(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】抗凝固剤拮抗剤としてのトロンボソーム
(51)【国際特許分類】
A61K 35/19 20150101AFI20221014BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20221014BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221014BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20221014BHJP
A61K 31/195 20060101ALI20221014BHJP
A61K 38/55 20060101ALI20221014BHJP
A61K 38/36 20060101ALI20221014BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61K35/19 Z
A61P7/04
A61K45/00
A61K31/197
A61K31/195
A61K38/55
A61K38/36
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509584
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 US2020046522
(87)【国際公開番号】W WO2021034716
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508180585
【氏名又は名称】セルフィアー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】モスコウィッツ キース アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】イシュラー ブレイデン カール
(72)【発明者】
【氏名】ディッカーソン ウィリアム マシュー
(72)【発明者】
【氏名】リー アンバー ニコル
(72)【発明者】
【氏名】シュー シャン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076CC14
4C076DD25Z
4C076DD26
4C076DD57Z
4C076DD67
4C076EE30
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4C076FF61
4C076GG05
4C076GG06
4C084AA02
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4C084BA44
4C084DC10
4C084DC34
4C084MA17
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA532
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB38
4C087CA04
4C087MA02
4C087MA05
4C087MA17
4C087MA55
4C087MA66
4C087NA10
4C087NA14
4C087ZA53
4C206AA01
4C206FA44
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206NA05
4C206ZA53
(57)【要約】
いくつかの実施形態では、対象における凝固障害を治療する方法が本明細書に提供され、この方法は、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における凝固障害を治療する方法であって、その必要がある前記対象に有効量の組成物を投与することを含み、
前記組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含む、
方法。
【請求項2】
対象における凝固障害を治療する方法であって、その必要がある前記対象に有効量の組成物を投与することを含み、
血小板を、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、前記組成物を形成することを含むプロセスによって、前記組成物が調製されている、
方法。
【請求項3】
対象における正常な止血を回復させる方法であって、その必要がある前記対象に有効量の組成物を投与することを含み、
前記組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含む、
方法。
【請求項4】
対象における正常な止血を回復させる方法であって、その必要がある前記対象に有効量の組成物を投与することを含み、
血小板を、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、前記組成物を形成することを含むプロセスによって、前記組成物が調製されている、
方法。
【請求項5】
対象を手術のために準備させる方法であって、その必要がある前記対象に有効量の組成物を投与することを含み、
前記組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含む、
方法。
【請求項6】
対象を手術のために準備させる方法であって、その必要がある前記対象に有効量の組成物を投与することを含み、
血小板を、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、前記組成物を形成することを含むプロセスによって、前記組成物が調製されている、
方法。
【請求項7】
前記手術が、緊急手術である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記手術が、予定された手術である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、抗凝固剤によって治療されていたか、または治療されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗凝固剤による治療が、停止される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗凝固剤による治療が、継続される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
対象における抗凝固剤の効果を改善する方法であって、その必要がある前記対象に有効量の組成物を投与することを含み、
前記組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含む、
方法。
【請求項13】
対象における抗凝固剤の効果を改善する方法であって、その必要がある前記対象に有効量の組成物を投与することを含み、
血小板を、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、前記組成物を形成することを含むプロセスによって、前記組成物が調製されている、
方法。
【請求項14】
前記抗凝固剤の前記効果が、前記抗凝固剤の過剰摂取の結果である、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、抗線溶剤をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗線溶剤が、ε-アミノカプロン酸(EACA)、トラネキサム酸、アプロチニン、アミノメチル安息香酸、フィブリノゲン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記血小板または血小板誘導体に、前記抗線溶剤が充填される、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗凝固剤が、ダビガトラン、アルガトロバン、ヒルジン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、フォンダパリヌクス、ワルファリン、ヘパリン、低分子量ヘパリン、サプリメント、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗凝固剤が、ダビガトラン、アルガトロバン、ヒルジン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、フォンダパリヌクス、ワルファリン、ヘパリン、低分子量ヘパリン、チファコギン、第VIIai因子、SB249417、ペグニバコギン(アニバメルセンを含むか、または含まない)、TTP889、イドラパリヌクス、イドラビオタパリヌクス、SR23781A、アピキサバン、ベトリキサバン、レピルジン、ビバリルジン、キシメラガトラン、フェンプロクモン、アセノクマロール、インダンジオン、フルインジオン、サプリメント、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗凝固剤が、ワルファリンである、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗凝固剤が、ヘパリンである、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記投与の前に、前記対象が、少なくとも4.0のINRを有した、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記投与の後に、前記対象が、3.0以下のINRを有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記投与の後に、前記対象が、2.0以下のINRを有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記投与の前に、前記対象が、少なくとも3.0のINRを有した、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記投与の後に、前記対象が、2.0以下のINRを有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
投与が、局所投与を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
投与が、非経口投与を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
投与が、静脈内投与を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
投与が、筋肉内投与を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
投与が、髄腔内投与を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
投与が、皮下投与を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
投与が、腹腔内投与を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が、前記投与工程の前に乾燥される、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、前記乾燥工程の後に再水和される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が、前記投与工程の前に凍結乾燥される、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が、前記凍結乾燥工程の後に再水和される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記インキュベーション剤が、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される1つ以上の塩を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記インキュベーション剤が、担体タンパク質を含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記緩衝液が、HEPES、重炭酸ナトリウム(NaHCO
3)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物が、1種以上の糖を含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
1種以上の糖が、トレハロースを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記1種以上の糖が、ポリスクロースを含む、請求項41または請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記1種以上の糖が、デキストロースを含む、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物が、有機溶媒を含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記血小板または血小板誘導体が、トロンボソームを含む、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月16日に出願された米国仮出願第62/887,985号および2020年8月13日に出願された米国仮出願第63/065,337号の優先権を主張し、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は、薬物誘発性凝固障害の治療としてのトロンボソームの使用を説明する役割を果たす。ワルファリン、ヘパリン、およびNOACクラスなどの抗凝固薬は、凝固カスケードの様々な血漿因子を阻害し、出血する可能性を増加させる。ここで、トロンボソームが、この阻害を回避または克服して止血を回復させることを実証する。
【背景技術】
【0003】
背景
抗凝固薬は、米国成人集団において一般的であり、多種多様な機序を用いて凝血カスケードのセグメントを無効にする。抗凝固剤は、多数の心臓または血栓塞栓性事象を治療するために使用される。例えば、ワルファリン(例えば、COUMADIN(登録商標))は、静脈血栓症およびその延長、肺塞栓症の予防および治療;心房細動および/または心臓弁置換に関連する血栓塞栓合併症の予防および治療;心筋梗塞後の死亡、再発性心筋梗塞、および脳卒中または全身塞栓などの血栓塞栓事象のリスクの低減(例えば、ワルファリン(COUMADIN(登録商標))の処方情報を参照されたい)のために承認されている。別の例として、ヘパリンは、血栓性静脈炎、静脈血栓症、ならびに脳、冠動脈、および網膜血管血栓症の治療のために承認されており、血栓および血栓塞栓性現象の延長を防止する。これはまた、血栓塞栓症の発生を防止するため、ならびに透析および外科的処置、特に血管手術中の凝血を防止するために、予防的に使用される。抗凝固特性を有する他の薬物としては、ダビガトラン(例えば、PRADAXA(登録商標))、アルガトロバン、およびヒルジンを含む、第IIa因子(トロンビン)を阻害する薬剤(作用機序に応じて、抗IIa剤、トロンビン阻害剤、または直接的なトロンビン阻害剤とも称される)、ならびにリバーロキサバン(例えば、XARELTO(登録商標))、アピキサバン(例えば、ELIQUIS(登録商標))、エドキサバン(例えば、SAVAYSA(登録商標))、およびフォンダパリヌクス(例えば、ARIXTRA(登録商標))を含む、第Xa因子を阻害する薬剤が挙げられ得る。従来の抗凝固剤としては、ワルファリン(例えば、COUMADIN(登録商標))およびヘパリン/LMWH(低分子量ヘパリン)が挙げられ得る。追加の抗凝固剤としては、ヘパライノイド、第IX因子阻害剤、第XI因子阻害剤、第VIIa因子阻害剤、および組織因子阻害剤が挙げられる。
【0004】
しかしながら、抗凝固剤は、毎年多数の薬物関連有害事象(ADE)に関与しており、これには、全ADE入院患者の10%、および介護施設における年間推定最大34,000件のADEが含まれる。ワルファリンは、65歳超の成人の全救急病院来院の17%に関与している。少なくとも2000人の患者が、ワルファリンによるビタミンKアンタゴニスト療法の後に、致命的な出血に苦しんでいる。
【0005】
また、ワルファリン拮抗療法は、ビタミンKを除いて非常に高価であり得、ビタミンKは、ワルファリンと同等に危険であり得る。例えば、Kcentra(プロトロンビン複合体濃縮物;PCC)は、1用量当たり約5100ドルの費用がかかる。
【0006】
NOACは、クマジンと同様の出血リスクを有し、モニタリングすることはできず、緊急手術が必要とされる場合の拮抗状況に対して課題を呈する。
【0007】
これらの薬物に関連する過剰摂取および有害事象は、患者集団に深刻な出血および関連する合併症のリスクをもたらす。したがって、抗凝固剤誘発性凝固障害などの凝固障害の治療に対するニーズが当該技術分野において存在する。
【発明の概要】
【0008】
いくつかの実施形態では、対象における凝固障害を治療する方法が本明細書に提供され、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、対象における凝固障害を治療する方法が本明細書に提供され、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、対象における正常な止血を回復させる方法が本明細書に提供され、この方法は、その回復を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、対象における正常な止血を回復させる方法が本明細書に提供され、この方法は、その回復を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、対象を手術のために準備させる方法が本明細書に提供され、この方法は、その準備を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
実装形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。手術は、緊急手術であり得る。手術は、予定された手術であり得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、対象を手術のために準備させる方法が本明細書に提供され、この方法は、その準備を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。実装形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。手術は、緊急手術であり得る。手術は、予定された手術であり得る。
【0014】
