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特表2022-544786ポリエーテル-ポリウレタンの分解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】ポリエーテル-ポリウレタンの分解方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/24 20060101AFI20221014BHJP
   C08J 11/10 20060101ALI20221014BHJP
   C12P 7/18 20060101ALI20221014BHJP
   C12P 13/00 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
C08J11/24 ZAB
C08J11/10
C12P7/18 ZNA
C12P13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509072
(86)(22)【出願日】2020-08-10
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2020072333
(87)【国際公開番号】W WO2021032513
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】19192115.4
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】レイスキー,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】イエーガー,ゲルノット
【テーマコード(参考)】
4B064
4F401
【Fターム(参考)】
4B064AC01
4B064AC05
4B064AE01
4B064CA21
4B064DA16
4F401AA26
4F401CA67
4F401CA75
4F401CA76
4F401EA60
4F401EA64
4F401EA77
(57)【要約】
本発明は、ポリエーテルポリオールと芳香族イソシアネートから形成されたポリウレタンを、ポリエーテルポリオールと芳香族アミンに分解することができる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 1分子当たり少なくとも2個の水酸基を有し、500g/mol以下の分子量を有する少なくとも1つの低分子量アルコールでポリエーテルポリウレタンをトランスウレタン化し、ポリエーテルポリオールおよび低分子量ウレタンを形成する工程;および
b) 方法の工程a)において形成された低分子量ウレタンを酵素的に開裂し、少なくとも1つのアミンおよび方法の工程a)において使用された少なくとも1つの低分子量アルコールの遊離を伴う工程
を含む方法。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリウレタンのイソシアネート成分が、少なくとも1つの芳香族ポリイソシアネートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記芳香族ポリイソシアネートが、トリレンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルイソシアネート(MDI)、およびナフチレンジイソシアネートからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリウレタンのイソシアネート成分が、少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脂肪族ポリイソシアネートが、1,4-ジイソシアナトブタン(BDI)、1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、2,4’-または4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、および1,10-ジイソシアナトデカンからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリエーテルポリウレタンを形成するために使用されたポリオール成分の少なくとも50重量%が、ポリエーテルポリオールの構成成分である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエーテルポリウレタン中のウレタン結合、尿素結合、およびチオウレタン結合の総量におけるウレタン結合および尿素結合の割合が、少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも80mol%、およびより好ましくは少なくとも90mol%である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記低分子量アルコールが、1分子当たり少なくとも2個の水酸基を有する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記低分子量アルコールが、45℃以下の融点を有する、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記低分子量アルコールが、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ポリエチレングリコール400、および上記アルコールの2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記低分子量アルコールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、および上記アルコールの2つ以上の混合物からなる群から選択され、方法の工程a)の終了時に、遊離したポリエーテルを含有する、低分子量アルコールとは分離した相が存在するように、前記ポリエーテルポリウレタンに対するモル比で使用される、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記低分子量ウレタンが、方法の工程b)を実施する前に、少なくとも1つの低分子量アルコールから分離される、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
