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特表2022-545149反応中に粒子を抽出する流動床反応器システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(54)【発明の名称】反応中に粒子を抽出する流動床反応器システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/24 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
B01J8/24 301
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576105
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 US2020039541
(87)【国際公開番号】W WO2020264104
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】16/453,571
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519461772
【氏名又は名称】エックス-エナジー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハワード タエリー
【テーマコード(参考)】
4G070
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB06
4G070BB32
4G070CA06
4G070CA10
4G070CA24
4G070CA25
4G070CB15
4G070DA21
(57)【要約】
流動気体反応器は、反応物を含む流動気体が早期に反応することを防止するシステムを含む。流動気体反応器は、粒子床を有する反応室と、それぞれが反応室に向かって開口している、複数の開口部を有する気体分配板と、複数の垂直状の流動気体用入口管と、を備える。流動気体用入口管のそれぞれは、気体分配板の開口部の1つと連通している。流動気体用入口管のそれぞれは、流動気体を受け取り、該流動気体を反応室に搬送するように構成されている。流動気体源は流動気体の流れを流動気体用入口管に供給する。冷却剤システムは、反応室に導入される前に流動気体が反応するのを防ぐ。冷却剤システムは、流体用入口と、流体用入口と連通し、流動気体用入口管のそれぞれを冷却するように構成されている冷却剤流路と、冷却剤流路と連通している流体用出口を有する。流体気体用入口管のそれぞれは、粒子用出口及び弁システムを含んでもよく、弁システムは、流動気体用入口管への流動気流を停止することを可能にし、流動気流が停止されている間に粒子床から粒子を回収することを可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行中の反応を中断することなく粒子試料を回収できるように構成された流動気体反応器であって、
粒子床を有する反応室と、
複数の開口部を有する気体分配板と、
複数の垂直状の流動気体用入口管と、
流動気体の流れを前記流動気体用入口管に供給するように構成された流動気体源と、
複数の粒子用出口と、を備え、
前記流動気体用入口管のそれぞれが、前記気体分配板の前記開口部の1つと連通し、
前記流動気体用入口管のそれぞれが、流動気体を受け取り、該流動気体を前記反応室に搬送するように構成され、
前記粒子用出口のそれぞれが、前記流動気体用入口管の1つに配置され、
前記流動気体源が、前記流動気体用入口管のうちいずれか1つへの流動気体の流れを選択的に停止するように構成され、
前記粒子用出口は、対応する前記流動気体用入口管への流動気体の流れが停止している間、前記粒子床から粒子を受け取るように構成される、流動気体反応器。
【請求項2】
請求項1記載の流動気体反応器であって、
前記流動気体源は、前記流動気体用入口管のうち前記いずれか1つとは別の前記流動気体用入口管への流動気体の流れを中断することなく、前記流動気体用入口管のうち前記いずれか1つへの流動気体の流れを選択的に停止するように構成されている、流動気体反応器。
【請求項3】
請求項1記載の流動気体反応器であって、
前記流動気体源は、複数の流動気体用供給管を備え、
前記流動気体用供給管のそれぞれが、前記流動気体用入口管のうち、対応する1つと連通し、
前記流動気体用供給管のそれぞれが、対応する前記流動気体用入口管への流動気体の流れを選択的に停止するように構成された弁を含む、流動気体反応器。
【請求項4】
請求項1記載の流動気体反応器であって、
前記流動気体源は、複数の流動気体用供給管を備え、
前記流動気体用供給管のそれぞれが、前記流動気体用入口管のうち、対応する1つと連通し、
前記流動気体用供給管のそれぞれが、第1の位置を設けられるように構成された第1の弁を備え、前記第1の位置が、対応する前記流動気体用入口管への流動気体の流れを選択的に停止させ、
対応する前記流動気体用入口管が、前記第1の弁が前記第1の位置に設けられるとき、前記粒子床から粒子が前記粒子用出口に流れることを可能にするように構成された第2の弁を備える、流動気体反応器。
【請求項5】
請求項4記載の流動気体反応器であって、
前記第1の弁が、第2の位置に設けられるように構成され、
前記第2の位置が、流動気体の流れが対応する前記流動気体用入口管に流れることを可能にし、
前記第2の弁は、前記第1の弁が前記第2の位置にあるとき、前記粒子床から粒子が前記粒子用出口に流れることを防止するように構成される、流動気体反応器。
【請求項6】
請求項1記載の流動気体反応器であって、
冷却剤システムをさらに備え、
前記冷却剤システムが、
流体用入口と、
複数の冷却ジャケットと、
前記冷却ジャケットのそれぞれと連通している流体用出口と、を備え、
