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特表2022-545248化学的に相溶化したフルオロポリマーブレンド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(54)【発明の名称】化学的に相溶化したフルオロポリマーブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20221019BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20221019BHJP
   C08K 5/353 20060101ALI20221019BHJP
   C08K 11/00 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
C08L27/12
C08L79/08 B
C08L79/08 C
C08K5/353
C08K11/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511123
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2020032691
(87)【国際公開番号】W WO2021039997
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/893,991
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510222590
【氏名又は名称】ダイキン アメリカ インコーポレイティッド
【氏名又は名称原語表記】DAIKIN AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】20 Olympic Drive,Orangeburg,New York 10962,U.S.A
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】マーティン, アーサー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, ダカライ カメロン
(72)【発明者】
【氏名】プタック, カイル アール.
(72)【発明者】
【氏名】マーティン, ヘイリー ジル
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD121
4J002BD141
4J002BD151
4J002BD161
4J002CM042
4J002EN066
4J002EU226
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】化学的に相溶化したフルオロポリマーブレンドの提供。
【解決手段】フルオロポリマー及び非全フッ素化ポリマーを含むポリマーブレンドを提供する。上記ポリマーブレンドは、相溶化剤を更に含んでいてもよい。上記ブレンドから形成されたポリマーアロイは、機械的強度が向上している。上記ポリマーアロイを用いて、バッグ、フィルム、容器、フィラメント、食品容器、塗膜(ワイヤ用の塗膜又は外装等)、静電粉体塗装用の粉末、分散用の粉末等の各種押出品、圧縮成形部品、及び各種射出成形部品を形成できる。
【選択図】図1-1及び図1-2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フルオロポリマー、
(b)相溶化剤、及び
(c)ポリエーテルイミド(PEI)又はポリイミド(PI)
を含むポリマーアロイ組成物。
【請求項2】
前記フルオロポリマーはパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)である、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項3】
前記相溶化剤は反応性ポリマー相溶化剤である、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項4】
前記相溶化剤はビス(オキサゾリン)化合物である、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項5】
前記相溶化剤は、反応性ポリマー相溶化剤及びビス(オキサゾリン)化合物を含む、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項6】
前記相溶化剤は1,4-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼンである、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項7】
前記ポリイミドは溶融加工性熱可塑性ポリイミド(TPI)である、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項8】
ナノ粒子を更に含む、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項9】
約70~85%のPFA、約5~20%の反応性ポリマー相溶化剤、及び約5~20%のPEI又はPIを含む、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項10】
約70~80%のPFA、約10~20%の反応性ポリマー相溶化剤、約10~15%のPIを含み、約0.1~0.3%のビス(オキサゾリン)及び約0.1~0.4%のナノ粒子を更に含む、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項11】
前記反応性ポリマー相溶化剤は、せん断PFA、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-オキシジアニリン、及びPEI-アミンを含む、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項12】
前記反応性ポリマー相溶化剤は、約75~85%のせん断PFA、約2.5~3.5%の4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1.2~1.7%の4,4’-オキシジアニリン、及び10~15%のPEI-アミンを含む、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項13】
前記ポリマーアロイ組成物は、最大引張強度が約20~35MPaである、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項14】
前記ポリマーアロイ組成物は、約100℃におけるZ方向の熱膨張率が約115~145(μm/m-C)である、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項15】
前記ポリマーアロイ組成物は、約150℃におけるZ方向の熱膨張率が約150(μm/m-C)未満である、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項16】
前記ポリマーアロイ組成物は、約100℃における貯蔵弾性率が約200~350MPaである、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項17】
前記ポリマーアロイ組成物は、約150℃における貯蔵弾性率が約150~250MPaである、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項18】
(a)フルオロポリマー、及び
(b)反応性ポリマー相溶化剤
を含むポリマーアロイ組成物であって、
前記反応性ポリマー相溶化剤は、約1~5%のジアミン、約10~15%のPEI-アミン、及び約1~10%の二無水物を含む、
ポリマーアロイ組成物。
【請求項19】
官能基化フルオロポリマー、多官能アミン、及び多官能無水物をブレンドして、反応性ポリマー相溶化剤を形成する工程、及び
前記反応性ポリマー相溶化剤を、非官能基化フルオロポリマー、ポリマー、及びビス(オキサゾリン)化合物とブレンドして、熱可塑性アロイを形成する工程、
を有する、熱可塑性アロイの形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してポリマー化学に関し、具体的には、官能基化全フッ素化ポリマーと、全フッ素化していない他のポリマーとのブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素含有ポリマーは、耐熱性、難燃性、耐薬品性、耐候性、高伸び性、低摩擦性、及び低誘電性に優れる。しかしながら、フルオロポリマーは、フッ素原子を含まない他のポリマー材料との相溶性が低い。このように相溶性が低いことから、フルオロポリマーで満足のいくポリマーアロイを形成するのは困難であった。そのため、他の種類のポリマーと比較して、全フッ素化フルオロポリマーの汎用性は限定的なものであった。非フッ素化ポリマーで部分フッ素化フルオロポリマーを合成しようと試みられてきたが、非フッ素化ポリマーと混和する全フッ素化フルオロポリマーには至っていない。
【0003】
フルオロポリマーの典型的な用途としては、コンピュータネットワーク用の配線の絶縁、半導体製造装置、並びに自動車燃料ホース、自動車パワートレイン、及び内部電子機器等が挙げられる。フルオロポリマーの約85パーセントはこれらのような産業用途で使用される。残りの15パーセントは、ノンスティック加工の調理器具、耐熱皿、小型電子機器、及び耐候性・耐薬品性の布地等の民生品で使用される。フルオロポリマーは、その特徴的な性質(高強度、汎用性、耐久性、及び耐熱性等)から、コンピュータ、飛行機、及び自動車の性能及び安全性を向上させ、高層建築における火災リスクを低減させ、大気汚染、水質汚染、産業汚染、及び自動車汚染を低減させる。
【0004】
電子産業において、プリント基板(PCB)積層体の製造に使用されるポリマー材料は、その誘電率D及び損失係数Dの値で分類でき、ピラミッドの頂点にくるのは、最も低い誘電率及び損失係数を有する最高性能の材料である。PCBは、リジッドであっても、フレキシブルであっても、リジッドフレキシブルであってもよく、それぞれ熱可塑性又は熱硬化性材料で作製された1~50個以上の積層体を有していてもよい。PCB内の個々の積層体に使用される材料は、コスト、PCB内での位置、並びに機械的性質、電気的性質、及び熱的性質といった技術的特性等、各種の要因によって異なる。
【0005】
誘電率(D)が低く損失係数(D)が低いと、材料が「低損失」であると定義されることになるが、これらは、自動運転や第5世代無線通信(5G)等の各種の新興市場で使用される高速デジタル/高周波PCBにおいて重要な性質である。用途としては、特に限定されないが、車載用レーダー、5G通信装置における無線周波数部材等の電子部材、特に、いわゆるミリ波帯で作動するパワーアンプ及びアンテナ等が挙げられる。低損失(D)の熱可塑性積層体を高周波PCBで使用すると、高出力用途に対応可能となり、熱によって生じる、信号品質を低下させ得るエネルギー損失が低減される。低誘電率(D)積層体は、高速な信号伝播を可能にする点で、高速デジタルPCBにおいて特に重要である。
【0006】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、いくつかの誘電性質が最も低い熱可塑性材料であり、従って、低損失PCB積層体に好ましい材料である。しかしながら、その物性は、高性能PCB用途で使用される液晶ポリマー(LCP)及びポリイミド(PI)等の他の専門材料と比較すると劣っている。更に、表面エネルギーが低いことから、他の材料を接着させることは困難である。
【0007】
自動車産業では、ネットワークデータのトラフィックが増加し続けているため、現代のコンピュータシステムは、より高速な処理速度及びより高い帯域幅となるよう、遅れを取ることなく継続してアップデートされてきた。このように増大するデータ需要は、モータービークルで使用されるネットワークシステムにおいてますます存在感を増してきている。歴史的には、モータービークル・ネットワークシステム内でデータを転送するために、当該産業ではController Area Network(CAN Bus)等のシステムに依拠してきた。CAN Bus等のシステムやそれらを補助するケーブルはあまりに低速且つ扱いにくいものであったため、モータービークル内に配置されるライダー、レーダー、先進インフォテインメント、及びバックカメラシステム等の新たな高速ブロードバンド機器には対応できなかった。モータービークルは、走るネットワークへと急速に変化してきているので、極めて高い信頼性及び稼働時間で、速度を上げ続けて(低遅延で)、増大し続けるデータスループットを処理できる必要がある。次世代のモータービークル制御、自動運転を実現するため、イーサネット等の先進ネットワークオペレーティングシステムを展開する必要がある。イーサネットは、建築物で使用されるネットワークシステム用の一般的なオペレーションプロトコルである。イーサネットは、モータービークル産業の新たなネットワークプロトコルになろうとしている。モータービークルに高速イーサネットが配置されたら、新たな無線ネットワークと接続でき、シームレスで、信頼性が高く、低遅延の通信を自動運転等の先進用途に利用できるようになる。
【0008】
米国電気電子学会(IEEE)802.3イーサネットグループ及び米国自動車技術者協会(SAE)は、高速イーサネット・モータービークルネットワーク(フィジカル層を含む)の規格を策定した、あるいは策定中である。これらの規格によれば、自動車イーサネット・ネットワークは、高性能な1対のツイストペアケーブルで相互接続される。これは、歴史的に4対のツイストペアケーブルを使用してきた建築システムからは逸脱したものである。自動車産業では大きさ及び重量を低減する必要があることから、開発者たちは、このように特有のシングルペア設計を創出せざるを得なかった。イーサネット技術は、最終的に、1対のツイストペアケーブルを介して毎秒マルチギガビットのデータを確実に送信できるまでに進歩した。従来知られてきたイーサネットケーブルで用いられる材料でも、現代及び未来のモータービークル・コンピュータシステムにおけるデータ需要を満たすような十分なデータスループットを得られたものの、モータービークル内の環境条件に耐えることはできなかった。
