(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(54)【発明の名称】偏心ホイール軸を備えた転動装置
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20221019BHJP
A47B 91/06 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
B60B33/00 T
A47B91/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576841
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2020067975
(87)【国際公開番号】W WO2020260552
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516231257
【氏名又は名称】ウィール.ミー アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】リーバッケン,ロルフ
【テーマコード(参考)】
3B069
【Fターム(参考)】
3B069CA01
3B069CA04
(57)【要約】
本発明は、表面(S)に沿って装置を移動させる転動装置(1、20)に関する。転動装置は、ホイール要素(6)を担持するホイール軸(8)と、前記ホイール要素(6)と前記ホイール軸(8)の相対的回転を行うための第1モータ部および第2モータ部を備えた駆動モータとを収容する軸受ハウジング(2)と、前記軸受ハウジング(2)内に回転可能に収容され、それぞれ前記ホイール軸の端部を支持する軸支持部材(3、10)と、を備えている。前記ホイール要素を担持する前記ホイール軸は、前記軸支持部材の間に延在し、前記ホイール軸の前記端部の各々は、前記軸支持部材(3、10)の中心線からオフセット変位した偏心位置において前記軸支持部材の各々に連結されている。前記転動装置は、さらに、前記軸受ハウジング(2)に対する前記軸支持部材(3、10)の回転を許容するロック解除位置と、前記軸受ハウジング(2)に対する前記軸支持部材の回転を阻止するロック位置との間で動作可能なロック手段を備える。前記ロック手段の前記ロック解除位置では、前記モータが、前記軸受ハウジング(2)に対する前記軸支持部材(3,10)と前記ホイール軸(8)の回転を実行し、前記ホイール要素(6)の少なくとも一部が前記軸受ハウジング(2)の外側に突出する延在位置と、前記ホイール要素が前記軸受ハウジング(2)の内側に位置する後退位置との間で、偏心運動により、前記ホイール要素(6)を変位させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面(S)に沿って装置を移動させることを可能にするための転動装置(1、20)であって、前記転動装置は、
ホイール要素(6)を担持するホイール軸(8)と、前記ホイール要素(6)と前記ホイール軸(8)の相対的回転を行うための第1モータ部および第2モータ部を備えた駆動モータとを収容する軸受ハウジング(2)と、
前記軸受ハウジング(2)内に回転可能に収容され、それぞれ前記ホイール軸の端部を支持する軸支持部材(3、10)と、を備え、
前記ホイール要素を担持する前記ホイール軸は、前記軸支持部材の間に延在し、前記ホイール軸の前記端部の各々は、前記軸支持部材(3、10)の中心線からオフセット変位した偏心位置において前記軸支持部材の各々に連結され、
前記転動装置は、さらに、
前記軸受ハウジング(2)に対する前記軸支持部材(3、10)の回転を許容するロック解除位置と、前記軸受ハウジング(2)に対する前記軸支持部材の回転を阻止するロック位置との間で動作可能なロック手段を備え、前記ロック手段の前記ロック解除位置では、前記モータが、前記軸受ハウジング(2)に対する前記軸支持部材(3,10)と前記ホイール軸(8)の回転を実行し、前記ホイール要素(6)の少なくとも一部が前記軸受ハウジング(2)の外側に突出する延在位置と、前記ホイール要素が前記軸受ハウジング(2)の内側に位置する後退位置との間で、偏心運動により、前記ホイール要素(6)を変位させる、転動装置。
【請求項2】
前記ロック位置における前記ロック手段は、前記軸支持部材(3、10)と前記軸受ハウジング(2)の間の回転を阻止し、そのとき、前記モータは前記ホイール要素(6)を回転させて前記転動装置を前記表面(S)に沿って移動させる、請求項1に記載の転動装置。
【請求項2】
