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▶ エンテック マニュファクチャリング エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(54)【発明の名称】格子を含む付加製造押出部品
(51)【国際特許分類】
   B22F 5/00 20060101AFI20221019BHJP
   B22F 10/14 20210101ALI20221019BHJP
   B22F 10/16 20210101ALI20221019BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20221019BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20221019BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20221019BHJP
   C22C 14/00 20060101ALN20221019BHJP
   C22C 29/08 20060101ALN20221019BHJP
   B29C 48/505 20190101ALN20221019BHJP
【FI】
B22F5/00 F
B22F10/14
B22F10/16
B22F10/28
B33Y80/00
B22F7/08 D
C22C14/00 Z
C22C29/08
B29C48/505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509172
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 US2020046393
(87)【国際公開番号】W WO2021030695
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】62/886,825
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522055876
【氏名又は名称】エンテック マニュファクチャリング エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ENTEK MANUFACTURING LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ アレン ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4F207
4K018
【Fターム(参考)】
4F207AJ08
4F207KA01
4F207KA17
4F207KL05
4F207KL07
4F207KL22
4F207KL23
4F207KL31
4F207KL38
4F207KL41
4K018AA07
4K018AA10
4K018AA24
4K018AA33
4K018AD06
4K018BA04
4K018BA13
4K018BA17
4K018JA07
4K018KA18
4K018KA19
4K018KA22
(57)【要約】
不浸透性面及び軸開口を画定する構造支持フレーム内に形成される格子構造を備える付加製造された押出部品が開示されている。ねじ部の軸開口は駆動シャフトと結合するように構成され、前記ねじ部の不浸透性面は押出可能材料と接触するように構成される。筒部の軸開口は押出可能材料と接触するように構成される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不浸透性ねじ面及び軸開口を画定する構造支持フレーム内に形成される格子構造を備える付加製造された押出部品であって、
前記不浸透性ねじ面は、押出可能材料と接触するように構成され、
前記軸開口は駆動シャフトと結合するように構成される、
付加製造された押出部品。
【請求項2】
不浸透性外面及び軸開口を画定する構造支持フレーム内に形成される格子構造を備える付加製造された押出部品であって、
前記軸開口は押出ねじ部品を格納するように構成される、
付加製造された押出部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、前記格子構造は梁形状の格子を含む、付加製造された押出部品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の付加製造された押出部品であって、前記格子構造はビンタイルズ(vintiles)格子を含む、前記格子構造は
【請求項5】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、前記格子構造は三重周期最小表面(TPMS)系格子を含む、付加製造された押出部品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、前記格子構造は、ジャイロイド形状格子、ダイアモンド形状格子、基本形状格子、及び上記の組み合わせを含む群から選ばれる三重周期最小表面(TPMS)系格子を含む、付加製造された押出部品。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、前記格子構造は、シートの変形型、骨組構造の変形型、及び上記の組み合わせを含む群から選ばれる三重周期最小表面(TPMS)系格子を含む、付加製造された押出部品。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、前記格子構造は均一な部分体積を含む、付加製造された押出部品。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、前記格子構造は、第1部分体積を有する第1領域、及び、前記第1部分体積とは異なる第2部分体積を有する第2領域を含む、付加製造された押出部品。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、前記格子構造は、第1形状、及び、前記第1形状とは異なる第2形状を有する、付加製造された押出部品。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、前記格子構造は、第1格子配向、及び、前記第1格子配向とは異なる第2格子配向を有する、付加製造された押出部品。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、
