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特表2022-545226神経学的疾患のための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(54)【発明の名称】神経学的疾患のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20221019BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20221019BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20221019BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20221019BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20221019BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20221019BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20221019BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20221019BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/705 ZNA
C07K19/00
C12N15/10 200Z
C12N15/12
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/869 Z
C12N7/01
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61P43/00 111
A61P25/02
A61P25/00
A61P13/02
A61P25/04
A61P25/28
A61P25/16
A61P1/00
A61P25/22
A61P25/30
A61P25/24
A61P9/10
A61P1/02
A61P9/06
A61K38/16
A61P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510971
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 US2020047503
(87)【国際公開番号】W WO2021035179
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/889,963
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518090029
【氏名又は名称】コーダ バイオセラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラウ, アンソニー ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】キーファー, オリオン ピー. ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】マキンソン, ステファニー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA02
4C084BA22
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA02
4C084ZA08
4C084ZA12
4C084ZA15
4C084ZA16
4C084ZA20
4C084ZA36
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA81
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA20
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA08
4C087ZA12
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZA20
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA81
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA45
4H045DA50
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
操作された受容体、操作された受容体をコードするポリヌクレオチド、および操作された受容体をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子治療ベクターを使用して、細胞の活性を調節するための組成物および方法が提供される。これらの組成物および方法は、例えば、疾患の治療または神経回路の研究における、ニューロンの活性の調節に特定の用途を見出す。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作された受容体であって、
a.ヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)に由来し、ヒトグリシン受容体α1サブユニットからのCys-ループドメインを含むリガンド結合ドメインと、
b.前記ヒトグリシン受容体α1サブユニットに由来するイオン孔ドメインと、を含み、
前記リガンド結合ドメインが、(i)L131およびS172、Y115およびS170、ならびにY115およびL131からなる群から選択される一対のアミノ酸残基に二つのアミノ酸置換、または(ii)L131Eのアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸残基は、α7-nAChRの前記アミノ酸残基に対応し、
前記操作された受容体が、キメラリガンド依存性イオンチャネル(LGIC)受容体である、操作された受容体。
【請求項1】
前記操作された受容体が、配列番号33のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列が、L131およびS172、Y115およびS170、ならびにY115およびL131からなる群から選択される一対のアミノ酸残基に前記二つのアミノ酸置換、またはL131Eの前記アミノ酸置換をさらに含み、前記アミノ酸残基が、α7-nAChRの前記アミノ酸残基に対応する、請求項1に記載の操作された受容体。
【請求項2】
前記リガンド結合ドメインが、L131およびS172、Y115およびS170、ならびにY115およびL131からなる群から選択される一対のアミノ酸残基に二つのアミノ酸置換を含む、請求項1または1.1に記載の操作された受容体。
【請求項3】
前記リガンド結合ドメインが、L131SおよびS172D、L131TおよびS172D、L131DおよびS172D、Y115DおよびS170T、Y115DおよびL131Q、ならびにY115DおよびL131Eからなる群から選択される一対のアミノ酸置換を含む、請求項1、1.1、または2のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項3】
前記操作された受容体が、配列番号33のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列が、L131SおよびS172D、L131TおよびS172D、L131DおよびS172D、Y115DおよびS170T、Y115DおよびL131Q、ならびにY115DおよびL131Eからなる群から選択される一対のアミノ酸置換をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項4】
前記リガンド結合ドメインが、L131Eのアミノ酸置換を含む、請求項1または1.1に記載の操作された受容体。
【請求項4】
前記操作された受容体が、配列番号33のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列が、L131Eのアミノ酸置換をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項5】
前記Cys-ループドメインが、配列番号2のアミノ酸166~172を含む、請求項1~4.1のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項6】
前記Cys-ループドメインが、配列番号2のアミノ酸166~180を含む、請求項1~4.1のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項7】
前記受容体が、前記ヒトグリシン受容体α1サブユニットからのβ1~2ループドメインを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項8】
前記β1~2ループドメインが、配列番号2のアミノ酸81~84を含む、請求項7に記載の操作された受容体。
【請求項8】
前記操作された受容体が、配列番号58~63からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項9】
アセチルコリンに対する前記操作された受容体の効力が、アセチルコリンに対する前記ヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも低い、請求項1~8のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項10】
アセチルコリンに対する前記操作された受容体の効力が、アセチルコリンに対する前記ヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも少なくとも2倍低い、請求項9に記載の操作された受容体。
【請求項11】
非天然リガンドに対する前記操作された受容体の効力が、前記非天然リガンドに対する前記ヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力とほぼ同じである、請求項1~10のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項12】
非天然リガンドに対する前記操作された受容体の効力が、前記非天然リガンドに対する前記ヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも高い、請求項1~11のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項13】
前記非天然リガンドに対する前記操作された受容体の効力が、前記非天然リガンドに対する前記ヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも少なくとも2倍高い、請求項12に記載の操作された受容体。
【請求項14】
前記効力を決定することが、EC50を決定することを含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項15】
非天然リガンドの存在下での前記操作された受容体の有効性が、前記非天然リガンドの存在下での前記ヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の有効性よりも高い、請求項1~14のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項16】
非天然リガンドの存在下での前記操作された受容体の有効性が、前記非天然リガンドの存在下での前記ヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の有効性よりも少なくとも2倍高い、請求項1~15のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項17】
前記有効性を決定することが、前記非天然リガンドの存在下でインビトロで前記操作された受容体を通過する電流の量を決定することを含む、請求項15~16のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項18】
前記非天然リガンドが、AZD-0328、TC-6987、ABT-126、APN-1125、TC-5619、およびファシニクリン/RG3487からなる群から選択される、請求項11~17のいずれか一項に記載の操作された受容体。
【請求項19】
前記非天然リガンドが、ABT-126、RG3487、およびAPN-1125からなる群から選択される、請求項18に記載の操作された受容体。
【請求項20】
前記非天然リガンドがTC-5619である、請求項18に記載の操作された受容体。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の操作された受容体をコードする核酸を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項22】
前記ポリヌクレオチドが、前記操作された受容体をコードする前記核酸に動作可能に連結されたプロモーターを含む、請求項21に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
前記プロモーターが、調節可能なプロモーターである、請求項22に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
前記調節可能なプロモーターが、興奮性細胞中で活性である、請求項23に記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
前記興奮性細胞が、ニューロンまたは筋細胞である、請求項24に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
前記興奮性細胞が、ニューロンである、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
請求項21~26のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項28】
前記ベクターがプラスミド、またはウイルスベクターである、請求項27に記載のベクター。
【請求項29】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、および単純ヘルペスウイルスベクター1(HSV-1)からなる群から選択されるウイルスベクターである、請求項28に記載のベクター。
【請求項30】
前記ウイルスベクターが、AVVベクターであり、前記AAVベクターが、AAV5もしくはそのバリアント、AAV6もしくはそのバリアント、またはAAV9もしくはそのバリアントである、請求項29に記載のベクター。
【請求項31】
請求項1~20のいずれか一項に記載の操作された受容体、請求項21~26のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、または請求項27~30のいずれか一項に記載のベクターを含む、組成物。
【請求項32】
請求項1~20のいずれか一項に記載の操作された受容体、請求項21~26のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、または請求項27~30のいずれか一項に記載のベクター、および薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項33】
ニューロンにおいて操作された受容体を作製する方法であって、前記ニューロンを、請求項21~26のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項27~30のいずれか一項に記載のベクター、請求項31に記載の組成物、または請求項32に記載の医薬組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項34】
前記ニューロンが、末梢神経系のニューロンである、請求項33に記載の方法または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項35】
前記ニューロンが、中枢神経系のニューロンである、請求項33もしくは34に記載の方法、または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項36】
前記ニューロンが、侵害受容性ニューロンである、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法、または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項37】
前記ニューロンが、非侵害受容性ニューロンである、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法、または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
前記ニューロンが、背根神経節(DRG)ニューロン、三叉神経節(TG)ニューロン、運動ニューロン、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、または感覚ニューロンである、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法、または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
前記ニューロンが、Aδ求心性線維、C線維、またはAβ求心性線維である、請求項33~38のいずれか一項に記載の方法、または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
前記ニューロンが、Aβ求心性線維である、請求項39に記載の方法、または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項41】
Aβ求心性線維が、損傷Aβ求心性線維である、請求項40に記載の方法、または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項42】
Aβ求心性線維が、非損傷Aβ求心性線維である、請求項40に記載の方法、または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項43】
前記ニューロンが、神経フィラメント200(NF200)、ピエゾ2、およびTLR-5を発現する、請求項33~42のいずれか一項に記載の方法、または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項44】
前記ニューロンが、TrpV1、前立腺酸性ホスファターゼ、NaV1.1を発現しない、請求項33~43のいずれか一項に記載の方法、または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項45】
前記接触工程が、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで実施される、請求項33~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記接触工程が、対象においてインビボで実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記接触工程が、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記組成物、または前記医薬組成物を前記対象に投与することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記接触工程が、インビトロまたはエクスビボで実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記接触工程が、リポフェクション、ナノ粒子送達、粒子衝撃、電気穿孔、超音波処理、またはマイクロインジェクションを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記操作された受容体が、前記ニューロンの細胞表面に局在化することができる、請求項33~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
(a)前記ニューロンを請求項1~20のいずれか一項に記載の操作された受容体、請求項21~26のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項27~30のいずれか一項に記載のベクター、請求項31に記載の組成物、または請求項32に記載の医薬組成物と接触させることと、(b)前記ニューロンを前記操作された受容体の非天然リガンドと接触させることと、を含む、ニューロンの活性を阻害する方法。
【請求項51】
前記ニューロンが、末梢神経系のニューロンである、請求項51に記載の方法。
【請求項51】
前記ニューロンが、中枢神経系のニューロンである、請求項51に記載の方法。
【請求項52】
前記ニューロンが、侵害受容性ニューロンである、請求項51~51.2のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記ニューロンが、非侵害受容性ニューロンである、請求項51~51.2のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記ニューロンが、背根神経節(DRG)ニューロン、三叉神経節(TG)ニューロン、運動ニューロン、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、または感覚ニューロンである、請求項51~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記ニューロンが、Aδ求心性線維、C線維、またはAβ求心性線維である、請求項51~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ニューロンが、Aβ求心性線維である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
Aβ求心性線維が、損傷Aβ求心性線維である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
Aβ求心性線維が、非損傷Aβ求心性線維である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記ニューロンが、神経フィラメント200(NF200)、ピエゾ2、およびTLR-5を発現する、請求項51~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記ニューロンが、TrpV1、前立腺酸性ホスファターゼ、NaV1.1を発現しない、請求項51~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
接触工程(a)が、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで実施される、請求項51~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
接触工程(b)が、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで実施される、請求項51~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
接触工程(a)および/または(b)が、対象においてインビボで実施される、請求項51~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
接触工程(a)が、前記操作された受容体、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、または前記医薬組成物を前記対象に投与することを含み、および/または接触工程(b)が、前記非天然リガンドを前記対象に投与することを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
接触工程(a)および/または(b)が、リポフェクション、ナノ粒子送達、粒子衝撃、電気穿孔、超音波処理、またはマイクロインジェクションを含む、請求項51~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記操作された受容体が、前記ニューロンの細胞表面に局在化することができる、請求項51~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
それを必要とする対象における神経学的障害の発症を治療および/または遅延する方法であって、
a.前記対象に、治療有効量の請求項1~20のいずれか一項に記載の操作された受容体、請求項21~26のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項27~30のいずれか一項に記載のベクター、請求項31に記載の組成物、または請求項32に記載の医薬組成物を投与することと、
b.前記操作された受容体の非天然リガンドを前記対象に投与することと、を含む、方法。
【請求項68】
前記対象が、工程(a)の後に前記非天然リガンドを投与される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記対象が、工程(a)と同時に前記非天然リガンドを投与される、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記神経学的障害が、発作障害、運動障害、摂食障害、脊髄損傷、神経因性膀胱、異痛症、痙縮性障害、そう痒症、アルツハイマー病、パーキンソン病、外傷後ストレス障害(PTSD)、胃食道逆流症(GERD)、依存症、不安症、うつ病、記憶損失、認知症、睡眠時無呼吸、脳卒中、ナルコレプシー、尿失禁、本態性振戦、三叉神経痛、口腔灼熱症候群、または心房細動である、請求項67~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記神経学的障害が、異痛症である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記非天然リガンドが、AZD-0328、ABT-126、TC6987、APN-1125、TC-5619、およびファシニクリン/RG3487からなる群から選択される、請求項67~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記非天然リガンドが、経口、皮下、局所的、または静脈内に投与される、請求項67~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記非天然リガンドが経口投与される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記操作された受容体、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記組成物、または前記医薬組成物が、皮下、経口、髄腔内、局所的、静脈内、神経節内、神経内、頭蓋内、脊髄内、または大槽に投与される、請求項67~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記操作された受容体、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記組成物、または前記医薬組成物が、経椎間孔注射によって、または髄腔内に投与される、請求項67~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記対象が三叉神経痛を患い、前記操作された受容体、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記組成物、または前記医薬組成物が、前記対象の三叉神経節(TG)に投与される、請求項67~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記対象が神経障害性疼痛を患い、前記操作された受容体、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記組成物、または前記医薬組成物が、前記対象の背根神経節(DRG)に投与される、請求項67~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記対象がヒトである、請求項67~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記治療有効量が、前記神経学的障害の徴候および/または症状の重症度を軽減させる、請求項67~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記治療有効量が、前記神経学的障害の徴候および/または症状の発症を遅延させる、請求項67~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記治療有効量が、前記神経学的障害の徴候および/または症状を除去する、請求項67~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記神経学的障害の前記徴候が、神経損傷、神経萎縮、および/または発作である、請求項80~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記神経損傷が、末梢神経損傷である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
85.前記神経学的障害の前記症状が、疼痛である、請求項80~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
それを必要とする対象における疼痛の発症を治療および/または遅延させる方法であって、
a.前記対象に、治療有効量の請求項1~20のいずれか一項に記載の操作された受容体、請求項21~26のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項27~30のいずれか一項に記載のベクター、請求項31に記載の組成物、または請求項32に記載の医薬組成物を投与することと、
b.前記操作された受容体の非天然リガンドを前記対象に投与することと、を含む、方法。
【請求項87】
前記対象が、工程(a)の後に前記非天然リガンドを投与される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記対象が、工程(a)と同時に前記非天然リガンドを投与される、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記非天然リガンドが、AZD-0328、ABT-126、TC6987、APN-1125、TC-5619、およびファシニクリン/RG3487からなる群から選択される、請求項86~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記非天然リガンドが、経口、皮下、局所的、または静脈内に投与される、請求項86~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記非天然リガンドが経口投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記操作された受容体、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記組成物、または前記医薬組成物が、皮下、経口、髄腔内、局所的、静脈内、神経節内、神経内、頭蓋内、脊髄内、または大槽に投与される、請求項86~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記操作された受容体、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記組成物、または前記医薬組成物が、経椎間孔注射によって、または髄腔内に投与される、請求項86~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記対象が三叉神経痛を患い、前記操作された受容体、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記組成物、または前記医薬組成物が、前記対象の三叉神経節(TG)に投与される、請求項86~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記対象が神経障害性疼痛を患い、前記操作された受容体、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記組成物、または前記医薬組成物が、前記対象の背根神経節(DRG)に投与される、請求項86~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記対象がヒトである、請求項86~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記疼痛が、神経障害性疼痛である、請求項85~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記疼痛が、化学療法に関連する、化学療法によって引き起こされる、または化学療法から生じる、請求項85~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記疼痛が、外傷に関連する、外傷によって引き起こされる、または外傷から生じる、請求項85~98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記対象が異痛症を患う、請求項85~99のいずれかに記載の方法。
【請求項101】
前記疼痛が、医療処置後に現れる、請求項85~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記疼痛が、出産もしくは帝王切開に関連する、出産もしくは帝王切開によって引き起こされる、または出産もしくは帝王切開から生じる、請求項85~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記疼痛が、偏頭痛に関連する、偏頭痛によって引き起こされる、または偏頭痛から生じる、請求項85~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記治療有効量は、前記対象の疼痛を一過性に軽減する、前記対象の疼痛を永久に軽減する、前記対象の疼痛の発症を予防する、および/または前記対象の疼痛を除去する、請求項85~103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
工程(a)および(b)が、前記対象の疼痛が現れる前に実施される、請求項85~104のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年8月21日に出願された米国仮特許出願第62/889,963号の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は「SWCH02901WO-Sequence_Listing」である。テキストファイルは200kbで、2020年8月21日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
本開示は、細胞の活性を調節し、疾患を治療するための、操作された受容体、および操作された受容体および小分子リガンドの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
難治性の神経学的疾患は、異常に作用するニューロンと関連していることが多い。これらの状態を治療するための治療法を開発する試みは、疾患に関連する扱いやすい標的タンパク質の欠乏によって妨げられている。例えば、緩和されない慢性疼痛は、米国および世界中で重大な健康問題である。Institute of Medicineの報告書によると、1億1,600万人のアメリカ人が数週間から数年間持続する痛みに苦しみ、その結果、年間コストが5億6,000万ドルを超えると見積もられている。慢性疼痛患者に対する適切な長期治療はなく、社会と個人の双方にとって大きな負担につながっている。痛みはしばしば障害を生じさせ、障害がなかったとしても、生活の質に多大な影響を与える。注意深く、十分に訓練された医師、オピオイドへの即座のアクセス、アジュバント鎮痛薬の使用、患者管理の鎮痛剤の利用可能性、および神経ブロックやITポンプなどの手技のエビデンスに基づく使用など、ケア提供の状況が最適である場合でも、痛みの治療はしばしば失敗する。
【0005】
慢性疼痛に対して最も一般的に使用される療法は、オピオイド鎮痛薬および非ステロイド性抗炎症薬の適用であるが、これらの薬剤は依存症につながる可能性があり、薬物依存、耐性、呼吸抑制、鎮静、認知不全、幻覚、および他の全身性の副作用などの副作用を引き起こす可能性がある。医薬品の幅広い使用にもかかわらず、疼痛緩和におけるその有効性の成功率は著しく低い。様々な薬剤を用いた大規模な無作為化試験では、二人または三人の患者のうち一人のみが、少なくとも50%の疼痛緩和を達成することが見出された(Finnerup et al.,2005)。最も開発された薬理学的治療を使用した追跡研究では、同じ結果が見出され、痛みに対する薬剤の有効性に改善がなかったことを示している(Finnerup et al.,Pain,150(3):573-81,2010)。
【0006】
痛みの治療のためのより侵襲的な選択肢には、神経ブロックおよび電気刺激が含まれる。神経ブロックは、脳への疼痛信号を中断するために通常脊髄に局所麻酔注射をするもので、その効果は数週間から数か月までしか持続しない。神経ブロックは、ほとんどの場合、推奨される治療選択肢ではない(Mailis and Taenzer,Pain Res Manag.17(3):150-158,2012)。電気刺激は、疼痛信号を遮断するために電流を供給することを伴う。効果は神経ブロックよりも長く続くことがあるが、リード線自体の転位、感染、破損、または電池の消耗という問題が生じる。一つのレビューによると、神経障害に対して電気刺激を受けた患者の40%が、装置に伴うこれらの問題のうち一つまたは複数を経験した(Wolter、2014)。
【0007】
痛みを管理する最も侵襲的で最も望ましくない方法は、痛みを引き起こす神経またはその部分の完全な外科的除去である。この選択肢は、患者が前者および他の低侵襲性の治療法を使い果たし、効果がなくなった場合にのみ推奨される。高周波神経焼灼療法は、熱を使用して問題のある神経を破壊し、神経ブロックよりも長い疼痛緩和を提供する。しかし、ある研究では、慢性腰仙神経根痛に対するDRGの部分高周波病変において、対照群と治療群との間に差異は見出されなかった(Geurts et al.,2003)。疼痛神経を外科的に除去するための他の外科手術方法は、同様の欠点に悩まされ、感覚障害もしくは運動障害を含む重篤な副作用を長期的に有するか、または他の場所で疼痛を引き起こす。
神経学的障害を治療する方法は、安全で、効率的で、費用効果が高いものであるべきである。遺伝子治療は、疼痛の管理を含む、様々な神経学的疾患に対する非侵襲的な治療選択肢を提供する可能性がある。しかしながら、これまで遺伝子治療方法は、神経学的疾患の治療において広く使用されていない。本開示は、これらのニーズに対処する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Finnerup et al.,Pain,150(3):573-81,2010
【非特許文献2】Mailis and Taenzer,Pain Res Manag.17(3):150-158,2012
【図面の簡単な説明】
【0009】
開示は、添付図面と併せて読み取った場合、以下の詳細な説明から最も理解される。特許または出願ファイルは、カラーで実行される図面を少なくとも一つ含む。本特許またはカラーの図面を含む特許出願公報の写しは、請求および必要な料金の支払いに応じて、官庁から提供される。一般的な慣行によれば、図面の様々な特徴は実寸でないことが強調される。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大または縮小している。図面には、以下の図が含まれる。
【0010】
図1A-B】図1A図1Gは、アセチルコリンまたは示された非天然リガンドのいずれかの様々な用量による刺激後の、示された二重アミノ酸置換を含む、操作されたキメラ受容体配列番号33の変異体におけるYFP蛍光のクエンチの割合のヒートマップを示す。リガンド用量は、各チャートの上部にわたって記載される。ボックスの中の数字は、観測されたクエンチの絶対量を示す。濃青色=YFPレポーターの最大クエンチ80%。水色=30~80%のクエンチ。白色=10~30%。オレンジ色=0~10%のクエンチ。負の値は、刺激アーチファクトによる負のクエンチを有する非応答を表す。配列番号29は、陰性対照として使用される非応答キメラである。非天然リガンド名の略語:abt:ABT-126、ach:アセチルコリン、apn:APN-1125;azd:AZD-0328;brd:TC-5619;fac:RG3487;tc6:TC-6987。
図1C-D】同上。
図1E-F】同上。
図1G】同上。
【0011】
