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特表2022-544669導電性液体を分割するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-20
(54)【発明の名称】導電性液体を分割するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/08 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
B22F9/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022509201
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2020072636
(87)【国際公開番号】W WO2021028477
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】102019122000.9
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507332907
【氏名又は名称】アー エル デー ヴァキューム テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ALD Vacuum Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Otto-von-Guericke-Platz 1, 63457 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランツ,ヘンリック
(72)【発明者】
【氏名】スピタン,セルゲイ
【テーマコード(参考)】
4K017
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017CA01
4K017DA01
4K017EB01
4K017EB04
4K017FA14
4K017FA15
4K017FA29
(57)【要約】
本発明は、導電性液体、特には溶融ジェットを分割する方法に関し、この方法は、液体ジェット(10)の形態で第1方向(12)に移動する導電性液体を提供するステップと、液体ジェット(10)を取り囲む高周波進行電磁界を発生させるステップとを含む。高周波進行電磁界は、第1方向(12)に移動して液体ジェット(10)を第1方向(12)に加速し、それにより液体ジェット(10)を霧化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性液体、特には溶融ジェットを分割するための方法であって、
液体ジェット(10)の形態で第1方向(12)に移動する導電性液体を提供するステップと、
前記液体ジェット(10)を取り囲む高周波進行電磁界を発生させ、前記高周波進行電磁界が前記第1方向(12)に移動して前記液体ジェット(10)を前記第1方向(12)に加速し、それにより前記液体ジェット(10)を霧化するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記高周波進行電磁界が、少なくとも0.1MHz、好ましくは少なくとも1MHz、より好ましくは少なくとも10MHz、さらにより好ましくは少なくとも100MHzの交流周波数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高周波進行電磁界が、少なくとも1つの極対(24A,24B,24C)、好ましくは少なくとも2つの極対(24A,24B,24C)、より好ましくは少なくとも3つの極対(24A、24B、24C)を有するコイルアセンブリ(22)により発生される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体ジェット(10)を取り囲むガス流を発生させ、前記ガス流が、ほぼ前記第1方向(12)に移動して、前記液体ジェット(10)を前記第1方向(12)にさらに加速させるステップをさらに含む、請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記液体ジェット(10)に衝突するさらなるガス流を、環状ノズル(50)を用いて発生させるステップをさらに含む、請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体ジェット(10)が、誘導コイル(40)を用いて電極(42)を溶融させることにより発生する、請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
