(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】化成を介したシリコンアノードを含むセルの改善された性能のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20221014BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20221014BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20221014BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20221014BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20221014BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20221014BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20221014BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20221014BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/058
H01M10/0566
H01M10/0565
H01M10/0562
H01M4/38 Z
H01M4/525
H01M4/134
H01M10/44 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512409
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 US2020047021
(87)【国際公開番号】W WO2021041124
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512188041
【氏名又は名称】エネヴェート・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウダイ・カサヴァジュラ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・パーク
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィット・ジェー・リー
(72)【発明者】
【氏名】スンウォン・チェ
【テーマコード(参考)】
5H029
5H030
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM07
5H029AM12
5H029AM16
5H029CJ16
5H029HJ01
5H029HJ17
5H029HJ18
5H030AA01
5H030AA10
5H030BB03
5H030BB21
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA08
5H050CB11
5H050DA03
5H050GA18
5H050HA01
5H050HA17
5H050HA18
(57)【要約】
化成を介したシリコンアノードを含むセルの改善された性能のためのシステム及び方法は、カソードと、電解質と、シリコン含有アノードとを含むことができる。電池は、電池内の電流がC/20に達するまで、電池を1Cレートで3.8ボルト以上に充電するステップと、2.5V以下まで電池を放電させるステップと、を1サイクル以上含む化成プロセスに付されてもよい。電池は、リチウムイオン電池を含むことができる。電解質は、液体、固体、又はゲルを含んでもよい。アノードは、70%を超えるシリコンを含んでもよい。電池は、電流が0.2Cに達するまで放電することができる。電池は、1Cレート又は0.2Cレートで放電されてもよい。電池は、充電と放電との間の休止期間にあってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル含有カソードと、電解質と、シリコン含有アノードとを備える電池であって、以下のステップ:
前記電池内の電流がC/20に達するまで、前記電池を1Cレートで3.8ボルト以上に充電するステップと、
2.5V以下まで前記電池を放電させるステップと、
を1サイクル以上含む化成プロセスに付される、電池。
【請求項2】
前記電池が、リチウムイオン電池を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記電解質が、液体、固体、又はゲルを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記アノードが、50%を超えるシリコンを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記アノードが、70%を超えるシリコンを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項6】
