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特表2022-544629粉末床積層造形でのセンサデータを分析する技術
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(54)【発明の名称】粉末床積層造形でのセンサデータを分析する技術
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/90 20210101AFI20221012BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20221012BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20221012BHJP
   B22F 10/366 20210101ALI20221012BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221012BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20221012BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221012BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B22F12/90
B22F10/28
B22F10/85
B22F10/366
B33Y30/00
B33Y50/02
B33Y10/00
B28B1/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518943
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2020073701
(87)【国際公開番号】W WO2021058216
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】102019125822.7
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514298748
【氏名又は名称】エスエルエム ソルーションズ グループ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ディーター シュバルツェ
(72)【発明者】
【氏名】キム クリング
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ホッペ
(72)【発明者】
【氏名】バエルベル クラッツ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル アルベルツ
【テーマコード(参考)】
4G052
4K018
【Fターム(参考)】
4G052DA02
4G052DB12
4G052DC06
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
原料の層にエネルギービームを照射することにより3次元ワークピースを製造するための機器に配置されたセンサのセンサデータを分析するための装置が提供される。装置は、データ値の時系列としてセンサデータを受信するように構成された制御ユニットを備える。各データ値は、3次元ワークピースの製造中の機器内のプロセス条件を示す。制御ユニットは、3次元ワークピースのための計画データを受信するようにさらに構成される。計画データは、複数の走査ベクトルと、エネルギービームが走査ベクトルに沿って走査される順序と、を規定する。制御ユニットは、時系列のデータ値を計画データの走査ベクトルの対応するベクトルデータに関連付けて、対応する走査ベクトルのデータ値の複数のセットを形成し、計画データに基づいて、複数の走査ベクトルのうちの少なくとも2つの走査ベクトルのグループを規定するようにさらに構成される。グループの走査ベクトルは、事前定義された類似基準を満たす。制御ユニットは、グループの第1の走査ベクトルのデータ値のセットを、グループの少なくとも1つの第2の走査ベクトルのデータ値のセット又はグループの少なくとも2つの第2の走査ベクトルから導出されたデータ値の組み合わされたセットと比較し、比較に基づいて、第1の走査ベクトルの位置でのワークピースの品質尺度を判定するようにさらに構成される。さらに、対応する方法及び対応するコンピュータプログラム製品が提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギービーム(22)で原料の層を照射することによって3次元ワークピース(4)を製造するための機器(2)に配置されたセンサ(6)のセンサデータを分析するための装置であって、前記装置は制御ユニット(8)を具備し、前記制御ユニットは、
前記センサデータをデータ値の時系列として受信するステップであって、各データ値は、前記3次元ワークピース(4)の製造中の前記機器(2)内のプロセス条件を示す、ステップと、
前記3次元ワークピース(4)のための計画データを受信するステップであって、前記計画データは、複数の走査ベクトル(44)と、前記エネルギービーム(22)が前記走査ベクトル(44)に沿って走査される順序と、を規定する、ステップと、
前記時系列のデータ値を前記計画データの前記走査ベクトル(44)の対応するベクトルデータに関連付けて、対応する走査ベクトル(44)のデータ値の複数のセットを形成するステップと、
前記計画データに基づいて、前記複数の走査ベクトル(44)のうちの少なくとも2つの走査ベクトル(44)のグループを規定するステップであって、前記グループの前記走査ベクトル(44)は、事前定義された類似基準を満たす、ステップと、
前記グループの第1の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セットを、前記グループの少なくとも1つの第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット又は前記グループの少なくとも2つの第2の走査ベクトル(44)から導出されたデータ値の組み合わされたセットと比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記第1の走査ベクトル(44)の位置での前記ワークピース(4)の品質尺度を判定するステップと、を実行するように構成される、装置。
【請求項2】
前記データ値は、前記エネルギービーム(22)が前記原料に衝突する溶融プールにて生成される熱放射の強度値又は温度値である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、少なくとも、前記センサデータを受信し、前記ワークピース(4)の造形プロセス中に関連付け、比較し、判定するステップを実行するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御ユニット(8)は、前記造形プロセス中に、前記判定された品質尺度に基づいて、前記機器(2)のプロセスパラメータを適合させるようにさらに構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御ユニット(8)は、前記時系列の前記データ値に時間データを関連付けるようにさらに構成される、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記類似基準は、前記走査ベクトル(44)の長さの類似性と、前記走査ベクトル(44)の向きの類似性と、走査ベクトル(44)が前記ワークピース(4)の輪郭の一部であるかどうかと、のうちの少なくとも1つを考慮する、請求項1から5のいずれかに1項に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ユニット(8)は、前記グループの前記第1の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セットを、前記グループに関連付けられたデータ値の事前定義された参照セットと比較するようにさらに構成される、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
制御ユニット(8)は、
前記グループの前記第1の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セットを、前記グループの以前に照射された第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セットと比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記第1の走査ベクトル(44)と前記第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット間の差を示す少なくとも1つの差分値を判定するステップと、を実行するように構成される、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
制御ユニット(8)は、
前記少なくとも1つの差分値を、以前に照射された2つの走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット間の差を示す、保存された差分値と比較するステップを実行するようにさらに構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記制御ユニット(8)は、
