(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】過敏性腸症候群の緩和のための機能性食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20221014BHJP
A61K 36/355 20060101ALI20221014BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20221014BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221014BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20221014BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221014BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221014BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221014BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221014BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20221014BHJP
A23G 3/48 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/355
A61P1/00
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/10
A23G3/34 101
A23G3/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512411
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2020011154
(87)【国際公開番号】W WO2021034139
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0103194
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520210398
【氏名又は名称】グリーン・クロス・ウェルビーイング・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒョ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ジュン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ボク・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】マン・フン・キム
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4B014GG18
4B014GK12
4B014GP10
4B018LB01
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD48
4B018ME11
4B018MF01
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA54
4C076AA56
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB29
4C076CC16
4C088AB12
4C088BA08
4C088BA09
4C088BA10
4C088MA16
4C088MA22
4C088MA23
4C088MA34
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA41
4C088MA52
4C088MA60
4C088MA66
4C088NA14
4C088ZA66
(57)【要約】
本発明は、金銀花抽出物を有効成分として含む過敏性腸症候群の緩和用機能性食品組成物に関する。より詳細には、前記金銀花抽出物は、下痢及び/又は腹鳴症状を改善して過敏性腸症候群を緩和させる効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金銀花抽出物(Lonicera japonice)を有効成分として含む過敏性腸症候群の緩和用機能性食品組成物。
【請求項2】
前記金銀花抽出物は、水、炭素数1~4のアルコ-ル又はこれらの混合溶媒から選択された溶媒で抽出されたことである、請求項1に記載の機能性食品組成物。
【請求項3】
前記金銀花抽出物は、水で抽出された金銀花水抽出物である、請求項2に記載の機能性食品組成物。
【請求項4】
前記金銀抽出物は、前記食品組成物の全体重量を基準にして0.1~10重量%含まれることである、請求項1に記載の機能性食品組成物。
【請求項5】
前記金銀花抽出物は、前記金銀花抽出物の有機溶媒分画物である、請求項1に記載の機能性食品組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒は、エチルアセテート、ジクロロメタン、クロロホルム及びブタノ-ルからなる群より選択された1種以上である、請求項5に記載の機能性食品組成物。
