(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】工作物検査方法および工作物検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/06 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
G01N29/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570249
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(85)【翻訳文提出日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2020062283
(87)【国際公開番号】W WO2020244859
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】102019003921.1
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514277307
【氏名又は名称】ホフシュミット ツェルシュパヌングシステーメ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】521513410
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート アウクスブルク
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホフシュミット,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】サウス,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】リンシャイド,フロリアン
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047BA03
2G047BC02
2G047BC03
2G047BC09
2G047BC10
2G047CA01
2G047DB02
2G047DB03
2G047FA01
2G047GG35
2G047GH07
(57)【要約】
本発明は、工作物(5)に超音波(9、19)を照射する工程、前記工作物(5)に前記超音波(9、19)を照射して生成した超音波信号(10、20)を検出する工程、前記超音波信号(10、20)から前記工作物(5)の超音波断層像データを生成する工程、以上の工程を含む工作物検査方法、特に、工作物(5)例えば繊維強化プラスチック材料から成る工作物(5)を内部損傷(6)について検査する方法に関する。本発明は、前記工作物(5)が切削加工され、特にフライス加工され、そのことで惹起される前記超音波(9、19)が前記工作物(5)に照射されることを特徴としている。本発明はさらに、このために好適な工作物検査システムに関する。
【選択図】
図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物(5)に超音波(9、19)を照射する工程と、
前記工作物(5)に前記超音波(9、19)を照射して生成した超音波信号(10、20)を検出する工程と、
前記超音波信号(10、20)から前記工作物(5)の超音波断層像データを生成する工程と、
を含む工作物検査方法において、
前記工作物(5)が切削加工され、前記切削加工によって惹起される前記超音波(9、19)が前記工作物(5)に照射されることを特徴とする工作物検査方法。
【請求項2】
前記工作物(5)に照射される前記超音波(9、19)を惹起する切削加工を利用して前記工作物(5)が製造されることを特徴とする請求項1に記載の工作物検査方法。
【請求項3】
前記工作物の前記超音波信号(10、20)が複数のセンサ(8)で検出されることを特徴とする請求項1または2に記載の工作物検査方法。
【請求項4】
前記工作物(5)の前記超音波信号(10、20)を検出する前に前記センサ(8)が前記工作物(5)に取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の工作物検査方法。
【請求項5】
前記工作物(5)の切削加工が工具(7)で所定の加工経路に沿って行われることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の工作物検査方法。
【請求項6】
前記工作物(5)が前記超音波(9、19)で透過され、伝播経路(11)に沿って前記工作物内を前記超音波(9、19)が伝搬するときに発生する前記工作物(5)の前記超音波信号(10、20)が検出され、前記伝播経路(11)が切削加工の進展に伴って連続的に変化することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の工作物検査方法。
【請求項7】
切削加工中に既に前記超音波断層像データが完全にまたは少なくとも部分的に生成されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の工作物検査方法。
【請求項8】
前記工作物(5)の切削加工中に、
瞬時加工位置(P1、P2)に連続的に対応しおよび/または前記瞬時加工位置(P1、P2)とセンサ位置との間の瞬時伝播経路(11)に連続的に対応した位置値が、および/または、
