IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフトの特許一覧

特表2022-545056アンモニア排出量を低減するための触媒
<>
  • 特表-アンモニア排出量を低減するための触媒 図1
  • 特表-アンモニア排出量を低減するための触媒 図2
  • 特表-アンモニア排出量を低減するための触媒 図3
  • 特表-アンモニア排出量を低減するための触媒 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-25
(54)【発明の名称】アンモニア排出量を低減するための触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/42 20060101AFI20221018BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221018BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221018BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20221018BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20221018BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20221018BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B01J23/42 A
B01J37/08 ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 228
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
F01N3/035 A
F01N3/08 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503538
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(85)【翻訳文提出日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2020073040
(87)【国際公開番号】W WO2021032702
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】19192428.1
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビルギット・フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン・カイトル
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB05
3G091BA01
3G091CA17
3G091GB01W
3G091GB06W
3G091GB09W
3G091GB10W
3G091GB17X
3G091HA09
3G190CA06
3G190CB23
3G190CB26
4D148AA06
4D148AA08
4D148AB01
4D148AB02
4D148AC03
4D148BA03X
4D148BA06X
4D148BA07X
4D148BA11Y
4D148BA30X
4D148BA35Y
4D148BA36Y
4D148BA41X
4D148BB01
4D148BB02
4D148BB14
4D148BB16
4D148BB17
4D148CC32
4D148DA03
4D148DA11
4D148DA20
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA07A
4G169BA13A
4G169BA17
4G169BB04A
4G169BC31A
4G169BC50A
4G169BC54A
4G169BC65A
4G169BC66A
4G169BC69A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CA08
4G169CA11
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA18
4G169EA27
4G169EC22X
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC07
4G169FC08
4G169ZA14A
(57)【要約】
