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特表2022-545191活性成分としてワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む、がん治療用医薬組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(54)【発明の名称】活性成分としてワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む、がん治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20221019BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 15/39 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 15/38 20060101ALN20221019BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20221019BHJP
【FI】
A61K35/76
A61K45/00
A61P35/00
A61K39/39
A61K31/454
A61K31/4985
A61K31/519
A61K31/337
A61K31/365
A61K31/4745
C12N7/01 ZNA
C12N15/39
C12N15/38
C12N15/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509096
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 KR2020011648
(87)【国際公開番号】W WO2021040496
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0106736
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520211498
【氏名又は名称】バイオノックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ファン, テ‐ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ, モン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジェ‐ジュン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065BB23
4B065BB28
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZC012
4C085AA38
4C085FF17
4C085FF19
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC22
4C086CA01
4C086CB09
4C086CB14
4C086CB22
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、活性成分としてワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む、がん予防又は治療用医薬組成物に関する。活性成分としてワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む、本発明のがん治療用医薬組成物は、ワクシニアウイルスだけを投与する場合と比較して優れた抗がん効果及び安全性を有する。したがって、活性成分としてワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む本発明の医薬組成物は、がんの治療に効果的に利用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を活性成分として含む、がん治療用医薬組成物。
【請求項2】
前記ワクシニアウイルスが、ウェスタン・リザーブ(Western Reserve、WR)、ニューヨーク・ワクシニアウイルス(NYVAC)、ワイス(ニューヨーク市保健局;NYCBOH)、LC16m8、リスター(Lister)、コペンハーゲン(Copenhagen)、ティアンタン(Tian Tan)、USSR、タシュケント(TashKent)、エバンス(Evans)、国際保健部-J(IHD-J)又は国際保健部-ホワイト(IHD-W)ワクシニアウイルス株に属する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ワクシニアウイルスが野生型ワクシニアウイルス又は組換えワクシニアウイルスである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組換えワクシニアウイルスが、野生型ワクシニアウイルスから少なくとも1つの遺伝子を欠失させるか又は野生型ワクシニアウイルスに外来遺伝子を挿入することによって得られる、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記野生型ワクシニアウイルスの前記遺伝子が、チミジンキナーゼ遺伝子、ワクシニア増殖因子遺伝子、F13.5L遺伝子、F14.5L遺伝子、A56R遺伝子、B18R遺伝子及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記外来遺伝子が、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、変異したHSV-TK、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、シトシンデアミナーゼ(CD)、カルボキシルエステラーゼ1型、カルボキシルエステラーゼ2型、インターフェロンベータ(INF-β)、ソマトスタチン受容体2及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つをコードする遺伝子である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記がんが、肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、甲状腺がん、乳がん、脳がん、頭頸部がん、食道がん、皮膚がん、胸腺がん、胃がん、結腸がん、肝がん、卵巣がん、子宮がん、膀胱がん、直腸がん、胆嚢がん、胆道がん、膵がん及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記顆粒球生成阻害剤がヒドロキシ尿素、レナリドマイド、サリドマイド、タダラフィル、パルボシクリブ、アルキル化剤、アントラサイクリン、代謝拮抗物質、カンプトセシン、エピポドフィロトキシン、マイトマイシンC、タキサン又はビンブラスチンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記顆粒球が好中球である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
免疫チェックポイント阻害剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ワクシニアウイルスのがん選択性が増加したものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
活性成分としてワクシニアウイルスを含む第1の組成物と、
活性成分として顆粒球生成阻害剤を含む第2の組成物と、
を含む、がん予防又は治療用キット。
【請求項13】
活性成分として免疫チェックポイント阻害剤を含む第3の組成物をさらに含む、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
がんを治療する方法であって、
がんを有する個体に顆粒球生成阻害剤及びワクシニアウイルスを投与するステップを含む方法。
【請求項15】
がんを有する個体に免疫チェックポイント阻害剤を投与するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ワクシニアウイルス及び前記顆粒球生成阻害剤が、同時に、逐次的に又は逆順に併用投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記顆粒球生成阻害剤が、前記ワクシニアウイルスの投与の前、その間又は後に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記顆粒球生成阻害剤が、前記ワクシニアウイルスの投与の3~5日前から開始して、前記ワクシニアウイルスの投与の後の9~28日間、1日1回連続的に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記顆粒球生成阻害剤が10mg/kg/日~90mg/kg/日の用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記ワクシニアウイルスが1×10pfu~1×1010pfuの用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記ワクシニアウイルスが7~30日の間隔で個体に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記顆粒球生成阻害剤が腫瘍内、腹腔内又は静脈内に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記ワクシニアウイルスが腫瘍内、腹腔内又は静脈内に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
がんの予防又は治療のための、ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む組成物の使用。
【請求項25】
がんを予防又は治療するための医薬の製造のための、ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む組成物の使用。
【請求項26】
顆粒球生成阻害剤を活性成分として含む、抗がんアジュバント。
【請求項27】
活性成分としてワクシニアウイルスを含む抗がん剤の抗がんアジュバントとして使用される、請求項26に記載の抗がんアジュバント。
【請求項28】
前記ワクシニアウイルスの抗がん活性を向上させるか、増強するか、又は増加させる、請求項26に記載の抗がんアジュバント。
【請求項29】
前記ワクシニアウイルスのがん選択性を増加させる、請求項26に記載の抗がんアジュバント。
【請求項30】
前記顆粒球生成阻害剤がヒドロキシ尿素、レナリドマイド、サリドマイド、タダラフィル、パルボシクリブ、アルキル化剤、アントラサイクリン、代謝拮抗物質、カンプトセシン、エピポドフィロトキシン、マイトマイシンC、タキサン又はビンブラスチンである、請求項26に記載の抗がんアジュバント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分としてワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む、がん治療用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍溶解性ウイルスは、優れた腫瘍特異的標的化能力、がん細胞での増殖能力及び殺がん細胞能力を有する。近年、腫瘍溶解性ウイルスに基づく様々な臨床試験が実行されている。2015年に、単純ヘルペスウイルスに基づく腫瘍溶解性ウイルスであるタリモジンラヘルパレプベク(T-Vec)が進行した黒色腫の治療剤として首尾よく商品化されたので、腫瘍溶解性ウイルス分野の時代が米国及び欧州で開始した。
【0003】
近年、腫瘍溶解性ウイルスの有用性はそれら自身の有効性を超え、このウイルスは腫瘍免疫を活性化し、それによって別の免疫療法剤と併用される治療剤としてのそれらの可能性を示す。腫瘍溶解性ウイルスの開発の初期段階であった2000年までは、そのがん細胞特異的増殖によってもたらされるウイルスの直接殺作用は比較的より重要であった。しかし、以降の臨床試験は、腫瘍免疫の活性化が直接殺がん細胞作用よりも重要な機構であることを見出した。この知見に基づいて、併用投与される、腫瘍溶解性ウイルスと免疫チェックポイント阻害剤などの免疫療法剤とを含む治療剤が近年開発されている。これは、腫瘍溶解性ウイルスが、免疫が抑制される腫瘍微小環境を免疫療法に適当な腫瘍微小環境に変換することが知られているからである。
【0004】
ワクシニアウイルスベースの腫瘍溶解性ウイルスに関するいくつかの臨床試験で、腫瘍溶解性ウイルス療法は、急性腫瘍壊死、永続的応答又は完全応答をもたらすことができるが、一部の場合には、進行性疾患又は早朝死亡などの予測困難な結果(薬力学変動)につながることがある。例えば、ワクシニアウイルスに基づくPexa-vecの場合、フェーズ1臨床試験では、一部の患者は腫瘍溶解性ウイルス療法から1カ月以内に早期に死亡し、これは持続的な全身炎症応答及び主要臓器機能障害と関連付けられた。また、腫瘍溶解性ウイルス治療の後に観察される一時的な風邪症状(高熱)及び低血圧は、腫瘍溶解性ウイルス療法の後の最も頻繁な有害事象である。
【0005】
一方、腫瘍溶解性ウイルスを使用する治療では、好中球の薬剤誘発性増加が治療結果に及ぼす影響に関する正確な報告はなかった。腫瘍溶解性ウイルスの投与に応答する最初の先天性免疫細胞は好中球であり、それはヒト体内で20時間未満の短い半減期を有する。臨床的には、薬物(例えば、クロザピン)で治療した患者、又は急性炎症及び急性損傷を有する患者において多数の好中球が観察されたが(Liao Yら、PloS One、8(7)、2013)、これは有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria of Adverse Events、CTCAE)に含まれていないので、好中球絶対数(ANC)の増加は異常な応答として認識されていない。
【0006】
したがって、好中球数の変化が腫瘍溶解性ウイルス治療に及ぼす影響に関する研究の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、腫瘍溶解性ウイルスとして使用するワクシニアウイルスの抗がん効果を増強するための研究を実行した結果として、本発明者は、がんを有する個体にワクシニアウイルスを投与する際に、好中球レベルを低下させる阻害剤を併用投与する場合、ワクシニアウイルスを単独で投与する既存の場合と比較して、この同時投与は全身炎症性応答を有意に低減させて、安全な使用を確実にすることができることを見出した。さらに、阻害剤を併用投与する場合、ワクシニアウイルスのがん細胞特異的選択性及び増殖能力が向上することを本発明者は見出し、それによって本発明を完成させた。阻害剤は顆粒球生成を阻害し、それによって好中球レベルを低下させ、よって腫瘍溶解性ウイルスの抗がん効果を向上させると推測されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様では、活性成分としてワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む、がん治療用医薬組成物が提供される。
【0009】
本発明の別の態様では、がんを治療する方法であって、がんを有する個体にワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を投与するステップを含む方法が提供される。
【0010】
本発明のさらに別の態様では、がんの予防又は治療のためのワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む組成物の使用が提供される。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、がんを予防又は治療するための医薬の製造のための、ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む組成物の使用が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、活性成分として顆粒球生成阻害剤を含む抗がんアジュバントが提供される。
【発明の効果】
【0013】
活性成分としてワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む、本発明のがん治療用医薬組成物は、ワクシニアウイルスだけが投与される従来の場合と比較して優れた抗がん効果及び安全性を有する。したがって、活性成分としてワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む、本発明の医薬組成物は、がんの治療に効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に、野生型ワクシニアウイルス(ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス、WR)及び顆粒球生成阻害剤(HU)を投与し、その後0、3、7、10及び14日目に腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図2】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に、野生型ワクシニアウイルス(WR)及びHUを投与し、その後0、3、7、10及び14日目に体重を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図3】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に、WRからTK遺伝子を欠失させて得られた組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びHU(60mg/kg)を投与し、その後0、3、7、10、14、17及び21日目に腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図4】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に、組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びHU(30mg/kg)を投与し、その後0、3、7、10及び14日目に腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図5】マウス黒色腫移植マウス(B16F10)に、WRからTK遺伝子及びワクシニアウイルス増殖因子(VGF)遺伝子を同時に欠失させて得られた組換えワクシニアウイルス(VV_DD)及びHUを投与した1日前、並びにそれから4及び7日目に腫瘍体積を測定して得られた結果を例示する図である。
図6】ヒト肺がん細胞(NCI-H460)移植マウスに組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)及びHUを投与し、その後0、5、10、12及び15日目に腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図7】ヒト肺がん細胞(NCI-H460)移植マウスに組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)及びHUを投与し、その後生存率を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図8】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に組換えワクシニアウイルス(VVtk-)及びヒト顆粒球コロニー刺激因子(rhG-CSF)又はHUを投与し、その後マウスで腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図9】組換えワクシニアウイルス(VVtk-)及びヒト顆粒球コロニー刺激因子(rhG-CSF)又はHUを投与したマウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)からの脾臓のリンパ球を単離し、リンパ球を新規のマウスに投与し、その後この新規のマウスで腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図10】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-)及びHUを投与し、その後マウスで腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図11】組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-)及びHUを投与したマウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)からTリンパ球を単離し、Tリンパ球を新規のマウスに投与し、その後この新規のマウスで腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図12】組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-)及びHUを投与したマウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)から脾細胞を単離し、脾細胞を新規のマウスに投与し、その後この新規のマウスで腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図13】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk)及びHUを投与し、その後22日目に腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図14】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk)及びHUを投与し、その後脾臓組織におけるCD4+T細胞又はCD8+T細胞の増殖を観察することによって得られた結果を例示する図である。