前記電池が、電流が0.2Cに達するまで放電される、請求項1に記載の電池。
【請求項7】
前記電池が、1Cレートで放電される、請求項1に記載の電池。
【請求項8】
前記電池が、0.2Cレートで放電される、請求項1に記載の電池。
【請求項9】
前記電池が、充電と放電との間の休止期間にある、請求項1に記載の電池。
【請求項10】
アノードと、酸化ニッケル含有カソードと、電解質と備える電池であって、前記アノードがシリコンを含む、電池において、
前記電池内の電流がC/20に達するまで、前記電池を1Cレートで3.8ボルト以上に充電するステップと、
2.5V未満まで前記電池を放電させるステップと、
を含む、電池を化成する方法。
【請求項11】
前記電池が、リチウムイオン電池を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電解質が、液体、固体、又はゲルを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記アノードが、50%を超えるシリコンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記アノードが、70%を超えるシリコンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記電池が、電流が0.2Cに達するまで放電される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記電池が、1Cレートで放電される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記電池が、0.2Cレートで放電される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記電池が、充電と放電との間の休止期間にある、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
アノードと、酸化ニッケル含有カソードと、電解質と備える電池であって、前記アノードがシリコンを含む、電池において、
前記電池内の電流がC/20に達するまで、前記電池を1Cレートで3.8ボルト以上に充電するステップと、
前記電池を1Cレートで、充電容量のXパーセンテージまで放電させるステップであって、Xは0.77~0.99の範囲である、ステップと、
を含む、電池を化成する方法。
【請求項20】
前記電池が、リチウムイオン電池を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記電解質が、液体、固体、又はゲルを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記アノードが、50%を超えるシリコンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記アノードが、70%を超えるシリコンを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照/参照による組み込み]
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年8月23日に出願された米国特許出願第16/549,926号の優先権を主張する。
【0002】
本開示の態様は、エネルギーの生成及び貯蔵に関する。より具体的には、本開示の特定の実施形態は、化成(formation)を介したシリコンアノードを含むセルの改善された性能のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
電池アノードに対する従来のアプローチは、費用がかかり、面倒であり、及び/又は非効率的である可能性がある-例えば、それらは、実施するのが複雑及び/又は時間がかかる可能性があり、また、電池の寿命を制限する可能性がある。
【0004】
従来の及び伝統的なアプローチのさらなる制限及び不利な点は、そのようなシステムと、図面を参照して本出願の残りの部分に記載される本開示の幾つかの態様とを比較することによって、当業者に明らかになるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
特許請求の範囲においてより完全に記載されるように、実質的に図面の少なくとも1つに示され、及び/又はそれらに関連して説明される、化成を介したシリコンアノードを含むセルの改善された性能のための方法及びシステムである。
【0006】
本開示のこれらの及び他の利点、態様及び新規の特徴、並びにそれらの例示された実施形態の詳細は、以下の説明及び図面からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の例示的な実施形態による、超高電圧コバルトフリーカソードを備えた電池の図である。
