(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(54)【発明の名称】終端抵抗設定回路およびこれを含むバッテリー管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20221017BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
H02J7/02 F
H02J7/00 302C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512420
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2021000226
(87)【国際公開番号】W WO2021149949
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0007585
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ソク・ホ
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503CC02
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
本発明は、終端抵抗設定回路およびこれを含むバッテリー管理システムに関する。本発明は、複数のバッテリーモジュールを含むバッテリーシステムにおいて、複数のバッテリーモジュールそれぞれを制御するモジュール制御器を少なくとも含むバッテリー管理システムであって、モジュール制御器は、差動入力方式で互いに通信し、複数のモジュール制御器それぞれは、差動入力のための一対の通信ラインの間に連結されて終端抵抗を発生させる抵抗発生部と、抵抗発生部に第1制御信号を印加する第1制御回路と、抵抗発生部と基準電位との間に形成され、第2制御信号によって抵抗発生部に基準電位による電圧が印加されるように制御される第2制御回路とを含む終端抵抗設定回路を含むバッテリー管理システムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリーモジュールを含むバッテリーシステムにおいて、前記複数のバッテリーモジュールそれぞれを制御するモジュール制御器を少なくとも含むバッテリー管理システムであって、
前記モジュール制御器は、差動入力方式で互いに通信し、
前記複数のモジュール制御器それぞれは、終端抵抗設定回路を含み、
前記終端抵抗設定回路は、
差動入力のための一対の通信ラインの間に連結されて終端抵抗を発生させる抵抗発生部と、
前記抵抗発生部に第1制御信号を印加する第1制御回路と、
前記抵抗発生部と基準電位との間に形成され、第2制御信号によって前記抵抗発生部に前記基準電位による電圧が印加されるように制御される第2制御回路と、
、
を含む、バッテリー管理システム。
【請求項2】
前記第1制御信号は、前記複数のモジュール制御器のうち、自分以外の他のモジュール制御器の一つから受信する信号であることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項3】
前記第2制御信号は、前記複数のモジュール制御器のうち、自分以外の他のモジュール制御器の一つに送信する信号であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリー管理システム。
【請求項4】
前記第1制御信号および前記第2制御信号は、前記複数のモジュール制御器が順にIDを割り当てるために送受信するウェークアップ信号であることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項5】
前記複数のバッテリーモジュールを充放電する充放電装置の動作を制御する上位制御器をさらに含み、
前記上位制御器が、前記複数のモジュール制御器に対してマスター制御器として動作することを特徴とする、請求項4に記載のバッテリー管理システム。
【請求項6】
他のモジュール制御器からウェークアップ信号を受信した前記モジュール制御器は、前記上位制御器と通信してID割り当てを行い、
前記ID割り当てが完了すると、前記複数のモジュール制御器のうち、他のモジュール制御器にウェークアップ信号を送信することを特徴とする、請求項5に記載のバッテリー管理システム。
【請求項7】
前記抵抗発生部は、前記一対の通信ラインの間に直列連結される抵抗および第1スイッチング素子を含み、
前記第1制御信号が前記抵抗発生部に印加されると、前記第1スイッチング素子がオンになることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項8】
前記第2制御信号が印加されると、前記オン状態になった第1スイッチング素子が再びオフ状態に切り替えられることを特徴とする、請求項7に記載のバッテリー管理システム。
【請求項9】
