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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-20
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01D 11/24 20060101AFI20221013BHJP
   G01K 7/16 20060101ALI20221013BHJP
   G01K 7/22 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
G01D11/24 B
G01K7/16
G01K7/22 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508858
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2021066067
(87)【国際公開番号】W WO2021255005
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】102020116018.6
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】クー, エイブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ペルマナ, アンディ
(72)【発明者】
【氏名】シュトラルホーファー, ハインツ
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056QF01
2F056QF04
2F056QF05
2F056QF07
2F056QF08
(57)【要約】
センサ素子(2)及び電気リード線(3)を含み、前記センサ素子(2)が前記電気リード線(3)に接続されているセンサ(1)が提供される。更に、開口部を有し、前記電気リード線(3)が前記開口部を通じて突出するように前記センサ素子(2)が内部に配置されたハウジング(4)が提供される。ハウジング(4)はシリコーン樹脂(5)で充填されており、前記センサ素子(2)及び前記電気リード線(3)はシリコーン樹脂(5)によって前記ハウジング内に固定されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- センサ素子(2);
- 電気リード線(3)であって、前記電気リード線(3)は前記センサ素子(2)に接続されている、電気リード線(3);
- ハウジング(4)であって、前記ハウジング(4)は開口部を有し、前記センサ素子(2)は、前記電気リード線(3)が前記開口部を通じて突出するように前記ハウジング(4)内に配置されている、ハウジング(4);及び
- 前記センサ素子(2)及び前記電気リード線(3)が前記ハウジング(4)内で固定されるように前記ハウジング(4)を充填するシリコーン樹脂(5)
を含むセンサ(1)。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂(5)は、硬質シリコーン材料である、請求項1に記載のセンサ(1)。
【請求項3】
前記センサ素子(2)は、シリコーン樹脂(5)材料内に封入されており、
前記ハウジング(4)は、同一のシリコーン樹脂(5)材料で充填されており、
封入された前記センサ素子(2)は、前記同一のシリコーン樹脂(5)材料によって前記ハウジング(4)に固定されている、請求項1又は2に記載のセンサ(1)。
【請求項4】
前記センサ素子(2)は、無鉛はんだ(11)によって前記電気リード線(3)に接続されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項5】
前記はんだ(11)は、Sn-Cuはんだ又はSn-Ag-Cu(SAC)はんだ(11)を含む、請求項4に記載のセンサ(1)。
【請求項6】
前記ハウジング(4)は、金属酸化物又はセラミックから製作されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項7】
前記センサ素子(2)は、NTCセンサ素子(2)である、請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項8】
