(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-20
(54)【発明の名称】広帯域用の積層バルクヘテロ接合太陽電池及び調整可能なスペクトルカバレッジ
(51)【国際特許分類】
H01L 51/44 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
H01L31/04 112A
H01L31/04 122
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509597
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 US2020046514
(87)【国際公開番号】W WO2021034713
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515087787
【氏名又は名称】ユビキタス エナジー, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】UBIQUITOUS ENERGY, INC.
【住所又は居所原語表記】3696 Haven Avenue, Suite B, Redwood City, California 94063 The United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【氏名又は名称】穐場 仁
(72)【発明者】
【氏名】バール,マイルス シー.
(72)【発明者】
【氏名】パンディ,リチャ
(72)【発明者】
【氏名】サイクス,マシュー イー.
(72)【発明者】
【氏名】ラブ,ジョン エー.
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151DA07
5F151DA15
5F151FA04
5F151FA06
5F151FA07
5F151FA23
5F151GA03
(57)【要約】
バルクヘテロ接合(BHJ)を有する可視光透過型光起電装置が開示される。そのような装置は、可視光を透過するが、近赤外光及び/又は紫外光を吸収する。光起電装置は、下部可視光透過型電極及び上部可視光透過型電極、並びに、相補的な吸収特性を有する複数の積層BHJ活性層を含んでもよい。例えば、第1のBHJ活性層は、第2のBHJ活性層の吸収スペクトルに対して相補的な吸収スペクトルを有してもよい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に結合される第1の電極と、
前記第1の電極の上方に配置される第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される第1のバルクヘテロ接合(BHJ)活性層であって、第1の電子ドナー材料と第1の電子アクセプタ材料との第1のブレンドを備える、第1のBHJ活性層と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される第2のBHJ活性層であって、第2の電子ドナー材料と第2の電子アクセプタ材料との第2のブレンドを備え、前記第1のBHJ活性層と接触する、第2のBHJ活性層と、
を備え、
前記第1のBHJ活性層の吸収スペクトルは、前記第2のBHJ活性層の吸収スペクトルに対して少なくとも部分的に相補的である、有機光起電装置。
【請求項2】
前記第1の電子ドナー材料が前記第2の電子ドナー材料とは異なり、前記第1の電子アクセプタ材料が前記第2の電子アクセプタ材料とは異なる、請求項1に記載の有機光起電装置。
【請求項3】
前記第1の電子ドナー材料が前記第2の電子ドナー材料とは異なり、前記第1の電子アクセプタ材料が前記第2の電子アクセプタ材料と同じである、請求項1に記載の有機光起電装置。
【請求項4】
前記第1の電子ドナー材料が前記第2の電子ドナー材料と同じであり、前記第1の電子アクセプタ材料が前記第2の電子アクセプタ材料とは異なる、請求項1に記載の有機光起電装置。
【請求項5】
前記第1の電子ドナー材料が前記第2の電子ドナー材料と同じであり、前記第1の電子アクセプタ材料が前記第2の電子アクセプタ材料と同じである、請求項1に記載の有機光起電装置である。
【請求項6】
前記第1のBHJ活性層の最低非占有分子軌道(LUMO)エネルギー準位が前記第2のBHJ活性層のLUMOエネルギー準位よりも大きい、請求項1に記載の有機光起電装置。
【請求項7】
前記第2のBHJ活性層の最高占有分子軌道(HOMO)エネルギー準位が前記第1のBHJ活性層のHOMOエネルギー準位よりも小さい、請求項1に記載の有機光起電装置。
【請求項8】
前記第1のBHJ活性層の前記第1の電子アクセプタ材料の最低非占有分子軌道(LUMO)エネルギー準位が前記第2のBHJ活性層の前記第2の電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位の300meV以内である、請求項1に記載の有機光起電装置。
【請求項9】
前記第1のBHJ活性層の前記第1の電子ドナー材料の最高占有分子軌道(HOMO)エネルギー準位は、前記第2のBHJ活性層の前記第2の電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位の300meV以内である、請求項1に記載の有機光起電装置。
【請求項10】
前記第1のBHJ活性層が前記第2のBHJ活性層に結合される、請求項1に記載の有機光起電装置。
【請求項11】
前記第1のブレンドは、更なる電子ドナー材料又は更なる電子アクセプタ材料のうちの少なくとも一方を含む三次、四次、又は、高次ブレンドである、請求項1に記載の有機光起電装置。
【請求項12】
前記第2のブレンドは、更なる電子ドナー材料又は更なる電子アクセプタ材料のうちの少なくとも一方を含む三次、四次、又は、高次ブレンドである、請求項1に記載の有機光起電装置。
【請求項13】
前記第1のBHJ活性層が前記第1の電極に結合される、請求項1に記載の有機光起電装置。
【請求項14】
前記第2のBHJ活性層が前記第2の電極に結合される、請求項1に記載の有機光起電装置。
【請求項15】
可視光透過型基板と、
前記可視光透過型基板に結合される第1の可視光透過型電極と、
前記第1の可視光透過型電極の上方に配置される第2の可視光透過型電極と、
前記第1の可視光透過型電極と前記第2の可視光透過型電極との間に配置される第1のバルクヘテロ接合(BHJ)活性層であって、第1の電子ドナー材料と第1の電子アクセプタ材料との第1のブレンドを備える、第1のBHJ活性層と、
前記第1の可視光透過型電極と前記第2の可視光透過型電極との間に配置される第2のBHJ活性層であって、第2の電子ドナー材料と第2の電子アクセプタ材料との第2のブレンドを備え、前記第1のBHJ活性層と接触する、第2のBHJ活性層と、
を備え、
前記第1のBHJ活性層の吸収スペクトルは、前記第2のBHJ活性層の吸収スペクトルに対して少なくとも部分的に相補的である、有機光起電装置。
【請求項16】
基板と、
前記基板に結合される第1の電極と、
前記第1の電極の上方に配置される第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される第1のサブセルであって、
第1の電子ドナー材料と第1の電子アクセプタ材料との第1のブレンドを備える第1のバルクヘテロ接合(BHJ)活性層と、
第2の電子ドナー材料と第2の電子アクセプタ材料との第2のブレンドを備える第2のBHJ活性層であって、前記第1のBHJ活性層と接触しており、前記第1のBHJ活性層の吸収スペクトルが、前記第2のBHJ活性層の吸収スペクトルに対して少なくとも部分的に相補的である、第2のBHJ活性層と、
を備える、第1のサブセルと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される第2のサブセルであって、
第3の電子ドナー材料と第3の電子アクセプタ材料との第3のブレンドを備える第3のBHJ活性層を備える、第2のサブセルと、
前記第1のサブセルと前記第2のサブセルとの間に配置される電荷再結合ゾーンと、
を備えるタンデム有機光起電装置。
【請求項17】
前記第1のサブセルが前記第1の電極と前記電荷再結合ゾーンとの間に配置される、請求項16に記載のタンデム有機光起電装置。
【請求項18】
前記第2のサブセルが前記第1の電極と前記電荷再結合ゾーンとの間に配置される、請求項16に記載のタンデム有機光起電装置。
【請求項19】
前記第2のサブセルは、第4の電子ドナー材料と第4の電子アクセプタ材料との第4のブレンドを備える第4のBHJ活性層を更に備え、前記第4のBHJ活性層が前記第3のBHJ活性層と接触し、前記第4のBHJ活性層の吸収スペクトルが前記第3のBHJ活性層の吸収スペクトルに対して少なくとも部分的に相補的である、請求項16に記載のタンデム有機光起電装置。
【請求項20】
前記タンデム有機光起電装置が可視光透過型である、請求項16に記載のタンデム有機光起電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]この出願は、「広帯域用の積層バルクヘテロ接合太陽電池及び調整可能なスペクトルカバレッジ」と題される2019年8月16日に出願された米国仮特許出願第62/887,973号の優先権の利益を主張し、この出願の全体の内容はあらゆる目的のために参照により本願に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
[0002]光起電装置は、一般に、吸収された光が電子又は他の電荷キャリアをより高いエネルギー状態に励起させる光起電力効果を使用することによって光を電気に変換するために用いられる。反対のタイプの電荷キャリアの分離は、外部回路によって利用され得る電圧をもたらす。光起電太陽電池などの光起電装置は、ソーラーパネルなどのより大きな光起電システムの光起電アレイを構成するために一緒にパッケージングされ得る。発電するための光起電システムの使用は、世界中で主流の電力源となり続けている再生可能エネルギーの重要な形態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]太陽エネルギーを利用するために必要な表面積は、再生不可能なエネルギー消費量のかなりの部分を相殺することに対する障害のままである。このため、家庭、高層ビル、自動車における窓ガラスに組み込むことができる低コストで透明な有機光起電(OPV)装置が望ましい。例えば、自動車及び建築物で利用される窓ガラスは、一般に、可視スペクトル、例えば約450~650nmの波長を有する光を70~80%及び40~80%それぞれ透過する。低い機械的可撓性、高いモジュールコスト、及び、より重要なことには、無機半導体のバンド状吸収は、それらの潜在的な有用性を透明太陽電池に制限する。達せられる進歩にもかかわらず、透明ソーラー技術の分野における改良されたシステム、方法、及び、装置構造が当技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]窓パネル上に一体化され得る透明有機光起電(OPV)装置は、太陽エネルギーをうまく利用するための広い表面積をもたらすのに望ましい。無機半導体とは対照的に、有機半導体及び分子半導体の光学特性は、それらの無機対応物のバンド吸収とは非常に異なる吸収最小値及び吸収最大値を有する高度に構造化された吸収スペクトルをもたらす。しかしながら、様々な有機半導体及び分子半導体が存在する一方で、多くは可視スペクトルに強い吸収を示し、したがって、窓ガラスベースの太陽光発電で用いるのに最適ではない。
【0005】
[0005]この出願は、一般に、光学的に活性な材料及び装置の分野に関し、より詳細には、可視光透過型の光起電装置及び視覚的に不透明な光起電装置、並びに、可視光透過型光起電装置及び視覚的に不透明な光起電装置のための材料に関する。
【0006】
[0006]本明細書中では、可視光透過型及び可視光不透過型光起電装置に関する材料、方法、及び、システムについて説明する。より詳細には、本明細書は、可視光透過型電極間に配置される1つ以上のバルクヘテロ接合(BHJ)活性層を有する、可視光透過型及び可視光不透過型光起電装置を提供する。
