(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】EREZエンジン-内燃ロータリエンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 53/00 20060101AFI20221014BHJP
F02B 53/04 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
F02B53/00 C
F02B53/04 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022519849
(86)(22)【出願日】2020-06-07
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 IL2020050635
(87)【国際公開番号】W WO2020250218
(87)【国際公開日】2020-12-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521537209
【氏名又は名称】スマーティブ テック エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】イフラッチ,エレズ
(57)【要約】
内燃ロータリエンジンは:少なくとも1つの燃焼チャンバと;フライホイールと;このフライホイールに設けられた少なくとも1つのピストンと;2つ以上のバリア要素と;フライホイールの外面、フライホイールのハウジング、及び2つ以上のバリア要素の間における、周辺容量と、を備える。周辺容量のある部分も、1つまたは複数のピストンによって区切られる。バリア要素は、周辺容量内に位置付けられ、それによって基本的にその中の空気の流れを遮断するよう、及び少なくとも部分的にその中の空気の流れを遮断しないよう位置付けられ、それによって空気が流れるのを可能にするよう、ならびに、ピストンが周辺領域間で動くのを促進するために完全に開放するよう、位置付けられるように適応される。バリア要素の動きのタイミングは、フライホイールの回転及び/またはピストンの箇所に依存する。圧搾空気の一部と接触したバリア要素は、密閉の必要なく動くよう適応され、その一方でピストンは、燃焼チャンバの内側における燃焼のために必要とされる圧搾空気を遮断する。ピストンは、圧搾空気を2つの部分に区分けする。その一方は、燃焼チャンバに閉じ込められ、その他方はピストンの前とバリア要素との間に位置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃ロータリエンジンであって、
少なくとも一つの燃焼チャンバと、
フライホイールと、
前記フライホイールに設けられた少なくとも1つのピストンと、
2つ以上のバリア要素と、
前記フライホイールの外面、前記フライホイールのハウジング、及び2つ以上の前記バリア要素の間における、周辺容量と、
を備え、
前記周辺容量のいくつかの部分は、1つまたは複数のピストンによっても区切られ、前記バリア要素は、前記周辺容量中への空気の流れを基本的に遮断するために、前記周辺容量内に位置付けられるよう、及び前記周辺容量の中への空気の流れを少なくとも部分的に遮断しないために位置付けられ、それによって前記空気の流れが生じるのを可能にするよう、ならびに前記ピストンが周辺領域間で動くのを促進するために、完全に開放するために位置付けられるよう、適応され、前記バリア要素の動きのタイミングは、前記フライホイールの回転、及び/または、前記ピストンの位置に依存し、
圧搾空気の一部と接触した前記バリア要素は、密閉の必要なく動き、一方で前記ピストンは、前記燃焼チャンバの内側での燃焼に必要な圧搾空気を遮断するよう適応され、前記ピストンは、圧搾空気を2つの部分に区分けし、その一方は前記燃焼チャンバに閉じ込められ、その他方は前記ピストンの前と前記バリア要素との間に位置される、エンジン。
【請求項2】
前記ピストンの前に位置された圧縮空気の一部は、前記バリア要素が少なくとも部分的に遮断しない位置にあるとき、前の動作から残された燃焼ガスを排出するために使用される、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
空気の代わりに可燃材料または混合気を圧縮するよう適応された、請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
前記バリア要素が閉位置にある間、混合気を包含するよう適応され、前記ピストンの前における圧搾混合気の一部が、入口を介して吸入システムに流入するのを可能にするのに好適である、請求項3に記載のエンジン。
【請求項5】
前記ピストンは前記フライホイールと一体化されるか、または、前記フライホイールから分離される、請求項1に記載のエンジン。
【請求項6】
前記バリア要素は直線的に可動である、請求項1に記載のエンジン。
【請求項7】
前記バリア要素は回転的に可動である、請求項1に記載のエンジン。
【請求項8】
