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特表2022-544959リチウムベースのエネルギー貯蔵装置用のアノードおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(54)【発明の名称】リチウムベースのエネルギー貯蔵装置用のアノードおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20221017BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20221017BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20221017BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221017BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221017BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20221017BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20221017BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/66 A
H01M4/38 Z
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/134
H01M4/1395
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509188
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 US2020045963
(87)【国際公開番号】W WO2021030461
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】62/886,177
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520324503
【氏名又は名称】グラフェニクス ディベロップメント,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ブリュワー,ジョン シー.
(72)【発明者】
【氏名】タンジル,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ガーマン,ポール ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アンスティ,ロバート ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ルンド,アイザック エヌ.
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE04
5H017HH03
5H029AJ03
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK18
5H029AL02
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ19
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB11
5H050DA10
5H050EA08
5H050GA02
5H050HA04
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA19
5H050HA20
(57)【要約】
エネルギー貯蔵装置で使用するためのアノードを作製する方法は、導電層と、導電層を覆う金属酸化物層とを有する集電体を提供するステップを含む。連続多孔質リチウム貯蔵層は、CVDプロセスによって金属酸化物層上に堆積される。アノードは、連続多孔質リチウム貯蔵層の堆積が完了した後、電池を組み立てる前に、熱処理される。熱処理は、アノードを100℃~600℃の範囲の温度に0.1分~120分の範囲の時間加熱することを含む。アノードは、カソードと共にリチウムイオン電池に組み込まれてもよい。カソードは、硫黄またはセレンを含んでもよい。少なくとも2つの補助層を有するアノードも記載されている。リチウムイオン電池で使用するためのプレリチウム化アノードを作製する方法を考察している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置で使用するためのアノードを作製する方法であって、
導電層と、前記導電層を覆う金属酸化物層とを含む集電体を提供するステップであって、前記金属酸化物層が少なくとも0.01μmの平均厚さを有する、提供するステップと、
CVDプロセスによって前記金属酸化物層上に連続多孔質リチウム貯蔵層を堆積させるステップと、
前記連続多孔質リチウム貯蔵層の堆積が完了した後、電池の組み立ての前に前記アノードを熱処理するステップと、
を含み、
前記熱処理するステップが、前記アノードを100℃~600℃の範囲の温度に0.1分~120分の範囲の時間加熱することを含む、方法。
【請求項2】
前記熱処理するステップが、それぞれ1Torr未満の酸素および水分圧を有する環境で行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱処理するステップが、アルゴン、窒素、または真空下で行われる、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記温度範囲が、350℃~600℃である、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記時間が0.1分~30分の範囲である、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記CVDプロセスがPECVDプロセスである、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記連続多孔質リチウム貯蔵層が、少なくとも40原子%のケイ素、ゲルマニウム、またはそれらの組み合わせの総含有量を含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記連続多孔質リチウム貯蔵層が、1.1g/cm~2.2g/cmの範囲の密度を有する少なくとも85原子%のアモルファスシリコンを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記導電層が、ニッケルまたは銅を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属酸化物層が、遷移金属酸化物を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記遷移金属酸化物が、ニッケルまたはチタンの酸化物である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記導電層が、銅を含み、
前記金属酸化物層が、0.01μm~0.20μmの範囲の厚さを有するチタンの酸化物を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記熱処理するステップの前に、前記連続多孔質リチウム貯蔵層の上にリチウム金属の層を堆積させるステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
リチウム化貯蔵層を形成するために熱処理した後に前記アノードを少なくとも部分的にプレリチウム化することをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記熱処理するステップが、前記アノードをオーブンに移すこと、前記アノードをIR放射源に曝露すること、または前記アノードを加熱された表面と接触させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記熱処理するステップが、
(i)前記連続多孔質リチウム貯蔵層の導電性を高め、
(ii)前記集電体に対する前記連続多孔質リチウム貯蔵層の密着性を高め、または
(iii)リチウムイオン電池セルにおいて、前記熱処理するステップを受けていない同等のアノードよりも高い充電容量を有するアノードを形成し、
(iv)リチウムイオン電池セルにおいて、前記熱処理するステップを受けていない同等のアノードよりも速く充電することができるアノードを形成し;または
(v)(i)、(ii)、(iii)、または(iv)の任意の組み合わせを行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項17】
カソードおよびアノードを含むリチウムイオン電池であって、
前記アノードが、請求項1に記載の方法によって作製される、
リチウムイオン電池。
【請求項18】
前記カソードが、硫黄、セレン、または硫黄とセレンとの両方を含み、
前記アノードが、少なくとも部分的にプレリチウム化されてリチウム化貯蔵層を形成する、
請求項17に記載のリチウムイオン電池。
【請求項19】
前記リチウム化貯蔵層が、前記連続多孔質リチウム貯蔵層の理論的リチウム貯蔵容量の50%~100%の範囲のリチウムを含む、
請求項18に記載のリチウムイオン電池。
【請求項20】
前記電池が、少なくとも1Cの充電速度およびアノード1平方センチメートル当たり少なくとも2.0mAhの充電容量を特徴とする、
請求項17に記載のリチウムイオン電池。
【請求項21】
エネルギー貯蔵装置用のアノードであって、
金属酸化物層を含む集電体、
前記金属酸化物層を覆う連続多孔質リチウム貯蔵層、および
前記連続多孔質リチウム貯蔵層を覆う第1の補助層であって、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、または酸窒化ケイ素を含む、第1の補助層
を含む、アノード。
【請求項22】
前記第1の補助層が、実質的に化学量論的な窒化ケイ素を含み、
前記第1の補助層が、約2nm~約50nmの範囲の厚さを有する、
請求項21に記載のアノード。
【請求項23】
前記第1の補助層が、実質的に化学量論的な二酸化ケイ素を含み、
前記第1の補助層が、約10nm~約150nmの範囲の厚さを有する、
請求項21に記載のアノード。
【請求項24】
前記第1の補助層を覆う第2の補助層をさらに備え、
前記第2の補助層は、前記第1の補助層の組成とは異なる組成によって特徴付けられ、
前記第2の補助層は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、または金属化合物を含む、
請求項21に記載のアノード。
【請求項25】
前記金属化合物が、金属酸化物、金属窒化物、または金属酸窒化物を含み、
前記第2の補助層が、約2nm~約50nmの範囲の厚さを有する、
請求項24に記載のアノード。
【請求項26】
前記第1の補助層が、窒化ケイ素を含み、
前記第2の補助層が、二酸化チタンを含む、
請求項25に記載のアノード。
【請求項27】
前記金属化合物が、リチウム含有材料を含む、
請求項24に記載のアノード。
【請求項28】
前記リチウム含有材料が、リチウムリン酸窒化物、リチウムリン酸塩、リチウムアルミニウム酸化物、またはリチウムランタンチタネートを含む、
請求項27に記載のアノード。
【請求項29】
前記第2の補助層が、約5nm~約150nmの範囲の厚さを有する、
請求項28に記載のアノード。
【請求項30】
前記金属化合物が、メタルコーンを含む、
請求項24に記載のアノード。
【請求項31】
前記第1および第2の補助層を覆う1つまたは複数の追加の補助層をさらに備え、
前記追加の補助層のうちの少なくとも1つが、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、リチウム含有材料、またはメタルコーンを含む、
請求項24に記載のアノード。
【請求項32】
前記連続多孔質リチウム貯蔵層が、少なくとも85原子%のアモルファスシリコンを含み、
前記連続多孔質リチウム貯蔵層が、1.1g/cm~2.2g/cmの範囲の密度を有する、
請求項21に記載のアノード。
【請求項33】
前記金属酸化物層が、ニッケルの酸化物またはチタンの酸化物を含み、少なくとも0.01μmの厚さを有する、
請求項21に記載のアノード。
【請求項34】
エネルギー貯蔵装置用アノードであって、
金属酸化物層を含む集電体、
前記金属酸化物層を覆う連続多孔質リチウム貯蔵層、
前記連続多孔質リチウム貯蔵層を覆う第1の補助層であって、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、または第1の金属化合物を含む第1の補助層、および
前記第1の補助層を覆う第2の補助層であって、前記第2の補助層は、前記第1の補助層の組成とは異なる組成によって特徴付けられ、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、または第2の金属化合物を含む、第2の補助層
を含み、
前記第1の補助層または前記第2の補助層の一方が、二酸化チタンを含み、約2nm~約50nmの範囲の厚さを有する、
アノード。
【請求項35】
(i)前記第1の補助層は、実質的に化学量論的な窒化ケイ素を含み、約2nm~約50nmの範囲の厚さを有し、また
(ii)前記第2の補助層は、二酸化チタンを含み、約2nm~約20nmの範囲の厚さを有する、
請求項34に記載のアノード。
【請求項36】
前記第1の補助層が、二酸化チタンを含み、約2nm~約20nmの厚さを有する、
請求項34に記載のアノード。
【請求項37】
前記第2の補助層が、酸化アルミニウムを含み、前記第2の補助層が約2nm~約20nmの厚さを有する、
請求項36に記載のアノード。
【請求項38】
前記第1の補助層が、酸化アルミニウムを含まない、
請求項34に記載のアノード。
【請求項39】
前記連続多孔質リチウム貯蔵層が、少なくとも85原子%のアモルファスシリコンを含み、
前記連続多孔質リチウム貯蔵層が、1.1g/cm~2.2g/cmの範囲の密度を有する、
請求項34に記載のアノード。
【請求項40】
前記金属酸化物層が、ニッケルの酸化物またはチタンの酸化物を含み、少なくとも0.01μmの厚さを有する、
請求項34に記載のアノード。
【請求項41】
リチウムイオン電池で使用するためのプレリチウム化アノードを作製する方法であって、
導電層と、前記導電層を覆う金属酸化物層とを含む集電体を提供するステップであって、前記金属酸化物層が少なくとも0.01μmの平均厚さを有する、提供するステップと、
CVDプロセスによって前記金属酸化物層上に連続多孔質リチウム貯蔵層を堆積させるステップと、
前記アノードを含む電池の第1の電気化学サイクルの前にリチウム化貯蔵層を形成するべく、リチウムを前記連続多孔質リチウム貯蔵層に組み込むステップと
を含む、方法。
【請求項42】
リチウムを組み込むステップが、前記連続多孔質リチウム貯蔵層の上にリチウム化材料を堆積させるステップを含む、
請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記リチウム化材料が、還元性リチウム化合物、リチウム金属、または安定化リチウム金属粉末を含む、
請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記リチウム化材料の堆積中または堆積後に、前記アノードに熱または圧力を加えるステップをさらに含む、
請求項42に記載の方法。
【請求項45】
リチウムを組み込むステップが、前記アノードをリチウム移動基板上のコーティングと接触させることを含み、
前記コーティングが、リチウム化材料を含む、
請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記リチウム化材料が、還元性リチウム化合物、リチウム金属、または安定化リチウム金属粉末を含む、
請求項45に記載の方法。
【請求項47】
接触中に前記アノードに熱または圧力を加えるステップをさらに含む、
請求項45に記載の方法。
【請求項48】
リチウムを組み込むステップが、前記連続多孔質リチウム貯蔵層を還元性リチウム有機化合物を含む溶液と接触させることを含む、
請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記リチウムを組み込むステップが、プレリチウム化溶液中のリチウムイオンの電気化学的還元を含む、
請求項41に記載の方法。
【請求項50】
リチウム化貯蔵層を形成する前に、前記連続多孔質リチウム貯蔵層の上に補助層を形成するステップをさらに含み、
前記補助層が、窒化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、または金属酸窒化物を含む、
請求項41に記載の方法。
【請求項51】
リチウム化貯蔵層を形成するために前記連続多孔質リチウム貯蔵層にリチウムを組み込むステップが、
(a)前記連続多孔質リチウム貯蔵層の上にリチウム金属層を堆積させるステップ、および
(b)前記リチウム金属層を堆積させた後に、リチウムイオン伝導層を堆積させるステップ
を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
i)ステップ(a)とステップ(b)との間、ii)ステップ(b)の後、またはiii)(i)と(ii)の両方で、前記アノードに熱を加えるステップをさらに含む、
請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記リチウムイオン伝導層が、リチウムリン酸窒化物(LIPON)、リチウムリン酸塩、リチウムアルミニウム酸化物、リチウムランタンチタネート、アルコン、またはジルコンのうちの少なくとも1つを含む、
請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記CVDプロセスが、PECVDプロセスであり、
前記連続多孔質リチウム貯蔵層が、1.1g/cm~2.2g/cmの範囲の密度を有する少なくとも85原子%のアモルファスシリコンを含む、
請求項41に記載の方法。
【請求項55】
前記金属酸化物層が、ニッケルの酸化物またはチタンの酸化物を含む、
請求項41に記載の方法。
【請求項56】
前記リチウム化貯蔵層が、前記連続多孔質リチウム貯蔵層の理論的リチウム貯蔵容量の10%~100%の範囲のリチウムを含む、
請求項41に記載の方法。
【請求項57】
カソードと、リチウム化貯蔵層を有するアノードとを含むリチウムイオン電池であって、
前記アノードが、請求項41に記載の方法によって作製される、
リチウムイオン電池。
【請求項58】
前記カソードは、硫黄、セレン、または硫黄とセレンとの両方を含む、
請求項57に記載のリチウムイオン電池。
【請求項59】
前記カソードが、カーボンナノチューブをさらに含む、
請求項58に記載のリチウムイオン電池。
【請求項60】
前記リチウム化貯蔵層が、前記連続多孔質リチウム貯蔵層の理論的リチウム貯蔵容量の50%~100%の範囲のリチウムを含む、
請求項57に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年8月13日に出願された米国仮出願第62/886,177号明細書の利益を主張し、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、リチウムイオン電池および関連するエネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0003】
