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特表2022-544987チオール基含有種を含む電気化学電池およびコンポーネント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(54)【発明の名称】チオール基含有種を含む電気化学電池およびコンポーネント
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20221017BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20221017BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20221017BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20221017BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20221017BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221017BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20221017BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/131
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/38
H01M10/052
H01M10/0567
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510934
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 US2020046466
(87)【国際公開番号】W WO2021034696
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/889,701
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/889,699
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500287732
【氏名又は名称】シオン・パワー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】バイナー,ベロニカ ジー
(72)【発明者】
【氏名】コールマン,デイビッド エル
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM06
5H029AM16
5H029BJ13
5H029DJ13
5H029DJ16
5H029EJ12
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ06
5H029HJ07
5H029HJ20
5H050AA07
5H050BA15
5H050BA18
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA09
5H050EA23
5H050FA04
5H050FA13
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA17
(57)【要約】
チオール基を含む電気化学電池および/または電気化学電池コンポーネントを含む物品および方法が、概して提供される。チオール基を含む前記コンポーネントは保護層または電解質であり得る。いくつかの具体例において、チオール基を含む保護層も粒子を含み得る。いくつかの具体例において、チオール基を含む保護層も複数の細孔を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学電池用アノードであって、
リチウム金属を含む電気活性材料;および
前記電気活性材料上に配置された保護層を含み、
前記保護層は、第1のタイプのチオール基含有モノマーおよび第2のタイプのチオール基含有モノマーを含むポリマーを含み;ならびに
前記保護層は複数の細孔を含む、前記アノード。
【請求項2】
電気化学電池用カソードであって、
リチウム遷移金属酸化物を含む電気活性材料;および
前記電気活性材料上に配置された保護層を含み、
前記保護層は、チオール基含有モノマーを含むポリマーを含み;ならびに
前記保護層は複数の細孔を含む、前記カソード。
【請求項3】
電気化学電池であって
リチウムを含む第1の電気活性材料を含む第1の電極;
リチウム遷移金属酸化物を含む第2の電気活性材料を含む第2の電極;および
電解質を含み、
前記電解質は、
チオール基を含む第1の添加剤;および
アルケン基を含む第2の添加剤を含み、
前記第2の添加剤のアルケン基は、前記第1の電気活性材料および/または第2の電気活性材料上に配置された保護層を形成するために、第1の添加剤のチオール基と反応するようになっている、前記電気化学電池。
【請求項4】
電気化学電池用コンポーネントであって、
電気活性材料;および
前記電気活性材料上に配置された保護層を含み、
前記保護層は、チオール基およびトリアジン基の双方を含む分子の反応生成物を含む、前記電気化学電池用コンポーネント。
【請求項5】
電気化学電池であって、
リチウムを含む電気活性材料を含む第1の電極;
リチウム遷移金属酸化物を含む第2の電極;および
電解質を含み、
前記電解質は、チオール基およびトリアジン基の双方を含む分子を含む、前記電気化学電池。
【請求項6】
前記チオール基が、脱プロトン化チオール基である、請求項1~5のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項7】
前記チオール基が、プロトン化チオール基である、請求項1~6のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項8】
前記チオール基が脱プロトン化チオール基であって、電気化学電池がさらに複数の対イオンを含む、請求項1~7のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項9】
前記複数の対イオンが、リチウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンおよびテトラアルキル・アンモニウムイオンの1つ以上を含む、請求項1~8のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項10】
前記複数の対イオンが1つ以上の遷移金属イオンを含む、請求項1~9のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項11】
前記遷移金属イオンが、ニッケル、マンガンおよび/またはコバルトを含む、請求項1~10のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項12】
前記ポリマーはジスルフィド結合を含む、請求項1~11のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項13】
チオール基に対するジスルフィド結合のモル比が、0.01以上かつ100以下である、請求項1~12のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項14】
前記チオール基が、3-メルカプトプロピオン酸のコンポーネントである、請求項1~13のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項15】
前記チオール基が、ペンタエリトリトール・テトラキス 3-メルカプトプロピオン酸、トリメチロールプロパン・トリス(3-メルカプトプロピオン酸)、トリチオシアヌル酸、2、2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、ポリ(エチレングリコール)ジチオール)、テトラ(エチレングリコール)ジチオール)、ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール、1,3,4-チアジアゾール-2,5-ジチオール、1,2,4-チアジアゾール-3,5-ジチオール、5、5’-ビス(メルカプトメチル)-2,2’-ビピリジン、4-フェニル-4H-(1,2,4)トリアゾール-3,5-ジチオール、5-(4-クロロ-フェニル)-ピリミジン-4,6-ジチオール、4,4’-ビス(メルカプトメチル)ビフェニル、p-テルフェニル-4,4’’-ジチオール、ベンゼン-1,4-ジチオール、1,4-ベンゼンジメタンジチオール、1,2-ベンゼンジメタンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジメタンチオール、ベンゼン-1,2-ジチオール、トルエン-3,4-ジチオール、4-フェニル-4H-(1,2,4)トリアゾール-3,5-ジチオール、5-(4-クロロ-フェニル)-ピリミジン-4,6-ジチオール、4,4’-チオビスベンゼンチオール、4,4’-チオビスベンゼンチオール、2,2’-チオジエタンチオールまたはアルキルチオールのコンポーネントである、請求項1~14のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項16】
第1の添加剤が、電解質の0.1重量%以上かつ10重量%以下を構成する、請求項1~15のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項17】
第1の添加剤が、電解質の0.5重量%以上かつ2.5重量%以下を構成する、請求項1~16のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項18】
第1の添加剤が、3つ、4つのまたはそれを超えるチオール基を含む、請求項1~17のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項19】
第2のタイプのチオール基含有モノマーに対する第1のタイプのチオール基含有モノマーのモル比が、0.1以上かつ15以下である、請求項1~18のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項20】
第2のタイプのチオール基含有モノマーに対する第1のタイプのチオール基含有モノマーのモル比が、1以上かつ1.5以下である、請求項1~19のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項21】
前記第2の添加剤が少なくとも2つのアルケン基を含む、請求項1~20のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項22】
前記アルケン基がビニル基である、請求項1~21のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項23】
前記アルケン基がアクリレート基である、請求項1~22のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項24】
前記アルケン基がメタクリレート基である、請求項1~23のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項25】
前記第2の添加剤がポリエーテル基を含む、請求項1~24のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項26】
前記第2の添加剤が、電解質の0.05重量%以上かつ5重量%以下を構成する、請求項1~25のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項27】
第1の添加剤の重量に対する第2の添加剤の重量の比率が、0.1以上かつ0.3以下である、請求項1~26のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項28】
前記ポリマーが架橋される、請求項1~27のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項29】
前記ポリマーが、アルケン基を含む分子およびチオール基を含む分子の反応生成物を含む、請求項1~28のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項30】
未反応および反応させたアルケン基に対する未反応および反応させたチオール基のモル比が、1、1.4または2以上かつ50または15以下である、請求項1~29のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項31】
前記保護層の平均細孔サイズが、10nm以上かつ1ミクロン以下である、請求項1~30のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項32】
前記細孔が、保護層の25体積%以上かつ95体積%以下を構成する、請求項1~31のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項33】
前記アノードが、さらにカソードを含む電気化学電池のコンポーネントである、請求項1~32のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項34】
前記リチウム遷移金属酸化物が、コバルト、ニッケル、マンガンおよび/またはアルミニウムを含む、請求項1~33のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項35】
前記リチウム遷移金属酸化物が、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む、請求項1~34のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項36】
前記リチウム遷移金属酸化物が、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムを含む、請求項1~35のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項37】
前記カソードが硫黄を含む、請求項1~36のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項38】
前記電気化学電池のサイクル寿命が、保護層を欠く他の等価な電気化学電池のサイクル寿命より5%以上または10%以上高い、請求項1~37のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項39】
前記電気化学電池のインピーダンスが、保護層を欠く他の等価な電気化学電池のインピーダンスのサイクル中のインピーダンス割合の増加より少なくとも2%低い割合にて、サイクル中に増加する、請求項1~38のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項40】
前記保護層が、前記電気化学電池に用いられる電解質に曝露された場合に、150%以下で膨潤するように構成される、請求項1~39のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項41】
前記保護層が、前記電気化学電池に用いられる電解質に曝露された場合に、その構造的完全性を維持するように構成される、請求項1~40のいずれか1記載の電気化学電池のアノード、カソード、電気化学電池またはコンポーネント。
【請求項42】
電気化学電池用アノードであって、
リチウム金属を含む電気活性材料;および
前記電気活性材料上に配置された保護層を含み、
前記保護層は、第1のタイプのチオール基含有モノマーおよび第2のタイプのチオール基含有モノマーを含むポリマーを含み;
前記保護層は、複数の粒子を含み;および
前記保護層は、複数の細孔を含む、前記アノード。
【請求項43】
電気化学電池用カソードであって、
リチウム遷移金属酸化物を含む電気活性材料;および
前記電気活性材料上に配置された保護層を含み、
前記保護層は、第1のタイプのチオール基含有モノマーを含むポリマーを含み;
前記保護層は複数の粒子を含み;ならびに
前記保護層は複数の細孔を含む、前記カソード。
【請求項44】
前記チオール基が脱プロトン化チオール基である、請求項42~43のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項45】
前記チオール基がプロトン化チオール基である、請求項42~44のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項46】
前記チオール基が脱プロトン化チオール基であって、前記アノードまたはカソードを含む電気化学電池が、さらに、複数の対イオンを含む、請求項42~45のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項47】
前記複数の対イオンが、リチウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンおよびテトラアルキル・アンモニウムイオンの1つ以上を含む、請求項42~46のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項48】
前記複数の対イオンが1つ以上の遷移金属イオンを含む、請求項42~47のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項49】
前記遷移金属イオンが、ニッケル、マンガンおよび/またはコバルトを含む、請求項42~48のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項50】
前記ポリマーが、ジスルフィド結合を含む、請求項42~49のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項51】
チオール基に対するジスルフィド結合のモル比が、0.01以上かつ100以下である、請求項42~50のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項52】
前記チオール基が、3-メルカプトプロピオン酸のコンポーネントである、請求項42~51のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項53】
前記チオール基が、ペンタエリトリトール・テトラキス 3-メルカプトプロピオン酸、トリメチロールプロパン・トリス(3-メルカプトプロピオン酸)、トリチオシアヌル酸、2、2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、ポリ(エチレングリコール)ジチオール)、テトラ(エチレングリコール)ジチオール)、ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール、1,3,4-チアジアゾール-2,5-ジチオール、1,2,4-チアジアゾール-3,5-ジチオール、5、5’-ビス(メルカプトメチル)-2,2’-ビピリジン、4-フェニル-4H-(1,2,4)トリアゾール-3,5-ジチオール、5-(4-クロロ-フェニル)-ピリミジン-4,6-ジチオール、4,4’-ビス(メルカプトメチル)ビフェニル、p-テルフェニル-4,4’’-ジチオール、ベンゼン-1,4-ジチオール、1,4-ベンゼンジメタンジチオール、1,2-ベンゼンジメタンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジメタンチオール、ベンゼン-1,2-ジチオール、トルエン-3,4-ジチオール、4-フェニル-4H-(1,2,4)トリアゾール-3,5-ジチオール、5-(4-クロロ-フェニル)-ピリミジン-4,6-ジチオール、4,4’-チオビスベンゼンチオール、4,4’-チオビスベンゼンチオール、2,2’-チオジエタンチオールまたはアルキルチオールのコンポーネントである、請求項42~52のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項54】
第2のタイプのチオール基含有モノマーに対する第1のタイプのチオール基含有モノマーのモル比が、0.1以上かつ15以下である、請求項42~53のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項55】
第2のタイプのチオール基含有モノマーに対する第1のタイプのチオール基含有モノマーのモル比が、1以上かつ1.5以下である、請求項42~54のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項56】
前記ポリマーが架橋される、請求項42~55のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項57】
前記ポリマーが、アルケン基を含む分子、およびチオール基を含む分子の反応生成物を含む、請求項42~56のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項58】
未反応および反応させたアルケン基に対する未反応および反応させたチオール基のモル比が、1、1.4または2以上かつ50または15以下である、請求項42~57のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項59】
前記複数の粒子の平均最大断面寸法が、5nm以上かつ5ミクロン、1ミクロンまたは500nm以下である、請求項42~58のいずれか1記載のごときアノードまたはカソード。
【請求項60】
前記複数の粒子が、酸化アルミニウム粒子、シリカ粒子、ヒュームドシリカ粒子、ベーマイト粒子、窒化炭素粒子、窒化ケイ素粒子、ホウ化炭素粒子、窒化ホウ素粒子、リチウム化黒鉛粒子および/またはホウ素粒子を含む、請求項42~59のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項61】
前記複数の粒子が、保護層の2重量%、5重量%、10重量%または40重量%以上かつかつ保護層の90重量%、70重量%、50重量%、または30重量%以下を構成する、請求項42~60のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項62】
前記保護層の平均細孔サイズが、10nm以上かつ1ミクロン以下である、請求項42~61のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項63】
前記細孔が、保護層の25体積%以上かつ95体積%以下を構成する、請求項42~62のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項64】
前記アノードがカソードをさらに含む電気化学電池のコンポーネントである、請求項42~63のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項65】
前記リチウム遷移金属酸化物が、コバルト、ニッケル、マンガンおよび/またはアルミニウムを含む、請求項42~64のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項66】
前記リチウム遷移金属酸化物が、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む、請求項42~65のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項67】
前記リチウム遷移金属酸化物が、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムを含む、請求項42~66のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項68】
前記カソードが硫黄を含む、請求項42~67のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項69】
前記アノードまたはカソードを含む電気化学電池のサイクル寿命が、保護層を欠く他の等価な電気化学電池のサイクル寿命より5%以上または10%以上高い、請求項42~68のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項70】
前記アノードまたはカソードを含む電気化学電池のインピーダンスが、保護層を欠く他の等価な電気化学電池のインピーダンスのサイクル中のインピーダンス増加率より少なくとも2%低い割合にてサイクル中に増加する、請求項42~69のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項71】
前記保護層が、前記電気化学電池に用いられる電解質に曝露された場合に150%以下で膨潤するように構成される、請求項42~70のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【請求項72】
前記保護層が、前記電気化学電池に用いられる電解質に曝露された場合にその構造的完全性を維持するように構成される、請求項42~71のいずれか1記載のアノードまたはカソード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2019年8月21日付けで出願され、「チオール基含有種を含む電気化学電池」を発明の名称とする米国仮出願第62/889,699号、および2019年8月21日付けで出願され、「チオール基含有種を含む電気化学電池およびコンポーネント」を発明の名称とする米国仮出願第62/889,701号に対する米国特許法第119条(e)下の優先権を主張し、すべての目的のために、これらの各出願を出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす。
【0002】
(分野)
チオール基を含む電気化学電池(または電気化学セル:electrochemical cell)および/または電気化学電池コンポーネント(または成分、または構成成分、または構成要素:component)を含む物品および方法が、概して提供される。
【背景技術】
【0003】
(背景)
リチウム含有アノードを含む高密度エネルギー電池の開発において、近年かなりの関心が存在している。かかる電池において、アノードおよびカソードは、望ましくない種の形成を生じる電解質コンポーネントとの反応を受け得る。これらの望ましくない種が形成する充電式電池(または再充電電池;rechargeable battery)は、一般的に限られたサイクル寿命を示す。したがって、サイクル寿命および/または他の改良を増加させるための物品および方法は有益であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要約)
チオール基を含む電気化学電池および/または電気化学電池コンポーネントの物品および方法が、概して提供される。本明細書に開示された主題は、いくつかの場合には、1つ以上のシステムおよび/または物品の相互に関連した物、特別の課題の代替解決方法、ならびに/あるいは複数の異なる使用を含む。
【0005】
いくつかの具体例において、電気化学電池用アノードが提供される。アノードは、リチウム金属を含む電気活性材料(または電気活性物質:electroactive material)および電気活性材料上に配置された保護層を含む。保護層は、第1のタイプのチオール基含有モノマーおよび第2のタイプのチオール基含有モノマーを含むポリマーを含む。保護層は複数の細孔(またはポア:pore)を含む。
【0006】
いくつかの具体例において、電気化学電池用カソードが提供される。カソードは、リチウム遷移金属酸化物を含む電気活性材料および電気活性材料上に配置された保護層を含む。保護層は、チオール基含有モノマーを含むポリマーを含む。保護層は複数の細孔を含む。
【0007】
いくつかの具体例において、電気化学電池用アノードが提供される。アノードは、リチウム金属を含む電気活性材料、および電気活性材料上に配置された保護層を含む。保護層は、第1のタイプのチオール基含有モノマーおよび第2のタイプのチオール基含有モノマーを含むポリマーを含む。保護層は複数の粒子を含む。保護層は複数の細孔を含む。
【0008】