制御部(20)は、前記転動装置を制御し、前記制御部(20)は、前記ロック位置と前記ロック解除位置の間での前記ロック手段の動作のための制御信号を、遠隔制御、コンピュータ、携帯電話機から、または音声起動により受信することを特徴とする請求項1又は2に記載の転動装置。
【請求項3】
前記ロック手段は、前記軸受ハウジング(2)に収容され前記ロック位置にあるとき前記軸支持部材(3、10)のロック凹部(14)と係合し、前記ロック解除位置において前記ロック凹部(14)から離脱されるロックボルト(13)を備える、請求項1乃至2のいずれかに記載の転動装置。
【請求項4】
ばね要素(16)が、前記ロック位置において前記ロックボルト(13)を前記ロック凹部(14)に係合させるための保持力を与える、請求項1~3のいずれかに記載の転動装置。
【請求項5】
前記制御部(20)は、ロック凹部(14)との係合とロック凹部(14)からの離脱との間でのロックボルト(13)を動作させるアクチュエータ手段(17)に連結されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の転動装置。
【請求項6】
前記軸支持部材(3、10)の少なくとも1つは、前記軸受ハウジング(2)に設けられたガイド凹部(21)に収容され、前記軸受ハウジング(2)に対する前記軸支持部材(3、10)の回転を案内する突出ガイド要素(18)を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の転動装置。
【請求項7】
前記軸支持部材(3、10)の少なくとも1つは、円形ディスク部材の構造を有し、前記取付開口は、対応する円形の貫通開口として配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の転動装置。
【請求項8】
前記ガイド要素(18)は、前記円形ディスク部材の周面から突出し、前記ガイド凹部(21)は、前記円形ディスク部材の周囲の一部に沿って前記軸受ハウジング(2)内に延在する、請求項6又は7に記載の転動装置。
【請求項9】
前記軸支持部材(3、10)の少なくとも1つは、前記軸受ハウジング内の取付開口(12aa、12b)に受容され、前記取付開口(12a、12b)は、前記軸受ハウジング(2)内に構成された内囲壁によって画定される、請求項1~8のいずれか1項に記載の転動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置に取り付けられ或いは一体化され、当該装置を表面に沿って移動可能にする転動装置に関する。
【0002】
より具体的には、移動されるべき装置は、家具、壁やドアなどの屋内建築部材であってもよい。また、移動されるべき装置は、例えば、ユーロパレットのように屋外に配置されてもよく、または移動しにくいその他の装置であってもよい。本発明は、屋外及び屋内両方の異なる場所の間で移動されるあらゆる種類の装置を移動させるのに適しており、その移動は、表面、例えば床に沿って行われる。
【背景技術】
【0003】
さまざまな装置、特に家具には、ある場所から別の場所への装置の移動を容易にするためのホイールが設けられる。例えば、複数の装置を再編成するため、または、装置占有空間または装置自体へのアクセスを得るべく当該装置を移動させるために、ホイールが設けられている。
【0004】
本出願人は、以前に、家具や可動壁等の装置に組み込まれて表面に沿って装置を移動させることが可能な転動装置を開発した。この転動装置は、健康状態や、転動装置を組み込んださまざまな装置を持ち上げる能力に関わらず、誰でも使用することができる。この装置は、特許文献1に記載されている。
【0005】
特許文献1に記載された転動装置は、例えば、家具の脚部に装着するための円筒状スリーブ装置と、円筒状スリーブ装置内に移動可能に配置されたピストンとを備える。ピストンには、ボール状又は球体状のホイールが配置されている。ピストンは、スプリングを備えたクリックシステムによって、上方位置と下方位置との間で移動可能である。ピストンが下方位置にあるとき、家具の配置された床を横切って家具は転動でき、一方、ピストンが上方位置にあるとき、ホイールは円筒状スリーブ装置の内側にあり、転動装置が配置された家具の脚部は床上に立つ。このため、家具に小さな力が加えられたときに家具が床を横切って不用意に転動することなく、家具は所望の位置に配置される。この解決方法は完全に機械的である。
【0006】
