(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(54)【発明の名称】エチレンおよびアクリレートモノマーの共重合のためのビス(ホスフィノ)-フェノキシニッケル(II)触媒
(51)【国際特許分類】
C08F 4/70 20060101AFI20221017BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C08F4/70
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508841
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 US2020046767
(87)【国際公開番号】W WO2021034809
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】502363412
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】アガピエ、テオドール
(72)【発明者】
【氏名】シオン、シュオイェン
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー、ブラッド シー.
(72)【発明者】
【氏名】スピニー、ヘザー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ネット、アレックス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、デイヴィッド アール.
(72)【発明者】
【氏名】クロシン、イェジ
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC48
4J128AF03
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC09B
4J128BC25B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB25
4J128EC02
4J128GA01
4J128GA06
4J128GA19
4J128GB01
(57)【要約】
触媒系を使用してオレフィンモノマーを重合するプロセスおよび式(I):(I)による構造を有するプロ触媒を含む触媒系。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)による構造を有するプロ触媒を含む触媒系であって、
【化1】
式中、
Mが、ニッケル(II)またはパラジウム(II)であり、
Xが、(C
1-C
40)ヒドロカルビル、(C
1-C
40)ヘテロヒドロカルビル、-CH
2Si(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-Si(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-OSi(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-Ge(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-P(R
C)
2-W(OR
C)
W、-P(O)(R
C)
2-W(OR
C)
W、-N(R
C)
2、-NH(R
C)、-N(Si(R
C)
3)
2、-NR
CSi(R
C)
3、-NHSi(R
C)
3、-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、-OCF
3、-S(O)R
C、-S(O)
2R
C、-OS(O)
2R
C、-N=C(R
C)
2、-N=CH(R
C)、-N=CH
2、-N=P(R
C)
3、-OC(O)R
C、-C(O)OR
C、-N(R
C)C(O)R
C、-N(R
C)C(O)H、-NHC(O)R
C、-C(O)N(R
C)
2、-C(O)NHR
C、-C(O)NH
2、ハロゲン、または水素から選択される配位子であり、各R
Cが独立して、置換もしくは非置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビルであり、Qが、0、1、2、または3であり、Wが、0、1、または2であり、
各Yが、ルイス塩基であり、XおよびYが、任意選択的に連結され、
Z
1、Z
2、Z
3が独立して、C(R
Z)または窒素であり、各R
Zが独立して、置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、非置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビル、非置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビル、-CH
2Si(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-Si(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-OSi(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-Ge(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-P(R
C)
2-W(OR
C)
W、-P(O)(R
C)
2-W(OR
C)
W、-N(R
C)
2、-NH(R
C)、-N(Si(R
C)
3)
2、-NR
CSi(R
C)
3、-NHSi(R
C)
3、-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、-OCF
3、-S(O)R
C、-S(O)
2R
C、-OS(O)
2R
C、-N=C(R
C)
2、-N=CH(R
C)、-N=CH
2、-N=P(R
C)
3、-OC(O)R
C、-C(O)OR
C、-N(R
C)C(O)R
C、-C(O)N(R
C)
2、-N(R
C)C(O)H、-NHC(O)R
C、-C(O)N(R
C)
2、-C(O)NHR
C、-C(O)NH
2、ハロゲン、または水素であり、Qが、0、1、2、または3であり、Wが、0、1、または2であり、各R
Cが独立して、置換もしくは非置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビル、または水素であるが、Z
1、Z
2、およびZ
3のうちの少なくとも1つが、C(R
Z)であることを条件とし、
R
1、R
2、R
3、およびR
4が独立して、(C
1-C
50)ヒドロカルビルおよび(C
1-C
50)ヘテロヒドロカルビルからなる群から選択され、
Z
1およびZ
2の両方がC(R
Z)である場合、任意選択的に、それぞれの基R
Zが、連結されて環構造を形成し、
Z
2およびZ
3の両方がC(R
Z)である場合、任意選択的に、それぞれの基R
Zが、連結されて環構造を形成し、
Z
1、Z
2、およびZ
3のすべてがC(R
Z)である場合、任意選択的に、それぞれの基R
Zが、連結されて多重環構造を形成し、
任意選択的に、R
1およびR
2が、連結されて環構造を形成し、
任意選択的に、R
3およびR
4が、連結されて環構造を形成する、触媒系。
【請求項2】
Z
1およびZ
2が、C(R
Z)であり、それぞれの基R
Zが、連結されて6員芳香族環構造を形成し、プロ触媒が、以下の式(II)による構造を有し、
【化2】
式中、
M、R
1、R
2、R
3、R
4、Z
3、X、およびYが、式(I)で定義されるとおりであり、
R
Z1、R
Z2、R
Z3、およびR
Z4が独立して-H、(C
1-C
20)ヒドロカルビル、または(C
1-C
40)ヘテロヒドロカルビルである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
Z
2およびZ
3が、C(R
Z)であり、それぞれの基R
Zが、連結されて6員芳香族環構造を形成し、プロ触媒が、以下の式(III)による構造を有し、
【化3】
式中、
M、R
1、R
2、R
3、R
4、Z
1、X、およびYが、式(I)で定義されるとおりであり、
R
Z5、R
Z6、R
Z7、およびR
Z8が独立して、-H、(C
1-C
40)ヒドロカルビル、または(C
1-C
40)ヘテロヒドロカルビルである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項4】
R
1、R
2、R
3、およびR
4が独立して、置換フェニル、非置換フェニル、置換ナフチル、非置換ナフチル、置換アントラセニル、または非置換アントラセニルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項5】
R
1、R
2、R
3、およびR
4が、2,6-ジメトキシフェニル、2,6-ジエトキシフェニル、2,6-ジフェノキシフェニル、2,4,6-トリエトキシフェニル、2,4,6-トリメトキシフェニル、2-フェニルフェニル、または2,6-ジイソプロポキシフェニルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項6】
R
1、R
2、R
3、およびR
4が、(C
1-C
18)アルキルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項7】
R
1およびR
2のいずれかが、連結されて5員環構造を形成し、ならびに/またはR
3およびR
4が、連結されて5員環構造を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項8】
Z
1が、Nである、請求項1および3~7のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項9】
Z
2が、Nである、請求項1および3~7のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項10】
Z
3が、Nである、請求項1または2および4~7のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項11】
Z
1およびZ
3が、Nである、請求項1および4~8のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項12】
Z
1およびZ
3が、C(R
Z)であり、各それぞれのR
Zが、-Hであり、Z
2が、C(R
Z)であり、前記それぞれのR
Zが、-H、置換(C
1-C
20)アルキル、非置換(C
1-C
20)アルキル、置換(C
6-C
18)アリール、非置換(C
1-C
20)ヘテロアルキル、置換(C
6-C
18)ヘテロアリール、非置換(C
6-C
18)アリール、-OR
N、-SR
N、-SO
3R
N、-SiR
N
3、ハロゲン、-N(R
N)
2、-P(R
P)
2、または-P(O)(R
P)
2から選択され、各R
Nが独立して、置換および非置換(C
6-C
18)アリールまたは(C
1-C
18)アルキルもしくはハロゲンであり、各R
Pが独立して、置換もしくは非置換(C
6-C
18)アリールまたは置換もしくは非置換(C
1-C
18)アルキル、-OR
Pである、請求項1および4~7のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項13】
Z
1およびZ
3が、C(R
Z)であり、各それぞれのR
Zが、-Hであり、Z
2が、C(R
Z)であり、前記それぞれのR
Zが、フェニル、ペンタフルオロフェニル、3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニル、-CF
3、-NMe
2、-PPh
2、-P(O)Ph
2-OMe、-SiMe
3、-SiPh
