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特表2022-545163帯域外波長の改善された光拒絶のための光学フィルタ素子、システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(54)【発明の名称】帯域外波長の改善された光拒絶のための光学フィルタ素子、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504199
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 US2020047188
(87)【国際公開番号】W WO2021035047
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/889,539
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515247783
【氏名又は名称】プロフサ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】レパク,クレイトン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK04
4C038KK05
4C038KK08
4C038KK10
4C038KL05
4C038KL07
4C038KM01
4C038KY01
(57)【要約】
帯域外波長の改善された光拒絶のための光学フィルタ素子、システム及び方法が開示される。例えば、埋め込み可能センサに照射するための励起光源と、埋め込み可能センサから放射光を収集するための光検出器とを含む検体検出システムが提供される。さらに、検体検出システムは、埋め込み可能センサと光検出器との間に配置された光学フィルタ素子を含み、光学フィルタ素子は、放射光の帯域外波長の高度な光拒絶を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の光学バンドパスフィルタと、
1つ又は複数の角度フィルタと
を含む装置であって、少なくとも3つの層を含み、各層は、順に、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタからの光学バンドパスフィルタ又は前記1つ又は複数の角度フィルタからの角度フィルタと交互にされている、装置。
【請求項2】
励起波長範囲の励起信号を放射するように構成された光源をさらに含み、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタは、前記励起波長範囲を拒絶するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
励起波長範囲の励起信号を放射するように構成された光源をさらに含み、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタは、0度の入射角における前記励起波長範囲を拒絶するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも3つの層を有し、及び前記1つ又は複数の角度フィルタのうちの角度フィルタは、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタのうちの第1の光学バンドパスフィルタと、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタのうちの第2の光学バンドパスフィルタとの間に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも3つの層を有し、及び前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタのうちの光学バンドパスフィルタは、前記1つ又は複数の角度フィルタのうちの第1の角度フィルタと、前記1つ又は複数の角度フィルタのうちの第2の角度フィルタとの間に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
励起波長範囲の励起信号を放射するように構成された光源をさらに含み、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタは、0度の入射角における前記励起波長範囲を拒絶するように構成され、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタは、30度より大きい入射角における前記励起波長範囲の拒絶には無効である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
放射波長範囲で放出された信号を測定するように構成された検出器であって、センサに応答して放出される前記信号は、励起波長範囲の光によって照射される、検出器をさらに含み、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタは、前記励起波長範囲を拒絶し、及び前記放射波長範囲を通過させるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
放射波長範囲で放出された信号を測定するように構成された検出器であって、センサに応答して放出される前記信号は、励起波長範囲の光によって照射される、検出器をさらに含み、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタは、0度の入射角における前記励起波長範囲を拒絶するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
放射波長範囲で放出された信号を測定するように構成された検出器であって、センサに応答して放出される前記信号は、励起波長範囲の光によって照射される、検出器をさらに含み、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタは、0度の入射角における前記励起波長範囲を拒絶するように構成され、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタは、30度より大きい入射角における前記励起波長範囲の拒絶には無効である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタは、0度の入射角における前記励起波長範囲を拒絶するように構成され、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタは、30度より大きい入射角における前記励起波長範囲の拒絶には無効であり、及び
前記1つ又は複数の角度フィルタは、20度より大きい入射角を有する励起信号が第2の光学バンドパスフィルタに到達することを防ぐように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも4つの層を有し、及び
