(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】M2マクロファージおよび骨髄系由来サプレッサー細胞を除去するための組成物ならびに関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/54 20170101AFI20221014BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221014BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221014BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20221014BHJP
A61P 33/14 20060101ALI20221014BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221014BHJP
A61K 33/34 20060101ALI20221014BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20221014BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20221014BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20221014BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61K47/54
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61P31/18
A61P33/14
A61K45/00
A61K47/26
A61K33/34
A61K33/24
A61K33/26
A61K47/22
A61K31/706
A61K51/04 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511023
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 US2020047036
(87)【国際公開番号】W WO2021034953
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594012483
【氏名又は名称】ナビディア、バイオファーマスーティカルズ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NAVIDEA BIOPHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ、デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC41
4C076DD60
4C076DD66
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA12
4C084AA19
4C084NA13
4C084ZB26
4C084ZB37
4C084ZC01
4C084ZC55
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA02
4C086EA10
4C086HA01
4C086HA03
4C086HA05
4C086HA11
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZB37
4C086ZC01
4C086ZC55
4C086ZC75
(57)【要約】
CD206を発現するマクロファージおよび/またはCD206を発現する骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を除去するための組成物ならびに方法が開示される。ある特定の態様では、開示される方法は、デキストラン骨格ならびにそれに結合された1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療剤を含む、有効用量の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む。ある特定の態様では、治療剤は金属を含む。さらなる態様では、治療剤は、細胞傷害剤を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD206を発現するマクロファージおよび/またはCD206を発現する骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を除去する方法であって、デキストラン骨格ならびにそれに結合された1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療剤を含む、有効用量の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記化合物が、式(I)の化合物:
【化1】
(式中、
各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、
各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療剤またはHを含み、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、nはゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは治療剤を含む)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療剤が、キレート剤と、銅[Cu]、銀[Ag]、ニッケル[Ni]、パラジウム[Pd]、コバルト[Co]、ロジウム[Rh]、鉄[Fe]、ルテニウム[Ru]、オスミウム[Os]、カドミウム[Cd]、ヒ素[As]、アンチモン[Sb]、および/またはガドリニウム[Gd]から選択される少なくとも1つの金属イオンとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの金属イオンが、Cu(II)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記キレート剤が、DOPTAまたはDOTAである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Cu(II)イオンの数が、1つのCu(II)イオンおよびキレーター部分の数に等しい数のCu(II)イオンからのものである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
組成物が、MDCS細胞死を誘導するのに十分な用量で投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、がんと診断されている、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が、少なくとも1つの他の治療または療法と併せて投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの他の治療または療法が、化学療法または放射線療法である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの治療または療法の有効用量が、前記化合物の投与を伴わない前記少なくとも1つの治療または療法の投与よりも低い、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、HIV-AIDS、デング熱、またはリーシュマニア症と診断されている、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
CD206を発現するマクロファージおよび/またはCD206を発現する骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を除去する方法であって、式(I)の化合物:
【化2】
(式中、
各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、
各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療剤またはHを含み、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、nはゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは、細胞傷害剤を含む治療剤を含む)を含む、有効量の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項14】
前記細胞傷害剤が、アムサクリン、ベキサロテン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、セツキシマブ、シスプラチン、クリサンタスパーゼ、ダカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ヒドロキシカルバミド(ヒドロキシ尿素)、イリノテカン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、プロカルバジン、テモゾロミド、トポテカン、トラスツズマブ、およびトレチノインから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞傷害剤が、ドキソルビシンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、少なくとも1つの他の療法または治療と併せて投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
CD206を発現するマクロファージおよび/またはCD206を発現する骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を除去するための化合物であって、式(I)の化合物:
【化3】
(式中、