3、カルバゾールイル、ジ-tBu-カルバゾールイル、アントラセニル、ジ-tBu-アントラセニル、-F、または-Clから選択される、請求項1および4~7のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項14】
Z
1およびZ
3が、C(R
Z)であり、各それぞれのR
Zが、-Hであり、Z
2が、C(R
Z)であり、前記それぞれのR
Zが、メチル、エチル、2-プロピル、n-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、2-メチルプロピル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルである、請求項1および4~6のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項15】
Xが、置換または非置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、置換または非置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビルである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項16】
Xが、メチル、2,2-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、(n-ブチル)ジメチルシリルメチル、(n-ヘキシル)ジメチルシリルメチル、(n-オクチル)ジメチルシリルメチル、またはベンジルである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項17】
重合プロセスであって、
オレフィン重合条件下、触媒系の存在下でエチレンおよび任意選択的にオレフィンモノマーを重合して、エチレン系コポリマーを形成することを含み、前記触媒系が、先行請求項のいずれか一項に記載の式(I)による金属-配位子錯体を含む、重合プロセス。
【請求項18】
前記オレフィンモノマーが、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、アルキルアクリレート、グリシジルアクリレート、CH
2=C(H)(CH
2)
nC(O)(OR)、CH
2=C(H)C(O)(OR)、CH
2=CHC(O)R、CH
2=C(H)-OC(O)R、CH
2=CH(OR)、CH
2=CHSi(R)
3-T(OR)
T、またはCH
2=CHClから選択され、
Rが、-H、置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、非置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビル、または非置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビルから選択され、
Tが、0、1、2、または3であり、
nが、1~10である、重合プロセス。
【請求項19】
本開示のいずれかの構造によるプロ触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年8月20日に出願された米国仮特許出願第62/889,249号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、エチレンおよびアクリレート重合触媒系およびプロセスに関し、より具体的には、ビス(ホスフィノ)-フェノキシニッケル(II)錯体を含むエチレンおよびアクリレート重合触媒系と、これらの触媒系を組み込むオレフィン重合プロセスとに関する。
【背景技術】
【0003】
エチレン/アクリレートコポリマーは、高圧および/または高温ラジカルプロセスを通して形成され、低密度ポリエチレン(LDPE)と同様の高度に分岐した微細構造を有する。配位触媒作用は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)と同様に、高度に線状のエチレン/アクリレートコポリマーへのルートを提供する。これらの線状コポリマーは、ラジカルプロセスを通して形成された既存の材料よりも高い結晶性および高い熱抵抗を示す。残念ながら、ほとんどの有機金属配位触媒は、アクリル酸またはアクリレートと互換性がない。
【0004】
LLDPE(エチレン/α-オレフィンコポリマー)の工業生産で使用されるIV族金属触媒(Ti、Zr、Hf)は、アクリレートなどの極性オレフィンモノマーと互換性がない。アクリレートの酸素原子は、金属の活性部位をブロックするルイス酸性IV族金属と強く配位し、さらなるオレフィン重合を効果的に妨げる。
【0005】
したがって、第10族金属(Pd、Ni)を含有するより電子豊富な後期金属触媒が、エチレンとアクリレートモノマーとの共重合反応に利用される。しかしながら、報告されている多くのNiおよびPd含有金属触媒は、a)重合速度が遅く、および/またはb)目的の極性モノマーの組み込みが少ない。
【発明の概要】
【0006】
エチレン共重合活性の高速度およびアクリレートコモノマーの高い取り込みの両方を促進するNi触媒の新しい配位子骨格を作成する必要性が継続的に存在する。Niの新しい配位子骨格を用いて、エチレンおよび極性モノマーを配位触媒作用を介して共重合して、高度に線状のLLDPEのようなコポリマーを形成し得る。新しい高度に線状のコポリマーは、より高い適用温度で改善された耐クリープ性および寸法安定性を示すことが期待される。
【0007】
本開示の実施形態は、触媒系を含む。触媒系は、以下の式(I)による構造を有するプロ触媒を含む。
【化1】
【0008】
式(I)において、Mは、ニッケル(II)またはパラジウム(II)であり、Xは、(C1-C40)ヒドロカルビル、(C1-C40)ヘテロヒドロカルビル、-CH2Si(RC)3-Q(ORC)Q、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Q、-Ge(RC)3-Q(ORC)Q、-P(RC)2-W(ORC)W、-P(O)(RC)2-W(ORC)W、-N(RC)2、-NH(RC)、-N(Si(RC)3)2、-NRCSi(RC)3、-NHSi(RC)3、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、-OCF3、-S(O)RC、-S(O)2RC、-OS(O)2RC、-N=C(RC)2、-N=CH(RC)、-N=CH2、-N=P(RC)3、-OC(O)RC、-C(O)ORC、-N(RC)C(O)RC、-N(RC)C(O)H、-NHC(O)RC、-C(O)N(RC)2、-C(O)NHRC、-C(O)NH2、ハロゲン、または水素から選択される配位子であり、各RCは独立して、置換もしくは非置換(C1-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C1-C30)ヘテロヒドロカルビルであり、下付き文字Qは、0、1、2、または3であり、下付き文字Wは、0、1、または2である。各Yは、ルイス塩基であり、XおよびYは、任意選択的に連結されている。
【0009】
いくつかの実施形態では、Yは、有機ルイス塩基である。
【0010】
式(I)において、Z1、Z2、Z3は独立して、C(RZ)または窒素であり、各RZは独立して、置換(C1-C30)ヒドロカルビル、非置換(C1-C30)ヒドロカルビル、置換(C1-C30)ヘテロヒドロカルビル、非置換(C1-C30)ヘテロヒドロカルビル、-CH2Si(RC)3-Q(ORC)Q、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Q、-Ge(RC)3-Q(ORC)Q、-P(RC)2-W(ORC)W、-P(O)(RC)2-W(ORC)W、-N(RC)2、-NH(RC)、-N(Si(RC)3)2、-NRCSi(RC)3、-NHSi(RC)3、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、-OCF3、-S(O)RC、-S(O)2RC、-OS(O)2RC、-N=C(RC)2、-N=CH(RC)、-N=CH2、-N=P(RC)3、-OC(O)RC、-C(O)ORC、-N(RC)C(O)RC、-N(RC)C(O)H、-NHC(O)RC、-C(O)N(RC)2、-C(O)NHRC、-C(O)NH2、ハロゲン、または水素であり、下付き文字Qは、0、1、2、または3であり、下付き文字Wは、0、1、または2であり、RCは、(C1-C18)ヒドロカルビルから選択されるが、Z1、Z2およびZ3のうちの少なくとも1つが、C(RZ)であることを条件とする。
【0011】
式(I)において、R1、R2、R3、およびR4は独立して、(C1-C50)ヒドロカルビルおよび(C1-C50)ヘテロヒドロカルビルからなる群から選択される。
【0012】
式(I)において、Z1およびZ2の両方がC(RZ)である場合、任意選択的に、それぞれの基RZは、連結されて環構造を形成する。Z2およびZ3の両方がC(RZ)である場合、任意選択的に、それぞれの基RZは、連結されて環構造を形成する。Z1、Z2、およびZ3のすべてがC(RZ)である場合、任意選択的に、それぞれの基RZは、連結されて多重環構造を形成する。任意選択的に、R1およびR2は、連結されて環構造を形成し、R3およびR4は、任意選択的に連結されて環構造を形成する。
【0013】
本開示の実施形態は、重合プロセスを含む。重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレンおよび1つ以上の極性モノマーを重合して、エチレン系コポリマーを形成することを含む。触媒系は、本開示の式(I)による金属-配位子錯体を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、触媒系の具体的な実施形態を説明する。本開示の触媒系が、異なる形態で具現化されてもよく、本開示に記載される具体的な実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全となり、また主題の範囲を当業者に完全に伝えるように、提供される。
【0015】
一般的な略語を、以下に列記する。
【0016】
RC、RZ、R1、R2、R3、R4、Z1、Z2、Z3、X、Y、Q、およびW:上記で定義されたとおり、Me:メチル、Et:エチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、i-Pr:イソプロピル、t-Bu:tert-ブチル、t-Oct:tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)、THF:テトラヒドロフラン、Et2O:ジエチルエーテル、CH2Cl2:ジクロロメタン、EtOAc:エチルアセテート、C6D6:重水素化ベンゼンまたはベンゼン-d6、CDCl3:重水素化クロロホルム、Na2SO4:硫酸ナトリウム、MgSO4:硫酸マグネシウム、HCl:塩化水素、n-BuLi:ブチルリチウム、t-BuLi:tert-ブチルリチウム、K2CO3:炭酸カリウム、N2:窒素ガス、PhMe:トルエン、PPR:並列圧力反応器、MAO:メチルアルモキサン、MMAO:修飾メチルアルモキサン、GC:ガスクロマトグラフィー、LC:液体クロマトグラフィー、NMR:核磁気共鳴、MS:質量分析、mmol:ミリモル、mL:ミリリットル、M:モル、minまたはmins:分、hまたはhrs:時間、d:日、Rf:保持因子、TLC:薄層クロマトグラフィー、rpm:毎分回転数。
【0017】
「独立して選択される」という用語とそれに続く複数の選択肢は、R1、R2、R3、R4、およびRCなど、その用語の前に現れる個々の基が、同一であるか、または異なってもよく、その用語の前に現れる任意の他の基の同一性についても依存関係がないことを示すために本明細書において使用される。
【0018】
「プロ触媒」という用語は、活性化後、例えば、NiまたはPd金属中心に配位したルイス塩基の除去時に触媒活性を有する化合物を指す。
【0019】