-走査ベクトル(44)から走査ベクトル(44)への前記データ値の減少及び/又は増大などの絶対データ値の経過と、
-相互の差異、偏差及び/又は変動などのデータ値の相対的な比較と、
-前記第1の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セットと、前記少なくとも1つの第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット又は前記少なくとも2つの第2の走査ベクトル(44)から導出されたデータ値の前記組み合わされたセットとの相関と、
-前記第1の走査ベクトル(44)のデータ値と、前記少なくとも1つの第2の走査ベクトル(44)のデータ値又は前記少なくとも2つの第2の走査ベクトル(44)から導出されたデータ値の前記組み合わされたセットとの間の絶対差と、
-前記第1の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット及び前記少なくとも1つの第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット又は前記少なくとも2つの第2の走査ベクトル(44)から導出されたデータ値の前記組み合わされたセットの極値の極値分析と、のうちの少なくとも1つを考慮することによって比較するステップを実行するように構成される、請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御ユニット(8)は、前記第1の走査ベクトル(44)及び/又は前記少なくとも1つの第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット又は少なくとも2つの第2の走査ベクトル(44)から導出されたデータ値の前記組み合わされたセットのサブセットのみを考慮することによって比較するステップを実行するように構成される、請求項1から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記制御ユニット(8)は、前記ワークピース(4)の層の少なくとも1つの2次元画像を表すデータセットを出力するように構成され、前記時系列の前記データ値は、前記2次元画像の対応するピクセルに割り当てられる、請求項1から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
原料の層にエネルギービームを照射することによって3次元ワークピースを製造するための機器(2)であって、前記機器(2)は、
請求項1から12のいずれか1項に記載の装置と、
前記エネルギービーム(22)を生成し、前記エネルギービーム(22)を前記原料の層に照射するためのエネルギービーム源(20)と、
前記データ値の時系列を測定し、前記データ値の時系列を前記装置に送信するように構成されたセンサ(6)と、を具備する、機器(2)。
【請求項14】
エネルギービーム(22)を原料の層に照射することにより3次元ワークピース(4)を製造するための機器(2)に配置されたセンサ(6)のセンサデータを分析するための方法であって、前記方法は、
前記センサデータをデータ値の時系列として受信するステップであって、各データ値は、前記3次元ワークピース(4)の製造中の前記機器(2)内のプロセス条件を示す、ステップと、
前記3次元ワークピース(4)のための計画データを受信するステップであって、前記計画データは、複数の走査ベクトル(44)と、前記エネルギービーム(22)が前記走査ベクトル(44)に沿って走査される順序と、を規定する、ステップと、
前記時系列のデータ値を前記計画データの前記走査ベクトル(44)の対応するベクトルデータに関連付けて、対応する走査ベクトル(44)のためのデータ値の複数のセットを形成するステップと、
前記計画データに基づいて、前記複数の走査ベクトル(44)のうちの少なくとも2つの走査ベクトル(44)のグループを規定するステップであって、前記グループの前記走査ベクトル(44)は、事前定義された類似基準を満たす、ステップと、
前記グループの第1の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セットを、前記グループの少なくとも1つの第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット又は前記グループの少なくとも2つの第2の走査ベクトル(44)から導出されたデータ値の組み合わされたセットと比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記第1の走査ベクトル(44)の位置での前記ワークピース(4)の品質尺度を判定するステップと、を含む、方法。
【請求項15】
コンピュータに請求項14に記載の方法を実行させるためのコンピュータ可読命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体に保存されたコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料の層にエネルギービームを照射することにより、3次元ワークピースを製造する装置に配置されたセンサのセンサデータを分析する技術に関する。この技術は、装置、方法及びコンピュータプログラム製品のうちの少なくとも1つに具体化される場合がある。3次元ワークピースを製造する装置は、選択的レーザ溶融又は選択的レーザ焼結のための装置である場合がある。
【背景技術】
【0002】
粉末床溶融とは、粉末原料、特に、金属原料及び/又はセラミック原料を複雑な形状の3次元ワークピースに加工することができる積層造形プロセスである。その目的を達成するために、原料粉末層が担体上に塗布され、製造されるワークピースの所望の形状に応じて、部位選択的に放射線(例えば、レーザ放射線又は粒子放射線)が照射される。粉末層に浸透する放射線は、加熱を引き起こし、その結果、原料粉末粒子の溶融又は焼結を引き起こす。次に、ワークピースが所望の形状及び大きさになるまで、すでに放射線処理済みの担体上の層に、さらに原料粉末層を連続的に塗布する。粉末床溶融は、CADデータに基づいて、プロトタイプ、工具、交換部品、高価値構成要素又は、例えば、歯科用又は整形外科用補綴などの医療用補綴の製造に採用される場合がある。粉末床溶融技術の例には、選択的レーザ溶融及び選択的レーザ焼結が挙げられる。
【0003】
上記の技術に従って1つ又は複数のワークピースを製造するための装置が知られている。例えば、特許文献1(欧州特許出願公開第2961549号明細書)及び特許文献2(欧州特許出願公開第2878402号明細書)にはそれぞれ、選択的レーザ溶融技術に従って3次元ワークピースを製造するための装置が記載されている。このような文献に記載されている一般原則は、本開示の技術にも適用される可能性がある。しかし、本開示は、選択的レーザ溶融に限定されず、原料の層が放射線ビームによって固化される他の積層造形プロセスに適用される場合がある。
【0004】
さらに、造形プロセス中に特定の特性(物理的状態など)を常に測定するセンサを少なくとも1つ提供することにより、造形プロセスの特性を監視することも知られている。例えば、機器の造形チャンバ内の温度、造形チャンバ内の酸素含有量、不活性ガス圧力及び/又は溶融プール温度、即ち、放射線ビームによって生じる溶融プールであって、放射線ビームが原料に衝突する溶融プールの温度を測定するためのセンサが設けられる場合がある。特に、溶融プールで発生する熱放射の強度を測定する高温計の形態のセンサを備える、いわゆる溶融プール監視システムを提供することが知られている。さらに正確には、高温計は、溶融プールから放出される熱放射を受け取り、熱放射の少なくとも1つの強度値を測定するように構成される。測定された強度値に基づいて、高温計(又は高温計に接続された制御ユニット)は、溶融プールの温度を判定することができる。
【0005】
対応するセンサの測定から得られたデータ値は、機器の制御ユニットのメモリに保存することができ、例えば、生成されたワークピースの層を表すこのようなデータ値の2次元マップを生成することが知られている。この2次元マップに基づいて、例えば、センサデータが層の他のエリアと大幅に異なるエリアを特定することができる。これは、特定されたエリアでは、ワークピースの品質が他のエリアと異なることを示している可能性がある。
【0006】
しかし、この形態のデータ評価を実施することによって、貴重な情報が失われ、データ評価では考慮することができなくなる。特に、生成されたワークピースの特定の走査ベクトルに個々のデータ点を割り当てることはできない。既知の形態のデータ評価の別の欠点には、データが評価されるときに、層全体の照射がすでに実施されており、オンラインで照射を監視し、層の照射中の評価に基づいて、照射のパラメータを調整するか、照射プロセスを停止する可能性がないことが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2961549号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2878402号明細書
【発明の概要】
【0008】
このため、本発明は、上記の問題及び/又は他の関連する問題を解決する装置及び方法を提供することを目的とする。特に、本発明の目的は、センサのセンサデータを分析するための改善された技術を提供することである。
【0009】
この目的は、請求項1に記載の装置、請求項13に記載の機器、請求項14に記載の方法及び請求項15に記載のコンピュータプログラム製品によって対処される。
【0010】