方法の工程b)で形成された低分子量アルコールが、方法の工程a)で再使用される、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
方法の工程b)において遊離された低分子量アルコールの少なくとも一部が、方法の工程a)において再使用される、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルポリオールおよびイソシアネートから形成されたポリウレタンをポリエーテルポリオールおよびアミンに分解することができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、とりわけ、硬質および軟質フォームの製造において大量に使用される。これらの材料を耐用年数の終わりに燃焼すると、COが発生する。ポリウレタンの製造のための原料は原油から主にまたは完全に製造されるので、ポリウレタンの燃焼は大気中のCO含量の増大をもたらす。従って、ポリウレタン廃棄物を可能な限り包括的にリサイクルすることが非常に望ましい。
【0003】
ポリウレタンは、イソシアネート成分およびポリオール成分から形成される。これらは、付加反応を受けて、2つの成分を連結するウレタン基を形成し、それによってポリマーネットワークを形成する。フォームの製造は、芳香族結合イソシアネート基を有するイソシアネート、特にトリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルイソシアネート、およびメチレンジフェニルイソシアネートの多環誘導体を主に使用する。ポリオール成分として一般に使用されるのは、ポリエーテルポリオールである。
【0004】
ポリウレタンからポリエーテルポリオールを回収する方法は既に存在し、そのいくつかは既に工業規模で試験されている。これらの方法は、ポリウレタンとグリコールのような低分子量アルコールとの反応に基づく。このような方法では、ポリエーテルポリオールと低分子量アルコールとの交換が行われる。ウレタン基の一部であるポリオールの別のポリオールへのこの交換は本特許出願において、トランスエステル化と同様に、「トランスウレタン化(transurethanization)」と呼ばれる。このようなトランスウレタン化の反応生成物は、ポリウレタンを製造するために使用されるポリエーテル、およびポリウレタンを合成するために使用される芳香族ポリイソシアネートおよびトランスウレタン化のために使用される低分子量アルコールから誘導されるウレタンである。トランスウレタン化がポリウレタンのポリエーテル含量に対して大モル過剰で低分子量ポリオールを使用し、低分子量ポリオール分子の大部分が結果的に、ポリエーテルポリウレタンを製造するために使用されるイソシアネートから誘導された1分子とのみ反応するので、新しく形成されたウレタンは低分子量である。この方法の詳細および変形は、Simonら(2018)、Waste Management、76:147-171に記載されている。
【0005】
しかしながら、ポリウレタンによって遊離されたポリエーテルポリオールのみがリサイクルされる。トランスウレタン化の過程で形成される低分子量ウレタンは副生成物であり、未だ満足のいく用途がない。Simonら(2014)、Journal of Material Cycles and Waste Management、16:523-525には、未反応の低分子量アルコールを蒸留によってウレタン化生成物から除去する方法が記載されている。蒸留残渣は、芳香族アミンと低分子量ウレタンとの明確に定義されていない混合物からなっていた。この残基は、ポリエーテルポリオールの合成のための開始剤として使用することができる。他の適用分野で蒸留残渣を使用するためには、その中に存在する化合物の多様性は不利である。
【0006】
上記の方法の鏡像において、Bene,H.,ern,R.,urakov,A.,& Ltalov,P.(2012)〔下線を付したs、C、D、cは原文では当該文字にハーチェクが付されており、下線を付したaは原文では当該文字にアキュート・アクセントが付されている。〕.Utilization of natural oils for decomposition of polyuretanes.Journal of Polymers and Environment,20(1),175-185は、魚油またはヒマシ油がトランスウレタン化のためのアルコールとして使用される方法を記載している。この方法の目的は、さらなる化学反応のための出発材料として低分子量ウレタンを得ることである。使用されるアルコールは強力に疎水性であるので、この生成物は、方法の最後に遊離したポリエーテルと一緒に相中に存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Simonら(2018)、Waste Management、76:147-171
【非特許文献2】Simonら(2014)、Journal of Material Cycles and Waste Management、16:523-525
【非特許文献3】Benes,H.,Cerna,R.,Durackova,A.,& Latalova,P.(2012).Journal of Polymers and Environment、20(1)、175-185
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、ポリエーテルポリウレタンを可能な限り完全に、化学的に可能な限り正確に定義される化合物に分解することを可能にする方法を提供することであった。