【
図2】本開示の例示的な実施形態による、4.2Vと3.2Vとの間で第1のサイクルシナリオでサイクルされる、従来の化成を使用するシリコンアノードを備えたリチウムイオン電池のサイクル性能を示す。
【
図3】本開示の例示的な実施形態による、4.2Vと3.2Vとの間で第2のサイクルシナリオでサイクルされる、従来の化成を使用するシリコンアノードを備えたリチウムイオン電池のサイクル性能を示す。
【
図4】本開示の例示的な実施形態による、シリコンアノードを備えた電池の化成プロセスのプロセスフローを示す。
【
図5】本開示の例示的な実施形態による、4.2Vと3.2Vとの間で第1のサイクルシナリオでサイクルされる、新しい化成を使用するシリコン含有アノードを備えたリチウムイオン電池のサイクル性能を示す。
【
図6】本開示の例示的な実施形態による、4.2Vと3.2Vとの間で第1のサイクルシナリオでサイクルされる、新しい化成を使用するシリコン含有アノードを備えたリチウムイオン電池のサイクル性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本開示の例示的な実施形態に係る電池の図である。
図1を参照すると、アノード101とカソード105との間に挟まれたセパレータ103と、集電体107A及び107Bとを備える電池100が示されている。また、電池100が放電モードである場合の例を示す、電池100に結合された負荷109が示されている。本開示において、「電池」との用語は、単一の電気化学セル、モジュールに形成された複数の電気化学セル、及び/又はパックに形成された複数のモジュールを示すために使用されてもよい。
【0009】
アノード101及びカソード105は、集電体107A及び107Bとともに電極を構成してもよく、電極は、電解質材料内に、又は電解質材料を含むプレート又はフィルムを備えてもよく、プレートは、電解質を含むための物理障壁と同様に、外部構造への導電性コンタクトを提供してもよい。他の実施形態では、アノード/カソードプレートは、電解質中に浸漬され、一方で、外側ケーシングが電解質の封じ込めを提供する。アノード101及びカソードは集電体107A及び107Bに電気的に結合され、集電体107A及び107Bは、電極への電気的コンタクトとともに電極形成における活物質に対する物理的支持を提供するための金属又は他の導電材料を含むことができる。
【0010】
図1に示す構成は、電池100を放電モードで示したものであるが、充電構成では、負荷107を充電器に置き換えてプロセスを逆転させることができる。電池の1つのクラスにおいて、セパレータ103は一般に、例えば電気絶縁ポリマーから作られたフィルム材料であり、電子がアノード101からカソード105へ、又はその逆に流れるのを防ぐ一方で、イオンがセパレータ103を通過できるように十分に多孔質である。典型的には、セパレータ103、カソード105、及びアノード101の材料は、個々にシート、フィルム、又は活物質被覆箔に形成される。カソード、セパレータ及びアノードのシートはその後、セパレータ103がカソード105とアノード101とを分離する状態で積層又は圧延されて、電池100を形成する。幾つかの実施形態では、セパレータ103はシートであり、一般に、その製造において巻線方法及び積層を利用する。これらの方法において、アノード、カソード、及び集電体(例えば、電極)は、フィルムを含んでもよい。
【0011】
例示的なシナリオでは、電池100は、固体、液体、又はゲル電解質を含むことができる。セパレータ103は、好ましくは、LiBF4、LiAsF6、LiPF6及びLiClO4などが溶解したエチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)などを含み得る組成物のような典型的な電池電解質には溶解しない。セパレータ103は、液体又はゲル電解質で湿潤しているか、又はそれらに浸漬していてもよい。さらに、例示的な実施形態において、セパレータ103は、約100~120℃以下では溶融せず、電池用途に十分な機械的特性を示す。電池は、動作中、アノード及び/又はカソードの膨張及び収縮を経験することができる。例示的な実施形態では、セパレータ103は、故障することなく少なくとも約5~10%膨張及び収縮することができ、また、可撓性であってもよい。
【0012】
セパレータ103は、例えば液体又はゲル電解質で一旦濡れるとイオンがセパレータを通過できるように、十分に多孔質であってもよい。代替的に(又は追加的に)、セパレータは、有意な多孔性がなくても、ゲル化又は他のプロセスを通じて電解質を吸収することができる。また、セパレータ103の多孔性は、一般に、アノード101及びカソード105がセパレータ103を介して電子を移動させることができる程度であれば、あまり多孔性にはならない。
【0013】