図2図2A図2Bは、アセチルコリンならびに非天然リガンドRG-3487(SA-2、合成アゴニスト-2)に対する、HEK293細胞で発現された、CR-11(化学物質誘発性受容体-11、配列番号33のY115DおよびL131Qのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む操作された受容体)の濃度反応曲線を示す。応答を、手動パッチクランプ電気生理学を使用して評価した。電流を、最大応答に対して一に正規化した。データ点を通る実線は、ヒルの式で得られる最適なものであり、各リガンドに対するEC50は、濃度反応曲線から推定される。図2Aは、アセチルコリンに対する野生型およびCR-11受容体の濃度反応曲線を示す。図2Bは、RG-3487(SA-2)に対する野生型およびCR-11受容体の濃度反応曲線を示す。
【0012】
図3図3は、CR-11(化学物質誘発性受容体-11、配列番号33のY115DおよびL131Qのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む操作された受容体)を発現するレンチウイルスで形質導入された成体ラットDRGニューロンにおけるRG-3487(SA-2)によって誘導された例示的な塩化物電流を示す。
【0013】
図4A図4Aは、異なる電流(50pA~700pA)を注入したときの、CR-11(配列番号33のY115DおよびL131Qのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む操作された受容体)を発現する形質導入DRGニューロン、または対照DRGニューロン(CR-11発現なし)の誘発活動電位を示す。上のパネルは、制御DGFニューロンの誘発活動電位を示す。左下のパネルは、3μMのRG-3487(SA-2)の存在下でCR-11を発現する形質導入DRGニューロンの誘発活動電位を示す。右下のパネルは、RG-3487(SA-2)が洗浄された後の、CR-11を発現する形質導入DRGニューロンの誘発活動電位を示す。
図4B図4Bは、指示されたリガンドの非存在下または存在下で、CR-11を発現する対照DRGニューロンおよび形質導入DRGニューロンの基電流値(活動電位を引き出すために必要とされる電流)を示す。
【0014】
図5図5は、配列番号33のアミノ酸配列を発現する対照細胞に対して正規化した、操作された受容体を発現するHAタグ陽性細胞の割合(「平均HAタグ%」)、および配列番号33のアミノ酸配列を発現する対照細胞に対して正規化した、操作された受容体を発現するα-ブンガロトキシン陽性細胞の割合(「正規化AB %」)を示す。図5はまた、抗HA抗体(「平均HA MFI」)またはAlexa Fluor 647にコンジュゲートされた蛍光標識α-ブンガロトキシン(「正規化AB MFI」)を使用して評価した、配列番号33のアミノ酸配列を発現する対照細胞に対して正規化された、操作された受容体を発現する細胞の蛍光強度(MFI)の中央値を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示は、ヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)に由来し、ヒトグリシン受容体α1サブユニットに由来するCysループドメインを含むリガンド結合ドメインと、ヒトグリシン受容体α1サブユニットに由来するイオン孔ドメインとを含む、操作された受容体を提供する。いくつかの実施形態では、操作された受容体は、キメラリガンド依存性イオンチャネル(LGIC)受容体である。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、(i)L131およびS172、Y115およびS170、ならびにY115およびL131からなる群から選択される一対のアミノ酸残基における二つのアミノ酸置換、または(ii)L131Eのアミノ酸置換を含み、アミノ酸残基は、α7-nAChRのアミノ酸残基に対応する。いくつかの実施形態では、操作された受容体は、配列番号33のアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、L131およびS172、Y115およびS170、ならびにY115およびL131からなる群から選択される一対アのミノ酸残基における二つのアミノ酸置換、またはL131Eのアミノ酸置換をさらに含み、アミノ酸残基は、α7-nAChRのアミノ酸残基に対応する。
【0016】
いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、L131およびS172、Y115およびS170、ならびにY115およびL131からなる群から選択される一対のアミノ酸残基に二つのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、L131SおよびS172D、L131TおよびS172D、L131DおよびS172D、Y115DおよびS170T、Y115DおよびL131Q、ならびにY115DおよびL131Eからなる群から選択される一対のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、操作された受容体は、配列番号33のアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、L131SおよびS172D、L131TおよびS172D、L131DおよびS172D、Y115DおよびS170T、Y115DおよびL131Q、ならびにY115DおよびL131Eからなる群から選択される一対のアミノ酸置換をさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、L131Eのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、操作された受容体は、配列番号33のアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、L131Eのアミノ酸置換をさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、Cys-ループドメインは、配列番号2のアミノ酸166~172を含む。いくつかの実施形態では、Cys-ループドメインは、配列番号2のアミノ酸166~180を含む。いくつかの実施形態では、受容体は、ヒトグリシン受容体α1サブユニットからのβ1-2ループドメインを含む。いくつかの実施形態では、β1-2ループドメインは、配列番号2のアミノ酸81~84を含む。いくつかの実施形態では、操作された受容体は、配列番号58~63からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された受容体は、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、および配列番号63からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、アセチルコリンに対する操作された受容体の効力は、アセチルコリンに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも低い。いくつかの実施形態では、アセチルコリンに対する操作された受容体の効力は、アセチルコリンに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力の少なくとも2倍低い。いくつかの実施形態では、非天然リガンドに対する操作された受容体の効力は、非天然リガンドに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力とほぼ同じである。
【0020】
いくつかの実施形態では、非天然リガンドに対する操作された受容体の効力は、非天然リガンドに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも高い。いくつかの実施形態では、非天然リガンドに対する操作された受容体の効力は、非天然リガンドに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも少なくとも2倍高い。いくつかの実施形態では、効力を決定することは、EC50を決定することを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、非天然リガンドの存在下での操作された受容体の有効性は、非天然リガンドの存在下でのヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の有効性よりも高い。いくつかの実施形態では、非天然リガンドの存在下における操作された受容体の有効性は、非天然リガンドの存在下でのヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の有効性よりも少なくとも2倍高い。いくつかの実施形態では、有効性を決定することは、非天然リガンドの存在下で、インビトロで操作された受容体を通過する電流の量を決定することを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、非天然リガンドは、AZD-0328、TC-6987、ABT-126、APN-1125、TC-5619、およびファシニクリン/RG3487からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、非天然リガンドは、ABT-126、RG3487、およびAPN-1125からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、非天然リガンドは、TC-5619である。
【0023】
本開示は、本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードする核酸を含むポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、操作された受容体をコードする核酸に動作可能に連結されたプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは、調節可能なプロモーターである。いくつかの実施形態では、調節可能なプロモーターは、興奮性細胞で活性である。いくつかの実施形態では、興奮性細胞はニューロンまたは筋細胞である。いくつかの実施形態では、興奮性細胞はニューロンである。
【0024】
本開示は、本明細書に開示されるポリヌクレオチドのいずれか一つを含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、ベクターはプラスミドまたはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、および単純ヘルペスウイルスベクター-1(HSV-1)からなる群から選択されるウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、AVVベクターであり、AAVベクターは、AAV5もしくはそのバリアント、AAV6もしくはそのバリアント、またはAAV9もしくはそのバリアントである。
【0025】
本開示は、本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つ、本明細書に開示されるポリヌクレオチドのいずれか一つ、または本明細書に開示されるベクターのいずれか一つを含む組成物を提供する。本開示はさらに、本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つ、本明細書に開示されるポリヌクレオチドのいずれか一つ、または本明細書に開示されるベクターのいずれか一つ、および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
本開示は、本明細書に開示されるポリヌクレオチドのいずれか一つ、本明細書に開示されるベクターのいずれか一つ、本明細書に開示される組成物のいずれか一つ、または本明細書に開示される医薬組成物のいずれか一つとニューロンを接触させることを含む、ニューロンにおいて操作された受容体を産生する方法を提供する。いくつかの実施形態では、ニューロンは、末梢神経系のニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは、中枢神経系のニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは侵害受容ニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは非侵害受容ニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは、背根神経節(DRG)ニューロン、三叉神経節(TG)ニューロン、運動ニューロン、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、または感覚ニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは、Aδ求心性線維、C線維、またはAβ求心性線維である。いくつかの実施形態では、ニューロンは、Aβ求心性線維である。いくつかの実施形態では、Aβ求心性線維は、損傷したAβ求心性線維である。いくつかの実施形態では、Aβ求心性線維は、損傷を受けていないAβ求心性線維である。いくつかの実施形態では、ニューロンが神経フィラメント200(NF200)、ピエゾ2、およびTLR-5を発現する。いくつかの実施形態では、ニューロンは、TrpV1、前立腺酸性ホスファターゼ、NaV1.1を発現しない。
【0027】
いくつかの実施形態では、接触工程は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、対象においてインビボで実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、接触工程は、インビトロまたはエクスビボで実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、リポフェクション、ナノ粒子送達、粒子衝撃、エレクトロポレーション、超音波処理、またはマイクロインジェクションを含む。いくつかの実施形態では、操作された受容体は、ニューロンの細胞表面に局在化することができる。
【0028】
本開示は、(a)ニューロンを本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つ、本明細書に開示されるポリヌクレオチドのいずれか一つ、本明細書に開示されるベクターのいずれか一つ、本明細書に開示される組成物のいずれか一つ、または本明細書に開示される医薬組成物のいずれか一つと接触させること、および(b)ニューロンを操作された受容体の非天然リガンドと接触させることを含む、ニューロンの活性を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、ニューロンは、末梢神経系のニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは、中枢神経系のニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは侵害受容ニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは非侵害受容ニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは、背根神経節(DRG)ニューロン、三叉神経節(TG)ニューロン、運動ニューロン、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、または感覚ニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは、Aδ求心性線維、C線維、またはAβ求心性線維である。いくつかの実施形態では、ニューロンは、Aβ求心性線維である。いくつかの実施形態では、Aβ求心性線維は、損傷したAβ求心性線維である。いくつかの実施形態では、Aβ求心性線維は、損傷を受けていないAβ求心性線維である。いくつかの実施形態では、ニューロンは、神経フィラメント200(NF200)、ピエゾ2、およびTLR-5を発現する。いくつかの実施形態では、ニューロンは、TrpV1、前立腺酸性ホスファターゼ、NaV1.1を発現しない。
【0029】
いくつかの実施形態では、接触工程(a)は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで実施される。いくつかの実施形態では、接触工程(b)は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで実施される。いくつかの実施形態では、接触工程(a)および/または(b)は、対象においてインビボで実施される。いくつかの実施形態では、接触工程(a)は、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、または医薬組成物を対象に投与することを含み、および/または接触工程(b)は、非天然リガンドを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、接触工程(a)および/または(b)は、リポフェクション、ナノ粒子送達、粒子衝撃、エレクトロポレーション、超音波処理、またはマイクロインジェクションを含む。いくつかの実施形態では、操作された受容体は、ニューロンの細胞表面に局在化することができる。
【0030】
本開示は、それを必要とする対象における神経学的障害の発症を治療および/または遅延する方法を提供し、本明細書に開示される操作された受容体のうちのいずれか一つ、本明細書に開示されるポリヌクレオチドのいずれか一つ、本明細書に開示されるベクターのいずれか一つ、本明細書に開示される組成物のいずれか一つ、または本明細書に開示される医薬組成物のいずれか一つの治療有効量を対象に投与することと、操作された受容体の非天然リガンドを対象に投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、対象は、工程(a)の後に非天然リガンドを投与される。いくつかの実施形態では、対象は、工程(a)と同時に非天然リガンドを投与される。
【0031】
いくつかの実施形態では、神経学的障害とは、発作障害、運動障害、摂食障害、脊髄損傷、神経因性膀胱、異痛症、痙縮性障害、そう痒症、アルツハイマー病、パーキンソン病、外傷後ストレス障害(PTSD)、胃食道逆流症(GERD)、依存症、不安症、うつ病、記憶損失、認知症、睡眠時無呼吸、脳卒中、ナルコレプシー、尿失禁、本態性振戦、三叉神経痛、口腔灼熱症候群、または心房細動である。いくつかの実施形態では、神経学的障害は異痛症である。いくつかの実施形態では、非天然リガンドは、AZD-0328、ABT-126、TC6987、APN-1125、TC-5619、およびファシニクリン/RG3487からなる群から選択される。
【0032】
いくつかの実施形態では、非天然リガンドは、経口、皮下、局所、または静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、非天然リガンドは、経口投与される。いくつかの実施形態では、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物は、皮下、経口、髄腔内、局所、静脈内、神経節内、神経内、頭蓋内、脊髄内、または大槽に投与される。いくつかの実施形態では、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物は、経椎間孔注射によって、または髄腔内に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、三叉神経痛に罹患し、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物は、対象の三叉神経節(TG)に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、神経障害性疼痛に罹患し、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物は、対象の背根神経節(DRG)に投与される。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0033】
いくつかの実施形態では、治療有効量は、神経学的障害の徴候および/または症状の重症度を軽減する。いくつかの実施形態では、治療有効量は、神経学的障害の徴候および/または症状の発症を遅らせる。いくつかの実施形態では、治療有効量は、神経学的障害の徴候および/または症状を除去する。いくつかの実施形態では、神経学的障害の徴候は、神経損傷、神経萎縮、および/または発作である。いくつかの実施形態では、神経損傷は、末梢神経損傷である。いくつかの実施形態では、神経学的障害の症状は、疼痛である。
【0034】
本開示は、それを必要とする対象における疼痛の発症を治療および/または遅延する方法を提供し、本明細書に開示される操作された受容体のうちのいずれか一つ、本明細書に開示されるポリヌクレオチドのいずれか一つ、本明細書に開示されるベクターのいずれか一つ、本明細書に開示の組成物のいずれか一つ、または本明細書に開示される医薬組成物のいずれか一つの治療有効量を対象に投与することと、操作された受容体の非天然リガンドを対象に投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、対象は、工程(a)の後に非天然リガンドを投与される。いくつかの実施形態では、対象は、工程(a)と同時に非天然リガンドを投与される。いくつかの実施形態では、非天然リガンドは、AZD-0328、ABT-126、TC6987、APN-1125、TC-5619、およびファシニクリン/RG3487からなる群から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、非天然リガンドは、経口、皮下、局所、または静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、非天然リガンドは、経口投与される。いくつかの実施形態では、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物は、皮下、経口、髄腔内、局所、静脈内、神経節内、神経内、頭蓋内、脊髄内、または大槽に投与される。いくつかの実施形態では、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物は、経椎間孔注射によって、または髄腔内に投与される。
【0036】
いくつかの実施形態では、対象は、三叉神経痛に罹患し、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物は、対象の三叉神経節(TG)に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、神経障害性疼痛に罹患し、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物は、対象の背根神経節(DRG)に投与される。
【0037】
いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、疼痛は神経障害性疼痛である。いくつかの実施形態では、疼痛は、化学療法に関連するか、化学療法によって引き起こされるか、または化学療法から生じる。いくつかの実施形態では、疼痛は、外傷に関連するか、外傷によって引き起こされるか、または外傷から生じる。いくつかの実施形態では、対象は異痛症に罹患している。いくつかの実施形態では、疼痛は、医療処置後に現れる。いくつかの実施形態では、疼痛は、出産もしくは帝王切開に関連するか、出産もしくは帝王切開によって引き起こされるか、または出産もしくは帝王切開から生じる。いくつかの実施形態では、疼痛は、偏頭痛に関連するか、偏頭痛によって引き起こされるか、または偏頭痛から生じる。いくつかの実施形態では、治療有効量は、対象の疼痛を一時的に軽減し、対象の疼痛を永続的に軽減し、対象の疼痛の発症を防止し、および/または対象の疼痛を除去する。いくつかの実施形態では、工程(a)および(b)は、対象の疼痛が現れる前に実施される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
A.概要
操作されたリガンド依存性イオンチャネル(LGIC)受容体、操作されたLGIC受容体をコードするポリヌクレオチド、および操作されたLGIC受容体をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子治療ベクターを使用して、細胞の活性を調節するための組成物および方法が提供される。これらの組成物および方法は、例えば、疾患の治療または神経回路の研究における、ニューロンの活性の調節に特定の用途を見出す。さらに、主題の方法を実践する際に使用するその試薬、装置、およびキットが提供される。
【0039】
特に、本開示は、公知の薬物、リガンド、および/または結合剤に結合し、それに応答してシグナルを送る操作された受容体を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された受容体は、公知のアゴニスト結合剤に対する親和性の増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された受容体は、拮抗薬または調節因子結合剤に対する親和性を示し、拮抗薬および/または調節因子剤に対して、それらがアゴニスト剤であるかのように応答する。本開示はさらに、それを必要とする対象における神経学的疾患を治療する方法を提供する。本開示は、野生型内因性受容体とは異なる様式で公知の薬物に応答する、操作された受容体を利用することによって、公知の薬物が使用され得る臨床適応症の数を増加させる。
【0040】
本方法および組成物を記載する前に、本開示は、当然のことながら変化し得るので、記載される特定の方法または組成物に限定されないことが理解されよう。また、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記述するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0041】
値の範囲が提供されている場合、文脈が別途明確に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示されることが理解される。記載範囲内の任意の記載値または介在値と、その記載範囲内の任意の他の記載値または介在値との間のより小さな各範囲は、本開示内に包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立して、その範囲内に含まれても除外されてもよく、いずれかまたは両方の限度が、より小さな範囲に含まれている、または含まれていない各範囲も、記載範囲内の任意の特に除外された限度を条件として、本開示内に包含される。記載範囲が、限度の一方または両方を含む場合、それらに含まれる限度のいずれかまたは両方を除外する範囲も、本開示に含まれる。
【0042】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を、本開示の実施または試験に使用することができるが、いくつかの潜在的かつ好ましい方法および材料がこれから説明される。本明細書で言及される全ての刊行物は、その刊行物が引用されるものに関連する方法および/または材料を開示および記述するために、参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、矛盾がある限り、組み込まれた刊行物の任意の開示に優先することが理解される。
【0043】
本開示を読んだ当業者には明らかであろうように、本明細書に説明および図示される個々の実施形態の各々は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されてもよく、または組み合わされてもよい、別個の構成要素および特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
【0044】
本明細書中で考察された刊行物は、本出願の出願日以前にその開示のためにのみ提供される。本明細書のいかなるものも、本開示が先行開示によって、かかる公表に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、提供される公表日は、個別に確認する必要のある実際の公表日とは異なる場合がある。
【0045】
B.定義
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が別途明確に指示しない限り、複数形の参照を含む。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のかかる細胞を含み、「ペプチド」への言及は、一つまたは複数のペプチドおよびその均等物、例えば、当業者に公知のポリペプチドなどを含む。
【0046】
本明細書で使用される場合、別段の示唆がない限り、用語「および/または」は、本開示において、「および」または「または」のいずれかに使用される。
【0047】
本明細書全体を通して、文脈が別途要求しない限り、用語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、指定された要素もしくは整数、または要素もしくは整数のグループを含むが、他の要素もしくは整数、またはは要素もしくは整数のグループの除外しないことを指す。さらに、本明細書全体を通しての数値範囲の記載は、特に、その間のすべての整数および小数点を含む。
【0048】
本明細書全体を通して、文脈上別段の解釈が要求されない限り、語句「から本質的になる」は、主題の開示の基本的および新規の特性に実質的に影響を与えない、指定された材料または工程に記述された組成物、方法、またはキットの範囲の制限を指す。例えば、開示された配列「から本質的になる」リガンド結合ドメインは、配列の境界部で、例えば、列挙された結合アミノ酸残基よりも約5残基、4残基、3残基、2残基、もしくは約1残基少ない、または列挙された結合アミノ酸残基よりも約1残基、2残基、3残基、4残基、もしくは5残基多い、開示された配列のアミノ酸配列の±約5残基のアミノ酸配列を有する。
【0049】
本明細書全体を通して、文脈上別段の解釈が要求されない限り、語句「からなる」は、特許請求の範囲で特定されていない任意の要素、工程、または成分を、組成物、方法、またはキットから除外することを意味する。例えば、開示された配列「からなる」リガンド結合ドメインは、開示されたアミノ酸配列のみからなる。
【0050】
本出願で使用される場合、用語「約」および「およそ」は、等価物として使用される。本出願で使用される任意の数字は、約/およその有無に関わらず、当業者によって認識される任意の通常の変動をカバーすることを意味する。ある特定の実施形態では、用語「およそ」または「約」は、別段の記載がない限り、または文脈から別途明らかでない限り、記載される参照値のいずれかの方向(より大きいまたは小さい)で、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ以下の範囲の値を指す(このような値が100%を超える可能性がある場合を除く)。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「単離」は、通常伴う構成要素から実質的にまたは本質的に遊離している材料が、その天然状態で見出される材料を意味する。いくつかの実施形態では、用語「取得」または「導出」は、単離と同義で使用される。
【0052】
用語「対象」、「個体」、および「患者」は、本明細書では、哺乳類などの脊椎動物を指すために互換的に使用される。哺乳動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ウマ、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、チンパンジー)、またはヒトであってもよい。インビボで取得された、またはインビトロで培養された対象の組織、細胞、またはその誘導体も包含される。ヒト対象は、成人、十代の若者、子供(2~14歳)、幼児(1か月~24か月)、または新生児(1か月未満)であり得る。いくつかの実施形態では、成人は、約65歳以上、または約60歳以上の高齢者である。いくつかの実施形態では、対象は、妊娠女性または妊娠を意図する女性である。
【0053】
用語「試料」は、分析に供される生物学的材料の体積および/または質量を指す。いくつかの実施形態では、試料は、組織試料、細胞試料、流体試料などを含む。いくつかの実施形態では、試料は、対象(例えば、ヒト対象)から採取されるか、または当該対象によって提供される。いくつかの実施形態では、試料は、任意の内臓、癌性、前癌性、または非癌性腫瘍、脳、皮膚、毛髪(毛根を含む)、眼、筋肉、骨髄、軟骨、白色脂肪組織、および/または褐色脂肪組織から採取された組織のいくつかを含む。いくつかの実施形態では、流体試料は、口腔スワブ、血液、臍帯血、唾液、精液、尿、腹水、胸水、脊髄液、肺洗浄液、涙、汗、およびこれに類するものを含む。当業者であれば、いくつかの実施形態では、「試料」は、供給源(例えば、対象)から直接取得されるという点で、「一次試料」であることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、「試料」は、例えば、特定の潜在的汚染成分を除去し、特定の成分を単離し、および/または特定の対象成分を精製するために一次試料を処理する結果である。いくつかの実施形態では、試料は、細胞または細胞集団(例えば、神経細胞)である。細胞試料は、対象から直接導出されてもよく(例えば、一次試料)、または細胞株であってもよい。細胞株は、非哺乳類細胞(例えば、昆虫細胞、酵母細胞、および/または細菌細胞)または哺乳類細胞(例えば、不死化細胞株)を含み得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療」とは、生理学的結果に影響を与えるために、組成物(例えば、操作された受容体および/または結合剤)を対象および/または細胞集団に送達することを指す。特定の実施形態では、治療は、一つまたは複数の疾患症状の改善(例えば、軽減、向上、または治療)をもたらす。改善は、観察可能または測定可能な改善であってもよく、または対象の一般的な幸福感の改善であってもよい。疾患の治療は、疾患症状の重症度の軽減を指し得る。いくつかの実施形態では、治療は、疾患の発症前のレベルと同等のレベルまでの疾患症状の重症度の軽減を指す場合がある。いくつかの実施形態では、治療は、疾患症状の短期(例えば、一時性または急性)および/または長期(例えば、持続性または慢性)の軽減を指し得る。いくつかの実施形態では、治療は、疾患症状の寛解を指し得る。いくつかの実施形態では、治療は、特定の疾患を発症するリスクがある対象に、疾患の発症を防止するために行う予防的治療を指し得る。疾患の発症の防止は、疾患の症状の完全な防止、疾患の発症の遅延、その後に発症した疾患における症状の重症度の緩和、または疾患の発症の可能性の低減を指す場合がある。
【0055】
本明細書で使用される場合、「管理」または「制御」は、特定の疾患に罹患する個体の生活の質を改善するために、本明細書で企図される組成物または方法の使用を指す。特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物および方法は、疼痛に罹患する対象に鎮痛を提供する。
【0056】
「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要な組成物の量である。治療有効量は、限定されるものではないが、対象の病態および年齢、性別、および体重などの要因に応じて変化し得る。概して、治療有効量は、治療上有益な効果が、組成物の任意の毒性または有害効果に優るものである。「治療有効量」は、対象を治療するために有効な組成物の量を含む。
【0057】
「増加」は、参照または対照レベルと比較して、少なくとも5%の値の増加(例えば、結合親和性の増加、生理学的応答の増加、治療効果の増加など)を指す。例えば、増加は、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、500、1000%またはそれ以上の増加を含み得る。増加はまた、参照または対照レベルよりも1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍、またはそれ以上(例えば、500、1000倍)高い増加を意味する。
【0058】
「減少」、「軽減」、「縮小」、またはその同義語は、参照または対照レベルと比較して、少なくとも5%の値の減少(例えば、結合親和性の減少、生理学的応答の減少、治療効果の減少、対象における疼痛の減少など)を指す。例えば、減少は、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、500、1000%またはそれ以上の減少を含み得る。減少はまた、参照または対照レベルよりも1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍、またはそれ以上(例えば、500、1000倍)低い減少を意味する。
【0059】
「維持」、または「保持」、または「持続」、または「変化なし」、または「実質的な変化なし」、または「実質的な減少なし」とは、ビヒクルまたは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる効果に匹敵する生理学的および/または治療効果を一般的に指す。同等の応答とは、参照応答と有意差がないか、または測定可能な差異ではない応答である。
【0060】
用語「参照」または「対照」は、本明細書で互換的に使用され、本明細書に記載される組成物で治療されていない対象もしくは試料、またはビヒクル対照で治療された対象もしくは試料における特定の生理学的および/または治療効果の値を指す。いくつかの実施形態では、参照レベルは、本明細書に記載される組成物(例えば、ベースラインレベル)の投与前に、対象または試料において測定される特定の生理学的および/または治療効果の値を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「リガンド」は、別のより大きな分子に結合する分子を指す。いくつかの実施形態では、リガンドは、受容体に結合する。いくつかの実施形態では、リガンドの受容体への結合は、受容体の機能を変化させ、その機能を活性化または抑制する。いくつかの実施形態では、リガンド依存性イオンチャネル(LGIC)のような受容体へのリガンドの結合は、イオンチャネルの開通または閉通をもたらす。
【0062】
「受容体-リガンド結合」および「リガンド結合」は本明細書では互換的に使用され、受容体(例えば、LGIC)とリガンドとの間の物理的相互作用を指す。本明細書で使用される場合、用語「リガンド」は、内因性または天然由来のリガンドを指し得る。例えば、いくつかの実施形態では、リガンドは、神経伝達物質(例えば、λ-アミノ酪酸(GABA)、アセチルコリン、セロトニンなど)、およびシグナル伝達中間体(例えば、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP))、アミノ酸(例えば、グリシン)、またはヌクレオチド(例えば、ATP)を指す。いくつかの実施形態では、リガンドは、非天然、すなわち、合成または非天然由来のリガンド(例えば、結合剤)を指す場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、リガンドは小分子を指す。リガンド結合は、当技術分野で公知の様々な方法(例えば、放射性標識リガンドとの会合の検出)によって測定することができる。
【0063】
「結合親和性」は概して、受容体の単一結合部位とリガンドとの間の非共有結合性相互作用の総和の強度を指す。別段の示唆が無い限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、受容体およびリガンド)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(K)によって表され得る。親和性は、本明細書に記載されるものを含む当技術分野で公知の共通の方法によって測定することができる。
【0064】
「特異的結合親和性」または「特異的結合」という用語は、本明細書および特許請求の範囲全体を通して互換的に使用され、例えば、受容体およびリガンドなどの対の分子種の間で生じる結合を指す。二つの種の相互作用が非共有結合性複合体を産生する場合、発生する結合は典型的には、静電、水素結合、または親油性相互作用の結果である。様々な実施形態において、一つまたは複数の種間の特異的結合は直接的である。一実施形態では、特異的結合の親和性は、バックグラウンド結合(非特異的結合)の約2倍、バックグラウンド結合の約5倍、バックグラウンド結合の約10倍、バックグラウンド結合の約20倍、バックグラウンド結合の約50倍、バックグラウンド結合の約100倍、またはバックグラウンド結合の約1000倍以上である。
【0065】
「シグナル伝達」とは、受容体へのリガンド結合の結果として(例えば、本明細書に記載の操作された受容体への結合剤結合の結果として)の生化学的または生理学的応答の生成を指す。
【0066】
用語「野生型」または「天然」は、当業者によって理解される当分野の用語であり、変異型またはバリアント形態から区別される、自然界で生じる生物、株、遺伝子、タンパク質、または特徴の典型的な形態を意味する。例えば、野生型タンパク質は、自然界で生じるタンパク質の典型的な形態である。
【0067】
用語「非天然」、「バリアント」、および「変異体」は、本明細書および特許請求の範囲全体を通して互換的に使用され、天然または野生型の組成物の変異体、例えば、天然または野生型の配列と100%未満の配列同一性を有するバリアントポリペプチドを指す。
【0068】