【0009】
従って、当該技術では、全フッ素化ポリマーと非フッ素化ポリマーとを組み合わせたものであり、例えば、新しい種類の通信ケーブル(イーサネットケーブル等)や高速/高周波PCB積層体で使用できる、良好な物性を有するフッ素含有ポリマーアロイが依然として必要とされていた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示には、非フッ素化ポリマー又は部分フッ素化ポリマーとの混和性を付与する官能性末端基又はペンダント基を全フッ素化ポリマーに付加することで、上記した課題に対応できるフッ素化ポリマーと非フッ素化ポリマーとのブレンドが記載されている(本明細書中に開示する全ての実施形態が上記した全ての課題に対応するものではないと理解されたい)。
【0011】
いくつかの開示した実施形態は、(a)全フッ素化した部分及び第1の官能性末端基を有する官能基化全フッ素化フルオロポリマー、並びに(b)非全フッ素化部分、及び第1の官能性末端基と化学結合を形成できる第2の官能性末端基又はペンダント基を有する官能基化非全フッ素化ポリマーを含むポリマーブレンドに関する。
【0012】
いくつかの開示した実施形態は、(a)全フッ素化フルオロポリマー、(b)全フッ素化フルオロポリマーのtruncated型部分及び第1の官能性末端基を有する官能基化全フッ素化フルオロポリマー、(c)非全フッ素化ポリマー、並びに(d)非全フッ素化ポリマーのtruncated型部分及び第2の官能性末端基又はペンダント基を有する官能基化非全フッ素化ポリマーを含むポリマーブレンドであって、上記第1の官能性末端基と上記第2の官能性末端基又はペンダント基とは、反応して化学結合を形成できるポリマーブレンドに関する。
【0013】
上では、簡略化した要約を提示して、請求した主題に係るいくつかの態様の基本的な理解を示したが、この要約は十分な概要ではない。主要な又は重要な要素を特定したり、請求した主題の範囲を正確に示したりすることを意図したものではない。以下で提示するより詳細な説明の導入として、いくつかの概念を簡略化した形式で提示することが唯一の目的である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1-1】図1A及び1Bは、本開示に係るペレット状ポリマーブレンドの実施形態における表面の均一性及び平滑性を表す写真である。
図1-2】図1C及び1Dは、本開示に係るペレット状ポリマーブレンドの実施形態における表面の均一性及び平滑性を表す写真である。
図2図2A~2Dは、FEPコントロール及び本開示に係るポリマーブレンドの実施形態のペレットを表す写真である。
図3】薄膜として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態及びFEPコントロールの引張強度を表す棒グラフである。
図4】薄膜として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態及びFEPコントロールの伸び率を表す棒グラフである。
図5】薄膜として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態及びFEPコントロールのヤング率を表す棒グラフである。
図6】薄膜として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態及びFEPコントロールの誘電率を表す棒グラフである。
図7】ファーストラン中に射出成形部品として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態及びFEPコントロールの引張強度を表す棒グラフである。
図8】ファーストラン中に射出成形部品として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態及びFEPコントロールのヤング率を表す棒グラフである。
図9】ファーストラン中に射出成形部品として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態及びFEPコントロールの破断伸びを表す棒グラフである。
図10】ファーストラン中に射出成形部品として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態及びFEPコントロールの降伏強度を表す棒グラフである。
図11】セカンドラン中に射出成形部品として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態及びFEPコントロールの引張強度を表す棒グラフである。
図12】セカンドラン中に射出成形部品として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態及びFEPコントロールのヤング率を表す棒グラフである。
図13】セカンドラン中に射出成形部品として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態及びFEPコントロールの破断伸びを表す棒グラフである。
図14】セカンドラン中に射出成形部品として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態及びFEPコントロールの降伏強度を表す棒グラフである。
図15】0~800℃の温度範囲における、本開示に係るポリマーブレンドの各種実施形態の重量保持率を表すグラフである。
図16】0~250℃の温度範囲における、本開示に係るポリマーブレンドの各種実施形態の貯蔵弾性率(MPa)を表すグラフである。
図17】本開示に係る絶縁ケーブルの実施形態を表す。
図18】本開示に係る絶縁ケーブルの実施形態の断面図である。
図19】発泡核剤のいくつかの例を表す。
図20】薄膜として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態の引張強度を表す棒グラフである。
図21】薄膜として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態の破断伸びを表す棒グラフである。
図22】薄膜として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態のヤング率を表す棒グラフである。
図23】薄膜として形成した本開示に係るポリマーブレンドの実施形態の降伏強度を表す棒グラフである。
図24】本開示に係るポリマーブレンドの実施形態、PFAフルオロポリマー、及びポリエーテルイミドの熱安定性を表すグラフである。
図25】一実施形態に係る反応性ポリマー相溶化剤を合成可能な方法を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
【0016】
特に定義されない限り、本明細書中で使用される用語(技術用語及び科学用語を含む)はいずれも、本開示の分野における当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。更に、通常使用される辞書で定義される用語等は、明細書の文脈における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、明細書中で明示的に定義されない限り、理想化された意味や過度に形式張った意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。簡潔さや明確さの点で、よく知られた機能や構成を詳細には説明していない。
【0017】
「約」及び「およそ」という語は、一般に、測定の性質又は精度を考慮した上で、測定した数量について許容される誤差や変動の程度を意味する。典型的な誤差又は変動の程度は、例えば、所定の数値や数値範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。特に言及されない限り、本明細書中で与えられた数量は近似値であり、明示されていない場合、「約」又は「およそ」という語は推定であることを意味する。
【0018】
本明細書中で使用される専門用語は、具体的な実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではない。本明細書中、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明確に提示されない限り、複数形も包含することを意図している。
【0019】
「A及びBの少なくとも一方」といった語は、「Aのみ、Bのみ、又はA及びBの両方」を意味するものと理解されたい。より長いリスト(例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つ」)についても同様である。
【0020】
上記説明及び/又は以下の特許請求の範囲において、「含む(comprise、comprises)」又は「含んでいる(comprising)」という語を使用した場合、文脈上必要とされない限り、それらの用語は排他的ではなく包括的なものとして解釈され、上記説明及び以下の特許請求の範囲を構成する際もこれらの用語はそのように解釈されるという基本的且つ明確な理解のもとで使用されている。
【0021】
「から本質的に構成されている」という語は、特許請求の対象が、記載された要素に加えて、本開示で記載したような意図された目的に対する特許請求の対象の運用性に悪影響を与えない他の要素(工程、構造、成分、部材等)を含んでいてもよいことを意味する。本用語は、当該他の要素が他の何らかの目的に対して特許請求の対象の運用性を向上させ得るものであったとしても、本開示で記載したような意図された目的に対する特許請求の対象の運用性に悪影響を与えるような他の要素を除外するものである。
【0022】
いくつかの箇所で、これらに限定はされないが測定方法等の標準的な方法を参照している。このような標準は時々改定されるものであり、明示的に記載されない限り、本開示におけるこのような標準への参照は、出願時点の直近で発行された標準を参照するものと解釈されることを理解されたい。
【0023】
本明細書中、「アルキル」という語は、直鎖のアルキル、アルケニル、若しくはアルキニル基、分岐鎖のアルキル、アルケニル、若しくはアルキニル基、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル基、アルキル置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、若しくはシクロアルキニル基、及びシクロアルキル置換されたアルキル、アルケニル、若しくはアルキニル基等の、飽和又は不飽和脂肪族基のラジカルを意味する。特に提示されない限り、直鎖又は分岐鎖アルキルは、その主鎖に33個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは12個以下の炭素原子を有する。
【0024】
また、「アルキル」という語は、炭化水素ラジカルの1つ以上の炭素原子における1つ以上の置換基や、ヘテロアルキルを包含する。好適な置換基としては、これらに限定されないが、フッ素、塩素、ホウ素、又はヨウ素等のハロゲン;ヒドロキシル;-NR(式中、R及びRは独立して水素、アルキル、又はアリールであり、且つ窒素原子は四級化されていてもよい);-SR(式中、Rは水素、アルキル、又はアリールである);-CN;-NO;-COOH;カルボキシレート;-COR、-COOR、又は-CONR(式中、Rは水素、アルキル、又はアリールである);アジド、アラルキル、アルコキシル、イミノ、ホスホネート、ホスフィネート、シリル、エーテル、スルホニル、スルホンアミド、ヘテロ環状部分、芳香族部分、又はヘテロ芳香族部分、-CF;-CN;-NCOCOCHCH;-NCOCOCHCH;-NCS;及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0025】
本明細書中、「アルケニル」及び「アルキニル」という語は、長さ及び起こりうる置換の点で上記したアルキルと類似しているが、それぞれ少なくとも1つの二重結合又は三重結合を有する不飽和脂肪族基を意味する。
【0026】
「アリール」という語は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、及びビフェニル等、6~20個の炭素原子を有する単環式又は多環式芳香族ラジカルを意味する。
【0027】
本明細書中、「ヘテロアリール」という語は、3~20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖、又は環状の炭素含有ラジカル、又はこれらの組み合わせであって、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されているものを意味する。好適なヘテロ原子としては、これらに限定されないが、O、N、Si、P、及びSが挙げられ、窒素、リン、及び硫黄原子は酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は四級化されていてもよい。環のうち1つは芳香族であってもよい。ヘテロ環及びヘテロ芳香族環としては、これらに限定されないが、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾ―ル、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、及びキサンテニル等が挙げられる。
【0028】
フルオロポリマーと非全フッ素化ポリマーとのブレンド
【0029】
フッ素化ポリマーと非全フッ素化ポリマーとのブレンドを提供する。一般的に言うと、フッ素化ポリマー及び非フッ素化ポリマーは非混和性であり、ブレンドするのが難しい。しかしながら、フッ素化ポリマー及び非フッ素化ポリマーに官能性末端基及び/又はペンダント基を付加することで、これら2種類のポリマー間の相溶性を向上させられることが分かった。
【0030】
