(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(54)【発明の名称】一価陰イオン選択性イオン交換膜
(51)【国際特許分類】
C08J 5/22 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
C08J5/22 104
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509679
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2020010951
(87)【国際公開番号】W WO2021034068
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0100083
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ウ・チェ
【テーマコード(参考)】
4F071
【Fターム(参考)】
4F071AA15
4F071FA05
4F071FB02
4F071FC05
4F071FC07
4F071FC09
(57)【要約】
一価陰イオン選択性イオン交換膜、及び該イオン交換膜の製造方法に係り、該一価陰イオン選択性イオン交換膜は、表面部は、陽イオン交換高分子電解質の含量比が高く、中心部は、陰イオン交換高分子電解質の含量比が高く、厚み方向に表面から中心に行くほど、陽イオン交換高分子電解質に対する陰イオン交換高分子電解質の含量比が連続して増大する構造を有することにより、一価陰イオンに比べ、多価陰イオンの交換膜透過を顕著に低減させ、一価陰イオンに対して高い選択性を有しうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性構造を有する高分子支持体と、
前記高分子支持体に含浸されたイオン交換高分子電解質と、を含む一価陰イオン選択性イオン交換膜であり、
前記イオン交換高分子電解質は、陰イオン交換高分子電解質及び陽イオン交換高分子電解質を含み、
前記高分子支持体中心部に、陰イオン交換高分子電解質が含浸され、
前記高分子支持体表面部に、陽イオン交換高分子電解質が含浸された、一価陰イオン選択性イオン交換膜。
【請求項2】
前記陰イオン交換高分子電解質及び前記陽イオン交換高分子電解質の含量比は、下記数式1の関係を有する、請求項1に記載の一価陰イオン選択性イオン交換膜:
【数1】
前記数式1で、
Aは、前記高分子支持体の中心部において、陽イオン交換高分子電解質に対する陰イオン交換高分子電解質の含量比であり、
Bは、前記高分子支持体の表面部において、陽イオン交換高分子電解質に対する陰イオン交換高分子電解質の含量比であり、
前記中心部は、前記高分子支持体の厚み100%につき、表面から中心方向に、20%ないし80%の深みまでの領域であり、
前記表面部は、前記高分子支持体の厚み100%につき、表面から中心方向に、0%ないし20%の深みまでの領域である。
【請求項3】
前記高分子支持体厚み方向に沿い、表面から中心に行くほど、前記陽イオン交換高分子電解質に対する陰イオン交換高分子電解質の含量比が増大する、請求項1に記載の一価陰イオン選択性イオン交換膜。
【請求項4】
前記陽イオン交換高分子電解質の含量は、陰イオン交換高分子電解質100重量部対比で、10重量部ないし40重量部である、請求項1に記載の一価陰イオン選択性イオン交換膜。
【請求項5】
前記陽イオン交換高分子電解質は、陰イオン基を有するスルホン酸含有電解質モノマーが架橋重合されたものである、請求項1に記載の一価陰イオン選択性イオン交換膜。
【請求項6】
前記陰イオン基を有するスルホン酸含有電解質モノマーは、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム、3-スルホプロピルアクリル酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される物質を含む、請求項5に記載の一価陰イオン選択性イオン交換膜。
【請求項7】
前記陰イオン交換高分子電解質は、陽イオン基を有する四価アンモニウム塩の電解質モノマーが架橋重合されたものである、請求項1に記載の一価陰イオン選択性イオン交換膜。
【請求項8】
前記陽イオン基を有する四価アンモニウム塩の電解質モノマーは、塩化(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム、塩化(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される物質を含む、請求項7に記載の一価陰イオン選択性イオン交換膜。
【請求項9】
前記多孔性高分子支持体は、空隙体積が、40%ないし50%、気孔サイズが、0.07μmないし0.1μm、厚みが、8μmないし30μmである、請求項1に記載の一価陰イオン選択性イオン交換膜。
【請求項10】
前記高分子支持体厚みに対する一価陰イオン選択性イオン交換膜の厚み比は、1.0ないし1.03である、請求項1に記載の一価陰イオン選択性イオン交換膜。
【請求項11】
陽イオン基を有する電解質モノマー、架橋剤、開始剤、及び溶媒を含む陰イオン交換前駆体溶液に、多孔性高分子支持体を含浸させる段階と、
前記多孔性高分子支持体に光を照射し、前記陰イオン交換前駆体溶液を架橋反応させ、前記多孔性高分子支持体中心部に、陰イオン交換高分子電解質を形成させる段階と、
陰イオン基を有する電解質モノマー、架橋剤、開始剤、及び溶媒を含む陽イオン交換前駆体溶液に、前記陰イオン交換高分子電解質が内部に形成された多孔性高分子支持体を含浸させる段階と、
前記陽イオン交換前駆体溶液に含浸された多孔性高分子支持体に光を照射し、前記陽イオン交換前駆体溶液を架橋反応させ、前記多孔性高分子支持体表面部に、陽イオン交換高分子電解質を形成させる段階と、を含む、一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法。
【請求項12】
前記陽イオン基を有する電解質モノマーは、四価アンモニウム塩電解質モノマーである、請求項11に記載の一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法。
【請求項13】
前記陰イオン基を有する電解質モノマーは、スルホン酸含有電解質モノマーである、請求項11に記載の一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法。
【請求項14】
前記多孔性高分子支持体は、前記陰イオン交換前駆体溶液に含浸される前、界面活性剤により、親水化処理される、請求項11に記載の一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一価陰イオン選択性イオン交換膜、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、石炭のような化石燃料の枯渇憂慮や、化石燃料の使用によって発生する二酸化炭素発生による地球温暖化のような問題により、それらを代替することができる新たなエネルギー源の開発が要求されている。それと係わり、現在、全世界的に、太陽熱、バイオ燃料、地熱、風力のような多様な再生可能エネルギー源が開発及び研究されているが、そのような再生可能エネルギー源は、今のところ、全世界エネルギー消耗量の10%未満に留まっている実情である。さらに、化石燃料の有望な代替エネルギー源として研究されている太陽熱、風力の場合、エネルギー生産量が、周辺の気候環境に非常に敏感であるために、エネルギー生産量の安定した確保側面において、短所を有し、それにより、枯渇の憂慮がないということは、言うまでもなく、安定してエネルギーを生成することができる環境にやさしい代替エネルギー源への関心が高まっている。
