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特表2022-544838非ステロイド性抗炎症薬物を使用する組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】非ステロイド性抗炎症薬物を使用する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20221014BHJP
   A61K 31/616 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 36/886 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 38/40 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/616
A61P29/00
A61P1/02
A61K36/886
A61K38/40
A61K38/46
A61K9/12
A61K9/20
A61K47/10
A61K47/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511083
(86)(22)【出願日】2020-08-22
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 US2020047551
(87)【国際公開番号】W WO2021035198
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/890,517
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518303387
【氏名又は名称】アプライド バイオロジカル ラボラトリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ラテフィ ナズリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC16
4C076DD37
4C076DD38
4C076EE32
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA44
4C084DA41
4C084DC22
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA35
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA08
4C084ZA67
4C084ZB11
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA17
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA67
4C088AB71
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA02
4C088MA13
4C088MA35
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA08
4C088ZA67
(57)【要約】
75mg未満のNSAIDの用量を含む組成物が提供される。本明細書に示されるように、これらの組成物は、粘膜の炎症状態の治療および予防に使用され得る。特に、75mg未満の用量のアセチルサリチル酸は、NSAID投与に関連する有害作用なしに、結合した粘膜に対して療法的および予防的作用を有することが示されている。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、および/または希釈剤と、1つ以上の非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)と、を含む、薬学的組成物であって、NSAIDの総濃度が、75mg/ml未満である、薬学的組成物。
【請求項2】
前記NSAIDが、アセチルサリチル酸(ASA)を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記アセチルサリチル酸の濃度が、10mg/ml未満である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記NSAIDの総濃度が、20mg/ml未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記組成物の総NSAID含有量が、前記NSAID含有量の重量に対する90%超、または95%超、または99%超のサリチラートおよびその誘導体(例えば、アセチルサリチル酸、サリチル酸)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
アセチルサリチル酸が、前記組成物中の唯一のNSAIDであるか、または前記NSAIDのうちの、前記組成物中の前記NSAIDの重量に対する90%超、もしくは95%超、もしくは99%超が、アセチルサリチル酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
アセチルサリチル酸およびアロエ抽出物が、前記組成物中の唯一のNSAIDであるか、または前記NSAIDのうちの、前記組成物中の前記NSAIDの重量に対する90%超、もしくは95%超、もしくは99%超が、アセチルサリチル酸およびアロエ抽出物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
ラクトフェリンおよびリゾチームをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記ラクトフェリン対リゾチームの重量比が、1:1~1:100である、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
ラクトフェリンおよびリゾチーム対NSAIDの重量比が、10:1~1:10である、請求項8または9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記薬学的組成物が、コルチコステロイドを含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記薬学的組成物が、
a)1~10mg/mlの前記1つ以上のNSAIDと、
b)0.1~1mg/mlのラクトフェリンと、
c)1~10mg/mlのリゾチームと、
c)10~100mg/mlのグリセロールと、
e)100~400mg/mlの甘味料と、
f)1~20mg/mlのメントールと、
g)1~20mg/mlのカルボキシメチルセルロースと、
h)1~20mg/mlのアロエと、を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記薬学的組成物が、トローチとして配合される、請求項1~12のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記1つ以上のNSAIDの総重量が、50mg未満(例えば、25mg未満、20mg未満、10mg未満)である、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記トローチが、0.1~10mgのアセチルサリチル酸を含む、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記トローチが、0.1~10mgのアセチルサリチル酸を含み、前記1つ以上のNSAIDのうちの、前記NSAIDの重量に対する90%超が、アセチルサリチル酸である、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記トローチが、
a)1~10mgの前記1つ以上のNSAIDと、
b)0.1~1mgのラクトフェリンと、
c)1~10mgのリゾチームと、
c)10~100mgのグリセロールと、
e)100~400mgの甘味料と、
f)1~20mgのメントールと、
g)1~20mgのカルボキシメチルセルロースと、
h)1~20mgのアロエと、を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記薬学的組成物が、経口スプレーとして配合される、請求項1~12のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の薬学的組成物の投与を含む、喉の痛みの治療または予防を必要とする対象における喉の痛みを治療または予防するための、方法。
【請求項20】
325mg未満(例えば、100mg未満、75mg未満、50mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満)の複数の前記NSAIDが、24時間で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
325mg未満(例えば、100mg未満、75mg未満、50mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満)の前記複数のNSAIDが、12時間で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記喉の痛みが、プロスタグランジン産生の増加を生じる炎症に関連する、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
薬学的製品であって、
(a)請求項18に記載の経口スプレー組成物を分配するための、口腔通路に挿入されるように構成されている本体、
(b)前記オリフィスと流体連通しているリザーバであって、前記経口スプレー組成物が、前記リザーバに収容されている、リザーバ、
(c)前記オリフィスを通じて、使用者の口腔粘膜(例えば、喉の粘膜)をコーティングすることが可能な、適切なサイズのエアロゾル化された飛沫の前記経口スプレー組成物を排出することが可能なポンプ機構、を備える、薬学的製品。
【請求項24】
前記ポンプ機構が、100μL~1000μLの前記経口スプレー組成物を排出するように構成されている、請求項23に記載の薬学的製品。
【請求項25】
喉の痛みの治療または予防を必要とする対象における喉の痛みを治療または予防するための方法であって、
a)口腔通路に挿入されるように構成されている、請求項23または24に記載の薬学的製品の一部分を前記対象の前記口腔通路に挿入することと、
b)前記ポンプ機構を作動させて、前記経口スプレー組成物を前記対象に投与することと、を含む、方法。
【請求項26】
前記挿入および作動ステップが、先述の前記投与経口スプレー組成物の10分超後の時点で繰り返される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
喉の痛みの治療を必要とする対象における喉の痛みを治療するための方法であって、75mg未満(例えば、50mg未満、25mg未満、15mg未満)の複数のNSAIDを前記喉に投与することを含む、方法。
【請求項28】
前記複数のNSAIDのうちの、前記複数のNSAIDの重量に対する90%超が、アセチルサリチル酸である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
325mg未満(例えば、100mg未満、75mg未満、50mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満)の前記複数のNSAIDが、24時間で投与される、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
325mg未満(例えば、100mg未満、75mg未満、50mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満)の前記複数のNSAIDが、12時間で投与される、請求項27または28に記載の方法。
【請求項31】
前記投与が、前記1つ以上のNSAIDを投与されていない他の点で同一の粘膜と比較して、(例えば、TEERによって測定して)前記粘膜のバリア完全性に最小限の影響を有するか、または全く影響を有しない、請求項19~22および25~30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年8月22日出願の米国出願第62/890,517号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
粘膜は、口腔、鼻、気管支、肺、気管および咽頭気道、視神経および眼表面、前立腺を含む泌尿生殖器系、生殖器系、ならびに結腸および直腸表面を含む消化管を覆う上皮膜である。粘膜は、多くの疾患の最初の入り口の代表である。粘膜はまた、厳密には本質的に微生物性ではない多くの障害および疾患、例えば、嚢胞性線維症、前立腺炎、および消化器障害に晒される。患者が、すべてのまたは特定の抗生物質に対するアレルギーなどの治療の形態に対してアレルギーである場合、粘膜の微生物性の感染、障害、または疾患に罹患している患者の治療には特定の問題が生じる。
【0003】
これらの問題は、粘膜に存在する炎症状態を引き起こして、感染した対象に疼痛を生じ得る。典型的には、喉の痛みは、特に嚥下時の痛みを特徴とし、多くの場合、喉頭または咽頭の炎症の兆候を伴う。咽頭炎(喉の痛み)は、最も一般的には、一般的な風邪、インフルエンザ、または単核球症などのウイルス性感染によって引き起こされる。あまり一般的ではないが、咽頭炎は、細菌性感染によって引き起こされる。最も一般的な、喉の細菌性感染は、A群レンサ球菌によって引き起こされる扁桃炎である。細菌性咽頭炎のまれな原因としては、淋病、クラミジア、およびコリネバクテリウムが挙げられる。ほとんどすべての人々が喉の痛みを経験し、予防的および療法的条件で喉の痛みに関連する炎症を低減するのに役立つ治療レジメンを提供することは、この集団に大きい利益をもたらすであろう。
【0004】