付属する瞬時加工位置(P1、P2)での前記超音波(9、19)の発生時間に対応した時間値が、
検出され、確定され、および/または保存され、および/または、
付属する前記瞬時加工位置(P1、P2)からセンサ位置に至る前記超音波(9、19)の伝播時間に対応した伝播時間値が、
検出され、確定され、および/または、保存される、
ことを特徴とする請求項3~7のいずれか1項に記載の工作物検査方法。
【請求項9】
付属する前記瞬時加工位置(P1、P2)に対応しおよび/または前記瞬時加工位置(P1、P2)と前記センサ位置との間の付属する前記瞬時伝播経路(11)に対応した多数の位置値が、および/または
付属する前記瞬時加工位置(P1、P2)での前記超音波(9、19)の付属する発生時間に対応した多数の時間値が、および/または
付属する前記瞬時加工位置(P1、P2)から前記センサ位置に至る前記超音波(9、19)の付属する伝播時間に対応した多数の伝播時間値が、
検出した多数の前記超音波信号(10、20)に関連付けられることを特徴とする請求項8に記載の工作物検査方法。
【請求項10】
そのつど多数の前記位置値、および/または、そのつど多数の前記伝播時間値に関連付けられた前記超音波信号(10、20)、に基づいて前記超音波断層像データを生成するために逆投影アルゴリズムが実行されることを特徴とする請求項9に記載の工作物検査方法。
【請求項11】
前記逆投影アルゴリズムの実行前に、前記超音波(9、19)および/または前記超音波信号(10、20)が、複数の特定周波数または周波数帯域(17)について濾波され、
複数の特定周波数に対応しまたは複数の特定周波数帯域内にある前記超音波信号のみが、および/または
複数の特定周波数に対応しまたは複数の特定周波数帯域(17)内にある前記超音波信号(10、20)の一部のみが、
検出され、および/または前記超音波断層像を生成するのに利用されることを特徴とする請求項10に記載の工作物検査方法。
【請求項12】
前記超音波信号の有意性にとって適した複数の周波数または周波数帯域(17)が特定されることを特徴とする請求項11に記載の工作物検査方法。
【請求項13】
生成された前記超音波断層像データが後続の画像処理工程において超音波断層像(13)へと可視化されることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の工作物検査方法。
【請求項14】
引き続き、前記工作物(5)の前記超音波断層像データおよび/または前記超音波断層像(13)が、前記工作物(5)の内部損傷(6)について評価されることを特徴とする請求項13に記載の工作物検査方法。
【請求項15】
複数の超音波センサ(8)によって検出され出力される出力量を入力量として引き取るインタフェースを備えた分散型または局所型計算ユニットを有する工作物検査システムにおいて、
-工作物(5)に切削加工による超音波(9、19)を照射することで惹起され、かつ複数のセンサによって検出され出力量として出力される超音波信号(10、20)を、入力量として引き取り、
-前記入力量から前記工作物(5)の超音波断層像を生成するように、
前記計算ユニットが構成されていることを特徴とする工作物検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載した工作物検査方法および請求項15の前提部分に記載した工作物検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造時における超音波に基づく方法は主として切削過程または一般に加工過程や機械・工具パラメータを監視するのに利用されてきた。例えば国際公開第2018/122119号パンフレットは、固体伝播音測定を基に工作機械の状態を監視することを述べている。米国特許出願公開第4118139号明細書は超音波測定に基づく工具の状態・破損監視に関するものであり、欧州特許出願公開第3281741号明細書に記載の工作機械では工具ホルダ内の超音波発生器が同時にセンサとして役立ち、工具の共振周波数の変化を超音波での励起に対する工具の応答として検出する。さらに独国特許発明第3627796号明細書ではボール盤またはフライス盤での工具破損を検知する固体伝播音測定構造体が開示されている。そこではセンサの脇に冷却剤管路が通され、冷却剤管路の末端から冷却液の自由噴流が工具に向けられていることによって、固体伝播音センサは工具と直接接続されている。
【0003】
なかんずく切削加工時に工作物を観察するために欧州特許第2587230号明細書は、加工中に発生する超音波振動を検出し、検出した振動スペクトルを、工作物の加工品質を判定する基礎となる三次元データ評価に供することを開示している。そこでは3つの次元が周波数軸、時間軸および振幅軸によって規定され、そのなかで可視化された状況が既知のパターン状況と比較され、こうして加工後の工作物の品質が判定される。
【0004】
工作物の内部損傷は必ずしも工作物の加工によって引き起こされるものでないが、内部損傷の工作物非破壊検査において今日ではX線法やサーモグラフィー法と並んで超音波断層撮影法や超音波断層撮影システムがますます利用されるようになった。独国特許出願公開第102005040180号明細書では工作物および万一の工作物欠陥を可視化するのに超音波断層撮影を用いることが述べられており、入力データとされる測定値は自由放射方式の超音波センサで得られ、このセンサは加工機械に取り付けられ、その都度の工作物を巡回する。
【0005】