【0003】
一方、前述の環境にやさしい代替エネルギー源として、電気透析工程を利用し、高純度食塩を生産する工程、高純度苛性ソーダを生産する工程、及び軟水を生産する工程には、一価陰イオン選択性イオン交換膜が必要であり、それ例外に、脱イオン過程において、一価イオン選択性が先決されなければならないという発酵工程の回収、食品工業、製薬分野、酸及び重金属の回収、並びに廃水中和などにも、高い一価陰イオン選択性イオン交換膜の開発が切実に要求されている。それにより、前述のような必要性により、一価陰イオン選択性イオン交換膜に対する研究が活発に進められているが、多価陰イオンに対し、高比率で一価陰イオンのみを選択的に透過するイオン交換膜の開発は、いまだに十分ではないというところが現実である。
【0004】
そのために、本発明者は、一価陰イオン選択性イオン交換膜について研究している中で、多孔性高分子支持体の中心部に、陰イオン交換高分子電解質を形成し、表面部に、陽イオン交換高分子電解質を形成し、イオン交換膜を製造することにより、多価陰イオンに対し、一価陰イオンが選択的に高い比率で、前記イオン交換膜を透過することを発見し、本発明完成に至った。
【0005】
それと係わり、大韓民国登録特許第10-1511990号は、逆電気透析装置用イオン交換膜、及びそれを含む逆電気透析装置について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-1511990号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述の問題を解決すべく案出されたものであり、本発明の一実施形態は、一価陰イオン選択性イオン交換膜を提供する。
【0008】
また、本発明の他の一実施形態は、一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法を提供する。
【0009】
本発明がなすべき技術的課題は、以上で言及された技術的課題に限定されるものではなく、言及されていないさらに他の技術的課題は、以下の記載から、本発明が属する技術分野において当業者であるならば、明確に理解することができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の技術的課題を達成するための技術的手段として、本発明の一側面は、
多孔性構造を有する高分子支持体と、前記高分子支持体に含浸されたイオン交換高分子電解質と、を含む一価陰イオン選択性イオン交換膜であり、前記イオン交換高分子電解質は、陰イオン交換高分子電解質及び陽イオン交換高分子電解質を含み、前記高分子支持体中心部に、陰イオン交換高分子電解質が含浸され、前記高分子支持体表面部に、陽イオン交換高分子電解質が含浸されたものである一価陰イオン選択性イオン交換膜を提供する。
【0011】
前記陰イオン交換高分子電解質及び前記陽イオン交換高分子電解質の含量比は、下記数式1の関係を有するものでもある。
【0012】
【0013】
前記数式1で、Aは、前記高分子支持体の中心部において、陽イオン交換高分子電解質に対する陰イオン交換高分子電解質の含量比であり、Bは、前記高分子支持体の表面部において、陽イオン交換高分子電解質に対する陰イオン交換高分子電解質の含量比であり、前記中心部は、前記高分子支持体の厚み100%につき、表面から中心方向に、20%ないし80%の深みまでの領域であり、前記表面部は、前記高分子支持体の厚み100%につき、表面から中心方向に、0%ないし20%の深みまでの領域である。
【0014】
前記高分子支持体厚み方向に沿い、表面から中心に行くほど、前記陽イオン交換高分子電解質に対する陰イオン交換高分子電解質の含量比が増大するものでもある。
【0015】
前記陽イオン交換高分子電解質の含量は、陰イオン交換高分子電解質100重量部対比で、10重量部ないし40重量部でもある。
【0016】
前記陽イオン交換高分子電解質は、陰イオン基を有するスルホン酸含有電解質モノマーが架橋重合されたものでもある。
【0017】
前記陰イオン基を有するスルホン酸含有電解質モノマーは、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(2-acrylamide-2-methylpropanesulfonate sodium)、ビニルスルホン酸ナトリウム(vinylsulfonate sodium)、ビニルスルホン酸(vinylsulfonic acid)、アリルスルホン酸ナトリウム(allyl sulfonate sodium)、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム(2-methyl-2-propene-1-sulfonate sodium)、3-スルホプロピルアクリル酸ナトリウム(3-sulfopropyl acrylate sodium)、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される物質を含むものでもある。
【0018】
前記陰イオン交換高分子電解質は、陽イオン基を有する四価アンモニウム塩の電解質モノマーが架橋重合されたものでもある。
【0019】
前記陽イオン基を有する四価アンモニウム塩の電解質モノマーは、塩化(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム[(3-acrylamidopropyl)trimethylammonium chloride]、塩化(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム[(vinylbenzyl)trimethylammonium chloride]、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される物質を含むものでもある。
【0020】
前記多孔性高分子支持体は、空隙体積が、40%ないし50%、気孔サイズが、0.07μmないし0.1μm、厚みが、8μmないし30μmでもある。
【0021】
前記高分子支持体厚みに対する一価陰イオン選択性イオン交換膜の厚み比は、1.0ないし1.03でもある。
【0022】
また、本発明の他の一側面は、
陽イオン基を有する電解質モノマー、架橋剤、開始剤、及び溶媒を含む陰イオン交換前駆体溶液に、多孔性高分子支持体を含浸させる段階と、前記多孔性高分子支持体に光を照射し、前記陰イオン交換前駆体溶液を架橋反応させ、前記多孔性高分子支持体中心部に、陰イオン交換高分子電解質を形成させる段階と、陰イオン基を有する電解質モノマー、架橋剤、開始剤、及び溶媒を含む陽イオン交換前駆体溶液に、前記陰イオン交換高分子電解質が内部に形成された多孔性高分子支持体を含浸させる段階と、及び前記陽イオン交換前駆体溶液に含浸された多孔性高分子支持体に光を照射し、前記陽イオン交換前駆体溶液を架橋反応させ、前記多孔性高分子支持体表面部に、陽イオン交換高分子電解質を形成させる段階と、を含む一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法を提供する。
