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特表2022-545098ポリアミド56低沸点水収縮性繊維、その製造方法およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ポリアミド56低沸点水収縮性繊維、その製造方法およびその用途
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/60 20060101AFI20221018BHJP
   D01D 10/00 20060101ALI20221018BHJP
   D02J 11/00 20060101ALI20221018BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20221018BHJP
   D04B 21/16 20060101ALI20221018BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20221018BHJP
   D03D 15/20 20210101ALI20221018BHJP
   D03D 15/49 20210101ALI20221018BHJP
【FI】
D01F6/60 351Z
D01D10/00 Z
D02J11/00
D04B1/16
D04B21/16
D03D15/283
D03D15/20 100
D03D15/49
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511216
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 CN2020072235
(87)【国際公開番号】W WO2021031529
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】201910776328.5
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517216486
【氏名又は名称】キャセイ バイオテック インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519322820
【氏名又は名称】シーアイビーティー アメリカ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ソン チャオシュウ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ シュウサイ
【テーマコード(参考)】
4L002
4L035
4L036
4L045
4L048
【Fターム(参考)】
4L002AA06
4L002AB02
4L002AB04
4L002AC00
4L002AC02
4L002BA00
4L002CA00
4L002EA00
4L002FA01
4L002FA06
4L035AA05
4L035BB31
4L035DD15
4L035EE06
4L035EE08
4L035EE09
4L035EE20
4L036MA06
4L036MA33
4L036PA03
4L036PA18
4L036PA28
4L036PA42
4L036PA49
4L045AA05
4L045BA03
4L045CA01
4L045CA05
4L045CA25
4L045CA28
4L045DA23
4L045DA41
4L045DA49
4L045DC03
4L048AA24
4L048AA46
4L048AA47
4L048AA48
4L048AA49
4L048AA50
4L048AA56
4L048AB06
4L048AB21
4L048AC00
4L048AC07
4L048AC09
4L048AC10
4L048AC11
4L048CA00
4L048DA00
4L048DA01
(57)【要約】
本発明は、ポリアミド材料の技術分野に関し、低沸水収縮性のポリアミド56予備配向糸およびポリアミド56延伸加工糸、その製造プロセス、ならびにその使用を提供する。上記ポリアミド56繊維を製造するための原料は、1,5-ペンタンジアミンとアジピン酸、または1,5-ペンタンジアミンモノマーとアジピン酸モノマーとを重合して得られるポリアミド56樹脂を含み、上記ポリアミド56繊維は沸水収縮率が9%以下であり、上記ポリアミド56繊維は低沸水収縮性ポリアミド56予備配向糸と、低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸とを含む。上記ポリアミド56繊維は、良好な機械的特性、染色均一性および寸法安定性を有する。上記ポリアミド56繊維の製造プロセスは、ポリアミド繊維をテクスチャード加工するための既存の装置に改変を必要とせず、したがって、製造コストを低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド56繊維であって、前記ポリアミド56繊維を製造するための原料が、1,5-ペンタンジアミンおよびアジピン酸、または1,5-ペンタンジアミンモノマーとアジピン酸モノマーとを重合して得られるポリアミド56樹脂を含み、前記ポリアミド56繊維が9%以下の沸水収縮率を有することを特徴とするポリアミド56繊維。
【請求項2】
請求項1に記載のポリアミド56繊維であって、前記ポリアミド56繊維が、低沸水収縮性ポリアミド56予備配向糸と、低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸とを含み、および/または
前記ポリアミド56樹脂は、1.2重量%以下、好ましくは0.8重量%以下のオリゴマー含有率を有し;
前記オリゴマーは、以下の構造から選択され:
【化1】

式中、n1およびn2はそれぞれ1~8の整数から選択され、m1およびm2は4であり、好ましくはn1およびn2はそれぞれ1~6の整数から選択され;より好ましくはn1およびn2はそれぞれ独立して1~5の整数であり;さらに好ましくはn1は1、2、3または4であり;n2は1、2、3、4または5であり;および/または
前記ポリアミド56繊維はブライト繊維、セミダル繊維およびフルダルポリアミド56繊維を含むことを特徴とする、ポリアミド56繊維。
【請求項3】
請求項2に記載のポリアミド56繊維であって、
