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特表2022-544803筋肉消耗及び他の状態の治療及び予防に好適な化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】筋肉消耗及び他の状態の治療及び予防に好適な化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 311/16 20060101AFI20221014BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20221014BHJP
   C07D 407/12 20060101ALI20221014BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20221014BHJP
   C07D 409/12 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 31/4433 20060101ALI20221014BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
C07D311/16 101
A61P21/00 ZNA
A61P9/04
A61P35/00
A61P11/00
A61P13/12
A61P3/10
A61P17/02
A61K31/352
C07D407/12 CSP
C07D405/12
C07D409/12
A61K31/381
A61K31/4433
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510087
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020072911
(87)【国際公開番号】W WO2021032643
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】19192107.1
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522059690
【氏名又は名称】アダムス,フォルカー
(71)【出願人】
【識別番号】522059704
【氏名又は名称】ラベイト,ジークフリート
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アダムス,フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ラベイト,ジークフリート
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB07
4C063BB08
4C063BB09
4C063CC79
4C063CC92
4C063DD12
4C063DD75
4C063DD79
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA08
4C086BB02
4C086BC17
4C086GA02
4C086GA04
4C086GA08
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA37
4C086ZA59
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB26
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に関するものであり、可変要素は、特許請求の範囲及び明細書に記載の通りである。本発明は、筋肉消耗状態の、骨格筋若しくは心筋の萎縮の、筋肉リングフィンガー1(MuRF1)発現増加に関連する状態、特にミオパチーの及び他の状態の、治療又は予防に使用するための式Iの化合物;医薬品としての使用のための式Iの化合物;少なくとも一つの式Iの化合物を含む医薬組成物;並びに前記状態を治療する方法に関するものでもある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩。
【化1】
[式中、
は、水素又は基-CH1aであり、R1aは、水素、C-C-アルキル、フェニル(フェニルは置換されていないか、又は独立にハロゲン、シアノ、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシから選択される1、2若しくは3個の基を有していてもよい。)、及び環員として独立にN、NR、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子又はヘテロ基を含む5~10員ヘテロ芳香環(前記5~10員ヘテロ芳香環は置換されていないか、又は1、2若しくは3個の基Rを有していてもよい。)からなる群から選択され;
は、水素、メチル及びフッ素化メチルからなる群から選択され;
は、水素、メチル及びフッ素化メチルからなる群から選択され;
は、水素及びC-C-アルキルからなる群から選択され;
各Rは、独立にハロゲン、シアノ、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル、C-C-アルコキシ及びC-C-ハロアルコキシからなる群から選択され;
各Rは、独立にハロゲン、シアノ、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル、C-C-アルコキシ及びC-C-ハロアルコキシからなる群から選択され;
各Rは、独立にハロゲン、シアノ、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル、C-C-アルコキシ及びC-C-ハロアルコキシからなる群から選択され;
はNR又はOであり;
はNR、O又はSであり;
Yは、酸素原子又は2個の水素原子を表し;
、R、Rはそれぞれ独立に、水素及びC-C-アルキルからなる群から選択され;
aは0、1、2、3又は4であり;
bは0、1、2又は3である。]
【請求項2】
が水素及び基-CH1aからなる群から選択され、R1aが、水素、メチル並びに環員としてN、O及びSからなる群から独立に選択される1~3個のヘテロ原子、特に1個のヘテロ原子を含む5~6員単環式ヘテロ芳香環からなる群から選択され、前記5~6員単環式ヘテロ芳香環が置換されていないか、又は1個の基Rを有しており、Rが、ハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が水素及び基-CH1aからなる群から選択され、R1aが、水素並びに環員としてN、O及びSからなる群から独立に選択される1~3個のヘテロ原子、特に1個のヘテロ原子を含む5~6員単環式ヘテロ芳香環からなる群から選択され;Rが特に基-CH1aであり、R1aが環員としてN、O及びSからなる群から独立に選択される1~3個のヘテロ原子、特に1個のヘテロ原子を含む置換されていない5~6員単環式ヘテロ芳香環である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が水素又はメチルであり;
が水素であり;
がメチルであり;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
がNH又はOであり;
がOであり;
aが0、1又は2であり;
bが0又は1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
が基CH-I′又はCH-II′から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化2】
[式中、
*は、尿素窒素原子への結合箇所を示し;
各Rは、独立にハロゲン、シアノ、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル、C-C-アルコキシ及びC-C-ハロアルコキシからなる群から選択され;
はNR、O又はSであり;
は、水素及びC-C-アルキルからなる群から選択され;
cは0、1、2又は3である。]
【請求項6】
が水素又はメチルであり;
が水素であり;
がメチルであり;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
がNH又はOであり;
がOであり;
がO又はSであり;
aが0、1又は2であり;
bが0又は1であり;
cが0又は1である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が水素であり;
が水素であり;
がメチルであり;
がNH又はOであり;
がOであり;
がO又はSであり;
aが0であり;
bが0であり;
cが0である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
下記式I-A:
【化3】
[式中、
はNH又はOであり;
はO又はSである。]
及びその薬学的に許容される塩に相当する、又は
下記式I-B:
【化4】
[式中、
はNH又はOである。]及びその薬学的に許容される塩に相当する、又は
下記式I-C:
【化5】
[式中、
はNH又はOであり;
はO又はSである。]及びその薬学的に許容される塩に相当する、又は
下記式I-D:
【化6】
[式中、
は水素又はメチルであり;
はNH又はOである。]及びその薬学的に許容される塩に相当する、請求項1~7のいずれか1項に記載の式Iの化合物。
【請求項9】
化合物[2-(2-フリルメチルカルバモイルアミノ)-2-オキソ-エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート及びその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
化合物4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-N-[2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)エチル]ベンズアミド及びその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
化合物[2-オキソ-2-(2-ピリジルメチルカルバモイルアミノ)エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート及びその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
N-[2-(2-フリルメチルカルバモイルアミノ)-2-オキソ-エチル]-4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンズアミド、[2-オキソ-2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-ベンゾエート、及び4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-N-[2-オキソ-2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)エチル]-ベンズアミドから選択される請求項1に記載の式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
(1-メチル-2-オキソ-2-ウレイド-エチル)4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート及び[1-メチル-2-(メチルカルバモイルアミノ)-2-オキソ-エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエートから選択される請求項1に記載の式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
少なくとも一つの請求項1~13のいずれか1項に記載の一般式Iの化合物又は少なくとも一つのその薬学的に許容される塩並びに少なくとも一つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
医薬品としての使用のための、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
筋肉消耗状態の治療又は予防に使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
次の疾患若しくは状態:
鬱血性心不全、慢性心不全、がん、ドキソルビシンなどの筋毒性物質及び/又は心臓毒性物質によるがん治療、先天性ミオパチー、AIDS、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎疾患、腎不全、糖尿病、重度火傷、加齢性サルコペニア、血液供給低下、一時的若しくは長期的固定、長期機械的人工換気、脱神経、長期無重力状態及び栄養不良
のうちの一つに起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
筋肉リングフィンガー1(MuRF1)発現増加に関連する状態の、特に筋肉リングフィンガー1(MuRF1)発現の増加に関連するミオパチーの治療又は予防に使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
前記ミオパチーが、重症疾患ミオパチー、ネマリンミオパチー、炎症性ミオパチー、糖尿病からのミオパチー、肺高血圧からのミオパチー、慢性心不全からのミオパチー、腎不全からのミオパチー及び腫瘍性悪液質からのミオパチーから選択される、請求項18に記載の使用のための化合物。
【請求項20】
収縮期又は拡張期の機能障害に関連する心臓状態の治療又は予防に使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
糖尿病の治療又は予防に使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項22】
-駆出率の低下を伴う心不全(HF-rEF)、保存された駆出率を伴う心不全(HF-pEF)、高血圧又は腫瘍悪液質に起因する又はそれに関連する骨格筋若しくは心筋の萎縮;
-ドキソルビシン誘発の筋萎縮及び/又は心臓毒性;
-老化によるサルコペニア及び/又は心筋症;
-慢性腎疾患による筋萎縮;
-機械的人工換気又は鬱血性心不全による横隔膜衰弱;
-先天性ミオパチー、特に先天性(congenetic)筋萎縮;
-糖尿病誘発性筋萎縮;及び/又は
-糖尿病
の治療又は予防に使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項23】
請求項16~22のいずれか1項に記載の状態を治療又は予防する方法であって、治療又は予防を必要とする対象者に、治療上有効量の請求項1~13のいずれか1項に記載の一般式Iの化合物から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な置換された4-[2-オキソ-クロメン-7-イル)ヘテロメチル]安息香酸化合物、特には本明細書に記載の一般式Iの化合物に関する。その化合物は有益な治療特性を有し、筋肉消耗状態の治療及び予防に、並びにミオパチーの治療又は予防に、特には筋肉リングフィンガー1(MuRF1)発現増加に関連するものの治療又は予防に好適である。
【背景技術】
【0002】
筋肉消耗及び筋力低下は、心臓悪液質、心筋梗塞、高血圧、がん、特定の薬剤によるがん治療、糖尿病、腎疾患及び腎不全、遺伝性筋萎縮及び重度感染症などの各種臨床状態下で認められる、並びに固定、長期人工呼吸器、長期無重力状態又は老齢などの特定の疾患に関連しないいくつかの物理的条件下でも認められる衰弱性合併症である。筋肉消耗は、四肢及び呼吸筋の両方で発生する筋肉量の喪失を特徴とする。筋肉の消耗は代表的には、症状及び予後の悪化につながり、回復期を長引かせる。
【0003】
筋肉消耗の基礎となる機序はまだ完全には理解されていない。筋肉の消耗には、オートファゴソーム及びユビキチンプロテアソームシステム(UPS)を介した筋肉タンパク質の分解を促進する、いわゆるアトロギン類の活性化が含まれることが知られている。
【0004】
残念ながら、運動トレーニングなど、上記の臨床状態によって開始される筋肉タンパク質の喪失を遮断する信頼性の高い戦略はほとんど知られていない。これらの既知の戦略は、一般に、アトロギンの発現を低下又は不活性化すること、及び/又はそれらのユビキチン化活性を阻害することを目的としている。
【0005】
たとえば、WO2015/010107A1には、シグナル伝達兼転写活性化因子(Stat3)の炎症性サイトカイン誘発性(IL-6誘発性)チロシンリン酸化を阻害することにより、筋力低下及び/又は筋力消耗及び/又は悪液質を軽減するための小分子の使用が記載されている。Stat3リン酸化の阻害は、特定のアトロギンの発現を上昇させることによって筋肉の成長を遮断することが知られているミオスタチンの発現増加を防ぐものである。
【0006】
筋タンパク質の喪失を遮断するもう一つの有望な戦略は、筋肉リングフィンガー1(MuRF1)の機能を阻害することである。MuRF1は、筋肉特異的なユビキチンE3リガーゼであり、多ユビキチン化された筋肉タンパク質をユビキチンプロテアソーム系に移して分解するための重要なステップを提供すると考えられている。その発現は、多くの臨床状態における筋肉消耗と密接に関連しているが、その遺伝子の不活性化は、筋肉消耗状態に対する部分的な抵抗性をもたらす。過去15年間の多くの研究が、多くの筋肉関連疾患、すなわちミオパチー、例えば、重病ミオパチー、ネマリンミオパチー、慢性炎症性ミオパチー、糖尿病からのミオパチー、又は筋力低下をもたらす肺高血圧症がMuRF1発現の上昇に関連し得ることを明らかにしている。
【0007】
Hooijman et al., Am. J. Respir. Crit. Med., 2015, 191(10), 1126-1138に、MuRF1発現と横隔膜筋線維力喪失及び人工呼吸器を受けている重病患者(重病ミオパチー)で代表的に認められる筋タンパク質分解との間の関連について記載されている。その著者らは、この筋線維力喪失が、機械的人工換気を受けているMuRF1-KOマウスで減弱されることを認めており、それによって重症ミオパチーとMuRF1発現との関係を明らかにしている。
【0008】
Li and Granzier, Hum. Mol. Genet., 2015 Sep 15,24(18), 5219-5233には、解糖系繊維豊富の筋肉がMuRF-1を含むタンパク質分解経路を上昇させ、低栄養になり、その結果断面積(CSA)が小さくなり、それによって筋力低下が悪化する、ネマリンミオパチーのマウスモデルが記載されている。従って、MuRF1阻害は、特に四頭筋などの解糖系線維豊富な筋肉タイプにおいて、ネマリンミオパチーにおける筋繊維CSA及び筋繊維力を保護すると予測される。
【0009】
Adams et al., J. Mol. Biol., 2008, 384, 48-59には、C57Bl6マウスにおける腫瘍壊死因子α(TNF-α)の腹腔内注射により、150Hzでのヒラメ筋の筋力発達を25%低下させたことが記載されている。このTNF-α誘発の筋力低下は、MuRF-1ノックアウト動物で減弱された。従って、MuRF1阻害が、TNF-αレベルが高い慢性炎症状態において有用であると予測される。
【0010】
De Man et al., Am. J. Respir. Crit. Care. Med., 2011 May 15、183(10), 1411-1418には、横隔膜線維CSAが、対照と比較して肺高血圧(PH)ラットにおいて大幅に小さいことが記載されている。そのラットデータと一致して、PH患者についての研究で、対照被験者と比較して、CSAの大幅な低下及び横隔膜筋線維の収縮性の低下が明らかになっている。その著者らはさらに、横隔膜線維CSAにおけるこの低下が、E3-リガーゼであるMAFbx及びMuRF-1の発現増加に関連していることを認めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2015/010107号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Hooijman et al., Am. J. Respir. Crit. Med., 2015, 191(10), 1126-1138
【非特許文献2】Li and Granzier, Hum. Mol. Genet., 2015 Sep 15,24(18), 5219-5233
【非特許文献3】Adams et al., J. Mol. Biol., 2008, 384, 48-59
【非特許文献4】De Man et al., Am. J. Respir. Crit. Care. Med., 2011 May 15、183(10), 1411-1418
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
今日までのところ、MuRF1機能の阻害に向けた治療アプローチはごくわずかしか存在しない。
【0014】
たとえば、Castillero et al., Metabolism, 2013, 62, 1495-1502には、培養L6筋管のデキサメタゾン誘発萎縮を防ぐアトロギン-1及びMuRF1のアデノウイルスノックダウンが記載されている。
【0015】
Eddins et al., CellBiochem. Biophys., 2011, 60, 113-118には、筋肉特異的小分子によるMuRF1ユビキチン化の標的阻害が記載されており、それにより、細胞萎縮モデルにおける筋肉消耗が大幅に減少することが記載されている。
【0016】
これらの療法研究は、小分子によるMuRF1機能の阻害が筋管の萎縮を防ぐことができることを示しているが、このアプローチは、臨床的に関連する動物モデルなどのイン・ビボ環境に適用されてはいない。したがって、筋肉消耗状態の治療及び/又は予防のための化合物及び方法を提供するという、当技術分野における実質的に満足されていないニーズが未だに存在している。
【0017】
本発明の目的は、筋肉消耗状態又は筋肉状態を改善することで減弱させ得る状態の治療及び/又は予防での使用に好適なさらなる小分子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的及びさらなる目的は、下記の一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩によって達成される。
【0019】
【化1】
式中、
は、水素又は基-CH1aであり、R1aは、水素、C-C-アルキル、フェニル(フェニルは置換されていないか、又は独立にハロゲン、シアノ、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択される1、2若しくは3個の基を有していてもよい。)、及び環員として独立にN、NR、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子又はヘテロ基を含む5~10員ヘテロ芳香環(前記5~10員ヘテロ芳香環は置換されていないか、又は1、2若しくは3個の基Rを有していてもよい。)からなる群から選択され;
は、水素、メチル又はフッ素化メチルであり;
は、水素、メチル又はフッ素化メチルであり;
は、水素又はC-C-アルキルであり;
各Rは、独立にハロゲン、シアノ、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル、C-C-アルコキシ及びC-C-ハロアルコキシからなる群から選択され;
各Rは、独立にハロゲン、シアノ、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル、C-C-アルコキシ及びC-C-ハロアルコキシからなる群から選択され;
各Rは、独立にハロゲン、シアノ、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル、C-C-アルコキシ及びC-C-ハロアルコキシからなる群から選択され;
はNR又はOであり;
はNR、O又はSであり;
Yは、酸素原子(従ってC=YがC=Oである。)又は2個の水素原子(従って、C=YがCHである。)を表し;
、R、Rはそれぞれ独立に、水素及びC-C-アルキルからなる群から選択され;
aは0、1、2、3又は4であり;
bは0、1、2又は3である。
【0020】
従って本発明は、一般式Iの化合物及び式Iの化合物の薬学的に許容される塩に関する。
【0021】
化合物Iの薬理特性を考慮すると、本発明は、医薬品としての使用のための一般式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩に関するものでもある。
【0022】
当該新規化合物が、細胞試験で、そして臨床関連動物モデルで筋肉消耗及び収縮不全を減弱する能力を有することが認められた。
【0023】
従って、本発明は、筋肉消耗状態の治療又は予防に使用するための一般式Iの化合物又は式Iの化合物の薬学的に許容される塩に関するものである。
【0024】
本発明は、特に、次の疾患又は状態:鬱血性心不全、慢性心不全、がん、筋毒性物質によるがん治療、先天性ミオパチー、AIDS、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎疾患、腎不全、糖尿病、重度火傷、加齢性サルコペニア、血液供給低下、一時的若しくは長期的固定、長期機械的人工換気、脱神経、長期無重力状態及び栄養不良のうちの一つに起因する骨格筋萎縮又は心筋萎縮の治療又は予防に使用するための、一般式Iの化合物又は式Iの化合物の薬学的に許容される塩に関する。
【0025】
さらに、本発明の化合物は、MuRF1のユビキチンE3リガーゼ活性及びMuRF1のタイチンなどの標的筋肉タンパク質への結合を阻害することによるMuRF1機能の強力な阻害剤である。したがって、本発明はさらに、筋肉リングフィンガー1(MuRF1)発現増加に関連する状態、特に、MuRF1発現増加に関連するミオパチーの治療又は予防に使用するための、一般式Iの化合物又は式Iの化合物の薬学的に許容される塩に関する。
【0026】
一般式Iの化合物が、筋肉状態に対する効果に直接関係しない収縮期又は拡張期機能障害に関連する心臓状態において有益な効果を有することも見出された。したがって、本発明はまた、収縮機能障害又は拡張機能障害に関連する心臓状態の治療又は予防に使用するための一般式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0027】
一般式Iの化合物が糖尿病に有益な効果を有することも見出された。したがって、本発明はまた、糖尿病、特にII型糖尿病の治療又は予防に使用するための一般式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0028】
本発明はさらに、少なくとも一つの本明細書に記載の式Iの化合物、又は少なくとも一つの式Iの化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬品に関する。
【0029】
本発明はさらに、本明細書に記載の一般式Iの化合物から選択される化合物、又は少なくとも一つのその薬学的に許容される塩及び少なくとも一つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0030】
本発明はさらに、筋肉消耗状態の治療若しくは予防のための、又は上記で挙げた状態若しくは障害の治療若しくは予防のための医薬品の製造のための本明細書に記載の一般式Iの化合物から選択される化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0031】
本発明はさらに、上記で挙げた状態若しくは障害の一つを治療若しくは予防するための方法であって、本明細書に記載の一般式Iの化合物から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩を、処置を必要とする対象者に対して投与するステップを含む方法に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
