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特表2022-545223末梢神経障害とそれに関連する疾患の予防及び/又は治療に使用する調剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(54)【発明の名称】末梢神経障害とそれに関連する疾患の予防及び/又は治療に使用する調剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5415 20060101AFI20221019BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
A61K31/5415
A61P25/02
A61K47/02
A61K47/20
A61K9/08
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022510956
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 SG2020050406
(87)【国際公開番号】W WO2021034267
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】10201907677Q
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522063619
【氏名又は名称】ロー,イン セ
【氏名又は名称原語表記】LOH,Yin Sze
【住所又は居所原語表記】47 Leedon Road,Singapore 267858(SG)
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】ロー,イン セ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA94
4C076BB24
4C076CC01
4C076CC10
4C076DD23Z
4C076DD25Z
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC89
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA20
4C086ZA33
(57)【要約】
本発明は、末梢神経障害とそれに関連する疾患、とりわけ眼病の予防及び/又は治療における塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムのようなジアミノフェノチアジン化合物という局所に適用される製剤の調剤及び調剤の使用法に関する。好ましい実施例において、ポリ(ラクチドコグリコリド)(PLGA)微小球にカプセル化される塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムを備える、局所に適用される製剤が調合され、その微粒子は、キトサンのような粘膜付着剤で被覆される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療するための局所に適用される製剤であって、式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型の有効量を備える:
ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R1’、R2’、R3’及びR4’は、独立して、水素、メチル又はエチルである。
【請求項2】
ジアミノフェノチアジン化合物が、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムを備える請求項1に記載の局所に適用される製剤。
【請求項3】
ジアミノフェノチアジン化合物が、150μM以下の塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムを備える請求項1に記載の局所に適用される製剤。
【請求項4】
局所に適用される製剤が、0.0001μMと60μMとの間だけの塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムを備える請求項2に記載の局所に適用される製剤。
【請求項5】
局所に適用される製剤が、0.0005μM、0.005μM、0.05μM、0.5μM、5μM、50μMまたは100μMだけの塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムを備える請求項2に記載の局所に適用される製剤。
【請求項6】
生理学的緩衝剤を更に備える請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の局所に適用される製剤。
【請求項7】
生理学的緩衝剤が、重炭酸ナトリウムと塩化ナトリウムを備える請求項6に記載の局所に適用される製剤。
【請求項8】
生理学的緩衝剤が、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を備える請求項6に記載の局所に適用される製剤。
【請求項9】
生理学的緩衝剤が、神経基底媒体を備える請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の局所に適用される製剤。
【請求項10】
局所に適用される製剤が、担体-媒体を備える請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の局所に適用される製剤。
【請求項11】
担体-媒体が、局所に適用される製剤の粘度を約15から150ミリパスカル/秒の範囲に調整する請求項10に記載の局所に適用される製剤。
【請求項12】
担体-媒体が、ジアミノフェノチアジン化合物の放出プロフィールを調節する請求項10又は請求項11に記載の局所に適用される製剤。
【請求項13】
担体-媒体が、微粒子を備える請求項10乃至請求項12のいずれかに記載の局所に適用される製剤。
【請求項14】
ジアミノフェノチアジン化合物の有効量が、微粒子に事前に入れられた塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムを備える請求項13に記載の局所に適用される製剤。
【請求項15】
微粒子が、キトサンのような粘膜付着剤で被覆されている請求項13又は請求項14に記載の局所に適用される製剤。
【請求項16】
末梢神経損傷とそれに関連する疾患の予防及び/又は治療において用いられる請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の局所に適用される製剤。
【請求項17】
末梢神経損傷が、神経栄養性角膜症を含む請求項16に記載の局所に適用される製剤。
【請求項18】
使用が、眼への使用である請求項16に記載の局所に適用される製剤。
【請求項19】
末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療する方法であって、末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療する必要のある被験者への
(a)、式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型の有効量:
ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R1’、R2’、R3’及びR4’は、独立して、水素、メチル又はエチルであるもの、又は
(b) 請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の局所に適用される製剤、又は
(c) 式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型の有効量、及び担体-媒体を備える局所に適用される製剤
の投与を備える。
【請求項20】
局所に適用される製剤が、眼に適用される製剤である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
局所に適用される製剤が、神経部位に直接投与される請求項19に記載の方法。
【請求項22】
角膜神経のパラメータを測定して、被験者は、末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療する必要があるのかどうかを、局所に適用される製剤の投与に先立って決める請求項19乃至請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
角膜神経のパラメータを、局所に適用される製剤を投与する前及び後に測定する請求項19乃至請求項22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
末梢神経損傷とそれに関連する疾患が、神経栄養性角膜症を含む請求項19乃至請求項23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
末梢神経損傷とそれに関連する疾患の予防及び/又は治療のための請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の局所に適用される製剤の製造における式Iの化合物の使用。
【請求項26】
末梢神経損傷とそれに関連する疾患が、神経栄養性角膜症を含む請求項25に記載の使用。
【請求項27】
眼への使用である請求項25又は請求項26に記載の使用。
【請求項28】
末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療するために局所に適用される製剤であって、150μM以下の塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウム及び、製剤の粘度を約15から150ミリパスカル/秒の範囲に調節する担体-媒体を備える局所に適用される製剤。
【請求項29】
担体-媒体が、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムの放出プロフィールを調節する請求項28に記載の局所に適用される製剤。
【請求項30】
担体-媒体が、微粒子を備える請求項28又は請求項29に記載の局所に適用される製剤。
【請求項31】
