(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-25
(54)【発明の名称】マルチターゲットレーダエミュレータシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20221018BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20221018BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20221018BHJP
【FI】
G01S7/40 186
G01S7/03 212
G01S13/931
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509638
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(85)【翻訳文提出日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 US2020031588
(87)【国際公開番号】W WO2021034357
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514046574
【氏名又は名称】キーサイト テクノロジーズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】リー,グレゴリー,エス.
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AF03
(57)【要約】
車両レーダを試験するシステム100が説明される。システム100は、レーダ被試験デバイス(DUT)から第1の側部103に入射する電磁波を回折するように構成された回折性光学素子104(DOE104)を備える。システム100は、第2の側部105から、DOE104から回折された電磁波を受信するように適合された再照射要素も備える。再照射要素は、見掛けの到来角(AoA)の電磁波をDOE104に戻して送信するように適合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験レーダデバイス(DUT)から第1の側部(103)に入射する電磁波を回折するように構成された回折性光学素子(104)と、
第2の側部(105)から、前記回折性光学素子(104)から回折された電磁波を受信するように適合された再照射要素であって、該再照射要素は、見掛けの到来角(AoA)の電磁波を前記回折性光学素子(104)に戻して送信するようになっている、再照射要素と
を備える、車両レーダを試験するシステム(100)。
【請求項2】
前記再照射要素は、見掛けのターゲット(2)距離若しくは見掛けのターゲット(2)速度、又はそれらの双方をエミュレーション(10)するようになっている、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記再照射要素は、それぞれが、アンテナ(108)と、サーキュレータ(402)と、同相-直交(IQ)ミキサ(403)と、可変利得増幅器(404)とを備える複数の変調反射素子(110)を更に備える、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記可変利得増幅器(404)の利得又は損失は、レーダ断面積を複数のターゲットのそれぞれにマッピングするように選択される、請求項3に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記複数の変調反射素子(110)は複数のターゲットに等しい、請求項3に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記複数の変調反射素子(110)のそれぞれが、互いに隣接して接続されたパッチアンテナの複数のアレイのそれぞれに接続され、前記複数の変調反射素子(110)及び複数のパッチアンテナは単一の再照射要素を備える、請求項3に記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記単一の再照射要素は、方位角方向においてジンバル支持されない、請求項6に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記パッチアンテナの複数のアレイのそれぞれが、信号送信線によって直列に接続された複数のパッチアンテナを備える、請求項6に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記直列に接続された複数のパッチアンテナのそれぞれに沿って進行する電磁波の位相は実質的に直列である、請求項8に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記複数のパッチアンテナの隣接したアレイに沿って進行する前記電磁波の位相は、方位角方向において走査するように変動する電気的位相を有する、請求項8に記載のシステム(100)。
【請求項11】
各アンテナ(108)はスポット集束アンテナ(108)である、請求項3に記載のシステム(100)。
【請求項12】
前記回折性光学素子(104)は、前記第1の側部(103)から鏡面反射された電磁波の低減を助長する、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項13】
システム(100)であって、
被試験レーダデバイス(DUT)から第1の側部(103)に入射する電磁波を回折するように構成された回折性光学素子(104)と、
第2の側部(105)から、前記回折性光学素子(104)から回折された電磁波を受信するように適合された再照射要素であって、該再照射要素は、見掛けの到来角(AoA)の電磁波を前記回折性光学素子(104)に戻して送信するようになっており、該再照射要素は、見掛けのターゲット(2)の距離若しくは見掛けのターゲット(2)の速度、又はそれらの双方をエミュレーション(10)するように適合されている、再照射要素と、
前記複数の変調反射素子(110)のうちの1つに接続された能動的エコーキャンセルデバイスであって、周波数シフト(δf
*)及び可変利得増幅器(404)の利得を有する該能動的エコーキャンセルデバイスが、前記回折性光学素子(104)の前記第1の側部(103)から鏡面反射された電磁放射と弱め合って干渉するように選択される、能動的エコーキャンセルデバイスと、
命令を記憶するメモリ(116)と、前記命令を実行するプロセッサ(118)とを備えるコントローラ(114)であって、該コントローラ(114)は、前記再照射要素を制御し、複数のターゲットを備える前記車両レーダに対する性能試験を行うように構成されるコントローラと
を備える、車両レーダを試験するシステム。
【請求項14】
前記再照射要素は、それぞれが、アンテナ(108)と、サーキュレータ(402)と、同相-直交(IQ)ミキサ(403)と、可変利得増幅器(404)とを備える複数の変調反射素子(110)を更に備える、請求項13に記載のシステム(100)。
【請求項15】
複数の焦点の数は、前記システム(100)によってエミュレーションされている前記複数のターゲットの数以上である、請求項14に記載のシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ミリメートル波は、30ギガヘルツ(GHz)~300ギガヘルツの周波数スペクトル内の周波数における振動から生じる。ミリメートル波(mm波)自動車レーダは、既存の先進運転支援システム(ADAS:advanced driver-assistance systems)及び計画されている自律運転システム(planned autonomous driving systems)にとって重要な技術である。例えば、前方衝突及び後方衝突を警告するために、先進運転支援システムにおいてミリメートル波自動車レーダが使用される。さらに、適応クルーズ制御(adaptive cruise control)及び自律駐車を実施するために、そして最終的には、街路及び幹線道路における自律運転のために、計画されている自律運転システムにおいてミリメートル波自動車レーダが使用される場合がある。ミリメートル波自動車レーダは、大部分のタイプの気象条件下で作動することができ、そして日中及び夜間に作動できるという点で、他のセンサシステムより優れた利点を有する。ミリメートル波自動車レーダを適応させるコストは、ミリメートル波自動車レーダを現時点において大規模に展開できるレベルまで下がっている。結果として、ミリメートル波自動車レーダは、先進運転支援システムにおいて長距離、中距離及び短距離の環境センシングのために、現在広く使用されている。さらに、ミリメートル波自動車レーダは、現在開発されつつある自律運転システムにおいて広く使用される可能性が高い。