燃焼ガスの排出を補助するのに好適な、圧搾ガスを包含するよう適応されたポートを備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項9】
前記ポートは前記フライホイールに設けられる、請求項8に記載のエンジン。
【請求項10】
空気/混合気が、前記エンジンの前記周辺容量の中に入るのを可能にするよう適応されたポートを備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項11】
前記ポートは前記フライホイールに設けられる、請求項10に記載のエンジン。
【請求項12】
接触せずに密閉するために、2つ以上の前記エンジンの部品間に微小空間をさらに備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項13】
密閉を促進させるために乱流を誘発するために好適な溝を、任意選択でさらに備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項14】
前記バリア要素の動きのタイミングを制御するために好適な、「ゼネバ歯車」機構を任意選択でさらに備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項15】
回転バリア要素をさらに備え、その軸に対して前記エンジンの構成要素は中央に置かれ、軸の周りを回転する、請求項1に記載のエンジン。
【請求項16】
密閉のための前記中央構成要素間に、微小空間をさらに備える、請求項15に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンの分野に関する。より具体的には、本発明は内燃ロータリエンジンの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃ロータリエンジンは、数十年前に最初に発明され、ロータリ機構が運動中に少ないエネルギー損失しか受けないので、非ロータリエンジンと比較してかなり高い効率を提供することで知られている。このエネルギー損失は、例えば直線運動を回転運動に運動変換する間において内燃エンジンで一般的である。
【0003】
先行技術によると、内燃ロータリエンジンは一般に、しばしば複数の可動構成要素を有する複雑な機構を備え、それは構成要素の接触を伴い、構成要素の摩滅を生じさせ、エンジンの寿命を減少させる。それは当然ながら、保守管理の必要性も増加させ、摩擦によって生じるエネルギー損失のため、エンジン効率を低下させる。このようなエンジンは、圧縮空気/混合気を伴う密閉の課題による困難も受け、密閉のために、異なる構成要素間の接触を利用する。セパレータ/ドア/バリア要素は、エンジンの動作中に空気/混合気が、それらの指定された容量から逃げるのを防止するため、フライホイール及びピストンの形状に接触することによって追随する。
【0004】
さらに、現存のロータリエンジンの多くは、顕著な密閉の課題を受け、隣接したストロークチャンバ間の流体漏洩によって効率の低下をもたらし、かつ隣接したチャンバ間を密閉するため及び可動機構の潤滑のために、継続的に消耗されるオイルの消費を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目標は、エンジンの他の構成要素とは全く接触せずに、運動を担う構成要素から離隔された中央回転要素を備えた、内燃ロータリエンジンを提供することである。
【0006】
本発明の1つの実施形態において、本発明は、密閉のための可動構成要素間に、1つまたは複数の微小空間を備える。加えて本発明は、1つまたは複数の点火チャンバを備える。これら点火チャンバは、ロータリエンジンの周辺容量のある部分における燃焼容量を提供するために好適である。本発明は、この周辺容量を組み合わせ、及びピストンによって、燃焼容量における圧縮空気/混合気を分離かつ閉じ込め、それによってエンジンのフライホイール及び/またはピストンと接触することなく、バリア要素を動かすことを可能にする。さらに、動作のタイミングに関して、フライホイール及び/またはピストンの動きに直接依存せず、エンジンの構成要素のタイミングプロトコルに依存する、フライホイールとバリア要素との間の機構的接続が存在する。燃焼容量において安定した圧縮空気/混合気を提供することによって、点火のタイミングは、さらに制御可能となり、正確な瞬間を設定することができ、密閉を維持するための接触を必要としない。フレーズ「周辺容量」は、「発明を実施するための形態」において説明を始める際に、詳細に説明する。
【0007】
本発明の別の目標は、先行技術で公知である他のロータリエンジンと比較して、エンジンの異なる構成要素間の密閉を改善した、外形及び構成要素を備え、それによってエンジン効率を向上させる、内燃ロータリエンジンを提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目標は、向上した排気浄化動作をもたらす内燃ロータリエンジン、及びその方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目標及び利点は、説明を進めると明白となろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
