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▶ テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイの特許一覧

<図1A>
  • 特表-液状食品用の包装機の状態監視 図1A
  • 特表-液状食品用の包装機の状態監視 図1B
  • 特表-液状食品用の包装機の状態監視 図1C
  • 特表-液状食品用の包装機の状態監視 図2A
  • 特表-液状食品用の包装機の状態監視 図2B
  • 特表-液状食品用の包装機の状態監視 図3
  • 特表-液状食品用の包装機の状態監視 図4A-4B
  • 特表-液状食品用の包装機の状態監視 図5
  • 特表-液状食品用の包装機の状態監視 図6A-6B
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】液状食品用の包装機の状態監視
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20221014BHJP
   B65B 57/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B65B57/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508800
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2020068951
(87)【国際公開番号】W WO2021028117
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】19191369.8
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
【住所又は居所原語表記】70 Avenue General Guisan,CH-1009 Pully,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100151105
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸川 義信
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・カペリ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ・ボルギ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア・マサセッシ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ディ カノサ
(72)【発明者】
【氏名】ジャコポ・カヴァラグリオ カマルゴ モラノ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ココンセッリ
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA38
3C100AA52
3C100AA56
3C100AA58
3C100BB12
3C100BB13
3C100CC02
(57)【要約】
液状食品のパッケージを生産するための包装機の状態評価用の監視装置は、包装機内の複数の振動センサー(20)に接続するための信号インターフェース(200a)を含む。監視装置は:振動センサー(20)から測定信号(SS1~SSm)を受信し、且つ包装機の予め定義された作業イベントを示すイベントタイミング信号MESを得るための論理(203~205)を含み、それぞれの作業イベントは、パッケージを生産するように動作するときの、包装機内のそれぞれの構成要素による機械的作用に対応する。監視装置は、さらに:MESを使用することによって、及び測定信号(SS1~SSm)において、それぞれの構成要素に関連付けられる信号値を特定し、且つそれぞれの構成要素の状態評価に関して信号値を評価するための論理(203~205)を含む。それゆえ、MESの提供及び使用は、包装機内の個々の構成要素の状態評価を容易にする。
【選択図】 図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状食品のパッケージ(106)を生産するように動作する包装機(10)の監視方法であって:
前記包装機(10)内の複数の振動センサー(20)から測定信号(SS1~SSm)を受信すること(302)、
前記包装機(10)の予め定義された作業イベントを示すイベントタイミング信号(MES)を得ること(301)であって、前記予め定義された作業イベントの中のそれぞれの予め定義された作業イベントは、前記パッケージ(106)を生産するように動作するとき、前記包装機(10)中のそれぞれの構成要素(D1~Dn)による機械的作用に対応すること、
前記イベントタイミング信号(MES)を使用することによって、前記測定信号(SS1~SSm)において、前記それぞれの構成要素(D1~Dn)に関連付けられる信号値を特定すること(303)、及び
前記それぞれの構成要素(D1~Dn)の状態評価に関して前記信号値を評価すること(304)
