IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-544595シリカ-グラフェンカーボン複合粒子およびそのような粒子を含むエラストマー材料
<>
  • 特表-シリカ-グラフェンカーボン複合粒子およびそのような粒子を含むエラストマー材料 図1
  • 特表-シリカ-グラフェンカーボン複合粒子およびそのような粒子を含むエラストマー材料 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(54)【発明の名称】シリカ-グラフェンカーボン複合粒子およびそのような粒子を含むエラストマー材料
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20221012BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20221012BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221012BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221012BHJP
   C01B 32/194 20170101ALI20221012BHJP
【FI】
C01B33/18 E
C08L21/00
C08K3/04
C08K3/36
C01B32/194
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509623
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 US2020046118
(87)【国際公開番号】W WO2021034592
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/887,856
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/988,755
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ドス サントス フレイレ, ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ディン, チー
(72)【発明者】
【氏名】クチュコ, シンシア
(72)【発明者】
【氏名】パン, シューヤン
(72)【発明者】
【氏名】シルバーネイル, ネイサン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4G072
4G146
4J002
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA28
4G072BB05
4G072CC13
4G072CC14
4G072DD02
4G072DD03
4G072DD04
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH14
4G072MM02
4G072MM31
4G072MM32
4G072TT01
4G072UU08
4G146AA01
4G146AB04
4G146AB07
4G146AC02B
4G146AC03A
4G146AC03B
4G146AD17
4G146AD37
4G146CB09
4G146CB10
4G146CB11
4G146CB19
4G146CB32
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AE052
4J002BB151
4J002BB181
4J002BD121
4J002CP031
4J002DA026
4J002DA047
4J002DE108
4J002DJ016
4J002EN079
4J002FB076
4J002FD016
4J002FD022
4J002FD039
4J002FD147
4J002FD148
4J002GN01
(57)【要約】
複合粒子は、液体キャリア中にシリカ粒子およびグラフェンカーボン粒子を含有するスラリーを乾燥させることによって生成することができる。ベースエラストマー組成物およびシリカ-グラフェンカーボン複合粒子を含むエラストマー配合物も開示される。この配合物は、増加された剛性などの好ましい特性を有し、タイヤトレッドなどの多くの用途に有用である。本開示は、シリカ-グラフェンカーボン複合粒子が分散されたベースエラストマー組成物を含む補強エラストマー材料を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
60~99.9重量パーセントのシリカ、および0.1~40重量パーセントのグラフェンカーボンを含むシリカ-グラフェンカーボン複合粒子。
【請求項2】
前記複合粒子が、2~100ミクロンの平均粒径を有する、請求項1に記載のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子。
【請求項3】
前記グラフェンカーボンが、10ナノメートル未満の平均厚さ、ならびに20~200ナノメートルの平均幅および長さを有するグラフェンナノシートの形態である、請求項1に記載のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子。
【請求項4】
前記グラフェンカーボンが、グラファイト酸化物、グラフェン酸化物、rGO、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子。
【請求項5】
前記グラフェンカーボンが、各複合粒子全体に分散され、前記シリカが、前記グラフェンカーボンが分散される連続的または相互接続ネットワークを含む、請求項1に記載のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子。
【請求項6】
各複合粒子の表面が、前記シリカを含む、請求項5に記載のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子。
【請求項7】
各複合粒子の前記表面の一部分が、前記グラフェンカーボンをさらに含む、請求項6に記載のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子。
【請求項8】
各複合粒子の表面積の50パーセント未満が、前記グラフェンカーボンを含み、前記グラフェンカーボンが、グラフェンナノシートの形態である、請求項7に記載のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子。
【請求項9】
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子の作製方法であって、前記方法が、シリカ粒子、グラフェンカーボン粒子、および液体キャリアを含むスラリーを乾燥させ、それによって前記シリカ-グラフェンカーボン複合粒子を生成することを含む、方法。
【請求項10】
前記乾燥が、噴霧乾燥を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記液体キャリアが、水を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記スラリーが、分散剤をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ベースエラストマー組成物と、
5~70重量パーセントのシリカ-グラフェンカーボン複合粒子と、を含む、エラストマー配合物。
【請求項14】
前記エラストマー配合物が、天然ゴム、合成ゴム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載のエラストマー配合物。
【請求項15】
前記エラストマー配合物が、スチレン/ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、EPDMゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロエラストマーゴム、天然ゴム、および/またはそれらの官能化誘導体を含む、請求項13に記載のエラストマー配合物。
【請求項16】
前記エラストマー配合物が、タイヤトレッド配合物を含む、請求項13に記載のエラストマー配合物。
【請求項17】
前記エラストマー組成物が、プロセスオイル、酸化防止剤、硬化剤、または金属酸化物から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、請求項13に記載のエラストマー配合物。
【請求項18】