霧化された前記液体ジェット(10)を冷却して、固化された粒子を生成するステップをさらに含む、請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
導電性液体、特には溶融ジェットを分割するための装置(20)であって、
第1方向(12)に移動する導電性液体の液体ジェット(10)を提供するための液体源と、
前記液体源の下流に、且つ前記液体ジェット(10)と同軸状に配置された少なくとも1つの極対(24A,24B,24C)を有するコイルアセンブリ(22)とを備え、
前記コイルアセンブリ(22)が、前記液体ジェット(10)を取り囲み前記第1方向(12)に進行する高周波進行電磁界を発生させるように適合されており、前記高周波進行電磁界により前記液体ジェット(10)を前記第1方向(12)に加速し、それにより前記液体ジェット(10)を霧化する、装置(20)。
【請求項9】
前記高周波進行電磁界が、少なくとも0.1MHz、好ましくは少なくとも1MHz、より好ましくは少なくとも10MHz、さらにより好ましくは少なくとも100MHzの交流周波数を有する、請求項8に記載の装置(20)。
【請求項10】
前記液体ジェット(10)を取り囲むガス流を発生させるように適合された不活性ガスノズル(30)をさらに含み、前記ガス流がほぼ前記第1方向(12)に移動して、前記ガス流により前記液体ジェット(10)を前記第1方向(12)にさらに加速させる、請求項8又は9に記載の装置(20)。
【請求項11】
前記コイルアセンブリ(22)が、前記不活性ガスノズル(30)内に、及び/又は、流路中心軸(A)に沿って見たときに前記不活性ガスノズル(30)の上流及び/又は下流に配置されている、請求項10に記載の装置(20)。
【請求項12】
前記液体ジェット(10)に衝突するように適合されたさらなるガス流を発生させるための環状ノズル(50)をさらに備えた、請求項8乃至11の何れか1項に記載の装置(20)。
【請求項13】
前記液体源が電極(42)であり、前記液体ジェット(10)が溶融ジェットである、請求項8乃至12の何れか1項に記載の装置(20)。
【請求項14】
前記電極(42)と同軸状に、且つ前記電極(42)の一端の領域に配置された誘導コイル(40)を備え、前記誘導コイル(40)が、前記溶融ジェットを発生させるために前記電極(42)を溶融するように適合されている、請求項13に記載の装置(20)。
【請求項15】
霧化された前記液体ジェット(10)を冷却及び固化するための霧化塔を備えた、請求項7乃至11の何れか1項に記載の装置(20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性液体を分割、すなわち霧化又は噴霧化する方法及び装置に関する。導電性液体の霧化は、導電性液体をマイクロ液滴に分割することに役立つ。詳細には、本発明による方法及び装置は、溶融ジェットの霧化又は噴霧化による高純度球状金属粉末の製造に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
霧化されたマイクロ液滴を生成するための先行技術から知られる方法及び装置は、多くの場合、液体又は液化材料の、不活性ガスによる霧化に基づいている。実際、これらの方法は、特には、金属粉末製造の分野から知られている。ここでは、金属又は金属合金溶融物の溶融ジェットが提供され、不活性ガスノズルを用いて霧化される。
【0003】
このような金属粉末製造方法の欠点は、不活性ガスの消費量が多く、それに関連する運転コストが高いことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、先行技術の状態の欠点を克服することである。詳細には、本発明の課題の1つは、導電性液体、特には溶融ジェットを分割するための、運転コストの削減を可能にする方法及び装置を提供することである。