担体-媒体が、ゲルを備える請求項28又は請求項29に記載の局所に適用される製剤。
【請求項32】
担体-媒体が、持続放出プラットフォームである請求項28又は請求項29に記載の局所に適用される製剤。
【請求項33】
更に一つ以上の化合物を追加で備える請求項28乃至請求項32のいずれかに記載の局所に適用される製剤。
【請求項34】
末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療する方法において用いられ、(a)塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムの有効量を備え、局所に適用される組成物、及び(b)前記組成物を保持する容器を備えるキット。
【請求項35】
容器は、前記局所に適用される組成物を、少なくとも1日、7日、14日、21日、又は30日間の治療を支える量だけ保持するよう構成される請求項34に記載のキット。
【請求項36】
局所に適用される組成物を調剤する方法であって、
塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムの、微粒子、又は緩慢な放出プロフィールを可能とするその他の担体-媒体へのカプセル化を備える方法。
【請求項37】
担体-媒体は、2つ以上の化合物を担持できる請求項36に記載の方法。
【請求項38】
医療又は獣医療での使用のための、請求項16又は請求項28に記載の局所に適用される製剤、請求項19に記載の方法、請求項25に記載の使用、請求項34に記載のキット。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の援用】
【0001】
この出願は、2019年8月20日に出願されたシンガポール特許出願第10201907677Q号に基づく優先権を主張するもので、その出願の内容は、参照することによってここに組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、末梢神経障害とそれに関連する疾患、とりわけ眼病の予防及び/又は治療における調剤及び調剤の使用法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景についての以下の議論は、本発明の理解を容易にすることを意図している。しかしながら、その議論によって、言及されているいずれかの資料が、どこかの管轄区において、出願の優先日時点で、公開されているとか、知られているとか、技術常識の一部になっているとかと言うことに同意することにもそう承認することにもならないと理解されたい。
【0004】
我々の神経系は二つの構成要素に分けられる。すなわち、脳と脊髄を含む中枢神経系(CNS)と、後根神経節(DRG)を包含し、また脳と脊髄の外側では神経繊維を、末端では神経受容器を包含する末梢神経系(PNS)である。PNSは2つの部分からなる。すなわち、知覚情報をCNSに向けて送る求心性の部分と、運動性の命令をCNSから目標の効果器(細胞、組織など)に伝える遠心性の部分である。PNSによって、CNSは、外部環境と交信することが可能となる。
【0005】
髄鞘層、脊椎骨及び頭蓋骨によって保護されているCNSの脳や脊髄とは異なり、PNSの神経は、時として無髄である。ニューロンは、神経系を構成する細胞体である。各ニューロンは、軸索として知られる長い突起を有し、それが電気化学信号を送信することでニューロン同士が交信する。これらの軸索突起がPNSを構成する。後根神経節は、PNSの一部であり、その神経繊維が、知覚入力からの情報をゆくゆく脳まで伝えて処理が行われる。末梢神経は、手足や角膜の神経において重要な感覚単位を提供している。末梢神経障害は、PNSへの損傷である。末梢神経障害によって、しばしば、虚弱、麻痺、痛みが引き起こされる。末梢神経障害は、外傷、感染、自己免疫障害、代謝障害、遺伝要因、加齢、及び毒素への露呈に起因する。最も一般的な原因の一つは、高血糖、すなわち、人体におけるブドウ糖値の上昇、へと帰着する糖尿病である。高浸透圧症もまた、高血糖症の続発症であって、潜在的に、高浸透圧により誘発される末梢神経障害に至る。
【0006】
真性糖尿病(DM)は、長期間に渡る高血糖値によって特徴付けられる代謝障害の一群である。2017年時点で、全世界で、4億2,500万人が糖尿病であると見積もられている(糖尿病アトラス2017)。真性糖尿病(DM)においては、末梢神経障害又は、PNSへの損傷と関連する合併症がある。糖尿病性末梢神経障害は、DMにおける最も一般的な合併症の一つで、知覚ニューロンや運動ニューロンを含むすべての末梢神経に影響を及ぼし、頻度はより低いものの自律神経系にも影響を及ぼす。現在、高血糖(高ブドウ糖)により誘発される末梢神経障害は、血糖値をうまく制御する以外に信頼できる療法はない。血糖値を管理するのは、被験者によっては、特にインシュリンの注射に依存しなければならない人にとっては、費用や注射の痛みのために、非常に難しいものであり得る。血糖値を管理する上での例外として、糖尿病性神経障害の唯一の治療は、痛みやその他の症状を低減する。神経繊維の退化は、2型糖尿病、特に、増殖性糖尿病網膜症を患う糖尿病被験者において一般的である(Gao et al. Int J Ophthalmol, Vol 8, No.2, 2015, 358-364)。DMの被験者は、進行性の角膜神経密度の低下と角膜感度の低減といった兆候を示す(ハンら、加齢における臨床介入2019年14巻53頁-63頁)。共焦点顕微鏡法で測定した角膜神経繊維の長さによって、糖尿病性末梢神経症の発生を予測できることが示されている(ハンら2019年)。高血糖症のために眼球面環境もまた高浸透圧となり得、高浸透圧によって誘発された角膜神経損傷に帰着する。眼、特に角膜神経とその分枝における末梢神経損傷を予防及び/又は治療するといった、糖尿病性神経障害のより良い管理と治療が必要とされている。
【0007】
塩化メチルチオニニウム(MTC)(メチレンブルー(MB)、塩化メチルチオニン、塩化テトラメチルチオニン、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウム、C.I.ベーシックブルー9、塩化テトラメチルチオニン、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェナザチオニウム、スイスブルー、C.I. 52015、C.I.ソルベントブルー8、アニリンバイオレット、及びウロレンブルー(登録商標))としても知られている)は、低分子量(319.86)で、水溶性の、下式の三環有機化合物である:
【化1】
【0008】
MTCについては種々の合成方法が知られており、WO2006/032879に要約されている。WO2006/032879にはまた、メチレンブルーの用途が数多く開示されており、それには、医療染料として、酸化還元指示薬として、防腐剤として、腎臓石の治療と予防のため、かつ、黒色腫、マラリア及びウイルス感染の治療のための使用が含まれている。計画的に服用されたMTCはまた、酸化/還元(酸化還元)剤としても、一酸化炭素、亜硝酸塩及びアニリン中毒の場合における解毒剤としても用いられている。計画的なMTCはまた、アルツハイマー病、中枢神経系に影響を及ぼす病気の治療にも提案されている。
【0009】
MTCは、水にもアルコールにも可溶である。メチレンブルーを塩化ナトリウム0.9%塩水で希釈した場合に(メチレンブルーの溶解度を低減することが示されている塩化イオンの存在のために)沈殿することが報告されているので、MTCを塩水に溶かすことは推奨されない。苛性アルカリ、ヨウ化物及び重クロム酸塩並びに酸化還元物とは配合禁忌であることが報告されている。MTCが脳脊髄液の脊髄区画に注入されると、大きな末梢神経損傷が引き起こされその結果完全な対麻痺が起こることが報告されている(シャーら、J. Neurol. Neurosur, and Psychiatry、1978年41巻384頁-386頁)。
【0010】
白内障手術の間、過失によって、トリパンブルーではなく、MTCをより高い濃度で眼に使用すると、取り返しのつかない失明、角膜浮腫(チムシンら、Arq. Bras. Oftalmol. 79巻2号2016年)、角膜移植に帰着する水疱性角膜症、及び角膜障害へと進行する眼内炎になってしまっている。したがって、メチレンブルーは、一般には、眼には使用されない毒性の染料であると考えられている。更には、MTCは染料であるので、肌や粘膜にそれを用いると、たいてい見苦しい青染みや汚れを生じてしまう。
【0011】
そこで、上に概説した不都合の少なくとも一つを改良する調剤法や使用法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、末梢神経障害、特に眼病の予防及び/又は治療において、好ましくは調剤及び調剤の使用法でもって、上述の困難をいくつか改良することである。
【0013】
本発明の一つの観点は、末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療するための局所に適用される製剤に関し、式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型の有効量を備える:
【化2】
ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R1’、R2’、R3’及びR4’は、独立して、水素、メチル又はエチルである。
【0014】
本発明のもう一つの観点は、末梢神経損傷とそれに関連する疾患の予防及び/又は治療に用いられる前述の局所に適用される製剤に関する。
【0015】
本発明のもう一つの観点は、末梢神経損傷を予防及び/又は治療する方法に関し、末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療する必要のある被験者への
(a)、式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型の有効量:
【化3】
ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R1’、R2’、R3’及びR4’は、独立して、水素、メチル又はエチルであるもの、又は
(b)前述の局所に適用される製剤、又は
(c)式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型の有効量、及び担体を備える局所に適用される製剤
の投与を備える。
