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特表2022-545116エネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-25
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20221018BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221018BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H02J7/02 F
H02J7/00 302C
H01M10/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512419
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2020008589
(87)【国際公開番号】W WO2021040217
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0103486
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ボ・ミ・イム
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503EA05
5G503GD03
5G503GD06
5G503HA03
5H030AA01
5H030AS03
5H030BB21
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
エネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法及びシステムを提供する。本発明は、エネルギー貯蔵システム(ESS)に組み込まれている多数のセルに対して、間欠的な充/放電による退化及び影響を極力抑えるようにバッテリーラックに組み込まれている多数のセルをモジュール単位で互いに異なるように充/放電駆動して、セル同士の間のSOCのばらつきの発生なしに均一に充/放電が行えるようにするエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法及びシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵システム(ESS)に組み込まれている各バッテリーモジュールを構成する多数のセルの充/放電を制御する方法において、
前記各バッテリーモジュールを構成する多数のセルの充/放電を行う充/放電遂行ステップと、
前記充/放電遂行ステップにより前記多数のセルが同時に充/放電中である状態で、所定の周期ごとに各セルのSOC測定データを測定するデータ測定ステップと、
前記測定された各セルの前記SOC測定データを用いて、SOCを算出するSOC算出ステップと、
前記算出された各セルの前記SOCを用いて、同一の時点に対して、前記各バッテリーモジュール別に最も大きなSOC値である最大SOCと最も小さなSOC値である最小SOCを取り出す最大値/最小値取り出しステップと、
取り出した前記最大SOCと前記最小SOCに基づいて、前記各バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作の有無を判断する充/放電動作有無判断ステップと、
前記判断結果を基にして、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を制御する充/放電動作制御ステップと、
を含んでなるエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法。
【請求項2】
前記SOC算出ステップにおける前記SOCの算出は、下記の数式1により行うことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法。
【数1】
【請求項3】
前記充/放電動作有無判断ステップは、
前記取り出した最大SOCが予め設定した動作限界範囲の最大限界値(UB)に達するか、あるいは、前記最小SOCが予め設定した最小限界値(LB)に達すれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断する第1の判断ステップと、
前記第1の判断ステップにおいて、充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断すれば、当該バッテリーモジュールの前記最大SOCと前記最小SOCとの差分を算出する偏差算出ステップと、
算出した前記最大SOCと前記最小SOCとの前記差分が所定の基準範囲を超えた状態であるか否かを比較して、その比較結果を基にして、前記第1の判断ステップにおける1次判断に対して最終的に判断する第2の判断ステップと、
を含んでなることを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法。
【請求項4】
前記第2の判断ステップは、
前記最大SOCと前記最小SOCとの前記差分が所定の基準範囲を超えた状態であれば、前記最大SOCが前記最大限界値(UB)に達したか、あるいは、前記最小SOCが前記最小限界値(LB)に達した場合であっても、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を行い続けるべきであると最終的に判断することを特徴とする請求項3に記載のエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法。
【請求項5】
前記第2の判断ステップは、
前記最大SOCと前記最小SOCとの前記差分が所定の基準範囲以内の場合であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を中止すべきであると最終的に判断することを特徴とする請求項3に記載のエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法。
【請求項6】
多数のセルから構成されたバッテリーモジュールを一つ以上備えるバッテリーラックと、
前記バッテリーモジュール別にセルの充/放電動作を制御する充/放電制御部と、
所定の周期ごとに、充/放電中のセルのSOC測定データを測定するデータ測定部と、
前記データ測定部により測定された前記SOC測定データを用いて、それぞれのセルのSOCを算出するSOC算出部と、
前記SOC算出部において算出されたそれぞれのセルの前記SOCを用いて、バッテリーモジュール別に当該セルの充/放電動作の有無を判断する充/放電動作有無判断部と、
前記充/放電動作有無判断部における各バッテリーモジュール別のセルの前記充/放電動作の有無の判断のための基準データが格納されるメモリー部と、
を備えてなるエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化システム。
【請求項7】