前記複合粒子が、前記配合物の30~50重量パーセントを構成する、請求項13に記載のエラストマー配合物。
【請求項19】
エラストマー配合物の作製方法であって、
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子をベースエラストマー組成物と混合することと、
前記混合物を硬化させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月16日に出願された米国特許仮出願第62/887,856号、および2020年8月10日に出願された米国特許非仮出願第16/988,755号の優先権の利益を主張し、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、エラストマー材料中に分散させたシリカおよびグラフェンカーボンを含む複合粒子を含むエラストマー材料に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な充填材がエラストマー組成物に添加されてきた。例えば、カーボンブラックは、ゴムを補強するためにトレッドを含むタイヤの様々な部分において利用されている。加えて、転がり抵抗を改善しつつゴムを補強するために、タイヤトレッドにシリカが利用されている。タイヤトレッド配合物のある特定の性能特徴を改善するために相当量の充填材を添加することが望ましいが、大量に充填することはまた、粘度、伸び率、およびヒステリシスなどの性能パラメータに不利となる。他の特性に負の影響を著しく与えることなく、ゴムを補強し、機械的特性を最適化することが関心の対象である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の態様は、シリカ-グラフェンカーボン複合粒子を提供する。
【0005】
本発明の別の態様は、シリカ-グラフェンカーボン複合粒子を生成するための乾燥方法を提供する。
【0006】
本発明のさらなる態様は、シリカ-グラフェンカーボン複合粒子が分散されたベースエラストマー組成物を含む補強エラストマー材料を提供する。
【0007】
本発明の別の態様は、乾燥シリカ-グラフェンカーボン複合粒子をベースエラストマー組成物と混合することと、混合物を硬化させることと、を含む、エラストマー材料の作製方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1および図2は、異なる倍率でのシリカ-グラフェンカーボン複合粒子のSEM画像である。
図2図1および図2は、異なる倍率でのシリカ-グラフェンカーボン複合粒子のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この詳細な説明の目的のために、本発明が、相反することが明示的に指定されている場合を除き、様々な代替的な変形およびステップシーケンスが想定され得ることが理解されるべきである。さらに、別様に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される量を表すすべての数は、すべての場合において、用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、相反することが示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。最低限でも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効数字の数に照らし合わせて、かつ通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0010】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは、近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に得られる一定の誤差を本質的に含む。
【0011】
また、本明細書に記載される任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての副範囲を含むことが意図されていることが理解されるべきである。例えば、「1~10」の範囲は、記載される最小値である1(を含む)と記載される最大値である10(を含む)との間、すなわち、1に等しいまたは1を超える最小値、および10に等しいまたは10未満の最大値を有するすべての副範囲を含むことを意図している。
【0012】
本出願では、別段の明記がない限り、単数形の使用は複数形を含み、複数形は単数形を包含する。加えて、本出願では、「および/または」がある特定の場合において明示的に使用され得るが、別段の明記がない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。
【0013】
本発明は、シリカ-グラフェンカーボン複合粒子を提供する。液体キャリア中のシリカおよびグラフェンカーボンの出発粒子のスラリーまたは懸濁液を提供することができ、これを乾燥させて、シリカ-グラフェンカーボン複合粒子を含む粉末を形成する。例えば、各複合粒子は、シリカ粒子とグラフェンカーボンナノシートとの組み合わせを含み得、シリカ粒子は互いに接触して、シリカ粒子の連続的または相互接続ネットワークを形成し、グラフェンカーボンナノシートは、複合粒子全体に分布される。したがって、各複合粒子は、複合粒子を形成するために付着または凝集した、複数のシリカ粒子および複数のグラフェンカーボンナノシートを含み得る。そのような凝集した複合粒子において、シリカ粒子およびグラフェンカーボンナノシートは、各粒子全体に均一に分布していてもよく、または不均一に分布していてもよい。各複合粒子の表面は、典型的には、シリカ粒子を含み、全体的にグラフェンカーボン粒子の表面を有するのではなく、表面の限定された一部分上にグラフェンカーボン粒子を含み得る。例えば、グラフェンカーボン粒子は、各複合粒子の表面積の50パーセント未満、例えば25パーセント未満、または10パーセント未満を覆うグラフェンナノシートの形態で提供され得る。
【0014】
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子は、エラストマー材料と組み合わせて、複合粒子がその中に分散されたエラストマー材料の連続マトリックスを提供し得る。そのような補強エラストマー材料は、分散させたシリカ-グラフェンカーボン複合粒子による改善された特性、例えば、剛性、伸び率、組み合わせた伸び率および硬度、耐摩耗性、摩損抵抗、引き裂き強度、ヒステリシスなどの増加を含む改善された機械的特性を示すことができる。
【0015】
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子の少なくとも一部分は、エラストマー材料中への導入の前、または間に、より小さな粒子を提供するために微粉化されてもよく、例えば、乾燥複合粒子は、より小さな複合粒子に分解されてもよい。あるいは、複合粒子は、エラストマー材料中に導入する前に、複数のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子を含むより大きな粒体に圧縮、圧密、または別の方法で組み合わされ得る。
【0016】
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子は、典型的には、60~99.9重量パーセントのシリカおよび0.1~40重量パーセントのグラフェンカーボン粒子、例えば、70~99.8重量パーセントのシリカおよび0.2~30重量パーセントのグラフェンカーボン粒子、または75~99.7重量パーセントのシリカおよび0.3~25重量パーセントのグラフェンカーボン粒子、または80~99.6重量パーセントのシリカおよび0.4~20重量パーセントのグラフェンカーボン粒子を含み得る。
【0017】
複合体のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子は、典型的には、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を使用して測定した場合、1~500ミクロン、例えば、2~100ミクロン、または3~10ミクロンの平均粒径を有し得る。
【0018】
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子は、ASTM D6845試験による標準的なCTAB法によって測定した場合、1グラム当たり50~1,000平方メートル、例えば、1グラム当たり70~230平方メートル、または1グラム当たり90~200平方メートル、または1グラム当たり150~170平方メートルの平均表面積を有し得る。