前記ハウジング(4)の壁厚は2mm未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項9】
前記電気リード線(3)は、前記ハウジング(4)の内側にある部分に屈曲部(10)を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項10】
前記ハウジング(4)の内面には2つの溝(9)が設けられており、
前記溝(9)は、前記開口部から長手軸に沿って前記ハウジング(4)内へ延びている、請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項11】
前記ハウジング(4)の外形は、径方向に非対称である、請求項1~10のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項12】
前記ハウジング(4)は、前記開口部を含む第1の部分(6)、及び、前記第1の部分(6)に接続された前記開口部とは反対側の第2の部分(7)の、2つの部分に分割されており、前記第2の部分(7)の広がりは前記第1の部分(6)の広がりよりも小さく、前記センサ素子(2)は前記ハウジング(4)の前記第2の部分(7)に配置されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のセンサ(1)。
【請求項13】
前記ハウジング(4)の前記第2の部分(7)における壁厚は、前記第1の部分(6)における壁厚よりも小さい、請求項12に記載のセンサ(1)。
【請求項14】
- 請求項1~13のいずれか1項に記載のセンサ(1)、及び
- ソケット(12)であって、前記ソケット(12)は、当該ソケット内に配置された前記センサ(1)の外形に適合した内形を有する、ソケット(12)
を含む装置。
【請求項15】
- 請求項12又は13に記載のセンサ(1)、及び
- ソケット(12)であって、前記ソケット(12)は、前記第2の部分(7)の広がりよりも大きな広がりを有する孔を有し、前記センサ(1)は、前記センサ(1)の前記第2の部分(7)が前記孔を通じて突出するように、前記ソケット(12)内に配置されている、ソケット(12)
を含む装置。
【請求項16】
- プリント回路基板(PCB)であって、前記ソケット(12)は前記PCB上に配置されており、前記センサ(1)は前記PCBと電気的に接続されている、プリント回路基板(PCB)
を更に含む、請求項14又は15に記載の装置。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか1項に記載のセンサ(1)又は請求項14~16のいずれか1項に記載の装置を備える、スマート電力計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関する。更に、本発明は、当該センサを使用する装置及び当該センサを組み立てるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
センサは、今日、ほとんどの電子デバイスで使用される。スマートセンサのみを考察すると、全世界の販売量は、2010年の60億個から2019年の推定260億個へと増加した。モノのインターネットの発展に伴って、及び、より高性能なデバイスに対する需要に応じて、この数は更に増加することさえ予見できる。センサには、通常、生態学的に疑わしい材料が使用されるので、廃棄が将来において課題となるであろう。
【0003】
現代のスマートフォンには、一般に、少なくとも近接センサ、輝度センサ、傾斜センサ、回転センサ、加速度計、GPSセンサ、磁気センサ及び温度計が組み込まれている。
【0004】
センサにおいては、その製造を持続可能かつ環境にとってより無害なものとしつつ、一方においては信頼性が高く再現可能な測定を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、堅牢で、保護されており、信頼性の高い測定を可能にし、環境に優しいセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該課題は、請求項1に記載のセンサによって解決される。更なる有利な構成及び可能な装置は、従属請求項に見出すことができる。
