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特表2022-545121AAV5の単離修飾VP1カプシドタンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-25
(54)【発明の名称】AAV5の単離修飾VP1カプシドタンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/35 20060101AFI20221018BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 15/57 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20221018BHJP
   C07K 14/015 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20221018BHJP
   A61K 38/36 20060101ALN20221018BHJP
   A61K 38/37 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
C12N15/35 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/57
C12N15/10 200Z
C07K14/015
C12N7/01
A61P7/04
A61P7/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P3/00
A61K48/00
A61K35/76
A61K38/36
A61K38/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512768
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 RU2020000445
(87)【国際公開番号】W WO2021034222
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】2019126509
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522070400
【氏名又は名称】リミテッド・ライアビリティー・カンパニー “アナビオン”
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ストレルコバ,アンナ・ニコラエバナ
(72)【発明者】
【氏名】カラベルスキー,アレクサンドル・ウラジーミロビチ
(72)【発明者】
【氏名】マデラ,ドミトリー・アレクサンドロビチ
(72)【発明者】
【氏名】ペレペルキナ,マリヤ・パブロブナ
(72)【発明者】
【氏名】イウルロバ,エレナ・ビクトロバナ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルシオビチ,パベル・ミハイロビチ
(72)【発明者】
【氏名】プロコフィエフ,アレクサンドル・ウラジーミロビチ
(72)【発明者】
【氏名】モロゾフ,ドミトリー・バレンチノビチ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA27
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA44
4C084CA18
4C084DC15
4C084DC16
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZA531
4C084ZA532
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZC211
4C084ZC212
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA09
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA51
4C087ZA53
4C087ZA94
4C087ZC21
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045EA24
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、遺伝子療法および分子生物学の分野に関する。より具体的には、本発明は、野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質と比較した際、形質導入効率を改善させる1つまたはそれより多くのアミノ酸置換を含む、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの単離改変VP1タンパク質、ならびにそれに基づくカプシドおよびベクターに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞の高効率形質導入のためのアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの単離改変VP1タンパク質であって:
S651A、
S2AおよびT711S、
S2A、S651AおよびT711S
を含む群より選択される1つまたはそれより多くの置換を含む、Cap遺伝子によってコードされる野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質のアミノ酸配列を含む、前記単離改変VP1タンパク質。
【請求項2】
野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号1によって示されるアミノ酸配列を有する、請求項1のAAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質。
【請求項3】
S651A位の1つの置換を含む、請求項1のAAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質。
【請求項4】
配列番号2によって示されるアミノ酸配列を有する、請求項3のAAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質。
【請求項5】
S2AおよびT711S置換を含む、請求項1のAAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質。
【請求項6】
配列番号3によって示されるアミノ酸配列を有する、請求項5のAAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質。
【請求項7】
置換S2A、S651AおよびT711Sを含む、請求項1のAAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質。
【請求項8】
配列番号4によって示されるアミノ酸配列を有する、請求項7の単離改変AAV5 VP1カプシドタンパク質。
【請求項9】
標的細胞の高効率形質導入に用いられる、請求項1~8のいずれか一項のアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質をコードする、単離核酸。
【請求項10】
アミノ酸S651A置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質をコードする、請求項9の単離核酸であって、配列番号5の核酸配列によって、または対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される、前記単離核酸。
【請求項11】
アミノ酸S2AおよびT711S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質をコードする、請求項9の単離核酸であって、配列番号6の核酸配列によって、または対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される、前記単離核酸。
【請求項12】
アミノ酸S2A、S651AおよびT711S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質をコードする、請求項9の単離核酸であって、配列番号7の核酸配列によって、または対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される、前記単離核酸。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項のアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質を含む、標的細胞の高効率形質導入のための単離カプシド。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項のアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質、AAV5カプシドのVP2タンパク質またはその改変変異体、およびAAV5カプシドのVP3タンパク質またはその改変変異体を含む、請求項13の単離カプシド。
【請求項15】
野生型AAV5カプシドのVP2タンパク質を含む、請求項14の単離カプシド。
【請求項16】
配列番号8によって示されるアミノ酸配列を有する、野生型AAV5カプシドタンパク質のVP2タンパク質を含む、請求項15の単離カプシド。
【請求項17】
アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP2タンパク質を含む、請求項14の単離カプシド。
【請求項18】
T575S置換を含む、AAV5カプシドの改変VP2タンパク質を含む、請求項17の単離カプシド。
【請求項19】
T575S置換を含み、そして配列番号9によって示されるアミノ酸配列を有する、AAV5カプシドの改変VP2タンパク質を含む、請求項18の単離カプシド。
【請求項20】
S515AおよびT575S置換を含む、AAV5カプシドの改変VP2タンパク質を含む、請求項18の単離カプシド。
【請求項21】
S515AおよびT575S置換を含み、そして配列番号10によって示されるアミノ酸配列を有する、AAV5カプシドの改変VP2タンパク質を含む、請求項20の単離カプシド。
【請求項22】
野生型AAV5カプシドのVP3タンパク質を含む、請求項14の単離カプシド。
【請求項23】
配列番号11によって示されるアミノ酸配列を有する野生型AAV5カプシドのVP3タンパク質を含む、請求項22の単離カプシド。
【請求項24】
アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP3タンパク質を含む、請求項14の単離カプシド。
【請求項25】
T519S置換を含むAAV5カプシドの改変VP3タンパク質を含む、請求項24の単離カプシド。
【請求項26】
T519S置換を含み、そして配列番号12によって示されるアミノ酸配列を有する、AAV5カプシドの改変VP3タンパク質を含む、請求項25の単離カプシド。
【請求項27】
S459AおよびT519S置換を含むAAV5カプシドの改変VP3タンパク質を含む、請求項24の単離カプシド。
【請求項28】
S459AおよびT519S置換を含み、そして配列番号13によって示されるアミノ酸配列を有する、AAV5カプシドの改変VP3タンパク質を含む、請求項27の単離カプシド。
【請求項29】
標的細胞の高効率形質導入に用いられる、請求項13~28のいずれか一項のカプシドをコードする、単離核酸。
【請求項30】
異種核酸配列の被験体への送達のための、組換えアデノ随伴ウイルス血清型5(rAAV5)に基づくベクターであって:
1)請求項13~28のいずれか一項のカプシド、および
2)標的細胞において、異種核酸配列によってコードされる産物の発現を促進する制御配列を含む、異種核酸配列
を含む、前記ベクター。
【請求項31】
異種核酸配列の発現産物が、療法ポリペプチドまたはレポーターポリペプチドである、請求項30のrAAV5に基づくベクター。
【請求項32】
療法ポリペプチドが、因子VIII、因子IX、またはその機能的変異体からなる群より選択される凝固因子である、請求項31のrAAV5に基づくベクター。
【請求項33】
療法ペプチドが因子VIIIまたはその機能的変異体である、請求項32のrAAV5に基づくベクター。
【請求項34】
療法ペプチドが因子IXまたはその機能的変異体である、請求項32のrAAV5に基づくベクター。
【請求項35】
遺伝子産物を送達する必要がある被験体に、遺伝子産物を送達するための薬学的組成物であって:
a)請求項30~34のいずれか一項のrAAV5に基づくベクター;および
b)薬学的に許容され得る賦形剤
を含む、前記薬学的組成物。
【請求項36】
被験体がヒト被験体である、請求項35の薬学的組成物。
【請求項37】
遺伝子産物を送達する必要がある被験体に、遺伝子産物を送達するための方法であって、請求項30~34のいずれか一項のAAV5に基づくベクターまたは請求項35の薬学的組成物を、被験体に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項38】
