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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】粒状セラミック混合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 33/135 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
C04B33/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508982
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020072869
(87)【国際公開番号】W WO2021028572
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】19191857.2
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520404573
【氏名又は名称】ベコー アイピー ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セヴェリン,エリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス,アーウィン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ミサ,ジョン ヴィンセント エイ.
(57)【要約】
本発明は、粒状セラミック混合物を製造するための方法に関し、当該方法は、以下の工程:
(a)流動床燃焼フライアッシュを酸性水溶液と接触させて酸性流動床燃焼フライアッシュスラリーを得る工程と、
(b)工程(a)で得られた前記スラリーから過剰の酸を除去して固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュを得る工程と、
(c)(i)工程(b)で得られた前記の固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュと、
(ii)粘土と、
(iii)任意に、長石と、
(iv)任意に、他の成分
とを一緒に接触させる工程
を含み、粒状セラミック混合物を生成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状セラミック混合物を製造するための方法であって、当該方法が、以下の工程:
(a)流動床燃焼フライアッシュを酸性水溶液と接触させて酸性流動床燃焼フライアッシュスラリーを得る工程;
(b)工程(a)で得られた前記スラリーから過剰の酸を除去して固体の酸処理流動床燃焼フライ酸を得る工程;
(c)(i)工程(b)で得られた前記の固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュと;
(ii)粘土と;
(iii)任意に、長石と;
(iv)任意に、他の成分
とを一緒に接触させる工程
を含み、粒状セラミック混合物を生成する、粒状セラミック混合物の製造方法。
【請求項2】
前記酸性水溶液が、酢酸(エタン酸)水溶液、アスコルビン酸((2R)-2-[(lS)-l, 2-ジヒドロキシエチル]-3, 4-ジヒドロキシ-2H-フラン-5-オン)水溶液、塩酸水溶液、硝酸水溶液、シュウ酸(エタン二酸)水溶液、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸性水溶液が酢酸(エタン酸)水溶液である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸性水溶液が0.2M~3.0Mのモル濃度を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(b)が、前記スラリーをすすぐ工程と、固形分から上清を除去して前記の固体の酸処理流動床燃焼フライ酸を得る工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記粒状セラミック混合物が:
(a)10重量%~60重量%の流動床燃焼フライアッシュ;
(b)15重量%~55重量%の粘土;
(c)0重量%~35重量%の長石;及び
(d)任意に、100重量%となる他の成分
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒状セラミック混合物が:
(a)20重量%~50重量%の流動床燃焼フライアッシュ;
(b)15重量%~35重量%の粘土;
