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特表2022-544718敗血症性心筋症を治療するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】敗血症性心筋症を治療するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7034 20060101AFI20221014BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61K31/7034
A61P31/04
A61P9/04
A61P29/00
A61P31/00
A61P17/02
A61P3/00
A61P43/00 105
A61P9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020540234
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(85)【翻訳文提出日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 US2018053199
(87)【国際公開番号】W WO2019067771
(87)【国際公開日】2019-04-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520108235
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー オヴ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストフィドウ-ソロミドウ,メルポ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA52
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB31
4C086ZB35
4C086ZC21
(57)【要約】
【課題】敗血症と死亡率の間の重要な関連を考えると、敗血症の治療と解決のための改善された方法論の必要性が明らかに存在する。
【解決手段】 敗血症関連心機能障害、特に敗血症誘発性心筋症を治療するため、および敗血症関連機能不全から心臓を保護しおよび敗血症を有する対象における心機能を改善するための方法、ならびに組成物が提供される。これらの方法は、亜麻仁などの天然源から得られる、または合成的に作成される、セコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)または関連化合物を含む組成物を投与することを含む。
【選択図】図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
敗血症誘発性心筋症の治療または予防を必要としている対象における敗血症誘発性心筋症を治療または予防するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを前記対象に投与し、それにより前記対象における敗血症誘発性心筋症を治療することを含む、方法。
【請求項2】
前記SDGが(S,S)-SDGである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SDGが(R,R)-SDGである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記SDGが合成SDGである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記SDGがSDG類似体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記投与ステップが経口的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記投与ステップが静脈内で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記SDGが、約1ナノモル(nM)~約1モル(M)の濃度で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象がヒト対象である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記敗血症が、全身性炎症反応症候群(SIRS)、感染症、または多臓器不全症候群に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記敗血症が外傷または損傷に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記損傷が、創傷、火傷、出血、先天性代謝異常、ミトコンドリア症、低酸素症および虚血、煙吸入、一酸化炭素中毒、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記敗血症が医学的治療に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記医学的治療が、侵襲的もしくは非侵襲的な手術、針の配置、創傷管理、または挿管を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
敗血症を有する対象における心機能を維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを前記対象に投与し、それにより前記対象における心機能を保持することを含む、方法。
【請求項16】
前記SDGが(S,S)-SDGである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記SDGが(R,R)-SDGである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記SDGが合成SDGである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記SDGがSDG類似体である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記投与ステップが経口的に行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記投与ステップが静脈内で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記SDGが、約1ナノモル(nM)~約1モル(M)の濃度で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記対象がヒト対象である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記敗血症が、全身性炎症反応症候群(SIRS)、感染症、または多臓器不全症候群に関連する、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記敗血症が外傷または損傷に関連する、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記損傷が、創傷、火傷、出血、先天性代謝異常、ミトコンドリア症、低酸素症および虚血、煙吸入、一酸化炭素中毒、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記敗血症が医学的治療に関連する、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記医学的治療が、侵襲的もしくは非侵襲的手術、針の配置、創傷管理、または挿管を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
敗血症を有する対象における心収縮性および/または心筋細胞ミトコンドリア機能を改善するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを前記対象に投与し、それにより前記対象における心収縮性を改善することを含む、方法。
【請求項30】
前記SDGが(S,S)-SDGである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記SDGが(R,R)-SDGである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記SDGが合成SDGである、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記SDGがSDG類似体である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記投与ステップが経口的に行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記投与ステップが静脈内で行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記SDGが、約1ナノモル(nM)~約1モル(M)の濃度で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記対象がヒト対象である、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記敗血症が、全身性炎症反応症候群(SIRS)、感染症、または多臓器不全症候群に関連する、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記敗血症が外傷または損傷に関連する、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記損傷が、創傷、火傷、出血、先天性代謝異常、ミトコンドリア症、低酸素症および虚血、煙吸入、一酸化炭素中毒、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記敗血症が医学的治療に関連する、請求項29に記載の方法。
【請求項42】
前記医学的治療が、侵襲的または非侵襲的な手術、針の配置、創傷管理、または挿管を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ミトコンドリア機能の改善が、心筋細胞ミトコンドリアの数の増加を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項44】
心筋細胞ミトコンドリア機能の改善が、心筋細胞ミトコンドリア数の敗血症媒介性減少の逆転を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項45】
心筋細胞ミトコンドリア機能の改善が、心筋細胞ミトコンドリアの融合および分裂の増加を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項46】
心筋細胞ミトコンドリア機能の改善が、心筋細胞ミトコンドリアの融合および分裂における敗血症媒介性減少の逆転を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項47】
心筋細胞ミトコンドリア機能の改善が、ミトコンドリアの融合および分裂関連遺伝子の発現の敗血症媒介性減少の逆転を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項48】
前記遺伝子が、ダイナミン関連タンパク質1(Drp1)、視神経萎縮1(OPA1)、ミトフシン1(MFN1)、ミトフシン2(MFN2)、ミトコンドリア分裂1(FIS1)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
心筋細胞ミトコンドリア機能の改善が、ミトコンドリアカルシウムユニポーター(MCU)サブユニットの発現の敗血症媒介性減少の逆転を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項50】
前記MCUサブユニットが、ミトコンドリアカルシウムユニポーター(MCU)、ミトコンドリアカルシウム取り込み1(MICU1)、またはそれらの両方を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
心筋細胞ミトコンドリア機能の改善が、心筋細胞酸素消費率の増加を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項52】
前記の心筋細胞酸素消費率の増加が、基礎呼吸の増加、最大呼吸の増加、ATP産生の増加、非ミトコンドリア酸素消費の増加、プロトン漏出の減少、予備呼吸容量の増加、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
敗血症を有する対象の心筋細胞における酸化ストレスを低減するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを前記対象に投与し、それにより前記対象における酸化ストレスを低減することを含む、方法。
【請求項54】
前記SDGが(S,S)-SDGである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記SDGが(R,R)-SDGである、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記SDGが合成SDGである、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記SDGがSDG類似体である、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記投与ステップが経口的に行われる、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
前記投与ステップが静脈内で行われる、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記SDGが、約1ナノモル(nM)~約1モル(M)の濃度で投与される、請求項53に記載の方法。
【請求項61】
前記対象がヒト対象である、請求項53に記載の方法。
【請求項62】
前記敗血症が、全身性炎症反応症候群(SIRS)、感染、または多臓器不全症候群に関連する、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
前記敗血症が外傷または損傷に関連する、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
前記損傷が、創傷、火傷、出血、先天性代謝異常、ミトコンドリア症、低酸素症および虚血、煙吸入、一酸化炭素中毒、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記敗血症が医学的治療に関連する、請求項53に記載の方法。
【請求項66】
前記医学的治療が、侵襲性または非侵襲性の手術、針の配置、創傷管理、または挿管を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
敗血症性心筋症の治療を必要とする対象における敗血症性心筋症を治療するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)を前記対象に投与し、それにより前記対象における前記敗血症性心筋症を治療することを含む、方法。
【請求項68】
敗血症関連心機能不全の治療を必要とする対象における敗血症関連心機能不全を治療するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)を前記対象に投与し、それにより前記対象における前記敗血症関連心機能不全を治療することを含む、方法。
【請求項69】
心筋細胞におけるミトコンドリア機能の改善を必要とする対象の心筋細胞におけるミトコンドリア機能を改善するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)を前記対象に投与し、それにより前記対象の心筋細胞における前記ミトコンドリア機能を改善することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敗血症誘発性心筋症などの敗血症関連心機能障害を治療し、および敗血症に関連する機能障害から心臓を保護し、および敗血症を有する対象の心機能を改善するための、亜麻仁などの天然源から得られた、または合成的に生成されたセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)(合成SDGは本明細書ではLGM2605とも呼ばれる)、アマニ中の他の活性成分、セコイソラリシレシノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、およびエンテロラクトン(EL)、ならびに前述の立体異性体、前述の代謝産物、前述の分解物および前述の類似体の、使用に関する。
