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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(54)【発明の名称】試料濾過のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/00 20060101AFI20221012BHJP
   B01D 29/66 20060101ALI20221012BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20221012BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20221012BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20221012BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20221012BHJP
【FI】
B01D29/08 520A
B01D29/08 540A
B01D29/08 530Z
B01D29/38 520A
B01J19/00 321
C12N15/10 Z
C12M1/00 A
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509135
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(85)【翻訳文提出日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 US2020046033
(87)【国際公開番号】W WO2021030507
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】62/886,299
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521525963
【氏名又は名称】ドロップワークス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホラブ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ダン マシュー ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン アンドリュー カール
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4D116
4G075
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS32
4B063QX02
4D116AA01
4D116AA08
4D116BA07
4D116FF02A
4D116GG02
4D116GG03
4D116GG04
4D116GG12
4D116GG21
4D116HH14A
4D116HH25A
4D116KK04
4D116QA41C
4D116QA41D
4D116QA41F
4D116RR01
4D116RR05
4D116RR16
4D116UU19
4D116UU20
4D116VV07
4G075AA13
4G075AA39
4G075AA65
4G075BB04
4G075BB05
4G075BB10
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB50
4G075FA01
4G075FA12
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB12
(57)【要約】
試料をさらに操作する前に、例えば、化学的、生物学的、または他の試料を濾過するためのデノボ濾過構造を作成するための方法及び組成物が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフィルタ要素を提供するための方法であって、
(i)第1の液体中に複数の第1の微粒子の入った第1の懸濁液を提供する工程であって、前記第1の微粒子は、1μm~1000μmの間の第1の流体力学的直径を有する、工程と、
(ii)短手寸法及び長手寸法を有する少なくとも1つの非円形の開口部に前記第1の懸濁液を適用する工程であって、前記短手寸法は前記第1の微粒子の前記流体力学的直径より小さく、前記長手寸法は前記第1の微粒子の前記流体力学的直径の少なくとも2倍であることにより、前記開口部に前記第1の微粒子が蓄積し、前記第1の微粒子を含む第1のフィルタ要素が形成される工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記第1の液体を前記開口部に流入させ、前記開口部を通過させることによって、前記第1の懸濁液を少なくとも1つの狭窄部に適用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記開口部が、処理システムにつながる導管への開口部を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記開口部を介してその外に第2の液体を流して前記開口部の前記微粒子を分散させることによって、工程(ii)で形成された前記第1のフィルタ要素を分散させる工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記開口部に第2のフィルタ要素を形成する工程であって、第3の液体中に複数の第2の微粒子の入った第2の懸濁液を少なくとも1つの前記開口部に適用して、前記開口部に前記第2の微粒子を含む第2のフィルタ要素を形成し、前記第2の微粒子は、1μm~1000μmの間の第2の流体力学的直径を有し、前記開口部の前記短手寸法は、前記第2の微粒子の前記流体力学的直径よりも小さく、前記開口部の前記長手寸法は、前記第2の微粒子の前記流体力学的直径の少なくとも2倍である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記開口部から前記開口部を介して第4の液体を流して、前記狭窄部