内燃ロータリエンジンは:
少なくとも一つの燃焼チャンバと;
フライホイールと;
このフライホイールに設けられた少なくとも1つのピストンと;
2つ以上のバリア要素と;
上記のフライホイールの外面、上記のフライホイールのハウジング、及び2つ以上のバリア要素、の間の周辺容量と、
を備え、
周辺容量のある部分は、1つまたは複数のピストンによっても区切られ、バリア要素は、周辺容量の中への空気の流れを基本的に遮断するために、周辺容量内に位置付けられるよう、及び周辺容量の中への空気の流れを少なくとも部分的に遮断しないために位置付けられ、それによって空気の流れが生じるのを可能にするよう、ならびにピストンが周辺領域間で動くのを促進するために、完全に開放するために位置付けられるよう、適応される。バリア要素の動きのタイミングは、上記のフライホイールの回転、及び/または上記のピストンの位置に依存し、
圧搾空気の一部と接触したバリア要素は、密閉の必要なく動き、一方でピストンは、燃焼チャンバの内側での燃焼に必要な圧搾空気を遮断するよう適応される。このピストンは、圧搾空気を2つの部分に区分けし、その一方は燃焼チャンバに閉じ込められ、その他方はピストンの前とバリア要素との間に位置される。
【0011】
1つの実施形態において、ピストンの前に位置された圧縮空気の一部は、バリア要素が少なくとも部分的に遮断しない位置にあるとき、前の動作から残された燃焼ガスを排出するために使用される。別の実施形態において、エンジンは、空気の代わりに混合気を圧縮するよう適応される。
【0012】
いくつかの実施形態において、エンジンは、混合気を包含するよう適応され、その一方でバリア要素は閉位置にあり、圧搾混合気の一部が、ピストンの前で入口を介して吸入システムの中に流れるのを可能にするのに好適である。
【0013】
いくつかの実施形態において、ピストンはフライホイールと一体化され、他方ではフライホイールから分離される。
【0014】
エンジンのバリア要素は、直線的に可動か、または回転的に可動とすることができる。
【0015】
1つの実施形態において、エンジンは、燃焼ガスの排出を補助するのに好適な圧搾ガスを包含するよう適応されたポートを備える。別の実施形態において、このポートはフライホイールに設けられる。別の実施形態において、エンジンは、空気/混合気がエンジンの周辺容量の中に入るよう適応されたポートを備え、さらに別の実施形態において、このポートはフライホイールに設けられる。
【0016】
エンジンは、接触せずに密閉するために、2つ以上のエンジン部品間に微小空間をさらに備える。1つの実施形態において、エンジンは、密閉を促進させるために乱流を誘発するために好適な溝を、任意選択で備えることができる。
【0017】
1つの実施形態において、エンジンは、バリア要素の動きのタイミングを制御するために好適な、「ゼネバ歯車」機構を任意選択で備えることができる。
【0018】
1つの実施形態において、エンジンは、回転バリア要素をさらに備え、エンジンの構成要素は、軸に対して中央に置かれ、軸の周りを回転する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の1つの実施形態によるエンジンの正面斜視図である。
【
図3】吸入ストローク及び圧縮ストロークを同時に開始する、
図1のエンジンの概略図である。
【
図4】吸入ストローク及び圧縮ストロークを明示する、
図1のエンジンの正面図である。
【
図5A】空気トラッピング用の溝をさらに備えた、本発明の別の実施形態によるエンジンを示す図である。
【
図6A】エンジンが吸入ストローク及び圧縮ストロークの終了直後の、
図1のエンジンの正面図である。
【
図6B】圧縮ガスの一部が燃焼チャンバを過ぎて位置する、
図6AにおけるセクションBの拡大図である。
【
図8A】点火後、頂部左のバリア要素が僅かに時計回りに回転した、
図7のエンジンを示す図である。
【
図8B】圧縮空気が排気ガスに向けて流れることができるところを示す、
図8AにおけるセクションCの拡大図である。
【
図9】点火によってフライホイールが回転を開始した後、バリア要素が、頂部左の空洞の円形周辺と整合するよう、同時に位置付けられ、新たな排出ガスが、頂部右及び左のバリア要素と、燃焼チャンバと、フライホイールと、そのピストンとによって画定された、消費容量を介して流れることができ、回転中に、新たな排出ガスを包含する容量を消費するところを示す図である。
【
図10】エンジンが、エンジンブロック、2つのピストンを備えたフライホイール、8つのバリア要素、及び4つの燃焼チャンバを備えた、本発明の別の実施形態によるエンジンの正面図である。
【
図11A】排出ポート及び吸入ポートがフライホイールに位置される以外は
図10のエンジンと類似の、本発明の別の実施形態における別のエンジンの斜視図である。
【
図11B】フライホイールに位置されたポートを介したガスの流れを示す、
