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特表2022-544701発毛促進活性を有するペプチド、及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-20
(54)【発明の名称】発毛促進活性を有するペプチド、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20221013BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20221013BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20221013BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20221013BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20221013BHJP
【FI】
C07K7/06
C12N15/11 Z
A61P17/14
A61Q7/00
A61K8/64
A61K38/08
A61K47/54
A61K47/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511060
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2019013268
(87)【国際公開番号】W WO2021033832
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0101881
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510271129
【氏名又は名称】ケアジェン カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジ・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ミ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジ・イ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC41
4C076DD09
4C076EE23
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF63
4C083AD411
4C083CC37
4C083EE22
4C083FF01
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA63
4C084NA03
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA921
4C084ZA922
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA13
4H045DA30
4H045EA15
4H045EA30
(57)【要約】
発毛促進活性を有するペプチド、及びその用途に係り、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、該ペプチドを含む脱毛改善用または発毛促進用の化粧料組成物、及び該ペプチドを含む脱毛予防用または脱毛治療用の薬学組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列からなる、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドのN-末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基、ブトキシカルボニル基(Boc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群のうちから選択されるいずれか1つの保護基と結合されたものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドのC-末端は、アミノ基(-NH)、三次アルキル基及びアザイド(-NHNH)からなる群のうちから選択されるいずれか1つの保護基と結合されたものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドは、下記のところのような特性から選択されるいずれか1以上を示すものである、請求項1に記載のペプチド:
(a)毛嚢細胞の活性促進、
(b)毛嚢細胞の増殖促進、
(c)毛嚢細胞の死滅抑制、及び
(d)DKK-1(Dickkopf-related protein 1)またはTGF-β1(transforming growth factor-beta 1)の発現抑制。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載のペプチドを有効成分として含む、脱毛改善用または発毛促進用の化粧料組成物。
【請求項6】
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載のペプチドを有効成分として含む、脱毛予防用または脱毛治療用の薬剤学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発毛促進活性を有するペプチド、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会が発達しながら、脱毛で悩む人の数が増加しており、既存には、中年男性らの主な問題であったが、最近では、若者及び女性層においても、脱毛予防や養毛などへの関心が高まっている。一方、脱毛は、一連の老化現状と認識されてきたが、最近では、遺伝的要因と共に、ストレス、西欧化された食習慣、栄養不均衡、社会活動の変化のような多様な原因により、脱毛が進むということが明らかにされている。