被験体がヒト被験体である、請求項37の遺伝子産物の送達のための方法。
【請求項39】
疾患の治療が必要な被験体における疾患の治療のための、請求項30~34のいずれか一項のrAAV5に基づくベクターまたは請求項35の薬学的組成物の使用。
【請求項40】
被験体がヒト被験体である、請求項39の使用。
【請求項41】
疾患が:血液疾患;中枢神経系疾患;代謝疾患;筋疾患;遺伝性疾患を含む群より選択される、請求項39の使用。
【請求項42】
疾患が血液疾患である、請求項41の使用。
【請求項43】
異種核酸配列の発現産物が因子IXまたはその機能的変異体である、請求項42の使用。
【請求項44】
異種核酸配列の発現産物が因子VIIIまたはその機能的変異体である、請求項42の使用。
【請求項45】
疾患が筋疾患である、請求項41の使用。
【請求項46】
疾患が遺伝性疾患である、請求項41の使用。
【請求項47】
請求項30~34のいずれか一項のrAAV5に基づくベクターを得るための方法であって、請求項29の核酸を産生細胞にトランスフェクションすることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、遺伝子療法および分子生物学の分野に関する。より具体的には、本発明は、野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質と比較した際、形質導入効率を改善させる1つまたはそれより多くのアミノ酸置換を含む、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの単離改変VP1タンパク質、ならびにそれに基づくカプシドおよびベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、小さい(20nm)独立の複製不全非エンベロープ化ウイルスである。多くの異なるAAV血清型が、ヒトおよび霊長類において記載されてきている。アデノ随伴ウイルスゲノムは、長さ約4,700ヌクレオチドの(+または-の)一本鎖DNA(ssDNA)で構成される。ゲノムDNAは、末端に末端逆位反復(ITR)を有する。ゲノムは、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)、RepおよびCapを含み、多様なタンパク質産物をコードするいくつかの代替リーディングフレームを含む。rep産物は、AAV複製に必須である一方、3つのカプシドタンパク質(VP1、VP2、およびVP3)と共に他の代替産物は、Cap遺伝子にコードされる。VP1、VP2およびVP3タンパク質は、1:1:10比であり、正二十面体カプシドを形成する(Xie Q.ら The atomic structure of adeno-associated virus(AAV-2), a vector for human gene therapy. Proc Natl Acad Sci USA, 2002;99:10405-10410)。組換えAAV(rAAV)ベクター産生中、ITRが隣接する発現カセットを、AAVカプシド内にパッケージングする。AAV複製に必要な遺伝子はカセット中には含まれない。組換えAAVは、in vivo遺伝子導入のための最も安全でそして最も広く用いられるウイルスベクターの1つと見なされる。ベクターは、多数の組織タイプの細胞を感染させて、強くそして持続した導入遺伝子発現を提供可能である。これらはまた、非病原性であり、そして低い免疫原性プロファイルを有する(High KAら, ”rAAV human trial experience” Methods Mol Biol. 2011;807:429-57)。
【0003】
有効な遺伝子療法を開発する分野における試験の本質的な目的の1つは、ベクター投薬量を最小限にしながら、組織形質導入を最大限にするよう、ベクターを最適化することである。
【0004】
多様なAAV血清型が、向性を有する別個の宿主細胞表面受容体に対するアフィニティによって特徴づけられることが知られる。したがって、AAV2に関して主に知られる受容体は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンであり、共受容体は、インテグリンヘテロ二量体aVβ5、1型線維芽細胞増殖因子受容体、および肝細胞増殖因子受容体、c-Metである。AAV12は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびシアル酸に結合する。AAV4およびAAV5は、それぞれ、NおよびO連結シアル酸に結合する。AAV5は、血小板由来増殖因子受容体を活性化する。同時に、AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列、およびその組み立てプロセス、ゲノムのカプシド形成、宿主細胞表面上に提示される異なるタイプの受容体に関するアフィニティの間の結びつき(binding)が確立されてきている(Govindasamy L.ら Structural insights into adeno-associated virus serotype 5. J Virol. 2013 Oct;87(20):11187-99)。
【0005】
国際出願WO 2012145601は、変異体カプシドタンパク質を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ビリオンを開示し、ここで、該AAVビリオンは、野生型AAVと比較して、硝子体内注射を通じて投与された際、網膜細胞へのより高い感染性を示す。
【0006】
国際出願WO 2013158879は、被験体に異種核酸配列を送達するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、1つまたはそれより多くのリジン置換を含むVP1カプシドタンパク質を含み、1つのリジン置換がK137Rであり、前記リジン置換が前記カプシドタンパク質のユビキチン化を阻害するために有効であり、それによって標的細胞において、前記AAVベクターの形質導入を増加させる、前記ベクターを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際出願WO 2012145601
【特許文献2】国際出願WO 2013158879
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Xie Q.ら Proc Natl Acad Sci USA, 2002;99:10405-10410
【非特許文献2】High KAら, Methods Mol Biol. 2011;807:429-57
【非特許文献3】Govindasamy L.ら J Virol. 2013 Oct;87(20):11187-99
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、改善された形質導入能を有するAAVであって、その構造中に、導入遺伝子を必要とする患者のための、臨床的に重要な導入遺伝子を含む多様な導入遺伝子を含む、前記AAVに関する必要性がある。組織形質導入が改善されると、被験体に投与されるベクターの用量を最小限にすることが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質中の:
S651A、
S2AおよびT711Sまたは
S2A、S651A、およびT711S
を含む群より選択される、1つ以上のアミノ酸置換の存在が、この/これらの修飾(単数または複数)を有するAAV血清型5ベクターを用いた標的細胞の形質導入効率の増加、および上記突然変異を有するrAAVベクターによる導入遺伝子送達効率の有意な増加を引き起こすことを見出した。
【0011】
1つの側面において、本発明は、標的細胞の高効率形質導入のためのアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの単離改変VP1タンパク質であって:
S651A、
S2AおよびT711S、
S2A、S651AおよびT711S
を含む群より選択される1つまたはそれより多くの置換を含む、Cap遺伝子によってコードされる野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質のアミノ酸配列を含む、前記単離改変VP1タンパク質に関する。
【0012】
いくつかの態様において、野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1によって示されるアミノ酸配列を有する。
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質には、S651A位の1つの置換が含まれる。
【0013】
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質は、配列番号2によって示されるアミノ酸配列を有する。
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質には、S2AおよびT711S置換が含まれる。
【0014】
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質は、配列番号3によって示されるアミノ酸配列を有する。
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質には、S2A、S651AおよびT711S置換が含まれる。
【0015】
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質は、配列番号4によって示されるアミノ酸配列を有する。
1つの側面において、本発明は、標的細胞の高効率形質導入に用いられる、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記改変VP1タンパク質をコードする、単離核酸に関する。
【0016】
いくつかの態様において、アミノ酸S651A置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質をコードする単離核酸は、配列番号5の核酸配列によって、またはアミノ酸S651A置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される。
【0017】
いくつかの態様において、アミノ酸S2AおよびT711S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質をコードする単離核酸は、配列番号6の核酸配列によって、またはアミノ酸S2AおよびT711S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される。
【0018】
いくつかの態様において、アミノ酸S2A、S651AおよびT711S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質をコードする単離核酸は、配列番号7の核酸配列によって、またはアミノ酸S2A、S651AおよびT711S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される。
【0019】
1つの側面において、本発明は、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記改変VP1タンパク質を含む、標的細胞の高効率形質導入のための単離カプシドに関する。
【0020】
いくつかの態様において、単離カプシドには、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記改変VP1タンパク質、AAV5カプシドのVP2タンパク質またはその改変変異体、およびAAV5カプシドのVP3タンパク質またはその改変変異体が含まれる。
【0021】
いくつかの態様において、単離カプシドには、野生型AAV5カプシドのVP2タンパク質が含まれる。
いくつかの態様において、単離カプシドには、配列番号8によって示されるアミノ酸配列を有する、野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質が含まれる。
【0022】
いくつかの態様において、単離カプシドには、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP2タンパク質が含まれる。
いくつかの態様において、単離カプシドには、T575S置換を含む、AAV5カプシドの改変VP2タンパク質が含まれる。
【0023】
いくつかの態様において、単離カプシドには、T575S置換を含み、そして配列番号9によって示されるアミノ酸配列を有する、AAV5カプシドの改変VP2タンパク質が含まれる。
【0024】
いくつかの態様において、単離カプシドには、S515AおよびT575S置換を含む、AAV5カプシドの改変VP2タンパク質が含まれる。
いくつかの態様において、単離カプシドには、S515AおよびT575S置換を含み、そして配列番号10によって示されるアミノ酸配列を有する、AAV5カプシドの改変VP2タンパク質が含まれる。
【0025】