【背景技術】
【0002】
敗血症は、感染に対する免疫反応および炎症反応の発現であり、最終的には多臓器不全を引き起こすことがある。毎年2000万~3000万人が敗血症になり、800万人以上が亡くなっている。敗血症の患者は、心臓発作や脳卒中を患った患者の5倍の確率で死亡する。敗血症は、世界中の集中治療室における最も一般的な死因でもある。敗血症は、新生児から高齢者、そして重篤な病気までのすべての年齢に影響を与え、治療が効果的であるには診断が遅すぎることが多い。多くの臓器系で機能異常を引き起こす敗血症の基本的な病態生理学的欠陥は、とらえどころのないままである。心筋機能障害は、敗血症性心筋症または敗血症誘発性心筋症とも呼ばれる、重症敗血症のよく説明されている合併症である。敗血症誘発性心筋症では、右心室と左心室の両方が拡張することができ、収縮機能が低下し、心室コンプライアンスが低下する(Kumar et al.(2000)Crit Care Clin.16:251-287)。さらに、心臓指数が正常または上昇しているにもかかわらず、一部の敗血症患者では駆出率の重度の低下が示されている(Parker et al.(1984)Ann Int Med 100:483-490)。
【0003】
敗血症の心筋機能障害は多くの調査の焦点だったが、その病因は不明のままである。敗血症誘発性心筋症の考えられる根本的な原因には、とりわけ、炎症の増加、酸化ストレス、心筋細胞内のATP産生の障害、およびおそらく心臓のアドレナリン作動性シグナル伝達の障害が含まれる。敗血症と死亡率の間の重要な関連を考えると、敗血症の治療と解決のための改善された方法論の必要性が明らかに存在する。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様において、本明細書では、それを必要とする対象における敗血症誘発性心筋症を治療または予防するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、または組み合わせを対象に投与することを含み、それにより対象における敗血症誘発性心筋症を治療する方法が提供される。
【0005】
別の態様では、本明細書では、敗血症を有する対象の心機能を維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与し、それにより対象における心臓を維持することを含む方法が提供される。
【0006】
さらなる態様では、本明細書では、敗血症を有する対象における心収縮性および/または心筋細胞ミトコンドリア機能を改善するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与し、それにより対象における心収縮性を改善することを含む方法が提供される。
【0007】
さらなる態様において、本明細書では、敗血症を有する対象の心筋細胞における酸化ストレスを低減するための方法であって、対象に有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与し、それにより対象における酸化ストレスを軽減する方法が提供される。
【0008】
さらなる態様において、本明細書では、それを必要とする対象における敗血症性心筋症を治療する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)を対象に投与し、それにより対象における敗血症性心筋症を治療することを含む方法が提供される。
【0009】
さらなる態様において、本明細書では、それを必要とする対象における敗血症関連心機能障害を治療する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)を対象に投与し、それにより対象における敗血症関連心機能障害を治療することを含む方法が提供される。
【0010】
さらなる態様において、本明細書では、それを必要とする対象の心筋細胞におけるミトコンドリア機能を改善する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)を対象に投与し、それにより対象における心筋細胞のミトコンドリア機能を改善することを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様をさらに実証するために含まれ、その発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つ以上を参照することによってよりよく理解できる。特許または出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。この特許または特許出願公開とカラー図面のコピーは、要求に応じて、必要な手数料を支払うことにより、官庁から提供される。
【0012】
図1】敗血症による心機能障害の可能性のあるメカニズムの概要を図で示す。
図2】SDGは敗血症性心機能障害を予防する。(A)盲腸結紮穿刺(CLP)の2時間前、またはCLPまたは偽手術の6時間後のいずれかにSDGで処置されたマウスのMモード心エコー図。(B)異なる治療を受けているマウスの駆出率(EF、左)と短縮率(FS、右)を示すグラフ。
図3】SDGはインビボでアデニル酸シクラーゼ(AC)の発現を増加させる。(A)CLPまたはSDG処理あり/なしの偽手術を受けた後のマウスにおけるAC V/VI発現を示すウエスタンブロット。(B)AC/GAPDH比として表された、(A)のウエスタンブロットのデンシトメトリー分析を示すグラフ。
図4】SDGは、刺激されていない状態で、12時間でAC16細胞のcAMP活性を増加させる。グラフは、刺激なしで、またはフォルスコリンまたはイソプロテネロールの存在下で、SDG、リポサッカライド(LPS)、またはその両方で処理されたAC16細胞のcAMPレベルを示す。
図5】SDGは、AC16細胞の12時間でイソプロテレノール刺激プロテインキナーゼA(PKA)の活性化を増強するが、疾患状態では増強しない。(A)SDG、リポサッカライド(LPS)、またはその両方で刺激せずに、またはイソプロテネロールの存在下で処理したAC16細胞のPKA活性レベルを示すグラフ。(B)様々な条件下でのイソプロテネロールの非存在下または存在下でのAC16細胞におけるPKA活性レベルのペアワイズ比較を示すグラフ。
図6】SDGは、AC16細胞におけるミトコンドリアのスーパーオキシド生成のLPSを介した増加を抑制する。(A)未処理(対照)、またはLPS処理のみまたはSDGによる12時間後のAC16細胞のミトソックスレッド染色を示す蛍光顕微鏡写真。(B)(A)に示すデータのグラフ表示。
図7】SDGは、LPSを介したAC16細胞のミトコンドリア数の減少を防ぐ。(A)未処理(対照)、またはLPS処理のみまたはSDGによる12時間後のAC16細胞の染色を示す蛍光顕微鏡写真。(B)(A)に示すデータのグラフ表示。
図8】SDG治療は、融合および核分裂マーカーのmRNAレベルの敗血症誘発性変化を回復させる。(A)未処理のマウス(対照)と、SDG処理の有無にかかわらずLPSで処理されたマウスの融合および分裂マーカーの変化の発現レベル。(B)発現レベルは、未処理のマウス(対照)と、CLP処理の6時間後にSDG処理の有無にかかわらずCLPを受けたマウスの融合および分裂マーカーの変化を折りたたむ。
図9】LPS刺激AC16細胞のSDG処理は、MCUおよびMICU1の発現を増加させる傾向がある。(A)未処理マウス(対照)と、LPSでSDG処理の有無にかかわらず処理されたマウスにおけるミトコンドリアカルシウムユニポーター(MCU)とミトコンドリアカルシウム取り込み1(MICU1)の発現レベル。(B)未処理のマウスとLPSで処理したマウス(SDG処理あり/なし)でのMCU発現を示すウエスタンブロット。(C)(B)のウエスタンブロットのデンシトメトリー分析を示すグラフであり、MCU発現の倍率変化として表わされる(D)未処理のマウスと、SDG処理の有無にかかわらずLPSで処理されたマウスにおけるMICU1発現を示すウエスタンブロット。(E)MICU1発現の倍率変化として表わされた、(D)のウエスタンブロットのデンシトメトリー分析を示すグラフ。
図10】敗血症マウスのSDG治療は、心臓組織のMCUのタンパク質レベルを増加させる。(A)未処理のマウス(対照)およびSDG処理の有無にかかわらず、CLPを受けたマウスでのMCU発現を示すウエスタンブロット。(B)(A)のウエスタンブロットのデンシトメトリー分析を示すグラフであり、MCU発現の倍率変化として表わされる。(C)未処理のマウスとCLPを受けたマウス(SDG処理あり/なし)でのMICU1発現を示すウエスタンブロット。(D)MICU1発現の倍数変化として表された、(C)のウエスタンブロットのデンシトメトリー分析を示すグラフ。
図11】SDGは敗血症マウスの心筋細胞の酸素消費率を増加させる。(A)未処理のマウス(対照)と、SDG処理のある場合とない場合のCLPを受けたマウスのタツノオトシゴ分析プロット。(B)異なる条件下での様々なミトコンドリア呼吸パラメータの比較を表すグラフ。
図12】盲腸結紮・穿刺モデル(CLP)を用いた敗血症性心機能の確立(A)CLP手術後の代表的なMモード心エコー図。(B)駆出率(EF)および短縮率(FS)のグラフ、n=5匹のマウス、一方向ANOVA分析はベースラインに対してp:<0.05。ベースラインに対して**p:<0.01。(C)偽手術またはCLP手術の12時間後のマウスの体温。n=3~4匹のマウス。(D)偽手術およびCLP手術の12時間後のマウスのDP/dt最大値のグラフ。n=3匹のマウス。(E)偽手術およびCLP手術の12時間後のマウスの心室組織における炎症性サイトカイン遺伝子発現、1群あたりn=4~5匹のマウス。t検定による偽処置に対してp<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図13】LGM2605は、CLP手術後のC57BL/6マウスの炎症性サイトカインを減少させることなく、敗血症性心機能障害を予防する。(A-Β)代表的なMモード心エコー図(Α)、駆出率(EF)、およびC57BL/6マウスの短縮率(FS)(CLPの6時間後にLGM2605で治療し、手術後12時間モニターした)。偽処置:n=9、偽処置+SDG6時間:n=4、CLP:n=12、CLP+SDG6時間:n=12、ボンフェローニ事後検定(C)を用いたANOVAによって偽処置に対して**P<0.01、CLPに対して###P<0.001、偽処置+LGM2605に対して$P<0.05。術後12時間のマウスの心室組織からリン酸化および総IkBαのイムノブロットおよびデンシトメトリー分析。(D)心臓mRNA発現および(E)術後12時間のサイトカインの血漿レベル、1群あたりn=4~5匹のマウス。ボンフェローニ事後検定を用いるANOVAによる、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
図14】LGM2605を介した心機能の改善は、β-ARシグナル伝達の変化とは関連していない。(A~B)12時間の時点での、偽手術、CLPおよびCLPとLGM2605の併用治療(CLPの6時間後)を受けたマウスにおけるイソプロテレノールの用量増加に対する心臓弛緩の指標としてのLVdP/dtmaxおよび心筋弛緩の指標としてのLVdP/dtmin。1群あたりn=3マウス、ボンフェローニ検定後を用いるANOVAによって、対応する時点での偽処置に対してP<0.01、***P<0.001、べースラインに対して#P<0.05、べースラインに対して##P<0.01、べースラインに対して###P<0.001、0.1ngイソプロテレノールに対して+P<0.05および++P<0.01、0.5ngイソプロテレノールに対して@P<0.05、(C)放射性リガンド結合アッセイを使用したβアドレナリン受容体の密度、1群あたりn=4~5匹のマウス。ボンフェローニ事後検定を用いるANOVAによる***P<0.001。
図15】LGM2605は、脂肪酸およびグルコース代謝関連の遺伝子発現プログラムを変更することなく、ミトコンドリアの酸化ストレスを緩和する。(A)手術後12時間の心室組織におけるグルコース代謝関連遺伝子の発現、1群あたりn=4匹のマウス。(B)手術後12時間の血漿グルコースレベル、1群あたりn=4匹のマウス。(C)手術後12時間の心室組織における脂質代謝関連遺伝子の発現、1群あたりn=4~5匹のマウス。(D)手術後12時間の血漿トリグリセリド含有量、1群あたりn=4匹のマウス。(E)LPSおよびLPS+LGM2605で12時間刺激されたAC16細胞における代表的な蛍光顕微鏡画像とMitosox Red染色の定量化、n=250。(F)代表的な共焦点顕微鏡画像と手術後12時間のマウスの心室組織におけるDHE染色強度の定量化、1群あたりn=3匹のマウス。(G)手術後12時間の心室組織における抗酸化剤関連遺伝子の発現、1群あたりn=4~5匹のマウス。ボンフェローニ事後検定を用いるANOVAによって、対照/偽処置に対してP<0.05、**P<0.01、***P<0.001、LPS/CLPに対して###p<0.001。
図16】LGM2605は、ミトコンドリア存在量を増加させる。(A)代表的な蛍光画像、および(B)LPS、LPS+LGM2605または車両で12時間処理されたAC16細胞におけるミトトラッカー信号の定量化、1群あたりn=250細胞。(C)代表的な蛍光画像、および(D)術後12時間のマウスから分離された成体心筋細胞からのMitotracker Redによるミトコンドリア検出の定量化、n=150細胞。(E)手術12時間後のマウスの心室組織からのミトコンドリア生合成関連遺伝子発現のグラフ。1群あたりn=4~5匹のマウス。(F)手術の12時間後のマウスの心室組織における融合および分裂遺伝子発現関連マーカー、1群あたりn=4匹のマウス。(G~H)代表的なLC3BとLC3BII/LC3BI比のデンシトメトリーによる定量、1群あたりn=8~9匹のマウス。(I)オートファジー関連遺伝子のrtPCR分析。ANOVA+ボンフェローニの事後検定によって、偽処置/生理食塩水に対してp<0.05、**p<0.01、***p<0.001、LPS/CLPに対して#p<0.05、###p<0.001。
図17】LGM2605は、敗血症マウスから分離された初代心筋細胞におけるミトコンドリアのカルシウム取り込みを増加させる。(A~C)手術後12時間でマウスから単離された透過性の成人心筋細胞におけるカルシウムの1回のボーラス投与後のミトコンドリアのカルシウム取り込み、1群あたりn=3匹のマウス。#P<0.05対ボンフェローニ事後HOC検定を用いるANOVAによるCLP。(D)偽手術、CLPおよびCLP手術の12時間後のCLPの6時間後のLGM2605による処置後の、マウスの心室組織からのMCU、MICU1遺伝子発現、n=4~5匹のマウス。(E)手術12時間後の心室組織からのMCU、MICU1ウエスタンブロットの免疫ブロットおよびデンシトメトリー分析(相対単位)、n=8~9匹のマウス。
図18】LGM2605は、敗血症マウスから分離された心筋細胞の酸素消費を増加させる。(A~G)Seahorse XF Mito Stressキットを使用して測定された、偽手術、CLP手術、CLPの12時間後のCLPの6時間後のLGM2605による処置後の、孤立した成体心筋細胞の酸素消費率。基礎呼吸(B)、ATP生成の呼吸(C)、最大呼吸(D)、および予備能力(E)のグラフ。ボンフェローニ事後検定を用いるANOVAによって、偽処置に対して**P<0.01、***P<0.001、CLPに対して##P<0.01。Seahorse実験で使用したマウスと分析したウェル:3匹の偽処置マウス(合計34ウェル)、4匹のCLPマウス(合計30ウェル)、4匹のCLP+SDGマウス(合計38ウェル)。
図19】LGM2605は、LPS刺激AC16心筋細胞のミトコンドリア膜電位を保持する。(A)代表的な画像と、(B)脱共役剤2,4-DNP(50μM)を含むまたは含まないLPSおよびLGM2605で12時間処理されたAC16細胞からの蛍光強度の定量化。ANOVA+ボンフェローニ事後hoc検定によって、ビヒクルに対してp<0.05、***P<0.001、LPSに対して##P<0.01、LGM2605に対して$$$P<0.001。(C)LGM2605が酸化ストレスを軽減し、ミトコンドリアの呼吸を増加させ、心臓の収縮機能を回復させる、提案されたメカニズムの図式モデル。図はServier Medical Artを使用して作成した。