「式Iの化合物」及び「化合物I」という用語は、同義語として使用される。
【0033】
「薬学的に許容される塩」という用語は、カチオン性又はアニオン性の塩化合物を指し、対イオンは、無機若しくは有機塩基及び無機若しくは有機酸を含む薬学的に許容される無毒性の塩基若しくは酸から誘導される。本明細書で使用される場合、式Iの化合物への言及は、薬学的に許容される塩も含むことを意味することが理解される。
【0034】
式Iの化合物が塩基性である場合、塩は、無機酸及び有機酸などの薬学的に許容される無毒性酸から製造することができる。そのような薬学的に許容される酸付加塩には、酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イソチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などがあるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいのは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸、及び酒石酸である。
【0035】
式Iの化合物が酸性である場合、塩は、無機及び有機塩基などの薬学的に許容される無毒性の塩基から製造することができる。薬学的に許容される塩基塩には、アルカリ又はアルカリ土類金属カチオンなどの金属カチオン、並びにアミンなどの塩基から誘導される無毒性塩などがある。好適な金属カチオンの例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、及びアルミニウムなどがある。好適なアミンの例には、アルギニン、N,N′-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、グリシン、リジン、N-メチルグルカミン、オラミン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-プロパン-1,3-ジオール、及びプロカインなどがある。好ましい薬学的に許容される塩基塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム及びジエタノールアミンである。
【0036】
有用な酸添加及び塩基塩の議論については、例えば、S. M. Berge et al., ″Pharmaceutical Salts,″ 66 J. Pharm. ScL 1-19 (1977)を参照する。
【0037】
「C-C-アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルを指す。好ましくは、C-C-アルキルはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルから、特にメチル及びエチルから選択される。
【0038】
「C-C-アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピルを指す。好ましくは、C-C-アルキルは、メチル及びエチルから、特にメチルから選択される。
【0039】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を指す。好ましくは、ハロゲンは、フッ素及び塩素、特にフッ素である。
【0040】
「フッ素化メチル」という用語は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、好ましくはトリフルオロメチルを指す。
【0041】
「フッ素化メトキシ」という用語は、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、好ましくはトリフルオロメトキシを指す。
【0042】
「C-C-アルコキシ」という用語は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ及びイソプロポキシを指す。好ましくは、C-C-アルコキシは、メトキシ及びエトキシから、特にメトキシから選択される。
【0043】
「C-C-ハロアルキル」という用語は、上記に記載のC-C-アルキル基を指し、C-C-アルキルラジカルの水素原子の少なくとも一つ、例えば、1、2、3、4、5又は6個の水素原子が、ハロゲン原子によって、好ましくは塩素又はフッ素原子によって、特にフッ素原子によって置き換えられている。C-C-ハロアルキルの例には、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2-クロロエチル、2,2-ジクロロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1-フルオロエチル、1,1-ジフルオロエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチルなどがある。特に、「C-C-ハロアルキル」は、上記に記載のフッ素化メチルから選択され、トリクロロメチル、2,2,2-トリクロロエチル及び2,2,2-トリフルオロエチルから、特にはトリフルオロメチルからも選択される。
【0044】
「C-C-ハロアルコキシ」という用語は、上記に記載のC-C-アルコキシ基を指し、C-C-アルコキシ基の水素原子の少なくとも一つ、例えば、1、2、3、4、5又は6個の水素原子が、ハロゲン原子、好ましくは塩素又はフッ素原子、特にフッ素原子によって置き換わっている。C-C-ハロアルコキシの例には、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ、2-クロロエトキシ、2,2-ジクロロエトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2-フルオロエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、1-フルオロエトキシ、1,1-ジフルオロエトキシ、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシなどがある。特に、「C-C-ハロアルコキシ」は、上記に記載のフッ素化メトキシから、トリクロロメトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシ及び2,2,2-トリフルオロエトキシから、特にトリフルオロメトキシから選択される。
【0045】
「5~10員のヘテロ芳香環」という用語は、5~6員の単環式芳香環又は縮合8~10員の二環式芳香環を指し、単環式又は二環式芳香環は独立にN、NR、O及びSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子又はヘテロ基を含み、Rは、水素及びC-C-アルキルからなる群から選択される。そのような5~6員の単環式芳香環の例には、チエニル、フリル、ピロリル、フラザニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、1,2,4-トリアジニル、1,3,6-トリアジニルなどがある。そのような8~10員の二環式芳香環の例には、キノリニル、イソキノリニル、イミダゾピリジル、キナゾリニル、キノキサリニル、プテリジニル、シンノリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、インドリル、イソインドリル、アザインドリル、インドリジニル、インダゾリル、プリニル、ピロロピリジニル、フロピルジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリルなどがある。
【0046】
これらの所期の使用に関連して、式I中の可変要素R、R、R、R、R、R、X、X、Y、R、R、R、a及びbは特に、以下の意味を有し、これらは、それ自体で及び少なくとも一つの他の若しくはすべてと組み合わせての両方で考慮して、式Iの化合物の特別な実施形態を表す。
【0047】
は、好ましくは、水素又は基-CH1aであり、R1aは、水素、メチル、フェニル、及び環員としてN、NR、O及びSからなる群から独立に選択される1~4個のヘテロ原子若しくはヘテロ基を含む5~10員のヘテロ芳香環からなる群から選択され、5~10員のヘテロ芳香環は置換されていないか、1、2若しくは3個の基Rを有していることができ、R及びRは、上記の一般的な意味の一つを有するか、特には以下の好ましい意味の一つを有する。
【0048】
より好ましくは、Rは、水素及び基-CH1aからなる群から選択され、R1aは、水素、メチル及び環員としてN、O及びSからなる群から独立に選択される1~3個のヘテロ原子、特に1個のヘテロ原子を含む5~6員の単環式ヘテロ芳香環からなる群から選択され、5~6員の単環式ヘテロ芳香環は置換されていないか、1個の基Rを有しており、Rは、ハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択される。
【0049】
特に、Rは、水素及び基-CH1aからなる群から選択され、R1aは、水素及び環員としてN、O及びSからなる群から独立に選択される1~3個のヘテロ原子、特に1個のヘテロ原子を含む置換されていない5~6員単環式ヘテロ芳香環からなる群から選択される。
【0050】
詳細には、Rは、基-CH1aであり、R1aは、環員としてN、O及びSからなる群から独立に選択される1~3個のヘテロ原子を含む置換されていない5~6員の単環式ヘテロ芳香環である。具体的には、Rは、基-CH1aであり、R1aは、環員としてN、O及びSからなる群から選択される1個のヘテロ原子を含む置換されていない5~6員の単環式ヘテロ芳香環である。非常に具体的には、Rは、基-CH1aであり、R1aは、フリル、チエニル、又はピリジルである。
【0051】
別により好ましい実施形態において、Rは、水素、メチル、及び基CH-I′若しくはCH-II′から選択される。
【0052】
【化2】
式中、は尿素窒素原子への結合点を示し、
はNR、O又はSであり;
cは0、1、2又は3であり;
は本明細書に記載の通りである。
【0053】
特に、Rは、CH-I′及びCH-II′からなる群から選択される。
【0054】
【化3】
式中、は尿素窒素原子への結合点を示し、R、X及びcは本明細書に記載の通りである。
【0055】
は好ましくは水素又はメチルである。特にRは水素である。
【0056】
は好ましくは水素又はメチルである。特にRは水素である。
【0057】
は好ましくはメチル又はエチルである。特にRはメチルである。
【0058】
好ましくは、各Rは、独立にハロゲン、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシフッ素からなる群から選択される。より好ましくは、各Rは、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択される。さらにより好ましくは、各Rは、独立にフッ素、メチル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される。特に、各Rは、独立にフッ素及びメチルからなる群から選択される。
【0059】
好ましくは、各Rは、独立にハロゲン、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシフッ素からなる群から選択される。より好ましくは、各Rは、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択される。さらにより好ましくは、各Rは独立に、フッ素、メチル及びトリフルオロメチルから選択される。特に、各Rは独立に、フッ素又はメチルから選択される。
【0060】
はNR又はOである。好ましくは、XはNH又はOである。
【0061】
好ましくは、XはO又はSである。特に、XはOである。
【0062】
好ましい実施形態において、Yは酸素原子である。別の好ましい実施形態において、Yは2個の水素原子を表す。
【0063】
好ましくは、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素及びC-C-アルキルからなる群から選択される。より好ましくは、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素及びメチルから選択される。特に、R、R、Rは水素である。
【0064】
好ましくは、aは0、1、2又は3である。より好ましくは、aは0、1又は2である。特にaは0である。
【0065】
好ましくは、bは0、1又は2である。より好ましくは、bは0又は1である。特にbは0である。
【0066】
式CH-I′の基において、可変要素X、c及びRは、存在する場合、それら自体及び少なくとも一つの他のもの又はすべてと組み合わせての両方を考慮すると、特に次の意味を有する。
【0067】
好ましくは、各Rは、独立にハロゲン、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択される。より好ましくは、各Rは、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-ハロアルキルからなる群から選択される。さらにより好ましくは、各Rは独立に、フッ素、メチル及びトリフルオロメチルから選択される。特に、各Rは独立に、フッ素及びメチルから選択される。
【0068】
好ましくは、XはO又はSである。特に、XはOである。別の特定の実施形態において、XはSである。
【0069】
好ましくは、cは0、1又は2である。より好ましくは、cは0又は1である。特にcは0である。
【0070】
式CH-II′の基において、可変要素c及びRは、存在する場合、それら自体及び少なくとも一つの他のもの又はすべてと組み合わせての両方を考慮すると、特に次の意味を有する。
【0071】
好ましくは、各Rは、独立にハロゲン、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択される。より好ましくは、各Rは、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-ハロアルキルからなる群から選択される。さらにより好ましくは、各Rは独立に、フッ素、メチル及びトリフルオロメチルから選択される。特に、各Rは独立に、フッ素及びメチルから選択される。
【0072】
好ましくは、cは0、1又は2である。より好ましくは、cは0又は1である。特にcは0である。
【0073】
本発明の好ましい実施形態は、
が水素又は基-CH1aであり、R1aが水素又は環員としてN、O及びSからなる群から独立に選択される1~3個のヘテロ原子、特に1個のヘテロ原子を含む置換されていない5~6員単環式ヘテロ芳香環であり;
が水素又はメチルであり;
が水素又はメチルであり;
がC-C-アルキルであり;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
がNR又はOであり;
がO又はSであり;
Yが酸素原子又は2個の水素原子を表し;
が、水素及びC-C-アルキルからなる群から選択され;
aが0、1、2又は3であり;
oが0、1又は2である、
一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0074】
本発明のより好ましい実施形態は、
が水素又は基-CH1aであり、R1aが水素又は環員としてN、O及びSからなる群から選択される1個のヘテロ原子を含む置換されていない5~6員単環式ヘテロ芳香環であり;
が水素又はメチルであり;
が水素であり;
がメチルであり;
がNH又はOであり;
がOであり;
Yが酸素原子又は2個の水素原子を表し;
aが0であり;
bが0である、
一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0075】
本発明の特定の実施形態は、
が基-CH1aであり、R1aが、環員としてN、O及びSからなる群から選択される1個のヘテロ原子を含む置換されていない5~6員単環式ヘテロ芳香環であり;
が水素であり;
が水素であり;
がメチルであり;
がNH又はOであり;
がOであり;
Yが酸素原子又は2個の水素原子を表し;
aが0であり;
bが0である、
一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0076】
本発明の別の好ましい実施形態は、
が水素、メチル又は基CH-I′若しくはCH-II′であり;
が水素及びメチルから選択され;
が水素及びメチルから選択され;
がC-C-アルキルであり;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
がNR又はOであり;
がO又はSであり;
がO又はSであり;
Yが酸素原子又は2個の水素原子を表し;
が、水素及びC-C-アルキルからなる群から選択され;
aが0、1、2又は3であり;
bが0、1又は2であり;
cが0、1又は2である、
一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0077】
本発明の別のより好ましい実施形態は、
が水素、メチル又は基CH-I′若しくはCH-II′であり;
が水素又はメチルであり;
が水素であり;
がメチルであり;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
がNH又はOであり;
がOであり;
がO又はSであり;
Yが酸素原子又は2個の水素原子を表し;
aが0、1又は2であり;
bが0又は1であり;
cが0又は1である、
一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0078】
本発明のさらにより好ましい実施形態は、
が水素、メチル又は基CH-I′又はCH-II′であり;
が水素又はメチルであり;
が水素であり;
がメチルであり;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
がNH又はOであり;
がOであり;
がO又はSであり;
Yが酸素原子又は2個の水素原子を表し;
aが0であり;
bが0であり;
cが0である、
一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0079】
本発明の別の特定の実施形態は、
が基CH-I′又はCH-II′であり;
が水素であり;
が水素であり;
がメチルであり;
がNH又はOであり;
がOであり;
がO又はSであり;
Yが酸素原子又は2個の水素原子を表し;
aが0であり;
bが0であり;
cが0である、
一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0080】
実施形態の別の好ましい群は、、基CH-I′において、
がO又はSであり;
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
cが0、1又は2である、
一般式Iの化合物に関するものである。
【0081】
実施形態の別の好ましい群は、基CH-II′において、
各Rが、独立にハロゲン、C-C-アルキル、C-C-ハロアルキル及びC-C-アルコキシからなる群から選択され;
cが0、1又は2である、
一般式Iの化合物に関するものである。
【0082】
実施形態のさらにより好ましい群は、基CH-I′において、
がO又はSであり;
各Rが独立に、フッ素、メチル又はトリフルオロメチルから選択され;
cが0又は1である、
一般式Iの化合物に関するものである。
【0083】
実施形態のさらにより好ましい群は、基CH-II′において、
各Rが独立に、フッ素、メチル又はトリフルオロメチルから選択され;
cが0又は1である、
一般式Iの化合物に関するものである。
【0084】
本発明の特に好ましい実施形態別は、式I-Aに相当する一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0085】
【化4】
式中、
はNH又はOであり;
はO又はSである。
【0086】
本発明の別の特に好ましい実施形態別は、式I-Bに相当する一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0087】
【化5】
式中、
はNH又はOである。
【0088】
本発明の別の特に好ましい実施形態別は、式I-Cに相当する一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0089】
【化6】
式中、
はNH又はOであり;
はO又はSである。
【0090】
本発明の別の特に好ましい実施形態は、式I-Dに相当する式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に関するものである。
【0091】
【化7】
式中、
は水素又はメチルから選択され;
はNH又はOである。
【0092】
式Iの特別に好ましい化合物は、[2-(2-フリルメチルカルバモイル-アミノ)-2-オキソ-エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート(すなわち、Rが基-CH1aであり、R1aがフラン-2-イルであり、RがHであり、RがHであり、Rがメチルであり、XがOであり、XがOであり、YがOであり、aが0であり、bがOである化合物I)及びその薬学的に許容される塩である。この化合物は、以下においてMyoMed-946とも称される。
【0093】
式Iの別の特別に好ましい化合物は、N-[2-(2-フリルメチルカルバモイルアミノ)-2-オキソ-エチル]-4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンズアミド(すなわち、Rが基-CH1aであり、R1aがフラン-2-イルであり、RがHであり、RがHであり、Rがメチルであり、XがNHであり、XがOであり、YがOであり、aが0であり、bが0である化合物I)及びその薬学的に許容される塩である。
【0094】
式Iの別の特別に好ましい化合物は、[2-オキソ-2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-ベンゾエート(すなわち、Rが基-CH1aであり、R1aがチエン-2-イルであり、RがHであり、RがHであり、Rがメチルであり、XがOであり、XがOであり、YがOであり、aが0であり、bが0である化合物I)及びその薬学的に許容される塩である。
【0095】
式Iの別の特別に好ましい化合物は、4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-N-[2-オキソ-2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)エチル]-ベンズアミド(すなわち、Rが基-CH1aであり、R1aがチエン-2-イルであり、RがHであり、RがHであり、Rがメチルであり、XがNHであり、XがOであり、YがOであり、aが0であり及びbが0である化合物I)及びその薬学的に許容される塩である。
【0096】
式Iの別の特別に好ましい化合物は、[2-オキソ-2-(2-ピリジルメチルカルバモイルアミノ)エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシ-メチル]ベンゾエート(すなわち、Rが基-CH1aであり、R1aがピリジン-2-イルであり、RがHであり、RがHであり、Rがメチルであり、XがOであり、XがOであり、YがOであり、aが0であり、bが0である化合物I)及びその薬学的に許容される塩である。この化合物は、以下においてMyoMed-203とも称される。
【0097】
式Iの別の特別に好ましい化合物は、4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-N-[2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)エチル]ベンズアミド(すなわち、Rが基-CH1aであり、R1aがチエン-2-イルであり、RがHであり、RがHであり、Rがメチルであり、XがNHであり、XがOであり、Yが2個の水素原子を表し(すなわち、C=YがCHである。、aが0であり及びbが0である化合物I)及びその薬学的に許容される塩である。この化合物は、以下においてMyoMed-205とも称される。
【0098】
式Iの別の特別に好ましい化合物は、(1-メチル-2-オキソ-2-ウレイド-エチル)4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート(すなわち、RがHであり、Rがメチルであり、RがHであり、Rがメチルであり、XがOであり、XがOであり、YがOであり、aが0であり、bが0である化合物I)及びその薬学的に許容される塩である。この化合物は、以下においてMyoMed-946-5とも称される。
【0099】
式Iの別の特別に好ましい化合物は、[1-メチル-2-(メチルカルバモイル-アミノ)-2-オキソ-エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-ベンゾエート(すなわち、Rが基-CH1aであり、R1aがHであり、Rがメチルであり、RがHであり、Rがメチルであり、XがOであり、XがOであり、YがOであり、aが0であり、bが0である化合物I)及びその薬学的に許容される塩である。この化合物は、以下においてMyoMed-946-8とも称される。
【0100】
本発明による化合物Iは、文献から公知の方法と同様の方法によって製造することができる。本発明による化合物への重要なアプローチが、図式1に描かれた方法に従って4-ブロモアルキル-置換されたメチルベンゾエート化合物IIとクロメン-2-オン化合物IIIと反応させて2-オキソクロメン-置換されたメチルベンゾエート化合物IVとし、それを加水分解して中間体の安息香酸化合物Vとすることで提供される。
【0101】
図式1:
【0102】
【化8】
【0103】
図式1において、可変要素R、R、R、R、X、a及びbは、上記の意味を有する。
【0104】
図式1のステップa)において、式(II)のブロミドを、求核置換反応に好適な条件下で化合物IIIのOH、SH又はHNR基(H-X-基)と反応させる。当業者は、この種類の求核置換反応に必要な反応条件については熟知している。代表的には、この反応は、塩基存在下で行われる。好適な塩基は、無機又は有機であることができる。好適な無機塩基の例は、アルカリ金属炭酸塩、例えばLiCO、NaCO、KCO又はCsCO、アルカリ金属水酸化物、例えばLiOH、NaOH又はKOH、又はリン酸塩、例えばLiPO、NaPO、KPO又はCsPOである。好適な有機塩基の例は、例えば三級アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミン(DIPEA)など、塩基性N-複素環、例えばモルホリン、ピリジン、ルチジン、DABCO、DBU又はDBN、又はアルコキシレート、例えばナトリウム又はカリウムメタノレート、エタノレート、プロパノレート、イソプロパノレート、ブタノノレート又はtert-ブタノノレートである。
【0105】
そうして得られた式(IV)のメチルエステル化合物を、図式1のステップb)で、強塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、例えばLiOH、NaOH又はKOHの存在下にケン化して、式(V)の安息香酸化合物を生成する。
【0106】
次に、中間体安息香酸化合物Vをさらに、図式2に描いた方法に従って、尿素化合物VIa若しくはVIbと反応させて、本発明による化合物Iを生成する。
【0107】
図式2:
【0108】
【化9】
【0109】
図式2において、可変要素R、R、R、R、R、R、X、Y、R、a及びbは上記の意味を有する。
【0110】