各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、
各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療剤またはHを含み、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、nはゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは治療剤を含み、前記治療剤はキレーターおよび少なくとも1つのCu(II)イオンを含む)を含む、化合物。
【請求項18】
少なくとも1つのL1が、-(CH2)pS(CH2)-NH-を含み、pおよびqが、0~5の整数である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
少なくとも1つのL2が、O、SおよびNからなる群から選択される最大3個のヘテロ原子によって任意選択により中断されたC2~12炭化水素鎖である、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
少なくとも1つのL2が、-(CH2)pS(CH2)-NH-を含み、pおよびqは独立して、0~5の整数である、請求項17に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月19日に出願され、「COMPOSITIONS AND RELATED METHODS FOR THE ABLATION OF M2 MACROPHAGES AND MYELOID DERIVED SUPPRESSOR CELLS」と題された米国仮出願第62/888,727号の優先権を主張し、これは、その全体が、米国特許法第119条(e)の下で参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
がんは、米国で2番目に多い死因であり、ほぼ4人に1人の死因を占めている。がんは、がん細胞の無制御な増殖および細胞分裂を特徴とする。しかしながら、がんは、腫瘍に対する慢性的な不適応免疫応答から非常に恩恵を受け、マクロファージは、その不適応応答の重要なメディエーターである。一般に、マクロファージは、多くの遺伝子、潜在的には数百の遺伝子についてのそれらの発現パターンを変化させることによって、それらの局所微小環境における様々な刺激に応答する。このような表現型的に変化したマクロファージは、活性化されたマクロファージであると言われている。マクロファージがどの刺激に応答するかに応じて、広範囲の活性化された表現型状態を達成することができる。マクロファージ活性化時に異なって発現されるこれらの遺伝子の中には、細胞表面マーカー(マクロファージマンノース受容体、CD206など)および様々なサイトカイン、活性酸素種(ROS)の生成をもたらす酵素経路、ならびにTリンパ球(T細胞)などの免疫系の他の構成要素の挙動を調節することができる他のシグナル伝達分子がある。最初に説明されたとき、活性化されたマクロファージは、2つの表現型:高度に炎症促進性であるM1と呼ばれる古典的に活性化された表現型、免疫抑制性であり、創傷治癒を促進するM2と呼ばれる代替的に活性化された表現型に分けられた。活性化されたマクロファージ表現型の厳密に二分された分類は、過度に単純化されており、それらの微小環境からの刺激に対するマクロファージ応答の真の柔軟性を表すものではないことが現在理解されているが、活性化されたマクロファージが、炎症促進性(M1様)または免疫抑制性(M2様)のいずれかであることによって局所免疫応答に影響を及ぼすことができるという概念は、様々な病理学的状態におけるマクロファージの役割を説明するときに有用であり続けている。
【0003】
腫瘍関連マクロファージ(TAM)は腫瘍に豊富にあり、がんに関連する不適応免疫応答の非常に重要な寄与因子である。M1様およびM2様TAMの両方が公知であるが、定着腫瘍内またはその近くに存在するTAMの大部分は、免疫抑制性のM2様活性化マクロファージである。重要なことに、これらのM2様TAMは、それらのCD206の高発現(すなわち、CD206+である)によって、腫瘍の免疫組織化学的評価において頻繁に同定されている。M2様TAMは、IL-10、TGF-β、およびPD-L1を発現することによってT細胞を抑制し、腫瘍の血管新生および転移を促進する。
【0004】
定着腫瘍に関連する腫瘍促進、不適応免疫応答に寄与する別の細胞群は、全体として骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)と称される不均一な細胞のクラスである。MDSCは、顆粒球および/または単球に似た形態学的および表現型の特徴を有するが、これらの細胞型のいずれとも異なる。MDSCは、健康な個体ではあまり見られないが、がん、ある特定の感染状態、および自己免疫疾患などの様々な炎症状態においては多数になる。すべてのMDSCによって共有される1つの特徴は、それらが、免疫系の他の細胞成分を誘導して、あまり活性化されていない炎症促進性の表現型を取るか、または明らかに免疫抑制性になることである。MDSCがそれらの免疫抑制効果を免疫系の他の構成要素に及ぼす手段は、広範囲にわたって調査されている。定義的に腫瘍微小環境に限定されるTAMとは異なり、MDSCはまた、腫瘍に局在するだけでなく、がん患者の血液および脾臓にも観察される。しかしながら、TAM、特にM2様免疫抑制性TAMと同様に、腫瘍および/または全身的でのMDSCの存在の増加は、患者の全生存期間および無増悪生存期間の減少、ならびにがん患者の転帰不良を示す他の尺度と関連付けられる。当該技術分野における現在の欠陥により、所望の免疫療法応答を達成するのに十分に、かつ/または重篤な有害な副作用のリスクなしに、M2様TAMおよびMDSCの数を適切に死滅させる、除去する、または減少させる手段に対する満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
CD206を発現するマクロファージおよび/またはCD206を発現する骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を除去するための方法であって、デキストラン骨格ならびにそれに結合された1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療剤を含む、有効用量の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0006】
ある特定の実施形態では、開示される化合物は、式(I)の化合物:
【0007】
【0008】
(式中、各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、各Aは、独立して、治療剤またはHを含み、各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、nはゼロより大きい整数であり、少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは治療剤を含む)である。
【0009】
ある特定の態様では、治療剤は、キレート剤および少なくとも1つのCu(II)イオンを含む。さらなる態様では、キレート剤は、DOPTAまたはDOTAである。なおさらなる態様では、少なくとも1つのCu(II)イオンは、約1つのCu(II)イオンからキレーター部分の数に等しい数のCu(II)イオンである。
【0010】
開示される方法のさらなる態様によれば、開示される組成物は、M2マクロファージがM1マクロファージに再分極することを誘導するのに十分な用量で投与される。別のさらなる態様では、組成物は、MDCS細胞死を誘導するのに十分な用量で投与される。
【0011】
ある特定の実施形態では、対象はがんと診断されている。ある特定の態様では、化合物は、少なくとも1つの他の治療または療法と併せて投与される。例示的な実施形態では、少なくとも1つの他の治療または療法は、化学療法または放射線療法である。さらなる例示的な実施形態では、少なくとも1つの治療または療法の有効用量は、化合物の投与を伴わない少なくとも1つの治療または療法の有効用量よりも低い。
【0012】
さらなる実施形態によれば、対象は感染症と診断されている。
腫瘍関連マクロファージ(TAM)をM2からM1に再分極するための方法であって、式(I)の化合物:
【0013】
【0014】
(式中、各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、各Aは、独立して、治療剤またはHを含み、各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、nはゼロより大きい整数であり、少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは治療剤を含む)を含む、有効量の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法が、さらに本明細書に開示される。
【0015】
ある特定の態様では、治療剤は、キレーターおよび少なくとも1つのCu(II)イオンを含む。さらなる態様では、治療剤は、約4個のCu(II)イオンを含む。
さらなる態様によれば、化合物は、少なくとも1つの他の療法または治療と併せて投与される。
【0016】
CD206を発現するマクロファージおよび/またはCD206を発現する骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を除去するための化合物であって、式(I)の化合物:
【0017】
【0018】
(式中、各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、各Aは、独立して、治療剤またはHを含み、各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、nはゼロより大きい整数であり、少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは治療剤を含み、治療剤は、キレーターおよび少なくとも1つのCu(II)イオンを含む)を含む、化合物が、さらに本明細書に開示される。
【0019】
