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特表2022-544643熱交換器の作動方法、熱交換器を備える配置および対応する配置を備えるシステム
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  • 特表-熱交換器の作動方法、熱交換器を備える配置および対応する配置を備えるシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-20
(54)【発明の名称】熱交換器の作動方法、熱交換器を備える配置および対応する配置を備えるシステム
(51)【国際特許分類】
   F28F 27/00 20060101AFI20221013BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20221013BHJP
   F25J 3/04 20060101ALI20221013BHJP
   F25J 5/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
F28F27/00 511D
F28D9/00
F25J3/04 C
F25J5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577448
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2020025378
(87)【国際公開番号】W WO2021037391
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】19020492.5
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519288685
【氏名又は名称】リンデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Linde GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Carl-von-Linde-Str. 6-14, 82049 Pullach i. Isartal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロッホナー、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】スペリ、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】レーマッハー、アクセル
(72)【発明者】
【氏名】フレコ、パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ、ポール
(72)【発明者】
【氏名】レースラー、フェリックス
【テーマコード(参考)】
3L103
4D047
【Fターム(参考)】
3L103AA10
3L103BB29
3L103CC30
3L103DD55
3L103DD61
3L103DD92
4D047AA08
4D047AB02
4D047AB04
4D047CA04
4D047DA05
4D047DA06
4D047DA17
4D047EA09
(57)【要約】

本発明は、熱交換器(1)を作動する方法に関し、この方法では、第1の時間帯で第1の動作モードが実行され、第1の時間帯と交番する第2の時間帯で第2の動作モードが実行され、第1の動作モードでは第1の温度レベルで第1の流体の流れ(A)が形成され、第1の温度レベルにある第1の領域(2)で熱交換器(1)に供給され、熱交換器(1)で部分的または完全に冷却され、第1の動作モードでは第2の温度レベルにある第2の流体の流れ(B)が形成され、第2の温度レベルにある第2の領域(3)で熱交換器(1)に供給され、熱交換器(1)で部分的または完全に加熱され、第2の動作モードでは第1の流体の流れ(A)および第2の流体の流れ(B)の熱交換器(1)への供給が部分的または完全に停止される。第2の時間帯では、熱交換器(1)の暖端部において端末の30%を構成する第1の領域(11)ではなく、第2の領域(12)において熱交換器(1)内または熱交換器上にある通路を通して案内される冷却流体を使用して第2の領域(12)が冷却される。対応する配置(10)、およびこの種の配置(10)を備えるシステム(100)も同様に、本発明の対象である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(1)を作動する方法であって、
・第1の時間帯で第1の動作モードを実行し、前記第1の時間帯と交番する第2の時間帯で第2の動作モードを実行し、
・前記第1の動作モードでは、第1の流体の流れ(A)が第1の温度レベルで形成され、第1の領域(11)において前記第1の温度レベルで前記熱交換器(1)に供給され、前記熱交換器(1)で部分的または完全に冷却され、
・前記第1の動作モードでは、第2の流体の流れ(B)が第2の温度レベルで形成され、第2の領域(12)において前記第2の温度レベルで前記熱交換器(1)に供給され、前記熱交換器(1)で部分的または完全に加熱され、
・前記第2の動作モードでは、前記第1の流体の流れ(A)および前記第2の流体の流れ(B)の前記熱交換器(1)への供給が部分的または完全に停止される
方法において、
・前記第2の領域(12)は、前記第2の時間帯において、前記熱交換器(1)の暖端部において末端の30%を構成する前記第1の領域(11)ではなく、前記第2の領域(12)において前記熱交換器(1)内または前記熱交換器上にある通路を通して案内される冷却流体を使用して冷却されることを特徴とする方法。
【請求項2】
・前記通路は、前記熱交換器(1)の前記第2の領域(12)において通流が生じる気化通路(13)であり、
・前記冷却流体は、容器(2)から取り出され、前記気化通路で気化される液体であり、
・前記液体(13)の気化の際に形成されるガスは、前記容器(2)にフィードバックされ、
・前記液体は、前記容器(2)内で前記液体の気化により上昇した前記ガスの圧力によって、前記気化通路(13)に圧送される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体が前記気化通路(13)内で気化される量は、前記容器(2)への前記液体の供給によって調節される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガスの気化によって上昇した前記容器(2)内の前記圧力は、ガスを前記容器(2)から放出することにより調節される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
・前記通路(14’)は、前記熱交換器(1)内に延在する熱交換器通路(14)のそれぞれの部分区間であり、
・前記部分区間は、前記熱交換器通路(14)の全長の50%または40%以下の長さを含み、