前記基準電位は、グラウンド電位である、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項10】
差動入力方式で通信を行う複数の通信装置それぞれに設けられる終端抵抗設定回路であって、
差動入力のための一対の通信ラインの間に連結されて終端抵抗を発生させる抵抗発生部と、
前記抵抗発生部に第1制御信号を印加する第1制御回路と、
前記抵抗発生部と基準電位との間に形成され、第2制御信号によって前記抵抗発生部に前記基準電位による電圧が印加されるように制御される第2制御回路と、
を含む、終端抵抗設定回路。
【請求項11】
前記抵抗発生部は、前記一対の通信ラインの間に直列連結される抵抗および第1スイッチング素子を含むことを特徴とする、請求項10に記載の終端抵抗設定回路。
【請求項12】
前記第1制御信号の印加によって前記第1スイッチング素子がオン状態になることを特徴とする、請求項11に記載の終端抵抗設定回路。
【請求項13】
前記第2制御信号が前記第2制御回路に印加されることによって、前記第1スイッチング素子がオン状態からオフ状態に切り替えられることを特徴とする、請求項12に記載の終端抵抗設定回路。
【請求項14】
前記第1制御信号は、前記終端抵抗設定回路が形成された通信装置と通信する他の通信装置が送信した第2制御信号であることを特徴とする、請求項10に記載の終端抵抗設定回路。
【請求項15】
前記第2制御信号は、前記終端抵抗設定回路が形成された通信装置が他の通信装置に設置された終端抵抗設定回路に送信する第1制御信号であることを特徴とする、請求項10に記載の終端抵抗設定回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年1月20日付けの韓国特許出願第10‐2020‐0007585号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、終端抵抗設定回路およびこれを含むバッテリー管理システムに関する。
【背景技術】
【0003】
最近、スマートフォンなどの電子機器および電気自動車の普及、そしてエネルギー貯蔵システム(ESS、Energy Storage System)のインフラ拡散に伴い、電力供給源としての二次電池に関する研究が活発に行われている。
【0004】
エネルギー貯蔵システムの場合、大容量の電気エネルギーを貯蔵する必要があるだけでなく、高い出力が求められる。このために、エネルギー貯蔵システムは、直列および/または並列に連結されている複数のバッテリーモジュールと、複数のバッテリーモジュールを充放電するための充放電装置とを含むバッテリーラックの形態で使用される。バッテリーモジュールには、二次電池であるバッテリーセルが直列および/または並列に連結されて含まれている。また、バッテリーラックには、充放電装置を制御するためのラック制御器(Rack BMS)と、複数のバッテリーモジュールそれぞれを制御する複数のモジュール制御器(Module BMS)が含まれる。
【0005】
エネルギー貯蔵システムを安定的に運用するためには、ラック制御器とモジュール制御器との通信が必須であり、この際、制御器の間の通信のために、差動入力方式の通信プロトコルが使用される。しかし、差動入力方式の通信プロトコルの場合、両端部に位置した通信ノードは終端抵抗を必要とする。これは、通信ノードで発生する反射現象を避けるために設けられる構成である。
【0006】
従来、終端に位置した通信ノードに直接抵抗を追加する方式で終端抵抗を挿入していた。しかし、かかる従来の方式の場合、誤った位置に終端抵抗を挿入するようになるか、抵抗の両端が短絡するなど、まともに抵抗が挿入されない可能性が存在していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、正確且つ簡単に終端抵抗を自動で設定することができる終端抵抗設定回路およびこれを含むバッテリー管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような技術的課題を解決するために、本発明の実施形態の一側面によると、複数のバッテリーモジュールを含むバッテリーシステムにおいて、複数のバッテリーモジュールそれぞれを制御するモジュール制御器を少なくとも含むバッテリー管理システムであって、モジュール制御器は、差動入力方式で互いに通信し、複数のモジュール制御器それぞれは終端抵抗設定回路を含み、前記終端抵抗設定回路は、差動入力のための一対の通信ラインの間に連結されて終端抵抗を発生させる抵抗発生部と、抵抗発生部に第1制御信号を印加する第1制御回路と、抵抗発生部と基準電位との間に形成され、第2制御信号によって抵抗発生部に基準電位による電圧が印加されるように制御される第2制御回路とを含むバッテリー管理システムを提供する。
【0009】
上記のような技術的課題を解決するために、本発明の実施形態の他の側面によると、差動入力方式で通信を行う複数の通信装置それぞれに設けられる終端抵抗設定回路であって、差動入力のための一対の通信ラインの間に連結されて終端抵抗を発生させる抵抗発生部と、抵抗発生部に第1制御信号を印加する第1制御回路と、抵抗発生部と基準電位との間に形成され、第2制御信号によって抵抗発生部に基準電位による電圧が印加されるように制御される第2制御回路とを含む終端抵抗設定回路を提供する。
