(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】巻付管式熱交換器を有する解重合システム
(51)【国際特許分類】
F28D 7/16 20060101AFI20221014BHJP
F28D 7/02 20060101ALI20221014BHJP
B01J 19/24 20060101ALI20221014BHJP
C07C 13/15 20060101ALI20221014BHJP
C07C 4/22 20060101ALI20221014BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20221014BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221014BHJP
【FI】
F28D7/16 C
F28D7/02
B01J19/24 Z
C07C13/15
C07C4/22
B01J19/00 301E
C07B61/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510207
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 CN2020082664
(87)【国際公開番号】W WO2021036257
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】201910782344.5
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513016781
【氏名又は名称】鎮海石化建安工程有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【氏名又は名称】三崎 正輝
(72)【発明者】
【氏名】陶 江
(72)【発明者】
【氏名】張 賢安
(72)【発明者】
【氏名】王 健良
(72)【発明者】
【氏名】胡 興苗
(72)【発明者】
【氏名】王 力
(72)【発明者】
【氏名】呉 力俊
(72)【発明者】
【氏名】黄 晨陽
【テーマコード(参考)】
3L103
4G075
4H006
【Fターム(参考)】
3L103AA31
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA32
4G075AA45
4G075BA05
4G075BA10
4G075CA02
4G075DA02
4G075EB01
4G075EC06
4H006AA04
4H006AC26
4H006BD84
(57)【要約】
材料を加熱するための熱交換装置と、熱交換装置の材料送出端と接続される気液分離装置と、気液分離装置の気体送出端と接続される解重合反応装置と、を含む巻付管式熱交換器を有する解重合システムであって、熱交換装置は少なくとも1台の巻付管式熱交換器を含む。このシステムは、解重合率を向上させ、設備の運転サイクルを延ばすことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を加熱するための熱交換装置と、前記熱交換装置の材料送出端と接続される気液分離装置(1)と、前記気液分離装置の気体送出端と接続される解重合反応装置(2)と、を含む巻付管式熱交換器を有する解重合システムであって、
前記熱交換装置は、少なくとも1台の巻付管式熱交換器(4)を含み、
各前記巻付管式熱交換器は、
シェル路筒体(41)と、
前記シェル路筒体に設けられた第1シェル路接続管(42a)及び第2シェル路接続管(42b)であって、前記第1シェル路接続管(42a)及び前記第2シェル路接続管(42b)と前記シェル路筒体(41)との間に、第1加熱媒体が流れるシェル路が形成される第1シェル路接続管(42a)及び第2シェル路接続管(42b)と、
前記シェル路筒体の両端に設けられた第1管板(43)及び第2管板と、
前記第1管板(43)に設けられ、且つ管路入口接続管(45a)を有する第1管箱(44)と、
前記第2管板に設けられ、且つ管路出口接続管(45b)を有する第2管箱と、
前記シェル路筒体(41)内に設けられ、内から外に螺旋状に巻き付けられて成り、且つ複数の管層を有する熱交換管(46)であって、前記熱交換管(46)の両端は、それぞれ前記第1管板(43)、前記第2管板に位置を規定され、それぞれ前記第1管箱(46)、前記第2管箱と連通して、前記材料が通る管路を形成する熱交換管(46)と、