・前記冷却流体はガス状で提供され、前記熱交換器通路(14)の前記部分区間(14’)を通して案内される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の時間帯には、前記第1の領域(11)への熱(H)の伝達が行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱(H)は、前記熱交換器(1)の外部に配置された熱源(3)によって提供され、前記熱交換器(1)の外部から前記熱(H)が前記第1の領域(11)に伝達される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記提供された熱(H)の伝達は、前記第1の領域(11)に接触する熱伝導要素を介する固体熱伝導によって行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記提供された熱(H)は、前記熱交換器(1)の外部に存在するガス空間(G)を介して前記第1の領域(11)に伝達され、前記熱(W)は、前記ガス空間(W)を介して少なくとも部分的に対流および/または放射で前記第1の領域(11)に伝達される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記熱交換器(1)は、ガス分離方法において作動され、前記第1の動作モードでは、前記第1の流体の流れ(A)が前記熱交換器で部分的または完全に冷却された後、精留の少なくとも一部に供給される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記気化通路(13)として、前記第1の流体の流れ(A)および/または前記第2の流体の流れ(B)を前記第1の動作モードで案内する前記熱交換器(1)の通路の少なくとも一部が使用されるか、または前記熱交換器(1)内部の通路とは別に、前記熱交換器(1)の外側に形成された通路が使用される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
熱交換器(1)を備える配置(10)であり、
・第1の時間帯で第1の動作モードを実行し、前記第1の時間帯と交番する第2の時間帯で第2の動作モードを実行し、
・前記第1の動作モードでは、第1の流体の流れ(A)を第1の温度レベルで形成し、第1の領域(2)において前記第1の温度レベルで前記熱交換器(1)に供給し、前記熱交換器(1)で部分的または完全に冷却し、
・前記第1の動作モードでは、第2の流体の流れ(B)を第2の温度レベルで形成し、第2の領域(3)において第2の温度レベルで前記熱交換器(1)に供給し、前記熱交換器(1)で部分的または完全に加熱し、
・前記第2の動作モードでは、前記第1の流体の流れ(A)および前記第2の流体の流れ(B)の前記熱交換器(1)への供給を部分的にまたは完全に停止するために設置されている手段を有している
前記配置(10)であって、
・前記熱交換器(1)の暖端部において末端の30%を構成する前記第1の領域(11)ではなく、前記第2の領域(12)において前記熱交換器(1)内または前記熱交換器上に通路が提供されており、
・前記第2の領域(12)を前記第2の時間帯で、前記第1の領域(11)にではなく前記第2の領域(12)において前記熱交換器(1)内または前記熱交換器上の前記通路を通って流れる冷却流体を使用して冷却するように設置されている手段が提供されることを特徴とする配置。
【請求項13】
・前記通路は、前記熱交換器(1)の前記第2の領域(12)において通流が生じる気化通路(13)として提供されており、
・極低温液体を前記冷却流体として収容するように設置されている容器(2)が提供されており、
・前記液体を前記容器(2)から取り出し、前記気化通路(13)で気化させるために設置されている手段が提供されており、
前記手段は、気化の際に形成されたガスを前記容器(2)にフィードバックし、前記容器(2)内で前記気化により上昇した前記ガスの圧力によって前記液体を前記気化通路(13)に圧送するために設置されている、請求項12に記載の配置。
【請求項14】
・前記通路(14’)は、前記熱交換器(1)内に延在する熱交換器通路(14)のそれぞれの部分区間であり、
・前記部分区間は、前記熱交換器通路(14)の全長の50%、40%、30%または20%以下の長さを含み、
・前記冷却流体はガス状で提供可能であり、前記熱交換器通路(14)の前記部分区間(14’)を通して案内可能である、請求項12に記載の配置。
【請求項15】
システム(100)は、ガス分離システムとして、特に空気分離システムとして形成されており、請求項12~14のいずれか一項に記載の配置(10)を特徴とするシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ独立請求項の上位概念による、熱交換器の作動方法、相応に作動可能な熱交換器を備える配置、および対応する配置を備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の適用分野で、熱交換器(技術的に正しくは、熱伝達器)は、極低温流体、すなわち0℃より明らかに低い、特に-50℃または-100℃より明らかに低い温度の流体により作動される。以下では本発明を、主に空気分離システムの主熱交換器を用いて説明する。しかし、本発明は、基本的に別の適用分野、例えば液体空気または液化天然ガスを使用してエネルギーを蓄積および再生するための装置、あるいは石油化学産業のシステムへの使用にも適する。
【0003】
本発明は、以下に説明する理由から、特有のやり方でガス状空気生成物、例えばガス状窒素を液化するためのシステムにも適している。対応するシステムには、特に空気分離システムからガス状窒素を供給することができ、これを液化すことができる。この場合、液化には空気分離システムの場合のように精留が後置されない。したがって、以下に説明する問題が克服される場合、例えば対応する液化生成物の必要性がない場合、このシステムは完全に遮断することができ、次の使用までスタンバイ状態を維持することができる。
【0004】
空気分離システムの主熱交換器および他の熱交換器の構築および作動に関しては、関連の専門文献、例えばH.-W.Haring(編集)、Industrial Gases Processing、Wiley-VCH、2006年、特に2.2.5.6章「装置」を参照されたい。熱交換器一般に関する詳細は、例えば、刊行物「The Standards of the Brazed Aluminium Plate-Fin Heat Exchanger Manufacturers’ Association」、第2版、2000年、特に1.2.1章「交換器のコンポーネント」に記載されている。
【0005】
追加的措置がないと、空気分離システムの熱交換器、および熱媒体と極低温媒体が通流する他の熱交換器は、温度平衡化を実行し、関連する装置の停止時に熱くなり、それにより熱交換器が運転を停止するか、あるいは対応する熱交換器で定置運転時に形成される温度プロファイルを、このような場合に維持できないことがある。引き続き、例えば再運転時に、加熱された熱交換器に極低温ガスが供給される場合、またはその逆の場合、特異的な温度差によって熱膨張に違いが生じ、高い熱応力が発生する。この熱応力は、長期的には熱交換器の損傷を引き起こすか、あるいはこの種の損傷を回避するために過大に高い材料コストや製造コストが必要になるおそれがある。
【0006】
特に熱交換器は、熱交換器が全体的に温まる前に運転停止すると、その金属材料の良好な熱伝導(縦方向熱伝導)により、それまで暖かかった暖端部とそれまで冷たかった冷端部とで温度調整が生じる。言い替えると、それまで暖かかった熱交換器暖端部は、時間とともに次第に冷え、それまで冷たかった熱交換器冷端部は、上記の温度が平均温度または平均温度に近い温度になるまで次第に暖まる。このことが、添付の図1にも示されている。ここでは運転停止時点で約-175℃あるいは+20℃にある温度が、数時間かけて互いに順応し、ほぼ中間の温度に達する。
【0007】
この挙動は、特に、空気分離システムの遮断時に低温断熱されて格納された主熱交換器が精留ユニットと共にブロックされる場合、すなわち外部からガスがそれ以上供給されない場合に観察される。このような場合、典型的には断熱損失により発生するガスだけが冷えて放出される。ガス状空気生成物、例えば液体窒素の液化装置が遮断される場合にも同様のことが当てはまる。
【0008】
場合によってはその後、熱交換器の運転再開時に熱交換器の冷えた暖端部に暖かい流体が供給されると、その個所で温度が急激に上昇する。これに対応して、暖まった冷端部では運転再開時にその個所に相応の低温流体が供給されると、温度が急激に低下する。このことは、すでに述べた材料応力を引き起こし、ひいては損傷を引き起こす場合もある。
【0009】