【0019】
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子は、エラストマー材料中に、5~70重量パーセント、または10~60重量パーセント、または20~60重量パーセント、例えば、30~50重量パーセントの典型的な量で存在し得る。エラストマー材料がタイヤトレッドで使用されるときに静止摩擦および剛性を改善するために、配合物中に存在する複合粒子の量を制御することが望ましく、例えば、複合粒子を5重量パーセント超または10重量パーセント超、例えば、20重量パーセント超または30重量パーセント超の量で添加することが望ましい場合がある。
【0020】
複合粒子に含有されるシリカおよびグラフェンカーボンの相対量は、グラフェンカーボンの量が、剛性の改善などの所望の特性を提供する量に最適化され得るように制御される。例えば、エラストマー材料の改善された剛性特性のために、複合粒子の重量に基づいて、複合粒子中のシリカの量は、70重量パーセント超、または90重量パーセント超であり得る一方で、グラフェンカーボン粒子の量は、30重量パーセント未満、例えば、10重量パーセント未満、例えば、8重量パーセント未満、または例えば、6重量パーセントであり得る。
【0021】
そのような複合シリカ/グラフェンカーボン粒子は、エラストマー組成物中に分散され得る。本発明によるエラストマー配合物は、車両用タイヤトレッド、サブトレッド、タイヤカーカス、タイヤサイドウォール、タイヤベルトウェッジ、タイヤビード、およびタイヤワイヤスキムコートなどのタイヤ成分、ワイヤおよびケーブルのジャケット、ホース、ガスケットおよびシール、工業用および自動車用のドライブベルト、エンジンマウント、Vベルト、コンベアベルト、ローラコーティング、靴底材、パッキングリング、緩衝部材などを含む様々な用途に有用であり得る。タイヤトレッド配合物は、本発明の特定の実施形態として本明細書に記載されているが、本発明のエラストマー配合物は、そのような使用に限定されず、様々な他の用途で使用され得ることが理解されるべきである。
【0022】
本発明のエラストマー配合物は、シリカ-グラフェンカーボン複合粒子が添加されるベースエラストマー組成物を含む。エラストマー配合物は、合成ゴム、天然ゴム、それらの混合物などを含み得る。例えば、エラストマー組成物は、スチレンブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、ハロブチル、および/または天然ゴム(ポリイソプレン)を含んでもよい。タイヤトレッドにおける使用のために、ベースエラストマー組成物は、典型的には、タイヤトレッド配合物全体の30~70重量パーセント、例えば、40~55重量パーセントを構成する。
【0023】
エラストマー配合物は、硬化性ゴムを含み得る。本明細書で使用される場合、「硬化性ゴム」という用語は、天然ゴムならびにその様々な生および再生形態、ならびに様々な合成ゴムの両方を意味する。例えば、硬化性ゴムとしては、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロエラストマーゴム、天然ゴム、任意の他の既知のタイプの有機ゴム、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。本明細書で使用される場合、「エラストマー」、「ゴム」および「ゴム状エラストマー」という用語は、別途示されない限り、互換的に使用され得る。「ゴム組成物」、「配合ゴム」、および「ゴム化合物」という用語は、様々な成分および材料とブレンドまたは混合されたゴムを指すために互換的に使用され得、そのような用語は、ゴム混合またはゴム配合技術分野の当業者に周知である。
【0024】
以下により完全に記載されるように、複合シリカおよびグラフェンカーボン粒子は、液体キャリア中で一緒に混合され、乾燥される、シリカおよびグラフェンカーボンの個々の粒子から生成され得る。複合シリカおよびグラフェンカーボン粒子を作製するために使用されるシリカ出発粒子としては、沈殿シリカ、コロイド状シリカ、シリカゲル、およびそれらの混合物を挙げることができる。出発シリカ粒子は、電子顕微鏡によって測定した場合、200ミクロン未満、または1~50ミクロン、もしくは5~20ミクロンの平均粒径を有することができる。出発シリカ粒子は、1グラム当たり25~1,000、または75~350、または80~250平方メートルの典型的な表面積を有することができる。表面積は、当該技術分野で既知の従来技術を使用して測定することができる。本明細書で使用される場合、表面積は、ASTM D1993-91に従って、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)法によって決定される。BET表面積は、Micromeritics TriStar 3000(商標)機器を用いて行われる窒素吸着等温測定から5つの相対圧力点を当てはめることによって決定することができる。FlowPrep-060(商標)ステーションは、分析用試料を調製するための熱および連続ガス流を提供する。窒素吸着前に、シリカ試料は、窒素(P5グレード)を少なくとも1時間流して160℃の温度まで加熱することによって乾燥される。
【0025】
本発明における使用のためのシリカ粒子、例えば、コロイド状シリカ、沈殿シリカ、ヒュームドシリカ、シリカゲルなどは、当業者に既知の様々な方法を使用して調製することができる。例えば、シリカは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/103,123号に開示される方法によって生成することができる。例えば、未処理の充填材として使用するためのシリカは、可溶性金属シリケートの水溶液を酸と組み合わせてシリカスラリーを形成することによって調製することができる。シリカスラリーは必要に応じて熟成され得、酸または塩基が必要に応じて熟成されたシリカスラリーに添加され得る。シリカスラリーは、当業者に既知の従来技術を使用して、濾過され、必要に応じて洗浄され、かつ必要に応じて乾燥され得る。
【0026】
シリカは、これに限定されないが、米国特許第3,873,489号(第5列第45行~第6列第56行)に記載されているものなどの様々な表面処理をさらに含んでよい。そのような表面処理は、グラフェンカーボン粒子との組み合わせの前、間、または後に提供され得る。例えば、そのような表面処理は、乾燥シリカ-グラフェンカーボン複合粒子上に提供され得る。
【0027】
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子を生成するために使用される出発グラフェンカーボン粒子は、ある特定の所望の特徴を有し得る。本明細書で使用される場合、「グラフェンカーボン粒子」という用語は、spまたはsp結合炭素原子の1原子厚平面シートの1つまたは1つより多くの層を含む構造を有する炭素粒子を意味する。
【0028】
ある特定の実施形態では、グラフェンカーボン粒子は、グラファイト酸化物を含み得、グラファイト酸化物は、2:1~25:1の範囲の炭素対酸素原子比を有する。グラファイト酸化物は、例えば、グラファイトおよび硝酸混合物中の塩素酸カリウムによるグラファイトの酸化、または他の酸化剤を使用するグラファイトの酸化によって調製され得る。
【0029】
ある特定の実施形態では、グラフェンカーボン粒子は、グラフェン酸化物(GO)を含んでよい。GOは、グラファイト酸化物と化学的に類似しているが、多層構造の配置を有する代わりに、数層の積み重ねの剥離単層を含む。GOは、米国特許第7,658,901号に記載されるように、グラファイト酸化物の熱的な剥離によって調製することができる。グラフェン酸化物はまた、例えば、グラファイト酸化物の、水中への分散、微小機械的な剥離、化学蒸着、または化学的な剥離によって調製することができる。本発明に好適なグラフェン酸化物は、1nm~1,500nmの厚さ、および10~100ミクロンの範囲の平均幅を有し得る。
【0030】
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子を生成するために使用されるグラフェン酸化物は、市販の供給源、例えば、Grapheneaおよび他の市販の供給源からのグラフェン酸化物の粉末またはグラフェン酸化物の水懸濁液から得ることができる。そのような市販のグラフェン酸化物材料は、グラファイト酸化物の層(複数可)が剥離されて薄いシートを提供する、既知の技術によって生成され得る。
【0031】
別の実施形態では、グラフェンカーボン粒子は、還元されたグラフェン酸化物(rGO)から構成され得る。還元されたグラフェン酸化物は、グラフェン酸化物の化学還元、熱還元、またはUV光還元によって得ることができる。還元されたグラフェン酸化物は、グラフェンに似ているが、残留酸素および他のヘテロ原子、ならびに構造的欠陥を含有し得る。