前記冷却ジャケットのそれぞれが、前記流動気体用入口管の1つを囲み、前記流体用入口と連通している、流動気体反応器。
【請求項7】
請求項1記載の流動気体反応器であって、
前記反応室がグラファイト製の壁を有し、
前記グラファイト製の壁が、約600℃~約2200℃の間の温度に加熱されるように構成されている、流動気体反応器。
【請求項8】
請求項1記載の流動気体反応器であって、
前記反応室の上部に設けられる同伴解除室と、
前記反応室と前記同伴解除室との間に設けられる円錐形の速度減少室と、を備え、
前記同伴解除室の直径が、前記反応室の直径の1.5倍から10倍である、流動気体反応器。
【請求項9】
請求項8記載の流動気体反応器であって、
前記同伴解除室の直径が、前記反応室の直径の2倍から5倍である、流動気体反応器。
【請求項10】
請求項8記載の流動気体反応器であって、
前記同伴解除室の直径が、前記反応室の直径の約2.5倍である、流動気体反応器。
【請求項11】
請求項8記載の流動気体反応器であって、
前記反応室が、約600℃と約2200℃の間の温度に加熱されるように構成されたグラファイト製の壁からなり、
前記速度減少室および前記同伴解除室の少なくとも一方が、約600℃から約2200℃の間の温度に加熱されるように構成されたグラファイト製の壁からなる、流動気体反応器。
【請求項12】
流動床反応器であって、
流動床を有する反応室と、
前記反応室に向かって開口している、複数の開口部を有する気体分配板と、
それぞれが前記気体分配板の前記開口部の1つと連通している、複数の流動気体用入口管と、
流動気体の流れを前記流動気体用入口管のそれぞれに個別に供給するように構成されている、流動気体源と、
流体用入口と、前記流体用入口に連通し、前記流動気体用入口管のそれぞれを冷却するように構成される、冷却剤流路と、前記冷却剤流路に連通している流体用出口と、を含む、冷却剤システムと、を備え、
前記流動気体用入口管のそれぞれが、流動気体を受け取り、該流動気体が前記反応室に搬送されるように構成される、流動床反応器。
【請求項13】
請求項12記載の流動床反応器であって、
前記流体用入口が、入口多岐管を有し、
前記冷却剤流路が、複数の冷却ジャケットを有し、
前記冷却ジャケットのそれぞれが、前記流動気体用入口管の1つを取り囲み、
前記冷却ジャケットのそれぞれが、前記入口多岐管と連通し、
前記流体用出口が、前記冷却ジャケットのそれぞれに連通する出口多岐管を有する、流動床反応器。
【請求項14】
請求項12記載の流動床反応器であって、
前記冷却剤流路が、複数の冷却ジャケットを有し、
前記冷却ジャケットのそれぞれが、前記流動気体用入口管の1つを取り囲み、
前記冷却剤流路が、前記流体用入口から前記流体用出口に冷却剤の流れを供給するように構成され、
冷却剤が、複数の前記冷却ジャケットを順次流れる、流動床反応器。
【請求項15】
請求項12記載の流動床反応器であって、
前記冷却剤流路が、複数の冷却ジャケットを有し、
前記冷却ジャケットのそれぞれが、前記流動気体用入口管の1つを取り囲み、
前記冷却剤流路が、前記流体用入口から前記流体用出口に冷却剤の流れを供給するように構成され、
冷却剤が、複数の前記冷却ジャケットを並行に流れる、流動床反応器。
【請求項16】
請求項12記載の流動床反応器であって、
それぞれが前記流動気体用入口管の内の1つの下部に設けられる複数の粒子用出口を備え、
前記流動気体源が、前記流動気体用入口管のいずれか1つへの流動気体の流れを選択的に停止するように構成され、
前記粒子用出口のそれぞれが、対応する前記流動気体用入口管への流動気体の流れが停止している間、前記粒子床から粒子を受け取るように構成される、流動床反応器。
【請求項17】
請求項12記載の流動床反応器であって、
前記反応室の上部に設けられる同伴解除室と、
前記反応室と前記同伴解除室との間に設けられる円錐形の速度減少室と、を備え、
前記同伴解除室の直径が、前記反応室の直径の1.5倍から10倍である、流動床反応器。
【請求項18】
進行中の反応を中断することなく粒子試料の回収を可能にするように構成された流動床反応器であって、
流動床を有する反応室と、
複数の開口部を有する気体分配板と、
前記気体分配板の前記開口部の1つと連通し、気体用入口開口部および粒子用出口開口部を有する、複数の流動気体用入口管と、
流動気体の流れを前記流動気体用入口管の前記気体用入口開口部に供給するように構成される、流動気体源と、
前記流動気体用入口管のいずれか1つの前記気体用入口開口部への流動気体の流れを選択的に停止し、前記気体用入口開口部への流動気体の流れが停止している間に粒子床から前記粒子用出口開口部への粒子の流れを可能にするように構成される、弁システムと、を備える、流動床反応器。
【請求項19】
請求項18記載の流動床反応器であって、
前記弁システムが、前記流動気体用入口管の前記いずれか1つの前記気体用入口開口部とは別の前記流動気体用入口管の前記気体用入口開口部への流動気体の流れを中断することなく、前記流動気体用入口管の前記いずれか1つの前記気体用入口開口部への流動気体の流れを選択的に停止するように構成される、流動床反応器。
【請求項20】
請求項18記載の流動床反応器であって、
前記弁システムが、前記気体用入口開口部への流動気体の流れが停止されない限り、前記粒子床から前記粒子用出口開口部への粒子の流れを許容しない、流動床反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、流動床反応器に関する。様々な実施形態において、本開示は、概して、進行中の反応を中断することなく、流動床反応器から粒子試料を回収するためのシステムに関する。様々な実施形態において、本開示は、流動床反応器内の流動気体用供給管に冷却剤を供給するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