で前記微粒子を分散させることによって、前記第2のフィルタ要素を分散させることをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の微粒子が、前記第1の液体の少なくとも1つの成分を吸着する表面を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の微粒子が、核酸と結合しない表面を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記表面がフッ素化表面を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記導管が内部フッ素化表面を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の液体が核酸を含み、前記処理システムがポリメラーゼ連鎖反応システムを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の微粒子が球形または実質的に球形であり、前記開口部が長方形または実質的に長方形の形状を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の微粒子の前記第1の懸濁液を複数の開口部に適用する工程であって、前記複数の開口部はすべて非円形であり、短手寸法及び長手寸法を有し、前記短手寸法は前記第1の微粒子の前記流体力学的直径より小さく、前記長手寸法は前記第1の粒子の前記流体力学的直径の少なくとも2倍である工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
(i)微粒子と、前記微粒子が懸濁された液体とをそれぞれが含み、前記微粒子が1~1000μmの間の流体力学的直径を有する、複数の試料容器と、
(ii)短手寸法及び長手寸法を有する少なくとも1つの非円形の開口部を有する導管であって、前記短手寸法は前記微粒子の前記流体力学的直径よりも小さく、前記長手寸法は前記微粒子の前記流体力学的直径の少なくとも2倍である、導管と、
(iii)前記導管の前記1つまたは複数の開口部を前記複数の試料に順次浸漬させるように構成されたシステムと、
(iv)前記1つまたは複数の開口部を介して前記導管に前記液体を流し、こうして前記開口部に前記微粒子を蓄積し、前記微粒子を含むフィルタ要素を形成するように構成されたシステムと、
(v)前記導管から前記1つまたは複数の開口部を介して第2の液体を流して、前記開口部で前記微粒子を分散させるように構成されたシステムと、
を含む装置。
【請求項15】
前記複数の第1の微粒子が、10μm~100μmの範囲の直径を有する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の液体が、水性液体である、請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記微粒子が、球形または実質的に球形である、請求項14~16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試料を、デジタルPCR分析機器にロードする方法であって、
(i)水溶液中に核酸を含む複数の試料を提供する工程であって、各試料は複数の微粒子をさらに含み、前記微粒子は流体力学的直径を有する、工程と、
(ii)前記複数の試料のうちの第1の試料に試料導管を配置する工程であって、前記導管は開口部を有し、前記開口部は、前記第1の試料中の前記微粒子の前記流体力学的直径よりも小さい限界寸法を有し、前記導管は、前記PCR分析機器に流体的に接続されるように構成される、工程と、
(iii)前記第1の試料の水溶液中の前記核酸を前記導管の前記開口部及び前記導管に流す工程であって、前記第1の試料中の前記微粒子は前記導管に流入できず、代わりに、前記導管の前記開口部に1種または複数種の微粒子を含む第1のフィルタ要素を形成する工程と、
(iv)工程(iii)の後、液体を、前記導管を介して前記導管の前記開口部から流して、前記導管の前記開口部から前記第1の試料からの前記1種または複数種の微粒子を除去し、前記第1のフィルタ要素を除去する工程と、
(v)前記複数の試料のうちの第2の試料に前記試料導管を配置し、但し、前記第2の試料は前記第1の試料とは異なり、前記第2の試料の水溶液中の核酸を前記導管の前記開口部及び前記導管に流し、前記第2の試料中の前記微粒子は前記導管に流入することができず、代わりに、前記導管の前記開口部に1種または複数種の微粒子を含む、前記第1のフィルタ要素とは異なる第2のフィルタ要素を形成する工程と、
を含む、方法。
【請求項19】
(vi)工程(v)の後に、液体を、前記導管を介して前記導管の前記開口部から流して、前記第2の試料中の1種または複数種の前記微粒子を前記導管の前記開口部からを除去し、前記第2のフィルタ要素を除去する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも10個の異なる試料が、前記導管及び前記PCR分析機器に流入し、少なくとも10個の異なるフィルタ要素を形成し、逆流させる、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも100個の異なる試料が、前記導管及び前記PCR分析機器に流入し、少なくとも100個の異なるフィルタ要素を形成し、逆流させる、請求項18または19に記載の方法。
【請求項22】
前記微粒子が、1μm~1000μmの流体力学的直径を有する、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記1種または複数種の試料の水溶液から複数の区分を生成することをさらに含む、請求項18~22のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2019年8月13日出願の米国仮特許出願第62/886,299号の優先権を主張し、その出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