前記格子構造は、内側領域と外側領域を有し、
前記内側領域と外側領域は、該内側領域と外側領域との間での流体透過を防止する障壁によって分離されている、
付加製造された押出部品。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、
前記格子構造は、内側領域と外側領域を有し、
前記内側領域と外側領域は、該内側領域と外側領域との間での流体透過を防止する障壁によって分離され、
前記内側領域は、前記内側領域の前記格子構造に冷却剤を通過させる冷却剤の流入口と流出口を有する、
付加製造された押出部品。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、
前記格子構造は、熱交換器を構成する三重周期最小表面(TPMS)系格子を含み、
前記熱交換器は、第1組のフローチャネルと第2組のフローチャネルを有し、
前記第1組は冷却剤を輸送するように構成され、
前記第2組は、前記冷却剤から前記格子構造を介して熱を吸収する伝熱流体を輸送するように構成される、
付加製造された押出部品。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、
【請求項16】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、前記軸開口を画定する内面、及び、前記格子構造に対向する外面を有する交換可能なバレルスリーブをさらに備える、付加製造された押出部品。
【請求項17】
請求項1又は2に記載の付加製造された押出部品であって、前記格子構造に隣接して前記軸開口を画定する内側不浸透性性軸壁をさらに備える、付加製造された押出部品。
【請求項18】
付加製造された押出ベントインサートであって、
不浸透性性本体と、
前記不浸透性性本体に結合されて、押出バレルと流体連通するように構成される内面を有する格子構造を含む有孔性フィルタ、
を備える、付加製造された押出ベントインサート。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年8月14日に出願された米国仮特許出願第62/886,825号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、高精度、高摩耗又は高腐食耐性部品を造形する付加製造技術に関し、特に、押出機械のねじ及びバレル部品の造形に関する。
【背景技術】
【0003】
ベンジャミン(Benjamin)らの特許文献1は、摩耗した金属製押出加工要素の修復のためのプロセスを記載している。とりわけこのプロセスは、新しい押出部品向けの同様の製造工程でも採用されている熱間等方圧加圧法(HIP)の使用を伴う。粉末金属HIP法を用いたねじの製造は、HIPキャニスターで加熱された高価な粉末金属工具鋼から円筒形のブランクを製造するHIP炉に電力を供給するのに大量のエネルギーを消費する。さらに、円筒形ブランクの後処理を実行するのに時間とエネルギーが費やされる。例えば、ブランクには、異なるフライトピッチ構成又はニーディングブロックローブのスタイルを作成するための機械加工工程が施される。また、フライト及びローブを作る際にブランクの大部分(例えば重量又は体積で10%超)が切り取られるため、大規模な機械加工は、相対的に大きな重金属の廃棄物流を発生させる。さらに、ブランクはスプライン形状を作るためにブローチ加工される。そして一旦部品が機械加工されると、その部品は、粉末金属材料をさらに硬化させるために別の熱処理工程を経る。
【0004】
従来のバレル設計では、(ボアと平行な)軸方向のドリル穴と、それらをつなぐクロスドリル穴を介して冷却ジャケットが作られる。穴の両端には、エキスパンダープラグとも呼ばれるCVプラグが取り付けられている。冷却流体は、入口穴から出口穴に送られる。このCVプラグ構造の冷却ジャケットは、通常、水が充満した冷却通路として使用される。冷却媒体は出口に達するまで冷却ジャケット内を自由に流れる。また、特定の経路がバレル内に画定されている直列設計もある。これらの設計では、冷却流体は入口孔から出口孔に送られるが、入口から出口までの流路は通常1つだけである。直列設計は、(ボアと平行な)バレルの軸方向に開けられた冷却穴で構成される。交差チャネルがバレルの両面に加工して設けられ、これらのチャネルは軸方向の冷却穴同士を接続し、穴から穴へと流体を誘導することで、流路はバレルの周囲を蛇行する。接続チャネルはバレルの両端でキャップによって覆われる。このキャップは、クロスオーバーチャネルのすぐ外側に位置する(バレルの端面を向く)チャンネルに挿入されて溶接されたリングで構成される。
【0005】
付加製造(AM、ただし3Dプリントとも呼ばれる)は、当初、試作品製造装置として使用するために開発された。この技術は、製造速度が遅く、利用可能な材料の選択が限られ、かつ相対的に精度、再現性、及び部品の耐久性が低いことによって制限されていた。その後時間が経つにつれて、材料の利用可能性はフォトポリマーからプラスチック、セラミック、金属、複合材料へと進化し、プリント部品の耐久性が向上した。
【0006】
最近では、AM技術は医療及び航空宇宙用途に採用されており、それらの用途では、コバルトクロム、インコネル、アルミニウム、ステンレス鋼、チタンなどの材料が造形用に開発されてきた。これらの材料は、より柔らかく、耐摩耗性のない材料が適している用途に展開されてきた。より高い硬度が求められる用途では、マルエージング鋼が開発されてきたが、この材料は耐摩耗性に欠ける。他の試みでは、M2材料及びM4材料が試みられてきた。
【0007】
金属部品を製造することができるAMには複数の種類がある。そのようなAMの4つのカテゴリーは、材料噴射、バインダー噴射、粉末床溶融、及び指向性エネルギー堆積(DED)を含む。
【0008】
材料噴射は、金属粒子が液体中で懸濁するナノ粒子噴射を含む。これは本質的にインクジェットプリントで、その後、液体は熱で蒸発される。得られた部品は、その後、炉の中で焼結される。
【0009】