ステロイド療法は、多くの場合、患部に局所コルチコステロイドを適用することによって炎症(および喉の痛み)を低減するために選択される療法である。ステロイド使用に関連する全身性毒性を低減するために、ステロイドが食道粘膜に付着し、抗炎症作用を提供することができるような、食道または消化管の炎症障害のための局所調製物が開発された。しかしながら、喉へのコルチコステロイド投与は、多くの場合、投与および制御が困難である。イブプロフェン、アスピリン、およびパラセタモールなどの非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)もまた同様に、喉の痛みに対する抗炎症作用を提供するために使用されているが、典型的には、325mg超の投薬量で使用されている。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Moore et al,IJCP 56(2002):732-734に示されるように、特に、例えば、表2および3に示されるように、NSAID投与における有害事象に関して、NSAID投与は、多くの場合、潜在的な非活性性と合わさった関連する有害事象に悩まされる。
【発明の概要】
【0005】
前述の目的および他の目的に従って、本開示は、炎症を低減し、治療可能時間域で、有害な結果を最小限に抑えることが可能である非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)を使用して粘膜の炎症状態を治療する、薬学的組成物、薬学的製品、方法を提供する。
【0006】
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、および/または希釈剤、ならびに1つ以上の非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)を含み得、NSAIDの総濃度が、75mg/ml未満(または0.01~75mg/ml)である、薬学的組成物が提供される。ある特定の実施形態では、1つ以上の非ステロイド性抗炎症薬物は、アセチルサリチル酸(アスピリン)を含む。ある特定の実施形態では、組成物中のNSAIDのうちの、組成物の重量に対する90%超は、アセチルサリチル酸である。
【0007】
薬学的組成物は、単位用量形態(例えば、トローチ、カプセル、カプレット)であり得る。ある特定の実施形態では、単位用量形態は、75mg未満(または0.01~75mg)、または50mg未満、または25mg未満、または20未満、または15mg未満のNSAIDを含む。いくつかの実施形態では、トローチは、20mg未満(例えば、10mg未満、0.01~20mg、0.01~15mg、0.01~10mg、0.1~10mg)のアセチルサリチル酸を含む。いくつかの実施形態では、NSAIDのうちの、NSAIDの重量に対する90%超、または95%超、または95%超は、アセチルサリチル酸である。例えば、トローチは、
a)1~10mgの当該1つ以上のNSAID(例えば、アセチルサリチル酸)と、
b)任意選択的に、0.1~1mgのラクトフェリンと、
c)任意選択的に、1~10mgのリゾチームと、
c)任意選択的に、10~100mgのグリセロールと、
e)任意選択的に、100~400mgの甘味料と、
f)任意選択的に、1~20mgのメントールと、
g)任意選択的に、1~20mgのカルボキシメチルセルロースと、
h)任意選択的に、1~20mgのアロエと、を含み得る。
【0008】
薬学的組成物はまた、経口スプレーの形態であり得る。経口スプレーは、各スプレーが75mg未満(または0.01mg~75mg)、または50mg未満、または25mg未満、または20未満、または15mg未満のアセチルサリチル酸、または10mg未満のアセチルサリチル酸を投与するように配合され得る。
【0009】
経口スプレーを備える薬学的製品もまた、本開示の範囲内であり、薬学的製品が、
(a)経口スプレー組成物を分配するための、口腔通路に挿入されるように構成されている本体、
(b)オリフィスと流体連通しているリザーバであって、経口スプレー組成物が、リザーバに収容されている、リザーバ、
(c)オリフィスを通じて、使用者の口腔粘膜(例えば、喉の粘膜)をコーティングすることが可能な、適切なサイズのエアロゾル化された飛沫の経口スプレー組成物を排出することが可能なポンプ機構、を備え得る。
いくつかの実施形態では、薬学的製品内のポンプ機構は、100μL~1000μL(例えば、200~800μL、300~700μL、400~600μL、500μL)の経口スプレー組成物を排出するように構成され得る。例えば、各スプレーは、75mg未満、または50mg未満、または25mg未満、または20未満、または15mg未満のNSAIDを含み得る。いくつかの実施形態では、トローチは、20mg未満(例えば、10mg未満、0.01~20mg、0.01~15mg、0.01~10mg、0.1~10mg)のアセチルサリチル酸を含む。いくつかの実施形態では、NSAIDのうちの、NSAIDの重量に対する90%超、または95%超、または99%超は、アセチルサリチル酸である。いくつかの実施形態では、経口スプレー組成物は、100mg/ml未満(または0.01mg/ml~100mg/ml)(例えば、75mg/ml未満、50mg/ml未満、25mg/ml未満、10mg/ml未満、0.01~100mg/ml、0.1mg/ml~100mg/ml、1mg/ml~100mg/ml、0.01~75mg/ml、0.1mg/ml~75mg/ml、1mg/ml~75mg/ml、0.01~50mg/ml、0.1mg/ml~50mg/ml、1mg/ml~50mg/ml、0.01~25mg/ml、0.1mg/ml~25mg/ml、1mg/ml~25mg/ml、0.01~10mg/ml、0.1mg/ml~10mg/ml、1mg/ml~10mg/ml)のNSAID濃度を有し得る。
【0010】
また、喉の痛みの治療または予防を必要とする対象における喉の痛みを治療または予防するための方法が本明細書に開示され、方法が、喉の痛みの治療または予防を必要とする対象へのこれらの薬学的組成物の投与を含む。いくつかの実施形態では、喉の痛みの治療または予防を必要とする対象における喉の痛みを治療または予防するための方法は、75mg未満(例えば、50mg未満、25mg未満、15mg未満)の複数のNSAIDを当該喉に投与することを含み得る。本明細書に記載の投薬レジメンは、抗炎症反応が使用者の粘膜上で生じることを可能にし、それによって、かかる投与なしに存在したであろう抗炎症反応を治療および/または防止する。例えば、325mg未満(例えば、100mg未満、75mg未満、50mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満)の複数のNSAIDが、24時間で投与される。いくつかの実施形態では、325mg未満(例えば、100mg未満、75mg未満、50mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満)の複数のNSAIDが、12時間で投与される。
【0011】
ある特定の実装形態では、薬学的組成物は、
a)1~10mg/mlの当該1つ以上のNSAIDと、
b)任意選択的に、0.1~1mg/mlのラクトフェリンと、
c)任意選択的に、1~10mg/mlのリゾチームと、
c)任意選択的に、10~100mg/mlのグリセロールと、
e)任意選択的に、100~400mg/mlの甘味料と、
f)任意選択的に、1~20mg/mlのメントールと、
g)任意選択的に、1~20mg/mlのカルボキシメチルセルロースと、
h)任意選択的に、1~20mg/mlのアロエと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aは、炎症状態の開始後にNSAID組成物を添加した場合の、示された試験条件で治療した3Dインビトロ呼吸器上皮から取得した、プロスタグランジンE2(PGE-2)産生を示す。図1Bは、0.6mg/mlのアセチルサリチル酸(ASA)条件の結果を、陽性対照と比較している。「*」の増加は、測定値間の統計的有意性の増加(すなわち、*:=p値<0.05、**:=p値:=0.01、***:=p値<0.001)を示し、誤差バーは、測定値の標準偏差を表す。
図2図2Aは、炎症状態の開始前にNSAID組成物を添加した場合の、示された試験条件で治療した3Dインビトロ呼吸器上皮から取得した、プロスタグランジンE2産生を示す。図2Bは、0.6mg/mlのアセチルサリチル酸(ASA)条件の結果を、陽性対照と比較している。「*」の増加は、測定値間の統計的有意性の増加(すなわち、*:=p値<0.05、**:=p値:=0.01、***:=p値<0.001)を示し、誤差バーは、測定値の標準偏差を表す。
図3図3Aは、炎症状態の開始後の投与の各試験条件の後の、3Dインビトロ呼吸器上皮でのTEER測定値を示す。図3Bは、炎症状態の開始前の投与の各試験条件の後の、3Dインビトロ呼吸器上皮でのTEER測定値を示す。「*」の増加は、測定値間の統計的有意性の増加(すなわち、*:=p値<0.05、**:=p値:=0.01、***:=p値<0.001)を示し、誤差バーは、測定値の標準偏差を表す。
図4図4Aは、炎症状態の開始後にNSAID組成物を添加した場合の、示された試験条件で治療した3Dインビトロ呼吸器上皮から取得した、インターロイキン-8(IL-8)産生を示す。図4Bは、炎症状態の開始後にNSAID組成物を添加した場合の、示された試験条件で治療した3Dインビトロ呼吸器上皮から取得した、インターロイキン-8産生を示す。「*」の増加は、測定値間の統計的有意性の増加(すなわち、*:=p値<0.05、**:=p値:=0.01、***:=p値<0.001)を示し、誤差バーは、測定値の標準偏差を表す。
図5図5Aは、いくつかの試験条件下での、LDH放出によって測定したA549細胞の細胞毒性を示す。図5Bは、いくつかの試験条件下での、A549細胞のインターロイキン-8(IL-8)産生を示す。図5Cは、いくつかの試験条件下での、A549細胞のPGE-2産生を示す。
図6図6Aは、2つの異なる3Dインビトロ呼吸器モデルへの異なるブラジキニン適用の後の、PGE-2産生を示す。図6Bは、これらのモデルの各々での、24時間でのIL-8産生を示す。図6Cは、モデルの各々での、24時間でのTEERを示す。図6Dは、これらのモデルの各々での、24時間でのLDHによって測定した細胞毒性を示す。図6Eは、これらのモデルの各々での、48時間でのIL-8産生を示す。図6Fは、モデルの各々での、48時間でのTEERを示す。図6Gは、これらのモデルの各々での、48時間でのLDHによって測定した細胞毒性を示す。
図7図7Aは、MucilAir 3Dインビトロモデルへの異なるブラジキニン適用の後の、PGE-2産生を示す。図7Bは、これらのモデルの各々での、24時間でのTEERを示す。図7Cは、48時間でのTEERを示す。図7Dは、これらのモデルの各々での、24時間でのIL-8産生を示す。図7Eは、これらのモデルの各々での、24時間でのIL-8産生を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の詳細な実施形態は、本明細書に開示されるが、しかしながら、開示の実施形態は、様々な形態で具現化され得る開示を単に例示するに過ぎないことが理解されるものである。加えて、開示の様々な実施形態に関連して与えられる実施例の各々は、例示的であり、限定的ではないことが意図される。
【0014】
本明細書で使用されるすべての用語は、別途提供されない限り、当該技術分野におけるそれらの通常の意味を有することが意図される。すべての濃度は、別途定義されない限り、指定された構成成分の、局所組成物の全重量に対する重量パーセンテージの観点でのものである。
【0015】
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、1つ以上を意味するものとする。本明細書で使用される場合、「含む」という単語と併せて使用される場合、「a」または「an」という単語は、1つ、または2つ以上を意味する。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2の、またはそれ以上を意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、数値のすべての範囲は、終点、および開示の値間の開示されるすべての可能性のある値を含む。すべての半整数数値の正確な値はまた、具体的に開示され、開示の範囲のすべての部分集合の限定として企図される。例えば、0.1%~3%の範囲は、0.1%、1%、1.5%、2.0%、2.5%、および3%のパーセンテージを具体的に開示する。加えて、0.1~3%の範囲は、0.5%~2.5%、1%~3%、および0.1%~2.5%を含む元の範囲の部分集合を含む。個々の構成成分の全重量%の合計が100%を超えないことが理解されるであろう。
【0017】
別途指定されない限り、示されるパーセンテージは、重量でのパーセンテージ(w/w)での重量であることが意図される。しかしながら、別途指定されない限り、g/100mLで与えられる重量/体積(w/v)などの組成の他のパーセンテージが示され得る。例えば、0.6%(w/v)の重量パーセンテージは、6mg/mlである。
【0018】
「本質的にからなる」とは、成分が、市販材料中に存在する通常の不純物、および開示の動作に影響を及ぼさないレベル、例えば、5重量%未満、または1%未満、またはさらには0.5重量%未満のレベルで存在する任意の他の添加剤とともに、列挙されている構成成分のみを含むことを意味する。「含む」の使用は、「本質的にからなる」および「からなる」実施形態を明示的に開示することが意図される。