分析液体ハンドリングの分野では、迅速で、高い回収率を与え、汚れ及び目詰まりに対して堅牢であり、試料間の汚染の可能性を最小限に抑える方法で少量から中程度の試料量を操作することができるマイクロ流体デバイスの需要が高まっている。これらの属性の中には、低コスト、使いやすさ、及びマイクロ流体分析液体ハンドリングワークフローを用いる用途への適合性が含まれる、すなわち、これらのソリューションは、ユーザーのワークフローを妨げるものであってはならない。
【発明の概要】
【0003】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、(i)第1の液体中に複数の第1の微粒子の入った第1の懸濁液を提供する工程であって、第1の微粒子は、1μm~1000μmの間の第1の流体力学的直径を有するものを提供する工程と、(ii)短手寸法及び長手寸法を有する少なくとも1つの非円形開口部に第1の懸濁液を適用する工程であって、短手寸法は第1の微粒子の流体力学的直径より小さく、長手寸法は第1の粒子の流体力学的直径の少なくとも2倍であることにより、開口部に第1の微粒子が蓄積し、第1の微粒子を含む第1のフィルタ要素が形成される工程と、を含む第1のフィルタ要素を提供するための方法である。ある特定の実施形態では、第1の液体を開口部に流入させ、開口部を通過させることによって、第1の懸濁液を少なくとも1つの狭窄部に適用する。ある特定の実施形態では、開口部は、処理システムにつながる導管への開口部を含む。ある特定の実施形態では、この方法は、開口部を介してその外に第2の液体を流して開口部の微粒子を分散させることによって、工程(ii)で形成された第1のフィルタ要素を分散させる工程をさらに含む。ある特定の実施形態では、この方法は、開口部に第2のフィルタ要素を形成する工程であって、第3の液体中に複数の第2の微粒子の入った第2の懸濁液を少なくとも1つの開口部に適用して、第2の微粒子を含む第2のフィルタ要素を形成し、第2の微粒子は、1μm~1000μmの間の第2の流体力学的直径を有し、開口部の短手寸法は、第2の微粒子の流体力学的直径よりも小さく、開口部の長手寸法は、第2の微粒子の流体力学的直径の少なくとも2倍である、工程をさらに含む。ある特定の実施形態では、この方法は、開口部を介して第4の液体を流して、狭窄部の微粒子を分散させることによって、第2のフィルタ要素を分散させる工程をさらに含む。ある特定の実施形態では、第1の微粒子は、第1の液体の少なくとも1つの成分を吸着する表面を含む。ある特定の実施形態では、第1の微粒子は、核酸と結合しない表面を含む。ある特定の実施形態では、表面は、フッ素化表面を含む。ある特定の実施形態では、導管は、内部フッ素化表面を含む。ある特定の実施形態では、第1の液体は核酸を含み、処理システムはポリメラーゼ連鎖反応システムを含む。ある特定の実施形態では、第1の微粒子は球形または実質的に球形であり、開口部は長方形または実質的に長方形の形状を有する。ある特定の実施形態では、この方法は、第1の微粒子の第1の懸濁液を複数の開口部に適用する工程であって、複数の開口部はすべて非円形であり、短手寸法及び長手寸法を有し、短手寸法は第1の微粒子の流体力学的直径より小さく、長手寸法は第1の粒子の流体力学的直径の少なくとも2倍である、適用する工程をさらに含む。
【0004】
本明細書で提供されるある特定の実施形態は、(i)微粒子と、前記微粒子が懸濁された液体とをそれぞれが含み、前記微粒子が1~1000μmの間の流体力学的直径を有する、複数の試料容器と、(ii)短手寸法及び長手寸法を有する少なくとも1つの非円形の開口部を有する導管であって、短手寸法は微粒子の流体力学的直径よりも小さく、長手寸法は微粒子の流体力学的直径の少なくとも2倍である、導管と、(iii)導管の1つまたは複数の開口部を複数の試料に順次浸漬させるように構成されたシステムと、(iv)1つまたは複数の開口部を介して導管に液体を流し、こうして開口部に微粒子が蓄積し、微粒子を含むフィルタ要素を形成するように構成されたたシステムと、(v)導管から1つまたは複数の開口部を介して第2の液体を流して、開口部で微粒子を分散させるように構成されたシステムと、を含む装置である。ある特定の実施形態では、複数の第1の微粒子は、10μm~100μmの範囲の直径を有する。ある特定の実施形態では、第1の液体は、水性液体である。ある特定の実施形態では、微粒子は、球形または実質的に球形である。
【0005】
本明細書で提供されるある特定の実施形態は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試料を、デジタルPCR分析機器にロードする方法であって、(i)水溶液中に核酸を含む複数の試料を提供する工程であって、各試料は複数の微粒子をさらに含み、微粒子は流体力学的直径を有する工程と、(ii)複数の試料のうちの第1の試料に試料導管を配置する工程であって、導管は開口部を有し、開口部は、第1の試料中の微粒子の流体力学的直径よりも小さい限界寸法を有し、導管は、PCR分析機器に流体的に接続されるように構成される工程と、(iii)第1の試料の水溶液中の核酸を導管の開口部及び導管に流す工程であって、第1の試料中の微粒子は導管に流入できず、代わりに、導管の開口部に1種または複数種の微粒子を含む第1のフィルタ要素を形成する工程と、(iv)工程(iii)の後、液体を導管を介して導管の開口部から流して、導管の開口部から第1の試料からの1種または複数種の微粒子を除去し、第1のフィルタ要素を除去する工程と、(v)複数の試料のうちの第2の試料に試料導管を配置し、但し、第2の試料は第1の試料とは異なり、第2の試料の水溶液中の核酸を導管の開口部及び導管に流し、第2の試料中の微粒子は導管に流入することができず、代わりに、導管の開口部に1種または複数種の微粒子を含む、第1のフィルタ要素とは異なる第2のフィルタ要素を形成する工程と、を含む。ある特定の実施形態では、この方法は、(vi)工程(v)の後、液体を、導管を介して導管の開口部から流して、導管の開口部から第2の試料からの1種または複数種の微粒子を除去し、第2のフィルタ要素を除去する工程をさらに含む。ある特定の実施形態では、少なくとも10個の異なる試料が導管及びPCR分析機器に流入し、少なくとも10個の異なるフィルタ要素を形成し、逆流させる。ある特定の実施形態では、少なくとも100個の異なる試料が導管及びPCR分析機器に流入し、少なくとも100個の異なるフィルタ要素を形成し、逆流させる。ある特定の実施形態では、微粒子は、1μm~1000μmの流体力学的直径を有する。ある特定の実施形態では、この方法は、1種または複数種の試料の水溶液から複数の区分を生成する工程をさらに含む。
