IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バーク アンド ボイヤー、インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-544847一価不飽和脂肪酸組成物及び脂肪性肝疾患を治療するための使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】一価不飽和脂肪酸組成物及び脂肪性肝疾患を治療するための使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/201 20060101AFI20221014BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221014BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20221014BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61K31/201
A61K31/202
A61P1/16
A61K31/20
A61K31/19
A61P35/00
A61P29/00
A61K47/44
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511353
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 US2020047491
(87)【国際公開番号】W WO2021035178
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/889,826
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522066355
【氏名又は名称】バーク アンド ボイヤー、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボイヤー、ダミオン、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】バーク、ジョン、エム.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB01
4C076CC04
4C076CC09
4C076CC27
4C076EE53
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA03
4C206DA04
4C206DA05
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA75
4C206ZB11
4C206ZB26
4C206ZC33
(57)【要約】
第1の一価不飽和脂肪酸及び第2の一価不飽和脂肪酸の混合物を含む組成物を投与することによって、肝疾患、特に脂肪性肝疾患を治療する方法が本明細書に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の一価不飽和脂肪酸及び第2の一価不飽和脂肪酸の混合物を含む組成物を投与することを含み、前記混合物が約-1.7℃~約10.7℃の融点温度を有する、対象の肝疾患を治療又は予防する方法。
【請求項2】
前記混合物が約3℃~約9℃の融点温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物が約7℃~約9℃の融点温度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物が、前記組成物の少なくとも80重量%を構成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の一価不飽和脂肪酸及び前記第2の一価不飽和脂肪酸のそれぞれが、約50~約130のヨウ素価を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、炭素数16個以下のアシル鎖を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の一価不飽和脂肪酸が、炭素数18個以上のアシル鎖を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、1つ又は複数の追加の一価不飽和脂肪酸を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、C12:1、C14:1及びC16:1からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の一価不飽和脂肪酸がC16:1である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、C16:1n-7、C16:1n-6、C16:1n-5、C16:1n-4又はC16:1n-3である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の一価不飽和脂肪酸が、C22:1、C20:1及びC18:1からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の一価不飽和脂肪酸がC18:1である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の一価不飽和脂肪酸がC18:1n-9である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の一価不飽和脂肪酸の二重結合がシス異性体である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の一価不飽和脂肪酸の二重結合がシス異性体である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の一価不飽和脂肪酸がパルミトレイン酸であり、前記第2の一価不飽和脂肪酸がオレイン酸である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の最大約40重量%で存在する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約18重量%~約40重量%で存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約20重量%~約40重量%で存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約18重量%~約23重量%で存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約20重量%~約23重量%で存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の最大約80重量%で存在する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約40重量%~約80重量%で存在する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約60重量%~約80重量%で存在する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約20重量%~約40重量%で存在し、前記第2の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約60重量%~約80重量%で存在する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約18重量%~約23重量%で存在し、前記第2の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約60重量%~約80重量%で存在する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約20重量%~約23重量%で存在し、前記第2の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約60重量%~約80重量%で存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、最大約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%又は約30重量%の飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸、あるいは約5重量%~約30重量%又は約10重量%~約25重量%の飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸を更に含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記飽和脂肪酸が、C16:0、C12:0、C14:0及びC10:0からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記飽和脂肪酸が、最大約10重量%、約15重量%、約20重量%又は約25重量%であるか、あるいは約2重量%~約25重量%又は約5重量%~約20重量%である、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記多価不飽和脂肪酸が、C18:2、C18:3、C20:4、C20:5、C22:5及びC22:6からなる群から選択される、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記多価不飽和脂肪酸が、最大約10重量%、約15重量%又は約20重量%であるか、あるいは約2重量%~約20重量%又は約3重量%~約15重量%である、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が、
約10重量%~約40重量%のC16:1と、
約40重量%~約80重量%のC18:1と、
最大約15重量%の飽和脂肪酸と、
最大約7重量%の多価不飽和脂肪酸と
を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、
約20重量%のC16:1と、
約60重量%のC18:1と、
約15重量%のC16:0と、
約5重量%のC18:2と
を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が、
約10重量%~約30重量%のC16:1と、
約60重量%~約80重量%のC18:1と、
最大約7%の飽和脂肪酸と、
最大約7%の多価不飽和脂肪酸と
を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が、
約20重量%のC16:1と、
約70重量%のC18:1と、
約5重量%のC16:0と、
約5重量%のC18:2と
を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
最大約3重量%の微量の脂肪酸を更に含む、請求項1~37に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が室温で液体である、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記肝疾患が脂肪性肝疾患である、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記脂肪性肝疾患がNAFLDである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記脂肪性肝疾患がNASHである、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記肝疾患が、肝炎症、肝細胞傷害、肝線維化、肝硬変、又は肝癌である、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記肝癌が肝細胞癌である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物が、体重1kg当たり約0.01~約2g、約0.1~約1.5g、又は約0.3~約1.3gの1日用量で投与される、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物が、体重1kg当たり0.2~0.85gの1日用量で投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記組成物が、約0.5g~約60gの1日用量で投与される、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記組成物が、約2g、約10g、約20g、約30g、約40g、約50g又は約60gの1日用量で投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記組成物が、約1g、約5g、約10g、約15g、約20g、約25g、約30g、約35g、約40g、約45g、約50g又は約55gの1日用量で投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物が少なくとも8週間投与される、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記組成物が1つ又は複数の担体脂肪酸と共に投与されるか、あるいは前記組成物が1つ又は複数の担体脂肪酸を更に含む、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記担体脂肪酸が、ベニバナ油、オリーブ油、パーム油、大豆油、キャノーラ油(ナタネ油)、トウモロコシ油、落花生油、他の植物油及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
第1の一価不飽和脂肪酸及び第2の一価不飽和脂肪酸の混合物を含み、前記混合物が約-1.7℃~約10.7℃の融点温度を有する、組成物。
【請求項54】
前記混合物が約3℃~約9℃の融点温度を有する、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