【0007】
[0007]本発明の概要は、以下で与えられる様々な例を参照してもたらされる。以下で使用されるように、一連の例への任意の言及は、それらの例のそれぞれへの言及として選言的に理解されるべきである(例えば、「例1-4」は、「例1、2、3又は4」と理解されるべきである)。
【0008】
[0008]例1は、基板と、基板に結合される第1の電極と、第1の電極の上方に配置される第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置される第1のバルクヘテロ接合(BHJ)活性層であって、第1の電子ドナー材料と第1の電子アクセプタ材料との第1のブレンドを備える、第1のBHJ活性層と、第1の電極と第2の電極との間に配置される第2のBHJ活性層であって、第2の電子ドナー材料と第2の電子アクセプタ材料との第2のブレンドを備え、第1のBHJ活性層と接触する、第2のBHJ活性層とを備え、第1のBHJ活性層の吸収スペクトルが、第2のBHJ活性層の吸収スペクトルに対して少なくとも部分的に相補的である、有機光起電装置である。
【0009】
[0009]例2は、第1の電子ドナー材料が第2の電子ドナー材料とは異なり、第1の電子アクセプタ材料が第2の電子アクセプタ材料とは異なる、例1の有機光起電装置である。
【0010】
[0010]例3は、第1の電子ドナー材料が第2の電子ドナー材料とは異なり、第1の電子アクセプタ材料が第2の電子アクセプタ材料と同じである、例1の有機光起電装置である。
【0011】
[0011]例4は、第1の電子ドナー材料が第2の電子ドナー材料と同じであり、第1の電子アクセプタ材料が第2の電子アクセプタ材料とは異なる、例1の有機光起電装置である。
【0012】
[0012]例5は、第1の電子ドナー材料が第2の電子ドナー材料と同じであり、第1の電子アクセプタ材料が第2の電子アクセプタ材料と同じである、例1の有機光起電装置である。
【0013】
[0013]例6は、第1のBHJ活性層の最低非占有分子軌道(LUMO)エネルギー準位が第2のBHJ活性層のLUMOエネルギー準位よりも大きい、例1の有機光起電装置である。
【0014】
[0014]例7は、第2のBHJ活性層の最高占有分子軌道(HOMO)エネルギー準位が第1のBHJ活性層のHOMOエネルギー準位よりも小さい、例1の有機光起電装置である。
【0015】
[0015]例8は、第1のBHJ活性層の第1の電子アクセプタ材料の最低非占有分子軌道(LUMO)エネルギー準位が第2のBHJ活性層の第2の電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位の300meV以内である、例1の有機光起電装置である。
【0016】
[0016]例9は、第1のBHJ活性層の第1の電子ドナー材料の最高占有分子軌道(HOMO)エネルギー準位が、第2のBHJ活性層の第2の電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位の300meV以内である、例1の有機光起電装置である。
【0017】
[0017]例10は、第1のBHJ活性層が第2のBHJ活性層に結合される、例1の有機光起電装置である。
【0018】
[0018]例11は、第1のブレンドが、更なる電子ドナー材料又は更なる電子アクセプタ材料のうちの少なくとも一方を含む三次、四次、又は、高次ブレンドである、例1の有機光起電装置である。
【0019】
[0019]例12は、第2のブレンドが、更なる電子ドナー材料又は更なる電子アクセプタ材料のうちの少なくとも一方を含む三次、四次、又は、高次ブレンドである、例1の有機光起電装置である。
【0020】
[0020]例13は、第1のBHJ活性層が第1の電極に結合される、例1の有機光起電装置である。
【0021】
[0021]例14は、第2のBHJ活性層が第2の電極に結合される、例1の有機光起電装置である。
【0022】
[0022]例15は、可視光透過型基板と、可視光透過型基板に結合される第1の可視光透過型電極と、第1の可視光透過型電極の上方に配置される第2の可視光透過型電極と、第1の可視光透過型電極と第2の可視光透過型電極との間に配置される第1のバルクヘテロ接合(BHJ)活性層であって、第1の電子ドナー材料と第1の電子アクセプタ材料との第1のブレンドを備える、第1のBHJ活性層と、第1の可視光透過型電極と第2の可視光透過型電極との間に配置される第2のBHJ活性層であって、第2の電子ドナー材料と第2の電子アクセプタ材料との第2のブレンドを備え、第1のBHJ活性層と接触する、第2のBHJ活性層とを備え、第1のBHJ活性層の吸収スペクトルが、第2のBHJ活性層の吸収スペクトルに対して少なくとも部分的に相補的である、有機光起電装置である。
【0023】
[0023]例16は、基板と、基板に結合される第1の電極と、第1の電極の上方に配置される第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置される第1のサブセルであって、第1の電子ドナー材料と第1の電子アクセプタ材料との第1のブレンドを備える第1のバルクヘテロ接合(BHJ)活性層と、第2の電子ドナー材料と第2の電子アクセプタ材料との第2のブレンドを備える第2のBHJ活性層であって、第1のBHJ活性層と接触しており、第1のBHJ活性層の吸収スペクトルが、第2のBHJ活性層の吸収スペクトルに対して少なくとも部分的に相補的である、第2のBHJ活性層と、を備える、第1のサブセルと、第1の電極と第2の電極との間に配置される第2のサブセルであって、第3の電子ドナー材料と第3の電子アクセプタ材料との第3のブレンドを備える第3のBHJ活性層を備える、第2のサブセルと、第1のサブセルと第2のサブセルとの間に配置される電荷再結合ゾーンとを備えるタンデム有機光起電装置である。
【0024】
[0024]例17は、第1のサブセルが第1の電極と電荷再結合ゾーンとの間に配置される、例16のタンデム有機光起電装置である。
【0025】
[0025]例18は、第2のサブセルが第1の電極と電荷再結合ゾーンとの間に配置される、例16のタンデム有機光起電装置である。
【0026】
[0026]例19は、第2のサブセルが、第4の電子ドナー材料と第4の電子アクセプタ材料との第4のブレンドを備える第4のBHJ活性層を更に備え、第4のBHJ活性層が第3のBHJ活性層と接触し、第4のBHJ活性層の吸収スペクトルが第3のBHJ活性層の吸収スペクトルに対して少なくとも部分的に相補的である、例16のタンデム有機光起電装置である。
【0027】
[0027]例20は、タンデム有機光起電装置が可視光透過型である、例16のタンデム有機光起電装置である。
【0028】
[0028]例21は、タンデム有機光起電装置が可視光不透過型である、例16のタンデム有機光起電装置である。
【0029】
[0029]例22は、第2のBHJ活性層のLUMOエネルギー準位が第2の電極のエネルギー準位よりも大きい、例6の有機光起電装置である。
【0030】
[0030]例23は、第1のBHJ活性層のHOMOエネルギー準位が第1の電極のエネルギー準位よりも小さい、例7の有機光起電装置である。
【0031】
[0031]例24は、有機光起電装置が可視光透過型である、例1の有機光起電装置である。
【0032】
[0032]例25は、有機光起電装置が可視光不透過型である、例1の有機光起電装置である。
【0033】
[0033]例26は、第2のBHJ活性層と第2の電極との間に配置される励起子ブロッキング層、正孔ブロッキング層、又は、電子ブロッキング層を更に備える、例1の有機光起電装置である。
【0034】
[0034]例27は、第1の電極と第1のBHJ活性層との間に配置される励起子ブロッキング層、正孔ブロッキング層、又は、電子ブロッキング層を更に備える、例1の有機光起電装置である。
【0035】
[0035]本発明により、従来の技術よりも多くの利点が達成される。例えば、本発明の実施形態は、可視光を透過しつつ太陽光発電のために近赤外線及び/又は紫外線を吸収するための方法及びシステムを提供する。好適には、これらの光学特性は、観察者が光起電装置を通じ見ることができるようにする、有用な可視光を依然として通過させることができるようにしつつ、光起電装置において入射する太陽輻射から電気を生成できる能力をもたらす。
【0036】
[0036]タンデム光起電装置とは異なり、本発明の実施形態は、複数のBHJ層の間に電荷再結合ゾーンを含まない。結果として、光電流(電圧ではない)はBHJ層間で付加的である。少なくとも1つの固有の活性層材料を各BHJ層に組み込むことによって、有機光起電力(OPV)の吸収を所望のスペクトルカバレッジに関して容易に調整することができる。積層BHJは、平面混合ヘテロ接合内の平面層の厚さが励起子拡散律速であるため、平面混合ヘテロ接合アーキテクチャよりも有利である。これらの平面層を更なるBHJブレンドで置き換えることにより、この制限を除去することができる。積層BHJ自体は平面混合接合とも適合し、この場合、混合接合は、ただ1つではなく複数の別個のBHJ層に分割することができる。
【0037】
[0037]三次又は高次ブレンドから構成される単一のBHJ層とは異なり、積層BHJは、これらの活性材料の一部を個別の層に分離する。一例として、三次ブレンドBHJは、代わりに、単一の三次ブレンドの3つの材料を組み合わせて含む2つの二次ブレンドの積層BHJに分割されてもよい。2つの二次ブレンドの使用は、装置最適化の単純さ、各層における材料のブレンド形態及び光電気特性を独立して制御できる能力、及び、より容易な製造につながるより単純な堆積プロセスの観点から大きな利点を与える。更に、幾つかの実施形態において、積層BHJ性能は、類似の三次ブレンドBHJの性能よりも向上し得る。積層BHJ自体は、各BHJ層が2つ以上の活性材料を備え得る高次ブレンドとも適合する。
【0038】
[0038]更に、直列に電気的に接続されるタンデムアーキテクチャと比較して、積層BHJは、BHJ層が電流付加的であるため、より高いレベルの光電流密度を可能にする。ヘイズ又はオフ角性能が問題となる透過PVなどの用途では、これが有望な代替手法となり得る。しかしながら、三次又は平面混合ヘテロ接合の場合と同様に、積層BHJは直列タンデムアーキテクチャに互換する。直列タンデム内の各直列接続サブセルは、それ自体が積層BHJから構成されてもよい。この手法は、より広いスペクトルカバレッジに関し、現在の整合する個々のサブセルにより大きな柔軟性を与え得る。
【0039】
[0039]本発明のこれら及び他の実施形態及び態様は、その利点及び特徴の多くと共に、以下の本文及び添付の図面と併せてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の一実施形態に係る可視光透過型光起電装置の簡略化された概略図を示す。
【
図2】光活性層に関する単一接合形態の様々な例の概要を示す。
【
図3】
図3は、太陽スペクトル、人間の眼の感度、及び、典型的な可視光透過型光起電装置の吸収の波長に応じた簡略化されたプロットを示す。
【
図4】可視光透過型光起電装置などの有機光起電装置の一例の動作に関する概略エネルギー準位図概要を示す。
【
図5A】
図5Aは、可視光透過型光起電装置で有用な異なる電子ドナー及び電子アクセプタ形態に関する吸収帯域の一例を表わす様々なプロットを示す。
【
図5B】
図5Bは、可視光透過型光起電装置で有用な異なる電子ドナー及び電子アクセプタ形態に関する吸収帯域の一例を表わす様々なプロットを示す。
【
図5C】
図5Cは、可視光透過型光起電装置で有用な異なる電子ドナー及び電子アクセプタ形態に関する吸収帯域の一例を表わす様々なプロットを示す。
【
図5D】
図5Dは、可視光透過型光起電装置で有用な異なる電子ドナー及び電子アクセプタ形態に関する吸収帯域の一例を表わす様々なプロットを示す。
【
図7A】本発明の様々な実施形態に係る様々なエネルギー準位図を示す。
【
図7B】本発明の様々な実施形態に係る様々なエネルギー準位図を示す。
【
図7C】本発明の様々な実施形態に係る様々なエネルギー準位図を示す。
【
図7D】本発明の様々な実施形態に係る様々なエネルギー準位図を示す。
【
図8A】本発明の様々な実施形態で利用され得る典型的な活性層材料の吸収係数を示す。