を含む、
ことを特徴とする、巻付管式熱交換器を有する解重合システム。
【請求項2】
前記熱交換装置は、1台の前記巻付管式熱交換器(4)を含み、前記巻付管式熱交換器の前記管路入口接続管(45a)は、前記材料を受け取り、前記管路出口接続管(45b)は、前記気液分離装置(1)の入口と接続されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の解重合システム。
【請求項3】
前記熱交換装置は、多管式熱交換器(3)をさらに含み、
前記多管式熱交換器(3)は、前記材料が通る管路と、第2加熱媒体が通るシェル路とを有し、
前記多管式熱交換器(3)の前記管路と前記巻付管式熱交換器(4)の前記管路とは互いに直列に接続され、前記巻付管式熱交換器(4)の前記管路入口接続管(45a)は、前記多管式熱交換器(3)の前記管路を介して前記材料を受け取る、
ことを特徴とする、請求項2に記載の解重合システム。
【請求項4】
前記熱交換装置は、少なくとも2台の前記巻付管式熱交換器を含み、各前記巻付管式熱交換器の前記管路は互いに直列又は並列に接続されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の解重合システム。
【請求項5】
前記熱交換装置は、3台の前記巻付管式熱交換器を含み、
第1の巻付管式熱交換器(401)の前記管路と第2の巻付管式熱交換器(402)の前記管路とは並列に接続され、それぞれが前記材料と前記気液分離装置(1)の入口とを接続し、
第3の巻付管式熱交換器(403)の前記管路と前記第1の巻付管式熱交換器(401)の前記管路とは直列に接続され、
各前記巻付管式熱交換器の前記管路入口接続管(45a)及び前記管路出口接続管(45b)に近接する箇所には、それぞれ、バルブ(6)が設けられている、
ことを特徴とする、請求項4に記載の解重合システム。
【請求項6】
前記管路入口接続管(45a)の中心軸は、前記第1管箱(44)及び前記シェル路筒体(41)の中心軸と互いに重なり合う、
ことを特徴とする、請求項1に記載の解重合システム。
【請求項7】
各前記管層の前記熱交換管の螺旋角度、すなわち螺旋線と前記シェル路筒体の中心軸との夾角(α)は、内側の前記管層から外側の前記管層になるほど次第に小さくなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の解重合システム。
【請求項8】
前記第1管箱(44)内には、前記熱交換管の端部の外側に位置し、前記第1管箱(44)の内壁に貼り合わせられた周縁集合環(47)が設けられており、前記周縁集合環(47)の前記熱交換管(46)に面する端面には、外側の前記管層の前記熱交換管(46)の内部まで延びる複数の第1ドレッジ管(49a)が、周方向に間隔をあけて突設されている、
或いは、
前記第1管箱内には、前記熱交換管(46)の端部の外側に位置し、周縁が前記第1管箱(44)の内壁に貼り合わせられた全体集合盤(48)が設けられており、前記全体集合盤(48)には、前記材料が通る複数の挿通孔(480)が間隔をあけて形成されており、前記全体集合盤(48)の前記熱交換管(46)に面する端面には、各前記管層の前記熱交換管の内部まで延びる複数の第2ドレッジ管(49b)が、間隔をあけて突設されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の解重合システム。
【請求項9】
前記第1ドレッジ管(49a)又は前記第2ドレッジ管(49b)の外径の前記熱交換管(46)の内径に対する比は、3/8よりも小さい、
ことを特徴とする、請求項8に記載の解重合システム。
【請求項10】
前記挿通孔(480)は、前記全体集合盤(48)の中心軸を中心とした複数の同心円の円周上に分布しており、前記同心円の円周上の前記挿通孔の密度は、内側から外側になるほど次第に高くなる、
ことを特徴とする、請求項8に記載の解重合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工業設備の技術分野に属し、具体的には巻付管式熱交換器を有する解重合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の解重合システムの多くは、一般的な熱交換器と解重合反応装置とを含む。