前記混合物が約7℃~約9℃の融点温度を有する、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記混合物が、前記組成物の少なくとも80重量%を構成する、請求項53~55のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項57】
前記第1の一価不飽和脂肪酸及び前記第2の一価不飽和脂肪酸のそれぞれが、約50~約130のヨウ素価を有する、請求項53~56のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、炭素数16個以下のアシル鎖を有する、請求項53~57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
前記第2の一価不飽和脂肪酸が、炭素数18個以上のアシル鎖を有する、請求項53~58のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項60】
前記組成物が、1つ又は複数の追加の一価不飽和脂肪酸を更に含む、請求項53~59のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、C12:1、C14:1及びC16:1からなる群から選択される、請求項53~60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
前記第1の一価不飽和脂肪酸がC16:1である、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、C16:1n-7、C16:1n-6、C16:1n-5、C16:1n-4又はC16:1n-3である、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記第2の一価不飽和脂肪酸が、C22:1、C20:1及びC18:1からなる群から選択される、請求項53~63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
前記第2の一価不飽和脂肪酸がC18:1である、請求項64に記載の組成物。
【請求項66】
前記第2の一価不飽和脂肪酸がC18:1n-9である、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
前記第1の一価不飽和脂肪酸の二重結合がシス異性体である、請求項53~66のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項68】
前記第2の一価不飽和脂肪酸の二重結合がシス異性体である、請求項53~67のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項69】
前記第1の一価不飽和脂肪酸がパルミトレイン酸であり、前記第2の一価不飽和脂肪酸がオレイン酸である、請求項53~68のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項70】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の最大約40重量%で存在する、請求項53~69のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項71】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約18重量%~約40重量%で存在する、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約20重量%~約40重量%で存在する、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約18重量%~約23重量%で存在する、請求項71に記載の組成物。
【請求項74】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約20重量%~約23重量%で存在する、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
前記第2の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の最大約80重量%で存在する、請求項53~74のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項76】
前記第2の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約40重量%~約80重量%で存在する、請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
前記第2の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約60重量%~約80重量%で存在する、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約20重量%~約40重量%で存在し、前記第2の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約60重量%~約80重量%で存在する、請求項53~69のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項79】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約18重量%~約23重量%で存在し、前記第2の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約60重量%~約80重量%で存在する、請求項53~69のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項80】
前記第1の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約20重量%~約23重量%で存在し、前記第2の一価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約60重量%~約80重量%で存在する、請求項79に記載の組成物。
【請求項81】
前記組成物が、最大約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%又は約30重量%の飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸、あるいは約5重量%~約30重量%又は約10重量%~約25重量%の飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸を更に含む、請求項53~80のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項82】
前記飽和脂肪酸が、C16:0、C12:0、C14:0及びC10:0からなる群から選択される、請求項81に記載の組成物。
【請求項83】
前記飽和脂肪酸が、最大約10重量%、約15重量%、約20重量%又は約25重量%であるか、あるいは約2重量%~約25重量%又は約5重量%~約20重量%である、請求項81又は82に記載の組成物。
【請求項84】
前記多価不飽和脂肪酸が、C18:2、C18:3、C20:4、C20:5、C22:5及びC22:6からなる群から選択される、請求項81~83のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項85】
前記多価不飽和脂肪酸が、最大約10重量%、約15重量%又は約20重量%であるか、あるいは約2重量%~約20重量%又は約3重量%~約15重量%である、請求項81~84のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項86】
約10重量%~約40重量%のC16:1と、
約40重量%~約80重量%のC18:1と、
最大約15重量%の飽和脂肪酸と、
最大約7重量%の多価不飽和脂肪酸と
を含む、請求項85に記載の組成物。
【請求項87】
約20重量%のC16:1と、
約60重量%のC18:1と、
約15重量%のC16:0と、
約5重量%のC18:2と
を含む、請求項86に記載の組成物。
【請求項88】
約10重量%~約30重量%のC16:1と、
約60重量%~約80重量%のC18:1と、
最大約7重量%の飽和脂肪酸と、
最大約7重量%の多価不飽和脂肪酸と
を含む、請求項86に記載の組成物。
【請求項89】
約20重量%のC16:1と、
約70重量%のC18:1と、
約5重量%のC16:0と、
約5重量%のC18:2と
を含む、請求項88に記載の組成物。
【請求項90】
最大約3重量%の微量の脂肪酸を更に含む、請求項53~89に記載の組成物。
【請求項91】
室温で液体である、請求項53~90のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項92】
1つ又は複数の担体脂肪酸を含む、請求項53~91のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項93】
前記担体脂肪酸が、ベニバナ油、オリーブ油、パーム油、大豆油、キャノーラ油(ナタネ油)、トウモロコシ油、落花生油、他の植物油及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項92に記載の組成物。
【請求項94】
a)約20重量%のC16:1n-7と、
b)約70重量%のC18:1n-9と、
c)約5重量%のC16:0と、
d)約5重量%のC18:2と
を含み、肝疾患を治療又は予防するための、請求項53~93のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項95】
ベニバナ油、オリーブ油、パーム油、大豆油、キャノーラ油(ナタネ油)、トウモロコシ油、落花生油、他の植物油及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数の担体脂肪酸を更に含む、請求項94に記載の組成物。
【請求項96】
前記担体脂肪酸がベニバナ油である、請求項94に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年8月21日に出願された米国仮出願第62/889,826号の優先権を主張し、これによってその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、肝疾患、例えば非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、特に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)等の脂肪性肝疾患を治療するための、低融点及び高ヨウ素価を有する一価不飽和脂肪酸(MUFA)を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
肝臓の代謝機能は、恒常性分子合成及びエネルギー調節にとって重要であり、炭水化物、脂肪、及びタンパク質代謝を含む。脂肪性肝疾患は、脂肪が肝臓に蓄積する状態である。2つの主な種類、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及びアルコール性脂肪肝炎とも呼ばれるアルコール性脂肪性肝疾患が存在する。NAFLDは、重度のアルコール使用に関連しない脂肪性肝疾患の一種である。NAFLDは2種類を含む。1つの種類は単純脂肪肝であり、これは肝臓の脂肪を特徴とするが、炎症又は肝細胞損傷は、ほとんど又は全くない。単純脂肪肝は、典型的には、肝損傷又は合併症を引き起こすほど悪化しない。もう1つの種類は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)であり、これは炎症及び肝細胞損傷、並びに肝臓の脂肪を特徴とする。炎症及び肝細胞損傷は、肝臓の線維化又は瘢痕化を引き起こす可能性がある。NASHは、肝硬変又は肝癌を導く可能性がある。NASH(脂肪壊死と呼ばれることもある)は、40~60歳の患者で最も頻繁に診断されるが、全ての年齢群で起こり得る。多くの罹患患者は、肥満、2型糖尿病(又はグルコース不耐性)、脂質異常症、及び/又はメタボリックシンドロームを有する。広く受け入れられている唯一の治療は、潜在的な原因及び危険因子を排除することである。そのような治療は、薬物又は毒素の中止、減量、及び脂質異常症の治療又は高血糖症の治療を含むことができる。予備的な証拠は、チアゾリジンジオン及びビタミンEが、NASHにおける生化学的及び組織学的異常の矯正に役立つ可能性があることを示唆している。他の多くの治療(例えば、ウルソデオキシコール酸、メトロニダゾール、メトホルミン、ベタイン、グルカゴン、グルタミン注入)は有効であることが証明されていない。
【0004】
NAFLD又はNASHを含む脂肪性肝疾患の新規治療、並びにNASHに起因する、肝炎症、肝細胞損傷、肝線維化、肝硬変及び肝癌、例えば肝細胞癌の新規治療及び予防を開発する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
低融点温度、及び任意に約50~約130のヨウ素価を有するMUFAを含む新規な組成物、並びに組成物により対象の肝疾患を治療する方法が本明細書に開示される。
【0006】
したがって、第1の態様では、本発明は、第1の一価不飽和脂肪酸及び第2の一価不飽和脂肪酸の混合物を含む組成物を投与することを含む、対象の肝疾患を治療又は予防する方法を提供し、混合物は、約-1.7℃~約10.7℃の融点温度を有する。一実施形態では、混合物は、約3℃~約9℃の融点温度を有する。他の実施形態では、混合物は、約7℃~約9℃の融点温度を有する。
【0007】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、混合物は、組成物の少なくとも80重量%を構成する。
【0008】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸及び第2の一価不飽和脂肪酸のそれぞれは、約50~約130のヨウ素価を有する。一実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸及び第2の一価不飽和脂肪酸のそれぞれは、約68~約130のヨウ素価を有する。