上記の方法のいくつかの実装形態では、対象は、抗凝固剤によって治療されていたか、または治療されている。いくつかの実施形態では、抗凝固剤による治療は、停止され得る。いくつかの実施形態では、抗凝固剤による治療は、継続され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、対象における抗凝固剤の効果を改善する方法が本明細書に提供され、この方法は、その改善を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、対象における抗凝固剤の効果を改善する方法が本明細書に提供され、この方法は、その改善を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤の効果は、抗凝固剤の過剰摂取の結果であり得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ダビガトラン、アルガトロバン、ヒルジン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、フォンダパリヌクス、ワルファリン、ヘパリン、低分子量ヘパリン、およびサプリメントからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ワルファリンであり得る。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリンであり得る。
【0019】
本明細書の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、投与の前に、対象は、少なくとも4.0のINRを有し得る。いくつかの実施形態では、投与の後に、対象は、3.0以下のINRを有し得る。いくつかの実施形態では、投与の後に、対象は、2.0以下のINRを有し得る。
【0020】
本明細書の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、投与の前に、対象は、少なくとも3.0のINRを有し得る。いくつかの実施形態では、投与の後に、対象は、2.0以下のINRを有し得る。
【0021】
本明細書の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。投与は、局所投与を含み得る。投与は、非経口投与を含み得る。投与は、静脈内投与を含み得る。投与は、筋肉内投与を含み得る。投与は、髄腔内投与を含み得る。投与は、皮下投与を含み得る。
投与は、腹腔内投与を含み得る。組成物は、投与工程の前に乾燥され得る。組成物は、乾燥工程の後に再水和され得る。組成物は、投与工程の前に凍結乾燥され得る。組成物は、凍結乾燥工程の後に再水和され得る。インキュベーション剤は、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される1つ以上の塩を含み得る。インキュベーション剤は、担体タンパク質を含み得る。緩衝液は、HEPES、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、またはそれらの組み合わせを含み得る。組成物は、1種以上の糖を含み得る。1種以上の糖は、トレハロースを含み得る。1種以上の糖は、ポリスクロースを含み得る。1種以上の糖は、デキストロースを含み得る。組成物は、有機溶媒を含み得る。血小板または血小板誘導体は、トロンボソームを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】様々なINRレベルでワルファリン血漿に400×10
3/μLのトロンボソームを添加することによって得られたピークトロンビン生成を示す。
【
図2】様々なINRレベルで血漿に400×10
3/μLのトロンボソームを添加することによって得られた内因性トロンビン産生能(ETP)値を示す。
【
図3】INR2ワルファリン血漿中のトロンボソームおよび新鮮な血小板によるピークトロンビン生成を示す。
【
図4】300×10
3/μLのトロンボソームの添加の結果としての、TEGアッセイにおけるワルファリン血漿試料のR時間に対する効果を示す。
【
図5】トロンボソームが、ピークトロンビン生成において用量依存的増加を提供することを示す。これらのデータは、150×10
3/μLの内因性血小板数を有する全血のバックグラウンドにおいて収集した。
【
図6】ピークトロンビン生成に対する血小板またはトロンボソームの濃度のプロットを示す。
【
図7A】INR-2血漿中のピークトロンビン生成に対する血小板、トロンボソーム、またはそれらの組み合わせの濃度のプロットを示す。
【
図7B】4つの異なるバッチのトロンボソームについて、INR-1血漿、INR-2血漿(ワルファリンで処理)、およびINR-2血漿(ワルファリンで処理)+トロンボソーム(150×103/μL)におけるトロンビン生成を示す。
【
図8】フロー下での剪断依存性コラーゲン接着アッセイ(T-TAS(登録商標))におけるワルファリン血漿中のトロンボソームによる血栓の生成を示す。
【
図9】全血(WB)中のリバーロキサバンの濃度の増加に伴って増加する血栓の生成までの時間のプロットを示す。
【
図10A】トロンボソームの添加によって減少する3mMのリバーロキサバンの存在下での血栓の生成までの時間のプロットを示す。
【
図10B】対照血漿中、3mMのリバーロキサバンで処理された血漿中、および3mMのリバーロキサバンおよび300×10
3/μLのトロンボソームで処理された血漿中の血栓の生成までの時間のプロットを示す。
【
図10C】
図10BからのT-TAS(登録商標)ARチップの閉塞の生成までの時間のプロットを示す。
【
図11】
図11Aは、R時間(凝血塊形成の開始)に関して測定した、標準血漿(INR=1.0)と比較したワルファリン血漿(INR=1.6)中のトロンボソームの効果を示す。
図11Bは、対数目盛りx軸上にプロットした、R時間に関して測定した、標準血漿(INR=1.0)と比較したワルファリン血漿(INR=1.6)中のトロンボソームの効果を示す。
【
図12】
図12Aは、アルファ角(角度とも称される)に関して、ワルファリン血漿(INR=1.6)中のトロンボソームの効果を示す。
図12Bは、対数目盛りx軸上にプロットした、アルファ角(角度とも称される)に関して、ワルファリン血漿(INR=1.6)中のトロンボソームの効果を示す。
【
図13】最大振幅(MA)に関して、ワルファリン血漿(INR=1.6)中のトロンボソームの効果を示す。
【
図14】対数目盛りx軸上にプロットした、最大振幅(MA)に関して、ワルファリン血漿(INR=1.6)中のトロンボソームの効果を示す。
【
図15】トロンボソームを補充された異なるINR値を有する試料についてのラグタイムの減少のプロットを示す。
【
図16】標識されたパラメータを有する例示的なトロンボエラストグラフィー(TEG)波形である。
【
図17】様々な濃度のトロンボソームを補充したか、または補充していない、ワルファリン血漿の様々なINR値についてのR時間のプロットである。
【
図18】トロンボソームを補充した、および補充していない、様々なINRレベルの血漿レベルにおける活性化された凝血時間のプロットである。
【
図19】全血に対するトロンボソームの効果を示す(正常、INR=2、INR=3、およびINR=6.2)。
【
図20】
図20Aは、INRが1および2である血漿中のトロンボソームのピークトロンビン生成に対する効果を示す。
図20Bは、INRが3である血漿中のトロンボソームのピークトロンビン生成に対する効果を示す。
図20Cは、INRが1および6である血漿中のトロンボソームのピークトロンビン生成に対する効果を示す。
【
図21】
図21Aは、INRが1および2である血漿中のトロンボソームの内因性トロンビン産生能に対する効果を示す。
図21Bは、INRが3である血漿中のトロンボソームの内因性トロンビン産生能に対する効果を示す。
図21Cは、INRが1および6である血漿中のトロンボソームの内因性トロンビン産生能に対する効果を示す。
【
図22A】トロンボソームバッチ1の複製について、INRが1、2、3、および6である血漿中のトロンボソームのピークトロンビン生成に対する効果(左)、ならびに0~30nMの同じデータのズームイン画像(右)を示す。
【
図22B】トロンボソームバッチ1の複製について、INRが1、2、3、および6である血漿中のトロンボソームのピークトロンビン生成に対する効果を示す。
【
図22C】トロンボソームバッチ1の複製について、INRが1、2、3、および6である血漿中のトロンボソームのピークトロンビン生成に対する効果を示す。
【
図22D】トロンボソームバッチ2について、INRが1、2、3、および6である血漿中のトロンボソームのピークトロンビン生成に対する効果(左)、ならびに0~2.5nMの同じデータのズームイン画像(右)を示す。
【
図22E】トロンボソームバッチ3について、INRが1、2、および3である血漿中のトロンボソームのピークトロンビン生成に対する効果を示す。
【
図23】
図23Aは、ヘパリンで処理された血漿および血漿のaPTT値を示す。
図23Bは、PPP低試薬で開始した、新鮮な血小板またはトロンボソームを添加した、ヘパリンで処理された血漿についてのトロンビン生成を示す。
図23Cは、PRP試薬で開始した、新鮮な血小板またはトロンボソームを添加した、ヘパリンで処理された血漿についてのトロンビン生成を示す。
【
図24】
図24Aは、血漿、ヘパリンで処理された血漿、ならびにヘパリンおよび硫酸プロタミンで処理された血漿についてのaPTT値を示す。
図24Bは、PPP低試薬で開始した、硫酸プロタミンを添加していない(比較的平坦な線)か、または添加した(曲線)、ヘパリンおよびトロンボソームで処理された血漿についてのトロンビン生成を示す。
図24Cは、PRP試薬で開始した、硫酸プロタミンを添加していない(比較的平坦な線)か、または添加した(曲線)、ヘパリンおよびトロンボソームで処理された血漿についてのトロンビン生成を示す。
【
図25】
図25Aは、PRP試薬で開始した、対照血漿、ダビガトランで処理された血漿、またはダビガトランおよびトロンボソームで処理された血漿についてのトロンビン生成を示す。
図25Bは、PRP試薬で開始した、対照血漿、ダビガトランで処理された血漿、またはダビガトランおよびトロンボソームで処理された血漿についてのトロンビン生成アッセイにおけるピークまでの時間(TTP)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本発明の実施形態を詳細に記載する前に、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、その用語が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と同様または同等である任意の方法および材料が本発明の実践に使用され得るが、ここでは、好ましい方法および材料を記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、刊行物が引用される方法および/また材料と関連して方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、あらゆる組み込まれた刊行物との矛盾を制御する。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明示的に示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「糖」への言及は、1つ以上の糖、および当業者に既知のそれらの同等物への言及を含む。さらに、同等の用語を使用して記載され得る用語の使用は、それらの同等の用語の使用を含む。したがって、例えば、「対象」という用語の使用は、「患者」、「人」、「動物」、「ヒト」、および医学的処置を受ける対象を示すために当該技術分野で使用される他の用語を含むことを理解されたい。
単一の概念を包含するために複数の用語を使用することは、使用されるそれらの用語のみに概念を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0025】
本明細書で使用される用語が、単に特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。さらに、値の範囲が開示される場合、当業者は、開示される範囲内の他のすべての特定の値が、本明細書で各特定の値または範囲を開示する必要なしに、これらの値およびそれらが表す範囲によって本質的に開示されることを理解するであろう。例えば、開示される1~10の範囲は、1~9、1~5、2~10、3.1~6、1、2、3、4、5などを含む。さらに、開示される範囲の各々は、範囲のより低い値については最大5%低いこと、および範囲のより高い値については最大5%高いことを含む。例えば、開示される4~10の範囲は、3.8~10.5を含む。この概念は、本書では「約」という用語によって捉えられている。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「血小板」という用語は、全血小板、断片化された血小板、血小板誘導体、またはトロンボソームを含み得る。上記の定義内の「血小板」は、例えば、全血中の血小板、血漿中の血小板、選択された血漿タンパク質で任意選択的に補充された緩衝液中の血小板、低温貯蔵された血小板、乾燥された血小板、凍結保存された(cryopreserved)血小板、解凍された凍結保存された(cryopreserved)血小板、再水和された乾燥された血小板、再水和された凍結保存された(cryopreserved)血小板、凍結保存された(lyopreserved)血小板、解凍された凍結保存された(lyopreserved)血小板、または再水和された凍結保存された(lyopreserved)血小板を含み得る。「血小板」は、ヒトなどの哺乳動物の「血小板」であり得るか、または非ヒト哺乳動物などの「血小板」であり得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「トロンボソーム」(本明細書では、特に実施例および図では、「Tsome」または「Ts」とも称される場合がある)は、インキュベーション剤(例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤のうちのいずれか)で処理され、凍結保存(例えば、凍結乾燥)されている、血小板誘導体である。いくつかの場合では、トロンボソームは、プールされた血小板から調製され得る。トロンボソームは、周囲温度で、乾燥形態で2~3年の貯蔵寿命を有し得、直ちに注入するために数分以内に滅菌水で再水和され得る。トロンボソームの1つの例は、血小板減少性患者における急性出血の治療のための臨床試験にある、THROMBOSOMES(登録商標)である。第IIa因子、第VIIa因子、第IX因子、第Xa因子、第XI因子、組織因子、もしくは凝血因子(例えば、第II因子、第VII因子、第IX因子、または第X因子)のビタミンK依存性合成を阻害する薬剤、または抗トロンビン(例えば、抗トロンビンIII)を活性化する薬剤は、本開示の目的のための抗凝固剤である。抗凝固剤の他の機序は、既知である。抗凝固剤の非限定的な例としては、ダビガトラン、アルガトロバン、ヒルジン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、フォンダパリヌクス、ワルファリン、ヘパリン、および低分子量ヘパリン(例えば、ダルテパリン、エノキサパリン、チンザパリン、アルデパリン、ナドロパリン、レベパリン、ダナパロイド)が挙げられる。抗凝固剤の追加の非限定的な例としては、チファコギン、第VIIai因子、SB249417、ペグニバコギン(アニバメルセンを含むか、または含まない)、TTP889、イドラパリヌクス、イドラビオタパリヌクス、SR23781A、アピキサバン、ベトリキサバン、レピルジン、ビバリルジン、キシメラガトラン、フェンプロクモン、アセノクマロール、インダンジオン、およびフルインジオンが挙げられる。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ダビガトラン、アルガトロバン、ヒルジン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、フォンダパリヌクス、ワルファリン、ヘパリン、低分子量ヘパリン、チファコギン、第VIIai因子、SB249417、ペグニバコギン(アニバメルセンを含むか、または含まない)、TTP889、イドラパリヌクス、イドラビオタパリヌクス、SR23781A、アピキサバン、ベトリキサバン、レピルジン、ビバリルジン、キシメラガトラン、フェンプロクモン、アセノクマロール、インダンジオン、およびフルインジオンからなる群から選択される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「抗凝固剤」は、抗血小板剤を含まない抗血栓剤である。抗血小板剤の例としては、アスピリン、カングレロール、チカグレロール、クロピドグレル(例えば、PLAVIX(登録商標))、プラスグレルエプチフィバチド(例えば、INTEGRILIN(登録商標))、チロフィバン(例えば、AGGRASTAT(登録商標))、およびアブシキシマブ(例えば、REOPRO(登録商標))が挙げられる。典型的には、P2Y受容体(例えば、P2Y12)、糖タンパク質IIb/IIIaを阻害する薬剤、またはトロンボキサンシンターゼもしくはトロンボキサン受容体に拮抗する薬剤は、抗血小板剤であると見なされる。抗血小板剤の他の機序は、既知である。本明細書で使用される場合、アスピリンは、抗血小板剤であるが、抗凝固剤ではないと見なされる。
【0029】
抗凝固剤の効果の克服は、抗凝固剤の薬理作用により異なる。事前に計画された手術のように、事前に通知されている場合には、抗凝固剤の用量が手術の前に調整され得る場合があるが、そのような用量の減少は、推奨されない場合があり得る。抗凝固剤が迅速に拮抗する必要がある場合(例えば、緊急手術の場合)には、拮抗剤は、典型的には、遅効性であるか、高価であるか、または患者に重大なリスクをもたらす。以下は、市販の抗凝固剤に対する拮抗剤のいくつかの非限定的な例である。
【0030】
ワルファリン(例えば、COUMADIN(登録商標))-ワルファリンは、複数の凝固因子を生成するために必要な補助因子である肝臓中のビタミンKの活性を防止するように作用する。ワルファリンの拮抗は、ビタミンKまたはプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)を投薬することにより行われ得る場合がある。ビタミンKは、低コストかつ遅効性(24時間超のPO)であるが、患者において血栓を誘発する重大なリスクをもたらし得、一方PCCは、およそ5000ドル/用量で高価である。
【0031】
ダビガトラン(例えば、PRADAXA(登録商標))-ダビガトランは、トロンビンの直接的阻害剤である。
5グラムの用量(2用量間隔で、各2.5グラム)のモノクローナル抗体療法イダルシズマブ(例えば、PRAXBIND(登録商標)、Boehringer-Ingelheim、Germany)は、典型的には、数分以内にダビガトランの効果に拮抗し得る。ある卸売価格は、そのような治療の場合、3482.50ドルである。
【0032】
リバーロキサバン(例えば、XARELTO(登録商標))-リバーロキサバンは、直接的な第Xa因子阻害剤である。リバーロキサバンは、組換え第Xa因子デコイであるアンデキサネットアルファ(例えば、ANDEXXA(登録商標))によって拮抗される。この治療は、高用量治療の場合、およそ50,000ドルの費用がかかる場合がある。
【0033】