本出願人は、上記概念をさらに展開し、転動要素を備えたピストンを上下位置の間で移動させる自動アクチュエータシステムを備えた転動装置を提供した。この概念は、特許文献2に開示されている。上方位置は、ホイール要素が転動装置内に引き込まれる受動静止位置であり、下方位置は、転動装置を表面に沿って移動させるための動作位置である。アクチュエータは、無線で制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ノルウェー特許第316760号明細書
【特許文献2】欧州特許公開第3102429号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記概念のさらなる発展であって、ホイール要素が表面に沿って移動するのを防止する後退位置と、ホイール要素が表面に沿って移動する準備ができている延在位置との間でホイール要素を変位させる構成のための代替解決策を提供する。
【0009】
従って、本発明の目的は、装置に取り付けられ又は装置に組み込まれることができる転動装置を提供することであり、後退位置と延在位置の間でホイール要素を移動させるための簡単で信頼性のある構成を提供することにより、先行技術の解決策に対する代替手段を示唆するものである。
【0010】
本発明の他の目的は、制御が簡単であり、従来技術の解決策よりもコンパクトな構造を有する解決策を見出すことである。
【0011】
本発明のこれらのおよびその他の特徴は、添付図面を参照して、非限定的な例として与えられた例示的な実施形態についての以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、表面に沿って装置を移動させることを可能とする転動装置に関する。転動装置は、典型的には、種々の家具などの装置、ユーロパレット、又はその他の装置と係合するように構成され、一つ以上の転動装置を使用することにより移動が容易となる。転動装置は、種々の方法で装置に取り付けることができる。すなわち、移動させる装置(例えば家具)内の空洞に転動装置を組み込むことにより、または、固定手段を用いて、移動させる装置に直接的又は間接的に転動装置を取り付けることにより、取り付けることができる。
【0013】
転動装置は、ホイール要素を担持するホイール軸を収容する軸受ハウジングを備える。転動装置は、軸受ハウジング内に回転可能に収容された軸支持部材をさらに備える。ホイール要素は、通常のホイール形状などの、または、ボール形状や球形、表面との相互作用において転動運動を与えることのできるその他の形状を有する種々の要素からなることができる。軸受ハウジングは、開放構造、半閉鎖構造、または閉鎖構造として提供されてもよい。最も単純化された形態では、軸受ハウジングは、軸支持構造収容のために、対向配置された2つのフレーム構造を備えることができる。フレーム構造はまた、開口部が設けられた底部構造を有していてもよく、この開口部は、ホイール要素の少なくとも一部を昇降させるように構成されている。
【0014】
転動装置は、軸受ハウジングに対する軸支持部材の回転を許容するロック解除位置と、軸受ハウジングに対する軸支持部材の回転を阻止するロック位置との間で動作可能なロック手段をさらに備える。
【0015】
ホイール要素を担持するために配置されたホイール軸は、軸支持部材の間に延在する。ホイール軸の各端部は、軸支持部材の中心線から(半径方向に)オフセット変位した偏心位置において各軸支持部材に(間接的又は直接的に)連結されている。
【0016】
中心線は、軸支持部材の回転軸でもある。そこで、ホイール要素の回転軸は、軸支持部材の回転軸から平行に変位している。
【0017】
軸支持部材は、ホイール軸の2つの端部の各々を支持するように配置され、典型的には、2つの別個の軸支持部材として提供され得る。ここで、各軸支持部材の回転は、独立して生じても、又は相互に連係してもよい。あるいは、軸支持部材は、同一の実体または構成要素の一部として共通の構成で配置されてもよく、その場合には、軸支持部材を含むホイール軸支持構成として実現されてもよい。
【0018】
駆動モータは、ホイール軸を中心としたホイール要素の回転のために配置されている。駆動モータには、ホイールとホイール軸との相対回転を伝達する第1モータ部及び第2モータ部が設けられている。駆動モータは、典型的には、ホイール軸に連結された第1モータ部と、ホイール軸を中心としたホイール要素の回転のためにホイール要素に連結された第2モータ部とを備える。第1モータ部は、ステータであってもよいし、第2モータ部は、ロータであってもよいし、逆であってもよい。駆動モータは、いわゆるハブモータであってもよい。
【0019】