【請求項7】
前記過敏性腸症候群は、腹鳴;及び/又は下痢を伴う過敏性腸症候群である、請求項1に記載の機能性食品組成物。
【請求項8】
前記下痢を伴う過敏性腸症候群は、増加した排便、ゆるい便及び排便緊急からなる群より選択された1種以上の症状を含むことである、請求項7に記載の機能性食品組成物。
【請求項9】
前記食品組成物は、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含むことである、請求項1に記載の機能性食品組成物。
【請求項10】
前記食品組成物は、錠剤、カプセル、粉末、液相、顆粒、環、片相、ペ-スト状、シロップ、ゲル、ゼリ-、キャラメル、グミ及びバーからなる群より選択された形態で剤形化されることである、請求項1に記載の機能性食品組成物。
【請求項11】
金銀花抽出物を有効成分として含む過敏性腸症候群の緩和用薬学組成物。
【請求項12】
前記過敏性腸症候群は、腹鳴;及び/又は下痢を伴う過敏性腸症候群である、請求項11に記載の薬学組成物。
【請求項13】
前記下痢を伴う過敏性腸症候群は、増加した排便、ゆるい便及び排便緊急からなる群より選択された1種以上の症状を含むことである、請求項12に記載の薬学組成物。
【請求項14】
前記薬学組成物は、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含むことである、請求項11記載の薬学組成物。
【請求項15】
前記薬学組成物は、錠剤、丸剤、硬/軟質カプセル剤、液剤、乳化剤、シロップ剤及び顆粒剤からなる群より選択された1種以上の経口投与用形態で剤形化されることである、請求項11に記載の薬学組成物。
【請求項16】
前記薬学組成物は、皮下注射剤、静脈注射剤、筋肉内注射剤又は胸部内注射剤及び坐剤からなる群より選択された1種以上の非経口投与用形態で剤形化されることである、請求項11に記載の薬学組成物。
【請求項17】
前記薬学組成物は、100~2000mgの範囲内で1日1~2回投与されることである、請求項11に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年8月22日付け韓国特許出願第10-2019-0103194号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、金銀花(Lonicera japonice)抽出物を有効成分として含む過敏性腸症候群の緩和のための機能性食品組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
過敏性腸症候群(IBS;irritable bowel syndrome)は、下腹部の膨満感、不快感、腹痛、頻繁な排便、下痢又は便秘、あるいはこれらの交代現象、屁、不快な臭いなどと特徴付けられる慢性機能性障害で、臨床症状が非特異的かつ多様であり、解剖学的や気質的病変異常がないことが特徴である。
【0004】
過敏性腸症候群の定義は研究者によって多少の差異を示しているが、機能性胃腸疾患に対する最近の研究成果を反映しているローマ基準IIでは、腹部不便感や痛みが排便に関連しているか、排便習慣の変化あるいは異常な排便の特徴を伴う様々な機能性腸疾患を含む1つのグル-プと定義されている。1978年Manningらの報告された資料によると、過敏性腸症候群患者において大便により好転する腹痛、症状発生時のゆるい便、痛み発生時の排便回数の増加及び腹部膨満感などの4つの症状が統計的に有意に多く、粘液便と不完全な排出感の2つの症状も過敏性腸症候群患者において多く発見される傾向があった。
【0005】
過敏性腸症候群症状の診断のために、1989年各国の専門家が集まって多様な機能性胃腸疾患に対してロ-マ基準Iという診断基準を提示し、排便の頻度や大便形態の変化を伴う腹痛や腹部不便感が3ヶ月以上持続し、(1)排便頻度の変化、(2)大便形態の変化、(3)大便排出の異常、(4)粘液便、(5)腹部膨満感などの5つの排便障害のうち2つ以上を伴うとき、過敏性腸症候群と診断した。このような診断基準は数年を経て修正補完され、1999年ロ-マ基準IIが、2006年ロ-マ基準IIIが再改正された。現在、最も広く使用されている基準はロ-マ基準IIであり、診断方法は最小限6ヶ月前に症状が始まり、過去3ヶ月間毎月少なくとも3日以上は排便による腹部痛症又は腹部不便感が緩和される場合、又は回数及び形態の変化がある場合をいう。これは、過敏性腸症候群の亜型分類である下痢型、便秘型及び下痢&便秘交代型にも分類される。
【0006】
過敏性腸症候群の原因は明確に知られてはいないが、一般的に腸運動性の変化、内臓過敏性、精神社会的要因、神経伝達物質の不均衡、細菌の感染又は炎症などの複合的な原因により発生すると予想される。また、過敏性腸症候群の正確な機序は明らかになっていないが、最近報告された資料によると神経伝達物質中のセロトニン濃度との関連性が明らかになり、特に血中セロトニンの濃度は、主に腸管内にあるセロトニンの濃度に影響されて下痢優勢型の過敏性腸症候群に影響を与えると知られている。他の機序としては、胃腸管壁に由来する内臓刺激に関する研究と、粘膜免疫系と腸に分布する求心性神経末端との間の低等級炎症によって変化した相互作用による機序、酸化ストレスなどがある。