局所的に冷却された気体分配板と接続して使用される流動床反応器システムを使用することが知られており、冷却流路は、気体噴出機の周りに構成されたジャケットを通して冷却流体を輸送することを可能にする。局所的に冷却された気体分配板は、気体分配板のオリフィス周辺の壁への堆積を防ぐのに有効である。一方、気体噴出機は、プレナム室から反応室への気体搬送のみ可能であり、気体の噴出を継続させながら粒子試料を回収することはできない。また、気体噴出機は気体分配板付近で流動気体を冷却するため、プレナム室内での反応気体の反応を効果的に防ぐことができない場合がある。
【0003】
また、噴出機から噴出する流動気体の流路と、噴出機近傍の粒子取出通路と、を有する流動床反応器を使用することが知られており、反応器へ流れる気流が、粒子取出通路を通る粒子の流れを防止または減少させるために使用されてもよい。流動化された反応気体を反応器の底部に導入し、粒子取出通路を通る気流を減少させることによって、粒子の取出しを開始することができる。一方、該構成では流動床の一部分からしか粒子の抽出ができない。流動床内の複数の部分のいずれかから選択的に粒子の取出しができることが望ましい。
【0004】
本開示は、進行中の反応を中断することなく、流動床反応器から粒子試料を回収するためのシステムを説明する。本開示は、さらに、流動床反応器内の流動気体用供給管に冷却剤を供給するためのシステムを説明する。これらのシステムは、本明細書に開示される様々な実施形態によって実現することができる。これらの実施形態は、本開示の教示に基づいて実現されうる利点を網羅的又は限定的に示すことを意図していない。本明細書に開示された様々な実施形態の様々な目的及び利点は、本明細書に記載された通りまたは当業者によって明らかな任意の変形に鑑みて変更された通りの両方において、本明細書の説明から明らかになるか、又は様々な実施形態を実施することから知ることができるであろう。したがって、本発明は、本明細書において様々な実施形態で開示される新規な方法、配置、組み合わせ、及び改良に属するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
排気流から同伴粒子を除去する改良された方法に対する現在の必要性に鑑みて、様々な例示的な実施形態の簡単な概要を提示する。様々な例示的な実施形態のいくつかの態様を強調し、紹介することを意図しているが、本発明の範囲を限定するものではない。また、後述する概要において、いくつかの簡略化及び省略がなされる場合がある。当業者が発明概念を製造及び使用することを可能にするのに十分な好ましい例示的な実施形態の詳細な説明が後述される。
【0006】
本明細書に開示される様々な実施形態は、進行中の反応を中断することなく粒子試料の回収を可能にするように構成された、流動床反応器に関するものである。様々な実施形態において、流動床反応器は、粒子床を含む反応室およびそれを通る複数の開口を有する気体分配板を含み、それぞれの開口は反応室に向かって開口している。反応器はまた、複数の流動気体用入口管を含み、それぞれの流動気体用入口管は、気体分配板の開口部の1つと連通している。また、それぞれの流動気体用入口管は、流動気体を受け取り、気体分配板を介して反応室に流動気体を搬送するように構成される。流動気体源は、流動気体の流れを流動気体用入口管に供給するように構成される。反応器の様々な実施形態は、複数の粒子用出口を備え、それぞれの粒子用出口は、流動気体用入口管の1つの下部に設けられる。流動気体源は、流動気体用入口管のうちいずれか1つの流動気体の流れを選択的に停止するように構成され、それぞれの粒子用出口は、対応する流動気体用入口管の流動気体の流れが停止されている間、粒子床から粒子を受け取るように構成される。
【0007】
様々な実施形態において、流動気体源は、流動気体用入口管のうち前記いずれか1つとは別の流動気体用入口管への流動気体の流れを中断することなく、流動気体用入口管のうち前記いずれか1つの流動気体の流れを選択的に停止するように構成される。様々な実施形態において、流動気体源は、複数の流動気体用供給管を備え、それぞれの流動気体用供給管は、対応する流動気体用入口管と連通しており、それぞれの流動気体用供給管は、対応する流動気体用入口管の流動気体の流れを選択的に停止するように構成された、弁を含む。
【0008】
様々な実施形態において、流動気体源は、複数の流動気体用供給管からなり、それぞれの流動気体用供給管は、対応する流動気体用入口管と連通している。それぞれの流動気体用供給管は、第1の位置に採用するように構成された第1の弁を備える。
【0009】
ここで、第1の位置は、流動気体の流れに対応する流動気体用入口管に流れることを選択的に停止させる。
【0010】
また、ここで、第1の弁が第1の位置にあるとき、対応する流動気体用入口管は、粒子床から粒子を粒子用出口に流れさせるように構成された第2の弁を備える。同様に、様々な実施形態において、第1の弁は、また、第2の位置を採用するように構成され、第2の位置は、流動気体の流れに対応する流動気体用入口管に流れることを許容し、第2の弁は、第1の弁が第2の位置にあるとき、粒子床から粒子用出口への粒子の流れを防止するように構成される。様々な実施形態において、第1および第2の弁は、流動気体の流れに対応する流動気体用入口管からの流れを許容または粒子床から流動気体用入口管を通る粒子用出口への粒子の流れを許容する。流動気体の流れおよび流動気体用入口管を通る粒子の流れは同時には許容されない。
【0011】
