(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(54)【発明の名称】非酸化染毛剤組成物及び非酸化染毛方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20221012BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20221012BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20221012BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q5/06
A61K8/49
A61K8/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509186
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2020072743
(87)【国際公開番号】W WO2021028529
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リピンスキー,ノルメン
(72)【発明者】
【氏名】モレンダ,ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB012
4C083AB032
4C083AB281
4C083AB282
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC091
4C083AC692
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC861
4C083AC862
4C083AC902
4C083BB04
4C083BB05
4C083BB06
4C083BB07
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD27
4C083EE26
(57)【要約】
本発明は、非酸化染毛剤組成物、非酸化染毛方法及び、該組成物の使用に関する。本組成物は、特定の直接染料、脂肪族アルコール、界面活性剤及び緩衝系を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが6~8.5の範囲である非酸化染毛剤組成物であって、
a)好ましくはアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性/双性イオン界面活性剤及び/又はノニオン界面活性剤及び/又はこれらの混合物から選択される1種以上の界面活性剤、
b)直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和のC
12~C
22炭化水素鎖を有する1種以上の脂肪族アルコール及び/又はこれらの混合物、
c)アニオン性及び/又はノニオン性毛髪直接染料及び/又はこれらの混合物から選択される1種以上の毛髪直接染料、
d)pH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、前記緩衝能が25℃の大気下で体積比1:10に水で希釈された前記組成物を酸塩基滴定することにより測定されたものである緩衝系、
を含む、非酸化染毛剤組成物。
【請求項2】
a)の界面活性剤がアニオン界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
毛髪直接染料が、HCブルー18、HCレッド18、HCイエロー16及び/又はこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1及び/又は2に記載の組成物。
【請求項4】
1種以上のカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを含み、化合物c)の1種以上の毛髪直接染料に対するカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーの総当量モル比が15以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
カチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを含まない、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
d)の緩衝能が、pH6~8.5の範囲において0.003g当量/L~0.25g当量/L、好ましくは0.003g当量/L~0.05g当量/Lであり、前記緩衝能が25℃の大気下で体積比1:10に水で希釈された前記組成物を酸塩基滴定することにより測定されたものであることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
d)の緩衝系がリン酸緩衝系であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の総重量に対して計算される緩衝塩の総濃度が、0.1重量%~10重量%、好ましくは0.25重量%~8重量%、より好ましくは0.5重量%~5重量%であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の総重量に対して計算される脂肪族アルコールb)の総濃度が、1重量%~20重量%、好ましくは2重量%~15重量%、より好ましくは3重量%~10重量%であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の総重量に対して計算される化合物a)の総濃度が、0.1重量%~10重量%、好ましくは0.2重量%~8重量%、より好ましくは0.3重量%~5重量%、更に好ましくは0.3重量%~3重量%であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物の総重量に対して計算される直接染料c)の総濃度が、0.01重量%~0.8重量%、好ましくは0.02重量%~0.25重量%であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
非酸化ヘアカラー組成物の製造方法であって、次の各ステップ:
i)請求項1~11に定義される化合物c)のアニオン性及び/又はノニオン性直接染料から選択される1種以上の毛髪直接染料を含む第一の組成物を提供すること、
ii)
-請求項1~11に定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤、
-請求項1~11に定義される化合物b)の1種以上の脂肪族アルコール、
-請求項1~11に定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、前記緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する前記組成物を滴定することにより測定される緩衝系、
を含む第二の組成物を提供すること、
iii)ステップi)及びステップii)の各組成物を混合して、pHが6~8.5の範囲にあるすぐに使用可能な組成物を生成すること、
を含む製造方法。
【請求項13】
前記すぐに使用可能な組成物が、1種以上のカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを含み、前記すぐに使用可能な組成物における化合物c)の1種以上の毛髪直接染料に対するカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーの総当量モル比が、15以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記すぐに使用可能な組成物が、カチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを含まないことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
次の各ステップ:
iv)請求項1~11に定義されるすぐに使用可能な混合物を1分~60分の間毛髪に適用すること、
v)任意的にその毛髪にすすぎ処理を行うこと
を含む、非酸化的ヘアカラー方法。
【請求項16】
-請求項1~11に定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤、
-請求項1~11に定義される化合物b)の1種以上の脂肪族アルコール、
-請求項1~11に定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、前記緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する前記組成物を滴定することにより測定される緩衝系
を含む組成物の、請求項1~11に定義される化合物c)のアニオン性及び/又はノニオン性直接染料の毛髪への取り込みを向上させるための使用。
【請求項17】
使用直前まで別々に保管される2種の組成物を含むキットオブパーツであって、第一の独立した組成物が、請求項1~11に定義される化合物c)の1種以上のアニオン性及び/又はノニオン性染料を含み、第二の独立した組成物が、
-請求項1~11に定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤と、
-請求項1~11に定義される化合物b)の1種以上の脂肪族アルコールと、
-請求項1~11に定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、前記緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する前記組成物を滴定することにより測定される緩衝系を含む、
キットオブパーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非酸化染毛剤組成物、非酸化染毛方法及び、特定の毛髪直接染料の毛髪への取り込みを向上させるための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、化粧品産業の顧客は、毛髪にダメージを与えることなく、また長期間美容室に行く必要も無く髪を染められるヘアカラー製品を求めている。一方同時に、明るく、艶のある、長持ちする、色ムラのないヘアカラーリングも求められている。通常、スピーディに毛髪の色を変えるには、毛髪直接染料が顧客満足のための一般的手段となっている。しかし、染色結果に対する顧客満足は高くないことが多いので、従来技術はこれらの問題の解決を試みてきた。
【0003】
特許文献1及び2は、アニオン性直接染料のためのpH6未満の緩衝系及び2ステップ毛髪処理プロセスを開示している。これらの開示に対して、本発明は異なるpH範囲を利用し、すぐに使用可能な組成物による1ステップ処理を採用する。
特許文献3は、pH4未満又は9を超えるpHにおいて酸化型及び非酸化型の第二組成物に混和される毛髪直接染料組成物を開示している。しかし、本発明の目的である非酸化染色を更に向上させるためには、緩衝系だけでなく異なるpHが必要とされる。
非特許文献1及び2は、毛髪直接染料、界面活性剤及び脂肪族アルコールを含む染毛剤製品を開示しているが、これら製品は本発明の緩衝系を採用していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017206087号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102016202649号明細書
【特許文献3】国際公開第2018/087203号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ミンテル#5730273
【非特許文献2】ミンテル#4854927
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、予期せぬことに、界面活性剤、脂肪族アルコール及びpH6~8.5の範囲の緩衝系を含む組成物が、毛髪への毛髪直接染料の取り込みを向上させることを見出した。従来技術では多くの試みがなされてきたものの、本発明の構成と技術的効果を開示するものはない。本発明は色濃く、明るく、艶があり、色落ちせず、色ムラがないヘアカラーを提供し、このヘアカラーはスピーディに毛髪に適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の第一の目的は、pHが6~8.5の範囲である非酸化染毛剤組成物であって、
a)好ましくはアニオン界面活性剤、両性/双性イオン界面活性剤及び/又はノニオン界面活性剤及び/又はこれらの混合物から選択される1種以上の界面活性剤、