シリコンは、約370mAh/gに制限された貯蔵容量を有する従来の炭素系アノードに取って代わるリチウムイオン電池のための潜在的な材料として提案されている。ケイ素はリチウムと容易に合金化し、炭素系アノードよりもはるかに高い理論貯蔵容量(室温で約3600から4200mAh/g)を有する。しかしながら、ケイ素マトリックスへのリチウムの挿入および抽出は、著しい体積膨張(>300%)および収縮を引き起こす。これは、シリコンの小さな粒子への急速な粉砕および集電体からの電気的切断をもたらすことができる。
【0004】
業界は、最近、粉砕の問題を低減するためにナノ構造または微細構造シリコン、すなわち、離間したナノワイヤまたはマイクロワイヤ、チューブ、ピラー、粒子などの形態のシリコンに注目している。理論は、構造をナノサイズにして亀裂の伝播を回避し、それらを離間させることにより、体積膨張のためのより多くの空間を可能にし、それにより、例えばバルクシリコンの巨視的層と比較して、応力が低減され、安定性が改善された状態で、シリコンがリチウムを吸収することを可能にすることである。
【0005】
構造化シリコン手法の研究にもかかわらず、シリコンのみに基づくそのような電池は、未解決の問題のためにまだ大きな市場での影響を与えていない。重要な問題は、これらのアノードを形成するために必要な製造の複雑さおよび投資である。例えば、米国特許出願公開第20150325852号明細書は、最初にプラズマ化学気相成長(PECVD)によってナノワイヤテンプレート上にケイ素系の非コンフォーマル多孔質層を成長させ、続いて熱化学気相成長(CVD)を使用してより緻密なコンフォーマルシリコン層を堆積させることによって製造されたケイ素を記載している。シリコンナノワイヤの形成は、品質管理および再現性を課題とする堆積条件における小さな摂動に対して、非常に影響されやすいことがある。ナノ構造シリコンまたはマイクロ構造シリコンを形成するための他の方法は、シリコンウェハのエッチングを使用し、これは時間がかかり、無駄である。さらに、シリコンワイヤと集電体との間の接続は本質的に脆弱であり、構造は、電池を製造するために必要な、取り扱い中の応力を受けたときに、破損または摩耗する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第20150325852号明細書
【発明の概要】
【0007】
製造が容易であり、取り扱いに強く、充電容量が大きく、例えば少なくとも1Cの急速充電に適したLiイオン電池などの、リチウムベースのエネルギー貯蔵装置用のアノードが依然として必要とされている。これらの必要性や他の必要性が、本明細書に記載の実施形態によって対処される。
【0008】
本開示の一実施形態によれば、エネルギー貯蔵装置で使用するためのアノードを作製する方法は、導電層と、導電層を覆う金属酸化物層とを有する集電体を提供することを含む。金属酸化物層は、少なくとも0.01μmの平均厚さを有する。連続多孔質リチウム貯蔵層は、CVDプロセスによって金属酸化物層上に堆積される。アノードは、連続多孔質リチウム貯蔵層の堆積が完了した後、電池を組み立てる前に、熱処理される。熱処理は、アノードを100℃~600℃の範囲の温度に0.1分~120分の範囲の時間加熱することを含む。アノードは、カソードと共にリチウムイオン電池に組み込まれてもよい。カソードは硫黄またはセレンを含んでもよく、アノードはプレリチウム化されてもよい。
【0009】
本開示の一実施形態によれば、金属酸化物層を有する集電体を含むエネルギー貯蔵装置用のアノードが提供される。連続多孔質リチウム貯蔵層は金属酸化物層を被覆し、第1の補助層は連続多孔質リチウム貯蔵層を被覆する。第1の補助層は、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、または酸窒化ケイ素を含む。
【0010】
本開示の別の実施形態によれば、金属酸化物層を有する集電体と、金属酸化物層を覆う連続多孔質リチウム貯蔵層と、連続多孔質リチウム貯蔵層を覆う第1の補助層と、第1の補助層を覆う第2の補助層とを含むエネルギー貯蔵装置用アノードが提供される。第1の補助層は、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、または酸窒化ケイ素、または第1の金属化合物を含む。第2の補助層は、第1の補助層の組成とは異なる組成を特徴とし、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、または第2の金属化合物を含む。第1の補助層または第2の補助層の一方は二酸化チタンを含み、約2nm~約50nmの範囲の厚さを有する。
【0011】
本開示の別の実施形態によれば、リチウムイオン電池で使用するためのプレリチウム化アノードを作製する方法は、導電層と、導電層を覆う金属酸化物層とを有する集電体を提供することを含む。金属酸化物層は、少なくとも0.01μmの平均厚さを有する。連続多孔質リチウム貯蔵層は、CVDプロセスによって金属酸化物層上に堆積される。リチウムは、連続多孔質リチウム貯蔵層に組み込まれて、アノードが電池に組み立てられるときの第1の電気化学サイクルの前にリチウム化貯蔵層を形成する。アノードは、カソードと共にリチウムイオン電池に組み込まれてもよい。カソードは硫黄またはセレンを含んでもよく、アノードはプレリチウム化されてもよい。
【0012】
本開示は、従来のアノードと比較して、少なくとも以下の利点、すなわち、急速な≧1Cの充電速度での安定性の改善、より高い全面電荷容量、シリコン1グラム当たりのより高い電荷容量、物理的耐久性の向上、簡略化された製造プロセス、およびより再現性のある製造プロセスのうちの1つまたは複数を有することができるエネルギー貯蔵装置用のアノードを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示のいくつかの実施形態によるアノードの断面図である。
図2】従来技術のアノードの断面図である。
図3】本開示のいくつかの実施形態によるアノードの断面図である。
図4】本開示のいくつかの実施形態によるアノードの断面図である。
図5】本開示のいくつかの実施形態によるアノードの断面図である。
図6】本開示のいくつかの実施形態によるアノードの断面図である。
図7A】本開示のいくつかの実施形態によるアノードの断面図である。
図7B】本開示のいくつかの実施形態によるアノードの断面図である。
図8】本開示の特定の実施形態によるアノードを準備するためのプロセスフロー図である。
図9A】本開示のいくつかの実施形態によるアノードのロールツーロール処理のための装置の概略図である。
図9B】本開示のいくつかの実施形態によるアノードのロールツーロール処理のための装置の概略図である。
図10】本開示のいくつかの実施形態による電池の断面図である。
図11】本開示のいくつかの実施形態によるアノードのサイクル性能データを示す図である。
図12】本開示のいくつかの実施形態によるアノードのサイクル性能データを示す図である。
図13】本開示のいくつかの実施形態によるアノードのサイクル性能データを示す図である。
図14】本開示のいくつかの実施形態によるアノードのサイクル性能データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面は、本開示の概念を説明するためのものであり、縮尺通りではない場合があることを理解されたい。
【0015】
アノードの概要
図1は、本開示のいくつかの実施形態による断面図である。アノード100は、導電性集電体101および連続多孔質リチウム貯蔵層107を含む。この実施形態では、導電性集電体101は、導電層103、例えば導電性金属層の上に設けられた金属酸化物層105を含む。連続多孔質リチウム貯蔵層107は、金属酸化物層105の上に設けられている。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層107の上部は、アノード100の上面108に対応する。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層107は、金属酸化物層と物理的に接触している。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層の活物質は、部分的に金属酸化物層内に延びていてもよい。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、リチウムと電気化学的に可逆的な合金を形成することができる材料を含む。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、ケイ素、ゲルマニウム、スズまたはそれらの合金を含む。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、少なくとも40原子%のケイ素、ゲルマニウムまたはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、限定はしないが、熱線CVDまたはプラズマ化学気相成長(PECVD)を含む化学気相成長(CVD)のプロセスによって提供される。いくつかの実施形態では、CVD貯蔵層堆積プロセスは、金属酸化物層の一部を金属に還元することができる。
【0016】
本開示では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、例えば、離間したワイヤ、ピラー、チューブなどの形態、またはリチウム貯蔵層を通って延びる規則的な線形垂直チャネルの形態のナノ構造を実質的に含まない。図2は、集電体180上に設けられたナノワイヤ190、ナノピラー192、ナノチューブ194およびナノチャネル196などのナノ構造体のいくつかの非限定的な例を含む従来技術のアノード170の断面図を示す。本明細書における「ナノ構造」という用語は、一般に、下地の基板(層厚など)に対してほぼ垂直な寸法を除き、またランダムな細孔およびチャネルによって引き起こされる寸法を除いて、約2,000nm未満の少なくとも1つの断面寸法を有する活物質構造(例えば、シリコン、ゲルマニウムまたはそれらの合金の構造)を指す。同様に、「ナノワイヤ」、「ナノピラー」および「ナノチューブ」という用語は、それぞれ、その少なくとも一部が2,000nm未満の直径を有するワイヤ、ピラーおよびチューブを指す。「高アスペクト比」ナノ構造は、4:1より大きいアスペクト比を有し、アスペクト比は、一般に、特徴(下にある集電体表面に対して45から90度の角度で整列した特徴軸に沿って測定され得る)の高さまたは長さを、特徴(特徴軸にほぼ直交して測定され得る)の幅で割ったものである。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、アノードが1600平方ミクロン当たり平均10未満のナノ構造(ナノ構造の数は、4:1以上のアスペクト比を有するナノ構造など同じ単位面積内のナノワイヤ、ナノピラー、およびナノチューブの数の合計)を有する場合、ナノ構造を「実質的に含まない」と見なされる。あるいは、1600平方マイクロメートル当たり平均1未満のそのようなナノ構造が存在する。後述するように、集電体は高い表面粗さを有することができ、または表面層はナノ構造を含むことができるが、これらの特徴は連続多孔質リチウム貯蔵層とは別個のものである。
【0017】
いくつかの実施形態では、堆積条件は、連続多孔質リチウム貯蔵層が比較的滑らかであり、550nmで少なくとも10%、あるいは少なくとも20%(連続多孔質リチウム貯蔵層側で測定)の拡散反射率または全反射率を有するアノードを提供するように、金属酸化物と組み合わせて選択される。いくつかの実施形態では、アノードは、例えば、粗い表面を有する集電体を提供することによって、またはリチウム貯蔵層の堆積条件を変更することによって、上記で引用したものよりも低い反射率を有し得る。
【0018】
アノードは、連続した箔またはシートであってもよいが、代わりにメッシュであってもよく、または他の何らかの三次元構造を有してもよい。いくつかの実施形態では、アノードは可撓性である。
【0019】
図3に示すいくつかの実施形態では、集電体301は、導電層303と、導電層303の両側に堆積された金属酸化物層(305a、305b)とを含み、連続多孔質リチウム貯蔵層(307a、307b)が両側に配置されてアノード300を形成する。金属酸化物層305aおよび305bは、組成、厚さ、多孔性または他の何らかの特性に関して同じであっても異なっていてもよい。同様に、連続多孔質リチウム貯蔵層307aおよび307bは、組成、厚さ、多孔度または他の何らかの特性に関して同じであっても異なっていてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、集電体はメッシュ構造を有し、代表的な断面を図4に示す。集電体401は、内側の導電性コア403、例えばメッシュの一部を形成するワイヤを実質的に取り囲む金属酸化物層405を含み、コアは導電層として作用する。金属酸化物層の上に連続多孔質リチウム貯蔵層407を設けて、アノード400を形成する。メッシュは、金属または導電性炭素の織り合わされたワイヤまたはリボンから形成することができ、基板、例えば金属または金属被覆シート、または当技術分野で公知の任意の適切な方法に孔をパターニングすることによって形成することができる。
【0021】
集電体
集電体(101、301、401)は、少なくとも1つの金属酸化物層(105、305、405)を含み、別個の導電層(103、303、403)をさらに含んでもよい。金属酸化物は、化学量論的または非化学量論的であり得る。金属酸化物層は、均一または不均一に分布した酸化物化学量論を有する金属酸化物の混合物、金属の混合物またはその両方を含み得る。金属酸化物層(105、305、405)が集電体として機能するのに十分な導電性を有する場合、別個の導電層(103、303、403)は任意である。導電層を使用する実施形態では、金属酸化物層は、導電層と連続多孔質リチウム貯蔵層との間の電荷の移動を可能にするのに十分な導電性(例えば、少なくとも半導電性または非絶縁性)であるべきである。金属酸化物層は、導電性を促進する未酸化金属のドーパントまたは領域を含んでもよい。いくつかの実施形態では、導電層は、少なくとも10S/m、あるいは少なくとも10S/m、あるいは少なくとも10S/mの導電率を有することができ、無機もしくは有機導電性材料またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、導電層は、金属材料、例えば、チタン(およびその合金)、ニッケル(およびその合金)、銅(およびその合金)、またはステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、導電層は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、およびグラファイトなどの導電性炭素を含む。いくつかの実施形態では、導電層は、導電性材料の箔またはシートの形態、あるいは絶縁基板(例えば、ニッケルまたは銅などの導電性材料で任意選択的に両面をコーティングされたポリマーシート)上に堆積された層であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、金属酸化物層は、遷移金属酸化物、例えばニッケル、チタンまたは銅の酸化物を含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物層はアルミニウムの酸化物を含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物層は、限定はしないが、インジウムドープ酸化スズ(ITO)またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)を含む導電性ドープ酸化物である。いくつかの実施形態では、金属酸化物層は、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物を含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物層はリチウムの酸化物を含む。上述のように、金属酸化物層は金属の混合物を含み得る。例えば、「ニッケルの酸化物」は、ニッケルに加えて他の金属を任意に含んでもよい。いくつかの実施形態では、金属酸化物層は、遷移金属(例えば、ニッケルまたは銅)の酸化物と共にアルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えば、リチウムまたはナトリウム)の酸化物を含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物層は、酸化物に対する水酸化物の形態の酸素原子の比がそれぞれ0.25未満であるように、少量の水酸化物を含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、金属酸化物層は、少なくとも0.005μm、あるいは少なくとも0.01μm、あるいは少なくとも0.02μm、あるいは少なくとも0.05μm、あるいは0.1μm、あるいは少なくとも0.2μm、あるいは少なくとも0.5μmの平均厚さを有する。いくつかの実施形態では、金属酸化物層は、約0.005μm~約0.01μm、あるいは約0.01μm~約0.02μm、あるいは約0.02μm~約0.05μm、あるいは約0.05μm~約0.1μm、あるいは約0.1μm~約0.2μm、あるいは約0.2μm~約0.5μm、あるいは約0.5μm~約1μm、あるいは約1μm~約2μm、あるいは約2μm~約5μm、あるいは約5μm~約1μmの範囲の平均厚さ、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせを有する。
【0025】