図20】(A-Β)CLPの2時間前にLGM2605で処理され、手術後12時間モニターされたC57BL/6マウスの代表的なMモード心エコー図、駆出率(EF)および短縮率(FS)。模造品:n=9、CLP:n=12、CLP+2時間前SDG:n=4。ボンフェローニ事後検定を用いるANOVAによって、偽処置に対して***p<0.001、CLPに対して##p<0.01。(C)CLP手術の12時間後の雌性C57BL/6マウスの心エコー検査分析。
図21】(A)偽手術の6時間後のマウスの心臓IL-1β、IL-6、およびTNFαmRNAレベル、手術の2時間前にCLPまたはCLP+LGM2605を投与、1群あたりn=3~4匹のマウス。ボンフェローニ事後検定を用いるANOVAによる、偽処置6時間に対してP<0.05、**P<0.01。(B)6時間の時点でのマウスからの血漿グルコースレベル、1群あたりn=4マウス。ボンフェローニ事後検定を用いるANOVAによる偽処置に対しうて***P<0.001。
図22】(A)脱共役剤2,4-DNPの濃度を上げて刺激したAC16のTMRM染色。(B)LGM2605およびDNP 2,4-DNP刺激AC16細胞の蛍光強度の定量。ボンフェローニ事後検定を用いるANOVAによって、0μM DNPに対して***p<0.001、10μM DNPに対して###p<0.001、50に対して$$P<0.001。
図23A-C】NOX2阻害によるROS生成の減少が敗血症の心臓機能を改善することを示している。
図24】LGM2605が化学的に合成された抗酸化剤セコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)であることを示している。
図25】動作モデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、亜麻仁などの天然源から得られる、または合成的に生成される(合成SDGは、本明細書ではLGM2605とも呼ばれる)セコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、亜麻仁の他の活性成分、ならびに敗血症に関連する心機能障害または敗血症誘発性心筋症を治療および予防するための関連化合物の使用に関する。驚くべきことにそして予期せぬことに、本発明者らは、SDGを使用して、敗血症を有する対象の心機能を回復および維持することができることを見出した。
【0014】
したがって、一実施形態において、本明細書では、それを必要とする対象における敗血症誘発性心筋症を治療するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態において、本明細書では、それを必要とする対象における敗血症誘発性心筋症を予防する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0015】
さらなる実施形態では、本明細書では、敗血症を有する対象の心機能を維持および/または回復するための方法がであって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「敗血症」は、感染に関連する全身性炎症反応を指す。「全身性炎症反応」は、有害な刺激に対する身体の圧倒的な反応である。この反応の特徴には、成人の人体における以下の非特異的な変化の1つ以上が含まれる場合がある。
(a)速い心拍数(頻脈、心拍数>90ビート/分);
(b)低血圧(収縮期<90mmHgまたはMAP<65mmHg);
(c)低いまたは高い体温(<36または>38℃);
(d)高い呼吸数(1分あたり>20呼吸);そして
(e)白血球数が少ないまたは多い(<40または120億細胞/リットル)。
【0017】
敗血症の原因および臨床症状は、当技術分野で周知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられるUS2016/0166598に詳細に記載されている。
【0018】
重度の敗血症は、低血圧、全身抵抗の低下、収縮剤に対する血管反応性の変化、および/または心筋収縮性の低下などの深刻な心血管機能障害に関連している。全身感染は心機能を低下させ、この心筋低下の重症度は予後不良と相関する。心エコー検査の研究では、駆出率の低下によって測定されるように、敗血症性ショックが長引く患者の40%~50%が心筋抑制を発症することが示唆されている。
【0019】
したがって、1つの実施形態では、本明細書では、敗血症を有する対象の心収縮性を改善する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体を対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態において、本明細書では、敗血症を有する対象における心収縮性を維持する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体を対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態において、本明細書では、敗血症を有する対象において心収縮性を回復させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0020】
別の実施形態において、本明細書では、敗血症を有する対象の心筋鬱病を治療する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体を対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態において、本明細書では、敗血症を有する対象における心筋鬱病を予防する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0021】
心収縮性の敗血症関連障害の機能的症状には、両心室の駆出率(EF%)の減少、短縮率(FS%)の減少、拡張末期容積(EDV)の増加、収縮末期容積(ESV)の増加、および低ストローク量(SV)が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
したがって、1つの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、敗血症を有する対象の駆出率(EF%)を増加させる。別の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、敗血症を有する対象において短縮率(FS%)を増加させる。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、敗血症を有する対象の拡張末期容積(EDV)を減少させる。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、敗血症を有する対象の収縮末期容積(ESV)を減少させる。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、敗血症を有する対象におけるストローク量(SV)を増加させる。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、当技術分野で既知の心収縮性の敗血症関連障害の機能症状を逆転させる。
【0023】
特定の理論に束縛されることを望まないが、敗血症に関連する心収縮性の障害は、敗血症によって引き起こされる心臓の構造変化によって引き起こされる。構造変化には、心筋浮腫、免疫細胞(特にマクロファージおよび好中球)による心筋浸潤、心内膜下出血、間質性浮腫および細胞内浮腫、内皮細胞浮腫、微小循環フィブリン沈着、心筋細胞における限局性筋原線維の細胞質内脂質蓄積、ならびに限局性筋原線維溶解および間質性線維症を含むが、これらに限定されない。これらの構造変化は、心機能の欠陥、具体的には、深刻な心筋抑制、グローバル左心室(LV)運動低下、LV拡張の低下、異常な心室弛緩、および心尖部運動低下につながる。
【0024】
敗血症中の心筋うつ病には、全身的(血行力学的)因子と遺伝的、分子的、代謝的および構造的変化の複雑な組み合わせが含まれる。心筋うつ病の症状には、特に、左心室駆出率(LVEF)の減少、左心室駆出率(LVEF)の減少、心筋細胞の壊死とアポトーシスが含まれる。
【0025】
したがって、本明細書に記載の組成物によって治療される心臓の敗血症誘発性の構造変化は、1つの実施形態では、心筋浮腫である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される心臓の敗血症誘発性の構造変化は、免疫細胞による心筋浸潤である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される心臓の敗血症誘発性の構造変化は、心内膜下出血である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される心臓の敗血症誘発性の構造変化は、間質性浮腫および細胞内浮腫である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される心臓の敗血症誘発性の構造変化は、内皮細胞浮腫である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される心臓の敗血症誘発性の構造変化は、微小循環フィブリン沈着である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される心臓の敗血症誘発性の構造変化は、心筋細胞における細胞質内脂質蓄積である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される心臓の敗血症誘発性の構造変化は、限局性筋原線維溶解である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される心臓の敗血症誘発性の構造変化は、心筋細胞壊死である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される心臓の敗血症誘発性の構造変化は、筋原線維間質性線維症である。
【0026】
1つの実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される敗血症誘発性心機能欠損は、心筋うつ病である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される敗血症誘発性心機能欠損は、全体的左心室(LV)運動低下症である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される敗血症誘発性心機能欠損は、LV拡張の低下である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される敗血症誘発性心機能欠損は、異常な心室弛緩である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される敗血症誘発性心機能欠損は、中隔尖運動低下症である。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物によって治療される敗血症誘発性心機能欠損は、左心室駆出率(LVEF)の減少である。
【0027】
理論に拘束されるものではないが、誘発された心機能障害の根底にある分子メカニズムには、酸化ストレス、炎症の増加(TNF-α、IL-1β、およびIL-6によって媒介される)、ならびに代謝障害および心筋細胞におけるATP産生の減少が含まれる(図1)。特に、酸化ストレスは、主にミトコンドリアの呼吸を介して生成される活性酸素種(ROS)によって誘発される。さらに、ミトコンドリア自体が酸化的損傷の主な標的であると考えられ、具体的には、ミトコンドリアの透過性が高まり、スーパーオキシドなどのミトコンドリアのROSがさらに放出されて、さらなる酸化的損傷が引き起こされる。
【0028】
したがって、1つの実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における酸化ストレスを低減する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0029】
別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるミトコンドリア活性酸素種の生成を抑制する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体を対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるミトコンドリアのスーパーオキシド生成を抑制する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体を対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるミトコンドリアの過酸化水素生成を抑制する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0030】
特定の理論に拘束されるものではないが、敗血症はミトコンドリアレベルで欠陥を引き起こし、細胞は酸素をエネルギー生産に使用できない。心筋細胞は、十分な酸素が利用可能であっても、細胞が酸素を好気性酸化的リン酸化に使用できないため、敗血症の間に「機能的に低酸素」になる可能性がある。敗血症中にエネルギー生産のために分子酸素を使用できないことは、「細胞変性低酸素症」と呼ばれている。細胞変性低酸素症は心筋ATPの減少と関連している。ミトコンドリアが心筋の体積の約30%を占めることを考えると、正常なミトコンドリア機能を維持することは、心筋細胞の敗血症関連の酸化ストレスを軽減するために重要な場合がある。
【0031】
さらに、正常なミトコンドリア機能は、酸化的リン酸化の適切な機能だけでなく、細胞のミトコンドリアの質量とコピー数の維持または増加、損傷したミトコンドリアと不要なミトコンドリア分子の効果的な除去など、ミトコンドリアの生合成の維持にも依存する。これは、ミトコンドリアの分裂と融合のプロセスを通じて達成され、それによって、ミトコンドリアのネットワークが絶えず改造される。核分裂と核融合はストレス状態で増加し、損傷したミトコンドリアの除去と修復プロセスの強化に重要な役割を果たす。敗血症は、ミトコンドリアの分裂/融合のバランスを乱し、最終的には心筋細胞のミトコンドリアの質量と数を全体的に減少させ、最終的には細胞変性低酸素症を引き起こす。したがって、敗血症条件下では、多数の核融合および核分裂マーカーの発現が抑制される。したがって、ミトコンドリアの融合と核分裂調節因子の適切な発現を復元すると、心筋細胞のミトコンドリアの質量と数の維持または復元、損傷したミトコンドリアの効率的な除去など、ミトコンドリアの生合成が復元される。
【0032】
したがって、1つの実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象におけるミトコンドリア生合成を刺激するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象においてミトコンドリア生合成を維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象におけるミトコンドリア生合成を回復するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0033】
別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心筋細胞ミトコンドリアの数を増加させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象において心筋細胞ミトコンドリアの数を維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心筋細胞ミトコンドリアの数の減少を防止するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心筋細胞ミトコンドリア数の敗血症媒介性の減少を逆転させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0034】
別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心筋細胞ミトコンドリアの融合および分裂を刺激するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象において心筋細胞ミトコンドリアの融合および分裂を維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心筋細胞ミトコンドリアの融合および分裂における敗血症媒介性の減少を逆転させるための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0035】