いくつかの具体例において、電気化学電池用カソードが提供される。カソードは、リチウム遷移金属酸化物を含む電気活性材料および電気活性材料上に配置された保護層を含む。保護層は、第1のタイプのチオール基含有モノマーを含むポリマーを含む。保護層は複数の粒子を含む。保護層は複数の細孔を含む。
【0009】
いくつかの具体例において、電気化学電池が提供される。電気化学電池は、リチウムを含む第1の電気活性材料を含む第1の電極、リチウム遷移金属酸化物を含む第2の電気活性材料を含む第2の電極、および電解質を含む。電解質は、チオール基を含む第1の添加剤(または添加物:additive)、およびアルケン基を含む第2の添加剤を含む。第2の添加剤のアルケン基は、第1の電気活性材料および/または第2の電気活性材料上に配置された保護層を形成するために、第1の添加剤のチオール基と反応するようになっている。
【0010】
いくつかの具体例において、電気化学電池用コンポーネントが提供される。コンポーネントは、電気活性材料および電気活性材料上に配置された保護層を含む。保護層は、チオール基およびトリアジン基の双方を含む分子の反応生成物を含む。
【0011】
いくつかの具体例において、電気化学電池が提供される。電気化学電池は、リチウムを含む電気活性材料を含む第1の電極、リチウム遷移金属酸化物を含む第2の電極、および電解質を含む。電解質は、チオール基およびトリアジン基の双方を含む分子を含む。
【0012】
添付図と組み合わせて考慮される場合、本発明の他の利点および新規特徴は、発明の種々の非限定の具体例の以下の詳細な記載から明らかになるであろう。本明細書および出典明示して組み込まれた文書が矛盾および/または一貫しない開示を含む場合には、本明細書が支配的であるものとする。出典明示して組み込まれた2つ以上の文書が相互に矛盾することおよび/または一貫しない開示を含んでいるならば、後の有効日を有する文書が支配的であるものとする。
【0013】
(図面の簡単な説明)
本発明の非限定の具体例は、添付図に関連して例として記載され、それは模式的であり、スケールに引き付けられるようには意図されない。図において、示された同一またはほとんど同一のコンポーネントはそれぞれ、単一の数字によって典型的に表わされる。明確性の目的のために、すべてのコンポーネントがすべての図において標識されるとは限らず、また、図示が当業者が本発明を理解するのを可能とするのに必要でない場合には、示された本発明の各具体例のすべてのコンポーネントも示されない。これらの図において:
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、いくつかの具体例による、チオール基を含む種を含む電解質を含む電気化学電池の非限定の具体例を示す。
図2図2は、いくつかの具体例による、チオール基を含む種の量が、保護層を形成するための電解質から除去される方法の非限定の具体例を示す。
図3図3は、いくつかの具体例による、保護層を含む電極の非限定例を示す。
図4図4は、いくつかの具体例による、電気活性材料、および複数の粒子およびあるポリマーを含む保護層を含む電極の非限定の具体例を示す。
図5図5は、いくつかの具体例による、異方性力(または不等方性力:anisotropic force)が適用される電気化学電池の非限定の具体例を示す。
図6-11】図6-11は、いくつかの具体例による、選択された電気化学電池についてのサイクル数の関数として放電容量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(詳細な説明)
チオール基を含む電気化学電池および/または電気化学電池コンポーネントを含む物品および方法が、概して提供される。いくつかの具体例において、電気化学電池コンポーネントは、アノードまたはカソード用の保護層のごとき電極用保護層である。かかる保護層中のチオール基の存在は、かかる保護層のイオン電導性(またはイオン伝導性:ionic conductivity)を有利に増加させことができ、これは、保護層が急速な充電および/または放電中に位置する電気化学電池の効率を改善でき、ならびに/あるいはかかる保護層が位置する電気化学電池のサイクル効率を高め得る。いずれかの特定の理論によって拘束されることなく、チオール基中の硫黄原子は、電子供与性であり得る、および/または非占有2s軌道を有する配位構造を形成でき、その一方または双方が、チオール基との配位および/または解離によって保護層を介してリチウムイオン輸送を促進し得ると考えられている。かかるプロセスは、チオール基を欠く保護層に対する比較において、保護層のリチウムイオン電導性を増加させ得る。
【0016】
いくつかの具体例において、保護層中のチオール基は、反応生成物を生成する反応を受けるように構成される、および/または保護層は、チオール基の反応生成物を含む。いくつかの保護層はチオール基およびチオール基の反応生成物の双方を含み得る。本明細書に記載されたいくつかの反応生成物の存在および/または形成は、保護層の機能性を高め得る。例えば、(例えば、保護層に最初に存在する少なくとも1つのチオール基から、保護層に最初に存在する2つのチオール基から、および/または保護層に組み入れられるようになる分子を形成するための2つのチオール基からの)保護層中のジスルフィド結合の形成は、有利な構造を有する保護層中の細孔の形成を生じ得る。細孔は、それを通ってかなりのリチウムイオン伝導を可能にしつつ、保護層を介して電解質の輸送をほとんどまたはまったく可能にし得ない。これらの細孔を含む保護層は、電解質、およびインピーダンスの増加を有することなく保護された層によって保護された電極間の望まれない相互作用を防止するための有用性を増加し得る。
【0017】
いくつかの具体例において、チオール基を含む保護層は、チオール基を含むポリマーを含む。ポリマーは、チオール基を含む1つ以上のモノマーを含み得る。換言すれば、ポリマーは1つ以上のチオール基含有モノマーを含み得る。チオール基含有モノマーからの保護層のポリマーコンポーネント(または高分子コンポーネント)の形成は、得られた保護層に、三次元において、および/または保護層の厚さを横切って相互連結する、1つ以上の硫黄富化(sulfur-rich)相を有利に含ませ得る。かかる硫黄富化相は、保護層が位置する電気化学電池の容量を増加させ得る、保護層が位置する電気化学電池のフェージング(fading)量を低下させ得る、および/または保護層が位置する電気化学電池の効率を改善し得る。いくつかの具体例において、チオール基含有モノマーから形成されたポリマーを含む保護層は、有利にさらに相互連結した細孔、および/または高表面積を有する細孔を含む。
【0018】
いくつかの具体例において、保護層は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーを含むポリマーを含む。例えば、ポリマーは少なくとも2つのチオール基含有モノマーを含み得る。もう一つの例として、ポリマーは少なくとも1つのチオール基含有モノマー、およびチオール基を含まない少なくとも1つのモノマーを含み得る。かかるポリマー中の異なるモノマーは、典型的に相互に異なった特性を有する。モノマーは相乗的に相互作用し得る、ポリマーに異なる有益な特性を与え得る、または(もしあれば)相互の欠点を補い得る。例えば、ポリマーは、電解質において余り膨潤性でない、余り脆くない、より柔軟性である、よりイオン電導性である、より容易に酸化される、より有益な細孔の量および/またはタイプを含む、ならびに/あるいはその組合せにおけるモノマーの1つ以上を欠くポリマーより低いインピーダンスを有するポリマーを形成するモノマーの組合せを含み得る。いくつかの具体例において、ポリマーは、電極の電気活性材料上に配置した連続層として、ポリマーの形成を促進するモノマーの組合せから形成される。ポリマーは、ポリマーが硬化した割合を高めたモノマーを含む、モノマーの組合せから形成し得る。いくつかの選択されたモノマーの効果は、単独または組み合せて、さらに詳細に以下に記載されるであろう。
【0019】
いくつかの具体例において、チオール基を含む保護層はさらに複数の粒子を含む。例えば、保護層は、チオール基含有モノマーを含むポリマーを含むこともでき、複数の粒子を含み得る。存在する場合、粒子は保護層に1つ以上の有益な特性を与え得る。例えば、粒子は、リチウムイオンが保護層を通過するために比較的低い抵抗性経路を提供することにより、保護層のインピーダンスを低下し得る。もう一つの例として、粒子は、保護層の形成中により均一な保護層の形成を促進し得る。保護層の微粒子の部分(複数)は、保護層の1つ以上の他のコンポーネントと一緒に形成し得る(例えば、粒子は、チオール基含有ポリマーおよび/またはジスルフィド基含有ポリマーを形成するために反応する1つ以上の種と堆積し得る)、ならびに/あるいは保護層の1つ以上の他のコンポーネントとは別々に形成し得る(例えば、粒子は最初に堆積でき、次いで、チオール基含有ポリマーおよび/またはジスルフィド基含有ポリマーを形成するために反応する1つ以上の種は、粒子上または粒子間に位置する間隙(interstice)に堆積し得る)。
【0020】
本明細書に記載されたいくつかの具体例は、チオール基を含む電解質に関する。電解質は、チオール基を含む添加剤および/またはチオール基を含む分子のごときチオール基を含む種を含み得る(例えば、添加剤は、チオール基を含む分子を含み得る)。いくつかの具体例において、電解質は、チオール基を含む種、およびチオール基と反応するように構成された官能基を含む種を含む。チオール基を含む種、およびチオール基と反応するように構成された官能基を含む種は、電極中の電気活性材料上に配置された保護層を形成するために反応するように構成し得る。例えば、電解質は、チオール基を含む分子、およびアルケン基(例えば、ビニル基)を含む分子を含むこともでき、また、チオール基を含む分子は、電極中の電気活性材料上に保護層を形成するためにチオール-エン反応において、アルケン(例えば、ビニル基)基を含む分子と反応するように構成し得る。いくつかの具体例において、電解質は、チオール官能基を含む第1の分子およびチオール基を含む第2の分子(例えば、第1のタイプの分子とは異なる化学構造を持つ第2のタイプの分子)を含み、チオール官能基を含む第1の分子は、電極中の電気活性材料上で保護層を形成するために酸化反応においてチオール基を含む第2の分子と反応するように構成し得る。より詳細に以下に記載のごとく、添加剤は、アルケン基以外の官能基、またはアルケン基以外の不飽和の官能基のごときチオール基を反応させるように構成されるチオール基を含み得る。チオール基を含む1つ以上の分子に関連する反応によって形成された保護層は、チオール基を含む保護層に関して前記された有益な特性のいくつかまたはすべてを有し得る。
【0021】
図1は、チオール基を含む種を含む電解質を含む電気化学電池の1つの非限定の具体例を示す。図1において、電気化学電池1000は第1の電極100、第2の電極200および電解質300を含む。電解質300は、チオール基を含む種310を含む。いくつかの具体例において、チオール基を含む種は添加剤である。添加剤は、電解質に典型的に見出される他のコンポーネントに加えて電解質に加えられるコンポーネント(例えば、1つ以上の溶媒、1つ以上の塩類、1つ以上のポリマー)であり得る。いくつかの具体例において、チオール基を含む種は分子(例えば、有機分子)である。分子は小分子であってもよく、またはオリゴマーまたはポリマー(例えば、反応性エンドキャップを有するポリマー、樹脂)のごときより大分子であり得る。電解質が、溶媒、塩、ポリマー(例えば、本明細書に記載された1つ以上の反応によって形成されたポリマー、本明細書に記載された1つ以上の反応によって形成されないポリマー)およびチオール基を含まない添加剤のごとき他の種を含み得ると理解されるべきである。望ましい反応生成物を形成するためにチオール基を含む種と反応するように構成された種(例えば、アルケン基を含む種、ポリマーを形成するためにチオール基を含む種と反応するように構成された種)、およびチオール基を含む種が関与する反応を始めるように構成された種(例えば、重合開始剤、触媒)のごときこれらの種は、以下にさらに詳細に記載されるであろう。
【0022】
電解質中に存在する場合、チオール基を含む種は種々の適当な方法でそれを介して分布し得る。例えば、チオール基を含む種は、電解質に溶解し、電解質に懸濁し、および/または部分的に電解質に溶解し、部分的に電解質に懸濁し得る。いくつかの具体例において、チオール基を含む種が、最初に電解質以外に位置に存在するが、期間(例えば、電池アセンブリ後、サイクル中)にわたり電解質に導入される。例として、チオール基を含む種は、それが電解質に浸出するリザーバー(reservoir)に存在し得る。リザーバーは、例えば、セパレーターに、電気化学電池に存在する電気活性材料に、および/または保護層(および/またはその副層(またはサブレイヤー、または亜層:sublayer)に位置し得る。もう一つの例として、チオール基を含む種は被包されてもよく、封入剤(encapsulant)が壊れるのに際いて、電解質に放出し得る。
【0023】
いくつかの具体例において、チオール基を含む種は、(例えば、保護層に組み込まれるのに先立ち)比較的長期間、かなりの量で電解質中に存在する。いくつかの具体例において、チオール基を含む種は、2回のサイクル以上の充放電、5回のサイクル以上の充放電、10回のサイクル以上の充放電または25回のサイクル以上の充放電の間、電解質中に存在する。いくつかの具体例において、チオール基を含む種は、50回のサイクル以下の充放電、25回のサイクル以下の充放電、10回のサイクル以下の充放電または5回のサイクル以下の充放電の間、電解質中に存在する。また、上記に参照された範囲の組合せ(例えば、2回のサイクル以上の充放電および50回のサイクル以下の充放電の間)が可能である。また、他の範囲が可能である。
【0024】
いくつかの具体例において、未サイクルの(uncycled)電気化学電池は、チオール基を含む種を含む。他の具体例は、サイクルされ、チオール基を含む種を含む電気化学電池に関する。いくつかの具体例において、チオール基を含む種は、25回未満、10回未満、5回未満または2回未満でサイクルさせた電気化学電池の電解質中に存在する。いくつかの具体例において、チオール基を含む種は、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも5回または少なくとも10回サイクルさせた電気化学電池の電解質中に存在する。また、前記に参照された範囲の組合せ(例えば、25回未満で少なくとも1回)が可能である。また、他の範囲が可能である。
【0025】
いくつかの具体例において、電解質中に存在するチオール基を含む種(例えば、チオール基を含む添加剤、チオール基を含む分子)の量および/または特性(性質:character)は、経時的に変化する。例として、前記のごとく、チオール基を含む種の少なくとも一部分は、電解質の一部分でない源からの電解質に導入し得る。さらに前記のごとく、チオール基を含む種の少なくとも一部分は、(例えば、保護層を形成する、および/または以前に形成された保護層のコンポーネントを形成するため)電解質から除去し得る。いくつかの具体例において、チオール基を含む種の少なくとも一部分は、電解質に残存し得るが、そこに位置しつつ、変換(transform)し得る。例えば、チオール基を含む種は、電解質に最初に懸濁し得るが、そこに溶解できるか、または最初に電解質に溶解し得るが、懸濁液をそこに形成するために溶液から離れた状態となり得る。
いくつかの具体例において、チオール基を含む種は、異なる種を形成するために(例えば、電気化学電池に最初に存在する1つ以上のコンポーネントで、電気化学電池のサイクル中に形成された1つ以上のコンポーネントで)、および/または電解質のもう一つのコンポーネントと複合体を形成するために反応を受ける(例えば、電気化学電池中に最初に存在した1つ以上のコンポーネントで、電気化学電池のサイクル中に形成された1つ以上のコンポーネントで)。かかる反応はチオール基を含む種に電解質をエンターさせるか、または電解質から除去させるか、電解質中だが異なる形態で維持させるか、または実質的に同じ形態において電解質中に維持させ得る。
【0026】
電解質中にチオール基を含む種(例えば、チオール基を含む添加剤、チオール基を含む分子)の量および/または特性の変化が、種々の適当な因子により生じ得る。例えば、いくつかの具体例において、時間経過は、電解質中のチオール基を含む種の量および/または特性の変化を引き起し得る。時間の経過は、例えば、非平衡状態のチオール基を含む種を平衡状態にし得る。もう一つの例として、電気化学電池の1つ以上の他のコンポーネント(例えば、その中の電極)に対する電解質の曝露は、チオール基を含む種の平衡状態を移行することもでき、これはチオール基を含む種の量および/または特性を変化させ得る。第3の例として、電気化学電池をサイクルさせることは、電解質の組成を変更することもでき、これは、さらにチオール基を含む種の平衡状態をシフトすることもでき、チオール基を含む種の量および/または特性を変化させ得る。
【0027】
図2は、チオール基を含む種の量が電解質から除去されて、保護層を形成する方法の1つの非限定の具体例を示す。図2において、チオール基を含む種310の一部分は、電解質300から除去されて、電気活性材料105上に配置された保護層400を形成する。同時に、保護層400および電気活性材料105は電極100を形成する。方法は、第2の電極200をさらに含む電気化学電池1000に行なわれる。いくつかの具体例において、図2に示されるように、チオール基を含む種は、その種だけを含むか、またはそのタイプの種だけを含む保護層を形成するために反応を受ける(例えば、チオール基を含む2つの同一の種は、保護層のすべてまたは一部分を形成するために酸化反応を受け得る)。いくつかの具体例において、チオール基を含む種は、異なる種を含む保護層を形成するために反応を受ける。例えば、チオール基を含む種は、保護層を形成するためにチオール基(例えば、もう一つのチオール基、ビニル基のごときアルケン基)と反応性の基を含む種との反応を受け得る。存在する場合、チオール基と反応性の基を含む種は、(例えば、その中に溶解、その中に懸濁した添加剤として)電解質中に存在し得る、および/または電気化学電池のもう一つのコンポーネント中に存在し得る。電気化学電池の他のコンポーネントは、例えば、セパレーター、電気化学電池中に存在する電気活性材料および/または保護層(またはその副層)であり得る。
【0028】
反対の明示的な表示の不存在では、第1の電極への参照が、アノードである第1の電極またはカソードである第1の電極への参照であり得ると理解されるべきである。同様に、第2の電極への参照は、アノードである第2の電極、またはカソードである第2の電極への参照であり得る。例として、図1および2の第1の電極100は、アノードまたはカソードであり得、また、図1および2の第2の電極200は、アノードまたはカソードであり得る。同様に、図2の保護層400は、アノード中の電気活性材料上に配置され得るか、またはカソード中の電気活性材料上に配置され得る。
【0029】
また、他の層(複数)またはコンポーネント(複数)「上に配置された」、「間に配置された」「上に」または、「に隣接した」として参照された層またはコンポーネントは、直接的に、他の層(複数)またはコンポーネント(複数)上に配置された、間に配置された、上に、または、に隣接したものであり得るか、あるいは介在する層またはコンポーネントも存在し得るものと理解されるべきである。例えば、電気活性材料に隣接した本明細書に記載された保護層は、電気活性材料に直接隣接し得る(例えば、電気活性材料との直接的な物理的接触であり得る)か、または介在する層またはコンポーネント(例えば、電気化学電池が電気活性材料上に配置された2つ以上の保護層を含む場合には、もう一つの保護層)は、電気活性材料および保護層間に位置し得る。もう一つの層またはコンポーネント「に直接隣接する」、「上に直接的」または「と接する」層またはコンポーネントは、介在する層またはコンポーネントが存在しないことを意味する。層またはコンポーネントが、他の層(複数)またはコンポーネント(複数)「上に配置された」、「間に配置された」「上に」または、「に隣接した」として参照される場合、それは、層(複数)またはコンポーネント(複数)のすべてにより、上で、隣接して覆われ得るか、または層(複数)またはコンポーネント(複数)の一部分により、上で、隣接して覆われ得る。
【0030】
また、いくつかの層が2つ以上の副層を含み得ると理解されるべきである。反対の明示的な表示の不存在では、層の特性への参照も、おそらく全体としてのその層の特性、および/または、その中の1つ、いくつかのまたはすべての副層(複数)の特性をいうと理解されるべきである。例えば、いくつかの保護層の特性への参照は、全体としてのいくつかの保護層の特性(すなわち、一緒でのすべての副層の特性)をいう、および/またはいくつかの保護層を構築する1つ以上の副層の特性をいうの双方と理解されるべきである。
【0031】
いくつかの具体例において、本明細書に記載された保護層は、図2に示されるもの以外の方法によって形成される。例えば、保護層(および/またはその1つ以上の部分および/または1つ以上のその副層)は、電気化学電池のアセンブリに先立って、ならびに/あるいは電解質への電気活性材料の曝露に先立って形成し得る。例えば、さらに詳細に以下に記載のごとく、保護層の一部分はエアロゾル堆積によって形成でき、保護層の一部分はもう一つの方法によって形成し得る。いくつかの具体例において、保護層(および/またはその1つ以上の部分および/または1つ以上のその副層)は、電気活性材料(例えば、アノード用の電気活性材料、カソードの電気活性材料)を、保護層を生成するために反応するように構成された1つ以上の種を含む流体に曝露することにより形成される。その曝露は、流体に電気活性材料を浸すこと、電気活性材料を流体に浸漬すること、(例えば、マイヤー・ロッド・コーティング、ドクター・ブレーディング、エア・ブラッシングシなどにより)流体で電気活性材料を覆うことによってのごとく種々の適当な方法で実施し得る。電気活性材料が曝露される流体は、いくつかの具体例において液体である。いくつかの具体例において、電気活性材料が曝露される流体はスラリーである。スラリーは、液体中に懸濁された保護層を生成するために反応するように構成された1つ以上の種を含む固体を含み得る。液体は、保護層を生成するために反応するように構成された種を欠如し得るか、または保護層を生成するために反応するように構成された1つ以上の種を含み得る。
【0032】
保護層(および/または1つ以上のその部分および/または1つ以上のその副層)が、保護層を生成するために反応するように構成された1つ以上の種を含む流体に電気活性材料を曝露することにより形成される場合、流体は、種々の適当なかかる種を含み得る。これらの種の非限定例は、チオール基を含む種、およびアルケン基(例えば、ビニル基)を含む種を含む。種はジスルフィド結合を形成する酸化反応を受けるように構成し得る、および/または炭素-硫黄結合を生成するチオール-エン反応をを受けるように構成し得る。流体は、さらなる種、例えば、粒子、チオール基を含む種の反応を開始するように構成された種(例えば、重合開始剤、触媒)、保護層を生成するために反応するように構成された種以外の添加剤(例えば、可塑剤、脱ガス剤、チキソトロピー剤)および/または溶媒をさらに含み得る。さらなる種は、さらに詳細に以下に記載されるであろう。流体は、比較的低い量(例えば、10重量%以下、7.5重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、および所望により、0重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、4重量%以上または7.5重量%以上)の種(個々にまたは合計において)を含み得る。
【0033】
いずれかの特定の理論によって拘束されることなく、電気活性材料上の流体を覆うことにより流体に電気活性材料を曝露する工程が行なわれる場合に、流体中のチオール基を含む種の存在は、特に有益であり得ると考えられる。チオール基を含む種はチキソトロピーであり得、それは応力および/または圧力の適用、および/または時間の経過によって塗布液の粘度が調整されることを可能にし得ると考えられる。また、チオール基を含む種は、電気活性材料上のかかる種を含む流体の湿潤および/または付着(adhesion)を望ましく増加でき、その結果、高められた均一性を持つ保護層の形成し得る、および/または電気活性材料に共有結合されると考えられる。
【0034】
本明細書に記載された保護層(またはそのポリマーコンポーネント)は、種々の適当な反応によって形成し得る。これらの反応は、組み立てられた電気化学電池(例えば、電気化学電池の電解質中の種からの)に、電気化学電池(例えば、他の電気化学電池コンポーネントでまだ組み立てられない電気活性材料上の)のコンポーネントに、またはそのコンポーネント上で生じ得る。いくつかの具体例において、本明細書に記載された反応の2つ以上が、保護層および/またはそのポリマーコンポーネントの形成中に生じる。その反応(複数)が、関連する種(例えば、電気活性材料が電気活性材料で最初に組み立てられる場合)への電気活性材料の初期の曝露の間に生じ得る、および/またはその後に、(例えば、硬化工程において電気化学電池サイクル中の電気化学電池貯蔵中に)生じ得る。かかる反応の非限定例は、酸化還元反応(例えば、前記のごときジスルフィド結合を形成する還元反応)、チオール-エン反応(例えば、前記のごとき炭素-硫黄結合を形成するための)および重合反応(例えば、フリーラジカル重合反応、アニオン重合反応、カチオン重合反応、段階成長重合反応)を含む。
【0035】
いくつかの具体例において、保護層の形成は2つのタイプの重合反応を行なうことを含む。例えば、アニオン重合およびフリーラジカル重合の双方は、保護層および/または保護層のポリマーコンポーネントを形成するために使用し得る。いくつかのかかる具体例において、電気活性材料は、フリーラジカル開始剤(例えば、Luperox 231)、アニオン重合開始剤(例えば、ピリジンのごときアミン)、および重合反応によって保護層を生成するために反応するように構成された1つ以上の種(例えば、フリーラジカル重合反応によって保護層を生成するために反応するように構成された1つ以上の種、アニオン重合反応によって保護層を生成するために反応するように構成された1つ以上の種、ならびに/あるいはフリーラジカルおよび/またはアニオン重合反応によって保護層を生成するために反応するように構成された1つ以上の種)に曝露し得る。フリーラジカル重合反応によって保護層を生成するために反応するように構成された適当な種の非限定例は、1つ以上のチオール基を含む種、および1つ以上のアルケン基(例えば、ビニル基)を含む種を含む。アニオン重合反応によって保護層を生成するために反応するように構成された適当な種の非限定例は、1つ以上のチオール基を含む種(例えば、ペンタエリトリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオナート))を含む。アニオン重合開始剤も存在しないならば、アニオン重合反応によって保護層を生成するために反応するように構成された種は、フリーラジカル重合反応のごときもう一つのタイプの反応を受け得る。
【0036】
前記された方法によって形成されたもののごとき保護層は、電極(例えば、保護された電極)の一部分を形成し得る。図3は、保護層を含む電極の1つの非限定例を示す。図3において、電極100は、電気活性材料105および電気活性材料上に配置された保護層400を含む。保護層は種々の適当な組成を有し得る。前記のごとく、いくつかの保護層は、保護層を含む電気化学電池中に存在する電解質中に最初に存在する1つ以上の種のポリマーおよび/または反応生成物を含む。保護層中に存在する反応生成物はポリマーであり得るか、またはもう一つの適当な種(例えば、オリゴマー、プレポリマー、ポリマー樹脂(または高分子樹脂)であり得る。ポリマー(および/または反応生成物)は1つ以上のチオール基含有モノマー(例えば、1つのチオール基含有モノマー、2つのチオール基含有モノマー、より多いチオール基含有モノマー)および/または1つ以上のアルケン基含有モノマー(例えば、1つのアルケン基含有モノマー、2つのアルケン基含有モノマー、より多いアルケン基含有モノマー、その1つ以上は、ビニル含有モノマーであり得る)を含み得る。
【0037】