【0032】
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子を生成するために使用される還元されたグラフェン酸化物は、市販の供給源、例えば、Grapheneaおよび他の市販の供給源からの還元されたグラフェン酸化物の粉末から得ることができる。
【0033】
例えば、還元されたrGOナノ粒子の合成は、米国特許第9,815,701号に記載されるように調製してもよい。
【0034】
ある特定の実施形態では、グラフェンカーボン粒子は、ハニカム結晶格子に密に詰まったsp結合炭素原子の、1原子厚平面シートの1つまたは1つより多くの層を含む構造から構成されるグラフェンを含む。積み重ねられた層の平均数は、100未満、例えば、50未満であり得る。ある特定の実施形態では、積み重ねられた層の平均数は、30もしくは30未満、例えば、20もしくは20未満、10もしくは10未満、または、場合によっては、5もしくは5未満である。グラフェンカーボン粒子は、実質的に平坦であり得るが、しかしながら、平面シートの少なくとも一部分は、実質的に湾曲状、カール状、折り畳み状、または屈曲状であってもよい。粒子は、典型的には、球状または等軸化した形態を有しない。グラフェンカーボン粒子は、グラフェンナノシートの形態であり得る。
【0035】
本発明のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子を生成するために使用されるグラフェンカーボン粒子は、炭素原子層に垂直な方向で測定された、10ナノメートル以下、または5ナノメートル以下、または4もしくは3もしくは2もしくは1ナノメートル以下、例えば3.6ナノメートル以下の厚さを有し得る。グラフェンカーボン粒子は、1原子層から最大3、6、9、12、20、もしくは30原子層の厚さであってよく、またはそれより大きくてもよい。グラフェンカーボン粒子は、炭素原子層に平行な方向で測定された、少なくとも20ナノメートル、少なくとも50ナノメートル、または少なくとも100ナノメートルの幅および長さを有し得る。グラフェンカーボン粒子は、最大200ナノメートルまたは最大500ナノメートルの幅および長さを有し得る。グラフェンカーボン粒子は、20~500ナノメートル、例えば20~200ナノメートル、例えば50~500ナノメートル、例えば100~500ナノメートル、または100~200ナノメートルの範囲の幅および長さを有し得る。グラフェンカーボン粒子は、3超:1、例えば10超:1の、比較的高いアスペクト比(粒子の最長寸法対粒子の最短寸法の比率として定義されるアスペクト比)を有する超薄片、プレートレット、またはシートの形態で提供され得る。
【0036】
本発明のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子を生成するために使用されるグラフェンカーボン粒子は、比較的低い酸素含有量を有する。例えば、グラフェンカーボン粒子は、5ナノメートル以下または2ナノメートル以下の厚さを有する場合でも、25超:1の炭素対酸素原子比を有し得る。グラフェンカーボン粒子の酸素含有量は、D.R.Dreyer et al.,Chem.Soc.Rev.39,228-240(2010)にて記載されているように、X線光電子分光を使用して決定することができる。
【0037】
グラフェンカーボン粒子は、典型的には、1グラム当たり少なくとも50平方メートル、例えば1グラム当たり70~1000平方メートル、または、場合によっては、1グラム当たり200~1000平方メートル、もしくは1グラム当たり200~400平方メートルのB.E.T.比表面積を有し得る。本明細書で使用される場合、「B.E.T.比表面積」という用語は、定期刊行物“The Journal of the American Chemical Society”,60,309(1938)に記載されているブルナウアー-エメット-テラー法に基づいて、ASTMD 3663-78標準に従って窒素吸着によって決定される比表面積を指す。
【0038】
本発明のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子を生成するために使用されるグラフェンカーボン粒子は、少なくとも0.8:1、例えば、少なくとも1.05:1、または少なくとも1.1:1、または少なくとも1.2:1、または少なくとも1.3:1のラマン分光法2D/Gピーク比を有し得る。本明細書で使用される場合、「2D/Gピーク比」という用語は、2692cm-1の2Dピークの強度対1,580cm-1のGピークの強度の比率を指す。
【0039】
グラフェンカーボン粒子は、比較的低いバルク密度を有し得る。例えば、グラフェンカーボン粒子は、0.2g/cm未満、例えば、0.1g/cm以下のバルク密度(タップ密度)を有することを特徴とし得る。本発明の目的のために、グラフェンカーボン粒子のバルク密度は、0.4グラムのグラフェンカーボン粒子を、読み取り可能な目盛りを有するガラス製のメスシリンダに入れることによって決定される。シリンダを約1インチ持ち上げ、シリンダの底を硬い表面に打ち付けることによって100回タップし、グラフェンカーボン粒子をシリンダ内部で沈積させる。次に、粒子の体積を測定し、0.4グラムを測定された体積で割ることによってバルク密度を計算し、ここでバルク密度はg/cmの単位で示される。
【0040】
グラフェンカーボン粒子は、グラファイト粉末およびある特定のタイプの実質的に平坦なグラフェンカーボン粒子の圧縮密度および百分率緻密化(percent densification)よりも低い圧縮密度および百分率緻密化を有し得る。現在では、より低い圧縮密度およびより低い百分率緻密化はそれぞれ、より高い圧縮密度およびより高い百分率緻密化を示すグラフェンカーボン粒子よりも良好な分散および/またはレオロジー特性に寄与すると考えられている。グラフェンカーボン粒子の圧縮密度は、0.9g/cmまたは0.9g/cm未満、例えば0.8g/cm未満、例えば0.7g/cm未満、例えば0.6~0.7g/cmであってよい。グラフェンカーボン粒子の百分率緻密化は、40%未満、例えば30%未満、例えば25~30%である。
【0041】
本発明の目的のために、グラフェンカーボン粒子の圧縮密度は、圧縮後の所定質量の粒子の測定厚から計算される。具体的には、測定厚は、0.1グラムのグラフェンカーボン粒子を、15,000ポンドの力で1.3センチメートルのダイ内で45分間、接触圧500MPaで冷間プレスすることによって決定される。次に、グラフェンカーボン粒子の圧縮密度を以下の式に従って、この測定厚から計算する。
【数1】
【0042】
次に、グラフェンカーボン粒子の百分率緻密化が、上記で決定したグラフェンカーボン粒子の計算された圧縮密度の、グラファイトの密度である2.2g/cmに対する比率として決定される。
【0043】
グラフェンカーボン粒子は、混合直後、および後の時点、例えば、10分後、または20分後、または30分後、または40分後において、少なくとも100マイクロジーメンス、例えば少なくとも120マイクロジーメンス、例えば少なくとも140マイクロジーメンスの測定バルク液体導電率を有し得る。本発明の目的のために、グラフェンカーボン粒子のバルク液体導電率は、以下のとおりに決定される。最初に、ブチルセロソルブ中の0.5%のグラフェンカーボン粒子の溶液を含む試料を、超音波処理器(bath sonicator)を用いて30分間、超音波処理する。超音波処理のすぐ後で、試料を標準的に較正された電解導電性セル(K=1)に入れる。Fisher Scientific AB 30導電率計を試料に導入して試料の導電率を測定する。導電率を、約40分間にわたってプロットする。
【0044】
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子を生成するために使用されるグラフェンカーボン粒子は、市販の供給源、例えば、Angstron、XG Sciencesおよび他の市販の供給源からの剥離グラフェンから得ることができる。そのような市販のグラフェン粒子は、グラファイト基体からグラフェンの層(複数可)を取り出し、薄いグラフェンシートを提供する、既知の剥離技術によって生成され得る。
【0045】
グラフェンカーボン粒子は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,486,363号、同第8,486,364号、および同第9,221,688号に記載される方法および装置に従って熱的に生成され得る。そのような熱的に生成されたグラフェンカーボン粒子は、Raymor NanoIntegrisからPureWaveという名称で市販されている。