【0023】
前記陽イオン基を有する電解質モノマーは、四価アンモニウム塩電解質モノマーでもある。
【0024】
前記陰イオン基を有する電解質モノマーは、スルホン酸含有電解質モノマーでもある。
【0025】
前記多孔性高分子支持体は、前記陰イオン交換前駆体溶液に含浸される前、界面活性剤により、親水化処理されるものでもある。
【0026】
前記一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法は、前記陰イオン交換高分子電解質を形成させる段階前、上部フィルム、前記陰イオン交換前駆体溶液に含浸された多孔性高分子支持体、及び下部フィルムを圧着ロールに投入し、前記高分子支持体の上部及び下部に、それぞれ前記上部フィルム及び前記下部フィルムを圧着させる段階と、前記陰イオン交換高分子電解質を形成させる段階後、前記形成された陰イオン交換高分子電解質を含む高分子支持体、上部フィルム及び下部フィルムを、脱着ロールから脱着させる段階と、をさらに含むものでもある。
【0027】
前記一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法は、前記陽イオン交換高分子電解質を形成させる段階前、上部フィルム、前記陽イオン交換前駆体溶液に含浸された多孔性高分子支持体、及び下部フィルムを圧着ロールに投入し、前記高分子支持体の上部及び下部に、それぞれ前記上部フィルム及び前記下部フィルムを圧着させる段階と、前記陽イオン交換高分子電解質を形成させる段階後、前記形成された陽イオン交換高分子電解質を含む高分子支持体、上部フィルム及び下部フィルムを、脱着ロールから脱着させる段階と、をさらに含むものでもある。
【0028】
前記上部フィルム及び前記下部フィルムは、前記多孔性高分子支持体と接触する一面が親水処理されたものでもある。
【0029】
前記圧着は、スクイーズ圧着を介して行われ、前記スクイーズ圧着を介し、前記圧着ロールに投入された多孔性高分子支持体厚み及びフィルム厚みの和が、投入前の厚み和に比べ、70%ないし97%の値を有するようにするものでもある。
【0030】
前記脱着を介し、前記多孔性高分子支持体の外部に形成された架橋重合された高分子樹脂が、前記上部フィルム及び前記下部フィルムに転写されて除去されるものでもある。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一実施例によれば、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜は、表面部は、陽イオン交換高分子電解質の含量比が高く、中心部は、陰イオン交換高分子電解質の含量比が高く、厚み方向に表面から中心に行くほど、陽イオン交換高分子電解質に対する陰イオン交換高分子電解質の含量比が連続して増大する構造を有することにより、一価陰イオンに比べ、多価陰イオンの交換膜透過を顕著に低減させ、一価陰イオンに対して高い選択性を有しうる。
【0032】
本発明の効果は、前述の効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明、または特許請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能な全ての効果を含むと理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一具現例による一価陰イオン選択性イオン交換膜を示した概略図である。
【
図2】本発明の一具現例による一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法を示した概略図である。
【
図3】本発明の一具現例による一価陰イオン選択性イオン交換膜のロール・ツー・ロール製造工程を示した概略図である。
【
図4】本発明の一実施例及び比較例による一価陰イオン選択性イオン交換膜の膜透過度を計算するために、溶液内伝導度を測定する装置の模式図である。
【
図5A】本発明の一実施例による一価陰イオン選択性イオン交換膜の膜透過度を計算するために、時間変化に対する濃度変化を測定した結果グラフである。
【
図5B】比較例による一価陰イオン選択性イオン交換膜の膜透過度を計算するために、時間変化に対する濃度変化を測定した結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。しかし、本発明は、さまざまに異なる形態にも具現され、ここで説明する実施例により、本発明が限定されるものではなく、本発明は、後述する請求範囲によってのみ定義される。
【0035】
さらには、本発明で使用された用語は、単に特定実施例についての説明に使用されたものであり、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本発明の明細書全体において、ある構成要素を「含む」ということは、特別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいということを意味する。
【0036】
本願の第1側面は、
多孔性構造を有する高分子支持体と、前記高分子支持体に含浸されたイオン交換高分子電解質と、を含む一価陰イオン選択性イオン交換膜であり、前記イオン交換高分子電解質は、陰イオン交換高分子電解質及び陽イオン交換高分子電解質を含み、前記高分子支持体中心部に、陰イオン交換高分子電解質が含浸され、前記高分子支持体表面部に、陽イオン交換高分子電解質が含浸されたものである一価陰イオン選択性イオン交換膜を提供する。
【0037】
以下、本願の第1側面による一価陰イオン選択性イオン交換膜につき、
図1を参照して詳細に説明する。
【0038】
本願の一具現例において、
図1は、一価陰イオン選択性イオン交換膜1を示した概略図であり、まず、本明細書において、前記高分子支持体110中心部に含浸された陰イオン交換高分子電解質120は、中心部にだけ含浸されたものではなく、表面部にも一部含浸されたものを意味するものであり、高分子支持体110表面部に含浸された陽イオン交換高分子電解質130も、表面部にだけ含浸されたものではなく、中心部にも、一部含浸されたものを意味すると解釈されなければならない。
【0039】
本願の一具現例において、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜1は、前記高分子支持体110表面部に、陰イオン基を有する陽イオン交換高分子電解質130が含浸されており、一価陰イオンに比べ、相対的に電荷量が多い多価陰イオンの場合、表面部に含浸された前記陽イオン交換高分子電解質130の陰イオン基との強い斥力により、一価陰イオンに比べ、前記陽イオン交換高分子電解質130を相対的に透過させないものでもある。一方、比較的電荷量が少ない一価陰イオンは、多価陰イオンに比べ、陰イオン基を有する陽イオン交換高分子電解質130との斥力が弱く、相対的に前記陽イオン交換高分子電解質130を良好に透過することができ、前記高分子支持体110中心部に含浸された陰イオン交換高分子電解質120に逹することができるために、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜1は、一価陰イオンのみを選択的に透過させることができるものでもある。