図11AのセクションDの拡大図である。
【
図12】バリア要素が直線のバリア要素である、本発明の別の実施形態によるエンジンの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、内燃ロータリエンジンに関し、簡潔にするために説明においては、「Erezエンジン」または単に「エンジン」と簡単に称する場合もある。フレーズ「Erezエンジン」は商品名を指し、その構造を示すものではない。本発明によるエンジンは、フライホイール、フライホイールハウジング、1つまたは複数のピストン、1つまたは複数の燃焼チャンバ、点火/注入要素、排出ポート、吸入ポート、及びガスの流れを遮断または可能にするために好適な1つまたは複数のバリア要素、を備える。
【0021】
説明において使用される、エンジンの「周辺容量」という別のフレーズは、フライホイールのハウジングと、このフライホイールの外側と、1つまたは複数のバリア要素と、1つまたは複数のピストンによる周辺容量のいくつかの部分と、の間によって画定された容量を説明する。
【0022】
以下の詳細な説明において、添付の図面を参照する。それらは、本発明による特定の実施形態または例を示す。これらの実施形態は組み合わされてよく、他の実施形態を利用してもよく、かつ他の変更が、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく成され得る。
【0023】
図1は、エンジンブロック101を備えた、本発明の1つの実施形態によるErezエンジン100の正面斜視図である。エンジンブロック101は、空洞102、103、104、及び105、燃焼チャンバ106、フライホイール107、ならびにピストン108を備える。フライホイール107は、「フライホイールハウジング」とも称される空洞102の内側に位置される。フライホイール107は、基本的に空洞102の径のサイズである最大径を有するピストン108を備え、それは、空洞102の外側とピストン108との間の非常に小さい空所を残し、それによって上記の部品間の摩擦を軽減させるために、
図5Bに示されるように、ほぼ同じサイズのみの場合もある。本実施形態によると、ピストン108はフライホイール107と一体化されるが、それらの各々は、それらの名称及び説明によって容易に理解され得るように、異なる役割りを有する。そのため、それらは別個の部品として称される。本発明の他の実施形態によると、ピストン及びフライホイールは、互いに装着された異なる部品とすることができる。
【0024】
Erezエンジン100は、バリア要素109、110、及び111を備え、それぞれは空洞103、104、及び105の内側で回転するのに好適なように、それぞれの空洞の内側に位置付けられる。空洞103~105と、空洞102との間は、恒久的に分離されていないが、これらは個々の空洞として称される。なぜなら、バリア要素109~111は、特定の位置においてそれらの間で分離を作り出すことができるか、または1つの空洞から別の空洞への、ガスの流入を可能にするからである。
【0025】
バリア要素109~111の各々は、シャフト(図示せず)を介して作動させることができる。これらシャフトは、対応した空洞103~105内で回転するよう、それぞれ番号112、113、及び114で示されたシャフト穴の内側に位置されるのに好適である。
【0026】
図1でさらに示されるように、エンジンブロック101は、燃焼ガスを排除するのに好適な排出ポート115、及びガスをErezエンジン100の周辺容量に流入させるのに好適な吸入ポート116、も備える。
【0027】
本実施形態によると、ポート115及び116は、使用外の間に完全には遮断されないが、例えば
図10における本発明の他の実施形態を示す、以下の図面で明示されるように、それらを介した流れが必要ではないときに、上記のポートの遮断をもたらす代替の構成を使用することが可能である。
【0028】
圧縮ガスの点火は、燃焼チャンバ106の内側で行なわれる。外部のスパークが必要である場合、スパークプラグ117によって提供することができる。スパークプラグ117は、例えば電子手段または電気機械手段によって制御され得る。燃焼チャンバは、ディーゼルなどの燃料をチャンバ106の中に注入するのにも好適であり、その一方で燃料チャンバは圧縮空気を包含する。燃料注入要素が
図1に示されないが、当技術分野では好適なデバイスが公知であり、当業者によって、容易にErezエンジン100と一体化させることができる。
【0029】
図2は、
図1のエンジン100の後面斜視図であり、バリア要素109~111の回転を制御するのに好適な、ゼネバ駆動機構(当技術分野では「ゼネバ歯車」としても公知の機構)を示す。
図2における、
図1のバリア要素109の回転を制御する頂部右のゼネバ歯車は、駆動ホイール201及び駆動ホイール202を備える。駆動ホイール202は、90°間隔で配置されたスロット203a及び203bなど4つのスロットを有し、それによって、ホイール202に接続された要素109は、90°のステップで回転するよう設定される。駆動ホイール201はピン204を備え、ホイール201が例えば時計回りに回転するとき、ピン204はスロット203bに入り、駆動ホイール202を反時計回りに回転させて、スロット203bを、前のスロット203aの位置に再び位置付ける。