本発明は、酸化チタン上に担持された白金を含む組成物であって、当該白金粒子が50~200nmの平均粒径を有する、組成物に関する。当該組成物は、アンモニア酸化に関して驚くほど低いライトオフ温度と、Nへの酸化に対する高い選択性とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物A上に担持された白金粒子の形態で白金を含む組成物であって、前記白金粒子が、50~200nmの平均粒径を有し、前記金属酸化物Aが、酸化チタンであることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記白金粒子が、80~120nmの平均粒径を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、白金以外の更なる貴金属を含有していないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記酸化チタンが、前記結晶相アナターゼ及びルチルを含み、前記アナターゼ対前記ルチルの比率が、9:1より大きいことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記白金担持量が、前記金属酸化物Aに基づいて、0.5~20重量%であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記白金担持量が、前記金属酸化物Aに基づいて、3~8重量%であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物Aが、酸化ケイ素を含有し、前記金属酸化物Aにおける酸化ケイ素の割合が、好ましくは1~10重量%であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物と、金属酸化物Bと、を含み、金属酸化物Bが、金属酸化物Aに等しいことが好ましいことを特徴とする、組成物。
【請求項9】
前記白金が、前記金属酸化物A上に溶液から堆積され、乾燥後、前記組成物が、700℃~900℃で熱処理に供されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を製造するための方法。
【請求項10】
前記組成物が、長さLの担体基材に適用されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を含む触媒。
【請求項11】
前記組成物が、前記全長Lの少なくとも80%にわたって担体基材に適用されることを特徴とする、請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
前記組成物が、前記担体基材長Lの10%~80%の長さにわたって担体基材に適用されることを特徴とする、請求項10に記載の触媒。
【請求項13】
前記組成物が、別の触媒活性組成物、好ましくはSCR反応に対して活性な組成物と共に、担体基材に適用されることを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項14】
前記組成物及び別の触媒活性組成物が、異なるゾーン及び/又は層に配列されていることを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項15】
前記担体基材が、セラミック基材又は金属基材であることを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項16】
前記担体基材が、フロースルー基材であることを特徴とする、請求項10~15のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項17】
前記フロースルー基材が、波形基材であることを特徴とする、請求項16に記載の触媒。
【請求項18】
前記担体基材が、フィルタ基材であることを特徴とする、請求項10~15のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項19】
請求項10~18のいずれか一項に記載の本発明による触媒を含むことを特徴とする、触媒系。
【請求項20】
リーンバーン内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物を還元するための方法であって、前記排気ガスが、窒素酸化物の選択的還元のための触媒(SCR)と排気ガス流の下流にあるアンモニアスリップ触媒(ASC)とを含む排気ガスシステム上を通過し、前記ASCが、請求項10~18のいずれか一項に記載の本発明による触媒であることを特徴とする、方法。
【請求項21】
前記SCR触媒が、酸化バナジウム系触媒又は前記Fe-ゼオライトタイプ若しくはCu-ゼオライトタイプのゼオライト系触媒であることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車の排気ガスの浄化には、ますます厳しい要件が課せられている。
【背景技術】
【0002】
粒子は濾過によって除去することができるが、不完全燃焼の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NO)は、水、二酸化炭素及び窒素に変換しなければならない。これは、触媒活性固体を介して行われ、それは、一般に、担体基材にコーティングとして適用される。
【0003】