ある特定の炭素原子を含有する化学基を記載するために使用される場合、「(Cx-Cy)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態がxおよびyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C1-C50)アルキルは、その非置換形態では1~50個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態および一般構造では、ある特定の化学基は、RSなどの1つ以上の置換基によって置換され得、RSは、一般的に、本明細書で定義される任意の置換基を表す。括弧付きの「(Cx-Cy)」を使用して定義される、化学基のRS置換バージョンは、任意の基RSの同一性に応じてy個超の炭素原子を含有し得る。例えば、「RSがフェニル(-C6H5)である正確に1つの基RSによって置換された(C1-C50)アルキル」は、7~56個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(Cx-Cy)」を使用して定義される化学基が1つ以上の炭素原子含有置換基RSによって置換される場合、化学基の炭素原子の最小および最大合計数は、xおよびyの両方それぞれに、すべての炭素原子含有置換基RS由来の炭素原子の合計数を添加することによって、決定される。
【0020】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物の炭素原子もしくはヘテロ原子または官能基に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が、置換基(例えばRS)によって置き換えられることを意味する。接頭辞「per」は、「完全に」または「全く」というその通常の意味を有し、例えば、「過置換」または「過置換された」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはテロ原子に結合したすべての水素原子(H)が、置換基(例えば、RS)によって置き換えられることを意味し、同様に、「過フッ素化アルキル」の場合では、アルキル基のすべての水素がフッ素原子によって置き換えられることを意味する。「多置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合した、少なくとも2個の、ただし、すべてよりは少ない水素原子が置換基によって置き換えられることを意味する。「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素または水素ラジカルを意味する。「水素」および「-H」は、交換可能であり、明記されていない限りは、同一の意味を有する。
【0021】
「(C1-C50)ヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、「(C1-C50)ヒドロカルビレン」という用語は、1~50個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを意味し、各炭化水素ラジカルおよび各炭化水素ジラジカルは、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(3個以上の炭素を有し、単環式および多環式、縮合および非縮合多環式、ならびに二環式を含む)または非環式であり、1つ以上のRSによって置換されているか、または置換されていない。
【0022】
本開示において、(C1-C50)ヒドロカルビルは、非置換または置換(C1-C50)アルキル、(C3-C50)シクロアルキル、(C3-C20)シクロアルキル-(C1-C20)アルキレン、(C6-C40)アリール、または(C6-C20)アリール-(C1-C20)アルキレン(ベンジル(-CH2-C6H5)など)であり得る。
【0023】
「(C1-C50)アルキル」および「(C1-C18)アルキル」という用語は、非置換または1つ以上のRSによって置換されている、それぞれ、1~50個の炭素原子の飽和直鎖または分岐炭化水素ラジカルおよび1~18個の炭素原子の飽和直鎖または分岐炭化水素ラジカルを意味する。非置換(C1-C50)アルキルの例は、非置換(C1-C20)アルキル、非置換(C1-C10)アルキル、非置換(C1-C5)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、2,2-ジメチルプロピル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、および1-デシルである。置換(C1-C40)アルキルの例は、置換(C1-C20)アルキル、置換(C1-C10)アルキル、トリフルオロメチル、および[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」という用語は、置換基を含めてラジカル中に最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、それぞれ、(C1-C5)アルキルである1つのRSによって置換されている(C27-C40)アルキルである。各(C1-C5)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、2,2-ジメチルプロピル、または1,1-ジメチルエチルであり得る。
【0024】
「(C6-C50)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子のうちの少なくとも6~14個の炭素原子が芳香環炭素原子である、非置換または置換(1つ以上のRSによる)の単環式、二環式、または三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味する。単環式芳香族炭化水素ラジカルは、1つの芳香環を含み、二環式芳香族炭化水素ラジカルは、2つの環を有し、三環式芳香族炭化水素ラジカルは、3つの環を有する。二環式または三環式芳香族炭化水素ラジカルが存在するとき、そのラジカルの環のうちの少なくとも1つは、芳香族である。芳香族ラジカルの他の1つまたは複数の環は独立して、縮合または非縮合の芳香族または非芳香族であり得る。非置換(C6-C50)アリールの例としては、非置換(C6-C20)アリール、非置換(C6-C18)アリール、2-(C1-C5)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、およびフェナントレニルが挙げられる。置換(C6-C40)アリールの例としては、置換(C1-C20)アリール、置換(C6-C18)アリール、2,4-ビス([C20]アルキル)-フェニル、3,5-ビス([C20]アルキル)-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、およびフルオレン-9-オン-l-イルが挙げられる。
【0025】
「(C3-C50)シクロアルキル」という用語は、非置換であるか、または1つ以上のRSによって置換されている、3~50個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(Cx-Cy)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、または1つ以上のRSによって置換されているかのいずれかであるものと同様な様式で定義される。非置換(C3-C40)シクロアルキルの例は、非置換(C3-C20)シクロアルキル、非置換(C3-C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルである。置換(C3-C40)シクロアルキルの例は、置換(C3-C20)シクロアルキル、置換(C3-C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、および1-フルオロシクロヘキシルである。
【0026】
(C1-C50)ヒドロカルビレンの例としては、非置換または置換(C6-C50)アリーレン、(C3-C50)シクロアルキレン、および(C1-C50)アルキレン(例えば、(C1-C20)アルキレン)が挙げられる。ジラジカルは、同じ炭素原子上(例えば-CH2-)もしくは隣接する炭素原子(すなわち1,2-ジラジカル)上にあってもよく、または1個、2個、もしくは3個以上の介在炭素原子によって離間されている(例えば1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカルなど)。いくつかのジラジカルとしては、1,2-、1,3-、1,4-、またはα,ω-ジラジカルが挙げられ、他のものとしては1,2-ジラジカルが挙げられる。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C2-C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち、-CH2CH2-)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH2CH2-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH(CH3)CH2-)が挙げられる。(C6-C50)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0027】
「(C1-C50)アルキレン」という用語は、非置換であるか、または1つ以上のRSによって置換されている1~50個の炭素原子の飽和直鎖または分岐鎖ジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子上にない)を意味する。非置換(C1-C50)アルキレンの例は、非置換(C1-C20)アルキレンであり、非置換-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、-(CH2)8-、-CH2C*HCH3、および-(CH2)4C*(H)(CH3)を含み、「C*」は、水素原子が除去されて、二級または三級アルキルラジカルを形成する炭素原子を示す。置換(C1-C50)アルキレンの例は、置換(C1-C20)アルキレン、-CF2-、-C(O)-、および-(CH2)14C(CH3)2(CH2)5-(すなわち、6,6-ジメチル置換1,20-エイコシレン)である。前述のように、2つのRSが一緒になって(C1-C18)アルキレンを形成し得るため、置換(C1-C50)アルキレンの例としてはまた、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、および2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。
【0028】
「(C3-C50)シクロアルキレン」という用語は、非置換であるか、または1つ以上のRSによって置換されている、3~50個の炭素原子の環式ジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子上にある)を意味する。
【0029】
「ヘテロ原子」という用語は、水素または炭素以外の原子を指す。1個または2個以上のヘテロ原子を含有する基の例としては、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-Si(RC)2-、-P(RP)-、-P(RP)2、-N(RN)-、-N(RN)2-N=C(RC)2、-N=C(NR2