【0030】
類似の方法で、頂部左のゼネバ歯車の駆動ホイール205が、ピン207によって
図1のバリア要素110に接続された駆動ホイール206を回転させる。底部のゼネバ歯車に属する駆動ホイール208は、駆動ホイール209の回転によって制御され、8つのスロットを備え、それによって
図1のバリア要素111は、45°のステップで回転するよう設定される。駆動ホイール209は、2つのピン210及び211を備え、それによってホイール209のフル回転ごとに、ホイール208の45°の回転を2回もたらす。各駆動ホイール202、206、及び208の動きのタイミングは、駆動ホイール201、205、及び209の角速度によって制御され、これらの角速度は、
図1のフライホイール107に(タイミングベルトなどの接続で)接続されたフライホイールシャフト212への機械的接続によって制御される。このような外部の手段は、タイミングベルトを用いて駆動ホイール201、205、及び209に連結された、独立した電気モータなど、例えば電子手段または電気機械手段とすることができる。
【0031】
当業者には明白であるが、
図2のゼネバ機構を、異なる動作パラメータを得るために変更することができることに留意されたい。例えば、
図1の要素109~111の回転角度は、スロットの数によって制御され、駆動ホイール202、206、及び208のペースは、駆動ホイール201、205、及び209の角速度によって、ならびにピン204、207、210、及び211などのピンの数によって制御される。各パラメータを、バリア要素109~111の所望の動きをもたらすために変更することができる。
図2のゼネバ機構を、バリア要素109~111の動きを制御するのに好適な、任意の他の機構に取り換えることができることにも、留意されたい。
【0032】
図2は、
図1の排出ポート115及び吸入ポート116も示す。特定の圧力または所定のタイミングでのみ、ポート115及び116を介してガスの流れを可能にするのに好適な弁を、ポート115及び116に設けることができる。ポート115及び116は、パイプまたは他のガス送達要素にも、さらに接続することができる。
【0033】
図3は、容量301における吸入ストロークと、容量302における圧縮ストロークとを同時に開始する、
図1のErezエンジン100を概略で示す。吸入の容量301は、ピストン108が反時計回りに回転する際に、バリア要素111とピストン108との間で増加し、その一方で、ピストン108とバリア要素109との間における圧縮の容量302は減少する。この状態において、要素111は、吸入ポート116を完全に露出した位置にあり、ポート116を介して容量301の中にガスを流入させる。要素110は、ガスが流れる位置にあり、燃焼チャンバ106も含んだ容量302を画定する。要素109はガスの流れを遮断する位置にあり、それによって容量302を、前サイクルからの排出ガスが存在する容量303から分離する。
【0034】
図4は、
図1のエンジンの正面図であり、
図3の位置と比較してフライホイール107が僅かに反時計回りに回転した後の、吸入ストローク及び圧縮ストロークを明示する。これによって容量301は増加し、同時に容量302は減少して、容量302の内側のガスを圧縮する。
【0035】
本発明の別の実施形態によると、
図5Aは、フライホイール501及びピストン502を備えた、別のErezエンジン500を示す。
図5Bは、
図5AにおけるセクションAの拡大図であり、ピストン502とバリア要素504との間の微小空間503を示し、それはエンジン動作中に密閉をもたらす。密閉に使用されるこのような微小空間を、エンジンの可動構成要素のいくつかの間、または全ての間に設けることができる。
図5A及び
図5Bは、空気トラッピング用の溝503を示し、それは乱流の密閉をもたらすことによって、ピストン502とバリア要素504との間の密閉を促進させる。空隙505に位置された、溝503とバリア要素504との間でトラッピングされたガスも、溝503のために渦流で流れる。このような乱流の密閉機構を、密閉を向上させるために、エンジンの他の部品間にも設けることができる。溝503がなくても、空隙505は、ピストン502とバリア要素504との間に微小空間をもたらし、それは空気/混合気を密閉し、その結果エンジンにおけるエネルギー損失を軽減させる。
【0036】
図6Aは、
図1のErezエンジン100の正面図であり、ここでErezエンジン100は、吸入ストローク及び圧縮ストロークを終了したばかりである。
図6Bは、
図6AにおけるセクションBの拡大図であり、ピストン108が、圧縮空気/混合気を2つの異なる容量601及び106に分離した瞬間を示す。ここで圧縮ガス(混合気または空気など)の一部601は、燃焼チャンバ106を過ぎて位置される。これは、