第1の態様によれば、原料の層にエネルギービームを照射することにより3次元ワークピースを製造するための機器に配置されたセンサのセンサデータを分析するための装置が提供される。装置は、データ値の時系列としてセンサデータを受信するように構成された制御ユニットを備える。各データ値は、3次元ワークピースの製造中の機器内のプロセス条件を示す。制御ユニットは、3次元ワークピースのための計画データを受信するようにさらに構成される。計画データは、複数の走査ベクトルと、エネルギービームが走査ベクトルに沿って走査される順序と、を規定する。制御ユニットは、時系列のデータ値を計画データの走査ベクトルの対応するベクトルデータに関連付けて、対応する走査ベクトルのためのデータ値の複数のセットを形成し、計画データに基づいて、複数の走査ベクトルのうちの少なくとも2つの走査ベクトルのグループを規定するようにさらに構成される。グループの走査ベクトルは、事前定義された類似基準を満たす。制御ユニットは、グループの第1の走査ベクトルのデータ値のセットを、グループの少なくとも1つの第2の走査ベクトルのデータ値のセット又はグループの少なくとも2つの第2の走査ベクトルから導出されたデータ値の組み合わされたセットと比較し、比較に基づいて、第1の走査ベクトルの位置でのワークピースの品質尺度を判定するようにさらに構成される。
【0011】
装置は、例えば、3次元ワークピースを製造するための機器からセンサデータを受信するように構成された独立型装置であっても、3次元ワークピースを製造するための機器の制御ユニットの一部であってもよい。データ値の時系列は、例えば、データ流として、あるいはデータファイルの形態で提供されてもよい。タイムスタンプをデータ値のうちの1つ又は複数に割り当ててもよく、その結果、(例えば、センサのサンプリング周波数がわかっている場合)特定の時点をデータ値のそれぞれに割り当てることができる。例えば、タイムスタンプは、ワークピースの造形プロセスが開始された時点を示してもよい。データ値は、個々のデータ値間の間隔が既知であり、一定であるように、一定のサンプリングレートでの対応するセンサのサンプリングの結果であってもよい。プロセス条件は、物理的なプロセス条件であってもよく、例えば、3次元ワークピースを製造するための機器のプロセスチャンバ内で測定されてもよい。測定され得るプロセス条件の例には、とりわけ、造形チャンバ内の温度、造形チャンバ内の酸素含有量、不活性ガス圧力及び/又は溶融プール温度が挙げられる。
【0012】
計画データは、データファイルの形態で提供されてもよい。計画データは、ワークピースのCADファイルが分析され、生成されるワークピースが複数の層に細分され、各層が複数の走査ベクトルに細分されるプロセスの結果であってもよい。走査ベクトルを、一般に、放射線ビームが溶融プールを生成し始める点と放射線ビームが溶融プールを生成するのを停止する点との間で機器の放射線ビームによって走査される経路として定義してもよい。このため、走査ベクトルのこの定義によれば、走査ベクトルは湾曲していてもよく、その方向を変えてもよい。本明細書に開示する教示にも適用され得る走査ベクトルのさらに厳密な定義によれば、走査ベクトルを、放射線ビームによって走査される経路の一部分として定義する。ここで、この部分は直線を形成する。この文脈では、例えば、複数の平行な走査ベクトルを含むハッチパターンによって生成されるワークピースの層を照射することが可能である。各走査ベクトルは、特定の事前定義された長さを有する。ここで、それぞれが同じ長さを有する複数の走査ベクトルが提供されてもよいが、このほか、異なる長さを有する走査ベクトルが提供されてもよい。例えば、ワークピースの内側領域を、碁盤の目パターンで満たしてもよい。ここで、パターンの碁盤の目それぞれは、複数の平行な走査ベクトルで満たされ、異なる目の走査ベクトルは、異なる方向に向けられる。
【0013】
上記のように、計画データは、複数の走査ベクトルと、エネルギービームが走査ベクトルに沿って走査される順序と、を規定する。計画データは、造形プロセスに関する追加情報及び/又はデータをさらに規定してもよい。例えば、計画データは、層ごとの計画された走査ベクトルのうちの1つ又は複数と、ワークピースの位置決めと、(例えば、個々の走査ベクトルの)走査速度と、(例えば、個々の走査ベクトルに対する)レーザ出力と、(例えば、個々の走査ベクトルに対する)焦点サイズと、個々の走査ベクトルの走査方向と、個々の走査ベクトルの走査順序と、を含む。
【0014】
データ値のセットのそれぞれは、特定の走査ベクトルに対応する。例えば、データセットのそれぞれは、n次元ベクトルの形態で提供されてもよい。ここで、nは、対応する走査ベクトルの照射中に測定されたセンサ値の数である。センサのサンプリングレートが既知である場合、走査ベクトルを走査する時間を計算することができる。さらに、走査速度が(例えば、計画データから)既知である場合、各センサ値(即ち、データセットの各データ点)について、ワークピースの層に関する対応する位置を計算することができる。
【0015】
少なくとも2つの走査ベクトルのグループは、計画データに基づいて、グループ内の走査ベクトルが特定の類似基準を満たすように規定される。言い換えれば、グループの走査ベクトルは、少なくとも1つの基準に関して類似している。さらに正確には、計画データの走査ベクトルのそれぞれについて、それぞれの類似値を、残りの走査ベクトルのそれぞれに関して計算してもよい。例えば、走査ベクトルの数がnである場合、n個の走査ベクトルのそれぞれについて、n-1個の類似値を計算してもよい。類似値が事前定義された閾値を下回る走査ベクトルの対を、同じグループにグループ化することができる。
【0016】
少なくとも2つの走査ベクトルのグループに加えて、1つ又は複数の追加のグループを規定してもよい。1つ又は複数の追加グループのベクトルはそれぞれ、(第1の)グループのベクトル以外の事前定義された類似基準を満たす。
【0017】
比較するステップでは、グループの第1の走査ベクトルのデータ値のセットを、同じグループの1つ又は複数の第2の走査ベクトルのデータ値のセットと比較することができる。これとは別に、第1の走査ベクトルのデータ値のセットを、同じグループの少なくとも2つの第2の走査ベクトルから導出されたデータ値の組み合わせられたセットと比較する。グループの第1の走査ベクトルは、グループの「最も若い」走査ベクトル、即ち、最後に照射された走査ベクトルであってもよい。第1の走査ベクトルのデータ値のセットは、他の1つの走査ベクトル(例えば、以前に照射された走査ベクトル)のみと比較されてもよく、この比較の結果を、同じグループ内(即ち、第1の走査ベクトルのグループ内)の走査ベクトルのデータセットの比較の以前の結果と比較してもよい。第1の走査ベクトルのデータ値のセットを他の走査ベクトルのデータ値のセットと比較した結果が以前の比較結果と大きく異なる場合(即ち、事前定義された閾値を超えている場合)、第1の走査ベクトルの位置でのワークピースの品質が変化したと判定することができる。言い換えれば、ワークピースのそれぞれの位置で、ワークピースの他のセクションに関してその品質が変化した可能性が高くなる。
【0018】
類似の方法で、第1の走査ベクトルのデータ値のセットは、1つの第2の走査ベクトルのデータ値のセットと比較されるだけでなく、複数の第2の走査ベクトルのデータ値のセット、例えば、グループの残りの(第2の)走査ベクトルのそれぞれと比較される。これとは別に、データ値の組み合わされたセットを、第2の(残りの)走査ベクトルのうちの少なくとも2つから導出してもよい。ここで、第1の走査ベクトルのデータ値のセットの比較は、組み合わされたセットと比較される。例えば、データ値の組み合わされたセットは、データ値の平均化されたセットであってもよい。さらに正確には、データ値の平均化されたセットを導出するために、グループの第2の走査ベクトルのうちの少なくとも2つのデータ値のセットに平均化の一形態が適用された可能性がある。平均化には、異なるベクトルのデータ値の算術平均の導出が含まれてもよい。データ値の組み合わされたセットは、子午線、極値及び変位値のうちの少なくとも1つを考慮することによって導出された可能性がある。
【0019】
上記の比較に基づいて、第1の走査ベクトルの位置でのワークピースの品質尺度を判定する。例えば、比較によって大きな差が生じる場合、第1の走査ベクトルの位置でのワークピースの品質が、ワークピースの残りの部分の品質よりも低い可能性が高いと判定されてもよい。
【0020】
上記の技術を実施することにより、類似した走査ベクトルのセンサデータを相互に比較することができる。このため、「異常な」又は「問題のある」データ値を、類似の走査ベクトルのデータ値と比較することによって識別することができる可能性がある。ここで、グループ内の走査ベクトルのデータ値は、相互に大きく異なることはないはずであると推測することができる。場合によっては、参照値又はデータ値の参照セットとの比較を回避してもよい。さらに正確には、いわゆる「地上検証データ」との比較が必要ではない。しかし、本明細書に開示するグループごとの比較に加えて、追加の情報及び/又は検証を得るために、参照値との比較を実施してもよい。
【0021】
データ値は、エネルギービームが原料に衝突する溶融プールにて生成される熱放射の強度値又は温度値であってもよい。
【0022】