前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタのうちの第1の光学バンドパスフィルタは、前記1つ又は複数の角度フィルタのうちの第1の角度フィルタと、前記1つ又は複数の角度フィルタのうちの第2の角度フィルタとの間に配置され、及び
前記第2の角度フィルタは、前記第1の光学バンドパスフィルタと、前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタのうちの第2の光学バンドパスフィルタとの間に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
散乱マトリックスに埋め込まれたセンサに照射するために、励起帯域の第1の光信号を放射するように構成された光源と、
前記センサから放出された放射帯域の第2の光信号を検出するように構成された検出器であって、前記第2の光信号の強度は、前記第1の光信号の強度よりも少なくとも1桁小さい、検出器と
をさらに含み、
前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタは、30度より大きい入射角を有する前記第1の光信号の後方散乱成分の拒絶には無効であり、
前記1つ又は複数の角度フィルタは、20度より大きい入射角を有する前記第1の光信号の後方散乱成分が前記検出器に到達することを防ぐように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
散乱マトリックスに埋め込まれたセンサに照射するために、励起帯域の第1の光信号を放射するように構成された光源と、
前記センサから放出された放射帯域の第2の光信号を検出するように構成された検出器であって、前記第2の光信号の強度は、前記第1の光信号の強度よりも少なくとも1桁小さい、検出器と
をさらに含み、
前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタは、30度より大きい入射角を有する前記第1の光信号の後方散乱成分の拒絶には無効であり、
前記1つ又は複数の角度フィルタは、20度より大きい入射角を有する前記第1の光信号の後方散乱成分が前記検出器に到達することを防ぐように構成され、
前記装置は、前記検出器における励起対放射比が少なくとも200であるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記1つ又は複数の光学バンドパスフィルタ及び前記1つ又は複数の角度フィルタは、シリコン集積回路製造技法を使用して構築された集積光学フィルタである、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
第1のフィルタリングされた光信号を生成するために、拡散光信号を第1の角度フィルタに通すことであって、前記第1の角度フィルタは、20度より大きい入射角を有する前記拡散光信号の成分を拒絶するように構成される、通すこと、
第2のフィルタリングされた光信号を生成するために、前記第1のフィルタリングされた光信号をバンドパスフィルタに通すことであって、前記バンドパスフィルタは、30度より小さい入射角及び所定の閾値より短い波長を有する前記第1のフィルタリングされた光信号の成分を拒絶するように構成される、通すこと、
第3のフィルタリングされた光信号を生成するために、前記第2のフィルタリングされた光信号を第2の角度フィルタに通すことであって、前記第2の角度フィルタは、20度より大きい入射角を有する前記第1のフィルタリングされた光信号の成分を拒絶するように構成される、通すこと
を含む方法。
【請求項16】
前記バンドパスフィルタは、第1のバンドパスフィルタであり、及び前記閾値は、第1の所定の閾値であり、前記方法は、
第4のフィルタリングされた光信号を生成するために、前記第3のフィルタリングされた光信号を第2のバンドパスフィルタに通すことであって、前記第2のバンドパスフィルタは、第2の所定の閾値より短い波長を有する前記第3のフィルタリングされた光信号の成分を拒絶するように構成される、通すこと
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の所定の閾値及び前記第2の所定の閾値は、同じ所定の閾値である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
励起光信号をセンサに照射することをさらに含み、前記センサは、散乱環境が励起帯域の前記拡散光信号の少なくとも一部分を生成するように前記散乱環境に配置され、前記励起帯域の波長は、前記所定の閾値より短い、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
励起光信号をセンサに照射することをさらに含み、前記センサは、散乱環境が励起帯域の前記拡散光信号の第1の部分を生成するように前記散乱環境に配置され、前記励起帯域の波長は、前記所定の閾値より短く、前記センサは、前記拡散光信号の第2の部分を放射するように構成され、前記拡散光信号の前記第2の部分は、放射帯域にあり、前記放射帯域の波長は、前記所定の閾値より長い、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
励起光信号をセンサに照射することであって、前記センサは、散乱環境が励起帯域の前記拡散光信号の第1の部分を生成するように前記散乱環境に配置され、前記励起帯域の波長は、前記所定の閾値より短く、前記センサは、前記拡散光信号の第2の部分を放射するように構成され、前記拡散光信号の前記第2の部分は、放射帯域にあり、前記放射帯域の波長は、前記所定の閾値より長い、照射することと、
前記第2のフィルタリングされた光信号を前記第2の角度フィルタに通した後、前記拡散光信号の前記第2の部分を検出することと
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
励起光信号をセンサに照射することをさらに含み、前記センサは、散乱環境が励起帯域の前記拡散光信号の少なくとも一部分を生成するように前記散乱環境に配置され、前記励起帯域の波長は、前記所定の閾値より短く、前記励起光信号の後方散乱成分は、前記第3のフィルタリングされた光信号の0.5%未満を構成する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の角度フィルタは、-20度より小さい入射角を有する前記拡散光信号の成分を拒絶するように構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
第1のフィルタリングされた光信号を生成するために、光信号を第1のバンドパスフィルタに通すことであって、前記第1のバンドパスフィルタは、30度より小さい入射角及び第1の所定の閾値より短い波長を有する前記拡散光信号の成分を拒絶するように構成される、通すことと、
第2のフィルタリングされた光信号を生成するために、前記第1のフィルタリングされた光信号を角度フィルタに通すことであって、前記角度フィルタは、20度より大きい入射角を有する前記第1のフィルタリングされた光信号の成分を拒絶するように構成される、通すことと、