図4における容量302で圧縮されて示された全てのガスが、2つの別個の容量601及び106に分割されたことを意味する。圧縮中のバリア要素109の箇所、外形、及び位置は、圧縮ストローク中にチャンバ106を過ぎたガスの流れをもたらし、それによってチャンバ106における圧縮ガスに加えて、チャンバ106を過ぎた圧縮ガスの一部601をもたらし、その後圧縮ストロークはピストン108によって遮断され、チャンバ106の内側に保たれて、点火の正確なタイミングを待ち、それは、バリア要素と、フライホイール及びピストンとの間の接触を必要とせずに、バリア要素を動かす機会を提供することに、留意されたい。圧縮空気の一部601は、
図7及び
図8Bに関して以下でさらに詳細に説明するように、燃焼ガスの流れを促進するために利用される。
図6A及び
図6Bでさらに示されるように、バリア要素110は、容量602からのガスの通過を遮断する位置にある。
【0037】
先行技術に対する本発明の大きな利点は、圧搾空気の一部と接触するバリア要素が、燃焼チャンバの内側における燃焼のために必要とする圧搾空気を、ピストンが遮断している間に、密閉する必要なく動くよう適応されるという事実である。バリア要素は、「ゼネバ歯車」などの機械的接続によって制御され、それらの動きは、直接的な接続またはカム機能を伴わずに、フライホイール及び/またはピストンの関連によって制御される。バリア要素と、フライホイール及び/またはピストンとの間の摩擦を避けることによる、エンジン効率を向上させる大きい利点に加えて、この事実は、バリア要素の動作に依存しないか、または制限されず、燃焼チャンバに関連したピストンの箇所のみで燃焼のタイミングも提供する。それは、圧縮ガスが燃焼チャンバにあり、かつピストンによって遮断されたときに生じる。
【0038】
説明において「ガス」が参照される。このフレーズは、空気、または燃料とガスとの混合気など、内燃エンジンに使用するのに好適な、任意のタイプのガスを指す。このようなガスは、圧縮状態とすることもできる。「ガス」は、内燃エンジンに使用するのに好適な、他の流体の形態と取り換えることもできる。
【0039】
図7は、点火中の、
図1におけるErezエンジン100を概略で示し、ここでプラグ117は燃焼チャンバ106内でスパークを生成し、それによって包含された圧縮ガスに点火する。その一方で要素109は、部分601が、空洞103の表面と、要素109の表面と、ピストン108と、の間に位置されるような位置付けにある。
図7には、吸入ポート116を介してエンジンに入ったガスが存在し、かつフライホイール107、ならびにバリア要素110及び111によって制限された容量602と、排出ポート115を介してエンジンから流出する排出ガスが存在する容量303と、も示めされる。点火のタイミングは重要であり、それは
図8Bに示されるように、フライホイール107が、チャンバ106からの排出ガスを、フライホイール107と、ピストン108と、要素110と、によって制限された容量の中に流入させる位置にあるときに、生じさせるべきである。
【0040】
図8Aは、バリア要素109が僅かに時計回りに回転し、かつフライホイール107が僅かに反時計回りに回転した、
図7に示された点火の後の、Erezエンジン100を示す。
図8Bは、
図8AにおけるセクションCの拡大図であり、要素109及びフライホイール107の、この特定の位置において、点火後に、
図6B及び
図7に示されるように部分601に位置された圧縮ガス801が、排出ガス802に向けて流れることができることを示している。圧縮ガスを排出ガスに混入させることで、排出段階に大きい利点をもたらす。なぜなら、高圧の圧縮ガス801は排出ガス802を「押しやり」、Erezエンジン100の非常に効果的な浄化動作を提供し、先行技術に対して明白な利点をもたらすからである。
【0041】
燃焼チャンバを通る圧縮ガスは、別の圧縮ストロークにおいて再び方向付けられ、再使用することもできる。例えば圧縮ガスが、燃焼に利用することができる混合気である場合、それは有益である。本発明の他の実施形態によると、エンジンは、圧搾ガスのこの一部が流れ、吸入ポートを介して周辺容量に流入するよう適応されたガスと混合されるのに好適な、流れ経路をさらに備える。本発明の別の実施形態によると、エンジンは、圧搾ガスの一部を流れ経路の中に導くのに好適な、吸引手段をさらに備える。
【0042】
図7に示されるように、点火前の瞬間、及び
図8Bに示されるように燃焼後に、フライホイール107は押される。燃焼前のピストン108を位置付けるため、かつフライホイール107の形状に対するピストン108の形状のために、フライホイール107は所望の方向に押される。点火のタイミングは重要である。点火のタイミングは、ピストン108の位置付けが、ガスの膨張ならびにフライホイール107及びピストン108の外形によって、フライホイール107を反時計回りに押すときと、ピストン108の位置付けが、排出ガスをチャンバ106から、フライホイール107、ピストン108、及び要素110によって制限された容量に流入できるときと、に生じるべきである。
【0043】