図式2のステップc)において、式(V)の安息香酸中間体を、クロライド基を含む式(VIa)の尿素化合物と、又はN(H)R基を含む式(VIb)の尿素化合物と反応させて、式Iの相当するエステル又はアミド化合物を形成する。図式2のステップc)における、式(V)の安息香酸中間体の、クロライド基を含む式(VIa)の尿素化合物との反応を、求核置換反応に好適な条件下で行う。当業者は、これらの種類の反応に必要な反応条件については熟知している。代表的には、この反応は、反応時に形成される酸を中和するために、上記に記載の塩基の存在下で行う。所望の場合、その求核置換反応に好適なブロミド塩又は特にヨージド塩を加えることで、化合物(VIa)をイン・サイツでさらに活性化することができる。好適なブロミド塩又はヨージド塩は、例えば、アルカリ金属臭化物又はヨウ化物及びテトラアルキルアンモニウム臭化物又はヨウ化物である。例としては、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化テトラブチルアンモニウム及びヨウ化テトラブチルアンモニウムなどがある。
【0111】
図式2のステップc)での、式(V)の安息香酸中間体の、N(H)R基を含む式(VIb)の尿素化合物との反応は、アミド結合形成に好適な条件下で行う。当業者は、これらの種類の反応に必要な反応条件については熟知している。代表的には、そのアミド結合形成は、カップリング試薬の存在下で行う。好適な試薬(活性化剤)は公知であり、例えば、カルボジイミド類、例えばEDCI(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;EDCとも略される)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)及びDIC(ジイソプロピルカルボジイミド)、ベンゾトリアゾール誘導体、例えばHOAt(1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール、HOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)、HATU(O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N′,N′-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、HBTU((O-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N′,N′-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)及びHCTU(1H-ベンゾトリアゾリウム-1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロテトラフルオロボレート)、ホスホニウム誘導活性化剤、例えばBOP((ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、Py-BOP((ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)-トリピロリジンホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)及びPy-BrOP(ブロモトリピロリジンホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、及び他のもの、例えばCOMU((1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウム-ヘキサフルオロホスフェート)からなる群から選択される。上記の活性化剤は、互いに組み合わせて用いることもできる。一般に、その活性化剤は、過剰には使用されないその反応物に関して、少なくとも等モル量で使用される。塩基性媒体中では、ベンゾトリアゾール系及びホスホニウム系カップリング試薬が一般に用いられる。あるいは、式(V)のカルボン酸中間体を最初に、いわゆる活性エステルに変換することができ、それは正式には、活性エステル形成性アルコール、例えばp-ニトロフェノール、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N-ヒドロキシコハク酸イミド又はOPfp(ペンタフルオロフェノール)とカルボン酸の反応によって得られる。次に、その活性エステルを、カップリング試薬の存在下又は非存在下でアミン3と反応させる。
【0112】
式(II)及び(III)の化合物は、購入することができるか、当業者に公知である方法を用いて合成することができる。
【0113】
式(VIa)及び(VIb)の化合物は、購入することができるか、例えば図式3に描いた手順に従って合成することができる。
【0114】
図式3:
【0115】
【化10】
【0116】
図式3において、可変要素R、R及びRは上記の意味を有する。図式3のステップd)で、Yが酸素原子を表す場合、尿素化合物(VII)を、求核アシル化条件下で酸塩化物(VIIIa)又は(VIIIb)と反応させる。アシル化反応に好適な反応条件は当業者には公知である。Yが2個の水素原子を表す場合、求核置換反応に好適な条件下で行う。当業者は、これらの種類の反応に必要な反応条件を熟知している。所望の場合、化合物(VIIIa)を、上記の方法に従ってイン・サイツでさらに活性化することができる。代表的には、ステップd)を、上記に記載の3級アミンなどの塩基存在下で行って、反応中に生成される塩化水素その他の酸を失活させる。
【0117】
一部の特定の場合、適切な保護基を用いて、化合物(VII)、(VIIIa)又は(VIIIb)中に存在し得る、及びその反応で競合するか、その反応を妨害し得る他の反応性基との副反応を回避することが必要となり得る。これらの場合、アミド結合形成後にこれらの保護基を除去するのに、別の脱保護ステップが必要となる場合がある。好適な保護基及びそのような好適な保護基を用いて異なる置換基を保護及び脱保護する方法は当業者には公知であり、その例は、T. Greene and P. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis (3rd ed.), John Wiley & Sons, NY (1999)にある。
【0118】
さらに、化合物(VIc)は、例えば図式4に描かれた手順に従って、化合物(VIa)から製造することができる。
【0119】
図式4:
【0120】
【化11】
【0121】
図式4では、可変要素R、R及びYは上記の意味を有する。図式4のステップe)において、尿素化合物(VIa)を、アジド源、例えばホスホリルアジド、アジ化水素酸又はアジ化ナトリウム、アジドの存在下に、又はZwierzak, A. in Phosphorus、Sulfur, and Silicon and the Related Elements (1993), 75:1-4, 51-54によって記載されたPPhその他のリン試薬とのシュタウディンガー反応を介して、アジド化合物(IX)とする。代表的には、ステップe)を、上記に記載の3級アミンなどの塩基の存在下に行って、反応時に生成する塩酸を失活させる。
【0122】
図式4のステップf)で、化合物(IX)のアジド基を、水素化触媒の存在下に水素で還元するか、水素化物と反応させて、アミン化合物(VIc)を得る。この種類の反応に好適な反応条件は、当業者には公知である。
【0123】
別断で断りがなければ、上記の反応は代表的には、有機溶媒、例えば非プロトン性有機溶媒、例えば置換されたアミド、ラクタム及び尿素;例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラメチル尿素、環状エーテル;例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、ハロゲン化炭化水素;例えばジクロロメタン、及びこれらの混合物、並びにそれらのC-C-アルカノール及び/又は水との混合物中で行う。
【0124】
上記で記載の反応は通常、使用される化合物の反応性に応じて、室温~使用される溶媒の沸点の温度で行われる。
【0125】
反応混合物を、従来法で、例えば水と混合し、相を分離し、適切な場合には粗生成物をクロマトグラフィーによって精製することで後処理する。中間体及び最終生成物が固体として得られる場合、その精製は、再結晶又は温浸によって行うこともできる。
【0126】
反応条件、試薬及び合成経路の順序、反応条件と適合しない可能性がある化学官能基の保護、及び製造方法の反応順序における好適な点での脱保護の適切な操作を含む通常の実験は、通常の技術の範囲内である。
【0127】
すでに前述したように、一般式Iの化合物が、細胞試験並びに臨床的に関連のある動物モデルで筋肉消耗及び収縮不全を減弱することができることが認められた。
【0128】
したがって、本発明は、筋肉消耗状態の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物に関する。
【0129】
筋肉消耗状態及びミオパチーに関連して本明細書で使用される「治療(treating)」及び「治療(treatment)」という用語は、状態及び/又は疾患に関連する症状、すなわち筋肉消耗又は筋肉衰弱の治療を指す。
【0130】
筋肉消耗状態及びミオパチーに関連して本明細書で使用される「予防」という用語は、予防処置、すなわち、状態及び/又は疾患に関連する筋肉消耗又は筋肉衰弱を予防又はリスク低下するための治療を指す。
【0131】
本明細書で使用される「筋肉消耗」という用語は、筋肉の質量減少として見ることができる大きさ(断面積の減少)及び筋線維数の減少を指すと理解されるべきであり、それはまた、科学文献及び医学文献で筋萎縮とも称される。
【0132】
本明細書で使用される「ミオパチー」という用語は、筋線維が適切に機能しない筋肉の疾患を指す。これは筋力低下をもたらす。本明細書で使用される「ミオパチー」という用語は、特に、筋肉リングフィンガー1(MuRF1)発現の増加に関連するミオパチーを指す。しかしながら、本発明の化合物の効果はその経路に限定されないと考えられる。
【0133】
筋肉消耗は、筋肉タンパク質合成と筋肉タンパク質分解の間のバランスの変化によって引き起こされると考えられている。特に、萎縮時に、筋タンパク質のユビキチン化などの筋タンパク質分解経路が活性化されると考えられている。
【0134】
筋肉消耗は、代表的には、悪液質、例えば心疾患によって引き起こされる悪液質、すなわち心臓悪液質を患う患者で認められる。さらに、筋肉消耗は特に骨格筋に影響を及ぼし、骨格筋の劣化、すなわち骨格筋萎縮をもたらす。しかしながら、筋肉消耗は心筋にも影響を与え得る。
【0135】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、心臓悪液質、骨格筋萎縮又は心筋萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物に関する。
【0136】
心臓悪液質、心臓及び骨格筋の萎縮は、例えば、心筋梗塞を患う患者で認められ、これは代表的には、症状及び予後の悪化につながり、回復期を著しく延長する可能性がある。
【0137】
したがって、本発明の特定の実施形態は、心臓悪液質、骨格筋萎縮又は心臓筋萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物に関するものであり、当該心臓悪液質、骨格筋萎縮又は心臓筋萎縮は心筋梗塞によって引き起こされる。
【0138】
非常に多くの既知の疾患関連状態があり、心筋萎縮又は骨格筋萎縮及び/又は悪液質を引き起こす、疾患に病気に関連しない多くの身体状態もある。
【0139】
心筋又は骨格筋の萎縮及び/又は悪液質を引き起こす可能性のある疾患関連の状態は、例えば、鬱血性心不全、慢性心不全、心筋梗塞、がん、先天性ミオパチー、AIDS、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、多発性硬化症、家族性アミロイド多発神経障害、血液供給低下、ホルモン欠乏症、慢性腎疾患、腎不全、糖尿病、感染症、慢性膵炎及び自己免疫障害である。
【0140】
骨格筋萎縮及び/又は悪液質を引き起こす可能性があり、疾患とは関連性がない身体状態は、例えば、重度火傷、脱神経、一時的若しくは長期の固定、長期機械的人工換気、加齢性サルコペニア、長期無重力、栄養不良及び薬物中毒である。
【0141】
がん治療に使用される特定の化学療法剤は、心臓毒性及び筋毒性を示す。たとえば、各種がん治療で使用される効率的な化学療法薬であるドキソルビシンの使用は、初期及び慢性の心毒性及び筋毒性に関連している(K.M. Cho et al., Oncotarget, 2017, 8(45), 79441-79452; D.S. Hydock et al., Characterization of the Effect of In Vivo Doxorubicin Treatment on Skeletal Muscle Function in the Rat, International Journal of Cancer Research and Treatment, 2011, 2028, 2023-2028; T.A. Nissinen et al., Sci. Rep., 2016, 6, 32695; M.S. Willis et al., Circulation: Heart Failure, 2019, 12(3), 1-12)。齧歯類において、ドキソルビシンの単回注射は心筋量及び骨格筋量を減少させ得るものであり、その後機能が顕著に損なわれる。
【0142】
本発明の好ましい実施形態は、次の疾患又は状態:鬱血性心不全、慢性心不全、がん、筋毒性物質によるがん治療、先天性ミオパチー、AIDS、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎疾患、腎不全、糖尿病、重度火傷、加齢性サルコペニア、血液供給低下、一時的若しくは長期的固定、長期機械的人工換気、脱神経、長期無重力状態及び栄養不良の一つに起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物に関するものである。
【0143】
本発明はまた、糖尿病、特にII型糖尿病の治療又は予防に関する。理論に縛られることを望むものではないが、糖尿病に対するプラスの効果は、筋肉のインスリン感受性を高めるMuRF1阻害に基づいていると考えられている。S. Hirnerらは、J.Mol. Biol, 2008, 379, 666-677で、MuRF1がグリコーゲン貯蔵を枯渇させ、解糖を阻害するのに対し、インスリンは解糖とグリコーゲン貯蔵を上昇させるという意味で、MuRF1とインスリンは拮抗的な形で機能的に関連していると理解することができることを示した。その結果、MuRF1の阻害は、インスリンの必要量を減らし、糖尿病治療のための戦略を構成することができる。
【0144】
本発明は、特に以下のものに関するものである。
【0145】
鬱血性心不全に起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0146】
慢性心不全に起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0147】
がんに起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0148】
ドキソルビシンなどの筋毒性及び/又は心臓毒性物質によるがん治療に起因する骨格筋又は心筋萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0149】
先天性ミオパチーに起因する骨格筋又は心筋萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0150】
AIDSに起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0151】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)に起因する骨格筋又は心筋萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0152】
慢性腎疾患に起因する骨格筋又は心筋萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0153】
腎不全に起因する骨格筋又は心筋萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0154】
糖尿病に起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0155】
重度火傷に起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0156】
老化性サルコペニアに起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0157】
血液供給減少に起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0158】
一時的又は長期的固定に起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0159】
長期機械的人工換気に起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0160】
脱神経に起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0161】
長期無重力に起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0162】
栄養不良に起因する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0163】
糖尿病の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0164】
本発明は、特に、下記のものに関するものである。
【0165】
心臓悪液質の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0166】
腫瘍悪液質の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0167】
心筋梗塞の治療に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0168】
慢性心不全の治療に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0169】
機械的人工換気からの回復に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0170】
本発明は、具体的には下記のものに関するものである。
【0171】
駆出率の低下を伴う心不全(HF-rEF)に起因又は関連する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0172】
保存された駆出率を伴う心不全(HF-pEF)に起因又は関連する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0173】
高血圧に起因する、又は高血圧に関連する骨格筋又は心筋の萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0174】
腫瘍悪液質に起因又は関連する骨格筋又は心筋萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0175】
ドキソルビシン誘発の筋萎縮及び/又は心臓毒性の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0176】
老化によるサルコペニア及び/又は心筋症の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0177】
慢性腎疾患による筋萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0178】
機械的人工換気又は鬱血性心不全による横隔膜衰弱の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0179】
先天性ミオパチー、特に先天性筋萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0180】
糖尿病誘発性筋萎縮の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0181】
糖尿病、特にII型糖尿病の治療又は予防に使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0182】
MuRF1のユビキチンE3リガーゼ活性を阻害することで、並びにタイチンなどの標的の筋肉タンパク質へのMuRF1の結合を阻害することでMuRF1の機能を低下させる能力があるため、式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩は、筋肉リングフィンガー1(MuRF1)発現の増加に関連する状態;及び特に、筋肉消耗及びミオパチーを生じさせる不均衡な筋肉タンパク質合成及び筋肉タンパク質分解に関連する、代表的には、筋肉リングフィンガー1(MuRF1)の発現増加に関連するミオパチーの治療又は予防での使用に好適でもある。
【0183】
したがって、本発明はさらに、筋肉リングフィンガー1(MuRF1)発現増加に関連する状態の治療又は予防に使用するための、上記に記載の式Iの化合物に関する。
【0184】
特に、本発明はさらに、筋肉リングフィンガー1(MuRF1)発現の増加に関連するミオパチーの治療又は予防に使用するための、上記に記載の式Iの化合物に関する。
【0185】
MuRF1発現増加に関連するミオパチーは、例えば、重症ミオパチー、ネマリンミオパチー、炎症性ミオパチー、糖尿病からのミオパチー、肺高血圧症からのミオパチー、慢性心不全時、特にサブタイプである駆出率低下を伴う心不全(HFrEF)及び保存された駆出率を伴う心不全(HFpEF)時に発症するミオパチー、腎不全からのミオパチー、及び腫瘍悪液質からのミオパチーから選択される。
【0186】
MuRF1発現増加と肺高血圧からのミオパチーとの間の関連は、例えば、du Bois et al., Circ. Res., 2015 Aug 14, 117(5), 424-436に記載されている。
【0187】
MuRF1発現増加とアンギオテンシンIIによって促進される慢性心不全及び/又は腎不全ミオパチーとの間の関連は、例えば、du Bois et al., Circ. Res., 2015 Aug 14, 117(5), 424-436に記載されている。
【0188】
同様に、Bowen et al., Eur. J. Heart. Fail., 2015 Mar, 17(3), 263-272には、MuRF1発現増加と拡張期心不全(HFpEF)時に発症するミオパチーとの関係が記載されている。
【0189】
MuRF1の上昇が慢性腎不全患者で報告されており、これは筋萎縮と密接に相関している(J. Aniort et al., J. Cachexia Sarcopenia Muscle, 2019, 10(2), 323-337; S.H. Lecker et al., J. Am. Soc. Nephrol., 2011, 22(5), 821-824)。したがって、MuRF1を低下させる化合物は、慢性腎不全時に骨格筋を保護すると予測される。腎障害及び筋萎縮の概念は、急性ゲンタマイシン誘発腎損傷を用いる動物モデルでもさらに検証されている(J. Aniort et al., Int. J. Biochem. Cell Biol., 2016, 79, 505-516)。
【0190】
MuRF1は、骨格筋の老化時に上昇する(O. Rom et al., Free Radic. Biol. Med. 2016, 98, 218-230)。これは、サルコペニア(筋原線維の喪失)及び心筋症に寄与すると考えられているミトコンドリア機能障害に関連している(H.W. Liu et al., Biogerontology. 2020, 21(3), 367-380)。ミトコンドリア機能障害からの救済が、心筋症からのマウスモデルで行われている(Y. A. Chiao et al., eLife, 2020, 9, 55513)。したがって、ミトコンドリア機能を改善し、MuRF1を低下させる化合物は、加齢関連サルコペニア及び心筋症から保護すると予測される。
【0191】
機械的人工換気による横隔膜へのストレス(H. W. van Hees et al., Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol., 2008, 294(6), L1260-8)又は鬱血性心不全(P. E. Hooijman et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med., 2015, 191(10), 1126-1138)は、MuRF1(van Hees, Loc. cit; Hoojiman, Loc. cit.)などのユビキチン及びプロテアソーム系を活性化する。これが単に相関的な知見ではないということは、ボルテゾミブ(van Hees, Loc. cit)によるプロテアソーム系の阻害、又はノックアウトモデル(Hoojiman, Loc. cit.)を使用することによるMuRF1の除去が横隔膜衰弱(Hoojiman, Loc. cit.)から保護するという所見によって裏付けられる。したがって、ここで記載の化合物は、鬱血性心不全及び重症疾患において横隔膜収縮力を保護すると予測される(van Hees, Loc. cit; Hoojiman, Loc. cit.)。
【0192】
遺伝的筋萎縮は、筋肉組織の著しい喪失と筋力の喪失に関連している。MuRF1の上昇が、これにおいて機械的に関係している(J. Shin et al., Int. J. Biochem. Cell Biol., 2013, 45(10), 2266-2279)。これの具体例として、解糖活性筋肉線維における線維レベルでのMuRF1の上昇が、最も萎縮性となる線維及び組織と密接に相関しているネマリンミオパチーを挙げることができる(F. Li et al., Hum. Mol. Genet., 2015, 24(18), 5219-5233)。
【0193】
糖尿病を含む多くの種類の代謝ストレス状態がMuRF1発現を活性化することが示されている(S. H. Lecker et al., FASEB J. 2004, 18(1), 39-51)。糖尿病(すなわち、マウスのストレプトトジン誘発糖尿病)の動物モデルにおいて、これはFoxo-MuRF1シグナル伝達軸を活性化することが示されており、次にこれは筋肉消耗と密接に相関している(B. T. O’Neill et al., Diabetes, 2019, 68(3), 556-570)。
【0194】
重度の肥満は、骨格タンパク質の合成及び分解に影響を与える循環因子(例えば、インスリン及びアミノ酸)の変化を伴う(C. S. Katsanos et al., Obesity, 2011, 19, 469-475)。インスリン抵抗性は、ユビキチン-プロテアソーム経路の活性化によって筋肉タンパク質の分解を加速する(X. Wang, Endocrinology, 147(9), 4160-4168)。以前の研究で、体重減少の最大30%が、肥満における各種ダイエット法を用いた筋肉量の減少が原因である可能性があることが明らかになった(D. L. Ballor et al., Int. J. Obes. Relat. Metab. Disord., 1994, 18, 35-40)。
