(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(54)【発明の名称】IGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20221017BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
H01L29/86 301D
H01L29/48 D
H01L29/86 301M
H01L29/86 301F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510225
(86)(22)【出願日】2020-06-28
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 CN2020098495
(87)【国際公開番号】W WO2021051923
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】201910893666.7
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594196624
【氏名又は名称】山東大学
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張翼飛
(72)【発明者】
【氏名】宋愛民
(72)【発明者】
【氏名】凌昊天
(72)【発明者】
【氏名】王卿璞
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104AA08
4M104BB07
4M104BB09
4M104DD34
4M104GG03
(57)【要約】
本発明は、IGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法に関し、IGZOショットキーダイオードには、下から上に順次成長した基板、ショットキー電極、アモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層、およびオーミック電極が含まれ、そのステップは以下を含む。(1)ショットキー電極としてメタマテリアルを使用し、アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層にメタマテリアルの容量性構造を完全にカバーさせ、メタマテリアルの容量性構造は、アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層と結合してショットキーバリアを形成する。(2)ステップ(1)で処理されたIGZOショットキーダイオードを介してメタマテリアルを動的に調整制御する。本発明は、メタマテリアル構造設計の共振周波数に影響を与えることなく、透過率、反射率、吸収率を含むメタマテリアルの電磁特性の大きな動的変調を実現し、さまざまなメタマテリアルデバイスおよびメタマテリアル構造を備えたプラズモンデバイスに適用でき、空間伝送型電磁波と表面伝送型電磁波への動的な調整を実現する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法であって、前記IGZOショットキーダイオードには、下から上に順次成長した基板、ショットキー電極、アモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層、およびオーミック電極が含まれ、
前記ショットキー電極としてメタマテリアルを使用し、かつ前記アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層に前記メタマテリアルの容量性構造を完全にカバーさせ、メタマテリアルの容量性構造は、前記アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層と結合してショットキーバリアを形成するステップ(1)と、
ステップ(1)で処理されたIGZOショットキーダイオードを介してメタマテリアルを動的に調整制御するステップ(2)と、
を含むことを特徴とするIGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法。
【請求項2】
前記メタマテリアルの容量性構造のギャップは5μmより小さいことを特徴とする請求項1に記載のIGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法。
【請求項3】
前記メタマテリアルの材質にはTi/Au/Pdが含まれることを特徴とする請求項1に記載のIGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法。
【請求項4】
前記メタマテリアルには、分割リングメタマテリアル、容量性誘導共振メタマテリアル、分割リングメタマテリアルアレイ、または容量性誘導共振メタマテリアルアレイが含まれることを特徴とする請求項1に記載のIGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法。
【請求項5】
前記ステップ(2)において、ステップ(1)で処理されたIGZOショットキーダイオードを介してメタマテリアルを動的に調整制御することは、