【0002】
自動車レーダが展開される場合がある実際の運転環境は大きく異なる可能性があり、多くのそのような運転環境は複雑な場合がある。例えば、実際の運転環境は数多くの物体を含む場合があり、実際の運転環境において遭遇する物体の中には、エコー信号に影響を及ぼす複雑な反射及び回折特性を有するものもある。エコー信号を誤って検知し、及び/又は解釈する直接の結果として、誤警告若しくは不適切な反応がトリガされるか、又はトリガされるべき警告若しくは反応がトリガされない場合があり、それにより事故につながるおそれがある。
【0003】
その結果、自動車製造業者及び自動車レーダ製造業者は、走行条件を電子的にエミュレーションして、最適な精度の性能を有する自動車レーダシステムを提供することを切望している。
【0004】
シングルターゲットレーダエミュレータ(single-target radar emulator)が知られている。しかしながら、実際の運転シナリオをエミュレーションするには、複数のターゲットをエミュレーションすることが必要となる。例として、レーダ装備車両の同じ車線内の前方に自動車が存在し、左側の1つの車線の前方にトラックが存在し、右側の車線分離線(lane divider)に沿って前方を走る自転車搭乗者が存在し、交差交通において赤信号を無視して走行しようとする別の車両が存在する場合がある。既知のデバイスを使用した見掛けの到来角(AoA:angle of arrival)のエミュレーションは遅く、高価な電子機器が原因で、より多くの数に対してスケーラブルでない。その上、ほとんどの既知のエミュレータでは、距離(range)、速度、及びAoAの不完全なサブセットしかエミュレーションされない。
【0005】
したがって、必要とされているものは、少なくとも上述した既知のレーダエミュレータの欠点を克服する、レーダシステムが遭遇する複数のターゲットをエミュレーションするシステムである。
【0006】
例示的な実施形態は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明から最も深く理解される。種々の特徴は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを強調したい。実際には、検討を明確にするために、寸法が任意に拡大又は縮小される場合がある。適用可能で、実用的な場合にはいつでも、同じ参照番号が同じ要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】代表的な実施形態による車両レーダを試験するシステムを示す簡略化されたブロック図である。
【
図2】代表的な実施形態による車両レーダを試験するシステムの或る特定の構成要素の簡略化された図である。
【
図3】代表的な実施形態による回折性光学素子(DOE:diffractive optical element)の斜視図である。
【
図4】代表的な実施形態による変調反射素子(MRD:modulated reflection device)の簡略化された回路図である。
【
図5A】代表的な実施形態による、チャープ信号の周波数対時間のグラフである。
【
図5B】代表的な実施形態による、チャープ信号の周波数対時間のグラフである。
【
図6A】代表的な実施形態による再照射器の簡略化された概略図である。
【
図6B】代表的な実施形態による、
図6AのMRDのミキサの同相成分及び直交成分の位相関係を示す図である。
【
図7】代表的な実施形態による、能動的エコーキャンセルを含む車両レーダを試験するシステムの或る特定の構成要素の簡略化された図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明では、説明のためであり、限定はしないが、本教示による一実施形態を完全に理解してもらうために、具体的な詳細を開示する代表的な実施形態が記述される。代表的な実施形態の説明を不明瞭にするのを避けるために、既知のシステム、デバイス、材料、動作方法及び製造方法の説明は省略される場合がある。それにもかかわらず、当業者の理解の範囲内にあるシステム、デバイス、材料及び方法は、本教示の範囲内にあり、代表的な実施形態に従って使用される場合がある。本明細書において使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものでないことは理解されたい。定義される用語は、定義された用語の科学技術的な意味に加えて、本教示の技術分野において一般に理解され、受け入れられるような意味を有する。
【0009】
種々の要素又は構成要素を説明するために、本明細書において第1の、第2の、第3の等の用語が使用される場合があるが、これらの要素又は構成要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことは理解されたい。これらの用語は、或る要素又は構成要素を別の要素又は構成要素から区別するためにのみ使用される。したがって、以下に論じられる第1の要素又は構成要素は、本開示の教示から逸脱することなく、第2の要素又は構成要素と呼ぶことができる。
【0010】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるときに、「一(a、an)」及び「その(the)」という単数形の用語は、文脈上、他の意味として明確に指示される場合を除いて、単数形及び複数形の両方を含むことを意図している。さらに、「備える(comprises、comprising)」という用語及び/又は類似の用語は、本明細書において使用されるときに、言及される特徴、要素及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、要素、構成要素及び/又はそのグループの存在又は追加を除外しない。本明細書において使用されるときに、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連して列挙される項目のうちの1つ以上の項目のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0011】
別段の言及がない限り、或る要素又は構成要素が、別の要素又は構成要素に「接続される」又は「結合される」と言われるとき、その要素又は構成要素を他の要素又は構成要素に直接接続又は結合することができるか、又は介在する要素又は構成要素が存在する場合があることは理解されたい。すなわち、これらの用語及び類似の用語は、2つの要素又は構成要素を接続するために、1つ以上の中間にある要素又は構成要素が利用される場合がある事例を含む。しかしながら、或る要素又は構成要素が、別の要素又は構成要素に「直接接続される」と言われるとき、これは、2つの要素又は構成要素が、任意の中間にある又は介在する要素又は構成要素を用いることなく、互いに接続される事例のみを含む。
【0012】
様々な代表的な実施形態に関して本明細書で説明されるように、車両レーダを試験するシステムが開示される。システムは、被試験デバイス(DUT)から第1の側部に入射する電磁波を回折するように構成された回折性光学素子(DOE: diffractive optical element)を備える。システムは、第2の側部から、DOEから回折された電磁波を受信するように適合された再照射(re-illumination)要素も備える。再照射要素は、見掛けの到来角(AoA)の電磁波をDOEに戻して送信するようになっている。システムは、命令を記憶するメモリと、命令を実行するプロセッサとを備えるコントローラも備える。コントローラは、再照射要素を制御し、複数のターゲットを含む車両レーダに対し性能試験を行うように構成される。
【0013】
図1は、代表的な実施形態による車両レーダを試験するシステム100を示す簡略化されたブロック図である。本開示の利益を有する当業者によって理解されるように、1つの有望な車両レーダは、現在及び振興の自動車の用途において様々な収容能力で使用される自動車レーダである。ただし、ここで説明される車両レーダを試験するシステム100は、自動車レーダシステムに限定されるものではなく、バス、オートバイ、原動機付き自転車(例えば、スクータ)、及び車両レーダシステムを用いることができる他の車両を含む他のタイプの車両にも適用することができることを強調しておく。
【0014】
代表的な実施形態によれば、システム100は、レーダ被試験デバイス(DUT)102を試験するように構成され、回折性光学素子104及び複数の再照射器106を備える。再照射器106のそれぞれがアンテナ108及び変調反射素子(MRD:modulated reflection device)110を備える。本明細書においてより十分に説明されるように、エミュレーションされたターゲットごとに1つの再照射器が存在する。