【0195】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、重症疾患ミオパチー、ネマリンミオパチー、炎症性ミオパチー、糖尿病からのミオパチー、肺高血圧からのミオパチー、慢性心不全からのミオパチー(特にサブタイプHFrEF及びHFpEF)、腎不全からのミオパチー、腫瘍性悪液質からのミオパチー、機械的人工換気又は鬱血性心不全による横隔膜に対するストレスによる横隔膜衰弱、先天性ミオパチー、特に先天性(congenetic)筋萎縮;加齢性サルコペニア及び心筋症の治療又は予防に使用するための、上記に記載の式Iの化合物に関するものである。
【0196】
本発明は特に、下記のものに関するものである。
重症疾患ミオパチーの治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
ネマリンミオパチーの治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
炎症性ミオパチー治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
糖尿病からのミオパチーの治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
肺高血圧からのミオパチーの治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
慢性心不全からのミオパチー、特にサブタイプHFrEF及びHFpEFの治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
腎不全からのミオパチーの治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物
腫瘍性悪液質からのミオパチーの治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
機械的人工換気又は鬱血性心不全による横隔膜に対するストレスによる横隔膜衰弱の治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
先天性ミオパチー、特に先天性(congenetic)筋萎縮の治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
加齢性サルコペニアの治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
加齢性心筋症の治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
糖尿病の治療又は予防で使用するための、上記に記載の一般式Iの化合物。
【0197】
さらに、筋肉の状態に対するそれらの作用とは独立して、化合物I及びその塩は、収縮期又は拡張期の機能障害に関連する心臓状態において有益な効果を有することが見出された。したがって、本発明はまた、収縮期又は拡張期の機能障害に関連する心臓状態の治療又は予防に使用するための化合物I及びその塩に関するものである。
【0198】
本発明はさらに、上記に記載の一般式Iの化合物から選択される少なくとも一つの化合物又はその少なくとも一つの薬学的に許容される塩及び少なくとも一つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物(すなわち、医薬品)に関する。
【0199】
これらの薬学的に許容される担体は、医薬品形態及び所望の投与方式に従って選択される。
【0200】
本発明の化合物は、非経口(例えば、筋肉、腹腔内、静脈、ICV、大槽内注射又は注入、皮下注射、又はインプラント)、経口、舌下、気管内、鼻腔内、局所、経皮、経膣又は直腸投与のための医薬組成物を製造するのに使用することができ、上記の状態又は疾患の予防又は治療のために、従来の医薬担体と混合して単位剤形で動物又はヒトに投与することができる。
【0201】
医薬組成物において、本発明の少なくとも一つの化合物を、単独で、又は一般に無毒性及び/又は薬学的に許容される従来の担体を含む好適な用量単位製剤中、さらなる活性化合物とともに製剤することができる。担体は、活性化合物用のビヒクル、担体、又は媒体として機能する固体、半固体又は液体の材料であり得る。好適な担体は、専門家医薬モノグラフに挙げられている。さらに、製剤は、薬学的に許容される担体又は通常の補助物質、例えば流動促進剤;湿展剤;乳化剤及び懸濁剤;防腐剤;抗酸化剤;抗刺激剤;キレート剤;コーティング助剤;乳濁液安定剤;フィルム形成剤;ゲル形成剤;臭気マスキング剤;味覚矯味剤;樹脂;親水コロイド;溶媒;可溶化剤;中和剤;拡散促進剤;顔料;四級アンモニウム化合物;再脂化及び過脂化剤;軟膏、クリーム又はオイルの原材料;シリコーン誘導体;拡散助剤;安定剤;滅菌剤;坐剤基剤;錠剤助剤、例えば結合剤、充填剤、流動促進剤、崩壊剤又はコーティング剤;推進剤;乾燥剤;乳白剤;増粘剤;ロウ;可塑剤及び白色鉱油を含むことができる。この点での製剤は、たとえば、Fiedler, H. P., Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete [Encyclopedia of auxiliary substances for pharmacy, cosmetics and related fields], 4th edition, Aulendorf:ECV-Editio-Kantor-Verlag, 1996に記載の専門知識に基づくものである。
【0202】
好適な単位剤形には、錠剤、ゼラチンカプセル、粉剤、粒剤及び経口摂取用の液剤若しくは懸濁液などの経口投与用の形態、舌下、口腔、気管内又は鼻腔内投与用の形態、エアロゾル、インプラント、皮下、筋肉内又は静脈投与の形態、及び直腸投与の形態などがある。
【0203】
本発明の化合物は、局所投与用のクリーム、軟膏又はローションで使用することができる。
【0204】
固体組成物が錠剤の形態で調製される場合、主成分は、ゼラチン、デンプン、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、タルク、二酸化ケイ素などの薬学的に許容される担体と混合される。
【0205】
錠剤は、ショ糖、セルロース誘導体又は別の好適な物質でコーティングするか、他の方法で処理して、長期活性又は遅延活性を示し、所定量の活性基礎成分を連続的に放出することができる。
【0206】
ゼラチンカプセルの形態での調製物は、有効成分を増量剤と混合し、得られた混合物を軟又は硬ゼラチンカプセルに入れることによって得られる。
【0207】
シロップ又はエリキシルの形態の調製物、又は滴剤の形態での投与のための調製物は、好ましくはノンカロリーである甘味料、防腐剤としてのメチルパラベン若しくはプロピルパラベン、香味料及び好適な着色剤と共に有効成分を含み得る。
【0208】
水和剤又は粒剤は、分散剤、湿展剤又はポリビニルピロリドンなどの懸濁剤、並びに甘味料又は味覚向上剤と混合された有効成分を含み得る。
【0209】
直腸投与は、直腸温度で溶融する結合剤、例えばココアバター(cocobutter)又はポリエチレングリコールを用いて調製される坐剤を使用することで達成される。
【0210】
非経口投与は、水系懸濁液、等張塩溶液、又は薬理的に好適な分散剤及び/又は湿展剤、例えばプロピレングリコール又はポリエチレングリコールを含む滅菌及び注射用溶液を使用することによって行われる。
【0211】
有効成分はまた、好適な場合、1以上の担体又は添加剤とともにマイクロカプセル又はリポソーム/セントロソームとして製剤することもできる。
【0212】
一般式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩に加えて、本発明の組成物は、上記で示した障害又は疾患の治療に有益であり得るさらなる有効成分を含み得る。
【0213】
したがって、本発明はさらに、複数の有効成分が一緒に存在し、そのうちの少なくとも一つが本発明の化合物である医薬組成物に関する。
【0214】
医薬組成物を製造する場合、本発明による化合物は、任意に、1以上の薬学的に許容される担体と混合又はそれによって希釈される。
【0215】
本発明はさらに、上記に記載の状態、例えば上記に記載の筋肉消耗、又は上記に記載の筋肉リングフィンガー1(MuRF1)発現の増加に関連する状態、特にミオパチー、又は収縮期若しくは拡張期機能障害に関連する心臓の状態、又は糖尿病の治療又は予防のための医薬品の製造のための、上記に記載の一般式Iの化合物から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0216】
前記医薬品の製造に関しては、上記の医薬組成物に関連して提供されている説明を参照する。
【0217】
本発明はまた、上記の状態、例えば筋肉消耗状態、又は上記に記載の筋肉リングフィンガー1(MuRF1)発現の増加に関連する状態、特にミオパチー、収縮期若しくは拡張期機能障害関連の心臓状態、又は糖尿病の治療又は予防方法であって、治療上有効量の一般式Iの化合物から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩を、処置を必要とする対象者に投与するステップを含む方法に関するものである。
【0218】
同様に、本発明は、長期機械的人工換気、手術、慢性心不全又は原発性筋疾患などのストレス状態時に横隔膜収縮性を保護又は強化する方法であって、治療上有効量の一般式Iの化合物から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩を、処置を必要とする対象者に投与するステップを含む方法に関するものである。
【0219】
本発明は特に、
鬱血性心不全に起因する骨格筋又は心筋の萎縮及び/又は横隔膜衰弱を治療又は予防する方法;
慢性心不全に起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
がんに起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
ドキソルビシンなどの筋毒性及び/又は心臓毒性物質によるがん治療に起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
先天性ミオパチーに起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
AIDSに起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
慢性閉塞性肺疾患(COPD)に起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
慢性腎疾患に起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
腎不全に起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
糖尿病に起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
重度火傷に起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
加齢性サルコペニアに起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
血液供給低下に起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
一時的若しくは長期的固定に起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
長期機械的人工換気に起因する骨格筋又は心筋の萎縮及び/又は横隔膜衰弱を治療又は予防する方法;
脱神経に起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
長期無重力状態に起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
栄養不良に起因する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法;
糖尿病を治療又は予防する方法;
収縮期又は拡張期の機能障害関連の心臓の状態を治療又は予防する方法であって、
治療上有効量の一般式Iの化合物から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩を、処置を必要とする対象者に投与するステップを含む方法に関する。
【0220】
本発明は特にさらに、
集中治療時の横隔膜収縮性及び機能の保護などの、重症疾患ミオパチーを治療又は予防する方法;
ネマリンミオパチーを治療又は予防する方法;
炎症性ミオパチーを治療又は予防する方法;
糖尿病からのミオパチーを治療又は予防する方法;
肺高血圧からのミオパチーを治療又は予防する方法;
慢性心不全からのミオパチー、特にサブタイプHFrEF及びHFpEFを治療又は予防する方法;
腎不全からのミオパチーを治療又は予防する方法;
腫瘍性悪液質からのミオパチーを治療又は予防する方法であって、
治療上有効量の一般式Iの化合物から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩を、処置を必要とする対象者に投与するステップを含む方法に関する。
【0221】
本発明は具体的には、下記のものに関する。
駆出率低下を伴う心不全(HF-rEF)に起因は関連する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法。
保存された駆出率(HF-pEF)を伴う心不全に起因又は関連する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法。
高血圧に起因又は関連する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法。
腫瘍悪液質に起因又は関連する骨格筋又は心筋の萎縮を治療又は予防する方法。
ドキソルビシン誘発の筋萎縮及び/又は心臓毒性を治療又は予防する方法。
加齢によるサルコペニア及び/又は心筋症を治療又は予防する方法。
慢性腎疾患による筋萎縮を治療又は予防する方法。
機械的人工換気又は鬱血性心不全による横隔膜衰弱を治療又は予防する方法。
先天性ミオパチー、特に先天性(congenetic)筋萎縮を治療又は予防する方法。
糖尿病誘発筋萎縮を治療又は予防する方法。
糖尿病を治療又は予防する方法。
収縮期又は拡張期の機能障害関連の心臓の状態を治療又は予防する方法。
【0222】
本明細書で使用される「処置を必要とする対象者」という用語は、前述の状態又は疾患の1以上を患う対象者を指すか、前述の状態又は疾患の1以上を発症する可能性が高い対象者を指す。好ましくは、「処置を必要とする対象者」という用語は、哺乳動物、特に人間、生産動物又は家畜を指す。特に、「処置を必要とする対象者」という用語は、人間を指す。
【0223】
本明細書で使用される「有効量」及び「治療上有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又は他の臨床関係者によって求められている組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する対象化合物の量を意味する。当業者は、現在これらの障害に苦しんでいる患者を治療することによって、又はこれらの障害に苦しんでいる患者を有効量の本発明の化合物で予防的に治療することによって、筋肉消耗状態及び/又はミオパチーに影響を及ぼし得ることが認識される。
【0224】
上記の方法に関連して本明細書で使用される「治療(treatment)」及び「治療する(treating)」という用語は、本明細書に記載の筋肉消耗状態及び/又はミオパチーの進行の減速、中断、停止、制御、又は停止があり得るすべてのプロセスを指すが、これらの状態又は障害のすべての症状の完全な排除、並びに特にそのような状態又は障害の素因がある患者における言及された状態の予防的療法を必ずしも示すものではない。
【0225】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、指定された量の指定された成分を含む製品、並びに指定された量の指定された成分の組み合わせに直接又は間接に起因する任意の製品を包含することを意図している。医薬組成物に関連するそのような用語は、有効成分、及び担体を構成する不活性成分を含む製品、並びに直接又は間接に成分のいずれか2以上の組み合わせ、複合体化又は凝集に起因する、又は成分の1以上の解離に起因する、又は成分の1以上の他の種類の反応若しくは相互作用に起因する生成物を包含することを意図している。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物及び薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の組成物を包含する。
【0226】
「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が製剤の他の成分と適合性でなければならず、その被投与者に有害であってはならないことを意味する。
【0227】
「化合物の投与」及び/又は「化合物を投与する」という用語は、処置を必要とする個体に本発明の化合物又は本発明の化合物のプロドラッグを提供することを意味すると理解されるべきである。
【0228】
MuRF1発現増加に関連する上記の筋肉消耗状態及びミオパチーの治療及び/又は予防において、適切な用量レベルは、一般に、処置を必要とする対象者の体重1kg当たり約2~500mg/日であり、それは単回投与又は複数回投与することができる。好ましくは、用量レベルは、約5~約250mg/kg/日である。
【0229】
経口投与の場合、組成物は、好ましくは、10~5000ミリグラムの有効成分、特に、処置を必要とする対象者への投与量の症候に応じた調節のために50.0、100.0、200.0、500.0、1000.0、2000.0、3000.0、4000.0及び5000.0ミリグラムの有効成分を含む錠剤の形態で提供される。
【0230】
この投与計画は、最適な治療反応を提供するように調節することができる。しかしながら、特定の患者の特定の用量レベル及び投与回数は変動する可能性があり、使用される特定の化合物の活性、代謝安定性及びその化合物の作用の長さ、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与の形態及び時刻、排泄速度、併用薬剤、特定の状態の重度、及び療法を受ける宿主などの多様な要素によって決まることは理解されよう。
【0231】
本発明の化合物は、非経口(例えば、筋肉、腹腔内、静脈、ICV、大槽内注射又は注入、皮下注射、又はインプラント)、経口、吸入噴霧、経鼻、経膣、直腸、舌下、又は局所投与経路などの従来の投与経路によって投与することができる。
【0232】
本発明による化合物は、他の薬剤と組み合わせての前述の疾患及び状態の治療及び/又は予防方法においてさらに有用である。
【0233】
本発明の化合物は、式Iの化合物又は他の薬剤が有用性を有し得る前述の疾患及び状態の治療及び/又は予防において、1以上の他の薬剤と組み合わせて使用することができ、その場合、その薬剤組み合わせは、一緒にすると、どちらかの薬剤単独の場合より安全又は効果的である。そのような他薬剤は、経路によって、したがって一般的に使用される量で、式Iの化合物と同時に又は順次に投与することができる。式Iの化合物が1以上の他薬剤と同時に使用される場合、そのような他薬剤及び式Iの化合物を含む単位剤形での医薬組成物が好ましい。しかしながら、併用療法はまた、式Iの化合物及び1以上の他薬剤を、異なる重なったスケジュールで投与する療法も含み得る。1以上の他の有効成分と併用する場合、本発明の化合物及び他の有効成分は、それぞれが単独で使用される場合よりも低い用量で使用され得ることもまた想定される。上記の組み合わせは、本発明の化合物と、一つの他の活性化合物との組み合わせだけでなく、2以上の他の活性化合物との組み合わせも含む。
【0234】
本発明の化合物の第2の有効成分に対する重量比は変動し得るものであり、各成分の有効用量によって決まる。一般に、それぞれの有効用量を用いる。したがって、例えば、本発明の化合物を別の薬剤と組み合わせる場合、本発明の化合物の他薬剤に対する重量比は、一般に、約1000:1~約1:1000、好ましくは約200:1~約1:200の範囲である。本発明の化合物及び他の有効成分との組み合わせもまた、前述の範囲内であるが、各場合で、各有効成分の有効用量を使用すべきである。そのような組み合わせにおいて、本発明の化合物及び他の活性剤は、別個に又は組み合わせて投与され得る。さらに、一つの要素の投与は、他の薬剤の投与の前、同時、又は後であることができる。
【0235】
以下の実施例及び図は、本発明をさらに説明することを意図したものである。
【0236】
略称:
ALPHA:増幅発光近接ホモジニアスアッセイ;
DSF:示差走査蛍光定量法;
GST:グルタチオン-S-トランスフェラーゼ;
UBE1:組換えヒトHis6-ユビキチン活性化酵素;
DMSO:ジメチルスルホキシド;
CDI:1,1′-カルボニルジイミダゾール;
DMEM:ダルベッコの改良イーグル培地;
Sham:生理食塩水処理された;
DEX:デキサメタゾン;
PBS:リン酸緩衝生理食塩水;
MCT:モノクロタリン;
TA:前脛骨筋;
TL:脛骨の長さ;
EDL:長指伸筋;
CSA:断面積;
LAD:冠動脈左前下行(dexterior)枝の結紮;
MI:心筋梗塞;
WB:ウェスタンブロット;
BW:体重;
CHF:慢性心不全;
LV:左心室;
LVEDD:左心室拡張終期径;
LVEF:左心室駆出率;
LVESD:左心室収縮終期径;
LVFS:左室内径短縮率;
MRPS-5:ミトコンドリアリボソームタンパク質5;
Nox2:NADPHオキシダーゼ2;
CS:クエン酸シンターゼ;
SDH:コハク酸デヒドロゲナーゼ;
TOM-20:ミトコンドリア外膜のトランスロカーゼ20;
GAPDH:グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ;
AU:任意単位。
HPRT:ヒポキサンチン-ホスホリボシル-トランスフェラーゼ;
FRET:蛍光共鳴エネルギー移動;
MAFbx:筋萎縮Fボックス;
CARP:心臓アドリアマイシン応答性タンパク質;
GAPDH:グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ;
eIF2B-delta:翻訳開始因子eIF-2Bサブユニットデルタ;
AS3MT:亜ヒ酸メチルトランスフェラーゼ;
ATPAF1:ATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1;
GHDC:GH3ドメイン含有タンパク質;
BAX:アポトーシス調節因子BAX。
【図面の簡単な説明】
【0237】
図1】濃度上昇させていく化合物MyoMed-946、MyoMed-946-5、MyoMed-946-8の存在下での培養筋芽細胞における乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性の放出に基づく細胞毒性試験の結果。
図2】濃度上昇させていく化合物MyoMed-946、MyoMed-946-5、MyoMed-946-8の存在下での培養筋細胞における乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性の放出に基づく細胞毒性試験の結果。
図3】通常の飼料(MCT;n=27)又はMyoMed-946化合物(MCT+MyoMed-946;n=27)のいずれかを与えたモノクロタリンで処理したsham(n=20)及びマウスの身体的特徴。データは、体重増加の障害(図3)、肺鬱血の増加(図4)、及び体重に対する心臓重量の増加(BW)(図5)によって示されるように、MCT処理が、投与された飼料とは無関係に心臓悪液質を誘発したこと、そして心臓の代表的なH&E染色された内側断面(図7)によって視覚化された右心室(RV)肥大(図6)が減弱されることを裏付けている。*P<0.01対Sham。
図4】通常の飼料(MCT;n=27)又はMyoMed-946化合物(MCT+MyoMed-946;n=27)のいずれかを与えたモノクロタリンで処理したsham(n=20)及びマウスの身体的特徴。データは、体重増加の障害(図3)、肺鬱血の増加(図4)、及び体重に対する心臓重量の増加(BW)(図5)によって示されるように、MCT処理が、投与された飼料とは無関係に心臓悪液質を誘発したこと、そして心臓の代表的なH&E染色された内側断面(図7)によって視覚化された右心室(RV)肥大(図6)が減弱されることを裏付けている。*P<0.01対Sham。
図5】通常の飼料(MCT;n=27)又はMyoMed-946化合物(MCT+MyoMed-946;n=27)のいずれかを与えたモノクロタリンで処理したsham(n=20)及びマウスの身体的特徴。データは、体重増加の障害(図3)、肺鬱血の増加(図4)、及び体重に対する心臓重量の増加(BW)(図5)によって示されるように、MCT処理が、投与された飼料とは無関係に心臓悪液質を誘発したこと、そして心臓の代表的なH&E染色された内側断面(図7)によって視覚化された右心室(RV)肥大(図6)が減弱されることを裏付けている。*P<0.01対Sham。
図6】通常の飼料(MCT;n=27)又はMyoMed-946化合物(MCT+MyoMed-946;n=27)のいずれかを与えたモノクロタリンで処理したsham(n=20)及びマウスの身体的特徴。データは、体重増加の障害(図3)、肺鬱血の増加(図4)、及び体重に対する心臓重量の増加(BW)(図5)によって示されるように、MCT処理が、投与された飼料とは無関係に心臓悪液質を誘発したこと、そして心臓の代表的なH&E染色された内側断面(図7)によって視覚化された右心室(RV)肥大(図6)が減弱されることを裏付けている。*P<0.01対Sham。
図7】通常の飼料(MCT;n=27)又はMyoMed-946化合物(MCT+MyoMed-946;n=27)のいずれかを与えたモノクロタリンで処理したsham(n=20)及びマウスの身体的特徴。データは、体重増加の障害(図3)、肺鬱血の増加(図4)、及び体重に対する心臓重量の増加(BW)(図5)によって示されるように、MCT処理が、投与された飼料とは無関係に心臓悪液質を誘発したこと、そして心臓の代表的なH&E染色された内側断面(図7)によって視覚化された右心室(RV)肥大(図6)が減弱されることを裏付けている。*P<0.01対Sham。
図8】MuRF1阻害剤MyoMed-946の非存在下又は存在下でのMCT処理マウスについての長指伸筋(EDL)(図8)、ヒラメ筋(図9)、前脛骨筋(TA)(図10)の骨格筋湿重量(脛骨の長さに対して正規化;TL)。さらに、TA筋肉の繊維断面積(CSA)も表示しており(図11)、後者は代表的なH&E染色によって視覚化されている(図12)。*P<0.05対sham;§P<0.01対sham及びMCT+MyoMed-946。
図9】MuRF1阻害剤MyoMed-946の非存在下又は存在下でのMCT処理マウスについての長指伸筋(EDL)(図8)、ヒラメ筋(図9)、前脛骨筋(TA)(図10)の骨格筋湿重量(脛骨の長さに対して正規化;TL)。さらに、TA筋肉の繊維断面積(CSA)も表示しており(図11)、後者は代表的なH&E染色によって視覚化されている(図12)。*P<0.05対sham;§P<0.01対sham及びMCT+MyoMed-946。
図10】MuRF1阻害剤MyoMed-946の非存在下又は存在下でのMCT処理マウスについての長指伸筋(EDL)(図8)、ヒラメ筋(図9)、前脛骨筋(TA)(図10)の骨格筋湿重量(脛骨の長さに対して正規化;TL)。さらに、TA筋肉の繊維断面積(CSA)も表示しており(図11)、後者は代表的なH&E染色によって視覚化されている(図12)。*P<0.05対sham;§P<0.01対sham及びMCT+MyoMed-946。
