(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(54)【発明の名称】III型受容体チロシンキナーゼ阻害剤としてのヘテロ環式ピラゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 495/04 20060101AFI20221017BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20221017BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221017BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221017BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221017BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20221017BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20221017BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20221017BHJP
A61K 31/541 20060101ALI20221017BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20221017BHJP
A61K 31/4162 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C07D495/04 103
A61K31/4439
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K31/5377
A61K31/496
A61K31/541
C07D519/00 CSP
A61K31/4162
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511322
(86)(22)【出願日】2020-08-22
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 US2020047552
(87)【国際公開番号】W WO2021041276
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507275235
【氏名又は名称】ディヴェロップメント センター フォー バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ペン, シャオ-ツェン
(72)【発明者】
【氏名】リャオ, チュ-ビン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, フン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, ユアン-ティン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, イ-メイ
(72)【発明者】
【氏名】パン, ユ-チ
【テーマコード(参考)】
4C071
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071AA08
4C071BB01
4C071CC02
4C071CC21
4C071EE22
4C071FF04
4C071GG02
4C071GG05
4C071GG10
4C071JJ05
4C071JJ06
4C071JJ07
4C071JJ08
4C071LL01
4C072MM08
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB27
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
(57)【要約】
タンパク質キナーゼ、とりわけ、FLT3、PDGFRα、c-KIT及び/又はCSF-1Rキナーゼ等のクラスIII RTKによって媒介される疾患又は障害の処置のための、そのようなキナーゼの阻害剤として作用し得る化合物は、式(I):
【化1】
の構造又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、タンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)の結合剤を有する。化合物は、FLT3、PDGFR、c-KIT及び/若しくはCSF-1Rキナーゼによって媒介される、又はFLT3、PDGFR、c-KIT及び/若しくはCSF-1Rキナーゼの変異体キナーゼによって媒介される、疾患又は状態の処置において使用され得る。そのような疾患又は状態は、がん、自己免疫疾患及び骨吸収性疾患を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
Xは、CR
2及びNR
3からなる群から選択され、
Yは、CR
2及びNR
3からなる群から選択され、
Gは、任意選択で置換されているアリール、任意選択で置換されているヘテロアリール、任意選択で置換されているヘテロシクリル、アルキニル及び直接結合からなる群から選択され、
Lは、-CH=、-CHR
4-、-(CH
2)
q-、-NR
5-、-O-、-O(CH
2)
q-、-C(O)-、-C(O)(CH
2)
q-、-SO
2-及び直接結合からなる群から選択され、各qは、個々に及び独立的に、1~4の整数であり、
Zは、水素、重水素、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4アルキルアミン、C
1~C
4ジアルキルアミン、任意選択で置換されているヘテロシクリル及びヘテロ環式スピロ化合物からなる群から選択され、
R
1は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルキルアミノ及びC
1~C
6ジアルキルアミノからなる群から選択され、
R
2は、水素、重水素、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
3~C
6シクロアルキル、C
5~C
6シクロアルケニル、C
1~C
6アルキルアミノ、C
1~C
6ジアルキルアミノ、C
3~C
6シクロアルキルアミノ、C
1~C
6アルコキシ、C
3~C
6シクロアルコキシ、アリール、3~6員のヘテロシクリル及び5~6員のヘテロアリールからなる群から選択され、前記アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアミノ、シクロアルコキシ、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールは、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アシル、アシルオキシ、C
1~C
4アルキル、ヒドロキシルC
1~C
4アルキル、アルコキシC
1~C
4アルキル、アシルオキシC
1~C
4アルキル、C
1~C
4アルコキシ、C
1~C
4ジアルキルアミノ、C
3~C
6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクリル、アリール及び5~6員のヘテロアリールにより任意選択で置換されており、
R
3は、水素、重水素、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルキルカルボニル、C
2~C
6アルケニルカルボニル、C
1~C
6アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、C
1~C
6アルキルアミノカルボニル及びC
1~C
6ジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択され、
R
4は、重水素及びC
1~C
6アルキルからなる群から選択され、
R
5は、水素及びC
1~C
6アルキルからなる群から選択される)
の化合物又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、タンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)の結合剤。
【請求項2】
式(II)
【化2】
のものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(III)
【化3】
のものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(IV)
【化4】
のものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式(V)
【化5】
のものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
環Gが、任意選択で置換されているアリール、任意選択で置換されているヘテロアリール、任意選択で置換されているヘテロシクリル又はアルキニルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
環Gが、
【化6】
(式中、
R
6は、水素、重水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、C
1~C
6アルキルアミノC
1~C
6アルキル、C
1~C
6ジアルキルアミノC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルキルアミノ、C
1~C
6アルコキシC
1~C
6アルキル、C
1~C
6ジアルキルアミノ、C
1~C
6アルコキシ、カルボン酸、C
1~C
6アルコキシカルボニル、C
1~C
6アルキルアミノカルボニル及びC
1~C
6ジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択され、
各nは、個々に及び独立的に、0~4の整数であり、
R
7は、水素、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル及びC
1~C
6アルキルカルボニルからなる群から選択される)
からなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Zが、フッ素、塩素、臭素、ジメチルアミノ、又は任意選択で置換されている4、5、6若しくは7員のヘテロ環式若しくはヘテロ環式スピロ化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Zが、
【化7】
(式中、
R
8は、水素、重水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、4-モルホリニル、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、C
1~C
6アルキルアミノ、C
1~C
6ジアルキルアミノ、C
1~C
6アルコキシ、カルボン酸、C
1~C
6アルコキシカルボニル、C
1~C
6アルキルアミノカルボニル及びC
1~C
6ジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択され、
各nは、個々に及び独立的に、0~4の整数であり、
R
9は、水素、重水素、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、C
1~C
6アルコキシカルボニル、C
1~C
6アルキルアミノカルボニル及びC
1~C
6ジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択される)
からなる群から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
3-(1H-インダゾール-5-イル)-6-(6-メトキシピリジン-3-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
3-(1H-インダゾール-6-イル)-6-(6-メトキシピリジン-3-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
5-(3-(1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-2-アミン、