【0015】
システムはコンピュータ112も備える。コンピュータ112は、例示として、本明細書において説明されるコントローラ114を備える。本明細書において説明されるコントローラ114は、命令を記憶するメモリ116と、本明細書において説明されるプロセスを実施するために命令を実行するプロセッサ118との組み合わせを含むことができる。コントローラ114は、コンピュータ112等のワークステーション、又はスタンドアローンコンピューティングシステム、サーバシステムのクライアントコンピュータ、デスクトップ若しくはタブレットの形態の1つ以上のコンピューティングデバイス、ディスプレイ/モニタ、及び1つ以上の入力デバイス(例えば、キーボード、ジョイスティック及びマウス)からなる別のアセンブリ内に収容することもできるし、それらにリンクすることもできる。「コントローラ」という用語は、本開示において説明されるような様々な原理の適用を制御する特定用途向けメインボード又は特定用途向け集積回路の、本開示の技術において理解されており本開示に例として説明されているような全ての構造的構成物を広く包含する。コントローラの構造的構成物は、プロセッサ(複数の場合もある)、コンピュータ使用可能/コンピュータ可読記憶媒体(複数の場合もある)、オペレーティングシステム、アプリケーションモジュール(複数の場合もある)、周辺デバイスコントローラ(複数の場合もある)、スロット(複数の場合もある)及びポート(複数の場合もある)を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
加えて、コンピュータ112は、互いにネットワーク化された構成要素を示しているが、2つのそのような構成要素は、単一のシステムに統合することができる。例えば、コンピュータ112は、ディスプレイ(図示せず)及び/又はシステム100と統合することができる。すなわち、いくつかの実施形態において、コンピュータ112に帰属する機能は、第1の医療撮像システム410を含むシステム100が実施する(例えば、実行する)ことができる。他方、コンピュータ112のネットワーク化された構成要素は、異なる部屋又は異なる建物等に分散させることによって空間的に分散させることもでき、その場合に、ネットワーク化された構成要素は、データ接続を介して接続することができる。更に別の実施形態において、コンピュータ112の構成要素のうちの1つ以上は、データ接続を介して他の構成要素に接続されず、その代わりに、メモリスティック又は他の形態のメモリ等によって手動で入力又は出力を与えられる。更に別の実施形態において、本明細書において説明される機能は、コンピュータ112の要素であるが、システム100の外部の要素の機能に基づいて実行することができる。
【0017】
システム100の様々な構成要素が、以下で代表的な実施形態に関してより詳細に説明されるが、システム100の機能の簡潔な説明をここで提示することにする。
【0018】
動作時に、レーダDUT102は、DOE104の第1の側部103に入射する信号(例示としてmm波信号)を放射する。本明細書においてより十分に説明されるように、レーダDUT102からの信号は、DOE104によって回折され、以下でより十分に説明されるように、有利には比較的高利得のアンテナであるアンテナ108のそれぞれにおいて集束される。したがって、DOE104は、第2の側部105に対し特定の角度で入射波を回折し、各回折波はアンテナ108のそれぞれにおいて集束される。特に、アンテナ18のそれぞれにおけるそれぞれ1つの焦点(focal point)(或いは複数の焦点(foci))は、システム100によってエミュレーションされるターゲットを表す。
【0019】
ここでもまた、DOE104によって回折される信号のそれぞれが、再照射器106のアンテナ108のそれぞれ1つに入射する。アンテナ108に入射する信号は、MRD110のそれぞれに提供される。本明細書においてより十分に説明されるように、コントローラからの入力に基づいて、入射信号の周波数変調は、MRDのそれぞれにおいて行われ、有利には、レーダDUT102からのターゲットの距離、若しくはレーダDUT102に対するターゲットの速度、又はその両方をエミュレーションする。さらに、ここでもまた本明細書においてより十分に説明されるように、方位角(azimuth)(
図1の座標系における±x方向)及び仰角(elevation)(
図1の座標系における±z方向)は、例示的に機械的にジンバル支持されるか、又は機械的ジンバル支持及び電子エミュレーションの組み合わせであるアンテナ108によってエミュレーションされる。
【0020】
再照射された信号がDOE104の第2の側部105に入射し、再び回折され、レーダDUT102に入射する。コンピュータ112は、レーダDUT102の精度の更なる解析のために、レーダDUT102から信号を受信する。
【0021】
図2は、代表的な実施形態による、車両レーダを試験するシステム200の或る特定の構成要素の簡略化された図である。
図1の代表的な実施形態に関連して説明されるシステム100の態様は、ここで説明するシステム200に共通のものとすることができるが、それらの態様は繰り返されない場合がある。
【0022】
システム200は、レーダDUT202を試験するように構成され、DOE204、第1の再照射アンテナ206、第2の再照射アンテナ208、第3の再照射アンテナ210及び第4の再照射アンテナ212を備える。
【0023】
第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212のそれぞれは、遅延電子機器(delay electronics)214に接続される。遅延電子機器214は、少なくとも1つのMRD(
図2に示されていない)を備え、以下でより十分に説明される。
【0024】
以下で
図3に関連しても説明するように、DOE204は、回折素子が所望の周波数範囲の電磁放射を回折するように選択された寸法を有するフレネルレンズの一般化である。上述したように、本教示のレーダDUTのレーダ信号は、ミリメートル波範囲にある。
【0025】
DOE204は、側部219のレーダDUT202におけるDOE軸217上に単一の焦点(focal point)216(或いは単一の「焦点(focus)」)を有し、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212に面する、側部217の反対側にある側部において複数の焦点(focal point)(或いは複数の焦点(plurality of foci)、又は複数の焦点(foci))を有する。複数の焦点の各焦点は、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212のうちの1つの入力に位置する。通常、側部219の反対側にある側部上の複数の焦点の数は、可能なターゲットの最大数になるように選択される。或る特定の代表的な実施形態において、DOE204は、10個以上の位置(location)においてレーダDUTからの信号を集束する。レーダDUT202の信号エミュレーションは、DOE204からの信号が集束するロケーションにおいて適切な受信デバイス(例えば、受信及び再照射されているレーダDUT信号の周波数について選択されたホーン)の配置を必要とする。特に、エミュレーションされたターゲットの数は、再照射アンテナの数、又は機能している(active)再照射アンテナの数の選択によって制御される。したがって、レーダDUT202において単一の焦点216から送信されるレーダ信号は、側部219の反対側にある側部において複数の焦点に対し回折されるが、ターゲットエミュレーションは、回折された信号ごとに行われない場合がある。
【0026】
代表的な実施形態によれば、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212のそれぞれが、少なくとも約20dBiの利得を有する比較的高利得のアンテナである。特に、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212は、ダイポールホーン又は低利得ホーンではない。なぜなら、そのようなデバイスは、DOE204の(全てではなくとも)過度に多くを再照射し、エミュレーションされたターゲットのAoAの誤差を引き起こす可能性があるためである。むしろ、或る特定の代表的な実施形態において、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212は、スポット集束アンテナ(spot-focusing antenna)であると考えられる。例示として、スポット集束アンテナの焦点距離は、特定のスポット集束アンテナにおける焦点とDOE204との間の距離の約30%~約100%である。スポットサイズは、例示的に、約1cm~約6cmの範囲の直径を有する。