アミノ酸修飾は、アミノ酸置換、アミノ酸欠失および/またはアミノ酸挿入であってもよい。アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換であってもよい。保存的置換(保存的変異、保存的置換、または保存的変化とも呼ばれる)は、所与のアミノ酸を、類似の生化学的特性(例えば、電荷、疎水性、およびサイズ)を有する異なるアミノ酸へと変化させる、タンパク質におけるアミノ酸置換である。本明細書で使用される場合、「保存的変化」は、アミノ酸残基を別の生物学的に類似した残基に置換することを指す。保存的変化の例としては、例えばイソロイシン、バリン、ロイシン、またはメチオニンなどの一つの疎水性残基の別のものへの置換、またはアルギニンのリジンへの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸への置換、またはグルタミンのアスパラギンへの置換など、一つの極性残基の別のものへの置換が挙げられる。保存的置換のその他の例示的な例には、以下の変化が含まれる:アラニンをセリンに;アルギニンをリジンに;アスパラギンをグルタミンまたはヒスチジンに;アスパラギン酸をグルタミン酸に;システインをセリンに;グルタミンをアスパラギンに;グルタミン酸をアスパラギン酸に;グリシンをプラリネ(praline)に;ヒスチジンをアスパラギンまたはグルタミンに;イソロイシンをロイシンまたはバリンに;ロイシンをバリンまたはイソロイシンに;リジンをアルギニン、グルタミン、またはグルタミン酸に;メチオニンをロイシンまたはイソロイシンに;フェニルアラニンをチロシン、ロイシンまたはメチオニンに;セリンをトレオニンに;スレオニンをセリンに;トリプトファンをチロシンに;チロシンをリプトファンまたはフェニルアラニンに;バリンをイソロイシンまたはロイシンになど。
【0069】
用語「親」または「開始剤」は、本明細書および特許請求の範囲全体を通して互換的に使用され、新規の特性を有する操作された組成物を生成するために、変異、改変、または誘導体化される初期組成物またはタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、親タンパク質はキメラタンパク質である。
【0070】
用語「操作された」は、本明細書および特許請求の範囲全体を通して使用され、親組成物または誘導体化されたタンパク質とは異なる特性を有する非天然の組成物またはタンパク質を指す。
【0071】
概して、「配列同一性」または「配列相同性」は、それぞれ二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列のヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の対応を指す。典型的には、配列同一性を決定するための技術には、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定すること、ならびにこれらの配列を第二のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較することが含まれる。二つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの「同一性パーセント」を決定することによって比較することができる。核酸配列またはアミノ酸配列にかかわらず、二つの配列の同一性パーセントは、二つの整列した配列間の完全な一致の数を、短い配列の長さで割って、100を乗じたものである。同一性パーセントは、例えば、国立衛生研究所から入手可能なバージョン2.2.9を含む高度なBLASTコンピュータプログラムを使用して配列情報を比較することによっても決定され得る。BLASTプログラムは、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268(1990)、およびAltschul,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990);Karlin And Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877(1993);およびAltschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997)に記載されるように、アライメント法に基づく。簡潔に述べると、BLASTプログラムは、同一性を、二つの配列のうち短い方の記号の総数で割った、同一の整列した記号(概してヌクレオチドまたはアミノ酸)の数として定義する。プログラムは、比較されるタンパク質の全長にわたって同一性パーセントを決定するのに使用され得る。デフォルトパラメータは、例えば、blastpプログラムで短いクエリ配列の検索を最適化するように提供されている。また、プログラムは、SEGフィルタを使用して、Wootton and Federhen,Computers and Chemistry 17:149-163(1993)のSEGプログラムによって決定されるクエリ配列のセグメントをマスクオフすることもできる。所望の程度の配列同一性の範囲は、約80%~100%であり、介在する整数値である。典型的には、開示される配列と請求される配列との間の同一性パーセントは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%である。
【0072】
本明細書で使用される場合、「実質的に同一」とは、85%以上、例えば、90%以上、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または100%の配列同一性を有することを指し、ここで、組成物の活性は、配列同一性の差異をもたらす配列の修飾によって変化しない。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「プロモーター」は、動作可能に連結された核酸の転写を指示する一つまたは複数の核酸制御配列を指す。プロモーターは、TATA要素などの転写開始部位近くの核酸配列を含んでもよい。プロモーターはまた、転写因子によって結合され得るシス作用ポリヌクレオチド配列を含んでもよい。「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境および発達条件下で活性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、環境または発達調節下で活性なプロモーターである。用語「動作可能に連結された」は、核酸発現制御配列(プロモーター、または転写因子結合部位のアレイなど)と第二の核酸配列との間の機能的連結を指し、ここで発現制御配列は、第二の配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「ウイルス(virus)ベクター」、「ウイルス(viral)ベクター」、または「遺伝子送達ベクター」は、核酸送達ビヒクルとして機能するウイルス粒子を指し、ビリオン内にパッケージされた核酸(例えば、AAV発現カセット)を含む。本開示の例示的なウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、レンチウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターが挙げられる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「ニューロン活性」、「ニューロンの活性」、「ニューロン発火」、およびその変形および同義語は、ニューロンの刺激または興奮から生じる電気活性を指す。いくつかの実施形態では、ニューロン活性は、自動または手動パッチクランプ技術を使用して測定される。いくつかの実施形態では、ニューロンの活性を決定することは、興奮性シナプス後電位(EPSP)、抑制性シナプス後電位(IPSP)、および/またはニューロンの活動電位を決定することを含む。いくつかの実施形態では、ニューロンの活性のレベルは、興奮性シナプス後電位(EPSP)、抑制性シナプス後電位(IPSP)、および/または活動電位に依存する、または影響を受ける。
【0076】
本明細書で使用される場合、「神経学的疾患」または「神経学的障害」は、神経系の疾患または障害を指す。いくつかの実施形態では、神経学的疾患は、脳、脊髄、神経、または神経系の任意の構成要素における構造的、生化学的、および/または電気的異常と関連するか、それらによって引き起こされるか、またはそれらの結果として生じる。
【0077】
本明細書で使用される場合、疾患の「徴候」は、疾患の病態を示すとみなされる身体的または精神的特徴を指す。いくつかの実施形態では、徴候は疾患の客観的兆候である。いくつかの実施形態では、徴候は、医師などの患者以外の人物によって客観的に評価、検査、観察、または測定される。
【0078】
本明細書で使用される場合、疾患の「症状」は、疾患の病態、特に患者に明らかであるこのような特徴を示すとみなされる、身体的または精神的特徴を指す。いくつかの実施形態では、症状は、患者によって主観的に評価される。例えば、いくつかの実施形態では、症状は疼痛である。
【0079】
本明細書で使用される場合、「効力」は、LGICなどのタンパク質の特定のレベルの活性を産生するために必要なリガンドの量を指す。いくつかの実施形態では、LGICなどのタンパク質の活性は、イオンチャネルの開閉を指す。いくつかの実施形態では、効力を決定することは、特定の条件下でのリガンドに対する、LGICなどのタンパク質の最大有効濃度の半分(EC50)を決定することを含む。EC50は、特定の曝露時間後にベースラインと最大値の中間の応答を誘導するリガンドの濃度を指す。
【0080】
本明細書で使用される場合、「有効性」は、リガンドの存在下でのLGICなどのタンパク質の活性の尺度を指す。いくつかの実施形態では、有効性は、リガンドの特定の濃度の存在下でなど、特定の条件下でLGICを通過する電流の量を指す。いくつかの実施形態では、有効性を決定することは、受容体を通過する電流の量および/または受容体の基電流を決定することを含む。
【0081】
本明細書で使用される場合、「応答性」は、リガンドの存在下でのLGICなどのタンパク質の全体的な機能の尺度を指す。応答性を決定することは、効力、有効性、およびタンパク質の細胞内局在化などの一つまたは複数の要因の決定および検討を含み得る。
【0082】
C.操作された受容体
本開示は、操作された受容体、操作された受容体変異体、およびそれらの使用のための方法を対象とする。本明細書で使用される場合、用語「受容体」は、細胞の表面上に位置し、細胞へのおよび/または細胞からのシグナル伝達を媒介することができる任意のタンパク質を指す。用語「操作された受容体」は、本明細書では、対応する親受容体と物理的および/または機能的に異なるように実験的に変更された受容体を指すために使用される。いくつかの実施形態では、親受容体は、野生型受容体である。用語「野生型受容体」は、本明細書では、自然界に存在するタンパク質のポリペプチド配列と同一のポリペプチド配列を有する受容体を指すために使用される。野生型受容体は、ヒトに天然に存在する受容体、ならびに他の真核生物、例えば、原生生物、真菌、植物または動物、例えば、酵母、昆虫、線虫、海綿動物、哺乳類、非哺乳類脊椎動物に天然に存在するオルソログを含む。いくつかの実施形態では、親受容体は、非天然受容体である。すなわち、天然では発生しない受容体、例えば、野生型受容体から操作される受容体である。例えば、親受容体は、一つの野生型受容体からの一つまたは複数のサブユニットと、第二の野生型受容体からの一つまたは複数のサブユニットとを含む、操作された受容体であってもよい。したがって、得られたタンパク質は、二つ以上の野生型受容体からのサブユニットからなる。したがって、いくつかの実施形態では、親受容体はキメラ受容体である。本開示の操作された受容体としては、例えば、親受容体、親受容体変異体、およびスイッチ受容体が挙げられる。
【0083】
いくつかの態様では、本開示の操作された受容体は、対応する親受容体に対する少なくとも一つのアミノ酸変異、例えば、野生型受容体の一つまたは複数のドメインにおける一つまたは複数の変異を含む。「アミノ酸変異」とは、対応する親配列、例えば、アミノ酸置換、欠失、および/または挿入に対するアミノ酸配列の任意の差異を意味する。いくつかの実施形態では、操作された受容体は、対応する親受容体と、約99%、約98%、約95%、約90%、約85%、約80%、約70%、約60%、約50%、またはそれ以下の配列同一性を共有し、それらの間にある全ての値および部分範囲を含む。いくつかの実施形態では、親受容体変異体は、対応する親受容体と85%以上、例えば、90%以上または95%以上、例えば、対応する親受容体と約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有し、それらの間にある全ての値および部分範囲を含む。いくつかの実施形態では、操作された受容体(例えば、親受容体変異体)は、エラープローンPCRによって生成される。
【0084】
いくつかの実施形態では、アミノ酸変異は、対応する親受容体に対する機能喪失型アミノ酸変異である。「機能喪失型」アミノ酸変異は、例えば、親受容体への内因性リガンドの結合と比較して、操作された受容体への内因性リガンドの結合を減少させることによって、または対応する親受容体への結合剤の結合に応答して典型的には活性化される、操作された受容体の下流のシグナル伝達経路の活性を減少させることによって、親受容体と比較して、操作された受容体の機能を減少させる、実質的に低下させる、または消失させる一つまたは複数の変異を指す。
【0085】
いくつかの実施形態では、アミノ酸変異は、対応する親受容体に対する機能獲得型アミノ酸変異である。「機能獲得型」アミノ酸変異は、例えば、親受容体への内因性リガンドの結合と比較して、結合剤に対する操作された受容体の親和性を変更もしくは増強させることによって、または対応する親受容体への内因性リガンドの結合と比較して、操作された受容体への結合剤の結合に応答して活性化される、シグナル伝達経路の活性を変更もしくは増強させることによって、親受容体と比較して、操作された受容体の機能を改変する一つまたは複数の変異を指す。いくつかの実施形態では、機能獲得型変異は、結合剤に対する操作された受容体の親和性の増加をもたらす。特定の実施形態では、機能獲得型変異は、アゴニスト結合剤に対する操作された受容体の親和性の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、機能獲得型変異は、操作された受容体に結合すると、アゴニスト結合剤として作用する拮抗薬結合剤をもたらす(例えば、アンタゴニストシグナル伝達経路の代わりにアゴニストシグナル伝達経路の活性化をもたらす)。いくつかの実施形態では、機能獲得型変異は、操作された受容体に結合するとアゴニスト結合剤として作用する調節因子結合剤をもたらす。いくつかの実施形態では、本開示の主題の操作された受容体は、対応する親受容体と比較して一つまたは複数の機能喪失型アミノ酸変異と、一つまたは複数の機能獲得型アミノ酸変異とを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、機能喪失型変異および機能獲得型変異は、同じ残基にあり、すなわち同じ変異である。他の実施形態では、機能喪失型変異および機能獲得型変異は、異なるアミノ酸残基における変異である。いくつかの実施形態では、機能喪失型変異および/または機能獲得型変異を含む、主題の操作された受容体は、対応する親受容体、例えば、野生型受容体または非天然受容体と、約99%、約98%、約95%、約90%、約85%、約80%、約70%、約60%、約50%、またはそれ以下の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態では、主題の操作された受容体は、対応する親受容体と、85%以上の配列同一性、例えば、85%、90%、または95%以上の配列同一性、いくつかの場合では、96%、97%、98%以上の配列同一性、例えば99%または99.5%以上の配列同一性を共有し、その間にある全ての値および部分範囲を含む。
【0087】
いくつかの態様では、本開示の操作された受容体は、例えば、一つまたは複数のアミノ酸配列を有する一つの野生型受容体からのサブユニット、例えば、第二の野生型受容体からのサブユニットなど、一つまたは複数のアミノ酸配列の組み合わせによって産生される受容体を含む。言い換えれば、操作された受容体は、互いに異種であるアミノ酸配列を含み、ここで、「異種」とは、自然界では一緒に発生しないことを意味する。かかる受容体は、本明細書では「キメラ受容体」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、本開示の操作された受容体が生成される親受容体として機能する。
【0088】
いくつかの実施形態では、親受容体変異体は、アゴニスト結合剤に対する親和性の増加を示す。いくつかの実施形態では、野生型受容体に結合するとき、拮抗薬または調節因子として機能するリガンドまたは結合剤は、親受容体変異体に結合するとき、アゴニストとして機能する。
【0089】
いくつかの実施形態では、操作された受容体は、「リガンド依存性イオンチャネル」またはLGICである。LGICは、特定のリガンド(例えば、化学剤または結合剤)による活性化時にイオンの通過を可能にする膜貫通タンパク質の大きな群を指す。LGICは、リガンド結合ドメインおよび膜貫通イオン孔ドメインの少なくとも二つのドメインから構成される。LGICへのリガンド結合は、LGICの活性化およびイオン孔の開放をもたらす。リガンド結合は、特定の一つまたは複数のイオンに対するチャネルの透過性に急激な変化を生じさせる。事実上、イオンが不活性または閉鎖状態にある時にチャネルを通過することはできないが、リガンド結合時に最大10イオン/秒が通過できる。いくつかの実施形態では、LGICは、細胞外リガンド(例えば、神経伝達物質)に応答し、イオンのサイトゾルへの流入を促進する。いくつかの実施形態では、LGICは、細胞内リガンド(例えば、ATPなどにおけるヌクレオチド、およびPIPなどのシグナル伝達中間体)に応答し、細胞外環境へのサイトゾルからのイオンの流出を促進する。重要なことに、LGICの活性化は、細胞膜を横切るイオン(例えば、Ca2+、Na、K、Clなど)の輸送をもたらし、リガンド自体の輸送をもたらさない。
【0090】
LGIC受容体は、複数のサブユニットから構成され、ホモマー受容体またはヘテロマー受容体のいずれかであり得る。ホモマー受容体は、すべて同じタイプであるサブユニットからなる。ヘテロマー受容体は、少なくとも一つのサブユニットが、受容体内に含まれる少なくとも一つの他のサブユニットとは異なるサブユニットからなる。例えば、グリシン受容体は、5つのサブユニットからなり、四つのアイソフォーム(α~α)があるα-サブユニットと、一つの公知のアイソフォームがあるβ-サブユニットの二つのタイプがある。例示的なホモマーGlyRは、5つのα-GlyRサブユニットからなるGlyRである。同様に、ホモマーGABA受容体は、β-GABAサブユニットからなり得、nAchR受容体は、α-nAchRサブユニットからなり得る。例示的なヘテロマーGlyRは、一つまたは複数のα-サブユニットと、一つまたは複数のβ-サブユニット(例えば、αβ-GlyR)とからなってもよい。LGIC受容体のサブユニットの例を表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0091】
特定の実施形態での使用に適したLGICのファミリーの例示的な例には、限定されないが、グリシン受容体(GlyR)などのCysループ受容体、セロトニン受容体(例えば、5-HT3受容体)、λ-アミノ酪酸A(GABA-A)受容体、およびニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)、ならびに酸感受性(プロトン依存性)イオンチャネル(ASIC)、上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)、イオンチャネル型グルタミン酸受容体、IP3受容体、P2X受容体、リアノジン受容体、および亜鉛活性化チャネル(ZAC)が挙げられる。
【0092】
本明細書に記載される方法での使用に適したLGICの特定の非限定的な例には、以下が含まれる。HTR3A;HTR3B;HTR3C;HTR3D;HTR3E;ASIC1;ASIC2;ASIC3;SCNN1A;SCNN1B;SCNN1D;SCNN1G;GABRA1;GABRA2;GABRA3;GABRA4;GABRA5;GABRA6;GABRB1;GABRB2;GABRB3;GABRG1;GABRG2;GABRG3;GABRD;GABRE;GABRQ;GABRP;GABRR1;GABRR2;GABRR3;GLRA1;GLRA2;GLRA3;GLRA4;GLRB;GRIA1;GRIA2;GRIA3;GRIA4;GRID1;GRID2;GRIK1;GRIK2;GRIK3;GRIK4;GRIK5;GRIN1;GRIN2A;GRIN2B;GRIN2C;GRIN2D;GRIN3A;GRIN3B;ITPR1;ITPR2;ITPR3;CHRNA1;CHRNA2;CHRNA3;CHRNA4;CHRNA5;CHRNA6;CHRNA7;CHRNA9;CHRNA10;CHRNB1;CHRNB2;CHRNB3;CHRNB4;CHRNG;CHRND;CHRNE;P2RX1;P2RX2;P2RX3;P2RX4;P2RX5;P2RX6;P2RX7;RYR1;RYR2;RYR3;およびZACN。
【0093】
TRPV1、TRPM8、およびP2Xは、構造的特徴とゲート原理を共有する大規模なLGICファミリーのメンバーである。例えば、TRPV1と同様に、TRPV4も熱によってトリガーされるが、カプサイシンによってはトリガーされず、P2Xは、ATPによってトリガーされるが、P2Xよりも急速に脱感作する。したがって、TRPV1、TRPM8、およびP2Xは、特定の実施形態での使用に適したLGICの非限定的な例である。
【0094】
一実施形態では、操作された受容体は、TRPV1もしくはTRPM8受容体またはその変異タンパク質である。TRPV1およびTRPM8は、末梢神経系の侵害受容ニューロンによって発現されるバニロイドおよびメントール受容体である。両方のチャネルは、非選択性、ナトリウム透過性およびカルシウム透過性のホモ四量体として機能すると考えられる。さらに、両方のチャネルおよびそれらの主なアゴニスト、それぞれカプサイシンおよびメントールなどの冷感性化合物は、中枢神経系に実質的に存在しない。カプサイシンならびにメントールおよびイシリンを含むいくつかの冷感性化合物は、感光性遮断基のための潜在的なアクセプタ部位を含有する。感光性遮断基とこのようなアクセプタとの関連は、光が活性リガンドを放出することによって間接的なトリガーとして作用する、リガンド依存性イオンチャネルをもたらす。
【0095】
一実施形態では、操作された受容体は、P2X受容体またはその変異タンパク質である。P2Xは、その脱感作の遅い速度によって区別される、ATP依存性の非選択的陽イオンチャネルである。P2Xは、脱分極電流の選択的にアドレス指定可能な供給源として使用されてもよく、天然アゴニストを完全に欠く操作されたチャネル-リガンドの組み合わせの生成のためのプラットフォームを提示してもよい。
【0096】
本開示の操作された受容体の生成における使用を見いだす野生型LGIC受容体の配列の非限定的な例には、以下が含まれる。配列では、シグナルペプチドは斜体で、リガンド結合ドメインは太字で、イオン孔ドメインは下線で示される:
【0097】
いくつかの実施形態では、野生型LGIC受容体は、GLRA1遺伝子(GenBank受託番号NM_001146040.1(配列番号1)によってコードされるヒトアルファ1グリシン受容体(GlyRα1)(GenBank受託番号NP_001139512.1、配列番号2)である。
【化1】
【0098】
いくつかの実施形態では、野生型LGIC受容体は、CHRNA7遺伝子(GenBank受託番号NM_000746.5(配列番号3)によってコードされるヒトニコチン性コリン作動性受容体アルファ7サブユニット(α7-nAchR)(GenBank受託番号NP_000737.1、配列番号4)である。
【化2】
【0099】
いくつかの実施形態では、野生型LGIC受容体は、HTR3A遺伝子(GenBank受託番号NM_213621.3(配列番号5)によってコードされるヒト5-ヒドロキシトリプタミン受容体3A(5HT3A、GenBank受託番号NP_998786.2、配列番号6)である。
【化3】
【0100】
いくつかの実施形態では、野生型LGIC受容体は、HTR3B遺伝子(GenBank受託番号NM_006028.4(配列番号56)によってコードされるヒト5-ヒドロキシトリプタミン受容体3B(5HT3B GenBank受託番号NP_006019.1、配列番号57)である。
【化4】
【0101】
いくつかの実施形態では、野生型LGIC受容体は、GABRB3遺伝子(GenBank受託番号NM_000814.5(配列番号7)によってコードされるヒトガンマ-アミノ酪酸受容体A(GABA-A)、サブユニットベータ-3(GABA-A β3)(GenBank受託番号NP_000805.1、配列番号8)である。
【化5】
【0102】
いくつかの実施形態では、野生型LGIC受容体は、GABRR1遺伝子(GenBank受託番号NM_002042.4(配列番号9)によってコードされるヒトGABA-A、サブユニットrho1(ρ1)(GABA-A ρ1)(GenBank受託番号NP_002033.2、配列番号10)である。
【化6】
【0103】
いくつかの実施形態では、野生型LGIC受容体は、GABRR2遺伝子(GenBank受託番号NM_002043.4(配列番号11)によってコードされるヒトGABA-A、サブユニットrho2(ρ2)(GABA-A ρ2)(GenBank受託番号NP_002034.3、配列番号12)である。
【化7】
【0104】
いくつかの実施形態では、野生型LGIC受容体は、GABRR3遺伝子(GenBank受託番号NM_001105580.2(配列番号13)によってコードされるヒトGABA-A、サブユニットrho3(ρ3)(GABA-A ρ3)(GenBank受託番号NP_001099050.1、配列番号14)である。
【化8】
【0105】
いくつかの態様では、主題の操作された受容体はキメラ受容体である。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、少なくとも第一のLGICからのリガンド結合ドメイン配列、および少なくとも第二のLGICからのイオン孔伝導ドメイン配列、またはより単純に、「イオン孔ドメイン配列」を含む。いくつかの実施形態では、第一および第二のLGICは、Cys-ループ受容体である。Cys-ループ受容体のリガンド結合ドメイン配列およびイオン孔ドメイン配列は、当技術分野で周知であり、公開されているソフトウェア、例えば、PubMed、Genbank、Uniprotなどの使用によって、文献から容易に特定することができる。上述の配列では、リガンド結合ドメインは太字で、イオン孔ドメインは下線で示される。
【0106】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体のリガンド結合ドメインは、ヒトグリシン受容体のリガンド結合ドメイン配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトグリシン受容体は、ヒトGlyRα1(配列番号2)である。いくつかのこうした実施形態では、リガンド結合ドメインは、GlyRα1のおおよそのアミノ酸29~235、例えば、配列番号2のアミノ酸29~235、アミノ酸29~240、アミノ酸29~246、アミノ酸29~248、アミノ酸29~250、またはアミノ酸29~252を含む。特定のこうした実施形態では、リガンド結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸29~235から本質的になり、配列番号2のアミノ酸29~240から本質的になり、配列番号2のアミノ酸29~246から本質的になり、配列番号2のアミノ酸29~248から本質的になり、配列番号2のアミノ酸29~250から本質的になり、配列番号2のアミノ酸29~252から本質的になる。いくつかの実施形態では、イオン孔ドメイン配列は、ヒトGlyRα1以外のCys-ループ受容体由来である。
【0107】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体のリガンド結合ドメインは、ヒトニコチン性コリン作動性受容体のリガンド結合ドメイン配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトニコチン性コリン作動性受容体は、ヒトα7-AChRである。いくつかのこうした実施形態では、リガンド結合ドメインは、α7-nAChR(配列番号4)のおおよそのアミノ酸23~220、例えば、配列番号4のアミノ酸23~220、アミノ酸23~226、アミノ酸23~229、アミノ酸23~230、いくつかの事例では、アミノ酸23~231を含む。特定のこうした実施形態では、リガンド結合ドメインは、配列番号4のアミノ酸23~220から本質的になり、配列番号4のアミノ酸23~226から本質的になり、配列番号4のアミノ酸23~229から本質的になり、配列番号4のアミノ酸23~230から本質的になり、または配列番号4のアミノ酸23~231から本質的になる。いくつかの実施形態では、イオン孔ドメイン配列は、ヒトα7-nAChR以外のCys-ループ受容体由来である。
【0108】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体のリガンド結合ドメインは、ヒトセロトニン受容体のリガンド結合ドメイン配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトセロトニン受容体は、ヒト5HT3Aまたは5HT3Bである。いくつかのこうした実施形態では、リガンド結合ドメインは、5HT3A(配列番号6)のおおよそのアミノ酸23~247、例えば、配列番号6のアミノ酸23~240、アミノ酸30~245、アミノ酸23~247、アミノ酸23~250、いくつかの事例では、アミノ酸30~255を含む。特定の実施形態では、リガンド結合ドメインは、配列番号6のアミノ酸23~240から本質的になり、配列番号6のアミノ酸23~245から本質的になり、配列番号6のアミノ酸30~247から本質的になり、配列番号6のアミノ酸23~250から本質的になり、配列番号6のアミノ酸23~255から本質的になる。いくつかのこうした実施形態では、リガンド結合ドメインは、5HT3B(配列番号57)のおおよそのアミノ酸21~239、例えば、配列番号57のアミノ酸21~232、アミノ酸21~235、アミノ酸21~240、アミノ酸21~245、いくつかの事例では、アミノ酸21~247を含む。特定の実施形態では、リガンド結合ドメインは、配列番号57のアミノ酸21~239から本質的になり、配列番号57のアミノ酸21~232から本質的になり、配列番号57のアミノ酸21~235から本質的になり、配列番号57のアミノ酸21~240から本質的になり、配列番号57のアミノ酸21~245から本質的になる。いくつかの実施形態では、イオン孔ドメイン配列は、ヒト5-ヒドロキシトリプタミン受容体3以外のCys-ループ受容体由来である。
【0109】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体のリガンド結合ドメインは、ヒトGABA受容体のリガンド結合ドメイン配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトGABA受容体は、ヒトGABA-A β3である。いくつかのこうした実施形態では、リガンド結合ドメインは、GABA-A β3(配列番号8)のおおよそのアミノ酸26~245、例えば、配列番号8のアミノ酸26~240、アミノ酸26~245、アミノ酸26~248、アミノ酸26~250、いくつかの事例では、アミノ酸26~255を含む。特定のこうした実施形態では、リガンド結合ドメインは、配列番号8のアミノ酸26~240から本質的になり、配列番号8のアミノ酸26~245から本質的になり、配列番号8のアミノ酸26~248から本質的になり、配列番号8のアミノ酸26~250から本質的になり、または配列番号8のアミノ酸26~255から本質的になる。いくつかの実施形態では、イオン孔ドメイン配列は、ヒトGABA-A以外のCys-ループ受容体由来である。
【0110】
いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインが融合されたイオン孔ドメインは、陰イオンを伝導し、例えば、それはヒトグリシン受容体またはヒトセロトニン受容体のイオン孔ドメイン配列を含む。他の実施形態では、リガンド結合ドメインが融合されたイオン伝導孔ドメインは、陽イオンを伝導し、例えば、それはヒトアセチルコリン受容体またはヒトガンマ-アミノ酪酸受容体Aのイオン孔ドメイン配列を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、イオン孔ドメインは、ヒトグリシン受容体のイオン孔ドメイン配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトグリシン受容体は、ヒトGlyRα1である。いくつかのこうした実施形態では、イオン孔ドメインは、GlyRα1(配列番号2)のおおよそのアミノ酸245~457、例えば、配列番号2のアミノ酸240~457、アミノ酸245~457、アミノ酸248~457、アミノ酸249~457、アミノ酸250~457、アミノ酸255~457、またはアミノ酸260~457を含む。特定のこうした実施形態では、イオン孔ドメインは、配列番号2のアミノ酸245~457から本質的になり、配列番号2のアミノ酸248~457から本質的になり、配列番号2のアミノ酸249~457から本質的になり、または配列番号2のアミノ酸250~457から本質的になる。
【0112】
いくつかの実施形態では、イオン孔ドメインは、ヒトニコチン性コリン作動性受容体のイオン孔ドメイン配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトニコチン性コリン作動性受容体は、ヒトα7-AChRである。いくつかのこうした実施形態では、イオン孔ドメインは、α7-nAChR(配列番号4)のおおよそのアミノ酸230~502、例えば、アミノ酸227~502、アミノ酸230~502、アミノ酸231~502、アミノ酸232~502、またはアミノ酸235~502を含む。特定のこうした実施形態では、イオン孔ドメインは、配列番号4のアミノ酸227~502から本質的になり、配列番号4のアミノ酸230~502から本質的になり、配列番号4のアミノ酸231~502から本質的になり、配列番号4のアミノ酸232~502から本質的になり、または配列番号4のアミノ酸235~502から本質的になる。
【0113】
いくつかの実施形態では、イオン孔ドメインは、ヒトセロトニン受容体のイオン孔ドメイン配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトセロトニン受容体は、ヒト5HT3Aまたは5HT3Bである。いくつかのこうした実施形態では、イオン孔ドメインは、5HT3A(配列番号6)のおおよそのアミノ酸248~516、例えば、配列番号6のアミノ酸240~516、アミノ酸245~516、アミノ酸248~516、アミノ酸250~516、またはアミノ酸255~516を含む。特定のこうした実施形態では、イオン孔ドメインは、配列番号6のアミノ酸240~516から本質的になり、配列番号6のアミノ酸245~516から本質的になり、配列番号6のアミノ酸248~516から本質的になり、配列番号6のアミノ酸250~516から本質的になり、またはアミノ酸253~516から本質的になる。いくつかのこうした実施形態では、イオン孔ドメインは、5HT3B(配列番号57)のおおよそのアミノ酸240~441、例えば、配列番号57のアミノ酸230~441、アミノ酸235~441、アミノ酸240~441、アミノ酸245~441、またはアミノ酸250~441を含む。特定のこうした実施形態では、イオン孔ドメインは、配列番号57のアミノ酸230~441から本質的になり、配列番号57のアミノ酸235~441から本質的になり、配列番号57のアミノ酸240~441から本質的になり、配列番号57のアミノ酸245~441から本質的になり、またはアミノ酸250~441から本質的になる。
【0114】
いくつかの実施形態では、イオン孔ドメインは、ヒトGABA受容体のイオン孔ドメイン配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトGABA受容体は、ヒトGABA-A β3である。いくつかのこうした実施形態では、イオン孔ドメインは、GABA-A β3(配列番号8)のおおよそのアミノ酸246~473、例えば、配列番号8のアミノ酸240~473、アミノ酸245~473、アミノ酸247~473、アミノ酸250~473、またはアミノ酸253~473を含む。特定のこうした実施形態では、イオン孔ドメインは、配列番号8のアミノ酸240~473、配列番号8のアミノ酸245~473、配列番号8のアミノ酸247~473、配列番号8のアミノ酸250~473、または配列番号8のアミノ酸253~473から本質的になる。
【0115】
いくつかの実施形態では、主題のキメラリガンド依存性イオンチャネルのイオン孔ドメインは、イオン孔ドメインのM2-M3リンカードメインに対して異種であるM2-M3リンカードメインを含む。「M2-M3リンカードメイン」または「M2-M3リンカー」とは、受容体の膜貫通ドメイン2(M2)のC末端にそのアミノ(N)末端が隣接し、かつ受容体の膜貫通ドメイン3(M3)のN末端にそのカルボキシ(C)末端が隣接している、LGICのイオン孔ドメイン内の配列を意味する。LGICのM2-M3リンカーは、当技術分野から、および/または公開されている任意のタンパク質分析ツール、例えば、Expasy、uniProtなどを使用することによって容易に決定され得る。典型的には、キメラ受容体のイオン孔ドメインが異種のM2-M3リンカーを含む場合、M2-M3リンカーは、キメラ受容体のリガンド結合ドメインと同じ受容体に由来する。例えば、主題のリガンド依存性イオンチャネルが、AChR由来のリガンド結合ドメインと、GlyR由来のイオン孔ドメインとを含む場合、主題のリガンド依存性イオンチャネルは、代わりにAChRに由来するものとなるM2-M3リンカーを除いて、GlyR由来のイオン孔ドメイン配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、イオン孔ドメインは、GlyRα1由来であり、M2-M3リンカーは、α7-nAChR由来である。いくつかの実施形態では、GlyRα1から除去されるM2-M3リンカー配列は、GlyRα1(配列番号2)のおおよそのアミノ酸293~311、例えば、アミノ酸304~310、293~306、298~310、305~311などである。いくつかのこうした実施形態では、挿入されるM2-M3リンカーは、α7-nAChR(配列番号4)のおおよそのアミノ酸281~295、例えば、アミノ酸290~295、281~290、281~295、287~292などであるか、またはα7-nAChRのアミノ酸281~295に対して約95%以上の同一性を有する配列である。
【0116】
いくつかの実施形態では、主題のキメラリガンド依存性イオンチャネルのリガンド結合ドメインは、リガンド結合ドメインのCysループ配列に対して異種であるCys-ループドメイン配列を含む。「Cys-ループドメイン配列」または「Cys-ループは配列」とは、N末端およびC末端でシステインに隣接するループ構造を形成する、Cys-ループLGICのリガンド結合ドメイン内のドメインを意味する。理論に拘束されることを意図するものではないが、リガンドのリガンド結合ドメインに結合に伴い、Cys-ループは構造的にM2-M3ループに近接して移動すると考えられており、この移動は、細胞外ドメインにおけるリガンド結合の生物物理学的翻訳を媒介して、イオン孔ドメインにおけるシグナル伝達をする(Miller and Smart,Trends in Pharmacological Sci 2009:31(4)に概説)。内因性Cys-ループ配列を異種Cys-ループ配列で置換することにより、LGICの導電率を1.5倍以上、例えば、少なくとも2倍、3倍、または4倍、いくつかの事例では、少なくとも5倍、または6倍、および特定の用量では、少なくとも7倍、8倍、9倍、または10倍増加させてもよい。Cys-ループ受容体のCys-ループドメインは、当技術分野から、および/または公開されている任意のタンパク質分析ツール、例えば、Expasy、uniProtなどを使用することによって容易に決定され得る。典型的には、キメラ受容体のリガンド結合ドメインが異種のCys-ループ配列を含む場合、Cys-ループ配列は、キメラ受容体のイオン孔ドメインと同じ受容体に由来する。例えば、主題のキメラリガンド依存性イオンチャネルが、AChR由来のリガンド結合ドメインと、GlyR由来のイオン孔ドメインとを含む場合、主題のリガンド依存性イオンチャネルは、代わりにGlyRに由来するものであるCys-ループドメインの配列を除いて、AChR由来のリガンド結合ドメイン配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、α7-nAChR由来であり、Cys-ループ配列は、GlyRα1由来である。いくつかのこうした実施形態では、α7-AChRから除去されるCys-ループ配列は、α7-nAChR(配列番号4)のおおよそのアミノ酸150~164、例えば、α7-nAChRのアミノ酸150~157である。いくつかのこうした実施形態では、挿入されるCysループ配列は、GlyRα1(配列番号2)のおおよそのアミノ酸166~180、例えば、GlyRα1のアミノ酸166~172、またはGlyRα1のアミノ酸166~180に対して約95%以上の同一性を有する配列である。
【0117】