【0003】
現在、発毛効果を示す薬物として、米国FDAで公認されたものとしては、ミノキシジル(6-Amino-1,2-dihydro-1-hydroxy-2-imino-4-phenoxypyrimidine)(米国特許第3,382,247号)及びフィナステリド(finasteride)(米国特許第5,215,894号)がある。ミノキシジルの場合、1970年代初、高血圧治療のための血管拡張剤として開発されたが、副作用として、多毛症が報告されながら、発毛促進剤で使用されており、毛孔が大きくなり、毛髪の直径が大きくなり、毛髪の太さが太くなる効果を示す。また、フィナステリドの場合、前立腺肥大症治療剤として開発されていて、現在、脱毛治療剤として使用されており、脱毛の進行を遅延させて発毛効果を示す。
【0004】
しかし、ミノキシジルの場合、体重増加、むくみ、皮膚炎、心臓拍動増加のような副作用が報告され、フィナステリドの場合、持続的な服用が要求され、男性の場合、性機能障害、妊娠した女性の場合、奇形児出産などの副作用があり、副作用がない脱毛治療剤の開発は、依然として要求されている実情である。
【0005】
そのような技術的背景下において、ホルモン調節、代謝調節のようなメカニズムを介して脱毛を改善するための多角的な研究が進められている(韓国公開特許第2002-0005332号)が、まだ十分ではない実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第2002-0005332号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一態様は、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。
【0008】
他の態様は、前記ペプチドを含む脱毛改善用または発毛促進用の化粧料組成物を提供する。
【0009】
さらに他の態様は、前記ペプチドを含む脱毛予防用または脱毛治療用の薬学組成物を提供する。
【0010】
本出願の他の目的及び利点は、添付の請求範囲及び図面と共に、下記の詳細な説明によってさらに明確になるであろう。本明細書に記載されていない内容は、本出願の技術分野、または類似した技術分野における当業者であるならば、十分に認識して類推することができるものであるので、その説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示された多様な要素の全ての組み合わせが、本出願の範疇に属する。また、下記で記述された具体的な敍述により、本出願の範疇が制限されるものではない。
【0012】
一態様は、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。
【0013】
本明細書で使用される用語「ペプチド」は、ペプチド結合により、アミノ酸残基が互いに結合されて形成された線形の分子を意味しうる。前記ペプチドは、当業界に公知された化学的合成方法、特に、固相合成技術(solid-phase synthesis techniques; Merrifield, J. Amer. Chem. Soc. 85: 2149-54 (1963); Stewart, et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd. ed., Pierce Chem. Co.: Rockford, 111 (1984))、または液状合成技術(米国登録特許第5,516,891号)によっても製造される。本発明者らは、生物学的に有効な活性を有するペプチドを開発すべく、鋭意努力を傾けた結果、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを究明した。ここで、前記生物学的に有効な活性は、(a)毛嚢細胞の活性促進、(b)毛嚢細胞の増殖促進、(c)毛嚢細胞の成長促進死滅抑制、及び(d)DKK-1(Dickkopf-related protein 1)またはTGF-β1(transforming growth factor-beta 1)の発現抑制のような特性から選択されるいずれか一つ以上を示すものでもある。従って、前記ペプチドは、脱毛改善または発毛促進のための用途、脱毛の予防または治療のための用途にも活用される。
【0014】
前記ペプチドは、化学的安定性、強化された薬理特性(半減期、吸水性、力価、効能など)、変更された特異性(例えば、広範囲な生物学的活性スペクトル)、低下された抗原性を獲得するために、ペプチドのN-末端またはC-末端に、保護基が結合されてもいる。一具体例において、前記ペプチドのN-末端は、アセチル基(acetyl group)、フルオレニルメトキシカルボニル基(fluoreonylmethoxycarbonyl group)、ホルミル基(formyl group)、パルミトイル基(palmitoyl group)、ミリスチル基(myristyl group)、ステアリル基(stearyl group)、ブトキシカルボニル基(Boc:butoxycarbonyl group)、アリルオキシカルボニル基(Alloc:allyloxycarbonyl group)及びポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)からなる群のうちから選択されるいずれか1つの保護基とも結合され、かつ/または前記ペプチドのC-末端は、アミノ基(-NH)、三次アルキル基(tertiary alkyl group)及びアジド(-NHNH)からなる群のうちから選択されるいずれか1つの保護基とも結合される。また、前記ペプチドは、選択的に、標的化配列、タグ(tag)、標識された残基、半減期またはペプチド安定性を増大させるための特定目的で製造されたアミノ酸配列も追加して含まれる。
【0015】
本明細書で使用される用語「安定性」は、生体内タンパク質切断酵素の攻撃から、前記ペプチドを保護するインビボ安定性だけではなく、保存安定性(例えば、常温保存安定性)も意味しうる。
