(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-20
(54)【発明の名称】生体分子の検知および検出のための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20221013BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20221013BHJP
G01N 27/414 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12M1/00 A
G01N27/414 301V
G01N27/414 301K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509046
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 US2020047676
(87)【国際公開番号】W WO2021035221
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521391748
【氏名又は名称】ユニバーサル シーケンシング テクノロジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ペイミン
(72)【発明者】
【氏名】レイ, ミン
(72)【発明者】
【氏名】チュン, キスプ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4B029FA15
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QR06
4B063QR08
4B063QR90
4B063QS36
4B063QX05
(57)【要約】
本発明は、化学検知およびバイオセンシングのためのナノデバイスにおいてDNAナノワイヤに繋がれたメタライゼーションされたポリマーまたは導電性ポリマーを使用して、導電性ナノジャンクションを作製するための方法に関する。本発明は、天然の、合成された、または改変されたもののいずれかの、DNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリサッカリド、およびそれらのアナログなどの同定および/またはシーケンシングが挙げられるが、これらに限定されない、生体分子および生化学的反応を検知するためのシステム、デバイスおよび方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体ポリマーの同定、特徴付けまたはシーケンシングのためのシステムであって、前記システムは、
a. 基材;
b. 前記基材上に互いに隣接して配置された第1の電極および第2の電極によって形成されるナノギャップ;
c. ナノワイヤであって、前記ナノワイヤは、前記ナノギャップに近づくように構成されかつ前記ナノワイヤの一方の末端を前記第1の電極に、および前記ナノワイヤのもう一方の末端を前記第2の電極に結合することによって、前記ナノギャップを橋渡しするように構成される寸法を有し、ここで前記ナノワイヤは、核酸二重鎖セグメントであって、少なくともメタライゼーションされたポリマーセグメントまたは少なくとも導電性ポリマーセグメントが前記核酸二重鎖セグメントの末端において隣接する核酸二重鎖セグメントを含む、ナノワイヤ;
d. 前記ナノワイヤ上の前記核酸二重鎖セグメントに結合するように構成された検知分子であって、前記生体ポリマーと相互作用するかまたは前記生体ポリマーとの生化学的反応を行うように構成された、検知分子;
e. 前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加されるように構成されたバイアス電圧;
f. 前記検知分子の活性によって引きおこされる前記ナノワイヤを通る電流変動を記録するように構成されたデバイス;ならびに
g. 前記生体ポリマーまたは前記生体ポリマーのサブユニットを同定するかまたは特徴づけるデータ分析のために構成されたソフトウェア、
を含む、システム。
【請求項2】
前記基材と前記第1の電極および前記第2の電極との間に絶縁層1をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電極の頂部に誘電性キャップ層をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
a. 前記第1の電極および前記第2の電極から、絶縁層2によって分離されたゲート電極;ならびに
b. 前記ゲート電極に印加されるように構成された基準電圧、
をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記生体ポリマーは、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリサッカリド、前述の生体ポリマーのうちのいずれかのアナログ、前述の生体ポリマーのうちのいずれかの天然の、改変されたもしくは合成されたもののいずれか、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記検知分子は、天然の、変異された、発現されたまたは合成されたもののいずれかの、核酸プローブ、分子ピンセット、酵素、レセプター、リガンド、抗原および抗体ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記酵素は、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、DNAヘリカーゼ、DNAリガーゼ、DNAエキソヌクレアーゼ、逆転写酵素、RNAプライマーゼ、リボソーム、スクラーゼ、ラクターゼ、前述の酵素のうちのいずれかの天然の、変異された、発現されたまたは合成されたもののいずれか、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記DNAポリメラーゼまたは前記酵素は、□29 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、RB69ポリメラーゼ、DNAポリメラーゼX、DNAポリメラーゼY、DNAポリメラーゼ Pol I、Pol II、Pol III、Pol IVおよびPol V、Pol □(アルファ)、Pol □(ベータ)、Pol □(シグマ)、Pol □(ラムダ)、Pol □(デルタ)、Pol □□□(エプシロン)、Pol μ(ミュー)、Pol □(イオタ)、Pol □(カッパ)、Pol □(エータ)、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、レトロウイルス逆転写酵素、テロメラーゼ、前述の酵素のうちのいずれかの天然の、変異された、発現されたまたは合成されたもののいずれか、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記RNAポリメラーゼは、天然の、改変された、発現されたまたは合成されたもののいずれかの、T7 RNAポリメラーゼ、任意のウイルスRNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼIV、RNAポリメラーゼV、任意の真核生物RNAポリメラーゼ、任意の古細菌RNAポリメラーゼならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記検知分子は、クリック反応を通じて所定の位置において前記ナノワイヤの前記核酸二重鎖セグメントに結合されるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