いくつかの態様において、単離カプシドには、野生型AAV5カプシドのVP3タンパク質が含まれる。
いくつかの態様において、単離カプシドには、配列番号11によって示されるアミノ酸配列を有する野生型AAV5カプシドのVP3タンパク質が含まれる。
【0026】
いくつかの態様において、単離カプシドには、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP3タンパク質が含まれる。
いくつかの態様において、単離カプシドには、T519S置換を含む、AAV5カプシドの改変VP3タンパク質が含まれる。
【0027】
いくつかの態様において、単離カプシドには、T519S置換を含み、そして配列番号12によって示されるアミノ酸配列を有する、AAV5カプシドの改変VP3タンパク質が含まれる。
【0028】
いくつかの態様において、単離カプシドには、S459AおよびT519S置換を含む、AAV5カプシドの改変VP3タンパク質が含まれる。
いくつかの態様において、単離カプシドには、S459AおよびT519S置換を含み、そして配列番号13によって示されるアミノ酸配列を有する、AAV5カプシドの改変VP3タンパク質が含まれる。
【0029】
1つの側面において、本発明は、標的細胞の高効率形質導入に用いられる、上記カプシドをコードする、単離核酸に関する。
1つの側面において、本発明は、異種核酸配列の被験体への送達のための、組換えアデノ随伴ウイルス血清型5(rAAV5)に基づくベクターであって:
1)上記カプシド、および
2)標的細胞において、異種核酸配列によってコードされる産物の発現を促進する制御配列を含む、異種核酸配列
を含む、前記ベクターに関する。
【0030】
いくつかの態様において、rAAV5に基づくベクターは、療法ポリペプチドまたはレポーターポリペプチドである産物をコードする異種核酸配列を含む。
いくつかの態様において、rAAV5に基づくベクターは、療法ポリペプチドである産物をコードする異種核酸配列を含み、療法ポリペプチドは、因子VIII、因子IX、またはその機能的変異体からなる群より選択される凝固因子である。
【0031】
いくつかの態様において、rAAV5に基づくベクターは、因子VIIIまたはその機能的変異体である産物をコードする異種核酸配列を含む。
いくつかの態様において、rAAV5に基づくベクターは、因子IXまたはその機能的変異体である産物をコードする異種核酸配列を含む。
【0032】
1つの側面において、本発明は、遺伝子産物を送達する必要がある被験体に、遺伝子産物を送達するための薬学的組成物であって:
a)rAAV5に基づく上記ベクター;および
b)薬学的に許容され得る賦形剤
を含む、前記薬学的組成物に関する。
【0033】
いくつかの態様において、遺伝子産物を送達する必要があるヒトに、遺伝子産物を送達するために、薬学的組成物を用いる。
1つの側面において、本発明は、遺伝子産物を送達する必要がある被験体に、遺伝子産物を送達するための方法であって、rAAV5に基づく上記ベクターまたは上記薬学的組成物を、被験体に投与する工程を含む、前記方法に関する。
【0034】
いくつかの態様において、遺伝子産物を送達する必要があるヒトに、遺伝子産物を送達するために、遺伝子産物の送達のための方法を用いる。
1つの側面において、本発明は、疾患の治療が必要な被験体における疾患の治療のための、rAAV5に基づく上記ベクターまたは上記薬学的組成物の使用に関する。
【0035】
いくつかの態様において、使用は、疾患の治療が必要なヒトにおいて、疾患の治療のために用いられる。
使用のいくつかの態様において、疾患は:血液疾患;中枢神経系疾患;代謝疾患;筋疾患;遺伝性疾患を含む群より選択される。
【0036】
使用のいくつかの態様において、疾患は、血液疾患である。
使用のいくつかの態様において、異種核酸配列の発現産物は、因子IXまたはその機能的変異体である。
【0037】
使用のいくつかの態様において、異種核酸配列の発現産物は、因子VIIIまたはその機能的変異体である。
使用のいくつかの態様において、疾患は筋疾患である。
【0038】
使用のいくつかの態様において、疾患は遺伝性疾患である。
1つの側面において、本発明は、rAAV5に基づく上記ベクターを産生するための方法であって、上記カプシドをコードする上記核酸で産生細胞をトランスフェクションすることを含む、前記方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】AAV血清型5のカプシド遺伝子のランダム変異体ライブラリーをクローニングするよう意図された、プラスミドpAAV-リンカーの環状図。 AmpRは、アンピシリンに対する耐性を提供するベータ-ラクタマーゼ遺伝子であり、 pUC起点は細菌におけるpUC複製起点であり、 ITRは逆位末端反復であり、 CMVプロモーターは、サイトメガロウイルス初期遺伝子のプロモーターであり、 ポリAは、mRNA安定性を増加させるためのポリアデニル化シグナル配列であり、 HBGイントロンはヒト・ベータグロビン・イントロンであり、 GFPは緑色蛍光タンパク質遺伝子であり、 T2Aは、標的タンパク質およびレポータータンパク質の同時発現を可能にする、自己切断ペプチドである。
図2】ランダム変異体のライブラリーから、野生型AAV血清型5の組換えウイルス産物を産生するよう意図された、プラスミドpAAV-Repの環状図。
【0040】
AmpRは、アンピシリンに対する耐性を提供するベータ-ラクタマーゼ遺伝子であり、
pUC起点は細菌におけるpUC複製起点であり、
Rep遺伝子は、AAV複製タンパク質をコードするRep遺伝子配列である。
図3】ランダム変異体のライブラリーから、野生型AAV血清型5の組換えウイルス産物を産生するよう意図された、プラスミドpHelperの環状図。
【0041】
AmpRは、アンピシリンに対する耐性を提供するベータ-ラクタマーゼ遺伝子であり、
Oriは細菌における複製起点であり、
アデノE2Aは、ウイルスDNA複製に関与するヘルパーアデノウイルス遺伝子配列であり、
アデノE4は、ウイルスDNA複製に関与するヘルパーアデノウイルス遺伝子配列であり、
アデノVARNAは、初期および後期両方のウイルス遺伝子の翻訳に関与するヘルパーアデノウイルス遺伝子配列である。
図4】AAV5-GFPに基づくウイルス産物であって、野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質に、1つまたはそれより多くのアミノ酸置換が含まれる、前記産物でのCHO-K1-S細胞形質導入の効率の分析。
図5】AAV5-hFIXに基づくウイルス産物であって、野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質に、1つまたはそれより多くのアミノ酸置換が含まれる、前記産物での形質導入の7日後、CHO-K1-S細胞から採取した培地中のhFIXタンパク質の濃度の分析。
図6】ゲノム中のAAV5カプシドタンパク質の位。
【0042】
2087~4258bp-VP1
2495~4258bp-VP2
2663~4258bp-VP3
【発明を実施するための形態】
【0043】
定義および一般的な方法
別に定義しない限り、本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、一般の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0044】
さらに、背景によって別に必要とされない限り、単数形には複数形が含まれるものとし、そして複数形には単数形が含まれるものとする。典型的には、細胞培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、有機合成化学、医学的および薬学的化学、ならびに本明細書記載のタンパク質および核酸のハイブリダイゼーションおよび化学の分類および方法は、当業者に周知であり、そして広く用いられる。酵素反応および精製法を、当該技術分野で一般的であるように、または本明細書に記載するように、製造者の指針にしたがって行う。
【0045】
「単離」は、天然状態から改変されるかまたは除去されることを意味する。例えば、動物中に天然に存在するペプチドは、「単離」されていないが、天然状態で同時に存在する物質から部分的にまたは完全に分離されている同じ核酸またはペプチドは「単離」されている。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された型で存在してもよいし、または例えば遺伝子修飾細胞など、非天然環境中に存在していてもよい。
【0046】
用語「天然存在」、「天然」または「野生型」は、人工的に産生されるものとは異なる、天然に見られうる物体を記載するために用いられる。例えば、天然供給源から単離可能であり、そして実験室において、人によって意図的に修飾されていない、生物(ウイルスを含む)中に存在するタンパク質またはヌクレオチド配列は、天然存在である。
【0047】
用語「ゲノム」は、生物の完全遺伝物質を指す。
本明細書および続く請求項で用いる際、背景によって別に指示されない限り、単語「含まれる(include)」および「含む(comprise)」またはその変形、例えば「有する(having)」、「含まれる(includes)」、「含まれている(including)」、「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」は、言及する整数または整数群の包含を示すが、いかなる他の整数または整数群の排除も示さないと理解される。
【0048】
タンパク質(ペプチド)
本明細書において用いる際、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、交換可能に用いられ、そしてこれらは、ペプチド結合によって共有結合しているアミノ酸残基からなる化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、そしてタンパク質またはペプチド配列が含んでもよいアミノ酸の最大数には制限は課されない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって、互いに連結される2つまたはそれより多くのアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書において用いる際、該用語は、当該技術分野において、例えばペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも一般的に称される、短い鎖、ならびに当該技術分野において一般的に、タンパク質と称される、多くのタイプがあるより長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」には、とりわけ、例えば生物学的活性断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチド変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはその組み合わせが含まれる。
【0049】
用語「形質転換」、「トランスフェクション」、および「形質導入」は、核酸が細胞または宿主生物内に導入される任意の方法または手段を指し、そして同じ意味を所持するように交換可能に用いられうる。こうした方法には、限定されるわけではないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、感染、PEG融合等が含まれる。
【0050】
核酸分子
用語「核酸」、「核配列(nucleic sequence)」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」は、本説明において交換可能に用いられ、修飾されているかまたはされていないヌクレオチドの正確な配列を意味し、核酸の断片または領域を決定し、非天然ヌクレオチドを含有するかまたは含有せず、そして二本鎖DNAまたはRNA、一本鎖DNAまたはRNA、あるいは前記DNAの転写産物のいずれかである。
【0051】
当業者は、核酸が、加水分解されて単量体「ヌクレオチド」になりうるポリヌクレオチドであるという一般的な知識を有する。単量体ヌクレオチドは加水分解されてヌクレオシドになりうる。本明細書で用いる際、ポリヌクレオチドには、限定されない例として、当該技術分野で利用可能な、限定されない例として組換え手段、すなわち一般的なクローニング技術およびPCR等を用いた、組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングを含む、任意の手段によって、そして合成手段によって、得られるすべての核酸配列が含まれる。
【0052】
本発明が、天然染色体環境にある、すなわち天然状態にあるヌクレオチド配列と関連しないこともまた、本明細書で留意されなければならない。本発明の配列は、単離され、そして/または精製されており、すなわちこれらは、例えばコピーによって、直接または間接的にサンプリングされ、その環境は少なくとも部分的に修飾されている。したがって、組換え遺伝学によって得られるか、例えば宿主細胞のものであるか、または化学合成によって得られる単離核酸もまた、本明細書に言及されなければならない。
【0053】