【0009】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、炭素数16個以下のアシル鎖を有する。
【0010】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸は、炭素数18個以上のアシル鎖を有する。
【0011】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、組成物は、1つ又は複数の追加の一価不飽和脂肪酸を更に含む。
【0012】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、C12:1、C14:1及びC16:1からなる群から選択される。一実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸はC16:1である。別の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、C16:1n-7、C16:1n-6、C16:1n-5、C16:1n-4又はC16:1n-3である。
【0013】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸は、C22:1、C20:1及びC18:1からなる群から選択される。一実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸はC18:1である。別の実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸はC18:1n-9である。
【0014】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸の二重結合はシス異性体である。
【0015】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸の二重結合はシス異性体である。
【0016】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸はパルミトレイン酸である。更なる実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸はオレイン酸である。特定の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸はパルミトレイン酸であり、第2の一価不飽和脂肪酸はオレイン酸である。
【0017】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の最大約40重量%で存在する。一実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約18重量%~約40重量%で存在する。別の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約20重量%~約40重量%で存在する。更に別の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約18重量%~約23重量%で存在する。更に別の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約20重量%~約23重量%で存在する。
【0018】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の最大約80重量%で存在する。一実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約40重量%~約80重量%で存在する。別の実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約60重量%~約80重量%で存在する。
【0019】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約18重量%~約40重量%で存在し、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約40重量%~約80重量%で存在する。一実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約20重量%~約40重量%で存在し、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約60重量%~約80重量%で存在する。別の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約18重量%~約23重量%で存在し、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約60重量%~約80重量%で存在する。更に別の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約20重量%~約23重量%で存在し、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約60重量%~約80重量%で存在する。
【0020】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、組成物は、最大約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%又は約30重量%の飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸、あるいは約5重量%~約30重量%、約10重量%~約25重量%の飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸、あるいは約5重量%~約20重量%の飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸を更に含む。
【0021】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、飽和脂肪酸は、C16:0、C12:0、C14:0及びC10:0からなる群から選択される。一実施形態では、飽和脂肪酸は、最大約10重量%、約15重量%、約20重量%又は約25重量%、あるいは約2重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、又は約3重量%~約10重量%である。別の実施形態では、多価不飽和脂肪酸は、C18:2、C18:3、C20:4、C20:5、C22:5及びC22:6からなる群から選択される。更に別の実施形態では、多価不飽和脂肪酸は、最大約10重量%、約15重量%又は約20重量%、約2重量%~約20重量%、約3重量%~約15重量%、又は約3重量%~約10重量%である。
【0022】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、組成物は、約10重量%~約40重量%のC16:1、約40重量%~約80重量%のC18:1、最大約15重量%の飽和脂肪酸、及び最大約7重量%の多価不飽和脂肪酸を含む。一実施形態では、組成物は約20重量%のC16:1、約60重量%のC18:1、約15重量%のC16:0、及び約5重量%のC18:2を含む。
【0023】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、組成物は、約10重量%~約30重量%のC16:1、約60重量%~約80重量%のC18:1、最大約7重量%の飽和脂肪酸、及び最大約7重量%の多価不飽和脂肪酸を含む。一実施形態では、組成物は約20重量%のC16:1、約70重量%のC18:1、約5重量%のC16:0、及び約5重量%のC18:2を含む。
【0024】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、組成物は最大約3重量%の微量の脂肪酸を更に含む。
【0025】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、組成物は室温で液体である。
【0026】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、肝疾患は脂肪性肝疾患である。一実施形態では、肝疾患はNAFLDである。別の実施形態では、脂肪性肝疾患はNASHである。
【0027】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、肝疾患は、肝炎症、肝細胞傷害、肝線維化、肝硬変、又は肝癌である。一実施形態では、肝癌は肝細胞癌である。
【0028】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、組成物は、体重1kg当たり、約0.01~約2g、約0.1~約1.5g、又は約0.3~約1.3gの1日用量で投与される。一実施形態では、組成物は、体重1kg当たり、0.2~0.85gの1日用量で投与される。あるいは、組成物は、約0.5g~約60g、約5g~55g、約10g~50g又は約15g~約45gの1日用量で投与される。一実施形態では、組成物は、約2g、約10g、約20g、約30g、約40g、約50g又は約60gの1日用量で投与される。別の実施形態では、組成物は、約1g、約5g、約10g、約15g、約20g、約25g、約30g、約35g、約40g、約45g、約50g又は約55gの1日用量で投与される。
【0029】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、組成物は少なくとも8週間投与される。
【0030】
本明細書に描写される本発明の第1の態様の様々な実施形態では、組成物は1つ又は複数の脂肪酸と共に投与されるか、あるいは組成物は1つ又は複数の担体脂肪酸を更に含む。一実施形態では、担体脂肪酸は、ベニバナ油、オリーブ油、パーム油、大豆油、キャノーラ油(ナタネ油)、トウモロコシ油、落花生油、他の植物油及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0031】
第2の態様では、本発明は、第1の一価不飽和脂肪酸及び第2の一価不飽和脂肪酸の混合物を含む組成物を提供し、混合物は約-1.7℃~約10.7℃の融点温度を有する。一実施形態では、混合物は、約3℃~約9℃の融点温度を有する。他の実施形態では、混合物は、約7℃~約9℃の融点温度を有する。
【0032】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、混合物は、組成物の少なくとも80重量%を構成する。
【0033】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸及び第2の一価不飽和脂肪酸のそれぞれは、約50~約130のヨウ素価を有する。一実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸及び第2の一価不飽和脂肪酸のそれぞれは、約68~約130のヨウ素価を有する。
【0034】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、炭素数16個以下のアシル鎖を有する。
【0035】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸は、炭素数18個以上のアシル鎖を有する。
【0036】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、組成物は、1つ又は複数の追加の一価不飽和脂肪酸を更に含む。
【0037】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、C12:1、C14:1及びC16:1からなる群から選択される。一実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸はC16:1である。別の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、C16:1n-7、C16:1n-6、C16:1n-5、C16:1n-4又はC16:1n-3である。
【0038】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸は、C22:1、C20:1及びC18:1からなる群から選択される。一実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸はC18:1である。別の実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸はC18:1n-9である。
【0039】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸の二重結合はシス異性体である。
【0040】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸の二重結合はシス異性体である。
【0041】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸はパルミトレイン酸である。更なる実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸はオレイン酸である。特定の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸はパルミトレイン酸であり、第2の一価不飽和脂肪酸はオレイン酸である。
【0042】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の最大約40重量%で存在する。一実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約18重量%~約40重量%で存在する。別の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約20重量%~約40重量%で存在する。更に別の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約18重量%~約23重量%で存在する。更に別の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約20重量%~約23重量%で存在する。