様々な実施形態において、流動気体用反応器は、流体用入口と、流体用入口と連通している冷却剤流路であって、それぞれの流動気体用入口管を冷却するように構成されている冷却剤流路と、冷却剤流路と連通している流体用出口と、を含む冷却剤システムを備える。流体用入口は、入口多岐管を有しもよい。冷却剤流路は、複数の冷却ジャケットを含んでもよく、それぞれの冷却ジャケットは、流動気体用入口管の1つを囲み、それぞれの冷却ジャケットは、入口多岐管と連通している。流体用出口は、それぞれの冷却ジャケットと連通している出口多岐管を有してもよい。
【0012】
様々な実施形態において、流動気体用反応器は、流体用入口と、流体用入口と連通している冷却剤流路と、冷却剤流路と連通している流体用出口を含む冷却剤システムを備える。冷却剤流路は、複数の冷却ジャケットを含んでもよく、それぞれの冷却ジャケットは、流動気体用入口管の1つを囲み、該冷却剤流路は、流体用入口から流体用出口に冷却剤を流れるように構成されてもよく、冷却剤は、複数の冷却ジャケットを通って、順に流れる。様々な実施形態において、冷却剤流路は、複数の冷却ジャケットを含み、それぞれの冷却ジャケットは、流動気体用入口管の1つを囲み、冷却剤流路は、流体用入口から流体用出口へ冷却剤が流れるように構成され、冷却剤は、複数の冷却ジャケットを通って並列に流れる。
【0013】
いくつかの実施形態において、流動気体用反応器は、反応室の上方に配設される同伴解除室(Disentrainment chamber)と、その間に配設される円錐形の速度減少室を含んでもよい。様々な実施形態において、同伴解除室の直径は、反応室の直径と比べて1.5~10倍、2~5倍、2.25~4倍、又は約2.5倍の大きさである。
【0014】
様々な実施形態において、流動気体用反応器は、約600℃と約2200℃または800℃と約2000℃または1250℃と約1800℃との間の温度に加熱されるように構成されたグラファイト製の壁を有する反応室を備える。流動気体用反応器は、約600℃と約2200℃との間の温度に加熱されるように構成されたグラファイト製の壁を有する反応室を備えてもよく、約600℃と約2200℃の間の温度に加熱されるように構成されたグラファイト製の壁を有する速度減少室および同伴解除室の少なくとも1つを備えてもよい。
【0015】
本明細書に開示される様々な実施形態は、粒子床を有する反応室と、貫通する複数の開口を有する気体分配板であって、それぞれの開口が反応室に向かって開口する、気体分配板と、複数の流動気体用入口管であって、複数の流動気体用入口管のそれぞれが気体分配板の開口のうちのいずれか1つと連通している、複数の流動気体用入口管とを含む、流動気体用反応器に関する。それぞれの流動気体用入口管は、流動気体を受け取り、流動気体を反応室に搬送するように構成されてもよい。反応器は、流動気体源であって、流動気体の流れを流動気体用入口管に供給するように構成されている流動気体源と、冷却剤システムと、を備えてもよい。様々な実施形態において、冷却剤システムは、流体用入口と、流体用入口と連通している冷却剤流路であって、それぞれの流動気体用入口管を冷却するように構成されている冷却剤流路と、冷却剤流路と連通している流体用出口と、を備える。
【0016】
本明細書に開示される様々な実施形態は、進行中の反応を中断することなく粒子試料の回収を可能にするように構成された流動気体反応器であって、粒子床を有する反応室と、貫通する複数の開口を有する気体分配板と、気体分配板内の円錐の1つと連通している複数の流動気体用入口管と、を含む流動気体用反応器に関する。様々な実施形態において、それぞれの流動気体用入口管は、気体用入口の開口部および粒子用出口の開口部を有する。流動気体源は、流動気体用入口管の気体用入口の開口部に流動気体の流れを供給するように構成されてもよい。様々な実施形態において、反応器は、流動気体用入口管のいずれか1つの気体用入口の開口部へ流れる流動気体の流れを選択的に停止し、気体用入口の開口部へ流動気体が流れることを停止している間に粒子床から粒子用出口の開口部へ粒子が流れるのを可能にするように構成される弁システムを含む。弁システムは、他の流動気体用入口管の気体用入口の開口部へ流動気体が流れることを中断することなく、流動気体用入口管のいずれか1つの気体用入口の開口部へ流動気体が流れることを選択的に停止するように構成されてもよい。弁システムは、気体用入口の開口部へ流動気体の流れが停止されない限り、粒子床から粒子用出口の開口部へ粒子が流れることを防止するように構成されてもよい。
【0017】
様々な例示的な実施形態をより深く理解するために、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】複数の気体用入口管を備える流動床反応器を示す図であり、それぞれが流動気体を反応室内に搬送するように構成されている。
図2図1による複数の気体用入口管を備える流動床反応器を示す図であり、1つの気体用入口管は、流動床から粒子試料の回収を可能にするように構成されている。
図3図1による複数の気体用入口管を備える流動床反応器の様々な実施形態を示す図であり、気体用入口管は冷却剤システムを備えている。
図4図1による複数の気体用入口管を備える流動床反応器の様々な実施形態を示す図であり、気体用入口管は冷却剤システムを備えている。
図5図1による複数の気体用入口管を備える流動床反応器の様々な実施形態を示す図であり、気体用入口管は冷却剤システムを備えている。
図6】流動床反応器用の気体用入口管を提供するシステムの4つの異なる側面を示す図であり、気体用入口管は、冷却ジャケットのシステムを備えている。
図7】流動床反応器用の気体用入口管を提供するシステムの4つの異なる側面を示す図であり、気体用入口管は、冷却ジャケットのシステムを備えている。
図8】流動床反応器用の気体用入口管を提供するシステムの4つの異なる側面を示す図であり、気体用入口管は、冷却ジャケットのシステムを備えている。
図9図6から図8にかかるシステムと接続された気体分配板を示す図である。
図10A図9に示す気体分配板と接続された気体用入口管の様々な配置を示す図である。