金属酸化物層は、化学量論的酸化物、非化学量論的酸化物、またはその両方を含み得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物層内の金属は、複数の酸化状態で存在し得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物層は、導電層に隣接する酸素の原子%が、リチウム貯蔵層に隣接する原子%よりも低い、酸素含有量の勾配を有し得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、金属酸化物層は、原子層堆積(ALD)、CVD、蒸着またはスパッタリングによって直接形成される。いくつかの実施形態では、導電層は金属層103であり、金属酸化物層は導電(金属)層の一部を酸化することによって形成される。例えば、金属は、酸素の存在下で熱酸化され、電解酸化され、酸化性の液体または気体媒体中で化学的に酸化されて、金属酸化物層を形成することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、金属酸化物層前駆体組成物を導電層103上にコーティングまたは印刷し、次いで処理して金属酸化物層105を形成することができる。金属酸化物前駆体組成物のいくつかの非限定的な例には、ゾル-ゲル(金属アルコキシド)、金属炭酸塩、金属酢酸塩(有機酢酸塩を含む)、金属水酸化物および金属酸化物分散物が含まれる。金属酸化物前駆体組成物を熱処理して金属酸化物層を形成してもよい。いくつかの実施形態では、室温は、前駆体を熱処理するのに十分な温度であり得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物前駆体組成物は、少なくとも50℃、あるいは50℃~150℃の範囲、あるいは150℃~250℃の範囲、あるいは250℃~350℃の範囲、あるいは350℃~450℃の範囲、またはこれらの範囲の任意の組み合わせの温度に曝露することによって熱処理される。前駆体から金属酸化物層を形成するための熱処理時間は、多くの要因に依存するが、約0.1分~約1分、あるいは約1分~約5分、あるいは約5分~約10分、あるいは約10分~約30分、あるいは約30分~約60分、あるいは約60分~約90分、あるいは約90分~約120分の範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、熱処理は、オーブン、赤外線加熱素子、加熱された表面(例えば、ホットプレート)との接触、またはフラッシュランプへの曝露を使用して行われてもよい。いくつかの実施形態では、金属酸化物前駆体組成物を減圧に曝露することによって処理して金属酸化物を形成し、例えば溶媒または揮発性反応生成物を追い出す。減圧は、100Torr未満、あるいは0.1~100Torrの範囲であってもよい。減圧への曝露時間は、約0.1分~約1分、あるいは約1分~約5分、あるいは約5分~約10分、あるいは約10分~約30分、あるいは約30分~約60分、あるいは約60分~約90分の範囲、あるいは約90分~約120分の範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、減圧および熱処理の両方を使用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、金属酸化物層前駆体組成物は、酸化物層前駆体が容易に酸化されるが、下地の導電層がそれほど酸化されない条件下で酸化剤(例えば、前述のように)で処理される金属、例えば金属含有粒子を含む。金属酸化物前駆体組成物は、導電層の金属と同じまたは異なる金属を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、複数の金属前駆体組成物を使用して、異なる金属酸化物のパターンまたは異なる金属酸化物の多層構造を形成することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、導電層は、束状カーボンナノチューブまたはナノファイバーから形成されたものを含むがこれらに限定されない導電性炭素のメッシュまたはシートを含む。いくつかの実施形態では、そのような炭素系導電層は、導電性金属、例えば、ニッケル、銅、亜鉛、チタンなどの表面層を含むことができる。いくつかの実施形態では、導電性金属表面層は、電解または無電解めっき法によって塗布されてもよい。金属表面層は、部分的または完全に酸化されて、対応する金属酸化物層を形成してもよい。いくつかの実施形態では、多孔質金属酸化物は、非多孔質金属酸化物の密度よりも低い密度を有し得る。いくつかの実施形態では、多孔質金属酸化物の密度は、非多孔質金属酸化物の密度の50%~60%、あるいは60%~70%、あるいは70%~80%、あるいは80%~90%、あるいは90%~95%、あるいは95%~99%の範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせである。
【0030】
いくつかの実施形態では、金属酸化物は、連続多孔質リチウム貯蔵層を堆積させるために使用されるツールと同じチャンバ内に、またはそれに沿って形成される。ドープされた金属酸化物層は、金属酸化物形成ステップ中にドーパントもしくはドーパント前駆体を添加することによって、または代替的に、金属酸化物層形成ステップの前に導電層の表面にドーパントもしくはドーパント前駆体を添加することによって、または代替的に、金属酸化物層の最初の形成後に金属酸化物層をドーパントもしくはドーパント前駆体で処理することによって形成することができる。いくつかの実施形態では、金属酸化物層自体がいくらかの可逆的または不可逆的なリチウム貯蔵容量を有し得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物層の可逆容量は、連続多孔質リチウム貯蔵層よりも低い。いくつかの実施形態では、金属酸化物層は多孔質であってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、金属酸化物は、米国特許出願第16/909,008号明細書に開示されているように、導電層の上にパターンで提供されてもよく、その内容全体は、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0032】
いくつかの実施形態では、金属酸化物は、金属基板の表面領域を酸化すること、例えば、ニッケル箔などの金属箔を酸化することによって形成される。金属箔の未酸化部分は導電層として作用し、酸化部分は金属酸化物層に相当する。この方法は、集電体の大量かつ低コストの製造に適している。酸化条件は、金属/金属表面、目標の酸化物の厚さおよび所望の酸化物多孔度に依存する。特に明記しない限り、特定の金属へのいずれかの言及は、その金属の合金を含む。例えば、ニッケル箔は、純ニッケルまたはニッケルが主成分である任意のニッケル合金を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金金属も酸化し、合金から形成されたニッケルの酸化物は、対応する酸化金属を含むことができる。いくつかの実施形態では、集電体は、少なくとも300℃、あるいは少なくとも400℃、例えば約600℃~約900℃の範囲、あるいはより高い温度にされた空気での炉内でのニッケル基板、例えばニッケル箔の酸化によって形成される。保持時間は、選択された温度および金属酸化物層の所望の厚さ/多孔度に依存する。典型的には、酸化保持時間は約1分~約2時間の範囲であるが、より短いまたはより長い時間が考えられる。表面前処理ステップを適用して、酸化を促進または制御することができる。銅およびチタンなどの他の金属は、酸化される傾向に応じて、他の運転保持時間、温度および前処理があってもよい。
【0033】
集電体は、化学組成の異なる2つ以上の副層を含む導電層を有してもよい。例えば、集電体は、第1の導電性副層としての金属銅箔と、銅の上に設けられた金属ニッケルの第2の導電性副層と、金属ニッケルの上の酸化ニッケルの層とを含んでもよい。前述のように、金属銅およびニッケルは合金の形態であってもよい。同様に、金属酸化物層は、化学組成の異なる2以上の副層を含んでいてもよい。例えば、集電体は、金属銅箔と、銅箔の上の酸化銅の層と、酸化銅の上の二酸化チタンの層とを含むことができる。図5は、これらの実施形態を示す断面図である。図5のアノード500は、導電層503の上に設けられた金属酸化物層505を有する導電性集電体501を含む。導電層503は、それぞれ第1および第2導電性副層503aおよび503bに分割され、金属酸化物層505は、それぞれ第1および第2金属酸化物副層505aおよび505bに分割される。第2の金属酸化物副層505bの上には、連続多孔質リチウム貯蔵層507が形成されている。そのような副層は、不連続であってもよく、または化学組成の勾配の形態をとってもよい。いくつかの実施形態では、導電層と金属酸化物層との間に勾配または遷移領域が存在してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態(図示せず)では、導電性集電体前駆体は、表面の第2の金属副層が下地の第1の金属副層よりも容易に酸化されるように、金属副層を有する導電層を最初に有してもよい。集電体を形成するための酸化条件下では、第2の副層のみが酸化する(全部または一部のみ)。これにより、金属酸化物層の厚さをより良好に制御することができる。
【0035】
連続多孔質リチウム貯蔵層
連続多孔質リチウム貯蔵層は、リチウムを可逆的に取り込むことが可能な多孔質材料を含む。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、ケイ素、ゲルマニウムまたは両方の混合物を含む。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層はアンチモンまたはスズを含む。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は実質的に非晶質である。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、実質的にアモルファスシリコンを含む。そのような実質的に非晶質の貯蔵層は、その中に分散された少量(例えば、20原子%未満)の結晶性材料を含むことができる。連続多孔質リチウム貯蔵層は、水素、ホウ素、リン、硫黄、フッ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ヒ素、アンチモン、ビスマス、窒素、または金属元素などのドーパントを含んでもよい。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、例えば、0.1から20原子%、またはそれ以上の水素含有量を有する多孔質の実質的に非晶質の水素化シリコン(a-Si:H)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、メチル化アモルファスシリコンを含んでもよい。水素含有量について特に言及しない限り、リチウム貯蔵材料または層について本明細書で使用される原子%メトリックは、水素以外のすべての原子を指すことに留意されたい。
【0036】
いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、少なくとも40原子%のケイ素、ゲルマニウムまたはそれらの組み合わせ、あるいは少なくとも50原子%、あるいは少なくとも60原子%、あるいは少なくとも70原子%、あるいは少なくとも80原子%、あるいは少なくとも90原子%を含む。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、少なくとも40原子%のケイ素、あるいは少なくとも50原子%、あるいは少なくとも60原子%、あるいは少なくとも70原子%、あるいは少なくとも80原子%、あるいは少なくとも90原子%、あるいは少なくとも95原子%、あるいは少なくとも97原子%を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、10原子%未満、あるいは5原子%未満、あるいは2原子%未満、あるいは1原子%未満、あるいは0.5原子%未満の炭素を含む。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、5%重量未満、あるいは1%重量未満の炭素系結合剤、カーボンナノチューブ、黒鉛状炭素、グラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、カーボンブラックおよび導電性炭素を含む。
【0038】
連続多孔質リチウム貯蔵層は、サイズ、形状および分布に関してランダムまたは不均一であり得る空隙または隙間(細孔)を含む。そのような多孔性は、ナノワイヤ、ナノピラー、ナノチューブ、ナノチャネルなどの任意の認識可能なナノ構造体の形成をもたらさないか、またはそれに起因しない。いくつかの実施形態では、細孔は多分散性である。いくつかの実施形態では、SEM断面によって分析した場合、任意の寸法における100nmより大きい細孔の90%は、任意の寸法において約5μmより小さく、あるいは約3μmより小さく、あるいは約2μmより小さい。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、任意の寸法が100nm未満、あるいは任意の寸法が50nm未満、あるいは任意の寸法が20nm未満のいくつかの細孔を含み得る。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、1.0~1.1g/cm、あるいは1.1~1.2g/cm、あるいは1.2~1.3g/cm、あるいは1.3~1.4g/cm、あるいは1.4~1.5g/cm、あるいは1.5~1.6g/cm、あるいは1.6~1.7g/cm、あるいは1.7~1.8g/cm、あるいは1.8~1.9g/cm、あるいは1.9~2.0g/cm、あるいは2.0~2.1g/cm、あるいは2.1~2.2g/cm、あるいは2.2~2.25g/cm、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせの範囲の平均密度を有し、少なくとも40原子%のケイ素、あるいは少なくとも50原子%のケイ素、あるいは少なくとも60原子%のケイ素、あるいは少なくとも70原子%のケイ素、あるいは80原子%のケイ素、あるいは少なくとも90原子%のケイ素、あるいは少なくとも95原子%のケイ素を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層の活物質(例えば、ケイ素、ゲルマニウムまたはそれらの合金)の大部分は、集電体の一部にわたって実質的な横方向の接続性を有し、そのような接続性は、(後述するように)ランダムな細孔および隙間の周りに延びる。再び図1を参照すると、いくつかの実施形態では、「実質的な横方向接続性」は、連続多孔質リチウム貯蔵層107の1つの点Xにおける活物質が、連続多孔質リチウム貯蔵層の厚さTと少なくとも同じ大きさの直線横方向距離LD、あるいは厚さの少なくとも2倍の横方向距離、あるいは厚さの少なくとも3倍の横方向距離で層の第2の点X’において活物質に接続され得ることを意味する。図示されていないが、包囲する細孔を含む材料の接続の経路の総距離は、LDよりも長くてもよい。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、ランダムな細孔および隙間が埋め込まれた、相互接続されたケイ素、ゲルマニウムまたはそれらの合金のマトリックスとして説明することができる。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層はスポンジ状の形態を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも電気化学的形成の前に、金属酸化物層表面の約75%以上が連続多孔質リチウム貯蔵層と連続している。連続多孔質リチウム貯蔵層は、必ずしも横方向のいずれの切れ目なしにアノード全体にわたって延在するとは限らず、ランダムな不連続性または亀裂を含んでもよく、依然として連続的であると考えられることに留意されたい。
【0040】
いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、ケイ素(SiO)、ゲルマニウム(GeO)またはスズ(SnO)の準化学量論的酸化物を含み、酸素原子対ケイ素、ゲルマニウムまたはスズ原子の比は、2:1未満、すなわちx<2、あるいは1:1未満、すなわちx<1である。いくつかの実施形態では、xは、0.02から0.95、あるいは0.02から0.10、あるいは0.10から0.50、あるいは0.50から0.95、あるいは0.95から1.25、あるいは1.25から1.50の範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせである。
【0041】
いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、ケイ素(SiN)、ゲルマニウム(GeN)またはスズ(SnN)の準化学量論的窒化物を含み、窒素原子対ケイ素、ゲルマニウムまたはスズ原子の比は1.25:1未満、すなわちy<1.25である。いくつかの実施形態では、yは、0.02から0.95、あるいは0.02から0.10、あるいは0.10から0.50、あるいは0.50から0.95、あるいは0.95から1.20の範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせである。
【0042】
いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、ケイ素、ゲルマニウムまたはスズ原子に対する全酸素および窒素原子の比が1:1未満、すなわち(x+y)<1である、ケイ素(SiO)、ゲルマニウム(GeO)またはスズ(SnO)の準化学量論的酸窒化物を含む。いくつかの実施形態では、(x+y)は、0.02から0.95、あるいは0.02から0.10、あるいは0.10から0.50、あるいは0.50から0.95の範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせである。
【0043】
いくつかの実施形態では、上記の準化学量論的な酸化物、窒化物または酸窒化物は、PECVDプロセスを含むがこれに限定されないCVDプロセスによって提供される。酸素および窒素は、連続多孔質リチウム貯蔵層内に均一に供給されてもよく、あるいは酸素または窒素含有量は、貯蔵層の厚さの関数として変化してもよい。
【0044】
図6を参照すると、アノード600は、金属酸化物層605および導電層603を含む集電体601の上に設けられた連続多孔質リチウム貯蔵層607を含む。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層607は、異なる物理的特性または化学組成を有し、上記の実施形態のいずれかから独立して選択される複数の連続多孔質リチウム貯蔵副層(607aおよび607b)を含む。例えば、リチウム貯蔵副層607aは、低酸素含有量のアモルファスシリコンを含むことができ、リチウム貯蔵副層607bは、シリコンの亜酸化物SiOを含むことができ、xは0.02から0.95の範囲である。あるいは、607aおよび607bの組成を逆にすることもできる。別の例では、リチウム貯蔵副層607aは、低ゲルマニウムを有するアモルファスシリコンを含んでもよく、リチウム貯蔵副層607bは、607aよりも高い原子%ゲルマニウムを含む。いくつかの実施形態では、リチウム貯蔵副層は、異なる量または種類のドーパントを有してもよい。いくつかの他の実施形態では、リチウム貯蔵副層607aおよび607bは同様の化学組成を有するが、607aの密度は607bよりも高い。これらは、非限定的な例のほんの数例である。他の多くの組み合わせが可能である。2つのリチウム貯蔵副層が図6に示されているが、代わりに3つ以上の副層が使用されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、層厚の関数として、成分、密度、もしくは多孔度の勾配、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、連続多孔質リチウム貯蔵層107は、上面108付近よりも金属酸化物層105付近の方が密度が高いアモルファスシリコンを含んでいてもよく、その逆であってもよい。
【0046】
追加のリチウム貯蔵層
本アノードのいくつかの実施形態の略平坦な性質は、本明細書に記載の連続多孔質リチウム貯蔵層ではない追加のリチウム貯蔵層の単純なコーティングをさらに可能にする。例えば、場合によりシリコン粒子をさらに含み得る炭素に基づく従来のリチウムイオン電池スラリーを、本開示の連続多孔質リチウム貯蔵層上にコーティングして、充電容量をさらに増幅させることができる。コーティング法は、カーテンコーティング、スロットコーティング、スピンコーティング、インクジェットコーティング、スプレーコーティング、または任意の他の適切な方法を含むことができる。
【0047】
CVD
CVDは、一般に、前駆体ガス、直接液体注入CVDに関してガス化された液体、またはガスおよび液体を、典型的には加熱されたコーティングされるべき1つまたは複数の物体を含むチャンバに流すことを含む。高温の表面およびその付近で化学反応が起こり、表面に薄膜が堆積する。これは、未反応の前駆体ガスと共にチャンバから排出される化学的副生成物の生成を伴う。堆積された多種多様な材料および広範囲の用途で予想されるように、リチウム貯蔵層、金属酸化物層、補助層(下記参照)または他の層を形成するために使用され得るCVDの多くの変形がある。これは、いくつかの実施形態では、熱い壁の反応器または冷たい壁の反応器内で、キャリアガスを用いておよび用いずに、torr未満の全圧から大気圧を超えて、典型的には100~1600℃の範囲の温度で行うことができる。堆積速度を増加させ、および/または堆積温度を低下させるためのプラズマ、イオン、光子、レーザ、ホットフィラメント、または燃焼反応の使用を含む様々な改良されたCVDプロセスもある。温度、前駆体材料、ガスの流れの量、圧力、基板電圧バイアス(適用可能な場合)、およびプラズマエネルギー(適用可能な場合)を含むがこれらに限定されない様々なプロセス条件を使用して堆積を制御することができる。