別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞においてミトコンドリアの融合/分裂バランスを維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む。別の実施形態において、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるミトコンドリア融合/分裂バランスを回復するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0036】
別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象におけるミトコンドリア融合および分裂関連遺伝子の発現を刺激するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象におけるミトコンドリア融合および分裂関連遺伝子の発現を維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象におけるミトコンドリア融合および分裂関連遺伝子の発現の敗血症媒介性の減少を逆転させるための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ミトコンドリア融合関連遺伝子」という用語は、ミトコンドリア融合の調節に関与する遺伝子、視神経萎縮1(OPA1)、ミトフシン1(MFN1)、ミトフシン2(MFN2)、またはその組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用する場合、「ミトコンドリア分裂関連遺伝子」という用語は、ミトコンドリア分裂の調節に関与する遺伝子を指し、ダイナミン関連タンパク質1(Drp1)、ミトコンドリア分裂1(FIS1)、ミトコンドリア分裂因子(MFF)、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0039】
理論に拘束されるものではないが、ミトコンドリアは、カルシウム(Ca2+)を特異的に取り込み、一時的に貯蔵することにより、細胞のカルシウムのホメオスタシスの調節に重要な役割を果たす。さらに、Ca2+はミトコンドリアのエフェクターを調節する重要な要素である。カルシウムは、主にミトコンドリアカルシウムユニポーター(MCU)複合体を介して、厳密に制御されたプロセスでミトコンドリアに入る。敗血症条件下では、主要なMCUサブユニット、ミトコンドリアカルシウムユニポーター(MCU)およびミトコンドリアカルシウム取り込み1(MICU1)の発現が低下し、これはミトコンドリアCa2+取り込みの調節不全を引き起こす。このことは、敗血症誘発性心筋症の根本的な原因の1つである心筋Ca2+ホメオスタシスの破壊につながる。したがって、MCUサブユニットの適切な発現を復元すると、心筋細胞のミトコンドリアのCa2+取り込みとCa2+ホメオスタシスが復元される可能性がある。
【0040】
したがって、1つの実施形態では、本明細書においては、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるCa2+ホメオスタシスを維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与すること含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書においては、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるCa2+ホメオスタシスを回復するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるCa2+ホメオスタシスの敗血症に関連する破壊を逆転させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0041】
別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象におけるミトコンドリアのCa2+取り込みを刺激するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象におけるミトコンドリアのCa2+取り込みを維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象におけるミトコンドリアのCa2+取り込みを回復するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるミトコンドリアのCa2+取り込みの敗血症に関連する調節不全を逆転させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0042】
別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象においてミトコンドリアのカルシウムユニポーター(MCU)サブユニットの発現を維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象におけるミトコンドリアのカルシウムユニポーター(MCU)サブユニットの発現を回復させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象におけるミトコンドリアカルシウムユニポーター(MCU)サブユニットの発現を刺激するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象におけるミトコンドリアのカルシウムユニポーター(MCU)サブユニットの敗血症媒介性発現の減少を逆転させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ミトコンドリアカルシウムユニポーター(MCU)サブユニット」は、MCU複合タンパク質成分をコードする遺伝子のいずれか、およびMCU活性を調節するタンパク質因子をコードする遺伝子、ならびにこれらの遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。これらの遺伝子には、ミトコンドリアカルシウムユニポーター、ミトコンドリアカルシウム取り込み1(MICU1)、ミトコンドリアカルシウム取り込み2(MICU2)、またはその他の機能または制御MCU複合コンポーネントが含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
1つの実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象において心筋細胞ミトコンドリア機能を刺激するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。さらに、別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心筋細胞ミトコンドリア機能を改善するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象において心筋細胞ミトコンドリア機能を維持するための方法であった、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象において心筋細胞ミトコンドリア機能を回復するための方法であった、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心筋細胞ミトコンドリア機能の敗血症媒介性の減少を逆転させるための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0045】
さらに、1つの実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心筋細胞の酸素消費を刺激する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心筋細胞の酸素消費率を増加させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心筋細胞酸素消費率を維持する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心筋細胞の酸素消費率を回復する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における、敗血症を介した心筋細胞の酸素消費率の減少を逆転させるための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0046】
1つの実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるミトコンドリアの基礎呼吸を増加させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるミトコンドリアの基礎呼吸を維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるミトコンドリアの基礎呼吸を回復するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における敗血症媒介性基礎ミトコンドリア呼吸の減少を逆転させるための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0047】
さらに、1つの実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における最大ミトコンドリア呼吸を増加させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における最大ミトコンドリア呼吸を維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における最大ミトコンドリア呼吸を回復するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における最大ミトコンドリア呼吸の敗血症媒介性の減少を逆転させるための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0048】
1つの実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるATP産生を刺激する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるATP産生を維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるATP産生を回復する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における、敗血症を介したATP産生の減少を逆転させるための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0049】
さらに、1つの実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における非ミトコンドリア酸素消費を増加させるための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における非ミトコンドリア酸素消費を維持する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるミトコンドリア以外の酸素消費を回復させるための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における非ミトコンドリア酸素消費の敗血症媒介性減少を逆転させるための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0050】
さらに、1つの実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるミトコンドリアの予備呼吸容量を増加させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるミトコンドリアの予備呼吸能力を維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるミトコンドリアの予備呼吸能力を回復する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における、敗血症を介した予備ミトコンドリア呼吸能の減少を逆転させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0051】
さらに、本明細書では、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるプロトン漏出を減少させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における低プロトン漏出を維持するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における低プロトン漏出を回復する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞におけるプロトン漏出の敗血症媒介性増加を逆転させるための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0052】
驚くべきことに、そして予期せぬことに、本出願の発明者らは、SDGを使用してcAMP活性を増加させ、心筋細胞におけるイソプロテレノール刺激ポリヌクレオチドキナーゼA(PKA)活性化を増強できることを見出した。特定の理論に拘束されるものでないが、cAMPおよびPKAは、心筋細胞の収縮を制御するβアドレナリン作動性シグナル伝達カスケードを媒介する。β-アドレナリン作動性シグナル伝達カスケードの崩壊は、心臓ブロック、低心拍出量(低灌流)、うっ血性心不全、心原性ショックを引き起こす可能性がある。cAMPレベルまたはPKA活性の増加は、β-アドレナリン作動性シグナル伝達を刺激し、心筋細胞の収縮性を増加させる。
【0053】
したがって、1つの実施形態では、本明細書において、それを必要とする対象においてβ-アドレナリン作動性シグナル伝達を刺激するための方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、それを必要とする対象においてβアドレナリン作動性シグナル伝達を維持する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、それを必要とする対象における心筋細胞cAMPレベルを増加させる方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、それを必要とする対象において心筋細胞のcAMPレベルを維持する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、それを必要とする対象における心筋細胞PKA活性を刺激するための方法であって、イソプロテレノールおよびセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、それを必要とする対象における心筋細胞PKA活性を維持するための方法であって、イソプロテレノールおよびセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0054】
別の実施形態では、本明細書において、それを必要とする対象における心筋細胞収縮性を改善する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、それを必要とする対象における心筋細胞の収縮性を改善するための方法であって、イソプロテレノールおよびセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0055】
別の実施形態では、本明細書において、対象の心臓ブロックを治療する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、対象の心臓ブロックを治療するための方法であって、イソプロテレノールおよびセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0056】