を含む、方法。
【請求項2】
前記機械的作用は、前記測定信号(SS1~SSm)のうちの少なくとも1つでの応答を生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イベントタイミング信号(MES)は、前記包装機(10)のシミュレーション及び前記パッケージを生産するためのその動作の実行によって発生される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記イベントタイミング信号(MES)は、ある時点を前記それぞれの予め定義された作業イベントと関連付ける、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記特定すること(303)は:前記測定信号(SS1~SSm)を前記イベントタイミング信号(MES)と同期させること(303a)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記特定すること(303)は、さらに:前記イベントタイミング信号に関する前記それぞれの予め定義された作業イベントに関する前記時点に基づいて、前記測定信号(SS1~SSm)のうちの1つ以上の対応する時点を前記それぞれの構成要素(D1~Dn)と関連付けること(303b)
を含み、前記対応する時点は、前記信号値のうちの1つ以上を特定する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
さらに:前記測定信号(SS1~SSm)のうちの1つに対応し且つ前記イベントタイミング信号(MES)に適合する予め定義された基準信号(SSr)を検索すること、及び前記予め定義された基準信号(SSr)を前記測定信号(SS1~SSm)のうちの前記1つと相関させて、前記測定信号(SS1~SSm)を前記イベントタイミング信号(MES)と同期させることを含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
さらに:前記包装機(10)内の基準センサー(20’)から、前記測定信号(SS1~SSm)と同時であり且つ前記イベントタイミング信号(MES)中の予め定義された時点を示す基準信号(SSr)を受信すること、及び前記基準信号(SSr)を前記測定信号(SS1~SSm)と比較して、前記予め定義された時点を前記測定信号(SS1~SSm)に割り当てて、前記測定信号(SS1~SSm)を前記イベントタイミング信号(MES)と同期させることを含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
前記信号値の少なくともサブセットが、前記測定信号(SS1~SSm)における時間的に離れたピークに対応する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記評価すること(304)は:前記信号値に関する1つ以上のパラメータ値を計算すること(304a)、及び前記状態評価に関して前記1つ以上のパラメータ値を解析すること(304b)を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のパラメータ値は:分散、平均、ピーク面積、エネルギー、パワー、二乗平均平方根、尖度、波高因子、ひずみ、スペクトル尖度、及び標準偏差のうちの1つ以上を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記解析することは:前記1つ以上のパラメータ値をそれぞれの閾値と比較すること、及び経時的な前記1つ以上のパラメータ値の変化を解析することのうちの少なくとも一方を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
さらに:前記評価すること(304)が、前記それぞれの構成要素(D1~Dn)の現在又は将来の故障状態を示すとき、前記それぞれの構成要素の保守の必要性を合図すること(305)を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
プロセッサー(210)によって実行されるとき、前記プロセッサー(210)に請求項1~13のいずれか1項に記載の方法を実行させるコンピュータ命令(212A)を含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
監視装置であって、包装機(10)内の複数の振動センサー(20)に接続するための信号インターフェース(200a;214)、及び請求項1~13のいずれか1項に記載の方法を実行するために、前記監視装置を制御するように構成された論理(203、204、205)を含む、監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、液状食品のパッケージすなわち包装の生産用に構成され且つそのために動作される包装機のコンディションすなわち状態監視、及び特に、包装機内にある複数の振動センサーからの測定信号に基づいた状態監視のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液状食品の工業生産及び包装は、自動化されており、且つ大量生産を達成するために食品包装機の高度プロセス制御(advanced process control)を伴う。動作不良及びその後の生産停止は生産コスト及び製品品質に深刻な影響を及ぼし得るため、食品包装機の安全且つ信頼性の高い動作は意義が大きい。動作不良の早期検出は、性能低下及び機械の損傷又は人の命への損害の回避において重要である。それゆえ、食品包装機の正確な状態監視は、オペレータが、緊急行動及び予防的な保守・点検(service)及び修繕で正しい判断を行うのを助けるために、一般的に必要である。