【0007】
特にDNA損傷を引き起こす酸化ストレスの場合、腸粘膜の潰瘍を増加させると報告されており、このとき、主に使用されるバイオマ-カ-としては、8-OHdG(8-hydroxy-2'-deoxyguanosine)が活用されている。腸粘膜損傷は、過敏性腸症候群のうち下痢優勢型症状に影響を与えると報告されている。
【0008】
このような過敏性腸症候群の主な発病原因は腸が弱いか、又はストレスであるため、単に便秘や下痢などの症状のみ治療しては根本的な効果が得られず、ストレスを解消すれば根本的な効果を奏することができると期待されている。また、このような効果を得ることができる食品又は治療剤を開発するために副作用がないか、又は少ない天然物から有効成分を得ようとする研究が活発に進められているが、これまでは特別な成果が報告されていない実情である。
【0009】
近年、天然物の中で金銀花抽出物の抗炎、抗バクテリア、解熱、肝保護、抗がん、免疫、抗アレルギ-、脂質代謝、抗関節炎、鎮静効果などに対する研究結果が公開されることにより、金銀花抽出物の食品又は医薬学用途に関する関心が高まっている。
【0010】
金銀花とは、忍冬科(caprifoliaceae)に属するスイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)のつぼみ又は咲き始めた花を干したことを意味する。古くから金銀花の茎、葉、根、花などのすべての部分を漢方薬として使用している。特に中医学(TCM、Traditional Chinese Medicine)において数千年間使用してきた薬物の1つとして中国薬典に記録されており、中国では高麗人参よりも優れた効能があると知られている。金銀花の花は香りが非常によく、蜂蜜が多く、味は淡々としてやや苦味を持っている。金銀花は伝統的に頭痛、急性熱症、咽頭痛、感染症などに使用され、最近の研究を通じて抗炎、抗バクテリア、解熱、肝保護、抗がん、免疫、抗アレルギ-、脂質代謝、抗関節炎、鎮静効果などの様々な研究結果が報告されている。
【0011】
特許文献1は、金銀花抽出物を用いた胃腸管運動障害の治療又は予防用食品組成物に関するものである。具体的に、前記金銀花水抽出物のアセテ-ト分画物が機能性消化不良、便秘、過敏性大腸症状、糖尿病性胃腸運動障害、化学療法による胃腸運動障害、消化管運動障害による腸閉鎖症及び筋緊張性異栄養症による胃腸管運動障害中の1つ以上である胃腸管運動障害症状の改善に効果的であることを開示している。前記特許は、金銀花抽出物の胃腸管運動障害の改善用途を提示しているが、胃腸管運動に関連する症状について言及しているだけで、胃腸管で発生する様々な症状の改善のための解決方法は提示していないという問題点がある。
【0012】
このように、金銀花抽出物に関連して様々な胃腸関連障害症状の改善のための食品又は薬品に関連する研究が続いているが、下痢を伴う過敏性腸症候群の改善に関連する食品又は薬品については具体的な研究がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の目的は、金銀花抽出物を有効成分として含む過敏性腸症候群の緩和のための機能性食品組成物を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、金銀花抽出物を有効成分として含む過敏性腸症候群の予防又は治療用薬学組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は、金銀花抽出物を有効成分として含む過敏性腸症候群の緩和のための機能性食品組成物を提供する。
【0017】
本発明はまた、金銀花抽出物を有効成分として含む過敏性腸症候群の緩和用薬学組成物を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金銀花抽出物は下痢症状を改善させ、過敏性腸症候群症状に対する緩和効果を示す。具体的に、前記金銀花抽出物は、増加した排便(Increased passage of stools)、ゆるい便(Loose stools)及び排便緊急(Urgent need for defecation)に対して改善効果を示し、過敏性腸症候群を緩和させることができる。
【0019】
また、本発明に係る金銀花抽出物は、過敏性腸症候群に関連している症状の1つである腹鳴を改善し、過敏性腸症候群を緩和するのに効果を示す。
【0020】
また、前記金銀花抽出物は、酸化ストレスの生物学的指標として活用される8-OHdG(8-hydroxy-2'-deoxyguanosine)の血中濃度を減少させ、 過敏性腸症候群の緩和効果を示す。
【0021】
また、前記金銀花抽出物の中でも、金銀花水抽出物は、腹鳴及び/又は下痢を伴う過敏性腸症候群を緩和するのにより効果的であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群と対照群による便秘及び下痢症状改善の程度を評価した結果を示すグラフである。
【
図2】実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群と対照群による便秘及び下痢に関連する細部症状改善の程度を評価した結果を示すグラフである。
【