保護層がポリマーを含む場合、ポリマーは種々の適当な分子量を有し得る。ポリマーの数平均分子量は、5kDa以上、7.5kDa以上、10kDa以上、15kDa以上、20kDa以上、25kDa以上、30kDa以上、40kDa以上、50kDa以上、75kDa以上、100kDa以上、150kDa以上、200kDa以上、250kDa以上、300kDa以上または400kDa以上であり得る。ポリマーの数平均分子量は、250kDa以下、500kDa以下、400kDa以下、300kDa以下、250kDa以下、200kDa以下、150kDa以下、100kDa以下、75kDa以下、50kDa以下、40kDa、30kDa以下、25kDa以下、20kDa以下、20kDa以下、15kDa以下、10kDa以下または7.5kDa以下であり得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、5kDa以上かつ500kDa以下、または10kDa以上かつ250kDa以下)。また、他の範囲が可能である。ポリマーの数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーによって測定し得る。
【0038】
いくつかの具体例において、保護層は複数の粒子を含む。保護層は、複数の粒子、およびポリマー(例えば、1つ以上のチオール基含有モノマーおよび/または1つ以上のアルケン基含有モノマーを含むポリマー)の双方を含み得る。例えば、保護層は、ポリマーを含むマトリックスに分散した複数の粒子を含み得る。図4は、電気活性材料105、および複数の粒子410およびポリマー420を含む保護層400を含む電極100の1つの非限定の具体例を示す。保護層は電気活性材料上に配置される。いくつかの具体例において、保護層は、1つ以上の方法で図4に示されるものに類似する方法で配置された複数の粒子を含む。例として、保護層は複数の粒子を含むことができ、層中の粒子の平均断面寸法より厚い。もう一つの例として、いくつかの具体例において、保護層は、サイズおよび/または組成が実質的に均一の複数の粒子を含む。いくつかの具体例において、電極は、粒子を含むが、1つ以上の方法で図4に示される保護層と異なる保護層を含む。例えば、保護層は、その中の粒子のものに実質的に同様の厚さを有し得る、サイズおよび/または形状において異なる粒子を含み得る、ならびに/あるいは図4に示されるもの以外の粒子の体積分率を含み得る。また、図4に示される保護層に対する他の類似点および図4に示される保護層からの変更が可能である。
【0039】
前記のごとき図3および4に示され、また、本開示の全体にわたって記載される保護層は、アノード、カソードまたは他の電極であり得る。アノードである電極は、ポリマーを含む保護層、電極を含む電気化学電池の電解質中に最初に存在する種の反応生成物、および/または複数の粒子を含み得る。アノードである電極は、ポリマーを欠く保護層、電極を含む電気化学電池の電解質中に最初に存在する種の反応生成物、および/または複数の粒子を含み得る。カソードである電極は、ポリマーを含む保護層、電極を含む電気化学電池の電解質中に最初に存在する種の反応生成物、および/または複数の粒子を含み得る。カソードである電極は、ポリマーを欠く保護層、電極を含む電気化学電池の電解質中に最初に存在する種の反応生成物、および/または複数の粒子を含み得る。
【0040】
前記のごとく、いくつかの具体例は、1つ以上のチオール基を含む種に関する。保護層はチオール基(例えば、保護層は、1つ以上のチオール基含有モノマーを含むポリマーを含み得る、保護層はチオール基を含むこともでき、チオール基を含む分子の反応生成物も含み得る)を含み得る、および/または電解質は、チオール基(例えば、チオール基を含む添加剤、チオール基を含む分子)を含み得る。チオール基は、プロトン化チオール基(例えば、構造R-SHを有するチオール基)であり得るか、または脱プロトン化チオール基(例えば、構造R-Sを有するチオール基)であり得る。いくつかの具体例において、種は、電気化学電池アセンブリおよび/またはサイクル中にプロトン化チオール基から脱プロトン化チオール基に転換するチオール基、電気化学電池アセンブリおよび/またはサイクル中に脱プロトン化チオール基からプロトン化チオール基に転換するチオール基、ならびに/あるいは電気化学電池アセンブリおよび/またはサイクル中にプロトン化チオール基および脱プロトン化チオール基の間で相互転換するチオール基を含む。いくつかの具体例において、種は、電気化学電池アセンブリおよび/またはサイクル中にプロトン化されたままであるチオール基を含む。いくつかの具体例において、種は、電気化学電池アセンブリおよび/またはサイクル中にプロトン化されたままであるチオール基を含む。さらに詳細に以下に記載のごとく、種は、プロトン化および/または脱プロトン化以外の反応を受けるチオール基を含み得る。
【0041】
チオール基が脱プロトン化チオール基である場合、チオール基を含む種を含む電気化学電池および/または電気化学電池コンポーネント(例えば、チオール基を含む種を含む保護層、チオール基を含む種を含む電極、チオール基を含む種を含む電解質)は、さらに複数の対イオンを含み得る。典型的には、複数の対イオンは、脱プロトン化チオール基の荷電を一緒に平衡させる対イオンを含む。複数の対イオンが、+1、+2、+3、+4の荷電、またはもう一つの適当な値の荷電を有する対イオンを含み得る。複数の対イオンは、単原子イオンおよび/または多原子イオンを含み得る。適当な対イオンの非限定例は、アルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン)、遷移金属イオン(例えば、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン)および/または有機イオン(例えば、テトラアルキル・アンモニウムイオン)を含む。また、他のタイプの対イオンが可能である。いくつかの具体例において、対イオンは、電気化学電池中に存在するもう一つの種に由来するイオン(例えば、カソードに由来する遷移金属イオン、塩からの対イオンおよび/または電解質に由来する添加剤)である。
【0042】
前記のごとく、本明細書に記載されたいくつかの具体例は、チオール基を含む添加剤および/またはチオール基を含む分子のごときチオール基を含む種を含む電解質に関する。いくつかの具体例において、電解質は、共有結合を形成するために反応するチオール基を含む種(例えば、添加剤、分子)を含む。共有結合を形成する反応は架橋反応および/または重合反応であり得る。共有結合の形成を生じる反応の1つの例は、ジスルフィド結合を引き起こす2つのプロトン化チオール基間の酸化還元反応である。2つのプロトン化チオール基は、同じ分子内(例えば、同じポリマー内)にあり得るか、または異なる分子上で存在し得る。異なる分子上で存在する場合、分子は同じタイプのものであり得るか、または異なるタイプのものであり得る。共有結合の形成を生じる反応のもう一つの例は、チオール-エン反応である。チオール-エン反応において、プロトン化チオール基は、硫化アルキルを形成するためにアルケン基(例えば、ビニル基)と反応する。チオール基およびアルケン基は同じ分子内(例えば、同じポリマー内)にあり得るか、または異なる分子上で存在し得る。異なる分子上で存在するならば、分子は同じタイプのものであり得るか、または異なるタイプのものであり得る。
【0043】
電解質中に存在するチオール基を含む種は1つのチオール基を含み得るか、または1つを超えるチオール基を含み得る。チオール基を含む小分子、例えば、チオール基を含む添加剤および/または保護層のコンポーネントを生成するために反応するように構成された種は、少なくとも1つのチオール基、少なくとも2つのチオール基、少なくとも3つのチオール基、少なくとも4つのチオール基またはより多いチオール基を含み得る。いくつかの具体例において、電解質は、1つ以上のチオール基を含む1つを超えるタイプの小分子、および/または1つ以上のチオール基を含む1つを超えるタイプの添加剤を含み得る。電解質はいくつかの小分子、および/または第1の数のチオール基を含む添加剤、ならびにいくつかの小分子、および/または第2の数のチオール基を含む添加剤を含み得る。チオール基の第1および第2の数は、同じであり得るか、または異なり得る。換言すれば、電解質は、双方とも同数のチオール基を含むが、1つ以上の他の方法において相互に異なる2つの種を含み得るか、ならびに/あるいは異なる数のチオール基を含む2つの種を含み得る。
【0044】
いずれかの特定の理論によって拘束されることなく、電解質が種々の理由で1つを超えるチオール基を含む種(例えば、添加剤、分子)を含むことは有益であり得ると考えられる。1つの理由は、1つを超えるチオール基を含む種が、共有結合を形成するために1つを超える反応を受け得る、したがって、1つを超える共有結合を形成し得ることである。かかる種は架橋されるポリマーを形成するために反応し得る。架橋ポリマーは、非架橋ポリマーに比較して有利さを有し得る。例えば、架橋ポリマーは、非架橋ポリマーより保護層を含む電気化学電池中に存在する電解質に対して余り浸透性でないかもしれず、非架橋ポリマーより電解質において余り可溶性でないかもしれず、非架橋ポリマーより大きな電気化学的ウィンドウを横切って安定性であり得る、および/または非架橋ポリマーより大きな機械的な完全性を有し得る(例えば、それらは、非架橋ポリマーよりクラッキングおよび/または塑性流動を受けにくいかもしれない)。これらの特徴の片方または双方は、架橋ポリマーを含む保護層が、この相互作用によって引き起こされた分解(または変質:degradation)を低下させて、電解質と保護層によって保護された電気活性材料の電解質との相互作用を低下し得る。
【0045】
電解質が1つを超えるチオール基を含む種(例えば、添加剤、分子)を含むことが有益であり得るもう一つの理由は、1つを超えるチオール基を含む種が、未反応のチオール基を含む反応生成物を形成するために反応し得ることである。かかる種からの保護層の形成中に、いくつかの具体例において、その中のチオール基の1つ以上は、反応生成物を形成するために(例えば、共有結合形成の方法で)反応し、その中の1つ以上のチオール基が、反応生成物形成中に反応しない。未反応のチオール基は、遊離チオール基として保護層に残ることができ、これは、保護層(例えば、イオン)を介して1つ以上の種の輸送を有益に助け得る。
【0046】
電解質は、種々の適当な分子量を有するチオール基を含む種を含み得る。いくつかの具体例において、電解質は、90Da以上、100Da以上、125Da以上、150Da以上、200Da以上、250Da以上、300Da以上、400Da以上、500Da以上、750Da以上、1kDa以上、1.25kDa以上、1.5kDa以上または2kDa以上の分子量を有するチオール基を含む種を含む。いくつかの具体例において、電解質は、2.5kDa以下、2kDa以下、1.5kDa以下、1.25kDa以下、1kDa以下、750Da以下、500Da以下、400Da以下、300Da以下、250Da以下、200Da以下、150Da以下、125Da以下または100Da以下の分子量を有するチオール基を含む種を含む。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、90Da以上かつ2.5kDa以下、または150Da以上かつ1.5kDa以下)。また、他の範囲が可能である。チオール基を含む種の分子量は、質量分析法によって決定し得る。
【0047】
チオール基を含む適当な種の非限定例は、3-メルカプトプロピオン酸(例えば、ペンタエリトリトール・テトラキス 3-メルカプトプロピオン酸、トリメチロールプロパン・トリス(3-メルカプトプロピオン酸)を含む種、トリアジン基およびチオール基の双方(例えば、トリチオシアヌル酸)を含む種、ポリエーテル基およびチオール基(例えば、2、2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、ポリ(エチレングリコール)ジチオール)、テトラ(エチレングリコール)ジチオール)、ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール)を含む種、チアジアゾール基およびチオール基の双方(例えば、1,3,4-チアジアゾール-2,5-ジチオール、1,2,4-チアジアゾール-3,5-ジチオール)を含む種、ピリジン基およびチオール基の双方(例えば、5、5’-ビス(メルカプトメチル)-2,2’-ビピリジン)を含む種、アゾール基およびチオール基の双方(例えば、4-フェニル-4H-(1,2,4)トリアゾール-3,5-ジチオール)を含む種、ピリミジン基およびチオール基の双方(例えば、5-(4-クロロ-フェニル)-ピリミジン-4,6-ジチオール)を含む種、芳香環およびチオール基の双方(例えば、4,4’-ビス(メルカプトメチル)ビフェニル、p-テルフェニル-4,4’’-ジチオール、ベンゼン-1,4-ジチオール、1,4-ベンゼンジメタンジチオール、1,2-ベンゼンジメタンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジメタンチオール、ベンゼン-1,2-ジチオール、トルエン-3,4-ジチオール、4-フェニル-4H-(1,2,4)トリアゾール-3,5-ジチオール、5-(4-クロロ-フェニル)-ピリミジン-4,6-ジチオール、4,4’-チオビスベンゼンチオール)の双方を含む種、チオエーテル基およびチオール基の双方(例えば、4,4’-チオビスベンゼンチオール、2,2’-チオジエタンチオール)を含む種、およびアルキルチオールを含む。
【0048】
前記のごとく、チオール基を含む種は、脱プロトン化チオール基(例えば、プロトン化チオール基に加えてまたは代えて)を含み得る。脱プロトン化チオール基は、前記の参照されたチオール基の1つ以上の共役塩基であり得る。例として、チオール基を含む種は、ペンタエリトリトール・テトラキス 3-メルカプトプロピオン酸に加えてまたは代えて、ペンタエリトリトール・テトラキス 3-メルカプトプロピオナートを含み得る。 前記または本明細書の他のチオール基への参照は、それとは反対の明示的な表示の不存在では、共役塩基をいうと理解されるべきである。
【0049】
電解質中に存在する場合、チオール基を含む種は、その種々の適当な量を構成(または作製、または構築:make up)し得る。電解質中に存在するチオール基を含む各種は、各々独立して、0.1重量%以上、0.25重量%以上、0.5重量%以上、0.75重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、2.5重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上または7.5重量%以上を構成し得る。電解質中に存在するチオール基を含む各種は、各々独立して、10重量%以下、7.5重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.75重量%以下、0.5重量%以下または0.25重量%以下を構成し得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、電解質の0.1重量%以上かつ10重量%以下、または電解質の0.5重量%以上かつ2.5重量%以下)。また、他の範囲が可能である。いくつかの具体例において、電解質中に存在するチオール基を含む種のすべては、前記範囲の1つ以上において電解質の量を一緒に構成し得る。本明細書に用いた電解質は、イオン電導性である電極間に位置した電気化学電池の種である。さらに詳細に以下に記載のごとく、電解質は溶媒、塩、ポリマーおよび他の種を含み得る。
【0050】
いくつかの具体例において、電解質は、1つ以上のアルケン基を含む種(例えば、添加剤、分子)(すなわち、重合性二重結合のごとき二重結合を含む1つ以上の種)を含む。アルケン基(例えば、ビニル基)を含む種は、少なくとも1つのアルケン基、少なくとも2つのアルケン基、少なくとも3つのアルケン基、少なくとも4つのアルケン基またはより多いアルケン基を含み得る。いくつかの具体例において、電解質は、1つ以上のアルケン基を含む1つを超えるタイプの小分子、および/または1つ以上のアルケン基を含む1つを超えるタイプの添加剤を含み得る。電解質はいくつかの小分子、および/または第1の数のアルケン基を含む添加剤、ならびにいくつかの小分子、および/または第2の数のアルケン基を含む添加剤を含み得る。アルケン基の第1および第2の数は同じであり得るか、または異なり得る。換言すれば、電解質は、双方が同数のアルケン基を含むが、1つ以上の他の方法において相互に異なる2つの種を含み得る、および/または異なる数のアルケン基を含む2つの種を含み得る。1つを超えるアルケン基を含む電解質中の分子および/または添加剤の存在は、チオール基に関して前記された理由のため有利であり得る。
【0051】
種々の適当なタイプのアルケン基が存在し得る。適当なタイプのアルケン基の非限定例は、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、ジエン基、ノルボルネン基、アルケン基を含む複素環基(例えば、マレイミド基、無水マレイン酸基)、およびビニルエーテル基を含む。いくつかの具体例において、アルケン基を含む種は、ポリエーテル基(例えば、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、例えば、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート)および/またはポリ(ジメチルシロキサン基のごときポリマー基(polymeric group)をさらに含み得る。いずれかの特定の理論によって拘束されることなく、ポリマー電子供与基のごとき電子供与基は、それらが存在する保護層のイオン電導性を高めることもでき、インピーダンスを低下でき、保護層を生成するために反応する種におけるそれらの存在を有益にし得ると考えられる。また、電子供与基は少なくとも部分的にリチウムイオンを溶媒和し得る、および/または電子供与基を含む種を介してリチウムイオン輸送を高め得ると考えられる。適当な電子供与基の非限定例は、ポリエーテル基(例えば、プロピレンオキシド基、エチレンオキシド基、交互(alternating)プロピレンオキシド基およびエチレンオキシド基)のごとき酸素原子を含む基を含む。
【0052】
前記のごとく、いくつかの具体例において、アルケン基は1つを超えるアルケン基を含む種に存在する。適当なタイプのかかる種の非限定例は、1つを超えるアクリレート基を含む種(例えば、トリメチロールプロパンエトキシレート トリアクリレートのごときトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレート テトラアクリレートのごときテトラアクリレート)、1つを超えるアルケン基を含むスターモノマー(例えば、スターの各分岐において1つ以上のアルケン基を含むスターモノマー)、超分岐モノマー(例えば、アルケン基を含む2つ以上の分岐を含む超分岐モノマー)、およびアルケン基を含む1つ以上のモノマーを含むポリマーを含む。アルケン基を含む1つ以上のモノマーを含むポリマーの非限定例は、ポリ(2-メトキシ-5-(2’-エチルヘキシロキシ)-1,4-フェニレンビニレン)、ブタジエン、テルペン、不飽和ポリオレフィン、およびポリ(ビニルシラン)(すなわち、ビニル基およびシラン基を含むモノマーの重合によって形成されたポリマー)を含む。
【0053】
また、前記のごとく、いくつかの具体例において、アルケン基を含む2つ以上の異なるタイプの種が、電解質中に存在し得る。かかる種の組合せは、それらが、保護層および/または有利な特性を持った保護層のポリマーコンポーネントを形成するために(例えば、チオール基を含む1つ以上の種と)反応するように、選択し得る。例えば、いくつかの具体例において、保護層が、短鎖(例えば、短いポリエーテル鎖)および長鎖(例えば、長いポリエーテル鎖)の双方を含むモノマーを含むことが望ましい。この組合せは望ましく結晶化度を低下し、柔軟性を改善し、ならびに/あるいは保護層および/またはそのポリマーコンポーネントの脆性を低下し得る;
【0054】
電解質中に存在する場合、アルケン基(例えば、ビニル基)を含む種は、その種々の適当な量を構成し得る。電解質中に存在するアルケン基(例えば、ビニル基)を含む各種は、各々独立して、電解質の0.05重量%以上、0.075重量%以上、0.1重量%以上、0.25重量%以上、0.5重量%以上、0.75重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、2重量%以上または2.5重量%以上を構成し得る。電解質中に存在するアルケン基(例えば、ビニル基)を含む各種は、各々独立して、電解質の5重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下、0.75重量%以下、0.5重量%以下、0.25重量%以下、0.1重量%以下または0.075重量%以下を構成する。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、0.05重量%以上かつ5重量%以下の電解質)。また、他の範囲が可能である。いくつかの具体例において、電解質中に存在するアルケン基を含むすべての種は、前記範囲の1つ以上において電解質の量で一緒に構成し得る。
【0055】
アルケン基を含む種およびチオール基を含む種の双方が電解質中に存在する場合、これらの種の相対量は所望のように選択し得る。いくつかの具体例において、電解質中のチオール基数に対するアルケン基数の比率は、0.1以上、0.125以上、0.15以上、0.175以上、0.2以上、0.225以上、0.25、または0.275以上である。電解質中のチオール基数に対するアルケン基数の比率は、0.3以下、0.275以下、0.25以下、0.225以下、0.2以下、0.175以下、0.15以下、または0.125以下であり得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、0.1以上かつ0.3以下)。また、他の範囲が可能である。
【0056】
いくつかの具体例において、電解質は、1つ以上のアルケン基(例えば、ビニル基)および1つ以上のチオール基を含む種を含む。アルケン基(例えば、ビニル基)の一部分および/またはチオール基の一部分は、保護層を形成するために反応を受けることもでき、アルケン基(例えば、ビニル基)の一部分および/またはチオール基の一部分は、得られた保護層において未反応のままであり得る。かかる種は前記された理由のために有利であり得る。
【0057】
いくつかの具体例において、電解質は、チオール基と反応するようになっているアルケン基以外に1つ以上の基を含む種(例えば、添加剤、分子)を含む。電解質は、1つ以上のアルケン基を含む種に加えておよび/またはに代えて、かかる種を含み得る。チオール基と反応するようになっているアルケン基以外の1つ以上の官能基を含む種の非限定例は、アルキン基、フラノース系の糖およびピラノース系の糖を含む種を含む。
【0058】
前記のごとく、いくつかの具体例はチオール基を含む保護層に関する。保護層は、チオール基を含む種の反応生成物(例えば、チオール基を含む電解質中の添加剤または分子の反応生成物、チオール基を含む保護層を形成するために用いられる試薬の反応生成物)を含み得る。反応生成物は、チオール基によって形成された共有結合(例えば、ジスルフィド結合、チオール-エン反応によって形成された共有結合)を含み得る、および/または1つ以上の未反応のチオール基(例えば、未反応のプロトン化チオール基、未反応の脱プロトン化チオール基)を含み得る。いくつかの具体例において、反応生成物はポリマーである。ポリマーは、一緒に連結されたモノマー(すなわち、繰返し単位)を含むことができ、それは、ポリマーの形成中に反応しなかったチオール基を含む種の一部分であり得る。前記のごとく、ポリマーは架橋され得る。
【0059】
いくつかの具体例において、保護層は、1つ以上のタイプのチオール基含有モノマーを含むポリマーを含む。ポリマーは1つ、2つ、3つ、4つまたはそれを超えるタイプのチオール基含有モノマーを含み得る。各タイプのチオール基含有モノマーは、ポリマーに異なる利益を提供し得る。例えば、保護層の一部分を形成する場合のポリマーの1つ以上の機能特性(例えば、イオン電導性、インピーダンス、柔軟性、電解質中での膨潤傾向)、および/または保護層の製作で支援するポリマーの1つ以上の特性(例えば、加工性)の組合せを高め得る。例として、ポリエーテル基およびチオール基の双方を含むモノマーから形成されたおよび/または前記モノマーを含むポリマーは、ポリエーテル基およびアルケン基の双方を含むモノマーに関して前記された同じ理由のために保護層のイオン電導性を高め得る。もう一つの例として、チオール基およびトリアジン基の双方を含むモノマーから形成されたおよび/または前記モノマーを含むポリマーは、多数の有利さ有し得る。これらは、トリアジン基の高表面積(これはポリマーを介してリチウムイオンの輸送を促進するために有利であるポリマー内の細孔の形成を促進し得る)、p-ドープおよびn-ドープされるトリアジン基の能力(これは、電子および/または荷電種の迅速な交換を促進し得る)、トリアジン基の電子供与特性(これはイオンの迅速な交換を促進し得る)、および二次元構造を形成するためのトリアジンの能力(これはかかるポリマーが位置する電気化学電池のサイクル寿命および/または効率を改善し得る)を含む。また、ポリマー中のトリアジン基の存在は、ポリマー内の相互に連結した細孔の形成を促進し得る、ポリマー内にメゾポア(例えば、本明細書に別記のごときBET表面分析によって測定された2nm以上かつ50nm以下の細孔サイズを有する細孔)およびミクロポア(例えば、本明細書に別記のごときBET表面分析によって測定された2nm未満の細孔サイズを有する細孔)の双方の存在を促進し得る、および/または全体としてポリマーの表面積を高め得ると考えられる。これらの特徴は、かかるポリマーが位置する電気化学電池のエネルギー貯蔵容量を有利に高め得る。
【0060】
モノマーの有利な組合せを含むポリマーのさらなる例は、本明細書のこの段落、および他の位置に記載される。例えば、いくつかの具体例において、ポリマーは、(1)ポリエーテル基およびチオール基の双方を含むモノマー、および(2)チオール基を含み、比較的低い分子量(例えば、500Da以下の)を有するモノマーから形成される、および/またはを含む。かかるポリマーは低下した鎖の絡み合いを示すこともでき、この結果、高められた柔軟性および/または低下した脆性を生じ得る。もう一つの例として、いくつかのポリマーは、(1)ポリエーテル基およびチオール基の双方を含むモノマー、および(2)チオール基およびトリアジン基(例えば、トリチオシアヌル酸)の双方を含むモノマーから形成される、および/またはを含む。かかるポリマーは、高められた柔軟性および/または低下した結晶化度を示し得る。
【0061】
保護層中に存在するポリマーが2つ以上のタイプのチオール基含有モノマーを含む場合、所望のように、チオール基含有モノマーのタイプの相対量が所望のように選択し得る。いくつかの具体例において、ポリマーは、第1のタイプのチオール基含有モノマーおよび第2のタイプのチオール基含有モノマーを含み、また、第2のタイプのチオール基含有モノマーの量に対する第1のタイプのチオール基含有モノマーの量のモル比は、0.1以上、0.25以上、0.5以上、0.75以上、1以上、1.5以上、2.5以上、5以上、7.5以上、10以上または12.5以上である。第2のタイプのチオール基含有モノマーに対する第1のタイプのチオール基含有モノマーの量のモル比は、15以下、12.5以下、10以下、7.5以下、5以下、2.5以下、1.5以下、1以下、0.75以下、0.5以下または0.25以下であり得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、0.1以上かつ15以下、または1以上かつ1.5以下)。また、他の範囲が可能である。保護層中の各タイプのチオール基含有モノマーの相対量は、核磁気共鳴によって決定し得る。
【0062】
前記段落中の範囲が、種々の適当な時点に保護層中に存在するポリマーにおける第2のタイプのチオール基含有モノマーの量に対する第1のタイプのチオール基含有モノマーの量のモル比をいい得ることが理解されるべきである。例えば、保護層中に存在するポリマーは、電気化学電池アセンブリの後だがサイクルに先立って、および/またはサイクル後に、電気活性材料上の形成または堆積直後に前記範囲の1つ以上において、第2のタイプのチオール基含有モノマーの量に対する第1のタイプのチオール基含有モノマーの量のモル比を有し得る。また、保護層中に存在するポリマーが、経時的に(例えば、電気化学電池アセンブリ中に、電気化学電池貯蔵中に、電気化学電池サイクル中に)変化する、第2のタイプのチオール基含有モノマーの量に対する第1のタイプのチオール基含有モノマーの量のモル比を有し得ることが理解されるべきである。