前記ポリアミド56予備配向糸が9%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは7%以下の沸水収縮率を有し;および/または
前記ポリアミド56予備配向糸が、10~300dtex、好ましくは20~200dtex、より好ましくは30~100dtex、さらに好ましくは50~80dtexの繊度を有し;および/または
前記ポリアミド56予備配向糸が、3.0~4.5cN/dtex、好ましくは3.3~4.3cN/dtex、より好ましくは3.5~4.1cN/dtex、さらに好ましくは3.7~3.9cN/dtexの破断強度を有し;および/または
前記ポリアミド56予備配向糸が、60~90%、好ましくは65~85%、より好ましくは70~80%、およびさらに好ましくは73~78%の破断点伸びを有し;および/または
前記ポリアミド56予備配向糸が、3級以上、好ましくは3.5級以上、より好ましくは4.0級以上、さらに好ましくは4.5級以上の染色均一性(グレースケール)を有することを特徴とする、ポリアミド56繊維。
【請求項4】
請求項2に記載のポリアミド56繊維であって、
前記ポリアミド56延伸加工糸が、8%以下、より好ましくは7%以下、およびさらに好ましくは6%以下の沸水収縮率を有し;および/または
前記ポリアミド56延伸加工糸が、10~200dtex、好ましくは20~100dtex、より好ましくは30~80dtex、さらに好ましくは40~60dtexの繊度を有し;および/または
前記ポリアミド56延伸加工糸が、3.5~5.5cN/dtex、好ましくは3.8~5.0cN/dtex、より好ましくは4.0~4.7cN/dtex、さらに好ましくは4.3~4.5cN/dtexの破断強度を有し;および/または
前記ポリアミド56延延伸加工糸が、20~50%、好ましくは25~45%、より好ましくは30~40%、さらに好ましくは33~36%の破断点伸びを有し;および/または
前記ポリアミド56延伸加工糸が、60%以上、好ましくは63%以上、より好ましくは66%以上、さらに好ましくは68%以上の結晶化度を有し;および/または
前記ポリアミド56延伸加工糸が、60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは73%以上の配向度を有し;および/または
前記ポリアミド56延伸加工糸が、3級以上、好ましくは3.5級以上、より好ましくは4.0級以上、さらに好ましくは4.5級以上の染色均一性(グレースケール)を有することを特徴とする、ポリアミド56繊維。
【請求項5】
請求項2に記載のポリアミド56繊維であって、前記ポリアミド56延伸加工糸が、2~8%の沸水収縮率、3.5~5.5cN/dtexの破断強度、20~50%の破断伸び、60~80%の結晶化度、または60~90%の配向度を有することを特徴とする、ポリアミド56繊維。
【請求項6】
請求項2または3に記載のポリアミド56予備配向糸の製造プロセスであって、前記プロセスが、以下の工程を含むことを特徴とするプロセス:
(1)1,5-ペンタンジアミンとアジピン酸とを重合してポリアミド56溶融物を形成するか、またはポリアミド56樹脂をスクリューで溶融状態に加熱してポリアミド56溶融物を形成する工程;
(2)前記ポリアミド56溶融物をパイプを通して紡糸用ポットに搬送し、前記溶融物を計量ポンプで精密に計量し、次に、それを紡糸アセンブリに注入し、紡糸口金オリフィスを通して押し出す工程;
(3)押出した紡糸したままの繊維を冷却、紡糸仕上げ、延伸、巻取りして、前記ポリアミド56予備配向糸を得る工程。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスであって、
工程(1)において、前記ポリアミド56樹脂が2.4~2.8、好ましくは2.5~2.7の相対粘度を有し;前記ポリアミド56樹脂が1.2重量%以下、好ましくは0.8重量%以下のオリゴマー含有率を有し;および/または
前記ポリアミド56樹脂が600~1200ppm、好ましくは800~1000ppmの水分含有量を有し;および/または
前記ポリアミド56樹脂が15,000~22,000、好ましくは18,000~20,000の数平均分子量分布を有し、または1.0~2.0、および好ましくは1.2~1.8の分子量分布を有し;および/または
前記スクリューが4つのゾーンで加熱され;ここで、第1のゾーンの温度は245~260℃、好ましくは250~255℃であり;第2のゾーンの温度は260~275℃、および好ましくは265~270℃であり;温度第3ゾーンの温度は275~285℃、好ましくは278~283℃であり、第4ゾーンの温度は280~285℃、好ましくは282~284℃であることを特徴とする、プロセス。
【請求項8】
請求項6に記載のプロセスであって、
工程(2)において、前記ポットの温度が275~285℃、好ましくは280~283℃であり;前記アセンブリの圧力が13~20MPa、好ましくは15~18MPaであり;および/または
工程(3)において、前記冷却がサイドエアーブローまたはクロスエアーブローによる冷却、好ましくはクロスエアーブローによる冷却を含み;エアー速度が好ましくは0.2~0.6m/s、より好ましくは0.3~0.5m/sであり;および/またはエアー温度が18~25℃、好ましくは20~23℃、より好ましくは21~22℃であり;および/または
前記紡糸仕上げがオイルロールで行われ;オイルピックアップが0.2~0.8重量%、好ましくは0.3~0.7重量%、より好ましくは0.4~0.5重量%であり;および/または
巻取速度が4000~5500m/分、好ましくは4300~5000m/分、より好ましくは4,500~4,800m/分であることを特徴とする、プロセス。
【請求項9】
請求項2、4または5のいずれかに記載のポリアミド56延伸加工糸の製造プロセスであって、前記プロセスが、以下の工程を含むことを特徴とするプロセス:
a)前記ポリアミド56予備配向糸をガイドにより第1のローラーに向け;それを撚りストッパーを通して搬送し、第1のホットボックス内で前記予備配向糸を熱延伸する工程;
b)前記予備配向糸を冷却プレートで冷却し、セットし、それを仮撚機、第2ローラー、および交絡装置を通して搬送し、それをオイルロールで紡糸仕上げする工程、および
c)前記予備配向糸を巻き取って、ポリアミド56延伸加工糸を得る工程。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスであって、
