(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(54)【発明の名称】セラミックヒーター付き熱作動式ガスバルブ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/14 20060101AFI20221017BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20221017BHJP
F23Q 7/22 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
H05B3/14 A
H05B3/74
F23Q7/22 615A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511019
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 US2020046623
(87)【国際公開番号】W WO2021034748
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520373486
【氏名又は名称】エスシーピー ホールディングス,アン アシュームド ビジネス ネーム オブ ナイトライド イグナイターズ,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ジャック エー.シンドル
(72)【発明者】
【氏名】イン リウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ エル.マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ ペンランド
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QB02
3K092QB04
3K092QB08
3K092QB11
3K092QB13
3K092QB21
3K092QB76
3K092RF11
(57)【要約】
セラミックヒーターを備える、熱作動可能なガスバルブアセンブリが開示される。ガスバルブアセンブリは、ガス入口とガス出口とを備えた、ハウジングを備える。バイメタル熱作動部品は、ハウジングの内部からガス出口を取り外し可能に密封する、バルブプラグを有する。セラミックヒーターは、通電可能であり、熱作動部品を撓ませて、それによりガス出口からバルブプラグを外し、それによりガス出口をガス入口及びハウジングの内部と流体連通するように配置される。ガスバルブアセンブリが窒化ケイ素セラミック点火装置に調理ガスを選択的に供給する、ガス加熱システムもまた図示され、説明される。点火装置及びヒーターは、直列に接続されており、従って点火装置とヒーターとに渡って交流源が印加されると、バルブアセンブリが開く前に、点火装置は、燃焼ガスの自己発火温度に達する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱作動式ガスバルブアセンブリであって、
ガス入口と、ガス出口と、該ガス出口に選択的に流体連通する内容積と、を有するハウジングと、
前記内容積に配設された熱作動部品と、
該熱作動部品に動作するように接続され、且つ前記内容積から前記ガス出口を選択的に密封するように配置された、バルブプラグと、
セラミックヒーターであって、前記熱作動部品と熱的に連通するセラミックヒーターと、
を備える熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項2】
前記セラミックヒーターは、セラミック本体と、該セラミック本体内に配設された導電性インクパターンと、を備える請求項1に記載の熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項3】
前記セラミック本体は窒化ケイ素を備える請求項2に記載の熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項4】
前記セラミックヒーターは、正の抵抗率温度係数を有する導電性インク回路を有する請求項1~3の何れか一項に記載の熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項5】
前記熱作動部品は、前記バルブプラグを前記ガス出口との密封係合の中と外に選択的に配置するように熱的に撓むことができる、少なくとも1つのバイメタル部材を備える、請求項1~4の何れか一項に記載の熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項6】
前記熱作動部品はバイメタル部材を備え、該バイメタル部材は、前記ハウジングの前記内部の中の位置に固定された第1の端部と、前記バイメタル部材の長さ軸に沿って前記第1の端部から離間した第2の自由端部と、を有し、
前記バイメタル部材が撓み温度に曝されると、前記バイメタル部材の前記第2の端部が、前記バルブプラグを前記ガス出口との密封係合から離脱するよう動かすように、前記バルブプラグは前記バイメタル部材の前記第2の自由端部に接続する、請求項1に記載の熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項7】
前記撓み温度は、約65.6℃(150°F)~約538℃(1000°F)である、請求項6に記載の熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項8】
前記バイメタル部材は、ASTM D388-06に従って測定された、約12.6×10
+6℃
+1(7.0×10
-6°F
-1)~約19.8×10
-6℃
-1(11.0×10
-6°F
-1)の屈曲性を有する、請求項6に記載の熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項9】
前記セラミックヒーターは、約5オーム~約15オームの室温抵抗を有する導電性インクパターンを有する、請求項1に記載の熱作動式ガスバルブ。
【請求項10】
1170℃(2138°F)~1482℃(2700°F)の温度範囲に渡って、前記導電性インクパターンは17Ω~28Ωの高温抵抗を有する、請求項9に記載の熱作動式ガスバルブ。
【請求項11】
前記導電性インクパターンは、約6.5×10
-5Ω・cm~約2×10
-4Ω・cmの室温抵抗率を有する、請求項9又は10に記載の熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項12】
セラミックヒーターは導電性インクパターンを備え、前記導電性インクは、前記導電性インクの約30重量パーセント以下の量の窒化ケイ素と、前記導電性インクの約70重量パーセント以上の量の少なくとも1つの導電性成分と、を有し、
前記少なくとも1つの導電性成分は、タングステンと、タングステンカーバイドと、マンガンと、二ケイ化モリブデンと、アルミナと、シリカと、からなる群から選択される、請求項1に記載の熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項13】
前記導電性インクは、酸化物と金属と希土類酸化物とからなる群から選択される、焼結助剤の約6重量パーセント以下を有する、請求項12に記載の熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項14】
前記セラミックヒーターは、約10.2(0.4インチ)~約25.4mm(1.0インチ)の長さ軸に沿った長さと、約3.81(0.15インチ)~約8.89mm(0.35インチ)の幅軸に沿った幅と、約0.762mm(0.03インチ)~約2.032mm(0.08インチ)の厚さ軸に沿った厚さと、を有し、前記長さは前記幅よりも長く、前記幅は前記厚さよりも長い、請求項1~13の何れか一項に記載の熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項15】
前記セラミックヒーターは、長さ軸に沿った長さと、幅軸に沿った幅と、厚さ軸に沿った厚さと、を有し、導電性インクパターンは、約0.0051mm(0.0002インチ)以上で且つ約0.076mm(0.003インチ)以下の前記厚さ軸に沿った事前焼製された厚さを有する、請求項1に記載の熱作動式ガスバルブアセンブリ。
【請求項16】
ガス加熱システムであって、
請求項1に記載の前記熱作動式ガスバルブアセンブリと、
前記ガス出口と流体連通するセラミック点火装置と、
を備えるガス加熱システムにおいて、
前記セラミック点火装置及び前記セラミックヒーターは、交流源に選択的に接続しており、互いに対して直列である、ガス加熱システム。
【請求項17】
前記セラミック点火装置は室温抵抗を有し、前記セラミックヒーターは室温抵抗を有し、前記セラミックヒーターの室温抵抗に対する前記セラミック点火装置の室温抵抗の比は約1.9~約4.0である、請求項16に記載のガス加熱システム。
【請求項18】
前記セラミック点火装置は高温抵抗を有しており、前記セラミックヒーターは高温抵抗を有し、1170℃(2138°F)~1482℃(2700°F)までの温度範囲に渡って、前記セラミックヒーターの高温抵抗に対する前記セラミック点火装置の高温抵抗の比は約1.9~約8.0である、請求項16又は17に記載のガス加熱システム。
【請求項19】
前記セラミック点火装置は約20オーム~約60オームの室温抵抗を有する、請求項16~18の何れか一項に記載のガス加熱システム。
【請求項20】
前記セラミック点火装置は室温抵抗を有し、前記セラミックヒーターは室温抵抗を有し、前記セラミック点火装置の室温抵抗と前記セラミックヒーターの室温抵抗との合計は約25オーム~約65オームである、請求項17に記載のガス加熱システム。
【請求項21】
前記セラミック点火装置は高温抵抗を有し、前記セラミックヒーターは高温抵抗を有し、1170℃(2138°F)~1482℃(2700°F)の温度範囲に渡って、前記セラミックヒーターの前記高温抵抗と前記セラミック点火装置の前記高温抵抗との合計は約145Ω~約288Ωである、請求項20に記載のガス加熱システム。
【請求項22】
前記セラミック点火装置は長さ軸を規定する長さと、幅軸を規定する幅と、厚さ軸を規定する厚さと、を有するセラミック本体を有し、
前記セラミック点火装置は、
それぞれの外面を有する第1と第2のセラミックタイルと、
前記第1と第2のセラミックタイルの間に配設された、導電性インクパターンと、を備え、
前記セラミック点火装置は、約1.19(0.047)~約1.52mm(0.060インチ)の、厚さ軸に沿った厚さを有し、120VのAC rmsの電位差に曝された場合に、それぞれのセラミック点火装置の外面の少なくとも1つは、8秒以内において少なくとも760℃(1400°F)の温度に達する、請求項16に記載のガス加熱システム。
【請求項23】
前記セラミック点火装置の導電性インクは、厚さ軸に沿って約0.0102mm(0.0004インチ)~約0.051mm(0.002インチ)の厚さを有する、請求項22に記載のガス加熱システム。
【請求項24】
前記セラミック点火装置の前記導電性インクパターンを備え、前記導電性インクは窒化ケイ素と炭化タングステンとを有する、ことを特徴とする請求項22又は23に記載のガス加熱システム。
【請求項25】
前記セラミック点火装置は正の抵抗率温度係数を有する導電性インクパターンを備える、請求項16に記載のガス加熱システム。
【請求項26】
前記セラミックヒーターは、正の抵抗率温度係数を有する導電性インクパターンを備える、請求項25に記載のガス加熱システム。
【請求項27】
ガス加熱システムであって、
正の抵抗率温度係数を有する導電性インクパターンを備えるセラミック点火装置と、
熱作動式ガスバルブアセンブリであって、
(i)ガス入口と、ガス出口と、前記ガス出口と選択的に流体連通する内容積と、を有するハウジングと、
(ii)前記内容積に配設された熱作動部品と、
(iii)前記熱作動部品に動作するように接続し、且つ前記内容積から前記ガス出口を選択的に密封するように配置されたバルブプラグと、
(iv)前記熱作動部品と熱的に連通するヒーターと、を有する、熱作動式ガスバルブアセンブリと、
を備えるガス加熱システム。
【請求項28】
前記ヒーターは導電性インクパターンを備えるセラミックヒーターである、請求項27に記載のガス加熱システム。