N)(RC)、-Ge(RC)2-、または-Si(RC)3が挙げられ、各RCおよび各RPは、非置換(C1-C18)ヒドロカルビルまたは-Hであり、各RNは、非置換(C1-C18)ヒドロカルビルである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、炭化水素の1個以上の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられている分子または分子骨格を指す。「(C1-C50)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子のヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C1-C50)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~50個の炭素原子のヘテロ炭化水素ジラジカルを意味する。(C1-C50)ヘテロヒドロカルビルまたは(C1-C50)ヘテロヒドロカルビレンのヘテロ炭化水素は、1個以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子上またはヘテロ原子上に存在してもよい。ヘテロヒドロカルビレンの2つのラジカルは、単一の炭素原子上または単一のヘテロ原子上に存在してもよい。加えて、ジラジカルの2つのラジカルのうちの一方が、炭素原子上に存在してもよく、他方のラジカルが、異なる炭素原子上に存在してもよいか、2つのラジカルのうちの一方が、炭素原子上に存在してもよく、他方が、ヘテロ原子上に存在してもよいか、または、2つのラジカルのうちの一方が、ヘテロ原子上に存在してもよく、他方のラジカルが、異なるヘテロ原子上に存在してもよい。各(C1-C50)ヘテロヒドロカルビルおよび(C1-C50)ヘテロヒドロカルビレンは、非置換または置換(1つ以上のRSによる)、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(単環式および多環式、縮合および非縮合多環式を含む)または非環式であってもよい。
【0030】
(C1-C50)ヘテロヒドロカルビルは、非置換であってもよく、または置換されてもよい。(C1-C50)ヘテロヒドロカルビルの非限定的な例としては、(C1-C50)ヘテロアルキル、(C1-C50)ヒドロカルビル-O-、(C1-C50)ヒドロカルビル-S-、(C1-C50)ヒドロカルビル-S(O)-、(C1-C50)ヒドロカルビル-S(O)2-、(C1-C50)ヒドロカルビル-Si(RC)2-、(Cl-C50)ヒドロカルビル-N(RN)-、(Cl-C50)ヒドロカルビル-P(RP)-、(C2-C50)ヘテロシクロアルキル、(C2-C19)ヘテロシクロアルキル-(C1-C20)アルキレン、(C3-C20)シクロアルキル-(C1-C19)ヘテロアルキレン、(C2-C19)ヘテロシクロアルキル-(C1-C20)ヘテロアルキレン、(C1-C50)ヘテロアリール、(C1-C19)ヘテロアリール-(C1-C20)アルキレン、(C6-C20)アリール-(C1-C19)ヘテロアルキレン、または(C1-C19)ヘテロアリール-(C1-C20)ヘテロアルキレンが挙げられる。追加の例としては、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Q、-Ge(RC)3-Q(ORC)Q、-P(RC)2-W(ORC)W、-P(O)(RC)2-W(ORC)W、-N(RC)2、-NH(RC)2、-ORC、-SRC、--NO2、-CN、-CF3、-OCF3、-S(O)RC、-S(O)2RC、-OS(O)2RC、-N=C(RC)2、-N=P(RC)3、-OC(O)RC、-C(O)ORC、-N(RC)C(O)RC、および-C(O)N(RC)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「(C4-C50)ヘテロアリール」という用語は、合計4~50個の炭素原子および1~10個のヘテロ原子の、非置換または置換(1つ以上のRSによる)の、単環式、二環式、または三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味する。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、1つのヘテロ芳香環を含み、二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、2つの環を有し、三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、3つの環を有する。二環式または三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルが存在する場合、ラジカルにおける環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香族である。ヘテロ芳香族ラジカルの他の1つまたは複数の環は独立して、縮合または非縮合および芳香族または非芳香族であってもよい。他のヘテロアリール基(例えば、一般に(Cx-Cy)ヘテロアリール、(C4-C12)ヘテロアリールなど)は、x~y個の炭素原子(4~12個の炭素原子など)を有し、かつ非置換または1つもしくは2つ以上のRSによって置換されているものと同様な様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環または6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子数であり、1、2、3、または4であり得、各ヘテロ原子は、O、S、N、またはPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、およびテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子数であり、1、2、または3であり得、ヘテロ原子は、NまたはPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、ピラジン-2-イル、1,3,5-トリアジン-2-イルが挙げられる。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-または6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、インドール-1-イル、およびベンズイミダゾール-1-イルである。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、キノリン-2-イル、およびイソキノリン-1-イルである。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、または6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例は、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルである。縮合5,6,6-環系の例は、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0032】
「(C1-C50)ヘテロアルキル」という用語は、1~50個の炭素原子、またはそれよりも少ない炭素原子、およびヘテロ原子のうちの1個以上を含有する飽和直鎖または分岐鎖ラジカルを意味する。「(C1-C50)ヘテロアルキレン」という用語は、1~50個の炭素原子および1個または2個以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖または分岐鎖ジラジカルを意味する。ヘテロアルキルまたはヘテロアルキレンのヘテロ原子には、Si(RC)3、Ge(RC)3、Si(RC)2、Ge(RC)2、P(RP)2、P(RP)、N(RN)2、N(RN)、N、O、ORC、S、SRC、S(O)、およびS(O)2が含まれ得、ヘテロアルキルおよびヘテロアルキレン基の各々は、非置換または1つ以上のRSによって置換されている。
【0033】
非置換(C2-C40)ヘテロシクロアルキルの例としては、非置換(C2-C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C2-C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-l-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-l-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、および2-アザ-シクロデシルが挙げられる。
【0034】
「ハロゲン原子」または「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、またはヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、ハロゲン原子のアニオン形態を意味する:フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、またはヨウ化物(I-)。
【0035】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、ならびに(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、窒素-窒素、窒素-リン、および炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基RSによって置換されている場合、1つ以上の二重および/または三重結合は、任意選択的に、置換基RS中に存在してもしなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、または(ヘテロ原子含有基において)1つ以上の炭素-窒素、炭素-リン、窒素-窒素、窒素-リン、または炭素-ケイ素二重結合を含有することを意味し、置換基RS、または存在しない場合もあるが(ヘテロ)芳香環中に存在し得る二重結合を含まない。
【0036】
本開示の実施形態は、触媒系を含む。触媒系は、以下の式(I)による構造を有するプロ触媒を含む。
【化2】
【0037】
式(I)において、Mは、ニッケル(II)またはパラジウム(II)であり、Xは、(C1-C40)ヒドロカルビル、(C1-C40)ヘテロヒドロカルビル、-CH2Si(RC)3-Q(ORC)Q、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Q、-Ge(RC)3-Q(ORC)Q、-P(RC)2-W(ORC)W、-P(O)(RC)2-W(ORC)W、-N(RC)2、-NH(RC)、-N(Si(RC)3)2、-NRCSi(RC)3、-NHSi(RC)3、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、-OCF3、-S(O)RC、-S(O)2RC、-OS(O)2RC、-N=C(RC)2、-N=CH(RC)、-N=CH2、-N=P(RC)3、-OC(O)RC、-C(O)ORC、-N(RC)C(O)RC、-N(RC)C(O)H、-NHC(O)RC、-C(O)N(RC)2、-C(O)NHRC、-C(O)NH2、ハロゲン、または水素から選択される配位子であり、各RCは独立して、置換もしくは非置換(C1-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C1-C30)ヘテロヒドロカルビルであり、下付き文字Qは、0、1、2、または3であり、下付き文字Wは、0、1、または2である。各RCは、(C1-C18)ヒドロカルビルから選択される。各Yは、ルイス塩基であり、XおよびYは、任意選択的に連結されている。
【0038】
