(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】バッテリーアノードとして使用するためのケイ素組成物材料
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20221014BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20221014BHJP
C23C 28/02 20060101ALI20221014BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20221014BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221014BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20221014BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20221014BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20221014BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20221014BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20221014BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H01M4/134
C23C28/00 A
C23C28/02
H01M4/66 A
H01M10/052
H01M10/0568
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022506754
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 NL2020050510
(87)【国際公開番号】W WO2021029769
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522044490
【氏名又は名称】ライデンジャー・テクノロジーズ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アリエン・ピーター・ディーデン
【テーマコード(参考)】
4K044
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4K044AA06
4K044AB02
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(57)【要約】
本発明は、充電式バッテリーアノードとして使用するためのシリコン複合材料であって、(i)銅又はチタンの箔を含む電気伝導性基材と、(ii)少なくとも1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を含む箔に取り付けられたた接着層と、(iii)接着層に取り付けられたシリコンを含む電極層とを含む、シリコン複合材料に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電式バッテリーアノードとして使用するためのシリコン複合材料であって、(i)銅又はチタンの箔を含む電気伝導性基材と、(ii)少なくとも1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を含む箔に取り付けられた接着層と、(iii)接着層に取り付けられたシリコンを含む電極層とを含む、シリコン複合材料。
【請求項2】
金属及び/又は金属化合物が亜鉛及び/又はスズを含む、請求項1に記載のシリコン複合材料。
【請求項3】
化合物が亜鉛及び/又はスズの酸化物である、請求項2に記載のシリコン複合材料。
【請求項4】
亜鉛の酸化物がアルミニウムでドープされており、スズの酸化物がフッ素又はインジウムでドープされている、請求項3に記載のシリコン複合材料。
【請求項5】
化合物がZnOである、請求項3又は4に記載のシリコン複合材料。
【請求項6】
シリコン層及び接着層が箔の両側に存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項7】
接着層が、0.1から5nmまでを含む厚さを有し、より好ましくは1から2nmまでの範囲の厚さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項8】
接着層が、電着、物理的気相成長、プラズマ強化化学的気相成長、又は原子層堆積法によって堆積される、請求項1から7のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項9】
電極層のシリコンが、複数の隣接したカラム及びナノ粒子集合体を含み、カラムが箔表面から垂直方向に延在し、隣接したカラムが垂直方向に延在するカラム境界によって分離される、請求項1から8のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項10】
シリコンがナノ結晶領域を含む非晶質構造を有する、請求項9に記載のシリコン複合材料。
【請求項11】
カラムが30%までのナノ結晶性シリコンを含む、請求項9に記載のシリコン複合材料。
【請求項12】
電極層が、好ましくはSi-C及び/又はSi-Nであるシリコン合金を更に含む、請求項9から11のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項13】