6-(6-メトキシピリジン-3-イル)-3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
N,N-ジメチル-5-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-2-アミン、
4-(4-(3-(1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
(2S,6R)-4-(4-(3-(1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)-2,6-ジメチルモルホリン、
4-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
(2S,6R)-2,6-ジメチル-4-((5-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-2-イル)メチル)モルホリン、
4-((5-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-2-イル)メチル)モルホリン、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(6-メチルピリジン-3-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
(2S,6R)-2,6-ジメチル-4-(3-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
4-(3-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(3-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)(4-メチルピペラジン-1-イル)メタノン、
(2R,6S)-4-((5-(3-(1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-2,6-ジメチルモルホリン、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(2-メチルピリジン-4-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
4-((5-(3-(1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-2-イル)メチル)モルホリン、
((2S,6R)-2,6-ジメチルモルホリノ)(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)メタノン、
4-(1-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)エチル)モルホリン、
(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)(モルホリノ)メタノン、
4-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェネチル)モルホリン、
(5-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-2-イル)(モルホリノ)メタノン、
4-(2-メトキシ-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
4-(2-フルオロ-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
4-(2-メチル-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
4-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)-2-(トリフルオロメチル)ベンジル)モルホリン、
4-(1-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)プロピル)モルホリン、
4-(3-メトキシ-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
3-(1H-インダゾール-6-イル)-6-(6-メチルピリジン-3-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
(5-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-3-イル)(モルホリノ)メタノン、
4-(3-フルオロ-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(6-メチルピリジン-3-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)(ピペリジン-1-イル)メタノン、
4-(4-(3-(1-イソブチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
3-(1H-インダゾール-5-イル)-6-(6-メチルピリジン-3-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
(3-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)(モルホリノ)メタノン、
(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)(ピロリジン-1-イル)メタノン、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(4-(チオモルホリノメチル)フェニル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
5-(3-(1H-インダゾール-5-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-2-アミン、
(5-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリミジン-2-イル)(モルホリノ)メタノン、
4-(4-(3-(1-イソプロピル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
(2-メトキシ-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)(モルホリノ)メタノン、
(2-フルオロ-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)(モルホリノ)メタノン、
5-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリミジン-2-アミン、
メチル-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)(モルホリノ)メタノン、
4-((4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)スルホニル)モルホリン、
(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)チオフェン-2-イル)(モルホリノ)メタノン、
N,N-ジメチル-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンズアミド、
N,N-ジメチル-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンゼンスルホンアミド、
4-((5-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)チオフェン-2-イル)メチル)モルホリン、
4-((4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)チオフェン-2-イル)メチル)モルホリン、
4-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
(2S,6R)-2,6-ジメチル-4-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
4-((6-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-3-イル)メチル)モルホリン、
(2-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-4-イル)(モルホリノ)メタノン、
(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)-3,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-イル)(モルホリノ)メタノン、
tert-ブチル-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピペリジン-1-カルボキシレート、
4-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン-3-オン、
(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)(モルホリノ)メタノン、
1-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)ピペリジン-2-オン、
3-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)オキサゾリジン-2-オン、
4-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)ピペラジン-2-オン、
1-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)ピロリジン-2-オン、
1,3-ジメチル-4-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)ピペラジン-2-オン、
4-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェネチル)モルホリン-3-オン、
6-(4-((3,3-ジフルオロピロリジン-1-イル)メチル)フェニル)-3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
4-(4-(3-(3-ブロモ-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
4-(2-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェノキシ)エチル)モルホリン、
4-(2-(3-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェノキシ)エチル)モルホリン、
4-(3-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)プロパ-2-イン-1-イル)モルホリン、
N-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-アミン、
N-メチル-N-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-アミン、
(R)-3-メチル-4-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
(S)-3-メチル-4-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(4-((テトラヒドロ-4H-ピラン-4-イリデン)メチル)フェニル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(4-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)フェニル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)モルホリン、