【0005】
この目的は、独立特許請求の範囲による、導電性液体を分割するための方法及び装置により解決される。この方法及び装置のオプション及び実施形態が、従属請求項及び以下の説明の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
導電性液体、特には溶融ジェットを分割する方法は、液体ジェットの形態で第1方向に移動する導電性液体を提供するステップを含む。
【0007】
本発明において、分割とは、前記導電性液体を霧化又は噴霧化することを意味する。ここで、前記液体ジェットとは、連続した液体ジェット、又は、密接に連続した少なくとも一連の液滴を指す。前記液体ジェットは、前記液体ジェットの流路中心軸にほぼ沿って前記第1方向に移動する。具体的には、前記導電性液体は、溶融ジェットの形態で提供される、金属又は金属合金の溶融物であり得る。しかし、本発明による方法及び装置は、金属溶融物の霧化に限定されるものではなく、進行電磁界により影響を受け得る任意の導電性液体の霧化に用いられ得る。
【0008】
本発明による前記方法のさらなるステップは、前記液体ジェットを取り囲む高周波進行電磁界を発生させるステップであり、この電磁界は前記第1方向に進行して前記液体ジェットを前記第1方向に加速させ、それにより前記液体ジェットを霧化する。
【0009】
より具体的には、前記第1方向に進行する前記高周波進行電磁界は、前記液体ジェットの周囲に周方向に配置されるため、前記液体ジェットの外層を内層よりも加速させることができる。前記高周波進行電磁界は、前記液体ジェットの外層に強い接線成分を発生し、特に外層を実質的に加速させる。この結果、大きい速度勾配を前記液体ジェット内に有する臨界速度プロファイルが得られ、これは、長手方向断面において、液体ジェットのU字状の速度プロファイルとして現れ得る。詳細には、層状のパイプ流の速度プロファイルがほぼ反転されてU字状の速度プロファイルになり得る。前記液体ジェット内の圧力が、前記液体ジェットの周囲の圧力と比較して、突然又は急激に上昇するため、前記液体ジェットは圧力差により分解又は霧化される。霧化又はノズル化により、前記液体ジェットがリガメントに分裂されるため、所望の微粒子が生成される。前記液体ジェット内の前記圧力上昇に加え、前記液体ジェットが過熱する場合もある。
【0010】
従来の霧化方法とは対照的に、本発明による方法によれば、均質な液体ジェット、例えば溶融ジェットを、高周波進行電磁界を用いて霧化できる。この目的のために不活性ガスを導入する必要はなく、これは、本発明の方法の運転コストを低減できることを意味する。
【0011】
一実施形態において、前記高周波進行電磁界は、少なくとも0.1MHz、好ましくは少なくとも1MHz、より好ましくは少なくとも10MHz、さらにより好ましくは少なくとも100MHzの交流周波数を有することができる。例えば、前記進行電磁界は、0.1MHz~100MHzの交流周波数を有することができる。前記交流周波数は、さらなる方法パラメータに応じて、特に、霧化されるべき前記液体ジェットの材料、及び/又は、生成されるべき微粒子又はマイクロ液滴の寸法に応じて調整されることができる。
【0012】
一実施形態によれば、前記高周波進行電磁界は、少なくとも1つの極対、好ましくは複数の極対を有するコイルアセンブリにより発生されることができる。例えば、前記コイルアセンブリは、少なくとも2つの極対、より好ましくは少なくとも3つの極対、さらに好ましくは少なくとも4つ以上の極対を含み得る。複数の極対を有するコイルアセンブリの場合、前記極対は、各々、前記流路中心軸に沿って、隣り合う極対と平行に配置され得る。前記コイルアセンブリは、前記高周波進行電磁界が前記第1方向に移動するように、すなわち、ほぼ前記第1方向に移動するように制御され得る。
【0013】