【0003】
食品包装機の固有の機械的な複雑さゆえに、状態監視を行うタスクはかなり困難である。突然の故障状態及び初期の故障状態を検出するために、食品包装機内のセンサーからの振動データの周波数又は時間-周波数の解析を行う試みが行われてきた。各センサーは、包装機内の複数の異なる機械的構成要素からの振動を拾う傾向があり、これにより、結果として生じる振動データは、食品包装機内で発生した振動が複雑に混じり合っているものを含んでしまうことになる。複数のセンサーからの振動データの周波数又は時間-周波数の解析は、包装機全体としての突然の又は初期の故障状態の存在を示すのに役立ち得るが、解析は、一般的に、包装機にある典型的には数百個の構成要素のうちの、保守・点検が必要である1つを明らかにはできない。換言すると、食品包装機の状態監視用の既存の技術は、現在の又は発展中の故障状態の発生源又は原因に関する特定性に欠けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の1つ以上の限界を少なくとも部分的に克服することが目的である。
【0005】
1つの目的は、液状食品のパッケージ生産用の機械の特異性を改善した、状態監視用の技術を提供することにある。
【0006】
さらなる目的は、単純で、効率的且つロバストな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的の1つ以上、並びに下記の説明から明らかになり得るさらなる目的は、独立請求項による包装機の監視方法、コンピュータ可読媒体、及び監視装置、従属請求項によって定義されるそれらの実施形態によって、少なくとも部分的に達成される。
【0008】
本開示の第1の態様は、液状食品のパッケージを生産するように動作する包装機の監視方法である。方法は:包装機内にある複数の振動センサーからの測定信号を受信すること;及び包装機の予め定義された作業イベントを示すイベントタイミング信号を得ることを含み、これら予め定義された作業イベントの中のそれぞれの予め定義された作業イベントは、パッケージを生産するように動作するときの包装機内のそれぞれの構成要素による機械的作用に対応する。方法は、さらに:イベントタイミング信号を使用することによって、及び測定信号において、それぞれの構成要素と関連付けられる信号値を特定すること;及びそれぞれの構成要素の状態評価に関して信号値を評価することを含む。
【0009】
第1の態様は、状態監視の特異性が、動作中に包装機によって実施される機械的作用を示し且つそれぞれの機械的作用に関わる機械の構成要素を指すイベントタイミング信号にアクセスすることによって、改善され得るという洞察に基づいている。それにより、イベントタイミング信号は、測定信号における、個々の機械の構成要素に特有であり且つそれゆえ包装機内の個々の機械の構成要素に関する状態評価を行うことができる信号値を特定するための基準として使用され得る。イベントタイミング信号が利用可能であるとき、信号値の特定は、イベントタイミング信号とのそれぞれの測定信号の単純で効率的且つロバストな時間領域適合によって、結果として起こり得る。
【0010】
本開示の第2の態様は、プロセッサーによって実行されるとき、プロセッサーに、第1の態様又はその任意の実施形態の方法を実行させるコンピュータ命令を含む、コンピュータ可読媒体である。
【0011】
本開示の第3の態様は、包装機内の複数の振動センサーに接続するための信号インターフェース、及び第1の態様又はその任意の実施形態の方法を実行するために、監視装置を制御するように構成された論理を含む監視装置である。
【0012】
さらなる他の目的、並びに本発明の実施形態、特徴、態様及び利点は、以下の詳細な説明並びに図面から明らかになる。
【0013】
ここで、実施形態を、例として、添付の概略的な図面を参照して、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】ある例による、ロール巻きで供給されるカートンの包装機の側面図である。
図1B図1Aの包装機を通る材料の流れの斜視図を示す。
図1C図1Aの包装機の横断方向封止用の機構の側面図である。
図2A-2B】いくつかの実施形態による、包装機の状態評価用の監視装置のブロック図である。
図3】いくつかの実施形態による、包装機の状態評価のための方法のフロー図である。
図4A】包装機における時間系列の機械的イベントを表すモデルイベント信号のグラフである。
図4B】包装機内の異なる機械的構成要素によって生じる複数の群の複数のイベントを示す。
図5】測定信号(上)及びモデルイベント信号(下)の合成グラフである。