2つの前記電極間の前記ナノギャップのサイズまたは距離は、約3nm~約1000nm、好ましくは約5nm~約30nmの範囲にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記ナノギャップに面する前記電極の末端表面は、約3nm~約1um、好ましくは約5nm~約30nmの範囲の幅、および約3nm~約100nm、好ましくは約5nm~約30nmの範囲の高さを有する実質的に矩形である、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記ナノギャップは、前記ナノワイヤの長さより幅広い頂部の開口部および前記ナノワイヤの長さより狭い底部の開口部を有するおおよそ逆向き台形の形状を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記電極は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、およびイリジウム(Ir)、銅(Cu)、ルテニウム(Re)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)ならびにTiNおよびTaNのようなそれらの誘導体、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される物質から作製される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の電極および前記第2の電極は、異なる平面にあり、互いに重なって、前記絶縁層によって分離されており、ここで前記ナノギャップのサイズは、前記絶縁層のおおよその厚みによって規定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記核酸二重鎖セグメントは、ポリマーメタライゼーションまたは分子リソグラフィーマスキングのためのタンパク質フィラメントと適合性であるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記タンパク質フィラメントは、前記核酸二重鎖セグメントに対して相補的な1本鎖核酸配列または前記核酸二重鎖セグメントに対して少なくとも約50%の配列相同性を有する配列を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記核酸二重鎖セグメントは、前記核酸二重鎖セグメントの導電性を増強する改変された核酸塩基を含み、ここで前記改変された核酸塩基は、天然または非天然のいずれかである、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記核酸二重鎖セグメントは、前記検知分子の結合のための官能基を有する改変された核酸塩基を含み、ここで前記改変された核酸塩基は、天然または非天然のいずれかである、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記官能基は、アジドまたはチオール基である、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記メタライゼーションされたポリマーセグメントは、ポリマー基材上に、金属粒子をシーディングするおよび/または金属粒子を沈着させることによって作製され、ここで前記ポリマー基材は、前記核酸二重鎖セグメントの一部もしくは伸長部、または前記核酸二重鎖セグメントに繋がれたポリマーであり、ここで前記ポリマーは、導電性、半導電性、もしくは非導電性、またはこれらの組み合わせのいずれかである、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記金属粒子は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、およびイリジウム(Ir)、ならびに前記第1の電極および/または前記第2の電極と同じ金属、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記シーディング金属粒子は、金ナノ粒子または銀ナノ粒子のいずれかを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記メタライゼーションされたポリマーセグメントは、不動態化単層によって覆われる、請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
前記ポリマーは、天然の、非天然の、改変されたまたは合成されたもののいずれかの、DNA二重鎖、RNA二重鎖、DNA/RNA二重鎖、部分的DNA二重鎖、部分的RNA二重鎖、1本鎖DNA、1本鎖RNA、DNAナノ構造体、ペプチドナノ構造体、PNAナノ構造体、前述の生体ポリマーのうちのいずれかの一部、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
前記核酸二重鎖セグメントは、天然の、非天然の、改変された、または合成されたもののいずれかの、二本鎖DNA二重鎖、三本鎖DNA二重鎖、DNAオリガミ構造体、DNAナノ構造体、ペプチドナノ構造体、PNAナノ構造体、DNAおよびPNA混合ナノ構造体、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される生体ポリマーセグメントによって置き換えられ、ここで前記生体ポリマーセグメントは、前記検知分子の結合のための官能基を有するように構成され、ポリマーメタライゼーションまたは分子リソグラフィーマスキングのためのタンパク質フィラメントと適合性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記導電性ポリマーセグメントは、導電性ポリマーモノマーを、酵素による、電気化学的な、または化学的な酸化結合体化、またはこれらの組み合わせを通じて、核酸足場または基材上にコーティングすることによって作製される、請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
前記導電性ポリマーセグメントは、天然の、非天然の、改変されたまたは合成されたもののいずれかの、ポリピロール(PPY)、ポリチオフェン(PT)、ポリアニリン(PANI)、ポリ(p-フェニレンスルフィド)(PPS)、ポリ(アセチレン)(PAC)、ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(フルオレン)、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
前記導電性ポリマーは、前記検知分子の結合のために、前記ナノワイヤの中央部または中央部付近で一緒に繋がれた前記核酸二重鎖セグメントを有する前記ナノワイヤ全体を通って延びる、請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
複数のナノギャップデバイスは、各々結合されたナノワイヤおよび検知分子を有する単一のナノギャップデバイスの特徴全てを有し、アレイ形式において製作されるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記ナノギャップデバイスの数は、ナノチップ、固体表面上にまたはウェルの中に約10~約10
9個である、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記ナノギャップデバイスの数は、約10
4~約10
6である、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
生体ポリマーの同定、特徴付けまたはシーケンシングのための方法であって、前記方法は、
a. 基材を提供する工程;
b. 第1の電極および第2の電極を、前記基材上に互いに隣接して配置することによって、ナノギャップを形成する工程;
c. 前記ナノギャップに匹敵する寸法を有するように構成されたナノワイヤを提供する工程であって、ここで前記ナノワイヤは、その末端において少なくともポリマーセグメントが隣接した核酸二重鎖セグメントを含み、ここで前記ポリマーセグメントは、導電性でありかつ前記核酸二重鎖セグメントに繋がれている、工程;
d. 前記ナノワイヤを、一方の末端において前記第1の電極に、および他方の末端において前記第2の電極に結合させる工程;
e. 検知分子を、前記核酸二重鎖セグメント上の所定の位置に結合させる工程であって、ここで前記検知分子は、前記生体ポリマーと相互作用するかまたは前記生体ポリマーとの生化学的反応を行うように構成されている、工程;
f. バイアス電圧を、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加する工程;
g. 前記検知分子の活性によって引きおこされる前記ナノワイヤを通る電流変動を記録するように構成されたデバイスを提供する工程;ならびに
h. 前記生体ポリマーまたは前記生体ポリマーのサブユニットを同定するかまたは特徴づけるデータ分析のためのソフトウェアを提供する工程、
を包含する、方法。
【請求項34】
前記基材と前記第1の電極および前記第2の電極との間に絶縁層1を提供する工程をさらに包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記電極の頂部に誘電性キャップ層を提供する工程をさらに包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