いくつかの実施形態では、主題のキメラリガンド依存性イオンチャネルのリガンド結合ドメインは、リガンド結合ドメインのβ1-2ループドメイン配列に対して異種であるβ1-2ループドメイン配列を含む。「β1-2ループドメイン配列」、または「β1-2ループ、またはβ1-β2ループ」とは、Cys-ループLGICのリガンド結合ドメイン内の、そのN末端にβ1シートのC末端、そのC末端にβ2シートのN末端が隣接するドメインを意味する。理論に拘束されることを意図するものではないが、β1-2ループは、細胞外ドメインにおけるイオン孔ドメインへのリガンド結合の生物物理学的翻訳およびその後のシグナル伝達(すなわち、GlyRの場合の塩化物流入)を媒介するのに役立つと考えられる。リガンドの結合に伴い、β1-2ループは、Cys-ループと共に、M2-M3ループに近接して、細胞外ドメインにおけるリガンド結合の生物物理学的翻訳を媒介し、M2-M3ループが存在するイオン孔ドメインにおけるシグナル伝達をすると考えられる(上記Miller and Smartに概説)。内因性β1-2ループ配列を異種β1-2ループ配列で置換することにより、LGICの導電率を1.5倍以上、例えば、少なくとも2倍、3倍、または4倍、いくつかの事例では、少なくとも5倍、または6倍、および特定の用量では、少なくとも7倍、8倍、9倍、または10倍増加させてもよい。Cys-ループ受容体のβ1-2ループは、当技術分野から、および/または公開されている任意のタンパク質分析ツール、例えば、Expasy、uniProtなどを使用することによって容易に決定され得る。典型的には、キメラ受容体のリガンド結合ドメインが異種のβ1-2ループ配列を含む場合、β1-2ループ配列は、キメラ受容体のイオン孔ドメインと同じ受容体に由来する。例えば、主題のキメラリガンド依存性イオンチャネルが、AChR由来のリガンド結合ドメインと、GlyR由来のイオン孔ドメインとを含む場合、主題のリガンド依存性イオンチャネルは、代わりにGlyRに由来するものであるβ1-2ループドメインの配列を除いて、AChR由来のリガンド結合ドメイン配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、α7-nAChR由来であり、β1-2ループ配列は、GlyRα1由来である。いくつかの実施形態では、α7-AChRから除去されるβ1-2ループ配列は、α7-nAChR(配列番号4)のおおよそのアミノ酸67~70、例えば、α7-nAChRのアミノ酸67~70、66~71、または64~72である。いくつかの実施形態では、挿入されるβ1-2ループ配列は、GlyRα1(配列番号2)のおおよそのアミノ酸79~85、例えば、GlyRα1のアミノ酸81~84、79~85、もしくは81~84、またはGlyRα1のアミノ酸79~85に対して約95%以上の同一性を有する配列である。
【0118】
本開示のキメラLGIC受容体の配列の非限定的な例としては、配列番号15~配列番号52として本明細書に開示される配列が挙げられる。いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体またはそれをコードするポリヌクレオチドは、本明細書における配列番号15~配列番号52に提供される配列に対して85%以上の配列同一性、例えば、配列番号15~配列番号52に提供される配列に対して、90%以上、93%以上、または95%以上、すなわち約96%、約97%、約98%、約98%、約99%、または約100%の配列同一性を有する。配列では、シグナルペプチドは斜体で、リガンド結合ドメインは太字で、イオン孔ドメインは下線で示される。
【0119】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、ヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、ヒトα7-AChRシグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、CHRNA7/GLRA1キメラ(R229ジャンクション)である:
【化9】
【0120】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、ヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、ヒトα7-AChRシグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、CHRNA7/GLRA1(R228ジャンクション)キメラである:
【化10】
【0121】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、ヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、ヒトα7-AChRシグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、CHRNA7/GLRA1(V224ジャンクション)キメラである:
【化11】
【0122】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、ヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、ヒトα7-AChRシグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、CHRNA7/GLRA1(Y233ジャンクション)キメラである:
【化12】
【0123】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、α7-nAChR M2-M3リンカー(小文字)を含むヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、ヒトα7-AChRシグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、CHRNA7/GLRA1キメラ(R229ジャンクション)である:
【化13-1】
【化13-2】
【0124】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、ヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、GlyRα1 Cys-ループ配列(小文字)を含むヒトα7-AChRシグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、CHRNA7/GLRA1キメラである:いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、配列番号33に対して80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0125】
【化14】
【0126】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、ヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、GlyRα1 β1-2ループ配列(小文字)を含むヒトα7-AChRシグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、CHRNA7/GLRA1キメラである:
【化15】
【0127】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、ヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、GlyRα1 β1-2ループ配列(小文字)およびCys-ループ配列(小文字)を含むヒトα7-AChRシグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、CHRNA7/GLRA1キメラである:
【化16】
【0128】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、ヒトα7-nAChR M2-M3リンカー(小文字)を含むヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、GlyRα1 β1-2ループ配列(小文字)を含むヒトα7-AChRシグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、CHRNA7/GLRA1キメラである:
【化17】
【0129】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、ヒトα7-nAChR M2-M3リンカー(小文字)を含むヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、GlyRα1 Cys-ループ配列(小文字)を含むヒトα7-AChRシグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、CHRNA7/GLRA1キメラである:
【化18】
【0130】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、ヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、ヒト5HT3Aセロトニン受容体シグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、HTR3A/GLRA1キメラ(R241ジャンクション)である:
【化19】
【0131】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、ヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、ヒト5HT3Aセロトニン受容体シグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、HTR3A/GLRA1キメラ(V236ジャンクション)である:
【化20】
【0132】
いくつかの実施形態では、キメラLGIC受容体は、ヒトGlyRα1イオン孔ドメイン(下線)に融合された、ヒトGABA-A β3シグナルペプチド(斜体)およびリガンド結合ドメイン(太字)を含む、GABRB3/GLRA1キメラ(Y245ジャンクション)である:
【化21】
【0133】
上述のように、いくつかの態様では、主題の操作された受容体は、操作された受容体に対するリガンドの効力を、非変異親受容体のその効力と比較して、変化させる少なくとも一つのアミノ酸変異を含む。換言すると、一つまたは複数のアミノ酸変異、例えば、機能喪失型変異または機能獲得型変異は、非変異親受容体の応答性と比較して、操作された受容体のリガンドに対する応答性を変える。いくつかのこうした実施形態では、一つまたは複数の変異は、操作された受容体のリガンド結合ドメイン内にある。いくつかの実施形態では、操作された受容体のリガンド結合ドメインがCys-ループ受容体タンパク質である場合と同様に、一つまたは複数のアミノ酸変異は、W77、Y94、R101、W108、Y115、T128、N129、V130、L131、Q139、L141、Y151、S170、W171、S172、S188、Y190、Y210、C212、C213、およびY217からなる群から選択されるα7-nAChR(配列番号4)の残基に対応する残基における置換である。いくつかの実施形態では、一つの残基が置換されている。いくつかの実施形態では、2、3、4、または5個以上の残基が置換されており、例えば、6、7、8、9または10個の残基が置換されている。特定の実施形態では、残基は、W77、R101、Y115、N129、L131、S170、S172、およびS188からなる群から選択される、α7-nAChR(配列番号4)の残基に対応する。特定の実施形態では、一つまたは複数の置換は、α7-nAChR配列内にある。
【0134】
いくつかの実施形態では、一つまたは複数の置換は、例えば、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、10倍以上、20倍以上、30倍以上、50倍以上、または100倍、アセチルコリンおよび非天然リガンドに対する操作された受容体の応答性を低下させる。特定の実施形態では、一つまたは複数の置換は、α7-nAChRのR101I、R101S、R101D、Y115L、Y115M、Y115D、Y115T、T128M、T128R、T128I、N129I、N129V、N129P、N129W、N129T、N129D、N129E、L131E、L131P、L131T、L131D、L131S、L141S、L141R、W171F、W171H、S172F、S172Y、S172R、S172D、C212A、C212L、またはC213Pに対応する置換である。他の事例では、一つまたは複数の置換は、操作された受容体に対するアセチルコリンの効力を選択的に減少させる。言い換えれば、一つまたは複数の置換は、操作された受容体のアセチルコリンに対する応答性を低下させる一方で、非天然リガンドに対する応答性を本質的に維持し、またはそうでなければ、それが非天然リガンドに対する操作された受容体の応答性を低下させるよりも2倍以上、例えば、3倍、4倍、5倍以上、場合によっては、10倍、20倍、50倍、または100倍以上、アセチルコリンに対する操作された受容体の応答性を低下させる。例示的な置換としては、すなわち、α7-nAChRのL131E、L131S、L131T、L131D、またはS172Dに対応する置換が挙げられる。さらに他の実施形態では、一つまたは複数の置換は、操作された受容体上の非天然リガンドの効力を選択的に低下させる。言い換えれば、一つまたは複数の置換は、操作された受容体の非天然リガンドに対する応答性を低下させる一方で、アセチルコリンに対する応答性を本質的に維持し、またはそうでなければ、それがアセチルコリンに対する操作された受容体の応答性を低下させるよりも2倍以上、例えば、3倍、5倍以上、場合によっては、10倍、20倍、または50倍以上、非天然リガンドに対する操作された受容体の応答性を低下させる。例示的な置換としては、α7-nAChRのW77M、Y115W、S172T、またはS172Cに対応する置換を含む。特定の実施形態では、一つまたは複数の置換は、α7-nAChR配列内にある。特定の実施形態では、非天然リガンドは、AZD-0328、TC6987、ABT-126、およびファシニクリン/RG3487から選択される。
【0135】
他の実施形態では、一つまたは複数の置換は、例えば、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、10倍以上、20倍以上、30倍以上、50倍以上、または100倍、アセチルコリンおよび/または非天然リガンドに対する操作された受容体の応答性を増加させる。例示的な置換の例としては、L131N、L141W、S170G、S170A、S170L、S170I、S170V、S170P、S170F、S170M、S170T、S170C、S172T、S172C、S188I、S188V、S188F、S188M、S188Q、S188T、S188PまたはS188Wに対応する置換を含む。いくつかの事例では、一つまたは複数の置換は、アセチルコリンおよび非天然リガンドの両方の効力を増加させ、例えば、α7-nAChRのL131N、S170G、S170A、S170L、S170I、S170V、S170P、S170F、S170M、S170T、S170C、S172T、S188I、S188V、S188F、S188M、S188Q、およびS188Tに対応する置換である。他の事例では、一つまたは複数の置換は、操作された受容体に対するアセチルコリンの効力を選択的に増加させる。言い換えれば、一つまたは複数の置換、例えば、α7-nAChRのL141W、S172T、S172C、S188P、またはS188Wに対応する置換は、それが操作された受容体の非天然リガンドに対する応答性を増加させるよりも、2倍以上、例えば、3倍、4倍、または5倍、いくつかの事例では、10倍、20倍、50倍、または100倍、操作された受容体のアセチルコリンに対する応答性を増加させる。特定の実施形態では、一つまたは複数の置換は、α7-nAChR配列内にある。特定の実施形態では、非天然リガンドは、AZD-0328、TC6987、ABT-126、およびファシニクリン/RG3487から選択される。さらに他の事例では、一つまたは複数の置換は、操作された受容体に対する非天然リガンドの効力を選択的に増加させる。言い換えれば、一つまたは複数の置換は、それが操作された受容体のアセチルコリンに対する応答性を増加させるよりも、2倍以上、例えば、3倍、5倍以上、いくつかの事例では、10倍、20倍、または50倍以上、操作された受容体の非天然リガンドに対する応答性を増加させる。
【0136】
いくつかの実施形態では、対象の操作された受容体において変異されるアミノ酸残基は、野生型a7 nAChR(配列番号4)のR27、E41、Q79、Q139、L141、G175、Y210、P216、Y217、またはD219に対応するアミノ酸ではない。いくつかの実施形態では、主題の操作された受容体において変異されるアミノ酸残基は、野生型a7 nAChR(配列番号4)のR27、E41、Q79、Q139、L141、G175、Y210、P216、Y217、またはD219に対応するアミノ酸である。いくつかの実施形態では、置換は、野生型α7 nAChRにおけるW77F、W77Y、W77M、Q79A、Q79Q、Q79S、Q79G、Y115F、L131A、L131G、L131M、L131N、L131Q、L131V、L131F、Q139G、Q139L、G175K、G175A、G175F、G175H、G175M、G175R、G175S、G175V、Y210F、P216I、Y217F、またはD219Aに対応する置換ではない。いくつかの実施形態では、置換は、野生型α7 nAChRにおけるW77F、W77Y、W77M、Q79A、Q79Q、Q79S、Q79G、Y115F、L131A、L131G、L131M、L131N、L131Q、L131V、L131F、Q139G、Q139L、G175K、G175A、G175F、G175H、G175M、G175R、G175S、G175V、Y210F、P216I、Y217F、またはD219Aに対応する置換である。いくつかの実施形態では、かかる置換が操作された受容体内に存在する場合、本明細書に記載されるアミノ酸変異のうちの一つまたは複数と組み合わせて存在する。
【0137】
例えば、α7-nAChR(配列番号4)の残基Y94、Y115、Y151、およびY190は、天然リガンドアセチルコリンの結合を媒介することが見出されている。これらの残基での変異は、アセチルコリンの結合を低減し、したがって機能喪失型変異である。対照的に、α7-nAChRの残基W77、Y115、N129、V130、L131、Q139、L141、S170、Y210、C212、C213、およびY217は、非天然リガンドAZD0328のこの受容体への結合を媒介し、これらの残基の変異は、この受容体に対するAZD0328および/または他のリガンドの親和性を増加させる可能性があり、したがって、機能獲得型変異であり得る。いくつかの実施形態では、主題の操作された受容体は、α7-nAChR(配列番号4)のリガンド結合ドメイン領域、またはα7-nAChRのリガンド結合ドメイン領域を含むキメラ受容体のリガンド結合ドメインの一つまたは複数のアミノ酸残基に変異を含み、一つまたは複数のアミノ酸残基は、W77、Y94、Y115、N129、V130、L131、Q139、L141、Y151、S170、Y190、Y210、C212、C213、およびY217からなる群から選択される。特定の実施形態では、α7-nAChR(配列番号4)のリガンド結合ドメイン領域、またはα7-nAChRのリガンド結合ドメイン領域を含むキメラ受容体のリガンド結合ドメインの一つまたは複数のアミノ酸残基における変異は、W77、Y94、Y115、N129、V130、L131、Q139、L141、Y151、S170、Y190、Y210、C212、C213、およびY217からなる群から選択される一つまたは複数のアミノ酸残基での置換である。
【0138】
別の例として、α7-nAChR(配列番号4)のY115、L131、L141、S170、W171、S172、C212、およびY217の残基は、アセチルコリンおよび/またはニコチンの結合を媒介し、これらの残基のうちの一つまたは複数での変異は、アセチルコリンおよび/またはニコチンの結合を減少させることが見出された。α7-nAChRのR101、Y115、L131、L141、W171、S172、S188、Y210、およびY217は、非天然リガンドABT126の結合を媒介し、これらの残基のうちの一つまたは複数の変異は、ABT126および/または他のリガンドのα7-nAChRに対する親和性を増加させることが予期される。α7-nAChRのR101、Y115、T128、N129、L131、L141、W171、S172、Y210、C212、C213、およびY217は、非天然リガンドTC6987の結合を媒介し、これらの残基のうちの一つまたは複数の変異は、TC6987および/または他のリガンドのα7-nAChRに対する親和性を増加させることが予期される。α7-nAChRのR101、N120、L131、L141、S170、W171、S172、Y210、およびY217は、非天然リガンドファシニクリン/RG3487の結合を媒介し、これらの残基のうちの一つまたは複数の変異は、ファシニクリン/RG3487および/または他のリガンドのα7-nAChRに対する親和性を増加させることが予期される。いくつかの実施形態では、主題の操作された受容体は、α7-nAChRのリガンド結合ドメイン領域、またはα7-nAChRのリガンド結合ドメイン領域を含むキメラ受容体のリガンド結合ドメインの一つまたは複数のアミノ酸残基に変異を含み、一つまたは複数のアミノ酸残基は、R101、Y115、T128、N120、N129、L131、L141、S170、W171、S172、S188、Y210、C212、C213、およびY217からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のアミノ酸残基は、アセチルコリンおよび/またはニコチンのα7-nAChRへの結合を変化させ、アミノ酸は、α7-nAChRのY115、L131、L141、S170、W171、S172、C212、およびY217からなる群から選択される。特定のこうした実施形態では、アミノ酸は、C212およびS170から選択される。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のアミノ酸残基における変異は、ABT126のα7-nAChRへの結合を変化させ、一つまたは複数のアミノ酸残基は、α7-nAChRのR101、Y115、L131、L141、W171、S172、S188、Y210、およびY217からなる群から選択される。特定のこうした実施形態では、アミノ酸は、R101、S188、およびY210から選択される。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のアミノ酸残基における変異は、TC6987のα7-nAChRへの結合を変化させ、一つまたは複数のアミノ酸残基は、α7-nAChRのR101、Y115、T128、N129、L131、L141、W171、S172、Y210、C212、C213およびY217からなる群から選択される。特定のこうした実施形態では、アミノ酸は、R101、T128、N129、Y210およびC213から選択される。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のアミノ酸残基における変異は、ファシニクリン/RG3487のα7-nAChRへの結合を変化させ、一つまたは複数のアミノ酸残基は、α7-nAChRのR101、N120、L131、L141、S170、W171、S172、Y210、およびY217からなる群から選択される。特定のこうした実施形態では、アミノ酸は、Y210、R101、およびN129から選択される。
【0139】
別の例として、5HT3(配列番号6)の残基W85、R87、Y136、Y138、G146、N147、Y148、K149、S177、S178、L179、Y228、およびY229が、セロトニンの結合を媒介し、これらの残基のうちの一つまたは複数での変異が、セロトニンの5HT3への結合を減少させることが見出された。5HT3のD64、I66、W85、R87、Y89、N123、G146、Y148、T176、S177、S178、W190、R191、F221、E224、Y228、Y229、およびE231は、非天然リガンドシランセトロンの結合を媒介し、これらの残基のうちの一つまたは複数の変異が、シランセトロンおよび/または他のリガンドの5HT3に対する親和性を増加させることが予測される。いくつかの実施形態では、主題の操作された受容体は、5HT3Aのリガンド結合ドメイン領域、または5HT3のリガンド結合ドメイン領域を含むキメラ受容体のリガンド結合ドメインの一つまたは複数のアミノ酸残基に変異を含み、一つまたは複数のアミノ酸残基は、D64、I66、W85、R87、Y89、N123、Y136、Y138、G146、N147、Y148、K149、T176、S177、S178、L179、W190、R191、F221、E224、Y228、Y229、およびE231からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のアミノ酸残基における変異は、セロトニンの5HT3への結合を変化させ、アミノ酸は、5HT3AのW85、R87、Y136、Y138、G146、N147、Y148、K149、S177、S178、L179、Y228、およびY229からなる群から選択される。特定のこうした実施形態では、アミノ酸は、Y136、Y138、N147、K149、およびL179から選択される。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のアミノ酸残基における変異は、シランセトロンの5HT3への結合を変化させ、一つまたは複数のアミノ酸残基は、5HT3AのD64、I66、W85、R87、Y89、N123、G146、Y148、T176、S177、S178、W190、R191、F221、E224、Y228、Y229、およびE231からなる群から選択される。特定のこうした実施形態では、アミノ酸は、D64、I66、Y89、N123、T176、W190、R191、F221、E224、およびE231から選択される。
【0140】
いくつかの実施形態では、LGICの活性を調節するリガンドの能力に影響を及ぼす一つまたは複数の変異は、LGICのイオン孔ドメイン内に位置する。例えば、セロトニン受容体5HT3Aの残基T279は、リガンドがチャネルの活性を調節する方法を媒介し、その結果、この残基の、例えばセリン(T279S)への変異が、拮抗的である(すなわち、LGICの活性を減少させる)効果をアゴニスト性(すなわち、チャネルの活性を促進する)に変換させる。いくつかの実施形態では、主題のリガンド依存性イオンチャネルは、ヒト5HT3A(配列番号6)のイオン孔ドメイン、または5HT3Aのイオン孔ドメインを含むキメラLGIC受容体のイオン孔ドメインの一つまたは複数のアミノ酸残基における変異を含み、ここで、置換は、配列番号6の279に対応するアミノ酸内にある。特定の実施形態では、置換は、配列番号6に対するT279S置換である。
【0141】
本開示は、親受容体と比較して、アミノ酸置換などの二つ以上の変異を有する操作された受容体を提供する。いくつかの実施形態では、親受容体はキメラ受容体である。いくつかの実施形態では、親受容体は、配列番号33のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作された受容体は、配列番号33のアミノ酸配列を含む親受容体と比較して、二つのアミノ酸置換を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、二つのアミノ酸置換は、L131およびS172、Y115およびS170、ならびにY115およびL131からなる群から選択される一対のアミノ酸残基にある。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、L131およびS172、Y115およびS170、ならびにY115およびL131からなる群から選択される一対のアミノ酸残基に二つのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、L131SおよびS172D、L131TおよびS172D、L131DおよびS172D、Y115DおよびS170T、Y115DおよびL131Q、ならびにY115DおよびL131Eからなる群から選択される一対のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、L131Eのアミノ酸置換を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、アセチルコリンに対する操作された受容体の効力は、アセチルコリンに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも低い。いくつかの実施形態では、アセチルコリンに対する操作された受容体の効力は、アセチルコリンに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも少なくとも約1.5倍(例えば、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、または約100倍、それらの間にある全ての部分範囲および値を含む)低い。
【0144】
いくつかの実施形態では、非天然リガンドに対する操作された受容体の効力は、非天然リガンドに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力とほぼ同じである。いくつかの実施形態では、非天然リガンドに対する操作された受容体の効力は、非天然リガンドに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも高い。いくつかの実施形態では、非天然リガンドに対する操作された受容体の効力は、非天然リガンドに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも少なくとも約1.5倍(例えば、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、または約100倍、それらの間にある全ての部分範囲および値を含む)高い。いくつかの実施形態では、効力を決定することは、EC50を決定することを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、非天然リガンドの存在下での操作された受容体の有効性は、非天然リガンドの存在下でのヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の有効性よりも高い。いくつかの実施形態では、非天然リガンドの存在下での操作された受容体の有効性は、非天然リガンドの存在下でのヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の有効性よりも少なくとも約1.5倍(例えば、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、または約100倍、それらの間にある全ての部分範囲および値を含む)高い。いくつかの実施形態では、有効性を決定することは、非天然リガンドの存在下で、インビトロで操作された受容体を通過する電流の量を決定することを含む。
【0146】
いくつかの態様では、主題のリガンド依存性イオンチャネルは、一つまたは複数の非脱感作変異を含む。リガンド依存性イオンチャネルの文脈で使用される場合、「脱感作」とは、アゴニストの長時間の存在下でのイオン流量の進行的な減少を指す。これにより、リガンドに対するニューロンの応答性が漸進的に失われる。非脱感作変異とは、LGICがリガンドに対して脱感作され、それによってニューロンがリガンドに対してより応答性が弱くなる、または非応答性になることを防ぐアミノ酸変異を意味する。非脱感作変異は、変異を担持するLGICをニューロンに導入し、リガンドへの長時間の曝露中に経時的な電流の流れを分析することによって容易に特定することができる。LGICが非脱感作変異を含まない場合、電流は、長時間の曝露中にピークから定常状態まで回復するが、LGICが非脱感作変異を含む場合、電流は、リガンドへの曝露期間中、ピーク流量に留まる。脱感作をもたらす例示的なアミノ酸変異としては、ヒトGlyRα1におけるV322L変異(シグナルペプチドを除去するためのプロタンパク質のV294Lポストプロセシング)、およびヒトGABA-A受容体GABRB3におけるL321V変異(シグナルペプチドを除去するためのプロタンパク質のL296Vポストプロセシング)が挙げられる。いくつかの実施形態では、脱感作変異は、LGICのC末端でまたはその近傍のアミノ酸残基の脱感作配列、例えば、GABAR1によりコードされるタンパク質のC末端に由来するIDRLSRIAFPLLFGIFNLVYWATYLNREPQL(配列番号53)に対して90%以上の同一性を有する配列との置換、例えば、GABRR1中の残基455~479のIDRLSRIAFPLLFGIFNLVYWATYLNREPQL(配列番号53)との置換である。LGIC脱感作、LGICの脱感作を測定する方法、および非脱感作の変異は当該技術分野で周知であり、例えば、Gielen et al.Nat Commun 2015 Apr 20,6:6829,and Keramidas et al.Cell Mol Life Sci.2013 Apr;70(7):1241-53を参照のこと。当該全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0147】
いくつかの態様では、主題のリガンド依存性イオンチャネルは、一つまたは複数の変換変異を含む。変換変異とは、LGICのイオン孔ドメインの透過性を変化させ、それが非天然イオン、すなわち自然通過を許さないイオンの伝導を許容するようになる変異を意味する。いくつかの事例では、変異は、透過性を陽イオンから陰イオンへと変換し、例えば、ヒトα7-nAChR(CHRNA7)(EKISLGITVLLSLTVFMLLVAE、配列番号54)中のアミノ酸残基260~281、または別の陽イオン透過性LGIC中の対応するアミノ酸をペプチド配列PAKIGLGITVLLSLTFMSGVAN(配列番号55)で置換する。いくつかの場合では、変異が、透過性を陰イオンから陽イオンへと変換し、例えば、GLRA1のアミノ酸残基279もしくは別の陰イオン透過性LGIC中の対応するアミノ酸のグルタミン酸(E)への置換(GLRA1のA293E置換により、LGICを陰イオン透過性からカルシウム透過性に変換する)、またはGLRA1のアミノ酸残基278もしくは別の陰イオン透過性LGIC中の対応するアミノ酸の欠失、GLRA1のアミノ酸残基279もしくは別の陰イオン透過性LGIC中の対応するアミノ酸のグルタミン酸(E)への置換、およびGLRA1のアミノ酸残基293もしくは別の陰イオン透過性LGIC中の対応するアミノ酸のバリン(V)への置換(GLRA1のP278Δ、A279E、T293Vにより、LGICを陰イオン透過性から陽イオン透過性に変換する)が挙げられる。
【0148】
本明細書に記載されるものを超える追加の操作された受容体は、インビトロスクリーニングおよび検証方法によって容易に特定することができる。いくつかの実施形態では、親受容体変異体のライブラリは、限定された数の親受容体から生成される。親受容体は、エラープローンPCRを含む当技術分野で公知の方法を使用して変異させることができる。いくつかの実施形態では、親受容体変異体のライブラリは、次いで酵母または哺乳類細胞にトランスフェクトされ、ハイスループットでスクリーニングされて、機能的受容体を特定する(例えば、結合剤またはリガンドに応答してシグナル伝達することができる親受容体変異体を特定する)。いくつかの実施形態では、この一次スクリーニングで識別された機能的親受容体変異体は、次いで哺乳類細胞中で発現され、例えば、本明細書に記載のプレートリーダーおよび/または電気生理学アッセイによって、結合剤またはリガンドに対する応答性についてスクリーニングされる。次いで、アゴニスト結合剤に対する増加した結合親和性を示すか、または二次スクリーニングにおけるアゴニストとしての拮抗薬または調節因子結合剤の使用を可能にするいずれかの親受容体変異体を選択し、さらにインビトロおよび/またはインビボでの検証および特徴解析アッセイを実施することができる。かかるスクリーニングアッセイは、当技術分野で公知であり、例えば、Armbruster,B.N.et al.(2007)PNAS,104,5163-5168;Nichols,C.D.and Roth,B.L.(2009)Front.Mol.Neurosci.2,16;Dong,S.et al.(2010)Nat.Protoc.5,561-573;Alexander,G.M.et al.(2009)Neuron 63,27-39;Guettier,J.M.et al.(2009)PNAS 106,19197-19202;Ellefson J.W.et al.(2014)Nat Biotechnol32(1):97-101;Maranhao AC and Ellington AD.(2017)ACS Synth Biol.20;6(1):108-119;Talwar S et al.(2013)PLoS One;8(3):e58479;Gilbert D.F.et al.(2009)Front Mol Neurosci.30;2:17;Lynagh and Lynch,(2010),Biol Chem.14:285(20),14890-14897;Islam R.et al.(2016)ACS Chem Neurosci.21;7(12):1647-1657;and Myers et al.(2008)Neuron.8:58(3):362-373を参照されたい。
【0149】
D.結合剤
用語「結合剤」または「薬剤」は、本明細書において互換的に使用され、哺乳類細胞上の公知の作用機序を有する外因性薬物または化合物を指す(例えば、受容体のアゴニスト、拮抗薬、または調節因子として作用することが知られている)。結合剤は、タンパク質、脂質、核酸、および/または小分子を含み得る。いくつかの実施形態では、結合剤は、特定の疾患(例えば、神経学的疾患)の治療における臨床使用のために米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている薬物または化合物を含む。いくつかの実施形態では、結合剤には、FDAによって臨床使用のために承認されていないが、一つまたは複数の臨床試験で試験された、一つまたは複数の臨床試験で現在試験されている、および/または一つまたは複数の臨床試験で試験されると予想される薬物または化合物が含まれる。いくつかの実施形態では、結合剤は、臨床使用のためにFDAによって承認されていないが、実験室研究で日常的に使用される薬物または化合物を含む。いくつかの実施形態では、結合剤は、前述の薬剤の一つの類似体である。特定の実施形態では、結合剤は、表2~9の薬剤のいずれか一つから選択される。いくつかの実施形態において、結合剤は、AZD0328、ABT-126、AQW-051、カンナビジオール、シランセトロン、PH-399733、ファシニクリン/RG3487/MEM-3454、TC-6987、APN-1125、およびTC-5619/AT-101からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、結合剤は、ABT-126、AZD-0328、APN-1125、RG3487、TC-6987、およびTC-5619からなる群から選択される。
【0150】
特定の実施形態では、結合剤は、例えば、そのRまたはSエナンチオマーのいずれかにおいて化合物式2~7のうちの一つによって記載されるようなシランセトロンの類似体である。
【化22】
【0151】
いくつかの実施形態では、結合剤は、アゴニストとして作用する。本明細書で使用される場合、用語「アゴニスト」は、シグナル伝達応答を誘発するリガンドまたは結合剤を指す。いくつかの実施形態では、結合剤は、拮抗薬として作用する。拮抗薬という用語は本明細書では、シグナル伝達応答を阻害する薬剤を指すために使用される。
【0152】
いくつかの実施形態では、結合剤は、抗不安剤、抗痙攣剤、抗うつ剤、抗精神病剤、制吐剤、向知性剤、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、または抗寄生虫剤である。
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表4-1】
【表4-2】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0153】
E.ポリヌクレオチド
様々な例示的な実施形態では、本開示は、部分的には、ポリヌクレオチド、LGICを含む操作された受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびにそのサブユニットおよび変異タンパク質、ならびに融合ポリペプチド、ウイルスベクターポリヌクレオチド、ならびにそれらを含む組成物を企図する。