【請求項29】
前記セラミックヒーターの導電性インクパターンは正の抵抗率温度係数を有する、請求項28に記載のガス加熱システム。
【請求項30】
ガスを点火する方法であって、
セラミック点火装置と選択的に流体連通する、燃焼ガス源を提供するステップと、
熱作動部品と、該熱作動部品に熱的に連通するセラミックヒーターと、を備えるガスバルブアセンブリを提供するステップであって、前記ガスバルブアセンブリが、燃焼ガス源を前記セラミック点火装置と流体連通するように選択的に配置するように動作可能である、ステップと、
前記セラミック点火装置は前記燃焼ガスの発火温度以上の表面温度に達するように、前記セラミック点火装置に通電する手順と、
前記燃焼ガス源を前記セラミック点火装置と流体連通させるように配置するために、前記セラミックヒーターに通電するステップと、
を備えるガスを点火する方法。
【請求項31】
前記熱作動部品が撓み可能な部材を備え、前記燃焼ガス源を前記セラミック点火装置と流体連通させるように配置するために、前記セラミックヒーターに通電するステップは、前記熱作動部品が撓むように該熱作動部品を加熱するステップを備える、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記セラミック点火装置は室温抵抗を有し、前記セラミックヒーターは室温抵抗を有し、前記セラミックヒーターの室温抵抗に対する前記セラミック点火装置の室温抵抗の比は約1.9Ω~約4.0Ωである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記セラミックヒーターは高温抵抗を有し、1170℃(2138°F)~1482℃(2700°F)の温度範囲に渡って、前記セラミックヒーターの高温抵抗は約17Ω~約28Ωである、請求項30~32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記セラミック点火装置は高温抵抗を有し、前記セラミックヒーターは高温抵抗を有し、1170℃(2138°F)~1482℃(2700°F)までの温度範囲に渡って、前記セラミックヒーターの高温抵抗に対する前記セラミック点火装置の高温抵抗の比は約1.9~約8.0である、請求項30~32の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記セラミック点火装置は約20オーム~約60オームの室温抵抗を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
1170℃(2138°F)~1482℃(2700°F)までの温度範囲に渡って、前記セラミック点火装置は約115Ω~約280Ωの高温抵抗を有する、請求項30~34の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記セラミック点火装置は室温抵抗を有し、前記セラミックヒーターは室温抵抗を有し、前記セラミック点火装置の室温抵抗と前記セラミックヒーターの室温抵抗との合計は約25オーム~約65オームである、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記セラミック点火装置は高温抵抗を有し、前記セラミックヒーターは高温抵抗を有し、1170℃(2138°F)~1482℃(2700°F)の温度範囲に渡って、前記セラミックヒーターの高温抵抗と前記セラミック点火装置の高温抵抗との合計は約145Ω~約288Ωである、請求項30~32、35及び37の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ガスバルブアセンブリはガス入口とガス出口とを備え、前記熱作動部品は、前記ガスバルブアセンブリ内のセラミック絶縁体に対して一端部に固定され、バルブプラグに接続する自由端部を有し、前記熱作動部品が撓むと、前記バルブプラグがガス出口から外れ、前記ガス入口が前記ガス出口と流体連通するように配置されるように、前記バルブプラグが前記ガス出口に取り外し可能に着座する、請求項30~38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記セラミック点火装置が前記燃焼ガスの発火温度に到達すると直ぐに、前記ガス入口は前記ガス出口と流体連通するように配置される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記セラミック点火装置及び前記セラミックヒーターは、互いに且つ交流源と直列に配置される、請求項30~40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記交流源は約102VのACから約132VのACのrms電圧を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記セラミック点火装置に通電するステップは、前記セラミック点火装置の表面温度が約8秒以上で前記燃焼ガスの発火温度に達するように、前記セラミック点火装置に通電するステップを備える、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
前記発火温度は約760℃(1400°F)以上である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記熱作動部品は、第1の軸に沿った長さと第2の軸に沿った幅とを有する、バイメタル部材を備え、前記セラミックヒーターは、前記第2の軸に沿った長さと前記第1の軸に沿った幅とを有する本体を備える、請求項30~44の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミックヒーターにより熱的に作動される、ガス制御バルブと、セラミック点火装置を備えたその様な制御バルブを備える、ガス加熱システムと、に関する。
(関連出願に関する相互参照)
本出願は、2019年8月19日に出願された米国仮特許出願第62/888872号明細書の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
米国及び海外の多くのオーブンキャビティは、炭化ケイ素高温表面点火装置等のセラミック点火装置を使用してガスにより加熱される。炭化ケイ素セラミック点火装置は、電位差が適用される、熱的端部を備えた半導電性セラミック本体を備える。セラミック本体に電流が流れることにより、本体が加熱されて温度が上昇し、燃焼ガスの発火源を提供する。この様なオーブン加熱システムでは、一旦可燃性ガスが、燃焼ガスと空気の可燃性混合物が発火する、表面温度に達した時だけに、可燃性ガスが炭化ケイ素点火装置に供給されることを確実にするように、バイメタルガスバルブアセンブリと呼ばれることもある、熱作動式ガス制御バルブアセンブリを備えることが標準である。
【0003】
ガスバルブアセンブリ及び炭化ケイ素点火装置は、回路への電気の流れを制御する、スイッチ又はリレーを介してAC(公称120VのAC)主電源に直列に接続する。オーブンが熱を要求する時に、スイッチが閉じられて、電気が最初に炭化ケイ素点火装置に流れ、次にバイメタルバルブアセンブリに流れる。点火装置は、負の抵抗温度係数と室温における高い抵抗とを有しており、そのことは、バイメタルバルブアセンブリへの電圧及び電流を制限する。高い初期抵抗は、高温表面点火装置が燃焼ガスの発火温度に達してしまう前にバルブが開くことを防止する。高温表面点火装置が加熱され始めると、その抵抗は、低下し始めて(抵抗係数が負であるため)、最終的には116VのACにおいて約35オーム及び1482℃(2700°F)(最高温度)で安定する。
【0004】
点火装置の抵抗が低下すると、電流が、バイメタルバルブアセンブリに流れ始める。アセンブリの内部には、ワイヤ抵抗要素と熱的に撓み可能なバイメタル帯体とがある。ワイヤ抵抗要素は、バイメタル帯体の一部の周りに巻き付けられ、そして電流が流れ始めると、抵抗要素が加熱され始める。抵抗要素が熱くなると、バイメタル帯体は、撓み温度に達し、そこで、バイメタル帯体は、ガスバルブアセンブリのガス出口からバルブプラグを外すように撓み、それにより、アセンブリの内部とそのガス入口とをガス出口と流体連通させて、ガスが流れることを可能にする。3.03~3.30VのACの必要な電圧及び3.2~3.6アンペアは、炭化ケイ素点火装置が所望の動作温度になるまで、回路から供給されない。バイメタル帯体は、異なる膨張係数を有する2つの金属を備える。異なる膨張係数により、帯体が曲げられるので、従ってバイメタル帯体のバルブプラグの端部が離れるように撓み、ガス出口から外れる。
【0005】
この設計の利点は、バイメタルガスバルブを開くのに必要な電流が、高温表面点火装置がその動作温度になるまで存在しないことである。これにより、高温表面点火装置がガスの点火を確実にする温度になるまで、可燃性ガスの流れが可能にならないことを確保する。
【0006】
残念ながら、炭化ケイ素点火装置と組み合わせてそれら(既知の熱作動式ガス制御バルブアセンブリ及びガス加熱システム)を利用する、既知の熱作動式ガス制御バルブアセンブリ及びガス加熱システムには不利益が存在する。先ず、炭化ケイ素点火装置、特にM回路設計は、非常に壊れ易く、工場での据え付け、最終使用者の自宅でのオーブンの出荷及び据え付け中に簡単に破損する。更に、炭化ケイ素点火装置は、加熱が遅く、殆どの場合、炭化ケイ素点火装置の所望の動作温度に達するまでに10~20秒を要する。
【0007】
更に、バイメタルバルブも遅く、炭化ケイ素点火装置がその所望の作動温度に達した後に、開くために更に20~40秒を必要とする。その結果、点火までの所要時間は、30~60秒の間のどこかになる。更に、炭化ケイ素高温表面点火装置は、炭化ケイ素粒及びリードの表面上に二酸化ケイ素絶縁層を形成し、時間の経過と共に点火装置の室温抵抗の増大を生じる。この抵抗の増大により、温度までの全体的な時間が更に長くなり、システムの全体的な性能は低下する。また、炭化ケイ素は半導体であり、点火装置全体が導電性である。このことは、火傷又は電気的短絡を防ぐように、オーブンの操作者が、不注意による接触から保護されなければならないことを必要とする。
【0008】
窒化ケイ素点火装置は、給湯器及び炉の用途で長い間使用されており、炭化ケイ素点火装置に比べて幾つかの利点を有する。先ず、窒化ケイ素点火装置は、優れた強度と破壊靭性とを有するので、炭化ケイ素点火装置の様々な用途において炭化ケイ素点火装置を非常に耐久性のあるものにする。更に、窒化ケイ素点火装置の表面は、絶縁性であるので、電気的短絡のリスクが排除される。更に、温度までの時間は、炭化ケイ素と比較して50~75%より速く、消費電力は、炭化ケイ素より80%より少ない。殆どの材料と同様に、窒化ケイ素点火装置が正の抵抗温度係数を有することも注目に値する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
オーブンキャビティにおける窒化ケイ素点火装置の採用に対する障害は、点火装置のオン及びオフの切り換えに必要とされる、制御システムの費用であった。一般的な窒化ケイ素点火装置により消費される電流は、一般的なワイヤ抵抗要素によりガスバルブアセンブリを開くためには十分ではない。従って、バイメタルバルブは、ソレノイドの様なバルブに置換される必要があり、そして制御基板が、点火装置をオンにして、温度に達した時を感知し、更にソレノイドに信号を送信して開くために追加される必要があるであろう。これらの形態の組み合わせにより、導入コストは法外に高くなる。対照的に、バイメタルガスバルブと組み合わせた炭化ケイ素点火装置は、非常にコスト競争力がある。従って、前述の事項に対処する、ガスバルブアセンブリの必要性が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の形様によれば、ハウジングと熱作動部品とバルブプラグとセラミックヒーターとを備える、熱作動可能なガスバルブアセンブリが提供される。ハウジングは、ガス入口と、ガス出口と、ガス出口に選択的に流体連通する内容積と、を有する。熱作動部品は、内容積内に配設されており、バルブプラグは、熱作動部品に動作するように接続する。バルブプラグは、ガス出口を内容積から選択的に密封するように配置されており、セラミックヒーターは、熱作動部品と熱的に連絡する。特定の例において、熱作動部品は、撓み温度に加熱されると撓む、バイメタル部材又はバイメタル部材アセンブリを備える。同じ又は別の例において、セラミックヒーターは、セラミック本体と、セラミック本体内に配設された導電性インクパターンと、を備える。同じ又は別の例において、セラミック本体は、窒化ケイ素を備える。同時に又は別の例において、セラミックヒーターの導電性インクパターンは、約6.5×10-5Ω・cm~約2×10-4Ω・cmの室温抵抗率を有する。同時に又は別の例において、導電性インクパターンは、約5Ω~約15Ωの室温抵抗を有する。