【0027】
動作時に、レーダ信号は、レーダDUT202の単一の焦点216からDOE204に入射し、DOE204によって回折される。レーダDUT202から送信された単一のレーダ信号は、側部219に入射し、回折後、側部219の反対側にあるDOE204の側部から複数のレーダ信号として現れる。これらの現れた複数のレーダ信号のそれぞれがDOE204によって回折され、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212のうちの1つにおいて集束される。第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212に入射するレーダ信号は、遅延電子機器に入力され、遅延電子機器は、ターゲット距離、及びターゲットとレーダDUT202との間の相対速度をエミュレーションする。
【0028】
或る特定の代表的な実施形態において、ターゲットのそれぞれからのエミュレーション信号の方位角(azimuth)(
図2の座標系のx方向に沿ったDOE軸217に対する位置)及び仰角(elevation)(
図2の座標系のy方向に沿ったDOE軸217に対する位置)が、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212を機械的にジンバル支持する(矢印によって示される)ことによってエミュレーションされる。本明細書に記載の他の代表的な実施形態において、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212から、側部219の反対側にあるDOE204の側部への再照射されたレーダ信号の方位角又は仰角の方向付け(orientation)(すなわち角度の方向付け)のうちの1つが、本明細書に開示される遅延電子機器の構成要素を用いて電子的に達成される。したがって、或る特定の代表的な実施形態において、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212の機械的ジンバル支持と、電子ビーム成形(shaping)との組み合わせを用いて、側部219の反対側にあるDOEの側部のサブエリア、並びに最終的に、ターゲットのエミュレーションされた位置及び向きを決定する。幾分別の言い方をすれば、或る特定の代表的な実施形態によれば、双方のAoA自由度(方位角及び仰角)のエミュレーションは、電子制御なしで完全に機械的な方式で行われてもよく、又は一方のAoA自由度(例えば、見掛けの仰角)について機械的に、他方のAoA自由度(例えば、見掛けの方位角)について電子的に行われてもよい。
【0029】
或る特定の代表的な実施形態によれば、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212は、比較的高利得のアンテナであり、上述したように、レンズホーン等のいわゆるスポット集束アンテナとすることができる。したがって、示される実施形態の第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212は、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212へのそれぞれの入力位置において複数の焦点に回折されたレーダ信号を受信し、DOE204の4つの(ここでもまた、ターゲットの所望の数に応じてより多いか又はより少ない)幾分小さなサブエリアを再照射する。再照射されたミリメートル波DOE204は、レーダDUT202に対する法線に対し、サブエリアスポットの見掛けの方位角及び仰角の角度を提示し、このため、エミュレーションされたターゲットのエミュレーションされたAoAを提供する。次に、これらの再照射されたレーダ信号は、レーダDUT202によって受信され、レーダDUT202の精度は、コンピュータ(例えば、コンピュータ112)を用いて決定される。
【0030】
図2に示すように、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212からのレーダ信号がDOE204に入射する、4つのエリアO
1、O
2、O
3及びO
4が存在する。これらの4つのエリアのそれぞれが、レーダDUT202において単一の焦点216上に集束される。これらの4つのエリアは、エミュレーションされたAoAターゲットサブエリアであり、(この場合は)4つのエミュレーションされたターゲットのAoAを表す。特に、任意選択のビーム拡張レンズ220を提供することができ、このビーム拡張レンズ220は、DOE204の側部219において、比較的広い方位角をO
1において第1のターゲットによって提示させる。
【0031】
(この例示では)4つのエリアO1、O2、O3及びO4は、スポット集束アンテナとすることができる例示的にジンバル支持された第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212によって照射されるターゲットスポットである。DOE204は、幾分「角度にとらわれずに(angle-agnostic)」レーダDUT202に面するとみなすことができるが、DOE全体(所与の時点において第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212によってスポット照射(spotted)されていないエリアを含む)は、その集束を、様々な第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212に分割するように設計される。別の時点において、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212のうちの1つ以上をDOE204上の異なるスポットにジンバル支持することができ、それによって、他のエリア(例えば、O5(図示せず))が、新たな見掛けの角度ターゲットとなる。したがって、(ここでもまた、この例示では)第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212の再配列(reorientation)は、システム200のエミュレーションのための「新たな」見掛けのターゲットを提示する。
【0032】
理解されるように、ターゲットの方位角及び仰角のエミュレーションは、DOE204の回折特性、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212の向き(orientation)、及びいくつかの例では、レーダDUT202からの信号の特定の波長(例えば、ミリメートル)について選択されたビーム成形レンズを用いて行われる。本教示によって、レーダDUT202とターゲットとの間の距離のエミュレーション、若しくはレーダDUT202及びターゲットの相対速度のエミュレーション、又は双方が、MRDを用いて電子的に行われる。
【0033】
図3は、代表的な実施形態によるDOEタイル300の斜視図である。
【0034】
DOE204と同様に、DOEタイル300は、回折素子が所望の周波数範囲の電磁放射を回折するように選択された寸法を有するフレネルレンズの一般化である。上述したように、本教示のレーダDUTのレーダ信号は、ミリメートル波範囲にある。
【0035】
DOEタイル300は、レーダDUTの波長(例えば、ミリメートル波)に対し透過性であり、そのような透過性に適した材料から作製される。例示的に、DOEタイル300は、
図3に示すように段丘(terracing)を含むように加工された、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、Ultem又はrexolite等の適切なポリマーから作製することができる。さらに、
図3に示すように、DOEタイル300は、入射した電磁放射の回折をもたらすように段丘が形成されている。段丘は、滑らかに湾曲したレンズに対する区分線形近似(piece-wise linear approximation)をもたらすように選択された適切な寸法を有する。DOEタイル300がプラスチック又は類似の材料から作製される例示的な実施形態において、段丘は、選択された材料の基板を、段丘の所望の外形(contour)を有するように加工することによって提供される。代表的な実施形態によれば、複数のDOEタイル300を用いてDOE(例えば、DOE204)を提供することができる。例えば、1つ~8つのDOEタイル300を用いてDOEを提供することができる。
【0036】
上記で説明したように、DOEタイル300は、単一の焦点を提供するレーダDUTの最も近くに配設された第1の側部と、第1の側部の反対側にあり、複数の焦点を提供する再照射アンテナの最も近くに配設された第2の側部とを有する。焦点の数は、エミュレーションされるターゲットの最大数を提供するように選択される。しかしながら、上述したように、全てのターゲットがエミュレーションされる必要はないため、特定の試験においてエミュレーションされるターゲットの数は、機能している再照射アンテナの数に基づく。