【0009】
この目的は、以下の工程:
a) ポリエーテルポリウレタンを少なくとも1つの低分子量アルコールでトランスウレタン化して、ポリエーテルポリオールおよび低分子量ウレタンを形成する工程;および
b) 方法の工程a)において形成された低分子量ウレタンを酵素的に開裂し、少なくとも1つのアミンおよび方法の工程a)において使用された少なくとも1つの低分子量アルコールの遊離を伴う工程
を含む方法によって達成される。
【0010】
方法の工程a)は、2つの目的を有する:(i)ポリウレタンを合成するために使用されたポリエーテルポリオールが単離可能な化合物としてポリウレタンから遊離されるべきである。(ii)ポリウレタンの合成に使用されたイソシアネートは、低分子量ウレタンの構成成分として存在するべきである。高分子量を有するポリウレタンとは対照的に、前述の低分子量ウレタンは、その低分子量とその結果としてのより良い溶解性のために、方法の工程b)で起こる酵素的開裂のための基質として良好に適している。
【0011】
方法の工程b)において、アミンおよび方法の工程a)においてトランスウレタン化に使用された低分子量アルコールは、低分子量ウレタンの酵素的開裂によって遊離される。さらに、この方法の工程でCOが発生する。これらの化合物は適切な分離方法によって単離し、次いでさらに使用することができる。ここで、遊離された低分子量アルコールは、方法の工程a)で行われるトランスウレタン化のために再使用されることが好ましい。遊離したアミンは、新規合成のための純粋で明確な出発物質として利用できる。
【0012】
ポリエーテルウレタン
ポリウレタンは、ポリオールおよびポリイソシアネートから形成される化合物である。ポリウレタンを形成するために使用される全てのポリオールの全体はこの特許出願において「ポリオール成分」とも呼ばれる。ポリウレタンを形成するために使用される全てのポリイソシアネートの全体は本特許出願において「イソシアネート成分」と呼ばれる。各ポリオールの1つの水酸基は付加反応を介して各ポリイソシアネートの1つのイソシアネート基とウレタン基を形成し、それによってポリウレタンの構造成分を架橋する。
【0013】
本発明の方法によって分解されるポリウレタンは、ポリエーテルポリウレタンである。この用語は、ポリオール成分がポリエーテルポリオールを含むポリウレタンを指す。ポリオール成分中に存在する水酸基の少なくとも40重量%がポリエーテルポリオールの構成成分であることが好ましい。より好ましくは、これは少なくとも60重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%である。本発明によれば、ポリエーテルポリウレタンは、上記の割合のポリエーテルポリオールを維持しながら、構造成分としてさらなるポリオールも含有することが可能である。これらは好ましくはポリエステルポリオールである。
【0014】
イソシアネート基は、原則として、ツェレビチノフ活性水素原子を含有する他の官能基と反応することもできる。このような官能基は、特にアミノ基およびチオール基である。この場合、付加反応は、それぞれ尿素基およびチオウレタン基を生じる。しかしながら、本特許出願に係る「ポリエーテルウレタン」において、ウレタン結合、尿素結合およびチオウレタン結合の総量におけるウレタン結合および尿素結合の割合は、少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも80mol%、より好ましくは少なくとも90mol%である。ウレタン結合、尿素結合、およびチオウレタン結合の総量に対するウレタン結合の割合は、少なくとも20mol%、好ましくは少なくとも40mol%、およびより好ましくは少なくとも60mol%である。
【0015】
さらに、「ポリウレタン」は、本特許出願の目的のために、1分子当たり少なくとも3個、好ましくは少なくとも5個のウレタン基を有する。関与する構造成分の複数の分子の結果として生じる架橋は、高分子量を有するポリウレタンをもたらす。従って、本発明の方法によって分解されるポリウレタンの数平均分子量は、好ましくは少なくとも1350g/molである。
【0016】
ポリエーテルポリオール
用語「ポリエーテルポリオール」は、当業者に周知である。これらは、1.5~6.0の平均ヒドロキシル官能価を有するポリエーテルである。ポリエーテルポリウレタン中に存在するポリエーテルポリオールは、好ましくは2~8個、好ましくは2~6個の反応性水素原子を含有する少なくとも1つのスターター分子を使用して、2~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキレンオキシドの重付加生成物である。
【0017】
好ましいアルキレンオキシドは、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、およびエピクロロヒドリンである。より好ましいのは、1,3-プロピレンオキシド、1,2-または2,3-ブチレンオキシド、およびスチレンオキシドである。エチレンオキシドおよび1,2-プロピレンオキシドが特に好ましい。アルキレンオキシドは、単独で、交互に連続して、または混合物として使用することができる。
【0018】
重付加に好ましいスターター分子は、水、有機ジカルボキシル酸、脂肪族および芳香族の、任意にN-モノ-、N、N-、またはN、N’-ジアルキル-置換されている、アルキル基中に1~4個の炭素原子を有するジアミン、二価アルコール、および多価アルコールである。
【0019】
好ましい有機ジカルボン酸は、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、およびテレフタル酸である。
【0020】