フロースルー基材及びフィルタ基材の両方を、これらの触媒のための担体基材として使用することができる。フロースルー基材は、当業者に知られており、市販されている。それらは、例えば、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、又は金属箔からなる。
【0004】
いわゆる波形基材もまた、フロースルー基材として使用され得る。これらは、不活性材料からなる波形シートから作製された基材として当業者に知られている。好適な不活性材料は、例えば、50~250μmの平均繊維直径及び2~30mmの平均繊維長を有する繊維状材料である。二酸化ケイ素、特に、ガラス繊維から作製された繊維状の耐熱性材料が好ましい。
【0005】
このような担体基材の製造では、例えば、前述の繊維材料のシートは既知の方法で波形にされ、個々の波形シートは、本体を通って延びるチャネルを有する円筒状のモノリシック構造体の形態にされる。好ましくは、横方向の波形構造を有するモノリシック構造体は、いくつかの波形シートを、層間で異なる向きの波形を有する平行な層として積み重ねることによって形成される。一実施形態では、平坦なシートを、波形シートの間に配列することができる。
【0006】
金属担体基材は、一般に、平坦な金属シート層も組み込むことができる波形金属シートから作製された構造からなる。これらの金属シートは、一般に、チャネル構造が形成されるように巻かれ、そのチャネルは、平行に走り、基材の一端から他端まで延びている。金属シートは、チャネル間のガス交換を可能にするために、連続的であることができるか、又は穴を設けることができる。更に、これらの金属シート構造は、当該構造(いわゆる開放フィルタ基材)によって潜在的な粒子排出物が捕集されるように成形することができる。
【0007】
ウォールフローフィルタは、長さLのチャネルを備える担体本体(carrier body)であり、このチャネルは、好ましくは、ウォールフローフィルタの第1の端部と第2の端部との間に平行に延びており、第1の端部又は第2の端部のいずれかにおいて交互に閉鎖されていて、多孔性壁によって分離されている。それらは、例えば、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、又はコーディエイトからなる。
【0008】
未コーティング状態では、ウォールフローフィルタは、例えば、30~80%、具体的には50~75%の細孔率を有する。未コーティング状態において、ウォールフローフィルタの平均細孔サイズは、例えば、5~30マイクロメートルである。
【0009】
一般に、ウォールフローフィルタの細孔は、いわゆる開細孔であり、すなわち、それらはチャネルに接続している。更に、細孔は、一般には、互いに相互接続されている。これは、一方では、内側細孔表面の容易なコーティングを可能にし、他方では、ウォールフローフィルタの多孔性壁を通した排気ガスの容易な通過を可能にする。
【0010】
貴金属(precious metal)は、特に、触媒活性固体として排気ガス触媒において使用される。貴金属の価格が高いため、これらの貴金属を最大限に活用することが触媒開発の重要なポイントである。高表面積は、小さな貴金属粒子を使用すると達成され、理想的な粒径は、用途、担体金属、及び貴金属(noble metal)に応じて変化し得る。
【0011】
欧州特許第1547682(A1)号は、SiO-Al上に担持された白金触媒を開示しており、これらの触媒のうちの2つが順次配列されていて、前方の触媒は、後方の触媒よりも小さい白金粒子を有する。最適な白金粒径は20nmである。
【0012】
Rymesら(「Pt combustion catalysts prepared from w/o microemulsions」;Studies in Surface Science and Catalysts 143,Elsevier Science B.B.2002 p.121-129)は、ある特定の炭化水素の酸化のためのT50温度に対する酸化アルミニウムペレット上に担持された白金触媒の白金粒径の影響を調査した。理想的な粒径は55nmである。
【0013】
特開平09-103651(A)号は、NOx還元のための排気システムを記載している。理想的な白金粒径は37nmである。
【0014】
米国特許出願公開第2009/0011177(A1)号は、NO酸化のための、γ-酸化アルミニウム上、最大271nmの粒径を有する白金コロイドを開示している。
【0015】
米国特許出願公開第2003/0185736(A1)号は、排気ガス後処理、特に窒素酸化物の変換のための、最大45nmの粒径を有する白金、パラジウム、及び/又はロジウムのための担体として新しい担体酸化物及びそれらの製造を記載している。
【0016】
DE102017122001(A1)は、ルチル相を有する担体酸化物上のルテニウム又は白金及びルテニウムのアンモニアスリップ触媒(ASC)を開示している。
【0017】
150~500nmの白金粒径を有する白金触媒は、出願公開第2010-149097(A)号に記載されている。
【0018】
リーンバーンエンジンでは、酸化触媒によるHC及びCOの変換が可能であるが、NOxの窒素への還元は不可能である。NOx吸蔵触媒の使用又はいわゆるSCR触媒の使用は、選択的接触還元(SCR)に必要である。NOx吸蔵触媒は定期的に再生する必要があるが、それは、SCR触媒には必要ない。