【発明の効果】
【0010】
以上のような終端抵抗設定回路およびこれを含むバッテリー管理システムによると、差動入力方式で通信を行う際に、終端抵抗を自動で設定することができ、終端抵抗の設定時に発生する各種のミスや故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態によるバッテリーシステムを概略的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による終端抵抗設定方法を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるバッテリーモジュールおよびモジュール制御器の構成を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による終端抵抗設定回路を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態による終端抵抗設定回路の一具現例を示す回路図である。
【
図6】本発明の一実施形態による終端抵抗設定方法を示すフローチャートである。
【
図7】従来技術による通信ノードの終端抵抗設定方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施形態による終端抵抗設定回路の他の具現例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明の様々な実施形態について詳細に説明する。本文書において、図面上の同じ構成要素に対しては、同じ参照符号を使用し、同じ構成要素に関する重複する説明は省略する。
【0013】
本文書に開示されている本発明の様々な実施形態に対して、特定の構造的もしくは機能的な説明は、単に本発明の実施形態を説明するために例示されているものであって、本発明の様々な実施形態は、様々な形態で実施されてもよく、本文書に説明している実施形態に限定されるものと解釈してはならない。
【0014】
様々な実施形態において使用されている「第1」、「第2」、「一番目」、または「二番目」などの表現は、様々な構成要素を、順序よび/または重要度に関係なく修飾することがあり、当該構成要素を限定しない。例えば、本発明の権利範囲から逸脱しないとともに、第1構成要素は第2構成要素と称され得、同様に、第2構成要素も第1構成要素に変えて称され得る。
【0015】
本文書において使用されている用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されているものであって、他の実施形態の範囲を限定することを意図しないものであり得る。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味を有していない限り、複数の表現を含み得る。
【0016】
図1は本発明の一実施形態によるバッテリーシステム1を概略的に示す図である。バッテリーシステム1は、バッテリーラック(Rack)であり得る。バッテリーラック1は、エネルギー貯蔵システムにおいて電気エネルギーを貯蔵する一つの単位である。エネルギー貯蔵システムには、かかるバッテリーラック1が一つ以上含まれていてもよい。
【0017】
図1を参照すると、バッテリーラック1は、充放電装置10と、複数のバッテリーモジュール30-1~30-Nとを含む。また、バッテリーラック1は、充放電装置10を制御するラック制御器20と、複数のバッテリーモジュール30-1~30-Nをそれぞれ制御するモジュール制御器40-1~40-Nとを含む(以下では、バッテリーモジュールおよびモジュール制御器を区別する必要がない場合には、図面符号を、それぞれ、バッテリーモジュール30、モジュール制御器40と記載する。)。
【0018】
充放電装置10は、バッテリーモジュール30を充放電する。充放電装置10は、バッテリーモジュール30に電力を供給するか、バッテリーモジュール30からの電力を負荷に供給する。充放電装置10は、系統に連結されて系統から電力の供給を受け、供給を受けた電力をバッテリーモジュール30に供給することができる。また、充放電装置10は、バッテリーモジュール30から放電された電力を、系統、または負荷(例えば、工場、家庭など)に供給することができる。充放電装置10は、バッテリーモジュール30を充放電するためのスイッチング装置、例えば、リレーなどを含むことができる。
【0019】
ラック制御器(RBMS;Rack Battery Management System)20は、バッテリーラック1の全般的な動作を制御し、バッテリーラック1の状態を管理する。ラック制御器20は、充放電装置10の動作を制御する。例えば、ラック制御器20は、バッテリーラック1の温度などをモニタリングすることができ、充放電装置10が故障しているか否かなどをモニタリングすることができる。