b)直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和のC12~C22炭化水素鎖を有する1種以上の脂肪族アルコール及び/又はこれらの混合物、
c)アニオン性及び/又はノニオン性毛髪直接染料及び/又はこれらの混合物から選択される1種以上の毛髪直接染料、
d)pH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、前記緩衝能が25℃の大気下で体積比1:10に水で希釈された前記組成物を酸塩基滴定することにより測定されたものである緩衝系、
を含む組成物である。
【0008】
本発明の第二の目的は、非酸化ヘアカラー組成物の製造方法であって、次の各ステップ:
i)上に定義される化合物c)のアニオン性及び/又はノニオン性直接染料から選択される1種以上の毛髪直接染料を含む第一の組成物を提供すること、
ii)
-上に定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤、
-上に定義される化合物b)の1種以上の脂肪族アルコール、
-上に定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、前記緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する該組成物を滴定することにより測定される緩衝系
を含む第二の組成物を提供すること、
iii)ステップi)及びステップii)の各組成物を混合して、pHが6~8.5の範囲にあるすぐに使用可能な(ready-to-use)組成物を生成すること、
を含む製造方法である。
【0009】
本発明の第三の目的は、
-上に定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤、
-上に定義される化合物b)の1種以上の脂肪族アルコール、
-上に定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、該緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する該組成物を滴定することにより測定される緩衝系
を含む組成物の、上に定義される化合物c)のアニオン性及び/又はノニオン性直接染料の毛髪への取り込みを向上させるための使用である。
【0010】
本発明の他の目的は、次の各ステップ:
iv)上に定義されるすぐに使用可能な混合物を1分~60分の間毛髪に適用すること、
v)任意的にその毛髪にすすぎ処理を行うこと
を含む、非酸化的ヘアカラー方法である。
【0011】
本発明の更なる他の目的は、上に定義される化合物c)の1種以上のアニオン性及び/又はノニオン性染料を含むA部と、
-上に定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤、
-上に定義される化合物b)の直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和のC12~C22炭化水素鎖を有する1種以上の脂肪族アルコール、
-上に定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、該緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する該組成物を滴定することにより測定される緩衝系
を含むB部とを含む、
2剤式非酸化染色組成物である。
【0012】
本発明の更なる他の目的は、使用する直前までは別々に保管される2種の組成物を含むキットオブパーツであって、第一の独立した(separate)組成物が、上に定義される化合物c)の1種以上のアニオン性及び/又はノニオン性染料を含み、第二の独立した組成物が、
-上に定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤、
-上に定義される化合物b)の1種以上の脂肪族アルコール、
-上に定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、該緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する該組成物を滴定することにより測定される緩衝系を含む、キットオブパーツである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、アニオン性及び/又はノニオン性の毛髪直接染料の毛髪繊維への付着を向上させる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本バッファー化組成物が処方媒体をもたらし、それによって毛髪直接染料を溶液内に安定的に収容せしめ、もって毛髪に対する染毛剤の親和性を実現し得ると考えられる。特に、本緩衝系は染毛剤の毛髪繊維への取り込みを容易とする。
【0014】
a)の化合物
本発明に係る組成物は、好ましくはアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性/双性イオン界面活性剤及び/又はノニオン界面活性剤及び/又はこれらの混合物から選択される1種以上の界面活性剤、より好ましくはアニオン界面活性剤、両性/双性イオン界面活性剤及び/又はノニオン界面活性剤及び/又はこれらの混合物から選択される1種以上の界面活性剤を含む。
【0015】
好適なアニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩や、アルキル若しくはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル若しくはアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和若しくは不飽和脂肪酸塩、アルキル若しくはアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸、リン酸モノ若しくはジエステル、スルホコハク酸エステルが挙げられる。アニオン界面活性剤の例としては、セテアリルリン酸ナトリウムやラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0016】