ドイツ特許出願公開第102014018412号は、炭化水素に富む流体、特に天然ガスを液化するための液化プロセスの作動方式を開示している。運転開始中、および液化すべき炭化水素に富む流体が仕様どおりに供給できない場合、冷媒回路からの適切な温度レベルにある少なくとも1つの冷媒部分流が、液化される炭化水素に富む流体の代わりに、所定の量で少なくとも1つの熱交換器に通される。この量は運転開始中に制御され、標準運転に達すると、液化される炭化水素に富む流体によって標準運転時に冷媒回路に取り込まれる熱量を補償するように量設定されている。
【0010】
米国特許出願公開第2015/226094号あるいは欧州特許出願公開第2880267号には、発電所および空気処理装置からなるコンビネーションシステムにおける電気エネルギーの生成が記載されている。第1の動作モードでは、空気処理装置で供給空気から貯蔵流体が生成され貯蔵される。第2の動作モードでは、貯蔵流体が超大気圧下で気化または疑似気化され、その際に形成されたガス状高圧流体が発電所のガス膨張ユニット内で膨張する。第2の動作モードでは、ガス状天然ガスが、気化または疑似気化された貯蔵流体に対して液化または疑似液化される。
【0011】
中国特許出願公開第102778105号には、酸素発生器のラピッドスタートが記載されており、この場合、一方において供給空気は気化して主精留塔に供給される前にターボ膨張器内で膨張し、他方では貯蔵容器に貯蔵された液体アルゴンが冷媒回路で供給空気の冷却に使用される。
【0012】
米国特許出願公開第2012/1617616号あるいは欧州特許第2449324号は、主熱交換器を使用するガス液化用液化システムの作動方式を開示している。冷媒圧縮回路が設けられており、そのうちの低圧部は、主熱交換器からの気化した冷媒を圧縮器に導き、高圧部は、圧縮され冷却された冷媒を圧縮器から主熱交換器に帰還させる。液化システム内の圧力は、気化した冷媒の量を、液化システムの低圧部もしくは高圧部で、またはシステムの両方の部分で調節することによって制御される。
【0013】
本発明の課題は、特に前述の装置のいずれかにおいて、対応する熱交換器の運転再開を、比較的長期の運転停止後も、言及した不利な作用が発生することなく可能にする措置を提供することである。
【0014】
発明の開示
これを背景に本発明は、それぞれ独立請求項の特徴を備える、熱交換器の作動方法、相応に作動可能な熱交換器を備える配置、および対応する配置を備える装置を提案する。
【0015】
まず以下に、本発明の説明に使用されるいくつかの用語を解説および定義する。
【0016】
「熱交換器」は、ここで使用される用法では、例えば互いに向流する少なくとも2つの流体の間で熱を間接的に伝達するように構成された装置である。本発明で使用する熱交換器は、単独の熱交換器部分または並列および/または直列に接続された複数の熱交換部分、例えば1つまたは複数のプレート式熱交換器ブロックから形成することができる。熱交換器は「通路」を有し、この通路は流体を案内するように設計されており、他方の通路から分離プレートによって分離されているか、またはそれぞれのヘッダだけを介して入口側および出口側で接続されている。外部への通路の分離はサイドバー(英語:Side Bars)を介して行われる。前述の通路を、以下に「熱交換器通路」と称する。以下では、一般的な用法に従い、2つの用語「熱交換器」と「熱伝達器」を同義的に使用する。同様のことが、「熱交換」と「熱伝達」という用語に対しても当てはまる。
【0017】
本発明は、特に、ISO15547-2:2005のドイツ版によるフィンプレート式熱交換器(英語:Plate-Fin Heat Exchangers)と称される装置に関する。したがって、以下で「熱交換器」について述べる場合は、特にフィンプレート式熱交換器であると理解されたい。フィンプレート式熱交換器は、重なり合う多数の平坦なチャンバあるいは長手方向に伸びるチャネルを有し、これらのチャネルは、それぞれ波形または他の形で構造化され、ろう付けなどで互いに接続された、通常はアルミニウム製のプレートによって互いに分離されている。プレートはサイドバーによって安定化され、これらのサイドバーを介して互いに接続されている。熱交換器プレートの構造化は、特に熱交換面積を拡大するために用いられるが、熱交換器の安定性を高めるためにも用いられる。本発明は特に、ろう付けされたアルミニウム製フィンプレート式熱交換器に関連する。しかし基本的には、対応する熱交換器を、他の材料、例えばステンレス鋼、または種々の異なる材料から作製することもできる。
【0018】
前述のように本発明は、公知の形式の空気分離システムに使用することができるが、例えば液体空気を使用してエネルギーを貯蔵および再生するための装置にも使用することができる。液体空気を使用してエネルギーを貯蔵および再生することは、英語では液化空気エネルギー貯蔵(LAES)とも称される。対応する装置は、例えば欧州特許出願公開第3032203号に開示されている。窒素または他のガス状空気生成物を液化するための装置も同様に専門文献から公知であり、これに関しては図3を用いて説明する。基本的に本発明は、熱伝達器を相応に作動することのできる任意の他の装置でも適用可能である。そのような装置は、例えば、天然ガス液化装置および天然ガス分離システム、上述のLAESシステム、空気分離システム、空気分離システム装備および非装備のあらゆる種類の(特に空気および窒素用)液化回路、エチレン装置(すなわち、詳細にはスチームクラッカーからのガス混合気を処理するために設置された分離システム)、例えばエタンまたはエチレンによる冷却回路をさまざまな圧力レベルで使用する装置、および一酸化炭素回路および/または二酸化炭素回路が設けられている装置などであってよい。
【0019】
電力供給量が多い場合、LAESシステムでは第1の動作モードにおいて、空気が相応の電力消費量で圧縮、冷却、液化され、断熱タンクシステムに貯蔵される。電力供給量が少ない場合は、第2の動作モードにおいて、タンクシステムに貯蔵された液体空気が、特にポンプによる圧力上昇後に加熱され、これによりガス状または超臨界状態に移行する。これによって得られた圧力流は、発電機に連結されている膨張タービン内で膨張する。発電機で得られた電気エネルギーは、例えば電力網にフィードバックされる。
【0020】
こうしたエネルギーの貯蔵および再生は、基本的に液体空気を使用するだけでは不可能である。むしろ第1の動作モードでは、空気を使用して形成された他の極低温液体も貯蔵され、これは第2の動作モードにおいて電気エネルギーを獲得するため使用することができる。対応する極低温液体の例は、液体窒素もしくは液体酸素、または主に液体窒素もしくは液体酸素からなる成分混合物である。対応するシステムでは、外部熱と燃料も投入して効率および出力電力を上昇させることができ、これは特にガスタービンを使用して行われ、その排ガスは、第2の動作モードで空気生成物から形成された圧力流と共に膨張する。この種のシステムに対しても本発明は適している。
【0021】
相応の極低温液体を準備するには、従来の空気分離システムを用いることができる。液体空気が使用される場合、純粋な空気液化装置を使用することもできる。したがって空気分離システムおよび空気液化装置に対する上位概念として、以下では「空気処理装置」という用語も使用される。
【0022】
本発明は、特にいわゆる窒素液化器でも使用することができる。空気以外の他のガスを液化および/または分離するためのシステムもまた、本発明により提案された措置により恩恵を受ける。
【0023】
発明の利点
基本的に熱交換器には、関連するシステムの静止状態中にタンクからの低温のガスや、定置システムからの排ガスが通流しており、これにより加熱を回避するか、あるいは定置運転(すなわち、特に対応するシステムの通常の生産運転)で形成される温度プロファイルを維持することができる。しかし、標準運転でも使用される通常の通路を適宜使用するこの種の運転は、従来の方式では、場合により実現するのが困難である。
【0024】