図6A-6B】それぞれ健全な機械的構成要素及び故障した機械的構成要素を含む、包装機で発生した信号に関する、時間に応じた信号の大きさのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、実施形態について、全てではないがいくつかの実施形態を示す添付図面を参照して、下記において十分に説明する。実際に、本発明は、多くの異なる形態で供されてもよく、且つ本明細書に記載した実施形態に限定されるとみなされるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が適切な法的必要条件を満たし得るように提供される。
【0016】
また、可能であれば、本明細書で説明及び/又は考慮される実施形態のいずれかの利点、特徴、機能、機器、及び/又は動作態様のいずれかは、本明細書で説明及び/又は考慮される他の実施形態のいずれかに含まれてもよく、及び/又は逆も同様であることが理解される。さらに、可能であれば、特に明記しない限り、本明細書において単数形で表されるいずれの用語も、複数形も含むことを意味する及び/又は逆も同様である。本明細書では、「少なくとも1つ」は、「1つ以上(one or more)」を意味し、及びこれらの語句は、置き換え可能であるものとする。それゆえ、用語「a(ある)」及び/又は「an」は、本明細書で語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」も使用されていても、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味する。本明細書では、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、言語又は必要な暗示を表す語「含む(comprise)」又はその変形例「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などは、包括的に、すなわち、明記した特徴の存在を特定するが、様々な実施形態においてさらなる特徴の存在又は追加を除外しないために使用される。本明細書では、用語「及び/又は」は、関連のリストしたアイテムのうちの1つ以上のいずれかの及び全ての組み合わせを含む。
【0017】
本明細書では、「液状食品」は、飲料、例えばフルーツジュース、ワイン、ビール、ソーダ、並びに乳製品、ソース、オイル、クリーム、カスタード、スープ、ペーストなどを含む、室温で非固形、半液体又は流動的(pourable)であるいずれの食品も、及びまた、液体中の固形食品、例えば豆類、果物、トマト、シチューなどを指す。
【0018】
本明細書では、「パッケージ」は、限定されるものではないが、厚紙又は包装積層体、例えばセルロースベースの材料で形成された容器、及びプラスチック材料製の又はそれを含む容器を含む、液状食品を密封して閉じ込めるための好適な任意のパッケージ又は容器を指す。
【0019】
同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0020】
図1Aは、液状食品を包装するための機械10の側面図である。機械10は、ロール巻きで供給されるカートンベースの包装システムの例である。説明する例では、機械10は、カートンベースのシート材料の1つ以上のリールを保持する送込みセクション11、シート材料に、成形された開放機器を付けるためのマイクロ射出成形セクション12、シート材料を滅菌するための浴セクション13、無菌室14、シート材料をチューブに形成するためのチューブ形成セクション15、チューブ形状の材料を充填、封止及び切断するための充填セクション16、及びパッケージを出力するための送出(outfeed)セクション17を含む。
【0021】
図1Bは、概して、液状食品を連続包装するように展開され得る、図1Aの機械10の動作原理を示す。包装材料は、シート材料のリール100で、包装機が設置されている工場に届けられる。機械10は、包装材料の巻きをほどいて、例えば過酸化水素を入れている浴槽102へ供給し、包装材料を滅菌する。或いは、滅菌は、低電圧電子ビーム(LVEB:low-voltage electron beam)技術を使用することによって実施され得る。滅菌後、包装材料は、チューブ104に形成される。より詳細には、長手方向封止と呼ばれることが多いプロセスにおいて、長手方向端部が互いに連続的に取り付けられる。チューブ104が形成されたら、機械は、チューブに液状食品を充填する。機械は、チューブ104の端部に横断方向封止を行い、且つ封止された部分が形成されたらそれらを切断することによって、食品が入っているチューブ104からパッケージ106を形成する。機械は、パッケージ106を付形するために、横断方向封止を行っている間及び/又はその後に、異なる付形作業を実施してもよい。
【0022】