【0007】
センサ素子及び電気リード線を備えるセンサが提供される。電気リード線は、センサ素子に接続されている。更に、ハウジングが設けられている。ハウジングは開口部を有し、センサ素子及び電気リード線は、電気リード線が開口部を通じて突出するように、ハウジング内に配置されている。ハウジングはシリコーン樹脂で充填されており、センサ素子及び電気リード線はシリコーン樹脂によってハウジング内に固定されている。
【0008】
例えばアルミナ酸化物又はシリコーン酸化物のようなセンサ用の普通の充填材料は、加工のために、例えばトルエン、キシレン又はIPAのような溶媒を必要とする。その結果として、硬化後にボイド、小胞及び気泡が生じるが、これらを回避することはできない。これらの含有物は、使用されたセンサ素子の不均一な環境をもたらす。その結果として、センサで行われる測定は、充填材料中の不均一性の数及び空間分布に依存して、大きく変動する。したがって、これらのセンサでは、応答時間及び測定値が変動し、信頼性の高い測定は不可能である。例えばシリコーン又はエポキシのようなポリマー樹脂を、センサのハウジング内の充填及び固定材料として使用することにより、ボイド、小胞及び他の不均一性が回避される。ポリマー樹脂は、環境からセンサ素子への均一な熱伝達を保証し、その結果、熱応答は速くなり、センサの応答時間の変動は少なくなる。その結果として、本発明によるセンサの測定の信頼性が向上する。
【0009】
センサが温度上昇に耐えなければならない用途では、充填樹脂が熱膨張係数により膨張する。例えばセンサのハウジングのような樹脂の閉じ込めは、温度変化の際、閉じ込められたセンサ素子に熱機械的応力を発生させる。比較的小さな熱機械的応力が既に、センサの測定を妨害する可能性がある。センサ素子が感圧性である場合は、一層そうである。高い熱機械的応力は、電気リード線とセンサ素子との間の接続の解除を通じて又はセンサ素子自体の破損を通じて、センサの故障をもたらす可能性がある。シリコーン樹脂は、金属酸化物又はエポキシ樹脂と比較して、はるかに高い弾性率を有するので、温度勾配がある場合にセンサ素子及び電気リード線に加わる応力ははるかに小さくなり、これにより堅牢なセンサがもたらされる。
【0010】
更に、シリコーン樹脂は、エポキシ樹脂とは対照的に、より高い長期間の温度に耐えることができる。シリコーン樹脂では200℃までの連続動作温度が実現可能であるが、それに反してエポキシ樹脂は、150℃で既に損傷を受ける。したがって、シリコーン樹脂を実装するセンサは、高温を発生させるか又は高温に曝される用途において、優れている。
【0011】
更に、シリコーンは不活性であり、高温においても他の化学物質、元素又は化合物と反応しない。シリコーンの健康上の危険性は知られていない。シリコーンは生分解性ではないが、それにもかかわらず、容易にリサイクル及びダウンサイクルすることができる。したがって、シリコーン樹脂は、他の代替物よりも環境に優しい。
【0012】
シリコーン樹脂は、硬質シリコーン材料であることができる。硬質シリコーンは、軟質シリコーンよりも剛である。したがって、センサ素子はより精密にハウジング内に固定され、ハウジング内におけるセンサ素子の位置は変化しない。更に、硬質シリコーンは、センサ素子に対してより多くの保護を提供することができる。
【0013】
一実施形態では、センサ素子がシリコーン樹脂材料中に封入されることができる一方、ハウジングは同じシリコーン樹脂材料で充填されることができ、封入されたセンサ素子は同じシリコーン樹脂材料によってハウジングに固定されることができる。センサ素子を封入するために、及び、センサ素子をハウジング内部に固定するために、同じ材料を使用することにより、2つの異なる材料が使用された場合に生じるであろう境界面が排除される。この境界面は、測定を妨害し乱す可能性がある。
【0014】
センサ素子は、無鉛はんだによって電気リード線に接続されている。鉛は、電気リード線に使用され得る多くの金属と共に、低い融点を有する合金を容易に形成し得る。例えば、電気リード線上へのSnめっきは、有鉛はんだと共に、低い温度で溶融するSnPb合金を生成する可能性がある。無鉛はんだを使用することにより、はんだ工程でそのような合金が形成される危険性が排除され、これにより、200oCに至るまでセンサが正常に機能することが保証される。更に、鉛は有毒な金属であり、環境を汚染し、重大な健康問題を引き起こす可能性がある。電気リード線をセンサ素子に接触させる際に鉛を排除することにより、センサは環境により優しくなる。