アピキサバン(例えば、ELIQUIS(登録商標))-アピキサバンは、直接的な第Xa因子阻害剤である。アピキサバンは、組換え第Xa因子デコイであるアンデキサネットアルファによって拮抗される。この治療は、高用量治療の場合、およそ50,000ドルの費用がかかる場合がある。
【0034】
エドキサバン(例えば、SAVAYSA(登録商標)、LIXIANA(登録商標))-エドキサバンは、直接的な第Xa因子阻害剤である。エキソキサバンは、承認された拮抗剤を有しない。シラパランタグ(アリパジン)およびアンデキサネットアルファは、適切であることが臨床的に証明されていない。
【0035】
ヘパリンおよび低分子量ヘパリンは、抗トロンビンIII(AT)の活性化剤である。ATは、トロンビンおよび第Xa因子などのプロテアーゼを不活性化する。硫酸プロタミンは、負荷電ヘパリンに結合し、ATに対するその作用を防止する、高正荷電ポリペプチドである。硫酸プロタミンは、典型的には、約1.0~約1.5mg/100IUの活性ヘパリンで投薬される。
【0036】
血小板由来の製品は、抗凝固薬の治療法としては現在使用されていない。
【0037】
抗凝固薬の治療は、必ずしも標的化された対策ではない。いくつかの新規の抗凝固剤治療、例えば、アンデキサネットアルファ(例えば、ANDEXXA(登録商標))は、ある程度の成功を見たが、高価であり得る。したがって、緊急治療(手術前、外傷など)は、典型的には、出血を回避または緩和するための包括的な予防策である。非限定的な例としては、血漿、赤血球、および抗線溶剤の注入が挙げられる。血小板誘導体(例えば、凍結保存された血小板(例えば、トロンボソーム))は、これらの一般的な治療に対する有効な代替策または補完であり得る。
【0038】
いかなる特定の理論にも拘束されることなく、トロンボソームは、抗凝固剤によって抑制されるものを超えてトロンビン生成を増強するために凝固促進性負荷電表面を提供することによって、少なくとも部分的に作用し得ると考えられている。
【0039】
出血を制御し、治癒を改善するための製品および方法が本明細書に記載される。本明細書に記載の製品および方法はまた、抗凝固剤(例えば、ワルファリン(例えば、COUMADIN(登録商標))、ヘパリン、LMWH、ダビガトラン(例えば、PRADAXA(登録商標))、アルガトロバン、ヒルジン、リバーロキサバン(例えば、XARELTO(登録商標))、アピキサバン(例えば、ELIQUIS(登録商標))、エドキサバン(例えば、SAVAYSA(登録商標))、フォンダパリヌクス(例えば、ARIXTRA(登録商標)))の活性に対抗するために使用され得る。本明細書に記載の製品および方法は、創傷の閉鎖および治癒を助ける実施形態を対象とする。
【0040】
ある特定の実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物は、患者の表面上または患者の内部の創傷に送達され得る。様々な実施形態では、血小板または血小板誘導体を含む組成物は、接着包帯、圧縮包帯、液体溶液、エアロゾル、マトリックス組成物、およびコーティングされた縫合、または他の医療的閉鎖を含むがこれらに限定されない、選択された形態で適用され得る。実施形態では、血小板誘導体は、患者の表面上の罹患領域の全部または一部のみに投与され得る。他の実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物は、例えば、血流を介して、全身的に投与され得る。実施形態では、血小板誘導体の適用は、2日間または3日間、好ましくは5~10日間、または最も好ましくは最大14日間、止血効果をもたらし得る。
【0041】
いくつかの実施形態は、対象における凝固障害を治療する方法を提供し、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0042】
いくつかの実施形態は、対象における凝固障害を治療する方法を提供し、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0043】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、凝固障害は、抗凝固剤の結果である。
【0044】
いくつかの実施形態は、抗凝固剤によって治療されていたか、または治療されている対象における凝固障害を治療する方法を提供し、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0045】
いくつかの実施形態は、抗凝固剤によって治療されていたか、または治療されている対象における凝固障害を治療する方法を提供し、この方法は、その治療を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0046】
いくつかの実施形態は、対象における正常な止血を回復させる方法を提供し、この方法は、その回復を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0047】
いくつかの実施形態は、対象における正常な止血を回復させる方法を提供し、この方法は、その回復を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0048】
いくつかの実施形態は、抗凝固剤によって治療されていたか、または治療されている対象における正常な止血を回復させる方法を提供し、この方法は、その回復を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0049】
いくつかの実施形態は、抗凝固剤によって治療されていたか、または治療されている対象における正常な止血を回復させる方法を提供し、この方法は、その回復を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0050】
本明細書に記載の組成物はまた、いくつかの場合では、対象を手術のために準備させるために投与され得る。抗凝固剤を服用している一部の患者にとって、手術の前に抗凝固剤の投与量を低減させることは困難または不可能であり得る(例えば、外傷または他の緊急手術の場合)。抗凝固剤を服用している一部の患者にとって、手術の前に抗凝固剤の投与量を低減させることは不得策である場合がある(例えば、抗凝固剤の投与量が経時的に低減された場合に、患者が血栓性事象(例えば、深部静脈血栓症、肺塞栓症、または脳卒中)のリスクに曝される場合)。
【0051】
したがって、いくつかの実施形態は、対象を手術のために準備させる方法を提供し、この方法は、その準備を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0052】
いくつかの実施形態は、対象を手術のために準備させる方法を提供し、この方法は、その準備を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0053】
いくつかの実施形態は、抗凝固剤によって治療されていたか、または治療されている対象を手術のために準備させる方法を提供し、この方法は、その準備を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0054】
いくつかの実施形態は、抗凝固剤によって治療されていたか、または治療されている対象を手術のために準備させる方法を提供し、この方法は、その準備を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0055】
いくつかの実施形態では、手術は、緊急手術(例えば、外傷の場合)または予定された手術であり得る。
【0056】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、抗凝固剤による治療は、(例えば、手術の準備において)停止され得る。いくつかの実施形態では、抗凝固剤による治療は、継続し得る。
【0057】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象はまた、抗凝固剤拮抗剤(例えば、イダルシズマブ、アンデキサネットアルファ、シラパランタグ(アリパジン)、硫酸プロタミン、ビタミンK)によって治療され得るか、または治療されない場合がある。いくつかの実施形態では、対象はまた、抗凝固剤拮抗剤によって治療されない。いくつかの実施形態では、対象はまた、抗凝固剤拮抗剤によって治療される。抗凝固剤拮抗剤は、対象に投与される抗凝固剤に基づいて選択され得ることが理解されよう。
【0058】
いくつかの実施形態は、対象における抗凝固剤の効果を改善する方法を提供し、この方法は、その改善を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0059】
いくつかの実施形態は、対象における抗凝固剤の効果を改善する方法を提供し、この方法は、その改善を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0060】
いくつかの場合では、抗凝固剤の投与量が不正確であるため、抗凝固剤の効果を改善する必要があり得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗凝固剤の効果は、抗凝固剤の過剰摂取後に改善され得る。いくつかの場合では、別の薬物(例えば、第2の抗凝固剤)との相互作用の可能性のため、抗凝固剤の効果を改善する必要があり得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗凝固剤の効果は、そのうちの少なくとも1つが抗凝固剤である、2つ以上の薬物の誤った投薬後に改善され得る。
【0061】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、組成物は、抗線溶剤などの活性剤をさらに含み得る。抗線溶剤の非限定的な例としては、e-アミノカプロン酸(EACA)、トラネキサム酸、アプロチニン、アミノメチル安息香酸、およびフィブリノゲンが挙げられる。いくつかの実施形態では、血小板または血小板誘導体に、抗線溶剤などの活性剤が充填され得る。
【0062】
血液(例えば、対象の血液)の凝血パラメータは、本明細書に記載の方法の間の任意の適切な時点で評価され得る。例えば、血液の1つ以上の凝血パラメータは、例えば、本明細書に記載の血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の必要性を決定するために、本明細書に記載の凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の前に評価され得る。別の例として、血液の1つ以上の凝血パラメータは、例えば、投与される組成物の有効性を決定するために、組成物の追加の投与が正当であるかどうかを決定するために、または外科的処置を実施することが安全であるかどうかを決定するために、本明細書に記載の凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の後に評価され得る。
【0063】
したがって、本明細書に記載の方法のうちのいずれかは、本明細書に記載の血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の前に、血液の1つ以上の凝血パラメータを評価する工程、本明細書に記載の凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の後に、血液の1つ以上の凝血パラメータを評価する工程、またはその両方を含み得る。
【0064】
任意の適切な方法を使用して、血液の凝血パラメータを評価し得る。方法の非限定的な例としては、プロトロンビン時間アッセイ、国際標準化比(INR)、トロンビン生成(TGA;例えば、ピークトロンビン、内因性トロンビン産生能(ETP)、およびラグタイムなどのパラメータを生成するために使用され得る)、トロンボエラストグラフィー(TEG)、活性化凝血時間(ACT)、および部分的トロンボプラスチン時間(PTTまたはaPTT)が挙げられる。
【0065】
INRは、投薬を決定する標準的な方法であり(以下の等式を参照されたい)、式中、「PT(x)」は、プロトロンビン時間アッセイの結果であり、ISI定数は、プロトロンビン時間アッセイで使用される組織因子の製造業者に依存する。
【0066】
ワルファリンは、健全な凝血塊形成に不可欠である4つの主要な血漿タンパク質の合成を阻害する。ワルファリンの治療的維持用量は、典型的には、約2.0~約3.0のINRを標的とする。トロンボソームは、ワルファリン型薬物の存在下で止血を回復させるための独自の治療法を提示する。ワルファリンの用量は、ワルファリンの量とともに増加する比率であるINRによって表され得る(1が正常値である)。
【0067】
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載の凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の前に、2.0超(例えば、少なくとも2.2、少なくとも2.4、少なくとも2.5、少なくとも2.6、少なくとも2.8、少なくとも3.0、少なくとも3.2、少なくとも3.4、少なくとも3.5、少なくとも3.6、少なくとも3.8、少なくとも4.0、少なくとも4.2、少なくとも4.4、少なくとも4.5、少なくとも4.6、少なくとも4.8、または少なくとも5.0)のINRを有する。いくつかの実施形態では、対象(例えば、ワルファリンなどの抗凝固剤によって治療されている対象)は、2.0~3.0、例えば、2.2~2.8、例えば、2.4~2.6、例えば、2.5のINRを有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載の凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の後に、より低いINR(または正常なINR)を有する。例えば、対象は、本明細書に記載の血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の後に、3.0以下(例えば、2.8未満、2.6未満、2.5未満、2.4未満、2.2未満、2.0未満、1.8未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.2未満、または1.0未満)のINRを有し得る。
【0069】
トロンビン生成
トロンビン生成アッセイは、蛍光ペプチドのトロンビン酵素切断および蛍光分子の放出の結果として生じる凝固促進剤を介した試料活性化後のトロンビンの産生を測定した。ピークトロンビンは、産生される最大トロンビンの尺度、ラグタイムは、トロンビン産生の開始までの時間、およびETPは、潜在的に産生される総トロンビンである。
【0070】
いくつかの実施形態では、患者は、本明細書に記載の血小板または血小板誘導体を含む組成物の投与の前に、約60nM~約170nM、例えば、約65nM~約170nM、例えば、約65nM~約120nM、例えば、約80nMのピークトロンビンを有し得る。
【0071】
TEGは、経時的な凝血塊強度のプロットを介して内因性止血を評価する。塩化カルシウム(CaCl
2)は、典型的には、開始試薬として使用される。TEG波形(例えば、
図16を参照)は、凝血についての情報を提供し得る複数のパラメータを有する。
R時間=反応時間-試験の開始から初期フィブリン形成までの待ち時間。
K=動態-初期フィブリン形成の速度、ある特定のレベルの凝血塊強度(例えば、20mmの振幅)を達成するのにかかる時間
アルファ角=RとKとの間の線の傾き-凝血魂形成の速度を測定する。
MA=最大振幅(mm)-フィブリン凝血塊の最終的な強度を表す。
A
30=最大振幅に到達した30分後の振幅-溶解相の速度を表す。
【0072】
凝固性低下状態の血液では、R時間は増加し、MAは減少する。R時間は、典型的には、MAよりも広い応答範囲を提供する。
【0073】
総血栓形成分析システム(T-TAS(登録商標)、FUJIMORI KOGYO CO.,LTD)では、試料は、鉱油を使用して、コラーゲンでコーティングされたマイクロチャネルを通される。圧力の変化は、血栓形成を評価するために使用される。閉塞開始時間は、10kPaに到達するのにかかる時間であり、閉塞時間は、ARチップ(例えば、Zacros品目番号、TC0101)を使用して各D80kPaに到達するのにかかる時間である。メーカーによれば、ARチップは、主にフィブリンおよび活性化された血小板からなる混合された白色血栓の形成を分析するために使用され得る。これは、コラーゲンおよび組織因子でコーティングされた流路(幅300μm×高さ50μm)を有し、凝血機能および血小板機能を分析するために使用され得る。比較して、PLチップは、主に活性化された血小板からなる血小板血栓の形成を分析するために使用され得る。PLチップは、コラーゲンのみでコーティングされた流路を有し、血小板機能を分析するために使用され得る。
【0074】
ACTアッセイは、凝血時間(tACT)を測定するための最も基本的であるが、恐らく最も確かな方法であり、その周囲に凝血塊が形成されるときの磁石の重力に対する抵抗によって決定される。典型的なドナーの血液は、CaCl2のみを使用して、約200~300秒のtACTを有する。
【0075】
いくつかの実施形態は、対象におけるトロンビン生成を増加させる方法を提供し、この方法は、その増加を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0076】
いくつかの実施形態は、対象におけるトロンビン生成を増加させる方法を提供し、この方法は、その増加を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0077】
いくつかの実施形態は、対象におけるピークトロンビンを増加させる方法を提供し、この方法は、その増加を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤と、を含む。
【0078】
いくつかの実施形態は、対象におけるピークトロンビンを増加させる方法を提供し、この方法は、その増加を必要とする対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物は、血小板を1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって調製されている。
【0079】