特定のケースでは、例えば米国特許出願公開第5233839号でも提案されているように、対応する熱交換器の暖端部の冷却を回避するために、その個所で周囲から熱を、ヒートブリッジを介して導入することもできる。熱交換器の下流に、例えば純粋な空気液化システムの場合のように、低温に対して有意な緩衝能力を備えるプロセスユニットが存在しない場合(例えば、極低温流体を収集する精留塔システムが存在しない場合)、このような熱維持を行うだけで、運転再開時に暖端部に暖かいプロセス流が突然供給される際の過剰な熱応力の発生を低減することがでる。
【0025】
運転再開後に供給される暖かいプロセス流は、この場合、例えば熱交換器の冷端部を出た後、少なくとも部分的に膨張マシン内で膨張し、低温流として(しかし、ここでは低温流が後の制御動作の経過で冷端部に存在するような低温をまだ有していない)冷端部を介して暖端部にフィードバックすることができる。このようにして熱交換器は、ジュール-トムソン冷却によって緩慢に通常の温度プロファイルに戻ることがでる。
【0026】
しかし、本発明は、このような場合、すなわち運転再開後に熱交換器の冷端部が(制御動作で存在する最終温度にある)低温のプロセス流に直接ぶつからないというプロセスにはあまり関連していない。むしろ、運転再開の始めから熱交換器によって加熱しなければならない極低温流体が存在しており、したがってこの極低温流体を運転再開後から熱交換器の冷端部に供給するような場合に関連している。
【0027】
本発明において該当するように、熱交換機の下流で低温に対して特筆すべき緩衝能力を備えたプロセスユニット(例えば、空気分離システムの場合のように、極低温流体を収集する精留塔システムなど)が存在する場合、前に説明した措置により、この個所では熱応力の発生を最小化することができるが、同時に温まった冷端部では、より冷えた流体が突然流れ始めることにより、許容できないほど大きな(時間的および場所的)温度勾配によって熱応力が発生し得る。しかも、この場合、暖端部の熱保持が冷端部でのさらに大きな温度差の形成を促進し、これによってさらに高い熱応力が発生する。したがって、このような場合には、熱交換器の冷端部を冷却もしくは低温維持することが望まれるか、または有利である。
【0028】
本発明は、すでに述べたように、たったいま説明した場合に関連する。言い替えると、本発明においては、(熱交換器の暖端部において常に可能な加熱の他に)熱交換器の冷端部を、停止フェーズ中に冷却あるいは低温に維持する場合が考察される。
【0029】
対応する熱交換器の冷端部を冷却あるいは低温維持するため、米国特許出願公開第5233839号でも同様に提案されているように、それぞれ冷却すべき領域に追加的な冷却通路を装備することが可能であり、この冷却通路は、特に外部から熱交換器(ブロック)に取り付けることができる。対応する通路(対応する配管部分の形で、単一のメアンダー状の管路によって形成されていてもよい)を異なる密度で配置することにより、それぞれ放出される熱(あるいは物理的に正しい表現ではないが、取り込まれる低温)を調節することができる。択一的に、制御運転中に使用される熱交換器の通路を、少なくとも部分的に冷端部の冷却あるいは低温維持に使用することもできる。
【0030】
本発明は、これを背景に熱交換器の作動方法を提案する。この熱交換器は、以下でさらに詳細に説明するように、特に比較的大きなシステムの一部として形成可能な対応する配置の一部とすることができる。本発明は、特に、前述および以下で詳細に説明されている種類の空気処理システムに使用することができる。しかし、基本的には、対応する熱交換器を通る流れが特定の時間帯に中止され、熱交換器がこの時間帯に加熱されるか、あるいは熱交換器に形成された温度プロファイルが平衡化される他の適用領域で使用することも可能である。本発明は、特に空気分離システムで使用することができる。なぜなら、対応する空気分離システムでは低温流体に対する緩衝能力が熱交換器の冷端部にあり、したがって停止フェーズ中に冷端部を低温維持することが望ましいからである。
【0031】
しかし、本発明は、いくつかの実施形態において、熱交換器の暖端部の過剰な熱負荷を回避するような措置にも関連する。このような措置は、本発明において、熱交換器の冷端部における熱応力の低減を目指す本発明によって提案された措置と組み合わせることができる。
【0032】
本発明は、1つの実施形態(以下では「第1の」実施形態と称する)において、熱交換器上または熱交換器内の気化通路においては気化するが、それ以前には気化しない極低温流体を使用する冷却が特別の利点を提供するという認識に基づく。本発明により提案された措置を使用することにより、特に、冷却流を提供するための費用のかかるポンプを省略することができる。本発明により提案された熱交換器の作動は、これにより低温流体の消費が低減され、かつ対応するハードウェア並びに制御および調整技術を、費用をかけて準備する必要がないことから、利点を提供する。本発明のさらなる有利な実施形態(以下では「第2の」実施形態と称する)は、ガスを冷却流体として使用するが、このガスは、熱交換器全体を通過するのではなく、冷端部にある部分区間だけその熱交換通路を通過する場合に、とりわけ利点を提供できるという認識に基づいている。
【0033】
以下では、まず第1の実施形態を説明する。
【0034】
対応する熱交換器の冷端部における冷却は、第1の実施形態によれば、容器から取り出される液体窒素などの液体により行われる。容器には、特に通常の運転中に、対応する液体が供給される。液体は、容器から液状で取り出され、熱交換器内または熱交換器上にある気化通路に供給される。気化通路は、熱交換器上または熱交換器内に適切な配置で準備された管路の管路部分によっても形成されていてよい。対応する熱交換器の通常の運転時にも、流体の冷却および/または加熱に使用される通路を対応する気化通路として使用することも基本的に可能である。
【0035】
この場合、対応する液体を容器から取り出し、気化通路に供給することは、特に熱交換器の冷端部で最大温度を超過した場合に行われる。容器内の液体は、特にその沸点または沸点近傍で存在する。容器には、さらなる容器もしくはタンク、または他の供給源(例えば空気分離システムの定圧カラム)から供給することができる。
【0036】
熱交換器において熱伝導により温度平衡化が開始されると、冷媒は、熱を奪われ、気化する。このとき、本発明の第1の実施形態における配置は、液体の気化の際に形成されたガスが(部分的または完全に)タンクに逆流する(循環原理)ようになっている。特に容器の気相出口にある圧力制御器によって規定の容器圧を調節することで、冷媒の所望の気化温度レベルを調節することができる。この温度レベルは、特に、低温に維持すべき熱交換器の冷端部に対する限界温度である。
【0037】
本発明の第1の実施形態における配置は、全体として、液体の気化に基づき駆動的圧力勾配が発生し、それにより自然循環が生じるようになっている。容器への液体の供給も同様に、例えば熱交換器における金属温度測定により容器への冷媒流量を決定することによって制御することができる。
【0038】
本発明の第2の実施形態の態様についてはすでに説明したが、以下でさらに詳細に説明する。
【0039】
熱交換器の暖端部における入熱は、本発明により提案された措置(すなわち、第1および第2の実施形態で説明された措置)に加えて、例えば対流熱供給、放射または電熱抵抗加熱による熱供給によって行うことができる。詳細を以下に説明する。
【0040】
本発明により行われる冷端部での冷却は、特に頭端部で入力される熱容量に適合させることができる。供給および排出される熱量を適切に調節することにより、金属製熱交換器における縦方向熱伝導の結果として規定の温度勾配が生じ、この温度勾配は、熱伝導断面積、有効熱伝導率、およびさらなる幾何形状パラメータおよびプロセスパラメータによって決定される。冷却および場合により加熱を整合的に制御することにより、暖端部と冷端部における金属製熱交換器の定常の温度レベルがシステム停止中に維持されるように、ほぼ線形の温度勾配が調整される。加熱能力および冷却能力を、機器およびプロセスの基本条件に適合させることは、本発明のすべての実施形態において、熱伝達器の流れ温度および金属温度の測定に基づいて行うことができる。