【0046】
グラフェンカーボン出発粒子は、例えば、熱プロセスによって作製することができる。グラフェンカーボン粒子は、熱ゾーン(thermal zone)において高温に加熱される炭素含有前駆体物質から生成することができる。例えば、グラフェンカーボン粒子は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,486,363号、同第8,486,364号、および同第9,221,688号に開示されるシステムおよび方法によって生成することができる。
【0047】
グラフェンカーボン粒子は、米国特許第8,486,363号に記載されている装置および方法を使用することによって作製することができ、ここでは、(i)2炭素フラグメント種を形成可能な1つまたは1つより多くの炭化水素前駆体物質(例えば、n-プロパノール、エタン、エチレン、アセチレン、塩化ビニル、1,2-ジクロロエタン、アリルアルコール、プロピオンアルデヒド、および/または臭化ビニル)を、熱ゾーン(例えば、プラズマ)に導入し、(ii)炭化水素を熱ゾーンにおいて、少なくとも1,000℃の温度に加熱してグラフェンカーボン粒子を形成する。グラフェンカーボン粒子は、米国特許第8,486,364号に記載されている装置および方法を使用することによって作製することができ、ここでは、(i)メタン前駆体物質(例えば、少なくとも50パーセントのメタン、あるいは、場合によっては、少なくとも95もしくは99パーセント、またはそれよりも大きい純度の気体または液体メタンを含む物質)を熱ゾーン(例えば、プラズマ)に導入し、(ii)メタン前駆体を熱ゾーンにおいて加熱してグラフェンカーボン粒子を形成する。そのような方法は、上記の特徴の少なくともいくつか、場合によってはすべてを有するグラフェンカーボン粒子を生成することができる。
【0048】
上記の方法によるグラフェンカーボン粒子の生成中に、炭素含有前駆体が、不活性キャリアガスと接触させることができる供給物質として提供される。炭素含有前駆体物質は、例えば、プラズマシステムによって熱ゾーンにおいて加熱され得る。前駆体物質は、1,000℃~20,000℃、例えば、3,500℃~20,000℃、または1,200℃~10,000℃の範囲の温度まで加熱され得る。例えば、熱ゾーンの温度は、1,500℃~8,000℃、例えば、2,000℃~5,000℃の範囲であってもよい。熱ゾーンは、プラズマシステムによって発生させることができるが、電気加熱式管炉などを含む様々なタイプの炉などの任意の他の好適な加熱システムを使用して、熱ゾーンを生み出すことができることを理解されたい。
【0049】
いかなる理論にも限定されるものではないが、現在、グラフェンカーボン粒子を製造する前述の熱的方法が、上記のように、比較的小さな厚みおよび比較的高いアスペクト比を、比較的低い酸素含有量との組み合わせで有するグラフェンカーボン粒子を生成するために特に好適であると考えられる。さらに、そのような方法は、現在では、実質的に二次元(または平坦な)形態を有する粒子を主に生成するのとは対照的に、実質的に湾曲状、カール状、折り畳み状、または屈曲状の形態(本明細書では「3D」形態と称される)を有する、相当量のグラフェンカーボン粒子を生成すると考えられている。
【0050】
本発明のある特定の態様によれば、噴霧乾燥などの乾燥方法を使用して、シリカ-グラフェンカーボン複合粒子を生成する。出発シリカ粒子およびグラフェンカーボン粒子を液体キャリア中に分散させてスラリーを形成し、続いて乾燥させて複合粒子を生成してもよい。例えば、乾燥シリカ粉末をスラリーへと形成し、続いてグラフェンカーボン粒子を添加してもよく、あるいはグラフェンカーボン粒子を含むスラリーに乾燥シリカ粉末を添加してもよい。あるいは、グラフェンカーボン粒子は、例えば、シリカを最初に乾燥させることなく、シリカスラリーとその場で組み合わせることができる。
【0051】
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子は、例えば、グラフェンカーボン粒子を添加するスラリーにシリカ粒子を形成し、シリカ粒子をグラフェンカーボン粒子の存在下で沈殿させ、かつ/またはグラフェンカーボン粒子をシリカの沈殿の間、もしくは後に添加する、その場での技術によって作製されてよい。シリカ粒子とグラフェンカーボン粒子との組み合わせは、シリカ粒子を事前に乾燥させることなく、その場で形成することができ、乾燥させてシリカ-グラフェンカーボン複合粒子を生成することができる。
【0052】
スラリーに使用するのに好適な液体キャリアとしては、水および/またはエタノール、メタノール、アセトン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、グリセリン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が挙げられる。液体キャリアは、分散体の総重量に基づいて、55~95重量パーセント、例えば、70~90重量パーセント、または75~85重量パーセントの典型的な量で存在し得る。
【0053】
液体キャリアに加えて、分散体は分散剤を含むことができる。好適な分散剤(dispersing agent)としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、アクリル、アミン、エポキシなどのポリマー分散剤(dispersant)が挙げられる。そのような分散剤は、溶媒および分散剤の総重量に基づいて、0~50重量パーセント、例えば、1~30重量パーセント、または2~20重量パーセントの典型的な量で水または他の溶媒中に存在し得る。
【0054】
他の添加剤、例えば、消泡剤、界面活性剤、レオロジー調整剤およびUV吸収剤が、必要に応じて分散体に含まれてもよい。
【0055】
典型的な分散体は、分散体の総重量に基づいて、0.01~80重量パーセント、例えば、10~25重量パーセントのシリカ粒子を含有し得る。
【0056】
典型的な分散体は、分散体の総重量に基づいて、0.01~30重量パーセント、例えば、0.1~10重量パーセントのグラフェンカーボン粒子を含有し得る。
【0057】
そのような分散体のシリカ粒子およびグラフェンカーボン粒子の総合量は、典型的には、分散体の総重量に基づいて、0.01~50重量パーセント、例えば、1~35重量パーセント、または10~25重量パーセントを構成し得る。
【0058】
PVPなどの分散剤が分散体に含まれる場合、それは、分散剤、シリカおよびグラフェンカーボンの総合量(溶媒を除く)に基づいて、0.1~10重量パーセント、例えば、0.5~5重量パーセント、または1~3重量パーセントの典型的な量で存在し得る。
【0059】
シリカ粒子およびグラフェンカーボン粒子の分散体を別に作製し、続いて乾燥前に分散体を組み合わせてもよい。例えば、グラフェンカーボン粒子は、上記のような水/ポリマー分散剤液体に分散されてよく、一方でシリカ粒子は、水単独に分散されてもよく、または水とポリビニルピロリドン(PVP)、アクリル、アミン、エポキシなどの分散剤との組み合わせに分散されてもよい。
【0060】
複合粒子は、従来の乾燥技術を使用して乾燥され得る。そのような技術の非限定的な例としては、オーブン乾燥、真空オーブン乾燥、回転式乾燥機、噴霧乾燥、またはスピンフラッシュ乾燥が挙げられる。噴霧乾燥機の非限定的な例としては、ロータリーアトマイザーおよびノズル噴霧乾燥機が挙げられる。噴霧乾燥は、任意の好適なタイプのアトマイザー、特にタービン、ノズル、液体圧または二流体アトマイザーを使用して実施され得る。洗浄されたシリカ固体は噴霧乾燥に好適な状態ではない場合がある。例えば、洗浄された複合固体はあまりに厚いため噴霧乾燥されないことがあり得る。上記のプロセスの一態様では、洗浄された複合固体、例えば、洗浄されたフィルターケーキは水と混合されて、液体懸濁液を形成し、必要であれば、懸濁液のpHは希酸または希アルカリ、例えば、水酸化ナトリウムにより、6~7の範囲内、例えば、6.5のpH値に調整され、次いで噴霧乾燥機の入口ノズルに供給される。
【0061】
複合粒子が乾燥される温度は広範囲にわたって変化し得るものの、複合体の融解温度よりも下である。典型的には、乾燥温度は室温より高く、50℃超~900℃未満、例えば、100℃超、例えば、200℃~500℃の範囲であり得る。上記のプロセスの一態様では、複合固体は、約500℃の入口温度および約105℃の出口温度を有する噴霧乾燥機内で乾燥される。乾燥複合体の遊離水含有量は変化し得るものの、典型的には、約1~10重量パーセント、例えば、4~7重量パーセントの範囲内であり得る。本明細書で使用される場合、遊離水という用語は、それを100℃~200℃、例えば105℃で24時間加熱することによって、複合体から除去され得る水を意味する。