【0040】
本願の一具現例において、前記陰イオン交換高分子電解質120及び陽イオン交換高分子電解質130の含量比は、下記数式1の関係を有するものでもある。
【0041】
【0042】
前記数式1で、Aは、前記高分子支持体110の中心部において、陽イオン交換高分子電解質130に対する陰イオン交換高分子電解質120の含量比であり、Bは、前記高分子支持体110の表面部において、陽イオン交換高分子電解質130に対する陰イオン交換高分子電解質120の含量比であり、前記中心部は、前記高分子支持体110の厚み100%につき、表面から中心方向に、20%ないし80%の深みまでの領域であり、前記表面部は、前記高分子支持体110の厚み100%につき、表面から中心方向に、0%ないし20%の深みまでの領域でもある。すなわち、前記高分子支持体110の厚み100%につき、表面から中心方向に、20%ないし80%の深みまでの領域においては、陽イオン交換高分子電解質130に対する陰イオン交換高分子電解質120の含量が、同じであるか、あるいはさらに多く、高分子支持体110の厚み100%につき、表面から中心方向に、0%ないし20%の深みまでの領域においては、陰イオン交換高分子電解質120に対する陽イオン交換高分子電解質130の含量が、同じであるか、あるいはさらに多いものでもある。従って、前記高分子支持体110全体(中心部及び表面部)につき、含量比だけ異なっているのみ、陰イオン交換高分子電解質120及び陽イオン交換高分子電解質130がいずれも分布することを排除するものではない。
【0043】
本願の一具現例において、前記高分子支持体110の厚み方向に沿い、表面から中心に行くほど、前記陽イオン交換高分子電解質130に対する陰イオン交換高分子電解質120の含量比が増大するものでもある。前記陽イオン交換高分子電解質130に対する陰イオン交換高分子電解質120の含量比は、高分子支持体110厚み方向に沿い、表面から中心に行くほど、連続して増大するものでもあり、あるいは連続する増大ではないものでもある。連続する増大ではない場合、前記表面部及び前記中心部の境界面において、前記陽イオン交換高分子電解質130に対する陰イオン交換高分子電解質120の含量比が急増するものでもある。
【0044】
本願の一具現例において、前記陽イオン交換高分子電解質130の含量は、陰イオン交換高分子電解質120 100重量部対比で、10重量部ないし40重量部でもある。前記陽イオン交換高分子電解質130の含量が10重量部未満である場合、多価陰イオンも、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜1を透過することができ、一価陰イオンのみを選択的に透過させることができず、40重量部超過である場合、陽イオン交換高分子電解質130の陰イオン基が過度に多く、一価陰イオンも、透過することができないという問題が生じてしまう。
【0045】
本願の一具現例において、前記陰イオン交換高分子電解質120は、陽イオン基を有する四価アンモニウム塩の電解質モノマーが架橋重合されたものでもあり、前記四価アンモニウム塩の電解質モノマーは、下記化学式1によっても表される;
【0046】
【0047】
前記化学式1で、R2ないしR5は、置換もしくは非置換の直鎖または側鎖のアルキルまたはアリールでもあり、Bは、ハロゲン元素でもある。
【0048】
本願の一具現例において、前記陽イオン基を有する四価アンモニウム塩の電解質モノマーは、塩化(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム[(3-acrylamidopropyl)trimethylammonium chloride]、塩化(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム[(vinylbenzyl)trimethylammonium chloride]、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される物質を含むものでもある。
【0049】
本願の一具現例において、前記陽イオン交換高分子電解質130は、陰イオン基を有するスルホン酸含有電解質モノマーが架橋重合されたものでもあり、前記陰イオン基を有するスルホン酸含有電解質モノマーは、下記化学式2によっても表される:
【0050】
【0051】
前記化学式2でR1は、置換もしくは非置換の直鎖または側鎖のアルキルまたはアリールでもあり、Aは、水素及び金属元素でもある。
【0052】
本願の一具現例において、前記陰イオン基を有するスルホン酸含有電解質モノマーは、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(2-acrylamide-2-methylpropanesulfonate sodium)、ビニルスルホン酸ナトリウム(vinylsulfonate sodium)、ビニルスルホン酸(vinylsulfonic acid)、アリルスルホン酸ナトリウム(allyl sulfonate sodium)、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム(2-methyl-2-propene-1-sulfonate sodium)、3-スルホプロピルアクリル酸ナトリウム(3-sulfopropyl acrylate sodium)、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される物質を含むものでもある。
【0053】
本願の一具現例において、前記多孔性高分子支持体110は、炭化水素系高分子であるならば、制限がなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される物質を含むものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0054】
本願の一具現例において、前記多孔性高分子支持体110は、空隙体積が、40%ないし50%、気孔サイズが、0.07μmないし0.1μm、厚みが、8μmないし30μmでもある。前記多孔性高分子支持体110が前記特性を満足しない場合、陰イオン交換高分子電解質及び陽イオン交換高分子電解質が前記多孔性高分子支持体110に円滑に含浸されず、一価陰イオン選択性イオン交換膜1が容易に製造されないのである。
【0055】
本願の一具現例において、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜1は、前記多孔性高分子支持体110の外部に架橋重合された高分子樹脂が除去され、表面に副産物がなく、従って、厚みが薄いという特性を有しうる。それは、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜1が、ロール・ツー・ロール工程によって製造される場合、前記特性が達成されるものでもあり、それについては、下記本願の第2側面で詳細に後述する。
【0056】