図10B図9に示す気体分配板と接続された気体用入口管の様々な配置を示す図である。
図10C図9に示す気体分配板と接続された気体用入口管の様々な配置を示す図である。
図10D図9に示す気体分配板と接続された気体用入口管の様々な配置を示す図である。
図10E図9に示す気体分配板と接続された気体用入口管の様々な配置を示す図である。
図10F図9に示す気体分配板と接続された気体用入口管の様々な配置を示す図である。
図11】流動床反応器と接続されて使用され、流動気体から微細な粒子の同伴を解除させるための装置を示す図である。
図12図10群の装置が流動床反応器と接続されて、使用されている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、図面において、同様の符号は、同様の構成要素または工程を示し、様々な例示的な実施形態の広範な態様が開示されている。図1は、進行中の反応を中断することなく粒子試料の回収を可能にするように構成された流動床反応器を示す図である。
【0020】
1.流動中の粒子の回収
図1に示された流動床反応器は、反応室1を含み、その中に粒子2の床が設けられる。気体分配板3は反応室1の床を形成し、その中に円錐形の気体用入口の開口部9を有する。複数の流動気体用入口管4は、流動気体を反応室1内に搬送する。このとき、複数の流動気体用入口管4は、垂直方向に配置されてもよい。また、流動気体用入口管のそれぞれは、気体分配板3内の開口部9のうちの1つと連通している。流動気体は、流動気体源から流動気体用供給管5を介してそれぞれの流動気体用入口管4に搬送される。それぞれの流動気体用供給管5は、対応する流動気体用入口管4と連通しており、流動気体の流れを対応する流動気体用入口管4に供給するように構成される。図1の流動床反応器は、また、複数の粒子用出口8を含み、それぞれの粒子用出口8は、流動気体用入口管4の1つに配置または接続される。
【0021】
様々な実施形態において、流動気体源は、流動気体用入口管4のいずれか1つへ流動気体が流れるのを選択的に停止させるように構成される。それぞれの粒子用出口は、対応する流動気体用入口管へ流動気体が流れていない間、粒子床から粒子を受け取るように構成される。図1を参照すると、それぞれの粒子用出口8は、弁7を介して流動気体用の入口管4のうちの1つに接続されている。ここでそれぞれの弁7は閉じられている。それぞれの流動気体用供給管5は、弁6を介して流動気体用入口管4のうちの1つに接続されている。図1では、それぞれの弁6は開いた状態であり、それぞれの弁7は閉じた状態である。流動気体は、管5を通って、矢印A方向に流動気体用入口管4に供給される。また、流動気体は、流動気体用供給管5の第1部分5aから弁6を通って、流動気体用供給管5の第2部分5bから流動気体用入口管3に搬送される。その後、流動気体は流動気体用入口管4を通って、矢印A方向に移動し、開口部9から反応室1内に入り、粒子2の床を流動化させる。
【0022】
様々な実施形態において、流動気体は、粒子2上にカーボンまたはセラミック製の被覆を形成させる反応気体を含む。このような場合、被覆層を分析するために、床内の粒子試料を回収できることが望ましい。さらに、成膜反応を中断することなく、床内の粒子試料を回収できることが望ましい。図2を参照するように、図1の装置における弁のシステムによって、該試料を回収できることを可能にする。
【0023】
図2において、流動気体は、2本の管5から弁6を経て、矢印Aの方向に流動気体用入口管4へ供給される。そして、流動気体は、流動気体用入口管4内を矢印Aの方向に移動し、開口部9から反応室1内に入り、粒子2の床を流動化させる。流動気体用入口管4が管5から流動気体を受け取る場合、弁7は閉じられている。図2に示すように、第3の流動気体用入口管4において、弁6a(図1における弁6の1つに相当する)が閉じられ、管5aから流動気体の流れが遮断されるので、流動気体が受け取れなくなる。この第3の流動気体用入口管4において、粒子用出口8と流動気体用入口管4との間にある弁7aは開かれている。これにより、反応室1内の粒子2の試料は、流動気体用入口管4を通って粒子用出口8へ矢印Cの方向に落下し、粒子用出口8から流動床内の粒子の試料を回収することができる。流動気体は他の管4を介し、矢印Bの方向に反応室に入り続けるので、粒子試料の回収において、反応室1内での進行中の成膜反応を中断することはない。さらに、流動気体が管4を通り、矢印Bの方向に反応室に入るときに、反応室内の正圧によって、粒子を矢印Cの方向に吹き飛ばし、粒子回収を助長させてもよい。
【0024】
図3は、流動床反応器であって、該内部に粒子2の床を備える反応室1を有する流動床反応器を示す。気体分配板3は、円錐形の気体用入口の開口部9を有する。複数の流動気体用入口管4(図3には2つ示されているが、より多くを用いてもよい)は、矢印Bの方向に反応室1内に流動気体を搬送する。それぞれの流動気体用供給管5は、対応する流動気体用入口管4と連通しており、流動気体の流れを対応する流動気体用入口管4に供給するように構成される。また、図1の流動床反応器は、複数の粒子用出口8を含み、それぞれの粒子用出口8は、流動気体用入口管4の内の1つに配置または接続される。
【0025】
図3において、反応室1は、例えばグラファイトに代表される導電性カーボンのような、導電性材料製の壁10を有する。反応室のグラファイトの壁は、電気的に抵抗を有する(図3では抵抗10aとして表している)。電源11は、回路12を介して抵抗を有するグラファイト製の壁10に電流を流し、反応室1を約600℃から約2200℃の間の温度に加熱する。
【0026】