【0019】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、薬学的に許容される賦形剤とともに配合される、本明細書に記載の化合物を含有する組成物を表す。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、哺乳類における疾患を治療するための療法的レジメンの一部として、政府の規制機関の承認を得て製造または販売される。薬学的組成物は、経口投与用に、例えば、単位剤形(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ゲルキャップ、トローチ)で配合され得る。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、配合され、スプレー(例えば、経口スプレー)、またはトローチである。
【0020】
本開示の薬学的組成物は、消化管の炎症状態、例えば上部消化管の炎症状態を治療するのに好適である。
【0021】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という語句は、特定の材料が、用いられるレベルで生物学的組織への摂取または接触に一般に安全であることを示す。薬学的に許容される、は、生理学的に適合性のあるものと互換的に使用される。開示の薬学的組成物は、別途指定されない限り、栄養補助組成物(例えば、補助食品)を含むことが理解されるであろう。
【0022】
本明細書の組成物の調製に有用な薬学的担体、賦形剤、および希釈剤は、固体、液体、または気体であり得る。これらとしては、任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に許容される担体または賦形剤は、開示の化合物の薬理学的活性を破壊せず、治療量の化合物を送達するのに十分な用量で投与される場合、非毒性である。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、カプセル、坐剤、粉末、腸溶コーティング配合物、または他の保護配合物(例えば、イオン交換樹脂上での結合、または脂質-タンパク質小胞内での包装)、徐放配合物、溶液、懸濁液、エリキシル剤、およびエアロゾルの形態を取り得る。担体は、原油、動物、植物由来または合成由来のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、およびゴマ油を含む様々な油から選択され得る。水、生理食塩水、デキストロース水溶液、およびグリコールは、特に(血液と等張である場合)注射可能な溶液用の液体担体の例である。例えば、静脈内投与用の配合物は、固体活性成分を水に溶解させて水溶液を生成し、溶液を無菌化することによって調製される、活性成分の無菌水溶液を含む。好適な薬学的賦形剤としては、デンプン、セルロース、キトサン、タルク、グルコース、ラクトース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、およびエタノールが挙げられる。組成物は、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤、浸透圧を調節するための塩、および緩衝液などの従来の薬学的添加物に施され得る。好適な薬学的担体およびそれらの配合物は、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。かかる組成物は、いずれにせよ、受給者への投与に適切な剤形を調製するために、好適な担体と一緒に有効量の活性化合物を含有するであろう。
【0023】
薬学的に許容される担体および賦形剤の非限定的な例としては、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびそれらの誘導体、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、ココアバターおよび座薬ワックス、ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油などの油、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル、寒天、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、等張生理食塩水、Ringer溶液、エチルアルコール、リン酸緩衝液、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの非毒性の適合可能な潤滑剤、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味剤および芳香剤、防腐剤、抗酸化剤、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、d-アトコフェロール(d-atocopherol)ポリエチレングリコール1000コハク酸塩などの自己乳化性薬物送達系(SEDDS)、Tweenまたは他の同様の高分子送達マトリックスなどの薬学的剤形で使用される界面活性剤、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水、塩、または硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、および亜鉛塩などの電解質、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリアクリレート、ワックス、ならびにポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーが挙げられる。α-、β-、およびγ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、または2-および3-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリンなどの化学修飾誘導体、または他の可溶化誘導体も、本明細書に記載の化合物の送達を向上させるために使用され得る。
【0024】
本明細書に記載の化合物は、薬学的に許容される塩として存在し得る。典型的には、塩は、塩が電気的に中性であるように、一緒に結合した(例えば、対がイオン結合している場合がある)関連する数のカチオンおよびアニオン(それらのうちの少なくとも1つは、本明細書に記載の化合物から形成される)で構成される。薬学的に許容される塩は、親化合物と同様の活性(例えば、10%以内のED50)を保持または有し得、薬学的組成物に有用性を与える範囲内の毒性プロファイルを有し得る。例えば、薬学的に許容される塩は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応を伴わずにヒトおよび動物の組織に接触して使用するのに好適であり得、合理的な利益/リスク比に見合う。薬学的に許容される塩は、Berge et al.,J.Pharmaceutical Sciences 66:1-19,1977、およびPharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,(Eds.P.H.Stahl and C.G.Wermuth),Wiley-VCH,2008に記載されている。塩は、無機および有機の酸および塩基を含む、薬学的に許容される非毒性の酸および塩基から調製され得る。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳、カンファスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジクロロ酢酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサノン酸塩、馬尿酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、よう化水素酸塩、スルホン酸2-ヒドロキシ-エタン、イセチオン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ムチン酸塩、スルホン酸2-ナフタレン、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、プロピオン酸3-フェニル、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、スルホン酸トルエン、ウンデカン酸塩、および硫酸塩、吉草酸塩が挙げられる。代表的な塩基性塩としてはアルカリが挙げられるか、またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩、アルミニウム塩、ならびに限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、カフェイン、およびエチルアミンを含む非毒性アンモニウムカチオン、四級アンモニウムカチオン、およびアミンカチオンが挙げられる。
【0025】
開示の薬学的に許容される酸付加塩は、開示の化合物と等モルまたは過剰量の酸との反応によって形成され得る。あるいは、ヘミ塩(hemi-salt)は、開示の化合物と所望の酸との、2:1の比の化合物対酸の反応によって形成され得る。反応物質は、一般に、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソ-プロパノール、ベンゼンなどの相互溶媒中で合わせられる。塩は、通常、例えば1時間から10日以内に溶液から析出し、濾過または他の従来の方法によって単離され得る。
【0026】
単位剤形(Unit dosage form)は、単位剤形(unitary dosage form)とも称され、多くの場合、投薬量を提供するためにさらなる計量または測定を必要としない様式で供給される医薬品の形態(例えば、錠剤、カプセル、カプレット)を示す。例えば、単位剤形は、ヒト対象および他の哺乳類用の単位剤形として好適な物理的に別個の単位を指し得、各単位が、任意の好適な薬学的な1つの賦形剤または複数の賦形剤と関連して、所望の療法的作用を生じるように計算された所定の量の活性物質を含有する。例示的な非限定的な単位剤形としては、錠剤(例えば、咀嚼可能な錠剤)、カプレット、カプセル(例えば、硬質カプセルまたは軟質カプセル)、トローチ、フィルム、ストリップ、およびゲルキャップが挙げられる。ある特定の実施形態では、結晶化形態、多形、およびそれらの溶媒和物を含む本明細書に記載の化合物は、単位剤形で存在し得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、薬剤(例えば、アセチルサリチル酸)の「有効量」または「治療有効量」という用語は、臨床結果などの有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量であり、したがって、「有効量」は、それが適用される文脈に依存する。いくつかの実施形態では、化合物は、疾患障害または状態の治療または予防のための有効量で投与される。別の実施形態では、抗炎症剤である薬剤を投与する文脈において、有効量の薬剤は、例えば、薬剤を投与せずに得られる反応と比較して、喉の痛みなどの1つ以上の症状または状態の軽減もしくは改善、または防止もしくは予防を達成するのに十分な量である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」などの用語は、所望の薬理学的および/または生理学的作用を得ることを指す。作用は、疾患またはその症状を完全にもしくは部分的に防止するという観点で予防的であり得、かつ/または疾患に対する部分的もしくは完全な治癒および/もしくは疾患に起因する有害作用という観点で療法的であり得る。本明細書で使用される場合、「防止する」または「予防」という用語は、疾患または疾患の生理学的症状の発症または進行を遅延させることを含む。「治療」という用語は、所与の疾患もしくはその生理学的症状の進行の低減、減少、排除、改善、阻止、遅らせること、および/または所与の疾患もしくはその生理学的症状の発症の遅延を含む。
【0029】
典型的には、状態(例えば、喉の痛みなどの本明細書に記載の炎症状態)の治療は、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。炎症は、多くの場合、組織がウイルス、細菌、外傷、化学物質、熱、寒さ、アレルゲン、または任意の他の有害な刺激によって損傷を受けた場合に発生する。ブラジキニン、ヒスタミン、セロトニンなどを含む化学物質が放出され、組織マクロファージおよび白血球が引き寄せされて、領域に局在化して異物を取り込み、破壊する。この過程の間、TNFαなどの化学的媒介物質が放出され、炎症を引き起こす。炎症障害は、炎症が持続的または慢性的であるものである。炎症疾患、状態、または障害に対する有益なまたは所望の結果としては、限定されないが、検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず、1つ以上の症状または状態の軽減または改善;疾患、障害、または状態の程度の減少;疾患、障害、または状態の安定した(すなわち悪化しない)状態;疾患、障害、または状態の拡大の防止;疾患、障害、または状態の進行の遅延または遅らせること;疾患、障害、または状態の改善または緩和;および(部分的または完全にかかわらず)寛解を挙げることができる。疾患、障害、または状態を「緩和する」は、疾患、障害、もしくは状態の程度および/もしくは望ましくない臨床症状が、治療の不在下での程度または時間経過と比較して、低下され、かつ/または進行の時間経過が、遅くなるかもしくは長くなることを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、開示による組成物および/または化合物が、例えば、実験的、診断的、予防的、および/または療法的目的のために投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象としては、任意の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、およびヒトなどの哺乳類)が挙げられる。喉の痛みの治療または予防を必要とする対象は、典型的には、本明細書に記載の疾患、障害、または状態を治療することが望ましい対象である。例えば、治療を必要とする対象は、治療を求めているかもしくは必要し得るか、治療を必要とし得るか、治療を受けている場合があるか、将来治療を受ける場合があるか、または特定の疾患、障害、もしくは状態について訓練された専門家による治療下にあるヒトもしくは動物であり得る。