【0048】
上述のように、連続多孔質リチウム貯蔵層、例えばシリコンもしくはゲルマニウムまたはその両方の層は、プラズマ化学気相成長(PECVD)によって提供され得る。従来のCVDと比較して、PECVDによる堆積は、より低い温度およびより高い速度で行われることが多く、これはより高い製造スループットに有利であり得る。いくつかの実施形態では、PECVDを使用して、金属酸化物層の上に実質的にアモルファスシリコン層(任意選択的にドープされた)を堆積させる。いくつかの実施形態では、PECVDを使用して、金属酸化物層の上に実質的に非晶質の連続多孔質シリコン層を堆積させる。
【0049】
PECVD
PECVDプロセスでは、様々な実施態様によれば、プラズマは、基板が配置されているチャンバ内またはチャンバの上流で生成され、チャンバに供給され得る。容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、および導電結合プラズマを含むがこれらに限定されない様々なタイプのプラズマを使用することができる。任意の適切なプラズマ源を使用することができ、DC、AC、RF、VHF、コンビナトリアルPECVDおよびマイクロ波源を含めて使用できる。有用なPECVDツールのいくつかの非限定的な例には、中空カソード管PECVD、マグネトロン閉じ込め型PECVD、誘導結合プラズマ化学気相成長法(時としてHDPECVD、ICP-CVDまたはHDCVDと呼ばれるICP-PECVD)、および膨張熱プラズマ化学気相成長法(ETP-PECVD)が含まれる。
【0050】
PECVDプロセス条件(温度、圧力、前駆体ガス、キャリアガス、ドーパントガス、流量、エネルギーなど)は、当技術分野で周知のように、使用される特定のプロセスおよびツールに従って変化し得る。
【0051】
いくつかの実施態様では、PECVDプロセスは、膨張熱プラズマ化学気相成長(ETP-PECVD)プロセスである。そのようなプロセスでは、プラズマ生成ガスは、任意選択的に、隣接する真空チャンバ内に集電体を含むウェブまたは他の基板と共に、直流アークプラズマ発生器を通過してプラズマを形成する。プラズマ中で、シリコン原料ガスが注入され、ラジカルが生成される。プラズマは、分岐ノズルを介して膨張され、真空チャンバ内に基板に向かって注入される。プラズマ発生用ガスの一例は、アルゴン(Ar)である。いくつかの実施形態では、プラズマ中のイオン化アルゴン種は、シリコンソース分子と衝突してシリコンソースのラジカル種を形成し、集電体上に堆積する。DCプラズマ源の電圧および電流の例示的な範囲は、それぞれ60~80ボルトおよび40~70アンペアである。
【0052】
シラン(SiH)、ジクロロシラン(HSiCl)、モノクロロシラン(HSiCl)、トリクロロシラン(HSiCl)、四塩化ケイ素(SiCl)、およびジエチルシランを含む任意の適切なシリコン源を使用してシリコンを堆積させることができる。使用されるガスに応じて、シリコン層は、分解または水素還元などによる別の化合物との反応によって形成され得る。いくつかの実施形態では、ガスは、シランなどのシリコン源、ヘリウム、アルゴン、ネオン、またはキセノンなどの希ガス、任意選択的に1つまたは複数のドーパントガスを含むことができ、また実質的に水素を含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、ガスは、アルゴン、シラン、および水素、ならびに場合によりいくつかのドーパントガスを含むことができる。いくつかの実施形態では、シランおよび水素を合わせたガスの流れに対するアルゴンのガスの流れの比は、少なくとも3.0、あるいは少なくとも4.0である。いくつかの実施形態では、シランおよび水素を合わせたガスの流れに対するアルゴンのガスの流れの比は、3~5、あるいは5~10、あるいは10~15、あるいは15~20の範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、シランガスに対する水素ガスのガスの流れの量の比は、0~0.1、あるいは0.1~0.2、あるいは0.2~0.5、あるいは0.5~1、あるいは1~2、あるいは2~5の範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、シランと水素の複合ガスの流れに対するシランのガスの流れの比が増加すると、より高い多孔度のシリコンが形成され得、および/またはシリコン堆積速度が増加し得る。いくつかの実施形態では、ドーパントガスは、場合によりキャリアガスと混合され得るボランまたはホスフィンである。いくつかの実施形態では、シリコン原料ガス(例えば、シラン)に対するドーパントガス(例えば、ボランまたはホスフィン)のガスの流れの量の比は、0.0001~0.0002、代替的には0.0002~0.0005、代替的には0.0005~0.001、代替的には0.001~0.002、代替的には0.002~0.005、代替的には0.005~0.01、代替的には0.01~0.02、代替的には0.02~0.05、代替的には0.05~0.10、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせの範囲内である。上述のそのようなガスの流れの量の比は、例えば、標準立方センチメートル毎分(SCCM)での相対ガスの流れの量を指すことができる。いくつかの実施形態では、PECVD堆積条件およびガスは、堆積の過程で変更することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、PECVD堆積時間の少なくとも一部の間の集電体の温度は、100℃~200℃、あるいは200℃~300℃、あるいは300℃~400℃、あるいは400℃~500℃、あるいは500℃~600℃の範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、温度はPECVD堆積の時間中に変化し得る。例えば、PECVDの初期時間の温度は、後の時間よりも高くてもよい。あるいは、PECVDの後の時間の間の温度は、前の時間よりも高くてもよい。
【0054】
連続多孔質リチウム貯蔵層の単位面積当たりの厚さまたは質量は、貯蔵材料、所望の充電容量、ならびに他の動作上および寿命の考慮事項に依存する。厚さを増加させると、通常、より多くの容量が得られる。連続多孔質リチウム貯蔵層が厚くなりすぎると、電気抵抗が上昇し、安定性が低下する場合がある。いくつかの実施形態では、アノードは、少なくとも0.5mg/cm、あるいは少なくとも1.0mg/cm、あるいは少なくとも1.5mg/cm、あるいは少なくとも3mg/cm、あるいは少なくとも5mg/cmの活性シリコン面密度を有すると特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、リチウム貯蔵構造体は、0.5~1.5mg/cmの範囲、あるいは1.5~2mg/cmの範囲、あるいは2~3mg/cmの範囲、あるいは3~5mg/cmの範囲、あるいは5~10mg/cmの範囲、あるいは10~15mg/cmの範囲、あるいは15~20mg/cmの範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせの活性ケイ素面密度を有すると特徴付けることができる。「活性シリコン面密度」とは、セルのサイクルの開始時、例えば、後述するアノード「電気化学的形成」の後に可逆的リチウム貯蔵に利用可能な集電体と電気的に連通しているシリコンを指す。この用語の「面」は、その上に活性シリコンが提供される導電層の表面積を指す。いくつかの実施形態では、ケイ素含有量のすべてが活性ケイ素であるわけではない、すなわち、いくつかは非活性ケイ化物の形態で結び付けられてもよく、または集電体から電気的に絶縁されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵部は、少なくとも0.5μm、あるいは少なくとも1μm、あるいは少なくとも3μm、あるいは少なくとも7μmの平均厚さを有する。いくつかの実施形態において、連続多孔質リチウム貯蔵層は、約0.5μm~約50μmの範囲の平均厚さを有する。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、少なくとも85原子%のアモルファスシリコンを含み、0.5~1μm、あるいは1~2μm、あるいは2~4μm、あるいは4~7μm、あるいは7~10μm、あるいは10~15μm、あるいは15~20μm、あるいは20~25μm、あるいは25~30μm、あるいは30~40μm、あるいは40~50μmの範囲の厚さ、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせを有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層はケイ素を含むが、実質的な量の結晶性ケイ化物を含まない、すなわち、ケイ化物の存在はX線回折(XRD)によって容易に検出されない。金属ケイ化物、例えばニッケルシリサイドは、一般に、ケイ素がより高温で金属、例えばニッケル箔上に直接堆積されるときに形成される。ケイ化ニッケルなどの金属ケイ化物は、ケイ素自体よりもはるかに低いリチウム貯蔵容量を有することが多い。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層内のケイ化物形成金属元素の平均原子%は、平均で35%未満、あるいは20%未満、あるいは10%未満、あるいは5%未満である。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層内のケイ化物形成金属元素の平均原子%は、約0.01%~約10%、あるいは約0.05~約5%の範囲である。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層中の金属元素を形成するケイ化物の原子%は、集電体から離れるよりも集電体に近い方が高い。
【0057】
他のアノードの特徴
いくつかの実施形態では、アノードは、1つまたは複数の補助層をさらに含んでもよい。図7Aに示すように、金属酸化物層705および導電層703を含む集電体701を覆う連続多孔質リチウム貯蔵層707の表面上に補助層750が設けられる。いくつかの実施形態では、補助層は、寿命または物理的耐久性を高めるための保護層である。補助層は、リチウム貯蔵材料自体から形成された酸化物または窒化物、例えば、ケイ素の場合は二酸化ケイ素、窒化ケイ素、または酸窒化ケイ素であってもよい。補助層は、例えば、ALD、CVD、PECVD、蒸着、スパッタリング、溶液コーティング、インクジェット、またはアノードと適合する任意の方法によって堆積されてもよい。いくつかの実施形態では、連続リチウム貯蔵層と同じCVDまたはPECVD装置内に補助層が堆積される。例えば、化学量論的な二酸化ケイ素または窒化ケイ素補助層は、連続多孔質リチウム貯蔵層を形成するために使用されるケイ素前駆体ガスと共に酸素または窒素含有ガス(またはその両方)を導入することによって形成される。いくつかの実施形態では、補助層は、窒化ホウ素または炭化ケイ素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、補助層750は、以下に説明するように金属化合物を含むことができる。
【0058】
図7Bに示すように、いくつかの実施形態では、アノードは、第1の補助層を覆い、第1の補助層とは異なる化学組成を有する第1の補助層750-1および第2の補助層750-2を含む。いくつかの実施形態では、第1の補助層750-1は、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、または第1の金属化合物を含むことができる。第2の補助層750-2は、第1の補助層とは異なる組成を有し、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、または第2の金属化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の補助層は、第1の補助層と接触していてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の追加の補助層を第2の補助層の上に設けることができる。2つ以上の補助層を有するいくつかの実施形態では、各補助層は、少なくとも1つの他の補助層と接触している。
【0059】
いくつかの実施形態では、第1の補助層750-1および任意の第2または追加の補助層は、界面を劣化させる可能性がある溶媒または電解質との直接電気化学反応に対するバリアを提供することによって、連続多孔質リチウム貯蔵層を安定化させるのに役立ち得る。補助層は、リチウムイオンに対して合理的に導電性であり、充放電中にリチウムイオンが連続多孔質リチウム貯蔵層に出入りすることを可能にすべきである。いくつかの実施形態では、補助層のリチウムイオン伝導度は、少なくとも10-9S/cm、あるいは少なくとも10-8S/cm、あるいは少なくとも10-7S/cm、あるいは少なくとも10-6S/cmである。いくつかの実施形態では、補助層は固体電解質として作用する。いくつかの実施形態では、補助層は、リチウム貯蔵構造よりも導電性が低いため、補助層/電解質界面でリチウムイオンのリチウム金属への電気化学的還元はほとんどまたは全く起こらない。電気化学反応からの保護を提供することに加えて、複数の補助層構造の実施形態は、優れた構造的支持を提供することができる。いくつかの実施形態では、リチウム化中に連続多孔質リチウム貯蔵層が膨張すると、補助層が屈曲して亀裂を形成することがあるが、バルク電解質へのリチウム貯蔵構造体の直接曝露を低減するために、層間に亀裂伝播を分散させることができる。例えば、第2の補助層の亀裂は、第1の補助層の亀裂と整列していなくてもよい。そのような利点は、ただ1つの厚い補助層が使用される場合には生じ得ない。一実施形態では、第2の補助層は、第1の補助層よりも高い可撓性を有する材料で形成されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、補助層(第1の補助層、第2の補助層、または任意の追加の補助層)は、窒化ケイ素、例えば、シリコンに対する窒素の比が1.33から1.25の範囲内である実質的に化学量論的な窒化ケイ素を含むことができる。窒化ケイ素を含む補助層は、約0.5nm~1nm、あるいは1nm~2nm、あるいは2nm~10nm、あるいは10nm~20nm、あるいは20nm~30nm、あるいは30nm~40nm、あるいは40nm~50nmの範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせの平均厚さを有することができる。窒化ケイ素は、原子層堆積(ALD)プロセスまたはCVDプロセスによって堆積させることができる。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、上述のような何らかの種類のCVDプロセスによって堆積されたケイ素を含み、最後に、窒素ガス源がケイ素源と共にCVD堆積チャンバに添加される。
【0061】
いくつかの実施形態では、補助層(第1の補助層、第2の補助層、または任意の追加の補助層)は、二酸化ケイ素、例えば、ケイ素に対する酸素の比が2.0から1.9の範囲内である実質的に化学量論的な二酸化ケイ素を含むことができる。二酸化ケイ素を含む補助層は、約2nm~10nm、あるいは10nm~30nm、あるいは30nm~50nm、あるいは50nm~70nm、あるいは70nm~100nm、あるいは100nm~150nm、あるいは150nm~200nmの範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせの平均厚さを有することができる。二酸化ケイ素は、原子層堆積(ALD)プロセスまたはCVDプロセスによって堆積させることができる。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、上述のような何らかの種類のCVDプロセスによって堆積されたケイ素を含み、最後に、酸素含有ガス源がケイ素源と共にCVD堆積チャンバに添加される。
【0062】
いくつかの実施形態では、補助層(第1の補助層、第2の補助層、または任意の追加の補助層)は、酸窒化ケイ素、例えば、実質的に化学量論的なケイ素の酸窒化物(SiO)を含むことができ、0.5xと0.75yの合計は1.00から0.95の範囲内である。窒化ケイ素を含む補助層は、約0.5nm~1nm、あるいは1nm~2nm、あるいは2nm~10nm、あるいは10nm~20nm、あるいは20nm~30nm、あるいは30nm~40nm、あるいは40nm~50nm、あるいは50nm~70nm、あるいは70nm~100nm、あるいは100nm~150nmの範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせの平均厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、酸窒化ケイ素は、PECVDプロセスを含むがこれに限定されないCVDプロセスによって提供されてもよい。酸素および窒素は、連続多孔質リチウム貯蔵層内に均一に供給されてもよく、あるいは酸素または窒素含有量は、貯蔵層内の位置(例えば、高さ)の関数として変化してもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、または酸窒化ケイ素は、原子層堆積(ALD)プロセスまたはCVDプロセスによって堆積されてもよい。いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、上述のような何らかの種類のCVDプロセスによって堆積されたケイ素を含み、最後に、窒素および/または酸素含有ガス源がケイ素源と共にCVD堆積チャンバに添加される。
【0064】