【0043】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の最大約80重量%で存在する。一実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約40重量%~約80重量%で存在する。別の実施形態では、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約60重量%~約80重量%で存在する。
【0044】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約18重量%~約40重量%で存在し、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約40重量%~約80重量%で存在する。一実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約20重量%~約40重量%で存在し、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約60重量%~約80重量%で存在する。別の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約18重量%~約23重量%で存在し、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約60重量%~約80重量%で存在する。更に別の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約20重量%~約23重量%で存在し、第2の一価不飽和脂肪酸は、組成物の約60重量%~約80重量%で存在する。
【0045】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、組成物は、最大約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%又は約30重量%の飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸、又は約5重量%~約30重量%、約10重量%~約25重量%の飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸、又は約5重量%~約20重量%の飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸を更に含む。
【0046】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、飽和脂肪酸は、C16:0、C12:0、C14:0及びC10:0からなる群から選択される。一実施形態では、飽和脂肪酸は、最大約10重量%、約15重量%、約20重量%又は約25重量%、あるいは約2重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、又は約3重量%~約10重量%である。別の実施形態では、多価不飽和脂肪酸は、C18:2、C18:3、C20:4、C20:5、C22:5及びC22:6からなる群から選択される。更に別の実施形態では、多価不飽和脂肪酸は、最大約10重量%、約15重量%又は約20重量%、あるいは約2重量%~約20重量%、約3重量%~約15重量%、又は約3重量%~約10重量%である。
【0047】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、組成物は、約10重量%~約40重量%のC16:1、約40重量%~約80重量%のC18:1、最大約15重量%の飽和脂肪酸、及び最大約7重量%の多価不飽和脂肪酸を含む。一実施形態では、組成物は約20重量%のC16:1、約60重量%のC18:1、約15重量%のC16:0、及び約5重量%のC18:2を含む。
【0048】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、組成物は、約10重量%~約30重量%のC16:1、約60重量%~約80重量%のC18:1、最大約7重量%の飽和脂肪酸、及び最大約7重量%の多価不飽和脂肪酸を含む。一実施形態では、組成物は約20重量%のC16:1、約70重量%のC18:1、約5重量%のC16:0、及び約5重量%のC18:2を含む。
【0049】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、組成物は最大約3重量%の微量の脂肪酸を更に含む。
【0050】
本明細書に描写される本発明の第2の態様の様々な実施形態では、組成物は室温で液体である。
【0051】
本発明の第2の態様の様々な実施形態では、組成物は、例えば、ベニバナ油、オリーブ油、パーム油、大豆油、キャノーラ油(ナタネ油)、トウモロコシ油、落花生油、他の植物油及びそれらの組合せからなる群から選択される、1つ又は複数の担体脂肪酸を更に含む。
【0052】
特定の実施形態では、組成物は、肝疾患を治療又は予防するためのものであり、a)約20重量%のC16:1n-7、b)約70重量%のC18:1n-9、c)約5重量%のC16:0、及びd)約5重量%のC18:2を含む。特定の実施形態では、組成物は、ベニバナ油、オリーブ油、パーム油、大豆油、キャノーラ油(ナタネ油)、トウモロコシ油、落花生油、他の植物油及びそれらの組合せからなる群から選択される、1つ又は複数の担体脂肪酸を更に含む。特定の実施形態では、担体脂肪酸はベニバナ油である。
【0053】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油、25%組成物A及び75%ベニバナ油、又は組成物Aで処置した動物の体重変化を示す図である。
【0055】
図2A】対照動物及び組成物Aで処置した動物における食物摂取量(1日目~2日目)を示す図である。
図2B】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物における食物摂取量(3日目~14日目)を示す図である。
【0056】
図3A】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物の体重を示す図である。
図3B】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物の肝重量を示す図である。
図3C】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物の肝重量の体重に対する比を示す図である。
【0057】
図4A】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物の全血グルコースを示す図である。
図4B】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物の血漿ALTを示す図である。
図4C】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物の肝ヒドロキシプロリンを示す図である。
図4D】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物の肝トリグリセリドを示す図である。
図4E】対照動物(101番)並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物(106番)又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物(108番)のパルミトレイン酸(C16:1)を示す図である。
【0058】
図5A】対照動物(101番)並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物(106番)又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物(108番)のHE染色肝切片を示す代表的な顕微鏡写真である。
図5B】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物のNAFLD活性スコアを示す図である。
図5C】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物の脂肪症スコアを示す図である。
図5D】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物の炎症スコアを示す図である。
図5E】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物の風船様腫大スコアを示す図である。
図5F】対照動物並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物のシリウスレッド染色肝切片を示す代表的な顕微鏡写真である。
図5G】対照動物(101番)並びに50%組成物A及び50%ベニバナ油で処置した動物(106番)又は25%組成物A及び75%ベニバナ油で処置した動物(108番)の線維化領域を示す図である。
【0059】
図6】進行性ヒト線維化NASHのCDAA-HFDモデルにおいて本明細書に記載される組成物の効果を決定するための試験概要を示す代表的な概略図である。
【0060】
図7A】DIAMONDマウスにおける誘導肝疾患の進行を示す代表的な概略図である。
図7B】肝疾患のDIAMONDモデルにおいて本明細書に記載される組成物の効果を決定するための試験概要を示す代表的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
脂肪性肝疾患を治療する方法を本明細書に開示する。方法は、第1の一価不飽和脂肪酸及び第2の一価不飽和脂肪酸の混合物を含む組成物を投与することを含み得る。混合物は、約-1.7℃~約10.7℃の融点温度を有する。特定の実施形態では、第1の一価不飽和脂肪酸及び第2の一価不飽和脂肪酸のそれぞれは、50~130のヨウ素価を有する。
【0062】
パルミチン酸(C16:0)及びステアリン酸(C18:0)等の飽和脂肪酸は、室温(約23℃)及び生理学的温度(約37℃)の両方で固体である。対照的に、一般にパルミチン酸及びステアリン酸と同じ長さのアシル鎖を有するが、1つ又は複数の不飽和結合を有するパルミトレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)及びリノール酸(C18:2)等の脂肪酸は、融点温度が低く、したがって上記温度では液体である。表1に、いくつかの一般的な脂肪酸の融点を提供する。
【表1】
【0063】
表1に見られる脂肪酸の多くは、植物、ナッツ及び動物等の天然供給源中のトリグリセリドとして見出すことができる。しかし、これらの天然トリグリセリド供給源は、アシル鎖長及び飽和度の両方が異なる多くの脂肪酸の混合物を含有する。例えば、ラード(ブタ由来)、牛脂(ウシ由来)及びマトン獣脂(ヒツジ由来)は室温で固体脂肪であり、それらのアシル基の40%~50%は飽和C16:0及びC18:0である。一価不飽和オレイン酸(C18:1)は、それらのアシル含有量の約40%~50%を構成し、残りの多くは多価不飽和リノール酸(C18:2)である。対照的に、室温で液体であるほとんどの植物油は、パルミチン酸エステル及びステアリン酸エステルを10%~20%しか有しておらず、残りはほとんどが不飽和オレイン酸エステル及びリノール酸エステルである。
【0064】
ヨウ素価は、油又は脂肪の炭素-炭素二重結合の程度の尺度である。飽和(炭素-炭素二重結合を有さない)油及び脂肪はヨウ素を取り込まないため、それらのヨウ素価は0である。対照的に、不飽和油及び脂肪はヨウ素を取り込む。二重結合が多く存在するほど、ヨウ素が多く結合し、ヨウ素価が高くなり、油又は脂肪の反応性がより高く、より不安定になる。ヨウ素価が130を超える脂肪酸は、架橋及び重合して、体内に沈着物を形成する可能性があり、一方で約50~約130のヨウ素価を有する脂肪酸は、より安定であり、重合及び動脈壁への付着が起こりにくいことが発見されている。
【0065】
表2は、いくつかの一般的な脂肪酸のヨウ素価を提供する。様々な実施形態では、約50~約130のヨウ素価を有する脂肪酸を本発明の組成物に組み込むことができる。
【表2】
【0066】
本明細書に記載のMUFA組成物は、C12:1、C14:1、及びC16:1の群から選択される少なくとも1つのメンバを任意に有する短炭素鎖の第1の脂肪酸基と、C22:1、C20:1、及びC18:1の群から選択される少なくとも1つのメンバを任意に有する長炭素鎖の第2の脂肪酸基とを含む。
【0067】
約18重量%~約40重量%の第1の短炭素鎖基及び約40重量%~約80重量%の第2の長炭素鎖基を含む好ましいMUFA組成物が提供される。本明細書で企図される組成物の代表的な例を、短炭素鎖MUFAと長炭素鎖MUFAとの濃度比と共に、表3に提供する。
【表3】
【0068】
本明細書に記載される組成物を投与することによる、肝疾患、例えば、NAFLD及び/又はNASH等の脂肪性肝疾患を治療するための方法もまた、提供される。そのような方法の例は、表3に記載の組成物を、体重1kg当たり、約0.01~約2g、約0.1~約1.5g、又は約0.3~約1.3g、例えば、1日につき、体重1kg当たり0.375gを、少なくとも8週間、又は1日につき、体重1kg当たり0.125gを、1日3回、少なくとも8週間、患者に投与することを含む。
【0069】
MUFAは、アシル炭化水素鎖に沿って、単一のビニル結合又は炭素-炭素二重結合を有する。以下、脂肪酸の構造は、Cx:yn-a等の表記によって特性決定されるであろう。「Cx」は、脂肪アシル基が「x」個の炭素原子を含有することを示す。「y」は、アシル鎖の炭素-炭素二重結合の数を示し、「n-a」は、最も遠位の二重結合が、終端メチル末端から数えて「a」炭素上で終端することを示す。
【0070】