【0062】
複合粒子が乾燥され得る圧力は、例えば、大気圧で、または真空下で、広範囲にわたって変化し得る。
【0063】
本明細書に記載されるプロセスの一態様では、乾燥複合体を造粒機に直接送り、そこで圧縮し、粒状化して、粒状生成物を得る。乾燥複合体を、例えば、粉砕および微粉砕によって例示される、従来のサイズ縮小技術に供することもできる。動作流体として空気または過熱蒸気を使用する流体エネルギーミリングを使用することもできる。得られる沈殿した複合体は通常、粉末の形態であり得る。造粒機から出る複合体生成物は、広範囲にわたる粒径分布、例えば、-5~+325メッシュを有することができる。サイズ縮小操作に供する場合、複合体生成物をサイジング操作に供し、例えば、例えば適切なメッシュサイズを有する振動ふるいによって、適合および不適合サイズ材料に分離することができる。不適合生成物は、サイズ縮小または圧縮プロセスにリサイクルすることができる。サイジングされた複合体生成物は、-18~+230メッシュ、例えば-60~+100メッシュのサイズ範囲を有する生成物に分離することができる。メッシュサイズは、ASTM E11 ASDに従う。
【0064】
本発明のエラストマー材料は、複合シリカおよびグラフェンカーボン粒子を、上記のようなエマルションおよび/または溶液ポリマー、例えば、溶液スチレン/ブタジエン(SBR)、ポリブタジエンゴムまたはそれらの混合物を含む有機ゴムと組み合わせて、マスターバッチを形成することによって作製することができる。マスターバッチにおける使用のための硬化性ゴムは、広範囲にわたって変化し得、当業者に周知であり、加硫性ゴムおよび硫黄硬化性ゴムを含むことができる。例えば、硬化性ゴムは、機械用ゴム製品およびタイヤに使用されるものを含み得る。マスターバッチの非限定的な例は、有機ゴム、水不混和性溶媒、処理済み充填材、および必要に応じて、プロセスオイルの組み合わせを含み得る。そのような製品は、ゴム製造業者によってタイヤ製造業者に供給され得る。マスターバッチを使用するタイヤ製造業者にとっての利点は、複合シリカおよびグラフェンカーボン粒子がゴム中に実質的に均一に分散され、これにより、配合ゴムを製造するための混合時間を実質的に低減または最小限にすることができることであり得る。非限定的な例では、マスターバッチは、ゴムの100部当たり(phr)10~150部の複合粒子を含有することができる。
【0065】
複合シリカおよびグラフェンカーボン粒子は、100°F~392°F(38℃~200℃)の温度で、Banburyミキサーまたはゴムミルなどの従来の手段によって、加硫性ゴム組成物を調製するために使用される未硬化ゴム状エラストマーと混合することができる。ゴム組成物中に存在する他の従来のゴム添加剤の非限定的な例としては、従来の硫黄または過酸化物硬化システムを挙げることができる。代替の非限定的な例では、硫黄硬化システムは、0.5~5部の硫黄、2~5部の酸化亜鉛、および0.5~5部の促進剤を含むことができる。さらなる代替の非限定的な例では、過酸化物硬化システムは、過酸化ジクミルなどの過酸化物の1~4部を含むことができる。
【0066】
上記の量のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子に加えて、エラストマー配合物はまた、充填材を含むことができる。本発明のゴム配合物における使用のための好適な追加の充填材としては、例えば、粘土、タルク、カーボンブラックなどの当業者に既知の多種多様な材料を挙げることができる。非限定的な例としては、これらに限定されないが、露出表面において、酸素(化学吸着または共有結合した)またはヒドロキシル(結合または遊離の)のいずれかを有する無機粒子状またはアモルファス固体材料などの無機酸化物を挙げることができ、例えば、これらに限定されないが、Advanced Inorganic Chemistry:A Comprehensive Text by F.Albert Cotton et al.,Fourth Edition,John Wiley and Sons,1980の元素周期表のIb、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb(炭素を除く)、Va、VIa、VIIaおよびVIII族の周期2、3、4、5、および6の金属の酸化物を挙げることができる。本発明における使用のための無機酸化物の非限定的な例としては、アルミニウムシリケート、アルミナ、およびそれらの混合物を挙げることができる。好適な金属シリケートは、当該技術分野で既知の多種多様な材料を含むことができる。非限定的な例としては、これらに限定されないが、アルミナ、リチウム、ナトリウム、カリウムのシリケート、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0067】
従来のゴム添加剤の非限定的な例としては、プロセスオイル、可塑剤、促進剤、遅延剤、酸化防止剤、硬化剤、金属酸化物、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、例えばステアリン酸、安息香酸、またはサリチル酸などの有機酸、他の活性化剤、増量剤、および着色顔料を挙げることができる。選択された配合レシピは、調製された特定の加硫ゴムに伴って変化する。そのようなレシピは、ゴム配合技術分野の当業者に周知である。非限定的な例では、カップリング材料がメルカプト有機金属化合物(複数可)である場合に本発明のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子を使用する利点は、そのような複合粒子を含有するゴム化合物の高温での安定性、および少なくとも1/2分間または最大60分間混合したときに少なくとも200℃までの温度における、それと配合されたゴムの硬化の本質的な非存在にあり得る。
【0068】
代替の非限定的な例では、配合プロセスは、バッチ式または連続的に実施することができる。さらなる非限定的な例では、ゴム組成物ならびに複合シリカおよびグラフェンカーボン粒子の少なくとも一部分を、混合パスの最初の一部分に連続的に供給してブレンドを作製することができ、ブレンドを混合パスの第2の一部分に連続的に供給することができる。
【0069】
本発明の態様によるエラストマー材料へのシリカ-グラフェンカーボン複合粒子の添加は、剛性、伸び率、組み合わせた伸び率および硬度、耐摩耗性、摩損耐性などの改善された機械的特性を生み出すことができる。例えば、非補強エラストマー材料と比較して、あるいはエラストマー材料中に分散されたシリカ粒子などの従来の粒子を含有するエラストマー材料と比較して、あるいはエラストマー材料中に分散されたシリカ粒子およびエラストマー中に分散されたグラフェンカーボン粒子を含有するが、シリカ-グラフェンカーボン複合体の一部としてではなく別に添加されるエラストマー材料と比較して、補強エラストマー材料の剛性は増加され得る。例えば、本発明のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子補強エラストマー材料は、本発明のシリカ-グラフェンカーボン複合粒子と同じ平均粒径を有する、同じ量のシリカ粒子を含有する同じエラストマー材料よりも少なくとも5パーセント、または10パーセント、または20パーセント大きい剛性を有し得る。
【0070】
ゴム中のシリカ分散体およびグラフェンカーボン分散体の質は、DisperGrader(Alpha Technologiesから市販されている)と呼ばれる1つの機器を使用して決定することができる。このデバイスを使用してゴム試料を検査する場合、白い領域の量は最小にする必要がある。複合シリカおよびグラフェン粒子の分散は、一貫した性能、摩損、良好な補強を得るため、および亀裂伝播などの欠陥を制限するために重要であり得る。したがって、複合粒子分散を著しく低減させる充填材は許容されない場合がある。
【0071】
シリカ-グラフェンカーボン複合粒子、シリカ-グラフェンカーボン複合粒子の作製方法、エラストマー配合物、およびエラストマー配合物の作製方法は、以下の態様のうちの1つまたは1つより多くを特徴とすることができる。
【0072】
第1の態様では、本発明は、60~99.9重量パーセントのシリカ、および0.1~40重量パーセントのグラフェンカーボンを含むシリカ-グラフェンカーボン複合粒子に関連することができる。
【0073】
第2の態様では、第1の態様によるシリカ-グラフェンカーボン複合粒子は、FE-SEMを使用して決定した場合、1~500ミクロン、例えば2~100ミクロン、または3~10ミクロンの平均粒径を有する。
【0074】