【0015】
はんだは、例えばSn-Cuはんだ又はSn-Ag-Cu(SAC)はんだを含むことができる。これらのはんだ合金は、有鉛はんだよりもはるかに高い融点を有し、センサをより高い温度で動作させることを可能にする。Sn‐Cuはんだ又はSn‐Ag‐Cu(SAC)はんだの融点は、約220℃である。したがって、提案されたはんだ及びシリコーン樹脂を使用するセンサは、より高い温度に耐えることができる。1%未満のCuの含有量が好ましい。更に、ボイド形成及びクラックを回避するために、はんだ合金にNiを添加することが可能である。
【0016】
好ましい実施形態では、ハウジングは金属酸化物又はセラミックから製作することができる。金属酸化物は、高い安定性及び比較的高い熱伝導率という有利な特性を有するので、ハウジングを金属酸化物から製作することが有利である。更に、それらは良好な電気絶縁体でもあるので、そのようなハウジングを有するセンサは、高電圧用途に適している。しかしながら、数kVの電圧は、特にハウジングが例えば金属のような導電体から成る場合、主として突出したリード線とハウジングとの間の短絡につながる可能性がある。ハウジングを金属酸化物から形成することにより、センサを5kVまでの電圧で動作させることが可能になる。金属酸化物又はセラミックのハウジングによって、センサは、過酷な動作条件下の用途に適しており、例えば酸及び塩基のような腐食性の媒体に対して耐性がある。
【0017】
センサ素子は、NTCセンサ素子であることができる。NTCセンサは、周囲の温度を測定するために使用されるため、方向に依存しない測定を可能にすることが必要である。特に、温度上昇によってトリガされるセキュリティシステムでは、信頼性があり方向に依存しない測定を可能にすることが必要である。代替として、センサ素子は、PTCセンサ素子、又は、白金の電気抵抗の温度依存性を利用するセンサ素子であることができる。
【0018】
ハウジングの壁厚は、2mm未満であることができる。一方において、ハウジングの壁厚は、ハウジング内部のセンサ素子を保護するために十分に厚くなければならない。他方において、ハウジングは、センサの感度を損なわないように、環境をセンサ素子から隔離すべきではない。2mm未満の壁厚が有利であることが判明している。0.5mmより大きく1mm未満の壁厚が、特に有利である。
【0019】
更に、電気リード線は、ハウジング内部に位置する電気リードの一部において屈曲していてもよい。リード線を屈曲させることにより、両方のリード線が接触せず、短絡が発生しないことが保証され得る。更に、リード線の屈曲は、ハウジングの内側に存在し得る溝内での電気リード線の係合を支援するための横方向の力を発生させ得る。同様に、屈曲によって生じる電気リード線のバネ張力は、センサ素子がハウジング内に配置されるポッティングプロセス中にセンサ素子を取り扱うのに役立つと共に、センサが適用対象内に組み込まれるか又は取り付けられる場合にセンサ全体を取り扱うのに役立つ。
【0020】
ハウジングは、その内面に2つの溝を有することができる。溝は、開口部から長手軸に沿ってハウジング内へ延びることができる。溝の内部には、センサ素子に接続された電気リード線を配置することができる。このようにして、ハウジングの内部でのセンサ素子の向きが、ハウジングに関して固定されている。
【0021】
更に、ハウジングの外形は、径方向に非対称であることができる。更に、ハウジングは長手軸を有することができ、ハウジングは、その長手軸周りの180°とは異なる回転角での回転に関して、径方向に非対称であることができる。それに応じて、センサ素子がハウジング内で向いている方向、並びに、デバイス内でのハウジングの方向は、回転非対称性に関して明確に確定することができる。センサ素子の信号出力は、しばしば、測定される事象までの距離だけでなく、センサ素子が当該事象に向く角度にも、依存している。例えば、熱源に直接的に面するNTCセンサ素子は、熱源に対して垂直に配向されたNTCセンサよりも、多くの熱エネルギーに晒される。ハウジング内でのセンサ素子の方向及びデバイス内でのハウジングの方向を、その外形によって決定することにより、センサ素子が作動し、信頼性が高く再現可能な値を測定することが保証される。更に、径方向に非対称な外形を有するハウジングは、ポカヨケ原理を満たす。内部にセンサが使用されるデバイスを組み立てる際、ハウジングとの適切な接続が使用されることにより、ミスが回避され得る。更に、ハウジングの外形は、互いに対向する少なくとも2つの平坦化されたセグメントを有することができる。センサは、平坦化されたセグメントで確実に受容され得る。なぜなら、平坦化されたセグメントは、安定した把持のための手段を提供するからである。したがって、センサは、ピックアンドプレースマシンによって、デバイス内で容易に組み込まれ取り付けられることができる。