図1に示すように、一般的な熱交換器の多くは、多管式熱交換器3’であり、材料は多管式熱交換器3’を経て加熱された後、解重合反応装置2’に入り、解重合反応が行われる。しかし、多管式熱交換器3’は低効率で、流速が遅く、材料の出口温度が低く、解重合反応の転化率が低い。一般的な熱交換器の効率が低いため、通常の場合、解重合及び重合を起こしやすい材料については、循環油(一般には解重合反応装置の底部に出てきた成分)を加えて新しい材料と一緒に投入するしかなく、液相解重合のみ可能である。また、用いる加熱媒体の温度が高いため、熱交換管壁の温度が高くなり、熱交換管壁で重合やコークス化が極めて発生しやすい。多管式熱交換器3’の材料出口から出てきた高温の材料は気液分離装置1’を経て分離され、分離された後の気体は解重合反応装置2’に入り、解重合が行われる。
【0003】
既存技術における、解重合システムを用いて解重合反応を行う設備及び方法については、中国特許出願番号201510691459.5(中国特許出願公開第105399590号)の「C9原料の気-液相解重合によるジシクロペンタジエンの調製方法」を参照されたい。これに開示された方法は、以下のステップを含む。C9原料を減圧下で、精留、切断して熱解重合原料を得、これを予熱して解重合釜R1の内部に送り投入するステップ。液相解重合を行ってガス化材料を得、このガス化材料を解重合釜の上部で気相解重合反応させて、気相解重合材料を得るステップ。気相解重合材料を多管式熱交換器に入れ、加熱して気相解重合を行った後、冷却熱交換器に入れ、熱交換により降温させて気液相材料を得、これを精留塔T1に入れて精留塔T1の頂部でCPDを得、CPDを二量化反応器R2に入れ、二量化によりDCPDを得るステップ。DCPDを精留塔T2に入れて減圧下で精留を行い、塔の頂部で軽い成分を除き、塔釜で重い成分を除くことにより、ジシクロペンタジエン(DCPD)を得るステップ。しかし、この文献の明細書中には、「本願では、解重合釜R1の上部の加熱器は、中温熱伝導オイルにより熱を与える。気相材料を部分的に解重合させた後、釜の最上部から取り出し、高温熱伝導オイルにより熱を与える熱交換器に入れて、290~310℃まで温度を上昇させ、激しい解重合反応を発生させる。これにより、DCPD全体の解重合率を向上させる。しかし、この高温気相解重合反応において、CPD等の活性成分は、非常に爆縮(implosion)しやすく、難溶性褐黄色顆粒を生成しやすいため、熱交換器の詰まりを引き起こす。このため、この気相解重合過程では、極めて短い停留時間が求められる。」と記載されている。ゆえに、この先行技術文献に開示された発明は、多管式熱交換器を採用し、且つ使用する加熱媒体の温度が高い。そのため、重合反応による熱交換管の詰まりが非常に起こりやすく、全体の設備の運転サイクルにも影響を及ぼす。また、この先行技術文献に開示された発明が採用する工程は、複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、既存技術の現状に対し、解重合率の向上と設備の運転サイクルの延長が可能な、巻付管式熱交換器を有する解重合システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が上述の技術的課題を解決するために採用した技術的手段は、材料を加熱するための熱交換装置と、熱交換装置の材料送出端と接続される気液分離装置と、気液分離装置の気体送出端と接続される解重合反応装置と、を含む巻付管式熱交換器を有する解重合システムであって、以下を特徴とする。熱交換装置は、少なくとも1台の巻付管式熱交換器を含む。各巻付管式熱交換器は、シェル路筒体と、シェル路筒体に設けられた第1シェル路接続管及び第2シェル路接続管と、シェル路筒体の両端に設けられた第1管板及び第2管板と、第1管板に設けられ且つ管路入口接続管を有する第1管箱と、第2管板に設けられ且つ管路出口接続管を有する第2管箱と、シェル路筒体内に設けられ、内から外に螺旋状に巻き付けられて成り、且つ複数の管層を有する熱交換管と、を含む。第1シェル路接続管及び第2シェル路接続管とシェル路筒体との間には、第1加熱媒体が流れるシェル路が形成される。熱交換管の両端は、それぞれ第1管板、第2管板に位置を規定され、それぞれ第1管箱、第2管箱と連通して、材料が通る管路を形成する。
【0006】
