(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-25
(54)【発明の名称】パーキンソン病を評価するためのニューロメラニン高感度MRI
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20221018BHJP
G16H 30/00 20180101ALI20221018BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20221018BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61B5/055 380
G16H30/00
A61B5/055 390
G01T1/161 A
G01T1/161 B
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510980
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 US2020046686
(87)【国際公開番号】W WO2021034770
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521506722
【氏名又は名称】テラン バイオサイエンシズ, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】512219574
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニバーシティー イン ザ シティー オブ ニューヨーク
(71)【出願人】
【識別番号】521151762
【氏名又は名称】ザ リサーチ ファウンデーション フォー メンタル ハイジーン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クラーク, サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ホルガ ヘルナンデス, ギレルモ
(72)【発明者】
【氏名】キャシディ, クリフォード ミルズ
(72)【発明者】
【氏名】ウェングラー, ケネス
【テーマコード(参考)】
4C096
4C188
5L099
【Fターム(参考)】
4C096AA10
4C096AA17
4C096AA18
4C096AB44
4C096AC01
4C096AD14
4C096AD19
4C096BA06
4C096BA19
4C096DC22
4C096DC28
4C096DC33
4C096FA01
4C188EE02
4C188EE25
4C188FF04
4C188FF07
5L099AA03
5L099AA26
(57)【要約】
パーキンソン病の程度を測定するため、その診断を提示するため、その処置をモニタリングするため、その新規処置を評価するため、またはパーキンソン病に関連する予後を判定するための、ニューロメラニン高感度磁気共鳴画像法(「MRI」)技法、方法およびコンピューターでアクセス可能な媒体。対象におけるパーキンソン病の存在を判定する方法、および対象における、時間に伴うニューロメラニンの濃度変化を決定する方法が、とりわけ本明細書において提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるパーキンソン病の進行を経時的に判定するin vivoでの方法であって、
(i)第1の時間点において、第1のニューロメラニン-磁気共鳴イメージング(NM-MRI)スキャンを得るステップ、
(ii)ステップ(i)の後に、第2の時間点において第2のNM-MRIスキャンを得るステップ、
(iii)前記第1のニューロメラニン磁気共鳴画像と前記第2のニューロメラニン磁気共鳴画像とを比較するステップであって、これによって、前記第1の時間点と前記第2の時間点との間で、ニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度の変化が発生したかどうかを判定するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記第2の時間点におけるニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度の前記変化が、前記第1の時間点におけるニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度よりも、約1%を超えて、約2%を超えて、約3%を超えて、約4%を超えて、約5%を超えて、約6%を超えて、約7%を超えて、約8%を超えて、約9%を超えて、約10%を超えて、約11%を超えて、約12%を超えて、約13%を超えて、約14%を超えて、約15%を超えて、約20%を超えてまたは約25%を超えて低い場合、パーキンソン病が進行している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
パーキンソン病を診断するin vivoでの方法であって、
(i)第1の時間点において、第1のニューロメラニン磁気共鳴画像を得るステップ、
(ii)ステップ(i)の後に、第2の時間点において第2のニューロメラニン磁気共鳴画像を得るステップ、
(iii)前記第1のニューロメラニン磁気共鳴画像と前記第2のニューロメラニン磁気共鳴画像とを比較し、これによって、前記第1の時間点と前記第2の時間点との間で、ニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度の変化が発生したかどうかを判定するステップを含む方法。
【請求項4】
前記第2の時間点におけるニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度の前記変化が、前記第1の時間点のニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度よりも、約1%を超えて、約2%を超えて、約3%を超えて、約4%を超えて、約5%を超えて、約6%を超えて、約7%を超えて、約8%を超えて、約9%を超えて、約10%を超えて、約11%を超えて、約12%を超えて、約13%を超えて、約14%を超えて、約15%を超えて、約20%を超えてまたは約25%を超えて低い場合、パーキンソン病の診断が提示される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
パーキンソン病を有する患者を診断する方法であって、
(i)ニューロメラニンのレベルを測定するステップ、
(ii)ニューロメラニンの前記レベルを標準対照と比較するステップ、
(iii)前記測定されたニューロメラニンのレベルが前記標準対照に比べてより低い場合に、必要に応じてパーキンソン病の診断を提示するステップ
を含む方法。
【請求項6】
前記第1のニューロメラニン磁気共鳴画像からの第1のシグナル強度を決定するステップ、および前記第2のニューロメラニン磁気共鳴画像からの第2のシグナル強度を決定するステップをさらに含み、前記第1の磁気共鳴画像と前記第2の磁気共鳴画像とを前記比較するステップが、前記第1のシグナル強度と前記第2のシグナル強度とを比較することを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
標準対照が、対象の集団において、ほぼ同じレベルで存在するニューロメラニンのレベルであるか、または前記標準対照が、対象の集団において存在するほぼ平均のニューロメラニンのレベルである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ニューロメラニン勾配ファントムを使用して、ニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度を測定する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ニューロメラニンファントム濃度勾配が、患者あたり約1回、1時間に約1回、1日約1回、1週間に約1回、または1か月に約1回、スキャンされる、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ニューロメラニンファントム勾配が、毎日スキャンされる、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ニューロメラニンファントム勾配が、各患者でスキャンされる、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第2の時間点でのニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度の前記変化が、第1の時間点におけるニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度よりも約5%を超えて低いまたは約10%を超えて低く、前記第1の時間点および前記第2の時間点が、約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年または約10年の間隔がある場合、パーキンソン病の診断が提示される、請求項5から11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の時間点におけるニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度の前記変化が、前記第1の時間点におけるニューロメラニンのシグナルおよび/または濃度よりも約35%を超えて低い、約40%を超えて低い、約45%を超えて低い、または約50%を超えて低く、前記第1の時間点および前記第2の時間点が、約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年または約10年の間隔がある場合、パーキンソン病の診断が提示される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第2の時間点が、前記第1の時間点の約3か月、約6か月、約9か月、約12か月、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年、約10年、約15年、約20年、約25年または約30年後である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
対象の脳の関心領域におけるニューロメラニン濃度を評価する方法であって、
前記対象にニューロメラニン-磁気共鳴イメージング(NM-MRI)スキャンを行うステップ、
前記NM-MRIスキャンからニューロメラニンデータセットを取得するステップ、
前記ニューロメラニンデータセットを必要に応じて暗号化するステップ、
前記ニューロメラニンデータセットを遠隔サーバーにアップロードするステップ、
前記データセットを必要に応じて解読するステップ、
前記ニューロメラニンデータセットの解析を行うステップであって、前記解析が、
(i)前記ニューロメラニンデータセットを前記対象から以前に取得した1つまたは複数のニューロメラニンデータセットと比較すること、
(ii)前記ニューロメラニンデータセットを対照のデータセットと比較すること、
(iii)前記ニューロメラニンデータセットを異なる対象から以前に取得した1つまたは複数のニューロメラニンデータセットと比較すること、
のうちの1つまたは複数を含む、ステップ、
前記ニューロメラニン解析を含む報告書を作成するステップ、
必要に応じて、前記報告書を暗号化するステップ、
前記報告書を遠隔サーバーにアップロードするステップ、および
必要に応じて、前記報告書を暗号解読するステップ
を含む方法。
【請求項16】
対象の脳の関心領域の1つまたは複数のニューロメラニン-磁気共鳴イメージング(NM-MRI)スキャンを解析するステップを含む、前記対象がパーキンソン病を有するか、またはそれを発症するリスクがあるかどうかを判定する方法であって、前記解析するステップが、
前記脳の関心領域のイメージング情報を受信するステップ、および
前記イメージング情報に基づいて、ボクセルワイズ解析を使用して、前記脳の関心領域におけるNM濃度を決定するステップ
を含み、
対象がパーキンソン病を有するか、またはそれを発症するリスクがあるかどうかを前記判定することが、
(1)1つもしくは複数のNM-MRIスキャンのNMシグナルが、パーキンソン病のない1つもしくは複数の対照スキャンと比べて低下している場合、前記対象が、パーキンソン病を発症するリスクを有する、もしくはそのリスクにあること、または
(2)1つもしくは複数のNM-MRIスキャンが、パーキンソン病のない1つまたは複数の対照スキャンの前記シグナルと同等のNMシグナルを有する場合、前記対象が、パーキンソン病を発症するリスクを有していない、またはそのリスクにはないこと
を含む、方法。
【請求項17】
対象の脳の関心領域のニューロメラニン-磁気共鳴イメージング(NM-MRI)スキャンを解析するステップを含む、パーキンソン病を有する前記対象を処置する方法であって、前記解析するステップが、
(i)第1の時間点おいて、前記脳の関心領域のイメージング情報を受信すること、
(ii)第2の時間点おいて、前記脳の関心領域のイメージング情報を受信すること、
(iii)前記イメージング情報に基づいて、ボクセルワイズ解析を使用して、前記脳の関心領域における前記第1および第2の時間点でのNM濃度を決定すること、ならびに
(iv)前記第1の時間点と前記第2の時間点における前記NM濃度を比較すること
を含み、
前記処置する方法が、以下:
(1)前記第2の時間点における前記NM-MRIスキャンが、前記第1の時間点における前記NMシグナルに比べて、NMシグナルが低下している場合、前記方法が、レボドーパおよびカルビドーパのうちの1種もしくは複数を投与するステップを含む、または
(2)前記第2の時間点における前記NM-MRIスキャンが、前記第1の時間点における前記NMシグナルに比べて、NMシグナルが増大している場合、前記方法が、
(a)レボドーパおよびカルビドーパのうちの1種または複数を投与することを保留するステップ、ならびに
(b)ステップ(i)~(iv)を繰り返すステップ
をさらに含む、方法。
【請求項18】
前記MRIスキャンが、ニューロメラニンに高感度である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
患者に処置レジメンを提供する方法であって、NM-MRIスキャンを行うステップ、関心領域における前記NM-MRIスキャンからのNMシグナルを取得するステップ、関心領域のデータにおける前記NM-MRIスキャンからの前記NMシグナルを年齢に一致するデータベース数と比較するステップ、前記NMシグナルが所定の値未満である場合、対応する処置レジメンを施すステップを含む方法。
【請求項20】
前記患者が、アルツハイマー病の症状を示す、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記NM-MRIスキャンが、アルツハイマー病とパーキンソン病とを区別する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記対象または患者が、パーキンソン病のうちの1つまたは複数の症状を示す、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
患者が、症状を示すことなく、パーキンソン病と診断される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記NM-MRIが、アルツハイマー病とパーキンソン病とを区別する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記患者がパーキンソン病を有する、またはパーキンソン病を有していないと診断するステップ、およびユーザーインターフェースを介して、ユーザーに前記診断を表示するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記解析がボクセルワイズ解析である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記ボクセルワイズ解析が、前記脳の関心領域内の少なくとも1つのトポグラフィーパターンを決定することを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
ニューロメラニンボクセルの体積を表す値を使用した計算をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記ボクセルワイズ解析の関心領域が、黒質である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記ボクセルワイズ解析の関心領域が、腹側黒質の部分領域である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
パーキンソン病に関する診断情報を提供するための診断システムであって、
対象の脳における、関心領域内に位置するボクセルに関する、一連のニューロメラニンデータと共に、ニューロメラニン高感度MRIスキャンを生成して取得するよう構成されているMRIシステム、
処理後のニューロメラニンMRIスペクトルを生成するための前記一連のニューロメラニンデータを処理するよう構成されているシグナルプロセッサー、および
前記処理後のニューロメラニンMRIスペクトルを処理して、
ある時間点におけるニューロメラニンに対応する前記関心領域からの測定値を抽出する、
前記測定値を、前記時間点前に取得した1つまたは複数の対照の測定値と比較する、
前記測定値が、前記対照の測定値より約25%超えて小さい場合、パーキンソン病の診断を提示する
ように構成されている診断プロセッサー
を含む、診断システム。
【請求項32】
a)患者に初期量のL-ドーパを投与するステップ、
b)前記患者の連続NM-MRIスキャンを行い、前記患者の脳における関心領域のニューロメラニン濃度をモニタリングし、初期処置期間にわたり、処置関連有害事象を評価するステップ、
c)前記初期処置期間中に、前記患者が、
i)前記患者の脳における前記関心領域のニューロメラニン濃度の低下
ii)L-ドーパに関連する有害作用または副作用のないこと
を示す場合、
その後の処置期間におけるL-ドーパの用量を増加するステップ
を含む、パーキンソン病を有する患者を処置する方法であって、
前記L-ドーパ処置により、前記患者における、パーキンソン病の症状の改善がもたらされる、方法。
【請求項33】
d)前記患者が、ステップc)におけるi)~ii)のうちの1つまたは複数を示さなくなるまで、ステップa)~c)を繰り返すステップを含む、
請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ポジトロン放出断層法(PET)、構造MRI、機能的MRI(fMRI)、血中酸素濃度依存(BOLD)fMRI、鉄高感度MRI、定量的磁化率マッピング(QSM)、拡散テンソルイメージングDTI、および単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)、DaTscan、およびDaTquantからなる群から選択される第2のイメージング方法と共に使用される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記第2のイメージング方法が、ポジトロン放出断層法(PET)を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記第2のイメージング方法が、構造MRIを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記第2のイメージング方法が、機能的MRI(fMRI)を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記第2のイメージング方法が、血中酸素濃度依存(BOLD)fMRIを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記ボクセルワイズ解析が、前記脳の関心領域内の少なくとも1つのトポグラフィーパターンを決定することを含み、前記の脳の関心領域が、1つまたは複数のパーキンソン病の症状に関連するボクセルである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記ボクセルワイズ解析が、前記脳の関心領域内の少なくとも1つのトポグラフィーパターンを決定することを含み、前記の脳の関心領域が、1つまたは複数の患者特異的パーキンソン病の症状に関連するボクセルである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記脳の関心領域が、黒質または青斑核である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記脳の関心領域が、腹側黒質である、請求項1から41に記載の方法。
【請求項43】
前記脳の関心領域が、外側黒質である、請求項1から41に記載の方法。
【請求項44】
前記脳の関心領域が、腹外側黒質である、請求項1から41に記載の方法。
【請求項45】
前記脳の関心領域が、黒質緻密部(SNpc)である、請求項1から41に記載の方法。
【請求項46】
前記脳の関心領域が、黒質網様部(SNpr)である、請求項1から41に記載の方法。
【請求項47】
前記脳の関心領域が、腹側被蓋野(VTA)である、請求項1から41に記載の方法。
【請求項48】
前記脳の関心領域が、青斑核である、請求項1から41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年8月20日に出願の米国仮出願第62/889,300号の優先権、および利益を主張する。
【0002】
政府支援
本明細書に記載されている研究は、米国国立衛生研究所の助成金番号R01MH114965、R01MH117323、R01DA020855およびUL1TR001873によって、全体または一部が支援されている。したがって、米国政府は、本発明に対して特定の権利を有する。
【0003】
開示の分野
本開示は、概して、磁気共鳴画像法(「MRI」)、ならびにより詳細には、パーキンソン病に着目した神経学的状態の非侵襲的尺度として、ニューロメラニン高感度MRI技法のための、例示的なシステム、方法およびコンピューターでアクセス可能な媒体の例示的な実施形態に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
加齢の2つの大きな神経変性疾患の1つであるパーキンソン病は、1,500,000名もの多くの米国人が罹患している進行性神経系疾患である。パーキンソン病は、黒質と呼ばれる脳の部分におけるある神経細胞(ニューロン)が死亡するか、または障害を受けた状態になると発生する。通常、これらの細胞は、ドーパミンとして公知の生命維持に必要な化学物質を生成する。ドーパミンにより、身体の筋肉および動きの円滑に協調して機能することが可能となる。ドーパミン生成細胞の約80%が損傷を受けると、パーキンソン病の症状が現れる。パーキンソン病は、男性と女性のどちらもほとんど同数で罹患する。それは、社会的、人種的、経済的または地理的な境界を示さない。米国では、60,000名の新規症例が毎年、診断されていると推定されている。この状態は、通常、65歳以降に発症し、診断された人の15%が50歳未満である。特発性パーキンソン病は、群を抜いて最も一般的であり、アルファ-シヌクレインおよびパーキンの遺伝子における変異によって引き起こされる希な遺伝的形態を含む。公知の環境的原因は、MPTP(1-メチル-4-フェニル-4-プロピオンオキシピペリジン)、一酸化炭素およびマンガンによる中毒という非常に希な場合を含む。
【0005】
パーキンソン病の出現率は、年齢と共に増加する。パーキンソン症候群のすべての形態に関する発病のメジアン年齢は、61.6歳であり、特発的パーキンソン病の発病のメジアン年齢は、62.4歳である。30歳前の発病は希であるが、特発性パーキンソン病の症例の最大で10%が、40歳までに始まる。米国における最近の研究では、パーキンソン病の出現率は、一般集団では、年間100,000名あたり10.9の症例となり、50歳を超える人の場合、年間100,000名あたり49.7名であった。出現率は、集団の年齢につれて向上する。有病率は、米国およびカナダでは、100,000名あたり約300名と推定されるが、重要な注意点として、おそらく、症例の40%は一度も診断されていない可能性がある。
【0006】
動作緩徐などの症状は、随意運動での緩慢である。それは、一旦、進行すると、運動の開始が困難になり、運動の完了も困難になる。ドーパミン減少による、脳から筋骨格に至る伝播の遅れにより、動作緩徐が生じる。手、指、前腕または足の振戦は、手足が休止状態にある場合に起こる傾向があるが、作業を行っている時には起こらない。振戦は、口および顎に起こることもある。硬直または筋肉のこわばりにより、筋肉痛および無表情なマスクのような顔が生じることがある。硬直は、運動の間に増大する傾向がある。バランスの乏しさは、バランスを維持するため、姿勢を調節する反射神経の損傷または喪失による。転倒は、パーキンソン病を有する人に共通している。パーキンソン病の人の歩行は、パーキンソン病に関連する特徴的な不安定な歩行である。不自然に後ろまたは前に傾く傾向があり、前かがみになり、頭を下に向け、肩を下に向けた姿勢となる。腕の振りが減少または欠如しており、パーキンソン病の人は小さなシャフルステップ(デスティネーション(Destination)と呼ばれる)をとる傾向がある。パーキンソン病を有する人は、歩行の開始に苦労を有し、歩くと前のめりしているように見え、ストライドの途中で動きが鈍り、方向転換するのが難しい場合がある。
【0007】
パーキンソン病の症状はまた、小字症(小さな手書き)、安静時振戦、すくみエピソード、痛みを伴う脚の痙攣、アキネジア-動きの開始が困難、筋肉のこわばり、椅子からの立ち上がりが困難、前かがみ姿勢、フェイシャルマスキング、仮面様顔貌-顔の表情の喪失、小声症-低音量、単調な発話、不明瞭、柔らかな発話、凝視、まばたき数の低下、眼瞼失行、小さなシャッフルステップ、平衡障害、硬直-筋肉、歯車様硬直-動きの停止/開始、よだれ、脂漏症-異常な程の脂性肌、疲れやすい、腕の振りの低減(ハンドフリッピングやフィンガータッピングなどの作業実施能力の低減など)、便秘、嚥下困難(嚥下障害)-口および喉の奥に唾液や食べ物が溜まり、窒息する恐れがある、咳またはよだれ、過度の唾液分泌(唾液分泌過多)、過度の発汗(多汗症)、膀胱および/または排便制御の喪失(失禁)、知的能力の喪失(認知症)-疾患の後期、質問への遅い応答(神経緩慢)、ならびに心理社会的障害(例えば、不安、うつおよび孤立感など)を含み得る。
【0008】
現在、パーキンソン病に関する絶対的な診断は存在せず、感度の高い非侵襲的診断を開発する臨床的必要性が大いにある。
【0009】
パーキンソン病の患者の診断およびモニタリングは、適切な予防的ケアに対応するために、進行の重症度を評価するために重要である。パーキンソン病を発病している間、適時の介入が救命となり得る。パーキンソン病を評価するための包括的な画像診断法は、依然として重要な、満たされていない臨床的必要性がある。
【0010】
このような重要な神経修飾物質が、ヒトにおいて、認知、神経発達、加齢および神経病理学的疾患にどのように寄与するのかを理解するために、ドーパミン活性のin vivo測定が使用されている。医薬では、このような測定によって、理想的には、臨床設定において取得が容易であると同時に、根底にある病態生理学を捉える手順を使用することによって、パーキンソン病を含めた臨床的転帰を予測する、客観的バイオマーカーをもたらすことができる。
【0011】
ニューロメラニン(「NM」)は、サイトゾルドーパミンの鉄依存的酸化、およびその後の中脳ドーパミンニューロン中のタンパク質および脂質との関係を介して合成される暗色色素である。NM色素は、脂質および様々なタンパク質と共に、NM-鉄複合体を含有する特定のオートファジー細胞小器官内に蓄積する。NMを含有する細胞小器官は、NMの濃度が高いためにその暗色外観にその名称が由来する核である黒質(「SN」)におけるドーパミンニューロンの細胞体に生涯にわたって徐々に蓄積し、パーキンソン病によるなどのミクログリアの作用によって細胞死を遂げた後にしか組織から一掃されない。NM-鉄複合体は常磁性であることを考慮すると、それらの複合体は、MRIを使用してイメージングすることができる。NM-MRIとして公知のMRIシーケンスのファミリーは、SNにおけるニューロンなど、NM含有量の高いニューロンのグループを高シグナル領域として捕捉する。パーキンソン病を有する患者のSNでは、NM陽性SNドーパミン細胞の変性、および年齢一致対照と比較したパーキンソン病患者の死後SN組織におけるNM濃度の減少と一致して、NM-MRIシグナルが確実に低下する。この証拠は、神経変性病におけるSNニューロン喪失のin vivo検出のためのNM-MRIの使用を支持するものであるが、このMRI手順が、神経変性SN病態がない場合でさえも、NM濃度の局所変動に敏感であることを直接、実証したものがない。さらに、L-ドーパ投与によるドーパミン合成の誘導は、げっ歯類のSN細胞では、NM蓄積を誘導することが公知であり、以前の研究では、SNにおけるNM-MRIシグナルがヒトにおけるドーパミンニューロン機能の指標となるということが前提とされたが、NM蓄積において、個体間での差異がMRI検出可能な差異をもたらすという前提を裏付ける直接的な証拠は欠如している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、上記の不足を克服することができるニューロメラニン高感度MRIのためのシステム、プロセス、方法およびコンピューターでアクセス可能な媒体を提供することが有益であると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
概要
対象におけるパーキンソン病の存在を判定する方法、および対象における、時間に伴うニューロメラニンの濃度変化を決定する方法が、とりわけ本明細書において提供される。ニューロメラニンの濃度は、パーキンソン病の通常の経過の結果として、または治療的介入の結果として変化することがある。第1の態様では、対象の脳における、ニューロメラニンの濃度の変化が経時的に起こるかどうかを判定する方法が提供される。好ましい実施形態では、対象はパーキンソン病の患者である。本方法は、第1の時間点において、対象の第1のニューロメラニン磁気共鳴画像を得るステップを含む。続いて、第2のニューロメラニン磁気共鳴画像が、第2の時間点において得られる。第1の磁気共鳴画像を、第2の磁気共鳴画像と比較し、これによって、第1の時間点と第2の時間点との間で、ニューロメラニンの濃度の変化が起こったかどうかを判定する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、対象におけるパーキンソン病を診断する方法であって、
(i)ニューロメラニン-磁気共鳴イメージング(NM-MRI)スキャンを行い、ニューロメラニンのレベルを測定するステップ、
(ii)このニューロメラニンのレベルと以前のスキャンおよび/または参照値を比較するステップ、および
(iii)パーキンソン病の診断を提示するステップ
を含む、方法を対象とする。
【0015】
一実施形態では、本発明は、対象におけるパーキンソン病の進行をモニタリングする方法であって、
(i)ニューロメラニン-磁気共鳴イメージング(NM-MRI)スキャンを行い、ニューロメラニンのレベルを測定するステップ、
(ii)このニューロメラニンのレベルと以前のスキャンおよび/または参照値を比較するステップ、ならびに
(iii)パーキンソン病の進行を判定するステップ
を含む方法を対象とする。
【0016】
一実施形態では、本発明は、対象におけるパーキンソン病の予後を提示する方法であって、
(i)ニューロメラニン-磁気共鳴イメージング(NM-MRI)スキャンを行い、ニューロメラニンのレベルを測定するステップ、
(ii)このニューロメラニンのレベルと以前のスキャンおよび/または参照値を比較するステップ、ならびに
(iii)必要に応じて、パーキンソン病の予後を提示するステップ
を含む方法を対象とする。
【0017】
一実施形態では、本発明は、対象におけるパーキンソン病の処置をモニタリングする方法であって、
(i)ニューロメラニン-磁気共鳴イメージング(NM-MRI)スキャンを行い、ニューロメラニンのレベルを測定するステップ、
(ii)このニューロメラニンのレベルと以前のスキャンおよび/または参照値を比較するステップ、ならびに
(iii)パーキンソン病の処置の効果を評価するステップ
を含む方法を対象とする。
【0018】
一実施形態では、本発明は、第1のニューロメラニン磁気共鳴画像からの第1のシグナル強度を決定するステップ、および第2のニューロメラニン磁気共鳴画像からの第2のシグナル強度を決定するステップを対象とし、第1の磁気共鳴画像と前記第2の磁気共鳴画像とを比較するステップは、第1のシグナル強度と第2のシグナル強度とを比較することを含む。