好ましいジアミンは、モノ-およびジアルキル-置換されているエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレン-1,3-ジアミン、ブチレン-1,3-ジアミンまたは-1,4-ジアミン、ヘキサメチレン-1,2-ジアミン、-1,3-ジアミン、-1,4-ジアミン、-1,5-ジアミンおよび-1,6-ジアミン、フェニレンジアミン、トリレン-2,3-ジアミン、-2,4-ジアミンおよび-2,6-ジアミン、並びに2,2’-、2,4’-および4,4’-ジアミノジフェニルメタンである。
【0021】
好ましい二価および多価アルコールは、エタンジオール、プロパン-1,2-および-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、トリエタノールアミン、ビスフェノール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびショ糖である。
【0022】
イソシアネート
イソシアネート成分が脂肪族、脂環式、芳香族または芳香脂肪族的に結合したイソシアネート基を有するイソシアネートを含むポリウレタンは、原則として、本発明の方法による分解に適している。
【0023】
脂肪族的に結合したイソシアネート基を有するイソシアネートにおいて、全てのイソシアネート基は、開放炭素鎖の一部である炭素原子に結合している。これは、1つ以上の位置で不飽和であり得る。脂肪族的に結合したイソシアネート基、または、ポリイソシアネートの場合には脂肪族的に結合したイソシアネート基が好ましくは炭素鎖の末端炭素原子に結合している。
【0024】
本発明による特に好適な脂肪族的に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネートは、1,4-ジイソシアナトブタン(BDI)、1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、および1,10-ジイソシアナトデカンである。
【0025】
脂環式的に結合したイソシアネート基を有するイソシアネートにおいて、全てのイソシアネート基は、炭素原子の閉環の一部である炭素原子に結合している。この環は、1つ以上の位置で不飽和であり得るが、ただし、二重結合の存在の結果として芳香族特性を獲得しない。
【0026】
本発明による特に好適な脂環式的に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネートは、1,3-および1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナト-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-2-メチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-4-メチルシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4’-および4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナト-3,3’,5,5’-テトラメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナト-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチル-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、4,4’-ジイソシアナト-2,5’5,5’-テトラメチル-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、1,8-ジイソシアナト-p-メンタン、1,3-ジイソシアナトアダマンタン、および1,3-ジメチル-5,7-ジイソシアナトアダマンタンである。
【0027】
芳香脂肪族的に結合したイソシアネート基を有するイソシアネートでは、すべてのイソシアネート基がメチレン基に結合し、メチレン基が芳香環に結合する。
【0028】
本発明により特に好適な芳香脂肪族的に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネートは、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート;XDI)、1,3-および1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(TMXDI)、ならびにビス(4-(1-イソシアナト-1-メチルエチル)フェニル)カーボネートである。
【0029】
重合性組成物は本発明によれば、モノマーおよび/またはオリゴマー形態の上記イソシアネートの任意の所望の混合物を含むことができる。
【0030】
芳香族的に結合したイソシアネート基を有するイソシアネートにおいて、全てのイソシアネート基は、芳香環の一部である炭素原子に直接結合している。
【0031】
本発明により特に好適な芳香族的に結合したイソシアネート基を有するイソシアネートは、トリレンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルイソシアネート(MDI)およびナフチレンジイソシアネートである。
【0032】
用語「トリレンジイソシアネート」は、トリレン-2,4-ジイソシアネート(2,4-TDI)、トリレン-2,6-ジイソシアネート(2,6-TDI)、および2つの異性体の任意の所望の混合物を指す。用語「メチレンジフェニルイソシアネート」は、MDIのすべての異性体、特にジフェニルメタン2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、上記の異性体の少なくとも2つを含有するすべての混合物、およびMDIの多環誘導体を指す。
【0033】
用語「ナフチレンジイソシアネート」は、ナフチレン-1,4-ジアミン、ナフチレン-1,5-ジアミン、およびナフチレン-1,6-ジアミン、ならびに上記異性体の任意の所望の混合物を指す。
【0034】