【0031】
別途指定されない限り、特定の活性薬剤をある特定の活性を有するものとして識別することは、限定的ではなく、同じ薬剤が追加の活性を有することを排除しない。
【0032】
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、および/または希釈剤、ならびに1つ以上の非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)を含み得、NSAIDの総濃度が、75mg/ml未満である、薬学的組成物が提供される。ある特定の実施形態では、1つ以上の非ステロイド性抗炎症薬物は、アセチルサリチル酸(アスピリン)を含む。ある特定の実施形態では、組成物中のNSAIDのうちの、組成物の重量に対する90%超は、アセチルサリチル酸である。
【0033】
薬学的組成物は、単位用量形態(例えば、トローチ、カプセル、カプレット)であり得る。ある特定の実施形態では、単位用量形態は、75mg未満、または50mg未満、または25mg未満、または20未満、または15mg未満のアセチルサリチル酸を含む。
【0034】
薬学的組成物はまた、経口スプレーの形態であり得る。経口スプレーは、各スプレーが75mg未満、または50mg未満、または25mg未満、または20未満、または15mg未満のアセチルサリチル酸、または10mg未満のアセチルサリチル酸を投与するように配合され得る。
【0035】
1つ以上のNSAIDは、アセチルサリチル酸(ASA)を含み得る。NSAIDは、例えば、COX-2阻害剤またはCOX-1阻害剤であり得る。本開示で使用するためのNSAIDは、NS-398(N-[2-(シクロヘキシルオキシ)-4-ニトロフェニル]メタンスルホンアミド)、ASA、セレコキシブ、またはチルマコキシブであり得る。いくつかの実施形態では、アセチルサリチル酸の濃度は、10mg/ml未満である。いくつかの実施形態では、NSAIDの総濃度は、20mg/ml未満である。いくつかの実施形態では、組成物の総NSAID含有量は、NSAID含有量の重量に対する90%超、または95%超、または99%超のアセチルサリチル酸である。様々な実装形態では、アセチルサリチル酸は、組成物中の唯一のNSAIDであるか、またはNSAIDのうちの、組成物中のNSAIDの重量に対する90%超、もしくは95%超、もしくは99%超は、アセチルサリチル酸である。ある特定の実施形態では、アセチルサリチル酸およびアロエ抽出物は、組成物中の唯一のNSAIDであるか、またはNSAIDのうちの、組成物中のNSAIDの重量に対する90%超、もしくは95%超、もしくは99%超は、アセチルサリチル酸およびアロエ抽出物である。アセチルサリチル酸およびアロエ抽出物は、100:1~1:100、または100:1~50:1、または10:1から50:1から、または10:1~1:10、または5:1~1:5、または2:1~1:2、または10:1~1:1、または5:1~1:1、または2:1~1:1、または1:1~1:10、または1:1~1:5、または1:1~1:2、または1:10~1:50、または1:50~1:100の重量比で組成物中に存在し得る。様々な実装形態では、1つ以上のNSAIDの総重量は、50mg未満(例えば、25mg未満、20mg未満、10mg未満)である。
【0036】
薬学的組成物は、粘膜の炎症状態の特徴である、紅斑(赤み)、浮腫(腫れ)、疼痛、および痒みの症状のうちの1つ以上の低減であり得る抗炎症作用を提供し得る。典型的には、薬学的組成物は、咽頭炎(喉の痛み)の治療に使用することができる。咽頭炎は、咽頭の疼痛および腫れを特徴とし得る。咽頭炎は、一般的には、細菌性(例えば、レンサ球菌)またはウイルス性感染によって引き起こされ、記載のアセチルサリチル酸を含む局所組成物で治療することができる。
【0037】
ある特定の実施形態では、剤形は、例えば、1日当たり1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、または8回投与され得る。1つ以上の剤形は、例えば、1、2、3、4、5、6、7日間、またはさらにより長く投与され得る。1つ以上の剤形は、例えば、1、2、3、4週間、またはさらにより長く投与され得る。1つ以上の剤形は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月、またはさらにより長く投与され得る。1つ以上の剤形は、患者、対象、哺乳類、喉の痛みの治療もしくは予防を必要とする哺乳類、ヒト、または喉の痛みの治療もしくは予防を必要とするヒトが、例えば、喉の痛みなどの炎症状態などの任意の疾患または状態の治療、予防、または改善が必要ではなくなるまで投与され得る。いくつかの態様では、剤形は、患者、対象、哺乳類、喉の痛みの治療もしくは予防を必要とする哺乳類、ヒト、または喉の痛みの治療もしくは予防を必要とするヒトが、炎症または疼痛を含む任意の疾患または状態の治療、予防、または改善が必要ではなくなるまで、他の薬学的組成物と同時に投与され得る。様々な実装形態では、300mg以下(例えば、200mg以下、100mg以下、50mg以下、25mg以下)のアセチルサリチル酸(ASA)は、24時間の期間で投与される。いくつかの実施形態では、300mg以下のアセチルサリチル酸(例えば、200mg以下、100mg以下、50mg以下、25mg以下)のアセチルサリチル酸(ASA)は、12時間の期間で投与される。
【0038】
喉の痛みは、喉の疼痛、痒み、または刺激である。喉の痛み(咽頭炎)の最も一般的な原因は、風邪またはインフルエンザなどのウイルス性感染である。ウイルスによって引き起こされる喉の痛みは、通常、自然に解消されるが、回復までの時間は、1週間以上かかり、不快なプロセスであり得る。
【0039】
いくつかの成分は、粘膜のレオロジーを模倣する量で存在し得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物(または粘膜に投与される場合、組成物)は、その粘膜(例えば、口腔および/もしくは鼻粘膜)から分泌される粘膜のレオロジー的パラメータを模倣することが可能である。投与される配合物が粘膜と同様のレオロジー的パラメータを有することは、配合物にいくつかの有益な作用であり得る。例えば、理論に拘束されることを望むものではないが、粘膜の複雑なレオロジー的特性を模倣することによって、膜の表面と接触する前に、様々な病原体に対する滞留時間を増加させて、標的結合および/もしくは抗微生物作用の増加を生じることができ、かつ/または薬学的組成物と組み合わせて粘膜のバリア機能を増加させることができる。レオロジー的パラメータは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lai,S.Et al.,Adv.Drug.Deliv.Rev.61(2009):86-100に記載されている。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、配合物の状態で、およびその後の粘膜への投与時に、非ニュートン性レオロジーを有する(例えば、投与される配合物は、非ニュートン性ゲルであり得る)。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、25℃での10Hzの剪断速度で、10-3~102Pa.s(例えば、10-3Pa.s~10-2Pa.s、10-2Pa.s~10-1Pa.s、10-1Pa.s~1Pa.s、1Pa.s~10Pa.s、10Pa.s~102Pa.s)の粘度を有し得る。粘膜のレオロジーを模倣するために、様々な薬剤が使用され得る。例えば、薬学的組成物は、粘膜のレオロジーを模倣することが可能な量で、ムチン、植物粘液、マシュマロ抽出物、リゾチーム、および/またはラクトフェリン(例えば、アポラクトフェリン)から選択される1つ以上の薬剤を含み得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、ムチンを含み得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、植物粘液を含み得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、ムチンおよび植物粘液を含み得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、ムチンおよびマシュマロ抽出物を含み得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、植物粘液およびマシュマロ抽出物を含み得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、ムチン、マシュマロ抽出物、および植物粘液を含み得る。
【0040】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、粘膜上に堆積した物質のレオロジーに影響を与える、ある量の成分を含み得る。例えば、薬学的組成物は、ラクトフェリン(例えば、アポラクトフェリン)および/またはリゾチームを含み得る。ある特定の実装形態では、組成物は、0.01%(w/v)~10%(w/v)、または0.1%(w/v)~10%(w/v)、または0.1%(w/v)~5%(w/v)、または0.01%(w/v)~5%(w/v)、または0.1%(w/v)~1%(w/v)のラクトフェリンおよび/またはリゾチームを含む。ラクトフェリン:リゾチームの重量比は、例えば、100:1~1:100(例えば、1:1~1:100、1:1~1:50、1:1~1:20、1:5~1:15、100:1~1:1、50:1~1:1、20:1~1:1、15:1~1:1、50:1~1:50、20:1~1:20、15:1~1:15、10:1~1:10)であり得る。ある特定の実施形態では、NSAID(例えば、サリチラート、ならびにサリチル酸およびアセチルサリチル酸を含むその誘導体)と組み合わせたラクトフェリンおよび/またはリゾチームは、NSAIDを含まない同一の組成物の結果と、ラクトフェリンおよびリゾチームを含まない他の点で同一の組成物の結果との組み合わせと比較して、抗炎症反応を増加させ得る。例えば、ラクトフェリンおよび/またはリゾチームと組み合わせたNSAIDは、(例えば、水性緩衝液中の本明細書に開示の薬学的組成物中の)NSAID単独の結果と、(例えば、水性緩衝液中の本明細書に開示の薬学的組成物中の)ラクトフェリンおよびリゾチームの結果との組み合わせと比較して、プロスタグランジン(例えば、PGE2)産生の減少および/またはインターロイキン-8(IL-8)産生の減少を提供し得る。
【0041】
本開示は、ある特定のNSAIDの用量が、ある特定のサイトカイン(例えば、ブラジキニン、およびプロスタグランジンの同時産生)に対する炎症反応を減少させ、粘膜のバリア完全性を維持することが可能であるという発見を部分的に前提としている。さらに、これらの同じNSAIDは、粘膜の炎症反応(例えば、プロスタグランジン産生)に最小限の作用を有し、バリア完全性の有意な劣化に結び付く。例えば、典型的には、75mg超(例えば、乳児用アスピリン)かつ最大325mgの用量で投与されるアセチルサリチル酸は、75mg未満、または70mg未満、または65mg未満、または60mg未満、または55mg未満、または50mg未満、または45mg未満、または40mg未満、または35mg未満、または30mg未満、または25mg未満、または20mg未満、または15mg未満の用量で炎症反応を阻害することが可能である。さらに、この同じ投薬量は、特に30mg/ml未満(例えば、20mg/ml未満、15mg/ml未満、0.1~30mg/ml、1~15mg/ml、1~10mg/ml)の濃度で投与される場合、膜の完全性に影響を及ぼさないことができる。投与は、10分超(例えば、15分超)の期間に2回以上(例えば、2回、3回)行われ得る。ある特定の実施形態では、NSAID(例えば、アセチルサリチル酸)は、24時間で、75mg未満、または70mg未満、または65mg未満、または60mg未満、または55mg未満、または50mg未満、または45mg未満、または40mg未満、または35mg未満、または30mg未満、または25mg未満、または20mg未満、または15mg未満が投与されるように投与される。ある特定の実施形態では、NSAID(例えば、アセチルサリチル酸)は、12時間で、75mg未満、または70mg未満、または65mg未満、または60mg未満、または55mg未満、または50mg未満、または45mg未満、または40mg未満、または35mg未満、または30mg未満、または25mg未満、または20mg未満、または15mg未満が投与されるように投与される。
【0042】
ある特定の実装形態では、薬学的組成物は、
a)1~10mg/mlの1つ以上のNSAIDと、
b)任意選択的に、0.1~1mg/mlのラクトフェリンと、
c)任意選択的に、1~10mg/mlのリゾチームと、
c)任意選択的に、10~100mg/mlのグリセロールと、
e)任意選択的に、100~400mg/mlの甘味料と、
f)任意選択的に、1~20mg/mlのメントールと、
g)任意選択的に、1~20mg/mlのカルボキシメチルセルロースと、
h)任意選択的に、1~20mg/mlのアロエと、を含む。
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、等張生理食塩水または0.9%のNaCl、1.25mMのCaCl2、および10mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)などの水性担体中にある。
【0043】