第3の態様では、第1の態様または第2の態様によるグラフェンカーボンは、グラフェンナノシートの形態である。
【0075】
第4の態様では、第3の態様によるグラフェンナノシートは、10ナノメートル未満の平均厚さを有する。
【0076】
第5の態様では、第3の態様または第4の態様によるグラフェンナノシートは、20~200ナノメートルの平均幅および長さを有する。
【0077】
第6の態様では、第1の態様または第2の態様によるグラフェンカーボンは、グラファイト酸化物、グラフェン酸化物、rGO、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0078】
第7の態様では、第1~第6の態様のいずれか1つによるグラフェンカーボンは、各複合粒子全体に分散される。
【0079】
第8の態様では、第1~第7の態様のいずれか1つによるシリカは、グラフェンカーボンが分散される連続的または相互接続ネットワークを含む。
【0080】
第9の態様では、第1~第8の態様のいずれか1つによる各複合粒子の表面は、シリカを含む。
【0081】
第10の態様では、第1~第9の態様のいずれか1つによる各複合粒子の表面の一部分は、グラフェンカーボンを含む。
【0082】
第11の態様では、第1~第10の態様のいずれか1つによる各複合粒子の表面積の50パーセント未満、例えば25パーセント未満、または10パーセント未満は、グラフェンカーボンを含む。
【0083】
第12の態様では、第1~第11の態様のいずれか1つによるシリカ-グラフェンカーボン複合粒子は、70~99.8重量パーセントのシリカおよび0.2~30重量パーセントのグラフェンカーボン、または75~99.7重量パーセントのシリカおよび0.3~25重量パーセントのグラフェンカーボン、または80~99.6重量パーセントのシリカおよび0.4~20重量パーセントのグラフェンカーボンを含む。
【0084】
第13の態様では、本発明は、シリカ-グラフェンカーボン複合粒子の作製方法に関連することができ、本方法は、シリカ粒子、グラフェンカーボン粒子、および液体キャリアを含むスラリーを乾燥させ、それによって第1~第12の態様のいずれか1つのシリカ-グラフェンカーボン複合粒子などのシリカ-グラフェンカーボン複合粒子を生成することを含む。
【0085】
第14の態様では、第13の態様による乾燥は、噴霧乾燥を含む。
【0086】
第15の態様では、第13の態様または第14の態様による液体キャリアは、水を含む。
【0087】
第16の態様では、第13~第15の態様のいずれか1つによるスラリーは、分散剤を含む。
【0088】
第17の態様では、第13~第16の態様のいずれか1つによるスラリーは、シリカ粒子およびグラフェン粒子の分散体を別に作製し、続いて乾燥前に分散体を組み合わせることによって調製される。
【0089】
第18の態様では、第13~第16の態様のいずれか1つによるスラリーは、乾燥シリカ粉末をスラリーへと形成し、続いてグラフェンカーボン粒子を添加するか、あるいは乾燥シリカをグラフェンカーボン粒子を含むスラリーに添加することによって調製される。
【0090】
第19の態様では、本発明は、ベースエラストマー組成物および5~70重量パーセントのシリカ-グラフェンカーボン複合粒子を含むエラストマー配合物に関連することができる。
【0091】
第20の態様では、第19の態様によるエラストマー配合物は、天然ゴム、合成ゴム、またはそれらの組み合わせを含む。
【0092】
第21の態様では、第19の態様または第20の態様によるエラストマー配合物は、スチレン/ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、EPDMゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロエラストマーゴム、天然ゴム、および/またはそれらの官能化誘導体を含む。
【0093】
第22の態様では、第19~第21の態様のいずれか1つによるエラストマー配合物は、タイヤトレッド配合物を含む。
【0094】
第23の態様では、第19~第22の態様のいずれか1つによるエラストマー配合物は、プロセスオイル、酸化防止剤、硬化剤、および金属酸化物から選択される少なくとも1つの添加剤を含む。
【0095】
第24の態様では、第19~第23の態様のいずれか1つによるシリカ-グラフェンカーボン複合粒子は、配合物の30~50重量パーセントを構成する。
【0096】
第25の態様では、第19~第24の態様のいずれか1つによるエラストマー配合物は、ゴムの100部当たり10~150部の複合粒子を含む。
【0097】
第26の態様では、本発明は、エラストマー配合物の作製方法に関連することができ、シリカ-グラフェンカーボン複合粒子をベースエラストマー組成物と混合することと、混合物を硬化させることと、を含む。
【0098】
第27の態様では、第26の態様の方法によるベースエラストマー組成物は、有機ゴムを含む。
【0099】
第28の態様では、第26の態様または第27の態様による方法の混合ステップは、複合粒子およびベースエラストマー組成物を水不混和性溶媒、充填材、および必要に応じて、プロセスオイルと混合することをさらに含む。
【0100】
第29の態様では、第26~第28の態様のいずれか1つによる方法の混合ステップは、複合粒子およびベースエラストマー組成物を硬化剤と混合することをさらに含む。
【0101】
第30の態様では、第26~第29の態様のうちのいずれか1つによる方法の混合ステップは、バッチ式または連続的に実施される。
【0102】
第31の態様では、第26~第30の態様のいずれか1つによる方法の混合ステップは、ベースエラストマー組成物および複合粒子の少なくとも一部分を混合パスの最初の一部分に連続的に供給してブレンドを作製し、次いでブレンドを混合パスの第2の一部分に連続的に供給することによって実施される。
【0103】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を例示することを意図し、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0104】
実施例1
水性グラフェン分散体を、表1に列挙される成分を用いて調製した。
【表1】
(1)Sigma Aldrichから、報告された平均分子量
10,000g/molを有する。
(2)Raymor NanoIntegrisから市販されている。
【0105】
完全に溶解するまでCowlesブレードを用いて混合しながら、PVPを水に添加した。グラフェンナノプレートレット材料を、Cowlesブレードを用いて積極的に撹拌しながらゆっくりと添加し、500RPMに始まり必要に応じて最大2000RPMまで徐々に増加させて、予め分散させた材料を形成し、次いで、サイズ1~1.2mmのセラミックマイクロミリングビーズを含むEigerミルを使用して、20分間の滞留時間までミリングし、粒径を1μm未満に減少させた。
【0106】
実施例2
シリカ分散体を、表2に列挙される成分を用いて調製した。
【表2】
(3)沈殿シリカ、PPG Industriesから市販されている。
【0107】
約1.5kgの粉末状シリカを5ガロンのバケツに充填し、7.9kgの水を添加して、表2に示す16%の固形分に達した。次いで、3つのスクープおよび3つの歯を有する3インチ直径のNorstoneタイプ7HHSポリエチレンポリブレードならびに2.0馬力モータを取り付けたPremier Mill 2500HV実験室用ディスパーサーを使用して、シリカと水との混合物を約8,000RPMで5分間剪断した。次いで、溶液を使用する直前に再びハイリフトブレードを用いて1時間撹拌した。
【0108】
実施例3
異なる量のグラフェンを含有する混合分散体を、表3に従って作製した。
【表3】
【0109】
実施例1のグラフェン分散体を、3つの異なるグラフェン対シリカ比で実施例2のシリカ分散体に添加した。表3に報告されるグラフェンの充填材パーセンテージは、総充填材、グラフェンおよびシリカに対して相対的である。
【0110】
試料A、B、およびCの分散体を、Malvern Panalytical Ltd.から購入したMastersizer 2000粒径分析器で評価した。グラフェンおよびシリカの個々の粒径を以下の表4に報告する。
【表4】
【0111】
実施例4
表3の試料A、試料B、および試料Cを、Buchi Corporationから市販されている0.5mmのノズルを備えたBuchi噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥した。表5は、噴霧乾燥した試料D、EおよびFを調製するために使用される条件を示す。SLPHは、1時間当たりの標準リットルを意味する。図1は、試料Eを噴霧乾燥することによって生成したケイ素-グラフェンカーボン複合粒子の10,000倍の倍率でのSEM顕微鏡写真である。図2は、同じ複合粒子の100,000倍の倍率でのSEM顕微鏡写真である。非球状グラフェンプレートレットが図2の倍率で視認可能である。