シリコンを含む電極層が10%から50%までの多孔率を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項14】
電極層が1μmから30μmまでの、好ましくは約10μmから20μmまでの厚さ、又は0.1から4.0mg/cm
2までの質量充填を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項15】
電解質、カソード層、セパレータ層及び請求項1から14のいずれか一項に記載のシリコン複合材料を含む充電式バッテリーであって、電解質が、カソード層とシリコン複合材料の間に配置され、リチウム塩化合物を更に含む、充電式バッテリー。
【請求項16】
カソード層が、ニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムコバルトアルミニウム酸化物、リチウムマンガン酸化物又はリン酸リチウム鉄を含む、請求項12に記載の充電式バッテリー。
【請求項17】
充電式バッテリーアノードとして使用するためのシリコン複合材料を調製する方法であって、(i)銅又はチタンの箔を含む電気伝導性基材を提供する工程と、(ii)少なくとも1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を含む箔に取り付けられた接着層を提供する工程と、(iii)低圧PECVDによって接着層に取り付けられたシリコンを含む電極層を形成する工程とを含む、方法。
【請求項18】
PECVDプロセスが、マイクロ波プラズマ又はケイ素含有ガス及び水素を含む混合物の使用を含み、層形成プロセスがナノ構造化薄膜層を生成するように構成されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
マイクロ波プラズマが細長いアンテナ線によって生成され、アンテナ線の各端部はマイクロ波発生装置に連結されている、請求項17及び18に記載の方法。
【請求項20】
ケイ素含有ガス及び水素の混合物が、シリコン合金の形成のための合金化化合物を更に含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
ケイ素含有ガス及び水素の混合物がアルゴンを更に含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ケイ素含有ガスが、モノシラン、ジシラン、トリシラン及びクロロシランを含む群から選択される、請求項18から21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーのアノードに有用である銅(Cu)又はチタン(Ti)箔を含むシリコン(Si)複合材料に関する。それは、更に、銅又はチタン箔を含むシリコン複合材料を製造する方法に関する。そのようなアノード材料は、現在使用されているアノード材料よりはるかに高い比容量を有するので、バッテリーにおいて非常に有用である。
【背景技術】
【0002】
バッテリー及びコンデンサーを含むエネルギー貯蔵装置は、様々な用途において使用されている。それらの比較的高いエネルギー密度、比較的高い比エネルギー、軽量、及び可能性のある長い使用寿命によって、先進的な充電式バッテリーは、広範囲の家電、電気自動車、送電網貯蔵及び他の重要な(将来)用途にとって望ましい。しかしながら、リチウム(Li)イオンバッテリーの増加する商業上の普及にもかかわらず、特に低い排出又はゼロ排出の、ハイブリッド電気自動車又は完全な電気自動車、ドローン、家電、エネルギー効率のよい貨物船及び機関車、航空宇宙用途、及び送電網において可能性のある用途に対して、これらのバッテリーのさらなる開発が必要とされる。
【0003】
現在、グラファイトは、一般に、著しい体積(約10%)及びモルフォロジーの変化のないリチウムイオンの可逆的インターカレーションのために、再充電可能なリチウムイオンバッテリーのアノード用材料として工業的に使用されている。リチウムイオンバッテリーの比容量を限定するグラファイトの比較的低い比容量(370mA h/g)は主要な欠点である。他の材料と比較してシリコンの約3,579mAh/gという高い理論的なリチウムイオン貯蔵比容量により、シリコンは、様々なタイプの充電式バッテリー用の炭素系アノードに対する有望な代替品と目されている。実際には、達成することができたのは低い容量のものである。現在までのところ、シリコンは炭素系アノード用の増強添加剤としてのみ商品化されている。シリコン系電極の完全な実施に対する1つの障壁は、リチウム化時にLi-Si電極が高度の粉状化及び剥落を被るという事実である。活性シリコン材料の解砕はバッテリーのより短い使用寿命を引き起こし、可能性としてバッテリー中での短絡による安全性問題を発生させかねない。
【0004】
国際公開第2015175509号において、シリコン又は炭素を含むナノワイヤーテンプレート上にシリコンが堆積されるシリコンアノードが提案されている。この方法の不都合は、様々な複雑な製作工程が必要であり、製作プロセスが相当高価になるので、シリコンアノード材料の製作に魅力がないということである。また、商業化に必要とされる工業的生産レベルへの拡張性が困難である可能性がある。
【0005】
国際公開第2016163878号において、アノード表面から垂直方向に延在する、複数の隣接したカラムを含む、ナノ構造化薄膜層を含むシリコンアノードが提案されており、ここで、カラムは、ナノ結晶領域が存在する非晶質構造を有するシリコンを含む。これらのアノードの不都合は、これらのアノードが、アノード表面からのシリコンの脱離を受けやすいことである。
【0006】