熱延伸倍率が1.1~1.5、好ましくは1.15~1.4、より好ましくは1.2~1.3であり;および/または熱延伸温度が150~220℃、好ましくは160~200℃、より好ましくは170~180℃であり;および/または
前記仮撚機の速度比D/Yが1.3~2.2、好ましくは1.5~2.0、より好ましくは1.7~1.8であり;および/または
前記交絡装置内の圧縮空気の圧力が0.3~1.5MPa、好ましくは0.5~1.2MPa、より好ましくは0.7~0.8MPaであり;および/または
巻取速度が300~800m/分、好ましくは400~700m/分、より好ましくは500~600m/分であり;および/または
巻取オーバーフィードが2~8%、好ましくは3~6%、より好ましくは4~5%であることを特徴とする、プロセス。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド56繊維の、編物または織物における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド材料の技術分野に関し、低沸水収縮性のポリアミド56予備配向糸およびポリアミド56延伸加工糸、その製造プロセス、ならびにその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド繊維は沸水収縮率が大きく、染色プロセスで著しく収縮し、染色ムラを生じやすい。収縮率は、特にロビン染色プロセス中に大きい。糸は、パッケージの外側部分および内側部分において異なる表面張力を有する。ボビンに隣接する糸は、張力が大きいため、染料が浸透しにくく、染色が困難であり、パッケージの外側部分と内側部分との間に色収差が生じる。第2に、パッケージの巻き出しの間、張力は収縮後に変化し、巻き出しを困難にし、糸を破断させ、これは加工の困難さと製造コストとを増加させる。糸は、沸水中で大きく収縮し、染色プロセス中に布地の幅を減少させ、したがって布地の幅を制御することが困難である。特に、続いて布地を衣類にした後、衣類を熱水で洗う際に収縮率が大きいと、衣類の保形性が悪い。
【0003】
ポリアミド56中強度糸および高強度糸ならびにその調製方法を報告した特許があった。例えば、特許CN 106835329 Aは、ポリアミド5X中強度糸およびその製造プロセスを開示している。特許CN 106868624 Aには、ポリアミド5X高強度糸およびその製造プロセスが開示されている。このような糸は、主にそれらの異なる加工方法のために、2~7%の低い沸水収縮率を有する。加工中の糸の延伸には複数対の熱ローラーが使用され、高温設定も行われる。このような繊維の結晶性および配向度が高く、非晶領域の割合が少なく、最終的に沸水収縮率が小さく寸法安定性が良好であることを示している。特許CN 106868623 Aには、バイオベースの、高弾性の、吸湿性の、および容易に染色される長鎖炭素ポリアミド5X繊維およびその製造プロセスが開示されている。この繊維はまた、3~10%の低い沸水収縮率を有する。使用する原料は、長炭素鎖ポリアミド510、512等、非短炭素鎖ポリアミド56であり、連続バルキングフィラメント加工法が適用される。特許CN 100489168 Cには、低沸水収縮性のポリエステル延伸加工糸(DTY)を製造するプロセスが開示されている。糸は低沸水収縮性であり、糸の材料はポリエステルである。ポリエステル繊維は、水分率が0.4%と低いため、吸水しにくく、寸法安定性が良好である。第2に、ポリエステル延伸加工糸には、2つの延伸ローラーおよび2つの延伸ホットボックスが使用される。延伸時間および硬化時間は比較的長く、糸の結晶性および配向度が高く、ならびにその沸水収縮率も比較的低い。しかしながら、ポリアミド予備配向および延伸加工糸プロセスを適用することによって、沸水中での糸の収縮率を低減することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1の目的は、低沸水収縮性であり、一方、良好な機械的特性および染色均一性を有するポリアミド56繊維を提供することである。
【0005】
本発明の第2の目的は、低沸水収縮性のポリアミド56繊維の製造プロセスを提供することである。このようなプロセスでは、ポリアミド56樹脂の粘度、オリゴマー含有率、分子量および分子量分布、ならびに水分含有量は、その品質を最適化することによって調整される。さらに、ポリアミド56予備配向糸について紡糸プロセスを最適化することにより、低沸水収縮性であり、機械的特性が良好なポリアミド56予備配向糸が得られる。最後に、良好な機械的特性、染色均一性および低沸水収縮性を有するポリアミド56延伸加工糸は、ポリアミド56予備配向糸をテクスチャード加工し、テクスチャード加工プロセスを調整することによって得られ、具体的には、延伸比を増加させ、延伸温度を増加させ、交絡圧力を増加させ、テクスチャード加工中の巻き取り速度を減少させ、オーバーフィードプロセスを適用し、ポリアミド56延伸加工糸の結晶化度および配向度を増加させ、その後の応力緩和を減少させる。
【0006】
本発明の第3の目的は、低沸水収縮性のポリアミド56繊維の使用を提供することである。
【0007】
低沸水収縮性の前記ポリアミド56繊維は、編物および織物に使用され、下着、シャツ、スーツ、ダウンジャケット、アウトドアジャケット、靴下、バッグおよびスーツケース、カーテン、靴材料、刺しゅう糸、ラベル、ソファカバー、ユニフォーム、スポーツウェア、および弾性テープなどの分野で使用される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の解決手段を提供する:
【0009】
[低沸水収縮性ポリアミド56繊維]
本発明は、ポリアミド56繊維であって、前記ポリアミド56繊維を製造するための原料が、1,5-ペンタンジアミンおよびアジピン酸、または1,5-ペンタンジアミンモノマーとアジピン酸モノマーとを重合して得られるポリアミド56樹脂を含み、前記ポリアミド56繊維は、沸水収縮率が9%以下であるポリアミド56繊維を提供する。
【0010】
本発明のいくつかの好ましい実施態様では、ポリアミド56繊維は、低沸水収縮性ポリアミド56予備配向糸と、低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸とを含む。
【0011】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ポリアミド56樹脂は、1.2重量%以下、および好ましくは0.8重量%以下のオリゴマー含有率を有する。例えば、オリゴマー含有率は、0.2~1.2重量%、0.4~0.8重量%、または0.4~1.2重量%である。
【0012】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、オリゴマーは、以下の構造から選択される:
【化1】
式中、n1およびn2はそれぞれ1~8の整数から選択され、m1およびm2は4であり、好ましくはn1およびn2はそれぞれ1~6の整数から選択され;より好ましくはn1およびn2はそれぞれ独立して1~5の整数であり;さらに好ましくはn1は1、2、3または4であり;n2は1、2、3、4または5である。
【0013】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ポリアミド56繊維は、ブライト繊維、セミダル繊維、フルダルポリアミド56繊維を含む。
【0014】
本発明の好ましい一実施形態では、低沸水収縮性ポリアミド56予備配向糸は、沸水収縮率が9%以下であり、さらに好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは7%以下である。本発明のいくつかの好ましい実施態様では、低沸水収縮性ポリアミド56予備配向糸は、沸水収縮率が3~9%、さらに好ましくは3~8%、さらに好ましくは3~7%、例えば3.1%、3.5%、4.5%、4.9%または5.4%である。
【0015】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ポリアミド56予備配向糸は、10~300dtex、好ましくは20~200dtex、より好ましくは30~100dtex、およびさらに好ましくは50~80dtexの繊度を有し;および/またはポリアミド56予備配向糸は、3.0~4.5 cN/dtex、好ましくは3.3~4.3cN/dtex、より好ましくは3.5~4.1cN/dtex、およびさらに好ましくは3.7~3.9cN/dtexの破断強度を有し;および/またはポリアミド56予備配向糸は、60~90%、好ましくは65~85%、より好ましくは70~80%、およびさらに好ましくは73~78%の破断伸びを有し;および/またはポリアミド56予備配向糸は、好ましくは3級以上、より好ましくは3.5級以上、さらに好ましくは4.0級以上、特に好ましくは4.5級以上の染色均一性(グレースケール)を有している。
【0016】
本発明のいくつかの好ましい実施態様では、低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸は、8%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは6%以下の沸水収縮率を有する。本発明のいくつかの好ましい実施態様では、前記ポリアミド56延伸加工糸は、2~8%、より好ましくは2~7%、さらに好ましくは2~6%、例えば2.5%、3.1%、3.5%、4.5%、4.9%または5.4%の沸水収縮率を有する。
【0017】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ポリアミド56延伸加工糸は、10~200dtex、好ましくは20~100dtex、より好ましくは30~80dtex、さらに好ましくは40~60dtexの繊度を有し;および/またはポリアミド56延伸加工糸は、3.5~5.5cN/dtex、好ましくは3.8~5.0cN/dtex、より好ましくは4.0~4.7cN/dtex、およびさらに好ましくは4.3~4.5cN/dtexの破断強度を有し;および/またはポリアミド56延伸加工糸は、20~50%、好ましくは25~45%、より好ましくは30~40%、さらに好ましくは33~36%の破断伸びを有し;および/またはポリアミド56延伸加工糸は、60%以上、好ましくは63%以上、より好ましくは66%以上、さらに好ましくは68%以上の結晶化度を有する。
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ポリアミド56延伸加工糸は、60~80%、好ましくは63~77%、より好ましくは66~74%、さらに好ましくは68~72%の結晶化度を有し;および/またはポリアミド56延伸加工糸は、60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは73%以上の配向度を有する。
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、前記ポリアミド56延伸加工糸は、60~90%、好ましくは65~85%、より好ましくは70~80%、さらに好ましくは73~78%の配向度を有し;および/またはポリアミド56延伸加工糸は、好ましくは3級以上、好ましくは3.5級以上、より好ましくは4.0級以上、さらに好ましくは4.5級以上の染色均一性(グレースケール)を有する。
【0018】
[低沸水収縮性ポリアミド56繊維の製造プロセス]
本発明は、さらに、低沸水収縮性ポリアミド56予備配向糸の製造プロセスであって、以下の工程を含む方法を提供する:
(1)1,5-ペンタンジアミンとアジピン酸とを重合してポリアミド56溶融物を形成するか、またはポリアミド56樹脂をスクリューで溶融状態に加熱してポリアミド56溶融物を形成する工程;
(2)ポリアミド56溶融物をパイプを通して紡糸用ポット内に搬送し、溶融物を計量ポンプで精密に計量し、次いで紡糸アセンブリに注入し、紡糸口金オリフィスを通して押し出す工程;
(3)押出した紡糸したままの繊維を冷却、紡糸仕上げ、延伸、巻取りして、ポリアミド56予備配向糸を得る工程。
【0019】
工程(1)において、ポリアミド56樹脂は、2.4~2.8、好ましくは2.5~2.7の相対粘度を有し、ポリアミド56樹脂は、1.2重量%以下、好ましくは0.8重量%以下のオリゴマー含有率を有し、例えば、ポリアミド56樹脂は、0.2~1.2重量%、0.4~0.8重量%、または0.4~1.2重量%のオリゴマー含有率を有し;および/またはポリアミド56樹脂は、600~1200ppm、好ましくは800~1000ppmの水分含有量を有し;および/またはポリアミド56樹脂は、15,000~22,000、好ましくは18,000~20,000の数平均分子量を有し、または1.0~2.0、および好ましくは1.2~1.8の分子量分布を有し;および/またはスクリューを4つのゾーンで加熱し、ここで、第1のゾーンの温度は245~260℃、好ましくは250~255℃であり;第2のゾーンの温度は260~275℃、および好ましくは265~270℃であり;第3のゾーンの温度は275~285℃、および好ましくは278~283℃であり;第4のゾーンの温度は280~285℃、および好ましくは282~284℃である;