【0022】
開口部を含む第1の部分、及び、第1の部分に接続された開口部とは反対側の第2の部分の、2つの部分に分割されていることができる。第2の部分は第1の部分よりも小さな直径を有することができ、センサ素子は、ハウジングの第2の部分に配置されることができる。第2の部分に配置されたセンサ素子は、第1の部分と比較して、より少ない材料によって取り囲まれている。これにより、より高い測定精度及びセンサのより短い応答時間が可能になる。同時に、ハウジングのうちより大きな径を有する第1の部分は、センサをより良好に取り扱うための手段を提供し、センサ素子に接続されたリード線を安定させる。2つの部分を有するハウジングの形状の更なる利点は、センサ及びそれが向いている方向を、例えばピックアンドプレースマシンのような機械によって容易に認識することができ、したがって、センサを容易に加工することができることにある。このようにして、デバイス内でセンサを取り付けるための加工時間を、自動化により減少させることができる。
【0023】
ハウジングの第2の部分における壁厚が、第1の部分における壁厚よりも小さいと、有利であり得る。センサ素子は第2の部分にあるので、より小さな壁厚が、例えば熱的な環境への結合を強め、センサの応答時間及び感度を最適化することができる。
【0024】
装置は、本発明によるセンサと、ソケットと、を備えることができる。ソケットは、センサの外形に適合した内形を有することができ、センサはソケット内に配置されることができる。したがって、装置はポカヨケ原理を満たしており、それにより、装置を組み立てる際に起こり得るミスが最小限に抑えられる。センサ素子は、ハウジングに関してだけでなく、ソケットに関しても、同じ位置に配あるる。したがって、センサの交換によって測定結果は変わらない。なぜなら、センサ素子の方向付け及び位置決めは同じままだからである。
【0025】
ソケットは、その広がりに関してセンサの第2の部分の広がりよりも大きな孔を有することができる。更なる装置では、センサは、センサの第2の部分が孔を通じて突出するように、このソケット内に配置されることができる。したがって、第2の部分にあるセンサ素子は、例えばセンサ素子の確実な位置決め及び方向付けのような、ソケットによって与えられる利点を維持しながら、ソケットの外部の特性をより直接的に測定することができる。したがって、そのような装置は、より正確に測定することができる。
【0026】
他の装置は、本発明によるセンサ又は装置と、プリント回路基板(PCB)とを含むことができ、それにより、ソケット又はセンサをPCB上に配置することができ、センサをPCBに電気的に接続することができる。PCBは、例えば抵抗、コイル、又は、例えばプロセッサなどのチップのような、熱を発生する多数の構成要素を備えている。例えば温度のような、これらの構成要素の特性を監視することができる場合、それにより安全性が向上する。なぜなら、PCBを使用するデバイスは、温度上昇の後にスイッチオフされ得るからである。本発明によるセンサは、より信頼性の高い測定を行うため、特に適している。
【0027】
同様に、本発明によるセンサ又は本発明によるセンサを含む装置を含むスマート電力計は、好都合であり得る。特に建物用のスマート電力計では、電気が電力供給網から様々な世帯に分配されるため、高い電流及び電圧が発生する。この理由から、例えば破損した導線又は腐食のようなあらゆる欠陥は、例えば火災のような破滅的な故障につながる可能性がある。したがって、例えば熱発生のような擾乱を確実に測定することができるセンサは、警告のために又は電力の遮断のために、使用することができる。
【0028】
記載されたセンサの1つの利点は、その組み立てが安全な方法で行われ得ることにある。