【0011】
本開示の第2の形態によれば、セラミック点火装置と、ハウジングと熱作動部品とバルブプラグとセラミックヒーターとを備える、熱作動式ガスバルブアセンブリと、を備えるガス加熱システムが提供される。ハウジングは、ガス入口と、ガス出口と、ガス出口に選択的に流体連絡する内容積と、を有する。熱作動部品は、内容積内に配設されており、バルブプラグは、熱作動部品に動作するように接続する。バルブプラグは、ガスバルブアセンブリの内容積からガス出口を選択的に密封するように配置されており、セラミックヒーターは、熱作動部品と熱的に連絡する。特定の例において、熱作動部品は、撓み温度に加熱されると撓む、バイメタル部材又はバイメタル部材アセンブリを備える。特定の例において、セラミック点火装置の室温抵抗の、セラミックヒーターの室温抵抗に対する比は、約1.9~約4.0である。同時に、セラミック点火装置の室温抵抗とセラミックとの合計は、約25Ω~約65Ωまでである。
【0012】
本開示の第3の形態によれば、正の抵抗率温度係数を有する導電性インクパターンを備えるセラミック点火装置と、熱作動式ガスバルブアセンブリと、を備える、ガス加熱システムが提供される。熱作動式ガスバルブアセンブリは、i)ガス入口と、ガス出口と、ガス出口と選択的に流体連絡する内容積と、を有するハウジングと、(ii)内容積に配設された熱作動部品と、(iii)熱作動部品に動作するように接続していて且つ内容積からガス出口を選択的に密封するように配置されたバルブプラグと、(iv)熱作動部品と熱的に連絡するヒーターと、を備える。特定の例において、ヒーターは、導電性インクパターンを備える、セラミックヒーターである。同時に又は別の例において、セラミックヒーターは、正の抵抗率温度係数を有する。
【0013】
本開示の第4の形態によれば、ガスを点火する方法が提供される。この方法が、セラミック点火装置と選択的に流体連通する、燃焼ガス源を提供する手順と、燃焼ガス源をセラミック点火装置と流体連通するように選択的に配置するように動作可能である、ガスバルブアセンブリを提供する手順と、セラミック点火装置が燃焼ガスの発火温度以上の表面温度に達するように、セラミック点火装置に通電する手順と、セラミックヒーターに通電して、燃焼ガス源をセラミック点火装置と流体連通させるように配置する手順と、を備える。ガスバルブアセンブリは、熱作動部品と、熱作動部品に熱的に連通するセラミックヒーターと、を備える。特定の例において、熱作動部品は、撓み可能な部材であり、そしてセラミックヒーターに通電して、燃焼ガス源をセラミック点火装置と流体連通させるように配置する手順は、熱作動部品を、熱作動部品が撓むように加熱する手順を備える。同時に又は別の例において、セラミック点火装置の室温抵抗のセラミックヒーターの室温抵抗に対する比は、約1.9~約4.0である。同時に又は別の例において、セラミック点火装置の室温抵抗とセラミックヒーターの室温抵抗との合計は、約25Ω~約65Ωである。同時に又は別の例において、セラミックヒーターに通電する手順は、セラミックヒーターに少なくとも約15VのAC rmsの電位差を印加する手順を備える。同時に又は別の例において、セラミック点火装置に通電する手順は、セラミック点火装置に、少なくとも約75VのV rmsの電位差を印加する手順を備える。同時に又は別の例において、ガスバルブアセンブリは、ガス入口とガス出口とを備えており、熱作動部品は、ガスバルブアセンブリ内のセラミック絶縁体に対して一端部に固定され、更にバルブプラグに接続する自由端部を有しており、そしてバルブプラグは、ガス出口に取り外し可能に着座するので、熱作動部品が撓むと、バルブプラグは、ガス出口から外れて、ガス入口をガス出口と流体連通するように配置する。同時に又は別の例において、セラミック点火装置が燃焼ガスの自己発火温度に達すると直ぐに、ガス入口は、ガス出口と流体連通するように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1Aは従来技術の熱作動式ガスバルブアセンブリの頂部斜視分解図である。
【
図1C】
図1Cは、ガス入口がガス出口と流体連通していない、第1の構成における
図1Aのガスバルブアセンブリの断面図である。
【
図1D】
図1Dは、ガス入口がガス出口と流体連通する、
図1Cのガスバルブアセンブリの断面図である。
【
図2】
図2は、互いに直列のセラミック点火装置及びセラミックヒーターと、交流源と、を備えた回路図である。
【
図3A】
図3Aは、ハウジングが取り外された状態のセラミックヒーターを備える、熱作動可能なガスバルブアセンブリの第1の実施の形態の頂部斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、ハウジングが取り外された状態のセラミックヒーターを備える、熱作動可能なガスバルブアセンブリの第2の実施の形態の頂部斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、ハウジングが取り外された状態のセラミックヒーターを備える、熱作動可能なガスバルブアセンブリの第3の実施の形態の底部斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、ハウジングが取り外された状態のセラミックヒーターを備える、熱作動可能なガスバルブアセンブリの第4の実施の形態の頂部斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、同等の抵抗を有していて且つ回路入力電圧に対してお互いに直列である、セラミック点火装置及びセラミックヒーターに渡る電位差のグラフである。
【
図7B】
図7Bは、互いに直列に接続する、セラミック点火装置及びセラミックヒーターに渡る電位差の、入力電圧に対するグラフであり、セラミックヒーターの抵抗は、セラミック点火装置の抵抗よりも著しくより低いことを示す。
【
図8】
図8は、互いに直列のセラミック点火装置及びセラミックヒーターを横切る電位差及びそれらによる消費電力の、回路入力電圧に対するグラフであり、セラミックヒーター及びセラミック点火装置は、室温抵抗の第1の比を有する。
【
図9】
図9は、互いに直列のセラミック点火装置とセラミックヒーターとに亘る電位差及びそれらによる消費電力の、回路入力電圧に対するグラフであり、セラミックヒーター及びセラミック点火装置は室温抵抗の第2の比を有する。
【
図10】
図10は、互いに直列のセラミック点火装置とセラミックヒーターとに渡る電位差及びそれらによる消費電力の、回路入力電圧に対するグラフであり、セラミックヒーター及びセラミック点火装置は室温抵抗の第3の比を有する。
【
図11】
図11は、互いに直列のセラミック点火装置及びセラミックヒーターを横切る電位差及びそれらによる消費電力の、回路入力電圧に対するグラフであり、セラミックヒーター及びセラミック点火装置は室温抵抗の第4の比を有する。
【0015】
同様の参照番号は、図中の同様の部分を指示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に説明するのは、セラミックヒーターを備える、熱作動式ガスバルブアセンブリと、その様なガスバルブアセンブリ及びセラミック点火装置を備える、ガス加熱システムと、の例である。ガスバルブアセンブリは、撓み温度に曝されると撓む、熱作動部品を備えており、それにより、ガスバルブアセンブリの出口ポートからバルブプラグを外し、出口ポートを入口ポートと流体連通するように配置する。特定の例において、セラミック点火装置は、窒化ケイ素点火装置である。同じ又は別の例において、セラミックヒーターは、窒化ケイ素ヒーターである。既知のガスバルブアセンブリと比較して、本明細書に記載されているものは、破壊に対してより耐性があり、燃焼ガスをより迅速に発火させる。
【0017】
図1Aを参照すると、従来技術のガスバルブアセンブリ20が示される。ガスバルブアセンブリ20は、ハウジング22と、ハウジング22上に適合して密閉された内部24を画定する頂部25と、を備える。密閉された内部24は、ある量の可燃性ガスを含む。ガス入口ポート38は、ガス源(図示せず)から密閉された内部24へガスを受け入れる。ガス出口ポート40は、バーナー(図示せず)に接続する。炭化ケイ素点火装置(図示せず)は、バーナーと流体連通して、ガスバルブアセンブリ20により選択的に供給される、燃焼ガスを点火する。
【0018】
熱作動部品26は、ガス出口ポート40の入口43に選択的且つ密封的に係合する、バルブプラグ42に取り付けられる。バルブプラグ42が入口43に密封的に係合する時に、ガス出口ポート40は、ガスバルブアセンブリ20の入口ポート38又はガスバルブアセンブリ20のハウジング22の内部24に流体連通せず、その場合に、可燃性ガスは、ガスバルブアセンブリ20から、ガス出口ポート40が接続するバーナーに流れない。
【0019】
熱作動部品26は、熱に応答して撓み、バルブプラグ42を、ガス出口ポート40の入口43と係合及び離脱するように移動させることが好ましい。特定の好適な例において、熱作動部品26は、熱膨張係数が異なる2つの金属から形成される、バイメタル部材アセンブリ23を備える。
図1A及び1Bの例において、バイメタル部材アセンブリ23は、2つのバイメタル部材28及び30を備えており、バイメタル部材28及び30の各々は、異なる熱膨張係数を有する、2つの金属を備える。2つの金属は、Z軸に沿ってお互いに隣接する。
【0020】
バイメタル部材アセンブリ23は、X軸に沿ってお互いに離間する、第1の端部34と第2の端部37とを有する。バイメタル部材アセンブリ23は、片持ち梁状である。第1の端部34は、リベット35を介して絶縁体ブロック36に固定的に取り付けられる。絶縁体ブロック36は、ハウジング22の内部に固定的に取り付けられる。第2の端部37は、ハウジングに固定的に取り付けられない、バルブプラグ42に直接的又は間接的のいずれかで取り付けられる。バイメタル部材アセンブリ23が撓み温度に加熱されると、第2の端部37は、Z軸に沿う方向においてガス出口ポート40の入口43から離れて移動し、ガス出口ポート40のガス入口43からバルブプラグ42を外して、ガス出口ポート40が接続する、バーナー(単数又は複数)に可燃性ガスを供給する。
【0021】
第1のバイメタル部材28は、第1の端部34において絶縁体ブロック36に取り付けられており、そして第2の端部39において第2のバイメタル部材30に取り付けられる。第1のバイメタル部材28は、X軸に沿った方向において第2のバイメタル部材30取り付けられ且つ重なる。ワイヤ抵抗ヒーター44は、第1のバイメタル部材28に沿って且つその周りを包むように提供されており、選択的に通電でき、バイメタル部材アセンブリ23を撓み温度(バイメタル部材アセンブリ23が十分に撓んで、バルブプラグ42をガス出口ポート40のガス入口43から外す温度)を超える温度に加熱する。1つの既知の例において、ワイヤ抵抗ヒーター44は、第1のバイメタル部材28の少なくとも一部の周りに巻き付けられて、X軸に沿う部材28の長さの少なくとも一部に沿って伸びる、ニッケルクロム合金コイルを備える。
【0022】
絶縁体ブロック36は、セラミック材料を備えており、そしてワイヤ抵抗ヒーター44を電気回路に配置して且つ交流源と電気的に連通するように使用される、上部リベットヘッド45a及び45bを有する、2つのリベット(別個に識別されない)を備えることが好ましい。2つのリベットの各々は、Z軸方向に沿って絶縁体ブロック36を介して伸びる。上部リベットヘッド45a及び45bは、絶縁体ブロック36とそれぞれのシリコーンOリングシール51a及び51bとを介して伸びる、それぞれのリベットの端部に配設される。絶縁体ブロック(
図1B)の下で、下部リベットヘッド48a及び48bは、それらの対応する上部リベットヘッド45a及び45bと同様に導電性である。カバー25がハウジング22と係合すると、上部リベットヘッド45a及び45bは、開口部46a及び46b(