【0037】
上記で言及したように、レーダDUT202からの見掛けの又はエミュレーションされた距離は、それぞれの第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212によって受信された信号において遅延をもたらすことによって求められる。第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212が反射開放又は短絡(reflecting open or short)に接続されている場合、見掛けのターゲット距離は、レイトレーシング距離(ray-trace distance)(にレンズ位相差(retardation)、アンテナ位相差等に起因した小さな補正を加えたもの)となる。したがって、見掛けのターゲット距離は、単に、DUT-サブエリア距離(DUT-subarea distance)に、サブエリアから再照射器の距離を加えた和である。さらに、そのようなシナリオにおいて、レーダDUT202とターゲットとの間に相対速度が存在しない。このため、
図2において、レーダDUT202とターゲット2との間の見掛けの又はエミュレーションされた距離は、単に、レーダDUT202からサブエリアO
2のレイトレーシング距離に、O
2から第2の再照射アンテナ208の距離を加えたものである。しかしながら、ほとんどの運転エミュレーション試験は、約1m~100mのオーダのエミュレーション距離を必要とする。さらに、ターゲットの方向はシステム200によって求められ、レーダDUT202とエミュレーションされているターゲットとの間のエミュレーションされた相対速度と組み合わせると、エミュレーションされているターゲットの相対速度のエミュレーションがもたらされる。
【0038】
上述したように、距離及び速度のエミュレーションは、第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ212のそれぞれをMRDに接続することによって行われ、ここで、
図4に関連して代表的な実施形態が説明される。
【0039】
図4は、代表的な実施形態による変調反射素子(MRD)400の簡略化された回路図である。
図4の代表的な実施形態に関連して説明されるMRD400の態様は、上記で説明したMRD及び遅延電子機器に共通のものとすることができるが、それらの態様は繰り返されない場合がある。
【0040】
MRD400は再照射アンテナ401に接続され、このため、上記で説明した再照射アンテナのうちの1つとすることができる。当然ながら、実際には、システムには2つ以上のMRD400が存在し、このため(例えば、
図2の代表的な実施形態に示すように)2つ以上の再照射アンテナ401が存在する。或る特定の代表的な実施形態において、再照射アンテナ401は、レーダDUT(
図4に示されていない)から受信した信号の波長について選択されたホーンである。再照射アンテナ401は、可変の利得を有することができ、上述したように、レンズ等のビーム成形素子に結合して、AoAの自由度を調節することができる。再照射アンテナ401のためのホーンアンテナ又は類似のアンテナの使用は必須ではなく、(以下で説明する)パッチアンテナ又はパッチアンテナアレイ等の他のタイプのアンテナが考えられる。
【0041】
MRD400は、ミキサ403に接続されたサーキュレータ402を備える。ミキサ403は、同相(in-phase)-(I)直交(ruadrature)(Q)ミキサ(IQミキサ)であり、以下で説明される理由によって、有利には、RF信号の標準的な90度位相整合(phasing)を有する単側波帯(single-sideband)IQミキサであり、その結果、上側波帯(USB:upper sideband)又は下側波帯(LSB:lower sideband)のいずれかを出力し、それぞれLSB又はUSBを阻止する。ミキサ403の出力は、可変利得増幅器(VGA)404に提供される。VGA404は、利得制御入力405を備える。上述したように、VGA404の利得制御入力405は、コンピュータ(例えば、
図1のコンピュータ112)に接続される。特に、VGA404は、再照射アンテナ401においてDOEから受信した再照射された信号の適切なエミュレーションを可能にする。特に、上述したように、DOEに対するレーダDUTからの入射信号は、再照射アンテナ401において複数の焦点間で分割される。したがって、DOEによって回折されると、信号の電力が分割され、したがって、再照射アンテナ401における複数の焦点に回折された各レーダ信号の電力は、レーダDUTからのレーダ信号の出力電力と比較して低減される。さらに、上述したように、再照射アンテナ401に面するDOEの側部における焦点から回折された信号の部分(したがって、電力)は、再照射アンテナ401における1つ以上の焦点に対する再照射アンテナ401の向きに依存する。したがって、再照射アンテナ401に入射する信号の電力は、レーダDUTに戻る再送信には不十分である場合があり、このため正確な試験には不十分である場合がある。さらに、再照射アンテナ401から再照射された信号の電力は、ターゲットとレーダDUTとの間のエミュレーションされた距離を示す。したがって、VGA404によって提供される利得は、再照射アンテナ401に入射するレーダ信号の電力と、エミュレーションされているターゲットの所望のエミュレーション距離とに基づいて利得制御入力405において選択される。
【0042】
特に、電力が、一貫したレーダ断面(RCS:radar cross-section)をエミュレーションするために使用される。レーダ断面(RCS)は、ルックアップテーブルに記憶することができる。このために、所与のレンジrについて、戻り信号はRCSに比例し、1/r4として低下することが知られている。車両は、通常、1平方メートル(s.m.:square meter)に対する10dB、又は平易な英語では10平方メートルを意味する測定面積のレーダスピーク(radar speak)である10dBsmであると言われている。多くの対象物(人々、自転車搭乗者、建物等)が表にされており、表にされていないものは、近年、レイトレーシング技法によって計算することができる。本教示によると、特定の対象物の距離rに対応する戻り信号強度(既知の1/r4レーダ減衰則(radar decay law)に従う)及びRCSの許容値をレーダDUTに提供することに重点が置かれる。代表的な実施形態によれば、信号強度(したがって、電力)は、コンピュータ112から様々な実施形態のMRDへのI/Q駆動信号の強度を調整することによって調整され、より弱いI/Q駆動信号は、比較してより弱いエミュレーション信号を提供する。特に、或る特定の代表的な実施形態において、コンピュータ112は、レーダDUTにおける単一の焦点に提供される一貫した戻り信号を事前に計算し、コントローラ114は、その後、このSSB強度を達成するようにI駆動及びQ駆動の強度を調整する。代替的にかつ有利には、VGA404の利得は、戻りSSB強度を制御するように調整することができる。
【0043】
多くの車両レーダが周波数変調連続波(FMCW:frequency-modulated continuous-wave)デバイスであるため、可変の見掛けの時間遅延をエミュレーションするために真の可変遅延線を実装する必要がない。むしろ、距離/速度は、MRD400を用いて電子的にエミュレーションされる。このために、FMCWレーダシステムは、チャープ波形を使用し、それによって、レーダDUTからの元の送信(Tx)波形と、受信される(Rx)エコー波形との相関が、ターゲット距離を明らかにする。例えば、±kswのチャープレート(Hz/secで測定される)を有するアップチャープ/ダウンチャープシステムでは、自車両に対して距離dにある0の相対速度のターゲットは、以下によって与えられる周波数シフト(δf)をもたらす。
δf=-(±2kSWd/c) (式(1))
ここで、cは光速であり、係数2はレーダDUTからの信号の往復伝播に起因するものである。このシフトの正負符号は、波形のアップチャープ対ダウンチャープのどの部分が処理されているのかに依存する。対照的に、相対速度に起因するドップラーシフトは、「コモンモード」周波数シフトとして現れる。例えば、波形の両半分にわたる正味のアップシフトは、レーダDUTがターゲットに接近していることを示す。相関は、DUTのIF/ベースバンドプロセッサにおいて実行される、数MHzの帯域幅が一般的である。
【0044】