図11】MuRF1阻害剤MyoMed-946の非存在下又は存在下でのMCT処理マウスについての長指伸筋(EDL)(図8)、ヒラメ筋(図9)、前脛骨筋(TA)(図10)の骨格筋湿重量(脛骨の長さに対して正規化;TL)。さらに、TA筋肉の繊維断面積(CSA)も表示しており(図11)、後者は代表的なH&E染色によって視覚化されている(図12)。*P<0.05対sham;§P<0.01対sham及びMCT+MyoMed-946。
図12】MuRF1阻害剤MyoMed-946の非存在下又は存在下でのMCT処理マウスについての長指伸筋(EDL)(図8)、ヒラメ筋(図9)、前脛骨筋(TA)(図10)の骨格筋湿重量(脛骨の長さに対して正規化;TL)。さらに、TA筋肉の繊維断面積(CSA)も表示しており(図11)、後者は代表的なH&E染色によって視覚化されている(図12)。*P<0.05対sham;§P<0.01対sham及びMCT+MyoMed-946。
図13】通常の飼料(MCT;n=10)又はMuRF1阻害剤MyoMed-946(MCT+MyoMed-946;n=10)、MyoMed-203(MCT+MyoMed-203;n=10)及びMyoMed-205(MCT+MyoMed-205;n=10)のいずれかを与えられたモノクロタリン処理されたsham(n=10)及びマウスの身体的特徴。データは、平均±平均の標準誤差として提供されている。図13:***p<0.001対開始;図14:***p<0.001対sham **p<0.01対sham;図15:***p<0.001、**p<001対sham、§§p<0.01、§p<0.05対sMCT;図16~18:*P<0.01対sham。データは、体重増加の障害(図13)、肺鬱血の増加(図14)、及び体重に対する心臓重量の増加(BW)(図15)によって示されるように、MCT処理が、投与された飼料とは無関係に心臓悪液質を誘発したこと、そして右心室(RV)肥大がMuRF1阻害剤であるMyoMed-946、MyoMed-203、及びMyoMed-205によって減弱されること(図16~18)を裏付けている。
図14】通常の飼料(MCT;n=10)又はMuRF1阻害剤MyoMed-946(MCT+MyoMed-946;n=10)、MyoMed-203(MCT+MyoMed-203;n=10)及びMyoMed-205(MCT+MyoMed-205;n=10)のいずれかを与えられたモノクロタリン処理されたsham(n=10)及びマウスの身体的特徴。データは、平均±平均の標準誤差として提供されている。図13:***p<0.001対開始;図14:***p<0.001対sham **p<0.01対sham;図15:***p<0.001、**p<001対sham、§§p<0.01、§p<0.05対sMCT;図16~18:*P<0.01対sham。データは、体重増加の障害(図13)、肺鬱血の増加(図14)、及び体重に対する心臓重量の増加(BW)(図15)によって示されるように、MCT処理が、投与された飼料とは無関係に心臓悪液質を誘発したこと、そして右心室(RV)肥大がMuRF1阻害剤であるMyoMed-946、MyoMed-203、及びMyoMed-205によって減弱されること(図16~18)を裏付けている。
図15】通常の飼料(MCT;n=10)又はMuRF1阻害剤MyoMed-946(MCT+MyoMed-946;n=10)、MyoMed-203(MCT+MyoMed-203;n=10)及びMyoMed-205(MCT+MyoMed-205;n=10)のいずれかを与えられたモノクロタリン処理されたsham(n=10)及びマウスの身体的特徴。データは、平均±平均の標準誤差として提供されている。図13:***p<0.001対開始;図14:***p<0.001対sham **p<0.01対sham;図15:***p<0.001、**p<001対sham、§§p<0.01、§p<0.05対sMCT;図16~18:*P<0.01対sham。データは、体重増加の障害(図13)、肺鬱血の増加(図14)、及び体重に対する心臓重量の増加(BW)(図15)によって示されるように、MCT処理が、投与された飼料とは無関係に心臓悪液質を誘発したこと、そして右心室(RV)肥大がMuRF1阻害剤であるMyoMed-946、MyoMed-203、及びMyoMed-205によって減弱されること(図16~18)を裏付けている。
図16】通常の飼料(MCT;n=10)又はMuRF1阻害剤MyoMed-946(MCT+MyoMed-946;n=10)、MyoMed-203(MCT+MyoMed-203;n=10)及びMyoMed-205(MCT+MyoMed-205;n=10)のいずれかを与えられたモノクロタリン処理されたsham(n=10)及びマウスの身体的特徴。データは、平均±平均の標準誤差として提供されている。図13:***p<0.001対開始;図14:***p<0.001対sham **p<0.01対sham;図15:***p<0.001、**p<001対sham、§§p<0.01、§p<0.05対sMCT;図16~18:*P<0.01対sham。データは、体重増加の障害(図13)、肺鬱血の増加(図14)、及び体重に対する心臓重量の増加(BW)(図15)によって示されるように、MCT処理が、投与された飼料とは無関係に心臓悪液質を誘発したこと、そして右心室(RV)肥大がMuRF1阻害剤であるMyoMed-946、MyoMed-203、及びMyoMed-205によって減弱されること(図16~18)を裏付けている。
図17】通常の飼料(MCT;n=10)又はMuRF1阻害剤MyoMed-946(MCT+MyoMed-946;n=10)、MyoMed-203(MCT+MyoMed-203;n=10)及びMyoMed-205(MCT+MyoMed-205;n=10)のいずれかを与えられたモノクロタリン処理されたsham(n=10)及びマウスの身体的特徴。データは、平均±平均の標準誤差として提供されている。図13:***p<0.001対開始;図14:***p<0.001対sham **p<0.01対sham;図15:***p<0.001、**p<001対sham、§§p<0.01、§p<0.05対sMCT;図16~18:*P<0.01対sham。データは、体重増加の障害(図13)、肺鬱血の増加(図14)、及び体重に対する心臓重量の増加(BW)(図15)によって示されるように、MCT処理が、投与された飼料とは無関係に心臓悪液質を誘発したこと、そして右心室(RV)肥大がMuRF1阻害剤であるMyoMed-946、MyoMed-203、及びMyoMed-205によって減弱されること(図16~18)を裏付けている。
図18】通常の飼料(MCT;n=10)又はMuRF1阻害剤MyoMed-946(MCT+MyoMed-946;n=10)、MyoMed-203(MCT+MyoMed-203;n=10)及びMyoMed-205(MCT+MyoMed-205;n=10)のいずれかを与えられたモノクロタリン処理されたsham(n=10)及びマウスの身体的特徴。データは、平均±平均の標準誤差として提供されている。図13:***p<0.001対開始;図14:***p<0.001対sham **p<0.01対sham;図15:***p<0.001、**p<001対sham、§§p<0.01、§p<0.05対sMCT;図16~18:*P<0.01対sham。データは、体重増加の障害(図13)、肺鬱血の増加(図14)、及び体重に対する心臓重量の増加(BW)(図15)によって示されるように、MCT処理が、投与された飼料とは無関係に心臓悪液質を誘発したこと、そして右心室(RV)肥大がMuRF1阻害剤であるMyoMed-946、MyoMed-203、及びMyoMed-205によって減弱されること(図16~18)を裏付けている。
図19】MuRF1阻害剤MyoMed-946、MyoMed-203及びMyoMed-205の非存在下(Sham)又は存在下でのMCT処理マウスにおける長指伸筋(EDL)の骨格筋湿重量(脛骨の長さに対して正規化;TL)。
図20】MuRF1阻害剤MyoMed-946、MyoMed-203及びMyoMed-205の非存在下(Sham)又は存在下でのMCT処理マウスにおける前脛骨筋(TA)の骨格筋湿重量(脛骨の長さに対して正規化;TL)。
図21】MuRF1阻害剤MyoMed-946、MyoMed-203、及びMyoMed-205の非存在下(Sham)又は存在下でのMCT処理マウスの最大横隔膜力。
図22】MuRF1阻害剤MyoMed-946、MyoMed-203及びMyoMed-205の非存在下(Sham)又は存在下でのMTC処理マウスの前脛骨筋組織におけるMuRF1の発現。
図23】MuRF1阻害剤MyoMed-946、MyoMed-203及びMyoMed-205の非存在下(Sham)又は存在下でのMTC処理マウスの前脛骨筋組織におけるテレトニンの発現。
図24】心筋梗塞(MI)後の駆出率低下した慢性心不全(CHF)(HFrEF)を患うマウスからの横隔膜筋線維束の等尺性収縮(図24)とさらに等張性収縮(図25)時に評価した横隔膜機能。それにより、最大横隔膜力(図26)及び横隔膜ピークパワー(図27)を求めた。データは、平均±平均の標準誤差として示した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001対CHF、§P<0.05、及び§§P<0.01対CHF+MyoMed-946。
図25】心筋梗塞(MI)後の駆出率低下した慢性心不全(CHF)(HFrEF)を患うマウスからの横隔膜筋線維束の等尺性収縮(図24)とさらに等張性収縮(図25)時に評価した横隔膜機能。それにより、最大横隔膜力(図26)及び横隔膜ピークパワー(図27)を求めた。データは、平均±平均の標準誤差として示した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001対CHF、§P<0.05、及び§§P<0.01対CHF+MyoMed-946。
図26】心筋梗塞(MI)後の駆出率低下した慢性心不全(CHF)(HFrEF)を患うマウスからの横隔膜筋線維束の等尺性収縮(図24)とさらに等張性収縮(図25)時に評価した横隔膜機能。それにより、最大横隔膜力(図26)及び横隔膜ピークパワー(図27)を求めた。データは、平均±平均の標準誤差として示した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001対CHF、§P<0.05、及び§§P<0.01対CHF+MyoMed-946。
図27】心筋梗塞(MI)後の駆出率低下した慢性心不全(CHF)(HFrEF)を患うマウスからの横隔膜筋線維束の等尺性収縮(図24)とさらに等張性収縮(図25)時に評価した横隔膜機能。それにより、最大横隔膜力(図26)及び横隔膜ピークパワー(図27)を求めた。データは、平均±平均の標準誤差として示した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001対CHF、§P<0.05、及び§§P<0.01対CHF+MyoMed-946。
図28】等尺性収縮(図28)及び等張性収縮時に評価したイン・ビトロ骨格筋収縮機能。これにより、短縮速度(図29)及び力(図30)を求めた。MCT処理されたマウスは、shamと比較して短縮速度及びパワーに約20%の障害を示す。これらの障害は、MyoMed-946化合物を与えられたMCTマウスでは本質的に防止される。*P<0.05対sham;§P<0.01対sham及びMCT+MyoMed-946。
図29】等尺性収縮(図28)及び等張性収縮時に評価したイン・ビトロ骨格筋収縮機能。これにより、短縮速度(図29)及び力(図30)を求めた。MCT処理されたマウスは、shamと比較して短縮速度及びパワーに約20%の障害を示す。これらの障害は、MyoMed-946化合物を与えられたMCTマウスでは本質的に防止される。*P<0.05対sham;§P<0.01対sham及びMCT+MyoMed-946。
図30】等尺性収縮(図28)及び等張性収縮時に評価したイン・ビトロ骨格筋収縮機能。これにより、短縮速度(図29)及び力(図30)を求めた。MCT処理されたマウスは、shamと比較して短縮速度及びパワーに約20%の障害を示す。これらの障害は、MyoMed-946化合物を与えられたMCTマウスでは本質的に防止される。*P<0.05対sham;§P<0.01対sham及びMCT+MyoMed-946。
図31】通常の飼料(腫瘍)を投与されたB16F10細胞接種マウス及び化合物MyoMed-946(腫瘍+MyoMed-946)及びMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-205)を与えられたB16F10細胞接種マウスにおける前脛骨筋(TA)の筋湿重量。
図32】B16F10細胞接種マウス(黒色腫腫瘍細胞モデル)のワイヤーハングテスト、接種後9日、16日、23日。腫瘍の増殖は、対照群のマウス(sham)と比較して、筋肉機能(腫瘍群)に有意な低下をもたらす。この筋肉機能の低下は、化合物MyoMed-946(腫瘍+MyoMed-946)及びMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-205)を与えられたマウスで減弱している。
図33】ウェスタンブロット分析によって測定されたsham、MCT、及びMCT+MyoMed-946マウスにおけるeIF2Bサブユニットデルタ(図33)及びBAX(図34)の発現レベルと代表的なブロット(図35)。*P<0.05対sham;§P<0.01対MCT。
図34】ウェスタンブロット分析によって測定されたsham、MCT、及びMCT+MyoMed-946マウスにおけるeIF2Bサブユニットデルタ(図33)及びBAX(図34)の発現レベルと代表的なブロット(図35)。*P<0.05対sham;§P<0.01対MCT。
図35】ウェスタンブロット分析によって測定されたsham、MCT、及びMCT+MyoMed-946マウスにおけるeIF2Bサブユニットデルタ(図33)及びBAX(図34)の発現レベルと代表的なブロット(図35)。*P<0.05対sham;§P<0.01対MCT。
図36】sham、MCT、及びMCT+MyoMed-946マウスにおけるMuRF1のタンパク質発現レベル及び代表的なウェスタンブロット。MCT処理は、MuRF1とCARPの発現を増加させるが、これはMyoMed-946化合物を与えられたマウスでは減弱している。MAFBxのレベルに変化は検出されない。*P<0.05対sham及びMCT+MyoMed-946。
図37】sham、MCT、及びMCT+MyoMed-946マウスにおけるMAFBxのタンパク質発現レベル及び代表的なウェスタンブロット。MCT処理は、MuRF1とCARPの発現を増加させるが、これはMyoMed-946化合物を与えられたマウスでは減弱している。MAFBxのレベルに変化は検出されない。*P<0.05対sham及びMCT+MyoMed-946。
図38】sham、MCT、及びMCT+MyoMed-946マウスにおけるCARPのタンパク質発現レベル及び代表的なウェスタンブロット。MCT処理は、MuRF1とCARPの発現を増加させるが、これはMyoMed-946化合物を与えられたマウスでは減弱している。MAFBxのレベルに変化は検出されない。*P<0.05対sham及びMCT+MyoMed-946。
図39】sham、CHF、及びCHF+MyoMed-946マウスの横隔膜組織におけるMRPS-5のタンパク質発現レベル及び代表的なウェスタンブロット。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図40】sham、CHF、及びCHF+MyoMed-946マウスの横隔膜組織におけるMuRF1のタンパク質発現レベルと代表的なウェスタンブロット。CHFは、MuRF1及びMuRF2の発現を増加させ、テレトニンの発現を低下させるが、これらの効果は、MyoMed-946化合物を与えられたマウスでは減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図41】sham、CHF、及びCHF+MyoMed-946マウスの横隔膜組織におけるMuRF2のタンパク質発現レベルと代表的なウェスタンブロット。CHFは、MuRF1及びMuRF2の発現を増加させ、テレトニンの発現を低下させるが、これらの効果は、MyoMed-946化合物を与えられたマウスでは減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図42】sham、CHF、及びCHF+MyoMed-946マウスの横隔膜組織におけるテレトニンのタンパク質発現レベルと代表的なウェスタンブロット。CHFは、MuRF1及びMuRF2の発現を増加させ、テレトニンの発現を低下させるが、これらの効果は、MyoMed-946化合物を与えられたマウスでは減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図43】ウェスタンブロット(WB)分析(図43)、Nox2(図44)、LC3 I/II(図46)によって決定されたMuRF1のタンパク質発現レベル、並びに通常の飼料(腫瘍)を与えられた又は化合物MyoMed-946(腫瘍+MyoMed-946)若しくはMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-205)を与えられたB16F10細胞接種マウスの筋肉組織における活性酸素種マーカーであるニトロチロシンのレベル(図45)。腫瘍の増殖は、MuRF1及びNox2のタンパク質発現レベル、並びにニトロチロシンレベルの有意な増加、及び対照群のマウス(sham)と比較した腫瘍群におけるLC3 I/IIの発現レベルの有意な低下をもたらす。これらの変化は、化合物MyoMed-946(腫瘍+MyoMed-946)又はMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-205)を与えられたマウスで減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図44】ウェスタンブロット(WB)分析(図43)、Nox2(図44)、LC3 I/II(図46)によって決定されたMuRF1のタンパク質発現レベル、並びに通常の飼料(腫瘍)を与えられた又は化合物MyoMed-946(腫瘍+MyoMed-946)若しくはMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-205)を与えられたB16F10細胞接種マウスの筋肉組織における活性酸素種マーカーであるニトロチロシンのレベル(図45)。腫瘍の増殖は、MuRF1及びNox2のタンパク質発現レベル、並びにニトロチロシンレベルの有意な増加、及び対照群のマウス(sham)と比較した腫瘍群におけるLC3 I/IIの発現レベルの有意な低下をもたらす。これらの変化は、化合物MyoMed-946(腫瘍+MyoMed-946)又はMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-205)を与えられたマウスで減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図45】ウェスタンブロット(WB)分析(図43)、Nox2(図44)、LC3 I/II(図46)によって決定されたMuRF1のタンパク質発現レベル、並びに通常の飼料(腫瘍)を与えられた又は化合物MyoMed-946(腫瘍+MyoMed-946)若しくはMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-205)を与えられたB16F10細胞接種マウスの筋肉組織における活性酸素種マーカーであるニトロチロシンのレベル(図45)。腫瘍の増殖は、MuRF1及びNox2のタンパク質発現レベル、並びにニトロチロシンレベルの有意な増加、及び対照群のマウス(sham)と比較した腫瘍群におけるLC3 I/IIの発現レベルの有意な低下をもたらす。これらの変化は、化合物MyoMed-946(腫瘍+MyoMed-946)又はMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-205)を与えられたマウスで減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図46】ウェスタンブロット(WB)分析(図43)、Nox2(図44)、LC3 I/II(図46)によって決定されたMuRF1のタンパク質発現レベル、並びに通常の飼料(腫瘍)を与えられた又は化合物MyoMed-946(腫瘍+MyoMed-946)若しくはMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-205)を与えられたB16F10細胞接種マウスの筋肉組織における活性酸素種マーカーであるニトロチロシンのレベル(図45)。腫瘍の増殖は、MuRF1及びNox2のタンパク質発現レベル、並びにニトロチロシンレベルの有意な増加、及び対照群のマウス(sham)と比較した腫瘍群におけるLC3 I/IIの発現レベルの有意な低下をもたらす。これらの変化は、化合物MyoMed-946(腫瘍+MyoMed-946)又はMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-205)を与えられたマウスで減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図47】sham、慢性心不全(CHF)、及びCHF+MyoMed-946マウスからの横隔膜組織サンプルにおけるクエン酸シンターゼの酵素活性。データは、shamと比較した場合、CHFにおけるクエン酸シンターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、及びミトコンドリア複合体I活性の有意な低下を明らかにしているが、これは化合物MyoMed-946を与えられたマウスでは減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図48】sham、慢性心不全(CHF)、及びCHF+MyoMed-946マウスからの横隔膜組織サンプルにおけるコハク酸デヒドロゲナーゼの酵素活性。データは、shamと比較した場合、CHFにおけるクエン酸シンターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、及びミトコンドリア複合体I活性の有意な低下を明らかにしているが、これは化合物MyoMed-946を与えられたマウスでは減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図49】sham、慢性心不全(CHF)、及びCHF+MyoMed-946マウスからの横隔膜組織サンプルにおけるミトコンドリア複合体Iの酵素活性。データは、shamと比較した場合、CHFにおけるクエン酸シンターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、及びミトコンドリア複合体I活性の有意な低下を明らかにしているが、これは化合物MyoMed-946を与えられたマウスでは減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図50】sham、慢性心不全(CHF)、及びCHF+MyoMed-946マウスからの横隔膜組織サンプルにおけるミトコンドリア外膜のミトコンドリアポリン(図50)及びTOM-20(図51)のタンパク質発現レベル。データは、shamと比較した場合、CHFにおけるポリン及びTOM-20発現の有意な低下を明らかにしているが、これは化合物MyoMed-946を与えられたマウスでは減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図51】sham、慢性心不全(CHF)、及びCHF+MyoMed-946マウスからの横隔膜組織サンプルにおけるミトコンドリア外膜のミトコンドリアポリン(図50)及びTOM-20(図51)のタンパク質発現レベル。データは、shamと比較した場合、CHFにおけるポリン及びTOM-20発現の有意な低下を明らかにしているが、これは化合物MyoMed-946を与えられたマウスでは減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図52】sham、通常の飼料(show)(腫瘍)を与えられたB16F10細胞接種マウス、及び化合物MyoMed-946(腫瘍+MyoMed-946)若しくはMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-205)を与えられたB16F10細胞接種マウスからの筋肉組織サンプルにおけるクエン酸シンターゼの酵素活性。データは、shamと比較した場合、腫瘍群におけるクエン酸シンターゼ及びミトコンドリア複合体I活性の有意な低下を明らかにしているが、これは化合物MyoMed-946又はMyoMed-205を与えられたマウスでは減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図53】sham、通常の飼料(show)(腫瘍)を与えられたB16F10細胞接種マウス、及び化合物MyoMed-946(腫瘍+MyoMed-946)若しくはMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-205)を与えられたB16F10細胞接種マウスからの筋肉組織サンプルにおけるミトコンドリア複合体Iの酵素活性。データは、shamと比較した場合、腫瘍群におけるクエン酸シンターゼ及びミトコンドリア複合体I活性の有意な低下を明らかにしているが、これは化合物MyoMed-946又はMyoMed-205を与えられたマウスでは減弱している。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
図54】デキサメタゾン(DEX;10μmol/L)との24時間のインキュベーション後の、筋管におけるmRNAレベルでのMuRF1の発現。表示されているのは、未処理の細胞(DEX)と、0.1μmol/L及び10μmol/LのMyoMed-946化合物で2時間前処理された細胞の倍率変化である。前処理された細胞は、MuRF1 mRNAレベルの低下を示している。*P<0.05対CON。§P<0.05対DEX。
図55】PBS緩衝液中のMuRF1中央フラグメント(実線)、PBS緩衝液+1%DMSO中のMuRF1中央フラグメント(点線)及びPBS緩衝液+1%の10mM化合物MyoMed-946/DMSO原液(MyoMed-946の最終濃度:100μM)中のMuRF1中央フラグメント(点線)についての、温度勾配に対する350nmでの蛍光シグナルの330nmでの蛍光シグナルに対する比としてプロットされた示差走査蛍光定量法(DSF)融解曲線。
図56】HFpEFラットモデル実験の研究計画の模式図。
図57】HFpEFラットモデル実験における心筋機能心エコー検査及び侵襲的血行動態測定の結果。
図58】HFpEFラットモデル実験における骨格筋量と機能測定の結果。
図59】ドキソルビシン誘発筋萎縮及び心臓毒性のマウスモデルにおける悪液質及び身体ストレス結果。
図60】ドキソルビシン誘発筋萎縮及び心臓毒性のマウスモデルにおける心エコー検査の結果。
図61】食餌誘発体重減少時の2型糖尿病の肥満マウスにおけるワイヤーハングテスト。MyoMed-205による処理は、筋肉機能の喪失を軽減した。
図62】DIO対照マウスと比較した、MyoMed-203処理DIOマウスの6時間絶食後の血糖値。
図63】DIO対照マウスと比較したMyoMed-203処理DIOマウスの試験第14日及び第28日での経口ブドウ糖負荷試験結果。
図64】DIO対照マウスと比較したMyoMed-203処理DIOマウスの試験第14日及び第28日での経口ブドウ糖負荷試験結果。
図65】DIO対照マウスと比較したMyoMed-203処理DIOマウスのインスリン耐性試験結果。
【0238】
I.化合物Iの合成
分析