ショットキー電極に正の電圧を印加し、オーミックに負の電圧を印加するステップAと、
ゼロバイアス状態で、メタマテリアルの容量性構造のギャップをカバーするアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層のIGZOが使い尽くされ、メタマテリアルの容量性構造は強力なLC共振を形成し、完全なバンドストップ応答をもたらすステップBと、
ゼロ電圧から正の電圧を連続的に増加し、正電圧の増加に伴い、アモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層のIGZOのキャリアは正電圧の方向、つまりオーミック電極からショットキー電極に移動し、メタマテリアルの容量性構造のギャップにあるアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層のIGZOフリーキャリア濃度が徐々に増加し、導電率が増加するため、ギャップの容量は短絡するまで減少し、メタマテリアル構造は徐々に準リング構造になり、電磁信号に対する減衰応答が弱くなり、より高い透過率を生成するステップCと、
を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のIGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法。
【請求項6】
ステップ(1)で生成されたメタマテリアルの動的調整制御のためのIGZOショットキーダイオードの製造方法は、
基板を洗浄するステップ(1)と、
フォトリソグラフィー、電子ビーム蒸着、リフトオフ技術を使用して、ステップ(1)の基板上にメタマテリアルを蒸着し、ショットキー電極とするステップ(2)と、
ステップ(2)でのショットキー電極上にアモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層を製造するステップ(3)と、
フォトリソグラフィー、電子ビーム蒸着、リフトオフ技術により、ステップ(3)でアモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層上にオーミック電極を製造し、材料はTi/Au、厚みは10/300nmであるステップ(4)と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のIGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法。
【請求項7】
前記ステップ(1)は、最初にDECONを入れて5分間洗浄し、次に脱イオン水で10分間洗浄し、次にアセトンで5分間洗浄し、すぐにエタノールを入れて5分間洗浄し、次に脱イオン水ですすぎ、最後に窒素でブロー乾燥することを含むことを特徴とする請求項6に記載のIGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法。
【請求項8】
前記ステップ(3)は、アモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層のパターンを、フォトリソグラフィーによってステップ(2)のサンプルに転写し、サンプルをプラズ洗浄機に入れて、酸素プラズマで30分間洗浄し、表面に残っている接着剤を除去して表面に酸素が豊富な環境を作成し、フォトリソグラフィー、マグネトロンスパッタリング、およびリフトオフ技術によって750nmの厚さのアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層を製造することを含むことを特徴とする請求項6に記載のIGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス技術、電磁界およびマイクロ波技術などの分野に属する、IGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタマテリアルは、「超材料」、「不自然材料」又は「特異材料」とも呼ばれ、自然材料には見られない並外れた物性を備えた人工複合構造や材料を指す。メタマテリアルは一般に、均一な周期分布とサブ波長サイズを持つ人工的に設計された金属または誘電体の微細構造で構成され、これらの微細構造と入射電磁波との間の結合によって特定の電磁応答を達成する。近年、電磁特性の人工的に設計可能であるメタマテリアルは、従来の材料のギャップをよく埋め、これらのメタマテリアルを、半導体、液晶、超伝導などの調整制御可能な材料システムと組み合わせることで、光、印加電場、印加磁場、応力、または化学試薬などの外部励起によってメタマテリアルの電磁特性への能動的調整制御を実現できる。
【0003】