本願の一具現例において、前記高分子支持体110の厚みに対する一価陰イオン選択性イオン交換膜1の厚み比は、1.0ないし1.03でもある。前記高分子支持体内に、陰イオン交換高分子電解質120及び陽イオン交換高分子電解質130が充填されるために、一価陰イオン選択性イオン交換膜1の厚みは、高分子支持体110の厚みと同じであるか、あるいは下記本願の第2側面で後述するように、表面において、陽イオン高分子電解質が除去されながら生じる表面粗さのために、若干厚く、前記厚みの比率が1.03超過である場合、イオン交換膜1表面において、陽イオン交換高分子電解質130が完全に除去されず、それは、イオン交換の妨害要素として作用してしまう。例えば、前記厚みの比率は、1.0ないし1.02であることがさらに望ましいのである。
【0057】
本願の第2側面は、
陽イオン基を有する電解質モノマー、架橋剤、開始剤、及び溶媒を含む陰イオン交換前駆体溶液に、多孔性高分子支持体を含浸させる段階と、前記多孔性高分子支持体に光を照射し、前記陰イオン交換前駆体溶液を架橋反応させ、前記多孔性高分子支持体中心部に、陰イオン交換高分子電解質を形成させる段階と、陰イオン基を有する電解質モノマー、架橋剤、開始剤、及び溶媒を含む陽イオン交換前駆体溶液に、前記陰イオン交換高分子電解質が内部に形成された多孔性高分子支持体を含浸させる段階と、前記陽イオン交換前駆体溶液に含浸された多孔性高分子支持体に光を照射し、前記陽イオン交換前駆体溶液を架橋反応させ、前記多孔性高分子支持体表面部に、陽イオン交換高分子電解質を形成させる段階と、を含む一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法を提供する。
【0058】
本願の第1側面と重複する部分については、詳細な説明を省略したが、本願の第1側面について説明された内容は、第2側面において、その説明が省略されても、同一に適用されうる。
【0059】
以下、本願の第2側面による前記一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法について、段階別に、
図2及び
図3を参照し、詳細に説明する。
図2は、本発明の一具現例による一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法を示した概略図であり、
図3は、本発明の一具現例による一価陰イオン選択性イオン交換膜のロール・ツー・ロール製造工程を示した概略図である。
【0060】
まず、本願の一具現例において、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜1の製造方法は、陽イオン基を有する電解質モノマー、架橋剤、開始剤、及び溶媒を含む陰イオン交換前駆体溶液700に多孔性高分子支持体110を含浸させる段階(S100)を含む。
【0061】
本願の一具現例において、前記陽イオン基を有する電解質モノマーは、四価アンモニウム塩電解質モノマーでもあり、例えば、塩化(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム、塩化(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される物質を含むものでもある。
【0062】
本願の一具現例において、前記架橋剤は、三次アミン作用基を有するアクリルアミド系架橋剤でもあり、それは、下記化学式3によっても表される:
【0063】
【0064】
前記化学式3で、R6及びR7は、置換もしくは非置換の直鎖または側鎖のアルキルまたはアリールでもある。
【0065】
本願の一具現例において、前記三次アミン作用基を有するアクリルアミド系架橋剤は、例えば、N,N’-ビス(アクリロイル)ピペラジン[N,N’-bis(acryloyl)piperazine]、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド[N,N’-(1,2-dihydroxyethylene)bisacrylamide]、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(N,N’-methylenebisacrylamide)、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド(N,N’-methylenebismethacrylamide)、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される物質を含むものでもある。
【0066】
本願の一具現例において、前記架橋剤は、製造される一価陰イオン選択性イオン交換膜1の架橋度を左右し、含量により、イオン交換膜の膨潤度及び機械的物性が調節されうる。
【0067】
本願の一具現例において、前記開始剤は、光開始剤でもあり、例えば、スイスのチバガイギー(Ciba Geigy)社製のDarocurシリーズまたはIrgacureシリーズのうちいずれか一つを使用するものでもあり、あるいは2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(2-hydroxy-2-methyl-1-phenylpropane-1-one)を使用するものでもある。
【0068】
本願の一具現例において、前記溶媒は、水、メタノールまたはエタノールのような水溶性溶媒でもあり、望ましくは、前記溶媒は、水でもある。
【0069】
本願の一具現例において、前記陽イオン基を有する電解質モノマーの含量は、約53重量部ないし約60重量部、前記架橋剤の含量は、約3重量部ないし約7重量部、及び前記溶媒の含量は、約33重量部ないし約44重量部の比率で混合するものでもあり、前記開始剤の含量は、前記陽イオン基を有する電解質モノマー、架橋剤、及び溶媒が混合された溶液100重量部対比で、約0.1重量部ないし約0.5重量部でもある。前記陽イオン基を有する電解質モノマーの含量が、前記範囲未満である場合、製造されるイオン交換膜のイオン伝導度を向上させることができるイオン交換容量が不足し、前記範囲超過である場合、製造されるイオン交換膜の耐久性が低減されてしまう。また、前記架橋剤の含量が、前記範囲未満である場合、架橋度が不足し、製造されるイオン交換膜の耐久性が低減され、前記範囲超過である場合、架橋度が過度に高く、製造されるイオン交換膜のイオン伝導度が顕著に低減されてしまう。併せて、前記溶媒の含量が、前記範囲未満である場合、前記多孔性高分子支持体内に、前記陽イオン基を有する電解質モノマーが過量含浸され、以下で後述する陰イオン基を有する電解質モノマーが相対的に少量含浸されることになる。従って、多孔性高分子支持体表面部に形成される陽イオン交換高分子電解質の厚みが薄くなり、製造されるイオン交換膜が、一価陰イオンを選択的に交換することができる効果を達成することができないことにもなる。また、前記溶媒の含量が、前記範囲超過である場合、前記多孔性高分子支持体内に、前記陽イオン基を有する電解質モノマーが少量含浸され、以下で後述する陰イオン基を有する電解質モノマーが相対的に過量含浸されることになる。従って、多孔性高分子支持体表面部に形成される陽イオン交換高分子電解質の厚みが厚くなり、製造されるイオン交換膜が、一価陰イオンを選択的に交換することができる効果を達成することができないことにもなる。すなわち、前記溶媒の含量は、本発明において、一価陰イオンを選択的に交換させるための効果を達成するにおいて、重要な役割を行うものでもあり、具体的には、前記溶媒の架橋反応時に蒸発され、多孔性高分子支持体の表面気孔を拡張させるものでもある。従って、前記陽イオン基を有する電解質モノマーを含む陰イオン交換前駆体溶液が含浸された多孔性支持体に光を照射し、架橋反応を行うとき、前記陰イオン交換前駆体溶液に含まれた溶媒が蒸発し、多孔性支持体の表面部に形成された気孔サイズを拡張させ、前記拡張された気孔に、さらに陽イオン交換前駆体溶液を含浸させて架橋反応をさせることにより、中心部に形成される陰イオン交換高分子電解質と、表面部に形成される陽イオン交換高分子電解質とが多孔性高分子支持体内において、適切な厚みを有するのである。