4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)モルホリン-3-オン、
4-(1-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)ピペリジン-4-イル)モルホリン、
4-(4-(3-(3-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
4-(5-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-2-イル)モルホリン、
3-(1H-インダゾール-6-イル)-6-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
6-(2-クロロピリジン-4-イル)-3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(2-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-4-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
4-(2,3-ジフルオロ-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
4-(4-(3-(1-メチル-1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
4-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)-3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)モルホリン、
4-(3-メチル-4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)モルホリン、
5-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-2-アミン、
N,N-ジメチル-1-(5-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-2-イル)メタンアミン、
N,N-ジメチル-1-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)フェニル)メタンアミン、
4-((6-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピリジン-3-イル)メチル)モルホリン、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(ピペリジン-4-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
4-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)-1,4-オキサゼパン、
1-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ピペリジン-1-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(4-(ピロリジン-1-イルメチル)フェニル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-6-(4-(ピペリジン-1-イルメチル)フェニル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
1-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)ピペラジン-2-オン、
6-(4-(3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール-6-イル)ベンジル)-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン、
6-(4-(アゼチジン-1-イルメチル)フェニル)-3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、
6-(4-((3,3-ジフルオロアゼチジン-1-イル)メチル)フェニル)-3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール、又は
6-(4-((3-メトキシアゼチジン-1-イル)メチル)フェニル)-3-(1-メチル-1H-インダゾール-6-イル)-1,4-ジヒドロチエノ[2’,3’:4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピラゾール
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体、又はそのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤若しくはキャリア、又はタンパク質標的化モジュールとを含む、医薬組成物。
【請求項12】
FLT3、PDGFR、c-KIT及び/若しくはCSF-1Rキナーゼによって媒介される、又はFLT3、PDGFR、c-KIT及び/若しくはCSF-1Rキナーゼの変異体キナーゼによって媒介される、疾患又は障害の処置における使用のための、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
FLT3、PDGFR、c-KIT及び/若しくはCSF-1Rキナーゼによって媒介される、又はFLT3、PDGFR、c-KIT及び/若しくはCSF-1Rキナーゼの変異体キナーゼによって媒介される、疾患又は障害を処置するための方法であって、必要とする対象に治療有効量の請求項11に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項14】
前記疾患又は障害が、がんである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記がんが、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、多形性膠芽腫、骨の巨細胞腫、非小細胞性肺がん、腱鞘の巨細胞腫、他の組織への腫瘍の転移、骨髄線維症、色素性絨毛結節性滑膜炎又は消化管間質腫瘍からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[0001]本発明は、新規の化学化合物並びに療法及び調製における該化合物の使用のための方法に関する。特に、本発明は、ある特定の置換ヘテロ環式ピラゾール化合物、並びに、FLT3、PDGFR、c-KIT及び/又はCSF-1R並びにそれらの関連シグナル伝達経路等のIII型受容体チロシンキナーゼの、阻害、調節及び/又は変調における該化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]タンパク質キナーゼ(PK)は、分化、増殖、遊走、生存及びアポトーシス等の種々の細胞機能を調節する細胞シグナル伝達経路において、重要な役割を果たす。これらの酵素は、ATPからタンパク質基質のチロシン、セリン又はスレオニン残基へのリン酸基の移動を触媒する。キナーゼによるリン酸化及びホスファターゼによる脱リン酸化は、多様な細胞内又は細胞外シグナル、細胞機能の調節、及び細胞操作の活性化又は不活性化に応答する無数の細胞プロセスに関与する。受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、タンパク質キナーゼのサブファミリーであり、FLT3、PDGFR、c-KIT及びCSF-1Rを含むIII型受容体チロシンキナーゼファミリーとして公知であるRTKのクラスは、種々の増殖性及び炎症性疾患に関係するとされてきた。
【0003】
[0003]III型受容体チロシンキナーゼの小分子阻害剤は、自己免疫疾患の処置のための新たな療法への、及び自然免疫系によって媒介される慢性組織破壊を特にブロックするための、合理的なアプローチを提供する。その上、III型受容体チロシンキナーゼの阻害は、がんの処置のための、とりわけ、がん侵襲性、がん血管新生又は脈管形成、がん転移、及びがん免疫寛容の処置のための、新たな療法への合理的なアプローチも提供する。
【0004】
[0004]FLT3(Fms様チロシンキナーゼ3、Flk2とも呼ばれる)及びそのリガンド(FL)は、正常造血の調節因子の1つであり、FLT3の活性化突然変異又は過剰発現は、AMLにおいて高頻度で見られる。十数を超える公知のFLT3阻害剤が開発されており、そのうちのいくつかは、有望な臨床効果を示し、FLT3変異体陽性AMLの処置のための承認を得ている。FLT3受容体は、樹状細胞前駆体の大部分においても発現され、FLT3受容体の刺激は、これらの前駆体の増殖及び樹状細胞(DC)への分化を引き起こす。樹状細胞は、自己反応性免疫応答を含むT細胞媒介性免疫応答の主要な開始剤であるため、FLT3の阻害は、下方調節DC媒介性炎症及び自己免疫応答のための機構を提供する。一つの研究は、FLT3阻害剤CEP-701が、多発性硬化症のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)において、ミエリン喪失を低減させる際に有効であることを示す。高レベルのFLT3リガンドは、ランゲルハンス細胞組織球増加症及び全身性エリテマトーデスを有する患者の血清において見られる。この観察は、それらの自己免疫疾患において、樹状細胞前駆体の異常調節におけるFLT3シグナリングをさらに暗示する。
【0005】
[0005]PDGFR(血小板由来成長因子受容体)及びそのリガンド(PDGF)は、主に間葉起源の細胞の細胞増殖、生存、分化及び遊走を調節する。PDGF受容体(PDGFR)の過剰発現若しくは増幅、機能獲得型点突然変異、又は活性化染色体転座を含むPDGF経路の異常が、がん、線維症、神経学的状態及びアテローム性動脈硬化症等の幅広い病態において観察されており、疾患処置の潜在的標的となっている。
【0006】
[0006]c-KIT(幹細胞成長因子受容体、SCFRとしても公知である)及びそのリガンド(SCF)は、種々の発達段階における造血、配偶子形成及びメラニン形成系統内での細胞の増殖、分化又は遊走を誘発する。c-KIT突然変異の存在は、消化管間質腫瘍(GIST)にとって鍵となる診断マーカーである。c-Abl媒介性慢性骨髄性白血病のために当初承認された最初のFDA承認受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤であるグリーベック(メシル酸イマチニブ又はSTI571)は、2002年にc-KIT媒介性GISTのためのFDA承認を獲得し、GISTの処置のためのc-KIT阻害の分子ベースのアプローチを検証してきた。c-KITにおける機能獲得型突然変異は、マスト細胞/骨髄性白血病及びセミノーマ/未分化胚細胞腫にも関連する。c-KIT突然変異は、ある特定の黒色腫においても同定されており、黒色腫のための潜在的治療標的として認識されている。
【0007】
[0007]CSF-1R(マクロファージコロニー刺激因子受容体(M-CSFR)又はFmsとしても公知である)は、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF又はCSF-1)のための受容体である。CSF-1/CSF-1Rは、単核食細胞系統の細胞の、生存、増殖及び分化を調節する一次成長因子である。複数の研究が、CSF-1/CSF-1Rは腫瘍組織においてある特定の役割を果たすことを実証している。CSF-1R及び/又はそのリガンドの発現又は活性化の上昇が様々ながんにおいて見られており、M-CSFのレベルの上昇は、ある特定のがんにおける予後不良に関連する。M-CSFは、腫瘍血管新生及び転移への腫瘍進行に寄与する腫瘍に関連するマクロファージ(TAM)の動員に関係するいくつかのサイトカインのうちの1つである。CSF-1Rの活性化は、破骨細胞前駆体の増殖及び分化にもつながり、それにより、骨吸収のプロセスを媒介する。したがって、CSF-1Rの阻害は、がん、とりわけ、がん浸潤、血管新生、転移、免疫寛容及び骨転移の処置を提供する。破骨細胞生物学における役割により、CSF-1Rは、骨粗鬆症、炎症性関節炎及び他の炎症性骨侵食のための重要な治療標的でもある。
【0008】
[0008]種々のチロシンキナーゼ阻害剤が有用な治療薬であることが示されているが、III型キナーゼ阻害剤が依然として必要である。
【発明の概要】
【0009】
