(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(54)【発明の名称】放射線不透過性を向上させたステント編組パターン
(51)【国際特許分類】
A61F 2/90 20130101AFI20221017BHJP
【FI】
A61F2/90
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507805
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(85)【翻訳文提出日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 US2020045079
(87)【国際公開番号】W WO2021030121
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】521535973
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Limited
【住所又は居所原語表記】Anngrove, IDA Business & Technology Park, Carrigtwohill, County Cork, T45HX08 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ジェフリー
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA44
4C267AA47
4C267BB12
4C267BB26
4C267BB40
4C267BB63
4C267CC08
4C267GG21
4C267GG23
4C267GG34
(57)【要約】
移植可能な金属編組は、第1材料のフィラメントのグループと、第1材料とは異なる第2材料のフィラメントのグループと、第1材料及び第2材料とは異なる第3材料のフィラメントのグループと、から形作られる。フィラメントは、編組機によってともに編組され、かつ、編組が始まる前に編組機上に開始フィラメント配列で配列され、第1材料は放射線不透過性材料であり、第2材料は支持材料であり、かつ、第3材料は、第1材料及び第2材料を備えるDFTである。開始フィラメント配列の及び編組のフィラメントの様々な配列によって、編組の画像で観察されることができる様々なレベルの細部をもたらし、フィラメントの特定の配列が、編組の他の機械的特性に影響を与えることなく放射線不透過性を向上させる。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料から形成された第1フィラメントの複数のグループと、
前記第1材料とは異なる第2材料から形成された第2フィラメントの複数のグループと、
前記第1フィラメントが、前記第1材料及び前記第2材料とは異なる第3材料から形成される、第3フィラメントの複数のグループと、を備え、
第1フィラメント、第2フィラメント及び第3フィラメントのそれぞれの前記グループが開始フィラメント配列でともに編組され、
第2フィラメントの各グループは、前記第1フィラメントのグループのうちの1つに直接隣接して位置決めされ、
第3フィラメントの各グループは、前記第2フィラメントのグループのうちの1つに直接隣接して位置決めされ、
第1フィラメントの各グループは、それに直接隣接する前記第2フィラメントのグループのうちの1つを有し、
第2フィラメントの各グループは、一方の側で前記第1フィラメントのグループのうちの1つに直接隣接し、かつ、もう一方の側で前記第3フィラメントのグループのうちの1つに直接隣接する、移植可能な編組。
【請求項2】
前記第2材料は、モノフィラメント及び延伸充填チューブ(DFT)ワイヤのうちの一方であり、前記DFTワイヤは、コアと、前記コアの周りのシースと、を備える、請求項1に記載の編組。
【請求項3】
前記第3材料は、前記モノフィラメント及び前記DFTワイヤのうちの他方である、請求項2に記載の編組。
【請求項4】
前記第1材料は放射線不透過性材料であり、前記モノフィラメントは、前記放射線不透過性材料の引張強度よりも大きい引張強度を有する支持材料である、請求項3に記載の編組。
【請求項5】
前記DFTワイヤは、放射線不透過性材料と、前記放射線不透過性材料の引張強度より大きい引張強度を有する支持材料と、を備える、請求項3に記載の編組。
【請求項6】
前記第2材料は前記モノフィラメントであり、前記第3材料は前記DFTワイヤである、請求項3に記載の編組。
【請求項7】
前記DFTワイヤのコアは前記放射線不透過性材料から形成され、前記DFTワイヤのシースは前記支持材料から形成される、請求項6に記載の編組。