【0006】
参照による組み込み
本明細書に記述される全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、明確かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
本開示の新規の組成物及び方法の特徴が、添付の特許請求の範囲に具体的に記載される。本組成物及び方法の特徴及び利点のより良い理解は、本組成物及び方法の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、及びその添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】デノボ・フィルタ形成における種々の段階を示す。
図2】デノボ・フィルタ形成及びフィルタ分散の種々の段階の顕微鏡写真を示す。
図3】試料導管の開口部がスリットであり、フィルタ形成のための粒子が球である実施形態を示す。
図4】試料導管の開口部がスリットであり、フィルタ形成のための粒子が球であり、スリットの長さ寸法が平均球直径の数倍である実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示される方法及び組成物は、液体溶液を濾過するための方法、より具体的には必要に応じて微孔性フィルタ要素を作製するための方法であって、微粒子の液体懸濁液を提供する工程と、懸濁液中の粒径よりも小さいボアホールを備えたノズルに液体懸濁液を適用する工程と、液体をノズルに引き込み、流れが逆になってフィルタ要素が破壊されるまで、ノズルのボアホールに微孔性フィルタ要素を形成させる工程と、を含む、方法に関する。典型的には、マイクロ流体用途のための試料濾過は、マイクロ流体デバイスの使用前または使用中に発生し得る。微粒子は、液体溶液に対して外因性であってもよく、例えば、分析試料などの試料に加えられるか、または試料中に形成されている微粒子であってもよい。
【0010】
典型的には、マイクロ流体デバイスの使用前に濾過が行われる用途では、液体溶液は、使用されるマイクロ流体デバイスの最小限界寸法よりも小さい孔径を使用する好適な濾過ユニットで濾過される。これにより、デバイスに入る液体から、例えば、デバイスの経路を目詰まりさせることによって、デバイスの機能を妨げることがある破片及び/または粒子が十分に除去されていることが保証される。しかし、濾過された液体をその貯蔵容器からデバイスに搭載されたリザーバーに移動させる場合、及びプロセスの他の工程においては、取り扱い中に新しい容器の表面、空気、または使用者を含むがこれらに限定されない多くの供給源から、材料が導入されることがある。
【0011】
この課題を克服するために、濾過ユニットは、多くの場合、デバイスの流体流に組み込まれ、使用中の連続濾過が可能となる。これらのフィルタは、例えば、ディスク、メッシュ、またはフリットの形態でインライン・フィルタとして存在する場合もあれば、堰フィルタ、ピラーフィルタ、クロスフローフィルタ、メンブレンフィルタなどのマイクロ流体デバイス自体に構築された構造的特徴である場合もある。この方法の典型的な手法は、アレイ内の各ピラー間に画定された間隔で微細加工ピラーを装備したマイクロ流体デバイスを使用することである。マイクロ流体ピラーによって、デバイスの機能を妨害することがあるより大きな粒子を捕捉しながら、ピラー間の距離よりも小さい流体力学的直径を有する液体成分の通過が可能になる。しかし、すべての静的濾過方法と同様に、このデバイスは、捕捉された粒子が蓄積し、フィルタの一部を遮断し、開いている細孔の数を削減するため、急速に汚れる傾向がある。この遮断により、デバイスが使用できなくなるまで、汚れたフィルタ全体の流体力学的抵抗が実質的に変化する。さらに、同じマイクロ流体デバイスを使用して複数の後続の試料を操作する場合、フィルタ機能及びまたは目詰まりした破片により、試料成分が前の試料から後続の試料に実質的に移動して、試料の完全性が損なわれる場合がある。
【0012】
したがって、集積マイクロ流体配管を備えたほとんどのデバイスは、使い捨ての1回使いきり濾過ユニットで試料を事前濾過する必要があるか、またはマイクロ流体自体が試料間での交換を必要とする1回使いきりアイテムであるかのいずれかである傾向がある。
【0013】
結果として、連続使用マイクロ流体機器のための使い捨てマイクロ流体デバイスまたは試料前濾過ユニットを必要としない濾過戦略が必要である。
【0014】
本明細書に開示される方法及び組成物によって、複数の連続する試料を処理システムに向けることが可能になり、この処理システムでは、処理システムの機能の妨害が回避される程度に試料が十分に濾過されており、例えばフィルタなどを交換または洗浄するためにサンプリングを中断する必要がなく、また濾過により、ある試料から次の試料への伝搬がないか、実質的にない。ある特定の実施形態では、この方法及び組成物により、少なくとも5、10、20、30、50、100、200、500、1000、2000、または5000個の連続試料を処理システムに向けることが可能になり、この処理システムでは、処理システムの機能の妨害が回避される程度に試料が十分に濾過されており、例えばフィルタなどを交換または洗浄するためにサンプリングを中断する必要がなく、また濾過により、ある試料から次の試料への伝搬がないか、実質的にない。ある特定の実施形態では、これは、各試料に外因性微粒子を加えるかまたは形成することで達成され、ここで、微粒子は、試料を、例えば、その試料容器から処理システムのバルクに試料を移動させるために使用されるサンプリング導管における、狭窄部(例えば、開口部であり、一般に、「狭窄部」及び「開口部」という用語は、本明細書では、別段の指定がない限り、同義的に使用される)の最大寸法よりも、球形粒子のより大きな直径など、より大きな限界寸法を有している。ある特定の実施形態では、微粒子は球形または実質的に球形であり、狭窄部(例えば、開口部)は、長方形またはほぼ長方形などの非円形であり、微粒子の直径は、非円形、例えば長方形の狭窄部(開口部)の短手寸法よりも大きい。