図15】マウス乳がん細胞移植マウス(4T1)に組換えワクシニアウイルス(OTS-412)及びHUを投与し、その後血液及び脾臓組織におけるCD4+T細胞又はCD8+T細胞の増殖を観察することによって得られた結果を例示する図である。
図16】マウス乳がん細胞移植マウス(4T1)の左腫瘍に組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びHUを投与し、その後左腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図17】マウス乳がん細胞移植マウス(4T1)の左腫瘍に組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びHUを投与し、その後右腫瘍体積を測定することによって得られた結果を例示する図である。
図18】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に組換えワクシニアウイルス(WR)及びHUを投与し、その後マウス腫瘍組織における組換えワクシニアウイルスの分布を特定するために22日目に染色を実行することによって得られた結果を例示する図である。
図19】正常マウスに野生型ワクシニアウイルス(WR)又は野生型ワクシニアウイルス(WR)とHUを投与し、その後肝臓及び腎臓組織における野生型ワクシニアウイルスの分布を特定することによって得られた結果を例示する図である。
図20】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に食塩水、HU、組換えワクシニアウイルス(OTS-412)、組換えワクシニアウイルス及び組換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(OTS-412+rhG-CSF)、又は組換えワクシニアウイルス及びHU(OTS-412+HU)を投与した後の各群におけるマウスの好中球絶対数を例示する図である。
図21】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に食塩水、組換えワクシニアウイルス、又は組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びHUを投与した後の各群において測定したマウスの血中好中球数を例示する図である。
図22】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に食塩水、組換えワクシニアウイルス、又は組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)及びHUを投与した後の各群において測定したマウスの血中好中球数を例示する図である。
図23】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に食塩水、レナリドマイド又はHUを投与した後の各群において測定したマウスの血中好中球数を例示する図である。
図24】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に食塩水、組換えワクシニアウイルス、組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)及びレナリドマイド、又は組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)及びHUを投与した後の各群において測定したマウスの血中好中球数を例示する図である。
図25】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びレナリドマイドを投与した後に測定したマウスの腫瘍体積を例示する図である。
図26】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びパルボシクリブを投与した後に測定したマウスの腫瘍体積を例示する図である。
図27】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びパルボシクリブを投与した後に測定したマウスの体重を例示する図である。
図28】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)、PD-1阻害剤及びHUを投与してから0日目、4日目、10日目、14日目、17日目及び21日目に測定したマウスの腫瘍体積を例示する図である。
図29】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)、CTLA-4阻害剤及びHUを投与してから0日目、4日目、10日目、14日目及び17日目に測定したマウスの腫瘍体積を例示する図である。
図30】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)に腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)、PD-L1阻害剤及びHUを投与してから0日目、4日目、10日目、14日目、17日目及び21日目に測定したマウスの腫瘍体積を例示する図である。
図31】マウス乳がん細胞移植マウス(4T1)に腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-)、CTLA-4阻害剤及びHUを投与してから0日目、3日目、7日目、10日目及び14日目に測定したマウスの腫瘍体積を例示する図である。
図32】マウス乳がん細胞移植マウス(4T1)に腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418)、PD-L1阻害剤及びHUを投与してから0日目、3日目、7日目、10日目、14日目及び18日目に測定したマウスの腫瘍体積を例示する図である。
図33】マウス腎臓がん細胞移植マウス(Renca)にウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス(WR)、CTLA-4阻害剤及びHUを投与してから0日目、3日目及び7日目に測定したマウスの腫瘍体積を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以後、本発明を具体的に記載する。
【0016】
本発明の一態様では、活性成分としてワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む、がん予防又は治療用医薬組成物が提供される。
【0017】
医薬組成物に含まれるワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤は、同時に、逐次的に又は逆順に併用投与することができる。具体的には、ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤は同時に投与することができる。また、顆粒球生成阻害剤を最初に、その後ワクシニアウイルスを投与することができる。さらに、ワクシニアウイルスを最初に、その後顆粒球生成阻害剤を投与することができる。また、顆粒球生成阻害剤を最初に、その後ワクシニアウイルスを投与することができ、顆粒球生成阻害剤を再び投与することができる。
【0018】
ワクシニアウイルスは、限定されずに、ウェスタン・リザーブ(Western Reserve、WR)、ニューヨーク・ワクシニアウイルス(NYVAC)、ワイス(Wyeth)(ニューヨーク市保健局(The New York City Board of Health);NYCBOH)、LC16m8、リスター(Lister)、コペンハーゲン(Copenhagen)、ティアンタン(Tian Tan)、USSR、タシュケント(TashKent)、エバンス(Evans)、国際保健部-J(International Health Division-J)(IHD-J)又は国際保健部-ホワイト(International Health Division-White)(IHD-W)ワクシニアウイルス株に属することができる。本発明の一実施形態では、ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス及びワイス株ワクシニアウイルスが使用された。
【0019】
ワクシニアウイルスは野生型ワクシニアウイルス又は組換えワクシニアウイルスであってよい。具体的には、組換えワクシニアウイルスは、野生型ワクシニアウイルスから遺伝子を欠失させるか又は野生型ワクシニアウイルスに外来遺伝子を挿入することによって得ることができる。ここで、野生型ワクシニアウイルスの遺伝子の中で、チミジンキナーゼ(TK)、ワクシニア増殖因子(VGF)、WR53.5、F13.5L、F14.5L、A56R、B18R又はその組合せからなる群から選択されるいずれか1つをコードする、ウイルス病原性に関する遺伝子を欠失させることができる。
【0020】
また、挿入される外来遺伝子は、免疫を促進し、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、変異したHSV-TK、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、シトシンデアミナーゼ(CD)、カルボキシルエステラーゼ1型、カルボキシルエステラーゼ2型、インターフェロンベータ(INF-β)、ソマトスタチン受容体2及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つをコードする遺伝子であってよい。
【0021】
具体的には、組換えワクシニアウイルスは、ウェスタン・リザーブ(WR)、ニューヨーク・ワクシニアウイルス(NYVAC)、ワイス(ニューヨーク市保健局;NYCBOH)、LC16m8、リスター、コペンハーゲン、ティアンタン、USSR、タシュケント、エバンス、国際保健部-J(IHD-J)又は国際保健部-ホワイト(IHD-W)ワクシニアウイルス株に属するワクシニアウイルスからTK遺伝子を欠失させることによって得ることができる。本発明の一実施形態では、ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルスからTK遺伝子を欠失させることによって得られた組換えワクシニアウイルスを使用し、このウイルスは「WR VVtk-」と命名した。また、本発明の一実施形態では、ワイス株ワクシニアウイルスからTK遺伝子を欠失させることによって得られた組換えワクシニアウイルスを使用し、このウイルスは「Wyeth VVtk-」と命名した。
【0022】
また、組換えワクシニアウイルスは、ウェスタン・リザーブ、NYVAC、ワイス、LC16m8、リスター、コペンハーゲン、ティアンタン、USSR、タシュケント、エバンス、IHD-J又はIHD-Wワクシニアウイルス株に属するワクシニアウイルスからTK遺伝子及びVGF遺伝子を欠失させることによって得ることができる。本発明の一実施形態では、ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルスからTK遺伝子及びVGF遺伝子を欠失させることによって得られた組換えワクシニアウイルスを使用し、このウイルスは「VV_DD」と命名した。
【0023】
さらに、組換えワクシニアウイルスは、ウェスタン・リザーブ、NYVAC、ワイス、LC16m8、リスター、コペンハーゲン、ティアンタン、USSR、タシュケント、エバンス、IHD-J又はIHD-Wワクシニアウイルス株に属するワクシニアウイルスからTK遺伝子を欠失させ、そこにHSV-TK遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0024】
また、組換えワクシニアウイルスは、ウェスタン・リザーブ、NYVAC、ワイス、LC16m8、リスター、コペンハーゲン、ティアンタン、USSR、タシュケント、エバンス、IHD-J又はIHD-Wワクシニアウイルス株に属するワクシニアウイルスからTK遺伝子を欠失させ、そこに変異したHSV-TK遺伝子を挿入することによって得ることができる。本発明の一実施形態では、ワイス株ワクシニアウイルスからTK遺伝子を欠失させ、欠失位置に配列番号1のHSV-TK断片(1~330aa)をコードする遺伝子を挿入することによって得られた組換えワクシニアウイルスを使用し、このウイルスは「OTS-412」と命名した。さらに、本発明の一実施形態では、ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルスからTK遺伝子を欠失させ、欠失位置にHSV-TK遺伝子の配列番号2のHSV-TKバリアントをコードする遺伝子を挿入することによって得られた組換えワクシニアウイルスを使用し、このウイルスは「WOTS-418」と命名した。
【0025】
さらに、組換えワクシニアウイルスは、ウェスタン・リザーブ、NYVAC、ワイス、LC16m8、リスター、コペンハーゲン、ティアンタン、USSR、タシュケント、エバンス、IHD-J又はIHD-Wワクシニアウイルス株に属するワクシニアウイルスからTK遺伝子を欠失させ、そこにGM-CSF遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0026】
また、組換えワクシニアウイルスは、ウェスタン・リザーブ、NYVAC、ワイス、LC16m8、リスター、コペンハーゲン、ティアンタン、USSR、タシュケント、エバンス、IHD-J又はIHD-Wワクシニアウイルス株に属するワクシニアウイルスからTK遺伝子を欠失させ、そこにG-CSF遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0027】
さらに、組換えワクシニアウイルスは、ウェスタン・リザーブ、NYVAC、ワイス、LC16m8、リスター、コペンハーゲン、ティアンタン、USSR、タシュケント、エバンス、IHD-J又はIHD-Wワクシニアウイルス株に属するワクシニアウイルスからTK遺伝子を欠失させ、そこにシトシンデアミナーゼ(CD)遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0028】
また、組換えワクシニアウイルスは、ウェスタン・リザーブ、NYVAC、ワイス、LC16m8、リスター、コペンハーゲン、ティアンタン、USSR、タシュケント、エバンス、IHD-J又はIHD-Wワクシニアウイルス株に属するワクシニアウイルスからTK遺伝子を欠失させ、そこにソマトスタチン受容体2遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0029】
さらに、組換えワクシニアウイルスは、ウェスタン・リザーブ、NYVAC、ワイス、LC16m8、リスター、コペンハーゲン、ティアンタン、USSR、タシュケント、エバンス、IHD-J又はIHD-Wワクシニアウイルス株に属するワクシニアウイルスからTK遺伝子を欠失させ、そこに単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、変異したHSV-TK、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、シトシンデアミナーゼ(CD)、又はソマトスタチン受容体2を各々コードする遺伝子からなる群から選択される任意の2つ以上の遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0030】
また、組換えワクシニアウイルスは、ウェスタン・リザーブ、NYVAC、ワイス、LC16m8、リスター、コペンハーゲン、ティアンタン、USSR、タシュケント、エバンス、IHD-J又はIHD-Wワクシニアウイルス株に属するワクシニアウイルスからTK遺伝子及びVGF遺伝子を欠失させ、そこに単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、変異したHSV-TK、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、シトシンデアミナーゼ(CD)、又はソマトスタチン受容体2を各々コードする遺伝子及びその任意の組合せからなる群から選択される任意の1つの遺伝子を挿入することによって得ることができる。
【0031】
本明細書で使用されるように、用語「遺伝子欠失」は、遺伝子の部分的若しくは完全な欠失、又はそこへの外来遺伝子の挿入によって、遺伝子が発現されないことを意味する。部分的欠失が遺伝子で起こる場合、遺伝子によって発現されるポリペプチドのN末端又はC末端の一部のアミノ酸が欠失してもよい。
【0032】
本明細書で使用されるように、用語「チミジンキナーゼ(TK)」は、チミジンキナーゼと呼ばれる、ヌクレオチド生合成に関与する酵素を指す。TKは、細胞及びウイルスの両方でヌクレオチド生合成に使用される酵素である。ここで、細胞については、正常な細胞はもはや分裂しないことから、TKはそこに存せず、毛包細胞などの速やかに分裂する細胞であっても、TKはウイルスが利用するのに十分な量で存在しない。これらの視点から、ウイルスはその中のTK遺伝子の欠失によってTKが存在するがん細胞の存在下だけで増殖が許され、そのためがん細胞を選択的に死滅させることができる。
【0033】
本明細書で使用されるように、用語「ワクシニア増殖因子(VGF)」は上皮増殖因子と配列相同性を有し、感染細胞周囲の細胞増殖を刺激するポリペプチドを指す。ワクシニアウイルスは増殖細胞でより良好に複製し、したがってin vivoウイルス複製のために有利に使用することができる。腫瘍溶解性ウイルスをがん細胞だけでより特異的に増殖させるために、ウイルスはTK遺伝子の欠失に加えてVGF遺伝子の欠失をさらに受けることができる。
【0034】
本明細書で使用されるように、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子と呼ばれる「GM-CSF」という用語は、マクロファージ、T細胞、肥満細胞、ナチュラルキラー細胞、内皮細胞及び線維芽細胞によって分泌されるタンパク質を指す。GM-CSFは、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)及び単球を産生するように幹細胞を刺激する。また、GM-CSFはマクロファージの数を速やかに増加させ、それによって免疫応答を誘導する。GM-CSFはヒト起源であってよく、GenBank:AAA52578.1の配列を有するタンパク質であってよい。
【0035】
本明細書で使用されるように、シトシンデアミナーゼと呼ばれる「CD」という用語は、ウラシル及びアンモニアへのシトシンの加水分解性脱アミノを触媒する酵素を指す。
【0036】
本明細書で使用されるように、顆粒球コロニー刺激因子と呼ばれる「G-CSF」という用語は、炎症又はエンドトキシンによる刺激の後にマクロファージ、線維芽細胞、内皮細胞などによって産生されるサイトカインを指す。G-CSFは、好中球の産生を促進する。G-CSFはヒト起源(rhGCSF)であってよく、GenBank:AAA03056.1の配列を有するタンパク質であってよい。
【0037】
本明細書で使用されるように、用語「ソマトスタチン受容体2」は、ヒトのSSTR2遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。ソマトスタチン受容体2は主に腫瘍で発現され、ソマトスタチン受容体2を過剰発現する神経内分泌腫瘍の患者は、改善された予後を示す。ソマトスタチン受容体2は、がん細胞を含む多くの細胞でアポトーシスを刺激する能力を有する。