「単離」核酸分子は、同定され、そして該分子がヌクレアーゼ核酸の天然供給源において結合している、少なくとも1つの核酸分子不純物から分離されているものである。単離核酸分子は、天然条件下で見られる型またはセットとは異なる。したがって、単離核酸分子は、天然条件下で細胞に存在する核酸分子とは異なる。しかし、単離核酸分子には、例えば核酸分子が天然条件下での細胞におけるその局在とは異なる染色体局在を有するならば、ヌクレアーゼが通常発現される細胞に局在する核酸分子が含まれる。
【0054】
別に示さない限り、用語、ヌクレオチド配列は、その相補体を含む。したがって、特定の配列を有する核酸は、その相補鎖とともに、その相補配列を含むものと理解されなければならない。
【0055】
アデノ随伴ウイルス(AAV)
パルボウイルス科のウイルスは、小さいDNA含有動物ウイルスである。パルボウイルス科は、2つの亜科:そのメンバーが脊椎動物を感染させるパルボウイルス亜科およびそのメンバーが昆虫を感染させるデンソウイルス亜科に分けられうる。2006年までに、アデノ随伴ウイルスの11の血清型が記載されてきている(Mori, S.ら, 2004, ”Two novel adeno-associated viruses from cynomolgus monkey: pseudotyping characterization of capsid protein”, Virology, Т. 330(2):375-83)。既知の血清型はすべて、多数の組織タイプ由来の細胞を感染させうる。組織特異性は、カプシドタンパク質血清型によって決定され;したがって、アデノ随伴ウイルスに基づくベクターは、望ましい血清型を割り当てることによって構築される。パルボウイルスおよびパルボウイルス科の他のメンバーに関するさらなる情報は、文献に記載される(Kenneth I. Berns, ”Parvoviridae: The Viruses and Their Replication”, Fields Virology中、第69章(第3版 1996))。
【0056】
すべての既知のAAV血清型のゲノム編成は非常に類似である。AAVのゲノムは、直鎖一本鎖DNA分子であり、長さ約5,000ヌクレオチド(nt)未満である。逆位末端反復(ITR)は、非構造タンパク質の複製(Rep)および構造タンパク質(Cap)のユニークなコードヌクレオチド配列に隣接する。Cap遺伝子は、カプシドを形成するVPタンパク質(VP1、VP2およびVP3)をコードする。末端145ヌクレオチドは自己相補的であり、そしてT型ヘアピンを形成する、エネルギー的に安定な分子内二重鎖を形成しうるように編成されている。こうしたヘアピン構造は、ウイルスDNA複製起点として機能し、細胞DNAポリメラーゼ複合体のプライマーとして働く。哺乳動物細胞における野生型AAV(wtAAV)感染後、Rep遺伝子(例えばRep78およびRep52)は、それぞれ、P5プロモーターおよびP19プロモーターを用いて発現され、そしてどちらのRepタンパク質も、ウイルスゲノム複製において、特定の機能を有する。Repオープンリーディングフレーム(Rep ORF)でのスプライシング事象は、実際に4つのRepタンパク質(例えばRep78、Rep68、Rep52、およびRep40)の発現を生じる。しかし、非スプライシングmRNAをコードするRep78およびRep52タンパク質は、哺乳動物細胞におけるAAVベクター産生に十分であることが示されてきている。
【0057】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)に基づくベクター
用語「ベクター」は、本明細書で用いた際、連結されている別の核酸を輸送可能な核酸分子を意味する。
【0058】
用語「組換えAAVベクター」(または「rAAVベクター」)は、本明細書で用いた際、関心対象の1つまたはそれより多くのポリヌクレオチド配列、パルボウイルスまたは逆位末端反復配列(ITR)が隣接した関心対象の遺伝子または「導入遺伝子」を含むベクターを指す。
【0059】
用語「感染単位(iu)」、「感染性粒子」、または「複製単位」は、ウイルス力価に関して用いた際、例えばMcLaughlinら, J. Virol.(1988)62:1963-1973に記載されるような、複製中心アッセイ(replication center assay)としてもまた知られる、感染性中心アッセイ(infectious center assay)によって測定されるような、感染性組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0060】
用語「異種」は、コード配列および制御配列などの核酸配列に関する場合、通常はともに連結されていない、そして/または通常は特定の細胞と関連しない配列を指す。したがって、核酸構築物またはベクターの「異種」領域は、天然に他の分子と関連して見出されない別の核酸分子内にあるかまたはこうした分子に付着している、核酸断片である。例えば、核酸構築物の異種領域には、天然にはコード配列に関連して見られない配列が隣接するコード配列が含まれてもよい。異種コード配列の別の例は、コード配列自体が天然に見られない(例えば天然遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)構築物である。
【0061】
本明細書において、用語「機能可能であるように連結される」は、機能的関連にあるポリヌクレオチド(またはポリペプチド)要素の連結を指す。核酸は、別の核酸配列と機能的に関連する状態で存在する場合、「機能可能であるように連結」されている。例えば、転写制御配列は、コード配列の転写に影響を及ぼすならば、前記コード配列に機能可能であるように連結されている。用語「機能可能であるように連結される」は、連結されるDNA配列が典型的には隣接しており、そして2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合は、やはり隣接しており、そしてリーディングフレーム中に存在することを意味する。
【0062】
本明細書において用いる際、用語「プロモーター」または「転写制御配列」または「制御配列」は、1つまたはそれより多くのコード配列の転写を制御し、そしてコード配列の転写開始部位から転写方向に対する読み取り方向に関して、上流に位置し、そしてDNA依存性RNAポリメラーゼ結合部位、転写開始部位、ならびに限定されるわけではないが、転写因子結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質結合部位を含む任意の他のDNA配列、および前記プロモーターでの転写レベルを直接または間接的に制御する、当業者に知られるヌクレオチドの任意の他の配列の存在によって構造的に同定される。「恒常的」プロモーターは、典型的な生理学的および発生的条件下で、大部分の組織において活性化しているプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、例えば化学誘導剤の影響下で、生理学的または発生学的に制御されるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターは、特定のタイプの組織または細胞においてのみ活性化している。
【0063】
用語「(単数または複数の)エンハンサー」は、本明細書において、組換え産物をコードするDNA配列に隣接して位置するDNA配列を指してもよい。エンハンサー要素は、典型的には、プロモーター要素の5’方向に位置するか、あるいはコードDNA配列(例えば、単数または複数の組換え産物に転写されるかまたは翻訳されるDNA配列)の下流または該配列内に位置してもよい。したがって、エンハンサー要素は、組換え産物をコードするDNA配列の上流または前記配列の下流100塩基対、200塩基対、または300塩基対あるいはそれより遠くに位置してもよい。エンハンサー要素は、単一プロモーター要素と関連する発現レベルよりも高く、DNA配列から発現される組換え産物の量を増加させうる。多数のエンハンサー要素は、一般の当業者には容易に入手可能である。
【0064】
用語「選択可能マーカー遺伝子」は、発現された際に、選択可能表現型、例えば抗生物質耐性を形質転換細胞に与える遺伝子を指す。
本明細書において用いた際、用語「発現」は、プロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と定義される。
【0065】
治療のための使用
「遺伝子療法」は、疾患、典型的には遺伝性疾患を治療するための被験体細胞および/または組織内への遺伝子の挿入であり、ここで欠陥がある突然変異アレルが機能的なもので置換される。
【0066】
「治療する」、「治療」および「療法」は、生物学的障害および/またはそれに付随する症状の少なくとも1つを軽減するかまたは抑制する方法を指す。本明細書において用いた際、疾患、障害または状態を「軽減すること」は、疾患、障害、または状態の症状の重症度および/または発生頻度を減少させることを意味する。さらに、本明細書における「治療」への言及には、治癒的、対症的および予防的治療が含まれる。
【0067】
1つの側面において、治療の対象または患者は、哺乳動物、好ましくはヒト被験体である。前記被験体は、任意の年齢の男性または女性いずれでもよい。
用語「障害」は、本発明にしたがった治療から利益を得る任意の状態を意味する。これには、問題の障害に哺乳動物を罹患しやすくさせる病的状態を含めて、慢性および急性障害または疾患が含まれる。
【0068】
「疾患」は、動物が恒常性を維持できなくなり、そして疾患が軽減しない場合、動物の健康状態が悪化し続ける、動物の健康状態である。
用語「被験体」、「患者」、「個体」等は、本明細書において、交換可能に用いられ、そしてこれらは、本明細書に記載する方法を受け入れられる任意の動物を指す。特定の限定されない態様において、被験体、患者または個体はヒトである。
【0069】
「療法的有効量」は、治療している疾患の症状の1つまたはそれより多くを、ある程度緩和するであろう、治療中に投与される療法剤の量を指す。
用語「慢性」使用は、長期間、初期療法効果(活性)を持続するように、投与の急性(一過性)経路とは対照的な、剤(単数または複数)の連続(中断されない)使用を指す。
【0070】
「断続的」使用は、中断を伴わず連続的に行われるのではなく、事実上、周期的である治療を指す。
発明の詳細な説明
アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの単離改変VP1タンパク質
1つの側面において、本発明は、標的細胞の高効率形質導入のためのアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの単離改変VP1タンパク質であって:
S651A、
S2AおよびT711S、
S2A、S651A、およびT711S
を含む群より選択される1つまたはそれより多くの置換を含む、Cap遺伝子によってコードされる野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質のアミノ酸配列を含む、前記単離改変VP1タンパク質に関する。
【0071】
アミノ酸S2A置換は、野生型アデノ随伴ウイルス血清型5カプシドのVP1タンパク質の2位のセリン(Ser、S)のアラニン(Ala、A)への置換を意味すると理解される。
【0072】
アミノ酸S651A置換は、野生型アデノ随伴ウイルス血清型5カプシドのVP1タンパク質の651位のセリン(Ser、S)のアラニン(Ala、A)への置換を意味すると理解される。
【0073】
アミノ酸T711S置換は、野生型アデノ随伴ウイルス血清型5カプシドのVP1タンパク質の711位のスレオニン(Thr、T)のセリン(Ser、S)への置換を意味すると理解される。
【0074】
いくつかの態様において、野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質アミノ酸配列は
【0075】
【化1】
【0076】
によって示されるアミノ酸配列を有する。
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質には、S651A位で1つの置換が含まれる。
【0077】
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質は
【0078】
【化2】
【0079】
によって示されるアミノ酸配列を有する。
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質には、S2AおよびT711S置換が含まれる。
【0080】
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質は
【0081】
【化3】
【0082】
によって示されるアミノ酸配列を有する。
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質には、S2A、S651A、およびT711S置換が含まれる。
【0083】
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP1タンパク質は
【0084】
【化4】
【0085】
によって示されるアミノ酸配列を有する。
アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの単離改変VP2およびVP3タンパク質
アデノ随伴ウイルスのゲノムDNAの(+)鎖の「右側」は、3つのカプシドタンパク質であるVP1、VP2およびVP3をコードする重複配列を含む。これらの遺伝子の転写は、1つのプロモーター、p40から始まる。対応するタンパク質の分子重量は、それぞれ、87、72、および62kDaである。3つのタンパク質はすべて、単一のmRNAから翻訳される。転写後、プレmRNAは、2つの異なる方式でスプライシングされることも可能であり、ここで、より長いまたはより短いイントロンが切除されて、長さ2300または2600ヌクレオチドのmRNAを形成する。
【0086】
したがって、Cas遺伝子内への突然変異の導入は、AAV5カプシドのVP1タンパク質のみでなく、AAV5カプシドのVP2およびVP3タンパク質にも影響を及ぼす。
図6は、AAVゲノムにおけるAAV5カプシドタンパク質の位置の模式図である:
2087~4258bp-VP1
2495~4258bp-VP2
2663~4258bp-VP3。
【0087】
上記から、VP1における突然変異S2Aと類似の突然変異は、VP2およびVP3には存在しない一方、VP1における突然変異S651Aおよび/またはT711Sと類似の突然変異は、VP2およびVP3の両方に存在することになる。
【0088】
3つのカプシドタンパク質であるVP1、VP2およびVP3をコードする重複配列を考慮して、VP1におけるアミノ酸置換S651Aは:
VP2におけるS515A位でのアミノ酸置換;
VP3におけるS459A位でのアミノ酸置換
に対応するであろう。
【0089】
3つのカプシドタンパク質であるVP1、VP2およびVP3をコードする重複配列を考慮して、アミノ酸T711S置換は:
VP2におけるT575S位でのアミノ酸置換;
VP3におけるT519S位でのアミノ酸置換
に対応するであろう。
【0090】
さらに、本出願者らは、VP1/VP2/VP3における前記突然変異を含む短いアミノ酸配列を示すことによって、見出されている突然変異の環境を特定することが適切であると考える:
【0091】
【化5】
【0092】
いくつかの態様において、野生型AAV5カプシドのVP2タンパク質のアミノ酸配列は
【0093】
【化6】
【0094】
によって示されるアミノ酸配列を有する。
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP2タンパク質には、T575S置換が含まれる。
【0095】
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP2タンパク質は
【0096】
【化7】
【0097】
によって示されるアミノ酸配列を有する。
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP2タンパク質には、S515AおよびT575S置換が含まれる。
【0098】
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP2タンパク質は
【0099】
【化8】
【0100】
によって示されるアミノ酸配列を有する。
いくつかの態様において、野生型AAV5カプシドのVP3タンパク質のアミノ酸配列は
【0101】
【化9】
【0102】
によって示されるアミノ酸配列を有する。
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP3タンパク質には、T519S置換が含まれる。
【0103】
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP3タンパク質は
【0104】
【化10】
【0105】
によって示されるアミノ酸配列を有する。
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP3タンパク質には、S459AおよびT519S置換が含まれる。
【0106】
いくつかの態様において、AAV5カプシドの単離改変VP3タンパク質は
【0107】
【化11】
【0108】
によって示されるアミノ酸配列を有する。
カプシド
1つの側面において、本発明は、標的細胞の高効率形質導入のための単離カプシドであって、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記改変VP1タンパク質を含む、前記単離カプシドに関する。
【0109】
1つの態様において、単離カプシドには、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記改変VP1タンパク質、AAV5カプシドのVP2タンパク質またはその改変変異体、およびAAV5カプシドのVP3タンパク質またはその改変変異体が含まれる。
【0110】
特に好ましい態様には、事実上、保存性である置換、すなわち側鎖で関連するアミノ酸ファミリー内で行われる置換が含まれる。特に、アミノ酸は典型的には4つのファミリーに分割される:(1)酸性アミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸であり;(2)塩基性アミノ酸はリジン、アルギニン、ヒスチジンであり;(3)非極性アミノ酸はアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンであり、そして(4)非荷電極性アミノ酸はグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシンである。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、ときに、芳香族アミノ酸として分類される。例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンでの、アスパラギン酸のグルタミン酸での、スレオニンのセリンでの単離置換、あるいはアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸での類似の保存的置換は、生物学的活性に大きな影響を持たないであろう。例えば、関心対象のポリペプチドには、分子の望ましい機能が損なわれない(intact)ままである限り、最大約5~10の保存的または非保存的アミノ酸置換、またはさらに最大約15~25または50の保存的または非保存的アミノ酸置換、あるいは5~50の間の任意の整数値が含まれてもよい。
【0111】
1つの態様において、単離カプシドには、野生型AAV5カプシドのVP2タンパク質が含まれる。
1つの態様において、単離カプシドには、配列番号8によって示されるアミノ酸配列を有する、野生型AAV5カプシドのVP2タンパク質が含まれる。
【0112】
1つの態様において、単離カプシドには、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP2タンパク質が含まれる。
1つの態様において、単離カプシドには、T575S置換を含む、AAV5カプシドの改変VP2タンパク質が含まれる。
【0113】
1つの態様において、単離カプシドには、T575S置換を含み、そして配列番号9によって示されるアミノ酸配列を有する、AAV5カプシドの改変VP2タンパク質が含まれる。
【0114】
1つの態様において、単離カプシドには、S515AおよびT575S置換を含む、AAV5カプシドの改変VP2タンパク質が含まれる。
1つの態様において、単離カプシドには、S515AおよびT575S置換を含み、そして配列番号10によって示されるアミノ酸配列を有する、AAV5カプシドの改変VP2タンパク質が含まれる。
【0115】
1つの態様において、単離カプシドには、野生型AAV5カプシドのVP3タンパク質が含まれる。
1つの態様において、単離カプシドには、配列番号11によって示されるアミノ酸配列を有する、野生型AAV5カプシドのVP3タンパク質が含まれる。
【0116】
1つの態様において、単離カプシドには、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP3タンパク質が含まれる。
1つの態様において、単離カプシドには、T519S置換を含む、AAV5カプシドの改変VP3タンパク質が含まれる。
【0117】
1つの態様において、単離カプシドには、T519S置換を含み、そして配列番号12によって示されるアミノ酸配列を有する、AAV5カプシドの改変VP3タンパク質が含まれる。
【0118】
1つの態様において、単離カプシドには、S459AおよびT519S置換を含む、AAV5カプシドの改変VP3タンパク質が含まれる。
1つの態様において、単離カプシドには、S459AおよびT519S置換を含み、そして配列番号13によって示されるアミノ酸配列を有する、AAV5カプシドの改変VP3タンパク質が含まれる。
【0119】
単離核酸
1つの側面において、本発明は、標的細胞の高効率形質導入のために用いられる、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記改変VP1タンパク質をコードする単離核酸に関する。
【0120】
いくつかの態様において、アミノ酸S651A置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質をコードする単離核酸は、核酸配列
【0121】
【化12-1】
【0122】
【化12-2】
【0123】
によって、またはアミノ酸S651A置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される。
【0124】
「アミノ酸S651A置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする他の配列」は、遺伝暗号の縮重により、広範囲の異なるDNA配列が、配列番号2として本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードしうるため、配列番号5を有する核酸配列に代わる核酸配列を意味する。当該技術分野において訓練された当業者は、同じアミノ酸配列をコードするこれらの代替DNA配列を生成することが十分にできる。こうした変異体DNA配列は、本発明の範囲内である。
【0125】
いくつかの態様において、アミノ酸S2AおよびT711S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質をコードする単離核酸は、核酸配列
【0126】
【化13-1】
【0127】
【化13-2】
【0128】
によって、またはアミノ酸S2AおよびT711S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される。
【0129】
「アミノ酸S2AおよびT711S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする他の配列」は、遺伝暗号の縮重により、広範囲の異なるDNA配列が、配列番号3として本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードしうるため、配列番号6を有する核酸配列に代わる核酸配列を意味する。当該技術分野において訓練された当業者は、同じアミノ酸配列をコードするこれらの代替DNA配列を生成することが十分にできる。こうした変異体DNA配列は、本発明の範囲内である。
【0130】
いくつかの態様において、アミノ酸S2A、S651AおよびT711S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質をコードする単離核酸は、核酸配列
【0131】
【化14-1】
【0132】
【化14-2】
【0133】
によって、またはアミノ酸S2A、S651AおよびT711S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される。
【0134】
「アミノ酸S2A、S651AおよびT711S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP1タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする他の配列」は、遺伝暗号の縮重により、広範囲の異なるDNA配列が、配列番号4として本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードしうるため、配列番号7を有する核酸配列に代わる核酸配列を意味する。当該技術分野において訓練された当業者は、同じアミノ酸配列をコードするこれらの代替DNA配列を生成することが十分にできる。こうした変異体DNA配列は、本発明の範囲内である。
【0135】
野生型アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記VP1をコードする単離核酸は、核酸配列
【0136】
【化15-1】
【0137】
【化15-2】
【0138】
によって、または野生型アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドのVP1タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される。