言い換えれば、データ値は、エネルギービームが原料に衝突する溶融プールにて生成される熱放射の強度値であってもよく、あるいはデータ値は、エネルギービームが原料に衝突する溶融プールにて生成される熱放射の温度値であってもよい。いずれの場合も、センサは高温計であってもよい。高温計は、1つ又は複数の波長帯域の熱放射強度を検出するように構成されてもよい。次に、1つ又は複数の熱放射強度は、強度値として出力されてもよく、あるいは対応する温度値を、1つ又は複数の熱放射強度に基づいて計算してもよい。このため、データ値は、(直接)強度値であるか、あるいはデータ値は、1つ又は複数の熱放射強度値から導出された温度値であるかのいずれかであってもよい。溶融プールから放出された熱放射強度が急速に変化する可能性があるため、センサのサンプリング周波数が、1つの走査ベクトルの進路で複数のデータ値が記録されるのに充分な高さである可能性がある。
【0023】
装置は、少なくとも、センサデータを受信し、ワークピースの造形プロセス中に関連付け、比較し、判定するステップを実行するように構成されてもよい。
【0024】
例えば、センサデータは、造形プロセス中に継続的に測定されてもよく、その結果、プロセス中に新たなデータ値が生成される。このような新たに生成されたセンサデータを処理するために、前述のステップは、ワークピースの造形プロセス中に実行することができる。このため、センサデータは、ほぼリアルタイムで、即ち、センサデータが生成されたときに分析されてもよい。このため、例えば、閉ループ制御に従って造形プロセスのパラメータを適応させることによって、偏差に迅速に対応することが可能である。
【0025】
制御ユニットは、造形プロセス中に、判定された品質尺度に基づいて、機器のプロセスパラメータを適合させるようにさらに構成されてもよい。
【0026】
プロセスパラメータは、例えば、レーザ出力、レーザ焦点位置、走査速度などであってもよい。このようにして、ワークピースの品質の低下に対抗するのを支援する対抗措置が開始されてもよい。
【0027】
制御ユニットは、時系列のデータ値に時間データを関連付けるようにさらに構成されてもよい。
【0028】
時間データは、時系列の対応するデータ値に関連付けられた少なくとも1つのタイムスタンプを含んでもよい。センサのサンプリング周波数が既知である場合は、1つの時間データ点をセンサの対応するデータ値に関連付けるだけで充分な場合がある。このため、対応する時点を各データ値に割り当てることができる。時間データは、時刻と、任意選択で日付を示してもよい。これに加えて、あるいはこれとは別に、時間データは、事前定義された参照時間t=0(造形プロセスの開始など)に関連する時間を示してもよい。時間データに基づいて、データ値のそれぞれについて、ワークピース内の対応する位置を特定してもよい。
【0029】
類似基準は、走査ベクトルの長さの類似性、走査ベクトルの向きの類似性及び走査ベクトルがワークピースの輪郭の一部であるかどうかのうちの少なくとも1つを考慮するものであってもよい。
【0030】
言い換えれば、ほぼ同じ長さを有する走査ベクトルを1つのグループにグループ化してもよい。このため、複数の異なる長さの区間について、対応するグループを提供してもよい。同じように、ほぼ同じ方向を有する走査ベクトルを、1つのグループにグループ化してもよい。ワークピースの輪郭の一部である走査ベクトルを、1つのグループにグループ化してもよい。
【0031】
制御ユニットは、グループの第1の走査ベクトルのデータ値のセットを、グループに関連付けられたデータ値の事前定義された参照セットと比較するようにさらに構成されてもよい。
【0032】
データ値の参照セットは、制御ユニットのメモリに保存されても、特定の目的のために計算されてもよい。参照セットは、それぞれのグループの特性に関して事前に計算されるか、事前定義されている場合がある。例えば、特定の長さを有する(あるいは特定の長さの範囲にある)走査ベクトルが、測定されたセンサ値に関して特定の典型的な反応を示すはずであるとわかっている場合、参照セットはこのような典型的な値を含む可能性がある。さらに、参照セットは、少なくとも1つの以前の測定値、即ち、同じ機器によって実行された以前の造形プロセス中の測定値から導出されてもよい。この場合、例えば、参照セットは、同じ類似基準を満たす走査ベクトルの対応するグループの平均データ値のセットであってもよい。
【0033】
制御ユニットは、グループの第1の走査ベクトルのデータ値のセットを、グループの以前に照射された第2の走査ベクトルのデータ値のセットと比較し、この比較に基づいて、第1の走査ベクトルと第2の走査ベクトルのデータ値のセット間の差を示す少なくとも1つの差分値を判定するように構成されてもよい。
【0034】
差分値は、比較されたデータ値のセットの距離メトリックであってもよい。上記のように、ベクトルのデータ値を順々に比較してもよい。言い換えれば、新たな走査ベクトルが照射され、対応するデータ値が記録されるたびに、このようなデータ値は、同じグループからの以前の走査ベクトルのデータ値と比較される。次に、この比較の結果を、例えば、閾値と比較してもよい。差分値が事前定義された閾値を超える場合、新たな走査ベクトル(第1の走査ベクトル)が異常なデータ値を含み、ワークの品質に偏差が生じる可能性があると判断される場合がある。
【0035】
制御ユニットは、少なくとも1つの差分値を、以前に照射された2つの走査ベクトルのデータ値のセット間の差を示す保存された差分値と比較するようにさらに構成されてもよい。
【0036】
このため、個々のベクトル間の典型的な差異の程度を考慮してもよく、第1の走査ベクトルの差分値がこの典型的な程度を超える場合にのみ、第1の走査ベクトルが異常なデータ値を含むと判断されてもよい。
【0037】
制御ユニットは、走査ベクトルから走査ベクトルへのデータ値の減少及び/又は増大などの絶対データ値の経過と、相互の差異、偏差及び/又は変動などのデータ値の相対比較と、第1の走査ベクトルのデータ値のセットと少なくとも1つの第2の走査ベクトルのデータ値のセット又は少なくとも2つの第2の走査ベクトルから導出されたデータ値の組み合わされたセットとの相関と、第1の走査ベクトルのデータ値と少なくとも1つの第2の走査ベクトルのデータ値又は少なくとも2つの第2の走査ベクトルから導出されたデータ値の組み合わされたセットとの間の絶対差と、第1の走査ベクトルのデータ値のセット及び少なくとも1つの第2の走査ベクトルのデータ値のセット又は少なくとも2つの第2の走査ベクトルから導出されたデータ値の組み合わされたセットの極値の極値分析と、のうちの少なくとも1つを考慮することによって比較するステップを実行するように構成されてもよい。
【0038】
制御ユニットは、第1の走査ベクトル及び/又は少なくとも1つの第2の走査ベクトルのデータ値のセット又は少なくとも2つの第2の走査ベクトルから導出されたデータ値の組み合わされたセットのサブセットのみを考慮することによって、比較するステップを実行するように構成されてもよい。
【0039】
例えば、第1の走査ベクトルのデータ値のセットのサブセットが開始され、それぞれのベクトルのデータ値の記録後に事前定義された時間t0が開始されてもよい。例えば、データ値のセットのサブセットのみを考慮すると、同じ長さのサブセットを相互に比較し得るという利点がある場合がある。例えば、走査ベクトルのグループが、異なる長さ、ひいては異なる量のデータ値を有するベクトルを含む場合、ベクトルを互いに容易に比較することができるように、各ベクトルを事前定義された均一な長さに切り取ってもよい。さらに、サブセットのみを考慮することにより、明らかに逸脱しているデータ値(例えば、ベクトルの転換点、原料の縁部で終端するベクトルなど)を含む、対応するベクトルの部分を無視する場合がある。
【0040】
制御ユニットは、ワークピースの層の少なくとも1つの2次元画像を表すデータセットを出力するように構成されてもよい。ここで、時系列のデータ値は、2次元画像の対応するピクセルに割り当てられる。
【0041】
このようにして、センサの測定値を個別に分析することができる。
【0042】
第2の態様によれば、エネルギービームを原料の層に照射することによって3次元ワークピースを製造するための機器が提供される。この機器は、第1の態様の装置と、エネルギービームを生成し、エネルギービームを原料の層に照射するためのエネルギービーム源と、データ値の時系列を測定し、装置へデータ値の時系列を送信するように構成されたセンサと、を備える。
【0043】
エネルギービームは、例えば、レーザ又は電子ビームであってもよい。原料の層は、(金属粉末又はセラミック粉末などの)原料粉末の層であってもよい。第1の態様の装置は第2の態様の機器の一部であるため、第1の態様の上記の詳細はこのほか、第2の態様に適用されてもよい。
【0044】
第3の態様によれば、エネルギービームを原料の層に照射することにより3次元ワークピースを製造するための機器に配置されたセンサのセンサデータを分析するための方法が提供される。この方法は、センサデータをデータ値の時系列として受信するステップを含む。各データ値は、3次元ワークピースの製造中の機器内のプロセス状態を示す。方法は、3次元ワークピースのための計画データを受信するステップをさらに含む。計画データは、複数の走査ベクトルと、エネルギービームが走査ベクトルに沿って走査される順序と、を規定する。方法は、時系列のデータ値を計画データの走査ベクトルの対応するベクトルデータに関連付けて、対応する走査ベクトルのためのデータ値の複数のセットを形成するステップと、計画データに基づいて、複数の走査ベクトルのうちの少なくとも2つの走査ベクトルのグループを規定するステップと、を含む。グループの走査ベクトルは、事前定義された類似基準を満たす。方法は、グループの第1の走査ベクトルのデータ値のセットを、グループの少なくとも1つの第2の走査ベクトルのデータ値のセット又はグループの少なくとも2つの第2の走査ベクトルから導出されたデータ値の組み合わされたセットと比較するステップと、比較に基づいて、第1の走査ベクトルの位置でのワークピースの品質尺度を判定するステップと、をさらに含む。