しかしながら、イソシアネート成分が芳香族的に結合したイソシアネート基を有するイソシアネートを含むか、またはこのようなイソシアネートからなるポリエーテルポリウレタンを分解することが好ましい。
【0035】
ポリエーテルポリウレタンのイソシアネート成分は、特に好ましくはTDI、MDI、または2つの上記イソシアネートの任意の所望の混合物を含む。
【0036】
本発明の特に好ましい実施形態において、イソシアネート成分中に存在するイソシアネート基の少なくとも50mol%は、TDIおよび/またはMDIの成分である。これは、少なくとも65mol%であることがより好ましく、少なくとも80mol%であることがさらに好ましい。
【0037】
低分子量アルコール
分子当たり少なくとも1つの水酸基を有する任意の化合物は、原則として、方法の工程a)における低分子量アルコールとしての使用に適している。しかしながら、全工程の成功のためには低分子量アルコールのある特定の性質が好都合であり、これは以下に定義される条件の1つ以上を満たす低分子量アルコールが好ましくは使用されることを意味する。
【0038】
方法の工程a)からの低分子量ウレタンがウレタン結合の酵素的開裂のための基質として好適であるためには、低分子量アルコールの分子量が高すぎてはならない。これは、好ましくは700g/mol以下、より好ましくは500g/mol以下、最も好ましくは200g/mol以下である。
【0039】
さらに、低分子量アルコールを使用することが有利であり、そのウレタンは、ポリエーテルウレタンから遊離したポリエーテルポリオールと別々の相を形成する。ここで、低分子量アルコールを使用することも可能であり、そのエステルは、さらなる溶媒の添加後に別々の相を形成する。これにより、別々のポリエーテル相の形成が促進され、それによって遊離したポリエーテルポリオールを反応混合物から容易に分離することができる。この理由から、比較的高い極性を有する低分子量アルコールが好ましい。好ましくは、低分子量アルコールが1分子当たり少なくとも2個の水酸基を含有する。特に好ましくは、低分子量アルコールが分子当たり少なくとも2個の水酸基を含み、500g/mol以下、より好ましくは200g/mol以下の分子量を有する。
【0040】
さらに、低融点を有する低分子量アルコールは技術的観点から特に好適であり、その結果、それらがシステムのパイプライン中で固化し、それらを閉塞させる危険がない。従って、45℃以下の融点を有する低分子量アルコールを使用することが好ましい。より好ましくは、使用される低分子量アルコールが20℃以下の融点を有する。
【0041】
少なくとも1つの低分子量アルコールは、好ましくはメタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ポリエチレングリコール400、および上記アルコールの2つ以上の混合物からなる群から選択される。より好ましくは、それはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、および2種以上の上記アルコールの混合物からなる群から選択される。低分子量アルコールとしてジエチレングリコールが非常に特に好ましい。
【0042】
反応生成物
方法の第1の工程では、遊離ポリエーテルが形成され、これは物理的方法によって反応混合物から分離することができる。
【0043】
十分に高い極性の低分子量アルコールが使用される場合、二相混合物が形成される。極性の低い相は、主としてポリエーテルからなる。他のより極性の相は、未使用の低分子量アルコール、低分子量ウレタン、および反応副生成物、特に芳香族アミンを含有する。ここで、ポリエーテルポリオールの除去は特に簡単である。
【0044】
得られた低分子量ウレタンの化学構造は、方法の工程a)で使用される反応物によって決定される。ウレタンは、ポリエーテルポリウレタンを合成するために使用されるイソシアネート成分から誘導される第1の炭化水素基を含有する。第2の炭化水素基は、方法の工程a)で使用される低分子量アルコールから誘導される。2つの炭化水素基はウレタン基によって結合され、その窒素原子は第1の炭化水素基に結合している。
【0045】
反応条件
トランスウレタン化に原則的に適した反応条件および触媒は、Simonら(2018)、Waste Management,76:147-171に記載されている。方法の工程a)は、140℃~300℃、好ましくは160℃~270℃の温度で実施される。ポリエーテルウレタンに対する低分子量アルコールの重量比は、2:1~1:17である。触媒として特に好適なものは、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、カルボン酸のアルカリ金属塩(特に酢酸塩)、カルボン酸のアルカリ土類金属塩(特に酢酸塩)、ルイス酸(特にジブチルスズジラウレートなど)、有機アミン(特にジエタノールアミンなど)、有機金属化合物(特にチタンブトキシド)、およびスズ化合物(特にオクタン酸スズなど)である。トランスウレタン化は、添加されるポリウレタン生成物の質量に基づいて、好ましくは0.1質量%~5質量%の触媒の存在下、160℃~270℃の範囲内の温度で行われる。
【0046】
酵素的開裂
低分子量ウレタンの実際の酵素的開裂に加えて、方法の工程b)は、さらなるサブステップを含むこともできる。これらは、特に、酵素的開裂の効率を改善するのに役立つ。
【0047】
ウレタン開裂は加水分解であるので、工程a)で得られた生成物に水を添加することが好ましい。
【0048】
好ましい実施形態において、遊離されたポリエーテルポリオールは、酵素的開裂に使用される酵素が添加される前に、工程a)において得られた生成物から最初に分離される。
【0049】
しかしながら、遊離したポリエーテルポリオールをなお含有する混合物中で酵素的開裂を行うことも可能である。
【0050】
さらなる好ましい実施形態において、過剰のアルコール、すなわち低分子量ウレタンに組み込まれていないアルコールは、酵素が添加される前に除去される。これは、蒸留によって特に有利に達成することができる。
【0051】