いくつかの実施形態では、投与の前に、対象のピークトロンビンは、66nM未満(例えば、64nM、62nM、60nM、55nM、50nM、45nM、40nM、35nM、30nM、25nM、20nM、15nM、10nM、または5nM未満)であった。いくつかの実施形態では、投与の後に、対象のピークトロンビンは、66nM超(例えば、68nM、70nM、75nM、80nM、85nM、90nM、95nM、100nM、110nM、120nM、130nM、140nM、または150nM超)である。いくつかの実施形態では、投与の後に、対象のピークトロンビンは、66~166nMである。ピークトロンビンは、任意の適切な方法によって測定され得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、対象を治療するのに有効な、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)の量を含む、組成物の量である。そのような量の血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、任意の適切な投与量の、対象に投与され得る本明細書に記載の血小板または血小板誘導体を含む組成物を含む。例えば、いくつかの実施形態では、ある用量の血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を含む組成物は、約1.0×107粒子~約1.0×1010粒子、例えば、約1.6×107粒子(例えば、トロンボソーム)/kg~約1.0×1010粒子/kg(例えば、約1.6×107~約5.1×109粒子/kg、約1.6×107~約3.0×109粒子/kg、約1.6×107~約1.0×109粒子/kg、約1.6×107~約5.0×108粒子/kg、約1.6×107~約1.0×108粒子/kg、約1.6×107~約5.0×107粒子/kg、約5.0×107~約1.0×108粒子/kg、約1.0×108~約5.0×108粒子/kg、約5.0×108~約1.0×109粒子/kg、約1.0×109~約5.0×109粒子/kg、または約5.0×109~約1.0×1010粒子/kg)を含み得る。
【0081】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、局所投与される。いくつかの実施形態では、局所投与は、溶液、クリーム、ゲル、懸濁液、パテ、粒子、または粉末を介した投与を含み得る。いくつかの実施形態では、米国特許出願第15/776,255号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に対応するPCT公開第W02017/040238号(例えば、段落[013]~[069])に記載のように、局所投与は、包帯(例えば、接着包帯または圧縮包帯)または医療的閉鎖(例えば、縫合、ステープル)を介した投与を含み得、例えば、血小板誘導体は、その中に埋め込まれ得る。
【0082】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、非経口投与される。
【0083】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、静脈内投与される。
【0084】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、筋肉内投与される。
【0085】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、髄腔内投与される。
【0086】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、皮下投与される。
【0087】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、腹腔内投与される。
【0088】
本明細書の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、投与工程の前に乾燥される。本方法のいくつかの実施形態では、組成物は、投与工程の前に凍結乾燥される。本方法のいくつかの実施形態では、組成物は、乾燥工程または凍結乾燥工程の後に再水和される。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ダビガトラン(例えば、PRADAXA(登録商標))、アルガトロバン、またはヒルジンなどの抗第Ila因子剤;リバーロキサバン(例えば、XARELTO(登録商標))、アピキサバン(例えば、ELIQUIS(登録商標))、エドキサバン(例えば、SAVAYSA(登録商標))、またはフォンダパリヌクス(例えば、ARIXTRA(登録商標))などの抗第Xa因子剤;ワルファリン(例えば、COUMADIN(登録商標))およびヘパリン/LMWH(低分子ヘパリン)などの従来の抗凝固剤;ハーブサプリントなどのサプリメント、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。サプリメントの例としては、ニンニク、補酵素CoQ10、グルコサミン、グルコサミン-コンドロイチンスルフェートが挙げられる。ハーブサプリメントの非限定的な例は、ニンニクである。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ダビガトラン(例えば、PRADAXA(登録商標))である。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、アルガトロバンである。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヒルジンである。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、リバーロキサバン(例えば、XARELTO(登録商標))である。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、アピキサバン(例えば、ELIQUIS(登録商標))である。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、エドキサバン(例えば、SAVAYSA(登録商標))である。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、フォンダパリヌクス(例えば、ARIXTRA(登録商標))である。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリンまたは低分子量ヘパリン(LMWH)である。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ワルファリン(例えば、COUMADIN(登録商標))である。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、チファコギンである。
【0100】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、第VIIai因子である。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、SB249417である。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ペグニバコギン(アニバメルセンを含むか、または含まない)である。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、TTP889である。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、イドラパリヌクスである。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、イドラビオタパリヌクスである。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、SR23781Aである。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、アピキサバンである。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ベトリキサバンである。
【0109】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、レピルジンである。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ビバリルジンである。
【0111】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、キシメラガトランである。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、フェンプロクモンである。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、アセノクマロールである。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、インダンジオンである。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、フルインジオンである。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、サプリメントである。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ハーブサプリメントである。
【0118】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物を再水和することは、血小板に水性液体を添加することを含む。いくつかの実施形態では、水性液体は、水である。いくつかの実施形態では、水性液体は、水溶液(例えば、緩衝液)である。いくつかの実施形態では、水性液体は、生理食塩水である。いくつかの実施形態では、水性液体は、懸濁液である。
【0119】
いくつかの実施形態では、再水和された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、40国際単位(IU)以上での凝血に関連するすべての個々の因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、および第IX因子)を示す凝固因子レベルを有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、約10%未満、例えば、約8%未満、例えば、約6%未満、例えば、約4%未満、例えば、約2%未満、例えば、約0.5%未満の血小板膜の架橋を、膜上に存在するタンパク質および/または脂質を介して有する。いくつかの実施形態では、再水和された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、約10%未満、例えば、約8%未満、例えば、約6%未満、例えば、約4%未満、例えば、約2%未満、例えば、約0.5%未満の血小板膜の架橋を、膜上に存在するタンパク質および/または脂質を介して有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、少なくとも約0.2μm(例えば、少なくとも約0.3μm、少なくとも約0.4μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約0.6μm、少なくとも約0.7μm、少なくとも約0.8μm、少なくとも約0.9μm、少なくとも約1.0μm、少なくとも約1.2μm、少なくとも約1.5μm、少なくとも約2.0μm、少なくとも約2.5μm、または少なくとも約5.0μm)の粒径(例えば、直径、最大寸法)を有する。いくつかの実施形態では、粒径は、約5.0μm未満(例えば、約2.5μm未満、約2.0μm未満、約1.5μm未満、約1.0μm未満、約0.9μm未満、約0.8μm未満、約0.7μm未満、約0.6μm未満、約0.5μm未満、約0.4μm未満、または約0.3μm未満)である。いくつかの実施形態では、粒径は、約0.3μm~約5.0μm(例えば、約0.4μm~約4.0μm、約0.5μm~約2.5μm、約0.6μm~約2.0μm、約0.7μm~約1.0μm、約0.5μm~約0.9μm、または約0.6μm~約0.8μm)である。
【0122】
いくつかの実施形態では、少なくとも50%(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%)の凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、約0.3μm~約5.0μm(例えば、約0.4μm~約4.0μm、約0.5μm~約2.5μm、約0.6μm~約2.0μm、約0.7μm~約1.0μm、約0.5μm~約0.9μm、または約0.6μm~約0.8μm)の範囲の粒径を有する。いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)の最大99%(例えば、最大約95%、最大約80%、最大約75%、最大約70%、最大約65%、最大約60%、最大約55%、または最大約50%)は、約0.3μm~約5.0μm(例えば、約0.4μm~約4.0μm、約0.5μm~約2.5μm、約0.6μm~約2.0μm、約0.7μm~約1.0μm、約0.5μm~約0.9μm、または約0.6μm~約0.8μm)の範囲にある。いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)の約50%~約99%(例えば、約55%~約95%、約60%~約90%、約65%~約85%、約70%~約80%)は、約0.3μm~約5.0μm(例えば、約0.4μm~約4.0μm、約0.5μm~約2.5μm、約0.6μm~約2.0μm、約0.7μm~約1.0μm、約0.5μm~約0.9μm、または約0.6μm~約0.8μm)の範囲にある。
【0123】
いくつかの実施形態では、血小板は、対象を治療する前に、例えば液体培地中で、単離される。
【0124】
いくつかの実施形態では、血小板は、ドナー由来の血小板である。いくつかの実施形態では、血小板は、アフェレーシス工程を含むプロセスによって得られる。いくつかの実施形態では、血小板は、プールされた血小板である。
【0125】
いくつかの実施形態では、血小板は、複数のドナーからプールされる。複数のドナーからプールされたそのような血小板は、本明細書では、プールされた血小板とも称され得る。いくつかの実施形態では、ドナーは、5人より多い、例えば、10人より多い、例えば、20人より多い、例えば、50人より多い、例えば、最大約100人のドナーである。いくつかの実施形態では、ドナーは、約5~約100人、例えば、約10~約50人、例えば、約20~約40人、例えば、約25~約35人である。プールされた血小板は、本明細書に記載の組成物のうちのいずれかを作製するために使用され得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、血小板は、インビトロで誘導される。いくつかの実施形態では、血小板は、培養物中で誘導されるか、または調製される。いくつかの実施形態では、血小板の調製は、巨核球の培養物から血小板を誘導または増殖することを含む。いくつかの実施形態では、血小板の調製は、胚性幹細胞(ESC)および/または人工多能性幹細胞(iPSC)を含む、ヒト多能性幹細胞(PCS)の培養物から血小板(または巨核球)を誘導または増殖することを含む。
【0127】
したがって、いくつかの実施形態では、血小板は、本明細書に記載の対象を治療する前に調製される。いくつかの実施形態では、血小板は、凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、血小板は、凍結保存される。
【0128】
いくつかの実施形態では、血小板またはプールされた血小板は、インキュベーション剤とのインキュベーションの前に、約6.0~約7.4のpHに酸性化され得る。いくつかの実施形態では、本方法は、血小板を約6.5~約6.9のpHに酸性化することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、血小板を約6.6~約6.8のpHに酸性化することを含む。いくつかの実施形態では、酸性化は、プールされた血小板にクエン酸デキストロース(ACD)を含む溶液を添加することを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、血小板は、インキュベーション剤とのインキュベーションの前に単離される。いくつかの実施形態では、本方法は、遠心分離を使用することによって血小板を単離することをさらに含む。いくつかの実施形態では、遠心分離は、約1000×g~約2000×gの相対的遠心力(RCF)で行われる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、約1300×g~約1800×の相対遠心力(RCF)で行われる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、約1500×gの相対遠心力(RCF)で行われる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、約1分~約60分間行われる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、約10分~約30分間行われる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、約30分間行われる。
【0130】
インキュベーション剤は、任意の適切な成分を含み得る。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、液体培地を含み得る。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、および血液もしくは血液製剤中に見出され得るか、または血小板を乾燥させるのに有用であることが既知である任意の他の塩、あるいはこれらのうちの2つ以上の任意の組み合わせから選択される1つ以上の塩を含み得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、および血液または血液製剤中に見出され得る任意の他の塩などの1つ以上の塩を含む。例示的な塩としては、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KC1)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約0.5mM~約100mMの1つ以上の塩を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約0.5mM~約100mM(例えば、約0.5~約2mM、約2mM~約90mM、約2mM~約6mM、約50mM~約100mM、約60mM~約90mM、約70~約85mM)の1つ以上の塩を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約5mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM、または約80mMの1つ以上の塩を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびその2つの組み合わせから選択される1つ以上の塩を、約0.5mM~約2mMの濃度で含む。
【0132】
好ましくは、これらの塩は、全血中に見出されるのとほぼ同じ量で、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物中に存在する。
【0133】
いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、担体タンパク質をさらに含む。いくつかの実施形態では、担体タンパク質は、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、担体タンパク質は、約0.05%~約1.0%(w/v)の量で存在する。