【0019】
一実施形態では、対照とは、対象の集団において、ほぼ同じレベルで存在するニューロメラニンのレベルのことであるか、または前記標準対照とは、対象の集団において存在するほぼ平均のニューロメラニンのレベルのことである。
【0020】
一実施形態では、ニューロメラニン勾配ファントムを使用して、ニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度を測定する。
【0021】
一実施形態では、ニューロメラニンファントム濃度勾配が、患者あたり約1回、1時間に約1回、1日約1回、1週間に約1回または1か月に約1回、スキャンされる。
【0022】
一実施形態では、ニューロメラニンファントム勾配が、毎日スキャンされる。
【0023】
一実施形態では、ニューロメラニンファントム勾配が、各患者でスキャンされる。
【0024】
一実施形態では、本発明は、対象におけるニューロメラニンを評価する方法であって、
対象にニューロメラニン-磁気共鳴イメージング(NM-MRI)スキャンを行うステップ、
NM-MRIスキャンからニューロメラニンデータセットを取得するステップ、
ニューロメラニンデータセットを必要に応じて暗号化するステップ、
ニューロメラニンデータセットを遠隔サーバーにアップロードするステップ、
データセットを必要に応じて解読するステップ、
ニューロメラニンデータセットの解析を行うステップであって、解析が、
(i)ニューロメラニンデータセットを前記対象から以前に取得した1つまたは複数のニューロメラニンデータセットと比較すること、
(ii)ニューロメラニンデータセットを対照のデータセットと比較すること、
(iii)ニューロメラニンデータセットを異なる対象から以前に取得した1つまたは複数のニューロメラニンデータセットと比較すること
のうちの1つまたは複数を含む、ステップ、
ニューロメラニン解析を含む報告書を作成するステップ、
必要に応じて、この報告書を暗号化するステップ、
この報告書を遠隔サーバーにアップロードするステップ、
必要に応じて、この報告書を解読するステップ
を含む方法を対象とする。
【0025】
一実施形態では、本発明は、対象におけるパーキンソン病の進行を経時的に判定するin vivoでの方法であって、
(i)第1の時間点において、第1のニューロメラニン磁気共鳴画像を得るステップ、
(ii)ステップ(i)の後に、第1のニューロメラニン磁気共鳴画像を年齢一致対照と比較するステップ、
(iii)前記第1の時間点と前記第2の時間点との間で発生したニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度を決定するステップ
を含む方法を対象とする。
【0026】
一実施形態では、パーキンソン病を診断するin vivoでの方法であって、
(i)第1の時間点において、第1のニューロメラニン磁気共鳴画像を得るステップ、
(ii)ステップ(i)の後に、第2の時間点において第2のニューロメラニン磁気共鳴画像を得るステップ、
(iii)第1のニューロメラニン磁気共鳴画像と前記第2のニューロメラニン磁気共鳴画像とを比較し、これによって、前記第1の時間点と前記第2の時間点との間で、ニューロメラニンのレベル、シグナルまたは濃度のうちの1つまたは複数の変化が発生したかどうかを判定するステップ
を含む方法を対象とする。
【0027】
一実施形態では、本発明は、患者に処置レジメンを提供する方法であって、NM-MRIスキャンを行うステップ、関心領域におけるNM-MRIスキャンからのNMシグナルを取得するステップ、関心領域のデータにおけるNM-MRIスキャンからのNMシグナルを年齢に一致するデータベース数と比較するステップ、NMシグナルが所定の値未満である場合、対応する処置レジメンを施すステップを含む方法を対象とする。
【0028】
一実施形態では、対象は、アルツハイマー病の症状を示す。
【0029】
一実施形態では、患者はパーキンソン病と一般に誤診される障害に罹患している。一実施形態では、この障害は、本態性振戦である。一実施形態では、この障害は、家族性振戦である。
【0030】
一実施形態では、NM-MRIスキャンおよび解析は、アルツハイマー病とパーキンソン病とを区別する。一実施形態では、NM-MRIスキャンおよび解析により、関連障害(例えば、MSA、PSP、パーキンソン症候群の症状、ジスキネジア、ジストニア)を区別して、これらを個別に特定することができる。一実施形態では、NM-MRIスキャンおよび解析は、パーキンソン病に関連する障害(例えば、MSA、PSP、パーキンソン症候群、ジスキネジア、ジストニア)の進行のモニタリング、その処置のモニタリング、およびその予後の提示をすることができる。
【0031】
一実施形態では、本発明は、対象の脳の関心領域の1つまたは複数のニューロメラニン-磁気共鳴イメージング(NM-MRI)スキャンを解析するステップを含む、対象がパーキンソン病を有するか、またはそれを発症するリスクがあるかどうかを判定する方法であって、解析するステップが、
脳の関心領域のイメージング情報を受信すること、および
イメージング情報に基づいて、ボクセルワイズ解析を使用して、脳の関心領域におけるNM濃度を決定すること
を含み、
対象がパーキンソン病を有するか、またはそれを発症するリスクがあるかどうかを判定することが、
(1)1つまたは複数のNM-MRIスキャンのNMシグナルが、パーキンソン病のない1つまたは複数の対照スキャンと比べて低下している場合、対象が、パーキンソン病を有するか、またはそれを発症するリスクがあること、または
(2)1つまたは複数のNM-MRIスキャンが、パーキンソン病のない1つまたは複数の対照スキャンのシグナルと同等のNMシグナルを有する場合、対象が、パーキンソン病を発症するリスクを有していない、またはそのリスクにはないことを含む、方法を対象とする。
【0032】
一実施形態では、本発明は、対象の脳の関心領域のニューロメラニン-磁気共鳴イメージング(NM-MRI)スキャンを解析するステップを含む、パーキンソン病を有する対象を処置する方法であって、解析するステップが、
第1の時間点において、脳の関心領域のイメージング情報を受信すること、
第2の時間点において、脳の関心領域のイメージング情報を受信すること、
イメージング情報に基づいて、ボクセルワイズ解析を使用して、脳の関心領域における第1および第2の時間点でのNM濃度を決定すること、ならびに
第1の時間点と第2の時間点におけるNM濃度を比較すること
を含み、
処置法が、以下:
(1)第2の時間点におけるNM-MRIスキャンのNMシグナルが、第1の時間点におけるNMシグナルに比べて低下している場合、レボドーパおよびカルビドーパのうちの1種もしくは複数を投与するステップ、または
(2)第2の時間点におけるNM-MRIスキャンのNMシグナルが、第1の時間点におけるNMシグナルに比べて増大している場合、レボドーパおよびカルビドーパのうちの1種または複数を投与するステップを保留するステップ
をさらに含む、方法を対象とする。
【0033】
一実施形態では、対象は、パーキンソン病のうちの1つまたは複数の症状を示す。
【0034】
一実施形態では、本方法は、症状が臨床的に現れる前に、パーキンソン病の診断を提示する。
【0035】
一実施形態では、NM-MRI法は、アルツハイマー病とパーキンソン病とを区別する。
【0036】
一実施形態では、NM-MRI法は、患者がパーキンソン病を有する、またはパーキンソン病を有していないと診断し、ユーザーインターフェースを介して、ユーザーに診断を表示する。
【0037】
一実施形態では、解析は、ボクセルワイズ解析である。
【0038】
一実施形態では、ボクセルワイズ解析は、脳の関心領域内の少なくとも1つのトポグラフィーパターンを決定することを含む。
【0039】
一実施形態では、本方法は、ニューロメラニンボクセルの体積を表す値を使用した計算をさらに含む。
【0040】
一実施形態では、ボクセルワイズ解析の関心領域は、黒質である。
【0041】
一実施形態では、ボクセルワイズ解析の関心領域は、腹側黒質の部分領域である。
【0042】
一実施形態では、本発明は、パーキンソン病に関する診断情報を提供するための診断システムであって、対象の脳における、関心領域内に位置するボクセルに関する、一連のニューロメラニンデータと共に、ニューロメラニン高感度MRIスキャンを生成して取得するよう構成されているMRIシステム、
処理後のニューロメラニンMRIスペクトルを生成するための一連のニューロメラニンデータを処理するよう構成されているシグナルプロセッサー、および
処理後のニューロメラニンMRIスペクトルを処理するよう構成されている診断プロセッサーであって、
ある時間点におけるニューロメラニンに対応する関心領域からの測定値を抽出する、
測定値を、時間点前に取得した1つまたは複数の対照の測定値と比較する
測定値が、対照の測定値より約25%を超えて小さい場合、パーキンソン病の診断を提示する、診断プロセッサー
を含む、診断システムを対象とする。
【0043】
別の態様では、対象における脳組織が、ニューロメラニンの異常なレベルを含有するかどうかを判定する方法が提供される。本方法は、組織中のニューロメラニンのレベルを検出するステップを含む。ニューロメラニンのレベルは、標準対照と比較される。標準対照に比べてより低いニューロメラニンのレベルが検出された場合、これは、パーキンソン病を示す。
【0044】
一実施形態では、対象に施されたパーキンソン病治療法が有効かどうか判定する方法が提供される。本方法は、第1の時間点における、組織中の内因性ニューロメラニンのレベル検出するステップを含む。後続のステップでは、治療法は、対象に施される。次に、組織中のニューロメラニンのレベルは、第2の時間点に決定される。これ以降、第1の時間点におけるニューロメラニンのレベルは、第2の時間点におけるニューロメラニンのレベルと比較される。第1の時間点に比べて第2の時間点においてニューロメラニンのレベルがより高いことは、この治療法が有効であったことを示す。代替として第1の時間点に比べて第2の時間点においてニューロメラニンのレベルがより低いことは、対象に施された治療法が無効であったことを示す。
【0045】
一実施形態では、パーキンソン病を有する患者を処置する方法が提供される。一実施形態では、本方法は、患者に初期量のL-ドーパを投与するステップを含む。一実施形態では、本方法は、患者の脳における、関心領域のニューロメラニン濃度をモニタリングし、初期処置期間にわたり、処置関連有害事象を評価するステップを含む。一実施形態では、初期処置期間中に、患者が、
i)患者の脳における関心領域のニューロメラニン濃度の低下、および
ii)L-ドーパに関連する有害作用または副作用のないこと
のうちの1つまたは複数を示す場合、その後の処置期間におけるL-ドーパの用量を増加し、
L-ドーパ処置により、患者における、パーキンソン病の症状の改善がもたらされる。
【0046】
一実施形態では、処置方法は、以下のステップ:
患者が、ステップc)におけるi)~ii)のうちの1つまたは複数を示さなくなるまで、ステップa)~c)を繰り返すステップ
を含む。
【0047】
本特許または出願書類は、カラーで作製された少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面を含む本特許または特許出願公開書類のコピーは、必要な料金の請求および支払い時に、米国特許商標庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1A-B】
図1A~Bは、MRI画像を示す。(A)すべての参加者からの空間的に正規化したNM-MRI画像を平均することによって生成した、MNI空間における中脳のテンプレート。黒質(SN)は、高シグナル領域としてはっきりと目視可能である。(B)MNI空間における、SNのマスク(黄色、参加者すべてに対する全SN対象範囲を確実にするよう過大包括的マスク)、および大脳脚参照領域(cyan)が、NM-MRIテンプレート上にトレースされ、コントラスト対ノイズ比(方法)の計算に関して、参加者のすべてに適用した。
【0049】
【
図2A-D】
図2A~Dは、コカイン使用者と対照との間の比較を示す。(A)コカイン使用者と対照との間のNM-MRIシグナルの診断群の差異である。診断に基づいて分割した参加者における、コカイン使用時ボクセル(上部パネル、Cで定義)、リーブワンアウト(LOO)手順で定義したコカイン使用時ボクセル(中央パネル)、および全SN(下部パネル)内で平均した、抽出したNM-MRIシグナル(CNR)を示す散布図。共変量(Bおよび本文において報告した統計)について調節した後の、NM-MRIシグナルに及ぼす診断群の効果を示す結果を補うため、これらの散布図は、未加工の未調節NM-MRIシグナルにおける診断群の差異を示している。(B)コカイン使用時ボクセル(上部パネル)、リーブワンアウト手順で定義したコカイン使用時ボクセル(中央パネル)および全SN(下部パネル)から抽出したシグナルに基づいた診断群を分離する際の、NM-MRIシグナルの感度および特異度を示す、受信者操作特性曲線。黒線は、年齢、ヘッドコイルおよびタバコの使用という共変量について調節したNM-MRIシグナルを表す;灰色の線は、未調節のNM-MRIシグナルを表す。(B)コカイン使用者が、対照よりも高いNM-MRIシグナルを示したボクセルのマップ(赤色で表示、ロバスト線形回帰、p<0.05片側)。この一連のボクセルは、偶然レベルより高かった(p
補正後=0.025、並べ替え検定)。(C)すべてのSNボクセルに関する診断群の影響に対するt統計量を示す、同じ解析の閾値なし結果。NM-MRIシグナルがコカイン使用者においてより高いボクセルが赤色で示されており、シグナルが、コカイン使用者ではより小さいボクセルは、青色で示されている。
【0050】
【
図3】
図3は、健常者およびコカイン使用障害における、線条体におけるサイトゾル、小胞およびシナプスプール間のドーパミンの輸送、ならびにその後のSN(曲線矢印)におけるNMの蓄積を示す概略図を示す。破線による四角囲いは、灰色のシナプス前ドーパミンニューロンと緑色のシナプス後線条体ニューロンとの間の線条体シナプスの概略詳細を示す。左:サイトゾルドーパミンプールは、NMに正常に変換され、中脳におけるSN内のシナプス前ドーパミンニューロンの細胞体において、生涯にわたり徐々に蓄積する。右:以前の文献においてPETを用いて観察されたドーパミン放出量の減少およびここで報告されたNM-MRIシグナルの増加を含む、コカイン使用障害において観察された変化を説明するための理論的シナリオが提示されている。PETおよび死後の研究とも一致する、VMAT2の減少は、これらの両方を説明することができる:VMAT2発現量が低下すると、小胞ドーパミンが減少し、NMが合成されるサイトゾルドーパミンプールが増加する。データの別の解釈については、本文を参照されたい。
【0051】
【
図4】
図4は、臨床的および人口統計学的測定を示す。
【0052】
【
図5】
図5は、実施例4に示した検討の人口統計学的および臨床的特徴を示す。
【0053】
【
図6A-B】
図6A~Bは、ベースラインNM-MRI CNRが、ベースラインでの歩行速度と相関することを示す。(a)NM-MRI CNRが、すべての対象からの平均NM-MRI CNR画像に重ねた、歩行速度という単一作業尺度(緑色のボクセル)と正に相関(P<0.05のボクセルレベルに閾値)した、SN-VTAボクセルのマップ。(b)視覚化目的で、歩行速度に対してプロットした重要なボクセルから抽出した平均NM-MRI CNRを示す散布図。これらのプロットされたデータは、0.49のピアソン相関係数を示すが、この効果量の推定値は、この効果に対する重要なボクセルの選択を考慮すると、かなり誇張されている可能性が高い。
【0054】
【
図7A-B】
図7A~Bは、ベースラインNM-MRI CNRの二次解析は、関心領域またはボクセルワイズ解析において、3週間のL-ドーパ処置後の歩行速度の変化を予測しないことを示す。(a)歩行速度に対してプロットした
図1aにおける重要な(緑色)ボクセルから抽出された平均NM-MRI CNRを示す散布図。これらのプロットされたデータは、ピアソン相関係数0.10を有する。(b)NM-MRI CNRは、3週間のL-ドーパ処置後の歩行速度の変化と正に相関する(N=64、P<0.05のボクセルレベルに閾値)、ボクセルから抽出された平均NM-MRI CNRを示す散布図。これらのプロットされたデータは、ピアソン相関係数0.17を有する。
【0055】
【
図8A-C】
図8A~Cは、NM-MRI CNRは、3週間のL-ドーパ処置後に、有意に増加することを示す。(a)すべての対象からの平均NM-MRI CNR画像に重ねた、L-ドーパの3週間後に、NM-MRI CNRが有意に増加したSN-VTAボクセルのマップ(P<0.05のボクセルレベルに閾値、赤色ボクセル)。(b)すべてのSN-VTAボクセルを含む処置後のNM-MRI CNRにおける対象全体の平均変化を示すヒストグラムであり、これは、一般に、ゼロの右側にシフトする(NM-MRI CNRの増加を意味する)。視覚化の目的で、高さは、L-ドーパボクセルの数(N=200;ボクセルに対応する赤い棒)または他のSN-VTAボクセルの数(つまり、重要でないボクセル;N=1607)のいずれかに比例する。例えば、L-ドーパボクセルの場合の0.2というボクセル比を有する棒は、40個のボクセルに相当する一方、他のSN-VTAボクセルの場合の0.2というボクセル比を有する棒は、321個のボクセルに相当する。(c)6名の対象の場合のベースライン時(L-ドーパ前)およびL-ドーパ処置の3週間後(L-ドーパ後)の重要な(赤色)ボクセルから抽出された平均NM-MRI CNRを示すラダープロット(各対象全体で一貫した増加があることを強調するよう、それぞれが、異なる色で表示されている)。
【発明を実施するための形態】
【0056】
詳細な説明
本開示を一層詳細に記載する前に、本開示は、記載されている特定の実施形態に限定されず、したがって、当然ながら変わり得ることを理解されたい。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってしか限定されないので、本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を記載することを目的としているに過ぎず、限定的であることを意図するものではないことをやはり理解すべきである。
定義
【0057】
本明細書において示されている詳細は、例として、および本発明の実施形態の例示的な議論を目的としているに過ぎず、本発明の原理および概念的側面の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提示するために示されている。これに関して、本発明の基本的な理解に必要な、本発明の構造的な詳細を一層詳細に示す試みは、なされておらず、本記載は、本発明の形態がどのように実際に具体化され得るかを、当業者に明白にする図面と共に行われる。
【0058】
本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が特に明確に指示しない限り、複数の参照物を含む。
【0059】
別段に示されている場合を除き、本明細書および特許請求の範囲において使用されている、成分の量、反応条件などを表現している数はすべて、すべての場合において、用語「約」によって修飾されているものとして理解すべきである。したがって、特に反対に示されていない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメーターは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて様々となり得る概数である。少なくとも、および特許請求の範囲への均等論の適用を制限する意図としてみなさないよう、各々の数値パラメーターは、有効数字および通常の四捨五入という慣例の観点で解釈されるべきである。
【0060】
さらに、本明細書内の数値範囲の開示は、その範囲内のすべての数値および範囲の開示とみなされる。例えば、ある範囲が、約1~約50である場合、それは、例えば、1、7、34、46.1、23.7、またはその範囲内の他の任意の値もしくは範囲を含むと考えられる。さらに、専門用語は、明記した数を少なくとも含み、例えば、「少なくとも50」は、50を含む。
【0061】
「MR」という用語は、磁気共鳴を指し、MRI(「磁気共鳴画像法」)、MRS(「磁気共鳴分光法」)などを含む、当分野で公知の、および/または本明細書に記載されている様々な実験手順が基本となる物理原理である。ニューロメラニン高感度MRIまたはニューロメラニン-MRIという用語は、脳内のニューロメラニンの検討におけるMRIの使用を指す。本明細書において、一般的な用語である磁気共鳴画像、磁気共鳴画像法またはMRIは、ニューロメラニン高感度変形型を包含する。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「NM-MRI」および類似の命名とは、独立して、個別としておよび一緒になっての両方で、MRIスキャンおよび対応するボクセルワイズ解析をそれぞれ指す。
【0063】
本明細書において使用される用語「T1」および「T2」とは、当分野で周知の慣用的な意味(すなわち、それぞれ「スピン-格子緩和時間」および「スピン-スピン緩和時間」)を指す。
【0064】
用語「T1強調」とは、MRI画像の文脈において、適切に短縮されたTRおよびTEを有するパルススピンエコーまたは反転回復シーケンスで作成された画像を指し、当分野で公知の通り、異なるT1値を有する組織間のコントラストを示すことができる。この文脈での「TR」という用語は、励起パルス間の反復時間を指す。「励起パルス」という用語は、90度の高周波(RF)励起パルスを指すと理解される。「TE」という用語は、励起パルスとMRシグナルサンプリングとの間のエコー時間を指す。
【0065】
用語「対象」は、マウス、ネズミ(rattus)、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコまたはヒトなどの哺乳動物対象とすることができる。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、対象はマウスである一方、他の実施形態では、対象はヒトである。用語「患者」は、本文脈では、ヒト対象を指す。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語「軽減する」は、障害の兆候または症状の重症度が低下する過程を説明することが意図される。重要なことに、兆候または症状は、なくならないで軽減され得る。好ましい実施形態では、本明細書において開示されている処置法の使用により、兆候または症状がなくなるが、なくなることを必要とするものではない。本発明によって案内される有効投与量は、兆候または症状の重症度を低下させることが期待される。
【0067】
投与量および投与は、活性剤の十分なレベルをもたらすよう、または所望の効果を維持するよう調節される。考慮され得る因子には、疾患状態の重症度、対象の一般的な健康、対象の年齢、体重および性別、食事、投与時間および頻度、薬物相互作用、反応感度、ならびに治療に対する耐性/応答が含まれる。医薬剤の有効量は、客観的に特定可能な改善を実現するものである。
【0068】
本明細書で使用する場合、「安定な」とは、再現可能な測定を指す。一実施形態では、「安定なニューロメラニンレベル」とは、ニューロメラニン(neuromelain)レベルが、比較的一定に維持される連続スキャンを指す。いくつかの文脈では、「安定なニューロメラニンレベル」は、1時間もしくは複数の時間、1日もしくは複数の日数、1週もしくは複数の週数または1回もしくは複数の処置サイクルの間、維持される。
【0069】
疾患の文脈における、用語「処置する」、「処置」などは、処置されている疾患を改善する、抑制する、根絶する、および/またはその発病を遅延させることを指す。一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、処置を必要とする対象に行われる。用語「処置を必要とする」などは、本明細書で使用する場合、疾患に至るおよび/または疾患を実際に有すると、医療技術者または獣医技術者によって理解されている、疾患を発症するリスクにある対象、状態を有する対象を指す。パーキンソン病の処置は、現在承認されている処置および探索的処置を含む。本発明のNM-MRIは、パーキンソン病の処置の有効性をモニタリングすることができる。本発明のNM-MRIは、探索的処置の有効性を判定することができる。本発明の一実施形態によりモニタリングされ得るパーキンソン病の処置の非網羅的な一覧は、以下のうちの1つまたは複数を含む。
【0070】
パーキンソン病の処置は、疾患修飾療法を含む。これらの治療法は、パーキンソン病(PD)の総合的な進行を予防する、減速させるまたは停止させることを狙いとする。それらは、疾患においてある役割を果たすと考えられる異なるタンパク質および経路を標的とする。
【0071】
アルファ-シヌクレイン;このタンパク質は、PDを有する人の一部の脳細胞および身体細胞に毒性塊を形成する。
【0072】
Anle138b;MODAGの低分子は、アルファ-シヌクレインの凝集を阻害することを狙いとする。MJFFは、パーキンソン病を有する人における、前臨床試験および第I相試験の一部に資金提供した。
【0073】
BIIB054;Biogenの抗体は、凝集したアルファ-シヌクレインが広がるのを防止する狙いがある。MJFFは、検討設計を支援する、器具開発およびデータ収集に資金提供している。
【0074】
NPT088;Proclara(以前のNeurophage)の薬物候補は、アルファ-シヌクレインが集まって塊を形成するのを防止する狙いがある。MJFFは、前臨床試験に資金提供した。
【0075】
PD01A;AFFiRiSのワクチンは、アルファ-シヌクレインに対する抗体を疑似することを狙いとしている。MJFFは、前臨床試験、第I相試験の一部およびブースト検討に資金提供した。
【0076】
RO7046015;Prothena/Rocheの抗体は、凝集したアルファ-シヌクレインが広がるのを防止することを狙いとしている。MJFFは、検討設計を支援する、器具開発およびデータ収集に資金提供している。
【0077】
GBA;GBA遺伝子における変異は、パーキンソン病に関連し、ある特定の細胞機能不全にリンクしている。
【0078】
GZ/SAR402671;Sanofi Genzymeの薬物は、GBA変異体で構成される脂質の生成を低減する。MJFFは、検討設計を支援する、器具開発およびデータ収集に資金提供している。
【0079】
LTI-291;Lysosomal Therapeuticsの経口薬物は、GBA変異に伴う機能不全を相殺することができる。MJFFは、前臨床試験に資金提供した。
【0080】
LRRK2;LRRK2遺伝子の変異は、パーキンソン病に関連しており、LRRK2タンパク質のより大きな活性にリンクしている。
【0081】
DNL201;DenaliのLRRK2阻害剤は、増大したLRRK2活性を低下させることを狙いとしている。MJFFは、この試験を支援する安全性検討に資金提供した。
【0082】
エクセナチド;前臨床パーキンソン病のモデルにおいて脳細胞を保護する糖尿病薬。MJFFは、University of College Londonによって主導された第II相試験に資金提供した。
【0083】
イノシン;栄養補給物は尿酸塩(抗酸化剤)レベルを高める。集団検討により、イノシンは、PDの予防効果を有するか、またはその進行を遅らせることができることが示されている。MJFFは、前臨床試験および第II相試験に資金提供し、パーキンソンの検討グループによって導かれた第III相試験において、バイオマーカー収集を支援している。
【0084】
イスラジピン;高血圧薬は、脳細胞を防御する一助となり得る。
【0085】
ニロチニブ;白血球のがん(慢性骨髄性白血病)に対するこの処置は、PDにおいて見られる機能不全に対処することができる。
【0086】
パーキンソン病の処置は、神経栄養因子を含む。栄養因子は、脳の天然の肥料のようなものである。それらは、ニューロンの回復およびその保護の一助となる。GDNF;MedGenesisの栄養因子は、ドーパミン細胞を保護することができる。MJFFは、前臨床試験に資金提供した。CDNF;Herantisの栄養因子は、ドーパミン細胞を保護することができる。MJFFは、前臨床試験に資金提供した。
【0087】
パーキンソン病の処置は、運動症状を改善するものを含む。振戦、こわばりおよび運動の緩慢は、動きに影響を及ぼす。レボドーパは、一助となるが、症状のすべてを処置するとは限らず、時間と共に有効性に乏しくなる感覚となり得、長期使用により、ジスキネジアなどの副作用をもたらす恐れがある。
【0088】
レボドーパ送達;運動症状を処置するためのゴールドスタンダードは、長期使用により、徐々に薄れ、ジスキネジアなどの副作用を引き起こす恐れがある。研究者は、一部の副作用は、レボドーパのレベルが変動することによる可能性があると考えている。Accordion Pill;レボドーパ/カルビドーパの層は、より良好な吸収のために胃からゆっくりと放出される。NDO612;Neurodermのレボドーパ/カルビドーパポンプまたはポンプパッチ剤は、安定したレベルのレボドーパを維持することができる。
【0089】
レボドーパは、血液脳関門を通過する能力があるため、パーキンソン病を有する患者に投与されるドーパミンのプロドラッグである。レボドーパは、血液脳関門の一方の側でドーパミンに代謝されることができ、したがって、カルビドーパのようなドーパデカルボキシラーゼ阻害剤と一般に投与されて、レボドーパが血液脳関門を通過した後になるまで代謝を阻止する。レボドーパは、血液脳関門を一旦通過すると、ドーパミンに代謝されて、ドーパミンの低い内因性レベルを補い、パーキンソン病の症状を処置する。FDAによって承認された最初の開発薬物製品は、Sinemetと呼ばれる、レボドーパとカルビドーパの組合せ製品であった。
【0090】
パーキンソン病の処置は、非ドーパミン手法を含む。アドオン治療法による他の脳化学物質を標的することは、レボドーパ使用に伴う運動変動を制御する一助となることがある。PXT002331;Prexton Therapeuticsの経口薬(フォリグルラックス)は、グルタミン酸および他の脳化学システムに働き、運動症状およびジスキネジアを低減する。
【0091】
パーキンソン病の処置は、「オフ」レスキュー治療剤を含む。レボドーパレベルが低下する場合、患者の症状は戻る恐れがある。これは、「オフ」エピソードと呼ばれる。APL-130277;Sunovion(以前のCynapsus)の、舌下に置かれるアポモルフィンという薬の薄層フィルム剤は、「オフ」エピソードから患者をレスキューすることができる。CVT-301;Acorda(以前のCivitas)の吸入レボドーパは、症状を迅速に緩和することができる。
【0092】
パーキンソン病の処置は、遺伝子治療法を含む。手術により、選択された遺伝子が脳に送達されて、欠損タンパク質の産生を増大させる。AAV2-hAADC;Voyagerの手法は、進行したパーキンソン病において、運動症状をよりよく制御し、より少ない「オフ」時間とするために、脳細胞中のAADC酵素を置き換えて、レボドーパのドーパミンへの変換を改善することを狙いとする。
【0093】
従来のMRIには、神経外傷の臨床的転帰を予測するために必要な空間的および定量的データが欠如している。しかし、本明細書において議論されている方法は、脳内のニューロメラニンの分散またはニューロメラニン含有ニューロンの喪失を考慮して、パーキンソン病の臨床的進行、重症度および応答を予測することができる脳内のニューロメラニンのレベルを検出する。
【0094】
一部の実施形態では、NM-MRIは、現在承認されている治療法もしくは検討中の治療法に起因する有害作用または副作用を回避すると同時に、パーキンソン病の処置のための用量漸増法を提供する。具体的には、投薬量レジメンを案内するための本明細書に記載されているボクセルワイズな手法を使用して、NMシグナルをモニタリングしながらL-ドーパを投与すると、L-ドーパ単独投与と比較して有効性を増大することが可能である。
【0095】
さらに、NM-MRIによって案内される特定の様々な投薬量レジメンに準拠した治療剤を投与することにより、投与に伴う可能性のある副作用を低減することが可能である。例えば、本発明のNM-MRIボクセル解析によって案内される特定の投薬量レジメンに準拠してL-ドーパを投与することは、処置に関連する副作用を大幅に低減するか、または完全になくすことさえ可能となる。
【0096】
ある特定の実施形態では、L-ドーパの用量は、以下に限定されないが、以前のスキャンに比べて、またはベースライン対照のどちらか一方に比べて、対象の脳の関心領域におけるニューロメラニンの増加または減少を含む生理学的要因に応じて、増加する、低減する、より頻繁に投与される、またはそれほど頻繁に投与されない。一実施形態では、関心領域は、パーキンソン病の症状に関連するボクセルである。用量の変動は、患者のコンプライアンスを高め、治療を改善し、望ましくないおよび/または有害な影響を低減する。ある特定の実施形態では、本発明の治療方法は、それ自体による治療剤の投与と比較して、総合的な治療法の改善を実現する。