ある特定の態様では、少なくとも1つのL1は、-(CH2)pS(CH2)-NH-を含み、式中、pおよびqは、0~5の整数である。さらなる態様では、少なくとも1つのL2は、O、SおよびNからなる群から選択される最大3個のヘテロ原子によって任意選択により中断されたC2~12炭化水素鎖である。別のさらなる態様では、少なくとも1つのL2は、-(CH2)pS(CH2)-NH-を含み、式中、pおよびqは、独立して、0~5の整数である。
【0020】
CD206を発現するマクロファージおよび/またはCD206を発現するMDCSを除去するための化合物であって、式(I)の化合物:
【0021】
【0022】
(式中、各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、各Aは、独立して、治療剤またはHを含み、各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、nはゼロより大きい整数であり、少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは治療剤を含み、治療剤は、ドキソルビシンを含む)を含む、化合物が、さらに本明細書に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ある特定の実施形態による、Cu(II)-チルマノセプト(tilmanocept)に対する曝露の間のCD206を発現するマクロファージからの経時的な蛍光の定量化を示す。
【
図2】ある特定の実施形態による、増加させた濃度のCu(II)-チルマノセプトで処理したマクロファージで観察された未処理の対照と比較したCD206発現の比率を示す。
【
図3】ある特定の実施形態による、Cu(II)-チルマノセプトに対する曝露の増加に応答するM2マクロファージによるCD80およびCD86の発現の変化を示す。
【
図4】ある特定の実施形態による、Cu(II)-チルマノセプトの濃度の増加に応答するM2マクロファージによるCD80およびCD86の発現の変化を示す。
【
図5】ある特定の実施形態による、本開示の化合物と、薬物なしと、チマノセプト-Cy3対照とに対する曝露後のCD206+マクロファージの細胞死を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において、範囲は、「約」1つの特定の値から、かつ/または「約」別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、さらなる態様は、1つの特定の値から、かつ/または他の特定の値までを含む。同様に、値が近似として表現される場合、先行詞「約」の使用により、特定の値がさらなる態様を形成することが理解されるであろう。範囲のそれぞれの終点は、他の終点に関して、および他方の終点とは無関係に有意であることが、さらに理解されるであろう。本明細書に開示されるいくつかの数の値があること、およびその各値は本明細書でその値自体に加えて「約」その特定の値としても開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示されていれば、「約10」も開示されている。2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されることも理解される。例えば、10および15が開示されていれば、11、12、13および14も開示されている。
【0025】
本明細書および結びの特許請求の範囲で使用される場合、化学種の残基は、部分が実際に化学種から得られるかどうかにかかわらず、特定の反応スキームまたはその後の製剤もしくは化学製品における化学種の得られた生成物である部分を指す。したがって、ポリエステルにおけるエチレングリコール残基は、ポリエステルを調製するためにエチレングリコールが使用されたかどうかにかかわらず、ポリエステルにおける1つ以上の-OCH2CH2O-単位を指す。同様に、ポリエステルにおけるセバシン酸残基は、残基が、ポリエステルを得るためにセバシン酸またはそのエステルを反応させることによって得られたかどうかにかかわらず、ポリエステルにおける1つ以上の-CO(CH2)8CO-部分を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むことが企図される。広い態様では、許容される置換基は、有機化合物の非環状および環状、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、ならびに芳香族および非芳香族置換基を含む。例示的な置換基としては、例えば、以下に記載されるものが挙げられる。許容される置換基は、1つ以上であってもよく、適切な有機化合物と同一または異なってもよい。本開示の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載される有機化合物の任意の許容される置換基を有し得る。本開示は、いかなる方法でも、有機化合物の許容される置換基により限定されることを意図するものではない。また、「置換」または「で置換される」という用語は、このような置換が、置換された原子および置換基の許容原子価に従うものであること、ならびに置換が、安定な化合物、例えば、再配置、環化、脱離などによる転換を自発的に経ない化合物を生じさせるという黙示的な条件を含む。また、ある特定の態様では、反対に明示的に示されない限り、個々の置換基は、さらに任意選択で置換されてもよい(すなわち、さらに置換されるか、または置換されない)ことが企図される。
【0027】
様々な用語を定義する際に、「A1」、「A2」、「A3」、および「A4」は、様々な特定の置換基を表すための一般記号として本明細書で使用される。これらの記号は、本明細書に開示されるものに限定されないが、任意の置換基であり得、ある例では特定の置換基であると定義されるとき、別の例では、それらは、いくつかの他の置換基として定義され得る。
【0028】
「R1」、「R2」、「R3」、「Rn」(式中、nは整数である)は、本明細書で使用される場合、独立して、上記に列挙される基のうちの1つ以上を有することができる。例えば、R1が直鎖アルキル基である場合、アルキル基の水素原子の1つは、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン化物などで任意選択に置換されてもよい。選択される基に応じて、第1の基は、第2の基内に組み込まれ得るか、または代替的に、第1の基は、第2の基にペンダントであり得る(すなわち、結合され得る)。例えば、「アミノ基を含むアルキル基」という語句では、アミノ基は、アルキル基の骨格内に組み込まれ得る。あるいは、アミノ基は、アルキル基の骨格に結合され得る。選択される基(複数可)の性質により、第1の基が第2の基に埋め込まれるか、または結合されるかが決定される。
【0029】
本明細書に記載される場合、本発明の化合物は、「任意選択に置換された」部分を含有し得る。一般的に、「置換された」という用語は、「任意選択に」という用語が前に付くか否かにかかわらず、指定された部分の1つ以上の水素が好適な置換基で置き換えられることを意味する。別段の指示がない限り、「任意選択に置換された」基は、基の各置換可能な位置に好適な置換基を有してもよく、任意の所与の構造内の2つ以上の位置が、特定の基から選択される2つ以上の置換基で置換されてもよく、置換基は、すべての位置で同じであっても異なっていてもよい。本発明によって想定される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定なまたは化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。ある特定の態様では、反対に明示的に示されない限り、個々の置換基は、さらに任意選択に置換され得る(すなわち、さらに置換されるか、または置換されない)こともまた企図される。
【0030】
本明細書に開示されているある特定の材料、化合物、組成物および成分は、市販のものを入手するか、または当業者に一般的に公知である技術を使用して容易に合成することができる。例えば、開示されている化合物および組成物を調製する際に使用される出発材料および試薬は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,Wis.)、Acros Organics(Morris Plains、N.J.)、Fisher Scientific(Pittsburgh,Pa.)、もしくはSigma(St.Louis,Mo.)などの商業的供給業者から入手可能であるか、またはFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、Volumes 1-17(John Wiley and Sons,1991)、Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,Volumes 1-5およびSupplementals(Elsevier Science Publishers,1989)、Organic Reactions,Volumes 1-40(John Wiley and Sons,1991)、March’s Advanced Organic Chemistry(John Wiley and Sons,4th Edition)、ならびにLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.,1989)などの参考文献で説明されている手順に従って当業者に公知の方法によって調製されるかのいずれかである。
【0031】