【0016】
他の態様は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む化粧料組成物、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む薬剤学的組成物、及び化粧料または薬剤学的組成物を製造したり、化粧料または薬剤学的組成物として使用したりするための配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの用途を提供する。
【0017】
他の態様は、前記ペプチドを含む脱毛防止用または発毛促進用の化粧料組成物を提供する。
【0018】
前記ペプチドに係わる説明で言及された用語または要素のうち、すでに言及されたところと同一のところは、前述の通りである。
【0019】
本明細書で使用される用語「改善」は、状態の緩和または治療と係わるパラメータ、例えば、症状の程度を少なくとも低減させる全ての行為を意味しうる。
【0020】
本明細書で使用される用語「脱毛改善」は、脱毛状態を治療、軽減、緩和させる過程、またはその効果などを包括的に意味し、例えば、毛嚢細胞の再生、毛嚢細胞の活性回復、毛嚢細胞の死滅抑制、DKK-1、TGF-β1のような脱毛誘発因子の発現抑制のような脱毛の進行を抑制する全ての作用を意味しうる。
【0021】
本明細書で使用される用語「発毛促進」は、毛嚢から毛髪が育つことを増進させる全ての行為を意味し、例えば、毛嚢細胞の増殖、毛嚢細胞の活性、または毛嚢細胞の成長を促進する効果のような毛髪の総量を増加させる全ての作用を意味しうる。
【0022】
従来の機能性ペプチドは、有効な生物学的活性にもかかわらず、ペプチド自体の大きさにより、標的組織または細胞に効果的に流入されなかったり、半減期が短く、短期間に体内で消滅してしまったりする短所を示した。一方、一実施例による化粧料組成物は、10個以下のアミノ酸からなるペプチドを有効成分として含み、それにより、有効成分の皮膚浸透率などが非常にすぐれ、例えば、局所的に皮膚に塗布する場合、脱毛を効果的に防止し、発毛を促進させることができる。
【0023】
一実施例によれば、前記ペプチドは、毛乳頭細胞の増殖促進、増殖関連因子の発現促進、増殖メカニズム促進効果、及び脱毛関連因子の発現抑制効果を示した。従って、前記ペプチドは、脱毛改善用または発毛促進用の化粧料組成物の有効成分としても活用される。
【0024】
前記化粧料組成物は、前記ペプチドの化粧品学的有効量(cosmetically effective amount)、及び/または化粧品学的に許容される担体を含むものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0025】
本明細書で使用される用語「化粧品学的有効量」は、前記化粧料組成物の脱毛改善効能または発毛促進効能を達成するのに十分な量を意味しうる。
【0026】
前記ペプチド、及び化粧品学的に許容される担体の重量比は、例えば、500:1ないし1:500でもあり、一例として、前記重量比は、450:1ないし1:450、400:1ないし1:400、350:1ないし1:350、300:1ないし1:300、250:1ないし1:250、200:1ないし1:200、150:1ないし1:150、100:1ないし1:100、80:1ないし1:80、60:1ないし1:60、40:1ないし1:40、20:1ないし1:20、10:1ないし1:10、8:1ないし1:8、6:1ないし1:6、4:1ないし1:4、または2:1ないし1:2でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0027】
前記化粧料組成物は、当業界で一般的に製造されるいかなる剤形にも製造され、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、せっけん、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファウンデーション、乳濁液ファウンデーション、ワックスファウンデーション及びスプレーなどにも剤形化される、それらに制限されるものではない。例えば、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレーまたはパウダーの剤形にも製造される。
【0028】
前記化粧料組成物の剤形が、ペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが利用されうる。
【0029】
前記化粧料組成物の剤形が、パウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、ケイ酸カルシウムまたはポリアミドパウダーが利用され、例えば、スプレーである場合には、追加して、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進剤を含んでもよい。
【0030】
前記化粧料組成物の剤形が、溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が利用され、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルを含んでもよい。
【0031】
前記化粧料組成物の剤形が、懸濁液である場合には、担体成分として、水・エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール・ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁液剤、微晶質セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラカントなどが利用されうる。
【0032】