【0097】
ある特定の実施形態では、本発明の誘導介入を使用する際に、既存の薬剤の用量を減らすか、またはより少ない頻度で投与することができ、それによって、患者のコンプライアンスを高め、治療を改善し、望ましくないまたは有害な影響を低減する。一実施形態では、本発明のNM-MRIを用いる治療をモニタリングすることにより、患者は、より長い時間枠の間、処置からの利益を受けることが可能となる。
【0098】
ニューロメラニン高感度MRIデータは、パーキンソン病、またはパーキンソン病を発症するリスク、重症度、疾病進行、処置応答および/もしくは臨床的転帰に対するバイオマーカーとして使用することができる。ニューロメラニン高感度MRI法は、パーキンソン病、重症度またはその発症のリスクを追跡する客観的なバイオマーカーのための必要性を満たす。ニューロメラニン高感度MRIは、侵襲的/放射線的画像測定(例えば、PET)の安全な代替手段として使用することができる。ニューロメラニン高感度MRIはまた、放射線への繰り返し曝露のリスクを考慮すると、現在実施することができない、進行のモニタリングのために使用することができる。ニューロメラニン高感度MRIは、非侵襲的で、安価で、安全で、臨床設定での取得が容易である。これにより、解剖学的解像度が大幅に向上し(5~10倍)、これによって、関連する脳構造内の解剖学的詳細を解像することが可能となる。
【0099】
ある特定の実施形態では、ニューロメラニン高感度磁気共鳴画像は、定期的に、例えば、1、2、3、4、5、6もしくは7日ごと、1、2、3もしくは4週間ごと、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12か月ごと、または1、2、3、4もしくは5年ごとに得られる。ある特定の実施形態では、症状が現れる前に、第1の磁気共鳴画像が得られる。ある特定の実施形態では、パーキンソン病に関連する症状の前に、第1の磁気共鳴画像が得られる。症状が現れる前またはその後のいずれかに、第2の磁気共鳴画像を得てもよい。他の実施形態では、第2の磁気共鳴画像は、第1の磁気共鳴画像の1年後に得てもよい。
【0100】
一部の実施形態では、ニューロメラニン高感度磁気共鳴画像法(「NM-MRI」)技法は、パーキンソン病の非侵襲的診断、その影響の測定および/または予後の提示に有効である。
【0101】
一部の実施形態では、NM-MRI技法は、発症前パーキンソン病を診断するための手段として使用される。一部の実施形態では、NM-MRI技法は、パーキンソン病を、以下に限定されないが、アルツハイマー病を含む他の神経学的状態と区別するのに効果的である。他の実施形態では、NM-MRI技法は、処置の経過を選択するのに有効であり、必要に応じて、このような処置は、パーキンソン病を処置するのに有効である。
【0102】
一部の実施形態では、NM-MRI技法は、パーキンソン病の進行をモニタリングするための手段として使用される。一部の実施形態では、NM-MRI技法は、パーキンソン病の進行の縦断的評価に有効である。
【0103】
一部の実施形態では、本技法は、ニューロメラニンを直接または間接的に測定する。他の実施形態では、本技法は、ドーパミン機能を直接または間接的に測定する。一部の実施形態では、ニューロメラニン高感度MRI(NM-MRI)シグナルとパーキンソン病の重症度との間に関係がある。
【0104】
一部の実施形態では、NM-MRI技法は、脳組織のすべての区域にわたるニューロメラニンの濃度を決定することが可能である。他の実施形態では、NM-MRI技法は、ニューロメラニンの局所濃度を決定することが可能である。他の実施形態では、NM-MRI技法は、ニューロメラニンの局所レベルを決定することが可能である。他の実施形態では、NM-MRI技法は、ニューロメラニンの局所シグナル強度を決定することが可能である。
【0105】
他の実施形態では、NM-MRI技法は、黒質部分領域中のニューロメラニン濃度を決定する。さらなる実施形態では、NM-MRI技法は、黒質内の背側線条体と安静時の血流におけるドーパミン放出量を直接的または間接的のどちらかで決定する。
【0106】
一部の実施形態では、NM-MRIシグナルとパーキンソン病の重症度は、直接、相関する。一部の実施形態では、NM-MRIシグナルとパーキンソン病の重症度は、逆相関する。他の実施形態では、NM-MRIは、パーキンソン病を有する人の黒質線条体路において、一層低いシグナルを示す。一部の実施形態では、NM-MRIは、ドーパミン機能不全を捕捉する。さらに他の実施形態では、NM-MRIは、パーキンソン病のバイオマーカーとして使用することができる。さらなる実施形態では、NM-MRIを使用して、パーキンソン病の重症度を決定することができる。さらなる実施形態では、NM-MRIは、パーキンソン病の診断および/または予後を提示するために使用することができる。
【0107】
一部の実施形態では、解析は、以前のNM-MRIと比較して行われる。他の実施形態では、解析は、参照値および/または範囲と比較して行われる。一部の実施形態では、参照値および/または範囲は、健常な人からのニューロメラニンデータの編集を使用して生成される。一部の実施形態では、参照値および/または範囲は、パーキンソン病を有する人に由来するニューロメラニンデータの編集を使用して生成される。一部の実施形態では、参照値および/または範囲は、パーキンソン病を有する人およびパーキンソン病を有さない人々に由来するニューロメラニンデータの編集を使用して生成される。
【0108】
一部の実施形態では、NM-MRIシグナルは、外側黒質から受信される。他の実施形態では、NM-MRIシグナルは、後部黒質から受信される。さらなる実施形態では、NM-MRIシグナルは、黒質の腹側領域から受信される。一部の実施形態では、NM-MRIシグナルは、黒質の外側領域、後部領域および腹側領域のうちの1つまたは複数から受信される。
【0109】
一部の実施形態では、NM-MRIシグナルは、黒質または青斑核から受信される。一部の実施形態では、NM-MRIシグナルは、腹側黒質から受信される。一部の実施形態では、NM-MRIシグナルは、外側黒質から受信される。一部の実施形態では、NM-MRIシグナルは、腹外側黒質から受信される。一部の実施形態では、NM-MRIシグナルは、黒質緻密部(SNpc)から受信される。一部の実施形態では、NM-MRIシグナルは、黒質網様部(SNpr)から受信される。一部の実施形態では、NM-MRIシグナルは、腹側被蓋野(VTA)から受信される。一部の実施形態では、NM-MRIシグナルは、青斑核から受信される。一部の実施形態では、NM-MRIシグナルは、腹側黒質、外側黒質、腹外側黒質、黒質緻密部(SNpc)、黒質網様部(SNpr)、腹側被蓋野(VTA)および青斑核のうちの1つまたは複数から受信される。
【0110】
一部の実施形態では、NM-MRI技法は、MRIスキャンを行うステップ、ニューロメラニンデータを取得するステップ、必要に応じてニューロメラニンデータを暗号化するステップ、必要に応じてニューロメラニンデータを遠隔サーバーにアップロードするステップ、必要に応じてデータを解読するステップ、ニューロメラニンデータの解析を行うステップを含む、対象におけるニューロメラニンを評価するステップであって、解析が、ニューロメラニンデータを、以前に取得したデータ、大集団のデータベースまたはそれらの両方と比較するステップ、ニューロメラニン解析を含む報告書を作成するステップ、必要に応じて、この報告書を暗号化するステップ、必要に応じて、この報告書を遠隔サーバーにアップロードするステップ、必要に応じてこの報告書を解読するステップを必要に応じて含む、評価するステップを含む。
【0111】
一部の実施形態では、報告書は、パーキンソン病に関する診断を提示する。一部の実施形態では、医師またはイメージング専門家が、報告書を解読する。さらなる実施形態では、解析は、遠隔で行われる。他の実施形態では、遠隔解析は、クラウドプラットフォーム上で行われる。他の実施形態では、遠隔解析は、クラウドサーバー上で行われる。
【0112】
一実施形態では、本発明は、例えば、研究もしくは検討のヒト対象、または患者などの対象におけるパーキンソン病を解析および分類することを対象とする。対象データは、NM-MRI測定によって取得される。パーキンソン病の程度に応じて分類された複数のテンプレートは、例えば、データベースなどのデータ格納部に格納される。各テンプレートは、パーキンソン病を有することが公知であり、少なくとも1名の他の対象から測定された集団の中から選択されたニューロメラニン測定値のサブセットを表す。一式のデータは、対象におけるニューロメラニン濃度間の側頭部の測定値を表すモデルが得られるように処理される。ニューロメラニンデータの少なくとも一部を複数のテンプレートと比較して、パーキンソン病の分類を作成する。
【0113】
本発明の実施形態は、臨床設定で使用するための診断手段、または研究設定で対象を評価するための手段を含む。より一般的には、本発明の態様は、NM-MRIを利用してパーキンソン病の評価または診断を得る手段を提供する。本発明の様々な態様によるシステムおよび方法は、例えば、パーキンソン病の進行など、対象の潜在的に変化する状態をモニタリングするのに有用である。さらに、本発明の態様は、患者の処置効果をモニタリングするための解決策を提供する。
【0114】
本発明の第2の態様は、患者におけるパーキンソン病もしくは対応する症状の発症または進行を予防、遅延または停止する治療剤をスクリーニングする方法であって、以下:1)前記患者を少なくとも1つの候補治療剤に曝露させるステップ、2)ニューロメラニン濃度を測定するステップ、および3)患者における、パーキンソン病もしくは対応する症状の発症または進行に対する少なくとも1つの治療剤の効果を評価するステップを含む方法である。
【0115】
本発明のある特定の実施形態は、診断精度を高め、パーキンソン病の認識を発症前の段階に早め、治療のモニタリングとして働くための客観的試験を提供することができる。一般に、本発明の実施形態は、保存されたテンプレートを使用してニューロメラニンを診断し、いくつかの異なる状態または疾患を区別し、ある期間にわたって対象をモニタリングするために使用することができる。
【0116】
一実施形態では、本発明は、第2のイメージング方法と共に使用され、第2のイメージング方法は、ポジトロン放出断層法(PET)である。一実施形態では、本発明は、構造MRIである第2のイメージング方法と共に使用される。一実施形態では、本発明は、機能的MRI(fMRI)である第2のイメージング方法と共に使用される。一実施形態では、本発明は、血中酸素濃度依存(BOLD)fMRIである第2のイメージング方法と共に使用される。一実施形態では、本発明は、鉄高感度MRIである第2のイメージング方法と共に使用される。一実施形態では、本発明は、定量的磁化率マッピング(QSM)である第2のイメージング方法と共に使用される。一実施形態では、本発明は、拡散テンソルイメージングDTIである第2のイメージング方法と共に使用される。一実施形態では、本発明は、単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)である第2のイメージング方法と共に使用される。一実施形態では、本発明は、DaTscanである第2のイメージング方法と共に使用される。一実施形態では、本発明は、DaTquantである第2のイメージング方法と共に使用される。
【0117】
一部の実施形態では、ニューロメラニン濃度および/またはレベルは、対照に対して測定され、ニューロメラニン濃度および/またはレベルが、対照よりも、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%低い場合、パーキンソン病の診断が裏付けられる。一部の実施形態では、ニューロメラニンの変化は、1年あたりの正味濃度またはレベルの変化として評価される。一部の実施形態では、ニューロメラニンの変化は、1年あたりの変化率として評価される。一部の実施形態では、ニューロメラニン濃度および/またはレベルは、対照に対して測定され、ニューロメラニン濃度および/またはレベルは、対照よりも約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%または約15%低い。一部の実施形態では、ニューロメラニン濃度および/またはレベルは、対照に対して測定され、ニューロメラニン濃度および/またはレベルは、対照と比較して、1年あたり、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%または約15%減少している。一実施形態では、対照は、患者の以前のNM-MRIスキャンおよびボクセルワイズ解析である。一実施形態では、ニューロメラニン濃度および/またはレベルは対照に対して測定され、ニューロメラニン濃度および/またはレベルは、毎年、2年ごと、3年ごと、4年ごと、5年ごと、6年ごと、7年ごと、8年ごと、9年ごと、10年ごと、20年ごとに測定される。一実施形態では、第2の時間点は、第1の時間期間の約3か月、約6か月、約9か月、約12か月、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年、約10年、約15年、約20年、約25年または約30年後である。ある特定の実施形態では、ニューロメラニン濃度および/またはレベルが対照よりも低いと測定される場合、患者はパーキンソン病と診断される。ある特定の実施形態では、ニューロメラニン濃度および/またはレベルが、年間または正味の総合的な変化のいずれかで対照よりも少ない所定の量であると測定される場合、患者はパーキンソン病と診断される。さらなる実施形態では、測定されたニューロメラニンは、対照よりも約20%を超えて少ない。さらなる実施形態では、測定されたニューロメラニンは、対照よりも約25%を超えて少ない。さらなる実施形態では、測定されたニューロメラニンは、対照よりも約30%を超えて少ない。さらなる実施形態では、測定されたニューロメラニンは、対照よりも約35%を超えて少ない。さらなる実施形態では、測定されたニューロメラニンは、対照よりも約45%を超えて少ない。さらなる実施形態では、測定されたニューロメラニンは、対照よりも約40%を超えて少ない。さらなる実施形態では、測定されたニューロメラニンは、対照よりも約50%を超えて少ない。ある特定の実施形態では、対照は、必要に応じて、同じ患者の以前のニューロメラニンMRIスキャンである。他の実施形態では、対照は、パーキンソン病を有する少なくとも1名の他の人からのニューロメラニンMRIスキャンのデータベースから必要に応じて決定された参照番号を含む。
【0118】
一実施形態では、第2の時間点でのニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度の変化が、第1の時間点におけるニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度よりも約5%超えて低いまたは約10%を超えて低く、第1の時間点および第2の時間点が、約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年または約10年の間隔がある場合、パーキンソン病の診断が示される。
【0119】
一実施形態では、第2の時間点におけるニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度の変化が、第1の時間点におけるニューロメラニンのシグナルおよび/または濃度よりも約35%超えて低い、約40%超えて低い、約45%超えて低い、または約50%を超えて低く、第1の時間点および第2の時間点が、約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年または約10年の間隔がある場合、パーキンソン病の診断が示される。
【0120】
一実施形態では、対照と比較した所与の患者におけるニューロメラニンの体積、シグナルまたは濃度の低減の程度は、パーキンソン病の進行および/または重症度に比例する。
【0121】
一実施形態では、対照と比較した所与の患者におけるニューロメラニンの体積、シグナルまたは濃度の増大の程度は、パーキンソン病の進行および/もしくは処置の改善および/または有効性に比例する。
【0122】
一実施形態では、標準対照は、対象の集団において、ほぼ同じレベルで存在するニューロメラニンのレベルであるか、または標準対照は、対象の集団において存在するほぼ平均のニューロメラニンのレベルである。
【0123】
このような用途の場合のNM-MRIの使用の拡充を例示するために、一連の検証研究を示す。第1の手順は、NM-MRIが、NMの組織中濃度の局所変動を検出するのに十分な感度があり得ることを示すよう提示され、これは、ドーパミン機能(例えば、合成能および貯蔵能を含む)の個体間および領域間の相違におそらく依存し、単にNM含有ニューロンの喪失だけではない。これを試験するために、MRI測定値を、パーキンソン病のない死後組織におけるNM濃度の神経化学的測定値と比較した。ドーパミン機能の変動は、必ずしもすべてのSN層全体に均一に発生し得るわけではないので、次の手順は、標準的な分子イメージング手順と比較して高い解剖学的解像度を有するNM-MRIが十分な解剖学的特異性を有することを示すことであった。NM-MRIを使用して、パーキンソン病におけるSN内の細胞喪失の既知のトポグラフィーパターンを捕捉するための新規なボクセルワイズな手法の能力を試験する。次に、次の手順は、ボクセルワイズな手法を使用して、NM-MRIとパーキンソン病との間の関係の直接的な証拠を提示することである。
【0124】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2020/077098において議論されている通り、NM-MRIシグナルは、線条体(SNニューロンの主要な投影部位)へのドーパミン放出の十分に検証されたポジトロン放出断層法(「PTET」)測定、およびパーキンソン病のない個体の群における、SNニューロンの活動の間接的な尺度であるSNにおける局所血流の機能的MRI測定に相関する。ニューロメラニンのレベルは、Terran NM-101によって測定すると増大(SNc中濃度、SNcにおけるNMの体積)し、これにより、L-ドーパ療法によるUPDRSが改善される。
【0125】
本発明は、パーキンソン病のボクセルを、UPDRSによって測定されるパーキンソン病の症状と相関付ける;Terran NM-101でボクセルベースの解析方法を適用すると、UPDRSに対するそれらの特定の症状と相関する、各患者に固有の特定のボクセル(PDボクセルと呼ばれる)が見出されることを実証する;L-ドーパ療法開始後のニューロメラニン測定値の変化とUPDRSスコアの改善と間の相関関係を決定付ける;PDを有する患者における、対照群の正常範囲からのニューロメラニン測定値の相違を決定付ける(例えば、黒質緻密部(SNc)における総NM濃度(湿組織のマイクログラムあたりのニューロメラニンのマイクログラム)、部分領域SNcにおけるNM濃度、総SNcにおけるニューロメラニンの体積、SNcの部分領域の体積);PDの診断を妥当にすると思われる対照群からのニューロメラニンレベルの相違を決定付ける;L-ドーパ療法の開始後のニューロメラニン測定値の変化とUPDRSスコアの改善とを相関付ける;処置への応答をモニタリングするためにNMレベルを使用することができることを検証するために、UPDRSの改善をもたらすニューロメラニンのレベル増加を判定する;パーキンソン病のボクセルを、UPDRSスコアにより測定されたパーキンソン病の症状と相関付ける;ボクセルベースの解析方法を適用して、UPDRSに対するその特定の症状と相関する、各患者に固有の特定のボクセル(PDボクセルと呼ばれる)を見つける;NM-MRIスキャン、およびDaTscanとUPDRSスコアとの両方の間を相関付ける。
【0126】
一実施形態では、L-ドーパは、任意のパーキンソン病の処置の代表的な処置である。一実施形態では、L-ドーパは、カルビドーパ/レボドーパを表す。一実施形態では、処置は遺伝子治療である。一実施形態では、ニューロメラニン濃度が安定、不変または一定のままである場合、L-ドーパの投与量は一定のままである。一実施形態では、ニューロメラニン濃度が安定のままである場合、L-ドーパの投与量を増加する。一実施形態では、ニューロメラニン濃度が、約1%を超えて、約2%を超えて、約3%を超えて、約5%を超えて、約10%を超えて、約15%を超えて、約20%を超えて、または約25%を超えて低下する場合、L-ドーパの投与量を増量する。一実施形態では、ニューロメラニンは、連続スキャンによってモニタリングされる。一実施形態では、ニューロメラニンは、単一患者における症状特異的ボクセルに従って測定される。一実施形態では、症状特異的ボクセルは、パーキンソン病に特異的である。一実施形態では、パーキンソン病の特定のボクセルは、患者において、患者のNM-MRIデータを他の患者に由来する所定の一連の対照と比較することによって、決定される。一実施形態では、他の患者からの一連の対照は、年齢が一致している。一実施形態では、他の患者からの一連の対照は、性別が一致している。
【0127】
一部の実施形態では、ニューロメラニンは、少なくとも隔日、毎週、2週間ごと、毎月、隔月、3か月ごと、6か月ごと、毎年、2年ごと、3年ごと、4年ごと、5年ごと、6年ごと、7年ごと、8年ごと、9年ごと、10年ごと、15年ごと、20年ごと、25年ごと、30年ごと測定される。ある特定の実施形態では、第2の治療剤の用量は、毎週または2週間ごとに投与される。ある特定の実施形態では、治療剤は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、24時間、1日、2日、3、4日間、5日、6日、7日、または少なくとも14日ごとに投与される。
【0128】
一実施形態では、本明細書において議論されている処置期間(初期またはその後のいずれか)またはモニタリング期間は、毎日、隔日、28日ごと、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間ごと、10週間ごと、11週間ごと、12週間ごと、13週間ごと、14週間ごと、15週間ごと、16週間ごと、17週間ごと、18週間ごと、19週間ごと、または20週間ごと、約毎月、約隔月、約3か月ごと、約6か月ごと、または約毎年である。
【0129】
一実施形態では、関心領域が決定され、その領域の範囲に及びボクセルが測定されて、その領域内のニューロメラニンの体積が決定される。
【0130】
一実施形態では、関心領域が細分化され、その部分領域の範囲に及ぶボクセルが測定されて、その領域内のニューロメラニンの体積が決定される。
【0131】
一実施形態では、これらのボクセルは、参照データセットと比較され、これを使用して、関心領域または関心領域内の部分領域におけるニューロメラニンの濃度を計算する。
【0132】
一実施形態では、これらのボクセルは、参照データセットと比較され、これを使用して、関心領域または関心領域内の部分領域におけるニューロメラニンの総量を計算する。
【0133】
一実施形態では、関心領域において特定されたすべてのボクセルと、特定の症状または症状の重症度のスケール、または疾患状態、または人口統計情報、または他の患者もしくは疾患固有の情報との間で多重比較が行われ、個々のボクセルの部分群と、特定の症状または疾患モニタリングスケールでの症状の重症度のレベルとの間の関係性が見出される。これらは、症状特異的ボクセルと呼ばれる。
【0134】
一実施形態では、関心領域において特定されたすべてのボクセルと特定の疾患の診断情報もしくは人口統計情報、または他の患者情報もしくは疾患固有の情報との間で多重比較が行われ、個々のボクセルの部分群と特定の疾患と診断される状態との間の関連性が見出される。これらは、疾患特異的ボクセルと呼ばれ、一例では、パーキンソン病の特異的ボクセルを含むことができる。
【0135】
一実施形態では、これらの症状特異的または疾患特異的ボクセルは、同じ疾患の状況において同じ症状を有する複数の患者間で類似性を有しており、同じ疾患を有する複数の患者(例えば、どちらも精神運動遅滞の症状を有する、パーキンソン病を有する2人の患者)間の比較を行うために使用することができる。この場合、患者間の類似性を比較することができ、症状特異的ボクセルが診断バイオマーカーとして機能し得る。
【0136】
一実施形態では、これらの症状特異的または疾患特異的ボクセルは、異なる疾患の状況で発生する同じ症状を有する患者間で差異を有する。この場合、症状特異的ボクセル間の相違を使用して、同じ症状を共有する2つの異なる障害を区別することができる。
【0137】
一実施形態では、特定の領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度もしくはニューロメラニン体積のいずれかを非侵襲的バイオマーカーとして使用し、診断情報を判断して特定の疾患(この場合、パーキンソン病、またはMSA、PSP、パーキンソン症候群の症状、ジスキネジア、ジストニアまたは本態性振戦などの関連障害)の存在を診断することができる。
【0138】
一実施形態では、これは、特定の患者における、特定領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかのベースライン測定値を、同じ患者におけるこれらの値の将来の測定値と比較することによって達成することができる。
【0139】
一実施形態では、これは、特定の患者における、特定領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかの測定値を、標準対照と比較することによって達成することができる。
【0140】
一実施形態では、特定の領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかを非侵襲的バイオマーカーとして使用し、診断情報を判断し、関連障害(パーキンソン病、およびMSA、PSP、パーキンソン症候群の症状、ジスキネジア、ジストニアまたは本態性振戦)の存在を除外する、またはこれらを区別することができる。
【0141】
一実施形態では、これは、特定の患者における、特定領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかのベースライン測定値を、同じ患者におけるこれらの値の将来の測定値と比較することによって達成することができる。
【0142】
一実施形態では、これは、特定の患者における、特定領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかの測定値を、標準対照と比較することによって達成することができる。
【0143】
一実施形態では、特定の領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかを非侵襲的バイオマーカーとして使用し、患者において、特定の疾患または症状をステージ決定または等級付けし、この情報を区別または分類することができる。例えば、これを使用して、特定の患者における、PDまたは関連する運動障害のステージを判定することができる。
【0144】
一実施形態では、特定の領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかを非侵襲的バイオマーカーとして使用し、患者における現在の症状の重症度を判定することができる。
【0145】
一実施形態では、特定の領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかを非侵襲的バイオマーカーとして使用し、患者がまだ発症していない新しい症状の発症を予測することができる。
【0146】
一実施形態では、特定の領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかを非侵襲的バイオマーカーとして使用して、現在の症状の重症度を予測する、疾患の経過の将来の進行を予測する、または疾患の特定の症状の応答もしくは疾患の応答、全体として処置への応答のいずれかを予測し、非侵襲的予後バイオマーカーとして機能することができる。
【0147】
一実施形態では、特定の領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかを非侵襲的バイオマーカーとして使用し、全体として、特定の症状または疾患状態のどちらかに対する処置への応答をモニタリングすることができる。
【0148】
一実施形態では、特定の領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかを非侵襲的バイオマーカーとして使用し、全体として、特定の症状または疾患状態のどちらかに対する正しい処置の選択を案内することができる。
【0149】
一実施形態では、特定の領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかを非侵襲的バイオマーカーとして使用し、全体として、処置の状態を判定するため、および特定の症状または疾患状態のどちらかに対する処置への適切な応答が得られたかどうかを判定することができる。
【0150】
一実施形態では、特定の領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかを非侵襲的バイオマーカーとして使用し、全体として、特定の症状または疾患状態のどちらかに対する処置への将来の応答を予測することができる。
【0151】
任意の実施形態では、比較は以下の間で行われてもよい:
【0152】
同じ患者におけるこれらの値の将来の測定値に対する、特定の患者における、特定領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかのベースライン測定値。
【0153】
標準対照に対する、特定の患者における、特定領域もしくは部分領域の症状特異的ボクセルもしくは疾患特異的ボクセル、またはニューロメラニン濃度、またはニューロメラニン体積のいずれかの測定値。
【実施例】
【0154】
(実施例1)
NM-MRIボクセルワイズ解析の検証実験
死後の中脳組織におけるNm濃度との例示的な関係
NM-MRIが、健常な集団およびパーキンソン病に罹患している集団における、個体間の変動のマーカーとしてその使用のための必要条件である、SNの主要な神経変性のない個体に見られるレベルで、NM組織中濃度の変動に感度が高くあり得るかどうかを判定するための試験を実施した。この目的のために、これは、NM-MRIシーケンスを使用して、パーキンソン病またはパーキンソン病関連症候群と適合性のある組織病理を持たない個体からSNを含む中脳切片をスキャンすることにより、NM濃度のゴールドスタンダード測定値に対して検証される。スキャン後、各標本をグリッド線の印に沿って13~20のグリッド区域に切開する。各グリッド区域において、NMの組織中濃度を、生化学的分離と分光光度法の決定を使用して測定し、グリッド区域内のボクセル全体の平均したNM-MRIコントラスト対ノイズ比(「CNR」)も計算する。
【0155】
すべての中脳標本にわたり、NM-MRI CNRがより高いグリッド区域ほど、NMの組織中濃度が高かった(β1=0.56、t114=3.36、p=0.001、複合効果モデル;116グリッド区域、7標本)。予想どおり、高シグナル域は、NMリッチSNに対応するグリッド区域では、最も明白であった。しかし、in vivoでのNM-MRI画像と同様に、中脳水道周囲灰白質(「PAG」)領域周辺の中脳の後部-内部領域は、NMの濃度が比較的低いにもかかわらず高シグナルに見える傾向があった。グリッド区域(例えば、PAG)におけるPAGの存在の制御により、非PAG領域(131=1.03、t112=5.51、p=10-7)におけるNM-MRI CNRのNM濃度への一致が改善されたが、この高シグナルの原因を説明することができなかった。このモデルでは、NM-MRI CNRの10%の増加は、組織1mgあたりのNMの推定増加量0.10μgに相当する。
【0156】
NM-MRI CNRとNM濃度との間の関係は、各グリッド区域内のSNボクセルの割合を制御する拡張モデル(例えば、ここでもPAG含有量に対して)でも維持された(β1=0.45、t111=2.15、p=0.034)。この後者の結果は、NM-MRI CNRにより、非SNボクセルと比較すると、SNにおける両方の測定値の増加によって単に説明される増加(NM-MRIが、局所NM濃度を測定することなく、SNにしか限定しない場合でさえも、予測される増加である)より高い、SNおよび周辺領域のNM濃度の変動を説明されることを示唆する。したがって、これらの結果は、NM-MRIシグナルが、特に焦点を合わせた領域、SNを取り巻く中脳領域において、NMの局所組織中濃度に対応することを示している。
【0157】
ボクセルワイズ手法の例示的な検証
【0158】