【0020】
ラック制御器20は、モジュール制御器40と通信するように構成されることができる。ラック制御器20は、バッテリーモジュール30に関連する各種のデータをモジュール制御器40から受信することができる。また、ラック制御器20は、バッテリーモジュール30を制御するための各種の制御信号をモジュール制御器40に伝送することができる。すなわち、ラック制御器20は、モジュール制御器40に対して、上位制御器としての機能を果たすことができる。また、ラック制御器20は、システム内でモジュール制御器40と通信を行う際に、マスター制御器としての機能を果たすことができる。
【0021】
バッテリーモジュール30は、電気エネルギーを貯蔵し、貯蔵した電気エネルギーを系統や負荷に供給する。バッテリーモジュール30は、系統などから電力の供給を受けて貯蔵する。バッテリーモジュール30は、複数のバッテリーセルが直列および/または並列に連結されていることができる。バッテリーセルは、リチウムイオン(Li-ion)電池、リチウムイオンポリマー(Li-ionpolymer)電池、ニッケルカドミウム(Ni-Cd)電池、ニッケル水素(Ni-MH)電池などの二次電池であってもよく、これに限定されない。
【0022】
モジュール制御器(MBMS、Module Battery Management System)40は、バッテリーモジュール30の充放電を制御し、状態を管理する。モジュール制御器40は、バッテリーモジュール30の電圧、電流、温度などをモニタリングすることができる。また、モジュール制御器40は、モニタリングのために不図示のセンサや各種の測定モジュールをさらに備えることができる。モジュール制御器40は、モニタリングした電圧、電流、温度などの測定値に基づいて、バッテリーモジュール30の状態を示すパラメータ、例えば、SOCやSOHなどを算出することができる。
【0023】
モジュール制御器40は、ラック制御器20と通信するように構成されることができる。モジュール制御器40は、バッテリーモジュール30を制御するための命令などの制御信号をラック制御器20から受信することができる。モジュール制御器40は、上述のモニタリングによる測定値やそれから算出したパラメータなどをラック制御器20に伝送することができる。
【0024】
ラック制御器20と複数のモジュール制御器40-1~40-Nを統合してバッテリー管理システムBMSと称する。バッテリー管理システムBMSのラック制御器20と複数のモジュール制御器40-1~40-Nは、差動入力方式の通信プロトコルで互いに通信を行うことができる。この際、ラック制御器20および複数のモジュール制御器40-1~40-Nのそれぞれは、通信ノードに相当する。差動入力方式の通信プロトコルとしては、CAN(Controller Area Network)、RS-485(Recommended Standard 485)、RS-422(Recommended Standard 422)などが例示として挙げられる。
【0025】
複数のモジュール制御器40-1~40-Nのそれぞれは、自動で終端抵抗を設定できるように構成される終端抵抗設定回路を含む。終端抵抗設定回路の具体的な構成については後述する。
図1には、バッテリー管理システムBMSに含まれたラック制御器20と複数のモジュール制御器40-1~40-Nが一対の通信ラインで連結されていることのみを図示しているが、これに限定されるものではなく、これらを連結するさらなる構成が含まれてもよい。例えば、バッテリー管理システムBMSのラック制御器20と複数のモジュール制御器40-1~40-Nが通信を開始するときに、IDを割り当てる必要があることがある。このために、ラック制御器20と複数のモジュール制御器40-1~40-Nは、それぞれが含んでいる通信モジュールを動作させるウェークアップ信号などを送受信するための別のラインがさらに備えられることがある。
【0026】
図2は本発明の一実施形態による終端抵抗設定方法を概略的に示す図である。
【0027】
図2を参照すると、バッテリー管理システムBMSは、ラック制御器20と、複数のモジュール制御器40-1~40-Nとを含む。ラック制御器20は、マスターとしての機能を果たす。また、モジュール制御器40は、スレーブとしての機能を果たす。
【0028】
バッテリーシステムであるバッテリーラック1の動作が開始すると、例えば、システムがONになると、マスターであるラック制御器20は、通信に必要なIDを割り当てるために、隣接したモジュール制御器40-1にウェークアップ信号WS#1を伝送する。
【0029】
ウェークアップ信号WS#1を受信したスレーブノードであるモジュール制御器40-1は、スイッチング素子SW#1をオンにして、一対の通信ラインの間に抵抗を発生させる。また、モジュール制御器40-1は、ラック制御器20との通信によりIDを割り当てる。ID割り当てが完了したモジュール制御器40-1は、隣接した次のモジュール制御器40-2にウェークアップ信号WS#2を伝送する。この際、ウェークアップ信号WS#2がスイッチング素子SW#1に作用して、スイッチング素子SW#1が再びオフ状態に切り替えられる。