ロック解除位置にあるロック手段は、軸支持部材及びホイール軸を軸受ハウジングに対して回転させる。このとき、モータは、軸支持部材とホイール軸(これらは固定的に連結され一体として移動する)を軸受ハウジングに対して回転させ、ホイール要素の少なくとも一部が軸受ハウジングの外側に突出する延在位置とホイール要素が軸受ハウジングの内側に位置する後退位置との間で、偏心運動によって、ホイール要素を変位させる。
【0020】
ロック位置にあるロック手段は、軸支持部材とハウジングとの間の回転を抑止し、その状態で、モータは、ホイール要素を回転させて転動装置を表面に沿って移動させる。
【0021】
転動装置は、駆動モードおよび突出/後退モードなどの異なる動作/作業モードを有すると言える。
【0022】
駆動モードでは、ロック手段がロック位置に配置され、モータがホイール要素を回転させて表面に沿って移動させる。
【0023】
転動装置の突出/後退モードにおいて、ロック手段はロック解除位置にあり、モータは、ホイール要素の少なくとも一部がハウジングの外側に突出する延在位置と、ホイール要素がハウジングの内側に位置する後退位置との間で偏心運動によってホイール要素を変位させる。
【0024】
ホイール要素の後退を達成するために、転動装置は静止状態に維持されるべきである。ホイール要素に対する摩擦/重量は、転動装置が静止状態に維持されることを保証し、例えば何らかの障害物(例えば壁)に対して装置を押し付けたり、あるいは、転動装置が一組の転動装置の一部である場合には、各ホイール要素を反対方向に回転させて静止を確実にすることができる。別の選択肢は、ホイール要素が延在位置からの後退を開始しようとするときに、ホイール要素の回転に抗するカウンターウエイト/カウンターフォース(対抗力)手段を提供することである。
【0025】
ホイール要素は、モータがホイール要素を回転させて表面に沿った移動を行うためには、延在位置にある必要がある。
【0026】
必要に応じてこれらの動作モードの間で転動装置を切り換えてもよい。いくつかの状況では、転動装置は、駆動モードにおいてのみ使用されてもよく、他の状況においては、定期的に切り替えを行なってもよい。
【0027】
また、必要に応じて、ホイール要素の延在位置と後退位置の切り替えを行い、これらホイール位置の選択や切り替えを定期的に行うようにしてもよい。必要に応じてホイール要素を多少なりとも永続的な延在位置において使用することも可能である。このシナリオにおいて、転動装置はホイール要素を後退位置に配置する可能性を提供するものであるが、必ずしも生じる必要のない選択肢としてである。
【0028】
ホイール軸の端部を、軸支持部材の端面における対応する受容凹部に配置することにより、ホイール軸と軸支持部材との固定連結が提供されてもよい。この場合、受容凹部は、軸支持部材の中心軸からオフセット配置されてもよい。
【0029】
転動装置を制御するために、制御部を転動装置に含めるか、あるいはどこか他の場所に配置して、駆動モータの動作モードを制御してもよい。制御部は、転動装置の動作のための制御信号を受信するように構成されてもよく、制御部は、ロック位置とロック解除位置の間のロック手段の動作のための制御信号を、遠隔制御、コンピュータ、携帯電話機から、または音声作動により、受信するように構成されてもよい。あるいは、制御信号を、転動装置上もしくは転動装置の近傍または遠隔の制御ボタンから受信してもよい。
【0030】
ロック手段は、典型的には、ロックボルトとロック凹部を備えてもよい。ロックボルトは、軸受ハウジング内、たとえば、収容凹部内に収容されてもよく、ロック位置にあるとき軸支持部材のロック凹部と係合し、ロック解除位置にあるときロック凹部から離脱されるようにしてもよい。
【0031】
ロック位置にあるとき、ロックボルトの少なくとも一部がロック凹部に挿入されてもよく、ロック解除位置にあるとき、ロックボルトは収容凹部から完全に引き出されてもよい。軸支持部材が自由に回転する状況と、回転が抑止される状況を交互に行うことができるロック手段としての他の実現可能な解決策は、磁気ロック装置、種々の機械的ロック装置、等を含む。
【0032】
ロックボルトがロック位置に維持されることを保証するために、ばね要素を設けて、ロック位置においてロックボルトをロック凹部に係合させるための保持力を与えてもよい。ばね要素は、ロックボルトがロック凹部に正確かつ完全に挿入されることを確実にするために、ロックボルトに予備張力を与えるために配置されてもよい。
【0033】