【0134】
インキュベーション剤は、血小板に対して非毒性であり、かつ本明細書に提供されるプロセス中に溶液が曝露される温度で溶液に適切な緩衝能力を提供する、任意の緩衝液であり得る。したがって、緩衝液は、リン酸緩衝液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、重炭酸塩/炭酸、例えば、重炭酸ナトリウム緩衝液、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸(HEPES)、およびトリス系緩衝液、例えば、トリス緩衝生理食塩水(TBS)などの、市販の既知の生体適合性緩衝液のうちのいずれかを含み得る。同様に、これは、以下の緩衝液:プロパン-1,2,3-トリカルボン酸(トリカルバリル酸);ベンゼンペンタカルボン酸;マレイン酸;2,2-ジメチルコハク酸;EDTA;3,3-ジメチルグルタル酸;ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノ-トリス(ヒドロキシメチル)-メタン(BIS-TRIS);ベンゼンヘキサカルボン酸(メリト酸);N-(2-アセトアミド)イミノ-二酢酸(ADA);ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸;ピロリン酸;1,1-シクロペンタン二酢酸(3,3-テトラメチレン-グルタル酸);ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES);N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES);1,1-シクロヘキサン二酢酸;3-6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸(EMTA;ENDCA);イミダゾール;2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド(CHOLAMINE);N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES);2-メチルプロパン-1,2,3-トリスカルボン酸(ベータ-メチルトリカルバリル酸);2-(N-モルホリノ)プロパン-スルホン酸(MOPS);リン酸;およびN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、1つ以上の緩衝液、例えば、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸(HEPES)、または重炭酸ナトリウム(NaHCO3)を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約5~約100mMの1つ以上の緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、1つ以上の緩衝液の約5~約50mM(例えば、約5mM~約40mM、約8mM~約30mM、約10mM~約25mM)を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約10mM、約20mM、約25mM、または約30mMの1つ以上の緩衝液を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、スクロース、マルトース、トレハロース、グルコース、マンノース、デキストロース、およびキシロースを含む、単糖および二糖などの1つ以上の糖を含む。いくつかの実施形態では、糖は、単糖である。いくつかの実施形態では、糖は、二糖である。いくつかの実施形態では、糖は、単糖、二糖、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、糖は、非還元性二糖である。いくつかの実施形態では、糖は、スクロース、マルトース、トレハロース、グルコース(例えば、デキストロース)、マンノース、またはキシロースを含む。いくつかの実施形態では、糖は、トレハロースを含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、デンプンを含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、スクロースおよびエピクロロヒドリンのポリマーであるポリスクロースを含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約10mM~約1,000mMの1つ以上の糖を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、約50~約500mMの1つ以上の糖を含む。実施形態では、1つ以上の糖は、10mM~500mMの量で存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の糖は、50mM~200mMの量で存在する。実施形態では、1つ以上の糖は、100mM~150mMの量で存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の糖は、凍結乾燥剤であり、例えば、いくつかの実施形態では、凍結乾燥剤は、トレハロース、ポリスクロース、またはそれらの組み合わせを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を含む組成物は、水または生理食塩水のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体を含む組成物は、DMSOを含み得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、アルコール(例えば、エタノール)などの有機溶媒を含む。そのようなインキュベーション剤において、溶媒の量は、0.1%~5.0%(v/v)の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、約0.1%(v/v)~約5.0%(v/v)、例えば、約0.3%(v/v)~約3.0%(v/v)、または約0.5%(v/v)~約2%(v/v)の範囲であり得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、好適な有機溶媒としては、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、ハロゲン化溶媒、炭化水素、ニトリル、グリコール、硝酸アルキル、水、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、好適な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、酢酸、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル(IPE)、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサン(例えば、1,4-ジオキサン)、アセトニトリル、プロピオニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、アニソール、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、エチレングリコール、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジメチルアミド、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、エタノール、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド(DMAC)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、エタノール、DMSO、またはそれらの組み合わせを含む。エタノールなどの有機溶媒の存在は、血小板、血小板誘導体、またはトロンボソーム(例えば、凍結乾燥された血小板誘導体)の処理において有益であり得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、水性培地の存在下で血小板にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、インキュベーション剤は、DMSOを含む培地の存在下でインキュベートされる。
【0140】
いくつかの実施形態では、1つ以上の他の成分は、血小板内でインキュベートされ得る。例示的な成分は、インキュベーションプロセス中の血小板凝集および活性化を防止するために、プロスタグランジンElもしくはプロスタシクリン、および/またはEDTA/EGTAを含み得る。
【0141】
使用され得るインキュベーション剤組成物の非限定的な例を表1~5に示す。
【0142】
【0143】
【0144】
(表3)
表3.緩衝液Bは、例えば、フローサイトメトリーのために血小板をインキュベートする場合に使用され得る。このようなインキュベーションは、暗所で室温で行われ得る。アルブミンは、緩衝液Bの任意選択的な成分である。
【0145】
【0146】
表4は、別の例示的なインキュベーション剤である。pHは、NaOHで7.4に調節され得る。アルブミンは、緩衝液Bの任意選択的な成分である。
【0147】
【0148】
表5は、別の例示的なインキュベーション剤である。
【0149】
いくつかの実施形態では、血小板(例えば、アフェレーシス血小板、全血から単離された血小板、プールされた血小板、またはそれらの組み合わせ)は、15~45℃の異なる温度、または約37℃で、異なる持続時間、インキュベーション剤とともにインキュベートされる。
【0150】
いくつかの実施形態では、血小板(例えば、アフェレーシス血小板、全血から単離された血小板、プールされた血小板、またはそれらの組み合わせ)は、10,000血小板/μL~10,000,000血小板/μL、例えば、50,000血小板/μL~2,000,000血小板/μL、例えば、100,000血小板/μL~500,000血小板/μL、例えば、150,000血小板/μL~300,000血小板/μL、例えば、200,000血小板/μLの濃度で液体培地を含むインキュベーション剤において懸濁液を形成する。
【0151】
血小板(例えば、アフェレーシス血小板、全血から単離された血小板、プールされた血小板、またはそれらの組み合わせ)は、例えば、少なくとも約5分間(例えば、少なくとも約20分間、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約30時間、約36時間、約42時間、約48時間、または少なくとも約48時間)などの異なる持続時間、インキュベーション剤とともにインキュベートされ得る。いくつかの実施形態では、血小板は、約48時間以内(例えば、約20分間以内、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約30時間、約36時間、または約42時間以内)、インキュベーション剤とともにインキュベートされ得る。いくつかの実施形態では、血小板は、約10分間~約48時間(例えば、約20分間~約36時間、約30分間~約24時間、約1時間~約20時間、約2時間~約16時間、約10分間~約24時間、約20分間~約12時間、約30分間~約10時間、または約1時間~約6時間)、インキュベーション剤とともにインキュベートされ得る。いくつかの実施形態では、血小板、血小板誘導体、またはトロンボソームは、5分間~48時間、例えば、10分間~24時間、例えば、20分間~12時間、例えば、30分間~6時間、例えば、1時間~3時間、例えば、約2時間という期間、インキュベーション剤とともにインキュベートされる。
【0152】
いくつかの実施形態では、血小板(例えば、アフェレーシス血小板、全血から単離された血小板、プールされた血小板、またはそれらの組み合わせ)は、異なる温度で、インキュベーション剤とともにインキュベートされる。実施形態では、インキュベーションは、37℃で実行される。ある特定の実施形態では、インキュベーションは、4℃~45℃、例えば、15℃~42℃で実施される。例えば、実施形態では、インキュベーションは、35℃~40℃(例えば、37℃)で、110~130(例えば、120)分間、および24~48時間もの長さにわたって実施される。いくつかの実施形態では、血小板は、本明細書に開示されるような異なる持続時間、かつ15~45℃、または約37℃の温度で、インキュベーション剤とともにインキュベートされる。
【0153】
いくつかの実施形態では、血小板(例えば、アフェレーシス血小板、全血から単離された血小板、プールされた血小板、またはそれらの組み合わせ)に、1つ以上の活性剤が充填される。いくつかの実施形態では、血小板に、抗線溶剤が充填され得る。抗線溶剤の非限定的な例としては、e-アミノカプロン酸(EACA)、トラネキサム酸、アプロチニン、アミノメチル安息香酸、およびフィブリノゲンが挙げられる。
【0154】
血小板(例えば、アフェレーシス血小板、全血から単離された血小板、プールされた血小板、またはそれらの組み合わせ)に活性剤(例えば、抗線溶剤)を充填することは、任意の適切な方法によって実施され得る。例えば、PCT公開番号第W02020/113090(A1)号、同第W02020/113101(A1)号、同第W02020/113035(A1)号、および同第W02020/112963(A1)号を参照されたい。一般に、充填は、血小板を抗線溶剤と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、充填は、活性剤をインキュベーション剤と組み合わせることによって実施され得る。いくつかの実施形態では、充填は、インキュベーション工程とは別個の工程で実施され得る。例えば、充填は、インキュベーション工程の前の工程で実施され得る。いくつかのそのような実施形態では、活性剤は、本明細書に記載のインキュベーション剤のうちのいずれかにおいて溶液または懸濁液として血小板に供給され得、これは、インキュベーション工程に使用されるインキュベーション剤と同一であり得るか、または異なり得る。いくつかの実施形態では、充填工程は、インキュベーション工程中に実施され得る。いくつかのそのような実施形態では、活性剤は、(例えば、インキュベーション中に、固体として、または溶液もしくは懸濁液において)インキュベーション剤に添加され得る。いくつかの実施形態では、充填工程は、インキュベーション工程の後の工程において実施され得る。いくつかのそのような実施形態では、本明細書に記載のインキュベーション剤のうちのいずれかにおいて溶液または懸濁液として血小板に供給され得、これは、インキュベーション工程に使用されるインキュベーション剤と同一であり得るか、または異なり得る。
【0155】
活性剤は、任意の適切な濃度で血小板に適用され得る。いくつかの実施形態では、活性剤は、約1μM~約100mM(例えば、約1μM~約10μm、約1μM~約50μM、約1μM~約100μM、約1μM~約500μM、約1μM~約1mM、約1μM~約10mM、約1μM~約25mM、約1μM~約50mM、約1μM~約75mM、約10μM~約100mM、約50μM~約100mM、約100μM~約100mM、約500μM~約100mM、約1mM~約100mM、約10mM~約100mM、約25mM~約100mM、約50mM~約100mM、約75mM~約100mM、約10μM~約100mM、約200μM~約1mM、約800μM~約900μM、約400μM~約800μM、約500μM~約700μM、約600μM、約5mM~約85mM、約20mM~約90mM、約25mM~約75mM、約30mM~約90mM、約35mM~約65mM、約40mM~約60mM、約50mM~約60mM、約40mM~約70mM、約45mM~約55mM、または約50mM)の濃度で(インキュベーション剤または別の溶液もしくは懸濁液の一部として)血小板に適用され得る。
【0156】
いくつかの実施形態では、本方法は、血小板を乾燥させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、乾燥工程は、血小板を凍結乾燥(lyophilizing)することを含む。いくつかの実施形態では、乾燥工程は、血小板を凍結乾燥(freeze-drying)することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、乾燥工程から得られた血小板を再水和することをさらに含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、血小板は、療法または機能アッセイに使用する前に、(例えば、トロンボソームを生成するために)低温貯蔵されるか、凍結保存されるか、または凍結乾燥される。
【0158】
5%未満の最終残留水分含有量を達成し得る限り、血小板を乾燥させるための任意の既知の技術が、本開示に従って使用され得る。好ましくは、本技術は、2%未満、例えば、1%、0.5%、または0.1%の最終残留水分含有量を達成する。好適な技術の非限定的な例は、凍結乾燥(freeze-drying)(凍結乾燥(lyophilization))および噴霧乾燥である。好適な凍結乾燥法を、表Aに提示する。追加の例示的な凍結乾燥法は、米国特許第7,811,558号、米国特許第8,486,617号、および米国特許第8,097,403号に見出され得る。例示的な噴霧乾燥法は、窒素を乾燥ガスとして、本開示によるインキュベーション剤と組み合わせること、次いで、二流体ノズル構成を有するGEA Processing Engineering,Inc.(Columbia MD,USA)製のGEA Mobile Minor噴霧乾燥機に混合物を導入すること、混合物を150℃~190℃の範囲の入口温度、65℃~100℃の範囲の出口温度、0.5~2.0バールの範囲の原子速度、5~13kg/時の範囲の原子速度、60~100kg/時の範囲の窒素使用、および10~35分間の実行時間で噴霧することを含む。噴霧乾燥における最終工程は、乾燥混合物を優先的に収集することである。いくつかの実施形態における乾燥組成物は、-20℃以下~90℃以上の範囲である温度で、少なくとも6か月間安定である。
【0159】
【0160】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように得られる血小板を乾燥させる工程、例えば、本明細書に開示されるように得られる血小板を凍結乾燥させる工程は、血小板を凍結乾燥剤(例えば、非還元性二糖)とともにインキュベートすることを含む。したがって、いくつかの実施形態では、血小板を調製するための方法は、血小板を凍結乾燥剤とともにインキュベートすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、凍結乾燥剤は、糖である。いくつかの実施形態では、糖は、非還元性二糖などの二糖である。
【0161】