図1B)に着座し、それらが、対応する導電性プロング47a及び47bと電気的に連通するように雲母絶縁体29を介して突出する。プロング47a及び47bは、約102VのAC rms~132VのAC rmsまでの範囲にあることが好ましい、交流源に差し込み接続する。プラスチック絶縁体42は、上部リベットヘッド45a及び45bを覆う。
【0023】
図1Bを再び参照すると、ワイヤ抵抗ヒーター44は、電気コネクタ49aを介して下部リベットヘッド48aに電気的に接続しており、それは、例えば、溶接された抵抗又はワイヤ抵抗ヒーター44の一部であってもよく、下部リベットヘッド48a、次いで下部リベットヘッド48aに溶接される抵抗まで伸長してもよい。ワイヤ抵抗ヒーター44から下部リベットヘッド48bへの接続は、接地接続であり、
図1において見えない。しかしながら、
図1Bに示されるように、中央リベット35は、例えば、リベット33と下部リベットヘッド48bとに接続する金属帯体又は溶接された抵抗であってもよい、コネクタ49bを介して下部リベットヘッド48bに電気的に接続することにより接地される。
【0024】
図1C及び1Dを参照すると、ガスバルブアセンブリ20は、ガス出口ポート40がハウジング22の内部24又はガス入口ポート38と流体連通していない、第1の動作構成(
図1C)において示される。この構成において、可燃性ガスは、ガスバルブアセンブリ20から、ガス出口ポート40が接続するバーナーに供給されない。バイメタル部材アセンブリ23は、撓みのない構成にあり、バルブプラグ42は、ガス出口ポート40のガス入口43に密封的に係合する。この第1の構成において、ワイヤ抵抗ヒーター44は、バイメタル部材アセンブリ23を撓み温度に加熱していない。
【0025】
第2の動作構成(
図1D)において、ワイヤ抵抗ヒーター44は、交流源及び炭化ケイ素点火装置と直列にそれを配置すること等により、選択的に通電される。結果として、バイメタル部材アセンブリ23は、最小撓み温度を超える温度に加熱される。バイメタル部材アセンブリ23と絶縁体ブロック36との間の片持ち梁接続により、第1のバイメタル部材28は、Z軸に沿って下向きに曲がり、それにより第2のバイメタル部材30に下向きの(Z軸)力を加える。更に、第2のバイメタル部材30はまた、第1のバイメタル部材28に対して撓み、ガス出口ポート40のガス入口43からバルブプラグ42を外す。
図1Dの第2の構成において、ガス入口ポート38は、ガス出口ポート40及びハウジング22の内部24と流体連通する。その結果、可燃性ガスは、ガス入口ポート38からガス出口ポート40を介して、ガス出口ポート40が接続する、バーナーに流れる。
【0026】
図1A~1Dの従来技術のガスバルブアセンブリ20は、正の抵抗温度係数を有する、セラミック点火装置、即ち炭化ケイ素点火装置、と共に使用されて、ガス加熱システムを形成する。オーブンキャビティに使用される、既知の熱作動可能なガスバルブアセンブリ20の特定の例において、ワイヤ抵抗ヒーター44は、熱作動部品26を撓ませて、ガス出口ポート40のガス入口43からバルブプラグ42を外すように、3.03~3.30VのAC(rms)の電位差及び3.2~3.6アンペアのrms交流を供給されなければならない。その様な場合において、熱作動部品26がガス出口ポート40のガス入口43からバルブプラグ42を外す前に、炭化ケイ素点火装置が可燃性ガスの発火温度に達するので、それにより、点火されていない燃焼ガスがバーナーに流入することを防止する。
【0027】
本開示によれば、熱作動可能なガスバルブアセンブリは、窒化ケイ素点火装置と共に使用される。炭化ケイ素点火装置とは異なり、窒化ケイ素点火装置は、正の抵抗温度係数を有する。もし現在利用可能な熱作動式ガス制御バルブに見られるタイプのワイヤ抵抗ヒーター及び120VのAC(rms)電流源と直列に配置された場合には、流れる電流が低過ぎるので、バルブプラグ42は、ガス出口ポート40のガス入口43から外れることはない。既知のワイヤ抵抗ヒーターは、バイメタル部材アセンブリ23を撓ませるのに十分な熱を提供するためには、長さを大幅且つ非現実的に伸長しなければならないであろう。
【0028】
セラミックヒーターが、ワイヤ抵抗ヒーターの代わりに使用されて十分な熱を生成し、更にガス出口ポート40からバルブプラグ42を外して、流体結合されたバーナーにバルブアセンブリから可燃性ガスを供給してもよいことが発見された。一実施の形態によれば、窒化ケイ素点火装置52が提供され、
図2に示されるように、交流源50及びセラミックヒーター54と直列に配置される。交流源は、102V~132VのrmsAC電圧を有することが好ましい。点火装置52及びヒーター54の抵抗は、ヒーター54が、バイメタル部材又は熱作動部品を形成するように使用される、部材の最小撓み温度に達する前に、点火装置52がガスの自己発火温度に達するように選択されることが好ましい(「最小撓み温度」は、ガス出口ポート40からバルブプラグ72を外すことができる最低温度である)。ヒューズ55がまた、もしセラミックヒーター54の熱作動部品が過熱してその最大撓み温度を超えてもよい、レベルに電流が達した場合に、回路を開くように設けられる。現在の熱作動可能なガスバルブアセンブリ及び炭化ケイ素点火装置は、もしヒューズが追加された場合には、ガスバルブを作動させるために利用可能な電圧がバルブを開くには不十分であろうために、ヒューズと共に使用可能ではない。図には示されないが、スイッチが、使用者がセラミック点火装置52及びセラミックヒーター54に選択的に通電することを可能にするように設けられてもよい。
【0029】
本明細書に記載のガスバルブアセンブリに関連して有用なセラミック点火装置は、米国特許出願第16/366,479号明細書に記載されるものを備えており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
図2において抵抗器52として表されているが、本明細書に記載のガス加熱システムにおいて有用なセラミック点火装置は、長さ軸を規定する長さと、幅軸を規定する幅と、厚さ軸を規定する厚さとを有する、セラミック本体を有する高温表面点火装置を備える。点火装置は、それぞれの外面を有する第1と第2のセラミックタイル(化粧レンガ)を備える。導電性インクパターンは、第1と第2のセラミックタイルの間に配設される。点火装置は、厚さ軸に沿って約1.19mm(0.047インチ)~約1.52mm(0.060インチ)、好適には約1.27(0.050)~約1.47mm(0.058インチ)、より好適には約1.32mm(0.052インチ)~約1.37mm(0.054インチ)、の厚みを有する。
図3A~3H及び米国特許出願第16/366,479号明細書の対応する本文を参照されたい。
【0031】
本明細書に記載のセラミック点火装置は一般的に、長方形の立方体の形状であり、そして2つの主要な面と、2つの小さな面と、頂部と、底部とを備える。主要な面は、セラミック点火装置本体の第1(長さ)と第2(幅)の最長の寸法により画定される。小さな面は、点火装置本体の第1(長さ)と第3(厚さ)の最長寸法により画定される。点火装置本体はまた、点火装置本体の第2(幅)と第3(厚さ)最長寸法により画定される、頂面と底面とを備える。
【0032】
点火装置タイルは、セラミックであり、窒化ケイ素を備えることが好ましい。導電性インク回路は、タイルの間に配設されており、通電すると熱を発生する。セラミックタイルは、電気絶縁性であるが、しかし所望の時間間隔内において、天然ガス、プロパン、ブタン、ブタン1400(加熱値52.16J/cm3(1400Btu/ft3)を有するブタンと空気との混合物)等の可燃性ガスを点火するために必要な外面温度に達するのに十分な熱伝導性がある。
【0033】
以下により深く詳細に説明するように、特定の例において、セラミックタイルは、窒化ケイ素と酸化イッテルビウムと二ケイ化モリブデンとを備える。同じ又は別の例において、導電性インク回路は、炭化タングステンを備えており、そして特定の具体的な実施例において、導電性インクは、酸化イッテルビウムと窒化ケイ素と炭化ケイ素とを追加的に備える。
【0034】
特定の例において、120VのACの電位差が加えられると、本明細書に記載のセラミック点火装置は、少なくとも760℃(1400°F)、好適には982℃(1800°F)以上、より好適には1149℃(2100°F)以上、そして更により好適には1166℃(2130°F)以上の表面温度に達する。これらの温度は、電位差が印加された後に、好適には8秒以内に到達し、より好適には6秒以内に到達し、更により好適には4秒以内に到達する。
【0035】
同じ又は追加の例において、本明細書のセラミック点火装置の表面温度は、定常状態の温度に達した後を含み、全波132VのAC電位差が印加された後は常に、1427℃(2600°F)を超えず、好適には1399℃(2550°F)を超えず、より好適には1371℃(2500°F)を超えず、更により好適には1343℃(2450°F)である。
【0036】
本開示によるセラミック点火装置の同じ又は別の例において、102VのACの電位差が加えられると、本明細書に記載のセラミック点火装置は、102VのAC電位差が最初に印加された後に、17秒以内、好適には10秒以内、より好適には約7秒以内において、少なくとも760℃(1400°F)、好適には少なくとも982℃(1800°F)、そして更により好適には少なくとも1149℃(2100°F)の表面温度に達する。これらの温度は、4秒以内に到達することが好ましく、3秒以内に到達することがより好ましい。
【0037】
同じ又は追加の例において、高温表面点火装置の導電性インク回路の厚さ(厚さ軸に沿って測られる)は、約0.051mm(0.002インチ)以下、好適には約0.038mm(0.0015インチ)以下、より好適には約0.023mm(0.0009インチ)以下である。同じ又は追加の例において、導電性インク回路の厚さ(厚さ軸に沿って測られる)は、約0.0089mm(0.00035インチ)以上、好適には約0.0076mm(0.0003インチ)以上、より好適には約0.0102mm(0.0004インチ)以上である。
【0038】
本開示の高温表面点火装置はまた、理論密度の、少なくとも50パーセント、より好適には少なくとも55パーセント、更により好適には理論密度の少なくとも60パーセント、のグリーンボディ密度を有することが好ましい。
【0039】
米国特許出願第16/366,479号明細書に記載されるように、本明細書に記載のガス加熱システムで使用されるセラミック点火装置は、セラミック組成物を焼結することにより調製される。焼結後に、点火装置52(導電性インク回路を含まない)を形成するように使用されるタイルは、1012Ω・cm以上、好適には1013Ω・cm以上、より好適には1014Ω・cm以上の室温抵抗率を有する。同じ又は別の例において、タイルは、482℃(900°F)以上、好適には510℃(950°F)以上、より好適には538℃(1000°F)以上の、ASTM C-1525に準拠した熱衝撃値を有する。
【0040】
導電性インク回路を備える導電性インクは、約1.4×10-4Ω・cm~約4.5×10-4Ω・cm、好適には約1.8×10-4Ω・cm~約4.1×10-4Ω・cm、より好適には約2.2×10-4Ω・cm~約3.7×10-4Ω・cm、の(焼結後の)室温抵抗率を有する。その長さに沿って一定の断面積を有する材料の場合において、よく知られる以下の数式に従って、所定の温度Tにおける抵抗率ρは、同じ温度Tにおける抵抗Rに関係する。
【0041】
【数1】
ここで、
ρ=温度Tにおける導電性回路材料の抵抗率(Ω・cm)
R=温度Tにおけるオーム(Ω)の抵抗
T=温度(°F又は℃)
A=電流の方向に垂直な導電性インク回路の断面積(cm
2)
l=電流の方向に沿った導電性インク回路の全長(cm)
【0042】
導電性回路の長さに沿って変化する断面積の場合において、抵抗は、次のように表されてもよい。
【0043】
【数2】
L=電流の方向に沿った回路の全長であり、残りの変数は数式(1)で定義された通りである。
【0044】