【0029】
方法は、以下のステップを含む:
a)例えば無鉛はんだ付けによって、センサ素子を電気リード線に接続するステップ
b)センサ素子をシリコーン樹脂内に浸漬するステップ
c)センサ素子上のシリコーン樹脂を硬化させるステップ
d)電気リード線が開口部を通じて突出するように、開口部を有するハウジング内でセンサを配置するステップ
e)ハウジングにシリコーン樹脂を充填するステップ
f)ハウジング内のシリコーン樹脂を硬化させるステップ
【0030】
プロセスは、組み立てプロセスにおける損失率及び故障率を最小限に抑える。ステップb)及びc)において、センサ素子をシリコーン樹脂内に浸漬し、その後硬化させることにより、センサ素子と電気リード線との間の接続強度が向上する。したがって、センサ素子がステップd)においてハウジング内に配置されると、センサ素子とリード線との間の接続が破損する危険性は低い。それとは別に、同じ材料、すなわちシリコーン樹脂が、センサ素子を電気リード線と共に封入し、ハウジングを充填するために使用されるので、センサの感度が向上する。同じ材料を使用することにより、2つの異なる材料が使用される場合と比較して、顕著な境界面は生じない。その結果として、センサ素子はより高感度であり、例えば増大する温度差に対してより短い応答時間を有する。
【0031】
以下で、本発明の実施形態及び製造方法を、図面を参照して説明する。同じ部品又は同等の効果を有する部分は、同じ参照番号によって参照される。
【0032】
図面は、本発明を説明することのみを意図しており、したがって、概略的にのみ描かれており、縮尺どおりには描かれていない。いくつかの部品が、寸法に関して誇張され又は歪められていることがある。したがって、図面からは絶対的な寸法も相対的な寸法も読み取ることはできない。同一又は同等に作用する部品には、同一の参照番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】センサの簡略化された断面を示している。
図2】センサのためのハウジングの断面を示している。
図3】センサのハウジングの平面図を示している。
図4】センサのハウジングの斜視図を示している。
図5】孔を有するソケット内に配置された、図1のセンサの簡略化された断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1には、本発明の第1の実施形態によるセンサ1の簡略化された断面が示されている。センサ1は、センサ素子2及び電気リード線3を含む。センサ素子2は、例えば無鉛はんだ11によって、電気リード3に接続されている。
【0035】
鉛は、多くの金属と共に低い融解温度を有する合金を形成し、それは、特にはんだ11用として利用される。そのような合金のいくつかの例は、バビットメタル、セロセーフ、テルル化鉛スズ、有鉛銅、ライノタイプ、モリブドカルコス、クイーンズメタル又はローズメタルである。そのような合金の融点は約150℃であり、したがって、センサ1が使用され得る温度範囲を制限することになる。例えばSn-Cuはんだ又はSn-Ag-Cu(SAC)はんだ11のような無鉛はんだ11を使用することにより、センサ1は、より高い温度で動作することができる。なぜなら、Sn-Cuはんだ又はSn-Ag-Cu(SAC)はんだの融点は約220℃だからである。更に、鉛は、環境を損なう有毒な元素である。それは、ヒトや動物において、例えば鉛毒のような健康問題を引き起こす。鉛は、植物によっても容易に吸収され、それによって食物循環に取り込まれる。センサ1内の有鉛はんだ11を排除することにより、センサ1はより環境を破壊しないものとなる。
【0036】
開口部を有するハウジング4の内部には、センサ素子2が、電気リード線3がハウジング4の開口部を通じて突出するように配置されている。したがって、センサ1は、容易に取り付けられ、デバイス内で接続され得る。ハウジング4はシリコーン樹脂5で充填されており、センサ素子2及び電気リード線3はシリコーン樹脂5によってハウジング4内に固定されている。
【0037】