別の実施形態では、本明細書において、対象における低灌流を治療する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、対象の低灌流を治療するための方法であって、イソプロテレノールおよびセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0057】
別の実施形態では、本明細書において、対象のうっ血性心不全を治療する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、対象のうっ血性心不全を治療する方法であって、イソプロテレノールおよびセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0058】
別の実施形態では、本明細書において、対象における心原性ショックを治療する方法であって、有効量のセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはその組み合わせを対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、対象の心原性ショックを治療する方法であって、イソプロテレノールおよびセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、その類似体、その立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0059】
2,3-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシベンジル)ブタン-1,4-ジオール(セコイソラリシレシノールまたはSECO)は、亜麻仁に含まれる主要なリグナンである。天然の状態では、それはSDGの共役として植物に保存される。亜麻仁、その生物活性成分、およびその代謝産物は、当技術分野で知られており、米国特許公開第2010/0239696号、同2011/0300247号、および同2014/0308379、ならびに国際特許公開第2014/200964号に記載され、それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
SDGは、天然資源から分離するか、または化学合成することができる。天然資源からセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)を分離するための複雑な抽出、精製、および濃縮方法のため、好ましい実施形態ではSDGは化学的に合成される。
【0061】
SDG、その立体異性体および類似体を合成する技術は、Mishra OP、et al.Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 2013、(19):5325-5328および国際特許公開第2014/200964号に記載されており、これらは全体として参照により本明細書に組み入れられる。例えば、天然化合物のバニリンとグルコースを使用して、SDGの2つのエナンチオマー(それらの構造を以下に示す):SDG(S、S)とSDG(R、R)は首尾よく合成された(Mishra et al.、Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 2013、(19):5325)。
【化1】
【0062】
1つの実施形態では、本明細書に記載の方法で投与されるSDGはSDG(S,S)である。別の実施形態では、本明細書に記載の方法で投与されるSDGはSDG(R,R)である。
【0063】
SDGはヒトの腸で代謝されてエンテロジオール(ED)とエンテロラクトン(EL)になる。エンテロジオールおよびエンテロラクトンの合成類似体は知られている(例えば、Eklund et al.、Org.Lett.2003、5:491)。したがって、別の態様では、亜麻仁の他の生物活性成分、それらの代謝産物、それらの分解物または立体異性体も使用することができる。亜麻仁の他の生物活性成分の例には、例えば、セコイソラリシレシノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、それらの類似体、それらの異性体(立体異性体を含む)、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
本明細書で提供される方法で使用するための生物活性成分は、当該技術分野で知られているように、哺乳動物の容易に代謝可能な形態であるエンテロジオール(ED)またはエンテロラクトン(EL)に直接化学合成することもできる。
【0065】
したがって、1つの実施形態では、本明細書において、それを必要とする対象における敗血症誘発性心筋症を治療するための方法であって、有効量の少なくとも1つの生物活性成分を対象に投与することを含み、該生物活性成分はセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレシノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、それらの代謝産物、それらの分解物、それらの類似体、それらの立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む、方法が提供される。
【0066】
別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心機能を維持するための方法であって、有効量の少なくとも1つの生物活性成分を対象に投与することを含み、該生物活性成分はセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレシノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、それらの代謝産物、それらの分解物、それらの類似体、それらの立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む、方法が提供される。
【0067】
別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心収縮性を改善するための方法であって、有効量の少なくとも1つの生物活性成分を対象に投与することを含み、該生物活性成分はセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレシノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、それらの代謝産物、それらの分解物、それらの類似体、それらの立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む、方法が提供される。
【0068】
別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における酸化ストレスを低減する方法であって、有効量の少なくとも1つの生物活性成分を対象に投与することを含み、該生物活性成分はセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレシノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、それらの代謝産物、それらの分解物、それらの類似体、それらの立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む、方法が提供される。
【0069】
別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象において心筋細胞ミトコンドリア機能を刺激するための方法であって、有効量の少なくとも1つの生物活性成分を対象に投与することを含み、該生物活性成分はセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレシノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、それらの代謝産物、それらの分解物、それらの類似体、それらの立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む、方法が提供される。
【0070】
別の実施形態では、本明細書において、それを必要とする対象においてβ-アドレナリン作動性シグナル伝達を刺激する方法であって、有効量の少なくとも1つの生物活性成分を対象に投与することを含み、該生物活性成分はセコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)、セコイソラリシレシノール(SECO)、エンテロジオール(ED)、エンテロラクトン(EL)、それらの代謝産物、それらの分解物、それらの類似体、それらの立体異性体、またはそれらの組み合わせを含む、方法が提供される。
【0071】
別の態様では、亜麻仁抽出物を使用することができる。SDGを抽出および精製するための技法は、当技術分野で知られており、米国特許第5,705,618号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
したがって、1つの実施形態では、本明細書において、それを必要とする対象における敗血症誘発性心筋症を治療する方法であって、有効量の亜麻仁抽出物を対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象において心機能を維持するための方法であって、有効量の亜麻仁抽出物を対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心収縮性を改善するための方法であって、有効量の亜麻仁抽出物を対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象の心筋細胞における酸化ストレスを低減するための方法であって、有効量の亜麻仁抽出物を対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、敗血症を有する対象における心筋細胞ミトコンドリア機能を改善するための方法であって、有効量の亜麻仁抽出物を対象に投与することを含む方法が提供される。別の実施形態では、本明細書において、それを必要とする対象においてβアドレナリン作動性シグナル伝達を刺激する方法であって、有効量の亜麻仁抽出物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0073】
「代謝産物」は、代謝または代謝過程によって産生される物質である。例えば、SDGの代謝物はELまたはEDである。「分解物」とは、SDGなどの分子がより小さな分子に分解された産物である。代謝物または分解物が天然の代謝物または分解物の化学的に合成された同等物でよいことは、当業者によって理解されるであろう。
【0074】
「類似体」は、その構造が別の化合物の構造に関連している化合物である。類似体は合成類似体でよい。
【0075】
別の態様では、本発明は医薬組成物に関する。「医薬組成物」とは、有効量の有効成分、例えば、(S、S)-SDG、(R、R)-SDG、メソ-SDG、SDG、SECO、EL、EDおよびそれらの類似体、ならびに医薬的に許容される担体または希釈剤を指す。
【0076】
本明細書に記載される組成物は、「治療有効量」を含んでよい。「治療的有効量」とは、所望の治療結果を達成するために必要な投与量および期間において有効な量を指す。治療的有効量は、個体の病状、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する組成物の能力などの要因によって変動し得る。治療上有効な量は、分子の毒性または有害な効果が治療上有益な効果によって上回る量でもある。
【0077】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った過度の毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題や合併症がない、ヒトおよび動物の組織との接触での使用に適した化合物、材料、組成物、担体、および/または剤形を指す。
【0078】
「薬学的に許容される賦形剤」は、一般的に安全で非毒性であり、生物学的にもその他の点でも望ましくない医薬組成物を調製するのに有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用ならびにヒトの薬学的使用に許容される賦形剤を含む。本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」は、1つの賦形剤および2つ以上のそのような賦形剤の両方を含む。
【0079】
医薬組成物は、経口、非経口、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、頭蓋内、膣内、腫瘍内、または頬側などの当業者に既知の任意の適切な方法によって対象に投与することができる。放出制御はまた、適切なポリマーに活性成分を埋め込むことによって使用することができ、次いで、皮下、腫瘍内、頬側、皮膚上のパッチとして、または膣に挿入することができる。有効成分で医療機器をコーティングすることも、カバーされる。
【0080】
ある実施形態では、医薬組成物は経口投与され、したがって、経口投与に適した形態、すなわち、固体または液体製剤として製剤化される。適切な固体経口製剤には、錠剤、カプセル、丸剤、顆粒、ペレットなどが含まれる。適切な液体経口製剤には、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液、油などが含まれる。ある実施形態では、活性成分はカプセルに製剤化される。この実施形態によれば、本明細書に記載の組成物は、活性化合物および不活性担体または希釈剤に加えて、他の賦形剤に加えて乾燥剤、ならびにゼラチンカプセルを含む。
【0081】
ある実施形態では、医薬組成物は、液体製剤の静脈内、動脈内、または筋肉内注射によって投与される。ある実施形態では、医薬組成物は、経口投与用に処方された液体製剤である。ある実施形態では、医薬組成物は、膣内投与用に処方された液体製剤である。適切な液体製剤には、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液、油などが含まれる。ある実施形態では、医薬組成物は静脈内投与され、したがって静脈内投与に適した形態で製剤化される。別の実施形態では、医薬組成物は動脈内投与され、したがって、動脈内投与に適した形態で製剤化される。ある実施形態では、医薬組成物は筋肉内に投与され、したがって筋肉内投与に適した形態で製剤化される。ある実施形態では、医薬組成物は、頬側に投与され、したがって、頬側投与に適した形態で処方される。
【0082】
ある実施形態では、医薬組成物は体表面に局所的に投与され、したがって局所投与に適した形態で処方される。適切な局所製剤には、ゲル、軟膏、クリーム、ローション、ドロップ、放出制御ポリマーなどが含まれる。局所投与のために、亜麻仁、その生理活性成分、またはその代謝産物は、医薬担体の有無にかかわらず、生理学的に許容される希釈剤中の溶液、懸濁液、または乳濁液として調製および適用される。
【0083】
ある実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、制御放出組成物、すなわち、亜麻仁、その生物活性成分、またはその代謝産物が投与後のある期間にわたって放出される組成物である。制御放出または持続放出組成物は、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、オイル)中の製剤を含む。他の実施形態では、組成物は、即時放出組成物、すなわち、亜麻仁、その生物活性成分、またはその代謝産物のすべてが投与直後に放出される組成物である。
【0084】
ある実施形態では、本明細書で提供される方法で使用するための組成物は、1日1回治療用量で投与される。ある実施形態では、組成物は、2日に1回、1週間に2回、1週間に1回、または2週間に1回投与される。
【0085】
1つの実施形態では、(S,S)-SDG、(R,R)-SDG、(S,R)-SDG(R,S)-SDG、メソ-SDG、SECO、EL、EDまたはそれらの類似体を0.1ng/kg~500mg/kgの用量で投与することができる。別の実施形態では、(S,S)-SDG、(R,R)-SDG、(S,R)-SDG(R,S)-SDG、メソ-SDG、SECO、EL、EDまたはそれらの類似体を約1ナノモル(nM)~約1モル(M)の濃度で投与することができる。別の実施形態では、(S,S)-SDG、(R,R)-SDG、(S,R)-SDG(R,S)-SDG、メソ-SDG、SECO、EL、EDまたはそれらの類似体を約25μM~約250μMの濃度で投与することができる。
【0086】