本発明のために選択されるMUFAは、約-1.7℃~約10.7℃の低融点温度、及び任意に約50~約130の高いヨウ素価を有する脂肪酸のブレンド又は混合物を含む。特定の実施形態では、高濃度の選択されたMUFAの少なくとも2つの基を組み合わせた組成物の投与を含む方法が提供され、ここで、第1のMUFA基の少なくとも1つのメンバは、短炭素鎖MUFA(炭素数16個以下のアシル炭素長)から選択され、第2のMUFA基の少なくとも1つのメンバは、長炭素鎖MUFA(炭素数18個以上のアシル炭素長)から選択される。本明細書で企図されるMUFAの非限定的な例は、以下の表4に見出すことができる。代表的な短炭素鎖MUFAは、C12:1、C14:1及びC16:1を含み、長炭素鎖MUFAは、C22:1、C20:1及びC18:1を含む。本発明で論じられるMUFAは、シス又はトランス配置の両方で存在してもよく、本発明では両方の幾何異性体が企図される。
【表4】
【0071】
注目すべきことに、短鎖MUFAパルミトレイン酸は長年知られているが、食習慣改善に有用な化合物として示唆されていない。PUFA及び飽和脂肪に代わる食餌としてのオレイン酸の支持は、パルミトレイン酸等のより短い鎖のホモログの有用性については同様の教示を提供していない。動物脂質の重要な成分としてのパルミトレイン酸及びミリストレイン酸の存在は、医学界又は生化学界によって、ほとんど又は全く重要ではないと考えられてきた。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の短炭素鎖MUFA及び長炭素鎖MUFAは、全組成物の少なくとも約80重量%を構成すべきである。好ましくは、短炭素鎖MUFA基は、組成物の約18重量%~約40重量%、より好ましくは約18重量%~約23重量%、更により好ましくは組成物の約20重量%~約23重量%を構成する。長炭素鎖MUFA基は、好ましくは組成物の約40重量%~約80重量%、より好ましくは約60重量%~約80重量%を構成する。
【0073】
好ましい脂肪酸は、C16:1及びC18:1である。脂肪酸C16:1は、C16:1n-7、C16:1n-6、C16:1n-5、C16:1n-4、及びC16:1n-3を含むその位置異性体のいずれか1つ、並びにそのシス及びトランス幾何異性体、又はそれらの組合せを含むことができる。より好ましい脂肪酸はC16:1n7である。C16:1n7の慣用名は、一般に式Iによって表されるパルミトレイン酸である。
CH(CHCH=CH(CHCOOH
(式I)
【0074】
C16:1は、少量であるが、天然に存在する油(「原料油」)で一般に入手可能である。C16:1を含有する所望の油画分は、従来の冷却及び蒸留技術、並びに/又は当業者に周知の溶媒抽出(「精製」技術)によって、植物油、種子油若しくは堅果油、魚油、動物脂肪、又は水生植物油、例えば塩水若しくは淡水植物等の様々な種類の油(すなわち、様々な原料油)、及び特定の微生物から容易に得ることができる。一般に、植物油並びに堅果油又は種子油は、C16:1の所望の含有量が高くない。大量の本発明のC16:1を有する油供給源には、約10重量%~約16重量%のC16:1n-7を含有し得るイワシ及びメンヘーデン等の魚油が含まれ、一方、マッコウクジラ油は約13重量%以上を含有し得る。堅果油は一般にC16:1n-7脂肪酸を有さないが、例外は、油の総重量の約16%~約25%の量でC16:1n-7を含有するマカダミアナッツ油であるが、これは他の望ましくない脂肪酸も含有する。バターオイル、鶏脂肪、ラード、及び牛脂等の動物脂肪は、一般に高レベルのC16:1n-7を有する。同様に、それらはまた、高レベルの他の望ましくない脂肪酸を含有する。したがって、所望のC16:1n-7脂肪酸をこれらの供給源から抽出及び単離することができる。
【0075】
例えば、C16:1n-7脂肪酸並びに対応するアルコール、ジグリセリド、トリグリセリド及び塩は、最初に油を所望のC16:1n-7の凝固温度又は融点温度より低い温度に冷却し、次いで残りの液体部分を除去することによって、上記の種類の油(すなわち、原料油)から抽出することができる。次いで、除去された液体油を蒸留させることができ、C16:1n-7等、C14:1n-5等、C12:1n-3よりも高い沸点を有する化合物を除去することができる。当業者に明らかなように、冷却-蒸留プロセスは、C16:1又はその対応するアルコール、ジグリセリド、トリグリセリド及び/又は塩が高濃度で得られるまで繰り返すことができる。あるいは、溶媒の気化時に選択的脂肪酸(及び/又は対応するアルコール、ジグリセリド、トリグリセリド及び塩)が得られるように、C16:1(及び/又は対応するアルコール、ジグリセリド、トリグリセリド及び塩)を溶解するが油の他の構成要素を溶解しない様々な1つ又は複数の溶媒を利用することができる。そのような技術及びプロセスは、当技術分野で周知である。例えば、参照により本明細書に完全に組み込まれる、米国特許第5,198,250号(その例1等)に記載の説明を参照されたい。
【0076】
原料油を精製することにより、大量又は高濃度のC16:1、例えば、供給源から抽出された全脂肪酸の約10%~約35%又は約50%又は約75%又は約90%を得ることができる。そのような精製原料油はまた、C12:0、C14:0、C16:0、及びC18:0等の少量の様々な飽和脂肪酸構成要素、例えば、組成物中の脂肪酸構成要素の総量に基づいて、≦20体積%、≦15体積%、≦12体積%、≦10体積%、及び≦5体積%を含有し得る。同様に、精製原料油はまた、C12:2又はC12:3、C14:2又はC14:3、Cl6:2又はCl6:3、C18:2又はCl8:3等の少量の多価不飽和脂肪酸油構成要素、例えば、組成物中の脂肪酸構成要素の総量に基づいて、<20体積%、<15体積%、<12体積%、<10体積%、更には<5体積%を含有する。
【0077】
様々な藻類株が、C16:1のための所望の原料油の製造に関して適している。藻類は、ホスファート等の栄養素を含有するタンク内で成長させることができる。藻類の多くの株は、高いシス-パルミトレイン酸含有量(それぞれ総脂肪酸の54.5%及び54.4%)を有する、シアノバクテリア(cyanobacteria)の、フォルミディウム種(Phormidium sp.)NKBG 041105及びオシラトリア種(Oscillatoria sp.)NKBG 091600等の比較的高い含有量のパルミトレイン酸を有する。フォルミディウム種(Phormidium sp.)NKBG 041105は、バイオマス当たり最高のシス-パルミトレイン酸含有量(46.3mg(g乾燥細胞重量)-1)を有し、シス-パルミトレイン酸組成物は、様々な温度で一定であることが見出された。同様の方式で、他の水生植物、例えばシーバックソーンも成長させ、利用することができる。次いで、藻類、シーバックソーン等を冷却-蒸留又は溶媒抽出等の既知の技術によって処理して、中~高濃度のC16:1n-7油画分を得ることができる。更に、2009年8月29日に公開された国際公開第2009/105620号及び2008年3月27日に公開された国際公開第2008/036654号は、C16:1の原料油として適した追加の藻類を特定している。両方の刊行物は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0078】
脂肪酸C18:1は、C18:1n9等のその位置異性体のいずれかを含むことができる。脂肪酸C18:1n9は、オレイン酸としても公知であり、C18:1の好ましい脂肪酸であり、一般に式IIで表される。
CH(CHCH=CH(CHCOOH
(式II)
【0079】
C18:1は、米国特許第6,664,405号に記載されているように、ベニバナ油又はオリーブ油等の天然供給源から抽出されるか、又はSea Land Chemical、Cargill、及びEmory等の商業的供給源から購入することができる。
【0080】
本明細書で企図されるMUFAは、遊離脂肪酸、脂肪酸エチルエステル、脂肪酸アミド又はそれらの誘導体、塩、モノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドを含む任意の形態で使用され得る。MUFAに対する任意の改変は、生理学的に許容される組成物をもたらすであろう。本明細書で使用される場合、「生理学的に許容される」エステル又は塩という用語は、栄養補助食品、機能性食品又は医薬組成物の他の成分と適合性であり、投与された場合に組成物を受けている対象に有害ではない活性成分のエステル又は塩形態を意味する。
【0081】
本明細書で使用される場合、「モノグリセリド」という用語は、エステル結合を介してグリセロール分子に共有結合した脂肪酸を指す。「ジグリセリド」という用語は、エステル結合を介してグリセロール分子に共有結合した2つの脂肪酸鎖を指す。「トリグリセリド」という用語は、エステル結合を介してグリセロール分子に共有結合した3つの脂肪酸鎖を指す。ジ又はトリグリセリドのグリセロール分子に結合した脂肪酸鎖のそれぞれは、同一であっても、又はそうでなくてもよい。
【0082】
一価不飽和脂肪アルコールは、当技術分野で知られているような、水素化リチウムアルミニウム等の強塩基による還元及び分別蒸留等であるがこれに限定されない二次分離工程によって、上記MUFAから誘導することができる。したがって、脂肪アルコール誘導体は、その中に同じ数の総炭素原子を有し、一価不飽和であり、本明細書で論じるMUFAに関して記載したものと同じ位置に二重結合を含有するであろう。上記MUFA、又は一価不飽和脂肪アルコール、又は一価不飽和脂肪酸、モノ、ジ若しくはトリグリセリドの適切な塩には、塩素等の様々なハロゲン化物が含まれる。
【0083】
本明細書で使用される「治療する」又は「治療すること」という用語は、望ましくない生理学的変化又は障害を、部分的又は完全に緩和すること、阻害すること、発症を遅延させること、発生率を低下させること、改善すること、及び/又は軽減することを指す。「予防すること」又は「予防」又は「予防する」という用語は、疾患又は障害を獲得するリスクを低減させること(すなわち、疾患に曝露されているか又は疾患の素因を有する可能性があるが、疾患の症状をまだ経験していないか又は示していない患者において、疾患の臨床症状の少なくとも1つを発症させないこと)を指す。
【0084】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語はヒト対象を含むが、本明細書に記載の方法は、「対象」という用語に含まれることが意図されている全ての脊椎動物種に関して有効であることを理解されたい。したがって、「対象」は、既存の状態若しくは疾患の治療又は状態若しくは疾患の発症の予防等の医学的目的のためのヒト対象、あるいは医学、獣医学目的又は発達目的のための動物対象を含み得る。適切な動物対象としては、霊長類、例えばヒト、サル、類人猿等、ウシ属、例えばウシ、雄ウシ等、ヒツジ類、例えばヒツジ等、ヤギ類、例えばヤギ等、ブタ類、例えばブタ、雄ブタ等、ウマ類、例えばウマ、ロバ、シマウマ等、野生及び飼育ネコを含むネコ科、イヌを含むイヌ科、ウサギ、野ウサギ等を含むウサギ目、マウス、ラット等を含むげっ歯類が含まれるが、これらに限定されない。動物はトランスジェニック動物であってもよい。いくつかの実施形態では、対象は、胎児、新生児、乳児、未成年、及び成人対象を含むがこれらに限定されないヒトである。更に、「対象」は、状態又は疾患に罹患しているか又は罹患している疑いがある患者を含むことができる。したがって、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0085】
肝疾患には、脂肪性肝疾患及びそれに関連する肝疾患が含まれる。一実施形態では、肝疾患は、NAFLD又はNASHを含む。
【0086】
NASHの病態生理学は、脂肪蓄積(脂肪症)、炎症、及び可変的に線維化を伴う。脂肪症は、肝トリグリセリド蓄積から生じる。脂肪症の可能性のある機序としては、超低密度リポタンパク質(VLDL)の合成の減少及び肝トリグリセリド合成の増加(おそらく、脂肪酸の酸化の減少又は肝臓に送達される遊離脂肪酸の増加に起因する)が挙げられる。炎症は、細胞膜への脂質過酸化損傷に起因し得る。これらの変化は、肝星細胞を刺激し、線維化をもたらし得る。進行すると、NASHは肝硬変及び門脈圧亢進症を引き起こす可能性がある。
【0087】
したがって、NASHは、炎症及び肝細胞損傷、並びに肝臓の脂肪を特徴とする。炎症及び肝細胞損傷は、肝臓の線維化又は瘢痕化を引き起こす可能性がある。NASHは、肝硬変又は肝癌を導く可能性がある。一実施形態では、MUFAによる治療から利益を得るであろう肝疾患には、NASHに起因する、肝炎症、肝細胞損傷、肝線維化、肝硬変及び肝癌、例えば肝細胞癌が含まれる。
【0088】
ほとんどのNASH患者は無症候性である。しかし一部では、疲労、倦怠感又は右上腹部不快感を有する。肝腫大が患者の約75%で発症する。脾腫は、進行した肝線維化が存在する場合に発症することがあり、通常、門脈圧亢進症が発症したことの最初の徴候である。NASHによる肝硬変の患者は無症候性である可能性があり、慢性肝疾患の通常の徴候を欠くことがある。一実施形態では、MUFAによる治療から利益を得るであろう肝疾患は、NASHによる肝腫大を含む。
【0089】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、治療製剤及び食餌処方物を含む。本発明の組成物は、栄養補助食品、機能性食品又は医薬組成物の脂肪酸含有量が、操作又は調整されて、短炭素鎖及び長炭素鎖MUFAである、C22:1、C20:1、C18:1、C16:1、C14:1及びC12:1によって表される、低融点及び任意に約50~約130のヨウ素価を有する所望の高濃度のMUFAを提供するという意義で製剤化される。「栄養補助食品」という用語は、栄養素を含有する摂取を意図した製品である。栄養素は、他の物質の中でも、以下の物質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、脂肪酸、又はアミノ酸のうちの1つ、又は任意の組合せであり得る。「機能性食品」という用語は、食品の生理学的活性を超える生理学的活性を有する任意の食品である。
【0090】
本明細書で提供されるMUFAは製剤化されており、これは、個々の構成要素が精製された供給源から一緒に混合されて、本明細書に記載の高濃度の短炭素鎖及び長炭素鎖MUFAを形成することを意味している。あるいは、天然に存在する食品は、改変されて、予想外の改善された治療特性を示す、本明細書に記載のMUFAの高組成を達成することができる。具体的には、本明細書で提供される長炭素鎖及び短炭素鎖MUFAを食品に添加又は補充して、所望の融点、すなわち-1.7℃~約10.7℃を示すMUFAの混合物を得るか、及び/又は(i)食品中の最終的な短炭素鎖及び長炭素鎖MUFA濃度が合計で約80重量%超であり、かつ(ii)短炭素鎖及び長炭素鎖MUFAの各基の重量パーセントが表3に提供される濃度範囲内に入るようにする。