【請求項8】
前記放射線不透過性材料は白金であり、前記支持材料はコバルトクロム合金である、請求項7に記載の編組。
【請求項9】
前記コバルトクロム合金は、1058CoCr合金及び35N LT(登録商標)超合金のうちの一方である、請求項8に記載の編組。
【請求項9】
前記第2材料は前記モノフィラメントであり、前記第3材料は前記DFTワイヤである、請求項3に記載の編組。
【請求項10】
第1フィラメントの各グループは前記第1材料の2つのフィラメントから構成され、第2フィラメントの各グループは前記第2材料の2つのフィラメントから構成され、第3フィラメントの各グループは前記第3材料の2つのフィラメントから構成される、請求項1に記載の編組。
【請求項11】
前記第1材料が白金であり、前記第2材料がコバルトクロム合金であり、前記第3材料が、白金コアと、コバルトクロム合金から形成されたシースと、を備えるDFTワイヤである、請求項1に記載の編組。
【請求項12】
前記編組が管状である、請求項1~11のいずれか1項に記載の編組。
【請求項13】
人体内への移植のための金属編組であって、前記編組は、
第1材料から形成された第1フィラメントの複数のグループと、
前記第1材料とは異なる第2材料から形成された第2フィラメントの複数のグループと、を備え、
前記第1材料及び前記第2材料のうちの一方が延伸充填チューブ(DFT)ワイヤであり、
前記第1フィラメントのグループ及び前記第2フィラメントのグループは、編組機によってともに編組され、かつ、編組が始まる前に前記編組機上に開始フィラメント配列で配列され、
前記開始フィラメント配列では、第2フィラメントの各グループは、前記第1フィラメントのグループのうちの1つに直接隣接して位置決めされる、編組。
【請求項14】
前記第1材料が放射線不透過性材料であり、前記第2材料が前記DFTワイヤである、請求項13に記載の編組。
【請求項15】
前記DFTワイヤは、コアと、前記コアを取り囲むシースと、を備え、前記シース及び前記コアのうちの一方が放射線不透過性材料から形成され、前記シース及び前記コアのうちの他方が、前記放射線不透過性材料の引張強度よりも高い引張強度を有する支持材料から形成される、請求項13に記載の編組。
【請求項16】
前記DFTワイヤは、白金コアと、前記白金コアを取り囲むコバルトクロム合金シースと、を備える、請求項13に記載の編組。
【請求項17】
コバルトクロム合金は合金L605である、請求項16に記載の編組。
【請求項18】
白金コアは、前記DFTワイヤの総断面積の20%~30%の断面積を有する、請求項16に記載の編組。
【請求項19】
前記編組を形成するすべてのフィラメントは前記第1材料又は前記第2材料から形成される、請求項13に記載の編組。
【請求項20】
前記編組が管状である、請求項13~19のいずれか1項に記載の編組。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、概して、体内移植可能な医療機器に関し、より具体的には、放射線不透過性を向上させた、かつ、有益な機械的特性を有するステントに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] しばしばステントと呼ばれる自己拡張型医療用プロテーゼがよく知られていて市販されている。これらのタイプのデバイスは、種々の医療用途のために身体血管内で使用される。例としては、狭窄を治療するための血管内ステント、尿路、胆管、食道及び腎尿路の開口を維持するためのステント、並びに、塞栓を捕捉するための大静脈フィルタが含まれる。さらに、動脈瘤が発生している血管内のステントが現在よく知られていて広く適用されている。特に微細なメッシュのステントは、通常、例えばフローダイバータとして使用される編組ステントとして製造される。
【0003】
[0003] 自己拡張型ステントは、螺旋状に巻かれて編組構成に織り合わされた多数の弾性フィラメントから形成される。これらのステントは、外力を受けていないとき、その無負荷状態又は拡張状態で実質的に管状の形態をとる。内向きの半径方向の力を受けると、これらのステントは、半径が減少し、長さが延びた有負荷状態又は圧縮状態にされる。ステントをその圧縮状態に保持する送達デバイスが使用されて、体内の血管を通じて治療部位にステントを送達する。圧縮されたステントの可撓性の性質及び減少した半径により、相対的に小さく湾曲した血管を通じてステントが送達されることができる。ステントが治療部位に位置決めされた後、送達デバイスが作動されてステントを解放し、それによって、ステントが身体血管内で自己拡張することを可能にする。その後、送達デバイスはステントから取り外されて患者から取り外される。ステントは治療部位で血管内に留まる。
