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特表2022-544600ナタマイシン及び少なくとも1種の殺虫剤を含む抗真菌組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ナタマイシン及び少なくとも1種の殺虫剤を含む抗真菌組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/90 20060101AFI20221012BHJP
   A01N 53/08 20060101ALI20221012BHJP
   A01N 47/40 20060101ALI20221012BHJP
   A01N 41/10 20060101ALI20221012BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20221012BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20221012BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20221012BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20221012BHJP
   A01N 47/12 20060101ALI20221012BHJP
   A01N 43/36 20060101ALI20221012BHJP
   A01N 51/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A01N43/90 101
A01N53/08 120
A01N53/08 125
A01N47/40 Z
A01N41/10 Z
A01P3/00
A01P7/04
A01N25/02
A01N25/00 102
A01N47/12 Z
A01N43/36 A
A01N51/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509656
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 NL2020050511
(87)【国際公開番号】W WO2021029770
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】19191549.5
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522058280
【氏名又は名称】セラディス パテント ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル クリーケン、ヴィルヘルムス マリア
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AC01
4H011BA06
4H011BB03
4H011BB04
4H011BB09
4H011BB10
4H011BC03
4H011BC06
4H011DA12
4H011DC05
4H011DD03
4H011DD04
(57)【要約】
本発明は、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤を含む組成物に関する。本発明はさらに、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤を含む上記組成物を、好ましくは植物又は植物部分を保護するため、農作植物の生長及び/又は収量を向上するため、並びに土壌及び/又は成長基質を保護するために、使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナタマイシン、並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤を含む抗真菌組成物であって、
好ましくは、少なくとも1種の殺虫剤は文献"IRAC Mode of Action Classification Scheme" (version 9.3)」に記載のサブグループ2、3、4、6及び/又は28に属する少なくとも1種の殺虫剤である、上記抗真菌組成物。
【請求項2】
1%~98%(w/w)のナタマイシン(好ましくは6%~60%(w/w)のナタマイシン)、及び1%~99%(w/w)(好ましくは5%~50%(w/w))の前記少なくとも1種の殺虫剤を含む、請求項1に記載の抗真菌組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の殺虫剤に対するナタマイシンの比率が1:1~1:5000(w/w)である、請求項1又は請求項2に記載の抗真菌組成物。
【請求項4】
ナタマイシン、並びに、フィプロニル(fipronil)、λ-シハロトリン(lambda-cyhalothrin)、アセタミプリド(acetamiprid)、クロチアニジン(clothianidin)、イミダクロプリド(imidacloprid)、チアクロプリド(thiacloprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、アバメクチン(abamectin)及びクロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)から選ばれる少なくとも1種の殺虫剤を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の抗真菌組成物。
【請求項5】
農学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の抗真菌組成物。
【請求項6】
水性組成物又は油性組成物である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の抗真菌組成物。
【請求項7】
ナタマイシンが、0.5μm~3μmの平均粒子径に粉砕されている、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の抗真菌組成物。
【請求項8】
相対量が1:2~60:1(w/w)のポリアニオン(リグニン化合物等)とポリカチオン(キトサン又はポリアリルアミン等)との不溶性高分子電解質複合体をさらに含有する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の抗真菌組成物。
【請求項9】
ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤、好ましくは請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の組成物、を準備すること、及び
前記ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する前記少なくとも1種の殺虫剤、好ましくは前記組成物、を農作植物又は植物部分に付与すること、
を含む、農作植物又は植物部分を保護する方法。
【請求項10】
前記植物部分が、種子、球根、果実又は野菜であり、好ましくは種子である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤、好ましくは請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の組成物、を準備すること、及び
前記ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する前記少なくとも1種の殺虫剤、好ましくは前記組成物、を植物と接触させること、
を含む、農作植物の生長及び/又は収量を向上する方法。
【請求項12】
土壌及び/又は成長基質に、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤、好ましくは請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の組成物、を付与することを含む、土壌及び/又は成長基質を保護する方法。
【請求項13】
前記成長基質が、キノコ成長基質(mushroom growth substrate)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、未希釈であるか、又は、前記組成物を植物、植物部分、土壌及び/又は成長基質に提供する前に、水溶液若しくは油で希釈されている、請求項10~請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
植物、植物部分、土壌及び/又は成長基質の真菌からの保護のための、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤、好ましくは請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の組成物、の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物及び植物部分の真菌性疾患(fungal disease)をコントロールし、植物の発育及び収量を改善するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、世界中の作物に甚大な損失を与える様々な植物病原性真菌により攻撃を受け得る。また、真菌の増殖は、栄養分の損失、異臭の形成、及び組織の破壊を引き起こし、加工後の品質低下を招くことがある。多くの場合、真菌感染症は圃場で発生し、その後、条件が好ましい場合には保管中に菌が増殖し、例えば、穀物、種子、球根、種芋、果物、及び野菜等のポストハーベストロスや、朝食用シリアル、ジュース、又はカットフルーツ等の加工食品におけるカビ発生が生じる。
【0003】
土壌中、(種子、球根及び苗等の農作物部分上の)圃場、(例えば、穀物、野菜及び果物上の)収穫後の植物病原性真菌(Phytopathogenic fungi)は、一般的に殺菌剤(fungicides)、特に合成殺菌剤によって防除されている。しかし、多くの殺菌剤は、繰り返し使用されることにより年を追うごとにその活性を失い、耐性菌が発生してしまう。この現象は、発売されて間もない新しい殺菌剤でも起こっており、例えば、ストロビルリン系殺菌剤に影響を与える点突然変異(point mutation)が関連菌で発生した。より一般的には、アゾール系殺菌剤に対するZymoseptoria triticiの抵抗性の発現のように、病原体集団が徐々に感受性を失うように、抵抗性が徐々に発現する。抵抗性の発達は、常に、処理回数の増加、並びにより多くの量及び/又は2種以上の殺菌剤の散布をもたらすことになる。
【0004】
現在市販されている殺菌剤の多くは、例えば水源を汚染したり、非標的生物に好ましくない影響を与える等により、自然の生態系を破壊するものとなっている。また、環境汚染だけでなく、人間の健康問題、特に労働者の安全性についても重要な問題となっている。さらに、農産物を消費する際に、有害な殺菌剤が残留基準を超えて高いレベルで残留していることは、深刻な問題である。消費者と政府規制当局の懸念は高まり、EU、米国、日本及びその他多くの国々で規制が強化されるに至っている。
【0005】
多くの市販殺菌剤が入手可能であり、広く使用されているにもかかわらず、ほぼ全ての作物及び収穫された農産物に真菌が発生していると結論づけることができる。また、農業分野では、現在使用されている有害な合成殺菌剤に代わる、環境にやさしい代替剤の必要性が高いと結論づけることができる。
【0006】
何十年もの間、ポリエンマクロライド系抗真菌剤ナタマイシン(natamycin)は、主にチーズ及び乾燥発酵ソーセージ等の食品のカビ発生を防ぐために使用されてきた。ナタマイシンは1957年に初めて報告され、ストレプトマイセス属の菌(例えば、Streptomyces natalensis)を用いた発酵によって生産される。現在、この天然抗菌剤(antimicrobial)は、食品添加物として世界中で広く使用されている。
【0007】
ナタマイシンは、長い間安全に使用されてきた歴史があり、さらに重要なことは、これまで耐性菌が自然界で発見されていない。長年にわたり、多くの農業用途においてナタマイシンを使用する可能性を記述した文献が発表されている。しかし、農業におけるナタマイシンの商業的使用にはほとんど至っていないことが観察される。これは、使用前に常に精製されるナタマイシンの価格が、農業用途、特に圃場での使用には高いという事実によるものと思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
農業における真菌対策及び経済的損失低減のための自然な解決策、特に農業における商業利用を可能し得る、ナタマイシンの効能の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ナタマイシンと、昆虫及び線虫(nematode)の神経系及び/又は筋肉組織に干渉する少なくとも1種の殺虫剤(insecticide)と、を含む抗真菌組成物を提供する。上記少なくとも1種の殺虫剤は、文献"IRAC Mode of Action Classification Scheme" (June 2019; version 9.3)に記載のサブグループ2、3、4、6及び/又は28に属するものであることが好ましい。
【0010】
しかし、ジョウゴグモ(funnel spider)ペプチドと呼ばれる生物殺虫剤、又は「SPEAR生物殺虫剤」はその例外となり得る。このペプチドは、ニコチン性アセチルコリン受容体を標的とすると考えられており、最近、新規な「神経・筋肉」作用様式を有することが発見された。このジョウゴグモペプチドは、昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤として含まれる可能性のある、新規なクラス32に挿入された。
【0011】