式(I)において、Z1、Z2、Z3は独立して、C(RZ)または窒素であり、各RZは独立して、水素、置換(C1-C30)ヒドロカルビル、置換(C1-C30)ヘテロヒドロカルビル、非置換(C1-C30)ヒドロカルビル、非置換(C1-C30)ヘテロヒドロカルビル、-CH2Si(RC)3-Q(ORC)Q、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Q、-Ge(RC)3-Q(ORC)Q、-P(RC)2-W(ORC)W、-P(O)(RC)2-W(ORC)W、-N(RC)2、-NH(RC)、-N(Si(RC)3)2、-NRCSi(RC)3、-NHSi(RC)3、-ORC、-SRC、--NO2、-CN、-CF3、-OCF3、-S(O)RC、-S(O)2RC、-OS(O)2RC、-N=C(RC)2、-N=CH(RC)、-N=CH2、-N=P(RC)3、-OC(O)RC、-C(O)ORC、-N(RC)C(O)RC、-N(RC)C(O)H、-NHC(O)RC、-C(O)N(RC)2、-C(O)NHRC、-C(O)NH2、ハロゲン、または水素であるが、Z1、Z2、およびZ3のうちの少なくとも1つが、C(RZ)であることを条件とする。下付き文字Qは、0、1、2、または3であり、下付き文字Wは、0、1、または2である。各RCは、水素または(C1-C18)ヒドロカルビルから選択される。いくつかの実施形態では、各RCは、水素または(C1-C18)アルキルから選択される。
【0039】
式(I)において、R1、R2、R3、およびR4は独立して、(C1-C50)ヒドロカルビルおよび(C1-C50)ヘテロヒドロカルビルからなる群から選択される。
【0040】
任意選択的に、式(I)において、Z1およびZ2の両方がC(RZ)である場合、それぞれの基RZは、連結されて環構造を形成し、Z2およびZ3の両方がC(RZ)である場合、それぞれの基RZは、連結されて環構造を形成し、Z1、Z2、およびZ3のすべてがC(RZ)である場合、それぞれの基RZは、連結されて多重環構造を形成し、R1およびR2は、連結されて環構造を形成し、R3およびR4は、連結されて環構造を形成する。
【0041】
いくつかの実施形態では、式(I)のプロ触媒において、Z
1およびZ
2は、C(R
Z)であり、それぞれの基R
Zは、連結されて6員環構造を形成する。プロ触媒は、以下の式(II)による構造を有する。
【化3】
【0042】
式(II)において、RZ1、RZ2、RZ3、およびRZ4は独立して、-H、(C1-C20)ヒドロカルビル、または(C1-C40)ヘテロヒドロカルビル、およびNiであり、R1、R2、R3、R4
、Z3、X、およびYは、式(I)で定義されるとおりである。
【0043】
いくつかの実施形態では、式(I)のプロ触媒において、Z
2およびZ
3は、C(R
Z)であり、それぞれの基R
Zは、連結されて6員環構造を形成し、プロ触媒は、以下の式(III)による構造を有する。
【化4】
【0044】
式(III)において、RZ5、RZ6、RZ7、およびRZ8は独立して、-H、(C1-C20)ヒドロカルビル、または(C1-C40)ヘテロヒドロカルビル、およびNiであり、R1、R2、R3、R4
、Z1、X、およびYは、式(I)で定義されるとおりである。
【0045】
様々な実施形態では、R1、R2、R3、およびR4は独立して、非置換フェニル、置換フェニル、非置換アントラセニル、置換アントラセニルである。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、およびR4は独立して、2,6-ジメトキシフェニル、2,6-ジエトキシフェニル、2,6-ジフェノキシフェニル、2,4,6-トリエトキシフェニル、2,4,6-トリメトキシフェニル、2-フェニルフェニル、2,6-ジイソプロポキシフェニルである。他の実施形態では、R1、R2、R3、およびR4は、(C1-C18)アルキルである。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、およびR4は、(C1-C18)シクロアルキルである。
【0046】
1つ以上の実施形態では、R1およびR2のいずれかは連結されて5員環構造を形成し、ならびに/またはR3およびR4は連結されて5員環構造を形成する。言い換えれば、1つ以上の実施形態では、R1およびR2は、連結されて5員環構造を形成し、R3およびR4は、連結されて5員環構造を形成するか、またはR1およびR2は、連結されて5員環構造を形成し、R3およびR4は、連結されて5員環構造を形成しないか、または、R1およびR2は、連結されて5員環構造を形成せず、R3およびR4は、連結されて5員環構造を形成する。
【0047】
いくつかの実施形態では、Z1は、Nである。他の実施形態では、Z2は、Nである。いくつかの実施形態では、Z3は、Nである。1つ以上の実施形態では、Z1およびZ3は、Nである。
【0048】
様々な実施形態では、Z1およびZ3は、C(RZ)であり、各それぞれのRZは、-Hであり、Z2は、C(RZ)であり、それぞれのRZは、-H、置換(C1-C20)アルキル、非置換(C1-C20)アルキル、置換(C6-C18)アリール、非置換(C6-C18)アリール、-ORN、-SRN、-SO3RN、-SiRN
3、ハロゲン、-N(RN)2、-P(RP)2、または-P(O)(RP)2から選択される。各RNは独立して、置換および非置換(C6-C18)アリールまたは(C1-C18)アルキルもしくはハロゲンである。各RPは独立して、置換(C6-C18)アリール、非置換(C6-C18)アリール、置換(C6-C18)ヘテロアリール、非置換(C6-C18)ヘテロアリール、置換(C1-C18)アルキル、非置換(C1-C18)アルキル、または-ORPである。任意選択的に2つのRPは、一緒に連結されて環構造を形成することができ、任意選択的に2つのRNは、一緒に連結して環構造を形成することができる。
【0049】
1つ以上の実施形態では、式(I)のプロ触媒において、Z1およびZ3は、C(RZ)であり、各それぞれのRZは、-Hであり、Z2は、C(RZ)であり、それぞれのRZは、フェニル、ペンタフルオロフェニル、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル、-CF3、-NMe2、-PPh2、-P(O)Ph2、-OMe、-SiMe3、-SiPh3、カルバゾールイル、ジ-tert-ブチル-カルバゾールイル、アントラセニル、ジ-tert-ブチル-アントラセニル、フッ素、または塩素から選択される。
【0050】
1つ以上の実施形態では、式(I)のプロ触媒において、Z1およびZ3は、C(RZ)であり、各それぞれのRZは、-Hであり、Z2は、C(RZ)であり、それぞれのRZは、メチル、エチル、2-プロピル、n-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、2-メチルプロピル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルである。
【0051】
式(I)、式(II)、または式(III)によるプロ触媒において、Xは、共有結合を通してMと結合し、Yは、配位結合を通してMと結合する。式(I)、(II)、および(III)のプロ触媒は、全体的に電荷中性であり得る。いくつかの実施形態では、触媒系は、式(I)、(II)、および(III)のプロ触媒を含み、Xは独立して、置換(C1-C30)ヒドロカルビル、非置換(C1-C30)ヒドロカルビル、置換(C1-C30)ヘテロヒドロカルビル、非置換(C1-C30)ヘテロヒドロカルビル、(C1-C20)アルキル、(C1-C20)ヘテロアルキル、(C6-C20)アリール、(C4-C20)ヘテロアリール、またはハロゲンから選択される。1つ以上の実施形態では、各Xは独立して、-CH2Si(CH3)3、メチル、ベンジル、フェニル、またはクロロである。さらなる実施形態では、各Xは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2-ジメチルプロピル、(n-ブチル)ジメチルシリルメチル、(n-ヘキシル)ジメチルシリルメチル、(n-オクチル)ジメチルシリルメチルから選択される。
【0052】
いくつかの実施形態では、Xは、ハロゲン、非置換(C1-C20)ヒドロカルビル、非置換(C1-C20)ヒドロカルビル-C(O)O-、またはRKRLN-であり、RKおよびRLのうちの各々は独立して、非置換(C1-C20)ヒドロカルビルである。いくつかの実施形態では、各単座配位子Xは、塩素原子、(C1-C10)ヒドロカルビル(例えば、(C1-C6)アルキルもしくはベンジル)、非置換(C1-C10)ヒドロカルビル-C(O)O-、またはRKRLN-であり、RKおよびRLのうちの各々は独立して、非置換(C1-C10)ヒドロカルビルである。
【0053】
1つ以上の実施形態では、Yは、ルイス塩基である。いくつかの実施形態では、Yは、有機ルイス塩基である。様々な実施形態では、有機ルイス塩基は、(C1-C30)ヘテロヒドロカルビルであるが、ヘテロヒドロカルビルのヘテロ原子が、Mとの配位結合を形成することができることを条件とする。有機ルイス塩基は、スルホキシド、トリヒドロカルビルホスフィン、例えば、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、もしくはトリアリールホスフィン、トリアルキル、トリアリールホスフィン、オレフィンもしくは環式オレフィン、置換もしくは非置換複素環、脂肪族もしくは芳香族カルボン酸のアルキルエステル、脂肪族ケトン、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、アルキルもしくはシクロアルキルエーテル、またはそれらの混合物であってもよく、各電子供与体は、2~20個の炭素原子を有する。様々な実施形態では、有機ルイス塩基は、2~20個の炭素原子を有するアルキルエーテルおよびシクロアルキルエーテル、3~20個の炭素原子を有するジアルキル、ジアリール、およびアルキルアリールケトン、ならびに2~20個の炭素原子を有するアルキルおよびアリールカルボン酸のアルキル、アルコキシ、およびアルキルアルコキシエステルから選択される。有機ルイス塩基の具体的な例としては、メチルホルメート、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルエーテル、ジオキサン、ジ-n-プロピルエーテル、ジブチルエーテル、エタノール、1-ブタノール、エチルホルメート、メチルアセテート、エチルアニセート、エチレンカーボネート、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、エチルプロピオネート、ピリジン、置換ピリジン、ルチジン、ピコリン、ジメチルスルホキシド、トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、シクロオクタジエン、シクロペンテン、エチレン、プロピレン、tert-ブチルエチレン、トリメチルアミン、1-メチルイミダゾール、または1-メチルピラゾールが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ルイス塩基は、ピリジンである。
【0054】
いくつかの実施形態では、XおよびYは、共有連結されている。X基と一緒に共有連結されている有機ルイス塩基Yの具体的な例としては、4-シクロオクテン-1-イル、2-ジメチルアミノベンジル、および2-ジメチルアミノメチルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施形態では、式(I)のプロ触媒の化学基(例えば、XおよびR1-R4)のいずれかまたはすべては、非置換であり得る。他の実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基XおよびR1-R4のいずれも1つもしくは2つ以上のRSで置換されないか、またはそれらのいずれかもしくはすべては、1つもしくは2つ以上のRSで置換され得る。2つまたは3つ以上のRSが式(I)のプロ触媒の同じ化学基に結合している場合、化学基の個々のRSは、同じ炭素原子もしくはヘテロ原子に、または異なる炭素原子もしくはヘテロ原子に結合し得る。いくつかの実施形態では、化学基XおよびR1-R4のいずれもRSで過置換されていなくてもよく、いずれかまたはすべてがRSで過置換されていてもよい。RSで過置換されている化学基では、個々のRSはすべて同一であっても、独立して選択されてもよい。
【0056】