工程(2)において、上記ポットの温度は275~285℃、好ましくは280~283℃であり、アセンブリの圧力は13~20MPa、好ましくは15~18MPaである;
工程(3)において、冷却は、好ましくはサイドエアーブローまたはクロスエアーブローによる冷却、好ましくはクロスエアーブローによる冷却を含み、エアー速度は好ましくは0.2~0.6m/s、さらに好ましくは0.3~0.5m/sであり、および/またはエアー温度が18~25℃、好ましくは20~23℃、さらに好ましくは21~22℃であり、および/または紡糸仕上げはオイルロールで行われ;ならびにオイルピックアップは0.2~0.8重量%、好ましくは0.3~0.7重量%、さらに好ましくは0.4~0.5重量%、および/または巻取速度は4000~5500m/分、好ましくは4300~5000m/分、さらに好ましくは4500~4800m/分である。
【0020】
本発明は、さらに、低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸の製造プロセスを提供し、このプロセスは、以下の工程を含む:
a)ポリアミド56予備配向糸をガイドにより第1のローラーに向け;それを撚りストッパーを通して搬送し、第1のホットボックス内で予備配向糸を熱延伸する工程;
b)予備配向糸を冷却プレートで冷却してセットし、それを仮撚機、第2ローラー、および交絡装置を通して搬送し、それをオイルロールで紡糸仕上げする工程、および
c)予備配向糸を巻き取って、ポリアミド56延伸加工糸を得る工程。
【0021】
熱延伸倍率は1.1~1.5、好ましくは1.15~1.4、より好ましくは1.2~1.3であり;および/または熱延伸温度は150~220℃、好ましくは160~200℃、より好ましくは170~180℃であり;および/または仮撚機の速度比D/Yは1.3~2.2、好ましくは1.5~2.0、より好ましくは1.7~1.8であり;および/または交絡装置内の圧縮空気の圧力は0.3~1.5MPa、好ましくは0.5~1.2MPa、より好ましくは0.7~0.8MPaであり;および/または巻取速度は300~800m/分、好ましくは400~700m/分、より好ましくは500~600m/分であり;および/または巻取オーバーフィードは2~8%、好ましく3~6%、より好ましくは4~5%である。
【0022】
本発明はさらに、ポリアミド56繊維の編物または織物における使用を提供する。
【0023】
上記の低沸水収縮性ポリアミド56繊維は、下着、シャツ、スーツ、ダウンジャケット、アウトドアジャケット、靴下、バッグおよびスーツケース、カーテン、靴材料、刺しゅう糸、ラベル、ソファカバー、ユニフォーム、スポーツウェア、弾性テープなどの分野を含むが、これらに限定されない、編物および織物に使用される。
【発明の効果】
【0024】
上記解決手段により付与される本発明の有利な効果は以下の通りである:
まず、本発明の低沸水収縮性ポリアミド56繊維を製造するための原料は、生物学的プロセスによって調製されてもよく、したがってグリーン材料である。それらは石油資源に依存せず、環境に深刻な汚染を引き起こさない。また、二酸化炭素の排出や温室効果を低減することができる。
【0025】
第2に、本発明の低沸水収縮性ポリアミド56繊維は、良好な機械的特性、染色均一性および寸法安定性を有する。一方、得られたポリアミド56繊維は、ポリアミド56樹脂の品質、紡糸およびテクスチャード加工プロセスを最適化することにより、高品質等級を有している。
【0026】
第3に、本発明の低沸水収縮性ポリアミド56繊維は、従来のポリアミド6テクスチャード加工設備を使用することによって製造することができる。適用要件は、テクスチャード加工設備を修正することなく、プロセスを最適化することによって満たすことができ、したがって、生産コストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の目的、技術的解決策および利点をより明確にするために、本開示の技術的解決策は、実施例を参照して以下に明確かつ完全に記載される。明らかに、記載された実施例は、本開示の実施例の一部のみであるが、全てではない。本開示における実施例に基づいて、かつ創造的な作業を伴わずに当業者によって得られるすべての他の実施例は、本開示の保護範囲に入るものとする。
【0028】
(1) 繊度:GB/T 14343に従って測定。
(2) 破壊強度:GB/T 14344に従って測定。
(3) 破断時の伸び:GB/T 14344に従って測定。
(4) 熱捲縮:FZ/T 50030に従って測定。
(5) 沸水収縮率:GB/6505に従って測定。
(6) 染色均一性(グレーカード)/級数:ナイロンフィラメントの染色均一性のためのFZ/T 50008試験方法に従って測定。
【0029】
(7) 相対粘度:
ポリアミド56樹脂の相対粘度は、濃硫酸およびウベローデ粘度計を用いて、乾燥したポリアミド56樹脂試料0.25±0.0002gを精密に量り取り、ポリアミド56樹脂試料溶液が得られるように溶解用濃硫酸(96%)50mLを加え、25℃の水浴中で濃硫酸の流動時間t0およびポリアミド56樹脂試料溶液の流動時間を測定記録する方法で測定する。
相対粘度は、以下の式に従って計算される:
相対粘度VN=t/t0
tは溶液の流動時間を表し、および
0は溶媒の流動時間を表す。
【0030】
(8) 水分含有量:
水分含有量は、カールフィッシャー水分滴定装置によって測定される。
【0031】
(9) 結晶化度:
繊維試料は、日本理学社製D/max-2550PC X線回折装置を用いて、以下の条件でで分析する:Cuターゲット波長λkα1=1.54056Å、電圧20~40kV、電流10~450mA、5~40°の範囲の測定角2θ。結晶化度の測定に用いるポリアミド56繊維サンプルは十分に細断されており、サンプルの質量は0.2gより大きい。微結晶配向の測定に用いたポリアミド56繊維試料は十分に梳かれた。長さ30mmの束を試験に用いる。オリジンなどのソフトは、繊維の結晶化度および配向度を分析および計算するために、データ処理に使用される。