メタマテリアルの能動的調整制御のこれらの方法の中で、最も一般的に使用されるのは、電界効果トランジスタ(三極管)構造を使用して材料のキャリア密度を調整することである。たとえば、酸化物半導体IGZOの調整制御については、Xu, W. Z. et al. Electrically tunable terahertz metamaterials with embedded large-area transparent thin-film transistor arrays. Sci. Rep. 6, 23486(2016)を参照する。グラフェンの調整制御については、Ju, L. et al. Graphene plasmonics for tunable terahertz metamaterials. Nat Nanotechnol. 6, 630-634(2011)、Jadidi, M. M. et al. Tunable Terahertz Hybrid Metal-Graphene Plasmons. Nano Lett. 15, 7099-7104 (2015)及びBalci, O. et al. Graphene-enabled electrically switchable radar-absorbing surfaces. Nat. Commun. 6, 6628(2015)を参照する。これまでのところ、ほとんどの能動的メタマテリアル調整制御はすべて、グラフェントランジスタに基づいており、その調整深度はグラフェンの品質によって制限され、Geim, A. K. & Novoselov, K. S. The rise of graphene, Nat. Mater. 6, 183-191(2007)を参照し、IGZO電界効果トランジスタに基づくメタマテリアルの調整深度は非常に低く、かつトランジスタのゲートはメタマテリアルの電磁特性に悪影響を与える。
【0004】
さらに、ショットキーダイオードは、半導体チャネルのキャリア濃度を調整制御することにより、メタマテリアルを動的に調整制御することもできる。2006年に、ガリウムヒ素(GaAs)ショットキーダイオードを使用してテラヘルツ周波数でメタマテリアルを能動的調整制御する方式が報告され、Chen, H.-T. et al. Active terahertz metamaterial devices. Nature 444, 597-600(2006)和Chen, H.-T. et al. A metamaterial solid-state terahertz phase modulator. Nature Photonics 3, 148-151(2009)を参照する。ただし、現在では、メタマテリアルの動的調整制御を実現できるショットキーダイオードは他にない。上記の記事で報告されている解決手段に使用されたGaAs基板は剛性で高価であり、大面積回路やフレキシブル回路にも、高いコストパフォーマンスのメタマテリアル動的調整制御アプリケーションにも適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の欠点を考慮して、本発明は、IGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法を提供する。
【0006】
本発明は、メタマテリアルの動的調整制御を実現するために、初めてIGZOショットキーダイオードを使用する。本発明は、従来のメタマテリアル能動的調整制御の複数種類の解決手段における低変調深度、高コスト、複雑な製造プロセス、およびフレキシブル回路に対する不適切性等の問題に対して、高い電子移動度(10~50cm2/Vs)、低い電磁損失、低コスト、成長と製造プロセスが簡単で、均一性が良好であるIGZOを活性層として、金属メタマテリアルを製造しながら、ショットキー電極とオーミック電極を製造してショットキーダイオードを形成し、オーミック電極とショットキー電極に電圧を印加することによってメタマテリアルの電磁特性への能動的調整制御を実現する。ガリウムヒ素やグラフェンなど、帯域幅が狭い、またはエネルギーギャップのない半導体と比較して、IGZOはエネルギー帯域が広く安定性に優れているため、IGZOショットキーダイオードの動的調整制御は可視光と広い温度範囲で機能することができる。IGZOショットキーダイオードは、室温での磁気同時スパッタリングにより製造できる。これは、大面積、高歩留まり、低コストという利点があり、かつフレキシブル回路で使用できる。
【0007】
用語の説明:
1、DECONは、デコン洗浄剤を指す。
2、IGZOは、インジウムガリウム亜鉛酸化物、酸化物半導体、英語名Indium Gallium Zinc Oxide、ショットキーダイオードの活性層である。
3、容量性メタマテリアルとは、回路モデルで等価容量を持つメタマテリアルを指し、これには、分割リングメタマテリアルや容量性誘導性共振メタマテリアル、およびそれらのさまざまなバリアントや複合メタマテリアルが含まれる。
4、表面プラズモン伝送線路とは、誘電体基板上に作製され、サブ波長のしわのある構造を持ち、深度サブ波長の電界局所性を有し、共振伝送できる新型の極細伝送線路を指し、サブ波長構造によって等価負誘電率を形成することにより、マイクロ波およびテラヘルツ周波数帯で表面プラズモンのような特性を実現する。
5、分割リングメタマテリアル、英語名split ring resonatorは、ギャップのある金属リング構造を指し、金属線はインダクタンスと見なすことができ、ギャップは容量を生成し、変化する磁場では、電荷がギャップの両端に蓄積し、共振を形成する。