炎症反応が最小限に抑えられ(または除去される)、かつ/または粘膜のバリア機能(例えば、TEERによって測定される)を減少させないように、NSAID(例えば、サリチラート、ならびにサリチル酸およびアセチルサリチル酸などのその誘導体)は投与され得る。本明細書に示されるかかる反応は、ある特定の治療可能時間域内でのみ可能であり得る。いくつかの実施形態では、(例えば、プロスタグランジンE2産生によって測定して)炎症反応が最小限に抑えられ(または除去される)、かつ/または(例えば、TEERによって測定して)粘膜のバリア機能を減少させないように、NSAIDは投与され得る。例えば、325mg未満(例えば、300mg未満、250mg未満、200mg未満、150mg未満、100mg未満、50mg未満、25mg未満、10mg未満)が、喉の粘膜などの粘膜に毎日投与され得る。いくつかの実施形態では、325mg未満(例えば、300mg未満、250mg未満、200mg未満、150mg未満、100mg未満、50mg未満、25mg未満、10mg未満)が、喉の粘膜などの粘膜に毎日2回(例えば、12時間ごと)投与され得る。投与後に生じ得る様々な希釈因子を考慮して、ある濃度のアセチルサリチル酸などのNSAIDで薬学的組成物を配合して、本明細書に記載の投薬可能時間域に適切な、粘膜上での濃度を達成することができる。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、325mg/ml未満(例えば、300mg/ml未満、250mg/ml未満、200mg/ml未満、150mg/ml未満、100mg/ml未満、50mg/ml未満、25mg/ml未満、10mg/ml未満)の濃度を有し得る。
【0044】
本明細書に開示の治療化合物は、非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)であり得る。典型的には、NSAIDは、シクロオキシゲナーゼを遮断することによって炎症を低減する。NSAIDは、限定されないが、含み、NSAIDは、それらの化学構造または作用機序に基づいて分類することができる。本開示は、NSAIDが、COX-1、COX-2などのシクロオキシゲナーゼ(COX)酵素、および/または活性化B細胞の核内因子カッパ軽鎖エンハンサー(NF-κB)タンパク質を阻害することによって、プロスタグランジン産生を下方制御することが可能であるという発見を部分的に前提としている。NSAIDの非限定的な例としては、非選択性シクロ-オキシゲナーゼ(COX)阻害剤、選択性シクロオキシゲナーゼ1(COX1)阻害剤、および選択性シクロオキシゲナーゼ2(COX2)阻害剤が挙げられる。例えば、NSAIDは、NS-398、サリチラート、またはサリチラート誘導体であり得る。好適なサリチラート誘導体NSAIDの例としては、限定されないが、サリチル酸、アセチルサリチル酸(アスピリンまたはASAとも称される)、ジフルニサル、およびサルサラートが挙げられる。特定の実施形態では、NSAIDは、アセチルサリチル酸のナトリウム塩またはカリウム塩である。好適なp-アミノフェノール誘導体NSAIDの例としては、限定されないが、パラセタモールおよびフェナセチンが挙げられる。好適なプロピオン酸誘導体NSAID(多くの場合、プロフェンと称される)の例としては、限定されないが、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、デクスケトプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、プラノプロフェン、およびスプロフェンが挙げられる。好適な酢酸誘導体NSAIDの例としては、限定されないが、アセクロフェナク、アセメタシン、アクタリット、アルコフェナック(alcofenac)、アンフェナク、クロメタシン、ジクロフェナク、エトドラク、フェルビナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、ケトロラク、メチアジン酸、モフェゾラク、ナブメトン、ナプロキセン、オキサメタシン、スリンダク、およびゾメピラクが挙げられる。好適なエノール酸(オキシカム)誘導体NSAIDの例としては、限定されないが、ドロキシカム、イソキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、ピロキシカム、およびテノキシカムが挙げられる。好適なフェナミン酸誘導体NSAIDの例としては、限定されないが、フルフェナム酸、メフェナム酸、メクロフェナム酸、およびトルフェナム酸が挙げられる。ある特定の実施形態では、組成物中の唯一のNSAIDは、サリチラート誘導体であるか、または組成物は、組成物の重量に対する1%未満、または0.5%未満、または0.1%未満のサリチラート誘導体以外のNSAIDを含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中の総NSAID濃度は、120mg/mlよりも、または100mg/ml未満、または75mg/ml未満、または50mg/ml未満、または30mg/ml未満、または20mg/ml未満である。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中の総NSAID含有量は、組成物の重量に対する15%よりもまたは10%未満である。
【0045】
組成物は、担体、および典型的には、必ずしもそうではないが、液体担体中に分散された1つ以上のNSAID(例えば、アセチルサリチル酸などのサリチラート誘導体)を含み得る。液体担体は、必ずしもそうではないが、エアロゾルまたは微細なミストとしてスプレーされるのに好適なレオロジーのものが理想的である。組成物は、軟化剤、閉塞剤、湿潤剤、担体、賦形剤、乳化剤、および精油からなる群から選択される1つ以上の成分を含み得る。典型的には、賦形剤、担体、および/または希釈剤は、ヒト粘膜および上皮と適合性がある必要があり、粘膜または上皮に過度の乾燥または刺激を引き起こさない必要がある。賦形剤はまた、水が体温で蒸発する傾向があるという事実を考慮する必要があり、したがって、溶液中の可溶性構成成分を維持するのを助けるために、二次溶媒が含まれ得る。担体としては、限定されないが、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、水素化デンプン加水分解物、イソマルト、マルチトールなどを含む、C2-C8ポリオールなどのポリオールを挙げることができる。組成物は、粘膜を刺激もしくは乾燥させない量であるか、または生じ得る任意の乾燥もしくは刺激が他の成分によって相殺される量であることを条件として、ある量のエタノールなどのアルコールを含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、アルコール(例えば、エタノール)を含まない。一実施形態では、担体は、(v/v)、(w/v)、または(w/w)に基づいて、1~95%、または5~50%、または10~40%、または15~35%、または20~30%の1,3-プロパンジオールを含む水性担体である。いくつかの実施形態では、組成物は、1~1,500、または5~1,000、または10~750、または20~500センチストーク(mm2/秒)の範囲の動粘度を有し得る。組成物は、ニュートン性または非ニュートン性レオロジーを有し得る。組成物は、例えば、スプレーノズルを通じて容易に流れ、剪断時に好適な飛沫サイズのミストを形成するように、ずり流動化しても、および/またはチキソトロピー性であってもよいが、粘膜と接触する病原体を中和するのに十分な時間、活性物質が粘膜上に留まるように、鼻腔および/または口腔からの排泄に耐性のある膜を粘膜上に形成するように、その場で増粘し得る。典型的には、組成物は、適用後少なくとも5、10、15、20、25、または30分などの、少なくとも1分の鼻腔および/または口腔の粘膜上での滞留時間を有するのに好適な粘度のものであろう。
【0046】
例えば、薬学的組成物は、10:1~1:10(例えば、8:1~1:8、6:1~1:6、2:1~1:2、3:2~2:3)のレオロジー調節化合物(例えば、ラクトフェリン、リゾチーム)対NSAID(例えば、アセチルサリチル酸などのサリチラート誘導体)の重量比を有し得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、10:1~1:10(例えば、8:1~1:8、6:1~1:6、2:1~1:2、3:2~2:3)のラクトフェリンおよびリゾチーム対NSAIDの重量比を有し得る。様々な実装形態では、薬学的組成物は、10:1~1:10(例えば、8:1~1:8、6:1~1:6、2:1~1:2、3:2~2:3)のラクトフェリンおよびリゾチーム対アセチルサリチル酸の重量比を有し得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中の総NSAID濃度(例えば、アセチルサリチル酸濃度)は、120mg/mlよりも、または100mg/ml未満、または75mg/ml未満、または50mg/ml未満、または30mg/ml未満、または20mg/ml未満であり、ラクトフェリンおよびリゾチーム対NSAIDの重量比は、10:1~1:10(例えば、8:1~1:8、6:1~1:6、2:1~1:2、3:2~2:3)である。
【0047】
開示による薬学的組成物は、経鼻スプレー、経鼻液滴、経口スプレー、経口リンス、またはトローチの形態であり得る。薬学的組成物の担体は、適用後少なくとも1分、または少なくとも5分、または少なくとも10分、または少なくとも15分、または少なくとも20分、または少なくとも25分、または少なくとも30分の鼻粘膜および/または口腔粘膜上での組成物の滞留時間を提供するように選択され得る。いくつかの実施形態では、鼻および/または口腔粘膜に適用するための組成物は、1~99%(v/v)の水または60~90%(v/v)の水、および10~40%(または20~30%)(v/v)のポリオールを含む液体担体中に分散された、1つ以上の抗ウイルス性および/または抗微生物性薬剤を含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、5~50%(v/v)、または10~40%(v/v)、または15~35%(v/v)、または20~30%(v/v)の1,3-プロパンジオールを含む水溶液である。組成物は、粘膜にスプレーまたは摂取されることが可能であり得、粘膜を実質的に刺激または乾燥させることなく、適用後少なくとも5分間(または少なくとも10分間、または少なくとも15分間、または少なくとも20分間、または少なくとも25分間、または少なくとも30分間)粘膜上に留まるように適合される。
【0048】
組成物は、経口、局所、経鼻、およびそれらの組み合わせを含む、任意の好適な経路によって投与され得る。一実施形態では、組成物は、鼻膜に投与される。一実施形態では、組成物は、口腔膜に投与される。一実施形態では、組成物は、噴霧器、吸入器、ネブライザ、スプレーボトル、およびスプレーポンプからなる群から選択されるデバイスを使用して投与される。組成物は、推進剤を含んでも、推進剤を含まなくてもよい。
【0049】
化合物および薬学的組成物は、併用療法で配合および用いられ得、すなわち、化合物および薬学的組成物は、1つ以上の他の所望の治療薬または医療手順と同時に、その前に、またはその後に配合または投与され得る。併用レジメンで用いられる療法(治療薬または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療薬および/または手順と、達成される所望の療法的作用との適合性を考慮するであろう。また、用いられる療法は、同じ障害に対して所望の作用を達成し得るか、または異なる作用(例えば、任意の有害作用の制御)を達成し得ることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、コルチコステロイドを含まないか、または組成物の重量に対する5%未満、もしくは1%未満、もしくは0.5%未満、もしくは0.1%未満のコルチコステロイドを含まない。様々な実装形態では、薬学的組成物は、フルルビプロフェンおよび/またはシクロデキストリンを含まない。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、1%以下のフルルビプロフェンもしくは以下、および/または1%未満のシクロデキストリンを含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中の唯一のNSAIDは、1つ以上のサリチラート誘導体(例えば、アセチルサリチル酸)である。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、組成物の重量に対する5%未満、または1%未満、または0.5%未満、または0.1%未満の、サリチラート誘導体(例えば、アセチルサリチル酸)以外のNSAIDを含む。
【0050】