点火後、点火によって作り出された新たな排出ガス803は右に流れ、フライホイール107、ピストン108、バリア要素110、及びチャンバ106によって制限される。
図9は、点火によってフライホイール107が反時計回りの回転を開始した後、バリア要素109が、空洞102の円形の周辺と整合するよう、同時に位置付けられながら、新たな排出ガスが、バリア要素109及び110と、燃焼チャンバ106と、フライホイール107と、ピストン108と、によって画定された消費容量を介して流れることができることを示す図である。この消費容量は、回転しながら新たな排出ガス803を包含する容量を消費する。この状態において、排出ポート115を露出させるため、及び前のサイクルからの排出ガス802が、ポート115を介してErezエンジン100を離れるのを可能にするために、バリア要素111は僅かに時計回りに回転する。
【0044】
図1~
図9のフライホイール107は、単一のピストン108を備えるが、本発明の他の実施形態によるフライホイールは、ピストン108など2つ以上のピストンを備えることもでき、それによっていくつかの同じタイプの同時サイクルを可能にし、異なる形状及びサイズとすることもできる。バリア要素109~111は、流体の流れを制限または可能にするのに好適な、異なる形状及びサイズの他の要素と取り換えることもできる。本発明によるエンジンは、追加の燃焼チャンバを備えることもでき、それらのチャンバの箇所は、エンジンにおける異なるガス間の、他の圧縮/圧力/容量の関係を可能にするために、変更できることにも留意されたい。当然ながら、追加の排出ポート及び吸入ポートを、所与の追加の点火チャンバに設けることができ、それらの箇所を、エンジンにおけるガスの、圧縮/圧力/容量の間の関係を制御するための別の手段として変更することもできる。
【0045】
図10は、Erezエンジン1000が、エンジンブロック1001、2つのピストン1003及び1004を備えた回転フライホイール1002、8つのバリア要素1005~1012、ならびに4つの燃焼チャンバ1013~1016を備えた、本発明の別の実施形態によるErezエンジンの正面図である。Erezエンジン1000は、吸入ポート1017及び排出ポート1018などの、吸入ポート及び排出ポートも備える。このエンジンは、全てのバリア要素1005~1012の背後に、ポート1017及び1018などの吸入ポート及び排出ポートを備えることに留意されたい。他のポートはこの図面には示されない。なぜなら、それらはバリア要素1005~1012の背後に位置され、
図10に示される特定の位置付けにおけるそれらのポートを遮断するからである。フライホイールの動きが反時計回りであるとき、第1のポートは吸入ポートで、第2のポートは排出ポートである。
【0046】
図10に示される位置付けにおいて、ピストン1003(圧縮パワーピストン)は、容量1019の圧縮ストローク及び容量1021のパワーストロークの役割りを担い、一方でピストン1004(吸入-排出ピストン)は、排出ポート1018を介した容量1020の排出ストロークの役割り、及びポート1017を介した容量1022の吸入ストロークの役割りを同時に担う。本実施形態によると、1つのピストンが常に、圧縮及び燃焼ストロークの役割りを担い、他は排出及び吸入ストロークの役割りを担う。
【0047】
図11Aは、番号1101a-b及び1102a-bでそれぞれ示される排出ポート及び吸入ポートが、フライホイール1103に位置される以外は
図10のエンジン1000と類似の、本発明の別を実施形態であり、別のErezエンジン1100の斜視図を示す。
図11Bは、
図11AにおけるセクションDの拡大図であり、吸入ガスがポート1101aを介してフライホイール1103に入り、次にポート1101bを介してエンジンの内部容量に入る。排出ガスは、ポート1102bを介してフライホイール1103に入り、次にポート1102aを介してエンジンを離れることができる。
【0048】
図12は、本発明の別の実施形態によるErezエンジン1200の正面図であり、ここで、エンジン1200と
図1のエンジン100との間の違いは、(
図2~
図11Bの実施形態における他のバリア要素とも類似する)
図1のバリア要素を、要素1201~1206などの直線のバリア要素と取り換えることができることである。エンジン100とエンジン1200との間の別の違いは、燃焼チャンバの数である。このような直線のバリア要素は、流体が周辺容量を通過可能にするか、または遮断するために、上下に動かすのに好適である。当然ながら、当業者には容易に推論できるように、図面に提示されたバリア要素を取り換えることもできる、他の構造が存在する。本発明は、バリア要素における任意の特定の形状またはタイプに限定されない。
【0049】
本発明は、バリア要素の特定の形状に限定されないが、
図1~
図11Bのバリア要素は、それらの形状が、比較的大きい荷重に耐えるのを可能にすること、及び回転運動を提供すること、ならびにその結果、バリア要素は摩耗及び破壊を受けにくいこと、という先行技術に対して大きい利点を提供することに留意されたい。