(S,S)-SDG、(R,R)-SDG、(S,R)-SDG(R,S)-SDG、メソ-SDG、SDG、SECO、EL、ED、またはそれらの類似体による治療レジメンは、単回投与から数日まで、数か月まで、数年まで、または無期限に及ぶ。1つの実施形態では、(S,S)-SDG、(R,R)-SDG、(S,R)-SDG(R,S)-SDG、メソ-SDG、SDG、SECO、EL、ED、またはその類似体は、1週間にわたる毎日の投与を含む。別の実施形態では、(S,S)-SDG、(R,R)-SDG、(S,R)-SDG(R,S)-SDG、メソ-SDG、SDG、SECO、EL、ED、またはその類似体は、2週間にわたる毎日の投与を含む。別の実施形態では、(S,S)-SDG、(R,R)-SDG、(S,R)-SDG(R,S)-SDG、メソ-SDG、SDG、SECO、EL、ED、またはその類似体は、3週間にわたる毎日の投与を含む。別の実施形態では、(S,S)-SDG、(R,R)-SDG、(S,R)-SDG(R,S)-SDG、メソ-SDG、SDG、SECO、EL、ED、またはその類似体は、1ヶ月にわたる毎日の投与を含む。別の実施形態では、(S,S)-SDG、(R,R)-SDG、(S,R)-SDG(R,S)-SDG、メソ-SDG、SDG、SECO、EL、ED、またはその類似体は、2ヶ月にわたる毎日の投与を含む。別の実施形態では、(S,S)-SDG、(R,R)-SDG、(S,R)-SDG(R,S)-SDG、メソ-SDG、SDG、SECO、EL、ED、またはその類似体は、3ヶ月にわたる毎日の投与を含む。別の実施形態では、(S,S)-SDG、(R,R)-SDG、(S,R)-SDG(R,S)-SDG、メソ-SDG、SDG、SECO、EL、ED、またはその類似体は、6ヶ月にわたる毎日の投与を含む。
【0087】
本明細書で使用される「治療する」は、治療的処置または予防的または防止的手段のいずれかを指し、目的は、本明細書に記載の目的の病的状態または障害、またはその両方を防止または軽減することである。したがって、本明細書で提供される方法で使用するための組成物は、病的状態または障害を発症するリスクがある対象に、前記病的状態または障害が発症する前に投与することができる。場合によっては、本明細書で提供される方法で使用するための組成物は、病的状態または障害が発症した後に対象に投与されてもよい。したがって、本明細書に記載されている病態の治療は、対象の病態の防止、阻害、逆転、または抑制を指す場合がある。
【0088】
さらに、本明細書で使用される場合、「治療する」および「治療」という用語は、目的が疾患または病態に関連する望ましくない生理学的変化を防止または減速(減少)することである治療的処置および予防的または防止的手段を指す。有益なまたは望ましい臨床結果には、検出可能であろうと検出不可能であろうと、症状の緩和、疾患または病態の程度の低下、疾患または病態の安定化(すなわち、疾患または病態が悪化しない場合)、遅延または遅延、疾患または病態の進行、疾患または病態の改善または緩和、および疾患または病態の寛解(部分的であろうと全体的であろうと)が含まれるが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けなければ予想される生存と比較して生存を延長することを意味し得る。治療を必要とする人には、すでに病的状態または障害を患っている人、または病的状態または障害を発症するリスクがある人が含まれる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「維持する」という用語は、疾患または病理の欠如に対応する状態または病態を維持または維持することを意味し、その状態または病態からの低下、失効または停止の防止を包含する。
【0090】
本明細書で使用する場合、「予防する」という用語は、疾患もしくは障害の症状または結果自体が現れる前に、あるいは疾患もしくは障害を引き起こすかもしれない病態に患者が曝される前に、疾患、障害、または疾患もしくは障害の症状を停止、妨害または抑制することを指すことがある。
【0091】
「対象」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒト、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ、鳥など)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、家禽など)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、鳥など)を含む。ヒトに加えて、対象には、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、バッファロー、ダチョウ、モルモット、ラット、マウス、鳥(例えば、インコ)および他の野生の家畜または商業的に有用な動物(例:鶏肉、ガチョウ、七面鳥、魚)が含まれてよい。「対象」という用語は、すべての点で正常な個人を除外するものではない。「対象」という用語は、病態またはその続発症のための治療を必要とするか、またはその影響を受けやすいヒトを含むが、これらに限定されない。
【0092】
したがって、1つの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、対象が敗血症誘発性心筋症またはβ-アドレナリン作動性シグナル伝達の破壊に関連する心疾患または障害を発症する前に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、対象の発症する敗血症誘発性心筋症、またはβ-アドレナリン作動性シグナル伝達の破壊に関連する心疾患または障害の後に投与される。
【0093】
「前の投与」とは、対象が敗血症誘発性心筋症を発症する前に本発明の組成物を、例えば、医療処置によって、例えば、4ヶ月前、3ヶ月前、2ヶ月前、1ヶ月前、4週間前、3週間前、2週間前、1週間前、6日前、5日前、4日前、3日前、2日前、1日前、24時間未満前(例えば、23、20、19、18、17、16、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2時間、または1時間未満)に投与することを意味する。
【0094】
敗血症および敗血症誘発性心筋症を発症することがある対象の例には、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全症候群(MODS)を示す患者、感染症に曝されている患者、腫瘍または変性疾患を有する患者、外傷または損傷を受けた患者、または制御された損傷をもたらす医療処置を受けた患者が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書で使用する場合、「感染症」という用語は、動物に影響を与える、ウイルス、細菌、真菌および寄生虫感染症を含むが、これらに限定されない局所または全身の任意の感染症を指す。
【0096】
本明細書で使用する場合、「外傷」という用語は、細胞、臓器、組織、または全身に対するあらゆる損傷(創傷または火傷)を指す。傷害の原因となる外的要因は、発射体による貫通の衝撃による急激な加速または減速、爆風、波、押しつぶしによって引き起こされるような物理的または機械的な力であってよい。傷害を引き起こす外的要因は、煙、化学的刺激物、または化学的または生物学的毒素などの化学物質でもよい。
【0097】
本明細書で使用する場合、「制御された損傷」という用語は、侵襲的または非侵襲的手術、針の配置、創傷管理、または挿管によって引き起こされるものなど、医療処置の過程で被る組織および臓器の損傷を指す。
【0098】
本明細書に記載される方法の実施形態はまた、敗血症の治療のための、心機能障害を改善する少なくとも1つの他の薬剤(例えば、アスコルビン酸またはイソプロテレノール)と、セコイソラリシレシノールジグルコシド(SDG)との同時投与を包含する。
【0099】
本明細書に引用されている特許、特許出願公開、または科学刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
以下の詳細な説明において、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記載される。しかし、本発明は、これらの具体的な詳細を伴わずに実行できることが当業者には理解されるだろう。他の例では、本発明を不明瞭にしないために、周知の方法、手順、および構成要素は、詳細には説明されていない。しかし、それらは決して本発明の広い範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0101】
実施例1
SDGは敗血症性心機能障害を予防する
マウスに偽処置または盲腸結紮穿刺(CLP)を施した。SDGをCLPの2時間前またはCLPの6時間後に投与した。マウスの各群から心エコー図を収集し(図2A)、駆出率(EF、左)および短縮率(FS、右)を決定した。図2Bに示すように、CLPの前または後のいずれかのSDG処置は、EFを復元し、CLP以前のレベルに戻す。
【0102】
実施例2
SDGは、生体内でのアデニル酸シクラーゼ(AC)発現を増加させる
マウスは、偽処置された(n=3)か、または盲腸結紮穿刺(CLP、n=6)を受けた。SDGをCLP後に3匹のマウスに投与した。図3Aは、各マウスにおけるアデニリルシクラーゼV/VI発現のウエスタンブロットを示す。各群全体で平均化されたデータのグラフ表示(図3B)は、SDG処理がシクラーゼV/VI発現前のCLPレベルを回復することを示す。
【0103】
実施例3
SDGは刺激されていない状態のAC16細胞においてcAMP活性を増加させる
AC16細胞を無刺激のままにするか、あるいは、フォルスコリンまたはイソプロテレノールで12時間刺激した後、SDG、リポサッカライド(LPS)またはその両方で処理した。SDG処理はcAMPレベルを増加させたが、LPSの存在下ではこの増加は無効となった(図4)。さらに、フォルスコリンまたはイソプロテレノールの存在下では、cAMPレベルのSDG依存的cAMPレベルの増加は取るに足らないように見える。
【0104】
実施例4
SDGは、イソプロテレノール刺激プロテインキナーゼA(PKA)活性化を疾患状態にないAC16細胞で増強する
AC16細胞を未処理のままにするか、あるいは、SDG、リポサッカライド(LPS)またはその両方で処理した。SDG処理はプロテインキナーゼA(PKA)活性を増加させ、その増加はイソプロテレノールによって増幅したが、この刺激はLPSの存在下では無効となった(図5)。
【0105】
実施例5
SDGは、AC16細胞におけるミトコンドリアの超酸化物生成のLPSを介した増加を抑制する
AC16細胞を未処理のままにするか、あるいは、SDGの非存在下または存在下でリポサッカライド(LPS)で12時間処理し、その後、ミトソックスレッドで染色した。SDG処理により、LPS処理細胞のスーパーオキシドレベルが統計的に有意に減少した(図6)。
【0106】
実施例6
SDGは、AC16細胞におけるミトコンドリアの超酸化物生成のLPSを介した増加を抑制する
AC16細胞を未処理のままにするか、あるいは、SDGの非存在下または存在下でリポサッカライド(LPS)で12時間処理し、ミトコンドリアを染色した。LPS処理はミトコンドリア数の統計的に有意な減少を引き起こしたが、SDG処理はこのLPS依存性の低下を相殺した(図7)。
【0107】
実施例7
SDG処理は、FUSIONおよびFISSIONマーカーのmRNAレベルの敗血症誘発性変化を回復する
AC16細胞を未処理のままにするか、あるいはSDGの非存在下または存在下でリポサッカライド(LPS)で処理し、DRP1、Opa、MFN1、MFN2、およびFIS1 mRNAのレベルを定量的PCRで測定した。図8Aは、DRP1レベルの変化のみが統計的に有意であったものの、6時間のLPS処理がすべての試験されたマーカーのレベルの低下を引き起こしたことを示している。SDG処理により、すべてのマーカーのレベルが回復した。図8Bは、12時間のLPS処理がすべての試験されたマーカーのレベルの増加を引き起こし、DRP1、MFN2、およびFIS1レベルの変化は統計的に有意であったことを示している。SDG処理によりすべてのマーカーのレベルが回復したが、MFN2レベルの変化のみが統計的に有意であった。
【0108】
実施例8
LPS刺激AC16細胞のSDG処理により、MCUおよびMICU1の発現を増加させる
マウスを、偽処置するか、またはSDGの有無にかかわらずLPSで処置し(各群でn=3)、MCUおよびMICU1 mRNAのレベルを定量PCRで測定し、タンパク質のレベルをウエスタンブロットで評価した。LPSはMCUおよびMICU1 mRNAの両方のレベルを抑制したが、SDG処理はmRNA発現を回復した(図9A)。図9Bは、各マウスにおけるMCU発現のウエスタンブロットを示している。各群で平均化されたデータのグラフ表示(図9C)は、SDG処理がLPSを介したMCUタンパク質レベルの低下を逆転させることを示している。図9Dは、各マウスにおけるMICU1発現のウエスタンブロットを示している。各群で平均化されたデータのグラフ表示(図9E)は、SDG処理がMICU1タンパク質レベルを増加させることを示している。
【0109】
実施例9
敗血症マウスのSDG治療は、心臓組織のMCUのタンパク質レベルを増加させる
マウスを、偽処置するか(n=3)か、または盲腸結紮穿刺(CLP、n=6)を施した。SDGをCLP後に3匹のマウスに投与した。図10Aは、各マウスにおけるMCU発現のウエスタンブロットを示している。各群で平均化されたデータのグラフ表示(図10B)は、SDG処理によりMCUタンパク質レベルが増加することを示している。図10Cは、各マウスにおけるMICU1発現のウエスタンブロットを示す。各群で平均化されたデータのグラフ表示(図10D)は、CLPがMICU1タンパク質レベルを増加させることを示している。
【0110】
実施例10
SDGは敗血症マウスの心筋細胞の酸素消費率を増加させる
マウスを、偽処置するか、または盲腸結紮穿刺を施し、その後SDG処置を施した。Seahorseアッセイで酸素消費率(OCR)を測定した。CLPはすべてのOCR測定値の減少をもたらしたが、SDG処理はその減少を補って余りあるものであった図11A)。CLPは非ミトコンドリアの酸素消費量を統計的に有意に減少させたが、SDG処理は、未処理レベルと比較して、基礎呼吸、最大呼吸、ATP産生、および非ミトコンドリア酸素消費量を統計的に有意に増加させた(図11B)。さらに、SDG処置により、CLP後に観察されたレベルと比較して、最大呼吸、ATP産生および非ミトコンドリア酸素消費量が統計的に有意に増加した。最後に、プロトン漏れの統計的に有意な変化は観察されなかった。
【0111】
実施例11
抗酸化剤LGM2605はミトコンドリア機能を改善し、敗血症心筋症を緩和する
敗血症は、感染に対する圧倒的な免疫反応として特徴付けられ、最終的に組織灌流および臓器損傷の減少につながる。重度の敗血症および敗血症性ショックに起因する心筋機能障害は、病院での高い死亡率の50%に関連している。我々のグループからの証拠は、エネルギー障害が敗血症の心筋機能障害の主要な因子であり、心筋細胞の代謝経路の遺伝的および薬理学的活性化が炎症を解決せずに心機能を改善することを示している。ROS産生は細胞代謝の健康の中心であるため、強力な抗酸化合成リグナンSecoisolariciresinol Diglucoside(SDG;LGM2605)が盲腸結紮および穿刺(CLP)ベースの腹膜炎のマウスモデルにおける敗血症性心機能障害を軽減するかどうかをテストした。心エコー検査によって測定された心機能は、術後12時間で著しく損なわれることがわかった。SDGによるマウスの処置(100mg/kg体重、腹腔内)CLP手術の6時間後、SDG投与から6時間以内に心臓の短縮率が増加した。心機能の改善が心臓のROSレベルの変化と関連していたかどうかを確認するために、SDGがROSの蓄積を減少させることを示したジヒドロエチジウム(DHE)でこれらのマウスの心臓組織を染色した。これは、我々が、LPS単独で処理された細胞と比較して、リポ多糖(LPS)とSDGの組み合わせで処理されたAC16心筋細胞のミトソックス赤色染色が低いことを観察したインビトロ研究と一致した。CLPによる成体C57BL/6マウスから得られた一次心筋細胞におけるSeahorseXF分析は、CLP単独および偽手術マウスと比較してSDGが酸素消費率(OCR)を増加させ、ATP産生に関連するミトコンドリア呼吸の増加を示した。改善されたミトコンドリアの呼吸を説明する分子経路を特定することを目指して、ミトコンドリアの豊富さとミトコンドリアのカルシウム処理タンパク質の発現を使用して評価した。SDGによる処置は、インビトロおよびインビボでミトコンドリアの存在量を回復させ、ミトコンドリアのカルシウム取り込みを調節するミトコンドリアのカルシウムユニポーターのタンパク質発現を増加させた。したがって、ミトコンドリアのカルシウム取り込みは、ミトコンドリアの機能を改善することが知られているこれらのマウスから分離された心筋細胞で増加した。注目すべきことに、SDG処置は脂肪酸酸化とグルコース代謝関連遺伝子の発現を回復しなかった。