【0154】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、または「核酸」は、互換的に使用される。これらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体のいずれかの長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有してもよく、公知または未知の任意の機能を実施することができる。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である。遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、結合分析から定義される座位(一つの座位)、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、短い干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、一つまたは複数の修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含んでもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーのアセンブリの前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば標識成分とのコンジュゲーションなどにより、重合後にさらに修飾されてもよい。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、またはDNA/RNAハイブリッドであってもよい。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチドには、限定されるものではないが、プレメッセンジャーRNA(プレmRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、短い干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、合成RNA、ゲノムRNA(gRNA)、プラス鎖RNA(RNA(+))、マイナス鎖RNA(RNA(-))、合成RNA、ゲノムDNA(gDNA)、PCR増幅DNA、相補DNA(cDNA)、合成DNA、または組換えDNAが含まれる。ポリヌクレオチドとは、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれか、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態の、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10000、または少なくとも15000以上のヌクレオチドの長さ、ならびにすべての中間長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。この文脈における「中間長さ」は、6、7、8、9など、101、102、103など、151、152、153など、201、202、203など、引用された値の間の任意の長さを意味することが容易に理解されよう。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはバリアントは、本明細書に記載の、または当技術分野で公知の参照配列に対して、少なくともまたは約50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有し、典型的には、バリアントは、別段の記載がない限り、参照配列の少なくとも一つの生物学的活性を維持する。
【0155】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子」は、エンハンサー、プロモーター、イントロン、エキソンなどを含むポリヌクレオチド配列を指し得る。特定の実施形態では、用語「遺伝子」は、ポリヌクレオチド配列がポリペプチドをコードするゲノム配列と同一であるか否かにかかわらず、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を指す。
【0156】
本明細書で使用される場合、「シス作用配列」、「シス作用調節配列」、または「シス作用ヌクレオチド配列」、または等価物は、遺伝子の発現、例えば、転写および/または翻訳に関連するポリヌクレオチド配列を指す。一実施形態では、シス作用配列は、転写を抑制または減少させるポリペプチドのための結合部位、または転写抑制に寄与する転写因子結合部位と関連するポリヌクレオチド配列であるため、転写を調節する。ポリヌクレオチド配列の発現を調節し、主題の操作された受容体の発現を調節するために本開示のポリヌクレオチドに動作可能に連結され得るシス作用配列の例は、当技術分野で周知であり、プロモーター配列(例えば、CAG、CMV、SYN、CamKII、TRPV1)、コザック配列、エンハンサー、転写後調節要素、miRNA結合要素、およびポリアデニル化配列などの要素を含む。
【0157】
一つの非限定的な例として、プロモーター配列は、細胞内でRNAポリメラーゼを結合し、下流(3’方向)コード配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。本発明を定義する目的で、プロモーター配列は、転写開始部位によってその3’末端で結合され、バックグラウンドを上回って検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基または要素を含むように上流(5’方向)に延びる。プロモーター配列内に、転写開始部位、ならびにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメインが見出される。真核生物プロモーターは、常にではないが、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含有することが多い。様々なプロモーターを使用して、本発明の様々なベクターを駆動してもよい。例えば、プロモーターは、構成的に活性なプロモーター、すなわち、外部適用剤の非存在下で活性なプロモーター、例えば、CMV IE1プロモーター、SV40プロモーター、GAPDHプロモーター、アクチンプロモーターであってもよい。プロモーターは、誘導性プロモーター、すなわち、細胞への薬剤の適用時にその活性が制御されるプロモーター、例えば、ドキシサイクリン、テトオンまたはテトオフプロモーター、エストロゲン受容体プロモーターなどであってもよい。プロモーターは、組織特異的プロモーター、すなわち、特定のタイプの細胞上で活性であるプロモーターであってもよい。
【0158】
いくつかの実施形態では、プロモーターは興奮性細胞において活性である。「興奮性細胞」とは、膜電位の変化によって活性化される細胞、例えば、ニューロンまたは筋細胞、例えば、背根神経節、運動ニューロン、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、または感覚ニューロンを意味する。本発明のポリヌクレオチド組成物で使用が見出される興奮性細胞で活性なプロモーターとしては、ニューロンプロモーター、例えばシナプシン(SYN)、TRPV1、Na1.7、Na1.8、Na1.9、CamKII、NSE、およびアドビリンプロモーター;筋細胞プロモーター、例えばデスミン(Des)、アルファ-ミオシン重鎖(α-MHC)、ミオシン軽鎖2(MLC-2)、および心臓トロポニンC(cTnC)プロモーター;ならびにユビキタス作用プロモーター、例えばCAG、CBA、E1Fa、Ubc、CMVおよびSV40プロモーターが挙げられる。
【0159】
本明細書で使用される場合、「誘導性発現のための調節要素」は、発現されるポリヌクレオチドに動作可能に結合され、かつ、それに動作可能に結合されたポリヌクレオチドの発現を増加(オン)または減少(オフ)するように、要素を結合する分子の存在または不在に応答する、プロモーター、エンハンサー、またはそれらの機能的断片であるポリヌクレオチド配列を指す。誘導性発現のための例示的な調節要素としては、以下に限定されないが、テトラサイクリン応答性プロモーター、エクジソン応答性プロモーター、クメート応答性プロモーター、グルココルチコイド応答性プロモーター、エストロゲン応答性プロモーター、RU-486応答性プロモーター、PPAR-γプロモーター、およびペルオキシド誘導性プロモーターが挙げられる。
【0160】
「一過性発現のための調節因子」は、ポリヌクレオチドヌクレオチド配列を短期または一時的に発現するために使用することができるポリヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態では、一過性発現のための一つまたは複数の調節要素を使用して、ポリヌクレオチドの持続時間を制限することができる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチド発現の好ましい持続時間は、分、時間、または日数の順序である。一過性発現のための例示的調節要素には、以下に限定されないが、ヌクレアーゼ標的部位、リコンビナーゼ認識部位、および抑制性RNA標的部位が含まれる。さらに、ある程度、特定の実施形態では、誘導性発現のための調節因子はまた、ポリヌクレオチド発現の持続時間の制御に寄与し得る。
【0161】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」などは、参照ポリヌクレオチド配列と実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチド、または以下に定義される厳しい条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語はまた、少なくとも一つのヌクレオチドの付加、欠失、置換、または修飾によって参照ポリヌクレオチドと区別されるポリヌクレオチドを包含する。したがって、用語「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」は、一つまたは複数のヌクレオチドが、付加もしくは欠失されたか、または修飾されたか、または異なるヌクレオチドで置換されたポリヌクレオチドを含む。これに関して、変異、付加、欠失、および置換を含む特定の変化が、参照ポリヌクレオチドに対して行われてもよく、それによって、改変ポリヌクレオチドが参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性を保持することが当技術分野で周知である。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはバリアントは、本明細書に記載の、または当技術分野で公知の参照配列に対して、少なくともまたは約50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有し、典型的には、バリアントは、別段の記載がない限り、参照配列の少なくとも一つの生物学的活性を維持する。
【0162】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、厳しい条件下で標的核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。「厳しい条件」下でハイブリダイズするには、互いに少なくとも60%同一であるヌクレオチド配列がハイブリダイズされたままである、ハイブリダイゼーションプロトコルを説明する。概して、厳しい条件は、定義されたイオン強度およびpHにおける特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5℃低いように選択される。Tmは、標的配列に対して相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度(定義されたイオン強度、pHおよび核酸濃度下で)である。標的配列は概して過剰に存在するため、Tmでは、プローブの50%が平衡状態で占有される。
【0163】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」、または例えば、「50%同一の配列」を含む記述は、比較ウィンドウにわたってヌクレオチドごとまたはアミノ酸ごとに配列が同一である範囲を指す。したがって、「配列同一性の割合」は、比較ウィンドウにわたって二つの最適に整列された配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)、または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が両方の配列に存在する位置の数を決定して、一致した位置の数を得、一致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、結果を100倍して、配列同一性の割合を得ることにより、計算されてもよい。二つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列関係を記述するために使用される用語には、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の割合」、および「実質的な同一性」が含まれる。「参照配列」は、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含む、長さが少なくとも12個、多くの場合15~18個、多くの場合少なくとも25個のモノマー単位である。二つのポリヌクレオチドはそれぞれ、(1)二つのポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列のいくつかのみ)、および(2)二つのポリヌクレオチド間で分散する配列を含む場合があるため、二つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、二つのポリヌクレオチドの配列を「比較ウィンドウ」上で比較して、配列類似性の局所領域を識別および比較することによって実施される。「比較ウィンドウ」は、二つの配列が最適に整列された後、配列が同じ数の連続した位置の基準配列と比較される、少なくとも6つの連続した位置、通常は約50~約100、より通常には約100~約150の概念的セグメントを指す。比較ウィンドウは、二つの配列の最適な整列のために、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適なアライメントは、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 ScienceDrive Madison,WI,USAのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピュータ実装によって、または検査および選択された様々な方法のいずれかによって生成される最適なアライメント(すなわち、比較ウィンドウにわたって最も高い割合の相同性をもたらす)によって実施され得る。参照は、例えば、Altschul et al.,1997,Nucl.Acids Res.25:3389に開示されているようなプログラムのBLASTファミリーに対してもなされ得る。配列解析の詳細な考察は、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons Inc,1994-1998,Chapter 15のUnit 19.3に見出すことができる。
【0164】
本明細書で使用される場合、「単離ポリヌクレオチド」は、天然に存在する状態で、それに隣接している配列から精製されたポリヌクレオチド、例えば、通常は断片に隣接する配列から除去されたDNA断片を指す。特定の実施形態では、「単離ポリヌクレオチド」は、相補的DNA(cDNA)、組換えDNA、または自然界には存在せず、人工的に作製された他のポリヌクレオチドを指す。
【0165】
ポリヌクレオチドの方向を記述する用語には、5’(通常、遊離リン酸基を有するポリヌクレオチドの末端)および3’(通常、遊離ヒドロキシル(OH)基を有するポリヌクレオチドの末端)が含まれる。ポリヌクレオチド配列は、5’から3’の方向または3’から5’の方向で注釈付けされ得る。DNAおよびmRNAについて、5’から3’鎖は、その配列が、プレメッセンジャー(プレmRNA)の配列と同一であるために、[DNA中のチミン(T)の代わりに、RNA中のウラシル(U)を除く]「センス」、「プラス」、または「コード」鎖と指定される。DNAおよびmRNAについては、RNAポリメラーゼによって転写された鎖である相補的な3’から5’の鎖は、「鋳型」、「アンチセンス」、「マイナス」、または「非コード」鎖として指定される。本明細書で使用される場合、用語「逆方向」は、3’から5’方向に書かれた5’から3’の配列、または5’から3’方向に書かれた3’から5’の配列を指す。
【0166】
用語「隣接する」は、配列に対して上流ポリヌクレオチド配列および/または下流ポイルヌクレオチド配列、すなわち、5’および/または3’の間にあるポリヌクレオチド配列を指す。例えば、二つの他の要素(例えば、ITR)に「隣接する」配列は、一方の要素が配列に対して5’に位置し、他方が配列に対して3’に位置することを示すが、それらの間に介在する配列が存在してもよい。
【0167】
用語「相補的」および「相補性」は、塩基対合規則によって関連するポリヌクレオチド(すなわち、一連のヌクレオチド)を指す。例えば、DNA配列5’AGTCATG3’の相補鎖は、3’TCAGTAC5’である。後者の配列は、しばしば、左に5’末端、右に3’末端、5’CATGACT3’の逆相補体として記述される。その逆補体と等しい配列は、パリンドローム配列であると言われる。相補性は、核酸の塩基の一部のみが塩基対合規則に従って一致する、「部分的」であり得る。または、核酸の間には、「完全な(complete)」または「完全な(total)」相補性があり得る。
【0168】
本明細書で使用される場合、「核酸カセット」または「発現カセット」という用語は、ポリヌクレオチドから一つまたは複数のRNAを発現するのに十分であるベクターなどのより大きなポリヌクレオチド内のポリヌクレオチド配列を指す。発現されたRNAはタンパク質に翻訳されてもよく、ガイドRNAまたは阻害RNAとして機能して、切断および/または分解のために他のポリヌクレオチド配列を標的としてもよい。一実施形態では、核酸カセットは、一つまたは複数の対象のポリヌクレオチドを含む。別の実施形態では、核酸カセットは、一つまたは複数の対象のポリヌクレオチドに動作可能に結合された一つまたは複数の発現制御配列を含有する。ポリヌクレオチドには、対象のポリヌクレオチドが含まれる。本明細書で使用される場合、用語「対象のポリヌクレオチド」は、ポリペプチドもしくは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または本明細書に企図される阻害性ポリヌクレオチド、例えばLGIC、ならびにそのサブユニットおよび変異タンパク質の転写のテンプレートとして機能するポリヌクレオチドを指す。特定の実施形態では、対象のポリヌクレオチドは、ヌクレアーゼ活性および/またはクロマチンリモデリングまたはエピジェネティック修飾活性などの一つまたは複数の酵素活性を有するポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードする。
【0169】
ベクターは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上の核酸カセットを含み得る。本開示の好ましい実施形態では、核酸カセットは、操作された受容体、例えば、LGIC、またはそのサブユニットもしくは変異タンパク質をコードするポリヌクレオチドに動作可能に結合された一つまたは複数の発現制御配列(例えば、神経細胞で動作可能なプロモーターまたはエンハンサー)を含む。カセットは、単一のユニットとして、他のポリヌクレオチド配列、例えば、プラスミドまたはウイルスベクターから除去または挿入されてもよい。
【0170】
一実施形態では、本明細書に企図されるポリヌクレオチドは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個以上の核酸カセットを含み、それらの任意の数または組み合わせは、同一または反対の方向であってもよい。
【0171】
さらに、遺伝子コードの縮退の結果として、本明細書に企図されるポリペプチドまたはそのバリアントの断片をコードし得る多くのヌクレオチド配列が存在することを、当業者であれば理解するであろう。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小限の相同性を有する。それにもかかわらず、コドン使用の違いにより変化するポリヌクレオチドは、本開示によって特に意図され、例えば、ヒトおよび/または霊長類のコドン選択に最適化されたポリヌクレオチドである。一実施形態では、特定の対立遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが提供される。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加、および/または置換などの一つまたは複数の変異の結果として改変される内因性ポリヌクレオチド配列である。
【0172】
F.ベクター
本開示のいくつかの態様では、核酸分子、すなわち、操作された受容体をコードするポリヌクレオチドが対象に送達される。いくつかの事例では、操作された受容体をコードする核酸分子は、ベクターによって対象に送達される。様々な実施形態では、ベクターは、本明細書で企図される一つまたは複数のポリヌクレオチド配列を含む。用語「ベクター」は、本明細書において、別の核酸分子を移送または輸送することができる核酸分子を指すために使用される。移送されたポリヌクレオチドは、一般に、ベクター核酸分子に連結され、例えば、挿入される。ベクターは、細胞内の自律的複製を指示する配列を含んでもよく、または宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含んでもよい。ベクターは、標的ポリヌクレオチドを生物、細胞、または細胞成分に送達することができる。いくつかの事例では、ベクターは発現ベクターである。本明細書で使用される場合、「発現ベクター」は、発現を促進することができるベクター、例えばプラスミド、ならびにその中に組み込まれたポリヌクレオチドの複製を指す。典型的には、発現される核酸配列は、シス作用調節配列、例えばプロモーターおよび/またはエンハンサー配列に動作可能に連結され、プロモーターおよび/またはエンハンサーによる転写調節制御に依存する。特定の事例では、ベクターを使用して、本開示の操作された受容体をコードする核酸分子を対象に送達する。
【0173】
特定の実施形態では、操作された受容体をコードする発現カセットまたはポリヌクレオチドを神経細胞に導入するのに好適な任意のベクターを用いることができる。好適なベクターの実例には、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌人工染色体、およびウイルスベクターが含まれる。いくつかの事例では、ベクターは、例えば、プラスミド、BAC、PAC、YAC、コスミド、ホスミドなどのための環状核酸である。いくつかの事例では、環状核酸分子を利用して、操作された受容体をコードする核酸分子を対象に送達することができる。例えば、操作された受容体をコードするプラスミドDNA分子を対象の細胞内に導入することができ、それにより、操作された受容体をコードするDNA配列がmRNAに転写され、mRNAの「メッセージ」がタンパク質産物に翻訳される。環状核酸ベクターは、概して、標的タンパク質の発現を調節する調節要素を含む。例えば、環状核酸ベクターは、任意の数のプロモーター、エンハンサー、ターミネーター、スプライスシグナル、複製起点、開始シグナルなどを含んでもよい。
【0174】
いくつかの事例では、ベクターは、レプリコンを含み得る。レプリコンは、自己複製が可能な任意の核酸分子であってもよい。いくつかの事例では、レプリコンは、ウイルスに由来するRNAレプリコンである。限定されないが、アルファウイルス、ピコルナウイルス、フラビウイルス、コロナウイルス、ペスチウイルス、ルビウイルス、カルシウイルス、およびヘパシウイルスを含む、様々な適切なウイルス(例えば、RNAウイルス)が利用可能である。
【0175】
いくつかの実施形態では、ベクターは、非ウイルスベクターである。「非ウイルスベクター」とは、ウイルスキャプシドまたはエンベロープを含まない任意の送達ビヒクル、例えば、脂質ナノ粒子(陰イオン性(負電荷)、中性、または陽イオン性(正電荷))、重金属ナノ粒子、ポリマー系粒子、プラスミドDNA、ミニサークルDNA、ミニベクターDNA、ccDNA、合成RNA、エキソソームなどを意味する。非ウイルスベクターは、例えば、ナノ粒子送達、粒子衝撃、電気穿孔、超音波処理、またはマイクロインジェクションを含む、当技術分野でよく理解される任意の適切な方法によって送達され得る。例えば、Chen et al.Mol.Therapy,Methods and Clinical Development.2016 Jan;Vol 3,issue 1;and Hardy,CE et al.Genes(Basel).2017 Feb;8(2):65を参照のこと。
【0176】
他の実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。「ウイルスベクター」とは、対象のRNAまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを囲むウイルスキャプシドまたはエンベロープを含む送達ビヒクルを意味する。いくつかの事例では、ウイルスベクターは、複製欠損ウイルスに由来する。本開示の核酸分子を対象に送達するのに好適なウイルスベクターの非限定的な例としては、アデノウイルス、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、および単純ヘルペス-1(HSV-1)に由来するものが挙げられる。好適なウイルスベクターの実例には、限定されないが、レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)、ヘルペスウイルスベースのベクター、およびパルボウイルスベースのベクター(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクター、AAV-アデノウイルスキメラベクター、およびアデノウイルスベースのベクター)が含まれる。
【0177】
本明細書で使用される場合、用語「パルボウイルス」は、自律的に複製するパルボウイルスおよびディペンドウイルスを含む、全てのパルボウイルスを包含する。自律型パルボウイルスには、パルボウイルス属、エリスロウイルス属、デンソウイルス属、イテラウイルス属、およびコントラウイルス属のメンバーが含まれる。例示的な自律型パルボウイルスとしては、以下に限定されないが、マウス微小ウイルス、ウシパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ニワトリパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ガチョウパルボウイルス、およびB19ウイルスが挙げられる。他の自律型パルボウイルスは、当業者に公知である。例えば、Fields et al.,1996 Virology,volume 2,chapter69(3d ed.,Lippincott-Raven Publishers)を参照のこと。
【0178】
ディペンドウイルス属は、AAVタイプ1、AAVタイプ2、AAVタイプ3、AAVタイプ4、AAVタイプ5、AAVタイプ6、AAVタイプ7、AAVタイプ8、AAVタイプ9、AAVタイプrh10、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、およびヒツジAAVを含むが、これらに限定されない、アデノ随伴ウイルス(AAV)を含有している。
【0179】
好ましい実施形態では、ベクターはAAVベクターである。特定の事例では、ウイルスベクターはAAV-6またはAAV-9ベクターである。
【0180】
すべての公知のAAV血清型のゲノム構造は類似している。AAVのゲノムは、長さ約5,000ヌクレオチド(nt)未満の直鎖一本鎖DNA分子である。逆方向末端反復(ITR)は、非構造複製(Rep)タンパク質および構造(VP)タンパク質に対して固有のコードヌクレオチド配列に隣接している。VPタンパク質(VPl、-2および-3)はキャプシドを形成し、ウイルスの向性に寄与する。末端145ntのITRは、自己相補的であり、T字型ヘアピンを形成する、エネルギー的に安定した分子内二本鎖が形成され得るように構成される。これらのヘアピン構造は、ウイルスDNA複製の起点として機能し、細胞DNAポリメラーゼ複合体のプライマーとして機能する。哺乳類細胞における野生型(wt)AAV感染に続いて、Rep遺伝子が発現され、ウイルスゲノムの複製において機能する。
【0181】
いくつかの事例では、ウイルスベクターの外側タンパク質「キャプシド」は、自然界で発生し、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAV10である。特定の事例では、キャプシドは、(例えば、定向進化または合理的設計によって)合成的に操作され、指向性の変化、形質導入効率の増加、または免疫回避など、自然界には存在しない特定の固有の特徴を有する。合理的に設計されたキャプシドの例は、VP3ウイルスキャプシドタンパク質上の一つまたは複数の表面に露出したチロシン(Y)、セリン(S)、トレオニン(T)、およびリジン(K)残基の変異である。そのVP3キャプシドタンパク質が合成的に操作され、本明細書に提供される組成物および方法での使用に適しているウイルスベクターの非限定的な例には、AAV1(Y705+731F+T492V)、AAV2(Y444+500+730F+T491V)、AAV3(Y705+731F)、AAV5(Y436+693+719F)、AAV6(Y705+731F+T492V)、AAV8(Y733F)、AAV9(Y731F)、およびAAV10(Y733F)が挙げられる。定向進化を通して操作され、本明細書に提供される組成物および方法での使用に適しているウイルスベクターの非限定的な例には、AAV-7m8およびAAV-ShH10が含まれる。
【0182】
本明細書の「組換えパルボウイルスまたはAAVベクター」(または「rAAVベクター」)は、一つまたは複数のAAV ITRに隣接する、本明細書に企図される一つまたは複数のポリヌクレオチドを含むベクターを指す。かかるポリヌクレオチドは、そのような組み合わせが、通常、自然界では発生しないため、ITRに対して「異種」であると言われる。かかるrAAVベクターは、AAV repおよびcap遺伝子産物(すなわち、AAV RepおよびCapタンパク質)を発現する昆虫宿主細胞中に存在するとき、複製され、感染性ウイルス粒子にパッケージングされ得る。rAAVベクターがより大きな核酸構築物(例えば、染色体内、またはクローニングまたはトランスフェクションに使用されるプラスミドもしくはバキュロウイルスなどの別のベクター内)に組み込まれる場合、rAAVベクターは、典型的には、「プロベクター」と呼ばれ、AAVパッケージング機能および必要なヘルパー機能の存在下で、複製およびキャプシド形成によって「救済」することができる。
【0183】
特定の実施形態では、任意のAAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、およびAAV16からのITRを含む、AAVベクターで使用され得る。好ましい一実施形態では、本明細書で企図されるAAVベクターは、一つまたは複数のAAV2 ITRを含む。
【0184】
二つのITRを含むrAAVベクターは、約4.4kBのペイロード容量を有する。自己相補的rAAVベクターは、第三のITRを含有し、ベクターの組換え部分の二本鎖をパッケージ化し、本明細書で企図されるポリヌクレオチドに対して約2.1kBのみを残す。一実施形態では、AAVベクターはscAAVベクターである。
【0185】
rAAVのパッケージング容量(約9kB)の約2倍である拡張パッケージング容量は、二重rAAVベクター戦略を使用して達成された。本明細書で企図されるrAAVの生成に有用な二重ベクター戦略には、スプライシング(トランススプライシング)、相同組換え(オーバーラップ)、または二つの組み合わせ(ハイブリッド)が含まれるが、これらに限定されない。二重AAVトランススプライシング戦略では、スプライスドナー(SD)シグナルが、5’ハーフベクターの3’末端に配置され、スプライスアクセプター(SA)シグナルが、3’ハーフベクターの5’末端に配置される。二重AAVベクターによる同じ細胞の共感染、および二つのハーフの逆方向末端反復(ITR)媒介頭尾コンカテマー化の際、トランススプライシングは成熟mRNAおよびフルサイズのタンパク質の産生をもたらす(Yan et al.,2000)。トランススプライシングは、筋肉および網膜における大きな遺伝子を発現するために首尾よく使用されている(Reich et al.,2003;Lai et al.,2005)。あるいは、二重AAVベクター内に含有される大型導入遺伝子発現カセットの二つのハーフは、相同組換えによる単一の大型ゲノムの再構成を媒介する、相同重複配列(5’ハーフベクターの3’末端および3’ハーフベクターの5’末端での二重AAV重複)を含有してもよい(Duan et al.,2001)。この戦略は、導入遺伝子重複配列の組換え特性に依存する(Ghosh et al.,2006)。第三の二重AAV戦略(ハイブリッド)は、外因性遺伝子(すなわち、アルカリホスファターゼ;Ghosh et al.、2008、Ghosh et al.、2011)からトランススプライシングベクターに高度な組換え誘導性領域を付加することに基づく。付加された領域は、二重AAV間の組換えを増加させるために、5’ハーフベクターのSDシグナルの下流、および3’ハーフベクターのSAシグナルの上流に配置される。
【0186】
「ハイブリッドAAV」または「ハイブリッドrAAV」は、異なるAAV血清型(および好ましくは、一つまたは複数のAAV ITRとは異なる血清型)のキャプシドと共にパッケージされたrAAVゲノムを指し、そうでなければシュードタイプrAAVと呼んでもよい。例えば、AAVキャプシドおよびゲノム(および好ましくは一つまたは複数のAAV ITR)が異なる血清型であることを条件として、rAAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16型のゲノムは、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16型のキャプシドまたはそのバリアント内にキャプシド形成され得る。特定の実施形態では、シュードタイプrAAV粒子は、「x/y」型と呼んでもよく、「x」はITRの供給源を示し、「y」はキャプシドの血清型を示し、例えば、2/5rAAV粒子は、AAV2由来のITRおよびAAV6由来のキャプシドを有する。
【0187】
「宿主細胞」は、本開示の組換えベクターまたはポリヌクレオチドを用いて、インビボ、エクスビボ、またはインビトロでトランスフェクト、感染、または形質導入された細胞を含む。宿主細胞には、ウイルス産生細胞およびウイルスベクターに感染した細胞が含まれ得る。特定の実施形態では、インビボでの宿主細胞は、本明細書で企図されるウイルスベクターに感染している。特定の実施形態では、用語「標的細胞」は、宿主細胞と互換的に使用され、所望の細胞型の感染細胞を指す。
【0188】
高力価AAV調製物は、例えば、米国特許第5,658,776号、第6,566,118号、第6,989,264号、および第6,995,006号、U.S.2006/0188484号、WO98/22607号、WO2005/072364号、およびWO/1999/011764号、ならびにViral Vectors for Gene Therapy:Methods and Protocols,ed.Machida,Humana Press,2003;Samulski et al.,(1989)J.Virology 63,3822 ;Xiao et al.,(1998)J.Virology 72,2224;lnoue et al.,(1998)J.Virol.72,7024に記載されているような、当技術分野において公知の技法を用いて産生することができる。インビボ投与時にそれらの免疫原性を低下させるために、シュードタイプAAVベクターの作製方法(例えば、WO00/28004)、ならびにAAVベクターの様々な改変または製剤化も報告されている(例えば、WO01/23001、WO00/73316、WO04/112727、WO05/005610、WO99/06562を参照)。
【0189】
医薬組成物
また、ベクターの医薬調製物および結合剤の医薬調製物を含む、医薬調製物も提供される。医薬調製物には、操作された受容体をコードする主題のポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)、主題の操作された受容体をコードするポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)を担持するベクター、または薬学的に許容可能なビヒクル中に存在する結合剤が含まれる。「薬学的に許容可能なビヒクル」は、ヒトなどの哺乳類での使用のために、連邦政府もしくは州政府の規制当局により承認されているか、または米国薬局方もしくは他の一般的に認められた薬局方に列挙されたビヒクルであり得る。用語「ビヒクル」は、本開示の化合物が哺乳動物への投与のために製剤化される際の希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を指す。こうした薬学的ビヒクルは、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物、または合成起源のものを含む、水および油などの液体であり得る。薬学的ビヒクルは、生理食塩水、アカシアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであり得る。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤および着色剤が使用され得る。哺乳動物に投与されるとき、本開示の化合物および組成物、ならびに薬学的に許容可能なビヒクル、賦形剤、または希釈剤は、滅菌されていてもよい。いくつかの実例では、本開示の化合物が静脈内に投与されるとき、水、生理食塩水溶液、および水性デキストロースおよびグリセロール溶液などの水性媒体が、ビヒクルとして用いられる。
【0190】
医薬組成物は、カプセル、錠剤、ピル、ペレット、トローチ、粉末、顆粒、シロップ、エリキシル、溶液、懸濁液、エマルション、座薬、もしくはその徐放性製剤、または哺乳動物への投与に適した任意の他の形態の形態を取ることができる。いくつかの実例では、医薬組成物は、ヒトへの経口投与または静脈内投与のために適合された医薬組成物として、日常的な手順に従って投与するために製剤化される。好適な薬学的ビヒクルの実施例およびその製剤方法は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Alfonso R.Gennaro ed.,Mack Publishing Co.Easton,Pa.,19th ed.,1995,Chapters 86,87,88,91,および92に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0191】
賦形剤の選択は、特定のベクターによって、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって部分的に決定される。したがって、本開示の医薬組成物の様々な適切な製剤がある。
【0192】
例えば、ベクターは、植物油または他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、より高度の脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコールなどの水性または非水性溶媒中に、溶解、懸濁、または乳化させることによって、および所望により、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤および防腐剤などの従来的な添加剤を用いて、注射用の調製物に製剤化され得る。
【0193】
別の例として、ベクターは、(a)水または生理食塩水などの希釈剤に溶解された有効量の化合物などの液体溶液、(b)各々が固体または顆粒として所定量の活性成分を含有するカプセル、サシェまたは錠剤、(c)適切な液体中の懸濁液、および(d)適切なエマルションを含む、経口投与に適した調製物に製剤化され得る。錠剤形態は、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤、香味剤、および薬理学的に相溶性のある賦形剤のうちの一つまたは複数を含み得る。ロゼンジ形態は、香料、通常、ショ糖およびアカシアまたはトラガカント中に活性成分、ならびに活性成分に加えて本明細書に記載されるような賦形剤を含むゼラチンとグリセリン、またはショ糖とアカシア、エマルション、ゲルなどの不活性基剤中に活性成分を含むパスティル、を含むことができる。
【0194】
別の例として、本開示の主題の製剤は、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤にすることができる。これらのエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容可能な噴射剤に配置することができる。これらはまた、ネブライザーまたはアトマイザーで使用するためのような非加圧調製物の医薬品として製剤化されてもよい。
【0195】
いくつかの実施形態では、非経口投与に適した製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および意図されたレシピエントの血液との等張性を製剤に付与する溶質を含有することができる水性および非水性の等張性滅菌注射溶液と、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含むことができる水性および非水性の滅菌懸濁液とを含む。製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量または複数用量の密封容器に提示することができ、使用直前に注射用の滅菌液体賦形剤、例えば、水の添加のみを必要とする凍結して乾燥した(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時の注射溶液および懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0196】