【0016】
本発明のもう一つの観点は、末梢神経損傷とそれに関連する疾患の予防及び/又は治療のために局所に適用される製剤の製造における式Iの化合物の使用に関する。
【0017】
本発明のもう一つの観点は、末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療するために局所に適用される製剤に関し、150μM以下の塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウム及び、製剤の粘度を約15から150ミリパスカル/秒の範囲に調整する担体媒体を備える。
【0018】
本発明のもう一つの観点は、末梢神経損傷とそれに関連する疾患、より詳しくは、角膜神経傷害とそれに関連する、神経栄養性角膜症を含む疾患に関係する眼の神経損傷を予防及び/又は治療する方法において用いられ、局所に適用されるキットに関し、(a)塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムの有効量を備え、局所に適用される組成物、及び(b)前記組成物を保持する容器を備える。
【0019】
本発明のもう一つの観点は、局所に適用される組成物を調剤する方法に関し、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムをカプセル化して微粒子とすることを備える。
【0020】
本発明のその他の観点及び特徴は、発明の特定の実施例についての以下の記述を、添付の図面と関連付けて見ることで当業者に明らかとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
例示的な図面において、本発明の実施例が示される。
図1図1は、テスト予定表を示す。
図2図2は、ブドウ糖毒性状態のもとメチレンブルーで処理された細胞におけるヘキスト33342核酸染色による細胞生存率を示しており、150mMのブドウ糖に1時間先立ってメチレンブルーでDRGが処理され、48時間後にHTS分析が行われた。
図3図3は、ブドウ糖毒性状態のもとメチレンブルーで処理された細胞におけるベータIIIチューブリンでの染色によるニューロンあたりの肢計数を示しており、150mMのブドウ糖に1時間先立ってメチレンブルーでDRGが処理され、48時間後にHTS分析が行われた。
図4図4は、ブドウ糖毒性状態のもとメチレンブルーで処理された細胞におけるベータIIIチューブリンでの染色によるニューロンあたりの合計長を示しており、150mMのブドウ糖に1時間先立ってメチレンブルーでDRGが処理され、48時間後にHTS分析が行われた。
図5図5は、ブドウ糖毒性状態のもとメチレンブルーで処理された細胞におけるWST8での染色による細胞生存率を示しており、150mMのブドウ糖に1時間先立ってメチレンブルーでDRGが処理され、48時間後にHTS分析が行われた。
図6図6は、ラン1において製造された微小球の顕微鏡写真(倍率40倍)のサンプルを示す。
図7図7は、ラン2において製造された微小球の顕微鏡写真(倍率40倍)のサンプルを示す。
図8図8は、ラン3において製造された微小球の顕微鏡写真(倍率40倍)のサンプルを示す。
図9図9は、ラン2で作り出された5mgのサンプルについてカプセル化されたメチレンブルーを7日間放出したプロフィールのグラフを示す。
【発明の詳細な説明】
【0022】
ここで、本発明の特定の実施例を、添付する図面を参照して記述する。ここでの用語は、特定の実施例を説明するためだけに使われるものであって、本発明の範囲を制限することを意図していない。加えて、そうではない旨の明示がない限り、ここで用いられるすべての技術用語と科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。明瞭で一貫したものとするために、可能な限り、図面全体を通して同じ参照番号を用いる。
【0023】
種々の実施例が、末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療するための局所に適用される製剤であって、式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型を備えたものに関係している:
【化4】
ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R1’、R2’、R3’及びR4’は、独立して、水素、メチル又はエチルである。
【0024】
種々の実施例において、式(1)の化合物の形態には、その、医薬的に許容できる塩、水和物、及び溶媒和物が含まれる。
【0025】
種々の実施例が、末梢神経損傷に対する保護のために局所に適用される製剤であって、式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型の有効量と、5μM以下の塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムと、生理学的緩衝剤とを備えたものに関係している:
ただし、式I中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R1’、R2’、R3’及びR4’は、独立して、水素、メチル又はエチルである。
【0026】
ここで用いられているように、ジアミノフェノチアジン化合物は、窒素及び硫黄原子双方に局在する部分的な正電荷を生じる電子の非局在化のために正に荷電されている。種々の実施例の中で、構成Aは、最も簡単なジアミノフェノチアジンであるチオニンの化学構造及び、電子の非局在化によって作り出された3つの互変異性型を示す。
【化5】
【0027】
種々の実施例において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は水素、また、R2、R5、R1’、R2’、R3’及びR4’は、独立して、水素又はエチルである。
【0028】
種々の実施例において、時にチアジンとも呼ばれるジアミノフェノチアジンは、アズールA、アズールB、アズールC、チオニン、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウム(メチレンブルー)、新しいメチレンブルー及び1-9-ジメチルメチレンブルーからなるグループから選択される。
【0029】
種々の実施例において、ジアミノフェノチアジン化合物は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムからなる。
【0030】
種々の実施例において、ジアミノフェノチアジン化合物は、150μM以下の塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムからなる。
【0031】
種々の実施例において、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムは、式IIの化合物からなる。
【化6】
【0032】
眼に関連する疾患の管理において、メチレンブルーは、厳格に妨げられ禁止もされているが、生理学的なpH範囲に緩衝し、メチレンブルーを十分に低濃度とした溶液なら許容できると工夫されている。同様に、その溶液は、末梢神経にも許容できる。有益であるのは、外傷、感染、自己免疫障害、代謝障害、遺伝要因、加齢、化学療法のような毒素への露呈、高血糖、及び/又は、高浸透圧により誘発される末梢神経障害、あるいは、末梢神経障害に帰着する当技術分野で知られているその他の原因によって引き起こされる、眼に関連する末梢神経疾患とそれに関連する疾患において局所に適用される製剤として、特に種々の実施例において、低濃度のメチレンブルーを末梢神経疾患の管理に用いることができる。
【0033】
ここで用いられている「局所に適用される製剤」という語は、身体における又は表面の特定の場所に適用されるあらゆる製剤を指示している。それが言及するのは、身体における又は表面の特定の場所への適用を可能とする溶液、懸濁液、ローション、軟膏、ゲル、粉体、ペースト、生地、経皮パッチ、その他いかなる調剤であっても良い。種々の実施例において、身体における又は表面の特定の場所は、皮膚や粘膜のような身体表面を指示する。種々の実施例において、身体における又は表面の特定の場所は、例えば、角膜の表面における神経部位といった神経部位を直接指示する。種々の実施例において、身体における又は表面の特定の場所は、眼を指示する。
【0034】
ここでの用語、末梢神経損傷の「予防」や「保護」は、神経細胞、繊維またはPNSからの伸長の損傷や死亡を予防したり阻止したり低減したりすることを指示するのに使われている。種々の実施例において、これが達成されるのは、細胞の損傷に帰着する神経細胞のミトコンドリアへのブドウ糖の流入から起こる好ましくない続発症を低減することによる。神経細胞は、他の細胞よりミトコンドリアの量が多いということが知られている。種々の実施例において、これが達成されるのは、非酵素的結合、すなわち、末梢神経の損傷につながるブドウ糖の蛋白質又は脂蛋白質への糖化を低減することによる。種々の実施例において、これが達成されるのは、化学療法薬の神経への望ましくない作用を低減するといった、毒性の作用又は毒素を低減することによる。種々の実施例において、これが達成されるのは、細胞の抗酸化防御能力を増大することによる。
【0035】
ここでの用語、末梢神経損傷の「治療」は、神経細胞、繊維またはPNSからの伸長の更なる損傷や死亡を止めたり低減したりすること、及び/又は、新しい神経細胞、繊維またはPNSからの伸長の形成及び成長に適切な環境を提供することを指示するのに使われている。種々の実施例において、これが達成されるのは、細胞の損傷に帰着する神経細胞のミトコンドリアへのブドウ糖の流入から起こる好ましくない続発症を低減することによる。神経細胞は、他の細胞よりミトコンドリアの量が多いということが知られている。種々の実施例において、これが達成されるのは、非酵素的結合、すなわち、末梢神経の損傷につながるブドウ糖の蛋白質又は脂蛋白質への糖化を低減することによる。種々の実施例において、これが達成されるのは、化学療法薬の神経への望ましくない作用を低減するといった、毒性の作用又は毒素を低減することによる。種々の実施例において、これが達成されるのは、細胞、及び/又は、それの神経繊維の抗酸化防御能力を増大することによる。
【0036】