【0004】
[0004] しかしながら、ステントの配置中及びその後の患者の検査中には重大な問題が残る:そのサイズが小さいので、これらのステントをX線によって見つけることが極めて困難である。イメージングに現れるステントの唯一の部分は、十分な放射線不透過性を有するものであり、かつ、それらの放射線不透過性部分の質量及び厚さは、治療される血管の直径とともに減少する。ステントの正確な配置はその効果的な性能にとって重要である。したがって、ステントが血管又は他の体腔内に配置されている際に、ステントを視覚的に知覚する必要がある。さらに、以前に展開されたステントを視覚的に見つけて検査することが有用である。通常、ステントの放射線不透過性を向上させることは、強度、延性、疲労破壊耐性、サイズなどの他の所望の機械的特性を犠牲にすることによって達成される。
【0005】
[0005] 本発明の目的は、ステントの好ましい機械的特性を実質的に低下させることなく、十分に放射線不透過性を向上させたステントを提供することである。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 本発明は、人体内に移植するための管状金属編組に関する。編組は、第1材料の第1フィラメントの複数のグループと、第1材料とは異なる第2材料の第2フィラメントの複数のグループと、第1材料及び第2材料とは異なる第3材料の第3フィラメントの複数のグループと、を含む。第1フィラメント、第2フィラメント及び第3フィラメントは、編組機によってともに編組され、かつ、編組が始まる前に、編組機上に開始フィラメント配列で配列される。開始フィラメント配列では、第2フィラメントの各グループが第1フィラメントのグループのうちの1つに直接隣接して位置決めされ、第3フィラメントの各グループが第2フィラメントのグループのうちの1つに直接隣接して位置決めされ、第1フィラメントの各グループの両側が、それに直接隣接する第2フィラメントのグループのうちの1つを有し、及び、第2フィラメントの各グループが、一方の側で第1フィラメントのグループのうちの1つに直接隣接し、かつ、他方の側で第3フィラメントのグループのうちの1つに直接隣接するように、第1フィラメント、第2フィラメント及び第3フィラメントが位置決めされる。
【0007】
[0007] 第2材料は、コアと、コアの周りのシースと、を備えるモノフィラメント又は延伸充填チューブ(DFT)ワイヤであってもよい。第3材料は、モノフィラメント及びDFTワイヤのうちの他方の材料であってもよい。一実施形態では、第2材料はモノフィラメントであり、かつ、第3材料はDFTワイヤである。第1材料は放射線不透過性材料であってもよい。モノフィラメントは、放射線不透過性材料の引張強度よりも大きい引張強度を有する支持材料であってもよい。DFTワイヤは、放射線不透過性材料と、放射線不透過性材料の引張強度よりも大きい引張強度を有する支持材料と、を含んでもよい。DFTワイヤコアは放射線不透過性材料から形成されてもよく、かつ、DFTワイヤシースは支持材料から形成されてもよい。放射線不透過性材料は白金であってもよく、かつ、支持材料はコバルトクロム合金であってもよい。コバルトクロム合金は、1058CoCr合金及び35N LT(登録商標)超合金のうちの1つであってもよい。第1フィラメントの各グループは第1材料の2つのフィラメントを含んでもよく、第2フィラメントの各グループは第2材料の2つのフィラメントを含んでもよく、かつ、第3フィラメントの各グループは第3材料の2つのフィラメントを含んでもよい。編組を形成するすべてのフィラメントは、第1材料、第2材料及び第3材料のうちの1つから形成される。例示的な一実施形態では、第1材料は白金であり、第2材料はコバルトクロム合金のモノフィラメントであり、かつ、第3材料は、白金コアと、コバルトクロム合金から形成されたシースと、を備えるDFTワイヤである。
【0008】