【0091】
本明細書で企図される組成物は、医薬組成物の形態で哺乳動物に投与することもできる。そのような医薬組成物は、活性成分として本明細書で企図されるMUFAのみを含有し得る。医薬組成物はまた、1つ又は複数の薬学的に許容される担体及び任意の追加の成分と共に当該活性成分を含有し得る。
【0092】
「薬学的に許容される担体」は、活性成分の活性の有効性を妨げず、投与される宿主に対して毒性でない任意の担体を包含することを意味する。薬学的に許容される担体は当業者に公知である。一実施形態では、薬学的に許容される担体は担体脂肪酸である。担体脂肪酸は、ベニバナ油、オリーブ油、パーム油、大豆油、キャノーラ油(ナタネ油)、トウモロコシ油、落花生油、他の植物油及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0093】
「追加の成分」は、次のもの、賦形剤、界面活性剤、分散剤、不活性希釈剤、造粒剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、着色剤、防腐剤、生理学的に分解可能な組成物(例えば、ゼラチン)、水性ビヒクル、水性溶媒、油性ビヒクル及び油性溶媒、懸濁化剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、緩衝剤、塩、増粘剤、充填剤、乳化剤、酸化防止剤、抗生物質、抗真菌剤、安定化剤、並びに薬学的に許容されるポリマー又は疎水性材料のうちの1つ又は複数を意味する。医薬組成物に含むことができる他の「追加の成分」は公知である。適切な追加の成分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Genaro,ed.,Easton,Pa.(1985)に記載される。
【0094】
希釈剤と呼ばれることもある許容可能な充填剤の例には、水、ラクトース、デキストロース、スクロース、マルトース、又は微結晶セルロース等の糖、粘土、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0095】
本発明において有用な結合剤には、粘着特性を有する薬学的に許容される物質が挙げられる。いくつかの例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース、ポリビニルピロリドン、糖、デンプン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0096】
本発明において有用な安定化剤の例としては、有機酸及び有機酸のアルカリ金属塩、例えばコハク酸、フマル酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0097】
本発明で使用され得る潤滑剤、流動促進剤及び/又は付着防止剤の例としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、水素化植物油、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0098】
本発明で使用することができる崩壊剤の例としては、コーンスターチ、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(polyplasdone XL-10)、グリコール酸デンプンナトリウム(EXPLOTAB(登録商標)又はPRIMOJEL(登録商標))、又は前述の任意の組合せが挙げられる。
【0099】
使用され得る溶媒の例は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルアルコール、酢酸エチル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、1,3-プロパンジオール、2-メチル-l,3-プロパンジオール、グリセロールリシノレアート、鉱油、落花生油、トウモロコシ油、綿実油、ゴマ油又はそれらの組合せである。
【0100】
本発明で使用され得る香味料としては、ペパーミント、スペアミント、冬緑油、シナモン、ココナッツ、コーヒー、チョコレート、バニラ、メントール、カンゾウ、アニス、アプリコット、カラメル、パイナップル、イチゴ、ラズベリー、ブドウ、サクランボ、ミックスベリー、熱帯果実、ミント、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0101】
本発明で使用され得る着色剤としては、FD&C型染料及びレーキ、果物及び植物抽出物、二酸化チタン、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0102】
本明細書に記載される医薬組成物は、任意の既知の方法又は薬理学の分野において今後開発される方法によって調製され得る。一般に、そのような調製方法は、当該活性成分を担体及び/又は1つ若しくは複数の他の補助成分と組み合わせ、次いで、必要又は所望であれば、製品を所望の単回又は複数回用量単位に成形又は包装する工程を含む。
【0103】
本明細書で提供される医薬組成物は、主にヒトへの倫理的投与に適したものに関しているが、そのような組成物は一般にあらゆる種類の哺乳動物に適していることが理解される。
【0104】
経口製剤は、それぞれが所定量の活性成分を含有する、錠剤、硬カプセル剤若しくは軟カプセル剤、カシェ剤、トローチ剤、又は薬用キャンディ等の個別の固体用量単位として調製、包装、及び/又は販売され得る。他の経口製剤には、粉末又は顆粒製剤、水性又は油性懸濁液、水性又は油性溶液、及びエマルジョンが含まれる。本明細書で使用される場合、「油性」液体は、水よりも低い極性特性を示す炭素含有液体分子である。活性成分を含有する硬カプセル剤及び軟ゼラチンカプセル剤は、ゼラチン等の生理学的分解性組成物を使用して製造することができる。硬カプセル剤は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、及びカオリン等の不活性固体希釈剤を更に含んでもよい。カルシウム希釈剤は許容されるが、その濃度は、脂肪酸との負の相互作用を回避するために最小化されるべきである。活性成分として本明細書で企図されるMUFAを含有する軟ゼラチンカプセル剤は、ゼラチン等の生理学的分解性組成物を使用して製造することができる。そのような軟カプセル剤は活性成分を含有し、これは他の賦形剤と混合され得る。経口投与に適した液体医薬製剤は、液体形態で調製、包装及び販売され得る。
【0105】
本明細書に記載のMUFA、栄養補助食品、機能性食品、及び医薬組成物のいずれも、本明細書に記載の方法に従って投与することができる。一般に、本明細書に記載の組成物は、体重1kg当たり、約0.01~約2g、約0.1~約1.5g、又は約0.3~約1.3g、例えば体重1kg当たり0.375gで投与され得る。投与量は、個人の年齢、健康、及び/又は既存のNAFLD若しくはNASHの重症度等の他の要因に従って変動し得る。
【0106】
非限定的な例として、本明細書に記載の組成物は、1日当たり約1g~約60g又はその間の任意の値で個人に投与され得る。体重が72kgを超える個人には、1日当たり合計約2g~約60gの範囲、好ましくは1日当たり合計約2g、約10g、約20g、約30g、約40g、約50g及び約60g、又はその間の任意の値の用量で投与され得る。体重72kg未満の個人には、1日当たり合計約1g~約55g、又はその間の任意の値、好ましくは約1g、約5g、約10g、約15g、約20g、約25g、約30g、約35g、約40g、約45g、約50g、約55g、又はその間の任意の値の用量で投与され得る。
【0107】
対象は、液体、固体又は半固体を含む本明細書に記載の任意の形態の栄養補助食品、機能性食品又は医薬品として本明細書で企図される高濃度のMUFA組成物を受けることができる。対象は、肝疾患、例えば、NAFLD又はNASH等の脂肪酸肝疾患が検出される前又は後に、当該高濃度のMUFA組成物による治療を受けることができる。MUFA組成物を、肝疾患、例えば、NAFLD又はNASH等の脂肪酸肝疾患を発症する高いリスク因子を有する対象に投与することが有利であり得る。本明細書で企図される方法は、毎日投与され得、肝疾患、例えば、NAFLD又はNASH等の脂肪酸肝疾患が消失するまで、少なくとも約4、5、6、7、8、9又は10週間、あるいは更に長く継続し得る。
【0108】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、対象の肝疾患を治療又は予防する方法に関する。肝疾患、例えば脂肪酸肝疾患の進行、グレード分類又は病期分類を示す組織学的バイオマーカを有する対象に本発明の組成物を投与して、肝疾患を治療又は予防することが有利であり得る。肝バイオマーカは、肝重量の体重に対する比(mg/gm)、全血グルコース(mg/dL)、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(U/L)、肝ヒドロキシプロリン(μg/mg総タンパク質)、肝トリグリセリド(mg/g肝)、脂肪症スコア、小葉炎症スコア、肝細胞風船様腫大スコア、又は線維化領域(シリウスレッド陽性領域%)を含み得る。脂肪症スコア、小葉炎症スコア、及び肝細胞風船様腫大スコアは、NAFLD活性スコアを決定するNAS構成要素として定義される。肝バイオマーカは、脂肪症スコア、小葉炎症スコア、及び肝細胞風船様腫大スコアを含むNAFLD活性スコアを更に含み得る。脂肪症、炎症及び風船様腫大スコアの決定因子は、当技術分野で公知の通りであり、例えば、Kleiner DE,Brunt EM,Van Natta M,Behling C,Contos MJ,Cummings OW,et al.Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease.Hepatology 2005;41:1313-1321、及び本明細書で簡潔に記載される通りである。そのようなバイオマーカは、当技術分野で公知であり、本明細書に簡潔に記載されている方法によって、血液試料及び/又は肝生検を介して決定することができる。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、本明細書に記載の組成物による治療に適した対象を同定することを更に含む。例えば、対象は、肝疾患、例えば、NASH又はNAFLDに罹患していると同定され得る。別の実施形態では、本発明の方法は、治療後の疾患の進行を評価することを更に含む。対象が本明細書に開示される組成物による治療に適しているかどうか、又は疾患の進行を評価するのに適しているかどうかを評価する方法は、上記のバイオマーカのレベルを評価することに関与し得る。例えば、方法は、対象から少なくとも1つの生物学的試料を抽出することと、1つ又は複数の肝バイオマーカについて試料を分析することとを含む。生物学的試料の抽出は、潜在的にリスクのある対象から全血試料を採取すること、潜在的にリスクのある対象から肝生検を得ること、又はその両方を含むことができる。生検の例には、パンチ生検、針生検、又は腹腔鏡下クラムシェル生検が含まれる。いくつかの実施形態によれば、1つ又は複数の肝バイオマーカについて生物学的試料を分析することは、肝バイオマーカの存在又は量を確立することと、それを当該バイオマーカの健康レベル又は不健康レベル、あるいはより早い時点、例えば治療前の対象からの適切なベースラインパラメータと比較することとを含む。
【0110】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で企図される方法は、対象の肝疾患を治療若しくは予防するか、対象の肝臓の代謝機能を改善するか、又はその両方である。いくつかの実施形態によれば、本明細書で企図される方法は、対象の肝疾患を治療又は予防する。いくつかの実施形態によれば、対象における肝疾患の治療又は予防は、1つ又は複数の肝バイオマーカの調節を含む。いくつかの実施形態によれば、本明細書で企図される方法は、対象の肝臓の代謝機能を改善する。いくつかの実施形態によれば、肝機能の改善は、1つ又は複数の肝バイオマーカの調節を含む。
【0111】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で企図される方法は、1つ又は複数の肝バイオマーカの調節を含む。いくつかの実施形態によれば、肝バイオマーカは、肝重量の体重に対する比(mg/gm)、全血グルコース(mg/dL)、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(U/L)、肝ヒドロキシプロリン(μg/mg総タンパク質)、肝トリグリセリド(mg/g肝)、脂肪症スコア、小葉炎症スコア、肝細胞風船様腫大スコア、NAFLD活性スコア、又は線維化領域(シリウスレッド陽性領域%)、上記の全て、あるいはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。一実施形態では、肝機能の改善は、肝重量の体重に対する比(mg/gm)、全血グルコース(mg/dL)、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(U/L)、肝ヒドロキシプロリン(μg/mg総タンパク質)、肝細胞風船様腫大スコア、NAFLD活性スコア、又は線維化領域(シリウスレッド陽性領域%)、上記の全て、あるいはそれらの任意の組合せの調節を含む。
【0112】
一実施形態では、肝バイオマーカの調節は、対照と比較した場合のそれらのバイオマーカの減少を含む。一実施形態では、肝重量の体重に対する比(mg/gm)は、対照と比較して、約0.1%~約15.0%、約5.0%~約10%、又は約5.5%~約9.5%低下する。一実施形態では、全血グルコース(mg/dL)は、対照と比較して、約0.1%~約20.0%、約8.0%~約14.0%、又は約10.5%~約11.3%低下する。一実施形態では、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(U/L)、肝ヒドロキシプロリン(μg/mg総タンパク質)は、対照と比較して、約0.1%~約30.0%、約10.0%~約20.0%、又は約18.0%~約19.6%低下する。一実施形態では、肝細胞風船様腫大スコアは、対照と比較して1倍減少する。一実施形態では、NAFLD活性スコア又はNASH活性スコアは、対照と比較して、約0.1%~約15.0%、約5.0%~約10.0%、又は約9.0~約9.3%低下する。一実施形態では、線維化領域(シリウスレッド陽性領域%)は、対照と比較して、約0.1%~約50.0%、約10.0%~約40.0%、又は約23.0%~約33.0%減少する。