6、容量性誘導共振メタマテリアル、英語名electric-LC metamaterials、等価回路モデルはLC共振回路、金属線はインダクタンスと見なすことができ、ギャップは容量と見なすことができ、共振を形成する。
7、準リング構造とは、分割共振リングのギャップを短絡する金属リング構造のことである。
8、バンドストップ応答とは、信号強度が特定のスペクトル範囲で大幅に減衰し、特定のスペクトル範囲外では信号の減衰がないという応答を指す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の技術的解決手段は以下のとおりである。
【0009】
IGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法であって、前記IGZOショットキーダイオードには、下から上に順次成長した基板、ショットキー電極、アモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層、およびオーミック電極が含まれ、そのステップは以下を含む。
(1)前記ショットキー電極としてメタマテリアルを使用し、前記アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層に前記メタマテリアルの容量性構造を完全にカバーさせ、メタマテリアルの容量性構造は、前記アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層と結合してショットキーバリアを形成し、
メタマテリアルの容量性構造の2つの金属板は電位を共有するため、2つの金属板の表面にショットキーバリアが形成され、メタマテリアルを通常の動作モードのようにする。
IGZO材料はメタマテリアルの容量性構造をカバーし、メタマテリアルの容量性構造の動作メカニズムは、RLC回路として理解できる。ここで、Lはリング構造のインダクタンス、Cはギャップでの容量、Rgはギャップでの自由キャリア吸収による可変減衰を表す。本発明の方法では、IGZO材料とメタマテリアルの容量性構造との間の接触は、メタマテリアルの容量性構造を埋めるギャップをカバーする必要がある。順方向バイアス電圧を印加した後、IGZOのキャリアは正電圧の方向、つまりオーミック電極からショットキー電極に移動し、メタマテリアルの容量性構造のギャップでのIGZO材料の自由キャリア濃度が増加し、ショットキー電極での導電率もそれにつれて増加する。このようにして、メタマテリアルの容量性構造のギャップが短絡され、材料の再構築と動的な調整が実現される。
(2)ステップ(1)で処理されたIGZOショットキーダイオードを介してメタマテリアルを動的に調整制御する。
【0010】
本発明によれば、好ましくは、前記メタマテリアルの容量性構造のギャップは5μmより小さい。
【0011】
メタマテリアルの容量性構造のギャップにあるIGZOがゼロバイアス電圧の条件下で使い尽くされた状態にあることを保証するために、メタマテリアルの容量性構造、つまりIGZOによってカバーされるギャップのサイズは5μmを超えてはならない。
【0012】
本発明によれば、好ましくは、前記メタマテリアルの材質にはTi/Au/Pdが含まれる。
【0013】
Tiは接着層として機能し、金属と基板間の結合強度を向上させるために用いられる。金属Auは主な信号伝送層として導電性に優れており、Auの厚みが増すと、伝送信号の損失もそれにつれて周波数帯域全体で減少する。高仕事関数の金属Pdは、酸素プラズマによる衝撃を受けた後、酸素に富む環境を形成し、アモルファスのインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層と結合した後、ショットキーバリアを形成する。メタマテリアルは、ショットキー電極として高仕事関数の金属Pdに使用できるが限定されず、IGZOとショットキーバリアを形成できる他の金属はすべて使用できる。
【0014】
本発明によれば、好ましくは、前記メタマテリアルには、分割リングメタマテリアル、容量性誘導共振メタマテリアル、分割リングメタマテリアルアレイ、または容量性誘導共振メタマテリアルアレイが含まれる。
【0015】
本発明によれば、好ましくは、前記ステップ(2)において、ステップ(1)で処理されたIGZOショットキーダイオードを介してメタマテリアルを動的に調整制御し、そのステップは以下を含む。
A、ショットキー電極に正の電圧を印加し、オーミックに負の電圧を印加する。
B、ゼロバイアス状態で、メタマテリアルの容量性構造のギャップをカバーするアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層のIGZOが使い尽くされ、メタマテリアルの容量性構造は強力なLC共振を形成し、完全なバンドストップ応答をもたらし、49GHzの電磁波に対して-31dBまでの強力なバンドストップ応答を生成する。
C、ゼロ電圧から正の電圧を連続的に増加し、正電圧の増加に伴い、アモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層のIGZOのキャリアは正電圧の方向、つまりオーミック電極からショットキー電極に移動し、メタマテリアルの容量性構造のギャップにあるアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層のIGZOフリーキャリア濃度が徐々に増加し、導電率が増加するため、ギャップの容量は短絡するまで減少し、メタマテリアル構造は徐々に準リング構造になり、電磁信号に対する減衰応答が弱くなり、より高い透過率を生成する。