バインダー噴射は、粒子を懸濁させることを除いて材料噴射に類似している。懸濁粒子は粉体として塗布され、その粉体にバインダーが塗布される。その後、部品は硬化される。
【0010】
粉体床溶融は、光または電子ビームによって提供される熱エネルギーを用いた粉末の溶融を必要とする付加製造の一種である。3D部品は、造形媒体として微細な粉末を使用して、1回に1層ずつ作成されされる。現在、光ビームを用いた粉体床溶融には主に2つの方式がある。第1の型は、選択的レーザー焼結(SLS)と呼ばれるものである。SLSでは、レーザービームは、粉体材料-たとえばプラスチック、ナイロン、及びセラミック-をレーザー光で焼結する。DMLS(直接金属レーザー焼結法)は、粉末が金属である類似の技術である。粉末床溶融の第2の型は、選択的レーザー溶融(SLM)と呼ばれ、直接金属レーザー溶融(DMLM)またはレーザー粉末床溶融(LPBF)としても知られている。SLMプロセスでは、レーザーが粉末層に溶融プールを生成する。この溶融プールは急速に冷却されて固化することで部品を形成する。
【0011】
DEDには、レーザー直接積層(LENS)法と電子ビーム積層造形(EBAM)法が含まれる。粉末層を焼結又は溶融する代わりに、供給材料は熱エネルギーで同時に堆積及び硬化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第8595910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本出願人であるオレゴン州レバノンのエンテックマニュファクチュアリングLLC(ENTEK Manufacturing LLC)は、AM技術の既存の応用が押出部品に最適化されていないことを認識していた。例えばエンテックは、AM技術が、以下の利点のうちの1以上を有する押出部品を開発するように最適化され得ることを認識した。その利点とは、最小限の後処理しか必要としないニアネットパーツであること、複数の材料を含むこと、空隙又は格子構造を有するボクセルを含むことで原材料の使用及び重量を減らして最適化された冷却(冷却ジャケット効率の向上)及び耐摩耗性をもたらすこと、である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って押出部品をニアネット形状として造形することを可能にし、それによって押出ねじ部材に求められる厳しい公差を得るために採用される仕上げ加工工程を大幅に削減する、3Dプリント方法、システム、及び装置に関する技術が開示される。押出部品の文脈では、ニアネットとは、造形された部品が後処理工程で機械加工によって除去されないか、または最小限(例えば、20%未満のわずかな量)しか機械加工で除去されないことを意味する。したがってニアネットは、後処理を行わないか、または最小限の後処理を包含する。
【0015】
従来の製造部品に対する3Dプリント部品の他のいくつかの利点は、材料使用の減少、仕上げ機械作業の減少、リードタイムの減少、すべての処理が社内で行われること、部品の追加カスタマイズが可能なこと、従来の機械加工での制約のために不可能とされてきた新しい設計の可能性があること、固定器具及び工具の減少、原料準備、すなわち熱間静水圧プレス(HIP)缶が不要となること、関与する製造工程の減少、労働の減少及び部品が無人で造形可能であることを含む。
【0016】
AMねじ、及びより一般的には、任意のAM製造されたマルチマテリアル押出部品(バレル部材又は交換可能なスリーブを含む)は、重量及び材料使用量を低減させるより軽い内部材料又は空隙で製造され得る。したがってAM製造技術は、(1)初期経済的利益をもたらす生産における材料消費、及び(2)出荷及び運用コストの削減という点でその後の経済的利益をもたらす物品の最終重量の両方を低減する。さらにこれらの利益は、大きな部品-たとえばバレル-でより顕著になる。
【0017】
従来の製造は、金属AMに比べて少なくとも4~6倍のエネルギーを消費すると推定される。さらにマルチマテリアルプリントを使用することにより、一部の実施形態では、HIP固化処理/肉盛溶接工程を省略することができ、部品をニアネット形状で造形し、内部格子を含む(すなわち、材料を節約する)又は(任意で完全な密度で)複数の材料を含むか、延性材料と耐摩耗材料を組み合わせて、エネルギーをさらに節約することができる。
【0018】
運用コストの削減という点では、重量の減少は、設置の容易さ(例えば、人件費の節約)及びバレルボアにおけるねじのセンタリングを改善するのに有益である。センタリングが不十分又は妥協したものである状況/用途と比較して、センタリングの改善は、重力による法線力が減少する結果として摩耗を低減することによって、部品の有効寿命を延長させる。例えば、AM 内部は従来の稠密コアよりも密度が低く、重量も軽くなり得るため、押出ボア内でより容易にセンタリングされる。押出内を流れる押出成形体は、ねじに流体力学的な力を作用させる。この力により、ねじは押出内部の中心に配置されやすくなる。ねじの重量が減少すると、法線力(F=μN)が減少し、システム内の摩擦力が減少する。従ってねじとバレルに作用する接触運動による摩擦摩耗が減少する。摩耗が少なくなることで、ねじ及びバレルの耐用年数が長くなり、次に説明するように、造形することもできるので、材料消費および重量が減少するという前述の利点の恩恵を受けることができる。
【0019】
他の態様および利点は、添付の図面を参照しながら進む好適実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来技術に係るHIPプロセスを用いて製造される従来のバイメタルねじの断面図である。
図2図1のバイメタルねじの2-2面での断面図である。
図3】硬いフライト先端部を備える3D造形された基部を有するバイメタルねじの断面図である。
図4図3のバイメタルねじの4-4面での断面図である。
図4A図4で示された領域の詳細図で、硬いフライト先端部を備える3D造形された基部の界面を構成する傾斜機能材料(FGM)の拡大図を示している。
図4B】従来技術による3Dプリントによる基部の図4及び図4Aと同様の領域の詳細図であるが、別の製造工程中に付与されたLENSクラッドの拡大図を示している。
図5】本開示の一の実施形態による造形された外側表面を有する付加製造されたバイメタル造形ねじの断面図である。
図6図5の付加製造されたバイメタル造形ねじの6-6での断面図である。