本明細書のセラミック点火装置を備える、セラミック本体は、窒化ケイ素と希土類酸化物焼結助剤とを備えることが好ましく、そこでは希土類元素は、イッテルビウムとイットリウムとスカンジウムとランタンとの内の1つ以上である。焼結助剤は、前述の希土類酸化物と、シリカとアルミナとマグネシアとの内の1つ以上と、から選択されるコードーパント(co-dopants)として提供されてもよい。緻密化を促進する、焼結助剤保護剤もまた具備されることが好ましい。好適な焼結助剤保護剤は、二ケイ化モリブデンである。希土類酸化物焼結助剤(コードーパント有り又は無)は、セラミック本体の、好適には約2~約15重量パーセント、より好適には約8~約14重量パーセント、そして更により好適には約12~約14重量パーセント、の範囲の量で存在する。二ケイ化モリブデンは、セラミック本体の、好適には約3~約7重量パーセント、より好適には約4~約7重量パーセント、更により好適には約5.5~約6.5重量パーセント、の範囲の量で存在する。残りは窒化ケイ素である。
【0045】
導電性インク回路は、約20Ω~約60Ω、好適には約25Ω~約55Ω、より好適には約30Ω~約50Ω、のセラミック点火装置(焼結後)の室温抵抗(RTR)をもたらすように、セラミックタイルの1つの表面に印刷されることが好ましい。同時に、1170℃(2138°F)~1482℃(2700°F)の温度範囲にわたるセラミック点火装置の高温抵抗(HTR)は、好適には約115Ω~約280Ω、好適には約120Ω~約270Ω、より好適には約128Ω~約260Ωである。
【0046】
点火装置内の導電性インクは、インク重量の、約20~約80重量パーセント、好適には約30パーセント~約80パーセント、より好適には約70~約75重量パーセント、の範囲の量の炭化タングステンを備えるべきである。窒化ケイ素は、インク重量の、約15~約40重量パーセント、好適には約15~約30重量パーセント、より好適には約18~約25重量パーセント、の範囲の量で提供されることが好ましい。セラミック本体について記載されたものと同じ焼結助剤又はコードーパントもまた、インク重量の、約0.02~約6重量パーセント、好適には約1~約5重量パーセント、より好適には約2~約4重量パーセント、の範囲の量で具備されることが好ましい。
【0047】
本出願のセラミックヒーター54(
図2)は、セラミック点火装置とほぼ同じ方法で製作される。しかしながら、セラミック点火装置52が可燃性ガスの発火温度に到達することを確実にするように、点火装置52の室温抵抗は、セラミックヒーター54のそれよりも著しくより高いことが好ましい。セラミック点火装置52及びセラミックヒーターの合計室温抵抗はまた、点火装置が可燃性ガスの自己発火温度に到達するかどうか、及びセラミックヒーターが熱作動部品56の撓み温度に到達するかどうかを決定する際にも重要である。本明細書のセラミックヒーターの室温抵抗に対する本明細書のセラミック点火装置の室温抵抗の比は、好適には約1.9~約4.0、より好適には約2.0~約3.8、更により好適には約2.2~約3.6である。同時に、1170℃(2138°F)~1482℃(2700°F)の温度範囲にわたる本明細書のセラミックヒーターの高温抵抗に対する本明細書のセラミック点火装置の高温抵抗の比は、約1.9~約8.0、好適には約2.2~約7.8、より好適には約2.5~約7.3である。同時に、セラミック点火装置52とセラミックヒーター54との室温抵抗の合計は、好適には約25Ω~約60Ω、より好適には約30Ω~約60Ω、更により好適には約35Ω~約55Ωであり、及び1170℃(2138°F)~1482℃(2700°F)の温度範囲にわたる本明細書のセラミックヒーターとセラミック点火装置との高温抵抗の合計は、約145Ω~約288Ω、好適には約150Ω~約280Ω、より好適には約170Ω~約260Ωである。
【0048】
本開示による熱作動可能なガスバルブアセンブリの例は次に、
図3A~6Bを参照して説明される。各熱作動可能なガスバルブアセンブリの各々は、ガスバルブアセンブリが、ワイヤ抵抗ヒーターの代わりにセラミックヒーターを使用してバルブを熱的に作動させること以外は、
図1A~1Dに示されるものと同様に構造化され、動作する。
図3A及び3Bを参照すると、本開示によるガスバルブアセンブリ60の第1の例が示される。ハウジング22及びカバー25(
図1A~1D)は、
図3A及び3Bには示されない。しかし、ハウジング22及びカバー25は、本例において実質的に同様であろう。バイメタル部材を備える熱作動部品66が提供されており、第1の端部74(
図3B)において絶縁体ブロック76に接続しており、第2の端部77においてバルブプラグ72に接続する。バイメタル部材66は、高熱膨張係数材料と低熱膨張係数材料とを備えており、低熱膨張係数材料は、バイメタル部材66の底部側(セラミックヒーター64に面する)にあり、そして高熱膨張係数材料は、カバー25に面するバイメタル部材66の上面(Z軸に沿ってセラミックヒーター64から離れる方向において)にある。高及び低熱膨張係数材料のこの配向により、Z軸に沿って上向きに見た時に(
図3Bのように)バイメタル部材66の底面(ヒーター64に面する表面)が凹状であるように、バイメタル部材を曲げる。
【0049】
バルブプラグ72及びコネクタ67は、高温に耐性があって且つ一体的に形成された、エラストマー構造を画定する。バルブプラグ72は、バイメタル部材の第2の端部77においてバイメタル部材66に接続しており、その際コネクタ67は、バイメタル部材66の第2の端部77の穴(図示せず)を介して挿入されて、第2の端部77をバルブプラグ72に接続する。リベット69は、熱作動部品66の第1の端部74を絶縁体ブロック76に接続する。リベット69のリベットヘッド68(
図3A)は、絶縁体ブロック76の上面の開口部80に着座する。熱作動部品66の第1と第2の端部74及び77は、長さ(X)軸に沿って離間しており、そして熱作動部品66は、Y軸に沿った幅と、Z軸に沿った厚さと、を有する。
【0050】
セラミックヒーター64は、米国特許出願第16/366479号明細書に記載されていて且つそこに記載される方法及び技術に従って製造された、窒化ケイ素高温表面点火装置に類似することが好ましい。セラミックヒーター64は、熱作動部品66の第1の端部74の近くに設けられており、熱作動部品66がZ軸に沿って、頂部25(
図1A)とセラミックヒーター64との間にあるように、Z軸に沿って熱作動部品66から離間する。Z軸の間隔は、熱作動部品66がZ軸に沿って撓んで、ガスがガス出口ポート40を通過することを可能にする時に(
図1A~1D)、熱作動部品66とセラミックヒーター64との間の接触を回避するために十分大きいことが好ましい。セラミックヒーター64は、導電性インク回路を備えた、2つの絶縁セラミックタイルからなる窒化ケイ素ヒーターであることが好ましく、導電性インク回路は、1つのタイルの一表面に印刷されており、タイルの間に挟まれることが好ましい。セラミックヒーター64は、Y軸に沿った長さと、X軸に沿った幅と、並びにZ軸に沿った厚さと、を有する。長さは、幅よりも大きく、幅は厚さよりも大きい。コネクタ84a及び84bは、Y軸に沿ってセラミックヒーター64の両端に蝋付けされ、導電性インク回路を、ガスバルブアセンブリのカバー25のプロング47a及び47bに接続する(
図1A)、端子ポスト78a及び78b(それぞれのリベットから形成された)のそれぞれの1つと電気的に連通するように設置される。分岐部分86a及び86b(
図3B)は、各コネクタ84a及び84bを端子88a及び88bに接続し、これらの端子の各々は、リベット90a及び90bの内の1つに電気的に接続する。リベット90a及び90bは、導電性金属から形成され、絶縁体ブロック76を介してZ軸に沿って伸びる。リベット69は、熱作動部品66を絶縁体ブロック76に固定する。端子ポスト78a及び78bは、Z軸に沿って絶縁体ブロック76から離れるように伸びており、それぞれのシリコーンOリングシール82a及び82bを介して伸長し、それらの下側の開口部46a及び46bを介してカバー25内に伸長して、
図1A及び1Bに関して前述したように、導電性プロング47a及び47bに電気的に接続する。
【0051】
バイメタル部材66は、コネクタ84a及び84bがバイメタル部材66と短絡しないことを確保にするために十分な余裕で、Y軸に沿ってセラミックヒーター64のY軸端部の内側に配置されることが好ましい。セラミックヒーター64は、約10.16mm(0.4インチ)~約25.4mm(1.0インチ)、好適には約12.7mm(0.5インチ)~約20.3mm(0.8インチ)、より好適には約14.0mm(0.55インチ)~約19.05mm(0.75インチ)、のY軸に沿った長さを有する。セラミックヒーター64は、約3.81mm(0.15インチ)~約8.89mm(0.35インチ)、好適には約4.57mm(0.18インチ)~約7.62mm(0.30インチ)、より好適には約6.10mm(0.24インチ)~約6.60mm(0.26インチ)、のX軸に沿った幅と、そして約0.762mm(0.030インチ)~約2.03mm(0.08インチ)、好適には1.02mm(約0.040インチ)~約1.78mm(0.070インチ)、より好適には約1.27mm(0.05インチ)~約1.52mm(0.06インチ)のZ軸に沿った厚さと、を有する。
【0052】
セラミックヒーター64は、そこに埋め込まれた導電性インクを備えるセラミック本体を画定する、セラミックタイルを備えることが好ましい。セラミック本体は、窒化物セラミックと炭化物セラミックと酸化物セラミックとから選択される少なくとも1つを備える。好適な炭化物セラミックは、炭化ケイ素と炭化チタンと炭化タンタルとを備える。好適な酸化物は、アルミナとコーディエライトとからなる群から選択される。好適な窒化物は、窒化ケイ素と窒化アルミニウムとを備える。セラミックヒーター64は、正の抵抗温度係数と正の抵抗率温度係数とを有することが好ましい。
【0053】
セラミックヒーター64を備えるセラミックタイルの間の導電性インクパターンは、焼結前に、好適には約0.0051mm(0.0002インチ)~約0.076mm(0.003インチ)、より好適には約0.0076mm(0.0003インチ)~約0.0635mm(0.0025インチ)、更により好適には約0.0102mm(0.0004インチ)~約0.051mm(0.002インチ)、の予備焼成厚さを有することが好ましい。導電性インクパターンを備えるインクは、導電性インクの約30重量パーセント以下の量の窒化ケイ素と、導電性インクの約70重量パーセント以上の量の少なくとも1つの導電性成分と、を備えており、そこでは導電性成分は、タングステンと炭化タングステンとモリブデンと二ケイ化モリブデンと窒化チタンとからなる群から選択される。
【0054】
焼結助剤はまた、導電性インクの約8重量パーセント以下、好適には導電性インクの約7重量パーセント以下、更により好適には導電性インクの約6重量パーセント以下の量で使用されてもよい。同じ又は別の例において、焼結助剤は、導電性インクの少なくとも約0.01重量パーセントの量で存在してもよい。適切な焼結助剤は、酸化物と金属と希土類酸化物とからなる群から選択される。適切な酸化物は、Y2O3とMgOとAl2O3とSiO2とを備える。適切な金属は、NiとCoとCuとPdとRuとRhとを備える。適切な希土類酸化物は、YbとScとLaとHfとを備える。セラミックヒーター54の導電性インクは、約6.5×10-5Ω・cm~約2×10-4Ω・cm、好適には8.0×10-5Ω・cm~約1.8×10-4Ω・cm、より好適には約1.0×10-4Ω・cm~約1.2×10-4Ω・cm、の焼結後の室温抵抗率を有する。導電性インクは、約5Ω~約15Ω、好適には約6Ω~約11Ω、より好適には約8Ω~約10Ωの室温抵抗を有する。定常状態(即ち、1170℃(2138°F)~約1482℃(2700°F)の温度)での高温抵抗は、約17Ω~約28Ω、好適には約19Ω~約26Ω、より好適には約23Ω~約25Ω、までである。導電性インクパターンは、インクの抵抗率の観点から所望の抵抗を達成するように選択される。
【0055】
図3A及び3Bの例において、熱作動部品は、異なる熱膨張係数を有する2つの金属から構成される、単一のバイメタル部材66であることが好ましい。撓み温度に曝された時に撓むことに適した様々なバイメタル材料の詳細は、Engineered Materials Solutionsが配布する「Thermostatic Bimetal Designer’s Guide」において提供されており、それは、本明細書においてその全体が参照により組み込まれており、そして次において入手できる。
(https://www.emsclad.com/fileadmin/Data/Divisions/EMS/Header/Bimetal_Desingers_Guide.pdf.)