昆虫の神経又は筋肉の作用を撹乱する殺虫剤は、病原性菌類に対するナタマイシンの効力を増強することがわかった。このナタマイシンの効力の増強は、成長調節、昆虫中腸の微生物攪乱、エネルギー代謝(呼吸)、又は不明若しくは非特異的な作用機序等のその他の作用機序を有する殺虫剤と併用した場合にはこれまでは見つかっていなかった("IRAC Mode of Action Classification Scheme" (June 2019; version 9.3)参照)。
【0012】
ナタマイシン等のポリエン系殺菌剤は、細胞膜、特に真菌膜ステロールと相互作用することが報告されている。ナタマイシンの作用機序は他のポリエン系殺菌剤とは異なることが報告されているが、ナタマイシンが真菌の主要なステロールであるエルゴステロールと相互作用し、それによって膜流動性及び膜結合酵素の機能を調節するという報告もある(te Welscher et al., 2008. J Biol Chem 283: 6393-6401)。エルゴステロールは、真菌の細胞膜において最も豊富なステロールであり、膜の透過性と流動性を調節する(Douglas and Konopka, 2014. Annu Rev Microbiol 68: 377-393)。
【0013】
理論に縛られることはないが、昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤のグループによるナタマイシンの活性の著しい刺激は、真菌又は真菌の芽胞において、これらの殺虫剤が細胞膜及び/又は受容体に影響を与え、その細胞膜及び/又は受容体がナタマイシンに対してより脆弱になるというメカニズムに基づいていると考えられる。これらの脆弱な膜においては、ナタマイシンは細胞膜のエルゴステロールにより効果的に干渉することが可能である。その結果、菌類による胞子及び菌糸の発生は、ナタマイシンによってより効果的に阻害される。
【0014】
プロピコナゾール(propiconazole)等の「トリアゾール」は、エルゴステロールの合成を阻害することが指摘されている。そのため、「トリアゾール系殺菌剤」は細胞膜の成分とは直接干渉しないため、トリアゾール化合物が、サブグループ2、3、4、6及び/又は28の殺虫剤との相乗効果を発揮する可能性は低い。
【0015】
本発明に係る抗真菌組成物は、好ましくは、1%~98%(w/w)のナタマイシン(好ましくは6%~60%(w/w)のナタマイシン)、及び1%~99%(w/w)(好ましくは5~50%(w/w))の上記少なくとも1種の殺虫剤を含む。サブグループ2、3、4、6及び/又は28の上記少なくとも1種の殺虫剤に対するナタマイシンの比率は、1:1~1:5000(w/w)であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る好ましい抗真菌組成物は、ナタマイシンと、フィプロニル(fipronil)、λ-シハロトリン(lambda-cyhalothrin)、アセタミプリド(acetamiprid)、クロチアニジン(clothianidin)、イミダクロプリド(imidacloprid)、チアクロプリド(thiacloprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、アバメクチン(abamectin)及びクロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)からなる少なくとも1種の殺虫剤と、を含む。本発明に係るさらに好ましい抗真菌組成物は、フィプロニル、λ-シハロトリン、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアクロプリド、チアメトキサム、アバメクチン及びクロラントラニリプロールからの少なくとも2種の殺虫剤を含む。
【0017】
本発明に係る抗真菌組成物は、農業的に許容可能な担体をさらに含んでもよい。
【0018】
本発明に係る抗真菌組成物は、水性又は油性組成物であることが好ましい。
【0019】
一実施形態において、本発明に係る抗真菌組成物におけるナタマイシンは、発酵生物によってバイオマスを発酵させることによって製造される。
【0020】
本発明に係る抗真菌組成物におけるナタマイシンは、好ましくは、例えば粉砕によって、0.5~3μmの平均粒子径(体積粒子径)に分画される。
【0021】
本発明に係る抗真菌組成物は、好ましくは、相対量が1:2~60:1(w/w)のポリアニオン(リグニン化合物等)とポリカチオン(キトサン又はポリ-アリルアミン等)との不溶性高分子電解質複合体をさらに含有する。
【0022】
本発明はさらに、本発明に係る抗真菌組成物を準備すること、及び上記組成物を農作植物又は植物部分に付与することを含む、農作植物又は植物部分を保護する方法を提供する。好ましい植物部分は、種子、球根、果実又は野菜である。
【0023】
本発明はさらに、本発明に係る組成物を準備すること、及び植物を上記組成物と接触させることを含む、農作植物の生長及び/又は収量を向上する方法を提供する。
【0024】
本発明はさらに、土壌及び/又は成長基質(growth substrate)を保護する方法であって、上記土壌及び/又は成長基質に本発明に係る組成物を付与することを含む、上記方法を提供する。好ましい成長基質は、キノコ成長基質(mushroom growth substrate)である。
【0025】
本発明に係る好ましい方法では、抗真菌組成物は、未希釈で、又は水溶液若しくは油で最大10倍に希釈して使用される。抗真菌組成物は、未希釈で、又は組成物を種子に付与する前に水溶液で最大100倍に希釈して使用してもよい。抗真菌組成物は、植物、植物部分、土壌及び/又は成長基質に付与する前に、水溶液又は油中で好ましくは10~10倍に希釈されてもよい。
【0026】
本発明はさらに、真菌から植物、植物部分、土壌及び/又は成長基質を保護するための、本発明に係る抗真菌組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<定義>
本明細書で使用する場合、「懸濁液濃縮物」という用語は、使用前に水で希釈することを意図した、液体中の固体粒子の懸濁液を意味する。
【0028】
本明細書で使用する場合、「可溶性液体」という用語は、使用前に水で希釈することを意図した、液体中の溶液を意味する。上記液体は、水性液体又は非水性液体、例えば、キシレン若しくはケロシン等の石油系溶媒であってもよい。
【0029】
本明細書で使用する場合、「サスポエマルジョン(suspo emulsion)」という用語は、使用前に水で希釈することを意図した、エマルジョンの形態で油相と組み合わせた水中の固体粒子の懸濁液を意味する。
【0030】
本明細書で使用する場合、「分散液濃縮物」という用語は、使用前に水で希釈することを意図した、液体中の固形粒子の分散液を意味する。
【0031】
本明細書で使用する場合、「水分散性顆粒」という用語は、懸濁液又は溶液等の分散液を形成する水に分散可能である顆粒形態の製剤を意味する。
【0032】
本明細書で使用する場合、「水和剤(wettable powder)」という用語は、使用前に水又は別の液体と混合することを意図した粉末製剤を意味する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「水スラリー化紛(water slurriable powder)」という用語は、使用前に水中でのスラリーとされる粉末製剤を意味する。
【0034】
本明細書で使用する場合、「界面活性剤」という用語は、イオン性又は非イオン性の界面活性剤を意味する。界面活性剤の例としては、アルキル末端キャップ化エトキシレートグリコール、アルキル末端キャップ化アルキルブロックアルコキシレートグリコール、ジアルキルスルホサクシネート、リン酸エステル、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、トリステリルフェノールアルコキシレート、天然若しくは合成脂肪酸アルコキシレート、天然若しくは合成の脂肪アルコールアルコキシレート、アルコキシル化アルコール(n-ブチルアルコールポリグリコールエーテル等)、ブロックコポリマー(エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマー及びエチレンオキシド-ブチレンオキシドブロックコポリマー等)、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0035】
本明細書で使用する場合、「生物活性の向上」という用語は、活性成分の治癒、予防及び/又は持続性能の向上を意味する。
【0036】
本明細書で使用する場合、「植物部分(plant part)」という用語は、単一細胞、細胞塊、及び植物組織(組織培養物を含む)を指す。植物部分の例としては、限定されないものの、花粉、子房、葉、胚、根、根端、葯、花、果実、シュート、穂木、台木、種子、プロトプラスト(protoplast)、及びカルス(calli)等が挙げられ、好ましくは種子が挙げられる。
【0037】
<抗真菌組成物>
本発明は、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経性及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の差駐在を含む抗真菌組成物を提供する。上記少なくとも1種の殺虫剤は、サブグループ2(GABAゲート型塩化物チャネルブロッカー(GABA-gated chloride channel blocker))、サブグループ3(ナトリウムチャネル調節因子)、サブグループ4(ニコチン性アセチルコリン受容体の競合調節因子)、サブグループ6(グルタミン酸ゲート型塩化物チャネルのアロステリック調節因子)及び/又はサブグループ28(ライノジン受容体調節因子)であることが好ましく、これらのサブグループは文献"IRAC Mode of Action Classification Scheme" (June 2019; version 9.3)に記載されている。上記殺虫剤の1つ又は複数とナタマイシンとの組み合わせにより、驚くべきことに、上記ナタマイシンの生物活性、すなわちナタマイシンの殺菌活性が向上することが判明した。
【0038】
好ましい殺虫剤は、GABAゲート型塩化物チャネルブロッカーである。GABAゲート型塩化物チャネルブロッカーは、昆虫の神経系に作用すると考えられている。好ましいGABAゲート型塩化物チャネルブロッカーは、シクロジエン系、有機塩素系及び/又はフェニルピラゾール系である。好ましいGABAゲート型塩化物チャネルブロッカーは、フィプロニル((±)-5-アミノ-1-(2,6-ジクロロ-α,α,α-トリフルオロ-p-トリル)-4-トリフルオロメチル・スルフィニルピラゾール-3-カルボニトリル)である。
【0039】
好ましい殺虫剤は、ナトリウムチャネル調節因子(sodium channel modulator)である。ナトリウムチャネル調節因子は、昆虫の神経系に作用すると考えられている。好ましいナトリウムチャネル調節因子は、ピレスロイド(pyrethroid)及び/又はピレトリン(pyrethrin)である。好ましいナトリウムチャネル調節因子は、シハロトリン(cyhalothrin)([シアノ(3-フェノキシフェニル)メチル]-3-[(Z)-2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン-1-ニル]-2,2-ジメチルシクロプロパン-1-カルボキシレート)である。好ましくは、λ-シハロトリン([(R)-シアノ(3-フェノキシフェニル)メチル](1S,3S)-3-[(Z)-2-クロロ-3,3-トリフルオロプロペン-1-ニル]-2,2-ジメチルシクロプロパン-1-カルボキシレート)である。
【0040】
好ましい殺虫剤は、ニコチン性アセチルコリン受容体の競合的調節因子である。ニコチン性アセチルコリン受容体競合調節因子は、昆虫の神経系に作用すると考えられている。好ましいニコチン性アセチルコリン受容体競合調節因子は、ネオニコチノイドである。好ましいニコチン性アセチルコリン受容体競合調節剤は、アセタミプリド(acetamiprid)(N-[(6-クロロピリジン-3-イル)メチル]-N’-シアノ-N-メチルエタナミド)、イミダクロプリド(imidacloprid)(N-[1-[(6-クロロピリジン-3-イル)メチル]-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イル]ニトラミド、チアクロプリド(thiacloprid)([3-[(6-クロロピリジン-3-イル)メチル]-1,3-チアゾリジン-2-イリデン]シアナミド)、及び/又はチアメトキサム(thiamethoxam)(N-[3-[(2-クロロ-1,3-チアゾール-5-イル)メチル]-5-メチル-1,3,5-オキサジアジナン-4-イリデン]ニトラミド)である。
【0041】