a. 前記第1の電極および前記第2の電極から、絶縁層2によって分離されたゲート電極を提供する工程;ならびに
b. 基準電圧を前記ゲート電極に印加する工程、
をさらに包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記生体ポリマーは、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリサッカリド、前述の生体ポリマーのうちのいずれかのアナログ、前述の生体ポリマーのうちのいずれかの天然の、改変されたもしくは合成されたもののいずれか、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記検知分子は、天然の、変異された、発現されたまたは合成されたもののいずれかの、核酸プローブ、分子ピンセット、酵素、レセプター、リガンド、抗原および抗体ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記酵素は、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、DNAヘリカーゼ、DNAリガーゼ、DNAエキソヌクレアーゼ、逆転写酵素、RNAプライマーゼ、リボソーム、スクラーゼ、ラクターゼ、前述の酵素のうちのいずれかの天然の、変異された、発現されたまたは合成されたもののいずれか、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記DNAポリメラーゼまたは前記酵素は、□29 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、RB69ポリメラーゼ、DNAポリメラーゼX、DNAポリメラーゼY、DNAポリメラーゼPol I、Pol II、Pol III、Pol IV、Pol V、Pol □(アルファ)、Pol □(ベータ)、Pol □(シグマ)、Pol □(ラムダ)、Pol □(デルタ)、Pol □□□(エプシロン)、Pol m(ミュー)、Pol □(イオタ)、Pol □(カッパ)、Pol □(エータ)、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、レトロウイルス逆転写酵素、テロメラーゼ、前述の酵素のうちのいずれかの天然の、変異された、発現されたまたは合成されたもののいずれか、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記RNAポリメラーゼは、天然の、改変された、発現されたまたは合成されたもののいずれかの、T7RNAポリメラーゼ、任意のウイルスRNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼIV、RNAポリメラーゼV、任意の真核生物RNAポリメラーゼ、任意の古細菌RNAポリメラーゼならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記検知分子は、クリック反応を通じて所定の位置において前記ナノワイヤのDNA二重鎖セグメントに結合されるように構成される、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
2つの前記電極間の前記ナノギャップのサイズまたは距離は、約3nm~約1000nm、好ましくは約5nm~約30nmの範囲にあるように構成される、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記ナノギャップに面する前記電極の末端表面は、約3nm~約1um、好ましくは約5nm~約30nmの範囲の幅、および約3nm~約100nm、好ましくは約5nm~約30nmの範囲の高さを有する実質的に矩形である、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記ナノギャップは、前記ナノワイヤの長さより幅広い頂部の開口部および前記ナノワイヤの長さより狭い底部の開口部を有するおおよそ逆向き台形の形状を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記電極は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、銅(Cu)、ルテニウム(Re)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)ならびにTiNおよびTaNのようなそれらの誘導体、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される物質から作製される、請求項33に記載の方法。
【請求項47】
前記核酸二重鎖セグメントは、前記核酸二重鎖セグメントの導電性を増強する改変された核酸塩基を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記核酸二重鎖セグメントは、前記検知分子の結合のための官能基を有する改変された核酸塩基を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項49】
前記官能基は、アジドまたはチオール基である、請求項33に記載の方法。
【請求項50】
前記ポリマーセグメントは、導電性ポリマーモノマーを、酵素による、電気化学的な、または化学的な酸化結合体化、またはこれらの組み合わせを通じて、核酸足場または基材にコーティングすることによって作製され、前記核酸足場は、1本鎖核酸配列、2本鎖核酸配列、部分的1本鎖および部分的2本鎖核酸シーケンシング、または中央部の核酸二重鎖の連続部分またはこれらの組み合わせである、請求項33に記載の方法。
【請求項51】
前記導電性ポリマーモノマーのコーティングは、前記ナノワイヤが前記電極に結合される前または結合された後のいずれかに作製される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ポリマーセグメントは、天然の、非天然の、改変されたまたは合成されたもののいずれかの、ポリピロール(PPY)、ポリチオフェン(PT)、ポリアニリン(PANI)、ポリ(p-フェニレンスルフィド)(PPS)、ポリ(アセチレン)(PAC)、ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(フルオレン)、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項53】
前記ポリマーセグメントは、前記検知分子の結合のために、前記ナノワイヤの中央部または中央部付近で一緒に繋がれた前記核酸二重鎖を有する前記ナノワイヤ全体を通って延びる、請求項33に記載の方法。
【請求項54】
工程dの後かつ工程eの前に、
1) 前記核酸二重鎖セグメントまたは前記核酸二重鎖セグメント上の所定の部分と適合性であるように構成されたタンパク質フィラメントを提供する工程;
2)隣接する前記ポリマーセグメントのメタライゼーションのためのマスクとして、前記タンパク質フィラメントを前記核酸二重鎖セグメントに結合させる工程;
3) 前記基材またはテンプレートとして前記ポリマーセグメントを用いた分子リソグラフィーアプローチを使用して、前記ポリマーセグメントをメタライゼーションする工程;および
4) 前記タンパク質フィラメントを前記核酸二重鎖セグメントから除去する工程;
をさらに包含し、ここで前記ポリマーセグメントは、導電性、半導電性または非導電性のいずれかである、請求項33に記載の方法。
【請求項55】
前記ポリマーセグメントは、前記核酸二重鎖セグメントの連続部分または伸長部である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記タンパク質フィラメントは、前記核酸二重鎖セグメントに対して相補的な1本鎖核酸配列または前記核酸二重鎖セグメントに対して少なくとも約50%の配列相同性を有する配列を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記ポリマーセグメントのメタライゼーションは、前記ポリマー基材上に、金属粒子をシーディングするまたは金属粒子を沈着させることによって作製される、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記金属粒子は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、およびイリジウム(Ir)、ならびに前記第1の電極および/または前記第2の電極と同じ金属、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記シーディング金属粒子は、金ナノ粒子または銀ナノ粒子のいずれかを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記ポリマーは、天然の、非天然の、改変されたまたは合成されたもののいずれかの、DNA二重鎖、RNA二重鎖、DNA/RNA二重鎖、部分的DNA二重鎖、部分的RNA二重鎖、または1本鎖DNA、1本鎖RNA、DNAナノ構造体、ペプチドナノ構造体、PNAナノ構造体、前述の生体ポリマーのうちのいずれかの一部、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項61】