化合物は、別断の記載がない限り、400MHz NMR装置(Bruker AVANCE III)でのd6-ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)中のH NMR及び最終的には13C NMRによって特性決定した。
【0239】
磁気核共鳴スペクトル特性(NMR)は、百万分率(ppm)で表される化学シフト(δ)を指す。1H NMRスペクトラムにおけるシフトの相対面積は、分子中の特定の機能型についての水素原子の数に相当する。多重度に関するシフトの性質は、一重線(s)、広い一重線(s.br.)、二重線(d)、広い二重線(dbr.)、三重線(t)、広い三重線(tbr.)、四重線(q)、五重線(quint.)、多重線(m)として示される。
【0240】
化合物はさらに、C18-材料についての高速勾配(エレクトロスプレーイオン化(ESI)モード)でのHPLC-MS及び/又はUPLC-MSによってさらに特性決定した。別断の記載がない限り、ESI MSデータはポジティブモードで記録される。MSデータは、電荷比(m/z)に対する質量として与えられるプロトン化化合物(M+H)を指し、zは1である。
【0241】
HPLC-MS仕様:
HPLC-MS機器:DAD\ELSD及びAgilent LC\MSD VL(G1956A)、SL(G1956B)質量分析計を備えたAgilent 1100シリーズLC/MSDシステム、又はDAD\ELSD及びAgilent LC\MSD SL(G6130A)、SL(G6140A)質量分析計を備えたAgilent1200シリーズLC/MSDシステム。すべてのLC/MSデータは、ポジティブ/ネガティブモード切替を使用して取得した。
【0242】
取得方法:カラム:Zorbax SB-C18 1.8μm 4.6x15mm Rapid Resolutionカートリッジ(PN821975-932)。移動相:А:アセトニトリル+0.1%ギ酸;B:0.1%ギ酸含有水。流量:3mL/分;注入容量:1μL。
【0243】
溶媒勾配:
0~0.01分100%B;
0.01~1.5分100%から0%B、直線勾配;
1.5~1.8分0%B;
1.8~1.81分0%から100%B。
【0244】
イオン化モード:大気圧化学イオン化(APCI);
走査範囲:m/z80-1000。
【0245】
UPLC-MS仕様:
UPLC-MS機器:シングル四重極エレクトロスプレーイオン化質量分析計を備えたAgilent Infinity 1290;
取得方法:カラム:Acquity UPLC BEH C18;1.7μm;2.1x50mm;T=40℃。移動相:A:水+0.1%トリフルオロ酢酸;B:MeCN+0.1%トリフルオロ酢酸。流量:1mL/分;注入容量3μL;運転時間3分。
【0246】
溶媒勾配(3分間勾配):
0~2.3分5%から100%B、直線勾配;
2.3~2.5分100%B;
2.5~2.6分100%から5%B、直線勾配;
2.6分~3.0分100%B。
【0247】
別断の断りがない限り、ESI MSデータはポジティブモードで記録される。MSデータは、電荷比(m/z)に対する質量として提供されるプロトン化化合物(M+H)を指し、zは1である。
【0248】
合成
2.1 分取HPLC精製
分取HPLC精製は、HPLC(HO-MeOH又はHO-CHCN;Waters SunFire C18 OBD分取カラム(100Å、5μm、19mmX100mm、SunFire C18 分取ガードカートリッジ、100Å、10μm、19mmX10mm)を用いるDAD及び質量検出器を搭載したAgilent 1260 Infinityシステムを使用して実施した。原料化合物をDMSO 0.7mLに溶かした。流量:30mL/分。得られた分画の純度を分析LCMSで確認した。溶液の形態でクロマトグラフィーを行った直後に得られたまま、各画分についてスペクトラムを記録した。溶媒をN気流下に80℃で留去させた。個々の分画を、クロマトグラフィー後LCMS分析に基づいて合わせた。固体分画をMeOH/CHCN 0.5mLに溶解し、予め秤量したマーク付きバイアルに移した。得られた溶液を、再度N気流下に80℃で溶媒留去させた。乾燥後、生成物をLC-MS及びH-NMRによって最終的に特性決定した。
【0249】
2.2 中間体
2.2.1:4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]酢酸
7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン80.6g(0.458mol)、メチル4-(ブロモメチル)ベンゾエート110.1g(0.480mol)、及び無水KCO95g(0.686mol)の脱水アセトン(800mL)中混合物を3時間加熱還流した。混合物を冷却し、濾過し、濾液を減圧下に濃縮した。残留物をDMSO(450mL)に溶解させ、水酸化カリウム水溶液(200mL、20%KOH)を加えた。得られた混合物を環境温度で72時間攪拌した。加水分解終了後、水1リットルを加え、その溶液を10%塩酸でpH=1~2の酸性とした。生成した沈殿を濾過し、真空乾燥して、純粋な生成物を得た。4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]酢酸の収率は75%(106g)であった。
【0250】
HPLC-MS(ポジティブモード):m/z311(M+H);保持時間:1.11分。
【0251】
H NMR(400MHz、DMSO-d、ppm):δ=13.01(brs、1H)、8.0-7.97(m、2H)、7.71(d、J=7.0Hz、1H)、7.60-7.58(m、2H)、7.09-7.05(m、2H)、6.23(s、1H)、5.34(s、2H)、2.40(s、3H)。
【0252】
2.2.2:2-アミノ-N-(2-フリルメチルカルバモイル)アセトアミド
2-クロロ-N-(2-フリルメチル-カルバモイル)アセトアミド1.46g(6.74mmol)及びアジ化ナトリウム90mg(NaN、2当量)のエタノール(15mL)中混合物を70℃で終夜攪拌した。冷却して室温とした後、固体を除去し、得られた濾液を減圧下に濃縮した(体積1/3)。残留物をEtOAcと水との間で分配した。有機層をブラインで洗浄し、NaSOで脱水し、減圧下に溶媒留去した。残留物をMeOHに溶解させ、Pd/Cをそれに加えた。混合物を脱気し、水素雰囲気下に室温で終夜攪拌した。触媒を除去し、濾液を溶媒留去し、真空乾燥して粗アミンを得て、それをそれ以上精製せずに次のステップで用いた。(X=O 0.8g 60%;X=O 0.7g 62%(2ステップから))。
【0253】
2.2.3:2-アミノ-N-(2-チエニルメチルカルバモイル)アセトアミド
出発材料として2-クロロ-N-(2-フリルメチル-カルバモイル)アセトアミドに代えて2-クロロ-N-(2-チエニルメチルカルバモイル)-アセトアミド1.26g(5.41mmol)を用いた以外は、実施例2.2.2と同様にして、2-アミノ-N-(2-チエニルメチルカルバモイル)アセトアミドを製造した。そうして得られた粗2-アミノ-N-(2-チエニルメチル-カルバモイル)アセトアミドを、それ以上精製せずに次のステップで用いた。収量:0.7g 62%(2ステップから)。
【0254】
2.3:化合物I
実施例1
[2-(2-フリルメチルカルバモイルアミノ)-2-オキソ-エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート(MyoMed-946)の合成
【0255】
4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-酢酸310mg(1.0mmol)、2-クロロ-N-(2-フリルメチルカルバモイル)アセトアミド228mg(1.05mmol)、NaI75mg(0.5mmol)、及びDIPEA 155mg(1.2mmol)の混合物をDMSO 6mLに溶解させた。得られたスラリーを室温で72時間攪拌して反応完了させた。変換はLC-MSによって制御した。次に、反応混合物を水50mLに投入し、得られた沈殿を濾過し、追加量の水、イソプロピルアルコール及びヘキサンの順で洗浄した。固体生成物を真空乾燥した。[2-(2-フリルメチルカルバモイルアミノ)-2-オキソ-エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシ-メチル]ベンゾエート(MyoMed-946)の収率は61%(289mg)であった。
【0256】
[2-(2-フリルメチルカルバモイルアミノ)-2-オキソ-エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート(MyoMed-946)は、室温で数ヶ月間にわたり貯蔵しても崩壊の痕跡を全く示さなかった(NMR及びLC-MSによって確認)。
【0257】
HPLC-MS(ポジティブモード):m/z491/492(M+H);保持時間:1.436分。
【0258】
H NMR(400MHz、DMSO-d、ppm):δ=10.50(brs、1H、NH)、7.85(brs、1H、NH)、7.55(d、J=8.0Hz、2H、CH+CH)、7.22(d、J=8.4Hz、1H、CH)、7.15(d、J=8.0Hz、2H、CH+CH)、7.09(s、1H、CH)、6.60(m、2H、CH+CH)、5.90(m、1H、CH)、5.78(d、J=1.4Hz、1H、CH)、5.74(s、1H、CH)、4.87(s、2H、OCH)、4.44(s、2H、OCH)、3.88(d、J=5.2Hz、2H、NCH)、1.91(s、3H、CH)。
【0259】
MyoMed-946のさらなる分析特性決定
化合物の純度及び同一性を、下記のような1D及び2D NMR及びUPLC-MSを用いてさらに評価した。
【0260】
NMR分析のためには、MyoMed-9462mgを痕跡量のCClを含むd-ジメチルスルホキシド1mLに溶解させた。H-及び13C-スペクトラム並びにH-NMRピーク割り当てのためのCOSY及びHSQC 2D-NMRスペクトラムを記録した。
【0261】
H NMR(500MHz、DMSO-d+CCl):δ=10.68(s、1H)、8.34(s、1H)、8.05(d、J=7.37Hz、2H)、7.53-7.45(m、4H)、7.14-6.91(m、2H)、6.40(s、1H)、6.30-6.16(m、2H)、5.37(s、2H)、4.94(s、2H)、4.44-4.23(m、2H)、2.41(s、3H)。
【0262】
13C NMR(126MHz、DMSO-d+CCl):δ=169.0、165.1、161.0、160.0、154.6、153.3、152.5、151.8、142.3(2C)、129.6(2C)、128.5、127.6(2C)、126.6、113.5、112.6、111.4、110.4、107.0、101.8、69.1、62.7、36.0、18.1。
【0263】
UPLC-MS分析のためには、少量のMyoMed-946をアセトニトリル(MeCN)に溶解させ、この溶液3μLをC18 UPLCカラム(Acquity UPLC BEH C18;1.7μm;2.1×50mm)に注入した。使用したUPLC-MSシステム及び分析方法は上記の通りであった。
【0264】
UPLC-MS(ポジティブモード):m/z=491.1(M+H);保持時間:1.7分。
【0265】
実施例2:
(1-メチル-2-オキソ-2-ウレイド-エチル)4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート(MyoMed-946-5)の合成
【0266】
2-クロロ-N-(2-フリルメチル-カルバモイル)アセトアミドに代えてN-カルバモイル-2-クロロ-プロパンアミドを用いた以外は、実施例1と同様にして合成を行った。
【0267】
HPLC-MS(ポジティブモード):m/z439(M+H);保持時間1.388分。
【0268】
H NMR(400MHz、DMSO-d、ppm):δ=10.63(brs、1H)、8.05-7.98(m、3H)、7.72-7.68(m、1H)、7.68-7.59(m、2H)、7.05-7.01(m、2H)、6.23(s、1H)、5.35(s、2H)、5.22-5.14(m、1H)、2.70(d、3H)、2.39(s、3H)、1.50(d、3H)。
【0269】
実施例3:
[1-メチル-2-(メチルカルバモイルアミノ)-2-オキソ-エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート(MyoMed-946-8)の合成
【0270】
2-クロロ-N-(2-フリルメチル-カルバモイル)アセトアミドに代えて2-クロロ-N-(メチルカルバモイル)プロパンアミドを用いた以外は、実施例1と同様にして合成を行った。
【0271】
HPLC-MS(ポジティブモード):m/z425(M+H);保持時間1.327分。
【0272】
H NMR(400MHz、DMSO-d、ppm):δ=10.51(brs、1H)、8.06-7.97(m、2H)、7.73-7.67(m、1H)、7.67-7.59(m、2H)、7.54(brs、1H)、7.33(brs、1H)、7.09-7.02(m、2H)、6.22(s、1H)、5.35(s、2H)、5.22-5.14(m、1H)、2.39(s、3H)、1.51(d、3H)。
【0273】
実施例4:
N-[2-(2-フリルメチルカルバモイルアミノ)-2-オキソ-エチル]-4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンズアミドの合成
【0274】
実施例2.2.2で得られた2-アミノ-N-(2-フリルメチルカルバモイル)アセトアミド(0.6mmol)、4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-酢酸558mg(1.8mmol)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール109mg(HOAt、0.8mmol)のDMF(2mL)中溶液を冷却しながら、それにEDC 124mg(0.8mmol)を滴下し、混合物を室温で終夜攪拌した。生成した沈殿を回収し、メタノール、次に水、再度メタノールで洗浄し、乾燥させて、標題化合物110mgを得た。収率:37%。
【0275】
H NMR(400MHz、DMSO-D、ppm):δ=10.53(s、1H)、8.82(t、J=5.7Hz、1H)、8.51(brs、1H)、7.89(d、J=8.0Hz、2H)、7.70(d、J=8.6Hz、1H)、7.56(m、3H)、7.06(m、2H)、6.37(s、1H)、6.24(d、J=2.5Hz、1H)、6.21(s、1H)、3.50(s、2H)、4.35(d、J=5.7Hz、2H)、3.99(d、J=5.0Hz、2H)、2.38(s、3H)。
【0276】
実施例5:
[2-オキソ-2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエートの合成
【0277】
4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-酢酸310mg(1.0mmol)、2-クロロ-N-(2-チエニルメチルカルバモイル)アセトアミド250mg(1.05mmol)、NaI75mg(0.5mmol)及びDIPEA 155mg(1.2mmol)の混合物をDMSO 6mLに溶解させた。得られたスラリーを室温で72時間攪拌して反応を完了させた。変換はLC-MSスペクトラムによって制御した。次に、反応混合物を水50mLに投入し、生成した沈殿を濾過し、追加量の水、イソプロピルアルコール及びヘキサンの順で洗浄した。生成物を真空条件下で乾燥させた。[2-オキソ-2-(2-チエニルメチルカルバモイル-アミノ)エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエートの収率61%(310mg)。
【0278】
HPLC-MS(ポジティブモード):m/z507/508(M+H);保持時間1.399分。
【0279】
H NMR(400MHz、DMSO-d、ppm):δ=10.67(brs、1H)、8.47(brs、1H)、8.03(d、J=8.0、2H)、7.71(d、J=8.0、1H)、7.64(d、J=8.0、2H)、7.39(d、J=4.0、1H)、7.08-6.95(m、4H)、6.22(s、1H)、5.35(s、2H)、4.92(s、2H)、4.52(d、J=4.6、2H)、2.39(s、3H)。
【0280】
実施例6:
4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-N-[2-オキソ-2-(2-チエニルメチル-カルバモイルアミノ)エチル]ベンズアミド
【0281】
標題化合物を実施例3と同様にして製造した。標題化合物90mgを得た。収率:30%。
【0282】
H NMR(400MHz、DMSO-D、ppm):δ=10.52(s、1H)、8.82(t、J=5.7Hz、1H)、8.63(brs、1H)、7.89(d、J=8.0Hz、2H)、7.68(d、J=8.7Hz、1H)、7.55(d、J=8.0Hz、2H)、7.39(d、J=4.2Hz、1H)、7.07(m、2H)、6.98(s、1H)、6.95(m、1H)、6.21(s、1H)、5.31(s、2H)、4.23(d、J=5.2Hz、2H)、4.00(d、J=5.7Hz、2H)、2.39(s、3H)。
【0283】
実施例7
[2-オキソ-2-(2-ピリジルメチルカルバモイルアミノ)エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート(MyoMed-203)の合成
【0284】
2-クロロ-N-(2-ピリジルメチルカルバモイル)アセトアミドの製造:
2-ピリジルメタンアミン(7.84g、72.5mmol)の脱水ジクロロメタン(100mL)中溶液を攪拌しながら、冷却して-10℃とし、クロロアセチルイソシアネート(8.66g、72.5mmol)を加え、反応混合物を室温で2時間攪拌した。沈殿固体を濾過によって回収し、ジクロロメタンで洗浄し(30mLで2回)、乾燥させて、2-クロロ-N-(2-ピリジルメチルカルバモイル)アセトアミド12.0g(52.7mmol、収率:73%)を得た。
【0285】
H NMR(500MHz、クロロホルム-d):δ=9.45(s、1H)、9.05(s、1H)、8.59(s、1H)、7.67(t、J=7.1Hz、1H)、7.28(d、J=8.0Hz、1H)、7.24-7.18(m、1H)、4.65(d、J=5.2Hz、2H)、4.13(s、2H)。
【0286】
HPLC-MS(ネガティブモード)m/z226(M-H);保持時間0.565分。
【0287】
4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]安息香酸の製造:
7-ヒドロキシ-4-メチル-クロメン-2-オン(80.6g、458mmol)のアセトン(1000mL)中溶液に、KCO(94.9g、687mmol)及びメチル4-(ブロモメチル)ベンゾエート(110g、480mmol)を加え、反応混合物を3時間還流させた。次に、それを冷却して室温とし、濾過した。濾液を減圧下に溶媒留去し、残留物を水(1000mL)と混合した。不溶固体を濾取し、水、2-プロパノール、及びヘキサンで洗浄し、乾燥させ、DMSO(500mL)に溶かした。20%KOH水溶液(150mL)を、得られたメチル4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエートの溶液に加え、混合物を室温で終夜攪拌状態に放置した。反応が完了した後、その反応液を水(3000mL)に投入し、10%塩酸でpH1~2となるまで酸性化した。30分間攪拌後、沈殿固体を濾取し、水、2-プロパノール、及びヘキサンで洗浄し、乾燥させて、4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]安息香酸106g(342mmol、収率:75%)を得た。
【0288】
メチル4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート:
H NMR(500MHz、DMSO-d):δ=7.98(d、J=8.1Hz、2H)、7.68(d、J=8.5Hz、1H)、7.60(d、J=8.1Hz、2H)、7.12-6.96(m、2H)、6.20(s、1H)、5.32(s、2H)、3.85(s、3H)、2.38(s、3H)。
【0289】
4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]安息香酸:
H NMR(400MHz、DMSO-d):δ=12.99(brs、1H)、7.96(d、J=7.2Hz、2H)、7.67(d、J=8.4Hz、1H)、7.57(d、J=7.2Hz、2H)、7.11-6.99(m、2H)、6.20(s、1H)、5.31(s、2H)、2.37(s、3H)。
【0290】
HPLC-MS(ポジティブモード)m/z311(M+H);保持時間1.242分。
【0291】
[2-オキソ-2-(2-ピリジルメチルカルバモイルアミノ)エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエートの製造:
4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]安息香酸(9.28g、29.9mmol)、2-クロロ-N-(2-ピリジルメチルカルバモイル)アセトアミド(7.49g、32.9mmol)、DIPEA(4.64g、35.9mmol)、及びNaI(0.900g、6.00mmol)のDMSO(100mL)中混合物を室温で終夜攪拌し、冷水(500mL)に投入した。沈殿固体を濾取し、水、2-プロパノール、及びヘキサンで洗浄し、乾燥させて、[2-オキソ-2-(2-ピリジルメチルカルバモイル-アミノ)エチル]4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート(MyoMed-203)13.8g(27.5mmol、収率:92%)を得た。
【0292】
H NMR(400MHz、DMSO-d):δ=10.65(brs、1H)、8.69(brs、1H)、8.47(d、J=4.6Hz、1H)、8.01(d、J=8.1Hz、2H)、7.73(t、J=8.4Hz、1H)、7.67(d、J=8.7Hz、1H)、7.61(d、J=8.1Hz、2H)、7.28(d、J=7.7Hz、1H)、7.26-7.20(m、1H)、7.08-6.97(m、2H)、6.19(s、1H)、5.33(s、2H)、4.91(s、2H)、4.46(d、J=5.3Hz、2H)、2.36(s、3H)。
【0293】
HPLC-MS(ネガティブモード)m/z502(M-H);保持時間1.176分。
【0294】
実施例8
4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-N-[2-(2-チエニルメチル-カルバモイルアミノ)エチル]ベンズアミド(MyoMed-205)の合成
【0295】
tert-ブチルN-[2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)エチル]カーバメートの製造:
CDI(42.8g、264mmol)の脱水アセトニトリル(400mL)中懸濁液に、2-チエニルメタンアミン(14.9g、132mmol)を加え、反応混合物を超音波浴中、室温で1時間維持した。次に、水(2.5mL)を加え、混合物を超音波浴中にさらに30分間維持した。溶液を脱気した後、N-boc-エチレンジアアミン(21.1g、132mmol)を加え、反応液を50℃で2時間攪拌した。次に、混合物を冷却して室温とし、減圧下に溶媒留去した。残留物を水(100mL)で摩砕し、濾過し、乾燥して、tert-ブチルN-[2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)-エチル]カーバメート35.2g(118mmol、89%)を得た。
【0296】
H NMR(400MHz、DMSO-d):δ=7.35(d、J=5.8Hz、1H)、6.97-6.88(m、2H)、6.83-6.72(m、1H)、6.55-6.38(m、1H)、6.07-5.93(m、1H)、4.34(d、J=5.9Hz、2H)、3.11-3.00(m、2H)、2.99-2.88(m、2H)、1.37(s、9H)。
【0297】
HPLC-MS(ポジティブモード)m/z300(M+H);保持時間1.156分。
【0298】
2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)エチルアンモニウムクロリドの製造:
tert-ブチルN-[2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)-エチル]カーバメート(19.5g、65.1mmol)の脱水ジクロロメタン(200mL)中溶液に、10%ジオキサン/HCl(50mL)を加え、反応塊を室温で2時間攪拌した。沈殿固体を濾取し、真空乾燥して、2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)エチルアンモニウムクロリド14.3g(60.6mmol、95%)を得た。
【0299】
H NMR(500MHz、DMSO-d):δ=8.08(brs、3H)、7.35(s、1H)、6.93(s、2H)、6.78(brs、1H)、6.51(brs、1H)、4.38-4.29(m、2H)、3.31-3.19(m、2H)、2.88-2.74(m、2H)。
【0300】
HPLC-MS(ポジティブモード)m/z200(M+H);保持時間0.428分。
【0301】
4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]安息香酸の製造:
7-ヒドロキシ-4-メチル-クロメン-2-オン(80.6g、458mmol)のアセトン(1000mL)中溶液に、KCO(94.9g、687mmol)及びメチル4-(ブロモメチル)ベンゾエート(110g、480mmol)を加え、反応混合物を3時間還流させた。次に、それを冷却して室温とし、濾過した。濾液を減圧下に溶媒留去し、残留物を水(1000mL)と混合した。不溶固体を濾取し、水、2-プロパノール、及びヘキサンで洗浄し、乾燥させ、DMSO(500mL)に溶かした。20%KOH水溶液(150mL)を、得られたメチル4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエートの溶液に加え、混合物を室温で終夜攪拌状態のままとした。反応が完了した後、それを水(3000mL)に投入し、10%塩酸でpH1~2となるまで酸性化した。30分間攪拌後、沈殿固体を濾取し、水、2-プロパノール、及びヘキサンで洗浄し、乾燥させて、4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]安息香酸106g(342mmol、収率:75%)を得た。
【0302】
メチル4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]ベンゾエート:
H NMR(500MHz、DMSO-d):δ=7.98(d、J=8.1Hz、2H)、7.68(d、J=8.5Hz、1H)、7.60(d、J=8.1Hz、2H)、7.12-6.96(m、2H)、6.20(s、1H)、5.32(s、2H)、3.85(s、3H)、2.38(s、3H)。
【0303】
4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]安息香酸:
H NMR(400MHz、DMSO-d):δ=12.99(brs、1H)、7.96(d、J=7.2Hz、2H)、7.67(d、J=8.4Hz、1H)、7.57(d、J=7.2Hz、2H)、7.11-6.99(m、2H)、6.20(s、1H)、5.31(s、2H)、2.37(s、3H)。
【0304】