【0019】
しかしながら、SCR触媒の使用には、還元剤の添加が必要である。一般的に行われているのは、SCR触媒の上流の排気ガスシステムへ尿素水溶液を注入することである。175℃を超える温度で、アンモニア及びCOを、加水分解によって形成する:
【0020】
【化1】
【0021】
次に、形成されたアンモニアは、SCR触媒によって窒素酸化物を窒素に還元するための還元剤として機能する。
【0022】
【化2】
【0023】
反応は、NO/NO≒1の比率で特に迅速に進行する:
【0024】
【化3】
【0025】
窒素酸化物の最も完全な可能な変換を達成するために、尿素はわずかに過剰投与する。これにより、排気ガス中に未変換のアンモニアが発生し、それは、その有毒作用のために望ましくなく、排気ガス規制においてアンモニア排出量がますます制限されている理由である。
【0026】
この理由から、SCR触媒によって未変換アンモニアを変換するいわゆるアンモニアスリップ触媒(ASC)が使用される。アンモニアは、窒素へと酸化される:
【0027】
【化4】
【0028】
アンモニア酸化に活性な触媒成分は、以下でAMOXと称される。
【0029】
パラジウム触媒及びロジウム触媒と比較して、白金触媒は、最高のアンモニア酸化活性を示す(Hansen T.K.(2017).Kgs.Lyngby:Technical Univ.of Denmark(DTU))。
【0030】
酸化アルミニウム(Al)は、一般に、優れた熱安定性を有するため、貴金属のための担体材料としてAMOX成分に使用される。しかしながら、従来のAl担持AMOX触媒は、窒素(N)への酸化に関して選択性が不十分である。望ましくない副反応として、アンモニアのNO及びNOへの酸化が起こる。これは、当然のことながら、窒素酸化物を還元するためには逆効果である。加えて、NOはまた、その温室ガス効果の故に問題がある。
【0031】
選択性を高めるために、上記AMOX触媒は、SCR活性触媒組成物とも組み合わされる(国際公開第WO2016/205506(A1)号、米国特許出願公開第2008/292519(A1)号、同第2014/212350(A1)号、同第2014/0157763(A1)号、同第2015/037233(A1)号)。これらのSCR活性組成物は、AMOX触媒と1つの層において混合して又は1つの層において混合し、更に上層の両方において混合して、AMOX触媒層上に適用することができる。これらの組み合わせにより、Nへの触媒の選択性を、その後のNOの還元によって高めることができ、全体としてアンモニアスリップ触媒(ASC)を構成する。
【0032】
しかしながら、白金触媒によるNOの還元は極わずかである。したがって、NOの形成は可能な限り低く保たなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
したがって、本発明の目的は、高いアンモニア酸化活性を有するが、窒素への酸化に対して良好な選択性も有し、かつ、有害な副産物を最小限に抑える、白金触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、アンモニア酸化に関するライトオフ(light-off)温度が驚くほど低温であり、かつNへの酸化について高い選択性を有する組成物に関する。
【0035】
本発明を以下において詳細に説明する。
本発明は、金属酸化物A上に担持された白金粒子の形態で白金を含む組成物に関し、当該白金粒子は、50~200nm、好ましくは80~120nmの平均粒径を有し、当該金属酸化物Aは、酸化チタンである。
【0036】
本発明の範囲内において、「平均粒径」は、Pt結晶子の平均直径であり、これは、ピーク幅(半値全幅、FWHM)にわたる約39.8°2シータにおける[111]主反射に基づいて、X線回折画像から計算される。ここでは、28.4°2シータにピークを有するケイ素及び0.06°2シータのFWHMを標準として使用している。
【0037】
一実施形態では、当該組成物は、白金以外の貴金属を含有していない。この実施形態の変化形に含有されない貴金属は、特に、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、金、及び銀である。
【0038】
好ましい実施形態では、二酸化チタンとして主に存在する酸化チタンは、結晶相アナターゼ及びルチルを含む。アナターゼ相及びルチル相は、好ましくは、9:1を超える比率で存在する。
【0039】
金属酸化物Aの白金担持量は、特に、金属酸化物Aに基づいて、0.5~20重量%、好ましくは3~8重量%の範囲である。
【0040】
金属酸化物Aの温度安定性は、酸化ケイ素でドープすることによって増加させることができ、好ましくは、1~10重量%の酸化ケイ素含有量が金属酸化物Aにおいて使用される。
【0041】