第3のフィルタリングされた光信号を生成するために、前記第2のフィルタリングされた光信号を第2のバンドパスフィルタに通すことであって、前記第2のフィルタリングされた光信号は、第2の所定の閾値より短い波長を有する前記第2のフィルタリングされた光信号の成分を拒絶するように構成される、通すことと
を含む方法。
【請求項24】
前記光信号は、拡散光信号である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記角度フィルタは、第1の角度フィルタであり、前記方法は、
前記光信号を生成するために、拡散光信号を第2の角度フィルタに通すことであって、前記第2の角度フィルタは、20度より大きい入射角を有する前記拡散光信号の成分を拒絶するように構成される、通すこと
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
励起光信号をセンサに照射することをさらに含み、前記センサは、散乱環境が励起帯域の前記拡散光信号の少なくとも一部分を生成するように前記散乱環境に配置され、前記励起帯域の波長は、前記第1の所定の閾値及び前記第2の所定の閾値より短い、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
励起光信号をセンサに照射することをさらに含み、前記センサは、散乱環境が励起帯域の前記拡散光信号の第1の部分を生成するように前記散乱環境に配置され、前記励起帯域の波長は、前記第1の所定の閾値及び前記第2の所定の閾値より短く、前記センサは、前記拡散光信号の第2の部分を放射するように構成され、前記拡散光信号の前記第2の部分は、放射帯域にあり、前記放射帯域の波長は、前記第1の所定の閾値及び前記第2の所定の閾値より長い、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
励起光信号をセンサに照射することであって、前記センサは、散乱環境が励起帯域の前記拡散光信号の第1の部分を生成するように前記散乱環境に配置され、前記励起帯域の波長は、前記第1の所定の閾値及び前記第2の所定の閾値より短く、前記センサは、前記拡散光信号の第2の部分を放射するように構成され、前記拡散光信号の前記第2の部分は、放射帯域にあり、前記放射帯域の波長は、前記第1の所定の閾値及び前記第2の所定の閾値より長い、照射することと、
前記第2のフィルタリングされた光信号を前記第2のバンドパスフィルタに通した後、前記拡散光信号の前記第2の部分を検出することと
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の所定の閾値及び前記第2の所定の閾値は、同じ所定の閾値である、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
励起光信号をセンサに照射することをさらに含み、前記センサは、散乱環境が励起帯域の前記拡散光信号の少なくとも一部分を生成するように前記散乱環境に配置され、前記励起帯域の波長は、前記第1の所定の閾値及び前記第2の所定の閾値より短く、前記励起光信号の後方散乱成分は、前記第3のフィルタリングされた光信号の0.5%未満を構成する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記第1のバンドパスフィルタのフィルタウィンドウは、30度より大きい入射角を有する前記拡散光信号の成分に対して青方偏移されるように構成され、それにより、前記第1のバンドパスフィルタは、前記第1の所定の閾値より長い波長を有する前記拡散光信号の成分を通過させるように構成され、それにより、前記成分は、前記第2のフィルタリングされた光信号の一部分を形成する、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記角度フィルタは、-20度より小さい入射角を有する前記第1のフィルタリングされた光信号の成分を拒絶するように構成される、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年8月20日に出願された米国仮特許出願第62/889,539号に対する優先権を主張し、その全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
[0002] 本明細書で開示される主題は、概して、光学バンドパスフィルタに関し、より具体的には、帯域外波長の改善された光拒絶のための光学フィルタ素子、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 多くの状態の管理では、生体内の検体の定期的な測定が望ましい。生理学的、代謝又は疲労状態の変化を継続的且つ正確に決定するセンサを人間の体内に埋め込み、生体内の生物脅威剤又は治療剤の濃度を測定し、症状の発症前に疾患の早期検出を提供することは、医学及び軍事の両方における長年の目的とされてきた。そのようなセンサは、非侵襲性又は最小侵襲手術を通して埋め込まれ、ユーザメンテナンスが最小限で済み、数ヶ月~数年にわたって動作できることが好ましい。
【0004】
[0004] 例えば、血中グルコースの測定により、糖尿病患者にインスリンを正しく投与する能力を向上させることができる。さらに、糖尿病患者の長期にわたる医療ケアにおいて、血中グルコースレベルをよりよく制御することにより、糖尿病と関連付けられる場合が多い網膜症、循環系問題及び他の変性疾患の発症を、防ぐとまではいかないにしても、遅らせ得ることが実証されている。従って、糖尿病患者による血中グルコースレベルの信頼できる正確なセルフモニタリングが必要とされている。
【0005】
[0005] 現在、組織に埋め込むことができるバイオセンサが存在する。例えば、皮下数ミリメートルに埋め込むことができるバイオセンサが存在する。そのようなセンサの一部では、対象の検体(例えば、酸素、グルコース、乳酸、二酸化炭素(CO)、pH)の濃度を測定するために発光染料が使用される。例えば、一定の発光染料の強度は、存在する検体の量に基づいて変調し得、それにより、放射光の強度は、検体濃度と相関し得る。しかし、強度に基づくシステムは、検出器(又はリーダ)において誤差及び雑音が潜在的に生じ易いことを原因として、正確な検体測定値を得ることが難しくなるため、難易度が高くなり得る。埋め込み可能センサ及び関連するコンポーネントについては、その各々の全開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,375,494号、米国特許出願公開第10,117,613号、米国特許出願公開第10,219,729号、米国特許出願公開第10,717,751号及び米国特許出願公開第2016/037455号で説明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] 蛍光分子励起源の光パワーは、結果として得られる蛍光放射よりも数桁強い場合が多いため、光学フィルタを使用して放射光から励起光を分離することには、一定の課題が伴う。すなわち、光学バンドパスフィルタのカットオフ波長(又はフィルタウィンドウ)は、入射光の入射角に依存する。入射角が増加すると、フィルタウィンドウは、より短い波長に偏移する(すなわち青方偏移する)。蛍光分子励起及び放射の事例では、この青方偏移により、放射に対する光学フィルタウィンドウが励起光源に向かって偏移する。それに従って、強度に基づく測定に依拠する際、システムの最悪の入射角で放射光パワーよりも数桁大きい励起光を拒絶することができる光学フィルタを提供するうえでの課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