好ましい殺虫剤は、グルタミン酸ゲート型塩化物チャネルのアロステリック調節因子である。グルタミン酸ゲート型塩化物チャネルのアロステリック調節因子は、昆虫の神経系に作用すると考えられている。好ましいグルタミン酸ゲート型塩化物チャネルのアロステリック調節因子は、アベルメクチン(avermectin)及び/又はミルベマイシン(milbemycin)である。グルタミン酸ゲート型塩化物チャネルの好ましいアロステリック調節因子は、アバメクチン(abamectin)((1’R,2R,3S,4’S,6S,8’R,10’E,12’S,13’S,14’E,16’E,20’R,21’R,24’S)-2-ブタン-2-イル-21’,24’-ジヒドロキシ-12’-[(2R,4S,5S,6S)-5-[(2S,4S,5S,6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-6-メチロキサン-2-イル]オキシ-4-メトキシ-6-メチロキサン-2-イル]オキシ-3,11’,13’,22’-テトラメチルスピロ[2,3-ジヒドロピラン-6,6’-3,7,19-トリオキサテトラシクロ[15.6.1.14,8.020,24]ペンタコサ-10,14,16,22-テトラエン]-2’-オン;(1’R,2R,3S,4’S,6S,8’R,10’E,12’S,13’S,14’E,16’E,20’R,21’R,24’S)-21’,24’-ジヒドロキシ-12’-[(2R,4S,5S,6S)-5-[(2S,4S,5S, 6S)-5-ヒドロキシ-4-メトキシ-6-メチロキサン-2-イル]オキシ-4-メトキシ-6-メチロキサン-2-イル]オキシ-3,11’,13’,22’-テトラメチル-2-プロパン-2-イルスピロ[2,3-ジヒドロピラン-6,6’-3,7,19-トリオキサテトラシクロ[15.6.1.14,8.020,24]ペンタコサ-10,14,16,22-テトラエン]-2’-オン)、エマメクチン安息香酸塩(emamectin benzoate)([(2S,3S,4S,6S)-6-[(2S,3S,4S,6R)-6-[(1’R,2R,3S,4’S,6S,8’R,10’E,12’S,13’S,14’E,16’E,20’R,21’R,24’S)-2-[(2S)-ブタン-2-イル]-21’,24’-ジヒドロキシ-3,11’,13’,22’-テトラメチル-2’-オキソスピロ[2,3-ジヒドロピラン-6,6’-3,7,19-トリオキサテトラシクロ[15. 6.1.14,8. 020,24]ペンタコサ-10,14,16,22-テトラエン]-12’-イル]オキシ-4-メトキシ-2-メチロキサン-3-イル]オキシ-4-メトキシ-2-メチロキサン-3-イル]-メチルアザニウム;ベンゾエート)、れぴめくちん(lepimectin)([(1R,4S,5’S,6R,6’R,8R,10E,12R,13S,14E,16E,20R,21R,24S)-6’-エチル-21,24-ジヒドロキシ-5’,11,13,22-テトラメチル-2-オキソスピロ[3,7,19-トリオキサテトラシクロ[15.6.1.14,8.020,24]ペンタコサ-10,14,16,22-テトラエン-6,2’-オキサン]-12-イル](2Z)-2-メトキシイミノ-2-フェニルアセテート)、及び/又はミルベメクチン(milbemectin)((1R,4S,5’S,6R,6’R,8R,10E,13R,14E,16E,20R,21R,24S)-21,24-ジヒドロキシ-5’,6’,11,13,22-ペンタメチルスピロ[3,7,19-トリオキサテトラシクロ[15.6.1.14,8.020,24]ペンタコサ-10,14,16,22-テトラエン-6,2’-オキサン]-2-オン)である。
【0042】
好ましい殺虫剤は、リアノジン(ryanodine)受容体調節因子である。リアノジン受容体調節因子は、昆虫の神経系に作用すると考えられている。好ましいリアノジン受容体調節因子は、ジアミドである。好ましいジアミドは、クロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)(5-ブロモ-N-[4-クロロ-2-メチル-6-(メチルカルバモイル)フェニル]-2-(3-クロロピリジン-2-イル)ピラゾール-3-カルボキサミド)である。
【0043】
本発明の組成物は、1%~98%(w/w)のナタマイシン、好ましくは6%~60%(w/w)のナタマイシンを含むことが好ましい。本発明の組成物は、上記少なくとも1種の殺虫剤を1%~99%(w/w)、好ましくは5~50%(w/w)含むことが好ましい。本発明の原液組成物は、1%~98%(w/w)のナタマイシン、好ましくは6%~60%(w/w)のナタマイシンと、1%~90%(w/w)、好ましくは5%~50%(w/w)の上記少なくとも1種の殺虫剤と、を含むことが好ましい。
【0044】
サブグループ2,3,4,6及び/又は28(IRAC作用機序分類体系参照)の殺虫剤とナタマイシンの殺菌活性との相乗効果は、広い範囲の殺虫剤濃度において認められる。これは、殺虫剤が菌類の細胞膜のタンパク質に影響を与え、この膜がナタマイシンに対してより脆弱になるためであると考えられる。その結果、胞子及び菌糸の発生がナタマイシンによってより効果的に阻害される。
【0045】
組成物は、ナタマイシン:殺虫剤の比(w/w)により特徴付けられることが好ましい。殺虫剤はそれ自体でより高い濃度で殺菌活性を持ち始めるため、上記少なくとも1種の殺虫剤の上限範囲を決定することは困難であることに注意が必要である。実験からは、上記殺虫剤の上限範囲が存在しない可能性が示唆されている。実施例では、ナタマイシンの殺菌活性に関する相乗効果が、1:2500、さらには1:7520(w/w)(ナタマイシン:殺虫剤)の比率で観察され得ることを示されている。ナタマイシンとサブグループ2、3、4、6及び/又は28の殺虫剤との好ましい比率、好ましくはナタマイシンとフィプロニル、λ-シハロトリン、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアクロプド、チアメトキサム、アバメクチン及びクロラントリプロールから選択される少なくとも1種の殺虫剤との比率は、したがって(ナタマイシン:殺虫剤)1:1(w/w)と1:10,000(w/w)であり、例えば、1:2~1:250、例えば1:50~1:100である。好ましい比率は、1:2、1:3、1:4及び1:5を含む。
【0046】
種子及び土壌への適用については、上記比率は、好ましくは(ナタマイシン:殺虫剤)1:1~1:100(w/w)であることは、当業者には理解されよう。この理由は、殺虫剤による保護が胚まで、好ましくは苗の段階まで延長されるように、種子を多量の殺虫剤で処理する必要性があるからである。
【0047】
本発明の組成物は、例えばDynomill(登録商標)等のビーズミルを用いて、好ましくは粉砕することにより、分画されていることが好ましい。ナタマイシンの体積基準平均粒子径は、0.2μm~10μm、好ましくは0.5μm~5μm、より好ましくは0.5μm~2μmであることが好ましい。本発明に係る組成物の体積基準平均粒子径を決定する方法は、当業者に公知である。例えば、Hukkanen and Braatz, 2003. Sensors and Actuators B 96: 451-459では、前方光散乱及び超音波消光を含む、組成物の平均粒子径を決定するために使用することができる様々な方法が論じられている。好ましい方法は、例えば、Analysette 22-MicroTec plus レーザー粒子径測定機(Fritsch, Idar-Oberstein, Germany)を用いたレーザー回折分析に基づくものである。
【0048】
本発明に係る抗真菌性組成物は、細胞物質(cellular matter)を含んでいてもよい。本発明に係る組成物中の上記ナタマイシンは、発酵生物によるバイオマスの発酵によって生産されたものであることが好ましく、組成物中に存在する細胞物質は、上記ナタマイシン生産発酵生物からのものである。上記ナタマイシン産生発酵生物としては、例えば、ストレプトマイセス・ナタレンシス(Streptomyces natalensis)及びストレプトマイセス・ギルヴォスポレウス(Streptomyces gilvosporeus)等が挙げられる。
【0049】
上記細胞物質は、好ましくは、ナタマイシン産生菌の残骸である化合物、又はナタマイシン産生菌が排泄する化合物を含む。このような化合物の例としては、ナタマイシン生産菌の細胞膜と細胞壁とを含む菌体エンベロープの化合物が挙げられる。このような化合物には、リン脂質及び糖脂質等のリン脂質が含まれ、水酸化ナトリウムの添加等の加水分解により、C16~C18脂肪酸等の脂肪酸となる。
【0050】
ストレプトマイセス・ナタレンシス及びストレプトマイセス・ギルヴォスポレウス等の発酵菌によりバイオマスを発酵させてナタマイシンを製造する方法は、当該技術分野において既知である。生産されたナタマイシンをバイオマスのバルクから分離して精製する方法は、当該技術分野において既知である。例えば、バイオマスの崩壊は、生産生物の全ての細胞の溶解及び破壊をもたらす可能性がある。得られたナタマイシンを含むブロスを濾過して濾過ケーキを得てもよく、その後、アルコール(好ましくはメタノール及び/又はエタノール)で処理してバイオマスを崩壊させ、ナタマイシンの少なくとも一部分を溶解させる。必要であれば、ナタマイシンを可溶化するためにpHを上昇させてもよい。その後の中和により、ナタマイシンの少なくとも一部が沈殿するであろう。
【0051】
本発明の組成物は、好ましくは、水性若しくは非水性(好ましくは油性)の、使用前に例えば水又は油等の適切な希釈剤で希釈されてもよい濃縮ストック組成物、又は水性若しくは非水性の即使用可能な組成物である。
【0052】
本発明の組成物は、土壌処理のために、又は、種子粉衣(seed dressing)又は種子コーティング(seed coating)等の種子処理材、コーティング乳剤(例えば、圃場の果物用又は植物用)、果物(例えば、パイナップル、オレンジ又はリンゴ)に付与されるワックス、圃場の植物(例えば、バナナ)にスプレーして適用されるオイルを調製するために使用することができる。本発明の組成物はまた、農産物の浸漬、噴霧又は浸漬用の組成物を調製するために使用可能な(例えば顆粒剤、粉末及び/又は錠剤等の)濃縮乾燥組成物も含む。
【0053】
本発明の抗真菌剤組成物は、懸濁液濃縮物(SC)、水分散性顆粒(WG)、水和剤(wettable powder)(WP)、サスポエマルジョン(suspo emulsion)(油性)(SE)、油分散液(OD)、分散濃縮物(DC)、乾燥粉末種子処理組成物(DS)、水スラリー化粉(water slurriable powder)(WS)、流動性種子処理組成物(FS)、水分散性顆粒種子処理組成物(WG)、サスポエマルジョン(SE)、又は可溶性液剤(soluble liquid)(SL)であることが好ましい。
【0054】
本発明の抗真菌組成物は、参照により本明細書に組み込まれる公開国際特許出願WO2013/133706号に記載されているようなポリアニオンとポリカチオンとの高分子電解質複合体、又は当技術分野で既知の他のカプセル化技術、例えば本発明の組成物がカプセル化されているリポソーム、脂質構造体又は例えば酵母の空細胞から構成されることが好ましい。
【0055】
上記高分子電解質複合体は、強い静電結合を形成する相反する電荷を有する高分子電解質(ポリアニオンとポリカチオンと)の複合体であり、上記高分子電解質複合体は、上記高分子電解質複合体である。上記高分子電解質複合体は、不溶性の複合体である。この複合体のみでは抗菌効果はない。高分子電解質複合体は、粘着性を有し、極性部(帯電部)と無極性部を含む。複合体中の芳香族部位は、例えばナタマイシン等の抗菌性化合物と親和性を有する場合がある。高分子電解質複合体の粘着性との組み合わせにより、農業、園芸、キノコ栽培に使用するために、抗菌化合物が最適に土壌に沈着・付着されることになる。
【0056】
高分子電解質複合体は、リグニン化合物(例えば、リグノスルホン酸、フミン酸、コンドロイチン硫酸、及びポリ(アクリル酸))等のポリアニオンと、キトサン、ε-ポリ(L)リジン、及びポリ-アリルアミン等のポリカチオンからなり、その相対量は1:2~60:1(w/w)、より好ましくは1:1~50:1、より好ましくは2:1~30:1、例えば、約2:1、約5:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、及び約30:1(w/w)である。高分子電解質複合体中のポリアニオン(好ましくはリグニン化合物)とポリカチオン(好ましくはキトサン)の相対量は、約5:1(w/w)であることが最も好ましい。
【0057】
高分子電解質複合体は、本発明の組成物中に5~800g/lの濃度、より好ましくは50~500g/lの濃度、最も好ましくは75~250g/lの濃度で存在することが好ましい。
【0058】
本発明に係る抗真菌組成物は、1種又は複数種の農学的に許容可能な担体をさらに含んでいてもよい。上記農学的に許容可能な担体は、安定剤、湿潤剤、分散剤、凍結防止剤、消泡剤及び/又は増粘剤であるか、又はそれを含むことが好ましい。少量の1種又は複数種の農学的に許容可能な担体の添加により、本発明に係る組成物の安定性及び/又は効力等のパラメータが影響を受けること、好ましくは改善することが可能である。少量の1種以上の農学的に許容可能な担体の添加は、本発明に係る組成物の安定性、効能及び/又は耐雨性を増強させることが好ましい。
【0059】
安定剤が存在する場合、クエン酸、酢酸等のカルボン酸、及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸、オルトリン酸ドデシルベンゼンスルホン酸、及びそれらの好適な塩から選択されることが好ましい。本発明の組成物はまた、2種以上の異なる安定剤を含んでいてもよい。安定剤は、0%から最大10%(w/v)、より好ましくは0.01%から最大5%(w/v)、より好ましくは0.02%から最大1%(w/v)、より好ましくは約0.05%(w/v)の量で存在することが好ましい。
【0060】
湿潤剤は、好ましくは、ジオクチルスクシネート、ポリオキシエチレン/ポリプロピレン、及びトリステアリルスルホネート/ホスフェートから選択されることが好ましい。本発明の組成物はまた、2種以上の異なる湿潤剤を含んでいてもよい。湿潤剤は、0%から最大10%(w/v)、より好ましくは0.01%から最大5%(w/v)、より好ましくは0.02%から最大1%(w/v)、より好ましくは約0.05%(w/v)の量で存在することが好ましい。
【0061】
分散剤が存在する場合、Morwet(登録商標)D425、リグニンスルホン酸塩、アルキルポリサッカライド、スチレンアクリルポリマー、アクリルコポリマー、及びエトキシル化トリスチレンフェノールリン酸(例えばポリエトキシル化リン酸(polyethoxylated fosforic acid))から選択されることが好ましい。本発明の組成物はまた、2種以上の異なる分散剤を含んでいてもよい。分散剤は、0%から最大10%(w/v)、より好ましくは0.01%から最大5%(w/v)、より好ましくは0.02%から最大1%(w/v)、より好ましくは約0.05%(w/v)の量で存在することが好ましい。