【表5】
【0112】
FE-SEM顕微鏡写真を使用して、噴霧乾燥複合体材料の粒径を測定した。試料上の3つの異なる領域において、3つの画像を同じ倍率で撮影した。各領域の粒子10個の直径を、合計30個の測定された粒子のために、ランダムに測定した。次いで、測定値を平均して、平均粒径および複合粒子径の範囲を得た。複合粒子の粒径分布を表6に列挙する。
【表6】
【0113】
実施例5
水性シリカおよびグラフェン酸化物分散体を、表7に列挙される成分を用いて調製した。
【表7】
(1)Graphenea,Inc.から市販されている。
(2)沈殿シリカ、PPG Industriesから市販されている。
【0114】
グラフェン酸化物は、水中にて2.5重量%のグラフェン酸化物の分散体として、Graphenea Inc.から購入した。グラフェン酸化物の分散体を、表7に示した量のDI水を用いてさらに希釈した。分散体を2リットルのビーカーに入れ、ポリエチレンブレードを取り付けたオーバーヘッド撹拌機を用いて撹拌した。ゆっくりと、表7による150gのシリカを混合物に添加した。表7の組成を有する均質な分散体を得た。Graphenea,Inc.からの400gのグラフェン酸化物は、2.5%のグラフェン酸化物を含有するため、分散体中のグラフェン酸化物の総量は10gである。150gのシリカを添加したため、得られたシリカ-グラフェン酸化物複合体中のグラフェン酸化物濃度は、6.25重量%となる。最終の分散体を、実施例4に従って、表5に列挙される条件を用いて乾燥させ、乾燥複合体を得た。
【0115】
実施例6
ゴム化合物を、表8に列挙されるモデル乗用トレッド配合物を使用して調製した。本実施例では、ゴム化合物に従来使用されていたシリカ充填材を、本発明のシリカ-グラフェン複合体に置き換えた。本実施例で使用されるシリカ-グラフェン複合体は、表5による試料Eからなる。試料Eは6.25%のグラフェンを有するため、化合物中の80部の複合体充填材はまた、75部のシリカおよび5部のグラフェンからなる、と言うことができる。
【表8】
(4)溶液スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、ビニル含有量:58%、スチレン含有量:27%、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃):65、JSRから市販されているものを入手。
(5)ブタジエンゴム(BR)、シス1,4含有量97%、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃):55、The Goodyear Tire&Rubber Co.から市販されているものを入手。
(6)プロセスオイル、Hansen & Rosentalから市販されているものを入手。
(7)3,3’-ビス(トリエトキシ-シリルプロピル)ジスルフィド、Momentiveから市販されているものを入手。
(8)N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミンオゾン劣化防止剤、Flexsysから市販されているものを入手。
(9)ゴム用(RM)硫黄、100%活性、Taber,Inc.から市販されているものを入手。
(10)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、Flexsysから市販されているものを入手。
(11)ジフェニルグアニジン、Monsantoから市販されているものを入手。
【0116】
Banburyブレードを取り付けた350mLのミキサーヘッドを備えたC.W.Brabender(登録商標)Intelli-Torque Plasti-Corder Torque Rheometer内で、75%の充填率を使用して、化合物を混合した。
【0117】
配合物を2回の非生産的パスを使用して混合し、化合物をパスの間で冷却し、続いて生産的パスを使用して硬化剤を添加した。第1のパスでは、ミキサーローターの速度を60RMPに設定し、混合の最初の60秒間に、充填1の成分をミキサー内に添加した。混合サイクルの60秒後、充填2の成分をミキサー内に添加した。第1のパスを混合開始から4分間で中断し、その時点で混合温度は約160℃に達した。
【0118】
第2のパスでは、ミキサーローターの速度を60RPMに維持し、冷却した第1のパスのマスターバッチを、混合の最初の1分間に、ミキサーを失速させないように、ゆっくりと添加した。第2のパスを、4分間で中断し、このときに中断温度は約160℃に達した。
【0119】
最終のパスでは、ミキサー速度を40RPMに維持し、冷却した第2のパスのマスターバッチを、混合の最初の1分間に、ミキサーを失速させないように、ゆっくりと添加した。マスターバッチを添加した後、充填3を添加した。第2のパスを、3分間で中断し、このときに中断温度は約100℃に達した。
【0120】
得られたゴム組成物を、オシレーティングディスクレオメーターを使用して得られた90%の最大トルクに達するのに十分な時間(90% ODR)+5分間(T90+5分間)、150℃で硬化させた。
【0121】
実施例7
シリカおよびグラフェン酸化物含有ゴム化合物を、実施例6の手順に従って調製したが、複合体試料Eを複合体試料Gに置き換えた。試料Gは6.25%のグラフェン酸化物を有するため、化合物中の80部の複合体充填材はまた、75部のシリカおよび5部のグラフェン酸化物からなる、と言うことができる。
【0122】
比較実施例1(CE-1)
シリカおよびグラフェン含有ゴム化合物を、実施例6の手順に従って調製したが、複合体試料Eを、75部の遊離Hi-Sil EZ 160Gおよび5部の遊離PureWave(商標)グラフェンナノプレートレット(安全な取り扱いのために、Vivatec(登録商標)500 usに予め分散させた)に置き換えた。
【0123】
比較実施例2(CE-2)
ゴム化合物を、実施例6の手順に従って調製したが、複合体試料Eを80部の遊離Hi-Sil EZ 160Gに置き換えた。グラフェンを添加せず、結果として標準的なシリカ充填ゴム組成物を表すグラフェンを含まないゴムを得た。
【0124】
結果
実施例6ならびに比較実施例1および2の得られた加硫ゴムを、標準ASTM手順に従って様々な物理的特性について試験した。
【0125】
表9に見られるように、すべての化合物の硬化レベル(S’max、S’minおよびT50値によって示される)および硬度は類似しており、残りのデータの比較を可能にする。
【表9】
【0126】
CE-1(5phrの遊離グラフェン)は、グラフェンを含まない化合物(CE-2)よりも高い引張り強度、伸び率および引き裂き強度を有することを表9に見ることができる。本発明におけるようなシリカ-グラフェンカーボン複合体を使用する場合(実施例6)、グラフェンを直接ミキサー内に添加すること(CE-1)と比較して、顕著な利点が得られる。複合体含有の実施例6は、グラフェンおよびシリカを別に添加したゴム(CE-1)と比較して、2倍を超える引張り強度、50%高い300%/100%の弾性率比、より高い動的弾性率(G’)、および17%高い耐摩耗性などのいくつかのパラメータで明らかな、はるかに高い補強を示す。顕著な改善はまた、標準的なシリカ充填ゴム配合物(CE-2)と比較した場合にも実証される。
【0127】
実施例7の得られた加硫ゴムもまた、標準ASTM手順に従って様々な物理的特性について試験した。
【0128】
表10に見られるように、グラフェン酸化物複合体(実施例7)およびシリカ化合物(CE-2)の硬度および動的剛性(G’)は同等である。
【表10】
【0129】
本発明におけるようなシリカ-グラフェン酸化物複合体を使用する場合(実施例7)、シリカ対照化合物(CE-2)と比較して顕著な利点が得られる。複合体含有の実施例7は、より高い引張り強度、より高い伸び率、およびより高い300%/100%の弾性率比などのいくつかのパラメータで明らかな、はるかに高い補強を示す。また、ヒステリシス(60℃でのTan(δ))、DIN耐摩耗性、引き裂き強度の改善が実証されている。
【0130】
前述の説明に開示されている概念から逸脱することなく、本発明の変更を行うことができることは、当業者によって容易に理解されるであろう。したがって、本明細書に詳細に記載される特定の実施形態は、例示的なものに過ぎず、添付の特許請求の範囲ならびにその任意およびすべての等価物の完全な幅を与える本発明の範囲を限定しない。
図1
図2
【国際調査報告】