ある特定の実施形態では、長方形の狭窄部は、短手寸法の少なくとも1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、または10倍である長手寸法を有する。しかし、それが微粒子を通過させないような方法で構成されている限り、任意の好適な狭窄部の形状を使用することができる。微粒子は狭窄部に蓄積し、微粒子間のスペースよりも大きい試料内の粒子がサンプリング導管に移動するのを防ぐデノボ・フィルタを形成する。典型的には、試料間では、ある試料からのすべてまたは実質的にすべての微粒子を、次の試料に配置される前に導管の狭窄部から離すために、導管内の流れを逆流させる。このプロセスは、その後、次の試料においても繰り返される。したがって、フィルタ要素は各試料でデノボ形成され、次の試料の前に除去されるため、フィルタ要素を交換する必要がない。また、ある試料からのデノボ・フィルタ要素は全くまたは実質的に全く次の試料に伝搬されないため、デノボ・フィルタ要素からの試料間の相互汚染はないかまたは実質的にない。例えば、平均して、ある試料からの(例えば、外因的に加えられるかまたは形成された微粒子から構成された)デノボ・フィルタ要素の5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、または0.0001%未満が、次の試料に伝搬される。
【0015】
したがって、本明細書では、マイクロ流体チューブ、チャネル、または導管の内側または外側の所定の場所に、微粒子よりもより小さな限界寸法の狭窄部またはオリフィスにおける液体溶液中の微粒子の蓄積によって構築される、動的に形成された濾過ユニットを開示する。狭窄部に微粒子が蓄積すると、ミクロンサイズの濾過ユニットが作製され、マイクロ流体デバイスへの液体溶液の流入を妨げることなく、粒子が濾過ユニットを通過するのを防ぐ。必要量の液体溶液を引き込んだ後、目的の液体溶液を逆流させると、微粒子濾過ユニットが破壊され、デバイスが元の状態に戻る。
【0016】
最も広い態様では、本発明は、微孔性要素を生成することによってフィルタ要素を作製する方法であって、微粒子の液体溶液を提供する工程と、懸濁液中の微粒子の流体力学的直径よりも小さい少なくとも1つの狭窄部に液体懸濁液を適用する工程と、狭窄部での微粒子の蓄積をもたらす工程と、を含む、方法に関する。
【0017】
微粒子は、任意の好適な材料を含んでもよいが、ある特定の実施形態では、材料は、樹脂、フルオロポリマー、セラミック、金属、ケイ酸塩及びそれらの誘導体、アガロース、アクリルアミドなどからなる群から選択される。
【0018】
ある特定の例では、微粒子の表面の材料は、微粒子を通過する材料中の目的の1種または複数種の成分、例えば、微粒子によって作成されたデノボ・フィルタにより濾過される、水性試料などの試料の1種または複数種の成分と相互作用しないか、または実質的に相互作用しない材料である。核酸が目的の試料の場合、そのような材料は核酸と相互作用しないか、または実質的に相互作用しない。タンパク質またはポリペプチドが目的の試料の場合、そのような材料はタンパク質またはポリペプチドと相互作用しないか、または実質的に相互作用しない。ある特定の例では、材料は、試料の吸着を防ぐためにフッ素化表面を含む。好適な樹脂としては、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)及び代替フルオロポリマー樹脂またはフッ素化表面でコーティングされた誘導体化シリカ微粒子が挙げられる。
【0019】
ある特定の例では、微粒子は、デバイスで分析されている分子に対して不活性または実質的に不活性でありながら、液体溶液が微粒子凝集体を通過するときに液体溶液からある特定の成分を吸着するための表面、例えば誘導体化された表面を含む。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応に関連する用途では、微粒子は、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、及びヘムなどの一般的な血液系PCR阻害剤、またはフミン酸、フルボ酸、多糖、及びポリフェノールなどの土壌系阻害剤に選択的に結合する場合がある。
【0020】
マイクロ流体チューブ、チャネル、または導管は、任意の好適な材料を含んでもよいが、好ましい材料としては、シリカ、ポリエーテルケトン、ポリジメチルシロキサン、またはフルオロポリマープラスチックが挙げられる。
【0021】
ある特定の例では、チューブ、チャネル、または導管は、試料の吸着を防ぐためにフッ素化表面を含む。好適な材料としては、PTFE、PFAなどのフルオロポリマー材料またはフッ素化表面でコーティングされ誘導体化されたシリカチップから構築されたチューブ、チャネル、または導管が挙げられる。
【0022】
ある特定の例では、微粒子サイズは、直径で100nm~2mm、または500nm~1mm、または1μm~1000μm、または1μm~500μm、または2μm~500μm、または2μm~200μm、または5μm~500μm、または5~200μmの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、範囲は、流体力学的直径で10μm~100μmであり得る。微粒子が球形または実質的に球形である実施形態では、流体力学的直径及び実際の直径は同等であることが理解されよう。
【0023】
狭窄部、または狭窄部の関連する寸法は、微粒子が狭窄部を通過したり、狭窄部内に埋め込まれたりしないことを保証する、微粒子の流体力学的直径よりも小さい、例えば、わずかに小さいサイズである。狭窄部(開口部)の関連寸法または限界寸法は、狭窄部(開口部)を通過するために微粒子が適合しなければならない寸法である。例えば、円形の狭窄部では、関連寸法または限界寸法は直径であり、長方形の場合、関連する寸法または限界寸法は短辺の長さである。他の形状についても、同様の分析を行うことができる。ある特定の例では、狭窄部(開口部)は、直径で50nm~1mm、または100nm~1mm、または500nm~1mm、または1μm~1000μm、または1μm~500μm、または2μm~500μm、または2μm~200μm、または5μm~500μm、または5~200μmの限界寸法を有してもよい。ある特定の例では、範囲は、5μm~95μmであり得る。