【0032】
結晶化度の算出には、以下の式を用いる:
【数1】
式中、
【数2】
は結晶部分の全回折積分強度であり、
【数3】
は非晶質部分の散乱積分強度である。
【0033】
(10) 配向度:音響式速度方位測定器で測定する。
(11) 数平均分子量:標準GPCで測定。
(12) 分子量分布:ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定。
【0034】
(13) オリゴマー含量試験:
水抽出法(重量測定):130℃で7時間乾燥したポリアミド56樹脂8gを精密に量り、500mL丸底フラスコに入れる。水400gを加える。加熱マントル中で36時間還流した後、溶液をデカントする。粒子を恒量ビーカー中で130℃で7時間乾燥した後、アルミビニール袋に密封して冷却し、秤量する。重量損失が計算される。
【0035】
CN108503826AおよびCN108503824Aに開示された方法に基づき、相対的な粘度が2.4~2.8、オリゴマー含有率が1.2重量%以下のポリアミド56樹脂(チップ形態)を調製する。相対粘度2.5~2.7のポリアミド6チップは、ルイメイフ工業株式会社(Ruimeifu Industrial Co., Ltd.)(Jiangsu)から市販されている。
【0036】
実施例1:低沸水収縮性ポリアミド56予備配向糸の調製
(1) ポリアミド56樹脂をスクリューで溶融状態に加熱し、ポリアミド56溶融物を形成する;
(2) ポリアミド56溶融物をパイプを通して紡糸用ポットに搬送し、溶融物を計量ポンプで精密に計量し、次いでそれを紡糸アセンブリに注入し、紡糸口金オリフィスを通して押し出す;および
(3) 押出した紡糸したままの繊維を冷却、紡糸仕上げ、延伸、巻取りして、ポリアミド56予備配向糸を得る。
【0037】
工程(1)において、ポリアミド56樹脂は、相対粘度が2.5、オリゴマー含有率が0.8重量%、水分含有量が800ppm、数平均分子量が18,000、分子量分布が1.6であった;
スクリューを4つのゾーンで加熱し、第1のゾーンの温度は250℃、第2のゾーンの温度は270℃、第3のゾーンの温度は285℃、第4のゾーンの温度は280℃であった;また、
工程(2)では、紡糸用ポットの温度は283℃、アセンブリの圧力は18MPaであった;また、
工程(3)では、クロスエアーブローで冷却を行い、エアー速度は0.5m/s、エアー温度は22℃であった;
紡糸仕上げはオイルロールで行い、オイルピックアップは0.5重量%、巻取り速度は4,500m/分であった。
【0038】
実施例2:低沸水収縮性ポリアミド56予備配向糸の調製
(1) ポリアミド56樹脂をスクリューで溶融状態に加熱し、ポリアミド56溶融物を形成する;
(2) ポリアミド56溶融物をパイプを通して紡糸用ポットに搬送し、溶融物を計量ポンプで精密に計量し、次いでそれを紡糸アセンブリに注入し、紡糸口金オリフィスを通して押し出す;および
(3) 押出した紡糸したままの繊維を冷却、紡糸仕上げ、延伸、巻取りして、ポリアミド56予備配向糸を得る。
【0039】
工程(1)において、ポリアミド56樹脂は、相対粘度が2.7、オリゴマー含有率が1.0重量%、水分含有量が900ppm、数平均分子量が19,000、分子量分布が1.8であった;
スクリューを4つのゾーンで加熱し、第1のゾーンの温度は255℃、第2のゾーンの温度は270℃、第3のゾーンの温度は280℃、第4のゾーンの温度は285℃であった;また、
工程(2)では、紡糸用ポットの温度は280℃、アセンブリの圧力は14MPaであった;また、
工程(3)では、クロスエアーブローで冷却を行い、エアー速度は0.4m/s、エアー温度は24℃であった;
紡糸仕上げはオイルロールで行い、オイルピックアップは0.6重量%、巻取り速度は4,800m/分であった。
【0040】
実施例3:低沸水収縮性ポリアミド56予備配向糸の調製
(1) ポリアミド56樹脂をスクリューで溶融状態に加熱し、ポリアミド56溶融物を形成する;
(2) ポリアミド56溶融物をパイプを通して紡糸用ポットに搬送し、溶融物を計量ポンプで精密に計量し、次いでそれを紡糸アセンブリに注入し、紡糸口金オリフィスを通して押し出す;および
(3) 押出した紡糸したままの繊維を冷却、紡糸仕上げ、延伸、巻取りして、ポリアミド56予備配向糸を得る。
【0041】
工程(1)において、ポリアミド56樹脂は、相対粘度が2.4、オリゴマー含有率が1.15重量%、水分含有量が1000ppm、数平均分子量が20,000、分子量分布が1.7であった;
スクリューを4つのゾーンで加熱し、第1のゾーンの温度は250℃、第2のゾーンの温度は272℃、第3のゾーンの温度は283℃、第4のゾーンの温度は282℃であった;また、
工程(2)では、紡糸用ポットの温度は278℃、アセンブリの圧力は16MPaであった;また、
工程(3)では、クロスエアーブローで冷却を行い、エアー速度は0.5m/s、エアー温度は20℃であった;
紡糸仕上げはオイルロールで行い、オイルピックアップは0.3重量%、巻取り速度は4,300m/分であった。
【0042】
実施例4:低沸水収縮性ポリアミド56予備配向糸の調製
(1) ポリアミド56樹脂をスクリューで溶融状態に加熱し、ポリアミド56溶融物を形成する;
(2) ポリアミド56溶融物をパイプを通して紡糸用ポットに搬送し、溶融物を計量ポンプで精密に計量し、次いでそれを紡糸アセンブリに注入し、紡糸口金オリフィスを通して押し出す;および
(3) 押出した紡糸したままの繊維を冷却、紡糸仕上げ、延伸、巻取りして、ポリアミド56予備配向糸を得る。
【0043】
工程(1)において、ポリアミド56樹脂は、相対粘度が2.6、オリゴマー含有率が0.9重量%、水分含有量が700ppm、数平均分子量が16,000、分子量分布が1.4であった;
スクリューを4つのゾーンで加熱し、第1のゾーンの温度は255℃、第2のゾーンの温度は270℃、第3のゾーンの温度は280℃、第4のゾーンの温度は280℃であった;また、
工程(2)では、紡糸用ポットの温度は285℃、アセンブリの圧力は18MPaであった;また、
工程(3)では、クロスエアーブローで冷却を行い、エアー速度は0.3m/s、エアー温度は21℃であった;
紡糸仕上げはオイルロールで行い、オイルピックアップは0.4重量%、巻取り速度は4,600m/分であった。
【0044】
実施例5:低沸水収縮性ポリアミド56予備配向糸の調製