(c)0重量%~25重量%の長石;及び
(d)任意に、100重量%となる他の成分
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記流動床燃焼フライアッシュが、循環流動床燃焼フライアッシュである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記流動床燃焼フライアッシュが、5.0重量%より多い硫黄の酸化物を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記流動床燃焼フライアッシュが、10重量%より多い硫黄の酸化物を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床燃焼フライアッシュ、特に循環流動床燃焼フライアッシュを粒状セラミック混合物に混合することに関する。
【背景技術】
【0002】
流動床燃焼(FBC, Fluid bed combustion)発電プラント 対 微粉炭燃焼(PCC, pulverized coal combustion)発電プラント
【0003】
石炭火力発電の結果、大量のフライアッシュが産出される。これは、予測可能な将来に続くことになる。このフライアッシュ廃物をどのように利用するかについて関心が持たれている。現在、多量のフライアッシュが、ポゾラン又はセメント系材料としてコンクリートに使用されている。他の用途としては、煉瓦製造や土壌安定化材料としての使用が挙げられる。しかし、多くのフライアッシュは埋め立て続けられている。これは明らかに、環境的にも経済的にもコストがかかる。それゆえ、フライアッシュを原料として使用できる製品やプロセスの開発には、継続的な価値と興味がある。これにより、埋め立てされるフライアッシュの量が最小限に抑えられ、他の未使用の原料の使用量が低減される。
【0004】
火力発電や焼却のための流動床燃焼(FBC)技術の導入により、発電からのフライアッシュをどのように再利用するかの問題がより難しくなってきている。流動床燃焼(FBC)プラント設計は、多くの数十年にわたって発電所において標準とされてきた微粉炭燃焼(PCC)プラント設計とは全く異なっている。FBCプラントにより産出されたフライアッシュは、PCCフライアッシュと異なり、FBCフライアッシュは、セラミック生産等の他の用途に再利用するには、PCCフライアッシュよりもはるかに硬い。
【0005】
流動床燃焼器は、PCC設計よりも低温で、アッシュ及び/又は砂の加熱流動床内で石炭を燃焼させる。流動床燃焼(FBC)の設計には、「気泡」流動床並びに「循環」流動床設計が含まれる。気泡流動床はまた、「沸騰流動床(boiling fluid bed)」とも呼ばれる。CFBとして知られている循環流動床は、最も一般的である。種々のFBC設計は、それらが作動する圧力が大気圧か加圧かのいずれかに基づいてさらに分けることができる。
【0006】
循環流動床(CFB)炉は、燃焼ゾーンから流入した排気流から大部分の高温アッシュ(任意の微細未燃焼燃料を含む)を流動床燃焼ゾーンの底部に連続的に再循環させることによって作動する。最終的なフライアッシュの割合は、排気から連続的に除去され、新鮮な燃料と添加物が連続的に燃焼ゾーンに添加される。このシステムは、(燃焼ゾーンを通る燃焼粒子の繰り返し通過による)非常に高いレベルの炭素燃焼を含む多くの利点を有しており、加えて、燃料は燃焼ゾーンに添加する前に粉砕される必要がない。高温および、CFB設計においてアッシュ粒子が経験する高レベルの粒子:粒子相互作用は、PCCアッシュにおいては通常に見られない鉱物相が形成される機会を与える。
【0007】
流動床燃焼(FBC)技術は、このような技術を用いたプラントは汚染が少ないため、ますます普及しつつある。FBCプラントは、従来のPCCプラントよりもはるかに低いレベルの亜酸化窒素を放出し、硫黄酸化物の除去が容易であり、FBCプラントは、低品位炭のようなより広い範囲の燃料、およびタイヤおよび油のような燃料でさえも燃焼することができる。これらの低品位燃料は、高い硫黄含有量を有することが多い。
【0008】
FBCプラント設計における高温粒子との固体/固体接触は非常に高い熱交換係数を与える。これは、PCCプラントにおける1400-1700℃と比較して、FBCプラントが、典型的には800-900℃の間のかなり低い温度で効率的に電力を産出できることを意味する。より低い燃焼温度で効率的に作動できることは大きな利点を有する。特に、FBCプラントにおいては亜酸化窒素の生成が低減され、それによりNOx汚染が低減される。
【0009】