さらに、シェーカー出版(Shaker Verlag)のシリーズ第6巻(2008)「ベリヒテ・アウス・デア・プロドュクチオーンステヒニーク”Berichte aus der Produktionstechnik”」に掲載された学位論文「フライス盤で工作物をインライン検査するための超音波断層撮影」には、一般的なHSK工具として形成された自由放射方式の超音波センサにより、フライス盤に固定した工作物にフライス加工後に超音波パルスを照射し、反射応答から工作物の超音波断層像を作成し、この断層像から工作物の内部損傷を検知できることが述べられている。
【0006】
工作物の検査に利用される他の超音波断層撮影システムとしては、工作物上に配置される超音波送受波器アレイが含まれ、工作物は異なる送波器から順次透過され、その他の受波器で記録された超音波応答が超音波断層像の生成に用いられる。そのことを以下で
図1~
図7を基にして詳しく説明する。
【0007】
図1Aは、超音波送波器Sが、波面として示された超音波Uを送波し、この超音波Uに由来するがしかし送波器と受波器との間の伝播経路中の媒質および諸事情の影響を受ける超音波信号UA0を、超音波受波器Eが受波することを示している。
【0008】
受波される超音波信号に影響するような事情とは、例えば、超音波信号の伝播経路中にある工作物の内部損傷でありえる。この状況を
図2Aが示している。送波器Sと受波器Eとの間の伝播経路中にここでは損傷Dがあり、この損傷で超音波Uが拡散され、受波器Eに到来する超音波信号UA1は超音波信号UA0よりも小さな振幅を有し、場合によってはモード転化または周波数偏移等の別の変化した性質および付加的信号成分も有する。
【0009】
図1Bと
図2Bは、伝播経路中に損傷のない場合に惹起される信号UA0(
図1A)と伝播経路中の損傷で惹起される信号UA1(
図2A)との時間的振幅推移の違いを示す。
【0010】
ところで工作物内の十分に異なる伝播経路について超音波信号UA0~UAnを記録すると、好適な逆投影アルゴリズムによって断層像、つまり工作物内部の画像を作成することができる。そのことは
図3と
図4に基づいて説明する。
【0011】
図3は、超音波断層撮影にしろ、磁気共鳴断層撮影にしろ、または核スピン断層撮影にしろ、断層撮影時に必要なデータ収集一般に関係している。このため対象物は多方面から透射され透視されまたは平らに透過され、その際に獲得される画像が透過方向における対象物の投影となる。
【0012】
それに対して
図4は、それぞれ多数のポイントまたはボクセルに細分された記録された諸投影から超音波断層像を生成することに関係しており、或る1つの投影がこれに垂直な諸投影と層毎に比較され、1つの投影内で1つのポイント、ピクセルまたはボクセルに関連付けられた諸情報は、別の諸投影内で一連のポイント、ピクセルまたはボクセルに関連付けられた諸情報と比較することができ、諸情報を関連付けられた諸ポイントの三次元様相を最終的に確定することができる。これはいわゆる逆投影アルゴリズムによって、もしくは濾波した逆投影によって、数学的には例えば逆ラドン変換に基づいて行われ、その他の逆投影アルゴリズムも利用される。
【0013】
次に
図5と
図6は、4個の送受波器S1~S4から成る超音波センサアレイが内部損傷Dのある工作物上に配置されたことを示す。
図5に示す状況において、工作物は送波器S4から超音波U4を透過され、超音波信号1、2、3は当該受波器S1、S2、S3で記録され、超音波信号2は損傷Dのゆえに、別の2つの超音波信号1、3とは別の特性(例えば低い振幅)を有すると見込まれる。それに対して
図6では送波器S3が超音波U3を送波して工作物に透過させ、付設された受波器S1、S2、S4で超音波信号1、2、4は検出される。ここで超音波信号1は別の2つの超音波信号2、4とは別の特性(例えば低い振幅)を有すると見込まれる。
図7に象徴的に示すように、諸投影として役立つ記録された超音波応答に重なる好適な逆投影アルゴリズムによって、損傷のモデル描写МDを含む工作物の超音波断層撮影モデルが作成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
公知の超音波断層撮影法は技術的に複雑であるがしかし基本的に機能性が高いのに対して、本発明の課題は、工作物の品質に関する少なくとも最初の手がかりを迅速かつ安価に得ることのできる工作物検査方法および工作物検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、工作物検査方法に関しては請求項1の特徴で解決され、工作物検査システムに関しては請求項15の特徴で解決される。
【0016】
本発明により提案される工作物検査方法は、特に工作物の内部損傷を検査するのに有利であり、繊維強化プラスチックから成る工作物に関連して特別有利である。これらの工作物では繊維、特にカーボン繊維での拡散による音波減衰の他に母材の粘弾性特性によっても音波減衰と音波速度の方向依存性とが生じる。検査のために工作物が超音波で照射され、次に引き続き、工作物の超音波照射に対する工作物の応答として超音波信号が検出され、これらの超音波信号から工作物の超音波断層像データが生成される。ところで本発明によれば、超音波断層撮影工作物検査方法の基礎となる超音波として用いるのは工作物が切削加工されることによって惹起される超音波であり、切削加工によって惹起される超音波が工作物に強制照射される。
【0017】