本開示のいくつかの実施形態は、重合プロセスを含む。いくつかの実施形態では、重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下でエチレンおよび1つ以上のオレフィンモノマーを重合して、エチレン系コポリマーを形成することを含み、触媒系は、本開示に記載されるように、式(I)による金属-配位子錯体を含む。オレフィンモノマーには、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、アルキルアクリレート、グリシジルアクリレート、CH2=C(H)(CH2)nC(O)(OR)、CH2=C(H)C(O)(OR)、CH2=CHC(O)R、、CH2=C(H)-OC(O)R、、CH2=CH(OR)、CH2=CHSi(R)3-T(OR)T、またはCH2=CHClが含まれるが、これらに限定されない。各Rは、-H、置換(C1-C30)ヒドロカルビル、非置換(C1-C30)ヒドロカルビル、置換(C1-C30)ヘテロヒドロカルビル、または非置換(C1-C30)ヘテロヒドロカルビルから選択される。下付き文字Tは、0、1、2、または3である。下付き文字nは、1~10である。
【0057】
重合プロセスの様々な実施形態では、極性コモノマーには、アルキルアクリレート、グリシジルアクリレート、CH2=C(H)(CH2)nC(O)(OR)、CH2=C(H)C(O)(OR)、CH2=CHC(O)R、CH2=C(H)-OC(O)R、CH2=CH(OR)、CH2=CHSi(R)3-T(OR)T、またはCH2=CHClが含まれる。各Rは、-H、置換(C1-C30)ヒドロカルビル、非置換(C1-C30)ヒドロカルビル、置換(C1-C30)ヘテロヒドロカルビル、または非置換(C1-C30)ヘテロヒドロカルビルから選択される。下付き文字Tは、0、1、2、または3である。下付き文字nは、1~10である。極性モノマーがアルキルアクリレートである実施形態では、極性エチレン系コポリマーを脱エステル化して、アクリル酸エチレン系コポリマーを形成し得る。
【0058】
重合プロセスのいくつかの実施形態では、アルキルアクリレートモノマーは、例としてであって限定されないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソ-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、またはそれらの組み合わせであり得る。様々な実施形態では、アルキルアクリレートは、1~8個の炭素を有するアルキル基を有する。これは、C2-C8-アルキルアクリレートと呼ばれる。特定の実施形態では、アルキルアクリレートは、メチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、またはn-ブチルアクリレートである。
【0059】
重合プロセスのいくつかの実施形態では、任意選択のα-オレフィンモノマーは、例としてであって限定されないが、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0060】
例示的は実施形態では、触媒系は、以下に列挙したプロ触媒1の構造を有する式(I)によるプロ触媒を含み得る。
【化5】
【0061】
酸成分
式(I)のプロ触媒を含む触媒系は、Ni中心に配位しているルイス塩基を除去することによって触媒的に活性にされ得る。例えば、式(I)のプロ触媒によるプロ触媒は、錯体をルイス酸と接触させるか、または錯体をルイス酸と組み合わせることによって、触媒的に活性にされ得る。いくつかの実施形態では、触媒系は、酸成分を含まなくてもよい。本明細書での使用に好適な酸には、例えば、アルキル/アリールアルミニウム、ポリマーもしくはオリゴマーのアルモキサン(アルミノキサンとしても知られている)、またはアルキル亜鉛が含まれる。前述の酸のうちの1つ以上の組み合わせも企図される。「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリドもしくはモノアルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニウムヒドリドもしくはジアルキルアルミニウムハライド、またはトリアルキルアルミニウム、あるいはそれらの混合物を意味する。ポリマーまたはオリゴマーアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサン、およびイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0062】
好適な酸には、本明細書に記載の(C1-C20)ヒドロカルビル置換基を含有する13族金属化合物が含まれる。いくつかの実施形態では、13族金属化合物は、トリ((C1-C20)ヒドロカルビル)-置換アルミニウムまたはトリ((C1-C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物である。他の実施形態では、13族金属化合物は、トリ(ヒドロカルビル)-置換アルミニウム、トリ((C1-C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物、トリ((C1-C10)アルキル)アルミニウム、トリ((C6-C18)アリール)ホウ素化合物、およびそれらのハロゲン化(過ハロゲン化、特にフッ素化または過フッ素化を含む)誘導体である。さらなる実施形態では、13族金属化合物は、トリス(フルオロ置換フェニル)ボラン、またはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0063】
中性ルイス酸の組み合わせとしては、トリ((C1-C4)アルキル)アルミニウムとハロゲン化トリ((C6-C18)アリール)ホウ素化合物、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせを含む混合物が挙げられる。他の実施形態は、そのような中性ルイス酸混合物とポリマーまたはオリゴマーアルモキサンとの組み合わせ、および単一の中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとポリマーまたはオリゴマーアルモキサンとの組み合わせである。(プロ触媒):(トリス(ペンタフルオロフェニルボラン):(アルモキサンのモル数の比は、1:1:1~1:10:30であり、他の実施形態では、1:1:1.5~1:5:10である。
【0064】
エチレン/アクリレートコポリマー
様々な実施形態では、本開示の重合プロセスは、極性エチレン系コポリマーが、極性エチレン系コポリマーの重量に基づいて少なくとも50重量パーセント(重量%)のエチレンを含有する、エチレン系コポリマーを生成し得る。いくつかの実施形態では、極性エチレン系コポリマーは、エチレン単位および極性コモノマー単位の合計に基づいて、70~99.9重量%のエチレン単位および0.1重量%~30重量%の極性コモノマー単位の反応生成物である。
【0065】
1つ以上の実施形態では、本開示の重合プロセスは、エチレンモノマー、アルキルアクリレートモノマー、および任意選択的に1つ以上のα-オレフィンを含み得る。α-オレフィンを含む重合プロセスのいくつかの実施形態では、α-オレフィンは、エチレン系酸コポリマーの重量に基づいて、0.01~45重量%の量で、生成されたポリマーに組み込まれ得る。
【0066】
様々な実施形態では、本開示の重合プロセスは、5,000g/モル~1,000,000g/モルの分子量を有するエチレン系酸コポリマーを生成し得る。いくつかの実施形態では、生成されたポリマーは、25,000g/モル~900,000g/モル、30,000g/モル~800,000g/モル、または10,000g/モル~300,000g/モルの分子量を有する。
【0067】
PPRスクリーニング実験の一般的手順
ポリオレフィン触媒作用スクリーニングを、ハイスループット並列重合反応器(PPR)システムで実施した。PPRシステムは、不活性雰囲気のグローブボックス内の48個の単一セル(6×8マトリックス)反応器のアレイで構成されていた。各セルには、およそ5mLの内部作業液体体積を有するガラスインサート(反応器管)が装備されていた。各セルは、独立した圧力制御を有し、500Hzで連続的に撹拌した。触媒、配位子、および金属前駆体溶液、ならびに任意選択の活性剤溶液(使用する場合)を、別途記述のない限り、トルエン中で調製した。別途指定のない限り、配位子を、金属前駆体の溶液を配位子の溶液と予混合することによって、1:1の配位子:金属(L:M)比で金属化した。すべての液体(すなわち、溶媒、t-ブチルアクリレート、および触媒溶液、ならびに任意選択の活性剤溶液(使用する場合))を、ロボットシリンジを介して添加した。ガス試薬(すなわち、エチレン)を、ガス注入口を介して添加した。各実行の前に、反応器を50℃に加熱し、エチレンでパージし、排気した。Tert-ブチルアクリレートを、使用前に活性アルミナの短いカラムを通して濾過して、いずれの重合阻害剤(例えば、4-メトキシフェノール)も除去した。
【0068】
すべての所望のセルにt-ブチルアクリレートを注入し、続いてトルエンの一部分を注入した。反応器を実行温度まで加熱し、次いで、エチレンで適切なpsigまで加圧する。次いで、単離された触媒錯体またはその場で金属化された配位子および任意選択の活性剤溶液(使用する場合)をセルに添加した。最終添加後に合計反応体積が5mLに達するように、各触媒添加を少量のトルエンでチェイスした。触媒を添加する際に、PPRソフトウェアで各セルの圧力の監視を始めた。設定点マイナス1psiでバルブを開き、圧力が2psi高く達したときにバルブを閉じて、エチレンガスを補充して添加することによって、所望の圧力(およそ2~6psig以内)を維持した。すべての圧力低下は、実行期間中、または取り込みもしくは変換要求値に達するまでのいずれか早い方の、エチレンの「取り込み」または「変換」として累積的に記録した。次いで、反応器圧力より40psi高い圧力で30秒間、窒素中1%の酸素を添加することによって、各反応をクエンチした。「クエンチ時間」(触媒を添加してから反応がクエンチされるまでの経過時間)が短いほど、触媒の活性が高くなる。任意の所与のセルにおける過剰なポリマーの形成を防止するために、80psigの既定の取り込みレベルに達した際に反応をクエンチした。すべての反応器をクエンチした後、約60℃に冷却した。次いで、排気し、反応器管を取り外して遠心蒸発器に入れた。次いで、ポリマー試料を遠心蒸発器で12時間60℃で乾燥し、秤量してポリマー収率を決定し、IR(t-ブチルアクリレート組み込み)、GPC(分子量、多分散性(PDI))、およびDSC(融点)分析にかけた。
【0069】
バッチ反応器実験の一般的な手順
窒素雰囲気下で、640gの乾燥トルエンを回転撹拌シャフトを装備した2Lステンレス鋼Parr反応器に導入した。反応器に導入する前に、いずれの重合阻害剤(例えば、4-メトキシフェノール)も除去するために、tert-ブチルアクリレートを活性アルミナの短いカラムを通して濾過した。Tert-ブチルアクリレートを、窒素加圧ショットタンクによって、そのままの形態で反応器に添加した(量については表2を参照)。ショットタンクをトルエンで2回すすぎ、すすぎ液も反応器に移した。反応器を所望の温度および圧力に加熱し、次いで、触媒のトルエン溶液を、窒素加圧ショットタンクによって反応器に添加した。ショットタンクをトルエンで2回すすぎ、すすぎ液も反応器に移した。400psiの圧力を維持するために、エチレンを反応器に連続的に供給した。エチレンの所望の取り込みが達成された後、または他の場合では、設定された反応時間の後に、エチレン供給を停止した。次いで、反応器の内容物を、クエンチ剤としてIrganoxを含有する蓋付きのダンプポットにダンプした。ダンプポットの内容物をドラフト内の開いたステンレス鋼トレイに入れ、揮発物を2日間蒸発させた。次いで、さらに乾燥させるためにトレイを真空オーブンに移した。ポリマー試料をトレイから擦り取り、秤量し、さらなる分析にかけた。
【0070】
GPC手順