前記SOC算出部における各セルの前記SOCの算出は、下記の数式1により行うことを特徴とする請求項6に記載のエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化システム。
【数2】
【請求項8】
前記充/放電動作有無判断部は、
前記SOC算出部において算出された多数のセルの前記SOCのうち、同一の時点に対して、前記各バッテリーモジュール別に最も大きなSOC値である最大SOCと最も小さなSOC値である最小SOCを取り出す最大値/最小値取り出し部と、
バッテリーモジュール別に取り出した前記最大SOCが予め設定した動作限界範囲の最大限界値(UB)に達するか否か、あるいは、前記最小SOCが予め設定した動作限界範囲の最小限界値(LB)に達するか否かを比較して、その比較結果を基にして、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作の有無を1次的に判断する第1の判断部と、
を備えてなることを特徴とする請求項6又は7に記載のエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化システム。
【請求項9】
前記第1の判断部は、
前記最大SOCが前記最大限界値(UB)に達するか、あるいは、前記最小SOCが前記最小限界値(LB)に達すれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断し、1次判断信号を出力することを特徴とし、
前記最大SOCが前記最大限界値(UB)未満であり、前記最小SOCが前記最小限界値(LB)を超える状態であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を行い続けるべきであると判断し、持続信号を出力することを特徴とする請求項8に記載のエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化システム。
【請求項10】
前記充/放電動作有無判断部は、
前記第1の判断部から前記1次判断信号が出力されれば、当該バッテリーモジュールの前記最大SOCと前記最小SOCとの差分を算出する偏差算出部と、
算出された前記最大SOCと前記最小SOCとの前記差分が所定の基準範囲を超えるか否かを比較して、その比較結果を基にして、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断した結果に対して、最終的に判断する第2の判断部と、
を備えてなることを特徴とする請求項9に記載のエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化システム。
【請求項11】
前記第2の判断部は、
前記最大SOCと前記最小SOCとの前記差分が所定の基準範囲を超えた状態であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を行い続けるべきであると最終的に判断して、前記充/放電制御部に持続信号を出力し、
前記最大SOCと前記最小SOCとの前記差分が所定の基準範囲以内の場合であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を中止すべきであると最終的に判断し、前記充/放電制御部に第2の判断信号を出力することを特徴とする請求項10に記載のエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化システム。
【請求項12】
前記充/放電制御部は、
前記第2の判断部から持続信号を受け渡されれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電中の状態が続くように制御し、前記第2の判断信号を受け渡されれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電電流を遮断して充/放電動作を中止することを特徴とする請求項11に記載のエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法及びシステムに係り、さらに詳しくは、エネルギー貯蔵システム(ESS)に組み込まれている多数のセルに対して、間欠的な充/放電による退化及び影響を極力抑えるように充/放電駆動して、セルの安定性を保持することのできるエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近頃、環境破壊、資源枯渇などが深刻な問題として取り上げられており、これに伴い、エネルギーを蓄え、蓄えられたエネルギーを効率よく活用できる電力貯蔵装置(Energy Storage System;ESS)への関心が高まりつつある。電力貯蔵装置(ESS)は、駆動電圧の保持及び効率よいエネルギーの出力のために複数のバッテリーセルを直列又は並列につないで複数のバッテリーパックを構成し、複数のバッテリーパックが直列につながれた複数のバッテリーラック(rack)を構成してバッテリーを構成する。
【0003】
一方、従来には、このようなバッテリーラック(rack)を構成する多数のセルの充/放電を制御する方式として、前記バッテリーラック(rack)に組み込まれている多数のセルの平均SOCを算出し、これを基準としてセルの充/放電を行う方式を採用していた。
【0004】
しかしながら、充/放電に際して、一つのバッテリーラック(rack)に組み込まれている多数のセルの平均充電状態(SOC:State of Charge)を基準として用いる場合、セルの充/放電状態にばらつきが出てしまうという不都合がある。
【0005】
具体的に、SOCが平均よりも高いセルは過剰に充電されてしまい、SOCが平均よりも低いセルは過剰に放電されてしまう結果、放電深度(Depth of Discharge;DOD)の上/下限の限界線において一部のセルが間欠的に充/放電を行い続け、このような現象は、セルの退化を引き起こす主な原因となって、バッテリーの性能を低下させるという不都合を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】JP4433752B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した不都合を解決するために案出されたものであり、その目的は、バッテリーラックに組み込まれている多数のセルをモジュール単位で互いに異なるように充/放電駆動して、セル同士の間のSOCのばらつきの発生なしに均一に充/放電が行えるようにするエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法及びシステムを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る、エネルギー貯蔵システム(ESS)に組み込まれている各バッテリーモジュールを構成する多数のセルの充/放電を制御する方法は、前記各バッテリーモジュールを構成する多数のセルの充/放電を行う充/放電遂行ステップと、前記充/放電遂行ステップにより前記多数のセルが同時に充/放電中である状態で、所定の周期ごとに各セルのSOC測定データを測定するデータ測定ステップと、前記測定された各セルの前記SOC測定データを用いて、SOCを算出するSOC算出ステップと、前記算出された各セルの前記SOCを用いて、同一の時点に対して、前記各バッテリーモジュール別に最も大きなSOC値である最大SOCと最も小さなSOC値である最小SOCを取り出す最大値/最小値取り出しステップと、取り出した前記最大SOCと前記最小SOCとに基づいて、各バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作の有無を判断する充/放電動作有無判断ステップと、前記判断結果を基にして、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を制御する充/放電動作制御ステップと、を含んでなる。