いくつかの実施形態では、補助層(第1の補助層、第2の補助層、または任意の追加の補助層)は、金属酸化物、金属窒化物、または金属酸窒化物、例えば、アルミニウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、もしくはスズ、またはそれらの混合物を含むものを含むことができる。いくつかの実施形態では、金属酸化物、金属窒化物、または金属酸窒化物を含む補助層は、約100nm未満、例えば、約0.5nm~約1nm、あるいは約1nm~約2nm、あるいは2nm~10nm、あるいは10nm~20nm、あるいは20nm~30nm、あるいは30nm~40nm、あるいは40nm~50nmの範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせの平均厚さを有することができる。金属酸化物、金属窒化物または金属酸窒化物は、遷移金属、リンまたはケイ素などの他の成分またはドーパントを含んでもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、金属化合物は、リチウムリン酸窒化物(LIPON)、リチウムリン酸塩、リチウムアルミニウム酸化物、またはリチウムランタンチタネートなどのリチウム含有材料を含み得る。いくつかの実施形態では、リチウム含有材料を含む補助層の厚さは、0.5nm~200nm、あるいは1nm~10nm、あるいは10nm~20nm、あるいは20nm~30nm、あるいは30nm~40nm、あるいは40nm~50nm、あるいは50nm~100nm、あるいは100nm~200nmの範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせであってもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、金属化合物は、ALD、熱蒸着、スパッタリング、または電子ビーム蒸着を含むプロセスによって堆積されてもよい。ALDは、典型的には気相化学プロセスの逐次使用に基づく薄膜堆積技術である。ALD反応の大部分は、典型的には前駆体と呼ばれる少なくとも2つの化学物質を使用する。これらの前駆体は、材料の表面と順次自己制限的に反応する。別々の前駆体に繰り返し曝露することにより、薄膜がしばしばコンフォーマルに堆積される。従来のALDシステムに加えて、例えば、米国特許第7,413,982号明細書に記載されているように、いわゆる空間ALD(SALD)方法および材料を使用することができ、その内容全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、SALDは、周囲条件および圧力下で実行することができ、従来のALDシステムよりも高いスループットを有することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、金属化合物を堆積させるためのプロセスは、無電解堆積、溶液との接触、反応性ガスとの接触、または電気化学的方法を含み得る。いくつかの実施形態では、金属層(熱蒸着、CVD、スパッタリング、電子ビーム蒸着、電気化学蒸着、または無電解蒸着を含むが、これらに限定されない)を堆積し、続いて金属を金属化合物(限定されないが、反応性溶液との接触、酸化剤との接触、反応性ガスとの接触、または熱処理を含む)に変換する処理を行うことによって、金属化合物を形成することができる。
【0068】
補助層は、金属酸化物と架橋有機材料との交互層を有する無機有機ハイブリッド構造を含むことができる。これらの無機有機ハイブリッド構造は、「メタルコーン」と呼ばれることもある。そのような構造は、金属化合物を塗布するための原子層堆積と有機化合物を塗布するための分子層堆積(MLD)との組み合わせを使用して作製することができる。有機架橋は、典型的には、複数の官能基を有する分子である。一方の基は金属化合物を含む層と反応することができ、他方の基は後続のALDステップで反応して新しい金属を結合するために利用可能である。ヒドロキシ、カルボン酸、アミン、酸塩化物および無水物を含むがこれらに限定されない広範囲の反応性有機官能基が使用され得る。ALD堆積に適したほぼすべての金属化合物を使用することができる。いくつかの非限定的な例には、アルミニウム(例えば、トリメチルアルミニウム)、チタン(例えば、四塩化チタン)、亜鉛(例えば、ジエチル亜鉛)、およびジルコニウム(トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム)のためのALD化合物が含まれる。本開示の目的のために、金属酸化物/架橋有機物のこの交互の副層構造は、メタルコーンの単一の補助層と考えられる。金属化合物がアルミニウムを含む場合、このような構造は、アルコンと呼ばれることがある。同様に、金属化合物がジルコニウムを含む場合、このような構造はジルコンと呼ばれることがある。補助層として好適であり得る無機-有機ハイブリッド構造のさらなる例は、米国特許第9,376,455号明細書、ならびに米国特許出願公開第2019/0044151号明細書および米国特許出願公開第2015/0072119号明細書に見出すことができ、これらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
いくつかの実施形態では、メタルコーンを有する補助層は、0.5nm~200nm、あるいは1nm~10nm、あるいは10nm~20nm、あるいは20nm~30nm、あるいは30nm~40nm、あるいは40nm~50nm、あるいは50nm~100nm、あるいは100nm~200nmの範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせの厚さを有することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、補助層(第1、第2、または追加の補助層)は、窒化ホウ素または炭化ケイ素を含むことができ、約100nm未満、例えば、約0.5nm~約1nm、あるいは約1nm~約2nm、あるいは2nm~10nm、あるいは10nm~20nm、あるいは20nm~30nm、あるいは30nm~40nm、あるいは40nm~50nmの範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせの平均厚さを有することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、アノードは、少なくとも部分的にプレリチウム化されている、すなわち、連続多孔質リチウム貯蔵層および/または金属酸化物層は、電池組み立て前、すなわち、アノードを電池セル内のカソードと組み合わせる前に、いくらかのリチウムを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層を堆積させる前に、リチウム金属(または他のリチウム化材料)を金属酸化物層上に堆積させる。リチウムは、例えば、蒸着、電子ビームまたはスパッタリングによって堆積されてもよい。リチウムの一部は、リチウム酸化物を形成していてもよい。金属酸化物層が遷移金属、例えば銅またはニッケルの酸化物を含む実施形態では、混合金属酸化物が形成され得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物の上にリチウム層を堆積させることにより、アノードの電気化学的形成(後述)中のリチウムの第1サイクル損失を低減することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、金属酸化物層中のリチウム金属原子対酸素原子の堆積比は、少なくとも0.02、あるいは0.05から1.0の範囲である。場合によっては、リチウム金属の析出量は、連続多孔質リチウム貯蔵層の最大リチウム面容量の少なくとも1%、あるいは2%~10%、あるいは10%~30%、あるいは30%~50%の範囲、またはこれらの範囲の任意の組み合わせに相当する。
【0074】
いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層は、電池組み立て後の第1の電気化学サイクルの前に、または代替的に電池組み立ての前に、少なくとも部分的にプレリチウム化されてもよい。すなわち、最初の電池サイクルの前であっても、一部のリチウムが連続多孔質リチウム貯蔵層に取り込まれてリチウム化貯蔵層を形成し得る。いくつかの実施形態では、リチウム化貯蔵層は、電気化学的に活性なままであり、可逆的にリチウムを貯蔵し続ける、血小板を含むがこれに限定されないより小さな構造に分解することができる。なお、「リチウム化貯蔵層」とは、リチウム貯蔵層の潜在的な蓄電容量の少なくとも一部が充填されていることを単に意味し、必ずしもすべてが充填されている必要はない。いくつかの実施形態では、リチウム化貯蔵層は、連続多孔質リチウム貯蔵層の理論的リチウム貯蔵容量の1%~10%、あるいは10%~20%、あるいは20%~30%、あるいは30%~40%、あるいは40%~50%、あるいは50%~60%、あるいは60%~70%、あるいは70%~80%、あるいは80%~90%、あるいは90%~100%の範囲のリチウム、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物層はリチウムの一部を捕捉することがあり、リチウム化貯蔵層内の所望のリチウム範囲を達成するためにそのような捕捉を考慮する必要があり得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、プレリチウム化は、例えば蒸着、電子ビームまたはスパッタリングによって、連続多孔質リチウム貯蔵層の上、あるいは1つ以上のリチウム貯蔵副層の間、またはその両方にリチウム金属を堆積させることを含み得る。あるいは、プレリチウム化は、アノードを還元性リチウム有機化合物、例えば、リチウムナフタレン、n-ブチルリチウムなどと接触させることを含み得る。いくつかの実施形態では、プレリチウム化は、プレリチウム化溶液中のリチウムイオンの電気化学的還元によってリチウムを組み込むステップを含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、プレリチウム化の前に、連続多孔質リチウム貯蔵層上に1つ以上の補助層(上述)を形成してもよい。補助層は、リチウム取り込み速度を制御するために使用することができる。補助層材料の非限定的な例は、窒化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、または金属酸窒化物を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、プレリチウム化は、連続多孔質リチウム貯蔵層とリチウム化材料との物理的接触を含む。リチウム化材料は、還元性リチウム化合物、リチウム金属または安定化リチウム金属粉末を含んでいてもよく、これらのいずれも、リチウム移動基板上にコーティングとして提供されていてもよい。リチウム移動基板は、金属(例えば、箔として)、ポリマー、セラミック、または任意選択的に多層形式のそのような材料のいくつかの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、そのようなリチウム化材料は、アノードに面する電流セパレータの少なくとも1つの面に提供されてもよく、すなわち、電流分離器はリチウム移動基板としても作用する。安定化リチウム金属粉末(「SLMP」)は、典型的には、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,377,236号明細書、第6,911,280号明細書、第5,567,474号明細書、第5,776,369号明細書および第5,976,403号明細書に記載されているように、リチウム金属粒子上にリン酸塩、炭酸塩または他のコーティングを有する。いくつかの実施形態では、SLMPは、コーティングを破壊し、連続多孔質リチウム貯蔵層へのリチウムの取り込みを可能にするために物理的圧力を必要とし得る。いくつかの実施形態では、他のリチウム化材料に圧力および/または熱を加えて、場合により1つ以上の補助層を介して、連続リチウム貯蔵層へのリチウム移動を促進することができる。いくつかの実施形態では、アノードとリチウム化材料との間に加えられる圧力は、少なくとも200kPa、あるいは少なくとも1000kPa、あるいは少なくとも5000kPaであり得る。圧力は、例えばカレンダ加工、加圧板によって、または電流セパレータ上のリチウム化材料コーティングの場合には、閉じ込めまたは他の加圧機構を有する電池への組み立てによって加えられてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、プレリチウム化は、リチウム取り込み中、リチウム取り込み後、またはその間およびその後の両方で連続多孔質リチウム貯蔵層を熱処理することを含む。熱処理は、例えばリチウム拡散を促進することによって、連続多孔質リチウム貯蔵層へのリチウムの取り込みを助けることができる。いくつかの実施形態では、熱処理することは、アノードを50℃~100℃、あるいは100℃~150℃、あるいは150℃~200℃、あるいは200℃~250℃、あるいは250℃~300℃、あるいは300℃~350℃の範囲の温度に曝露することを含む。いくつかの実施形態では、酸素、窒素、水または他の反応性ガスとの望ましくない反応を回避するために、制御された雰囲気下、例えば真空またはアルゴン雰囲気下で熱処理を行うことができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、プレリチウム化は、例えばリチウム-シリコン合金の形成に起因して、連続多孔質リチウム貯蔵層を軟化させ得る。この軟化は、いくつかのプロセス、例えば、軟化したリチウム貯蔵層が巻取り中にローラまたはそれ自体に付着し始めるロールツーロールプロセスにおいて問題を引き起こす可能性がある。プレリチウム化前またはプレリチウム化後に1つまたは複数の補助層を提供するいくつかの実施形態では、アノードの構造的完全性および加工性を実質的に改善することができる。いくつかの実施形態では、補助層は、他の表面とのより硬い界面として作用して、そのような表面と軟化したリチウム貯蔵材料との接触を防止または低減することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、連続多孔質リチウム貯蔵層の上にリチウム金属を堆積させ、続いてリチウムイオン伝導層を堆積させることができる。アノードは、リチウムイオン伝導層の堆積前、リチウムイオン伝導層の堆積後、またはその両方で熱処理されてもよい。いくつかの実施形態では、リチウム金属は、連続多孔質リチウム貯蔵層上に直接堆積される。いくつかの実施形態では、リチウム金属の堆積の前に、連続多孔質リチウム貯蔵層上に補助層、例えば窒化ケイ素が堆積される。いくつかの実施形態では、リチウムイオン伝導層は、リチウム含有材料、金属酸化物、またはメタルコーンを含み得る。リチウムイオン伝導層材料のいくつかの非限定的な例には、リチウムリン酸窒化物(LIPON)、リチウムリン酸塩、リチウムアルミニウム酸化物、リチウムランタンチタネート、およびアルコンが含まれる。リチウムイオン伝導層は、例えば上記のリストから選択される、異なる材料の複数の副層を含んでもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、アノードは、最終的な電池の組み立ての前に還元剤で処理されてもよい。還元剤は、金属酸化物層の少なくとも一部を還元するのに十分な電気化学的電位を有し得る。還元剤としては、無機水素化物、置換もしくは無置換の水素化ホウ素、アミン-ボラン、またはアニオン性有機芳香族化合物を挙げることができる。いくつかの実施形態では、還元剤は、それ自体は還元剤によって還元されず、低い酸素および水分を有する制御された条件下で適用される非水性溶媒中に提供され得る。
【0082】
熱処理は、プレリチウム化および金属酸化物前駆体に関して上述したが、いくつかの実施形態では、アノードは、プレリチウム化ステップの有無にかかわらず、電池の組み立ての前(連続多孔質リチウム貯蔵層の堆積が完了した後であるが、電池セルにおいてアノードがカソードと組み合わされる前)に熱処理されてもよい。いくつかの実施形態では、アノードを熱処理することにより、例えば、集電体(すなわち、金属酸化物層またはその下の導電性金属層)からの金属または任意の補助層からの原子の連続多孔質リチウム貯蔵層への移動を誘導することによって、様々な層の密着性または導電性を改善することができる。いくつかの実施形態では、アノードを熱処理することは、制御された環境、例えば、真空、アルゴン、または低酸素および低含水量(例えば、劣化を防止するために、100ppm未満、または分圧が10Torr未満、あるいは1Torr未満、あるいは0.1Torr未満)を有する窒素下で行うことができる。本明細書において、「真空下」とは、一般に、すべてのガス(例えば真空オーブン内)の全圧が10Torr未満である減圧状態を指す。機器の制限により、真空圧力は通常、約10-8Torrを超える。いくつかの実施形態では、オーブン、管状炉、赤外線加熱素子、高温表面(例えば、ホットプレート)との接触、またはフラッシュランプへの曝露を使用して、アノード熱処理を行うことができる。アノード熱処理の温度および時間は、アノードの材料に依存する。いくつかの実施形態では、アノード熱処理は、アノードを少なくとも50℃、任意選択的に50℃~600℃、あるいは100℃~250℃、あるいは250℃~350℃、あるいは350℃~450℃、あるいは450℃~600℃、あるいは600℃~700℃、あるいは700℃~800℃の範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせの温度に加熱することを含む。いくつかの実施形態では、アノード熱処理時間は、約0.1分~約1分、あるいは約1分~約5分、あるいは約5分~約10分、あるいは約10分~約30分、あるいは約30分~約60分、あるいは約60分~約90分の範囲、あるいは約90分~約120分の範囲、またはそれらの連続する範囲の任意の組み合わせであってもよい。
【0083】
図8に示すように、本開示のアノードを組み込んだ電池を製造するための多数のプロセスフロー選択肢がある。図8のすべてのステップは上記でより詳細に説明されており、図8はすべての可能性を網羅した列挙ではない。いくつかの実施形態では、少なくともステップ801、805および817に従う。ステップ801において、導電層、例えば金属箔または金属メッシュなどの導電性金属層上に金属酸化物層が形成される。ステップ805において、金属酸化物層の上に、1つまたは複数の連続多孔質リチウム貯蔵層が堆積される。代替的な実施形態では、ステップ805の前に、リチウム金属(または他のリチウム化材料)を、ステップ803に示すように金属酸化物層上に堆積させることができる。場合によっては、ステップ805で形成されたアノードは、ステップ817で電池に組み立てる準備ができている。
【0084】
いくつかの実施形態では、ステップ805の後に、プレリチウム化ステップ、例えば、リチウム金属を連続多孔質リチウム貯蔵層上に堆積させることができるステップ807が含まれてもよい。場合によっては、ステップ807からのアノードは、ステップ817で電池に組み立てる準備ができている場合がある。ステップ811に示す他の実施形態では、電池組み立てステップ817の前に、ステップ807の生成物上に1つまたは複数のリチウムイオン伝導層を堆積させてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、ステップ805の後、ステップ809に示すように、連続多孔質リチウム貯蔵層上に1つまたは複数の補助層を堆積させることができる。場合によっては、ステップ809からのアノードは、ステップ817で電池に組み立てる準備ができている。他の実施形態では、例えばステップ813に示すように、予備リチウム化ステップが含まれてもよく、リチウム金属が補助層の上に堆積されてもよい。場合によっては、ステップ813からのアノードは、ステップ817で電池に組み立てる準備ができている。他の実施形態では、電池組み立てステップ817の前に、ステップ813の生成物上に1つまたは複数のリチウムイオン伝導層を堆積させてもよい。
【0086】
図8に示す明示的なステップに加えて、熱処理または他の処理をステップのいずれかの間に実行することができる。さらに、上述のように、ステップ805の後に、連続多孔質リチウム貯蔵層ではない追加のリチウム貯蔵層をコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のステップは、ロールツーロールコーティング法を使用して実施されてもよく、導電層は、圧延フィルム、例えば金属箔のロールの形態である。
【0087】
場合によっては、概略的な図9Aに示すように、ロールツーロール処理は、特定のステップ内で実行されてもよく、そのようなステップのための装置901は、例えば、処理されるフィルム906のロールを保持するための装填ツール905、およびステップが完了した後に、処理されたフィルム908をロールアップするための巻取りツール907と共に、層を堆積、形成、または処理するために必要な処理ハードウェア903を含む。次のステップを実行するために、処理されたロールは、それ自体の処理ハードウェア913、装填ツール915、および巻取りツール917を有する処理装置911に移送されてもよい。移送中、ロールは、ステップに応じて、制御された環境、例えば低酸素または低水分に保たれてもよい。