薬学的組成物は、1つ以上の追加の構成成分、例えば、スクロース、フルクトース、ラクトース、アスパルテーム、またはサッカリンなどの甘味剤、ペパーミント、冬緑油、またはチェリーなどの香味剤、着色剤、pH調節構成成分、湿潤剤、および保存剤を含有して、薬学的に好ましい調製物を提供することができる。組成物に有用な典型的な甘味剤(甘味料)としては、天然および人工甘味料の両方であるものが挙げられる。使用される甘味剤は、水溶性甘味剤、水溶性人工甘味剤、天然に生じる水溶性甘味剤に由来する水溶性甘味剤、ジペプチド系甘味剤、およびタンパク質系甘味剤を含む、それらの混合物を含む広範な材料から選択され得る。本発明で使用可能な保湿剤または湿潤剤の代表例としては、限定されないが、アセトアミドモノエタノールアミンウラゾール、その様々な形態(例えば、アロエベラゲル、アロエベラ抽出物、アロエベラ濃縮物)のうちのいずれかのアロエベラ、アラントイン、グアニジン、グリコール酸、およびグリコール酸塩(例えば、アンモニウム塩および四級アルキルアンモニウム塩)、ヒアルロン酸、ラクタミドモノエタノールアミン、ポリエチレングリコール、多価アルコール(例えば、ソルビトール、グリセロール、ヘキサントリオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなど)、糖およびデンプン、糖およびデンプン誘導体(例えば、アルコキシル化グルコース)、ならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。好適な香味剤としては、ペパーミント、油、スペアミント油、冬緑油、クローブ、メントール、ジヒドロアネトール、エストラゴール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、カシア、酢酸1-メンチル、セージ、オイゲノール、パセリ油、メントン、オキサノン、アルファ-イリソン、アルファ-イオノン、アニス、マージョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグアエトール、シナモン、バニリン、エチルバニリン、チモール、リナロール、リモネン、酢酸イソアミル、ベンズアルデヒド、酪酸エチル、フェニルアルコール、レンタカンバ、シンナムアルデヒド、シナムアルデヒドグリセロールアセタール(CGAとして知られる)、および前述の混合物が挙げられる。甘味剤としては、スクロース、グルコース、サッカリン、デキストロース、レブロース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、マルトース、キシリトール、サッカリン塩、ソーマチン、アスパルテーム、D-トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、シクラミン酸塩、および前述の混合物が挙げられる。香味剤および甘味剤に加えて、組成物は、任意選択的な成分として、冷却剤、唾液分泌剤(salivating agent)、加温剤、および麻痺剤を含み得る。冷却剤としては、カルボキサミド、メントール、パラメンタンカルボキサミド、イソプロピルブタンアミド、ケタール、ジオール、3-1-メントキシプロパン(menthoxypropane)-1,2-ジオール、メントングリセロールアセタール、乳酸メンチル、およびそれらの混合物が挙げられる。唾液分泌剤としては、(Takasagoによって製造された)Jambu(登録商標)が挙げられる。加温剤としては、カプシカムおよびニコチン酸エステル(ニコチン酸ベンジルなど)が挙げられる。麻痺剤としては、ベンゾカイン、リドカイン、クローブバッド油、およびエタノールが挙げられる。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアなどの1つ以上の結合剤を含み得る。
【0051】
薬学的組成物は、1つ以上の天然抽出物および濃縮物を含み得る。好適な全葉アロエベラ濃縮物は、例えば、担持剤として作用し得る。全葉アロエベラ濃縮物は、薬学的組成物の10%(w/v)未満、例えば、疼痛緩和組成物の2%(w/v)~4%(w/v)、または0.1%(w/v)~3%(w/v)、または0.1%(w/v)~2%(w/v)の量で存在する。いくつかの研究は、アロエ抽出物が抗炎症特性を付与し得ることを示し得るが、いくつかの実施形態では、アロエは、ある量で存在し、未満はかかる活性に有効である。したがって、アロエは、投与される濃度および投薬量に依存して、NSAID含有量の一部と見なしても、NSAID含有量の一部でないと見なしてもよい。ほとんどの実施形態では、アロエ抽出物は、NSAID含有量の一部と見なさない。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、10%(w/v)未満のアロエを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、特に経口スプレー内の薬学的組成物は、水溶液などの溶液であり、提供される化合物が、生理食塩水、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、または他の緩衝剤によって適切に緩衝され得、これらは、任意の生理学的に許容されるpH、一般に、pH4~pH7であり得る。リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、および酢酸緩衝液などの緩衝剤の組み合わせも用いられ得る。生理食塩水の場合、0.9%の生理食塩水が用いられ得る。酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩などの場合、50mMの溶液が用いられ得る。緩衝剤に加えて、好適な防腐剤を用いて、細菌および他の微生物の増殖を防止または制限してもよい。例えば、組成物は、組成物の重量に対して0.001%~0.1%の保存剤を有し得る。用いられ得るかかる1つの防腐剤は、塩化ベンザルコニウム(例えば、0.05%(w/v)塩化ベンザルコニウム)である。
【0053】
様々な実施形態では、薬学的組成物は、経口、より具体的には、経口スプレーとして投与される。甘味料および風味向上剤もまた、経口スプレー組成物中に含まれ得る。甘味料としては、フルクトース、デキストロース、スクロースなどを挙げることができる。フルクトースなどを含む非人工甘味料は、経口スプレー組成物の8~15重量パーセント(例えば、経口組成物の10重量パーセント)の量で含まれ得る。経口スプレー組成物の1つのある特定の実施形態は、例えば、経口組成物の1%(w/w)を含む、経口スプレー組成物の0.5~2.0%(w/w)の量で、ペパーミントなどの風味向上剤を含む。
【0054】
本開示の別の態様によれば、様々な成分の安定性を促進するために、保存剤を薬学的組成物に添加してもよい。例えば、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、およびEDTA二ナトリウムなどの任意の好適な保存剤は、本開示に従って使用され得る。いくつかの実施形態では、保存剤としては、0.01~0.02重量パーセント、例えば、0.015重量パーセントの濃度で経口組成物に混和された保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)の50%溶液が挙げられる。
【0055】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、本明細書に記載の治療可能時間域内で療法的用量のNSAIDを達成するために、表1に示される構成成分とともに配合され得る。
【表1】

【0056】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物(例えば、表1による薬学的組成物)は、経口スプレー組成物の形態であり得る。経口スプレー組成物は、適切な装置からスプレーごとに100μL~1mL(例えば、300μL~700μL、500μL)のスプレー組成物を送達するために使用され得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物(例えば、表1による薬学的組成物)は、ゲルまたはトローチなどのより粘性の高いまたは固体の組成物の形態であり得る。いくつかの実施形態では、トローチは、表1に示される重量パーセントを有し得る。ある特定の実施形態では、トローチは、1回以上(例えば、2、3、4回)の上記のスプレーと同様の投薬量の構成成分として配合され得る。例えば、トローチは、液体組成物から水を除去してシロップを形成した後、固化してトローチを形成することから形成され得る。例えば、トローチは、表2に示される各構成成分を有し得る。
【表2】

【0057】
例示的な実施形態では、薬学的組成物は、水性緩衝担体中の、
a)0.05%(w/v)のラクトフェリンと、
b)0.5%(w/v)のリゾチームと、
c)5%(w/v)のグリセロールと、
d)30%(w/v)の甘味料と、
e)1%(w/v)のメントールと、
f)1%(w/v)のカルボキシメチルセルロースと、
g)1%(w/v)のアロエ水性抽出物と、
h)0.6%(w/v)のアセチルサリチル酸と、である。ある特定の実施形態では、NSAID(例えば、サリチラート、ならびにサリチル酸およびアセチルサリチル酸を含むその誘導体)を含む、(例えば、表1もしくは表2に開示の、または本明細書に開示される例示的な実施形態の)薬学的組成物は、NSAIDを含まない他の点で同一の組成物の結果と、(例えば、水性緩衝液中の)NSAID単独の結果との組み合わせと比較して、抗炎症反応を増加させ得る。例えば、ラクトフェリンおよび/またはリゾチームと組み合わせたNSAIDは、NSAID単独の結果と、NSAIDを含まない他の点で同一の組成物の結果との組み合わせと比較して、プロスタグランジン(例えば、PGE2)産生の減少および/またはインターロイキン-8(IL-8)産生の減少を提供し得る。
【0058】
さらなる実施形態では、本開示は、安定した一定用量の、経鼻および/または経口投与用の容器に収容された本開示の水性薬学的組成物と、薬学的組成物の使用に関する指示書を含有する添付文書と、を含むキットに関する。一実施形態では、容器は、アクチュエータを有する噴霧器の一部である。アクチュエータが作動されると、組成物は、スプレーの形態で送達される。さらなる実施形態では、薬学的組成物は、噴霧器に収容され、ヒトの鼻に組成物のスプレーを送達する際に、15~75mmの最長軸、10~65mmの最短軸、および1~2の楕円性を有するスプレーパターンを有する。本開示の文脈において、噴霧器を使用して経鼻および/または経口スプレーとして送達される場合、薬学的組成物は、特定のスプレーパターンおよびスプレー飛沫サイズを生じる。スプレーパターンは、経鼻スプレー製品ユニバーサルアクチュエータ(Nasal Spray Products Universal Actuator、NSP UA)セットアップ(Innova System)を用いる軸対称液滴形状分析(ADSA)を用いるなどの様々な既知の技法によって決定することができ、スプレー飛沫サイズ分布は、NSPUAセットアップ(Innova System)を用いるMalvern Spraytecを用いるなどの様々な既知の技法によって決定することができる。以下は、スプレー飛沫サイズ分布の特徴評価のための典型的な手順を説明する--噴霧器に、上記の組成物を充填し、噴霧器のノズルから微細なミストが現れるまで、アクチュエータを介して作動ポンプによって注入する。ノズルがレーザ回折機器のレーザビームより3cmまたは6cm下になるように、市販のレーザ回折機器を配置する。一定の力を使用して、従来の機械的アクチュエータを用いて、ポンプを作動させる。組成物の生じたスプレーは、レーザビームを横切る。D10、D50、D90、SPAN、および<10μmの体積%のデータを収集する。3つのスプレーの、これらのパラメータの各々の平均値を計算する。水性懸濁液または水溶液は、液滴または局所投与に好適な任意の他の形態として投与され得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、経口スプレーまたは経鼻スプレーの形態で提供され、懸濁液が、単一単位用量容器または複数用量容器で投与される。好適な単一単位用量容器または複数用量容器としては、限定されないが、ガラス、アルミニウム、ポリプロピレン、または高密度ポリエチレン、例えば、成形同時充填製造技法を使用して製造された高密度ポリエチレン容器が挙げられる。
【0060】
ある特定の追加の実施形態では、開示は、(a)複数単位投薬量の本開示の薬学的組成物と、(b)容器であって、(i)複数投薬量の組成物を保持し、開口部を有する、圧搾可能なチャンバであって、圧搾可能なチャンバが圧搾されると、投薬量が開口部から出る、圧搾可能なチャンバ、および(ii)圧搾可能なチャンバの開口部に取り外し可能に取り付けられた閉鎖機構、を備える容器と、を含む、複数投薬量組成物を提供する。ある特定の実施形態では、複数投薬量容器は、成形可能なポリマーで作製される。かかる実施形態では、好適なポリマーとしては、限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリレート(PAR)、およびポリアミド(PA)が挙げられる。ある特定の実施形態では、ポリマーとしては、ポリエチレン、特に中密度ポリエチレン(MDPE)(または分岐ポリエチレン)、または高密度ポリエチレン(HDPE)(または線状ポリエチレン)が挙げられる。一実施形態では、複数用量容器は、高密度ポリエチレン(HDPE)で作製される。
【0061】
本開示の組成物は、微細なスプレーミストによって口を通じて口腔に送達され得る。方法は、口腔への送達のための、本開示に従った経口組成物を得るステップを含む。方法は、スプレーアプリケータを用いて、経口組成物を口腔に適用するステップをさらに含む。医師は、任意の好適なアプリケータを使用することができることを理解するであろう。例えば、アプリケータは、組成物の100~150の定量を保持するように構成され得、用量が、0.1ml~1ml(例えば、0.5mlを含む、0.25~0.75ml)である。
【0062】
定量吸入器(MDI)を介した吸入などの、経鼻および/または経口スプレーを送達するための他の手段も使用され得る。一様には、吸入による投与には、いくつかのタイプのMDIが使用されている。これらのタイプのデバイスとしては、呼吸作動型MDI、MDIと組み合わせたスペーサ/保持チャンバ、およびネブライザを挙げることができる。定量吸入器は、例えば、活性薬剤と、任意選択的に、1つ以上の賦形剤を含む推進剤との混合物を収容するキャニスタと、定量弁と、アクチュエータと、マウスピースと、を備える、吸入送達システムである。キャニスタは、本明細書に記載の経口スプレー組成物などの活性薬剤と、1つ以上のヒドロフルオロアルカン[例えば、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134a)、および1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227)]、クロロフルオロカーボンなどの推進剤と、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロパノール、またはそれらの混合物などのアルコールとの、懸濁液で充填され得る。しかしながら、典型的には、組成物は推進剤を含まない。アクチュエータが押下されると、吸入のために定量の懸濁液がエアロゾル化される。活性薬剤を含む粒子は、次いで、対象によって吸入され得るマウスピースに向かって推進される。