したがって、アノードを含むシリコンの調製のための代替材料及び技法に対する需要が存在する。更に、多くのバッテリー用途に適している耐剥離性アノードに対する需要が存在する。更に、経済的に魅力的なプロセスによってこれらのアノード及びバッテリーを製造する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2015175509号
【特許文献2】国際公開第2016163878号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、新規のシリコンを含むアノードを提供することである。本発明の別の目的は、様々なバッテリー用途のためのシリコンの剥離及び/又は粉状化に対するより高い抵抗力を有するシリコンアノードを提供することである。本発明のさらなる目的は、充電式バッテリーにこれらのアノードを使用することである。本発明のなおさらなる目的は、これらのアノードを製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、充電式バッテリーアノードとして使用するためのシリコン複合材料であって、(i)銅又はチタンの箔を含む電気伝導性基材と、(ii)少なくとも1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を含む箔に取り付けられた接着層と、(iii)接着層に取り付けられたシリコンを含む電極層とを含む、シリコン複合材料に関する。
【0010】
本発明は、更に、電解質、カソード層、セパレータ層及びシリコン複合材料、カソード層とシリコン複合材料の間に配置されたリチウム塩化合物を含む電解質層を含む充電式バッテリーに関する。
【0011】
本発明は、また、充電式バッテリーアノードとして使用するためのシリコン複合材料を調製する方法であって、シリコン複合材料が、(i)銅又はチタンの箔を含む電気伝導性基材と、(ii)少なくとも1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を含む箔に取り付けられた接着層と、(iii)低圧PECVDによって接着層に取り付けられたシリコンを含む電極層とを含む、方法に関する。
【0012】
本発明の利点の1つは、シリコン形成プロセスが、複数のカラム、ナノ粒子集合体、及びその間の界面でナノ構造化された連続的な非晶質層を接着層に形成する自己組織化及び自発的過程であり、単位質量当たり貯蔵容量が増加し、容量減退が減少し、経時的な安定性が向上した充電式バッテリーが得られることである。ナノ構造化非晶質アノード層中の界面は、基材として役立つ金属箔の表面に対して局所的に垂直になる。接着層は、シリコンの剥離を防止し、及び/又は粉状化を縮小する。
【0013】
本発明の方法は、例えば、基材及び/又はシリコンアノード層のための後処理法工程を必要としない、単一工程の製作プロセスとして設計することができ、それによって商業化のための工業生産レベルを容易にする。
【0014】
他に定義しない限り、本明細書において使用される科学技術用語はすべて、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書において本発明の記載で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのみにあり、本発明を限定するようには意図されない。
【0015】
本明細書において使用される場合、「アノード」という用語は、片側又は両側を電極材料で被覆した集電子を指す。
【0016】
「銅又はチタンの箔」という用語は、本明細書において使用される場合、冷間圧延又は電気めっきのいずれかによって製造された5-50マイクロメートルの範囲の厚さを有するシート状材料を含み、またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、リン(P)及び/又は銀(Ag)などの元素との、銅又はチタンの合金を含むことができる。それは平滑でもテクスチャーがあってもよく、好ましくは150~600MPaの範囲の引張強度を有し、空気中酸化から銅箔を保護するために銅箔に堆積した不動態化層を含んでもよい。
【0017】
「CVD」という用語は、本明細書において使用される場合、固体材料の薄いコーティングが高温で固体基材に蒸気又は気体の間の化学反応によって形成されるプロセスをすべて含む。
【0018】
「PECVDプロセス」という用語は、本明細書において使用される場合、マイクロ波(MW)、高周波(VHF)、無線周波(RF)の周波数範囲の電磁波の助けによって又はDC電場、又は拡大熱プラズマ(ETP)を用いて発生させたプラズマを使用してシリコンが形成される化学反応を促進する、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)のプロセスをすべて含む。
【0019】
「低圧PECVD」という用語は、本明細書において作動圧力が0.01-10mbarの範囲にあるPECVDプロセスを指す。
【0020】
MW-PECVDという用語は、本明細書において、マイクロ波がプラズマを生成するのに使用されるPECVDプロセスを指す。
【0021】
「シリコン層」という用語は、本明細書において、非晶質、又は結晶性、又は非晶質と結晶性の混合物のいずれかであるシリコン、水素化シリコン又はドープシリコンからなる5-50マイクロメートルの厚さを有する層を指す。
【0022】
「水素化シリコン」又は「a:SiH」という用語は、20%までの水素濃度を有する非晶質シリコンを指す。
【0023】
「非晶質シリコン」という用語は、ある一定の割合のナノ結晶性シリコンを含む非晶質シリコンの定義である原結晶性シリコンを含むと解釈されるべきである。この割合は、ナノ構造化シリコン薄膜層の約30%までであってもよい。言及の簡便のために、非晶質シリコンという用語は、以降では、ナノ構造化シリコン薄膜層が、ナノ構造化シリコン薄膜層のナノ結晶領域が、約30%までの割合のナノ結晶性シリコンを含んで存在し得る非晶質シリコンを含むことを示すために使用される。