図面の簡単な説明
[0007] 本明細書で開示される主題についてこうして一般的な用語で説明してきたが、ここで、添付の図面を参照し、添付の図面は、必ずしも原寸に比例するとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】[0008]実施形態による、帯域外波長の高度な光拒絶を提供するように構成された光学フィルタ素子を含む、本明細書で開示される検体検出システムの例のブロック図を示す。
図2】[0009]実施形態による、検体検出システムの光学フィルタ素子のブロック図を示す。
図3】[0010]実施形態による、光学フィルタ素子のブロック図を示す。
図4】[0011]実施形態による、光学フィルタ素子のブロック図を示す。
図5】[0012]実施形態による、光学フィルタ素子のブロック図を示す。
図6】[0013]様々な光学フィルタ構成の放射対励起比を比較した実験結果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
[0014] 本明細書で説明される実施形態は、概して、帯域外波長の改善された光拒絶のための光学フィルタ素子及び/又はシステム並びに方法に関する。いくつかの実施形態によれば、検体検出システムは、埋め込み可能センサに照射するための励起光源と、埋め込み可能センサから放射光を収集するための光検出器とを含む。光学フィルタ素子は、例えば、励起光源から生じた帯域外波長を拒絶する一方、例えば埋め込み可能センサから生じた対象の信号を通過させ、光検出器に受信させるように動作可能であり得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書で説明される光学フィルタ素子は、フィルタへの入射光が、ほぼ+90度~-90度の範囲の入射角でフィルタの表面に当たる散乱光である場合でも、光学バンドパスフィルタから、光の帯域外波長の高度な光拒絶を提供するように動作可能であり得る。従って、本明細書で説明される光学フィルタ素子は、例えば、着用可能な検出デバイスでの使用に適している、単純な迷光無依存性のコンパクトな製造可能なフォームファクタにおいて、コリメートされていない蛍光分子放射光からの、コリメートされていない蛍光分子励起光の効率的な光学フィルタリングを提供することができる。
【0010】
[0015] いくつかの実施形態による検体検出システムは、1つ又は複数の光学フィルタと組み合わせた1つ又は複数の角度フィルタを含む光学フィルタ素子を含む。本明細書で説明される光学フィルタ素子は、典型的には、少なくとも3つの層(例えば、バンドパスフィルタ及び角度フィルタのスタック)を含む。そのような光学フィルタ素子は、励起光信号を実質的に拒絶する一方、放射光信号を伝送することができる。一例では、光学フィルタ素子は、順に、第1の角度フィルタ、光学バンドパスフィルタ及び第2の角度フィルタを含む。別の例では、光学フィルタ素子は、順に、第1の光学バンドパスフィルタ、角度フィルタ及び第2の光学バンドパスフィルタを含む。さらなる別の例では、光学フィルタ素子は、順に、第1の角度フィルタ、第1の光学バンドパスフィルタ、第2の角度フィルタ及び第2の光学バンドパスフィルタを含む。
【0011】
[0016] 本明細書で説明される実施形態は、システムの最悪の入射角で放射光パワーよりも数桁大きい励起光を拒絶することができる光学フィルタ素子を含み得る。
【0012】
[0017] いくつかの実施形態では、光学フィルタ素子を含む検体検出システムは、着用可能な検出デバイスにおいて実装される。
【0013】
[0018] いくつかの実施形態では、光学フィルタ素子を含む検体検出システムは、着用可能な検出デバイスに組み込めるように物理的にスケーラブルなものであり得る。すなわち、光学フィルタ素子は、着用可能な検出デバイスに適したフォームファクタで提供することができる。
【0014】
[0019] 本明細書で説明されるいくつかの実施形態は、励起光源と関連付けられた成分を拒絶する一方、放射信号と関連付けられた成分を通過させるために、拡散光信号を光学フィルタ素子に通すことを含む方法に関する。励起光源は、組織などの高散乱環境に配置されたセンサに照射するように動作可能であり得る。散乱環境は、励起源からの光を散乱させ、励起光源に向かって広範な角度で反射し返す。センサは、励起光の一部分を吸収し、異なる(典型的にはより高い)波長の放射信号を放射するように動作可能であり得る。従って、散乱環境を出た光(拡散光信号)は、励起光源と関連付けられた成分と、センサからの放射と関連付けられた成分とを含み得る。
【0015】
[0020] 方法は、第1のフィルタリングされた光信号を生成するために、拡散光信号を第1の角度フィルタに通すことを含み得る。第1の角度フィルタは、所定の範囲外(例えば、20度より大きい及び/又は-20度より小さい)の入射角を有する拡散光信号の成分を拒絶するように構成することができる。第1の角度フィルタを通過した成分(例えば、第1のフィルタリングされた光信号)は、30度より小さい(及び/又は-30度より大きい)入射角並びに第1の所定の閾値より短い波長を有する第1のフィルタリングされた光信号の成分を拒絶するように構成されたバンドパスフィルタに通すことができる。バンドパスフィルタを通過した成分(例えば、第2のフィルタリングされた光信号)は、20度より大きい(及び/又は-20度より小さい)入射角を有する第2のフィルタリングされた光信号の成分を拒絶するように構成された第2の角度フィルタに通すことができる。第2の角度フィルタを通過した成分(例えば、第3のフィルタリングされた光信号)は、検出器によって検知することができる。検出器によって検知される成分は、非常に高い信号対雑音(又は放射対励起)比を有し得る。
【0016】
[0021] 図1は、実施形態による検体検出システム100のブロック図であり、検体検出システム100は、帯域外波長の高度な光拒絶を提供する光学フィルタ素子を含む。検体検出システム100及び光学フィルタ素子は、埋め込み可能センサを読み取って検体値を決定するために使用することができる。
【0017】
[0022] 検体検出システム100は、組織105に埋め込まれた埋め込み可能センサ150に隣接して位置決めすることができる検出デバイス110を含む。例えば、埋め込み可能センサ150は、ユーザの皮下数ミリメートル(例えば、1~10mm)に埋め込むことができ、検出デバイス110は、組織の外側で埋め込み可能センサを覆うように位置決めすることができる。