【0070】
本願の一具現例において、前記多孔性高分子支持体110は、前記陰イオン交換前駆体溶液700に含浸される前、界面活性剤により、親水化処理されるものでもある。このとき、前記界面活性剤は、親水化させることができるものを使用することができ、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸(dodecylbenzenesulfonic acid, DBSA)、アルキルベンゼンスルホン酸(alkylbenzenesulfonic acid, ABS)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(linear alkylbenzenesulfonic acid, LAS)、アルファスルホン酸(alphasulfonic acid, AS)、アルファオレフィンスルホン酸(alphaolefinsulfonic acid, AOS)、アルコールポリオキシエチレンエーテル(alcohol polyoxyethylene ether, AE)、アルコールポリオキシエチレンエーテルスルホン酸(alcohol polyoxyethylene ether sulfonic acid, AES)、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される物質を使用するものでもあり、望ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸を使用するものでもある。前記界面活性剤は、疎水部が、疎水性である前記高分子支持体110表面と、疎水・疎水相互作用(hydrophobic-hydrophobic interaction)によって結合されれば、界面活性剤の親水部が、高分子支持体110の表面の代わりを行うことになり、親水化がなされる。このとき、該界面活性剤により、高分子支持体110の表側表面だけではなく、内部の細孔表面全体が親水化されうる。細孔表面全体が親水化されることにより、親水性である前記陰イオン交換前駆体溶液700は、親水・親水相互作用(hydrophilic-hydrophilic interaction)により、効果的に容易に細孔内に充填可能になりうる。具体的には、前記親水化処理は、市販される界面活性剤を、0.5重量部ないし1重量部に水に希釈した溶液に、前記多孔性高分子支持体110を、1分間ないし2分間浸漬させた後で乾燥させる方法により、細孔表面を親水化させるものでもある。
【0071】
次に、本願の一具現例において、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜1の製造方法は、前記多孔性高分子支持体110に光を照射し、前記陰イオン交換前駆体溶液700を架橋反応させ、前記多孔性高分子支持体110中心部に、陰イオン交換高分子電解質120を形成させる段階(S200)を含む。
【0072】
本願の一具現例において、前記S200段階は、
図3に示したロール・ツー・ロール工程によっても進められる。その場合、S200段階以前、上部フィルム200、前記陰イオン交換前駆体溶液700に含浸された多孔性高分子支持体110、及び下部フィルム300を圧着ロールに投入させ、前記高分子支持体110の上部及び下部に、それぞれ前記上部フィルム200及び下部フィルム300を圧着させる段階をさらに含むものでもあり、S200段階以後、前記形成された陰イオン交換高分子電解質を含む高分子支持体110、上部フィルム200及び下部フィルム300を、脱着ロールから脱着させる段階をさらに含むものでもある。このとき、前記圧着ロールは、上下に離隔されている上部圧着ロール400及び下部圧着ロール450を含んでもよく、すなわち、2個の圧着ロールを使用するものでもあり、前記脱着ロールも、上下に離隔されている上部脱着ロール500及び下部脱着ロール550を含んでもよく、すなわち、2個の脱着ロールを使用するものでもある。以下、前記S200段階につき、ロール・ツー・ロール工程によって進められる場合につき、例示をもって詳細に説明するが、本段階は、ロール・ツー・ロール工程に限定されるものではない。
【0073】
本願の一具現例において、前記上部フィルム200及び下部フィルム300は、ポリ(エチレンテレフタレート)(poly(ethylene terephthalate, PET)でもある。
【0074】
本願の一具現例において、前記上部フィルム200及び下部フィルム300の厚みは、約30μmないし約70μmでもあり、望ましくは、約50μmないし約60μmでもある。前記上部フィルム200及び下部フィルム300の厚みが30μm未満である場合、以下で後述する、架橋反応後多孔性高分子支持体110と、上部フィルム200及び下部フィルム300との脱着が円滑になされず、前記多孔性高分子支持体110が裂けてしまうという問題が生じてしまい、70μm超過である場合、以下で後述する光の照射時、フィルムの厚みが過度に厚く、光が、前記多孔性高分子支持体110に十分に照射されず、架橋反応が十分になされないという問題が生じてしまう。
【0075】
本願の一具現例において、前記上部フィルム200及び下部フィルム300は、前記多孔性高分子支持体110と接触する一面が撥水処理されていないか、あるいは親水処理されたものでもある。前記親水処理は、例えば、シリコン、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリビニルアミン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸などで親水処理するものでもあり、望ましくは、シリコンで親水処理するものでもある。すなわち、前記上部フィルム200及び下部フィルム300の多孔性高分子支持体110と接触する一面を親水処理することにより、界面活性剤によって親水化処理された多孔性高分子支持体110との結合をさらに容易にすることができるのである。
【0076】
本願の一具現例において、前記圧着は、前記圧着ロールに投入される多孔性高分子支持体110の厚み、及びフィルム200,300厚みの和より小さい値を有するように、スクイーズ圧着を介して遂行されるものでもある。このとき、前記スクイーズ圧着は、約50kgf/cm2ないし約100kgf/cm2の圧力によって遂行されるものでもある。すなわち、前記スクイーズ圧着を介し、多孔性高分子支持体110とフィルム200,300とをさらに強く結合させることにより、後述するように、多孔性高分子支持体110外部に形成された架橋重合された高分子樹脂710が、前記上部フィルム200及び下部フィルム300にさらに容易に転写されて除去されうる。
【0077】