【0009】
ここで、前記SOC算出ステップにおける前記SOCの算出は、下記の数式1により行うことを特徴とする。
【0010】
【数1】
【0011】
一方、前記充/放電動作有無判断ステップは、前記取り出した最大SOCが予め設定した動作限界範囲の最大限界値(UB)に達するか、あるいは、前記最小SOCが予め設定した最小限界値(LB)に達すれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断する第1の判断ステップと、前記第1の判断ステップにおいて、充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断すれば、当該バッテリーモジュールの前記最大SOCと前記最小SOCとの差分を算出する偏差算出ステップと、算出した前記最大SOCと前記最小SOCとの差分が所定の基準範囲を超えた状態であるか否かを比較して、その比較結果を基にして、前記第1の判断ステップにおける1次判断に対して最終的に判断する第2の判断ステップと、を含んでなることを特徴とする。
【0012】
具体的に、前記第2の判断ステップは、前記最大SOCと前記最小SOCとの前記差分が所定の基準範囲を超えた状態であれば、前記最大SOCが前記最大限界値(UB)に達したか、あるいは、前記最小SOCが前記最小限界値(LB)に達した場合であっても、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を行い続けるべきであると最終的に判断することを特徴とする。
【0013】
これに対し、前記第2の判断ステップは、前記最大SOCと前記最小SOCとの前記差分が所定の基準範囲以内の場合であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を中止すべきであると最終的に判断することを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施形態に係る、エネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化システムは、多数のセルから構成されたバッテリーモジュールを一つ以上備えるバッテリーラックと、前記バッテリーモジュール別にセルの充/放電動作を制御する充/放電制御部と、所定の周期ごとに、充/放電中のセルのSOC測定データを測定するデータ測定部と、前記データ測定部により測定された前記SOC測定データを用いて、それぞれのセルの前記SOCを算出するSOC算出部と、前記SOC算出部において算出されたそれぞれのセルのSOCを用いて、バッテリーモジュール別に当該セルの充/放電動作の有無を判断する充/放電動作有無判断部と、前記充/放電動作有無判断部における各バッテリーモジュール別のセルの前記充/放電動作の有無の判断のための基準データが格納されるメモリー部と、を備えてなる。
【0015】
ここで、前記SOC算出部における各セルの前記SOCの算出は、下記の数式1により行うことを特徴とする。
【0016】
【数2】
【0017】
一方、前記充/放電動作有無判断部は、前記SOC算出部において算出された多数のセルの前記SOCのうち、同一の時点に対して、各バッテリーモジュール別に最も大きなSOC値である最大SOCと最も小さなSOC値である最小SOCを取り出す最大値/最小値取り出し部と、バッテリーモジュール別に取り出した前記最大SOCが予め設定した動作限界範囲の最大限界値(UB)に達するか否か、あるいは、前記最小SOCが予め設定した動作限界範囲の最小限界値(LB)に達するか否かを比較して、その比較結果を基にして、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作の有無を1次的に判断する第1の判断部と、を備えてなることを特徴とする。
【0018】
具体的に、前記第1の判断部は、前記最大SOCが前記最大限界値(UB)に達するか、あるいは、前記最小SOCが前記最小限界値(LB)に達すれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断し、1次判断信号を出力することを特徴とし、前記最大SOCが前記最大限界値(UB)未満であり、前記最小SOCが前記最小限界値(LB)を超える状態であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を行い続けるべきであると判断し、持続信号を出力することを特徴とする。
【0019】
一方、前記充/放電動作有無判断部は、前記第1の判断部から前記1次判断信号が出力されれば、当該バッテリーモジュールの前記最大SOCと前記最小SOCとの差分を算出する偏差算出部と、算出された前記最大SOCと前記最小SOCとの前記差分が所定の基準範囲を超えるか否かを比較して、その比較結果を基にして、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断した結果に対して、最終的に判断する第2の判断部と、を備えてなることを特徴とする。
【0020】
具体的に、前記第2の判断部は、前記最大SOCと前記最小SOCとの差分が所定の基準範囲を超えた状態であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を行い続けるべきであると最終的に判断して、前記充/放電制御部に持続信号を出力し、前記最大SOCと前記最小SOCとの前記差分が所定の基準範囲以内の場合であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電動作を中止すべきであると最終的に判断し、前記充/放電制御部に第2の判断信号を出力することを特徴とする。
【0021】