ここでの用語、「塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウム」は、低分子量(319.86)で、水溶性の、下式の三環有機化合物からなる塩化メチルチオニニウム(MTC)(メチレンブルー(MB)、塩化メチルチオニン、塩化テトラメチルチオニン、C.I.ベーシックブルー9、塩化テトラメチルチオニン、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェナザチオニウム、スイスブルー、C.I. 52015、C.I.ソルベントブルー8、アニリンバイオレット、及びウロレンブルー(登録商標))としても知られている)を指示するのに使われている。
【化7】
【0037】
種々の実施例において、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムは、当技術分野で知られているいかなる方法によって調剤されても良い。
【0038】
種々の実施例において、局所に適用される製剤は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムを0.0001μMと150μMとの間だけ備える。種々の実施例において、局所に適用される製剤は、149.5μM以下のMTCを備える。種々の実施例において、局所に適用される製剤は、59.5μM以下のMTCを備える。種々の実施例において、局所に適用される製剤は、4.5μM以下のMTCを備える。種々の実施例において、局所に適用される製剤は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムを0.0001μMと50μMとの間だけ備える。種々の実施例において、局所に適用される製剤は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムを0.001μMと90μMとの間、0.005μMと0.5μMとの間、又は0.0059μMと0.49μMとの間だけ備える。種々の実施例において、局所に適用される製剤は、0.05μMの塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムを備える。
【0039】
種々の実施例において、局所に適用される製剤は、生理学的な緩衝剤を更に備える。
【0040】
種々の実施例において、生理学的な緩衝剤は、酸とそれに共役する塩基の混合物からなる水素イオン水溶液を備えており、添加物又は生物学的な環境の構成要素と接触するとき、製剤の生理学的なpHを約pH4から約pH8に維持することができる。
種々の実施例において、生理学的な緩衝剤は、重炭酸塩、ビシン、カコジン酸塩、HEPES、MES、MOPS、PIPES、リン酸塩、TEPS、TAPSO、TES、トリシン及びトリスからなるグループから選択される。種々の実施例において、生理学的な緩衝剤は、重炭酸ナトリウムと塩化ナトリウムからなる。驚くことに、生理学的緩衝剤に、重炭酸ナトリウムと一緒に塩化ナトリウムが存在しているときは、MTCを塩化ナトリウムと一緒に使うことは技術上禁止されているにもかかわらず、MTCのようなジアミノフェノチアジン化合物は、溶液のままであって、末梢神経の保護を証明し、末梢神経への直接使用と眼病への使用との双方に適切なpHを有する。種々の実施例において、溶液のpHは4から8である。種々の実施例において、溶液のpHは4から7.5である。種々の実施例において、溶液のpHは4である。種々の実施例において、溶液のpHは5である。種々の実施例において、溶液のpHは6である。種々の実施例において、溶液のpHは7である。種々の実施例において、溶液のpHは7.4である。種々の実施例において、溶液のpHは7.5である。種々の実施例において、溶液のpHは8である。
【0041】
種々の実施例において、生理学的な緩衝液は、好ましくは、重炭酸ナトリウムと塩化ナトリウムの存在下のHEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を備える。種々の実施例において、生理学的な緩衝剤は、神経基底媒体を備える。
【0042】
種々の実施例において、局所に適用される製剤は、担体を備える。種々の実施例において、担体は、担体-媒体であって、自然状態で液体及び/又は水溶性である。種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、高分子量の親水性ポリマー、ポリビニルアルコール、ポロクサマー、ヒアルロン酸、カルボマー、セルロース誘導体(ジェランガム、キサンタンガム)、デキサメタゾン、ピロカルピン、2-ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチレングリコールジメチルアクリレート、アクリルアミド、N-ビニルピロリドン及びエチルアクリレート又はこれらの組み合わせのようなポリマーを備えても良い。種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、キレート化剤、界面活性剤又はシクロデキストリンのような、眼への薬の供給を増加させる賦形剤を備えても良い。種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、ナノパーティクル、マイクロパーティクル、ニオソメス、ディスコソメス、デンドリマー、原位置ゲル、ウェファー又はコンタクトレンズへの埋め込みのような包接化合物を備えても良い。種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、ショ糖、ブドウ糖、乳糖、Dグルコース(デキストロース)のような糖分子を備えても良い。種々の実施例において、末梢神経環境において自然に発生する内因性のブドウ糖は、溶液において担体又は担体-媒体の一部を形成してもよい。これは、特に、高濃度のブドウ糖をもたらす高血糖症を有するDM被験者において当てはまる。
【0043】
種々の実施例において、担体又は担体媒体は、微粒子又は微小球を備える。
【0044】
種々の実施例において、ジアミノフェノチアジン化合物の有効量は、微粒子に事前に入れられた塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムを備える。
【0045】
種々の実施例において、微粒子は、キトサンのような粘膜付着剤で被覆されている。種々の実施例において、微粒子は、流体媒体に懸濁されている。種々の実施例において、流体媒体は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムのようなジアミノフェノチアジン化合物を前記流体媒体に溶解することが可能であるように、自然状態で水溶性である。
【0046】
種々の実施例において、担体又は担体媒体は、局所に適用される製剤の粘度を約15から150ミリパスカル/秒の範囲に調整する。
【0047】
種々の実施例において、担体又は担体媒体は、ジアミノフェノチアジン化合物の放出プロフィールを調節する。
【0048】
種々の実施例において、担体又は担体媒体は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムのようなジアミノフェノチアジン化合物の所定時間に渡る放出プロフィールを調節する。MTCのようなジアミノフェノチアジン化合物の末梢神経環境への放出の速度を調節することができる既知の担体又は担体-媒体は、いかなるものでも適切である。種々の実施例において、担体又は担体媒体は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムの放出プロフィールを、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウム自体の放出の速度未満の、又はそれより遅い、所定の速度に調節する。種々の実施例において、適切な担体又は担体-媒体は、高分子量の親水性ポリマー、ポリビニルアルコール、ポロクサマー、ヒアルロン酸、カルボマー、セルロース誘導体(ジェランガム、キサンタンガム)、デキサメタゾン、ピロカルピン、2-ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチレングリコールジメチルアクリレート、アクリルアミド、N-ビニルピロリドン及びエチルアクリレート又はこれらの組み合わせのようなポリマーを備えても良い。種々の実施例において、適切な担体又は担体-媒体は、ナノパーティクル、マイクロパーティクル、ニオソメス、ディスコソメス、デンドリマー、原位置ゲル、ウェファーのような包接化合物を備えるか又はコンタクトレンズに埋め込まれても良い。種々の実施例において、担体又は担体媒体は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムのようなジアミノフェノチアジン化合物の放出プロフィールを、所定の時間に渡って緩慢とするか又は低減する。
【0049】
種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、局所に適用される製剤の粘度を約15から150ミリパスカル/秒の範囲に調整する。種々の実施例において、担体又は担体媒体は、粘度を調整し、約15から150ミリパスカル/秒の範囲を達成するようそれを増大する。種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、粘度を約15から100ミリパスカル/秒の範囲に増大する。種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、粘度を調整し、約15から50ミリパスカル/秒の範囲を達成するようそれを増大する。種々の実施例において、粘度は、室温におけるものである。粘度を増大させることで、MTCのようなジアミノフェノチアジン化合物と角膜表面との接触時間を長くすることができ、そうして、その生物学的利用能、特に、角膜神経とその分枝へのものを増加できるという利点がある。種々の実施例において、ポリマー、糖分子、ナノパーティクル、マイクロパーティクル、ニオソメス、ディスコソメス、デンドリマーという各担体又は担体-媒体は、溶液の粘度を調整するか増大しても良い。
【0050】