【0018】
[0023] 埋め込み可能センサ150は、例えば、検体検知蛍光センサであり得る。組織105に埋め込まれると、埋め込み可能センサ150は、血管と十分に接触し(極めて接近している)、及び間質液に直接アクセスするため、様々な生物検体を測定するように動作可能であり得る。埋め込み可能センサ150は、検体検知染料を含む。埋め込み可能センサ150の検体検知染料は、対象の検体を標的とするための検体特有の染料であり得る。対象の検体の例は、これらに限定されないが、酸素、活性酸素種、グルコース、乳酸、ピルビン酸、コルチゾール、クレアチニン、尿素、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、バソプレシン、ホルモン(例えば、黄体形成ホルモン)、pH、CO、サイトカイン、ケモカイン、エイコサノイド、インスリン、レプチン、低分子薬剤、エタノール、ミオグロビン、核酸(RNA、DNA)、フラグメント、ポリペプチド、単一アミノ酸及び同様のものを含み得る。一例では、埋め込み可能センサ150は、グルコースセンサであり得、従って、検体検知染料は、グルコース検知染料である。
【0019】
[0024] 検出デバイス110は、光学デバイスであり、埋め込み可能センサ150に照射して励起させるように動作可能な励起光源140と、埋め込み可能センサ150によって放出された信号を受信するように動作可能な光検出器146と、帯域外波長(例えば、励起光源140と関連付けられた雑音)の高度な光拒絶(例えば、10-5、10-6又は10-7の光拒絶)を提供する光学フィルタ素子120とを含む。検出デバイス110は、ある光学コンポーネント144及び通信ポート148をさらに含む。いくつかの実施形態では、検出デバイス110は、電池などの電源(図示せず)を含み得る。検出デバイス110は、皮膚の表面に適合するように設計される。検出デバイス110は、プリント基板(PCB)、フレキシブルPCB又は他のフレキシブル基板を使用して実装することができる。検出デバイス110は、例えば、埋め込み可能センサ150に極めて接近して皮膚(すなわち組織105)の表面に貼ることができるパッチとして提供される着用可能な検出デバイスであり得る。
【0020】
[0025] 励起光源140は、皮膚の表面から組織105を通して埋め込み可能センサ150に励起光142を伝送するように配置される。励起光源140からの励起光142は、埋め込み可能センサ150の任意の検体検知染料の励起波長の範囲内である。適切な励起光源は、これらに限定されないが、レーザ、半導体レーザ、発光ダイオード(LED)及び有機LEDを含み得る。光学コンポーネント144は、励起光源140を調節するために検出デバイス110で必要とされるいかなるタイプのコンポーネント(例えば、光学フィルタ)も含み得る。
【0021】
[0026] 光検出器146は、埋め込み可能センサ150の検体検知染料から組織105を通過して出た放射光152を検出するように動作可能である。すなわち、光検出器146は、埋め込み可能センサ150の検体検知染料の放射波長の放射光152を検出する。適切な光検出器は、これらに限定されないが、フォトダイオード、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)検出器及び電荷結合素子(CCD)検出器を含み得る。
【0022】
[0027] 本明細書でさらに詳細に論じられるように、光検出器146は、光学フィルタ素子120を使用してフィルタリングを行うことができ、それにより、光検出器146は、所望の波長範囲(例えば、放射波長範囲)内で放出された光信号を測定するように動作可能であり、光学フィルタ素子120は、従来の光学検出デバイスと比べて帯域外波長(例えば、励起波長帯域)の高度な光拒絶を提供する。
【0023】
[0028] 使用時、励起光142を介して埋め込み可能センサ150をその励起波長で励起させる。次いで、埋め込み可能センサ150は、励起光142を吸収し、より長い波長の放射光152を放射する。次いで、光学フィルタ素子120は、励起光142を拒絶し、放射光152を通過させて、光検出器146による正確な測定を行うことができるようにする。しかし、本明細書でさらに詳細に論じられるように、組織は、高散乱環境であるため、励起光142の一部分は、広範な入射角(例えば、-89度~89度)で光学フィルタ素子に当たる。公知のバンドパスフィルタは、放射光152と高入射角の励起光との区別には無効であり得る。従って、光学フィルタ素子120は、例えば、1つ又は複数の光学コンポーネントの配列又はスタックを含み得る。
【0024】
[0029] 検出デバイス110は、内蔵型電子処理デバイス(図示せず)及び/又はデータストレージ(図示せず)を含み得る。そのような実施形態では、検体検出システム100の処理能力は、皮膚の表面に位置する検出デバイス110に完全に又は部分的に搭載することができる。加えて又は代わりに、検体検出システム100の処理能力は、皮膚の表面に位置する検出デバイス110の外部に位置する。それに従って、検出デバイス110と別個のコンピューティングデバイス160との間に通信ポート148が提供され、コンピューティングデバイス160は、検出デバイス110からの任意の情報を処理するために使用することができる。コンピューティングデバイス160は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットデバイス、携帯電話、スマートフォン、集中型サーバ又はクラウドコンピュータ及び同様のものなど、いかなるタイプのコンピューティングデバイスでもあり得る。この例では、通信ポート148は、励起光源140及び/又は光検出器146から例えばコンピューティングデバイス160への有線及び/又は無線通信リンクを促進する。例えば、通信ポート148は、USBポートなどの有線通信ポート、及び/又は例えばWiFi及び/又はBluetooth(登録商標)技術を使用する無線通信ポートであり得る。
【0025】
[0030] コンピューティングデバイス160は、埋め込み可能センサ150からの任意の情報を処理するためにデスクトップアプリケーション162又はモバイルアプリ162を使用することができる。すなわち、デスクトップアプリケーション162又はモバイルアプリ162は、埋め込み可能センサ150からの任意の情報を処理するための任意のソフトウェア及び/又はハードウェアコンポーネントを含み得る。検出デバイス110は、電池を含み得るが、他の実施形態では、コンピューティングデバイス160が検出デバイス110に電力を供給する。
【0026】