【0063】
いくつかの具体例において、保護層は、チオール基およびジスルフィド結合の双方を含むポリマーを含む。チオール基およびジスルフィド結合の相対量は一般的に所望のように選択することもでき、電気化学電池アセンブリおよび/またはサイクル中に変化し得る。例えば、いくつかのチオール基は、電気化学電池アセンブリ中および/またはジスルフィド基を形成するためのサイクル中に酸化するようになり得る、ならびに/あるいはいくつかのジスルフィド基は、電気化学電池アセンブリ中および/またはチオール基を形成するためのサイクル中に還元されるようになり得る。ポリマー中のチオール基量に対するジスルフィド結合量のモル比は、0.01以上、0.02以上、0.05以上、0.1以上、0.2以上、0.5以上、1以上、2以上、5以上、10以上、20以上、50以上または75以上であり得る。ポリマー中のチオール基量に対するジスルフィド結合量のモル比は、100以下、75以下、50以下、20以下、10以下、5以下、2以下、1以下、0.5以下、0.2以下、0.1以下、0.05以下または0.02以下であり得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、0.01以上かつ100以下)。また、他の範囲が可能である。保護層は、種々の時点(例えば、製作の後、サイクルに先立ち、サイクル中)にて前記の参照された範囲の1つ以上において、チオール基に対するジスルフィド結合のモル比を有するポリマーを含み得る。
【0064】
前記のごとく、いくつかの保護層は、アルケン基(例えば、ビニル基)を含む1つ以上の種、およびチオール基を含む1つ以上の種を含む反応によって形成されたポリマーを含む。かかるポリマーは、チオール基およびアルケン基(例えば、ビニル基)の種々の適当な相対量を有し得る。いくつかの具体例において、未反応および反応させたアルケン基(例えば、ビニル基)の総量に対する未反応および反応させたチオール基の総量のモル比は、1以上、1.2以上、1.4以上、1.8以上、2以上、5以上、10以上、15以上、20以上、30以上または40以上であり得る。未反応および反応させたアルケン基(例えば、ビニル基)の総量に対する未反応および反応させたチオール基の総量のモル比は、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、5以下、2以下、1.8以下、1.4以下または1.2以下であり得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、1以上かつ50以下、1.4以上かつ15以下、または2以上かつ15以下)。また、他の範囲が可能である。保護層中の未反応および反応させたチオール基および未反応および反応させたアルケン基の相対量は、核磁気共鳴によって決定し得る。
【0065】
種々の適当な時点にて前記段落の範囲が、保護層中に存在するポリマー中の未反応および反応させたアルケン基の総量に対する未反応および反応させたチオール基の総量のモル比をいい得ることが理解されるべきである。例えば、保護層中に存在するポリマーは、電気活性材料上の形成または堆積直後に、電気化学電池アセンブリ後だがサイクルに先立って、および/またはサイクル後に、前記範囲の1つ以上において未反応および反応させたアルケン基の総量に対する未反応および反応させたチオール基の総量のモル比を有し得る。また、保護層中に存在するポリマーが、経時的に(例えば、電気化学電池アセンブリ中に、電気化学電池貯蔵中に、電気化学電池サイクル中に)変化する、未反応および反応させたアルケン基の総量に対する未反応および反応させたチオール基の総量のモル比を有し得ることが理解されるべきである。
【0066】
いくつかの具体例において、本明細書に記載された保護層は複数の粒子を含む。複数の粒子は種々の適当なタイプの粒子を含むこともでき、それらの非限定例はセラミック粒子、黒鉛粒子(例えば、リチウム化黒鉛粒子(またはリチウム化グラファイト粒子:lithiated graphite particle))およびホウ素粒子を含む。セラミック粒子は酸化物粒子(例えば、酸化アルミニウム粒子、ベーマイト粒子、シリカ粒子、ヒュームドシリカ粒子)、窒化物粒子(例えば、窒化炭素粒子、窒化ホウ素粒子、窒化ケイ素粒子)および/またはホウ化物粒子(例えば、ホウ化炭素粒子)を含み得る。いくつかの具体例において、粒子は、保護層のインピーダンスを低下し得る、および/または保護層が電極内の電気活性材料上に覆われる容易さ(ease)を高め得る。
複数の粒子がまさに1つのタイプの粒子を含み得るか、または2つ以上のタイプの粒子を含み得る。シリカ粒子、リチウム化黒鉛粒子および/またはホウ素粒子は、保護層がアノードの一部分を形成する場合、特別の有用性を有し得る。アルミナ粒子は、保護層がカソードの一部分を形成する場合、特別の有用性を有し得る。
【0067】
存在する場合、複数の粒子は、種々の適当な量の保護層および/またはそのいずれかの副層を構成し得る。いくつかの具体例において、複数の粒子は、2重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上または80重量%以上の保護層を構成する。複数の粒子は、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下または5重量%以下の保護層を構成し得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、2重量%以上かつ30重量%以下の保護層、5重量%以上かつ90重量%以下の保護層、10重量%以上かつ70重量%以下の保護層、または40重量%以上かつ50重量%以下の保護層)。いくつかの具体例において、複数の粒子は、保護層がアノードの一部分を形成する場合(例えば、5重量%および30重量%の間の保護層)、比較的低い量の保護層を構成し得る。いくつかの具体例において、複数の粒子は、保護層がカソードの一部分を形成する場合(例えば、5重量%以上かつ90重量%以下の保護層)、比較的低い量、中程度の量または比較的高い量の保護層を構成し得る。また、他の範囲が可能である。いくつかの具体例において、複数の粒子は、1つを超えるタイプの粒子を含むこともでき、また、各タイプの粒子は、独立して前記範囲の1つ以上において保護層および/またはそのいずれかの副層の量を構成し得る。
【0068】
複数の粒子が、種々の適当なサイズを有する粒子を含み得る。いくつかの具体例において、複数の粒子の平均最大断面寸法は、5nm以上、7.5nm以上、10nm以上、15nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上、75nm以上、100nm以上、150nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、750nm以上、1ミクロン以上または2ミクロン以上である。複数の粒子の平均最大断面寸法は、5ミクロン以下、2ミクロン以下、1ミクロン以下、750nm以下、500nm以下、300nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、75nm以下、50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下または7.5nm以下であり得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、5nm以上かつ5ミクロン以下、5nm以上かつ1ミクロン以下、または5nm以上かつ500nm以下)。また、他の範囲が可能である。保護層および/またはその副層が2つ以上の複数の粒子を含む場合、各複数の粒子は独立して、1つ以上の前記範囲の平均最大断面寸法を有し得る。
【0069】
本明細書に用いた粒子の平均最大断面寸法は、粒子の表面でのその終了点の双方を有すると示し得る最長の直線線分である。複数の粒子の平均最大断面寸法は、複数の粒子中の粒子の最大断面寸法の数平均である。複数の粒子の平均最大断面寸法は、電子顕微鏡法によって決定し得る。
【0070】
いくつかの具体例において、保護層は、少なくとも部分的に一緒に融合される、および/またはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子を含む。適当なタイプの融合された粒子およびエアロゾル堆積の適当な方法の非限定例は、米国特許公開第2016/0344067号、米国特許第9,825,328号、米国特許公開第2017/0338475号および米国特許公開第2018/0351148号に記載されていたものを含み、ここに、その各々をここに出典明示して、それらの全体をおよびすべての目的のために、本願明細書の一部とみなす。少なくとも部分的に一緒に融合される複数粒子、および/またはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子は、比較的均一な保護層の一部分を構成し得るか、または保護層の1つ以上の他の副層と離れた個別の副層を形成し得る。
【0071】
例えば、少なくとも部分的に一緒に融合される、および/またはそれにはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子は、本明細書に別記されたコンポーネントの1つ以上(例えば、チオール基、チオール基の反応生成物、チオール基を含むポリマー、および/またはチオール基の反応生成物、および/または第2の複数の粒子)と一緒に比較的均一な層を形成し得る。いくつかのかかる具体例において、少なくとも部分的に一緒に融合される、および/またはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子は、チオール基および/またはジスルフィド基を含むポリマーと一緒に、浸透用(または相互侵入:interpenetrating)構造を形成する。浸透用構造は三次元構造であり得る、および/または保護層の厚さにわたり得る。存在する場合、浸透用構造は、保護層を横切って勾配を形成するイオン電導性を望ましく示すこともでき、それは、保護層にて、および/または保護層およびそれが隣接するもう一つの電気化学電池コンポーネント(例えば、電気活性材料、電解質)間の界面にて抵抗のビルドアップを低下し得る。
【0072】
いくつかの具体例において、保護層は、少なくとも部分的に一緒に融合される、および/またはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子を含む第1の副層、ならびに第2の副層を含む。第2の副層は、全体として保護層に関して本明細書に別記された1つ以上の特徴を有し得る。例として、第2の副層は、チオール基、チオール基の反応生成物(例えば、ジスルフィド結合、チオール-エン基結合)および/または第1の副層中に存在する複数の粒子以外の第2の複数の粒子を含み得る。もう一つの例として、第2の副層は、本明細書に別記のごとき細孔を含み得る。保護層が2つ以上の副層を含む場合、副層は種々の適当な方法で相互に関して位置し得る。例えば、保護層は、少なくとも部分的に一緒に融合される、および/または電気活性材料に直接隣接するエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子を含み得る、ならびに/あるいは少なくとも部分的に一緒に融合される、および/または1つ以上の介在する層(例えば、全体として、保護層に関して本明細書に別記された1つ以上の特徴を有する介在する層)によって電気活性材料から分けられるエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子を含む副層を含み得る。いくつかの具体例において、少なくとも部分的に一緒に融合される、および/またはそれにはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子を含む副層は、多層の保護層の最も外側の副層である。
【0073】
少なくとも部分的に一緒に融合される、および/またはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子は、種々の適当な方法によって形成し得る。かかる1つの方法は、エアロゾル堆積によって電気活性材料(および/またはその上に配置されたいずれかの層(複数))上に粒子を堆積させる第1の工程、およびもう一つの方法によって保護層(例えば、ポリマー、もう一つの複数の粒子)の1つ以上のさらなるコンポーネントを堆積する第2の工程を含む。他の方法は、本明細書に別記されたいずれかの適当な方法、例えば、さらなるコンポーネント(複数)および/またはさらなるコンポーネント(複数)を形成するために反応し得る1つを超える前駆物質を含む電解質への曝露、ならびに/あるいはさらなるコンポーネント(複数)および/または電気化学電池のアセンブリに先立ち、さらなるコンポーネント(複数)を形成するために反応し得る1つを超える前駆物質を含むもう一つの流体(例えば、スラリー)への曝露によるものであり得る。第2の工程は第1の工程の後に、または第1の工程に先立って行い得る。また、他の方法が可能である。
【0074】
前記のごとく、保護層は、少なくとも部分的に一緒に融合された複数の粒子を含む層および/または副層を含み得る。用語「融合する」および「融合された」(および「融合」)は、当該技術分野におけるそれらの典型的な意味を与え、一般的に、単一の物体を形成するように、2つ以上の物体(例えば、粒子)の物理的連結をいう。例えば、いくつかの場合、融合に先立って単一粒子(例えば、粒子の外表面内の全体量)で占有された体積は、2つの融合された粒子で占有された体積の半分に実質的に等しい。当業者は、用語「融合する」、「融合された」および「融合」が、1つ以上の表面で単に互いに接触する粒子をいわないが、個々の粒子の元来の表面の少なくとも一部分が、もはや他の粒子と区別できない粒子をいうことを理解するであろう。いくつかの具体例において、融合された粒子(例えば、融合に先立って粒子の等価な体積を有する融合された粒子)は、1ミクロン未満の最小の断面寸法を有し得る。例えば、融合された後の複数の粒子は、1ミクロン未満、0.75ミクロン未満、0.5ミクロン未満、0.2ミクロン未満または0.1ミクロン未満の平均最小断面寸法を有し得る。いくつかの具体例において、融合された後の複数の粒子は、0.05ミクロン以上、0.1ミクロン以上、0.2ミクロン以上、0.5ミクロン以上、または0.75ミクロン以上の平均最小断面寸法を有する。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、1ミクロン未満で0.05ミクロン以上)。また、他の範囲が可能である。
【0075】
いくつかの場合において、複数の粒子は、複数の粒子の少なくとも一部分が、保護層および/またはその副層を横切って連続的経路(例えば、保護層の第1の表面および保護層の第2の対向する表面間に、副層の第1の表面および副層の第2の対向する表面間に)を形成するように融合される。連続的経路は、例えば、保護層および/またはその副層の第1の表面から第2の対向する表面までのイオン電導性経路を含むことができ、その中では、経路において実質的に、ギャップ、切断または不連続が存在しない。層を横切る融合された粒子が連続的経路を形成し得るが、パックされた非融合の粒子を含む経路は、経路を連続的にしないであろう粒子間のギャップまたは不連続を有し得る。かかるギャップおよび/または不連続は、保護層および/またはその副層のもう一つのコンポーネント、例えば、チオール基を含む種の反応生成物、チオール基を含むポリマー、および/またはジスルフィド基を含むポリマーにより充填し得る。いくつかの具体例において、少なくとも部分的に一緒に融合された複数の粒子は、保護層および/またはその副層を横切って複数のかかる連続的経路を形成する。いくつかの具体例において、少なくとも10体積%、少なくとも30体積%、少なくとも50体積%または少なくとも70体積%の保護層および/またはその副層は、融合された粒子(例えば、これはイオン電導材料を含み得る)を含む1つ以上の連続的経路を含む。いくつかの具体例において、100体積%以下、90体積%以下、70体積%以下、50体積%以下、30体積%以下、10体積%以下または5体積%以下の保護層および/またはその副層は、融合された粒子を含む1つ以上の連続的経路を含む。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、少なくとも10体積%で100体積%以下)。いくつかの場合において、保護層の副層の100体積%が、融合された粒子を含む1つ以上の連続的経路を含む。すなわち、いくつかの具体例において、保護層の副層は、融合された粒子(例えば、第2の層は実質的に非融合の粒子を含まない)から実質的に成る。他の具体例において、保護層は非融合の粒子を欠く、および/または非融合の粒子を実質的に含まない。
【0076】
当業者は、粒子が、例えば、共焦点ラマン顕微鏡法(CRM)を行なうことを含めて、融合されるかどうかを決定するための適当な方法を選択することができるであろう。CRMを用いて、保護層および/またはその副層内の融合された面積のパーセンテージを決定し得る。例えば、いくつかの態様において、融合された面積は、保護層および/またはその副層内の非融合の面積(例えば、粒子)と比較して、余り結晶性でなくてもよく(より無定形であってもよく)、非融合の面積のものより異なるラマン特徴的なスペクトル帯(Raman characteristic spectral bands)を提供し得る。いくつかの具体例において、融合された面積は無定形であることもでき、また、層内の非融合の面積(例えば、粒子)は結晶性であり得る。結晶および無定形の面積は同じ/類似した波長でピークを有することもできるが、無定形のピークは、結晶の面積のものより広く/余り極度(intense)でないこともできる。いくつかの例において、非融合の面積は、層(バルク(bulk)スペクトル)の形成に先立ってバルク粒子のスペクトル帯に実質的に同様のスペクトル帯を含み得る。例えば、非融合の面積は、同じまたは同様の波長でのピークを含むこともでき、層の形成に先立って粒子のスペクトル帯内のピークとしてピーク(統合シグナル)下の同様の面積を有することを含み得る。非融合の面積は、例えば、スペクトルで最大ピーク(最大の統合シグナルを有するピーク)のために統合シグナル(ピーク下の面積)を有することもでき、これは、例えば、バルクのスペクトルの対応する最大ピークについての統合シグナルの値の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも97%以内であり得る。対照的に、融合された面積は、層の形成に先立つ粒子のスペクトル帯(例えば、同じまたは同様の波長でのピークだが、前記スペクトル帯とは実質的に異なる/より低い統合シグナルを有するピーク)とは異なるスペクトル帯を含み得る。融合された面積は、例えば、スペクトルで最大ピーク(最大の統合シグナルを有するピーク)のために統合シグナル(ピーク下の面積)を有することもでき、それは、例えば、バルクスペクトルの対応する最大ピークについての統合シグナルの値の50%未満、60%未満、70%未満、75%未満、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満または97%未満であり得る。
【0077】
いくつかの具体例において、CRMの二次元および/または三次元のマッピングを用いて、保護層および/またはその副層中の融合された面積のパーセンテージ(例えば、前記のごとく、層の形成に先立って粒子についてのものとは異なるスペクトルの最大ピークについての統合シグナルを有する、最小断面面積内の面積のパーセンテージ)を決定し得る。
【0078】
前記のごとく、いくつかの方法は、エアロゾル堆積プロセスによって保護層および/または保護層の副層の一部分を形成することに関する。エアロゾル堆積プロセスは当該技術分野において知られ、表面に比較的高速度で粒子(例えば、無機粒子、ポリマー粒子)を堆積させる(例えば、スプレーする)ことを一般的に含む。本明細書に記載されたエアロゾル堆積は、一般的に少なくとも複数の粒子のいくつかの衝突および/または弾性変形を生じる。いくつかの態様において、エアロゾル堆積は、複数の粒子の少なくとももう一つの部分に少なくとも複数の粒子のいくつかの融合を生じるのに十分な条件(例えば、速度を用いる)下で実施することができる。例えば、いくつかの具体例において、複数の粒子が、複数の粒子の少なくとも一部分が融合する(例えば、保護層の一部分および/または副層を形成する)ように、相対的な高速度で電気活性材料(および/またはその上に配置されたいずれかの副層)上に堆積する。粒子融合に必要な速度は、粒子の材料組成、粒子のサイズ、粒子のヤングの弾性率および/または粒子もしくは粒子を形成する材料の降伏強度(耐力:yield strength)のごとき因子に依存し得る。
【0079】
いくつかの具体例において、複数の粒子が、少なくともいくつか粒子の融合をその中で引き起こすのに十分な速度で堆積される。しかしながら、いくつかの態様において、粒子は、少なくともいくつかの粒子が融合されないような速度で堆積されることが認識されるべきである。ある態様において、粒子の速度は、少なくとも150m/s、少なくとも200m/s、少なくとも300m/s、少なくとも400m/s、少なくとも500m/s、少なくとも600m/s、少なくとも800m/s、少なくとも1000m/sまたは少なくとも1500m/sである。いくつかの具体例において、速度は、2000m/s以下、1500m/s以下、1000m/s以下、800m/s以下、600m/s以下、500m/s以下、400m/s以下、300m/s以下または200m/s以下である。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、150m/sおよび2000m/sの間で、150m/sおよび600m/sの間で、200m/sおよび500m/sの間で、200m/sおよび400m/sの間で、500m/sおよび2000m/sの間で)。また、他の速度が可能である。1つを超える粒子タイプが保護層および/またはその副層に含まれるいくつかの具体例において、各粒子タイプは、1つ以上の前記に参照された範囲の速度にて堆積し得る。
【0080】
いくつかの具体例において、少なくとも部分的に融合される複数の粒子は、粒子をキャリヤーガスで加圧することにより電気活性材料(および/またはその上に配置されたいずれかの副層(複数))の表面で粒子を(例えば、エアロゾル堆積を介して)スプレーすることを含む方法によって堆積される。いくつかの具体例において、キャリヤーガスの圧力は、少なくとも5psi、少なくとも10psi、少なくとも20psi、少なくとも50psi、少なくとも90psi、少なくとも100psi、少なくとも150psi、少なくとも200psi、少なくとも250psiまたは少なくとも300psiである。いくつかの具体例において、キャリヤーガスの圧力は、350psi以下、300psi以下、250psi以下、200psi以下、150psi以下、100psi以下、90psi以下、50psi以下、20psi以下または10psi以下である。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、5psiおよび350psiの間で)。また、他の範囲が可能であり、当業者は、この明細書の教示に基づいてキャリヤーガスの圧力を選択することができるであろう。例えば、いくつかの具体例において、キャリヤーガスの圧力は、電気活性材料(および/またはその上に配置されたいずれかの副層(複数))上に堆積された粒子の速度が、相互に少なくともいくつかの粒子を融合させるのに十分なようなものである。
【0081】
いくつかの態様において、キャリヤーガス(例えば、少なくとも部分的に融合される複数の粒子を輸送するキャリヤーガス)は、堆積に先立って加熱される。いくつかの態様において、キャリヤーガスの温度は、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも30℃、少なくとも50℃、少なくとも75℃、少なくとも100℃、少なくとも150℃、少なくとも200℃、少なくとも300℃または少なくとも400℃である。いくつかの具体例において、キャリヤーガスの温度は、500℃以下、400℃以下、300℃以下、200℃以下、150℃以下、100℃以下、75℃以下、50℃以下、30℃以下または20℃以下である。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、少なくとも20℃で500℃以下)。また、他の範囲が可能である。
【0082】
いくつかの具体例において、少なくとも部分的に融合される複数の粒子は、減圧環境下で堆積される。例えば、粒子は、(例えば、粒子流に対する大気抵抗を除去する、高速度の粒子を可能にするおよび/または汚染物質を除去するために)コンテナーに減圧が適用されるコンテナーにおいて電気活性材料(および/またはその上に配置されたいずれかの副層(複数))の表面に堆積し得る。いくつかの具体例において、コンテナー内の減圧(vacuum pressure)は、少なくとも0.5mTorr、少なくとも1mTorr、少なくとも2mTorr、少なくとも5mTorr、少なくとも10mTorr、少なくとも20mTorrまたは少なくとも50mTorrである。いくつかの具体例において、コンテナー内の減圧は、100mTorr以下、50mTorr以下、20mTorr以下、10mTorr以下、5mTorr以下、2mTorrまたは1mTorr以下である。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、0.5mTorrおよび100mTorrの間で)。また、他の範囲が可能である。
【0083】
いくつかの具体例において、保護層および/またはその副層の形成のために本明細書に記載されたプロセスは、前駆物質(例えば、粒子)のバルク特性(例えば、結晶化度、イオン電導性)が得られた層に維持されるように、実施することができる。
【0084】
いくつかの具体例において、少なくとも部分的に一緒に融合される、および/またはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子は、無機材料を含む。例えば、少なくとも部分的に一緒に融合される、および/またはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子は、無機材料から形成し得る。いくつかの具体例において、少なくとも部分的に一緒に融合される、および/またはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子は、2つ以上のタイプの無機材料を含む。無機材料(複数)は、セラミック材料(例えば、グラス、ガラス質のセラミック材料)を含み得る。無機材料(複数)は、結晶性であり得るか、無定形であり得るか、または部分的に結晶性で部分的に無定形であり得る。
【0085】
いくつかの具体例において、少なくとも部分的に一緒に融合される、および/またはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子は、LiMPを含む。かかる無機材料について、x、yおよびzは整数(例えば、32未満の整数)である、および/またはMは、Sn、Geおよび/またはSiを含み得る。例として、無機材料はLi22SiP18、Li24MP19(例えば、Li24SiP19)、LiMP12(例えば、M=Sn、Ge、Siである)および/またはLiSiPSを含み得る。適当な無機材料のさらに次の例は、ガーネット、スルフィド、リン酸塩、ペロブスカイト、抗ペロブスカイト、他のイオン電導性無機材料および/またはその混合物を含む。LiMP粒子が保護層および/またはその副層に使用される場合、それらは、例えば、原料(raw)コンポーネントLiS、SiSおよびP(または別法として、LiS、Si、SおよびP)を用いることにより形成し得る。
【0086】