(1) ポリアミド56樹脂をスクリューで溶融状態に加熱し、ポリアミド56溶融物を形成する;
(2) ポリアミド56溶融物をパイプを通して紡糸用ポットに搬送し、溶融物を計量ポンプで精密に計量し、次いでそれを紡糸アセンブリに注入し、紡糸口金オリフィスを通して押し出す;および
(3) 押出した紡糸したままの繊維を冷却、紡糸仕上げ、延伸、巻取りして、ポリアミド56予備配向糸を得る。
【0045】
工程(1)において、ポリアミド56樹脂は、相対粘度が2.8、オリゴマー含有率が1.2重量%、水分含有量が600ppm、数平均分子量が22,000、分子量分布が1.2であった;
スクリューを4つのゾーンで加熱し、第1のゾーンの温度は255℃、第2のゾーンの温度は265℃、第3のゾーンの温度は280℃、第4のゾーンの温度は285℃であった;また、
工程(2)では、紡糸用ポットの温度は282℃、アセンブリの圧力は13MPaであった;また、
工程(3)では、クロスエアーブローで冷却を行い、エアー速度は0.5m/s、エアー温度は20℃であった;
紡糸仕上げはオイルロールで行い、オイルピックアップは0.5重量%、巻取り速度は4,800m/分であった。
【0046】
比較例1a:ポリアミド6予備配向糸の調製
(1) ポリアミド6樹脂をスクリューで溶融状態に加熱し、ポリアミド6溶融物を形成する;
(2) ポリアミド6溶融物をパイプを通して紡糸用ポットに搬送し、溶融物を計量ポンプで精密に計量し、次いでそれを紡糸アセンブリに注入し、紡糸口金オリフィスを通して押し出す;および
(3) 押出した紡糸したままの繊維を冷却、紡糸仕上げ、延伸、巻取りして、ポリアミド6予備配向糸を得る。
【0047】
工程(1)において、ポリアミド6樹脂は、相対粘度が2.4、オリゴマー含有率が1.0重量%、水分含有量が1000ppm、数平均分子量が20,000、分子量分布が1.7であった;
スクリューを4つのゾーンで加熱し、第1のゾーンの温度は225℃、第2のゾーンの温度は245℃、第3のゾーンの温度は260℃、第4のゾーンの温度は265℃であった;また、
工程(2)では、紡糸用ポットの温度は260℃、アセンブリの圧力は14MPaであり;また、
工程(3)では、クロスエアーブローで冷却を行い、エアー速度は0.5m/s、エアー温度は20℃であった;
紡糸仕上げはオイルロールで行い、オイルピックアップは0.3重量%、巻取り速度は4,300m/分であった。
【0048】
比較例1b:ポリアミド56予備配向糸の調製
JP4165106B2に開示されるポリアミド56の製造プロセスにしたがって、ポリアミド56樹脂を調製した。
(1) ポリアミド56樹脂をスクリューで溶融状態に加熱し、ポリアミド56溶融物を形成する;
(2) ポリアミド56溶融物をパイプを通して紡糸用ポットに搬送し、溶融物を計量ポンプで精密に計量し、次いでそれを紡糸アセンブリに注入し、紡糸口金オリフィスを通して押し出す;および
(3) 押出した紡糸したままの繊維を冷却、紡糸仕上げ、延伸、巻取りして、ポリアミド56予備配向糸を得る。
【0049】
工程(1)において、ポリアミド56樹脂は、相対粘度が2.4、オリゴマー含有率が3.1重量%、水分含有量が1000ppm、数平均分子量が20,000、分子量分布が1.7であった;
スクリューを4つのゾーンで加熱し、第1のゾーンの温度は250℃、第2のゾーンの温度は272℃、第3のゾーンの温度は283℃、第4のゾーンの温度は282℃であった;また、
工程(2)では、紡糸用ポットの温度は278℃、アセンブリの圧力は16MPaであり;また、
工程(3)では、クロスエアーブローで冷却を行い、エアー速度は0.5m/s、エアー温度は20℃であった;
紡糸仕上げはオイルロールで行い、オイルピックアップは0.3重量%、巻取り速度は4,300m/分であった。
【0050】
実施例6:低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸の調製
実施例1で調製したポリアミド56予備配向糸から、ポリアミド56延伸加工糸を調製した。
低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸の製造プロセスは、以下の工程を含んでいた:
まず、ポリアミド56予備配向糸をガイドにより第1ローラーに向け、撚りストッパーを通して搬送し、第1のホットボックス内で予備配向糸を熱延伸する工程;次に、冷却板で予備配向糸を冷却してセットし、仮撚機、第2ローラー、交絡装置を通して搬送し、オイルロールで紡糸仕上げする工程;そして最後に、予備配向糸を巻いてポリアミド56延伸加工糸を得る工程。
【0051】
延伸倍率は1.3、延伸温度は180℃とした;
仮撚機の速度比D/Yは1.65であった;
交絡装置内の圧縮空気の圧力は0.6MPaであり、巻取速度は650m/分であり、巻取オーバーフィードは3%であった。
【0052】
実施例7:低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸の調製
実施例2で調製したポリアミド56予備配向糸から、ポリアミド56延伸加工糸を調製した。
低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸の製造プロセスは、以下の工程を含んでいた:
まず、ポリアミド56予備配向糸をガイドにより第1ローラーに向け、撚りストッパーを通して搬送し、第1のホットボックス内で予備配向糸を熱延伸する工程;次に、冷却板で予備配向糸を冷却してセットし、仮撚機、第2ローラー、交絡装置を通して搬送し、オイルロールで紡糸仕上げする工程;そして最後に、予備配向糸を巻いてポリアミド56延伸加工糸を得る工程。
【0053】
延伸倍率は1.25、延伸温度は200℃とした;
仮撚機の速度比D/Yは1.8であった;
交絡装置内の圧縮空気の圧力は0.8MPaであり、巻取速度は500m/分であり、巻取オーバーフィードは5%であった。
【0054】
実施例8:低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸の調製
実施例3で調製したポリアミド56予備配向糸から、ポリアミド56延伸加工糸を調製した。
低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸の製造プロセスは、以下の工程を含んでいた:
まず、ポリアミド56予備配向糸をガイドにより第1ローラーに向け、撚りストッパーを通して搬送し、第1のホットボックス内で予備配向糸を熱延伸する工程;次に、冷却板で予備配向糸を冷却してセットし、仮撚機、第2ローラー、交絡装置を通して搬送し、オイルロールで紡糸仕上げする工程;そして最後に、予備配向糸を巻いてポリアミド56延伸加工糸を得る工程。
【0055】
延伸倍率は1.3、延伸温度は160℃とした;
仮撚機の速度比D/Yは1.75であった;
交絡装置内の圧縮空気の圧力は0.7MPaであり、巻取速度は550m/分であり、巻取オーバーフィードは4%であった。
【0056】
実施例9:低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸の調製
実施例4で調製したポリアミド56予備配向糸から、ポリアミド56延伸加工糸を調製した。
低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸の製造プロセスは、以下の工程を含んでいた:
まず、ポリアミド56予備配向糸をガイドにより第1ローラーに向け、撚りストッパーを通して搬送し、第1のホットボックス内で予備配向糸を熱延伸する工程;次に、冷却板で予備配向糸を冷却してセットし、仮撚機、第2ローラー、交絡装置を通して搬送し、オイルロールで紡糸仕上げする工程;そして最後に、予備配向糸を巻いてポリアミド56延伸加工糸を得る工程。
【0057】
延伸倍率は1.28、延伸温度は170℃とした;
仮撚機の速度比D/Yは1.65であった;
交絡装置内の圧縮空気の圧力は0.3MPaであり、巻取速度は450m/分であり、巻取オーバーフィードは6%であった。
【0058】
実施例10:低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸の調製
実施例5で調製したポリアミド56予備配向糸から、ポリアミド56延伸加工糸を調製した。
低沸水収縮性ポリアミド56延伸加工糸の製造プロセスは、以下の工程を含んでいた:
まず、ポリアミド56予備配向糸をガイドにより第1ローラーに向け、撚りストッパーを通して搬送し、第1のホットボックス内で予備配向糸を熱延伸する工程;次に、冷却板で予備配向糸を冷却してセットし、仮撚機、第2ローラー、交絡装置を通して搬送し、オイルロールで紡糸仕上げする工程;そして最後に、予備配向糸を巻いてポリアミド56延伸加工糸を得る工程。
【0059】
延伸倍率は1.2、延伸温度は180℃とした;
仮撚機の速度比D/Yは1.7であった;
交絡装置内の圧縮空気の圧力は0.6MPaであり、巻取速度は350m/分であり、巻取オーバーフィードは2%であった。
【0060】
比較例2:
実施例3で調製したポリアミド56予備配向糸から、ポリアミド56延伸加工糸を調製した。
ポリアミド56延伸加工糸の製造プロセスは、以下の工程を含んでいた:
まず、ポリアミド56予備配向糸をガイドにより第1ローラーに向け、撚りストッパーを通して搬送し、第1のホットボックス内で予備配向糸を熱延伸する工程;次に、冷却板で予備配向糸を冷却してセットし、仮撚機、第2ローラー、交絡装置を通して搬送し、オイルロールで紡糸仕上げする工程;そして最後に、予備配向糸を巻いてポリアミド56延伸加工糸を得る工程。
【0061】
延伸倍率は1.02、延伸温度は160℃とした;
仮撚機の速度比D/Yは1.75であった;
交絡装置内の圧縮空気の圧力は0.7MPaであり、巻取速度は550m/分であり、巻取オーバーフィードは4%であった。
【0062】
比較例3:
実施例3で調製したポリアミド56予備配向糸から、ポリアミド56延伸加工糸を調製した。
ポリアミド56延伸加工糸の製造プロセスは、以下の工程を含んでいた:
まず、ポリアミド56予備配向糸をガイドにより第1ローラーに向け、撚りストッパーを通して搬送し、第1のホットボックス内で予備配向糸を熱延伸する工程;次に、冷却板で予備配向糸を冷却してセットし、仮撚機、第2ローラー、交絡装置を通して搬送し、オイルロールで紡糸仕上げする工程;そして最後に、予備配向糸を巻いてポリアミド56延伸加工糸を得る工程。
【0063】
延伸倍率は1.3、延伸温度は160℃とした;
仮撚機の速度比D/Yは1.75であった;
交絡装置内の圧縮空気の圧力は0.6MPaであり、巻取速度は900m/分であり、巻取オーバーフィードは4%であった。
【0064】
比較例4:
比較例1aで調製したポリアミド6予備配向糸から、ポリアミド6延伸加工糸を調製した。
ポリアミド6延伸加工糸の製造プロセスは、以下の工程を含んでいた:
まず、ポリアミド6予備配向糸をガイドにより第1ローラーに向け、撚りストッパーを通して搬送し、第1のホットボックス内で予備配向糸を熱延伸する工程;次に、冷却板で予備配向糸を冷却してセットし、仮撚機、第2ローラー、交絡装置を通して搬送し、オイルロールで紡糸仕上げする工程;そして最後に、予備配向糸を巻いてポリアミド6延伸加工糸を得る工程。
【0065】
延伸倍率は1.2、延伸温度は180℃とした;
仮撚機の速度比D/Yは1.7であった;
交絡装置内の圧縮空気の圧力は0.6MPaであり、巻取速度は350m/分であり、巻取オーバーフィードは2%であった。
【0066】
比較例5:
実施例8のポリアミド56延伸加工糸の調製について記載したプロセスに従って、比較例1bで調製したポリアミド56予備配向糸からポリアミド56延伸加工糸を調製した。
【0067】
実施例1~10および比較例で調製した予備配向糸および延伸加工糸のパラメータの試験結果を表1に示した。
【表1】
【0068】
比較例2~5で調製したポリアミド繊維と比較すると、本発明に係る実施例6~10で調製したポリアミド56繊維は、低沸水収縮性であり、機械的特性が良好であった。また、本発明に係るポリアミド56繊維は、染色均一性および寸法安定性が良好であった。また、実施例6~10で調製したポリアミド56繊維は、比較例2~5で調製したものよりも有意に良好であった。
【0069】
最後に、上記の実施形態は、本発明の技術的解決策を説明するためにのみ使用されるが、それらを限定するものではないことに留意されたい。以上、本発明を上記実施形態を用いて詳細に説明したが、当業者は、上記実施形態に記載された技術的解決策をさらに変形することが可能であること、またはその技術的特徴の一部もしくは全部を均等に置き換えることが可能であることを理解すべきである。これらの変更または置き換えにより、対応する技術的解決策の趣旨が本発明の実施形態の技術的解決策の範囲から逸脱することはない。
【国際調査報告】