【0038】
骨髄細胞は顆粒球であってよく、具体的には骨髄細胞は好中球、好酸球又は好塩基球であってよい。
【0039】
顆粒球生成阻害剤は、骨髄で主に生成される顆粒球(例えば、好中球、好酸球又は好塩基球)を阻害する物質であってよい。体内の好中球(すなわち、骨髄細胞のうちの1つ)の数を低減又は抑制する場合、顆粒球生成阻害剤は好中球阻害剤と呼ぶことができるか又はそれを含むことができる。好中球は好中球性白血球とも呼ばれ、血中を循環する好中球細胞を指し、それは骨髄で主に生成されるタイプの顆粒球である。好中球は顆粒球の主要構成要素であり、正常な数は血液1mmにつき約1,500~約8,000である。好中球は体に侵入した細菌などの外来物質を食作用を通して吸収し、消化酵素(例えば、過酸化水素、リソソーム等)により外来物質を分解する。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「好中球絶対数(ANC)」は、白血球数×好中球のパーセンテージの掛け算によって得られる数を指す。
【0041】
顆粒球生成阻害剤は、ヒドロキシ尿素、レナリドマイド、サリドマイド、タダラフィル、パルボシクリブ、アルキル化剤、アントラサイクリン、代謝拮抗物質、カンプトセシン、エピポドフィロトキシン、マイトマイシンC、タキサン又はビンブラスチンであってよい。ヒドロキシ尿素は、下式1の構造を有する化合物であってよい:
【0042】
【化1】
【0043】
ヒドロキシ尿素は、DNA合成を阻害する抗がん剤として知られるが、その正確な作用機構は解明されていない。また、ヒドロキシ尿素は、ヒドロキシ尿素を含有する市販薬の形で医薬組成物に含まれてもよい。ヒドロキシ尿素を含有する市販薬の例は、ヒドロキシ尿素(登録商標)、ヒドレア(Hydrea)(登録商標)、ドロキシア(Droxia)(商標)、ミロセル(Mylocel)(商標)、シクロス(Siklos)(登録商標)及びヒドリン(Hydrine)(登録商標)カプセルを限定されずに含むことができる。ヒドロキシ尿素は経口的にとることができ、その非経口投与も可能である。
【0044】
レナリドマイドは、下式2の構造を有する化合物であってよい:
【化2】
【0045】
レナリドマイドは、多発性骨髄腫などの治療に使用される抗がん剤である。また、レナリドマイドは、抗がん効果として腫瘍抑制遺伝子を活性化することによってがん細胞の成長周期を停止し、がん増殖を阻害する。免疫調節効果として、レナリドマイドは免疫細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、B細胞等)を活性化することによって腫瘍細胞を排除する。また、レナリドマイドは、がん細胞に栄養素を供給するための新規の血管の形成を阻害する血管新生阻害効果を有する。
【0046】
サリドマイドは、下式3の構造を有する化合物であってよい:
【化3】
【0047】
サリドマイドの正確な作用機構は未知であるが、多発性骨髄腫及びらい病(ハンセン病)患者の重度の皮膚病巣の治療に使用される。
【0048】
タダラフィルは、下式4の構造を有する化合物であってよい:
【化4】
【0049】
パルボシクリブは、下式5の構造を有する化合物であってよい:
【化5】
【0050】
アルキル化剤は、悪性腫瘍の化学療法剤の中でも、ナイトロジェンマスタード、エチレン誘導体、アルキルスルホン酸誘導体、ニトロソ尿素又はトリアジン化合物であってよい。これらは多くの有機化合物、タンパク質又は核酸中の水素をアルキル基で置換するので、アルキル化剤の名で呼ぶこともできる。アルキル化剤によるアルキル化によって、腫瘍細胞のDNA複製及びmRNA転写を阻害することができ、抗腫瘍作用を示すことができる。一般的な薬理作用として、アルキル化剤は細胞周期の各段階に非特異的に作用し、高い増殖能力を有する細胞分裂を阻害することができる。アルキル化剤は放射線様作用を示すので、造血異常が強烈であり、免疫抑制を引き起こすことができる。
【0051】
アントラサイクリンはストレプトマイセス(Streptomyces)細菌から抽出される薬物であり、がん化学療法に使用され、白血病、リンパ腫、乳がん、胃がん、子宮がん、卵巣がん、膀胱がん及び肺がんを含む多くのがんの治療に使用される。最初に発見されたアントラサイクリンはダウノルビシン(商標:ダウノマイシン(Daunomycin))であり、それは放線菌類(Actinomycetes)の1種であるストレプトマイセス・ポイセチウス(Streptomyces peucetius)によって天然に生成された。最も臨床的に重要なアントラサイクリンには、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン等が含まれる。
【0052】
代謝拮抗物質は、微生物又は腫瘍細胞の代謝又は成長に必須の代謝産物に拮抗することによって、細胞の発達及び増殖を阻害する物質であってよい。歴史的に、化学療法剤として使用され、細菌のパラアミノ安息香酸(PABA)に拮抗的であるスルパミンが最初に開発された。代謝拮抗物質には、細菌のためのサルファ薬、悪性腫瘍のためのプリン代謝拮抗薬(8-アザグアニン、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン)、ピリミジン代謝拮抗薬(5-フルオロウラシル、シタラビン、アザウリジン)、葉酸代謝拮抗薬(4-アミノプテリン、メトトレキセート)、又はグルタミン代謝拮抗薬(アゼリン、DON)を含めることができる。
【0053】
カンプトセシンは、カンプトテカ・アクミナート(Camptotheca acuminate)(カンプトテカ、ハッピーツリー)及びコネモルファ・フラグランス(Chonemorpha fragrans)などの植物から単離された天然の抗がん物質であってよい。
【0054】
カンプトセシンは、下式6の構造を有する化合物であってよい:
【化6】
【0055】
エピポドフィロトキシンは、ポドフィラム・ペルタータム(Podophyllum peltatum)の根で天然に生成される天然の抗がん物質であってよい。現在、がん治療に、エピポドフィロトキシンの誘導体を使用することができる。
【0056】
エピポドフィロトキシンは、下式7の構造を有する化合物であってよい:
【化7】
【0057】
マイトマイシンCは、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)によって単離される抗生物質であってよい。マイトマイシンCは熱に安定であり、最も低い毒性を有し、強力な抗がん効果を有する。マイトマイシンCは細胞酵素系及び核酸代謝を阻害し、このように細胞核の分裂を阻害し、それによって悪性腫瘍細胞の増殖を阻止する。マイトマイシンCの副作用の例には、白血球減少及び血小板減少等を伴う出血が含まれる。
【0058】
タキサンは細胞分裂阻害剤又は抗微小管阻害剤とも呼ばれ、細胞分裂を阻害することによってがん細胞の増殖を阻害する抗がん剤である可能性がある。タキサンは、細胞有糸分裂の間に染色体が移動する微小管を破壊することによって、がん細胞を死滅させることができる。タキサンは、乳がん、卵巣がん及び非小細胞肺がんなどの各種のがんの治療に使用される。具体的には、タキサンにはパクリタキセル、ドセタキセル等が含まれる。
【0059】
ビンブラスチンは、各種のがんの治療に使用されるビンカアルカロイド構成成分の抗がん剤である。ビンブラスチンはキョウチクトウ(Oleander)科に属するツルニチニチソウ植物から最初に抽出され、現在は合成物が使用される。ビンブラスチンは抗がん剤の中で最も広く使用されている薬剤であり、他の抗がん剤との併用療法で広く使用されてもいる。ビンブラスチンは、微小管の正常な機能に干渉することによってがん細胞の分裂を阻止する。ビンブラスチンは、精巣がん、乳がん、リンパ腫、カポジ肉腫などに広く使用することができる。ビンブラスチンの最も重要な副作用は白血球及び血小板の減少であり、胃腸障害、血圧上昇、過発汗、うつ病、筋肉痛、吐き気及び頭痛などの副作用が出現することがある。
【0060】
ワクシニアウイルスの投薬量は、個体の状態及び体重、疾患の重症度、薬物のタイプ、投与の経路及び期間によって異なり、当業者が適切に選択することができる。投薬量は、患者が1×10~1×1018のウイルス粒子、感染性ウイルス単位(TCID50)又はプラーク形成単位(pfu)でワクシニアウイルスを受けるようなものであってよい。具体的には、投薬量は、患者が1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017又はそれ以上のウイルス粒子、感染性ウイルス単位又はプラーク形成単位でワクシニアウイルスを受けるようなものであってよく、上記の数値の間の様々な数値及び範囲がその中に含まれてもよい。好ましくは、ワクシニアウイルスは1×10~1×1010pfuの用量で投与することができる。より好ましくは、ワクシニアウイルスは1×10以上及び1×10pfu未満の用量で投与することができる。本発明の一実施形態では、ワクシニアウイルスは1×10又は1×10pfuで投与された。
【0061】
また、顆粒球生成阻害剤は1mg/kg/日~100mg/kg/日、又は10mg/kg/日~90mg/kg/日の用量で投与することができる。具体的には、顆粒球生成阻害剤は10mg/kg/日~90mg/kg/日、15mg/kg/日~80mg/kg/日、20mg/kg/日~70mg/kg/日、25mg/kg/日~65mg/kg/日、又は30mg/kg/日~60mg/kg/日の用量で投与することができる。本発明の実施形態では、ヒドロキシ尿素、レナリドマイド又はパルボシクリブは、顆粒球生成阻害剤として25mg/kg/日、30mg/kg/日、50mg/kg/日、60mg/kg/日又は100mg/kg/日の用量で投与された。投薬量によって、顆粒球生成阻害剤は分割用量によって1日につき数回投与することができる。具体的には、顆粒球生成阻害剤は1日につき1~4回又は1日につき1~2回投与することができる。
【0062】
医薬組成物は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)をさらに含むことができる。
【0063】
免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞の活性化に干渉するがん細胞の機構を阻害する物質を指し、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L2抗体、LTF2調整抗体、抗LAG3抗体、抗A2aR抗体、抗TIGIT抗体、抗TIM-3抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗VISTA抗体、抗CD47抗体、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗IDO抗体及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つであってよい。
【0064】
がん細胞は、免疫応答を避ける機構として免疫チェックポイントシステムを乗っ取る。具体的には、がん細胞は免疫応答を避けるために免疫チェックポイント受容体を使用し、代表的な受容体にはPD-L1、PD-1、CTLA-4等が含まれる。これらのがん細胞の免疫回避を阻止するために、がんの治療に、免疫チェックポイント受容体に特異的に結合する分子である免疫チェックポイント阻害剤が使用される。第1の免疫チェックポイント阻害剤はイピリムマブ(Yervoy(登録商標))であり、それは細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)に特異的に結合するモノクローナル抗体である。次に開発された免疫チェックポイント療法は、プログラム細胞死-1(PD-1)及び対応するリガンド、プログラム死リガンド-1(PD-L1)に対するモノクローナル抗体である。代表薬物には、抗PD-1抗体(例えばニボルマブ(オプジーボ(Opdivo)(登録商標))、ペムブロリズマブ(ケイツルーダ(Keytruda)(登録商標)等)、及び抗PD-L1抗体(例えばアベルマブ(バベンシオ(Bavencio)(登録商標))、アテゾリズマブ(テセントリク(Tecentriq)(登録商標))、デュルバルマブ(イムフィンチ(Imfinzi)(登録商標)等)が含まれる。
【0065】
それに加えて、様々な免疫チェックポイント受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体(例えば、グルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質(GITR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有-3(TIM-3)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRSF4))に関する研究が進行中である。
【0066】
免疫チェックポイント阻害剤の用量は、各製造業者の投薬レジメンに従って投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤の用量は、0.1mg/kg~10mg/kg又は1mg/kg~5mg/kgであってよい。例えば、活性成分としてニボルマブを含有するオプジーボ注射剤の場合、2週間隔で3mg/kgを60分間に渡って静脈内点滴注入することができ、併用療法としての投薬レジメンに関しては、1mg/kgを30分間に渡って静脈内点滴注入することができる。また、活性成分としてペムブロリズマブを含有するケイツルーダ注射剤の場合、3週間隔で200mgを30分間に渡って静脈内点滴注入することができる。このように、同じ抗PD-1抗体であっても製品によって異なる投薬レジメンを有するので、製造業者の投薬レジメンに従って抗体を投与することが好ましい。
【0067】
医薬組成物が免疫チェックポイント阻害剤をさらに含む場合、医薬組成物に含まれる腫瘍溶解性ウイルス、顆粒球生成阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤は、同時に、逐次的に又は逆順に投与することができる。
【0068】
具体的には、腫瘍溶解性ウイルス、顆粒球生成阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤は同時に投与することができる。また、顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて免疫チェックポイント阻害剤を投与し、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与することができる。顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて腫瘍溶解性ウイルスを投与し、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与することができる。顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、その後腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤を同時に投与することができる。
【0069】
さらに、腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、続いて顆粒球生成阻害剤を投与し、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与することができる。腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、続いて免疫チェックポイント阻害剤を投与し、その後顆粒球生成阻害剤を投与することができる。腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、その後顆粒球生成阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤を同時に投与することができる。
【0070】
また、免疫チェックポイント阻害剤を最初に投与し、続いて顆粒球生成阻害剤を投与し、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤を最初に投与し、続いて腫瘍溶解性ウイルスを投与し、その後顆粒球生成阻害剤を投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤を最初に投与し、その後腫瘍溶解性ウイルス及び顆粒球生成阻害剤を同時に投与することができる。
【0071】
さらに、顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて腫瘍溶解性ウイルスを投与し、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて免疫チェックポイント阻害剤を投与し、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤を同時に投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。
【0072】
また、顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて腫瘍溶解性ウイルスを投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与し、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与することができる。顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて免疫チェックポイント阻害剤を投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与し、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与することができる。
【0073】
さらに、顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて腫瘍溶解性ウイルスを投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与し、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて免疫チェックポイント阻害剤を投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与し、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。
【0074】
また、腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、続いて顆粒球生成阻害剤を投与し、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤を最初に投与し、続いて顆粒球生成阻害剤を投与し、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。
【0075】
がんは、固形がん又は血液がんであってよい。具体的には、血液がんは、リンパ腫、急性白血病及び多発性骨髄腫からなる群から選択されるいずれか1つであってよい。固形がんは、肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、甲状腺がん、乳がん、脳がん、頭頸部がん、食道がん、皮膚がん、胸腺がん、胃がん、結腸がん、肝がん、卵巣がん、子宮がん、膀胱がん、直腸がん、胆嚢がん、胆道がん、膵がん及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つであってよい。
【0076】
また、本発明の医薬組成物は、生理的に許容される担体をさらに含むことができる。また、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の調製で一般的に使用される好適な賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。また、医薬組成物は、従来の方法によって注射剤の形で製剤化することができる。
【0077】
非経口投与用製剤として製剤化される場合、医薬組成物は、無菌水溶液、非水性溶液、懸濁液、乳剤、フリーズドライ製剤、坐薬などに製剤化することができる。非水性溶液又は懸濁液の場合、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射用エステルなどを使用することができる。坐薬の基剤として、ウィテップゾール(Witepsol)(商標)、マクロゴール、ツイーン(Tween)(商標)61、カカオ脂、ラウリン系脂肪、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0078】