メタライゼーションされた前記ポリマーセグメントは、不動態化単層によって覆われる、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記ポリマーセグメントを、適切に設計された金属粒子シーディングによって、前記核酸二重鎖セグメントをマスクすることなくメタライゼーションする工程をさらに包含し、ここで前記ポリマーセグメントは、導電性、半導電性または非導電性のいずれかである、請求項33に記載の方法。
【請求項63】
前記核酸二重鎖セグメントは、天然の、非天然の、改変されたまたは合成されたもののいずれかの、DNA/RNA混合二重鎖、二本鎖DNA二重鎖、三本鎖DNA二重鎖、DNAオリガミ構造体、DNAナノ構造体、ペプチドナノ構造体、PNAナノ構造体、DNAおよびPNA混合ナノ構造体、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される生体ポリマーセグメントによって置き換えられ、ここで前記生体ポリマーセグメントは、前記検知分子の結合のための官能基を含み、かつポリマーメタライゼーションまたは分子リソグラフィーマスキングのためのタンパク質フィラメントと適合性であるように構成される、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月22日出願の米国仮特許出願第62/890,251号(その開示全体が、本明細書に参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
分野
本発明は、天然の、合成された、または改変されたもののいずれかの、DNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリサッカリド、およびそれらのアナログなどの同定および/またはシーケンシングが挙げられるが、これらに限定されない、生体分子および生化学的反応を検知するためのシステム、デバイスおよび方法に関する。より具体的には、本開示は、パターン化導電性ナノジャンクション(patterned conductive nanojunction)が、足場またはテンプレートとしてDNAを使用してナノギャップの中に作製されている実施形態を含む。
【背景技術】
【0003】
背景
電子ナノデバイスは、低コストでの臨床現場でのバイオセンシングに関して大きな潜在能力を有する。7nm分離能が干渉リソグラフィーによって達成された1が、産業で使用される旧来のトップダウン半導体製作プロセスは、その限界が近づきつつある。他方で、DNAは、生物学的オペレーティングシステムをÅ精度でナノエレクトロニクスへと組み込むことに関して最も有望かつ適切な物質のうちの1つである。第1に、DNAは、自己アセンブリによって二次元および三次元両方の予測可能なナノメートルサイズの構造(例えば、2D DNAアレイ、DNA-切頭八面体(truncated octahedron)、DNAオリガミ、および3D DNA)を形成するようにプログラムされ得る2。加えて、精巧な核酸化学は、本発明者らがDNAを調節および改変し、新たなDNAベースの物質を作り出すことを可能にする。このようにして、DNAは、ナノマシンの「ボトムアップ」構築にとっての選択肢になった。
【0004】
DNA分子は、隣接する塩基対のπ軌道に縦方向に重なり合うことによって、電子を伝導し得る。長い天然のDNAワイヤが、硬い基材上に沈着された場合には導電性ではなく
3,4、短いDNA分子がそれらを通る電荷輸送を許容する(<15塩基対)
5ことが観察された。概して、AT配列は、DNAにおけるそのGC対応物より導電性が低い
6。AT塩基対は、トンネリングバリア(tunneling barrier)と考えられ、GC塩基対は電荷移動のホッピング部位と考えられている。水性溶液中では、ポリ(CG)
nDNA二重鎖のコンダクタンス(G)は、それらの長さ(L)に伴って減少する
8。ポリ(CG)
4は、約100nSのコンダクタンスを有する(
図2,a)が、測定可能なコンダクタンスを有するためのポリ(CG)
nについての推定値は、1V未満のバイアスで約n=10である(
図2,b)。以前の研究は、(ポリG-ポリC)
30二重鎖が、室温および50%空気中湿度において2Vバイアスの下で1nA未満のコンダクタンス(約0.5nS)を有するに過ぎないことを示す(
図1)
7。従って、DNAは、ナノエレクトロニクスにとって必要な長さスケールの範囲にわたって十分な電導率を有しない。
【0005】
DNAナノ構造体の電導率を改善する1つの方法は、DNAに導電性物質を付加することである。電気的接続のために、上記ナノ構造体は、オーム性電導率(ohmic conductivity)をより良好に有する。DNAのメタライゼーションは、導電性ナノワイヤを作製するために有効な方法である。金属(例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、およびロジウム(Rd)など)は、メタライゼーションしたナノワイヤを形成するために、DNA上でメッキされている9。一般に、これらのDNAテンプレート化ナノワイヤは、それらの直径が、良好な電導率のために10nmより大きい。Braunおよび共同研究者らは、2本の金ナノワイヤ間の絶縁ギャップをDNA基材上に作製する、DNA基材上にパターン化するための分子リソグラフィー技術を発明した10。
【0006】
本発明は、ナノギャップに結合したDNAヘリックスに沿って、金属ナノ粒子または導電性ポリマーモノマーの薄い層をコーティングする、あるいは導電性ポリマー(例えば、ポリアニリン)を結合体化する、あるいは両方の組み合わせによって、DNAナノナノジャンクションの電導率を増大させる手段および方法を提供する。
【0007】
前置き: 本発明は、テンプレートもしくは基材もしくは足場としてDNA二重鎖を使用して、導電性ナノワイヤを作製するまたはナノジャンクションを形成するが、本発明者らは、同じ目的のために他の物質を使用する(例えば、RNA二重鎖、ポリペプチド鎖、ポリサッカリド鎖、または類似の生体ポリマーまたはこれらの組み合わせ(DNA(天然または非天然のいずれでも)との組み合わせを含む)ことを排除しない。本発明の方法の原理は、ナノワイヤ/ナノジャンクション構築物質として使用されるために適切な任意の他の生体ポリマーにあてはまる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1:ナノギャップDNAジャンクションによって測定される、固体基材上のGC塩基対から構成されるDNAの電導率。DNA分子(30塩基対、2本鎖ポリ(G)-ポリ(C))は、10.4nm長であり、ナノ電極ギャップは、8nm幅である。室温および50%空気中湿度において2つの金属ナノ電極間で捕捉されたDNA分子上で測定した電流±電圧曲線。その後のI-V曲線は、電圧ギャップの幅の変動を除いて類似の挙動を示す。
【0009】
【
図2】
図2:STMブレイクジャンクション(STM break junction)によって測定した、溶液中のGC塩基対から構成されるDNAの電導率。(a)ポリ(GC)
8DNA二重鎖のコンダクタンスヒストグラム;(b)1/長さに対する(GC)
nのコンダクタンス。
【0010】
【
図3】
図3:ナノギャップを製作するトップダウンプロセスを図示する。
【0011】
【
図4】
図4:検知分子が結合されるナノジャンクションを製作するボトムアップ分子リソグラフプロセスを図示する。ここでは酵素が検知分子の例として示される。
【0012】
【
図5】
図5:ナノギャップにおけるテーパー状の電極末端表面およびナノギャップの下にあるゲート電極を示す。
【0013】
【
図6】