図7】第1の付加製造された金属組成物の軸穴ライナーと該軸穴ライナーの基部支持体を有する付加製造により造形されたバレルの端部図である。図中、前記基部支持体は、前記第1の付加製造された金属組成物とは異なる第2の付加製造された金属組成物を有する。
図8図8Aは、ノードを接続する梁を含むボクセルを示す等角図である。図8Bは、図8Aのノードと梁との間で延在するシェル(メッシュ)を示す等角図である。図8Cは、図8Aに含まれるボクセルを備える格子と、格子の外側層と稠密外側層のオプションを示す等角図である。
図9A】コンベヤねじ部分を含む造形ねじ部分の等角図である。
図9B】ニーディングねじ部分を含む造形ねじ部分の等角図である。
図10図9Aの線10-10での断面である。
図11A図10に示された領域の詳細図で、梁形状格子の拡大図を示している。
図11B図10及び図11Aに示されたものと同様の領域の詳細図であるが、三重周期最小表面(TPMS)系ジャイロイド型格子を示している。
図12】任意の加熱又は冷却装置を有するバレルの等角図である。
図13図12の線13-13での断面図で、内部の梁形状格子を示している。
図14図12の線14-14での断面図で、内部の梁形状格子を示している。
図15A図13に示された領域の詳細図で、梁形状格子の拡大図を示している。
図15B図13及び図15Aで示されたのと同様の領域の詳細図だが、部分体積が均一なジャイロイド型格子を示している。
図15C図13及び図15Aで示されたのと同様の領域の詳細図だが、部分体積が変化するジャイロイド型格子を示している。
図15D図13及び図15Aで示されたのと同様の領域の別な詳細図だが、ジャイロイド型格子と基本形状格子とを結合した格子をそれらの間の混成領域と共に示している。
図15E】オクテットトラスを示す等角図である。
図15F】ジャイロイド骨組形状の変形例を示す等角図である。
図15G】ジャイロイドシート形状の変形例を示す等角図である。
図15H】ダイアモンド骨組形状の変形例を示す等角図である。
図15I】ダイアモンドシート形状の変形例を示す等角図である。
図15J】ビンタイルズ(vintiles)形状の変形例を示す等角図である。
図15K】熱交換器としての二重ジャイロイド格子の等角図である。
図16】押出バレルから気体を排気するための内部有孔性領域を有する付加製造されたベント式押出部品を示す等角図である。
図17図16のベント式押出部品の線17-17での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ねじ製品の中には、図1及び図2のねじ10に示すように、いわゆるバイメタル材料メイクアップを含むものがある。駆動スプライン14(図2)を画定する内側コア12は、軟質で延性のある円筒形状の1018軟鋼である。内側コア12を包含する領域を形成する外側シェル16は、耐摩耗性粉末金属工具鋼から作られる。このバイメタル材料は、粉末金属を稠密化し、外側シェル16の構成要素を内側コア12に結合させるHIPプロセスを経て作られる。
【0022】
[押出部品用の複数のAM材料及び傾斜機能材料]
エンテックは、稠密な単一材料の押出ねじとバレル要素を3Dプリントするプロセスの開発にAMを採用した。AMはまた、延性支持材料と摩耗表面材料のような異なる金属間の勾配、すなわち傾斜機能材料(FGM)を画定する機能をも提供する。
【0023】
FGMは、所与の体積全体にわたって組成と構造が変化していることが特徴である。化学的性質と微細構造におけるこの段階的な変化により、多くの異なる材料の組み合わせを共加工することができる。これらの組み合わせには、金属と金属、金属とセラミック、セラミックとセラミック、およびセラミックとポリマーが含まれる。
【0024】
FGMは、熱膨張特性が不一致の材料を組み合わせたときに生じる応力を、遷移領域にわたって分散させることができる。FGM技術は、これらの応力を、より大きな面積に勾配を付けて広げる。FGMを使用することで、熱応力を30%程度低減できることが研究により明らかになってきた。(篠原嘉一、『ハンドブック・オブ・アドバンストセラミックス』第2版、2013年)。
【0025】
FGM技術の利点は、3Dプリントビルドサイクル内で選択的な粉末分布を採用できることである。粒子径は、焼結特性を制御する方法として制御及び変化され得る。これにより、全く異なる組成物を、同じレーザーパラメータとスキャン計画で処理することができる。例えば、図3、4、4Aは、インコネル718系支持体32と、押出可能材料に接触するように構成された先端を画定するコルモノイ4表面層34とを有する3Dプリントにより造形されたねじ30を示す。コルモノイ4材料は、ニッケル系材料であるが、ベース支持体32のものよりも優れた耐摩耗性を向上させる要素をその中に有する。他の耐摩耗性又は耐腐食性の付加的に製造された金属組成物がこれと同様に用いられ得る。付加製造された金属組成物には、金属材料、メタロイドおよびメタロイド含有材料(例えば、炭化ケイ素)、金属材料を有する複合材料(セラミックス金属基複合材料)、および押出部品の製造に用いることができる他の材料が含まれる。
【0026】
一般的なAMプロセス中にインコネル原料を用いて強靭で延性のあるベース支持体32を造形する一方で、フライトの先端で脆くて硬い表面層34を造形すると、表面層34をベース支持体32に接続する第1及び第2の付加製造された金属組成物から形成される応力が小さく、緊密に結合したFGM遷移領域36を提供することができる。具体的には、図4Aは、FGM遷移領域36が、第1の付加製造された金属組成物38(例えば、表面層34を形成する黒丸として表されるコルモノイ4)から第2の付加製造金属組成物40(例えば、ベースサポート32を形成する四角として表されるインコネル)への漸進的遷移を画定していることを示している。一部の実施形態では、FGM遷移領域36における組成物40から組成物38への漸進的混合は、選択的粉末堆積と組み合わせたLPBF又はバインダー噴霧造形技術を使用して達成される。
【0027】
材料の厚さは、押出の用途に応じて変化し得る。一の実施形態では、表面層34は、押出ボア直径の約2.5パーセントに等しい厚さ42を有する。FGM遷移領域36は、押出ボア直径の約7.5パーセントに等しい厚さ44を有する。厚さ44に沿った様々な点における黒丸及び正方形の分布は、FGM遷移領域36の勾配を表している。一部の実施形態では、FGM遷移領域を画定する分布は、線形、階段状、シグモイド曲線状の分布で実現可能で、又は他の金属間遷移も可能である。