一実施形態において、本発明の方法のさらなるステップは、前記液体ジェットを取り囲むガス流を発生させることであり得る。前記ガス流は、ほぼ前記第1方向に移動して、前記液体ジェットを前記第1方向にさらに加速させる。使用されるガスは、好ましくは不活性ガスであり、例えばアルゴンである。前記ガスは、高圧、例えば、0Pa~10MPa、好ましくは0.1MPa~5MPaであり得る。前記ガス流は不活性ガスノズルを用いて発生され得る。前記ガス流は、前記液体ジェットに衝撃を与え得る。この衝撃は、前記高周波進行電磁界に加えて、及び前記高周波進行電磁界と協働する重畳された加速の形態である。前記ガス流は前記液体ジェットを、時間的及び/又は空間的に、前記コイルアセンブリの前及び後に向けて同時に加速させることができる。前記ガス流は、前記液体ジェットに剪断応力を介して作用する。こうして、前記液体ジェットにおける前記臨界速度プロファイル(U字状の速度プロファイル)と、従って高い内圧とが、前記高周波進行電磁界及び前記ガス流により設定され、それにより前記液体ジェットが効率的に霧化される。ガス流を追加で用いたとしても、ガス消費量を、従来のノズル化方法と比較して削減できる。なぜなら、前記霧化は前記ガス流によってだけでなく、前記進行電磁界も一緒に用いて行われるからである。
【0014】
前記不活性ガスノズルは、ラバールノズルであり得る。
【0015】
一実施形態において、前記高周波進行電磁界は、前記不活性ガスノズルに組み込まれたコイルアセンブリにより発生され得る。この場合、前記液体ジェットは、前記ガス流及び前記高周波進行電磁界によりほぼ同時に加速され得る。
【0016】
一実施形態において、前記高周波進行電磁界は、前記不活性ガスノズルの流路中心軸に沿った上流又は下流に取り付けられたコイルアセンブリを用いて発生され得る。この場合、前記液体ジェットの、前記高周波進行電磁界及び前記ガス流による加速が、前記液体ジェット、又は、少なくとも部分的に既に霧化された液体ジェットに、少なくとも部分的に次々に作用する。
【0017】
一実施形態において、前記液体ジェットは、環状ノズルを介して導入されるさらなるガス流により霧化されることができる。このさらなるガス流は、前記液体ジェット又は前記少なくとも部分的に霧化された液体ジェットに対して、衝動的又は衝撃的な影響を与え得る。この目的のためのガスとして、不活性ガス、例えばアルゴンも使用できる。前記環状ノズルは、前記流路中心軸に沿って見たときに、前記コイルアセンブリの下流に配置されることができる。前記流路中心軸に沿って見たときに、前記環状ノズルは、前記不活性ガスノズルの下流に取り付けられることができる。
【0018】
前記方法は、具体的には、EIGA法(電極誘導溶融(不活性)ガス霧化(“Electrode Induction Melting (Inert) Gas Atomization”))であってよく、又はEIGA法において使用されてもよい。また、前記方法は、VIGA法(不活性ガス霧化と組み合わされた真空誘導溶融(“Vacuum Induction Melting combined with Inert Gas Atomization”))、PIGA法(ガス霧化をガイドするプラズマ溶融誘導 (“Plasma Melting Induction Guiding Gas Atomization”))、CCIM法(低温坩堝誘導溶融(“Cold Crucible Induction Melting”))、又は、その他の任意の粉末製造のための方法であってもよい。
【0019】
前記液体ジェットは、具体的には、垂直に吊り下げられた回転電極を円錐状の誘導コイルを用いて溶融することにより発生され得る。この目的のために、前記電極を前記誘導コイルの方向に連続的に移動させ、非接触で溶融させることができる。前記電極をその長手方向軸を中心に回転させることで、前記電極の均一な溶融を保証できる。前記電極の溶融、及び、前記発生された溶融ジェットの霧化は真空中又は不活性ガス雰囲気中で行われ得る。これは、前記溶融された材料の、例えば酸素との不都合な反応を生じないようにするためである。EIGA法を用いて、高純度の金属又は貴金属粉末(例えば、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル合金の粉末)のセラミックフリー生成が可能である。
【0020】
一実施形態において、本発明の方法は、固化された、特には球状の粒子を生成するために、前記霧化された液体ジェットを冷却するステップをさらに含み得る。この冷却は、局所的な冷却状況下で行われ得る。また、冷却は、特に収集容器に組み込まれた冷却装置により積極的に影響を受け得る。