投与経路、投薬量及び投与の頻度に関して、医薬組成物は、患者の状態及び副作用の有無;並びに最適な投与経路、投薬量及び投与の頻度によって様々な方法及び量で対象に投与することができ、したがって、好適な範囲内で当業者が選択することができる。また、医薬組成物は、その治療効果が治療する疾患について知られている別の薬物若しくは生理活性物質と併用投与することができ、又は他の薬物との併用製剤の形で製剤化することができる。
【0079】
医薬組成物は非経口的に投与することができ、そのような投与は任意の好適な方法、例えば腫瘍内、腹腔内、皮下、皮内、結節内、静脈内又は動脈内投与によって実行することができる。これらの中で、腫瘍内、腹腔内又は静脈内投与が好ましいかもしれない。他方、医薬組成物の投薬量は投与スケジュール、全投薬量及び患者の健康状態によって決定することができる。
【0080】
がん治療用医薬組成物は、ワクシニアウイルスの増加したがん選択性によって特徴付けることができる。
【0081】
本発明の別の態様はがん予防又は治療用キットであって、活性成分としてワクシニアウイルスを含む第1の組成物と、活性成分として顆粒球生成阻害剤を含む第2の組成物と、を含むキットを提供する。キットは、活性成分として免疫チェックポイント阻害剤を含む第3の組成物をさらに含むことができる。
【0082】
ワクシニアウイルス、顆粒球生成阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤は、医薬組成物において上述したものと同じである。
【0083】
活性成分として顆粒球生成阻害剤を含む第2の組成物は、市販薬であってよい。顆粒球生成阻害剤として活性成分としてヒドロキシ尿素を含有する市販薬の例は、ヒドロキシ尿素(登録商標)、ヒドレア(登録商標)、ドロキシア(商標)、ミロセル(商標)、シクロス(登録商標)及びヒドリン(登録商標)カプセルを含むことができる。第2の組成物は経口的にとることができ、その非経口投与も可能である。
【0084】
第1の組成物の投薬量は、個体の状態及び体重、疾患の重症度、薬物のタイプ、投与の経路及び期間によって異なり、当業者が適切に選択することができる。投薬量は、患者が1×10~1×1018のウイルス粒子、感染性ウイルス単位(TCID50)又はプラーク形成単位(pfu)でワクシニアウイルスを受けるようなものであってよい。具体的には、投薬量は、患者が1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017又はそれ以上のウイルス粒子、感染性ウイルス単位又はプラーク形成単位でワクシニアウイルスを受けるようなものであってよく、上記の数値の間の様々な数値及び範囲がその中に含まれてもよい。好ましくは、第1の組成物は1×10~1×1010pfuの用量で投与することができる。より好ましくは、第1の組成物は1×10以上及び1×10pfu未満の用量で投与することができる。本発明の一実施形態では、第1の組成物は1×10又は1×10pfuで投与された。
【0085】
また、第2の組成物は、1mg/kg/日~100mg/kg/日、又は10mg/kg/日~90mg/kg/日の用量で投与することができる。具体的には、第2の組成物は、10mg/kg/日~90mg/kg/日、15mg/kg/日~80mg/kg/日、20mg/kg/日~70mg/kg/日、25mg/kg/日~65mg/kg/日又は30mg/kg/日~60mg/kg/日の用量で投与することができる。本発明の一実施形態では、第2の組成物は、25mg/kg/日、30mg/kg/日、50mg/kg/日、60mg/kg/日又は100mg/kg/日で投与された。投薬量によって、第2の組成物は分割用量によって1日につき数回投与することができる。具体的には、第2の組成物は1日につき1~4回又は1日につき1~2回投与することができる。
【0086】
第3の組成物の用量は、第3の組成物に含まれる免疫チェックポイント阻害剤の各製造業者の投薬レジメンに従って投与することができる。第3の組成物の用量は、0.1mg/kg~10mg/kg、又は1mg/kg~5mg/kgであってよい。
【0087】
がんは、固形がん又は血液がんであってよい。具体的には、血液がんは、リンパ腫、急性白血病及び多発性骨髄腫からなる群から選択されるいずれか1つであってよい。固形がんは、肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、甲状腺がん、乳がん、脳がん、頭頸部がん、食道がん、皮膚がん、胸腺がん、胃がん、結腸がん、肝がん、卵巣がん、子宮がん、膀胱がん、直腸がん、胆嚢がん、胆道がん、膵がん及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つであってよい。
【0088】
第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物は、生理的に許容される担体をさらに含むことができる。また、本発明のキットに含まれる組成物は、医薬組成物の調製で一般的に使用される好適な賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。また、組成物は、従来の方法によって注射剤の形で製剤化することができる。
【0089】
非経口投与用製剤として製剤化される場合、第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物は、無菌水溶液、非水性溶液、懸濁液、乳剤、フリーズドライ製剤、坐薬などに製剤化することができる。非水性溶液又は懸濁液の場合、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射用エステルなどを使用することができる。坐薬の基剤として、ウィテップゾール(商標)、マクロゴール、ツイーン(商標)61、カカオ脂、ラウリン系脂肪、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0090】
投与経路、投薬量及び投与頻度に関して、第1の組成物、第2の組成物及び第3の組成物は、患者の状態及び副作用の有無;並びに最適な投与経路、投薬量及び投与頻度によって様々な方法及び量で対象に投与することができ、したがって、好適な範囲内で当業者が選択することができる。また、医薬組成物は、その治療効果が治療する疾患について知られている別の薬物又は生理活性物質と併用投与することができ、又は他の薬物との併用製剤の形で製剤化することができる。
【0091】
第2の組成物は、経口的に又は非経口的に投与することができる。具体的には、第2の組成物は非経口的に投与することができ、そのような投与は腹腔内、動脈内又は静脈内投与によって実行することができる。
【0092】
第1の組成物は非経口的に投与することができ、そのような投与は任意の好適な方法、例えば腫瘍内、腹腔内、皮下、皮内、結節内、動脈内又は静脈内投与によって実行することができる。これらの中で、腫瘍内、腹腔内又は静脈内投与が好ましいかもしれない。他方、第1の組成物及び第2の組成物の投薬量は投与スケジュール、全投薬量及び患者の健康状態によって決定することができる。
【0093】
また、第1の組成物は1~10回又は2~5回投与することができ、個体へのその投与は7~30日の間隔で実行することができる。具体的には、第1の組成物は、7日、14日、21日又は30日の間隔で投与することができる。
【0094】
第2の組成物は、第1の組成物の投与の前後に投与することができる。具体的には、第2の組成物は、第1の組成物の投与の3~5日前から開始して1日に1回連続的に投与することができ、第1の組成物の投与から24時間以内又はその24時間後に開始して9~28日間、1日に1回連続的に投与することができる。本発明の一実施形態では、第2の組成物は、第1の組成物の投与の1~3日前から開始して1日に1回連続的に投与することができ、第1の組成物の投与の後に13日間、17日間、18日間又は28日間、1日に1回投与することができる。
【0095】
第3の組成物は、第1の組成物の投与の後の1~10週間、少なくとも週1回連続的に投与することができる。具体的には、第3の組成物は、第1の組成物の投与の後の1~8週間、少なくとも週2回連続的に投与することができる。
【0096】
本発明のさらに別の態様では、がんを治療する方法であって、がんを有する個体にワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を投与するステップを含む方法が提供される。
【0097】
治療方法は、がんを有する個体に免疫チェックポイント阻害剤を投与するステップをさらに含むことができる。
【0098】
腫瘍溶解性ウイルス、顆粒球生成阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤は、医薬組成物において上述したものと同じである。
【0099】
ワクシニアウイルスは、ウェスタン・リザーブ、NYVAC、ワイス、LC16m8、リスター、コペンハーゲン、ティアンタン、USSR、タシュケント、エバンス、IHD-J又はIHD-Wワクシニアウイルス株に限定されずに属することができる。
【0100】
ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤は、同時に、逐次的に又は逆順に併用投与することができる。具体的には、ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤は同時に投与することができる。また、顆粒球生成阻害剤を最初に、その後ワクシニアウイルスを投与することができる。さらに、ワクシニアウイルスを最初に、その後顆粒球生成阻害剤を投与することができる。また、顆粒球生成阻害剤を最初に、その後ワクシニアウイルスを投与することができ、その後顆粒球生成阻害剤を再び投与することができる。
【0101】
また、治療方法が免疫チェックポイント阻害剤を投与するステップをさらに含む場合、腫瘍溶解性ウイルス、顆粒球生成阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤は同時に、逐次的に又は逆順で投与することができる。具体的には、腫瘍溶解性ウイルス、顆粒球生成阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤は同時に投与することができる。また、顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて免疫チェックポイント阻害剤を投与し、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与することができる。顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて腫瘍溶解性ウイルスを投与し、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与することができる。顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、その後腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤を同時に投与することができる。
【0102】
さらに、腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、続いて顆粒球生成阻害剤を投与し、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与することができる。腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、続いて免疫チェックポイント阻害剤を投与し、その後顆粒球生成阻害剤を投与することができる。腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、その後顆粒球生成阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤を投与し、その後顆粒球生成阻害剤を同時に投与することができる。
【0103】
また、免疫チェックポイント阻害剤を最初に投与し、続いて顆粒球生成阻害剤を投与し、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤を最初に投与し、続いて腫瘍溶解性ウイルスを投与し、その後顆粒球生成阻害剤を投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤を最初に投与し、その後腫瘍溶解性ウイルス及び顆粒球生成阻害剤を同時に投与することができる。
【0104】
さらに、顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて腫瘍溶解性ウイルスを投与し、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて免疫チェックポイント阻害剤を投与し、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、その後腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤を同時に投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。
【0105】
また、顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて腫瘍溶解性ウイルスを投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与し、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与することができる。顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて免疫チェックポイント阻害剤を投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与し、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与することができる。
【0106】
さらに、顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて腫瘍溶解性ウイルスを投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与し、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。顆粒球生成阻害剤を最初に投与し、続いて免疫チェックポイント阻害剤を投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与し、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。
【0107】
また、腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、続いて顆粒球生成阻害剤を投与し、その後免疫チェックポイント阻害剤を投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤を最初に投与し、続いて顆粒球生成阻害剤を投与し、その後腫瘍溶解性ウイルスを投与し、再び顆粒球生成阻害剤を投与することができる。
【0108】
ワクシニアウイルスの投薬量は、個体の状態及び体重、疾患の重症度、薬物のタイプ、投与の経路及び期間によって異なり、当業者が適切に選択することができる。投薬量は、患者が1×10~1×1018のウイルス粒子、感染性ウイルス単位(TCID50)又はプラーク形成単位(pfu)でワクシニアウイルスを受けるようなものであってよい。具体的には、投薬量は、患者が1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×10、2×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017又はそれ以上のウイルス粒子、感染性ウイルス単位又はプラーク形成単位でワクシニアウイルスを受けるようなものであってよく、上記の数値の間の様々な数値及び範囲がその中に含まれてもよい。好ましくは、ワクシニアウイルスは1×10~1×1010pfuの用量で投与することができる。より好ましくは、ワクシニアウイルスは1×10以上及び1×10pfu未満の用量で投与することができる。本発明の一実施形態では、ワクシニアウイルスは1×10又は1×10pfuで投与された。
【0109】
また、顆粒球生成阻害剤は1mg/kg/日~100mg/kg/日、又は10mg/kg/日~90mg/kg/日の用量で投与することができる。具体的には、顆粒球生成阻害剤は10mg/kg/日~90mg/kg/日、15mg/kg/日~80mg/kg/日、20mg/kg/日~70mg/kg/日、25mg/kg/日~65mg/kg/日又は30mg/kg/日~60mg/kg/日の用量で投与することができる。本発明の実施形態では、ヒドロキシ尿素、レナリドマイド又はパルボシクリブは、顆粒球生成阻害剤として25mg/kg/日、30mg/kg/日、50mg/kg/日、60mg/kg/日又は100mg/kg/日の用量で投与された。投薬量によって、顆粒球生成阻害剤は分割用量によって1日につき数回投与することができる。具体的には、顆粒球生成阻害剤は1日につき1~4回又は1日につき1~2回投与することができる。
【0110】
また、ワクシニアウイルスは1~10回又は2~5回投与することができ、7~30日の間隔で個体に投与することができる。具体的には、ワクシニアウイルスは、7日、14日、21日又は30日の間隔で投与することができる。
【0111】
顆粒球生成阻害剤は、ワクシニアウイルスの投与の前、その間又は後に投与することができる。具体的には、顆粒球生成阻害剤は、ワクシニアウイルスの投与の前後に投与することができる。顆粒球生成阻害剤は、ワクシニアウイルスの投与の3~5日前から開始して1日に1回連続的に投与することができ、ワクシニアウイルスの投与から24時間後に開始して9~28日間、1日に1回連続的に投与することができる。本発明の一実施形態では、顆粒球生成阻害剤は、ワクシニアウイルスの投与の1~3日前から開始して1日に1回連続的に投与することができ、ワクシニアウイルスの投与の後に13日間、17日間、18日間又は28日間、1日に1回投与することができる。
【0112】
がんは、固形がん又は血液がんであってよい。具体的には、血液がんは、リンパ腫、急性白血病及び多発性骨髄腫からなる群から選択されるいずれか1つであってよい。固形がんは、肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、甲状腺がん、乳がん、脳がん、頭頸部がん、食道がん、皮膚がん、胸腺がん、胃がん、結腸がん、肝がん、卵巣がん、子宮がん、膀胱がん、直腸がん、胆嚢がん、胆道がん、膵がん及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つであってよい。
【0113】
顆粒球生成阻害剤は、経口的に又は非経口的に投与することができる。具体的には、顆粒球生成阻害剤は非経口的に投与することができ、そのような投与は腹腔内、動脈内又は静脈内投与によって実行することができる。
【0114】
ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤は非経口投与することができ、そのような投与は任意の好適な方法、例えば腫瘍内、腹腔内、皮下、皮内、結節内、静脈内又は動脈内投与によって実行することができる。これらの中で、腫瘍内、腹腔内又は静脈内投与が好ましいかもしれない。他方、ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤の投薬量は投与スケジュール、全投薬量及び患者の健康状態によって決定することができる。
【0115】
本明細書で使用されるように、用語「個体」は、本発明の医薬組成物を投与することによって緩和、抑制又は治療することができる状態の疾患を有するか又は患っている人を指す。
【0116】
本明細書で使用されるように、用語「投与」は、適当な方法によって物質の有効量を個体に導入することを意味し、ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤の投与は、物質が標的組織に到達することを可能にする一般的な経路を通して実行することができる。
【0117】
また、ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤は、その治療効果が治療する疾患について知られている別の薬物又は生理活性物質と併用投与することができ、又は他の薬物との併用製剤の形で製剤化することができる。
【0118】