[0009]本発明は、キナーゼ、とりわけ、FLT3、PDGFRα、c-KIT及び/又はCSF-1Rキナーゼ等のクラスIII RTKによって媒介される疾患又は障害の処置のための、そのようなキナーゼを阻害する新規の阻害剤に関する。本発明の阻害剤は、FLT3、PDGFR、c-KIT又はCSF-1Rキナーゼによって媒介されるヒト疾患を含む、他の哺乳動物の疾患の処置においても有用性を見出している。そのような疾患は、限定されないが、がん、自己免疫疾患及び骨吸収性疾患を含む。
【0010】
[0010]本発明の実施形態は、ある特定のヘテロ環式ピラゾール化合物が、III型受容体チロシンキナーゼファミリーのメンバー(例えば、FLT3、PDGFR、c-KIT及びCSF-1R)の活性を阻害し得るという予想外の所見に基づく。化合物は、医学的処置、医薬組成物、並びに、FLT3、PDGFR、c-KIT及び/又はCSF-1Rキナーゼの野生型及び/又は突然変異型を含む、FLT3、PDGFR、c-KIT及び/又はCSF-1Rキナーゼの活性を変調するための方法において有用である。これらの特性は、これらのヘテロ環式ピラゾール化合物が、タンパク質チロシンキナーゼ関連疾患及び/又は状態を処置する際に使用されることを可能にする。
【0011】
[0011]本発明の実施形態によれば、化合物は、一般式I:
【化1】
又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、タンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)の結合剤(式中、
Xは、CR
2及びNR
3からなる群から選択され、
Yは、CR
2及びNR
3からなる群から選択され、
Gは、任意選択で置換されているアリール、任意選択で置換されているヘテロアリール、任意選択で置換されているヘテロシクリル、アルキニル及び直接結合からなる群から選択され、
Lは、-CH=、-CHR
4-、-(CH
2)
q-、-NR
5-、-O-、-O(CH
2)
q-、-C(O)-、-C(O)(CH
2)
q-、-C(O)NH-、-SO
2-及び直接結合からなる群から選択され、各qは、個々に及び独立的に、1~4の整数であり、
Zは、水素、C1~C4アルキル、C1~C4アルキルアミン、C1~C4ジアルキルアミン、並びに任意選択で置換されているヘテロシクリル、及びヘテロ環式スピロ化合物からなる群から選択され、
R
1は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルアミノ及びC1~C6ジアルキルアミノからなる群から選択され、
R
2は、水素、重水素、ハロゲン、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、C5~C6シクロアルケニル、C1~C6アルキルアミノ、C1~C6ジアルキルアミノ、C3~C6シクロアルキルアミノ、C1~C6アルコキシ、C3~C6シクロアルコキシ、アリール、3~6員のヘテロシクリル及び5~6員のヘテロアリールからなる群から選択され、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアミノ、シクロアルコキシ、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールは、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アシル、アシルオキシ、C1~C4アルキル、ヒドロキシルC1~C4アルキル、アルコキシC1~C4アルキル、アシルオキシC1~C4アルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ジアルキルアミノ、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクリル、アリール及び5~6員のヘテロアリールにより任意選択で置換されており、
R
3は、水素、重水素、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルカルボニル、C2~C6アルケニルカルボニル、C1~C6アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、C1~C6アルキルアミノカルボニル及びC1~C6ジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択され、
R
4は、水素、重水素及びC1~C6アルキルからなる群から選択され、
R
5は、水素及びC
1~C
6アルキルからなる群から選択される)
を有し得る。
【0012】
[0012]別の態様において、本発明の実施形態は、式Iの化合物、その立体異性体、互変異性体、溶媒和物、プロドラッグ又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容されるキャリア、賦形剤又は添加剤とをそれぞれ含む、医薬組成物を提供する。
【0013】
[0013]別の態様において、本発明の実施形態は、哺乳動物において、FLT3、PDGFR、c-KIT及び/又はCSF-1Rキナーゼ等のIII型受容体チロシンキナーゼを阻害するための方法を提供する。本発明の方法は、それを必要とする前記哺乳動物に治療有効量の式Iの化合物を投与するステップを含む。
【0014】
[0014]本発明の別の態様において、本発明の実施形態は、ユビキチン経路を介する、哺乳動物におけるFLT3、PDGFR、c-KIT及び/又はCSF-1Rキナーゼ等のIII型受容体チロシンキナーゼの分解のための、タンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)の結合剤を提供する。タンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)は二塩基分子の一種であり、細胞内のタンパク質分解選択性によって誘発された不要なタンパク質を除去することが可能である。PROTACは、2つのタンパク質結合部分からなり、一方はE3ユビキチンリガーゼのためであり、他方は標的タンパク質(本明細書において記述されている結合剤)のためである。2つのタンパク質を結合することにより、PROTACは、標的タンパク質をE3リガーゼへ移動させ、プロテアソームによるその後の分解のための標的タンパク質の標識化(すなわち、ユビキチン化)をもたらす。多くの分子は、国際公開第2019/140003A1号において開示されている通り、ヌトリン、メチル-ベスタチン、VHLリガンド、サリドマイド、ポマリドマイド及びレナリドマイド等の種々のE3ユビキチンリガーゼと結合することが公知であり、その開示は、参照により組み込まれる。これらのE3リガーゼ結合剤のいずれかを、本発明の化合物とカップリングしてもよい。カップリング反応の間隔及び容易さを実現するために、2つの結合部分の間にリンカーを使用してもよい。リンカーの一部の例は、国際公開第2019/140003号において見ることができる。加えて、Burslemらは、低ナノモル濃度のタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)を介するタンパク質分解を標的とする受容体チロシンキナーゼの能力によって触発された。Burslemらは、公知のFLT3阻害剤キザルチニブを動員要素として用い、最適化されたリンカーを介してフォン・ヒッペル-リンドウ(VHL)リガンドを設置して、FLT3 PROTACを開発した。化合物FLT3 PROTACは、MOLM-14細胞及びMV4-11細胞において低ナノモル濃度でFLT3-ITDタンパク質分解を有効に誘発した(J.Am.Chem.Soc.2018;140:16428~16432)。
【0015】
[0015]別の態様において、本発明の実施形態は、哺乳動物において、線維症、骨関連疾患、がん、自己免疫障害、炎症性疾患及び心血管疾患から選択される疾患又は障害を処置するための方法を提供する。本発明の方法は、それを必要とする前記哺乳動物に治療有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む。
【0016】
[0016]別の態様において、本発明の実施形態は、哺乳動物における、線維症、骨関連疾患、がん、自己免疫障害、炎症性疾患及び心血管疾患から選択される疾患又は障害の処置のための医薬の製造における、式Iの化合物の使用を提供する。
【0017】
[0017]別の態様において、本発明の実施形態は、哺乳動物における、線維症、骨関連疾患、がん、自己免疫障害、炎症性疾患及び心血管疾患から選択される疾患又は障害の処置における、式Iの化合物の使用を提供する。
【0018】
[0018]別の態様において、本発明の実施形態は、式Iの化合物を調製するための中間体を提供する。一実施形態において、式Iのある特定の化合物を、式Iの他の化合物の調製のための中間体として使用してもよい。
【0019】
[0019]別の態様において、本発明の実施形態は、本明細書において記述されている化合物を調製するためのプロセス、該化合物の分離の方法及び精製の方法を提供する。
【0020】
[0020]本発明の他の態様及び利点は、以下の記述及び添付の請求項から明らかとなるであろう。
【詳細な説明】
【0021】
定義
[0021]付随する構造及び式で例が例証されている、ある特定の実施形態を詳細に参照する。列挙されている実施形態について記述されるが、本発明をそれらの実施形態に限定することを意図していないことが理解されるべきである。それどころか、本発明は、請求項によって定義される通りの本発明の範囲内に含まれることができる、すべての代替物、修正形態及び均等物を網羅することが意図されている。当業者ならば、本発明の実践において使用され得る、本明細書において記述されているものと同様又は同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。本発明は、本明細書において記述されている方法及び材料に決して限定されない。組み込まれた文献及び同様の材料のうちの1つ又は複数が、定義されている用語、用語の用法、記述されている技術等を含むがこれらに限定されない本出願と異なる又は矛盾する場合には、本出願が優先するものとする。
【0022】
[0022]用語「アルキル」は、別段の定めがない限り、1~20個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝鎖状の一価飽和炭化水素を指す。本明細書における数値範囲は、個々の数字が別個に開示されているかのように、定義された範囲内の任意の数字(複数可)を含むことが意図されている。例えば、1~20個の炭素のアルキル基は、C1、C2、・・・C20、及びC1~C20、C1~C15、C1~C10、C1~C6、C1~C4等を含むであろう。アルキルの例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル及びt-ブチルを含むがこれらに限定されない。
【0023】
[0023]用語「アルケニル」は、2~20個の炭素原子(例えば、C2~C10)及び1つ又は複数の二重結合を含有する直鎖状又は分枝鎖状の一価炭化水素を指す。アルケニルの例は、エテニル、プロペニル、アリル及び1,4-ブタジエニルを含むがこれらに限定されない。
【0024】
[0024]用語「アルキニル」は、2~20個の炭素原子(例えば、C2~C10)及び1つ又は複数の三重結合を含有する直鎖状又は分枝鎖状の一価炭化水素を指す。アルキニルの例は、エチニル、1-プロピニル、1-及び2-ブチニル、並びに1-メチル-2-ブチニルを含むがこれらに限定されない。
【0025】
[0025]用語「アルコキシ」は、-O-アルキルラジカルを指し、アルキル部は、上記で定義されている通りである。アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ及びtert-ブトキシを含むがこれらに限定されない。
【0026】
[0026]用語「アシルオキシ」は、-O-C(O)-Rラジカルを指し、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール又はヘテロアリールであり得る。
【0027】
[0027]用語「アミノ」は、NH2を指す。用語「アルキルアミノ」は、-N(R)-アルキルラジカルを指し、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール又はヘテロアリールであり得る。
【0028】