【
図8B】本発明の様々な実施形態で利用され得る典型的な活性層材料の吸収係数を示す。
【
図8C】本発明の様々な実施形態で利用され得る典型的な活性層材料の吸収係数を示す。
【
図9A】本発明の様々な実施形態に係る様々な装置構造を示す。
【
図9B】本発明の様々な実施形態に係る様々な装置構造を示す。
【
図9C】本発明の様々な実施形態に係る様々な装置構造を示す。
【
図10A】電流密度-電圧及び外部量子効率(EQE)曲線を示す。
【
図10B】電流密度-電圧及び外部量子効率(EQE)曲線を示す。
【
図11A】本発明の様々な実施形態に係る様々な装置構造を示す。
【
図11B】本発明の様々な実施形態に係る様々な装置構造を示す。
【
図11C】本発明の様々な実施形態に係る様々な装置構造を示す。
【
図11D】本発明の様々な実施形態に係る様々な装置構造を示す。
【
図13】本発明の一実施形態に係る装置構造を示す。
【
図15】本発明の一実施形態に係る装置構造を示す。
【
図17】本発明の一実施形態に係る装置構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[0058]本開示は、有機光起電装置(OPV)に関し、幾つかの実施形態では、可視光透過型光活性化合物を組み込む可視光透過型光起電装置に関する。可視光透過型光活性化合物は、近赤外領域及び/又は紫外領域ではより強く、可視領域ではより弱く光を吸収し、可視光透過型光起電装置でのそれらの使用を可能にする。開示された可視光透過型光起電装置は、可視光透過型電極間に位置される可視光透過型光活性材料を伴う可視光透過型電極を含む。
【0042】
[0059]本開示は、複数のBHJブレンドがOPVの活性層内で互いの上に直接に積み重ねられる「積層」バルクヘテロ接合(BHJ)の概念を説明する。相補的な吸収体を有する複数のBHJの使用は、太陽スペクトルの広帯域カバレッジを可能にする。サブセル電流が整合されて電圧が付加的である標準的な直列接続タンデムPVとは対照的に、各BHJ層からの光電流は付加的であり、一方、電圧はそのような構造における個々の層の平均である。それぞれの別個のBHJ層は、ドナーとアクセプタとの二次、三次、又は、高次ブレンドであってもよい。隣接するBHJ層は、ドナー種又はアクセプタ種のみがそれらの間で変化するように、同じアクセプタ又はドナーを共有することさえできる。隣接するBHJ層中のドナー分子及びアクセプタ分子は、電荷抽出又は注入に関する著しいエネルギー障壁を回避するために、それらの最高占有分子軌道(HOMO)(ドナーに関して)又は最低非占有分子軌道(LUMO)(アクセプタに関して)準位が全て互いに約300meV以内であるように選択され得る。障壁高さを低減することにより、本発明の実施形態は、「s-キンク」を低減又は排除し、装置充填率を改善することができる。
【0043】
[0060]BHJの概念は、活性層の厚さと平面ヘテロ接合に固有の励起子拡散効率との間のトレードオフを回避するために使用することができる。活性層の厚さがそれらの励起子拡散長を超えて増大されると、ドナー-アクセプタ界面に到達する光生成励起子の効率が低下する。その結果、活性層の厚さ及び光吸収が抑制される。ドナー材料及びアクセプタ材料の両方をBHJ内で三次元的にブレンドすることによって、活性層の厚さは励起子拡散効率から切り離され、代わりに、個々のドナー領域及びアクセプタ領域の形態は、ほぼ1である傾向がある拡散効率を決定する。結果として、光吸収を最大にするためにBHJ活性層の厚さが増大されてもよい。
【0044】
[0061]スペクトルカバレッジを増大させ、吸収を更に改善するために、上で言及した二次BHJアーキテクチャに対する幾つかの別の手法がある(活性層における単一のドナー及び単一のアクセプタの使用に起因して「二次」と呼ばれる)。第1の手法は、添加された分子が相補的吸収体であると仮定して、活性層の吸収を広げることができるBHJブレンド内の更なるドナー又はアクセプタ分子を使用する三次又は高次BHJを含む。第2の手法は、吸収を改善するためにBHJブレンドに隣接する平面バッファ層として更なるドナー又はアクセプタ分子を使用する平面混合ヘテロ接合(PMHJ)を含む。幾つかの実施態様において、平面層からの光電流寄与は、標準的な平面ヘテロ接合の動作と同様の態様で制限される。
【0045】
[0062]第3の手法は、異なる組成の平面ヘテロ接合、PMHJ、及び/又は、BHJの組み合わせが電荷再結合ゾーンを介して電気的に接続される個々のサブセルを備える、直列タンデムアーキテクチャを含む。電荷再結合ゾーンは、1つのサブセル内の電子における準フェルミレベルを別のサブセルからの正孔の準フェルミレベルと整列させ、それらの出力電圧を付加的にする。直列タンデムを通じて流れる光電流が最も低い光電流サブセルによって制限され得ることに留意すべきである。4端子形態を利用する機械的に積層されたタンデム装置は、この設計基準を緩和するのに役立つことができるが、より多くの電極層及びエンジニアリングを必要とする。並列タンデム装置は、相互接続電極が共通のアノード又はカソードとして機能する3端子装置において2つ以上のサブセルを電気的に並列に接続する。このようにして、サブセルの電流は、付加的であるが、最低電圧セルによって電圧が制限される。これらは、また、2つのサブセルの間に電極を埋め込むという付加的な課題を有する。
【0046】
[0063]建築用ガラス用途の透明OPVに関して、活性層は、可視スペクトル内で比較的平坦な吸収を有するように選択することができる。これは、装置積層体全体の中立な透過色を達成するために重要であり得る。二次BHJの場合には、2つの相補的吸収体を特定の組成で可視スペクトル全体に及ぶように使用できる。色中立組成が電力生産に最適な組成でない場合、これは装置の審美性とのトレードオフを示す。第1の手法を使用して更なる吸収体を導入することにより、色中立性が達成され得る組成物の数を増大させることができるが、これもまた最大性能と一致しない可能性がある。第2の手法は、色中立性を達成するための装置に首尾よく採用されており、それによって14nmのPTCBIが色中和層として導入された。しかしながら、この膜内の励起子の拡散長が短いため、平面層の吸収は、効果的に寄生的であり、装置性能にほとんど寄与しない。同時に電力変換効率(PCE)を最大化しながら、透明OPVにおいて高い平均可視光透過率(AVT)を維持するために、非常に高い内部量子効率を有する活性層を使用することが重要であり得る。第3の手法は、一般に、個々のサブセルからの光電流が一致するように実施され、これは、必ずしも色中立装置と一致しない。短波長での光子束が低いため、青緑色吸収サブセルは、透過色を変更する電流バランスのために赤色NIRサブセルよりも厚く且つ吸収性が高いことが多い。
【0047】
[0064]本発明の実施形態は、複数のBHJがOPV活性層を備えるべく互いに直接積層される積層BHJを提供する。積層BHJアーキテクチャは、非常に柔軟であり、上記の3つの手法のいずれかを置き換えるか補完することができる。
【0048】
[0065]
図1は、本発明の一実施形態に係る可視光透過型光起電装置100の簡略化された概略図を示す。
図1に示されるように、可視光透過型光起電装置100は、以下でより完全に説明される幾つかの層及び要素を含む。本明細書中で説明されるように、可視光透過とは、光起電装置が例えば450nm~650nmの可視波長帯域外の波長で光エネルギーを吸収するが可視波長帯域内の可視光を実質的に透過することを示す。
図1に示されるように、UV光及び/又はNIR光は、光起電装置の層及び要素で吸収され、一方、可視光は装置を透過する。したがって、本明細書中で与えられる透過性の議論は、可視光透過性として理解されるべきである。
【0049】
[0066]図示の他の層及び構造に十分な機械的支持をもたらすガラス又は他の可視光透過型材料であり得る基板105は、光学層110,112を支持する。これらの光学層は、反射防止(AR)特性、波長選択反射又は分布ブラッグ反射特性、屈折率整合特性、カプセル化などを含む様々な光学特性を与えることができる。光学層は、好適には、可視光透過型であってもよい。更なる光学層114は、例えば、ARコーティング、後屈折率整合、受動的赤外線又は紫外線吸収層などとして利用され得る。随意的には、光学層は、紫外光及び/又は近赤外光を透過してもよく、又は、紫外帯域及び/又は近赤外帯域の波長の少なくともサブセットを透過してもよい。形態に応じて、更なる光学層114が受動的可視吸収層であってもよい。基板材料の例としては、様々なガラス及び硬質又は可撓性のポリマーが挙げられる。ラミネートなどの多層基板を利用することもできる。基板は、例えば、1mm~20mmの厚さなど、他の層及び構造に必要な機械的支持をもたらすのに適した任意の厚さを有してもよい。場合によっては、基板は、窓ガラス、表示装置などの他の構造に対する可視光透過型光起電装置100の適用を可能にする接着フィルムであってもよく又はそれを備えてもよい。
【0050】
[0067]装置は、全体として、可視光透過性、例えば、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、或いは、最大で100%又はほぼ100%の450~650nm範囲の透過性を示し得るが、個々に採取された特定の材料は、可視スペクトルの一部で吸収を示し得ることが理解される。随意的に、可視光透過型光起電装置内における個々の材料又は層はそれぞれ、可視範囲内、例えば30%(すなわち、30%~100%)を超える高い透過性を有する。透過率又は吸収率は、パーセンテージとして表わすことができ、材料の吸光度特性、吸収材料を貫く厚さ又は経路長、及び、吸収材料の濃度に依存してもよく、それにより、吸収材料を貫く経路長が短い及び/又は吸収材料が低濃度で存在する場合、可視スペクトル領域に吸光度を伴う材料は、依然として低い吸収率又は高い透過率を示し得ることが理解される。
【0051】
[0068]ここで及び以下で記載されるように、様々な光活性層中の光活性材料は、好適には、可視領域において最小の吸収率(例えば、20%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、又は、70%未満)を示し、代わりに、近赤外領域及び/又は紫外領域において高い吸収率(例えば、50%超、60%超、70%超又は80%超の吸収ピーク)を示す。幾つかの用途では、可視領域での吸収率が70%もの大きさとなり得る。基板、光学層、及び、バッファ層などの他の材料の様々な形態は、材料が若干の可視吸収率を示し得る場合でも、これらの材料が全体的な可視光透過性をもたらすことができるようにし得る。例えば、Ag又はCuのような可視吸収を示す金属など、金属薄膜が透明電極に含まれてもよいが、薄膜形態でもたらされる場合、膜の全体的な透過性が高くてもよい。同様に、光学層又はバッファ層に含まれる材料は、可視範囲で吸収を示し得るが、可視光吸収の全体量が低い場合には可視光透過性をもたらす濃度又は厚さで与えられてもよい。
【0052】
[0069]また、可視光透過型光起電装置100は、電極120,122間に位置される光活性層140を伴う一組の透明電極120,122も含む。ITO、薄い金属膜、又は、他の適切な可視光透過型材料を使用して製造され得るこれらの電極は、図示の様々な層のうちの1つ以上に対する電気接続をもたらす。例えば、銅、銀、又は、他の金属の薄膜は、これらの金属が可視帯域の光を吸収し得る場合であっても、可視光透過型電極としての使用に適し得る。しかしながら、1nm~200nm(例えば、約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、約100nm、約105nm、約110nm、約115nm、約120nm、約125nm、約130nm、約135nm、約140nm、約145nm、約150nm、約155nm、約160nm、約165nm、約170nm、約175nm、約180nm、約185nm、約190nm、又は約195nm)の厚さを有する膜などの薄膜として与えられる場合、可視帯域における薄膜の全透過率は、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、又は、90%超など、高いままであってもよい。好適には、金属薄膜は、透明電極として使用される場合、幾つかの半導体透明導電性酸化物が、紫外帯域で生じるバンドギャップを示し、したがって紫外光を高度に吸収する又は透過しないため、ITOなどの透明電極として有用であり得る他の半導体材料よりも紫外帯域で低い吸収を示し得る。しかしながら、場合によっては、紫外光が特定の材料を劣化させる場合があるため、紫外線吸収透明電極を使用して、紫外光の少なくとも一部を下方にある構成要素から遮蔽することができる。