図3】実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群と対照群に対する腹鳴症状改善の程度を評価した結果を示すグラフである。
【
図4】実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群と対照群に対して血中8-OHdG濃度に関連した血液学的分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0024】
食品組成物
本発明は、金銀花抽出物を有効成分として含む過敏性腸症候群の緩和のための機能性食品組成物に関する。
【0025】
金銀花は、忍冬科(Caprifoliaceae)に属するスイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)の花で金銀花、忍冬草又はスイカズラ花と呼ばれる。
【0026】
前記金銀花抽出物は、水、炭素数1~4のアルコ-ル又はこれらの混合溶媒から選択された溶媒で抽出されたものであってもよい。
【0027】
前記金銀花抽出物は、上記金銀花抽出物の有機溶媒分画物であってもよい。このとき、前記金銀花抽出物の有機溶媒分画物とは、下記有機溶媒のうち1種以上を用いて前記金銀花抽出物を独立して又は順次に系統分画を行って得た物質を意味する。
【0028】
前記有機溶媒は、ヘキサン、エチルアセテート、ジクロロメタン、クロロホルム及びブタノ-ルからなる群より選択された1種以上を含むものであってもよい。
【0029】
例えば、前記金銀花抽出物の有機溶媒分画物は、過敏性腸症候群の緩和効能を考慮して、後述するような金銀花物抽出物のエチルアセテート分画物であってもよい。
【0030】
また、前記金銀花抽出物は、水を用いて抽出された金銀花物抽出物であってもよい。上記金銀花水抽出物は、過敏性腸症候群の中でも下痢を伴う過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome with diarrhea、疾病コ-ド:K58.0)の症状を緩和させるのに効果的であり得る。
【0031】
胃腸管機能症状尺度(Gastrointestinal Symptom Rating Scale, GSRS)によれば、前記下痢症状は、増加した排便(Increased passage of stools)、ゆるい便(Loose stools)及び排便緊急(Urgent need for defecation)を含むことができる。
【0032】
したがって、前記金銀花抽出物は、下痢症状である増加した排便、ゆるい便及び排便緊急症状を改善し、下痢を伴う過敏性腸症候群の症状を緩和させることができる。
【0033】
また、前記金銀花抽出物は、過敏性腸疾患に関連する症状である腹鳴(borborygmus)を改善させることができる。腹鳴は、胃及び腸管で生じる音で食べ物量が少なくガスが多いとき、食べ物が消化されないときに過度のガス形成時、胃筋肉が収縮して液相とガスが前進する過程でクルルク(rumbling)音が発生するが、前記金銀花抽出物は、前記腹鳴を改善して過敏性腸症候群を緩和することができる。
【0034】
前記金銀花抽出物の含有量は特に制限されないが、前述のような過敏性腸症候群関連症状の緩和効果を考慮するとき、前記食品組成物の全体重量を基準にして0.1~10重量%であってもよい。
【0035】
本発明において、前記食品組成物の剤形は特に限定されないが、例えば、錠剤、カプセル、粉末、液相、顆粒、環、片相、ペ-スト状、シロップ、ゲル、ゼリ-、キャラメル、グミ又はバ-(bar)の剤形であってもよい。
【0036】
本発明の食品組成物は、通常使用される賦形剤及び/又は添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤は、結合剤、崩解剤、甘味剤、芳香剤、着色剤又は保存剤であってもよいが、食品組成物に通常許容される添加剤であればこれに制限されない。
【0037】
前記賦形剤は、製剤を摂取しやすくしたり、一定の形態を作るために添加される物質であれば本発明において特に制限しない。このような賦形剤の例としては、マルトデキストリン、デンプン、カルシウムカ-ボネ-ト、スクロ-ス、乳糖、ブドウ糖、マンニト-ル、イソマルト、キシリト-ル、ゼラチン、(微)結晶セルロ-ス、ソルビト-ル、マルチト-ル、HPMC(hypromellose), ソジウムラウリルサルフェート、ソジウムアルジネート、リン酸カルシウムなどが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0038】
前記結合剤は、製剤の形態が維持され得るようにする物質であり、例えば、水、メタクリル酸共重合体の水性懸濁液、エチルセルロ-ス水性懸濁液、及びポリビニルアセテート水性懸濁液、ステアリン酸マグネシウムから選択される1種以上であってもよい。
【0039】
前記崩解剤は、体内消化管の中で崩解を促進するためのものであり、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ-ス、ベントナイト、ヒドロキシプロピルスタ-チ、カルボキシメチルセルロ-スナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、1-ヒドロキシプロピルセルロ-ス、デキストラン、デンプン、酢酸ポリビニル、ホルムアルデヒド処理カゼイン及びゼラチン、アルギン酸、アミロ-ス、グア-ガム(Guar gum)、中調ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、アミロペクチン、ペクチン、ポリリン酸ナトリウム、エチルセルロ-ス、百糖、及びケイ酸マグネシウムアルミニウムから選択される1種以上であってもよい。