【0024】
ある特定の例では、微粒子は、マイクロ流体チューブ、チャネル、または導管の狭窄部と同じ形状であり得る。他の例では、微粒子は、狭窄部とは異なる形状であり得る。例えば、微粒子が球形の物体であり、狭窄部が非球形である場合、またはその逆の場合、懸濁液中の微粒子のうちの1つの相補的な形状の一致によって狭窄部が目詰まりする可能性は低くなる。
【0025】
ある特定の例では、マイクロ流体チューブ、チャネル、または導管の狭窄部は、1つの(限界)寸法においてのみ狭窄部よりも小さい場合がある。例えば、狭窄部は、溶液中の微粒子の直径よりも小さい、短手寸法を有する細長いスリットの形をとることができ、一方、より大きいスリット寸法は、微粒子の1以上の倍数よりも大きいサイズであり得る。例えば、大きい方の寸法は、短手寸法の少なくとも1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、または10倍であってもよい。この例では、狭窄部の目詰まりの可能性を制限するであろう。
【0026】
ある特定の例では、チャネル、導管、またはチューブは、マイクロ流体デバイスへの流体の流入を可能にする複数のボアホール(本明細書で使用される開口部または狭窄部)を有し得る。微粒子懸濁液をマイクロ流体デバイスに引き込むとき、流体は各流体入口に入り、これにより複数の微粒子凝集体の生成がもたらされる。1つまたは複数の流体入口が目詰まりしている場合、残りの妨げられていない流体入口により、デバイスの機能を継続させることができる。さらに、流体入口の数が増加すると、単一の流体入口と比較して、総流量を増加させることができる場合がある。したがって、ある特定の実施形態では、複数の狭窄部(開口部)、例として、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、10、12、15、20、30、40、50、75、または100の狭窄部(開口部)、及び/または3、4、5、6、7、8、10、12、15、20、30、40、50、75、100、または150の狭窄部(開口部)が使用され、それらのすべては、微粒子よりも小さい限界寸法を有する。
【0027】
ある特定の例では、微粒子を、流体の流れ以外の力により流体入口に付着させることができる。これらの非限定的な例としては、磁性及び磁性粒子、電場及び荷電粒子、誘電泳動場及び対応する粒子、ならびに重力及び粒子床へのチューブの挿入による容器の底への粒子の沈降を挙げてもよい。
【0028】
液体試料の分析液体ハンドリングの場合、微粒子は、元の試料の一部であるか、外部試薬として加えられるか、または容器に事前堆積され、前記容器に試料を加えると再懸濁されるかのいずれかであり得る。
【0029】
容器への微粒子の事前堆積の1つの非限定的な例は、ソルビトールのようなキャリア相における微粒子の溶液または懸濁液の配合、容器への所定量の前記試料の添加、及びその後溶媒が乾燥するまでの凍結乾燥であってもよい。微粒子の糖質マトリックスは、溶媒和試料によって溶解するまで、実際に容器に結合したままになる。ソルビトールは単なる例示であり、凍結乾燥が可能であり、試料が導入される処理システムにおいてそれらの使用を変更するような方法で使用される可能性のある試料と相互作用しない、または実質的に相互作用しない限り、任意の好適なキャリア相を使用できることが理解されよう。
【0030】
ある特定の実施形態では、微粒子濾過戦略は、分析液体ハンドリングシステムとの関係で利用することができる。目的の材料を効果的にサイズフィルタリングできる任意の分析液体ハンドリングシステムで、これらの方法及び組成物において有用性が見出され得る。
【0031】
分析液体ハンドリングシステムの1つの非限定的な例は、デジタルPCR機器である。本実施例では、PCR試料は液体ハンドリングロボットまたは使用者によって調製され、分析液体ハンドリングシステムに注入され、液滴発生器を使用してエマルジョンに変換され、フッ素化油キャリアなどの連続相キャリアを熱循環させてPCR反応を実行し、次に検出器を通過させて、任意の好適な手段によってPCR反応の程度を分析する。この例では、各試料が同じ分析液体ハンドリングシステムを通過するため、高レベルの試料濾過及び低レベルの試料間汚染が必要である。試料の数は1~数千の範囲であり得る。
【0032】
微粒子濾過戦略の組み込みは、記載されたデジタルPCR機器の使用の容易さ及び堅牢性における大きな進歩を表す。例えば、2倍濃縮PCRマスターミックスでは、必要な濃度の微粒子を配合することができる。必要な量の試料、プライマー、及び検出剤で1対1に希釈したら、試料を96ウェルプレートに加え、デジタルPCR装置に挿入することができる。PCR溶液中の微粒子の直径よりも小さいボアホールを備えた試料注入チューブを試料に浸し、試料を機器に引き込み、チューブの表面に微粒子フィルタを形成し、試料を、デジタルPCRを実行するための機器に引き込む。試料を引き込んだ後、試料注入チューブを洗浄ステーションに移動させ、そこでチップを介して洗浄液を分注して微粒子フィルタを効果的に除去し、チューブからPCR材料を洗浄し、試料注入チューブを元の状態に実際に戻した後、試料に接触させる。
【0033】
したがって、ある特定の実施形態では、下記工程を含む、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試料をデジタルPCR機器などのPCR分析機器にロードする方法が提供される。