いくつかの実施形態では、血小板は、血小板を凍結乾燥剤とともにインキュベートするのに十分な時間、かつ好適な温度で、凍結乾燥剤とともにインキュベートされる。好適な凍結乾燥剤の非限定的な例は、スクロース、マルトース、トレハロース、グルコース(例えば、デキストロース)、マンノース、およびキシロースを含む、単糖および二糖などの糖である。いくつかの実施形態では、凍結乾燥剤の非限定的な例としては、血清アルブミン、デキストラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、デンプン、およびヒドロキシエチルデンプン(HES)が挙げられる。いくつかの実施形態では、例示的な凍結乾燥剤としては、高分子量ポリマーが挙げられ得る。「高分子量」とは、約70kDa以上かつ最大1,000,000kDaの平均分子量を有するポリマーを意味する。非限定的な例は、スクロースおよびエピクロロヒドリンのポリマー(例えば、ポリスクロース)である。いくつかの実施形態では、凍結乾燥剤は、ポリスクロースである。任意の量の高分子量ポリマーが凍結乾燥剤として使用され得るが、約3%~10%(w/v)、例えば、3~7%、例えば、6%の最終濃度を達成する量が使用されることが好ましい。
【0162】
本明細書に開示される組成物に使用するための例示的な糖は、トレハロースである。糖の同一性にかかわらず、糖は、任意の好適な量で組成物中に存在し得る。例えば、糖は、1mM~1Mの量で存在し得る。実施形態では、糖は、10mM~500mMの量で存在する。いくつかの実施形態では、糖は、20mM~200mMの量で存在する。実施形態では、糖は、40mM~100mMの量で存在する。様々な実施形態では、糖は、上に列挙された範囲内の異なる特定の濃度で存在し、当業者は、本明細書で各々を具体的に列挙する必要なしに、様々な濃度を即座に理解することができる。複数の糖が組成物中に存在する場合、各糖は、上に列挙された範囲および特定の濃度に応じた量で存在し得る。
【0163】
本明細書に提供される組成物を作製するための本明細書に提供されるプロセス内で、凍結乾燥剤の添加は、乾燥の前の最後の工程であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、凍結乾燥剤は、塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、または他の成分などの組成物の他の成分と同時に、またはその前に添加される。いくつかの実施形態では、凍結乾燥剤は、インキュベーション剤に添加され、完全に混合されて乾燥溶液を形成し、乾燥容器(例えば、ガラスまたはプラスチックの血清バイアル、凍結乾燥バッグ)中に分配され、溶液を乾燥させて乾燥組成物を形成することを可能にする条件に供される。
【0164】
血小板を凍結保護剤とともにインキュベートする工程は、温度と併せて、凍結保護剤が血小板に接触するのに十分な、好ましくは、少なくともある程度まで血小板に組み込まれるのに十分な時間と同程度の長さである、充填に好適な時間、血小板をインキュベートすることを含み得る。実施形態では、インキュベーションは、約1分間~約180分間以上行われる。
【0165】
血小板を凍結保護剤とともにインキュベートする工程は、割り当てられた時間の量と併せて選択される場合、インキュベートに好適な温度で、血小板および凍結保護剤をインキュベートすることを含み得る。一般に、組成物は、凍結を上回る温度で、凍結保護剤が血小板に接触するのに少なくとも十分な時間、インキュベートされる。実施形態では、インキュベーションは、37℃で実行される。ある特定の実施形態では、インキュベーションは、20℃~42℃で実施される。例えば、実施形態では、インキュベーションは、110~130(例えば、120)分間、35℃~40℃(例えば、37℃)で実施される。
【0166】
様々な実施形態では、凍結乾燥バッグは、ガスが、処理中にバッグの少なくとも一部または全部を通過することを可能にするように構成された、ガス透過性バッグである。ガス透過性バッグは、バッグの内部内のガスを、周囲環境に存在する大気ガスと交換することを可能にし得る。ガス透過性バッグは、酸素、窒素、水、空気、水素、および二酸化炭素などのガスに対して透過性であり得、本明細書に提供される組成物においてガス交換が生じることを可能にする。いくつかの実施形態では、ガス透過性バッグは、二酸化炭素がバッグの壁を通って透過することを可能にすることによって、
バッグの内部内に存在する二酸化炭素の一部の除去を可能にする。いくつかの実施形態では、バッグからの二酸化炭素の放出は、バッグ内に収容される組成物の所望のpHレベルを維持するのに有利であり得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、本明細書におけるプロセスの容器は、閉鎖または密封されたガス透過性容器である。いくつかの実施形態では、容器は、閉鎖または密封され、かつその一部がガス透過性である、容器である。いくつかの実施形態では、容器に収容される製品の体積に対する、閉鎖または密封された容器(例えば、バッグ)のガス透過性部分の表面積(以下、「SA/V比」と称される)は、本明細書に提供される組成物のpH維持を改善するように調整され得る。例えば、いくつかの実施形態では、容器のSA/V比は、少なくとも約2.0cm2/mL(例えば、少なくとも約2.1cm2/mL、少なくとも約2.2cm2/mL、少なくとも約2.3cm2/mL、少なくとも約2.4cm2/mL、少なくとも約2.5cm2/mL、少なくとも約2.6cm2/mL、少なくとも約2.7cm2/mL、少なくとも約2.8cm2/mL、少なくとも約2.9cm2/mL、少なくとも約3.0cm2/mL、少なくとも約3.1cm2/mL、少なくとも約3.2cm2/mL、少なくとも約3.3cm2/mL、少なくとも約3.4cm2/mL、少なくとも約3.5cm2/mL、少なくとも約3.6cm2/mL、少なくとも約3.7cm2/mL、少なくとも約3.8cm2/mL、少なくとも約3.9cm2/mL、少なくとも約4.0cm2/mL、少なくとも約4.1cm2/mL、少なくとも約4.2cm2/mL、少なくとも約4.3cm2/mL、少なくとも約4.4cm2/mL、少なくとも約4.5cm2/mL、少なくとも約4.6cm2/mL、少なくとも約4.7cm2/mL、少なくとも約4.8cm2/mL、少なくとも約4.9cm2/mL、または少なくとも約5.0cm2/mLであり得る。いくつかの実施形態では、容器のSA/V比は、最大約10.0cm2/mL(例えば、最大約9.9cm2/mL、最大約9.8cm2/mL、最大約9.7cm2/mL、最大約9.6cm2/mL、最大約9.5cm2/mL、最大約9.4cm2/mL、最大約9.3cm2/mL、最大約9.2cm2/mL、最大約9.1cm2/mL、最大約9.0cm2/mL、最大約8.9cm2/mL、最大約8.8cm2/mL、最大約8.7cm2/mL、最大約8.6cm2/mL、最大約8.5cm2/mL、最大約8.4cm2/mL、最大約8.3cm2/mL、最大約8.2cm2/mL、最大約8.1cm2/mL、最大約8.0cm2/mL、最大約7.9cm2/mL、最大約7.8cm2/mL、最大約7.7cm2/mL、最大約7.6cm2/mL、最大約7.5cm2/mL、最大約7.4cm2/mL、最大約7.3cm2/mL、最大約7.2cm2/mL、最大約7.1cm2/mL、最大約6.9cm2/mL、最大約6.8cm2/mL、最大約6.7cm2/mL、最大約6.6cm2/mL、最大約6.5cm2/mL、最大約6.4cm2/mL、最大約6.3cm2/mL、最大約6.2cm2/mL、最大約6.1cm2/mL、最大約6.0cm2/mL、最大約5.9cm2/mL、最大約5.8cm2/mL、最大約5.7cm2/mL、最大約5.6cm2/mL、最大約5.5cm2/mL、最大約5.4cm2/mL、最大約5.3cm2/mL、最大約5.2cm2/mL、最大約5.1cm2/mL、最大約5.0cm2/mL、最大約4.9cm2/mL、最大約4.8cm2/mL、最大約4.7cm2/mL、最大約4.6cm2/mL、最大約4.5cm2/mL、最大約4.4cm2/mL、最大約4.3cm2/mL、最大約4.2cm2/mL、最大約4.1cm2/mL、または最大約4.0cm2/mLであり得る。いくつかの実施形態では、容器のSA/V比は、約2.0~約10.0cm2/mL(例えば、約2.1cm2/mL~約9.9cm2/mL、約2.2cm2/mL~約9.8cm2/mL、約2.3cm2/mL~約9.7cm2/mL、約2.4cm2/mL~約9.6cm2/mL、約2.5cm2/mL~約9.5cm2/mL、約2.6cm2/mL~約9.4cm2/mL、約2.7cm2/mL~約9.3cm2/mL、約2.8cm2/mL~約9.2cm2/mL、約2.9cm2/mL~約9.1cm2/mL、約3.0cm2/mL~約9.0cm2/mL、約3.1cm2/mL~約8.9cm2/mL、約3.2cm2/mL~約8.8cm2/mL、約3.3cm2/mL~約8.7cm2/mL、約3.4cm2/mL~約8.6cm2/mL、約3.5cm2/mL~約8.5cm2/mL、約3.6cm2/mL~約8.4cm2/mL、約3.7cm2/mL~約8.3cm2/mL、約3.8cm2/mL~約8.2cm2/mL、約3.9cm2/mL~約8.1cm2/mL、約4.0cm2/mL~約8.0cm2/mL、約4.1cm2/mL~約7.9cm2/mL、約4.2cm2/mL~約7.8cm2/mL、約4.3cm2/mL~約7.7cm2/mL、約4.4cm2/mL~約7.6cm2/mL、約4.5cm2/mL~約7.5cm2/mL、約4.6cm2/mL~約7.4cm2/mL、約4.7cm2/mL~約7.3cm2/mL、約4.8cm2/mL~約7.2cm2/mL、約4.9cm2/mL~約7.1cm2/mL、約5.0cm2/mL~約6.9cm2/mL、約5.1cm2/mL~約6.8cm2/mL、約5.2cm2/mL~約6.7cm2/mL、約5.3cm2/mL~約6.6cm2/mL、約5.4cm2/mL~約6.5cm2/mL、約5.5cm2/mL~約6.4cm2/mL、約5.6cm2/mL~約6.3cm2/mL、約5.7cm2/mL~約6.2cm2/mL、または約5.8cm2/mL~約6.1cm2/mLの範囲であり得る。
【0168】
ガス透過性の閉鎖された容器(例えば、バッグ)またはその一部は、1つ以上の様々なガス透過性材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、ガス透過性バッグは、フルオロポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびペルフルオロアルコキシ(PFA)ポリマーなど)、ポリオレフィン(低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)など)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、シリコーン、およびそれらの任意の組み合わせを含む、1つ以上のポリマーから作製され得る。
【0169】
いくつかの実施形態では、乾燥された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、熱処理を受け得る。加熱は、約25℃超(例えば、約40℃超、50℃、60℃、70℃、80℃以上)の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、加熱は、約70℃~約85℃(例えば、約75℃~約85℃、または約75℃もしくは80℃)で実行される。加熱の温度は、加熱が実施される時間の長さと併せて選択され得る。任意の好適な時間が使用され得るが、典型的には、凍結乾燥された血小板は、少なくとも1時間、ただし36時間以下、加熱される。したがって、実施形態では、加熱は、少なくとも2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、または少なくとも30時間実施される。例えば、凍結乾燥された血小板は、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、または30時間加熱され得る。非限定的な例示的な組み合わせとしては、乾燥された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を30℃超の温度で少なくとも30分間加熱すること、乾燥された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を50℃超の温度で少なくとも10時間加熱すること、乾燥された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を75℃超の温度で少なくとも18時間加熱すること、および乾燥された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を80℃で24時間加熱することが挙げられる。いくつかの実施形態では、加熱は、キャップ付きバイアルなどの密封された容器内で実施され得る。いくつかの実施形態では、密封された容器は、加熱の前に真空に供される。特にアルブミンまたはポリスクロースなどの凍結保護剤の存在下での熱処理工程は、凍結乾燥された血小板の安定性および貯蔵寿命を改善させることが見出されている。実際に、熱処理工程なしの凍結乾燥保護剤と比較して、血清アルブミンまたはポリスクロースと、凍結乾燥後の熱処理工程との特定の組み合わせで、有利な結果が得られている。凍結保護剤(例えば、スクロース)は、任意の適切な量(例えば、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)の質量または体積で約3%~約10%)で存在し得る。
【0170】
いくつかの実施形態では、インキュベーション剤とのインキュベーションを含むプロセスによって本明細書に開示されるように調製された血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)は、インキュベーションの前に血小板の貯蔵安定性と少なくともほぼ等しい貯蔵安定性を有する。
【0171】
いくつかの実施形態では、本方法は、血小板または血小板誘導体を投与する前に、血小板または血小板誘導体を(例えば、インキュベーション剤、例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤で)凍結保存することをさらに含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、本方法は、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を投与する前に、血小板または血小板誘導体を含む組成物を(例えば、インキュベーション剤、例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤で)乾燥させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、乾燥工程の後に組成物を加熱することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、凍結乾燥工程または加熱工程の後に組成物を再水和することをさらに含み得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、本方法は、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を投与する前に、血小板または血小板誘導体を含む組成物を(例えば、インキュベーション剤、例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤で)凍結乾燥させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、凍結乾燥工程の後に組成物を加熱することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、凍結乾燥工程または加熱工程の後に組成物を再水和することをさらに含み得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、本方法は、血小板、血小板誘導体、またはトロンボソームを投与する前に、血小板、血小板誘導体またはトロンボソームを(例えば、インキュベーション剤、例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤で)低温貯蔵することをさらに含む。
【0175】
貯蔵条件は、例えば、標準的な室温貯蔵(例えば、約20~約30℃の範囲の温度での貯蔵)または低温貯蔵(例えば、約1~約10℃の範囲の温度での貯蔵)を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を投与する前に、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を含む組成物を(例えば、インキュベーション剤、例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤で)凍結保存すること、凍結乾燥させること、解凍すること、再水和すること、およびそれらの組み合わせをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)を投与する前に、血小板または血小板誘導体を含む組成物を(例えば、インキュベーション剤、例えば、本明細書に記載のインキュベーション剤で)(例えば、トロンボソームを形成するために)乾燥させる(例えば、凍結乾燥させる)ことをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、乾燥工程から得られた組成物を再水和することをさらに含み得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板などの血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)、ポリスクロース、およびトレハロースを含む組成物が本明細書に提供され、この組成物は、新鮮な血小板を得るプロセス、任意選択的に血小板をDMSO中でインキュベートするプロセス、遠心分離によって血小板を単離するプロセス、血小板をトレハロースおよびエタノールを含むインキュベーション剤中に再懸濁させ、それによって第1の混合物を形成するプロセス、第1の混合物をインキュベートするプロセス、ポリスクロースを第1の混合物と混合し、それによって第2の混合物を形成するプロセス、ならびに第2の混合物を凍結乾燥させて、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)、ポリスクロース、およびトレハロースを含む凍結乾燥された組成物を形成するプロセスによって作製されている。
【0177】