【0040】
前記甘味剤は、苦味を遮蔽する役割をするものであり、例えば、白糖、ブドウ糖、D-ソルビト-ル、アスパルテ-ム、甘草抽出物、エリスリト-ル、ステビオ-ル配糖体、酵素処理ステビオサイドなどを用いることができる。
【0041】
前記芳香剤としては、例えば、オレンジ油、果汁エキス、シナモン油、スペアミント油、ミント、バニラ、フェパミント油、バラ油、レモン油、ベリ-香、イチゴ香、ブドウ香、ベリ-香、ヨ-グルト香などを用いることができる。
【0042】
前記着色剤としては、例えば、食用合成色素のような人工着色剤、クチナシ黄色素、コチニール抽出色素、キャラメル色素、紅麹赤色素、サフラン色素のような天然着色剤などを用いることができる。
【0043】
前記保存剤としては、例えば、デヒドロ酢酸類、ソルビン酸類、安息香酸類、プロピオン酸類、パラオキシ安息香酸エステル類などを用いることができる。
【0044】
その他には、本発明の食品組成物は通常使用される安定剤、増粘剤、増量剤、又はpH調整剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0045】
また、前記食品の種類には特に制限はない。前記金銀花抽出物を添加することができる食品の例としては、肉類、ソ-セ-ジ、パン、チョコレ-ト、キャンディ-類、スネック類、ピザ、ラ-メン、その他の麺類、アイスクリ-ム類を含む酪農製品、各種ス-プ、飲料水、ドリンク剤、アルコ-ル飲料及びビタミン混合剤などがあり、通常の意味での健康食品をすべて含むことができる。
【0046】
本発明に係る金銀花抽出物は、金銀花を粉砕した後、抽出溶媒を加え、加熱して製造することができる。
【0047】
抽出時の条件は、50~100℃、好ましくは60~95℃の温度で1~10時間、好ましくは3~7時間実施することができる。
【0048】
前記金銀花抽出物を得た後、前記抽出物の濃縮をさらに実施することもでき、前記濃縮は30~70℃の温度で1~10時間実施してもよい。
【0049】
また、前記濃縮された金銀花抽出物の粉末化のために賦形剤を追加することができ、賦形剤の例としては、マルトデキストリン、デンプン、乳糖、結晶セルロ-スなどを用いることができ、前記金銀花抽出物と賦形剤を10:90~50:50の割合で混合して粉末を製造することができる。前記賦形剤混合後の抽出物の乾燥工程は、減圧乾燥(vacuum drying)、噴霧乾燥(spray drying)又は凍結乾燥(freeze drying)により実施することができ、このような工程を通じて金銀花抽出物を製造する。前記乾燥工程は、20~100℃の温度で15~18時間実施してもよい。
【0050】
このとき、前記抽出溶媒は、水、炭素数1~4のアルコ-ル及びこれらの混合溶媒の中から選択されるものであってもよく、過敏性腸症候群の症状を緩和することができる効能を考慮するとき、前記抽出溶媒は水であってもよい。
【0051】
また、前記濃縮された金銀花抽出物を水に懸濁させた後、有機溶媒で分画し、金銀花抽出物の有機溶媒分画物を得ることができる。
【0052】
薬学組成物
本発明は、金銀花抽出物を有効成分として含む過敏性腸症候群の緩和用薬学組成物に関し、具体的に、前記薬学組成物は、過敏性腸症候群の予防又は治療用薬学組成物であってもよい。
【0053】
前記過敏性腸症候群は、腹鳴;及び/又は下痢を伴う過敏性腸症候群であってもよく、前記下痢を伴う過敏性腸症候群は、増加した排便、ゆるい便及び排便緊急からなる群より選択された1種以上の症状を含んでいてもよい。
【0054】
本発明において、前記薬学組成物は、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含むことができ、前記賦形剤及び/又は添加剤は、薬剤学的に許容されるものであれば特に制限されるものではない。
【0055】
例えば、前記賦形剤は、マルトデキストリン、ラクト-ス、デキストロ-ス、スクロ-ス、ソルビト-ル、マンニト-ル、キシリト-ル、エリスリト-ル、マルチト-ル、デンプン、アカシアゴム、アルジネ-ト、ゼラチン、カルシウムフォスフェイト、カルシウムシリケート、セルロ-ス、メチルセルロ-ス、微晶質セルロ-ス、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエ-ト、プロピルヒドロキシベンゾエ-ト、タルク、マグネシウムステアレート又は鉱物油であってもよい。
【0056】
前記添加剤は、薬学組成物を製剤化するために一般的に使用される担体、希釈剤、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤又は界面活性剤であってもよい。
【0057】
本発明において、前記金銀花抽出物を有効成分として含む薬学組成物は、経口又は非経口投与の形態で剤形化することができる。
【0058】