【0024】
更に、「シリコン」に加えて又はその代替として、カラムはシリコン系材料、すなわちシリコン系合金又はシリコン系混合物を含んでもよいことが留意される。したがって、「シリコン」という用語はまた、シリコン系材料、すなわちシリコン系合金又はシリコン系混合物を含むと解釈されるべきである。カラムは、非晶質シリコン又は非晶質シリコン合金、又は非晶質シリコンと非晶質シリコン合金の組み合わせのいずれを含んでもよい。
【0025】
「シリコンのドーピング」という用語は、元素N、P、B、Al、Cのうちの1つの微量を含むシリコンを指し、微量元素は伝導性を増加させるか、又はシリコンの結晶構造を改善する。
【0026】
本発明によるシリコン複合材料デバイスは、アノードとして充電式バッテリーにおいて使用されるように設計される。それは、(i)銅又はチタンの箔を含む電気伝導性基材、(ii)少なくとも1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を含む箔に取り付けられた接着層、及び(iii)接着層に取り付けられたシリコンを含む電極層を含む。
【0027】
先行技術の、シリコンを含むアノードが試験され、多数回充電すると、シリコンの粉状化又は脱離及び容量の消失にまつわる問題を示した。
【0028】
出願人は、驚いたことに、シリコンを銅箔又はチタン箔に堆積させた場合、箔が金属又は金属化合物で被覆された場合、箔に対するシリコンの接着が増加し、接着層を形成することを見いだした。驚いたことに、このようにして、様々なバッテリーの用途にとってシリコンの剥離及び/又は粉状化に対するより大きい抵抗力が達成された。
【0029】
接着層は、箔自体の金属と異なる少なくとも1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を含む。したがって、銅箔は、銅及び/又は銅化合物でない、少なくとも1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を含み、チタン箔は、チタン及び/又はチタン化合物それ自体でない、少なくとも1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を含む。
【0030】
有利には、銅箔又はチタン箔に取り付けられた接着層は、亜鉛若しくはスズ又はその化合物を含む。より有利には、箔に取り付けられた接着層は、亜鉛及び/又はスズの酸化物を含む。亜鉛若しくはスズ又はその酸化物のこの層は、シリコンの異なる複合体が、箔とシリコンの間の界面に形成されているので、シリコンと銅箔又はチタン箔の間の接着を増加させる。はるかに有利には、亜鉛の酸化物はアルミニウム(Al)でドープされ、スズの酸化物はフッ素(F)又はインジウム(In)でドープされて、更に層の電気伝導性を増加させる。
【0031】
酸化亜鉛、ZnOを用いて被覆された銅の箔を使用することは最も好ましい。ZnO又はSnO2の適用は、シリコン層と金属箔の間の接着力を増加させる。
【0032】
箔に取り付けられるそのような接着層を調製するために、好ましくは物理的気相成長(PVD)、化学的気相成長(CVD)又は電着が活用される。層は好ましくは50nm未満の厚さである。
【0033】
シリコン層は、有利には銅又はチタン箔の両側に存在し、1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物で構成される接着層もまた有利には銅箔の両側に存在する。これによって、体積単位当たりの使用において、アノード容量は増加する。
【0034】
銅又はチタン箔上への、1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物の接着層は、好ましくは5nmまでの厚さ、より好ましくは1から2nmまでの範囲の厚さである。
【0035】
有利には、接着層は、銅又はチタン箔の表面の少なくとも50%、より好ましくは表面の少なくとも80%、更により好ましくは表面の少なくとも90%、最も好ましくは表面の少なくとも95%を覆う。好ましくは、層は、等しい厚さを有する平滑な層である。
【0036】
有利には、接着層は、1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を用いて銅箔を電気化学的コーティングし、1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物をその酸化物に酸化することによって製造することができる。代替として、金属及び/又は金属化合物は、金属及び/又は金属化合物ターゲットのスパッタリング、又はそのようなターゲットの電子ビーム又はレーザーアブレーションなどの物理的気相成長技法を用いて堆積することができ、又は、それは、金属-有機金属前駆体、及び水若しくは酸素、又は水若しくは酸素のプラズマなどの酸化剤を使用する、CVD、PECVD、又は原子層堆積、又はプラズマ強化原子層堆積技法を用いて堆積することができる。これらの堆積は、別個の堆積プロセスで実行されてもよく、又は、アノードを製造するのに使用されるシリコン堆積プロセスへ統合されてもよい。好ましくは、接着層は、電着、物理的気相成長、プラズマ強化化学気相成長又は原子層堆積を用いて堆積される。
【0037】
シリコン層は、好ましくは複数の隣接したカラム、及び少なくとも5nmから50nmまでの、より好ましくは10から20nmまでの範囲の直径を有する凝集粒子を含む薄膜層として接着層に取り付けられ、カラムは銅箔表面から垂直方向に延在し、隣接したカラムは垂直方向に延在するカラム境界によって分離される。
【0038】
シリコン層は、好ましくはナノ結晶領域が存在する非晶質構造を有する。より好ましくは、カラムは、30%までのナノ結晶性シリコンを含む。