【0045】
第3の態様の方法は、第1の態様の装置を用いて実行されてもよい。第1の態様に関して上記で考察した詳細及び追加の仕様はこのほか、第3の態様の方法に適用されてもよい。
【0046】
第4の態様によれば、コンピュータ可読記憶媒体に保存されたコンピュータプログラム製品が提供される。コンピュータプログラム製品は、コンピュータに第3の態様による方法を実行させるためのコンピュータ可読命令を含む。
【0047】
第1の態様の装置に関して上記で考察した詳細及び追加の仕様はこのほか、第4の態様のコンピュータプログラム製品に適用されてもよい。
【0048】
本発明の好ましい実施形態を、添付の概略図を参照してさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本開示による、原料の層にエネルギービームを照射することによって3次元ワークピースを製造するための機器の概略図であって、機器は、センサと、センサのセンサデータを分析するための装置とを備える、概略図。
図2】本開示による、原料の層にエネルギービームを照射することによって3次元ワークピースを製造するための機器に配置されたセンサのセンサデータを分析するための装置の概略ブロック図。
図3】互いに比較される走査ベクトルを備えた例示的な構造の上面図。
図4】互いに比較される2つの走査ベクトルの図。
図5】複数の層の概略図であって、異なる層の走査ベクトルが互いに比較される、概略図。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、3次元ワークピース4を製造するための機器2の概略図を示す。機器2は、熱放射を測定するためのセンサの形態のセンサ6と、センサ6によって生成されたセンサデータを分析するための装置と、を備える。この装置は、制御ユニット8を備える、この制御ユニットは、図1の実施形態では、機器2の一般的な制御ユニット8である。
【0051】
図1に示す機器2は、選択的レーザ溶融によって3次元ワークピース4を製造するための機器である。機器2は、プロセスチャンバ10を備える。プロセスチャンバ10は、周囲雰囲気に対して、即ち、プロセスチャンバ10を取り巻く環境に対して封止可能である。プロセスチャンバ10内に配置された粉末塗布装置12が、原料粉末を担体14に塗布するのに役立つ。担体14が垂直方向に移動することができるように、垂直移動ユニット16が提供され、その結果、ワークピース4の構築高さが増大するにつれて、ワークピースは、担体14上の原料粉末から層状に積み上げられるため、担体14は、垂直方向下向きに移動することができる。
【0052】
垂直移動ユニット16による担体14の可動性は、選択的レーザ溶融の分野で周知であるため、本明細書では詳細に説明しない。可動担体14の代替として、担体14は、静止(又は固定)担体として(特に、垂直z方向に関して)提供されてもよい。ここで、照射ユニット18(以下を参照)及びプロセスチャンバ10は、造形プロセス中に上方に移動するように構成される(即ち、ワークピース4の構築高さが増大する)。
【0053】
担体14の担体表面が、水平面(x-y平面)を規定する。ここで、この平面に直交する方向を、垂直方向(z方向)として規定する。このため、原料粉末の各最上層は、上記で規定された水平面(x-y平面)に平行な平面内で延びる。
【0054】
機器2は、担体14上に塗布された原料粉末の最上層にレーザ放射線を選択的に照射するための照射ユニット18をさらに備える。照射ユニット18によって、担体14に塗布された原料粉末は、製造されるワークピース4の所望の形状に応じて、部位選択的にレーザ照射を受けてもよい。
【0055】
照射ユニット18は、レーザビーム22を生成するための少なくとも1つのレーザビーム源20を備える。代替の実施形態では、レーザビーム22の代わりに、粒子ビーム(例えば、電子ビーム)を使用して、原料粉末を溶融してもよい。レーザビーム源20は、例えば、約1070~1080nmの波長のレーザ光を放出するダイオード励起イッテルビウムファイバレーザを含んでもよい。照射ユニット18は、所望の場所で、即ち、部位選択的に粉末を局所的に加熱し、溶融するために、担体14上に塗布された原料粉末の最上層にレーザビーム22を向けるための走査ユニット24を備える。走査ユニット24を用いて、レーザビーム22の位置を、原料粉末の最上層のx-y平面全体にわたって移動させることができる。走査ユニット24は、1つ又は複数の可動ミラーを備えてもよく、検流計スキャナの形態で構成されてもよい。
【0056】
さらに、照射ユニット18は、走査ユニット24に加えて、レーザビーム22を拡張するためのビーム拡大器などの他の光学装置、ビーム経路に沿った方向にレーザビーム22を集束させるための集束光学装置及び/又は対物レンズを備えてもよい。対物レンズは、走査ユニット24の後のビーム経路に提供されるf-シータ対物レンズであってもよい。照射ユニット18の動作は、制御ユニット8によって制御される。さらに、制御ユニット8は、垂直移動ユニット16及び粉末塗布装置12などの機器2の他の構成要素を制御するように構成される。
【0057】
さらに、センサ6は照射ユニット18内に配置される。本実施形態のセンサ6は、レーザビーム22により生成される溶融プールから放出される熱放射を検知するように構成された高温計である。溶融プールでは、熱放射は原料粉末に衝突して粉末を溶融させる。熱放射をセンサ6に向けるために、半透明ミラー28が提供される。半透明ミラー28は、好ましくは熱放射(熱放射の波長領域の光)がセンサ6に向かって反射されるように、波長依存性であってもよい。さらに正確には、半透明ミラー28は、レーザビーム22がミラー28を走査ユニット24に向かって通過することができ、反対方向に向けられた熱放射がセンサ6に向かって反射されるように構成される。このようにして、レーザビーム22と熱放射は、(原料粉末と半透明ミラー28との間の)同じビーム経路を共有する。
【0058】
しかし、センサ6は、レーザビーム源20と同じ照射装置18に配置される必要はない。センサ6は、別個のビーム経路及び別個の光学部品(走査ユニットなど)を有する別個の装置として提供されてもよい。本開示の範囲内で、溶融プールによって放出される熱放射は、機器2内のプロセス条件と考えられる。熱放射を検出するためのセンサ6に加えて、あるいはその代替として、機器2内の異なるプロセス条件を検出するための異なるセンサ、例えば、造形チャンバ10内の温度を検出するための温度センサ、レーザビーム22のレーザ出力を検出するためのレーザ出力センサ及び/又は不活性ガス圧力を検出するための不活性ガス圧力センサなどが提供されてもよい。
【0059】
センサ6は、熱放射を検出し、センサ信号を出力する。本実施形態によるセンサ信号は、事前定義された既知のサンプリングレートでサンプリングされ、デジタル信号に変換されるアナログ信号である。サンプリングは、センサ6自体又は制御ユニット8のいずれかによって実行することができる。いずれの場合も、制御ユニット8によって処理することができるデータ値の時系列を含むセンサデータが取得される。本実施形態によれば、個々のデータ値は、センサ6によって検出された熱放射の強度を示す。しかし、センサ6又は制御ユニット8は、センサ6によって生成された強度信号を受信し、強度信号に基づいて、溶融プールの温度を示すデータ値を含む温度データを生成することも可能である。
【0060】
個々のデータ値が、較正されたセンサ6の絶対値を表すことが可能である。しかし、データ値は相互に比較されるため、較正された値を使用する必要はない。
【0061】
図2は、本開示による、原料の層にエネルギービームを照射することによって3次元ワークピースを製造するための機器に配置されたセンサのセンサデータを分析するための装置30の概略ブロック図を示す。図1に示す制御ユニット8は、図2に示す装置30の実施形態である。このため、3次元ワークピースを製造するための機器は、図1に示す3次元ワークピース4を製造するための機器2であり、エネルギービームは、レーザビーム22である。
【0062】
図2の装置30は、複数のユニット32~42を備える。ここで、ユニットのそれぞれは、ハードウェア又はソフトウェア、あるいはその組み合わせの形態で具体化されてもよい。例えば、装置30は、プロセッサ及びメモリを備えてもよい。ここで、メモリは、それぞれのユニット32~42を表す命令を含む。
【0063】
装置30は、時系列のデータ値としてセンサデータを受信するように構成された第1の受信ユニット32を備える。ここで、各データ値は、3次元ワークピースを製造する間の機器内のプロセス条件を示す。装置30は、3次元ワークピースのための計画データを受信するように構成された第2の受信ユニット34を備え、計画データは、複数の走査ベクトルと、エネルギービームが走査ベクトルに沿って走査される順序と、を規定する。装置30は、時系列のデータ値を計画データの走査ベクトルの対応するベクトルデータに関連付けて、対応する走査ベクトルのデータ値の複数のセットを形成するように構成された関連付けユニット36を備える。装置30は、計画データに基づいて、複数の走査ベクトルのうちの少なくとも2つの走査ベクトルのグループを規定するように構成された規定ユニット38を備える。ここで、グループの走査ベクトルは、事前定義された類似基準を満たす。装置30は、グループの第1の走査ベクトルのデータ値のセットを、グループの少なくとも1つの第2の走査ベクトルのデータ値のセット又はグループの少なくとも2つの第2の走査ベクトルから導出されたデータ値の組み合わされたセットと比較するように構成された比較ユニット40を備える。装置30は、比較に基づいて、第1の走査ベクトルの位置でのワークピースの品質尺度を判定するように構成された判定ユニット42を備える。