【0021】
本発明のさらなる態様は、導電性液体、特には溶融ジェットを分割するための装置に関する。この装置は、第1方向に移動する導電性液体の液体ジェットを提供するための液体源と、前記液体ジェットの移動方向に関して前記液体源の下流に、且つ、前記流路中心軸に関して前記液体ジェットと同軸状に配置された、少なくとも1つの極対を有するコイルアセンブリと、を備えている。前記コイルアセンブリは、前記液体ジェットを取り囲み前記第1方向に進行する高周波進行電磁界を発生させるように適合されており、前記高周波進行電磁界により前記液体ジェットを前記第1方向に加速し、それにより前記液体ジェットを霧化する。
【0022】
前記装置は、前記導電性液体を分割するための上述の方法を実行するように適合され得る。
【0023】
一実施形態によれば、高周波進行電磁界を発生させるための前記コイルアセンブリは、複数の極対を含み得る。例えば、前記コイルアセンブリは、少なくとも2つの極対、より好ましくは少なくとも3つの極対、なおより好ましくは少なくとも4つ以上の極対を含み得る。複数の極対の前記極対は、各々、液体ジェットの流路中心軸に沿って、隣り合う極対に平行に配置され得る。前記コイルアセンブリは、前記高周波進行電磁界が前記第1方向に予め決められた速度で進行するように、すなわち、前記高周波進行電磁界がほぼ前記第1方向に、前記予め決められた速度で進行するように駆動され得る。
【0024】
一実施形態において、前記高周波進行電磁界は、少なくとも0.1MHz、好ましくは少なくとも1MHz、より好ましくは少なくとも10MHz、さらにより好ましくは少なくとも100MHzの交流周波数を有することができる。例えば、進行電磁界は、0.1MHz~100MHzの交流周波数を有することができる。前記交流周波数は、さらなる方法パラメータに応じて、特に、霧化されるべき前記液体ジェットの材料、及び/又は、生成されるべき微粒子又はマイクロ液滴の寸法に応じて調整することができる。
【0025】
一実施形態によれば、前記装置は、前記液体ジェットを取り囲むガス流を発生させるように設計された不活性ガスノズルを含み得る。前記ガス流は、ほぼ前記第1方向に移動し、それにより、前記液体ジェットを前記ガス流により前記第1方向にさらに加速する。前記ガス流は、不活性ガス流であってよく、例えば不活性ガスとしてアルゴンガスを用いることができる。
【0026】
前記ガス流は、ラバールノズルの形態の不活性ガスノズルにより発生され得る。
【0027】
一実施形態において、前記コイルアセンブリは、前記不活性ガスノズル内に配置され又は組み込まれることができる。前記コイルアセンブリと前記不活性ガスノズルとは、互いに同軸状に配置されることができる。この場合、前記液体ジェットは、前記ガス流と前記高周波進行電磁界とによりほぼ同時に加速されることができる。
【0028】
一実施形態において、前記コイルアセンブリは、前記流路中心軸に沿って見たときに、前記不活性ガスノズルの上流又は下流に配置され得る。この場合、前記高周波進行電磁界及び前記ガス流による前記液体ジェットの前記加速は、前記液体ジェット又は前記少なくとも部分的に既に霧化された液体ジェットに、少なくとも部分的に次々に作用する。
【0029】
前記不活性ガスノズルの配置により、前記ガス流は前記液体ジェットに衝撃を与え得る。この衝撃は、前記高周波進行電磁界に加えて、及び、前記高周波進行電磁界と協働する重畳された加速の形態である。こうして、前記液体ジェットにおける前記臨界速度プロファイルを、前記高周波進行電磁界及び前記ガス流を用いて調整でき、それにより前記液体ジェットを効率的に霧化できる。また、ガス流を付加するにもかかわらず、従来のノズル化装置と比較してガス消費量を低減できる。なぜなら、前記霧化は、前記ガス流だけによるものではなく、前記進行電磁界との併用により行われるからである。
【0030】