「野生型アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドのVP1タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする他の配列」は、遺伝暗号の縮重により、広範囲の異なるDNA配列が、配列番号1として本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードしうるため、配列番号14を有する核酸配列に代わる核酸配列を意味する。当該技術分野において訓練された当業者は、同じアミノ酸配列をコードするこれらの代替DNA配列を生成することが十分にできる。こうした変異体DNA配列は、本発明の範囲内である。
【0139】
1つの側面において、本発明は、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記改変VP2タンパク質をコードする単離核酸に関する。
いくつかの態様において、アミノ酸T575S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP2タンパク質をコードする単離核酸は、核酸配列
【0140】
【化16】
【0141】
によって、またはアミノ酸T575S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP2タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される。
【0142】
「アミノ酸T575S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP2タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする他の配列」は、遺伝暗号の縮重により、広範囲の異なるDNA配列が、配列番号9として本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードしうるため、配列番号15を有する核酸配列に代わる核酸配列を意味する。当該技術分野において訓練された当業者は、同じアミノ酸配列をコードするこれらの代替DNA配列を生成することが十分にできる。こうした変異体DNA配列は、本発明の範囲内である。
【0143】
いくつかの態様において、アミノ酸S515AおよびT575S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP2タンパク質をコードする単離核酸は、配列番号10として本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードする任意の核酸配列を有する。当該技術分野において訓練された当業者は、同じアミノ酸配列をコードするこれらの代替DNA配列を生成することが十分にできる。こうした変異体DNA配列は、本発明の範囲内である。
【0144】
野生型アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記VP2をコードする単離核酸は、核酸配列
【0145】
【化17】
【0146】
によって、または野生型アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドのVP2タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される。
「野生型アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドのVP2タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする他の配列」は、遺伝暗号の縮重により、広範囲の異なるDNA配列が、配列番号8として本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードしうるため、配列番号16を有する核酸配列に代わる核酸配列を意味する。当該技術分野において訓練された当業者は、同じアミノ酸配列をコードするこれらの代替DNA配列を生成することが十分にできる。こうした変異体DNA配列は、本発明の範囲内である。
【0147】
1つの側面において、本発明は、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記改変VP3タンパク質をコードする単離核酸に関する。
いくつかの態様において、アミノ酸T519S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP3タンパク質をコードする単離核酸は、核酸配列
【0148】
【化18】
【0149】
によって、またはアミノ酸T519S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP3タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される。
【0150】
「アミノ酸T519S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP3タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする他の配列」は、遺伝暗号の縮重により、広範囲の異なるDNA配列が、配列番号12として本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードしうるため、配列番号17を有する核酸配列に代わる核酸配列を意味する。当該技術分野において訓練された当業者は、同じアミノ酸配列をコードするこれらの代替DNA配列を生成することが十分にできる。こうした変異体DNA配列は、本発明の範囲内である。
【0151】
いくつかの態様において、アミノ酸S459AおよびT519S置換を含むアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの改変VP3タンパク質をコードする単離核酸は、配列番号13として本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードする任意の核酸配列を有する。当該技術分野において訓練された当業者は、同じアミノ酸配列をコードするこれらの代替DNA配列を生成することが十分にできる。こうした変異体DNA配列は、本発明の範囲内である。
【0152】
野生型アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記VP3をコードする単離核酸は、核酸配列
【0153】
【化19】
【0154】
によって、または野生型アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドのVP3タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする任意の他の配列によって、示される。
「野生型アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドのVP3タンパク質の対応するアミノ酸配列をコードする他の配列」は、遺伝暗号の縮重により、広範囲の異なるDNA配列が、配列番号11として本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードしうるため、配列番号18を有する核酸配列に代わる核酸配列を意味する。当該技術分野において訓練された当業者は、同じアミノ酸配列をコードするこれらの代替DNA配列を生成することが十分にできる。こうした変異体DNA配列は、本発明の範囲内である。
【0155】
1つの側面において、本発明は、標的細胞の高効率形質導入のために用いられる、上記カプシドをコードする単離核酸に関する。
いくつかの態様において、上記カプシドをコードする単離核酸には、任意の上記核酸配列が含まれる。
【0156】
組換えアデノ随伴ウイルス血清型5(rAAV5)に基づくベクター
1つの側面において、本発明は、異種核酸配列の被験体への送達のための、組換えアデノ随伴ウイルス血清型5(rAAV5)に基づくベクターであって:
1)上記カプシド、および
2)標的細胞において、異種核酸配列によってコードされる標的産物の発現を促進する制御配列を含む、異種核酸配列
を含む、前記ベクターに関する。
【0157】
本発明のrAAVベクターは、非構造タンパク質(Rep)および構造タンパク質(Cap)をコードする遺伝子のヌクレオチド配列を含まない。
カプシドは本明細書の上記セクションに詳細に特徴づけられる。
【0158】
いくつかの態様において、rAAV5に基づくベクターは、療法ポリペプチドまたはレポーターポリペプチドである、異種核酸配列の発現産物を有する。
いくつかの態様において、rAAV5に基づくベクターは、療法ポリペプチドである産物をコードする異種核酸配列を含み、療法ポリペプチドは、因子VIII、因子IX、またはその機能的変異体からなる群より選択される凝固因子である。
【0159】
いくつかの態様において、rAAV5に基づくベクターは、因子VIIIまたはその機能的変異体である産物をコードする異種核酸配列を含む。
いくつかの態様において、rAAV5に基づくベクターは、因子IXまたはその機能的変異体である産物をコードする異種核酸配列を含む。
【0160】
薬学的組成物
1つの側面において、本発明は、遺伝子産物を送達する必要がある被験体に、遺伝子産物を送達する薬学的組成物であって:
a)rAAV5に基づく上記ベクター;および
b)薬学的に許容され得る賦形剤
を含む、前記薬学的組成物に関する。
【0161】
いくつかの態様において、遺伝子産物を送達する必要があるヒトに、遺伝子産物を送達するために、薬学的組成物を用いる。
特定の態様において、本発明は、薬学的に許容されうるキャリアーまたは他の医学的剤、薬学的剤、キャリアー、アジュバント、希釈剤等に、本発明のrAAV5ウイルス粒子を含む、薬学的組成物に関する。注射のため、キャリアーは典型的には液体キャリアーであろう。他の投与法のため、キャリアーは、固形または液体、例えば無菌発熱物質不含水または無菌発熱物質不含リン酸緩衝生理食塩水溶液であってもよい。吸入投与のため、キャリアーは吸入可能であり、そして好ましくは固形または液体微粒子型である。注射媒体として、注射溶液に一般的な添加物、例えば安定化剤、塩または生理食塩水、および/または緩衝剤を含有する水を使用することが好ましい。
【0162】
他の態様において、本発明は、rAAV5に基づくベクターがゲノム内に組み込まれている細胞を、薬学的に許容されうるキャリアーまたは他の医学的剤、薬学的剤、キャリアー、アジュバント、希釈剤等中に含む、薬学的組成物に関する。
【0163】
「薬学的組成物」は、本発明のrAAV5に基づく上記ベクター、および薬学的に許容されうる、そして薬理学的に適合する賦形剤、例えば充填剤、溶媒、希釈剤、キャリアー、補助剤、分配剤、送達剤、保存剤、安定化剤、乳化剤、懸濁剤、増粘剤、持続送達調節剤からなる群より選択される構成要素の少なくとも1つを含む組成物を意味し、その選択および比率は、投与のタイプおよび経路ならびに投薬量に応じる。本発明の薬学的組成物およびその調製法は、明白に、当業者に明らかであろう。薬学的組成物は、好ましくは、GMP(製造管理および品質管理に関する基準)要件にしたがって製造されるべきである。組成物は、緩衝剤組成物、等張剤、安定化剤および可溶化剤を含んでもよい。
【0164】
「薬学的に許容されうる」は、生物学的または他の負の副作用を持たない物質を意味し、例えば物質は、いかなる望ましくない生物学的影響も引き起こさずに、被験体に投与されうる。したがって、こうした薬学的組成物を、例えば、ex vivoでの細胞のトランスフェクションにおいて、あるいは被験体への直接のウイルス粒子または細胞のin vivoでの投与に、用いてもよい。
【0165】
用語「賦形剤」は、本明細書において、本発明の上記成分以外の任意の成分を記載するために用いられる。これらは、必要な物理化学的特性を薬剤産物に与えるために、薬学的製造において用いられる、無機性または有機性の物質である。
【0166】
「安定化剤」は、活性剤の物理的および/または化学的安定性を提供する、賦形剤、あるいは2つまたはそれより多くの賦形剤の混合物を指す。
用語「緩衝液」、「緩衝組成物」、「緩衝剤」は、その酸-塩基コンジュゲート構成要素の作用により、pHの変化に抵抗可能であり、rAAV5産物に基づくベクターがpH変化に抵抗することを可能にする、溶液を指す。一般的に、薬学的組成物は、好ましくは、4.0~8.0の範囲のpHを有する。用いてもよい緩衝剤の例には、限定されるわけではないが、酢酸、リン酸、クエン酸、ヒスチジン、コハク酸等の緩衝溶液が含まれる。
【0167】
薬学的組成物は、例えば2~8℃の保存温度で、明記される保存可能期間中、活性剤が、その物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を保持するならば、「安定」である。好ましくは、活性剤は、物理的および化学的安定性、ならびに生物学的活性の両方を保持する。保存期間は、加速されたまたは天然の経年劣化(aging)条件下での安定性試験の結果に基づいて調整される。