[0008] 本発明の別の実施形態は、人体内に移植するための管状金属編組に関する。編組は、第1材料の第1フィラメントの複数のグループと、第1材料とは異なる第2材料の第2フィラメントの複数のグループと、を含む。第1材料及び第2材料のうちの1つは延伸充填チューブ(DFT)ワイヤである。第1フィラメント及び第2フィラメントは、編組機によってともに編組され、かつ、編組が始まる前に、編組機上に開始フィラメント配列で配列される。開始フィラメント配列では、第2フィラメントの各グループは、第1フィラメントのグループのうちの1つに直接隣接して位置決めされる。第1材料は放射線不透過性材料であってもよく、かつ、第2材料はDFTワイヤであってもよい。DFTワイヤは、コアと、コアを取り囲むシースと、を含んでもよい。シース及びコアの一方が放射線不透過性材料から形成されてもよく、かつ、シース及びコアの他方が、放射線不透過性材料よりも高い引張強度を有する支持材料から形成されてもよい。DFTワイヤは、白金コアと、白金コアを取り囲むシースと、を含んでもよく、シースはコバルトクロム合金を備える。コバルトクロム合金は合金L605であってもよい。白金コアの断面積は、DFTワイヤの総断面積の20%~30%であってもよい。一実施形態では、編組を形成するすべてのフィラメントが第1材料又は第2材料のいずれかから形成される。
【0009】
[0009] 開示された実施形態の他の及びさらなる態様及び特徴は、添付の図面を考慮して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0010】
[0010] 実施形態の前述の及び他の態様は、添付の図面を参照してさらに詳細に説明され、同様の参照符号が同様の要素を示し、かつ、同様の要素についての説明は、関連する場合にすべての説明された実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】[0011] 編組内のフィラメントの様々な配列に従って形成された2つのサイズの管状金属編組の画像である。
【
図1B】[0012]
図1Aに示す管状金属編組を編組が形成し始める前に、編組機の正面から取られたフィラメントの配列の断面図である。
【
図2A】[0011] 編組内のフィラメントの様々な配列に従って形成された2つのサイズの管状金属編組の画像である。
【
図2B】[0012]
図2Aに示す管状金属編組を編組が形成し始める前に、編組機の正面から取られたフィラメントの配列の断面図である。
【
図3A】[0011] 編組内のフィラメントの様々な配列に従って形成された2つのサイズの管状金属編組の画像である。
【
図3B】[0012]
図3Aに示す管状金属編組を編組が形成し始める前に、編組機の正面から取られたフィラメントの配列の断面図である。
【
図4A】[0011] 編組内のフィラメントの様々な配列に従って形成された2つのサイズの管状金属編組の画像である。
【
図4B】[0012]
図4Aに示す管状金属編組を編組が形成し始める前に、編組機の正面から取られたフィラメントの配列の断面図である。
【
図5】[0013] 編組が始まる前に編組機の正面から取られたフィラメントの配列の代替の実施形態の断面図である。
【
図6】[0013] 編組が始まる前に編組機の正面から取られたフィラメントの配列の代替の実施形態の断面図である。
【
図7】[0013] 編組が始まる前に編組機の正面から取られたフィラメントの配列の代替の実施形態の断面図である。
【
図8】[0014] 例示的な実施形態の管状金属編組の半径方向圧力性能の比較を示すグラフである。
【
図9】[0014] 例示的な実施形態の管状金属編組の半径方向圧力性能の比較を示すグラフである。
【
図10A】[0015] 従来のステントが体腔内に展開されている画像である。
【
図10B】[0015] 本明細書の実施形態に係るステントが体腔内に展開されている画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0016] 本発明は、概して、ステントの機械的特性に悪影響を与えることなくステントの放射線不透過性を向上させる固有の編組パターンを有する、移植可能で半径方向に拡張可能なステントに関する。ステントは、動脈瘤の治療に使用されるフローダイバーティングステントであってもよく、又は、狭窄の治療、開口の維持などの他の腔内用途に使用されてもよい。固有の編組パターンにより、同一又は類似の材料から形成された既存のステントと比較して、管状ステントの機械的特性を維持又は改善しながら、放射線不透過性を向上させる。したがって、開示されたデバイスの固有の放射線不透過性パターンは、長さ、圧縮、直径の縮小などを医師がより容易に決定することができるので、医師に追加の情報を提供する。
【0013】
[0017] 同じ材料、サイズ、フィラメントの量及びフィラメントのサイズの編組ステントが、編組機上でのワイヤパターン配置に応じて、X線下で様々なパターンを作成する。特定の編組パターンは、視認性の高いクロスハッチングパターンを維持しながら、優れたエッジ鮮明度を実現する。白金及び延伸充填チューブ(DFT)放射線不透過性ワイヤを編組構成で固有に配置すると、血管造影下で明確なセグメント化パターンが作成されることがわかっている。白金ワイヤ、DFTワイヤ及び支持ワイヤの特定の交互パターンが、開口及び並置などの半径方向圧力又はステント性能特性を損なうことなく、放射線不透過性を向上させたハイブリッド編組を作成する。