Polymer Char赤外線検出器(IR5)およびAgilent PLgel Mixed Aカラムが装備されたDow Robot Assisted Delivery(RAD)システムを使用して、高温GPC分析を実施した。内部フローマーカーとして使用するために、デカン(10μL)を各試料に添加した。まず、試料を、300ppmのブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)で安定化させた1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)中に10mg/mLの濃度に希釈し、160℃で120分間撹拌することによって溶解した。注入前に、試料を、BHTで安定化させたTCBで3mg/mLの濃度までさらに希釈した。試料(250μL)を、1つのPL-gel 20μm(50mmx7.5mm)ガードカラム、続いて2つのPL-gel 20μm(300mmx7.5mm)Mixed-Aカラムを通して溶出し、1.0mL/分の流速で、BHTで安定化させたTCBで160℃に維持した。合計実行時間は、24分であった。分子量(MW)を較正するために、Agilent EasiCalポリスチレン標準物(PS-1およびPS-2)を、BHTで安定化させた1.5mLのTCBで希釈し、160℃で15分間撹拌することによって溶解した。これらの標準物を分析して、3次MW較正曲線を作成した。5つのDowlex 2045参照試料の平均を使用して約0.4と計算される1日のQ因子を使用して、分子量単位を、ポリスチレン(PS)単位からポリエチレン(PE)単位に変換する。
【0071】
FT-IR手順
GPC分析のために調製した10mg/mLの試料も利用して、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によるt-ブチルアクリレート(tBA)の組み込みを定量化した。Dowのロボット調製ステーションは、試料を160℃で60分間加熱および撹拌し、次いで、シリコンウェーハ上に促進されたステンレスウェルに130μLの部分を堆積させた。窒素パージ下、160℃でTCBを蒸発させた。解像度4cm-1の128スキャンを利用する4000~400cm-1のDTGS KBr検出器が装備されたNexus 6700 FT-IRを使用して、IRスペクトルを収集した。tBA(C=O:1762~1704cm-1)のエチレン(CH2:736~709cm-1)に対する比率を計算し、線形較正曲線に適合させて総tBAを決定した。
【0072】
DSC手順
溶融温度(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、および溶解熱を、加熱-冷却-加熱温度プロファイルを使用して、示差走査熱量測定法(DSC Q2000、TA Instruments,Inc.)によって測定した。3~6mgのポリマーのオープンパンDSC試料を以下の温度プロファイルに供し、TA Universal分析ソフトウェアまたはTA Instruments TRIOSソフトウェアを使用してトレースを個別に分析した。
175.00℃で平衡化する
3分間等温
30.00℃/分で0.00℃まで上昇
10.00℃/分で175.00℃まで上昇
【実施例】
【0073】
実施例1~2は、配位子中間体、配位子、および単離されたプロ触媒の合成手順である。実施例3および4では、プロ触媒1の重合反応の結果を一覧にして考察する。本開示の1つ以上の特徴は、以下の実施例を考慮して例示される。
【0074】
実施例1-2,6-ビス(ビス(2’,6’-ジメトキシフェニル)ホスフィノ)-4-tert-ブチルフェノール(POP-H)の合成。
ねじ込み式テフロンストッパーが装着されたシュレンクフラスコに、THF(40mL)中の1,3-ジブロモ-5-(tert-ブチル)-2-(メトキシメトキシ)ベンゼンの溶液(3.52g、10.0mmol)を装填し、窒素下で-78℃に冷却した。n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(4mL、2.5M、10.0mmol)を、シリンジを介して滴加した。さらに30分間撹拌した後、THF(20mL)中のビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィンクロリドの溶液(3.41g、10.0mmol)を、カニューレを介して滴加した。完全に添加した後、反応物を室温まで温め、さらに3時間撹拌して、黄色の溶液を得た。次いで、反応混合物を-78℃に冷却し、n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(4mL、2.5M、10.0mmol)を、シリンジを介して滴加した。さらに30分間撹拌した後、THF(20mL)中のビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィンクロリドの溶液(3.41g、10.0mmol)を、カニューレを介して滴加した。完全に添加した後、反応物を室温まで温め、さらに3時間撹拌して、明るい橙色の溶液を得た。次いで、揮発物を真空下で除去した。淡黄白色の残留物CH2Cl2(20mL)に、脱気したMeOH(10mL)および濃HCl水溶液(5mL)を添加した。得られた混合物を室温下で8時間撹拌し、次いで揮発物を真空下でもう一度除去した。N2を充填したグローブボックス(水を排除しない)内で、得られた橙色の残留物をCH2Cl2(40mL)中に取り込み、K2CO3(10mL×3)およびNH4Cl(10mL×3)の飽和水溶液で洗浄した。揮発物を減圧下で除去した。グローブボックス(水および酸素を排除)内で、得られた淡黄色の固体をエーテル中に溶解し、セライトを通して濾過した。揮発物を真空下でもう一度除去し、得られた混合物をヘキサン(10mL)で洗浄し、固体を真空濾過を介して収集して、2,6-ビス(ビス(2’,6’-ジメトキシフェニル)ホスフィノ)-4-tert-ブチルフェノール(POP-H)(1.68g、2.2mmol、22%)を白色粉末として得た。
【0075】
1H NMR(400 MHz,C6D6):δ 7.56-7.54(d,2H,ArH),7.50(s,1H,OH),7.03-6.99(t,4H,ArH),6.26-6.23(dd,8H,ArH),3.13(s,24H,OCH3),1.17(s,9H,C(CH3)3);13C NMR(400 MHz,C6D6):162.52(d,aryl-C),159.09(t,Ar-C),138.94(t,Ar-C),130.83(d,Ar-C),128.92(s,Ar-C),121.97(d,Ar-C),115.16(d,Ar-C),104.20(s,Ar-C),55.12(s,OCH3),33.95(s,C(CH3)3),31.65(s,C(CH3)3);31P NMR(400 MHz,C6D6):-55.61(s)。
【0076】
実施例2-合成POP-Ni(ピリジン)(CH2SiMe3)錯体、プロ触媒1
工程1-(ピリジン)2Ni(CH2Si(CH3)3)2の調製
窒素を充填したグローブボックス内で、反応ジャーにテトラキス(ピリジン)ニッケルジクロリド(1.78g、3.99mmol、1当量)、ジエチルエーテル(40mL)、およびピリジン(0.51mL)を装填した。ジャーを-35℃の冷凍庫で3日間冷却した。ジャーを冷凍庫から取り出し、Et2O(8.0mL、8.0mmol、2当量)中のトリメチルシリルメチルマグネシウムクロリドの1.0Mの溶液をゆっくりと添加した。添加中に、青い固体は、青緑色に変化し、最終的にベージュに変化した。反応混合物を室温で15分間撹拌し、その後、懸濁液の色が褐色であることが観察された。溶液を15分間にわたって真空で濃縮して、濃い褐色のスラリーを得た。褐色のスラリーをペンタン(20mL)で粉砕し、真空で濃縮した。ペンタン(120mL)およびピリジン(1.2mL)の溶液を調製した。褐色の固体をペンタン/ピリジン溶液(40mL)で粉砕し、セライトのパッドを通して濾過した(このプロセスを合計3回繰り返した)。合わせた濾液を真空で40mLの体積まで濃縮した。赤色の溶液を-35℃の冷凍庫に20時間入れ、結晶性固体を沈殿させた。懸濁液を濾過し、冷(-30℃)ペンタン(10mL)で洗浄し、真空乾燥して、暗赤色の結晶性固体(0.770g、49%収率)を得た。
【0077】
工程2-POP-Ni(ピリジン)(CH2SiMe3)錯体-プロ触媒1の調製
グローブボックス内で、20mLのバイアルに、(ピリジン)2Ni(CH2Si(CH3)3)2(22mg、0.0593mmol)およびベンゼン(2mL)を装填した。この溶液に、ベンゼン(4mL)中の2,6-ビス(ビス(2’,6’-ジメトキシフェニル)ホスフィノ)-4-tert-ブチルフェノール(POP-H、42.83mg、0.0563mmol)の溶液を添加した。混合物にピリジンを一滴添加し、得られた溶液をグローブボックス内で2時間撹拌して、赤褐色の溶液を形成した。すべての揮発物を真空下で除去し、残留物をヘキサンで抽出し、濾過し、真空乾燥させて、錯体を濃黄色の固体として得た(44mg、76%)。
【0078】
1H NMR(400 MHz,C6D6):δ 8.94-8.92(m,2H,ArH),(s,1H,OH),7.47-7.43(m,1H,ArH),7.08-7.04(t,2H,ArH),7.04-7.00(t,2H,ArH),6.95-6.92(m,1H,ArH),6.83-6.79(m,1H,ArH),6.47-6.43(m,2H,ArH),6.34-6.32(dd,4H,ArH),6.29-6.26(dd,4H,ArH),3.36(s,12H,OCH3),3.28(s,12H,OCH3),1.13(s,9H,C(CH3)3),0.12(s,9H,Si(CH3)3),-0.71--0.74(s,2H,NiCH2Si),;13C NMR(400 MHz,C6D6):163.54(d,Ar-C),163.42(d,Ar-C)151.15(s,Ar-C),132.93(d,Ar-C),129.84(m,Ar-C),129.76(s,Ar-C),128.78(d,Ar-C),128.37(s,Ar-C),128.19(s,Ar-C),125.05(t,Ar-C),122.69(d,Ar-C),118.20(d,Ar-C),112.32(s,Ar-C),111.86(s,Ar-C),104.67(s,Ar-C),104.45(d,Ar-C),55.66(d,OCH3),55.13(d,OCH3),33.70(s,C(CH3)3),31.98(s,C(CH3)3),2.15(s,Si(CH3)3),-18.25(d,NiCH2Si);31P NMR(400 MHz,C6D6):-5.28,-5.35(d),-52.06,-52.13(d)。
【0079】
実施例3-並列圧力反応器での重合反応
触媒活性(クエンチ時間およびポリマー収率の観点から)ならびに得られたポリマー特性を、プロ触媒1ついて評価した。重合反応を、前述のように並列圧力反応器(PPR)で実行した。
【0080】
これらの実験では、トルエン中の配位子の2mM溶液をトルエン中のビス(トリメチルシリルメチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)の2mM溶液と組み合わせて、黄色の溶液を形成することによって、配位子をその場で金属化した。溶液を室温で30分間撹拌した後、PPR反応器を含むドライボックスに送った。共重合実験は、0.25μmolの触媒負荷で400psiのエチレン圧力で実行した。表1に示すように、反応器温度およびtert-ブチルアクリレート負荷を変動させた。表1の各記入は、少なくとも2回の反復実行の平均を表す。
【表1】
【0081】
様々な反応器温度およびアクリレート負荷量で、プロ触媒1を含む触媒系は、様々な量のt-ブチルアクリレート(t-BA)を含有するポリマーを生成した。
【0082】
実施例4-バッチ反応器重合反応
この実験では、プロ触媒を、単離された金属錯体のトルエン溶液として反応器に導入した(実施例2参照)。共重合実験を、59.2μmolの触媒負荷で400psiのエチレン圧力で実行した。反応器温度およびt-ブチルアクリレート負荷は表2に示すとおりであった。
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)による構造を有するプロ触媒を含む触媒系であって、