前記化粧料組成物の剤形が、界面活性剤含有クレンジングである場合には、担体成分として、脂肪族アルコールスルフェート、脂肪族アルコールエーテルスルフェート、ソルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレイト、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルスルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが利用されうる。
【0033】
前記化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分としてのペプチド、及び担体成分以外に、化粧料組成物に一般的に利用される成分を含み、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような一般的な補助剤を含んでもよい。
【0034】
さらに他の態様は、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む化粧料組成物を個体の皮膚に塗布する段階を含む脱毛を改善する方法または発毛を促進させる方法を提供する。
【0035】
前記化粧料組成物に係わる説明で言及された用語または要素のうち、すでに言及されたところと同一のところは、前述の通りである。
【0036】
本明細書で使用される用語「適用する」、「投与する」及び「塗布する」は、相互交換的に使用され、一実施例による組成物を、所望する部位に対する少なくとも部分的局所化をもたらすこと、または投与経路によって個体内への一実施例による組成物を配置することを意味しうる。
【0037】
さらに他の態様は、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む脱毛予防用または脱毛治療用の薬学組成物を提供する。
【0038】
前記ペプチドに係わる説明で言及された用語または要素のうち、すでに言及されたところと同一のところは、前述の通りである。
【0039】
本明細書において用語「予防」は、前記組成物の投与により、疾病の発病を抑制または遅延させる全ての行為を意味する。
【0040】
本明細書において用語「治療」は、疾病を病んでいるか、あるいは疾病が発病する危険性があったりする個体に、前記個体の状態(例えば、1以上の症状)の改善、疾病進行の遅延、症状発生の遅延、または症状進行の鈍化などを含む効果を提供する任意形態の治療を意味する。従って、前述の「治療」及び「予防」は、症状の治癒、または完全な除去を意味するようには意図されない。
【0041】
前記「個体」は、疾病の治療を必要とする対象を意味し、さらに具体的には、ヒト、または非ヒトである霊長類、マウス・犬・猫・馬及び牛などの哺乳類を意味する。
【0042】
前記薬剤学的組成物による予防または治療の対象疾病である「脱毛」は、正常に毛髪が存在しなければならない部位に毛髪がない状態を意味し、具体的には、頭皮の成毛(太くて黒い毛髪)の抜けを意味しうる。脱毛の原因は、制限されるものではないが、遺伝的な原因、ホルモン不均衡、精神的ストレス、大気汚染露出、加工食品の摂取のような、多様な食習慣及び環境的影響によっても誘発される。例えば、脱毛は、遺伝性アンドロゲン性脱毛(禿頭)、円形脱毛、かび感染による頭部白癬、休止期脱毛、抜毛癖、毛髪生成障害疾患などがあり、傷跡が形成される瘢痕性脱毛としては、ル-プスによる脱毛、禿髮性毛嚢炎、毛孔性扁平苔癬、火傷及び外傷による脱毛を意味しうる。
【0043】
一実施例によれば、前記ペプチドは、毛嚢細胞の増殖、または活性促進の効果、及び脱毛関連因子の発現抑制効果を示した。従って、前記ペプチドは、脱毛の予防用または治療用の薬剤学的組成物の有効成分としても活用される。
【0044】
前記薬剤学的組成物は、前記ペプチドの薬剤学的有効量(pharmaceutically effective amount)、及び/または薬剤学的に許容される担体を含むものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0045】
本明細書で使用される用語「薬剤学的有効量」は、前記薬剤学的組成物の脱毛予防または治療効能を達成するのに十分な量を意味する。
【0046】
前記ペプチド、及び薬剤学的に許容される担体の重量比は、例えば、500:1ないし1:500でもあり、一例として、前記重量比は、450:1ないし1:450、400:1ないし1:400、350:1ないし1:350、300:1ないし1:300、250:1ないし1:250、200:1ないし1:200、150:1ないし1:150、100:1ないし1:100、80:1ないし1:80、60:1ないし1:60、40:1ないし1:40、20:1ないし1:20、10:1ないし1:10、8:1ないし1:8、6:1ないし1:6、4:1ないし1:4、または2:1ないし1:2でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0047】
前記薬剤学的に許容される担体は、製剤時に一般的に利用されるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、それらに限定されるものではない。適する薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0048】
前記薬剤学的組成物は、前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁液剤、保存剤などを追加して含んでもよいが、それらに制限されるものではない。
【0049】
前記薬剤学的組成物は、経口または非経口、望ましくは、非経口で投与することができるし、非経口投与である場合には、筋肉注入、静脈内注入、皮下注入、腹腔注入、局所投与、経皮投与などで投与することができるが、それらに限定されるものではない。
【0050】
前記薬剤学的組成物の投与量は1日当たり、0.0001ないし1,000μg、0.001ないし1,000μg、0.01ないし1,000μg、0.1ないし1,000μg、または1.0ないし1,000μgでもあるが、それらに制限されるものではなく、製剤化方法、投与方式、患者の年齢・体重・性、病的状態、飲食物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によっても多様に処方される。