【0112】
まとめると、我々のデータは、SDGがROS蓄積の防止、ミトコンドリアのカルシウム取り込みの増加、およびミトコンドリアの呼吸の改善を介して敗血症性心機能障害を緩和することを示している。LGM2605は敗血症に心臓保護の役割があり、敗血症を管理する治療に使用できる。
【0113】
方法
動物の手入れ、盲腸の結紮および穿刺手順と心エコー検査-動物のプロトコルは、テンプル大学の施設内動物管理および使用委員会によって承認され、実験動物の手入れと使用に関するNIHガイドラインに従って実施された。野生型(WT)8~12週齢のC57BL/6マウスは、Jackson labsから購入した。盲腸結紮および穿刺(CLP)は、以前に記載されたように行った。マウスを3.5%吸入イソフルオランで麻酔した。無菌条件下で、1~2cmの正中線開腹術を行い、隣接する腸で盲腸を露出させた。盲腸を、回腸盲腸弁の下の基部で1cmの距離でしっかりと結紮し、19ゲージの針で2回穿刺した。結紮された盲腸の長さは、盲腸の遠位端から結紮点までの距離として定義され、これは疾患の重症度に影響する。穿刺された盲腸から糞便が押し出され、腹腔内に戻された。腹膜と皮膚を3本の縫合糸で閉じた。予熱した0.9%生理食塩水1mlを皮下注射してマウスを蘇生させ、敗血症の超動的段階を誘発し、術後鎮痛のためにマウスにブプレノルフィン(0.05mg.kg体重)を皮下投与した。マウスは、CLPの2時間前またはCLPの6時間後のいずれかに投与されたLGM2605の腹腔内注射を1回受けた(100mg/kg ip)。CLPの12時間後に、VisualSonics Vevo 2100機械を使用して、麻酔マウス(1.5%吸入イソフルラン)で2次元心エコー検査を行った。心エコー画像はデジタル形式で記録した。マウスのそれぞれの処理を知らされていない一人の観察者が、LVトレースによって短軸mモード画像を分析した。各実験で使用したマウスの数は、図の凡例に記載されている。
【0114】
RNA精製と遺伝子発現分析-全RNAは、製造元(Invitrogen)の指示に従って、TRIzol試薬を使用してAC16細胞または心臓から精製した。DNase処理したRNAを、ProtoScript II First Strand cDNA合成キット(New England Biolabs)を使用したcDNA合成に使用した。Sybr Select Master Mix(Applied Biosystems)を使用して、定量的リアルタイムPCRを行った。PCR産物へのSYBRグリーン色素の取り込みは、Applied BiosystemsのStepOnePlusリアルタイムPCRシステムで監視した。サンプルは、マウス36B4またはヒトrps13 RNAに対して正規化した。
【0115】
タンパク質の精製と分析-分離した心臓組織またはAC16細胞を、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Pierce ProteaseおよびPhosphatase Inhibitor Mini Tablet、Thermo Scientific)を含む放射免疫沈降アッセイバッファーでホモジナイズした。30~50μgの総タンパク質抽出物をSDS-PAGEに適用し、ニトロセルロース膜に転写した。
【0116】
炎症性サイトカイン測定-IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-10、およびTNFαの循環レベルは、キットの仕様に従ってMilliplex MAPマウスサイトカインキット(MCYTOMAG-70K-05)を使用して、凍結血漿サンプルから同時に定量化された。サンプルはLuminex MAGPIX多重化ユニットを使用して読み取られた。
【0117】
成体マウス心筋細胞の分離-成体マウス心筋細胞(ACM)は、C57BL/6マウスの心室から偽手術12時間後、CLP手術、または術後6時間でのCLPとLGM2605による治療の組み合わせで分離された。ヘパリン化マウス(90USP;ip)の心臓に大動脈からカニューレを挿入した。心臓を灌流バッファー(120.4mM NaCl、14.7mM KCL、0.6mM NaHPO、0.6mM KHPO、1.2mM MgSO、10mM Hepes、4.6mM NaHCO、30mMタウリン、10mM BDM、5.5mMグルコース;pH7.4)で3分間灌流した。19250ユニットのコラゲネーゼタイプII(ワージントン)、5~6mgトリプシン、0.02mM CaClを含む灌流バッファーで7分間消化した後、7分間消化する。心室を穏やかに引き裂いて小片にし、5mg/ml BSAおよび0.125mM CaClを含む灌流バッファーを加え、100μmナイロンで濾過した。濾液を重力により5分間ペレット化し、700rpmで30秒間遠心分離し、ペレットを5mg/ml BSAおよび0.225mM CaClを含む灌流バッファーに再懸濁した。細胞を重力により10分間ペレット化し、700rpmで30秒間遠心分離し、ペレットを5mg/ml BSAおよび0.525mM CaClを含む灌流バッファーに再懸濁した。
【0118】
細胞培養-AC-16と呼ばれるヒト心室心筋細胞由来の細胞株を、いくつかのインビトロ実験に使用した。細胞はダルベッコの改変イーグル培地栄養素混合物F-12(DMEM-F-12;Invitrogen、Carlsbad、CA)で維持された。
【0119】
ミトコンドリアのスーパーオキシド、ミトコンドリアの膜電位およびミトコンドリアの数の測定-AC16細胞は、約80%のコンフルエンスで無菌の細胞培養食器で培養された。一晩のインキュベーション後、細胞をLPS(1μg/ml)、LPSおよびLGM2605(50μM)で処理した。LPSおよびLGM2605を無血清培地で希釈し、対照群を無血清培地と同様にインキュベートした。処理後12時間で、AC16細胞にミトコンドリアスーパーオキシドインジケーターMitoSOXレッド(5μM、M36008、Molecular Probes)をロードし、暗所で30分間インキュベートした。PBS溶液で3回洗浄した後、過剰なMitoSOX Redを除去した。MitoSOX Red蛍光は、510(励起)および580nm(発光)で記録された。
【0120】
ミトコンドリア数の変化を評価するために、LPS刺激AC16細胞とCLPの12時間後に分離された成体心筋細胞を200nM Mitotracker Red(M22425、Molecular Probes)で染色し、暗所で30分間インキュベートした。過剰のMitotracker RedをPBS溶液で3回洗浄して除去した。Mitotracker Red蛍光は、581(励起)および644nm(発光)で記録された。
【0121】
ミトコンドリア膜電位を測定するために、AC16細胞を暗所で30分間TMRM(62.5nM、T668、Molecular Probes)で染色した。TMRM染色液を温かいPBSで3回洗浄し、Cy3フィルター(510nm励起波長)を使用して200倍の倍率で画像化した。
【0122】
心臓組織のDHE染色-手術12時間後にマウスから生きた心筋を分離し、清潔なかみそりの刃を使用して10切片に切り分けた。組織を20μMジヒドロエチジウム(DHE)で室温で30分間染色し、Zeiss Axio Observer Z1蛍光顕微鏡で490±10nm励起および632±30nm発光で画像化した。酸化されたDHEは赤色に蛍光を発し、DNAを挿入する。Zeiss Zen Blueソフトウェアを使用して各視野内で個々の核を測定し、視野を平均して各マウスの平均蛍光強度を測定した。
【0123】
放射性リガンド結合アッセイ-切除したマウスの心臓からの原形質膜を調製し、β-AR密度測定に125I-CYP(ヨードシアノピンドロール;PerkinElmer、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して、前述のように飽和放射性リガンド結合を行った。データは、GraphPad Prism(GraphPad Software、カリフォルニア州ラホーヤ)を使用した非線形回帰分析によって分析された。
【0124】
タツノオトシゴの分析-分離された一次ACMを血球計算盤でカウントした。死細胞は、トリパンブルー色素染色で検出された。細胞を、20μg/mlラミニン(Invitrogen、23017)を含むラミニンでプレコートしたXF96Seahorse(登録商標)プレートに播種した(ウェルあたり3000細胞)。脂肪酸酸化(FAO)記録の酸素消費率(OCR)を評価するために、細胞を基質限定培地(10mMグルコース、1.025mM CaCl、0.5mMカルニチン、pH=7.4を含むDMEM)でインキュベートし、製造元のプロトコルに従って脂肪酸酸化培地でアッセイした。アッセイを開始する前に、BSAと結合した1mMのパルミチン酸を各ウェルに加えた。脂肪酸酸化時の最大応答に使用された薬物は、複合体Vをブロックするオリゴマイシン(3μM)(Sigma、O4875)、プロトン勾配の崩壊を引き起こすFCCP(2μM)(Sigma、C2920)、およびロテノン/アンチマイシンA(0.5μM)(Sigma、A8674)/(Sigma、R8875)ロテノンは複合体Iをブロックし、アンチマイシンAは複合体IIIをブロックする。XFアッセイのキャリブラントで事前に水和し、XFカートリッジを薬剤で満たし、カートリッジをSeahorse Analyzerで30分間キャリブレーションした。すべての実験は37℃で行った。計算は、SeahorseのマニュアルとXF SeahorseのMito Stress Testキットのユーザーガイドに記載されているとおりに行った。簡単に言えば、基礎呼吸は、最初の注射の前の最後の測定から非ミトコンドリア呼吸速度を差し引いて計算された。最大呼吸は、FCCP注入後の最大測定値から非ミトコンドリア呼吸測定値を差し引くことによって計算された。複雑なV阻害剤(オリゴマイシン)の存在下でATPに関連する呼吸を測定することにより、ATP合成関連のOCRが間接的に得られた。ATP合成を推進するために使用された基礎呼吸の部分を表す酸素消費率の減少は、オリゴマイシン注射前の最後の測定値からオリゴマイシン注射後の最小測定値を差し引いて計算された。予備呼吸容量は(最大呼吸)-(基礎呼吸)に等しかった。
【0125】
生体内心臓アドレナリン作動性感度測定-公開21のとおり、血行動態測定が行われた。マウスを2%トリブロモエタノール(アベルチン)で麻酔した。右頸動脈に1.4フレンチマイクロマノメーター(Millar Instruments、ヒューストン、テキサス州)でカニューレを挿入し、LV腔に進入させ、LV圧力、LV拡張末期圧(LVEDP)および心拍数(HR)を測定した。これらのパラメータと、LV圧力の瞬間的な1次導関数の最大値(心収縮性の尺度としての+dP/dtmax)およびLV圧力の瞬間的な1次導関数の最小値(-dP/dtmin、心臓の尺度としてのベースライン時および頸静脈を介した投与後、β-アドレナリン受容体(βAR)アゴニストであるイソプロテレノール(0.1ng、0.5ng、1ng、5ng、10ng)の漸増用量の投与後に記録された。PowerLabシステム(AD Instruments)でデータを記録および分析した。
【0126】
透過処理された成人心筋細胞におけるカルシウム取り込みアッセイ-CLPまたは偽手術の12時間後およびLGM2605または生理食塩水注射の6時間後にマウスから心筋細胞を単離した。カルシウムの取り込みは、前述のように22、以下に詳しく説明されている。透過前に、心筋細胞をCa2+を含まない緩衝液(120mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのKHPO、0.2mMのMgClを、0.1mMのEGTAおよびpH7.4の20mMのHEPES-NaOHで、)で洗浄し、そして氷上で少なくとも10分間保管する。心筋細胞を遠心分離によりペレット化し、細胞内様媒体(透過化緩衝液:pH7.2の、120mMの塩化カリウム、10mMの塩化ナトリウム、1mMのKHPO、20mMのHEPES-トリス、プロテアーゼ阻害剤(EDTAを含まない完全錠剤、Roche Applied Science)、2μMタプシガルギンおよびジギトニン(40μgml-1)))に移した。コハク酸塩(2mM)を添加した細胞懸濁液を蛍光光度計に入れ、穏やかに攪拌して透過性を高めた。Fura2FF(0.5μM)を0秒で追加し、JC-1(800nM)を20秒で追加した。蛍光シグナルは、JC-1モノマーの490nm励起/535nm発光を使用して、温度制御(37℃)多波長励起デュアル波長発光分光蛍光光度計(Delta RAM、Photon Technology International)で監視された、570-JC-1のJ凝集体ではnm励起/595nmの発光、Fura2FFでは340nm/380nmである。400秒の時点で、1つの10μM Ca2+パルスが追加され、サイトゾル¥[Ca2+]の変化がモニターされた。ミトコンドリア膜電位を崩壊させ、ミトコンドリアから排出されたカルシウムを測定するために、CCCPが750秒で追加された。
【0127】
統計分析-結果は平均±SEMとして表示される。対応のないt検定は、2つの平均の比較に使用された。P<0.05の両側の値は統計的に有意であると見なされた。2つ以上の群では、ANOVAを、ボンフェローニ事後検定(Prism v5、GraphPad Software)で使用した。
【0128】
結果
LGM2605は、盲腸結紮および穿刺(CLP)によって誘発された敗血症のマウスモデルで心機能障害を予防する。我々は、CLPを使用して雄性のC57BL/6マウスに中低グレードの敗血症(結紮部位:1cm)を誘発し、術後最大12時間まで2Dエコーで心機能を評価した。心機能はCLPの6時間後に低下し始め、敗血症マウスはCLPの9時間後に有意な心機能障害を示し、これはCLPの12時間後にさらに悪化した(図12A~B)。敗血症マウスは、体温の有意な低下(図12C)と、dP/dtmax図12D)で表される収縮性の低下、およびCLPの12時間後の心臓炎症遺伝子の発現の増加(図12E)を示した。
【0129】
敗血症性心機能障害におけるLGM2605の効果を評価するために、1つのマウスグでCLPの2時間前および別のマウス群で6時間後のCLPに、最初にLGM2605を腹腔内注射(100mg/kg体重)で投与した。CLP前(補足図12A~Bおよび表1)およびCLP後(図13A~Bおよび表1)の処置は両方とも、CLP媒介性心機能障害を防止した。LGM2605を投与されなかった敗血症マウスでは駆出率が17.82%減少し、短縮率が12.06%減少したのに対して、LGM2605で処理したマウスは正常な収縮機能を示した。したがって、LGM2605は、予防的またはCLP手術後に投与すると、敗血症の心機能を改善する。
【0130】
LGM2605は心臓のNF-kBの活性化に影響を与えるが、心臓の発現および血漿の炎症性サイトカインのレベルには影響を与えない。LGM2605の心臓保護効果が抗炎症性に依拠するかどうかを評価するために、我々は、敗血症C57BL/6マウスの心臓における心臓炎症性マーカーの発現を試験した。CLPのあるマウスは、IκBαのリン酸化が増加しており、NF-κΒの活性化が増加していることを示唆している。これは、LGM2605によって妨げられた(図13C)。敗血症マウスの炎症マーカーの分析により、LGM2605は、CLPの6時間後(図13A)または12時間後(図13D)に、IL-1α、IL-1β、IL-6、およびTNFαのmRNAレベルを低下させなかった。したがって、LGM2605の投与は、炎症誘発性サイトカインIL-1α、IL-1β、IL-6、およびTNFα、または敗血症の際にも上昇する抗炎症性サイトカインIL-10の循環レベルを低下させなかった(図13E)。したがって、NFκBシグナル伝達はLGM2605治療によって緩和されるが、LGM2605を介した心機能の改善は炎症性サイトカインの産生を低下させない。
【0131】
LGM2605を介した心機能の改善は、β-ARシグナル伝達の変化と関連しない。敗血症は主にβ-アドレナリン受容体(β-AR)シグナル伝達によって制御される心臓の収縮に影響を与えるため、我々は、β-AR感度を改善することによってLGM2605が心臓機能を改善するかどうかを試験した。血行力学的測定により、敗血症マウスは、偽手術と比較して、LGM2605投与の有無にかかわらず、基底心筋のLVdP/dtmax図14B)とLVdP/dtmin図14C)が低いことがわかった。イソプロテレノールに対する反応性は、LGM2605治療に関係なく、両方の敗血症群でそれほど強くなかった(図14A、14B)。LVdP/dtmaxとLVdP/dtminの基礎レベルがCLPのマウスで低かったため、我々は、放射性リガンド結合アッセイを実施して、LGM2605(CLPの6時間後)で処置した敗血症マウス(CLPの12時間後)から得られた心臓におけるβ-ARの密度を評価した。この分析は、CLPを受けたマウスにおいて心臓のβ-AR密度の有意な減少を示したが、LGM2605での処置によっては逆転しなかった(図14C)。