[0028]用語「シクロアルキル」は、3~30個の炭素原子を有する(例えば、C3~C6又はC3~C12)一価飽和炭化水素環系を指す。シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル及びアダマンタニルを含むがこれらに限定されない。
【0029】
[0029]用語「シクロアルケニル」は、3~30個の炭素(例えば、C3~C6又はC3~C12)及び1つ又は複数の二重結合を有する一価非芳香族炭化水素環系を指す。例は、シクロペンテニル、シクロヘキセニル及びシクロヘプテニルを含む。
【0030】
[0030]用語「ヘテロシクロアルキル」は、1個又は複数のヘテロ原子(O、N、S又はSe等)を有する、一価非芳香族5~8員の単環式、8~12員の二環式又は11~14員の三環式環系を指す。ヘテロシクロアルキル基の例は、ピペラジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ジオキサニル、モルホリニル及びテトラヒドロフラニルを含むがこれらに限定されない。
【0031】
[0031]用語「ヘテロシクロアルケニル」は、1個又は複数のヘテロ原子(O、N、S又はSe等)及び1つ又は複数の二重結合を有する、一価非芳香族5~8員の単環式、8~12員の二環式又は11~14員の三環式環系を指す。
【0032】
[0032]用語「アリール」は、一価6-炭素単環式、10-炭素二環式又は14-炭素三環式芳香族環系を指す。アリール基の例は、フェニル、ナフチル及びアントラセニルを含むがこれらに限定されない。
【0033】
[0033]用語「アリールオキシ」は、-O-アリールを指す。用語「アリールアミノ」は、-N(R)-アリールを指し、Rは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール又はヘテロアリールであり得る。用語「ヘテロアリール」は、1個又は複数のヘテロ原子(O、N、S又はSe等)を有する、一価芳香族5~8員の単環式、8~12員の二環式又は11~14員の三環式環系を指す。ヘテロアリール基の例は、ピリジル、フリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チエニル、キノリニル、インドリル、チアゾリル、ピロリル、イソキノリニル、プリニル、オキサゾリル、ピラゾリル及びカルバゾリルを含むがこれらに限定されない。すべてのこれらの用語において、「アリール」部は、上記で定義されている通りである。
【0034】
[0034]用語「ハロゲン」は、F、Cl、Br又はIを指す。好ましくは、ハロゲンは、F、Cl又はBrである。
【0035】
[0035]上述のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、アリール及びヘテロアリールは、置換又は非置換部分であってもよい。アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリール及びヘテロアリール上の可能な置換基は、C1~C10アルキル、C2~C10アルケニル、C2~C10アルキニル、C3~C20シクロアルキル、C3~C20シクロアルケニル、C1~C20ヘテロシクロアルキル、C1~C20ヘテロシクロアルケニル、C1~C10アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、アミノ、C1~C10アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシ、ハロ、オキソ(O=)、チオキソ(S=)、チオ、C1~C10アルキルチオ、アリールチオ、C1~C10アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アシルアミノ、アミノアシル、アミノチオアシル、アミジノ、メルカプト、アミド、チオウレイド、チオシアナト、スルホンアミド、グアニジン、ウレイド、シアノ、ニトロ、アシル、チオアシル、アシルオキシ、カルバミド、カルバミル(-C(O)NH2)、カルボキシル(-COOH)及びカルボン酸エステルを含むがこれらに限定されない。他方では、アルキル、アルケニル又はアルキニル上の可能な置換基は、C1~C10アルキルを除く上記で挙げた置換基のすべてを含む。シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール及びヘテロアリールは、互いに縮合することもできる。
【0036】
[0036]本明細書において提供されるのは、FLT3、PDGFR、c-KIT及び/又はCSF-1Rキナーゼ等のIII型受容体チロシンキナーゼによって(又は関連して)変調される/媒介される、疾患、状態及び/又は障害の処置又は予防において有用な、化合物及びその医薬組成物である。
【0037】
[0037]本発明の一部の実施形態は、式I:
【化2】
(式中、
Xは、CR
2及びNR
3からなる群から選択され、
Yは、CR
2及びNR
3からなる群から選択され、
Gは、任意選択で置換されているアリール、任意選択で置換されているヘテロアリール、任意選択で置換されているヘテロシクリル、アルキニル及び直接結合からなる群から選択され、
Lは、-CHR
4-、-(CH
2)
q-、-NR
5-、-O-、-O(CH
2)
q-、-C(O)-、-C(O)(CH
2)
q-、-C(O)NH-、-SO
2-及び直接結合からなる群から選択され、各qは、個々に及び独立的に、1~4の整数であり、
Zは、水素、C1~C4アルキル、C1~C4アルキルアミン、C1~C4ジアルキルアミン、任意選択で置換されている4、5及び6員の環状アミン、並びに任意選択で置換されているヘテロシクリル、及びヘテロ環式スピロ化合物からなる群から選択され、
R
1は、水素、重水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルアミノ及びC1~C6ジアルキルアミノからなる群から選択され、
R
2は、水素、重水素、ハロゲン、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C6シクロアルキル、C5~C6シクロアルケニル、C1~C6アルキルアミノ、C1~C6ジアルキルアミノ、C3~C6シクロアルキルアミノ、C1~C6アルコキシ、C3~C6シクロアルコキシ、アリール、3~6員のヘテロシクリル及び5~6員のヘテロアリールからなる群から選択され、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアミノ、シクロアルコキシ、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールは、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アシル、アシルオキシ、C1~C4アルキル、ヒドロキシルC1~C4アルキル、アルコキシC1~C4アルキル、アシルオキシC1~C4アルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ジアルキルアミノ、C3~C6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクリル、アリール及び5~6員のヘテロアリールにより任意選択で置換されており、
R
3は、水素、重水素、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルカルボニル、C2~C6アルケニルカルボニル、C1~C6アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、C1~C6アルキルアミノカルボニル及びC1~C6ジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択され、
R
4は、水素、重水素、C1~C6アルキルからなる群から選択され、
R
5は、水素及びC
1~C
6アルキルからなる群から選択される)の化合物又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、タンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)の結合剤
を提供する。
【0038】
[0038]当業者ならば、上記の式(I)において、異なる置換基のすべての可能な組合せ又は順列は本発明の範囲内であることが分かるであろう。これらの化合物は、容易に入手可能な材料/試薬及び公知の化学反応を使用して調製することができる。当技術分野における一般的な知識及び本開示における教示に基づき、当業者は、必要以上の実験をすることなく、これらの化合物を調製及び使用することができるはずである。
【0039】
[0039]下記の反応スキーム、スキーム1~スキーム6は、式(I)の化合物を調製するために使用され得る例示的な手順を提供する。しかしながら、当業者ならば、これらの例が例証のみのためであること及び本発明の範囲から逸脱することなく修正又は変形が可能であることが分かるであろう。本発明の実施形態に従って合成されたヘテロ環式ピラゾール化合物は、フラッシュカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、結晶化又は任意の他の好適な方法によって等、任意の公知の技術を用いて精製されてもよい。
【化3】
【0040】
[0040]ボロン酸又はボロネート(1.2当量)を、1,4-ジオキサン/水(5:1)中の2-ブロモ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-4-オン(1.0当量)の溶液に添加した。K
2CO
3(2当量)及び鈴木カップリングPd(II)又はPd(0)触媒(5~8mol%)(例えば、Pd(dppf)Cl
2、Pd(PPh
3)
4又はPd(OAc)
2等)を溶液に添加した。次いで、得られた混合物を還流下で加熱した。反応が完了した後、水を添加し、溶液を酢酸エチルで抽出した。有機層をMgSO
4で乾燥させ、真空中で蒸発させた。クロマトグラフィーによる精製後に最終化合物が得られた。
【化4】
【0041】
[0041]60%水素化ナトリウム(NaH、1.3当量)を、窒素雰囲気下、テトラヒドロフラン(THF、0.2M)中のイミダゾール活性エステル(1.1当量)及びジヒドロ-シクロペンタ[b]チオフェン-4-オン誘導体(1.0当量)の懸濁液に添加した。次いで、反応物を4時間にわたって還流下で加熱した。反応の完了後、反応物を0℃にて酢酸(HOAc、1.5当量)でクエンチした。次いで、得られた黄色沈殿物を濾過し、水及び冷メタノールで洗浄した。次いで、固体を真空下で乾燥させて、所望の1,3-ジケトン化合物を産出した。
【化5】
【0042】
[0042]ヒドラジン水和物(3当量)を、エタノール(EtOH、0.2M)中のジケトン(1当量)及び酢酸(HOAc、5当量)の懸濁液に添加した。次いで、反応物を6時間にわたって還流下で加熱した。反応が完了した後、次いで、得られた黄色沈殿物を濾過し、水及び冷メタノールで洗浄した。次いで、固体を真空下で乾燥させて、所望のピラゾール化合物を産出した。
【化6】
【0043】
[0043]60%水素化ナトリウム(NaH、1.3当量)を、窒素雰囲気下、テトラヒドロフラン(THF、0.2M)中のイミダゾール活性エステル(1.1当量)及びジヒドロ-シクロペンタ[b]チオフェン-4-オン誘導体(1.0当量)の懸濁液に添加した。次いで、反応物を4時間にわたって還流下で加熱した。反応の完了後、反応物を0℃にて酢酸(AcOH、1.5当量)でクエンチした。次いで、得られた沈殿物を濾過し、水及び冷メタノールで洗浄した。次いで、固体を真空下で乾燥させて、所望の1,3-ジケトン化合物を産出した。
【化7】
【0044】
[0044]ヒドラジン水和物(3当量)を、エタノール(EtOH、0.2M)中のジケトン(1当量)及び酢酸(HOAc、5当量)の懸濁液に添加した。次いで、反応物を6時間にわたって還流下で加熱した。反応が完了した後、次いで、得られた沈殿物を濾過し、水及び冷メタノールで洗浄した。次いで、固体を真空下で乾燥させて、所望のピラゾール化合物を産出した。
【化8】
【0045】
[0045]ボロン酸又はボロネート(1.2当量)を、1,4-ジオキサン/水(5:1)中のピラゾール誘導体(1.0当量)の溶液に添加した。炭酸カリウム(K2CO3、2当量)及び正規の鈴木カップリングPd(II)又はPd(0)触媒(5~8mol%)(例えば、Pd(dppf)Cl2、Pd(PPh3)4又はPd(OAc)2等)を溶液に添加した。次いで、得られた混合物を還流下で加熱した。反応が完了した後、水を添加し、溶液を酢酸エチルで抽出した。有機層をMgSO4で乾燥させ、真空中で蒸発させた。クロマトグラフィーによる精製後に最終化合物が得られた。