アノード101及びカソード105は、電池100用の電極を備え、充電状態及び放電状態における電荷の移動のためにデバイスに電気的接続を提供する。例示的なシナリオでは、カソードは、酸化ニッケルを含んでもよい。アノード101は、例えば、シリコン、炭素、又はこれらの材料の組み合わせを含んでもよい。典型的なアノード電極は、銅板などの集電体を含む炭素材料を含む。炭素は、電気化学的特性に優れ、かつ導電性であるため、しばしば使用される。再充電可能なリチウムイオンセルに現在使用されているアノード電極は、通常、約200ミリアンペア時間/グラムの比容量を有する。ほとんどのリチウムイオン電池のアノードに使用されている活物質であるグラファイトは、372ミリアンペア時間/グラム(mAh/g)の理論エネルギー密度を有する。これに対し、シリコンは4200mAh/gと高い理論容量を有する。リチウムイオン電池の体積エネルギー密度及び重量エネルギー密度を高めるために、カソード又はアノードの活物質としてシリコンを使用することができる。シリコンアノードは、例えば、50%を超えるシリコンを含むシリコン複合材料から形成されてもよい。
【0014】
例示的なシナリオでは、アノード101及びカソード105は、リチウムなどの電荷の分離に使用されるイオンを貯蔵する。この例では、電解質は、例えば
図1に示すように、放電モードではアノード101からカソード105に正に帯電したリチウムイオンを運び、充電モードではセパレータ105を介してその逆を行う。リチウムイオンの移動により、アノード101に自由電子が生じ、これが正の集電体107Bに電荷を生じさせる。そして、電流は、集電体から負荷109を通って負の集電体107Aに流れる。セパレータ103は、電池100の内部で電子の流れを遮断する。
【0015】
電池100が放電して電流を供給している間、アノード101はセパレータ103を介してカソード105にリチウムイオンを放出し、結合負荷109を介して一方から他方への電子の流れが発生する。電池の充電時には、リチウムイオンがカソード105から放出されアノード101に受け取られるという逆の現象が起こる。
【0016】
アノード101及びカソード105に選択される材料は、電池100に可能な信頼性及びエネルギー密度のために重要である。内燃機関(ICE)技術に対抗し、電気自動車(EV)の普及を可能にするために、現在のリチウムイオン電池のエネルギー、パワー、コスト、及び安全性を改善する必要がある。リチウムイオン電池の高エネルギー密度、高出力密度、安全性の向上は、高容量及び高電圧のカソード、高容量アノード、及び高電圧安定性と電極との界面相溶性を有する機能性不燃性の電解質の開発によって達成される。さらに、プロセスコストを削減し、消費者の安全性を促進するために、毒性の低い材料は電池材料として有益である。
【0017】
再充電可能なリチウムイオン電池は、通常、アノード(負極)、カソード(正極)、セパレータ、電解質、及び筐体を備える。一般に、リチウムイオン電池は、組立後、セルが工場外に出荷される前にセルを初期化するために、低速充電又は電気、熱、物理的なある一連の作用がセルに行われる、化成と呼ばれる特定のプロセスを経る。特に初回充電の1つの重要な側面は、アノード表面での電解質の過剰な還元を防ぐために、アノードに有益な固体電解質界面(SEI)層を形成するように設計されていることである。
【0018】
主なアノード活物質としてグラファイトを含むリチウムイオン電池の場合、化成は、多くの化成レジームは秘匿性が高くより複雑であるが、以下の4つのステップから構成される:グラファイトアノード上にSEI層形成を促進するための3.5Vより高い電圧への低速充電、休止、セルの容量測定のための特定の電圧又は特定の出荷電圧の何れかまでの放電、及び最終的な別の休止ステップ。グラファイトアノードを備えるリチウムイオン電池では、最初の低速充電ステップが、良好なサイクル性能及び貯蔵性能を可能にする化成の最も重要なステップであるとしばしば考えられている。しかしながら、シリコンを含むアノードを備えるリチウムイオン電池(特に、シリコンが唯一の活物質又は主な活物質である電池)では、このような従来の化成では結果的に、特定のサイクル条件下で性能が低下する。
【0019】
図2は、本開示の例示的な実施形態による、4.2Vと3.2Vとの間で第1のサイクルシナリオでサイクルされる、従来の化成を使用するシリコンアノードを備えたリチウムイオン電池のサイクル性能を示す。
図2を参照すると、従来の化成を使用してセルが化成される、アノードとしてシリコンを有するリチウムイオン電池のサイクル性能が示されている。ここでの化成は4サイクルであるが、ほとんどの商業的な化成手順は1サイクル以下で行われる。この場合の化成は、放電遮断電圧を3.3Vと低くして行っている。各サイクルにおいて、電流がC/20に達するまでセルを1Cレートで4.2Vまで充電し、セルを3.3Vまで放電させる。Cレートとは、電池がその最大容量に対して充電又は放電されたレートの尺度である。1C放電レートは、放電電流が1時間で電池の公称定格容量を放電することを意味し、100アンペア/hの容量を持つ電池の場合、1時間で100アンペアの放電電流に相当する。この電池の場合、5Cレートは500アンペア、C/2レートは50アンペアとなる。各サイクルにおける休止期間は、充電も放電もしない時間、すなわち無負荷の時間を含み、電池が定常状態に達するまでの時間であれば、どのような時間であってもよい。時間の例としては、10分、15分、あるいは30分以上である。別のシナリオでは、休止期間は数時間であってもよい。少なくとも10分が適切な最小値である。