一実施形態において、本明細書中で開示したポリマーブレンドは、少なくとも官能基化全フッ素化フルオロポリマー及び非全フッ素化ポリマーを含む。本明細書中、「全フッ素化」という語は、炭素原子が、フッ素原子、炭素原子、又は他の炭素原子(すなわち、ポリマー鎖の一部)に結合したヘテロ原子に結合している基を意味する。本開示の目的のため、本開示に記載の官能基化全フッ素化フルオロポリマーは、全フッ素化した部分を少なくとも1つ有するべきである。官能基化全フッ素化フルオロポリマーは、少なくとも1つの官能基を有する。本明細書中、「官能基」は、例えば、共有結合、水素結合、又はイオン結合によって、ブレンド中の他のポリマー(例えば、非全フッ素化ポリマー)と化学結合を形成できる反応性基を意味する。官能基は、末端基又はペンダント側基であってもよい。官能基はまた、二官能であっても多官能であってもよい。例えば、一実施形態において、上記ポリマーは2つ以上の官能性末端基を有していてもよい。官能基化フルオロポリマーのいくつかの実施形態は、炭素原子10個あたり少なくとも1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、300、400、又は500個の反応性基という末端基数を有している。別の実施形態において、上記ポリマーは、1~4個のペンダント基を有していてもよい。官能性末端基又はペンダント基としては、これらに限定されないが、カルボキシル、アミン、無水物、ヒドロキシル、エポキシ、スルフヒドリル、シロキサン、及びオキサゾリンが挙げられる。
【0031】
官能基化全フッ素化フルオロポリマーは、全ての炭素原子がフッ素及び少なくとも1つの官能基で飽和しているフルオロポリマーを含んでいてもよい。好適なフルオロポリマーとしては、これらに限定されないが、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、及び/又はエチレンテトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー(EFEP)が挙げられる。官能基化フルオロポリマーは、上記したもの等の官能基を、意図される全フッ素化フルオロポリマーに付加することで生成してもよい。当該分野では、官能基をポリマーに導入する様々な方法が知られている。例えば、全フッ素化フルオロポリマーに官能性モノマーをグラフトして化学反応性基を得てもよい。官能性モノマーのグラフトは、反応押出しによって、又は化学合成中に該モノマーを低モルパーセントで挿入することによって実施してもよい。いずれの方法も、上手くグラフトするにはペルオキシド開始剤を必要とする。官能基をポリマーに導入する他の方法としては、例えば、官能性モノマーの直接重合、モノマー単位の重合後修飾、官能性開始剤の使用、又は求核置換反応等の末端基変換ケミストリーが挙げられる。
【0032】
一実施形態において、官能基化全フッ素化フルオロポリマーは、カルボキシル、アミン、無水物、ヒドロキシル、エポキシ、スルフヒドリル、シロキサン、オキサゾリン、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの官能基を有するフッ素化エチレンプロピレン(FEP)である。具体的な実施形態において、官能基化全フッ素化フルオロポリマーは、少なくとも1つのカルボキシル基を有するFEPである。
【0033】
ブレンド中に存在する非全フッ素化ポリマーは、官能基化されていても官能基化されていなくてもよい。本明細書中、「非全フッ素化」という語は、(i)どの炭素原子もフッ素で飽和していない非フッ素化ポリマー、又は(ii)全てではないがいくつかの炭素原子がフッ素で飽和しており、水素が少なくとも1つ結合した炭素原子がいくつか存在している部分フッ素化ポリマーを意味する。一実施形態において、非全フッ素化ポリマーは官能基化されていない。本態様において、非全フッ素化ポリマーは、官能基化全フッ素化フルオロポリマーと水素結合又はイオン結合を形成してもよい。
【0034】
非官能基化非全フッ素化ポリマーは、全フッ素化しておらず、官能基も含まないポリマーを含んでいてもよい。一実施形態において、非官能基化非全フッ素化ポリマーは非フッ素化ポリマーである。すなわち、該ポリマーはフッ素を含まない。別の実施形態において、非官能基化非全フッ素化ポリマーは部分的にフッ素化されている。本開示で使用するのに好適な非フルオロポリマー及び部分フッ素化ポリマーとしては、これらに限定されないが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド-イミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフェニルスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、及び芳香族ポリエステル(液晶)が挙げられる。例えば、一実施形態において、非全フッ素化ポリマーは、下記式を有するポリエーテルイミドである。
【化1】
【0035】
別の実施形態において、非全フッ素化ポリマーは官能基化されていてもよい。例えば、非全フッ素化ポリマーは、全フッ素化フルオロポリマーの官能基と化学結合を形成できる官能基を有していてもよい。本態様において、非全フッ素化ポリマーの官能基は、全フッ素化フルオロポリマーの官能基と反応してコポリマーを形成する。
【0036】
官能基化非全フッ素化ポリマーは、非官能基化非全フッ素化ポリマーに関して上記したいずれのポリマーを含んでいてもよいが、官能基が付加されている。例えば、官能基化非全フッ素化ポリマーは、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド-イミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフェニルスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、及び芳香族ポリエステル(液晶)から選択される非フルオロポリマー又は部分フッ素化ポリマーであってもよく、該非フルオロポリマー又は部分フッ素化ポリマーは官能基を有する。官能基化非全フッ素化ポリマーの官能基は、全フッ素化フルオロポリマーの官能基と同じであっても異なっていてもよい。例えば、官能基化非全フッ素化ポリマーの官能基は、これらに限定されないが、カルボキシル、アミン、無水物、ヒドロキシル、エポキシ、スルフヒドリル、シロキサン、及びオキサゾリンを含む1つ以上の官能性末端基又はペンダント基を有していてもよい。
【0037】
一実施形態において、官能基化非全フッ素化ポリマーは、カルボン酸、無水物、又はアミン末端基を有するポリエーテルイミド又はポリイミドである。別の実施形態において、官能基化非全フッ素化ポリマーは無水物末端基を有するポリエーテルイミドである。更に別の実施形態において、官能基化非全フッ素化ポリマーは、下記式を有する無水物末端ポリイミドである。
【化2】
【0038】
更に別の実施形態において、官能基化非全フッ素化ポリマーは、カルボン酸末端基を有するポリエーテルイミドである。更に別の実施形態において、官能基化非全フッ素化ポリマーは、アミン末端基を有するポリエーテルイミドである。
【0039】
ポリマーブレンドは、官能基化されていない非全フッ素化ポリマーと、官能基化されており且つその官能基が全フッ素化フルオロポリマーの官能基と化学結合を形成できる非全フッ素化ポリマーとの組み合わせを含んでいてもよい。
【0040】
また、本明細書中に記載のポリマーブレンドは、非官能基化フルオロポリマーを含んでいてもよい。非官能基化フルオロポリマーは、官能基を有するように修飾されていないフルオロポリマーであってもよい。一実施形態において、非官能基化フルオロポリマーは、官能基化全フッ素化フルオロポリマーと同じフルオロポリマーであって、官能基を有していないものであってもよい。別の実施形態において、非官能基化フルオロポリマーは、官能基化全フッ素化フルオロポリマーと異なるフルオロポリマーであってもよい。非官能基化フルオロポリマーは、全フッ素化されていても部分的にフッ素化されていてもよい。非官能基化フルオロポリマーとして使用するのに好適なフルオロポリマーとしては、これらに限定されないが、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、並びにエチレン、テトラフルオロエチレン、及びヘキサフルオロプロピレンのターポリマー(EFEP)が挙げられる。
【0041】
上記フルオロポリマーは、発泡していても中実状であってもよい。一実施形態において、フルオロポリマーは発泡構造を有する。発泡ポリマーが形成される場合、発泡核剤が存在していてもよい。発泡ポリマーは、誘電性が向上し重量が低下する点で有利である。ポリマーブレンドのいくつかの実施形態は、1~10重量%の発泡核剤を含んでいてもよい。当該分野では各種の好適な核剤が知られており、窒化ホウ素、無機塩(バリウム塩、四ホウ酸カルシウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、炭酸カルシウム、四ホウ酸亜鉛、及び硝酸バリウム等)、スルホン酸、ホスホン酸、それらの共役塩、タルク、並びに酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、及び二酸化ケイ素等の金属酸化物等の成分を含んでいてもよい。ポリマーブレンドの具体的な実施形態は、主に窒化ホウ素及び四ホウ酸カルシウムを含む発泡核剤を含んでいる。更なる実施形態では、F(CFCHCHSOH(n=6、8、10、又は12)のバリウム塩を追加で含んでいる。発泡核パッケージを構成する、又はその成分である発泡核剤は、式:Z(CF(CFCFX)(R’)(CH(ROM(式中、ROを除く二価の基は、任意の順序で存在していてもよい;Zは、CCl、CClH、H、F、Cl、及びBrから選択される;Xは、それぞれ独立に、H、F、C、及びCFから選択される;Rは、硫黄及びリンから選択される;Mは、H、金属、アンモニウム、置換アンモニウム、及び第四級アンモニウムカチオンから選択される;x及びzは、それぞれ独立に、0~20の整数である;pは、0~6の整数である;yは、0又は1である;x+y+z+pは、正の整数であるか、x+y+z+pが0である場合、ZはCCl又はCClHである;nは、Mの価数である;R’は、炭素数5~6の全フッ素化脂環式ジラジカル;CFO、[CFCFO]、及び[CFCF(CF)O]から選択される繰り返し単位を有する炭素数1~16の全フッ素化脂肪族ポリエーテルジラジカル;及び置換又は非置換の芳香族ジラジカル(この場合、ZはHである)から選択される)で表される発泡核剤を含む。押出しプロセスに好適な発泡核剤の実施形態は、スルホン酸及びホスホン酸、並びに/又はその塩から選択される少なくとも1種の熱安定化合物を発泡核生成有効量で含んでいてもよい。発泡核剤の例を図19に表す。「TBSA」は、F(CFCHCHSOH(式中、nは6、8、10、場合によっては12であり、主に8である)である。
【0042】
本明細書中で開示したポリマーブレンドは、少なくとも官能基化全フッ素化フルオロポリマー及び非全フッ素化ポリマーを含んでいてもよい。別の実施形態において、ポリマーブレンドは、官能基化全フッ素化フルオロポリマー、1つ以上の非全フッ素化ポリマー、及び非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマーを含む。更に別の実施形態において、ポリマーブレンドは、非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマー、官能基化全フッ素化フルオロポリマー、非官能基化非全フッ素化ポリマー、及び官能基化非全フッ素化ポリマーを含み、官能基化全フッ素化フルオロポリマー及び官能基化非全フッ素化ポリマーの官能基は、反応して化学結合を形成できる。特定の理論に拘束されるものではないが、非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマー及び非官能基化非全フッ素化ポリマーが存在することで、官能基化全フッ素化フルオロポリマー及び官能基化非全フッ素化ポリマーが相互に混和し、互いに化学結合できる環境が形成されるものと考えられる。
【0043】
相溶化ブレンドの一実施形態において、官能性末端基又はペンダント基を有する非フッ素化ポリマー及び全フッ素化ポリマーの混合物は、同様の加工温度を有するエンジニアリング又は高性能非官能基化非フルオロポリマーである任意のポリマーと水素結合又はイオン結合を形成できる。他の形態のエンジニアリング又は高性能非フルオロポリマーは官能基化されている。これにより、相溶化剤との化学的な反応、又は官能基化全フッ素化ポリマーとの直接的な反応による相溶化が促進される。いくつかの実施形態において、官能基化基は相溶化剤と共有結合的に反応する。この意味における共有結合は、化学結合を形成可能な求核中心及び求電子中心を有する対向基を意味する。
【0044】
非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマー、官能基化全フッ素化フルオロポリマー、非官能基化非全フッ素化ポリマー、及び官能基化非全フッ素化ポリマーは、ポリマーブレンド中に様々な量で存在していてよい。一実施形態において、官能基化全フッ素化フルオロポリマー及び非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマーは、ブレンドの約1重量%~約99重量%の量で存在していてもよい。別の実施形態において、官能基化全フッ素化フルオロポリマー及び非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマーは、ブレンドの約1重量%~約90重量%の量で存在していてもよい。いくつかの実施形態において、官能基化全フッ素化フルオロポリマー及び非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマーは、ブレンドの5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは99重量%、これらの値の近似値、又はこれらの値のうち2つの間の範囲である量で存在していてもよい。具体的な実施形態において、官能基化全フッ素化フルオロポリマー及び非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマーは、ブレンドの約80重量%~約95重量%の量で存在していてもよい。別の具体的な実施形態において、官能基化全フッ素化フルオロポリマー及び非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマーは、ブレンドの約85重量%~約95重量%の量で存在していてもよい。更に別の具体的な実施形態において、非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマーは存在していない。