本発明のさらに別の態様では、がんの予防又は治療のためのワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む組成物の使用が提供される。
【0119】
本発明のさらに別の態様では、がんを予防又は治療するための医薬の製造のための、ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む組成物の使用が提供される。
【0120】
本発明のさらに別の態様では、活性成分として顆粒球生成阻害剤を含む抗がんアジュバントが提供される。ここで、顆粒球生成阻害剤は、医薬組成物について上述した通りである。また、抗がんアジュバントは、活性成分としてワクシニアウイルスを含む抗がん剤の抗がんアジュバントとして使用されることを特徴とし得る。抗がんアジュバントは、ワクシニアウイルスの抗がん活性を向上させるか、増強するか、又は増加させることを特徴とし得る。抗がんアジュバントは、ワクシニアウイルスのがん選択性を増加させることを特徴とし得る。
【0121】
顆粒球生成阻害剤は、ヒドロキシ尿素、レナリドマイド、サリドマイド、タダラフィル、パルボシクリブ、アルキル化剤、アントラサイクリン、代謝拮抗物質、カンプトセシン、エピポドフィロトキシン、マイトマイシンC、タキサン又はビンブラスチンであってよい。
【実施例
【0122】
以降、本発明は実施例によりさらに詳細に記載される。しかし、以下の実施例は例示だけが目的であり、本発明の範囲はそれに限定されない。
【0123】
調製実施例1.組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-、WR VVtk-)の生成
調製実施例1.1.シャトルプラスミドベクターの構築
チミジンキナーゼ(TK)遺伝子が欠失している組換えワクシニアウイルスを生成するために、野生型ワクシニアウイルス、すなわち、ワイス株(NYC Department of Health)及びウェスタン・リザーブ株を、アメリカ基準株保存機構(ATCC)から購入した。組換えのために、野生型ワクシニアウイルスのTK領域を、ホタルルシフェラーゼリポーター(p7.5プロモーター)遺伝子又はGFP遺伝子を含有するシャトルプラスミドベクターを使用して置換した。
【0124】
調製実施例1.2.組換えワクシニアウイルスの生成
組換えウイルスを得るために、HeLa細胞(ATCC)を1ウェルにつき4×10細胞で6ウェルプレートに播種し、次に、10%ウシ胎児血清を含有するEMEM培地で培養を実行した。その後、野生型ワクシニアウイルスによる処理を0.05のMOIで実行した。2時間後に、培地を2%ウシ胎児血清を含有するEMEM培地で置き換え、次に、Xfect(商標)ポリマー(Clonetech631317、USA)を使用して、調製実施例1.1で構築されて線状化された4μgのシャトルプラスミドベクターで細胞をトランスフェクトした。培養は、4時間実行した。その後、培地を2%ウシ胎児血清を含有するEMEM培地で置き換え、その後、培養を72時間さらに実行した。最後に、感染細胞を収集し、次に凍結解凍を3回繰り返した。その後、細胞を超音波処理によって溶解し、スクロースクッション方法を使用して遊離の組換えワクシニアウイルスを得、それらをWyeth VVtk-又はWR VVtk-と命名した。
【0125】
調製実施例2.組換えワクシニアウイルス(OTS-412)の生成
チミジンキナーゼ(TK)遺伝子が欠失し、変異した単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を発現する組換えワクシニアウイルスを生成するために、ワイス株野生型ワクシニアウイルスのTK領域を、配列番号1の合成された変異した1型HSV-TK遺伝子(pSE/Lプロモーター)及びホタルルシフェラーゼリポーター(p7.5プロモーター)遺伝子を組み換えたpUC57amp+プラスミド(Genewiz、USA)をシャトルベクターとして使用して置換した。上で構築したシャトルベクターを使用して、組換えワクシニアウイルスを調製実施例1.2と同様に得、このウイルスをOTS-412と命名した。
【0126】
調製実施例3.組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)の生成
チミジンキナーゼ(TK)遺伝子が欠失し、変異した単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を発現する組換えワクシニアウイルスを生成するために、ウェスタン・リザーブ株野生型ワクシニアウイルスのTK領域を、配列番号2の合成された変異した1型HSV-TK遺伝子(pSE/Lプロモーター)及びホタルルシフェラーゼリポーター(p7.5プロモーター)遺伝子を組み換えたpUC57amp+プラスミド(Genewiz、USA)をシャトルベクターとして使用して置換した。上で構築したシャトルベクターを使用して、組換えワクシニアウイルスを調製実施例1.2と同様に得、このウイルスをWOTS-418と命名した。
【0127】
調製実施例4.組換えワクシニアウイルス(VV_DD)の生成
チミジンキナーゼ(TK)遺伝子及びワクシニア増殖因子(VGF)遺伝子が欠失している組換えワクシニアウイルスを生成するために、ウェスタン・リザーブ株野生型ワクシニアウイルスのTK領域を、増強した緑色蛍光性タンパク質(EGFP)遺伝子を含有するシャトルプラスミドを使用して置換し、同じウイルスのVGF遺伝子領域を、lacZ遺伝子を含有するシャトルプラスミドを使用して置換した。EGFP遺伝子を含有するシャトルプラスミド及びlacZ遺伝子を含有するシャトルプラスミドを使用して、組換えワクシニアウイルスを調製実施例1.2と同様に得、このウイルスをVV_DDと命名した。
【0128】
I.ワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素の同時投与による相乗的抗がん効果の特定
【0129】
実験的実施例1.マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(I)における野生型ワクシニアウイルス(WR)及びヒドロキシ尿素のがん治療効果の特定
実験的実施例1.1.マウス腎臓がん細胞移植マウスの生成及び薬物投与
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、10週齢)を2日間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を皮下に5×106細胞で移植した。それが50mm~80mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後野生型ワクシニアウイルスの投与を開始した。他方、ウェスタン・リザーブ株野生型ワクシニアウイルス(WR)は、同種移植モデルにおいてワイス株野生型ワクシニアウイルスより強力な増殖能力を有する。
【0130】
生成されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、3群(n=6)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、野生型ワクシニアウイルス(WR、1×10pfu)の投与を受ける群は陽性対照群として設定した。また、野生型ワクシニアウイルス(WR、1×10pfu)及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。野生型ワクシニアウイルスは腫瘍内に1回投与し;ヒドロキシ尿素は、野生型ワクシニアウイルスの投与日を除いて野生型ワクシニアウイルスの投与の1日前から開始して、投与から14日目にかけて、腹腔内に1週につき5回投与した。
【0131】
実験的実施例1.2.腫瘍体積の変化の検査
腫瘍体積は、実験的実施例1.1の各群のマウスへの薬物投与の0、3、7、10及び14日目に測定した。その結果、陽性対照群のマウスの腫瘍体積は陰性対照群と比較して抑制され、実験群のマウスの腫瘍体積は著しく抑制されることが特定された(図1)。
【0132】
実験的実施例1.3.体重変化の検査
体重は、実験的実施例1.1の陰性対照群、陽性対照群及び実験群のマウスへの各薬物投与の3、7、10及び14日目に測定した。その結果、全3群で有意な体重減少はなかった(図2)。
【0133】
実験的実施例2.マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(II)における組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びヒドロキシ尿素のがん治療効果の特定
実験的実施例2.1.マウス腎臓がん細胞移植マウスの生成及び薬物投与
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが100mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後組換えワクシニアウイルスの投与を開始した。他方、ウェスタン・リザーブ株由来組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)は、同種移植モデルにおいてワイス株由来組換えワクシニアウイルスより強力な増殖能力を有する。
【0134】
生成されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、3群(n=8)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-、1×10pfu)の投与を受ける群は陽性対照群として設定した。また、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素(60mg/kg)の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。組換えワクシニアウイルスは腫瘍内に2回投与し;ヒドロキシ尿素は、組換えワクシニアウイルスの投与日を除いて、組換えワクシニアウイルスの投与の1日前から開始して、投与から21日目にかけて、腹腔内に1週につき6回投与した。
【0135】
実験的実施例2.2.腫瘍体積の変化の検査
腫瘍体積は、実験的実施例2.1の各群のマウスへの薬物投与から0、3、7、10、14、17及び21日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されることが特定された(図3)。
【0136】
実験的実施例3.マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(III)における組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びヒドロキシ尿素のがん治療効果の特定
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、10週齢)を2日間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を左大腿の皮下に5×10細胞で移植した。それが50mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後組換えワクシニアウイルスの投与を開始した。
【0137】
生成されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、3群(n=6)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-、1×10pfu)の投与を受ける群は陽性対照群として設定した。また、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。組換えワクシニアウイルスは腫瘍内に1回投与し;ヒドロキシ尿素は、組換えワクシニアウイルスの投与日を除いて、組換えワクシニアウイルスの投与の1日前から開始して、投与から14日目にかけて、腹腔内に1週につき6回投与した。
【0138】
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与から0、3、7、10及び14日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して成長が約25%抑制されることが特定された(図4)。
【0139】
実験的実施例4.マウス黒色腫移植マウス:B16F10における組換えワクシニアウイルス(VV_DD)及びヒドロキシ尿素のがん治療効果の特定
KOATECH(Korea)から購入したC57BL/6マウス(雌、7週齢)を2日間の順化にかけ、次にマウス黒色腫がん細胞株(ATCC、B16F10)を5×10細胞で皮下に移植した。それが50mm~100mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後組換えワクシニアウイルス(VV_DD)の投与を開始した。組換えワクシニアウイルス(VV_DD)は、ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルスのチミジンキナーゼ(TK)及びワクシニア増殖因子(VGF)領域の二重欠失を実行して得られ、同種移植モデルにおいて限定的な増殖能力を有する。
【0140】
生成されたマウス黒色腫移植マウスは、4群(n=6)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、ヒドロキシ尿素(30mg/kg)又は組換えワクシニアウイルス(VV_DD、1×10pfu)の投与を単独で受ける群は陽性対照群として設定した。また、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。組換えワクシニアウイルスは0及び5日目に腹腔内に投与した;ヒドロキシ尿素は、組換えワクシニアウイルスの投与日を除いて、組換えワクシニアウイルスの投与の1日前から開始して、投与から15日目にかけて、腹腔内に1週につき6回投与した。
【0141】
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与の1日前と投与の4及び7日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されることが特定された(図5)。これらの結果から、組換えワクシニアウイルス(VV_DD)及びヒドロキシ尿素が同時投与される場合に相乗効果が観察されることが特定された。
【0142】
実験的実施例5.ヒト肺がん細胞株移植マウス:NCI-H460における組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)及びヒドロキシ尿素のがん治療効果の特定
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/c nu/nuマウス(雌、7週齢)を2日間の順化にかけ、次にNCI-H460ヒト肺がん細胞株(Korea Cell Line Bank)を皮下に5×10細胞で異種移植した。それが100mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)の投与を開始した。他方、ウェスタン・リザーブ株由来組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)は、ヒト肺がん細胞株(NCI-H460)異種移植マウスにおいて増殖能力を有する。
【0143】
生成されたヒト肺がん細胞株移植マウスは、2群(n=4)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は対照群として設定し、組換えワクシニアウイルス(WOTS-418、1×10pfu)及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。組換えワクシニアウイルスは腹腔内に1回投与した;ヒドロキシ尿素は、組換えワクシニアウイルスの投与日を除いて組換えワクシニアウイルスの投与の1日前から開始して投与から15日目にかけて、腹腔内に1週につき6回投与した。
【0144】
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与の0、5、10、12及び15日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は対照群と比較して約40%抑制されることが特定された(図6)。
【0145】
実験的実施例6.マウス結腸直腸がん細胞移植マウス:CT-26における組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)及びヒドロキシ尿素の生存分析
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、7週齢)を2日間の順化にかけ、次にマウス結腸直腸がん細胞株(CT-26、Korea Cell Line Bank)を皮下に5×10細胞で移植した。7日後に、組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)及びヒドロキシ尿素の投与を開始した。他方、ウェスタン・リザーブ株由来組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)は、同種移植モデルにおいてワイス株由来組換えワクシニアウイルスより強力な増殖能力を有する。
【0146】
生成されたマウス結腸直腸がん細胞株移植マウスは、2群(n=12)に、すなわち、組換えワクシニアウイルス(WOTS-418、1×10pfu)の腹腔内投与を受ける群、並びに組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群に分割した。組換えワクシニアウイルスは腹腔内に1回投与した;ヒドロキシ尿素は、組換えワクシニアウイルスの投与の1日目から開始して腹腔内に連続5回投与した。
【0147】
それぞれの群のマウスの生存曲線を分析した。その結果、組換えワクシニアウイルスの投与を単独で受けた群では、全てのマウスは投与の25日後に死んだ;しかし、ヒドロキシ尿素及び組換えワクシニアウイルスの同時投与を受けたマウスの30%以上は、55日間以上生存した(図7)。これらの結果から、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素が同時投与される場合に、組換えワクシニアウイルスだけが投与される場合と比較して増強された安全性が得られることが特定された。
【0148】
実験的実施例7.マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(IV)における組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-)及びヒドロキシ尿素のがん治療効果の特定
実験的実施例7.1.マウス腎臓がん細胞移植マウスの生成及び薬物投与
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、7週齢)を2日間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが100mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後組換えワクシニアウイルスの投与を開始した。
【0149】
生成されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、4群(n=4)に分割した。食塩水の腫瘍内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)の投与を受ける群は陽性対照群として設定した。また、組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)及び組換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(rhG-CSF、75μg/kg)の同時投与を受ける群、並びに組換えウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の投与を受ける群は、実験群として設定した。組換えワクシニアウイルスは腫瘍内に投与し、rhG-CSF又はヒドロキシ尿素は、組換えワクシニアウイルスの投与の3日前から開始して屠殺まで腹腔内に1週につき5回投与した。
【0150】
実験的実施例7.2.腫瘍体積の変化の検査
実験的実施例7.1の各群のマウスは薬物投与から16日目に屠殺し、腫瘍体積を測定した。その結果、陽性対照群のマウスと組換えワクシニアウイルス及びrhG-CSFの同時投与を受けた実験群のマウスは、最初の腫瘍体積と比較してほぼ10倍の増加を示した。他方、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素の同時投与を受けた実験群のマウスは、最初の腫瘍体積と比較してほぼ8倍の増加を示し、これは、観察された中で最も抑制された腫瘍体積であった(図8)。