様々な実施形態において、様々な材料を反応室内の主粒子に成膜してもよい。流動床化学気相析出法(Fluidized Bed Chemical Vapor Deposition:FBCVD)を、流動床の主粒子上に単結晶、多結晶および非晶質の被覆材料を析出させるために使用してもよい。これらの被覆には、ケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、熱分解性炭素、ダイヤモンド、グラファイト、フルオロカーボン、タングステン、窒化チタン、および高誘電率物質が含まれる。
【0027】
様々な実施形態において、FBCVDを用いて、主粒子上に熱分解性炭素(Pyrolytic Carbon : PyC)が析出されてもよい。このとき、アセチレンまたはアセチレン/プロピレン混合物が用いられ、析出温度が1250~1450℃に設定される。FBCVDを用いて、主粒子上にケイ素が析出されてもよい、このとき、温度を650℃に設定し、流動床に形成されたケイ素の析出に伴った、シランの熱分解性析出物が用いられる。CHSiClのFBCVDを用いて、主粒子上に炭化ケイ素(SiC)が析出されてもよい。このとき、温度を1500℃に設定し、水素搬送気体が用いられる。
【0028】
様々な実施形態において、主粒子は、複数の床で順次被覆されてもよい。例えば、核燃料粒子を、UO製の主粒子を順次コーティングすることによって製造してもよい。該UO製の粒子に、不活性搬送気体中のエチレンから炭素を1250℃で析出させることによって、多孔質炭素層が被覆され、次いで、不活性搬送気体中のアセチレン/プロピレン混合物から炭素を1300℃で析出させることによって緻密炭素層が被覆されてもよい。炭化ケイ素層が、1500℃の水素搬送気体を用いて、CHSiClから緻密炭素層上に堆積される。最後に、不活性搬送気体中のアセチレン/プロピレン混合物から緻密炭素の外層を1300℃で析出させる。得られた粒子は、トリーイソ構造(tri iso-structural : TRISO)被覆粒子として知られるものである。
【0029】
様々な実施形態において、請求項1にかかる流動床反応器における流動床は、主粒子を含んでもよい。また、反応物を含む流動気体は、図1に示すように、気体分配板3の開口部9を通して、様々な入口管4から反応室1内に流入されてもよい。一定時間反応を進行させた後、1つの弁6(図2では弁6aとして示す)が閉じられることで、残りの入口管4を通る流動気体の流れから粒子床の流動化が中断されることなく、1つの入口管4を通る流動気体の流れが遮断されてもよい。図2に示すように、弁6aに接続された入口管に存在する弁7の1つ(図2では弁7aとして示す)が開かれ、粒子試料が入口管4を通って粒子用出口8に落下し、粒子試料の回収及び分析を可能にする。例えば、熱分解性炭素が主粒子上に析出される場合、反応を規定期間進行させた後、残りの入口管4を通して流動化が中断されることなく、炭素被覆粒子の試料が、入口管4及び粒子用出口8を通して回収されうる。分析の結果、粒子試料の被覆が不均一または不完全であることが判明した場合、反応室内での熱分解性炭素の析出を継続させることができる。粒子が完全に被覆されていることが判明した場合、析出を停止し、粒子を回収することができる。
【0030】
粒子を複数の床で順次被覆する場合、流動化を中断することなく粒子を回収し、それぞれの被覆工程で分析してもよい。
【0031】
2. 冷却剤システム
高温FBCVD反応を行う場合、反応室1の内部を約600℃~約2200℃の温度に加熱すると、反応室1に入る前に流動気体用入口管4内の流動気体が加熱されるという望ましくない副作用が生じうる。流動気体が反応気体を含む場合、これが、例えば、カーボンまたはセラミック層のような反応生成物を管4の内部に析出させ、流動気体の流量が減少または完全に流れなくなることが生じうる。このことは、適切な冷却剤システムによって軽減または防止されうる。
【0032】
このような冷却剤システムが図3に示される。それぞれの流動気体用入口管4は、気体分配板3の下部に設けられたプレナム室17に入る。それぞれの流動気体用入口管4は、中空のジャケット14によって囲まれている。水または蒸気などの冷却剤流体は、冷却剤用入口管13を通って、第1のジャケット14に導入される。第1のジャケット14が満ちた後、冷却剤は冷却剤流管15を通って、ジャケット14から排出され、第2のジャケット14へ移動する。第2のジャケット14が満ちた後、冷却剤は冷却剤用出口管16を通って、第2のジャケット14から排出される。図3の実施形態では、冷却剤は、複数の冷却ジャケット14を互いに直列に移動する。これにより、反応室1の内部の高温気体によって流動気体用入口管4、またはこれらの管内の流動気体が過度に加熱される可能性を低減することができる。また、このことにより、炭素またはセラミック反応生成物が管4の内表面に析出する速度を減少させる。
【0033】
図4には、他の冷却剤システムが示されている。それぞれの流動気体用入口管4は、気体分配板3の下部に設けられたプレナム室17に入る。冷却剤流体は、好ましくは気体18であり、水蒸気などである。冷却剤流体は、冷却剤用入口管13aを通じて、プレナム室17に導入される。プレナム室17が満ちた後、冷却剤は冷却剤用出口管16を通ってプレナム室17から排出される。これにより、プレナム室17の内部が過度に加熱される可能性が低くなるとともに、反応室1の内部の高温気体によって、流動気体用入口管4内の流動気体が過度に加熱されなくなる。この場合においても、反応生成物が管4の内表面に析出する速度を減少させる。
【0034】