【0045】
官能基化全フッ素化フルオロポリマー及び非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマーの相対量は、官能基化全フッ素化フルオロポリマーが100%で非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマーが0%までの範囲であってもよい。組成のいくつかの実施形態において、非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマーに対する全フッ素化フルオロポリマーの比は0.1~1である。組成の具体的な実施形態において、非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマーに対する全フッ素化フルオロポリマーの比は、0.10、0.11、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、及び1であってもよい。組成の好ましい所定の実施形態において、非官能基化全フッ素化又は部分フッ素化フルオロポリマーに対する全フッ素化フルオロポリマーの比は、0.11、0.25、0.40、又は1であってもよい。
【0046】
ブレンド中、非官能基化非全フッ素化ポリマーは、ブレンドの約1重量%~約99重量%の量で存在していてもよい。例えば、非官能基化非全フッ素化ポリマーは、ブレンドの1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは99重量%、これらの値の近似値、又はこれらの値のうち2つの間の範囲である量で存在していてもよい。別の実施形態において、非官能基化非全フッ素化ポリマーは、ブレンドの約5重量%~約90重量%の量で存在していてもよい。具体的な実施形態において、非官能基化非全フッ素化ポリマーは、ブレンドの約5重量%~約15重量%の量で存在していてもよい。別の具体的な実施形態において、非官能基化非全フッ素化ポリマーは、ブレンドの約5重量%~約10重量%の量で存在していてもよい。更に別の具体的な実施形態において、非官能基化非全フッ素化ポリマーは、ブレンドの約85~90重量%又はブレンドの約88重量%の量で存在していてもよい。
【0047】
ブレンド中、官能基化非全フッ素化ポリマーは、ブレンドの約0.1重量%~約99重量%で存在していてもよい。例えば、官能基化非全フッ素化ポリマーは、ブレンドの0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは99重量%、これらの値の近似値、又はこれらの値のうち2つの間の範囲である量で存在していてもよい。別の実施形態において、官能基化非全フッ素化ポリマーは、ブレンドの約0.1重量%~約3重量%の量で存在していてもよい。更に別の実施形態において、官能基化非全フッ素化ポリマーは、ブレンドの約1重量%~約2重量%の量で存在していてもよい。
【0048】
本明細書中で開示したポリマーブレンドは、少なくとも1つの相溶化剤を更に含んでいてもよいが、相溶化剤は任意である。相溶化剤は、押出し時に非混和性材料のブレンドに添加すると、非混和性材料の界面性質を変性させて溶融ブレンドを安定化させる添加剤である。系を相溶化させると、2つの非混和性ポリマー間で相互作用が起こることで、ブレンド相の形態をより安定且つ良好なものにできる。
【0049】
一実施形態において、相溶化剤は、少なくとも2つの官能性末端基を有していてもよく、例えば、各末端に1つの官能基を有し、それぞれの官能性末端基は官能基化全フッ素化フルオロポリマー及び官能基化非全フッ素化フルオロポリマーの一方又は両方の官能基と反応して化学結合を形成できるものであってもよい。別の実施形態において、相溶化剤は、各末端に2~5個の官能基を有していてもよい。相溶化剤の官能基は、官能基化全フッ素化フルオロポリマー及び官能基化非全フッ素化フルオロポリマーに関して上記した官能基のいずれかを含んでいてもよい。例えば、相溶化剤は、カルボキシル、アミン、無水物、ヒドロキシル、エポキシ、スルフヒドリル、シロキサン、及びオキサゾリンのいずれかの官能性末端基を有していてもよい。一実施形態において、相溶化剤の各末端にある1つ以上の官能基は、同じであってもよい。別の実施形態において、相溶化剤の一末端にある1つ以上の官能基は、相溶化剤の別の末端にある1つ以上の官能基と異なっていてもよい。
【0050】
別の実施形態において、相溶化剤は、例えば、ポリマーブレンド中に存在する各ポリマーと構造的に類似したセグメントとのブロックコポリマー又はグラフトコポリマー等の反応性ポリマー相溶化剤であってもよい。本態様において、相溶化剤は、ブレンド中に存在するポリマー成分から形成されたコポリマーであってもよい。
【0051】
更に別の実施形態において、相溶化剤は、ビス(オキサゾリン)化合物であってもよい。ビス(オキサゾリン)化合物は、連結基で結合された少なくとも2つの官能性末端基を有する。より具体的には、ビス(オキサゾリン)化合物は、各末端に、連結基で結合された少なくとも2つの官能性オキサゾリン環を有する。連結基は、直鎖のアルキル、アルケニル、若しくはアルキニル基、分岐鎖のアルキル、アルケニル、若しくはアルキニル基、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル基、アルキル置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、若しくはシクロアルキニル基、シクロアルキル置換されたアルキル、アルケニル、若しくはアルキニル基、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、及びビフェニル等のアリール基、ピリジニル基等のヘテロアリール基、炭化水素ラジカルの1つ以上の炭素原子に1つ以上の置換基を有するアルキル基、並びにこれらの組み合わせを含んでいてもよい。また、オキサゾリン環は、1つ以上の置換基を有していてもよい。置換基は、連結基に関して上記した基のいずれかを含んでいてもよい。
【0052】
相溶化剤として使用するのに好適なビス(オキサゾリン)化合物としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる。
【0053】
1,3-フェニレン-ビス-オキサゾリン
【化3】
【0054】
1,4-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン
【化4】
【0055】
1-4-ビス(2-ベンゾオキサゾリル)ナフタレン
【化5】
【0056】
1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン
【化6】
【0057】
1,4-ビス(5-フェニル-2-オキサゾリル)ベンゼン
【化7】
【0058】
S,S)-2,2’-イソプロピリデンビス(4-イソプロピル-2-オキサゾリン)
【化8】
【0059】
(R,R)-2,6-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン-2-イル)ピリジン
【化9】
【0060】
2,2’-メチレンビス[(4S)-4-フェニル-2-オキサゾリン
【化10】
【0061】
2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン
【化11】
【0062】
(4S)-(+)-フェニル-α-[(4S)-フェニルオキサゾリジン-2-イリデン]-2-オキサゾリン-2-アセトニトリル
【化12】
【0063】
具体的な実施形態において、相溶化剤は、1,4-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼンである。
【0064】
ポリマーブレンド中、相溶化剤は、約0.1重量%~約99重量%の量で存在していてもよい。例えば、相溶化剤は、ブレンドの0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは99重量%、これらの値の近似値、又はこれらの値のうち2つの間の範囲である量で存在していてもよい。具体的な実施形態において、相溶化剤は、ブレンドの約0.1重量%~約1重量%の量で存在していてもよい。別の具体的な実施形態において、相溶化剤は、ブレンドの約0.1重量%~約0.5重量%の量で存在していてもよい。
【0065】
ポリマーアロイの形成
【0066】
本明細書中に記載のポリマーブレンドは、ポリマーアロイとして形成してもよい。本明細書中、「ポリマーアロイ」とは、少なくとも2つのポリマーをブレンドすることで異なる物性を有する新たな材料として生成された混合物を意味する。
【0067】
ポリマーアロイを形成するプロセスを提供する。該プロセスは、上記ポリマーブレンドのいずれかを、官能基化全フッ素化フルオロポリマーを溶融させ、且つ非全フッ素化ポリマー及び/又は官能基化非全フッ素化ポリマーを溶融させ、且つ官能基化全フッ素化フルオロポリマーの官能基と非全フッ素化ポリマー及び/又は官能基化非全フッ素化ポリマーとを共有結合、イオン結合、又は水素結合させられる温度に保持する工程を有する。
【0068】
別の実施形態において、ポリマーアロイを形成するプロセスは、上記ポリマーブレンドのいずれかを、全フッ素化フルオロポリマー、官能基化全フッ素化フルオロポリマー、非全フッ素化ポリマー、及び官能基化非全フッ素化ポリマーを溶融させ、且つ官能基化全フッ素化フルオロポリマーの官能基と官能基化非全フッ素化ポリマーの官能基とを化学結合させられる温度に保持する工程を有する。
【0069】
当業者であれば、ポリマー成分の溶融温度を容易に決定できる。しかしながら、一実施形態において、全フッ素化フルオロポリマー、官能基化全フッ素化フルオロポリマー、非全フッ素化ポリマー、及び官能基化非全フッ素化ポリマーを溶融させられる温度は、約250℃~約400℃の範囲であってもよい。別の実施形態において、上記温度は約280℃~350℃の範囲であってもよい。ポリマーは、これらの温度に約1分~約10分保持してもよい。別の実施形態において、ポリマーは、これらの温度に約2分保持してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、上記の通りブレンドが発泡剤を含有する場合、発泡ポリマーブレンドを形成できる。プロセスのそのような実施形態では、加工中にガスを導入することになる。ガスは、当該分野において発泡フルオロポリマーを形成するのに好適であることが知られている任意のものであってもよい。具体的な実施形態において、上記ガスは、比較的不活であり低コストであるという利点を有するNである。プロセスのいくつかの実施形態において、上記ガスは、ガス含有量が最大90体積%となるように導入する。プロセスの更に別の実施形態において、上記ガスは、ガス含有量が10~80体積%となるように導入する。
【0071】
押出品及び製造プロセス
【0072】
上で提供したポリマーアロイのいずれかを含む押出品と、ポリマー押出品の製造プロセスとを提供する。製造品は、当該分野で知られている任意のポリマー押出品であってもよい。好適な押出品の具体例としては、バッグ、フィルム、容器、フィラメント、食品パッケージ、コーティング(電線用の皮膜又はジャケット等)、及び各種の射出成形部品が挙げられる。
【0073】
一実施形態において、押出品は、上記したポリマーアロイのいずれかのフィルムである。ポリマーアロイのフィルムを形成するプロセスも提供する。該プロセスは、上記した方法でポリマーアロイを形成して溶融アロイを形成する工程、及び溶融アロイを押し出して薄膜を形成する工程を有する。本態様において、ポリマーブレンドは、溶融ブレンドによって溶融アロイを形成し、ペレット形状に押し出したものであってもよい。次いで、ペレットを押し出して薄膜としてもよい。フィルムを形成する方法として知られたものは、いずれも本開示とともに使用することが考えられる。
【0074】
本明細書中に記載のポリマーアロイから形成したフィルムのいくつかの実施形態は、純粋なフッ素化ポリマーから形成したフィルムに対し、機械的強度が大幅に向上している。例えば、上記フィルムは、優れた引張強度を示す。本明細書中、「引張強度」とは、ASTM D638に従って測定した非弾性永久歪に到達するまでに材料が対応できる応力量を意味する。一実施形態において、フィルムは、引張強度が約15MPaより大きい。別の実施形態において、フィルムは、引張強度が約17MPaより大きい。更に別の実施形態において、フィルムは、引張強度が約22MPaより大きい。更に別の実施形態において、フィルムは、引張強度が約24MPaより大きい。別の実施形態において、フィルムは、引張強度が約27MPaより大きい。更に別の実施形態において、フィルムは、引張強度が約30MPaより大きい。
【0075】
また、フィルムのいくつかの実施形態によれば、優れた伸び性が見られる。「伸び」とは、引っ張り時に材料が破断するまでに見られる長さの増加率を意味する。一実施形態において、フィルムは、伸びが約250%未満である。別の実施形態において、フィルムは、伸びが約200%未満である。更に別の実施形態において、フィルムは、伸びが約180%未満である。更に別の実施形態において、フィルムは、伸びが約100%未満である。別の実施形態において、フィルムは、伸びが約50%未満である。更に別の実施形態において、フィルムは、伸びが約30%未満である。更に別の実施形態において、フィルムは、伸びが約20%未満である。
【0076】
更に、フィルムのいくつかの実施形態によれば、優れたヤング率性が見られる。「ヤング率」とは、ASTM D638に従って測定した、材料が弾性変形に抵抗する傾向を意味する。一実施形態において、フィルムは、ヤング率が約400MPaより大きい。別の実施形態において、フィルムは、ヤング率が約450MPaより大きい。更に別の実施形態において、フィルムは、ヤング率が約480MPaより大きい。更に別の実施形態において、フィルムは、ヤング率が約500MPaより大きい。更に別の実施形態において、フィルムは、ヤング率が約600MPaより大きい。別の実施形態において、フィルムは、ヤング率が約650MPaより大きい。更に別の実施形態において、フィルムは、ヤング率が約750MPaより大きい。別の実施形態において、フィルムは、ヤング率が約800MPaより大きい。例えば、フィルムは、ヤング率が約850MPaより大きい。