【0062】
凍結防止剤は、存在する場合、グリセリン、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びプロピレングリコールから選択されることが好ましい。本発明の組成物はまた、2種以上の異なる凍結防止剤を含んでいてもよい。凍結防止剤は、0%から最大10%(w/v)、より好ましくは0.01%から最大5%(w/v)、より好ましくは0.02%から最大1%(w/v)、より好ましくは約0.05%(w/v)の量で存在することが好ましい。
【0063】
消泡剤は、存在する場合、ポリメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、シメチコンオクタノール、及びシリコーンオイルから選択されることが好ましい。本発明の組成物はまた、2種以上の異なる発泡防止剤を含んでいてもよい。消泡剤は、0%から最大10%(w/v)、より好ましくは0.05%から最大5%(w/v)、より好ましくは0.1%から最大1%(w/v)、より好ましくは約0.05%(w/v)の量で存在することが好ましい。
【0064】
増粘剤が存在する場合、寒天、アルギン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、ゲランガム、キサンタンガム、スクシノグリカンガム(succinoglycan gum)、グアーガム、アセチル化アジピン酸架橋デンプン(acetylated distarch adipate)、アセチル化酸化デンプン(acetylated oxidised starch)、アラビノガラクタン(arabinogalactan)、エチルセルロース、メチルセルロース、ローカストビーンガム(locust bean gum)、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、及びクエン酸トリエチルから選択することが好ましい。また、本発明の組成物は、2種以上の異なる増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤は、0%から最大10%(w/v)、より好ましくは0.01%から最大5%(w/v)、より好ましくは0.02%から最大1%(w/v)、より好ましくは約0.05%(w/v)の量で存在することが好ましい。
【0065】
本発明に係る組成物は、高濃度のナタマイシン、及び上記少なくとも1種の殺虫剤を最大約30%(w/v)含む安定した水性懸濁液を提供し、当該水性懸濁液は、農学的に許容可能な担体としての比較的低量のアジュバントの存在下で、上記ナタマイシンの市販の製剤と比較して、向上した殺菌活性を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、組成物は、緩衝剤、酸味料、及び漂流防止剤、顔料、安全剤、及び保存料等の1つ又は複数の物理的安定剤及び/又は添加剤をさらに含む。
【0067】
<使用方法>
本発明はさらに、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤を準備すること、並びに、農作植物又は農作植物部分が十分な量の上記ナタマイシン及び少なくとも1種の殺虫剤と接触するように、上記ナタマイシン及び少なくとも1種の殺虫剤を農作植物又は農作植物部分へ付与することを含む、農作植物又は農作植物部分を保護する方法を提供する。
【0068】
農作植物又は農作植物部分を保護するための好ましい方法は、本発明に係る組成物を準備することと、農作植物又は農作植物部分が十分な量の上記組成物と接触するように、上記組成物を農作植物又は植物部分に付与することと、を含む。
【0069】
上記方法は、植物又は植物部分を真菌(好ましくはカビ)から保護するためのものであることが好ましい。
【0070】
本明細書で使用する場合、「植物」及び「作物」という用語は、いずれも、食用、衣料用、家畜飼料用、バイオ燃料用、医薬用、又はその他の用途用に栽培される植物、樹木、又は菌類(fungus))を意味する。
【0071】
上記植物部位は、葉、茎、種子、球根、花球、種芋、根、塊茎、果実及び/又は野菜であることが好ましく、最も好ましくは種子、球根、果実又は野菜である。
【0072】
本発明はさらに、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤を準備すること、及び、上記ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤を植物に接触させることを含む、農作植物の成長及び/又は収量を向上する方法を提供する。
【0073】
農作植物の成長及び/又は収量を向上するための好ましい方法は、本発明に係る組成物を準備することと、上記組成物を植物に接触させることと、を含む。
【0074】
ナタマイシンと、昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤と、を含む組成物(好ましくは本発明の組成物)は、多くの異なる方法で適用することが可能である。例えば、上記の組成物(単数又は複数)は、以下のようにして適用することが可能である:(1)任意選択的にワックス又は油等の担体を用いて、畑又は温室で植物に散布する;(2)種子、球根、又は種芋を浸す;(3)例えば土壌を介して、植物部分(種子又は根系等)に添加する;(4)種子コーティング(seed coating)又は種子粉衣(seed dressing)を介して植物部分(種子、種芋又は球根等)に添加する;(5)種子が植えられるか若しくは発芽するか、及び/又は植物又はキノコが発生する土壌又は成長基質に添加する;(6)例えば温室又は畑において、付与する水又は水やりシステムに加える;(7)例えばディッピング又はスプレーによって、球根、種子、穀物、大豆、花、果物、野菜又は植物等の収穫した植物部分を処理する。
【0075】
本発明の組成物は、希釈することなく、又は希釈した後に付与することが可能である。通常、本発明の組成物は、水性又は油性の希釈液を介して、粉衣、コーティング又はワックスを介して付与されるであろう。本発明に係る組成物は、未希釈であるか、又は、希釈されていることが好ましい。本発明に係る組成物は、種子処理については最大10倍又は100倍に希釈されることが好ましい。本発明に係る組成物は、本発明の方法における他の用途については、水溶液中又は油中で最大10倍から10倍まで希釈されることが好ましい。用途によって異なる処理を必要とする場合があるので、本発明の組成物の必要量は用途ごとに異なることは容易に理解されるであろう。しかしながら、一般的に、製品(例えば、成長基質、土壌、種子、球根、畑の植物又は収穫された果実)を処理するために必要な、例えば浸漬又は噴霧懸濁液等のすぐに使える組成物の量は、ナタマイシン10~100,000ppm、より好ましくはナタマイシン30~50,000ppm、最も好ましくはナタマイシン50~5,000ppmであろう。
【0076】
土壌若しくは生育培地中、植物上、又は収穫された植物部分上のナタマイシンの最終量は、異なる方法で表すことができる。1つ目の例として、例えば種子粉衣(seed dressing)又は種子コーティングを介して付与される、例えば種子上のナタマイシンの量は、種子1kg当たりナタマイシンが0.01~20.0g、より好ましくは種子1kg当たりナタマイシンが0.05~5.0g、最も好ましくは種子1kg当たりナタマイシンが0.1~2.0gである。
【0077】
2つ目の例として、花卉球根(flower bulbs)、種芋、タマネギ、リンゴ、ナシ、バナナ、及びパイナップル等の製品に浸漬又は噴霧するための本発明の組成物は、一般的に0.01g/1~100g/l、好ましくは0.03g/l~50g/l、最も好ましくは0.05g/l~5g/lのナタマイシンを含むであろう。
【0078】
花卉球根、種芋、タマネギ、リンゴ、ナシ、バナナ、及びパイナップル等の製品を処理した後、当該製品上のナタマイシンの量は典型的には、0.01~20.0mg/dmであり、好ましくは0.1~10.0mg/dmである。
【0079】
キノコ成長基質等の成長基質を処理する場合、1回の噴霧処理で、成長基質1mあたり0.01~5.0gのナタマイシンが、より好ましくは成長基質1mあたり0.02~1.0gのナタマイシンが添加される。
【0080】
(例えば野菜又は観葉植物が栽培されている)土壌を処理する場合、1mあたり0.01~5.0gのナタマイシンが付与され(好ましくは土壌の表層に混合され)、より好ましくは1mあたり0.1~1.0gのナタマイシンが付与される。圃場の作物に散布する場合、典型的な投与量は1ヘクタール当たり1~5000gのナタマイシン、より好ましくは1ヘクタール当たり50~2000gのナタマイシンである。しかしながら、バナナ等の作物の場合、ナタマイシンの好ましい投与量は、1ヘクタール当たり5~500g、より好ましくは10~100gである。
【0081】
ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤(好ましくは本発明の組成物)は、任意の好適な時期に、任意の好適な方法を用いて、成長培地、土壌、植物又は植物部分に、例えば、(例えば、種子、球根、種芋、切り花若しくは若草の)植付け前、植付け中若しくは植付け後に;果物、野菜、実又は花卉球根の畑での成長中、収穫後又は貯蔵中に、添加することが可能である。
【0082】
本発明の一態様は、ナタマイシンの生物活性を高めるための、昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤の使用を提供する。本発明に係る上記使用により、上記ナタマイシンの付与頻度の低減及び/又は上記ナタマイシンの生物学的活性の増加が可能となり得る。
【0083】
本発明の一態様は、植物、植物部分、又は土壌に存在するナタマイシンの生物活性を高めるための、昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する少なくとも1種の殺虫剤の適用を提供する。上記殺虫剤は、上記ナタマイシンの生物学的活性を増加させることが可能である。上記少なくとも1つの殺虫剤は、文献"IRAC Mode of Action Classification Scheme" (June 2019; version 9.3)に記載のサブグループ2(GABAゲート型塩化物チャネルブロッカー)、サブグループ3(ナトリウムチャネル調節剤)、サブグループ4(ニコチン性アセチルコリン受容体の競合調節剤)、サブグループ6(グルタミン酸ゲート型塩化物チャネルのアロステリック調節剤)、及び/又はサブグループ28(ライノジン受容体調節剤)に属するものであることが好ましい。
【0084】
「付与頻度の低減」及び「生物学的活性の増加」という用語は、少なくとも1種の殺虫剤を含まないナタマイシンの付与頻度と比較した場合に、10%以上、好ましくは30%以上低減された付与頻度を指し得る。
【0085】
上記低減された付与頻度は、付与頻度が、1ヘクタールあたり活性成分5mg(a.i.)~2.5kg a.i./ha、好ましくは1g a.i./ha~2kg a.i./ha、例えば100~750g a.i./ha(頻度が600g a.i./ha、頻度が500g a.i./ha、頻度が400g a.i./ha、頻度が300g a.i./ha、頻度が200g a.i./ha、及び100g a.i./haが含まれる)であることを指し得る。
【0086】
本発明に係る抗真菌組成物は、園芸、農業、及び林業において遭遇する害虫の防除に好適である。抗真菌組成物は、通常感受性及び抵抗性の害虫種に対して、また発生の全段階若しくは個々の段階において活性である。使用に先立って、本発明に係る抗真菌組成物を含む組成物を、水に溶解若しくは分散させるか、又は水で希釈し、0.001~10w/v%の生物活性ナタマイシンを含む水性組成物を準備することが好ましい。必要に応じて、粘着剤等の農学的に許容可能な担体が、希釈された水性組成物に添加される。
【0087】
本発明に係る組成物は、植物、植物部分又は土壌に接触させる前に、ナタマイシンを0.0001~10%(w/v)含むように、水性溶媒(好ましくは水)で2~5000倍、好ましくは約200倍に希釈されることが好ましい。
【0088】
農業害虫を防除するために、本発明は、植物又は植物の一部を病原体から保護するための、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、ナタマイシン及び少なくとも1種の殺虫剤を含む本発明に係る組成物)の使用を提供する。この効果を達成するために、上記植物若しくは植物の一部、又は土壌を、上記ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、本明細書で上述したような希釈水性組成物を含む、上記組成物)と接触させる。上記ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは上記組成物)は、例えば、食物/飼料作物(樹木果物、野菜作物、畑作物、ブドウ、観賞植物、及び芝草ファーム(sod farm)を含む)のうどんこ病及びボツリヌス菌感染を制御するために使用される。さらに、例えば、そうか病(common sacab)、リンゴそうか病(apple scab)、及びジャガイモの黒星病(black scab on potatoes)、ナシそうか病(pear scab)、及び粉状そうか病(powdery scab)等のそうか病(scab)、モモの灰星病(brown rot)、カラント及びグーズベリーの葉斑、フザリウム病(Fusarium diseases)、ピーナッツ葉斑、並びにバラのべと病(mildew)等の制御にも使用される。その他の使用法としては、温室栽培の花卉類、家庭菜園、住宅の芝生の保護等が挙げられる。さらに、上記ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、希釈水性組成物を含む上記組成物)は、分離した種子、果物、ナッツ、野菜及び/又は花に接触させてもよい。