これにより、前記充/放電制御部は、前記第2の判断部から持続信号を受け渡されれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電中の状態が続くように制御し、前記第2の判断信号を受け渡されれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの前記充/放電電流を遮断して充/放電動作を中止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、多数のセルに対してセル同士の間のSOCのばらつきの発生なしに同様に充/放電を行うことが可能であることから、SOCのばらつきの発生によるセルの退化を防ぐことができ、さらに、バッテリー性能の低下を極力抑えることができることから、バッテリーの効率性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の他の実施形態に係るエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法を示すフローチャートである。
図3】本発明に適用される電圧モデルを概略的に示す回路図である。
図4】本発明に係るエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化システムを概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、添付図面に基づいて、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態について詳しく説明する。しかしながら、本発明は、種々の異なる形態に具体化可能であり、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。なお、図中、本発明を明確に説明するために、説明とは無関係な部分は省略し、明細書の全般に亘って、類似の部分には類似の図面符号を付している。
【0025】
以下、添付図面に基づいて、本発明について詳しく説明する。
【0026】
1.本発明に係るエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法
図1は、本発明の一実施形態を示すフローチャートであり、図2は、本発明の他の実施形態を示すフローチャートである。これらに基づいて、本発明のエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化方法について説明する。
【0027】
1.1.充/放電遂行ステップ(S100)
充/放電遂行ステップは、エネルギー貯蔵システム(ESS)に組み込まれている各バッテリーモジュールを構成する多数のセルに対して同時に充/放電動作を行うステップであって、これにより、エネルギー貯蔵システム(ESS)を構成する多数のすべてのセルは、充/放電中の状態となる。このように、セルの充/放電の遂行を制御することは、後述する充/放電制御部200により行われる。
【0028】
1.2.データ測定ステップ(S200)
データ測定ステップは、前記充/放電遂行ステップ(S100)を通して多数のセルが同時に充/放電中である状態で、所定の周期ごとに各セルのSOCの測定のためのデータを測定するステップであって、後述するデータ測定部300により行われる。
【0029】
具体的に、充/放電中の多数のセルに対して、所定の周期ごとに各セルの電流、電圧、抵抗を測定してもよい。
【0030】
この明細書においては、このステップを通して測定される各セルの電流、電圧、抵抗値をSOC測定データと命名して説明することがある。
【0031】
1.3.SOC算出ステップ(S300)
<実施形態1:SOCを用いる場合>
SOC算出ステップは、前記データ測定ステップ(S200)において測定された各セルのSOC測定データに基づいて、当該セルのSOCを算出するステップであって、後述するSOC算出部400により行われる。
【0032】
具体的に、セルのSOCの算出は、前記測定されたSOC測定データに基づいて、下記の数式1により行われてもよい(図3参照)。
【0033】
【数3】
【0034】
このステップにより、充/放電中の各セルに対するSOC値を取得することができる。
【0035】
<実施形態2:端子電圧を用いる場合>
実施形態2の場合、各セルのSOCを算出するSOC算出ステップ(S300)ではなく、各セルの端子電圧Vを算出する端子電圧算出ステップ(S300)から構成されてもよく、この場合、後述する端子電圧算出部400により行われる。
【0036】
具体的に、セルの端子電圧の算出は、前記測定されたSOC測定データに基づいて、下記の数式2により行われてもよい(図3参照)。
【0037】
【数4】
【0038】
このステップにより、充/放電中の各セルに対する端子電圧値を取得することができる。
【0039】
1.4.最大値/最小値取り出しステップ(S400)
<実施形態1:SOCを用いる場合>
最大値/最小値取り出しステップは、前記SOC算出ステップ(S300)を通して算出された各セルのSOCのうち、同一の時点に対して、各バッテリーモジュール別に最大及び最小SOCを取り出すステップであって、充/放電動作有無判断部500の最大値/最小値取り出し部510により行われる。
【0040】
各バッテリーモジュール別に、当該バッテリーモジュール内に組み込まれている多数のセルの各SOC値のうち、最も大きなSOCを有するセルのSOC値を最大SOCとして、最も小さなSOCを有するセルのSOC値を最小SOCとして取り出してもよい。このステップを通して、各バッテリーモジュール別に最大SOC及び最小SOCが取り出され、前記取り出される最大SOC及び最小SOCは、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルに対して行われている充/放電動作を中止しなければならない状態であるか、あるいは、行い続けてもよい状態であるかを判断するうえで利用可能である。
【0041】
<実施形態2:端子電圧を用いる場合>
実施形態2に係る最大値/最小値取り出しステップにおいては、前記端子電圧算出ステップ(S300)において算出された各セルの端子電圧値Vのうち、同一の時点に対して、各バッテリーモジュール別に最大及び最小端子電圧値を取り出してもよい。
【0042】
各バッテリーモジュール別に、当該バッテリーモジュール内に組み込まれている多数のセルの各端子電圧値のうち、最も大きな電圧を有するセルの電圧値を最大端子電圧として、最も小さな電圧を有するセルの端子電圧値を最小端子電圧として取り出してもよい。これにより、各バッテリーモジュール別に最大電圧測定値及び最小電圧測定値が取り出され、前記取り出される最大端子電圧及び最小端子電圧は、後述するステップを通して当該バッテリーモジュールを構成する多数のセルの充/放電動作を中止しなければならない状態であるか、あるいは、行い続けてもよい状態であるかを判断するうえで利用可能である。
【0043】
1.5.充/放電動作有無判断ステップ(S500)
<実施形態1:SOCを用いる場合>
充/放電動作有無判断ステップにおいては、実施形態1の場合、前記最大値/最小値取り出しステップ(S400)により取り出された同一の時点に対する各バッテリーモジュール別の最大SOC及び最小SOCに基づいて、各バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作の有無を判断してもよい。
【0044】
<実施形態2:端子電圧を用いる場合>