ロール巻きで供給される包装システムで並行して実行される重要なプロセスがいくつかあり、これにより、例えばこれらのプロセスが適切に調整されていない場合、又は摩耗した機械の部品がある場合、生産されたパッケージに品質問題を引き起こす可能性がある。機械10における1つの重要なプロセスは、充填セクション16であり、これは、図1Cに例としてより詳細に説明される。チューブ104からパッケージ106を生産するために、成形用フラップ(forming flaps)160a、160bが、シーリング用ジョー(sealing jaws)162a、162bと組み合わせて、使用され得る。各シーリング用ジョー162a、162bは、封止装置164a、164b、及び形成されたパッケージをチューブ104から分離するためのナイフ166a、166b又は他の切断要素を含む。成形用フラップ160a、160bとシーリング用ジョー162a、162bの各組み合わせは、それぞれの機械ユニット1a、1bを規定し、これは、チューブと一緒に動かされる、例えばチェーン機構(図示せず)によって駆動される。図1Cは、パッケージ形成プロセスの第1及び第2の段階を示す。第1の段階では、成形用フラップ160aは、チューブをパッケージの形状に形成し始め、及びチューブには、例えば、チューブ内へと延びるパイプ(図示せず)を経由して、液状食品が充填される。第1の段階ではまた、シーリング用ジョー162aが、封止装置164aを使用することによって、横断方向封止を形成するように動作される。第2の段階では、成形用フラップ160bが適所に保持されて、パッケージ形状が形成される。第2の段階ではまた、シーリング用ジョー162bが、封止装置164bを使用して、横断方向封止を形成するように動作される。横断方向封止が完成したら、ナイフ166bがチューブ104の下方部分を切断するように動作され、その際、両端部は、横断方向封止によって閉鎖されている。
【0023】
図1A~1Cの機械10は、単に、包装機の例として与えられている。別のよく知られているタイプの包装機は、いわゆるブランク供給包装システムを実施し、ここでは、折り畳まれたスリーブを形成するために、2つの端部が溶接された複数の包装材料(「ブランク」)が、包装機に供給され、開放スリーブが作られ、折り畳まれて封止されて、底部が形成されるようにし、液状食品が充填され、及び封止されて折り畳まれて、パッケージを形成する。
【0024】
下記では、包装機の状態監視用の技術の実施形態について、図1A~1Cの機械10を参照して説明する。しかしながら、状態監視用の技術は、限定されるものではないが、包装材料を供給及び/又は操作するための機械、任意のタイプの包装システムを備える充填機、打栓機、アキュムレータ機、ストロー取付機、二次包装機などを含む、液状食品の包装用の生産ラインに展開されるいずれの機械にも応用されてもよい。
【0025】
状態監視は、例えば図1Cに示すように、監視されるべき機械10に取り付けられる、統合される又は他の方法で含まれる複数の振動センサー20からのセンサー信号(「測定信号」)で動作する。振動センサーは、振動を示す出力信号を発生できる任意のタイプであってもよい。本明細書では、「振動」は、機械10内の機械的構成要素のいずれの震える又は揺れる動きも指す。振動センサー20の非限定的な例は、加速度計、方位センサー、位置センサー、力センサー、及びマイクロホンを含む。さらに、回転系内、例えば機械10の動いている構成要素のための駆動機構内のトルクを測定するために配置されたトルクセンサーが、振動センサーとして使用されてもよい。
【0026】
パッケージを生産するために動作可能であるとき、機械10は、多くの動いている部分を備え、且つ動いている部分間及び動いている部分と静止部分との間の双方の機械的相互作用が著しい、非常に動的なシステムである。機械10内の1つ以上の機械的構成要素が正常に動かなくなり始める場合、センサー20によって検出される振動は、変化する傾向があり、これが、時間及び/又は周波数領域におけるセンサー信号の解析によって検出されてもよい。しかしながら、それぞれの振動センサー20は、その周囲にある多くの異なる発生源の振動を拾う傾向があることが理解されるべきである。それゆえ、振動センサー20からのセンサー信号に基づいて、交換する必要のある特定の機械的構成要素を特定することは困難である。それゆえ、保守・点検及び保守の有効性は、オペレータの経験に大きく依存しており、及び生産が長期にわたって停止するという大きなリスクがある。本発明の実施形態は、この問題を軽減しようと努力している。
【0027】
図2Aは、いくつかの実施形態による状態監視を実施する監視装置200を示している。監視装置200は、有線又は無線で、振動センサー20に接続されるように構成される信号インターフェース200aを含む。説明する例では、監視装置200は、m個の振動センサーから、信号インターフェース200aを介して、センサー信号SS1~SSmを受信する。振動センサー20は、単一の包装機、例えば図1A~1Cの機械10内に配置されても、又は工場内にある複数の包装機内に配置されてもよい。監視装置200は、フィードバック装置202用の出力信号を生じるために、メモリ素子201から得られるモデル化されたイベント信号MES(modeled event signal)を考慮してセンサー信号SS1~SSmを処理するように構成されている。出力信号は、交換する必要のある特定の機械的構成要素、及びおそらくは、その構成要素の推定される残存耐用年数(RUL:remaining useful life)を示してもよい。フィードバック装置202は、例えば、ディスプレイ、タッチスクリーン、表示ランプ、及び拡声器のうちの1つ以上を含んでもよい。監視装置20は、さらに、機械10の制御装置(図示せず)に接続され、且つ緊急の故障状態が検出されるときに緊急停止を命令するように動作可能としてもよい。