NM-MRIがSN内およびその周辺のNMの局所濃度を測定することを示したので、NM-MRIシグナルの局所差異が、SN内の解剖学的部分領域全体で生物学的に意味のある変動を捉えるかどうかを判定した。SNにおける細胞集団の不均一性は、ドーパミン機能が腹側線条体、背側線条体または皮質部位に投影するニューロン層間で大幅に異なり得ることを示唆するので、この手段を使用してドーパミン機能を調べることが必要であった。SN内のボクセルワイズ解析は、ボクセルワイズ解析で使用される空間正規化および解剖学的マスクに関する情報について、SN内の特定の部分領域またはおそらく不連続なニューロン層に影響を及ぼすプロセスに対して感度が高い可能性があると判定した。この手法の実現可能性を裏付けるために、個々のSNボクセルの大部分は、良好または優れた試験-再試験の信頼性を示し、局所レベルで同様の実証を展開した。
【0159】
ボクセルワイズNM-MRI手法の解剖学的特異性を試験するために、疾患を検出するNM-MRIの能力と、疾病における細胞喪失の既知のトポグラフィーとを利用する。
【0160】
28名の患者と12名の年齢一致対照のNM-MRIデータを使用して、ボクセルワイズ解析がこのトポグラフィーパターンを捕捉するかどうかを解析する。例示的な手法は、SN内のドーパミンニューロン喪失の既知の解剖学的トポグラフィーを捕捉することが可能である:CNRの減少が大きいほど、より外側(β|x|=-0.13、t1803=-14.2、p=10-43)、後部(βy=-0.05、t1803=-6.6、p=10-10)、および腹側SNボクセル(βz-0.17、t1803=16.3、p=10-55;それらのx[正中線からの絶対距離]、y方向およびz方向の座標の関数としての、SNボクセル全体の群の差異のt統計量を予測する多重線形回帰解析:オムニバスF3,1803=111、p=10-65)で優勢になる傾向があった。
【0161】
ドーパミン機能へのNM-MRIシグナルの例示的な関係
【0162】
例示的なボクセルワイズ手法の解剖学的感度を検証したので、SNにおけるNM-MRIシグナルがin vivoでのドーパミン機能と相関しているかどうかを解析する。そのために、ポジトロン放出断層法(「PET」)イメージングを使用して、ベースラインとデキストロ-アンフェタミン(0.5mg/kg、p.o.)の投与後との間のD2/D3放射性トレーサー[11C]ラクロプライド結合電位の変化としてドーパミン放出能(ΔBPND)を測定する。この方法は、その小胞およびサイトゾルのプールを含む、ドーパミン軸索のシナプス前部位からの線条体シナプスへのドーパミンの放出を測定するものであり、したがって、これらのドーパミンプールの大きさにおける、軽質のような個体間の相違がMN蓄積の重要な決定因子になり得ることが関係し得る。神経変性病のない18名の個体の群におけるデータを収集し、これには、9名の健康な対照と9人の神経変性を有する非投薬患者が含まれる。パーキンソン病を有する患者は、この部分領域でドーパミン放出の相違を示す傾向があるので、背側線条体の一部である連合線条体でのドーパミン放出を、十分な変動性を確保するために焦点をあてた。同様に、背側線条体はSNからの投影を受信し(例えば、黒質線条体経路を介して)、腹側線条体は主に腹側被蓋野からの投影を受信(例えば、中脳辺縁系経路を介して)し、これは、そのNM濃度がより低く、サイズがより小さいため、NM-MRIスキャンで視覚化するのがより難しいことがある。各対象について、ΔBPNDが測定され、各ボクセルにおけるSNマスクのNM-MRI CNRと相関する、ボクセルワイズ解析を行った。これにより、NM-MRI CNRが連合線条体におけるドーパミン放出能と正の相関関係にある一組のSNボクセルが明らかになった(例えば、p<0.05で1341のSNボクセルのうち225、診断、年齢およびヘッドコイルを調整するスピアマン偏相関;p補正後=0.042、並べ替え検定;ピークボクセルMNI座標[x、y、z]:-1、-18、-16mm)。この効果は、ドーパミン放出に関連するボクセルがSNの前面および側面で優勢になる傾向があるようなトポグラフィー分布を示した。この解析は、比較的少数の対象が最も背側のSNで使用可能なデータを有するため、より小さなSNマスク(例えば、1341ボクセル)で行った。診断との相互作用は見出されなかった(例えば、p=0.31)。ボクセルワイズ結果は、関心領域(「ROI」)の結果によって反映され、SN全体にわたって平均NM-MRI CNRが線条体全体の平均ΔBPNDと相関していることを示す(例えば、p=0.64、p=0.013;不完全なSN対象範囲の場合、ボクセルワイズ解析と同じ共変量および追加の共変量との偏相関)。
【0163】
SNにおける神経活性へのNM-MRIシグナルの例示的な関係
【0164】
後者の結果は、黒質線条体SNニューロンからのドーパミン放出が高い個体ほど、NM-MRIにより測定すると、NM蓄積が高いことを示したので、NM蓄積は、SNニューロンにおける活性向上の局所特性のような傾向とも相関することができると判定した。これを試験するために、動脈スピン標識機能的磁気共鳴画像法(「ASL-fMRI」)を使用して、安静時活性における特質のような個体間差異を捕捉するニューロンの活性の十分に確立された(例えば、間接的な)機能的尺度である、局所脳血流(「CBF」)を測定した。神経変性疾患を有さない個体(例えば、12名の健常な個体、19名の統合失調症患者)は、より高いSN NM-MRI CNRと相関するSNにおいて、より高いCBFが見出された。これは、ドーパミン放出能に関連するSNボクセル(例えば、「ドーパミンボクセル」、r=0.40、p=0.030;年齢および診断を制御する偏相関)およびSN全体(例えば、r=0.48、p=0.008;年齢、診断および不完全なSN対象範囲を制御する偏相関)における、ROI解析の平均値に該当した。やはり、診断との相互作用は見出されなかった(例えば、すべてp>0.7)。
【0165】
NM-MRIのパーキンソン病との関係
【0166】
SNにおけるNM濃度の尺度としてのNM-MRIは、パーキンソン病を有する人、またはパーキンソン病を示す症状に罹患している人における、ニューロン喪失のマーカーとして使用することができる。
【0167】
NM-MRIが、パーキンソン病に関連するニューロメラニン濃度の変化を捕捉することができることを示すことは、研究ツールとしてのNM-MRIと、パーキンソン病の候補バイオマーカーとしてのニューロメラニン濃度との潜在的な価値を裏付ける。この現象は、パーキンソン病の病歴のある患者で特定されている。一部の実施形態では、この現象は、その経験の重症度に比例する。ある特定の実施形態では、パーキンソン病は、1つまたは複数の症状によって特徴付けられる。例示的な手順は、黒質線条体ドーパミン過剰からなるこのパーキンソン病関連の表現型が、NM-MRIにより捕捉され得る、SNにおけるNM蓄積の減少をもたらすことを示唆する。具体的には、パーキンソン病の重症度に比例してNM-MRI CNRが低下し得る、ほとんど腹側のSN部分領域が見出された。例示的な知見は、ニューロメラニン濃度に関連する状態の臨床的に有用なバイオマーカーとしてのNM-MRIの有望性をさらに強調するものである。これは、特に縦断的イメージングに実用的(例えば、安価で非侵襲的)であり、標準的なイメージング法と比較して高い解剖学的解像度を実現するという明らかな利点を有しており、これによって、異なる病態生理学的役割を有する機能的に異なるSN層の解像が容易になる。生涯にわたってSNにNMがゆっくりと蓄積し、この手順の再現性が高いことを考慮すると、NM-MRIがNMを長期的に指標化すると推定される能力は、NM-MRIが急性状態(例えば、最近の睡眠喪失または物質消費)に鈍感な安定したマーカーになり得ることを示唆する。これは、候補バイオマーカーにとって特に魅力的な特性であり、他のマーカーを補完することができるものとなり得る。パーキンソン病に関連するNM変化の次元マーカーは、パーキンソン病の縦断的なバイオマーカーとして非常に役立つ。このようなバイオマーカーは、CHRの個体よりも全体として投薬の恩恵を受けることができるリスクのある個体のサブセットを選択するさらなる一助となり得、したがって、非生物学的測定のみに基づく現在のリスク予測手順を強化する。
【0168】
NM-MRIの潜在的な用途にはいくつかの制限があり得る。他のニューロイメージング測定と同様に、例示的なデータは、NM-MRIシグナルは高感度となり得るが、NM濃度に完全に特異的ではないことを示す。プロトン密度を含む他の組織特性は、シグナルに影響を及ぼし得る。したがって、とりわけ、NM濃度が低い領域では、NM-MRIシグナルのすべての変化をNM濃度の変化として解釈する際に注意を払うのは当然となり得る。
【0169】
パーキンソン病の例示的な縦断的モニタリング
【0170】
MR画像は、約毎年、約2年ごと、約3年ごと、約4年ごと、約5年ごとに取得し、ニューロメラニンレベル、シグナルおよび/または濃度を測定する。ニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度は、以前のスキャンと比較する。ニューロメラニンのレベル、シグナルおよび/または濃度を比較した後、時間に関する低下が、状態の進行を示す。一部の実施形態では、この低下は、パーキンソン病の進行または重症度に比例する。一部の実施形態では、医薬は、第1のMRIスキャンの後、およびこの医薬の投与後の第2の時間点でのMRIスキャン後に投与する。2つのスキャンを比較すると、処置レジメンの成功を示すことができる。
【0171】
例示的なNM-MRIの取得
MR画像は、32チャネルのフェーズドアレイNovaヘッドコイルを使用して、GE Healthcare 3T MR750スキャナーですべての検討参加者に対して取得した。ロジスティック上の理由から、代わりに8チャネルのin vivoでのヘッドコイルを使用して、数枚のスキャン(例えば、すべてのスキャンの17%、合計139枚のうち24枚)を取得した。パイロット中に、様々なNM-MRIシーケンスを比較して、以下のパラメーター:反復時間(TR)=260ms、エコー時間(TE)=2.68ms、フリップ角=40°、面内解像度=0.39×0.39mm2、視野を含む部分的な脳の対象範囲(FoV)=162×200、マトリックス=416×512、スライス数=10、スライス厚=3mm、スライスギャップ=0mm、磁化移動周波数オフセット=1200Hz、励起回数[NEX]=8、取得時間=8.04分を有する、磁化移動コントラスト(例えば、2D GRE-MT)を使用した2Dグラジエント応答エコーシーケンスを使用して、SNで最適なCNRを実現した。スライス処方プロトコールは、前交連-後交連(「ACPC」)線に沿って画像スタックを方向付け、脳の中央部における矢状面で見た、上部スライスを第三脳室の床から3mm下に配置することからなった。このプロトコールは、臨床集団によって許容されやすい短いスキャンを使用する高い面内空間的解像度によって、中脳のSN含有部分(例えば、脳幹を取り巻く皮質および皮質下の構造)を対象範囲にした。2D GRE-MT(例えば、NM-MRI)データの前処理のために、全脳の高解像度構造MRIスキャンも取得した:T1強調3D BRAVOシーケンス(例えば、反転時間=450ms、TR約7.85ms、TE約3.10ms、フリップ角度=12°、FoV=240×240、マトリックス=300×300、スライス数=220、等方性ボクセルサイズ=0.8mm3)およびT2強調CUBEシーケンス(例えば、TR=2.50ms、TE約ms、エコートレイン長=120、FoV=256×256、スライス数=1、等方性ボクセルサイズ=8mm3)。NM-MRI画像の品質は、取得直後にアーチファクトに関して目視検査し、必要に応じて、時間の許す限りスキャンを繰り返した。10名の参加者は、中脳に影響を与えるはっきりと見える、汚れまたはバンディングのアーチファクト(例えば、参加者の動き、n=4)、または誤ったイメージングスタックの配置(例えば、n=6)のために除外した。
【0172】
例示的なNM-MRIの再処理
【0173】
NM-MRIスキャンは、標準化されたMNI空間でのボクセルワイズ解析を容易にするために、SPM12を使用して前処理した。例えば、NM-MRIスキャンおよびT2強調スキャンを、T1強調スキャンに同時登録した。組織のセグメント化は、T1およびT2強調スキャンを個別のチャネルとして使用して実施した。すべての検討参加者からのスキャンは、個体の初期試料から生成した灰白色および白質のテンプレートを使用したDARTELルーチンを使用してMNI空間に正規化した。平滑化されていない正規化済みNM-MRIスキャンの再度サンプリングしたボクセルサイズは、1mmで等方性とした。画像はすべて、各前処理手順に従って目視検査した。次に、カスタムMatlab(登録商標)スクリプトを使用して、強度の正規化および空間平滑化を実施した。各対象およびボクセルvのCNRは、CNRV=(IV-モード(IRR))/モード(IRR)として、NM-MRIシグナル強度Iの相対変化として、最小限のNM含有物である大脳脚を有することが公知の、白質路の参照領域RRから計算した。MNI空間における参照領域のテンプレートマスクは、テンプレートNM-MRI画像を手作業でトレースすることによって作成した(例えば、最初のサンプル個体からの正規化NM-MRIスキャンの平均)。モード(IRR)は、マスク内のすべてのボクセルのヒストグラムのカーネル平滑化関数あてはめから各参加者に対して計算した。平均値またはメジアンではなくモードが利用され、これは、外れ値のボクセルに対してよりロバストであることが判明し(例えば、エッジアーチファクトによる)、これにより、参照領域マスクをさらに変更する必要がなくなったからである。次に、画像を1mmの半値全幅のガウスカーネルで空間的に平滑化した。
【0174】
さらに、SNボクセルの過大包括的マスクは、テンプレートNM-MRI画像を手作業でトレースすることによって作成した。続いて、極値を有するエッジボクセルを削除することによって、マスクを減らした:所与の参加者に関する極端な相対値を示すボクセル(例えば、2名を超える対象におけるSNボクセル全体のCNR分布の1パーセンタイルまたは99パーセンタイルを超える)または参加者全体に一貫して低いシグナルを有するボクセル(例えば、90%を超える対象では、5%未満のCNR)。これらの手順により、手作業でトレースされたマスク内のボクセルの9%が削除され、1,807個の再度サンプリングされたボクセルを含有する最終的なテンプレートSNマスクが残った。
【0175】
例示的なNM-MRI解析
【0176】
すべての解析は、カスタムスクリプトを使用してMatlab(登録商標)(Mathworks、Natick、MA)で実施した。一般に、ロバスト線形回帰解析は、SNマスク内のすべてのボクセルvについて、対象全体に以下として行った:
【数1】
対象となる測定値は、解析に応じて、イメージング(例えば、ドーパミン放出能)または臨床的(例えば、パーキンソン病の重症度)データからなった。診断、ヘッドコイルおよび年齢を含む、迷惑共変量は、異なる解析に応じて様々となる。すべての解析には、年齢共変量が含まれたが、ヘッドコイルおよび診断共変量は、これらの変数が対象間で異なる解析だけに含まれた。ロバスト線形回帰を使用して、質量単変量のボクセルワイズ解析の状況で回帰診断の必要性を最小限にした。p<0.05でのLilliefors検定に従い変数が正規分布していない場合(例えば、ドーパミン放出能の場合)、線形回帰の代わりに部分的(例えば、ノンパラメトリック)スピアマン相関を使用した。ボクセルワイズ解析を、欠測値(例えば、解剖学的構造の個体間変動に起因する少数の対象の背側SNの不完全な対象範囲のため)または極値(例えば、すべてのSNボクセルおよび対象にわたるCNR分布の1パーセンタイルまたは99パーセンタイルよりも極端な値[それぞれ-9%未満または40%を超えるCNR値])を用いる対象データ点の切り捨て後のテンプレートSNマスク内で行った。すべてのボクセルワイズ解析の場合、効果の空間範囲は、対象となる測定値とCNR(例えば、p<0.05、片側[β
1
+])の回帰係数β
1のt検定に関するボクセル-レベルの高さ閾値)との間の有意な関係を示す、ボクセル数k(例えば、隣接または非隣接)として定義した。
【0177】
仮説検定は、対象となる測定値がCNRに関して無作為にシャッフルされる並べ替え検定に基づいた。この検定は、効果の空間範囲kが偶然によって予想されるよりも大きいかどうかを判定することによる多重比較を補正した(例えば、p
補正後<0.05、10,000順列、クラスターレベルのファミリーワイズエラー補正p値と同等であるが、この場合、SNのサイズが小さく、特定の投影部位によって定義されたSN層が必ずしも解剖学的にクラスター化されたニューロンを含まないことを考慮すると、隣接ボクセルのクラスターを形成するためにボクセルを必要としなかった)。各反復で、対象となる変数(例えば、ドーパミン放出能)の値の順序を対象間で無作為に並べ替えた(および、例えば、空間的依存性の主原因となる、並べ替え検定の所与の反復に対するSNマスク内のすべてのボクセルの解析のために維持した)。これにより、10,000個の並べ替えられたデータセットのそれぞれに対する空間範囲の測定値がもたらされ、真のデータにおける効果の空間範囲kを偶然に観測する確率(p
補正後)を計算するためのヌル分布を形成する。合接の効果に関連する仮説検定の場合、各効果の真の重要なボクセルの位置がSNマスク内で無作為にシャッフルされた後に重要なボクセルの重なりを計数するヌル分布に基づいて、パーミュテーション解析により、両方の効果
【数2】
の重なりの範囲kが偶然に予想されるよりも大きいかどうかを判定した(例えば、p<0.05、10,000順列)。
【0178】
例示的なトポグラフィー解析。SNボクセル全体の多重線形回帰解析を使用して、x(例えば、正中線からの絶対距離)、yおよびz方向のMNIボクセル座標の関数として、効果の強度(または、例えば有意な合接の効果の存在)を予測した。
【0179】
例示的なROI解析。SNマスク全体のボクセル全体の平均NM-MRIシグナルを検査する事後ROI解析には、これらの対象における、それぞれのボクセルワイズ解析で使用されたものと同じ共変量、および偏った平均CNR値におけるシグナル強度の背側-腹側勾配として、背側SNの不完全な対象範囲で対象をインデックス分類した追加のダミー共変量が含まれた。この「不完全なSN対象範囲」共変量は、これらの限定された一連のボクセルは、背側SNからの寄与が比較的小さいため、「ドーパミン」ボクセルまたは「パーキンソン病-重なり」ボクセルから抽出されたNM-MRIシグナルに関する解析には使用しなかった。
【0180】
例示的な死後実験
【0181】
ヒト中脳組織の死後標本を、Columbia UniversityのThe New York Brain Bankから入手した。パーキンソン病に罹患した個体からそれぞれ、7つの標本を得た。標本は、色素沈着したSNを含む吻側片側中脳から新しく凍結した組織の厚さ約3mmのスライスとした。これらの標本を、in vivoで使用されるものと同様のNM-MRIプロトコールを使用してスキャンし、その後、NM組織中濃度を解析するために、これらの標本を切り取った。標本を含む皿には、切除物をMR画像と一致して維持するために使用するグリッドインサートが含まれた。
【0182】
死後組織におけるNM濃度の例示的な神経化学測定。チタン器具を用いて各グリッド区域から誘導された試料をホモジナイズした。次に、解剖学的境界に沿って適切に切開されたSNの区域と比較して、繊維含有量がより多く、かつNMを含むニューロンがほとんどない中脳領域からの妨害性の組織構成成分の除去を改善するための小さな変更を加えて、次いで、各グリッド区域のNM濃度を前述の例示的な分光測光法に従って測定した。追加の試験により、Fomblin(登録商標)による洗浄の例示的な方法が有効であり、この物質もメチレンブルー色素のどちらも、NMの分光光度測定に影響を及ぼさない可能性が高いことを確認した。
【0183】
死後組織におけるNMシグナルの例示的なMRI測定。NM-MRIシグナルは、カスタムMatlab(登録商標)スクリプトを使用して対応するグリッド区域で測定した。NM-MRI画像の処理には、エッジアーチファクトおよびシグナルドロップアウトを示すボクセルの自動除去、2D画像を作成するためのスライスの平均化、およびグリッドインサートに一致する寸法のグリッドとの位置合わせが含まれた。グリッドの位置合わせは、グリッドインサートが置かれている最上位のスライスに存在するウェルマーカーとグリッド形状のエッジアーチファクトとに基づいて手作業で調節した。残りのボクセルのシグナルは、各グリッド区域内で平均化した。標本全体のシグナル強度を正規化するために、各グリッド区域のCNRをin vivoでのボクセルワイズと同様に計算した。各標本の参照領域は、in vivoスキャンに使用される大脳脚参照領域の位置に最良に一致する3つのグリッド区域によって画定した。
【0184】
死後データの例示的な統計解析。すべてのグリッド区域gおよび標本sにわたるデータを含む一般化線形混合効果(「GLME」)モデルを使用して、同じグリッド区域における平均NM-MRI CNRに基づいて各グリッド区域のNM組織中濃度を予測した。GLME解析は、等方性共分散行列を使用し、Matlab(登録商標)関数fitglmeによって実施した通り、最尤推定によりあてはめた。p<0.05での尤度比検定は、無作為勾配のない縮小モデルが好都合であった。したがって、すべてのモデルには、以下:
【数3】
の通り、無作為な切片が含まれたが、無作為な傾きは含まれなかった。基本モデルには、固定効果予測因子として、所与のグリッド区域
【数4】
における平均NM-MRI CNRしか含めなかった。PAGの近傍の区域は、シグナル強度は比較的高いが、NM組織中濃度は低くなる傾向があった。したがって、拡張モデルは、グリッド区域に存在するPAGの二元変数(例えば、PAG+、PAG-)、および追加の固定効果共変量としてNM-MR1 CNRxPAGの交互作用項を含んだ(例えば、相互作用は、p=0.040で有意であり、NM-MRIがPAG-領域と比較してPAG+におけるNM濃度にそれほど強力に関連していないことが確認された)。PAG+グリッド区域(例えば、標本ごとに1~5)は、標本の後部-内部の側面に位置し、PAGの解剖学的位置と一致する区域として定義した。最後に、対照解析は、目視検査でSNを含むとみなされるグリッド区域でCNRが10%を超えるボクセルの割合として定義される、各グリッド区域のSNを含むボクセルの割合を示す固定効果共変量をさらに含んだ。この後者の対照解析は、NM-MRI CNRの局所変動が、所与の領域におけるSNニューロンの存在または非存在の単なる関数として両方の測定値の変化を考慮した後でさえも、NM組織中濃度の局所変動を予測するかどうかを試験することを目的とした(例えば、部分体積効果と組み合わせる)。
【0185】
例示的なPETイメージング検討
【0186】
対象(例えば、健常な対照、パーキンソン病の患者)は、放射性トレーサー[11C]ラクロプライドとアンフェタミンチャレンジとを使用してPETスキャンを受け、ドーパミン放出能を定量化した。ベースラインPETスキャンを1日間、実施し、翌日、デキストロアンフェタミン(例えば、0.5mg/kg、p.o.)を投与して5~7時間後にアンフェタミン後PETスキャンを取得した。各PETスキャンに関すると、リストモードデータを、Biograph mCT PET-CTスキャナー(Siemens/CTI、Knoxville TN)で、[11C]ラクロプライドの単回ボーラス注射後60分にわたって取得し、増大期間の一連のフレームにビニングし、供給業者提供のソフトウェアを使用して、フィルターをかけた逆投影によって再構築した。PETデータの移動補正を行い、SPM2を使用して個体のT1強調MRIスキャンに登録した。ROIは、各対象のT1強調MRIスキャン上に描き、同時登録したPETデータに転送した。時間-活性曲線は、各フレームにおける各ROIの平均活性として作成した。例示的な先験的ROIは、尾状核全体、およびSNニューロンから黒質線条体軸索投影を受け取り、パーキンソン病に関連する状態に一貫して関与される背側線条体の一部である交連前被殻として定義される連合線条体であった。小脳を参照組織として使用する簡略化した参照組織モデル(「SRTM」)を使用してデータを解析し、非置換コンパートメント(例えば、BPND)と比較した結合能を求めた。一次転帰尺度は、ドーパミン放出能の尺度であるアンフェタミン誘発性ドーパミン放出を反映する、BPNDの相対減少(ΔBPND)とした。アンフェタミンは、サイトゾルと小胞との両方の貯蔵に由来するドーパミンのシナプス放出を誘発する。これにより、D2受容体での放射性トレーサーとの過度の競合が発生し、同時に、アゴニスト誘発性D2受容体の内在化が起こり、それらのどちらも放射性トレーサーの変位およびBPNDの低下を引き起こす。したがって、ΔBPNDは両方の効果を組合せ、ドーパミン貯蔵の大きさを反映する。これらの貯蔵はドーパミン合成に依存しているので、ドーパミン放出能のPET測定値はドーパミン機能に関連し得る。NMの蓄積がサイトゾルドーパミンによって(例えば、またはサイトゾルに一旦輸送され得ると、小胞のドーパミンによる)駆動され得ることを考慮すると、それはNMにも関連し得る。
【0187】
例示的な動脈スピン標識(「ASL」)灌流イメージング検討
【0188】
対象(例えば、健常な対照、パーキンソン病の患者)は、安静時にASL機能的MRIスキャンを受け、局所CBFを定量化した。これらの対象はすべて、上記の研究にも参加し、以下に記載する。疑似連続ASL(例えば、3D-pCASL)灌流イメージングは、8つの面内スパイラルインターリーブ(例えば、TR=4463ms、TE=10.2ms、標識期間=1500ms、標識後遅延=2500ms、フロークラッシュ勾配なし、FoV=240×240、NEX=3、スライス厚さ=4mm)を備えた3Dバックグラウンド抑制高速スピンエコースタックオブスパイラル読み出しモジュール、およびエコートレイン長23を使用して行い、23の連続するアキシャルスライスを得た。小脳の下端より20mm下に厚さ10mmの標識面を配置した。合計スキャン時間は、259sとした。Functoolソフトウェア(バージョン9.4、GE Medical Systems)を使用して、ASL灌流データを解析してCBF画像を作成した。CBFは以前の作業と同様に計算した。
【0189】
前処理のために、CBF画像をASLローカライザー画像に同時登録し、次に、T1画像に同時登録し、同時登録パラメーターをCBF画像に適用した。次に、NM-MRIスキャンについて上記で説明したのと同じ手順を使用して、CBF画像をMNI空間に正規化した。平均CBFは、SNマスク全体内、および結合層のドーパミン放出能に有意に関連するSNボクセルのマスク内で計算した。ROIベースの偏相関関係解析は、年齢および診断を制御する、同じマスクで平均CBFおよび平均NM-MRI CNRの間の関係を試験した。
【0190】
さらなる死後実験
【0191】
ヒト中脳組織の死後標本を、Columbia UniversityのThe New York Brain Bankから入手した。死亡時にアルツハイマー病または他の非PD認知症に罹患した個体からそれぞれ7つの標本を得た(例えば、44~90歳;さらなる臨床情報および人口統計情報については、以下の表1を参照されたい)。アルファ-シヌクレイン、ベータ-アミロイドまたはタウなどの異常なタンパク質の蓄積に関する神経病理学的検査に基づいて、パーキンソン病、パーキンソン病の症状、またはSNに影響を与える任意の他の運動障害または神経変性病に罹患する人はいなかった。1つの例は、明確に特定可能なNMにもかかわらず、SNのニューロン密度の著しい低下を示した。この1つの例を除いた解析では、NM-MRI CNRとNM濃度との間に観察された関係は変化しなかった。したがって、提示されたデータには、統計的検出力を増大るためにこの例を含めた。標本は、色素沈着したSNを含む右半球の吻側片側中脳から新しく凍結した組織の厚さ約3mmのスライスとした。それらを-80℃で保存した。これらの標本を、NM-MRIプロトコールを使用してスキャンし、その後、NM組織中濃度の解析のために切り取った。MRIスキャンセッションでは、レーザー温度計により確認した通り、標本を徐々に20℃まで解凍した。標本を、MRI適合性ナイロンポリマー(NW Rapid Mfg.、McMinnville、OR)から3D印刷されたカスタムメイドの皿に置き、一致するグリッドインサートの蓋を標本の上に置き、標本を所定の位置に保持するよう取り付けた。皿に固定した状態で、標本をMRI不可視潤滑剤(Fomblin(登録商標)パーフルオロポリエーテルY25;Solvay、Thorofare、NJ)に完全に浸し、デシケーターに30分間入れて、組織から空気を除去した。皿の縁の4つの主要な点のウェルに、MRI画像でその位置と方向を記すために水を満たした。次に、皿を32チャネルのフェーズドアレイNovaヘッドコイル内のカスタムスタンドに置き、上記の2D GRE-MT NM-MRIシーケンスを使用してin vivoイメージングをスキャンした。死後スキャンプロトコールの唯一の変更は、解像度の増加(例えば、面内解像度=0.3125×0.3125mm2、スライスの厚さ-0.60mm)とFoVの低下(例えば、160×80)であった。
【0192】
スキャンセッション後、試料を所定の位置で再凍結し、スタンプとしてグリッドインサートを使用して組織にメチレンブルー色素(例えば、0.05%水溶液[5mg/10ml];Sigma-Aldrich、St. Louis、MO)を適用することによりグリッド線で印を付けた。皿の壁に組み込まれたガイドを、標本に対するグリッドの向きが常に固定されていることを確実にした。スキャン後4日以内に、組織スライスを滴下し、次いで、超清浄ろ紙上で切片の表面を穏やかに転がすことによって、Fomblin(登録商標)を広範囲に除去した後、部分的に解凍した標本をグリッド線に沿って切り取った。組織切片の切除および操作は、鉄による汚染を避けるためにセラミックブレードおよびチタン製とプラスチック製の鉗子を用いて行った。各グリッド区域(例えば、スライスの厚さに応じて3.5mm×3.5mm×約3mm)は、隣接する部分グリッド区域と一緒に秤量し、Eppendorf管に個別に保存して、凍結した。したがって、標本を13~20のグリッド区域に分割した。切除した各グリッド区域のグリッド列および行番号をコード化した。
【0193】
例示的なNM-MRI解析:観察がほとんどないボクセルの排除
【0194】
タイプIIエラーのリスクを低減するため、欠損値または極値を有する対象データ点の切り捨て後、特定の解析の回帰係数β1のt検定の自由度が10未満の場合、ボクセルをこの解析から除外する(例えば、自由度は、所与のボクセルで使用可能なデータを含むサンプルサイズと、モデル予測因子の数とを考慮することに留意されたい)。このボクセルの除外は、PETデータセットのサンプルサイズがより小さいことを考慮すると、NM-MRIシグナルをドーパミン放出能に関連付ける解析にのみ適用され、したがって、この解析は、(例えば、1,807個の再度サンプリングされたボクセルの全マスクに対するものよりもむしろ)1,341個の再度サンプリングされたSNボクセルに対して行った。8~11自由度の間のいずれかで除外閾値を選択すると、非常に類似した結果が得られた。この解析のすべてのボクセルに対する自由度の分布に関しては、挿入図を参照されたい。
【0195】
例示的なNM-MRI解析:偏りのない効果量の推定のための非円形ボクセル選択
【0196】
ボクセルワイズ解析の場合、効果量の偏りのない測定値が、リーブワンアウト手順を使用することによって生成した。所与の対象について、対象変数がNM-MRIシグナルに関連するボクセルが、この(例えば、提供された)対象を除外するすべての対象を含む解析で最初に特定した。次に、提供された対象の平均シグナルが、この一連のボクセルから計算された。この手順をすべての対象に対して繰り返し、そうして、各対象がそれらを除外した解析から得られた抽出された平均NM-MRIシグナル値を持った。こうして、この偏りのないボクセルの選択およびデータ抽出により、統計的循環が回避された。次に、これらの抽出されたNM-MRIシグナル値を、提供された対象全体の関心のある変数に関連付け、ボクセルワイズ解析と同じ共変量、および完全な背側SN対象範囲を欠如した対象をインデックス付け(例えば、NM-MRIシグナル強度の背側-腹部勾配のため)した追加の共変量を含めることによって、効果量の偏りのない推定値(例えば、コーエンのdまたは相関係数)を決定した。
【0197】
死後組織におけるNM濃度の例示的な神経化学測定:死後組織に適用された化学剤の試験
【0198】
Fomblin(登録商標)がNM測定に影響を与えるかどうかを試験するために、類似レベルの色素沈着を伴うSN緻密部の小さな立方体を1名の健常な対象から切除した。一部の立方体(例えば、n=3)をFomblin(登録商標)に浸し、次に、Fomblin(登録商標)を洗浄した(例えば、水気を切り、ろ紙に巻いた)。残りの立方体(例えば、n=5)は、対照試料としてFomblin(登録商標)に浸さなかった。NM濃度は、これら2組の立方体で同等であった(例えば、平均+標準偏:それぞれ、0.82+0.08対0.86±0.09μg NM/mg湿潤組織;t6=-0.62、p=0.56)。水溶性メチレンブルー色素を、NM濃度を測定するための例示的な標準プロトコールでの洗浄手順の間に効率的に除去した。さらに、この化合物の吸収波長(例えば、680nm付近にピークを有する)は、NM濃度の決定に使用される波長(例えば、350nm)から遠く離れ得ることが確認された。