HPLC-MS(ポジティブモード)m/z311(M+H);保持時間1.242分。
【0305】
4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-N-[2-(2-チエニル-メチルカルバモイルアミノ)エチル]ベンズアミドの製造:
4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]安息香酸(12.6g、40.6mmol)のDMA(150mL)中溶液に、CDI(7.26g、44.8mmol)を加え、混合物を室温で30分間攪拌した。次に、2-(2-チエニルメチルカルバモイルアミノ)-エチルアンモニウムクロリド(10.1g、42.7mmol)及びトリエチルアミン(4.90g、48.4mmol)を加え、反応塊を50℃で16時間攪拌した。混合物を冷却して室温とした後、水(600mL)を加えた。沈殿した固体を濾取し、水、2-プロパノール、及びヘキサンで洗浄し、乾燥させて、4-[(4-メチル-2-オキソ-クロメン-7-イル)オキシメチル]-N-[2-(2-チエニル-メチルカルバモイルアミノ)エチル]ベンズアミド(MyoMed-205)13.3g(27.1mmol、67%)を得た。
【0306】
H NMR(400MHz、DMSO-d):δ=8.61-8.47(m、1H)、7.86(d、J=7.9Hz、2H)、7.70(d、J=8.7Hz、1H)、7.55(d、J=7.9Hz、2H)、7.38-7.27(m、1H)、7.12-7.02(m、2H)、6.51(t、J=6.0Hz、1H)、6.22(s、1H)、6.17-6.06(m、1H)、5.30(s、2H)、4.36(d、J=5.9Hz、2H)、3.32-3.17(m、4H)、2.39(s、3H)。
【0307】
HPLC-MS(ポジティブモード)m/z492(M+H);保持時間1.249分。
【0308】
II.生化学アッセイ
MuRF1-タイチン相互作用アッセイ:
MuRF1とタイチンの間の相互作用を阻害する化合物を特定するためにALPHAスクリーンを使用して小分子スクリーニングを行った。このスクリーンは、タイチンA169と相互作用するMuRF1 Bボックスコイルドメインを特定したMuRF1及びタイチン相互作用の研究に基づいている(たとえば、Mrosek et al., Biochemistry 2008, 47, 10722-10730を参照)。このALPHAスクリーンアッセイのプロトタイプが、WO2009/077618に記載されている。
【0309】
手順:
WO2009/077618に記載されているように、これらの相互作用するフラグメントはGST及びビオチン融合タンパク質として発現されたことから、それぞれグルタチオンアクセプター及びアビジンドナービーズで複合体形成をモニタリングすることができた。280,000個の化合物(社内ライブラリ、EMBL化学コア施設)の調査により、MuRF1-タイチン相互作用のKi値が5~25μmol/Lである合計40個の分子が特定された。
【0310】
MuRF1 E3リガーゼ活性の阻害の測定:
次に、75nmol/L UBE1(Boston Biochem)、1μmol/L UbcH5c(Boston Biochem)、100μmol/Lユビキチン、4mmol/L ATP、100nmol/LタイチンA168-170と20~100μmol/Lのそれぞれの化合物とを混合することで、化合物について、タイチン又はMuRF1自体(自己ユビキチン化)へのMuRF1 E3リガーゼ活性に対する効果を評価した。220nmol/L MuRF1を加えることで反応を開始し、次に37℃で1時間、SDS PAGEとMuRF1及びタイチン特異的抗体を用いたウェスタンブロット分析を行った。すべての反応が5%DMSOも含んでいた。MyoMed-946、MyoMed-946-5、及びMyoMed-946-8について試験を行い、ユビキチン化パターンに基づいて、MuRF1 E3リガーゼ活性を有意に阻害することが確認できた。
【0311】
化合物MyoMed-946の非存在下及び存在下でのMuRF1中央フラグメントの示差走査蛍光測定(DSF):
MuRF1タンパク質の安定性に対する化合物MyoMed-946の効果を、示差走査蛍光測定(DSF)によってイン・ビトロで測定した。
【0312】
方法:
「MuRF1中央フラグメント」を、既報の方法(Mrosek M et al., FASEB J, 2007, 21, 1383-1392)に従って発現させ、75μM最終濃度でDSF実験に使用した。化合物MyoMed-946を、DSFアッセイ緩衝液としてのPBSで10mM DMSO中原液から100μMまで希釈して、最終濃度1%DMSOとした。室温で1時間前インキュベーションした後、タンパク質水溶液をキャピラリーにしみこませ、Prometheus NT.48 nanoDSF装置(NanoTemper Technologies, Munich, Germany)に入れた。温度勾配でタンパク質アンフォールディングの際にLEDレーザー励起後に発生した固有のトリプトファン又はチロシン蛍光の変化が、それぞれ330nmと350nmで検出された。温度勾配における固有タンパク質蛍光の変化を、それぞれ350nmと330nmでモニタリングした。熱タンパク質アンフォールディング時の350/330nmの蛍光波長比の一次導関数を用いて、単一及び複数の遷移状態の遷移中点(Tm)を計算した。
【0313】
結果:
図55からわかるように、PBS中のMuRF1中央フラグメントのTmは65.2℃(実線)であり、1%DMSO(破線)の添加によってごくわずかに変化して65.8℃となった。対照的に、化合物MyoMed-946(点線)の添加により、MuRF1の熱アンフォールディングへの強い効果が観察された。化合物MyoMed-946は、52.5℃の大幅に減少したメインTmによって示されるように、MuRF1を不安定化した。
【0314】
III.生物学的研究
細胞培養実験
マウスC2C12筋芽細胞(CRL-1772、ATCC)を、10%ウシ胎仔血清(FCS;Gibco(R) Invitrogen、 Carlsbad, CA)を補充したDMEM(Lonza;Basel, Switzerland)で培養した。筋管への分化を誘発するために、サブコンフルエントな培養物を、2%のウマ血清を含むDMEM(Sigma-Aldrich;Seelze, Germany)に切り替えた。続いて、筋管を、化合物濃度を上げながら(0.1~10μmol/L、DMSOに溶解)又は等容量のDMSOで2時間前処理した後、10μmol/Lデキサメタゾン(DEX;Sigma-Aldrich;Seelze, Germany)で24時間処理した。次に、筋管の直径を画像解析ソフトウェア(Analysis 3.0、Olympus Soft Imaging Solutions GmbH, Munster, Germany)によって評価した。選択した化合物の細胞毒性を測定するために、筋芽細胞又は筋管を、濃度を上げながら24時間インキュベートした。続いて、Bellocci et al., Anal Biochem, 2008, 374, 48-55に記載のように、細胞破壊の尺度として、細胞培養上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性の濃度を定量した。図1及び図2からわかるように、化合物MyoMed-946は、筋芽細胞及び筋管(筋細胞)の両方で低い毒性を示す。
【0315】
動物実験
2.1:肺高血圧マウスモデル:
2.1.1:MuRF1阻害剤MyoMed-946を使用した試験シリーズ1
この動物実験は、Regierungspraesidium Karlsruhe(35-9185.81/G-141/13)及びRegierungspraesidium Leipzig(TVV40/16)によって承認された。この試験には、1)生理食塩水処理(sham;n=20);2)モノクロタリン(MCT)処理した通常の飼料(MCT;n=27);3)MCT処理した摂食MuRF1阻害剤飼料(MCT+化合物;n=27)を含む三つの群のマウスを含めた。すなわち、C57BL/6マウス(8週齢)にMCT(600mg/kg)又は同容量の生理食塩水を6週間皮下注射し、その期間で、Ahn et al.K PLoS One, 2013, 8:e62702に記載されているように、MCTは、肺高血圧による心臓悪液質及びその後に食欲不振ではなくRV機能障害を誘発することが知られている。マウスを12:12時間の明暗サイクルで同じ条件に曝露し、飼料及び飲料水は自由に与えた。MCT+化合物群は、MCT注射の1週間前に阻害剤飼料の摂取を開始したが、sham群及びMCT群には、選択した化合物を添加せずに同じ飼料を与えた。各マウスの体重を毎週記録した。フェンタニル(0.05mg/kg)、メデトミジン(0.5mg/kg)、ミダゾラム(5mg/kg)及びケタミン(100mg/kg)の腹腔内投与による深麻酔後、マウスを屠殺した。屠殺時に、心臓と肺を解剖し、洗浄し、乾式ブロットし、秤量し、心臓は4%PBS緩衝ホルマリンで固定した。左前脛骨筋(TA)、ヒラメ筋、長指伸筋(EDL)、及び肋骨横隔膜の切片も切り取り、秤量し、4%PBS緩衝ホルマリンで固定し、残りの筋肉部分は、分子分析用に、直ちに液体Nで凍結した。
【0316】
組織学的評価のために、パラフィン包埋TA筋肉切片(3μm)をH&Eで染色し、次に画像ソフトウェア(Analysis 3.0, Olympus Soft Imaging Solutions GmbH, Munster, Germany)で繊維断面積(CSA)を評価した。さらに、心臓の内側断面(3μm)をスライドガラスに乗せ、続いてH&Eで染色してRV壁の厚さを評価した。
【0317】
図3~5からわかるように、体重増加、肺重量及び心臓重量は、MCTを与えたマウスとMCT+MyoMed-946を与えたマウスでほぼ同じであり、これは、化合物摂取とは無関係に両方の群で疾患が進行したことを示している。重要な点として、図6及び7からわかるように、MuRF1阻害剤であるMyoMed-946は、右心室肥大の発症を軽減する。さらに、図8~12からわかるように、MCT処理マウスは骨格筋量の進行性の喪失を示したが、MCT+化合物を与えられたマウスはこの傾向に従わず、保護されました。これはTA筋肉で見られた最も明白な効果である。
【0318】
2.1.2:MuRF1阻害剤MyoMed-946、MyoMed-203及びMyoMed-205を使用した試験シリーズ2:
試験シリーズ2は、試験シリーズ1と同様に実施した。すなわち、この試験では、三つのマウス群:1)生理食塩水で処理されたマウス(sham;n=10);2)通常の飼料を与えられたモノクロタリン(MCT)処理マウス(MCT;n=10);3)MuRF1阻害剤飼料を与えられたMCT処置マウス(MCT+化合物;各化合物についてn=10)を含めた。8週齢のC57BL/6マウスに、MCT(600mg/kg)又は同容量の生理食塩水を8週間にわたり週1回皮下注射した。MCT+化合物群は、MCT注射の1週間前に阻害剤飼料摂取を開始したが、sham及びMCT群には、選択した化合物を添加せずに同じ飼料を与えた。飼料中の化合物濃度は0.1重量%であり、マウス1匹あたりの1日化合物摂取量約3mgとなった。各マウスの体重を毎週記録した。8週間の処理後にマウスを屠殺した。屠殺時に、試験シリーズ1に記載の方法に従って検査及び組織分析を行った。
【0319】
図13~15からわかるように、体重増加、肺重量と心臓重量は、MCTを与えたマウスとMCT+化合物を与えたマウスの間で類似しており、それは、化合物摂取とは無関係に両方の群で疾患が進行したことを示唆している。また、この試験シリーズでは、図16~18からわかるように、MuRF1阻害剤であるMyoMed-946、MyoMed-203、及びMyoMed-205は、右心室肥大の進行を軽減する。さらに、図19~21からわかるように、MCT処理マウスは骨格筋量の進行性喪失を示したが、MCT+化合物を与えられたマウスはこの傾向に従わず、保護された。これは化合物MyoMed-203で見られた最も顕著な効果である。さらに、TA筋組織におけるMuRF1発現レベルは、MCT+化合物を与えられたマウスで明らかに低下しており、図22からわかるように、化合物MyoMed-205において最も顕著な低下が見られる。MuRF1標的タンパク質であるテレトニンの発現レベルも、図23からわかるように、MCT+化合物を与えられたマウスでは本質的に正常化されている。
【0320】
2.2:心筋梗塞LADマウスモデル:
駆出率(HFrEF)が低下した心不全を患う心筋梗塞マウスモデルを、以下に記載のように冠動脈左前下行枝(LAD)を結紮して急性心筋梗塞(MI)を誘発し、続いて慢性(収縮性)心不全(CHF)を誘発することで発生させた。
【0321】
LAD結紮術:
小動物の手術は、ライプツィヒ心臓センターで12週齢のC57/BL6マウスに対して、現場で確立された公知の手順に従って実施した(たとえば、Bowen et al., J Appl Physiol, 2015, 118, 11-19;Mangner et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle, 2015, 6, 381-390参照)。すなわち、LAD群からのマウスに、MMF;メデトミジン(0.5mg/kg)、ミダゾラム(5.0mg/kg)、フェンタニル(0.05mg/kg)の腹腔内注射で麻酔を施した。麻酔マウスを手術台に固定した。胸部の腹側部分を剃毛し、洗浄し、滅菌した。次に、麻酔マウスに挿管し、動物用呼吸器(TSE GmbH, Siemensstr. 21, 61352 Bad Homburg;product:http://tinateb.com/wp-content/uploads/2016/06/TSE_Respirator-Compact_20080724_HR.pdf)を使用して通常の室内空気で換気した。LAD手術では、剣状突起の約1cm上及び胸骨傍的に約1cm左で胸郭を、そこで皮膚を切開することで開いた。下にある大胸筋を、胸壁にアクセスするために、それ以上損傷させることなく横に移動させた。肋骨を壊さずに、二つの肋骨の間の肋間筋を、横に動かした。心膜の上に挿入された外科用スプレッダーによって、それにより作られた胸郭内アクセスを広げた。二つの解剖ピンセットを使用して、心膜を外科的に断端で開いた。胸腺が手術野に存在する場合は、大動脈根にアクセスするために手術用綿棒で胸腺を横に押した。フックを使用して心臓を心膜から出して注意深く移動させ、左心房を外科用綿棒で横に置いた。次に、LADを5.0 Prolene縫合糸で結紮した(Ethicon、http://www.ethicon.com/healthcare-professionals/products/wound-closure/non-absorbable-sutures/prolene-polypropyleneを参照)。大動脈基部の近くで結紮を行い、冠状動脈前壁の蒼白が認められるまで縫合糸を締めた。結紮後、4.0Prolene縫合糸(会社:Ethicon)を使用して、胸壁と皮膚を一つのボタンシームで閉じた。
【0322】
対照として、sham手術を行った。sham対照群の場合、従った手順は、5.0プロレン縫合糸を締め付けることなくLAD周囲に緩く外に出ただけであること以外は、上記とまったく同じとした。
【0323】
手術を抜管により終了し、アチパメゾール(2.5mg/kg)及びフルマゼニル(0.5mg/kg)の腹腔内注射により麻酔を無効化した。マウスは、目覚めるまで保温マット(mate)上に置き、その後、動物ケージに戻した。専門スタッフによる上記の全手順の時間は約30分であった。
【0324】
LAD結紮の1週間後、心エコー検査をMモードで行って、MIを確認した。すなわち、左心室拡張末期(LVEDD)及び収縮期(LVESD)の直径を評価して、左心室(LV)の短縮率を計算できるようにした(LVFS=[LVEDD_LVESDLVEDD]×100)。次に、大きい梗塞を有するマウス(左心室駆出率(LVEF)<20%)のみを、二つの群に無作為に割り付け、一つの群には通常の飼料を与え(CHF、n=11)、第2の群には化合物を補充した飼料を与えた(0.1%の化合物MyoMed-946、CHF+MyoMed-946、n=12)。sham手術された動物には通常の飼料のみを与えた(n=15)。9週間後、心エコー検査を再度行った。
【0325】
【表1】
【0326】
動物を屠殺して、機能的及び分子的特性決定のために、組織、特に横隔膜組織を回収した。すべての実験及び手順は、地元の動物研究評議会、ライプツィヒ大学、及びLandesbehorde Sachsen(TVV36/15)によって承認された。
【0327】
収縮機能:
直接機能評価を提供するために、骨格筋線維束、すなわち、MCTマウス及びCHFマウスの横隔膜からの線維束の収縮性を次のように測定した。横隔膜からの線維束を単離して、Bowen et al., FASEB J, 2017, 31によって記載の方法に従って、長さ制御レバーシステム(301B, Aurora Scientific Inc., Aurora, Canada)を用いてイン・ビトロ収縮機能を評価できるようにした。すなわち、筋肉束を、緩衝液で満たされた臓器浴(約22℃)に垂直に取り付け、最適な長さに設定し、15分後に1~300Hzの力-収縮頻度プロトコールで刺激した(600mA;500ミリ秒の列持続時間;0.25ミリ秒のパルス幅)。次に、筋肉について力-速度プロトコルを行うことで、150Hzで300ミリ秒間刺激した後、外部負荷(最大強縮力の80~10%、それぞれ1分間隔)に対して筋肉を短縮させた。長さにおける、そしてトランジェント(transient)の直線部分(DMAソフトウェア、Aurora Scientific)での最初の変化の10ミリ秒後に短縮速度を測定した。L(cm)と推定筋肉密度(1.06)の積によって筋肉量(g)を割ることで、力(N)を筋肉断面積(CSA;cm)に対して正規化し、それによってN/cm単位での比筋力を計算することができた。短縮速度を至適筋肉長さに対して正規化したが(単位:L/s)、各負荷について、パワーを、短縮速度と比筋力の積として計算した(単位:W/cm)。
【0328】
図24から27からわかるように、慢性心不全マウス(CHFマウス)の横隔膜筋線維束は、電気刺激時に相対的に弱い力を生じ(図24)、最大力(図25及び26)及びピークパワー(図27)も低かった。したがって、sham動物と比較して、対照飼料を与えられたCHFマウスは、10週目に横隔膜ミオパチーを発症した。化合物MyoMed-946を与えることで、そのような梗塞後横隔膜衰弱からマウスを保護した。慢性心不全による横隔膜機能及び横隔膜最大力の喪失は、CHFマウスの未処理群と比較して、化合物MyoMed-946を与えられたマウスで大幅に減らすことができる。これは、化合物MyoMed-946によるMuRF1の選択的阻害が、心筋梗塞によって誘発される駆出率(HFrEF)の低下を伴う心不全後の横隔膜機能への良い効果に介在することを示している。
【0329】
同様に、図28~30からわかるように、MCT誘発性肺高血圧を患っているマウスにおける横隔膜の収縮不全(短縮速度及びパワーに関して)も、MCTマウスに化合物MyoMed-946(MCT+MyoMed-946)を与えたときに実質的に防止された。
【0330】
したがって、まとめると、上記の所見は、化合物MyoMed-946によるMuRF1の選択的阻害が、慢性心不全及び心臓悪液質における骨格筋の量(すなわち、質量)及び質(すなわち、収縮機能)の両方への良い効果に介在することを示唆している。
【0331】
腫瘍マウスモデル:
8週齢の雌C57BL/6Nマウスに、B16F10黒色腫細胞(9×10細胞)又は生理食塩水(sham、n=10)を接種した。腫瘍接種後の最初の3日以内に、B16F10マウス並びにshamのマウスに通常の飼料を与えた。次に、B16F10マウスを無作為に3群に分け、第1群にはMyoMed-946飼料(Tumor+MyoMed-946、n=10)を与え、第2群にはMyoMed-205飼料(Tumor+MyoMed-205、n=10)を与え、第3群には、選択化合物を加えなかった以外は同じ飼料を与えた(腫瘍、n=10)。飼料中の化合物濃度は0.1重量%であり、マウス1匹あたりの1日化合物摂取量は約3mgとなった。また、sham群には、選択化合物を加えなかった以外は同じ飼料を与えた。腫瘍接種の9、16、23日後に、各マウスでワイヤーハング試験(筋肉機能)を行った。それに関しては、標準的なワイヤーハング構造を床から70cmの高さのワイヤー(長さ:40cm、直径:2.5mm)とともに用いた。ワイヤーの中央の下に、おがくずが入った大きい箱を置いた。試験のために、マウスを2本の肢でワイヤーに吊るし、吊るした時間を記録した。各動物について、それぞれ最大180秒間3回試みた。3回試行後、最大保持力積(holding impluse)を計算した(吊り下げ時間x体重)。
【0332】
腫瘍接種の25日後にマウスを屠殺した。屠殺時に、検査及び組織分析を上記のように実施した。
【0333】
図31からわかるように、腫瘍誘発性骨格筋萎縮(TA筋重量に基づく)は、腫瘍マウスと比較した場合、腫瘍+MyoMed-946マウス及び腫瘍+MyoMed-205マウスで少なくともある程度まで弱めることができた。この効果は、化合物MyoMed-946及びMyoMed-205(腫瘍+MyoMed-946マウス及び腫瘍+MyoMed-205マウス)の投与が、通常の飼料を与えた腫瘍マウスと比較して、筋肉機能の喪失を大幅に軽減するワイヤーハングテスト(図32)でより顕著である。
【0334】
保存された駆出率(HFpEF)を伴う心不全における心筋及び骨格筋の変化-ラットモデル
試験計画の模式図を図56に示す。この試験では、ZSF1ラットを使用した。20週齢後、ZSF1ラットは拡張期コンプライアンスを失い、拡張末期容積が増加するため、ヒトHFpEF(拡張期心不全としても知られる)を模倣する。
【0335】
雌のZSF1痩身型(対照、n=25)及びZSF1肥満型(n=40)ラットを試験に含めた。20週齢で、心エコー検査/侵襲的血行動態測定によってHFpEFの発症を確認し、動物の下位集合から組織材料を収集した(対照n=10;ZSF1肥満n=10)。残りの対照ラット(対照、n=15)はさらに12週間固定状態(sedentary)に維持したが、残りのZSF1肥満動物(n=30)は次の群:(1)正常な飼料を与えられるラット(HFpEFグループ、n=15)又は化合物MyoMed-205を補充した飼料を与えられるラット(MyoMed-205の0.1%、HFpEF+MyoMed-205、n=15)に無作為に割り付けた。ラットを12時間の明暗サイクルで同じ条件に曝露し、飼料と飲料水は自由に摂取させた。無作為化から12週間後、心エコー検査と侵襲的血行動態測定を実施して、拡張機能障害の程度を明らかにした。続いてラットを屠殺し(深麻酔で胸部を開く)、機能及び分子分析のために骨格筋及び心筋組織を採取した(ホルマリン固定及び液体窒素での急速凍結)。すべての実験と手順は、地元の動物研究評議会、ドレスデン工科大学及びLandesbehorde Sachsen(TVV42/2018)によって承認された。
【0336】
心エコー検査
ラットにイソフルラン(1.5~2%)で麻酔を施し、Vevo3100システムと21MHzトランスデューサー(Visual Sonic, Fujifilm)を使用して経胸壁心エコー検査を行って、前述のように心機能を評価した(T. S. Bowen et al., Eur. J. Heart Fail., 2015, 17, 263-272)。収縮機能については、胸骨傍の長軸及び短軸のBモードとMモードを乳頭筋のレベルで測定した。左心室の中隔壁の基底中隔セグメントのレベルでの脈波ドップラー(僧帽弁速度の初期(E)及び心房(A)波の測定のため)及び組織ドップラー(心筋速度(E′及びA′)の測定のため)を使用して、心尖部四腔像で、拡張機能を評価した。機能パラメータ(すなわち、LV駆出率(LVEF)及び1回拍出量(SV))及び[E/E′]と[E/A]の比率)を、Vevo LAB2.1.0ソフトウェアを使用して取得した。
【0337】
侵襲的血行動態測定
侵襲的血行動態圧力測定は、最終手順として実行した。麻酔を施した(ケタミン、キシラジン)が自発呼吸をしているラットで、左心室の中央に静かに配置したラットPVカテーテル(SPR-838、ADInstruments Limited)で右頸動脈にカニューレを挿入した。左心室拡張末期圧及び収縮末期圧、最大圧力上昇率(dP/dtmax)、最大圧力低下率(dP/dtmin)、及び後にカテーテルの大動脈への引き抜きが続くLV弛緩の時定数(τ)、並びに相性及び平均動脈圧を測定した。上行大動脈で平均動脈圧を測定した。データはLabChart8ソフトウェア(ADInstruments)に記録した。
【0338】
骨格筋機能
右EDLと左ヒラメ筋を切開し、フックと力変換器の間のクレブス-ヘンゼライト緩衝液で満たされた臓器浴に垂直に取り付け、出力を連続的に記録してデジタル化した(1205A:Isolated Muscle System-Rat, Aurora Scientific Inc., Ontario, Canada)。高出力バイポーラー刺激装置(701C;Aurora Scientific Inc., Ontario, Canada)からの最大上電流(700mA、500ms列持続時間、0.25msパルス幅)で筋肉を刺激する白金電極によって、イン・ビトロ筋肉機能を評価した。筋肉束を、生成された最大単収縮力に相当する至適長さ(Lo)に設定し、その後、浴温度を25℃に上昇させ、続いて15分間の熱平衡期間を設けた。次に、力-周波数プロトコールを1、15、30、50、80、及び120Hzで行い、1分間の休止間隔で区切った。5分間の休止期間後、筋肉について、5分間にわたって疲労プロトコールを行った(2秒ごとに40Hz)。疲労プロトコール時に生成された力を、発生した最初の力に正規化することで、疲労性の相対的評価を得た。
【0339】
結果:
20週(無作為化の時点)での動物の特徴
動物を異なる処理群に無作為に割り付ける前にHFpEFの発生を検証するために、10匹のZSF1痩身及び10匹のZSF1肥満動物を心エコー検査、侵襲的血行動態測定、及び骨格筋機能の測定によって分析した。ZSF1肥満動物は体重の増加(肥満の兆候)を示し、心筋肥大の兆候(脛骨長さに正規化した場合の心臓重量の増加)が明らかであった。拡張機能のマーカーに関しては、比率E/eと左心室拡張末期圧(LVEDP)がZSF1肥満動物で有意に増加した。拡張機能の障害にもかかわらず、左心室駆出率(LVEF)は正常(>60%)であり、痩身対照ラットと比較した場合でも少し高かった。平均動脈圧(MABP)に関しては、ZSF1肥満動物で有意な上昇が見られた。MABPにおけるこの増加は、動物の過緊張状態の兆候であり、それはHFpEF患者からよく知られている特徴である。末梢骨格筋に関しては、ZSF1肥満動物は筋萎縮と骨格筋機能障害を発症した。要約すると、20週齢の動物は、HFpEFの診断に従った特徴を生じた。
【0340】
HFpEFにおける心臓パラメータに対するMyoMed-205処理の影響
心筋機能に対するMyoMed-205の影響を評価するために、心エコー検査及び侵襲的血行動態測定を実施した。図57に示すように、左心室駆出率(LVEF)(図57A)は、対照ZSF1痩身動物と比較した場合、未処理HFpEF動物で有意に減少した。この減少は、MyoMed-205による12週間の処理によって大幅に軽減される。拡張機能のパラメータ、比率E/e(図57B)及びLVEDP(図57C)に関して、MyoMed-205による処理は、ZSF1肥満の未処理動物で見られる増加を減弱させた。MyoMed-205の処理効果はMABPでは見られなかった(図57D)。まとめると、これらの結果は、MyoMed-205による処理が収縮機能と拡張機能を大幅に改善し、この効果には血圧の調節が介在しないことを示している。
【0341】
骨格筋量及び機能に対するMyoMed-205処理の影響