【0151】
実験的実施例7.3.抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性化の特定
組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素が同時投与される場合に腫瘍特異的抗がん効果が得られるかどうか特定するために、実験的実施例7.1の各群のマウスを16日目に屠殺し、次に脾臓中のリンパ球を各群から単離した。次に、単離したリンパ球を新規の正常マウスにそれぞれ注射した。がん移植を実行し、腫瘍体積を観察した。具体的には、1週後に、マウスにRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植し、19日目に腫瘍体積を測定した。
【0152】
その結果、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素の同時投与を受けた群のマウスから収集した脾細胞を注射したマウスで、腫瘍増殖は著しく抑制された。他方、残りの群のマウスから収集した脾細胞を注射したマウスの各々では、腫瘍増殖は有意に抑制されなかった(図9)。これらの結果から、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素の同時投与を受けた群の場合、細胞傷害性T細胞などの免疫細胞が生成されただけでなく、適応免疫も活性化されたことが特定された。
【0153】
実験的実施例8.マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(V)における組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-)及びヒドロキシ尿素のがん治療効果の特定
実験的実施例8.1.マウス腎臓がん細胞移植マウスの生成及び薬物投与
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、7週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが50mm~100mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後組換えワクシニアウイルスの投与を開始した。他方、ワイス株由来組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-)は、マウス腎臓がん細胞移植マウスモデルではほとんど増殖しない。
【0154】
生成されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、4群(n=4)に分割した。食塩水の腫瘍内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、ヒドロキシ尿素(30mg/kg)の投与を単独で受ける群及び組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)の投与を単独で受ける群は陽性対照群として設定した。また、組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。組換えワクシニアウイルスは腫瘍内に投与し、ヒドロキシ尿素は、組換えワクシニアウイルスの投与の3日前から開始して屠殺まで腹腔内に1週につき5回投与した。
【0155】
実験的実施例8.2.腫瘍体積の変化の検査
腫瘍体積は、実験的実施例8.1の各群のマウスへの薬物投与の0、4、10、15及び22日目に測定した。その結果、陽性対照群のマウスの腫瘍体積は最初の腫瘍体積と比較して約11~13倍増加した。他方、実験群のマウスの腫瘍体積は最初の腫瘍体積と比較して約4倍増加した(図10)。
【0156】
実験的実施例8.3.腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性化の特定
組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素が同時投与される場合に腫瘍特異的抗がん効果が得られるかどうか特定するために、実験的実施例8.1の各群のマウスを16日目に屠殺し、次に、脾細胞及び細胞傷害性Tリンパ球(CD8+T細胞)を各群から単離した。次に、単離した脾細胞又は細胞傷害性Tリンパ球を新規の正常マウスにそれぞれ注射した。がん移植を実行し、腫瘍体積を観察した。具体的には、1週後に、マウスにRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植し、7、10、14、18及び21日目に腫瘍体積を測定した。
【0157】
その結果、実験群のマウスから収集した脾細胞又はTリンパ球を注射したマウスで、腫瘍増殖は著しく抑制された。他方、残りの群のマウスから収集した脾細胞又はTリンパ球を注射したマウスでは、腫瘍増殖は有意に抑制されなかった(図11)。これらの結果から、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素の同時投与を受けた群の場合、抗がん効力を有する適応免疫が、Tリンパ球だけでなく脾臓で形成される他の免疫細胞によっても活性化されることが特定された(図11及び12)。
【0158】
実験的実施例9.マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(VI)における組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-)及びヒドロキシ尿素のがん治療効果の特定
実験的実施例9.1.マウス腎臓がん細胞移植マウスの生成及び薬物投与
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが100mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後組換えワクシニアウイルスの投与を開始した。他方、ワイス株由来組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-)は、マウス腎臓がん細胞移植マウスモデルではほとんど増殖しない。
【0159】
生成されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、3群(n=6)に分割した。食塩水の腫瘍内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)の投与を受ける群は陽性対照群として設定した。また、組換えワクシニアウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の投与を受ける群は、実験群として設定した。組換えワクシニアウイルスは腫瘍内に投与し、ヒドロキシ尿素は、組換えワクシニアウイルスの投与の1日前から開始して屠殺まで腹腔内に1週につき6回投与した。
【0160】
実験的実施例9.2.腫瘍体積の変化の検査
実験的実施例9.1の各群のマウスは薬物投与から22日目に屠殺し、腫瘍体積を測定した。その結果、陽性対照群のマウスの腫瘍体積は、陰性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して約25%抑制された。特に、実験群のマウスの腫瘍体積は陰性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して約37.5%抑制され、陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較したときは約15%抑制された(図13)。
【0161】
実験的実施例9.3.脾臓組織微小環境の特定
組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素を同時投与した場合の、腫瘍微小環境中の免疫細胞の分布を分析した。分析のために、ジアミノベンジジン(DAB)を使用した免疫組織化学染色を実行した。具体的には、脾臓を各群のマウスから収集した。脾臓組織は0.4μmに切断して乾燥させた。その後、組織をPBSで洗浄し、次にウシ血清アルブミン(BSA)で処理した。組織は、1:50の比に希釈した一次抗体(抗CD3抗体(Abcam)、抗CD4抗体(BD Biosciences)、抗CD8抗体(BD Biosciences))による処理にかけ、反応は4℃で一晩進行させた。翌日、組織をPBSで洗浄し、次に室温で二次抗体(Dako)と30分間反応させた。組織をPBSで再び洗浄し、ABCキット(Dako)を使用して反応させ、次にHの添加によって発色させた。次に、組織を脱水させ、その後封入した。
【0162】
その結果、CD4+T細胞及びCD8+T細胞が実験群のマウスの腫瘍組織により豊富に分布していたことが特定された(図14)。これらの結果から、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素が同時投与される場合に、脾臓組織中のCD4+T細胞及びCD8+T細胞が組換えワクシニアウイルスだけが投与される場合より分化し、活性化されることが特定された。すなわち、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素が同時投与される場合に、組換えワクシニアウイルスだけが投与される場合より適応免疫がより活性化されることが特定された。
【0163】
実験的実施例10.マウス乳がん細胞移植マウス:4T1(I)における組換えワクシニアウイルス(OTS-412)及びヒドロキシ尿素によって引き起こされる抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性化の特定
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、7週齢)を1週間の順化にかけ、次に4T1がん細胞株(Korea Cell Line Bank)を1×10細胞で同種移植した。それが100mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後組換えワクシニアウイルスの投与を開始した。他方、ワイス株由来組換えワクシニアウイルス(OTS-412)は、マウス乳がん細胞移植マウスモデルではほとんど増殖しない。また、乳がん細胞株移植マウスは、転移が肺組織を含む体全体で進行する動物モデルであり、転移は腫瘍表面の小結節の数によって一般的に評価される。
【0164】
生成されたマウス乳がん細胞移植マウスは、4群(n=5)に分割した。食塩水の腫瘍内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、組換えワクシニアウイルス(OTS-412、1×10pfu)又はヒドロキシ尿素(30mg/kg)の投与を受ける群は、陽性対照群として設定した。組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素の投与を受ける群は、実験群として設定した。組換えワクシニアウイルスは先ず腫瘍内に投与し、次に第2に、第1の投与から7日目に投与した。ヒドロキシ尿素は、組換えワクシニアウイルスの投与日を除いて組換えワクシニアウイルスの投与の3日前から開始して屠殺の3日前まで、1日に1回腹腔内に投与した。
【0165】
薬物投与から18日目に、各群のマウスを屠殺し、血液及び脾臓をそこから収集した。血液及び脾細胞中の免疫細胞の分布を、フローサイトメトリーによって分析した。その結果、腫瘍免疫応答を誘導する血液及び脾臓中のCD4+T細胞及びCD8+T細胞の分布は、実験群のマウスで最も高いことが特定された。また、免疫抑制機能を有する骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の数が、陰性対照群及び陽性対照群のマウスと比較して実験群のマウスで著しく低いことが特定された(図15)。
【0166】
実験的実施例11.マウス乳がん細胞移植マウス:4T1(II)における組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びヒドロキシ尿素の適応免疫増加効果の特定
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、10週齢)を2日間の順化にかけ、次に4T1がん細胞株(Korea Cell Line Bank)を左大腿の皮下に1×10細胞で移植した。2日後に、マウスに同数の4T1がん細胞株を右大腿の皮下に移植した。その体積が50mm~200mmに到達するまで右大腿の皮下に移植した腫瘍を観察し、その後組換えワクシニアウイルスの投与を開始した。
【0167】
生成されたマウス乳がん細胞移植マウスは、3群(n=6)に分割した。食塩水の腫瘍内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-、1×10pfu)の投与を受ける群は陽性対照群として設定した。また、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素(90mg/kg)の同時投与を受ける群は実験群として設定した。組換えワクシニアウイルスは左腫瘍に1回投与し、ヒドロキシ尿素は、組換えワクシニアウイルスの投与日を除いて、組換えワクシニアウイルスの投与の1日前から開始して投与から14日目にかけて、腹腔内に1週につき6回投与した。
【0168】
両方の大腿の皮下に移植した腫瘍の体積は、各群のマウスへの薬物投与の0、3、7、10及び14日目に測定した。その結果、実験群のマウスの左腫瘍の体積は陽性対照群のマウスの左腫瘍の体積と比較して成長が約35%抑制されることが特定された(図16)。また、実験群のマウスの右腫瘍の体積は陽性対照群のマウスの右腫瘍の体積と比較して成長が約45%抑制されることが特定された(図17)。これらの結果から、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素の同時投与がどのような効果を周囲の腫瘍に及ぼすかが特定された。
【0169】
すなわち、腫瘍がワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素による同時投与によって局所的に治療される場合、ウイルスが投与されなかった腫瘍においてさえ抗がん効果が観察されることが特定された。
【0170】
実験的実施例12.マウス腎臓がん細胞移植マウス(I)における野生型ワクシニアウイルス(WR)及びヒドロキシ尿素の同時投与後の増加したがん選択性の特定
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが100mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後野生型ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス(WR)の投与を開始した。他方、野生型ワイス株ワクシニアウイルスは、同系マウスで限定的な増殖能力を有する。
【0171】
生成されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、3群(n=8)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、野生型ワクシニアウイルス(WR、1×10pfu)の投与を受ける群は陽性対照群として設定した。また、野生型ワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素(60mg/kg)の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。野生型ワクシニアウイルスは腫瘍内に2回投与し、ヒドロキシ尿素は、野生型ワクシニアウイルスの投与日を除いて、野生型ワクシニアウイルスの投与の1日前から開始して投与から21日目にかけて、腹腔内に1週につき6回投与した。
【0172】
各群のマウスを22日目に屠殺し、腫瘍をそこから単離した。ジアミノベンジジン(DAB)を使用した免疫組織化学染色を通して、ウイルス増殖を比較した。具体的には、腫瘍組織を各群のマウスから収集した。腫瘍組織は0.4μmに切断して乾燥させた。その後、組織をPBSで洗浄し、次にウシ血清アルブミン(BSA)で処理した。組織は1:50の比で希釈した一次抗体(カタログ番号ABIN1606294、抗体-オンライン)による処理にかけ、反応を4℃で一晩進行させた。翌日、組織をPBSで洗浄し、次に室温で二次抗体(Alexa 594、カタログ番号A21205、Invitrogen)と30分間反応させた。組織をPBSで再び洗浄し、ABCキット(Dako)を使用して反応させ、次にHの添加によって発色させた。次に、組織を脱水させ、その後封入した。
【0173】
その結果、野生型ワクシニアウイルスが実験群のマウスの腫瘍組織により豊富に分布していたことが特定された(図18)。これらの結果から、ヒドロキシ尿素が野生型ワクシニアウイルスの全身投与時に同時投与された場合に、野生型ワクシニアウイルスのより効果的な腫瘍特異的増殖が観察されることが特定された。
【0174】
実験的実施例13.正常マウス(II)における野生型ワクシニアウイルス(WR)及びヒドロキシ尿素の同時投与後の増加した生存及びがん選択性の特定
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/c nu/nuマウス(雌、7週齢)を2日間の順化にかけ、その後野生型ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス(WR)の投与を開始した。他方、野生型ワイス株ワクシニアウイルスは、同系マウスで限定的な増殖能力を有する。
【0175】
マウスは2群(n=12)に分割した。野生型ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス(1×10pfu)の投与を受ける群は対照群として設定し、野生型ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素(50mg/kg)の同時投与を受ける群は実験群として設定した。野生型ワクシニアウイルスは鼻腔内に1回投与し;ヒドロキシ尿素は、野生型ワクシニアウイルスの投与の1日前から開始して、野生型ワクシニアウイルスの投与日を除いて腹腔内に1週につき5回投与した。
【0176】
8日目に、対照群及び実験群のマウスを屠殺し、腎臓及び肝臓組織をそこから単離した。免疫組織化学的染色を実行した。パラフィンブロックを作製し、キシレン及びエチルアルコールを使用して各ブロックを脱パラフィンした。生じたブロックは、デクローキングチャンバーを使用して抗原回収にかけた。次に、一次抗体(カタログ番号ABIN1606294、抗体-オンライン)をこのブロックに結合させ、FITC標識二次抗体(Alexa 594、カタログ番号A21205、Invitrogen)をそれに結合させた。次に、蛍光顕微鏡を使用して観察を行った。
【0177】
その結果、対照群のマウスの肝臓及び腎臓組織と比較して、実験群のマウスの肝臓及び腎臓組織にウイルスが少数分布し、増殖することが特定された(図19)。
【0178】
実験的実施例14.組換えワクシニアウイルス(OTS-412)及びヒドロキシ尿素を同時投与した後のマウス腎臓がん細胞移植マウスにおける好中球絶対数(ANC)の特定
ORIENT BIO(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、7週齢)を7日間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが100mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後組換えワクシニアウイルスの投与を開始した。他方、組換えワクシニアウイルス(OTS-412)は、マウス腎臓がん細胞移植マウスモデルでほとんど増殖しない。
【0179】
調製されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、4群(n=4)に分割した。食塩水の腫瘍内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、ヒドロキシ尿素(30mg/kg)の投与を受ける群は陽性対照群として設定した。組換えワクシニアウイルス(OTS-412、1×10pfu)の投与を受ける群、組換えワクシニアウイルス(OTS-412、1×10pfu)及び組換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(rhG-CSF、75μg/kg)の投与を受ける群、並びに組換えワクシニアウイルス(OTS-412、1×10pfu)及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の投与を受ける群は、実験群として設定した。組換えワクシニアウイルスは腫瘍内に投与し、第2の投与は第1の投与の13日後に実行した。rhG-CSF又はヒドロキシ尿素は、組換えワクシニアウイルスの投与の2日前からマウスの屠殺まで腹腔内に投与した。