【0020】
この例のアノードはシリコン支配アノード、例えばSi>70%のフィルムであり、カソードは導電性添加剤&PVDFと混合したNCAであり、電解質はカーボネートのブレンドに溶解したLiPF6である。サイクルによる放電容量の消失、すなわちサイクル寿命を測定するために、セルを4.2Vと3.2Vとの間で充放電する(シナリオ-1)。このシナリオでは、リチウムイオン電池は200サイクル後に容量が~20%消えている。一般に、ほとんどの商業的用途では、500~1000サイクル後に<20%の容量消失が望まれる。
【0021】
図3は、本開示の例示的な実施形態による、4.2Vと3.2Vとの間で第2のサイクルシナリオでサイクルされる、従来の化成を使用するシリコンアノードを備えたリチウムイオン電池のサイクル性能を示す。このシナリオであるシナリオ-2では、セル設計はシナリオ-1と同じである。しかしながら、シナリオ-2において、シリコンアノードを備えるリチウムイオン電池は、3.2V未満の電圧までセルを放電する場合に、3.2Vへのサイクル中に容量消失が速くなり、100サイクルごとに容量が回復するという独特の現象を有する。
【0022】
ここで、シナリオ-1とシナリオ-2の両方においてリチウムイオン電池は4.2Vと3.2Vとの間でサイクルされるが、シナリオ-2では、放電電圧が3.2V未満である100サイクルごとにより深い放電サイクルが存在することに留意されたい。これらの結果は、従来の化成ではサイクル性能に大きなばらつきが生じる可能性があることを示している。シナリオ-1及びシナリオ-2の両方におけるサイクル性能は、従来の化成を用いた場合、シリコンを含むアノードを備えるリチウムイオン電池が早期に故障することを表している。このような性能は、最終製品の機能に不具合を生じさせる可能性があり、実用上許容できない。
【0023】
図4は、本開示の例示的な実施形態による、シリコンアノードを備えた電池の化成プロセスのプロセスフローを示す。例示的なシナリオでは、カソードは、ニッケル含有酸化物を含んでもよい。
図4を参照すると、プロセスはステップ401で始まり、ここで電池は、アノード、カソード、セパレータ、電解質、及び筐体を備えて組み立てられる。上述のように、「電池」との用語は、単一の電気化学セル、モジュールに形成された複数の電気化学セル、及び/又はパックに形成された複数のモジュールを示すために使用されてもよい。
【0024】
プロセスは、電池をある電圧/充電を超えて充電するステップ403に続き、電池を時間間隔にわたって充電も放電もしない休止状態にするステップ405に進み、電池を閾値電圧より下に放電させるステップ407に進む。ステップ409において、このサイクルが最終サイクルである場合、プロセスは終了ステップ411で終了するが、複数のサイクルがある場合、プロセスはステップ403に戻り、別の充電/休止/放電サイクルが行われる。表1は、シリコンアノード電池に利用され得る異なる化成シーケンスを示しており、各充電/放電ステップの間に休止が利用される。このプロセスの主なテーマは、全てのシーケンスがセルを実質的に完全に放電された状態(例えば、ニッケルカソードベースのシステムでは2.5V程度)まで強制的に放電させるということである。
【0025】
【0026】
上記の充電/休止/放電サイクルの1つの態様は、サイクル前にシリコンからリチウムを除去するために、セルをある量を超えて充電し、その後ある量を超えて完全に放電してもよいということである。充電される量と放電される量は、電圧に対応してもよい。充電電圧は、3.8V、4.0V、又は4.1Vよりも高くなければならない可能性がある。放電電圧は2.5V未満である必要がある。充電容量は、セルの全可逆容量の80%より高くなければならず、放電容量は、残存容量の23%より低くなければならない可能性がある。
【0027】
図5は、本開示の例示的な実施形態による、4.2Vと3.2Vとの間で第1のサイクルシナリオでサイクルされる、新しい化成を使用するシリコン含有アノードを備えたリチウムイオン電池のサイクル性能を示す。
図5を参照すると、サイクル番号に対する放電容量のプロットが示されている。プロットは、上述の新しい化成方法が使用される場合、サイクルシナリオ-1のシリコンを含むアノードを備えたリチウムイオン電池のサイクル性能が向上していることを示す。従来の化成プロセスでは、シリコン含有アノード電池は、約200サイクルの後、放電容量が20%低下する。しかしながら、
図4に関して説明した改善された化成サイクルでは、20%の容量が消失する前に、電池は750サイクルを超えて持続する。これは、サイクル寿命の275%の改善に相当する。
【0028】