さらなる好ましい実施形態において、少なくとも1つの共溶媒および/または少なくとも1つの界面活性剤が、方法の工程b)において添加される。これは、低分子量ウレタンの水への溶解度を増加させ、従って、酵素に対するその近接性を改善することができる。好ましい共溶媒は、エタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、およびジメチルホルムアミドである。好ましい界面活性剤はソルビン酸塩である。
【0052】
低分子量ウレタンはまた、ウレタン化後に、酵素的開裂を妨害する塩によって汚染され得る。したがって、本発明のさらに好ましい実施形態において、低分子量ウレタンと並んで存在する塩は酵素的開裂に使用される酵素が添加される前に、完全にまたは部分的に除去される。
【0053】
低分子量アルコールは、酵素の活性に悪影響を及ぼさない場合が多いため、この調製工程を省略することも可能である場合が多い。酵素的開裂前に遊離低分子量アルコールの除去が必要な程度は、方法の工程a)で使用される低分子量アルコールの存在下および非存在下での単純な予備試験によって、当業者によって決定され得る。
【0054】
工程b)における酵素的開裂は、ウレタン結合を開裂することができる任意の酵素を用いて実施することができる。
【0055】
例えば、配列番号1~13に定義されるようなアミノ酸配列を有する酵素が、この目的に適している。特に好適なのは、配列番号3によって定義される酵素またはその変異体である。上記酵素を用いる場合、低分子量ウレタンの酵素的開裂には、100mMのKHPO/KHPOおよび20体積%のエタノールを含むpH7の反応緩衝液が適している。しかしながら、エタノールを使用せずに良好な結果を達成することもできることが見出された。
【0056】
「酵素変異体」は、好ましくはそれぞれのポリペプチド中に存在するアミノ酸の10%まで、より好ましくは5%までを付加、欠失または置換することによって得られる。上記の修飾は、原則として、ポリペプチド中の任意の所望の点で連続的または不連続的に実行され得る。しかし、それらは、好ましくはポリペプチドのN末端および/またはC末端においてのみ実行される。しかし、本発明に従ってアミノ酸を付加、置換または欠失させることによって得られる各変異体は、ウレタナーゼ活性によって特徴付けられる。これは、好ましくは例1に記載の試験方法によって実証される。
【0057】
原則として好適なさらなる酵素は、WO2006/019095、WO/2013/134801、Shigenoら(2006)、Applied Microbiology and Biotechnology、70:422~429、Gamerithら(2016)、Polymer Degradation and Stability、132:69~77、およびMagninら(2019)、Waste Management、85:141~150に記載されている。
【0058】
方法の工程b)における低分子量ウレタンの酵素的開裂から生じる反応生成物は、方法の工程a)において使用される少なくとも1つの低分子量アルコール、およびアミンまたはアミンの混合物である。形成されるアミンの化学構造は、ポリウレタンを合成するために使用されるイソシアネート成分の性質に依存する。アミンが遊離され、これはイソシアネート成分に使用されるイソシアネートから、水を加え、続いてCOを除去することによって誘導することができる。
【0059】
従って、本発明の方法は、高価値生成物の新規な合成のための出発物質として好適な明確な構造を有する化合物を提供する。
【0060】
以下の実施例は、本発明を説明するためにのみ役立つ。それらは、特許請求の範囲の保護の範囲を何らかの形で制限することを意図したものではない。
【実施例
【0061】
例1(発明)
手順:
酵素反応のモデル基質
ウレタナーゼ活性を有すると推定される酵素を、基質スペクトルを特徴付けるために、例示的なウレタンモデル化合物の加水分解において試験した。これは、ポリウレタンの解糖の間に形成され得るカルバメートを使用して行われた。この目的のために使用されるすべてのモデル基質およびスクリーニング基質を以下に示す。反応緩衝液(100mM KHPO/KHPO、PH7.0)を20%(v/v)エタノールと0.2mg/mlの基質と混合した。反応は、1~3mgの酵素凍結乾燥物を添加したガラス管中で200μLのテストラン中で実施した。テストランを振盪しながら室温で約20時間、次いで37℃で約16時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを室温で撹拌せずに放置して、懸濁粒子の沈降を可能にし(5分)、上清を、PVDF膜および0.2μm孔サイズを有する96ウェルフィルタープレート(Corning、Kaiserslautern)を介して、96ウェルポリプロピレンプレート中に、大容量遠心機中で4000rpmおよび20℃で5分間遠心分離した。形成されたアミンを検出するために、「Dabsylamine」法を用いたHPLCによって試料を測定した。
【化1】
【0062】
PUフォームからのオリゴマーとの酵素反応
ウレタナーゼが、ポリエステルPUフォーム中のエステル結合の加水分解において形成された可溶性オリゴマーを加水分解することができるかどうかも調査した。ポリエーテルポリウレタンをジエチレングリコールで解糖すると、同じ生成物が得られる。このために、20mLのpH7.0リン酸カリウム緩衝液および約30mgのCalB凍結乾燥物(Roche、Basel、Switzerlandからの「Chirazyme L2」)を含む50mL遠心管に1gのフォームを添加し、37℃および200rpmで5日間インキュベートした。次いで、濁った溶液を、大容量遠心機中で25℃および4000rpmで10分間遠心分離した。透明な上清を1M NaOHでpH7.0に調整した。室温で約6時間後、pHのわずかな低下を7.0に戻し、溶液を滅菌濾過した。
【0063】