特に、電気リード線3に接続されたセンサ素子2は、先ずシリコーン樹脂内に浸漬され、硬化され、それにより、シリコーン樹脂封入体5aが形成される。その後、封入されたセンサ素子2はハウジング4内に配置され、ハウジング4はシリコーン樹脂充填物5bで充填される。シリコーン樹脂封入体5a及びシリコーン樹脂充填物5bは、共にハウジング4内のシリコーン樹脂5を形成する。このように、センサ素子2を封入する材料は、ハウジング4の内面に接触する同じ材料であり、センサ素子2をハウジング4内で固定する。封入及びハウジング4の充填のためにシリコーンを使用することにより、2つの異なる材料が使用される場合には逆に大きく展開されるであろう境界面の形成が、低減される。
【0038】
例えばシリコーンのようなポッティング材としてのポリマー材料は、広くポッティングに使用される金属酸化物と比較して、気泡及びボイドの形成を回避する。これらの含有物は、信頼性の低い測定につながるセンサ素子2の不均一な環境の原因となる。なぜなら、測定値は充填材中の不均一性の空間分布に依存するからである。シリコーン樹脂5をハウジング4内の充填及び固定材料として使用するセンサ1は、不均一性を回避し、それによりセンサ1の測定の信頼性及び再現性を向上させる。更に、シリコーン樹脂5は湿気に耐えることができ、これによりセンサ1に印加可能な電圧が高められる。
【0039】
やはりポリマー材料であるエポキシ樹脂と比較して、シリコーン樹脂は、いくつかの顕著な利点を有する。第一に、シリコーン樹脂5は、特に大きな温度勾配又は高い温度が生じる用途において、ハウジング4内のセンサ素子2又は電気リード線3により小さな熱機械的応力をもたらす、より大きな弾性率を有する。第二に、シリコーン樹脂5は、エポキシ樹脂とは対照的に、より高い温度に耐え、それにより、シリコーン樹脂5を利用するセンサ1は、特に無鉛はんだ11との組み合わせで、高温用途により適したものになる。更に、シリコーン樹脂5は不活性であり、したがって、高い温度においてもその環境と反応しない。したがって、シリコーン樹脂5は毒性がなく、更に環境により優しい。
【0040】
図1のセンサ素子2は、NTCセンサ素子2である。NTCセンサ素子2は、環境の温度を測定する。したがって、方向に依存しない測定が、NTCセンサには望ましい。特に、温度上昇によってトリガされるセキュリティシステムは、緊急の場合に再現可能な挙動を提供するために、信頼性があり方向に依存しない測定を必要とする。
【0041】
ハウジング4内には、開口部から長手軸に沿ってハウジング4の底部まで延びる2つの溝9が、ハウジング4の内面に配置されている。代替として、溝は、例えば開口部を形成する第1の部分6のような、ハウジング4の一部にのみあってもよい。更に、電気リード線3は、ハウジング4の内側の部分に、2つの屈曲部10を有する。それにより、電気リード線3は、互いに押し合うバネのような構成要素を形成する。その結果として、両方の電気リード線3は互いに開かれ、それらが短絡を発生させることは、あり得ない。同様に、電気リード線3の屈曲部10によって引き起こされる横方向の力が、電気リード線3をハウジング4の内側の溝9の中に押し付ける。このようにして、センサ素子2の方向付けがハウジング4と比較して確定される。更に、電気リード線3に加えられる横方向の力は、センサ1又はセンサ素子2の取り扱いを容易にするので、ポッティングプロセス又は組み立てプロセス中に役に立つ。
【0042】
図2には、本発明によるセンサ1のためのハウジング4の断面が示されている。ハウジング4は、上側に開口部を含む第1の部分6、及び、第1の部分に接続された開口部とは反対側の第2の部分7の、2つの部分を有し、それにより、第2の部分7は第1の部分6よりも小さな直径を有する。溝9は、ハウジング4の内側で、開口部から底部まで全体に亘って延びている。センサ素子2は、ハウジング4のうちより小さな直径を有する第2の部分7に配置されている。センサ素子2は、第2の部分7とは対照的に、より少ない材料によって取り囲まれているので、センサ1についてより高い測定精度及びより速い応答時間が提供される。ハウジング4のうちより大きな直径を有する第1の部分6は、センサ素子2に接続された電気リード線3を安定させる。
【0043】
更に、周囲からセンサ素子2への熱伝導性を向上させ、センサ1の応答時間を向上させるために、ハウジング4の第2の部分7の壁厚は、第1のハウジング4の壁厚よりも小さい。図2に示すハウジング4の壁厚は、0.7mmである。ハウジング4の壁厚は、センサ素子2を保護するために、それを取り付けるか又は組み込む際にセンサ1に加えられる圧力に耐えるのに十分に堅牢であるべきである。それとは別に、ハウジング4は、高い感度を提供するために、環境を熱的にセンサ素子2に接続しなければならない。2mm未満の壁厚が、特に温度センサにとって有利であることが判明している。例えば0.7mmのような、0.5mmより大きく1mm未満の壁厚が、特に有利である。