本願の一具現例において、前記スクイーズ圧着を介し、前記圧着ロールに投入された多孔性高分子支持体厚み及びフィルム厚みの和が、投入前の厚み和に比べ、70%ないし97%の値を有することにするものでもある。前記値が70%未満である場合、その後、脱着段階において、多孔性高分子支持体110と、上部フィルム200及び下部フィルム300との脱着が容易になされないという問題が生じてしまい、前記値が90%超過である場合、その後、脱着段階において、多孔性高分子支持体110外部に形成された架橋重合された高分子樹脂710が、上部フィルム200及び下部フィルム300に転写が良好になされずに除去されないのである。
【0078】
本願の一具現例において、前記上部フィルム200、多孔性高分子支持体110及び下部フィルム300が圧着ロールに投入される速度は、約0.5M/minないし約2M/minでもある。前記速度が0.5M/min未満である場合、工程が遅く進められ、生産効率が低下してしまい、2M/min超過である場合、工程が早く進められ、その後の工程において、陰イオン交換前駆体溶液700の架橋反応が円滑になされないのである。
【0079】
本願の一具現例において、前記陰イオン交換前駆体溶液700の架橋反応は、前記上部フィルム200及び下部フィルム300が圧着された前記多孔性高分子支持体110に、光を照射して行われるものでもある。このとき、前記光の照射は、上部フィルム200及び下部フィルム300が圧着された多孔性高分子支持体110の上部及び下部のいずれにおいても遂行されるものである。
【0080】
本願の一具現例において、前記照射される光は、紫外線でもあり、前記紫外線の種類は、UVA、UVB及びUVVに分類することができ、前記紫外線は、異なる波長帯を有するものでもある。具体的には、該UVAは、約320nmないし約400nm、該UVBは、約280nmないし約320nm、及び該UVVは、約400nmないし約450nmの波長帯を有するものでもある。
【0081】
本願の一具現例において、前記照射される紫外線のエネルギーは、UVAの場合、約40mW/cm2ないし約50mW/cm2、UVBの場合、約30mW/cm2ないし約50mW/cm2、及びUVVの場合、約30mW/cm2ないし約50mW/cm2でもあり、望ましくは、UVAの場合、約47mW/cm2、UVBの場合、約37mW/cm2、及びUVVの場合、約35mW/cm2でもある。前記照射される紫外線のエネルギーが前記範囲未満である場合、前記陰イオン交換前駆体溶液700の架橋反応が円滑に進められず、前記範囲超過である場合、エネルギーが過度に強く、前記多孔性高分子支持体110、上部フィルム200及び下部フィルム300が炭化されてしまうという問題が生じうる。
【0082】
本願の一具現例において、前記紫外線の照射は、UVAの場合、約360秒ないし約480秒、UVBの場合、約360秒ないし約480秒、及びUVVの場合、約360秒ないし480秒の間行われるものでもある。前記紫外線の照射が前記範囲未満の間遂行される場合、前記陰イオン交換前駆体溶液700の架橋反応が円滑に進められず、前記範囲超過の間遂行される場合、前記多孔性高分子支持体110、上部フィルム200及び下部フィルム300が炭化されてしまうという問題が生じうる。
【0083】
本願の一具現例において、前記S200段階は、前述のように、陰イオン交換高分子電解質120を形成させた後、前記形成された陰イオン交換高分子電解質120を含む高分子支持体110、上部フィルム200及び下部フィルム300を、脱着ロールから脱着させる段階をさらに含む。
【0084】
本願の一具現例において、前記脱着を介し、前記多孔性高分子支持体110の外部に形成された架橋重合された高分子樹脂710が、前記上部フィルム200及び下部フィルム300に転写されて除去されるのでもある。
【0085】
本願の一具現例において、前記上部脱着ロール500及び下部脱着ロール550の間隔は、前記圧着ロールに投入される前の、多孔性高分子支持体110及びフィルム200,300厚みの和と同一でもある。このとき、前記圧着ロールに投入される前の多孔性高分子支持体110は、前記陰イオン交換前駆体溶液700に含浸される前の高分子支持体110を意味する。すなわち、前記多孔性高分子支持体110の厚みは、陰イオン交換前駆体溶液700を含まない高分子支持体110の厚みでもある。
【0086】
本願の一具現例において、前記脱着ロールを過ぎる前記上部フィルム200及び下部フィルム300を、他側からそれぞれ引っ張ることにより、前記脱着がなされ、このとき、前記他側の方向は、前記上部脱着ロール500及び下部脱着ロール550からそれぞれ対角線方向でもある。
【0087】
次に、本願の一具現例において、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜1の製造方法は、陰イオン基を有する電解質モノマー、架橋剤、開始剤、及び溶媒を含む陽イオン交換前駆体溶液700に、前記陰イオン交換高分子電解質120が内部に形成された多孔性高分子支持体110を含浸させる段階(S300)を含む。
【0088】
本願の一具現例において、前記陰イオン基を有する電解質モノマーは、スルホン酸含有電解質モノマーでもあり、例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム、3-スルホプロピルアクリル酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される物質を含むものでもある。
【0089】
本願の一具現例において、前記架橋剤及び開始剤は、前記S100段階で使用したものと同一のものでもある。
【0090】
本願の一具現例において、前記陽イオン交換前駆体溶液700は、前記陰イオン基を有する電解質モノマーの含量が、約44重量部ないし約47重量部、前記架橋剤の含量が、約6重量部ないし約12重量部、及び前記溶媒の含量が、約44重量部ないし約47重量部の比率で混合されたものでもあり、前記開始剤の含量は、前記陰イオン基を有する電解質モノマー、架橋剤、及び溶媒が混合された溶液100重量部対比で、約0.1重量部ないし約0.5重量部でもある。前記陰イオン基を有する電解質モノマーの含量が、前記範囲未満である場合、製造されるイオン交換膜1のイオン伝導度を向上させることができるイオン交換容量が不足し、前記範囲超過である場合、製造されるイオン交換膜1の耐久性が低減されてしまう。また、前記架橋剤の含量が、前記範囲未満である場合、架橋度が不足し、製造されるイオン交換膜1の耐久性が低減され、前記範囲超過である場合、架橋度が過度に高く、製造されるイオン交換膜1のイオン伝導度が顕著に低減されてしまう。
【0091】
次に、本願の一具現例において、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜の製造方法は、前記陽イオン交換前駆体溶液に含浸された多孔性高分子支持体に光を照射し、前記陽イオン交換前駆体溶液を架橋反応させ、前記多孔性高分子支持体表面部に、陽イオン交換高分子電解質を形成させる段階(S400)を含む。
【0092】
本願の一具現例において、前記S400段階は、前記S200段階と同一に、
図3に示されたロール・ツー・ロール工程によって進められるものでもあり、以下の工程は、前述のところと同一であるので、説明を省略する。
【0093】