図6:絶縁層によって分離された異なる平面にある電極によって形成される垂直ナノギャップを示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明は、生体分子および生化学的反応を検知するためのナノギャップデバイスをアセンブリする方法を提供する。
図3は、トップダウンアプローチにおいて標準的な半導体製作技術を使用して、2つのナノ電極から構成されるナノギャップを製作するスキームを示す。従って、上記ナノギャップは、高収量および低コストで製作され得る。上記ナノギャップを分子ワイヤで橋渡しするために、ボトムアップ分子リソグラフは、
図4に示されるように、ナノデバイスアセンブリのプロセス全体を完了させるために適用される。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記ナノギャップは、2つの電極を含み、その間の距離は、3nm~1000nm、好ましくは5nm~100nm、および最も好ましくは5nm~30nmの範囲にある。上記電極の末端表面は、3nm~1μm、好ましくは5nm~30nmの範囲の幅、および3nm~100nm、好ましくは5nm~30nmに範囲の高さを有する実質的に矩形である。上記電極は、貴金属、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、または他の金属(例えば、銅(Cu)、ルテニウム(Re)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、およびそれらの誘導体(例えば、TiN、およびTaNなど))を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記ナノギャップは、絶縁層によって分離される異なる平面にある2つの電極によって形成される。
図6を参照のこと(参考文献US62994712)。上記絶縁層の厚みは、2nm~1000nm、好ましくは5nm~30nmの範囲にある。絶縁物質は、SiNx、SiOx、HfOx、Al
2O
3、他の金属酸化物、および半導体産業で使用される任意の誘電体からなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0017】
いくつかの実施形態において、ナノジャンクションは、上記ナノギャップをナノワイヤで橋渡しすることによって形成され、次いで、検知分子は、所定の位置において結合される。上記ナノワイヤは、2つのメタライゼーションされたポリマーまたは導電性ポリマー結合体化ナノワイヤセグメントが隣接した半導電性DNA二重鎖セグメントを含む。検知分子は、上記DNA二重鎖に中央部で結合される。上記結合した検知分子および上記半導電性DNA二重鎖は、フォースエフェクトトランジスタ(force effect transistor)(「FET」という)を構成する。上記検知分子は、そのレセプターまたは基材と相互作用する場合に、そのコンホメーションを変化させる。これは、DNAに対して力を発揮し、その塩基スタッキングを妨害し、上記ナノワイヤを通って流れる電流の変動を生じる。次いで、電流シグナル(これは、分子事象への応答を表す)が記録され、分子相互作用または反応が、推測される。例えば、上記検知分子がDNAポリメラーゼである場合、それは、電気的シグナルを記録することによって、DNAプライマーへとヌクレオチドを組み込むポリメラーゼのプロセスをモニターし得る。抗体が上記検知分子として使用される場合、抗原は、このナノジャンクションデバイスを利用して検出され得るか、またはその逆もまた同様である。同様に、レセプターが検知分子として使用される場合、サンプル中のそのリガンドが決定され得るか、またはその逆もまた同様である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
図3は、トップダウン半導体製作アプローチを使用して20nm未満の距離が分離されている2つの電極を含むナノギャップを製作するプロセスを描写する。白金ワイヤ(101)は、EBLによって,窒化ケイ素絶縁層(102)でコーティングされたケイ素基材(103)上に製作され、次いで、誘電性キャップ層(104)が、続いて、ハードマスク(HM)層(105)が沈着される。ナノギャップは、フォトレジスト(106)上でのEBLパターン形成、続いて、HM RIE、CAP、Pt RIE、およびHM除去によって製作される。
【0019】
図4は、上記ナノギャップを有するナノジャンクションのアセンブリのためのボトムアップアプローチを描写する。第1に、DNAアンカー(201)を、ナノギャップ(206)を規定する2つの電極(207)の側壁に結合する。次いで、DNAワイヤ(202)は、上記ナノギャップを橋渡しして、2つのニックを有する2本鎖DNA(208)から構成されるナノジャンクションを形成するために、上記DNAアンカーにハイブリダイズされる。上記ニックは、ライゲーション反応によって閉じられ、半導電性DNA二重鎖セグメント(209)を生じる。次いで、タンパク質フィラメント(205)を付加して、中央部セクション(210)をマスクし、続いて、隣接するセグメント上に金属粒子を沈着させ、半導電性セグメントの2つの末端において導電性ワイヤ(211)を生成する。上記タンパク質フィラメントを除去した後、上記半導電性DNA二重鎖セグメントは、上記検知分子(例えば、酵素、ポリメラーゼ、または抗体(212))を結合させるために露出される。このプロセスは、生体分子検知ナノデバイスを作製する方法を提供する。
【0020】
1つの実施形態において、上記DNAアンカー201は、短いオリゴヌクレオチド201-aおよび201-bのセットであって、それらの配列が異なる末端においてDNAワイヤ202にマッチするオリゴヌクレオチドのセットである。プローブ(アンカー)オリゴ201-aは、202-a、および202-bの一部の両方にマッチする。同じように、201-bは、202-c、および202-dの一部の両方にマッチする。上記プローブオリゴ201-aおよび201-bの配列は、同じであるかまたは異なるかのいずれかである。それらの各々が、それぞれ、ナノギャップを構成する個々の電極に結合される場合、それらは、DNAワイヤ202を捕捉して、ニックを含む二重鎖を形成する。ライゲーション反応の後、完全な二重鎖が形成し、そのうちの中央部は、半導電性セグメント(209)を含み、そのうちの残りは、導電性、半導電性または非導電性のいずれかであり得る。201に対する202のハイブリダイゼーション(捕捉)の相補的要件に起因して、ナノギャップサイズが、アセンブリされた分子ワイヤ209の長さにマッチすることを要求する。
【0021】
別の実施形態において、上記DNAアンカー201は、最初にDNAワイヤ202に対してハイブリダイズし、ライゲーションによって満たされるニックを有するDNA二重鎖を形成し、次いで、上記2つの電極に結合して、上記ナノジャンクションを形成する。ジャンクション形成の成功率を増大させるために、上記電極の末端は、上記DNA二重鎖の着地(landing)および結合を促進するために、逆向き台形の幾何学的形状としてテーパー状にされ得る(
図5中の図示を参照のこと(参考文献US62/833870))。
【0022】
ある実施形態において、上記DNAアンカーは、上記電極への結合のために構成された官能基を含む。上記官能基は、(a)ヌクレオシドの糖環上のチオール;(b)ヌクレオシドの核酸塩基上のチオールおよびセレノール;(c)ヌクレオシド上の脂肪族アミン;(d)ヌクレオシド上のカテコール;(e)RXHおよびRXXR(ここでRは脂肪族または芳香族の基であり;Xは、カルコゲンであり、SおよびSeが好ましい);ならびに(f)塩基をカルコゲン化したヌクレオシドが挙げられるが、これらに限定されない。これらの官能基の詳細な説明については、US62/812,736が参照される。
【0023】
いくつかの実施形態において、第3の電極であるゲート電極が導入され(
図5を参照のこと(参考文献US62/833870))、上記ナノワイヤの電導率を調節するために、基準電圧が印加される。上記ゲート電極は、第2の絶縁層によって、上記第1のおよび上記第2の電極から分離される。
【0024】
別の実施形態において、上記DNAアンカー201および上記DNAワイヤ202は、上記電極に結合する前にハイブリダイズおよびライゲーションされるか、またはDNA二重鎖209の同じ配列を有する予めアセンブリされたDNA二重鎖によって単に置き換えられる。上記予めアセンブリされたDNA二重鎖は、上記ナノギャップにおいて2つの電極に結合され、ナノジャンクションを形成し、続いて、中央部セクションへの上記タンパク質フィラメントの結合(マスキング)、側部セクションのメタライゼーション、および最後の検知分子結合が行われる(