【0063】
薬学的製品は、
(a)本明細書に開示の経口スプレー組成物を分配するための、口腔通路に挿入されるように構成されている本体、
(b)オリフィスと流体連通しているリザーバであって、経口スプレー組成物が、リザーバに収容されている、リザーバ、
(c)オリフィスを通じて、使用者の口腔粘膜(例えば、喉の粘膜)をコーティングすることが可能な、適切なサイズのエアロゾル化された飛沫の経口スプレー組成物を排出することが可能なポンプ機構、を備え得る。
いくつかの実施形態では、ポンプ機構の単一の作動は、100μL~1000μL(例えば、200μL~800μL、400μL~600μL、500μL)の経口スプレー組成物を排出するように構成される。例えば、各スプレーは、75mg未満、または60mg未満、または50mg未満、または25mg未満、または15mg未満、または10mg未満のNSAID(例えば、アセチルサリチル酸)を排出し得る。ある特定の実施形態では、経口スプレー組成物は、
a)1~10mg/mlの1つ以上のNSAIDと、
b)任意選択的に、0.1~1mg/mlのラクトフェリンと、
c)任意選択的に、1~10mg/mlのリゾチームと、
c)任意選択的に、10~100mg/mlのグリセロールと、
e)任意選択的に、100~400mg/mlの甘味料と、
f)任意選択的に、1~20mg/mlのメントールと、
g)任意選択的に、1~20mg/mlのカルボキシメチルセルロースと、
h)任意選択的に、1~20mg/mlのアロエと、を含む。
【0064】
組成物は、任意の好適な投薬量で個人に送達され得る。開示の一実施形態によれば、経口スプレーアプリケータは、スプレーアプリケータと関連付けられたポンプが作動されるごとに、0.1ml~1ml(例えば、0.5mlを含む、0.25~0.75ml)の単位用量(例えば、0.5ml/スプレー)の組成物を個人に供給するように構成される。ある特定の実施形態では、組成物は、10~30分以内に2回のスプレーを口内に適用することによって送達される。
【0065】
喉の痛みなどの粘膜の炎症状態の治療または予防のための医薬品が、本明細書で提供される。典型的には、医薬品は、75mg未満の1つ以上のNSAID(例えば、アセチルサリチル酸)を含む。いくつかの実施形態では、医薬品は、本明細書に記載の薬学的組成物である。様々な実装形態では、医薬品の調製に使用するためのアセチルサリチル酸が開示されており、医薬品が、75mg未満のアセチルサリチル酸(例えば、50mg未満のアセチルサリチル酸、25mg未満のアセチルサリチル酸、20mg未満のアセチルサリチル酸、15mg未満のサリチル酸)を含む。ある特定の実施形態では、医薬品の調製に使用するためのアセチルサリチル酸が開示されており、医薬品が、75mg/ml未満のアセチルサリチル酸(例えば、50mg/ml未満のアセチルサリチル酸、25mg/ml未満のアセチルサリチル酸、20mg/ml未満のアセチルサリチル酸、15mg/ml未満のアセチルサリチル酸)を含む。
【0066】
喉の痛みの治療または予防を必要とする対象における喉の痛みを治療または予防するための方法であって、
a)口腔通路に挿入されるように構成されている、経口スプレーを含む薬学的製品の一部分を対象の口腔通路に挿入することと、
b)ポンプ機構を作動させて、経口スプレー組成物を対象に投与することと、を含む、方法が提供される。
いくつかの実施形態では、挿入および作動ステップは、先述の投与経口スプレー組成物の10分超後の時点で繰り返される。
【0067】
また、喉の痛みの治療または予防を必要とする対象における喉の痛みを治療または予防するための方法が本明細書に開示され、方法が、喉の痛みの治療または予防を必要とする対象へのこれらの薬学的組成物の投与を含む。いくつかの実施形態では、喉の痛みの治療または予防を必要とする対象における喉の痛みを治療または予防するための方法は、75mg未満(例えば、50mg未満、25mg未満、15mg未満)の複数のNSAIDを喉に投与することを含み得る。本明細書に記載の投薬レジメンは、抗炎症反応が使用者の粘膜上で生じることを可能にし、それによって、かかる投与なしに存在したであろう抗炎症反応を治療および/または防止する。例えば、325mg未満(例えば、100mg未満、75mg未満、50mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満)の複数のNSAIDが、24時間で投与される。いくつかの実施形態では、325mg未満(例えば、100mg未満、75mg未満、50mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満)の複数のNSAIDが、12時間で投与される。いくつかの実施形態では、複数のNSAIDは、1時間未満、または30分未満の期間内に投与される。いくつかの実施形態では、複数のNSAIDは、1時間未満、または30分未満の期間内で毎日投与される。ある特定の実施形態では、喉の痛みは、プロスタグランジン産生の増加を生じる炎症に関連する。いくつかの実施形態では、喉の痛みを治療または予防するための方法は、粘膜のバリア完全性に、(例えば、TEERによって測定して)最小限(例えば、20%以内、または10%以内、または5%以内)の影響を有し得るか、または全く影響を有しない場合がある。
【実施例
【0068】
以下の実施例は、本記載の特定の態様を説明する。実施例は、実施形態およびその様々な態様の具体的な理解および実践を提供するに過ぎず、実施例は限定として解釈される必要はない。
【0069】
実施例1
鼻(MucilAir(商標)nasal pool)、または気管もしくは気管支生検(MatTek PE-200-6.5)から新たに単離した初代ヒト上皮細胞で構成されるヒト気道上皮の3Dモデルを保護する組成物の能力について、様々な組成物を試験した。MucilAir(商標)およびMatTek組織は、気道および肺の外科的断片から再構築されたヒト3D組織であり、完全に分化し、インビトロの偽重層上皮である。MucilAir(商標)-Poolは、鼻茸に由来し、14人の異なるドナーから単離した細胞の混合物で再構成する。空気-液体界面で培養したモデルは、高い経上皮電気抵抗、繊毛拍動、ならびに粘液産生を示し、上皮組織の完全な機能を実証する。MatTek組織は、気管-気管支に由来する。鼻および喉を覆う呼吸器上皮は、組織学的に、および構造的に高い類似性を有する。これらの2つの異なるモデルが、1つのモデルが別のモデルよりも多くの根本的な炎症、またはその修復に関する他の変動性を有し得る場合、異なる由来のモデルが治療に対する同様の反応を有することを再確認する。
【0070】
0.9%のNaCl、1.25mMのCaCl2、10mMのHEPESなどの生理食塩水溶液ビヒクル中の様々な濃度のアセチルサリチル酸(0.6mg/mlのASAまたは6mg/mlのASA)とともに、組成物を配合した。10μLの各配合物を、MucilAir(商標)またはMatTek組織のいずれかの尖端に添加した。培地における炎症反応の活性化の10分後(図1A~B、3A、4A)、または培地における炎症反応の活性化の5分前(図2A~B、3B、4B)のいずれかに、配合物を添加した。粘膜上での唾液産生の速度およびそれに伴うアセチルサリチル酸の希釈に起因して、各濃度のインビトロ投与は、製品形態では10倍の濃度に相関する。例えば、インビトロ測定における0.6mg/mlのASAは、組成物中6mg/mlのASAの投与に相当し、インビボにおける6mg/mlは、組成物中60mg/mlの投与に相当する。
【0071】
典型的には、炎症性サイトカインブラジキニンは、(アラキドン酸を通じて)プロスタグランジン経路を刺激し、次いで、別の炎症性サイトカインであるIL-8を刺激する。理解され得るように、アセチルサリチル酸は、(プロスタグランジンを刺激する)COX-2を阻害することによって、またIL-8の転写をもたらすNFkBを阻害することによって、プロスタグランジンを下方制御する。MucilAir(商標)培地の尖端側面に適用した10μLの25mg/mlのブラジキニンタンパク質の添加を通じて、プロスタグランジン経路の炎症反応を刺激した。
【0072】
ブラジキニンの適用から4時間後、炎症反応の様々な測定値を測定した。上皮をMucilAir(商標)培養培地で2回洗浄して、接種物を洗浄した。基底培地から液体アリコートを収集し、将来の研究用に-80℃で保管した。
【0073】
基底培地からの液体アリコートで、プロスタグランジンE2またはIL-8酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を実施して、産生されるプロスタグランジンE2の量を、各試験条件で開始された炎症状態の結果として決定した。図1Aは、6mg/mlのASA、および0.6mg/mlのASAを用いた、ブラジキニンを適用しなかった培地(陰性)、ブラジキニンを適用した培地(陽性対照)から採取したアリコートで測定した、生じた測定されたプロスタグランジン濃度を示す。理解され得るように、6mg/ml(60mg/mlを含む組成物に対応する)は、統計学的に有意な事案で炎症反応を増加させた。アセチルサリチル酸は、典型的には、これらの測定された用量よりも多い用量で投与されるが、この投薬量は、炎症反応を増加させた。しかしながら、図1Aおよび1Bに示されるように、0.6mg/mlの投与は、ブラジキニン投与に対する抗炎症反応を生じた。ブラジキニン適用前に配合物を投与すると、6mg/mlのASAの適用は、陽性対照と比較して統計的有意性を生じなかった(図2Aを参照されたい)。しかしながら、0.6mg/mlの低用量は、統計学的に有意な様式で炎症を阻害した(図2Aおよび2Bを参照されたい)。さらに、6mg/mlのASA投与では、療法的(図4Aおよび予防的(図4B)条件の両方において、IL-8濃度は有意に高かった。同様の結果は、0.6mg/mlの測定では観察されなかった。
【0074】
また、経上皮電気抵抗(「TEER」)測定値を使用して、組織完全性を監視した。TEERは、いくつかの要因によって影響され得る上皮の状態およびバリア機能を反映する動的パラメータである。例えば、穴が存在する場合、または細胞結合が破壊されている場合、TEER値は、一般に、300Ωcm2未満であろう。対照的に、上皮が損傷されていない場合、TEER値は、典型的には、300Ωcm2超である。TEER値の顕著な減少(ただし、>300Ωcm2)は、一般に、イオンチャネルの活性化を反映する。
【0075】
TEER測定用に、200μLの温かいMucilAir(商標)培地またはMatTek TEER緩衝液を各挿入物の尖端側面に適用した。二重電極を有するMillicell ERS-2 Voltohmmeter(#MERS00002 Millipore)を、70%エタノールおよび生理食塩水溶液(0.9%のNaCl、1.25mMのCaCl2、10mMのHEPES)で洗浄した。短いステムを尖端培地に吊り下げながら、MucilAir(商標)装入物の間隙を通じて電極の長いステムを挿入し、ウェルの底部に支持した。抵抗(Ω)は、Voltohmmeterで読み取り、TEER値は、以下の式を用いて計算した:TEER(Ω.cm2)=(抵抗値(Ω)-100(Ω))×0.33(cm2)。TEER測定値を、48時間PIで取得した。
【0076】
治療用の上皮での抵抗測定値を図3Aおよび3Bに示す。理解され得るように、6mg/mlのアセチルサリチル酸投与は、100Ω.cm2閾値を下回る、上皮のバリア機能における劇的な減少を生じた。しかしながら、0.6mg/mlのASAの投与では、バリア機能の同様の減少は示されていない。これらのデータは、アセチルサリチル酸が、バリア機能に影響を及ぼさずに、炎症に対する抗炎症反応を提供するのに有効である場合、典型的に投与されるものを下回る、粘膜における治療可能時間域の存在を実証している。さらに、この可能時間域を超える(それでもなお典型的な投与用量を下回る)と、アセチルサリチル酸の投与は炎症を増加させ、バリア機能を劣化させる。理解され得るように、このNSAID投薬量範囲は、(プロスタグランジン産生の減少によって測定して)プロスタグランジンサイトカイン経路を遮断し、それによって粘膜の炎症状態を防止または治療することが可能である。ブラジキニンが誘発したPGE-2の増加は、用量依存的様式ではあるが、期待されるように、非選択的Cox阻害剤であるアセチルサリチル酸(アスピリン)によって阻害することができる。アセチル-サリチル酸は、PGE-2レベルが有意に減少したにもかかわらず、IL-8タンパク質のレベルを著しく減少させなかった。
【0077】
実施例2
COX経路とは別に、アラキドン酸(AA)はまた、リポキシゲナーゼを介したロイコトリエンの生成を担う。理論に束縛されることを望むものではないが、COX阻害剤を用いてCOX経路を阻害することによって、AAのリポキシゲナーゼ経路への分流が生じて、より多くのロイコトリエンの産生が生じ得る。主要なリポキシゲナーゼ産生物のうちの1つであるLTB4は、合成を刺激し、IL-8を放出することが示されている。
【0078】
A549細胞および2つのエクスビボモデルを研究し、NSAIDがPGE-2およびIL-8放出を阻害する小さい治療可能時間域が示された。この療法的用量よりも10倍高い濃度では、IL-8は、ブラジキニン刺激単独の場合よりも2~5倍高いレベルに増加した。IL-8は炎症性サイトカインであることが知られており、高レベルのタンパク質発現で、TEERの減少およびLDHの増加などの負の細胞障害作用が観察された。
【0079】
A549細胞を、ウェル当たり6,400個の細胞密度で完全な増殖培地中に播種した。1日後、増殖培地を無血清培地に置き換えた。2日目に、培地を除去し、図5A~Cに示される180μLの様々な試験組成物(600μg/mlのシアル酸(SA)、60μg/mlのSA、6μg/mlのSA、600μg/mlのアセチルサリチル酸(ASA)、60μg/mlのASA、6μg/mlのASA、COX-2特異的阻害剤NS-398を含む組成物)に置き換えた。各試験組成物で30分間インキュベーションした後、細胞混合物を、適用日に再構成した様々な濃度の20μLの凍結乾燥ブラジキニン(BK)でチャレンジした(各実験の陽性対照は、10μMのBKチャレンジであった)。