【0030】
ウェークアップ信号WS#2を受信したスレーブノードであるモジュール制御器40-2は、スイッチング素子SW#2をオンにして、一対の通信ラインの間に抵抗を発生させる。また、モジュール制御器40-2は、ラック制御器20との通信によりIDを割り当てる。ID割り当てが完了したモジュール制御器40-2は、隣接した次のモジュール制御器40-3にウェークアップ信号WS#3を伝送する。この際、ウェークアップ信号WS#3がスイッチング素子SW#2に作用して、スイッチング素子SW#2が再びオフ状態に切り替えられる。
【0031】
上記のような動作を繰り返して、最後のスレーブノードであるモジュール制御器40-Nに対するID割り当てが完了すると、最後のモジュール制御器40-Nは、それ以上ウェークアップ信号を伝送する必要がなくなる。したがって、ウェークアップ信号WS#Nによってオンになったスイッチング素子SW#Nは、オン状態をそのまま維持する。すなわち、一対の通信ラインの間に終端抵抗が発生した状態で維持される。
【0032】
上記のような構成によると、終端抵抗を自動で設定することができる。また、モジュール制御器40-1~40-Nがすべて同じ形態の終端抵抗設定回路を備える。したがって、終端抵抗を設定するための別のモジュール制御器を生産するか、終端抵抗を挿入するために別の作業を行う必要がないため、効率的に終端抵抗を挿入することが可能になる。
【0033】
本実施形態では、ID割り当てにおいて使用されるウェークアップ信号として終端抵抗を設定する構成について説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、終端抵抗設定のための制御信号を別に生成することができる。また、ラック制御器20とモジュール制御器40が制御信号を受信するための専用のラインを備えることができる。
【0034】
図3は本発明の一実施形態によるバッテリーモジュール30およびモジュール制御器40の構成を示す図である。
【0035】
図3を参照すると、バッテリーモジュール30は、+端子および-端子を通じて他のバッテリーモジュールと直列または並列に連結されることができる。バッテリーモジュール30は、+端子および-端子を通じて充電または放電されることができる。
【0036】
モジュール制御器40は、上述のように、バッテリーモジュール30の動作を制御し、バッテリーモジュール30の状態をモニタリングする。また、モジュール制御器40は、他の通信ノードと通信するために、通信ラインに連結されることができる。ここで、他の通信ノードは、通信システムにおいて、マスターに相当するラック制御器20と、他のモジュール制御器40とを含む。本実施形態において、バッテリー管理システムBMS内の通信ノードであるラック制御器20およびモジュール制御器40は、差動入力方式の通信プロトコルで通信を行うため、通信ラインとしては、一対の通信ラインCAN_H、CAN_Lが備えられる。以下では、通信プロトコルとしてCAN通信が使用される場合について説明するが、これは、単に説明のためのものであって、他の差動入力方式の通信プロトコルが使用可能であることを理解することができる。
【0037】
モジュール制御器40は、一対の通信ラインと連結される一対の端子t1、t2を備えることができる。また、モジュール制御器40は、後述する終端抵抗設定回路において使用される第1制御信号が入力される端子である端子s1と、第2制御信号が出力される端子である端子s2とを備えることができる。
【0038】
端子s1は、複数のモジュール制御器40-1~40-Nのうち自分と近接したモジュール制御器から制御信号を受信する端子である。すなわち、
図3のモジュール制御器40がn番目のモジュール制御器である場合、n-1番目のモジュール制御器から伝送される制御信号を受信する端子であり得る。したがって、端子s1は、n-1番目のモジュール制御器の端子s2と連結されるように構成されることができる。
【0039】
端子s2は、複数のモジュール制御器40-1~40-Nのうち自分と近接したさらに他のモジュール制御器に制御信号を供給する端子である。すなわち、
図3のモジュール制御器40がn番目のモジュール制御器である場合、n+1番目のモジュール制御器に供給する制御信号を出力する端子であり得る。したがって、端子s2は、n+1番目のモジュール制御器の端子s1と連結されるように構成されることができる。
【0040】
端子s1および端子s2が、隣接したモジュール制御器と連結されるものと説明しているが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。ただし、複数のモジュール制御器40-1~40-Nが一回ずつ順次に連結さえできれば、端子間の連結は、隣接モジュール制御器に限定される必要はない。
【0041】
以下では、モジュール制御器40に含まれた終端抵抗設定回路について具体的に説明する。
【0042】