これにより、以下に示すオリゴマーが形成された。各オリゴマー混合物(OM)について、2,4-TDAに基づく異性体を例として示すが、この混合物はまた、2,6-TDAに基づく異性体、およびアミノ基のジエチレングリコールへの異なる結合から生じる種々の位置異性体も含む。同定されたウレタナーゼを、これらのカルバメートに対する加水分解活性について試験した。
【0064】
可溶性オリゴマーは、使用するまで4℃で保存した。150μLのこの溶液を20μLのDMFと混合した。次いで、それぞれに、30μLの未希釈の精製ウレタナーゼを添加し、テストランを30℃および1000rpmで、加熱ブロック上で振盪した。酵素貯蔵緩衝液を含むテストランを陰性対照とした。3日後、テストランを、PVDF膜および0.2μmの孔径を有するフィルタープレート(Corning、Kaiserslautern)を通して濾過し、濾液を、「Dabsylamine95」方法を使用するHPLCによって、形成された2,4-および2-6-TDAに関して分析した。
【化2】
【0065】
HPLC分析
オートサンプラーおよびUVおよび可視光領域のためのDAD(ダイオードアレイ検出器)を備えたAgilent Technologies (Santa Clara、USA)1100シリーズ装置で、高圧液体クロマトグラフィーを実施した。全ての測定は、3.5μmの粒径および4.6×75mmの寸法を有するZorbax XDB-C18カラム(Agilent Technologies、Santa Clara、USA)を用いて行った。全ての方法において、5μLのサンプルを注入し、カラムを40℃に加熱した。流量は一般に1.5mL/分であった。逆相カラムを使用したので、全ての方法における溶出は、有機溶媒の濃度を上げることで行った。
【0066】
芳香族アミンおよびウレタンの検出および定量は、「Dabsylamine」および「Dabsylamine 95」法を用いて行った。AcNに加えて溶離液としてpH7.0の10mMリン酸ナトリウム緩衝液を使用し、これに0.005%(w/v)アジ化ナトリウムを添加して微生物の増殖を防いだ。OpenLAB CDS ChemStationLCソフトウェア、バージョンA.02.09[017](Agilent Technologies、Santa Clara、USA)を用いてデータを分析した。
【0067】
Dabsylamine:溶離液:アセトニトリルおよび10mMNaHPO/NaHPO、pH7.0
【表1】
【0068】
Dabsylamine95:溶離液:5%(v/v)ddHOを含むアセトニトリルおよび10mM NaHPO/NaHPO、pH7.0
【表2】
【0069】
結果
酵素反応のモデル基質
化学的トランスウレタン化によってポリウレタンから製造することができるモデル基質MDEC、MDBC、TDBC、およびTDMCを、活性ウレタナーゼで処理し、アミンへの加水分解開裂を触媒する少なくとも1つのウレタナーゼを、モデル基質のそれぞれについて同定することができた(表1)。さらに、2種のウレタナーゼはオリゴマー混合物OM-1,OM-2,OM-3に対して活性を示し、2,4-TDAと2,6-TDAの両方が遊離した。
【0070】
表1:ウレタナーゼの基質スペクトルの調査の要約。さらなるウレタン化合物のスクリーニングは、MDECおよびUreによるスクリーニングにおいて明らかな活性を示した酵素を用いて行った。3:(ほとんど)完全に加水分解された生成物(ジアミン)のみが検出可能であり、2:最終生成物および中間生成物への加水分解、1:中間生成物(モノアミン)への加水分解、0:加水分解生成物は(ほとんど)検出できない。「-」は、かなりの量の基質がまだ存在していたことを示している。n.d.:決定されないことを示す。PLE:ブタ肝臓エステラーゼを示す。
【表3】
【0071】
例2(発明):Aes72によるカルバメート開裂についての異なる反応条件の試験
はじめに
この実験は軟質TDIフォームの化学的解糖(ジエチレングリコールによるトランスウレタン化)後に、下相に存在するカルバメートを酵素的に加水分解することを求めた。軟質TDIフォームの解糖は、長鎖ポリエーテルポリオールを遊離し、これは、反応後、過剰のグリコールおよび形成されたカルバメートおよびアミンの上に第2の相として沈降する。このようにして生成した反応生成物の下相を基質溶液として用いた。ウレタン結合の酵素的加水分解は、2,4-TDAおよび2,6-TDAならびにジエチレングリコールおよびCOを遊離する。例1では、共溶媒を使用した。工業的用途では、追加の溶媒を再び労力をかけて除去する必要があるので、共溶媒の不在下でも反応が進行するかどうかを確立するための試験を試みた。反応中の基質濃度が高いほど、反応後にTDA溶液をより濃縮することができ、後続の処理に有利である。従って、Aes72(配列番号3)を40%(w/v)までの基質濃度で試験した。さらに、温度を上昇させて、これが反応速度に影響を及ぼすかどうかを調べた。
【0072】
手順
化学的解糖(Chemical glycolysis)
250gのジエチレングリコールの初期装入物を200℃に加熱した。次に、250gの軟質TDIフォームを計量供給した。フォームが溶解したら、温度をさらに3時間一定に保った。2.5gのスズ(II)2-エチルヘキサノエートを触媒として使用した。
【0073】
酵素調製物
酵素の調製のために、E.coli BL21(DE3)をプラスミドpET21a-Aes72で形質転換した。全ての培養物に100mg/Lのアンピシリンを添加した。MagicMedia(Thermofisher)に単一コロニーを接種し、次いで30℃および130rpmで24時間振盪しながらインキュベートした。4000gおよび4℃で10分間遠心分離することによって細胞を分離した。細胞ペレットを10mLのpH7.5の50mMリン酸カリウム緩衝液に取り、超音波処理(振幅50%、パルス1秒、続いて1秒の休止、2分間の総超音波処理時間)によって破壊した。遠心分離(9500rpm、4℃、20分間)により不溶成分を分離した後、粗酵素溶液を-80℃で凍結し、次いで凍結乾燥した。凍結乾燥物を4℃で保存した。さらに、対応するブランクベクターをpET21a-Aes72の代わりに使用した酵素調製物として、ブランクベクター対照を調製した。