さらに、制御部を、ロック凹部との係合とロック凹部からの離脱との間でロックボルトを動作させるためのアクチュエータ手段に連結してもよい。アクチュエータ手段は、磁場を設定可能な電磁作動ソレノイドを備えていてもよい。その場合、ロックボルトは、強磁性材料からなるロックボルトの少なくとも一部または全体を有し、ロックボルトをロック凹部から後退させるために、ソレノイドによって起動される磁界は、ばね力に打ち勝ってロックボルトをロック凹部との係合から離して移動させるのに十分な強さでなければならない。ロックボルトをロック位置に移動させる際には、ソレノイドをオフに切替えるよう制御して磁界を除去し、ばね力によりロックボルトをロック位置に移動させる。
【0034】
軸支持部材の一方または両方は、突出ガイド要素を備え、突出ガイド要素は、軸受ハウジング内に設けられたガイド凹部に収容され、軸受ハウジングに対する軸支持部材の回転を案内するように構成されている。この構成により、軸受ハウジングに対する軸支持部材の安定した確実な回転が保証される。
【0035】
軸受ハウジングに対する軸支持部材の効率的な回転を得るために、軸支持部材の各々は、典型的には、球面状ディスク部材の形状を有していてもよく、円形断面を有する対応する貫通孔として取付開口が配置されてもよい。回転を可能にするのに適した他の形状の軸支持部材を選択してもよく、例えば、円筒形、種々の球形または円形の形状、または回転運動を行うことができる他の形状などである。
【0036】
一方または両方の軸支持部材が円形ディスク部材として構成されている場合には、ガイド要素が円形ディスク部材の周面から突出し、対応するガイド凹部が円形ディスク部材の周囲の一部に沿って軸受ハウジング内に延在してもよい。
【0037】
軸支持部材の一方又は両方は、軸受ハウジング内の取付開口に収容されてもよく、その場合には、取付開口は、軸受ハウジング内に構成された内囲壁(internal surrounding wall)によって画定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【
図1】本発明に係る転動装置を示す概略斜視図である。
【
図2】駆動モードにおける一対の転動装置の概略側面図である。
【
図3】ホイール要素の後退開始時における
図2の転動装置を示す図である。
【
図4】ホイール要素の後退継続時の状態を示す図である。
【
図5】ホイール要素の更なる後退継続時の状態を示す図である。
【
図6】表面から後退したホイール要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1および
図7には、家具、ユーロパレット、その他の可動構造体等の被移動装置に取り付けられるか一体化される転動装置1が示されている。転動装置1は、図に半閉鎖構造として示されるハウジング2を有し、この半閉鎖構造は、ここでは軸支持部材3を収容するための側壁4として構成された対向する2つのフレーム構造を有する。底部構造5には開口7が設けられ、この開口7は、ホイール要素6の少なくとも一部を開口7を通って昇降させるように構成されている。
【0040】
ホイール要素6は、ホイール軸8上に回転可能に配置され、駆動モータ(図示せず)がホイール内に配置され、ホイール要素6を、ホイール軸8を中心として回転させる。駆動モータは、いわゆるハブモータであってもよいし、ホイール要素6をホイール軸8に対して回転させることのできるその他のモータであってもよい。駆動モータは、典型的には、ホイール軸8に連結された第1モータ部と、駆動モータの作動時にホイール要素6とホイール軸8との相対回転を生じさせるためにホイール要素6に連結された第2モータ部とを有する。第1モータ部は、ステータであってもよく、第2モータ部は、ロータであってもよいし、逆であってもよい。
【0041】
ホイール軸8は、端部8a、8bを有し、各端部は、軸支持部材3、10内の受容凹部3a、3bに挿入され、ホイール軸8と軸支持部材3、10の間の固定連結を形成する。端部8a、8bは、軸支持部材3、10の中心線CLからオフセット変位した偏心位置EPにおいて各軸支持部材に連結される。中心線CLは、軸支持部材3、10の回転軸でもある。
【0042】
そのため、ホイール要素の回転軸は、軸支持部材3、10の回転軸から平行に変位している。
【0043】
軸支持部材3、10は、ここでは軸受ハウジング2の球状の空洞又は貫通孔として示される対応する取付開口12a、12bにそれぞれ回転可能に収容されている。軸支持部材3、10は、円形ディスク部材として形成されたものとして示されているが、本出願では、軸受ハウジング2に対して回転可能なその他の回転体を用いることもできる。
【0044】
円形ディスク部材として示される軸支持部材3,10は、円形ディスク部材の周面19から突出する突出ガイド要素17を備えている。突出ガイド要素17は、軸受ハウジングに設けられたガイド凹部21に収容できるように構成されている。突出ガイド要素17は、軸支持部材3、10の回転に追従してガイド凹部21内を移動し、軸受ハウジングに対して軸支持部材を案内する。