前記経口投与用剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、硬/軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、シロップ剤及び顆粒剤からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0059】
また、前記非経口投与用剤形としては、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び坐剤からなる群より選択される1種以上であってもよい。前記非経口投与用剤形は、金銀花抽出物を安定剤又は緩衝剤とともに水で混合して溶液形態で製造されたものであってもよく、アンプル又はバイアルの単位投与用形で製品化され、皮下注射剤、静脈注射剤、筋肉内注射剤又は胸部内注射で注入することができる。
【0060】
本発明の金銀花抽出物を有効成分として含む過敏性腸症候群の緩和用薬学組成物の投与量は、患者の体重、年齢及び疾病の特殊な性質と深刻性のような要因により医師の処方に従う。しかしながら、成人の治療に必要な経口又は非経口投与量は、100~2000mg、好ましくは100~1000mg、より好ましくは100~400mgの範囲内で1日1~2回経口投与されてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属するのも当然である。
【0062】
実施例1:金銀花抽出物の製造
金銀花つぼみ100gを乾燥及び粉砕した後、精製水100mLに入れて60℃で4時間加熱して抽出及び濾過した後、30℃の温度で2時間濃縮を行い、金銀花抽出物を製造した。
【0063】
その後、抽出物の粉末化のための賦形剤としてマルトデキストリンを混合した後、40℃の温度で14時間減圧乾燥して60gの金銀花抽出物を粉末状に製造した。
【0064】
実験例1:胃腸管機能症状尺度(Gastrointestinal Symptom Rating Scale、GSRS)の評価
実施例1で製造された金銀花抽出物を用いて過敏性腸症候群の症状に対する予防又は治療効能に対する実験を行った。
【0065】
具体的な実験対象、実験方法、実験項目及び実験結果は以下の通りである。
【0066】
1-1.実験対象
- 19歳以上の成人男性・女性
- 上腹部の不便又は持続性/再発性痛症患者であって、機能性消化不良と診断された患者(ローマIII基準)で早急な薬品治療を要しない対象者
- 人体適用試験同意書に書面同意し、研究過程に必要な訪問と関連検査及びアンケ-トなどに協力することができる対象者
- 参加人数:計92名(試験群:46名、対照群:46名)
- 最終デ-タ分析人数:計73名(試験群:38名、対照群:35名)
【0067】
1-2.実験方法
前記実施例1で製造された金銀花抽出物を錠剤で製造して用いた。前記金銀花抽出物は通常の方法で金銀花抽出物錠剤(300mg/1錠)を製造した。このとき、前記錠剤に含まれた金銀花抽出物の含有量は125mg/1錠となるようにした。
【0068】
試験群については、前記金銀花抽出物錠剤を1日2回、1回1錠として8週間投与し、前記金銀花抽出物の投与量は250mg/dayであった。
【0069】
対照群については、前記マルトデキストリンのみを含む錠剤(300mg/1錠)を1日2回、1回1錠として8週間投与した。
【0070】
1-3.実験結果
(1)評価項目
実験が完了した試験群及び対照群について、胃腸管機能症状尺度(Gastrointestinal Symptom Rating Scale、GSRS)に関連してアンケ-トを実施した。
【0071】
以下の表1は、胃腸と機能症状の尺度を分類したものである。
【0072】
【0073】
前記表1の胃腸管機能症状尺度の中で、便秘症状(Constipation syndrome)関連3つの項目、下痢症状(Diarrhea syndrome)関連3つの項目、及び過敏成長疾患に関連する腹鳴に関する項目を含む7つの項目についてアンケ-トを行った。前記7つの項目は、腹からの音である腹鳴、便秘症状である減少した排便(Decreased passage of stools)。硬便(Hard stools)及び不完全な排出感覚(Feeling of incomplete evacuation)症状を含み、下痢症状である増加した排便(Increased passage of stools)、ゆるい便(Loose stools)及び排便緊急(Urgent need for defecation)症状を含む。
【0074】
(1)評価方法
前記便秘症状、下痢症状及び腹鳴症状を含む7つの項目に規定された症状に対する改善程度を4等級に分類した後、前記試験群及び対照群に対して各項目に対する改善強度を評価するようにし、その結果を統計分析方法である、Mann-Whitney U test方法で分析し、金銀花抽出物の摂取前後に関する統計分析方法は、Wilcoxon signed-rank testを用いて検定した。
【0075】
(2) 評価結果
図1は、実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群と対照群による便秘及び下痢症状改善の程度を評価した結果を示すグラフである。
図1を参照すると、実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群(金銀花抽出物錠剤)は、対照群(Placebo)に比べて下痢症状が有意に改善されたことが分かる。図において、試験群は「金銀花」、対照群は「Placebo」と表示した。