【0039】
実施形態によると、ナノ構造化シリコン薄膜層は、有利にはそれぞれn型伝導性又はp型伝導性のナノ構造化シリコン薄膜層を得るために、n型又はp型ドーパントを含む。
【0040】
有利には、シリコンカラムは、好ましくはSi-C及び/又はSi-Nを含む群から選択されるシリコン合金又は複合材を更に含む。
【0041】
シリコン合金は、非晶質シリコンに対する、追加又は代替法のいずれであってもよい。したがって、本発明の態様によると、カラムの材料は、非晶質シリコン及び非晶質シリコン合金から選択される少なくとも1つの材料を含む。さらなる態様によれば、カラムの材料は、非晶質シリコン及びナノ結晶性シリコン合金を含む。幾つかの実施形態において、シリコン合金はナノ結晶性相として電極層中に存在してもよい。
【0042】
また、アノード層は、非晶質材料とナノ結晶性相の混合物を含んでもよい。例えば、非晶質シリコンとナノ結晶性シリコンの混合物、又はナノ結晶性シリコン合金との非晶質シリコンの混合物、又は主に非晶質状態のシリコンとシリコン系合金の混合物は、ある一定の割合 (約30%以内)の混合物をナノ結晶性状態で含む。
【0043】
本発明によると、非晶質シリコンカラムは、好ましくはアノード表面(すなわちアノード層と電解質層の間の界面)から垂直方向に延在し、ここで、複数のシリコンカラムは、アノード表面に垂直に延在する界面によって分離されつつ互いに隣接して配置される。
【0044】
有利には、シリコンを含む電極層は、10%から50%までの多孔率を有し、孔径は10-40nmの範囲である。これは、好ましくはBarrett-Joyner-Halena法を用いて測定される。
【0045】
充電式バッテリーアノードとして使用するためのシリコン複合材料は、好ましくは1μmから30μmまでの、好ましくは約10μmから20μmまでの厚さ、又は2.5から4.0mg/cm2までの質量充填を有する電極層を含む。
【0046】
本発明は、更に上に記載のような電解質、カソード層、セパレータ層及びシリコン複合材料を含む充電式バッテリーであって、電解質層が、カソード層とシリコン複合材料の間に配置されたリチウム塩化合物を含む、充電式バッテリーを対象とする。充電式バッテリーのカソードは、好ましくはニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムコバルトアルミニウム酸化物、リチウムマンガン酸化物、又はリン酸リチウム鉄である。ニッケルマンガンコバルト酸化物は、最も高い比容量を与えるので、最も好ましいが、しかし、他の適切な材料も同様に使用されてもよい。
【0047】
本発明の充電式バッテリーは、シリコンの使用が単位体積及び質量当たり大量のリチウムの貯蔵を可能にするので、先行技術リチウムイオンバッテリーより単位質量及び体積当たりより高度な貯蔵容量を示す。その結果、電解質を用いて充填したアノード-セパレータ-カソードスタックの比容量が、480Wh/kg(3.5Vの電圧で140Ah/kg)まで到達することができる。更に、電極層の開放ナノ構造によって、充電サイクル時、すなわち、リチウム化及び脱リチウム化の間のナノ構造化シリコン薄膜層を出入りするリチウムイオンの近づきやすさ及び拡散が向上する。
【0048】
本発明は、更に、充電式バッテリーアノードとして使用するためのシリコン複合材料を調製する方法であって、(i)銅又はチタンの箔を含む電気伝導性基材を提供する工程と、(ii)少なくとも1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を含む箔に取り付けられた接着層を提供する工程と、(iii)低圧プラズマ強化化学的気相成長(PECVD)によって接着層に取り付けられたシリコンを含む電極層を形成する工程とを含む、方法を対象とする。方法は、1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を含む接着層を含む銅又はチタンの箔に、アノード層としてのナノ構造化シリコン薄膜層を形成する工程を含み、形成プロセスは、複数の隣接したシリコンカラム及びナノ粒子集合体を含むナノ構造化シリコン薄膜層を生成するように構成される。上に説明したように、ナノ構造化シリコン薄膜層は著しくより高度な、例えば先行技術のグラファイトアノードより10倍のエネルギー貯蔵能力を提供することができる。
【0049】
形成プロセスの間、シリコン系カラムは、接着層を含む箔の表面に垂直に延在する。複数のシリコンカラムは、垂直方向に延在する界面によって分離されつつ互いに隣接して配置され、界面の分離間隔は、ナノ構造化薄膜層の表面と実質上平行である。複数のシリコンカラムは、形成されると、薄膜材料の構造分析によって検証されるように、非晶質シリコン(am-Si)を含む。
【0050】
前述のように、非晶質シリコンという用語は、原結晶性シリコンを含むと解釈されるべきであり、したがって、非晶質シリコンは、ナノ構造化シリコン薄膜層の約30%までの割合でナノ結晶性シリコンの領域を含む。更に、「シリコン」という用語もまた、シリコン系材料、すなわち、シリコン合金、ドープシリコンを含むと解釈されるべきである。
【0051】
方法の利点は、複数のシリコンカラムが自己組織化様式で形成され、箔にわたってランダムに分布し、そのため、積極的にカラム形成を操作又は制御する必要がないということである。したがって、本発明の方法は、後加工工程を含まないナノ構造化シリコン薄膜層を形成するための自己組織化、自発的過程である。その結果、方法は、商業化のための工業的レベルにシリコン系アノードを製造するのに容易に適応する。
【0052】
実施形態において、形成プロセスは、PPECVDによるアノード層の堆積を含み、それによって1μm~30μmの厚さを有するナノ構造化薄膜アノード層の堆積を可能にする。