【0028】
HIP圧密/肉盛溶接又はLENSを使用してバイメタル押出部品を製造する従来の方法では、2つの材料の間に明確な界面が形成される。この明確な界面により、材料の組み合わせが制限される。熱応力がこの明瞭な界面に集中し、割れの発生が問題となるため、熱膨張係数が近い材料を使用しなければならない。図4Bは例えば、LENSで肉盛溶接されたフライトの先端部46が、別の製造工程中にDMLS 3Dプリントされたベース48に設けられている先行技術例を示している。このプロセスは、レーザーを使用して溶融プールを作成し、粉末又はワイヤーは溶融プールに供給されて基板上に堆積される。一部のねじ部品では、肉盛溶接体の厚さは約0.030インチ(製造されるねじのサイズによって異なる)であり、原料は粉末である。換言すると、肉盛溶接体は、金属間の遷移が個別のステップ遷移として現れるように、ベースサポートの上に設けられる。多くの場合、ベース支持材料と表面肉盛溶接材料との間には熱膨張の不一致が存在する。肉盛溶接工程では、表面肉盛溶接層とベース支持体内部に引き付けあう熱応力が発生する。これらの応力は部品が熱を受けると緩和され,表面層及び時にはベース支持材料にクラックを発生させる。表面層材料における応力破壊は、材料がベース支持体から離脱し、押出バレルおよびねじ部材または押出可能な材料を潜在的に汚染することに寄与する。
【0029】
図5及び図6は、多材料積層造形プロセスを用いて構築されたマルチマテリアルねじ部分(又は単に、ねじ)50の一例を示している。3Dプリントされた内側コア52は、駆動スプライン54を画定し、ローブ又はフライトを画定するようにねじ50の長手方向軸56に沿って変化する断面幾何学形状を含む。この具体例では、幾何学形状は、搬送押出ねじ部分のフライト及びその間のチャネルの形状を概ね画定するように変化するが、他の形状も可能である(例えば、ニーディングブロック押出ねじ部分)。さらに他の内部駆動形状-たとえば例えば六角形、ピン、及び他の形状-も可能である。
【0030】
3Dプリントされた外殻58は、内側コア52を包含する。図示のようにねじ50の全表面を覆うために、2つのAM実施形態は以下のように要約される。
【0031】
第1実施形態は、DMLS又は他の種類のAMを使用して内側コア52を造形し、次にLENS(または他の)プロセスを使用してそれを肉盛溶接することを伴う。しかし、内側コア52の外面全体を肉盛溶接するためには、LENSプロセスヘッドが複数回通過する。LENSプロセスヘッドは、内側コア52の複数の外径に対応するために、3次元的に移動可能である。例えば、LENSプロセスヘッドが外径に沿って移動して外径を肉盛溶接することで面60から反対側の面62まで上向きに作用する際に内側コア52を回転させるテーブルジグの上に、内側コア52の面60は置かれる。この実施形態では、プロセスヘッドは、上方に移動する際に、内側コア52の回転に伴って内向き及び外向きにも移動する。プロセスヘッドの追加の傾斜角度は、溶融プールと内側コア52の傾斜した外面角との間の一定の角度を維持するためにも有用である。
【0032】
当業者は、前述の実施形態において、FGMが前述した技術を用いて任意に含まれ得ることを理解するであろう。例えば、DED AM技術(例えば、LENS)を採用し、内側コア52の材料と同じ材料で開始し、耐摩耗性又は耐腐食性材料に遷移して、ねじ50の外側に肉盛溶接して外側シェル58を形成することによって、勾配は形成され得る。この方法は、前述したように応力を低減する。さらに、他のAMプロセスも可能である。例えばジュールプリントがワイヤー原料に用いられる。ジュールプリントでは、ワイヤーは、そのワイヤーに電流を流して、その通電したワイヤーと部品とを接触させることで溶かされる。
【0033】
第2実施形態は、マルチ材料粉末床溶融、マルチ材料バインダー噴射、又は他のマルチ材料AMプロセスを使用した造形を伴う。したがって、部品の各造形層は、適合する金属材料のための複数の金属の種類及びマルチメタルインターフェースを含む。
【0034】
レーザーは、薄い材料層を基板に堆積させることを可能にする正確なスポットサイズ(溶接)プールを提供する。この付加制御により、ねじフライトに直接重ね合わせる場合の廃棄物及び追加の後処理が回避される。プロセスの公差に応じて、内部駆動スプライン54のチェーシングは任意である。チェーシングとは、プリンタによって保持できない寸法に保持するために、スプライン領域を再切削することである。
【0035】
また、ねじ50の外径を約±0.001インチの公差で研削し、部品を全長仕様の約±0.001インチに仕上げ研削することも任意である。後者の研削プロセスは、ねじフライトをスプラインプロファイルに合わせる(同期させる)。内部スプライン形状に対するねじフライトのタイミングは、押出内のねじ間の噛合いギャップを維持するために必要である。
【0036】
CADモデルの幾何学形状は、任意の造形後の処理に対応するように、公称幾何学形状から修正されてよい。例えば追加の材料が、造形後の仕上げが施される部品の特徴部に付加される。テストでは、エンテックは部品の両端に約0.010インチを追加し、合計で約0.020インチの全長にした。またエンテックは、部品の外径にも約0.010インチを追加した。材料の追加量は経験的に決定され、他の用途では異なり得る。また材料の追加量は、使用されるAM技術によっても異なり得る。例えば、BJプリントは、DMLSよりも多くの加工用原料を使用する場合がある。
【0037】
図1及び図2の従来のバイメタル実施形態と比較して、内側コア52の幾何学形状は長手方向軸56に沿って変化し、外側シェル58は一貫した幅を維持する。外側シェル58の体積は、それが相対的に薄い層(例えば、約1~3mmの厚さ)となる点で大幅に減少する。その結果、内側コア52の幾何学形状は円筒形である必要はない。内側コア52の幾何学形状は、単にねじの幾何学形状の小さくしたものである。
【0038】