【0180】
組換えワクシニアウイルスを投与してから8日目に各群の3匹のマウスを屠殺することによって完全血球測定(CBC)を実行した結果、陽性対照群の好中球絶対数(ANC)は陰性対照群のそれと比較して減少したことが確認された。実験群では、好中球絶対数は、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素が同時投与された群だけで陽性対照群のそれに類似していると測定された(図20)。
【0181】
実験的実施例15.組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びヒドロキシ尿素を同時投与した後のマウス腎臓がん細胞移植マウスにおける好中球数の測定
Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが100mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後組換えワクシニアウイルスの投与を開始した。他方、組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)は、マウス腎臓がん細胞移植マウスモデルで増殖することができる。
【0182】
調製されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、3群(n=8)に分割した。食塩水の腫瘍内投与を受ける群は対照群として設定した。組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-、1×10pfu)の投与を受ける群、並びに組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-、1×10pfu)及びヒドロキシ尿素(60mg/kg)の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。組換えワクシニアウイルスは腹腔内に2回投与し、ヒドロキシ尿素は、組換えワクシニアウイルスの投与日を除いて、組換えワクシニアウイルスの投与の1日前から投与の21日目に腹腔内に1週につき6回投与した。
【0183】
組換えワクシニアウイルスを投与してから8日目に各群の3匹のマウスを屠殺して完全血球測定(CBC)を実行した結果、組換えワクシニアウイルスだけの投与を受けた群のマウスの血中好中球数は、対照群と比較して増加していた。一方、組換えワクシニアウイルス及びヒドロキシ尿素を同時投与した群のマウスの血中好中球数は、対照群と比較して有意に低減していた(図21)。
【0184】
実験的実施例16.組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)及びヒドロキシ尿素を同時投与した後のマウス腎臓がん細胞移植マウスにおける好中球絶対数(ANC)の特定
Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが100mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス由来腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418)の投与を開始した。
【0185】
調製されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、3群(n=3)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418、1×10pfu)の投与を受ける群は陽性対照群として設定し、腫瘍溶解性ウイルス及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は実験群として設定した。腫瘍溶解性ウイルスは腹腔内に1回投与し、ヒドロキシ尿素は、腫瘍溶解性ウイルスの投与の1日前から投与の2日目に腹腔内に毎日投与した。
【0186】
腫瘍溶解性ウイルスを投与してから3日目に各群のマウスを屠殺することによって完全血球測定(CBC)を実行した結果、実験群の好中球数に低下の傾向があったことが確認された(図22)。
【0187】
II.ワクシニアウイルス及びレナリドマイドの同時投与による相乗的抗がん効果の特定
【0188】
実験的実施例17.レナリドマイドを投与した後のマウス腎臓がん細胞移植マウスにおける好中球絶対数(ANC)の特定
Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。さらなる1週間の順化期間の後、マウスを3群(n=3)に分割し、腫瘍溶解性ウイルスの投与の1日前から投与の4日目に、食塩水、ヒドロキシ尿素(30mg/kg)及びレナリドマイド(30mg/kg)を腹腔内にそれぞれ毎日投与した。
【0189】
腫瘍溶解性ウイルスを投与してから5日目に各群のマウスを屠殺することによって完全血球測定(CBC)を実行した結果、レナリドマイドを投与した群のマウスの好中球数が、1匹の外れ値マウスを除いて食塩水を投与した群と比較して低減したことが確認された。また、ヒドロキシ尿素を投与した群のマウスの好中球数が食塩水を投与した群のそれより有意に低かったことが確認された(図23)。
【0190】
実験的実施例18.組換えワクシニアウイルス(WOTS-418)及びレナリドマイドを同時投与した後のマウス腎臓がん細胞移植マウスにおける好中球絶対数(ANC)の特定
Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが100mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス由来抗がん剤(WOTS-418)の投与を開始した。
【0191】
調製されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、4群(n=5)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418、1×10pfu)の投与を受ける群は陽性対照群として設定し、腫瘍溶解性ウイルス及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群、並びに腫瘍溶解性ウイルス及びレナリドマイド(30mg/kg)の同時投与を受ける群は実験群として設定した。腫瘍溶解性ウイルスは腹腔内に1回投与し、ヒドロキシ尿素又はレナリドマイドは、腫瘍溶解性ウイルスの投与の1日前から投与の2日目に腹腔内に毎日投与した。
【0192】
腫瘍溶解性ウイルスを投与してから5日目に各群のマウスを屠殺することによって完全血球測定(CBC)を実行した結果、実験群のマウスの好中球数が腫瘍溶解性ウイルスだけを投与した陽性対照群のそれより有意に低かったことが確認された(図24)。
【0193】
実験的実施例19.マウス腎臓がん細胞移植マウスにおける組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びレナリドマイドの同時投与後のがん治療効果の特定
Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが100mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後腫瘍溶解性ウイルスの投与を開始した。一方、ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス由来腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-)は、マウス腎臓がん細胞移植マウスモデルで増殖することができる。
【0194】
調製されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、6群(n=8)に分割した。実験は、以下の通りにマウスを分割することによって実行した:食塩水の腹腔内投与を受ける群は対照群として設定し、腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-、1×10pfu)だけの投与を受ける群、腫瘍溶解性ウイルス及びヒドロキシ尿素(60mg/kg)の同時投与を受ける群、並びに腫瘍溶解性ウイルス及びレナリドマイド(25mg/kg)の同時投与を受ける群。腫瘍溶解性ウイルスは腹腔内に2回投与し、ヒドロキシ尿素又はレナリドマイドは、腫瘍溶解性ウイルスの投与日を除いて、腫瘍溶解性ウイルスの投与の1日前から投与の21日目に腹腔内に1週につき6回投与した。
【0195】
21日目に各群のマウスを屠殺することによって腫瘍体積を測定した結果、腫瘍溶解性ウイルスを単独で投与した群では腫瘍増殖が対照群と比較して有意に阻害されたことが確認された(p<0.001)。腫瘍溶解性ウイルス及びレナリドマイドを同時投与した群は、レナリドマイドを単独投与した群と比較して腫瘍増殖を阻害する傾向を示した。特に、腫瘍溶解性ウイルス及びヒドロキシ尿素を同時投与した群は、腫瘍溶解性ウイルスを単独投与した群と比較して腫瘍増殖を有意に阻害したことが観察され(p<0.05)、レナリドマイド及びヒドロキシ尿素を同時投与した群は、腫瘍溶解性ウイルス及びヒドロキシ尿素を同時投与した群より高い腫瘍増殖阻害を示したことが確認された(図25)。
【0196】
III.ワクシニアウイルス及びパルボシクリブの同時投与による相乗的抗がん効果の特定
【0197】
実験的実施例20.マウス腎臓がん細胞移植マウスにおける組換えワクシニアウイルス(WR VVtk-)及びパルボシクリブの同時投与後のがん治療効果の特定
実験的実施例20.1.マウス腎臓がん細胞移植マウスの調製及び薬物投与
Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を1週間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが100mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後腫瘍溶解性ウイルスの投与を開始した。一方、ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス由来腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418)は、マウス腎臓がん細胞移植マウスモデルで増殖することができる。
【0198】
調製されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、5群(n=5)に分割した。実験は、以下の通りにマウスを分割することによって実行した:食塩水の腹腔内投与を受ける群は対照群として設定し、腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-、1×107pfu)だけの投与を受ける群、腫瘍溶解性ウイルス及びヒドロキシ尿素(60mg/kg)の同時投与を受ける群、並びに腫瘍溶解性ウイルス及びパルボシクリブ(50mg/kg又は100mg/kg)の同時投与を受ける群。腫瘍溶解性ウイルスは腹腔内に1回投与し、パルボシクリブは腫瘍溶解性ウイルスの投与の5日前から1週に1回経口投与し、ヒドロキシ尿素は、腫瘍溶解性ウイルスの投与日を除いて、腫瘍溶解性ウイルスの投与の1日前から投与の19日目に腹腔内に1週につき6回投与した。
【0199】
実験的実施例20.2.腫瘍体積の変化の特定
19日目に実験的実施例20.1の各群のマウスを屠殺することによって腫瘍体積を測定した結果、腫瘍溶解性ウイルスを単独で投与した群では腫瘍増殖が対照群と比較して統計的に有意に阻害されたことが確認された(p<0.05)。腫瘍溶解性ウイルス及びヒドロキシ尿素又はパルボシクリブを同時投与した群は、腫瘍溶解性ウイルスだけを投与した群と比較して腫瘍増殖を有意に阻害したことが観察された(p<0.0001)(図26)。
【0200】
実験的実施例20.3.体重変化の特定
実験的実施例20.1の対照群及び各群への各薬物の投与の後に、マウスの重量を3、6、9、12、16及び19日目に測定した。その結果、同時投与群の全てにおいて体重減少の傾向がなく、腫瘍溶解性ウイルスを単独で投与した群では体重の連続的減少の傾向があったものの、19日目の体重は投与開始時の体重と比較して90%近くに維持され、したがって、安全性は懸念されるレベルにないことが確認された(図27)。
【0201】
IV.ワクシニアウイルス、顆粒球生成阻害剤(ヒドロキシ尿素)及び免疫チェックポイント阻害剤の同時投与による相乗的抗がん効果の特定
【0202】
実験的実施例21.マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(I)における腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)、PD-1阻害剤及びヒドロキシ尿素の同時投与のがん治療効果の特定
腫瘍溶解性ウイルス及びPD-1阻害剤(CD279、BioXCell)(すなわち、免疫チェックポイント阻害剤の1つ)を同時投与した場合のヒドロキシ尿素の投与の追加の効果を確認するために、マウス腎臓がん細胞移植マウスを使用して実験を行った。
【0203】
先ず、Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を7日間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが200mm~300mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)の投与を開始した。腫瘍溶解性ウイルスは、同種移植モデルにおいて限定的な増殖能力を有する。
【0204】
調製されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、5群(n=5)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、マウスPD-1阻害剤(200μg/マウス)の投与を受ける群、腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)の腫瘍内投与を受ける群、並びに腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)及びPD-1阻害剤の同時投与を受ける群は陽性対照群として設定した。また、腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)、PD-1阻害剤及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は実験群として設定した。この場合、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍内に1回投与し、PD-1阻害剤は腹腔内に14、16、18及び20日目に2日おきに1回投与し、ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき6回投与した。
【0205】
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与から0、4、10、14、17及び21日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は、陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されたことが確認された(図28)。
【0206】
実験的実施例22.マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(II)における腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)、CTLA4阻害剤及びヒドロキシ尿素の同時投与のがん治療効果の特定
腫瘍溶解性ウイルス及びCTLA-4阻害剤(B7-H1、BioXCell)(すなわち、免疫チェックポイント阻害剤)を同時投与した場合のヒドロキシ尿素の投与の追加の効果を確認するために、マウス腎臓がん細胞移植マウスを使用して実験を行った。
【0207】
先ず、Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を7日間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが50mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)の投与を開始した。腫瘍溶解性ウイルスは、同種移植モデルにおいて限定的な増殖能力を有する。
【0208】
調製されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、5群(n=6)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、CTLA-4阻害剤(150g/マウス)の投与を受ける群、腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)の腫瘍内投与を受ける群、並びに腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)及びCTLA-4阻害剤の同時投与を受ける群は陽性対照群として設定した。また、腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)、CTLA-4阻害剤及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は実験群として設定した。この場合、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍内に1回投与し、CTLA-4阻害剤は腹腔内に3、5、7及び9日目に2日おきに1回投与し、ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき6回投与した。
【0209】
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与から0、4、7、10、14及び17日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は、陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されたことが確認された(図29)。これらの結果から、腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤(CTLA-4阻害剤)を同時投与した場合、それへのヒドロキシ尿素のさらなる投与はマウス腎臓がんを抑制する優れた効果の発揮をもたらしたことが確認された。
【0210】
実験的実施例23.マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(III)における腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素の同時投与のがん治療効果の特定
腫瘍溶解性ウイルス及びPD-L1阻害剤(CD152、BioXCell)(すなわち、免疫チェックポイント阻害剤の1つ)を同時投与した場合のヒドロキシ尿素の投与の追加の効果を確認するために、マウス腎臓がん細胞移植マウスを使用して実験を行った。
【0211】
先ず、Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を7日間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが50mm~100mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-)の投与を開始した。腫瘍溶解性ウイルスは、同種移植モデルにおいて限定的な増殖能力を有する。
【0212】
調製されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、5群(n=6)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、PD-L1阻害剤(300μg/マウス)の投与を受ける群、腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)の腫瘍内投与を受ける群、並びに腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)及びPD-L1阻害剤の同時投与を受ける群は、陽性対照群として設定した。また、腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。この場合、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍内に1回投与し、PD-L1阻害剤は腹腔内に0、3、7、10、14、17及び21日目に投与し、ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき6回投与した。