図4を参照のこと)。繰り返すと、より良好な結合のためにテーパー状の電極末端、または予めアセンブリされたDNA二重鎖の長さより小さいかもしくはこれに等しいギャップが要求され得る。
【0025】
ある実施形態において、上記ナノワイヤは、一方の末端のみにおいてメタライゼーションまたは結合体化された導電性ポリマーセグメントが隣接する半導電性DNA二重鎖セグメントを含む。上記検知分子は、上記半導電性DNA二重鎖セグメント上の所定の位置に結合される。
【0026】
いくつかの実施形態において、以前の仮特許出願US62/794096およびUS62/833870において開示される方法を使用して構築された、予めアセンブリされたDNAナノ構造体は、DNA二重鎖209の代わりに使用され、上記電極に直接結合して、マスキングのためのDNA/タンパク質フィラメント205と適合性の中央部部分を有するナノジャンクションを形成し、続いて、バイオセンシングナノデバイス構築を完成させるために
図4における残りの工程が行われる。これらの予めアセンブリされたDNAナノ構造体の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:天然の、非天然の、改変されたまたは合成されたもののいずれかの、単一のDNAもしくはRNA二重鎖、DNA/RNA混合二重鎖、二本鎖DNA二重鎖(double DNA duplex)、三本鎖DNA二重鎖(triple DNA duplex)、DNAオリガミ構造体、DNAナノ構造体、ペプチドナノ構造体、PNA(ペプチド核酸)ナノ構造体、DNA/PNA混合ナノ構造体またはマスキングのためのタンパク質フィラメントと適合性の中央部セクションを有する任意のDNAもしくはRNAもしくはPNAナノ構造体、あるいはこれらの組み合わせ(ここで上記中央部セクションは、高いGC含有量(約51%~95%)を有するかまたは上記DNA二重鎖を半導電性もしくは導電性にする改変されたDNA塩基を有するDNA二重鎖であり得る)。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記DNAワイヤ202およびDNAアンカー201は、全長に対して相補的であり、その結果、得られるDNA二重鎖209は、その全長において2本鎖になっている。一方、いくつかの他の実施形態において、上記DNAワイヤ202は、ナノギャップサイズより短く、完全に相補的なDNAアンカー201ではないので、両方の末端で隣接した1本鎖オリゴヌクレオチドを有するDNA二重鎖(209)を形成する。DNA二重鎖209は、全て2本鎖、または末端セグメントが1本鎖である部分的2本鎖であるかのいずれであっても、バイオセンシングナノデバイスを構築するための残りのプロセスは、
図4におけるものと同じである。1本鎖または2本鎖のいずれであっても、側方(末端)セグメントのメタライゼーションプロセスは、類似である。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記DNA二重鎖209の中央部セクションは、所定のヌクレオシド(位置)において官能基を有し、この官能基は、化学反応を行って、他の実体(例えば、検知分子)をワイヤに接続し得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、上記DNA二重鎖(209)の末端セグメントは、以下に図示されるとおりの構造を有するホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを含む:
【化1】
ここでn=3~100であり;RおよびR’は、上記で列挙されるとおりの種々の官能基であるが、それらに限定されない。ホスフェート/ホスホロチオエート(PO/PS)キメラオリゴデオキシリボヌクレオチドは、自動化DNA合成機において合成され得る
11。
図4における上記のライゲーションは、RとR’との間の自律的化学反応、または酵素触媒性プロセスであり得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記フィラメント(205)は、その配列と、上記DNAワイヤ202の半導電性中央部セグメント(または上記DNA二重鎖209の中央部セクション)の配列に対して相補的または類似の(上記核酸二重鎖セグメントに対して少なくとも約50%配列相同性を有する)1本鎖DNA(203)、およびタンパク質(例えば、単一のDNA鎖上に重合され得るRecAタンパク質(204))を含む12。上記フィラメントは、相同な2本鎖DNAに特異的に結合し得、分子リソグラフィーのためのマスクとして使用され得る10。いくつかの実施形態において、上記フィラメント205は、上記DNA二重鎖の末端セグメント上の金属沈着(メッキ)のためにマスク(210)として上記DNA二重鎖(209)の半導電性セクションに結合する。
【0031】
1つの実施形態において、DNAメタライゼーションの例として、上記金属ナノワイヤ211は、先ず、金属チオール共有結合を介してホスホロチオエート上に約1.0nmの銀ナノ粒子をシーディングし、続いて、水で洗浄して、過剰な銀ナノ粒子を除去することによって、調製される。次いで、1:1比でKAuCl4(0.06M)と混合したKSCN(0.6M)の溶液を、ナノジャンクション領域に添加し、続いて、その金メッキ溶液と同じ容積のヒドロキノン(25mM)を添加する。上記ナノジャンクションは、上記溶液中で60秒間インキュベートされる。次いで、上記溶液をさっと流し、上記ナノジャンクションを水ですすぐ。結果として、金ナノワイヤが、DNAジャンクションの2つの側方セグメントにおいて形成される。次に、上記金ワイヤは、非特異的吸着を防止するために、親水性単層、例えば、オリゴ(エチレングリコール)単層を表面上に形成することによって不動態化される。上記フィラメントマスクは、プロテイナーゼKを使用するタンパク質消化によって除去されて、上記半導電性DNAセグメントが露出される。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記シーディングナノ粒子は、銀の代わりに金である。貴金属(上記第1の電極および/または上記第2の電極と同じかまたは異なるかのいずれでも)は、ナノ粒子指向性無電解メッキ(nanoparticle directed electroless plating)によって、上記DNAナノジャンクション上に沈着される。上記貴金属としては、Au、Ag、Pd、Pt、Rdなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記メッキプロセスは、規定された位置において異なる金属を特異的に沈着させるための電気化学的プロセスによって行われる。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記金属は、DNA/タンパク質フィラメントマスク205を使用することなく、十分に規定された金属ナノ粒子のシーディングで、DNA二重鎖上に沈着される。
【0035】
いくつかの実施形態において、上記DNA二重鎖209におけるホスホロチオエート基は、4-ブロモブチルアルデヒドと反応し、以下で示されるように、アルデヒド官能化ホスホロチオエートを生じる:
【化2】
上記アルデヒドは、金属イオン溶液(例えば、AgNO
3溶液)でのシーディングのための還元剤である。他のアルデヒドはまた、ホスホロチオエートを官能化するために使用され得、これは、以下に示されるような構造を有する:
【化3】
【0036】
いくつかの実施形態において、上記DNA二重鎖209の末端セグメントのメタライゼーションは、導電性ポリマーを上記DNAセグメントへと一緒に繋ぐことによって置き換えられ得る。上記DNAアンカー(201)は、その核酸塩基に結合された導電性ポリマー(CP)のモノマー、またはより一般的にはDNA二重鎖209の1本鎖末端セグメントにカップリングされた導電性ポリマーモノマーを有する。上記モノマーの構造は、以下に示され、これらが挙げられるが、これらに限定されない:
【化4】
これらのモノマーは、改変されたヌクレオシド(それらの核酸塩基は以下で示されるように、アミンで官能化されている)に結合され得る。
【化5】