(i)水溶液中に核酸を含む複数の試料を提供する工程であって、各試料は複数の微粒子をさらに含み、微粒子は流体力学的直径を有する工程と、(ii)複数の試料のうちの第1の試料に試料導管を配置する工程であって、導管は開口部(狭窄部)を有し、開口部は、第1の試料中の微粒子の前記流体力学的直径よりも小さい限界寸法を有し、導管は、PCR分析機器に流体的に接続されるように構成される工程と、(iii)第1の試料の水溶液中の核酸を導管の開口部及び導管に流す工程であって、第1の試料中の微粒子は導管に流入できず、代わりに、導管の開口部に1種または複数種の微粒子を含む第1のフィルタ要素を形成する工程。開口部(狭窄部)は、任意の好適な形状であり得る。ある特定の実施形態では、開口部は、円形または実質的に円形であり、限界寸法は直径である。ある特定の実施形態では、開口部は長方形または実質的に長方形であり、限界寸法は長方形の短辺の長さであり、このような場合、長方形の長辺の長さは、短辺の長さの少なくとも1.5、2、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、12、15、または20倍などの任意の好適な長さであり得る。ある特定の実施形態では、この方法は、(iv)工程(iii)の後、液体を、導管を介して導管の開口部から流して、導管の開口部から第1の試料からの1種または複数種の微粒子を除去し、前第1のフィルタ要素を除去する工程、例えば、開口部から離れた導管に流体を導入し、流体を導管を介して開口部から流し、こうして微粒子を移動させる工程を含む。場合によっては、導管は試料が除去された試料容器内に残り、流れる流体が容器に入る。場合によっては、導管を別の容器、例えば廃棄物容器に移動させ、流れる流体は他の容器に入る。この方法はまた、(v)複数の試料のうちの第2の試料に試料導管を配置し、但し、第2の試料は第1の試料とは異なり、第2の試料の水溶液中の核酸を導管の開口部及びう導管に流し、第2の試料中の微粒子は導管に流入することができず、代わりに、導管の開口部に1種または複数種の微粒子を含む、第1のフィルタ要素とは異なる第2のフィルタ要素を形成する工程を含む。このプロセスは、好適な回数繰り返すことができ、各試料で微粒子のデノボ・フィルタが形成され、試料または試料の一部がPCR装置に移動された後に分散され、濾過の追加の工程を実行する必要なしに、例えば、プロセス中に(従来の意味で)フィルタを追加または変更する必要がない。例えば、少なくとも2、3、4、5、7、10、12、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000の試料を、(デノボ・フィルタを形成及び分散するためのその必要性以外に)新しいまたは洗浄されたフィルタ要素を加えるために中断することなくサンプリングされ、及び/または3、4、5、7、10、12、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、5000以下の試料を、(デノボ・フィルタを形成及び分散するためのその必要性以外に)新しいまたは洗浄されたフィルタ要素を加えるために中断することなくサンプリングされる。代わりに、試料ごとに、新しいフィルタ要素が形成され、その後、逆流させる。微粒子は、1つまたは複数の開口部を通過できない限り、任意の好適な寸法、例として本明細書の他の場所で説明されている寸法、例えば、1~1000μmの流体力学的直径を有する。微粒子は、任意の好適な形状、例えば、球形または実質的に球形であり得る。本明細書に記載の数などの、導管内の任意の好適な数の開口部、例えば、1~100個の開口部、または1~10個の開口部、または1~5個の開口部、または2~100個の開口部、または2~10個の開口部、または2~5個の開口部、または3~100個の開口部、または3~10個の開口部、または3~5個の開口部、または5~100個の開口部、または5~50個の開口部、または5~10個の開口部、または10~100個の開口部、または10~50個の開口部を使用することができる。
【0034】
図1は、特定の限界直径(寸法)のチャネル、導管、またはオリフィスを含有する基板を示す。この基板は、マイクロ流体チャネルを含有するマイクロ流体チップまたはチューブであり得る。基板内のチャネルまたはオリフィスの特定の限界直径よりも大きい流体力学的直径の微粒子を含有する溶液は、チャネルまたはオリフィスを介して引き込まれる。溶液が引き込まれると、微粒子は入口点に蓄積し始める。この微粒子の蓄積は、入口点での微粒子がパッキングする性質によって、指定されたサイズの細孔穴(pore hole)を備えたマトリックスを形成する。これらの細孔穴は、マイクロ流体基板上の入口点よりも著しく小さいサイズである。前記マイクロ流体デバイスの機能を妨害する場合がある前記溶液への粒子の侵入は、蓄積された微粒子凝集体によって防止される。
【0035】
図2は、本明細書に開示される方法及び組成物の一実施形態の試験を示す。内径が0.01インチの1/16インチODチューブに50μmの金属ワイヤを挿入し、加熱して、カスタマイズされたPFAチューブを準備した。加熱するとPFAチューブが柔らかくなり、金属ワイヤの周りで変形した。金属ワイヤを取り外すと、チューブは、直径50μmのオリフィスを実質的に有していた。カスタマイズされたチューブをシリンジポンプに取り付け、53~63μmの蛍光ポリスチレン微小球を懸濁させた調製溶液に浸漬した。調製された溶液の濃度は、製造元の指示に従って、10mLの脱イオン水に0.1gの微小球を分散させた濃度であった。チューブ及び溶液を40倍の倍率の蛍光顕微鏡下に置き、100μL/分の速度で引き込みながら撮像した。所定の時間が経過した後、液体を逆流させた。ビデオから選択したフレームを、時系列に配置した。矢印は、液体の流れの速度を表す。時間t=1で、液体の引き込みが始まる。時間t=5で、液体の逆流が始まる。チューブのボアホールでの微粒子の蓄積は、時間の経過とともに明らかになり、蓄積した微粒子は、液体の流れが逆流するとすぐに分散する。
【0036】
図3は、本明細書に開示される方法及び組成物の別の実施形態を示す。ある特定の例では、微粒子は、狭窄部と同じ形状であり得る。他の例では、微粒子は、狭窄部とは異なる形状であり得る。例えば、微粒子が球形の物体であり、狭窄部が非球形である場合、またはその逆の場合、狭窄部が目詰まりする可能性は低くなる。
【0037】
一実施形態では、球形微粒子の液体試料は、溶液中の微粒子よりも小さい限界直径を有する非円形マイクロチャネルに引き込まれる。微粒子溶液が非円形チャネルに引き込まれると、微粒子は流体入口で凝集する。微粒子とチャネルとの間の形状の不一致により、微粒子が流体入口を目詰まりさせることができないことが保証される。
【0038】