【0132】
LGM2605はグルコースおよび脂肪酸代謝関連の遺伝子発現には影響しない。我々は、LGM2605の有無にかかわらずCLPを受けたマウスでGLUT1、GLUT4、およびPDK4を含むグルコース取り込みおよび異化マーカーの心臓mRNAレベルを測定した。GLUT1とGLUT4の心臓のmRNAレベルは敗血症性心臓組織で有意に変化しなかったが、我々は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼを不活性することによってピルビン酸利用を阻害する、心臓PDK4のmRNAレベルの有意な増加を観察した(図15A)。この増加はLGM2605の投与によって緩和されなかったことから、LGM2605は敗血症に伴うグルコース利用の低下を防止しないことが示唆された(図15A)。我々は、CLP後6時間(図21B)および12時間(図15B)の敗血症マウスの血漿グルコースレベルを測定し、敗血症マウスの低血糖がLGM2605の投与によって緩和されなかったことを観察した。
【0133】
次に、我々は、敗血症時に影響を受けることが知られている心臓のATP産生23の約70%を構成する脂肪酸代謝に関連する遺伝子の心臓の発現を評価した。CLPで処置したマウスは、PPARαおよびLCADの発現レベルが低く、PPARβ/δ、PPARγ、MCAD、VLCAD、CPT1βおよびCD36 mRNAレベルは有意に変化しなかった(図15C)。LGM2605は、PPARαおよびLCADにおけるCLPを介した変化を逆転させなかった(図15C)。血漿トリグリセリド濃度は増加傾向を示したが、LGM2605で処理した敗血症マウスでは発生しなかった(図15D)。まとめると、これらのデータは、敗血症性心機能障害におけるLGM2605の有益な効果は、脂肪酸代謝関連の遺伝子発現の変化と関連していないことを示唆している。
【0134】
LGM2605は、抗酸化剤関連の遺伝子発現を変えずに酸化ストレスを軽減する大腸菌リポ多糖(LPS)で処理されたAC16細胞でミトソックスレッド染色を使用してミトコンドリアスーパーオキシド生成を測定した。AC16細胞をLPSで12時間処理すると、ミトコンドリアのスーパーオキシドレベルが増加し、LGM2605によって抑制された(図15E)。したがって、CLPの12時間後の敗血症マウスから単離された心室組織のジヒドロエチジウム(DHE)染色は、染色強度の増加を示し、これはLGM2605投与により有意に軽減された(図15F)。LGM2605の有益な効果は、核呼吸因子2(NRF2)、ヘムオキシゲナーゼ1(HO1)、グルタチオンS-トランスフェラーゼMu 1(GSTM1)、NAD(P)H:キノン酸化還元酵素1(NQO1)、および脱共役タンパク質2および3(UCP2、UCP3))を含む抗酸化遺伝子の心臓発現におけるCLP媒介変化の防止を伴わなかった(図15G)。まとめると、これらの結果は、LGM2605の有益な効果は、ROS蓄積の直接的な緩和に依存しており、抗酸化システムの遺伝子発現プログラムに対する転写効果には依存していないことを示している。
【0135】
LGM2605は、ミトコンドリア生合成関連の遺伝子発現またはオートファジーマーカーに影響を与えずにミトコンドリアの存在量を増加させる。LGM2605の有益な効果が敗血症性心機能障害に影響を与えることが知られているミトコンドリア数の変化を伴うかどうかを評価するために、我々は、AC16細胞をLPSおよびLGM2605で12時間処理し、Mitotracker Redで染色した。LPS処理によりミトコンドリア数が減少したが、これはLGM2605による処理によって抑制された(図16A~B)。これらの結果に従って、CLPの12時間後の敗血症マウスから分離された成体心筋細胞で行われたMitotracker染色分析は、LGM2605がミトコンドリア存在量のCLP関連の減少を抑制することを示唆している(図16C~D)。
【0136】
ミトコンドリアの豊富さのLGM2605駆動の復元を介在するかもしれないメカニズムを調査するために、我々は、ミトコンドリアの生合成、融合/分裂、およびミトファジーの様々なマーカーの発現を測定した。PGC1αとPGC1βを含むミトコンドリア生合成マーカーの心臓遺伝子発現はCLPの12時間後に減少したが、mtTFAは有意に変化しなかった。これらの変更はいずれもLGM2605の影響を受けなかった(図16E)。次に、我々は、LGM2605の効果がミトコンドリアの融合と核分裂マーカーの発現の変化に関連しているかどうかを調べた。CLPを受けたマウスの心臓組織では、MFN1、MFN2、およびDRP1のmRNAレベルが増加し、Fis1のmRNAレベルが減少する傾向があった(図16F)。LGM2605処理は、MFN1、MFN2、DRP1、およびFIS1の発現におけるCLPを介した変化を回復し(図16F)、LGM2605がミトコンドリアの分裂と融合の間のダイナミクスに影響を及ぼし、CLP誘発融合マーカーの発現を抑制する可能性があることを示唆している。
【0137】
敗血症におけるミトコンドリアの流動を媒介するオートファジー経路の活性化を評価するために、我々は、LC3BIからオートファゴソーム形成の既知のマーカーであるLC3BIIへの変換を測定した。我々は、敗血症マウスから分離された心臓組織におけるオートファジー経路の活性化を示すLC3BII/LC3BI比の増加(図16G、5H)を発見した。我々は、さらに、Map1lc3bおよびBNIP3 mRNAレベルの誘導を発見した(図20)。どちらのマーカーもLGM2605によって緩和されず、LGM2605がオートファジー経路の活性化を妨げないことを示唆している。
【0138】
LGM2605処理マウスでの心臓ミトコンドリア存在量の増加は、ミトコンドリアカルシウム取り込みと酸素消費率の増加に関連している-ミトコンドリアカルシウム取り込みは、小胞体によるSERCA媒介Ca2+取り込みを阻害するタプシガルギンで処理されたジギトニン透過化成人心筋細胞で評価された(図17A)。CLP手術後のマウスの12時間から単離された心筋細胞は、減少のCa2+取り込みおよびCa2+の下部放出以下CCCP投与(図17B、17C)を示した。我々は、敗血症マウスへのLGM2605の投与は、偽手術マウスで観察されたものを超えて、CCCP投与後のミトコンドリアのCa2+取り込み速度とCa2+の放出を増加させることがわかった(図17B、17C)。カルシウムの取り込みの変化がミトコンドリアのカルシウム取り込み関連遺伝子の変化と関連しているかどうかを判断するために、我々は、ミトコンドリアのカルシウムユニポーター(MCU)とミトコンドリアのカルシウム取り込みタンパク質(MICU)1の発現を測定した。mRNAおよびタンパク質レベルでは、CLPの12時間後にMCUもMICU1も変更されず、LGM2605はこれらのタンパク質の発現に影響を与えなかった。(図17D~E)。
【0139】
LGM2605で処理された敗血症マウスから分離された成体心筋細胞のSeahorse XF分析で測定されたように、ミトコンドリアのカルシウム摂取の増加は酸素消費率の増加を伴った(図18A~E)。CLPを受けたマウスにLGM2605を投与すると、CLPマウスと偽マウスの両方と比較して、基礎呼吸レベル(図18B)とATP合成に伴う酸素消費率(図18C)が増加した。最大呼吸および呼吸予備能もまた、LGM2605治療により著しく上昇し(図18D~E)、LGM2605がミトコンドリアの能力を高め、心臓のストレス時に増大するエネルギー需要を満たすことができることを示唆している。
【0140】
LGM2605は、ミトコンドリア膜の脱分極を抑制する。ミトコンドリア膜電位はミトコンドリアのカルシウム取り込みとミトコンドリア呼吸の主要な駆動力であるため、我々は、TMRM染色を用いて、LGM2605が、ミトコンドリア膜電位に依存的な活性ミトコンドリアによって隔離される、ミトコンドリア脱分極を変化させるかどうかを試験した。LPS処理は、媒体およびLGM2605処理された対照と比較して、TMRM染色強度を有意に低下させ、LPSがミトコンドリア膜電位の低下を誘導することを示唆している(図19A、19B)。LGM2605による治療は、ベースラインに向かってTMRM染色を有意に回復させた(図19A、19B)。
【0141】
対照実験として、我々は、ROSの生成とは無関係にミトコンドリア膜を脱分極させる脱共役剤2,4-ジニトロフェノール(2,4-DNP)によって駆動される膜脱分極にLGM2605が影響するかどうかを試験した。まず、AC16細胞に重大な毒性をもたらさない2,4-DNPの適切な用量を選択するために、我々は、2,4-DNPの濃度を増加させながら一連の処理を適用した(図22)。この分析に基づいて、我々は、50μMの2,4-DNPで細胞を処理することを選択した。AC16細胞をLGM2605および2,4-DNPと組み合わせて処理すると、LGM2605は、LPSの有無にかかわらず50μMの2,4-DNPを受けた細胞のTMRM染色の回復においてその有益な効果を失うことがわかった(図19B)。
【表1】
【0142】
敗血症は、特にそれが急性臓器不全を伴う場合、集中治療室(ICU)の重症患者の最も一般的な死因である。ある病院ベースの研究では、菌血症の患者の43%が血清トロポニンの増加を示しており、心筋障害を示している。他の臨床研究は、敗血症における心血管機能障害の存在が、心血管障害のない敗血症患者における20%の死亡率と比較して70%~90%の大幅に増加した死亡率と関連していることを示した。長年の研究にもかかわらず、敗血症によって誘発される心筋機能障害の病態生理はまだ定義されておらず、原因となる細胞メカニズムはまだ不明のままである。敗血症誘発性心筋症を逆転させるための臨床診療では、効果的な治療法や特定の薬物療法は使用されていない。敗血症性心機能不全の病態生理は、酸化ストレスの増加、炎症の増加、β-アドレナリン作動性シグナル伝達の障害、アポトーシスの活性化、代謝経路の抑制、および心筋細胞におけるATP合成の減少に起因するとされている。
【0143】
我々のグループからの以前の証拠は、敗血症における心筋機能障害の主要な構成要素がエネルギー障害であることを示しており、その修正は、炎症性サイトカインのレベルの増加にもかかわらず心臓機能を改善する。ミトコンドリアは、心臓や他の器官のエネルギー機構に関与する主要な細胞小器官を構成する。したがって、ミトコンドリア機能不全は、敗血症および他の疾患における心機能に有害であり得る。スーパーオキシドや過酸化物などのROSは、ミトコンドリアの完全性と敗血症時の機能を低下させる。我々のチームの以前の研究は、スーパーオキシドの生成に関与するミトコンドリア外タンパク質であるNOX2の阻害が、酸化ストレスを軽減し、敗血症のマウスモデルで心機能を維持することを示しており、異常な心機能におけるROSストレスの重要な役割を示している敗血症に関連付けられる。
【0144】
本研究では、我々は、敗血症中のミトコンドリア機能における抗酸化療法の効果に焦点を当てた。抗酸化剤LGM2605は、敗血症の誘発前または後のいずれかに投与すると、敗血症マウスの正常な心機能を正常に回復させた。LGM2605の心保護効果は、ミトコンドリア存在量の回復と、それぞれインビトロおよびインビボでのROSのLPSおよびCLPを介した増加の減少に関連していた。ミトコンドリアは、心筋細胞の細胞機能に対する酸化ストレスの有害な影響の中心である。ROS生成の増加は、ミトコンドリア膜の脱分極、ミトコンドリア呼吸の減少、およびアポトーシス経路の開始と関連している33。我々の研究では、我々は、LGM2605抗酸化療法によって心筋細胞ミトコンドリア呼吸の増加とミトコンドリア膜電位の維持を観察し、このことは。LGM2605がミトコンドリア機能を保護していることを示唆している、
【0145】
ミトコンドリア存在量の変化、核分裂/核融合経路の制御、およびエネルギー障害は、心臓病で説明されている。我々の現在の研究は、敗血症における心機能の悪化における酸化ストレスに起因するミトコンドリア存在量の減少の役割を示している。LGM2605治療は、ミトコンドリアのカルシウムの取り込みとミトコンドリアの呼吸の増加を伴っていた。ミトコンドリアでのカルシウムの取り込みは、主にミトコンドリアのカルシウムユニポーター(MCU)を介して行われ、ミトコンドリアの膜電位によって駆動される。MCUタンパク質レベルは、LGM2605で処理された敗血症性マウスでは大幅に変更されないため、ミトコンドリアのカルシウム取り込みの改善は、有益な治療がもたらすミトコンドリア電位の回復とミトコンドリア存在量の増加によって促進される可能性がある。ミトコンドリアのカルシウムは、脂肪酸とピルビン酸の酸化、クレブス回路と酸化的リン酸化に関連する酵素のレギュレーターとして機能し、細胞呼吸に関連する酵素活性を刺激する。一方、増加したCa2+摂取の抑制は、心臓ストレス中の治療的介入として提案されており、ミトコンドリアによる無秩序なCa2+摂取は、ROS産生を増加させる。我々の研究では、Ca2+摂取の増加はROSの蓄積の低下と関連していた。この効果は、LGM2605の抗酸化作用に起因している可能性があり、これは、ミトコンドリアのCa2+取り込みの二重誘導因子およびROSスカベンジャーとして機能しているようである(図19C)。
【0146】
増加したミトコンドリアカルシウムの取り込みは、心臓におけるアドレナリン作動性シグナル伝達へのエネルギー適応の基礎となる不可欠なプロセスとしても提案されている。別の敗血症動物モデルを使用した研究では、分離された非透過処理ラット心筋細胞でのミトコンドリアのカルシウム取り込みの減少が報告された。研究は、カルシウム摂取の減少が、敗血症ラットにおけるアドレナリン作動性チャレンジに対する反応性の低下の根底にある可能性があることを示した。我々の研究では、LGM2605は透過処理された心筋細胞でのカルシウム取り込みを増加させたが、β-AR応答性を改善しなかった。したがって、ミトコンドリアの量とカルシウムの取り込みが増加すると、ミトコンドリアの呼吸が回復するが、敗血症におけるβ-AR応答性の欠如を回復するには不十分である。
【0147】
エネルギー障害を敗血症性心筋症の主要な原因として特定した以前の研究に基づいて、我々の現在の研究は、敗血症の心機能の悪化における酸化ストレスを介したミトコンドリアパラメーターの障害の役割に焦点を当てている。我々は、敗血症がミトフシン遺伝子の発現を活性化することを観察したが、これはLGM2605によって抑制された。この結果は、LGM2605が心臓のストレスを緩和し、それによりストレス誘発性ミトコンドリアの過融合を軽減することを示している(このような過融合は、ストレス条件に対するアポトーシス前の細胞応答として以前に説明されている)。他の人たちは、酸化ストレスが筋細胞のミトコンドリアの過融合を促進することを示している。驚くべきことに、LGM2605は、ミトコンドリアの生合成またはオートファジー経路の活性化に関連する遺伝子発現に影響を与えなかった。重要なことに、我々の遺伝子発現分析は、LGM2605によるオートファジー関連マーカーの復元された発現の傾向を示している。この応答は、酸化ストレスの低下、ミトコンドリア膜電位の維持、ミトコンドリア呼吸の増加、ミトコンドリア損傷の減少によるミトファジーを改善する初期の二次信号を構成する可能性がある。この支持として、我々の結果は、LGM2605投与後のミトコンドリア損傷マーカーBNIP3の発現低下の傾向を示し、LGM2605のミトコンドリア保護特性がミトコンドリア損傷を防ぐことができることを示している。
【0148】
結論として、我々の研究は、多微生物性敗血症のマウスモデルにおける敗血症性心機能不全の予防における、化学的に合成されたSDGである抗酸化剤LGM2605の役割を実証した。LGM2605の有益な効果は、酸化ストレスの減少、ミトコンドリア膜電位の維持、およびミトコンドリアの量と呼吸の増加に関連していた。したがって、LGM2605は敗血症性心筋症の治療薬として使用することができる。
【0149】
その広範な発明の概念から逸脱することなく、上述の実施形態に変更を加えることができることが当業者には理解されよう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内にある変更をカバーすることが意図される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【国際調査報告】