好ましくは、熱交換装置は、1台の巻付管式熱交換器を含む。巻付管式熱交換器の管路入口接続管は材料を受け取り、管路出口接続管は、気液分離装置の入口と接続されている。1台の巻付管式熱交換器を使用して運転すると、材料の出口温度を上げて解重合率を向上させることができるだけでなく、エネルギー消費を最大限に減らすことができる。
【0007】
さらには、熱交換装置は、多管式熱交換器をさらに含む。多管式熱交換器は、材料が通る管路と、第2加熱媒体が通るシェル路とを有する。多管式熱交換器の管路と巻付管式熱交換器の管路は、互いに直列に接続され、巻付管式熱交換器の管路入口接続管は、多管式熱交換器の管路を介して材料を受け取る。多管式熱交換器と巻付管式熱交換器が直列に接続されていることにより、洗浄時に、多管式熱交換器の芯体のみ洗浄すればよく、洗浄サイクルを大幅に短縮することができる。また、以下の3つの条件の1つが発生した時に、多管式熱交換器と巻付管式熱交換器が直列に接続されていることにより、装置の生産に影響を及ぼすことがなく、動作状況の変動による熱交換器の深刻な詰まりを引き起こすことがない。3つの条件とは、1)負荷が不安定で正常な材料投入が保証されない場合、2)1台の巻付管式熱交換器を取り出して洗浄する必要がある場合、3)材料の投入時の組成が設計条件から逸脱する(特に、不飽和炭化水素の含量及び成分が増加する)場合である。
【0008】
同様に好ましくは、熱交換装置は、少なくとも2台の巻付管式熱交換器を含み、各巻付管式熱交換器の管路は互いに直列又は並列に接続されている。
【0009】
さらには、熱交換装置は、3台の巻付管式熱交換器を含む。第1の巻付管式熱交換器の管路と第2の巻付管式熱交換器の管路は並列に接続され、それぞれが材料と気液分離装置の入口とを接続する。第3の巻付管式熱交換器の管路と第1の巻付管式熱交換器の管路は、直列に接続されている。各巻付管式熱交換器の管路入口接続管及び管路出口接続管に近接する箇所には、それぞれ、バルブが設けられている。このように、各バルブの開閉を制御することによって、材料を第1の巻付管式熱交換器の管路又は第2の巻付管式熱交換器の管路のみに通すことも、材料を第3の巻付管式熱交換器の管路と、第1の巻付管式熱交換器の管路に順に通すこともでき、操作者が実際の動作状況に応じて選択できる。また、ある1台の熱交換器が故障した時、バルブを制御することによって、その他の熱交換器を使って正常な使用に影響が出ないようにすることができる。
【0010】
本願において、巻付管式熱交換器の管路入口接続管の箇所と、熱交換媒体が入る第1シェル路接続管又は第2シェル路接続管の箇所とに、それぞれ温度測定装置及び圧力測定装置が設けられている。
【0011】
上述の手段において、シェル路内の流体の偏流を防ぐため、管路入口接続管の中心軸と第1管箱及びシェル路筒体の中心軸とは互いに重なり合う。
【0012】
管路入口接続管の箇所の流体は真っ直ぐに流れるため、流速が早く、流量も多いが、管板の外側周辺の流体の流速は遅く、流量も少ない。流体を均一に分布させて、低流速エリアの存在に起因するコークス化の発生を避けるために、改良として、各管層の熱交換管の螺旋角度、すなわち螺旋線とシェル路筒体の中心軸との夾角を、内側の管層から外側の管層になるほど次第に小さくする。これにより、1本の熱交換管の流体の圧力低下は次第に抑えられ、流体を管板周辺のエリアに流れるように導くことができ、管板周辺のエリアの流体の分布と流速を向上させることができる。
【0013】
上述の手段において、コークス化媒体を流しやすくするために、第1管箱内に、周縁集合環を設ける。周縁集合環は、熱交換管の端部の外側に位置し、第1管箱の内壁に貼り合わせられて設けられる。周縁集合環の熱交換管に面する端面には、複数の第1ドレッジ管が周方向に間隔をあけて突設されている。第1ドレッジ管は、外側管層の熱交換管の内部まで延びる。
【0014】
或いは、上述の手段において、コークス化媒体を流しやすくするために、第1管箱内に全体集合盤を設ける。全体集合盤は、熱交換管の端部の外側に位置し、全体集合盤の周縁は、第1管箱の内壁に貼り合わせられて設けられている。全体集合盤には、材料が通る複数の挿通孔が間隔をあけて形成されており、全体集合盤の熱交換管に面する端面には、複数の第2ドレッジ管が間隔をあけて突設されている。第2ドレッジ管は、各管層の熱交換管の内部まで延びる。
【0015】
改良として、第1ドレッジ管又は第2ドレッジ管の外径の熱交換管の内径に対する比は、3/8よりも小さい。こうして、ドレッジ管を熱交換管内に差し込むことによって、熱交換管内の流れを初期的に良くするとともに、ドレッジ管が熱交換管内の流体の流動に影響を与えないようにすることができる。