【0045】
軸支持部材3、10のロック凹部14の内外に変位するロックボルト13として図に例示されるロック手段は、
図3に示すロック解除位置と、
図2に示すロック位置の間で動作可能である。
図2に示すロック位置では、軸受ハウジング2に対する軸支持部材3、10の回転が抑止されて転動装置が駆動モードとなる。ホイール要素6の一部はハウジングの外側に突出し、駆動モータは、転動装置を表面Sに沿って移動させるためのホイール要素6の回転を可能とする。
【0046】
ロックボルト13は、軸受ハウジング2の収容凹部15内に配置され、ロック凹部14内のロック位置にロックボルト13を維持するための保持力を付与するばね要素16によって予備張力を与えられている。ソレノイド(図示)や電気モータ(図示せず)等のアクチュエータ手段17が、ロックボルト13をロック凹部14から離脱させ、これによりロック解除位置を得るために設けられている。ロック解除位置では、軸支持部材3、10を軸受ハウジング2に対して回転させることができ、転動装置は突出/後退モードに配置される。駆動モータがホイール軸8に対してホイール要素6を回転させると、ホイール軸8及び軸支持部材3、10は、ロック凹部14からのロックボルト13の解放により、一体として自由に移動することができる。軸支持部材3、10は、矢印A及びBに示すように、ホイール要素6の回転運動に対して反対向きに回転する。ホイール軸8の偏心位置は、ホイール要素6を、偏心運動によって、
図3及び
図4に示すように、ホイール要素の少なくとも一部がハウジングの外側に突出する延在位置と、ホイール要素が軸受ハウジング2の内側に位置し、軸受ハウジング2が表面Sに当接する後退位置から変位させる。
【0047】
転動装置を制御するために制御部20が設けられている。制御部20は、遠隔制御、コンピュータ、携帯電話機から、または音声起動により、ロック位置とロック解除位置の間のロック手段の動作のための制御信号を受信する。
【0048】
ホイール要素6を、例えば
図6に示すような後退位置から延在位置に変位しようとする場合には、駆動モータを、ホイール要素6の後退を引き起こす方向とは反対方向にホイール要素6を回転させるように動作させる。
【0049】
軸支持部材3、10には、
図5及び
図6に示すようにホイール要素6を後退させたときに軸支持部材3、10を係止する付加ロック凹部(図示せず)を設けることもできる。
【0050】
図2~
図6には、2つの転動装置1、20が示されている。これらは、例えば、移動される装置、例えばユーロパレットに取り付けられた一組のホイールの一部であってもよい。ロックボルト13がロック凹部14から解放されると、2つの転動装置1、20の各ホイール要素6が矢印B及びCで示すように反対方向に回転し、ホイール要素6の回転を最小限に抑え、ホイール軸8と軸支持部材3、10との回転を増進して、ホイール要素6のハウジング内への効率的な後退を行うことができる。そのため、ホイール要素に対する摩擦/重量は、ホイール要素6の後退中に転動装置が静止状態に維持されることを保証する。ホイール要素が延在位置にあって後退しようとする際に転動装置の静止をもたらすその他の方法は、移動しようとする装置を壁または他の障害物に対して押し付けること、またはホイール要素6の回転に抗するためのカウンターウェイト手段を提供することを含んでもよい。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
円形ディスク部材として示される軸支持部材3,10は、円形ディスク部材の周面19から突出する突出ガイド要素18を備えている。突出ガイド要素18は、軸受ハウジングに設けられたガイド凹部21に収容できるように構成されている。突出ガイド要素18は、軸支持部材3、10の回転に追従してガイド凹部21内を移動し、軸受ハウジングに対して軸支持部材を案内する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
図2~
図6には、2つの転動装置
1が示されている。これらは、例えば、移動される装置、例えばユーロパレットに取り付けられた一組のホイールの一部であってもよい。ロックボルト13がロック凹部14から解放されると、2つの転動装置