本願の一具現例において、前記陽イオン交換高分子電解質130の含量は、陰イオン交換高分子電解質120 100重量部対比で、10重量部ないし40重量部でもある。前記陽イオン交換高分子電解質130の含量が10重量部未満である場合、多価陰イオンも、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜1を透過してしまい、一価陰イオンのみを選択的に透過させることができず、40重量部超過である場合、陽イオン交換高分子電解質130の陰イオン基が過度に多く、一価陰イオンも透過することができないという問題が生じうる。
【0094】
本願の一具現例において、前記製造された一価陰イオン選択性イオン交換膜1は、陽イオン交換高分子電解質130が、前記高分子支持体110の外部に形成されず、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜1の表面に、前記高分子支持体110の多孔性構造が露出されるものでもある。
【0095】
本願の一具現例において、前記陽イオン交換高分子電解質130が、前記高分子支持体110の外部に形成されないという意味は、少なくとも一部は、形成される可能性があることを含む意味に解釈されなければならない。また、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜1の表面に、前記高分子支持体110の多孔性構造が露出されるというのは、少なくとも一部が露出されうるということを含む意味に解釈されなければならず、前記高分子支持体110表面の多孔性構造が露出されると解釈されなければならない。
【0096】
本願の一具現例において、前記一価陰イオン選択性イオン交換膜1は、多孔性高分子支持体110の外部に形成された架橋重合された高分子樹脂が除去され、表面に副産物がなく、イオン交換膜1の厚みが薄いという特性を有しうる。
【0097】
本願の一具現例において、前記高分子支持体110及びイオン交換高分子電解質(陰イオン交換高分子電解質120及び陽イオン交換高分子電解質130)の重さ(重量)の比率は、1:0.8ないし1:1.1でもある。前記高分子支持体110内に、イオン交換高分子電解質が充填された重さの比率が1:0.8未満である場合、イオン交換高分子電解質が十分に充填されず、具現するイオン交換膜としての物理的、電気化学的な特性発現が困難になり、前記重さの比率が1:1.1超過である場合、一価陰イオン選択性イオン交換膜1表面に、高分子電解質が残留し、均一なイオン交換膜の形成が困難ともなる。
【0098】
以下、本発明が属する技術分野において当業者が容易に実施することができるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、さまざまに異なる形態に具現され、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0099】
<実施例>一価陰イオン選択性イオン交換膜製造
1.陰イオン交換高分子電解質の充填
塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム((vinylbenzyl)trimethylammonium chloride)(99%)、1,4-アクリロイルピペラジン(1,4-acryloylpiperazine)及び水が12:1:9の重量比で混合された重合溶液を準備し、メタノールに、N,N’-アゾビスイソブチロニトリルが10重量比に希釈された開始剤溶液を、0.01重量比使用した。その後、厚み16μm、気孔分布45%である多孔性ポリエチレン支持体を混合溶液に含浸させ、支持体内に単量体が十分に浸透するようにした後、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム間に置き、UVAの場合、約47mW/cm2、UVBの場合、約37mW/cm2、及びUVVの場合、約35mW/cm2の強度の紫外線を照射し、架橋反応を行った。前記架橋過程を行った後、PETフィルムを除去し、支持体表面に付いた副産物を除去し、一次的に陰イオン交換膜を得た。
【0100】
2.陽イオン交換高分子電解質の充填
前述の1.陰イオン交換高分子電解質充填によって製造された陰イオン交換膜の両表面に、陽イオン交換高分子電解質を充填するために、アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(acrylamide-2-methyl-1-propanesulfonic acid)(99%)、1,4-アクリロイルピペラジン及び水を、12:1:12の重量比で混合した溶液に、前記1によって製造された陰イオン交換膜を含浸させ、前記1によって製造された陰イオン交換膜の表面部に十分に充填されていない気孔に、溶液を十分に浸透させた後、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム間に置き、二次として、UVAの場合、約47mW/cm2、UVBの場合、約37mW/cm2、及びUVVの場合、約35mW/cm2の強度の紫外線を照射し、架橋反応を行った後、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを除去し、支持体表面に付いた副産物を除去し、一価陰イオン選択性陰イオン交換膜を得た。
【0101】
<比較例>商用陰イオン交換膜(AMV)の準備
市販中の一価陰イオン交換膜(AGC(株))を使用し、実施例と比較した。
【0102】
<実験例>
前記実施例及び比較例によるイオン交換膜を、
図4に示した測定装置に装着した後、膜左側容器には、1ノルマル濃度の塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムの水溶液を入れ、膜右側容器には、蒸溜水を入れた。経時的に水溶液のイオンが膜試料を介して透過する量を知るために、2時間伝導度を測定した。各溶液の濃度別伝導度測定を介し、前記結果を濃度に変換させ、経時的濃度変化を
図5A及び
図5Bに図示した。
図5Aは、前記実施例によるイオン交換膜を使用した結果データを示すグラフであり、
図5Bは、前記比較例によるイオン交換膜を使用した結果データを示すグラフである。
【0103】
また、下記数式2を利用し、イオンクロスオーバーに係わる膜透過度(Pcrossover)を計算した結果を下記表1に示した。
【0104】
【0105】
前記数式2で、Vは、透過度測定用セル両側(当該イオンが含有された側、及び純水側)に供給された同一量の溶液体積(cm3)、Lは、透過度測定に使用されたイオン交換膜厚(cm)、Aは、透過度測定に使用されたイオン交換膜有効面積(cm2)、CAは、当該イオンが含有された溶液内初期イオン濃度(M)、CB(t)は、純水側に越えて来た時間変化による当該イオンの濃度(M)、tは、測定時点における変化された時間(s)、t0は、測定前の初期時間(s)を示す。
【0106】
【0107】
図5A、
図5B及び前記表1によれば、比較例による常用一価陰イオン選択性イオン交換膜と異なり、本願実施例による一価陰イオン選択性イオン交換膜は、一価陰イオン(Cl
-、NO
3
-)の透過程度が、二価陰イオン(CO
3
2-及びSO
4
2-)の透過程度に比べ、顕著に高く、一価陰イオンに対する選択性が、比較例による陰イオン交換膜に比べ、顕著にすぐれるということを確認することができた。
【国際調査報告】