局所投与に適した製剤は、活性成分に加えて、適切な担体などを含有するクリーム、ゲル、ペースト、またはフォームとして提示され得る。いくつかの実施形態では、局所製剤は、構造化剤、増粘剤またはゲル化剤、ならびに軟化剤または潤滑剤から選択される一つまたは複数の成分を含有する。頻繁に使用される構造化剤は、ステアリルアルコールなどの長鎖アルコール、ならびにそのグリセリルエーテルもしくはエステル、およびオリゴ(エチレンオキシド)エーテルもしくはエステルを含む。増粘剤およびゲル化剤には、例えば、アクリルもしくはメタクリル酸のポリマーおよびそのエステル、ポリアクリルアミド、ならびに寒天、カラギーナン、ゼラチン、およびグアーガムなどの天然由来の増粘剤が含まれる。軟化剤の例としては、トリグリセリドエステル、脂肪酸エステルおよびアミド、ミツロウ、鯨ろう、またはカルナウバワックスなどのワックス、レシチンなどのリン脂質、ならびにそれらのステロールおよび脂肪酸エステルが挙げられる。局所製剤は、他の成分、例えば、収斂剤、芳香剤、色素、皮膚浸透促進剤、日焼け止め剤(すなわち、サンブロック剤)などをさらに含みうる。
【0197】
本開示の化合物は、局所投与のために製剤化されてもよい。局所適用のためのビヒクルは、様々な形態、例えば、ローション、クリーム、ゲル、軟膏、スティック、スプレー、またはペーストのうちの一つであってもよい。これらは、様々なタイプの担体を含有してもよく、例えば、溶液、エアロゾル、エマルション、ゲル、およびリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。担体は、例えば、油中水または油中水の基材を有するエマルションとして製剤化されてもよい。エマルションに使用される適切な疎水性(油性)成分としては、例えば、植物油、動物脂肪および油、合成炭化水素、ならびにポリエステルを含むそのエステルおよびアルコール、ならびに有機ポリシロキサン油が挙げられる。こうしたエマルションはまた、乳化剤および/または界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤を含み、連続相内に不連続相を分散および懸濁させる。
【0198】
座薬製剤はまた、乳化基剤または水溶性基剤などの様々な基剤と混合することによっても提供される。膣投与に適した製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームとして提示され得る。
【0199】
シロップ、エリキシル、および懸濁液などの経口投与または直腸投与のための単位剤形が提供されてもよく、各投与単位、例えば、小さじ一杯、大さじ一杯、錠剤または座薬は、一つまたは複数の阻害剤を含有する所定量の組成物を含有する。同様に、注射または静脈内投与のための単位剤形は、滅菌水、通常の生理食塩水、または別の薬学的に許容可能な担体中の溶液としての組成物中に阻害剤を含み得る。
【0200】
本明細書で使用される場合、「単位剤形」という用語は、ヒトおよび動物対象のための単位用量として好適な、物理的に別個の単位を指し、各単位は、薬学的に許容可能な希釈剤、担体またはビヒクルに関連して所望の効果を生じさせるのに十分な量で計算された、本開示の化合物の所定量を含有する。本開示の新規単位剤形の仕様は、用いられる特定の化合物、および達成されるべき効果、ならびに宿主内の各化合物に関連する薬力学に依存する。
【0201】
用量レベルは、特定の化合物、送達ビヒクルの性質などの関数として変化し得る。所与の化合物に対する所望の用量は、様々な手段によって容易に決定可能である。
【0202】
本開示の文脈で、動物、特にヒトに投与される用量は、例えば、以下でより詳細に記載されるように、合理的な時間枠にわたって動物において予防または治療応答をもたらすのに十分であるべきである。用量は、使用される特定の化合物の強度、動物の状態、および動物の体重、ならびに疾患の重症度および疾患の段階を含む、様々な要因に依存する。用量のサイズはまた、特定の化合物の投与に付随し得る、任意の有害な副作用の存在、性質、および程度によっても決定される。
【0203】
薬学的剤形では、ASC誘導剤化合物は、遊離塩基、その薬学的に許容可能な塩の形態で投与されてもよく、または単独で、もしくは適切な会合で、ならびに他の薬学的に活性な化合物との組み合わせで使用されてもよい。
【0204】
G.臨床適用および治療方法
本明細書に開示される組成物および方法を利用して、神経学的疾患または障害を治療することができる。本開示のいくつかの態様では、対象の神経学的疾患または障害を治療する方法が提供され、方法は、操作された受容体を神経細胞に導入することと、操作された受容体を活性化して細胞の活性を制御するリガンドを有効量で提供することと、それによって対象の疼痛を緩和することと、を含む。いくつかの態様では、本明細書に開示されるベクターまたは組成物は、神経学的疾患または障害を治療するための医薬品の製造に使用される。
【0205】
いくつかの事例では、本開示の方法および組成物が、てんかんを治療するために利用される。本明細書に記載される組成物は、てんかん発作を予防または制御するために使用され得る。てんかん発作は、強直間代発作、強直発作、間代発作、ミオクローヌス発作、欠神発作、または脱力発作として分類され得る。いくつかの事例では、本明細書の組成物および方法は、対象が経験するてんかん発作の数を、約5%、約10%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%予防または低減することができる。
【0206】
いくつかの事例では、本開示の方法および組成物が、摂食障害を治療するために利用される。摂食障害は、対象の肉体的または精神的健康に悪影響を及ぼす異常な摂食行動によって定義される精神障害であり得る。場合によっては、摂食障害は神経性食欲不振症である。他の事例では、摂食障害は神経過食症である。場合によっては、摂食障害は、異食症、反芻障害、回避性/制限性食物摂取障害、過食性障害(BED)、他の特定される食行動障害および摂食障害(OSFED)、強制過食症、糖尿病の摂食障害(diabulimia)、オルトレキシア、選択的摂食障害、ドランクオレキシア、妊娠中の食欲不振、またはグルマン症候群である。いくつかの事例では、組成物は、摂食障害に関連する一つまたは複数の分子の産生を増加または減少させるGタンパク質共役受容体を含む。他の場合では、組成物は、摂食障害に関連する一つまたは複数の分子の産生を変化させるリガンド依存性イオンチャネルを含む。摂食障害に関連する一つまたは複数の分子には、限定されないが、バソプレシン、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、コルチゾール、エピネフリン、またはノルエピネフリンを含む、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の分子、ならびにセロトニン、ドパミン、ニューロペプチドY、レプチン、またはグレリンが含まれ得る。
【0207】
いくつかの事例では、組成物および方法は、外傷後ストレス障害(PTSD)、胃食道逆流疾患(GERD)、依存症(例えば、アルコール、薬物)、不安症、うつ病、記憶喪失、認知症、睡眠時無呼吸、脳卒中、尿失禁、ナルコレプシー、本態性振戦、運動障害、心房細動、癌(例えば、脳腫瘍)、パーキンソン病、またはアルツハイマー病を治療するために利用される。本明細書の組成物および方法によって治療され得る神経学的疾患または障害のその他の非限定的な例には、無為症、失書症、アルコール中毒、失読症、動脈瘤、一過性黒内障、記憶喪失、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アンジェルマン症候群、失語症、失行症、くも膜炎、アーノルド・キアリ奇形、アスペルガー症候群、運動失調、毛細血管拡張性運動失調症、注意欠陥多動障害、聴知覚障害、自閉症スペクトラム、双極性障害、顔面麻痺、腕神経叢損傷、脳損傷、脳傷害、脳腫瘍、カナバン病、カプグラ症候群、手根管症候群、灼熱痛、中枢性疼痛症候群、橋中心髄鞘崩壊症、中心核ミオパチー、セファリック障害、脳動脈瘤、脳動脈硬化症、大脳萎縮症、皮質下梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、脳性巨人症、脳性小児麻痺、脳血管炎、頸椎脊椎管狭窄症、シャルコー・マリー・トゥース病、キアリ奇形、コレア、慢性疲労症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、慢性疼痛、コフィン・ローリー症候群、昏睡、複合性局所疼痛症候群、圧迫性神経障害、先天性眼筋麻痺、皮質基底核変性症、頭蓋動脈炎、頭蓋縫合早期癒合症、クロイツフェルトヤコブ病、累積外傷性障害、クッシング症候群、気分循環性障害、巨細胞性封入体病(CIBD)、サイトメガロウイルス感染、ダンディ・ウォーカー症候群、ドーソン病、ドモルシア症候群、デジェリーヌ-クルンプケ麻痺、デジュリーヌ・ソッタス病、睡眠相後退症候群、認知症、皮膚筋炎、発達性協調運動障害、糖尿病性神経障害、びまん性硬化症、複視、ダウン症候群、ドラベ症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、構音障害、自律神経失調、計算障害、書字障害、ジスキネジア、失読症、ジストニア、トルコ鞍空洞症候群、脳炎、脳ヘルニア、脳三叉神経領域血管腫、遺糞症、夜尿症、てんかん、女性におけるてんかん知的障害、エルブ麻痺、紅痛症、頭内爆発音症候群、ファブリー病、ファール症候群、失神、家族性痙性対麻痺、熱性痙攣、フィッシャー症候群、フリードライヒ運動失調症、線維筋痛症、フォヴィーユ症候群、胎児アルコール症候群、脆弱X症候群、脆弱X関連振戦失調症候群(FXTAS)、ゴーシェ病、全般てんかん熱性痙攣プラス、ゲルストマン症候群、巨細胞性動脈炎、巨細胞性封入体病、グロボイド細胞白質ジストロフィー、異所性灰白質、ギランバレー症候群、全般性不安障害、HTLV-1関連ミエロパチー、ハラーホルデン・スパッツ症候群、頭部損傷、頭痛、片側顔面痙攣、遺伝性痙性対麻痺、多発神経炎型遺伝性失調症、耳帯状疱疹、帯状疱疹、ヒラヤマ症候群、ヒルシュスプルング病、ホルムズ-アーディー症候群、全前脳症、ハンチントン病、水頭性無脳症、水頭症、副腎皮質ホルモン過剰症、低酸素症、免疫介在性脳脊髄炎、封入体筋炎、色素失調症、乳児レフサム病、点頭てんかん、炎症性ミオパチー、頭蓋内嚢腫、頭蓋内圧亢進症、二動原体染色体(Isodicentric)15、ジュベール症候群、カラク症候群、ケアーンズ・セイヤー症候群、キンスボーン症候群、クライネ・レヴィン症候群、クリッペル・ファイル症候群、クラッベ病、ラフォラ病、ランバート・イートン筋無力症症候群、ランドウ・クレフナー症候群、延髄外側(ワレンベルク)症候群、学習障害、リー病、レノックス・ガストー症候群、レッシュ・ナイハン症候群、白質ジストロフィー、白質の消失を伴う白質脳症、レビー小体型認知症、脳回欠損、閉じこめ症候群、腰部椎間板症、腰部脊柱管狭窄症、ライム病-神経学的後遺症、マシャド・ジョセフ病(脊髄小脳失調症3型)、大脳症、大視症、上陸後症候群(Mal de debarquement)、皮質下嚢腫を伴う大頭型白質脳症、巨脳症、メルカーソン・ローゼンタール症候群、メニエール病、髄膜炎、メンケス病、異染性白質ジストロフィー、小頭症、小視症、偏頭痛、ミラー・フィッシャー症候群、小発作(一過性脳虚血発作)、ミソフォニア、ミトコンドリアミオパチー、メビウス症候群、一側上肢筋萎縮症、運動能力障害、モヤモヤ病、ムコ多糖症、多発脳梗塞性認知症、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、多系統萎縮症、筋ジストロフィー、筋痛性脳脊髄炎、重症筋無力症、ミエリン破壊性びまん性硬化症、乳児のミオクローヌス脳障害、ミオクローヌス、ミオパチー、筋細管ミオパチー、先天性筋強直症、ナルコレプシー、神経ベーチェット病、神経線維腫症、神経弛緩薬性悪性症候群、AIDSの神経症状、狼瘡の神経学的後遺症、神経性筋強直症、神経セロイドリポフスチン症、神経細胞移動障害、神経障害、神経症、ニーマン・ピック病、非24時間性睡眠覚醒障害、非言語的学習障害、オーサリバン・マクラウド症候群、後頭部神経痛、潜在性脊椎神経管閉鎖異常後遺症、大田原症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、眼球クローヌス・ミオクローヌス運動失調、視神経炎、起立性低血圧、耳硬化症、濫用症候群、反復視、異常知覚、パーキンソン病、先天性パラミオトニア、傍腫瘍性疾患、発作性発作、パリー・ロンバーグ症候群、PANDAS、ペリツェウス・メルツバッヘル病、周期性麻痺、末梢神経障害、広汎性発達障害、光くしゃみ反射、フィタン酸蓄積症、ピック病、縮まった神経、脳下垂体腫瘍、PMG、多発神経障害、ポリオ、多小脳回、多発性筋炎、脳孔症、ポリオ後症候群、帯状疱疹後神経痛(PHN)、体位性低血圧、プラダー・ウィリー症候群、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性顔面片側萎縮、進行性多巣性白質脳症、進行性核上性麻痺、顔貌失認、偽脳腫瘍、四分盲、四肢麻痺、狂犬病、神経根麻痺、ラムゼイハント症候群I型、ラムゼイハント症候群II型、ラムゼイハント症候群III型、ラスムッセン脳炎、反射性神経血管性ジストロフィー、レフサム病、REM睡眠行動障害、反復性ストレス損傷、下肢静止不能症候群、レトロウイルス関連ミエロパチー、レット症候群、ライエ症候群、リズム運動障害、ロンベルグ症候群、舞踏病、サンドホフ病、シルダー病、裂脳症、知覚処理障害、中隔視神経異形成症、乳児揺さぶり症候群、帯状疱疹、シャイ・ドレーガー症候群、シェーグレン症候群、睡眠時無呼吸、睡眠病、食後のくしゃみ(Snatiation)、ソトス症候群、痙縮、脊椎破裂、脊髄損傷、脊髄腫瘍、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、分離脳、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群、全身硬直症候群、発作、スタージ・ウェーバー症候群、どもり、亜急性硬化性全脳炎、皮質下動脈硬化性脳症、表在性鉄沈着、シドナム舞踏病、卒倒、共感覚、脊髄空洞症、足根管症候群、遅発性ジスキネジア、遅発性ディスフレニア、ターロフ嚢腫、ティサックス病、側頭動脈炎、側頭葉てんかん、破傷風、繋索脊髄症候群、トムセン病、胸郭出口症候群、三叉神経痛、トッド麻痺、トゥレット症候群、中毒性脳症、一過性脳虚血発作、伝達性海綿状脳症、横断性脊髄炎、外傷性脳損傷、振戦、抜毛症、三叉神経痛、熱帯性痙性不全対麻痺症、トリパノソーマ症、結節性硬化症、ウンフェルリヒト・ルントボルク病、フォンヒッペル・リンダウ病(VHL)、ビリウス脳脊髄炎(VE)、ワレンベルク症状群、ウェスト症候群、むち打ち、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、またはツェルウェーガー症候群が挙げられる。
【0208】
いくつかの事例では、本明細書に開示される組成物および方法は、脳癌または脳腫瘍を治療するために使用することができる。本明細書に記載されるベクターおよび組成物を用いた治療に適している場合がある脳癌または腫瘍の非限定的な例には、悪性星状細胞腫(グレードIIIのグリオーマ)、星状細胞腫(グレードIIのグリオーマ)、脳幹グリオーマ、上衣腫、神経節膠腫、神経節神経腫、神経膠芽腫(グレードIVのグリオーマ)、グリオーマ、若年性毛様星状細胞腫(JPA)、低グレードの星状細胞腫(LGA)、髄芽細胞腫、混合型グリオーマ、乏突起神経膠腫、視神経グリオーマ、毛様細胞性星状細胞腫(グレードIのグリオーマ)、および原始神経外胚葉性(PNET)を含む、グリオーマ;聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)、先端巨大症、アデノーマ、軟骨肉腫、脊索腫、頭蓋咽頭腫、類表皮腫瘍、頸静脈小体腫瘍、テント下髄膜腫、髄膜腫、脳下垂体アデノーマ、脳下垂体腫瘍、ラトケ裂溝嚢胞を含む、頭蓋底腫瘍;脳転移、転移性脳腫瘍を含む、転移性癌;脳嚢腫、脈絡叢乳頭腫、CNSリンパ腫、コロイド嚢腫、嚢腫性腫瘍、類皮腫瘍、胚細胞腫、リンパ腫、鼻癌腫、鼻咽腔腫瘍、松果腺腫瘍、松果体芽腫、松果体細胞腫、テント上髄膜腫、および血管腫瘍を含む、他の脳腫瘍;星状細胞腫、上衣腫、髄膜腫、およびシュワン細胞腫を含む、脊髄腫瘍が挙げられる。
【0209】
本開示は、部分的に、対象における疼痛を制御、管理、予防、または治療するための組成物および方法を企図する。「疼痛」は、対象の体内の不快感および/または不快な感覚を意味する。疼痛の感覚は、軽度および時折のものから重度および絶えず続くものまであり得る。疼痛は、急性疼痛または慢性疼痛に分類することができる。疼痛は、侵害受容性疼痛(すなわち、組織損傷によって引き起こされる疼痛)、神経障害性疼痛、または心因性疼痛であり得る。場合により、疼痛は疾患(例えば、癌、関節炎、糖尿病)によって引き起こされるか、またはそれに関連する。他の場合では、疼痛は、傷害(例えば、スポーツ傷害、外傷)によって引き起こされる。本明細書の組成物および方法を用いた治療に適している疼痛の非限定的な例には、末梢神経障害、糖尿病性神経症、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、腰痛、癌に関連する神経症、HIV/AIDSに関連する神経症、幻肢痛、腕管症候群、中枢性脳卒中後痛、慢性アルコール依存症に関連する疼痛、甲状腺機能低下症、尿毒症、多発性硬化症に関連する疼痛、脊髄損傷に関連する疼痛、パーキンソン病に関連する疼痛、てんかん、変形性関節痛、関節リウマチ疼痛、内臓痛、およびビタミン欠乏に関連する疼痛を含む神経障害性疼痛;ならびに中枢神経系外傷、株/捻挫、およびやけどに関連する疼痛を含む侵害受容性疼痛;心筋梗塞、急性膵臓炎、術後疼痛、外傷後疼痛、腎疝痛、癌に関連する疼痛、線維筋痛に関連する疼痛、毛根管症候群に関連する疼痛、および腰痛が挙げられる。
【0210】
本明細書の組成物および方法は、対象における疼痛のレベルを改善するために利用され得る。いくつかの事例では、対象における疼痛のレベルは、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または約100%改善される。対象における疼痛のレベルは、様々な方法によって評価することができる。いくつかの事例では、疼痛のレベルは、自己報告によって評価される(すなわち、ヒト対象は、自身が経験している疼痛のレベルについて口頭で報告する)。いくつかの事例では、疼痛のレベルは、疼痛の行動指標、例えば、表情、四肢の動き、発声、落ち着きのなさ、および警戒行動によって評価される。これらのタイプの評価は、例えば、対象が自己報告できない場合(例えば、幼児、意識不明の対象、非ヒト対象)に有用であり得る。疼痛のレベルは、組成物を用いた治療の前に対象が経験していた疼痛のレベルと比較して、本開示の組成物を用いた治療後に評価され得る。
【0211】
様々な実施形態では、対象における疼痛を制御、管理、予防、または治療するための方法は、有効量の本明細書で企図される操作された受容体を対象に投与することを含む。任意の特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、本開示は、本明細書に開示されるベクターを使用して、ニューロンの活性を調節して、対象における疼痛を緩和することを企図する。
【0212】
様々な実施形態では、神経細胞を活性化または脱分極させる操作された受容体をコードするベクターは、疼痛感覚を減少させる一つまたは複数の神経細胞、例えば、抑制性介在ニューロンに投与される(または導入される)。リガンドの存在下では、操作された受容体を発現する神経細胞は活性化され、これらの神経細胞を刺激する鎮痛効果を増強する疼痛に対する感受性を低下させる。
【0213】
様々な実施形態では、神経細胞を不活性化または過分極化させる操作された受容体をコードするベクターは、疼痛感覚または疼痛に対する感受性を増加させる一つまたは複数の神経細胞、例えば、侵害受容器、末梢感覚ニューロン、C線維、Aδ線維、Aδ線維、DRGニューロン、TGGニューロンなどに投与される(または導入される)。リガンドの存在下では、操作された受容体を発現する神経細胞は不活性化され、疼痛に対する感受性を低下させ、鎮痛効果を増強する。
【0214】
操作された受容体の発現を侵害受容器のサブ集団に標的化することは、ベクター(例えば、AAV1、AAV1(Y705+731F+T492V)、AAV2(Y444+500+730F+T491V)、AAV3(Y705+731F)、AAV5、AAV5(Y436+693+719F)、AAV6、AAV6(VP3バリアントY705F/Y731F/T492V)、AAV-7m8、AAV8、AAV8(Y733F)、AAV9、AAV9(VP3バリアントY731F)、AAV10(Y733F)、およびAAV-ShH10)の選択、プロモーターの選択、および送達手段のうちの一つまたは複数によって達成され得る。
【0215】
特定の実施形態では、本明細書で企図される組成物および方法は、疼痛の低減に有効である。本明細書で企図されるベクター、組成物、および方法を用いた治療に適している疼痛の実例としては、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、異痛症、炎症性疼痛、炎症性痛覚過敏、神経障害、神経痛、糖尿病性神経症、ヒト免疫不全ウイルス関連神経症、神経損傷、関節リウマチ性疼痛、骨関節炎疼痛、やけど、腰痛、眼痛、内臓痛、癌性疼痛(例えば、骨癌性疼痛)、歯痛、頭痛、偏頭痛、手根管症候群、線維筋痛、神経炎、坐骨神経痛、骨盤過敏症、骨盤痛、ヘルペス後神経痛、術後疼痛、脳卒中後疼痛、および月経痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
疼痛は、急性または慢性に分類することができる。「急性疼痛」は、突然始まり、通常、鋭い質の疼痛を指す。急性疼痛は、軽度でほんの一瞬持続するか、または重度で数週間または数か月持続する場合がある。ほとんどの場合、急性疼痛は三か月以上持続せず、疼痛の根本原因が治療または治癒された時点で消失する。しかしながら、緩和されない急性疼痛は、慢性疼痛につながる可能性がある。「慢性疼痛」とは、通常の急性疾患または傷害の経過を超えて持続するか、または三~六か月以上持続し、個人の健康に悪影響を及ぼす、継続的または再発的な疼痛を指す。特定の実施形態では、用語「慢性疼痛」は、続くべきでない時に続く疼痛を指す。慢性疼痛は、侵害受容性疼痛または神経障害性疼痛であり得る。
【0217】
いくつかの実施形態では、疼痛は、傷害、感染、または医学的介入に関連して、またはその結果として生じると予想されるか、または予測される。いくつかの実施形態では、感染は神経損傷を引き起こす。いくつかの実施形態では、医学的介入は、身体の中心核に対する手術などの外科手術である。いくつかの実施形態では、医学的介入は、体内の一つまたは複数の組織、腫瘍、または器官の部分または全体を除去するための外科手術である。いくつかの実施形態では、医学的介入は切断である。特定の実施形態では、本明細書で企図される組成物および方法は、急性疼痛の軽減に有効である。特定の実施形態では、本明細書で企図される組成物および方法は、慢性疼痛の軽減に有効である。
【0218】
患者の症状の中に不快感および異常感受性の特徴がある場合、臨床的疼痛が存在する。個体は様々な疼痛症状を呈することがある。このような症状には、1)鈍い、灼熱感、または刺すような自発痛、2)有害な刺激に対する誇張された疼痛応答(痛覚過敏)、および3)通常無害な刺激によって生じる疼痛(allodynia-Meyer et al.,1994,Textbook of Pain,13-44)が含まれる。様々な形態の急性疼痛および慢性疼痛を患らっている患者は類似の症状を有し得るが、根底にある機序は異なる場合があり、したがって異なる治療戦略を必要とする場合がある。したがって、疼痛はまた、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、および神経障害性疼痛を含む、異なる病態生理学に従って、多数の異なるサブタイプに分けることができる。
【0219】
特定の実施形態では、本明細書で企図される組成物および方法は、侵害受容性疼痛の軽減に有効である。特定の実施形態では、本明細書で企図される組成物および方法は、炎症性疼痛の軽減に有効である。特定の実施形態では、本明細書で企図される組成物および方法は、神経障害性疼痛の軽減に有効である。
【0220】
侵害受容性疼痛は、組織損傷によって、または損傷を引き起こす可能性のある強い刺激によって誘発される。中等度から重度の急性侵害受容性疼痛は、中枢神経系外傷、筋違え/捻挫、やけど、心筋梗塞および急性膵炎、術後疼痛(任意の種類の手術処置後の疼痛)、外傷後疼痛、腎疝痛、癌疼痛および腰痛からの疼痛の顕著な特徴である。癌疼痛は、腫瘍関連疼痛(例えば、骨痛、頭痛、顔面痛、または内臓痛)、または癌療法に関連する疼痛(例えば、化学療法後症候群、慢性術後疼痛症候群、または放射線後症候群)などの慢性疼痛であり得る。癌疼痛は、化学療法、免疫療法、ホルモン療法、または放射線療法に応答しても生じ得る。腰痛は、椎間板のヘルニアもしくは破裂、または腰椎間関節、仙腸骨関節、傍脊柱筋、もしくは後縦靱帯の異常による場合がある。腰痛は自然に解消する場合もあるが、12週間以上持続する患者では、特に衰弱しやすい慢性的な状態になる。
【0221】
神経障害性疼痛は、神経系の原発性病変または機能障害によって開始または引き起こされる疼痛として定義され得る。神経障害性疼痛の病因としては、例えば、末梢神経障害、糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、腰痛、癌神経障害、HIV神経障害、幻肢痛、手根管症候群、脳卒中後中枢性疼痛、および慢性アルコール中毒に関連する疼痛、甲状腺機能低下症、尿毒症、多発性硬化症、脊髄損傷、パーキンソン病、てんかん、およびビタミン欠乏症が挙げられる。
【0222】
神経障害性疼痛は、疼痛に関連するか、または疼痛によって引き起こされる疾患、障害、または状態を指す用語である、疼痛障害と関連し得る。疼痛障害の実例には、関節炎、異痛症、典型的な三叉神経痛、三叉神経痛、身体表現性障害、知覚鈍麻、知覚過敏、神経痛、神経炎、神経原性疼痛、無痛覚症、無知覚性疼痛症、灼熱痛(causlagia)、坐骨神経痛障害、変性関節障害、線維筋痛、内臓疾患、慢性疼痛障害、偏頭痛/頭痛、慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群、神経ジストロフィー、足底筋膜炎または癌に関連する疼痛が挙げられる。
【0223】
炎症過程は、組織損傷または異物の存在に応答して活性化され、腫れおよび疼痛をもたらす、複雑な一連の生化学的および細胞的事象である。関節痛は、一般的な炎症性疼痛である。
【0224】
本明細書で企図されるベクター、組成物、および方法を用いた治療に適しているその他の種類の疼痛には、筋肉痛、線維筋痛、脊椎炎、血清陰性(非リウマチ)関節障害、非関節リウマチ、ジストロフィン異常症、糖原分解、多発性筋炎、および化膿性筋炎を含む筋骨格障害に起因する疼痛;扁桃炎、心筋梗塞、僧帽弁狭窄症、心膜炎、レイノー現象、強皮症(scleredoma)および骨格筋虚血を含む心臓および血管疼痛;頭痛、例えば、偏頭痛(前兆ありの偏頭痛および前兆なしの偏頭痛を含む)、群発頭痛、緊張型頭痛と混合した頭痛、血管障害に関連する頭痛;ならびに歯痛、耳痛、口腔灼熱症候群、および顎関節筋膜痛を含む口腔顔面疼痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0225】
ヒト対象が経験する疼痛の量を減少させるための本明細書で企図される組成物および方法の有効量は、様々な疼痛スケールを使用して決定することができる。患者の自己報告を使用して、疼痛が軽減するかどうかを評価することができる。例えば、Katz and Melzack(1999)Surg.Clin.North Am.79:231を参照のこと。あるいは、観察的疼痛スケールを使用してもよい。LANSS疼痛スケールを使用して、疼痛が軽減されるかどうかを評価することができる。例えば、Bennett(2001)Pain92:147を参照のこと。視覚的アナログ疼痛スケールを使用してもよい。例えば、Schmader(2002)Clin.J.Pain 18:350を参照のこと。Likert疼痛スケールを使用してもよい。例えば、0は疼痛なし、5は中等度の疼痛、10は起こり得る最悪の疼痛である。小児のための自己報告疼痛スケールには、例えば、顔面疼痛スケール、Wong-Baker 顔面疼痛評価スケール、およびカラーアナログスケールが含まれる。成人のための自己報告疼痛スケールには、例えば、視覚的アナログスケール、口頭数値評価スケール、口頭記述子スケール、および簡易疼痛調査票が含まれる。疼痛測定スケールには、例えば、Alder Hey トリアージ疼痛スコア(Stewart et al.(2004)Arch.Dis.Child.89:625);行動疼痛スケール(Payen et al.(2001)Critical Care Medicine 29:2258);簡易疼痛調査票(Cleeland and Ryan(1994)Ann.Acad.Med.Singapore 23:129);非言語的疼痛指標のチェックリスト(Feldt(2000)Pain Manag.Nurs.1 :13);救命救急疼痛観察ツール(Gelinas et al.(2006)Am.J.Crit.Care 15:420);コンフォートスケール(Ambuel et al.(1992)J.Pediatric Psychol.17:95);ダラス疼痛アンケート (Ozguler et al.(2002)Spine 27:1783);痛覚計疼痛指標(Hardy et al.(1952)Pain Sensations and Reactions Baltimore:The Williams & Wilkins Co.);顔面疼痛スケール改訂版(Hicks et al.(2001)Pain 93:173);顔の脚の活動の叫び慰めのスケール(Face Legs Activity Cry Consolability Scale);マクギル疼痛アンケート(Melzack(1975)Pain 1 :277);記述子差分スケール(Gracely and Kwilosz(1988)Pain 35:279);数字11ポイントボックス(Jensen et al.(1989)Clin.J.Pain 5:153);数字評価スケール(Hartrick et al.(2003)Pain Pract.3:310);Wong-Baker顔面疼痛評価スケール;および視覚アナログスケール(Huskisson(1982)J.Rheumatol.9:768)が挙げられる。
【0226】
特定の実施形態では、対象の疼痛を緩和する方法が提供され、方法は、操作された受容体を神経細胞に導入することと、操作された受容体を活性化するリガンドを有効量で提供することによって細胞の活性を制御することと、それによって対象の疼痛を緩和することと、を含む。この方法は、一般的な中枢神経系のうつ病など、オフターゲット効果を伴うことなく、疼痛に対する有意な鎮痛をもたらす。特定の実施形態では、本方法は、治療されていない対象と比較して、対象における神経障害性疼痛の1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、結合剤の投与の前後に対象における疼痛を測定する工程を含み、対象における疼痛は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上低減される。このような場合、測定は、結合剤の投与の4時間以上後、例えば、結合剤の投与の8時間、12時間、16時間、24時間、36時間、48時間、3日、または4日以上後に行われてもよい。
【0227】
特定の実施形態では、本明細書に企図されるベクターは、一つまたは複数の神経細胞に投与または導入される。神経細胞は、同じタイプの神経細胞であってもよく、または異なるタイプの神経細胞の混合集団であってもよい。一実施形態では、神経細胞は、侵害受容器または末梢感覚ニューロンである。感覚ニューロンの実例には、限定されないが、背根神経節(DRG)ニューロンおよび三叉神経節(TGG)ニューロンが含まれる。一実施形態では、神経細胞は、ニューロンの疼痛回路に関与する抑制性介在ニューロンである。
【0228】
いくつかの事例では、操作された受容体をコードするベクターは、それを必要とする対象に投与される。投与方法の非限定的な例としては、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮膚内投与、腹腔内投与、経口投与、注入、頭蓋内投与、髄腔内投与、鼻腔内投与、神経節内投与、脊髄内投与、大槽投与、および神経内投与が挙げられる。いくつかの事例では、投与は、ベクターの液体製剤の注射を含むことができる。他の事例では、投与は、ベクターの固体製剤の経口送達を含むことができる。いくつかの事例では、経口製剤は、食品と共に投与することができる。特定の実施形態では、ベクターは、ベクターを一つまたは複数の神経細胞に導入するために、非経口的に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、髄腔内に、神経内に、神経節内に、脊髄内に、または脳室内に投与される。様々な実施形態では、ベクターはrAAVである。
【0229】
一実施形態では、AAVは、感覚ニューロンまたは侵害受容器、例えば、DRGニューロン、TGGニューロンなどに、髄腔内(IT)または神経節内(IG)投与によって投与される。IT経路は、AAVを脳脊髄液(CSF)に送達する。この投与経路は、例えば、慢性疼痛または他の末梢神経系(PNS)または中枢神経系(CNS)の適応症の治療に適し得る。動物では、IT投与は、大槽を通してITカテーテルを挿入し、それを腰椎レベルまで尾側に前進させることによって達成されてきた。ヒトでは、優れた安全性プロファイルを用いる日常的な臨床処置である腰椎穿刺(LP)によって、IT送達を容易に行うことができる。
【0230】
特定の事例では、ベクターは、神経節内投与によって対象に投与されてもよい。神経節内投与は、一つまたは複数の神経節への直接の注射を伴い得る。IG経路は、AAVを直接DRGまたはTGG実質に送達し得る。動物では、DRGへのIG投与は、それが複雑かつ侵襲的な処置を必要とするため、ヒトでは望ましくない開放的な神経外科処置によって行われる。ヒトでは、DRGを安全に標的化するための低侵襲のCT撮像誘導技術が使用され得る。対流増加送達(CED)用のカスタマイズされた針アセンブリを使用して、AAVをDRG実質内に送達することができる。非限定的な実施例では、本開示のベクターは、慢性疼痛の治療のために、一つまたは複数の背根神経節および/または三叉神経節に送達されてもよい。別の非限定的な例では、本開示のベクターは、てんかんを治療するために、節上神経節(迷走神経)に送達されてもよい。
【0231】
さらに別の特定の事例では、ベクターは、頭蓋内投与(すなわち、脳内に直接)によって対象に投与されてもよい。頭蓋内投与の非限定的な例では、本開示のベクターは、例えば、てんかん発作の焦点を治療するために脳の皮質に、例えば、満腹障害を治療するために視床下部室傍に、または、例えば、満腹障害を治療するために扁桃体中心核に送達されてもよい。別の特定の事例では、ベクターは、神経内注射(すなわち、神経内に直接)によって対象に投与されてもよい。神経は、治療される適応症に基づいて選択されてもよく、例えば、慢性的疼痛を治療するために座骨神経への注射、またはてんかんもしくは満腹障害を治療するために迷走神経への注射が挙げられる。さらに別の特定の事例では、ベクターは、例えば、慢性疼痛を治療するために感覚神経末端に皮下注射によって対象に投与されてもよい。
【0232】
ベクター用量は、対象に送達されるベクターゲノムユニットの数として表され得る。本明細書で使用される場合、「ベクターゲノムユニット」は、用量で投与される個々のベクターゲノムの数を指す。個々のベクターゲノムのサイズは、一般的に使用されるウイルスベクターのタイプに依存する。本開示のベクターゲノムは、約1.0キロ塩基から、1.5キロ塩基、2.0キロ塩基、2.5キロ塩基、3.0キロ塩基、3.5キロ塩基、4.0キロ塩基、4.5キロ塩基、5.0キロ塩基、5.5キロ塩基、6.0キロ塩基、6.5キロ塩基、7.0キロ塩基、7.5キロ塩基、8.0キロ塩基、8.5キロ塩基、9.0キロ塩基、9.5キロ塩基、10.0キロ塩基、10.0キロ塩基超であり得る。したがって、単一のベクターゲノムは、最大10,000塩基対のヌクレオチド、またはそれ以上を含み得る。場合によっては、ベクター用量は、約1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x1010、2x1010、3x1010、4x1010、5x1010、6x1010、7x1010、8x1010、9x1010、1x1011、2x1011、3x1011、4x1011、5x1011、6x1011、7x1011、8x1011、9x1011、1x1012、2x1012、3x1012、4x1012、5x1012、6x1012、7x1012、8x1012、9x1012、1x1013、2x1013、3x1013、4x1013、5x1013、6x1013、7x1013、8x1013、9x1013、1x1014、2x1014、3x1014、4x1014、5x1014、6x1014、7x1014、8x1014、9x1014、1x1015、2x1015、3x1015、4x1015、5x1015、6x1015、7x1015、8x1015、9x1015、1x1016、2x1016、3x1016、4x1016、5x1016、6x1016、7x1016、8x1016、9x1016、1x1017、2x1017、3x1017、4x1017、5x1017、6x1017、7x1017、8x1017、9x1017、1x1018、2x1018、3x1018、4x1018、5x1018、6x1018、7x1018、8x1018、9x1018、1x1019、2x1019、3x1019、4x1019、5x1019、6x1019、7x1019、8x1019、9x1019、1x1020、2x1020、3x1020、4x1020、5x1020、6x1020、7x1020、8x1020、9x1020またはそれ以上のベクターゲノムユニットであり得る。
【0233】
特定の実施形態では、本明細書で企図されるベクターは、少なくとも約1x10ゲノム粒子/mL、少なくとも約1x1010ゲノム粒子/mL、少なくとも約5x1010ゲノム粒子/mL、少なくとも約1x1011ゲノム粒子/mL、少なくとも約5x1011ゲノム粒子/mL、少なくとも約1x1012ゲノム粒子/mL、少なくとも約5x1012ゲノム粒子/mL、少なくとも約6x1012ゲノム粒子/mL、少なくとも約7x1012ゲノム粒子/mL、少なくとも約8x1012ゲノム粒子/mL、少なくとも約9x1012ゲノム粒子/mL、少なくとも約10x1012ゲノム粒子/mL、少なくとも約15x1012ゲノム粒子/mL、少なくとも約20x1012ゲノム粒子/mL、少なくとも約25x1012ゲノム粒子/mL、少なくとも約50x1012ゲノム粒子/mL、または少なくとも約100x1012ゲノム粒子/mLの力価で対象に投与される。ウイルス力価に関連して使用される場合、用語「ゲノム粒子(gp)」または「ゲノム当量」または「ゲノムコピー」(gc)は、感染性または機能性にかかわらず、組換えAAV DNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。特定のベクター調製物中のゲノム粒子の数は、当技術分野でよく理解されている方法、例えばゲノムDNAの定量的PCR、または例えば、Clark et al.(1999)Hum.Gene Ther.,10:1031-1039;Veldwijk et al.(2002)Mol.Ther.、6:272-278に記載されているものにより測定することができる。
【0234】
本開示のベクターは、流体容積中で投与されてもよい。場合によっては、ベクターは、約0.1mL、0.2mL、0.3mL、0.4mL、0.5mL、0.6mL、0.7mL、0.8mL、0.9mL、1.0mL、2.0mL、3.0mL、4.0mL、5.0mL、6.0mL、7.0mL、8.0mL、9.0mL、10.0mL、11.0mL、12.0mL、13.0mL、14.0mL、15.0mL、16.0mL、17.0mL、18.0mL、19.0mL、20.0mL、または20.0mL超の容積で投与されてもよい。いくつかの事例では、ベクター用量は、対象に投与されるベクターの濃度または力価として表されてもよい。この場合、ベクター用量は、容積当たりのベクターゲノムユニット数(すなわち、ゲノム単位/容積)として表されてもよい。
【0235】
特定の実施形態では、本明細書で企図されるベクターは、少なくとも約5x10感染単位/mL、少なくとも約6x10感染単位/mL、少なくとも約7x10感染単位/mL、少なくとも約8x10感染単位/mL、少なくとも約9x10感染単位/mL、少なくとも約1x1010感染単位/mL、少なくとも約1.5x1010感染単位/mL、少なくとも約2x1010感染単位/mL、少なくとも約2.5x1010感染単位/mL、少なくとも約5x1010感染単位/mL、少なくとも約1x1011感染単位/mL、少なくとも約2.5x1011感染単位/mL、少なくとも約5x1011感染単位/mL、少なくとも約1x1012感染単位/mL、少なくとも約2.5x1012感染単位/mL、少なくとも約5x1012感染単位/mL、少なくとも約1x1013感染単位/mL、少なくとも約5x1013感染単位/mL、少なくとも約1x1014感染単位/mLの力価で対象に投与される。ウイルス力価に関して使用される場合、用語「感染単位(iu)」、「感染性粒子」、または「複製単位」は、例えば、McLaughlin et al.(1988)J.Virol.,62:1963-1973に記載されるように、複製センターアッセイとしても知られる、感染性センターアッセイによって測定されるような、感染性および複製能力のある組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0236】