種々の実施例において、担体又は担体媒体は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムのようなジアミノフェノチアジン化合物の放出プロフィールを調節する。種々の実施例において、担体又は担体媒体は、放出プロフィールが持続される微粒子を備える。これには、製剤の粘度を増大させるという利点があり、また、局所に適用される製剤の前角膜への在留又は滞留時間を長くすることによって、目薬を頻繁に適用する必要も減らせる。粘度が増大することによって、したたり落ち及び/又は涙に伴う放出が減って、顔への汚れや変色がなくなるので、持続放出調剤にはまた、皮膚への見苦しい青染みが減るという利点もある。種々の実施例において、放出プロフィールが持続される担体又は担体媒体微粒子は、ポリ(ラクチドコグリコリド)(PLGA)微小球を備えているが、ただし、当技術分野で放出プロフィールが緩慢になる/持続されることが知られているいかなる微粒子であっても適当とされる。種々の実施例において、PLGA微小球は、PLGA (50:50)、 PLGA (75:25)又は PLGA (85:15)というポリマー比を備える。種々の実施例において、MTCのようなジアミノフェノチアジン化合物の持続放出プロフィールは、微小球において異なるポリマー比を用いて、又は、サイズの異なる微小球を用いて、1ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月に調節される。
【0051】
種々の実施例において、局所に適用される製剤は、薬品を含む一つ以上の化合物を追加で備える。
【0052】
種々の実施例は、ここに記載されている局所に適用される製剤を、末梢神経損傷の予防及び/又は治療に用いることに関する。
【0053】
種々の実施例において、局所に適用される製剤は、人間を含む動物において使用するのに適しており、医療又は獣医療の場において末梢神経損傷の予防及び/又は治療に適している。
【0054】
種々の実施例において、末梢神経損傷は、神経栄養性角膜症に帰着するかそれを含む。種々の実施例において、末梢神経損傷は、外傷、感染、自己免疫障害、代謝障害、遺伝要因、加齢、化学療法のような毒素への露呈、高血糖により誘発される末梢神経障害、あるいは、当技術分野で末梢神経障害に帰着することが知られているその他の原因によって引き起こされる末梢神経疾患を含む。
【0055】
種々の実施例において、局所に適用される製剤は、眼に使用するものである。種々の実施例において、局所に適用される製剤は、目薬又は軟膏の形にある。
【0056】
種々の実施例は、末梢神経損傷を予防及び/又は治療する方法に関し、末梢神経損傷を予防及び/又は治療する必要のある被験者への
(a)、式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型:
【化8】
ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R1’、R2’、R3’及びR4’は、独立して、水素、メチル又はエチルであるもの、又は
(b) 請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の局所に適用される製剤、又は
(c) 式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型、及び担体-媒体を備える局所に適用される製剤
の投与を備える。
【0057】
種々の実施例は、末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療する方法に関し、末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療する必要のある被験者への
(a) 式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型の有効量:
【化9】
ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R1’、R2’、R3’及びR4’は、独立して、水素、メチル又はエチルであるもの、又は
(b) 請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の局所に適用される製剤、又は
(c) 式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型の有効量、及び担体-媒体を備える局所に適用される製剤
の投与を備える。
【0058】
種々の実施例において、被験者は、末梢神経損傷の予防及び/又は治療を必要とする人間、馬、牛、犬、猫、その他の動物を含む哺乳類のような動物である。
【0059】
種々の実施例は、末梢神経損傷を予防及び/又は治療する方法に関し、末梢神経損傷を予防及び/又は治療する必要のある被験者への
(a) 150μM以下の塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウム及び生理学的緩衝剤を備え、局所に適用される製剤、又は
(b) 前述の局所に適用される製剤、又は
(c) 150μM以下の塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウム及び担体-媒体を備え、局所に適用される製剤
の投与を備える。
【0060】
種々の実施例において、局所に適用される製剤は、眼に適用される製剤である。
【0061】
ここで用いられる被験者は、末梢神経障害と診断されているか、それにかかっている危険が高いか、それを患っているかその疑いのある患者又は個人を指示する。種々の実施例において、患者又は個人は、DM又は前糖尿病と診断されているか、DMの疑いがあるかそれにかかっている危険があるか又はドライアイ疾患の個人である。種々の実施例において、患者又は個人は、神経栄養性角膜症と診断されているか、神経栄養性角膜症にかかっている危険がある。種々の実施例において、患者又は個人は、外傷、感染、代謝障害、遺伝要因、加齢、化学療法のような毒素への露呈、高血糖、及び/又は、高浸透圧により誘発される末梢神経障害、あるいは、末梢神経障害に帰着する当技術分野で知られているその他の原因によって引き起こされる末梢神経障害を患う。
【0062】
種々の実施例において、局所に適用される製剤は、末梢神経部位に直接投与される。種々の実施例において、局所に適用される製剤は、眼に投与される。
【0063】
種々の実施例において、方法は、局所に適用される製剤の投与に先立って、被験者は、末梢神経損傷を予防及び/又は治療する必要があるのかどうかを決めるために角膜神経のパラメータを測定するステップを更に備える。種々の実施例において、測定されるパラメータには、神経繊維長と神経繊維密度が含まれる。種々の実施例において、パラメータは、角膜の生体内又は原位置共焦点顕微鏡法で測定される。角膜神経繊維の状態は、被験者の身体の他の部位においてDM及び末梢神経障害と相関することが証明されている(ハンら2019年)。
【0064】
種々の実施例において、方法は、局所に適用される製剤の投与前及び/又は投与後に、角膜神経のパラメータを測定するステップを更に備える。種々の実施例において、測定されるパラメータには、神経繊維長と神経繊維密度が含まれる。種々の実施例において、パラメータは、角膜の生体内又は原位置共焦点顕微鏡法で測定される。これにより、予防及び/又は治療の効果を監視することが可能となる。
【0065】
種々の実施例が、末梢神経損傷の予防及び/又は治療のための局所に適用される製剤の製造における、式Iのジアミノフェノチアジン化合物又は互変異性型の使用に関係している。
【0066】
種々の実施例において、化合物は、人間を含む動物において使用するのに適しており、医療又は獣医療の場において、末梢神経損傷の予防及び/又は治療に適する、局所に適用される製剤において製造されている。
【0067】
種々の実施例において、末梢神経損傷は、神経栄養性角膜症に帰着するかそれを含むかする。種々の実施例において、末梢神経損傷は、外傷、感染、自己免疫障害、代謝障害、遺伝要因、加齢、化学療法のような毒素への露呈、高血糖により誘発される末梢神経障害、あるいは、末梢神経障害に帰着する当技術分野で知られているその他の原因によって引き起こされる末梢神経障害を含む。
【0068】
種々の実施例が、末梢神経損傷の予防及び/又は治療のために、150μM以下の塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウム及び、生理学的緩衝剤もしくは担体又は担体-媒体を備え、局所に適用される製剤の製造における、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムの使用に関係している。
【0069】
種々の実施例において、末梢神経損傷の予防及び/又は治療のための局所に適用される製剤が記載されている。
【0070】
種々の実施例において、使用は、眼への使用である。種々の実施例において、使用は、ドライアイの治療のためである。種々の実施例において、使用は、角膜末梢神経障害の予防のためである。
【0071】
種々の実施例が、150μM以下の塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウム及び、製剤の粘度を約15から150ミリパスカル/秒の範囲に調整又は増大する担体又は担体-媒体を備え、末梢神経損傷の予防及び/又は治療のために局所に適用される製剤に関係している。
【0072】
種々の実施例において、局所に適用される製剤は、担体又は担体-媒体を備える。種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、高分子量の親水性ポリマー、ポリビニルアルコール、ポロクサマー、ヒアルロン酸、カルボマー、セルロース誘導体(ジェランガム、キサンタンガム)、デキサメタゾン、ピロカルピン、2-ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチレングリコールジメチルアクリレート、アクリルアミド、N-ビニルピロリドン及びエチルアクリレート又はこれらの組み合わせのようなポリマーを備えても良い。種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、キレート化剤、界面活性剤又はシクロデキストリンのような、眼への薬の供給又は浸透を増加させる賦形剤を備えても良い。種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、ナノパーティクル、マイクロパーティクル、ニオソメス、ディスコソメス、デンドリマー、原位置ゲル、ウェファー又はコンタクトレンズへの埋め込みのような包接化合物を備えても良い。種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、ショ糖、ブドウ糖、乳糖、Dグルコース(デキストロース)のような糖分子を備えても良い。種々の実施例において、末梢神経環境において自然に発生する内因性のブドウ糖は、溶液において担体又は担体-媒体の一部を形成してもよい。これは、特に、高濃度のブドウ糖をもたらす高血糖症を有するDM被験者において当てはまる。