【0056】
バイメタル部材は、約65.6℃(150°F)~約538℃(1000°F)、好適には約93.3℃(200°F)~約427℃(800°F)、より好適には約121℃(250°F)~約399℃(750°F)の撓み温度を有することが好ましい。
図2の回路において実装された場合に、ヒューズ55は、電流が最大撓み温度を超えるレベルを下回ることを確保するように定格決定される。
【0057】
バイメタル材料は、ガスバルブ装置の寸法と所望の撓み温度及び特性とに基づいて選択されることが好ましい。一例において、ASTMタイプTM4バイメタルが、使用されてもよい(ASTM D388-06)。TM4は、マサチューセッツ州アトルボロのEngineered Materials SolutionsからTruflex(登録商標)E4として供給される。
【0058】
一例において、バイメタル部材66は、第1の金属を備えており、第1の金属は、ニッケルとクロムと鉄とを備えており、好適には本質的にニッケルとクロムと鉄とからなり、より好適にはニッケルとクロムと鉄とからなる。同時に、バイメタル部材66は、第2の金属を備えており、第2の金属は、ニッケルと鉄とを備えており、好適には本質的にはニッケルと鉄とからなり、より好適にはニッケルと鉄とからなる。第1の金属は、バイメタル部材の約40~約60重量パーセント、好適にはバイメタル部材の約45~約55重量パーセント、より好適にはバイメタル部材の約48~約52重量パーセント、の範囲の量で存在する。好適な例において、第1の金属は、第2の金属よりも大きい熱膨張係数を有する。
【0059】
同じ又は別の例において、バイメタル部材66は、約6947kg/m3(0.25lb/in3)~約9714kg/m3(0.35lb/in3)、好適には約7500kg/m3(0.27lb/in3)~約9161kg/m3(0.33lb/in3)、より好適には約7777kg/m3(0.28lb/in3)~約8884kg/m3(0.32lb/in3)、の密度を有する。同じ又は別の例において、バイメタル部材66は、約0.159Pa(23×10-6psi)~約0.186Pa(27×10-6psi)、好適には約0.165Pa(24×10-6psi)~約0.183Pa(26.5×10-6psi)、より好適には約0.172Pa(25×10-6psi)~約0.179Pa(26×10-6psi)、の弾性係数を有する。
【0060】
同じ又は別の例において、バイメタル部材66は、約12.6×10-6℃-1(7.0×10-6°F-1)~約19.8×10-6℃-1(11.0×10-6°F-1)、好適には約13.5×10-6℃-1(7.5×10-6°F-1)~約18.9×10-6℃-1(10.5×10-6°F-1)、より好適には約15.3×10-6℃-1(8.5×10-6°F-1)~約16.2×10-6℃-1(9×10-6°F-1)、の37.8℃(100°F)~148.9℃(300°F)(ASTM D388-06に従って測定される)における屈曲性を有する。
【0061】
その様な例によれば、バイメタル部材66は、約25.4mm(1.0インチ)~約76.2mm(3.0インチ)、好適には約31.8mm(1.25インチ)~約69.9mm(2.75インチ)、より好適には約38.1mm(1.5インチ)~約60.3mm(2.375インチ)まで、の長さ(X軸に沿って)を有する。同時に、バイメタル部材66は、約5.08mm(0.200インチ)~約15.9mm(0.625インチ)の幅と、約0.305mm(0.012インチ)~約0.559mm(0.022インチ)、好適には約0.356mm(0.014インチ)~0.508mm(0.020インチ)、より好適には約0.406mm(0.016インチ)~約0.457mm(0.018インチ)、の厚さ(Z軸に沿った)と、を有する。
【0062】
ガス加熱システムは、ガスバルブアセンブリ60のガス出口ポート40をバーナーと流体連通するように配置することにより、及び前述したタイプのセラミック点火装置52(
図2)をセラミックヒーター54と交流源とに直列に配置することにより、提供されてもよい。交流電源は、102V以上で且つ132V以下のAC rms電圧を有することが好ましい。その様なシステムのための例示的な電気回路は、前述のように、
図2に提供される。
【0063】
ガスバルブアセンブリ70(ハウジング22及びカバー25が取り外される状態)の第2の例が、
図4A及び4Bに示される。ガスバルブアセンブリ70は、熱作動部品以外の全ての点において
図3A及び3Bのガスバルブアセンブリ60と同一である。ガスバルブアセンブリ70は、バイメタル部材アセンブリ96を備える、熱作動部品を備える。バイメタル部材アセンブリ96は、第1のバイメタル部材98と第2のバイメタル部材100とを備える。バイメタル部材アセンブリ96の第1の端部97は、X軸に沿って、バイメタル部材アセンブリ96の第2の端部99から離間する(
図4B)。第1のバイメタル部材98の第1の端部97はまた、バイメタル部材アセンブリ96の第1の端部97であり、そして第2のバイメタル部材100の第2の端部99はまた、バイメタル部材アセンブリ96の第2の端部99である。第1のバイメタル部材98は、第1のバイメタル部材98の第2の端部105がX軸に沿ってバイメタル部材98の第1の端部97から離間する状態で、片持ち梁方式でリベット69により第1の端部97において絶縁体ブロック76の下側に固定される。第1のバイメタル部材98の一部が、X軸に沿って第2のバイメタル部材の一部と重なるように、第1のバイメタル部材の第2の端部105は、第2のバイメタル部材100の第1の端部107に取り付けられる。第2のバイメタル部材100の第2の端部99は、
図3A及び3Bに関して前述したように、コネクタ67によりバルブプラグ72に取り付けられる。
【0064】
図4A及び4Bの場合において、高熱膨張係数及び低熱膨張係数の材料の配向は、第1のバイメタル部材98及び第2のバイメタル部材100においてお互いに逆である。第1のバイメタル部材98において、低熱膨張係数材料は、Z軸に沿ってセラミックヒーター64に面しており、高熱膨張係数材料は、セラミックヒーター64から離れて面する。しかし、第2のバイメタル部材100において、高熱膨張係数材料が、Z軸に沿った方向においてヒーター64に向かって面するのに対して、低熱膨張係数材料は、Z軸に沿った方向においてセラミックヒーター64から離れて面する。高膨張合金及び低膨張合金のこのZ軸転置法は、バイメタル部材アセンブリ96の所与の長さに対してバルブプラグ72のZ軸撓みを減少させる手段を提供する。
【0065】
初期温度T1から加熱された後に撓み温度T2に曝される、単純な片持ち梁要素(
図3A及び3Bのバイメタル部材66等)は、次の関係に従って、自由端部においてZ軸に沿って量Bだけ撓む。
【0066】
【数3】
ここで、
B=片持ち梁部材の自由端部のZ軸撓み(インチ)
T
2-T
1=温度変化(°F)
L=片持ち梁部材の長さ(インチ)
F=屈曲性(°F
-1)
t=Z軸厚さ(インチ)
図3A~B及び
図6A~B(以下で説明)の設計におけるZ軸撓みは、上記の数式を使用して計算できる。
【0067】
図4A及び4Bを参照すると、第1のバイメタル部材98の高熱膨張係数合金が頂部に向けられていて(Z軸に沿ってカバー25に面する)、且つ第2のバイメタル部材100において、高熱膨張係数合金が底部に配置される(Z軸に沿ってカバー25から離れる方向を向く)、逆片持ち梁要素を設計することも可能である。第1のバイメタル部材98及び第2のバイメタル部材100の長さは、等しい必要はなく、同じことがそれらのそれぞれの厚さについても当てはまる。次の関係は、厚さと長さとが異なる2つの異なる材料により作られていて且つ重ね溶接された片持ち梁要素を説明するために使用される。
【0068】
【数4】
ここで、
B=片持ち梁部材の自由端部のZ軸撓み(インチ)
T2-T1=温度変化(°F)
F
a=第1のバイメタル部材98の屈曲性
F
b=第2のバイメタル部材100の屈曲性
t
a=第1のバイメタル部材98のインチ単位の厚さ
t
b=第2のバイメタル部材100のインチ単位の厚さ
a=X軸に沿った第1のバイメタル部材98のインチ単位の長さ
b=X軸に沿った第2のバイメタル部材100のインチ単位の長さ
各バイメタル部材98及び100の長さ及び厚さを変えることにより、上記の数式を利用することにより、Z軸撓み(B)は、最適化可能である。
図1A~D及び
図4A~5Bの設計におけるZ軸撓みは、上記の数式2を使用して計算できる。
【0069】
図5A及び5Bを参照すると、ハウジング22及びカバー25が取り外された、熱作動可能なガスバルブアセンブリ75の第3の例が、示される。熱作動可能なガスバルブアセンブリ75は、ガスバルブアセンブリ75が異なる熱作動部品を有するという点で、アセンブリ60及び70とは異なるが、しかし別の全ての点において同じである。熱作動部品は、第1のバイメタル部材105を備える、バイメタル部材アセンブリ104であり、第1のバイメタル部材105は、一般的に長方形の形状であるが、しかし第1のバイメタル部材105が切り欠き107を備える。切り欠き107は、バイメタル部材構成部106a及び106bを画定しており、バイメタル部材構成部106a及び106bの各々は、各部材構成部106a及び106bのX軸の長さが部材構成部106a及び106bのそれぞれのY軸の幅を超えるように、X軸に沿った長さとY軸に沿った幅とを有する。切り欠き107は、第1のバイメタル部材105の熱質量を減少させ、バイメタル部材アセンブリ104の応答時間を改善する。バイメタル部材構成部106a及び106bのX軸の長さは、各バイメタル部材構成部106a及び106bのY軸の幅と同様に、等しいことが好ましい。第1のバイメタル部材105の近位端部74(
図5A)もまた、バイメタル部材アセンブリ104の近位端部でもあり、単一である(複数のバイメタル部材構成部に分割されていない)。バイメタル部材アセンブリの近位端部74(