図3図4及び図4Aの肉盛溶接されたものと比較して、外側シェル58は、先端だけをハードフェイシングするのではなく、フライト全体を包含する。フライト全体をハードフェイシングすることにより、加工されるポリマー中にグラスファイバーのような充填材が追加されることによってよく生じる摩耗に対する追加の耐性が与えられる。またハードフェイング又はカプセル化は、腐食を防止するのにも用いられ得る。例えば、鉄系のネジ(ベース材料)は、ニッケル又はコバルト系のオーバーレイ材料で覆われてよい。これは、ニッケル系の材料-たとえばインコネル625または718-からねじ要素全体を製造することと比較して費用を削減すると思われる。
【0039】
マルチ材料ねじ50はまた、必要とされる耐摩耗性粉末金属材料の量の減少をももたらす。ねじ50の大部分は内側コア52で構成される。内側コア52はより安価な材料から作ることができる。例えば内側コア52は、ねじが押出内へ入り込む際にかかるトルク負荷に対応する延性材料から作ることができる。より薄い外側シェル58は、割れの可能性が減少するように、より硬い(より脆い)材料を使用することを可能にする。
【0040】
使用できる材料に関して、従来のHIPプロセスの金属粉末の仕様は、DMLS 3Dプリントプロセスの要件ほど厳格ではない。従来のHIPプロセスでは、略32メッシュの粉末が適している。32メッシュは792ミクロンに相当する。よって一部の実施形態では、すべての粒子が794ミクロンより小さい。しかし、DMLSプリントプロセスの場合、典型的な粉末の仕様は45/15ミクロンである。したがって粒子サイズは、一部の実施形態において、45ミクロンより小さくて15ミクロンより大きい。
【0041】
押出成形物接触面に使用することができる材料の種類の例としては、A2、D2、M2、M4、H-13、H-11、4140、窒化物135、及び4340などの工具鋼と、9V、10V、S90V、15V、MPL-1、CPM110V、及びCPM125Vなどの粉末金属工具鋼と、17-4、304、316及び440Cなどのステンレス鋼と、インコネル625、インコネル718、ハステロイC276、コルモノイ4、コルモノイ56及びヘインズ242などのニッケル系材料と、ステライト6、ステライト12、ステライト21などのコバルト系材料と、70%WC-MMC(ニッケル系、70重量%WC)、60%WC-MMC(ニッケル系、60重量%WC)などの炭化金属マトリックス複合材料と、セラミックス金属マトリックス複合材料が含まれる。
【0042】
ベース支持面に使用できる材料の種類の例としては、1018、H-13、H-11、4140、窒化物135、4340などの鉄系材料と、17-4、304、316、440Cなどのステンレス鋼と、インコネル625、インコネル718などのニッケル系材料が含まれる。
【0043】
現在入手可能な造形可能な粉末金属の例には、AlSi10Mg、316Lステンレス鋼、マレージング鋼(C300)、17-4PHステンレス鋼、チタン-6Al-4V、インコネル625、インコネル718、H-13、M2工具鋼、コバルトクロムが含まれる。これらの材料は、FGMマルチマテリアル部品の製造に使用するためにも調整され得る。
【0044】
インコネル718とインコネル625は、フルオロポリマーを製造する押出し用途で良好に機能する耐腐食性材料である。フルオロポリマーの溶融加工では、非常に腐食性の高いフッ化水素酸が発生することがある。加工に必要な温度は、腐食を加速させる。インコネルは、フルオロポリマーの加工に使用される材料の1つである。インコネルはニッケル系材料であるため、フッ化水素酸の腐食に耐えることができる。AM並びに耐摩耗性及び耐腐食性の向上から恩恵を受ける用途に最適化された材料を含む他の材料も可能である。
【0045】
エンテックは、それぞれ130Nm/シャフト及び 565Nm/シャフトとされるインコネル 718プリントねじを 27mm および43mm の押出でテストした。故障は検出されなかった。インコネル718材の靭性は、10V材(すなわち、二軸押出に使用される高摩耗材)よりも優れていた。密度については、エンテックによって測定された3Dプリントされたインコネル718材の密度は8.15g/ccである。これは密度8.19g/ccを有する従来のインコネル材で作られたものに匹敵する。.3DプリントされたMS1(マルエージング鋼)の密度は7.98g/ccで、これも密度8.1g/ccを有する従来から作られてきたマルエージング鋼に匹敵する。
【0046】
前述の耐摩耗性及び耐腐食性のAM材料に加えて、任意の処理技術により、フルオロポリマー産業で採用されているAM成形インコネル(またはより一般的にはニッケル系)材料の耐摩耗性をも向上させる。例えば、ホウ素化処理(ホウ素化処理とも呼ばれる)はその一例であり、インコネル718ねじ又は他の部品のレーザクラッディング(レーザ肉盛溶接)に加えて、またはその代用として使用することが可能である。このプロセスは、部品周辺の粉末媒体からホウ素原子を鋼材表面に拡散させることを必要とする。その結果、ホウ素原子は鉄(Fe)と反応して高硬度のFe2B化合物が形成される。このプロセスは鉄鋼に対して有効で、ニッケル系材料では特に硬い摩耗面を形成する。インコネル625及びインコネル718のようなニッケル合金は、ホウ素化処理に活用されるかなりの量の鉄を内部に含む。
【0047】
図7は、付加製造により造形されたバレル部分64を示す。ベース支持体66は、軸方向ボアライニング68を画定する。軸方向ボアライニング68中で、第1の付加製造された金属組成物の表面層70は、内側シェルのハードフェイシング軸方向ボアライニング68を形成する。第2の付加製造された金属組成物は、軸方向ボアライニング68を形成する。前述したように、第1及び第2の付加製造された金属組成物は、表面層70とベース支持体66との間にFGM遷移領域(図示せず)が形成されるように互いに異なっている。別の実施形態(図示せず)では、軸方向ボアライニングは、交換可能なバレルスリーブである。
【0048】
一部の実施形態では、追加の熱処理は、AM製造された材料を精製するのに役立つ。他の場合では、追加の熱処理は行われない。例えば、インコネル718部品は熱処理工程を受ける必要はないが、より耐摩耗性の高い材料などの他の材料は、熱処理工程の恩恵を受けることがあり得る。関連して、造形中に部品に誘起される応力を緩和するために、応力緩和が行われることもある。
【0049】