【0041】
すでに言及した米国特許出願公開第5233839号に開示されているような措置を使用して、対応する熱交換器の暖端部および冷端部を温度調整するのに対して、第1の実施形態に従って本発明により提案された方法は、冷却または低温維持に使用される液体の液状供給により、排出可能な熱量がより大きくなり、冷媒を節約することができるという利点を有することができる。第2の実施形態によれば、熱交換器の冷端部において特に適切な冷却を行うことができる。
【0042】
もう一度まとめると、本発明では、第1の動作モードでは第1の時間帯に、第2の動作モードでは、この第1の時間帯と交番する第2の時間帯で本方法を実行することが提案される。第1の時間帯と第2の時間帯は、本発明においては互いに重なっていない。このとき、第1の時間帯あるいは第1の時間帯で実行される第1の動作モードは、本発明においては、対応するシステムの生産運転に相当し、すなわち、本発明でフォーカスしている空気分離システムの場合では、液状および/またはガス状の空気生成物が空気分離によって提供される動作モードに相当するものである。これに対応して、第2の動作時間帯で実行される第2の動作モードは、対応する生成物が形成されない動作モードである。これに対応して、第2の時間帯あるいは第2の動作モードは、例えば空気生成物をエネルギー再生のために液化および再気化するためのシステムまたはすでに言及したLAESシステムにおいて、特にエネルギー節約のために用いられる。
【0043】
すでに述べたように、第2の動作モードでは、好適には熱交換器に通流されないか、あるいは第1の動作モードよりも明らかに少ない量しか通流されない。しかし、本発明は、基本的に第2の動作モードにおいてある程度の量のガスも、対応する熱交換器を通して案内することを除外するものではない。第2の動作モードで熱交換器を通して案内される流体の量は、通常の第1の動作モードで熱交換器を通る流体の量よりも明らかに小さい。第2の動作モードで熱交換器を通る流体の量は、本発明においては、例えば全体で、第1の動作モードで熱交換器を通る流体量の20%、10%、5%、1%、または0.1%以下である。
【0044】
本発明において第1の動作モードと第2の動作モードは、すでに述べたようにそれぞれ交番する時間帯で実行される。すなわち、第1の動作モードが実行されるそれぞれの第1の時間帯には常に第2の動作モードが実行される第2の時間帯が続き、第2の時間帯あるいは第2の動作モードには第1のモードによる第1の時間帯が再び続くということになる。しかし、このことは特に、それぞれの第1の時間帯と第2の時間帯との間にさらなる動作モードを設けること、例えば第3の動作モードによる第3の時間帯を設けることを排除するものではない。本発明においては、第3の動作モードの場合について、特に以下のシーケンスが生じる。すなわち、第1の動作モード-第2の動作モード-第3の動作モード-第1の動作モード等々、である。
【0045】
本発明において、第1の動作モードでは、第1の流体の流れが第1の温度レベルで形成され、第1の領域において第1の温度レベルで熱交換器に供給され、熱交換器で部分的または完全に冷却される。対応する第1の流体の流れとして、本発明においては、ガス混合分離方式によって分離されるガス混合気を使用することができ、例えば空気分離システムで分離された空気によって使用されてよい。
【0046】
本発明において、第1の動作モードでは、第2の流体の流れが第2の温度レベルで形成され、第2の領域において第2の温度レベルで熱交換器に供給され、熱交換器で部分的または完全に加熱される。このとき、第2の流体の流れの形成は、特に空気生成物または排気流の形で、空気分離システムにおける逆流の形成とすることができる。
【0047】
第2の温度レベルは、特に対応する逆流が形成される温度に相当する。好ましくは極低温は、特に-50℃~-200℃、例えば、-100℃~-200℃、または-150℃~-200℃である。これに対して、第1の流体の流れが形成され、熱交換器の第1の領域に供給される第1の温度レベルは、好ましくはバイパス温度であるが、いずれにしても、通常は0℃を明らかに上回る温度レベルであり、例えば10℃~50℃である。
【0048】
ここで、第1または第2の温度レベルで第1または第2の流体の流れが形成されると言う場合、これによってもちろん、さらなる流体の流れが第1または第2の温度レベルで形成されることを排除するものではない。対応するさらなる流体の流れは、第1または第2の流体の流れの流体と同じ組成であるか、またはそれとは異なる組成を有することができる。例えば、最初に全体の流れが形成され、これから第2の流体の流れが分岐して、第2の流体の流れが形成されてよい。さらに本発明においては、必要に応じて複数の流体の流れを形成し、次に互いを合流させ、このようにして第2の流体の流れの形成に使用することもできる。
【0049】
ここで、熱交換器内の流体の流れが「部分的もしくは完全に」冷却または加熱されると言う場合、このことは、流体の流れ全体が熱交換器を通過し、しかも暖端部もしくは中間温度レベルから冷端部もしくは中間温度レベルへと案内されるか、その逆を意味するか、または対応する流体の流れが熱交換器で2つ以上の部分流に分割され、これら部分流は同じ温度レベルか異なる温度レベルで熱交換器から取り出されることを意味するものと理解されたい。もちろん、それぞれの流体の流れに熱交換器でさらなる流体の流れを供給し、このようにして形成された集合流を熱交換器でさらに冷却あるいは加熱することも可能である。しかし、いずれの場合でも、対応する流体の流れは、特に第1あるいは第2の温度レベルで熱交換器に供給され、これが熱交換器で(単独で、または前述のようなさらなる流れと共に)冷却あるいは加熱される。
【0050】
さらに、第1と第2の流体の流れに加えて、熱交換器内ではさらなる流体の流れもまた、特に同じ温度レベルか異なる温度レベルで、および/または第1もしくは第2の流体の流れと同じ温度レベルか異なる温度レベルから開始して、冷却あるいは加熱できることは自明である。対応する措置は、空気分離の分野では一般的であり、公知であるため、これに関しては、冒頭に引用したような専門文献を参照することができる。
【0051】
本発明における第2の動作モードでは、第1の流体の流れおよび第2の流体の流れの熱交換器への供給、並びに熱交換器でのそれぞれの冷却または加熱が、部分的にまたは完全に中断される。例えば、第1の動作モードで熱交換器を通過し、熱交換器で冷却される第1の流体の流れの代わりに、どの流体も熱交換器を通過しないようにすることも可能である。したがって、第1の動作モードで第1の流体の流れを冷却するために使用される熱交換器の熱交換器通路は、この場合、通流されないままである。しかし、第1の動作モードにおいて熱交換器を通過して冷却される第1の流体の流れに代わって、別の流体の流れを、明らかに少ない量で熱交換器を通過させることも可能である。同様のことが、第2の動作モードにおいて別のガスと置換することのできる第2の流体の流れに対しても当てはまるが、本発明においては熱交換器の冷端部における冷却、すなわち言及した第2の領域における冷却は行われない。
【0052】
ここで、熱交換器の冷端部の冷却について述べる場合、この冷却は、特に、この冷端部が第1の動作モードで有する第2の温度レベルまで行われる。
【0053】
本発明に基づき暖端部において熱交換器の端末の30%を構成する第1の領域にではなく、第2の領域において熱交換器内または熱交換器上にある通路を通して案内される冷却流体を使用して、第2の領域が第2の時間帯に冷却されることが、本発明に従って設けられている。すでに述べたように、ここでは、重要な態様について上記で説明した第1と第2の実施形態が特に有利である。誤解を避けるために、第1の領域は熱交換器の暖端部に、第2の領域は冷端部に配置されているか、または第1の領域は熱交換器の暖端部から冷端部の方向に伸びており、第2の領域は熱交換器の冷端部から暖端部の方向に伸びていることを強調しておく。
【0054】