いくつかの具体例において、少なくとも部分的に一緒に融合される、および/またはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子は、酸化物、窒化物、ならびに/あるいはリチウム、アルミニウム、シリコン、亜鉛、スズ、バナジウム、ジルコニウム、マグネシウムおよび/またはインジウムならびに/あるいはその合金の酸窒化物を含む。適当な酸化物の非限定例は、LiO、LiO、LiO、LiRO(式中、Rは希土類金属合金(例えば、リチウムランタン酸化物)である)、リチウムチタン酸化物、Al、ZrO、SiO、CeOおよびAlTiOを含む。少なくとも部分的に一緒に融合される、および/またはエアロゾル堆積によって堆積した粒子を示す構造を有する複数の粒子に使用し得る適当な材料の例は、硝酸リチウム(例えば、LiNO)およびリチウムシリケート、ホウ酸リチウム(例えば、リチウムビス(オキサラト)ボラート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボラート、アルミン酸リチウム、シュウ酸リチウム、リン酸リチウム(例えば、LiPO、LiPO)、リチウムリン酸窒化物、リチウムシリコスルフィド、リチウムゲルマノスルフィド、フッ化リチウム(例えば、LiF、LiBF、LiAlF、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiSiF、LiSOF、LiN(SOF)、LiN(SOCF)、リチウムボロスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、リチウムホスホスルフィド、オキシ-スルフィド(例えば、リチウムオキシ-スルフィド)および/またはその組合せを含む。いくつかの具体例において、複数の粒子は、Li-Al-TiPO(LATP)を含む。
【0087】
前記のごとく、本明細書に記載された保護層および/または副層は、多孔性であり得る。いくつかの具体例において、保護層(および/または1つ以上のその副層)は多孔性であり、有利なサイズを有する細孔を含む。かなりの量のイオンが、かなりの量の電解質がそれを通過させることなく(電解質から基底の電気活性材料を保護して)、(保護層のイオン電導性を高めて)それを通過することをそれらが可能にするような有利なサイズを有する細孔が分類(sized)され得る。いずれかの特定の理論によって拘束されることなく、保護層中(例えば、保護層中のポリマー中)のチオール基からのジスルフィド結合の形成は、この範囲のサイズを有する細孔の形成を高め得ると考えられる。ジスルフィド結合を形成するために反応する対のチオール基は、得られたジスルフィド結合より大きな体積を一緒に有することもでき、したがって、それらがジスルフィド結合を形成するために反応する場合、細孔を残し得る。この細孔は、保護層を介する電解質輸送をかなり高めることなく、保護層を介するイオン輸送をかなり高めるために適切に分類され得る。保護層中に最初に存在するチオール基は、電気化学電池製作中、および/または電気化学電池サイクル中にジスルフィド結合および細孔を形成するために反応し得る。
【0088】
いくつかの具体例において、保護層および/または1つ以上のその副層は、10nm以上、15nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上、75nm以上、100nm以上、150nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上または750nm以上の平均サイズ(例えば、有利である平均サイズ)を有する細孔を含み得る。保護層の平均細孔サイズは、1ミクロン以下、750nm以下、500nm以下、300nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、75nm以下、50nm以下、30nm以下、20nm以下または15nm以下であり得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、10nm以上かつ1ミクロン以下)。また、他の範囲が可能である。保護層が1つ以上の副層を含む場合、各副層は、独立して前記範囲の1つ以上において平均サイズを有する細孔を含む。いくつかの具体例において、保護層および/またはその副層は、前記に挙げられた範囲の1つ以上において平均細孔サイズを有するポリマーを含む。例えば、S.Brunauer、P.H.EmmettおよびE.Teller、J. Am. Chem. Soc.,1938,60,309(ここに、出典明示して、そのすべてを本明細書の一部とみなす)に記載のごときBET表面分析を用いて、保護層およびそのいずれかの副層の平均細孔サイズを決定し得る。
【0089】
保護層が細孔を含む場合、細孔は、保護層の体積の種々の適当なパーセンテージを構成し得る。いくつかの具体例において、保護層および/または1つ以上のその副層は、25体積%以上、30体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上、80体積%以上または90体積%以上の保護層および/または副層を構成する細孔を含む。保護層および/または1つ以上のその副層は、95体積%以下、90体積%以下、80体積%以下、70体積%以下、60体積%以下、50体積%以下、40体積%または30体積%以下の保護層および/または副層を構成する細孔を含み得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、25体積%以上かつ95体積%以下の保護層)。また、他の範囲が可能である。保護層が1つ以上の副層を含む場合、各副層は独立して、前記範囲の1つ以上において副層のある体積%を構成する細孔を含み得る。例えば、S.Brunauer、P.H.EmmettおよびE.Teller、J. Am. Chem. Soc.,1938,60,309(ここに、出典明示して、そのすべてを本明細書の一部とみなす)に記載のごときBET表面分析を用いて、保護層およびそのいずれかの副層の平均多孔度(または空隙率:porosity)を決定し得る。
【0090】
保護層が細孔を含む場合、細孔は種々の適当な表面積を有し得る。いくつかの具体例において、保護層および/または1つ以上のその副層は、30m/g以上、50m/g以上、75m/g以上、100m/g以上、125m/g以上、150m/g以上または175m/g以上の表面積を有する細孔を含む。保護層および/または1つ以上のその副層は、200m/g以下、175m/g以下、150m/g以下、125m/g以下、100m/g以下、75m/gまたは50m/g以下の表面積を有する細孔を含み得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、30m/g以上かつ200m/g以下)。また、他の範囲が可能である。保護層が1つ以上の副層を含む場合、各副層は独立して、前記範囲の1つ以上において表面積を有する細孔を含み得る。例えば、S.Brunauer、P.H.EmmettおよびE.Teller、J. Am. Chem. Soc.,1938,60,309(ここに、出典明示して、そのすべてを本明細書の一部とみなす)に記載のごときBET表面分析を用いて、保護層およびそのいずれかの副層の細孔の表面積を決定し得る。
【0091】
いくつかの具体例において、保護層はそれが比較的有利な方法で位置する電気化学電池中の電解質と相互作用するように構成し得る。例えば、前記のごとく、電解質は比較的小さな電解質がそれを通過することを可能にし得るか、または電解質がそれを通過しないことを可能にし得る。いくつかの具体例において、保護層は、その上に位置する電極(例えば、アノード、カソード)との電解質の小さいまたは全くない相互作用を可能にし、電解質およびカソードの間の有害な相互作用を低下または除去する。いくつかの具体例において、保護層は、電解質およびカソードの間の最小またはゼロの有害な相互作用を可能にしつつ、電解質およびそれが位置する電極の間のポジティブな相互作用、例えば、保護層を介して高められたイオン電導性を促進する相互作用を可能にする。
【0092】
保護層は、電解質に曝露された場合、その構造的完全性を維持し得る、および/または電解質中の最小程度まで膨潤するように構成し得る。いくつかの具体例において、電気化学電池は保護層および電解質を含み、保護層および/または1つ以上のその副層は、24時間または48時間電解質に曝露される場合、150%以下、125%以下、100%以下、75%以下、50%以下、40%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、2%以下または1%以下で膨潤するように構成される。いくつかの具体例において、電気化学電池は保護層および電解質を含み、保護層および/または1つ以上のその副層は、24時間または48時間電解質に曝露される場合、0%以上、1%以上、2%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、100%以上または125%以上で膨潤するように構成される。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、150%以下かつ0%以上、50%以下かつ2%以上)。また、他の範囲が可能である。保護層の膨潤は、(1)電解質への曝露に先立ち保護層を秤量すること;(2)適当な時間量の間(例えば、24時間、48時間)電解質に保護層を曝露すること;(3)適当な時間量の後に保護層を秤量すること;および(4)2つの測定された重量に基づいて質量のパーセント増加を計算することによって決定し得る。
【0093】
いくつかの保護層は、かなりの程度の時間にわたり電解質において安定である。例えば、いくつかの保護層は、使用に先立つ電気化学電池貯蔵中に、サイクル中に、および/またはサイクル寿命の終わりに、電解質を含む組み立てられた電気化学電池において、ほとんどまたはまったく分解(壊変:disintegration)を示さないこともできる。いくつかの具体例において、50℃での48時間の電解質溶液中の保護層の貯蔵は、ほとんどまたはまったくその分解を引き起こさず、および/または1つ以上のその副層の分解をほとんどまたはまったく引き起こさない。保護層の分解の範囲およびタイプは、走査型電子顕微鏡により決定し得る。
【0094】
前記のごとく、いくつかの具体例において、アノードである電極は本明細書に記載された保護層を含む。いくつかの具体例において、アノード(例えば、本明細書に記載された保護層を含むアノード、本明細書に記載されたもの以外の保護層を含むアノード、保護層を欠くアノード)は、本明細書に記載された保護層を含むカソードおよび/または、本明細書に記載された1つ以上の種(例えば、添加剤および/またはチオール基を含む分子、アルケン基(例えば、ビニル基)を含む添加剤、本明細書に記載された保護層を形成するために反応するように構成された1つ以上の種)を含む電解質と組み合わせた電気化学電池において使用される。いくつかの具体例において、アノードは、アルカリ金属を含む電気活性材料を含む。アルカリ金属は、リチウム(例えば、リチウム金属)、例えば、リチウム箔、電導性基材上に堆積したリチウム、およびリチウム合金(例えば、リチウム-アルミニウム合金およびリチウム-スズ合金)であり得る。リチウムは、所望により分離された、1つのフィルム、またはいくつかのフィルムとして含有することができる。適当なリチウム合金は、リチウムならびに、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素(シリコン)、インジウムおよび/またはスズの合金を含むことができる。
【0095】
いくつかの具体例において、電気活性材料は、少なくとも50重量%のリチウムを含む。いくつかの場合において、電気活性材料は、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%または少なくとも99重量%のリチウムを含む。
【0096】
いくつかの具体例において、電極は、リチウムイオンが放電中に遊離され、リチウムイオンが充電中に統合される(例えば、インターカレートされた(intercalate))電気活性材料を含む。いくつかの具体例において、電気活性材料は、リチウムインターカレーション化合物(例えば、格子部位および/または間隙部位にリチウムイオンを可逆的に挿入することができる化合物)である。いくつかの具体例において、電気活性材料は炭素を含む。いくつかの場合において、電気活性材料は、黒鉛酸材料(例えば、黒鉛)であるかまたはそれを含む。黒鉛酸材料は、一般的にグラフェンの複数の層(例えば、六方格子に配置された炭素原子を含む層)を含む材料をいう。共有結合はいくつかの場合に1枚以上のシート間で存在し得るが、隣接したグラフェン層はファンデルワールス力を介して相互に典型的に引きつけられる。いくつかの場合において、電極のカーボンを含む材料は、コークス(例えば、石油コークス)であるか、またはそれを含む。いくつかの具体例において、電気活性材料は、シリコン、リチウムおよび/またはその組合せのいずれかの合金を含む。いくつかの具体例において、電気活性材料は、チタン酸リチウム(LiTi12、「LTO」ともいう)、スズ-コバルト酸化物またはそのいずれかの組合せを含む。
【0097】
いくつかの具体例において、電気活性材料の表面(例えば、電解質と最初に接触した表面、保護層が配置された表面)は不動態化され得る。理論によって拘束されることなく、不動態化される電気活性材料表面は、電気活性材料のバルクに存在する材料より余り反応性(例えば、電解質と)ではない層を形成するために化学反応を受けた表面である。電気活性材料表面を不動態化する1つの方法は、COおよび/またはSO-誘導層を形成するためのCOおよび/またはSOを含むプラズマに電気活性材料を曝露することである。いくつかの創造的な方法および物品は、COおよび/またはSOにそれを曝露することにより電気活性材料不動態化すること、またはCOおよび/またはSOへの曝露によって不動態化された表面を有する電気活性材料を含み得る。かかる曝露は、電気活性材料上で多孔性の不動態化層(例えば、CO-またはSOを誘導する層)を形成し得る。
【0098】
前記のごとく、いくつかの具体例において、カソードである電極は、本明細書に記載された保護層を含む。いくつかの具体例において、カソード(例えば、本明細書に記載された保護層を含むカソード、本明細書に記載されたもの以外の保護層を含むカソード、保護層を欠くカソード)は、本明細書に記載された保護層を含むアノード、および/または本明細書に記載された1つ以上の種(例えば、チオール基を含む添加剤および/または分子、アルケン基(例えば、ビニル基)を含む添加剤、本明細書に記載された保護層を形成するために反応するように構成された1つ以上の種)を含む電解質と組み合わせて、電気化学電池において使用される。カソードが本明細書に記載された保護層を含む場合、保護層は、カソード中のある材料と都合よく相互作用し得る。例えば、保護層は、カソードからのいくつかの金属(例えば、以下の金属を含むカソードからのニッケル、マンガン、鉄および/またはコバルトのごとき遷移金属)の損失を低下し得る。保護層中(例えば、ポリマー中、チオール基中、ジスルフィド基中)の硫黄は、その還元および/または損失を低下させる方法で金属と結合し得る。電気化学電池サイクル中に、電気化学的アニーリングが生じかねないが、これはカソード上の保護層のオーダリング(または順序、または秩序:ordering)を改善し得る。また、結合した保護層は、電極に対する電解質中の酸化種の拡散を有利に遅らせて、それにより、電極での酸化を低下し得る。もう一つの例として、保護層は、硫黄含有カソードからの硫黄の欠乏(または枯渇:depletion)を低下し得る。これは、保護層が、硫黄富化ポリマーを含むポリマー(例えば、チオール基、ジスルフィド基および/または全体として硫黄富化であるチオール基を含む添加剤の反応生成物を含むポリマー)を含む場合、生じ得る。カソードは、リチウムインターカレーション化合物(例えば、格子部位および/または間隙部位にリチウムイオンを可逆的に挿入することができる化合物)を含む電気活性材料を含み得る。いくつかの場合において、電気活性材料は、リチウム遷移金属オキソ化合物(すなわち、リチウム遷移金属酸化物またはオキソ酸のリチウム遷移金属塩)を含む。電気活性材料は、層状酸化物(例えば、リチウム遷移金属オキソ化合物でもある層状酸化物)であり得る。層状酸化物は、一般的にラメラ構造(例えば、相互に積み重ねられた複数のシートまたは層)を有する酸化物をいう。適当な層状酸化物の非限定例は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウム酸化ニッケル(LiNiO)およびリチウム酸化マンガン(LiMnO)を含む。いくつかの具体例において、層状酸化物は、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物(LiNiMnyCo、「NMC」または「NCM」ともいう)である。いくつかのかかる具体例において、x、yおよびzの合計は1である。例えば、適当なNMC化合物の非限定例は、LiNi1/3Mn1/3Co1/3である。いくつかの具体例において、層状酸化物は、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム酸化物(LiNiCoAl、「NCA」ともいう)である。いくつかのかかる具体例において、x、yおよびzの合計は1である。例えば、適当なNCA化合物の非限定例は、LiNi0.8Co0.15Al0.05である。いくつかの具体例において、電気活性材料は、遷移金属ポリアニオン酸化物(例えば、遷移金属、酸素および/または1を超える絶対値を有する荷電を有するアニオンを含む化合物)を含む。適当な遷移金属ポリアニオン酸化物の非限定例は、リチウム・鉄リン酸塩(LiFePO、「LFP」ともいう)である。適当な遷移金属ポリアニオン酸化物のもう一つの非限定例は、リチウム・マンガン・鉄リン酸塩(LiMnFe1-xPO、「LMFP」ともいう)である。適当なLMFP化合物の非限定例は、LiMn0.8Fe0.2POである。いくつかの具体例において、電気活性材料は、スピネル(例えば、構造ABを有する化合物(式中、AはLi、Mg、Fe、Mn、Zn、Cu、Ni、TiまたはSiであることができ、BはAl、Fe、Cr、MnまたはVであることができる)を含む。適当なスピネルの非限定例は、リチウム・マンガン酸化物(LiMn、「LMO」ともいう)である。もう一つの非限定例は、リチウム・マンガン・ニッケル酸化物(LiNi2-x、「LMNO」ともいう)である。適当なLMNO化合物の非限定例は、LiNi0.5Mn1.5である。いくつかの場合において、電気活性材料がLi1.14Mn0.42Ni0.25Co0.29(「HC-MNC」)、炭酸リチウム(LiCO)、二炭化リチウム(例えば、Li、LiC、Li、Li、Li、Li、Li)、酸化バナジウム(例えば、V、V、V13)および/またはリン酸バナジウム(例えば、Li(POのごときリチウム・バナジウム・リン酸塩)またはそれらのいずれかの組合せを含む。
【0099】
いくつかの具体例において、電気活性材料は、変換化合物を含む。例えば、電気活性材料はリチウム変換材料であり得る。変換化合物を含むカソードが比較的大きな特定の容量を有し得ることが認識された。特定の理論によって拘束されることを望むことなく、比較的大きな特定の容量は、(例えば、インターカレーション化合物中の0.1~1の電子伝達(または電子移動:electron transfer)と比較した)1つの遷移金属当たり1つを超える電子伝達が起こる転換反応を介して化合物のすべての可能な酸化状態を利用することにより達成し得る。適当な変換化合物は、限定されるものではないが、遷移金属酸化物(例えば、Co)、遷移金属水素化物、遷移金属硫化物、遷移金属窒化物および遷移金属フッ化物(例えば、CuF、FeF、FeF)を含む。遷移金属は、一般的にその原子が部分的に満たされたdサブ-シェルを有する元素(例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、O、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、Sg、Bh、Hs)をいう。
【0100】
いくつかの場合において、電気活性材料が、電気活性材料の電気的性質(例えば、導電率)を変更するために1つ以上のドーパントでドープされる材料を含み得る。適当なドーパントの非限定例は、アルミニウム、ニオブ、銀およびジルコニウムを含む。
【0101】
いくつかの具体例において、電気活性材料は硫黄を含むことができる。いくつかの具体例において、カソードである電極は、電気活性硫黄含有材料を含むことができる。本明細書に用いた「電気活性硫黄含有材料」は、いずれかの形態の硫黄元素を含む電気活性材料をいい、ここに、電気化学的活性は、硫黄原子または部分(または基:moiety)の酸化または還元を含む。例として、電気活性硫黄含有材料は、硫黄元素(例えば、S)を含み得る。いくつかの具体例において、電気活性硫黄含有材料は、硫黄元素および硫黄含有ポリマーの混合物を含む。かくして、適当な電気活性硫黄含有材料は、限定されるものではないが、硫黄元素、有機または無機であり得る硫化物または多硫化物(例えば、アルカリ金属の)、および硫黄原子および炭素原子を含む有機材料(これらはポリマーか、またはポリマーでないこともできる)を含み得る。適当な有機材料は、限定されるものではないが、ヘテロ原子、電導性ポリマー材料セグメント、コンポジット、および電導性ポリマーをさらに含むものを含む。いくつかの具体例において、第2の電極(例えば、カソード)内の電気活性硫黄含有材料は、少なくとも40重量%の硫黄を含む。いくつかの場合において、電気活性硫黄含有材料は、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%または少なくとも90重量%の硫黄を含む。
【0102】
硫黄含有ポリマーの例は、Skotheimらへの米国特許第5,601,947号および第5,690,702号;Skotheimらへの米国特許第5,529,860号および第6,117,590号;Gorkovenkoらに2001年3月13日付けで発行された米国特許第6,201,100号、およびPCT公開番号第WO99/33130号に記載されたものを含む。多硫化物結合(または連鎖:linkage)を含む他の適当な電気活性硫黄含有材料は、Skotheimらへの米国特許第5,441,831号;Perichaudらへの米国特許第4,664,991号、およびNaoiらへの米国特許第5,723,230号、第5,783,330号、第5,792,575号および第5,882,819号に記載されている。電気活性硫黄含有材料の依然としてさらなる例は、例えば、Armandらへの米国特許第4,739,018号;双方がDe Jongheらへの米国特許第4,833,048号および第4,917,974号;双方がViscoらへの米国特許第5,162,175号および第5,516,598号;およびOyamaらへの米国特許第5,324,599号に記載されたジスルフィド基を含むものを含む。
【0103】
前記のごとく、本明細書に記載されたいくつかの電気化学電池は電解質を含む。電解質は1つ以上の添加剤(例えば、チオール基を含む添加剤、アルケン基(例えば、ビニル基)を含む添加剤、チオール基およびトリアジン基の双方を含む添加剤、保護層を形成するために反応するように構成された1つ以上の添加剤)、および/または有利な特性を有すると本明細書に記載された1つ以上の分子(例えば、チオール基を含む分子、アルケン基(例えば、ビニル基)を含む分子、チオール基およびトリアジン基の双方を含む分子、保護層を形成するために反応するように構成された1つ以上の分子)を含み得る。電解質は、さらなるコンポーネント、例えば、さらに非常に詳細に後記されるものを含み得る。
【0104】
いくつかの具体例において、電気化学電池は、非水性電解質である電解質を含む。適当な非水性電解質は、液体電解質、ゲルポリマー電解質および固体ポリマー電解質のごとき有機電解質を含み得る。これらの電解質は、所望により、1つ以上のイオン性電解質塩(例えば、イオン電導性を提供または高めるための)を含み得る。有用な非水性液体電解質溶媒の例は、限定されるものではないが、非水性有機溶媒、例えば、N-メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル(例えば、炭酸のエステル)、炭酸塩(例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸フルオロエチレン、炭酸ジフルオロエチレン)、スルホン、亜硫酸塩、スルフォラン、スルホンイミド(例えば、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド・リチウム塩)、脂肪族エーテル、非環状エーテル、環状エーテル、グライム、ポリエーテル、リン酸エステル(例えば、ヘキサフルオロホスファート)、シロキサン、ジオキソラン、N-アルキルピロリドン、硝酸塩含有化合物、前記の置換形態およびそれらの混合物(またはブレンド:blend)を含む。用い得る非環状エーテルの例は、限定されるものではないが、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、1,2-ジメトキシプロパンおよび1,3-ジメトキシプロパンを含む。用い得る環状エーテルの例は、限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランおよびトリオキサンを含む。用い得るポリエーテルの例は、限定されるものではないが、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ダイグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、より高グライム、ジプロピレングリコールジメチルエーテルおよびブチレングリコールエーテルを含む。用い得るスルホンの例は、限定されるものではないが、スルフォラン、3-メチルスルフォランおよび3-スルフォレンを含む。さらに、前記のもののフッ素化誘導体は、液体電解質溶媒として有用である。
【0105】
いくつかの場合において、本明細書に記載された溶媒の混合物も用い得る。例えば、いくつかの具体例において、溶媒の混合物は、1,3-ジオキソランおよびジメトキシエタン、1,3-ジオキソランおよびジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3-ジオキソランおよびトリエチレングリオールジメチルエーテル、ならびに1,3-ジオキソランおよびスルフォランよりなる群から選択される。ある具体例において、溶媒の混合物は炭酸ジメチルおよび炭酸エチレンを含む。いくつかの具体例において、溶媒の混合物は炭酸エチレンおよび炭酸エチルメチルを含む。混合物中の2つの溶媒の重量比は、いくつかの場合、5重量%:95重量%から95重量%:5重量%までの範囲にあり得る。例えば、いくつかの具体例において、電解質は、炭酸ジメチル:炭酸エチレンの50重量%:50重量%混合物を含む。ある他の具体例において、電解質は、炭酸エチレン:炭酸エチルメチルの30重量%:70重量%混合物を含む。電解質は、50重量%:50重量%以下かつ30重量%:70重量%以上である炭酸ジメチル:炭酸エチレンの比率を有する炭酸ジメチル:炭酸エチレンの混合物を含み得る。
【0106】
いくつかの具体例において、電解質は、炭酸フルオロエチレンおよび炭酸ジメチルの混合物を含み得る。炭酸フルオロエチレン-対-炭酸ジメチルの重量比は、約20重量%:80重量%または約25重量%:75重量%であり得る。炭酸ジメチルへの炭酸フルオロエチレン-対-炭酸ジメチルの重量比は、20重量%:80重量%以上かつ25重量%:75重量%以下であり得る。
【0107】
適当なゲルポリマー電解質の非限定例は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、パーフルオロ化メンブレン(NAFION樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、前記のものの誘導体、前記のもののコポリマー、前記のものの架橋およびネットワーク構造ならびに前記のものの混合物を含む。
【0108】
適当な高分子固体電解質の非限定例は、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、前記のものの誘導体、前記のもののコポリマー、前記のものの架橋およびネットワーク構造ならびに前記のものの混合物を含む。
【0109】
いくつかの具体例において、電解質は、特定の厚さを有する層の形態にある。電解質層は、例えば、少なくとも1ミクロン、少なくとも5ミクロン、少なくとも10ミクロン、少なくとも15ミクロン、少なくとも20ミクロン、少なくとも25ミクロン、少なくとも30ミクロン、少なくとも40ミクロン、少なくとも50ミクロン、少なくとも70ミクロン、少なくとも100ミクロン、少なくとも200ミクロン、少なくとも500ミクロンまたは少なくとも1mmの厚さを有し得る。いくつかの具体例において、電解質層の厚さは、1mm以下、500ミクロン以下、200ミクロン以下、100ミクロン以下、70ミクロン以下、50ミクロン以下、40ミクロン以下、30ミクロン以下、20ミクロン以下、10ミクロン以下または50ミクロン以下である。また、他の値が可能である。また、前記範囲の組合せが可能である。