切削加工として適しているのは特に、工作物自体の寸法と比べて一定の延長を有する所定の加工経路に沿って工作物が工具で加工される切削法、つまり例えば工作物の内縁または外縁に沿った特定輪郭の削り落としである。理論的には旋削、或いはさまざまなフライス加工、つまり例えば仕上げ削りまたは荒削りも、本提案による超音波断層撮影工作物検査方法の出発点とすることができる。
【0018】
一連の実験で特別成果があると判明したのは、肉厚の薄い工作物または工作物部分、特に扁平に形成されて極力一定した厚さを有する工作物または工作物部分に沿ったフライス加工時の方法、つまり例えばカーボン繊維強化プラスチックから成る板状工作物における方法であり、特に、本方法の基礎となるフライス加工工程時に巡回される加工経路が工作物を完全にまたは少なくとも大部分取り囲む外輪郭に追従する場合そうである。
【0019】
本発明の根底には、超音波の伝播区間内に内部損傷があると音波伝搬が変化すると見込まれるとの知見がある。超音波照射に対する工作物の応答と解釈することのできる超音波信号はセンサで検出可能であるが、工作物の切削加工時に生成される超音波の伝搬変化に伴ってこの超音波信号も変化する。というのも、損傷の境界面で超音波が拡散され部分反射され、それに伴ってなかんずく振幅が低減するからである。
【0020】
しかし本発明の枠内で、工作物の切削加工中に連続的に生成される超音波に対する工作物の応答として超音波信号をパルス反射法で、工具または工具チャックに取り付けたセンサによって検出することが理論的には考えられよう。
【0021】
しかし、本質的に雑音が少なく振幅高さに関して改善された結果が達成されるのは超音波信号を工作物で直接取り出すときである。これには確かに基本的にさまざまな構造様式の超音波センサ、例えば自由放射センサ、スリーブ形超音波センサまたは光学的に接続されたシステムが適している。しかし、特別簡素な構造体、したがって切削加工中に工作物検査方法をインラインで利用する点に関して特別適した構造体は、超音波信号を検出する前に工作物に取り付けた接触センサ様式のセンサを超音波センサとして用いるときに得られる。この点について、先行する方法工程において被検工作物にセンサ位置決め用の基準マークを備え、または相応する受容部を備えることさえ考えられよう。
【0022】
特にフライス加工中に工作物の外輪郭全体が巡回される場合、単一のセンサを工作物に取り付ければ十分であることが判明した。比較的短い加工経路の巡回時に別のセンサを好適な位置に付け加えることによって、超音波断層像を生成するのに十分な数の超音波応答は発生させることができる。したがって工作物上にセンサアレイを取り付けることは本発明の枠内で確かに排除されていないが、しかし有利なことに、単に1個のセンサを有する構造体の意味で、また特に工作物のフライス加工中に利用する意味で、回避することができる。
【0023】
その際に考慮すべき点として、この切削加工工程、特にフライス加工工程は有利なことに同時に工作物製造時の1加工工程であり、つまり個別の工作物検査方法における1つの純然たる基準加工工程ではなく、製造に一体化された1工程であり、この工程は同時に本来の工作物製造中に工作物検査方法を実施する基礎である。しかし、工作物の最終寸法への本来の最終的フライス加工を行う前に、例えばフライス加工盤で工作物製造に備えて工作物を固定して、本発明に係る工作物検査方法の出発点として基準加工段階を前もって実施することが考えられよう。
【0024】
その際、工作物内で発生される超音波信号の品質を十分に評価可能とする意味でさらに有利なのは工作物の透過、つまりフライスから工作物に取り付けたセンサに至るまで工作物の透過を行うことであり、さらに、フライスの変化する瞬時位置から不変センサ位置に至る伝播経路の切削加工中に連続的に変化する超音波信号伝播経路を超音波信号の処理に一緒に含めることも有利である。
【0025】
有利なことに加工経路の他に工具送り、工具回転数および/または工具ジオメトリ、工具材料パラメータを、同様に工作物パラメータ(厚さ、材料等)等も、設定しまたは例えば機械制御装置から確定しもしくは読み取り、超音波信号の処理もしくは超音波断層像データの生成に関して一緒に含めることができる。工作物検査の基礎となるフライス加工に関する基準ジオメトリを有する諸部分を工作物に設けることさえ考えられよう。
【0026】
単数もしくは複数のセンサによって検出される超音波信号は記憶され、後続の工程において超音波断層像データへと処理することができる。しかし迅速に評価する意味で有利には、既に切削加工またはフライス加工中に超音波断層像データの生成が少なくとも開始され、または超音波断層像データの生成が実時間でまたは僅かな時間遅延でさえ行われる。
【0027】
超音波断層像とは超音波を介して生成される工作物内部の画像であり、この画像は複数のファイルまたはデータストリームに含まれ公知の画像処理規則に従って構成されたデータもしくはデータレコードから、表示装置で、例えば切削機械制御卓のディスプレイで表示することができる。
【0028】
ところで本発明に係る方法の意味で、超音波断層像の基礎となるこのようなデータ、つまり超音波断層像データのみを生成し、次に工作物内部損傷についての機械的評価部もしくは(半)自動化評価部に提供することができる。しかし、超音波断層像データの検査に先行する画像処理工程において、生成した超音波断層像データを可視化して超音波断層像とすることも当然考えられよう。次にこの超音波断層像は同様に機械的に、或いは工作物検査員によって評価することができる。その際超音波断層像は今日のコンピュータ支援製造施設内に存在する工作物モデルに例えばCADデータもしくはCAМデータの形で写像することができる。