特定の実施形態では、本明細書で企図されるベクターは、少なくとも約5x1010形質導入単位/mL、少なくとも約1x1011形質導入単位/mL、少なくとも約2.5x1011形質導入単位/mL、少なくとも約5x1011形質導入単位/mL、少なくとも約1x1012形質導入単位/mL、少なくとも約2.5x1012形質導入単位/mL、少なくとも約5x1012形質導入単位/mL、少なくとも約1x1013形質導入単位/mL、少なくとも約5x1013形質導入単位/mL、少なくとも約1x1014形質導入単位/mLの力価で対象に投与される。ウイルス力価に関連して使用される場合、用語「形質導入単位」(tu)は、例えば、Xiao et al.(1997)Exp.Neurobiol.,144:113-124;またはFisher et al.(1996)J.Virol.,70:520-532(LFUアッセイ)に記載されているような機能的アッセイにおいて測定されるような、機能的導入遺伝子産物の産生をもたらす、感染性組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0237】
ベクター用量は、概して投与経路によって決定される。特定の実施例では、神経節内注射は、約0.1mL~約1.0mLの容積中に、約1x10~約1x1013ベクターゲノムを含み得る。別の事例では、髄腔内注射は、約1.0mL~約12.0mLの容積中に、約1x1010~約1x1015ベクターゲノムを含み得る。さらに別の特定の事例では、頭蓋内注射は、約0.1mL~約1.0mLの容積中に、約1x10~約1x1013ベクターゲノムを含み得る。別の特定の事例では、神経内注射は、約0.1mL~約1.0mLの容積中に、約1x10~約1x1013ベクターゲノムを含み得る。別の特定の実施例では、脊髄内注射は、約0.1mL~約1.0mLの容積中に、約1x10~約1x1013ベクターゲノムを含み得る。さらに別の特定の事例では、大槽注入は、約0.5mL~約5.0mLの容積中に、約5x10~約5x1013ベクターゲノムを含み得る。さらに別の特定の事例では、皮下注射は、約0.1mL~約1.0mLの容積中に、約1x10~約1x1013ベクターゲノムを含み得る。
【0238】
いくつかの事例では、ベクターは、注入によって対象に送達される。注入によって対象に送達されるベクター用量は、ベクター注入速度として測定され得る。ベクター注入速度の非限定的な例には、以下が含まれる:神経節内投与、脊髄内投与、頭蓋内投与、または神経内投与については1~10μL/分、髄腔内投与または大槽内投与については10~1000μL/分。いくつかの事例では、ベクターは、MRI誘導対流増加送達(CED)によって対象に送達される。この技術により、脳の大部分に分布するウイルス拡散および形質導入の増加が可能になり、針経路に沿ったベクターの逆流を減少させる。
【0239】
様々な実施形態では、神経細胞を不活性化または過分極化する操作された受容体をコードするベクターを、疼痛感覚または疼痛に対する感受性を増加させる一つまたは複数の神経細胞に投与することと、操作された受容体を発現する神経細胞に特異的に結合するリガンドを対象に投与することと、それによって細胞を不活性化し、疼痛に対する感受性を低下させ、鎮痛効果を増強することと、を含む方法が提供される。
【0240】
様々な実施形態では、神経細胞を活性化または分極化する操作された受容体をコードするベクターを、疼痛感覚または疼痛に対する感受性を減少させる一つまたは複数の神経細胞に投与することと、操作された受容体を発現する神経細胞に特異的に結合するリガンドを対象に投与することと、それによって細胞を活性化し、疼痛に対する感受性を低下させ、鎮痛効果を増強することと、を含む方法が提供される。
【0241】
リガンドの製剤は、様々な経路によって対象に投与されてもよい。投与方法の非限定的な例としては、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、経皮投与、皮膚内投与、腹腔内投与、経口投与、注入、頭蓋内投与、髄腔内投与、鼻腔内投与、神経節内投与、および神経内投与が挙げられる。いくつかの事例では、投与は、リガンドの液体製剤の注射を含むことができる。他の事例では、投与は、リガンドの固体製剤の経口送達を含むことができる。特定の事例では、リガンドは、経口投与(例えば、ピル、錠剤、カプセルなど)によって投与される。いくつかの事例では、経口組成物は、食品と共に投与することができる。別の特定の事例では、リガンドは、対象の脳脊髄液(CSF)への送達のために、髄腔内注射(すなわち脊髄の髄腔内)により投与される。別の特定の事例では、リガンドは局所的に投与される(例えば、皮膚パッチ、クリーム、ローション、軟膏など)。
【0242】
対象に投与されるリガンドの用量は、絶対的な制限の対象ではないが、組成物およびその活性成分の性質、ならびにその望ましくない副作用(例えば、抗体に対する免疫反応)、治療される対象、および治療される状態のタイプおよび投与方法に依存する。概して、用量は、所望の生物学的効果を達成するのに十分な量、例えば、対象が経験する疼痛のレベルを低減または軽減するのに有効な量などの治療有効量である。特定の実施形態では、用量はまた、予防量または有効量であってもよい。治療有効量のリガンドは、投与経路、治療される適応症、および/または使用のために選択されるリガンドに依存し得る。
【0243】
一実施形態では、リガンドは、ベクターの投与前に最初に対象に投与される。治療有効量のリガンドは、ベクターの送達後のある時点で対象に投与されてもよい。概して、ベクターの送達後、対象の一つまたは複数の細胞が、ベクターによってコードされるタンパク質(すなわち、操作された受容体)を生成するのに必要とされる期間がある。この期間中、対象へのリガンドの投与は、対象に有益ではない場合がある。この状況では、対象の一つまたは複数の細胞によって一定量の操作された受容体が産生された後、リガンドを投与するのが適切であり得る。
【0244】
一実施形態では、リガンドが最初に投与されるのは、ベクターが対象に投与されるのとほぼ同時である。
【0245】
一実施形態では、リガンドが最初に投与されるのは、対象にベクターを投与した1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、または12時間後、日後、週間後、か月後、または年後である。いくつかの事例では、治療有効量のリガンドが、対象に投与されるのは、ベクターの送達の少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日または30日超後であってもよい。特定の実施例では、治療有効量のリガンドは、ベクターの送達の少なくとも一週間後に対象に投与される。さらなる実施例では、治療有効量のリガンドは、少なくとも三日間連続で毎日対象に投与される。
【0246】
本開示のリガンドの治療有効量または用量は、対象の体重kg当たりのリガンドのmgまたはμgとして表され得る。いくつかの事例では、リガンドの治療有効量は、約0.001μg/kg、約0.005μg/kg、約0.01μg/kg、約0.05μg/kg、約0.1μg/kg、約0.5μg/kg、約1μg/kg、約2μg/kg、約3μg/kg、約4μg/kg、約5μg/kg、約6μg/kg、約7μg/kg、約8μg/kg、約9μg/kg、約10μg/kg、約20μg/kg、約30μg/kg、約40μg/kg、約50μg/kg、約60μg/kg、約70μg/kg、約80μg/kg、約90μg/kg、約100μg/kg、約120μg/kg、約140μg/kg、約160μg/kg、約180μg/kg、約200μg/kg、約220μg/kg、約240μg/kg、約260μg/kg、約280μg/kg、約300μg/kg、約320μg/kg、約340μg/kg、約360μg/kg、約380μg/kg、約400μg/kg、約420μg/kg、約440μg/kg、約460μg/kg、約480μg/kg、約500μg/kg、約520μg/kg、約540μg/kg、約560μg/kg、約580μg/kg、約600μg/kg、約620μg/kg、約640μg/kg、約660μg/kg、約680μg/kg、約700μg/kg、約720μg/kg、約740μg/kg、約760μg/kg、約780μg/kg、約800μg/kg、約820μg/kg、約840μg/kg、約860μg/kg、約880μg/kg、約900μg/kg、約920μg/kg、約940μg/kg、約960μg/kg、約980μg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、または10mg/kg超とすることができる。
【0247】
特定の実施形態では、対象に投与されるリガンドの用量は、少なくとも約0.001マイクログラム/キログラム(μg/kg)、少なくとも約0.005μg/kg、少なくとも約0.01μg/kg、少なくとも約0.05μg/kg、少なくとも約0.1μg/kg、少なくとも約0.5μg/kg、0.001ミリグラム/キログラム(mg/kg)、少なくとも約0.005mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg、少なくとも約0.05mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.5mg/kg、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約2mg/kg、少なくとも約3mg/kg、少なくとも約4mg/kg、少なくとも約5mg/kg、少なくとも約5mg/kg、少なくとも約6mg/kg、少なくとも約7mg/kg、少なくとも約8mg/kg、少なくとも約8mg/kg、少なくとも約9mg/kg、または少なくとも約10mg/kg以上である。
【0248】
特定の実施形態では、対象に投与されるリガンドの用量は、少なくとも約0.001μg/kg~少なくとも約10mg/kg、少なくとも約0.01μg/kg~少なくとも約10mg/kg、少なくとも約0.1μg/kg~少なくとも約10mg/kg、少なくとも約1μg/kg~少なくとも約10mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg~少なくとも約10mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg/少なくとも約10mg/kg、または少なくとも約1mg/kg~少なくとも約10mg/kg、またはそれらの任意の介在範囲である。
【0249】
いくつかの態様では、治療有効量のリガンドは、モル濃度(すなわち、Mまたはmol/L)として表され得る。いくつかの事例では、治療有効量のリガンドは、約1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、9nM、10nM、20nM、30nM、40nM、50nM、60nM、70nM、80nM、90nM、100nM、200nM、300nM、400nM、500nM、600nM、700nM、800nM、900nM、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、200mM、300mM、400mM、500mM、600mM、700mM、800mM、900mM、1000mMまたはそれ以上であり得る。
【0250】
治療有効量のリガンドは、一日一回以上投与することができる。いくつかの事例では、治療有効量のリガンドが、必要に応じて投与される(例えば、疼痛緩和が必要とされる場合)。リガンドは、連続的に投与されてもよい(例えば、治療レジメンの間、中断することなく毎日)。いくつかの事例では、治療レジメンは、一週間未満、一週間、二週間、三週間、一か月、または一か月超であり得る。いくつかの事例では、治療有効量のリガンドは、一日、少なくとも二日連続、少なくとも三日連続、少なくとも四日連続、少なくとも五日連続、少なくとも六日連続、少なくとも七日連続、少なくとも八日連続、少なくとも九日連続、少なくとも十日連続、または少なくとも十日連続を超えて投与される。特定の事例では、治療有効量のリガンドが三日連続で投与される。場合によっては、治療有効量のリガンドを、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、週に7回、週に8回、週に9回、週に10回、週に11回、週に12回、週に13回、週に14回、週に15回、週に16回、週に17回、週に18回、週に19回、週に20回、週に25回、週に30回、週に35回、週40回、または週に40回超投与することができる。いくつかの事例では、治療有効量のリガンドは、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日7回、1日8回、1日9回、1日10回、または1日10回超の投与が可能である。場合によっては、治療有効量のリガンドは、少なくとも1時間ごと、少なくとも2時間ごと、少なくとも3時間ごと、少なくとも4時間ごと、少なくとも5時間ごと、少なくとも6時間ごと、少なくとも7時間ごと、少なくとも8時間ごと、少なくとも9時間ごと、少なくとも10時間ごと、少なくとも11時間ごと、少なくとも12時間ごと、少なくとも13時間ごと、少なくとも14時間ごと、少なくとも15時間ごと、少なくとも16時間ごと、少なくとも17時間ごと、少なくとも18時間ごと、少なくとも19時間ごと、少なくとも20時間ごと、少なくとも21時間ごと、少なくとも22時間ごと、少なくとも23時間ごと、または少なくとも毎日投与される。リガンドの用量は、対象に連続的に、または1日に1、2、3、4、もしくは5回、週に1、2、3、4、5、6、もしくは7回、月に1、2、3、もしくは4回、2、3、4、5、もしくは6か月に1回、または年1回、またはさらにより長い間隔で投与されてもよい。治療期間は、1日、1、2、もしくは3週間、1、2、3、4、5、7、8、9、10、もしくは11か月、1、2、3、4、5年以上、またはより長く継続し得る。
【0251】
本明細書に開示される方法および組成物によって治療される対象は、ヒトであってもよく、または非ヒト動物であってもよい。本明細書で使用される用語「治療する」およびその文法的等価物は、概して、疾患の症状を低減、除去、または予防するための組成物または方法の使用を指し、治療的利益および/または予防的利益を達成することを含む。治療的利益とは、治療される障害または状態の症状の進行を遅らせること、進行を停止すること、進行を逆転させること、または根絶もしくは向上させることを意味する。治療の予防的利益は、状態のリスクの低減、状態の進行の遅延、または状態の発生の可能性の低減を含む。
【0252】
非ヒト動物の非限定的な例としては、非ヒト霊長類、家畜動物、家庭用ペット、および実験動物が挙げられる。例えば、非ヒト動物は、類人類(例えば、チンパンジー、ヒヒ、ゴリラ、またはオランウータン)、旧世界のサル(例えば、アカゲザル)、新世界のサル、イヌ、ネコ、バイソン、ラクダ、ウシ、シカ、ブタ、ロバ、ウマ、ラバ、ラマ、ヒツジ、ヤギ、バッファロー、トナカイ、ヤク、マウス、ラット、ウサギ、または任意の他の非ヒト動物であり得る。本明細書に記載される組成物および方法は、獣医学的動物の治療に適している。獣医学的動物は、限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヘビ、カメ、およびトカゲを含み得る。いくつかの態様では、組織または細胞集団を組成物と接触させることは、組成物を細胞集団または対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与は、例えば、組成物を細胞培養系に添加することによって、インビトロで行われる。いくつかの態様では、投与は、例えば、特定の経路を介した投与によって、インビボで行われる。二つ以上の組成物が投与される場合、組成物は、同じ経路を介して、同時に(例えば、同じ日に)、または同じ経路を介して、異なる時間に投与され得る。あるいは、組成物は、異なる経路を介して、同時に(例えば、同じ日に)、または異なる経路を介して、異なる時間に投与され得る。
【0253】
組成物がそれを必要とする対象に投与される回数は、医療専門家の裁量、障害、障害の重症度、および製剤に対する対象の応答に依存する。いくつかの態様では、組成物の投与は少なくとも1回行われる。さらなる態様では、投与は、所与の期間中に、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回以上行われる。各投与の用量および/または投与頻度は、患者の状態および生理学的応答に基づいて必要に応じて調節され得る。
【0254】
いくつかの実施形態では、組成物は、対象の状態において所望の生理学的効果または改善を達成するのに十分な回数投与されてもよい。対象の状態が改善しない場合、医師の裁量により、組成物は、慢性的に、すなわち、対象の疾患または状態の症状を改善するか、または他の方法で制御もしくは制限するために、対象の生涯全体を含む、長期にわたって投与され得る。対象の状態が改善する場合、医師の裁量により、組成物は連続的に投与されてもよく、あるいは、投与される薬物の用量は、一定の期間、一時的に減少または一時的に中断されてもよい(すなわち、「休薬」)。休薬期間は、例としてのみであるが、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、および365日を含む、2日~1年の間で変動する。休薬中の用量減少は、例としてのみであるが、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%を含む、10%~100%であってもよい。
【0255】
組成物が複数回投与される場合、各投与は、同じ実施者によって、および/または同じ地理的位置で行われてもよい。あるいは、各投与は、異なる実施者によって、および/または異なる地理的位置で行われてもよい。
【0256】
ヒトおよび獣医学的治療に関して、投与される特定の薬剤の量は、治療される障害および障害の重症度;使用される特定の薬剤の活性;患者の年齢、体重、健康全般、性別および食事;使用される特定の薬剤の投与時間、投与経路、および排泄速度;治療期間;使用される特定の薬剤と組み合わせて、または偶然に使用される薬物;処方医師または獣医師の判断;ならびに医学や獣医学の分野で公知の要因を含む、様々な要因に依存し得る。同様に、所与の組成物の有効濃度は、患者または対象の年齢、性別、体重、遺伝子状態、および全体的な健康状態を含む様々な要因に依存し得る。
【0257】
以下の表2~8は、様々な用量のアセチルコリンまたは非天然リガンドのいずれかによる、示された操作された受容体の刺激後のYFP蛍光の消光率を列挙する。
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【0258】
以下の表9~11は、示されるように異なる技術によって計算された、示される操作された受容体のEC50を列挙する。
【表17】
【表18】
【表19】
以下の表Aは、本明細書に開示される二重変異体を列挙する。
【表20】
【0259】
本明細書において引用される全ての論文、刊行物、および特許は、個々の論文、刊行物、または特許が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に込みこまれ、刊行物が引用されることに関連する方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本明細書に引用される任意の参考文献、記事、刊行物、特許、特許公開、および特許出願についての言及は、有効な先行技術を構成する、または世界のいかなる国でも共通の一般知識の一部を形成することを承認するものではなく、またはいかなる形態の示唆としても解釈されるべきではない。
【0260】
文脈が別段の示唆をしない限り、本明細書に記載される様々な特徴を任意の組み合わせで使用できることが特に意図される。
【0261】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0262】
当然のことながら、上記の説明ならびに以下の実施例は、本発明の範囲を例示することを意図するものであり、限定するものではない。本発明の範囲内の他の態様、利点および修正は、本発明が関連する当業者には明らかであろう。
【実施例
【0263】
実施例1.リガンド結合ドメインにおける変異を含む操作された受容体の発見
ヒトα7-nAChRの非天然小分子アゴニストへの曝露後に陰イオン電流を伝導するLGICを生成するために、ヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)由来のリガンド結合ドメイン、およびヒトGlyR1α由来の塩化物導電性イオン孔ドメインを含む、キメラリガンド依存性イオンチャネル(LGIC)受容体を遺伝子操作した。配列番号33のアミノ酸配列を有する操作された受容体が識別され、これは、野生型のα7-nAChRとほぼ同様にアセチルコリン、ABT-126、およびTC-6987に対して感受性であり、TC-6987は、野生型と同様に配列番号33に対する部分アゴニスト活性を示した。配列番号33は、野生型と比較して、ニコチンに対して約2倍感受性が低く、AZD-0328およびファシニクリン/RG3487に対してそれぞれ約3倍および10倍感受性が高かった。
【0264】
アミノ酸置換を、配列番号33のアミノ酸配列を有する操作された受容体のリガンド結合ドメインに導入した。α7-nAChRの各リガンドの結合ポケットをモデル化し、結合ポケットを形成するアミノ酸残基をマッピングした。次いで、単一、二重、および三重の変異キメラLGICのライブラリが生成され、各変異キメラLGICは、配列番号33のリガンド結合ポケットの一つまたは複数のアミノ酸に置換を含む。親キメラ受容体(配列番号33)を、標準的な分子生物学技術によってBamHI部位およびEcoRI部位を使用して、pcDNA3.1(+)(Invitrogen)にクローニングした。アミノ酸置換は、部位特異的変異誘発により導入された。
【0265】
得られた全ての操作された受容体を、それらの天然リガンドであるアセチルコリン(Ach)、およびAZD-0328(adisinsight.springer.com/drugs/800018503)、TC-6987(drugbank.ca/drugs/DB14854)、ABT-126(medchemexpress.com/Nelonicline.html)、APN-1125(clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02724917)、TC-5619(en.wikipedia.org/wiki/Bradanicline)、およびFacinicline/RG3487(researchgate.net/figure/Molecular-structure-of-RG3487_fig1_47499934)などの非天然リガンドに対するそれらの効力について分析した。
【0266】
実施例2:ハイスループット蛍光ベースのプレートスクリーニングを使用した操作された受容体の特性評価
リガンドに対する新規の応答プロファイルを有するものについてこれらの変異型LGICをスクリーニングするために、陰イオンレポーターアッセイを開発し、ハイスループットフォーマットでチャネルの機能を評価した。このアッセイでは、陰イオンの存在下で蛍光が消光するYFPレポーターを発現する細胞は、目的のチャネルをコードするDNAでトランスフェクトされる。リガンドに曝露すると、活性化されたチャネルは陰イオンを流束させ、プレートリーダー上で検出可能なYFPの用量依存性消光をもたらす。
【0267】
Lenti-X 293T細胞(LX293T、Clontech社)を、10%のFBSおよび1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen社)を含有するDMEM中で維持した。プレートリーダーアッセイの場合、LX293T細胞をレンチウイルスに感染させて、陰イオンに対する感受性の強化を示す変異型YFP(H148Q/I152L)レポーターを安定的に発現する細胞を作製した。アッセイの二日前に、ポリ-dリジン(Thermo Scientific社)で被覆された96ウェル組織培養プレート中で、細胞を20,000細胞/ウェルの密度で分割した。翌日、標準的なFugeneプロトコル(Promega社)を使用して、ウェル当たり0.1μgのDNAを細胞に一過性にトランスフェクトした。アッセイ当日、細胞を1X細胞外溶液(1X ECS:140mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl2、2mM CaCl2、10mM HEPES、10mMグルコース、pH7.2、mOsms300)中で2回洗浄した。最後の洗浄後、100μLの1X ECSをウェルに加え、プレートを37℃で30分間インキュベートした。プレートをインキュベートしながら、薬物を1X ECS-NaI(140mMのNaClを140mMのNaIで置き換えた以外は1X ECSと同じ成分)中で2倍濃度に希釈した。次いで、プレートをFlexstation3(分子デバイス)で読み取った。プレートの各ウェル、一度に8ウェルを、Flexstation3(分子デバイス)を使用して、以下のように2分間読み取る:1)ベースラインYFP蛍光を17秒間読み取り、2)100μLのリガンドを添加し、3)次いで、残りの時間、1.3秒ごとにYFP蛍光の変化を測定する。
【0268】
図1は、図に示すように、様々な用量のアセチルコリンまたは非天然リガンドのいずれかによる、刺激後のYFP蛍光の消光率のヒートマップを提供する。青く塗りつぶされたセルで示すように、正の蛍光シグナルは、操作された受容体が、その濃度で非天然リガンドによって活性化されることを示す。結果は、操作された受容体が、試験された非天然リガンドに対して様々な効力を有することを示す。表12は、YFP蛍光プレートリーダー実験から決定された、アセチルコリン(Ach)およびTC-5619に対する示された二重変異体のEC50値を列挙する。
【表21】
【0269】
実施例3:ハイスループット電気生理学を使用した操作された受容体の特性評価
プレートリーダーによって決定されたEC50を確認するとともに、最大電流の流れをより良く理解するために、以下に記載するように、操作された受容体を、ハイスループット電気生理学システムにかけた。HEK293T試験では、イオンチャネルをコードするcDNAを、標準的な組換え技術を使用してpcDNA3.1にクローニングした。ClontechからのHEK293T細胞(Lenti-X(商標)293T細胞株)を、標準的な細胞培養プロトコルを使用して、10%のFBSおよび1%のPen/Strepを40~50%のコンフルエンスまで補充したDMEM中で培養し、Fugene 6を使用して15cmのディッシュ当たり18μgの濃度でイオンチャネルプラスミドでトランスフェクトし、さらに24時間にわたって増殖させた。次いで、細胞を電気生理学的システム(IonFluxHTおよび/またはMercury,Fluxion Biosciences)上でアッセイし、全細胞構成を確立するためのマイクロフルイディクスに基づくプラットフォームを介して用量反応関係を評価してもよい。アンサンブルプレートに、LynaghおよびLynchから適応されるような、細胞外緩衝液(140mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl、1mM MgCl、10mM HEPES、および10mM グルコース、NaOHでpH7.2、mOsm 310)、細胞内緩衝液(145mM CsCl、2mM CaCl2、2mM MgCl2、10mM HEPES、および10mM EGTA、CsOHでpH 7.2、mOsm 305)をプライミングし、試験化合物(新鮮に調製されたストック)を細胞外緩衝液中で希釈した。次いで、細胞をAccutaseを用いてプレートから解放し、遠心分離して、細胞外緩衝液中に再懸濁し、アンサンブルプレートに充填した。次いで、細胞をプライミング、トラップ、破壊、および全細胞構成を確立するための標準プロトコルに供し、細胞が記録全体を通して-60mVで保持された。ベースラインを記録した後、IonFluxソフトウェアを使用して、進行用量の試験化合物を適用し、用量反応関係を評価した。次いで、カスタムPythonスクリプトを使用してオフラインでデータを分析して、データを.csv形式に変換し、トレースを再プロットし、QC測定値を適用して不安定な記録を拒否した(すなわち、ベースラインのアクセス抵抗および/または標準偏差に基づく閾値処理、ならびにアーチファクト拒否)。次いで、ピーク電流を計算し、ヒル方程式によって記述される4パラメータロジスティック方程式を使用して、集団データを適合させた。薬物を1秒間添加した後、自動パッチクランプシステム(Fluxion Biosciences社)で電流を測定し、計算されたEC50値を以下の表13に集計する。
【表22】
【0270】
これらの結果は、全ての操作された受容体が、野生型nAchRa7と比較して、アセチルコリンに対する効力を低下させたことを示す。例えば、いくつかの操作された受容体は、野生型nAchRa7のEC50よりも数桁高いEC50値を有する。さらに、結果は、野生型受容体と比較して、操作された受容体のいくつかが、特定の非天然リガンドに対する効力を増大させたことを示す。例えば、配列番号33のL131D、S172Dのアミノ酸配列を含む操作された受容体は、野生型対照受容体と比較して、AZD-0328およびRG-3487に対して少なくとも10倍増加した効力を示す。これらの結果は、操作された受容体が、アセチルコリンに対する効力を低下させるために使用され得る一方で、ヒトにおいて安全で忍容性良好であると認識されている合成小分子nAChα7受容体アゴニストに対する効力を保持または増加させ得ることを示す。
【0271】
電気生理学的方法からのこれらの結果は、プレートリーダーからのEC50値の確認を提供し、さらに、本明細書に開示される操作された受容体のアセチルコリンおよび非天然リガンド応答のデカップリングを確認する。
【0272】
実施例4:手動パッチクランプ電気生理学を使用した操作された受容体の特性評価
HEK293細胞およびラットDRGニューロンにおける全細胞手動パッチクランプ電気生理学を使用して、Achリガンドおよび非天然リガンドに対する本明細書に開示される様々な操作された受容体のEC50を測定した。基電流シフトは、受容体の有効性を反映するラットDRGニューロンでも測定された。基電流を計算するために、まず、活動電位を生成できる電流の量を決定した。次いでリガンドを添加し、続いて700pAまで注入された電流を段階的に増加させた。リガンドの添加後に注入された電流を、活動電位を得るために注入された元の電流で割って、基電流を計算した。EC50は、リガンドの漸増用量からのピーク電流を測定し、ヒル方程式を使用して計算した。
【0273】
結果を以下の表14に集計する。これらの結果は、本明細書に開示される操作された受容体が、Achに対する効力は極めて低いが、RG3487およびTC5619などの非天然リガンドに対する効力および有効性は高いことを確証する。実施例6も参照されたい。
【表23】
【0274】
実施例5:操作された受容体の局在化
本明細書に開示される操作された受容体が細胞表面に局在する効率を、二つの方法を用いて評価した。まず、HAタグ付き操作された受容体をHEK293T細胞中で発現させ、その表面発現を、蛍光タグ付きHA抗体を使用してモニタリングした。第二に、操作された受容体(CHNRA7)上のアミノ酸に特異的に結合する蛍光標識されたα-ブンガロトキシンを使用して、操作された受容体に結合した。これら両方の方法、続いてフローサイトメトリーの使用により、操作された受容体の表面局在化の裏付けが可能となった。
【0275】
モノクローナル抗体の抗-HA-PeCy7(16B12)は、Biolegend(San Diego、CA)から購入した。モノクローナル抗体のクローン名は括弧内に記載されている。ビオチンにコンジュゲートされたアルファ-ブンガロトキシン、Alexa Fluor 647は、すべてThermo/Fisher(Waltham MA)から購入した。簡潔に述べると、HEK-293Tをウェル当たり200,00細胞でプレーティングし、翌日、DNA対Fugeneの比率1:3でFugene 6をトランスフェクトした。細胞を、フローサイトメトリーを使用してトランスフェクションの翌日に分析した。フローサイトメトリー分析のために、トランスフェクトされたHEK293T細胞を、0.05%トリプシンおよび0.02%EDTA(Thermo/Fisher社)を使用して持ち上げ、洗浄し、FACS緩衝液(2%BSA、Ca+およびMg+を含まない1X PBS、および1Xペニシリンストレプトマイシン)中で抗体(30分、1:100)またはα-ブンガロトキシン(1時間 1:1000)でインキュベートした。次いで細胞をFACS緩衝液中で洗浄し、次いでSony SH800 FACSソーター(San Jose、CA)で分析した。FlowJo(San Jose、CA)を使用して、後続の分析を行った。提示されるデータは、HA-タグ蛍光またはα-ブンガロトキシン染色に対して陽性の細胞の割合、および配列番号 33のアミノ酸配列を含む親キメラ受容体の蛍光強度の中央値に正規化されている。表1を参照されたい。
【0276】
図5および表1は、配列番号33のアミノ酸配列を発現する対照細胞に対して正規化した、操作された受容体を発現するHAタグ陽性細胞の割合(「平均HAタグ%」)、および配列番号33のアミノ酸配列を発現する対照細胞に対して正規化した、操作された受容体を発現するα-ブンガロトキシン陽性細胞の割合(「正規化AB %」)を示す。
【0277】
図5および表15はまた、抗HA抗体(「平均HA MFI」)またはAlexa Fluor 647にコンジュゲートされた蛍光標識されたα-ブンガロトキシン(「正規化AB MFI」)を使用して評価した、配列番号33のアミノ酸配列を発現する対照細胞に対して正規化した、操作された受容体を発現する細胞の蛍光強度中央値(MFI)を示す。異なる点変異は、フローサイトメトリーによるHAおよびアルファ-ブンガロトキシンの両方の検出に影響を与える可能性がある。
【表24】
【0278】
結果は、本明細書に開示される操作された受容体の変異が、細胞表面への局在化に影響を及ぼすことを示す。いくつかの二重変異体の局在は親キメラ(配列番号33)の局在と同等であるが、その他は親キメラ(配列番号33)と比較して細胞表面局在を減少させた。例えば、L131T、S172D変異を有する操作された受容体は、HAタグによって評価されるように、親キメラと同程度の局在性を示す。さらに、Y115D、L131E変異を有する操作された受容体は、両方の手法、すなわち、HAタグおよびα-ブンガロトキシンによって評価されるように、親キメラと同程度の局在性を示す。
【0279】
実施例6:CR-11操作された受容体の特性評価
ハイスループット電気生理学プラットフォームにより、配列番号33のY115DおよびL131Qのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む操作された受容体のアセチルコリンに対する効力は、野生型受容体と比較して500倍超低下し、RG-3487に対するその効力は10倍超増加することを示した。
【0280】
全細胞手動パッチクランプ電気生理学を使用して、HEK293細胞および培養ラット背根神経節(DRG)感覚ニューロンの両方で、配列番号33のY115DおよびL131Qのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む操作された受容体が、野生型nAchRα7受容体と比較して、アセチルコリンに対して本質的に非感受性であるが、RG-3487に対してはるかに感受性が高いことを確認した。図2を参照のこと。
【0281】
HEK293細胞では、配列番号33のY115DおよびL131Qのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む操作された受容体のAChに対するEC50は、最大100mMのAch濃度でさえも、ほとんど電流を生成できなかったため、決定できなかった。対照的に、野生型nAchRα7受容体のAChに対するEC50は、42.4μMである(図2A)。ハイスループットデータをさらに確認すると、手動パッチクランプ電気生理学結果は、配列番号33のY115DおよびL131Qのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む操作された受容体が、野生型nAchα7受容体(EC50=2.9μM)と比較して、RG-3487(SA-2)(EC50=0.3μMの場合)に対してより感受性が高いことも示している(図2B)。
【0282】
配列番号33のY115DおよびL131Qのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む操作された受容体を発現する培養された成体ラットDRGニューロンでは、RG-3487(SA-2)の適用により、用量依存的に塩化物電流が発生したが(図3)、非形質導入細胞ではこのような電流は観察されない。
【0283】
さらに、形質導入されたラットDRGニューロンにおいて、配列番号33のY115DおよびL131Qのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む操作された受容体を、RG-3487(SA-2)で、3μMの濃度で活性化すると、電流注入によって誘発される活動電位を可逆的に阻害し(図4A)、活性電位の誘発に必要な電流を約3倍増加させた(n=7)。3.0mMのアセチルコリンは、形質導入されたニューロンにおける誘発された活動電位に影響を及ぼさなかった(n=4)(図4B)。これらの結果は、DRGニューロンにおける配列番号33のY115DおよびL131Qのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む操作された受容体の発現が、誘発された活動電位を阻害することができることを示す。
【0284】
実施例7.IPSC由来ニューロンにおける操作された受容体の特性評価(予測的)
IPSC由来のAβニューロンを生成するための分化プロトコルが開発されている。以下のマーカーは、Aβニューロンとして細胞を定義するために使用される。有髄一次求心性ニューロンを描写する神経フィラメント200(NF200)の発現(Basbaum et al,2009)、低閾値機械的受容器感覚ニューロン(LTMR)のマーカーであるピエゾ2(Ranade et al.,2014)、およびAβ線維もマークすると報告されているトール様受容体であるTLR5(Xu et al.,2015)。特性評価にはまた、多くのCおよびAβ線維で発現する侵害受容器特異的マーカーTrpV1(Caterina et al.,1997)、非ペプチド作動性の無髄求心性神経を描写する前立腺酸性ホスファターゼ(Zylka et al.,2009)、およびAβ侵害受容ニューロンのマーカーであるNaV1.1の不在に関する評価も含まれる。上記の基準を満たすIPSC由来ニューロンは、c-RetおよびMafA/C-Mafの発現に基づいて急速に適応するLTMR、またはc-Ret発現の非存在下で、TrkBおよびShox2の発現に基づいて徐々に適応するLTMRのいずれかとしてさらに特徴付けられるであろう(Koch et al.,2018)。
【0285】
(1)Aβニューロンの上記発現マーカー基準を満たす細胞が、非侵害受容性感覚ニューロンに特徴的な電気生理学的特性を有することを確認する。これらの特性には、リガンドに応答して電流を生成すること、および直流注入が活動電位を誘発することが含まれる。
【0286】
(2)選択的な化学発生受容体(操作された受容体)で形質導入されたニューロン内の塩化物電流の存在を確認する。細胞を、IRES GFPを有するHAタグ付き化学発生受容体をコードするレンチウイルスベクターで形質導入し、GFP蛍光を介して形質導入細胞を特定する。合成アゴニストに応答する塩化物電流は、内外の流体陽イオンとしてNMGD+を用いた電圧クランプモードで検出される。NMDG+は陽イオンチャネルに対して不浸透性であるため、その含有が、研究された合成アゴニストに応答して任意の内因性nAchRα7陽イオン電流を除去する。次いで、化学発生受容体-合成アゴニスト対のEC50を決定する。記録後、受容体の発現および細胞表面局在化を、HAタグに向けられた抗体を使用して、透過化および非透過化細胞における蛍光顕微鏡によって評価する。
【0287】
(3)電流注入誘発活動電位を阻害する能力を評価する。細胞を、IRES GFPを有するHAタグ付き化学発生受容体をコードするレンチウイルスベクターで形質導入し、GFP蛍光を介して形質導入細胞を特定する。電流クランプモードでは、細胞膜が脱分極するまで電流を印加し続けることによって、合成アゴニストの存在下および非存在下での基電流が決定される。結果は、GFPのみで形質導入される細胞と比較される。
【0288】
(4)入力抵抗への影響を評価する。細胞を、IRES GFPを有するHAタグ付き化学発生受容体をコードするレンチウイルスベクターで形質導入し、GFP蛍光を介して細胞を特定する。電流クランプモードでは、入力抵抗を計算するために、サブ閾値電流が注入され、膜電圧の変化が決定される。結果は、GFPのみで形質導入される細胞と比較される。
【0289】
(5)合成アゴニストの存在下および非存在下での静止膜電位への影響を評価する。細胞を、IRES GFPを有するHAタグ付き化学発生受容体をコードするレンチウイルスベクターで形質導入し、GFP蛍光を介して形質導入細胞を特定する。電圧クランプモードでは、静止膜電位は、合成アゴニストの存在下および非存在下で決定される。結果は、GFPのみで形質導入される細胞と比較される。