【0168】
本発明の薬学的組成物を、そのまま使用可能な(ready)配合物の形の、単回単位用量または複数の単回単位用量の形で、製造するか、パッケージングするかまたは広く販売してもよい。用語「単回単位用量」は、本明細書で用いた際、活性成分のあらかじめ決定された量を含有する薬学的組成物の別個の量を指す。活性成分の量は、典型的には、被験体に投与しようとする活性成分の用量に等しいか、こうした用量の好適な部分、例えばこうした用量の半量または三分の一量に等しい。
【0169】
遺伝子産物の送達法
1つの側面において、本発明は、遺伝子産物を送達する必要がある被験体に、遺伝子産物を送達するための方法であって、rAAV5に基づく上記ベクターまたは上記薬学的組成物を、被験体に投与する工程を含む、前記方法に関する。
【0170】
いくつかの態様において、遺伝子産物を送達するための方法は、遺伝子産物を送達する必要があるヒトに、遺伝子産物を送達するために用いられる。
当該技術分野に認識される、rAAV5に基づくベクターを投与するための任意の方法が、本発明のrAAV5に基づく上記ベクターのために適切に用いられうる。
【0171】
rAAV5に基づく組換えウイルスベクターは、好ましくは、生物学的有効量で、細胞に投与される。ウイルスベクターの「生物学的有効」量は、細胞において、感染(または形質導入)および異種核酸配列の発現を引き起こすために十分な量である。ウイルスを、in vivoで細胞に投与する場合(例えば以下に記載するように、ウイルスを被験体に投与する場合)、ウイルスベクターの「生物学的有効」量は、標的細胞において、形質導入および異種核酸配列の発現を引き起こすために十分な量である。
【0172】
本発明のrAAV5ウイルスベクターを投与するための細胞は、任意のタイプの細胞であってもよく、限定されるわけではないが、神経細胞(末梢および中枢神経系の細胞、特に脳細胞を含む)、肺細胞、上皮細胞(例えば腸および呼吸器上皮細胞)、筋細胞、膵臓細胞(島細胞を含む)、肝細胞、心筋細胞、骨細胞(例えば骨髄幹細胞)、造血幹細胞、脾臓細胞、角化細胞、線維芽細胞、内皮細胞、前立腺細胞、生殖細胞等が含まれる。あるいは、rAAV5ウイルスベクターを投与するための細胞は、任意の前駆細胞であってもよい。さらに代替物として、細胞は、幹細胞(例えば神経幹細胞、肝臓幹細胞)であってもよい。さらに、細胞は、上に明記するような、任意の起源の種由来であってもよい。
【0173】
使用
1つの側面において、本発明は、疾患を治療する必要がある被験体において、疾患を治療するための、rAAV5に基づく上記ベクターまたは上記薬学的組成物の使用に関する。
【0174】
いくつかの態様において、使用は、疾患を治療する必要があるヒトにおいて、疾患を治療するために用いられる。
投与の必要があるヒト被験体または動物への本発明のrAAV5に基づくベクターの投与は、ウイルスベクターを投与するために当該技術分野に知られる任意の手段によってもよい。
【0175】
投与の例示的な方式には、局所、経口、直腸、経粘膜、経皮、吸入、非経口投与(例えば静脈内、皮下、皮内、筋内、および関節内投与)等、ならびに直接組織または臓器注入、およびあるいは、クモ膜下腔内、直接筋内、脳室内、静脈内、腹腔内、鼻内、または眼内注射が含まれる。注射液を、液体溶液または懸濁物、注射前に、液体中で溶液または懸濁物を調製するために適した固形型として、あるいはエマルジョンとしてのいずれかで、慣用的な型で調製してもよい。あるいは、全身方式ではなく、局所で、例えばデポまたは持続放出配合物で、rAAV5に基づくベクターを投与してもよい。
【0176】
使用のいくつかの態様において、疾患は:血液疾患;中枢神経系疾患;代謝疾患;筋疾患;遺伝性疾患を含む群より選択される。
使用のいくつかの態様において、疾患は、血液疾患である。
【0177】
使用のいくつかの態様において、疾患は筋疾患である。
使用のいくつかの態様において、疾患は遺伝性疾患である。
本発明の特定の態様において、関心対象のヌクレオチド配列は、被験体の肝臓に、rAAV5に基づくベクターによって送達される。肝臓への投与は、限定されるわけではないが、静脈内投与、門脈内投与、胆管内投与、動脈内投与、および肝実質内への直接注射を含む、当該技術分野に知られる任意の方法によって行われてもよい。
【0178】
好ましくは、細胞(例えば肝臓細胞)は、ペプチドまたはタンパク質をコードするrAAV5に基づくベクターに感染し、該細胞は、コードされるペプチドまたはタンパク質を発現し、そしてこれを療法的有効量で血液循環系内に分泌する(以下に記載する通り)。あるいは、ベクターは、限定されるわけではないが、脳、膵臓、脾臓または筋肉を含む、別の細胞または組織に送達され、そして該細胞または組織によって発現される。
【0179】
「療法的有効量」は、疾患状態と関連する症状の少なくとも1つを軽減する(例えば緩和する、低下させる、減少する)量を意味する。言い換えると、「療法的有効」量は、被験体の状態にある程度の改善を提供するために十分な量である。
【0180】
使用のいくつかの態様において、異種核酸配列の発現産物は、因子IXまたはその機能的変異体である。
使用のいくつかの態様において、異種核酸配列の発現産物は、因子VIIIまたはその機能的変異体である。
【0181】
他の好ましい態様において、本発明のrAAV5に基づくベクターを筋内投与、より好ましくは筋内注射によって、または局所投与によって投与する(上述の通り)。他の好ましい態様において、本発明のパルボウイルス粒子を肺に投与する。
【0182】
本発明に開示するrAAV5に基づくベクターを、任意の適切な手段によって被験体の肺に投与してもよいが、好ましくは、本発明のrAAV5に基づくベクターで構成される吸入可能な粒子のエアロゾル懸濁物の形で投与し、これを被験体が吸入する。吸入可能粒子は液体または固体であってもよい。本発明のパルボウイルスrAAV5ベクターを含む液体粒子のエアロゾルを、任意の適切な手段によって、例えば当業者に知られるような、圧駆動式エアロゾルネブライザーまたは超音波ネブライザーで、産生してもよい。また、本発明のウイルスrAAV5ベクターを含む固体粒子のエアロゾルを、薬学業に知られる技術によって、任意の固体微粒子薬剤エアロゾル生成装置で産生してもよい。
【0183】
本発明のパルボウイルスrAAV5粒子の投薬量は、投与様式、治療しようとする疾患または状態、被験体の状態、特定のウイルスベクター、および送達しようとする遺伝子に応じ、そしてルーチンの方式で決定可能である。療法効果を達成するための例示的な用量は、少なくとも約10、10、10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016形質導入単位またはそれより多く、好ましくは約10~1013形質導入単位、さらにより好ましくは1012形質導入単位のウイルス力価である。
【0184】
したがって、本発明のrAAV5に基づくパルボウイルスベクター、試薬および方法を用いて、分裂または非分裂細胞のいずれかに核酸を導き、そしてその中で異種核酸を安定発現させてもよい。このベクター系を用いて、ここで、in vivo条件下で、細胞内に、細胞生理に影響を及ぼすタンパク質をコードする遺伝子を導入することが可能になる。したがって、本発明のベクターは、疾患状態のため、遺伝子療法において有用でありうる。
【0185】
一般的に、本発明を使用して、遺伝子発現に関連する任意の障害に関連する症状を治療するかまたは軽減する、生物学的効果を有する任意の外来核酸遺伝子を送達してもよい。例示的な疾患状態には、限定されるわけではないが:嚢胞性線維症(および他の肺疾患)、血友病A、血友病B、サラセミア、貧血および他の凝血障害、AIDS、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋委縮性側索硬化症、癲癇、および他の神経学的障害、糖尿病、筋ジストロフィー(例えばデュシェンヌ型、ベッカー型)、ゴーシェ病、ハーラー病、アデノシンデアミナーゼ不全症、糖原病、および他の代謝欠陥、実質臓器(例えば脳、肝臓、腎臓、心臓)の疾患等が含まれる。
【0186】
遺伝子導入は、疾患状態を理解し、そしてそのための療法を提供する際に実質的に潜在的な使用を有する。欠陥遺伝子が知られ、そしてクローニングされている遺伝性疾患が数多くある。いくつかの場合、これらのクローニングされた遺伝子の機能が知られる。一般的に、上記疾患状態は、2つのクラスに属する:一般的に劣性方式で遺伝する欠損性状態、典型的には酵素欠損、および時に少なくとも制御または構造タンパク質を伴う、優性方式で遺伝する不均衡状態。欠損状態疾患に関しては、遺伝子導入を用いて、置換療法のために、罹患組織内に正常遺伝子を運んでもよい。不均衡疾患状態に関しては、遺伝子導入を用いて、モデル系において疾患状態を生成し、これを次いで、疾患状態に対抗する試みに用いてもよい。したがって、本発明の方法は、遺伝性疾患を治療することを可能にする。本発明にしたがって、疾患状態は、部分的にまたは完全に、疾患を引き起こすかまたはより重症にする欠損または不均衡を改善する(remedy)ことによって治療される。突然変異を誘導するかまたは欠損を修正するための核酸配列の部位特異的組込みの使用もまた可能である。
【0187】
rAAV5に基づくベクターを産生するための方法
1つの側面において、本発明は、rAAV5に基づく上記ベクターを産生するための方法であって、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)の改変VP1カプシドタンパク質を含むカプシドをコードする配列を含む上記核酸で、産生細胞をトランスフェクションすることを含む、前記方法に関する。
【0188】
rAAV5に基づくベクターを産生するための方法のいくつかの態様において、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記改変VP1タンパク質、AAV5カプシドのVP2タンパク質またはその改変変異体、およびAAV5カプシドのVP3タンパク質またはその改変変異体をコードする配列を含む上記核酸を用いる。
【0189】
野生型AAV5カプシドのVP2タンパク質およびAAV5カプシドタンパク質のVP3タンパク質の改変変異体は、1つまたはそれより多くのアミノ酸置換を含む、野生型AAV5カプシドのVP2タンパク質および野生型AAV5カプシドのVP3タンパク質の変異体を意味すると理解される。
【0190】
特に好ましい態様には、事実上、保存性である置換、すなわち側鎖で関連するアミノ酸ファミリー内で行われる置換が含まれる。特に、アミノ酸は典型的には4つのファミリーに分割される:(1)酸性アミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸であり;(2)塩基性アミノ酸はリジン、アルギニン、ヒスチジンであり;(3)非極性アミノ酸はアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンであり、そして(4)非荷電極性アミノ酸はグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシンである。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、ときに、芳香族アミノ酸として分類される。例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンでの、アスパラギン酸のグルタミン酸での、スレオニンのセリンでの単離置換、またはアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸での類似の保存的置換は、生物学的活性に大きな影響を持たないであろう。例えば、関心対象のポリペプチドには、分子の望ましい機能が損なわれないままである限り、最大約5~10の保存的または非保存的アミノ酸置換、またはさらに最大約15~25または50の保存的または非保存的アミノ酸置換、あるいは5~50の間の任意の整数値が含まれてもよい。
【0191】
rAAV5に基づくベクターを産生するための方法のいくつかの態様において、アデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)カプシドの上記改変VP1タンパク質、野生型AAV5カプシドのVP2タンパク質および野生型AAV5カプシドのVP3タンパク質をコードする配列を含む、上記核酸を用いる。
【0192】
AAV5カプシドのVP2およびVP3タンパク質の改変変異体、ならびにこれらをコードする核酸は、本明細書の対応するセクションに詳細に開示される。
【実施例
【0193】
以下の実施例は、本発明のよりよい理解のために提供される。これらの実施例は、例示のみの目的のためであり、そしていかなる形でも、本発明の範囲を制限するとは見なされないものとする。
【0194】
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許および特許出願は、本明細書に援用される。前述の発明は、理解を明確にする目的のため、例示および例によってある程度詳細に記載されているが、一般の当業者には、本発明の解説を考慮して、付随する態様の精神または範囲から逸脱することなく、特定の変化および修飾を行ってもよいことが、容易に明らかであろう。
【0195】