【0044】
図3には、センサ1のためのハウジング4の平面図が示されている。それは、中央に丸い開口部を形成する、ハウジング4の第1の部分6を示している。第1の部分6の外形及び輪郭は、径方向に非対称である。ハウジング4の輪郭は、互いに対向する2つの平坦化されたセグメント8を有する。このようにして、センサ1は、平坦化されたセグメント8で確実に受容され得る。なぜなら、平坦化されたセグメント8は、安定した把持のための手段を提供するからである。したがって、センサ1は、ピックアンドプレースマシンによって、容易にデバイス内で取り付けられ組み込まれることもできる。
【0045】
径方向に対称ではないハウジング4を使用することにより、ハウジング4内でセンサ素子2が向いている方向、及び、デバイス内でのハウジング4内の方向が、決定され確定される。その結果として、センサ1の位置及び方向は、デバイス内において全く同じである。センサ素子2は、それらが測定すべき事象に対して有する角度及び距離に依存する。一例として、その大きな平面で熱源に面する平面的な温度センサ素子2は、熱源に対して垂直に方向付けられたNTCセンサよりも、多くの熱エネルギーを受容する。ハウジング4内でのセンサ素子2の方向及びデバイス内でのハウジング4の方向を、その外形及び輪郭によって決定することにより、センサ素子2及びそれによってセンサ1自体が、作動し、信頼性が高く再現可能な値を測定することが保証される。溝9は、ハウジング4の外側輪郭の一部である平坦化されたセグメント8に関して、中央にある。電気リード線3は溝9内に係合することが想定されており、溝は平坦化されたセグメント8と比較して固定されているので、ハウジング4内でのセンサ素子2の方向付けは、平坦化されたセグメント8に関して予め定められている。このようにして、ハウジングの方向付け及び位置付けが特定される所与の環境において、センサ1が再現可能に測定することが保証される。
【0046】
図4は、ハウジング4の斜視図を示している。上述したように、ハウジング4は2つの部分を有し、径方向に非対称であり、第1の部分6の上に2つの平坦化されたセグメント8を有する。それは、96%のアルミナ及び4%の酸素を含む金属酸化物である、アルミナ酸化物から製作されている。金属酸化物は、高い安定性及び比較的高い熱伝導性を提供する。更に、金属酸化物は電気絶縁体である。したがって、金属酸化物から製作されたハウジング4を有するセンサ1は、高電圧用途に用いることができる。シリコーン樹脂5は、センサの絶縁破壊電圧を低下させるであろう湿気に強いからである。高い電圧が電気リード線に印加されると、特に突出する電気リード線3とハウジング4との間で、短絡が発生する可能性がある。電気絶縁体から製作されたハウジング4は、有利であり得る。金属酸化物から製作された、図4に示されたハウジング4を使用するセンサ1は、5kVまでの電圧で動作させることができる。
【0047】
図5は、孔を有するソケット12内に配置された、図1のセンサの簡略化された断面を示している。センサ素子2は、孔を通って突出するハウジング4の第2の部分7に配置されている。したがって、センサ1は、例えばセンサ素子の確実な位置決め及び方向付けのような、ソケット12によって与えられる利点を維持しながら、ソケット12の外部の特性を測定することができる。ソケット12は、例えば平坦化されたセグメント8のような、ハウジング4の外形に適合した内形を有する。したがって、装置はポカヨケ原理を満たし、例えば組み立ての際の誤った方向付けのようなミスを減少させる。更に、センサ1の交換又は修理のための装置の分解は、リスクが少なくなる。
【符号の説明】
【0048】
1 センサ
2 センサ素子
3 電気リード線
4 ハウジング
5 シリコーン樹脂
5a シリコーン樹脂封入体
5b シリコーン樹脂充填物
6 第1の部分
7 第2の部分
8 平坦化されたセグメント
9 溝
10 屈曲部
11 はんだ
12 ソケット
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】