【0213】
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与から0、3、7、10、14、17及び21日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は、陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されたことが確認された(図30)。特に、マウスを屠殺する前の腫瘍体積を比較すると、実験群の腫瘍体積は、腫瘍溶解性ウイルス及びPD-L1阻害剤の同時投与を受けた群のそれより約46%小さかったことが確認された。
【0214】
これらの結果から、腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤(PD-L1阻害剤)を同時投与した場合、それへのヒドロキシ尿素のさらなる投与はマウス腎臓がんを抑制する優れた効果の発揮をもたらしたことが確認された。
【0215】
実験的実施例24.マウス乳がん細胞移植マウス:4T1(I)における腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-)、CTLA-4阻害剤及びヒドロキシ尿素のがん治療効果の特定
実験的実施例24.1.マウス乳がん細胞移植マウスの調製及び薬物投与
腫瘍溶解性ウイルス及びCTLA-4阻害剤(B7-H1、BioXCell)を同時投与した場合のヒドロキシ尿素の投与の追加の効果を確認するために、マウス乳がん細胞移植マウスを使用して実験を行った。
【0216】
先ず、Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を7日間の順化にかけ、次に4T1がん細胞株(Korea Cell Line Bank)を1×10細胞で同種移植した。それが50mm~150mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、次に腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-)の投与を開始した。ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス由来腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-)は、同種移植モデルにおいてワイス株ワクシニアウイルス由来腫瘍溶解性ウイルスより強力な増殖能力を有する。
【0217】
調製されたマウス乳がん細胞移植マウスは、5群(n=5)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、CTLA-4阻害剤(300μg/マウス)の投与を受ける群、腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-、1×10pfu)の腫瘍内投与を受ける群、並びに腫瘍溶解性ウイルス(Wyeth VVtk-、1×10pfu)及びCTLA-4阻害剤の同時投与を受ける群は陽性対照群として設定した。また、腫瘍溶解性ウイルス(WR VVtk-、1×10pfu)、CTLA-4阻害剤及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は実験群として設定した。この場合、腫瘍溶解性ウイルスは腹腔内に2回投与し、CTLA-4阻害剤は腹腔内に3、5、7及び9日目に投与し、ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき6回投与した。
【0218】
実験的実施例24.2.腫瘍体積の変化の特定
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与から0、3、7、10及び14日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は、陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されたことが確認された(図31)。
【0219】
実験的実施例24.3.生存率の分析
さらに、生存期間中、実験群のマウスの生存期間及び生存率は最高であることが示されたことが確認された。この結果から、腫瘍溶解性ウイルス及びCTLA-4阻害剤をマウス乳がん細胞移植マウスに同時投与した場合、ヒドロキシ尿素のさらなる投与は有意な効果を示したことが確認された。
【0220】
実験的実施例25.マウス乳がん細胞移植マウス:4T1(II)における腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素のがん治療効果の特定
実験的実施例25.1.マウス乳がん細胞移植マウスの調製及び薬物投与
腫瘍溶解性ウイルス及びPD-L1阻害剤(CD152、BioXCell)を同時投与した場合のヒドロキシ尿素の投与の追加の効果を確認するために、マウス乳がん細胞移植マウスを使用して実験を行った。
【0221】
先ず、Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を7日間の順化にかけ、次に4T1がん細胞株(Korea Cell Line Bank)を1×10細胞で同種移植した。それが50mm~100mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、次に腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418)の投与を開始した。ウェスタン・リザーブ株は、同種移植モデルにおいてワイス株より強力な増殖能力を有する。
【0222】
調製されたマウス乳がん細胞移植マウスは5群(n=6)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、PD-L1阻害剤(300μg/マウス)の投与を受ける群、腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418、1×10pfu)の腫瘍内投与を受ける群、並びに腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418、1×10pfu)及びPD-L1阻害剤の同時投与を受ける群は、陽性対照群として設定した。また、腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418、1×10pfu)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。この場合、腫瘍溶解性ウイルスは腹腔内に2回投与し、PD-L1阻害剤は腹腔内に3、5、7及び9日目に投与し、ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき6回投与した。
【0223】
実験的実施例25.2.腫瘍体積の変化の特定
腫瘍体積は、実験的実施例5.1の各群のマウスへの薬物投与から0、3、7、10及び14日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は、陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されたことが確認された(図32)。特に、マウスを屠殺する前の腫瘍体積を比較すると、実験群の腫瘍体積は、腫瘍溶解性ウイルス及びPD-L1阻害剤の同時投与を受けた群のそれより約30%小さかったことが確認された。
【0224】
これらの結果から、腫瘍溶解性ウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤(PD-L1阻害剤)を同時投与した場合、それへのヒドロキシ尿素のさらなる投与はマウス乳がんを抑制する相乗効果の発揮をもたらしたことが確認された。
【0225】
実験的実施例25.3.生存率の分析
実験的実施例5.1の各群のマウスの30日間の生存率を分析した。その結果、実験群のマウスの生存率は陰性及び陽性対照群のマウスのそれより高かったことが確認された。
【0226】
実験的実施例26.マウス結腸直腸がん細胞移植マウス:CT-26Iにおける腫瘍溶解性ウイルス(WR、WOTS-418)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素による生存率の分析
ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス(WR)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素の同時投与の後の安全性を確認するために、マウス結腸直腸がん細胞移植マウスを使用して生存期間を分析した。
【0227】
先ず、Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を7日間の順化にかけ、次に結腸直腸がん(CT-26)(Korea Cell Line Bank)を1×10細胞で皮下移植した。7日後、腫瘍溶解性ウイルス(WR)及びPD-L1阻害剤を腹腔内に投与し、その翌日から5日間、ヒドロキシ尿素を毎日投与した。一方、ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルスは、同種移植モデルにおいてワイス株ワクシニアウイルスより強力な増殖能力を有する。
【0228】
調製されたマウス結腸直腸がん細胞移植マウスは、5群(n=13)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、PD-L1阻害剤(300μg/マウス)の単独投与を受ける群、並びに腫瘍溶解性ウイルス(WOTS-418)及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群は陽性対照群として設定した。また、腫瘍溶解性ウイルス(WR、1×10pfu又はWOTS-418、1×10pfu)、PD-L1阻害剤及びヒドロキシ尿素の同時投与を受ける群は、実験群として設定した。この場合、腫瘍溶解性ウイルスは腹腔内に1回投与し、PD-L1阻害剤は腹腔内に1、4、8及び11日目に投与し、ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき5回投与した。
【0229】
各群のマウスの生存曲線を分析した結果、実験群のマウスの生存期間は陰性対照群のマウス及び陽性対照群のマウスと比較して最も長かったことが観察された。これらの結果から、腫瘍溶解性ウイルス、免疫チェックポイント阻害剤及びヒドロキシ尿素を同時投与した場合、安全性が向上したことが確認された。
【0230】
実験的実施例27.マウス腎臓がん細胞移植マウス:Renca(IV)におけるウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス(WR)、CTLA-4阻害剤及びヒドロキシ尿素による生存率の分析
ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス(WR)及びCTLA-4阻害剤(B7-H1、BioXCell)(すなわち、免疫チェックポイント阻害剤の1つ)を同時投与した場合のヒドロキシ尿素の投与の追加の効果を確認するために、マウス腎臓がん細胞移植マウスを使用して実験を行った。
【0231】
先ず、Orient Bio(Busan、Korea)から購入したBalb/cマウス(雌、8週齢)を7日間の順化にかけ、次にRencaがん細胞株(Korea Cell Line Bank)を5×10細胞で同種移植した。それが30mm~50mmに到達するまで腫瘍体積を観察し、その後ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス(WR)の投与を開始した。ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス(WR)は、同種移植モデルにおいてワイス株ワクシニアウイルスより強力な増殖能力を有する。
【0232】
調製されたマウス腎臓がん細胞移植マウスは、4群(n=4)に分割した。食塩水の腹腔内投与を受ける群は陰性対照群として設定し、ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス(WR、1×10pfu)及びヒドロキシ尿素(30mg/kg)の同時投与を受ける群、並びにウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス及びCTLA-4阻害剤(マウスごとに150μg)の同時投与を受ける群は陽性対照群として設定した。また、ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルス、CTLA-4阻害剤及びヒドロキシ尿素の同時投与を受ける群は実験群として設定した。この場合、ウェスタン・リザーブ株ワクシニアウイルスは腹腔内に1回投与し、CTLA-4阻害剤は腹腔内に2、4、6及び8日目に投与し、ヒドロキシ尿素は腹腔内に1週につき4回投与した。
【0233】
腫瘍体積は、各群のマウスへの薬物投与から0、3及び7日目に測定した。その結果、実験群のマウスの腫瘍体積は、陽性対照群のマウスの腫瘍体積と比較して有意に抑制されたことが確認された(図33)。
図1
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図32
図33
【配列表】
2022545191000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を活性成分として含む、がん治療用医薬組成物。
【請求項2】
前記ワクシニアウイルスが、ウェスタン・リザーブ(Western Reserve、WR)、ニューヨーク・ワクシニアウイルス(NYVAC)、ワイス(ニューヨーク市保健局;NYCBOH)、LC16m8、リスター(Lister)、コペンハーゲン(Copenhagen)、ティアンタン(Tian Tan)、USSR、タシュケント(TashKent)、エバンス(Evans)、国際保健部-J(IHD-J)又は国際保健部-ホワイト(IHD-W)ワクシニアウイルス株に属する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ワクシニアウイルスが野生型ワクシニアウイルス又は組換えワクシニアウイルスである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組換えワクシニアウイルスが、野生型ワクシニアウイルスから少なくとも1つの遺伝子を欠失させるか又は野生型ワクシニアウイルスに外来遺伝子を挿入することによって得られる、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記野生型ワクシニアウイルスの前記遺伝子が、チミジンキナーゼ遺伝子、ワクシニア増殖因子遺伝子、F13.5L遺伝子、F14.5L遺伝子、A56R遺伝子、B18R遺伝子及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記外来遺伝子が、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、変異したHSV-TK、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、シトシンデアミナーゼ(CD)、カルボキシルエステラーゼ1型、カルボキシルエステラーゼ2型、インターフェロンベータ(INF-β)、ソマトスタチン受容体2及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つをコードする遺伝子である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記がんが、肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、甲状腺がん、乳がん、脳がん、頭頸部がん、食道がん、皮膚がん、胸腺がん、胃がん、結腸がん、肝がん、卵巣がん、子宮がん、膀胱がん、直腸がん、胆嚢がん、胆道がん、膵がん及びその組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記顆粒球生成阻害剤がヒドロキシ尿素、レナリドマイド、サリドマイド、タダラフィル、パルボシクリブ、アルキル化剤、アントラサイクリン、代謝拮抗物質、カンプトセシン、エピポドフィロトキシン、マイトマイシンC、タキサン又はビンブラスチンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記顆粒球が好中球である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
免疫チェックポイント阻害剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ワクシニアウイルスのがん選択性が増加したものである、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
活性成分としてワクシニアウイルスを含む第1の組成物と、
活性成分として顆粒球生成阻害剤を含む第2の組成物と、
を含む、がん予防又は治療用キット。
【請求項13】
活性成分として免疫チェックポイント阻害剤を含む第3の組成物をさらに含む、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
粒球生成阻害剤と併用されることを特徴とする、ワクシニアウイルスを含がん治療用医薬組成物
【請求項15】
さらに免疫チェックポイント阻害剤と併用される、請求項14に記載の医薬組成物
【請求項16】
記顆粒球生成阻害剤同時に、逐次的に又は逆順に併用投与される、請求項14又は15に記載の医薬組成物
【請求項17】
前記顆粒球生成阻害剤が、前記医薬組成物の投与の前、その間又は後に投与される、請求項14又は15に記載の医薬組成物
【請求項18】
前記顆粒球生成阻害剤が、前記医薬組成物の投与の3~5日前から開始して、前記医薬組成物の投与の後の9~28日間、1日1回連続的に投与される、請求項14又は15に記載の医薬組成物
【請求項19】
前記顆粒球生成阻害剤が10mg/kg/日~90mg/kg/日の用量で投与される、請求項14~18のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項20】
前記ワクシニアウイルスが1×10pfu~1×1010pfuの用量で投与されるように用いられる、請求項14~19のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項21】
~30日の間隔で個体に投与される、請求項14~20のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項22】
前記顆粒球生成阻害剤が腫瘍内、腹腔内又は静脈内に投与される、請求項14~21のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項23】
瘍内、腹腔内又は静脈内に投与される、請求項14~22のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項24】
がんを有する非ヒト個体にワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を投与するステップを含む、がんを治療する方法
【請求項25】
がんを予防又は治療するための医薬の製造のための、ワクシニアウイルス及び顆粒球生成阻害剤を含む組成物の使用。
【請求項26】
顆粒球生成阻害剤を活性成分として含む、抗がんアジュバント。
【請求項27】
活性成分としてワクシニアウイルスを含む抗がん剤の抗がんアジュバントとして使用される、請求項26に記載の抗がんアジュバント。
【請求項28】
前記ワクシニアウイルスの抗がん活性を向上させるか、増強するか、又は増加させる、請求項27に記載の抗がんアジュバント。
【請求項29】
前記ワクシニアウイルスのがん選択性を増加させる、請求項27又は28に記載の抗がんアジュバント。
【請求項30】
前記顆粒球生成阻害剤がヒドロキシ尿素、レナリドマイド、サリドマイド、タダラフィル、パルボシクリブ、アルキル化剤、アントラサイクリン、代謝拮抗物質、カンプトセシン、エピポドフィロトキシン、マイトマイシンC、タキサン又はビンブラスチンである、請求項26~29のいずれか一項に記載の抗がんアジュバント。
【国際調査報告】