【0110】
いくつかの具体例において、電解質は少なくとも1つのリチウム塩を含む。例えば、いくつかの場合において、少なくとも1つのリチウム塩は、LiSCN、LiBr、LiI、LiSOCH、LiNO、LiPF、LiBF、LiB(Ph)、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiSbF、LiAlCl、リチウム・ビス(オキサラト)ボラート、リチウム・ジフルオロ(オキサラト)ボラート、LiCFSO、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiC(C2n+1SO(式中、nは1から20までの範囲の整数である)および(C2n+1SOXLi(式中、nは、1から20までの範囲の整数であり、mは、Xが酸素または硫黄から選択される場合に1であり、mは、Xが窒素またはリンから選択される場合に2であり、mは、Xが炭素またはケイ素から選択される場合に3である)よりなる群から選択される。
【0111】
存在する場合、リチウム塩は種々の適当な濃度で電解質中に存在し得る。いくつかの具体例において、リチウム塩は、0.01M以上、0.02M以上、0.05M以上、0.1M以上、0.2M以上、0.5M以上、1M以上、2M以上または5M以上の濃度で電解質中に存在する。リチウム塩は、10M以下、5M以下、2M以下、1M以下、0.5M以下、0.2M以下、0.1M以下、0.05M以下または0.02M以下の濃度で電解質中に存在し得る。また、前記の参照された範囲の組合せは可能である(例えば、0.01M以上かつ10M以下、または0.01M以上かつ5M以下)。また、他の範囲が可能である。
【0112】
いくつかの具体例において、電解質は、有利な量でLiPFを含み得る。いくつかの具体例において、電解質は、0.01M以上、0.02M以上、0.05M以上、0.1M以上、0.2M以上、0.5M以上、1M以上または2M以上の濃度でLiPFを含む。電解質は、5M以下、2M以下、1M以下、0.5M以下、0.2M以下、0.1M以下、0.05M以下、または0.02M以下の濃度でLiPFを含み得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、0.01M以上かつ5M以下)。また、他の範囲が可能である。
【0113】
いくつかの具体例において、電解質は、オキサラト(ボラート)基(例えば、LiBOB、リチウム・ジフルオロ(オキサラト)ボラート)を有する種を含み、電気化学電池中の(オキサラト)ボラート基を有する種の全重量は、電解質の全重量に対して30重量%以下、28重量%以下、25重量%以下、22重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下または1重量%以下であり得る。ある種の具体例において、電気化学電池中の(オキサラト)ボラート基を有する種の全重量は、電解質の全重量に対して0.2重量%を超える、0.5重量%を超える、1重量%を超える、2重量%を超える、3重量%を超える、4重量%を超える、6重量%を超える、8重量%を超える、10重量%を超える、15重量%を超える、18重量%を超える、20重量%を超える、22重量%を超える、25重量%を超えるまたは28重量%を超える。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、0.2重量%および30重量%の間で、0.2重量%および20重量%の間で、0.5重量%および20重量%の間で、1重量%および8重量%の間で、1重量%および6重量%の間で、4重量%および10重量%の間で、6重量%および15重量%の間で、または8重量%および20重量%の間で)。また、他の範囲が可能である。
【0114】
いくつかの具体例において、電解質は炭酸フルオロエチレンを含み、電気化学電池中の炭酸フルオロエチレンの全重量は、電解質の全重量に対して30重量%以下、28重量%以下、25重量%以下、22重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下または1重量%以下であり得る。ある種の具体例において、電解質中の炭酸フルオロエチレンの全重量は、電解質の全重量に対して0.2重量%を超える、0.5重量%を超える、1重量%を超える、2重量%を超える、3重量%を超える、4重量%を超える、6重量%を超える、8重量%を超える、10重量%を超える、15重量%を超える、18重量%を超える、20重量%を超える、22重量%を超える、25重量%を超えるまたは28重量%を超える。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、0.2重量%および30重量%の間で、15重量%および20重量%の間で、または20重量%および25重量%の間で)。また、他の範囲が可能である。
【0115】
いくつかの具体例において、電解質は1つ以上のさらなる添加剤を含む。いくつかの具体例において、電解質は、式(II):
【0116】
【化1】
【0117】
(式中、Qは、Se、O、S、PR、NR、CR およびSiR よりなる群から選択され、各RおよびRは同一または異なることができ、所望により連結することができる。RおよびRは各々、独立して1つ以上の水素;酸素;硫黄;ハロゲン;ハロゲン化物;窒素;リン;置換または非置換の分岐もしくは非分岐の脂肪族;置換または非置換の環状;置換または非置換の分岐もしくは非分岐の非環状;置換または非置換の分岐もしくは非分岐の複素脂肪族;置換または非置換の分岐もしくは非分岐のアシル;置換または非置換のアリール;および置換または非置換のヘテロアリールを含み得る)におけるごとき構造の添加物を含む。Rは炭素-Q結合を介してQに結合し得る。例えば、Rは、CH、CHOCH、CHSCH、CHCF、CHN(CHおよび/またはCHP(CHであり得る。
【0118】
いくつかの具体例において、式(I)中のQは、Se、O、S、PR、CR およびSiR よりなる群から選択され、各RおよびRは同一または異なることができ、所望により連結することができる。RおよびRは各々、独立して1つ以上の水素;酸素;硫黄;ハロゲン;ハロゲン化物;窒素;リン;置換または非置換の分岐もしくは非分岐の脂肪族;置換または非置換の環状;置換または非置換の分岐もしくは非分岐の非環状;置換または非置換の分岐もしくは非分岐の複素脂肪族;置換または非置換の分岐もしくは非分岐のアシル;置換または非置換のアリール;および置換または非置換のヘテロアリールを含み得る。Rは炭素-Q結合を介してQに結合し得る。いくつかの具体例において、Rは、5つ未満の炭素を有するアルキル基のごときアルキル基である。いくつかの具体例において、Rは、5つ未満の炭素を有するアルキル基のごときアルキル基である。いくつかの具体例において、RおよびRの双方はアルキル基である、および/またはRおよびRの双方は5つ未満の炭素を有するアルキル基である。いくつかの具体例において、Rは、CH、CHOCH、CHSCH、CHCF、CHN(CHおよび/またはCHP(CHであり得る。
【0119】
いくつかの具体例において、式(I)中のQは、Se、O、S、NR、PR、CR およびSiR よりなる群から選択される。いくつかの具体例において、QはOまたはNRである。もう一つの具体例において、QはNRである。QはNRであって、RおよびRの双方は、5つ未満の炭素を有するアルキル基のごときアルキル基であり得る。いくつかの具体例において、QはOである。Qは、Oであることもでき、Rは、5つ未満の炭素を有するアルキル基のごときアルキル基であり得る。特別の具体例において、Qは硫黄である。いくつかの具体例において、電解質は、Qが酸素であるような式(I)におけるごとき構造を含む添加剤を含む。いくつかの具体例において、電解質は、QがNRであるような式(I)におけるごとき構造を含むジチオカルバマート塩である添加剤を含む。典型的な具体例において、電解質は、Qが酸素であって、RがCである式(I)におけるごとき構造を含む添加剤を含む。もう一つの典型的な具体例において、電解質は、Qが硫黄であって、RがCである式(I)におけるごとき構造を含む添加剤を含む。さらにもう一つの典型的な具体例において、電解質は、QがNRであって、RおよびRは各々Cである式(I)におけるごとき構造を含む添加剤を含む。第3の典型的な具体例において、電解質は、QがOであって、Rがtert-ブチル基である式(II)におけるごとき構造を含む添加剤を含む。
【0120】
いくつかの具体例において、電解質は、tert-ブチルキサンタートアニオンである添加剤を含む、および/またはトリアゾール-ジチオカルバマートアニオンである添加剤を含む。
【0121】
いくつかの具体例において、式(I)におけるごとき構造を含む添加剤を含む電解質は、さらにカチオンを含む。いくつかの具体例において、カチオンは、Li、Na、K、Cs、Rb、Ca+2、Mg+2、置換または非置換のアンモニウム、およびグアニジニウムまたはイミダゾリウムのごとき有機カチオンよりなる群から選択される。いくつかの具体例において、電解質はポリアニオン性添加剤を含む。
【0122】
いくつかの具体例において、電解質は、リチウムキサンタート、カリウムキサンタート、リチウムエチルキサンタート、カリウムエチルキサンタート、リチウムイソブチルキサンタート、カリウムイソブチルキサンタート、リチウムtert-ブチルキサンタート、カリウムtert-ブチルキサンタート、リチウムジチオカルバマート、カリウムジチオカルバマート、リチウムジエチルジチオカルバマートおよびカリウムジエチルジチオカルバマートの1つ以上を含む添加剤を含む。
【0123】
いくつかの具体例において、電解質は、式(I)におけるごとき構造を含む添加剤を含み、Rはポリマーの繰返し単位であり、Qは酸素であって、添加剤はキサンタート官能基を含むポリマーである。キサンタート官能基を含む適当なポリマーは、キサンタート官能基を有する1つ以上のモノマーを含み得る。いくつかの具体例において、キサンタート官能基を含むポリマーは、2つ以上のモノマー(その少なくとも1つはキサンタート官能基を含む)を含むコポリマーであり得る。
【0124】
いくつかの具体例において、電解質は、式(II):
【0125】
【化2】
【0126】
(式中、各RおよびRは、同一または異なることができ、所望により連結することができる。RおよびRは各々、独立して1つ以上の水素;酸素;硫黄;ハロゲン;ハロゲン化物;窒素;リン;置換または非置換の分岐もしくは非分岐の脂肪族;置換または非置換の環状;置換または非置換の分岐もしくは非分岐の非環状;置換または非置換の分岐もしくは非分岐の複素脂肪族;置換または非置換の分岐もしくは非分岐のアシル;置換または非置換のアリール;および置換または非置換のヘテロアリールを含み得る)におけるごとき構造の添加物を含む。Rおよび/またはRは、炭素-窒素結合を介して窒素原子に結合し得る。例えば、RおよびRは各々、独立してCH、CHOCH、CHSCH、CHCF、CHN(CHおよび/またはCHP(CHであり得る。
【0127】
いくつかの具体例において、式(II)におけるごとき構造を含む添加剤を含む電解質は、さらにカチオンを含む。いくつかの具体例において、カチオンは、Li、Na、K、Cs、Rb、Ca+2、Mg+2、置換または非置換のアンモニウム、およびグアニジニウムまたはイミダゾリウムのごとき有機カチオンよりなる群から選択される。いくつかの場合において、電解質が、ポリアニオン性である添加剤を含む。
【0128】
いくつかの具体例において、電解質は、リチウムカルバマートおよび/またはカリウムカルバマートを含む添加剤(複数)を含む。
【0129】
いくつかの具体例において、電解質は、式(II)におけるごとき構造を有する添加剤を含み、RおよびRの少なくとも1つはポリマーの繰返し単位であることもでき、添加剤はポリカルバマートであり得る。適当なポリカルバマートは、カルバマート官能基を有する1つ以上のモノマーを含み得る。いくつかの具体例において、ポリカルバマートは、2つ以上のモノマー(その少なくとも1つはカルバマート官能基を含む)を含むコポリマーであり得る。
【0130】
いくつかの具体例において、電解質は、式(III):
【0131】
【化3】
【0132】
(式中、各Qは独立して、Se、O、S、PR、NR、CR およびSiR よりなる群から選択され、各RおよびRは、同一または異なることができ、所望により連結することができる。Rおよび/またはRは各々、独立して1つ以上の水素;酸素;硫黄;ハロゲン;ハロゲン化物;窒素;リン;置換または非置換の分岐もしくは非分岐の脂肪族;置換または非置換の環状;置換または非置換の分岐もしくは非分岐の非環状;置換または非置換の分岐もしくは非分岐の複素脂肪族;置換または非置換の分岐もしくは非分岐のアシル;置換または非置換のアリール;および置換または非置換のヘテロアリールを含み得る)におけるごとき構造を含む。Rは炭素-Q結合を介してQに結合し得る。例えば、Rは、CH、CHOCH、CHSCH、CHCF、CHN(CHおよび/またはCHP(CHであり得る。いくつかの具体例において、各Qの出現は独立して、Se、O、S、NR、PR、CR およびSiR よりなる群から選択される。
【0133】
いくつかの具体例において、式(III)におけるごとき構造を有する添加剤について、各Qは、同一または異なることもでき、酸素、硫黄およびNRよりなる群から選択し得る。特別の具体例において、各Qは同じであり、硫黄である。もう一つの具体例において、各Qは同じであり、NRである。いくつかの具体例において、各Qは同じであり、酸素である。
【0134】
典型的な具体例において、電解質は、各Qが同じであり酸素であって、RがCである式(III)におけるごとき構造を有する添加剤を含む。もう一つの典型的な具体例において、電解質は、各Qが同じであり硫黄であって、RがCである式(III)におけるごとき構造を有する添加剤を含む。さらにもう一つの典型的な具体例において、電解質は、各Qが同じであり、NRであり、ここに、RおよびRは各々Cである式(III)におけるごとき構造を有する添加剤を含む。
【0135】
いくつかの具体例において、式(III)におけるごとき構造を有する添加剤について、nは、(式(III)の構造がジスルフィド架橋を含むように)1である。ある種の具体例において、nは、(式(III)の構造が多硫化物を含むように)2~6である。いくつかの場合において、nは、1、2、3、4、5、6またはその組合せ(例えば、1~3、2~4、3~5、4~6、1~4、または1~6)である。
【0136】
適当な添加剤のさらなる非限定例は、ビニル基(例えば、炭酸ビニレン)およびスルトンを含む種を含む。いくつかの具体例において、電解質は、プロプ-1-エン-1,3-スルトンのごときビニル基を含むスルトンである添加剤を含む。
【0137】
電解質が添加剤を含む場合、それは種々の適当な量においてそのようにし得る。いくつかの具体例において、1つ以上の添加剤は、電解質の0.5重量%以上、0.75重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、2重量%以上、2.5重量%以上、3重量%、または3.5重量%以上を構成する。いくつかの具体例において、1つ以上の添加剤は、電解質の4重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下または0.75重量%以下を構成する。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、0.5重量%以上かつ4重量%以下)。また、他の範囲が可能である。いくつかの添加剤が、前記に挙げられた範囲の1つ以上において電解質中に存在することもでき(例えば、電解質は、前記された範囲の1つ以上において炭酸ビニレンを含み得る)、いくつかの電解質が、前記に挙げられた範囲の1つ以上においてすべての添加剤の総量を含み得る(例えば、電解質は、式(I)におけるごとき構造を有する添加剤、および式(II)におけるごとき構造を有する添加剤の双方を含むこともでき、双方の添加剤の総量は、前記に挙げられた範囲の1つ以上において一緒に存在し得る)ことが理解されるべきである。
【0138】
いくつかの具体例において、1つ以上の電解質コンポーネントの重量%は、既知量の種々のコンポーネントを用いて、電気化学電池の第1の使用または第1の放電に先立って測定される。他の具体例において、重量%は電池のサイクル寿命中の時点で測定される。いくつかのかかる具体例において、電気化学電池のサイクルは停止することもでき、電解質中の関連するコンポーネントの重量%は、例えば、ガスクロマトグラフィー-質量分析を用いて決定し得る。また、他の方法、例えば、NMR、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)および元素分析を用いることができる。
【0139】
いくつかの具体例において、電解質は、組合せにおいて特に有益であるいくつかの種を一緒に含み得る。例えば、いくつかの具体例において、電解質は炭酸フルオロエチレン、炭酸ジメチルおよびLiPFを含む。炭酸フルオロエチレン-対-炭酸ジメチルの重量比は、20重量%:80重量%および25重量%:75重量%の間であることもでき、電解質中のLiPFの濃度は、約1M(例えば、0.05Mおよび2Mの間で)であり得る。電解質は、リチウムビス(オキサラト)ボラート(例えば、電解質中の0.1重量%および6重量%の間、0.5重量%および6重量%の間、または1重量%および6重量%の間の濃度で)、および/またはリチウムトリス(オキサラト)ホスフェート(例えば、電解質中の1重量%および6重量%の間の濃度で)をさらに含む。
【0140】
本明細書に記載のごとく、いくつかの具体例において、電気化学電池はセパレーターを含む。セパレーターは、一般的にポリマー材料(例えば、電解質に対する曝露に際して膨潤するか膨潤しないポリマー材料)を含む。いくつかの具体例において、セパレーターは、電解質および電極の間(例えば、電解質および第1の電極の間、電解質および第2の電極の間、電解質およびアノードの間、または電解質およびカゾードの間)に位置する。
【0141】
セパレーターは、2つの電極間(例えば、アノードおよびカソードの間、第1の電極および第2の電極の間)の電気化学電池の短絡を生じ得る物理的接触を抑制する(例えば、防止する)ように構成することができる。セパレーターは、実質的に電子的に非電導性であるように構成することができ、これはセパレーターが電気化学電池の短絡を引き起こす程度を抑制することができる。ある種の具体例において、セパレーターのすべてまたは一部分は、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも1010、少なくとも1015、または少なくとも1020オーム-メートルのバルク電子抵抗率を有する材料から形成することができる。バルク電子抵抗率は、室温(例えば、25℃)で測定し得る。
【0142】
いくつかの具体例において、セパレーターはイオン電導性であることができるが、一方、他の具体例において、セパレーターは実質的にイオン的に非電導性であり得る。いくつかの具体例において、セパレーターの平均イオン電導性は、少なくとも10-7S/cm、少なくとも10-6S/cm、少なくとも10-5S/cm、少なくとも10-4S/cm、少なくとも10-2S/cmまたは少なくとも10-1S/cmである。ある種の具体例において、セパレーターの平均イオン電導性は、1S/cm以下、10-1S/cm以下、10-2S/cm以下、10-3S/cm以下、10-4S/cm以下、10-5S/cm以下、10-6S/cm以下、10-7S/cm以下または10-8S/cm以下であり得る。さらに、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、少なくとも10-8S/cmで10-1S/cm以下の平均イオン電導性)。また、他の値のイオン電導性が可能である。
【0143】
セパレーターの平均イオン電導性は、圧力を増加させるとき、セパレーターの平均抵抗率が変化しないまで、一連の圧力増加でセパレーターの平均抵抗率を測定するために導電率ブリッジ(すなわち、インピーダンス計測回路)を使用することにより決定することができる。この値は、セパレーターの平均抵抗率であると考えられ、その逆数はセパレーターの平均導電率であると考えられる。導電率ブリッジは1kHzで操作し得る。圧力は、少なくとも3トン/cmのセパレーターに圧力を適用することができる、セパレーターの対向面に配置された2つの銅製円筒によって500kg/cmの増加量でセパレーターに適用し得る。平均イオン電導性は、室温(例えば、25℃)で測定し得る。
【0144】
いくつかの具体例において、セパレーターは固体であることができる。セパレーターは、電解質溶媒がそれを通過することを可能にするように、十分に多孔性であり得る。いくつかの具体例において、セパレーターは、セパレーターの細孔を通過するまたは細孔に存する溶媒を除いて、溶媒(例えば、それは、そのバルクの全体にわたって溶媒を含むゲルとは異なり得る)を実質的に含まない。他の具体例において、セパレーターは、ゲルの形態であり得る。
【0145】
セパレーターは、種々の材料を含むことができる。セパレーターは、1つ以上のポリマー(例えば、それは高分子であり得る、それは1つ以上のポリマーから形成し得る)を含み得る、および/または無機材料(例えば、それは無機であり得る、それは1つ以上の無機材料から形成し得る)を含み得る。
【0146】
適当なポリマーのセパレーター材料の例は、限定されるものではないが、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリ(ブテン-1)、ポリ(n-ペンテン-2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン;ポリアミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI));ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレン・アジプアミド(ナイロン66));ポリイミド(例えば、ポリイミド、ポリニトリルおよびポリ(ピロメリットイミド-1,4-ジフェニルエーテル)(Kapton)(NOMEX)(KEVLAR));ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK);ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、およびポリ(イソヘキシルシアノアクリレート);ポリアセタール;ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシ酪酸);ポリエーテル(ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO));ビニリデンポリマー(例えば、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリ(塩化ビニリデン)およびポリ(フッ化ビニリデン));ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ-1,3-フェニレンイミノイソフタロイル)およびポリ(イミノ-1,4-フェニレンイミノテレフタロイル));ポリヘテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT));多複素環状化合物(例えば、ポリピロール);ポリウレタン;フェノール系ポリマー(例えば、フェノール-ホルムアルデヒド);ポリアルキン(例えば、ポリアセチレン);ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエン、シスまたはトランス-1,4-ポリブタジエン);ポリシロキサン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS));無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホナート、ポリシラン、ポリシラザン)を含む。いくつかの具体例において、ポリマーは、(ポリ(n-ペンテン-2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリイミド(例えば、ポリニトリルおよびポリ(ピロメリットイミド-1,4-ジフェニルエーテル)(Kapton)(NOMEX)(KEVLAR)、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)およびそれらの組合せから選択し得る。
【0147】
適当な無機セパレーター材料の非限定例は、ガラス繊維濾紙を含む。
【0148】
存在する場合、セパレーターは多孔性であり得る。いくつかの具体例において、セパレーターの細孔サイズは、5ミクロン以下、3ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、300nm以下、100nm以下または50nm以下である。いくつかの具体例において、セパレーターの細孔サイズは、50nm以上、100nm以上、300nm以上、500nm以上、1ミクロンまたは3ミクロン以上である。また、他の値が可能である。また、前記の範囲の組合せが可能である(例えば、5ミクロン以下かつ50nm以上、300nm以下かつ100nm以上、1ミクロン以下かつ300nm以上、または5ミクロン以下かつ500nm以上)。ある種の具体例において、セパレーターは実質的に非多孔性である。換言すれば、セパレーターは、細孔を欠くこともでき、最小数の細孔を含むこともでき、および/またはその大部分において細孔を含まない。
【0149】
いくつかの具体例において、本明細書に記載された電気化学電池は、少なくとも1つの集電体を含む。集電体の材料は、いくつかの場合において、金属(例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、不動態化金属および他の適当な金属)、金属化ポリマー、電気電導性ポリマー、その中に分散した電導性粒子を含むポリマー、および他の適当な材料から選択し得る。集電体は、電極(例えば、アノード、カソード、第1の電極、第2の電極)上に配置し得る。ある種の具体例において、集電体は、選択された材料に、物理蒸着法、化学蒸着法、電気化学的堆積、スパッタリング、ドクター・ブレーディング、フラッシュ蒸発、または他の適当な堆積技術を用いて、電極(および/またはその層のごときコンポーネント)上に堆積される。いくつかの場合において、集電体が別々に形成され、電極(および/またはその層のごときコンポーネント)に結合し得る。しかしながら、いくつかの具体例において、電極から離れた(例えば、アノードから離れた、カソードから離れた)集電体が、必要でないか、または存在しないことが認識されるべきである。これは、電極自体(および/またはその中の電気活性材料)が電気電導性である場合、真実であり得る。
【0150】
ある種の具体例によれば、充電および/または放電中に異方性力を本明細書に記載された電気化学電池に適用することは、有利であることができる。ある種の具体例において、本明細書に記載された電気化学電池および/または電極は、それらの構造的完全性を維持しつつ、適用された異方性力(例えば、電池内の電極の形態学を高めるために適用された力)に耐える(または抵抗する;withstand)ように構成することができる。
【0151】
ある種の具体例において、本明細書に記載された電極のいずれも、電池の充電中および/または放電中の少なくとも1つの期間、電気化学電池内の電極(例えば、リチウム金属および/またはリチウム合金を含むアノード)の活性表面に垂直なコンポーネントで異方性力を電池に適用するように構築され配置された電気化学電池の一部分であり得る。ある種の具体例において、本明細書に記載された保護層のいずれも、電気化学電池内の電極(例えば、リチウム金属および/またはリチウム合金を含むアノード)の活性表面に垂直なコンポーネントで異方性力を電池に適用するように構築され配置された電気化学電池の一部分であることができる。1つの組の具体例において、適用された異方性力は、電極(例えば、リチウム金属および/またはリチウム合金アノードのごときアノード)の形態学を高めるために選択することができる。
【0152】