本発明の組成物を調製するために使用される成分および本明細書に開示されている方法において使用される組成物自体が開示される。これらおよび他の材料は本明細書に開示されており、これらの材料の、組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示されている場合、これらの化合物の各種々の個々のおよび集合的組み合わせならびに順列の具体的な参照を明確に開示することはできないが、それぞれが具体的に企図され、本明細書に記載されていることが理解される。例えば、特定の化合物が開示され、論じられ、化合物を含むいくつかの分子に対してすることができる修飾の数について論じられているならば、具体的に企図されているのは、具体的に反対の指示がない限り可能な、化合物および修飾のありとあらゆる組み合わせおよび順列である。したがって、分子A、BおよびCのクラスが開示されており、かつ分子D、EおよびFのクラスならびに組み合わせ分子の例A-Dが開示されていれば、それぞれ個々には列挙されていなくても、それぞれが個々にかつ集合的に企図されている意味組み合わせであり、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-EおよびC-Fは、開示されているとみなされる。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも開示されている。したがって、例えば、A-E、B-FおよびC-Eのサブグループは、開示されているとみなされるであろう。この概念は、本発明の組成物を作製および使用する方法におけるステップを含むが、これらに限定されない本出願のすべての態様に当てはまる。したがって、実施できる多様な追加ステップがあるならば、これらの追加ステップのそれぞれは、本発明の方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせを用いて実施できることが理解される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」または「担体」という用語は、滅菌水性もしくは非水性溶液、コロイド、分散液、懸濁液またはエマルション、および使用直前に滅菌注射溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を指す。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含む。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有することもできる。微生物の作用の予防は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの種々の抗菌および抗真菌剤の包含によって確実にすることができる。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが望ましい場合もある。注射用医薬形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの薬剤の包含によってもたらされ得る。注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)などの生分解性ポリマー中に薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製される。薬物とポリマーとの比および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。デポー注射用製剤は、薬物を、生体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルション中に封入することによっても調製される。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または滅菌剤を、使用直前に、滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体に溶解するもしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で組み込むことによって、滅菌することができる。好適な不活性担体は、ラクトースなどの糖を含むことができる。望ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%が、0.01~10マイクロメートルの範囲内の有効な粒径を有する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、自律的増殖の能力を有する細胞を指す。このような細胞の例には、細胞増殖が急速に増加することを特徴とする異常な状態または状況を有する細胞が含まれる。この用語は、組織病理学的型または侵襲の段階に関係なく、がん性増殖、例えば、腫瘍、発がん性プロセス、転移性組織、および悪性形質転換細胞、組織、または器官を含むことを意味する。呼吸器系、心血管系、腎臓系、生殖器系、血液系、神経系、肝臓系、消化管系、および内分泌系などの様々な器官系の悪性腫瘍、ならびにほとんどの結腸がん、腎細胞がん、前立腺がんおよび/または精巣腫瘍、非小細胞肺がん、小腸がん、ならびに食道がんなどの悪性腫瘍を含む腺がんも含まれる。「自然発生する」がんには、対象へのがん細胞の移植によって実験的に誘発されていないあらゆるがんが含まれ、例えば、自然発生的ながん、患者の発がん性物質(複数可)への曝露によって引き起こされるがん、トランスジェニックがん遺伝子の挿入または腫瘍抑制遺伝子のノックアウトに起因するがん、および感染症、例えば、ウイルス感染によって引き起こされるがんが含まれる。「がん腫」という用語は、当該技術分野において認識されており、上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。いくつかの実施形態では、本発明の方法を使用して、上皮がん、例えば、上皮起源の固形腫瘍、例えば、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、膵臓がん、または結腸がんを有する対象を治療することができる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、投与の標的、例えば、動物を指す。したがって、本明細書に開示される方法の対象は、哺乳動物、魚類、鳥類、爬虫類または両生類などの脊椎動物であり得る。あるいは、本明細書に開示される方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット、またはげっ歯類であり得る。この用語は、特定の年齢または性別を示すものではない。したがって、成人および新生児の対象、ならびに胎児が、男女を問わず、網羅されるように意図されている。一態様では、対象は哺乳動物である。患者は、疾患または障害に罹患している対象を指す。「患者」という用語は、ヒトおよび獣医学的対象を含む。開示される方法のいくつかの態様では、対象は、投与するステップの前に、1つ以上のがん障害の治療を必要とすると診断されている。
【0035】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、疾患、病態または障害を、治癒させる、寛解させる、安定させるか、または予防することを意図した、患者の医療管理を指す。この用語は、積極的治療、すなわち、疾患、病態、または障害の改善に具体的に向けた治療を含み、原因治療、すなわち、関連疾患、病態、または障害の原因の除去に向けた治療も含む。加えて、この用語は、緩和的治療、すなわち、疾患、病態、または障害の治癒よりもむしろ症状の軽減のために設計された治療;予防的治療、すなわち、関連疾患、病態、または障害の発病を、最小化するまたは部分的にもしくは完全に阻害することを対象とする治療;ならびに補助的治療、すなわち、関連疾患、病態、または障害の改善に向けた別の特異的療法を補うために用いられる治療を含む。様々な態様では、この用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)を含む対象の任意の治療を網羅し、(i)疾患にかかりやすい可能性があるが、未だそれを有すると診断されていない対象において、疾患が発生するのを予防すること、(ii)疾患を阻害すること、すなわち、その発病を停止させること、または(iii)疾患を軽減させること、すなわち、疾患の退行を引き起こすことを含む。一態様では、対象は霊長類などの哺乳動物であり、さらなる態様では、対象はヒトである。「対象」という用語には、飼い慣らされた動物(例えば、ネコ、イヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、および実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ミバエなど)も含まれる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「予防する」または「予防すること」という用語は、特に事前行動によって、何かが起こるのを、妨げる、回避する、未然に防ぐ、未然に食い止める、阻止する、または邪魔することを指す。低減させる、阻害する、または予防するが本明細書で使用される場合、具体的に別段の指示がない限り、他の2つの語の使用も明示的に開示されていることが理解される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「診断された」という用語は、当業者、例えば医師によって、身体検査に供されたこと、および本明細書で開示される化合物、組成物、または方法によって診断または治療することができる状態を有することが見出されたことを意味する。例えば、「がんと診断された」とは、当業者、例えば、医師によって身体検査に供され、腫瘍サイズを低減させることができる、または腫瘍の増殖速度を遅延させることができる化合物または組成物によって診断または治療され得る状態を有することが見出されたことを意味する。がん、腫瘍、または少なくとも1つのがんもしくは腫瘍細胞を有する対象は、当該技術分野において公知の方法を使用して特定され得る。例えば、がん細胞または腫瘍の解剖学的位置、総サイズ、および/または細胞組成は、造影MRIまたはCTを使用して決定することができる。がん細胞を特定するための追加の方法には、超音波検査、骨スキャン、外科生検、および生物学的マーカー(例えば、血清タンパク質レベルおよび遺伝子発現プロファイル)が含まれ得るが、これらに限定されない。本発明の細胞増感組成物を含む撮像溶液は、例えば、がん細胞を特定するために、MRIまたはCTと組み合わせて使用されてもよい。
【0038】