【0053】
[0070]原子層堆積、化学蒸着、物理蒸着、熱蒸着、スパッタ蒸着、エピタキシなどの真空堆積技術を含む様々な堆積技術を使用して透明電極を生成することができる。場合によっては、スピンコーティング、スロットダイコーティング、ブレードコーティング、スプレーコーティングなどの溶液ベースの堆積技術を使用することもできる。更に、透明電極は、リソグラフィ、リフトオフ、エッチングなどを含む、微細加工の技術分野で知られている技術を使用してパターニングされてもよい。
【0054】
[0071]バッファ層130,132及び光活性層140は、光起電装置の電気的及び光学的な特性を実現するために利用される。これらの層は、単一の材料の層であってもよく、又は、特定の用途に適した複数の副層を含んでもよい。したがって、「層」という用語は、単一の材料の単一の層を示すことを意図するものではなく、同じ又は異なる材料の複数の副層を含むことができる。幾つかの実施形態において、バッファ層130、光活性層140、及び、バッファ層132は、積層形態で繰り返されて、複数のヘテロ接合を含むようなタンデム装置形態をもたらす。幾つかの実施形態において、光活性層は、ドナー及びアクセプタとも称される電子ドナー材料及び電子アクセプタ材料を含む。これらのドナー及びアクセプタは、可視光透過型であるが、可視波長帯域外を吸収して、装置の光活性特性を与える。
【0055】
[0072]有用なバッファ層は、電子輸送層、電子ブロッキング層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層、励起子ブロッキング層、光学スペーサ、物理バッファ層、電荷再結合層、又は、電荷生成層として機能するものを含む。バッファ層は、所望の緩衝効果をもたらすのに適した任意の厚さを有してもよく、随意的に存在しても存在しなくてもよい。有用なバッファ層は、存在する場合、1nm~1μmの厚さを有し得る。フラーレン材料、カーボンナノチューブ材料、グラフェン材料、金属酸化物、例えば酸化モリブデン、酸化チタン、酸化亜鉛など、ポリマー、例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホン酸、ポリアニリンなど、コポリマー、ポリマー混合物、及び、小分子、例えばバソクプロインを含む様々な材料がバッファ層として使用されてもよい。バッファ層は、堆積プロセス(例えば、熱蒸発)又は溶液処理方法(例えば、スピンコーティング)を使用して適用されてもよい。
【0056】
[0073]本発明の様々な実施形態において活性材料/緩衝材料(輸送層)/光学材料として利用され得る材料の例としては、近IR吸収材料、UV吸収材料、及び/又は、電磁スペクトルの近IR領域又はUV領域における強い吸収ピークによって特徴付けられる材料が挙げられる。近IR吸収材料としては、フタロシアニン、ポルフィリン、ナフタロシアニン、スクアライン、ホウ素-ジピロメテン、ナフタレン、リレン、ペリレン、テトラシアノキノイドチオフェン化合物、テトラシアノインダセン化合物、カルバゾールチアポルフィリン化合物、金属ジチオレート、ベンゾチアジアゾール含有化合物、ジシアノメチレンインダノン含有化合物、これらの組み合わせなどが挙げられる。UV吸収材料としては、フラーレン、リレン、ペリレン、ベンズイミダゾール、ヘキサカルボニトリル、トリアリールアミン、ビストリアリールアミン、フェナントロリン、パラ-フェニレン、それらの組み合わせなどが挙げられる。
【0057】
[0074]
図2は、光活性層140における接合形態の様々な例の概要を示す。光活性層140は、随意的に、混合ドナー/アクセプタ(バルクヘテロ接合)形態、平面ドナー/アクセプタ形態、平面及び混合ドナー/アクセプタ形態、勾配ドナー/アクセプタ形態、又は、積層ヘテロ接合形態に対応してもよい。紫外帯域又は近赤外帯域で吸収するが可視帯域では仮に吸収するとしても最小限しか吸収しない材料など、様々な材料が光活性層140として使用されてもよい。このようにして、光活性材料を使用して、紫外吸収及び/又は近赤外吸収によって外部回路に給電するための電子-正孔対を生成することができ、それにより、可視光を比較的乱さずに残して可視光透過性を与えることができる。図示のように、光活性層140は、別個のドナー層及びアクセプタ層を含む平面ヘテロ接合を備えてもよい。或いは、光活性層140は、別個のアクセプタ層及びドナー層並びに混合ドナー-アクセプタ層を含む平面混合ヘテロ接合構造を備えてもよい。或いは、光活性層140は、完全に混合されたアクセプタ-ドナー層を含む混合ヘテロ接合構造、又は、様々な相対濃度勾配を伴う混合ドナー-アクセプタ層を含む混合ヘテロ接合構造を備えてもよい。
【0058】
[0075]光活性層は、任意の適切な厚さを有してもよく、所望のレベルの透過性及び紫外/近赤外吸収特性をもたらすために、任意の適切な濃度又は組成の光活性材料を有することができる。光活性層の厚さの例は、約1nm~約1μm、約1nm~約300nm、又は、約1nm~約100nmの範囲であってもよい。場合によっては、光活性層は、
図2に示されるように、適切な太陽光発電特性をもたらすために、個々の副層又は層の混合物から形成されてもよい。
図2に示される様々な形態が使用されてもよく、また、これらの形態は、有利な太陽光発電を行うために使用される特定のドナー及びアクセプタ材料に依存してもよい。例えば、幾つかのドナーとアクセプタとの組み合わせは特定の形態から利益を得ることができるが、他のドナーとアクセプタとの組み合わせは他の特定の形態から利益を得ることができる。ドナー材料及びアクセプタ材料は、適切な太陽光発電特性をもたらすために任意の比率又は濃度で提供されてもよい。混合層の場合、アクセプタに対するドナーの相対濃度は、約20:1~約1:20であってもよい。場合により、アクセプタに対するドナーの相対濃度は随意的に約5:1~約1:5である。場合により、ドナー及びアクセプタは1:1の比率で存在する。
【0059】
[0076]様々な可視光透過型光活性化合物は、電子ドナー光活性材料として有用であり、また、幾つかの実施形態では、光起電装置に有用な光活性層を設けるために適切な電子アクセプタ光活性材料と対にされてもよい。様々な可視光透過型光活性化合物は、電子アクセプタ光活性材料として有用であり、また、光起電装置に有用な光活性層を設けるために適切な電子ドナー光活性材料と対にされてもよい。ドナー材料及びアクセプタ材料の例は、それぞれが2017年6月16日に出願された米国仮出願第62/521,154号、第62/521,158号、第62/521,160号、第62/521,211号、第62/521,214号、及び、第62/521,224号に記載されており、これらの出願はその全体が参照により本願に組み入れられる。
【0060】
[0077]実施形態において、様々な光活性化合物の化学構造は、材料に望ましい電気的特性を与えるために、電子供与基、電子求引基、又は、コア金属原子の周り又はコア金属原子への置換などの1つ以上の配向基で官能化され得る。例えば、幾つかの実施形態において、光活性化合物は、光起電装置において電子ドナーとして機能する材料の能力を向上させるために、アミン基、フェノール基、アルキル基、フェニル基、又は、他の電子供与基で官能化される。他の例として、幾つかの実施形態において、光活性化合物は、光起電装置内の電子アクセプタとして機能する材料の能力を向上させるために、シアノ基、ハロゲン、スルホニル基、又は他の電子吸引基で官能化される。
【0061】
[0078]実施形態において、光活性化合物は、望ましい光学特性を与えるために官能化される。例えば、幾つかの実施形態において、光活性化合物は、材料の吸収プロファイルを再シフトさせるために拡張された共役で官能化されてもよい。共役は、分子内のpi電子の非局在化を指してもよく、また、分子構造内の単結合と多重結合とを交互に繰り返すことを特徴としてもよいことが理解される。例えば、電子共役を拡張する官能化は、1つ以上の芳香族基を材料の分子構造に融合することを含んでもよい。拡張された共役を与え得る他の官能化としては、ビニル基、芳香族又はヘテロ芳香族官能化などによるアルケン官能化、アシル基などによるカルボニル官能化、スルホニル官能化、ニトロ官能化、シアノ官能化などが挙げられる。様々な分子官能化は、光活性化合物の光学特性及び電気特性の両方に影響を及ぼし得ることが理解される。
【0062】
[0079]装置機能は、固体状態の活性層の形態によって影響を受け得ることが理解される。励起子拡散長及び大きな界面面積の規模での寸法を有する離散領域への電子ドナー及びアクセプタの分離は、高い装置効率を達成するために有利であり得る。好適には、光活性材料の分子フレームワークは、材料の形態を制御するように調整され得る。例えば、本明細書中に記載される官能基の導入は、そのような改質が材料のエネルギー特性又は電子特性に影響を及ぼすかどうかにかかわらず、固体状態の材料の形態に大きな影響を及ぼし得る。そのような形態学的変動は、純粋な材料において、また、特定の材料が対応するドナー又はアクセプタとブレンドされるときに観察され得る。形態を制御するための有用な機能性としては、アルキル鎖、共役リンカー、フッ素化アルカン、嵩高い基(例えば、tert-ブチル、フェニル、ナフチル又はシクロヘキシル)の付加、並びに、過剰な結晶化を抑制するために構造の一部を分子の平面から押し出すように設計されたより複雑なカップリング手順が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
[0080]実施形態において、他の分子構造特性は、光活性化合物において望ましい電気的及び光学的特性を与え得る。例えば、幾つかの実施形態において、光活性化合物は、電子供与性として特徴付けられ得る分子の部分を示すことができ、一方、分子の他の部分は電子受容性として特徴付けられ得る。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、交互の電子供与部及び電子受容部を含む分子は、交互の電子供与部及び電子受容部を欠く類似の分子と比較して、分子の吸収特性を再シフトさせ得る。例えば、交互の電子供与部及び電子受容部は、最高占有分子軌道と最低非占有分子軌道との間のより低いエネルギーギャップを減少させ又はさもなければもたらし得る。有機ドナー及び/又はアクセプタ基は、可視光透過型光活性化合物中の任意のアリール、芳香族、ヘテロアリール、ヘテロ芳香族、アルキル又はアルケニル基などのR基置換基として有用であり得る。
【0064】
[0081]ドナー/アクセプタ材料が電子ドナー又は電子アクセプタのいずれかとして透明光起電装置内の光活性層として組み込まれる場合、層厚は、装置出力、吸光度、又は、透過率を変化させるように制御され得る。例えば、ドナー層又はアクセプタ層の厚さを増大させると、その層の光吸収率を増大させることができる。場合によっては、ドナー層中又はアクセプタ層中のドナー/アクセプタ材料の濃度を増大させると、その層の光吸収率が同様に増大し得る。しかしながら、幾つかの実施形態では、活性材料層がドナー/アクセプタ材料の純粋もしくは実質的に純粋な層又はドナー/アクセプタ材料の純粋もしくは実質的に純粋な混合物を備える場合など、ドナー/アクセプタ材料の濃度が調整可能ではない場合がある。場合により、ドナー/アクセプタ材料は、溶媒中に供給されてもよく又はバッファ層材料などのキャリア中に懸濁されてもよく、その場合、ドナー/アクセプタ材料の濃度が調整されてもよい。幾つかの実施形態において、ドナー層濃度は、生成される電流が最大化される場合に選択される。幾つかの実施形態では、アクセプタ層濃度は、生成される電流が最大化される場合に選択される。
【0065】