実施形態2の場合には、前記最大値/最小値取り出しステップ(S400)により取り出された同一の時点に対する各バッテリーモジュール別の最大端子電圧及び最小端子電圧に基づいて、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作の有無を判断してもよい。
【0045】
このような充/放電動作有無判断ステップは、下記のような細かいステップを含んでいてもよい。
【0046】
ア.第1の判断ステップ(S510)
<実施形態1:SOCを用いる場合>
まず、前記取り出された最大SOCと最小SOCをあらかじめ設定した動作限界範囲の最大限界値(UB)及び最小限界値(LB)とそれぞれ比較して、その比較結果を基にして、当該バッテリーモジュールの充/放電動作の有無を判断してもよい。これは、後述する第1の判断部520により行われる。
【0047】
具体的に、前記最大SOC(SOCmax)が前記動作限界範囲の最大限界値(UB)に達する(以上である状態)か、あるいは、前記最小SOC(SOCmin)が前記動作限界範囲の最小限界値(LB)に達すれば(以下である状態)、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断(S512)してもよい。
【0048】
すなわち、前記最大SOCと最小SOCのうちのどちらか一方でも最大限界値(UB)以上の状態になるか、あるいは、最小限界値(LB)以下の状態になると、当該バッテリーモジュールの充/放電中のセルの充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断するのである。
【0049】
これに対し、前記最大SOCが最大限界値(UB)未満であり、かつ、最小SOCもまた最小限界値(LB)に達していない状態であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を行い続けるべきであると判断(S514)する。
【0050】
<実施形態2:端子電圧を用いる場合>
実施形態2の場合は、前記取り出された最大端子電圧と最小端子電圧を予め設定した動作限界範囲の最大電圧値(OVW)及び最小電圧値(UVW)とそれぞれ比較して、その比較結果を基にして、当該バッテリーモジュールの充/放電動作の有無を判断してもよい。
【0051】
具体的に、前記最大端子電圧(Vmax)が前記動作限界範囲の最大電圧値(Over Voltage Warning;OVW)に達する(以上である状態)か、あるいは、前記最小端子電圧(Vmin)が前記動作限界範囲の最小電圧値(Under Voltage Warning;UVW)に達する(以下である状態)と、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断してもよい。
【0052】
すなわち、前記最大端子電圧と最小端子電圧のうちのどちらか一方でも最大電圧値(OVW)又は最小電圧値(UVW)以下の状態になると、当該バッテリーモジュールの充/放電中のセルの充/放電動作を中止すべきであると判断するのである。
【0053】
これに対し、前記最大端子電圧が最大端子電圧(Vmax)未満であり、かつ、最小端子電圧もまた最小端子電圧(Vmin)に達していない状態であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を行い続けるべきであると判断(S514)する。
【0054】
イ.偏差算出ステップ(S520)
<実施形態1:SOCを用いる場合>
偏差算出ステップは、前記第1の判断ステップ(S510)において充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断された当該バッテリーモジュールの最大SOCと最小SOCとの差分を算出するステップであって、前記最大/最小取り出しステップ(S400)において取り出したバッテリーモジュール別の最大SOCと最小SOCの値を用いて算出してもよい。このようにして算出された最大SOCと最小SOCとの偏差は、前記第1の判断ステップ(S510)において充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断された当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作有無を最終的に判断するうえで利用可能である。
【0055】
<実施形態2:端子電圧を用いる場合>
実施形態2の場合、前記最大/最小取り出しステップ(S400)において取り出された各バッテリーモジュール別の最大端子電圧と最小端子電圧との差分を算出する場合であって、上述した実施形態1と同様に、前記第1の条件比較ステップ(S510)において充/放電動作を中止すべきであると判断された場合に行われてもよい。これを通して、各バッテリーモジュール別に最大端子電圧と最小端子電圧との偏差が算出される。このようにして算出された最大端子電圧と最小端子電圧との偏差は、前記第1の条件比較ステップ(S510)において充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断された当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作有無を最終的に判断するうえで利用可能である。
【0056】
このような動作は、後述する偏差算出部530により行われる。
【0057】
ウ.第2の判断ステップ(S530)
<実施形態1:SOCを用いる場合>
第2の判断ステップにおいては、前記偏差算出ステップ(S520)を通して算出された最大SOCと最小SOCとの差分値を用いて、前記第1の判断ステップ(S510)の1次判断に対する、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作の有無を最終的に判断してもよい。
【0058】
具体的に、前記最大SOCと最小SOCとの偏差が所定の基準範囲を超えるか否かを比較して、前記最大SOCと最小SOCとの偏差が所定の基準範囲を超えれば、前記第1の判断ステップ(S510)において当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべきであると判断した場合であっても、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を行い続けるべきであると最終的に判断(S522)してもよい。
【0059】
これに対し、前記最大SOCと最小SOCとの偏差が所定の基準範囲以内の場合であれば、前記第1の判断ステップ(S510)において当該バッテリーモジュール内のセルの充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断した結果と同様に、充/放電動作を中止すべきであると最終的に判断(S524)してもよい。
【0060】