【0016】
本発明によれば、好ましくは、ステップ(1)で生成されたメタマテリアルの動的調整制御のためのIGZOショットキーダイオードの製造方法は、
基板を洗浄するステップ(1)と、
フォトリソグラフィー、電子ビーム蒸着、リフトオフ技術を使用して、ステップ(1)でショットキー電極として基板上にメタマテリアルを蒸着するステップ(2)と、
ステップ(2)でのショットキー電極上でアモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層を製造するステップ(3)と、
フォトリソグラフィー、電子ビーム蒸着、リフトオフ技術により、ステップ(3)でアモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層上にオーミック電極を製造する。材料はTi/Au、厚みは10/300nmであるステップ(4)と、を含む。
【0017】
さらに好ましくは、前記ステップ(1)は、最初にDECONを入れて5分間洗浄し、次に脱イオン水で10分間洗浄し、次にアセトンで5分間洗浄し、すぐにエタノールを入れて5分間洗浄し、次に脱イオン水ですすぎ、最後に窒素でブロー乾燥することを含む。
【0018】
さらに好ましくは、前記ステップ(3)は、アモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層のパターンを、フォトリソグラフィーによってステップ(2)のサンプルに転写し、サンプルをプラズ洗浄機に入れて、酸素プラズマで30分間洗浄し、表面に残っている接着剤を除去して表面に酸素が豊富な環境を作成し、フォトリソグラフィー、マグネトロンスパッタリング、およびリフトオフ技術によって750nmの厚さのアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層を製造することを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0020】
本発明では、IGZOショットキーダイオード構造とメタマテリアルの組み合わせを使用して、透過率、反射率、吸収率などのメタマテリアルの電磁特性の大きな動的変調を実現し、同時に、メタマテリアル構造設計の共振周波数には影響せず、さまざまなメタマテリアルデバイスやメタマテリアル構造を持つプラズモンデバイスに適用して、空間伝送型電磁波と表面伝送型電磁波の動的調整制御を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a)は、シングルリング分割リングメタマテリアルをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオードの構造1の模式図であり、(b)は、シングルリング分割リングメタマテリアルをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオードの構造2の模式図である。
【
図2】
図2(a)は、容量性誘導共振メタマテリアルをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオードの構造1の模式図であり、(b)は、容量性誘導共振メタマテリアルをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオードの構造1の模式図である。
【
図3】
図3は、分割リングメタマテリアルアレイをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオードの構造模式図である。
【
図4】
図4は、容量性誘導共振メタマテリアルアレイをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオードの構造模式図である。
【
図5】
図5は、分割リングメタマテリアルをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオード空間の構造模式図である。
【
図6】
図6は、容量性誘導共振メタマテリアルをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオード空間の構造模式図である。
【
図7】
図7は、メタマテリアルの容量性構造の動作原理の模式図である。
【
図8】
図8は、本発明を用いた電磁波(人工表面プラズモン)の伝送への動的調整制御の模式図である。
【
図9】
図9は、本発明を用いた電磁波(人工表面プラズモン)の吸収への動的調整制御の模式図である。
【
図10】
図10は、電圧が印加されていない場合に、IGZOショットキーダイオードがカバーされたものとIGZOショットキーダイオードがカバーされていないメタマテリアルの信号透過率の比較模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下で明細書の図面および実施例を参照しながら本発明を、さらに限定するが、これに限定されない。