【0077】
また、フィルムのいくつかの実施形態によれば、優れた降伏強度が見られる。「降伏強度」とは、材料が形状変化を始めるまでに印加できる最大応力を意味する。一実施形態において、フィルムは、降伏強度が約15MPaより大きい。別の実施形態において、フィルムは、降伏強度が約20MPaより大きい。更に別の実施形態において、フィルムは、降伏強度が約29MPaより大きい。更に別の実施形態において、フィルムは、降伏強度が約40MPaより大きい。
【0078】
別の実施形態において、押出品は、上記したポリマーアロイのいずれかの射出成形部品である。ポリマーアロイの射出成形品を形成するプロセスも提供する。該プロセスは、上記した方法でポリマーアロイを形成して溶融アロイを形成する工程、及び溶融アロイを型穴に射出する工程を有する。本態様において、ポリマーブレンドは、溶融ブレンドによって溶融アロイを形成し、ペレット形状に押し出したものであってもよい。次いで、任意の好適な射出成形機を用いて、化合物を射出成形する。射出成形する方法として知られたものは、いずれも本開示とともに使用することが考えられる。
【0079】
本明細書中に記載のポリマーアロイから形成した射出成形品のいくつかの実施形態によれば、純粋なフッ素化ポリマーから形成した射出成形品に対して優れた物性が見られる。例えば、射出成形品のいくつかの実施形態は、引張強度が10MPaより大きい。別の実施形態において、射出成形品は、引張強度が15MPaより大きい。更に別の実施形態において、射出成形品は、引張強度が20MPaより大きい。別の実施形態において、射出成形品は、引張強度が50MPaより大きい。更に別の実施形態において、射出成形品は、引張強度が100MPaより大きい。
【0080】
また、射出成形品のいくつかの実施形態によれば、優れた伸び性が見られる。一実施形態において、射出成形品は、伸びが約200%未満である。別の実施形態において、射出成形品は、伸びが約180%未満である。更に別の実施形態において、射出成形品は、伸びが約150%未満である。更に別の実施形態において、射出成形品は、伸びが約100%未満である。別の実施形態において、射出成形品は、伸びが約80%未満である。更に別の実施形態において、射出成形品は、伸びが約30%未満である。例えば、射出成形品は、伸びが約20%未満である。
【0081】
更に、射出成形品のいくつかの実施形態によれば、優れたヤング率性が見られる。例えば、射出成形品は、ヤング率が約350MPaより大きい。別の実施形態において、射出成形品は、ヤング率が約400MPaより大きい。更に別の実施形態において、射出成形品は、ヤング率が約500MPaより大きい。更に別の実施形態において、射出成形品は、ヤング率が約600MPaより大きい。更に別の実施形態において、射出成形品は、ヤング率が約620MPaより大きい。
【0082】
更に、射出成形品のいくつかの実施形態によれば、優れた降伏強度が見られる。一実施形態において、射出成形品は、降伏点が約17MPaより大きい。別の実施形態において、射出成形品は、降伏点が約20MPaより大きい。更に別の実施形態において、射出成形品は、降伏点が約50MPaより大きい。更に別の実施形態において、射出成形品は、降伏点が約75MPaより大きい。
【0083】
通信ケーブル
【0084】
本明細書中に開示したポリマーアロイは、その軽量さ、温度耐性、及び誘電性から、ケーブル絶縁体としての用途が見いだされた。導体と、本明細書中に開示したポリマーアロイのいずれかを含む絶縁層とを有する絶縁ケーブルが提供される。
【0085】
本開示では、イーサネットケーブル等の通信ケーブルの実施形態が記載されている。このようなケーブルは、高温に曝されるがデータ需要がますます増大しているモータービークル・コンピュータシステムで特に有用である。上記ケーブルの具体的な一実施形態は、1対のツイストペアワイヤを含む。このようなワイヤそれぞれの絶縁体は、本明細書中に開示したポリマーアロイ等の、高絶縁性、低減衰性、及び耐熱性の材料によって得られる。ツイストペアワイヤは、差動データ及び/又は動力信号を伝達するよう構成されている。上で開示したポリマーアロイをワイヤ絶縁体として使用することで、モータービークルで見られるようなより過酷な温度条件にも対応しつつ、ケーブルが高周波帯(例えば10MHz~10GHz)の差動信号を伝送できるようになる。なお、ケーブルの他の実施形態では、複数対のワイヤによって、差動データ及び/又は動力信号用のパスを複数用意してもよい。ケーブルの更に別の実施形態では、2対以上のツイストペアを有していてもよい。ケーブルの具体的な実施形態では、少なくとも1対、2対、3対、又は4対のツイストペアを有する。ケーブルの更に別の具体的な実施形態では、ちょうど1対、2対、3対、又は4対のツイストペアを有する。これらのペアワイヤは、ケーブルジャケット内に挿入してもよく、これによって構造健全性を備えたイーサネットケーブルを提供できる。更に、いくつかの実施において、ケーブルをシールドして電磁干渉から保護してもよい。
【0086】
図17は、本開示に係るケーブル100の実施形態の斜視図であり、図18は、図17に示したケーブル100の実施形態の断面図である。ケーブル100はワイヤ102及び104のペアを有し、これらは互いにツイストされてワイヤ102及び104のツイストペアを形成している。ワイヤ102は導体106を有し(図18参照)、ワイヤ104は導体108を有する(図18参照)。これらはそれぞれ導電材料から形成されている。導体106及び108を形成する導電材料は、元素金属、合金等の任意の導電材料であってもよい。一実施形態において、ワイヤ102及び104中の導体106及び108はそれぞれ銅で形成されている。いくつかの実施において、導体106及び108のペアを用いて差動信号を伝播させることで、位相が約180度ずれている相補信号を導体106及び108が伝送するようにしてもよい。従って、ワイヤ102及び104のペアをツイストすることで、ワイヤ102及び104間の電磁干渉を打ち消し、且つ導体106及び108のペアをバランスが取れた状態で保持するのが容易になる。一実施では、ワイヤ102及び104のペアを用いて、データ信号伝達及び動力伝達を処理することになる。例えば、ワイヤ102及び104のペアを利用して、50ワット前後の動力をセンサ及びアクティブな通信装置に送達させてもよい。
【0087】
図17及び図18に示すとおり、ワイヤ102及び104はそれぞれワイヤ絶縁体110及び112を有する。ワイヤ102のワイヤ絶縁体110は導体106を囲んで被覆し、ワイヤ104のワイヤ絶縁体112は導体108を囲んで被覆する。ワイヤ絶縁体110及びワイヤ絶縁体112は、高電荷及び高電流の存在下、誘電率が低いため電磁力線の集中に抵抗する絶縁材料で形成されている。これにより、ワイヤ102及び104のペアは高周波信号を伝播させられる。一実施において、ケーブル100は、カテゴリ6Aイーサネットケーブルである。この場合、ケーブル100は、外部雑音の影響や、近端クロストーク(NEXT)及び遠端クロストーク(FEXT)等の内部クロストーク源を最小化しつつ、10MHz~500MHzの動作周波数及び最大10ギガビット/毎秒(Gbps)のシステムスループットで信号を伝達できる必要がある。カテゴリ6Aケーブル100の好適な形態の例としては、非シールドツイストペアケーブル(UTP)、セグメント化シールドツイストペア(SSTP)、及びシールドツイストペア(STP)が挙げられる。STPの好ましい一形態は、一方にポリエチレンテレフタレート(PET)を有し他方にアルミニウムを有するシールドと、ドレインワイヤとを有する。SSTPの好ましい一形態は、一方にポリエチレンテレフタレート(PET)を有し他方にアルミニウムを有するシールドを有し、上記アルミニウムは一定の間隔で切断されており、PETはシールドの長さに沿って手を加えていないので、ドレインワイヤが不要となっている。
【0088】
いくつかの実施形態において、ワイヤ絶縁体110及びワイヤ絶縁体112を形成する絶縁材料は、現代の自動車エンジン用ボンネット下で起こるような温度において、誘電率が約1.2~約2.4である。このような温度は、典型的には約40℃~200℃の範囲で変動する。別の実施形態において、ワイヤ絶縁体110及びワイヤ絶縁体112を形成する絶縁材料は、現代の自動車エンジン用ボンネット下で起こるような温度において、誘電率が約1.5~約2.1である。更に別の実施形態において、ワイヤ絶縁体110及びワイヤ絶縁体112を形成する絶縁材料は、現代の自動車エンジン用ボンネット下で起こるような温度において、誘電率が約1.7~約2.1である。
【0089】
各導電ワイヤの絶縁体は、ポリマーアロイの少なくとも50重量%であってもよい。更に別の実施形態において、各導電ワイヤは、ポリマーアロイの少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100%であってもよい。
【0090】
また、絶縁材料は、添加剤、改質剤、又は補強剤を含んでいてもよい。例えば、絶縁材料は、同定を目的として、着色されていてもよいし着色剤を含んでいてもよい。
【0091】
なお、ケーブル100の他の実施形態では、カテゴリ5e、カテゴリ6、カテゴリ7、カテゴリ7A、及びカテゴリ8等、異なるカテゴリのイーサネットケーブルとして提供してもよい。ケーブル100の別の実施形態では、10BASE-T1ケーブル又は100BASE-T1ケーブルを含む他の種類のイーサネットケーブルとして提供してもよい。ケーブル100の各例が準拠し得るいくつかのイーサネット規格としては、イーサネット規格IEEE802.3cg、IEEE802.3bw、IEEE802.3bp、IEEE802.3ch、IEEE802.3buが挙げられる。更に、いくつかのケーブル規格としては、SAE J3117/1、SAE J3117/2、及びSAE J3117/3が挙げられる。
【0092】
図17及び図18に示すケーブル100の実施形態は、ケーブル100の長さに沿って差分データ及び/又は動力信号を伝送するワイヤ102及び104を囲むシールド114及びケーブルジャケット116を有する。本例示において、シールド114は、ワイヤ102及び104とケーブルジャケット116との間に配置されている。シールド114は、EMIを反射し且つ/又はEMIを安全に接地させるよう構成されている。いずれの場合も、シールド100により、EMIがワイヤ102及び104中の導体106及び108へ作用するのを防止しやすくなる。従って、EMIがいくらかシールド100を通過したとしても、大幅に減衰しているので、ワイヤ102及び104の導体106及び108を介して伝達されるデータ及び/又は動力信号へ大きく干渉することはない。
【0093】
本例示において、シールド100はブレードとして提供され、銅等の金属の織網として形成されていてもよい。従って、シールド100は、導電性が高い接地経路を供給できる。このようなケーブル100の実施形態は、非シールドツイストペアケーブル(UTP)の一例である。いくつかの実施において、ケーブル100は、長さが最大40メートルであり、大型トラックでの使用に特に有用である。別の例示において、シールド100は、ホイルシールドとして提供されていてもよく、アルミニウム等の金属の薄層として形成されていてもよい。ホイルシールドは、(ポリエステル等の材料で形成されていてもよい)キャリアに付着させて、強度及び耐久性を付与するものであってもよい。更に別の例示において、ケーブル100は、複数の同心シールドを有していてもよく、極めてノイズの多い環境において特に有用である。更に別の例示において、ケーブル100は非シールドであって、ジャケット116とワイヤ102及び104との間にシールド114が存在しないものであってもよい。これは非シールドツイストペアケーブル(UTP)の一例である。いくつかの実施において、UTPは、長さが最大15メートルであり、標準的な大衆車で特に有用である。
【0094】
また、図17及び図18に示すケーブル100の実施形態は、ケーブル100の最外層を形成し、その外表面が外部環境に曝されることになるジャケット116を有している。ジャケット116のいくつかの実施形態は、シールド114とワイヤ102及び104との一方又は両方を囲んでいる。このようにして、ジャケット116は、シールド114、絶縁体110及び112、並びに導体106及び108をEMI、外的な物理力、熱、及び化学的変性から保護するように構成されている。ジャケット116は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PUR)、塩素化ポリエチレン(CPE)、ネオプレン、エチレンプロピレンゴム(EPR)、FEP、PFA、又はエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)等、任意の好適な材料から形成されていてもよい。別のいくつかの例示において、フィラー、可塑剤、活性化剤、及び阻害剤をジャケット116に添加して、ジャケット116の具体的な物理的特徴、電気的特徴、又は化学的特徴を向上させてもよい。
【0095】
図17に示すケーブル100の実施形態は、ケーブル100の一端120に接続されたコネクタ118を有している。より具体的には、コネクタ118は導電部材122及び124のペアを有し、ワイヤ102の導体106の対応する端部(図示せず)が導電部材122と接続され、ワイヤ104の導体108の対応する端部(図示せず)が導電部材124と接続されている。導電部材122及び124は、ケーブル100の差動入力/出力ポートを提供することで、ワイヤ102及び104を介して伝播された差分データ及び/又は動力信号をケーブル100と入出力できるようにしてもよい。また、コネクタ118は、導電部材122及び124のペアを収容するコネクタハウジング126を有している。シールド114及びジャケット116は、ハウジング126内に端部を有し、内部接続されている。ハウジング126は、導電部材122及び124を囲み、対をなす(antipodal)コネクタ(図示せず)へ挿入してもよい挿入可能部128を更に有することで、データ及び/又は動力差動信号をケーブル100と入出力してもよい。