第1の実施形態では、通路は、熱交換器の第2の領域内(第1の領域内ではない)で通流が生じる気化通路である。これは、熱交換器上に別個に取り付けられた通路とすることができるが、通常の熱交換のために使用される通路の部分区間であってもよい。この通路または部分区間は、特に熱交換器の、第2の冷端部から第1の暖端部の方向に最大50%、40%、30%または20%伸びる領域上または領域内に延在する。しかしすでに述べたように、この通路または部分区間は、暖端部において熱交換器の端末の30%を構成する第1の領域上または第1の領域内には配置されていない。第1の実施形態では、第2の領域の冷却は、冷却流体として使用される流体の気化により、第2の領域と熱接触している気化通路で行われる。ここで使用される液体(すでに述べたように、特に液体窒素)は容器から取り出され、気化の際に形成されたガスが(部分的または完全に)容器に戻され、この液体は、容器内で気化により上昇したガスの圧力によって気化通路に圧送される。このようにして自然循環が生じ、使用される冷却剤の量が低下する。
【0055】
従来技術による方式とは反対に、第1の実施形態では、このときシステム全体における圧力の調節によって、特に圧力制御を使用し、容器からガスを適切に放出することによって、気化温度および冷却の温度を調節することができる。本発明の第1の実施形態おいては、冷却のために液状媒体を気化させることにより、ガスを使用する公知の方式と比較して、冷却剤の必要量は減少させて、放出される熱量を明らかに増大させることができる。
本発明の方法では、第1の実施形態によれば、有利には、液体を気化通路で気化する量が、液体を容器に供給することによって調節され、容器への液体の供給は、特に温度制御によって制御することができる。このようにしても、熱交換器の第2の端部の冷却が行われる温度を適切に調節することができる。
【0056】
本発明の第2の実施形態では、ガス状の冷却流体が使用される。冷却に使用される通路は、熱交換器内で第1の端部と第2の端部との間に延在する熱交換器通路のそれぞれの部分区間であり、かつ特に第1の動作モードで通常の熱交換のために、とりわけ第1および/または第2の流体の流れ、またはさらなる流体の流れのために使用される部分区間である。このとき、部分区間は、特に対応する(中間)取り出し手段、例えばサイドヘッダにより形成することができる。対応する部分区間が形成される通路は、特に、例えば存在する通路全体の数の50%未満など、一部のみで構成されていてよい。
【0057】
第2の実施形態では、部分区間が、特に第1の(暖)端部と第2の(冷)端部との間で、熱交換器通路の全長の50%、40%、30%または20%、例えば5~15%以下の長さで構成されている。しかし、すでに述べたように、これらの部分区間は、本発明では暖端部において熱交換器の端末30%で構成される第1の領域上または第1の領域内には配置されていない。部分区間のこの種の構成により、特に第2の領域あるいは熱交換器の冷端部が適切に冷却され、第1の領域あるいは暖端部での(不所望の)熱放出は行われない。
【0058】
すでに述べたように、本発明では両方の実施形態において、第2の時間帯で第1の領域に熱を供給することができ、この熱は熱源によって提供され、熱交換器の外部から第1の領域に伝達される。対応する熱源は、最も簡単な場合、周囲熱とすることができ、周囲熱は、適切な措置によって、例えばコールドボックスの該当領域に導入するか、または熱交換器の第1の領域に送ることができる。しかしまた、熱源は、以下にさらに詳細に説明するようなアクティブ型加熱装置とすることもできる。
【0059】
例えば、この熱を熱源によって提供し、熱交換器の外部にあるガス空間を介して第1の領域に伝達したり、またはこの熱を、熱交換器に接触する構成要素、例えば金属もしくは非金属支持体、懸架部もしくは固定具を介して熱交換器ブロックに供給したりすることができる。本発明においては、固体接点を備える電気加熱ベルトを使用することも可能である。熱がガス空間を介して伝達される実施形態では、熱伝達は固体接触がほとんどないか、または完全にない状態で行われる。すなわち、ほとんどもしくは完全にガス空間内の熱伝達の形で行われ、つまり固体熱伝導による熱伝達は行われないか、またはほとんど行われない。「ほとんど」という用語は、ここでは熱量の20%未満または10%未満の割合を指す。電気加熱ベルトのような別の加熱装置を使用する場合、この比率はもちろん相応に異なる。
【0060】
したがって本発明は、この実施形態において、第2の時間帯で対応する熱交換器の暖端部のアクティブな加熱を実行するか、あるいは熱伝導を介するパッシブな加熱を許容するように設けられている。この場合、「熱交換器の外部」という用語は、熱交換器通路に目的どおりに流体を流すことによっても可能な代替の加熱方式と本発明とを区別するものである。したがって、この実施形態では、特に、熱交換器通路を通る流体の熱の伝達によって加熱は行われない。
【0061】
この関連において、特に、ここで熱交換器の「領域」(第1の領域あるいは第2の領域)と言う場合、この種の領域を、熱交換器への第1あるいは第2の流体の流れの直接的な供給個所に限定する必要はなく、むしろこれらの領域は、対応する熱交換器の特に端末部分、すなわち熱交換器の中央方向に延伸している所定の区間であってもよいことを述べておく。このとき、対応する領域は、特に対応する熱交換器の端末の10%、20%または30%で構成されていてよく、本発明によれば、第1の領域とは暖端部における端末の30%を意味している。対応する領域は、通常、熱交換器の残りの部分から構造的に明確に区切られていない。
【0062】
本発明において、熱源による熱は、第1の領域に接触する熱伝導要素を介する固体熱伝導により、熱交換器通路の外部から熱交換器に伝達することができる。このことは、すでに述べたように、熱伝導要素としての支持体または金属もしくは非金属要素を介して行うことができ、これらは熱交換器に接触しており、例えば抵抗加熱もしくは誘導加熱によって加熱される。この場合、対応する配置は、基本的に米国特許出願第5233839号で提案されているように構成することができる。
【0063】
しかしまた、固体熱伝導による熱伝達の代わりに、熱源によって提供される熱を、熱交換器の外部に存在するガス空間を介して第1の領域に伝達することもでき、しかも、すでに説明したように、少なくとも部分的に対流によって、および/または少なくとも部分的に放射によって、すなわち熱放射によって伝達することも可能である。
【0064】
熱が加熱装置から熱交換器の外部に存在するガス空間を介して第1の領域に伝達される実施形態による本発明は、例えば前述の米国特許出願第5233839号とは異なり、熱を伝達するために対応する領域に設けられている懸架が不要であるという特別な利点を有する。したがって、本発明により、この実施形態においては、熱交換器ブロックを別の領域、例えば下方または中央で支承する場合も温度調整が可能となり、このような仕方で、対応する熱交換器と周囲とを接続する配管への応力を低減することができる。これに対して従来技術で提示される方式は、対応する熱交換器ブロックが上方で懸架される場合だけ使用することができる。言及した本発明の実施形態に対して、前述の従来技術に記載された方式のさらなる欠点は、ここでは熱が限定的にサポート部にしか取り込まれず、対応する領域における熱交換器の面全体にわたって取り込まれないことである。そのため、例えば、対応する熱交換器の薄板ジャケット移行部に凍結が生じることがある。これに対して、本発明の前述の実施形態では、熱の有利な取り込みが可能であり、このような仕方で、前に述べたような欠点のない効率的な温度調整が可能になる。
【0065】
特に本発明においては、すでに述べたように、ガス空間を介して、少なくとも部分的に熱を対流および/または放射で第1の領域に伝達することができる。この場合、対流による熱伝達のために、特にガス乱流を誘発させることができ、これにより熱の蓄積が回避される。これに対して、純粋な放射加熱は、対応する赤外線を介して第1の熱交換器の第1の領域に直接作用する。
【0066】