[0082]しかしながら、電荷収集効率は、電荷キャリアにおける「移動距離」の増大に起因して、ドナー又はアクセプタの厚さの増大に伴って減少し得る。したがって、層の厚さが増大するにつれて吸収率が増大することと電荷収集効率が低下することとの間にはトレードオフがあり得る。したがって、厚さ当たりの光吸収率の増大を可能にするために、高い吸収係数及び/又は濃度を有する材料を選択することが有利となり得る。幾つかの実施形態において、ドナー層の厚さは、生成される電流が最大化される場合に選択される。幾つかの実施形態において、アクセプタ層の厚さは、生成される電流が最大化される場合に選択される。
【0066】
[0083]個々の光活性層の厚さに加えて、透明光起電装置における他の層の厚さ及び組成も、光活性層内の吸収を増強するように選択され得る。他の層(バッファ層、電極など)は、一般に、薄膜装置積層体及び結果として生じる光学キャビティとの関連でそれらの光学特性(屈折率及び吸光係数)に基づいて選択される。例えば、近赤外吸収光活性層は、それが装置によってもたらされる吸収及び結果として生じる電流を最大にするために吸収する近赤外波長における光場のピークに位置され得る。これは、第2の光活性層及び/又は光学層をスペーサとして使用して光活性層を電極から適切な距離を隔てて離間させることによって達成され得る。同様の方式を紫外線吸収光活性層に関して使用することができる。多くの場合、より長い波長の光場のピークは、より短い波長の光場のピークと比較してより反射性がある2つの透明電極からより遠くに位置される。したがって、別個のドナー及びアクセプタ光活性層を使用する場合、ドナー及びアクセプタは、より赤色の吸収(より長い波長)材料をより反射性のある電極からより遠くに位置させるとともに、より青色の吸収(より短い波長)材料をより反射性のある電極の近くに位置させるように選択され得る。
【0067】
[0084]幾つかの実施形態では、ドナーがドナー層で吸収して光吸収率を増大させ、したがってドナー層によって生成される電流を増大させる波長での光場の強度を増大させるために光学層が含まれてもよい。幾つかの実施形態では、アクセプタがアクセプタ層で吸収して光吸収率を増大させ、したがってアクセプタ層によって生成される電流を増大させる波長での光場の強度を増大させるために、光学層が含まれてもよい。幾つかの実施形態では、光学層を使用して、可視吸収又は可視反射のいずれかを減少させることによって積層体の透過性を向上させることができる。更に、電極材料及び厚さは、可視範囲内の光を優先的に透過させながら、光活性層内の可視範囲外の吸収を増強するように選択されてもよい。
【0068】
[0085]随意的に、可視光透過型光起電装置のスペクトルカバレッジを高めることは、
図1に関連して説明したように、バッファ層130、光活性層140、及び、バッファ層132の複数の積層された事例として含まれ得る、タンデム電池と称される、可視光透過型光起電装置のマルチセル直列積層体を使用することによって達成される。この構造は2つ以上の光活性層を含み、これらの光活性層は、一般に、例えば、バッファ層及び/又は薄い金属層の組み合わせによって分離される。この構造において、各サブセルで生成される電流は、対向する電極に直列に流れ、したがって、セル内の正味電流は、例えば、特定のサブセルによって生成される最小電流によって制限される。開回路電圧(VOC)はサブセルのVOCの和に等しい。太陽スペクトルの異なる領域で吸収する異なるドナー-アクセプタ対で製造されたサブセルを組み合わせることにより、単一接合セルと比較して効率の大幅な向上を得ることができる。
【0069】
[0086]ドナー層及び/又はアクセプタ層を含む、バッファ層及び光活性層のうちの1つ以上で利用される材料に関する更なる説明を以下で行う。
【0070】
[0087]
図3は、太陽スペクトル、人間の眼の感度、及び、典型的な可視光透過型光起電装置の吸収の波長に応じた簡略化されたプロットを示す。
図3に示されるように、本発明の実施形態は、約450nm~約650nmの可視波長帯域において低い吸収を有するが、UV及びNIR帯域において、すなわち、可視波長帯域の外側において吸収し、可視光透過型光起電動作を可能にする光起電構造を利用する。紫外線帯域又は紫外線領域は、実施形態では、約200nm~450nmの光の波長として説明されてもよい。地上レベルでの有用な太陽輻射は、約280nm未満の限られた量の紫外線を有してもよく、したがって、紫外線帯域又は紫外線領域は、幾つかの実施形態では、約280nm~450nmの光の波長として説明されてもよいことが理解される。近赤外帯域又は近赤外領域は、実施形態では、約650nm~1400nmの光の波長として説明することができる。本明細書中に記載される様々な組成物は、可視領域における最大吸収強度がNIR領域又はUV領域における最大吸収強度よりも小さいUVピーク及び/又はNIRピークを含む吸収を示し得る。
【0071】
[0088]
図4は、可視光透過型光起電装置100などの有機光起電装置の一例の動作に関する概略エネルギー準位図概要を示す。例えば、そのような光起電装置において、様々な光活性材料は、それらの分子特性とバッファ層、電極などに使用される材料のタイプとに応じて、電子ドナー特性又は電子アクセプタ特性を示すことができる。
図4に示されるように、ドナー材料及びアクセプタ材料のそれぞれはHOMO及びLUMOを有する。HOMOからLUMOへの電子の遷移は、光子の吸収によって付与され得る。材料のHOMOとLUMOとの間のエネルギー(HOMO-LUMOギャップ)は、おおよそ、材料の光学バンドギャップのエネルギーを表わす。本明細書中で提供される透明光起電装置で有用な電子ドナー材料及び電子アクセプタ材料の場合、電子ドナー材料及び電子アクセプタ材料におけるHOMO-LUMOギャップは、随意的に可視範囲の光子のエネルギー外にあり得る。例えば、光活性材料に応じて、HOMO-LUMOギャップは、紫外領域又は近赤外領域にあってもよい。HOMOが従来の導体又は半導体における価電子帯に匹敵し、LUMOが従来の導体又は半導体における伝導帯に匹敵することが理解される。
【0072】
[0089]ドナーに隣接するバッファ層は、一般にアノードバッファ層又は正孔輸送層と称され、バッファ層のHOMOレベル又は価電子帯(無機材料の場合)がドナーからアノード(透明電極)に正孔を輸送するためにドナーのHOMOレベルとエネルギーランドスケープにおいて整列されるように選択される。幾つかの実施形態では、バッファ層が高い正孔移動度を有することが有用であり得る。アクセプタに隣接するバッファ層は、一般にカソードバッファ層又は電子輸送層と称され、バッファ層のLUMOレベル又は伝導帯(無機材料の場合)がアクセプタからカソード(透明電極)に電子を輸送するためにアクセプタのLUMOレベルとエネルギーランドスケープにおいて整列されるように選択される。幾つかの実施形態では、バッファ層が高い電子移動度を有することが有用であり得る。
【0073】
[0090]
図5A-
図5Dは、可視光透過型光起電装置で有用な異なる電子ドナー及び電子アクセプタ形態に関する吸収帯域の一例を表わす様々なプロットを示す。
図5Aでは、ドナー材料はNIRで吸収を示し、アクセプタ材料はUVで吸収を示す。
図5Bは、ドナー材料がUVで吸収を示し、アクセプタ材料がNIRで吸収を示す反対の形態を示す。
【0074】
[0091]
図5Cは、ドナー材料及びアクセプタ材料の両方がNIRで吸収を示す更なる形態を示す。図示のように、太陽スペクトルは、比較的少量の紫外線のみでNIRにおいて有意な量の有用な放射を示し、それにより、太陽スペクトルから大量のエネルギーを捕捉するのに有用な
図5Cに示される形態がなされる。例えば、ドナーがアクセプタに対して青色にシフトされる
図5Cに示される形態とは反対である、アクセプタがドナーに対して青色にシフトされる
図5Dに示されるように、ドナー材料及びアクセプタ材料の両方がNIRにおいて吸収を示す他の実施形態が企図されるのが分かる。
【0075】
[0092]
図6は、本発明の一実施形態に係る装置構造600を示す。装置構造600は、上部電極608と基板602上に形成され得る下部電極604との間に複数の「積層」BHJ活性層606を備える。活性層のそれぞれは、BHJ活性層がそれらの光電流を光起電力セルの全体出力に加えるように、互いに直接積層される。したがって、BHJ活性層は互いに接触していると考えることができる。
【0076】
[0093]直列タンデム配置とは異なり、BHJ活性層間に電荷再結合ゾーンは存在しない。結果として、光電流はBHJ活性層606間で付加的である。少なくとも1つの固有の活性層材料をBHJ活性層606のそれぞれに組み込むことによって、装置構造600の吸収を所望のスペクトルカバレッジに合わせることができる。
【0077】
[0094]二次ブレンドの場合、BHJ活性層606は、三次又はより高次のBHJのスペクトルカバレッジを与えながら、それらの処理制御を保持する。光学的には、積層BHJは、各特定のドナー又はアクセプタ分子がそのピーク吸収波長に対応する光場ピークに空間的に位置され得るため、三次BHJよりも優れる場合がある。三次(又は高次)BHJの場合、構成分子は、それらの吸収がより少ない位置でさえ、積層体全体にわたってブレンドされる。積層されたBHJは、BHJ層内の三次又はより高次のブレンドとも適合する。
【0078】
[0095]
図7A~
図7Dは、異種電子ドナー及びアクセプタ材料(
図7A)、異種電子ドナー及び共有アクセプタ材料(
図7B)、共有ドナー及び異種アクセプタ材料(
図7C)、並びに、共有ドナー及びアクセプタ材料(
図7D)を伴う2つのBHJ層を含む積層BHJを概略的に示すエネルギー準位図を示す。
図7A~
図7Dにおいて、破線は電子ドナー材料に対応してもよく、実線で囲まれた陰影領域は電子アクセプタ材料に対応してもよい。材料の組み合わせは、それらのHOMO又はLUMOエネルギー準位オフセットがそれぞれアノード又はカソードに向かってエネルギーを減少させるように選択することができる。
【0079】
[0096]
図7Aを参照すると、2つのBHJ層(「BHJ1」及び「BHJ2」)を含む積層BHJについてのエネルギー準位図が示されている。
図7Aに示す例では、BHJ1に用いられる電子ドナー材料とBHJ2に用いられる電子ドナー材料とが異なり、BHJ1に用いられる電子アクセプタ材料とBHJ2に用いられる電子アクセプタ材料とが異なる。
【0080】
[0097]図示の例において、BHJ1は、LUMOエネルギー準位702A-1のセット(例えば、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位及びBHJ1で使用される電子ドナー材料のLUMOエネルギー準位を含む)と、LUMOエネルギー準位702A-1のセットの最小エネルギー準位に対応し得る全体的なLUMOエネルギー準位704A-1とを含む。BHJ2は、LUMOエネルギー準位702A-2のセット(例えば、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位及びBHJ2で使用される電子ドナー材料のLUMOエネルギー準位を含む)と、LUMOエネルギー準位702A-2のセットの最小エネルギー準位に対応し得る全体的なLUMOエネルギー準位704A-2とを含む。LUMOエネルギー準位704A-1,704A-2間の差は、LUMOエネルギー準位オフセット706Aに等しい。BHJ1及びBHJ2で使用される材料は、LUMOエネルギー準位オフセット706Aが正(すなわち、LUMOエネルギー準位704A-1がLUMOエネルギー準位704A-2より大きい)であり且つBHJ1のLUMOに励起された電子がBHJ2を通ってカソードにエネルギー的に有利な移動を経験するように選択することができる。
【0081】