FMCWの最も一般的に展開される変形形態は、繰り返しアップチャープ又は繰り返しダウンチャープを使用するが、双方を使用しない(介在する不感時間を有する)。したがって、ターゲットまでの距離は、ここでは正負符号の問題を抜きにして前の段落と同様に求められる。相対速度は、連続するフレームのIF相関信号の間の位相シフトを測定することによって求められ、ここで、フレームは、波形の1周期の専門用語である。多くのFMCWレーダアプリケーションにおいて、フレームの繰り返しレートは、通常、数kHzである。
【0045】
1つの既知の手法は、1つ以上のプローブポイントにおいてレーダDUTからの送信信号を受信し、次に信号をレーダDUTに戻す前に受信信号に平衡位相変調を適用する概念を導入した。位相変調は、周波数変調の別の形態であるため、そのような既知のシステムの平衡位相変調の結果として、元の信号の両側波帯(DSB)変調が生じ、元の掃引搬送波が抑制される。平衡位相変調は、開放と短絡負荷とを単純に切り替えることができるため、実施がむしろ容易である。変調周波数がδf*であり、元の信号の時間依存周波数がf(t)である場合、比較的低速のチャープ速度に起因して、戻り信号の時間依存周波数は、f(t)±δf*である。式(1)から、
δf*=2kSW(dem-dsu)/c (式(2))
を選択することによって、参照された既知の方法は、dsuのセットアップ距離についてdemのターゲット距離をエミュレーションする。dsuはレーダDUTとプローブとの間の物理的距離である。不都合なことに、DSB変調に起因して、距離dem,jにおいて意図的に生成されたターゲットjごとに、この方法は、距離dem,j±2dsu,jにおいても対のゴーストターゲット(ghost target)を生成する。ここで、dsu,jは、プローブjに対するセットアップ距離であり、ここで、「ゴースト式(ghost equation)」における正負符号は、チャープ傾斜(chirp slope)の正負符号に依拠する。
【0046】
長距離レーダ(LRR:long range radar)について、10cmの距離精度が望ましいのに対し、短距離レーダ(SRR:short range radar)は2cmの精度を目指す。これは、ゴースト対を問題にしないためには、既知のDSB変調試験セットアップのセットアップ距離が、LRRについて5cm未満でなくてはならず、SRRについて1cm未満でなくてはならないことを暗に意味する。セットアップ距離は、実際のレーダパッチアンテナからバンパの距離と、バンパからプローブの距離と、有効なバンパの厚み=実際のバンパの厚みにバンパ材料のミリメートル波屈折率を乗算したものとを含むため、そのようなセットアップを達成することは非常に困難である。
【0047】
既知のDSB変調試験セットアップの別の欠点は、可変AoAをエミュレーションすることが不可能であることである。そのような既知のシステムにおいて、見掛けのAoAは固定されている。原則として、AoAは、並進ステージにプローブを装着することによって変動させることができるが、この際、導入部で述べたブロッキングの問題に遭遇する。当然ながら、これはあまり効率的でない。
【0048】
参照した既知のシステムの第3の欠点は、レーダ断面積(RCS)のダイナミックレンジ、すなわちエコーの強度が20dB未満に制限されていたことである。これは、既知のシステムにおいて用いられるスイッチについて整合した(matched)一致した負荷状態が存在せず、単に、変調が遮断され、この時点でスイッチがバイアスされたときに、疑似整合として作用する「開放」及び「短絡」間のクロスオーバポイントが存在していたことに起因する。トライステートスイッチにおける置き換えは、ダイナミックレンジを増大させる適切な解決策でない。なぜなら、RCSはほぼ連続して変動しなくてはならないためである。自動車レーダRCSは、様々な推定値に依拠して、25dB~50dBにわたって変動する必要がある。
【0049】
再び
図4を参照すると、サーキュレータ402における増幅/減衰時に、MRDは、増幅/減衰したSSB信号を提供し、この信号は、サーキュレータ402に戻され、再照射アンテナ401から再送信される。
【0050】
特に、代替的な実施形態のSSB MRD400において、変調の強度を減少させることにより、I及びQ駆動信号が出力トーン強度を減少させ、このためRCSを減少させる。実際には、この方法は、変調駆動単独ではダイナミックレンジの15dB~20dB超を達成しない可能性が高い。しかしながら、VGA404は、所望のRCSダイナミックレンジを達成するために欠点を補い、可変利得の10dB~50dBは、可変減衰器及び増幅器バイアス調節の組み合わせによって容易に達成することができる。代表的な実施形態に従って車両レーダを試験するシステムにおけるターゲットの相対速度のエミュレーションは、変調とレーダDUTフレームとの間の同期動作を必要とする。そのような同期動作は、レーダDUTからトリガ信号を提供することによって、又はそのようなトリガを引き出すことによって行うことができる。トリガは、補助検出器(場合によっては「スニファ(sniffer)」と呼ばれる)を用いることによって、又はサーキュレータ402の出力をタッピングすることによって促進される。例えば、補助検出器を用いて、レーダDUTの各フレームの第1のチャープ及び第2のチャープの到着を検出することができる。フレームレートが約10fps(毎秒のフレーム数(frames per second))である例において、バースト又はフレームにおいて2つのみのチャープ間の時間間隔を記録することにより、以下の式3を通じて、エミュレーションのための一貫したチャープ繰り返しレートを求めることができる。アップチャープ/ダウンチャープレーダDUTSについて、LSBからUSBへの切り替えを管理する同期が
図5Aに示される。全てのアップチャープレーダについて、同期は、位相の0がフレーム開始に結び付けられることを可能にする。したがって、代表的な実施形態によれば、
図5Bに関して以下で論考されるように、そのようなレーダDUTが相対速度の存在下で遭遇する位相スリップを厳密に模倣する変調信号における位相スリップがフレーム間に導入される。
【0051】
図5Aを参照すると、周波数対時間のグラフは、代表的な実施形態によるアップチャープ/ダウンチャープを示す。曲線501は、レーダDUTからのTxチャープ信号を表し、曲線502、503は、MRD(例えば、MRD400)からの再照射信号を表す。アップチャープ(ダウンチャープ)中、LSB(USB)信号が選択される。特に、曲線501と曲線502、503との間のギャップは、説明を簡潔にするために誇張されるが、実際には、ギャップは比較的非常に小さい。なぜなら、δf
u
*及びδf
d
*が最大で数MHzであるのに対し、チャープスパンは通常1GHz~4GHzであるためである。このため、相関の目的で、ギャップは無視することができる。このため、曲線502、503は、曲線501の遅延バージョンのように見え、ここで遅延はレーダDUTと特定のターゲットとの間のエミュレーションされた距離に対応する。相対速度は、非正のδf
u
*及び非負のδf
d
*の代数平均に適用される通常のドップラ式によって与えられる。
【0052】
図5Bを参照すると、周波数対時間のグラフは、代表的な実施形態によるアップチャープ/ダウンチャープを示す。Δφは、MRDの変調信号に意図的に導入された連続フレーム位相スリップである。DUT Rxによって受信されると、アップチャープ/アップチャープFMCW DUTは、フレームを処理し、この位相スリップを検出し、相対速度を知覚する。ここでもまた、曲線501及び502間の推測遅延は、レーダDUTによるターゲット距離として解釈される。
【0053】
特に、粗い速度及び精密な速度の双方が存在する。粗い速度は、単に、フレーム間の距離の変化をフレーム時間で除算したものであり、通常、0.1秒のオーダである。精密な速度(ドップラと呼ばれる場合がある)は、(連続チャープ間の)IF位相スリップΔφを測定することによって計算される。Tがチャープ間の期間であり、λが中間帯波長である場合、以下の式となる。
vfine=λΔφ/(4πT) (式(3))
【0054】
粗い速度は、通常、おおよそ±5mph~±100mph超をカバーする。精密な速度は、分解能/精度を約±0.1mphまで拡張することができるバーニアである。精密な速度は、通常、約5mph~7mphにおいてエイリアスに陥るが、ここで粗い速度が引き継ぐことでエイリアスを解消する。特に、粗い速度及び精密な速度を組み合わせて、1mph未満の精度及び分解能で数分の1マイル毎時~数百マイル毎時の連続速度測定値を得ることができる。
【0055】
ここまでで説明された代表的な実施形態において、ターゲットの遅延、このため距離及び速度は電子的にエミュレーションされるのに対し、ターゲットのAoA、方位角及び仰角の自由度は、(例えばジンバル支持によって)機械的にエミュレーションされる。ここで説明される代表的な実施形態は、方位角並びに距離及び速度の電子エミュレーションを可能にする。特に、ここで説明される代表的な実施形態は、ターゲットの電子方位角エミュレーションのみと関連して説明されるが、代替形態において、仰角もエミュレーションすることができることに留意されたい。