換言すれば、前記第1の判断ステップ(S510)において最大SOC及び最小SOCを所定の最大限界値(UB)及び最小限界値(LB)と比較して、当該バッテリーモジュール内のセルの充/放電動作の有無を1次的に判断し、その判断の結果、充/放電動作を中止すべきであると判断されれば、前記第2の判断ステップ(S510)において最大SOCと最小SOCとの偏差が所定の基準範囲を超えるか否かを比較して、超えれば、前記第1の判断ステップ(S510)において充/放電動作を中止すべきであると判断した場合であっても、当該バッテリーモジュール内のセルの充/放電動作を行い続けるべきであると最終的に判断するのである。
【0061】
<実施形態2:端子電圧を用いる場合>
実施形態2の場合、前記偏差算出ステップ(S520)を通して算出された最大端子電圧と最小端子電圧との差分値をもって、前記第1の判断ステップ(S510)において当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作有無に対して1次的に判断した結果に対して最終的に判断してもよい。
【0062】
具体的に、前記最大端子電圧と最小端子電圧との偏差が所定の基準範囲に収まるか否かを比較して、前記最大端子電圧と最小端子電圧との偏差が所定の基準範囲を超えれば、前記第1の判断ステップ(S510)において当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべきであると判断した場合であっても、当該バッテリーモジュールのセルの充/放電動作を行い続けるべきであると最終的に判断(S522)してもよい。
【0063】
これに対し、前記最大端子電圧と最小端子電圧との偏差が所定の基準範囲以内の場合であれば、SOCとの偏差がSOC誤差範囲以内であることもあり、使用できる電力もしくは充電できる電力が少ない場合であるとみなし、前記第1の判断ステップ(S510)において当該バッテリーモジュール内のセルの充/放電動作を中止すべきであると判断した結果と同様に、充/放電動作を中止すべきであると最終的に判断(S524)してもよい。
【0064】
このように、実施形態2の場合には、最大端子電圧及び最小端子電圧を所定の最大電圧値(OVW)及び最小電圧値(UVW)と比較して、当該バッテリーモジュール内のセルの充/放電動作の有無を1次的に判断し、前記最大端子電圧と最小端子電圧との偏差が所定の基準範囲を超えるか否かを比較して、超えれば、前記第1の条件比較ステップ(S510)において充/放電動作を中止すべきであると判断した場合であっても、当該バッテリーモジュール内のセルの充/放電動作を行い続けるべきであると最終的に判断してもよい。これに対し、最大端子電圧と最小端子電圧との偏差が所定の基準範囲以内であれば、前記1次判断結果と同様に、当該バッテリーモジュール内のセルの充/放電動作を中止すべきであると最終的に判断してもよい。
【0065】
要するに、実施形態1は、最大SOCと最小SOCを用いて1次的に判断し、これらの値の間の偏差を用いて、1次判断に対して最終的に判断するのであり、実施形態2は、最大端子電圧と最小端子電圧を用いて1次的に判断し、これらの値の間の偏差を用いて1次判断に対して最終的に判断するのである。
【0066】
このようなステップは、後述する第2の判断部540により行われる。
【0067】
ここで、実施形態1と実施形態2は、SOCと端子電圧を用いるという相違点があるため、上述した実施形態1における所定の基準範囲と実施形態2における所定の基準範囲は、互いに異なる値に設定される。
【0068】
1.6.充/放電動作制御ステップ(S600)
充/放電動作制御ステップは、前記第2の判断ステップ(S530)において最終的に判断した結果を基にして、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を制御するステップであって、充/放電制御部200により行われる。
【0069】
前記第2の判断ステップ(S530)において充/放電動作を行い続けるべきであると判断されれば、当該バッテリーモジュールのセルの充/放電電流が流れる状態を保持して充/放電を行い続けるように制御してもよい。これに対し、前記第2の判断ステップ(S530)において充/放電動作を中止すべきであると判断された場合であれば、当該バッテリーモジュールのセルに流れる充/放電電流を遮断して現在行われている充/放電動作を中止してもよい。
【0070】
このように、バッテリーラック100(rack)を構成する多数のセルを、充/放電中のセルの充/放電動作を行い続けるか否かを2段階にわたって2種類の条件の充足有無に応じてモジュール単位で判断して制御することにより、バッテリーラック100(rack)を構成する多数のセル同士の間のばらつきを最小化させて均一に充/放電可能なようにして、充/放電状態のばらつきに伴うセルの間欠的な充/放電に伴う退化及び悪影響を防ぐことができる。これにより、セルの安定性を保持することができ、さらに、エネルギー貯蔵システム(ESS)をさらに安定的に運用することが可能である。
【0071】
2.本発明に係るエネルギー貯蔵システム(ESS)のセル安定化システム
2.1.バッテリーラック100
バッテリーラックは、一つ以上のバッテリーモジュール110を備えてなり、各バッテリーモジュール110は、多数のバッテリーセル111を備えていてもよい。
【0072】
前記バッテリーラックを構成する各バッテリーモジュール110には、当該モジュール識別番号が与えられており、前記バッテリーモジュール内に組み込まれる各バッテリーセル111にもまた、それに見合うセル識別番号が与えられている。
【0073】
2.2.充/放電制御部200
これは、各バッテリーモジュール110に組み込まれているセルの充/放電動作を制御する構成要素であって、後述する充/放電動作有無判断部500の判断を基にして充/放電中のセルの充/放電電流を遮断して充/放電動作を中止してもよく、あるいは充/放電が行われている状態を保持してもよい。
【0074】
このような充/放電制御部は、後述する充/放電動作有無判断部500から出力される制御信号に基づいて、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を制御してもよい。
【0075】
2.3.データ測定部300
データ測定部は、前記バッテリーラック100を構成する各バッテリーモジュール110に組み込まれている多数のセル111の充/放電が行われている状態で、所定の周期ごとに各セル111の電流、電圧、抵抗値を測定してもよい。
【0076】
前記データ測定部は、電流測定部、電圧測定部、抵抗測定部(以下、図示せず)を備えてなり、所定の周期ごとに充/放電中の各セルの電流、電圧、抵抗値を測定してもよい。
【0077】
このようにして測定される各セルの電流、電圧値をSOC測定データと命名する。
【0078】
2.4.SOC算出部400
<実施形態1:SOCを用いる場合>
SOC算出部は、前記データ測定部300により測定された充/放電中の各セルのSOC測定データに基づいて、下記の数式1により当該セルのSOCを算出してもよい(図3参照)。
【0079】
【数5】
【0080】
これにより、充/放電中の各セルに対するSOC値を取得することができる。
【0081】
<実施形態2:端子電圧を用いる場合>
実施形態2の場合、上述したSOC算出部ではなく、端子電圧算出部400から構成される場合であって、各セルの端子電圧Vkを算出して充/放電有無の判断に用いてもよい。