硫黄酸化物の除去はまた、PCCプラントと比べてFBCプラントの方がより簡単である。典型的には、PCCプラントは、無煙炭のようなより高品質で、より低硫酸塩石炭を燃焼させる。典型的には、PCCプラントは、排煙脱硫(FGD, flue gas desulfurisation)と呼ばれるプロセスを介して硫黄酸化物を化学的に除去するために排ガスを処理する湿式スクラバー(wet scrubbers)を有する。これは、高価で集中的な工程である。
【0010】
PCCプラントとは対照的に、FBCプラントは、典型的には、燃料と石灰石/チョーク/ドロマイトの混合物を燃焼させることにより、それらの硫黄酸化物放出を減少させる。石灰石材料(炭酸カルシウム)は流動層内に酸化カルシウムを形成する。これは、燃料中の硫黄化合物の燃焼から硫黄酸化物と反応して、その場で硫酸カルシウムを形成する。これにより、硬石膏(anhydrite)等の硫酸カルシウム鉱物の流動床において、温度が十分に低く、安定して容易に形成することができる。
【0011】
このような反応は、使用される高温のためにPCCプラントにおいては起こり得ない。従って、別のFGDシステムが必要となる。
【0012】
硫黄酸化物をその場で反応させるために石炭に石灰石材料を添加することは、煙道ガスをスクラブするよりもはるかに簡単なプロセスである。
【0013】
流動床燃焼(FBC)フライアッシュと微粉炭燃焼(PCC)フライアッシュとの間の違い
【0014】
流動床燃焼(FBC)プラントにおけるボイラーへのかなりの量の石灰石材料の添加は、流動床燃焼(FBC)フライアッシュが典型的には高レベルのカルシウム種および硫黄種を含むことを意味する。
【0015】
通常、同等の酸化カルシウムレベルとして報告されているFBCフライアッシュ中のカルシウム種のレベルは、PCCプラントからの高カルシウム酸化物(タイプC)フライアッシュよりも高いことが多い。
【0016】
さらに、通常、同等の硫黄酸化物レベルとして報告されているFBCフライアッシュ中の硫黄種のレベルは、PCCフライアッシュの硫黄酸化物レベルよりも高い。
【0017】
ASTM-C618標準は、ポゾランまたはセメント質製品として使用するのに適したフライアッシュ品質を規定するために一般的に使用される。ASTM-C618に適合する材料についてのSO3上限は5重量%である。FBCフライアッシュは、典型的には、はるかに高いレベルの硫黄の酸化物を含む。
【0018】
物理的に、FBC設計からのフライアッシュは、従来のPCCフライアッシュとは全く異なる。FBCフライアッシュは、従来のPCCプラントの排気システムで遭遇する非常に高い温度にさらされていない。PCCプラントで産出されたフライアッシュは、非常に高温の流出燃焼ガス中に懸濁されている。経験される温度は、粒子を溶融するのに十分に高い。これは、PCCフライアッシュ粒子の大部分が球状であり、ガラス質の非晶質相で形成されていることを意味する。
【0019】
対照的に、FBCプラント、特にCFB燃焼プラントからのフライアッシュは、FBCのより低い温度のために溶融されることはない。その結果、FBCフライアッシュ粒子は不規則な形状を有し、ガラス質相を含まない。別の違いは、フライアッシュが高温にさらされた時間が、FBCプラント、特に、CFB燃焼プラントのような高レベルのフライアッシュが再循環されるプラントにおいては、典型的には非常に長いことである。これは、例えば、PCCフライアッシュ中の鉄が、マグネタイト及びヘマタイトとしてしばしば存在する一方、FBCフライアッシュ、及びCFB燃焼フライアッシュにおいては、ほとんどフェライトとして存在することを意味する。これは、例えば、鉄の除去が容易であるという大きな意味を有する。
【0020】
PCCとFBCフライアッシュは、化学的に異なり(例えば、典型的には異なるレベルのカルシウム種およびスルフェート種を有する)、物理的に異なり(例えば、典型的には異なる形態、例えば、不規則/非ガラス質(FBC)と比較して、規則的/ガラス質(PCC)を有する)、および鉱物学的に異なる。又、FBCフライアッシュは、PCCフライアッシュよりも小さな直径を有しており(自己粉砕作用による)、PCCフライアッシュと比べて残留炭素レベルが低い。
【0021】
粒状セラミック混合物への、流動床燃焼(FBC)フライアッシュ、特に循環流動床(CFB)燃焼フライアッシュの混合に関する問題
【0022】
FBCフライアッシュの大部分は、現在、埋め立てに送られるか、又は非常に低い価値の土壌安定化剤として使用される。これは、ポゾランとしてのPCCフライアッシュよりも有効ではない。また、高いスルフェートレベルは問題を引き起こす可能性がある。FBCフライアッシュの代替用途を見出す必要が高まっている。可能性のある高価値の使用は、セラミック床タイル及び磁器床タイルのようなセラミック物品である。