【0016】
管路の流体を均一に分布させるため、挿通孔は、全体集合盤の中心軸を中心とした複数の同心円の円周上に分布しており、同心円の円周上の挿通孔の密度は、内側から外側になるほど次第に高くなる。
【0017】
既存技術と比較した本発明の特長は、以下の通りである。巻付管式熱交換器を採用しているので、本願は、加熱した後に解重合させて生成品を得る解重合システムユニット、すなわち、材料(原料)が熱交換器に入り、ある温度まで加熱された後、解重合反応(高分子物質を解重合して低分子にする過程)を起こすのと同時に、熱量を吸収して、解重合生成物間、生成物と材料との間、及び材料と材料との間で一定の温度以上で重合反応し、高分子化合物を生成する過程、に適している。特に、DCPDを解重合してCPDにする解重合システム等のC9不飽和炭化水素の加工、解重合システムに適している。この時の巻付管式熱交換器は、反応器(解重合釜)の機能も果たす。既存の技術において、巻付管式熱交換器は既に一般的な熱交換器となっているが、巻付管式熱交換器の洗浄は難しいため、解重合システムに応用するには制限がある。ゆえに、洗浄しやすい多管式熱交換器を採用し、それにより加熱を行うことが多い。
【0018】
また、本願の解重合システムは、工程を簡略化しており、温度が高い循環油を加える必要がない。既存技術の多管式熱交換器のみを採用した場合と比べて、巻付管式熱交換器を採用すると、同温度(305℃)の加熱媒体の作用の下、冷たい材料の温度は、当初の220℃から260~275℃まで上昇し、同時に、解重合率も大幅に向上する。運転サイクルは、元来30日であったのが、1台の巻付管式熱交換器の支路では、12か月以上にまで延び、2台の巻付管式熱交換器を直列につなぐと、18か月以上にまで延びる(主に第1の巻付管式熱交換器の制限を受ける)。また、1台の巻付管式熱交換器と同等の熱交換効果を実現するのに、2台の巻付管式熱交換器を直列につないだ場合は、各巻付管式熱交換器内の熱交換管の長さを短くすることができ、短くすると、洗浄時間が大幅に短縮され、洗いやすい。1台の巻付管式熱交換器の一次投資費用は、2台の熱交換器を直列につなぐ場合の費用に比べて相対的に安いが、2台の熱交換器を合わせて使用すると、解重合システム全体の使用サイクルも大幅に向上し、熱交換器の詰まりにより全てのシステムが停止することがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】既存技術における解重合システムの構造模式図。
【
図2】本発明の実施例1の解重合システムの構造模式図。
【
図3】本発明の実施例1の巻付管式熱交換器の部分的構造模式図。
【
図5】本発明の実施例1の巻付管式熱交換器の別の状態の部分的構造模式図。
【
図7】本発明の実施例1の熱交換管の螺旋構造の模式図。
【
図8】本発明の実施例2の解重合システムの構造模式図。
【
図9】本発明の実施例3の解重合システムの構造模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面と実施例とを結び付けながら本発明についてさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図2~7に示すのは、本発明の巻付管式熱交換器を有する解重合システムの好ましい実施例1である。この解重合システムは、材料を加熱するための熱交換装置と、熱交換装置の材料送出端と接続される気液分離装置1と、気液分離装置1の気体送出端と接続される解重合反応装置2と、を含む。この熱交換装置は、少なくとも1台の巻付管式熱交換器4を含んでいる。
【0022】
各巻付管式熱交換器4は、シェル路筒体41と、シェル路筒体に設けられた第1シェル路接続管42a及び第2シェル路接続管42bと、シェル路筒体41の両端に設けられた第1管板43及び第2管板と、第1管板43に設けられ且つ管路入口接続管45aを有する第1管箱44と、第2管板に設けられ且つ管路出口接続管45bを有する第2管箱と、シェル路筒体41内に設けられ、内から外に螺旋状に巻き付けられて成り、且つ複数の管層を有する熱交換管46と、を含む。第1シェル路接続管42a及び第2シェル路接続管42bとシェル路筒体41との間には、第1加熱媒体(加熱媒体は、熱伝導オイル、蒸気等から選んで使用することができ、加熱媒体の導入温度は、実際の動作状況により選択する)が流れるシェル路が形成される。熱交換管46の両端は、それぞれ第1管板43、第2管板に位置を規定され、それぞれ第1管箱44、第2管箱と連通し、上述の材料が通過する管路を形成する。本実施例では、各巻付管式熱交換器は、設置面積節約のために縦方向に設置されているが、もちろん横向きに設置してもよい。