【0051】
前記薬剤学的組成物は、当該発明が属する技術分野において当業者であるならば、容易に実施することができる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位用量形態に製造されるか、あるいは多用量容器内に内入させても製造される。
【0052】
さらに他の態様は、治療学的有効量の配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む薬剤学的組成物を個体に投与する段階を含む、脱毛を予防または治療する方法を提供する。
【0053】
前記薬剤学的組成物に係わる説明で言及された用語または要素のうち、すでに言及されたところと同一のところは、前述の通りである。
【0054】
さらに他の態様は、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む脱毛防止用または発毛促進用の食品組成物を提供する。
【0055】
前記ペプチドに係わる説明で言及された用語または要素のうち、すでに言及されたところと同一のところは、前述の通りである。
【0056】
前記食品組成物に含有された有効成分としてのペプチドの含量は、食品の形態、所望する用途などにより、適切に非制限的に選択され、例えば、全体食品重量の0.01ないし15重量%で添加することができる。また、例えば、健康飲料組成物は、100mlを基準に、0.02ないし10g、望ましくは、0.3ないし1gの比率で添加することができる。
【発明の効果】
【0057】
一態様によるペプチドによれば、脱毛関連因子(DKK-1またはTGF-β1)の発現を抑制することにより、脱毛の改善、予防または治療などに適用することができる。
【0058】
一態様によるペプチドによれば、毛嚢細胞の増殖、成長または活性を促進させることにより、発毛促進、毛髪成長促進などに適用することができる。
【0059】
一態様によるペプチドによれば、従って、前記ペプチドは、化粧料組成物または薬剤学的組成物の脱毛改善または発毛促進のための有効成分としても含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの毛嚢細胞の増殖促進効果を確認した結果である。
図2】配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの毛嚢細胞の増殖促進効果として、毛乳頭細胞の増殖と係わる因子であるERK及びAKTのリン酸化、すなわち、活性化が誘導されることを確認した結果である。
図3】配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの毛嚢細胞の増殖促進効果として、毛乳頭細胞の増殖と係わる因子であるβ-カテニンの細胞質から核への移動を増大させることを確認した結果である。
図4】配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの毛嚢細胞における脱毛関連因子の発現抑制効果として、DHT処理によるDKK-1発現経路を抑制させることを確認した結果である。
図5】配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの毛嚢細胞における脱毛関連因子の発現抑制効果として、TGF-β1発現経路を抑制させることを確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0062】
実施例1:ペプチドの合成
自動ペプチド合成器(Milligen 9050、Millipore、米国)を利用し、下記表1に記載された配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドを合成し、C18逆相高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)(Waters Associates、米国)を利用し、それら合成されたペプチドを純水分離した。カラムは、ACQUITY UPLC BEH300 C18(2.1mmX100mm、1.7μm、Waters Co.、米国)を利用した。
【0063】
【表1】
実施例2:ペプチドの毛嚢細胞増殖または活性促進効果の確認
1.毛乳頭細胞(dermal papilla cell)の増殖促進効果確認
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの毛嚢細胞の増殖促進効果を確認する。具体的には、ヒト毛嚢毛乳頭細胞(human hair follicle dermal papilla cells)を、5x10細胞/ウェルの密度で、96ウェルプレートにシーディングした後、16時間培養した。無血清培地に替えた後、前記ペプチドを、0.5μM、5μMまたは50μMそれぞれの濃度で処理して72時間培養した。陽性対照群として、脱毛治療剤として使用されるミノキシジル(minoxidil)5μMを処理した。その後、細胞増殖を測定するために、MTT(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide))法を遂行した。具体的には、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムプロミド(MTT)4μg/mlを処理し、4時間後、DMSOを処理してポルマザンを溶解させ、それを、分光光度計を利用し、560nmにおける吸光度を測定した。
【0064】
その結果、図1に示されているように、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドは、ヒト毛乳頭細胞の増殖を促進することを確認した。
【0065】
2.毛乳頭細胞の増殖関連因子の活性化効果確認