一実施形態では、白金で担持された金属酸化物Aは、別の金属酸化物、すなわち金属酸化物Bと混合される。酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化セリウム、又は酸化ジルコニウムを、金属酸化物Bのために使用することができる。これらの酸化物の混合物又はそれらの混合酸化物も使用することができる。金属酸化物Bは、金属酸化物Aとは異なっていてもよい。しかしながら、金属酸化物A及び金属酸化物Bは、好ましくは同じ金属酸化物であり、一実施形態における金属酸化物Bは、貴金属、例えば、白金、パラジウム、及び/又はロジウムを担持し、別の実施形態では、貴金属を担持しない。
【0042】
加えて、本発明は、金属酸化物A上に担持された白金粒子を有する本発明による組成物を製造するための方法を含み、当該白金は、金属酸化物A上の溶液から堆積され、続いて乾燥後700℃~900℃で熱処理され、それによって白金は金属酸化物上に固定される。
【0043】
本発明は、触媒を更に含み、本発明による組成物は、長さLのセラミック担体基材にコーティングの形態で適用される。
【0044】
本発明による触媒の一実施形態の変形では、組成物は、担体基材の全長の少なくとも80%にわたって適用される。出来る限り完全にコーティングすると、排気ガスと触媒との可能な限り最長の接触時間を引き起こし、そのため、可能な限り最高のアンモニア変換が得られる。
【0045】
本発明による触媒の更なる実施形態の変形では、組成物は、担体基材の全長の10%~80%にわたってコーティングされ、したがって、ゾーン化触媒の設計が可能になる。
【0046】
本発明による触媒の場合、本発明による組成物は、別の触媒活性組成物と一緒に、特に、SCR反応に活性な組成物と一緒に、担体基材に適用することができる。
【0047】
加えて、本発明は、本発明による組成物及び別の触媒活性組成物が、異なるゾーン及び/又は層に配列されている触媒を含む。
【0048】
前述の触媒に使用される担体基材は、セラミック又は金属から作製され得る。それは、例えば、フロースルー基材であることができる。いわゆる波形基材は、担体基材として使用することもできる。フィルタ基材もまた使用してよい。
【0049】
本発明はまた、本発明による触媒が使用される触媒系も含む。
【0050】
本発明はまた、リーンバーン内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物を還元するための方法であって、当該排気ガスが、窒素酸化物の選択的還元のための触媒(SCR)及び排気ガス流の下流にあるアンモニアスリップ触媒(ASC)を含む排気ガスシステム上を通過し、当該ASCが本発明による触媒である、方法も含む。
【0051】
SCR触媒は、Fe-ゼオライト又はCu-ゼオライトタイプの酸化バナジウム系触媒又はゼオライト系触媒であることができる。
【0052】
ゼオライトは2次元又は3次元構造であり、その最も小さい下部構造は、SiO及びAlO四面体であると考えることができる。これらの四面体はより大きな構造を形成し、2つはそれぞれ共通の酸素原子を介して互いに接続されている。したがって、4、6、又は更に9個の四面体に配位されたSi又はAl原子の環構造などの異なるサイズの環構造を形成することができる。様々なゼオライトタイプは、しばしば最大の環サイズによって定義されるが、それは、このサイズによって、ゼオライト構造に浸透できるゲスト分子が決まるためである。通常は、最大12個の四面体の環サイズを有する大細孔ゼオライトと、最大10個の四面体の環サイズを有する中細孔ゼオライトと、最大8個の四面体の環サイズを有する小細孔ゼオライトが区別される。ゼオライトは、国際ゼオライト学会の構造委員会(Structural Commission of the International Zeolite Association)によって構造タイプに分類されており、3文字のコードで示されている。
【0053】
大細孔及び中細孔又は小細孔ゼオライトの両方を、本発明による組成物のために使用することができる。好適なゼオライトの例は、構造タイプABW、AEI、AFX、BEA、CHA、DDR、ERI、ESV、FAU、FER、KFI、LEV、LTA、MER MFI、MWW、SOD、又はSTTに属する。構造タイプAEI、AFX、CHA又はLEVの小細孔ゼオライトが好ましい。構造タイプCHAのゼオライトが特に好ましい。2対100、特に好ましくは5:50、更に好ましくは10:40のSi:Al比が使用される。
【0054】
本発明の範囲内では、「ゼオライト」という用語は、モレキュラーシーブも含み、これは時折「ゼオライト様構造」と呼ばれる。前述の構造タイプのモレキュラーシーブが好ましくは使用される。例としては、SAPOとも呼ばれるケイ素-アルミニウム-ホスフェートゼオライト、及び用語AlPOとして知られているアルミニウム-ホスフェートゼオライトが挙げられる。
【0055】