好適なカチオン界面活性剤としては、モノアルキルトリメチルアンモニウムクロリドや、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、モノアルキルトリメチルアンモニウムブロミドが挙げられる。カチオン界面活性剤の例としてはセトリモニウムクロリドやベヘントリモニウムクロリドが挙げられる。
【0017】
好適なノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルや、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ若しくはジエタノールアミド、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、アルキルサッカライド、アルキルアミンオキシド、アルキルアミドアミンオキシドが挙げられる。ノニオン界面活性剤の例としては、セテアレス-30やPEG-40水添ヒマシ油が挙げられる。
【0018】
好適な両性界面活性剤としては、イミダゾリン類や、カルボベタイン類、アミドベタイン類、スルホベタイン類、ヒロドキシスルホベタイン類、アミドスルホベタイン類が挙げられる。両性界面活性剤の例としては、ココイルベタインやココアミドプロピルベタインが挙げられる。
【0019】
毛髪に色強度を与える観点から、界面活性剤a)としてはアニオン界面活性剤が好ましい。
【0020】
乳化安定性や毛髪に色強度を与える観点から、最も好ましいアニオン界面活性剤はセテアリルリン酸ナトリウムである。
【0021】
本発明の組成物は原則として1種以上のカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマー含むことができる。しかし、毛髪に色強度を与える観点から、化合物c)の1種以上の毛髪直接染料に対するカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーの総当量モル比は、15以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。
【0022】
要するに、カチオン界面活性剤及び/又はポリマーに対比して、染料のモル濃度を過剰にすることが色強度向上の観点から好ましい。
【0023】
本発明のより好ましい態様において、色強度向上の観点から、本発明組成物はカチオン性ポリマー及び/又はカチオン界面活性剤を含まない。
【0024】
組成物全体に対して計算される化合物a)の総濃度は、組成物の安定性の観点から、0.1重量%以上が好ましく、0.2重量%以上がより好ましく、0.3重量%以上が更に好ましい。
【0025】
製品コストの観点からは、組成物全体に対して計算される化合物a)の総濃度は、10重量%以下が好ましく、8重量%以下がより好ましく、5重量%以下が更に好ましく、3重量%以下が更に好ましい。
【0026】
上述の効果を達成するため、組成物の総重量に対して計算される化合物a)の総濃度は、0.1重量%~10重量%の範囲が好ましく、0.2重量%~8重量%の範囲がより好ましく、0.3重量%~5重量%の範囲が更に好ましく、0.3重量%~3重量%が更に好ましい。
【0027】
本発明の好ましい態様において、組成物の安定性の観点から、化合物a)の界面活性剤としてはアニオン界面活性剤が好ましく、組成物の総重量に対して計算されるアニオン界面活性剤の総濃度は、0.1重量%~10重量%の範囲が好ましく、0.2重量%~8重量%の範囲がより好ましく、0.3重量%~5重量%の範囲が更に好ましく、0.3重量%~3重量%が更に好ましい。
【0028】
b)の化合物
本発明組成物は、b)の化合物として、直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和のC12~C22炭化水素鎖を有する1種以上の脂肪族アルコール及び/又はこれらの混合物を含む。
【0029】
分枝鎖又は直鎖、飽和又は不飽和のC12~C22アルキル鎖を有する脂肪族アルコールとして好適なものは、例えばラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及び/又はこれらの混合物である。
【0030】
毛髪への色強度付与及びコンディショニング効果提供の各観点から、1種以上の脂肪族アルコールは、分枝鎖又は直鎖、飽和又は不飽和のC14~C18アルキル鎖を有する脂肪族アルコール(好ましくは飽和C14~C18アルキル鎖)及び/又はこれらの混合物から選択されることが好ましい。より好ましくは、直鎖、飽和のC16及びC18アルキル鎖を有する脂肪族アルコールの混合物である。
【0031】
化粧料としての相溶性、毛髪への色強度付与、コンディショニング効果提供の各観点から、脂肪族アルコールとしてはセテアリルアルコールが好ましい。
【0032】
毛髪への色強度付与、染色された毛髪へのコンディショニング効果提供の各観点から、組成物総重量に対して計算される脂肪族アルコールb)の好ましい総濃度は、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、3重量%以上が更に好ましい。
【0033】
毛髪への色強度付与、染色された毛髪へのコンディショニング効果提供、保存安定的な組成物の実現の各観点から、組成物総重量に対して計算される脂肪族アルコールb)の総濃度は、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更に好ましい。
【0034】
好ましくは、上述の効果を達成するためには、組成物総重量に対して計算される脂肪族アルコールb)の総濃度は、1重量%~20重量%の範囲、より好ましくは2重量%~15重量%の範囲、更に好ましくは3重量%~10重量%の範囲である。
【0035】
c)の化合物
本発明組成物は、c)の化合物として、アニオン性及び/又はノニオン性毛髪直接染料から選択される1種以上の毛髪直接染料を含む。
【0036】
本発明の意味範囲において、「アニオン性及び/又はノニオン性毛髪直接染料」とは、pH6~8.5の条件における染料のイオン性状を意味する。
【0037】
毛髪に色強度を付与する観点から、化合物c)の1種以上の毛髪直接染料はノニオン性毛髪直接染料から選択されることが好ましい。従って、各染料はpH6~8.5においてノニオン性である。
【0038】
上述の定義を満足する好適な染料全てを本発明の目的で使用することができる。
【0039】