図6は、本開示の例示的な実施形態による、4.2Vと3.2Vとの間で第1のサイクルシナリオでサイクルされる、新しい化成を使用するシリコン含有アノードを備えたリチウムイオン電池のサイクル性能を示す。
図6を参照すると、サイクル番号に対する放電容量のプロットが示されている。
図6は、
図4に関して説明した新しい化成方法が使用される場合、サイクルシナリオ-2のシリコンを含むアノードを備えたリチウムイオン電池のサイクル性能が向上していることを示す。例示的なシナリオでは、カソードは、ニッケル含有酸化物を含んでもよい。新しい化成方法が使用される場合、容量の消失及び容量の回復が速くなる現象は解消される。
図5及び
図6を比較すると、シナリオ-1とシナリオ-2との間のサイクル性能のばらつきが、本開示に記載の新しい化成方法を用いることによって著しく低減されることが理解され得る。
【0029】
本開示の例示的な実施形態では、化成を介したシリコンアノードを含むセルの改善された性能のための方法及びシステムが説明される。システムは、カソード、電解質、及びシリコン含有アノードを含んでもよく、電池は、電池内の電流がC/20に達するまで電池を1Cレートで3.8ボルト以上に充電するステップと、電池を2.5ボルト以下に放電させるステップと、の1以上のサイクルを含む化成プロセスに付される。電池は、リチウムイオン電池を含んでいてもよい。電解質は、液体、固体、又はゲルを含んでいてもよい。アノードは、70%を超えるシリコンを含んでいてもよい。電池は、電流が0.2Cに達するまで放電されてもよい。電池は、1Cレートで放電されてもよい。電池は、0.2Cレートで放電されてもよい。電池は、充電と放電との間の休止期間にあることができる。
【0030】
別の例示的な実施形態では、化成を介したシリコンアノードを含むセルの改善された性能のための方法及びシステムが説明される。本方法は、アノード、カソード、及び電解質を含む電池であって、アノードがシリコンを含む、電池において、電池内の電流がC/20に達するまで電池を1Cレートで4.2ボルト以上に充電するステップと、充電容量のXパーセンテージまで電池を1Cレートで放電させるステップであって、Xが0.77から0.99の範囲である、ステップと、を含んでもよい。電池は、リチウムイオン電池を含んでいてもよい。電解質は、液体、固体、又はゲルを含んでいてもよい。アノードは、70%を超えるシリコンを含んでいてもよい。
【0031】
本明細書で利用される場合、「回路(circuits)」及び「回路構成(circuitry)」との用語は、物理的な電子部品(すなわち、ハードウェア)、及び、ハードウェアを構成し、ハードウェアによって実行され、又はその他の方法でハードウェアと関連付けられる可能性がある任意のソフトウェア及び/又はファームウェア(「コード」)を指す。本明細書で使用されるように、例えば、特定のプロセッサ及びメモリは、第1の1つ又は複数のコード行を実行するときに第1の「回路」を備えてもよく、第2の1つ又は複数のコード行を実行するときに第2の「回路」を備えてもよい。本明細書で利用する場合、「及び/又は」は、「及び/又は」で結合されたリスト内の項目のうちの任意の1つ又は複数を意味する。一例として、「x及び/又はy」は、3要素セット{(x)、(y)、(x、y)}の任意の要素を意味する。換言すれば、「x及び/又はy」は、「xとyの一方又は両方」を意味する。別の例として、「x、y、及び/又はz」は、7要素セット{(x)、(y)、(z)、(x、y)、(x、z)、(y、z)、(x、y、z)}のうちの任意の要素を意味する。換言すれば、「x、y及び/又はz」は、「x、y及びzのうちの1つ又は複数」を意味する。本明細書で利用される場合、「例示的」との用語は、非限定的な例、実例、又は例証として機能することを意味する。本明細書で利用されるように、「例えば(e.g.)」及び「例えば(for example)」との用語は、1つ又は複数の非限定的な例、実例、又は例証のリストを始めるものである。本明細書で利用されるように、回路構成又はデバイスは、機能の性能が(例えば、ユーザーが構成可能な設定、工場トリムなどによって)無効化されているか否かにかかわらず、回路構成又はデバイスが機能を実行するために必要なハードウェア及びコード(もしあれば)を含んでいるときはいつでも、機能を実行するために「動作可能(operable)」である。
【0032】
本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ、等価物が置換され得ることは当業者には理解されよう。さらに、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、その範囲から逸脱することなく、多くの変更を行うことができる。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲内に入る全ての実施形態を含むことになることが意図される。
【符号の説明】
【0033】
100 電池
101 アノード
103 セパレータ
105 カソード
107A、107B 集電体
109 負荷
【国際調査報告】