【0029】
実際のところ、本発明に係る方法を用いれば、超音波断層像を作成しもしくは断層像の基礎となる超音波断層像データを作成するのに十分な数の超音波信号を用意できるだけでなく、またその逆に、超音波断層像もしくは超音波断層像データの作成を容易としかつこうして促進するために大量のデータを縮減し、および/または被処理超音波信号もしくは超音波応答をこのデータ処理前に改善することは、加工プロセスもしくはフライスプロセス中の希望するインラインデータ処理を考慮して望ましくさえあり、用意すべき計算容量を考慮して不可避でもありえる、ということが判明した。
【0030】
この目的のため、超音波信号を超音波断層像データへと処理する前に、好適な信号情報を期待できる周波数帯域のみを処理部に提供し、こうして暗雑音のみを濾別するだけでなく主要なものへの一定のデータ縮減も実行するために、例えば好適な帯域通過フィルタでもって超音波信号の濾波を行うことができる。
【0031】
さまざまな基準工作物を加工する際において、切削加工もしくはフライス加工によって生成される周波数スペクトルは工作物に応じて、場合によってはさまざまな主周波数、場合によっては共振周波数も有することがあり、これらの周波数では進展するフライス加工の時間的推移において常時またはほぼ常時、この周波数の超音波に基づく超音波信号を評価するのに十分な信号強さを有する超音波が生成される、ということが判明した。
【0032】
有利には、その内部で超音波信号が検出されることになる周波数スペクトルは、もしくは超音波断層像データが生成されることになる超音波信号の周波数スペクトルは、場合によっては狭い帯域近傍の周波数帯域を有する当該主周波数に限定され、こうしてデータ縮減によって比較的妥当な計算支出において評価速度が速まることになる。
【0033】
特定工作物について実施される本発明に係る方法にとっていかなる周波数または周波数帯域が特別適しているのかは、例えば、同じ加工パラメータのもとでまたその際に発生する周波数スペクトルを検出しながら、同一構造の加工物について事前に実施したフライス加工に基づいて確定し、または既に蓄えられた経験値から読み取ることができる。その際、特定の工具、機械および工作物に関して経験値もしくはディジタル指紋をデータベースに蓄え、次にこのデータベースから、超音波断層撮影に適した主周波数に関する当該期待値を算出しまたは少なくとも推定することも考えられよう。
【0034】
しかし有利には、センサで検出した超音波信号の有意性にとって適した複数の周波数または周波数帯域の特定は、超音波信号が生成されまたそこから超音波断層像データが生成されることになる超音波を惹起するフライス加工中に行われ、つまりフライス加工工程中にインラインで行われる。その際、超音波スペクトルにわたって分布したさまざまな周波数および/または周波数帯域での超音波信号の信号強さはフライス加工中に検出することができ、その場合、好適な周波数および/または周波数帯域の特定は平均信号強さよりも強い信号強さを有する単数または複数の周波数および/または周波数帯域の選択と並行して行うことができる。
【0035】
この選択はフライス加工の過程で自己学習AIアルゴリズムによって、加工過程中の超音波スペクトルの変化の特定傾向を含めて、実際の超音波信号で達成可能な結果もしくは予想される結果に絶えず適合させることができる。その際例えば、フライス加工の開始段階だけは超音波工作物検査に関して除外し、または例えば工作物と工具との接触のない切込み運動が実行される別の加工段階、または工作物の厚さ急変箇所またはアンダーカットを有する箇所等を除外することも考えられよう。
【0036】
例えば、工具内部のフライスからセンサに至る超音波伝播経路上で障害物、つまり内部損傷または穴等にヒットしない主周波数の超音波の振幅高さは伝播経路長が既知のとき比較的正確に予め特定することができる。その場合、伝播経路は同じ長さの諸部分に区分することができ、最も単純な場合これらの諸部分に、選択した周波数において超音波応答の同じ大きさの振幅成分がそれぞれ関連付けられる。それに対して伝播経路中に損傷があると振幅が小さくなり、比較的僅かな振幅成分が各伝播経路部分に関連付けられる。
【0037】
次に逆投影もしくは超音波断層像データ生成のため、最も簡単な場合、単に伝播経路がそれぞれ同じ大きさの伝播経路部分に区分されねばならず、伝播経路に関連付けられた超音波信号、つまり例えば主周波数範囲内の検出された超音波信号の振幅高さも同様である。好適な逆投影アルゴリズムでもって次に、検出したさまざまな超音波信号のさまざまな伝播経路の個々の諸部分に関連付けられた振幅成分は加算によって重ね合わせることができ、こうして工作物内部の写像、つまり工作物の超音波断層像、もしくは超音波断層像の基礎となる超音波断層像データが生成される。
【0038】
内部損傷のゆえに変化する可能性のある別の信号特性、例えばモード組成または周波数偏移を、振幅高さの代わりにまたはそれを補足して評価することも当然考えられよう。
【0039】
同様に、例えば当該伝播経路部分における工作物の音響特性に応じて伝播経路を同じ長さの伝播経路部分に区分するのでなく、いっそう長い伝播経路部分と短い伝播経路部分とに区分することも考えられよう。
【0040】