【0056】
図6Aは、代表的な実施形態による再照射器600の簡略化された概略図である。
図6Aの代表的な実施形態に関連して説明される再照射器600の態様は、上記で説明した再照射器及びシステムに共通のものとすることができるが、それらの態様は繰り返されない場合がある。
【0057】
最初に、再照射器600は、それぞれの1つのMRD400に接続することができる第1の再照射アンテナ206~第4の再照射アンテナ210のうちの1つについて用いることができることに留意されたい。したがって、エミュレーションされる複数のターゲット(
図6Aに示されていない)は、複数の(機能している)再照射器600を必要とし、各機能している再照射器600は、エミュレーションされている各ターゲットの距離/速度及びAoAをエミュレーションするように実施される。
【0058】
再照射器600は、第1のパッチアンテナアレイ602に接続された第1のMRD601、第2のパッチアンテナアレイ604に接続された第2のMRD603等を備え、第nのMRD605は第nのパッチアンテナアレイに接続される。本明細書に記載のように、位相遅延は、連続MRDから導入され、単一のターゲット(
図6Aには示されていない)の方位角をエミュレーションする。
【0059】
代表的な実施形態によれば、第1のパッチアンテナアレイ602、第2のパッチアンテナアレイ604及び第nのパッチアンテナアレイ606は、いわゆるマイクロストライプアンテナアレイである。第1のパッチアンテナアレイ602、第2のパッチアンテナアレイ604及び第nのパッチアンテナアレイ606のそれぞれは、適切な信号送信線等によって直列に接続された複数のパッチアンテナを備え、このため互いに実質的に同相である。
【0060】
ターゲットの方位角エミュレーションを提供するために、各隣接パッチアンテナアレイ間の電気位相が、方位角方向を走査するように変動する。特に、示すように、第1のパッチアンテナアレイ602、第2のパッチアンテナアレイ604及び第nのパッチアンテナアレイ606のそれぞれが、第1のパッチMRD601、第2のパッチMRD603、...第nのパッチMRD605のそれぞれによって入力(feed)され、ここで、各次のMRDの出力の位相が、前回のものと比較して遅延される。特に、それぞれの第1のMRD601、第2のMRD603、...第nのMRD605へのチャープ入力信号の位相及び周波数の結果として、距離及びドップラ速度のステアリングを決定づける各連続パスアンテナアレイ間の位相変化が生じる。
【0061】
特に、本教示のMRDは、局部発振器(LO)を必要としない。なぜなら、MRDは、LO変調又は復調を必要とする送信機又は受信機ではなくトランスポンダ(transponder:中継装置)として機能するためである。多くの既知のトランスポンダが、受信、ダウンコンバート、IF処理、アップコンバート、及び再送信によって機能するが、この処理チェーンは全く必須ではないことに留意されたい。
【0062】
同じ再照射器に接続された第1のMRD601、第2のMRD603...第nのMRD605に、共通変調周波数δf
*に対する相対同相位相整合(phasing)及び同一相対直交位相整合が適用される。特に、「相対」位相整合は、
図6Aの代表的な実施形態において、再照射器に接続された連続MRDのI(Q)チャネルにおけるδf
*位相として理解することができる。
図6Bに示すように、各MRD I-Q座標系は、前回の近傍MRDと比較して回転される。ここでもまた、δf
*は通常わずか数MHzであり、このため、低損失及び低コストの双方で多くの位相強制(phase imposition)を実施することができることに留意されたい。I及びQ双方の変調チャネルにおいて強制される相対位相整合の結果として、n個のパッチアンテナアレイにわたるSSBチャープ戻り信号の相対位相整合が得られ、このため、既知のRF位相アレイ原理による方位角ステアリングが実施される。
【0063】
再び
図6A及び
図6Bを参照すると、第1のパッチアンテナアレイ602は基準アレイとみなすことができる。第2のパッチアンテナアレイ604の出力は、再送信時に回転され、このため、第2のパッチアンテナアレイ604のI
2は、第1のパッチアンテナアレイ602のI
1に対してシフトされる。この位相進行(phase progression)は、連続位相アンテナアレイで継続し、電子方位角遅延は、エミュレーションされている特定のターゲットについて、レーダDUTと再照射デバイスとの間の途中で信号に与えられる。再照射器600からの再送信時、信号はオフセットされ、システムのDOEと(方位角的に)と異なる点からのものであるように見える。したがって、再照射器600は、方位角方向における(単一の)ターゲットのエミュレーションを可能にする。同様に、方位角においてエミュレーションされたターゲットごとに、
図2~
図4の代表的な実施形態のシステム及び構成要素に関連して説明した1つの再照射アンテナ/MRDについて1つの再照射器600を実施することができる。
【0064】
理解されるように、上記で説明したシステムのうちの1つ以上のDOEからの鏡面反射の結果として、レーダDUTにおけるDOEからの常に存在するエコー信号が生じる可能性がある。本教示は、このエコー信号を実質的に除去するための受動的技法、及びこのエコー信号を実質的に除去するための能動的な方式を考える。
【0065】
図7は、代表的な実施形態による、能動的エコーキャンセル(active echo cancellation)を含む車両レーダを試験するシステム700の或る特定の構成要素の簡略化された図である。
図1~
図6Bの代表的な実施形態に関連して説明されるシステム700の態様は、ここで説明するシステム700に共通のものとすることができるが、それらの態様は繰り返されない場合がある。
【0066】
システム700は、レーダDUT702を試験するように構成され、DOE704、第1の再照射アンテナ706、第2の再照射アンテナ708、第3の再照射アンテナ710及び第4の再照射アンテナ712を備える。第1の再照射アンテナ706~第4の再照射アンテナ712のそれぞれは、遅延電子機器714に接続される。遅延電子機器714は、少なくとも1つのMRD(
図2に示されていない)を備え、以下でより十分に説明される。
【0067】
以下で
図3に関連しても説明するように、DOE704は、フレネルレンズの一般化であり、回折素子は、所望の周波数範囲の電磁放射を回折するように選択された寸法を有する。上述したように、本教示のレーダDUTのレーダ信号は、ミリメートル波範囲にある。
【0068】
DOE704は、DOE軸717上のレーダDUT702のロケーションにおいて単一の焦点716を有し、側部719の反対側にある側部に複数の焦点を有し、ここで、複数の焦点のうちの1つが第1の再照射アンテナ706~第4の再照射アンテナ712のそれぞれに位置する。通常、側部719の反対側にある側部上の焦点の数は、可能なターゲットの最大数になるように選択される。上述したように、本教示は、数十個のターゲットが考えられ、このため、各再照射アンテナの入力に(この場合、第1の再照射アンテナ706~第4の再照射アンテナ712のそれぞれに)位置するポイントにおいてDOE704によって回折された信号の集束を必要とする。特に、エミュレーションされたターゲットの数は、再照射アンテナの数、又は機能している再照射アンテナの数の選択によって制御される。したがって、レーダDUT702において単一の焦点から送信されるレーダ信号は回折され、それぞれの第1の再照射アンテナ706~第4の再照射アンテナ712のそれぞれにおける複数の焦点に入射するが、ターゲットエミュレーションは、回折された信号ごとに行われない場合がある。
【0069】
動作時に、レーダDUT702からのレーダ信号は、レーダDUT702に位置する単一の焦点716においてDOE704に送信され、回折され、側部719の反対側にあるDOEの側部に位置する第1の再照射アンテナ706~第4の再照射アンテナ712における複数の焦点にマッピングされる。レーダ信号は、第1の再照射アンテナ706~第4の再照射アンテナ712のそれぞれに位置する複数の焦点に更に送信される。第1の再照射アンテナ706~第4の再照射アンテナ712に入射したレーダ信号は、遅延電子機器に入力され、遅延電子機器は、ターゲット距離、並びにターゲットとレーダDUT702との間の相対速度をエミュレーションする。
【0070】
エコーキャンセルの1つの態様は、側部719に適用される低誘電率レンズ材料を用いて行われる。これにより、空気に対する遅延指数(index retardation)が低減するにもかかわらず、レーダDUT702からの波長は、数mmの段丘段差が標準となるのに十分短く、このためレンズの厚み全体が非常に妥当である。エコーキャンセルの別の態様によれば、DOE704からのエコーのキャンセルが受動的に行われる代表的な実施形態において、多重回の(multi-fold)対称パターンが提供される。