【0096】
なお、本例示では、導電部材122及び124のペアがオス接続を形成してデータ及び/又は動力差動信号を入出力するため、コネクタ118はオス差動コネクタである。別の実施形態において、コネクタ118はメスコネクタであってもよく、従って、オス差動コネクタを受け入れるよう構成された導電チャネルのペアを有していてもよい。加えて、このようなケーブル100の実施形態では、コネクタ118と類似した別のコネクタをケーブル100の他端128に形成しない。その代わり、ケーブル100の端部128において、導体106及び108との直接接続を形成してもよい。しかしながら、別の実施形態では、ケーブル100の端部128において、コネクタ118と類似した別のコネクタが接続されている。
【0097】
その他の用途
【0098】
本明細書中に開示したポリマーアロイは、目的とする用途の要求に合わせて物性及び誘電性を調整できるような方法によって、異なるポリマーを組み合わせて生成する。ポリマーアロイは、低損失及び高物性の両方、更に高表面エネルギーを示すよう設計できる。このように性質が向上することで、選択したこれらの材料を、リジッドな多層低損失PCB等のいくつかの電子及び電気部材用のものにできる。例えば、本明細書中に開示したポリマーアロイは、PCB等の電気部材を積層及び絶縁するのに有用である。いくつかの実施形態において、開示したポリマーアロイは、例えば、銅層及びPFA層と接触する接着剤層等の接着剤層として使用できる。いくつかの実施形態において、開示したポリマーアロイは、例えば、銅膜及び/又はPFA膜等の膜間の接着剤層として使用できる。いくつかの実施形態において、開示したポリマーアロイは、例えば、PCB積層体等のPCB用途における接着剤層として使用してもよい。別の実施形態において、本明細書中に開示したポリマーアロイは、バッテリーケースとして有用である。本明細書中に開示したポリマーアロイは、電子産業に限定されるということは全くなく、自動車、電線及びケーブル、石油及びガス、航空宇宙、3D印刷等の他の産業で見られる用途にも拡張できる。
【0099】
いくつかの実施形態において、FEP/PEI又はPFA/PEIの熱可塑性アロイ(TPA)の薄膜を積層体として使用してもよい。いくつかの実施形態において、TPA積層体は、例えば、高周波基板等のプリント基板として使用してもよい。いくつかの実施形態において、TPA積層体は、押し出してもよく、且つ/又は厚さが約5μm~200μmであってもよい。いくつかの実施形態において、TPA薄膜は、溶融シリカ、石英、酸化マグネシウム、及び/又は酸化アルミニウムのナノサイズ粒子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、無機粒子を添加することで、損失係数及び/又はCTEを低減しやすくしてもよい。いくつかの実施形態において、無機材料の割合は少なくとも1%である。
【0100】
いくつかの実施形態において、FEP/PEI及び/又はPFA/PEIの熱可塑性アロイのフィラメントを3D印刷に使用してもよい。いくつかの実施形態において、TPAのフィラメントは、熱溶解積層法に使用してもよい。いくつかの実施形態において、フィラメントは、厚さが少なくとも0.5mmであってもよい。PFA及びFEP等のパーフルオロポリマーは、フィラメント積層法(FDM)を採用した3D印刷プロセスを実施するのが極めて困難であり、PEIは、FDMによる3D印刷に有用であることが知られている。理論に拘束されるものではないが、このような加工性及びFDMによるPEIの3D印刷性の違いは、PEI及びPFAの表面エネルギーの違いによるものと考えられる。PFA及びFEPは表面エネルギーが低く、印刷材料の連続層間の接着を阻害することが知られている。いくつかの実施形態において、PFA及びPEIの熱可塑性アロイ又はFEP及びPEIの熱可塑性アロイは、PFA又はFEPよりも表面エネルギーが高くなり、FDM法による3D印刷が可能となる。
【0101】
いくつかの実施形態において、FEP/PEI及びPFA/PEIの熱可塑性アロイの繊維を押し出してもよい。いくつかの実施形態において、繊維は、単一より線若しくは多重より線繊維、及び/又はそれらの組み合わせを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、押出し繊維は織基材及び/又は不織基材に含まれていてもよく、且つ/又は樹脂と組み合わせて使用してもよい。いくつかの実施形態において、熱可塑性繊維をプリント基板積層体に組み込んでもよい。いくつかの実施形態において、熱可塑性繊維は、1GHzを越える用途、20GHzを越える用途、又は50GHzを越える用途のためのプリント基板積層体に組み込んでもよい。いくつかの実施形態において、熱可塑性繊維を組み込んだプリント回路板は、79GHzという高い周波数で使用してもよい。いくつかの実施形態において、熱可塑性アロイ繊維は、銅及び/又は銀ゼオライトのナノパウダー及び/又はマイクロパウダーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、熱可塑性アロイ繊維は、抗菌布に使用してもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、FEP/PEI及びPFA/PEIの熱可塑性アロイの繊維は、例えば、熱硬化性樹脂、エポキシ、熱可塑性ポリマー、ポリエステル、ビニルエステル、及び/又はナイロン等の結着ポリマーと混合してもよい。
【0103】
いくつかの実施形態において、熱可塑性アロイは、銅線上に押し出して、ジャケット又は絶縁層を形成してもよい。ジャケット又は絶縁層は、平滑な表面又は断面設計を有していてもよい。いくつかの実施形態において、得られるポリマー絶縁ワイヤ又はケーブルは、自動車及び/又は航空宇宙用途に使用してもよい。いくつかの実施形態において、得られるポリマー絶縁ワイヤ又はケーブルは、ダウンホール等の石油・ガス関連用途に使用してもよい。
【0104】
いくつかの実施形態において、FEP/PEI及び/又はPFA/PEIの熱可塑性アロイは、例えば、5G等の無線通信で使用するためのアンテナ、アンテナハウジング、レドーム、及び/又はその他の関連部材に組み込んでもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、FEP/PEI及びPFA/PEIの熱可塑性アロイは、射出成形してもよい。いくつかの実施形態において、熱可塑性アロイを射出成形して、例えば、電子用途、自動車用途、充電用途、無線通信設備、及び/又は光学コネクタで使用するための電気コネクタを形成してもよい。
【実施例
【0106】
実施例1:FEP-PEIブレンドの薄膜
【0107】
下記組み合わせのポリマー、すなわち、下記表1に示す性質を有する全フッ素化FEPフルオロポリマー、末端基を有する官能基化フッ素化FEPフルオロポリマー、ポリエーテルイミド(PEI)、マレイン酸無水物末端基を有する官能基化ポリエーテルイミド、及びビス(オキサゾリン)を、Leistritz ZSE-18 HP-PH二軸押出機中、280℃~320℃の温度勾配で溶融ブレンドし、化合物をペレット状に押し出した。下記表2に、各ポリマーのブレンド比を示す。混合したポリマーブレンドを、Brabender 1”一軸押出機でフレキシブルリップ・フィルムダイを介して溶融押出しして、均一な(測定厚さが0.38mmの)フィルムを形成した。
【表1】
【表2】
【0108】
図1A~1Dは、形成したペレットの表面の各種写真を表す。図1A~1Dから分かるとおり、本明細書中で提供されるポリマーブレンドからペレットを形成した場合、形成されたペレットは、ペレット表面の均一性及び平滑性が向上していた。
【0109】
図2A~2Dは、コントロールポリマー(全フッ素化FEP)及び本明細書中で提供されるFEP-PEIポリマーブレンドから形成したペレットの各種写真を表す。図2B~2Dから分かるとおり、FEP-PEIポリマーブレンドから形成したペレットは、均一な形状を有する。
【0110】
引張強度
【0111】
表1に表すFEP-PEIブレンドの薄膜を、引張強度について試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル膜を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル膜をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。引張強度は、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。引張強度試験の結果を下記表3に示す。
【表3】
【0112】
表3及び図3に示すとおり、官能基化ポリエーテルイミド及びビス(オキサゾリン)相溶化剤を含むFEP-PEIブレンド(256C)の薄膜は、コントロールや、官能基化ポリエーテルイミド及びビス(オキサゾリン)相溶化剤を含まないFEP-PEIブレンド(256A)に対して、引張強度が上昇していた。
【0113】
伸び
【0114】
表2に表すFEP-PEIブレンドの薄膜を、伸びについて試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル膜を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル膜をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。伸びは、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。伸び試験の結果を下記表4に示す。
【表4】
【0115】
表4及び図4に示すとおり、官能基化ポリエーテルイミド及びビス(オキサゾリン)相溶化剤を含むFEP-PEIブレンド(256C)の薄膜は、コントロールと比較した場合に伸びが大きく低下していた。また、256Cブレンドは、官能基化ポリエーテルイミド及びビス(オキサゾリン)相溶化剤を含まないFEP-PEIブレンド(256A)と比較した場合も伸びが低下していた。
【0116】
ヤング率
【0117】
表2に表すFEP-PEIブレンドの薄膜に対してヤング率試験を実施した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル膜を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル膜をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。ヤング率は、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。ヤング率試験の結果を下記表5に示す。
【表5】
【0118】
表5及び図5に示すとおり、官能基化ポリエーテルイミド及びビス(オキサゾリン)相溶化剤を含むFEP-PEIブレンド(256C)の薄膜は、コントロールと比較した場合にヤング率が2.4倍上昇していた。また、256Cブレンドは、官能基化ポリエーテルイミド及びビス(オキサゾリン)相溶化剤を含まないFEP-PEIブレンド(256A)と比較した場合もヤング率が上昇していた。
【0119】
降伏強度
【0120】
表2に表すFEP-PEIブレンドの薄膜を、降伏強度について試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル膜を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル膜をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。降伏強度は、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。降伏強度試験の結果を下記表6に示す。
【表6】
【0121】
誘電率
【0122】
表2に表すFEP-PEIブレンドの薄膜を、誘電率について試験した。誘電率試験の結果を下記表6に示す。
【表7】
【0123】
表7及び図6から分かるとおり、PEIを添加すると誘電率にわずかな上昇が見られた。PEIの誘電率は3.2である。FEPに6%のPEIを添加すると、誘電率は2.17から2.36に上昇しただけであった。
【0124】
実施例2:FEP-PEIブレンドの射出成形部品(1stラン)
【0125】
上記表1に示した性質を有する全フッ素化FEPフルオロポリマー、末端基を有する官能基化フッ素化FEPフルオロポリマー、ポリエーテルイミド、マレイン酸無水物末端基を有する官能基化ポリエーテルイミド、及びビス(オキサゾリン)を含むポリマーの様々な組み合わせを、Leistritz ZSE-18 HP-PH二軸押出機中で溶融ブレンドし、化合物をペレット状に押し出した。下記表8に、各種ブレンドの組成及び各ポリマーのブレンド比を表す。次いで、住友SE75DU射出成形機を使用し、温度プロファイル300℃~400℃にて各化合物を射出成形して、ASTM D638 Type V引張試験片とした。
【表8】
【0126】
引張強度
【0127】
表8に表すFEP-PEIブレンドの射出成形部品を、引張強度について試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル品を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル品をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。引張強度は、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。引張強度試験の結果を下記表9に示す。
【表9】
【0128】
表9及び図7に示すとおり、5%PEI、1.0%PEI-MAH、及び相溶化剤として0.1%ビス(オキサゾリン)を含むFEP-PEIブレンド(236C)は、コントロールに対して引張強度が約40%上昇していた。
【0129】
ヤング率
【0130】