【0046】
[0046]上記の反応スキームは、本発明のヘテロ環式ピラゾール化合物をどのように調製することができるかを例証する。当業者ならば、関与する反応及びこれらの反応において使用される試薬は、当技術分野において公知であることが分かるであろう。したがって、上記の教示及び当技術分野における一般的な知識に基づき、本明細書において定義されている通りの種々の置換基を持つヘテロ環式ピラゾール化合物は、発明に関する努力をすることなく、当業者によって調製され得る。
【0047】
[0047]式Iの化合物は、FLT3、PDGFR、c-KIT及び/又はCSF-1Rキナーゼ等のIII型受容体チロシンキナーゼの新規の強力な阻害剤を表し、これらのキナーゼの作用によって生じる障害の予防及び処置において有用となることができる。
【0048】
[0048]式Iの化合物は、線維症、骨関連疾患、がん、自己免疫障害、炎症性疾患及び心血管疾患から選択される疾患又は障害の処置において、治療的価値を持つことがある。
【0049】
[0049]本発明の一部の実施形態に従って、式Iの化合物は、線維性疾患の処置に有用である。線維症の例は、特発性肺線維症(IPF)、腎性全身性線維症(NSF)、肝硬変、糖尿病誘発性腎症、心筋線維症(例えば、心内膜心筋線維症)、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、クローン病、ケロイド形成、強皮症及び全身性強皮症を含む。線維性疾患の追加の例は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)、原発性胆汁性肝硬変、エタノール肝硬変、間質性線維症及び尿細管萎縮(CAD)、増殖性硝子体網膜症並びに瘢痕化(肥大型及びケロイド)を含む。
【0050】
[0050]本発明の一部の実施形態に従って、式Iの化合物は、転移性骨疾患、処置誘発性骨量減少、骨粗鬆症、関節リウマチ、強直性脊椎炎、パジェット病及び歯周病を含む骨関連疾患の処置に有用である。骨粗鬆症は、(1)女性における閉経、(2)男性若しくは女性における老化、(3)ピーク骨量に達することができないという結果をもたらした小児期及び青年期の間の最適ではない骨の成長、並びに/又は(4)他の病態、摂食障害、薬剤及び/若しくは医学的処置(例えば、グルココルチコイドによる処置、アロマターゼ阻害療法又は抗アンドロゲン療法の結果として)に続発する骨量減少に起因することがある。
【0051】
[0051]本発明の実施形態に従って処置され得る他の溶骨性疾患は、より限局性である。特定の例は、転移性腫瘍誘発性骨溶解である。転移性腫瘍誘発性骨溶解の状態において、骨がん又は骨転移は、疼痛、骨の虚弱及び骨折を引き起こす、限局性骨溶解を誘発する。そのような限局性骨溶解は、骨中により大きな腫瘍のための空間を作り、骨基質から成長因子を放出することにより、腫瘍が大きく成長することも可能にする。腫瘍誘発性骨溶解を引き起こすことが現在公知であるがんは、血液系悪性腫瘍(例えば、骨髄腫及びリンパ腫)及び固形腫瘍(例えば、乳、前立腺、肺、腎臓及び甲状腺)を含み、いずれも本発明が処置を企図している。
【0052】
[0052]本発明の一部の実施形態に従って、式Iの化合物は、がん及び増殖性障害の処置に有用である。例は、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、多形性膠芽腫、骨の巨細胞腫(骨芽細胞腫(osteoclastome)としても公知である)、腱鞘の巨細胞腫(腱滑膜巨細胞腫又はTGCTとしても公知である)、他の組織への腫瘍の転移、骨髄線維症及び色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)等の他の慢性骨髄増殖性疾患を含む。
【0053】
[0053]本発明の一部の実施形態に従って、式Iの化合物は、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、成人スティル病、糸球体腎炎、骨粗鬆症、シェーグレン症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、ランゲルハンス細胞組織球増加症、血球貪食症候群、多中心性細網組織球症及びパジェット病を含むがこれらに限定されない、自己免疫障害及び炎症性疾患の処置に有用である。自己免疫疾患及び障害の追加の例は、原発性硬化性胆管炎及び移植片拒絶反応(肝臓、腎臓及び心臓/肺移植術を含む)を含む。
【0054】
[0054]本発明の一部の実施形態に従って、式Iの化合物は、心血管疾患の処置に有用である。心血管疾患の例は、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、冠動脈疾患、虚血/再灌流、高血圧症、再狭窄、肺動脈高血圧症及び動脈炎を含む。心血管疾患の追加の例は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、動静脈(AV)瘻孔開存及び静脈閉塞疾患(HSC/BMT後)を含む。
【0055】
[0055]本明細書において記述されているヘテロ環式ピラゾール化合物は、例えば、コア芳香族環と結合している置換基中に、非芳香族二重結合及び1つ又は複数の不斉中心を含有してもよい。したがって、これらの化合物は、ラセミ体及びラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマー、ジアステレオマー混合物、並びにシス又はトランス異性体形態として存在してもよい。すべてのそのような異性体形態は、本発明の範囲内である。本発明のヘテロ環式ピラゾール化合物は、塩、特に薬学的に許容される塩を形成することができる、酸性又は塩基性官能基を(例えば、置換基群に)有してもよい。そのような塩の形成は、製薬業界における通常の業務である。本発明のヘテロ環式ピラゾール化合物とともに使用してもよい塩の例は、例えば、塩基性官能基では、塩化物、硫酸塩、メシル酸塩(mesylaye)、ベシル酸塩、トシル酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩等を含む。そのようなヘテロ環式ピラゾール塩は、本発明の範囲内である。同様に、酸性又は塩基性基は、例えばエステルに官能化されることがある。そのような官能化された誘導体は、インビボで加水分解されることになる。したがって、そのような誘導体は、本発明のヘテロ環式ピラゾール化合物のプロドラッグとして機能することができる。プロドラッグの形成は、通常の技量のみを伴い、当業者ならば、必要以上の実験をすることなく、そのようなプロドラッグをどのようにして調製及び使用するかを知っているであろう。
【0056】
[0056](1)有効量の本発明のヘテロ環式ピラゾール化合物のうちの少なくとも1つと、薬学的に許容されるキャリアとを含有する、医薬組成物、(2)そのような処置を必要とする対象に有効量のそのようなヘテロ環式ピラゾール化合物を投与することによって、タンパク質キナーゼ関連疾患(例えば、がん)を処置するための方法、及び(3)少なくとも1つのタンパク質キナーゼを、本発明のヘテロ環式ピラゾール化合物のうちの少なくとも1つと接触させることによって、少なくとも1つのタンパク質キナーゼの活性を減少させる方法も、本発明の範囲内である。
【0057】
[0057]本明細書において使用される場合、用語「タンパク質キナーゼ関連疾患/障害」、又は「タンパク質キナーゼに関連する疾患/障害」、又は「タンパク質キナーゼによって変調される疾患/障害」は、異常なタンパク質キナーゼ(PK)活性を特徴とする疾患若しくは状態、又は少なくとも1つのPKの活性における変化により処置され得る疾患若しくは状態を指す。異常なPK活性は、正常な状態では起こらないPK発現レベルの上昇又はPK発現の存在から生じ得る。本明細書において記述されているPK関連疾患/障害は、がん、糖尿病、過剰増殖障害、腎臓の過剰増殖性障害、腎疾患、フォン・ヒッペル-リンドウ病、再狭窄、線維症、乾癬、変形性関節症、関節リウマチ、炎症性障害、自己免疫疾患(例えば、AIDS、ループス等)等の免疫障害、心血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化症)、及び異常な脈管形成等の血管増殖性障害を含むがこれらに限定されない。
【0058】
[0058]用語「処置すること」は、障害のリスク、障害の症状又はそれに対する素因について、治癒させる、治す、緩和する、軽減させる、改変する、矯正する、寛解させる、改善する、影響を及ぼす又は低減させることを目的として、タンパク質キナーゼ関連疾患/障害を有する又は該疾患/障害の症状若しくはそれに対する素因を有する対象に、本発明のヘテロ環式ピラゾール化合物を投与することを指す。例えば、がんを処置することは、処置が、がん成長若しくはがん細胞成長の阻害、がん成長における退縮(すなわち、検出可能ながんのサイズを低減させる)、又はがんの消失をもたらすことを指す。
【0059】
[0059]用語「有効量」は、対象において意図されている治療効果を付与するために必要とされる活性剤の量を指す。有効量は、当業者によって認識されている通り、投与ルート、添加剤の用法、及び他の作用物質との併用の可能性に応じて変動し得る。有効量の決定は、通常の技量のみを必要とし、当業者ならば、意図されている使用のためのそのような有効量を、必要以上の実験をすることなく決定することができるであろう。処置を必要とする対象は、哺乳動物であり得る。用語「哺乳動物」は、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ブタ、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラット若しくはマウスを指す。
【0060】
[0060]本発明の方法を実践するために、上述の医薬組成物のいずれかを、吸入スプレー、局所的に、経直腸的に、鼻内に、口腔内に、経膣的によって、又は埋込みリザーバを介して経口的に、非経口的に投与することができる。用語「非経口」は、本明細書において使用される場合、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑膜内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内、及び頭蓋内注射又は注入技術を含む。本発明の一部の実施形態に従って、本発明のヘテロ環式ピラゾール化合物は、静脈内に投与されてもよく、好適なキャリアは、生理的食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、並びにグルコース、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等の増粘及び可溶化剤、並びにそれらの混合物を含有する溶液を含んでもよいがこれらに限定されない。
【0061】
[0061]滅菌注射用組成物、例えば、滅菌注射用水性又は油脂性懸濁液は、当技術分野において公知である技術に従い、好適な分散用剤又は湿潤剤(ツイーン80等)及び懸濁化剤を使用して、製剤化され得る。滅菌注射用調製物は、非毒性の非経口的に許容される賦形剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液であることもできる。許容されるビヒクル及び溶媒の中でも、用いられ得るのは、マンニトール、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、滅菌の、固定油が、溶媒又は懸濁媒として慣例的に用いられる(例えば、合成モノ-又はジグリセリド)。オレイン酸等の脂肪酸及びそのグリセリド誘導体は、オリーブ油又はヒマシ油等の天然の薬学的に許容される油のように、とりわけポリオキシエチル化された形の注射液の調製において有用である。これらの油溶液又は懸濁液は、長鎖アルコール賦形剤若しくは分散媒、又はカルボキシメチルセルロース若しくは同様の分散用剤も含有することができる。ツイーン若しくはスパン等の他の一般的に使用される界面活性剤、又は薬学的に許容される固体、液体若しくは他の剤形の製造において一般的に使用される他の同様の乳化剤又はバイオアベイラビリティエンハンサーも、製剤の目的のために使用され得る。
【0062】