いずれにしても本発明に係る工作物検査方法にとって根本的なことは、切削加工が工作物内に超音波を誘発するか否か、もしくは超音波信号がセンサに到来するか否か、そしていかなる超音波信号がセンサに到来し、および/または持続的に超音波信号がセンサで検出されるか否かが、工作物の切削加工中に持続的に把握されることである。このため超音波信号はまず加工工具の瞬時位置にまたは工作物で瞬時加工が行われる瞬時加工位置に関係付けられねばならない。検出した超音波信号は次に工具とセンサとの間の特定信号伝播経路に関連付けることができる。これは、2つの選択したポイントの間の最短距離をポイントクラウドの接続ロジックから確定する反復探索アルゴリズムによって行うことができよう。
【0041】
工具位置は機械制御装置から、もしくは機械内に格納された機械座標系内のNC移動経路から読み取り、工作物座標系に変換することができる。機械座標系内に格納された工具ゼロ点座標と工作物に対する作用点つまり瞬時加工位置との間に生じえるずれは、やはり機械側に格納したデータレコードから読み取ることのできる既知の工具ジオメトリを頼りに確定することができる。
【0042】
つまり有利には工作物の切削加工中に、工具が或る実時点で工作物に作用する瞬時加工位置は連続的に検出され確定されおよび/または保管される。有利にはさらに、切削加工の時間的推移において変化する瞬時加工位置と定置センサ位置との間の瞬時伝播経路も連続的に検出し確定しおよび/または保管することができる。同様に、瞬時加工位置からセンサ位置に至る超音波信号の伝播時間は連続的に検出し確定しおよび/または保管することができる。
【0043】
その際考慮すべきこととして、信号伝播経路は必ずしも工作物内の幾何学的最短線に一致するわけでない。肝要なのはむしろ工作物内の瞬時加工位置とセンサ位置との間の音響接続線の推移である。工作物内の音響接続線は、特に工作物のジオメトリが複雑な場合、幾何学的最短接続線から著しく相違することがあるが、しかし例えば探索アルゴリズムを介して工作物の離散化CAD/CAМデータから特定することができる。
【0044】
それゆえに有利には、超音波信号が検出されることになる各瞬時加工位置について、瞬時加工位置からセンサに至る工作物内の音響接続線が特定され、瞬時加工位置および/または超音波信号に関連付けられる。その際、音響接続線は瞬時加工位置とセンサとの間の信号伝播経路に対応している。次に、瞬時加工位置および/または瞬時伝播経路から形成される位置値は、そして場合によっては、当該伝播時間から形成される伝播時間値も、各超音波信号に、または少なくとも有意性のある各超音波信号に、および/または超音波断層像データの生成に利用される各超音波信号に関連付けることができ、こうして超音波断層像データの生成に必要な逆投影アルゴリズムを実行することができる。次に、逆投影のため、複数の伝播経路の1つによってヒットされる1つのポイントに関連付けられた各超音波信号の強度値を単純に合算することができる。各音響接続経路の推移、つまり超音波信号伝播経路の推移を経路に応じて補償することを逆投影アルゴリズムに含めることも考えられよう。すなわち例えば、伝播経路が密に重なり合う箇所で、伝播経路が比較的広く離間した箇所でよりも低い係数が強度値に掛けられる。
【0045】
本発明に係る工作物検査システムは、工作物検査方法を計算機支援で実現する方法工程を実現することのできる一般に計算ユニットと称されるエンティティを有する。計算ユニットは、接続された複数の超音波センサもしくは接続された単数の超音波センサから到来する超音波信号を入力量として検出するために当該ソフトウェアルーチンを作動させる自律した計算機または計算機複合体として形成しておくことができる。超音波信号は工作物の切削加工時特にフライス加工時に工作物で惹起される超音波によって生成さ、超音波信号から工作物の超音波断層像データが生成される。しかし計算ユニットは機械に一体化した機械制御ユニットとすることもでき、または機械制御装置を補足するモジュールとして、工作機械の制御計算機内にまたは少なくとも計算集中的工程に関するなら外部の大型計算機に、当該工作物検査ルーチンを蓄えておくことができる。
【0046】
本発明の主要な利点は加工済み部材に関する後続の検査プロセスが省かれまたは縮小されることにある。選択した製造プロセスによってはこれはかなりの経費負担分であり、本発明に係る工作物検査方法もしくは工作物検査システムでもってごく安価に、時間的超過支出なしに実現することができる。同時に、選択した方策は超音波断層撮影の古典的方法と比べて、いっそう高い分解能を達成できるほどに優れていると考えることができる。
【0047】
加工工具の位置を承知して工作物の切削加工中に加工工具で励起することによって、多数の瞬時加工位置で超音波信号を検出することができる。工作物上のN個のセンサと超音波応答が関連付けられるМ個の瞬時加工位置とを用いると、МN個の透過方向でМN個の超音波信号を検出し、超音波断層像データの生成に利用することができる。それに対してセンサアレイ内で静的透過によって超音波断層撮影する古典的事例ではN個のトランスデューサにおいて(N-1)N個の方向のみが可能である。МはNよりもはるかに大きいことがあり、つまりそれらの超音波信号を検出することのできる瞬時加工位置はトランスデューサの数をはるかに上まわることがあるので、本発明に係る工作物検査方法もしくは工作物検査システムによって基本的に内部損傷の著しく精確な近似を達成することができる。
【0048】
伝播経路もしくは透過方向はそれぞれ音響接続線に沿ってセンサに接近し、それとともに、逆投影アルゴリズムを重ねることのできる中心固定点を有する格子を形成する。こうしてcm2範囲内の誤差を検波できることが判明したが、これは航空分野で一般的な検波上重要な誤差量である。しかし、mm2範囲に至るいっそう小さな誤差量も基本的に検出可能であると考えられる。