【0053】
したがって、本発明は、シリコンの層で覆われた銅又はチタンの箔を含むアノードデバイスを調製する方法であって、低圧PECVDによって1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物で被覆された箔にシリコンを堆積させることによる、方法を対象とする。PECVDプロセスは、好ましくはマイクロ波プラズマ又はケイ素含有ガス及び水素を含む混合物の使用を含み、形成プロセスはナノ構造化薄膜層を生成するように構成される。
【0054】
さらなる実施形態において、マイクロ波プラズマは細長いアンテナ線によって生成され、ワイヤーの各端部はマイクロ波発生装置に連結される。より好ましくは、ケイ素含有ガス及び水素の混合物は、シリコン合金を形成するための合金化化合物を更に含む。
【0055】
さらなる実施形態において、PECVDプロセスは、ケイ素化合物ガスと水素、H2の混合物のマイクロ波プラズマの使用を含む。シリコン化合物は、例えばシランSiH4又はクロロシラン、例えばSiCl4であってもよい。好ましくは、ケイ素含有ガスは、モノシラン、ジシラン、トリシラン及びクロロシランを含む群から選択される。
【0056】
マイクロ波振動数の使用は、形成プロセスの間の基材のアノード成長帯域のイオン衝撃を減少させ、その結果、アノード層の成長速度が増加する。
【0057】
なおまたさらなる実施形態において、ケイ素化合物ガスとH2の混合物は更にアルゴン(Ar)を含む。そのような混合物を使用すると、低圧でプラズマ保持が可能になり、ナノ構造化シリコン薄膜層、すなわち、複数のシリコンカラム及びカラム境界、すなわちその間の界面の自己組織化成長を促進することができる。ここで、自己組織化成長とは、複数のシリコンカラム及びナノ粒子集合体、並びにその間の界面の形成が自発的に生じることを意味する。複数のシリコンカラムは、箔にわたって、及び箔に沿って実質上ランダム様式で堆積され、そのようにして実質上ランダム配列を形成する。複数のシリコンカラムの自己組織化の形成は、箔又は堆積したシリコンアノード層の後処理を回避する、1段階の製作プロセスとして見ることができる。
【0058】
更に、ナノ構造化薄膜層の形成は、前駆体の型に依存してn型又はp型いずれかのドープナノ構造化シリコン薄膜層を得るために、ドーピング前駆体の添加を含んでもよい。実施形態において、前駆体は、シランと水素の混合物に添加されるガス状種である。
【0059】
使用されるPECVDプロセスは有利には低圧PECVDプロセスである。例えば、実施形態において、ケイ素化合物ガス、例えばシランと水素の混合物が使用される場合、保持可能なプラズマを維持することができるように、低圧PECVDプロセスは、0.15mbarを超える圧力を含む。別の実施形態において、例えばシランと水素の混合物が更にアルゴンを含む場合、低圧PECVDプロセスは、0.15mbar未満の圧力を含む。
【0060】
さらなる実施形態において、PECVDプロセスはマイクロ波PECVDプロセスである。シリコンアノード層の大面積製造を可能にするために、有利な実施形態において、マイクロ波プラズマは細長いアンテナ線によって生成され、その線の各端部は、マイクロ波発生装置に連結される。細長いアンテナ線は、形成プロセス時に、プラズマリアクターにおいてマイクロ波放射の実質上線状で均質な場を与え、その結果、複数のシリコンカラムのより均質な堆積が大面積にわたって達成される。実施形態において、アンテナ線の長さは少なくとも50cm、より好ましくは少なくとも100、例えば120cm、好ましくは200cmまで、より好ましくは150cmまでである。アンテナ線の長さは、単位時間当たりのナノ構造シリコン薄膜層の製造される表面積に直接に影響を及ぼす。アンテナ線の長さを増加させると、典型的には単位時間当たり製作することができるナノ構造化シリコン薄膜層の達成可能な表面積が増加する。
【0061】
発明概念のいかなる限定もなく、堆積メカニズムについてのいかなる理論に束縛されることもないが、実施形態によれば、ナノ構造化シリコン薄膜の形成のための方法は、シリコン薄膜の成長条件を提供するように構成され、堆積したシリコン原子は、シリコン薄膜の典型的なナノ構造を結果としてもたらす比較的低い表面移動性を経験すると考えられる。
【0062】
本発明の以下の非限定的な実施形態は、添付の図を参照して更に以降に記載され、類似の文字及び番号は類似の部材を指し、図はほぼ実寸に比例する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】粗い銅箔の表面(SEM)の例を示す画像である。
【
図2】平滑な銅箔の表面(SEM)の例を示す画像である。
【
図4】両側シリコンアノード、2つの片側カソード、及び2つのセパレータを有するバッテリー電池の構造を示す図である。
【
図5】シリコン中の微小孔の粒度分布を示すグラフである。
【
図6】シリコンのラマン分光測定を示すグラフである。
【
図7A】ZnOコーティングを含む銅箔に製造された電極のシリコン電極の安定性を示すグラフである。
【
図7B】クロム酸塩コーティングを含む銅箔に製造された電極のシリコン電極の安定性を示すグラフである。
【
図9】粒子構造を示すシリコン電極のTEM画像である。
【
図10】コイン電池において数回の充電/放電サイクルを受けた後のSiを含む銅箔を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1及び
図2は、同一の銅箔であるが、箔の異なる側を示す。
図1は、シリコンアノードの基材として役立つことができる銅箔のテクスチャーのある側の表面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。表面は、数マイクロメートルまでの寸法を有する特徴を有し得る。テクスチャーのある銅箔はおよそ1マイクロメートルの粗さを有する。堆積するシリコン層は表面の粗さに追随する。