材料および一般的な方法
組換えDNA技術
Sambrook J.ら, Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載されるような標準技術によって、DNA操作を行った。製造者の指示にしたがって、分子生物学試薬を用いた。
【0196】
遺伝子合成
化学合成によって、作製したオリゴヌクレオチドから、所望の遺伝子セグメントを調製した。PCR増幅を含むオリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結によって、単一の制限部位が隣接する長さ300~4000bpの遺伝子セグメントを組み立て、そして続いて明記する制限部位を通じてクローニングした。サブクローニングされた遺伝子断片のDNA配列をDNAシーケンシングによって確認した。
【0197】
DNA配列決定
サンガーシーケンシングによって、DNA配列を決定した。
DNAおよびタンパク質配列分析、ならびに配列データ管理
InfomaxのVector NTI Advanceパッケージソフト、バージョン8.0およびSnapGene Viewerを配列生成、マッピング、分析、注釈付けおよび例示に用いた。
【0198】
実施例1. AAV5カプシド変異体ライブラリーの産生
AAV5カプシド変異体のライブラリーをCap遺伝子配列(Davidsson M.ら、2016)のランダム突然変異誘発によって産生した。簡潔には、血清型5のCap遺伝子の野生型配列(GenBank ID AF085716.1)をデノボで組み立て、合成した野生型AAV5カプシド遺伝子をその後、ウラシル-DNAグリコシラーゼを用いて断片化し、プルーフリーディング活性を持たない(その結果、配列中にランダム突然変異が生じる)DNAポリメラーゼを用いて、生じた断片を全長Cap遺伝子に組み立てた。全長突然変異変異体を、緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む共通リーディングフレーム中のAscI/EcoRI制限部位で、キャリアープラスミドpAAV-リンカー(図1)内にクローニングし、それによってAAV5カプシドの多様なランダムライブラリーを産生し、その後、このライブラリーを用いて、形質導入活性が増加したカプシド変異体を選択した。
【0199】
形質導入活性が増加したウイルス粒子の陽性選択を、CHO-K1-S細胞に対して、in vitroで行った。それによって、形質導入のため、本発明者らは、イオジキサノール勾配中の超遠心を用いて精製した粒子を用いた。48時間後、細胞を採取し、そして効率的な形質導入が可能なウイルスゲノム配列の続く増幅のために、ゲノムDNAを単離した。その後、最高の形質導入効率を有する変異体でライブラリーを濃縮するために、続く選択反復のため、生じた配列を再クローニングし、そして再生産した。選択5周期後、30のクローンのカプシド遺伝子を配列決定して、最も成功する突然変異およびその組み合わせを決定した。配列決定結果によって、突然変異の卓越した組み合わせは、AAV5 VP1中のS2A、T711Sであり、そしてAAV5 VP1中のS2A、T711S、S651Aを含有するカプシド変異体であり、これらはクローンの約20%であった。AAV5 VP1中の突然変異S651Aを含むカプシド変異体もまた選択された。これらのカプシド変異体を、ウイルス粒子を産生するためにベクター内にクローニングし、そして野生型AAV5に比較した形質導入プロファイルを視覚化し、そして比較するためにさらに用いた。
【0200】
実施例2. 生じた配列ライブラリーからの組換えウイルス粒子の産生および続く選択
生じた配列ライブラリーから組換えウイルス粒子を産生し、そして続いて選択するため、一連のプラスミドを以下のように発展させた:キャリアープラスミド、Rep遺伝子配列を含むプラスミド、ならびにウイルス粒子の複製に必要なアデノウイルス遺伝子を含む構築物。
【0201】
HindIII/EcoRI部位で、5’端にEcoRI制限部位を、そして3’端にHindIII制限部位を添加した、デノボ合成した配列T2A-GFPをクローニングするリストリクターゼ―リガーゼ法を用いて、CellBiolab(米国)の元来の構築物pAAV-GFP対照プラスミド(VPK-402)中の修飾緑色蛍光タンパク質の配列を置換することによって、レポータータンパク質を含む1つのリーディングフレーム内に、AAV血清型5のカプシド遺伝子のランダム変異体ライブラリーをクローニングすることを意図した、キャリアープラスミドpAAV-リンカー(図1)を産生した。
【0202】
PciI/PsiI制限部位(New England Biolabs、米国)のAAV血清型2 Rep遺伝子(GenBank ID AF043303.1)の合成配列を、T4 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs、米国)で続いて処理して平滑端を生成し、やはりPciI/PsiI制限酵素(New England Biolabs、米国)で処理したプラスミドpGem-T Easy(Promega、米国)内にデノボクローニングすることによって、Rep遺伝子配列を含むプラスミドpAAV-Rep(図2)を産生した。
【0203】
組換えウイルス粒子を産生するためのアデノウイルス遺伝子は、アンピシリンに対する耐性を提供するベータ-ラクタマーゼ遺伝子であるAmpR、細菌中の複製起点であるOri、ウイルスDNA複製に関与するヘルパーアデノウイルス遺伝子配列であるアデノE2A、ウイルスDNA複製に関与するヘルパーアデノウイルス遺伝子配列であるアデノE4、初期および後期ウイルス遺伝子両方の翻訳に関与するヘルパーアデノウイルス遺伝子配列であるアデノVARNAを含む、CellBiolab(米国)の商業的キットAAV-2パッケージング系(VPK-402)由来の構築物pHelper(図3)を供給源とした。
【0204】
実施例3. 改変アデノ随伴ウイルス血清型5(rAAV)に基づくベクターを産生するための方法
改変血清型5カプシドを含むrAAV粒子を産生するため、産生細胞に以下のような3つのプラスミドを同時にトランスフェクションした:
1)rAAV粒子の組み立てのために必要なタンパク質およびRNAをコードするアデノウイルスヌクレオチド配列を含むプラスミド(ヘルパープラスミド);
2)アデノ随伴ウイルス血清型2のRep遺伝子の天然ヌクレオチド配列と共に、改変Cap遺伝子の配列を含むプラスミドであって、改変Cap遺伝子が:配列番号5、6または7のヌクレオチド配列あるいは配列番号2、3または4のアミノ酸配列を含むVP1タンパク質をコードする任意の他のヌクレオチド配列、ならびに用いられるヌクレオチド配列の代替リーディングフレーム由来のVP2およびVP3タンパク質を含む群より選択され
VP2が配列番号8、9、または10のアミノ酸配列いずれを有してもよく;
そしてVP3が配列番号11、12、または13のアミノ酸配列のいずれを有してもよい
前記プラスミド;
3)患者細胞内への送達のために意図される標的遺伝子をコードする、rAAV粒子の異種ゲノムを含むプラスミド。
【0205】
このセットの遺伝子は、rAAVウイルス粒子の組み立ておよび該粒子内での標的ゲノムのカプシド形成を72時間以内に提供する。トランスフェクション72時間後、産生細胞を溶解して、続く濾過およびクロマトグラフィー工程による精製のため、rAAV粒子を放出させる。酵素連結免疫吸着アッセイおよび定量PCRによって、精製rAAV粒子の力価を検証する。
【0206】
実施例4. 野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質中の突然変異S2A、S651A、T711Sの存在下でのrAAV5に基づく産物での細胞形質導入の効率の増加
実験設計:
CHO-K1-S細胞を12ウェルプレートのウェルにプレーティングした。以下の増殖培地内に播種した:グルタミンを補充したDMEM/F12、グルコース含量は4.5g/l、5%ウシ血清であった。細胞播種密度は10,000細胞/cm2であった。形質導入実行中、あらかじめ調製した細胞に、100,000vg/細胞のMOIで形質導入した。すべての試料について3回の独立した実験を行った。インタクトな細胞を陰性対照として用いた。
【0207】
Guava EasyCyteflowサイトメーターおよびGuavaSoftソフトウェアを用いて、形質導入効率の分析を行った。
本発明者らは、驚くべきことに、野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質中のS2A、S651AまたはT711Sを含む群より選択される1つまたはそれより多くの突然変異の存在は、上記突然変異を含むrAAVベクターによる導入遺伝子送達の効率の有意な増加を引き起こすことを見出した。例えば、フローサイトメトリー法は、野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質、あるいは:S2A、S651A、T711Sを含む群より選択される1つまたはそれより多くの突然変異を所持する野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質を含有するrAAVに基づく産物で、CHO-K1-S株に形質導入した48時間後、GFP陽性細胞の量の変化を示した(図4)。
【0208】
突然変異S651Aが存在する場合(AAV5-01Mut-GFP)、GFP発現細胞の量は、野生型VP1カプシドタンパク質(AAV5-NullMut-GFP)を含む対照AAV5と比較した際、22.54%から49.45%に2.2倍増加した。
【0209】
突然変異S2AおよびT711S両方が同時に存在する場合(AAV5-02Mut-GFP)、GFP発現細胞の量は、野生型VP1カプシドタンパク質(AAV5-NullMut-GFP)を含む対照AAV5と比較した際、22.54%から58.51%に2.6倍増加した。
【0210】
突然変異S2A、S651AおよびT711Sが同時に存在する場合(AAV5-03Mut-GFP)、GFP発現細胞の量は、野生型VP1カプシドタンパク質(AAV5-NullMut-GFP)を含む対照AAV5と比較した際、22.54%から38.27%に1.7倍増加した。
【0211】
実施例5. 野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質中の突然変異S2A、S651A、T711Sの存在下でのrAAV5に基づく産物での細胞形質導入後の導入遺伝子にコードされる標的タンパク質産生の増加
実験設計:
CHO-K1-S細胞を12ウェルプレートのウェルにプレーティングした。以下の増殖培地内に播種した:グルタミンを補充したDMEM/F12、グルコース含量は4.5g/l、5%ウシ血清であった。細胞シーディング密度は10,000細胞/cm2であった。形質導入実行中、あらかじめ調製した細胞に、100,000vg/細胞のMOIで形質導入した。すべてについて3回の独立した実験を行った。インタクトな細胞を陰性対照として用いた。
【0212】
ヒト因子IX ELISAキットを用いて、形質導入7日後の培養液中のFIXタンパク質の量を評価した。本発明者らは、試料の1:25希釈を用いた。製造者の指示にしたがって、方法を行った。
【0213】
本発明者らは、驚くべきことに、野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質中のS2A、S651AまたはT711Sを含む群より選択される1つまたはそれより多くの突然変異の存在は、上記突然変異を含むrAAVに基づくベクターでのCHO-K1-S細胞の形質導入後のhFIXタンパク質産生の有意な増加を引き起こすことを見出した。例えば、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)法は、野生型AAV5 VP1カプシドタンパク質、あるいは:S2A、S651A、T711Sを含む群より選択される1つまたはそれより多くの突然変異を所持する野生型AAV5カプシドのVP1タンパク質を含むrAAV産物でのCHO-K1-S細胞の形質導入7日後、培地中のhFIXタンパク質の量の増加を示した(図5)。
【0214】
突然変異S651Aが存在する場合(AAV5-01Mut-FIX)、産生されるタンパク質の量は、野生型VP1カプシドタンパク質(AAV5-NullMut-GFP)を含む対照AAV5と比較した際、0.17ng/mlから0.74ng/mlに4.6倍増加した。
【0215】
突然変異S2AおよびT711S両方が同時に存在する場合(AAV5-02Mut-GFP)、産生されるタンパク質の量は、野生型VP1カプシドタンパク質(AAV5-NullMut-GFP)を含む対照AAV5と比較した際、0.17ng/mlから1.24ng/mlに7.1倍増加した。
【0216】
突然変異S2A、S651AおよびT711Sが同時に存在する場合(AAV5-03Mut-GFP)、産生されるタンパク質の量は、野生型VP1カプシドタンパク質(AAV5-NullMut-GFP)を含む対照AAV5と比較した際、0.17ng/mlから0.57ng/mlに3.3倍増加した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2022545121000001.app
【国際調査報告】