図4は本発明の一実施形態による終端抵抗設定回路100を示すブロック図である。
【0043】
図4を参照すると、終端抵抗設定回路100は、抵抗発生部110と、第1制御回路120と、第2制御回路130とを含むことができる。
【0044】
抵抗発生部110は、差動入力のための一対の通信ラインの間に連結されて終端抵抗を発生させる。抵抗発生部110は、一対の通信ラインの間に直列連結されるように構成される抵抗およびスイッチング素子を含む。抵抗発生部110は、第1制御回路120によってスイッチング素子がONになるように構成されている。また、抵抗発生部110は、第2制御回路130によってONになっているスイッチング素子が再びOFFになるように構成されている。
【0045】
第1制御回路120は、外部から受信した第1制御信号を抵抗発生部110に印加する。第1制御回路120は、外部から第1制御信号を受信すると、受信した第1制御信号をそのまま抵抗発生部110に印加して、スイッチング素子をONにすることができる。もしくは、代案として、第1制御回路120は、外部から第1制御信号を受信すると、受信した第1制御信号を用いて抵抗発生部110のスイッチング素子をONにするための他の信号を生成することができる。また、生成した当該信号を抵抗発生部110に印加して、スイッチング素子をONにすることもできる。
【0046】
第1制御回路120は、第1制御信号を、複数のモジュール制御器40-1~40-Nのうち、自分以外の他のモジュール制御器の一つから受信する。
【0047】
第2制御回路130は、抵抗発生部110のスイッチング素子がONになった状態で第2制御信号を受信すると、第2制御信号に基づいて、スイッチング素子を再びOFF状態に切り替える。このために、第2制御回路130は、抵抗発生部110と基準電位との間に形成され、第2制御信号によって基準電位による電圧が抵抗発生部110に印加されるように構成されることができる。ここで、基準電位は、グラウンド電位であり得る。
【0048】
第2制御回路130は、第2制御信号を複数のモジュール制御器40-1~40-Nのうち、自分および第1制御信号を受信するモジュール制御器以外の他のモジュール制御器に送信する。
【0049】
この際、第1制御信号および第2制御信号は、複数のモジュール制御器40-1~40-Nが順にIDを割り当てるために送受信するウェークアップ信号であり得る。任意のモジュール制御器40が他のモジュール制御器からウェークアップ信号を受信する場合、当該モジュール制御器40は、上位制御器であるラック制御器20と通信してID割り当てを行う。モジュール制御器40は、ID割り当てが完了すると、複数のモジュール制御器40-1~40-Nのうち、さらに他のモジュール制御器にウェークアップ信号を送信する。すなわち、他のモジュール制御器が生成して受信したウェークアップ信号は、第1制御信号に相当する。また、自分が生成して他のモジュール制御器に伝送する信号は、第2制御信号に相当する。
【0050】
ただし、本発明の実施形態において、第1制御信号および第2制御信号がID割り当ての時に使用されるウェークアップ信号に限定されるものではない。第1制御信号および第2制御信号は、ID割り当ての時に使用されるウェークアップ信号とは別に生成されて送受信する終端抵抗設定用専用信号であってもよい。
【0051】
図5は本発明の一実施形態による終端抵抗設定回路の一具現例を示す回路図である。
【0052】
図5を参照すると、モジュール制御器40は、モジュール制御器40の全般的な動作を制御するコントローラであるMCU41と、外部装置、例えば、ラック制御器20および他のモジュール制御器と通信するための通信モジュール42とを含むことができる。また、モジュール制御器40は、終端抵抗設定回路100を含むことができる。
【0053】
図5に図示されているように、一対の通信ラインCAN_H、CAN_Lに連結される一対の端子t1およびt2から延びるラインが、通信モジュール42に連結される。また、端子t1およびt2から延びる一対のラインの間に終端抵抗設定回路100が設けられている。
【0054】
終端抵抗設定回路100において、抵抗発生部110は、抵抗R1、R2とスイッチング素子であるトランジスタtr1が直列に連結されるように構成されている。
図5には、2個の抵抗が形成されていることを図示しているが、これは例示的なものであって、1個の抵抗のみを含んでもよく、3個以上の抵抗が含まれてもよい。抵抗発生部110のトランジスタtr1は、普段、OFF状態である。したがって、抵抗発生部110は、開放状態であり、終端抵抗が発生していない状態である。
【0055】
第1制御回路120は、端子s1と抵抗発生部110との間に形成される回路である。具体的に第1制御回路120は、少なくともトランジスタtr1の制御端子と端子s1との間に連結される抵抗R3を含むことができる。端子s1を通じて、第1制御回路120は、第1制御信号を受信する。第1制御信号は、上述のように、以前のモジュール制御器から伝送されたウェークアップ信号であり得る。
【0056】