図5には、第3の冷却剤システムが示されている。流動気体用入口管4は、プレナム室17に収容されている。それぞれの流動気体用入口管4は、中空のジャケット14に囲まれている。水または蒸気などの冷却剤は、冷却剤用入口管13から入口多岐管19に入る。入口多岐管19によって、冷却剤流はそれぞれのジャケット14に分配される(図5では2つのジャケット付き気体用入口管が示されているが、所望により、より多くのジャケット付き気体用入口管を使用してもよい)。数々のジャケット14が満ちた後、冷却剤はジャケット14から排出され、出口多岐管20に導入される。出口多岐管20から、冷却剤は、冷却剤用出口管16を通ってプレナム室17から排出される。図5の実施形態では、冷却剤は、数々の冷却ジャケット14に対して並列に移動する。このことは、冷却剤を数々の冷却ジャケット14に対して直列に移動させるよりも、プレナム室内の熱をより均等に分配することを可能しうる。冷却剤が冷却ジャケットを直列に移動する場合、冷却剤は、最後の冷却ジャケットに導入されるときよりも最初の冷却ジャケットに導入されるときにおいて、流動気体用入口管4から熱を吸収する時間が短くなるので、冷却剤用入口からの距離が長くなると流動気体用入口管4から熱を吸収する効率が減少する。冷却剤が冷却ジャケットに対して並列に移動する場合、冷却剤はそれぞれの冷却ジャケット14に対してほぼ同時に到達するので、それぞれの流動気体用入口管4から熱を吸収する効率が同程度になる。
【0035】
図3及び図5に見られるように、それぞれの流動気体用供給管5は、対応する流動気体用入口管4との交差する前に、冷却ジャケット14を通過してもよい。このことにより、流動気体が入口管4に導入される前に冷却され、流動気体中の反応物質が反応して、供給管5と入口管4との間の開口部に固体炭素またはセラミック物質が形成されるのを防止する。これにより、入口管4へ導入される、流動気体の流れが阻害される可能性を低減することができる。
【0036】
また、図3に見られるように、流動気体用入口管4は、プレナム室17の下面を越えて下方に延在していてもよい。それぞれの入口管4について、弁7が、プレナム室17の下方であって、入口管4と粒子用出口8との間の接続部に配置される。
【0037】
図3に見られるように、それぞれの流動気体用供給管5は弁6を有し、対応する入口管4に流動気体が流れるのを停止させることを可能にする。それぞれの弁6は独立して操作される。いずれかの入口管4への流動気体の流れは、残りのそれぞれの入口管への流動気体の流れを中断することなく、対応する供給管5の弁6を閉じることによって停止させることができる。
【0038】
入口管4を選択し、その選択した入口管への流動気体の流れが遮断された後、選択した入口管の下端に設けられている弁7が開かれると、粒子床の粒子試料が選択した入口管から開いた弁7を通って粒子用出口7に落下する。粒子が回収されている間、粒子は冷却ジャケット5によって冷却された入口管4の領域を通って落下するので、管4内の任意の反応ガスと粒子表面との間の反応速度が低下する。粒子試料が回収された後、弁7が閉じられ、弁6が開かれると、選択された入口管4を通る流動気体の流れが回復される。したがって、この配置により、流動気体が残りのすべての入口管を通して、反応室1に流れ続けることを可能にしながら、第1の入口管4に接続された粒子用出口8から分析のための粒子試料を回収することができる。このように、粒子試料を回収する際の、室1内の流動気体と粒子の床の間の反応は中断されない。
【0039】
図6及び図7は、流動気体反応器のプレナム室に適合するように設計された、気体分配板の下方に設けられる一組の流動気体用入口管及び冷却剤システムを含む組立品を示している。図6及び図7の実施形態では、2つの冷却ジャケット14が存在する。流動気体用入口管4(図7に示す)は、それぞれの冷却ジャケットを通り、分配板3(図6及び図7に図示されない)を通過する開口部9を介して、反応室に流動気体を搬送する。板22(図7に示す)は、冷却ジャケットを安定させ、それらを一定の相対的な向きに保持する。また、板22はプレナム室の内壁に固定されてもよい。
【0040】
図6及び図7に見られるように、冷却剤用入口13は、冷却剤流体を第1の冷却ジャケット14へ搬送する。次に、冷却剤流体は、第1の冷却ジャケット14から第2の冷却ジャケット14に移動した後、冷却剤用出口16を通ってプレナム室から排出される。その後、冷却液は管15を通って冷却ジャケット14の間を移動する。図6及び図7に見られるように、流動気体は、対応する流動気体用供給管5を介してそれぞれの流動気体用入口管4に搬送され、入口管4と交差する前に、冷却ジャケット14を通過させてもよい。あるいは、図7に示すように、流動気体用供給管5は、入口管4と交差する前に固体の柱14cを通過してもよい。ここで、柱14cは冷却剤用入口13の下部に配置される。弁6により、それぞれの入口管へ、流動気体の供給を一時的に停止することができるので、弁7を開くことにより、対応する試料室24において、粒子試料を回収することが可能になる。
【0041】
図8は、図7の組立品を、矢印8の方向に見た図である。図8において、試料室24の上側に、冷却ジャケット14が見られる。第1の冷却ジャケット14は、流体用入口13を有し、冷却剤流体をジャケット14の中に搬送する。冷却剤流体は、管15を介して第1の冷却ジャケット14から排出され、第2の冷却ジャケット14に導入される。そして、冷却剤流体は、冷却剤流体用出口16を通って第2の冷却ジャケットから排出される。それぞれの冷却ジャケット14は、その中心に流動気体用供給管4を有し、流動気体の温度を冷却剤流体との間接的な熱交換によって調節する。それぞれの流動気体用供給管4には、弁6に接続されている供給管5aを経て、管5bから流体気体が供給される。
【0042】
図9は、気体分配板3と組み合わせた、図7にかかる装置の断面を示す図である。図9に示すように、板3は、円筒形の壁3aと、流動気体用供給管4の開口部を囲む円錐形の気体分配面9と、を有していてもよい。複数の隣接する気体分配孔9は、隆起状の縁部9aで互いに接触してもよい。円錐形の気体分配孔9の表面は、縁部9bにおいて、円筒状の壁3aと交差していてもよい。
【0043】