【0023】
実施例1
IGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御の方法であって、IGZOショットキーダイオードには、下から上に順次成長した基板、ショットキー電極、アモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層、およびオーミック電極が含まれ、そのステップは以下を含む。
(1)前記ショットキー電極としてメタマテリアルを使用し、前記アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層に前記メタマテリアルの容量性構造を完全にカバーさせ、メタマテリアルの容量性構造は、前記アモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層と結合してショットキーバリアを形成し、
メタマテリアルの容量性構造の2つの金属板は電位を共有するため、2つの金属板の表面にショットキーバリアが形成され、メタマテリアルを通常の動作モードのようにした。
IGZO材料はメタマテリアルの容量性構造をカバーし、メタマテリアルの容量性構造の動作メカニズムは、
図7に示すRLC回路として理解でき、ここで、Lはリング構造のインダクタンス、Cはギャップでの容量、Rgはギャップでの自由キャリア吸収による可変減衰を表す。本発明の方法では、IGZO材料とメタマテリアルの容量性構造との間の接触は、メタマテリアルの容量性構造を埋めるギャップをカバーする必要がある。順方向バイアス電圧を印加した後、IGZOのキャリアは正電圧の方向、つまりオーミック電極からショットキー電極に移動し、メタマテリアルの容量性構造のギャップでのIGZO材料の自由キャリア濃度が増加し、ショットキー電極での導電率もそれにつれて増加した。このようにして、メタマテリアルの容量性構造のギャップが短絡され、材料の再構築と動的な調整が実現された。
(2)ステップ(1)で処理されたIGZOショットキーダイオードを介してメタマテリアルを動的に調整制御した。
【0024】
実施例2
実施例1によるIGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御方法であって、その区別は、メタマテリアルの容量性構造のギャップが5μmより小さいことである。
【0025】
メタマテリアルの容量性構造のギャップにあるIGZOがゼロバイアス電圧の条件下で使いつくされた状態にあることを保証するために、メタマテリアルの容量性構造、つまりIGZOによってカバーされるギャップのサイズは5μmを超えてはならない。
【0026】
実施例3
実施例1によるIGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御方法であって、その区別は、以下のとおりである。
メタマテリアルの材質にはTi/Au/Pdが含まれる。Tiは接着層として機能し、金属と基板間の結合強度を向上させるために用いられる。金属Auは主な信号伝送層として導電性に優れており、Auの厚みが増すと、伝送信号の損失もそれにつれて周波数帯域全体で減少する。高仕事関数の金属Pdは、酸素プラズマによる衝撃を受けた後、酸素に富む環境を形成し、アモルファスのインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層と結合した後、ショットキーバリアを形成した。メタマテリアルはショットキー電極として高仕事関数の金属Pdに使用できるが限定されず、IGZOでショットキーバリアを形成できる他の金属はすべて使用できる。
【0027】
メタマテリアルには、分割リングメタマテリアル、容量性誘導共振メタマテリアル、分割リングメタマテリアルアレイ、または容量性誘導共振メタマテリアルアレイが含まれる。
図1(a)に示すように、
図1(a)は、シングルリング分割リングメタマテリアルをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオードの構造1であり、シングルリング分割リングメタマテリアルをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオードの構造2を
図1(b)に示し、容量性誘導共振メタマテリアルをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオード構造1を
図2(a)に示し、容量性誘導共振メタマテリアルをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオード構造2を
図2(b)に示し、分割リングメタマテリアルアレイをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオードの構造、空間構造は、それぞれ
図3、
図5に示され、容量性誘導共振メタマテリアルアレイをショットキー電極とするIGZOショットキーダイオードの構造、空間構造は、それぞれ
図4、
図6に示される。他のタイプの分割リングメタマテリアルおよび容量性誘導共振メタマテリアルをIGZOショットキーダイオードと組み合わせて、動的制御を実現することもでき、その組み合わせ方式は
図1~6と類似する。