【0074】
酵素反応
酵素溶液は、4.5%(w/v)酵素凍結乾燥物をpH7.5の50mMリン酸カリウム緩衝液に溶解することによって調製した。各テストランは、60μLの酵素溶液と、基質として解糖後のそれぞれ5%(w/v)、10%(w/v)、20%(w/v)、および40%(w/v)の下相とを使用して、300μLの総体積で調製した。残りはpH7.5の50mMリン酸カリウム緩衝液で構成した。これらを40℃、50℃または60℃および800rpmで、加熱ブロック中でインキュベートした。ブランクベクター対照調製物との反応を、同一の様式で調製した。3時間後、TDAの総量をHPLCによって定量した。陰性対照におけるTDA濃度を酵素反応における値から差し引いて、Aes72によって遊離されたTDAの総量を得た。
【0075】
酵素反応の停止
試料を20%酢酸中の50mM NaOHで1:2に希釈して酵素を不活性化した。不活化サンプルを室温で少なくとも5分間、または4℃でより長くインキュベートし、次いで140mM NaOHで1:10に希釈した。
【0076】
HPLC分析
形成された2,4-TDAおよび2,6-TDAをHPLCによって分析した。標準およびサンプルを分析前に遠心分離し(2分、13300rpm、室温)、上清を0.22μm PESフィルターを通して濾過した。5μLのサンプルを、それぞれの場合において、オートサンプラーによって注入した。使用したカラムは、適切なガードカラムを備えたZorbax Eclipse C18(15cm)であった。アセトニトリルを溶離液Aとし、pH7.0の10mMリン酸ナトリウム緩衝液を溶離液Bとし、全体の流量は1mL/分であった。溶媒勾配を表2に示す。
【0077】
表2:HPLC勾配
【表4】
【0078】
結果
化学的解糖後の下相におけるNMRによって定量された成分を表3に列挙する。
【0079】
表3:解糖後の下相の組成。組成は、H-NMRにより測定した。TDAカルバメートの重量パーセントは、単に化合物のTDA分率を指し;DEG分率は「カルバメートDEG」として示される。
【表5】
【0080】
酵素反応における種々の条件下で遊離したTDAの濃度を表4に示す。高い転化率を達成することが可能であることが見出された。共溶媒は酵素活性に必須ではないことも見出された。すべての温度でかなりの量のTDAが遊離し、反応速度は、2つの最低基質濃度で温度が上昇することにつれて増加した。
【0081】
表4:3時間後に遊離した全TDA。遊離したTDAの量を得るために、陰性対照におけるTDAの定量化された量を酵素反応における量から差し引いた。
【表6】
【0082】
例3(比較、非発明):相形成を調べるためのBenesら、2012の複製
はじめに
下記の試験の目的は、Benes,H.,Cerna,R.,Durackova,A.,& Latalova,P.(2012)「ポリウレタンの分解のための天然油の利用」Journal of Polymers and Environment、20(1)、175-185に記載されているカルバメートが、どの程度本特許出願に開示されている2段階分解プロセスの出発材料として好適であるかを実証することである。この方法では、新たに製造されたカルバメートと分解されたポリウレタンから遊離されたポリオールとの間の最良の可能な相分離が重要である。
【0083】
Benesら、2012によれば、pMDIベースのポリエーテルポリウレタンは、天然の脂肪/油でトランスウレタン化を受け、元のポリエーテルポリオールを遊離する。ヒマシ油のような長鎖および疎水性油が過剰に使用されるので、本発明で使用されるように、遊離したポリエーテルポリオールおよび新たに形成されたカルバメートおよび過剰の油の間の相分離が、トランスウレタン化に続く可能性は低い。これを確認するために、Benesら、2012による生成物として記載されたカルバメートをpMDIおよびヒマシ油から合成し、そこで使用されるポリエーテルポリオールとの混合試験を行った。これは、そこに記載された解糖後に存在する生成物混合物を複製しようとした。
【0084】
手順
ラン4BK(run 4BK)からの生成混合物およびBenesら、2012からの4BKを、例示として複製した。32.25%のNCOを含有するpMDI混合物を合成に使用した。7.935重量部のpMDIを210重量部のヒマシ油(10倍OH過剰)に添加し、測定された0.03%のNCO値が得られるまで混合物を80℃で撹拌した(OH価=138.2mgKOH/g;25℃での粘度=1570mPas)。MDAカルバメートを過剰のヒマシ油に完全に溶解した均一相が得られた。この26.14gのカルバメート溶液に、11.06gのDesmophen 5035 BT(ドイツ、レバークーゼンのCovestro Deutschland AGによって製造された、35mgKOH/gのヒドロキシル価、1.1重量%のヒドロキシル含量、および約1600gのOH当量を有する三官能性ポリプロピレンエーテルポリオール)(=D3からの4BK中での解糖後の比)を添加した。
【0085】
結果
カルバメート溶液とポリエーテルポリオールを混合した後、観察された全ては、室温で24時間後でも分離しない均一な液相であった。これは、Benesら、2012に記載されている方法が分相解糖に不適切であることを示している。したがって、トランスウレタン化後にポリエーテルポリオールを分離相として除去することは不可能であり、いずれも、得られた芳香族アミンの回収のために順に使用することができる過剰のグリコールを有するカルバメートの分離相でもない。したがって、Benesら、2012に記載された方法は特に、柔軟に使用することができるモノマーの回収のためのポリウレタンの2段階開裂を可能にしない。その中の生成物は、非常に特異的な反応のための出発物質としてのみ適した特定のタイプのポリオールである。
【配列表】
2022544786000001.app
【国際調査報告】