【0014】
[0018]
図1A~
図7に示すステントはすべて、同じ量、サイズ及びタイプのフィラメントから形成されているが、様々なフィラメントの配列を有している。ステントは、管状の本体を編組する技術において知られた任意の技術に従って、フィラメントを編組することによって形成された実質的に管状の本体である。
図1A、
図2A、
図3A及び
図4Aに見られるように、編組のワイヤの配列は、小径ステント(
図1A、
図2A、
図3A及び
図4Aの上部に示されている)及び大径ステント(
図1A、
図2A、
図3A及び
図4Aの下部に示されている)の両方において、イメージングで見ることができる細部のレベルに実質的な影響を有している。
図1B、
図2B、
図3B、
図4B及び
図5~
図7は各々、編組が始まる前の、編組機の正面から見たときのフィラメントの配列の断面図を示している。結果として得られた管状金属編組の特性は、
図1B、
図2B、
図3B、
図4B及び
図5~
図7に示す開始フィラメント配列に大きく依存している。
【0015】
[0019]
図1A及び
図1Bに示すステントは、ともに編組された複数のフィラメントから形成された従来のステント100である。複数のフィラメントは第1材料102及び第2材料104を含む。
図1Bの断面図に示すように、開始フィラメント配列において、第2材料104のフィラメントは、第1材料102のフィラメントの両側で第1材料102のフィラメントに直接隣接している。
図1Aに示すように、クロスハッチング及びエッジパターンはイメージングに現れない。
図1Aに示すステント100のエッジは実線で現れる。対照的に、クロスハッチング及びエッジパターンは、
図2A、
図3A及び
図4Aに示すステント画像でよりよく見える。特に、
図4Aを参照すると、ステントのエッジは、実線ではなく、明暗の交互領域として現れる。
【0016】
[0020]
図2A~
図4Bのステントは、
図1A及び
図1Bに示すステント100と同じ材料から形成される。すなわち、
図2A~
図4Bのステントは、第1材料102のフィラメント及び第2材料104のフィラメントを含み、これらは両方とも、
図1A及び
図1Bのステント100で使用された第1材料102及び第2材料104と同じである。しかしながら、
図2A~
図4Bのステントは、第1材料102及び第2材料104の組み合わせである第3材料106から形成されたフィラメントをさらに含む。第3材料106は、第1材料102又は第2材料104の他方から形成されたシースで覆われた、第1材料102又は第2材料104から形成されたコアを有する延伸充填チューブ(DFT)ワイヤである。
【0017】
[0021] 例示的な一実施形態では、第1材料102は放射線不透過性材料であり、第2材料104は、放射線不透過性材料よりも高い引張強度を有する支持材料から形成されたモノフィラメントであり、かつ、第3材料106は、放射線不透過性材料から形成されたコアと、支持材料から形成されたシースと、を有するDFTワイヤである。代替として、DFTワイヤは、支持材料から形成されたコアと、放射線不透過性材料から形成されたシースと、を有してもよい。放射線不透過性材料は、白金、金、パラジウム、タングステンなどであってもよく、又は、これらの材料の2以上から形成された合金であってもよい。支持材料は、放射線不透過性材料よりも高い引張強度を有しており、かつ、コバルトクロム(CoCr)合金などであってもよい。支持材料に使用されることができる他の材料には、(これらに限定されないが)L605、モリブデン、チタン、又は、白金のような放射線不透過性材料の相対的に高い引張強度の合金が含まれる。DFTワイヤの放射線不透過性材料及び支持材料は、第1材料及び第2材料のものと同じであってもよく、又は、異なる放射線不透過性材料及び支持材料であってもよい。当業者であれば、編組フィラメントが、生体適合性を有し、かつ、編組に加工されることができる任意の適切な材料から形成されることができることを容易に理解するであろう。
【0018】
[0022]
図2Aに示すステント200は、
図2Bに示すような開始フィラメント配列を有する。編組が始まる前に、フィラメントは、第3材料106の単一のフィラメントが第1材料102の単一のフィラメントのいずれかの側にあるように編組機上に配列される。第3材料106のフィラメントの反対側には第2材料104のフィラメントが直接隣接している。第2材料104、第3材料106、第1材料102、第3材料106及び第2材料104のパターンがステント200周りで繰り返される。これは「ハイブリッド8x」構成と呼ばれる。