一実施形態において、前記装置は環状ノズルを含んでもよく、当該環状ノズルは、前記環状ノズルを介して導入されるさらなるガス流を用いて、前記液体ジェットを追加的に霧化するように設計されている。前記環状ノズルは、前記液体ジェット又は前記少なくとも部分的に既に霧化された液体ジェットを、前記液体ジェット又は前記少なくとも部分的に既に霧化された液体ジェットへの衝撃を用いてさらに霧化するように設定され得る。この目的のために、不活性ガスは、例えばアルゴンも使用され得る。前記環状ノズルは、前記流路中心軸に沿って見たときに、前記コイルアセンブリの下流に配置され得る。前記環状ノズルは、前記流路中心軸に沿って見たときに、前記不活性ガスノズルの下流に配置され得る。
【0031】
1つの不活性ガスノズルと1つの環状ノズルとを備えた実施形態において、これらの2つのノズルを1つのノズル装置として設計できる。このノズル装置は一体型であり得る。
【0032】
不活性ガスノズルと環状ノズルとを備えた実施形態において、生成される粉末の品質及び/又は粒径は、前記コイルアセンブリ、前記不活性ガスノズル及び前記環状ノズルの相互作用及び調整により影響を受けることになろう。
【0033】
一実施形態において、前記液体源は、具体的には、電極の形態の溶融ジェット源であり得る。一実施形態において、前記液体ジェットは、溶融された電極材料の溶融ジェットであり得る。前記電極は、垂直に吊り下げられた回転可能な電極であり得る。例えば、前記電極は、チタン、チタン合金、ジルコニウムベースの、ニオブベースの、ニッケル若しくはタンタルベースの合金、貴金属若しくは貴金属の合金、銅若しくはアルミニウムの合金、特殊金属若しくは特殊金属の合金を含み得る、又はから成り得る。前記電極は、直径が50mmよりも大きく、最大150mmであり得、長さが500mmよりも長く、最大1000mmであり得る。
【0034】
さらに、前記装置は、前記電極の下端の領域に配置された、前記電極と同軸の円錐状の誘導コイルを含み得る。この誘導コイルは、前記電極を溶融して溶融ジェットを発生させるように適合されている。この目的のために、前記電極は、前記誘導コイルの方向に連続的に変位可能であり得る。前記電極及び前記誘導コイルは、真空又は不活性ガス雰囲気が与えられるハウジング内に配置され得る。
【0035】
一実施形態において、前記装置は、前記霧化された液体ジェットを冷却及び固化するための霧化塔を含み得る。この霧化塔は、筐体に接続されていてもよく、また、真空又は不活性ガス雰囲気を供給されてもよい。前記コイルアセンブリ、及び、前記不活性ガスノズル(取り付けられる場合)も、前記霧化塔との接続領域において前記筐体内に配置され得る。前記霧化塔には、前記霧化された液体ジェットを積極的に冷却するための冷却装置を設けることができ、これにより、目標を定めて粒子形成に作用させることができる。
【0036】
前記装置はEIGAシステムであってよく、或いはEIGAシステムに搭載されてもよい。
【0037】
幾つかの態様及び特徴を、本発明の方法との関連においてのみ記載したが、これらは、装置及び実施形態に適宜適用でき、その逆もあり得る。
【0038】
本発明の実施形態を、以下に、同封の概略図を参照しつつ、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明による方法の動作モードを示す概略図である。
図2図2は、ラバールノズルを用いたノズル化方法の動作モードを示す概略図である。
図3図3は、本発明による方法のEIGA法における動作モードを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、導電性液体の液体ジェット10の一部の長手方向断面図である。この例において、液体ジェット10は実質的に、金属溶融物の連続溶融ジェットである。液体源(図示せず)から出発して、液体ジェット10は、その流路中心軸Aに沿って第1方向12に移動する。示されている図1の図において、液体ジェット10は重力により上方から下方に落下する。
【0041】
液体ジェット10は、液体ジェット10を霧化するための装置20を通過する。図示されている設計例において、装置20は、3つの極対24A,24B,24Cを有するコイルアセンブリ22を含む。代替的な設計例において、コイルアセンブリが3つの極対よりも多い又は少ない極対を有し得ることが理解されよう。コイルアセンブリ22は、移動方向において液体源(図示せず)の下流にあり、巻線は互いに平行に、且つ液体ジェット10と同軸に配置されている。