【0199】
死後組織におけるNMシグナルの例示的なMRI測定:エッジアーチファクトおよびシグナルドロップアウトを示すボクセルの自動除去
【0200】
NM-MRI画像の処理には、標本の外側のすべてのボクセル、またはシグナルのドロップアウトを示す標本内のボクセルを含め、低シグナルボクセルの自動除去が含まれた。低シグナルボクセルを除外するための閾値は、カーネル平滑化関数を使用してあてはめられた画像内のすべてのボクセルのヒストグラムに基づいて、各標本に対して決定した。閾値は、標本の外側の低シグナルボクセルに対応する一致ヒストグラムの左端のピークと、標本内のより高シグナルボクセルに対応する右端のピークの間にある最小値に対応するシグナルとして定義した(例えば、バイモーダル分布と一致する)。
【0201】
エッジアーチファクトを排除するため、最初の手順は、標本と標本の外側の周囲の空間との間、および標本とシグナルドロップアウトの領域との間の境界を定義するであった。これらの境界は3Dと2Dとで定義した。そのために、低シグナルボクセルのすぐ隣にある標本の境界ボクセル(上記で定義)を、Matlab(登録商標)のbwperim関数を使用して標識した。これらの境界ボクセルは、全量に対して定義し、スライス全体の平均化によって作成した2D平坦化画像に対しても定義した。これらの境界ボクセルは標本から除去した(例えば、最初に3D境界ボクセルを3D画像から除去し、次に2ボクセルによって拡張された2D境界ボクセルを得られた平坦化画像から削除した)。最後に、同じ2Dグリッド区域内の他のボクセルと比較した極限シグナル値(例えば、定数のみの線形回帰モデルでのクックの距離>4/n)を除去した。エッジアーチファクト、シグナルドロップアウト、およびその他の外れ値ボクセルが除去された、得られた2D画像を最終的な解析手順に持ち越した。
【0202】
例示的なPETイメージング検討:アンフェタミン後のPETスキャンのタイミング
【0203】
各対象は、以前に公開された個別の実験の目的で、2回のアンフェタミン後PETスキャンを受けた。この以前の検討は、D2放射性トレーサー[11C]ラクロプライドの長期変位を介して測定された、アゴニストチャレンジ後の受容体内在化の経時的経過を評価することを目的とした。PETスキャンは4つのセッションで取得した:ベースライン、アンフェタミンの3時間後、アンフェタミンの5~7時間後およびアンフェタミンの10時間後。しかし、アンフェタミン後のすべての時点が、必ずしもすべての対象に利用可能であったわけではなかった。しかし、変位は非常に安定しており、3時間と5~7時間の時間点の間で違いはなかった(ΔBPNDは、実際に、これら2つの時点の間の対象間で強く相関した;r=0.75)。これらのアンフェタミン後スキャンのただ1つ:アンフェタミンの5~7時間後に投与されたものだけを使用した。5~7時間の時点を選択し、これが最も利用可能なデータを有する時点であったからであった(例えば、3時間の時間点からのデータによって置き換えられた3/18の参加者のみがない)。アンフェタミン後5~7時間時の変位(アンフェタミン後3時間時の変位のように)は、アンフェタミンによるドーパミン放出量の多さを反映しており、これは、ドーパミンと受容体への結合に関する放射性トレーサーとの間の競合と、アゴニスト誘発性受容体内在化との組合せとなり得、それらのどちらも、アゴニストの利用可能性の大きさに依存する。したがって、利用可能なデータを有する対象の数がより多いことにより、および3時間と5~7時間の時間点との間の変位の観察された安定性を考慮すると、5~7時間の時間点がこの検討に対する最適な時間点となり得る。10時間の時間点において、これは、受容体の再利用に続く受容体の内在化が減少する可能性のため、BPND)はより高くなる傾向があった。3時間でのPETデータを用いて11名の対象を検査すると、この3時間の時間点でのNM-MRI CNRとΔBPNDとの間の相関関係の効果量は、5~7時間の時間点での効果量と同様であることが明らかになった。
【0204】
ニューロメラニン(NM)MRIを使用したパーキンソン病に関連する例示的な検討
【0205】
背景
【0206】
パーキンソン病(PD)は、高齢者の間でアルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性障害である、進行性の運動神経変性疾患である。安静時振戦、動作緩慢、硬直および不安定な姿勢という典型的な症状を伴うPDは、主に運動障害として定義され、黒質線条体ドーパミン作動性ニューロンの変性および生存ニューロンにおけるレビー小体(誤って折りたたまれたα-シヌクレイン)の存在によって病理学的に特徴づけられる。非運動兆候には、うつ病、自律神経機能不全、白内障、軽度認知障害やパーキンソン型認知症などの認知障害が含まれ得る。
【0207】
PDを有する患者のSNでは、NM陽性SNドーパミン細胞の変性、および年齢一致対照と比較したPD患者の死後SN組織におけるNM濃度の減少と一致する、ニューロメラニン(NM)MRI シグナルが確実に低下する。NM-MRIが2002年に最初に利用されて以来、黒質におけるNM変化の少なくとも35の臨床試験が存在しており、感度および特異度が高い、パーキンソン病における変性のバイオマーカーであることが示されている。364のPD症例および231名の健常な対照を含む16の臨床試験の最近のメタ解析により、SNの変化を検出するために、NM-MRIが97.7%の感度および94.4%の特異度を有することが見出された。
【0208】
本発明者らの技法は、NM-MRIの診断精度を改善すると考えている。対照データベースとの比較なしのNM-MRIは、これらの患者において、および正常対照に対して、SNのNMレベルが変動するために、PDの非常に初期のステージでのバイオマーカーとしての診断精度が低くなる恐れがある。NM-MRIの精度は、経時的なSNにおけるNMの減少を示す、経時的な縦断的評価によって大幅に向上すると思われる。この転帰は、非PD患者では起こらない。
【0209】
目的
SNにおけるNMレベルは、NM-MRIを使用して、可能性のあるPDおよび初期PD対象において、経時的に低下することを実証すること
【0210】
診断バイオマーカーおよびPDの進行を予測するものとして、NM-MRIの感度/特異度の精度を改善すること。
【0211】
論理的根拠
【0212】
理論的根拠は、NM-MRIがSNにおけるドーパミン機能の代替尺度として使用することができること、およびSNにおけるNMのより低い値がPD患者において観察されること、およびそれらの値が経時的に低下し続けるということである。
【0213】
検討設計
【0214】
100名の対照対象を含む約200名の初期PD対象におけるSNおよびLC NMレベルを経時的に評価するために、多施設NM-MRI検討を行った。NM-MRIの評価は、最大で2年間、6か月ごとに行う。対象はまた、6か月ごとに評価され、これには、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)および併用薬が含まれる。
【0215】
合計サンプルサイズ:約300名の対象
【0216】
検討期間:2年間
【0217】
登録期間:1.5年間
【0218】
施設数:約40施設
【0219】
一次エンドポイント:
【0220】
ベースライン時およびエンドポイント時(合計2年間)におけるパーキンソン病の可能性のある対象および対照対象との間の絶対NMレベルの変化。
【0221】
ベースライン時およびエンドポイント時のパーキンソン病の可能性のある対象と対照対象との間のNM低下率(合計2年間)
【0222】
NM-MRIおよびパーキンソン病に関連する実施形態
【0223】
すべての患者が、PDにおいて同じ程度までニューロメラニンレベルが低下するわけではない。実際に、Cassidy et al. 2019に示されている通り、PDを有する患者の一部は、健常な対照よりも高いニューロメラニンを有しており、反対に、一部の健常な患者は、PDを有する患者よりも低いニューロメラニンレベルを有する。本明細書において議論するソフトウェアは、患者のニューロメラニンレベルを大集団データベースのレベルと比較することによって、既知のベースラインを有している患者なしに、かつ症状の非存在下で、パーキンソン病の診断を支援することが可能な医療用デバイスである。患者のニューロメラニンレベルが、カットオフであると決定されたレベルよりも低い場合(約30~50%を超えて少ない)には、PDの診断が支援される。
【0224】
第2の実施形態では、患者は、5年ごとに連続的なニューロメラニンスキャンを受ける。患者のニューロメラニン減少率が1年あたりのニューロメラニン損失のある特定の百分率(%)を超える場合(約10~15%より高い)、PDの診断が支援される。
【0225】
第3の方法では、連続スキャンに対するニューロメラニンの総量が、患者のベースラインニューロメラニンの約30%未満に減少した場合には、患者はパーキンソン病を有すると判定される。
【0226】
(実施例2A)
パーキンソン病の診断および縦断的評価
NM-MRIのニューロメラニン-MRI縦断的評価が初期パーキンソン病の診断を支援する
一次目的
【0227】
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析の縦断的評価を使用して、パーキンソン病(PD)を診断するために必要になると思われる、NM濃度のベースラインからの絶対変化および変化率を決定すること
【0228】
対照対象と比較して、初期パーキンソン病(ステージ1または2)またはLRRK2ハプロタイプを有する対象において、テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析を使用して、ベースラインからエンドポイントまでのNM濃度の低下を実証すること
【0229】
PDの診断を可能にする対照群からのニューロメラニンレベル(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)の差異(絶対値および変化率)を決定すること
【0230】
黒質緻密部(SNc)における総NM濃度、SNc部分領域におけるNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積は、対照群の正常範囲に比べて、PDを有する対象ではより小さいことを実証すること
【0231】
二次目的:
【0232】
NM-MRI評価(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)とMDS-統一パーキンソン病評価尺度(MDS-UPDRS)スコアとの間の相関関係を実証すること
【0233】
NM-MRI評価(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)と5年間にわたるDaTscanイメージングの間の相関関係を実証すること
【0234】
NM-MRI評価(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)とホーエン・ヤール重症度分類の間の相関関係を実証すること
【0235】
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析の適用が、MDS-UPDRSに対するそれらの特定の症状と相関する、各患者に固有の特定のボクセル(PDボクセルと呼ばれる)を見出すことを実証すること
【0236】
パーキンソン病のボクセルとMDS-UPDRSによって測定されるパーキンソン病の症状の相関関係を実証すること
【0237】
エンドポイント
【0238】
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析を使用するNM-MRIイメージング
【0239】
対照対象と比較した、初期PD(ステージ1または2)またはLRRK2ハプロタイプを有する対象における、テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析に対する、ベースラインからエンドポイントまでの変化率。
【0240】
黒質緻密部(SNc)における総NM濃度、SNcにおけるNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積
【0241】
対照対象と比較した、初期PD(ステージ1または2)またはLRRK2ハプロタイプを有する対象において、テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析に対する、ベースラインからエンドポイントまでの変化。
【0242】
黒質緻密部(SNc)における総NM濃度、SNcにおけるNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積。
【0243】
対照群からのニューロメラニンレベル(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)の差異(絶対値および変化率)(ニューロメラニンレベルは、PDの診断に関係するので)。
【0244】
対照群と比較した、PDを有する対象における、黒質緻密部(SNc)における総NM濃度、SNcにおけるNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積。
【0245】
NM-MRI評価(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)とホーエン・ヤール重症度分類の間の相関関係。
【0246】
PDボクセルは、MDS-UPDRSおよびMDS-UPDRSに関する特定の症状と相関するため、PDを有する対象対対照対象におけるPDボクセル。
【0247】
DaTscanイメージング:1)PDの診断;2)ベースライン時および5年間にわたるテランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析との相関関係。
【0248】
MDS-統一パーキンソン病評価尺度(MDS-UPDRS):1)ベースライン時および5年間にわたるテランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析との相関関係;2)PDボクセルとの相関関係。
【0249】
検討設計
【0250】
この検討は、L-ドーパによる処置を受けていない初期PD(ステージ1または2)を有する対象、または無症候性であるLRRK2ハプロタイプを有する>55歳である対象における、テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析の診断値を実証するための6年間の検討(募集に1年間および経過観察に5年間)である。この検討は、L-ドーパで処置されていない初期PD(ステージ1または2)を有する約300名の対象、またはLRRK2ハプロタイプを有する無症候性対象(年齢>55歳)、および年齢と性別が一致する200名の対照を登録する。対象は、インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名し、すべての組入れ基準/除外基準を満たした後にこの検討に登録される。スクリーニング期間中、対象は、NM-MRIスキャン、DaTscanおよびMDS-UPDRSを有する。各対象は、ヤール重症度分類を使用して評価する。対象は、この検討に登録後、12、24、36、48および60か月後に同じ一連の試験を完了する。
【0251】
対象集団
【0252】
スクリーニング手順の完了時に、患者は、本検討に登録されるために、以下の選択基準を満たさなければならず、除外基準を満たしてはならない。
【0253】
選択基準
【0254】
L-ドーパで処置されていない初期PD(ステージ1または2)を有する、40歳を超える女性および男性。PDの臨床診断は、DaTscanにより確認する。
【0255】
無症候性であり、PDと診断されていないLRRK2ハプロタイプを有する年齢が>55の女性および男性。
【0256】
本検討に参加することに同意し、インフォームドコンセントを提出する能力を有する。
【0257】
除外基準
【0258】
L-ドーパによる処置歴
【0259】
スクリーニングまたは尿中薬物検査陽性(アンフェタミン、コカイン、オピオイドおよびフェンシクリジンに対する)前の少なくとも6か月間、DSM-Vにより定義された物質使用障害(タバコを除く)歴。軽度の大麻またはアルコール物質使用障害を有する対象は、医療モニターの許可を得て登録することができる。
【0260】
以下の参考書:"Guide to MR procedures and metallic objects" Shellock, PhD, Lippincott-Raven press, NY 1998に記載されているガイドラインに従って判定される通り、閉所恐怖症、またはMRIスキャンを妨げる可能性のある体内に入れられた金属製インプラントもしくは常磁性物体。
【0261】
中度または重度の腎疾患
【0262】
ヨウ素またはDaTscanに対する、アレルギーまたは過敏症。スクリーニングまたは尿中薬物検査陽性(アンフェタミン、コカイン、オピオイドおよびフェンシクリジンに対する)前の少なくとも6か月間、DSM-Vにより定義された物質使用障害(タバコを除く)歴。軽度の大麻またはアルコール物質使用障害を有する対象は、医療モニターの許可を得て登録することができる。
【0263】
以下の参考書:"Guide to MR procedures and metallic objects" Shellock, PhD, Lippincott-Raven press, NY 1998に記載されているガイドラインに従って判定される通り、閉所恐怖症、またはMRIスキャンを妨げる可能性のある体内に入れられた金属製インプラントもしくは常磁性物体。
【0264】
中度または重度の腎疾患
【0265】
ヨウ素またはDaTscanへのアレルギーまたは過敏症
【0266】
評価 - スクリーニング:
・ ICFへの署名
・ 精神疾患簡易構造化面接法(MINI)
・ 神経医学歴および病歴
・ 人口統計
・ 靴をはかない身長および体重を含む身体検査
・ 尿中薬物検査
・ 併用薬
・ 適格基準
・ NM-MRIイメージング
・ DaTscan
・ ホーエン・ヤール重症度分類
・ MDS-UPDRS
【0267】
検討期(12、24、36、48および60か月時に訪問)
【0268】
以下の評価を計画する:
・ NM-MRIイメージング
・ DaTscan
・ MDS-UPDRS
【0269】
統計解析:
【0270】
この検討は、L-ドーパ処置歴のない初期PD(ステージ1)を有する約300名の対象、またはLRRK2ハプロタイプを有する無症候性対象(年齢>55歳)、および年齢と性別が一致する200名の対照を登録する。サンプルサイズは、対照対象と比較した、ステージ1のPDまたはLRRK2ハプロタイプを有する対象におけるエンドポイント(5年後)でのSNcニューロメラニン濃度レベルの20%の低下に基づく。一次および二次エンドポイントに関する解析は、共分散解析(ANCOVA)、線形回帰またはピアソン相関によって行う。
【0271】
一次エンドポイント:
【0272】
対照対象と比較した、L-ドーパで処置されていない初期PD(ステージ1または2)を有する対象またはLRRK2ハプロタイプを有する対象において、NM-MRIに対する、ベースラインからエンドポイントまでの変化率
【0273】
黒質緻密部(SNc)における総NM濃度(湿組織のマイクログラムあたりのニューロメラニンのマイクログラム)、SNcにおけるNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積
【0274】
対照対象と比較した、L-ドーパで処置されていない初期PD(ステージ1または2)を有する対象またはLRRK2ハプロタイプを有する対象において、NM-MRIに対する、ベースラインからエンドポイントまでの変化
【0275】
黒質緻密部(SNc)における総NM濃度、SNcにおけるNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積
【0276】
黒質緻密部(SNc)における総NM濃度、SNcにおけるNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積は、対照群の正常範囲に比べて、初期PDを有する対象ではより小さい
【0277】
DaTscanによって確認される、PDの診断を可能にする対照群からの、LRRK2対象におけるニューロメラニンレベル(SNc中濃度、SNcにおけるNMの体積)の差異(絶対値および変化率)を決定すること
【0278】
二次エンドポイント
【0279】
NM-MRI評価とMDS-統一パーキンソン病評価尺度(MDS-UPDRS)スコアおよび5年間にわたるDaTscanイメージングの間の相関関係
【0280】
NM-MRI評価(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)とホーエン・ヤール重症度分類の間の相関関係
【0281】
パーキンソン病のボクセル(テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析によって特定される)とUPDRSによって測定されるパーキンソン病の症状の相関関係
【0282】
UPDRSによって測定される、特定のパーキンソンの症状と相関するパーキンソン病のボクセル(テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析によって特定される)の特定
【0283】
ドーパミンバイオマーカーであるニューロメラニンに基づいた例示的なボクセルをベースとする解析手順を使用して、患者におけるパーキンソン病を検出することができる。パーキンソン病を診断すること、パーキンソン病の異なるステージ間を区別すること、パーキンソン病の症状の経過および/もしくは進行を予測すること、処置に対する将来の応答を予測すること、または高リスク個体における将来の症状を予測することが可能な承認を受けているイメージング検査は現在、存在しない。例示的なシステム、方法およびコンピューターでアクセス可能な媒体は、標準的な病院のMRI機器で行うことができる。方法がNM-MRIに適用された場合、例示的なボクセルをベースとする手順を、臨床設定におけるパーキンソン病を有する患者において、バイオマーカーとして使用することができる。例示的なシステム、方法およびコンピューターでアクセス可能な媒体はまた、高いリスクにある人における症状の転換を予測するために使用することができる。さらに、例示的なシステム、方法およびコンピューターでアクセス可能な媒体は、パーキンソン病の発症を診断または予測するために使用することができる。
【0284】
ニューロメラニン高感度MRI(NM-MRI)は、黒質(SN)のドーパミンニューロンにおいて、年齢と共に蓄積するドーパミン代謝の生成物である、ニューロメラニン(NM)の含有量を検出することができる。NM-MRIは、SNにおけるドーパミン細胞の変性を測定することができるので、この技法は、パーキンソン病(PD)の診断の有用なマーカーとなることができ、他の神経病理学的状態に利用することができる。
【0285】
パーキンソン病は、運動制御を損なう衰弱性神経変性病であり、現在の方法によって適切に処置することができない。疾病の根底をなす生物学的変化は、カテコールアミン作動性ニューロン(ドーパミンおよびノルエピネフリンニューロン)の変性を含むことが公知であるが、この変性は、現在の臨床手段を使用して正確に測定することができない。NM-MRIシーケンスは、中脳におけるある特定の構造中、すなわち黒質緻密部(SNc;ドーパミンニューロンを含有)および青斑核(LC;ノルエピネフリンニューロンを含有)中に存在する、神経化学的なニューロメラニンを検出することができると言われている。
【0286】
PDにおける最近の証拠により、ドーパミンおよびその副生物であるニューロメラニンの代謝における機能不全は、SNにおいて、具体的には、ニューロメラニン-正の細胞のドーパミン細胞の変性の一因となり得ることが示唆されている。損傷を受けたニューロメラニン含有ドーパミン細胞は、結果として退行し、そのニューロメラニン顆粒と共にミクログリアによって除去される(組織からNMを除去する唯一公知の生物学的過程である)。したがって、ニューロメラニンに対して高感度なMRIスキャンは、PDにおけるカテコールアミン作動性ニューロンの変性を検出することができるはずである。NM-MRI手順は、短時間(8分間)であり、非侵襲的構造MRIスキャンである。大部分の構造MRIスキャンとは異なり、このタイプのスキャンは、このような神経化学物質が金属に結合する傾向があるために、特定の神経化学物質であるニューロメラニンに対して感度が高い。
【0287】
したがって、ニューロメラニンは、T1およびT2緩和時間に影響を及ぼして、対象を外因性造影剤に何ら曝露させることなく観察され得る。NM-MRIスキャンは、中脳における高シグナル領域として、SNcおよびLCを示す。このシグナルの強度および領域における顕著な低減は、SNcおよびLCのどちらに対しても、PDにおいて観察され、このことは、このシグナルが、PDにおいて起こる神経変性を検出することができることをはっきりと示している。NM-MRIは、既存のPDバイオマーカーより優れていることが既に示されている。これらの測定値はまた、PDにおける疾病の重症度と有意に相関があること、および初期PDの検出において、高感度および特異度(80~95%)をもたらすことを示している。364のPD症例および231名の健常な対照を含む16の臨床試験の最近のメタ解析により、NM-MRIが97.7%の感度および94.4%の特異度を有することが見出された。
【0288】
ニューロメラニンイメージングは、パーキンソン病を有する患者におけるFDA承認を受けているDaTscan(イオフルパン123I放射性トレーサーを使用するSPECTイメージング)と比較されており、検討は、DaTscanとの統計学的に有意な相関関係を示した。具体的には、ニューロメラニン-ポジティブ黒質緻密部(SNc)領域の体積およびニューロメラニン-ポジティブSNc体積の非対称指数により、DaTscanの特異的結合比(SBR)と有意な相関関係はあることが示された。
【0289】
パーキンソン病の大部分の症例は、環境因子および遺伝的因子の複雑な相互作用に起因している可能性が高い。これらの症例は散発性に分類され、その家族において、明白な障害歴のない人に起こる。これらの散発性症例の原因は、不明瞭なままである。パーキンソン病を有する人々のほぼ15パーセントが、この障害の家族歴を有する。PDに関連する変異の1つは、LRRK2であり、これは、常染色体優性パターンにおいて遺伝する。LRRK2における変異は、現在、特定されている後期発症性パーキンソン病(PD)の最も一般的な遺伝的原因である。LRRK2変異の浸透は、明らかに年齢に依存し、50歳時の17%から70歳時の85%へと増大する。
【0290】
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析は、NM-MRIスキャンを死後中脳組織中のNM濃度に関係付けた検討において、ドーパミン機能の代替尺度として検証されている。PDまたはPD関連症候群に一致する組織病理のない(異常なタンパク質凝集物からなるレビー小体が存在しないことを含む)7つの死後個体にSN含有中脳切片のNM-MRIスキャンを行った。スキャン後、各標本をグリッド線の印に沿って切開し、生物化学的分離および分光測光法決定を使用して、NM濃度を測定した。グリッド区域内のボクセル全体の平均NM-MRIコントラスト対ノイズ比(CNR)も計算した。すべての中脳標本にわたり、NM-MRI CNRがより高いグリッド区域ほど、NMの組織濃度がより高かった(β1=0.56、t114=3.36、P=0.001、複合効果モデル)。予期される通り、高いシグナルが、非中脳水道周囲灰白質(PAG)領域では、NM濃度に対するNM-MRI CNRのNMリッチSNに対応するグリッド区域において最も明白であった(β1=1.03、t112=5.51、P=10-7)。このモデルでは、NM-MRI CNRの10%の増加は、組織1mgあたりのNMの推定増加量0.10μgに相当する。
【0291】
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析は、NM-MRIを用いて得られるニューロメラニンレベルを測定する医療用デバイス(SaMD)として独立型ソフトウェアとして開発されている。テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析を使用して、黒質中のニューロメラニン濃度および体積の正確な測定値を得ることができる。ニューロメラニンは、中脳のドーパミンレベルに影響を及ぼす医療状態を有する対象を評価する医師への支援として使用することができる、ドーパミン作動性ニューロンの活性の代替尺度である。この検討は、5年間の期間にわたり、L-ドーパ処置歴のない初期PD(ステージ1または2)を有する対象、またはLRRK2ハプロタイプを有する無症候性対象を縦断的に評価する。
【0292】
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析の縦断的評価を使用して、パーキンソン病(PD)を診断するために必要になると思われる、NM濃度のベースラインからの絶対変化および変化率を求めること
【0293】
対照対象と比較した、初期パーキンソン病(ステージ1または2)またはLRRK2ハプロタイプを有する対象において、テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析を使用して、ベースラインからエンドポイントまでのNM濃度の低下を実証すること
【0294】
PDの診断を可能にすると思われる対照群からのニューロメラニンレベル(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)の差異(絶対値および変化率)を求めること
【0295】
黒質緻密部(SNc)における総NM濃度、SNc部分領域のNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積は、対照群の正常範囲に比べて、PDを有する対象ではより小さいことを実証すること
【0296】
二次目的:
【0297】
5年間にわたるDaTscanイメージングを用いる、NM-MRI評価(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)とMDS-統一パーキンソン病評価尺度(MDS-UPDRS)スコアとの間の相関関係を実証すること
【0298】
NM-MRI評価(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)とホーエン・ヤール重症度分類の間の相関関係を実証すること
【0299】
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析の適用により、MDS-UPDRSに対するそれらの特定の症状と相関する、各患者に固有の特定のボクセル(PDボクセルと呼ばれる)が見出されることを実証すること
【0300】
MDS-UPDRSによって測定される、パーキンソン病の症状を有するパーキンソン病のボクセルの相関関係を実証すること
【0301】
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析は、PDを診断する有効な方法であり、PD対象と対照を区別し、経時的にPDの進行を追跡する
【0302】
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析は、MDS-UPDRSによって測定される、パーキンソン病の症状に相当するパーキンソン病のボクセルを特定する
【0303】
検討設計
【0304】
この検討は、L-ドーパ処置歴のない初期PD(ステージ1または2)を有する対象、または無症候性であるLRRK2ハプロタイプを有する≧55歳である対象における、NM-MRIの診断値を評価するための6年間の検討(募集に1年間および経過観察に5年間)である。この検討は、ステージ1のPDを有する約300名の対象、またはLRRK2ハプロタイプを有する無症候性対象(年齢≧55歳)、および年齢と性別が一致する200名の対照を登録する。対象は、インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名し、すべての選択基準/除外基準を満たした後に、この検討に登録される。スクリーニング期間中、対象は、3回の訪問にわたり、NM-MRIスキャン、DaTscan SPECTイメージングおよびMDS-UPDRSを有する。ヤール重症度分類を使用して、各対象を評価する。対象は、本検討に登録後、12、24、36、48および60か月後に同じ一連の試験を完了する。各訪問時に、MDS-UPDRSおよびホーエン・ヤール重症度分類を行う。
【0305】
現在、薬物乱用症歴を有する対象は、この検討から除外される。最後に、MRI検討に対して不安定な医療状態または禁忌を有する対象も除外される。
【0306】
評価のスケジュール
【0307】
評価は、以下における検討フローチャートの通りに行う。
【0308】
表1.