本明細書で使用される場合、「投与すること」および「投与」という用語は、医薬調製物を対象に提供する任意の方法を指す。このような方法は、当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼内投与、耳内投与、脳内投与、経直腸投与、舌下投与、口腔投与、ならびに静脈内投与、動脈内投与、浸潤による特定の器官への投与、筋肉内投与、腫瘍内投与、および皮下投与などの注射用を含む非経口投与が含まれるが、これらに限定されない。投与は、連続的であっても間欠的であってもよい。様々な態様では、調製物は、治療的に投与されてもよく、すなわち、既存の疾患または状態を治療するために投与されてもよい。さらなる様々な態様では、調製物は、予防的に投与されてもよく、すなわち、疾患または状態の予防のために投与されてもよい。
【0039】
本明細書で使用される場合、「有効量」および「有効な量」という用語は、望ましい結果を実現するために、または望ましくない状態に対して効果を有するために十分な量を指す。例えば、「治療有効量」は、望ましい治療結果を実現するために、または望ましくない症状に対して効果を有するために十分であるが、概して、有害な副作用を引き起こすのに不十分な量を指す。任意の特定の患者のための具体的な治療有効用量レベルは、治療されている障害および障害の重症度、用いられている特定の組成物、患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事、投与時期、投与経路、用いられている特定の化合物の排泄率、治療の持続期間、用いられている特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用される薬物、ならびに医学分野において周知の同様の要因を含む、多様な要因に依存する。例えば、化合物の用量を、望ましい治療効果を実現するために必要とされるよりも低いレベルで開始すること、および望ましい効果が実現されるまで投薬量を徐々に増大させることは、十分に当該技術分野の範囲内である。望ましい場合、投与の目的のために、有効1日用量を複数回用量に分割することができる。結果として、単回用量組成物は、1日用量を構成するような量またはその約数を含有することができる。投薬量は、任意の禁忌の事象においては、個々の医師によって調整され得る。投薬量は、変動し得、1日に1回以上の用量投与で、1日または数日間にわたって投与され得る。指針は、所与のクラスの医薬品に適切な投薬量についての文献に見出され得る。さらなる様々な態様では、調製物は、「予防有効量」、すなわち、疾患または状態の予防に有効な量で投与され得る。
【0040】
有効投薬量は、最初にインビトロアッセイから推定されてもよい。例えば、動物で使用するための初回投薬量は、インビトロアッセイで測定される特定の化合物のIC50である、またはそれを超える活性化合物の循環血液または血清濃度を達成するために製剤化され得る。特定の活性剤のバイオアベイラビリティを考慮に入れて、このような循環血液またはスクラム濃度を達成するための投薬量を計算することは、十分に当業者の能力の範囲内である。指針については、読者は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Fingl & Woodbury,“General Principles,”In:Goodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics,Chapter 1,pp.1-46,latest edition,Pergamagon Press、およびその中で引用されている参考文献を参照されたい。
【0041】
「抗がん組成物」という語句は、抗腫瘍効果、化学療法効果、抗ウイルス効果、抗有糸分裂効果、抗腫瘍活性効果、抗血管新生効果、抗転移効果および/または免疫療法効果を発揮し、例えば細胞抑制効果もしくは細胞破壊効果によって、例えば腫瘍細胞上で直接的に、また、生物学的応答修飾などの機構を介して間接的に、新生細胞の発生、成熟、もしくは拡散を防ぐ、組成物を含むことができる。商業用途、臨床評価、および臨床前開発において、多数の抗増殖剤が利用可能であり、これらは、併用薬物化学療法によって本出願に含まれ得る。説明の便宜のために、抗増殖剤は、以下のクラス、サブタイプ、および種に分類される:ACE阻害剤、アルキル化剤、血管新生阻害剤、アンジオスタチン、アントラサイクリン/DNAインターカレーター、抗がん抗生物質または抗生物質型の薬剤、代謝拮抗剤、抗転移性化合物、アスパラギナーゼ、ビスホスホネート、cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤、炭酸カルシウム、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、DHA誘導体、DNAトポイソメラーゼ、エンドスタチン、エピポドフィロトキシン、ゲニステイン、ホルモン抗がん剤、親水性胆汁酸(URSO)、免疫調節剤または免疫学的薬剤、インテグリンアンタゴニスト、インターフェロンアンタゴニストまたは薬剤、MMP阻害剤、その他の抗腫瘍剤、モノクローナル抗体、ニトロソウレア、NSAID、オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、pBATT、放射線/化学増感剤/保護剤、レチノイド、内皮細胞の増殖および遊走の選択的阻害剤、セレン、ストロメライシン阻害剤、タキサン、ワクチン、ならびにビンカアルカロイド。
【0042】
いくつかの抗増殖剤が含まれる主要なカテゴリーには、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質型の薬剤、ホルモン性抗がん剤、免疫学的薬剤、インターフェロン型薬剤、およびその他の抗腫瘍剤のカテゴリーが含まれる。いくつかの抗増殖剤は、複数のまたは未知の機構を介して作動し、したがって、2つ以上のカテゴリーに分類され得る。
【0043】
「チルマノセプト」は、LYMPHOSEEK(登録商標)診断剤の非放射標識前駆体を指す。チルマノセプトは、マンノシルアミノデキストランである。それは、複数のアミノ末端リーシュ(leash)(-O(CH2)3S(CH2)2NH2)がコアグルコース要素に結合しているデキストラン骨格を有する。加えて、マンノース部分は、多数のリーシュのアミノ基にコンジュゲートされ、キレーターのジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)は、マンノースを含有していない他のリーシュのアミノ基にコンジュゲートされ得る。一般に、チルマノセプトは、複数のグルコース残基がアミノ末端リーシュを含むデキストラン骨格を有し、
【0044】
【0045】
マンノース部分は、アミジンリンカーを介してリーシュのアミノ基にコンジュゲートされ、
【0046】
【0047】
キレーターのジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)は、アミドリンカーを介してリーシュのアミノ基にコンジュゲートされる。
【0048】
【0049】
チルマノセプトは、デキストラン3-[(2-アミノエチル)チオ]プロピル17-カルボキシ-10,13,16-トリス(カルボキシメチル)-8-オキソ-4-チア-7,10,13,16-テトラアザヘプタデカ-1-イル3-[[2-[[1-イミノ-2-(D-マンノピラノシルチオ)エチル]アミノ]エチル]チオ]プロピルエーテル錯体という化学名を有し、チルマノセプトTc99mは、以下の分子式:[C6H10O5]n.(C19H28N4O9S99mTc)b.(C13H24N2O5S2)c.(C5H11NS)aを有し、3~8個のコンジュゲートDTPA分子(b)、12~20個のコンジュゲートマンノース分子(c)、および遊離のままの0~17個のアミン側鎖(a)を含有する。チルマノセプトは、以下の一般構造を有する:
【0050】
【0051】
グルコースのある特定の部分は、結合したアミノ末端リーシュを有することができない。
本開示は、著しい安全性リスクを導入することなく、両方ともCD206を発現する(すなわち、CD206+である)M2様TAMおよびMDSCを効果的に減少させる、または排除する手段を記載している。本開示は、TAMおよび/またはMDSCを除去することを意図して、小分子および/または金属イオンのTAMおよびMDSCへの標的化された送達を可能にする薬物送達ビヒクルおよび使用方法をさらに記載している。本開示の文脈において、除去は、細胞傷害効果(すなわち、細胞死)のために、および/またはプログラム細胞死(例えば、アポトーシス)の誘導によって細胞(例えば、TAMおよび/またはMDSC)の数を減少させることを意味する。TAMおよびMDSCの標的化された送達は、TAMおよびMDSCに対する小分子およびイオンのより高い質量用量を提供し、除去効果を増加させると同時に、オフターゲット細胞および組織への潜在的な毒性曝露を制限する。本開示の化合物および方法の使用は、M2様(免疫抑制性)活性化マクロファージ、具体的にはTAMおよび/またはMDSCの効果的な除去をもたらす。
【0052】
化合物
ある特定の態様では、本明細書に開示される化合物は、1つ以上の活性治療剤を送達するために、マンノース結合Cレクチン型受容体標的化部分(例えばマンノース)がコンジュゲートされているポリマー(例えば炭水化物)骨格を含む担体構築物を利用する。このような構築物の例は、マンノシルアミノデキストラン(MAD)を含み、これは、骨格のグルコース残基にマンノース分子がコンジュゲートされ、かつ骨格のグルコース残基に活性医薬成分がコンジュゲートされているデキストラン骨格を含む。チルマノセプトはMADの特定の例である。DTPAがコンジュゲートしていないチルマノセプトであるチルマノセプトの誘導体はMADのさらなる例である。
【0053】