【0076】
図2は、実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群と対照群による便秘及び下痢に関連する細部症状改善の程度を評価した結果を示すグラフである。
【0077】
図3は、実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群と対照群に対する腹鳴症状改善の程度を評価した結果を示すグラフである。
【0078】
このとき、前記便秘及び下痢に関連する細部症状は、便秘症状である減少した排便(Decreased passage of stools)、硬便(Hard stools)及び不完全な排出感覚(Feeling of incomplete evacuation)症状を含み、下痢症状である増加した排便(Increased passage of stools)、ゆるい便(Loose stools)及び排便緊急(Urgent need for defecation)症状を含む。
【0079】
図2を参照すると、実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群(金銀花抽出物錠剤)は対照群(Placebo)に比べて、下痢症状であるゆるい便と排便緊急症状で有意に改善されたことが分かる。
【0080】
図3を参照すると、実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群(金銀花抽出物錠剤)は対照群(Placebo)に比べて、腹鳴症状が有意に改善されたことが分かる。
【0081】
なお、下記の表2は、前記試験群と対照群に対して、前記金銀花抽出物錠剤の投与前(Baseline、0日)、投与後4週間(28day)及び投与後8週間(56day)である時点で、前記便秘及び下痢症状に関連する詳細症状の評価結果を示す。
【0082】
【0083】
(X±SD)X=Mean。SD=Standard deviation。*p< 0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001 Comparisons with baseline(wilcoxon test for matched samples)。+p<0.05、++p<0.01Comparisons with placebo(Mann Whitney U test)。
【0084】
前記表2を参照すると、実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群は、対照群に比べて下痢症状であるゆるい便、排便緊急及び腹鳴症状で有意に改善されたことが分かる。
【0085】
また、前記表2を参照すると、実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群は、7つの項目のうち5つの項目、減少した排便、不完全な排出感覚、ゆるい便、排便緊急症状及び腹鳴で金銀花抽出物の摂取前より有意に改善されたことが分かる。対照群では有意な改善を確認することができなかった。
【0086】
このような結果から、本発明に係る金銀花抽出物は過敏性腸症候群の改善に効果があり、特にゆるい便、排便緊急及び/又は腹鳴症状を含む下痢症状が有意に改善され、前記金銀花抽出物は特に下痢を伴う過敏性腸症候群の改善に効果的であることが分かる。
【0087】
実験例2
8-OHdGは、酸化ストレスを測定するためのバイオマ-カ-であって、細胞のDNA損傷を示す生物学的指標として活用されるため、炎症疾患、特に胃腸管関連疾病である過敏性腸症候群とも関連性があると報告されている(Kauppi J, Rasanen J,Sihvo E,Nieminen U,et al.,Transl Oncel.2016;9:336-339;Albayrak F,Uyanik MH,Dursun H,Albayrak Y,et al.,South Med J.2010;103:753-757)。すなわち、8-OHdGの血中濃度が減少するほど過敏性腸症候群の症状が改善される。
【0088】
そこで、前記実験例1の試験群及び対照群に対して、8-OHdGの血中濃度について血液学的分析を行い、統計分析方法である、Mann-Whitney U test方法を用いた。
【0089】
図4は、実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群と対照群に対して血中8-OHdG濃度に関連した血液学的分析結果を示すグラフである。
【0090】
図4を参照すると、実施例1の金銀花抽出物を投与した試験群(金銀花抽出物精製)は対照群(Placebo)に比べて、血中8-OHdG濃度が有意に減少したことが分かる。
【0091】
これにより、前記金銀花抽出物は、過敏性腸症候群の緩和に効能があることが分かる。
【0092】
以上から、本発明は限定された実施例と図面によって説明されたが、本発明はこれによって限定されるものではなく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と以下に記載する特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは勿論である。
【国際調査報告】