【0309】
【0310】
スクリーニング - 訪問1
【0311】
スクリーニング期は、最大で30日間、続き、この間に人口統計情報、病歴およびインフォームドコンセントを得る。選択基準および除外基準を満たした対象は、登録が許可され得る。この検討の性質および目的は、スクリーニング作業を開始する前に対象に説明しなければならない。
【0312】
インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名した後、以下の人口統計データを収集して記録すべきである:患者の誕生日、インフォームドコンセント時の年齢、性別、民族性および人種。検討施設の職員は、スクリーニングの間に患者から全病歴を得ることになり、訪問1の際に必要に応じて更新する。病歴が取得され、同様にバイタルサイン(血圧および脈拍)が測定される。薬物スクリーニングのため、尿を採取する。投薬の現在および最近の使用歴も得る。治験責任医師または設計者は、対象がこの検討に対する適格基準のすべてを満たしているかどうかを判定する。
【0313】
以下の評価が行われる:
・ICFへの署名
・MINI
・人口統計
・病歴
・ホーエン・ヤール重症度分類
・UPDRS
・MRI金属調査質問票
・バイタルサイン(血圧および心拍数)
・尿中薬物検査
・併用薬
・有害事象
・適格基準
【0314】
スクリーニング訪問2および3
【0315】
スクリーニング訪問2および3の間に、以下の試験が行われる:
・NM-MRIイメージング
・DaTscanイメージング
・バイタルサイン(血圧および心拍数)
・尿中薬物検査
・併用薬
・有害事象
【0316】
検討期(12、24、36、48および60か月時の訪問4~8)
・NM-MRIイメージング
・DaTscan
・ホーエン・ヤール重症度分類
・MDS-UPDRS
・MRI金属調査質問票
・バイタルサイン(血圧および心拍数)
・尿中薬物検査
・ 併用薬
・有害事象
【0317】
検討評価 - MRIスクリーニング
MRI実験に含める前に、対象全員をスクリーニングし、MRIスキャンに対する適格性を確認する。スクリーニング質問票は、強常磁性インプラントの存在を含む、選択/除外基準に関する質問を含む。対象が、スキャナーに不適切な金属製インプラント(すなわち、金属製心臓弁、大動脈クリップなど)の何らかを有している場合、本発明者らの検討に、それらの対象を含まない。本発明者らの検討における組入れおよび除外は、この検討における、PIおよび共同PIによって判定される。
【0318】
検討評価 - MRI手順
【0319】
対象は、構造3テスラMRIスキャンおよびニューロメラニン高感度(構造)スキャンを受ける。どちらのスキャンも、外因性造影剤の使用を含まない。全スキャン時間は、通常、約30分間であり、1時間を超えない。初期データが利用可能でない場合、対象は、追加のスキャンを行うために戻ってくるよう求められることがある。MRIスキャンの間、対象は、カメラのテーブル上に仰臥位に置かれる。頭部が所定の位置に置かれ、プラスチック製ヘッドホルダーを使用して、スキャン中の頭部の動きを低下させる。参加者にはスクイーズボールが与えられ、気分が悪い場合、またはスキャン中に何ら問題がある場合に、握りしめるよう指導され、こうして、MRIスタッフは、スキャンを停止することができる。参加者は、MRIのノイズを低減するため、オーバーイヤ型ヘッドホンが与えられる。対象はすべて、解剖学上の同時登録が可能となるよう、セッションの開始時に構造MRIスキャンを受ける。参加者は全員が、各スキャンセッション前に金属調査質問票を受ける。
【0320】
DaTscan手順
【0321】
DatScan(イオフルパンI 123注射剤)は、パーキンソン症候群(PS)が疑われる成人の評価において支援するため、単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)脳イメージングを使用して、線条体ドーパミン輸送体の可視化のために適応されている、FDAに承認されている放射性医薬品である。パーキンソン症候群は、線条体におけるドーパミン輸送体(DAT)損失に関連している。イオフルパンI 123は、PSが疑われる成人患者の評価において支援するため、SPECT脳イメージングを使用して、線条体DATの可視化のために適応されている、放射性医薬品である。イオフルパンI 123は、脳内の神経線維の束である、ドーパミン作動性黒質線条体ニューロンにあるDaTタンパク質に結合する。通常のスキャンでは、イオフルパンI 123は、線条体に分布し、「コンマ」または三日月形状に似て見える。イオフルパンI 123活性の低下は、円形「ピリオド」または長円形形状をもたらし、片側または両側の画像強度が低下する。
【0322】
手順
・スキャンの前に、各対象は、ヨウ素に対してアレルギーを有するかどうか、腎疾患歴または肝疾患歴を有するかどうか、およびコカインを現在または過去に使用しているかどうかが尋ねられる。
・スタッフは、投与の少なくとも1時間前に、甲状腺ブロック剤(例えば、100mgのヨウ素に等価なヨウ化カリウム経口用溶液剤、または過塩素酸カリウム400mg)を投与する。
・イメージング施設は、投与直前に、好適な放射活性較正システムによって、患者の用量を測定する。
・推奨用量は、静脈(IV)線から腕に注射される、111~185MBq(3~5mCi)である。
・注射後、3~6時間の間、ガンマカメラを使用して、SPECTイメージングを開始する。
・DaTscanを一旦開始すると、ほぼ30~45分かかる。
【0323】
SPECTスキャンの間、対象は、テーブルの上に横になり、イメージング技術者は、ヘッドレストに対象の頭部を置く。テープ片または可撓性拘束具を対象の頭部の周りに置いて、スキャン中に頭部が動かないようにするのを支援してもよい。カメラを対象の頭上に置き、画像の撮影中、対象は約30分間、絶対に静かにしたままでいなければならない。
【0324】
DaTscanは腎臓によって排出され、重症な腎臓障害は、患者への放射線曝露を増大させて、画像を改変することがある。
【0325】
DaTscanの安全性
【0326】
禁忌
【0327】
活性物質、賦形剤またはヨウ素への過敏症
【0328】
MDS-統一パーキンソン病評価尺度
【0329】
MDS-UPDRSは、4つの部分を有する:
【0330】
部分I(日常生活の非運動経験)
【0331】
部分II(日常生活の運動経験)
【0332】
部分III(運動検査)
【0333】
部分IV(運動合併症)
【0334】
部分Iは、2つの構成要素および13個の質問を有する:IAは、患者および介護人からの関連性のある情報のすべてを用いて、治験責任医師によって評価されるいくつかの挙動に関するものであり、IBは、介護人の手助けでまたはなしであるが、治験責任医師とは独立して、患者によって完了される。しかし、これらのセクションは、すべての質問が明確に回答されたこと、および評価者が、あらゆる曖昧と感じた点を説明する手助けをすることができることを確認するよう評価者によって吟味することができる。部分IIは、13個の質問があり、自己で行われる部分IBのような質問票となるよう設計されているが、完全および明確となるよう治験責任医師によって吟味され得る。部分IIIは、運動検査であり、18個の評価がある。部分Iは、運動合併症に対処するものであり、6個の質問がある。
【0335】
ホーエンおよびヤール重症度
【0336】
ホーエンおよびヤール尺度は、パーキンソン病の症状がどのように進行するか、および障害のレベルを測定するために使用する。元の尺度は、ステージ1~5を有する。この検討は、ステージ0を追加した、修正尺度を使用する。
【0337】
ステージ0 - 疾患の兆候はない
【0338】
ステージ1 - 片側だけに症状がある(片側性)
【0339】
ステージ2 - 両側に症状があるが、平衡感覚は損なわれていない
【0340】
ステージ3 - バランス障害、軽度から中等度の疾患、身体的に独立している
【0341】
ステージ4 - 重度の障害であるが、依然として、援助なしで歩行または立ち上がりは可能
【0342】
ステージ5 - 車いすを必要とするか、または援助がなければ寝たきりである
【0343】
統計解析
【0344】
対象数およびサンプルサイズの計算
【0345】
この検討は、ステージ1のPDを有する約300名の対象、またはLRRK2ハプロタイプを有する無症候性対象(年齢≧55歳)、および年齢と性別が一致する200名の対照を登録する。サンプルサイズは、対照対象と比較した、ステージ1のPDまたはLRRK2ハプロタイプを有する対象におけるエンドポイント(5年後)での黒質ニューロメラニンレベルの20%の低下に基づく。
【0346】
二次エンドポイントは、NM-MRIスキャンと、DaTscanスキャンおよびUPDRSスコアの両方との間の相関関係である。
【0347】
解析集団
【0348】
以下の患者集団を統計解析に使用する:
【0349】
スクリーニング後のNM-MRIスキャンを1回受けた対象
【0350】
統計学的方法
【0351】
この検討は、L-ドーパ処置歴のない初期PD(ステージ1または2)を有する約300名の対象、またはLRRK2ハプロタイプを有する無症候性対象(年齢>55歳)、および年齢と性別が一致する200名の対照を登録する。サンプルサイズは、対照対象と比較した、初期PD(ステージ1または2)またはLRRK2ハプロタイプを有する対象におけるエンドポイント(5年後)での黒質ニューロメラニンレベルの20%の低下に基づく。
【0352】
対象素因
【0353】
登録して完了した、またはこの検討を中止した対象の数、および検討中止の理由を適宜、処置群ごとに表にする。
【0354】
一次エンドポイント
【0355】
この検討は、L-ドーパで処置されていない初期PD(ステージ1または2)を有する約300名の対象、またはLRRK2ハプロタイプを有する無症候性対象(年齢≧55歳)、および年齢と性別が一致する200名の対照を登録する。サンプルサイズは、対照対象と比較した、ステージ1のPDまたはLRRK2ハプロタイプを有する対象におけるエンドポイント(5年後)でのSNcニューロメラニン濃度レベルの20%の低下に基づく。一次および二次エンドポイントに関する解析は、共分散解析(ANCOVA)、線形回帰またはピアソン相関によって行われる。
【0356】
対照対象と比較した、L-ドーパで処置されていない初期PD(ステージ1または2)を有する対象またはLRRK2ハプロタイプを有する対象において、NM-MRIに対する、ベースラインからエンドポイントまでの変化率
【0357】
黒質緻密部(SNc)における総NM濃度(湿組織のマイクログラムあたりのニューロメラニンのマイクログラム)、SNcにおけるNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積
【0358】
対照対象と比較した、L-ドーパで処置されていない初期PD(ステージ1または2)を有する対象またはLRRK2ハプロタイプを有する対象において、NM-MRIに対する、ベースラインからエンドポイントまでの変化
【0359】
黒質緻密部(SNc)における総NM濃度、SNcにおけるNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積
【0360】
黒質緻密部(SNc)における総NM濃度、SNcにおけるNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積は、対照群の正常範囲に比べて、初期PDを有する対象ではより小さい
【0361】
DaTscanによって確認される、PDの診断を可能にする、対照群からのLRRK2対象におけるニューロメラニンレベル(SNc濃度、SNcにおけるNMの体積)の差異(絶対値および変化率)を決定すること
【0362】
二次エンドポイント
【0363】
5年間にわたる、NM-MRI評価とMDS-統一パーキンソン病評価尺度(MDS-UPDRS)スコアおよびDaTscanイメージングとの間の相関関係
【0364】
MDS-UPDRSによって測定される通り、パーキンソン病の症状を有するパーキンソン病のボクセル(テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析によって特定される)の相関関係
【0365】
NM-MRI評価(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)とホーエン・ヤール重症度分類の間の相関関係
【0366】
MDS-UPDRSによって測定される通り、特定のパーキンソン病の症状と相関するパーキンソン病のボクセル(テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析によって特定される)の特定
【0367】
L-ドーパ療法の開始後のニューロメラニン測定値の変化とMDS-UPDRSスコアの改善との間の相関関係を実証すること
【0368】
ニューロメラニンのレベルは、テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析によって測定すると増大(SNc濃度、SNcにおけるNMの体積)し、これにより、L-ドーパ療法によるMDS-UPDRSが改善される。
【0369】
(実施例2B)
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析によるパーキンソン病におけるカルビドーパ/レボドーパ処置の評価
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析は、NM-MRIを用いて得られるニューロメラニンレベルを測定する医療用デバイス(SaMD)としての独立型ソフトウェアとして開発されている。テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析を使用して、黒質中のニューロメラニン濃度および体積の正確な測定値を得ることができる。ニューロメラニンは、中脳のドーパミンレベルに影響を及ぼす医療状態を有する対象を評価する医師への支援として使用することができる、ドーパミン作動性ニューロンの活性の代替尺度である。この検討は、テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析を使用して、PDの処置におけるカルビドーパ/レボドーパ処置の有効性を評価する。
【0370】
一次目的
【0371】
カルビドーパ/レボドーパ処置の開始後の、ニューロメラニン測定値(黒質緻密部(SNc)、SNc部分領域におけるNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積)とMDS-統一パーキンソン病評価尺度(MDS-UPDRS)スコアの改善との間の相関関係を実証すること
【0372】
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析によって測定される、ニューロメラニンのレベル(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)の増大であって、処置への応答をモニタリングするためにNMレベルを使用することができることを検証する、MDS-UPDRSの改善をもたらす、増大を決定すること
【0373】
テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析は、患者がカルビドーパ/レボドーパ処置への最適応答を有するかどうかを判定する有効な方法である
【0374】
検討設計
【0375】
この検討は、カルビドーパ/レボドーパ処置歴のない、症候性PD対象における12週間の検討である。本検討は、カルビドーパ/レボドーパ処置を開始しているPDを有する対象をモニタリングするための、テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析の値を実証する。この検討は、カルビドーパ/レボドーパで処置されていない症候性PDを有する約100名の対象を登録する。対象は、インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名し、すべての選択基準/除外基準を満たした後にこの検討に登録される。スクリーニング期間中、対象は、テランニューロメラニンMRIボクセルに基づく解析およびMDS-UPDRSを使用して、NM-MRIスキャンを受ける。各対象は、ヤール重症度分類を使用して評価される。対象は、4週、8週および12週に、NM-MRIスキャンおよびMDS-UPDRSの反復評価を受ける。スクリーニングを完了後、対象は、処置期間に入り、カルビドーパ/レボドーパ処置を開始する。カルビドーパ/レボドーパの用量は、臨床応答および有害事象に基づいて、この検討の臨床医によって個別化される。投与量は、1日3回の25mg~100mgのカルビドーパ/レボドーパ錠剤1錠から最良に開始される。この投与量スケジュールは、1日あたり、75mgのカルビドーパを提供する。投与量は、1日あたり25mg~100mgの錠剤を8錠となる投与量が到達されるまで、必要に応じて、毎日または隔日に1錠ずつ増加してもよい。カルビドーパ/レボドーパの徐放性製剤は、同様の投薬で許可される。用量増加および減量は、NM-MRIシグナル比較によって案内される。
【0376】
現在、薬物乱用症歴を有する対象は、この検討から除外される。最後に、MRI検討に対して不安定な医療状態または禁忌を有する対象も除外される。
【0377】
評価のスケジュール
評価は、表1における検討フローチャートの通りに行う。
【表2】
【0378】
スクリーニング - 訪問1
【0379】
スクリーニング期は、最大で30日間続き、この間に人口統計情報、病歴およびインフォームドコンセントを得る。選択基準および除外基準を満たした対象は、登録が許可され得る。この検討の性質および目的は、スクリーニング作業を開始する前に対象に説明しなければならない。
【0380】
インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名した後、以下の人口統計データを収集して記録すべきである:患者の誕生日、インフォームドコンセント時の年齢、性別、民族性および人種。検討施設の職員は、スクリーニングの間に患者から全病歴を得ることになり、訪問1の際に必要に応じて更新する。病歴が取得され、同様にバイタルサイン(血圧および脈拍)が測定される。薬物検査のため、尿を採取する。現在および最近の投薬歴も得る。治験責任医師または設計者は、対象がこの検討の適格基準のすべてを満たしているかどうかを判定する。
【0381】
以下の評価が行われる:
・ICFへの署名
・MINI
・人口統計
・病歴
・ホーエン・ヤール重症度分類
・UPDRS
・MRI金属調査質問票
・バイタルサイン(血圧および心拍数)
・尿中薬物検査
・併用薬
・有害事象
・適格基準
【0382】
スクリーニング訪問2
【0383】
スクリーニング訪問2の間に、以下の試験が行われる:
・NM-MRIイメージング
【0384】
検討評価
【0385】
MRI手順
【0386】
MRIスクリーニング
【0387】
MRI実験に組み入れる前に、対象全員をスクリーニングし、MRIスキャンに対する適格性を確認する。スクリーニング質問票は、強常磁性インプラントの存在を含めた、選択/除外基準に関する質問を含む。対象が、スキャナーに不適切な金属製インプラント(すなわち、金属製心臓弁、大動脈クリップなど)の何らかを有している場合、対象は、本発明者らの検討に含まない。本発明者らの検討への組入れおよび除外は、本検討における、PIおよび共同PIによって判定される。
【0388】
MRI手順
【0389】
対象は、構造3テスラMRIスキャンおよびニューロメラニン高感度(構造)スキャンを受ける。どちらのスキャンも、外因性造影剤の使用を含まない。全スキャン時間は、通常、約30分間であり、1時間を超えない。初期データが使用可能でない場合、対象は、追加のスキャンを行うために戻ってくるよう求められることがある。MRIスキャンの間、対象は、カメラのテーブル上に仰臥位に置かれる。頭部が所定に位置に置かれ、プラスチック製ヘッドホルダーを使用して、スキャン中の頭部の動きを低下させる。参加者にはスクイーズボールが与えられ、気分が悪い場合、またはスキャン中に何ら問題がある場合に、握りしめるよう指導され、こうして、MRIスタッフは、スキャンを停止することができる。参加者は、MRIのノイズを低減するため、オーバーイヤ型ヘッドホンが与えられる。対象はすべて、解剖学上の同時登録が可能となるよう、セッションの開始時に構造MRIスキャンを受ける。参加者は全員が、各スキャンセッション前に金属調査質問票を受ける。
【0390】
MDS-統一パーキンソン病評価尺度
【0391】
MDS-UPDRSは、4つの部分を有する:
・部分I(日常生活の非運動経験)
・部分II(日常生活の運動経験)
・部分III(運動検査)
・部分IV(運動合併症)
【0392】
部分Iは、2つの構成要素および13個の質問を有する:IAは、対象および介護人からの関連性のある情報のすべてを用いて、治験責任医師によって評価されるいくつかの挙動に関し、IBは、介護人の手助けでまたはなしであるが、治験責任医師とは独立して、患者によって完了される。しかし、これらのセクションは、すべての質問が明確に回答されたこと、および評価者が、あらゆる曖昧と感じた点を説明する手助けをすることができることを確認するよう評価者によって吟味することができる。部分IIは、13個の質問があり、自己で行われる部分IBのような質問票となるよう設計されているが、完全および明確となるよう治験責任医師によって吟味され得る。部分IIIは、運動検査であり、18個の評価がある。部分Iは、運動合併症に対処するものであり、6個の質問がある。
【0393】
ホーエンおよびヤール重症度
【0394】
ホーエンおよびヤール尺度は、パーキンソン病の症状がどのように進行するか、および障害のレベルを測定するために使用する。元の尺度は、ステージ1~5を有する。この検討は、ステージ0を追加した、修正尺度を使用する。
・ステージ0 - 疾患の兆候はない
・ステージ1 - 片側だけに症状(片側性)
・ステージ2 - 両側に症状があるが、平衡感覚は損なわれていない
・ステージ3 - バランス障害、軽度から中等度の疾患、身体的に独立している
・ステージ4 - 重度の障害であるが、依然として、援助なしで歩行または立ち上がりは可能
・ステージ5 - 車いすを必要とするか、または援助がなければ寝たきりである。
【0395】
対象登録および離脱
【0396】
選択基準
【0397】
この検討の参加に適格となるためには、対象は、以下の選択基準のすべてを満たさなければならない:
【0398】
カルビドーパ/レボドーパまたはレボドーパ処置歴のない症候性PDを有する40歳より上の女性および男性。
【0399】
本検討に参加することに同意し、インフォームドコンセントを提出する能力を有する。
【0400】
除外基準
【0401】
対象が以下の除外基準のいずれかを満たす場合、対象はこの検討から排除される:
【0402】
カルビドーパ/レボドーパまたはレボドーパによる処置歴
【0403】
スクリーニングまたは尿中薬物検査陽性(アンフェタミン、コカイン、オピオイドおよびフェンシクリジンに対する)前の少なくとも6か月間、DSM-Vにより定義された物質使用障害(タバコを除く)歴。軽度の大麻またはアルコール物質使用障害を有する対象は、医療モニターの許可を得て登録することができる。
【0404】
以下の参考書:"Guide to MR procedures and metallic objects" Shellock, PhD, Lippincott-Raven press, NY 1998に記載されているガイドラインに従って判定される通り、閉所恐怖症、またはMRIスキャンを妨げる可能性のある体内に入れられた金属製インプラントもしくは常磁性物体。
【0405】
以前の治療および併用治療
【0406】
この検討への登録の1か月以内に患者によって使用された薬局市販調製剤および家庭薬を含めたすべての投薬は、症例報告書に記録しなければならない。
【0407】
安全性
【0408】
これは、NM-MRIを縦断的に評価する非介入検討である。この評価は、脳の特定の構造におけるニューロメラニンの量を測定する、標準3-T MRIおよびソフトウェアを含む。バイタルサイン(血圧および脈拍)が、各検討訪問時に測定される。
【0409】
各訪問検討の開始時に、検討スタッフは、入院、医療状態、医師訪問、薬の使用、薬物使用、およびそれらが金属を含む事故に関与するかどうかについて調査する、「簡易検査」フォームからの一連の質問事項を尋ねる。この質問の間に、有害経験に関する情報が万一生じた場合には、この情報は、症例報告書(CRF)に記録されなければならない。
【0410】
これは、非介入的検討であることを考慮すると、身体検査、検査室評価、心電図は行われないことに留意されたい。
【0411】
バイタルサインの測定
【0412】
血圧(収縮期および拡張期)は、各訪問時に、AHA推奨に準拠して対象が座位の状態で測定される。脈拍数は、座位での橈骨脈拍の触診によって決定することができる。血圧および脈拍は、血圧モニタリング機器によって測定することができる。
【0413】
対象へのリスク
【0414】
検討期間の間に、遭遇する恐れのあるリスク
【0415】
手順はすべて、参加者にいかなるリスクまたは潜在的な危険が実質的にない。大部分の手順では、面倒さによる不快感のわずかなリスクがある。評価における質問の一部は、慎重に扱うべき内容に触れている。
【0416】
磁気共鳴画像法
【0417】
FDAおよびNYSPI IRBのどちらも、非深刻なリスクと分類されるMRIスキャンとみなされている。この交差スキャナー検証検討の場合、適用可能な唯一のリスクは、MRIスキャンと関係のあるものである(すなわち、不快感、倦怠感、不安症)。MRIスキャンは、FDAによる非深刻なリスクをもたらすとみなされる3テスラスキャナーを含む。
【0418】
参加者へのリスクおよび不快感を最小限にするため、施設は、以下を行う:
【0419】
MRI金属調査質問票を使用することによって、スキャンに対する金属製デバイス、インプラントおよび他の禁忌に関するスクリーニング
【0420】
スキャン前に妊娠対象を除外し、尿妊娠検査を行う。
【0421】
閉所恐怖症を有する対象を除外する。本発明者らは、磁気室に入る前に手順を議論し、対象が室内を見渡すことができる鏡を対象に提供し、インターホンを介して対象と通信することにより、この潜在的な有害反応を低減する。対象が、引き続き不快を感じる場合、イメージング手順を終了し、対象を磁石から取り除く。
【0422】
スタッフは、スキャンの間、適切な医療的モニタリング、安全性モニタリング、および観察を行う。
【0423】
検討スタッフは、支援を提供し、不安症を低減し、対象の快適さを最適化し、要求された場合、MRI機器から対象を移動させることができる。
【0424】
カルビドーパ/レボドーパ
【0425】
患者のすべては、付随する自殺傾向を有するうつ病の発症に注意深く観察すべきである。
【0426】
カルビドーパ/レボドーパは、重度の心血管疾患または肺疾患、気管支ぜんそく、腎、肝または内分泌疾患を有する患者には、注意して投与すべきである。
【0427】
レボドーパと同様に、残遺性心房性、結節性または心室性不整脈を有する心筋梗塞歴を有する患者へのカルビドーパ/レボドーパを投与する際に注意が払われるべきである。
【0428】
レボドーパと同様に、カルビドーパ/レボドーパによる処置は、消化性潰瘍歴を有する患者では、胃腸管上部の出血の可能性が増大することがある。
【0429】
日常生活の活動および傾眠中に眠りに落ちる:カルビドーパ/レボドーパを単独で、または他のドーパミン作動性薬と一緒に服用する患者は、日常生活の活動(自動車の運転を含む)に従事している間、眠気の事前の警告なしに突然眠りに落ちると報告している。カルビドーパ/レボドーパによる処置の間、運転中または機械の操作中に注意を払うよう患者は助言を受けるべきである。傾眠または突然の入眠のエピソードを既に経験している患者は、カルビドーパ/レボドーパによる処置の間に、これらの活動に参加すべきではない。
【0430】
カルビドーパ/レボドーパによる処置を開始する前に、眠気を発症する可能性について患者に助言し、併用鎮静薬の使用および睡眠障害の存在などの、カルビドーパ/レボドーパによる傾眠のリスクを高める可能性のある要因に関して具体的に尋ねる。
【0431】
異常高熱および錯乱:神経遮断薬悪性症候群に似た合併症状の散発性症例。
【0432】
有害反応/事象
【0433】
カルビドーパ/レボドーパで報告された最も一般的な有害反応は、舞踏病状、ジストニー運動および他の不随意運動、および吐き気などのジスキネジアを含む。
【0434】
以下の他の有害反応は、カルビドーパ/レボドーパを用いた場合に報告された:
【0435】
身体、全体として:胸痛、無力。
【0436】
心血管:心臓の不規則性、低血圧、起立性低血圧、高血圧症、気絶、静脈炎、動悸を含む起立性作用。
【0437】
胃腸管:暗色唾液、胃腸管出血、十二指腸潰瘍の発症、食欲不振、嘔吐、下痢、便秘、消化不良、ドライマウス、味感変質。
【0438】
血液系:無顆粒球症、溶血性および非溶血性貧血、血小板減少症、白血球減少。
【0439】
過敏症:血管浮腫、じんましん、掻痒、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、水泡性病変(天疱瘡様反応を含む)。
【0440】
筋骨格:背痛、肩痛、筋肉痙攣。
【0441】
神経系/神経医学:妄想、幻覚および妄想様観念を含む精神病エピソード、動作緩慢性エピソード(「オン-オフ」現象)、錯乱、動揺、目まい、傾眠、悪夢を含む夢の異常、不眠症、知覚異常、頭痛、自殺傾向の発症を伴うまたは伴わないうつ病、認知症、病的賭博、性欲亢進を含む性的衝動の増大、衝動制御症状。
【0442】
呼吸:呼吸困難、上部呼吸器感染。
【0443】
皮膚:発疹、発汗増加、脱毛、暗色の汗。
【0444】
尿生殖:尿路感染症、頻尿、暗色尿。
【0445】
検査室検査:ヘモグロビンおよびヘマトクリットの低下;アルカリホスファターゼの異常、SGOT(AST)、SGPT(ALT)、LDH、ビリルビン、BUN、クームス試験;血清グルコースの向上;尿中の白血球、細菌および血液。
【0446】
有害事象
【0447】
有害事象(AE)は、検討中に収集される。検討中のAE/SAEの収集、定義、分類化および報告に関する詳細情報に関しては、項目[0457]を参照されたい。
【0448】
本検討を通じてAEをモニタリングし、以下の情報を記録する:
【0449】
逐語的な病状
【0450】
事象が、治療中に発生した有害反応であったかどうか
【0451】
事象が、重篤な有害事象であったかどうか
【0452】
発病の日付および時間
【0453】
事象の重症度
【0454】
検討薬物への事象の関係性
【0455】
事象による検討薬物に関して採用された措置
【0456】
事象の臨床的転帰(解決済みまたは進行中)。解決済みであれば、解決日時を提示する。
【0457】
有害事象
【0458】
AEの定義、観察期間およびAEの記録
【0459】
AEとは、検討に関連するとみなされるか否かにかかわらず、いかなる不都合なまたは意図しない兆候、症状または疾患のことである。有害事象の記録は、インフォームドコンセントのフォームに署名がされた時に開始する。それ以降、AEは、患者が最後の訪問以来、どのような状態にあったかを患者に質問することによって確認される。評価は、治験責任医師の医療的判断に一致するその解決または許容される安定化に対して、AEの経過観察を必要に応じて継続すべきである。
【0460】
診断に関して、AEを記載するあらゆる試みがなされるべきである。明確な診断が一旦、行われると、個々の兆候および症状が、診断の非定型兆候または極端な兆候を呈さない限り、それらは記録されるべきではなく、この場合、それらは、個別の事象として報告されるべきである。診断に至る事象は、保持すべきである。明確な診断を確定することができない場合、各兆候および症状は、個別に記録されなければならない。
【0461】
治験責任医師は、治験責任医師によって観察されたか、または患者によって報告されたかにかかわらず、すべての有害臨床経験が、CRFおよび患者の医療記録に報告されることを確実にする責任がある。治験責任医師は、以下のAE属性を割り当てなければならない。
【0462】
有害事象の診断、または既知の場合、症候群(未知の場合、兆候または症状)
【0463】
発病および解決の日時
【0464】
重症度(および/またはプロトコールによる毒性)
【0465】
検討製品への関連性の評価、および
【0466】
採用された措置
【0467】
強度の分類
【0468】
AEおよびSAEの両方について、治験責任医師は、事象の重症度/強度を評価しなければならない。AEの重症度/強度は、以下の通り、患者の症状に基づいて等級付けされる。
【0469】
軽度 - 一過性のまたは軽度な不快;活動に制限はない;医学的介入/治療は必要ない。
【0470】
中等度 - 活動に軽度から中等度の制限がある。ある程度の支援が必要なことがある;医学的介入/治療は必要ないかまたは最小限である。
【0471】
重度 - 活動に著しい制限がある。ある程度の支援を通常、必要とする;医学的介入/治療法が必要である。入院の可能性がある。
【0472】
生命を脅かす - 活動に極度の制限がある。大きな支援を必要とする;大きな医学的介入/治療が必要であり、入院またはホスピスでのケアの可能性が高い。
【0473】
「重度」という用語は、特定の事象の強度を説明するために使用されることが多い(軽度、中等度または重度の心筋梗塞など)。しかし、事象自体は、比較的軽微な医療的重要性(重症な頭痛など)となる可能性がある。この基準は、患者の生命または機能を脅かす事象に関連する患者/事象の転帰または行動診断基準に基づく、「重度の」と同じではない。
【0474】
重症度ではなく、重症とは、規制義務を明確にするための指針としての役割がある。
【0475】
統計解析
【0476】
対象数およびサンプルサイズの計算
【0477】
この検討は、カルビドーパ/レボドーパ処置歴のない、症候性PDを有する約100名の対象を登録する。サンプルサイズは、カルビドーパ/レボドーパ処置後にエンドポイントにおいて、SNcニューロメラニン濃度レベルの20%の改善に基づく。
【0478】
解析集団
【0479】
以下の患者集団を統計解析に使用する:
【0480】
スクリーニング後のNM-MRIスキャンを1回受けた対象
【0481】
統計学的方法
【0482】
対象素因
【0483】
登録して完了した、またはこの検討を中止した対象の数、および検討中止の理由を適宜、処置群ごとに表にする。
【0484】
一次エンドポイント
【0485】
カルビドーパ/レボドーパ治療の開始後の、ニューロメラニン尺度(黒質緻密部(SNc)、SNc部分領域におけるNM濃度、全SNcにおけるNMの体積、およびSNcの部分領域の体積)とMDS-UPDRSスコアの改善との相関関係
【0486】
カルビドーパ/レボドーパの開始後の、MDS-UPDRSの改善をもたらすニューロメラニンレベル(SNcおよびSNc部分領域濃度、SNcおよびSNc部分領域におけるNMの体積)
【0487】
統計解析の詳細は、統計解析計画(SAP)に含まれる
【0488】
NM-MRI解析
【0489】
解析の詳細は、統計解析計画に提示される。
【0490】
プロトコールの逸脱
【0491】
逸脱はすべて列挙する。プロトコール逸脱は、重大または軽微と分類される。重大なプロトコールの逸脱は、治験依頼者によって判定される。重大なプロトコールの逸脱を伴う対象、または重大なプロトコールの逸脱と判断されるデータ点は、PP集団から除外される。
【0492】
人口統計学的特徴およびベースライン特徴
【0493】
人口統計学的特徴およびベースライン特徴を列挙し、処置および全体によって要約する。