【0028】
モデル化されたイベント信号MESは、パッケージ106の生産中の、機械10内での予め定義された作業イベントのタイミングを示す、予め定義された又は予め計算された信号である。各作業イベントは、動作中の機械10内のそれぞれの構成要素による機械的作用に対応する。それゆえ、MESは、機械10及び機械10の動作設定に特有のイベントタイミング信号である。MESは、それぞれの作業イベントの時点に関連付けるために見られてもよい。機械10が、例えば1つの又は一連のパッケージ106を生産するために、繰り返しの生産サイクルで動作する場合、MESは、1生産サイクル中に機械によって実施される複数の作業イベントの相対的なタイミングを表してもよい。一実施形態では、MESは、機械10及びその動作、特にパッケージ106の生産中に機械10によって実施される機械的作用を表す数学モデルを使用することによって、シミュレーションによって計算される。別の実施形態では、MESは、作業イベントの単独での検出用の特殊センサーを備えてもよく、対応する基準となる機械での測定値に基づいて、少なくとも部分的に決定される。
【0029】
MESの例が図4Aに示されており、ここでは、各垂直線が、機械10における作業イベントを表している。説明する例では、それゆえ、MESは、一連のイベントインジケータ又はフラグEを含み、及び複数の作業イベントの相対的なタイミングは、MES中のイベントインジケータEの箇所によって与えられる。MES中の各イベントインジケータEは、振動を発生させる機械的作用に対応してもよく、これは、機械10内のセンサー20のうちの1つ以上によって検出され、それゆえ、センサー信号SS1~SSmの少なくとも1つでの応答を生じる。しかしながら、いくつかのイベントインジケータEは、必ずしも、そのような応答を生じるわけではないことが考えられる。
【0030】
MESでは、複数の群の複数のイベントが、機械10の異なる機械的構成要素と関連付けられる。これは、機械10中のn個の異なる構成要素D1~Dnに関連付けられる複数の群の複数のイベントを示す図4Bに示されている。図1Cの例では、構成要素D1~Dnのうちの1つ以上は、フラップ160a、160bの1つ以上、シーリング用ジョー162a、162bの1つ以上、ナイフ166a、166bの1つ以上、又はそれぞれの機械ユニット1a、1bの駆動素子、又はそれらの任意の組み合わせに対応してもよい。
【0031】
図4Bの一番下に示されているように、異なる構成要素D1~Dnの複数の群の複数のイベントの和がMESを生じる。構成要素D1~Dnへの複数の群の複数のイベントの関連付けはまた、予め定義されており、且つMESから分かる。ある構成要素が単一のイベントに関連付けられ、それゆえ、ある群の複数のイベントは、1つ以上のイベントを含み得ることが考えられる。
【0032】
本開示の一態様は、包装機の監視方法に関する。この監視方法について、ここで、図3のフロー図、及び図1A~1Cの機械10に関連する図2Aの例示的な監視装置200を参照して例示する。説明する監視方法300は、予め計算され且つメモリ、例えばメモリ素子201(図2A)に記憶されたMESを獲得するステップ301を含む。上述の通り、MESは、機械10の予め定義された作業イベントを示し、及びそれぞれの予め定義された作業イベントは、動作可能であるときは、機械10中のそれぞれの構成要素D1~Dnによって、機械的作用に対応する。ステップ302は、振動センサー20からセンサー信号SS1~SSmを受信する。一実装例では、ステップ302は、例えば上述の生産サイクルに対応する予め定義された期間、センサー信号SS1~SSmを得て、その後、それら信号を、後続のステップによる処理に提供する。別の実装例では、ステップ302は、振動センサーSS1~SSmから信号値を連続的に受信し、且つ後続のステップによる処理にほぼリアルタイムで信号値を提供してもよい。
【0033】
ステップ303は、MESを使用することによって、機械10中のそれぞれの構成要素D1~Dnに関連付けられる信号値を特定する。それゆえ、ステップ303では、MESは、センサー信号SS1~SSmにおいて、それぞれの構成要素D1~Dnの動作を表す信号値を特定するための基準として使用される。MESを基準として使用するために、MESの時間枠及びそれぞれのセンサー信号SS1~SSmは、同期される必要があることが分かる。
【0034】