好適なアニオン性直接染料は、アシッドブラック1、アシッドブルー1、アシッドブルー3、フードブルー5、アシッドブルー7、アシッドブルー9、アシッドブルー74、アシッドオレンジ3、アシッドオレンジ6、アシッドオレンジ7、アシッドオレンジ10、アシッドレッド1、アシッドレッド14、アシッドレッド18、アシッドレッド27、アシッドレッド50、アシッドレッド52、アシッドレッド73、アシッドレッド87、アシッドレッド88、アシッドレッド92、アシッドレッド155、アシッドレッド180、アシッドバイオレット9、アシッドバイオレット43、アシッドバイオレット49、アシッドイエロー1、アシッドイエロー23、アシッドイエロー3、フードイエローNo.8、D&CブラウンNo.1、D&CグリーンNo.5、D&CグリーンNo.8、D&CオレンジNo.4、D&CオレンジNo.10、D&CオレンジNo.11、D&CレッドNo.21、D&CレッドNo.27、D&CレッドNo.33、D&Cバイオレット2、D&CイエローNo.7、D&CイエローNo.8、D&CイエローNo.10、FD&Cレッド2、FD&Cレッド40、FD&CレッドNo.4、FD&CイエローNo.6、FD&Cブルー1、フードブラック1、フードブラック2、ディスパースブラック9、ディスパースバイオレット1及びこれらのアルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)塩である。これらのうち、もっとも好ましいアニオン性染料は、アシッドレッド52、DCバイオレット2、DCレッド33、DCオレンジ4、DCレッド27、DCイエロー10、HCブルー18、HCレッド18及びHCイエロー16である。
【0040】
ニトロ染料を含む好適なノニオン性染料は、HCブルーNo.2、HCブルーNo.4、HCブルーNo.5、HCブルーNo.6、HCブルーNo.7、HCブルーNo.8、HCブルーNo.9、HCブルーNo.10、HCブルーNo.11、HCブルーNo.12、HCブルーNo.13、HCブラウンNo.1、HCブラウンNo.2、HCグリーンNo.1、HCオレンジNo.1、HCオレンジNo.2、HCオレンジNo.3、HCオレンジNo.5、HCレッドBN、HCレッドNo.1、HCレッドNo.3、HCレッドNo.7、HCレッドNo.8、HCレッドNo.9、HCレッドNo.10、HCレッドNo.11、HCレッドNo.13、HCレッドNo.54、HCレッドNo.14、HCバイオレットBS、HCバイオレットNo.1、HCバイオレットNo.2、HCイエローNo.2、HCイエローNo.4、HCイエローNo.5、HCイエローNo.6、HCイエローNo.7、HCイエローNo.8、HCイエローNo.9、HCイエローNo.10、HCイエローNo.11、HCイエローNo.12、HCイエローNo.13、HCイエローNo.14、HCイエローNo.15、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、ピクラミン酸、1,2-ジアミノ-4-ニトロベンゾール、1,4-ジアミノ-2-ニトロベンゾール、3-ニトロ-4-アミノフェノール、1-ヒドロキシ-2-アミノ-3-ニトロベンゾール及び2-ヒドロキシエチルピクラミン酸である。
【0041】
しかし、色強度の観点から、化合物c)の最も好ましい毛髪直接染料は、HCブルー18、HCレッド18、HCイエロー16及び/又はこれらの混合物から選択される。
【0042】
十分な色強度を毛髪に付与する観点から、組成物の総重量に対して計算される直接染料c)の総濃度は、0.01重量%以上が好ましく、0.02重量%以上がより好ましい。
【0043】
製品コストの観点から、組成物の総重量に対して計算される直接染料c)の総濃度は、0.8重量%以下が好ましく、0.25重量%以下がより好ましい。
【0044】
好ましくは、上述の効果を達成するためには、組成物の総重量に対して計算される直接染料cの総濃度は、0.01重量%~0.8重量%、より好ましくは0.02重量%~0.25重量%である。
【0045】
本発明の一態様においては、製品コストの観点から、HCブルー18、HCレッド18、HCイエロー16及び/又はこれらの混合物から選択される直接染料の、組成物の総重量に対して計算される総濃度は、好ましくは0.01重量%~0.8重量%、より好ましくは0.02重量%~0.25重量%である。
【0046】
d)の特徴
本発明組成物は、特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、該緩衝能は25℃の大気下で体積比1:10に水で希釈された該組成物を酸塩基滴定することにより測定される緩衝系を含む。
【0047】
緩衝能の測定は次のように行われる。10mLの染毛剤組成物を水で希釈し100mLとする。得られた溶液のpHをpH電極等の適切な手段で測定する。続いて1Nの塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液を対象溶液に滴下し滴定し、染毛剤組成物溶液のpH1単位を減少/増加させるための酸/塩基の体積(x[mL])を決定する。塩酸/水酸化ナトリウム溶液の密度は1g/cm3とみなせるため、体積は[g]で表される。緩衝能は次の式で算出される。
緩衝能=x[g]*10/1000[グラム当量/L]
【0048】
処方の自由度及び毛髪への色強度付与の観点から、d)の緩衝能は、pH6~8.5の範囲において0.003g当量/L~0.25g当量/Lが好ましく、0.003g当量/L~0.1g当量/Lがより好ましく、0.003g当量/L~0.05g当量/Lが更に好ましい。該緩衝能は25℃の大気下で体積比1:10に水で希釈された該組成物を酸塩基滴定することにより測定される。
【0049】
pH6~8.5の好適な緩衝系の例としては、
リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウム;
リン酸水素二カリウムとリン酸二水素カリウム;
リン酸水素二ナトリウムとクエン酸;及び
ホウ酸と水酸化ナトリウム、が挙げられる。
【0050】
化粧料としての相溶性の観点から、d)の緩衝系としてはリン酸緩衝系が好ましい。リン酸緩衝系は、上に例示した最初の3種の緩衝系のように少なくとも1種のリン酸塩を含む。もっとも好ましい緩衝系は、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウム、及びリン酸水素二カリウムとリン酸二水素カリウムである。