表8に表すFEP-PEIブレンドの射出成形部品を、ヤング率について試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル品を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル品をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。ヤング率は、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。ヤング率試験の結果を下記表10に示す。
【表10】
【0131】
表10及び図8に示すとおり、5%PEI、1.0%PEI-MAH、及び相溶化剤として0.1%ビス(オキサゾリン)を含むFEP-PEIブレンド(236C)は、コントロールと比較した場合にヤング率が約60%上昇していた。
【0132】
破断伸び
【0133】
表8に表すFEP-PEIブレンドの射出成形部品を、破断伸びについて試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル品を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル品をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。破断伸びは、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。破断伸び試験の結果を下記表11に示す。
【表11】
【0134】
表11及び図9に示すとおり、5%PEI、1.0%PEI-MAH、及び相溶化剤として0.1%ビス(オキサゾリン)を含むFEP-PEIブレンド(236C)は、コントロールと比較した場合に破断伸びが大きく低下していた。
【0135】
降伏強度
【0136】
表8に表すFEP-PEIブレンドの射出成形部品を、降伏強度について試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル品を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル品をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。降伏強度は、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。降伏強度試験の結果を下記表12に示す。
【表12】
【0137】
表12及び図10に示すとおり、5%PEI、1.0%PEI-MAH、及び相溶化剤として0.1%ビス(オキサゾリン)を含むFEP-PEIブレンド(236C)は、コントロールと比較した場合に降伏強度が約80%上昇していた。
【0138】
実施例3:FEP-PEIブレンドの射出成形部品(2ndラン)
【0139】
上記表1に示した性質を有する全フッ素化FEPフルオロポリマー、末端基を有する官能基化フッ素化FEPフルオロポリマー、ポリエーテルイミド、マレイン酸無水物末端基を有する官能基化ポリエーテルイミド、及びビス(オキサゾリン)を含むポリマーの様々な組み合わせを、Leistritz ZSE-18 HP-PH二軸押出機中で溶融ブレンドし、化合物をペレット状に押し出した。次いで、住友SE75DU射出成形機を使用し、温度プロファイル300℃~400℃にて各化合物を射出成形して、ASTM D638 Type V引張試験片とした。下記表13に、2ndランにおける各種ブレンドの組成及び各ポリマーのブレンド比を表す。
【表13】
【0140】
引張強度
【0141】
表13に表すFEP-PEIブレンドの射出成形部品を、引張強度について試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル品を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル品をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。引張強度は、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。引張強度試験の結果を下記表14に示す。
【表14】
【0142】
表14及び図11に示すとおり、大部分がFEPブレンドであるFEP-PEIブレンド(121D;FEP:PEI=90:10)は、引張強度が48%上昇していた。しかしながら、大部分がPEIのブレンド(サンプル121E;PEI:FEP=90:10)だと、引張強度は純粋全フッ素化FEPと同様(6%低いのみ)であった。
【0143】
ヤング率
【0144】
表13に表すFEP-PEIブレンドの射出成形部品を、ヤング率について試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル品を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル品をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。ヤング率は、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。ヤング率試験の結果を下記表15に示す。
【表15】
【0145】
表15及び図12に示すとおり、大部分がFEPブレンドであるFEP-PEIブレンド(121D;FEP:PEI=90:10)は、コントロールと比較した場合に、ヤング率が41%上昇していた。しかしながら、大部分がPEIのブレンド(サンプル121E;PEI:FEP=90:10)だと、純粋全フッ素化FEPと比較してわずかに3%の上昇が測定された。
【0146】
破断伸び
【0147】
表13に表すFEP-PEIブレンドの射出成形部品を、破断伸びについて試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル品を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル品をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。破断伸びは、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。破断伸び試験の結果を下記表16に示す。
【表16】
【0148】
表16及び図13に示すとおり、大部分がFEPブレンドであるFEP-PEIブレンド(121D;FEP:PEI=90:10)は、純粋PEIと比較して伸びが大きく低下していた。大部分がPEIのブレンド(サンプル121E;PEI:FEP=90:10)だと、伸び率は31%であり純粋PEIとほぼ同じであった。
【0149】
降伏強度
【0150】
表13に表すFEP-PEIブレンドの射出成形部品を、降伏強度について試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル品を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル品をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。降伏強度は、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。降伏強度試験の結果を下記表17に示す。
【表17】
【0151】
表17及び図14に示すとおり、大部分がFEPブレンドであるFEP-PEIブレンド(121D;FEP:PEI=90:10)は、純粋全フッ素化FEPと比較して降伏強度が大きく上昇していた。
【0152】
実施例4:ポリマーブレンドの重量保持率
【0153】
図15は、0℃~800℃の温度範囲における各種ポリマーブレンドの重量保持率を表すグラフである。図15から分かるとおり、FEP、カルボン酸官能性FEP、PEI、PEI-MAH、及びビス(オキサゾリン)を含むブレンドは、800℃における重量保持率が18%である一方、純粋FEPや、5成分の全ては含んでいない他のブレンドでは完全に劣化している。
【0154】
実施例5:ポリマーブレンドの貯蔵弾性率
【0155】
図16は、0℃~250℃の温度範囲における各種ポリマーブレンドの貯蔵弾性率(MPa)を表すグラフである。図16から分かるとおり、大部分がFEPブレンドである射出成形FEP-PEIブレンド(サンプル236C;FEP:PEI=94%:6%)を動的機械分析(DMA)したところ、純粋全フッ素化FEPと比較した場合に貯蔵弾性率が750MPaから1250MPaへ大きく上昇していた。大部分がPEIのブレンド(サンプル121E;PEI:FEP=90:10)だと、貯蔵弾性率は純粋PEIと同様であった。
【0156】
実施例6:FEP-PEIブレンドの別の薄膜
【0157】
[715A]実験1:下記組み合わせのポリマーを独立に計量した後、ポリエチレンバッグ内で混合した。150gのカルボン酸官能性FEPフルオロポリマー、975gのPFA、及び195gのポリイミド(PI)、全混合質量:1320g。混合後、ポリマーの組み合わせをLeistritz ZSE-18 HP-PH二軸押出機中、280℃~320℃の温度勾配で溶融ブレンドし、化合物をペレット状に押し出した。混合したポリマーブレンドを、Brabender 1”一軸押出機でフレキシブルリップ・フィルムダイを介して溶融押出しして、均一な(測定厚さが0.38mmの)フィルムを形成した。
【0158】
実施例6及び7で使用したポリイミド(PI)は、溶融加工性ポリイミド又は非溶融加工性ポリイミドを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、PIは、熱可塑性ポリイミド(TPI)、熱硬化性ポリイミド(TSPI)、及び/又はポリアミック酸を含んでいてもよい。
【0159】
[715B]実験2:下記組み合わせのポリマーを独立に計量した後、ポリエチレンバッグ内で混合した。150gのカルボン酸官能性FEPフルオロポリマー、975gのPFA、195gの熱可塑性ポリイミド(TPI)、及び1.3gのビス(オキサゾリン)、全混合質量:1321g。混合後、ポリマーの組み合わせをLeistritz ZSE-18 HP-PH二軸押出機中、280℃~320℃の温度勾配で溶融ブレンドし、化合物をペレット状に押し出した。混合したポリマーブレンドを、Brabender 1”一軸押出機でフレキシブルリップ・フィルムダイを介して溶融押出しして、均一な(測定厚さが0.38mmの)フィルムを形成した。
【0160】
[715C]実験3:下記組み合わせのポリマーを独立に計量した後、ポリエチレンバッグ内で混合した。150gのカルボン酸官能性FEPフルオロポリマー、975gのPFA、195gの熱可塑性ポリイミド(TPI)、及び13gのビス(オキサゾリン)、全混合質量:1333g。混合後、ポリマーの組み合わせをLeistritz ZSE-18 HP-PH二軸押出機中、280℃~320℃の温度勾配で溶融ブレンドし、化合物をペレット状に押し出した。混合したポリマーブレンドを、Brabender 1”一軸押出機でフレキシブルリップ・フィルムダイを介して溶融押出しして、均一な(測定厚さが0.38mmの)フィルムを形成した。
【0161】
[715D]実験4:下記組み合わせのポリマーを独立に計量した後、ポリエチレンバッグ内で混合した。150gのカルボン酸官能性FEPフルオロポリマー、975gのPFA、195gの熱可塑性ポリイミド(TPI)、39gのカルボン酸末端基を有する官能基化ポリエーテルイミド、及び1.3gのビス(オキサゾリン)、全混合質量:1360g。混合後、ポリマーの組み合わせをLeistritz ZSE-18 HP-PH二軸押出機中、280℃~320℃の温度勾配で溶融ブレンドし、化合物をペレット状に押し出した。混合したポリマーブレンドを、Brabender 1”一軸押出機でフレキシブルリップ・フィルムダイを介して溶融押出しして、均一な(測定厚さが0.38mmの)フィルムを形成した。
【0162】
[715E]実験5:下記組み合わせのポリマーを独立に計量した後、ポリエチレンバッグ内で混合した。150gのカルボン酸官能性FEPフルオロポリマー、975gのPFA、195gの熱可塑性ポリイミド(TPI)、39gのカルボン酸末端基を有する官能基化ポリエーテルイミド、及び13gのビス(オキサゾリン)、全混合質量:1372g。混合後、ポリマーの組み合わせをLeistritz ZSE-18 HP-PH二軸押出機中、280℃~320℃の温度勾配で溶融ブレンドし、化合物をペレット状に押し出した。混合したポリマーブレンドを、Brabender 1”一軸押出機でフレキシブルリップ・フィルムダイを介して溶融押出しして、均一な(測定厚さが0.38mmの)フィルムを形成した。
【0163】
[715F]実験6:下記組み合わせのポリマーを独立に計量した後、ポリエチレンバッグ内で混合した。150gのカルボン酸官能性FEPフルオロポリマー、975gのPFA、195gの熱可塑性ポリイミド(TPI)、39gの無水物末端基を有する官能基化ポリエーテルイミド、及び13gのビス(オキサゾリン)、全混合質量:1372g。混合後、ポリマーの組み合わせをLeistritz ZSE-18 HP-PH二軸押出機中、280℃~320℃の温度勾配で溶融ブレンドし、化合物をペレット状に押し出した。混合したポリマーブレンドを、Brabender 1”一軸押出機でフレキシブルリップ・フィルムダイを介して溶融押出しして、均一な(測定厚さが0.38mmの)フィルムを形成した。
【0164】
[715G]実験7:下記組み合わせのポリマーを独立に計量した後、ポリエチレンバッグ内で混合した。150gのカルボン酸官能性FEPフルオロポリマー、975gのPFA、195gの熱可塑性ポリイミド(TPI)、及び39gのアミン末端基を有する官能性ポリエーテルイミド、全混合質量:1359g。混合後、ポリマーの組み合わせをLeistritz ZSE-18 HP-PH二軸押出機中、280℃~320℃の温度勾配で溶融ブレンドし、化合物をペレット状に押し出した。混合したポリマーブレンドを、Brabender 1”一軸押出機でフレキシブルリップ・フィルムダイを介して溶融押出しして、均一な(測定厚さが0.38mmの)フィルムを形成した。
【0165】
下記表18A及び18Bに、実験715A~715Gのポリマーブレンド比をまとめた。表18Aはブレンド比を重量%で表し、表18Bはブレンド比をグラムで表した。