図5A)は、前述のように、リベット69を使用して絶縁体ブロック76に固定される。第1のバイメタル部材105の遠位端部79(
図5A)もまた、単一であり、第2のバイメタル部材108の近位端部109に重なる。
【0070】
第2のバイメタル部材108は、バイメタル部材アセンブリ104の遠位端部77をバルブプラグ72に固定するようにリベット67が通って配設される、遠位端部開口部を除いて単一である。各バイメタル部材105及び108は、バイメタル部材66(
図3A~3B)及びバイメタル部材アセンブリ96(
図4A~4B)と同じバイメタル材料により構成されることが好ましい。
【0071】
例示的なガスバルブアセンブリ60、70及び75において、セラミックヒーター64は、その長手(最長寸法)がバイメタル部材66又はバイメタル部材アセンブリ96、104の長手(最長寸法)に直交するように配向されるので、セラミックヒーター64の最長寸法は、Y軸に沿って伸長する一方で、バイメタル部材66又はバイメタル部材アセンブリ96、104の最長寸法は、X軸に沿って伸長する。この配置の1つの利点は、リベット90a及び90bに接触するようにヒーター端子88a及び88bを曲げる必要がないことである。
図3A~3B、4A~4B、及び5A~5Bの各々に示されるように、コネクタ84a及び84bは、端子88a及び88bと同様に、X軸に沿った長さを有しており、そこではコネクタ84a及び84bの長さは、それらのそれぞれのY軸幅又はZ軸厚さよりも長い。この配置が有益である一方で、別の配置もまた使用されてもよい。
【0072】
図6A及び6Bを参照すると、ガスバルブアセンブリ101が示される(ハウジング22及びカバー25が取り外される状態で)。
図6A及び6Bにおいて、ガスバルブアセンブリ101は、セラミックヒーター120がセラミックヒーター64の代わりに設けられる点において、
図3Bのガスバルブアセンブリ60とは異なる。セラミックヒーター120は、セラミックヒーター64について説明したものと同じセラミック材料と導電性インクとを備える。しかし、セラミックヒーター120は、X軸に沿って配向された、即ちバイメタル部材66の長さ軸に平行な、長さを有する。セラミックヒーター120は、X軸に沿って遠位端部123から離間する、近位端部121(
図6B)を有する。近位端部121において、コネクタ122a及び122bは、セラミックヒーター120の側縁部に蝋付けされており、Y軸に沿ってお互いに離間する。端子124a及び124bはそれぞれ、対応するコネクタ122a及び122bに接続しており、そしてコネクタ122a及び122bに対して垂直に配向される。各端子124a及び124bは、対応するリベット90a及び90bに電気的に接続して、バイメタル部材66を絶縁体ブロック76に固定する。バイメタル部材66がガス出口ポート40からバルブプラグ72を外すように撓む時、及び同様にバイメタル部材66が撓まない状態にある時に、バイメタル部材66がセラミックヒーター120に接触しないように、セラミックヒーター120は、Z軸に沿ってバイメタル部材66から離間することが好ましい。しかしながら、
図3A~3B、4A~4B及び5A~5Bの例とは対照的に、セラミックヒーター120は、バイメタル部材66に沿う位置まで、X軸に沿って伸長しており、その位置において、ガスバルブアセンブリの出口ポート40を入口ポート38(
図1A~1D)と流体連通するように配置する時に、幾らかのZ軸撓みが生じる。従って、バイメタル部材66が、撓む時に、セラミックヒーター120を損傷させることを防ぐ程度まで、セラミックヒーターは、Z軸に沿ってバイメタル部材66から離間することが好ましい。
【0073】
ガスを点火する方法が、以下で、
図3A~3Bを参照して説明される。しかしながら、それは、
図3A~6Bのガスバルブアセンブリのいずれにも等しく適用可能である。前に示したように、ガスバルブアセンブリは、
図1A~1Dのハウジング22と頂部25とを備えると想定されるが、しかしさもなければ
図3A~6Bに示されるように修正される。この方法によれば、燃焼ガス源は、セラミック点火装置(図示されない)と選択的に流体連通するように配置される。燃焼ガス源は、例えば、燃焼ガス源をガスバルブアセンブリの入口ポート38(
図1A)に流体結合することにより、及びセラミック点火装置の近くに配置された1つ以上のガスオリフィスを有する、バーナーにガス出口ポート40を流体結合することにより、セラミック点火装置と選択的に流体連通するように配置されるであろう。
【0074】
セラミック点火装置は、それが燃焼ガスの発火温度以上の表面温度に達するように通電されており、そしてセラミックヒーターが通電されて、バイメタル部材66を撓ませ、バルブプラグ72を、ガス出口ポート40の入口43と係合するシールから外れるように引き、その時点において、ガス出口ポート40は、ガスバルブアセンブリ(
図1A)の内部24と、ガスバルブアセンブリのガス入口ポート38(
図1A)と、に流体連通する。ガスバルブアセンブリ20が点火装置と流体連通するように配置される前に、セラミック点火装置が、燃焼ガス発火温度に到達することが好ましい。
【0075】
セラミック点火装置及びセラミックヒーターは、
図2に示されるように、102V~132Vのrms電圧を有する、交流源と直列にセラミック点火装置及びセラミックヒーターを配置することにより通電される。この電源電圧の回路への印加は、セラミック点火装置を横切って、少なくとも約75V、好適には少なくとも80V、より好適には少なくとも約85Vの電位差を印加することが好ましく、更に電源電圧の回路への印加はまた、セラミックヒーターを横切って、少なくとも約12V、好適には少なくとも約15V、より好適には少なくとも約20V、の電位差を印加することが好ましい。同時に、セラミック点火装置の消費電力は、少なくとも約45W、好適には少なくとも約50W、より好適には少なくとも約55Wであることが好ましい一方で、セラミックヒーターの消費電力は、約7.5W~約20W未満、好適には約10W~約20W未満、より好適には約15W~約20W未満であることが好ましい。同時に、バルブプラグ72がガス出口ポート40から確実に外れるように、セラミックヒーターの消費電力は、少なくとも8W、好適には少なくとも8.5W、より好適には少なくとも9Wであることが好ましい。前述の値において、セラミック点火装置及びセラミックヒーター(それらは同じ電流を有する)に供給されるrms電流は、約400mA~約700mA、好適には約450mA~約650mA、より好適には約500mA~約600mAであることが好ましい。一例において、本方法は、オーブンキャビティにおいて実行される。
【0076】
図2に反映されるように且つ前述のように、お互いに且つ交流源に直列に配置される場合に、セラミックヒーター52、64、120及びセラミック点火装置52の抵抗の合計(及びそれらの比)は、セラミック点火装置52が発火温度に到達するかどうか、及びそれ(抵抗の合計(及びそれらの比))が、許容可能な時間枠内に到達するかどうかを決定する。抵抗の合計及び比はまた、セラミックヒーター52、64、120が、バイメタル部材66又はバイメタル部材アセンブリ96、104を過熱及び損傷することなく、バイメタル部材66又はバイメタル部材アセンブリ96、104の撓み温度に到達するかどうかを決定する。点火装置及びヒーターの抵抗を変化させたことの影響は、次の例において示される。
【0077】
(例)
以下の例において、セラミックヒーターは、
図12に示されるように、セラミック点火装置及び交流源と直列に配置される。セラミックヒーターへの入力電圧は、V
inである。セラミックヒーターからの出力電圧は、V
OUTとして表される。従って、セラミックヒーターを横切る電位差は、V
in-V
OUTである。セラミック点火装置への入力電圧は、V
OUTであり、セラミック点火装置からの出力電圧は、ゼロ(接地)である。R1は、セラミックヒーターの抵抗であり、そしてR2は、セラミック点火装置の抵抗である。
【0078】
オームの法則によれば、セラミックヒーターへのrms入力電圧は、以下のように、セラミックヒーター及びセラミック点火装置の各々へのrms電流に関連付けることができる。
【0079】
【数5】
ここで、
V
in=セラミックヒーターrms入力電圧(ボルト)
I=セラミックヒーター及びセラミック点火装置へのrms電流(アンペア)
R1=セラミックヒーター抵抗(オーム)
R2=セラミック点火装置抵抗(オーム)
セラミックヒーターへの入力電圧及びセラミックヒーターからの出力電圧(セラミック点火装置への入力電圧である)は、次のように分圧器の数式を使用して関連付けられてもよい。
【0080】
【0081】
(例1)
図7A~7Bを参照すると、室温抵抗R1=42Ωを有する、セラミックヒーターが提供されており、同様に2つのセラミック点火装置が提供されており、一方は、R2=34Ωの室温抵抗を有し、もう一方は、92Ωの室温抵抗を有する。各点火装置は、
図12に示されるように、ヒーターと交流源とを備えた回路に別々に配置されており、そしてAC電源からの入力電圧(V
in)が変化する。ヒーターを横切る理想的な電位差(V
in-V
OUT)は、数式(3)から計算されており、やはり点火装置を横切る電位差(V
OUT-0=V
OUT)と同様に測定される。点火装置及びヒーターの両方のためのセラミック本体は、82重量パーセントの窒化ケイ素と、13重量パーセントの酸化イッテルビウムと、5重量パーセントの二ケイ化モリブデンと、により構成される。インク組成物は、セラミック点火装置とセラミックヒーターとの両方用であり、75重量パーセントの炭化タングステンと、20重量パーセントの窒化ケイ素と、2重量パーセントの炭化ケイ素と、である。点火装置及びヒーターの導電性インクの厚さは、抵抗を、指定された値に制御するように変更される。
【0082】
図7Aは、数式(6)により予測された(且つ測定された)、R1=42Ω及びR2=34Ωの場合の入力電圧V
inに対するセラミックヒーターとセラミック点火装置とを横切る定常状態電位差を示す。