【0051】
リン酸緩衝系の緩衝能の観点から、本発明組成物のpHは6~8であることが好ましい。
【0052】
十分な緩衝能を提供する観点から、組成物の総重量に対して計算される緩衝塩の総濃度は0.1重量%以上が好ましく、0.25重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上が更に好ましい。
【0053】
化粧料としての許容性の観点からは、組成物の総重量に対して計算される緩衝塩の総濃度は、10重量%以下が好ましく、8重量%以下がより好ましく、5重量%以下が更に好ましい。
【0054】
好ましくは、上述の効果を達成するため、組成物の総重量に対して計算される緩衝塩の総濃度は、0.1重量%~10重量%、より好ましくは0.25重量%~8重量%、更に好ましくは0.5重量%~5重量%である。
【0055】
緩衝塩の総モル濃度は0.01M~0.5Mが好適である。
【0056】
本発明の一態様において、組成物の総重量に対して計算されるリン酸緩衝系のリン酸塩の総濃度は、0.1重量%~10重量%、より好ましくは0.25重量%~8重量%、更に好ましくは0.5重量%~5重量%である。
【0057】
pH調整
pHを6~8.5の望ましい範囲に調整する観点から、当業者であれば本発明組成物との相溶性に基づき適切な酸や塩基を選択するであろうことに留意すべきである。好適な酸は塩酸及びリン酸であり、好適な塩基は水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである。
【0058】
非酸化染毛剤組成物の製造方法と染毛方法
本発明はまた、非酸化染毛組成物の製造方法に関し、この方法は次の各ステップ:
i)上に定義される化合物c)のアニオン性及び/又はノニオン性直接染料から選択される1種以上の毛髪直接染料を含む第一の組成物を提供すること、
ii)
-上に定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤、
-上に定義される化合物b)の1種以上の脂肪族アルコール、
-上に定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、該緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する該組成物を滴定することにより測定される緩衝系
を含む第二の組成物を提供すること、
iii)ステップi)及びステップii)の各組成物を混合して、pH範囲6~8.5を有するすぐに使用可能な組成物を生成すること、
を含む製造方法に関する。
【0059】
このすぐに使用可能な組成物は、色強度の観点から、1種以上のカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを、すぐに使用可能な組成物における化合物c)の1種以上の毛髪直接染料に対する総当量モル比15以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下で含むことが好ましい。
【0060】
色強度の観点から更に好ましいのは、すぐに使用可能な組成物がカチオン性ポリマー及び/又はカチオン界面活性剤を含まないことである。
【0061】
本発明は非酸化的ヘアカラー方法であって、次の各ステップ:
iv)上に定義されるすぐに使用可能な混合物を1分~60分の間毛髪に適用すること、
v)任意的にその毛髪を洗い流すこと
を含む方法に関する。
【0062】
毛髪に高い色強度とユーザー利便性を付与する観点から、ステップiv)のすぐに使用可能な混合物は、5分から20分の間毛髪に留まることが好ましい。
【0063】
本方法のステップv)によれば、すぐに使用可能な混合物は洗い流さない(leave-in)タイプの組成物とすることができ、毛髪から洗い落とさない。これは、毛髪のコンディショニングをしっかり行いたい顧客に特に好ましい。
【0064】
同様に、ステップv)のすぐに使用可能な混合物は洗い流す(rinse-off)タイプの組成物で、毛髪から洗い落とすことが好適である。これは、洗い流さないタイプの組成物の重みによる垂れ下がりの影響を望まない顧客に特に好ましい。
【0065】
毛髪の色強度向上の観点から、前述の本発明の方法の一態様においては、ステップiv)のすぐに使用可能な組成物は、1種以上のカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを、化合物c)の1種以上の毛髪直接染料に対する総当量モル比15以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下で含む。
【0066】
毛髪の色強度向上の観点から、前述の本発明の方法の好ましい一態様においては、ステップiv)のすぐに使用可能な組成物は、カチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを含まない。
【0067】
組成物の使用
上に定義されるように、本発明の一目的はまた、上に定義される化合物c)のアニオン性及び/又はノニオン性直接染料の毛髪への取り込みを向上させるための本発明組成物の使用である。
【0068】
色強度向上の観点から、上に定義される本組成物の使用の一態様においては、本組成物は1種以上のカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを、化合物c)の1種以上の毛髪直接染料に対する総当量モル比15以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下で含む。
【0069】
上に定義される組成物の色取り込みの観点から、本組成物がカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを含まないことが、本使用の好ましい態様である。
【0070】
2剤式染色組成物
上に定義されるように、本発明は、上に定義される化合物c)の1種以上のアニオン性及び/又はノニオン性染料とを含むA部と、
-上に定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤、
-上に定義される化合物b)の直鎖又は分枝鎖の、飽和又は不飽和のC12~C22炭化水素鎖を有する1種以上の脂肪族アルコール、