[0098]BHJ1は、HOMOエネルギー準位712A-1のセット(例えば、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料のHOMOエネルギー準位及びBHJ1で使用される電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位を含む)と、HOMOエネルギー準位712A-1のセットの最大エネルギー準位に対応し得る全体的なHOMOエネルギー準位714A-1とを含む。BHJ2は、HOMOエネルギー準位712A-2のセット(例えば、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料のHOMOエネルギー準位及びBHJ2で使用される電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位を含む)と、HOMOエネルギー準位712A-2のセットの最大エネルギー準位に対応し得る全体的なHOMOエネルギー準位714A-2とを含む。HOMOエネルギー準位714A-1,714A-2間の差は、HOMOエネルギー準位オフセット716Aに等しい。BHJ1及びBHJ2で使用される材料は、HOMOエネルギー準位オフセット716Aが正(すなわち、HOMOエネルギー準位714A-1がHOMOエネルギー準位714A-2より大きい)であり且つBHJ2のそのような正孔がBHJ1を通ってアノードまでエネルギー的に良好な移動を経験するように選択することができる。
【0082】
[0099]
図7Bを参照すると、2つのBHJ層(「BHJ1」及び「BHJ2」)を含む積層BHJについてのエネルギー準位図が示される。
図7Bに示される例において、BHJ1で使用される電子ドナー材料は、BHJ2で使用される電子ドナー材料とは異なり、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料は、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料と同じ(及び/又はエネルギー的に類似)である。
【0083】
[0100]図示の例において、BHJ1は、LUMOエネルギー準位702B-1のセット(例えば、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位及びBHJ1で使用される電子ドナー材料のLUMOエネルギー準位を含む)と、LUMOエネルギー準位702B-1のセットの最小エネルギー準位に対応し得る全体的なLUMOエネルギー準位704B-1とを含む。BHJ2は、LUMOエネルギー準位702B-2のセット(例えば、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位及びBHJ2で使用される電子ドナー材料のLUMOエネルギー準位を含む)と、LUMOエネルギー準位702B-2のセットの最小エネルギー準位に対応し得る全体的なLUMOエネルギー準位704B-2とを含む。電子アクセプタ材料は同じであるため、BHJ1とBHJ2との間にLUMOエネルギー準位オフセットはなく、BHJ1のLUMOに励起された電子は、BHJ2を通ってカソードに移動することができる。
【0084】
[0101]BHJ1は、HOMOエネルギー準位712B-1のセット(例えば、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料のHOMOエネルギー準位及びBHJ1で使用される電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位を含む)と、HOMOエネルギー準位712B-1のセットの最大エネルギー準位に対応し得る全体的なHOMOエネルギー準位714B-1とを含む。BHJ2は、HOMOエネルギー準位712B-2のセット(例えば、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料のHOMOエネルギー準位及びBHJ2で使用される電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位を含む)と、HOMOエネルギー準位712B-2のセットの最大エネルギー準位に対応し得る全体的なHOMOエネルギー準位714B-2とを含む。HOMOエネルギー準位714B-1,714B-2間の差は、HOMOエネルギー準位オフセット716Bに等しい。BHJ1及びBHJ2で使用される材料は、HOMOエネルギー準位オフセット716Bが正(すなわち、HOMOエネルギー準位714B-1は、HOMOエネルギー準位714B-2より大きい)であり且つBHJ2の正孔がBHJ1を通ってアノードまでエネルギー的に良好な移動を経験するように選択することができる。
【0085】
[0102]
図7Cを参照すると、2つのBHJ層(「BHJ1」及び「BHJ2」)を含む積層BHJについてのエネルギー準位図が示される。
図7Cに示す例では、BHJ1で使用される電子ドナー材料は、BHJ2で使用される電子ドナー材料と同じ(及び/又は類似)であり、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料は、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料とは異なる。
【0086】
[0103]図示の例において、BHJ1は、LUMOエネルギー準位702C-1のセット(例えば、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位及びBHJ1で使用される電子ドナー材料のLUMOエネルギー準位を含む)と、LUMOエネルギー準位702C-1のセットの最小エネルギー準位に対応し得る全体的なLUMOエネルギー準位704C-1とを含む。BHJ2は、LUMOエネルギー準位702C-2のセット(例えば、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位及びBHJ2で使用される電子ドナー材料のLUMOエネルギー準位を含む)と、LUMOエネルギー準位702C-2のセットの最小エネルギー準位に対応し得る全体的なLUMOエネルギー準位704C-2とを含む。LUMOエネルギー準位704C-1,704C-2間の差は、LUMOエネルギー準位オフセット706Cに等しい。BHJ1及びBHJ2に使用される材料は、LUMOエネルギー準位オフセット706Cが正(すなわち、LUMOエネルギー準位704C-1はLUMOエネルギー準位704C-2より大きい)であり、それによってBHJ1のLUMOに励起された電子がBHJ2を通ってカソードに移動するように選択されてもよい。
【0087】
[0104]BHJ1は、HOMOエネルギー準位712C-1のセット(例えば、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料のHOMOエネルギー準位及びBHJ1で使用される電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位を含む)と、HOMOエネルギー準位712C-1のセットの最大エネルギー準位に対応し得る全体的なHOMOエネルギー準位714C-1とを含む。BHJ2は、HOMOエネルギー準位712C-2のセット(例えば、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料のHOMOエネルギー準位及びBHJ2で使用される電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位を含む)と、HOMOエネルギー準位712C-2のセットの最大エネルギー準位に対応し得る全体的なHOMOエネルギー準位714C-2とを含む。電子ドナー材料は同じであるため、BHJ1とBHJ2との間にHOMOエネルギー準位オフセットはなく、それによってBHJ2の正孔がBHJ1を通ってアノードに移動する。
【0088】
[0105]
図7Dを参照すると、2つのBHJ層(「BHJ1」及び「BHJ2」)を含む積層BHJについてのエネルギー準位図が示される。
図7Dに示す例では、BHJ1で使用される電子ドナー材料は、BHJ2で使用される電子ドナー材料と同じ(及び/又はエネルギー的に類似)であり、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料は、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料と同じ(及び/又は類似)である(少なくとも1つのドナー又はアクセプタは層間で異なる)。
【0089】
[0106]図示の例において、BHJ1は、LUMOエネルギー準位702D-1のセット(例えば、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位及びBHJ1で使用される電子ドナー材料のLUMOエネルギー準位を含む)と、LUMOエネルギー準位702D-1のセットの最小エネルギー準位に対応し得る全体的なLUMOエネルギー準位704D-1とを含む。BHJ2は、LUMOエネルギー準位702D-2のセット(例えば、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位及びBHJ2で使用される電子ドナー材料のLUMOエネルギー準位を含む)と、LUMOエネルギー準位702D-2のセットの最小エネルギー準位に対応し得る全体的なLUMOエネルギー準位704D-2とを含む。電子アクセプタ材料は同じであるため、BHJ1とBHJ2との間にLUMOエネルギー準位オフセットはなく、それによってBHJ1のLUMOに励起された電子がBHJ2を通ってカソードに移動する。
【0090】
[0107]BHJ1は、HOMOエネルギー準位712D-1のセット(例えば、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料のHOMOエネルギー準位及びBHJ1で使用される電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位を含む)と、HOMOエネルギー準位712D-1のセットの最大エネルギー準位に対応し得る全体的なHOMOエネルギー準位714D-1とを含む。BHJ2は、HOMOエネルギー準位712D-2のセット(例えば、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料のHOMOエネルギー準位及びBHJ2で使用される電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位を含む)と、HOMOエネルギー準位712D-2のセットの最大エネルギー準位に対応し得る全体的なHOMOエネルギー準位714D-2とを含む。電子ドナー材料は同じであるため、BHJ1とBHJ2との間にHOMOエネルギー準位オフセットはなく、それによってBHJ2の正孔がBHJ1を通ってアノードに移動する。
【0091】
[0108]幾つかの実施形態では、BHJ1で使用される電子ドナー材料は、BHJ2で使用される電子ドナー材料とは異なり、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料は、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料とは異なる。そのような実施形態において、BHJ1で使用される電子ドナー材料は、BHJ2で使用される電子ドナー材料と整列したエネルギー準位を有してもよく、BHJ1で使用される電子アクセプタ材料は、BHJ2で使用される電子アクセプタ材料と整列したエネルギー準位を有してもよい。
【0092】
[0109]
図8A~
図8Cは、本発明の様々な実施形態で利用することができる典型的な活性層材料における吸収係数を示す。
図8A~
図8Cに示されるように、活性層材料は、スペクトルのUV、近IR、又は、両方の領域における強い吸収ピークによって特徴付けられ得る。特に、活性層のために利用される特定の材料に応じて、吸収係数の強度及びスペクトル幅を変えることができ、それにより、システム性能の制御が可能となる。更に、複数の材料の組み合わせを利用して、吸収係数のピーク振幅及びスペクトル幅を調整することができる。当業者は、多くの変形、修正、及び代替を認識できる。
【0093】
[0110]
図9A~
図9Cは、NIR吸収BHJ(
図9A)のための装置構造900A、可視吸収平面混合ヘテロ接合(
図9B)のための装置構造900B、及び、UV-NIRからのスペクトル応答を有する装置構造900A及び900Bに基づく積層BHJのための装置構造900Cを含む、様々な装置構造を示す。D-100:C
60及びDBP:C