[0062]経口投与するための組成物は、カプセル剤、錠剤、乳剤並びに水性懸濁剤、分散剤及び液剤を含むがこれらに限定されない任意の経口的に許容される剤形であり得る。経口使用のための錠剤の事例において、一般的に使用されるキャリアは、ラクトース及びコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤も典型的には添加される。カプセル剤形態での経口投与では、有用な賦形剤は、ラクトース及び乾燥コーンスターチを含む。水性懸濁剤又は乳剤が経口的に投与される場合、活性成分は、乳化又は懸濁化剤と合わせた油性相に懸濁又は溶解され得る。所望ならば、ある特定の甘味、香味又は着色剤が添加され得る。鼻エアゾール剤又は吸入剤組成物は、医薬製剤の技術分野において周知である技術に従って調製され得る。ヘテロ環式ピラゾール化合物含有組成物を、経直腸投与のための坐剤の形態で投与することもできる。
【0063】
[0063]医薬組成物におけるキャリアは、製剤の活性成分と適合性であり(及び好ましくは、活性成分を安定させることができ)、処置される対象にとって有害ではないという意味で、「許容される」ものであるべきである。活性ヘテロ環式ピラゾール化合物とより可溶性の複合体を形成する1つ又は複数の可溶化剤(例えば、シクロデキストリン)を、活性化合物の送達のための医薬キャリアとして利用することができる。他のキャリアの例は、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム及びラウリル硫酸ナトリウムを含む。
【0064】
[0064]上記の反応スキームは、本発明のヘテロ環式ピラゾール化合物をどのように調製することができるかを例証する。当業者ならば、関与する反応及びこれらの反応において使用される試薬は、当技術分野において公知であることが分かるであろう。したがって、上記の教示及び当技術分野における一般的な知識に基づき、本明細書において定義されている通りの種々の置換基を持つヘテロ環式ピラゾール化合物は、発明に関する努力をすることなく、当業者によって調製され得る。
【0065】
[0065]さらなる綿密さはなくとも、上記の記述が本発明を十分に可能にしたと考えられる。したがって、下記の例は、例証にすぎないとして解釈されるべきであり、開示の残りをいかようにも限定するものではない。
【実施例】
【0066】
実施例1:式(I)の化合物の合成
[0066]例示的なヘテロ環式ピラゾール化合物を表1に収載する。該化合物の1H NMR及び質量データを表2に提供する。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
実施例2:インビトロ生化学的アッセイにおける式(I)の化合物の阻害活性の評価
[0067]式Iの種々の化合物を、様々な受容体チロシンキナーゼに対する阻害活性について試験した。異なるアッセイの簡単な説明を後述する。
【0072】
FLT3キナーゼアッセイ
[0068]本明細書において開示されている試験化合物によるFLT3キナーゼ活性の阻害を、アルファスクリーン(PerkinElmer、Akron、Ohio、USA)によって推定した。標準的なアッセイ条件は、25μLの最終体積の、アッセイ緩衝液(10μM ATP、10mM MOPs、pH7.0、0.21mM EDTA、0.5%グリセロール、1mg/mL BSA、0.01%2-メルカプトエタノール、0.001%Brij35、10mM MgCl2)中、6ngのビオチンコンジュゲートポリ-(Glu4:Tyr1)(Cisbio、Bedford、MA、USA)を加えた1.5ngの組換えFLT3キナーゼ(SignalChem、Richmond、BC、Canada)であった。反応物を30℃で30分間にわたってインキュベートし、5μLの50mM EDTAを添加することによって停止させた。得られた生成物を、アルファスクリーンキットを使用して分析し、エンスパイアアルファ(PerkinElmer、Waltham、MA、USA)でカウントした。対照反応物(完全な反応混合物)からの読み出しを0%阻害と指定し、酵素なしの反応についての読み出しを100%阻害と指定した。阻害剤のIC50値は、連続希釈濃度の各化合物を用いるアッセイを二連で行った後に決定した。結果を、線形回帰ソフトウェア(グラフパッドプリズム5;GraphPad Software Inc.)を使用して分析した。
【0073】
FLT3-D835Y変異体キナーゼアッセイ
[0069]本明細書において開示されている試験化合物によるFLT3-D835Y変異体キナーゼ活性の阻害を、アルファスクリーン(PerkinElmer)によって推定した。標準的なアッセイ条件は、25μLの最終体積の、アッセイ緩衝液(10μM ATP、10mM MOPs、pH7.0、0.21mM EDTA、0.5%グリセロール、1mg/mL BSA、0.01%2-メルカプトエタノール、0.001%Brij35、10mM MgCl2)中、6ngのビオチンコンジュゲートポリ-(Glu4:Tyr1)(Cisbio)を加えた1ngの組換えFLT3-D835Y変異体キナーゼ(SignalChem)であった。反応物を30℃で30分間にわたってインキュベートし、5μLの50mM EDTAを添加することによって停止させた。得られた生成物を、アルファスクリーンキットを使用して分析し、エンスパイアアルファ(PerkinElmer)でカウントした。対照反応物(完全な反応混合物)からの読み出しを0%阻害と指定し、酵素なしの反応についての読み出しを100%阻害と指定した。阻害剤のIC50値は、連続希釈濃度の各化合物を用いるアッセイを二連で行った後に決定した。結果を、線形回帰ソフトウェア(グラフパッドプリズム5;GraphPad Software Inc.)を使用して分析した。
【0074】
PDGFRαキナーゼアッセイ
[0070]本明細書において開示されている試験化合物によるPDGFRαキナーゼ活性の阻害を、アルファスクリーン(PerkinElmer)によって推定した。標準的なアッセイ条件は、25μLの最終体積の、アッセイ緩衝液(10μM ATP、10mM MOPs、pH7.0、0.21mM EDTA、0.5%グリセロール、1mg/mL BSA、0.01%2-メルカプトエタノール、0.001%Brij35、10mM MgCl2)中、6ngのビオチンコンジュゲートポリ-(Glu4:Tyr1)(Cisbio)を加えた1.5ngの組換えPDGFRαキナーゼ(SignalChem)であった。反応物を30℃で30分間にわたってインキュベートし、5μLの50mM EDTAを添加することによって停止させた。得られた生成物を、アルファスクリーンキットを使用して分析し、エンスパイアアルファ(PerkinElmer)でカウントした。対照反応物(完全な反応混合物)からの読み出しを0%阻害と指定し、酵素なしの反応についての読み出しを100%阻害と指定した。阻害剤のIC50値は、連続希釈濃度の各化合物を用いるアッセイを二連で行った後に決定した。結果を、線形回帰ソフトウェア(グラフパッドプリズム5;GraphPad Software Inc.)を使用して分析した。
【0075】
METキナーゼアッセイ
[0071]本明細書において開示されている化合物を、カウンタースクリーニング(比較)としてアルファスクリーン(PerkinElmer)によって推定されたMETキナーゼ活性の阻害において試験して、クラスIII RTKに対する選択的キナーゼ阻害活性を実証した。クラスVIII RTKファミリーに属するMETキナーゼは、1つの細胞外β鎖と連結している1つの膜貫通α鎖を有するため、これは、5つの免疫グロブリン(Immunoglobin)様細胞外ドメインを持つクラスIII RTKファミリーとは異なる。標準的なアッセイ条件は、25μLの最終体積の、アッセイ緩衝液(10μM ATP、10mM MOPs、pH7.0、0.21mM EDTA、0.5%グリセロール、1mg/mL BSA、0.01%2-メルカプトエタノール、0.001%Brij35、10mM MgCl2)中、3ngのビオチンコンジュゲートポリ-(Glu4:Tyr1)(Cisbio)を加えた1ngの組換えMETキナーゼ(SignalChem)であった。反応物を30℃で45分間にわたってインキュベートし、5μLの50mM EDTAを添加することによって停止させた。得られた生成物を、アルファスクリーンキットを使用して分析し、エンスパイアアルファ(PerkinElmer)でカウントした。対照反応物(完全な反応混合物)からの読み出しを0%阻害と指定し、酵素なしの反応についての読み出しを100%阻害と指定した。阻害剤のIC50値は、連続希釈濃度の各化合物を用いるアッセイを二連で行った後に決定した。結果を、線形回帰ソフトウェア(グラフパッドプリズム5;GraphPad Software Inc.)を使用して分析した。
【0076】
結果
[0072]METキナーゼ阻害活性と比較すると、本発明の化合物は、クラスIII RTKに対して予想外の及び選択的阻害活性を有することが分かった。より具体的には、本発明の化合物はいずれも、FLT3キナーゼ及びFLT3-D835Y変異体キナーゼについて10nM未満のIC50値を示し、105の本発明の化合物のうちの57は、PDGFRキナーゼについて10nM未満のIC50値を示し、クラスIII RTKに対する本発明の化合物の高い効力を実証している。FLT3、FLT3-D835Y変異体、PDGFRα及びMetキナーゼに対する本発明の化合物についてのIC50値を、表3にまとめる。表において、記号「A+」は、1nM未満のIC50を意味し、「A」は、IC50が1~10nMの間であることを意味し、「B」は、IC50が10~30nMの間であることを意味し、「C」は、IC50が30~100nMの間であることを意味し、「D」は、IC50が100~300nMの間であることを意味し、「E」は、IC50が300~1000nMの間であることを意味し、「F」は、IC50が1,000nMより大きいことを意味する。
【0077】
【0078】
実施例3:異なるシグナリング依存関係を持つヒトがん細胞株のパネルに対する式(I)の化合物の抗増殖活性の評価
[0073]上記で注記した通り、本発明の化合物を使用して、タンパク質キナーゼ関連疾患又は障害を処置することができる。タンパク質キナーゼ関連疾患は、がん、自己免疫疾患又は血管増殖性障害であってもよい。がんは、肺がん、結腸がん、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、胃がん、腎臓がん、唾液腺がん、卵巣がん、子宮体がん、子宮頸がん、口腔がん、皮膚がん、脳がん、リンパ腫又は白血病であってもよい。
【0079】
[0074]化合物による細胞成長の阻害を、セルタイター(CellTiter)(商標)-96アッセイを使用して測定した。本発明の化合物の細胞毒性を、FLT3-ITD突然変異を持つMV4-11ヒト急性骨髄性白血病細胞、FLT3-ITD突然変異を持つMolm-14ヒト急性骨髄性白血病細胞、NRAS G12D突然変異を持つTHP-1ヒト急性骨髄性白血病細胞、BRAF V600E突然変異を持つA375黒色腫細胞、及びEGFRエクソン19欠失突然変異を持つHCC827 NSCLC細胞を含む、異なるシグナリング経路依存関係を持つ細胞株パネルにおいて評価した。
【0080】
MV4-11細胞培養
[0075]本明細書において開示されている化合物を、MV4-11細胞増殖アッセイにおいて試験して、FLT3シグナル経路依存性細胞成長に対する細胞効力を決定した。MV4-11細胞は、リガンド非依存性FLT3-ITD活性化突然変異を抱えるヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞であり、AML細胞FLT3シグナリング経路の異常な増殖を依存性にする。FLT3キナーゼ活性の阻害は、成長の低減及び/又は細胞死をもたらすことになる。MV4-11細胞(カタログ番号CRL-9591)は、米国タイプカルチャーコレクション(ATCC、Manassas、VA)から入手した。簡潔に述べると、細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清を補充したIMDM培地中で成長させ、5%CO2雰囲気中、37℃でインキュベートした。細胞を飽和に達するまで拡張させ、その時点で細胞を継代培養するか又はアッセイ使用のために採取した。
【0081】
Molm-14細胞培養