図10A図10Fは、3本の流動気体用供給管4(図10A及び10B)、4本の流動気体用供給管4(図10C及び10D)または5本の流動気体用供給管4(図10E及び10F)とともに使用するための、気体分配板3の種々の構成を示している。それぞれの板は、それぞれが流動気体用供給管4の上部の開口部に対応する複数の開口部と、板3の底部に設けられ、それぞれの開口部を囲む円錐面9とを有する。隣接する円錐面9のそれぞれの組は、隆起状の縁部9aで交差している。
【0044】
再び図3を参照すると、反応室1は、例えばグラファイトのような、導電性炭素などの、導電性材料製の壁10を有する。流動気体は、反応室1内を矢印Bの方向に流れ、出口管1aを通って反応室から排出される。流動気体が反応室1内を流れることにより、粒子床内の粒子2が流動化される。通常、粒子床は、粗大な粒子と微細な粒子を含む、様々な粒径を有する粒子を含む。流動気体が粒子床を流れるとき、気流によって粗大な粒子は粒子床の表面から離れることなく粒子床内を移動する。しかし、微細な粒子は、流動気流の中でより大きな浮力を持つため、流動気流に同伴されることがある。これらの微細な粒子は、流動床の表面から離れ、管1aを通って、反応室1から出る可能性がある。このため、流動床内の粒子と流動床内の反応物との反応の収率が低下するので、管1aの出口に、同伴された微細な粒子を回収又は再利用するための装置を配置しなければならない。同伴された微細な粒子が流動気体用出口管1aに入ることが防止されれば有利になるであろう。
【0045】
3. 微小粒子の同伴解除
図11は、管状流動気体反応器を通過する流動気流から微細な同伴粒子を回収するための装置25を示す図である。装置25は、管状流動気体反応室1の上方に配置されるように構成されている。装置25は、反応室から流動気体を受け取るように構成された、直径xの開口部26を有する下端と、開口部26の上部に設けられ、直径nxの管状の同伴解除室30と、を含む。ここで、nは1.5~10の間である。様々な実施形態において、同伴解除室の内直径は、反応室の直径の1.5倍から10倍(nは1.5から10)、2倍から5倍、2.25倍から4倍、または約2.5倍である。様々な実施形態において、円錐状の速度減少室29が、開口部26と速度減少室との間を同伴解除室30の下部境界を規定する平面mと速度減少室29の円錐形の内壁との間の角度yが15°~75°、25°~65°、30°~60°、40°~50°の間、または約45°になるように、結合する。同伴解除室30の壁に設けられる2つの開口部31は、開口部26を通って速度減少室に入った後、流動気体が同伴解除室30から排出されることを可能にする。
【0046】
開口部26の周縁は、隆起したリップ28によって画定されている。インデンテーション27は、リップ28の垂直な外表面と、速度減少室29の壁の外表面の下縁の水平な表面と、によって画定される。リップ28とインデンテーション27は、装置25を反応室1の上縁に固定させるために使用される。
【0047】
図12に示すように、装置25は、一般に図1に示すような流動気体反応器と組み合わせて、使用可能である。流動気体反応器は、その上端に開口部35を有する反応室1を備える。開口部35の周縁の周囲に、反応室1は、装置25のインデンテーション27に固定する隆起したリップ34を有する。反応室1はまた、装置25の隆起したリップ28を受け入れるインデンテーション33を有する。装置1の上部の開口部は、蓋32によって閉じられてもよい。
【0048】
図11に見られるように、流動気体は流動気体用供給管5aから流動気体用入口管4を通って移動し、気体分配板3の開口部9から反応室1に導入される。その後、流動気体は開口部26を通って反応室から排出されて、装置25に導入される。装置25において、流動気体は、反応室1内の流動床から微細な同伴粒子を搬送し、第1の速度を有した状態で、速度減少室29に導入される。流動気体が速度減少室を通過するにつれて、気体が横断する断面積が増加するので、流動気体が速度減少室29から排出されると、同伴解除室30に入るまでガス速度が減少し、第1の速度より小さい第2の速度になる。図12の装置において、反応室1の断面積はxであり、同伴解除室30の断面積は2.5xである。流動気体が反応室1から速度減少室29を経て、同伴解除室30に移動するとき、気体速度は10分の1に低下する。
【0049】
同伴解除室30において、流動気体の速度が低下するため、反応室1を通過する際に流動気体に同伴された微細な粒子の流動気体内部においての浮力は、同伴解除室30において、減少する。したがって、微細な粒子は、気流が出口開口部31に入る前に、流動気流から落下する。すなわち、同伴が解除される傾向を示す。同伴から解除された粒子は速度減少室29を通って反応室1へ落下する。速度減少室29の円錐形の内面は、同伴から解除された粒子を同伴解除室30から反応室1へ搬送するのに有益である。微細な粒子の同伴解除後、流動気体は、出口開口部31から出口管1aに導入され、同伴解除室から排出される。出口管1aは、図12に示すように、流動気体を同伴解除室30から直接搬送してもよい。あるいは、開口部31は、流動気体を同伴解除室30から、反応室1及び装置25を囲む外側のハウジング室に搬送してもよい。その後、流動気体は、一組の出口管を通して外側のハウジング室から排出されてもよい。
【0050】
様々な実施形態が、その特定の態様を特に参照して詳細に説明されたが、本発明は他の実施形態が可能であり、その詳細は様々な明白な点での変更が可能であることを理解されたい。当業者には容易に明らかなように、本発明の精神及び範囲内に留まりながら、変形及び修正が可能である。したがって、前述の開示、説明、および図は、説明のためのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明を決して限定するものでない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11
図12
【国際調査報告】