担体基材のコーティングは、当業者によく知られている方法に従って、例えば、その後に熱的後処理(焼成)を伴う、一般的な浸漬コーティング法、又はポンプコーティング及び吸引コーティング法に従って、調製することができる。当業者は、ウォールフローフィルタの場合、コーティングされる材料の平均細孔サイズ及び平均粒径が、ウォールフローフィルタのチャネルを形成する多孔性壁上に存在するように、互いに適合させることができる(オンウォールコーティング)、ことを認識している。コーティングされる材料の平均粒径はまた、当該材料がウォールフローフィルタのチャネルを形成する多孔性壁内に位置するように、すなわち、内側細孔表面がコーティング(インウォールコーティング)されるように、選択できる。この場合、コーティングされる材料の平均粒径は、ウォールフローフィルタの細孔内に入り込むのに十分に小さくなければならない。
【0056】
ゾーン化触媒は、異なる設計が可能である。例えば、本発明による組成物で提供される又は別の触媒活性組成物と混合されるゾーンは、基材の一端(A)から、基材の全長Lの長さL=20%~80%にわたって延びていることができ、一方、更なるゾーンは、基材のもう一方の一端(B)から、基材の全長LのL=20%~80%にわたって延びていることができる。この場合、ゾーンは、重なり合ったり、接触したり、又はギャップを有するように設計されたりすることができる。例えば、本発明による組成物は、長さLにわたって適用することができ、一方、SCRコーティングは、Lにわたって適用することができる。重なり合うとき、長さLのゾーンは、ゾーンLの上で延びていることができ、したがって、上述したように、その後のNOのNへの還元を想定することができる。後者の場合、Lは、基材の長さと全く同じになるように選択することもできる。
【0057】
ウォールフローフィルタを使用すると、入力チャネルをSCR活性コーティングでコーティングし、出口チャネルをASCコーティングでコーティングすることも可能であって、本発明による組成物は、ASCコーティングのAMOX活性成分として完全に好適である。この場合、基材の長さにわたるゾーニングを更に使用することができる。
【0058】
本発明による組成物は、リーンバーン内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物を還元するためのシステムにおけるアンモニア酸化触媒としての使用に完全に好適である。窒素酸化物の選択的還元のための触媒(SCR)と、排気ガス流の下流にあるアンモニアスリップ触媒(ASC)とを含むシステムであって、ASCが、AMOX触媒機能を含む本発明による粉末又は粉末混合物を含む、システムである。
【0059】
このためのSCR触媒は、一般に、窒素酸化物とアンモニアとのSCR反応において活性な全ての触媒から、特に、自動車の排気ガス触媒の分野において当業者には慣習的なものであることが知られている触媒から、選択することができる。これには、混合酸化物タイプの触媒、及びゼオライトに基づく-特に遷移金属交換ゼオライトに基づく-触媒が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】K1の温度(点線)及び比較例VK1(実線)の関数としての変換曲線を示す図である。
図2】2つの触媒のNOに対する選択性を示す図である。
図3】新鮮(a)、並びに650℃(b)、700℃(c)、800℃(d)、900℃(e)、及び1000℃(f)における還元雰囲気(10%O、10%HO、残りは窒素)下での当該触媒のエージング後の本発明による、触媒K1上でのアンモニアの変換について示す図である。
図4】、実施例K2(円)、K3(三角形)、及びK4(星型)の結果を比較的して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明によるAMOX触媒を、従来技術に対応する触媒と比較して、以下で説明する。
【0062】
実施例K1
希硝酸を添加することによって、白金を、テトラエチルアンモニウムヘキサヒドキソプラチネート(tetraethylammonium hexahydoxoplatinate)(欧州特許第3210989(B1)号)の水溶液から、5重量%の酸化ケイ素で安定化された酸化チタン粉末上に沈殿させて、3重量%(酸化チタン粉末に基づく)濃度のPtを有する材料を得る。次いで、このようにして製造された粉末を濾別し、乾燥させ、空気雰囲気中で800℃で2時間固定する。
本発明による触媒を製造するために、当該粉末を水中でスラリー化し、コーティングされていない酸化チタンを添加することによって、0.14重量%(総酸化チタン粉末に基づいて)のPtの所望の担持量を設定する。セル密度400cpsi及び壁厚110μmを有する市販のセラミックフロースルー基材を、通常の方法によって、このウォッシュコートでコーティングする。次いで、コーティングされた基材を、110℃で乾燥し、600℃で6時間焼成する。触媒のウォッシュコート担持量は25g/Lであり、触媒の白金担持量は0.0353g/Lである。
【0063】
比較例VK1
比較参照として、担体粉末としてγ-酸化アルミニウムと等しい白金含有量を有する触媒を使用する。
【0064】
白金は、希釈硝酸を添加することによって、テトラエチルアンモニウムヘキサヒドキソプラチネートの水溶液から担体粉末に沈殿させる。γ-酸化アルミニウムを担体粉末として使用する。次いで、そのようにして生成させたウォッシュコートを、市販のフロースルー基材上に通常の方法でコーティングする。次いで、コーティングされた基材を、110℃で乾燥し、600℃で6時間焼成する。触媒のウォッシュコート担持量は25g/Lである。