【0023】
上述の巻付管式熱交換器4は、1台、又は1台以上であってもよい。本実施例では、投資費用を抑えるため、上述の熱交換装置は、1台の巻付管式熱交換器4を含む。この巻付管式熱交換器4の管路入口接続管45aは材料を受け取り、管路出口接続管45b即ち熱交換装置の材料送出端は、上述の気液分離装置1の入口と接続されている。第1シェル路接続管42aは、加熱媒体と接続され、加熱媒体は第1シェル路接続管42aに入り、管路内の材料と熱交換した後、第2シェル路接続管42bからシェル路を出る。
【0024】
本願の巻付管式熱交換器4は、既存の構造設計を参考にすることができ、本願の要求を満たすことができる。当然ながら、管路内の材料の流体偏流を防ぐために、さらに、管路入口接続管45aの中心軸と上述の第1管箱44及びシェル路筒体41の中心軸とを重なり合わせる。管路入口接続管45aの箇所では流体が真っ直ぐに流れるので、流速が早く、流量が多くなり、コークス化しにくいが、外側管層エリアに入る流体の流速は遅く、流量も少ないため、コークス化しやすい。管路に入る材料流体が確実に均一に分布するように、各管層の熱交換管46の螺旋角度α、即ち螺旋線と上述のシェル路筒体41の中心軸との間の夾角を、内側の管層から外側の管層になるにつれ次第に小さくすることで、材料を周辺の外側管層エリアに流れるように導くことができる。これにより、周辺のエリアにおける流体の分布と流速を向上させて、熱交換管46のコークス化を防ぐ。
【0025】
コークス化物質の流れを良くし、熱交換管46のコークス化による詰まりをさらに防ぐために、周縁集合環47又は全体集合盤48がさらに設けられている。周縁集合環47及び全体集合盤48の選択は、巻付管式熱交換器の具体的な構造によって決定する。具体的には、以下の通りである。
【0026】
周縁集合環47は、第1管箱44内に設けられている。この周縁集合環47は、熱交換管46の端部の外側に位置し、且つ、第1管箱44の内壁に貼り合わせられて設けられている。即ち、
図3から分かるように、この周縁集合環47の周縁と第1管箱44の内壁は張り合わせられて固定されており、この周縁集合環47の熱交換管46に面する端面には、若干数の第1ドレッジ管49aが周方向に間隔をあけて突設されている。この第1ドレッジ管49aは、外側管層の熱交換管46の内部まで延びる。このようにして、外側管層の熱交換管46内のコークス化物質を流れやすくし、コークス化物質による熱交換管46の詰まりを防ぐことができる。具体的には、
図3及び
図4を参照されたい。
【0027】
或いは、全体集合盤48は、第1管箱44内に設けられている。全体集合盤48は、熱交換管46の端部の外側に位置し、全体集合盤48の周縁は第1管箱44の内壁に貼り合わせられている。この全体集合盤48には、材料が通る若干数の挿通孔480が間隔をあけて形成されており、全体集合盤48の熱交換管46に面する端面には、若干数の第2ドレッジ管49bが間隔をあけて突設されている。この第2ドレッジ管49bは、各管層の熱交換管46の内部まで延びる。このように、挿通孔480は、管路の流体を分布させる働きをし、引き出された第2ドレッジ管49bは、それぞれの熱交換管46の内部まで延び、これによって、コークス化物質を流れやすくする。具体的には、
図5及び
図6を参照されたい。
【0028】
本実施例において、上述の管路入口接続管45aの流路面積の第1管箱44の流路面積に対する比が1/3以上の状態の場合では、管路入口接続管45aの流路面積が相対的に大きく、管路入口接続管45aにおける流体の流速が早く、流量が多いので、対応する内側管層の熱交換管はコークス化しにくいが、外側管路の熱交換管46に入る流体は、流速が遅く、流量が少ないため、コークス化しやすい。外側管路の熱交換管のコークス化による詰まりを防ぐため、上述の周縁集合環47を設置する。上述の管路入口接続管45aの流路面積の第1管箱44の流路面積に対する比が1/3より小さい状態の場合では、管路入口接続管45aの流路面積が相対的に小さいので、改めて管路の流体を分布させる必要があるため、上述の全体集合盤48を設置する。