【0089】
本発明はさらに、植物又は植物部分を病原体から保護する方法であって、上記植物又は上記植物部分を、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、ナタマイシン、並びに神経系及び筋肉系殺虫剤(好ましくは、文献“IRAC Mode of Action Classification Scheme” (June 2019; version 9.3)に記載のサブグループ2、3、4、6及び/又は28に属する殺虫剤)を含む本発明に係る水性希釈組成物)と接触させることを含む、上記方法を提供する。
【0090】
本発明はさらに、植物又は植物の一部における病原体の存在を予防、低減及び/又は排除する方法であって、上記植物又は上記植物の一部を、ナタマイシン、並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは本発明に係る水性組成物)と接触させることを含む、上記方法を提供する。
【0091】
上記使用及び上記方法のために、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、希釈水性組成物を含む上記組成物)は、植物又はその一部に噴霧されることが好ましい。自動散布システムの使用を含む散布用途は、人件費を削減し、費用対効果に優れていることが知られている。当業者によく知られている方法及び装置をそのために使用することができる。ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、希釈水性組成物を含む上記組成物)は、感染の危険性が高い場合、定期的に噴霧することができる。感染のリスクが低い場合、当業者に知られているように、散布間隔はより長くてもよい。
【0092】
植物又はその一部を、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは本発明の組成物)と接触させるのに適した他の方法もまた、本発明の一部である。これらは、浸漬、散水、浸漬、ダンプタンクへの導入、気化、霧化、燻蒸、塗装、ブラシ、霧吹き、散布、発泡、散布、包装、コーティング(例えば、ワックス又は静電気による手段)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。さらに、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、希釈水性組成物を含む本発明の組成物)を土壌に注入してもよい。
【0093】
例えば、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくはナタマイシン及び本発明に係る少なくとも1種の殺虫剤を含む希釈水性組成物)で植物及びその一部を被覆してもよく、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、本発明に係る希釈水性組成物)で、植物又はその一部を浸漬することにより、植物又はその一部を病原体から保護するか、及び/又は、植物若しくは植物の一部条の病原体の存在を防止、低減及び/又は排除してもよい。
【0094】
ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは本発明に係る組成物、又はその希釈物)で被覆される植物の好ましい部分は、種子である。ナタマイシン、並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは本発明に係る組成物、又はその希釈物)で被覆される植物のさらに好ましい部位は、果実である。好ましくは、例えば、オレンジ、マンダリン、ライム等の柑橘類、リンゴ、ナシ等のナシ状果(pome fruit)、アーモンド、アプリコット、サクランボ、ダムソン(damson)、ネクタリン、トマト、スイカ等の核果(stone fruit)、バナナ、マンゴー、ライチ、ミカン等のトロピカルフルーツ等の収穫後のフルーツである。好ましい果物は、オレンジ等の柑橘類及び/又はバナナ等のトロピカルフルーツである。
【0095】
本発明はさらに、植物又はその増殖材料上の病原性真菌によって引き起こされる病気を制御する方法を提供し、この方法は、植物又はその増殖材料を、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、水性希釈組成物を含む本発明に係る組成物)と接触させることを含む。
【0096】
また、本発明は、(i)害虫又はその遺伝子座(locus)、(ii)植物又はその遺伝子座若しくは繁殖材料、(iii)土壌、及び/又は(iv)害虫の侵入を防止したい場所に、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、ナタマイシン及び少なくとも1種の殺虫剤を含む本発明の組成物)を接触させて、害虫を駆除する方法も提供する。
【0097】
また、本発明は、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは本明細書に記載の組成物)を植物又は土壌に付与することを含む、害虫駆除の改善方法を提供する。
【0098】
また、本発明は、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは本発明の組成物又はその希釈物)を植物、植物部分又は土壌に付与することを含む、植物、植物部分又は土壌に対するナタマイシンの防除効果を持続させる方法を提供する。
【0099】
いくつかの実施形態において、標的は、植物、植物部分、土壌又は成長基質である。いくつかの実施形態では、標的は、菌類である。
【0100】
また、本発明は、植物、その遺伝子座又はその繁殖材料を、有効量のナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、ナタマイシン及び少なくとも1種の殺虫剤を含む本発明に係る組成物)と接触させることを含む、病原性真菌により引き起こされる植物病の予防、治療又は持続処理による害虫を制御する方法を提供する。
【0101】
ナタマイシン及び少なくとも1種の殺虫剤を含む本発明によって記載された組成物は、健康な植物又は病気の植物に付与してよい。記載された組成物は、作物、種子、球根、繁殖材料、又は観賞用種を含むがこれらに限定されない様々な植物に使用することが可能である。
【0102】
本発明は、植物又はその繁殖材料上の病原性真菌によって引き起こされる病気を防除する方法であって、植物、その遺伝子座又はその繁殖材料を、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、ナタマイシン及び少なくとも1種の殺虫剤を含む本発明に係る組成物)と接触させることを含む、上記方法を提供する。
【0103】
いくつかの実施形態において、真菌は、コムギの葉枯病(Leaf Blotch)(Mycosphaerella graminicola;アナモルフ:Septoria tritici)、コムギの赤さび病(Brown Rust)(Puccinia triticina)、黄さび病(Stripe Rust)(Puccinia striiformis f. sp. tritici)、りんごそうか病(scab of apple)(Venturia inaequalis)、トウモロコシ火ぶくれ病(Blister Smut)(Ustilago maydis)、ブドウうどんこ病(Powdery Mildew)(Uncinula necator)、オオムギ雲形病(Barley scald)(Rhynchosporium secalis)、イネのいもち病(Blast of Rice)(Magnaporthe grisea)、ダイズのさび病(Rust of Soybean)(Phakopsora pachyrhizi)、コムギの穎斑病(Glume Blotch of Wheat)(Leptosphaeria nodorum)、コムギのうどんこ病(Powdery Mildew of Wheat)(Blumeria graminis f. sp.tritici)、オオムギのうどんこ病(Powdery Mildew of Barley)(Blumeria graminis f. sp. hordei)、ウリ類のうどんこ病(Powdery Mildew of Cucurbits)(Erysiphe cichoracearum)、ウリ類の炭疽病(Anthracnose of Cucurbits)(Glomerella lagenarium)、ビートの葉斑病(Leaf Spot of Beet)(Cercospora beticola)、トマトの早枯病(Early Blight of Tomato)(Alternaria solani)、及びオオムギの網班病(Net Blotch of Barley)(Pyrenophora teres)のうちの1つである。
【0104】
いくつかの実施形態では、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、ナタマイシン及び少なくとも1種の殺虫剤を含む本発明に係る組成物)は、害虫を制御するために有効な頻度で付与される。いくつかの実施形態では、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、ナタマイシン及び少なくとも1種の殺虫剤を含む本発明に係る組成物)を、害虫の侵入を防止するために有効な頻度で付与する。いくつかの実施形態では、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤(好ましくは、ナタマイシン及び少なくとも1種の殺虫剤を含む本発明に係る組成物)は、害虫の侵入を治癒するために有効な頻度で付与される。
【0105】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、害虫の侵入を防止するために有効である。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、害虫の蔓延を治癒するために有効である。いくつかの実施形態において、本方法は、ナタマイシンの殺虫活性を増加させるために有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、ナタマイシンの殺虫効果を延長させるために有効である。
【0106】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ナタマイシンの半最大有効濃度(EC50)を減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、EC50を10%以上減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、EC50を25%以上減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、EC50を35%以上減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、EC50を50%以上減少させるのに有効である。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ナタマイシンのLC50を減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、LC50を10%以上減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、LC5025%以上減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、LC50を50%以上減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、LC50を75%以上減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、LC50を90%以上減少させるのに有効である。
【0108】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ナタマイシンのLC90を減少させるのに有効である。いくつかの実施形態において、本方法は、LC90を10%以上減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、LC90を25%以上減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、LC90を50%以上減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、LC90を75%以上減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、LC90を90%以上減少させるのに有効である。
【0109】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、害虫、植物部分、植物、その遺伝子座、又はその繁殖材料に少なくとも1つの追加の農薬を付与することをさらに含む。上記追加の農薬は、ナタマイシン並びに昆虫及び線虫の神経系及び/又は筋肉系に干渉する殺虫剤と、タンク内で混和しても、又は順次付与してもよく、好ましくは、ナタマイシン及び少なくとも一つの殺虫剤を含む組成物と共に植物、植物部分、土壌又は生育基材に付与してよい。
【0110】
限定するわけではないが、以下の実施例により本発明を説明する。
【0111】
<実施例>
<概要>
[実験で使用するナタマイシン製剤]
ナタマイシンは、0ppm(対照)、50ppm、100ppm及び200ppmの濃度でリンゴに対して試験された。ナタマイシンは表1に示す通り製剤化した。
【0112】
【表1】