いくつかの実施形態では、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)、ポリスクロース、およびトレハロースを含む、凍結乾燥された血小板組成物を作製する方法が本明細書に提供され、この方法は、新鮮な血小板を得ることと、任意選択的に血小板をDMSO中でインキュベートすることと、遠心分離によって血小板を単離することと、血小板をトレハロースおよびエタノールを含むインキュベーション剤中に再懸濁させ、それによって第1の混合物を形成することと、第1の混合物をインキュベートすることと、ポリスクロースを第1の混合物と混合することと、それによって第2の混合物を形成することと、第2の混合物を凍結乾燥させて、血小板または血小板誘導体(例えば、トロンボソーム)、ポリスクロース、およびトレハロースを含む凍結乾燥された組成物を形成することと、を含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板を作製するためのプロセスが本明細書に提供され、このプロセスは、単離された血小板を、少なくとも1つの糖の存在下で、以下の条件:20℃~42℃の温度下で、約10分間~約180分間インキュベートすることと、血小板に少なくとも1つの凍結保護剤を添加することと、血小板を凍結乾燥させることと、を含み、このプロセスは、任意選択的に、インキュベーション工程と添加工程との間に血小板を単離することを含まず、任意選択的に、このプロセスは、血小板を血小板活性化阻害剤に曝露することを含まない。凍結保護剤は、多糖(例えば、ポリスクロース)であり得る。このプロセスは、凍結乾燥された血小板を、70℃~80℃の温度で8~24時間加熱することをさらに含み得る。血小板に少なくとも1つの凍結保護剤を添加する工程は、血小板をエタノールに曝露することをさらに含み得る。少なくとも1つの糖の存在下で単離された血小板をインキュベートする工程は、少なくとも1つの糖の存在下でインキュベートすることを含み得る。少なくとも1つの糖の存在下で単離された血小板をインキュベートする工程は、少なくとも1つの糖の存在下でインキュベートすることを含み得る。インキュベートするための条件は、約100分間~約150分間インキュベートすることを含み得る。インキュベートするための条件は、約110分間~約130分間インキュベートすることを含み得る。インキュベートするための条件は、約120分間インキュベートすることを含み得る。インキュベートするための条件は、35℃~40℃インキュベートすることを含み得る。インキュベートのための条件は、37℃でインキュベートすることを含み得る。インキュベートのための条件は、35℃~40℃で110分間~130分間インキュベートすることを含み得る。インキュベートするための条件は、37℃で120分間インキュベートすることを含み得る。少なくとも1つの糖は、トレハロース、スクロース、またはトレハロースとスクロースの両方であり得る。少なくとも1つの糖は、トレハロースであり得る。少なくとも1つの糖は、スクロースであり得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥された血小板を調製する方法が本明細書に提供され、この方法は、血小板を提供することと、約100mMのトレハロースおよび約1%(v/v)のエタノールを含む塩緩衝液中に血小板を懸濁させて、第1の組成物を作製することと、第1の組成物を約37℃で約2時間インキュベートすることと、ポリスクロース(例えば、ポリスクロース400)を約6%(w/v)の最終濃縮物に添加して、第2の組成物を作製することと、第2の組成物を凍結乾燥させて、凍結乾燥された血小板を作製することと、凍結乾燥された血小板を80℃で24時間加熱することと、を含む。
【0180】
本明細書に開示される特定の実施形態は、「~からなる」または「~から本質的になる」という言語を使用して、特許請求の範囲にさらに限定され得る。
【0181】
例示的な実施形態
実施形態1は、対象における凝固障害を治療する方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含む、方法である。
【0182】
実施形態2は、対象における凝固障害を治療する方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、血小板を、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって、この組成物が調製されている、方法である。
【0183】
実施形態3は、対象における正常な止血を回復させる方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含む、方法である。
【0184】
実施形態4は、対象における正常な止血を回復させる方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、血小板を、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって、この組成物が調製されている、方法である。
【0185】
実施形態5は、対象を手術のために準備させる方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含む、方法である。
【0186】
実施形態6は、対象を手術のために準備させる方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、血小板を、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって、この組成物が調製されている、方法である。
【0187】
実施形態7は、手術が、緊急手術である、実施形態5または6に記載の方法である。
【0188】
実施形態8は、手術が、予定された手術である、実施形態5または6に記載の方法である。
【0189】
実施形態9は、対象が、抗凝固剤によって治療されていたか、または治療されている、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法である。
【0190】
実施形態10は、抗凝固剤による治療が、停止される、実施形態9に記載の方法である。
【0191】
実施形態11は、抗凝固剤による治療が、継続される、実施形態9に記載の方法である。
【0192】
実施形態12は、対象における抗凝固剤の効果を改善する方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、この組成物が、血小板または血小板誘導体と、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とを含む、方法である。
【0193】
実施形態13は、対象における抗凝固剤の効果を改善する方法であって、その必要がある対象に有効量の組成物を投与することを含み、血小板を、1つ以上の塩、緩衝液、任意選択的に凍結保護剤、および任意選択的に有機溶媒を含むインキュベーション剤とともにインキュベートして、組成物を形成することを含むプロセスによって、この組成物が調製されている、方法である。
【0194】
実施形態14は、抗凝固剤の効果が、抗凝固剤の過剰摂取の結果である、実施形態12または実施形態13に記載の方法である。
【0195】
実施形態15は、組成物が、抗線溶剤をさらに含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法である。
【0196】
実施形態16は、抗線溶剤が、ε-アミノカプロン酸(EACA)、トラネキサム酸、アプロチニン、アミノメチル安息香酸、フィブリノゲン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態15に記載の方法である。
【0197】
実施形態17は、血小板または血小板誘導体に、抗線溶剤が充填される、実施形態15または実施形態16に記載の方法である。
【0198】
実施形態18は、抗凝固剤が、ダビガトラン、アルガトロバン、ヒルジン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、フォンダパリヌクス、ワルファリン、ヘパリン、低分子量ヘパリン、サプリメント、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態9~17のいずれか1つに記載の方法である。
【0199】
実施形態19は、抗凝固剤が、ダビガトラン、アルガトロバン、ヒルジン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、フォンダパリヌクス、ワルファリン、ヘパリン、低分子量ヘパリン、チファコギン、第VIIai因子、SB249417、ペグニバコギン(アニバメルセンを含むか、または含まない)、TTP889、イドラパリヌクス、イドラビオタパリヌクス、SR23781A、アピキサバン、ベトリキサバン、レピルジン、ビバリルジン、キシメラガトラン、フェンプロクモン、アセノクマロール、インダンジオン、フルインジオン、サプリメント、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態9~17のいずれか1つに記載の方法である。
【0200】
実施形態20は、抗凝固剤が、ワルファリンである、実施形態18または実施形態19に記載の方法である。
【0201】
実施形態21は、抗凝固剤が、ヘパリンである、実施形態18または実施形態19に記載の方法である。
【0202】
実施形態22は、投与の前に、対象が、少なくとも4.0のINRを有した、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0203】
実施形態23は、投与の後に、対象が、3.0以下のINRを有する、実施形態22に記載の方法である。
【0204】
実施形態24は、投与の後に、対象が、2.0以下のINRを有する、実施形態22に記載の方法である。
【0205】
実施形態25は、投与の前に、対象が、少なくとも3.0のINRを有した、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0206】
実施形態26は、投与の後に、対象が、2.0以下のINRを有する、実施形態25に記載の方法である。
【0207】
実施形態27は、投与が、局所投与を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0208】
実施形態28は、投与が、非経口投与を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0209】
実施形態29は、投与が、静脈内投与を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0210】
実施形態30は、投与が、筋肉内投与を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0211】
実施形態31は、投与が、髄腔内投与を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0212】
実施形態32は、投与が、皮下投与を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0213】
実施形態33は、投与が、腹腔内投与を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0214】
実施形態34は、組成物が、投与工程の前に乾燥される、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法である。
【0215】
実施形態35は、組成物が、乾燥工程の後に再水和される、実施形態34に記載の方法である。
【0216】
実施形態36は、組成物が、投与工程の前に凍結乾燥される。実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法である。
【0217】
実施形態37は、組成物が、凍結乾燥工程の後に再水和される、実施形態36に記載の方法である。
【0218】
実施形態38は、インキュベーション剤が、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される1つ以上の塩を含む、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法である。
【0219】
実施形態39は、インキュベーション剤が、担体タンパク質を含む、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法である。
【0220】
実施形態40は、緩衝液が、HEPES、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法である。
【0221】
実施形態41は、組成物が、1種以上の糖を含む、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法である。
【0222】
実施形態42は、1種以上の糖が、トレハロースを含む、実施形態41に記載の方法である。
【0223】
実施形態43は、1種以上の糖が、ポリスクロースを含む、実施形態41または実施形態42に記載の方法である。
【0224】
実施形態44は、1種以上の糖が、デキストロースを含む、実施形態41~43のいずれか1つに記載の方法である。
【0225】
実施形態45は、組成物が、有機溶媒を含む、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法である。
【0226】
実施形態46は、血小板または血小板誘導体が、トロンボソームを含む、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法である。
【実施例】
【0227】
実施例1
以下の結果は、一般的な抗凝固薬であるワルファリンを服用している患者のインビトロモデルにおけるトロンボソーム製品の影響を実証する。ワルファリンは、ビタミンKに依存する肝臓における多数の止血性血漿タンパク質の合成を阻害する。
【0228】
トロンボソームおよび他の凍結乾燥された血小板製品は、外傷または止血不全の診断の後に患者の血流に注入されるように設計されている。ワルファリンを使用して患者をモデル化する以下の実施例では、トロンボソームを最初に血漿系システムに導入し、続いて実施例2では全血システムを導入して、インビボでの条件により近く模倣した。
【0229】
血漿モデルでは、トロンボソームは、トロンビン生成(TGA)およびトロンボエラストグラフィー(TEG)アッセイにおいて顕著な改善を実証した。
【0230】
血漿モデルに使用される試料を、ワルファリン血漿(供給元:George King Biomedical、様々なINR値で)または多血小板血漿(PRP)と、
図1~
図3に示される濃度で再水和されたトロンボソームを含むかまたは含まない、以下の表6に詳述される対照緩衝液とを、1:1の体積で組み合わせることによって調製した。ワルファリン血漿は、本薬剤を使用する患者から採取された血液から得た。ワルファリンは、止血性タンパク質の生物学的合成を阻害するため、エクスビボで添加することはできない。トロンボソームを、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。
【0231】
【0232】
INRが増加するにつれて、トロンビン生成は減少する。すべての用量にわたって、トロンボソームは、ピークトロンビンにおける顕著な改善を実証する。トロンボソームは各用量レベルで上昇を示すため、それらの有効性がワルファリンに関連していないことは明らかである。
【0233】
図1および
図2に実証するように、トロンボソームは、実施例3に記載のトロンビン生成アッセイ(TGA)で評価される、血漿中のワルファリンのモデルにおけるトロンビン生成(凝血能力の尺度)に対して正の影響を有する。
【0234】
多血小板血漿試料の調製
(1)0型ドナーの全血を、クエン酸ナトリウム(ブルートップ)バキュテナーチューブ中に得る。
(2)血液を、180×gで20分間、遠心分離する。
(3)緩衝液コートをそのまま残しながら、多血小板血漿を慎重にピペットで移す
(4)血漿試料中の血小板数を計測する。
(5)試料当たりの適切な数の血小板を、選択した血漿に補充する
【0235】
特に、
図1に示すように、ピークトロンビン生成は、400×10
3/μLのトロンボソームをワルファリン血漿に添加することによって改善される。ピークトロンビンについての正常範囲を、66~166nMであると決定し、正常な血液状態(INR=1)でのピークトロンビンの上昇が、合理的なトロンビンレベル外ではないことを示した。同様に、
図2は、内因性トロンビン産生能(ETP;トロンビン生成アッセイにおける曲線下面積として決定)が、100×10
3/μLのトロンボソームをワルファリン血漿に添加することによって改善されることを示す。
【0236】
図3は、INR2ワルファリン血漿中のトロンボソームおよび多血小板血漿(PRP)によるピークトロンビン生成を示す。トロンボソームはさらに、血小板よりも多くのトロンビンを生成し、いかなる特定の理論または機序にも拘束されることなく、これは、恐らくトロンボソームの活性化の上昇に起因し得る。これは、追加のトロンビン生成が内因性凝血機序を刺激するため、インビボでの出血の減少が予測される。
【0237】
図4は、血液および血漿の粘弾性特性を測定するシステムである、実施例3に記載のトロンボエラストグラフィー(TEG)アッセイからのデータを取り上げる。
図4にプロットされたR時間は、血漿モデルにおける凝血生成の速度と相関する。すべてのワルファリン用量間で、トロンボソームの添加により、R時間の減少を観察した。特に、300×10
3/μLのトロンボソームの添加は、ワルファリン血漿試料のR時間を実質的に減少させた(TEGアッセイ)。正常なR時間(約5~10分)と比較して、トロンボソームの添加は、すべてのINRレベル間でR時間をほぼ完全に補正した。
【0238】
実施例2:全血アッセイ:
血漿中の影響が確立されると、トロンボソームを、ドナーの全血を使用して同様のワルファリンモデルに導入した。トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。同等の抗凝固条件を生成するために、実施例3に記載のとおり、O型ドナーの血液の天然血漿を除去し、ワルファリン血漿で置き換えた。TGAアッセイを、実施例3に記載のとおり実施した。
図5は、トロンボソームが、ピークトロンビン生成に対する用量依存的効果を提供することを示す。
図5では、データは、150×10
3/μLの内因性血小板数を有する全血のバックグラウンドにおいて収集した。
図5では、特にINR3.0および6.2において、ピークトロンビンの増加を観察した。インビトロでの(INR3での)ピークトロンビンにおけるおよそ50%の増加は、トロンビン生成が最終的に凝血安定性を決定するため、インビボでの出血を有意に低下させると解釈し得る。
【0239】
実施例3:手順
全血試料の調製
(1)O型ドナーの全血を、クエン酸ナトリウム(ブルートップ)バキュテナーチューブ中に得る。
(2)血液を、2000×gで10分間、遠心分離する。
(3)緩衝液コートをそのまま残しながら、血漿を慎重にピペットで移す
(4)除去された血漿と同等の体積のHEPES緩衝化生理食塩水(HBS)を添加し、全血を穏やかに再懸濁させる。
(5)血液を、2000×gで10分間、再び回転させる。
(6)緩衝液コートをそのまま残しながら、上澄みを慎重に除去する。
(7)測定されたヘマトクリットがドナーの新鮮な全血のヘマトクリットと同等になるまで、血液を、ワルファリン血漿、正常な血漿(機能対照)、または自己血漿(プロセス対照)中に増量的に再懸濁させる。
a.室温で最大4時間貯蔵する。
(8)任意の試料を実行する直前に、トロンボソームを含むかまたは含まない対照緩衝液と、1:1の体積で組み合わせる。
【0240】