「異方性力」は、当該技術分野のその通常の意味で与えられ、全方向に等しくない力を意味する。全方向に等しい力は、例えば、物体の内部ガス圧力のごとき流体または材料内の流体または材料の内圧である。全方向に等しくない力の例は、重力によってテーブル上の物体によって適用されたテーブル上の力のごとき特別の方向に指向された力を含む。異方性力のもう一つの例は、物体の周囲のまわりに配置されたバンドによって適用された力を含む。例えば、ラバーバンドまたはターンバックルは、それが包まれる物体の周囲のまわりに力を適用することができる。しかしながら、バンドは、バンドに接しない物体の外表面のいずれかの部分上に直接的な力を適用し得えない。加えて、バンドが第1の軸に沿って第2の軸より大きな範囲まで延長する場合、バンドは、第2の軸に平行に適用された力よりも第1の軸に平行な方向において、より大きな力を適用することができる。
【0153】
ある種のかかる場合において、異方性力は、電気化学電池内の電極の活性表面に垂直なコンポーネントを含む。本明細書に用いた用語「活性表面」は、電気化学反応が起こり得る電極の表面を記載するために用いられる。例えば、図5を参照すると、電気化学電池9210は、活性表面9218を含むことができる第2の電極9212および/または活性表面9220を含むことができる第1の電極9216を含むことができる。電気化学電池9210は、さらに電解質9214を含む。図5において、異方性力9250のコンポーネント9251は、第2の電極の活性表面および第1の電極の活性表面の双方に垂直である。いくつかの具体例において、異方性力は電解質に接する保護層の表面に垂直なコンポーネントを含む。
【0154】
表面に対して「垂直なコンポーネント」を有する力は、当業者によって理解されるであろうその通常の意味で与えられ、例えば、表面に実質的に垂直な方向においてそれ自体を少なくとも部分的に発揮する力を含む。例えば、テーブル上に置き、重力によってのみ影響される物体を有する水平のテーブルの場合、物体はテーブルの表面に対して本質的に完全に垂直な力を発揮する。また、物体が水平のテーブル表面を横切って側方に促されるならば、その時、それは、水平表面に完全に垂直でないが、テーブル表面に垂直なコンポーネントを含むテーブル上の力を発揮する。特に、この文書の記載内で適用されるように、当業者は、これらの用語の他の例を理解することができる。曲面(例えば、凹面または凸面)の場合、電極の活性表面に垂直な異方性力のコンポーネントが、異方性力が適用される点で曲面に接する平面に垂直なコンポーネントに対応し得る。異方性力は、いくつかの場合、アノードの活性表面および/または保護層の表面上に所望により分配された、1つ以上の所定の位置で適用し得る。いくつかの具体例において、異方性力は、第1の電極(例えば、アノードの)の活性表面にわたり一様に、および/または電解質に接する保護層の表面にわたり一様に適用される。
【0155】
本明細書に記載された電気化学電池特性および/または効率メトリック(metrics)のいずれも、単独でまたは相互に組み合わせて達成し得るが、異方性力が充電および/または放電中に(例えば、電池の充電および/または放電中に)電気化学電池に適用される。ある種の具体例において、(例えば、電池の充電および/または放電中の少なくとも1つの期間に)電極および/または電気化学電池に適用された異方性力は、電極(例えば、電気化学電池内のリチウム金属のごときアノードおよび/またはリチウム合金アノード)の活性表面に垂直なコンポーネントを含むことができる。ある種の具体例において、電極の活性表面に垂直な異方性力のコンポーネントは、1kg/cm以上、2kg/cm以上、4kg/cm以上、6kg/cm以上、8kg/cm以上、10kg/cm以上、12kg/cm以上、14kg/cm以上、16kg/cm以上、18kg/cm以上、20kg/cm以上、22kg/cm以上、24kg/cm以上、26kg/cm以上、28kg/cm以上、30kg/cm以上、32kg/cm以上、34kg/cm以上、36kg/cm以上、38kg/cm以上、40kg/cm以上、42kg/cm以上、44kg/cm以上、46kg/cm以上または48kg/cm以上の圧力を規定する。ある種の具体例において、活性表面に垂直な異方性力のコンポーネントは、例えば、50kg/cm以下、48kg/cm以下、46kg/cm以下、44kg/cm以下、42kg/cm以下、40kg/cm以下、38kg/cm以下、36kg/cm以下、34kg/cm以下、32kg/cm以下、30kg/cm以下、28kg/cm以下、26kg/cm以下、24kg/cm以下、22kg/cm以下、20kg/cm以下、18kg/cm以下、16kg/cm以下、14kg/cm以下、12kg/cm以下、10kg/cm以下、8kg/cm以下、6kg/cm以下、4kg/cm以下または2kg/cm以下の圧力を規定する。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、1kg/cm以上かつ50kg/cm以下、1kg/cm以上かつ40kg/cm以下、1kg/cm以上かつ30kg/cm以下、1kg/cm以上かつ20kg/cm以下、または10kg/cm以上かつ20kg/cm以下)。また、他の範囲が可能である。
【0156】
本明細書に記載された充電および/または放電中に適用された異方性力は、当該技術分野において公知のいずれの方法を用いても適用し得る。いくつかの具体例において、力は圧縮バネを用いて適用し得る。力は、限定されるものではないが、特に、ベルヴィル・ワッシャー、機械ねじ(machine screws)、空気デバイスおよび/または重量を含む他の要素(格納(または封じ込め:containment)構造の内側または外側のいずれか)を用いて適用し得る。いくつかの場合において、格納構造に挿入される前、および格納構造に挿入される際に、電池は予め圧縮することもでき、それらは、電池に対する正味の力を生成するために拡張し得る。かかる力を適用するのに適当な方法は、例えば、米国特許第9,105,938号(ここに、出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす)に詳述されている。
【0157】
本明細書に記載された電気化学電池、および本明細書に記載された1つ以上のコンポーネント(例えば、本明細書に記載された電解質中に存在する1つ以上の添加剤、本明細書に記載された電解質中に存在する1つ以上の分子、本明細書に記載された保護層を含む1つ以上の電極)を組み込む電気化学電池は、関連するコンポーネントを欠く他の等価な電気化学電池に比較して、高められた効率を示し得る。改善された効率を示し得るメトリックの2つの例は、後記される。
【0158】
いくつかの具体例において、有利なコンポーネント(例えば、本明細書に記載された電解質中に存在する1つ以上の添加剤、本明細書に記載された電解質中に存在する1つ以上の分子、本明細書に記載された保護層を含む1つ以上の電極)を組み込む電気化学電池のサイクル寿命は、有利なコンポーネントを欠く他の等価な電気化学電池よりも、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、50%以上または75%以上高い。有利なコンポーネント(例えば、本明細書に記載された電解質中に存在する1つ以上の添加剤、本明細書に記載された電解質中に存在する1つ以上の分子、本明細書に記載された保護層を含む1つ以上の電極)を組み込む電気化学電池のサイクル寿命は、有利なコンポーネントを欠く他の等価な電気化学電池よりも、90%以下、75%以下、50%以下、20%以下、15%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下または6%以下であり得る。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、5%以上かつ50%以下、5%以上かつ10%以下、または15%以上かつ90%以下)。また、他の範囲が可能である。電気化学電池のサイクル寿命は、放電容量が形成サイクル後にその値の80%になるまで、電気化学電池をサイクルさせることにより決定し得る。サイクルは、C/4の速度で電気化学電池を充電し、1Cの速度で電気化学電池を放電することにより行い得る。電気化学電池がこのプロセスの間に受けるサイクル数は、電気化学電池のサイクル寿命である。
【0159】
いくつかの具体例において、有利なコンポーネント(例えば、本明細書に記載された電解質中に存在する1つ以上の添加剤、本明細書に記載された電解質中に存在する1つ以上の分子、本明細書に記載された保護層を含む1つ以上の電極)を組み込む電気化学電池のインピーダンスは、有利なコンポーネントを欠く他の等価な電気化学電池のインピーダンスが増加する割合よりも、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも7.5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%または少なくとも60%低い割合にて増加する。いくつかの具体例において、有利なコンポーネントを組み込む電気化学電池のインピーダンスは、有利なコンポーネントを欠く他の等価な電気化学電池のインピーダンスが増加する割合よりも、最大70%、最大60%、最大50%、最大40%、最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、最大7.5%または最大5%低い割合で増加する。また、前記の参照された範囲の組合せが可能である(例えば、少なくとも2%で最大70%、または少なくとも5%で最大50%)。また、他の範囲が可能である。
【0160】
電気化学電池のインピーダンスは、電気化学インピーダンス分光法(EIS)によって測定され、イオンが電気化学電池の作動中に電気化学電池を介して輸送される方向に対応する方向で測定される。電気化学電池を横切るインピーダンスは、開回路電圧に対する電気化学電池を横切る5mVの交流電圧を流し、100kHzおよび20mHzの間の周波数の関数として実数および虚数インピーダンスを測定することにより決定される。
【0161】
以下の出願をすべての目的のために、出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす:2006年4月6日付けで出願第11/400,781号として出願され、「再充電可能なリチウム/水、リチウム/空気電池」を発明の名称とする、2007年9月27日付けで公開された米国特許公開第2007/0221265号;2007年7月31日付けで出願第11/888,339号として出願され、「バッテリー中の膨潤抑制」を発明の名称とする、2009年2月5日付けで公開された米国特許公開第2009/0035646号;2010年2月2日付けで出願第12/312,674号として出願され、2013年12月31日付けで米国特許第8,617,748号として特許され、「電解質の分離」を発明の名称とする、2010年5月17日付けで公開された米国特許公開第2010/0129699号;2010年7月30日付けで出願第12/682,011号として出願され、2014年10月28日付けで米国特許第8,871,387号として特許され、「バッテリー電極用プライマー」を発明の名称とする、2010年11月18日付けで公開された米国特許公開第2010/0291442号;2008年2月8日付けで出願第12/069,335号として出願され、2012年9月11日付けで米国特許第8,264,205号として特許された、「エネルギー蓄積装置中の充電および/または放電保護のための回路」を発明の名称とする、2009年8月31日付けで公開された米国特許公開第2009/0200986号;2006年4月6日付けで出願第11/400,025号として出願され、2010年8月10日付けで米国特許第7,771,870号として特許された、「再充電可能なリチウム電池を含む水性および非水性の電気化学電池の双方の電極保護」を発明の名称とする、2007年9月27日付けで公開された米国特許公開第2007/0224502号;2007年6月22日付けで出願第11/821,576号として出願され、「リチウム合金/硫黄バッテリー」を発明の名称とする、2008年12月25日付けで公開された米国特許公開第2008/0318128号;2001年2月27日付けで出願第09/795,915号として出願され、2011年5月10日付けで米国特許第7,939,198号として特許された、「新規のコンポジットカソード、新規のコンポジットカソードを含む電気化学電池、およびその作製プロセス」を発明の名称とする、2002年5月9日付けで公開された米国特許公開第2002/0055040号;2005年4月20日付けで出願第11/111,262号として出願され、2010年3月30日付けで米国特許第7,688,075号として特許された、「リチウムサルファー充電式電池燃料計システムおよび方法」を発明の名称とする、2006年10月26日付けで公開された米国特許公開第2006/0238203号;2007年3月23日付けで出願第11/728,197号として出願され、2011年12月27日付けで米国特許出願第8,084,102号として特許された、「重合性モノマーおよび非重合性キャリヤー溶媒/塩混合物/溶液の共同フラッシュ蒸発のための方法」を発明の名称とする、2008年8月7日付けで公開された米国特許公開第2008/0187663号;2010年9月23日付けで出願第12/679,371号として出願され、「リチウム電池のための電解質添加剤および関連方法」を発明の名称とする、2011年1月13日付けで公開された米国特許公開第2011/0006738号;2010年9月23日付けで出願第12/811,576号として出願され、2015年5月19日付けで米国特許第9,034,421号として特許された、「硫黄および、炭素を含む多孔性物質を含む電極の形成方法」を発明の名称とする、2011年1月13日付けで公開された米国特許公開第2011/0008531号;2009年8月4日付けで出願第12/535,328号として出願され、2015年8月11日付けで米国特許第9,105,938号として特許された、「電気化学電池の力の適用」を発明の名称とする、2010年2月11日付けで公開された米国特許公開第2010/0035128号;2008年7月25日付けで出願第12/180,379号として出願され、「電気化学電池用アノードの保護」を発明の名称とする、2011年7月15日付けで公開された米国特許公開第2011/0165471号;2006年6月13日付けで出願第11/452,445号として出願され、2013年4月9日付けで、米国特許第8,415,054号として特許された、「電気化学電池用リチウムアノード」を発明の名称とする、2006年10月5日付けで公開された米国特許公開第2006/0222954号;2010年3月19日付けで出願第12/727,862号として出願され、「リチウム電池用カソード」を発明の名称とする、2010年9月23日付けで公開された米国特許公開第2010/0239914号;2009年5月22日付けで出願第12/471,095号として出願され、2012年1月3日付けで米国特許第8,087,309号として特許された、「制御されたガス環境下の微量分析を行なうための密封サンプルホルダーおよび方法」を発明の名称とする、2010年11月25日付けで公開された米国特許公開第2010/0294049号;2010年8月24日付けで出願第12/862,581号として出願され、「硫黄を含む多孔質構造を含む電気化学電池」を発明の名称とする、2011年3月31日付けで公開された米国特許公開第2011/00765560号;2010年8月24日付けで出願第12/862,513号として出願され、「電気化学電池用リリースシステム」を発明の名称とする、2011年3月24日付けで公開された米国特許公開第2011/0068001号;2011年8月24日付けで出願第13/216,559号として出願され、「電気化学電池用非導電材料」を発明の名称とする、2012年3月1日付けで公開された米国特許公開第2012/0048729号;2010年8月24日付けで出願第12/862,528号として出願され、「電気化学電池」を発明の名称とする、2011年7月21日付けで公開された米国特許公開第2011/0177398号;2010年8月24日付けで出願第12/862,563号として出願され、「硫黄を含む多孔質構造を含む電気化学電池」を発明の名称とする、2011年3月24日付けで公開された米国特許公開第2011/0070494号;2010年8月24日付けで出願第12/862,551号として出願され、「硫黄を含む多孔質構造を含む電気化学電池」を発明の名称とする、2011年3月24日付けで公開された米国特許公開第2011/0070491号;2010年8月24日付けで出願第12/862,576号として出願され、2015年4月14日付けで米国特許第9,005,009号として特許された、「硫黄を含む多孔質構造を含む電気化学電池」を発明の名称とする、2011年3月10日付けで公開された米国特許公開第2011/0059361号;2011年9月22日付けで出願第13/240,113号として出願され、「低電解質の電気化学電池」を発明の名称とする、2012年3月22日付けで公開された米国特許公開第2012/0070746号;2011年2月23日付けで出願第13/033,419号として出願され、「エネルギー蓄積装置用多孔質構造」を発明の名称とする、2011年8月25日付けで公開された米国特許公開第2011/0206992号;2012年6月15日付けで出願第13/524,662号として出願され、2017年1月17日付けで米国特許第9,548,492号として特許された、「電極用めっき技術」を発明の名称とする、2013年1月17日付けで公開された米国特許公開第2013/0017441号;2013年2月14日付けで出願第13/766,862号として出願され、2015年7月7日付けで米国特許第9,077,041号として特許された、「電気化学電池用電極構造」を発明の名称とする、2013年8月29日付けで公開された米国特許公開第2013/0224601号;2013年3月8日付けで出願第13/789,783号として出願され、2015年12月15日付けで米国特許第9,214,678号として特許された、「多孔質支持構造、それを含む電極および関連方法」を発明の名称とする、2013年9月26日付けで公開された米国特許公開第2013/0252103号;2012年10月4日付けで出願第13/644,933号として出願され、2015年1月20日付けで米国特許出願第8,936,870号として特許された、「電極構造およびその作製方法」を発明の名称とする、2013年4月18日付けで公開された米国特許公開第2013/0095380号;2013年11月1日付けで出願第14/069,698号として出願され、2015年4月14日付けで米国特許第9,005,311号として特許された、「電極活性表面の前処理」を発明の名称とする、2014年5月8日付けで公開された米国特許公開第2014/0123477号;2014年1月8日付けで出願第14/150,156号として出願され、2017年1月31日付けで米国特許第9,559,348号として特許された、「電気化学電池の導電率制御」を発明の名称とする、2014年7月10日付けで公開された米国特許公開第2014/0193723号;2014年3月5日付けで出願第14/197,782号として出願され、2016年11月6日付けで米国特許出願第9,490,478号として特許された、「繊維材料を含む電気化学電池」を発明の名称とする、2014年9月11日付けで公開された米国特許公開第2014/0255780号;2013年3月15日付けで出願第13/833,377号として出願され、「電極用保護構造」を発明の名称とする、2014年9月18日付けで公開された米国特許公開第2014/0272594号;2014年3月13日付けで出願第14/209,274号として出願され、「保護された電極構造および方法」を発明の名称とする、2014年9月18日付けで公開された米国特許公開第2014/0272597号;2014年1月8日付けで出願第14/150,196号として出願され、2016年12月27日付けで米国特許出願第9,531,009号として特許された、「電気化学電池における電極の不動態化」を発明の名称とする、2014年7月10日付けで公開された米国特許公開第2014/0193713号;2014年3月13日付けで出願第14/209,396号として出願され、「保護された電極構造」を発明の名称とする、2014年9月18日付けで公開された米国特許公開第2014/0272565号;2014年7月3日付けで出願第14/323,269号として出願され、「再充電可能なリチウム電池を含む電気化学電池における電極保護用セラミック/ポリマーマトリクス」を発明の名称とする、2015年1月8日付けで公開された米国特許公開第2015/0010804号;2014年8月8日付けで出願第14/455,230号として出願され、「電気化学電池における自己回復電極保護」を発明の名称とする、2015年2月12日付けで公開された米国特許公開第2015/044517号;2014年2月19日付けで出願第14/184,037号として出願され、「電解質抑制イオン伝導体を用いる電極保護」を発明の名称とする、2015年8月20日付けで公開された米国特許公開第2015/0236322号;および2015年9月9日付けで出願第14/848,659号として出願され、「リチウムイオン電気化学電池ならびに関連電極の保護層および方法」を発明の名称とする、2016年3月10日付けで公開された米国特許公開第2016/0072132号。以下の出願をすべての目的のために、出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす:2
006年4月6日付けで出願第11/400,781号として出願され、「再充電可能なリチウム/水、リチウム/空気電池」を発明の名称とする、2007年9月27日付けで公開された米国特許公開第2007/0221265号;2007年7月31日付けで出願第11/888,339号として出願され、「バッテリー中の膨潤抑制」を発明の名称とする、2009年2月5日付けで公開された米国特許公開第2009/0035646号;2010年2月2日付けで出願第12/312,674号として出願され、2013年12月31日付けで米国特許第8,617,748号として特許され、「電解質の分離」を発明の名称とする、2010年5月17日付けで公開された米国特許公開第2010/0129699号;2010年7月30日付けで出願第12/682,011号として出願され、2014年10月28日付けで米国特許第8,871,387号として特許され、「バッテリー電極用プライマー」を発明の名称とする、2010年11月18日付けで公開された米国特許公開第2010/0291442号;2008年2月8日付けで出願第12/069,335号として出願され、2012年9月11日付けで米国特許第8,264,205号として特許された、「エネルギー蓄積装置中の充電および/または放電保護のための回路」を発明の名称とする、2009年8月31日付けで公開された米国特許公開第2009/0200986号;2006年4月6日付けで出願第11/400,025号として出願され、2010年8月10日付けで米国特許第7,771,870号として特許された、「再充電可能なリチウム電池を含む水性および非水性の電気化学電池の双方の電極保護」を発明の名称とする、2007年9月27日付けで公開された米国特許公開第2007/0224502号;2007年6月22日付けで出願第11/821,576号として出願され、「リチウム合金/硫黄バッテリー」を発明の名称とする、2008年12月25日付けで公開された米国特許公開第2008/0318128号;2001年2月27日付けで出願第09/795,915号として出願され、2011年5月10日付けで米国特許第7,939,198号として特許された、「新規のコンポジットカソード、新規のコンポジットカソードを含む電気化学電池、およびその作製プロセス」を発明の名称とする、2002年5月9日付けで公開された米国特許公開第2002/0055040号;2005年4月20日付けで出願第11/111,262号として出願され、2010年3月30日付けで米国特許第7,688,075号として特許された、「リチウムサルファー充電式電池燃料計システムおよび方法」を発明の名称とする、2006年10月26日付けで公開された米国特許公開第2006/0238203号;2007年3月23日付けで出願第11/728,197号として出願され、2011年12月27日付けで米国特許出願第8,084,102号として特許された、「重合性モノマーおよび非重合性キャリヤー溶媒/塩混合物/溶液の共同フラッシュ蒸発のための方法」を発明の名称とする、2008年8月7日付けで公開された米国特許公開第2008/0187663号;2010年9月23日付けで出願第12/679,371号として出願され、「リチウム電池のための電解質添加剤および関連方法」を発明の名称とする、2011年1月13日付けで公開された米国特許公開第2011/0006738号;2010年9月23日付けで出願第12/811,576号として出願され、2015年5月19日付けで米国特許第9,034,421号として特許された、「硫黄および、炭素を含む多孔性物質を含む電極の形成方法」を発明の名称とする、2011年1月13日付けで公開された米国特許公開第2011/0008531号;2009年8月4日付けで出願第12/535,328号として出願され、2015年8月11日付けで米国特許第9,105,938号として特許された、「電気化学電池の力の適用」を発明の名称とする、2010年2月11日付けで公開された米国特許公開第2010/0035128号;2008年7月25日付けで出願第12/180,379号として出願され、「電気化学電池用アノードの保護」を発明の名称とする、2011年7月15日付けで公開された米国特許公開第2011/0165471号;2006年6月13日付けで出願第11/452,445号として出願され、2013年4月9日付けで、米国特許第8,415,054号として特許された、「電気化学電池用リチウムアノード」を発明の名称とする、2006年10月5日付けで公開された米国特許公開第2006/0222954号;2010年3月19日付けで出願第12/727,862号として出願され、「リチウム電池用カソード」を発明の名称とする、2010年9月23日付けで公開された米国特許公開第2010/0239914号;2009年5月22日付けで出願第12/471,095号として出願され、2012年1月3日付けで米国特許第8,087,309号として特許された、「制御されたガス環境下の微量分析を行なうための密封サンプルホルダーおよび方法」を発明の名称とする、2010年11月25日付けで公開された米国特許公開第2010/0294049号;2010年8月24日付けで出願第12/862,581号として出願され、「硫黄を含む多孔質構造を含む電気化学電池」を発明の名称とする、2011年3月31日付けで公開された米国特許公開第2011/00765560号;2010年8月24日付けで出願第12/862,513号として出願され、「電気化学電池用リリースシステム」を発明の名称とする、2011年3月24日付けで公開された米国特許公開第2011/0068001号;2011年8月24日付けで出願第13/216,559号として出願され、「電気化学電池用非導電材料」を発明の名称とする、2012年3月1日付けで公開された米国特許公開第2012/0048729号;2010年8月24日付けで出願第12/862,528号として出願され、「電気化学電池」を発明の名称とする、2011年7月21日付けで公開された米国特許公開第2011/0177398号;2010年8月24日付けで出願第12/862,563号として出願され、「硫黄を含む多孔質構造を含む電気化学電池」を発明の名称とする、2011年3月24日付けで公開された米国特許公開第2011/0070494号;2010年8月24日付けで出願第12/862,551号として出願され、「硫黄を含む多孔質構造を含む電気化学電池」を発明の名称とする、2011年3月24日付けで公開された米国特許公開第2011/0070491号;2010年8月24日付けで出願第12/862,576号として出願され、2015年4月14日付けで米国特許第9,005,009号として特許された、「硫黄を含む多孔質構造を含む電気化学電池」を発明の名称とする、2011年3月10日付けで公開された米国特許公開第2011/0059361号;2011年9月22日付けで出願第13/240,113号として出願され、「低電解質の電気化学電池」を発明の名称とする、2012年3月22日付けで公開された米国特許公開第2012/0070746号;2011年2月23日付けで出願第13/033,419号として出願され、「エネルギー蓄積装置用多孔質構造」を発明の名称とする、2011年8月25日付けで公開された米国特許公開第2011/0206992号;2012年6月15日付けで出願第13/524,662号として出願され、2017年1月17日付けで米国特許第9,548,492号として特許された、「電極用めっき技術」を発明の名称とする、2013年1月17日付けで公開された米国特許公開第2013/0017441号;2013年2月14日付けで出願第13/766,862号として出願され、2015年7月7日付けで米国特許第9,077,041号として特許された、「電気化学電池用電極構造」を発明の名称とする、2013年8月29日付けで公開された米国特許公開第2013/0224601号;2013年3月8日付けで出願第13/789,783号として出願され、2015年12月15日付けで米国特許第9,214,678号として特許された、「多孔質支持構造、それを含む電極および関連方法」を発明の名称とする、2013年9月26日付けで公開された米国特許公開第2013/0252103号;2012年10月4日付けで出願第13/644,933号として出願され、2015年1月20日付けで米国特許出願第8,936,870号として特許された、「電極構造およびその作製方法」を発明の名称とする、2013年4月18日付けで公開された米国特許公開第2013/0095380号;2013年11月1日付けで出願第14/069,698号として出願され、2015年4月14日付けで米国特許第9,005,311号として特許された、「電極活性表面の前処理」を発明の名称とする、2014年5月8日付けで公開された米国特許公開第2014/0123477号;2014年1月8日付けで出願第14/150,156号として出願され、2017年1月31日付けで米国特許第9,559,348号として特許された、「電気化学電池の導電率制御」を発明の名称とする、2014年7月10日付けで公開された米国特許公開第2014/0193723号;2014年3月5日付けで出願第14/197,782号として出願され、2016年11月6日付けで米国特許出願第9,490,478号として特許された、「繊維材料を含む電気化学電池」を発明の名称とする、2014年9月11日付けで公開された米国特許公開第2014/0255780号;2013年3月15日付けで出願第13/833,377号として出願され、「電極用保護構造」を発明の名称とする、2014年9月18日付けで公開された米国特許公開第2014/0272594号;2014年3月13日付けで出願第14/209,274号として出願され、「保護された電極構造および方法」を発明の名称とする、2014年9月18日付けで公開された米国特許公開第2014/0272597号;2014年1月8日付けで出願第14/150,196号として出願され、2016年12月27日付けで米国特許出願第9,531,009号として特許された、「電気化学電池における電極の不動態化」を発明の名称とする、2014年7月10日付けで公開された米国特許公開第2014/0193713号;2014年3月13日付けで出願第14/209,396号として出願され、「保護された電極構造」を発明の名称とする、2014年9月18日付けで公開された米国特許公開第2014/0272565号;2014年7月3日付けで出願第14/323,269号として出願され、「再充電可能なリチウム電池を含む電気化学電池における電極保護用セラミック/ポリマーマトリクス」を発明の名称とする、2015年1月8日付けで公開された米国特許公開第2015/0010804号;2014年8月8日付けで出願第14/455,230号として出願され、「電気化学電池における自己回復電極保護」を発明の名称とする、2015年2月12日付けで公開された米国特許公開第2015/044517号;2014年2月19日付けで出願第14/184,037号として出願され、「電解質抑制イオン伝導体を用いる電極保護」を発明の名称とする、2015年8月20日付けで公開された米国特許公開第2015/0236322号;および2015年9月9日付けで出願第14/848,659号として出願され、「リチウムイオン電気化学電池ならびに関連電極の保護層および方法」を発明の名称とする、2016年3月10日付けで公開された米国特許公開第2016/0072132号。