-上に定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、該緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する該組成物を滴定することにより測定される緩衝系
を含むB部とを含む2剤式非酸化染色組成物は、本発明の目的の一つである。
【0071】
この2剤式組成物のA部及びB部は毛髪に適用する直前まで別々にしておく。
【0072】
本発明において、上に定義される成分以外の成分に非相溶性が予想される際、2剤式組成物とすることが好ましい。このような相溶性の欠如は組成物の保存時に発生し得る。
【0073】
キットオブパーツ
上に定義されるように、本発明の一目的は、使用の直前までは別々に保管される2つの組成物を含むキットオブパーツに関する。ここにおいて、第一の独立した組成物は、上で化合物c)として定義される1種以上のアニオン性及び/又はノニオン性染料を含み、第二の独立した組成物は、
-上に定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤、
-上に定義される化合物b)の1種以上の脂肪族アルコール、
-上に定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、該緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する該組成物を滴定することにより測定される緩衝系とを含む。
【実施例】
【0074】
実施例、比較例
表1に示す染毛剤組成物を以下記載のように調製した。得られた染毛剤組成物について後続の「方法」のセクションにおいて「緩衝能」と「C*」を評価した。これらの結果をまとめて以下の表1に示す。
同様の方法で得た実施例13~22については表2に示す。
【0075】
染毛剤組成物の調製方法
化合物c)を水に溶解した。この溶液を所定の時間攪拌して第一の組成物を調製した。これとは別に、成分a)、成分b)、リン酸水素二ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムを水に溶解して第二の組成物を調製した。続いて、この第二組成物を第一組成物と混合し、得られた混合物を所定時間攪拌することにより染毛剤組成物を得た。
【0076】
【0077】
【0078】
実施例22
第一組成物
重量%
アミノメチルプロパノール 5.0
HCレッド18 2.0
HCイエロー16 0.5
香料 適量
1,2-プロピレングリコール 全量を100.0
【0079】
第二組成物
重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 3.0
ステアリルアルコール 2.0
リン酸水素二ナトリウム 2.5
リン酸二水素ナトリウム 0.3
NaOH/HCl pH8.0にする適量
水 全量を100.0
【0080】
第一組成物0.5mLを第二組成物20mLと混合して、すぐに使用可能な混合物を得る。
実施例13は、本発明の第二の目的、更には2剤式組成物、キットオブパーツの具体例である。
【0081】
方法
緩衝能の測定
本発明において緩衝能とは、25℃において対象組成物の10%水溶液のpHを初期の値から1単位下げるために必要な酸の濃度を測定値として用い、次の式から決定される数値を意味する。
緩衝能=ΔCa/ΔpH
(式中、Caは酸のイオン濃度(グラム当量/L、g当量/Lと略す)である。)
【0082】
上の実施例では、各組成物の緩衝能を次のように決定した。染毛剤組成物10mLを水で希釈して100mLとし、得られた溶液のpHを測定した。1N塩酸水溶液を対象溶液に滴下して滴定し、染毛剤組成物溶液のpHを1単位下げるための酸の体積(x[mL])を決定した。塩酸溶液の密度は1g/cm3とみなせるので、体積は[g]で表される。緩衝能は次の式で算出される。
緩衝能=x[g]*10/1000[グラム当量/L]
【0083】
染毛実験
ヤクの毛(一本当たり毛繊維2gの毛束)をインターナショナル・ヘア・インポーター(グレンデール、NY、米国)より購入した。この毛を市販ブリーチ(商品名ゴールドウエル・シルクリフト・コントロール)により40℃で30分漂白した。この毛束をシャンプーした後ブローで乾かした。続いて、上の染毛剤組成物1gを脱色したヤクの毛に適用し、室温で毛に3分間放置した。この毛束を37℃の水で1分間一回すすぎ洗いした。
色強度をデータカラー45G(データカラー社の機器)で測定した。CIE*lab系に従う彩度を測定し、上述のC*として示した。彩度は色強度に対応する。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが6~8.5の範囲である非酸化染毛剤組成物であって、
a
)1種以上の界面活性剤、
b)直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和のC
12~C
22炭化水素鎖を有する1種以上の脂肪族アルコール及び/又はこれらの混合物、
c)アニオン
性又はノニオン性毛髪直接染料及
びこれらの混合物から選択される1種以上の毛髪直接染料、
d)pH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、前記緩衝能が25℃の大気下で体積比1:10に水で希釈された前記組成物を酸塩基滴定することにより測定されたものである緩衝系、
を含む、非酸化染毛剤組成物。
【請求項2】
a)の界面活性剤がアニオン界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
毛髪直接染料が、HCブルー18、HCレッド18、HCイエロー16及
びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
1種以上のカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを含み、化合物c)の1種以上の毛髪直接染料に対するカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーの総当量モル比が15以
下であることを特徴とする、
請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
カチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを含まない、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