【0071】
ここで説明される実施形態において、このとき、DOE704は4回(fourfold)対称性を有し、すなわち、DOE704の左半分及び右半分が互いの鏡像であり、DOE704の上半分及び下半分が互いの鏡像である。レーダDUT702の焦点からのレンズ軸は再照射アンテナの対称焦点を通る。
【0072】
通常、4回を超えるDOE704の対称性を達成することは複雑となる。しかしながら、4の倍数回の対称性の倍数は比較的確立が容易である。このため、ここでも限定ではなく例示の目的で、ターゲットの最大数は、対称性を保持するために4の倍数になるように選択することができるが、全てのターゲットが本明細書に記載のように同時にエミュレーションされなくてはならないわけではない。このため、例えば、10個のターゲットをエミュレーションすることが望ましい場合、DOE704は、12個のターゲットのエミュレーションのために設計することができ(これにより4回対称性を保持する)、ここで、VGAに関連付けられた再照射アンテナのうちの2つが遮断され、このためターゲットを表さない。
【0073】
(少なくとも、本教示について予期されるレンズのカテゴリのうちの任意のものについて)レンズの焦点深度が波長λ未満になることが決してないため、DOE704は象限(quadrant)に分けられ、象限は互い違いに配置される。当該技術分野において既知であるように、互い違いの配置とは、DOE軸717に沿って
図7のz方向にDOEタイルを物理的に変位させることである。代表的な実施形態において、互い違いの配置は、焦点特性を変更することなく、軸方向において0又はλ/4によって行われる。
図7の代表的な実施形態において、第1の象限721及び第2の象限722は互い違いに配置され、それぞれが、λ/4のレーダDUT701からの反射信号の位相シフトを行う。ここで、λは反射信号の波長である。第3の象限723及び第4の象限は、対照をなすが互い違いにされていない。したがって、DOE軸717における反射における2次のヌルが達成される。ここでもまた、第1の象限721及び第2の象限722は、軸方向にλ/4だけ互い違いに配置されている。これは、第1の象限721及び第2の象限722から反射されたレーダ信号における余分なλ/2の位相シフトを生じるため(ここで、送信振幅又は位相には変化がない)、4つの象限の反射和は、合算すると、レーダDUT202に向かって0まで後退する。
【0074】
能動的キャンセレーション(active cancellation)は、補助再照射アンテナ732を備える補助再照射器EC730によってもたらされる。再照射器は、DOE704の焦点に黒の破線の焦点エリア734(「EC」によってラベル付けされる)を生成する。補助再照射アンテナ732は、DOE704のいくらかの好都合な送信サイドローブに位置決めされる。ここで、「送信」とは、DOE204によって吸収も反射もされないレーダDUT202からのTx電力を指す。較正が行われ、これによって、ターゲットがエミュレーションされないが、補助再照射器位相及び利得がDUTの受信を最小限にするように調整される。特に、コンピュータ112は、キャンセル信号を制御するが、キャンセル信号は補助再照射アンテナ732等の別の再照射アンテナから発せられる。キャンセル信号は、DOE704の焦点に入射し、レーダDUT702に再集束される。これは、ノイズキャンセルヘッドフォンと非常に類似している。これを達成する非常に好都合な方法は、MRDを補助再照射アンテナ732に接続し、そのδf*を、キャンセラ距離がレーダDUT202とDOE204との間の距離に合致し、補助δf*位相及びVGA利得が鏡面反射により破壊的干渉(destructive interference)を生成するように選択することである。
【0075】
上記のことを考慮して、本開示は、それゆえ、その種々の態様、実施形態及び/又は具体的な特徴若しくはサブ構成要素のうちの1つ以上を通して、以下に具体的に言及されるような利点のうちの1つ以上を明らかにすることを意図している。説明のためであり、限定はしないが、本教示による一実施形態を完全に理解してもらうために、具体的な詳細を開示する例示的な実施形態が記述される。しかしながら、本明細書において開示される具体的な詳細から逸脱するが、本開示と矛盾しない他の実施形態も依然として、添付の特許請求の範囲内にある。さらに、例示的な実施形態の説明を不明瞭にしないように、既知の装置及び方法の説明は省略される場合がある。そのような方法及び装置は、本開示の範囲内にある。
【0076】
自動車レーダシステムに関する種々のターゲットエミュレーションがいくつかの代表的な実施形態を参照しながら説明されてきたが、使用されてきた言葉は、限定の言葉ではなく、説明及び例示の言葉であることは理解されたい。その態様における自動車レーダセンサ構成に関する動的エコー信号エミュレーションの範囲及び趣旨から逸脱することなく、ここで言及されるように、そして修正されるように、添付の特許請求の範囲内で変更を加えることができる。自動車レーダセンサ構成に関する動的エコー信号エミュレーションが特定の手段、材料及び実施形態を参照しながら説明されてきたが、自動車レーダセンサ構成に関する動的エコー信号エミュレーションは、開示される詳細に限定されることは意図していない。むしろ、自動車レーダセンサ構成に関する動的エコー信号エミュレーションは、添付の特許請求の範囲内にあるような全ての機能的に等価な構造、方法及び用途にまで広がる。
【0077】
本明細書において説明される実施形態の例示は、種々の実施形態の構造を包括的に理解してもらうことを意図している。それらの例示は、本明細書において説明される開示の全ての要素及び特徴の完全な記述としての役割を果たすことは意図していない。数多くの他の実施形態が、本開示を再検討した当業者には明らかになる場合がある。本開示の範囲から逸脱することなく、構造的及び論理的代替及び変更を行うことができるように、本開示から他の実施形態を利用し、導出することができる。さらに、例示は単に表現するものであり、縮尺通りに描かれない場合がある。例示内の或る特定の比率が誇張されている場合があり、一方、他の比率が最小化される場合がある。したがって、開示及び図は、限定するものではなく、例示するものと見なされるべきである。
【0078】
本開示の1つ以上の実施形態が、本明細書において、「本教示」という用語によって個別に、及び/又はまとめて参照される場合があるが、便宜にすぎず、本出願の範囲を任意の特定の発明又は発明概念に自発的に制限することは意図していない。さらに、本明細書において具体的な実施形態が例示及び説明されてきたが、図示される具体的な実施形態の代わりに、同じ、又は類似の目的を果たすように設計される任意の後の時点の装置が使用されてもよいことは理解されたい。本開示は、種々の実施形態のありとあらゆる後の時点の改変又は変形に及ぶことを意図している。上記の実施形態の組み合わせ、及び本明細書において具体的には説明されない他の実施形態が、説明を再検討した当業者には明らかになるであろう。
【0079】
本開示の要約書は、米国特許法施行規則第1.72(b)に準拠するように与えられ、特許請求の範囲又は意味を解釈又は制限するために使用されないという了解の下に提出される。さらに、これまでの発明を実施するための形態において、本開示を簡素化する目的で、種々の特徴がまとめられる場合があるか、又は単一の実施形態において説明される場合がある。本開示は、特許請求される実施形態が、各請求項において明確に列挙されるより多くの特徴を必要とするという意図を反映すると解釈されるべきではない。むしろ、添付の特許請求の範囲が反映するように、発明の主題は、開示される実施形態のいずれかの実施形態の全ての特徴より少ない特徴を対象にする場合がある。したがって、添付の特許請求の範囲は発明を実施するための形態に組み込まれ、各請求項は、別々に特許請求される主題を規定するものとして自立している。
【0080】
開示される実施形態のこれまでの説明は、任意の当業者が本開示において説明される概念を実践できるようにするために与えられる。その場合に、上記の開示される主題は、例示と見なされ、限定するものと見なされるべきではなく、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内に入る全てのそのような変更形態、改善形態及び他の実施形態に及ぶことを意図している。したがって、法律によって許される最大限まで、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の最も広い許容可能な解釈によって決定されるべきであり、これまでの詳細な説明によって限定又は制限されるべきではない。
【国際調査報告】