第2制御回路130は、抵抗発生部110と基準電位との間に形成される。第2制御回路130は、少なくとも抵抗発生部110のトランジスタtr1の制御端子と基準電位との間に連結されるトランジスタtr2を含むことができる。トランジスタtr2の制御端子と基準電位との間、および制御端子とs2との間に、それぞれ、抵抗R4および抵抗R5が形成されることができる。図示しているように、基準電位は、グラウンド電位であり得る。
【0057】
以下、終端抵抗設定回路100が動作する方式について説明する。
【0058】
上述のように、抵抗発生部110は、トランジスタtr1がOFF状態であり、したがって、一対の通信ラインの間には、いかなる抵抗も発生していない状態である。
【0059】
この際、第1制御回路120が第1制御信号を受信すると、第1制御信号は、抵抗発生部110のトランジスタtr1の制御端子に印加される。これにより、トランジスタtr1がON状態になり、一対の通信ラインの間に抵抗が発生する。発生する抵抗の大きさは、
図5の場合、R1+R2である。
【0060】
第1制御信号は、通信モジュール42を起動するためのウェークアップ信号であり得る。したがって、以前のモジュール制御器から伝送された第1制御信号であるウェークアップ信号WS#nは、通信モジュール42に印加される。通信モジュール42は、ウェークアップ信号WS#nによって起動し、ID割り当て動作を行う。また、ID割り当てが完了すると、次のモジュール制御器のID割り当てを開始するために、ウェークアップ信号WS#n+1を次のモジュール制御器に伝送する。
【0061】
第2制御回路130は、通信モジュール42がウェークアップ信号WS#n+1を次のモジュール制御器に伝送すると、当該信号を第2制御信号として使用する。第2制御回路130は、第2制御信号が印加されると、トランジスタtr2をONにする。トランジスタtr2がON状態になると、抵抗発生部110のトランジスタtr1の制御端子がグラウンド端子と連結される。トランジスタtr1の制御端子に基準電位であるグラウンド電位が印加されると、トランジスタtr1は、ON状態から再びOFF状態になる。すなわち、第1制御信号によって発生した終端抵抗が、第2制御信号によって除去される。
【0062】
このように、モジュール制御器40が、通信システムにおいて終端に位置した通信ノードではない場合、モジュール制御器40は、次のモジュール制御器にウェークアップ信号を伝送する必要がある。また、当該ウェークアップ信号は、第2制御信号として使用されて発生していた終端抵抗を除去する機能を果たす。
【0063】
したがって、本実施形態による終端抵抗設定回路100によると、終端抵抗を作業者が直接挿入するなど、別の作業を行う必要なしに、終端に位置したモジュール制御器でのみ自動で生成されて、効率的且つ簡単に終端抵抗を挿入できるようになる。
【0064】
本実施形態では、トランジスタtr1としてNチャンネルMOSFETが、トランジスタtr2としてNPN型BJTが使用されることを図示しているが、これは例示的なものであって、他のタイプのトランジスタ、またはトランジスタ以外のスイッチング素子が使用可能であることを通常の技術者であれば理解することができる。
【0065】
図6は本発明の一実施形態による終端抵抗設定方法を示すフローチャートである。
【0066】
バッテリーシステムがONになると(S1)、ラック制御器20は、バッテリーシステム内に存在するモジュール制御器40と通信を行うために、ウェークアップ信号をいずれか一つのモジュール制御器に伝送する(S2)。
【0067】
ウェークアップ信号を受信したモジュール制御器40は、当該ウェークアップ信号によって終端抵抗を発生させる(S3)。また、モジュール制御器40は、次のモジュール制御器でウェークアップ信号を伝送するかを判断する(S4)。すなわち、自分がバッテリーシステム内で終端に位置した最後の通信ノードであるかを判断する。
【0068】
次のモジュール制御器にウェークアップ信号を伝送する場合、自分が伝送したウェークアップ信号を用いて発生させた終端抵抗を除去する(S5)。一方、自分が終端に位置した最後の通信ノードである場合、次のモジュール制御器にウェークアップ信号を伝送せず、したがって、発生した終端抵抗はそのまま維持される(S6)。
【0069】
図7は、従来の技術による通信ノードの終端抵抗設定方法を説明するための図である。
【0070】
図7において、システム内には複数の通信ノードが含まれており、これらの複数の通信ノードのうち、終端に位置した通信ノードおよび通信ノードNには、終端抵抗RaおよびRbがそれぞれ形成されている。
【0071】
従来、終端抵抗RaおよびRbを作業者が直接挿入していた。そのため、作業者が終端抵抗の挿入を漏らすか、誤った位置、すなわち、誤った通信ノードに終端抵抗を挿入する恐れが存在していた。また、抵抗挿入時に両端が短絡して抵抗値が変わるか、抵抗挿入作業に伴う他の故障の発生を引き起こす可能性が存在していた。
【0072】
しかし、上述のような本発明の実施形態による終端抵抗設定回路を用いる場合、効率的且つ簡単に終端抵抗を設定することができる。