本発明の方法は、何度も述べたように、相応に液状化されたガス混合気が分離部に供給される、空気または天然ガスの極低温分離方式などのガス分離方式で使用するのに特に適している。したがって、第1の動作モードでは、第1の流体の流れが、熱交換器で部分的または完全に冷却された後、有利には精留の少なくとも一部に供給される。言い替えると、ガス分離方式では、第1の流体の流れを少なくとも部分的に液化し、特に、材料組成の異なる画分に分離するように設けられている。しかし、分離に比べれば僅かな変化だが、凝縮温度の違いによるある程度の変化が、液化自体からすでに生じていることもある。
【0067】
本発明は、熱交換器を備える配置にも関し、この配置は、第1の時間帯で第1の動作モードを実行し、第1の時間帯と交番する第2の時間帯で第2の動作モードを実行し、第1の動作モードでは第1の温度レベルで第1の流体の流れを形成し、第1の温度レベルにある第1の領域で熱交換器に供給し、熱交換器で部分的または完全に冷却し、第1の動作モードでさらに第2の温度レベルにある第2の流体の流れを形成し、第2の温度レベルにある第2の領域で熱交換器に供給し、熱交換器で部分的または完全に加熱し、第2の動作モードでは第1の流体の流れおよび第2の流体の流れの熱交換器への供給を部分的または完全に停止するために設置されている手段を有している。
【0068】
本発明に基づき暖端部において熱交換器の端末の30%を構成する第1の領域にではなく、本発明に基づいて第2の領域において熱交換器内または熱交換器上に通路が提供されており、さらに、第2の領域を第2の時間帯で、第1の領域にではなく第2の領域において熱交換器内または熱交換器上の通路を通って流れる冷却流体を使用して冷却するように設置されている手段が提供される。
【0069】
本発明の配置にも関連する前述の第1の実施形態では、熱交換器の第2の領域内で通流される通路が気化通路として使用され、極低温液体を冷却流体として収容するために設置されている容器が提供されている。流体を容器から取り出し、気化通路で気化させるために設置されている手段が提供されており、この手段は、気化の際に形成されたガスを容器にフィードバックし、容器内で気化により上昇したガスの圧力によって液体を気化通路に圧送するために設置されている。
【0070】
対応する配置体では、すでに述べたように、特に熱交換器内部に形成された通路とは別に、気化通路が熱交換器の外側に設けられている。
【0071】
第2の実施形態において、通路は、熱交換器内で特に第1の(暖)端部と第2の(冷)端部との間に延在する熱交換器通路のそれぞれの部分区間であり、この部分区間は、熱交換器通路の全長、詳細には第1の(暖)端部と第2の(冷)端部との間の50%または40%以下、特に30%または20%以下、特に5%または10%以下の長さを含み、冷却流体はガス状で提供可能であり、熱交換器通路の部分区間を通して案内可能である。しかしすでに述べたように、前述の部分区間は、暖端部において熱交換器の端末の30%を構成する第1の領域内には形成されていない。
【0072】
有利な実施形態によれば、さらに、熱源、詳細には加熱装置が設けられており、この装置は、熱を熱源によって提供し、熱交換器の外部から第1の領域に伝達することによって、第2の時間帯に第1の領域に熱を供給するために設置されている。
【0073】
本発明による配置およびその有利な実施形態のさらなる態様については、本発明の方法およびその実施形態に関する上記の説明を明示的に参照されたい。本発明による配置は、対応する方法および方法の変形形態について説明した利点から利益を得る。
【0074】
有利には、本発明における熱交換器は、コールドボックス内に配置されており、熱を伝達できるガス空間が、コールドボックス内部の断熱材料のない領域によって形成されている。熱交換器の第1の領域は、この場合、特に第1の領域に接触する懸架部なしにコールドボックス内部のガス空間に配置されていてよい。これに関しても上記の説明を参照されたい。
【0075】
本発明において、熱源は、特に熱放射器の形による加熱装置として形成されていてよく、この装置は、例えば電気的に、または燃料ガスを使用して加熱することができる。しかしまた、この加熱装置は、特に抵抗加熱装置または対流加熱装置として形成されていてもよく、熱交換器の第1の領域に接触する熱伝導要素を加熱する。
【0076】
本発明はさらに、ここでは前に説明したような配置を有することを特徴とするシステムにも関する。このシステムは、特にガス混合気分離システムとして形成されていてよい。さらに、このシステムは、特に、実施形態においてすでに説明したような方法を実施するために設置されていることを特徴とする。
【0077】
以下に、本発明の実施形態および対応する熱交換図を示す添付図面を参照してより詳細に本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】本発明の実施形態による措置を使用しない、運転停止後の熱交換器における温度経過を示す図である。
図2】本発明の特に好適な実施形態による熱交換器を備える配置図である。
図3】本発明のもう1つの特に好適な実施形態による熱交換器を備える配置図である。
図4】本発明の実施形態による配置を装備することのできる空気分離システムの図である。 図面中、同一の要素や、機能的または意味的に互いに対応する要素は、同じ参照符号により示されており、明確にするため繰り返して説明しない。
【発明を実施するための形態】
【0079】
図1は、本発明の有利な構成による措置を使用しない、運転停止後の(通流されない)熱交換器における温度経過を温度線図の形で示したものである。
【0080】
図1に示された線図には、対応する熱交換器の暖端部における温度(Hで表示)と、冷端部における温度(Cで表示)とが、それぞれ縦軸を℃とし、横軸を時間として示されている。
【0081】
図1から理解されるように、熱交換器の暖端部の温度Hは、運転停止の開始時には、まだ熱交換器の通常運転時の温度に相当し(約20℃)、冷端部の温度Cは約-175℃である。これらの温度は、時間と共に互いに同じになる。これは、熱交換器に組み込まれた材料の熱伝導率が高いためである。言い替えると、ここでは熱が暖端部から冷端部の方向に流れる。周囲からの熱入力と相まって、約-90℃の平均温度になる。冷端部における明らかな温度上昇は、大部分が熱交換器における内部温度平衡化によるものであり、僅かな部分だけが外部からの熱入力によるものである。
【0082】
何度も述べたように、図示されているケースにおいて、熱交換器の暖端部に再生後しばらくしてさらなる措置がないまま図示されている例で約20℃の暖かい流体が当てられると、過度に強い熱応力が発生し得る。しかし、同様に、熱交換器に後置接続されたシステムが、直ぐにまた、例えば空気分離システムの精留塔から極低温液体などの極低温流体を送出する場合にも熱応力が発生することがある。しかし、本発明は、後者の問題がさほど発生しないか、または全く発生しないシステムに関連する。
【0083】
図2には、本発明の特に好適な実施形態による熱交換器を備える配置が示されており、全体に10の符号が付されている。図2による実施形態は、この場合、前に説明した第1の実施形態に実質的に相当する。
【0084】
熱交換器には符号1が付されている。熱交換器は、第1の領域11と第2の領域12とを有し、ここではこれらの領域がそれぞれ熱交換器1の残りの部分から構造的に区別されている。第1の領域11と第2の領域12とは、特に流体の流れの供給あるいは取り出しを特徴とする。
【0085】
図示されている例では、熱交換器1を介して2つの流体の流れAとBとが通っており、流体の流れAは、前述で第1の流体の流れと呼んでいたものであり、流体の流れBは、前述で第2の流体の流れと呼んでいたものである。第1の流体の流れAは、熱交換器1内で冷却され、これに対して第2の流体の流れBは、加熱される。熱交換器を通る流体の流れAとBとの案内は、一般に通常運転中、すなわち前に説明した第1の時間帯または動作モードの間だけ行われる。これに対して、後に説明する冷却は第2の時間帯または動作モードで行われる。