【0162】
便宜上、本明細書、実施例および添付された特許請求の範囲に使用された用語のいくつかの用語は、ここにリストされる。特定の官能基および化学用語の定義はより詳細に後記される。本発明の目的のために、化学元素は、元素周期表、CASバージョン、化学および物理学のハンドブック、第75版、内表紙に従って識別され、特定の官能基は、一般的に本明細書に記載のごとく定義される。加えて、有機化学の一般的な原理、ならびに特定の官能性部分および反応性は、有機化学、トマス・ソレル(Thomas Sorrell)、大学科学ブック、サウサリト(Sausalito):1999に記載されている。
【0163】
本明細書に用いた用語「脂肪族」は、所望により1つ以上の官能基で置換された、飽和および不飽和の両方の、直鎖(すなわち、非分岐)、分岐、非環状および環状(すなわち、炭素環状)の炭化水素を含む。当業者に明らかなように、「脂肪族」は、限定されるものではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル部分を含むことが本明細書において意図される。かくして、本明細書で用いた用語「アルキル」は、直鎖、分岐、および環状のアルキル基を含む。類似の慣用語は、「アルケニル」、「アルキニル」等の他の上位概念の用語に適用される。さらに、本明細書に用いた用語「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」等は、置換および非置換の双方の基を包含する。いくつかの具体例において、本明細書に用いた「脂肪族」を用いて、1~20個の炭素原子を有する脂肪族基(環状、非環状、置換、非置換、分岐または非分岐の)を示す。脂肪族基置換基は、限定されるものではないが、安定部分の形成を生じる本明細書に記載された置換基のいずれか(例えば、脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ環状、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシ等を含み、それらの各々はさらに置換し得るか、置換されないこともできる)を含む。
【0164】
用語「アルキル」は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環状)基、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基を含めた飽和脂肪族基の基をいう。アルキル基は、より十分に後記されるごとく、所望により置換し得る。アルキル基の例は、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を含む。「ヘテロアルキル」基は、残りの原子が炭素原子である、少なくとも1つの原子がヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素、リン等)であるアルキル基である。ヘテロアルキル基の例は、限定されるものではないが、アルコキシ、ポリ(エチレングリコール)-、アルキル置換アミノ、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、モルホリニル等を含む。
【0165】
用語「アルケニル」および「アルキニル」は、前記のごときアルキル基と類似するが、各々、少なくとも1つの二重または三重結合を含む不飽和脂肪族基をいう。「ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」は、1つ以上の原子がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄等)である、本明細書に記載のごときアルケニルおよびアルキニル基をいう。
【0166】
用語「アリール」は、所望により置換された、単環(例えば、フェニル)、多環(例えば、ビフェニル)、またはその少なくとも1つが芳香族である複数融合環(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリルまたはフェナントリル)をいう。「ヘテロアリール」基は、残りの原子が炭素原子である、芳香族環の少なくとも1つの環原子がヘテロ原子であるアリール基である。ヘテロアリール基の例は、所望により置換された、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N低級アルキルピロリル、ピリジル Nオキシド、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、インドリル等を含む。
【0167】
用語「アミン」および「アミノ」は、非置換および置換の双方のアミン、例えば、一般式:N(R’)(R’’)(R’’’)(式中、R’、R’’およびR’’’は各々独立して、原子価の規則(rules of valence)により許される基を表す)により表わすことができる部分をいう。
【0168】
用語「アシル」、「カルボキシル基」または「カルボニル基」は、当該技術分野において認識され、一般式:
【0169】
【化4】
【0170】
(式中、Wは、H、OH、O-アルキル、O-アルケニルまたはその塩である)。
WがOアルキルである場合、式は「エステル」を表わす)によって表わすことができるような部分を含むことができる。WがO-アルキルである場合、その式は「エステル」を表わす。WがOHである場合、その式は「カルボン酸」を表わす。一般的に、前記の式の酸素原子が硫黄に置換される場合、その式は「チオールカルボニル」基を表わす。WがS-アルキルである場合、その式は「チオールエステル」を表わす。WがSHである場合、その式は「チオールカルボン酸」を表わす。他方、Wがアルキルである場合、前記の式は「ケトン」基を表わす。Wが水素である場合、前記の式は「アルデヒド」基を表わす。
【0171】
本明細書に用いた用語「ヘテロ芳香族」または「ヘテロアリール」は、炭素原子環員および1つ以上のヘテロ環員(例えば、酸素、硫黄または窒素のごとき)を含む単環または多環状のヘテロ芳香族環(またはその基)を意味する。典型的には、ヘテロ芳香族環は、少なくとも1つの環員が酸素、硫黄および窒素から選択されたヘテロ原子である5~約14環員を有する。もう一つの具体例において、ヘテロ芳香族環は、5または6員環であり、1~約4つのヘテロ原子を含み得る。もう一つの具体例において、ヘテロ芳香族環系は7~14の環員を有し、1~約7個のヘテロ原子を含み得る。代表的ヘテロアリールは、ピリジル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリジニル、チアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、ピリジニル、チアジアゾリル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、インドリジニル、イミダゾピリジニル、イソチアゾリル、テトラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、カルバゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、キニザオリニル(qunizaolinyl)、プリニル、ピロロ[2,3]ピリミジル、ピラゾロ[3,4]ピリミジル、ベンゾ(b)チエニル等を含む。これらのヘテロアリール基は、所望により、1つ以上の置換基で置換し得る。
【0172】
用語「置換の(または置換された)」は、有機化合物のすべての許容できる置換基を含み、「許容できる」は、当業者に知られた原子価の化学規則の文脈内にあると考えられる。いくつかの場合において、「置換の」は、一般的に、本明細書に用いた置換基での水素の置換をいい得る。しかしながら、本明細書に用いた「置換の」は、鍵となる官能基の置換および/または変更を包含せず、それにより、分子は、例えば、「置換の」官能基が、置換を介して、異なる官能基になるように識別される。例えば、1つの「置換フェニル」は、この定義において、フェニル部分を依然として含み、置換により改変できず、例えば、ピリジンのごときヘテロアリールにならねばならない。広範囲の態様において、許容できる置換基は、有機化合物の非環状および環状、分岐および非分岐、炭素環状、ヘテロ環状、芳香族および非芳香族の置換基を含む。例示的な置換基は、例えば、本明細書に記載されたものを含む。許容できる置換基は、適当な有機化合物につき、1つ以上で同じか異なることができる。本発明の目的のために、窒素のごときヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載された有機化合物の水素置換基および/またはいずれの許容できる置換基も有し得る。本発明は、有機化合物の許容できる置換基によっていずれかの方法で限定されることを意図しない。
【0173】
置換基の例は、限定されるものではないが、アルキル、アリール、アラルキル、環状アルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ペルハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アミノ、ハロゲン、アルキルチオ、オキソ、アシル、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキシル、カルボキシアミド、ニトロ、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキシアミドアルキルアリール、カルボキシアミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキシアミドアルキル、アルコキシアルキル、ペルハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキル等を含む。
【0174】
実施例1
本実施例は、チオール含有種の反応生成物を含む保護層を含む電気化学電池および他のタイプの電気化学電池間の比較を示す。他のタイプの電気化学電池は、これらの保護層を欠くか、または代わりに他のタイプの保護層を含むが、チオール含有種の反応生成物を含む保護層を含む電気化学電池と別に等価である。
【0175】
電気化学電池A
この電気化学電池は、トリチオシアヌル酸の反応生成物を含む保護層を含む。
LiNi0.6Co0.2Mn0.2を含むカソードを1重量%トリチオシアヌル酸および99重量%エタノールを含む溶液に浸漬した。このプロセス中に、減圧を溶液に適用して、カソードの細孔からの空気の除去を助け、かつその中のトリチオシアヌル酸の浸透を援助した。次いで、被覆したカソードを2~12時間、20~30℃で周囲の環境において乾燥した。次に、被覆したカソードを6~48時間、減圧下110℃でさらに乾燥した。乾燥が完了した後、被覆したカソードは電解質およびアノードと共に組み立てた。電解質は、1MのLiPF(Liイオン14電解質)をさらに含む炭酸フルオロエチレン:炭酸ジメチルの20重量%:80重量%混合物であった。そのアノードは、25ミクロンの厚い層の蒸気堆積したリチウムであった。
【0176】
電気化学電池B
この電気化学電池は電気化学電池Aと等価であるが、トリチオシアヌル酸の反応生成物を含む保護層を欠く。
LiNi0.6Co0.2Mn0.2を含む被覆されていないカソードを電解質およびアノードと共に組み立てた。電解質は、1MのLiPF(リチウムイオン14電解質)をさらに含む炭酸フルオロエチレン:炭酸ジメチルの20重量%:80重量%混合物であった。アノードは、25ミクロンの厚い層の蒸気堆積したリチウムであった。
【0177】
電気化学電池C
この電気化学電池は電気化学電池Aと等価であるが、トリチオシアヌル酸の反応生成物に代えてポリ(ジチオカルバマート)を含む保護層を含む。そのポリ(ジチオカルバマート)は、トリチオシアヌル酸を含む溶液に代えてペンタエリトリトール・テトラキス(3-メルカプトプロピオナート)を含む溶液にカソードを浸漬することにより形成した。
【0178】
電気化学電池D
この電気化学電池は電気化学電池Aと等価であるが、トリチオシアヌル酸の反応生成物に代えてポリ(ジチオカルバマート)を含む保護層を含む。そのポリ(ジチオカルバマート)は、トリチオシアヌル酸を含む溶液に代えてペンタエリトリトール・テトラキス(3-メルカプトプロピオナート)を含む溶液にカソードを浸漬することにより形成した。
【0179】
電気化学電池E
この電気化学電池は電気化学電池Aと等価であるが、トリチオシアヌル酸の反応生成物に代えてペンタエリトリトール・テトラキス(3-メルカプトプロピオナート)の反応生成物を含む保護層を含む。そのペンタエリトリトール・テトラキス(3-メルカプトプロピオナート)を含む溶液は、乾燥環境においてコーティングロッドでカソードの表面に適用した。
【0180】
電気化学電池F
この電気化学電池は電気化学電池Eと等価であるが、ペンタエリトリトール・テトラキス(3-メルカプトプロピオナート)だけの反応生成物に代えて、ペンタエリトリトール・テトラキス(3-メルカプトプロピオナート)およびポリエチレングリコール・ジアクリレートの双方の反応生成物を含む保護層を含む。そのペンタエリトリトール・テトラキス(3-メルカプトプロピオナート)およびポリエチレングリコール・ジアクリレートを含む溶液は、乾燥環境においてコーティングロッドでカソードの表面に適用した。
【0181】
電気化学電池G
この電気化学電池は電気化学電池Fと等価であるが、ペンタエリトリトール・テトラキス(3-メルカプトプロピオナート)およびポリエチレングリコール・ジアクリレートの反応生成物に代えて、トリメチロールプロパン・トリス(3-メルカプトプロピオナート)およびポリエチレングリコール・ジアクリレートの反応生成物を含む保護層を含む。
【0182】
サイクル寿命テスト
電気化学電池A~Gのサイクル寿命は、種々の異なる方法によって測定した。各方法において、電気化学電池は、最大電圧まで40mAで充電し、次いで60mAで3.2Vまで放電する3回のサイクルを最初に受けた、次いで、電気化学電池は、「通常速度(regular rate)」または「高速(fast rate)」のいずれかで最大電圧および3.2Vの間でサイクルさせた。通常速度でサイクルさせた場合、電気化学電池は200mAで最大電圧まで充電し、次いで、60mAで3.2Vまで放電した。高速でサイクルさせた場合、電気化学電池はC/4で最大電圧まで充電し、次いで、Cで3.2Vまで放電した。
【0183】
すべての場合において、チオール含有分子の反応生成物を含む保護層を含む電気化学電池は、保護層を欠くか、または他の組成を有する保護層を含む電気化学電池より長いサイクル寿命を有した。図6は、高速で4.35Vの最大電圧までサイクルさせた場合の、電気化学電池AおよびBについてサイクル数の関数としての放電容量を示す。図7は、4.35Vの電圧の最大電圧まで高速でサイクルさせ、次いで、4.5Vの電圧の最大電圧まで通常速度でサイクルさせた場合の、電気化学電池AおよびBについてのサイクル数の関数としての放電容量を示す。図8は、4.35Vの最大電圧まで高速でサイクルさせた場合の、電気化学電池A、CおよびDについてのサイクル数の関数としての放電容量を示す。図9は、最初に4.35Vの最大電圧まで通常速度でサイクルさせ、次いで4.5Vの電圧の最大電圧まで通常速度でサイクルさせた場合の、電気化学電池AおよびBについてのサイクル数の関数としての放電容量を示す。図10は、4.35Vの最大電圧まで通常速度でサイクルさせた場合の、電気化学電池A、BおよびE~Gについてのサイクル数の関数としての放電容量を示す。
【0184】
実施例2
本実施例は、異なる組成を有する電解質を含む電気化学電池間の比較を提示する。チオール基を含む種を欠く電解質を含む電気化学電池は、プロトン化チオール基(プロトン化トリチオシアヌル酸)を含む種を含む電解質を含む電気化学電池、および脱プロトン化チオール基(トリチオシアヌル酸のリチウム塩)を含む種を含む電解質を含む電気化学電池に比較される。
【0185】
各電気化学電池を形成するために、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物カソード、14ミクロンの厚みのリチウムアノード、セパレーターおよび電解質を一緒に組み立てた。その組み立てた電気化学電池は、40mAで4.35Vまで充電され、次いで60mAで3.2Vまで放電される3回のサイクルを受けた。次いで、電気化学電池は、100mAで4.35Vまで電気化学電池を充電し、次いで、300mAで3.2Vまで電気化学電池を放電することにより、放電容量が200mAhに達するまで、サイクルさせた。
【0186】
以下の表1は、各電気化学電池の電解質の組成、および放電容量が200mAhに達する前のサイクル数を示す。図11は、各電気化学電池のサイクル寿命の関数としての放電容量を示す。プロトン化トリチオシアヌル酸を含む電解質を含む電気化学電池、およびトリチオシアヌル酸のリチウム塩を含む電気化学電池の双方は、これらの種の双方を欠く電解質を含む電気化学電池より優れていた。トリチオシアヌル酸のリチウム塩を含む電解質を含む電気化学電池は、プロトン化トリチオシアヌル酸を含む電解質より優れていた。
【0187】
【表1】
【0188】
本発明のいくつかの具体例が本明細書に記載および例示されたが、当業者ならば、機能を実行し、ならびに/あるいは本明細書に記載された結果および/または1つ以上の有利さ得るための様々な他の手段および/または構造を容易に予測し、かかる変形および/または改良は各々、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者ならば、本明細書に記載された全てのパラメーター、寸法、材料、および構成が例示であることを意味することを容易に理解し、実際のパラメーター、寸法、材料、および/または構成が、そのために本発明の教示が用いられる特定の用途(複数)に依存することを容易に理解するであろう。当業者ならば、日常的な実験のみを用いて、本明細書中に記載された本発明の特定の具体例に対する多数の等価物を認識し、または確認することができたであろう。したがって、前記の具体例が、例示のためだけに示され、かつ添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で、本発明は、具体的に説明され、特許請求の範囲に記載された以外の方法で実施し得ると理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載された、個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に指向される。加えて、2つ以上のかかる特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法のいずれの組合せが、かかる特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しないならば、本発明の範囲内に含まれる。
【0189】
本明細書に規定および用いられたすべての定義は、辞書の定義、出典明示して組み込まれた文書中の定義、および/または定義された用語の通常の意味に関して支配的であることが理解されるべきである。
【0190】
本明細書中および特許請求の範囲において用いた、不定冠詞「a」および「an」は、明確に逆に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると解されるべきである。
【0191】
本明細書中および特許請求の範囲において用いた、句「および/または」は、結合した要素、すなわち、いくつかの場合には結合して存在し、他の場合には分離して存在する要素の「いずれかまたは双方」を意味すると解されるべきである。「および/または」でリストされた複数の要素は、同一の方法、すなわち、結合された要素の「1つ以上」で解釈されるべきである。その「および/または」の文節により特に識別される要素以外に、特に識別される要素に関連するかまたは関連しないかどうかに拘わらず、所望により他の要素が存在し得る。かくして、非限定例として、「Aおよび/またはB」への参照は、「~を含む」のごときオープンエンドの言語と合わせて用いられる場合、Aのみ(所望によりB以外の要素を含む);もう一つの具体例において、Bのみ(所望によりA以外の要素を含む);さらにもう一つの態様において、AおよびBの両方(所望により他の要素を含む);等をいうことができる。
【0192】
本明細書中および特許請求の範囲において用いた、「または」は、前記に定義した「および/または」と同じ意味を有すると解されるべきである。例えば、1つのリスト中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は包括的である、すなわち、多数の要素または要素のリストの、1つを超えるも含む少なくとも1つ、および所望により、リストに挙げられていないさらなる項目を含むと解釈されるべきである。明確に逆に示されている項目のみ、例えば、「~の内の1つのみ」または「~の内の正確に1つ」、あるいは特許請求の範囲において使用される場合の「~よりなる」は、多数の要素または要素のリストの正確に1つの要素の包含を意味する。一般的に、本明細書中で用いられる用語「または」は、「いずれか」、「~の1つ」、「~の1つのみ」または「~の正確に1つ」のごとき排他性の用語が先行する場合、排他的選択肢(すなわち、「一方、または双方でない他方」)を示すものとして解釈されるのみである。特許請求の範囲に用いた「~より実質的になる」は、特許法の分野で用いられるその通常の意味を有するであろう。
【0193】
本明細書中および特許請求の範囲に用いた、1つ以上の要素のリストに関する語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト中のいずれかの1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると解されるべきであるが、要素のリスト内に具体的に挙げられた各々およびすべての要素の少なくとも1つを必ずしも含んでおらず、かつ要素のリスト中の要素のいずれかの組合せを必ずしも除外しない。また、この定義は、語句「少なくとも1つ」が、具体的に識別されたそれらの要素に関連するかまたは関連しないかに拘わらず、参照する要素のリスト内で特に識別された要素以外に、要素が所望により存在し得るのを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(あるいは等価に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または等価に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、1つの態様において、所望により1つを超えることを含む少なくとも1つ、Bが存在しないA(所望によりB以外の要素を含む);もう一つの具体例において、所望により1つを超えることを含む少なくとも1つ、Aが存在しないB(所望によりA以外の要素を含む);さらにもう一つの具体例において、所望により1つを超えることを含む少なくとも1つ、Aおよび所望により1つを超えることを含む少なくとも1つ、B(所望により他の要素を含む);等をいうことができる。
【0194】
明確に逆に示されない限りは、1つ以上の工程または行為(act)を含む本明細書に特許請求されたいずれの方法においても、その方法の工程または行為の順序は、その方法の工程または行為が引用される順序に必ずしも限定されないと理解されるべきである。
【0195】
本願の特許請求の範囲ならび本明細書において、「~を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を有する(carrying)」、「~を有する(having)」、「~を含有する(containing)」、「~を含む(involving)」、「~を含む(holding)」のごときすべての移行句は、オープンエンドである、すなわち、限定されるものではないが含むことを意味すると解されるべきである。移行句「~よりなる」および「~より実質的になる」だけは、「United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures,Section 2111.03」に記載されているように、それぞれクローズまたはセミクローズの移行句である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】