【0088】
場合によっては、ロールツーロール処理は、図9Bに概略的に示すように、1つのステップで処理されたフィルムを次のステップまたは装置に直接転写することを含むことができる。処理装置921は、装置901に類似しているが、巻取りツールを含まない。装置921は、処理されるフィルム926のロールを保持するための装填ツール925と、例えば層を堆積、形成、または処理するための適切な処理ハードウェア923とを含む。最初のステップからの処理済みフィルム928は、別の処理ステップを受け取るために処理装置931に移動する。装置931は、例えば、層を堆積、形成、または処理するための適切な処理ハードウェア933と、次のステップが完了した後に処理されたフィルム938をロールアップするための巻取りツール937とを含む。図示されていないが、処理済みフィルム938は、代わりに、巻取りなしでさらに別の処理装置に移動してもよい。また、別個のユニットとして描かれているが、いくつかの実施形態では、装置921および装置931は共通のチャンバを共有してもよい。いくつかの実施形態では、あるプロセスが別のプロセスをコンタミネーションするのを回避するように、またはあるプロセスが別のプロセスよりも短い時間しか必要としない場合にフィルム搬送速度バッファとして機能するように設計された移行チャンバまたはゾーンを装置921と931との間に設けることができる。
【0089】
他とインターフェースする1つの装置の互換性に応じて、上記の実施形態の様々な組み合わせを一緒に使用することができる。造形装置は、スリットステーションをさらに含んでもよい。
【0090】
電池の特徴
前述の説明は、主にリチウムイオン電池(LIB)のアノード(負極)に関する。LIBは、典型的には、カソード(正極)、電解質、およびセパレータ(固体電解質を使用しない場合)を含む。周知のように、電池は、介在するセパレータを用いてアノードおよびカソードの多層スタックに形成することができる。あるいは、単一のアノード/カソードスタックは、いわゆるジェリーロールに形成することができる。そのような構造は、所望の電気接点を有する適切なハウジング内に設けられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、電池は、例えば、米国特許出願公開第2018/0145367号明細書および米国特許出願公開第2018/0166735号明細書に記載されているように、電池の膨張を制限するための閉じ込め機構で構成されてもよく、その全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、例えば、張力がかけられたばねまたはクリップ、圧縮性フィルムなどを使用して、アノードとカソードとの間に物理的圧力が加えられる。閉じ込め、圧力、または閉じ込めと圧力の両方は、連続多孔質リチウム貯蔵層の膨張および収縮を引き起こす可能性がある形成およびサイクル中にアノードが集電体と能動的に接触したままであることを確実にするのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、金属または他の硬質円筒形ハウジングを使用するジェリーロール電池設計は、効果的な閉じ込め、圧力、または閉じ込めと圧力の両方を提供することができる。
【0092】
図10は、本開示のいくつかの実施形態による電池の概略断面図である。電池790は、天板760、底板762、アノード側板764およびカソード側板766を含み、これらは、アノード700、カソード740および介在するセパレータ730のスタックのためのハウジングの一部を形成する。アノードは、アノード側板764を通って延びるアノードリード722に接続されたアノードバス720に取り付けられている。カソードは、カソード側板766を通って延在するカソードリード752に接続されたカソードバス750に取り付けられる。電池790は、空間を満たし、セパレータ730を飽和させる電解質780をさらに含む。上部圧縮部材770および下部圧縮部材772は、アノードとカソードとの間に物理的圧力(矢印)を加える。圧縮部材は、例えば多孔質ポリマーまたはシリコーンから作製された圧縮性フィルムであってもよい。あるいは、圧縮部材は、例えば多孔質ポリマーまたはシリコーンから作製された圧縮性機構のアレイを含むことができる。あるいは、圧縮部材は、ばねまたはばねのアレイを含むことができる。あるいは、圧縮部材は、圧縮クリップまたはクランプの2つの側面に対応してもよい。いくつかの実施形態では、セパレータは圧縮性フィルムとして作用することができる。いくつかの実施形態では、上部プレートおよび底部プレートは、変形に抵抗し、それによって電池の膨張を閉じ込める材料および/または構造化されてもよい。
【0093】
カソード
カソード(負極)材料には、リチウム金属酸化物または化合物(例えば、LiCoO、LiFePO、LiMnO、LiNiO、LiMn、LiCoPO、LiNiCoMn、LiNiCoAl、LiFe(SOまたはLiFeSiO)、フッ化炭素、フッ化鉄(FeF)などの金属フッ化物、金属酸化物、硫黄、セレン、硫黄-セレンおよびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。カソード活物質は、典型的には、導電性カソード集電体上に設けられるか、または導電性カソード集電体と電気的に連通している。
【0094】
いくつかの実施形態では、本開示のプレリチウム化アノードは、硫黄、セレン、または硫黄とセレンの両方を含むカソード(本明細書では集合的に「カルコゲンカソード」と呼ばれる)と共に使用される。いくつかの実施形態では、本開示のプレリチウム化アノードは、活物質層を有するカルコゲンカソードと対をなすことができ、活物質層は、炭素材料と、Se、Se、Te、TeSe、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、選択された化合物とを含むことができ、x、yおよびzは0~1の任意の値であり、yとxの和は1であり、z、yとxの和は1であり、化合物は、例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2019/0097275号明細書に記載されているように、炭素材料に含浸されている。化合物は、活物質層の総重量に基づいて9~90%重量の量で存在してもよい。いくつかの実施形態では、カルコゲンカソード活物質層は、全体的な導電性および物理的耐久性を改善するために導電性カーボンナノチューブをさらに含み、より速い充電および放電を可能にし得る。カーボンナノチューブの存在は、より大きな可撓性を有し、それによってより高い容量を可能にするより厚いコーティングをさらに可能にし得る。
【0095】
カルコゲンカソードは、一般に、リチウム金属アノードと対になっている。しかしながら、リチウム金属アノードは取り扱いが困難であり、劣化しやすく、さらに、壊滅的な短絡をもたらし得る危険な樹枝状リチウムの形成を可能にし得る。いくつかの実施形態では、本開示のプレリチウム化アノードは、純粋なリチウムアノードと同等のエネルギー貯蔵容量を達成することができるが、取り扱いがはるかに容易であり、樹枝状リチウムを形成しにくいため、カルコゲンカソードとより適合性になる。
【0096】
電流セパレータ
電流セパレータは、イオンがアノードとカソードとの間を流れることを可能にするが、直接的な電気的接触を防止する。このようなセパレータは、典型的には多孔質シートである。非水性リチウムイオンセパレータは、特に小型電池用の、典型的にはポリオレフィン製の単層または多層ポリマーシートである。最も一般的には、これらはポリエチレンまたはポリプロピレンに基づくが、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)も使用することができる。例えば、セパレータは、30%を超える多孔度、低いイオン抵抗率、約10から50μmの厚さ、および高いバルク穿刺強度を有することができる。あるいは、セパレータは、例えば、より高い機械的および熱的安定性を提供するために、ガラス材料、セラミック材料、ポリマーに埋め込まれたセラミック材料、セラミックでコーティングされたポリマー、または何らかの他の複合または多層構造を含んでもよい。上述のように、セパレータは、少なくともアノードに面する側にコーティングされたリチウム金属、還元性リチウム化合物、またはSLMP材料などのリチウム化材料を含むことができる。
【0097】
電解質
リチウムイオン電池における電解質は、液体、固体またはゲルであり得る。典型的な液体電解質は、1つ以上の溶媒および1つ以上の塩を含み、それらの少なくとも1つはリチウムを含む。最初の数回の充電サイクル(形成サイクルと呼ばれることもある)の間に、有機溶媒および/または電解質は、負極表面上で部分的に分解してSEI(固体-電解質-界面)層を形成することができる。SEIは、一般に電気絶縁性であるがイオン伝導性であり、それによってリチウムイオンを通過させる。SEIは、後の充電サイクルにおける電解質の分解を低減することができる。
【0098】
いくつかのリチウムイオン電池に適した非水性溶媒のいくつかの非限定的な例には、以下の環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびビニルエチレンカーボネート(VEC))、ビニレンカーボネート(VC)、ラクトン(例えば、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン(GVL)およびα-アンゲリカラクトン(AGL))、直鎖カーボネート(例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC、一般にEMCとも略される)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルブチルカーボネート(NBC)およびジブチルカーボネート(DBC))、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン、および1,2-ジブトキシエタン)、ニトリル(例えば、アセトニトリルおよびアジポニトリル)直鎖エステル(例えば、プロピオン酸メチル、ピバル酸メチル、ピバル酸ブチルおよびピバル酸オクチル)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド)、有機ホスフェート(例えば、リン酸トリメチルおよびリン酸トリオクチル)、S=O基を含有する有機化合物(例えば、ジメチルスルホンおよびジビニルスルホン)、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0099】
非水性液体溶媒を組み合わせて使用することができる。これらの組み合わせとしては、環状カーボネート-鎖状カーボネート、環状カーボネート-ラクトン、環状カーボネート-ラクトン-鎖状カーボネート、環状カーボネート-鎖状カーボネート-ラクトン、環状カーボネート-鎖状カーボネート-エーテル、環状カーボネート-鎖状カーボネート-鎖状エステルの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、環状カーボネートを直鎖エステルと組み合わせてもよい。また、環状カーボネートと、ラクトンおよび直鎖エステルとを組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、環状カーボネートと直鎖エステルの重量比または体積比は、1:9~10:1、あるいは2:8~7:3の範囲である。
【0100】
液体電解質のための塩は、以下の非限定的な例:LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiCFSO、LiC(CFSO、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(イソ-C、LiPF(イソ-C)、環状アルキル基を有するリチウム塩(例えば、(CF(SO2xLiおよび(CF(SO2xLi)、およびそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含み得る。一般的な組み合わせには、LiPFおよびLiBF;LiPFおよびLiN(CFSO;LiBFおよびLiN(CFSOが挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態では、液体非水性溶媒(または溶媒の組み合わせ)中の塩の総濃度は、少なくとも0.3M、あるいは少なくとも0.7Mである。上限濃度は、溶解限界および動作温度範囲によって決定され得る。いくつかの実施形態では、塩の濃度は、約2.5M以下、あるいは約1.5M以下である。
【0102】
いくつかの実施形態では、電池電解質は、非水性イオン液体およびリチウム塩を含む。
【0103】
固体電解質は、セパレータ自体として機能するため、セパレータを用いずに用いてもよい。電気絶縁性であり、イオン伝導性であり、電気化学的に安定である。固体電解質構成では、上述の液体電解質電池と同じであり得るリチウム含有塩が使用されるが、有機溶媒に溶解されるのではなく、固体ポリマー複合体に保持される。固体ポリマー電解質の例は、伝導中に付着および移動する電解質塩のリチウムイオンに利用可能な、電子の孤立電子対を有する原子を含むモノマーから準備されるイオン伝導性ポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)または塩化物またはそれらの誘導体のコポリマー、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(エチレン-クロロトリフルオロエチレン)、またはポリ(フッ素化エチレンプロピレン)、ポリエチレンオキシド(PEO)およびオキシメチレン結合PEO、三官能性ウレタンで架橋されたPEO-PPO-PEO、ポリ(ビス(メトキシ-エトキシ-エトキシド))-ホスファゼン(MEEP)、二官能性ウレタンで架橋されたトリオール型PEO、ポリ((オリゴ)オキシエチレン)メタクリレート-コ-アルカリ金属メタクリレート、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリロニトリル(PMAN)、ポリシロキサンおよびそれらのコポリマーおよび誘導体、アクリレート系ポリマー、他の同様の無溶媒ポリマー、異なるポリマーを形成するために縮合または架橋された前述のポリマーの組み合わせ、および前述のポリマーのいずれかの物理的混合物であってもよい。薄いラミネートの強度を改善するために上記ポリマーと組み合わせて使用され得る他の低導電性ポリマーには、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が含まれる。このような固体高分子電解質は、上記に列挙した少量の有機溶媒をさらに含んでいてもよい。高分子電解質は、イオン液体ポリマーであってもよい。そのようなポリマーベースの電解質は、カーテンコーティング、スロットコーティング、スピンコーティング、インクジェットコーティング、スプレーコーティングまたは他の適切な方法などの任意の数の従来の方法を使用してコーティングすることができる。
【0104】
添加剤は、様々な機能を果たすために電解質に含まれてもよい。例えば、不飽和二重結合を有する重合性化合物などの添加剤を添加して、SEIを安定化または修飾してもよい。特定のアミンまたはホウ酸塩化合物は、カソード保護剤として作用することができる。ルイス酸を添加して、PF などのフッ素含有アニオンを安定化することができる。安全保護剤としては、過充電を保護するためのもの、例えばアニソール、または難燃剤、例えばアルキルホスフェートが挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、固体電解質は、蒸着、溶液コーティング、溶融コーティング、またはそれらの組み合わせであってもよい。溶液または溶融物から蒸着またはコーティングされるかどうかにかかわらず、本開示の実施形態は、ナノ構造デバイスよりも有利である。蒸着固体電解質の場合、本開示のアノードは、ナノ構造またはマイクロ構造のデバイスがそうであるような物理的「シャドーイング」の問題を有さない。シャドーイングは、電解質の不均一な堆積をもたらす。本明細書に開示されるアノードは、一般に、上述のような高アスペクト比構造を有さず、その結果、シャドーイング効果がないか、または低くなる。気相堆積固体電解質は、低速原子層または他のコンフォーマルコーティング法に頼ることなく、本開示のアノード上に均一かつ迅速に堆積させることができる。溶液または溶融堆積固体電解質の場合、本開示のアノードは、コーティング操作によって引き起こされる応力およびせん断力に対してより堅牢であり得る。高アスペクト比のナノ構造体または微細構造体は、このような力による破損を受けやすい。
【0106】
いくつかの実施形態では、元のサイクルされていないアノードは、例えば、通常の電池使用から、または以前の「電気化学的形成ステップ」から、電気化学的充電/放電中に構造的または化学的変化を受けることができる。当技術分野で知られているように、電気化学的形成ステップは、初期SEI層を形成するために一般的に使用され、低電流および制限された電圧の比較的穏やかな条件を含む。そのような電気化学的充電/放電サイクルから部分的に調製された修飾アノードは、元の非サイクルアノードと比較してそのような構造的および/または化学的変化にもかかわらず、依然として優れた性能特性を有し得る。
【実施例
【0107】
アノード1~10については、導電性金属層(ニッケル)の上に金属酸化物層(酸化ニッケル)を有する集電体を、ニッケル箔をマッフル炉(加熱空気)に入れ、箔を700℃で30分間保持し、次いで室温に冷却することによって調製した。金属酸化物の厚さは約0.7から1.2ミクロンであった。
【0108】
アノード1(補助層なし)
シリコンおよびアルゴンキャリアガスの供給源としてシランガスを使用する高密度プラズマ化学気相成長ツール(HDPECVD)に集電体を配置した。約0.8mg/cmの総充填量でニッケル箔の片面上にアモルファスシリコンを堆積させて、約4μmの厚さを有する連続多孔質リチウム貯蔵層を形成した。
【0109】
アノード2(Si補助層)
アノード2は、アノード1と同じ方法で調製したが、HDPECVDツールから除去する前に、窒素源をシラン/Arガス混合物に添加し、30nmの実質的に化学量論的な窒化ケイ素を堆積させて、連続多孔質リチウム貯蔵層(a-Si)の上に補助層を形成した。
【0110】
アノード3(Si/TiO補助層)
アノード3は、アノード1と同じ方法で調製したが、HDPECVDツールから除去する前に、窒素源をシラン/Arガス混合物に添加し、15nmの実質的に化学量論的な窒化ケイ素を堆積させて、連続多孔質リチウム貯蔵層(a-Si)の上に第1の補助層を形成した。アノードをALDツールに移し、第1の補助層の上に6nmの二酸化チタンを堆積させて第2の補助層を形成した。
【0111】
半電池
各アノードの直径1.27cmのパンチを使用して半電池を構築した。リチウム金属は、Celgard(商標)セパレータを使用して試験アノードから分離された対電極として機能した。電解液は以下を含んでいた:a)3:7のEC:EMC(重量比)中の88wt.%の1.0MLiPF;b)10wt.%FEC;およびc)2wt.%VC。アノードは、最初に電気化学的形成ステップを受けた。当技術分野で知られているように、電気化学的形成ステップは、初期SEI層を形成するために使用される。アノードが過度にストレスを受けないようにするために、低電流および/または制限された電圧の比較的穏やかな条件を使用することができる。例えば、電気化学的形成は、C/20からC/5の範囲の低いCレートで数サイクルを含み得る。シリコンは、リチウムイオン電池に使用される場合、約3600mAh/gの理論的充電容量を有するが、全容量の一部のみが使用される場合、サイクル寿命が大幅に改善されることが分かった。特に明記しない限り、性能サイクルは、総容量の約3分の1、すなわち約1200mAh/g(「容量定格」)を使用するように設定した。特記しない限り、性能サイクルのプロトコルは、一般に、およそ20%の充電状態までの3C充電およびC/3放電を含んでいた。充放電サイクル間に10分間の休止を設けた。