【0494】
安全性
【0495】
有害事象
【0496】
有害事象のタイプおよび出現率を表にする。
【0497】
AEは、Medical Dictionary for Regulatory Activities(MedDRA(登録商標))の最新版を使用してコード化する。
【0498】
TEAE、処置に起因するSAE、および検討中止に至ったTEAEを経験している対象の数および割合は、処置群ごとに、および総合的には、MedDRA器官別大分類(SOC)および/または基本語(PT)によってまとめる。
【0499】
バイタルサイン
記述統計学は、ベースラインからのすべてのバイタルサインの測定(血圧および脈拍)変化について計算する。
【0500】
【0501】
実施例2に関する参照
【0502】
以下の参照は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
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【0538】
(実施例3)
ニューロメラニン高感度MRIによって明らかになったコカイン依存症における黒質中のドーパミン異常に関する証拠
要約
【0539】
目的:ヒト脳におけるドーパミン機能を検討する新規手段としてニューロメラニン高感度MRI(NM-MRI)の使用を裏付ける最近の証拠。この検討の目的は、この障害が鈍的シナプス前線条体ドーパミンに関連することを示す以前のイメージング検討に基づいて、年齢および性別一致対照と比較した、コカイン使用障害におけるNM-MRIシグナルを検討することであった。
【0540】
方法:NM-MRIおよびT1強調画像は、コカイン使用障害を有する20名の参加者、および35名の対照から取得した。NM-MRIシグナルにおける診断群の影響は、黒質(SN)内のボクセルワイズ解析を使用して決定した。NM-MRIが報酬処理の変化に関連するかどうかを検討するため、金銭報酬遅延課題を使用して、20名のコカイン使用者および17名の対照のサブセットも機能的MRIイメージングを受けた。
【0541】
結果:対照と比較すると、コカイン使用者は、SNの腹外側領域において、NM-MRIシグナルがかなり増大することが示された(線形回帰;修正後p=0.025、並べ替え検定;受信者操作特性曲線下面積=0.83)。探索的解析により、金銭報酬の期待の間に、腹側線条体の活性化に対するNM-MRIシグナルの有意な相関関係は見出されなかった。
【0542】
結論:以前のイメージング検討が、線条体におけるドーパミンシグナル伝達の低下を示していることを考慮すると、SNにおけるNM-MRIシグナルの増大の知見は、コカイン使用障害の病態生理学にさらなる洞察をもたらす。解釈の1つは、コカイン使用障害は、サイトゾルおよび小胞のプール間のドーパミンの再分布に関連し、ニューロメラニンの蓄積の増加をもたらすということである。したがって、この検討は、NM-MRIは、依存症において、ドーパミンシステムを調べるための実践的なイメージング手段として働くことができることを示唆している。
【0543】
序論
【0544】
ドーパミン機能の変化は、ドーパミン摂取、受容体密度およびドーパミン放出量(1)の測定を含む、ポジトロン放出断層法(PET)を使用して、コカイン使用障害において以前に実証されている。PETを用いて測定した、コカイン使用者における、刺激薬誘発性シナプス前ドーパミン放出量の低減が十分に再現され(1~4)、再発(1、2)を含めた、コカイン使用障害の一層難治性の症状に関連する。しかし、PETは、依存症において、ドーパミンシグナル伝達に関する重要な洞察を提供することができるが、費用が高く、かなり専門的な基礎設備を必要とする。さらに、リスクのある若年集団における、縦断的検討および研究におけるその使用は、放射活性曝露によって限定される。
【0545】
最近の検討により、ニューロメラニン高感度磁気共鳴画像法(NM-MRI)は、ドーパミン機能の相補的な非侵襲的代替尺度および完全性(5、6)をもたらすことができることが示唆される。ニューロメラニン(NM)は、黒質(SN)のドーパミンニューロンにおいて、生涯にわたり徐々に蓄積するサイトゾルドーパミンの変換から生成される色素である(7)。ニューロメラニンは鉄に結合し、MRIを使用してイメージングすることができる、鉄が形成する常磁性複合体に結合する(6、8、9)。NM-MRIは、パーキンソン病におけるSN神経変性後のニューロメラニン枯渇を確実に捕捉することができる(6、10)。重要なことに、この技法はまた、ドーパミン合成を刺激するとNM合成が促進されるというin vitroでの証拠(12、13)と一致する、神経変性の非存在下でのドーパミン機能の変化を捕捉することができる(5、11)。
【0546】
特に、黒質の部分領域内のNM-MRIシグナルは、精神病に関連して増加し(5)、精神病におけるドーパミンシグナル伝達の増加というPET所見と一致する(14)。さらに、NM-MRIシグナルは、シナプス前ドーパミン放出量のPET測定値と中脳における安静時血流の両方と直接相関する(5)。したがって、一実施形態では、本明細書において開示されている主題は、NM-MRIが、明白な神経変性なしに精神障害を検討するために有用性を有するドーパミン作動性経路の機能的変化の代替尺度を提供することを実証している。
【0547】
ここでは、NM-MRIを初めて使用し、ドーパミン機能不全を伴う障害であるコカイン使用障害において同様の変化を検出できるかどうかを試験した。この目的のために、本明細書における主な解析は、黒質におけるNM-MRIシグナルに対する診断群の影響について試験した。理論によって拘泥されないが、以前のPET検討(1、3)に基づくと、コカイン使用障害は、NM-MRIシグナルの低減を伴うと考えられる。探索的解析では、コカイン使用障害におけるNM-MRIシグナル強度の変化と、金銭報酬遅延課題中の血行動態脳応答との間の評価した関連性を評価した。この課題における報酬を期待している間の腹側線条体の活性化は、薬物依存および行動嗜癖(18、19)が一貫して低減するドーパミン(16、17)に関連する報酬処理(15)のロバストな機能的読み出しをもたらすことが示されている。腹側線条体は、腹側被蓋野および背内側SNからの投影を受け取るので(20、21)、SNにおけるNM-MRIシグナルと腹側線条体における報酬関連活性化との間の関係を探索した。
【0548】
方法
【0549】
参加者
【0550】
この検討は、New York State Psychiatric Instituteの施設審査員会によって承認された。参加者はすべて、書面のインフォームドコンセントを提出した。コカイン使用参加者は、他の現在の軸I診断または現在の医療的疾病がない、中等度から重度のコカイン使用障害に関する、DSM-V基準を満足した。他の物質使用障害(タバコおよびコカインを除く)のいずれも、除外基準であった。組入れ時に、これらの参加者は、燻煙したコカインを積極的に使用しており、これは、尿毒性により確認した。それらは、スキャンの前に最低でも5日間、断煙するように要求され、これは、尿薬物検査(隔日に実施)によって確認した。参加者は、スキャンの前に、最低で1時間、タバコの使用を控えた。タバコ使用対照および非タバコ使用対照の群もまた含んだ。スクリーニング手順には、身体検査、心電図および検査室検査が含まれた。参加者はすべて、広告によって、および口伝えによって動員した。対照は、現在または過去の軸I障害(タバコの使用障害を除く)、神経障害歴、または現在の主な医療的疾病について除外した。合計では、58名の男性がこの検討に参加した。3名の参加者(1名のコカイン使用者および2名の対照)は、使用不可のNM-MRI画像のため(参加者が動いたため[中脳に影響を及ぼす、はっきり見える、染みまたは帯のようなアーチファクトを示す、n=2]、または画像スタックの配置が正しくないため[n=1])に除外した。したがって、合計で55名の参加者:
図4に示されている、20名のコカイン使用者および35名の年齢および性別の一致した対照を解析に確保した。参加者はすべて、受けたソーシャルサポートの多次元尺度(Multidimensional Scale of Perceived Social Support)(22)およびベックうつ病調査表(23)を含む自己報告質問票を完了した。
【0551】
NM-MRIの取得
【0552】
磁気共鳴(MR)画像は、以前の検討(5)における方法に従い、32チャネルのフェーズドアレイNovaヘッドコイルを使用して、GE Healthcare 3T MR750スキャナーですべての検討参加者に対して取得した。ロジスティック上の理由から、代わりに8チャネルのin vivoでのヘッドコイルを使用して、数枚のスキャン(すべてのスキャンの7%、合計55名のうち4名)を取得した。NM-MRI画像は、以下のパラメーター:反復時間(TR)=260ms;エコー時間(TE)=2.68ms;フリップ角度=40°;面内解像度=0.39×0.39mm2;視野を含む部分的な脳の対象範囲(FoV)=162×200;マトリックス=416×512;スライス数=10;スライスの厚さ=3mm;スライスギャップ=0mm;磁化移動周波数オフセット=1,200Hz;励起回数(NEX)=8;取得時間=8.04分による、磁化移動コントラスト(2D GRE-MT)を使用した2Dグラジエント応答エコーシーケンスを使用して取得した。スライス処方プロトコールは、前交連-後交連線に沿って画像スタックを方向付け、上部スライスを第三脳室の床から3mm下に配置することからなった(さらなる詳細に関しては、(5)を参照されたい)。このプロトコールは、中脳の一部および周辺構造のSN含有部分の対象範囲を提供する。NM-MRI画像の前処理を支持するために(以下を参照されたい)、全脳の高解像度T1強調構造MRIスキャンも、高速スポイルドグラジエントエコーシーケンス(反転時間=500ms、TR=6.37ms、TE=2.59ms、フリップ角度=11°、FoV=256×256、スライス数=244、等方性ボクセルサイズ=1.0mm3)、または一部の場合、3D BRAVOシーケンス(反転時間=450ms、TR約7.85ms、TE約3.10ms、フリップ角度=12°、FoV=240×240、スライス数=220、等方性ボクセルサイズ=0.8mm3)を使用して取得した。NM-MRI画像の品質は、取得直後にアーチファクトに関して目視検査し、必要に応じて、時間の許す限りスキャンを繰り返した。
【0553】
NM-MRIの前処理
【0554】
以前の研究(5)と同様に、NM-MRIスキャンは、標準化されたMNI空間でのボクセルワイズ解析を容易にするために、SPM12を使用して前処理した。NM-MRIスキャンは、参加者のT1強調スキャンに最初に同時登録した。次に、組織のセグメント化は、T1強調画像を使用して行った。NM-MRIスキャンは、すべての検討参加者から生成した灰白質および白質のテンプレートを使用したDARTELルーチンを使用してMNI空間に正規化した。平滑化されていない正規化済みNM-MRIスキャンの再度サンプリングしたボクセルサイズは、1mmで等方性とした。画像はすべて、各前処理工程後に目視検査した。次に、カスタムMatlab(登録商標)(Mathworks)スクリプトを使用して、強度の正規化および空間平滑化を実施した。各参加者およびボクセルvに関するコントラスト対ノイズ比(CNR)は、CNR
v=(I
v-モード(I
RR))/モード(I
RR)として、NM含有量が最小値を有することが分かっている白質路、大脳脚の参照領域RRからのNM-MRIシグナル強度Iの相対差として計算した。参照領域のテンプレートマスクおよびSNのテンプレートマスクは、MNI空間におけるテンプレートNM-MRI画像に手作業でトレースすることによって作成した(検討参加者全員からの正規化NM-MRIスキャンの平均値、さらなる詳細に関しては
図1および以前の報告を参照されたい(5))。モード(I
RR)は、マスク内のすべてのボクセルの分布のヒストグラムにカーネル平滑化関数あてはめから各参加者について計算した。次に、得られたNM-MRIコントラスト対ノイズ比マップは、1mmの半値全幅ガウスカーネルを用いて空間的に平滑化した。
【0555】
NM-MRI解析
【0556】
解析はすべて、Matlab(登録商標)で実施した。先の検討(5)に従い、主要解析は、SNマスクにおけるコントラスト対ノイズ比の値のボクセルワイズ解析からなった。この手法は、機能的に別個のSNニューロン部分集団(20)におそらく対応するトポグラフィー変化を捕捉し、この手法は、ドーパミン作動性病態生理学に対して高い感度を以前に示した(5)。特に、一次ボクセルワイズ解析は、CNRv=β0+β1・診断+Σn
i=2βi・迷惑共変量+εとして、SNマスク内の各ボクセルvにおいて、コントラスト対ノイズ比(NMシグナル)を予測する、ロバスト線形回帰解析(Matlab(登録商標)におけるrobustfit関数)により、コカイン使用者および対照の間の特定の差異を検討し、タバコの使用(1日あたりのシガレットの本数)、ヘッドコイルおよび年齢が、迷惑共変量である。年齢とニューロメラニン蓄積(7)との間の既知の関係を考慮すると、年齢の補正が重要であることに留意されたい。以前の検討と同様に(5)、不完全なSN対象範囲または極値(コントラスト対ノイズ比<-8%またはコントラスト対ノイズ比>40%;対象あたり、平均71±195ボクセルまたはすべてのSNボクセルの4%を切り捨てた)のために欠測値を有する参加者データ点を切り捨てた後に、群に由来するテンプレートSNマスクを使用した。多重比較を修正し、以前の検討(5)に再度従い、効果の空間範囲を、正または負のどちらか一方の方向のNMシグナルにおける診断的差異(コカイン使用者と対照との間)を示すボクセルk(隣接している、または隣接していない)の数として定義した(p<0.05の回帰係数β1のt検定に対する、ボクセルレベルの高さ閾値、片側;結果は、p<0.01のより厳密な高さ閾値において、依然として有意であることに留意されたい)。次に、NMシグナルの個々のマップに関して、診断標識がランダムにシャッフルされた、並べ替え検定に基づいて、有意性検定を決定した。これにより、10,000個の並べ替えられたデータセットのそれぞれに対する空間範囲の測定値がもたらされ、真のデータにおける効果の空間範囲kを偶然に観測する確率を計算するためのヌル分布を形成する。したがって、この検定は、効果の空間範囲kが偶然によって予想されるよりも大きいかどうかを判定することによる多重比較を修正する(p補正後<0.05、10,000順列)。
【0557】
SNにおけるボクセルワイズな効果のより詳細なトポグラフィー説明に関すると、SNボクセル全体の事後多重線形回帰解析を使用して、SNマスク内の、x(正中線からの絶対距離)、yおよびz方向のMNIボクセル座標の関数として、効果の強度を予測した。完全性のため、SNマスク全体の平均NMシグナル対して関心領域解析も実施した。関心領域解析は、迷惑共変量として、ヘッドコイル、年齢および不完全なSN対象範囲(はい/いいえ)を含むロバストな線形回帰解析からなった。
【0558】
診断群に基づいて参加者を分けるNM-MRIの能力は、一次ボクセルワイズ解析においてコカイン使用障害に関連すると特定されたボクセルにおける平均NM-MRIシグナルに基づいて、効果量の推定値と受信者操作特性曲線下面積を計算することによって決定した(これ以降、「コカイン使用ボクセル」と呼ぶ:一次ボクセルワイズ解析またはリーブワンアウト手順後のボクセルワイズ解析によって診断効果を示すボクセル。リーブワンアウト手順を使用して、ボクセルの選択によって偏りのない効果量の測定値を得た:所与の参加者について、関心のある変数がNM-MRIシグナルに関連するボクセルが、この(提供された)参加者を除くすべての参加者を含む解析において最初に特定された。次に、提供された参加者における平均シグナルを、この一連のボクセルから計算した。この手順をすべての参加者に対して繰り返し、そうして、各参加者が、それらを除外した解析から得られた、抽出された平均NM-MRIシグナル値を有した。コーエンのdおよびf2効果量測定の信頼区間は、ブーストトラップによって決定した。
【0559】
偏相関関係は、コカイン-使用時ボクセルから抽出した、NM-MRIシグナルに対する臨床的な測定値に関係し、年齢およびタバコの使用を共変量とした。p<0.05でのLilliefors検定によれば、臨床測定値が正規分布していなかったので、スピアマン偏(ノンパラメトリック)相関を使用した。
【0560】
fMRI方法
【0561】
検討参加者の37名(20名のコカイン使用者、17名の対照)fMRIデータを収集した。参加者が金銭報酬遅延課題を完了している間に、血中酸素濃度依存(BOLD)fMRIを取得した。エコープラナー画像は、以下のパラメーター:反復時間(TR)=1500ms;エコー時間(TE)=27ms;フリップ角度=60°;面内解像度=3.5×3.5mm2;スライスの厚さ=4mm;スライスギャップ=1mmで取得した。2回行い、それぞれ、12.1分間、続いた。fMRI画像は、スライス時間補正、再調整、T1強調スキャンへの同時登録、標準化されたMNI空間への空間正規化、平滑化(6mm半値全幅カーネル)を含む、SPM12における標準法を使用して前処理した。使用した金銭報酬遅延課題は、金銭報酬(1ドルまたは5ドル)、金銭的損失(1ドルまたは5ドル)または結果なし(0ドル)に関するフィードバックのその後の受領にリンクした視覚的手がかり(幾何学的形状)の提示を含む標準バージョン(24)と同様であった。この課題は、5つの条件に均等に分割した110回の試験からなった。お金を得るか、または損失を回避することは、参加者に視覚的な合図に続く素早くキーを押させることによって、確率的に実現した。キーを押すのに利用可能な時間は、練習試験の間の参加者の運動速度に基づいて個別化した。第1レベルのモデルには、予測期間(ボタンを押した後、およびフィードバック前の期間として定義)、見込み期間(手がかりの提示後、およびボタンを押す前)、および結果期間(フィードバックの送信時)の間の、5つの条件すべてに対するボックスカーリグレッサを含んだ。迷惑リグレッサには、24個のモーションパラメーター(6個のモーションパラメーター、およびその二乗、導関数、および二乗導関数)、および2回の実行に対応するセッション固有の切片が含まれた。以前の検討(15)と同様に、報酬の期待中の活性化は、5ドルと0ドルの獲得条件との間のコントラストによって定義した。各参加者に関すると、腹側線条体のマスク内のこのコントラストからのシグナル(公表されている線条体の機能マスクから、//osf.io/jkzwp/)を抽出した。腹側線条体は、この課題を使用すると、最も一般的に調査される脳構造であり(19)、この課題の間に報酬に関連する活動のロバストなかつ信頼性の高い読取り値をもたらすことが示された(25)。NM-MRIへの関係を決定するために、線形回帰を使用して、年齢およびタバコの使用を制御する、腹側線条体における予測的なBOLD活性に対する、診断、コカイン使用ボクセルにおけるNM-MRIシグナル、およびNM-MRIシグナルによる診断の相互作用の効果を検討した。
【0562】
結果
【0563】
黒質におけるNM-MRIシグナルに及ぼす診断の影響
【0564】
コカイン使用者と対照との間の差異の演繹ボクセルワイズ解析
【0565】
SN内で主に腹外側に位置するボクセルのサブセットは、対照と比較した、コカイン使用者において有意に増加したNM-MRIシグナル(コントラスト対ノイズ比)を示した(p<0.05において、1775個のボクセルのうち344個、年齢、ヘッドコイルおよび1日あたりのシガレットの本数を制御する、ロバストな線形回帰;p
補正後=0.025、並べ替え検定;ピークボクセルMNI座標[x、y、z]:6、-26、-17mm;
図2Bを参照されたい)。比較的軽度の喫煙者のこのサンプルでは、タバコの使用は、NM-MRIシグナルの差異に有意に関連しなかった(267個のSNボクセルは、一次線形回帰モデル、p
補正後=0.054における、1日あたりのシガレットの本数に正に相関するシグナルを示した)。
【0566】
コカイン使用者が、ボクセルワイズ解析における対照に対するNM-MRIシグナルの増大を示す、ボクセルから抽出された平均NM-MRIシグナル値に基づくと(
図2Bでは赤色で示されているコカイン使用ボクセル、
図2Aの上部パネルに示されているこれらのボクセルからの抽出した値を含む)、コカイン使用障害の診断は、NM-MRIシグナルに中等度から大きな影響を及ぼした(コーエンのd=1.34、95%信頼区間[CI]=0.91~1.90、コーエンのf2=0.46、95%CI=0.19~0.95;偏りのないリーブワンアウトコーエンのd=0.77、95%CI=0.35~1.27、コーエンのf2=0.15、95%CI=0.02~0.43;すべての推定値は、年齢、ヘッドコイルおよびタバコの使用に合わせて調節されたNM-MRIシグナルに基づいた)。コカイン使用ボクセルから抽出された調節後のNM-MRIシグナルの診断的差異は、考えられる交絡に対する検討サンプルのサブセットを解析した場合、中程度から大きいままであった(教育年数の制御:コーエンのd=0.76、95%CI=0.22~1.39、n=38;抑うつ症状の制御:コーエンのd=0.84、95%CI=0.31~1.52、n=37;認識されたソーシャルサポートの制御:コーエンのd=1.06、95%CI=0.52~1.72、n=37;非喫煙者を除く:コーエンのd=1.05、95%CI=0.50~1.74、n=28;8チャネルコイルでスキャンされた参加者を除外:コーエンのd=1.38、CI=0.93~1.97、n=51)。さらに、大部分のコカイン使用者は、コカイン使用時ボクセルから抽出された調節したNM-MRIシグナルに基づいて、35名の対照すべてに対して正常に分類することができた(受信者操作特性曲線下面積[AUC]=0.83、バイアスのないリーブワンアウトAUC=0.71;
図2)。
【0567】
完全性のため、関心領域の解析を使用して全SN内で平均化したNM-MRIシグナルを調べた。ここでもやはり、コカイン使用者は、対照と比較して有意に増加したNM-MRIシグナルを示した(t49=2.07、p=0.044、コーエンのd=0.62、95%CI=0.19~1.12、年齢、ヘッドコイル、タバコの使用および不完全なSN対象範囲を制御するロバスト線形回帰;AUC=0.69)。
【0568】
黒質におけるNM-MRIシグナルとコカイン使用の重症度の測定値との関係の探索的解析
【0569】
コカイン使用時ボクセルから抽出したNM-MRIシグナルが、コカイン使用の重症度と相関するかどうか試験し、使用期間(ρ=-0.33、p=0.18)または1週間あたりのコカインに費やされた金額と有意な相関関係がないことが見出された(ρ=-0.08、p=0.74;年齢およびタバコの使用を制御するスピアマン偏相関)。
【0570】
黒質におけるNM-MRIシグナルと報酬の期待に応答する腹側線条体との関係の探索的解析
【0571】
コカイン使用障害におけるドーパミン関連回路機能不全に対するNM-MRI所見の関係を探索するため、金銭報酬を期待している間に、腹側線条体においてfMRI BOLD活性化を測定した。期待される通り、参加者のすべてにわたり、報酬がない場合と比較して報酬を期待した場合に、腹側線条体においてBOLDシグナルがより高かった(t36=2.56、p=0.015、期待している間の[5ドル~0ドル]対比の1サンプルt検定)。しかし、腹側線条体におけるこの報酬に関連する活性化は、群間で差異がない(β=0.038、t32=0.72、p=0.48)か、またはすべての参加者にわたり、コカイン使用時ボクセルにおけるNM-MRIシグナルと相関しなかった(β=-0.015、t32=-1.52、p=0.14)。腹側線条体における報酬関連活性化に対するNM-MRIシグナル相互作用による群も存在しなかった(p=0.24;年齢およびタバコの使用を制御する線形回帰)。
【0572】
議論
【0573】
コカイン使用障害を有する個体のSNにおけるNM-MRIシグナルの増大を示すデータが本明細書において提示されている。この増大は、全SNの全体にわたり示されなかったが、むしろより腹側および外側のSN部分領域で優勢であった。NM-MRIシグナルが、実験的調製における合成メラニンの濃度(8)、および死後中脳組織中のNMの濃度(5)に反映すること、およびSNにおけるNM蓄積はドーパミン機能に依存することを考慮すると(5、12、13)、これらの知見により、コカイン使用者が、ドーパミン作動性機能不全の指標となり得る、これらのSN部分領域における、NM濃度の向上を示すことが示唆された。
【0574】
シナプス前ドーパミンがコカイン使用障害において鈍化することを示した以前のPET検討を考慮すると、コカイン使用者におけるNMシグナルが上昇するという知見は、驚くべきものであった(1~4)。しかし、この相違点は、この障害におけるドーパミンシグナル伝達の病態生理学にさらなる洞察をもたらす。線条体におけるドーパミン放出の鈍化とSNにおけるNMの上昇とを組み合わせると、ドーパミンが対照と比べ、コカイン使用者では、異なって分布していることを示唆する。シナプス小胞に集中するドーパミンが少なく、サイトゾルプールにドーパミンが一層多いことは、小胞からのドーパミン放出量を推定するPET検討と、サイトゾル中のドーパミン濃度に基づいて蓄積するNMのイメージングとの間の相違点が説明される(12、26)。一方、コカイン使用障害がドーパミン合成の全体的かつ持続的な減少と関連している場合、PETおよびNM-MRIシグナルの両方の低下が期待される。
【0575】
コカイン使用障害が小胞とサイトゾルの貯蔵との間のドーパミンの再分布を含むという仮説を支持する、いくつかの以前の検討が存在する(この仮説の図示に関しては、
図3を参照されたい)。慢性的なコカイン曝露は、小胞モノアミン輸送体2(VMAT2)の発現量の低減と関連しており、小胞プールにおいてドーパミンが少なくなり、サイトゾルプールのドーパミンが多くなる。VMAT2の低減は、コカインを慢性的に自己投与する非ヒト霊長類(27)およびヒトコカイン使用者(28)に示されている。死後ヒト検討でも、コカイン使用者における線条体VMAT2の低減が示されている(29~31)。
【0576】
コカイン使用障害におけるVMAT2発現量の鈍化により、PETによるシナプス前ドーパミン放出量の低下が説明され(1~4)、この集団で見られる[18F]DOPA蓄積の低下を説明することもでき(32)、これは、シナプス小胞に集中する放射性トレーサーに依存する可能性が高いからである(33)。VMAT2発現量の低下は、中脳におけるNM形成の上昇と相関することも示されている(12、34)。コカインの使用は、D2自己受容体および他のいくつかのタンパク質の発現量の変化と関連していることが示されているが(1、35)、これらの変化は一般に、NM蓄積とドーパミン放出の両方を同じ方向にシフトさせると思われる。一方、VMAT2の変化は、反対方向に発生する観察された変化に対する最も簡潔な説明として際立つ。まとめると、これらのイメージング検討は、コカインの使用が小胞プールにおけるドーパミンの低下およびサイトゾルコンパートメントの一層高い濃度に関連していることを示唆する。しかし、仮説を裏付けるためには、中脳におけるNM-MRIと組み合わせたコカイン使用者におけるVMAT2およびドーパミン放出をイメージングする検討が必要である。コカインの使用が実際にサイトゾルのドーパミンを増加させる場合、このコンパートメントでのドーパミンの酸化が反応性キノン種を形成するので、上記のことは、ニューロンにリスクをもたらす可能性がある(36)。しかし、コカイン使用者におけるドーパミン細胞死の増進(37)またはパーキンソン病のリスク(38)の明確な証拠は存在しない。
【0577】
主な知見の別の解釈は、コカイン使用者におけるNM上昇が、参加者の生涯にわたって発生したドーパミンの反復する一時的な急上昇に起因し、これは、PETによって捕捉できない可能性がある。NM顆粒は、細胞死の後にしか除去されず(26)、したがって、ドーパミン機能の長期的なリポーターとして機能し、コカイン使用歴かなり以前であっても(これは、コカイン消費中に過度なドーパミンに急激に至る恐れがある)、NM-MRIシグナルの持続的増加として現れ得る。この可能性に対処するには、将来の縦断的検討が必要になると思われる。
【0578】
知見の機能的重要性の最初の試験として、SN内のコカイン使用時ボクセルにおけるNM-MRIシグナルが、報酬システム機能のロバストなプローブである金銭報酬遅延課題の間の腹側線条体における報酬の期待に対するfMRI応答と相関するかどうかを検討した(15、19、25)。有意な相関関係は見出されなかった。コカイン使用者における異常は、主な投射を腹側線条体に送る「辺縁」SNまたは腹側被蓋野[過大包括的SNマスクの背内側領域(21)]の近傍でクラスター形成しないので、これはおそらく驚くべきことではない。むしろ、トポグラフィー解析は、認知の柔軟性および他の高次機能に関与すると考えられる背側線条体への顕著な投射を伴う部分領域である腹側(または「認知」)SN(21)において優勢な群の差異であることを示した。コカイン使用者におけるドーパミン機能のPETイメージング検討により、背側線条体におけるドーパミン作動性変化の一貫した証拠が見出されたが、上記の検討により、腹側線条体の顕著な変化もまた見出された。興味深いことに、この集団では、コカイン使用者がSNの背側線条体投射領域においてNM-MRIシグナルの増加を示すが、腹側線条体投射領域では増加しないという観察は、背側線条体ではなく腹側線条体での有意なVMAT2低減するという以前の観察と一致する(28、31)。この解剖学的パターンの根底にあるものが何であろうとも、認知機能を補助する黒質線条体回路がコカイン使用障害において重要となり得ること、および今後の検討は、報酬課題に加えて、一層高次の認知過程を探索することによって、この障害におけるNM-MRIシグナル変化の機能的重要性を決定付けるために良好な位置にあり得ることを強調するものである。
【0579】
この検討の主な制限は、比較的小さく、全部が男性のサンプルであることである。しかし、物質使用障害におけるNM-MRIのこの最初の報告は、この集団においてドーパミン機能を測定するための、このような方法が有望であることを裏付けるものである。物質使用を調査する唯一の以前のNM-MRI検討は、精神病患者の小グループにおけるSN領域のサイズの予備評価であった。物質使用を伴う精神病患者は、非使用患者よりも大きなSN領域を示した(39)。物質使用障害における死後組織中のNM濃度を調査する以前の研究はなく、これは知見の収束的支持を提供するための重要な将来の方向性になると思われる。とりわけ、NM-MRIおよびタバコ使用の間の傾向レベルの関係を示す知見に照らし合わせると、一般化の問題に対処するためにさらなる研究が必要である(これは、より多数のサンプルまたは一層頻度の高い喫煙者では有意に十分に到達し得る)。NMシグナルの増加がVMAT2の下方調節によるものであると仮定すると(27、28)、報告されたNM-MRI表現型は、VMAT2に影響を及ぼすコカインまたは他の薬物に特異的である可能性がある[おそらくメタンフェタミンを含むが、VMAT2との関係はあまり明確ではない(1)]。本明細書におけるデータにおいてNM-MRIシグナルとコカイン使用期間との間に有意な相関関係がないことは驚くべきことである。NMが経時的に蓄積することを考えると、使用期間が長くなると、コカイン使用者に見られるいずれの異常も誇張されることが予想される。しかし、参加者全員が長年コカインを使用しているので、本明細書において開示されているサンプルの使用期間の範囲が限られているために、有意な関係が欠如している可能性がある。NM-MRIシグナルは、単一の生物学的過程を反映していないが、ドーパミン合成(12)、小胞へのドーパミンの移動(34)またはドーパミン細胞死(6)の変化によって変化する可能性がある。このような非特異性は、イメージング測定に共通しており(40、41)、本明細書における知見は以前のPETイメージング報告に照らして解釈することができるので、神経生物学的機構の三角測量におけるマルチモーダル研究の有用性の根拠を示す。NM-MRIの結果の解釈は、コカイン使用者におけるドーパミン細胞死の増進がないことによって単純化されるが(37)、NM蓄積の変化と組み合わされた実質的な細胞死を示す障害をもたらすNM-MRIの解釈は、一層、難題となり得る。
【0580】
ここで、コカイン使用者における異常なNM蓄積に関するNM-MRIの証拠が、提示されており、これは、以前の研究と一致するドーパミン機能不全の間接的な指標である。したがって、本明細書において開示されている主題は、NM-MRIを依存症の有望な研究手段として位置付け、覚醒剤使用障害の候補バイオマーカーとしてのその開発を支持するものである。依存症におけるドーパミンの中心的な役割とNM-MRIデータ取得の容易さを考えると、この方法は、PETを使用して検討するのが難題である、特に若くてリスクのある集団への機会を提供し、ドーパミンの変化の縦断的軌跡を説明するので、依存症におけるドーパミンの変化の理解を進める可能性を有する。
【0581】
実施例3に関する参照
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【0582】
(実施例4)
ニューロメラニン高感度MRIシグナルと老年期うつ病における精神運動遅滞との関連
要約
【0583】
老年期うつ病(LLD)は、高齢者によく見られる障害状態であり、処理速度と歩行速度の低下を伴うことが多い。これらの症状は、ドーパミン機能の障害に関連しており、レボドーパ(L-ドーパ)によって時として治療される。この検討では、ドーパミン機能の代替尺度であるニューロメラニン高感度磁気共鳴画像法(NM-MRI)と、数字記号試験および歩行速度パラダイムによって測定されるベースラインの減速との間の関連性を判定するため、LLDを有する33名の高齢者を募集した。二次解析では、3週間のL-ドーパを服用したこれらの患者のサブセット(N=15)におけるL-ドーパ処置応答を予測するNM-MRIの能力も評価した。これらの患者のさらなるサブセット(N=6)は、ベースライン時および処置後にNM-MRIを用いてスキャンし、NM-MRIシグナルに対するL-ドーパ処置の効果を評価した。特に、内側、前側および背側のSN-VTAにおいて、ベースラインNM-MRIが低いと、ベースライン歩行速度が遅くなることと相関することが見出された(1,807個の黒質腹側被蓋野(SN-VTA)ボクセルのうち346個、P補正後=0.038)。二次解析では、ベースラインNM-MRIと、歩行速度、処理速度またはうつ病の重症度における処置関連変化との間の関連性を示すことができなかった(すべてP補正後>0.361)。ベースラインと比較して、L-ドーパによる処置の3週間後のNM-MRIシグナルが増大する証拠が見出された(1,807個のSN-VTAボクセルのうち200個、P補正後=0.046)。全体として、これらの知見は、NM-MRIがLDDを有する患者における歩行速度の変動に感度が高いことを示しており、このことは、この非侵襲的MRI測定は、老年神経精神医学におけるドーパミン関連性精神運動遅滞の有望なマーカーを提供し得ることを示唆する。
【0584】
序論
【0585】
老年期うつ病(LLD)は、高齢者によく見られる障害状態であり、再発することが多く、慢性化する恐れがあり、抗うつ剤投薬に非応答性であることが多い(1~4)。動機付けの欠陥、処理速度の減速、および歩行障害は、LLD表現型の顕著な側面であり、ドーパミン作動性機能不全が重要な病態生理学的役割を果たし得ることを示唆する(5~7)。これらの特徴は、抗うつ薬処置の負の予後因子であり(8)、死亡を含めた一層幅広い健康への悪影響転帰の予見となる(9、10)。最近の検討により、カルビドーパ/レボドーパ(L-ドーパ)単剤療法が、選択された線条体部分領域においてドーパミンの利用可能性を増大することにより、うつ病高齢者における処理速度、歩行速度およびうつ症状を大幅に改善することが示唆されている(11)。しかし、LLDは、不均一で病因的に複雑な障害であり、ドーパミン欠乏症の個体を特定し、その処置を個別化するための非侵襲的でスケーラブルな方法の必要性を示唆する。この方向への最初のステップとして、ここでは、ニューロメラニン高感度磁気共鳴画像法(NM-MRI)がLDDのドーパミン関連表現型、特に精神運動遅延を捕捉する能力を試験した。