【化1】
式中、
Mが、ニッケル(II)またはパラジウム(II)であり、
Xが、(C
1-C
40)ヒドロカルビル、(C
1-C
40)ヘテロヒドロカルビル、-CH
2Si(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-Si(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-OSi(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-Ge(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-P(R
C)
2-W(OR
C)
W、-P(O)(R
C)
2-W(OR
C)
W、-N(R
C)
2、-NH(R
C)、-N(Si(R
C)
3)
2、-NR
CSi(R
C)
3、-NHSi(R
C)
3、-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、-OCF
3、-S(O)R
C、-S(O)
2R
C、-OS(O)
2R
C、-N=C(R
C)
2、-N=CH(R
C)、-N=CH
2、-N=P(R
C)
3、-OC(O)R
C、-C(O)OR
C、-N(R
C)C(O)R
C、-N(R
C)C(O)H、-NHC(O)R
C、-C(O)N(R
C)
2、-C(O)NHR
C、-C(O)NH
2、ハロゲン、または水素から選択される配位子であり、各R
Cが独立して、置換もしくは非置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビルであり、Qが、0、1、2、または3であり、Wが、0、1、または2であり、
各Yが、ルイス塩基であり、XおよびYが、任意選択的に連結され、
Z
1、Z
2、Z
3が独立して、C(R
Z)または窒素であり、各R
Zが独立して、置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、非置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビル、非置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビル、-CH
2Si(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-Si(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-OSi(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-Ge(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-P(R
C)
2-W(OR
C)
W、-P(O)(R
C)
2-W(OR
C)
W、-N(R
C)
2、-NH(R
C)、-N(Si(R
C)
3)
2、-NR
CSi(R
C)
3、-NHSi(R
C)
3、-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、-OCF
3、-S(O)R
C、-S(O)
2R
C、-OS(O)
2R
C、-N=C(R
C)
2、-N=CH(R
C)、-N=CH
2、-N=P(R
C)
3、-OC(O)R
C、-C(O)OR
C、-N(R
C)C(O)R
C、-C(O)N(R
C)
2、-N(R
C)C(O)H、-NHC(O)R
C、-C(O)N(R
C)
2、-C(O)NHR
C、-C(O)NH
2、ハロゲン、または水素であり、Qが、0、1、2、または3であり、Wが、0、1、または2であり、各R
Cが独立して、置換もしくは非置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビル、または水素であるが、Z
1、Z
2、およびZ
3のうちの少なくとも1つが、C(R
Z)であることを条件とし、
R
1、R
2、R
3、およびR
4が独立して、(C
1-C
50)ヒドロカルビルおよび(C
1-C
50)ヘテロヒドロカルビルからなる群から選択され、
Z
1およびZ
2の両方がC(R
Z)である場合、任意選択的に、それぞれの基R
Zが、連結されて環構造を形成し、
Z
2およびZ
3の両方がC(R
Z)である場合、任意選択的に、それぞれの基R
Zが、連結されて環構造を形成し、
Z
1、Z
2、およびZ
3のすべてがC(R
Z)である場合、任意選択的に、それぞれの基R
Zが、連結されて多重環構造を形成し、
任意選択的に、R
1およびR
2が、連結されて環構造を形成し、
任意選択的に、R
3およびR
4が、連結されて環構造を形成する、触媒系。
【請求項2】
Z
1およびZ
2が、C(R
Z)であり、それぞれの基R
Zが、連結されて6員芳香族環構造を形成し、プロ触媒が、以下の式(II)による構造を有し、
【化2】
式中、
M、R
1、R
2、R
3、R
4、Z
3、X、およびYが、式(I)で定義されるとおりであり、
R
Z1、R
Z2、R
Z3、およびR
Z4が独立して、-H、(C
1-C
20)ヒドロカルビル、または(C
1-C
40)ヘテロヒドロカルビルである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
Z
2およびZ
3が、C(R
Z)であり、それぞれの基R
Zが、連結されて6員芳香族環構造を形成し、プロ触媒が、以下の式(III)による構造を有し、
【化3】
式中、
M、R
1、R
2、R
3、R
4、Z
1、X、およびYが、式(I)で定義されるとおりであり、
R
Z5、R
Z6、R
Z7、およびR
Z8が独立して、-H、(C
1-C
40)ヒドロカルビル、または(C
1-C
40)ヘテロヒドロカルビルである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項4】
R
1、R
2、R
3、およびR
4が独立して、置換フェニル、非置換フェニル、置換ナフチル、非置換ナフチル、置換アントラセニル、または非置換アントラセニルである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項5】
R
1、R
2、R
3、およびR
4が、2,6-ジメトキシフェニル、2,6-ジエトキシフェニル、2,6-ジフェノキシフェニル、2,4,6-トリエトキシフェニル、2,4,6-トリメトキシフェニル、2-フェニルフェニル、または2,6-ジイソプロポキシフェニルである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項6】
R
1、R
2、R
3、およびR
4が、(C
1-C
18)アルキルである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項7】
R
1およびR
2のいずれかが、連結されて5員環構造を形成し、ならびに/またはR
3およびR
4が、連結されて5員環構造を形成する、請求項1に記載の触媒系。
【請求項8】
Z
1が、Nである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項9】
Z
2が、Nである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項10】
Z
3が、Nである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項11】
Z
1およびZ
3が、Nである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項12】
Z
1およびZ
3が、C(R
Z)であり、各それぞれのR
Zが、-Hであり、Z
2が、C(R
Z)であり、前記それぞれのR
Zが、-H、置換(C
1-C
20)アルキル、非置換(C
1-C
20)アルキル、置換(C
6-C
18)アリール、非置換(C
1-C
20)ヘテロアルキル、置換(C
6-C
18)ヘテロアリール、非置換(C
6-C
18)アリール、-OR
N、-SR
N、-SO
3R
N、-SiR
N
3、ハロゲン、-N(R
N)
2、-P(R
P)
2、または-P(O)(R
P)
2から選択され、各R
Nが独立して、置換および非置換(C
6-C
18)アリールまたは(C
1-C
18)アルキルもしくはハロゲンであり、各R
Pが独立して、置換もしくは非置換(C
6-C
18)アリールまたは置換もしくは非置換(C
1-C
18)アルキル、-OR
Pである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項13】
Z
1およびZ
3が、C(R
Z)であり、各それぞれのR
Zが、-Hであり、Z
2が、C(R
Z)であり、前記それぞれのR
Zが、フェニル、ペンタフルオロフェニル、3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニル、-CF
3、-NMe
2、-PPh
2、-P(O)Ph
2-OMe、-SiMe
3、-SiPh
3、カルバゾールイル、ジ-tBu-カルバゾールイル、アントラセニル、ジ-tBu-アントラセニル、-F、または-Clから選択される、請求項1に記載の触媒系。
【請求項14】
Z
1およびZ
3が、C(R
Z)であり、各それぞれのR
Zが、-Hであり、Z
2が、C(R
Z)であり、前記それぞれのR
Zが、メチル、エチル、2-プロピル、n-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、2-メチルプロピル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルである、請求項に記載の触媒系。
【請求項15】
Xが、置換または非置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、置換または非置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビルである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項16】
Xが、メチル、2,2-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、(n-ブチル)ジメチルシリルメチル、(n-ヘキシル)ジメチルシリルメチル、(n-オクチル)ジメチルシリルメチル、またはベンジルである、請求項1に記載の触媒系。
【請求項17】
重合プロセスであって、
オレフィン重合条件下、触媒系の存在下でエチレンおよび任意選択的にオレフィンモノマーを重合して、エチレン系コポリマーを形成することを含み、前記触媒系が、先行請求項のいずれか一項に記載の式(I)による金属-配位子錯体を含む、重合プロセス。
【請求項18】
前記オレフィンモノマーが、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、アルキルアクリレート、グリシジルアクリレート、CH
2=C(H)(CH
2)
nC(O)(OR)、CH
2=C(H)C(O)(OR)、CH
2=CHC(O)R、CH
2=C(H)-OC(O)R、CH
2=CH(OR)、CH
2=CHSi(R)
3-T(OR)
T、またはCH
2=CHClから選択され、
Rが、-H、置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、非置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビル、または非置換(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビルから選択され、
Tが、0、1、2、または3であり、
nが、1~10である、請求項17に記載の重合プロセス。
【請求項19】
本開示のいずれかの構造によるプロ触媒。
【国際調査報告】