【0290】
IPSC由来のAβニューロンにおける上記の電気生理学的特性を、IPSC由来のC線維ニューロンならびに成体ラットDRGニューロンにおける電気生理学的特性と比較する。さらに、損傷を受けたAβ線維求心性神経の生化学的変化が、神経障害状態の自発的疼痛に寄与する可能性があるため、インビトロでの損傷後にIPSC由来のAβニューロンの電気生理学的特性が調査される。インビトロで損傷を生じさせるために、培養でプロセスを延長した後、細胞を採取し、再播種する。再播種プロセスは、軸索損傷を模倣して、プロセスを切断する。損傷後の様々な時点で、細胞は、自発的活動電位の生成、静止膜電位の変化、および基電流の変化を含む様々な電気生理学的特性について評価される。化学発生受容体の効果は、損傷状態でも評価される。
【0291】
実施例8.動物モデルにおける疾患を治療するための操作された受容体の有効性の評価
本明細書に開示される操作された受容体は、小分子リガンドの投与後の神経障害性疼痛のラットモデルにおいて、鎮痛を提供する能力について評価される。野生型のα7-nAChR、または本明細書に開示される操作されたキメラ受容体のいずれかをコードするポリヌクレオチドに連結されたヒトシナプシン-1(hSYN)プロモーターを含有するAAV発現カセットは、標準的な分子生物学技術を使用して構築される。
【0292】
これらのAAV発現カセットは、AAVバクミドにサブクローニングし、精製し、Sf9昆虫細胞にトランスフェクトして、組換えバキュロウイルスを産生し、次いで増幅する。Sf9細胞は、野生型のα7-nAChR、または上述の操作されたキメラ受容体カセットのいずれか一つを含む増幅された組換えバキュロウイルス、ならびにRepおよびAAV6(Y705+731F+T492V)キャップ遺伝子を含有する別の組換えバキュロウイルスで二重感染させ、組換えAAVベクターを産生する。ウイルスベクターを精製し、qPCRを使用してウイルス力価を決定し、SDS-PAGEを使用してAAVベクターの純度を検証する。
【0293】
行動実験および疼痛モデル:神経障害性疼痛状態を模倣するモデルにおいて機械的過敏症を引き起こすために、神経部分損傷(SNI)モデル(機械的異痛症の検証モデル)が使用される(Shields et al.,2003,The Journal of Pain,4,465-470)。このモデルは、総腓骨神経および腓腹神経の切断、ならびに脛骨分岐の分離によって作製される。機械的離脱閾値は、高いワイヤメッシュグリッド上にラットを置き、後肢の足底表面をフォンフレイフィラメントで刺激することによって評価される。
【0294】
ラットの脊髄へのAAV注射:背側半側椎弓切除術は、腰髄の二つのセグメント(約1.5~2mm)を露出させるために、腰膨大のレベルで行われ、その後硬膜を切開して反射させる。ウイルス溶液を、(鉱油で予め充填された)ガラスマイクロピペットに装填する。マイクロピペットは、定位装置に取り付けられた手動マイクロ注入器に接続される。ウイルス溶液は、背角(左側)を標的とする。露出領域内の吻側-尾側軸に沿って、それぞれ240nlの6回の注入を等距離線直線的に実施する。各注入後、1分間の休息時間が観察され、次いで筋層が縫合され、皮膚をステープルで閉じ、動物は、加熱パッドで回復させてから自宅のケージに戻した。動物は、最後の行動試験後に、組織学的分析のために灌流される。
【0295】
ラットの背根神経節(DRG)へのAAVの神経節内注射:注入は、マイクロインジェクションポンプに取り付けられたシリンジにポリエチレン管(内径/外径0.4/0.8mm)によって取り付けられた、微細な先端まで引き込まれたホウケイ酸ガラスキャピラリー(内径/外径0.78/1mm)を用いて行われる。針は、外側に振られた定位固定フレームの延長アーム上に取り付けられる(針を保持し、操作するためにのみ使用される)。チュービング、シリンジ、および針はすべて水で満たされている。1マイクロリットルの空気を針に取り込み、その後、3μLのウイルスベクター溶液を取り込む。注射ごとに、この容量で別々に針を充填する。動物は、手術前に麻酔される。背側正中線に沿った切開の後、L4およびL5 DRGは、椎骨の外側突起の除去によって露出される。DRGの上に横たわる神経上膜が開かれ、ガラス針が、露出した神経節の表面から400μmの深さまで神経節に挿入される。ガラスキャピラリー先端の周りの組織の封着を可能にするために3分間遅滞させた後、1.1μLのウイルス溶液を0.2μL/分の速度で注入した。さらに2分間遅滞させた後、針が除去される。L4神経節を最初に注射し、続いてL5神経節を注射する。脊髄を覆う筋肉を5-0縫合糸で緩く縫合し、創傷を閉鎖する。動物は、37℃で回復させ、術後鎮痛剤を受ける。
【0296】
ラットにおけるAAV髄腔内注射:ラットを最初に麻酔し、その後、頭を定位フレームに固定して垂直に配置する。首の付け根に切開を行い、項部稜の溝を露出させる。脳脊髄液が漏出する深さまで、槽膜に切開(1~2mm)を行う。次いで、4cmの32G髄腔内カテーテルを腰髄の方向にゆっくりと挿入し、カテーテルの周りの縫合により皮膚を閉じる。次いで、ラットを回復させる。次いで、ラットを麻酔し、ベクター(6μL)を投与する。カテーテルを6μLのPBSでフラッシュし、次いで除去し、ラットを回復させる。
【0297】
投与の効果:このSNIモデルは、ラットの総腓骨神経と腓腹神経の切断、および脛骨分枝の分離によって作製される。Chaplan & Yakshのアップダウン法を使用して、AAV.hSYN-α7-nAChR/GlyRα1を脊髄、DRG、または髄腔内空間へ注入する前に機械的閾値を決定する。片側ベクター注射の3週間後、動物を再び試験し、その機械的離脱閾値が変わらないことを確認する。運動協調性も、最高速度33rpmの加速ロータロッド(Stoelting、USA)を使用して、注入の前後に試験される。ラットがロータロッドに費やした時間を記録し、300秒でカットオフする。各ラットは、三回の訓練試験を経て、二時間後に試験される。
【0298】
その後、各キメラコホートのラットの半分に、AZD-0328またはファシニクリンの単回IP注射を投与し、IP注射の1、2、5、7、および13日後に、アップダウン法を用いて機械的閾値を試験した。三日目に、閾値が損傷後のベースラインに戻った時、AZD-0328を再びIP注射し、再び、損傷のないベースライン閾値への回復が観察される。これらの動物を48時間追跡する。次いで、動物を組織学のために灌流する。
【0299】
実施例9:慢性疼痛を患う患者の治療
非限定的な例では、慢性神経根性疼痛を患う患者は、本明細書に開示される組成物および方法を使用して治療される。患者は、一日目に、一つまたは複数の背根神経節に直接送達される(すなわち、腰部、頸部、または胸部DRGへの神経節内対流増加送達)、1.0mLの容積の本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結されたAAV.hSYNの1013ベクターゲノムで治療される。この実施例では、AAVベクターは、選択的ニューロン発現のためのヒトシナプシン-1(SYN1)プロモーターの制御下で、本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードする。注射の二週間後、患者は、AZD-0328または別の非天然リガンドの処方のためにクリニックに戻る。患者は、必要に応じて(すなわち、疼痛エピソードの間)、0.1mg/kgのAZD-0328または別の非天然リガンドを経口的に自己投与する。
【0300】
実施例10.慢性疼痛を患う患者の治療
非限定的な例では、慢性頭蓋顔面痛(例えば、三叉神経痛または顎関節機能障害)を患う患者は、本明細書に開示される組成物および方法を使用して治療される。患者は、一日目に、三叉神経節に直接送達される(すなわち、神経節内対流増加送達)、0.150mLの容積の本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結されたAAV.hSYNの1013ベクターゲノムで治療される。この実施例では、AAVベクターは、選択的ニューロン発現のためのヒトシナプシン-1(SYN1)プロモーターの制御下で、本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードする。注射の二週間後、患者は、AZD-0328または別の非天然リガンドの処方のためにクリニックに戻る。患者は、必要に応じて(すなわち、疼痛エピソードの間)、0.1mg/kgのAZD-0328または別の非天然リガンドを経口的に自己投与する。
【0301】
実施例11.肥満を患う患者の治療
非限定的な例では、肥満を患う患者は、本明細書に開示される組成物および方法を使用して治療される。患者は、一日目にAAVの1013のベクターゲノムで治療される。グレリンは、迷走神経の胃枝(すなわち、神経内)に直接送達される1.0mLの容積の本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結する。この実施例では、AAVベクターは、選択的ニューロン発現のためのヒトグレリンプロモーターの制御下で、操作された受容体をコードする。注射の二週間後、患者は、AZD-0328または別の非天然リガンドの処方のためにクリニックに戻る。患者は、過剰な体重減少のため(すなわち、食欲抑制のため)に、0.1mg/kgのAZD-0328または別の非天然リガンドを毎日経口的に自己投与する。
【0302】
実施例12.肥満を患う患者の治療
非限定的な例では、肥満を患う患者は、本明細書に開示される組成物および方法を使用して治療される。患者は、一日目に、膵臓を神経支配する背根神経節(すなわち、神経節内)に直接送達される、1.0mLの容積の本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結されたAAV-TRPV1の1013ベクターゲノムで治療される。この実施例では、AAVベクターは、侵害受容器における選択的ニューロン発現のためのヒトTRPV1プロモーターの制御下で、操作された受容体をコードする。注射の二週間後、患者は、AZD-0328または別の非天然リガンドの処方のためにクリニックに戻る。患者は、過剰な体重減少のために、0.1mg/kgのAZD-0328または別の非天然リガンドを毎日経口的に自己投与する。
【0303】
実施例13.肥満を患う患者の治療
非限定的な例では、肥満を患う患者は、本明細書に開示される組成物および方法を使用して治療される。患者は、一日目に、視床下部の室傍核(PVH)に直接送達される(すなわち、頭蓋内対流増加送達)、1.0mLの容積の本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結されたAAV-SIM1の1013ベクターゲノムで治療される。この実施例では、AAVベクターは、プロオピオメラノコルチン(POMC)ニューロンにおける選択的ニューロン発現、および最終的には食欲抑制経路の刺激のためのヒトシングルマインドファミリーBHLH転写因子1(SIM1)プロモーターの制御下で操作されたチャネルをコードする。注射の二週間後、患者は、AZD-0328または別の非天然リガンドの処方のためにクリニックに戻る。患者は、過剰な体重減少のため(すなわち、食欲抑制のため)に、0.15mg/kgのAZD-0328または別の非天然リガンドを毎日経口的に自己投与する。
【0304】
実施例14.PTSDを患う患者の治療
非限定的な例では、外傷後ストレス障害(PTSD)を患う患者は、本明細書に開示される組成物および方法を使用して治療される。患者は、一日目に、C6星状神経節(すなわち、神経節内)に直接送達される、1.0mLの容積の本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結されたAAV-hSYN1の1013ベクターゲノムで治療される。この実施例では、AAVベクターは、選択的ニューロン発現のためのヒトシナプシン-1(hSYN1)プロモーターの制御下で、操作された受容体をコードする。注射の二週間後、患者は、AZD-0328または別の非天然リガンドの処方のためにクリニックに戻る。患者は、PTSD症状(すなわち、不安)のために、0.15mg/kgのAZD-0328または別の非天然リガンドを毎日経口的に自己投与する。
【0305】
実施例15.うつ病を患う患者の治療
非限定的な例では、治療抵抗性うつ病(TRD)を患う患者は、本明細書に開示される組成物および方法を使用して治療される。患者は、一日目に、迷走神経(すなわち、神経内)に直接送達される、1.0mLの容積の本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結されたAAV-hSYN1の1013ベクターゲノムで治療される。この実施例では、AAVベクターは、選択的ニューロン発現のためのヒトシナプシン-1(hSYN1)プロモーターの制御下で、操作された受容体をコードする。注射の二週間後、患者は、AZD-0328または別の非天然リガンドの処方のためにクリニックに戻る。患者は、うつ病症状のために、0.1mg/kgのAZD-0328または別の非天然リガンドを毎日経口的に自己投与する。
【0306】
実施例16.GERDを患う患者の治療
非限定的な例では、胃食道逆流症(GERD)を患う患者は、本明細書に開示される組成物および方法を使用して治療される。患者は、一日目に、それぞれ下食道括約筋(LES)迷走神経および腸筋神経叢(すなわち、神経内)または平滑筋(筋内)に直接送達される1.0mLの容積の本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結されたAAV-hSYN1、または本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結されたAAV-CAGの1013ベクターゲノムで治療される。この実施例では、AAVベクターは、選択的ニューロン発現のためのヒトシナプシン-1(hSYN1)プロモーターまたはLES筋細胞における発現のためのCAGプロモーターの制御下で、操作された受容体をコードする。注射の二週間後、患者は、AZD-0328または別の非天然リガンドの処方のためにクリニックに戻る。患者は、GERDの症状(すなわち、呑酸)のために、0.15mg/kgのAD-0328または別の非天然リガンドを毎日経口的に自己投与する。
【0307】
実施例17.てんかんを患う患者の治療
非限定的な例では、てんかんに関連する発作を患う患者は、本明細書に開示される組成物および方法を使用して治療される。患者は、一日目に、運動皮質などの所定の発作焦点(すなわち、頭蓋内)に直接送達される、1.0mLの容積の本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結されたAAV-CamKIIαの1013ベクターゲノムで治療される。この実施例では、AAVベクターは、興奮性ニューロンにおける選択的ニューロン発現のためのヒトカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼIIα(CamKIIα)プロモーターの制御下で、操作された受容体をコードする。注射の二週間後、患者は、AZD-0328の処方のためにクリニックに戻る。患者は、てんかん症状(すなわち発作)のために、0.1mg/kgのAZD-0328を毎日経口的に自己投与する。
【0308】
実施例18.運動障害を患う患者の治療
非限定的な例では、運動障害(例えば、パーキンソン病の振戦)を患う患者は、本明細書に開示される組成物および方法を使用して治療される。患者は、一日目に、視床下核(すなわち、頭蓋内STN)に直接送達される、1.0mLの容積の本明細書に開示される操作された受容体のいずれか一つをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結されたAAV-CamKIIαの1013ベクターゲノムで治療される。この実施例では、AAVベクターは、興奮性ニューロンにおける選択的ニューロン発現のためのヒトカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼIIα(CamKIIα)プロモーターの制御下で、操作された受容体をコードする。注射の二週間後、患者は、AZD-0328の処方のためにクリニックに戻る。患者は、運動障害の症状(すなわち振戦)のために、0.1mg/kgのAZD-0328を毎日経口的に自己投与する。
【0309】
さらなる番号付けされた実施形態
本発明のさらなる実施形態は、以下の番号付けされた実施形態に提供される。
実施形態1
操作された受容体であって、
ヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)に由来し、ヒトグリシン受容体α1サブユニットからのCys-ループドメインを含むリガンド結合ドメインと、
ヒトグリシン受容体α1サブユニットに由来するイオン孔ドメインと、を含み、
リガンド結合ドメインが、(i)L131およびS172、Y115およびS170、ならびにY115およびL131からなる群から選択される一対のアミノ酸残基に二つのアミノ酸置換、または(ii)L131Eのアミノ酸置換を含み、アミノ酸残基は、α7-nAChRのアミノ酸残基に対応し、
操作された受容体が、キメラリガンド依存性イオンチャネル(LGIC)受容体である、操作された受容体。
実施形態1.1
操作された受容体が、配列番号33のアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列が、L131およびS172、Y115およびS170、ならびにY115およびL131からなる群から選択される一対のアミノ酸残基に二つのアミノ酸置換、またはL131Eのアミノ酸置換をさらに含み、アミノ酸残基が、α7-nAChRのアミノ酸残基に対応する、実施形態1に記載の操作された受容体。
実施形態2
リガンド結合ドメインが、L131およびS172、Y115およびS170、ならびにY115およびL131からなる群から選択される一対のアミノ酸残基に二つのアミノ酸置換を含む、実施形態1または1.1に記載の操作された受容体。
実施形態3
リガンド結合ドメインが、L131SおよびS172D、L131TおよびS172D、L131DおよびS172D、Y115DおよびS170T、Y115DおよびL131Q、ならびにY115DおよびL131Eからなる群から選択される一対のアミノ酸置換を含む、実施形態1、1.1、または2のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態3.1
操作された受容体が、配列番号33のアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列が、L131SおよびS172D、L131TおよびS172D、L131DおよびS172D、Y115DおよびS170T、Y115DおよびL131Q、ならびにY115DおよびL131Eからなる群から選択される一対のアミノ酸置換をさらに含む、実施形態1~3のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態4
リガンド結合ドメインが、L131Eのアミノ酸置換を含む、実施形態1または1.1に記載の操作された受容体。
実施形態4.1
操作された受容体が、配列番号33のアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列が、L131Eのアミノ酸置換をさらに含む、請求項1~4のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態5
Cys-ループドメインが、配列番号2のアミノ酸166~172を含む、実施形態1~4.1のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態6
Cys-ループドメインが、配列番号2のアミノ酸166~180を含む、実施形態1~4.1のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態7
受容体が、ヒトグリシン受容体α1サブユニットからのβ1~2ループドメインを含む、実施形態1~6のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態8
β1~2ループドメインが、配列番号2のアミノ酸81~84を含む、実施形態7に記載の操作された受容体。
実施形態8.1
操作された受容体が、配列番号58~63からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~8のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態9
アセチルコリンに対する操作された受容体の効力が、アセチルコリンに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも低い、実施形態1~8のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態10
アセチルコリンに対する操作された受容体の効力が、アセチルコリンに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも少なくとも2倍低い、実施形態9に記載の操作された受容体。
実施形態11
非天然リガンドに対する操作された受容体の効力が、非天然リガンドに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力とほぼ同じである、実施形態1~10のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態12
非天然リガンドに対する操作された受容体の効力が、非天然リガンドに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも高い、実施形態1~11のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態13
非天然リガンドに対する操作された受容体の効力が、非天然リガンドに対するヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の効力よりも少なくとも2倍高い、実施形態12に記載の操作された受容体。
実施形態14
効力を決定することが、EC50を決定することを含む、実施形態9~13のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態15
非天然リガンドの存在下での操作された受容体の有効性が、非天然リガンドの存在下でのヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の有効性よりも高い、実施形態1~14のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態16
非天然リガンドの存在下での操作された受容体の有効性が、非天然リガンドの存在下でのヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7-nAChR)の有効性よりも少なくとも2倍高い、実施形態1~15のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態17
有効性を決定することが、非天然リガンドの存在下でインビトロで操作された受容体を通過する電流の量を決定することを含む、実施形態15~16のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態18
非天然リガンドが、AZD-0328、TC-6987、ABT-126、APN-1125、TC-5619、およびファシニクリン/RG3487からなる群から選択される、実施形態11~17のいずれか一つに記載の操作された受容体。
実施形態19
非天然リガンドが、ABT-126、RG3487、およびAPN-1125からなる群から選択される、実施形態18に記載の操作された受容体。
実施形態20
非天然リガンドがTC-5619である、実施形態18に記載の操作された受容体。
実施形態21
実施形態1~20のいずれか一つの操作された受容体をコードする核酸を含む、ポリヌクレオチド。
実施形態22
ポリヌクレオチドが、操作された受容体をコードする核酸に動作可能に連結されたプロモーターを含む、実施形態21に記載のポリヌクレオチド。
実施形態23
プロモーターが、調節可能なプロモーターである、実施形態22に記載のポリヌクレオチド。
実施形態24
調節可能なプロモーターが、興奮性細胞中で活性である、実施形態23に記載のポリヌクレオチド。
実施形態25
興奮性細胞が、ニューロンまたは筋細胞である、実施形態24に記載のポリヌクレオチド。
実施形態26
興奮性細胞が、ニューロンである、実施形態25に記載のポリヌクレオチド。
実施形態27
実施形態21~26のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
実施形態28
ベクターがプラスミド、またはウイルスベクターである、実施形態27に記載のベクター。
実施形態29
ベクターが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、および単純ヘルペスウイルスベクター1(HSV-1)からなる群から選択されるウイルスベクターである、実施形態28に記載のベクター。
実施形態30
ウイルスベクターが、AVVベクターであり、AAVベクターが、AAV5もしくはそのバリアント、AAV6もしくはそのバリアント、またはAAV9もしくはそのバリアントである、実施形態29に記載のベクター。
実施形態31
実施形態1~20のいずれか一つに記載の操作された受容体、実施形態21~26のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド、または実施形態27~30のいずれか一つに記載のベクターを含む、組成物。
実施形態32
実施形態1~20のいずれか一つに記載の操作された受容体、実施形態21~26のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド、または実施形態27~30のいずれか一つに記載のベクター、および薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
実施形態33
ニューロンにおいて操作された受容体を作製する方法であって、ニューロンを、実施形態21~26のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド、実施形態27~30のいずれか一つに記載のベクター、実施形態31に記載の組成物、または実施形態32に記載の医薬組成物と接触させることを含む、方法。
実施形態34
ニューロンが、末梢神経系のニューロンである、実施形態33に記載の方法または実施形態26に記載のポリヌクレオチド。
実施形態35
ニューロンが、中枢神経系のニューロンである、実施形態33もしくは34に記載の方法または実施形態26に記載のポリヌクレオチド。
実施形態36
ニューロンが、侵害受容性ニューロンである、実施形態33~35のいずれか一つに記載の方法、または実施形態26に記載のポリヌクレオチド。
実施形態37
ニューロンが、非侵害受容性ニューロンである、実施形態33~36のいずれか一つに記載の方法、または実施形態26に記載のポリヌクレオチド。
実施形態38
ニューロンが、背根神経節(DRG)ニューロン、三叉神経節(TG)ニューロン、運動ニューロン、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、または感覚ニューロンである、実施形態33~37のいずれか一つに記載の方法、または実施形態26に記載のポリヌクレオチド。
実施形態39
ニューロンが、Aδ求心性線維、C線維、またはAβ求心性線維である、実施形態33~38のいずれか一つに記載の方法、または実施形態26に記載のポリヌクレオチド。
実施形態40
ニューロンが、Aδ求心性線維である、実施形態39に記載の方法、または実施形態26に記載のポリヌクレオチド。
実施形態41
Aβ求心性線維が、損傷Aβ求心性線維である、実施形態40に記載の方法、または実施形態26に記載のポリヌクレオチド。
実施形態42
Aβ求心性線維が、非損傷Aβ求心性線維である、実施形態40に記載の方法、または実施形態26に記載のポリヌクレオチド。
実施形態43
ニューロンが、神経フィラメント200(NF200)、ピエゾ2、およびTLR-5を発現する、実施形態33~42のいずれか一つに記載の方法、または実施形態26に記載のポリヌクレオチド。
実施形態44
ニューロンが、TrpV1、前立腺酸性ホスファターゼ、NaV1.1を発現しない、実施形態33~43のいずれか一つに記載の方法、または実施形態26に記載のポリヌクレオチド。
実施形態45
接触工程が、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで実施される、実施形態33~44のいずれか一つに記載の方法。
実施形態46
接触工程が、対象においてインビボで実施される、実施形態45に記載の方法。
実施形態47
接触工程が、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物を対象に投与することを含む、実施形態46に記載の方法。
実施形態48
接触工程が、インビトロまたはエクスビボで実施される、実施形態45に記載の方法。
実施形態49
接触工程が、リポフェクション、ナノ粒子送達、粒子衝撃、電気穿孔、超音波処理、またはマイクロインジェクションを含む、実施形態48に記載の方法。
実施形態50
操作された受容体が、ニューロンの細胞表面に局在化することができる、実施形態33~49のいずれか一つに記載の方法。
実施形態51
(a)ニューロンを実施形態1~20のいずれか一つに記載の操作された受容体、実施形態21~26のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド、実施形態27~30のいずれか一つに記載のベクター、実施形態31に記載の組成物、または実施形態32に記載の医薬組成物と接触させることと、(b)ニューロンを操作された受容体の非天然リガンドと接触させることと、を含む、ニューロンの活性を阻害する方法。
実施形態51.1
ニューロンが、末梢神経系のニューロンである、実施形態51に記載の方法。
実施形態51.2
ニューロンが、中枢神経系のニューロンである、実施形態51に記載の方法。
実施形態52
ニューロンが、侵害受容性ニューロンである、実施形態51~51
2のいずれかに記載の方法。
実施形態53
ニューロンが、非侵害受容性ニューロンである、実施形態51~51
2のいずれかに記載の方法。
実施形態54
ニューロンが、背根神経節(DRG)ニューロン、三叉神経節(TG)ニューロン、運動ニューロン、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、または感覚ニューロンである、実施形態51~53のいずれか一つに記載の方法。
実施形態55
ニューロンが、Aδ求心性線維、C線維、またはAβ求心性線維である、実施形態51~54のいずれか一つに記載の方法。
実施形態56
ニューロンが、Aδ求心性線維である、実施形態55に記載の方法。
実施形態57
Aβ求心性線維が、損傷Aβ求心性線維である、実施形態56に記載の方法。
実施形態58
Aβ求心性線維が、非損傷Aβ求心性線維である、実施形態56に記載の方法。
実施形態59
ニューロンが、神経フィラメント200(NF200)、ピエゾ2、およびTLR-5を発現する、実施形態51~58のいずれか一つに記載の方法。
実施形態60
ニューロンが、TrpV1、前立腺酸性ホスファターゼ、NaV1
1を発現しない、実施形態51~59のいずれか一つに記載の方法。
実施形態61
接触工程(a)が、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで実施される、実施形態51~60のいずれか一つに記載の方法。
実施形態62
接触工程(b)が、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで実施される、実施形態51~61のいずれか一つに記載の方法。
実施形態63
接触工程(a)および/または(b)が、対象においてインビボで実施される、実施形態51~62のいずれか一つに記載の方法。
実施形態64
接触工程(a)が、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、または医薬組成物を対象に投与することを含み、および/または接触工程(b)が、非天然リガンドを対象に投与することを含む、実施形態63に記載の方法。
実施形態65
接触工程(a)および/または(b)が、リポフェクション、ナノ粒子送達、粒子衝撃、電気穿孔、超音波処理、またはマイクロインジェクションを含む、実施形態51~64のいずれか一つに記載の方法。
実施形態66
操作された受容体が、ニューロンの細胞表面に局在化することができる、実施形態51~65のいずれか一つに記載の方法。
実施形態67
それを必要とする対象における神経学的障害の発症を治療および/または遅延する方法であって、
対象に、治療有効量の実施形態1~20のいずれか一つに記載の操作された受容体、実施形態21~26のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド、実施形態27~30のいずれか一つに記載のベクター、実施形態31に記載の組成物、または実施形態32に記載の医薬組成物を投与することと、
操作された受容体の非天然リガンドを対象に投与することと、を含む、方法。
実施形態68
対象が、工程(a)の後に非天然リガンドを投与される、実施形態67に記載の方法。
実施形態69
対象が、工程(a)と同時に非天然リガンドを投与される、実施形態67に記載の方法。
実施形態70
神経学的障害が、発作障害、運動障害、摂食障害、脊髄損傷、神経因性膀胱、異痛症、痙縮性障害、そう痒症、アルツハイマー病、パーキンソン病、外傷後ストレス障害(PTSD)、胃食道逆流症(GERD)、依存症、不安症、うつ病、記憶損失、認知症、睡眠時無呼吸、脳卒中、ナルコレプシー、尿失禁、本態性振戦、三叉神経痛、口腔灼熱症候群、または心房細動である、実施形態67~69のいずれか一つに記載の方法。
実施形態71
神経学的障害が、異痛症である、実施形態70に記載の方法。
実施形態72
非天然リガンドが、AZD-0328、ABT-126、TC6987、APN-1125、TC-5619、およびファシニクリン/RG3487からなる群から選択される、実施形態67~71のいずれか一つに記載の方法。
実施形態73
非天然リガンドが、経口、皮下、局所的、または静脈内に投与される、実施形態67~72のいずれか一つに記載の方法。
実施形態74
非天然リガンドが経口投与される、実施形態73に記載の方法。
実施形態75
操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物が、皮下、経口、髄腔内、局所的、静脈内、神経節内、神経内、頭蓋内、脊髄内、または大槽に投与される、実施形態67~74のいずれか一つに記載の方法。
実施形態76
操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物が、経椎間孔注射によって、または髄腔内に投与される、実施形態67~75のいずれか一つに記載の方法。
実施形態77
対象が三叉神経痛を患い、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物が、対象の三叉神経節(TG)に投与される、実施形態67~76のいずれか一つに記載の方法。
実施形態78
対象が神経障害性疼痛を患い、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物が、対象の背根神経節(DRG)に投与される、実施形態67~76のいずれか一つに記載の方法。
実施形態79
対象がヒトである、実施形態67~78のいずれか一つに記載の方法。
実施形態80
治療有効量が、神経学的障害の徴候および/または症状の重症度を軽減させる、実施形態67~79のいずれか一つに記載の方法。
実施形態81
治療有効量が、神経学的障害の徴候および/または症状の発症を遅延させる、実施形態67~80のいずれか一つに記載の方法。
実施形態82
治療有効量が、神経学的障害の徴候および/または症状を除去する、実施形態67~81のいずれか一つに記載の方法。
実施形態83
神経学的障害の徴候が、神経損傷、神経萎縮、および/または発作である、実施形態80~82のいずれか一つに記載の方法。
実施形態84
神経損傷が、末梢神経損傷である、実施形態83に記載の方法。
実施形態85
神経学的障害の症状が、疼痛である、実施形態80~84のいずれか一つに記載の方法。
実施形態86
それを必要とする対象における疼痛の発症を治療および/または遅延させる方法であって、
対象に、治療有効量の実施形態1~20のいずれか一つに記載の操作された受容体、実施形態21~26のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド、実施形態27~30のいずれか一つに記載のベクター、実施形態31に記載の組成物、または実施形態32に記載の医薬組成物を投与することと、
操作された受容体の非天然リガンドを対象に投与することと、を含む、方法。
実施形態87
対象が、工程(a)の後に非天然リガンドを投与される、実施形態86に記載の方法。
実施形態88
対象が、工程(a)と同時に非天然リガンドを投与される、実施形態86に記載の方法。
実施形態89
非天然リガンドが、AZD-0328、ABT-126、TC6987、APN-1125、TC-5619、およびファシニクリン/RG3487からなる群から選択される、実施形態86~88のいずれか一つに記載の方法。
実施形態90
非天然リガンドが、経口、皮下、局所的、または静脈内に投与される、実施形態86~89のいずれか一つに記載の方法。
実施形態91
非天然リガンドが経口投与される、実施形態90に記載の方法。
実施形態92
操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物が、皮下、経口、髄腔内、局所的、静脈内、神経節内、神経内、頭蓋内、脊髄内、または大槽に投与される、実施形態86~91のいずれか一つに記載の方法。
実施形態93
操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物が、経椎間孔注射によって、または髄腔内に投与される、実施形態86~92のいずれか一つに記載の方法。
実施形態94
対象が三叉神経痛を患い、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物が、対象の三叉神経節(TG)に投与される、実施形態86~93のいずれか一つに記載の方法。
実施形態95
対象が神経障害性疼痛を患い、操作された受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、または医薬組成物が、対象の背根神経節(DRG)に投与される、実施形態86~94のいずれか一つに記載の方法。
実施形態96
対象がヒトである、実施形態86~95のいずれか一つに記載の方法。
実施形態97
疼痛が、神経障害性疼痛である、実施形態85~96のいずれか一つに記載の方法。
実施形態98
疼痛が、化学療法に関連する、化学療法によって引き起こされる、または化学療法から生じる、実施形態85~97のいずれか一つに記載の方法。
実施形態99
疼痛が、外傷に関連する、外傷によって引き起こされる、または外傷から生じる、実施形態85~98のいずれか一つに記載の方法。
実施形態100
対象が異痛症を患う、実施形態85~99のいずれかに記載の方法。
実施形態101
疼痛が、医療処置後に現れる、実施形態85~100のいずれか一つに記載の方法。
実施形態102
疼痛が、出産もしくは帝王切開に関連する、出産もしくは帝王切開によって引き起こされる、または出産もしくは帝王切開から生じる、実施形態85~101のいずれか一つに記載の方法。
実施形態103
疼痛が、偏頭痛に関連する、偏頭痛によって引き起こされる、または偏頭痛から生じる、実施形態85~102のいずれか一つに記載の方法。
実施形態104
治療有効量は、対象の疼痛を一過性に軽減し、対象の疼痛を永久に軽減し、対象の疼痛の発症を予防し、および/または対象の疼痛を除去する、実施形態85~103のいずれか一つに記載の方法。
実施形態105
工程(a)および(b)が、対象の疼痛が現れる前に実施される、実施形態85~104のいずれか一つに記載の方法。
【0310】
前述は、本開示の原理を単に例示するに過ぎない。当然のことながら、当業者は、本明細書に明示的に説明または示されていないが、本開示の原理を具体化し、その精神および範囲内に含まれる様々な配置を考案することができる。さらに、本明細書に列挙されるすべての実施例および条件付き文言は、主に、本開示の原理および発明者によって当技術分野を促進するために貢献された概念を理解する際に、読者を助けることを意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。さらに、本開示の原理、態様、および実施形態ならびにその具体的な実施例を列挙する本明細書のすべての記述は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することが意図されている。さらに、かかる等価物は、現在公知の等価物および将来開発される等価物の両方、すなわち、構造に関係なく、同じ機能を実行するように開発される任意の要素を含むことが意図される。したがって、本開示の範囲は、本明細書に示され、説明される例示的な実施形態に限定されることを意図していない。むしろ、本開示の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。
図1A-B】
図1C-D】
図1E-F】
図1G
図2
図3
図4A
図4B
図5
【配列表】
2022545226000001.app
【国際調査報告】