【0113】
[実験で使用する殺虫剤製剤]
殺虫剤活性成分であるチアメトキサム(Thiamethoxam)(メルク社;37924)、イミダクロプリド(Imidacloprid)(メルク社;37894)、アバメクチン(Abamectin)(メルク社;31732)、及びクロルピリホス(Chlorpyrifos)(メルク社;45395)を表2に示す組成で製剤化した。
【0114】
【表2-1】

【0115】
【表2-2】

【0116】
【表2-3】

【0117】
【表2-4】

【0118】
有効成分であるフィプロニル(Fipronil)、λ-シハロトリン(Lambda-Cyhalothrin)、α-シペルメトリン(alpha-Cypermethrin)、アセタミプリド(Acetamiprid)、エマメクチン安息香酸塩(Emamectin benzoate)、クロラントラニリプロール(Chlorantraniliprole)、フルベンジアミド(Flubendiamide)、フェノキシカルブ(Fenoxycarb)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、クロルフェナピル(Chlorfenapyr)、及びアザジラクチン(Azadirachtin)は市販品を使用した(表3参照)。
【0119】
[実施例において付与された殺虫剤の線量率]
実施例では、ナタマイシンを標準的な殺虫剤のラベル用量と組み合わせている。実施例で使用された殺虫剤有効成分の量は、表3に示されている。
【0120】
【表3】

【0121】
[相乗効果の測定]
殺虫剤によるナタマイシンの抗真菌活性の刺激は相乗的であることが判明した例もある。コルビー式(Colby, 1967. Weeds 15: 20-22)は、2種以上の有効成分を含む組み合わせの抗真菌活性の期待値(E in %)を算出するものである:
【数1】


ここで、X及びYはそれぞれ、個々の有効成分x及びyの観察された抗真菌活性(単位:%)である。組み合わせの観察された抗真菌活性(O%)がこの組み合わせの期待される抗真菌活性(E%)を超え、したがって相乗係数O/Eが>1.0であれば、活性成分の組み合わせ適用により、相乗的抗真菌効果がもたらされることになる。
【0122】
<実施例1:人工感染植物組織でのナタマイシンの抗真菌活性に対する殺虫剤の有効性試験
[材料及び方法]
リンゴcv Elstarは有機栽培由来のものであり、SKAL認証を取得している。SKALはオランダの半官半民の組織であり、オランダの有機栽培を管理している。
【0123】
ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)の胞子懸濁液として、10個/mlの胞子を含むものを使用する。
【0124】
直径0.6cm、深さ最大0.5cmのコルクボーラーで果皮を傷つけ、リンゴ果実1個につき2個の傷をつける。B. cinereaの新鮮な胞子懸濁液(約10個/ml)を30μl、各傷口にピペットで塗布する。その後、胞子懸濁液を3時間風乾させる。以下の表4及び表5に示すように、50μlのナタマイシン及び/又は殺虫剤を、各創傷にピペットで塗布する。
【0125】
すべての果実は室温(20℃)で保管される。傷は毎日検査し、10日後に記録する。
【0126】
すべての処理は6個のリンゴに対して行われ、それぞれ2個の傷がつき、1回の処理で12個の傷がつくことになる。記録された抗真菌活性は、未処理の対照の腐敗表面積と比較して、12個の傷で観察された腐敗の平均表面積の減少(%)である。
【0127】
[結果]
結果を表4及び表5に示す。各文字は感染率(表面積)の違いを示し、Aが最も高い感染面積であり、B、C、Dは感染面積が減少している(BはAより有意に低く、CはBより有意に低く、DはCより有意に低い)。これらの結果から、殺虫剤はそれ自体では殺菌作用を持たないが、昆虫の神経又は筋肉系を介した作用機序である表4の殺虫剤は、リンゴ植物組織に対するナタマイシンの殺菌作用を刺激し、昆虫の神経又は筋肉系を介した作用機序ではない表5の殺虫剤は、この作用を持たないことが明らかである。
【0128】
【表4】