ある特定の実施形態では、本開示は、1つ以上のマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分および1つ以上の治療剤が結合されているデキストランベースの部分または骨格を含む化合物を提供する。デキストランベースの部分は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,409,990号(‘990特許)に記載されているものと同様のデキストラン骨格を概して含む。したがって、骨格は、主にα-1,6グリコシド結合によって連結された複数のグルコース部分(すなわち、残基)を含む。α-1,4および/またはα-1,3結合などの他の連結が存在することもある。いくつかの実施形態では、あらゆる骨格部分が置換されているとは限らない。いくつかの実施形態では、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分は、デキストラン骨格のグルコース残基の約10%~約50%、またはグルコース残基の約20%~約45%、またはグルコース残基の約25%~約40%に結合される。いくつかの実施形態では、デキストランベースの部分は、約50~100kDである。デキストランベースの部分は、少なくとも約50kD、少なくとも約60kD、少なくとも約70kD、少なくとも約80kD、または少なくとも約90kDであり得る。デキストランベースの部分は、約100kD未満、約90kD未満、約80kD未満、約70kD未満、または約60kD未満であり得る。あるいは、いくつかの実施形態では、デキストラン骨格は、約1~約50kDaのMWを有し、一方、他の実施形態では、デキストラン骨格は、約5~約25kDaのMWを有する。さらに他の実施形態では、デキストラン骨格は、約8~約15kDa、例えば、約10kDaのMWを有する。一方、他の実施形態では、デキストラン骨格は、約1~約5kDa、例えば約2kDaのMWを有する。
【0054】
さらなる態様によれば、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分は、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンから選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、標的化部分は、デキストラン骨格のグルコース残基の約10%~約50%、またはグルコース残基の約20%~約45%、またはグルコース残基の約25%~約40%に結合される。本明細書で参照されるMW、ならびにデキストラン骨格に結合される受容体基質、リーシュ、および診断/治療部分のコンジュゲーションの数および程度は、合成技術がいくらかの変動をもたらすため、担体分子の所与の量についての平均量を指す。
【0055】
ある特定の実施形態によれば、1つ以上のマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分および1つ以上の治療剤は、リンカーによってデキストランベースの部分に結合される。リンカーは、骨格部分の約50%~約100%、または約70%~約90%で結合されてもよい。リンカーは同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ末端リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、-O(CH2)3S(CH2)2NH-を含むことができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、炭素、酸素、硫黄、窒素およびリンから選択される1から20個のメンバー原子の鎖であってもよい。リンカーは、直鎖であっても分岐であってもよい。リンカーはまた、ハロ基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、C1~4アルキルなどのアルキル基、C1~4アルケニルなどのアルケニル基、C1~4アルキニルなどのアルキニル基、ヒドロキシ基、オキソ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルコキシ基、ニトロ基、アジドアルキル基、アリールまたはヘテロアリール基、アリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、アラルコキシまたはヘテロアラルコキシ基、HO-(C=O)-基、ヘテロ環式基、シクロアルキル基、アミノ基、アルキル-およびジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、-NH-NH2、=N-H、=N-アルキル、-SH、-S-アルキル、-NH-C(O)-、-NH-C(=N)-などを含むが、これらに限定されない1つ以上の置換基で置換されてもよい。当業者に明らかなように、他の好適なリンカーも可能である。
【0056】
いくつかの実施形態では、1つ以上の治療剤は、生分解性リンカーを介して結合される。いくつかの実施形態では、生分解性リンカーは、ヒドラゾンなどのpH感受性部分を含む。より低い(より酸性の)pHでは、ヒドラゾンリンカーは、pHが低下するにつれて増加する速度で自発的に加水分解する。マンノシル化デキストランがCD206に結合すると、それは、経時的にますます酸性化されるエンドソームに内在化され、それによって治療剤ペイロードを細胞内に放出する。
【0057】
ある特定の実施形態では、治療剤は、本明細書に開示されるMAD担体に結合したときに、TAMおよび/またはMDSCを除去することができる。さらなる実施形態では、治療剤は、M1へのM2 TAMの再分極を誘導することができる。ある特定の態様では、治療剤は、金属イオンである。例示的な実施形態では、金属イオンは、Cu(II)である。これらの実施形態の例示的な態様では、Cu(II)イオンは、1つ以上のリーシュ上で(以下にさらに記載されるように)キレーターに結合される。ある特定の態様では、治療剤は、化合物の分子当たり1つ以上のCu(II)イオンから構成される。さらなる実施形態では、治療剤は、1つのCu(II)イオンからキレーター部分の数に等しい数のCu(II)イオンから構成される。別のさらなる実施形態では、Cu(II)イオンの数は、1~12個のCu(II)イオンである。なお一層さらなる実施形態では、Cu(II)イオンの数は、3~8個のCu(II)イオンである なおさらなる実施形態では、治療剤は、約4個のCu(II)イオンから構成される。
【0058】
さらなる実施形態によれば、治療剤は、銅[Cu]、銀[Ag]、ニッケル[Ni]、パラジウム[Pd]、コバルト[Co]、ロジウム[Rh]、鉄[Fe]、ルテニウム[Ru]、オスミウム[Os]、カドミウム[Cd]、ヒ素[As]、アンチモン[Sb]、および/またはガドリニウム[Gd]から選択される金属である。なおさらなる実施形態では、治療剤は、前述の金属に対する2つ以上の組み合わせである。
【0059】
さらなる実施形態によれば、治療剤は、細胞傷害剤(例えば、ドキソルビシン)である。別のさらなる実施形態では、細胞傷害剤は、アムサクリン、ベキサロテン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、セツキシマブ、シスプラチン、クリサンタスパーゼ、ダカルバジン、ドセタキセル、ヒドロキシカルバミド(ヒドロキシ尿素)、イリノテカン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、プロカルバジン、テモゾロミド、トポテカン、トラスツズマブ、および/またはトレチノインから選択される。なお一層さらなる実施形態では、治療剤は、前述の細胞傷害剤のうちの2つ以上の組み合わせである。
【0060】
なおさらなる実施形態では、治療剤は、抗がん剤である。
ある特定の態様では、キレート剤は、開示された化合物に結合または組み込まれてもよく、治療剤、例えばCu(II)をキレートするために使用され得る。例示的なキレーターとしては、ペンテト酸またはジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)(Mx-DTPAなど)、ドデカンテトラ酢酸(DOTA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、NETA、ヒドラジノニコチンアミド(HYNIC)、および/またはトリアザシクロノナントリ酢酸(NOTA)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の例示的な実施態様によれば、キレーターは、DOTAである。
【0061】
ある特定の態様では、開示される化合物は、薬学的に許容される担体の形態で存在する。
ある特定の実施形態によれば、開示される化合物は、式(I)の化合物:
【0062】
【0063】
(式中、各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、
各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療剤またはHを含み、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、
nはゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは治療剤を含む)である。
【0064】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つのL1は、-(CH2)pS(CH2)-NH-を含み、式中、pおよびqは、0~5の整数である。
さらなる実施形態によれば、少なくとも1つのL2は、O、SおよびNからなる群から選択される最大3個のヘテロ原子によって任意選択により中断されたC2~12炭化水素鎖である。
【0065】
なおさらなる実施形態では、少なくとも1つのL2は、-(CH2)pS(CH2)-NH-を含み、式中、pおよびqは、独立して、0~5の整数である。
さらなる実施形態では、開示される組成物は式(II)のものであり、
【0066】
【0067】
式中、*は、治療剤が結合している点を示す。ある特定の実施形態では、治療剤は、リンカーを介して結合される。
ある特定の実施形態によれば、開示される化合物は、薬学的に許容される担体と、本明細書に開示される化合物、または化合物の薬学的に許容される塩とを含むことができる。開示される化合物、またはその薬学的に許容される塩はまた、1つ以上の他の治療活性化合物と組み合わせて、医薬組成物に含まれてもよい。
【0068】
利用される医薬担体は、例えば、固体、液体、または気体であってもよい。固体担体の例としては、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸が挙げられる。液体担体の例は、シュガーシロップ、ピーナッツオイル、オリーブオイル、および水である。気体担体の例としては、二酸化炭素および窒素が挙げられる。
【0069】