【0028】
実施例4
実施例1によるIGZOショットキーダイオードに基づくメタマテリアルの動的調整制御方法であって、その区別は以下のとおりである。
ステップ(1)で処理されたIGZOショットキーダイオードを介してメタマテリアルを動的に調整制御することは、以下のステップを含む。
A、ショットキー電極に正の電圧を印加し、オーミックに負の電圧を印加した。
B、ゼロバイアス状態で、メタマテリアルの容量性構造のギャップをカバーするアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層のIGZOが使い尽くされ、メタマテリアルの容量性構造は強力なLC共振を形成し、完全なバンドストップ応答をもたらし、
図6~8に示すように、49GHzの電磁波に対して-31dBまでの強力なバンドストップ応答を生成した。
C、ゼロ電圧から正の電圧を連続的に増加し、正電圧の増加に伴い、アモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層のIGZOのキャリアは正電圧の方向、つまりオーミック電極からショットキー電極に移動し、メタマテリアルの容量性構造のギャップにあるアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層のIGZOフリーキャリア濃度が徐々に増加し、導電率が増加したため、ギャップの容量は短絡するまで減少し、メタマテリアル構造は徐々に準リング構造になり、電磁信号に対する減衰応答が弱くなり、より高い透過率を生成した。
ショットキー電極の材質はPdで、ショットキー電極の厚さは10nmより大きく、アモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層の厚さは10nmより大きく、前記オーミック電極はTiまたはAu、厚さは10nmより大きい。
【0029】
上記メタマテリアルの動的調整制御のためのIGZOショットキーダイオードの製造方法は、以下のステップを含む。
(1)基板の洗浄であって、最初にDECONを入れて5分間洗浄し、次に脱イオン水で10分間洗浄し、次にアセトンで5分間洗浄し、すぐにエタノールを入れて5分間洗浄し、次に脱イオン水ですすぎ、最後に窒素でブロー乾燥した。
(2)フォトリソグラフィー、電子ビーム蒸着、リフトオフ技術を使用して、ステップ(1)でショットキー電極として基板上のメタマテリアルを蒸着した。
(3)ステップ(2)でのショットキー電極上でアモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層を製造した。アモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層のパターンを、フォトリソグラフィーによってステップ(2)のサンプルに転写し、サンプルをプラズ洗浄機に入れて、酸素プラズマで30分間洗浄し、表面に残っている接着剤を除去して表面に酸素が豊富な環境を作成し、フォトリソグラフィー、マグネトロンスパッタリング、およびリフトオフ技術によって750nmの厚さのアモルファスインジウムガリウム亜鉛酸化物活性層を製造した。
(4)フォトリソグラフィー、電子ビーム蒸着、リフトオフ技術により、ステップ(3)でアモルファスインジウムガリウム酸化亜鉛活性層上にオーミック電極を製造した。材料はTi/Au、厚さは10/300nmである。
【0030】
図8は、本発明を用いた電磁波(人工表面プラズモン)の伝送への動的調整制御の模式図である。
【0031】
高周波試験装置の保護電圧により制限され、試験電圧の上限は46Vであり、理想的な変調範囲を得るために、AnsysのHFSSシミュレーションソフトウェアを使用して、IGZOショットキーダイオードのメタマテリアルに対する調整効果をシミュレートした。分割共振リングのDC試験結果から、可変導電率値が抽出され、印加バイアス電圧の増加に伴い、IGZO材料の導電率が増加し、IGZO材料の導電率の実際の変動範囲は7.9×10-6~0.23Smであることができる。シミュレーションでのIGZO材料の導電率を0.016Smに調整すると、透過率の理想的な変調範囲をさらに67%に、吸収率の理想的な変調範囲をさらに32%に増やすことができる。順方向バイアス電圧を46Vに印加すると、信号の透過率を-30dBから-7dBまで変調することができ、同時に、この変調による共振周波数のシフトがないことがわかる。
【0032】
図9は、本発明を用いた電磁波(人工表面プラズモン)の吸収への動的調整制御の模式図である。
図9に示すように、バイアス電圧の増加に伴い、正の電圧を46Vに印加すると、メタマテリアル構造の吸収率の変調範囲は19%に達することができる。
【0033】
図10は、電圧が印加されていない場合に、IGZOショットキーダイオードがカバーされ、IGZOショットキーダイオードがカバーされていないメタマテリアルの信号透過率の比較模式図である。
図10から、IGZOショットキーダイオードのカバーはメタマテリアルの電磁特性にほとんど影響を与えないことがわかり、つまり、デバイスの初期状態でのIGZOの挿入損失は非常に小さい。これは、メタマテリアルの動的調整のためのIGZOショットキーダイオードの非常に重要な利点である。
【国際調査報告】