骨格量及び骨格筋機能は、異なる処理群への無作為割り付けの時点で、ZSF1肥満動物ではすでに損なわれていた。本試験では、MyoMed-205が骨格筋の量と機能を調節できるか否かを調べた。結果を図58に示してある。前脛骨筋(TA)の筋肉重量の分析(図58A)により、HFpEF未処理動物の筋肉湿重量の有意な低下が明らかになった。この筋萎縮はMyoMed-205によって減弱された。EDL(図58C)及びヒラメ筋(図58B)に関しては、HFpEFの発生は筋肉の湿重量に影響を与えなかった。しかしながら、EDL筋では、MyoMed-205による処理により、筋肉重量に小さいが有意な増加があった(図58C)。
【0342】
筋萎縮の発症に関して筋重量を測定することに加えて、筋機能の評価は非常に重要である。図58Dに示されるように、処理されなかったZSF1肥満動物は、ZSF1痩身対照群と比較した場合、骨格筋機能障害を発症する。絶対比筋力を測定すると、この筋力低下はヒラメ筋において明らかである(図58D)。HFpEF動物をMyoMed-205で12週間処理することで、機能喪失が減弱された。
【0343】
結論:
結果は、HFpEFにおいて、MyoMed-205が心筋拡張機能障害の発症を減弱させ、骨格筋萎縮及び骨格筋機能障害を減弱させることを示している。
【0344】
2.6:ドキソルビシン誘発性筋萎縮及び心臓毒性
ドキソルビシン(DOX)は、各種のがん治療に使用される効率的な化学療法薬である。しかしながら、その使用は、初期及び慢性の心毒性及び筋毒性に関連している。齧歯類では、ドキソルビシンの単回注射は心臓及び骨格筋量を減らし得るものであり、その後、機能が著しく損なわれる。
【0345】
ドキソルビシンで処理されたマウスモデルにおけるMyoMed-205強化食品の効果を評価した。C57bl/6マウスを動物飼養場で3日間馴致させた後、次のように4群に無作為に分類した:1.対照(プラセボ飼料+0.9%生理食塩水腹腔内注射);2.MyoMed-205(MyoMed-205-飼料、1g/kgのMyoMed-205を添加した飼料;+0.9%生理食塩水注射);3.DOX(プラセボ飼料+DOX注射);4.DOX+MyoMed-205(MyoMed-205飼料+DOX注射)。初回DOX注射の前に、動物にMyoMed-205飼料又はプラセボのいずれかを7日間前付与した。DOX処理は、それぞれ第10、12、16、25、及び28日に5回の注射で与え、25mg/kgの総投与量であった。動物の体重及び摂餌量を毎日同じ時刻に測定して、摂餌量と体重増加を評価した。心機能を、心エコー検査によって第19日と第42日に評価した。図59に示すように、MyoMed-205を与えることで、第43日までに悪液質消耗及び身体ストレスの特徴を著しく減らすことができた。MyoMed-205を与えたマウスは、より高い除脂肪量を有しており(図59A)、より多い体脂肪を保持し(図59B)、そして約1/2の間質性浮腫のない液体を有していた(図59C)。*はp<0.05対対照を意味し;$は、p<0.05対MyoMed-205を意味し;§は、p<0.05対DOX+MyoMed-205(テューキー事後検定)を意味する。
【0346】
図60からわかるように、第15日及び25mg/Kgの累積DOX投与後の心エコー検査では、心臓毒性及び心不全が示された。すなわち、それぞれ心臓重量の低下(脛骨長さによって補正)(図60C)、駆出率の低下(それぞれ、長軸平面図から計算)(図60A)、及び短縮率の低下(短軸平面図から計算)(図60B)である。第43日までのMyoMed-205処理が、これを防いだ。要約すると、DOX化学療法時のMyoMed-205の投与は心臓を保護するのに有用である。*はp<0.05対対照を意味し;$は、p<0.05対MyoMed-205を意味し;§は、p<0.05対DOX+MyoMed-205(テューキー事後検定)を意味する。
【0347】
2.7:飼料誘発性体重減少時の2型糖尿病の肥満マウスにおける筋肉機能(DIOマウスモデル:インスリン抵抗性と肥満を伴う糖尿病)
糖尿病の進行時にミオパチーも発症する糖尿病のマウスモデルにおける化合物摂取の効果を調べた。糖尿病は、DIOマウスで4か月間、高果糖高脂肪食(HFD)によって誘発した。体重増加は22.2%であった。マウスは空腹時血糖値とインスリン抵抗性の増加を生じた。対照群動物には、通常の齧歯類飼料(通常の飼料)を与えた。その後、30日間の試験期間中、体重減を誘発した。第1ステップでは、動物に通常の齧歯類飼料を16日間与えた。次に、第2ステップで、動物には14日間、低カロリー食を与えた。体重はエンドポイントで平均12.4%減少した。第1ステップ開始から2日後、飼料にMyoMed-205(化合物1g/飼料1kg)を補充した。第1ステップの開始時及び試験期間の第3、7、14、21及び28日に、化合物を与えたマウスと対照マウスについて、ワイヤーハングテストで筋力を比較した。
【0348】
試験計画:ICR-DIO雄マウスを、それぞれ8~10匹の動物群に無作為に割り付けた。3つの対照群:肥満のないマウスの対照群(対照;通常食(RD);n=10)、全試験期間時に高果糖高脂肪飼料を与えられた肥満マウス(DIO HFD;n=8);及び体重減少が始まった肥満マウス(DIO対照;n=8)を含めた。
【0349】
ワイヤーハングテスト:ワイヤーハングテスト(WHT)では、床上70cmの高さのワイヤー(長さ:40cm、直径:2.5mm)を用いる標準のワイヤーハング構造を使用した。ワイヤーの中央の下に、おがくずが入った大きなボックスを置いた。試験のために、マウスを2本の肢でワイヤーに吊るし、マウスが落下する前にワイヤーに保持することができた時間を記録した。各動物について、最大180秒間3回試行した。3回の試行の後、最大保持力積を計算した(吊り下げ時間×体重)。
【0350】
結果:
【0351】
【表2】
【0352】
図61は、DIO対照マウスと比較した、MyoMed-205処理DIOマウスのWHTの結果をグラフで表したものである。これからわかるように、MyoMed-205は第4週(28日)までにDIO対照マウスと比較して筋力を大幅に改善した。筋力もDIO HFDマウスと比較して有意に改善され、第4週までに対照(RD)マウス群と有意差はなかった(図61では不図示)。
【0353】
2.8:飼料誘発性体重減少時の2型糖尿病の肥満マウスにおけるグルコース及びインスリン調節(DIOマウスモデル:インスリン抵抗性及び肥満を伴う糖尿病)
実施例2.7と同様にして、DIOマウスで4か月間にわたり、高果糖高脂肪食(HFD)によって糖尿病を誘発した。そのマウスは、空腹時血糖値上昇及びインスリン抵抗性を生じた。対照群動物には、通常の齧歯類飼料(通常飼料)を与えた。その後、30日間の試験期間中に体重減少が誘発された。第1ステップでは、動物には16日間にわたって通常の齧歯類飼料を与えた。次に、第2ステップで、動物には14日間にわたり低カロリー飼料を与えた。第1ステップの開始から2日後、飼料にMyoMed-203(化合物1g/飼料1kg)を補充した。
【0354】
試験計画:ICR-DIO雄マウスを、それぞれ8~10匹の動物の群に無作為に割り付けた。三つの対照群:肥満のないマウスの対照群(対照;通常食(RD);n=10)、全研究期間中、高果糖高脂肪食を与えられた肥満マウス(DIO HFD;n=8);体重減少が始まった肥満マウス(DIO対照;n=8)を含めた。
【0355】
血糖値の測定
血糖値の測定を、6時間の絶食後に行った。On Call Plus血糖計(Acon Laboratories, Inc., USA)及び特異的試験紙(REFG133-111)を使用して、血糖値を測定した。尾の先端を切開することにより、尾静脈から採血を行った。各アッセイに、血液5~6μLを使用した。
【0356】
MyoMed-203処理動物では、血糖値は処理期間全体を通じてDIO対照群と比較して有意に低く、試験の第2日及び第21日に空腹時血糖値が有意に変化した。図62は、MyoMed-203で処理したDIOマウスとDIO対照マウスとの比較を示している。
【0357】
ブドウ糖負荷試験
経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)では、6時間の絶食後に、10mL/kgの投与容量で用量2g/kgのブドウ糖をマウスに経口投与した。グルコース測定は、治療の直前、及びグルコース投与後15、30、60及び120分に実施した。試験中の各マウスにおける血糖出力率を説明するAUCを、次の式を使用して計算した。
【0358】
【数1】
【0359】
MyoMed-203は、OGTTデータによると、14日間の体重減少及び治療後、肥満マウスで軽度の低血糖効果を示した。この群の動物における血糖値は、DIO対照群と比較して、OGTT試験の30分で低くなる傾向があった。同じことが、グルコース除去を説明するAUC計算値にも当てはまる。同様の傾向が試験の第28日で続いており、すべての対照群と比較して120分でのグルコースレベルの有意な低下が、MyoMed-203処理群で観察され;グルコース排出曲線下の面積計算値も同様に低くなる傾向があった。図63図64は、それぞれMyoMed-203処理DIOマウスとDIO対照マウスの第14日及び第28日のOGTTデータを示している。
【0360】
インスリン作用に対する耐性の試験
インスリン耐性試験(ITT)の場合、6時間の絶食後、マウスに、体積5mL/kgで0.75又は0.60IU/gの用量で組換えヒトインスリン溶液(Lilly, France;REF C620001K)を腹腔内注射した。グルコース測定は、処理の直前、及びインスリン投与の15、30、60、120分後に実施した。血糖出力率の結果を、曲線下面積(AUC)として表した。
【0361】
すべての対照群と比較して、インスリン注射後120分でMyoMed-203処理マウスにおいて、グルコースレベルの有意な低下が観察された。図65は、MyoMed-203処理DIOマウス及びDIO対照マウスにおけるITT結果を示している。
【0362】
組織分析
3.1:プロテオーム及びウェスタンブロット分析:
3.1.1:MCTマウス:
プロテオーム分析:
sham、MCT及びMCT+化合物マウス(群当たりn=3)における冷凍横隔膜サンプルからのタンパク質を液体N下で粉末化した。次に、Konzer et al., Methods in Molecular Biology, 2013, 1005, 39-52に記載の方法に従って、バートナウハイムのDZHK質量分析コア施設で質量分析を実施した。MCT/sham及びMCT+化合物/MCTについての相対比を求め、異なって発現され、非常に有意である(P<0.01)と思われるヒット(hits)のみをウェスタンブロットによってさらに調べた。
【0363】
ウェスタンブロット分析:
ウェスタンブロット分析は、冷凍TA筋肉サンプルをプロテアーゼ阻害剤混合物(阻害剤ミックスM, Serva, Heidelberg, Germany)を含むRIPA緩衝液(50mmol/L Tris、150mmol/L塩化ナトリウム、1mmol/L EDTA、1%NP-40、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、1%Triton X-100;pH7.4)又は緩和(relax)緩衝液(90mmol/L HEPES、126mmol/L塩化カリウム、1mmol/L MgCl、50mmol/L EGTA、8mmol/L ATP、10mmol/Lクレアチンリン酸;pH7.4)中で均質化し、超音波処理し、16,000×gで5分間遠心することからなるものであった。上清のタンパク質濃度を測定し(BCAアッセイ、Pierce, Bonn, Germany)、小分けサンプル(5~20μg)をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。タンパク質をポリフッ化ビニリデン膜(PVDF)に移し、次の一次抗体:MAFbx(1/2000、Eurogentec, Seraing, Belgium)、MuRF1(1/1000、Myomedix Ltd., Neckargemund, Germany)、CARP(1/500、Myomedix Ltd., Neckargemund, Germany)、BAX(1/1000;Abcam, Cambridge, UK)、及びeIF2B-delta(1/200;Santa Cruz Biotechnolgy, Santa Cruz, USA)とともに4℃で一晩インキュベートした。続いて、膜を西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体とインキュベートし、比帯域を酵素化学発光(Super Signal West Pico, Thermo Fisher Scientific Inc., Bonn, Germany)によって視覚化し、密度測定を1D走査ソフトウェアパッケージ(Scanalytics Inc., Rockville, USA)を使用して定量した。次に、ブロットをローディングコントロールGAPDH(1/30000;HyTest Ltd, Turku, Finland)に対して正規化した。すべてのデータは、shamに対する倍率変化として表されている。
【0364】
MCTとMCT+MyoMed-946プロテオームの比較によって示されるように、五つのタンパク質の発現レベルが化合物に特異的に応答することが認められた。これらのタンパク質の発現レベルを表2にまとめている。
【0365】
【表3】
【0366】
これには、eIF2B(デルタサブユニット)の上昇とBAXの低下が含まれ、それは次に、図33~35からわかるように、イムノブロッティングによって確認された。eIF2B経路はタンパク質合成の既知の翻訳調節因子である。elF2Bは以前に、MuRF1相互作用因子として確認されており、それは、MuRF1がMCTストレス下で翻訳開始因子elF2Bの枯渇に介在したことを示唆しているが、これは化合物によって軽減された。さらに、この化合物はアポトーシス促進性調節因子BAXも調節し、このタンパク質はshamと比較してMCTマウスで上昇し、MCT+MyoMed-946群では正常化された。ヒト慢性心不全患者では、アポトーシスが骨格筋で増加し、萎縮の程度と密接に相関している(たとえば、Adams et al., J Am Coll Cardiol, 1999, 33, 959-965及びVescovo et al., Heart, 2000, 84, 431-437)。実際、BAXは心臓悪液質で上昇し、MuRF1発現の増加に関連していることが以前に指摘されている(たとえば、Dalla Libera et al., Am J Physiol Cell Physiol, 2004, 286, C138-144及びRezk et al., PLoS One, 2012, 7, e30276)。
【0367】
図36~38からさらにわかるように、プロテオーム分析により、MCTマウスでのMuRF1のタンパク質発現の増加が、化合物MyoMed-946によって防止されることが確認されたが、MAFBx(別の重要なアトロギンE3リガーゼ)では効果が全く観察されなかった。これは、化合物の基礎的機序がMuRF1に特異的であるように見えることを示しており、これは予備イン・ビトロ試験に基づいて予想されるものと考えられる。MuRF1は、多数の基質と相互作用することも知られており、一つは特にはCARP(筋肉アンキリン反復タンパク質(MARP)ファミリーの構成員)であり、それは転写機能を有する核及びサルコメア(タイチン)ベースのタンパク質とされている(例えば、Miller et al., J Mol Biol, 2003, 333, 951-964を参照)。CARPは、ストレス関連状態で上昇することが知られており、収縮不全及び筋萎縮に関連している(たとえば、Laure et al., FEBS Journal, 2009, 276, 669-684及びMoulik et al., J Am CollCardiol, 2009, 54, 325-333を参照する)。このような証拠と一致して、MCTストレスマウスでのCARP発現の増加が観察されるが、この効果はMyoMed-946を与えられたマウスでは無効になり、このことは、この化合物がMuRF1に対する阻害を介してCARP発現を鈍らせる可能性があり、それが次に、筋肉の量及び機能の維持に寄与し得ることを示唆している。
【0368】
3.1.2:CHFマウス:
CHFを患うMyoMed-946処理マウスの観察される生理的変化及び利益の基礎となる分子機序を分析するため、比較定量的プロテオーム分析、並びにsham、CHF、及びCHF+MyoMed-946処理マウスからの横隔膜組織のウェスタンブロット分析を行った。
【0369】
プロテオーム分析:
質量分析に基づくプロテオーム分析を、DZHK Core Facility, Bad Nauheim, Germanyで実施した。取得したMS生データを、Andromeda検索エンジン及びハツカネズミのUniprotデータベース(2017年4月20日現在)を使用してMaxQuant(1.6.0.1)によって処理した。1%の偽陽性率(ペプチドレベルとタンパク質レベルの両方)で、2600を超えるタンパク質群が確認された。採用された還元的ジメチル化プロトコール(Boersema et al., Nat Protoc, 2009, 4, 484-494を参照)は、標準的な統計的検定を用いて有意差について統計的に質問されたCHF+MyoMed-946、CHF、及びsham状態からのタンパク質間の一対相対比較定量(比率)を生じた。いくつかのタンパク質が統計的に異なることが確認された(例:TNNT3、Timm9、Ccdc5、Adi1、Ptges3、及びNdufa3)。化合物摂取を行った及び行わなかったCHFマウスの比較のために複数の仮説検定(ベンジャミニ-ホックバーグ;補正P<0.05)を適用した後、Mrps5(ミトコンドリアリボソームタンパク質5)、ミトコンドリアリボソームでのタンパク質の開始と伸長を担当するミトコンドリア-サイトゾルシャトルタンパク質のみが、有意に上昇したタンパク質として残り(P=0.02;図4A)、下記に記載のようにウェスタンブロット分析によってさらに調べた。
【0370】
図39からわかるように、CHF試験に含まれるすべての動物の横隔膜のウェスタンブロット分析により、化合物MyoMed-946摂取によって逆転したshamの対照群と比較してCHF群においてMrps5発現の有意な減少が明らかになった。データは、平均±平均の標準誤差として表される。
【0371】
ウェスタンブロット分析:
ウェスタンブロット分析では、冷凍横隔膜を、プロテアーゼ阻害剤混合物(阻害剤ミックスM、Serva, Heidelberg, Germany)を含む緩和緩衝液(90mmol/L HEPES、126mmol/L塩化カリウム、36mmol/L塩化ナトリウム、1mmol/L塩化マグネシウム、50mmol/LEGTA、8mmol/LATP及び10mmol/Lリン酸クレアチン、pH7.4)中で均質化し、超音波処理した。上清のタンパク質濃度を測定し(ビシンコニン酸アッセイ、Pierce, Bonn, Germany)、小分けサンプル(5~20μg)をドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離した。タンパク質をポリフッ化ビニリデン膜に移し、次の一次抗体:ポリン及びテレトニン(両方とも1/1000、Abcam,Cambridge, UK)、MRPS-5(1/500、Thermo Fisher, Rockford, IL, USA)、MuRF1及びMuRF2(両方とも1/1000;Myomedix, Neckargemund, Germanyから市販)、及びTom20(1:200、Santa Cruz Biotechnologies, Heidelberg, Germany)を使用して4℃で終夜インキュベートした。続いて、膜をセイヨウワサビペルオキシダーゼ標識二次抗体とともにインキュベートし、比帯域を酵素化学発光(Super Signal West Pico, Thermo Fisher Scientific Inc., Bonn, Germany)で可視化し、密度測定を一次元走査ソフトウェアパッケージ(Scanalytics Inc., Rockville, MD, USA)を用いて定量した。測定値は、ローディングコントロールGAPDH(1/30000;HyTest Ltd, Turku, Finland)又はα-チューブリン(1:1000、Santa Cruz Biotechnologies)に対して正規化した。すべてのデータを、shamに対する倍率変化として表す。
【0372】
図40~42からわかるように、MuRF1及びMuRF2の発現は、CHF群で有意に上昇しており、これは化合物MyoMed-946による処理によって防止された(図40及び41)。MuRF1標的タンパク質であるテレトニンの発現を定量化すると、CHF群で発現が低下する傾向(P=0.08)が観察されたが、これは化合物MyoMed-946処理群では明らかではなかった(図42)。
【0373】
B16F10マウス(腫瘍マウス):
B16F10マウスの筋肉組織におけるMuRF1、Nox2及びLC3 I/IIのタンパク質発現を、MCT及びCHFマウスについて上記の方法に従って測定した。さらに、活性酸素種マーカーであるニトロチロシンのレベルを測定した。
【0374】
図43~46に見られるように、MuRF1発現は腫瘍群で有意に上昇しており、これは化合物MyoMed-946及びMyoMed-205による処理によって防止された(図43)。さらに、既知の内因性活性酸素種(ROS)であるNox2の発現、及びニトロチロシンの組織レベルも、腫瘍マウス群で有意に上昇するが、腫瘍+MyoMed-946及び腫瘍+MyoMed-205マウス群では、これらの種の量が筋肉組織で大幅に減少している(図44及び45)。他方、自己貪食に関与する重要なタンパク質であるLC3 I/IIの発現レベルは、腫瘍群で低下しており、それは腫瘍+MyoMed-946群及び腫瘍+MyoMed-205群では観察されない(図46)。
【0375】
3.2:酵素活性測定:
3.2.1:CHFマウス:
プロテオームプロファイリングデータは、ミトコンドリア恒常性が障害されていることを示唆していることから、CHFマウスの横隔膜組織における主要なミトコンドリア酵素の酵素活性を測定した。
【0376】
横隔膜組織を緩和緩衝液中で均質化し、小分けサンプルを酵素活性測定に使用した。乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.27)、ピルビン酸キナーゼ(EC2.7.1.40)、コハク酸デヒドロゲナーゼ(SDH、EC1.3.5.1)、クエン酸シンターゼ(CS、EC2.3.3.1)、β-ヒドロキシアシル-COAデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.35)、及びミトコンドリア複合体Iについての酵素活性を、過去に詳細に報告されているように分光光度法で測定した(Mukherjee et al., J Biol Chem, 1976, 251, 2155-2160; Vanderlinde et al., Ann Clin Lab Sci, 1985, 15, 13-31; Dzeja et al., Mol Cell Biochem, 1999, 201, 33-40; Takashi et al., Biochim Biohphys Acta, 1979, 574, 258-267; Schwarzer et al., J Physiol, 2014, 592, 3767-3782)。酵素活性データは、shamに対する倍率変化として表す。
【0377】
図47~51からわかるように、クエン酸シンターゼ(図47)、コハク酸デヒドロゲナーゼ(図48)及びミトコンドリア複合体I(図49)などのミトコンドリア酵素の酵素活性は、shamと比較した場合に、CHF動物の横隔膜において、それぞれ21、28、27%だけ大幅に低下している。クレアチンキナーゼに相違は見られなかった。ミトコンドリアポリン発現(図50)及びTOM-20(図51)のタンパク質発現によって評価される横隔膜組織におけるミトコンドリアの量も、CHFマウスで有意に減少した。ミトコンドリア機能に対する効果と一致して、化合物MyoMed-946による処理は、クエン酸シンターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、及びミトコンドリア複合体I酵素活性を部分的に改善し(図47~49)、ほぼ正常なポリン及びTOM-20発現におけるわずかであるが統計的に有意な改善をもたらした(図50及び51)。
【0378】
対照的に、解糖及び脂肪酸代謝のための細胞質酵素(解糖:ピルビン酸キナーゼ及び乳酸デヒドロゲナーゼ;脂肪酸代謝:β-ヒドロキシアシル-COAデヒドロゲナーゼ)を評価した場合、これら三つの群間に差は検出されなかった。
【0379】
3.2.2:B16F10マウス(腫瘍マウス):
B16F10接種マウスの筋肉組織におけるクエン酸シンターゼ及びミトコンドリア複合体Iの酵素活性を、CHFマウスについて上記に記載の方法に従って測定した。
【0380】
図52及び53からわかるように、ミトコンドリア酵素クエン酸シンターゼ(図52)及びミトコンドリア複合体I(図53)の酵素活性は、shamと比較した場合、腫瘍群の筋肉組織で有意に低下している。化合物MyoMed-946及びMyoMed-205による処理は、B16F10接種マウスの筋肉組織におけるクエン酸シンターゼ及びミトコンドリア複合体I酵素活性を部分的又は完全に回復させる(図52及び53)。
【0381】
4.C2C12筋管細胞培養、逆転写PCR
C2C12筋管を、化合物MyoMed-946とともに又はそれなしに、最終濃度10μmol/Lで20分間インキュベートした。インキュベーション期間後、総RNAをC2C12細胞から単離し、ランダムヘキサマー及びSensiscript逆転写酵素(Qiagen, Hilden, Germany)を使用してcDNAに逆転写した。Light Cyclerシステム(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を適用して、cDNAの小分けサンプルを定量RT-PCRに使用した。特定の遺伝子の発現を、ヒポキサンチン-ホスホリボシル-トランスフェラーゼ(HPRT)-mRNAの発現に対して正規化した。MuRF-1発現の定量のために、以下のプライマー(TIB MolBiol, Berlin, Germany)及び条件:HPRT:5′-CTCATggACTgATTATggACAggAC-3′(配列番号1)及び5′-gCAggTCAgCAAAgAACTTATAgCC-3′(配列番号2)、60℃アニーリング;MuRF-1:5′-gATgTgCAAggAACACgAA-3′(配列番号3)、5′-CCTTCACCTggTggCTATTC-3′(配列番号4)、LC640-gCACAAggAgCAAgTAggCACCTCAC-PH(配列番号5)、5′-gCCTggTgAgCCCCAAACACCT-FL(配列番号6)、58℃のアニーリングを使用して蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術を適用した。LC640は、蛍光色素であるLCRed640を表す。FLはフルオレセインを表す。PHはリン酸基を表す(ポリメラーゼによる望ましくない伸長に対して遊離の3′-ヒドロキシル基をブロックする)。
【0382】
図54からわかるように、MCTマウスにおけるMuRF1のタンパク質発現の増加が、化合物MyoMed-946によって防止された。
【0383】
5.統計解析:
データは平均±SEMとして表される。一元配置分散分析(ANOVA)とそれに続くボンフェローニ事後解析を使用して群を比較し、二元反復測定ANOVAとそれに続くボンフェローニ事後解析を使用して収縮機能を評価した(GraphPad Prism)。有意性はP<0.05として認めた。
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【配列表】
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【国際調査報告】