【0064】
装置30の上記のユニットは、以下のステップ、
-センサデータをデータ値の時系列として受信するステップであって、各データ値は、3次元ワークピースの製造中の機器内のプロセス条件を示す、ステップと、
-3次元ワークピースのための計画データを受信するステップであって、計画データは、複数の走査ベクトルと、エネルギービームが走査ベクトルに沿って走査される順序と、を規定する、ステップと、
-時系列のデータ値を計画データの走査ベクトルの対応するベクトルデータに関連付けて、対応する走査ベクトルのデータ値の複数のセットを形成するステップと、
-計画データに基づいて、複数の走査ベクトルのうちの少なくとも2つの走査ベクトルのグループを規定するステップであって、グループの走査ベクトルは、事前定義された類似基準を満たす、ステップと、
-グループの第1の走査ベクトルのデータ値のセットを、グループの少なくとも1つの第2の走査ベクトルのデータ値のセット又はグループの少なくとも2つの第2の走査ベクトルから導出されたデータ値の組み合わされたセットと比較するステップと、
-比較に基づいて、第1の走査ベクトルの位置でのワークピースの品質尺度を判定するステップと、を含む方法を実行するように構成される。
【0065】
以下では、図2に示す装置30の個々のユニットを、図1の実施形態の文脈で詳細に説明する。ここで、制御ユニット8は、装置30を表す。
【0066】
装置30の第1の受信ユニット32は、センサデータをデータ値の時系列として受信する。ここで、データ値は、溶融プールによって放出される熱放射の強度を示す。センサ6は既知のサンプリング周波数でサンプリングされるため、タイミング情報をデータ値のそれぞれに関連付けることができる。言い換えれば、例えば、第1のデータ値が記録される時間が既知である場合、他のデータ値の時間を計算することができる。このため、それぞれのタイムスタンプをデータ値のうちの1つ又は複数に割り当てることができる。さらに、データ値から特定のイベントを導出し、それによって、このような値が記録された時間(例えば、レーザのスイッチを入れる、レーザの開閉など)に関する情報を取得することが可能である。
【0067】
装置30の第2の受信ユニット34は、計画データを受信する。計画データは、制御ユニット8のメモリに保存されてもよく、機器2の個々の構成要素の制御データを取得するために制御ユニット8によって使用されてもよい。言い換えれば、計画データは、機器2が原料粉末のそれぞれの層の所望の場所の照射を実行することができるように、1つの特定の造形プロセス(即ち、生成されるそれぞれのワークピースの造形プロセス)に関する全情報を含む。この目的のために、計画データは、複数の走査ベクトルを規定するデータと、レーザビーム22が走査ベクトルに沿って走査される順序とを含む。以下の図3を参照して説明する例では、走査ベクトルは、所定の長さを有し、ワークピース4の内部を埋めるために互いに平行に配置された複数の直線である。これに加えて、ワークピース4の輪郭を表す走査ベクトルが提供される。
【0068】
測定されたセンサデータのタイミングが既知であるため(上記を参照)、時系列の個々のデータ値を、計画データの走査ベクトルの対応するベクトルデータに(関連付けユニット36によって)関連付けることができる。その結果、データ値の複数のセットが生成され、データ値のセットが、走査ベクトルのうちの1つに対応する。データ値のセットは、データ値の対応するセットを対応する走査ベクトルに結び付ける情報に関連して保存される。
【0069】
規定ユニット38は、事前定義された類似基準を満たす複数の走査ベクトルのうちの少なくとも2つの走査ベクトルのグループを規定する。このステップは、対応するセンサデータを考慮せずに、計画データに基づいて実行される。このため、このステップはこのほか、これより早い時点、即ち、センサデータが受信される前に実行することができる。一般に、方法ステップの順序は上記の順序に限定されず、方法は、技術的に可能な限り、任意の順序に従って実行することができる。
【0070】
類似基準は、走査ベクトル間の類似性を規定するのに適した任意の基準であってもよい。例えば、特定の長さを有する(あるいは特定の長さの範囲の長さを有する)走査ベクトルを、規定単位によって1つのグループにグループ化してもよく、異なる長さを有する(あるいは特定の異なる範囲の長さを有する)走査ベクトルを、別のグループにグループ化してもよい。別の例によれば、特定の向きを有する全走査ベクトルを、1つのグループにグループ化する。このため、右を指す(即ち、任意に選択されたx軸に関して正又はゼロのx成分を有する)全走査ベクトルを、第1のグループにグループ化し、左を指す(即ち、負のx成分を有する)残りの走査ベクトルを、第2のグループにグループ化する。類似性を規定するための追加の基準が、例えば、ワークピース4に関する走査ベクトルの位置に基づくものであってもよい(例えば、輪郭の走査ベクトル部分、内部領域の一部、ワークピースの上部/下部/左/右領域の一部である)。
【0071】
比較ユニット40は、グループの第1の走査ベクトルのデータ値のセットを、グループの少なくとも1つの第2の走査ベクトルのデータ値のセットと比較する。これとは別に、第1の走査ベクトルのデータ値のセットは、グループの少なくとも2つの第2の走査ベクトルから導出されたデータ値の組み合わされたセットと比較される。走査ベクトルが互いに比較されると本開示が記述している場合、比較の上記のステップが意味すること、即ち、それぞれのベクトルのデータ値の対応するセットが互いに比較されることを認めるべきである。
【0072】
一実施形態によれば、新たに測定された各走査ベクトルが、同じグループの以前に記録された走査ベクトルと比較される。上記のように、これは、走査ベクトルのデータ値の対応するセットが互いに比較されることを意味する。例えば、距離メトリックの一種を、それぞれの2つのベクトルに対して計算することができる。距離メトリックは、それぞれの走査ベクトルの場所でのワークピースの品質の変化を示す可能性のあるデータ値を識別するのに適した任意の距離メトリックであってもよい。
【0073】
距離メトリックを比較し、判定するステップの例には、
-第1のベクトルのデータ値のセットの最大値と第2のベクトルのデータ値のセットの最大値の差を判定するステップ、
-第1のベクトルのデータ値のセットの最小値と第2のベクトルのデータ値のセットの最小値の差を判定するステップ、
-第1のベクトルのデータ値のセットの平均値と第2のベクトルのデータ値のセットの平均値の差を判定するステップ、
-第1のベクトルのデータ値のセットの中央値と第2のベクトルのデータ値のセットの中央値の差を判定するステップ、又は
-2つのセットの個々のデータ値の絶対差の合計を判定するステップ、が挙げられる。
【0074】
続いて、比較ユニット40は、距離メトリックが閾値を超えるかどうかを判断する。閾値は、事前定義された(固定された)閾値であってもよい。閾値は、同じグループの以前に測定された距離メトリックに基づいてさらに導出されてもよい。例えば、閾値は、以前に測定された距離メトリックの平均値又は平均値に事前定義された係数を掛けたものである。別の例によれば、閾値は、現在の距離メトリックの直前に測定された距離メトリックに対応し、事前定義された係数(例えば、1.1、1.2、1.5又は2.0)を任意選択で掛けたものである。この例によれば、グループの現在の走査ベクトルは、グループの以前の走査ベクトルと比較され、比較の結果は、以前の走査ベクトルと以前の走査ベクトルの前の走査ベクトルとの間の以前の比較と比較される。このようにして、現在の走査ベクトルのデータ値のセットがそれぞれのグループに対して正常範囲内にあるかどうかを判断することができる。データ値が大きく異なる場合は、それぞれのベクトルの場所で品質問題が発生する可能性があると判断される。
【0075】
新たに測定された各走査ベクトルを同じグループの以前に記録された走査ベクトルと比較する代わりに、グループの少なくとも2つの第2の走査ベクトルから導出されたデータ値の組み合わされたセットを生成してもよい。次に、新しく測定された走査ベクトル(第1の走査ベクトル)のデータ値のセットは、この組み合わされたセットと比較される。言い換えれば、距離メトリックを、この組み合わされたセットと第1の走査ベクトルのデータ値のセットの間で計算する。距離メトリックが事前定義された閾値よりも大きい場合、第1の走査ベクトルの位置でのワークピースの品質測定値がワークピースの他の位置よりも低いことが判定ユニット42によって判定される。一実施形態によれば、データ値の組み合わされたセットは、データ値の平均化されたセットであってもよい。さらに正確には、データ値の平均化されたセットを導出するために、グループの第2の走査ベクトルのうちの少なくとも2つのデータ値のセットに平均化の一形態が適用された可能性がある。言い換えれば、データ値の組み合わされたセットは、平均化されたベクトル、即ち、組み合わされたベクトルのデータ値の平均化されたものを表してもよい。平均化には、異なるベクトルのデータ値の算術平均の導出が含まれてもよい。データ値の組み合わされたセットは、子午線、極値及び変位値のうちの少なくとも1つを考慮することによって導出された可能性がある。
【0076】