70ブレンドは、2つの異なる電子ドナー材料及び2つの異なる電子アクセプタ材料を構成する。ITO層はアノードに対応してもよい。MoO
3層は、正孔注入層として機能することができ、アノード構造の一部又はアノードに結合されたバッファ層と考えることができる。Ag層は、陰極に相当し得る。TPBi:C
60層は、カソード構造の一部又はカソードに結合されたバッファ層と考えることができる。HAT-CN層は、光学層に対応してもよく、又はカソードに対する封入層としてもよい。幾つかの例では、D-100:C
60及びDBP:C
70ブレンドは、それぞれ体積で20:80及び14:86のドナー対アクセプタ比に維持される。これは、各BHJ層に異なる電子ドナー及びアクセプタを有する構造に相当する。
図9Cでは、D-100:C
60層及びDBP:C
70層は、互いに重なって配置され、相補的な吸収体である。特定の例示的なドナー(又はアクセプタ)が
図9に示されるが、本発明の実施形態は特定の例に限定されず、他のドナー及び/又はアクセプタを本発明の様々な実施形態に従って利用することができる。当業者は、多くの変形、修正、及び代替を認識できる。
【0094】
[0111]
図10A及び
図10Bは、
図9A~
図9Cに示す装置構造の電流密度-電圧(
図10A)曲線及び外部量子効率(EQE)曲線(
図10B)を示す。具体的には、破線が装置構造900Aに対応し、点線が装置構造900Bに対応し、実線が装置構造900Cに対応する。図から分かるように、光電流は2つの構成装置間で付加的であり、その結果、積層BHJからの出力電力が増大する。積層BHJのEQE曲線は、積層内の両方のBHJ層からの効率的な光電流生成を示し、そのスペクトル応答はUVからNIRまで累積的に延びる。DBP:C
70のEQE曲線は、D-100:C
60曲線の2つのピークの間を埋めることによって、D-100:C
60におけるEQE曲線に対して相補的である。
【0095】
[0112]
図11A~
図11Dは、異なる電子ドナー(それぞれD-300及びD-310)及び同一の電子アクセプタ(C
70)を使用する2つの二次BHJ装置(
図11A及び
図11B)の装置構造1100A及び1100B、両方のドナー(
図11C)を使用する三次ブレンドを有する装置構造1100C、及び対応する積層BHJ(
図11D)を有する装置構造1100Dを含む、様々な装置構造を示す。ITO層、MoO
3層、Ag層及びTPBi:C
60層は、上述したように電極及びバッファ層を構成する。各BHJ層では、ドナー対アクセプタ比は体積で50:50に維持され、三次ブレンドでは、組成全体が体積でD-310:D-300:C
70(25:25:50)である。幾つかの例では、ドナー含有量は三次BHJ構造と積層BHJ構造との間で同一であるが、積層BHJの場合には空間的に偏析している。全ての場合において、活性層の合計厚さを60nmに維持することができる。他の実施形態では、異なる総活性層厚を含む他の総活性層厚が利用される。特定の例示的なドナー及びドナーの組み合わせが
図11A~
図11Dに示されているが、本発明の実施形態は特定の例に限定されず、他のドナー及び/又はドナーの組み合わせを本発明の様々な実施形態に従って利用することができる。同様に、本発明は、本図に示される例示的なアクセプタに限定されず、他のアクセプタ及びアクセプタの組み合わせも本発明の範囲内に含まれる。当業者は、多くの変形、修正、及び代替を認識できる。
【0096】
[0113]
図12A及び
図12Bは、
図11A~
図11Dに示す装置構造の電流密度-電圧(
図12A)及びEQE曲線(
図12B)を示す。具体的には、点線は装置構造1100Aに対応し、破線は装置構造1100Bに対応し、灰色実線は装置構造1100Cに対応し、黒色実線は装置構造1100Dに対応する。図から分かるように、三次BHJ及び積層BHJの両方からの出力電圧は、最低電圧材料によって制限される。得られたEQEスペクトルは、2つの二次BHJの平均として現れるが、光電流出力及びEQE応答は、三次BHJよりも積層BHJの方が高い。
図12A及び
図12Bは、より高い効率をもたらす、より高い光電流及びEQE値を得ることによって、三次ブレンドではなく積層BHJを使用することの利点を実証する。
【0097】
[0114]更に、積層BHJは、構成BHJ層におけるEQEピーク間のどこにでもEQEピークを配置できるように調整することができる。積層BHJの調整は、構成ブレンドの組成及び/又は厚さを変えることによって行うことができる。例えば、D310:C70の組成は、例えば、1:99~99:1の体積比の間で変化することができ、D300:C70の組成は、例えば、1:99~99:1の体積比の間で変化することができ、D310:C70対D300:C70の厚さは、例えば、とりわけ、1:99~99:1の厚さ比の間で変化し得る。
【0098】
[0115]
図13は、2つの構成BHJ層の全体の厚さは一定であるが厚さは変化する積層BHJの装置構造1300を示す。ITO層、MoO
3層、Ag層及びTPBi:C
60層は、上述したように電極及びバッファ層を構成する。D-310:C
70の厚さは変数X(nm)に等しく、D-300:C
70の厚さは60-X(nm)に等しい。したがって、様々な実施形態では、D-310:C
70及びD-300:C
70の厚さはそれぞれ0から60nmの間で変化し得るが、装置構造1300の厚さは一定のままである。幾つかの例では、ドナー対アクセプタ比は、BHJ層D-310:C
70及びD-300:C
70のそれぞれについて体積で50:50に維持することができる。
【0099】
[0116]
図14A及び
図14Bは、
図13に示す装置構造1300の電流密度-電圧(
図14A)及びEQE曲線(
図14B)を示し、Xは20から40nmまで変化する。EQE曲線から明らかなように、スペクトル応答はBHJ層の厚さによって調整することができる。厚さが変化すると、各ドナーの全含有量は活性層内で線形に調整され、EQEピークはD-300:C
70又はD-310:C
70(図12Bに示す)の二次BHJ応答の間でシフトする。これは、三次ブレンド中のドナー分子の比を調整することと等価であり得る。
【0100】
[0117]
図15は、NIR吸収BHJ層の様々な厚さ及び可視吸収BHJ層の固定厚さを使用する積層BHJの装置構造1500を示す。ITO層、MoO
3層、Ag層及びTPBi:C
60層は、上述したように電極及びバッファ層を構成する。D-100:C
60の厚さは、変数Y(nm)に等しい。したがって、様々な実施形態において、装置構造1500の厚さは、D-100:C
60の厚さに基づいて変化し得る。幾つかの実施形態では、D-100:C
60の厚さは、10nm、20nm、30nm、又は40nmに等しい。ドナー対アクセプタ比は、D-310:C
70及びD-100:C
60についてそれぞれ体積で50:50及び20:80に維持することができる。
【0101】
[0118]
図16A~
図16Cは、
図15に示す装置構造1500の電流密度-電圧(
図16A)及びEQE曲線(
図16B)を示し、Yは10から40nmまで変化する。D-310ドナーとD-100ドナーとの間の不適切なHOMO準位アライメントに起因して、D-310:C
70層は、D-100:C
60層内に生成された正孔に対する抽出障壁を有する。その結果、D-100:C
60BHJ内で生成された電荷キャリアは順バイアス下で抽出することができない。これは、I-V曲線において「s字形キンク」をもたらす。高い逆バイアス(-0.5V~-1V)を印加すると、これらのキャリアが抽出障壁を超えて駆動され、積層体から公称光電流が生じる。
図16Bに見られるように、高い逆バイアス(-1V)におけるEQEは、薄いD310:C
70BHJ層からの光電流によって支配されるゼロバイアスよりも著しく高い。0V~-1Vの印加バイアスとの間のEQE差は、Yが40nmに等しい場合について
図16Cに示されており、D-100:C
60(図10B)から予想される光電流出力と一致する。
【0102】
[0119]
図17は、直列タンデムアーキテクチャへの積層BHJ概念の拡張を示す装置構造1700を示す。この場合、直列タンデムが2つのサブセル(「サブセル1」及び「サブセル2」)の間に形成され、その各々は、電荷再結合ゾーン1708を介して接続された積層BHJ1706から成る。2つのサブセルは、基板1702上に形成され得る上部電極1710と下部電極1704との間に積層される。この概念は、任意の数のサブセルを含むことができ、その各々は任意の数の積層BHJから構成され得る。電流整合をサブセル間でより良好に調整することができるので、各サブセル内の積層BHJによって与えられるスペクトル同調性は、直列タンデムの設計柔軟性を高める。
【0103】
[0120]
図18は、可視光透過型光起電装置100、装置構造600、900、1100、1300、1500、1700、又はそれらの任意の組み合わせなどの光起電装置を形成するための方法1800を示す。様々な実施形態において、光起電装置は、可視光透過型であってもよく、又は可視光不透過型又は不透明であってもよい。例えば、方法1800を参照して説明した光起電装置の構成要素のいずれかは、不透明な第1の電極(ブロック1806)又は不透明な第2の電極(ブロック1814)など、可視光不透過型であってもよい。更に、方法1800を参照して可視光透過型であるとして説明した構成要素のいずれかは、幾つかの実施形態では、可視光不透過型又は不透明であってもよい。方法1800は、更なるステップ又は
図18に示されているよりも少ないステップを含むことができる。更に、方法1800の1つ以上のステップは、
図18に示されている順序とは異なる順序で実行されてもよい。
【0104】
[0121]方法1800は、例えば透明基板などの基板が用意されるブロック1802で開始する。有用な透明基板は、ガラス、プラスチック、石英などの可視光透過型基板を含むことが理解される。様々な実施形態では、可撓性基板及び硬質基板が有用である。随意的に、透明基板は、上面及び/又は下面に予め形成された1つ以上の光学層を備える。
【0105】
[0122]ブロック1804において、随意的に、透明基板の上面及び/又は下面など、透明基板上又は透明基板の上方に1つ以上の光学層が形成される。随意的に、1つ以上の光学層は、介在層又は透明導体などの材料などの他の材料上に形成される。随意的に、1つ以上の光学層は、可視光透過型基板に隣接して及び/又は接触して位置される。光学層の形成は随意的であり、幾つかの実施形態は、透明基板に隣接する及び/又は透明基板と接触する光学層を含まなくてもよいことが理解される。光学層は、めっき、化学溶液堆積、スピンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、ブレードコーティング、スプレーコーティング、化学気相堆積、プラズマ化学気相堆積、及び、原子層堆積などの1つ以上の化学堆積法、又は、熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシ、スパッタリング、パルスレーザ堆積、イオンビーム堆積、及び、エレクトロスプレー堆積などの1つ以上の物理堆積法を含むがこれらに限定されない様々な方法を使用して形成することができる。有用な光学層は、可視光透過型光学層を含むことが理解される。有用な光学層は、例えば、反射防止特性、波長選択反射又は分布ブラッグ反射特性、屈折率整合特性、カプセル化などを含む1つ以上の光学特性を与えるものを含む。有用な光学層は、場合により、紫外光及び/又は近赤外光を透過する光学層を含んでもよい。しかしながら、形態に応じて、幾つかの光学層は、随意的に、受動的な赤外線及び/又は紫外線吸収を与えてもよい。随意的に、光学層は、本明細書に記載の可視光透過型光活性化合物を含んでもよい。
【0106】
[0123]ブロック1806において、例えば第1の透明電極などの第1の(例えば、下部)電極が形成される。前述のように、透明電極は、ITO薄膜又は他の透明導電膜、例えば金属薄膜(例えば、Ag、Cuなど)、金属薄膜(例えば、Ag、Cuなど)及び誘電体材料を含む多層積層体、又は導電性有機材料(例えば、導電性ポリマーなど)に対応し得る。透明電極は、可視光透過型電極を含むことが理解される。透明電極は、原子層堆積、化学蒸着、物理蒸着、熱蒸着、スパッタ堆積、エピタキシなどの真空堆積技術を含む1つ以上の堆積プロセスを使用して形成され得る。場合によっては、スピンコーティングなどの溶液ベースの堆積技術も使用され得る。更に、透明電極は、リソグラフィ、リフトオフ、エッチングなどの微細加工技術によってパターニングされてもよい。