【0049】
寸法1m×1mのアルミニウム板を毎秒0.1mの送り速度、毎秒3000メートルの音波速度で循環エッジ加工する例で、最短伝播経路(0.5m)について166μsの信号伝播時間を利用する場合、板の中心にある単に1個のセンサ(N=1)で検出可能な瞬時加工位置の計算上の可能性はМ=240964となる。そのことから透過方向が240964
1個となる。それに対して、
図5、
図6による古典的方策では匹敵する分解能を達成するのに少なくとも7個のトランスデューサもしくは送受波器を利用しなければならないであろう。
【0050】
それに加えて、超音波断層撮影用の信号伝送器として加工プロセス自体を利用することによって、工作物の超音波断層撮影を実際にインラインで、つまり切削加工機械に固定した工作物の切削加工中に行うことにはじめて成功する。本発明の一実施形態による工作物検査方法と、公知の超音波断層撮影工作物検査方法との違いは、添付図に基づいて詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1A】同じ超音波励起における異なる超音波信号の生成と透過された工作物の内部損傷の有無との関係を示す原理図である。
【
図2A】同じ超音波励起における異なる超音波信号の生成と透過された工作物の内部損傷の有無との関係を示す原理図である。
【
図1B】内部損傷の有無時に同じ超音波励起で生成される超音波信号を示す。
【
図2B】内部損傷の有無時に同じ超音波励起で生成される超音波信号を示す。
【
図3】断層撮影時のデータ収集と逆投影とを説明する原理図である。
【
図4】断層撮影時のデータ収集と逆投影とを説明する原理図である。
【
図5】公知の超音波断層撮影工作物検査方法における手法を説明する図である。
【
図6】公知の超音波断層撮影工作物検査方法における手法を説明する図である。
【
図7】公知の超音波断層撮影工作物検査方法における手法を説明する図である。
【
図8A】それに対して、さまざまな瞬時加工位置で超音波信号が検出される本発明の一実施形態による工作物検査方法の間のフライス加工経過を原理図で示す。
【
図9A】それに対して、さまざまな瞬時加工位置で超音波信号が検出される本発明の一実施形態による工作物検査方法の間のフライス加工経過を原理図で示す。
【
図8B】
図8Aによる瞬時加工位置で検出される超音波信号を示す。
【
図9B】
図9Aによる瞬時加工位置で検出される超音波信号を示す。
【
図10A】
図8A~
図9Bに示した本発明の実施形態による工作物検査方法における逆投影、つまり超音波断層像データの生成を示す図である。
【
図10B】2個の超音波センサを用いた本発明の選択的な実施形態における逆投影を示す図である。
【
図11】
図8A~
図10Aで原理的に説明した工作物検査方法によって検査される工作物のCADモデルとそこに描いた音響接続線とを示す。
【
図12】
図8A~
図10Aによる工作物検査方法の実施時に検出した超音波信号の一例を、時間-周波数グラフとして示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
公知の超音波断層撮影工作物検査方法に関する
図1~
図7については既に導入部で言及したので、以下では本発明の実施形態による工作物検査方法に関係した
図8~
図12を参照する。
【0053】
図8Aと
図9Aはフライス7でフライス加工中の工作物5を2つの異なる時点t1(
図8A)、t2(
図9A)について示す。フライス7が連続的フライス加工の過程で
図8Aに示す時点t1の瞬時加工位置P1から
図9Aに示す時点t2の瞬時加工位置P2へと工作物下縁に沿って右方向に徐々に移動したことが認められる。
【0054】
時点t1でフライス加工は波面として描かれる超音波9を生成し、時点t2でも同様に波面として描いた超音波19を生成する。両方の超音波は確かに必ずしも同一であるわけでないが、しかしフライス7の送り速度、回転数および侵入深さに変化がないので著しく変化するわけではない。但し、フライス加工の過程で変化しえるのは工作物5に取り付けた超音波センサ8によってそれぞれ検出される超音波信号である。時点t1に検出した超音波信号は符号10、時点t2に検出した超音波信号は符号20で示してある。さらに、工作物に含まれた内部損傷6が認められ、この内部損傷は工作物下縁に沿ってフライス工具7が脇を通過するとき信号伝播経路内に入り、こうして超音波センサ8で連続的に検出される超音波信号に影響を加える。
【0055】
図8Bと
図9Bは、
図8Aに示す瞬時加工位置で惹起された信号10と、
図9Aに示す瞬時加工位置で惹起された信号20との、異なる時間的振幅推移を示す。記録時間の約3分の2経過後に、つまり損傷6の様相に対応する位置で、違いが認められる。
【0056】
図10Aは、逆投影アルゴリズムを用いて不均質性の再構成がどのように行われるのかを示す。t1~t2間のさまざまな時点に占められる信号伝播経路に沿って、関連付けられた超音波応答の逆投影は、内部損傷6の画像描写12を含め工作物5の超音波断層像13の作成をもたらす好適な逆投影アルゴリズムと重ね合わせて行われる。逆投影アルゴリズムには信号伝播経路もしくは透過方向のさまざまな角度位置が考慮されねばならない。この角度位置は、
図3に示す4つの側面のみからの超音波透過の変更態様において、静的断層撮影法におけるように同じ大きさのボクセルの格子ではなく、はるかに密な角度格子のもとでセンサを中心とした格子をもたらす。それに加えて、信号伝播経路は実際には大抵の場合、