【0113】
MUFA組成物は、約-1.7℃~約10.7℃の融点温度及び約50~約130のヨウ素価を有する高濃度のMUFAの組合せ、混合物又はブレンドを含む。当該高濃度のMUFAは、全組成物の少なくとも約80重量%~約100重量%に寄与し得る。当該MUFAは更に、全組成物の少なくとも約90重量%~約95重量%に寄与し得る。任意に、他の脂肪酸を当該高MUFA組成物に組み込むことができる。そのような任意の脂肪酸は、飽和及び多価不飽和脂肪酸であってもよい。そのような任意の脂肪酸は、組成物の総重量の15%以下を構成することが好ましい。
【0114】
短炭素鎖基からの好ましい脂肪酸はC16:1を含み、長炭素鎖基からの好ましい脂肪酸はC18:1を含む。本明細書に記載の組成物は、各基から選択される単一の脂肪酸に限定されない。例えば、C16:1は代表的なMUFAとして選択されるが、短鎖MUFAメンバの全組成が組成物の40重量%を超えないように、C12:1又はC14:1を含む他の短炭素鎖基メンバと組み合わせてもよい。同様に、本明細書で論じられるMUFAの長炭素鎖メンバは、長炭素鎖メンバの全組成が約80%を超えないように、C22:1及びC20:1を含む他のメンバから構成され得るように、C18:1に限定されない。短炭素鎖及び長炭素鎖MUFAの組合せは、全組成物の少なくとも約80重量%~約100重量%を構成し得る。組み合わされた短炭素鎖及び長炭素鎖MUFAは、全組成物の少なくとも約90重量%~約95重量%を更に構成し得る。
【0115】
任意に、飽和及び多価不飽和脂肪酸を含む他の脂肪酸をC16:1及びC18:1脂肪酸組成物に組み込むことができる。そのような任意の飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸は、組成物全体の約15重量%を超えてはならない。飽和脂肪酸は、飽和脂肪酸の単一又は複数のメンバを含んでもよく、全組成物の最大約15重量%、好ましくは最大約7重量%、より好ましくは全組成物の約1重量%~約5重量%の任意の値を更に含んでもよい。飽和脂肪酸の非限定的な例としては、C16:0、C12:0、C14:0、及びC10:0が挙げられる。表5は、本発明で企図される一般的な飽和脂肪酸を提供する。
【表5】
【0116】
多価不飽和脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸の単一又は複数のメンバを含んでもよく、全組成物の最大約15重量%、好ましくは最大約7重量%、より好ましくは全組成物の約1重量%~約5重量%の任意の値を更に含んでもよい。多価不飽和脂肪酸の非限定的な例としては、C18:2、C18:3、C20:4、C20:5及びC22:6が挙げられる。表6は、本発明で企図される一般的な多価不飽和脂肪酸を提供する。
【表6】
【0117】
任意に、組成物は、微量又は極小量の他の脂肪酸を含んでいてもよい。微量の脂肪酸は、本明細書に記載のこれらの脂肪酸を含むC8:0~(C22:6)の範囲の哺乳動物の食餌に一般的に見られる任意の脂肪酸を指すと理解されるであろう。そのような微量の脂肪酸は、任意に全組成物の最大約3重量%で存在し得る。
【0118】
C16:1及びC18:1を含む本明細書に記載のMUFAは、典型的には製剤化され、これは、個々の構成要素が最初にその供給源材料から不純物を取り除き、精製され、次いで一緒に混合されて、本明細書に記載の所望の組成物を形成することを意味している。C16:1及びC18:1の所望の重量パーセント及び本明細書に記載の所望の融点範囲が達成されるように、食品を本明細書に記載のMUFAの少なくとも1つで添加、調整又は置換することによって、天然に存在する食品を本明細書に記載の組成物へと増強することができることが更に企図される。飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸を含む他の脂肪酸は、任意に当該増強された組成物中に存在してもよいが、好ましくは、そのような任意の脂肪酸は、組成物全体の約15重量%を超えてはならない。
【0119】
「融点」という用語は、第1の一価不飽和脂肪酸及び第2の一価不飽和脂肪酸、並びに存在する場合は存在し得る追加の一価不飽和脂肪酸の混合物の融点を指す。
【0120】
C16:1及びC18:1を含む例示的な組成物、並びにそれらの融点を表7に提供する。
【表7】
【0121】
本発明によって包含され、本発明の範囲内にある更なる代表的な組成物を以下に示す。以下のこれらの例及び調製物は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施することを可能にするために提供される。それらは、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではなく、単にその例示的かつ代表的なものである。
【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】
【0122】
一実施形態では、上記の本明細書に開示される組成物は、担体脂肪酸で希釈するか、又は担体脂肪酸と同時投与することができる。一実施形態では、担体脂肪酸は、ベニバナ油、オリーブ油、パーム油、大豆油、キャノーラ油(ナタネ油)、トウモロコシ油、落花生油、他の植物油、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0123】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、使用されている数の数値の±20%を意味する。したがって、約50%は、40%~60%の範囲を意味する。
【0124】
本明細書に記載の発明をより完全に理解することができるように、以下の例を記載する。これらの例は例示のみを目的としており、いかなる方法によっても本発明を限定するものと解釈されないことを理解されるべきである。
【0125】
本発明の各態様の全ての特徴は、必要な変更を加えて他の全ての態様に適用する。本出願を通して引用された全ての参考文献、特許、係属中の特許出願及び公開された特許の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0126】
例1:非アルコール性脂肪肝炎のSTAMモデルにおける組成物Aの効果
1.試験目的
非アルコール性脂肪肝炎のSTAMモデルにおける組成物Aの効果を検査すること。組成物Aは、以下の要素を含んでいた。
【表16】
【0127】
2.材料及び方法
2.1.試験物質
投与溶液を調製するために、組成物Aをベニバナ油(ロット番号;T-18502,CLEA Japan Inc.,Japan)で希釈した。ベニバナ油を含まない高脂肪飼料(ロット番号;T-18480,CLEA Japan Inc.)によって実験用飼料を調製した。
【0128】
2.2.NASHの誘導
生後2日の雄マウス16匹に、ストレプトゾトシン(STZ,Sigma-Aldrich,USA)溶液200μgを単回皮下注射し、4週齢から7週齢まで高脂肪飼料(HFD,57kcal%脂肪,カタログ番号HFD32,CLEA Japan,Inc.)を与えることによって、NASHを誘導した。
【0129】
2.3.薬物投与経路
組成物Aを200μL/マウスの体積で経口投与した。
【0130】
2.4.処置用量
組成物Aは、100%の用量で、0日目から2日目まで(7週齢に)1日3回投与した。
【0131】
組成物Aを、50%及び25%の2つの用量レベルで、3日目から13日目まで(7週齢~9週齢に)1日3回投与した。
【0132】
2.5.動物
C57BL/6マウス(妊娠14日の雌)を、Japan SLC,Inc(Japan)から入手した。試験に使用した全ての動物を、日本薬理学会の動物使用ガイドラインに従って収容し、管理した。
【0133】
2.5.1.環境
動物を、温度(23±2℃)、湿度(45±10%)、照明(12時間の人工的な明暗サイクル、8:00から20:00までの明かり)及び空気交換の制御された条件下でSPF施設で維持した。実験室では、設備の汚染を防ぐために高圧を維持した。
【0134】
2.5.2.動物飼育
動物を、1ケージ当たり最大4匹のマウスを有するTPXケージ(CLEA Japan Inc.)に収容した。滅菌されたペパークリーン(Paper-Clean)(Japan SLC)を床敷に使用し、週に1回交換した。
【0135】
2.5.3.飲食物
滅菌粉末のベニバナ油を含まないHFDを自由に提供し、ケージの底部の粉末給餌器(カタログ番号;CL-0932,CLEA Japan Inc.)に入れた。ゴム栓及びシッパーチューブを備えた水瓶から純水を自由に提供した。水瓶は1週間に1回交換し、洗浄し、オートクレーブで滅菌し、再使用した。
【0136】
2.5.4.動物及びケージの識別
マウスをイヤーパンチによって識別した。各ケージを特定の識別コードでラベル付けした。
【0137】
2.6.食物摂取量の測定
食物消費量は、処置期間中、ケージ当たり1日1回測定した。2日目から14日目までの群1の食物配給量は、1日目の組成物A群のマウスにおける食物消費量の平均に基づいて制限した。
【0138】
2.7.全血及び血漿生化学の測定
非空腹時血中グルコースを、Stat Stripグルコースメータ(NIPRO CORPORATION,Japan)を使用して全血で測定した。血漿生化学のために、抗凝固剤(Novo-Heparin,Mochida Pharmaceutical Co.Ltd.,Japan)を含むポリプロピレンチューブに非空腹時血液を採取し、1,000xgで15分間4℃で遠心分離した。上清を回収し、使用するまで-80℃で保存した。血漿ALTレベルをFUJI DRI-CHEM7000(Fujifilm,Japan)によって測定した。
【0139】
2.8.肝生化学の測定
肝ヒドロキシプロリン含有量を定量するために、凍結肝試料を以下のようにアルカリ-酸加水分解法によって処理した。肝試料を100%アセトンで脱脂し、空気中で乾燥させ、65℃で2NのNaOHに溶解し、121℃で20分間オートクレーブ処理した。溶解した試料(400μL)を400μLの6NのHClで121℃において20分間、酸加水分解し、活性炭10mg/mLを含有する4NのNaOH400μLで中和した。試料にAC緩衝液(2.2M酢酸/0.48Mクエン酸、400μL)を添加し、続いて遠心分離して上清を回収した。ヒドロキシプロリンの標準曲線を、16μg/mLで開始するトランス-4-ヒドロキシ-L-プロリン(Sigma-Aldrich)の段階希釈によって構築した。調製した試料及び標準(それぞれ400μL)を、クロラミンT溶液400μL(Wako Pure Chemical Industries)と混合し、室温で25分間インキュベートした。次いで、試料をエールリッヒ溶液(400μL)と混合し、65℃で20分間加熱して発色させた。試料を氷上で冷却し、遠心分離して沈殿物を除去した後、各上清の光学密度を560nmで測定した。ヒドロキシプロリンの濃度をヒドロキシプロリン標準曲線から計算した。肝試料のタンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific,USA)を使用して決定し、計算されたヒドロキシプロリン値を正規化するために使用した。肝ヒドロキシプロリンレベルをμg/mgタンパク質として表した。
【0140】
肝トリグリセリド含有量を定量するために、Folchの方法(Folch J.et al.,J.Biol.Chem.1957;226:497)によって肝全脂質抽出物を得た。肝試料をクロロホルム-メタノール(2:1、v/v)中でホモジナイズし、室温で一晩インキュベートした。クロロホルム-メタノール-水(8:4:3、v/v/v)で洗浄した後、抽出物を蒸発乾固し、イソプロパノールに溶解した。肝トリグリセリド含有量をトリグリセリドEテスト(FUJIFILM Wak Pure Chemical Corporation,Japan)によって測定した。
【0141】
2.9.パルミトレイン酸(C16:1)の測定
マウス脳内のパルミトレイン酸濃度を決定するために、マウス脳全体を回収し、-80℃で保存した。マウス脳パルミトレイン酸(C16:1)レベルを、Lipidome lab Inc.(Japan)のLC-MS/MSによって定量した。
【0142】
2.10.組織学的分析
HE染色のために、ブアン溶液で予め固定した肝組織のパラフィンブロックから切片を切断し、リリーマイヤーのヘマトキシリン(Muto Pure Chemicals Co.,Ltd.,Japan)及びエオシン溶液(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation,Japan)で染色した。NAFLD活性スコア(NAS)をKleinerの基準(Kleiner DE.et al.,Hepatology,2005;41:1313)に従って算出した。
【0143】
コラーゲン沈着を可視化するために、ブアンの固定肝切片をピクロシリウスレッド溶液(Waldeck,Germany)を使用して染色した。線維化領域の定量的分析のために、シリウスレッド染色切片の明視野像を、デジタルカメラ(DFC295;Leica,Germany)を使用して、200倍の倍率で中心静脈周辺を撮影し、ImageJソフトウェア(National Institute of Health,USA)を使用して、5視野/切片の陽性領域を測定した。
【0144】
2.11.試料回収
血漿試料については、抗凝固剤(ノボヘパリン)を含むポリプロピレンチューブに非絶食血液を回収し、1,000xgで15分間4℃で遠心分離した。20μLの上清を回収し、生化学のために-80℃で保存した。残りの血漿を回収し、輸送のために-80℃で保存した。
【0145】
肝試料については、外側左葉及び尾状葉を回収し、液体窒素中で急速凍結し、輸送のために-80℃で保存した。左中葉及び右中葉を液体窒素で急速凍結し、肝生化学のために-80℃で保存した。右葉をブアン溶液で固定し、次いでパラフィンに包埋した。試料を組織学のために室温で保存した。
【0146】