1の各ホイール要素6が矢印B及びCで示すように反対方向に回転し、ホイール要素6の回転を最小限に抑え、ホイール軸8と軸支持部材3、10との回転を増進して、ホイール要素6のハウジング内への効率的な後退を行うことができる。そのため、ホイール要素に対する摩擦/重量は、ホイール要素6の後退中に転動装置が静止状態に維持されることを保証する。ホイール要素が延在位置にあって後退しようとする際に転動装置の静止をもたらすその他の方法は、移動しようとする装置を壁または他の障害物に対して押し付けること、またはホイール要素6の回転に抗するためのカウンターウェイト手段を提供することを含んでもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面(S)に沿って装置を移動させることを可能にするための転動装置(
1)であって、前記転動装置は、
ホイール要素(6)を担持するホイール軸(8)と、前記ホイール要素(6)と前記ホイール軸(8)の相対的回転を行うための第1モータ部および第2モータ部を備えた駆動モータとを収容する軸受ハウジング(2)と、
前記軸受ハウジング(2)内に回転可能に収容され、それぞれ前記ホイール軸の端部を支持する軸支持部材(3、10)と、を備え、
前記ホイール要素を担持する前記ホイール軸は、前記軸支持部材の間に延在し、前記ホイール軸の前記端部の各々は、前記軸支持部材(3、10)の中心線からオフセット変位した偏心位置において前記軸支持部材の各々に連結され、
前記転動装置は、さらに、
前記軸受ハウジング(2)に対する前記軸支持部材(3、10)の回転を許容するロック解除位置と、前記軸受ハウジング(2)に対する前記軸支持部材の回転を阻止するロック位置との間で動作可能なロック手段を備え、前記ロック手段の前記ロック解除位置では、前記モータが、前記軸受ハウジング(2)に対する前記軸支持部材(3,10)と前記ホイール軸(8)の回転を実行し、前記ホイール要素(6)の少なくとも一部が前記軸受ハウジング(2)の外側に突出する延在位置と、前記ホイール要素が前記軸受ハウジング(2)の内側に位置する後退位置との間で、偏心運動により、前記ホイール要素(6)を変位させる、転動装置。
【請求項2】
前記ロック位置における前記ロック手段は、前記軸支持部材(3、10)と前記軸受ハウジング(2)の間の回転を阻止し、そのとき、前記モータは前記ホイール要素(6)を回転させて前記転動装置を前記表面(S)に沿って移動させる、請求項1に記載の転動装置。
【請求項3】
前記転動装置は、さらに制御部(20)を有し、前記制御部(20)は、前記転動装置を制御し、前記制御部(20)は、前記ロック位置と前記ロック解除位置の間での前記ロック手段の動作のための制御信号を、遠隔制御、コンピュータ、携帯電話機から、または音声起動により受信することを特徴とする 請求項1又は2に記載の転動装置。
【請求項4】
前記ロック手段は、前記軸受ハウジング(2)に収容され前記ロック位置にあるとき前記軸支持部材(3、10)のロック凹部(14)と係合し、前記ロック解除位置において前記ロック凹部(14)から離脱されるロックボルト(13)を備える、請求項1
~3のいずれかに記載の転動装置。
【請求項5】
ばね要素(16)が、前記ロック位置において前記ロックボルト(13)を前記ロック凹部(14)に係合させるための保持力を与える、請求項1~
4のいずれかに記載の転動装置。
【請求項6】
前記制御部(20)は、ロック凹部(14)との係合とロック凹部(14)からの離脱との間でのロックボルト(13)を動作させるアクチュエータ手段(17)に連結されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の転動装置。
【請求項7】
前記軸支持部材(3、10)の少なくとも1つは、前記軸受ハウジング(2)に設けられたガイド凹部(21)に収容され、前記軸受ハウジング(2)に対する前記軸支持部材(3、10)の回転を案内する突出ガイド要素(18)を備える、請求項1~
6のいずれか1項に記載の転動装置。
【請求項8】
前記軸支持部材(3、10)の少なくとも1つは、前記軸受ハウジング内の取付開口(12a、12b)に受容され、前記取付開口(12a、12b)は、前記軸受ハウジング(2)内に形成された内囲壁によって画定される、請求項1~7のいずれか1項に記載の転動装置。
【請求項9】
前記軸支持部材(3、10)の少なくとも1つは、円形ディスク部材の構造を有し、前記取付開口は、対応する円形の貫通開口として配置されている、請求項
8に記載の転動装置。
【請求項10】
前記
突出ガイド要素(18)は、前記円形ディスク部材の周面から突出し、前記ガイド凹部(21)は、前記円形ディスク部材の周囲の一部に沿って前記軸受ハウジング(2)内に延在する、請求項
7に記載の転動装置。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】