【0129】
【表5】

【0130】
<実施例2:殺虫剤併用及び非併用のナタマイシンの人工感染土壌の種子での病原性真菌に対する殺菌効果試験>
[材料及び方法]
種子を、表2に記載の殺虫剤組成物の存在下又は非存在下で、表1に記載のナタマイシン製剤で被覆する。ダイズ種子を、人工的に感染させた土壌に入れる(方法は下記参照)。
【0131】
土壌感染は、感染して死んだソルガム(Sorghum)種子を用いて土壌を培養することで得られる。このために、ソルガム種子を100gと水100mlを500ml容のビンに入れ、オートクレーブを2回かける(121℃、15分、15psi)。死んだソルガム種子は、フザリウム・グラミネアルムセグメント(直径6mmのコルクボーラーでシャーレから切り出した新鮮なフザリウム・グラミネアルム菌糸で完全に成長した、5mmの寒天上の高さを持つ円形セグメント)に感染させる。10個のフザリウム・グラミネアラム(F. graminearum)寒天片を、100mlの水にオートクレーブした(死んだ)ソルガム種子を入れた500ml容のビンに、25℃で入れ、2週間培養する(16時間昼光、8時間暗黒)。感染土壌を調製するために、土壌(Lentse potgrondタイプ821201030、Horticoopから購入)と砂(Wageningenのvan Leusden社の川砂)を1:1の混合物でプラグトレイ(トレイの寸法は52cm×30cm、直径5cm、深さ4.5cmの40個の丸いセル(modiform;Leusden、オランダ))に入れる。
【0132】
F. graminearumのキャリアとなる感染したソルガム種子を、砂質土混合物を含む各プラグに3粒ずつ撒いた。トレイは温室(日照16時間、昼温20℃、夜温18℃、湿度60%)内に1週間放置する。
【0133】
その後、ダイズ種子を70%エタノールで洗浄し、水で十分に洗い流す。
【0134】
ナタマイシン(種子1kgあたり0.06g、0.12g又は0.24gの有効成分)及び表示されている殺虫剤(投与量は表3参照)を30mlの水に懸濁又は溶解して、ユーザー溶液を調製する。次に、種子250gをロータリーコーターに投入し、ユーザー溶液を種子に塗布する。種子は、それぞれの溶液とともに45秒間回転される。溶液は、ロータリーコーターの回転する円盤を通して、種子に均一に行き渡る。その後、種子をロータリーコーターから取り出し、25℃の温度で15分間乾燥機に入れる。
【0135】
種子は、土壌と砂の混合物を含むプラグトレイのセル(栓)に2cmの深さで播種し、1処理あたり20粒、1セルあたり1粒とした。播種後14日目に苗の出穂と品質評価を行う。
【0136】
[結果]
表6及び表7に、昆虫の神経系又は筋肉系に活性を有する殺虫剤(表6)、又は昆虫の他の系に活性を有する殺虫剤(表7)とナタマイシンとの併用及び非併用による、ダイズ種子の発育品質への影響を示した。播種から14日後に、健全な苗(非感染土壌におけるダイズ種子の発育と比較)、異常な苗(例えば、発育不良、変色した小さな植物、奇形の葉)及び枯れた種子の割合を決定している。表6及び表7の結果は、健全な苗の割合を表す。
【0137】
【表6】

【0138】
【表7】

【0139】
[結果]
表6及び表7において、個々の文字は、健康な苗の割合の違いを示し、Aは健康な苗の割合が最も低く、B、C、Dは健康な苗の割合が増加していることを示す(BはAより有意に高く、CはBより有意に高く、DはCより有意に高い)。
【0140】
これらの結果から、殺虫剤自体には殺菌力はないが、昆虫の神経系又は筋肉系を介した作用機序とする表6の殺虫剤は、ナタマイシンの種子に対する殺菌作用を刺激し、昆虫の神経系又は筋肉系を介した作用機序ではない表7の殺虫剤は、その作用を阻害しないことが明らかである。
【0141】
<実施例3:トウモロコシ種子の真菌による攻撃に対するナタマイシン及び殺虫剤の単独又は併用効果>
[材料及び方法]
殺虫剤の投与量は表3に示すとおりである。トウモロコシ種子の処理方法は、実施例2のダイズ種子について記載した方法と同じである。播種から14日後に、健康な苗(非感染土壌におけるトウモロコシ種子の発育と同等)、異常な苗(例えば、発育不良、変色した小さな植物、奇形の葉)及び死んだ種子の割合(%)が決定される。表8の結果は、健康な苗の割合を示す。
【0142】
表8には、昆虫の神経系又は筋肉系に活性を有する殺虫剤とナタマイシンとを併用した場合の、トウモロコシ種子の発育品質への影響が示されている。
【0143】
【表8】

【0144】
表8の結果から、神経又は筋肉組織を介して作用する殺虫剤は、それ自体では殺菌力を有しないが、トウモロコシ種子に対するナタマイシンの殺菌作用を刺激し、より健康な苗を得ることができることがわかる。
【0145】
表9に、昆虫の神経系又は筋肉系に活性を有しない殺虫剤とナタマイシンとを併用処理したトウモロコシ種子の発育品質への影響を示す。
【0146】
【表9】

【0147】
表9の結果から、神経系又は筋肉系を介した作用機序を有しない殺虫剤は、それ自体では殺菌活性を持たず、ナタマイシンの種子に対する殺菌作用を刺激しないことがわかる。
【0148】
<実施例4:ナタマイシン及びアバメクチン(昆虫の神経系に作用)の単独及び併用によるトウモロコシ種子での各種病原真菌の攻撃に対する影響
[材料及び方法]
方法は、実施例2の種子実験について述べたとおりである。フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)を表10に記載の病原性真菌に置き換えた。ナタマイシン及び殺虫剤組成物は、表1及び表2に示されている。
【0149】
【表10】

【0150】
[結果]
表10の結果から、神経又は筋肉系を介した作用機序を有する殺虫剤であるアバメクチンは、それ自体には殺菌作用はないが、種子の異なる真菌病原体に対するナタマイシンの殺菌作用を刺激して、より健康な苗が得られること分かる。
【0151】
<実施例5:ナタマイシン及びイミダクロプリド(昆虫の神経系に作用)の単独又は組み合わせによる、異なる種類の種子への影響>
[材料及び方法]
テンサイ種子75g、芝草種子75g、及びトマト種子25gを用いた以外は、実施例2に記載と同様に、人工感染土壌(Fusarium culmorum)に異なる種類の種子を植栽した。健康な苗木の割合(%)を、14日間の培養後に評価する。
【0152】
[結果]
表11の結果から、イミダクロプリドはそれ自体では殺菌作用を持たないが、異なる植物の種子に対するナタマイシンの殺菌作用を刺激し、より健康な苗をもたらすことが分かる。
【0153】
【表11】

【0154】
<実施例6:Fusarium culmorumに対するナタマイシンの効力に対するフィプロニルの影響>
[実施例6~19の材料及び方法]
100ml容のDuranビン中でCarl-Roth(Carl-Roth GmbH + Co. KG, Karlsruhe, Germany)のジャガイモデキストロース寒天(PDA)3.9gと100mlの脱イオン水を混合し、Duranビンを120℃で15分間オートクレーブすることにより、寒天培地を調製した。オートクレーブ処理後、溶液を48℃のオーブンに約2時間入れて冷却した。その後、半液状のPDA溶液に表12に規定されたナタマイシン及び/又は殺虫剤の投与量を注意深く混合した。Duranビン内の培地を、25ml容血清ピペット(ROTILABO(登録商標);Carl-Roth)を用いて、5枚のシャーレ(90×15mm)上に、1枚当たり20mlずつ分注した。各ナタマイシン処理及び/又は殺虫剤処理は5回に分けて行った。
【0155】
十分に成長したシャーレを滅菌水で浸漬することにより、真菌胞子の懸濁液を調製した。真菌を削り取り、Miracloth(孔径:22~25μm)(Merck KGaA, Darmstadt, Germany;カタログ番号:475855)で濾過した。血球計数装置で胞子数を数え、真菌懸濁液を10個/mlに調整した。その後、調製した胞子懸濁液5□lを寒天平板の中央部にピペッティングした。プレートを25℃でインキュベートした。真菌の増殖の測定は、異なる時点でノギスを用いて行った。
【0156】
この実施例では、IRACグループ2に属する活性成分であるフィプロニルを含むBASF社の製品REGENT(登録商標)を用いて、ナタマイシンとの相乗効果を検証した。使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天当たり0.94gの殺虫剤製品であった。0.5Nは0.47gである。ナタマイシン含有インキュベーションにおけるナタマイシンの濃度は1ppmであった。ナタマイシン:フィプロニルの比率は、1:7520(w/w)及び1:3760(w/w)であった。25℃のストーブで7日間培養した後、効力を評価した。相乗効果の計算はコルビー方程式を用いて行った。
【0157】
[結果]
【表12】

【0158】
<実施例7:Fusarium culmorumに対するナタマイシン効力に対するλ-シハロトリンの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ3に属する活性成分であるλ-シハロトリンを含むSyngenta社の製品KARATE ZEON(登録商標)を使用した。
【0159】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天に対して20μlの殺虫剤製剤を使用した。0.5Nは、100mlのPDA寒天に対して10μlである。
【0160】
ナタマイシン含有培養物中のナタマイシン濃度は1ppmであった。ナタマイシン:λ-シハロトリンの比率は1:50(w/w)及び1:25(w/w)であった。25℃のストーブで7日間培養した後に効力を評価した。
【0161】
[結果]
【表13】

【0162】
<実施例8:Alternaria solaniに対するナタマイシンの効力に及ぼすλ-シハロトリンの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ3に属する活性成分であるλ-シハロトリンを含むSyngentaの製品KARATE ZEON(登録商標)を使用した。
【0163】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天に対して25倍に水で希釈した殺虫剤溶液を500μl使用した。2Nは、100mlのPDA寒天に対して、水中希釈した溶液を1000μlとした。5Nは、PDA寒天100mlに対してKARATE ZEONの原液を100μlとした。
【0164】
ナタマイシン含有培養物中のナタマイシン濃度は0.5ppmであった。ナタマイシン:λ-シハロトリンの比率は1:100(w/w)、1:200(w/w)、及び1:500(w/w)であった。25℃のストーブで4日間インキュベートした後に、効力を評価した。
【0165】
[結果]
【表14】

【0166】
<実施例9:Sclerotinia sclerotiorumに対するナタマイシンの効力に対するλ-シハロトリンの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ3に属する活性成分であるλ-シハロトリンを含むSyngenta社の製品KARATE ZEON(登録商標)を使用した。
【0167】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天に対して25倍に水で希釈した殺虫剤溶液を500μl使用した。2Nは、100mlのPDA寒天培地あたり、水中希釈液を1000μlとした。5Nは、100mlのPDA寒天に100μlの原液を入れたものである。
【0168】
ナタマイシン含有培養物中のナタマイシン濃度は0.5ppmであった。ナタマイシン:λ-シハロトリンの比率は1:100(w/w)、1:200(w/w)、及び1:500(w/w)であった。25℃のストーブで4日間インキュベートした後に、効力を評価した。
【0169】
[結果]
【表15】