【0082】
各セルの端子電圧Vの算出に際しては、前記データ測定部300により測定された充/放電中の各セルのSOC測定データに基づいて、下記の数式2により当該セルの端子電圧を算出してもよい(図3参照)。
【0083】
【数6】
【0084】
これにより、充/放電中の各セルに対する端子電圧値を取得することができる。
【0085】
2.5.充/放電動作有無判断部500
<実施形態1:SOCを用いる場合>
充/放電動作有無判断部は、前記SOC算出部400において算出した各セルのSOCを用いて、各バッテリーモジュール別に当該セルの充/放電動作の有無を判断してもよい。
【0086】
<実施形態2:端子電圧を用いる場合>
実施形態2に係る充/放電動作有無判断部は、前記端子電圧算出部400において算出された充/放電中の各セルの端子電圧を用いて、各バッテリーモジュール別に当該セルの充/放電動作の有無を判断してもよい。
【0087】
このような充/放電動作有無判断部は、下記のような細かい構成要素を備えていてもよい。
【0088】
ア.最大値/最小値取り出し部510
<実施形態1:SOCを用いる場合>
最大値/最小値取り出し部は、前記SOC算出部400において算出した各セルのSOCのうち、同一の時点に対して、各バッテリーモジュール別に最大SOC及び最小SOCを取り出す構成要素である。
【0089】
各バッテリーモジュール別に、当該バッテリーモジュール内に組み込まれている多数のセルの各SOC値のうち、最も大きなSOCを有するセルのSOC値を最大SOC(SOCmax)として、最も小さなSOCを有するセルのSOC値を最小SOC(SOCmin)として取り出してもよい。これにより、各バッテリーモジュール別に最大SOC及び最小SOCが取り出され、前記取り出された最大SOC及び最小SOCは、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべき状態であるか、あるいは、行い続けてもよい状態であるかを判断するうえで利用可能である。
【0090】
<実施形態2:端子電圧を用いる場合>
実施形態2に係る最大値/最小値取り出し部は、前記端子電圧算出部400において算出した各セルの端子電圧のうち、同一の時点に対して、各バッテリーモジュール別に最大端子電圧及び最小端子電圧を取り出してもよい。
【0091】
各バッテリーモジュール別に、当該バッテリーモジュール内に組み込まれている多数のセルの各端子電圧値のうち、最も大きな端子電圧を有するセルの端子電圧値を最大端子電圧(Vmax)として、最も小さな端子電圧を有するセルの端子電圧値を最小端子電圧(Vmin)として取り出してもよい。これにより、各バッテリーモジュール別に最大端子電圧及び端子電圧が取り出され、前記取り出された最大端子電圧及び最小端子電圧は、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべき状態であるか、あるいは、行い続けてもよい状態であるかを判断するうえで利用可能である。
【0092】
イ.第1の判断部520
<実施形態1:SOCを用いる場合>
実施形態1に係る第1の判断部は、前記最大値/最小値取り出し部510において取り出された各バッテリーモジュール別の最大SOC及び最小SOCを用いて、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべきであるか、あるいは、行い続けるべきであるかを判断してもよい。
【0093】
具体的に、前記取り出された各バッテリーモジュール別の最大SOC及び最小SOCを予め設定した動作限界範囲の最大限界値(UB)及び最小限界値(LB)とそれぞれ比較して、その比較結果を基にして判断してもよい。
【0094】
比較の結果、前記最大SOCが前記最大限界値(UB)に達するか、あるいは、前記最小SOCが前記最小限界値(LB)に達すれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの現在行われている充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断し、この旨を示す第1の判断信号を生成して出力してもよい。
【0095】
これに対し、前記最大SOCが最大限界値(UB)未満であり、前記最小SOCが前記最小限界値(LB)を超える状態であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの現在行われている充/放電動作を行い続けてもよいと判断し、この旨を示す持続信号を生成して出力してもよい。
【0096】
<実施形態2:端子電圧を用いる場合>
実施形態2に係る第1の判断部は、前記最大値/最小値取り出し部510において取り出した各バッテリーモジュール別の最大端子電圧及び最小端子電圧を用いて、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべきであるか、あるいは、行い続けるべきであるかを判断してもよい。
【0097】
具体的に、前記取り出された各バッテリーモジュール別の最大端子電圧及び最小端子電圧を予め設定した動作限界範囲の最大電圧値(OVW)及び最小電圧値(UVW)とそれぞれ比較して、その比較結果を基にして判断してもよい。
【0098】
比較の結果、前記最大端子電圧が前記最大電圧値(OVW)に達するか、あるいは、前記最小端子電圧が前記最小電圧値(UVW)に達すれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの現在行われている充/放電動作を中止すべきであると1次的に判断し、この旨を示す1次判断信号を生成して出力してもよい。
【0099】
これに対し、前記最大端子電圧が前記最大電圧値(OVW)未満であり、前記最小端子電圧が前記最小電圧値(UVW)を超える状態であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの現在行われている充/放電動作を行い続けてもよいと判断し、この旨を示す持続信号を生成して出力してもよい。
【0100】
ここで、このとき、前記第1の判断信号と持続信号は、当該バッテリーモジュールのモジュール識別番号及びそこに組み込まれているセルのセル識別番号を含む。
【0101】
ウ.偏差算出部530
<実施形態1:SOCを用いる場合>
偏差算出部は、前記最大値/最小値取り出し部510において取り出した各バッテリーモジュール別の最大SOCと最小SOCを用いて、その差分を算出する構成要素であってもよい。
【0102】
具体的に、前記偏差算出部は、前記第1の判断部520から充/放電動作を中止すべきであると判断した結果を示す第1の判断信号が出力されれば動作し、前記出力された第1の判断信号に埋め込まれているモジュール識別番号及びセル識別番号を用いて、当該バッテリーモジュールの最大SOCと最小SOCとの偏差を算出してもよい。
【0103】
<実施形態2:端子電圧を用いる場合>
偏差算出部は、前記最大値/最小値取り出し部510において取り出した各バッテリーモジュール別の最大端子電圧と最小端子電圧を用いて、その差分を算出することができる。