【0065】
図2において、銅箔の反対側のSEM画像を示し、またシリコンアノードの基材として役立つことができる。ここで、
図1に示される箔と比較して、表面はより平滑である。
【0066】
図3において、アノード材料の2つの模式的な構成が示される。
図3Aにおいて、両側アノードが示され、本発明の実施形態によれば、最上層はシリコンから製造された電極層(1)であり、中間の層は例えばZnOから製造された接着層(2)であり、中間の層は銅又はチタンから製造された集電子(3)である。集電子(3)は、接着層(2)及び電極層(1)によって覆われた反対側にある。
図3Bにおいて、シリコンから製造される電極層(1)を含む片側アノード構造が示され、中間の層は例えばZnOから製造された接着層(2)であり、中間の層は集電子(3)である。
【0067】
図4において、両側シリコンアノード(6)、2つの片側カソード(4)、及び2つのセパレーター(5)を有するバッテリー電池の構造が模式的に描かれる。これは、リチウムイオンバッテリー電池内部の電極スタックに典型的なレイアウトを表わす。
【0068】
図5は、Barrett-Joyner-Halena法を用いて測定されたPECVDプロセスを用いて堆積した多孔性シリコンの典型的な孔径分布を示す。それは、平均孔径が100nm未満で、ほとんどの細孔体積が10~30nmの間の大きさを有する孔でできていることを示す。孔径を積分すると、材料の多孔率が約20%であることを示す。
【0069】
図6において、シリコンのラマン分光測定が示される。477cm
-1の幅の広いピークは、非晶質シリコンの存在を示す。通常、結晶性シリコンに起因する520cm
-1の鋭いピークの欠如は、シリコンが主として非晶質であることを示す。
【0070】
図8は、典型的な材料構造を説明する断面SEM画像であり、カラムのような構造と粒子凝集体の組み合わせを描く。また、シリコンの層が基材の構造に追随することを明白に描き、シリコン充填が均質的に分布していることを意味する。
【0071】
図9は、シリコンアノード層を構成する粒子凝集体構造のTEM画像を示す。それは、アノード層を構成するシリコン一次粒子が10-20nmの大きさの範囲にあることを示す。また、それは、粒子間に十分な空間があり、リチウム化時のシリコンの膨張と、層を通る電解質の輸送の両方を可能にすることを示す。
【0072】
図10は、コイン電池において繰り返した3つのアノード間の比較を示す。箔1は、ZnOの薄層及び非晶質Siのコーティングを有する銅箔である。箔2は、Cr
2O
3の薄層及び非晶質Siのコーティングを有する銅箔である。箔3は、ZnOの薄層が最上部に堆積されたCr
2O
3の薄層、及び非晶質Siのコーティングを有する銅箔である。
【0073】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例証するために提供される。
【実施例1】
【0074】
良好な接着性を与える銅箔を、また薄いZnO層の電気化学的堆積を含む電着プロセスを用いて調製した(
図10の箔1)。その隣に、堆積したCr
2O
3コーティングを有する銅箔もまた電着を用いて調製し(
図10の箔2)、電着を用いて堆積した薄いCr
2O
3層の上にスパッタすることにより堆積したAlドープZnOコーティングを有する銅箔(
図10中の箔3)を調製した。銅箔表面の元素組成を、X線光電子分光法を使用して測定した。Table 1(表1)に示す測定結果は、銅箔の表面がZnO、Cr
2O
3又はAlドープZnOである金属酸化物の層で覆われていることを示す。
【0075】
【0076】
箔1において、より大きい割合のZnに加えて、より小さい割合のCuが測定され、そこから、ZnOの層の厚さが5nm未満であるか、又は、表面がおよそ90%しか完全にはZnOで覆われていないと結論することができる。Oの存在は、ZnがZnOに酸化していることを示す。箔2において、Cr/Cu比又はCu箔表面の部分的な被覆率に基づいて、また5nm未満の厚さを有するCr2O3コーティングでCuを被覆する。箔3は、スパッタリングツールの平均スパッタ堆積速度に基づいて5nmのAlドープZnOの高密度のコーティングを有する。AlドープZnOの層は、Cu及びCrの信号がZnのそれと比較して極めて小さいので、非常に高密度であることがほぼ確実である。Alドーピングの濃度はおよそ10%である。すべての試料において、炭素の存在は、空気への曝露による試料汚染によって引き起こされた可能性が最も高いが、P、Cl及びSの存在は、箔製造の残存の結果である可能性が最も高い。
【0077】
銅箔に対するシリコンの接着強度を試験するために、コイン電池を組み立て、Cu箔、接着層から構成される電極、並びにSi及びLi対向電極を数サイクルにわたって試験した。数サイクル後の事後の画像を
図10に示す。CuとSiの間にZnO層を有する箔では、なおSiがCu箔に取り付けられているが、SiはCr
2O
3被覆箔からほとんど完全に脱離していた。
【実施例2】
【0078】
酸化亜鉛接着層を含む銅箔を用いて製造した電極の繰り返し安定性を、クロム酸塩でできたコーティング、及び接着層のない箔を含む銅箔と比較する。箔はすべて厚さ8-10ミクロンである。リチウム金属を対向電極として使用し、この実施例において、アノードとしてではなくカソードとしてシリコン含有銅箔を働かせた。これらの実験を比較試験及び安定性試験に使用したので、結果を、アノードとしてシリコンを含む電極層に外挿することができる。
【0079】
接着層なしで製造した電極は機械的に安定ではなく、コイン電池を製造するのには使用することはできなかった。そのため、電気化学的測定は可能でない。
【0080】