【0170】
<実施例10:Botrytis cinereaに対するナタマイシンの効力に対するλ-シハロトリンの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ3に属する活性成分であるλ-シハロトリンを含むSyngenta社の製品KARATE ZEON(登録商標)を使用した。
【0171】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天に対して20μlの殺虫剤製品を使用した。0.5Nは、100mlのPDA寒天あたり製品10μlとした。0.25NはPDA寒天100mlに対してKARATE ZEONの原液を5μl、0.125NはPDA寒天100mlに対して殺虫剤を2.5μlであった。
【0172】
ナタマイシン含有培養物中のナタマイシン濃度は1ppmであった。ナタマイシン:λ-シハロトリンの比率は、1:12.5(w/w)、1:25(w/w)、及び1:50(w/w)であった。25℃のストーブで6日間培養した後に、効力を評価した。
【0173】
[結果]
【表16】

【0174】
<実施例11:Fusarium graminerumに対するナタマイシンの効力に対するイミダクロプリドの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ4に属する殺虫活性成分であるイミダクロプリドを、表17に示すような追加の化合物と共に配合した。
【0175】
【表17】

【0176】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天に対して5μlの殺虫剤製剤を使用した。0.5Nは、100mlのPDA寒天あたり2.5μlの製剤である。ナタマイシン含有培養物中のナタマイシンの濃度は1ppmであった。ナタマイシン:イミダクロプリドの比率は1:20(w/w)、及び1:10(w/w)であった。25℃のストーブで8日間及び12日間培養した後、効力を評価した。
【0177】
[結果]
【表18】

【0178】
【表19】

【0179】
<実施例12:Fusarium culmorumに対するナタマイシンの効力に対するチアメトキサムの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ4に属する活性成分であるチアメトキサムを水と混合し、1000ppmの溶液とした。使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天に対して5mlの殺虫剤溶液であった。2Nは、100mlのPDA寒天に対して10mlのチアメトキサム溶液である。
【0180】
ナタマイシン含有培養物中のナタマイシン濃度は0.5pmであった。ナタマイシン:チアメトキサムの比率は、1:100(w/w)及び1:200(w/w)であった。25℃のストーブで4日間培養した後に、効力を評価した。
【0181】
[結果]
【表20】

【0182】
<実施例13:Fusarium graminerumに対するナタマイシンの効力に対するアバメクチンの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ6に属する活性成分であるアバメクチンを含むSyngenta社の製品VERTIMEC(登録商標)を使用した。
【0183】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天に対して75μlの殺虫剤製品を使用した。0.5Nは、100mlのPDA寒天に対して37.5μlの製品を使用した。
【0184】
ナタマイシン含有培養物中のナタマイシン濃度は1ppmであった。ナタマイシン:アバメクチンの比率は、1:13.5(w/w)及び1:6.75(w/w)であった。25℃のストーブで8日及び12日間培養した後、効力を評価した。
【0185】
[結果]
【表21】

【0186】
【表22】

【0187】
<実施例14:Fusarium graminerumに対するナタマイシンの効力に対するアバメクチンの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ6に属する活性成分であるアバメクチンを含有するSyngenta社の製品VERTIMEC(登録商標)を使用した。使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天当たり75μlの殺虫剤製品であった。0.5Nは、100mlのPDA寒天当たり37.5μlの製品である。ナタマイシン含有培養物中のナタマイシンの濃度は1ppmであった。ナタマイシン:アバメクチンの比率は、1:13.5(w/w)及び1:6.75(w/w)であった。25℃のストーブの中で7日間培養した後、効力を評価した。
【0188】
[結果]
【表23】

【0189】
<実施例15:Botrytis cinereaに対するクロラントラニリプロールのナタマイシンの効力に対する影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ28に属する活性成分であるクロラントラニリプロールを含むDupont社の製品CORAGEN(登録商標)を使用した。
【0190】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天に対して125μlの殺虫剤製剤を使用した。100mlのPDA寒天あたり、濃度0.25Nは31.25μlのコラーゲンを、0.5Nは62.5μlのコラーゲンを、2Nは250μlのコラーゲンを、5Nは625μlのコラーゲンを、10Nは1250μlのコラーゲン生成物を含有していた。
【0191】
ナタマイシン含有培養物中のおけるナタマイシンの濃度は1ppmであった。ナタマイシン:クロラントラニリプロールの比率は、1:62.5(w/w)、1:125(w/w)、1:250(w/w)、1:500(w/w)、1:1250(w/w)、及び1:2500(w/w)であった。25℃のストーブで4日及び5日間培養した後、効力を評価した。
【0192】
【表24】

【0193】
【表25】

【0194】
<実施例16:Botrytis cinereaに対するナタマイシンの効力に対するヒドロペンの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ7に属する活性成分であるヒドロプレン(hydroprene)を含有する製品GENTROL(登録商標)IGR(Zoecon;Syngenta社)を使用した。
【0195】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、50mlのPDA寒天に2.49mlのGentrolを50mlの水に溶かした溶液を300μl添加したものを使用した。0.5N:100mlのPDA寒天に対して150μl、0.25N:75μlの殺虫剤溶液殺虫剤製品を使用した。
【0196】
ナタマイシン含有培養物中のナタマイシン濃度は1ppmであった。ナタマイシン:ヒドロプレンの比率は、1:3.4(w/w)、1:6.75(w/w)、及び1:13.5(w/w)であった。25℃のストーブ中で4日間培養した後、効力を評価した。
【0197】
[結果]
【表26】

【0198】
<実施例17:Fusarium culmorumに対するナタマイシンの効力に対するヒドロペンの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、活性成分であるヒドロプレンを含有する製品GENTROL(登録商標)IGR(Zoecon;Syngenta社)を使用した。
【0199】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、50mlのPDA寒天に2.49mlのGentrolを50mlの水に溶かした溶液を300μl添加したものを使用した。0.5N:100mlのPDA寒天に対して150μl、0.25N:75μlの殺虫剤溶液殺虫剤製品を使用した。
【0200】
ナタマイシン含有培養物中のナタマイシン濃度は1ppmであった。ナタマイシン:ヒドロプレンの比率は、1:3.4(w/w)、1:6.75(w/w)、及び1:13.5(w/w)であった。25℃のストーブで5日間培養した後、効力を評価した。
【0201】
[結果]
【表27】

【0202】
<実施例18:Fusarium graminerumに対するナタマイシンの効力に対するヒドロペンの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ7に属する活性成分であるヒドロプレンを含有する製品GENTROL(登録商標)IGR(Zoecon;Syngenta社)を使用した。
【0203】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、50mlのPDA寒天に2.49mlのGentrolを50mlの水に溶かした溶液を300μl添加したものである。0.5N:100mlのPDA寒天に対して150μl、0.25N:75μlの殺虫剤溶液殺虫剤製品を使用した。
【0204】
ナタマイシン含有培養物中のナタマイシン濃度は1ppmであった。ナタマイシン:ヒドロプレンの比率は、1:3.4(w/w)、1:6.75(w/w)、及び1:13.5(w/w)であった。25℃のストーブで5日間培養した後、効力を評価した。
【0205】
[結果]
【表28】

【0206】
<実施例19:Fusarium graminerumに対するナタマイシンの効力に対するバチルス・チューゲンリンシスの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ11に属する活性成分であるバチルス・チューゲンリンシス(15.000 IU/mg(IU=国際単位))を含む製品XENTARI(登録商標)(Bayer社)を使用した。
【0207】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、PDA寒天100mlにXENTARI製品31.25mgを添加したものである。0.5N:100mlのPDA寒天に15.63mgのXENTARI製品を添加した。
【0208】
ナタマイシン含有培養物中のナタマイシン濃度は1ppmであった。ナタマイシン:バチルス・チューゲンリンシスの比率は、1:156.25及び1:312.5(XENTARIの製品基準のw/w)であった。25℃のストーブで8日間培養した後、効力を評価した。
【0209】
[結果]

【0210】
<実施例20:Fusarium culmorumに対するナタマイシンの効力に対するクロルフェナピルの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ13に属する活性成分であるクロルフェナピルを含有する製品SPECTRE(登録商標)(アダマ社)を使用した。
【0211】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天に1mlのSpectre製品を添加したものである。PDA寒天100mlに対して、0.5Nは0.5ml、0.25Nは0.25mlのSpectreを添加したものである。
【0212】
ナタマイシン含有培養物中のナタマイシン濃度は1ppmであった。ナタマイシン:クロルフェナピルの比率は、1:536(w/w)、1:1072(w/w)、及び1:2145(w/w)であった。25℃のストーブで7日間培養した後、効力を評価した。
【0213】
[結果]
【表30】

【0214】
<実施例21:Fusarium graminerumに対するナタマイシンの効力に対するアザジラクチンの影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、まだ知られていないIRACグループに属する活性成分であるアザジラクチンを含有する製品AZATIN(登録商標)(Certis社)(217g/Lアザジラクチン(26g/Lのアザジラクチン-Aの濃度となるように配合されている))を使用した。
【0215】
使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天に31μlのアザチン製剤を添加した。0.5N:100mlのPDA寒天に37.5μlのアザチンを添加した。
【0216】
ナタマイシン含有培養物中のナタマイシン濃度は1ppmであった。ナタマイシン:アザジラクチンの比率は、アザジラクチン-Aを基準として、1:9.75(w/w)及び1:19.5(w/w)であった。25℃のストーブで8日間培養した後、効力を評価した。
【0217】
[結果]

【0218】
<実施例22:Fusarium graminerumに対するナタマイシンの効力に対するエマメクチン安息香酸塩の影響>
[材料及び方法]
実施例6を参照。この実施例では、IRACグループ6に属する活性成分であるエマメクチン安息香酸塩を含有する製品OPTIGARD(登録商標)Cockroach gel Bait、(Syngenta社)を使用した。使用した殺虫剤濃度「N」(下記参照)は、100mlのPDA寒天当たり250mgの殺虫剤製品であった。0.5Nは、100mlのPDA寒天あたり125mgの製品である。ナタマイシン含有培養物中のナタマイシンの濃度は0.25ppmであった。ナタマイシン:エマメクチン安息香酸塩の比率は、1:10及び1:5(w/w)であった。25℃のストーブで3日間培養した後、効力を評価した。
【0219】
[結果]
【表32】


【国際調査報告】