比較ユニット40の動作はこのほか、以下のように説明する場合がある。1つ又は複数の実施形態によれば、絶対強度の進行(ベクトルからベクトルへの強度の低下/増大)間の比較のほか、相対的な比較(例えば、互いに対する差異/偏差/変動)が可能である。計画データと共に、結果として得られるワークピースの品質に関して結論を(例えば、層内のベクトルの場所と組み合わせて)導き出すことができる。
【0077】
比較は、適切な任意の品質基準又は数値メトリック(例えば、相関、絶対差、極値分析など)に基づいて判定することができる。品質基準は、システムパラメータ又は計画データの情報を追加で考慮することにより、多次元的に構造化されてもよい。このような接続は、ニューラルネットワーク又は決定木を介して相互に関連付けることができる。
【0078】
全品質データを、後に使用するために収集し、保存してもよい。この(成長する)データベースは、どの走査ベクトルに対してどのワークピースの品質が期待されるかを「学習」するために使用されてもよい。このような値は、後の走査のために、走査ベクトルの異なるクラス(即ち、異なるグループ)の参照値(又は、さらに正確には、データ値の参照セット)に対して使用されてもよい。一例として、処理され、保存されたデータの量を低減するために、(例えば、ランダムな)サンプル値に基づいて「学習」するアルゴリズムを実装してもよい。参照用に、以前の個々の造形プロセスを使用してもよい。
【0079】
判定ユニット42は、比較ユニット40の比較に基づいて、第1の走査ベクトルの位置でのワークピース4の品質測定値を判定する。比較により、第1の走査ベクトルのデータ値のセットが、その比較対象のデータ値のセットと大きく異なることが示された場合(即ち、閾値を超えた場合)、判定ユニットは、第1の走査ベクトルの位置にあるワークピースの品質尺度が低下していると決定する。
【0080】
「問題のある」第1の走査ベクトルのこのような位置は、保存され、ユーザに出力されてもよい。このようにして、ユーザは、ワークピースの潜在的に問題のある領域、即ち、ワークピースの品質が変化した可能性がある領域に関する情報を取得してもよい。
【0081】
これに加えて、あるいはこれとは別に、機器2の制御ユニット8は、照射された走査ベクトルの品質を改善するために対抗策を開始してもよい。言い換えれば、機器のプロセスパラメータを、判定された品質尺度に基づいて、造形プロセス中に適合させてもよい。例えば、焦点位置又はレーザ出力などの照射パラメータを適合させてもよい。
【0082】
判定ユニット42の動作はこのほか、以下のように説明される場合がある。一例には、強度信号の進行での偏差の影響が挙げられる。このような偏差は、表面品質の分類子として理解され得る、対応する外側の輪郭のうねりと相関している可能性がある。レーザ出力が高すぎる場合、気泡のほか、蒸発が発生する可能性がある。これにより、外側の輪郭に強いうねりが生じ、このため、対応するワークピースの品質が低下する。
【0083】
さらに、多重光学装置システムでは、異なる光学装置の相互の時系列の経過と、ワークピースの品質への影響と、を理解することができる。例えば、2つのレーザが隣接する領域を同時に照射するか、ほぼ同じ時間に照射すると、強度が大幅に増大する経過が得られる。
【0084】
ベクトル比較の類似性の尺度が、後に、完成したワークピースの密度測定値、あるいはワークピースの結晶構造、引張強度、あるいは異なる品質の特徴に起因するものであることがある。
【0085】
さらに、多次元アプローチを考慮することができる。個々のグループ(又はクラス)の強度は、各層にて2D強度画像として表示することができる。このような2D画像は、さまざまな照射層に配置することができ、3Dデータセットとして表示し、評価することができる。このような3Dデータセットは、N次元データセットとしてさまざまな造形プロセスにて分析することができる。
【0086】
このようにして、複数の層の時系列の進行に関する情報のほか、例えば、ワークピースの高さ又は造形シリンダ内の粉末の量に関する依存性を取得することができる。
【0087】
図3は、複数の走査ベクトル44で満たされた10辺の多角形を形成するワークピース4の層の一例を示す。図3では、わかりやすくするために、2つの例示的な走査ベクトルのみを参照符号を用いて示す。さらに正確には、層の内部は、パターンを規定する複数の走査ベクトル44で満たされ、これによれば、ほとんどの走査ベクトル44は、事前定義された固定長を有し、走査ベクトルの走査方向が、各走査ベクトルの後に反転する。
【0088】
図3に示す例では、走査ベクトルの複数の列が走査され、列はy軸に沿って延在し、個々の走査ベクトルはx軸に平行である。1つの例示的な列(図3に示す中央の列)では、第1の走査ベクトルV1が正のx方向に沿って照射され、続いて、第2の走査ベクトルV2が負のx方向に沿って照射される。その後、第3の走査ベクトルV3が正のx方向などに沿って走査される。このようにして、列は、図3の太い矢印によって示すように、正のy方向に沿って走査される。
【0089】
上記の走査戦略は、製造される3次元ワークピース4のための計画データによって規定される。この計画データは、特定の類似基準を満たす走査ベクトルのさまざまなグループを規定するために分析される。図3に示す例では、正のx方向に延びる走査ベクトルを第1のグループに関連付け、負のx方向に延びる走査ベクトルを第2のグループに関連付ける。
【0090】
さらに、走査ベクトル44の照射中に、センサ6は、上記で考察したように、溶融プールによって放出される熱放射の強度を測定する。生成されたデータ値は、走査ベクトルの対応するベクトルデータに関連付けられる。
【0091】
図3に示すように、走査ベクトルのデータ値のそれぞれのセット間の対ごとの比較が実行される。第3の走査ベクトルV3が走査された場合、データ値の対応するセットは、第1の走査ベクトルV1に割り当てられたデータ値のセットと比較される。同じように、V4はV2と比較され、V5はV3と比較され、V6はV4と比較されるなどの比較が実行される。
【0092】
このため、特定の走査ベクトルのデータ値のセットは、同じグループの走査ベクトルのデータ値のセットと常に比較される。類似する走査ベクトルのデータ値を相互に比較することができる。このため、比較の結果から、それぞれの走査ベクトルに関して品質の問題が存在しない場合、データ値が類似していることがわかるはずである。
【0093】
図4は、相互に比較することができるさまざまな走査ベクトルV1~V3のデータ値の一例を示す。タイムスタンプが個々のデータ値に割り当てられているため、データ値は(水平)時間軸に記入することができる。縦軸は、対応するデータ値、即ち、溶融プールから放出される熱放射強度の強度値(任意単位)を示す。
【0094】
図4の表現に基づいて、ベクトルのデータ値は、上記の技術のうちの1つに従って(例えば、極値を比較することによって)互いに容易に比較することができることは明らかである。
【0095】
さらに、図4の両側矢印は、一実施形態によれば、(全データ値ではなく)各走査ベクトルのデータ値のセットのサブセットのみを互いに比較することができることを示す。この場合、固定持続期間を有するサブセットが規定され、各走査ベクトルの対応するセクションのデータ値のみが相互に比較される。このようにして、人為的に誤ったデータ値がない走査ベクトルの領域を選択することが可能である。さらに、互いに比較されるべき走査ベクトルが異なる長さを有し、その結果、同じ長さのサブセットを互いに比較することができる(あるいはベクトルのうちの1つのサブセットをサブセットと同じ長さを有する他のベクトル全体と比較する)。
【0096】
さらに、互いに比較される2つ以上の走査ベクトル(即ち、そのデータ値のそれぞれのセット)は、同じ方向に延びる走査ベクトルでは必ずしもないことに概ね留意されたい。類似基準はこのほか、一般に、反対方向又は異なる方向に延びるベクトルをグループ化してもよい。図4の例では、2つの走査ベクトルV1及びV2(又はそれぞれのサブセット)は、(蛇行走査戦略の場合に)反対方向に走査された可能性がある場合でも、互いに比較されてもよい。
【0097】
図5は、異なる層(L1~L4)の走査ベクトルも相互に比較することができることを示す。この図は、互いの上に配置された複数の層を示しており、一例として、各層の断面は、ここでも図3に示す10辺の多角形である。図5に示す実施形態によれば、ワークピースの輪郭の一部である走査ベクトルが、1つのグループに配置される。さらに、走査ベクトルの測定されたデータ値は、異なる(例えば、隣接する)層の走査ベクトルのデータ値と比較される。図5に示すように、L1の輪郭の走査ベクトルがL2の輪郭の走査ベクトルと比較される。同じように、L2の輪郭の走査ベクトルがL3の輪郭の走査ベクトルと比較されるなどの比較が実行される。このほか、異なる層間の走査ベクトルの比較を、ワークピースの輪郭の一部ではない走査ベクトル(即ち、ワークピースの内部のベクトル)に対して実行することができる。さらに、走査ベクトルを、(例えば、同一の造形命令の連続生産に関して)以前の造形プロセスの走査ベクトルと比較してもよい。
【0098】
上記の説明では、原料の層にエネルギービームを照射することによって3次元ワークピースを製造するための機器に配置されたセンサのセンサデータを分析するための改善された技術を提供する実施形態を説明した。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギービーム(22)で原料の層を照射することによって3次元ワークピース(4)を製造するための機器(2)に配置されたセンサ(6)のセンサデータを分析するための装置であって、前記装置は制御ユニット(8)を具備し、前記制御ユニットは、
前記センサデータをデータ値の時系列として受信するステップであって、各データ値は、前記3次元ワークピース(4)の製造中の前記機器(2)内のプロセス条件を示す、ステップと、