【0029】
当然ながら、全体集合盤48と周縁集合環47の選択は、上述の条件に限られるものではなく、使用者がニーズと実際の動作状況に基づいて、全体集合盤48、周縁集合環47の使用、不使用を選択してよい。
【0030】
コークス化物質を良好に流して、材料の熱交換管への流入に影響を及ぼさないように、第1ドレッジ管又は第2ドレッジ管の外径の熱交換管の内径に対する比は、3/8よりも小さい。本実施例では、第1ドレッジ管49a又は第2ドレッジ管49bの表面粗さは、Ra≦1.6であり、外径はφ1~φ3である。熱交換管の内径は、8mmよりも大きい。ドレッジ管は、熱交換管内のコークス化物質を初期的に流すために用いられ、その後、熱交換管を洗浄することでコークス化物質を取り除く。熱交換管の洗浄は、物理的洗浄、化学的洗浄等の既存の洗浄方法で行われる。材料の流体を均一に分布させるため、挿通孔480は、全体集合盤48の中心軸を中心にした若干数の同心円の円周上に分布しており、同心円の円周上の挿通孔480の密度は、内側から外側になるほど次第に高くなる。これにより、材料が外側管層エリアに流れるように導くことができる。
【0031】
本実施例において、解重合反応装置2は、第1反応器21と、第2反応器22とを含む。第1反応器21及び第2反応器22の材料入口2aは、それぞれ、気液分離装置1の気体送出端と接続される。最上部の材料出口2bで得た軽い成分は、集合した後、下流と接続され、底部の材料出口2cで得た重い成分は、それぞれのポンプ体5を通って集合し、下流と接続される。
【実施例2】
【0032】
図8に示すのは、本発明の巻付管式熱交換器を有する解重合システムの好ましい実施例2である。この解重合システムと、実施例1の解重合システムは基本的には同じであるが、相違点は、本実施例の熱交換装置は、少なくとも2つの巻付管式熱交換器4を有し、各巻付管式熱交換器4の管路は互いに直列又は並列に接続されている点である。具体的には以下の通りである。
【0033】
熱交換装置は、3台の巻付管式熱交換器4を含み、第1の巻付管式熱交換器401の管路と、第2の巻付管式熱交換器402の管路とは並列に接続され、それぞれが材料と気液分離装置1の入口とを接続する。第3の巻付管式熱交換器403の管路と第1の巻付管式熱交換器401の管路とは直列に接続されている。各巻付管式熱交換器4の管路入口接続管45a、管路出口接続管45bに近接する箇所には、それぞれバルブ6が設けられている。
【0034】
このように、第1の巻付管式熱交換器401又は第2の巻付管式熱交換器402の管路入口接続管45a、管路出口接続管45bの箇所にあるバルブ6を開けるだけで、実施例1の1台の巻付管式熱交換器と同じように加熱をすることができる。また、第2の巻付管式熱交換器402の管路入口接続管45a、管路出口接続管45bの箇所にあるバルブ6を閉めるだけで、第1の巻付管式熱交換器401と第3の巻付管式熱交換器403を直列につなぐことができ、材料は、まず第3の巻付管式熱交換器403の管路に入り、そして第1の巻付管式熱交換器401の管路に入って、加熱が行われる。
【実施例3】
【0035】
図9に示すのは、本発明の巻付管式熱交換器を有する解重合システムの好ましい実施例3である。この解重合システムは、実施例1と基本的に同じであるが、その相違点は、本実施例の熱交換装置は、多管式熱交換器3(既存技術における多管式熱交換器と同じ構造)をさらに含む点である。この多管式熱交換器3は、上述の材料が通る管路と、第2加熱媒体が通るシェル路とを有し、この多管式熱交換器3の管路と上述の巻付管式熱交換器4の管路は直列に接続され、巻付管式熱交換器4の管路入口接続管45aは、この多管式熱交換器3の管路を介して材料を受け取る。このように、材料は、まず多管式熱交換器3の管路に入って一次加熱された後、巻付管式熱交換器4の管路に入って二次加熱される。
【0036】
当然ながら、本願の巻付管式熱交換器の数は、以上に開示されたものに限定されず、3台、或いはそれよりも多くの台数が直列に接続されてもよいが、費用及び熱交換効率を考慮すると、以上の実施例に開示された数種の手段が好ましい。使用者は、実際の動作状況に応じて選択すればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】中国特許出願番号201510691459.5(中国特許出願公開第105399590号)
【国際調査報告】