d)の緩衝能が、pH6~8.5の範囲において0.003g当量/L~0.25g当量/
Lであり、前記緩衝能が25℃の大気下で体積比1:10に水で希釈された前記組成物を酸塩基滴定することにより測定されたものであることを特徴とする、
請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
d)の緩衝能が、pH6~8.5の範囲において0.003g当量/L~0.05g当量/Lであり、前記緩衝能が25℃の大気下で体積比1:10に水で希釈された前記組成物を酸塩基滴定することにより測定されたものであることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
d)の緩衝系がリン酸緩衝系であることを特徴とする、
請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の総重量に対して計算される緩衝塩の総濃度が、0.1重量%~10重量
%であることを特徴とする、
請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の総重量に対して計算される脂肪族アルコールb)の総濃度が、1重量%~20重量
%であることを特徴とする、
請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物の総重量に対して計算される化合物a)の総濃度が、0.1重量%~10重量
%であることを特徴とする、
請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物の総重量に対して計算される直接染料c)の総濃度が、0.01重量%~0.8重量
%であることを特徴とする、
請求項1~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物の総重量に対して計算される直接染料c)の総濃度が、0.02重量%~0.25重量%であることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
非酸化ヘアカラー組成物の製造方法であって、次の各ステップ:
i)請求項1~
13のいずれかに定義される化合物c)のアニオン
性又はノニオン性直接染料から選択される1種以上の毛髪直接染料を含む第一の組成物を提供すること、
ii)
-請求項1~
13のいずれかに定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤、
-請求項1~
13のいずれかに定義される化合物b)の1種以上の脂肪族アルコール、
-請求項1~
13のいずれかに定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、前記緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する前記組成物を滴定することにより測定される緩衝系、
を含む第二の組成物を提供すること、
iii)ステップi)及びステップii)の各組成物を混合して、pHが6~8.5の範囲にあるすぐに使用可能な組成物を生成すること、
を含む製造方法。
【請求項15】
前記すぐに使用可能な組成物が、1種以上のカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを含み、前記すぐに使用可能な組成物における化合物c)の1種以上の毛髪直接染料に対するカチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーの総当量モル比が、15以
下であることを特徴とする、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記すぐに使用可能な組成物が、カチオン界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを含まないことを特徴とする、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
次の各ステップ:
iv)請求項1~
13のいずれかに定義されるすぐに使用可能な混合物を1分~60分の間毛髪に適用すること、
v)任意的にその毛髪にすすぎ処理を行うこと
を含む、非酸化的ヘアカラー方法。
【請求項18】
-請求項1~
13のいずれかに定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤、
-請求項1~
13のいずれかに定義される化合物b)の1種以上の脂肪族アルコール、
-請求項1~
13のいずれかに定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、前記緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する前記組成物を滴定することにより測定される緩衝系
を含む組成物の、請求項1~
13のいずれかに定義される化合物c)のアニオン性及び/又はノニオン性直接染料の毛髪への取り込みを向上させるための使用。
【請求項19】
使用直前まで別々に保管される2種の組成物を含むキットオブパーツであって、第一の独立した組成物が、請求項1~
13のいずれかに定義される化合物c)の1種以上のアニオン性及び/又はノニオン性染料を含み、第二の独立した組成物が、
-請求項1~
13のいずれかに定義される化合物a)の1種以上の界面活性剤、
-請求項1~
13のいずれかに定義される化合物b)の1種以上の脂肪族アルコール、
-請求項1~
13のいずれかに定義される特徴d)のpH6~8.5の範囲において0.002g当量/L~0.5g当量/Lの緩衝能を有する1種以上の緩衝系であって、前記緩衝能が25℃の大気下で10重量%の有効含有量を有する前記組成物を滴定することにより測定される緩衝系を含む、キットオブパーツ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0080
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0080】
第一組成物0.5mLを第二組成物20mLと混合して、すぐに使用可能な混合物を得る。
実施例22は、本発明の第二の目的、更には2剤式組成物、キットオブパーツの具体例である。
【国際調査報告】