トロンボエラストグラフィーアッセイ(TEG(登録商標)5000 THROMBOELASTOGRAPH(登録商標)止血アナライザシステム)
(1)TEG 5000アッセイソフトウェアを開き、製造業者のガイドラインに従って機器をセットアップする。
(2)ワルファリン血漿を、37℃の水浴中で5分間解凍する。
(3)トロンボソームを細胞培養グレードの水で10分間再水和し、次いで、対照緩衝液で希釈して、600×103/μLにする。
(4)20μLの0.2MのCaCl2を、空の試料カップに添加する。
(5)各試料について、トロンボソームを含むかまたは含まない対照緩衝液と、血漿とを、1:1の体積で組み合わせる。
(6)340μLの試料をカップに添加し、次いで、カップをデバイスに素早く搭載し、実行を開始する。
(7)実行は、R時間が決定されるか、または実行がタイムアウトした時点で、完了する。
【0241】
トロンビン生成アッセイ(Fluoroskan ASCENT(登録商標)上で)
(1)CATソフトウェアを開き、機器をセットアップし、PRP試薬(組織因子およびいくつかのリン脂質を含む)、キャリブレータ、およびフルオロ緩衝液を製造業者のガイドラインに従って調製する。
(2)ワルファリン血漿または対照血漿を、37℃の水浴中で5分間解凍する。
(3)トロンボソームを細胞培養グレードの水で10分間再水和し、次いで、対照緩衝液で希釈して、標的濃度を2倍にする。
(4)各試料について、トロンボソームを含むかまたは含まない対照緩衝液と、血漿とを、1:1の体積で組み合わせる。
(5)マルチチャネルピペットを使用して、20μLのPRP試薬を各ウェルに添加する。
(6)ウェル当たり80μLの試料を添加する。各試料につき1つのキャリブレータウェルを含める。
(7)プレートをトレイに挿入し、フルオロ緩衝液(トロンビンにより切断されると蛍光シグナルを生成する、蛍光標識ペプチドを含む)を活性ウェルに注入する。
(8)プレートを、20秒間隔で180分間読み取り、完全なトロンビン生成プロファイルをキャプチャする。
【0242】
T-TAS(登録商標)
T-TAS(登録商標)機器は、製造業者の指示に従って使用するために準備した。ARチップ(Diapharmaカタログ番号TC0101)およびARチップカルシウムトウモロコシトリプシン阻害剤(CaCTI;Diapharmaカタログ番号TR0101)を、室温に加温した。300uLの再水和されたトロンボソームを、1.7mLのマイクロ遠心チューブに移し、3900g×10分間でペレットに遠心分離した。トロンボソームペレットを、George King(GK)プールされた正常なヒト血漿、または自己血小板を含むかもしくは含まない自己血漿中に、AcT数(Beckman Coulter AcT Diff 2 Cell Counter)によって決定される約100,000~450,000/uLの濃度に再懸濁させた。20uLのCaCTIを、GK血漿中の480uLのトロンボソーム試料と、ピペットで穏やかに混合した。試料を充填し、製造業者の指示に従ってT-TAS(登録商標)上で実行した。
【0243】
部分的トロンボプラスチン時間(aPTT)
aPTTを測定するためのプロトコルは、以下のとおりである。
【0244】
機器の電源を入れ、製造業者のガイドラインに従って、試薬1、試薬2、凝固対照N、および凝固対照Pを調製する。
【0245】
George Kingプールされた正常な血漿を、37℃の水浴中で5分間解凍する。
【0246】
キュベットストリップを、37℃で少なくとも3分間予熱するために、インキュベーション領域に配置する。ボールを、各キュベットに分配する。
【0247】
各試料について、一連の濃度のヘパリンおよび/または硫酸プロタミンを含むかまたは含まないGKPを、室温で5分間インキュベートする。
【0248】
50μLの試料および50μLの試薬1を、各キュベットに分配する。180秒のインキュベーションのために、インキュベーションカラムに対応するタイマーを開始する。
【0249】
機器がビープ音を発し始めたら、キュベットを試験カラム領域に移す。
【0250】
フィンピペットを、0.025MのCaCl2で1回プライミングする。
【0251】
ピペットキーを押すことによって、フィンピペットを起動する。50μLの0.025MのCaCl2を、フィンピペットを使用して各キュベットに分配する。
【0252】
実施例4:新鮮な血小板との比較
トロンボソームは、新鮮な血小板よりも優れた様式で、クマジン血漿中のトロンビン生成の特異的な用量依存的回復を誘発する。トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。TGAアッセイを、実施例3に記載のとおり実施した。INR3の用量では、トロンボソームは、ピークトロンビンの用量依存的回復を実証する(
図6)。さらに、トロンボソームを添加することは、同等の用量の新鮮な血小板よりも有効である。
【0253】
実施例5:新鮮な血小板との組み合わせ
トロンボソームは、血小板と協働して、ワルファリン血漿中のトロンビン生成を増加させる。トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。TGAアッセイを、実施例3に記載のとおり実施した。トロンボソームは、より大きな有効性を示すだけでなく、内因性血小板との付加効果も示す(
図7A)。トロンボソームは、モデル患者を健全なピークトロンビン範囲(例えば、約66~166nM)に押し戻し得ることに留意されたい。「両方」の線は、示される量で等しい量の2つの成分を含むことに留意されたい(例えば、x軸上の「50」値で、y値は、1μL当たり50kのPRPからの血小板と、1μL当たり50kのトロンボソームとの混合物のピークトロンビンを表す。
【0254】
加えて、異なるバッチのトロンボソームはまた、モデル患者(INR=2、ワルファリンにより治療)を健全なピークトロンビン範囲に押し戻し得る(
図7B)。
【0255】
実施例6:コラーゲン接着
トロンボソームは、フロー下で剪断依存性コラーゲン接着アッセイ(T-TAS(登録商標))を使用して、ワルファリン血漿中のフィブリンに接着し、生成する(
図8)。トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。T-TAS(登録商標)アッセイを、実施例3に従って実施した。
【0256】
実施例7.リバーロキサバン結果
全血中のリバーロキサバン(本明細書ではRivと称される場合がある)用量反応を、T-TAS(登録商標)を使用して測定した。ARチップ(コラーゲン+TF)を使用した。T-TAS(登録商標)アッセイを、実施例3に従って実施した。ドナーの血小板を、307k/μLで使用した。9mMの用量(薬理学的用量)は、閉塞を阻害するが、すべての血栓形成を阻害するわけではない(
図9、表7)。
【0257】
【0258】
トロンボソームは、リバーロキサバン抗凝固化全血中の血栓形成を部分的に回復させる。トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。T-TAS(登録商標)アッセイを、3mMのリバーロキサバンおよび異なる濃度のトロンボソームを使用して、実施例3に従って実行した(
図10A、表8)。「Rivなし」の垂直線は、リバーロキサバンが添加されていない試料のおおよその閉塞時間を示す。
【0259】
【0260】
同様の実験では、T-TAS(登録商標)アッセイを、リバーロキサバンなし、3mMのリボロキサバン、ならびに3μMのリボロキサバンおよび300×103/μLのトロンボソームを用いて、実施例3に従って実行した。経時的な圧力を
図10Bに示し、閉塞時間を
図10Cに示す。3μMのリバーロキサバンで処理された多血小板血漿が、T-TAS(登録商標)フローシステム(コラーゲンおよび組織因子でコーティングされたチャネル)上で、閉塞時間を6.04分から26.01分に延長したことを示す。300k/μLの添加により、時間が減少して18.01分に戻った。
【0261】
実施例8.ワルファリン血漿のトロンボエラストグラフィーアッセイ
図11~
図13に示すように、ワルファリン血漿(INR=1.6)中のトロンボソームの効果を試験し、850、450、50、および0k/uLのトロンボソーム濃度で、標準血漿(INR=1.0)と比較した。トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。
【0262】
この実験では、+170μLの血漿を各カップに、+170μLのトロンボソームまたは対照を各カップに、および+20μLのCaCl2(TEG試薬)を各ウェルに配置した。
【0263】
各実行を、各条件について単一の複製を使用して実施した。計4回実行した。トロンボソーム希釈液を、各実行の少し前に調製し、計数を、各実行を開始した直後に確認した。結果を、
図11A、
図11B、
図12A、
図12B、
図13、および
図14に示す(トロンボソームバッチ4)。
【0264】
実施例9.ラグタイム
トロンボソームは、すべての試験されたトロンボソーム濃度でラグタイムを減少させ、プラトー効果は、過凝固性を実証しない(
図15)。トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。TGAアッセイを、実施例3に記載のとおり実施した。
【0265】
実施例10.TEG結果
様々な濃度のトロンボソームを添加することにより、ワルファリン血漿中のR時間が減少する。トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。T-TAS(登録商標)アッセイを、実施例3に従って実施した。
図17は、トロンボソームが、様々なINR値についてR時間を低下させることを示す。プラトーは、20分のR時間の前に見られ、トロンボソームが治療的に有意な結果を生み出し得ることを示唆する。
【0266】
実施例11.活性化凝血時間
トロンボソームは、ワルファリン血漿中の活性化凝血時間に対する効果を示す。トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。MaxActチューブを空にするために、25μlのトロンボソームまたは対照緩衝液および25μlの0.2MのCaCl
2を添加し、続いて全クエン酸血液または血漿(400μl)を添加した。チューブを手で一度振とうし、次いで、MaxAct ACT機器に挿入し、凝血時間を自動的に記録した。生理学的範囲にトロンボソームを添加することにより、tACTが改善する。正常状態(INR=1)における変化は観察されなかった。(
図18)。
【0267】
実施例12.全血アッセイ
クマジン全血を調製した。実施例3に記載のとおり、ドナーの全血から血漿を除去し、ワルファリンまたは対照血漿で置き換えた。
【0268】
トロンボソームは、3.0および6.2INR全血中でトロンビン生成を増加させる。トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。TGAアッセイを、実施例3に記載のとおり実施した。トロンボソームは、ピークトロンビンを増加させるが、効果の大きさは小さい。トロンボソームは、正常な血液状態に対して最小限の効果を示す(
図19)。これらの実験では、血小板数は、150×10
3/μLであった(全血のCBCにより測定)。
【0269】
実施例13.トロンビン生成アッセイ
トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。TGAアッセイを、実施例3に記載のとおり実施した。
【0270】
トロンボソーム(バッチ4)の効果を試験し、1450、1150、850、650、450、150、50、および0k/uLのトロンボソーム濃度で、標準血漿(INR=1.0)および上昇したINR対照(INR=2、3、および6)と比較した。様々なINR値について得られたピークトロンビン(
図20A~
図20C)およびトロンビン生成(ETP;
図21A~
図21C)値を、
図20および
図21に示す。
【0271】
ピークトロンビン結果
INR=1:ピークトロンビンの増加は、約800kのトロンボソームで飽和し、最大トロンボソーム濃度で約100nMの正常レベルからほぼ2倍になった(
図20C)。同じロットで試験を繰り返すと、700kのトロンボソームで約145nMに大幅に増加し、続いて最高トロンボソーム濃度で120nMに減少した(
図20A)。以前の試験は、ピークトロンビンの増加なしまたはわずかな増加のいずれか、続いてより高いトロンボソーム濃度で減少を示した(例えば、
図22A~
図22Eを参照されたい)。
【0272】
INR2:新たに調製されたトロンボソームは、最大トロンボソーム濃度で約10nM~約80nMのピークトロンビンの増加をもたらした(
図20A)。以前の試験は、0~20nM~30~80nMの範囲で同様の傾向を示した(例えば、
図22A~
図22Eを参照されたい)。
【0273】
INR3:新たに調製されたトロンボソームは、最大トロンボソーム濃度でゼロから約40nMのピークトロンビンの増加をもたらした(
図20B)。以前の試験は、最大約40nM(バッチ1;
図22A~
図22C);1~2nM(バッチ2;
図22D);0~10nM(バッチ3;
図22E)と同様の傾向を示した。
【0274】
INR6:新たに調製されたトロンボソームは、最大トロンボソーム濃度でゼロから約20nMのピークトロンビンの増加をもたらした(
図20C)。以前の試験は、同様の傾向を示した。(例えば、
図22A~
図22Eを参照されたい)。
【0275】
トロンビン生成(ETP)結果
INR1:ETPは、50~150kのトロンボソームでわずかに増加し、次いで、より高いトロンボソーム濃度で安定レベルにわずかに減少した(
図17A、
図17C)。以前の試験は、同様の傾向を示した(
図21A~
図21C)。ETP範囲は、1000~1600nM*分であった。
【0276】
INR2:ETPは、最高トロンボソーム濃度で約200nM*分~約850nM*分に増加した(
図21A)。以前の試験は、200~400nM*分~500~900nM*分の範囲で同様の傾向を示した。
【0277】
INR3:ETP値は、最高トロンボソーム濃度で約100nM*分~400nM*分に増加した(
図21B)。以前の試験は、100~350(バッチ1);100~200nM*分の範囲で同様の傾向を示した。
【0278】
INR6:ETP値は、最高トロンボソーム濃度で約100nM*分~300nM*分に増加した(
図21C)。以前の試験は、100nM*分~200nM*分の範囲で同様の傾向を示した。
【0279】
実施例14.新鮮な血小板ではないトロンボソームは、ヘパリン化血漿中のトロンビン生成を回復させる
トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和し、aPTTおよびトロンビン生成アッセイを、実施例3に記載のとおり実施した。
【0280】
図23Aは、x軸に記載されているように、様々な濃度のヘパリンの不在下および存在下におけるGeorge King血漿(GKP)のaPTTを示す。約70秒での破線は、異常なaPTTの限界を示し、第2の破線は、機器によって測定された最大時間(120秒)を示す。ヘパリンで処理された試料中のトロンビン生成も測定した。
図23Bは、トロンビン生成を主にリン脂質を含有するPPP低試薬で開始した場合の、1μL当たり5K(点線)でのトロンボソーム、および50K(実線)の血小板またはトロンボソームを含むアフェレーシス単位(APU)を比較した、GKP中のトロンビン生成に対するGKP中の0.1Uのヘパリンの効果を示す。
図23Cはまた、リン脂質および組織因子の混合物を含有するPRP試薬によってトロンビン生成が開始されることを除いて、
図23Bと同様のトロンビン生成を示す。
図23Bおよび
図23Cの破線は、対照血漿についてこのアッセイで見られる典型的なトロンビンピーク値を示す。これらのデータは、新鮮な血小板ではなく、トロンボソームが、ヘパリン化血漿中のトロンビン生成を回復させることを示す。
【0281】
実施例15.硫酸プロタミン中和は、治療用ヘパリン化血漿中のトロンボソーム媒介性トロンビン生成を回復させる
トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和し、aPTTおよびトロンビン生成アッセイを、実施例3に記載のとおり実施した。
【0282】
図24Aは、x軸に記載されているように、ヘパリン(H)(U/mL)および硫酸プロタミン(P)の不在下および存在下におけるGeorge King血漿(GKP)のaPTTを示す。約70秒での破線は、異常なaPTTの限界を示し、第2の破線は、機器によって測定された最大時間(120秒)を示す。また、硫酸プロタミンを含むおよび含まない、ヘパリンで処理された試料中のトロンビン生成も測定した。
図24Bは、トロンビン生成を主にリン脂質を含有するPPP低試薬で開始した場合の、1μL当たり5K(点線)、50K(破線)、および150K(実線)のトロンボソームを有するGKP中のトロンビン生成に対する、20μg/mLの硫酸プロタミンによる拮抗前(比較的平坦な線)および拮抗後(曲線)の、2U/mLのヘパリンの効果を示す。
図24Cはまた、リン脂質および組織因子の混合物を含有するPRP試薬によってトロンビン生成が開始されることを除いて、
図24Bと同様のトロンビン生成を示す。
図24Bおよび
図24Cの破線は、対照血漿についてこのアッセイで見られる典型的なトロンビンピーク値を示す。
【0283】
実施例16.トロンボソームは、ダビガトランで処理された多血小板血漿中のトロンビン生成を回復させる
トロンボソームを、米国特許第8,486,617号(例えば、実施例1~5など)および同第8,097,403号(例えば、実施例1~3など)に記載の手順と一致して調製し、滅菌水の添加により再水和した。トロンビン生成アッセイを、実施例3に記載のとおり実施した。
【0284】
図25Aおよび
図25Bは、トロンボソームで処理された場合、ダビガトランで処理されたPRPにおいてトロンビン生成が正常に戻ることを示す。PRP試薬で刺激したダビガトラン(100ng/mL)の存在下または非存在下で処理されたPRPのトロンビン生成を、150k/μLのトロンボソームで拮抗した。ピークまでの時間は、未処理の18.89分からダビガトランで34.67分に増加したが、150k/μLのトロンボソームで18.33分に戻った。
【0285】
前述の説明は、本発明の好ましい実施形態を対象とするが、他の変形および修正が、当業者には明らかであり、かつ本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく行われ得ることに留意されたい。さらに、本発明の1つの実施形態に関連して記載される特徴は、上記に明示的に記載されていない場合であっても、他の実施形態と併せて使用され得る。さらに、当業者は、上記で考察されるような発明が、異なる順序の工程で、および/または開示されるものとは異なる構成のハードウェア要素を用いて実践され得ることを容易に理解するであろう。したがって、本発明はこれらの好ましい実施形態に基づいて記載されているが、ある特定の修正、変形、および代替的な構成が、本発明の趣旨および範囲内に留まる一方で、明らかであることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲および境界を決定するために、添付の特許請求の範囲を参照すべきである。
【国際調査報告】