【0112】
サイクル番号の関数としての放電容量のプロットを図11に示す。全アノードは、これらの急速充電条件(3C)下でさえ良好なサイクル寿命を有する。アノード1は、減衰の徴候を示す前に約300サイクル持続した。補助層を追加することにより、アノード2のサイクル寿命が減衰の徴候の前に約400サイクルまで延長され(約30%の増加)、始動の全体の容量のわずかな損失(約10%)のみであった。さらに、それが起こると、減衰率はアノード1よりも実質的に低かった。第1および第2の補助層を追加することにより、アノード3のサイクル寿命は、減衰の徴候の前にほぼ500サイクルまで延長され(アノード1に対して約60%の増加)、全容量の損失はさらに小さくなった(約5%)。さらに、それが起こると、減衰率はアノード1よりも実質的に低かった。アノード1~3の初期充電容量の80%までのサイクルに関するサイクル寿命を、他のアノードと共に以下の表1に示す。
【0113】
追加のアノードを準備し、上記と同様の方法で半電池で試験した。
【0114】
アノード4(補助層なし)
アノード4は、アノード1と実質的に同じであった。連続多孔質リチウム貯蔵層は、約4μmの厚さおよび約1.8から2.0g/cmの範囲の密度を有するアモルファスシリコンを含んでいた。
【0115】
アノード5(Si/Al補助層)
アノード5は、アノード4と実質的に同じであったが、HDPECVDツールから除去する前に、窒素源をシラン/Arガス混合物に添加し、15nmの実質的に化学量論的な窒化ケイ素を堆積させて、連続多孔質リチウム貯蔵層(a-Si)の上に第1の補助層を形成した。アノードをALDツールに移し、6nmの酸化アルミニウムを窒化ケイ素上に堆積させた。以下のその後の試験では、このセルは電気化学的形成ステップに耐えられなかった。したがって、いくつかの実施形態では、窒化ケイ素の第1の補助層を使用する場合、第2の補助層として酸化アルミニウムを使用しないことが好ましい可能性がある。驚くべきことに、酸化アルミニウムは良好に機能せず、この場合、二酸化チタンはより良好な第2の補助層であるようである。
【0116】
アノード6(TiO/Al補助層)
アノード6は、複数の補助層がALDによって堆積されたことを除いて、アノード4と同様であった。第1の補助層は10nmの二酸化チタンを含み、第2の補助層は4nmの酸化アルミニウムを含んでいた。以下の表1に示すように、サイクル寿命は、補助層を有さないアノード4よりも実質的に改善される。
【0117】
アノード7(Al/TiO補助層)
アノード6は、複数の補助層がALDによって堆積されたことを除いて、アノード4と同様であった。第1の補助層は10nmの酸化アルミニウムを含み、第2の補助層は4nmの二酸化チタンを含んでいた。表1に示すように、サイクル寿命は許容可能であったが、補助層を有さないアノード4ほど良好ではなく、逆の補助層の構造を有するアノード5よりもはるかに低かった。アノード7の構造を使用する他の理由もあり得るが、いくつかの実施形態では、複数の金属酸化物補助層を使用する場合、第1の補助層として酸化アルミニウムを使用しないことが好ましい可能性がある。驚くべきことに、酸化アルミニウムは良好に機能せず、この場合、二酸化チタンはより良好な第1の補助層であるようである。
【0118】
アノード8(60nmのSiO補助層)
アノード8はアノード4と同様であったが、HDPECVDツールから除去する前に、酸素ガスをシラン/Arガス混合物に添加し、60nmの実質的に化学量論的な二酸化ケイ素を堆積させて、連続多孔質リチウム貯蔵層(a-Si)の上に補助層を形成した。表1に示すように、二酸化ケイ素は、面電荷容量の低下を引き起こすが、サイクル寿命を大幅に向上させることができる。容量定格を1600mAh/gに増加させることによって、面電荷容量をアノード4と同様に回復することができ、サイクル寿命は依然として延長される。
【0119】
アノード9(120nmのSiO補助層)
アノード9は、120nmの実質的に化学量論的な二酸化ケイ素が堆積されたことを除いて、アノード8と同様であった。表1に示すように、二酸化ケイ素は、面電荷容量の低下を引き起こすが、サイクル寿命を大幅に向上させることができる。容量定格を1600mAh/gに増加させることによって、面電荷容量をアノード4と同様に回復することができ、サイクル寿命は依然として延長される。
【0120】
アノード10(SiOxリチウム貯蔵副層)
アノード10はアノード4と同様であったが、HDPECVDツールから除去する前に、酸素ガスをガス混合物に添加し、約250nmの準化学量論的な酸化ケイ素を堆積させて、アモルファスシリコン上にリチウム貯蔵副層を形成した。SiOx副層の化学量論は確実には知られていないが、酸素ガス流量は、実質的に化学量論的な二酸化ケイ素を作製するために使用される比率の約12%のみに設定された。a-SiおよびSiOxの組み合わされた副層の全体の厚さおよび密度は、それぞれ約4.5μmおよび2.1g/cmであり、表1に示すように、アノード10は、SiOx副層を有さないアノード4と比較して改善されたサイクル寿命を有する。なお、表1のサイクル寿命は2回の平均値である。
【0121】
【表1】
【0122】
アノード11
アノード11用に異なる集電体を準備した。具体的には、50nmのTiO(金属酸化物)層を、ALDによって導電性の市販の銅箔上に堆積させた。Oxford Plasmalabs System 100 PECVDのツールを使用して、約300℃で約225WのRF電力で50分間動作させて、ケイ素をTiO上に堆積させた。堆積ガスは、ホウ素含有ドーパントガスと共に、それぞれ約1対11のガス流量の比を有するシランおよびアルゴンの混合物であった。水素ガスは使用しなかった。約1.7g/cmの密度を有する厚さ約14μmの接着性ボロンドープアモルファスシリコン膜を堆積させた。
【0123】
アノード11A~11E
シリコン堆積後、アノード11のサンプルをアルゴン下で管状炉に移し、様々な時間および温度で熱処理して、以下の表2に示すアノード11A~11Eを形成した。
【0124】
アノード11および11A~11Eは、より大きな充電容量のためにセルのパンチサイズが小さくなったことを除いて、前述のように半分のセルで試験された。形成サイクルの終わりに、全面電荷容量を最終形成サイクル電流効率と共に電気化学的に測定した。これらのデータをまた、表2に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
すべてのアノードは非常に高い面電荷容量を有するが、表2のデータは、アノード熱処理が、475℃または575℃で処理された場合にいくらかの追加の充電容量をロック解除するようである(熱処理なしのアノード11よりも約8%~15%多い)ことを示している。リチウムイオン電池において、このような改善は、商業的に重要であり、セルの充電容量を増加させるため、セルの充電容量を維持しながらセルの重量および/または体積を減少させるため、セルの全充電容量を維持しながら、定格の容量を下げることによりサイクルの寿命を延ばすため、またはいくつかの組み合わせのために、使用することができる。
【0127】
サイクル条件下でのアノード11および11A~11Eの性能を、前述のようにC/3、1Cおよび3.2C充電(すべてC/3放電)で試験した。アノードは、約1100mAh/gの容量定格であった。C/3および1Cの充電スケジュールでは、セルは、2.0mAh/cmという目標の初期面電荷容量のサイクルにされた。高充電率の3.2C試験は、3.2Cの充電電流で完了し、合計時間制限は15分である。これは、業界で行われている一般的な急速充電試験である(Battery Test Manual for Electric Vehicles’’,Jon P.Christophersen,June 2015,INL/EXT-15-34184 Revision 3,page 5を参照)。セルが定電流充電のすべてを完了する場合、セルはその定格容量の3.2×0.25または80%を達成し、この場合は1.6mAh/cmである。15分前に充電電圧限界に達したセルは、定電流および定電位の両方で充電する。後者の充電部分は、セルの定格容量の80%未満を達成するセルをもたらす。これらのアノードのいずれも、サイクルを終了しておらず、または初期充電容量の80%に到達していない(約400サイクルでそうしたアノード11Aを除く)が、プロットを図12(C/3充電)、図13(1C)および図14(3.2C)に示す。試験用セルは、すべて同時に着手されたわけではなく、そのため、サイクルの様々な段階にある。
【0128】
図12の検査は、C/3充電時のアノード間にまだ実質的な差がないことを示している。
【0129】
図13は、他のアノードのすべてに対してサイクル25~60におけるアノード11の性能の低下を明らかにする。アノード11は、約サイクル225から始まる何らかのサイクルのフェードを示しているようにも見える。この書き込みで少なくとも230サイクル(276サイクルで11Aおよび237サイクルで11B)に達した2つの熱処理されたアノードは、そのようなフェードが観察されなかった。したがって、C/3よりも速い充電速度では、熱処理されたアノードは、サイクル寿命の改善を示しているように見える。
【0130】
図14は、非熱処理アノード11が3.2Cで80%の充電状態に決して到達しない、すなわち、1.6mAh/cmではなく、アノード11が約1.25mAh/cmにしか到達しないことを示している。より抵抗特性が高いため、15分間の定電流充電は完了しない。対照的に、熱処理されたアノードは、少なくとも数サイクルにわたって80%の充電状態に達する。それらの容量が1.6mAh/cmの限界容量に近いという事実は、それらの充電の大部分が定電流のままであることを示している。(アノード1~10に対して)高容量シリコンアノードと組み合わせた3.2Cの非常に速い充電の組み合わせは、電子の流れまたはリチウム拡散にいくらかの抵抗をもたらした可能性があると仮定される。しかしながら、熱処理されたサンプルのすべて、アノード11A~11Eは、熱処理されていないアノード11よりも目標の充電容量にはるかに近かったことに留意されたい。したがって、アノードの急速充電特性を改善するためにアノード熱処理を使用することができるようである。
【0131】
マイクロまたはナノ構造シリコンまたは他のリチウム貯蔵材料の業界の支持にもかかわらず、本開示では、そのような特徴なしで非常に効果的なアノードを形成することができることが見出されている。本アノードについて電池を参照して説明してきたが、いくつかの実施形態では、本アノードをハイブリッドキャパシタの装置に使用することができる。同等のマイクロまたはナノ構造アノードと比較して、本開示のアノードは、少なくとも以下の予想外の利点、すなわち、積極的な≧1Cの充電速度での同等または改善された安定性、より高い全面電荷容量、高重量電荷容量、より高い体積電荷容量、物理的耐久性の向上、簡略化された製造プロセス、および/またはより再現性のある製造プロセスのうちの1つまたは複数を有することができる。
【0132】
本アノードについて電池を参照して説明してきたが、いくつかの実施形態では、本アノードをハイブリッドリチウムイオンキャパシタの装置に使用することができる。いくつかの非限定的な代表的な実施形態を以下に列挙する。
1.エネルギー貯蔵装置用のアノードであって、
金属酸化物層を含む集電体、および
金属酸化物層を覆う連続多孔質リチウム貯蔵層を含む、アノード。
2.連続多孔質リチウム貯蔵層を覆う第1の補助層をさらに備え、第1の補助層は、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、または第1の金属化合物を含む、実施形態1のアノード。
3.第1の補助層が、約2nm~約50nmの範囲の厚さを有する窒化ケイ素を含む、実施形態2に記載のアノード。
4.第1の補助層が二酸化ケイ素を含み、約10nm~約150nmの範囲の厚さを有する、実施形態2に記載のアノード。
5.第1の補助層が、金属酸化物、金属窒化物、および金属酸窒化物からなる群から選択される第1の金属化合物を含み、約2nm~約50nmの厚さを有する、実施形態2に記載のアノード。
6.第1の金属化合物が遷移金属酸化物である、実施形態5に記載のアノード。
7.第1の金属化合物が二酸化チタンである、実施形態5に記載のアノード。
8.第1の補助層組成物とは異なる組成を特徴とし、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、または第2の金属化合物を含む第2の補助層をさらに含む、実施形態2~7のいずれかに記載のアノード。
9.第2の金属化合物が、金属酸化物、金属窒化物、または金属酸窒化物を含み、第2の補助層が、約2nm~約50nmの範囲内の厚さを有する、実施形態8に記載のアノード。
10.第1の補助層が窒化ケイ素を含み、第2の補助層が二酸化チタンを含む、実施形態9に記載のアノード。
11.(i)第1の補助は、実質的に化学量論的な窒化ケイ素を含み、約2nm~約50nmの範囲の厚さを有し、また
(ii)第2の補助層は二酸化チタンを含み、約2nm~約20nmの範囲の厚さを有する、
実施形態10に記載のアノード。
12.第1の補助層が二酸化チタンを含み、約2nm~約20nmの厚さを有する、実施形態8に記載のアノード。
13.第2の補助層が、約2nm~約20nmの厚さを有する酸化アルミニウムを含む、実施形態12に記載のアノード。
14.(i)第1の補助層は酸化アルミニウムを含まず、
(ii)第1の補助層が実質的に化学量論的な窒化ケイ素を含む場合、第2の補助層は酸化アルミニウムを含まない、
実施形態8に記載のアノード。
15.第2の金属化合物がリチウム含有材料である、実施形態8に記載のアノード。
16.リチウム含有材料が、リチウムリン酸窒化物、リチウムリン酸塩、リチウムアルミニウム酸化物、またはリチウムランタンチタネートを含む、実施形態15に記載のアノード。
17.第2の補助層が、メタルコーンを含む、実施形態8に記載のアノード。
18.第2の補助層が、約5nm~約150nmの範囲の厚さを有する、実施形態15~17のいずれかに記載のアノード。
19.第1および第2の補助層を覆う1つまたは複数の追加の補助層をさらに含み、追加層のうちの少なくとも1つは、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、リチウム含有材料、またはメタルコーンを含む、実施形態8~18のいずれかに記載のアノード。
20.連続多孔質リチウム貯蔵層が、金属酸化物層を覆う第1のリチウム貯蔵副層と、第1のリチウム貯蔵副層を覆う第2のリチウム貯蔵副層とを含み、第1のリチウム貯蔵副層が、第2のリチウム貯蔵副層とは異なる組成を特徴とする、実施形態1~19のいずれかに記載のアノード。
21.各リチウム貯蔵副層が、ケイ素、ゲルマニウム、またはそれらの組み合わせを含む組成を有する、実施形態20に記載のアノード。
22.第1または第2のリチウム貯蔵副層がケイ素および酸素を含み、ケイ素に対する酸素の比が0.02~0.95の範囲内である、実施形態20または21に記載のアノード。
23.i)第2のリチウム貯蔵副層がケイ素および酸素を含み、ケイ素に対する酸素の比が0.02から0.95の範囲内であり、ii)第1のリチウム貯蔵副層が第2のリチウム貯蔵副層よりも高いケイ素原子%および低い酸素原子%を含み、iii)第2のリチウム貯蔵副層の厚さが第1のリチウム貯蔵副層の厚さよりも薄い、実施形態20または21に記載のアノード。
24.第1または第2のリチウム貯蔵副層がケイ素および窒素を含み、ケイ素に対する窒素の比が0.02から0.95の範囲内である、実施形態20~22のいずれかに記載のアノード。
25.第1または第2のリチウム貯蔵副層がケイ素、酸素および窒素を含み、ケイ素に対する全酸素および窒素原子の比が0.02から0.95の範囲内である、実施形態20~22のいずれかに記載のアノード。
26.連続多孔質リチウム貯蔵層が、
i)ケイ素原子に対する酸素原子の比が0.02から0.95の範囲にある、ケイ素および酸素、
ii)ケイ素原子に対する窒素原子の比が0.02から0.95の範囲にある、ケイ素および窒素、または
iii)ケイ素原子に対する酸素原子および窒素原子の合計の比が0.02から0.95の範囲内である、ケイ素、酸素および窒素
を含む、実施形態1~19のいずれかに記載のアノード。
27.金属酸化物層が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物を含む、実施形態1~26のいずれかに記載のアノード。
28.金属酸化物層がリチウムの酸化物を含む、実施形態27に記載のアノード。
29.金属酸化物層が遷移金属の酸化物を含む、実施形態1~28のいずれかに記載のアノード。
30.金属酸化物層が、ニッケルの酸化物またはチタンの酸化物を含む、実施形態29に記載のアノード。
31.金属酸化物層が金属水酸化物をさらに含む、実施形態1~30のいずれかに記載のアノード。
32.金属酸化物層が、0.25未満の酸化物に対する水酸化物の形態の酸素原子の比を有する、実施形態31に記載のアノード。
33.金属酸化物層が、約0.010μm~約1.0μmの範囲の平均厚さを有する、実施形態1~32のいずれかに記載のアノード。
34.連続多孔質リチウム貯蔵層が、少なくとも40原子%のケイ素、ゲルマニウム、またはそれらの組み合わせの総含有量を有する、実施形態1~33のいずれかに記載のアノード。
35.連続多孔質リチウム貯蔵層が、約1.1g/cm~2.2g/cmの範囲の密度を有する少なくとも85原子%のアモルファスシリコンを含む、実施形態1~34のいずれかに記載のアノード。
36.連続多孔質リチウム貯蔵層が少なくとも3μmの厚さを有する、実施形態1~35のいずれかに記載のアノード。
37.連続多孔質リチウム貯蔵層が約7μm~約30μmの範囲の厚さを有する、実施形態1~37のいずれかに記載のアノード。
38.連続多孔質リチウム貯蔵層がナノ構造を実質的に含まない、実施形態1~37のいずれかに記載のアノード。
39.連続多孔質リチウム貯蔵層が重量基準で1%未満の炭素系バインダーを含む、実施形態1~38のいずれかに記載のアノード。
40.アノードが、アノードの上面で550nmにおいて測定された少なくとも10%の全反射率を有する、実施形態1~39のいずれかに記載のアノード。
41.連続多孔質リチウム貯蔵層が、金属酸化物層由来の金属を約0.05%~約5%の原子%範囲で含む、実施形態1~40のいずれかに記載のアノード。
42.集電体が導電層をさらに含み、金属酸化物層が導電層と連続多孔質リチウム貯蔵層との間に介在する、実施形態1~41のいずれかに記載のアノード。
43.導電層が、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、銅、導電性炭素、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態42に記載のアノード。
44.連続多孔質リチウム貯蔵層が、約0.05%~約5%の原子%範囲で導電層からの金属を含む、実施形態43に記載のアノード。
45.実施形態1~44のいずれかによるアノードと、カソードとを備える電池。
46.カソードに向かう方向にアノードに圧力を加えるように構成された、またはアノードに向かう方向にカソードに圧力を加えるように構成された、またはその両方である、1つ以上の圧縮部材をさらに備える、実施形態45に記載の電池。
47.アノードがプレリチウム化されており、カソードが硫黄、セレン、または硫黄とセレンの両方を含む、実施形態45または46に記載のリチウムイオン電池。