脳試料については、マウスID101、106及び108の全脳を回収し、液体窒素で急速凍結した。脳生化学のために試料を-80℃で保存した。
【0147】
2.12.統計的検定
結果を平均±SDとして表した。
【0148】
3.実験の設計及び処置
3.1.試験群
0日目~2日目(7週齢)
群1:対照
8匹のNASHマウスに、200μL/マウスの体積のベニバナ油を1日3回(合計600μL/マウス/日)経口投与し、0日目から2日目まで粉末給餌器を使用して粉末HFD(ベニバナ油なし)を与えた。
【0149】
群2:組成物A
8匹のNASHマウスに、200μL/マウスの体積の組成物Aを1日3回(合計600μL/マウス/日)経口投与し、0日目から2日目まで粉末給餌器を使用して粉末HFD(ベニバナ油なし)を与えた。
【0150】
以下の表は、処置スケジュールを要約する。
【表17】
【0151】
3日目~14日目(7~9週齢)
群1:対照
4匹のNASHマウスに、200μL/マウスの体積のベニバナ油を1日3回(合計600μL/マウス/日)経口投与し、3日目から13日目まで粉末給餌器を使用して粉末HFD(ベニバナ油なし)を与えた。
【0152】
群2:50%組成物/50%ベニバナ油
2匹のNASHマウスに、200μL/マウスの体積の50%組成物/50%ベニバナ油を1日3回(合計600μL/マウス/日)経口投与し、3日目から13日目まで粉末給餌器を使用して粉末HFD(ベニバナ油なし)を与えた。
【0153】
群3:25%組成物/75%ベニバナ油
2匹のNASHマウスに、200μL/マウスの体積の25%組成物/75%ベニバナ油を1日3回(合計600μL/マウス/日)経口投与し、3日目から13日目まで粉末給餌器を使用して粉末HFD(ベニバナ油なし)を与えた。
【0154】
以下の表は、処置スケジュールを要約する。
【表18】
【0155】
3.2.動物のモニタリング及び屠殺
生存率、臨床徴候及び挙動を毎日モニタリングした。処置前に体重を記録した。各投与のおよそ60分後に、毒性、瀕死及び死亡の有意な臨床徴候についてマウスを観察した。動物は瀕死の有意な臨床徴候を示したため、試験終了前に動物を安楽死させた。死亡又は安楽死させた動物から試料を回収した。動物をイソフルラン麻酔(Pfizer Inc.)下で直接心臓穿刺による放血によって9週齢(14日目)で屠殺した。
【0156】
4.結果
4.1.体重変化及び全身状態
4.1.1.体重変化(図1
組成物A群の全てのマウスが2日目までに死亡又は瀕死状態を示したため、対照群のマウスを50%組成物/50%ベニバナ油及び25%組成物/75%ベニバナ油群に再編成した。
【0157】
処置期間中、14日目に達する前に死亡したマウスは以下の通りであった。組成物A群では、8匹中4匹のマウスは死亡したことが分かり、8匹中4匹のマウスは安楽死させた。50%組成物/50%ベニバナ油及び25%組成物/75%ベニバナ油群において、2匹のマウスのうち1匹を安楽死させた。
【0158】
4.2.食物摂取量
食物摂取量を図2A及び図2Bに示す。
【0159】
4.3.屠殺日の体重及び肝重量
4.3.1.屠殺日の体重(図3A及び表A)
屠殺日の平均体重を図3Aに示す。
【0160】
4.3.2.肝重量及び肝重量の体重に対する比(図3B及び3C並びに表A)
平均肝重量及び肝重量の体重に対する比の平均を図3B及び3Cに示す。
【表19】
【0161】
4.4.生化学
4.4.1.全血グルコース(図4A及び表B)
全血グルコースレベルを図4Aに示す。
【0162】
4.4.2.血漿ALT(図4B及び表B)
血漿ALTレベルを図4Bに示す。
【0163】
4.4.3.肝ヒドロキシプロリン(図4C及び表B)
肝ヒドロキシプロリン含有量を図4Cに示す。
【0164】
4.4.4.肝トリグリセリド(図4D及び表B)
肝トリグリセリド含有量を図4Dに示す。
【表20】
【0165】
4.4.5.パルミトレイン酸(C16:1)(図4E及び表C)
パルミトレイン酸レベルを図4Eに示す。
【表21】
【0166】
4.5.組織学的分析
4.5.1.HE染色及びNAFLD活性スコア(図5A、5B、5C、5D及び5E、並びに表D)
HE染色した肝切片の代表的な顕微鏡写真及びNAFLD活性スコアを図5A及び5Bに示す。
【表22】
【0167】
4.5.2.シリウスレッド染色及び線維化領域(図5F及び5G並びに表E)
シリウスレッド染色した肝切片の代表的な顕微鏡写真及び線維化領域(シリウスレッド陽性領域)を図5F及び5Gに示す。
【表23】

【表24】
【0168】
5.結論
結果は、高脂肪又は飽和脂肪飼料組成物を投与した動物の肝組織の顕微鏡検査で、脂肪沈着物が明らかであったが、驚くべきことに、高量の短鎖MUFAトリグリセリドを含有する同等に高脂肪の飼料組成物を投与した動物には存在しなかったことを示す。
【0169】
具体的には、50/50群及び25/75群のどちらも肝細胞の風船様腫大を何ら示さなかったが、一方で、対照群の50%が風船様腫大を示し、結果として対照群と比較してNAFLD活性スコアが9.3%低下した。
【0170】
更に、線維化領域(シリウスレッド陽性領域%)は処置群で減少した。
o対照群:0.69+/-0.21
o50/50群:0.46、対照から33%の減少
o25/75群:0.53、対照から23%の減少
【0171】
肝重量の体重に対する比(mg/gm)は処置群で減少した。
o対照群:7.4+/-0.4
o50/50群:6.7、対照から9.5%の減少
o25/75群:7.0、対照から5.5%の減少
【0172】
全血グルコース(mg/dL)は両処置群で減少した。
o対照群:563+/-60
o50/50群:504、対照から10.5%の減少
o25/75群:500、対照から11.3%の減少
【0173】
血漿ALT(U/L)は肝損傷の指標である。
o対照群:46+/-11
o50/50群:55、対照から19.5%の増加
o25/75群:37、対照から19.6%の減少
【0174】
肝ヒドロキシプロリン(μg/mg)は肝線維化のマーカである。
o対照群:65.2+/-11.0
o50/50群:66.2、対照から1.5%の増加
o25/75群:50.2、対照から23%の減少。
【0175】
本発明者等は、動物の陰性応答は、組成物がマカダミアナッツから供給されたため、組成物に対するアレルギー反応であった可能性があると考えている。
【0176】
動物の陰性応答があった時に、動物からの陰性応答を低減又は排除するであろうことを期待して、ベニバナの量を増加させて組成物を希釈した。ベニバナ油は、本質的に、両方の群からの摂取量(カロリー/重量)が最小効果で等しいことを確実にするためにプラセボとして使用されていた。25/75のいくつかの結果は50/50よりも良好であったが、50/50がより良好な結果を有する場合もあった。
【0177】
例2.進行性ヒト線維化NASHのCDAA-HFDモデルにおける組成物の効果
1.試験目的
本明細書に記載の組成物、例えば組成物Aの効果を検査するために、投与溶液を、進行性ヒト線維化非アルコール性脂肪肝炎に似ている、コリン欠乏L-アミノ酸定義(CDAA)高脂肪飼料(HFD)モデルで試験する。組成物Aは、以下の要素を含み得る。
【表25】
【0178】
2.材料及び方法
2.1.試験物質
投与溶液は、上記のように調製されてもよく、又は必要に応じて、例えばベニバナ油で希釈されてもよい。
【0179】
対照物質は、ビヒクル対照、例えば、生理食塩水又は鉱油、イコブツラート(icobuturate)、及びエラフィブラノルを含み得る。
【0180】
2.2.NASHの誘導
試験開始前に4週間、高脂肪飼料(24kcal%HFD、32%フルクトース、1%コレステロール、コリン欠乏、0.1%メチオニン添加飼料[A16092001;RD])を与えることによって、10週齢の雄マウス(雄C57BL/6JRj)の4群(n=12)においてNASHを誘導する。
【0181】
更なる群(n=10)には、陰性対照として通常の固形飼料を与える。
【0182】
2.3.投与経路
試験物質を経口投与する。
【0183】
2.4.投与
試験物質を1日1回投与する。
【0184】
2.5.体重の測定
体重を、試験期間全体にわたって1日1回測定する。
【0185】
2.6.食物摂取量の測定
食物摂取量を、試験期間の最初の2週間は1日1回測定し、その後、残りの試験期間中は週に1回(24時間)測定する。
【0186】
2.7.全血及び/又は血漿の生化学
終末全血を回収する。血漿生化学のために、血漿を全血から分離し、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、遊離脂肪酸(FFA)レベル、トリグリセリド(TG)及び総コレステロール(TC)を測定する。
【0187】
2.8.肝臓の分析
終末肝を取り出し、凍結し、組織学的分析、生化学、任意でRNA配列決定のためにサンプリングし、及び/又は更なる分析のために凍結したままにする。
【0188】
肝生化学のために、終末肝をTG、TC、FFA、及びヒドロキシプロリン(HP)含有量のために処理する。
【0189】
組織学に関しては、終末肝を生検し、(1)線維化ステージ(ピクロシリウスレッド(PSR))を含むNAFLD活性スコア(ヘマトキシリン及びエオシン(HE))、(2)脂肪症(HE)、(3)ガレクチン-3(Gal-3)(免疫組織化学(IHC))、(4)コラーゲン1a1(col1a1)(IHC)、(5)PSR、及び(6)α-平滑筋アクチン(a-SMA)(IHC)について分析する。
【0190】
3.実験の設計及び処置
3.1.試験群
動物を体重に基づいて5つの群にランダム化する。
【0191】
群1.陰性対照
群1には、脂肪の少ない固形飼料(LEAN-CHOW)を与え、ビヒクル対照を投与する。
【0192】
群2:プラセボ対照
群2には、CDAA-HFDを与え、ビヒクル対照を投与する。
【0193】
群3:試験群
群3には、CDAA-HFDを与え、組成物A等の投与溶液を投与する。
【0194】
群4:陽性対照
群4には、CDAA-HFDを与え、イコブツラート(Icobuturate)を投与する。
【0195】
群5:陽性対照
群5には、CDAA-HFDを与え、エラフィブラノルを投与する。
【0196】
試験群の試験期間は、以下の表に記載されるように、1日1回の経口強制給餌によって、合計8週間の投与となる。
【表26】
【0197】
3.2.処置スケジュール
試験のタイムラインは、以下の表に試験的に記載されている通りである。
【表27】
【0198】
試験概要の代表図は図6に示す通りである。
【0199】
例3.肝疾患のDIAMONDモデルにおける組成物の効果
1.試験目的
本明細書に記載される組成物、例えば、組成物Aの効果を調査するために、投薬溶液を、NAFLD、NASH、線維化、及びHCCの非アルコール性脂肪性肝疾患モデルの飼料誘発性動物モデル(DIAMOND)モデルにおいて試験する。組成物Aは、以下の要素を含み得る。
【表28】
【0200】
2.材料及び方法
2.1.試験物質
投与溶液は、上記のように調製され得るか、又は必要に応じて例えばベニバナ油で希釈され得るか、又はTeklad42%HFD固形飼料に混合され得る。
【0201】
2.2.肝疾患の誘導
50匹の雄DIAMOND(商標)マウスを8~12週齢まで飼育し、肝疾患を誘導するためのウェスタン飼料(高糖及び高脂肪)、又は通常固形飼料の対照飼料のいずれかに20週間配置する。
【0202】
肝疾患の誘導の代表図は図7Aに示す通りである。
【0203】
2.3.投与経路
試験物質を経口投与する。
【0204】
2.4.投与
試験物質を1日1回投与する。
【0205】
2.5.体重の測定
マウスを毎日、目視検査する。体重を、試験期間全体にわたって週1回測定する。
【0206】
2.6.ベースラインにおける生化学測定
ベースラインにおいて、陽性対照を屠殺し、以下の分析物について試験する。空腹時血中グルコース及びケトン、脂質パネル(総コレステロール(T chol)、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)、トリグリセリド(triggs))及び肝パネル(アルブミン(ALB)、アルカリホスファターゼ(ASP)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、血中尿素窒素(BUN)、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)及び総ビリルビン(Tbil))。
【0207】
2.7.試験終了時の生化学測定
試験の結論として、全ての処置群並びに陽性及び陰性の固形飼料対照を屠殺し、以下の分析物について試験する。空腹時血中グルコース及びケトン、脂質パネル(T chol、HDL、non-HDL、trigs)及び肝パネル(ALB、ALP、AST、ALT、BUN、GGT及びTbil)。
【0208】
2.8.組織学的分析
肝臓の一部を組織学のためにホルマリン中に保存し、残りを急速凍結し、後の試験のために-80で保存する。試験終了時に肝臓を撮影し、秤量する。
【0209】
組織学:全ての群の全ての動物についての、肝ブロックの調製並びにスライド切断及び染色。FFPEスライドを切断し、肝NASスコアリング(線維化、脂肪症のグレード及び割合、炎症、風船様腫大、NAS、SAF活性スコア、線維化NASH CRNスコア、類洞線維化スコア、及びNASH分類)のためにH&E及びシリウスレッドで染色し、Dr.Pierre Bedossaがスコアリングし、報告し、代表的な写真を撮る。
【0210】
3.実験の設計及び処置
3.1.試験群
動物を体重に基づいて3つの群にランダム化する。
【0211】
群1.陰性天然対照
群1(n=10)には通常の固形飼料を与え、処置を施さない。
【0212】
群2:陽性天然対照
群2(n=14)には、ウェスタン飼料(すなわち、高脂肪、高糖)を与え、処置を施さない。ベースラインで、2匹の動物をベースライン生化学測定のために屠殺する。
【0213】
群3:試験群
群3(n=14)にはウェスタン飼料を与え、Teklad42%HFD固形飼料に予め混合した投与溶液を投与する。
【0214】
3.2.処置スケジュール
試験群には毎日給餌し、試験期間は8週間とし、IACUCプロトコルの下で実施し、AAALAC承認施設で試験を実施する。
【0215】
試験概要の代表図は図7Bに示す通りである。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6
図7A
図7B
【国際調査報告】