図2Aに示すように、ハイブリッド8x編組パターンでは、
図1Aに示すステントと比較して、編組の細部の視認性が向上する。すなわち、クロスハッチングパターンは、
図1Aに示す従来のステント100よりもハイブリッド8x編組パターンを有するステント200においてよりよく見える。
【0019】
[0023] 別の実施形態では、ステント300は、編組が始まる前に、
図3Bに示すパターンでフィラメントが配列された、ともに編組されたフィラメントを含む。開始フィラメント配列は、第1材料102のフィラメントのグループと、第1材料102のフィラメントのグループの各側に直接隣接して位置決めされた第3材料106のフィラメントのグループと、を有する。第3材料106のフィラメントのグループの他方の側には第2材料104のフィラメントのグループがある。この例では、フィラメントの各グループに2つのフィラメントがある。しかしながら、各グループに3以上のフィラメントが含まれてもよいことが容易に理解されるべきである。第2材料104の2つのフィラメント、第3材料106の2つのフィラメント、第1材料102の2つのフィラメント、第3材料106の2つのフィラメント及び第2材料104の2つのフィラメントのパターンがステント300周りで繰り返される。このパターンは「ハイブリッドダブル4x」構成と呼ばれる。
図3Aに示すように、ハイブリッドダブル4xパターンでは、
図1A及び
図2Aのステントと比較して、クロスハッチパターンの視認性が向上し、かつ、エッジ鮮明度がわずかに向上する。
【0020】
[0024] さらに別の実施形態では、ステント400は、編組が始まる前に、
図4Bに示すパターンでフィラメントが配列された、ともに編組されたフィラメントを含む。開始フィラメント配列は、第3材料106及び第2材料104が入れ替えられていることを除いて、
図3Bに示すものと同様である。すなわち、第1材料102のフィラメントのグループの両側が、第2材料104のフィラメントのグループに直接隣接して配置される。第3材料106のフィラメントのグループは、第2材料104のフィラメントのグループの他方の側に直接隣接して配置される。この例では、フィラメントの各グループに2つのフィラメントがある。第3材料106の2つのフィラメント、第2材料104の2つのフィラメント、第1材料102の2つのフィラメント、第2材料104の2つのフィラメント及び第3材料106の2つのフィラメントのパターンがステント400周りで繰り返される。このパターンは「ハイブリッドダブル8x」構成と呼ばれる。
図4Aに示すように、他の実施形態と比較して、ハイブリッドダブル8xパターンでは、フィラメントのクロスハッチパターンの視認性が向上し、かつ、ステント400の側面に沿ったエッジ鮮明度が向上する。すなわち、ステント400のエッジは、実線ではなく、明暗の交互領域として現れる。
【0021】
[0025] 開始フィラメント配列の別の例を
図5に示す。この例では、第2材料104の2つのフィラメントが第1材料102の単一のフィラメントの一方の側に直接隣接し、第3材料106の2つのフィラメントが第1材料102の単一のフィラメントの他方の側に直接隣接する。第2材料104の4つのフィラメント、第1材料102の単一のフィラメント、第3材料106の4つのフィラメント及び第1材料102の単一のフィラメントのこのパターンがステント周りで繰り返される。このパターンは「ハイブリッド4x」構成と呼ばれる。ハイブリッド4x編組パターンでは、放射線不透過性が向上したステントをもたらし得るが、他の編組構成と比較して、編組の開口及び並置が急激であることがわかった。
【0022】
[0026]
図6に示す、ステントの開始フィラメント配列のさらに別の例では、第1材料102の単一のフィラメントが、第2材料104の単一のフィラメントによって両側が取り囲まれる。第2材料104の単一のフィラメントの他方の側は、第3材料106の単一のフィラメントに直接隣接している。第3材料106の単一のフィラメント、第2材料104の単一のフィラメント、第1材料102の単一のフィラメント、第2材料104の単一のフィラメント及び第3材料106の単一のフィラメントのこのパターンがステント周りで繰り返される。このパターンは「ハイブリッド16x」構成と呼ばれる。
【0023】
[0027]
図1A~
図6に示すすべてのステントが、同じ材料から形成され、かつ、同じ数のフィラメントを有することは注目に値する。一例では、ステントの材料は白金及びコバルトクロム合金である。
図2A~
図6に示す例は、白金及びコバルトクロム合金から形成されたDFTワイヤをさらに含む。
図2A~