【0042】
個々の極対24A,24B,24Cは、位相がφ変化し、そしてそれにより高周波進行電磁界が発生するように、順に制御され得る。位相変化φの順序は、一例としてφ,φ,φという番号で図示されている。高周波進行電磁界は、例えば、0.1MHz~100MHzの交流周波数を有し得る。
【0043】
また、高周波進行電磁界は、位相変化φにより、第1方向12に移動する。液体ジェット10の周囲にコイル順序22の巻線が配置されているため、強い接線成分を有する高周波進行電磁界により発生するローレンツ力26が、主に液体ジェット10の外層に衝突し、さらに、外層を第1方向12に加速させる。こうして、液体ジェット10の外層は、液体ジェット10の内層よりも強く加速され、その結果、大きい速度勾配を液体ジェット内に有する臨界速度プロファイルが形成される。液体ジェットのコースにおいて優勢な速度(液体ジェット内の速度プロファイルを示す)が矢印Vにより図示されており、長い矢印が、より高い速度を示し、短い矢印が、より低い速度を示す(明瞭化のために1つの矢印にだけ参照符Vmが付されている)。長手方向断面において、コイルアセンブリ22からの液体ジェット10の出口における臨界速度プロファイルが、U字状の速度プロファイル28として示されている。液体ジェット10内の大きい速度勾配が、液体ジェット10内の圧力を増大させる。この結果、液体ジェット10内の高い圧力と、液体ジェットの周囲のはるかに低い圧力との間に大きな圧力差が生じる。この圧力差により、液体ジェット10がリガメントに分裂され、すなわち、液体ジェット10が霧化されて微粒子になる。微粒子は、例えば、20μm~100μmの平均粒子寸法又は平均粒子径d50を有し得る。
【0044】
図2は、金属溶融物の溶融ジェット110の一部の長手方向断面図である。液体ジェット110は、不活性ガスノズル化方法又はラバールノズル化により霧化される。溶融ジェット110は、不活性ガスノズル120の開口部を通過して、霧化塔(図示せず)に入る。
【0045】
図1に示した方法とは異なり、図2に示す方法における溶融ジェット110における臨界速度プロファイルは、不活性ガス流122により生成される。不活性ガス流122は、不活性ガスノズル120を高速度Vで流れて霧化塔に入る。溶融ジェット110が不活性ガスノズル120の中心を通るように通過するため、不活性ガス流122が溶融ジェット110を取り囲み、剪断応力を介して溶融ジェット110の外層に作用する。こうして、溶融ジェット110の外層は、溶融ジェット110の内層よりも第1方向12に強く加速される。これにより、臨界速度プロファイル128が溶融ジェット110内に生成され、そして、溶融ジェット110が、不活性ガスノズル120を出た後、又は、接続された霧化塔に入った後に霧化される。
【0046】
図3は、EIGA法における本発明による手順の動作モード、又は、EIGAシステム200における本発明による装置20の断面図の一部を概略的に示している。図1と同一の構成要素及び特徴物には同一の参照符号を付してある。
【0047】
図3に見られるように、図示の設計例におけるコイルアセンブリ22は、ラバールノズルの形態で設計された不活性ガスノズル30に組み込まれている。従って、図3は、図1及び図2に示した方法の組合せを含む本発明の一実施形態を示す。この結果、驚くべき相乗効果が得られ、霧化のさらなる改善をもたらすことができる。
【0048】
コイルアセンブリ22と不活性ガスノズル30とは同軸状に配置されており、コイルアセンブリ22は、不活性ガスノズル30及び不活性ガスノズル30の内部をそれぞれ包囲している。不活性ガス流32が不活性ガスノズル30を通って流れ、これにより、複数の連続した液滴から成る液体ジェット10が層状に加速される(図2に類似)。不活性ガスノズル30を介した、又は不活性ガス流32を介したこの層状加速(図2に類似)が、コイルアセンブリ22を介した導電性液体ジェット10の電磁加速(図1に類似)により重畳される。
【0049】