48.カソードは第1の炭素材料をさらに含む、実施形態47に記載のリチウムイオン電池。
49.カソードはカーボンナノチューブをさらに含む、実施形態48に記載のリチウムイオン電池。
50.エネルギー貯蔵装置で使用するためのアノードを作製する方法であって、
導電層と、導電層を覆う金属酸化物層とを含む集電体を提供するステップであって、金属酸化物層が少なくとも0.01μmの平均厚さを有する、提供するステップ、および
CVDプロセスによって金属酸化物層上に連続多孔質リチウム貯蔵層を堆積させるステップ
を含む、方法。
51.集電体を提供するステップは、
i)堆積した金属酸化物前駆体組成物を形成するべく導電層の上に金属酸化物前駆体組成物を堆積させるステップ、および
ii)堆積された金属酸化物前駆体組成物を用いて金属酸化物層を形成するステップ
を含む、実施形態50に記載の方法。
52.金属酸化物前駆体組成物が、ゾル-ゲル、金属炭酸塩、金属酢酸塩、金属有機酢酸塩、金属水酸化物、金属酸化物分散物、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態51に記載の方法。
53.金属酸化物層を形成するステップが、堆積した金属酸化物前駆体組成物を熱処理するステップを含む、実施形態52に記載の方法。
54.熱処理するステップが、堆積した金属酸化物前駆体組成物を50℃~250℃の範囲の温度に、場合により0.1~120分の範囲の時間曝露することを含む、実施形態53に記載の方法。
55.金属酸化物層を形成するステップが、堆積した金属酸化物前駆体組成物を0.1~100torrの範囲の圧力に、場合により0.1~120分の範囲の時間曝露することを含む、実施形態51~54のいずれかに記載の方法。
56.金属酸化物前駆体組成物が金属含有粒子を含む、実施形態51に記載の方法。
57.金属酸化物層を形成するステップが、金属含有粒子を酸化することを含む、実施形態56に記載の方法。
58.酸化することが、金属粒子を酸素含有ガスまたは化学酸化剤を含む溶液に曝露することを含む、実施形態57に記載の方法。
59.連続多孔質リチウム貯蔵層を堆積させる前に、金属酸化物層上にリチウム金属を堆積させるステップをさらに含む、実施形態50~58のいずれかに記載の方法。
60.リチウム金属が、蒸着、電子ビームまたはスパッタリングによって堆積される、実施形態59に記載の方法。
61.金属酸化物層中の堆積されたリチウム金属原子対酸素原子の比が0.05~1.0の範囲内である、実施形態59または60に記載の方法。
62.析出したリチウム金属の量が、連続多孔質リチウム貯蔵層の最大リチウム面容量の2%~50%の範囲内である、実施形態59~61のいずれかに記載の方法。
63.アノードがエネルギー貯蔵装置に組み立てられるとき、第1の電気化学サイクルの前にリチウムを連続多孔質リチウム貯蔵層に組み込むことによってリチウム化貯蔵層を形成するステップをさらに含む、実施形態1~62のいずれかに記載の方法。
64.リチウムは、エネルギー貯蔵装置の組み立て前に組み込まれる、実施形態63に記載の方法。
65.リチウムを組み込むステップが、リチウム化材料を連続多孔質リチウム貯蔵層の上に堆積させるステップを含む、実施形態63または64に記載の方法。
66.リチウム化材料は、還元性リチウム化合物、リチウム金属、または安定化リチウム金属粉末を含む、実施形態65に記載の方法。
67.リチウム化材料の堆積中または堆積後にアノードに熱または圧力を加えるステップをさらに含む、実施形態65または66に記載の方法。
68.リチウムを組み込むステップが、リチウム移動基板上のコーティングとして提供されるリチウム化材料とアノードとの接触を含む、実施形態63または64に記載の方法。
69.リチウム化材料が、還元性リチウム化合物、リチウム金属、または安定化リチウム金属粉末を含む、実施形態68に記載の方法。
70.接触中または接触後にアノードに熱または圧力を加えるステップをさらに含む、実施形態68または69に記載の方法。
71.リチウム移動基板が、組み立てられた電池の電流セパレータとして機能する、実施形態68~70のいずれかに記載の方法。
72.リチウムを組み込むステップが、連続多孔質リチウム貯蔵層を還元性リチウム有機化合物を含む溶液と接触させることを含む、実施形態63または64 1に記載の方法。
73.リチウムが電気化学的に組み込まれる、実施形態63または64に記載の方法。
74.リチウム化貯蔵層を形成する前に、連続多孔質リチウム貯蔵層の上に補助層を形成するステップをさらに含む、実施形態63~73のいずれかに記載の方法。
75.補助層は、窒化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、または金属酸窒化物を含む、実施形態74に記載の方法。
76.組み込み中、組み込み後、または組み込み中と組み込み後の両方で連続多孔質リチウム貯蔵層を熱処理するステップをさらに含む、実施形態63~75のいずれかに記載の方法。
77.リチウム化貯蔵層を形成するステップが、
(a)連続多孔質リチウム貯蔵層の上にリチウム金属層を堆積させるステップ、および
(b)リチウム金属層を堆積させた後にリチウムイオン伝導層を堆積させるステップ
を含む、実施形態64に記載の方法。
78.i)ステップ(a)とステップ(b)との間、ii)ステップ(b)の後、またはiii)(i)と(ii)の両方で、前記アノードに熱を加えるステップをさらに含む、請求項77に記載の方法。
79.リチウムイオン伝導層が、リチウム含有材料、金属酸化物またはメタルコーンのうちの少なくとも1つを含む、実施形態77または78に記載の方法。
80.リチウムイオン伝導層が、リチウムリン酸窒化物(LIPON)、リチウムリン酸塩、リチウムアルミニウム酸化物、リチウムランタンチタネート、アルコンまたはジルコンのうちの少なくとも1つを含む、実施形態77~79のいずれかに記載の方法。
81.電池組み立て前にアノードを還元剤で処理することをさらに含む、実施形態50~80のいずれかに記載の方法。
82.還元剤が、金属酸化物層の少なくとも一部を還元するのに十分な電気化学ポテンシャルを有する、実施形態81に記載の方法。
83.還元剤が、無機水素化物、置換もしくは非置換水素化ホウ素、アミン-ボラン、またはアニオン性有機芳香族化合物を含む、実施形態81または82に記載の方法。
84.アノードを還元剤で処理することが、アノードを還元剤を含む非水性溶媒で処理することを含む、実施形態81~83のいずれかに記載の方法。
85.連続多孔質リチウム貯蔵層を堆積させた後、電池組み立て前にアノードを熱処理するステップをさらに含む、実施形態50~84のいずれかに記載の方法。
86.熱処理するステップは、アノードを50℃~600℃の範囲の温度まで0.1分~120分の範囲の時間加熱することを含む、実施形態85に記載の方法。
87.熱処理するステップが、それぞれ1Torr未満の酸素および水分圧を有する環境で行われる、実施形態85または86に記載の方法。
88.熱処理するステップが、それぞれ0.1Torr未満の酸素および水分圧を有する環境で行われる、実施形態85または86に記載の方法。
89.熱処理するステップは、アノードを350℃~600℃の範囲の温度まで0.1分~30分の範囲の時間加熱することを含む、実施形態85~88のいずれかに記載の方法。
90.金属酸化物層がニッケルの酸化物またはチタンの酸化物を含む、実施形態85~89のいずれかに記載の方法。
91.導電層が銅を含み、金属酸化物層が0.01μm~0.20μmの範囲の厚さを有するチタンの酸化物を含む、実施形態85~89のいずれかに記載の方法。
92.熱処理するステップが、アノードのオーブンへの移動、アノードのIR放射源への曝露、またはアノードと加熱された表面との接触を含む、実施形態85~91のいずれかに記載の方法。
93.熱処理するステップにより、連続多孔質リチウム貯蔵層の導電性が増加する、実施形態85~92のいずれかに記載の方法。
94.熱処理するステップが、集電体に対する連続多孔質リチウム貯蔵層の密着性を増加させる、実施形態85~93のいずれかに記載の方法。
95.熱処理するステップが、リチウムイオン電池セルにおいて、熱処理するステップを受けない同等のアノードよりも高い充電容量を有するアノードを形成する、実施形態85~94のいずれかに記載の方法。
96.熱処理するステップが、リチウムイオン電池セルにおいて、熱処理するステップを受けない同等のアノードよりも速い充電ができるアノードを形成する、実施形態85~95のいずれかに記載の方法。
97.CVDプロセスがPECVDプロセスである、実施形態45~96のいずれかに記載の方法。
98.連続多孔質リチウム貯蔵層は、少なくとも40原子%のケイ素、ゲルマニウムまたはそれらの組み合わせの総含有量を含む、実施形態97に記載の方法。
99.連続多孔質リチウム貯蔵層が、約1.1g/cm~2.2g/cmの範囲の密度を有する少なくとも85原子%のアモルファスシリコンを含む、実施形態97または98に記載の方法。
100.連続多孔質リチウム貯蔵層が少なくとも3μmの厚さを有する、実施形態50~99のいずれかに記載のアノード。
101.連続多孔質リチウム貯蔵層が約7μm~約30μmの範囲の厚さを有する、実施形態50~100のいずれかに記載のアノード。
102.PECVDプロセスが、シランガスおよび場合により水素ガスを使用することを含み、水素ガスの流れ対シランガスの流れの比が0~2の範囲内である、実施形態50~101のいずれかに記載の方法。
103.PECVDプロセスが、連続多孔質リチウム貯蔵層をドープするためにドーピングガスを使用することをさらに含み、ドーピングガスの流れのシランガスの流れに対する比が0.001から0.05の範囲である、実施形態50~102のいずれかに記載の方法。
104.ドーピングガスがボランまたはホスフィンである、実施形態103に記載の方法。
105.PECVDプロセスが膨張熱プラズマPECVDプロセスまたは中空カソード管PECVDプロセスである、実施形態97~104のいずれかに記載の方法。
106.PECVDプロセスが、プロセスの少なくとも一部の間、集電体を200℃~600℃の範囲の温度に加熱することをさらに含む、実施形態97~105のいずれかに記載の方法。
107.連続多孔質リチウム貯蔵層の少なくとも50%を堆積させた後に、酸素源、窒素源、またはその両方をシランガスに添加して、窒化ケイ素、酸化ケイ素、または酸窒化ケイ素を含むリチウム貯蔵副層または補助層を形成するステップをさらに含む、実施形態97~106のいずれかに記載の方法。
108.約10nm~約150nmの範囲の厚さを有する二酸化ケイ素を含む補助層が形成される、実施形態107に記載の方法。
109.約2nm~約50nmの範囲の厚さを有する実質的に化学量論的な窒化ケイ素を含む補助層が形成される、実施形態107に記載の方法。
110.各々が独立して選択された金属化合物を含む1つまたは複数の補助層を堆積させるステップをさらに含む、実施形態50~109のいずれかに記載の方法。
111.金属化合物が、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、リチウム含有材料、またはメタルコーンである、実施形態110に記載の方法。
112.ロールツーロール製造方法を使用して、1つまたは複数の堆積または熱処理するステップが行われる、実施形態50~111のいずれかに記載の方法。
113.実施形態50~112のいずれかに従って作製されたアノードと、カソードとを含むリチウムイオン電池。
114.アノードがリチウム化貯蔵層を含み、カソードが硫黄、セレン、または硫黄とセレンの両方を含む、実施形態113に記載のリチウムイオン電池。
115.カソードはカーボンナノチューブをさらに含む、実施形態114に記載のリチウムイオン電池。
116.リチウム化貯蔵層が、連続多孔質リチウム貯蔵層の理論的リチウム貯蔵容量の50%~100%の範囲のリチウムを含む、実施形態114または115に記載のリチウムイオン電池。
117.アノードとカソードとを含むリチウムイオン電池であって、アノードが、少なくとも1つの電気化学的充電/放電サイクルを非サイクルアノードに適用することによって部分的に準備され、非サイクルアノードが、i)実施形態1~41のいずれかに記載のアノード、または実施形態50~112のいずれかに従って作製されたアノードを含む、リチウムイオン電池。
【0133】
前述の説明では、説明の目的のために、本技術の様々な実施形態の理解をもたらすために多くの詳細が記載されている。しかしながら、特定の実施形態は、これらの詳細の一部なしで、または追加の詳細を用いて実施され得ることが当業者には明らかであろう。
【0134】
いくつかの実施形態を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な修正、代替構成、および均等物を使用することができることが当業者によって認識されるであろう。さらに、本発明を不必要に不明瞭にすることを避けるために、いくつかの周知のプロセスおよび要素は記載されていない。さらに、任意の特定の実施形態の詳細は、その実施形態の変形形態に常に存在するとは限らず、他の実施形態に追加されてもよい。
【0135】
値の範囲が提示される場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈上明確に指示されない限り、下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示されることが理解される。記載された範囲内の任意の記載された値または介在する値と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在する値との間のより小さい各範囲が、包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して範囲に含まれてもよく、または除外されてもよく、限界がより小さい範囲のいずれかに含まれる、いずれにも含まれない、または両方に含まれる各範囲もまた、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界を条件として、本発明に包含される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方または両方を除外した範囲も含まれる。
【0136】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、複数のそのような方法を含み、「層」への言及は、当業者に知られている1つまたは複数の層およびその均等物などへの言及を含む。ここで、本発明を、明確化および理解の目的で詳細に説明した。しかしながら、添付の特許請求の範囲内で特定の変更および修正が実施され得ることが理解されよう。
【0137】
本明細書で引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。先行技術であると認められるものはない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置で使用するためのアノードを作製する方法であって、
導電層と、前記導電層を覆う金属酸化物層とを含む集電体を提供するステップであって、前記金属酸化物層が少なくとも0.01μmの平均厚さを有する、提供するステップと、
化学気相成長プロセスによって前記金属酸化物層上に連続多孔質リチウム貯蔵層を堆積させるステップと、
前記連続多孔質リチウム貯蔵層の堆積が完了した後、電池の組み立ての前に前記アノードを熱処理するステップと、
を含み、
前記熱処理するステップが、前記アノードを100℃~600℃の範囲の温度に0.1分~120分の範囲の時間加熱することを含む、方法。
【請求項2】
前記熱処理するステップが、それぞれ1Torr未満の酸素および水分圧を有する環境で行われ、特に前記熱処理するステップが、アルゴン、窒素、または真空下で行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度の範囲が、350℃~600℃であり、
前記時間が、0.1~30分の範囲である、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記化学気相成長プロセスが、プラズマ化学気相成長プロセスであり、
前記連続多孔質リチウム貯蔵層は、少なくとも40原子%のケイ素、ゲルマニウム、またはそれらの組み合わせの総含有量を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記化学気相成長プロセスが、プラズマ化学気相成長プロセスであり、
前記連続多孔質リチウム貯蔵層が、1.1g/cm~2.2g/cmの範囲の密度を有する少なくとも85原子%のアモルファスシリコンを含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記導電層が、ニッケルまたは銅を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属酸化物層が、遷移金属酸化物を含み、
特に、前記遷移金属酸化物が、ニッケルまたはチタンの酸化物である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱処理するステップの前に、前記連続多孔質リチウム貯蔵層の上にリチウム金属の層を堆積させるステップをさらに含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アノードが前記エネルギー貯蔵装置に組み立てられるときの第1の電気化学サイクルの前に、リチウムを前記連続多孔質リチウム貯蔵層に組み込むことによってリチウム化貯蔵層を形成するステップをさらに含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
リチウム化貯蔵層を形成する前に、前記連続多孔質リチウム貯蔵層の上に補助層を形成するステップをさらに含み、
前記補助層が、窒化ケイ素、金属酸化物、金属窒化物、または金属酸窒化物を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組み込み中、前記組み込み後、または前記組み込み中および前記組み込み後の両方で、前記連続多孔質リチウム貯蔵層を熱処理するステップをさらに含む、
請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
リチウム化貯蔵層を形成するステップが、
(a)前記連続多孔質リチウム貯蔵層の上にリチウム金属層を堆積させるステップ、および
(b)前記リチウム金属層を堆積させた後に、リチウムイオン伝導層を堆積させるステップを含み、
前記方法は、i)ステップ(a)と(b)との間、ii)ステップ(b)の後、またはiii)(i)と(ii)の両方で前記アノードに熱を加えるステップをさらに含む、
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記リチウムイオン伝導層が、リチウム含有材料、金属酸化物またはメタルコーンのうちの少なくとも1つを含み、
前記リチウムイオン伝導層が、リチウムリン酸窒化物(LIPON)、リチウムリン酸塩、リチウムアルミニウム酸化物、リチウムランタンチタネート、アルコンまたはジルコンのうちの少なくとも1つを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
カソードおよびアノードを含むリチウムイオン電池であって、
前記アノードが、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって作製される、
リチウムイオン電池。
【請求項15】
前記カソードが、硫黄、セレン、または硫黄とセレンの両方を含み、
前記アノードが、少なくとも部分的にプレリチウム化されてリチウム化貯蔵層を形成する、
請求項14に記載のリチウムイオン電池。
【国際調査報告】