【0104】
具体的に、前記偏差算出部は、前記第1の判断部520から充/放電動作を中止すべきであると判断した結果を示す第1の判断信号が出力されれば動作し、前記出力された第1の判断信号に埋め込まれているモジュール識別番号及びセル識別番号を用いて、当該バッテリーモジュールの最大端子電圧と最小端子電圧との偏差を算出してもよい。
【0105】
エ.第2の判断部540
<実施形態1:SOCを用いる場合>
第2の判断部は、前記偏差算出部530において算出された第1の判断信号に相当するバッテリーモジュールの最大SOCと最小SOCとの偏差を用いて、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電を中止すべきであると判断した1次判断結果に対して最終的に判断してもよい。
【0106】
具体的に、前記偏差算出部530において算出された最大SOCと最小SOCとの偏差が所定の基準範囲を超えるか否かを比較して、その比較結果を基にして1次判断に対して最終的に判断してもよい。
【0107】
その比較の結果、前記算出された最大SOCと最小SOCとの偏差が所定の基準範囲を超えた場合であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を行い続けてもよいと最終的に判断し、前記充/放電制御部200に持続信号を出力して現在行われている充/放電動作が行われ続けるようにする。
【0108】
これに対し、前記算出された最大SOCと最小SOCとの偏差が所定の基準範囲以内の状態であれば、使用できる電力もしくは充電できる電力が少ない状態であるとみなし、前記第1の判断部520において1次的に判断したのと同様に、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべきであると最終的に判断し、前記充/放電制御部200に第2の判断信号を出力して当該バッテリーモジュール内のセルの充/放電動作が中止されるようにする。
【0109】
要するに、バッテリーモジュールの最大SOCが前記最大限界値(UB)に達するか、あるいは、最小SOCが前記最小限界値(LB)に達するとしても、前記最大SOCと最小SOCとの差分が所定の基準範囲を超えた場合であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を行い続けるべきであると最終的に判断するのであり、バッテリーモジュールの最大SOCが前記最大限界値(UB)に達したか、あるいは、最小SOCが前記最小限界値(LB)に達した状態であり、かつ、前記最大SOCと最小SOCとの差分が所定の基準範囲以内である場合には、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべきであると最終的に判断するのである。
【0110】
<実施形態2:端子電圧を用いる場合>
実施形態2に係る第2の判断部は、前記偏差算出部530において算出された第1の判断信号に相当するバッテリーモジュールの最大端子電圧と最小端子電圧との偏差を用いて、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべきであると判断した1次判断結果に対して最終的に判断してもよい。
【0111】
具体的に、前記偏差算出部530において算出された最大端子電圧と最小端子電圧との偏差が所定の基準範囲を超えた状態であるか否かを比較して、その比較結果を基にして1次判断に対して最終的に判断してもよい。
【0112】
その比較の結果、前記算出された最大端子電圧と最小端子電圧との偏差が所定の基準範囲を超えた場合であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を行い続けてもよいと最終的に判断し、前記充/放電制御部200に持続信号を出力して現在行われている充/放電動作が行われ続けるようにする。
【0113】
これに対し、前記算出された最大端子電圧と最小端子電圧との偏差が所定の基準範囲以内の状態であれば、前記第1の判断部520において1次的に判断したのと同様に、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべきであると最終的に判断し、前記充/放電制御部200に第2の判断信号を出力して当該バッテリーモジュール内のセルの現在行われている充/放電動作が中止されるようにする。
【0114】
要するに、バッテリーモジュールの最大端子電圧が前記最大電圧値(OVW)に達するか、あるいは、最小端子電圧が前記最小電圧値(UVW)に達するとしても、前記最大端子電圧と最小端子電圧との差分が所定の基準範囲を超えた状態であれば、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を行い続けるべきであると最終的に判断するのであり、バッテリーモジュールの最大端子電圧が前記最大電圧値(OVW)に達したか、あるいは、最小端子電圧が前記最小電圧値(UVW)に達した状態であり、かつ、前記最大端子電圧と最小端子電圧との差分が所定の基準範囲以内である場合には、当該バッテリーモジュールに組み込まれているセルの充/放電動作を中止すべきであると最終的に判断するのである。
【0115】
ここで、前記第2の判断信号もまた、当該バッテリーモジュールのモジュール識別番号及びそこに埋め込まれているセル識別番号を含んでいるため、これを受け渡された充/放電制御部200においていろいろなバッテリーモジュールのうち当該バッテリーモジュールを識別し、そこに組み込まれているセルの充/放電電流を遮断して充/放電動作を中止するようにする。
【0116】
また、上述した実施形態1と実施形態2は、SOCと端子電圧を用いるという相違点があるため、前記実施形態1における所定の基準範囲と前記実施形態2における所定の基準範囲は、互いに異なる値に設定される。
【0117】
2.6.メモリー部600
メモリー部には、前記第1の判断部520と第2の判断部540においてセルの充/放電動作の有無を判断するうえで基準となる予め設定した動作限界範囲の最大限界値(UB)及び最小限界値(LB)、所定の基準範囲などの値が格納される。
【0118】
一方、本発明の技術的思想は、前記実施形態に基づいて具体的に記述されたが、前記実施形態はその説明のためのものであり、その制限のためのものではないということに留意すべきである。なお、本発明の技術分野における当業者であれば、本発明の技術思想の範囲内において種々の実施形態が実施可能であるということが理解できる筈である。
【符号の説明】
【0119】
100:バッテリーラック
110:バッテリーモジュール
111:バッテリーセル
200:充/放電制御部
300:データ測定部
400:SOC算出部
400:端子電圧算出部
500:充/放電動作有無判断部
510:最大値/最小値取り出し部
520:第1の判断部
530:偏差算出部
540:第2の判断部
600:メモリー部
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】