【0073】
図8は、本発明の一実施形態による終端抵抗設定回路の他の具現例を示す回路図である。本具現例では、
図5と相違する部分について重点的に説明する。
【0074】
図8を参照すると、モジュール制御器40は、モジュール制御器40の全般的な動作を制御するコントローラであるMCU41と、外部装置、例えば、ラック制御器20および他のモジュール制御器と通信するための通信モジュール42とを含むことができる。また、モジュール制御器40は、終端抵抗設定回路100を含むことができる。
【0075】
また、
図5と同様、一対の通信ラインCAN_H、CAN_Lに連結される一対の端子t1およびt2から延びるラインが通信モジュール42に連結される。また、端子t1およびt2から延びる一対のラインの間に終端抵抗設定回路100が設けられている。
【0076】
ただし、本具現例において、端子s1に印加される第1制御信号としてのウェークアップ信号WS#nは、通信モジュール42の代わりにMCU41に直接印加される。MCU41は、ウェークアップ信号WS#nが印加されると、起動して、通信モジュール42を起動させる。また、ID割り当てが完了すると、MCU41が次のモジュール制御器に伝送するためのウェークアップ信号WS#n+1を生成し、端子s2に供給する。このウェークアップ信号WS#n+1が、第2制御信号として用いられる。
【0077】
上記のように、ウェークアップ信号を送受信する主体が通信モジュール42の代わりにMCU41に変更された以外は、
図5と同じ形態で終端抵抗設定回路100が構成される。
【0078】
本具現例による場合にも、
図5と同様の効果を奏することができる。
【0079】
以上で記載の「含む」、「構成する」、または「有する」などの用語は、特別に反対の意味の記載がない限り、当該構成要素が内在し得ることを意味するため、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得るものと解釈すべきである。技術的もしくは科学的な用語を含むすべての用語は、異なる意味に定義されない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有すると解釈し得る。辞書に定義されている用語のように一般的に使用されている用語は、関連技術の文脈上の意味と一致するものと解釈すべきであり、本発明で明白に定義しない限り、理想的もしくは過剰に形式的な意味に解釈されない。
【0080】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明しているものに過ぎず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で、様々な修正および変形が可能である。したがって、本発明に開示されている実施形態は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、かかる実施形態よって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、下記の特許請求の範囲によって解釈すべきであり、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【符号の説明】
【0081】
10 充放電装置
20 ラック制御器
30 バッテリーモジュール
40 モジュール制御器
41 MCU
42 通信モジュール
100 終端抵抗設定回路
110 抵抗発生部
120 第1制御回路
130 第2制御回路
【手続補正書】
【提出日】2022-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
バッテリーシステムがONになると(S100)、ラック制御器20は、バッテリーシステム内に存在するモジュール制御器40と通信を行うために、ウェークアップ信号をいずれか一つのモジュール制御器に伝送する(S200)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
ウェークアップ信号を受信したモジュール制御器40は、当該ウェークアップ信号によって終端抵抗を発生させる(S300)。また、モジュール制御器40は、次のモジュール制御器でウェークアップ信号を伝送するかを判断する(S400)。すなわち、自分がバッテリーシステム内で終端に位置した最後の通信ノードであるかを判断する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
次のモジュール制御器にウェークアップ信号を伝送する場合、自分が伝送したウェークアップ信号を用いて発生させた終端抵抗を除去する(S500)。一方、自分が終端に位置した最後の通信ノードである場合、次のモジュール制御器にウェークアップ信号を伝送せず、したがって、発生した終端抵抗はそのまま維持される(S600)。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】