図7Aの上部のグラフ(「V1理想値」)及びデータポイントの上部のセットは、セラミックヒーターを横切る電位差(V
in-V
OUT)を表す。
図7Aの下部のグラフ(「V2理想値」)及び下部のデータポイントのセットは、セラミック点火装置を横切る電位差(V
out)を表す。
【0083】
図7Bは、数式(6)により予測された(且つ測定された)、R1=42Ω及びR2=94Ωの場合の入力電圧V
inに対する、セラミックヒーター及びセラミック点火装置間の定常状態電位差を示す。
図7Aの上部のグラフ(「V2理想値」)及びデータポイントの上部のセットは、セラミック点火装置を渡る定常状態電位差(V
OUT)を表す一方で、下部のグラフ(「V1理想値」)及びデータポイントの下部のセットは、セラミックヒーターを渡る定常状態電位差(V
in-V
OUT)を表す。セラミック点火装置の室温抵抗(R2)が、セラミックヒーターの室温抵抗(R1)よりも大幅に大きい場合に、ヒーターに対する点火装置を横切る総電位差(V
in)の比は、入力電圧(V
in)の増加と共に増加する。測定された電位差と数式(6)により予測された電位差との間の偏差は、窒化ケイ素セラミックヒーター及び点火装置が正の抵抗温度係数を有するという事実に起因することが予想されており、つまり、抵抗は、温度とともに増加する。従って、点火装置が著しくより高い室温抵抗を有する場合(
図7B)に、点火装置は、より高い熱量を比例して生成し、それによりその抵抗を、セラミックヒーターのそれよりも速い速度で増加させる。対照的に、室温の抵抗の大きさが同じである場合に、点火装置及びヒーターは、同じ速度で加熱され、それらのそれぞれの電位差を数式(6)に、より厳密に準拠させる。
【0084】
以下の例において、セラミック点火装置は、オーブンキャビティにおいて使用されており、102VのrmsAC~130VのrmsACの範囲の入力電圧(rms)において、1170℃(2138°F)~1482℃(2700°F)の所望の定常状態温度を有する。同時に、セラミックヒーター(
図12のR1)は、同じ範囲の入力電圧V
inにわたって、約93.3℃(200°F)~538℃(1000°F)の定常状態のバイメタル部材の撓み温度を有する。所望の定常状態温度を達成するために必要な点火装置最小消費電力は、少なくとも45Wである。バイメタル部材の最大撓み温度を下回るためのヒーター最大消費電力は、20W以下である。所望の温度を達成するために、点火装置の室温抵抗R1のヒーターのそれ(室温抵抗)R2に対する比は、好適には約1.9~約4.0、より好適には約2.0~約3.8、更により好適には約2.2~約3.6である。同時に、セラミック点火装置及びセラミックヒーターの室温抵抗の合計は、好適には約25Ω~約60Ω、より好適には約30Ω~約60Ω、更により好適には約35Ω~約55Ωである。
【0085】
(例2)
セラミックヒーター(
図12)が、提供されており、タイル間に埋め込まれた導電性インク回路を備える、2つの窒化ケイ素セラミックタイルを備える。導電性インク回路の室温抵抗率は、1.1×10
-4Ω・cmであり、回路の厚さは、約13ミクロンである。室温抵抗は、14Ωである。導電性インクは、100重量パーセントのタングステンにより構成される。
【0086】
セラミック点火装置(
図12)が提供されており、タイル間に埋め込まれた導電性インク回路を備える、2つの窒化ケイ素タイルを備える。導電性インクの室温抵抗率は、3.5×10
-4Ω・cmであり、回路の厚さは、約25ミクロンである。導電性インクは、75重量パーセントの炭化タングステンと、20重量パーセントの窒化ケイ素と、3重量パーセントの酸化イッテルビウムと、2重量パーセントの窒化ケイ素と、により構成される。室温抵抗R2は、31Ωである。セラミックヒーター及び点火装置は、
図12に示すように、お互いに且つ交流源に直列に配置される。室温抵抗比R2/R1は、2.2であり、室温抵抗の合計R1+R2は、45Ωである。
【0087】
本例及び以下の例において、点火装置及びヒーターの両方のためのセラミック本体は、82重量パーセントの窒化ケイ素と、13重量パーセントの酸化イッテルビウムと、5重量パーセントの二ケイ化モリブデンと、からなる。
図12を参照すると、入力rms電圧(V
in)は、0~130Vrmsまで変化する。ヒーター(R1)及び点火装置(R2)を横切るオーム単位の抵抗が、測定され、ヒーター(V1)と点火装置(V2)を横切る電圧の電位差も、同様である。rms電流I(アンペア)もまた測定され、点火装置及びヒーターに関して同じである。ヒーターの消費電力P1(ワット)及び点火装置の消費電力P2(ワット)もまた、決定される。結果は、表1及び
図8に示される。
【0088】
【表1】
この場合において、100Vのrmsにおける点火装置消費電力P2は、僅か約38Wであり、所望の定常状態温度に到達するために必要な電力よりも少ない。更に、130Vにおいて、ヒーター消費電力P2は、21Wであり、これは、約536℃(997°F)の過度のバイメタル部材温度に対応する。従って、抵抗R1とR2との組み合わせは、セラミック点火装置及び熱作動式ガスバルブアセンブリのための要件を満たさない。
【0089】
(例3)
1.1×10-4Ω・cmの室温抵抗率を有するセラミックヒーターが、提供される。その導電性インク回路は、100重量パーセントのタングステンを備えており、厚さは、17ミクロンの厚さを有する。室温抵抗R1は、9Ωである。
【0090】
室温抵抗率3.5×10
-4Ω・cmを有するセラミック点火装置が、提供される。その導電性インク回路は、75重量パーセントの炭化タングステンと、20重量パーセントの窒化ケイ素と、3重量パーセントの酸化イッテルビウムと、2重量パーセントの炭化ケイ素と、を備える。回路の厚さは、約25ミクロンである。室温抵抗R2は、32Ωである。セラミックヒーター及びセラミック点火装置は、
図12に示すように、お互いに且つ交流源と直列に配置される。入力電圧V
inは、0~130VのAC rmsまで変化し、消費電力と電流と電圧と抵抗とは、例2のように決定される。結果は、表2及び
図9に提供される。
【0091】
【0092】
100V~130VのAC rmsまで、点火装置の消費電力P2は、45Wを超えており、そしてヒーターの消費電力P1は、ガスがバーナーに流れることを可能にするために8Wを超えるが、依然として、熱作動部品が過熱することを防ぐように20W未満のままである。従って、点火装置は、ヒーターが最大バイメタル部材撓み温度を超えない一方で、その所望の発火温度に到達するのに十分な電力を有する。従って、室温抵抗の比R2/R1が3.6であって且つ室温抵抗の合計R1+R2が41Ωである、R1とR2のこの組み合わせは、所望の点火装置及び熱作動式ガスバルブの要件を達成する。
【0093】
(例4)
2.9×10-4Ω・cmの室温抵抗率を有する、セラミックヒーターが、提供される。その導電性インク回路は、100%炭化タングステンを備えており、厚さは、約17ミクロンである。室温抵抗R1は、25Ωである。
【0094】
セラミック点火装置は、3.5×10
-4Ω・cmの室温抵抗率を備えるように提供される。その導電性インク回路は、75重量パーセントの炭化タングステンと、20重量パーセントの窒化ケイ素と、3重量パーセントの酸化イッテルビウムと、2重量パーセントの炭化ケイ素と、を備える。回路の厚さは、約20ミクロンである。室温抵抗R2は、42Ωである。室温抵抗の比R2/R1は、1.7であり、室温抵抗の合計R1+R2は、67Ωである。入力電圧V
inは、0~130VのAC rmsまで変化し、消費電力と電流と電圧と抵抗とは、例2のように決定される。結果は、表3及び
図10に示される。
【0095】
【0096】
ヒーターが20Wのその最大の所望の電力消費量を超えないが、130Vの電源電圧Vinにおいてでさえも、点火装置は、その所望の発火温度に到達するように、45Wのその最小の所望の電力消費量に到達できない。これは主に、回路の総抵抗R1+R2が高いことによる。従って、R1とR2のこの組み合わせは、所望の点火装置及び熱作動式ガスバルブの基準を満たさない。
【0097】
(例5)
2.8×10-4Ω・cmの室温抵抗率を有する、セラミックヒーターが、提供される。その導電性インク回路は、84重量パーセントの炭化タングステンと、12重量パーセントの窒化ケイ素と、3重量パーセントの酸化イッテルビウムと、2重量パーセントの炭化ケイ素と、を備える。回路の厚さは、約17ミクロンである。室温抵抗R1は、37Ωである。
【0098】
セラミック点火装置は、3.5×10-4Ω・cmの室温抵抗率を備えるように提供される。導電性インク回路は、75重量パーセントの炭化タングステンと、20重量パーセントの窒化ケイ素と、3重量パーセントの酸化イッテルビウムと、2重量パーセントの炭化ケイ素と、を備える。回路の厚さは、約20ミクロンである。室温抵抗R2は、42Ωである。室温抵抗の比R2/R1は、1.1であり、室温抵抗の合計R1+R2は、79Ωである。
【0099】
入力電圧V
inは、0~130VのAC rmsまで変化し、消費電力と電流と電圧と抵抗とは、例2のように決定される。結果は、表4及び
図11に提供される。
【0100】
【0101】
点火装置の消費電力P2は、102V~130VのAC rmsまでの入力電圧(Vin)の範囲にわたって点火装置の点火要件を満たすには低過ぎる。更に、ヒーターの消費電力が、120VのAC rms以上で高過ぎるため、バイメタル部材の最大撓み温度を超える温度に結果的になるであろう。従って、抵抗R1とR2のこの組み合わせは、セラミック点火装置又は熱作動式ガスバルブの要件を満たさない。
【0102】
前述の例は、3.6の室温抵抗比R2/R1及び41Ωの室温全抵抗R1+R2が、所望の点火装置及び熱作動式ガスバルブ性能を達成することを示す。45Ωの全抵抗における2.2の比R2/R1は、十分ではなかった。但し、もし例2の熱作動部品が最大撓み温度が538℃(1000°F)を超えるバイメタル部材により製作される場合には、45Ωの全抵抗における2.2の比は、十分であってもよい。
【国際調査報告】