[0031] 一例では、コンピューティングデバイス160は、励起光源140を起動させるために使用することができ、励起光源140は、励起光142を放出し、埋め込み可能センサ150の検体検知染料に照射し、検体検知染料は、一定の吸収スペクトル及び一定の放射スペクトルを有する。次いで、光検出器146は、埋め込み可能センサ150から光学フィルタ素子120を通過した放射光152を収集し、光学フィルタ素子120は、放射光152の帯域外波長の高度な光拒絶を提供する。次いで、コンピューティングデバイス160は、光検出器146から情報を収集し、光検出器146は、埋め込み可能センサ150から受信した光信号を電気信号出力に変換する。測定された放射光152の強度は、検体値と相関する。例えば、埋め込み可能グルコースセンサ150では、測定された放射光152(すなわち蛍光)の強度は、存在するグルコースの量又は濃度と相関する。一般に、励起光142は、放射光152よりも数桁強いものである。それに従って、光学フィルタ素子120は、励起光142と放射光152とを分離するために使用される。すなわち、光学フィルタ素子120は、光検出器146に照射される光の信号対雑音比を増加させるために、励起光142をできる限り拒絶するために使用される。本明細書でさらに詳細に説明されるように、光学フィルタ素子120は、光学フィルタ素子120の入射角の許容範囲が、ストークスシフトが短い蛍光分子に対して使用される公知のフィルタリング技法で可能であるものより高いように、高散乱環境でも、特にストークスシフトが短い蛍光分子に対する励起光を効率的に拒絶するのによく適している。例えば、特に励起ピークが放射ピークに非常に近い蛍光分子の場合(例えば、50、30、25、15nm又はそれ未満)、公知のフィルタ及びフィルタリング方法を使用して、放射信号とオフ角度の後方散乱励起信号とを区別することは難しい。本明細書で説明される実施形態は、埋め込み可能センサからのストークスシフトが短い放射の検出に適した公知の方法では達成可能ではない、高入射角(例えば、+/-30度を超える)の帯域外光の高度な光拒絶(例えば、10-5より大きい)が可能である。
【0027】
[0032] 図2は、図1を参照して上記で示され及び説明される検出デバイス110のブロック図であり、光学フィルタ素子120の追加の詳細を示す。蛍光分子を励起するように構成された励起光源140の光パワーは、結果として得られる蛍光放射よりも数桁(例えば、1、2又は3桁)強い場合が多い。従って、システムの最悪の入射角で放射光パワーよりも数桁大きい励起光を拒絶するように光学フィルタ素子120を設計することが望ましい。すなわち、光学バンドパスフィルタのカットオフ波長(又はフィルタウィンドウ)は、入射光の角度に依存する場合が多い。入射角が増加すると、フィルタウィンドウは、より短い波長に偏移する(すなわち青方偏移する)。蛍光分子励起及び放射の事例では、この青方偏移により、放射に対する光学フィルタウィンドウは、励起光源に向かって偏移し、いくつかの事例では、高入射角(例えば、+/-20、25、30、35、45度を超える)を有する励起帯域幅の範囲の光の拒絶において光学バンドパスフィルタが無効になる(帯域外光の50%超、75%超、90%超などを通過させる)。それに従って、強度に基づく測定に依拠し得る検体検出システム100の光学フィルタ素子120は、システムの最悪の入射角で放射光パワーよりも数桁大きい励起光を拒絶するように動作可能であり得る。
【0028】
[0033] 図2は、埋め込み可能センサ150に当たる励起光142を示す。加えて、励起光142は、広範な入射角(例えば、-89度~89度)にわたって光学フィルタ素子120に到達する(例えば、拡散反射及び/又は後方散乱を原因として)。励起光142に応答して、埋め込み可能センサ150は、放射光152を生成する。典型的には、光検出器146は、放射光152の多くが光学フィルタ素子120に実質的に垂直になるように、埋め込み可能センサ150を覆うように位置決めされる。
【0029】
[0034] 本明細書でさらに詳細に論じられるように、光学フィルタ素子120は、システムの最悪の入射角(例えば、+/-89度)で放射光パワーよりも数桁強力な励起光を拒絶するように設計される。従って、光学フィルタ素子120は、0度の又は0度近くの入射角で光学フィルタ素子に到達した励起光142(例えば、垂直励起光)及び高入射角で光学フィルタ素子に到達した励起光142を実質的に拒絶すると同時に、放射光152を透過させる。例えば、光学フィルタ素子120の出力側の放射光152対励起光142の放射対励起比が大きく、いくつかの実施形態によれば200超である。
【0030】
[0035] 一般に、本明細書で開示される検体検出システム100は、励起光信号を実質的に拒絶する一方、放射光信号を伝送するために、1つ又は複数の光学フィルタと組み合わせて交互にされた1つ又は複数の角度フィルタを含む光学フィルタ素子120を提供する。光学フィルタ素子120は、典型的には、2つ以下の層が、劇的に劣る帯域外光拒絶を提供することを実験結果が実証しているように、少なくとも3つの層を含む。いくつかの例では、二層光学フィルタ素子と比べて、三層光学フィルタ素子は、信号対雑音比を350超に増加させることができる。例えば、図3で描写される実施形態に従って示されるように、光学フィルタ素子220は、順に、第1の光学フィルタ222、角度フィルタ224及び第2の光学フィルタ222を含む。
【0031】
[0036] 光学フィルタ素子220は、拡散源(例えば、組織)からの帯域外光のフィルタリングを可能にする。第1及び第2の光学フィルタ222は、薄膜光学バンドパスフィルタであり得る。第1及び第2の光学フィルタ222は、例えば、IDEX Health & Science, LLC(Rochester, NY)の事業部門であるSemrockから入手可能な707nmフィルタ(p/n PROF-0016)であり得る。角度フィルタは、垂直光(0度の又は0度近くの入射角で角度フィルタ224に当たる光、+10度~-10度の入射角で角度フィルタ224に当たる光、+20度~-20度の入射角で角度フィルタ224に当たる光など)の通過を可能にする一方、高角度の光(例えば、30度を超える入射角を有する光)の通過を防ぐことができる。それに従って、角度フィルタ224は、光の一定の角度拒絶を提供する。角度フィルタ224は、例えば、ファイバオプティクプレート(FOP)であり得る。FOPは、ミクロンサイズの直径のファイバを束にして形成された光学素子である。FOPは、その入力表面に入射した光又は像をその出力表面に直接伝搬する。光学フィルタ素子220に適したFOPの例は、これらに限定されないが、SCHOTT North America, Inc.(Southbridge, MA)から入手可能なSCHOTT(登録商標)Fiber Optic Faceplates及びHamamatsu Corporation(Bridgewater, NJ)から入手可能なFOPを含み得る。別の例では、角度フィルタ224は、一連の開口であり得る。
【0032】
[0037] 前述のコンポーネントの例は、グルコース特有の染料に適切であり得るが、より一般的には、光学フィルタ素子220のコンポーネントは、以下の通りであり得る。
光学フィルタ:
以下の範囲のバンドパス波長:400nm~1600nm
基板:ガラス、プラスチック、他の透過性材料
通過帯域外(具体的には励起波長近く)の光学密度(OD):4OD超
通過帯域の光透過:1%超