【0023】
フライアッシュは、セラミック物品において粘土の部分置換として使用することができる。フライアッシュは、粒状セラミック混合物を形成するために、粘土及び、長石のような他の材料と組み合わせることができる。前記の粒状セラミック混合物は、セラミックタイル、特に磁器床タイルのようなセラミック物品に形成することができる。このようなセラミック物品は、かなりのレベルのフライアッシュを用いて製造することができ、これは当該技術分野で知られている。
【0024】
フライアッシュによる粘土の置き換えは、適切な粘土の供給が制限されつつあるので有益である。フライアッシュにより置き換え可能な粘土の実用レベルを最大化することは有益である。
【0025】
しかしながら、当該技術分野で使用されているフライアッシュは、ほとんどPCCフライアッシュである。FBC、特にCFB燃焼は比較的最近の開発であり、以前のセラミック技術が開発されたときには使用されなかった。従って、セラミックス用途におけるFBCフライアッシュの使用に特に関連した問題は認識されず、または関連していても、ほとんどフライアッシュ加工品の本体に関するものであった。例えば、当該技術には、非晶質ガラス相の球体からなるフライアッシュが記載されており、これはPCCフライアッシュの説明であって、FBCフライアッシュではない。当該技術がPCCフライアッシュを参照していることは明らかである。
【0026】
本発明者らは、粘土、長石および必要に応じて他の成分を含有するセラミック組成物において、PCCフライアッシュをFBCフライアッシュ、特にCFB燃焼フライアッシュと単に置換するだけで、欠陥を引き起こし得ることを発見した。FBCフライアッシュを用いて作製されたセラミック物品は、焼成サイクル中にクラックが生ずることが観察された。これは、セラミック床タイル、特に磁器床タイルのような高品質で、大きなセラミック物品を製造する際に特に問題であり、このような欠陥は特に許容できない。低吸水性、高曲げ強度を必要とする磁器床タイルへのフライアッシュの混入は特に困難である。
【0027】
本発明者らはまた、この問題が、FBCフライアッシュがセラミックス用途においてより高いレベルで使用される場合に悪化することも明らかにした。
【0028】
理論により拘束されることを望むものではないが、典型的なセラミック製造プロセスの高エネルギー環境と、粘土とFBCフライアッシュ粒子との間の強い表面/表面接触の高レベルは、材料の焼成挙動を変化させる高レベルの特定の鉱物相の形成をもたらすと仮定される。これにより、セラミック物品の割れが生じる。
【0029】
本発明者らは、粒状セラミック混合物を調製する過程において、FBCフライアッシュを水性酸溶液で処理すると、FBCフライアッシュ、特にCFB燃焼フライアッシュの、粒状セラミック混合物への混合に関連する問題が克服できることを見出した。これにより、FBCフライアッシュ、特にCFB燃焼フライアッシュを粒状セラミック混合物に混合することが可能となり、クラックの問題なく、セラミック床タイルや磁器床タイルのようなセラミック物品に形成することができる。
【0030】
理論により拘束されることを望むものではないが、FBCフライアッシュの酸処理とそれに続く粒状セラミック混合物への混合は、異なる熱的挙動を有し、容易にひび割れしない異なる鉱物組成物および相の形成をもたらすと仮定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明は、粒状セラミック混合物の製造方法を提供し、当該方法は、以下の工程:
(a)流動床燃焼フライアッシュを酸性水溶液と接触させて酸性流動床燃焼フライアッシュスラリーを得る工程;
(b)工程(a)で得られた前記スラリーから過剰の酸を除去して固体の酸処理(solid acid treated)流動床燃焼フライ酸を得る工程;
(c)(i)工程(b)で得られた前記の固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュと;
(ii)粘土と;
(iii)任意に、長石と;
(iv)任意に、他の成分
とを一緒に接触させる工程
を含み、粒状セラミック混合物を生成することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
発明の詳細な説明
【0033】
粒状セラミック混合物を製造するための方法
粒状セラミック混合物を製造するための前記方法は、以下の工程:
(a)流動床燃焼フライアッシュを酸性水溶液と接触させて酸性流動床燃焼フライアッシュスラリーを得る工程;
(b)工程(a)で得られた前記スラリーから過剰の酸を除去して固体の酸処理流動床燃焼フライ酸を得る工程;