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの毛嚢細胞の増殖と係わる因子の活性化効果を確認する。具体的には、ヒト毛嚢毛乳頭細胞を、4x10細胞/ウェルの密度で、6ウェルプレートにシーディングした後、16時間培養した。無血清培地に替えた後、前記ペプチドを、0.5μM、5μMまたは50μMそれぞれの濃度で処理し、30分間培養した。陽性対照群として、ミノキシジル5μMを処理した。細胞を収穫し、細胞溶解物を準備した後、p-ERK抗体及びp-AKT抗体(Santacruz Biotechnology、米国)を利用し、リン酸化されたERK、及びリン酸化されたAKTに対するウェスタンブロッティングを進めた。
【0066】
その結果、図2に示されているように、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの処理により、毛乳頭細胞の増殖と係わる因子であるERK及びAKTのリン酸化が誘導されることを確認した。前記結果を介し、毛乳頭細胞の増殖関連因子が活性化されることを確認することができる。
【0067】
3.毛乳頭細胞の増殖メカニズム促進効果の確認
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの毛嚢細胞の増殖メカニズム活性化効果を確認する。具体的には、ヒト毛嚢毛乳頭細胞を、4x10細胞/ウェルの密度で、6ウェルプレートにシーディングした後、16時間培養した。無血清培地に替えた後、前記ペプチドを、0.5μM、5μMまたは50μMそれぞれの濃度で処理して24時間培養した。陽性対照群として、ミノキシジル5μMを処理した。細胞を収穫し、核タンパク質抽出キット(Merck、米国)を使用し、核タンパク質を分離した。β-カテニン抗体(Santacruz Biotechnology、米国)を利用し、毛乳頭細胞の増殖と係わる因子であるβ-カテニンに対するウェスタンブロッティングを進めた。
【0068】
その結果、図3に示されているように、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの処理により、β-カテニンの細胞質から核への移動が増大されることを確認した。前記結果を介し、核に移動されたβ-カテニンが増加され、転写因子として作用することにより、毛乳頭細胞の増殖メカニズムが促進されるということを確認することができる。
【0069】
実施例3:ペプチドの脱毛関連因子の発現抑制効果の確認
1.毛乳頭細胞でDKK-1発現抑制効果の確認
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの毛嚢細胞においけ、脱毛関連因子であるDKK-1の発現が抑制されるか否かということを確認する。具体的には、ヒト毛嚢毛乳頭細胞を、4x10細胞/ウェルの密度で、6ウェルプレートにシーディングした後、16時間培養した。無血清培地に替えた後、刺激剤(stimulator)として、ジヒドロテストステロン(DHT:dihydrotestosterone)10μg/ml、及び前記ペプチドの、0.5μM、5μMまたは50μMそれぞれの濃度で処理して24時間培養した。細胞を収穫し、核タンパク質抽出キットを使用し、核タンパク質を分離した。DKK-1抗体(Santacruz Biotechnology、米国)を利用し、DKK-1に対するウェスタンブロッティングを進めた。前記DHTは、アンドロゲン受容体を活性化させるものであり、脱毛誘発因子であるDKK-1(Dickkopf-related protein1)の発現を増大させる脱毛ホルモンであると知られている。
その結果、図4に示されているように、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドは、DHT処理による脱毛誘発因子であるDKK-1の発現を抑制することができるということを確認した。
【0070】
2.毛乳頭細胞でTGFβ-1発現抑制効果の確認
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドの毛嚢細胞において、脱毛関連因子であるTGFβ-1の発現が抑制されるか否かということを確認する。具体的には、ヒト毛嚢毛乳頭細胞を、4x10細胞/ウェルの密度で、6ウェルプレートにシーディングした後、16時間培養した。無血清培地に替えた後、前記ペプチドを、0.5μM、5μMまたは50μMそれぞれの濃度で処理して24時間培養した。陽性対照群として、ミノキシジル5μMを処理した。細胞収獲及びRNA分離後、cDNA合成キット及びPCR pre-mixを利用してcDNA合成し、下記表2に記載されたTGFβ-1プライマー及びGAPDHプライマーを利用してPCR(polymerase chain reaction)を進めた。前記TGFβ-1は、毛嚢細胞において、アンドロゲン誘導(androgen-inducible)因子であり、脱毛と関連していると知られている。
【0071】
【表2】
【0072】
その結果、図5に示されているように、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドは、毛嚢細胞において、脱毛誘発因子として知られたTGFβ-1の発現を抑制することができるということを確認した。
【0073】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の当業者であるならば、本発明の技術的思想や、必須な特徴を変更せずとも他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解することができるであろう。従って、以上で記述された実施例は、全ての面において、例示的なものであり、限定的ではないと理解されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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【国際調査報告】