前記3次元ワークピース(4)のための計画データを受信するステップであって、前記計画データは、複数の走査ベクトル(44)と、前記エネルギービーム(22)が前記走査ベクトル(44)に沿って走査される順序と、を規定する、ステップと、
前記時系列のデータ値を前記計画データの前記走査ベクトル(44)の対応するベクトルデータに関連付けて、対応する走査ベクトル(44)のデータ値の複数のセットを形成するステップと、
前記計画データに基づいて、前記複数の走査ベクトル(44)のうちの少なくとも2つの走査ベクトル(44)のグループを規定するステップであって、前記グループの前記走査ベクトル(44)は、事前定義された類似基準を満たす、ステップと、
前記グループの第1の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セットを、前記グループの少なくとも1つの第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット又は前記グループの少なくとも2つの第2の走査ベクトル(44)から導出されたデータ値の組み合わされたセットと比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記第1の走査ベクトル(44)の位置での前記ワークピース(4)の品質尺度を判定するステップと、を実行するように構成される、装置。
【請求項2】
前記データ値は、前記エネルギービーム(22)が前記原料に衝突する溶融プールにて生成される熱放射の強度値又は温度値である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、少なくとも、前記センサデータを受信し、前記ワークピース(4)の造形プロセス中に関連付け、比較し、判定するステップを実行するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御ユニット(8)は、前記造形プロセス中に、前記判定された品質尺度に基づいて、前記機器(2)のプロセスパラメータを適合させるようにさらに構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御ユニット(8)は、前記時系列の前記データ値に時間データを関連付けるようにさらに構成される、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記類似基準は、前記走査ベクトル(44)の長さの類似性と、前記走査ベクトル(44)の向きの類似性と、走査ベクトル(44)が前記ワークピース(4)の輪郭の一部であるかどうかと、のうちの少なくとも1つを考慮する、請求項1から5のいずれかに1項に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ユニット(8)は、前記グループの前記第1の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セットを、前記グループに関連付けられたデータ値の事前定義された参照セットと比較するようにさらに構成される、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
制御ユニット(8)は、
前記グループの前記第1の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セットを、前記グループの以前に照射された第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セットと比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記第1の走査ベクトル(44)と前記第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット間の差を示す少なくとも1つの差分値を判定するステップと、を実行するように構成される、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
制御ユニット(8)は、
前記少なくとも1つの差分値を、以前に照射された2つの走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット間の差を示す、保存された差分値と比較するステップを実行するようにさらに構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記制御ユニット(8)は、
-走査ベクトル(44)から走査ベクトル(44)への前記データ値の減少及び/又は増大などの絶対データ値の経過と、
-相互の差異、偏差及び/又は変動などのデータ値の相対的な比較と、
-前記第1の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セットと、前記少なくとも1つの第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット又は前記少なくとも2つの第2の走査ベクトル(44)から導出されたデータ値の前記組み合わされたセットとの相関と、
-前記第1の走査ベクトル(44)のデータ値と、前記少なくとも1つの第2の走査ベクトル(44)のデータ値又は前記少なくとも2つの第2の走査ベクトル(44)から導出されたデータ値の前記組み合わされたセットとの間の絶対差と、
-前記第1の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット及び前記少なくとも1つの第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット又は前記少なくとも2つの第2の走査ベクトル(44)から導出されたデータ値の前記組み合わされたセットの極値の極値分析と、のうちの少なくとも1つを考慮することによって比較するステップを実行するように構成される、請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御ユニット(8)は、前記第1の走査ベクトル(44)及び/又は前記少なくとも1つの第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット又は少なくとも2つの第2の走査ベクトル(44)から導出されたデータ値の前記組み合わされたセットのサブセットのみを考慮することによって比較するステップを実行するように構成される、請求項1から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記制御ユニット(8)は、前記ワークピース(4)の層の少なくとも1つの2次元画像を表すデータセットを出力するように構成され、前記時系列の前記データ値は、前記2次元画像の対応するピクセルに割り当てられる、請求項1から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
原料の層にエネルギービームを照射することによって3次元ワークピースを製造するための機器(2)であって、前記機器(2)は、
請求項1から12のいずれか1項に記載の装置と、
前記エネルギービーム(22)を生成し、前記エネルギービーム(22)を前記原料の層に照射するためのエネルギービーム源(20)と、
前記データ値の時系列を測定し、前記データ値の時系列を前記装置に送信するように構成されたセンサ(6)と、を具備する、機器(2)。
【請求項14】
エネルギービーム(22)を原料の層に照射することにより3次元ワークピース(4)を製造するための機器(2)に配置されたセンサ(6)のセンサデータを分析するための方法であって、前記方法はコンピュータによって実行され
前記センサ(6)によって測定された前記センサデータをデータ値の時系列として受信するステップであって、各データ値は、前記3次元ワークピース(4)の製造中の前記機器(2)内のプロセス条件を示す、ステップと、
前記3次元ワークピース(4)のための計画データを受信するステップであって、前記計画データは、複数の走査ベクトル(44)と、前記エネルギービーム(22)が前記走査ベクトル(44)に沿って走査される順序と、を規定する、ステップと、
前記時系列のデータ値を前記計画データの前記走査ベクトル(44)の対応するベクトルデータに関連付けて、対応する走査ベクトル(44)のためのデータ値の複数のセットを形成するステップと、
前記計画データに基づいて、前記複数の走査ベクトル(44)のうちの少なくとも2つの走査ベクトル(44)のグループを規定するステップであって、前記グループの前記走査ベクトル(44)は、事前定義された類似基準を満たす、ステップと、
前記グループの第1の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セットを、前記グループの少なくとも1つの第2の走査ベクトル(44)のデータ値の前記セット又は前記グループの少なくとも2つの第2の走査ベクトル(44)から導出されたデータ値の組み合わされたセットと比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記第1の走査ベクトル(44)の位置での前記ワークピース(4)の品質尺度を判定するステップと、を含む、方法。
【請求項15】
コンピュータに請求項14に記載の方法を実行させるためのコンピュータ可読命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体に保存されたコンピュータプログラム製品。
【国際調査報告】