(c)(i)工程(b)で得られた前記の固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュと;
(ii)粘土と;
(iii)任意に、長石と;
(iv)任意に、他の成分
とを一緒に接触させる工程
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0034】
処理されたフライアッシュと、粘土のような他のセラミック材料を接触させる前に、FBCフライアッシュを水性酸で処理することは、複数の利点を有する。例えば、これは、このような用途では実際に酸処理を必要とするのがフライアッシュのみであるので、必要とされる酸の量を最小にする。本発明の方法は、酸とフライアッシュとの間の化学反応の可溶性生成物の除去を必要とすることがある。
【0035】
更に、フライアッシュは、多くの粘土のように水性混合物中にて膨潤(それゆえゲル化)しないので、フライアッシュを酸だけに接触させることにより、固形懸濁液の濾過がより容易になる。洗浄粘土、並びにフライアッシュに関連したゲル化および増粘は、非常に希薄な溶液を使用しない限り、上澄み液の分離を遅くし、複雑にすることになる。
【0036】
酸性流動床燃焼フライアッシュスラリーを得る工程(a)
流動床燃焼フライアッシュを酸性水溶液と接触させて酸性流動床燃焼フライアッシュスラリーを得る。好ましくは、工程(a)のpHは、2.0~7.0未満の範囲内であり、好ましくは2.0~6.0、又は2.0~5.0、又は2.3~4.0である。
【0037】
固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュを得る工程(b)
工程(a)で得られたスラリーから過剰の酸を除去して、固体の酸処理流動床燃焼用フライ酸を得る。
【0038】
典型的には、工程(b)は、スラリーをすすぐ工程と、固形分から上清を除去する工程を含む。この典型的なすすぎ工程は、例えば2回以上、または3回以上、または4回以上繰り返すことができる。
【0039】
粒状セラミックス混合物を生成する工程(c)
工程(c)の間、以下の成分を一緒に接触させる。
(i)工程(b)で得られた固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュ;
(ii)粘土;
(iii)任意に、長石;及び
(iv)任意に、他の成分
【0040】
粒状セラミックス混合物
この粒状セラミック混合物は、固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュ、粘土、長石、及び任意に他の成分を含む。
【0041】
好ましくは、前記粒状セラミックス混合物は、
(a)10重量%~60重量%、又は20重量%~50重量%の固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュ;
(b)15重量%~55重量%の粘土;
(c)0重量%~35重量%、又は5重量%~25重量%の長石;及び
(d) 任意に、100重量%となる他の成分
を含む。
【0042】
好ましくは、前記粒状セラミックス混合物は、
(a)20重量%~50重量%の固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュ;
(b)15重量%~35重量%の粘土;
(c)0重量%~35重量%、又は5重量%~25重量%の長石;及び
(d) 任意に、100重量%となる他の成分
を含む。
【0043】
流動床燃焼フライアッシュ
好適な流動床燃焼フライアッシュは、大気圧流動床燃焼フライアッシュ、加圧流動床燃焼フライアッシュ、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0044】
好適な流動床燃焼フライアッシュは、循環流動床燃焼フライアッシュ、バブリング流動床燃焼フライアッシュ、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0045】
好ましい流動床燃焼フライアッシュは、循環流動床燃焼フライアッシュである。
【0046】
典型的には、流動床燃焼フライアッシュは、4.0重量%より多い硫黄の酸化物、または5.0重量%より多い、または6.0重量%より多い、または6.5重量%より多い、または7.0重量%より多い、または10重量%より多い硫黄の酸化物を含む。
【0047】
典型的には、流動床燃焼フライアッシュは、石炭、典型的には流動床燃焼石炭フライアッシュから誘導される。
【0048】
固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュ
典型的には、固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュは、4.0重量%より多い硫黄の酸化物、または5.0重量%より多い、または6.0重量%より多い、または6.5重量%より多い、または7.0重量%より多い、または10重量%より多い硫黄の酸化物を含む。
【0049】
硫黄の酸化物
フライアッシュの元素組成の分析は、X線蛍光(XRF)技術によって最も一般的に行われる。これは、鉄、アルミニウム、シリコン、スルフェートおよびカルシウムのようなより重い元素のレベルを測定する。慣例では、これらは、酸化物の等価化学量論的レベルとして報告されている。硫黄はSO3として報告されている。
【0050】
「スルフェート」という用語は技術的にSO4 2-イオンを意味するが、SO3は、しばしばセラミックの文献において「スルフェート」と呼ばれる。時々、硫黄は元素の硫黄として報告されることもあるが、硫黄がどのように報告されているかは、存在する実際のレベルに差がない。したがって、本発明では、より一般的である「硫黄の酸化物」という用語を使用する。「硫黄の酸化物」、SO3及び「スルフェート」は、本明細書で使用するときに交換可能な用語である。
【0051】
フライアッシュ中に存在する硫黄の酸化物のレベルは、以下のXRF法を用いて決定することができる。
【0052】
好適なXRF装置は、クレイス(Classe)社からのサンプルディスク調製のためのAegon2自動融合装置を使用して製造されたサンプルディスクを用いた、マルバーン パナリティカル(Malvern panalytical) 社からのイプシロン4 XRF分析装置である。アッシュサンプルは、溶融したホウ酸リチウムフラックス中に自動的に溶解され、ディスク状に形成される。これは次に、分析のためにイプシロン4内に配置される。機器は、製造業者の指示に従って操作されるべきである。SO3を測定する際には、イプシロン4を、4.5kVの電圧、3000μaの電流に設定し、媒体としてヘリウムを使用し、フィルタは使用せず、450秒の測定時間とする。
【0053】
粘土
好適な粘土としては、ウクライナ(Ukrainian)粘土やイライト(illitic)粘土などの標準粘土が挙げられる。好ましい粘土は、標準粘土と高可塑性粘土との組み合わせである。標準粘土と高可塑性粘土との重量比は、2:1~5:1の範囲であってもよい。好適な粘土は、ベントナイト粘土等の高可塑性粘土である。典型的には、高可塑性粘土は25.0より大きいアッターバーグ(Atterburg)可塑性指数を有する。典型的には、標準的な粘土は、25.0以下のアッターバーグ可塑性指数を有する。高可塑性粘土の量は、粒状セラミック混合物に十分な堅牢性および流動性を提供するように選択することができる。
【0054】
長石
好適な長石には、ナトリウム及び/又はカリウム長石が含まれる。
【0055】
任意の他の成分
他の任意成分には、化学添加剤および結合剤が含まれる。
【0056】
酸性水溶液
前記酸性水溶液は、有機酸性水溶液、無機酸性水溶液、又はこれらの組み合わせとすることができる。この酸性水溶液は弱酸であることが好ましい。
【0057】
適した酸性水溶液は、酢酸(エタン酸)、アスコルビン酸((2R)-2-[(lS)-l, 2-ジヒドロキシエチル]-3, 4-ジヒドロキシ-2H-フラン-5-オン)、塩酸、硝酸、シュウ酸(エタン二酸)、硫酸、及びこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0058】
好ましくは、前記酸性水溶液は、酢酸(エタン酸)の水溶液である。酢酸(エタン酸)の好適な供給源は、食酢である。
【0059】
典型的には、工程(a)の間、前記酸性水溶液は0.2M~3.0M、または、0.4M~2.0M、または0.5M~1.5Mのモル濃度を有する。
【0060】
好ましくは、工程(a)の間の前記酸性水溶液のpHは2.0~7.0未満の範囲内であり、好ましくは2.0~6.0、又は2.0~5.0、又は2.3~4.0である。
【0061】
好ましくは、前記の酸は硫酸ではなく、前記の酸性水溶液は硫酸の水溶液ではない。
【実施例
【0062】
本発明の実施例
FBCフライアッシュを取り出し、10%(容量%)酢酸(エタン酸)水溶液中で、酢酸(エタン酸)水溶液500mlに対して50gのFBCフライアッシュの比率にて洗浄することにより、酸処理されたFBCフライアッシュを調製した。この混合物を周囲温度で60分間激しく攪拌した。
【0063】
混合後、この混合物を沈降させ、上澄み液を捨てた。次いで、混合物を旋回させて新鮮な水で濯ぎ、固形物を沈降させ、上澄み液をデカントした。次いで、この湿潤アッシュを120℃で1時間乾燥して、乾燥させた酸処理FBCフライアッシュを生成した。