経口剤形のための組成物を調製する際に、任意の好都合な医薬媒質を用いることができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤などを使用して、懸濁液、エリキシル剤および液剤などの経口液体調製物を形成することができ、一方、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの担体を使用して、散剤、カプセル剤および錠剤などの経口固体調製物を形成することができる。それらの投与の容易さにより、錠剤およびカプセル剤は好ましい経口投薬量単位であり、それにより、固体医薬担体が用いられる。任意選択で、錠剤を、標準的な水性または非水性技術によってコーティングすることができる。
【0070】
開示される化合物を使用する方法が、さらに本明細書に開示される。ある特定の実施形態では、CD206を発現するマクロファージおよび/またはCD206を発現する骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を除去する方法であって、デキストラン骨格ならびにそれに結合された1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療剤を含む、有効用量の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法が開示される。M2からM1へ腫瘍関連マクロファージ(TAM)を再分極するための方法であって、有効量の本明細書に開示される化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法がさらに本明細書に開示される。
【0071】
ある特定の態様では、化合物は、治療有効量で投与される。化合物は、予防有効量で投与される。
別のさらなる態様では、方法は、化合物を、静脈内、腹腔内、筋肉内、経口、皮下 眼内、腫瘍内注射、もしくは経皮的に、または浸潤技術による腫瘍器官への直接送達により投与することをさらに含む。
【0072】
なおさらなる態様では、方法は、組成物を少なくとも1つの他の治療または療法と併せて投与することをさらに含む。なお一層さらなる態様では、他の治療または療法は、抗がん剤を同時投与することを含む。さらなる態様では、他の治療または療法は、化学療法である。ある特定の態様では、化合物は、単独で、または他の化学ベースの療法と組み合わせて、もしくは放射線療法もしくは熱療法もしくは理学療法もしくは食事療法と組み合わせて投与される。
【0073】
ある特定の実施形態によれば、別の療法または治療と併せた本明細書に開示される化合物の投与は、他の療法または治療単独の投与と比較して低減された毒性と関連付けられる。さらなる実施形態では、本開示の化合物および他の治療または治療の同時投与は、相乗効果を生じる。別のさらなる実施形態では、本開示の化合物の同時投与は、より低い有効用量の他の療法または治療を提供する。
【0074】
本明細書に提供される方法は、アジュバント設定において実施され得る。いくつかの実施形態では、方法は、ネオアジュバント設定で実施され、すなわち、方法は、一次/原因療法の前に実施され得る。いくつかの実施形態では、方法は、以前に治療されたことのある個体を治療するために使用される。本明細書に提供される治療方法のいずれかは、以前に治療されていない個体を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態では、方法は、第一選択療法として使用される。いくつかの実施形態では、方法は、第二選択療法として使用される。
【0075】
ある特定の態様によれば、対象は、黒色腫、乳がん、肺がん、膵臓がん、腎臓がん、卵巣がん、前立腺がんもしくは子宮頸がん、膠芽腫、または結腸直腸がん、脳脊髄腫瘍、頭頸部がん、胸腺腫、中皮腫、食道がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、胆管がん、膀胱がん、精巣がん、生殖細胞がん、脳がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、リンパ腫、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄腫、肉腫、またはそれらの任意の組み合わせと診断されている。
【0076】
ある特定の態様では、方法は、組成物をボーラスとして、および/または一定の間隔で投与することをさらに含む。ある特定の態様では、開示される方法は、組成物を、静脈内、腹腔内、筋肉内、経口、皮下、腫瘍内、または経皮的に投与することをさらに含む。
【0077】
ある特定のさらなる実施形態によれば、方法は、対象をがんと診断することをさらに含む。さらなる態様では、対象は組成物の投与前にがんと診断される。なおさらなる態様によれば、方法は、組成物の有効性を評価することをさらに含む。別のさらなる態様では、組成物の有効性を評価することは、組成物を投与する前に腫瘍サイズを測定すること、および化合物を投与した後に腫瘍サイズを測定することを含む。なお一層さらなる態様では、組成物の有効性を評価することは、一定の間隔で行われる。ある特定の態様によれば、開示される方法は、方法の少なくとも1つの態様を任意選択で調整することをさらに含む。別のさらなる態様では、方法の少なくとも1つの態様を調整することは、組成物の用量、組成物の投与頻度、または化合物の投与経路を変更することを含む。
【0078】
ある特定の代替の実施形態によれば、対象は、CD206+マクロファージおよび/またはMDSCのレベルの上昇と関連する疾患と診断されている。このような疾患または状態には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、アレルギー性疾患、円形脱毛症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、抗シンセターゼ症候群、動脈プラーク障害、喘息、アテローム性動脈硬化症、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性甲状腺機能低下症、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性じんましん、自己免疫性ブドウ膜炎、バロー病/バロー同心円性硬化症、ベーチェット病、バージャー病、ビッカースタッフ型脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性再発性多巣性骨髄炎、慢性閉塞性肺疾患、慢性静脈うっ血性潰瘍、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠乏症、接触性皮膚炎、頭蓋動脈炎、クレスト症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、ドゴー病、ダーカム病、ヘルペス状皮膚炎、皮膚筋炎、I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、びまん性皮膚全身性硬化症、ドレスラー症候群、薬物誘発性ループス、円板状エリテマトーデス、湿疹、肺気腫、子宮内膜症、腱付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エヴァンズ症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維化性肺胞炎(または特発性肺線維症)、胃炎、胃腸疱瘡、ゴーシェ病、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、心臓疾患、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹(別名妊娠性類天疱瘡)、化膿性汗腺炎、HIV感染、ヒューズ・ストービン症候群、低ガンマグロブリン血症、感染性疾患(細菌感染性疾患を含む)、特発性炎症性脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、炎症性関節炎、炎症性腸疾患、炎症性認知症、間質性膀胱炎、間質性肺炎、若年性特発性関節炎(別名若年性関節リウマチ)、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルポイド肝炎(別名自己免疫性肝炎)、エリテマトーデス、リンパ腫様肉芽腫、マジード症候群、がん(例えば、肉腫、カポジ肉腫、リンパ腫、白血病、癌腫および黒色腫)を含む悪性腫瘍、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合性結合組織病、斑状強皮症、ムッハ・ハーベルマン病(別名急性痘瘡状苔癬状粃糠疹)、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(別名デビック病)、神経性筋緊張病、眼部瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、PANDAS(小児自己免疫性溶連菌感染関連性神経精神障害)、傍腫瘍性小脳変性症、パーキンソン障害、発作性夜間血色素尿症(PNH)、パリー・ロンバーグ症候群、パーソネージ・ターナー症候群、扁平部炎、尋常性天疱瘡、末梢動脈性疾患、悪性貧血、静脈周囲脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性神経障害、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤血球糸無形成症、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発性軟骨炎、ライター症候群、再狭窄、むずむず脚症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、敗血症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スティル病(成人発症)、スティッフパーソン症候群、脳卒中、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎(別名「巨細胞性動脈炎」)、血小板減少症、トロサ・ハント症候群、移植(例えば、心臓/肺移植)拒絶反応、横断性脊髄炎、結核、潰瘍性大腸炎、未分化結合織疾患、未分化脊椎関節症、じんましん様血管炎、血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症が含まれるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法がどのように作製および評価されるかのある特定の例の完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、単に本発明の例であることを意図し、本発明者がこれらの発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、多くの変更が、開示され、依然として本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、同様または類似の結果を得る特定の実施形態において行われ得ることを理解すべきである。