図3に示す一実施形態では、ステップ303は、センサー信号SS1~SSmの時点をMESの時点に適合させるサブステップ303aを含んでもよい。いくつかの実施形態では、この時間領域適合(time-domain matching)は、図1C及び図2Aに示されるように、機械10中の基準センサー20’によって発生されたリアルタイムの信号である基準信号SSrを使用することによって、実施される。基準センサー20’は、MES中のイベントとして含まれる特定の機械的作用を合図するように配置された位置センサー又は任意の他のタイプのセンサーとしてもよい。それゆえ、基準信号SSrは、センサー信号SS1~SSmと同時に発生され、且つMESにおける予め定義された時点を示す。そのような一実施形態では、ステップ303aは、センサー信号SS1~SSmに対して基準信号SSrを比較し、予め定義された時点をセンサー信号SS1~SSm中に割り当て、それにより、MESと同期される。いくつかの実施形態では、その代わりに、時間領域適合は、予め定義された基準信号SSrを使用することによって実施され、これは、メモリ、例えばメモリ素子201(図2A)から検索される。予め定義された基準信号SSrは、センサー信号SS1~SSmのうちの1つに対応し得、且つMESに適合されるため、SSrの時点とMESの時点との間には公知の時間的な対応がある。予め定義された基準信号SSrは、機械10と実質的に同一である基準となる機械にある1つ又は複数の振動センサーによって生じた1つ以上のセンサー信号から発生され得る。そのような一実施形態では、サブステップ303aは、予め定義された基準信号SSrを対応するセンサー信号と相関させて、例えば信号間の最適な適合を特定し得る。この相関によって、基準信号SSrは、MESとの公知の時間的な対応を有しているため、センサー信号SS1~SSmの時点はMESの時点と適合される。予め定義された基準信号SSrを使用する1つの技術的な利点は、監視方法300が、基準センサー20’のない機械10で実施され得ることである。欠点は、1つの基準信号SSrが機械10の各設定に対して予め定義される必要があることである。この欠点は、基準センサー20’を使用することによって除去され、それゆえ、多用途性及びおそらくは精度を高める。
【0035】
図3に示すように、ステップ303は、図4Bに例示されるような、複数の群の複数のイベントと構成要素D1~Dnとの間の公知の関連付けを使用する、さらなるサブステップ303bを含み得る。一実施形態では、サブステップ303bは、MESのそれぞれの作業イベントの時点に基づいて、センサー信号SS1~SSmのうちの1つ以上の対応する時点をそれぞれの構成要素D1~Dnと関連付ける。それにより、対応する時点は、それぞれの構成要素D1~Dnに関する1つ以上の信号値を特定する。
【0036】
ステップ303は、センサー信号SS1~SSmの全て、又は各構成要素に対する1つ以上の選択したセンサー信号における、それぞれの構成要素に関する信号値を特定し得る。一実施形態では、ステップ303は、センサー信号と構成要素との間の予め定義された関連付けを使用することによって、それぞれの構成要素に対して1つ以上のセンサー信号を選択し、且つそれぞれの構成要素と関連付けられる1つ又は複数の選択したセンサー信号の中から、それぞれの構成要素に対する信号値を特定する。
【0037】
ステップ303は、さらに、図5のグラフで説明される。図5の上の部分は、ステップ302によって得られた、時間に応じたセンサー信号SS1を示し、及び下の部分は、ステップ301によって得られた、時間に応じたMESを示す。SS1とMESを共通の時間枠内に配置することによって、ステップ303において、特定の構成要素によって実施された機械的作用に対応するSS1の信号値を特定することが可能になる。一実施形態では、ステップ303は、MESのそれぞれの作業イベントのタイミングに適合する、SS1中の信号値を抽出する。別の実施形態では、ステップ303は、MESでの作業イベントのタイミングに適合する時間窓内のSS1に応じて、信号値を計算し得る。例えば、信号値は、大きさ、例えば平均、和、振幅、RMS(二乗平均平方根)などの指標として、計算されてもよい。
【0038】
ステップ304は、それぞれの構成要素の状態評価に関して、ステップ303によって特定される信号値を評価する。ステップ304が、構成要素のうちの1つの現在又は将来の故障状態を特定する場合、方法300は、例えばフィードバック装置202を介して、構成要素の保守の必要性を合図し得るステップ305へ進んでもよい。
【0039】
ステップ303は、センサー信号SS1~SSmの時間的に離れたピークに対応する信号値を特定できることが分かる。各構成要素に対して別々に特定されたそのような信号値は、ステップ304において、機械10中の特定の構成要素の突然の故障状態及び初期の故障状態の特定、並びに機械10中の個々の構成要素のRUL推定のために、いずれかの従来の解析技術を応用することができるようにする。突然の故障状態は、保守・点検要員による早急な対応を必要とし、及びおそらくは機械10が遮断される、構成要素の不良又は故障状態を指す。初期の故障状態は、それぞれの構成要素の状況(state)又は状態(condition)が不完全であるため、修正措置が取られない場合には、劣化による又は致命的な不良が最終的に予想される結果となる可能性がある(又はその可能性がない)ことを指す。
【0040】