図10Aに例示し説明目的のために描いただけの直線的なコース11を辿らない。
【0057】
図10Bは、異なる位置で超音波信号を検出するために2個のセンサが工作物上に配置された、本発明の選択的な実施形態における逆投影アルゴリズムを示す。ここで信号は、一方で瞬時加工位置と第一超音波センサとの間、他方で瞬時加工位置と第二超音波センサとの間の重なり合う信号伝播経路に関連付けられている。それゆえに、逆投影アルゴリズムを実行するのに、重なり合う伝播経路で倍の数の信号が利用可能である。これにより、超音波信号を検出するために単に1個のセンサを設けた本発明の実施形態におけるよりも、なおいっそう正確な内部損傷画像を作成することができる。
【0058】
この点について
図11を参照すると、この図は、本発明の上記実施形態による工作物検査方法を実施することのできる基準工作物のCADモデルを示す。このCADモデル14には1つのセンサ位置と3つの時点における3つの瞬時加工位置との間の音響接続線11が描かれている。これらの接続線は図の下側の基準工作物の1つの縁に沿ったフライス加工中の3つの時点における信号伝播経路に対応している。逆投影には音響接続線の推移も決定的影響を持つことがあり、それゆえに逆投影アルゴリズムに一緒に含めるべきであろう。
図10に原理的に示しただけの超音波断層像はCADモデル14に重ねることができ、損傷6もしくはその画像描写12の様相は十分に認めることができる。
【0059】
最後に
図12は工作物検査方法の実施時に検出した超音波信号の時間・周波数グラフ16を示す。500kHzの僅か下の範囲内に主周波数帯域17がはっきり認められ、この帯域内でフライス加工の時間的推移全体の間に強い信号が検出され、超音波応答の検出もしくはその継続処理はこの範囲に限定することができる。図示し説明した工作物検査方法の変種および変更態様は本発明の枠から逸脱することなく可能である。
【0060】
本発明に係る工作物検査方法は特に工作物を内部損傷について検査するのに適している。本発明に係る工作物検査方法は例えば繊維強化プラスチックから成る工作物を検査するのに適している。その際有利には、工作物がフライス加工され、それによって惹起される超音波が工作物に照射される。
【0061】
その際有利にはさらに、1個または2個の主に圧電式のセンサで工作物の超音波信号が検出される。このセンサは主に接触センサであり、工作物の超音波信号を検出する前に工作物に取り付けられる。有利にはさらに工具での工作物の切削加工は所定の加工経路に沿って、つまり工作物の周囲を巡る外輪郭に沿って、特に所定の工具送りで行われる。
【0062】
有利にはさらに、付属する瞬時加工位置に対応しおよび/または瞬時加工位置とセンサ位置との間の付属する瞬時伝播経路に対応した多数の位置値が、および/または付属する瞬時加工位置での超音波の付属する発生時間に対応した多数の時間値が、および/または付属する瞬時加工位置からセンサ位置に至る超音波の付属する伝播時間に対応した多数の伝播時間値が、検出した各超音波信号に関連付けられる。
【0063】
有利にはさらに、そのつどの数の位置値および/またはそのつどの数の伝播時間値に関連付けられた超音波信号に基づいて超音波断層像データを生成するために、逆ラドン変換で逆投影アルゴリズムが実行される。
【0064】
有利にはさらに、逆投影アルゴリズムを実行する前に、そして位置値および/または伝播時間値を超音波信号に関連付ける前に、超音波および/または超音波信号は複数の特定周波数または周波数帯域について濾波され、複数の特定周波数に対応しまたは複数の特定周波数帯域内にある超音波信号のみが、および/または複数の特定周波数に対応しまたは複数の特定周波数帯域内にある超音波信号の一部のみが、検出され、および/または超音波断層像データを生成するのに利用される。
【0065】
有利にはさらに、超音波スペクトルにわたって分布したさまざまな周波数および/または周波数帯域でフライス加工中に超音波信号の信号強さを検出することによって、また平均信号強さよりも強い信号強さを有する単数または複数の周波数および/または周波数帯域を選択することによって、超音波信号の有意性にとって適した複数の周波数または周波数帯域が特定される。
【0066】
有利にはさらに、生成した超音波断層像データは後続の画像処理工程において超音波断層像へと可視化されて、CAD/CAМデータとして存在しまたは作成される工作物または工作物部分のモデルとされる。
【0067】
本発明に係る工作物検査システムは特に工作物を内部損傷について検査するのに適している。本発明に係る工作物検査システムは例えば、繊維強化プラスチックから成る工作物を検査するのに適している。その際計算ユニットは特に切削加工機械、主にフライス加工機械に一体化されている。出力量を検出し出力するのに使用する複数の超音波センサとして適しているのは主に1個または2個の超音波センサである。前記単数または複数の超音波センサは、工作物に取り付けるのに好適な特に圧電センサ、主に接触センサである。計算ユニットは、工作物をフライス加工して工作物に超音波を照射することによって惹起される超音波信号を入力量として引き取るように構成されている。計算ユニットは特に、請求項7~14のいずれか1項に記載の方法工程を実施するように構成されており、および/または特に切削加工機械、特に工作物をフライス加工して超音波を惹起する機械を制御し、および/または請求項2、5または6のいずれか1項に記載の方法工程を実施する機械を制御するように構成されている。
【国際調査報告】