【0080】
実施例1:銅(II)[Cu(II)]チルマノセプトは、M2様マクロファージをM1様表現型へ再分極する。
CD206は、M2様TAMを含むほとんどのM2様マクロファージにおいて、M1様マクロファージよりも高いレベルで発現される。したがって、チルマノセプトはM2様TAMに局在する。第1の実験では、チルマノセプトのDTPA部分へのキレート化を介して、チルマノセプト分子当たり約3.9個の銅イオンの割合で、チルマノセプトにCu[II]イオンを充填した。3人のヒトボランティアからのヒト末梢血単球を、10%+2.0g/Lのグルコース、0.3g/LのL-グルタミン、2.0g/LのNaHCO3、および1mLのピルビン酸ナトリウム(11g/L)の最終濃度にウシ胎児血清を補充したRPMI-1640培地中に配置することによって、M2様表現型を取るように誘導した。この培養培地に、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)も加えて50ng/mlの濃度にした。この培養培地中に単球を含有するフラスコを3日間インキュベートして、M2表現型を有するCD206を発現するマクロファージへの分化を誘導した。これらの細胞はまた、骨髄細胞表面マーカーCD14を発現する。
【0081】
次いで、CD14+CD206+M2様マクロファージを、様々な濃度のCu(II)-チルマノセプト:0、1、2、4、8、16(ug/ml)で同じ培養培地中でインキュベートした。これらの濃度のCu(II)-チルマノセプトは、およそ0、50、100、200、400、800nMに等しい。培養物を23または48時間インキュベートし、その後、M1様表現型:CD80およびCD86を有するマクロファージについてのCD206および細胞表面マーカーの発現について、フローサイトロジー(flow cytology)によって評価した。
【0082】
未処理の対照マクロファージにおけるCD206+マクロファージの幾何平均蛍光と比較して、3人のボランティアドナーに由来するマクロファージ間に差があったが、Cu(II)-チルマノセプト曝露は、CD206免疫蛍光の量を約40~60+%減少させ、これらのマクロファージがM2様表現型から、よりM1様表現型に移行することを示した(
図1)。観察されたCD206発現の変化の大部分は、
図2に示すように、1.0μg/mlまたは2.0μg/ml(50nmまたは100nm)のCu(II)-チルマノセプト濃度で生じたこと、および変化のほとんどは23時間以内に生じたことに留意されたい。
【0083】
CD80およびCD86は、様々な免疫細胞によって発現され得る細胞表面マーカーである。M1様活性化マクロファージは、M2様マクロファージよりも高いレベルのCD80およびCD86を発現する。CD80およびCD86は、T細胞上で発現したCD28に結合する受容体複合体を形成し、T細胞の活性化をもたらす。
図3に示すように、CD80およびCD86の両方の発現は、Cu(II)-チルマノセプトへの曝露によって、特に48時間の曝露後に増加する。
【0084】
M2様マクロファージのM1様マクロファージへの再分極は、M2マーカーの発現の減少およびM1マーカーの発現の増加として現れる。したがって、Cu(II)-チルマノセプトによる再分極の効率の尺度は、同様に処理したマクロファージ上のCD206発現の変化(
図2)に正規化された未処理の対照と比較して、Cu(II)-チルマノセプトで処理したマクロファージ上のCD80およびCD86発現の変化(
図3)によって表すことができる。この分析の結果を
図4に示す。これらのCD206発現正規化分析の結果は、Cu(II)-チルマノセプトが、濃度および時間依存様式で、M2様マクロファージの、よりM1様マクロファージ表現型への再分極を引き起こすことを示す。
【0085】
この実施例に記載される実験は、Cu(II)-チルマノセプトが、M2様マクロファージを、よりM1様活性化表現型に再分極しているという概念実証を提供する。このような効果は、2つの関連する機構を通じて腫瘍の炎症性微小環境を劇的に変化させていると予想される。第1に、TAMの表現型を変化させることによって、腫瘍誘発性の免疫抑制性表現型から離れ、より抗腫瘍性の炎症誘発性表現型に向かわせる。第2に、炎症誘発性TAMは、IL-10およびTGFβなどの免疫抑制サイトカインの産生を低下させることにより、かつCD80およびCD86などの炎症誘発性シグナル伝達分子の産生を増加させることにより、T細胞を含む、他の免疫細胞の抗腫瘍および炎症誘発活性化を促進すると予想される。TAMの再分極は、それ自体で臨床的に有意な治療効果を有すると予想されるが、M1様表現型へのTAM再分極の最大の臨床的有用性は、TAMの再分極を他の抗がん療法と組み合わせることによって実現されてもよく、それによって、M2様TAMの腫瘍促進効果を除去または低減することにより、他の抗がん療法が、より効果的になり、おそらく相乗的により効果的になり得る。他の抗がん剤の有効性を改善するTAM再分極の能力は、任意の特定のクラスの抗がん療法に限定されることはないと予想される。TAM再分極は、細胞傷害剤、放射線療法、およびチェックポイント阻害剤を対象としたものなどの生物学的療法の有効性を改善することができる。最後に、マクロファージを再分極するCu(II)-チルマノセプトの濃度は、MDSCのアポトーシスを誘導することが予想される。MDSCはインビトロで研究することが困難であるが、Cu(II)がTAM表現型を変化させる能力は、インビボでMDSCを誘導する能力の代用として機能する。さらに、MDSCのアポトーシスによる免疫抑制活性の除去は、リンパ球の抗腫瘍免疫応答の堅牢性を大幅に増加させると予想される。
【0086】
実施例2:ドキソルビシンペイロードを担持するマンノシル化デキストランは、CD206+マクロファージを選択的に死滅させる。
10kDaのデキストラン骨格から開始してマンノシル化デキストラン構築物を合成した。アミン末端リーシュ(約35)を各デキストラン骨格分子に付加し、その後、平均16個のマンノース部分をリーシュにコンジュゲートした。次いで、ヒドラゾンリンカーを占有されていないアミン末端リーシュに付加した。ヒドラゾンリンカーに、細胞傷害剤、ドキソルビシンを付加した。最終合成生成物は、デキストラン骨格当たり平均2.0個のドキソルビシン部分を有した。ヒドラゾンリンカーは、加水分解性であり、pH感受性であるため、ドキソルビシンペイロードのコンジュゲーションのために選択した。より低い(より酸性の)pHでは、ヒドラゾンリンカーは、pHが低下するにつれて増加する速度で自発的に加水分解する。マンノシル化デキストランがCD206に結合すると、それは、経時的にますます酸性化されるエンドソームに内在化され、それによってドキソルビシンペイロードを細胞内に放出する。対照構築物として、チルマノセプトを、平均1.5個の部分の蛍光色素Cy3を付加することによって修飾した。
【0087】
1つの実験において、末梢血単球に由来するCD206+ヒトマクロファージの培養物を、
図5においてMT1001.1と称される様々な濃度のドキソルビシン担持構築物に曝露した。培養したマクロファージを、MT1001.1に24時間曝露し、その後、培養培地を、MT1001.1を含まない新鮮な培地と置き換えた。次いで、培養物をさらに24時間インキュベートし、次いで、フローサイトメトリーによって死滅した細胞の存在を分析した。対照培養物を、薬物構築物をいずれも含まない培地、またはCy3-チルマノセプト構築物を含む培地のいずれかに曝露した。マクロファージを8.62μMの濃度でMT1001.1に曝露した実験の結果を
図5に示す。死滅した細胞の存在を示す領域は、ポリゴンで囲まれている。
【0088】
図5は、薬物を含まない培地またはCy3-チルマノセプト対照で処理したCD206+マクロファージの大部分が、実験の最後まで生存した一方で、ドキソルビシン構築物に曝露された細胞のほぼすべてがこの処理によって死滅したことを示す。他の実験(図示せず)は、MT1001.1がCD206を発現しないリンパ球に対して非常に限定された毒性を有することを示した。MDSCは、MT1001.1のアポトーシス誘導活性に対して、CD206+マクロファージよりもはるかに感受性が高いと予想される。
【0089】
感染症:
がんに加えて、CD206+M2様マクロファージは、多数の感染症の病理生物学に重要な寄与因子である。例としては、ベクター媒介性フラビウイルスによって引き起こされるデング熱、細菌感染症である結核、および原虫感染症であるリーシュマニア症が挙げられ得る。これらの病原体はすべて、マクロファージ内で複製され、CD206との相互作用を介してこれらの細胞に侵入する。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こす。現在の診療では、HIVウイルス血症およびAIDSの症状の多くは、抗レトロウイルス併用療法(cART)によって制御することができる。しかしながら、持続的なcART耐性細胞リザーバーが、cARTで治療された患者に存在し、cARTでの治癒的処置を阻止する。重要なcART耐性リザーバーは、CD206+マクロファージから構成される。最後に、CD206+マクロファージは、いくつかの寄生虫の病理生物学に寄与する。
【0090】
本発明は好ましい実施形態に関して記載されてきたが、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細に変更が行われ得ることを認識するであろう。
【国際調査報告】