【0073】
種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムの放出プロフィールを低減するなどして調節する。末梢神経環境へのMTC放出の速度を低減するなどして調節することができる担体又は担体-媒体のような緩慢な放出プロフィールを調節できる既知の担体又は担体-媒体は、いかなるものでも適切である。種々の実施例において、担体又は担体媒体は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムの放出プロフィールを、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムだけのときの放出の速度未満の、又はそれより遅い、所定の速度に低減するなどして調節する。種々の実施例において、適切な担体又は担体-媒体は、高分子量の親水性ポリマー、ポリビニルアルコール、ポロクサマー、ヒアルロン酸、カルボマー、セルロース誘導体(ジェランガム、キサンタンガム)、デキサメタゾン、ピロカルピン、2-ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチレングリコールジメチルアクリレート、アクリルアミド、N-ビニルピロリドン及びエチルアクリレート又はこれらの組み合わせのようなポリマーを備えても良い。種々の実施例において、適切な担体又は担体-媒体は、ナノパーティクル、マイクロパーティクル、ニオソメス、ディスコソメス、デンドリマー、原位置ゲル、ウェファーのような包接化合物を備えるか又はコンタクトレンズに埋め込まれても良い。
【0074】
種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、粘度を約15から150ミリパスカル/秒の範囲に増大するなどして調整する。種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、粘度を約15から100ミリパスカル/秒の範囲に増大するなどして調整する。種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、粘度を約15から50ミリパスカル/秒の範囲に増大するなどして調整する。種々の実施例において、粘度は、室温におけるものである。粘度を増大させると、MTCと角膜表面との接触時間を長くすることができ、そうして、その生物学的利用能を増大できるという利点がある。種々の実施例において、ポリマー、糖分子、ナノパーティクル、マイクロパーティクル、ニオソメス、ディスコソメス、デンドリマーという各担体又は担体-媒体は、溶液の粘度を調整又は増大する。
【0075】
種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムの放出プロフィールを低減するなどして調節する。種々の実施例において、担体又は担体媒体は、放出プロフィールが緩慢な微粒子を備える。これには、製剤の粘度を増大させるという利点があり、また、それで、目薬を頻繁に適用する必要が減って患者の受けも良いものとなる。粘度が増大することによって、したたり落ち及び/又は涙に伴う放出が減って、顔への汚れや変色がなくなるので、緩慢に放出する調剤にはまた、皮膚への見苦しい青染みが減るという利点もある。種々の実施例において、放出プロフィールが持続される/緩慢である担体又は担体-媒体微粒子は、ポリ(ラクチドコグリコリド)(PLGA)微小球を備えているが、ただし、当技術分野で放出プロフィールが緩慢になる/持続されることが知られているいかなる微粒子であっても適当とされる。種々の実施例において、PLGA微小球は、PLGA (50:50)、 PLGA (75:25)又は PLGA (85:15)というポリマー比を備える。そのような比によって、MTCの放出プロフィールを低減するなどして更に調節することが可能となる。種々の実施例において、MTCの放出プロフィールは、微小球において異なるポリマー比を用いて、又は、サイズの異なる微小球を用いて、1ヶ月、3ヶ月、又は6ヶ月に調節される。
【0076】
種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、ここに記述される微粒子を備える。
【0077】
種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、ゲルのような水性の流体を備える。
【0078】
種々の実施例において、担体又は担体-媒体は、ここに記述されるようなゲルを備える。
【0079】
ここでの用語「ゲル」は、流体部の割合を高く含むか含むことが可能な3次元の半固体の母体を備える架橋網状組織を指示するよう使われる。
【0080】
局所に適用されるメチレンブルーは、一般的には、PNS障害に効能のあることが決して示されていない。局所に適用される製剤に工夫を凝らすと、外傷、感染、自己免疫障害、代謝障害、遺伝要因、加齢、化学療法のような毒素への露呈、高血糖により誘発される末梢神経障害、あるいは、末梢神経障害に帰着する当技術分野で知られているその他の原因によって引き起こされる末梢神経疾患を管理することが示されます。これは、予防及び/又は治療に役立ち得るものです。
【0081】
種々の実施例は、 (a) 塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムのようなジアミノフェノチアジンの有効量を備え、局所に適用される組成物と、(b) 末梢神経損傷とそれに関連する疾患を予防及び/又は治療する方法における使用のために前記組成物を保持する容器とを備える、局所に適用されるキットに関する。種々の実施例において、末梢神経損傷とそれに関連する疾患は、角膜神経傷害とそれに関連する、神経栄養性角膜症を含む疾患に関係する眼の末梢神経損傷を含む。
【0082】
種々の実施例において、容器は、前記局所に適用される組成物を、少なくとも1日、7日、14日、21日、又は30日間の治療を支える有効量だけ保持するよう構成される。
【0083】
種々の実施例において、キットは、目薬キットを含む。種々の実施例において、容器は、壊れやすい封を備える。
【0084】
種々の実施例は、塩化3, 7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イウムの、緩慢な放出プロフィールを有し得る微粒子又はその他の担体-媒体への閉じ込めを含む、局所に適用される組成物の調剤法に関する。
【0085】
種々の実施例において、緩慢な放出プロフィールを有し得る微粒子又はその他の担体-媒体は、流体又は水溶性の媒体を更に備える。
【0086】
種々の実施例において、担体-媒体は、2以上の化合物を担持することができる。
【0087】
種々の実施例において、局所に適用される組成物の調剤法は、少なくとも以下の条件のいくつかを満たすことからなる。(a) イスラム法でハラルではない動物の一部又はその製品、あるいはイスラム法に従って屠殺されていない動物の一部又はその製品を含まない。(b) イスラム法によるナジ(najs)を含まない。(c) 処方された薬量では、人間への使用が安全で、健康にとって、無毒であり、中毒にならず、害がない。(d) イスラム法によるナジで汚染された装置を用いて調合されたり加工されたり製造されたりしていない。(e)イスラム法で許されていない人間の一部やそこからの派生物を含まない。(f) 調合、加工、処理、梱包、蓄積及び配送の間、ハラル医薬品は、(a)、(b)、(c)、(d)又は(e)の各品目において記述される要件を満たさない他の医薬品、又はイスラム法でハラルではない及びナジであると定められたその他の品目から物理的に分離される。
【0088】
明細書全体を通して、反対の指示がない限り、「を備える」、「からなる」などの用語は、否包括的であって、換言すれば、「を含んでいるがそれに限定されない」との意味に解釈されるものである。
【0089】
明細書全体を通して、文脈的にそうでないとする必要がなければ、「からなる」、又は「からなり」、「からなっている」など、その変形の語は、記述された整数又は整数のグループの包含を意味するがその他の整数又は整数のグループの排除は意味しないと理解される。
【0090】
明細書全体を通して、文脈的にそうでないとする必要がなければ、「含む」、又は「含み」、「含んでいる」など、その変形の語は、記述された整数又は整数のグループの包含を意味するがその他の整数又は整数のグループの排除は意味しないと理解される。
【0091】
ここでの用語「約」は、典型的には、記述された値の±5%を意味し、より典型的には、記述された値の±4%を意味し、更に典型的には、記述された値の±3%を意味し、もっと典型的には、記述された値の±2%を意味し、なおも更に典型的には、記述された値の±1%を意味し、加えて更には典型的には、記述された値の±0.5%を意味するように使われている。
【0092】
そうでない旨の定義がなされていない限り、ここでの全ての技術用語及び科学用語は、本発明の主題が属する分野の当業者が通常理解するのと同じ意味で使われている。ここで用いられている通り、本発明の理解を容易にするために以下の定義を提示する。
【0093】
この文書全体を通して、反対の指示がない限り、「を備える」、「からなる」、「を有する」などの用語は、否包括的であって、換言すれば、「を含んでいるがそれに限定されない」との意味に解釈されるものである。
【0094】
更に、明細書全体を通して、文脈的にそうでないとする必要がなければ、「含む」、又は「含み」、「含んでいる」など、その変形の語は、記述された整数又は整数のグループの包含を意味するがその他の整数又は整数のグループの排除は意味しないと理解される。
【0095】
明細書と添付する請求項において用いられている通り、文脈的にそうでないと明確に指示されない限り、”a”と”the”での単数形は、複数に言及することも含まれる。
【実施例
【0096】
実施例1:ブドウ糖による末梢神経の損傷の防止