両方の加速が協働して、液体ジェット10に衝撃を、液体ジェット10が第1方向12に加速されるように与える。これらの重畳された加速により、液体ジェット10に、図1及び図2の速度プロファイルに対応するU字状の臨界速度プロファイルが形成される。このようにして発生された液体ジェット10内の大きい速度勾配が、液体ジェット10内の圧力を上昇させ、液体ジェット10内の高い圧力と液体ジェットの周囲のはるかに低い圧力との間に大きな圧力差をもたらす。この圧力差により、液体ジェット10がリガメントに分解され、すなわち、液体ジェット10は霧化されて微粒子になる。
【0050】
図3にも示されているように、液体ジェット10は、いわゆるEIGA法で発生する。この目的のために、EIGAコイル40又は誘導コイル40が、コイルアセンブリ22及び不活性ガスノズル30の前方に取り付けられている。誘導コイル40は、コイルアセンブリ22及び不活性ガスノズル30と同軸状に配置されている。誘導コイル40は、第1方向12において見たときにテーパ状であり、すなわち、第1方向12において見たときに減少していく直径を有する。
【0051】
電極42が、誘導コイル40と同軸状に、且つ、少なくとも部分的に誘導コイル40の前方に設けられ、液体ジェット10を発生させるために、誘導コイル40により溶断される。図示されている電極は、例えば、チタン、チタン合金、又は、ジルコニウム、ニオブ、ニッケル若しくはタンタルベースの合金、貴金属若しくは貴金属合金、銅若しくはアルミニウムの合金、特殊金属若しくは特殊金属合金から成り得る。電極42は上端部(図示せず)にて吊り下げられており、第1方向(すなわち、コイル装置22及び不活性ガスノズル30の配置方向)において軸方向に変位可能である。これにより、電極42の溶融において電極42は連続的に追従できる。
【0052】
コイルアセンブリ22及び不活性ガスノズル30の下流に環状ノズル50があり、この環状ノズル50を通して、さらなる不活性ガス流52をアセンブリ全体に導入できる。図示されている設計におけるさらなる不活性ガス流52が、コイルアセンブリ22及び不活性ガスノズル30から出現する液体ジェット10に、衝動的又は衝撃的に衝突する。出現する液体ジェット10は、環状ノズル50からのさらなる不活性ガス流52が液体ジェット10に衝突するときに、既に少なくとも部分的に霧化されているであろう。さらなる不活性ガス流52が、液体ジェット10又は少なくとも部分的に霧化された液体ジェット10に衝突することにより、液体ジェット10はさらにノズル化されることになる。
【0053】
図3に示されているように、コイルアセンブリ22、不活性ガスノズル(ラバールノズル)30及び環状ノズル50を共通の装置20として設計できる。装置20は、例えば、一体型であり得る。
【0054】
図3に示した装置全体に続くように、霧化塔を、霧化された液体ジェットを冷却及び固化するために設けることができるが、ここでは示唆するだけで完全には示さない。霧化塔は、固化された粉末を収集するための収集タンクを含み得る。
【0055】
液体ジェットを発生させるためのEIGA法の代わりに、坩堝を使用しない代替方法又は坩堝を使用する方法、例えば、VIGA法、PIGA法、CCIM法又はその他の方法を提供し得ることが理解されよう。従って、図3に示したシステムにおいて、誘導コイルの代わりに、上述の方法に必要な1以上の装置をコイルアセンブリの上流に設けてもよい。
【0056】
本発明による方法及び本発明による装置が、一実施形態において、不活性ガスノズルを含まず、コイルアセンブリを有する装置と環状ノズルとの組合せを含み得ることが理解されよう。
【0057】
本発明による方法又は本発明による装置により、特に、不活性ガスの消費を節約することにより、従来の不活性ガスノズル化方法と比較して、運転コストを削減できる。
【符号の説明】
【0058】
10 液体ジェット
A 流れの中心軸
12 第1方向
20 液体ジェットを霧化する装置
22 コイル装置
24A,24B,24C 極対/巻線
26 ローレンツ力
28 U字状速度プロファイル
Vm 液体ジェット内の速度
φ,φ,φ,φ 位相変化
30 不活性ガスノズル(ラバールノズル)
32 不活性ガス流
40 誘導コイル
42 電極
50 環状ノズル
52 さらなる不活性ガス流
110 溶融ジェット(先行技術)
120 不活性ガスノズル(先行技術)
122 不活性ガスフロー(先行技術)
128 速度プロファイル(先行技術)
200 EIGAシステム

図1
図2
図3
【国際調査報告】