従って、これらの官能化ヌクレオシドは、自動化DNA合成機によってDNAオリゴヌクレオチドへと組み込まれ得る。ターピロール-ウリジンホスホルアミダイト(11)を合成する例は、実施例の節に記載される。上記ホスホルアミダイト(11)は、自動化DNA合成機によって、例えば、CXA GXT AXC GXCの配列(ここでX=ターピロールモノマーを有するウリジン)を有するDNAへと組み込まれる。上記DNAは、上記電極への結合のためのアンカーとして使用される。それは上記DNAワイヤとハイブリダイズして、ナノギャップにおいてナノジャンクションを形成し、それらは一緒にライゲーションされる。上記タンパク質フィラメントマスクは、半導電性セグメントに付加される。次いで、上記ターピロールモノマーが、先行技術のアプローチ
13に従って中性pHの水性溶液中での電気化学的酸化によって重合される。マスクを除去した後、上記ナノジャンクションは、検知分子で官能化される準備ができている。あるいは、上記ターピロールモノマーは、タンパク質フィラメントマスク205を使用することなく、DNA二重鎖209全体に沿って結合および重合される。
【0037】
いくつかの実施形態において、上記CPモノマーを有するDNAアンカーは、先ず、アミノ官能化ヌクレオシドを有するDNAオリゴヌクレオチドを合成することによって調製され、次いで、上記CPモノマーは、活性化カルボキシレートとアミンとの反応によってオリゴヌクレオチドへとカップリングされる。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記DNAナノジャンクションにおける導電性ポリマーは、先行技術14,15に示されている、化学的酸化または酵素による酸化のいずれかによって合成される。
【0039】
いくつかの他の実施形態において、上記導電性ポリマーは、末端セグメントに限定されずDNA二重鎖209全体にわたって繋がれ、DNA足場に繋がれた導電性ポリマーを含むナノジャンクション全体を作製する。その一方で、いくつかの官能基(例えば、アジド、チオールおよびその誘導体)は、上記検知分子の結合のためにDNA二重鎖に沿って予め規定された位置に配置され得る。
【0040】
いくつかの実施形態において、導電性ポリマーモノマーは、タンパク質フィラメントマスクありまたはなしで、水性溶液中でDNAテンプレートまたは足場に結合体化されて、導電性ナノワイヤを先ず形成し、次いで、上記ナノワイヤは、導電性ナノジャンクションを形成するようにナノギャップを橋渡しするために、上記第1のおよび上記第2の電極に結合される。
【0041】
他の実施形態において、第1に、導電性ポリマーモノマーは、タンパク質フィラメントマスクありまたはなしで、水性溶液中でDNAテンプレートまたは足場上に沈着される;第2に、上記DNAテンプレートまたはナノワイヤは、上記ナノギャップを橋渡しするために、上記第1のおよび上記第2の電極に結合され、第3に、上記導電性ポリマーモノマーは、上記ナノワイヤ電導率を増強するために酸化され、よって導電性ナノジャンクションが形成される。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記ナノワイヤまたはその下にあるDNA(its underline DNA)またはポリマー足場またはテンプレートは、上記第1のおよび上記第2の電極への結合のために、その末端に官能基(例えば、アジド、アルキン、またはチオール)およびその誘導体を有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、上記DNAナノワイヤ209は、二重鎖、または二重鎖と末端の1本鎖セグメントとの混合物である。いくつかの実施形態において、上記DNAナノワイヤ209は、三重鎖、または二重鎖、三重鎖、および1本鎖セグメントの混合物である。
【0044】
ある実施形態において、導電性ポリマーは、末端においてDNAナノワイヤに繋がれ得、DNA-導電性ポリマー結合体化ナノワイヤを形成する。
【0045】
ある実施形態において、メタライゼーションされたDNAナノワイヤセグメントの下にある上記DNA足場は、、メタライゼーションされ得かつ上記DNA二重鎖ナノワイヤセグメントに繋がれ得る任意のポリマー(このポリマーは、導電性、半導電性または非導電性のいずれかであり、かつこれは天然または非天然のもののいずれかである)によって置き換えられ得る。
【0046】
上記全てにおいて、上記導電性ポリマーは、ポリピロール(PPY)、ポリチオフェン(PT)、ポリアニリン(PANI)、ポリ(p-フェニレンスルフィド)(PPS)、ポリ(アセチレン)(PAC)、ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(フルオレン)、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピンなどからなる群より選択されるが、これらに限定されない。最初3種のポリマー、PPY、PTおよびPANIは、相対的な合成のしやすさに起因して好ましい。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記検知分子は、天然の、変異された、発現された、または合成されたもののいずれかの、核酸プローブ、分子ピンセット、酵素、レセプター、リガンド、抗原および抗体ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0048】
いくつかの実施形態において、上記検知分子は、天然の、変異された、または合成されたもののいずれかの、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、DNAヘリカーゼ、DNAリガーゼ、DNAエキソヌクレアーゼ、逆転写酵素、RNAプライマーゼ、リボソーム、スクラーゼ、ラクターゼなどが挙げられるが、これらに限定されない酵素である。
【0049】
いくつかの実施形態において、上記検知分子は、ポリメラーゼファミリー、A、B、C、D、X、Y、およびRTに由来する任意のポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されないDNAポリメラーゼである。例えば、ファミリーAの中のものとしては、T7 DNAポリメラーゼおよびBacillus stearothermophilus Pol Iが挙げられる;ファミリーBの中のものとしては、T4 DNAポリメラーゼ、Phi29 DNAポリメラーゼ、およびRB69が挙げられる;ファミリーCの中のものとしては、E.coli DNAポリメラーゼIIIが挙げられる。DNAポリメラーゼのうちのRT(逆転写酵素)ファミリーは、例えば、レトロウイルス逆転写酵素および真核生物テロメラーゼを含む。
【0050】
いくつかの他の実施形態において、上記検知分子は、ウイルスRNAポリメラーゼ(例えば、T7 RNAポリメラーゼ);真核生物RNAポリメラーゼ(例えば、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼIV、およびRNAポリメラーゼ V);および古細菌RNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されないRNAポリメラーゼである。
【化6】
【0051】
いくつかの実施形態において、クリック反応は、検知分子をナノジャンクション上に結合させるために使用される。例として、アセチレンを含むヌクレオシドは、本発明者らのPCT出願(WO 2020/150695)に開示される方法に従って、アジドで官能化した検知分子を結合させるために導電性DNAセグメントへと組み込まれる。それらの構造は、以下に示される。
【0052】
いくつかの実施形態において、複数のナノギャップデバイス(各々、結合したナノワイヤおよび検知分子を有する単一のナノギャップデバイスの特徴全てを有する)は、生体ポリマー検知またはシーケンシングのスループット要件に基づいて、ナノチップ、固体表面上もしくはウェルの中に10~109、好ましくは103~107またはより好ましくは104~106のナノギャップデバイスの数でアレイフォーマットにおいて製作され得る。上記アレイ中のナノギャップデバイスは全て、1つのタイプの検知分子または異なるタイプの検知分子で構成される。
【実施例】
【0053】
実施例
エチル 2-(2,5-ジブロモ-1H-ピロール-イル)アセテート(4)を、以下に示される経路に従って合成する:
【化7】
第1に、エチル 2-(1H-ピロール-イル)アセテート(3)を、改変を加えて先行技術(WO 2011/094823)の手順に従って合成する。適切な溶媒(例えば、水/酢酸(1:2)の共溶媒)中のグリシンエチルエステル(ethyl glycinate)(1, 1.0当量)および酢酸ナトリウム(1.7当量)の還流溶液に、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン(2, 1.0当量)を添加する。上記溶液を、約4時間還流し、水で希釈し、NaHCO