【0107】
[0124]ブロック1808において、透明電極上などに、1つ以上のバッファ層が随意的に形成される。バッファ層は、めっき、化学溶液堆積、スピンコーティング、浸漬コーティング、化学気相堆積、プラズマ化学気相堆積、及び原子層堆積などの1つ以上の化学堆積法、又は、熱蒸着、電子ビーム蒸発、分子線エピタキシ、スパッタリング、パルスレーザ堆積、イオンビーム堆積、及びエレクトロスプレー堆積などの1つ以上の物理堆積法を含むがこれらに限定されない様々な方法を使用して形成することができる。有用なバッファ層は、可視光透過型バッファ層を含むことが理解される。有用なバッファ層としては、電子輸送層、電子ブロッキング層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層、光学スペーサ、物理バッファ層、電荷再結合層、又は、電荷生成層として機能するものが挙げられる。場合によっては、開示された可視光透過型光活性化合物は、バッファ層材料として有用であり得る。例えば、バッファ層は、随意的に、本明細書に記載の可視光透過型光活性化合物を含んでもよい。
【0108】
[0125]ブロック1810において、バッファ層上又は透明電極上などに、1つ以上の光活性層が形成される。前述のように、光活性層は、電子アクセプタ層及び電子ドナー層又は電子ドナー及びアクセプタの共堆積層を含んでもよい。光活性層は、めっき、化学溶液堆積、スピンコーティング、浸漬コーティング、化学気相堆積、プラズマ化学気相堆積、及び原子層堆積などの1つ以上の化学堆積法、又は、熱蒸着、電子ビーム蒸発、分子線エピタキシ、スパッタリング、パルスレーザ堆積、イオンビーム堆積、及びエレクトロスプレー堆積などの1つ以上の物理堆積法を含むがこれらに限定されない様々な方法を使用して形成することができる。
【0109】
[0126]幾つかの実施形態において、ブロック1810は、1つ以上のBHJ活性層を形成することを含むことができる。例えば、ブロック1818では、第1のBHJ活性層が形成される。幾つかの実施形態において、第1のBHJ活性層は、ブロック1806で形成された第1の透明電極上又はブロック1808で形成されたバッファ層上に形成される。第1のBHJ活性層は、電子ドナー材料(すなわち、第1の電子ドナー材料)と電子アクセプタ材料(すなわち、第1の電子アクセプタ材料)とのブレンド(すなわち、第1のブレンド)を含んでもよい。第1のBHJ活性層は、第1の電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位によって特徴付けられる(例えば、第1の電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位に等しい)HOMOエネルギー準位(すなわち、第1のHOMOエネルギー準位)と、第1の電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位によって特徴付けられる(例えば、第1の電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位に等しい)LUMOエネルギー準位(すなわち、第1のLUMOエネルギー準位)とを有することができる。
【0110】
[0127]第1のBHJ活性層は、電子ドナー材料(第1の電子ドナー材料を含む)及び電子アクセプタ材料(第1の電子アクセプタ材料を含む)の二次、三次、四次、又は高次ブレンドであってもよい。第1のBHJ活性層は、励起子ブロッキング層、正孔ブロッキング層、又は電子ブロッキング層によってコーティングされてもよい。幾つかの実施形態では、第1のBHJ活性層と第1の透明電極との間に励起子ブロッキング層、正孔ブロッキング層、又は電子ブロッキング層が配置される(例えば、堆積される)。
【0111】
[0128]別の例として、ブロック1820では、第2のBHJ活性層が形成される。幾つかの実施形態において、第2のBHJ活性層は、ブロック1818で形成された第1のBHJ活性層上に形成される。第2のBHJ活性層は、電子ドナー材料(すなわち、第2の電子ドナー材料)と電子アクセプタ材料(すなわち、第2の電子アクセプタ材料)とのブレンド(すなわち、第2のブレンド)を含んでもよい。第2のBHJ活性層は、第2の電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位によって特徴付けられる(例えば、第2の電子ドナー材料のHOMOエネルギー準位に等しい)HOMOエネルギー準位(すなわち、第2のHOMOエネルギー準位)と、第2の電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位によって特徴付けられる(例えば、第2の電子アクセプタ材料のLUMOエネルギー準位に等しい)LUMOエネルギー準位(すなわち、第2のLUMOエネルギー準位)とを有することができる。
【0112】
[0129]第2のBHJ活性層は、電子ドナー材料(第2の電子ドナー材料を含む)及び電子アクセプタ材料(第2の電子アクセプタ材料を含む)の二次、三次、四次、又は高次ブレンドであってもよい。第2のBHJ活性層は、励起子ブロッキング層、正孔ブロッキング層、又は電子ブロッキング層によってコーティングされてもよい。幾つかの実施形態では、励起子ブロッキング層、正孔ブロッキング層、又は電子ブロッキング層は、第2のBHJ活性層と第2の透明電極との間に配置される。
【0113】
[0130]幾つかの実施形態において、第1のBHJ活性層は、第2のBHJ活性層とは異なる電子ドナー材料を有してもよい(例えば、第1の電子ドナー材料は、第2の電子ドナー材料と異なっていてもよい)。幾つかの実施形態において、第1のBHJ活性層は、第2のBHJ活性層と電子ドナー材料を共有してもよい(例えば、第1の電子ドナー材料は、第2の電子ドナー材料と同じであってもよい)。幾つかの実施形態において、第1のBHJ活性層は、第2のBHJ活性層とは異なる電子アクセプタ材料を有してもよい(例えば、第1の電子アクセプタ材料は、第2の電子アクセプタ材料と異なっていてもよい)。幾つかの実施形態において、第1のBHJ活性層は、第2のBHJ活性層と電子アクセプタ材料を共有してもよい(例えば、第1の電子アクセプタ材料は、第2の電子アクセプタ材料と同じであってもよい)。
【0114】
[0131]様々な実施形態において、第1のLUMOエネルギー準位及び第2のLUMOエネルギー準位は、互いに100meV、200meV、300meV、400meV、又は500meV以内であってもよい。様々な実施形態において、第1のHOMOエネルギー準位及び第2のHOMOエネルギー準位は、互いに100meV、200meV、300meV、400meV、又は500meV以内であってもよい。
【0115】
[0132]幾つかの実施形態において、第1のBHJ活性層は、第1のBHJ活性層による放射線の吸収がピークを示す波長である1つ以上のピーク吸収波長を有することができる。幾つかの実施形態において、第2のBHJ活性層は、第2のBHJ活性層による放射線の吸収がピークを示す波長である1つ以上のピーク吸収波長を有することができる。幾つかの実施形態において、第1のBHJ活性層の吸収スペクトルは、第2のBHJ活性層の吸収スペクトルに対して少なくとも部分的に相補的である。そのような実施形態において、第1のBHJ活性層のピーク吸収波長は、より広いスペクトル範囲を与えるように、第2のBHJ活性層のピーク吸収波長から少なくとも波長オフセット量だけオフセットされる。様々な実施形態において、波長オフセット量は、50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、又はそれらの間の任意の値であってもよい。
【0116】
[0133]ブロック1812において、光活性層上などに、1つ以上のバッファ層が随意的に形成される。ブロック1812において形成されるバッファ層は、ブロック1808において形成されるバッファ層と同様に形成されてもよい。
【0117】
[0134]ブロック1814において、例えば第2の透明電極などの第2の(例えば、上部)電極が形成される。第2の透明電極は、バッファ層上に形成されていてもよく、光活性層上に形成されていてもよい。第2の透明電極は、ブロック1806における第1の透明電極の形成に適用可能な技術を用いて形成されてもよい。
【0118】
[0135]ブロック1816において、第2の透明電極上などに、1つ以上の更なる光学層が随意的に形成される。
【0119】
[0136]方法1800は、随意的に、電気エネルギーを生成する方法に対応するように拡張されてもよい。例えば、電気エネルギーを生成するための方法は、方法1800に従って可視光透過型光起電装置を形成することなどによって、可視光透過型光起電装置を提供することを含むことができる。電気エネルギーを生成するための方法は、例えば、電気エネルギーを生成するために、電子-正孔対の形成及び分離をもたらすために、可視光、紫外光及び/又は近赤外光に可視光透過型光起電装置を曝露することを更に含んでもよい。可視光透過型光起電装置は、光活性材料、緩衝材料、及び/又は光学層として本明細書に記載の可視光透過型光活性化合物を含むことができる。
【0120】
[0137]本明細書で使用される「備える」は、「含む」、「包含する」又は「によって特徴付けられる」と同義であり、包括的又非制約的であり、更なる列挙されていない要素又は方法ステップを排除しない。本明細書で使用される「から成る」は、特許請求の範囲の要素で指定されていない要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書中で使用される「から本質的に成る」は、特許請求の範囲の基本的且つ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップを排除しない。特に組成物の成分の説明又は装置の要素の説明における「備える」という用語の本明細書における列挙は、列挙された成分又は要素から本質的に成る及び列挙された成分又は要素から成るそれらの組成物及び方法を包含すると理解される。本明細書に例示的に記載された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つ以上の要素、1つ以上の限定がない状態で適切に実施され得る。
【0121】
[0138]本明細書で利用され得る略語には、以下が含まれる。
TPBi:2,2’、2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)
HAT-CN:ジピラジノ[2,3-f:2’、3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11ヘキサカルボニトリル
PTCBI:ビスイミダゾ[2,1-a:1’、2-b’]アントラ[2,1,9-def:6,5,10-d’e’f’]ジイソグイノリン-10,21ジオン
DBP:ジベンゾ{[f,f’]-4,4’、7,7’-テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3-cd:1’、2’、3’-lm]ペリレン
【0122】
[0139]使用された用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現の使用において、示され説明された特徴又はその一部の均等物を除外する意図はないが、特許請求される発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態及び任意選択の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の修正及び変形は当業者によって使用されてもよく、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であると考えられることを理解されたい。
【国際調査報告】