【0086】
これに関する詳細は、上記の説明を参照されたい。特に、何回も説明した熱交換器の第2の動作モードでは、対応する流体の流れAとBが通流しないか、または第1の動作モードのような範囲では通流しない。例えば第2の動作モードでは、流体の流れAとBとは、別のものを使用するか、あるいはより少ない量を使用することもできる。
【0087】
熱交換器1は、配置10においてコールドボックス(図示されていない)に収容されていてよく、このコールドボックスは、特に部分的に断熱材料、例えばパーライトを充填することができる。断熱材料のない領域は、これは同時に熱交換器1の第1の領域11を取り囲むガス空間であるが、符号Gで示されている。
【0088】
配置10内には加熱装置3が設けられており、この加熱装置は、第2の動作モードの特定の時間帯にかけて、または第2の動作モード全体の時間帯にかけて熱交換器1の第1の領域11を加熱する。そのために、配置10内の加熱装置3によって、ここでは複数の矢印により示される熱Hを、熱交換器1の第1の端部11または第1の領域11に伝達することができる。ここではガス空間Gを介する熱の伝達が示されているが、加熱装置3が相応に形成されていれば、これは基本的に例えば金属熱伝導要素を介して行うこともできる。第1の動作モードでは、通常、対応する熱伝達が行われない。熱交換器の第2の領域12は、ここに示した本発明の実施形態によれば、冷却されるか、あるいは以下に説明するように、この領域から熱がアクティブに排出される。
【0089】
ここに示した本発明の実施形態では、熱交換器1の第2の領域12は、第2の領域12と熱接触する気化通路13内での液体の気化によって冷却される。このとき、液体が容器2から取り出され、気化の際に形成されたガスは、部分的または完全に容器2にフィードバックされる。ここに示した本発明の実施形態では、液体は、気化によって上昇した容器2内のガスの圧力によって気化通路13に圧送される。したがって、自然循環が生じる。
【0090】
図2の配置では、液体が気化通路13内で気化される量は、供給管Fを介する容器2への液体の供給によって調節される。液体の容器2への供給は、温度制御TCにより、温度センサTIによって検出された値に基づいて制御される。
【0091】
さらに、ここに示した実施形態では、ガスの気化によって上昇した容器2内の圧力は、ガスを容器2から放出することにより調節され、そのために、ここでは圧力センサを備える圧力制御PCが使用される。これは、オフガス管Oにあるバルブ(特に図示されていない)に作用する。相応の圧力調節により、さらに気化温度および冷却温度が調節される。
【0092】
図3には、本発明の特に好適な実施形態による熱交換器を備える配置が示されている。図3による実施形態は、この場合、前に説明した第2の実施形態に実質的に相当する。
【0093】
ここでも配置全体に符号10が付されている。熱交換器には再度符号1が付されている。この熱交換器は、第1の領域11と第2の領域12とを有する。さらなる詳細は、図2の説明を参照されたい。
【0094】
図示されている例でも、熱交換器1を介して2つの流体の流れAとBとが通っており、流体の流れAは、前述で第1の流体の流れと呼んでいたものであり、流体の流れBは、前述で第2の流体の流れと呼んでいたものである。第1の流体の流れAは、熱交換器1内で冷却され、これに対して第2の流体の流れBは、加熱される。熱交換器を通る流体の流れAとBの案内は、一般に通常運転中、すなわち前に説明した第1の時間帯または動作モードの間だけ行われる。これに対して、後に説明する冷却は、第2の時間帯または動作モードで行われる。
【0095】
熱交換器1内には、それぞれここでは暗示的にのみ示された熱交換器通路14が、第1の端部11と第2の端部12との間に延在している。
【0096】
これらの通路は、それぞれの部分区間14’を含み、この部分区間は、熱交換器通路14の全長の20%未満の長さが、第1の端部11と第2の端部12との間に含まれている。冷却流体Cは、ガス状で提供され、熱交換器通路14の部分区間14’を通して案内される。
【0097】
図4は、熱交換器を備える配置を有する空気分離システムを示す。この空気分離システムは、本発明の有利な実施形態による方法を使用して運転することができる。
【0098】
図示されている種類の空気分離システムは、すでに述べたように、例えばH.-W.Haring(編集)、Industrial Gases Processing、Wiley-VCH、2006年、特に2.2.5章「極低温精留」など、他の場所で度々説明されている。したがって、構造および機能機序についての詳細は、対応する専門文献を参照されたい。本発明で使用する空気分離システムは、さまざまなやり方で形成されていてよい。本発明の使用は、図4による実施形態に限定されない。
【0099】
図4に示した空気分離システムには、全体に符号100が付されている。このシステムは、特に、主空気圧縮器101、予冷却装置102、クリーニングシステム103、後圧縮配置104、前に説明した熱交換器1とすることができ、特に対応する配置10の一部である主熱交換器105、膨張タービン106、絞り装置107、ポンプ108、蒸留塔システム110を有する。蒸留塔システム110は、図示されている例では、高圧塔111と低圧塔112とからなる従来の二重塔配置、並びに生アルゴン塔113および純アルゴン塔114を含む。
【0100】
空気分離システム100では、投入空気流が主空気圧縮器101によって、図示されていないフィルタを介して吸引され圧縮される。圧縮された投入空気流は、冷却水により駆動される予冷却装置102に供給される。予冷却された投入空気流は、クリーニングシステム103で浄化される。通常、交互動作で使用される一対の吸着容器を含むクリーニングシステム103では、予冷却された投入空気流からほとんどの水と二酸化炭素が除去される。
【0101】
クリーニングシステム103の下流では、投入空気流が2つの部分流に分割される。部分流の一方は、投入空気流の圧力レベルにおいて主熱交換器105内で完全に冷却される。他方の部分流は、後圧縮配置104で後圧縮され、同様に主熱交換器105で冷却されるが、中間温度レベルまでしか冷却されない。このいわゆるタービン流は、中間温度レベルへの冷却後に膨張タービン106によって、完全に冷却された部分流の圧力レベルにまで膨張され、この部分流と合流し、高圧塔111に供給される。
【0102】
高圧塔111では、酸素富化液状サンプ画分と窒素富化ガス状頭部画分とが形成される。酸素富化液状サンプ画分は、高圧塔111から抜き取られ、部分的に熱媒体として純アルゴン塔114のサンプ気化器で使用され、それぞれ規定の割合で純アルゴン塔114の頭部コンデンサ、生アルゴン塔113の頭部コンデンサ、および低圧塔12に供給される。生アルゴン塔113および純アルゴン塔114の頭部コンデンサの気化室では、気化流体が同様に低圧塔112に移送される。
【0103】
高圧塔111の頭部からは、ガス状の窒素富化頭部生成物gが抜き取られ、高圧塔111と低圧塔112との間で熱交換接続を確立する主コンデンサにおいて液化され、一部は還流として高圧塔111に送られ、低圧塔112で膨張する。
【0104】
低圧塔112では、酸素富化液状サンプ画分と窒素富化ガス状頭部画分とが形成される。前者は、ポンプ108内で液体として部分的に加圧され、主熱交換器105で加熱され、生成物として提供される。低圧塔112の頭部にある液体保持装置から、液状窒素富化流が抜き取られ、液体窒素生成物として空気分離システム100から搬出される。低圧塔112の頭部から抜き取られたガス状窒素富化流は、主熱交換器105を通して案内され、低圧塔112の圧力で窒素生成物として提供される。さらに、低圧塔112からは、上部領域からの流れが抜き取られ、主熱交換器105での加熱後にいわゆる不純窒素として予冷却装置102で使用されるか、または電気ヒータによる加熱後にクリーニングシステム103で使用される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】