試験管細胞検定に基づく実験により、メチレンブルーが、1時間だけの損傷前の培養でもって、高ブドウ糖濃度での損傷から後根神経節ニューロンとその神経延長部を保護する能力があることが証明された。
【0097】
本研究の目的は、作用のメカニズムを反映する、細胞に基づいてのマルチパラメーターのプロトコール用いて、高ブドウ糖値によって誘発された神経毒性に対するメチレンブルー(MB)の薬量に依存する、神経保護効果を探求するものである。150mMのブドウ糖に48時間露呈されるのに先立って、濃度の異なるMTC化合物(0.0005μM、0.005μM、0.05μM、0.5μM、5μM及び50μM)で前処理された96穴プレートで培養された、分離されたばかりのラットの後根神経節ニューロン(DRG)を用いて検定が行われた。
【0098】
48時間のブドウ糖処置(150mM)によってDRG培養において試験管損傷が誘発された。ブドウ糖処置に先立ち、試験化合物の濃度を6段階(0.0005μM、0.005μM、0.05μM、0.5μM、5μM及び50μM)増大させて1時間 DRGを培養し、それに高薬量ブドウ糖での48時間の共培養が続けられた。処置後に、細胞が固定され、抗ベータIIIチューブリンで着色され、そうしてBDパスウェイ855で分析された(ベクトンディキンソン)。HCS技術を用いることによって、神経突起の成長-致死前の細胞障害効果の指示-と関連する細胞パラメータが、単一細胞レベルで測定されたが、それによって高スループットでのスクリーニングが可能となる。
【0099】
化合物の神経保護の程度を異なる濃度で比較するために、化合物の各濃度での神経保護のレベルを研究し、対照細胞と比較した時のレベルの変化に従って、神経保護の異なる4段階の評価点:無・神経保護、低・神経保護、中・神経保護及び高・神経保護を確立した。
【0100】
後根神経節ニューロンの一次培養が、第8日に新生児SDラットの後根神経節から調合された。神経節は、双眼顕微鏡のもとで、脊椎から取り出され、ニューロンは、コラゲナーゼI(ウォーシントン)1.25 mg/mlで1時間、37℃で酵素学的に2度分散させて、一穴あたり30,000細胞という数のB27(インビトロゲン# Cat. 17504-044)で補足された神経基底媒体(インビトロゲン# Cat. 21103-049)を有するポリLリジン(シグマアルドリッチ# Cat. P1524)穴で培養された。細胞は、加湿された5 % CO2雰囲気中のB-27化合物で補足された神経基底媒体に37℃で8日間維持された。
【0101】
最終的に10 mMという濃度になるようにメチレンブルー化合物(トクリス)がエタノールに溶解された。そして、試験化合物の濃度が、20%のB27(インビトロゲン# Cat. 17504-044)で補足された神経基底媒体(インビトロゲン# Cat. 21103-049)において調整された。
【0102】
第8日に、完全な媒体においてメチレンブルーの濃度を6段階(0.0005μM、0.005μM、0.05μM、0.5μM、5μM及び50μM)増大させて1時間、細胞を前処理した。そして、B27成分の無い神経基底媒体(80%)プラスB27成分で補足された神経基底媒体(20%)で媒体を、異なる濃度で共培養されたメチレンブルーと共にブドウ糖150mMの存在下48時間かけて取り替えた。
テスト予定表について図1を参照のこと。
【0103】
神経基底媒体は、ニューロン細胞の特別な要件を満たすよう調合された基底媒体である。それによって、正常な表現型の長期維持とニューロン細胞の成長が可能となり、星状細胞フィーダー層の必要の無いニューロン細胞の純粋な個体群を血清が無いまま維持する。その媒体を使用する結果、ニューロン細胞での使用に適する、4から8の範囲にあるより高いpHのメチレンブルー溶液が得られる。その溶液は粘性が増大する。
【0104】
【表1】
【0105】
高含量スクリーニング検定:メチレンブルー(MB)神経保護が、高含量スクリーニング(HCS)検定によって測定されたが、これには、以下の終点が含まれる:神経突起成長、細胞数及び細胞生存率
【0106】
1.細胞数:細胞数を測定するのにヘキスト33342核酸染料が用いられた。細胞は、5μg/mlヘキスト33342(インビトロゲン# Cat. H1399)で染色され、三度洗浄され、励起波長が380 nmで発光波長が460 nmの蛍光発光で測定された。この染料によって、蛍光顕微鏡検査による高感度の細胞数測定が可能となる。
【0107】
ブドウ糖処置は、150mMの濃度への露呈後、ニューロンの死亡率54%に帰着し、最も高い濃度(50μM)が例外ではあったが、薬量に依存する形で全ての濃度において、メチレンブルーとの共培養で、ブドウ糖に誘発される死亡を防止することができた。更には、この濃度の化合物をブドウ糖に加えると死亡率の更なる増大が誘発されることもまた観察された(図2及びテーブル1)。
【0108】
【表2】
【0109】
試験された残りの濃度でも度合いの異なる神経保護が観察され、従って、メチレンブルーの補足によって、細胞死が大きく低減され、ニューロンの生存と神経の保護を向上させた。
【0110】
2.WST-8検定:生存している細胞を検出するために、10μlのCCK-8試薬(WST-8)を各々の穴に加え、プレートを37℃で培養した。1時間後に、シナジーIIマイクロプレートリーダーを用いて450 nmの吸光度を計測した。
【0111】
ブドウ糖処置は、露呈後にWST8によって測定された時DRGにおける生存率の低減が22%という結果を生じたが、化合物は、ブドウ糖によって誘発された生存率の減少を防ぐことができなかった(図5)。ブドウ糖に加えられた最も濃度が高い化合物(50μM)が、生存率の減少を誘発したこともまた観察された。
【0112】
3.ベータIIIチューブリン染色:ベータIIIチューブリン染色を、免疫組織化学(IHQ)で測定した。細胞を、PBS(シグマアルドリッチ# Cat. D8537)で洗浄し、メタノールで10分間定着した。定着ステップ後、サンプルをPBSで3回洗浄し、PBS+0.3%トリトンで10分間透過化処理した。そして、サンプルを、PBS+ウシ血清アルブミン(BSA)で30分間遮断して、最後に、室温で60分間、PBS+0.5%BSAにおいて1/1000で抗ベータチューブリンIII抗体(アブカム #Cat.ab7751)を加えた。3度の洗浄ステップの後、二次抗体、抗ヤギ-抗マウスアレクサ633(アブカム #Cat.A21050)を60分間1/100で加えて、一次抗体と反応させた。そしてサンプルを3回洗浄して自動蛍光顕微鏡検査で測定した。神経突起の延長部の役割を調査するために、この研究において主に2つの幾何学パターンを使用した:合計神経突起長(ニューロン本体からの経路の合計長)と肢の数(ニューロン当たりの末端神経突起部の数)。
【0113】
検定の最後に、生細胞を測定するために、まず、WST-8で1時間、細胞を染色し、そしてベータIIIチューブリン染色のためにメタノールで定着させ、BDパスウェイ855を再度用いて撮像した。分析に十分な細胞を得るために、一穴当たり9つの視域を撮像した。明瞭な蛍光チャンネルについての画像を集めるために20x対物レンズが用いられた。染料が励起され、フィルターを適当に設定して、その励起の発光波長で蛍光がモニターされた。手順の設定にあたり、異なるプローブ間での発光の重なりを回避するために、露呈時間を調節した。定義済みの核及び細胞質区画と関連する蛍光強度を測定するために異なる分子プローブによって染色された細胞下構造の同時定量化を可能とするモジュールを用いて、集めた画像を分析した。
【0114】
神経突起の延長部の役割を調査するために、この研究において主に2つの幾何学パターンを使用した:ニューロン当たりの神経突起合計長と肢計数/ニューロン。ブドウ糖処置は、処置されていない細胞と比べると、神経突起合計長と神経突起肢計数が、それぞれ38%と31%の低下を生じ、他方、メチレンブルーは、濃度が0.05μMのブドウ糖で誘発された神経突起成長患部を回復させ得る(図3図4、テーブル2及びテーブル3)。従って、メチレンブルーの補足によって、神経突起成長が大きく促され、ニューロンの生存が増大した。
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
ブドウ糖に加える化合物の濃度(5及び50μM)を最も高くすることで、神経突起成長の低減が誘発されることもまた観察された。
【0118】
研究された全てのパラメータについて、処置されていない培養に関連して、蛍光強度における、または対応する形態パラメータにおける、少なくとも20%のバラツキが考慮された。メチレンブルーの神経保護の程度を比較するために、対照細胞と比較した時のバラツキのレベルに応じて神経保護に4つの異なるスコアを設定した:0(神経保護が無いか20%未満のバラツキ)、1(20-40%のバラツキ)、2(40-60%のバラツキ)、3(60-100%のバラツキ)、4(100-200%のバラツキ)。更には、濃度によっては、おそらくはそれらに毒性があるために、または、おそらくはブドウ糖との組み合わせにおいてそれらに毒性があるために、ある程度の損傷が呈示されており、ブドウ糖処置された細胞と比較した時のバラツキのレベルに応じて損傷にも同様のスコアを設定した:-1(20-40%のバラツキ)、-2(40-60%のバラツキ)及び-3(40-60%のバラツキ)。各個別スコアを合計して、各化合物について神経保護の合計レベルを得、神経保護の程度として定義した。この計算から、神経保護の尺度を設定した:高(>6)、中(4-5)、低(1-3)及び無・神経保護 (0)。
【0119】
異なる濃度で試験をした化合物の神経保護の度合いを比較するために、変化のレベルに応じた異なるスコアを作り(グループを形成する基準は、物質と方法の章に記述している)、そして、各パラメータに値を割り当てた。各パラメータと試験をした濃度についての全ての値の合計を計算し、それらの、神経保護のレベルに応じて個別のグループを4つ作った。この分析から、調査した各化合物の神経保護の度合いを定義した(テーブル4)。
【0120】
【表5】
【0121】
手短に言えば、メチレンブルーは、0.05μMで中度の神経保護が得られており、0.0005μM、0.005μM及び0. 5μMで低度の神経保護が得られており、5μMで神経保護は得られておらず、50μMで有毒との評価を得た。
【0122】
メチレンブルーの神経保護効果が、下のテーブル5に示されている:
【0123】
【表6】
【0124】