図6のステントを形成するすべてのフィラメントは第1材料、第2材料又は第3材料から形成される。
図1A~
図6に示す実施形態の各々は40本のフィラメントを含むが、当業者であれば、任意の数のフィラメントが使用されることができることを容易に理解するであろう。さらに、当業者であれば、白金及びコバルトクロム合金以外の他の材料が編組ステントのフィラメントに使用されることができることを理解するであろう。ステントの製造に使用され得るコバルトクロム合金の例には、1058CoCr合金、合金L605、35N LT(登録商標)超合金などが含まれる。
【0024】
[0028] 第3材料106(DFTワイヤ)の最大引張強度によっては、第2材料104(モノフィラメント)が必要とされない場合がある。例えば、DFTワイヤが、DFTワイヤの総断面積の20%~30%の断面積を有する白金コアと、合金L605の外部シースと、から形成されている場合、モノフィラメントは必要とされない。合金L605は、1058CoCr合金などの他の合金に比べて高い最大引張強度を有している。第1材料102及び第3材料106のみを含むステントの一例が
図7に示されている。
図7のステントを形成するすべてのフィラメントは第1材料102又は第3材料106から形成される。別の実施形態では、管状編組が、DFTワイヤの総断面積の28%である断面積を有する白金コアから形成されたDFTワイヤと、1058CoCr合金の外部シースと、を含む場合、ステントの強度を向上させ、かつ、十分な半径方向圧力を達成するため、第2材料104モノフィラメントが必要とされる。
【0025】
[0029] 上述したように、ステントの編組に使用されるフィラメントのパターンはステントの放射線不透過性に影響を及ぼす。編組パターンのいくつか(例えば、
図4Bに示すパターン)は、ステントの細部のより高精細な画像を提供する。しかしながら、編組パターンは、ステントの機械的特性にほとんど影響を与えないことが示されている。
図8及び
図9に示すように、編組パターンは、ステントの半径方向圧力の性能にほとんど影響を与えない。
図8は、上述した実施形態に係る編組パターンを有する2mm及び2.5mmの圧縮直径ステントの半径方向圧力を示している。
図8に示すように、これらのステントの半径方向圧力は、グラフの右側に示されている従来のステントの半径方向圧力と同等である。
【0026】
[0030] 同様に、
図9は、本明細書に記載の実施形態に係る編組パターンを有する3mm及び3.5mmの圧縮直径ステントの半径方向圧力を示している。
図9に示すように、これらのステントの半径方向圧力は、グラフの右側に示されている従来のステントの半径方向圧力と同等である。
【0027】
[0031]
図10Aは、
図1A及び
図1Bに示すステントなどの従来のステント1000の画像である。ステント1000のエッジ1002は、実線として現れ、医師が、フィラメントを見て、ステントが拡張されている又は圧縮されているかを視覚化することを困難にする。対照的に、
図10Bは、本明細書に記載の実施形態に係る編組パターンを有するステント1010の展開を示している。
図10Bのステントのエッジ1012は、暗領域と明領域とが交互に現れる。したがって、医師は、ステント1010のどの領域が圧縮され、かつ、どの領域が拡張されているかを見ることができる。圧縮領域1014は、より暗く、より短いセグメントとして現れる一方、拡張領域1016は、より明るく、より長いセグメントとして現れる。この視認性は、例えば、前向きの力が使用されて動脈瘤のネックの領域でステントを縦方向にコンパクトにし得る動脈瘤治療において重要である。本明細書に開示される編組パターンの放射線不透過性の向上により、医師は、血流を動脈瘤から効果的にそらすためにステントがコンパクトにされることを見ることができる。放射線不透過性の向上により、医師が、動脈瘤への入口に対する位置又は半径方向の向きのいずれかに関して、デバイスが適切に展開されているかどうかを確認することをさらに可能にする。
【0028】
[0032] 本明細書では、開示された発明の多くの態様の変形例を示す特定の実施形態が開示及び説明されているが、そうした開示は、説明及び例示のみを目的として提供される。したがって、特許請求の範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に対して様々な変更及び修正が行われ得る。例えば、実施形態に記載された構成要素のすべてが特定の実施形態に必要であるとは限らず、開示された発明は、記載された構成要素の任意の適切な組み合わせを含み得る。したがって、開示された発明は、以下の特許請求の範囲及びそれらの同等物に説明されている場合を除き、限定されるべきではない。
【国際調査報告】