【0586】
精神運動遅延は、LDDにとって臨床的に非常に重要であり、ドーパミン機能にリンクしている。LLDでは、処理速度の低下は、抗うつ剤に対する貧弱な急性応答(8)、および認知症に対する一層高いリスクを予測(12)する一方、歩行の減速は、転倒(13)、障害(14)および死亡(6)のリスクが高まる。高齢個体における精神運動遅滞は、少なくとも部分的には、加齢に伴うドーパミン伝達の低下に起因すると考えられており(15~17)、中線条体ドーパミン作動性伝達を歩行速度にリンクするヒトおよび前臨床研究と一致する(18、19)。このリンクを考慮すると、精神運動遅延の存在は、LDDの病態生理学に対する中心となり得る(7)、根本的なドーパミン作動性欠損であって、L-ドーパなどのプロドーパミン作動性処置によって改善され得るドーパミン作動性欠損を示し得る。実際に、以前の検討により、歩行速度が遅いLLD個体では、L-ドーパ単剤療法は、中線条体ドーパミン伝達を正常化することにより、精神運動遅滞およびうつ症状を改善することができることが示された(11)。これらの結果は有望であるが、歩行速度の低下は、ドーパミン欠損の間接的かつ非特異的なマーカーであり、NM-MRIのようなより直接的な尺度が、L-ドーパ処置から最も恩恵を受け得るLDD患者の選択を最適化することができることを示唆する。
【0587】
NM-MRIは、NMリッチ領域におけるニューロメラニン(NM)濃度の可視化を可能にする非侵襲的イメージング技法である(20、21)。NMは、黒質(SN)のドーパミン作動性ニューロンに蓄積するドーパミン代謝の生成物である(22~25)。SNのNM-MRIイメージングは、ドーパミン機能のマーカーとして最近検証され、NM-MRIシグナルは、線条体におけるドーパミン放出能のポジトロン放出断層法(PET)測定値と相関し、精神性疾病に関連するドーパミン機能不全を捕捉する(20)。したがって、NM-MRIは、少なくとも一部のLDD患者を含むドーパミン機能不全を有する患者における処置選択のための潜在的なバイオマーカーとして独自に適しており、その非侵襲性、費用効果および電離放射線がないことを考慮すると、広く採用することができる。
【0588】
本検討の目的は、精神運動遅滞のための潜在的なバイオマーカーとしてNM-MRIの適合性を判定すること、ならびにNM-MRIが、LLDにおけるL-ドーパ処置応答を予測する能力を試験およびそのモニタリングを開始することであった。理論によって拘泥されないが、一層遅い処理を有する個体、および一層遅い歩行を有する個体は、NM-MRIによって測定すると、一層低いドーパミン機能を示すと考えられる。さらに、少ないサンプルでの二次解析では、L-ドーパ処置後に精神運動遅滞の改善をNM-MRIが予測する能力を検討した。患者のさらなるサブセットにおける解析では、L-ドーパ処置に関連するドーパミン機能の縦断的な変化を捕捉するNM-MRIの感度もまた検討した。
【0589】
方法および物質
【0590】
対象
【0591】
記載されている検討は、New York State Psychiatric Institute(NYSPI)におけるAdult and Late Life Depression Research Clinicにおいて行い、NYSPI Institutional Review Boardによって承認を受けた。LLDに関する研究プログラムは、多数の治療的および病態生理学的検討を包含する。サンプルサイズを増加するため、データは、同様の選択診断基準を有しており、かつ同じNM-MRIシーケンスを利用する2つの検討から集めた。第1の検討(N=18;検討1)は、抗うつ剤処置試験とし、この試験からは、ベースラインデータだけを使用した。第2の検討(N=15;検討2)は、非盲検L-ドーパ試験とし、ここから、ベースラインおよび処置後データを使用した(処置前後L-ドーパデータセット)。これらの15名の個体のうち、L-ドーパを服用した後のNM-MRIデータの経過観察を6名で収集した。この解析に含まれるサンプルのさらなる図示に関しては、
図5を参照されたい。すべての対象(N=33;検討1+検討2)は、診断および統計マニュアル5の大うつ障害、気分変調症または特に指定されていないうつ病と診断されており、標準化された尺度(ハミルトンうつ病評価尺度[HRSD]≧16または疫学研究センター-うつ病評価尺度≧10)に関して、最小うつ症状スコアを有する、≧60歳の成人外来患者とした。物質乱用または依存症を示し、精神病性障害、双極性障害、または認知症の可能性があると診断され、ミニメンタルステート検査スコア≦24、HRSD自殺項目>2またはベースラインにおいて臨床対象全般印象度-重症度スコア7を有する対象はすべて除外した。急性または重度の医学的疾病、動きが制限された変形性関節症または関節疾患、MRIへの禁忌を有する、または過去4週間以内に向精神薬で、またはドーパミンに影響を及ぼすことが公知の他の投薬で処置された対象も除外した。
【0592】
評価
【0593】
ウェクスラー成人知能検査IIIからの数字記号試験を使用して、処理スピードを評価した(26)。歩行速度は、検討参加者が15フィートの歩行コースを通常または正常の速度で歩く、単一課題としてm/sで測定した。2回の試験を完了し、最終的な歩行速度の測定値をこれら2回の試験の平均として記録した。うつ病の重症度は、24項目のHRSDを使用して評価した。
【0594】
検討1の設計
【0595】
評価およびMRIデータは、抗うつ剤処置(N=18)を始める前にベースラインで得た。さらなる詳細は、clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01931202に見出すことができる。
【0596】
検討2の設計
【0597】
この検討への組入れはまた、歩行速度の低下を必要とする(15フィートコースでの平均で歩く速度<1m/秒として定義)。評価およびMRIデータは、L-ドーパ処置(N=15)を始める前にベースラインで取得した。それらのMRIスキャンの後、対象は、37.5mgのカルビドーパ/150mgのレボドーパを1日1回(午前9時)の服用を開始した。この投与量での1週間後、対象は、1日2回、37.5mgのカルビドーパ/150mgのレボドーパを服用するよう指示を受けた(午前9時および午後5時)。処置の3週目に関しては、対象は、毎日3回、37.5mgのカルビドーパ/150mgのレボドーパ(午前9時、正午および午後5時)を服用した。参加者は、上記の検討全体を通じて、同じ時機の用量を維持するよう指示を受けた。これらの参加者(N=6)のサブセットは、処置後評価を行った3週間後の訪問に、処置後のMRIスキャンを受けた。検討手順の全記載に関する以前に公開された主要な転帰の原稿を参照されたい(11)。さらなる詳細は、clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02744391に見出すことができる。処理および歩行速度は、ベースライン時に、次に、L-ドーパ処置の間、毎週、評価した(すなわち、0~3週目)。評価は、時刻の影響および最後の朝のL-ドーパ用量からの期間(4時間と予想される)を管理するために、午後1時頃に行った。HRSDもまた第0週と第3週に実施した。処理速度、歩行速度およびHRSDの変化は、第3週目と第0週目の間の差として採用した。
【0598】
磁気共鳴画像法
【0599】
脳の磁気共鳴画像は、32チャネルのフェーズドアレイNovaヘッドコイルを使用してGE MR750 3.0Tスキャナーですべての参加者について取得した。NM-MRIデータは、以下のパラメーター(20):反復時間(TR)=260ms;エコー時間(TE)=2.68ms;フリップ角度=40°;面内解像度=0.39×0.39mm2;視野を含む部分的な脳の対象範囲(FoV)=162×200;マトリックス=416×512;スライス数=10;スライスの厚さ=3mm;スライスギャップ=0mm;磁化移動周波数オフセット=1,200Hz;励起回数(NEX)=8;取得時間=8.04分による、磁化移動コントラスト(2D GRE-MT)を使用した2Dグラジエントリコールドエコーシーケンスを使用して取得した。スライス処方プロトコールは、前交連-後交連線に沿って画像スタックを方向付け、脳の中央部における矢状面で見た、上部スライスを第三脳室の床から3mm下に配置することからなった。このプロトコールは、臨床集団によって許容され易い短いスキャンを使用する高面内空間的解像度によって、中脳のSN含有部分(ならびに脳幹を取り巻く皮質および皮質下の構造)を対象範囲にした。NM-MRIデータの前処理のために、全脳の高解像度T1強調3D BRAVO構造MRIスキャンを以下のパラメーター:反転時間=450ms、TR=7.85ms、TE=3.10ms、フリップ角度=12°、FoV=240×240、マトリックス=300×300、スライス数=220、等方性ボクセルサイズ=0.8mm3で取得した。
【0600】
NM-MRIデータは、SPMとANTを組み合わせたパイプラインを使用して前処理し、高い試験と再試験の信頼性を実現することが以前に示された(27)。パイプラインは、以下のステップからなった:(1)「antsBrainExtraction.sh」を使用したT1w画像の脳抽出;(2)「antsRegistrationSyN.sh」(リジッド+アフィン+変形可能syn)を使用した、脳から抽出したT1w画像のMNI空間への空間正規化;(3)「antsRegistrationSyN.sh」(リジッド)を使用したNM-MRI画像のT1w画像への同時登録;(4)「antsApplyTransforms」を使用してステップ(2)および(3)で推定された変換を組み合わせた単一ステップ変換による、NM-MRI画像のMNI空間への空間正規化;(5)「ResampleImage」を使用して、空間的に正規化したNM-MRI画像を1mmの等方性解像度へのリサンプリング;(6)「SPM-Smooth」を使用した、半値全幅1mmのガウスカーネルを用いた空間的に正規化したNM-MRI画像の空間平滑化。次に、前処理したNM-MRI画像を使用して、NM-MRIコントラスト比(CNR)マップを推定した。各ボクセルでのNM-MRI CNRは、CNRV={[Iv-モード(Icc)]/モード(ICC)}×100として、NM含有量が最小値を有することが公知の白質路の領域である大脳脚(ICC)のシグナル強度から、所与のボクセル(IV)でのNM-MRIシグナル強度のシグナル差割合として計算した。モード(ICC)は、CCマスク内のすべてのボクセルのヒストグラムのカーネル平滑化関数あてはめから各参加者に対して計算した(20)。
【0601】
統計解析
【0602】
先験的解析では、より低いベースラインNM-MRI CNRが、より遅い精神運動変数と相関するという仮説を検証した(数字記号および歩行速度;N=33;検討1+検討2)。二次解析では、本発明者らは、ベースラインNM-MRI CNRがこれらの精神運動変数のL-ドーパ誘発性改善(スピード)を予測するかどうかを検討した(N=15;検討2)。これらの効果は、Cassidyらで検証されたボクセルワイズ解析手法を使用して、黒質-腹側被蓋野(SN-VTA)複合体内で試験した(20)。手短に述べると、この方法は、並べ替え検定を使用したロバスト線形回帰解析および回帰係数の有意性の検定を使用する。先験的仮説(モデル1)を試験するために使用した線形モデルは、CNRV=β0+β1・歩行速度+β2・数字記号スコア+β3・HRSD+β4・年齢+β5・性別+β6・教育とし、β1~3は、目的の変数であり、β4~6は、目的としない共変量である。二次解析(モデル2)に関する線形モデルは、CNRV=β0+β1・Δ歩行速度+β2・Δ数字記号スコア+β3・ΔHRSD+β4・歩行速度+β5・数字記号スコア+β6・HRSD+β7・年齢+β8・性別+β9・教育とし、β1~3は、目的の変数であり、β4~9は、目的としない共変量である。1つのモデルにおいて目的のすべての変数を含めると、効果のより大きな特異性をもたらすと同時に、回帰係数のt検定の自由度を調節することによって誤検出を防ぐ、より保守的な検定も提供される(28)。有意な効果を示すボクセルの数は、目的としない共変量を一定に保ちながら、目的とする変数のランダム順列の10,000回の反復が実行された、並べ替え検定によって有意であると判定された。さらなる詳細に関しては、Cassidyらを参照されたい(20)。このボクセルワイズな並べ替え検定は、ボクセル間の多重比較を補正し、機能的MRI検討で使用される方法と同様に、誤検出に対する適切な保護をもたらす(29)。
【0603】
探索的解析では、本発明者らは3週間のL-ドーパ処置後にNM-MRI CNRの変化を検出することができるかどうかも調査した(N=6、検討2のサブセット)。L-ドーパ処置前後のNM-MRI CNR値を比較するノンパラメトリックな符号順位検定を使用したことを除いて、同様のボクセルワイズ解析アプローチを使用した。有意な効果を示すボクセルの数は、各対象のL-ドーパ処置前後の標識の無作為な割り当てを10,000回、反復することによってヌル分布が誘導された並べ替え検定によって有意であると判定した(すなわち、対象のL-ドーパ処置前のNM-MRI CNR値に関する50%見込みは、それらのL-ドーパ治療後の値として割り当てられ、それらのL-ドーパ処置後の値は、そのL-ドーパ処置前の値として割り当てられる)。
【0604】
ベースライン歩行速度とPETによるドーパミン機能測定値を比較する効果量を使用した先験的検出力解析(19)は、33名の対象(両側、□=0.05)のベースラインサンプルでは、効果を検出するのに85%の検出力となることを実証したが、15名の対象のL-ドーパサンプルでは、50%の検出力でしかなかった。したがって、前者のサンプル(モデル1)における解析は、先験的試験として十分な検出力であった。完全性と説明の目的で提示されている後者の探索的性質を考慮すると、演繹試験と二次試験にわたって追加の修正は行わなかった。
【0605】
検討2からの経過観察NM-MRIサブセットにおける潜在的な選択バイアスを除外するために、ピアソンのカイ二乗検定またはマン・ホイットニーU検定を使用して、L-ドーパ処置の3週間後に経過観察NM-MRIスキャンを受けた検討2における参加者(N=6)、および処置後に経過観察NM-MRIスキャンを受けなかった参加者(N=9)間の人口統計学的特徴および臨床的特徴を比較した。
【0606】
結果
【0607】
サンプル特徴
【0608】
サンプルの臨床的および人口統計学的特性を
図5に示す。33名の対象すべてについて、平均年齢は71.8±6.5歳であり、63.6%は女性であり、平均教育は、16.8±2.5歳であり、平均歩行速度は、0.97±0.32m/秒であり、平均数字記号スコアは、36.8±10.7であり、平均HRSDは20.7±6.6であった。経過観察NM-MRIスキャンを有する検討2における対象と経過観察NM-MRIスキャンを行わなかった対象の間に有意差は観察されなかった。
【0609】
ベースライン歩行速度は、ベースラインNM-MRIに関係する
【0610】
理論によって拘泥されないが、処理が遅い個体と歩行が遅い個体は、LLDを有する33名の患者においてNM-MRIによって測定すると、より低いドーパミン機能を示すという演繹仮説を調査した(検討1+検討2)。ボクセルワイズな線形回帰モデル(モデル1)は、SN-VTAマスク内のNM-MRI CNRを、共変量として年齢、性別および教育を用いる、歩行速度、数字記号スコアおよびHRSDの関数として予測した。これにより、NM-MRI CNRが歩行速度と正の相関関係にある一連のSN-VTAボクセルのセットが明らかになった(P<0.05では、1,807個のSN-VTAボクセルのうち346個、ロバスト線形回帰、P
補正後=0.038、並べ替え検定;
図7)。対照的に、数字記号スコア(P<0.05で1,807個のSN-VTAボクセルのうち194個、P
補正後=0.121、並べ替え検定)またはHRSD(P<0.05で1,807個のSN-VTAボクセルのうち19個、P
補正後=0.731、並べ替え検定)には有意な効果はなかった。歩行速度とNM-MRI CNRの間の関係のトポグラフィー解析では、より内側(β
|x|=0.02、t
1803=2.40、P=0.016)、前部(β
y=0.14、t
1803=25.8、P=10
-124)および背側(β=-0.05、t
1803=-6.62、P=10
-10)SN-VTAボクセル[x(正中線からの絶対距離)、yおよびz方向のそれらの座標の関数としてのSN-VTAボクセル全体の歩行速度効果のt統計量を予測する重回帰解析:オムニバスF
3,1803=297、P=10
-155]で、より強い関係が発生する傾向があることが示された。
【0611】
二次解析は、ベースラインNM-MRIとL-ドーパ処置による精神運動速度の変化との間の関連性を示すことができない
【0612】
二次解析では、ベースラインと処置後の精神運動評価(検討2)の両方を有する15名の患者において、ベースラインNM-MRIシグナルと3週間のL-ドーパ処置後の精神運動速度の変化との関係を検討した。この関係のより厳密で空間的に制約された試験として、L-ドーパ処置の3週間後の歩行速度の変化とベースラインの歩行速度に正に相関する346SN-VTAボクセル(
図1中の緑色ボクセル)の平均NM-MRI CNRとの間に関係があるかどうかを最初に判定した。ここで、ベースラインNM-MRI CNRと歩行速度の変化との間に関係は見出されなかった(t
1,9=0.71、P=0.49;ベースラインの歩行速度、年齢、性別および教育を調節する歩行速度の変化の影響に関して試験するロバスト線形回帰;
図7)。仮説のより寛大な試験として、ボクセルワイズ解析を行い、この場合、各対象について、各ボクセルにおけるSN-VTA内のベースラインNM-MRI CNRによるL-ドーパ処置後の歩行速度の変化および数字記号スコアの間の関係を検討した(モデル2)。やはり、ベースラインNM-MRI CNRと歩行速度の変化(P<0.05で1,807個のSN-VTAボクセルのうち64個、歩行速度の変化、数字記号スコアの変化、およびベースライン歩行速度、ベースライン数字記号スコア、ベースラインHRSD年齢、性別および教育に関して調節したHRSDの変化の影響に関して試験するロバスト線形回帰、P補正後=0.377、並べ替え検定)、数字記号スコアの変化(P<0.05で1,807個のSN-VTAボクセルのうち69個、P補正後=0.361、並べ替え検定)、またはHRSDの変化(P<0.05で1,807個のSN-VTAボクセルのうち67個、P補正後=0.371、並べ替え検定)の間に関係は見出されなかった。
【0613】
L-ドーパ処置によるSN-VTAのNM-MRI CNRの増加
【0614】
探索的解析では、NM-MRIシグナルが、利用可能なベースラインと処置後のMRIデータを有する6名の患者において、L-ドーパ処置の3週間後に変化したかどうかも調査した(検討2サブセット)。この目的のために、ノンパラメトリックボクセルワイズ解析を行い、この場合、各対象について、ベースラインでのNM-MRI CNRと、各ボクセルにおけるSN-VTAマスク内の処置後の相違を検査した。これにより、処置後のスキャンにおいてNM-MRI CNRが有意により高かった一連のSN-VTAボクセルが明らかになった(P<0.05で1,807個のSN-VTAボクセルのうち200個、ベースラインおよび処置後のNM-MRI CNRの相違に関して試験する符号順位検定;P
補正後=0.046、並べ替え検定;
図8)。
【0615】
議論
【0616】
PDの症状に関する診断バイオマーカーとして:運動障害の症状の決定および現在の症状の重症度の予測
【0617】
NM-MRIのボクセルベースの解析には、ニューロメラニン濃度を決定するために使用されるボクセル、ニューロメラニンの体積を決定するために使用されるボクセル、および特定の症状に関連するある特定のボクセル(症状特異的ボクセルと呼ばれ、この場合、運動障害症状のボクセル、例えば精神運動遅滞のボクセル)が含まれる。精神運動遅滞の症状はパーキンソン病で発生することが示されており、ボクセルベースの解析方法は、診断バイオマーカーとして機能し、特定の症状の重症度を決定することもできる。
【0618】
パーキンソン病(PD)では、歩行速度は顕著に遅い(Petersonら、2020)。最初に、老年期うつ病(LLD)を有する高齢者における、NM-MRIデータと精神運動速度との関係を検討し、ボクセルベースの解析方法によって決定すると、SN-VTA複合体の内側、前部および背側におけるより低いNM-MRIシグナルは、歩行速度の低下に関連することを見出した。これは、PDの鍵となる運動症状の存在および重症度(この例では、精神運動遅滞)の両方が、これらの症状のケアを導くことができる重要な情報を決定するための非侵襲的方法を提示する、ニューロメラニンMRIデータのボクセルベースの解析によって予測することができるという証拠を提供する。
【0619】
より低いNM-MRIシグナルによってインデックス付けされる、より遅い歩行速度に関連するよりより低いドーパミン機能の知見は、以前の文献に基づく先験的な仮説と一致する。例えば、最近の研究により、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT、rs4680;強壮性ドーパミンを調節する)の遺伝的多型と歩行速度との間の関係が特定されている(30、31)。さらに、脳小血管病を有する高齢患者では、歩行の低下は黒質線条体ドーパミンの低減に起因する。より一般的には、年齢関連性運動機能不全における背側大脳基底核のドーパミン機能に関与する強力な理論的根拠が提案されており、この領域におけるドーパミン作動性バイオマーカーの必要性を支持する。
【0620】
このデータは、ベースラインNM-MRIデータが精神運動速度の症状を予測することができることを示している。ニューロメラニンは、PDでは低減し、歩行の減速が顕著な特徴であるので、この解析方法では、特定のボクセルでPDの特定の症状を予測することができる。NM-MRIに対する異なる症状の予測は、パーキンソン病の診断を決定し、異なる運動症状を伴う関連障害と区別するための非侵襲的手法を提供することができる。
【0621】
NM-MRIシグナルによってインデックス付けされたドーパミン機能が、数字記号スコアによる非有意性傾向と関連しているという知見は、数字記号スコアとドーパミン機能の間の有意な関連性を決定する能力を制限する、少ないサンプルサイズ(N=33)によって制限され、これに対処するためには、より多くのサンプルでの検討を必要とする。ドーパミンは理論的には処理速度にリンクしているが、ドーパミンシグナル伝達のニューロイメージングをベースとする測定値を処理速度課題の性能と相関させる経験的証拠は雑多である。これまでの最大の研究(N=181名の健常な成人)は、線条体ラクロプライドPET D2受容体結合と処理速度との間に有意な相関関係を示さなかったが、小規模な検討では、処理速度とドーパミン機能との間に小さいが有意な関連性が観察された。本出願人は、ドーパミンシグナル伝達と数字記号スコアとの間に有意な相関関係を実証した検討を何ら認識していない。したがって、数字記号試験の運動要件と速度の依存性は、理論的には、ドーパミン機能へのリンクを示唆するが、より複雑に関与される可能性がある。さらに、加齢とうつ病の両方の集団において、運動速度および注意力が損なわれているが、これらの欠陥は、多くの場合、微妙であり、数字記号試験によって検出されず、これらの臨床集団におけるそれらの損傷の機構は、ドーパミン作動性ではないことがある。
【0622】
PDの診断のため、および関連障害を除外するための診断バイオマーカーとして
【0623】
このデータは、NM-MRIに基づいてLLDとパーキンソン病を区別するボクセルベースの解析方法の能力を支持する。例えば、歩行速度とNM-MRIシグナルとの間の関係のトポグラフィー解析の結果は、SN-VTAの内側、前部および背側の領域でより強い関係が発生したことを示した。対照的に、NM-MRIデータは、PDにおけるより大きなシグナルの減少が、より外側、後部および腹側のボクセルにおいて優勢になる傾向があることを示している。さらに、組織病理学的研究では、PD関連性ニューロン喪失が主にSNの腹外側層で発生することも見出されており、最近の自由水イメージング検討では、同様の空間パターンが特定されている。最近の研究は、NM-MRIを使用して、PDの2つの運動サブタイプにおけるSNのシグナル強度を解析し、患者は、対照と共に、不安定な姿勢、優勢な歩行困難または優勢な振戦のいずれかとして分類される。対照と比較した場合、両方のPDサブタイプにおけるSNの外側部分において有意なシグナル減衰が検出され、振戦優勢群と比較して、不安定性な姿勢の歩行困難優勢患者におけるSNの内側部分でも重度のシグナル減衰が観察された(52)。まとめると、トポロジーの知見は、動作の遅い、うつの対象は、通常、PDの臨床的斑点(例えば、歯車様、こわばり、振戦など)を現さないという事実に加えて、LLD患者のサンプルは、無症候性PD患者のサンプルにはならない可能性が高いことを支持し、かつここで説明したボクセルベースの解析方法が、同様の症候を有する運動障害を区別する能力があることを支持する。
【0624】
ボクセルベースの解析方法は、PDと関連する運動障害とを区別することができる。本発明者らの研究では、ボクセルベースの解析方法は、老年期うつ病(LLD)によって影響を受けるSNcの部分領域と、PDにおいて影響を受けることが公知の領域との間の重要な差異を判定することができた。LLDとPDのどちらも、精神運動遅滞を示すが、ボクセルベースの解析方法は、LLDによって影響を受けるSNcの部分領域が、PD病理によって影響を受けることが公知の部分領域とは異なることを判定することができた。ボクセルベースの解析方法は、LLDを有する患者がPDを表さないことを判定することができる。これは、ボクセルベースの解析方法が、重複する症状を有することが示されている異なる運動障害を区別することができるという強力な証拠を提示する。これは、PDの診断を案内し、同様の症状を伴う関連障害を除外する一助とするよう適用することができる。
【0625】
ベースラインのNM-MRI症状に関連するボクセルのボクセルベースの解析は、処置に対する将来の反応を予測し、PDの重要な予後バイオマーカーをもたらすことができる
【0626】
L-ドーパ処置を受けた対象のより小さなサンプルの二次解析では、ベースラインNM-MRIと処置後の精神運動速度の変化との間に正の関連性に対する非有意性傾向が観察された。本発明者らのデータは、有意性に到達しなかったが、それはかなり検出力不足であり、本発明者らは、より大規模な研究では、これは有意性に到達することを予期している。
【0627】
この解析は、ボクセルベースの解析が判定する個々のベースラインNM-MRIボクセルが、運動障害の症状に関連し、処置が開始される前にその症状の処置に対する将来の応答を予測できる可能性があることを示唆する。これは、疾患の経過を予測し、適切な処置の選択を案内することができる重要な予後情報を提供する。精神運動遅滞は、パーキンソン病の顕著な症状であり、L-ドーパ処置は、最も効果的で広く使用されているPD療法の1つであるため、この知見は、精神運動遅滞を含むパーキンソン病の運動症状の処置に対する応答の予測へのボクセルベースの解析法の応用を直接、支持する。
【0628】
処置への応答をモニタリングするため
【0629】
さらに、最も広く使用されているPD処置の1つである3週間のL-ドーパ処置は、NM-MRIシグナルの有意な増大と関連していることが観察された。これは、L-ドーパ療法の投与が、NM-MRIのボクセルベースの解析を介して測定することができる黒質の変化を誘発するという、これまでの最初の証拠である。これは、NM-MRIがex vivo組織試料中のNM濃度を捕捉すること、およびドーパミン合成の増強がNM蓄積の増加をもたらすという知見と一致する、ドーパミン伝達の増加と相関することを示す以前の検討によって裏付けられた。
【0630】
これは、治療の過程にわたってNM-MRIデータの変化を追跡するボクセルベースの解析方法の能力を支持する。これは、治療への応答を追跡し、患者が治療に対して適切または不十分な応答を有したかどうかを判定するための非侵襲的方法を提供する。この情報は、治療を案内し、治療の投与量を増加するかまたは減少させるかを決定するのに使用することができる。この場合、パーキンソン病を有する患者では、パーキンソン病のボクセルは、L-ドーパによる処置に応答するはずである。例えば、確立したパーキンソン病のボクセルを有する患者にL-ドーパを投与すると、
・患者のベースラインパーキンソン病のボクセルの読取り値
・同様のパーキンソン病のボクセルを有する未処置患者からの読取り値
・および、標準対照に対して、パーキンソン病のボクセルの変化を引き起こすはずである。
【0631】
パーキンソン病のボクセルの変化は、患者が適切に処置されているかどうかを示すことができる。この方法は、L-ドーパ以外の治療剤にも適用することができる。
【0632】
ボクセルベースの解析方法を使用して、各患者に固有の処置に対する異なる応答を予測するために使用することができる患者間の差異を検出する。
【0633】
探索的解析では、L-ドーパ処置後のNM-MRIシグナルの有意な増大が観察され、L-ドーパ処置は、利用可能な線条体ドーパミンを増加させる可能性が高いが、参加者はその増加に対して異なって応答するという見解を支持する。これは、ボクセルベースの解析方法が、各患者に特異的な処置に応答して差異を検出することができることを示しているので、重要である。この年齢関連性過程は非常にゆっくりと発生し、ここで評価した3週間の期間よりもかなり長い時間規模でしか検出されないはずなので、観察された変化が経時的に自然なNM蓄積によるものである可能性は低い。さらに、サンプルサイズは限定されているが(N=6)、NM-MRIの優れた再現性は、NM-MRIシグナルの観察されたいずれの増大も、実際にNM濃度の増加によるものであることを示唆する。この結果は、NM-MRIがL-ドーパによって誘発される合成を含むドーパミン機能を測定することを支持するさらなる証拠を提示する。この結果はまた、NM-MRIが以前に考えられていたよりも短い時間規模でNMの変化に驚くほど感度が高くなり得ることを示唆する。この知見は、NM-MRIが、PDまたは関連障害を有する患者におけるドーパミン作動性処置応答のモニタリングに十分に適し得ることを示唆する。
【0634】
結論として、LLDを有する患者では、SN-VTAにおけるNM-MRIシグナルとベースライン歩行速度との間の関連性、およびL-ドーパ処置の3週間後に歩行速度または処理速度の変化に伴う傾向レベルの影響が見出された。
【0635】
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【0695】
コンピューターベースの解析
【0696】
本明細書に記載されている開示による例示的な手順は、クラウドベースの処理装置および/またはコンピューティング装置(例えば、コンピューターハードウェア装置)によって行うことができる。このような処理/コンピューティング装置は、以下に限定されないが、例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサーを含むことができるコンピューター/プロセッサーの、例えば全部もしくはその一部とすることができるか、またはこれらを含んで、コンピューターでアクセス可能な媒体(例えば、RAM、ROM、ハードドライブまたは他のストレージデバイス)に格納された命令を使用することができる。
【0697】
例えば、コンピューターでアクセス可能な媒体(例えば、本明細書の上に記載されている通り、暗号化されたクラウドファイル、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、メモリスティック、CD-ROM、RAM、ROMなどの記憶デバイス、またはそれらの収集物)が提供され得る(例えば、処理装置と通信する)。コンピューターでアクセス可能な媒体は、そこで実行可能な命令を含むことができる。追加的にまたは代替として、記憶装置は、コンピューターでアクセス可能な媒体とは別に提供することができ、これは、例えば、本明細書の上で記載されている通り、ある特定の例示的な手順、プロセスおよび方法を実行するために処理装置を構成するように処理装置に命令を提供することができる。
【0698】
さらに、例示的な処理装置は、例えば、有線ネットワーク、無線ネットワーク、インターネット、イントラネット、データ収集プローブ、センサーなどを含むことができる入力/出力ポートを設けることができるか、またはこれらを含むことができる。例示的な処理装置は、例えば、本開示のある特定の例示的な実施形態によれば、処理装置から情報を出力することに加えて、処理装置に情報を入力するように構成されたタッチスクリーンとすることができる、例示的なディスプレイ装置と通信することができる。さらに、例示的なディスプレイ装置および/または記憶装置を使用して、ユーザーがアクセス可能なフォーマットおよび/またはユーザーが読み取り可能なフォーマットでデータを表示および/または格納することができる。
【0699】
均等物
上述は、単に、本開示の原理を例示しているに過ぎない。記載されている実施形態に対する様々な修正および変更は、本明細書における教示を鑑みると、当業者には明白であろう。したがって、当業者は、本明細書に明示的に示されておらず、記載もされていないが、本開示の原理を具体化し、したがって本開示の趣旨および範囲内にあり得る、様々なシステム、装置および手順を工夫することができることが理解されよう。様々な異なる例示的な実施形態は、当業者によって理解されるべきである通り、互いに、およびそれらと互換的に一緒に使用することができる。さらに、本明細書、その図面および特許請求の範囲を含めた、本開示に使用されるある特定の用語は、以下に限定されないが、例えば、データおよび情報を含めたある特定の例では、同義的に使用することができる。これらの語および/または互いに同義であることができる他の語は、本明細書において同義に使用することができるが、そのような語が同義に使用することを意図し得ない場合があり得ることを理解すべきである。さらに、先行技術の知識が本明細書の上に参照により明示的に組み込まれていない程度に、その全体が本明細書に明示的に組み込まれている。参照されているすべての出版物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0700】
値の範囲が提示されている場合、下限値の単位の10分の1までの各介在値(文脈が明確にそうでないと指示しない限り)、その範囲の上限値と下限値との間、およびその明記した範囲における任意の他の明記された値または介在値が、本開示の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限値および下限値は、より小さな範囲に独立して含まれてもよく、明記されている範囲におけるいずれかの具体的に除外されている境界値に従うことを条件として、本開示の範囲内にやはり包含される。明記された範囲が境界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれている境界値のどちらか一方または両方を除外する範囲も、本開示に含まれる。
【国際調査報告】