【0064】
その後、乾燥させた酸処理FBCフライアッシュを、粘土及び長石と混合し、以下の工程に従ってセラミック物品とした。
【0065】
酸処理された流動床燃焼フライアッシュ100gを、50gのイライト粘土と50gのナトリウム長石と混合し、粒状セラミックス混合物を生成した。この混合物を粉砕し、ふるい分けし、湿潤させた。次いで、上記粒状セラミックス混合物140gを、長方形の軟鋼型(155×40mm)内で、40MPaの圧力まで一軸加圧し、1.5分(90秒)保持した。このようにして成形された成形体を型から取り出し、110℃のオーブン内に入れて乾燥させた。
【0066】
この乾燥させた成形体を、電気キルン内で2.5℃/分の傾斜速度にて1160℃まで焼成した。この温度を最高温度で30分間保持した。その後、この焼成体を自然に(従ってゆっくりと)室温まで冷却した。
【0067】
この焼成体には、ひび割れは観察されなかった。
【0068】
比較例
流動床アッシュは、酸処理工程を除いては、酸処理流動床燃焼フライアッシュと全く同じとする一方で、酸洗浄工程に供されず、その代わりに他の成分と直接混合した以外、上記と同様の手順を行った。
【0069】
この焼成体には、ひび割れが観察された。
【0070】
同様にして製造されたものであるが、PCCフライアッシュから作製した、FBCフライアッシュ比較例と同じ組成の比較例は、全くひび割れを示さなかった。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
粒状セラミック混合物を製造するための方法であって、当該方法が、以下の工程:
(a)流動床燃焼フライアッシュを酸性水溶液と接触させて酸性流動床燃焼フライアッシュスラリーを得る工程;
(b)工程(a)で得られた前記スラリーから過剰の酸を除去して固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュを得る工程;
(c)(i)工程(b)で得られた前記の固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュと;
(ii)粘土と;
(iii)任意に、長石と;
(iv)任意に、他の成分
とを一緒に接触させる工程
を含み、粒状セラミック混合物を生成する、粒状セラミック混合物の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
前記工程(b)が、前記スラリーをすすぐ工程と、固形分から上清を除去して前記の固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュを得る工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
本発明は、粒状セラミック混合物の製造方法を提供し、当該方法は、以下の工程:
(a)流動床燃焼フライアッシュを酸性水溶液と接触させて酸性流動床燃焼フライアッシュスラリーを得る工程;
(b)工程(a)で得られた前記スラリーから過剰の酸を除去して固体の酸処理(solid acid treated)流動床燃焼フライアッシュを得る工程;
(c)(i)工程(b)で得られた前記の固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュと;
(ii)粘土と;
(iii)任意に、長石と;
(iv)任意に、他の成分
とを一緒に接触させる工程
を含み、粒状セラミック混合物を生成することを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
粒状セラミック混合物を製造するための方法
粒状セラミック混合物を製造するための前記方法は、以下の工程:
(a)流動床燃焼フライアッシュを酸性水溶液と接触させて酸性流動床燃焼フライアッシュスラリーを得る工程;
(b)工程(a)で得られた前記スラリーから過剰の酸を除去して固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュを得る工程;
(c)(i)工程(b)で得られた前記の固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュと;
(ii)粘土と;
(iii)任意に、長石と;
(iv)任意に、他の成分
とを一緒に接触させる工程
を含む。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
固体の酸処理流動床燃焼フライアッシュを得る工程(b)
工程(a)で得られたスラリーから過剰の酸を除去して、固体の酸処理流動床燃焼用フライアッシュを得る。
【国際調査報告】