急峻カットオン/カットオフエッジ:30nm未満のカットオフ幅
ファイバオプティクプレート(FOP)
開口数:0.5~0.05
垂直入射透過:1%超
迷光制御:ファイバ間のクロストークを防ぐためのEMAガラス又は均等物
高入射角光拒絶:OD4超における
開口(単一又はアレイ)
高入射角における光拒絶:OD4超
垂直入射透過:1%超
レンズ(単一又はアレイ)+開口系
開口数:0.5~0.05
高入射角における光拒絶:OD4超
垂直入射透過:1%超
【0033】
[0038] 動作時、第1の光学フィルタ222、角度フィルタ224及び第2の光学フィルタ222の仕様(例えば、波長通過帯域)は、放射光252(所定の波長の)が実質的にフィルタリングされずに配列を通過し、及び励起光242(異なるより低い所定の波長の)が実質的に拒絶されるように選択される。励起光242の拒絶に関して、励起光242の垂直成分(例えば、垂直励起光242’)と、励起光242の高入射角成分(例えば、高入射角励起光242’’)との両方とも光学フィルタ素子220に到達する。第1の光学フィルタ222は、垂直励起光242’を実質的にフィルタ除去し、それにより、ごく少量(例えば、10-5、10-6、10-7超)の垂直励起光242’がライン沿いに進み、光学フィルタ素子220の出力側に到達する。しかし、高入射角励起光242’’(例えば、25、30、35、45度などより大きい及び/又は-25、-30、-35、-45度などより小さい入射角を有する光)は、第1の光学フィルタ222を通過し、角度フィルタ224に到達する。述べられるように、同様に、第1の光学フィルタ222は、高入射角で第1の光学フィルタ222に当たる励起帯域幅の範囲内の光には無効であり得る(その50%未満を拒絶するように動作可能であり得る)。角度フィルタ224は、高入射角励起光242’’を実質的にフィルタ除去し、それにより、ごく少量の高入射角励起光242’’がライン沿いに進み、光学フィルタ素子220の出力側に到達する。しかし、高入射角励起光242’’が角度フィルタ224の界面に到達すると、新しい垂直励起光242’成分が形成され、第2の光学フィルタ222に伝わる可能性がある。第2の光学フィルタ222は、この垂直励起光242’を実質的にフィルタ除去し、それにより、そのごく少量のみが光学フィルタ素子220の出力側に到達する。この方法では、光学フィルタ素子220は、励起光242の垂直及び高入射角成分を実質的に拒絶する一方、放射光252を透過させるために使用される。
【0034】
[0039] 図4に示される別の実施形態によれば、光学フィルタ素子320は、順に、第1の角度フィルタ324、第1の光学バンドパスフィルタ322、第2の角度フィルタ326及び第2の光学バンドパスフィルタ328を含む。すなわち、図4に示される光学フィルタ素子320は、図3に示される光学フィルタ素子220と実質的に同じであるが、第1の光学バンドパスフィルタ322の前に別の角度フィルタ324が追加されることを除く。第1の角度フィルタ324は、追加のフィルタリングレベルを提供する。例えば、光拒絶の一定の所望のレベルを達成するため、追加の段階(例えば、第1の角度フィルタ324)を追加して、性能を向上させることができる。
【0035】
[0040] 図5に示される別の実施形態によれば、光学フィルタ素子420は、順に、第1の角度フィルタ424、光学バンドパスフィルタ422及び第2の角度フィルタ426を含む。すなわち、図5に示される光学フィルタ素子420は、図3に示される光学フィルタ素子320と実質的に同じであるが、2つの光学フィルタ及び1つの角度フィルタの代わりに、光学フィルタ素子420は、2つの角度フィルタ424、426及び1つの光学フィルタ422を含むことを除く。
【0036】
[0041] 光学フィルタ素子は、図3~5を参照して示されるコンポーネントの数及び順番に限定されない。これらの構成は、単なる例示である。光学フィルタ素子は、励起光信号を実質的に拒絶する一方、放射光信号を伝送するため、2つ以上の光学フィルタと組み合わせた1つ又は複数の角度フィルタのうち、いかなる数も含み得、任意の順番であり得る。必ずしもではないが、高い頻度で、角度フィルタと光学フィルタとは、光学フィルタ素子のスタックにおいて交互である。しかし、光学フィルタ素子の信号対雑音(SNR)を大幅に低減することなく、コンポーネントの数及び配列のバランスを取ることができる。
【0037】
[0042] 実施形態は、ハウジング底部及びハウジング上部を含む着用可能な検出デバイスを含む。ハウジング底部は、ハウジングウィンドウを含み得、ハウジング底部は、着用可能な検出デバイスのユーザの皮膚に当たる部分である。一態様では、ユーザの皮膚の温度を検出するために、温度検出器を含めることができる。着用可能な検出デバイスは、メインプリント基板(PCB)及び皮膚温度PCBを含み得、皮膚温度PCBは、温度検出器と熱的に接触させ、温度検出器からの皮膚温度情報を処理することができる。メインPCBは、複数のLED及び光検出器を含み得る。光検出器は、図1及び図2に示される光検出器146の一例である。
【0038】
[0043] 実施形態では、着用可能な検出デバイスは、プロセッサも含み得、プロセッサは、着用可能な検出デバイスの動作全体を管理するために使用されるマスタコントローラであり得る。プロセッサは、プログラム命令の実行が可能ないかなる標準コントローラ又はマイクロプロセッサデバイスでもあり得る。さらに、一定の量のデータストレージをプロセッサと関連付けることができる。メインPCBは、これに限定されないが、通信インタフェースなど、着用可能な検出デバイスに有用な他の任意のコンポーネントを含み得る。一例では、着用可能な検出デバイスは、ユーザのグルコースレベルを定期的に(数分ごとになど)報告するために使用することができる。
【0039】
[0044] 実施形態では、着用可能な検出デバイスは、第1のデュアルバンドパスフィルタ(例えば、異なる放射スペクトルを有する複数の蛍光染料と関連付けられた光信号を通過させるように構成される)、第1のFOP、第2のデュアルバンドパスフィルタ及び第2のFOPを含み得、それらは、スタック状に配列することができる。この第1のデュアルバンドパスフィルタ、第1のFOP、第2のデュアルバンドパスフィルタ及び第2のFOPのスタックは、帯域外波長の高度な光拒絶を提供する、本明細書で開示される光学フィルタ素子120の一例である。より具体的には、このスタックは、図4に示される光学フィルタ素子320の一例である。すなわち、デュアルバンドパスフィルタは、図4の光学フィルタ素子320の光学フィルタ322、328の例であり、FOPは、図4の光学フィルタ素子320の角度フィルタ324、326の例である。
【0040】
[0045] 実施形態では、着用可能な検出デバイスは、その能動コンポーネントに電力を供給するための電池を含み得る。電池は、充電式又は非充電式電池であり得る。
【0041】