別の実施形態では、好ましくはHIPを用いて処理される部品について、軟質工具鋼と粉末金属特定合金が選択的粉末堆積システムを用いて共に堆積され得て、軟質鋼外装のみがHIPケーシングとして機能するために焼結される必要があるだろう。よって粉末金属合金は、HIP処理中に稠密化される。例えば、この技術は、溶接されたシートメタルから製造されるHIP製造部品と同様に、造形後に真空下でこのケーシングを溶接封止できる配管を備えたプレフィルドケーシングの製造に採用することができる。その後、HIP処理の残りの部分は、確立された工程に進んでよい。さらに任意のFGM遷移領域は、軟質鋼の内側表面から始まって粉末金属特定合金に向かって内側に広がる材料の勾配混合物を堆積することによって軟質工具鋼と粉末金属特定合金との間に設けられ得る。
【0050】
別の実施形態では、従来のHIPプロセス又はビレット材料を用いてコアが形成される。次に、DED材料がコアに付与されることで、上にFGM遷移領域及び表面層がDEDプロセス中に同時に形成されるベース支持体が確立される。
【0051】
[内部格子構造]
図9A~15Dは、造形された内部格子構造を有する押出部品を示す。前記押出部品は、最初に図8A~8Cの単純化された梁形状格子の例によって紹介されている。具体的には、図8Aは、ボクセル80の中心及び角でノード86を接続する梁82で構成されるボクセル80を示す。図8Bは、一部の実施形態において、シェル(又はメッシュ)90がノード86の間に形成されていることを示している。例えば、面92は、3つの頂点94の間で延び、頂点94の一部又は全部はノード86の1つであってよい。最後に、図8Cは、どのように複数のボクセル80から格子構造100(又は単に、格子100)が形成されるのかを示す。格子100は、不浸透性平板状表皮104または不浸透性格子状表皮108で囲まれてもよい。
【0052】
より一般的には、AM格子は、ノードで交差する梁(ストラット)のネットワークで構成される2次元又は3次元マイクロアーキテクチャである。梁(ストラット)はノードで交差するネットワークであるため、通常は隣接ボクセルの一部でもある関連梁及びノードによって封じ込められたボイド(又はギャップ)を有する平面的(すなわち2D)又は容積的(すなわち3D)ボクセルを画定する。格子は、構造的な完全性を維持しながら、稠密部品に比べて劇的に減らす。採用可能な格子構造は多岐にわたる。特定の用途に適した格子構造を選択する場合、ボクセル構造、ボクセルサイズ、選択された材料の密度、ボクセルの配向といった格子特性の一部又は全部が変化され得る。したがって、格子構造100のセルの形状は、本開示で後述するように、多くの方法で構成され得る。
【0053】
図9A~11Bは、造形された搬送用ねじ部分120を示す。図9Bは、造形されたニーディングブロックねじ部分126である。ねじ部分126は、フライト130およびチャネル132(図9A)の代わりにローブ128を含む。しかし、どちらの種類のねじ部分も、内部144に造形された内部梁形状格子構造140を含む。その例は図10及び図11Aで示されている。
【0054】
格子構造140は、外側支持フレーム152(図10)として作用する不浸透性ねじ表面150、及び、内側支持フレーム156(図10)として作用する軸方向開口154を画定する構造支持フレーム146内に形成されている。したがって格子構造140は、一体型管状ねじ部品として付加製造された外側構造支持フレームと内側構造支持フレームとの間の内部144に形成される。ねじ部分120において、支持フレーム152及び156の部分は、チャネル132の位置で合流し、内部144に螺旋状に切断された格子を確立する。
【0055】
不浸透性ねじ表面150は、押出可能な材料に接触するように構成されているので、ガスおよび流体の侵入に対して不浸透性である。例えば不浸透性ねじ表面150は、前述したように、フライト130若しくはローブ128の先端又は完全に包含される表面150のいずれかの上で耐摩耗性又は耐腐食性表面層として造形され得る。
【0056】
軸方向開口部154は、駆動軸(図示せず)に結合するように構成される。例えば、軸方向開口部154は、造形されたスプライン158(又は他の形状)を含む。
【0057】
一部の実施形態では、稠密端面160及びねじ部分120の他の外部部分は、内部144を完全に封止する。換言すれば、ねじ120は、従来の構成要素の外形を有する。さらに一部の実施形態では、1つ以上のオリフィス(図示せず)が端面160又は他の外表に含まれる。そのようなオリフィスは、未焼結粉末を排出するために使用され、粉末が除去された後に溶接で閉じられてよい。
【0058】
図11Bは、ジャイロイド形状の格子構造162の形態の格子構造に関する別の実施形態を示す。さらなる種類の格子の実施形態は、本開示で後述される。
【0059】
図12~15Aは、押出ねじ部品を格納するように構成されたツインバレル軸方向開口166を含む造形バレル部分(又は単にバレル)164を示す。構造支持フレーム168は、軸方向開口部166及び不浸透性外面170を画定する。外面170は、造形ガセット178によって支持された造形フランジ172を含む。隣接するガセット178は、ボルト止め部分164用のフランジボルト穴となる。位置合わせダボ穴182と取り付け穴184も、フランジ172の表面に形成される。交換可能なバレルスリーブ取り付けボルト穴188及び追加のヒーター取り付けボルト穴190もまた含まれる。
【0060】
交換可能なスリーブ194は、軸方向開口部166を画定する内面198を有する。図13は、スリーブ194が、梁形状格子構造210に隣接する構造支持フレーム168の内側軸方向壁206に対向する外側表面202を有することを示す。他の実施形態(図示せず)において、交換可能なバレルスリーブは、格子構造の外側部分と対向する(すなわち、その間に内側軸方向壁なしに格子に直接接触する)外面を有する。他の実施形態は、軸方向ライニングが格子(例えば、格子表皮)の上に形成されている一体型(非交換型)バレル、又は格子構造に隣接する内側不透性軸方向壁上のハードフェイシングを含む。
【0061】
図12は、バレル部分164の外面170に取り付けられた2つの任意のL字型電気プレートヒータ220を示す。400Fのヒーター温度は、温度70Fの冷却ジャケット(すなわち、外面170)及び温度70Fのバレルを加熱するのに用いられると推定される。
【0062】