[0076]本明細書において開示されている化合物を、Molm-14細胞増殖アッセイにおいて試験して、FLT3シグナル経路依存性細胞成長に対する細胞効力を決定した。Molm-14細胞は、リガンド非依存性FLT3-ITD活性化突然変異を抱えるヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞であり、AML細胞FLT3シグナリング経路の異常な増殖を依存性にする。FLT3キナーゼ活性の阻害は、成長の低減及び/又は細胞死をもたらすことになる。Molm-14細胞(カタログ番号ACC-777)は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ、Braunschweig、Germany)から入手した。簡潔に述べると、細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清を補充したRPMI1640培地中で成長させ、5%CO2雰囲気中、37℃でインキュベートした。細胞を飽和に達するまで拡張させ、その時点で細胞を継代培養するか又はアッセイ使用のために採取した。
【0082】
THP-1細胞培養
[0077]本明細書において開示されている化合物を、カウンタースクリーニング(比較)としてTHP-1細胞増殖アッセイにおいて試験して、クラスIII RTKシグナリングに依拠する細胞成長に対する選択的抗増殖活性を実証した。THP-1細胞は、NRAS G12D突然変異を持つヒト急性骨髄性白血病細胞であり、細胞成長をクラスIII RTKシグナリングとは無関係にする。THP-1細胞(カタログ番号TIB-202)は、ATCCから入手した。簡潔に述べると、細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清及び0.05mM 2-メルカプトエタノールを補充したRPMI1640培地中で成長させ、5%CO2雰囲気中、37℃でインキュベートした。細胞を飽和に達するまで拡張させ、その時点で細胞を継代培養するか又はアッセイ使用のために採取した。
【0083】
A375細胞培養
[0078]本明細書において開示されている化合物を、カウンタースクリーニングとしてA375細胞増殖アッセイにおいて試験して、クラスIII RTKシグナリングに依拠する細胞成長に対する選択的抗増殖活性を実証した。A375細胞は、BRFA V600E突然変異をコードしている黒色腫細胞であり、細胞成長を、クラスIII RTKシグナリングの代わりにBRAFシグナリングに対して依存性にする。A375細胞(カタログ番号CRL-1619)は、ATCCから入手した。簡潔に述べると、細胞を、10%FBSを含有するDMEM中で培養し、5%CO2雰囲気中、37℃でインキュベートした。細胞を飽和に達するまで拡張させ、その時点で細胞を継代培養するか又はアッセイ使用のために採取した。
【0084】
HCC827細胞培養
[0079]本明細書において開示されている化合物を、カウンタースクリーニングとしてHCC827細胞増殖アッセイにおいて試験して、クラスIII RTKシグナリングに依拠する細胞成長に対する選択的抗増殖活性を実証した。HCC827細胞は、EGFRエクソン19欠失突然変異をコードしている非小細胞肺癌(NSCLC)細胞であり、細胞成長を、クラスIII RTKシグナリングの代わりにEGFRシグナリングに対して依存性にする。HCC827細胞(カタログ番号CRL-2868)は、ATCCから入手した。簡潔に述べると、細胞を、10%FBSを補充したRPMI1640培地中で培養し、5%CO2雰囲気中、37℃でインキュベートした。細胞を飽和に達するまで拡張させ、その時点で細胞を継代培養するか又はアッセイ使用のために採取した。
【0085】
[0080]MV4-11、Molm-14、THP-1、A375及びHCC827細胞を、96ウェルプレートに、それぞれ6500、25000、5000、2000及び8000細胞/ウェルで播種し、37℃、5%CO2で終夜インキュベートした。次いで、これらの播種された細胞を、増加濃度の試験化合物で処理し、もう72時間にわたってインキュベートした。インキュベーションの終わりに、セルタイター96(登録商標)アクオスワンソリューション試薬(Promega、San Luis Obispo、CA、USA)を添加し、追加で2~4時間にわたってインキュベートした。イーマックス(EMax)(登録商標)マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、San Jose、CA、USA)を使用して490nmにおける吸光度を測定することにより、細胞生存度を決定した。
【0086】
結果
[0081]THP-1、A375又はHCC827細胞における抗増殖活性と比較すると、本発明の化合物は、クラスIII RTKシグナリングに依拠する細胞成長に対して予想外の及び選択的細胞毒性を呈した。より具体的には、本発明の68の化合物は、FLT3シグナリング依存関係を持つ白血病細胞成長について30nM未満のIC50値を示し、本発明の化合物の高い細胞効力を実証している。
【0087】
[0082]50%阻害濃度(IC50)値は、グラフパッドプリズム5ソフトウェアを曲線当てはめに使用して、成長阻害のパーセンテージを化合物の濃度に対してプロットすることによって算出した。本発明の化合物の抗増殖活性を、表4にまとめる。表において、記号「A」は、IC50が0.03μM未満であることを表し、「B」は、IC50が0.03~0.1μMの間であることを表し、「C」は、IC50が0.1~0.3μMの間であることを表し、「D」は、IC50が0.3~1μMの間であることを表し、「E」は、IC50が1~10μMの間であることを表し、「F」は、IC50が10μMよりも高いことを表す。
【0088】
【0089】
[0083]表4におけるデータは、本発明の化合物が、クラスIII RTKシグナリング経路に依拠するがん細胞成長に対する予想外の及び選択的抗増殖活性を有することを明確に示す。したがって、これらの化合物は、FLT3、PDGFR、c-KIT及び/若しくはCSF-1Rキナーゼによって媒介される、又はFLT3、PDGFR、c-KIT及び/若しくはCSF-1Rキナーゼの変異体キナーゼによって媒介される疾患又は障害等のタンパク質キナーゼ関連疾患の処置において使用されてもよい。本発明の一実施形態に従う方法は、それを必要とする対象に有効量の本発明の化合物を投与するステップを含む。
【0090】
実施例4:FLT3キナーゼ及びその変異体に対して予想外の及び優れた効力を呈する、2位が窒素原子である5又は6位で6,5-縮合二環式ヘテロアリールがコンジュゲートされたヘテロ環式ピラゾール誘導体(式I)を同定する
【化9】
【0091】
[0084]表5に示す通り、化合物1及び化合物2は、実施例A~Gと比較して、化合物1及び化合物2における6,5-縮合二環式ヘテロアリール環が2位に2個の窒素原子をそれぞれ含有することを除き、それぞれ実施例A~Gと構造がほぼ同一である。
【0092】
【0093】
[0085]予想外にも、化合物1及び化合物2は、FLT3キナーゼ及びFLT3-D835Y変異体を阻害する際に、実施例A~Gのものと比較して優れた効力を呈し、およそ5倍以上良好な効力であったことが観察された。上記の結果に基づき、2位に2個の窒素原子を含有する6,5-縮合二環式ヘテロアリールは、FLT3キナーゼ及びその変異体に対して極めて強力な阻害活性を呈することが予想外にも(unexpected)分かった。
【0094】
実施例5:式(I)の化合物と先行技術における構造的に近い化合物との効力の比較
[0086]実施例H~Kの化合物は、先行技術において見られるか、又は網羅されている(米国特許第8853207B2号)。化合物40及び化合物3は、それらのインビトロ効力を、実施例Hの化合物の効力と比較するために選択した。化合物1及び化合物2は、それらのインビトロ効力を、実施例I及びJの効力と比較するために選択した。化合物36及び化合物30は、それらのインビトロ効力を、実施例Kの効力と比較するために選択した。
【0095】
[0087]表6に示す通り、化合物40、化合物3、化合物1、化合物2、化合物36及び化合物30は、実施例H~Kの先行技術化合物と比較して、本発明の化合物が、ピラゾールに直接結合した置換インダゾール部分をそれぞれ有することを除き、それぞれ実施例H~Kの化合物と構造がほぼ同一である。
【0096】
【0097】
[0088]予想外にも、実施例H~Kの先行技術化合物と比較して、本発明の化合物は、FLT3キナーゼ及びその変異体を阻害する際に優れた効力を呈し、およそ10倍以上の効力であった。
【0098】
実施例6:FLT3シグナルの構成的活性化を伴うMV4-11白血病細胞株におけるFLT3及びその下流(down)エフェクターSTAT5のリン酸化に対する式(I)の化合物の細胞効力の評価
[0089]FLT3は、ほとんどの患者のAML細胞において発現され、FLT3は、AML細胞のおよそ30%において変異している。突然変異は、患者のおよそ25%においてAML細胞に存在する遺伝子内縦列重複(ITD)、及び患者のおよそ5%において存在するチロシンキナーゼドメイン(TKD)における点突然変異を含む。ITD及びTKD突然変異はいずれも活性化しており、リガンド非依存性又は構成的、FLT3受容体シグナリングを引き起こし、それにより、サイトカイン非依存性AML細胞生存及び増殖を促進する(Blood 2002;100:1532~42.)。FLT3-ITD及びFLT3 TKD突然変異はいずれも、FLT3シグナリングの構成的活性化をもたらし、FLT3キナーゼ並びにRas/MAPKキナーゼ(MEK)/細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)経路及びPI3K/Akt経路を含むFLT3キナーゼの下流の増殖性シグナリング経路を伴う。加えて、野生型FLT3シグナリングとは対照的に、FLT3-ITDは、STAT5経路を強力に活性化する。STAT5は、細胞成長にとって重要な、サイクリンD1、c-myc及び抗アポトーシス遺伝子p21等のSTAT5の標的遺伝子を誘発する。これらの効果は、白血病細胞の異常型の細胞成長におけるFLT3-ITDの役割を示すことができる。STAT5のFLT3-ITD構成的活性化は、AML細胞成長を加速させることができる(J Hematol Oncol.2011;4:13.)。
【0099】
[0090]実施例2における式(I)の強力な化合物を、FLT3シグナリングの構成的活性化を伴うMV4-11白血病細胞株におけるFLT3及びその下流エフェクターSTAT5のリン酸化に対する該化合物の細胞効力について、ウェスタンブロッティングアッセイによって評価した。ウェスタンブロッティング実験のために、MV4-11細胞を、0.1%FBSを含有するIMDM培地中で終夜培養した。アッセイ当日、300万個の細胞を、15mL管中、化合物を用いて又は用いずに3時間にわたって処理した。次いで、2×SDS試料緩衝液を添加し、105℃のホットプレートで15分間にわたって煮沸することによる抽出後、全細胞溶解物を採取した。得られた細胞溶解物をSDS-PAGE電気泳動によって分離し、PVDF膜に移した。対応する一次抗体及び二次抗体を用いるイムノブロットを使用し、標準的な手順に準拠して、タンパク質発現を検出した。p-FLT3(Tyr-591)に対する抗体、抗ウサギIgG HRP連結二次抗体、及び抗マウスIgG HRP連結二次抗体は、Cell Signaling Technologyから購入した。p-STAT5(Tyr-694)に対する抗体は、BD biosciencesから購入した。アクチンに対する抗体は、R&D systemから購入した。イムノブロットを、化学発光(スーパーシグナル(SuperSignal)(商標)ウエストフェムト最大感受性基質、Thermo)によって明らかにし、ケミドック(ChemiDoc)(商標)MPイメージングシステム(Bio-Rad)によって検出した。ウエスタンブロットのバンド強度もケミドック(商標)MPイメージングシステムによって定量化した。単一濃度(30nM)における薬物処理に対応するバンドの相対強度を、DMSO対照群と比較した。各薬物濃度における阻害パーセンテージ(%)を、式:
阻害パーセンテージ(%)=(1-相対強度)×100
を使用して算出した。
【0100】
[0091]30nM処理でFLT3及びその下流エフェクターSTAT5のリン酸化に対して50%を超える阻害を呈する式Iの選択された化合物を、下記の表7に収載した。
【0101】
【0102】
[0092]本発明の一部の実施形態は、タンパク質キナーゼ関連疾患を処置するための方法に関する。本発明の一実施形態に従う方法は、それを必要とする対象に有効量の本発明の化合物を投与するステップを含む。
【0103】
[0093]限定された数の実施形態に関して本発明を説明してきたが、本開示の利益を有する当業者ならば、本明細書において開示される通りの本発明の範囲から逸脱しない他の実施形態が考案され得ることが分かるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】