[0046] 一例では、着用可能な検出デバイスは、約3cmの全長、約2cmの全幅及び約1cmの全厚又は全高を有する。デュアルバンドパスフィルタの各々は、例えば、約1mmの厚さであり得る。FOPの各々は、例えば、約0.5mm~約1mmの厚さであり得る。それに従って、スタック全体は、例えば、約2mm~約4mmの厚さであり得る。加えて、スタックは、例えば、約4mmの正方形であり得る。一例では、着用可能な検出デバイスは、接着パッチを使用してユーザの皮膚に固定することができる。着用可能な検出デバイスのハウジングウィンドウは、埋め込み可能センサ(埋め込み可能センサ150など)からの光学読取値を捕捉するために、埋め込み可能センサと関連付けて位置決めすることができる。
【0042】
[0047] 他の実施形態では、個別のコンポーネントを使用する代わりに、シリコン製造方法を全体的に使用して形成された集積コンポーネントとして、デュアルバンドパスフィルタとFOPのスタック、光学フィルタ素子120及び光検出器146を提供することができる、例えば、ウェーハ及びダイレベルで光検出器を提供する。次いで、ウェーハレベルにおいて、ダイをフィルタ材料でコーティングする。次いで、一連のレンズ又は角度フィルタをフィルタ上に堆積させる。次いで、ウェーハをさいの目に切り、光学フィルタ素子120と光検出器146との両方を含む個々の集積回路(IC)デバイスを形成する。
【0043】
[0048] 図6は、本明細書で開示される光学フィルタ素子120を含む様々な光学フィルタ構成の放射対励起比を比較した棒グラフ500の例を示す。棒510は、図3を参照して示され及び説明される光学フィルタ素子220の性能を示す。200を超える放射対励起(信号対雑音)比により、図6は、2つの層のみを含む一部の公知のフィルタ素子(棒512)より劇的な性能の向上(350倍以上優れた)を示している。光が光学バンドパスフィルタに当たる前に光をコリメートするためのコリメータとしてFOPを含む光学フィルタ構成に対する実験データ(棒314に示される)は、コリメートされていない光と比べて性能が向上しているが、光学フィルタ素子222(棒510)より劣ることを示している。
【0044】
[0049] 長年存続している特許法の慣例に従うと、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」という用語は、本出願(特許請求の範囲を含む)で使用される際、「1つ又は複数」を指す。従って、例えば、「対象」への言及は、複数の対象を含むなどが挙げられるが、文脈が明確にそれ(例えば、複数の対象)と矛盾する場合を除く。
【0045】
[0050] 本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含んでいる」という用語は、文脈が必要とする場合を除いて、非排他的な意味で使用される。同様に、「包含する」という用語及びその文法上の変形形態は、リスト内のアイテムの列挙が、リストアイテムに代用又は追加できる他の同様のアイテムを除外しないように、非限定的であることが意図される。
【0046】
[0051] 本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のため、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される量、サイズ、寸法、割合、形状、公式化、パラメータ、パーセンテージ、数量、特性及び他の数値を表現する数のすべては、「約」という用語が値、量又は範囲と共に明示されていなくとも、すべての例において「約」という用語によって修正できるものとして理解されたい。それに従って、矛盾する指示がない限り、以下の本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、まさにその数値でなくともよく、まさにその数値である必要もなく、近似値及び/又は必要に応じてより大きい若しくはより小さい値であり得、本明細書で開示される主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて、許容差、変換係数、四捨五入、測定誤差及び同様のもの並びに当業者に知られている他の因子を反映するものであり得る。例えば、「約」という用語は、値を指す場合、指定された量からのばらつき(いくつかの実施形態では±100%、いくつかの実施形態では±50%、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%及びいくつかの実施形態では±0.1%)が、開示される方法の実行又は開示される組成の採用に適切である場合、そのようなばらつきを包含することを意味し得る。
【0047】
[0052] さらに、「約」という用語は、1つ又は複数の数又は数値範囲と関係して使用される際、すべてのそのような数(範囲内のすべての数を含む)を指すものであり、記載される数値の上方及び下方に境界を拡張することによってその範囲を修正できるものと理解すべきである。端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に組み入れられるすべての数(例えば、整数全体(その小数部を含む))及びその範囲内の任意の範囲を含む(例えば、1~5の列挙は、1、2、3、4、5のみならず、その小数部(例えば、1.5、2.25、3.75、4.1及び同様のもの)も含む)。
【0048】
[0053] いくつかの実施形態は、「有効な」又は「無効な」ものとしてのフィルタリングについて説明する。いくつかの例では、フィルタは、特定の信号の99.99%超をブロックする場合(10-4の拒絶)、その信号に対して「有効」である(又は「拒絶するように構成される」)。他の例では、有効なフィルタは、帯域外光子の10-5又は10-6の拒絶を提供する。逆に言えば、いくつかの例では、フィルタは、特定の信号の0.5%、0.01%、0.001%又は0.00001%超を通過させる場合、その信号に対して無効である。
【0049】
[0054] 前述の主題について、明確な理解のために、例示及び例としてある程度詳細に説明してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内において、一定の変更形態及び修正形態が実践され得ることを理解するであろう。さらに、様々な実施形態について、特定の特徴及び/又はコンポーネントの組合せを有するものとして説明してきたが、適切な場合、実施形態のいずれかからの任意の特徴及び/又はコンポーネントの組合せ並びに追加の特徴及び/又はコンポーネントを有する他の実施形態も可能である。
【0050】
[0055] 上記で説明される方法が、特定のイベントが特定の順番で起こることを示す場合、特定のイベントの順番を修正することができる。加えて、特定のイベントは、可能な場合、並行プロセスで同時に実行することも、上記で説明されるように順次実行することもできる。様々な実施形態について、特定の特徴及び/又はコンポーネントの組合せを有するものとして説明してきたが、適切な場合、実施形態のいずれかからの任意の特徴及び/又はコンポーネントの組合せを有する他の実施形態も可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】