【0080】
乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)は、安定な細胞質酵素であり、細胞膜が破裂すると、培養培地に急速に放出される。試料を採取して、各試験条件下でのLDHを測定した。放出されたLDHの量を、マイクロプレートリーダーを用いて、490nmでの各試料の吸光度を使用して定量化した。高い対照値は、アッセイの24時間前に、10%のTriton X-100処理によって得、100%の細胞毒性に相当する。図5Aは、BKチャレンジおよび示される構成成分の投与後のこれらの細胞の測定された細胞毒性を示す。加えて、ELISAアッセイを測定して、PGE-2およびIL-8サイトカイン産生も同様に定量化した。データの統計的有意性をt検定によって測定し、p値が減少すると「*」(P<0.05)、試料と陽性対照との間で増加すると「*」によって表す。これらは、異なる化合物によるPGE-2放出の防止を示すが、IL-8は、同様のパターンに従わない。
【0081】
実施例3
COX-2は呼吸器上皮細胞に発現する主要なCOXであるので、これらの治療可能時間域におけるNSAID投与の負の細胞障害作用は、COX酵素の不均衡に起因しない可能性がある。代わりに、COX-2を阻害することによって、アラキドン酸は、ロイコトリエン産生に分流し得る。
【0082】
炎症反応および疼痛シグナル伝達におけるブラジキニンの重要な役割を考慮すると、それに関連するシグナル伝達経路が厳密に調節されるのにブラジキニンは重要である。エクスビボモデルを調製し、ブラジキニンによるPGE2およびIL-8の刺激が、実施例1と同様の飽和点に達することが示された。
【0083】
MatTek(気管気管支組織)またはMucilAir(鼻茸)の3D装入物を、各細胞系に対応する事前に温めた培地中に置き、37℃で15分間インキュベートした。10μLの唾液(陰性対照)または処理物を尖端表面に添加した。5分後、同様に、10μLの唾液またはブラジキニンを尖端側面に添加した。ブラジキニンは、示されるように、TocrisまたはNew England Peptide(NEP)から得た。4時間で、基底培地から試料を収集し、PGE-2 ELISA測定用に-80℃で凍結した。24時間で、挿入物を新鮮な(各細胞系に対応する)基底培地に移動させ、先に記載のTEER分析用に各尖端側面に200μLの培地を添加した。次いで、プレートを5分間インキュベートした。TEER測定の後、尖端溶液を除去し、10μLの各処理物(または唾液)を尖端表面に添加した。ブラジキニンは添加しなかった。TEERを48時間で再度測定した。加えて、24時間および48時間で、基底培地を収集し、IL-8およびLDH分析用に凍結した。図6A~Gは、気管気管支組織(MatTek)および鼻茸(MucilAir)システムにおける、異なる濃度および供給源のブラジキニン(BK 1X=MatTekでは16mg/ml、およびMucilAirでは50mg/ml)でのこれらの測定結果を示す。異なるブラジキニン濃度のMucilAir培地で同様の一連の実験を実施した(図7A~7E)。
【0084】
PGE-2およびIL-8の最大濃度では、TEERおよびLDHレベルは正常範囲に留まり、細胞毒性はなかったことが示唆された。しかしながら、先述のように、治療可能時間域を超えるアセチルサリチル酸の用量は、これらのレベルを超えてPGE2およびIL-8を増加させた。したがって、別の経路が、本明細書に記載のNSAIDの治療可能時間枠に関与し得る。TEERおよびLDH測定値によって理解されるように、この経路によって誘導されるより高いレベルのPGE2およびIL-8は、呼吸器上皮にとって健全ではない可能性があり、受容体の飽和、または下流の飽和、または調節は、生理学的条件下でPGE2およびIL-8レベルの制御を担い得る。あるいは、2つの経路は、「サイトカインストーム」に類似する過剰な炎症をもたらし得る、炎症反応の異なるレベルまたは層を表し得る。それにもかかわらず、かかる機序は、本開示のより低い療法的NSAID用量で操作可能であり、かつ/または活用することができる。
【0085】
特定の実施形態
非限定的な特定の実施形態を以下に記載し、それらの各々は、本開示内にあると見なされる。
【0086】
特定の実施形態1.1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、および/または希釈剤と、1つ以上の非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)と、を含む、薬学的組成物であって、NSAIDの総濃度が、75mg/ml未満である、薬学的組成物。
【0087】
特定の実施形態2.NSAIDが、アセチルサリチル酸(ASA)を含む、特定の実施形態1に記載の薬学的組成物。
【0088】
特定の実施形態3.アセチルサリチル酸の濃度が、10mg/ml未満である、特定の実施形態2に記載の薬学的組成物。
【0089】
特定の実施形態4.NSAIDの総濃度が、20mg/ml未満である、特定の実施形態1~3のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0090】
特定の実施形態5.組成物の総NSAID含有量が、NSAID含有量の重量に対する90%超、または95%超、または99%超のアセチルサリチル酸である、特定の実施形態1~4のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0091】
特定の実施形態6.アセチルサリチル酸が、組成物中の唯一のNSAIDである、特定の実施形態1~4のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0092】
特定の実施形態7.アセチルサリチル酸およびアロエ抽出物が、組成物中の唯一のNSAIDである、特定の実施形態1~4のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0093】
特定の実施形態8.ラクトフェリンおよびリゾチームをさらに含む、特定の実施形態1~7のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0094】
特定の実施形態9.ラクトフェリン対リゾチームの重量比が、1:1~1:100である、特定の実施形態8に記載の薬学的組成物。
【0095】
特定の実施形態10.ラクトフェリンおよびリゾチーム対NSAIDの重量比が、10:1~1:10である、特定の実施形態8または9に記載の薬学的組成物。
【0096】
特定の実施形態11.薬学的組成物が、コルチコステロイドを含まない、特定の実施形態1~10のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0097】
特定の実施形態12.薬学的組成物が、
a)1~10mg/mlの1つ以上のNSAIDと、
b)0.1~1mg/mlのラクトフェリンと、
c)1~10mg/mlのリゾチームと、
c)10~100mg/mlのグリセロールと、
e)100~400mg/mlの甘味料と、
f)1~20mg/mlのメントールと、
g)1~20mg/mlのカルボキシメチルセルロースと、
h)1~20mg/mlのアロエと、を含む、特定の実施形態1~11のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0098】
特定の実施形態13.薬学的組成物が、トローチとして配合される、特定の実施形態1~12のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0099】
特定の実施形態14.トローチが、1~10mgの1つ以上のNSAIDを含む、特定の実施形態13に記載の薬学的組成物。
【0100】
特定の実施形態15.トローチが、1~10mgのアセチルサリチル酸を含む、特定の実施形態13に記載の薬学的組成物。
【0101】
特定の実施形態13.当該トローチが、0.1~10mgのアセチルサリチル酸を含み、1つ以上のNSAIDのうちの、NSAIDの重量に対する90%超(例えば、95%超、99%超、99.9%超)が、アセチルサリチル酸である、特定の実施形態13に記載の薬学的組成物。
【0102】
特定の実施形態16.トローチが、
a)1~10mgの1つ以上のNSAIDと、
b)0.1~1mgのラクトフェリンと、
c)1~10mgのリゾチームと、
c)10~100mgのグリセロールと、
e)100~400mgの甘味料と、
f)1~20mgのメントールと、
g)1~20mgのカルボキシメチルセルロースと、
h)1~20mgのアロエと、を含む、特定の実施形態13~22のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0103】
特定の実施形態17.薬学的組成物が、経口スプレーとして配合される、特定の実施形態1~12のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0104】
特定の実施形態18.特定の実施形態1~17のいずれか1つに記載の薬学的組成物の投与を含む、喉の痛みの治療または予防を必要とする対象における喉の痛みを治療または予防するための、方法。
【0105】
特定の実施形態19.325mg未満(例えば、100mg未満、75mg未満、50mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満)の複数のNSAIDが、24時間で投与される、特定の実施形態18に記載の方法。
【0106】
特定の実施形態20.325mg未満(例えば、100mg未満、75mg未満、50mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満)の複数のNSAIDが、12時間で投与される、特定の実施形態18に記載の方法。
【0107】
特定の実施形態21.喉の痛みが、プロスタグランジン産生の増加を生じる炎症によって引き起こされる、特定の実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
特定の実施形態22.薬学的製品であって、
(a)特定の実施形態17に記載の経口スプレー組成物を分配するための、口腔通路に挿入されるように構成されている本体、
(b)オリフィスと流体連通しているリザーバであって、経口スプレー組成物が、リザーバに収容されている、リザーバ、
(c)オリフィスを通じて、使用者の口腔粘膜(例えば、喉の粘膜)をコーティングすることが可能な、適切なサイズのエアロゾル化された飛沫の経口スプレー組成物を排出することが可能なポンプ機構、を備える、製品。
【0109】
特定の実施形態23.ポンプ機構が、100μL~1000μLの経口スプレー組成物を排出するように構成されている、特定の実施形態22に記載の薬学的製品。
【0110】
特定の実施形態24.喉の痛みの治療または予防を必要とする対象における喉の痛みを治療または予防するための方法であって、
a)口腔通路に挿入されるように構成されている、特定の実施形態22または23に記載の薬学的製品の一部分を対象の口腔通路に挿入することと、
b)ポンプ機構を作動させて、経口スプレー組成物を対象に投与することと、を含む、方法。
【0111】
特定の実施形態25.挿入および作動ステップが、先述の投与経口スプレー組成物の10分超後の時点で繰り返される、特定の実施形態24に記載の方法。
【0112】
特定の実施形態26.喉の痛みを治療または予防するための方法であって、を含む、方法。
【0113】
特定の実施形態27.喉の痛みの治療を必要とする対象における喉の痛みを治療するための方法であって、75mg未満(例えば、50mg未満、25mg未満、15mg未満)の複数のNSAIDを喉に投与することを含む、方法。
【0114】
特定の実施形態28.複数のNSAIDのうちの、複数のNSAIDの重量に対する90%超が、アセチルサリチル酸である、特定の実施形態27に記載の方法。
【0115】
特定の実施形態29.325mg未満(例えば、100mg未満、75mg未満、50mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満)の複数のNSAIDが、24時間で投与される、特定の実施形態27または28に記載の方法。
【0116】
特定の実施形態30.325mg未満(例えば、100mg未満、75mg未満、50mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満)の複数のNSAIDが、12時間で投与される、特定の実施形態27または28に記載の方法。
【0117】
特定の実施形態31.投与が、1つ以上のNSAIDを投与されていない他の点で同一の粘膜と比較して、(例えば、TEERによって測定して)粘膜のバリア完全性に最小限の影響を有するか、または全く影響を有しない、特定の実施形態19~22および25~30のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
本開示の範囲および趣旨から逸脱することなく、上記述の主題において様々な変更を行うことができるので、上の説明に含まれるか、または添付の特許請求の範囲に定義されるすべての主題は、本開示の説明および例示として解釈されることが意図される。上の教示に照らした本開示の多くの修正および変形は、可能である。したがって、本記載は、添付の特許請求の範囲内に入るすべてのかかる代替、修正、および相違を包含することが意図される。
【0119】
本明細書または本明細書で参照により組み込まれる任意の文書で言及される任意の製品の任意の製造業者の指示書、説明、製品仕様、および製品シートと一緒に、本明細書で引用または参照されるすべての文書、および本明細書で引用される文書で引用または参照されるすべての文書、は、参照により本明細書に組み込まれ、開示の実施に用いられ得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
【国際調査報告】