【0050】
本発明の実施形態を例示として説明してきたが、本発明は、特許請求の範囲を離れることなく、多くの変形、変更、及び適応で実施され得ることに、理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2021-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃ロータリエンジンであって、
少なくとも一つの燃焼チャンバと、
フライホイールハウジングに位置されたフライホイールと、
2つ以上のバリア要素と、
前記フライホイールに設けられた少なくとも1つのピストンであって、前記フライホイールハウジングの内径よりも僅かに小さい最大径を有し、それによって前記ピストン、前記フライホイールハウジング、及び前記バリア要素の間で摩擦のない前記ピストンの動きを可能にする、少なくとも1つのピストンと、
前記フライホイールの外面、前記フライホイールのハウジング、及び2つ以上の前記バリア要素の間における、周辺容量と、
を備え、
前記周辺容量のいくつかの部分は、1つまたは複数のピストンによっても区切られ、前記バリア要素は、前記周辺容量中への空気の流れを基本的に遮断するために、前記周辺容量内に位置付けられるよう、及び前記周辺容量の中への空気の流れを少なくとも部分的に遮断しないために位置付けられ、それによって前記空気の流れが生じるのを可能にするよう、ならびに前記ピストンが周辺領域間で動くのを促進するために、完全に開放するために位置付けられるよう、適応され、前記バリア要素の動きのタイミングは、前記フライホイールの回転、及び/または、前記ピストンの位置に依存し、
圧搾空気の一部と接触した前記バリア要素は、密閉の必要なく動き、一方で前記ピストンは、前記燃焼チャンバの内側での燃焼に必要な圧搾空気を遮断するよう適応され、前記ピストンは、圧搾空気を2つの部分に区分けし、その一方は前記燃焼チャンバに閉じ込められ、その他方は前記ピストンの前と前記バリア要素との間に位置される、エンジン。
【請求項2】
空気トラッピング用の溝であって、前記ピストンに位置され、ガスをトラッピングして、前記ピストン及び前記フライホイールハウジングと、前記バリアとの間の空隙に位置されたガスの乱流を作り出すことによって、前記ピストン及び前記フライホイールハウジングと、前記バリアとの間の前記密閉を促進するよう適応された、空気トラッピング用の溝をさらに備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
空気の代わりに可燃材料または混合気を圧縮するよう適応された、請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
前記バリア要素が閉位置にある間、混合気を包含するよう適応され、前記ピストンの前における圧搾混合気の一部が、入口を介して吸入システムに流入するのを可能にするのに好適である、請求項3に記載のエンジン。
【請求項5】
前記ピストンは前記フライホイールと一体化されるか、または前記フライホイールから分離される、請求項1に記載のエンジン。
【請求項6】
前記バリア要素は直線的に可動である、請求項1に記載のエンジン。
【請求項7】
前記バリア要素は回転的に可動である、請求項1に記載のエンジン。
【請求項8】
燃焼ガスの排出を補助するのに好適な、圧搾ガスを包含するよう適応されたポートを備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項9】
前記ポートは前記フライホイールに設けられる、請求項8に記載のエンジン。
【請求項10】
空気/混合気が、前記エンジンの前記周辺容量の中に入るのを可能にするよう適応されたポートを備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項11】
前記ポートは前記フライホイールに設けられる、請求項10に記載のエンジン。
【請求項12】
接触せずに密閉するために、2つ以上の前記エンジンの部品間に微小空間をさらに備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項13】
前記バリア要素の動きのタイミングを制御するために好適な、「ゼネバ歯車」機構を任意選択でさらに備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項14】
回転バリア要素をさらに備え、その軸に対して前記エンジンの構成要素は中央に置かれ、軸の周りを回転する、請求項1に記載のエンジン。
【請求項15】
密閉のために、前記中央構成要素間に微小空間をさらに備える、請求項14に記載のエンジン。
【請求項16】
空気トラッピング用の溝であって、前記バリア要素に位置され、ガスをトラッピングして、前記バリア要素、前記フライホイール、及び、前記バリアの間の空隙に位置されたガスの乱流を作り出すことによって、前記バリア要素及び前記フライホイールの間の前記密閉を促進するよう適応された、空気トラッピング用の溝をさらに備える、請求項1に記載のエンジン。
【国際調査報告】