調査した全てのパラメータに応じて、メチレンブルーは、0.0005μMから0. 5μMまでの濃度で、ブドウ糖で誘発されるDRG毒性に対する神経保護を幾分かは示し、0.05μMで、ブドウ糖で誘発されるDRG毒性に対する中度の神経保護効果を示した。
【0125】
本調査において、ブドウ糖毒性は、神経突起成長及び細胞数と生存率の低下という結果を生じた。ブドウ糖毒性に対するメチレンブルーの予防効果は、細胞生存率の上昇及び神経突起成長の再生と関連している。調査した全てのパラメータに注意すると、メチレンブルーの補足によって、0.05μMで中度の神経保護レベルが得られる。
【0126】
実施例2:局所に適用されるメチレンブルー製剤の人間の眼における(生体内)耐性の試験
メチレンブルーの局所に適用される製剤の、0.005%(160μM)を含んでそこまでの濃度で、人間の眼に使用できるものを確認するために、眼に適用される製剤を一連の濃度で調合して試験した。メチレンブルー化合物(Bleu de Methylene 1%, STEROP)を無菌の潤滑性眼用ゲル(Systane Gel Drop)に溶解して、最終の最大濃度が160μMまでの10mlsの量とした。局所に適用される製剤の濃度を、0.05μM、0. 5μM、5μM、50μM、60μM、150μM及び160μMに調節した。潤滑性眼用ゲル(Systane Gel Drop)を使用して目薬の粘度を増大した。局所に適用される製剤の各々を一滴、一日に一度人間の眼に滴下した。標準的な検眼走査を用いて、滴下直後、滴下してから6時間後と24時間後に眼を検査したが、全ての時点で、有害な影響は示されなかった。
【0127】
150μM以下のメチレンブルーを含む全ての局所に適用される製剤において、局所に適用される製剤は、眼に対して損傷や不快感を引き起こすことなく完全に許容できることが観察された。150μMを超えると、少し目にしみて、穏やかな不快感が引き起こされ、自然に自分で制限を加えることになる。このゲル状の局所に適用される製剤の粘度によって、局所に適用される製剤が、眼の中に留まり、瞼から流れ出て顔に筋をつけ無いようにすることが可能である。この「したたらない」効果は非常に望ましい。
【0128】
実施例3:局所に適用される製剤の調合
調剤A
メチレンブルー化合物(トクリス)を無菌水に溶解して、最終濃度を10 mMとする。テスト化合物の濃度を、重炭酸ナトリウムと塩化ナトリウムを含む10 mMのHEPES緩衝液において0.05μM、0.5μM、5μM、50μMまたは100μMに調整する。
【0129】
調剤B
まず、脱イオン水に低アクリルゲル化剤ガム(ケルコゲルCG LA、アゼリス、UK)を溶解して、流動ゲルを作る。室温で脱イオン水に正確な割合のゲル化剤粉を加えて、1%(w/v)溶液を生じさせる。ゾルを、磁気攪拌器を備えたホットプレート上で攪拌しながら、ポリマーが全て溶解するまで70℃に加熱する。一度溶解したら、カップと羽板の幾何構造(カップ:直径35mm、羽板:直径28mm)を備えた回転流量計のカップにゲル化剤ゾルを加える。そして、それ全体を40℃に冷却する。メチレンブルー化合物(トクリス)を無菌水に溶解して、最終濃度を10mMとする。テスト化合物の濃度を、リン酸緩衝食塩水(PBS)(4.76mg/ml)と塩化ナトリウム水(0.2M)において0.05μM、0.5μM、5μM、50μMまたは100μMに調整する。これに続けて、混合物を、剪断しながら(450/s) 最終温度20℃まで速度1℃/分で冷却する。そして、サンプルを取り出し、更なる使用まで4℃で蓄積する。メチレンブルー化合物を含まない流動ゲルの場合、最終の目薬が、0.9%(w/v)のゲル化剤、10mMのNaClと言う組成を有するように割合を調整する。
【0130】
調剤C
PLGAのカプセル化には、DI水への溶解度が高い化合物が必要である。従って、MTCの溶解度をテストした。溶媒20mlをガラス小瓶に入れて磁気攪拌器に置いた。純度88.0%のメチレンブルー(Merck)を飽和点またはそれを超えるまで加えた。溶解が緩慢な純度88.0%のメチレンブルー(Merck)に必要なだけ長時間、攪拌した。溶解した純度88.0%のメチレンブルー(Merck)の量を測定して、特定の溶媒への純度88.0%のメチレンブルー(Merck)の溶解度を得た。
【0131】
以下における純度88.0%のメチレンブルー(Merck)の溶解度の結果:
DI水: 41.432 mg/ml
ジクロロメタン(DCM): < 0.1 mg/ml
アセトニトリル(ACN): 0.5675 mg/ml
【0132】
メチレンブルーの溶解度を調べてみることで、驚くことに、最終的には成功と言う結果であるにもかかわらず、PLGA担体とは最初は不相溶であることが示唆された。
【0133】
カプセル化
微小球の製造は、3回の機会に3つの別のランで、以下のように行われた。メチレンブルーのケースは独特である;染料は色が明瞭で、メチレンブルーをPLGA微小球に装填したことを確認するために目視検査を行っても良い。メチレンブルーの微小球への装填効率を最適化するために3つの製造ランが実行された。
【0134】
ガラス毛細管微小流体機構を用いて水中油乳液を生成した。四角及び円形毛細管を用いて軸対称同軸ガラス毛細管流集束装置を組み立てた。円形毛細管の表面は、酸素プラズマ(100ワット)で120秒間処置して親水化した。PVA(1 % w/v)を水に混ぜることによって水性連続相を作り出した。純度88.0%のメチレンブルー(Merck) で分散相(O)を通した。純度88.0%のメチレンブルー(Merck)は、以下の濃度の一つを用いた:(i) 0.5μM、(ii) 各々、50μM、150μM。ジクロロメタン(DCM)のPLGA濃度(50mg/mL)を3つの全てのケースにおいて一定に保った。W相とO相を、各々150及び50μL/分と言う流速で、シリンジポンプ(ハーバードPHD22/2000シリーズ)を用いて外部同軸領域を通して四角い毛細管の二端から注入した。流体は、流体力学的に円形毛細管のノズルを通って流集束し、その結果、乳液液滴を形成した。サンプルの収集に6cm IDガラス穴を用いた。水滴の融合を防止するために、約300μLのO/W乳液を、前もって調合された連続相のフィルム(3 mL)を含むガラス穴へと直接分配した。室温(24℃)で溶剤を蒸発させた。均一な微小球を収集してメチレンブルーをカプセル化し、顕微鏡画像を用いて確認した。
【0135】
微小球の特性表示
PLGA微小球のパフォーマンスを最大とするには、10-25μmの範囲にある微小球サイズが最適である。ソフトウェアImageJを用いて微小球を100個測定し、平均値及び標準偏差を報告することによって特性を表示した。
【0136】
結果
各製造ランで製造される微小球のサイズは以下の通りである。
ラン1: 25.45±1.13μm
ラン2: 20.46±1.12μm
ラン3: 16.69±0.74μm
【0137】
各ランの顕微鏡写真が、図6図7及び図8に示される。ラン2及びラン3は、受容基準を満たす。
【0138】
実施例4:製剤Cの放出プロフィール
上述したラン2で製造された5 mgの乾燥微小球を7日放出調査に用いた。以下の時点を測定して放出プロフィールを評価した:0、3、6、9、12、24、48、72、96、120、144及び168時間。
【0139】
メチレンブルーの装填量も評価するために、乾燥微小球の小さなサンプルもまた測定した。
【0140】
HPLCを用いて各サンプルの濃度を測定した。
結果
ラン2で製造された微小球からのメチレンブルーの7日放出の結果は以下の通りである。
【0141】
【表7】
【0142】
PLGA微小球内へメチレンブルーをカプセル化する微小球の製造を成功させる目標サイズ範囲を打ち立てた。その結果が、メチレンブルーの一様な放出を示す7日間の放出調査で確認された。微小球は、粘膜付着性コーティングで被覆された。
【0143】
製造ランにおいて、カプセル化の結果、PLGA微小球へのメチレンブルーの実質的な装填が行われた。これは、HPLCを用いて確認された。放出プロフィールがテーブル6及び図9に示されている。
【0144】
実施例5:眼の末梢神経損傷の生体内予防及び/又は処置
メチレンブルー化合物(トクリス)を無菌水に溶解して、最終濃度を10mMとする。テスト化合物の濃度を、重炭酸ナトリウムと塩化ナトリウムを含む10mMのHEPES緩衝液において0.05μM、0.5μM、5μM、50μMまたは100μMに調整する(調剤A)。処置されていないグループは、重炭酸ナトリウムと塩化ナトリウムを含む10mMのHEPES緩衝液のみを含んでいた。同じテスト溶液の第二のグループは、5g/lのゲル化剤ガムで粘度を調節して増大させて作られる(調剤B)。同じテスト溶液の第三のグループは、緩慢放出微粒子を用いて粘度を調節して増大させて作られる(調剤C)。
【0145】
毎日一度二週間、溶液を糖尿病マウスの眼に滴下する。改良ハイデルブルグ網膜断層撮影ロストック角膜モジュールを用いて、生体内共焦点顕微鏡検査を行う。走査する前に50mg/kgのケタミンと5mg/kgのキシラジンを一度に注射し、局所に適用する0.5%の点眼剤一滴を滴下して、マウスに麻酔した(ボシュロム、タンパFL)。リフレッシュプラスを用いて反対側の眼の潤滑性を維持した(アラーガン、アービンCA)。上皮の見えを良くするために、シリコンワッシャーをトモキャップ(ハイデルブルグ、ドイツ)の外端に配置し、トモキャップ先端と上皮表面との間に薄い空間層を作った。17ワッシャーの寸法は以下の通りであった:外径1.2cm、内径3mm、厚さ600mm(スペシャリティシリコンプロダクト社、バルストンスパNY)。前述の通り画像の獲得を行った。17角膜は、秒速30mmというレンズ速度で走査し、ステップ毎に1mmずつ速度を増加させた。各角膜につき最低三回の走査を行った。
【0146】
局部に適用するメチレンブルーの点眼薬の効果が薬量に依存して高まるよう、処置を繰り返すことが考えられており、また、メチレンブルーの点眼溶液の効果が高まるよう、溶液の粘度を5μM、50μM及び100μMと増大させることも考えられている。
【0147】
上述の特徴の取り替えや入れ替えではなく、変形や組み合わせは、本発明で意図した範囲内に入る、なおも更なる実施例を形成するために組み合わされても良いということを当業者は加えて理解するべきである。
【0148】
当業者は理解するであろうが、各実施例は、他の実施例又はいくつかの実施例と組み合わせて用いてもよい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】