図4は、本明細書に開示される方法及び組成物のさらなる実施形態を示す。ある特定の例では、狭窄部は、1つの限界寸法においてのみ微粒子よりも小さい場合がある。例えば、狭窄部は、溶液中の微粒子の直径よりも小さい、短い直径を有するスリットの生成によって形成されることがあり、一方、より大きいスリット寸法は、微粒子の1以上の倍数よりも大きいサイズであり得る。この例では、液体の流れが狭窄部を通るのを妨げる狭窄部の目詰まりの可能性を制限する。
【0039】
一実施形態では、球形微粒子の液体試料は、溶液中の微粒子よりも小さい限界直径(寸法)を有する細長いマイクロチャネルに引き込まれる。細長いマイクロチャネルは、微粒子の侵入を防ぐ形状であるが、複数の微粒子が入口全体に広がる程度に大きい。微粒子溶液が細長いチャネルに引き込まれると、微粒子は流体入口で凝集する。微粒子とチャネルとの間の形状の不一致により、微粒子が流体入口を目詰まりさせることができることが保証される。
【0040】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、(i)第1の液体中に複数の第1の微粒子の入った第1の懸濁液を提供する工程であって、第1の微粒子は、本明細書に記載の任意の好適な範囲、例として1μm~1000μmの間、または10μm~100μmの間の第1の流体力学的直径を有する、工程と、(ii)短手寸法及び長手寸法を有する、楕円形もしくは実質的に楕円形の形状、または長方形もしくは実質的に長方形の形状などの、少なくとも1つの非円形開口部に第1の懸濁液を適用する工程であって、短手寸法は第1の微粒子の流体力学的直径より小さく、長手寸法は、本明細書に記載されるような短手寸法の好適な倍数、例えば、第1の粒子の流体力学的直径の少なくとも1.5、2、3、4、または5倍、例えば少なくとも2倍であることにより、開口部に第1の微粒子が蓄積し、第1の微粒子を含む第1のフィルタ要素が形成される、工程と、を含む第1のフィルタ要素を提供するための方法である。開口部は、開口部を通過する液体または液体の成分を処理するための、機器につながる導管への開口部であり得るか、または、機器につながるように配置されるように構成され得る。液体は、任意の好適な方法によって、例えば、液体を流すことによって、開口部を通過することができる。ある特定の実施形態では、工程(ii)で形成されたフィルタ要素を、開口部から第2の液体が逆に通過する(例えば、開口部を通る流体の流れの方向を逆にする)ことによって分散させることができる。この方法は、開口部に第2のフィルタ要素を形成する工程であって、第3の液体中に複数の第2の微粒子の入った第2の懸濁液を少なくとも1つの開口部に適用して、第2の微粒子を含む第2のフィルタ要素を形成し、第2の微粒子は、本明細書に記載の任意の好適な範囲、例として1μm~1000μmの間、または10μm~100μmの間の第2の流体力学的直径を有し、開口部の短手寸法は、第2の微粒子の流体力学的直径よりも小さく、開口部の長手寸法は、本明細書に記載されるような短手寸法の好適な倍数、例えば、第2の微粒子の流体力学的直径の少なくとも1.5、2、3、4、または5倍、例えば少なくとも2倍である、工程をさらに含むことができる。第2のフィルタは、いくつかの例では、第1のフィルタと同様に分散させることができる。各流体中の微粒子は、任意の好適な形状であり得、ある特定の例では、微粒子は球形または実質的に球形である。微粒子のいくつかまたはすべての表面は、それが1種または複数種の液体のある特定の成分と相互作用することができ、及び/または他の成分と相互作用しないか、または実質的に相互作用しないようなものであり得る。例えば、分析される核酸を含む液体の場合、微粒子は、核酸と相互作用しない、または実質的に相互作用しない表面を有することができ、本明細書の他の場所で説明されているように、表面はさらに他の成分と相互作用することができる場合がある。場合によっては、複数の開口部が使用され、すべてが粒子の流体力学的直径よりも小さい限界寸法を有する。
【0041】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、(i)微粒子と、微粒子が懸濁された液体とをそれぞれが含み、微粒子が任意の好適な流体力学的直径、例えば、1~1000μmの間、または10~100μmの間を有する複数の試料容器と、(ii)短手寸法及び長手寸法を有する少なくとも1つの非円形の開口部を有する導管であって、短手寸法は微粒子の流体力学的直径よりも小さく、長手寸法は微粒子の流体力学的直径の任意の好適な倍数、例として微粒子の流体力学的直径の少なくとも1.5、2、3、4、5、7、または10倍、例えば少なくとも2倍である、導管と、(iii)導管の1つまたは複数の開口部を複数の試料に順次浸漬するように構成されたシステム、例えば、デジタルPCR機器用のサンプリングシステムなどのサンプリングシステムと、(iv)ポンプなどのように、1つまたは複数の開口部を介して導管に液体を流し、こうして開口部に微粒子を蓄積し、微粒子を含む第1のフィルタ要素を形成するように構成されたシステムと、(v)導管から1つまたは複数の開口部を介して第2の液体を流して、開口部で微粒子を分散させるように構成されたシステムと、を含む装置である。したがって、装置は、試料容器から材料を順次サンプリングし、各サンプリング中にフィルタを形成し、サンプリングが完了した後にフィルタを分散させ、容器から容器へと移動するように構成される。各フィルタを分散させて、試料が引き込まれた容器に、または1つもしくは複数の廃棄物容器などの異なる容器に戻すことができる。
【0042】
本組成物及び方法の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されたが、そのような実施形態が単なる例として提供されていることは当業者には明らかであろう。ここで、当業者は、多数の変化形、変更、及び置換を本発明から逸脱することなく想定するであろう。本明細書に記載の本方法及び組成物の実施形態に対する種々の代替案を、本方法及び組成物を実施する際に使用することができることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本方法及び組成物の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造、ならびにそれらの同等物は、それによって包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】