【0065】
25.4mmの直径及び76.2mmの長さを有するドリルコアを、測定目的のために、完成触媒から取得した。ガス組成及び空間速度を表1に示すように選択し、これらのドリルコアをモデルガスシステムで測定した。
【0066】
【表1】
【0067】
その結果を図1図2に比較して示す。
【0068】
図1は、K1の温度(点線)及び比較例VK1(実線)の関数としての変換曲線を示している。図から分かるように、本発明による触媒は、著しく早期のライトオフを有する。K1は、すでに197℃で50%の変換率を達成しているが、これは、VK1を使用した場合は、237℃でのみ達成される。加えて、K1によって10%の変換率がすでに150℃で達成され、この温度では、VK1の場合、変換を観察することができない。
【0069】
図2は、2つの触媒のNOに対する選択性を示している。ここでも同様に、K1の結果は点線で示し、VK1の結果は実線で示している。本発明によるAMOX触媒は、参照触媒よりもNOに対する選択性が低いことが明らかである。ASC後の排気ガスにおいて測定された最大NO濃度は、K1では47ppmであって34%の選択性に相当し、VK1では60ppmであって44%の選択性に相当した。
【0070】
更に、K1の白金粒子のサイズを測定した。この目的のために、X線回折像を作成し、平均粒径は、ピーク幅(FWHM)にわたる約39.8°での[111]主反射に基づいて計算した。このようにして、100nmの平均粒径を決定した。
【0071】
そのような良好な選択性及び活性を有する触媒が、そのような大きな白金粒子直径を有することは驚くべきことである。触媒活性に対する白金粒径の影響を更に調査するために、白金粒径を、K1の様々なエージングによって変化させた。エージング温度が高いほど、他の点では同一のエージング条件下では、粒子焼結に起因して、得られる白金粒径は大きくなる。
【0072】
図3は、新鮮(a)、並びに650℃(b)、700℃(c)、800℃(d)、900℃(e)、及び1000℃(f)における還元雰囲気(10%O、10%HO、残りは窒素)下での当該触媒のエージング後の本発明による、触媒K1上でのアンモニアの変換について示している。650℃でのエージングが12時間であったことを除いて、エージング時間は16時間であった。図から分かるように、アンモニアの最大変換率が900℃で低下し、及び1000℃以上で触媒活性が大幅に低下するまで、より高いエージング温度、したがってより大きな白金粒径は、NOへの選択性を低下させ、アンモニア変換のためのライトオフ温度を低下させる。したがって、約800℃あたりの範囲は、熱前処理のための好ましい温度範囲と見なすことができる。
【0073】
白金含有金属酸化物と、貴金属を含まない金属酸化物との混合物の影響を、本発明による触媒K2~K4を使用して調査した。それを以下に記載する。
【0074】
実施例K2
希硝酸を添加することによって、白金を、テトラエチルアンモニウムヘキサヒドキソプラチネート(欧州特許第3210989(B1)号)の水溶液から、5重量%の酸化ケイ素で安定化された酸化チタン粉末上に沈殿させて、3重量%(酸化チタン粉末に基づく)濃度のPtを有する材料を得る。次いで、このようにして製造された粉末を濾別し、乾燥させ、空気雰囲気中で800℃で2時間固定する。
【0075】
本発明による触媒を製造するために、当該粉末を水中でスラリー化し、そしてコーティングされていない酸化チタンを添加することによって、0.4重量%(総酸化チタン粉末に基づいて)のPtの所望の担持量が設定される。セル密度400cpsi及び壁厚110μmを有する市販のセラミックフロースルー基材を、通常の方法によって、このウォッシュコートでコーティングする。次いで、コーティングされた基材を、110℃で乾燥し、600℃で6時間焼成する。触媒のウォッシュコート担持量は25g/Lであり、触媒の白金担持量は0.1059g/Lである。
【0076】
実施例K3
触媒は、K2と同様に調製するが、酸化チタン粉末に基づいて4重量%のPt濃度を有する材料は、白金が水溶液から酸化チタン粉末上に沈殿するときに製造する。
【0077】
実施例K4
触媒は、K2と同様に調製するが、酸化チタン粉末に基づいて8重量%のPt濃度を有する材料は、白金が水溶液から酸化チタン粉末上に沈殿するときに製造される。
【0078】
触媒K2、K3、及びK4を、還元条件(10%O、10%HO、残りは窒素)下、800℃で16時間エージングし、アンモニア変換、並びにNO及びNO濃度を、触媒後に測定する。
【0079】
図4は、実施例K2(円)、K3(三角形)、及びK4(星型)の結果を比較的して示している。図から分かるように、触媒特性はほとんど同じであり、酸化チタン粉末の高いPt担持量は、処理される粉末の量を減らすため、製造コストも低減される。したがって、Pt含有粉末を、Ptを含まない粉末と混合することによって製造される粉末混合物は、本発明による物質の好ましい変形である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】