3の飽和水性溶液で中和し、CH
2CI
2で抽出する。その有機相を、MgSO
4で乾燥させ、濾過し、ロータリエバポレーションによって濃縮する。その残渣を、シリカカラム上のフラッシュクロマトグラフィーによって分離し、所望の化合物3を収率>50%で得る。次に、臭素化ピロール4を、文献
16に報告される手順に従って合成する。無水DMF中のN-ブロモスクシンイミド(NBS, 2.0当量)の溶液を、無水THF中の化合物3(1.0当量)の溶液に0℃で滴下添加した。添加した後、その混合物を30分間撹拌する。その反応を、完了するまでTLCによってモニターし、水を添加することによって停止させ、クロロホルムで3回抽出する。その合わせた有機溶液を、水で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濾過し、エバポレートして、溶媒を除去する。その残渣を、シリカカラムでのフラッシュクロマトグラフィーによって分離し、所望の生成物を収率>90%で得る。
【0054】
(1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-ピロール-2-イル)ボロン酸(6)を、文献
17に報告される手順に従って合成する。
【化8】
無水THF中の1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-ピロール(5)の溶液に、-78℃においてアルゴン下で、リチウム2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(LiTMP)の溶液を滴下添加する。その溶液を、-78℃で4時間撹拌し、続いて、ホウ酸トリエチル((EtO)
3B)を滴下添加する。その混合物を、さらに12時間撹拌している間に室温へと加温させる。その反応混合物を、飽和NH
4Cl溶液でクエンチし、40分間撹拌する。その懸濁物を、飽和NaHCO
3水性溶液で中和し、20分間撹拌した。その溶液を、エーテルで3回抽出する。その合わせた有機層を、Na
2SO
4で乾燥させ、その溶媒をロータリーエバポレーションによって除去する。その残渣を、シリカゲルカラム上のフラッシュクロマトグラフィーによって分離して、所望の生成物6を得る。
【0055】
2-(1,1”-ビス((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H,1’H,1”H-[2,2’:5’,2”-ターピロール]-1’-イル)酢酸(8)を、以下に示されるとおりの経路に従って合成する:
【化9】
第1に、ターピロールエステルを、文献
18に報告される方法に基づいて合成する。上記ターピロールピロールボロン酸6(2.3当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(10 mol%)、炭酸ナトリウム(8当量)および塩化カリウム(3当量)を排気し、アルゴンで2回フラッシュする。次いで、脱気したトルエン(20mL)、ジブロモピロール4(1当量)、脱気したエタノールおよび水を添加する。その混合物を、95℃で18時間加熱し、冷却し、その溶媒を、ロータリーエバポレーションによって除去する。その残渣をクロロホルムで3回抽出し、その合わせた有機相をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過する。その溶媒を、ロータリーエバポレーションによって除去する。その残渣を、シリカゲル勾配カラムクロマトグラフィーによって分離して、所望のターピロールエステル7を得、これを、文献
19に報告される温和な加水分解手順に従って、その相当するカルボン酸8へと変換する。そのエステルを、2容積%の水を含むCH
3CN中に溶解する(10ml/gのエステル)。トリエチルアミン(3当量)を添加し、続いて、LiBr(10当量)を添加する。その混合物を室温で激しく撹拌し、その生成物を、シリカゲル勾配カラムクロマトグラフィーによって分離する。
【0056】
2-(1,1”-ビス((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H,1’H,1”H-[2,2’:5’,2”-ターピロール]-1’-イル)-N-(3-(デオキシウリジン-5-イル)プロパ-2-イン-1-イル)アセトアミド(10)を、以下に示されるとおりの経路に従って合成する:
【化10】
0℃においてDMF中の8(200mg, 1.0当量)の溶液に、HATU(2.0当量)およびDIEA(3.0当量)を添加し、続いて、5-(3-アミノプロパ-1-イン-1-イル)-デオキシウリジン9(1.1当量)を添加する。その得られた混合物を、RTにおいて1時間撹拌し、次いで、その反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで3回抽出する。その有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーションによって濃縮した。その残渣を、シリカカラム上のフラッシュクロマトグラフィーによって分離し、所望の生成物10を得る。
【0057】
5’-O-ジメトキシトリチル-2-(1,1”-ビス((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H,1’H,1”H-[2,2’:5’,2”-ターピロール]-1’-イル)-N-(3-(デオキシウリジン-5-イル)プロパ-2-イン-1-イル)アセトアミド-3’-O-(2-カノチル(cannothyl)-N,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト(11)を、以下に示される経路に従って合成する:
【化11】
第1に、ピリジン(3ml)中の改変デオキシウリジン10(1.18mmol)の溶液に、4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(1.30mmol)を添加する。その混合物を、室温で1時間撹拌した。TLC分析は、少量の出発物質の存在を示した。さらなる4,4’-ジメトキシトリチルクロリドを添加して、その反応を完了させる。その混合物を水(50ml)の中に注ぎ、塩化メチレンで抽出する(3×50ml)。その合わせた有機相を水で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させる。その生成物を、溶離液として塩化メチレン/メタノール(95:5)の混合物を使用するシリカゲルカラム上のフラッシュクロマトグラフィーによって分離する。次いで、そのトリチル化生成物(0.57mmol)およびジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(0.57mmol)を、塩化メチレン(6ml)中に溶解する。その溶液に、2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソピロピルホスホロジアミダイト(0.66mmol)を添加する。その溶液を、穏やかに旋回させ、窒素下で室温において1.5時間静置させ、次いで、酢酸エチルで希釈し、水で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させる。その生成物を、溶離液として酢酸エチル/トリエチルアミン(98:2)の混合物を使用するクロマトトロン(chromatotron)上でのシリカゲルクロマトグラフィーによって分離した。化合物11を、発泡した固体として得る。
【0058】
総論:
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、特許出願、および他の文書は、それらの全体において参考として援用される。別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明は、種々の実施形態の記載によって例証され、これらの実施形態は、かなり十分に記載されているが、出願の範囲を制限するか何らかの形で限定することは、出願人の意図ではない。さらなる利点および改変は、当業者に容易に明らかである。従って、その最も広い局面にある発明は、示されて記載される、その具体的な詳細、代表的デバイス、装置および方法、ならびに例証となる例に限定されない。よって、出願人の一般的な発明の概念の趣旨からは逸脱することなく、このような詳細からの逸脱が行われ得る。
【化12】
【化13】
【化14】
【国際調査報告】