図3に示す一実施形態では、ステップ304は、それぞれの構成要素に関してステップ303によって特定された信号値に基づいて、それぞれの構成要素に関する1つ以上のパラメータ値を計算するサブステップ304a、及びそれぞれの構成要素の状態評価に関する1つ以上のパラメータ値を解析するサブステップ304bを含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のパラメータ値は:分散、平均、ピーク面積、エネルギー、パワー、RMS、尖度、波高因子、ひずみ、スペクトル尖度、及び標準偏差のうちの1つ以上を含んでもよい。サブステップ304bは、1つ以上のパラメータ値を、それぞれの閾値と比較することを含んでもよい。閾値は、それぞれの構成要素の突然の故障状態を検出するように設定され得る。その代わりに又はそれに加えて、サブステップ304bは、それぞれの構成要素の初期の故障状態の検出に関する経時的な1つ又は複数のパラメータ値のトレンド及び予測を含んでもよい。図3に示すように、方法300は、ステップ304bによる解析のための時間系列のパラメータ値、例えばトレンド及び予測を生じるために、ステップ302~304aを繰り返してもよい。例えば、ステップ304bは、初期の故障状態の検出のために、時間毎又は日毎のパラメータ値を比較してもよい。
【0041】
構成要素が劣化すると発生し得る振動の変化を例示するために、図6A~6Bはパワー信号を示し、このパワー信号は、振動信号の振幅の二乗を表し、且つ特定の構成要素によって実施された機械的作用に起因する2つの時間的に離れたピーク(円で囲まれている)を含む。図6Aでは、構成要素は健全である。図6Bでは、構成要素は故障しており、及び2つのピークの大きさは著しく増大している。
【0042】
ステップ304における解析は、利用可能なセンサーデータ及び所望の出力に依存して、異なるレベルの複雑さで実施され得ることが分かる。当業者は、状態評価に対して、限定されるものではないが、統計的手法、例えば回帰に基づく手法、ウィーナー過程(Wiener processes)、ガンマプロセス(Wiener processes)、マルコフ(Markovian)ベースの手法、確率的フィルタリング(stochastic filtering)ベースの手法、共変量ベースのハザード手法、隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model)ベースの手法などを含む、大量のよく知られている解析技術の中から選択し得る。ステップ304は、故障状態の検出及び/又はRUL推定のために機械学習(ML)又は深層学習(DL)を含むことも考えられる。
【0043】
図2Aに戻ると、監視装置200は、図3の方法300を実施するように構成されている論理を含んでもよい。説明する例では、論理は、1組のモジュール又はユニット203~205を含む。信号適合器203は、センサー信号SS1~SSmをMESと同期させるために、ステップ301、302及び303aを実行するように構成されている。信号値抽出器204は、同期したMESを使用することによって、センサー信号SS1~SSmからそれぞれの構成要素に関する1つ以上の信号値を抽出するために、ステップ303bを実行するように構成されている。解析器205は、それぞれの構成要素の状態評価に関する信号値を評価するためにステップ304を実行するように構成されている。
【0044】
それぞれのモジュール203~205は、ハードウェア、又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって実装されてもよい。いくつかの実施形態では、監視装置200は、例えば図2Bに示すような、ソフトウェア制御計算装置に実装されてもよい。図2Bの例では、監視装置200は、プロセッサー210及びコンピュータメモリ212を含む。プロセッサー210は、例えばCPU(「中央処理装置(Central Processing Unit)」)、DSP(「デジタル信号プロセッサー(Digital Signal Processor)」)、マイクロプロセッサー、マイクロコントローラ、ASIC(「特定用途向け集積回路(Application-Specific Integrated Circuit)」)、個別のアナログコンポーネント及び/又はデジタルコンポーネントの組み合わせ、又は何らかの他のプログラム可能な論理デバイス、例えばFPGA(「フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array)」)のうちの1つ以上を含んでもよい。コンピュータ命令を含む制御プログラム212Aが、メモリ212に記憶されており、且つプロセッサー210によって実行されて、上記で例示したような監視方法を実行するようにする。有形の(持続性の)製品(例えば磁気媒体、光ディスク、リードオンリーメモリ、フラッシュメモリなど)とし得るコンピュータ可読媒体20又は伝搬信号で、制御プログラム212Aは、監視装置200に供給されてもよい。図2Bに示すように、メモリ212はまた、プロセッサー210によって使用するためのデータ212B、例えばMES、予め定義された基準信号SSrなどを記憶してもよい。監視装置200は、さらに、信号インターフェース200a(図2A)を含み得る通信インターフェース214、並びにフィードバック装置202及び/又は機械10の制御装置、及び/又は存在する場合には外部メモリ素子201と通信するためのさらなる信号インターフェースを含む。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A-4B】
図5
図6A-6B】
【国際調査報告】