AM技術は、従来の機械加工を使用することでは製造不可能であった通路用の新しい幾何学形状(三角、四角、楕円、および他の形状)で構築する機能を提供する。これらの特殊な通路は、バレルボアの近くに設けられ、バレル内を往復する経路で構成することができる。これらの通路は、冷却ジャケットの効果を増大させる。
【0063】
関連して、格子構造210はまた、冷却剤通路として採用され得る。よって格子構造210は、格子210全体の流体/気体の対流冷却に熱を伝達するための伝熱性経路として機能するように用いられる。このような困難な経路を通る強制的な流れによって、対流係数を増加させる乱流が導入されるので、熱伝達の有効性は増加し、そうでなければ調整可能である。特殊な幾何学的通路と格子構造を組み合わせることで、冷却と加熱の能力をさらに最適化することができる。加熱または冷却の追加の態様は、図15Jを参照して後述する。
【0064】
例えば図12は、伝熱流体222が入口ポート224を通って送られて出口ポート230から出ることを示す。図13~15Aに示されるように、一部の実施形態において、伝熱流体222は、格子構造210を通って流れる。一部の実施形態において、格子構造210は、第1領域236と第2領域240とを含む。第1領域236と第2領域240は、これらの間での流体透過を防止する障壁242によって分離されている。ポート224及び230は、伝熱流体222が貫流して第2領域240を通って流れる必要がないように、第1領域236と流体連通している。他の実施形態では、伝熱流体は両方の領域を通って流れるか、または単一の領域が存在する。400Fのバレル温度を冷却するために、90psiの入口圧力及び90Fの冷却水温度が使用され得ると推定される。
【0065】
図15B~15Jは、バレル164またはねじ部分での使用に適した他の様々な種類の格子構造を示している。例えば図15Bは、領域236及び240において均一な体積分率を有するジャイロイド格子を示している。対照的に図15Cは、領域236および240において異なる体積分率を有するジャイロイド格子を示す。可変体積分率はまた、一部の実施形態において、熱伝導及び剛性特性のために格子壁の厚さを最適化するように単一の領域において確立され得る。別の実施形態では、図15Dは、異なる格子の形状及び配向の組み合わせを示す。この例では、ジャイロイド型および基本型の格子は、その間に数学的に最適化されたハイブリッド領域を含む。図15Eは、オクテットトラス格子を示す。図15F及び図15Gは、ジャイロイド形格子の骨格及びシートの変形例を示す図である。同様に、図15Hおよび図15Iは、菱形格子の骨格及びシートの変形を示す。図15Jは、ビンタイルズ(vintiles)形状格子を示している。
【0066】
別の実施形態では、格子形状の種類は、熱交換器として構成可能である。例えば、図15Kは、梁形状の格子構造210の代わりに、二重ジャイロ形状格子270又は他の適切な三周期最小表面(TPMS)系の格子が、単一の格子構造内に形成されて格子270の内部表面により互いに分離されている(すなわち、流体連通していない)チャネル272の第1の組及びチャネル274の第2の組を含んでもよいことを示している。第1の組272は、伝熱流体276(例えば、格子270を通してポンプで送られる周囲空気)を輸送し、第2の組274は、バレルまたは他の押出構成要素の高温領域に循環される冷却剤278を輸送する。一方のチャネルを通して温水を、他方のチャネルを通して冷水をポンピングすることにより、液体加熱または冷却システムのいずれにも同じ原理が使用され得る。
【0067】
バレル部分164は造形されているので、格子210を形成するものを含む内部空隙又はセルの幾何学形状(前述)に対応することもできる。従ってバレル部分164は、流体が第1領域236を通って循環されるとき、漏れの影響を受けにくい。これは、冷却剤チャネルが内部で構成されているので、CVプラグ、溶接、シールリング、又は穴がないためである。また流体の容量及び方向は、十分に構成可能であり、クロスドリル穴のサイズによって制限されない。内部構造は、その内部構造を貫く冷却剤の流れを方向付けるためにバッフルなどを備えてよい。
【0068】
内部格子構造(又は他の複合構造)は、従来の(稠密又は単一材料の)代替品と比較してバレルをより軽量にすることもできる。軽量化されたバレルは、保守の実施又は押出の再設定を行う際に扱いやすくなる。例えばある実験では、重量47.6ポンドの従来のバレルから、格子形状を有するように造形されたバレルに変更した場合、全体の重量を44%削減することができた。同様に、格子状のねじを使用した実験は、ジャイロイド型と梁形状の格子で、それぞれ17%と5.7%の軽量化を示している。
【0069】
[制御された空隙率]
前述したように、上述の格子構造は、部品の全体的な密度(相対して稠密な部品)に影響を与える。十分に小さい造形構造では、AM技術は、造形された材料の気孔率を制御するために密度を減少させるために採用され得る。具体的には、当業者は、AM押出部品が、DMLS技術を使用してレーザーの強度によって制御可能な密度を有する密度の低い(例えば、非稠密な)内部を含み得ることを、本開示に照らして理解するであろう。例えば図16及び図17は、格子形状300のメッシュサイズに基づいて気孔率が制御される一体成形多孔質フィルタ294を有する交換可能なベントインサート290を示す。フィルタ294の円弧状表面310は、表面が押出可能な材料から気体を排出するためにバレル内において同一面内で適合するように、軸方向開口の円弧状表面に適合する。しかしベントインサート290の本体は、気体に対して不浸透性である。
【0070】
[結語]
当業者は、本発明の基本原理から逸脱することなく、上述した実施形態の細部に多くの変更を加えることができることを理解するであろう。例えば、FGMは、格子構造と構造支持フレームとの間の遷移領域において採用されてもよい。また実施形態は、二軸ねじ、単軸ねじ、単一のバレル部分を有するワンピースバレル、およびコニカルボア押出への適用が可能である。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲および均等物によって決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図15I
図15J
図15K
図16
図17
【国際調査報告】