クロム酸塩及び酸化亜鉛のコーティングを有する銅箔を用いて製造した電極をコイン電池に入れた。使用した電解質は、1Mの濃度を有するLiPF6を、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの体積で1:1混合物中に含んでいた。この電解質に2質量%の炭酸ビニレン及び25質量%の炭酸フルオロエチレンを添加した。
【0081】
電池は、シリコンのグラム当たり1800mAhの一定容量で繰り返した。サイクルの結果は
図7に与えられる。結果は、クロム酸塩コーティングを有する箔に比較して、ZnO被覆銅箔を使用することにより電極の安定性が非常に改善されることを示す。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電式バッテリーアノードとして使用するためのシリコン複合材料であって、(i)銅又はチタンの箔を含む電気伝導性基材と、(ii)少なくとも1種若しくは複数の金属及び/又は金属化合物を含む箔に取り付けられた接着層と、(iii)接着層に取り付けられたシリコンを含む電極層とを含
み、金属及び/又は金属化合物がそれぞれ、亜鉛及び/又はスズ、及び亜鉛及び/又はスズの酸化物を含み、接着層が、0.1から5nmまでを含む厚さを有する、シリコン複合材料。
【請求項2】
亜鉛の酸化物がアルミニウムでドープされており、スズの酸化物がフッ素又はインジウムでドープされている、請求項
1に記載のシリコン複合材料。
【請求項3】
化合物がZnOである、請求項
1又は
2に記載のシリコン複合材料。
【請求項4】
シリコン層及び接着層が箔の両側に存在する、請求項1から
3のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項5】
接着層が
、1から2nmまでの範囲の厚さを有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項6】
接着層が、電着、物理的気相成長、プラズマ強化化学的気相成長、又は原子層堆積法によって堆積される、請求項1から
5のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項7】
電極層のシリコンが、複数の隣接したカラム及びナノ粒子集合体を含み、カラムが箔表面から垂直方向に延在し、隣接したカラムが垂直方向に延在するカラム境界によって分離される、請求項1から
6のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項8】
シリコンがナノ結晶領域を含む非晶質構造を有する、請求項
7に記載のシリコン複合材料。
【請求項9】
カラムが30%までのナノ結晶性シリコンを含む、請求項
7に記載のシリコン複合材料。
【請求項10】
電極層が、好ましくはSi-C及び/又はSi-Nであるシリコン合金を更に含む、請求項
7から
9のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項11】
シリコンを含む電極層が10%から50%までの多孔率を有する、請求項1から
10のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項12】
電極層が1μmから30μmまでの、好ましくは約10μmから20μmまでの厚さ、又は0.1から4.0mg/cm
2までの質量充填を有する、請求項1から
11のいずれか一項に記載のシリコン複合材料。
【請求項13】
電解質、カソード層、セパレータ層及び請求項1から
12のいずれか一項に記載のシリコン複合材料を含む充電式バッテリーであって、電解質が、カソード層とシリコン複合材料の間に配置され、リチウム塩化合物を更に含む、充電式バッテリー。
【請求項14】
カソード層が、ニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムコバルトアルミニウム酸化物、リチウムマンガン酸化物又はリン酸リチウム鉄を含む、請求項
13に記載の充電式バッテリー。
【請求項15】
充電式バッテリーアノードとして使用するためのシリコン複合材料を調製する方法であって、(i)銅又はチタンの箔を含む電気伝導性基材を提供する工程と、(ii
)箔に取り付けられ
、0.1から5nmまでを含む、好ましくは1から2nmまでの範囲の厚さを有し、少なくとも1種若しくは複数の亜鉛及び/又はスズを含む金属、及び/又は亜鉛及び/又はスズの酸化物を含む金属化合物を含む、接着層を提供する工程と、(iii)低圧PECVDによって接着層に取り付けられたシリコンを含む電極層を形成する工程とを含む、方法。
【請求項16】
PECVDプロセスが、マイクロ波プラズマ又はケイ素含有ガス及び水素を含む混合物の使用を含み、層形成プロセスがナノ構造化薄膜層を生成するように構成されている、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
マイクロ波プラズマが細長いアンテナ線によって生成され、アンテナ線の各端部はマイクロ波発生装置に連結されている、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
ケイ素含有ガス及び水素の混合物が、シリコン合金の形成のための合金化化合物を更に含む、請求項
16又は
17に記載の方法。
【請求項19】
ケイ素含有ガス及び水素の混合物がアルゴンを更に含む、請求項
16から
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ケイ素含有ガスが、モノシラン、ジシラン、トリシラン及びクロロシランを含む群から選択される、請求項
16から
19のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】