【表18】
【表19】
【0166】
引張強度
【0167】
表18A及び18Bに表すFEP-PEIブレンドの薄膜を、引張強度について試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル膜を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル膜をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。引張強度は、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。引張強度試験の結果を下記表19に示す。
【表20】
【0168】
表19及び図20に示すとおり、アミン末端基を有するポリエーテルイミドを含みビス(オキサゾリン)相溶化剤を含まない実験715GのFEP-PEIブレンドの薄膜は、カルボキシル化FEP、PFA、及び他のFEP-PEIブレンドに対して引張強度が上昇していた。
【0169】
破断伸び
【0170】
表18A及び18Bに表すFEP-PEIブレンドの薄膜を、破断伸びについて試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル膜を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル膜をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。伸びは、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。伸び試験の結果を下記表20に示す。
【表21】
【0171】
表20及び図21に示すとおり、アミン末端基を有するポリエーテルイミドを含みビス(オキサゾリン)相溶化剤を含まない実験715GのFEP-PEIブレンドの薄膜は、カルボキシル化FEP及びPFAと比較した場合に、伸びが大きく低下していた。
【0172】
ヤング率
【0173】
表18A及び18Bに表すFEP-PEIブレンドの薄膜に対してヤング率試験を実施した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル膜を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル膜をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。ヤング率は、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。ヤング率試験の結果を下記表21に示す。
【表22】
【0174】
表21及び図22に示すとおり、アミン末端基を有するポリエーテルイミドを含みビス(オキサゾリン)相溶化剤を含まない実験715GのFEP-PEIブレンドの薄膜は、カルボキシル化FEP及びPFAと比較した場合に、ヤング率が大きく上昇していた。また、715Gブレンドは、715A~Eブレンドと比較した場合もヤング率が上昇していた。
【0175】
降伏強度
【0176】
表18A及び18Bに表すFEP-PEIブレンドの薄膜を、降伏強度について試験した。Lucris MA Series 3プレスを使用し、ASTM D638 Type V引張試験片ダイでサンプル膜を打ち抜いた。空気圧グリップでサンプルを保持して、サンプル膜をInstron万能試験機に入れた。グリップ間距離は25.4mmに設定した。破断が発生してサンプルが破壊されるまで、50mm/分の速度で試験した。降伏強度は、ASTM D638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plasticsで測定した。降伏強度試験の結果を下記表22に示す。
【表23】
【0177】
表22及び図23に示すとおり、アミン末端基を有するポリエーテルイミドを含みビス(オキサゾリン)相溶化剤を含まない実験715GのFEP-PEIブレンドの薄膜は、カルボキシル化FEP及びPFAと比較した場合に、降伏強度が大きく上昇していた。また、715Gブレンドは、715A~Fブレンドと比較した場合も降伏強度が上昇していた。
【0178】
熱膨張率
【0179】
射出成形サンプルの板(plaque)を取り出し、長方形に切り出した。ゲート位置に基づいて、流動方向、横断方向、及び厚さ方向を示すように長方形の面をマークした。長方形の大きさは約5mm、4.5mm×2mmであった。サンプルは各面とも水平であった。熱機械分析装置(TMA)のサンプルホルダを開き、測定する面を下にしてサンプルをホルダ内に配置した。サンプル上へプローブを下ろし、0.100Nの力で固定した。サンプルチャンバを閉じ、温度を45℃で平衡させた。サンプルチャンバを10℃/分の速度で最終温度120℃まで加熱し始め、一定温度で5分間保持した。サイクル2では、温度を10℃/分の速度で55℃まで低下させた。サイクル3では、温度チャンバを5℃/分で190℃まで加熱した。試験が完了したら、実験データをTA汎用分析ソフトにエクスポートした。プロット中、2つの傾きを有する直線が得られた。開始温度(ガラス転移点又は傾きが変化する点)前後の熱膨張率(CTE)を取得した。各面についてこれを繰り返し、流動方向(整列したポリマー変化)、(流動に対する)横断方向(未整列の鎖)、及び厚さ方向におけるCTEを得た。
【0180】
下記表23は、試験したブレンドの横断方向(Z方向)におけるCTEを表す。
【表24】
【0181】
下記表24は、試験したブレンドの流動方向(X軸)におけるCTEを表す。
【表25】
【0182】
熱安定性
【0183】
PFAフルオロポリマー、熱可塑性ポリイミド(TPI)、及び715Gブレンドを、熱安定性について試験した。試験するポリマーのサンプルを切断し、TGAパンに入れた。サンプルの重量は約10mg~約15mgとする。サンプルパンをTGA内に配置し、炉を閉じた。熱安定性プロトコルに関して、10ml/分の窒素ガス連続フローでTGA炉をパージした。TGA炉のプログラムは、10℃/分の温度勾配で、室温(15~30℃、好ましくは23℃)から800℃までの加熱に設定した。TGAでは、サンプル加熱中の時間に対するサンプル重量を記録した。加熱サイクルが完了したら、全ての残留材料を含むパンを炉から取り除いた。各ポリマーの5%重量損失温度を下記表25に示す。
【表26】
【0184】
表25及び図24に示すとおり、715Gブレンドは507℃まで高い熱安定性を示し、PFAフルオロポリマー及び熱可塑性ポリイミド(TPI)の熱安定性と同等であった。
【0185】
実施例7:PEI/PFAブレンド
【0186】
PEI/PFA反応性ポリマー相溶化剤の調製
【0187】
反応性ポリマー相溶化剤は、相溶化剤の1種である。反応性ポリマー相溶化剤は、官能基化フルオロポリマーを1つ以上のモノマー、オリゴマー、又はポリマー等の多官能分子とブレンドして形成してもよい。多官能分子は、例えば、ジアミン、二無水物、ジカルボン酸、ジエポキシ、ジヒドロキシル等の末端基を有していてもよい。多官能分子は二官能種に限定されず、三及び/又は四官能分子を含んでいてもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤は、官能基化フルオロポリマー、ジアミン官能基化分子、及び二無水物官能基化分子を混合して形成してもよい。いくつかの実施形態において、ジアミン及び/又は二無水物官能基化分子はモノマーである。いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤はまた、例えば、モノマー性、オリゴマー性、又はポリマー性PEI-アミン等のアミン末端分子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤は、官能基化フルオロポリマー及びポリマー性PEI-アミン等のアミン末端分子を混合して形成してもよい。
【0188】
いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤は、単一工程で各種成分をブレンドして形成してもよい。いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤の成分は、押出機を用いてブレンドしてもよい。
【0189】
本実施例において、反応性ポリマー相溶化剤は、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)と、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、PEI-アミン、及び4,4’-オキシジアニリンを有するせん断PFAとを均一になるまでブレンドして作製してもよい。各化学種の割合を表26に表す。せん断PFAは、高せん断押出機を用いて、市販のPFAを加工して作製する。せん断PFAは、反応性末端基の数が市販の未せん断PFAの約3~5倍である。4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物及び4,4’-オキシジアニリンは、いずれもPEIモノマーである。
【0190】
サンプルを十分に混合したら、混合物を4.0~6.0kg/時でLeistritz ZSE-18 HP-PH二軸押出機に供給し、化合物をペレット状に押し出した。サンプル161Aの場合、ゾーン1から8は350℃~390℃に加熱した。スクリュー速度は250rpmの一定に保持した。また、PEI/PFA反応性ポリマー相溶化剤ブレンドは、PFAを用いて又は用いないで調製できる。いずれの反応性ポリマー相溶化剤ブレンドも、淡黄色ペレットとして得た。
【表27】
【0191】
PEI/PFA相溶化ブレンドの調製
【0192】
PFAとPEI及びTPIとの相溶化におけるブレンド処方を表27(下記)に表す。反応性相溶化剤サンプル161A、PEI又はTPI、1,4-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン、ナノ粒子、及びPFAを全て1つのバッグに加え、均一になるまで混合した。表27に表すとおり、サンプル162Fではナノ粒子Silocym-Aを用いなかった。次いで、混合物を2.0~6.0kg/時でLeistritz ZSE-18 HP-PH二軸押出機内に供給し、化合物をペレット状に押し出した。ゾーン1から8は350℃~390℃に加熱した。スクリュー速度は250rpmの一定に保持した。PEI/PFAブレンドを淡黄色ペレットとして得た。
【0193】
PEI/PFA薄膜の調製
【0194】
本実施例7で検討するPEI/PFA膜はいずれも、9”FL-100コートハンガーダイを備えたDavis Standard 1”GP一軸押出機で製造した。スクリュー速度は20~40rpmとした。溶融圧力は490~920PSIとした。ゾーン1~4の温度は327℃~371℃とした。製造した膜の厚さは25~100μmであった。
【0195】
PEI/PFA繊維の調製
【0196】
本実施例で検討したPEI/PEI繊維はいずれも、12ホール0.8mmブロックダイを備えたLeistriz ZSE 27 HP二軸押出機で製造した。スクリュー速度は100rpmの一定に保持した。溶融圧力は325~500PSIとした。ゾーン1~8の温度は325~380℃とした。供給速度は3.0kg/時の一定に保持した。繊維の直径を測定したところ0.09mm~0.2mmであった。
【0197】
引張試験片の引張試験
【0198】
射出成形サンプルの機械試験は、いずれもASTM D638 Type V引張試験片を用いて実施した。全ての引張試験は、Type V 引張試験片及びInstron machine model3365を用いてASTM D638に従って完了した。いずれのサンプルも10mm/分で破断するまで引っ張った。BlueHill2ソフトを用いて、ヤング率(YM)、引張強度、及び伸びを算出した。いずれのデータも4つの引張試験片に対する試験の平均を表す。
【0199】
繊維の引張試験
【0200】
ASTM D-3379-75に従い、テープを用いて、ゲージ長さ30mmで各繊維を紙製マウントに取り付けた。2本目のテープと紙片とを用いて、繊維をその場に固定し、Instronグリップから繊維に直接かかる摩擦を排除した。各サンプルについて、Ziess Stereo Discovery V.12顕微鏡を用いて繊維の直径を測定した。Instron5582万能試験機を用いて、フルオロポリマー及びフルオロポリマーアロイの繊維の物性を測定した。Instron装置は、1kNロードセル及びウェッジアクショングリップを備えていた。各サンプルをウェッジアクショングリップに設置したら、ハサミで繊維マウントを切断した。引張測定は、伸長速度50mm/分で破断するまで実施した。BlueHill2ソフトを用いて、引張強度、引張弾性率、及び伸びを算出した。報告した値はいずれも15サンプルの平均である。
【0201】
熱機械分析(TMA)
【0202】
3×3cm射出成形板から切り出した200~300μmのサンプルを用いて、TA Instruments TMA Q400で熱膨張率(CTE)を測定した。サンプルの初期寸法は、ミツトヨ293シリーズマイクロメータを用いて測定した。いずれのサンプルも以下の方法で処理した。1:装置を釣り合わせて力を0.10N未満とする。2:サンプルを48.0℃で平衡化させる。3:サイクル0の終点をマークする。4:サンプル温度が100.0℃に到達するまで10.0℃/分の速度でサンプル温度に勾配をつける。5:温度100.0℃で5.00分保持する。6:サイクル1の終点をマークする。7:サンプル温度が55.0℃に到達するまで10.0℃/分の速度でサンプル温度に勾配をつける。8:サイクル2の終点をマークする。9:サンプル温度が190.0℃に到達するまで5.0℃/分の速度でサンプル温度に勾配をつける。10:サイクル3の終点をマークする。11:サンプル温度を30.0℃まで急変化させる。12:方法を完了する。
【0203】
下記式を用いてCTE(α)を算出した。
α=(1/L)(ΔL/ΔT)
式中、Lは25℃におけるサンプルの初期高さを表す。ΔLは高さの変化(ミクロン;μm)を表す。ΔTは、温度の変化(摂氏;℃)を表す。いずれのサンプルも、温度変化(ΔT)が摂氏5度となった時点で測定した。特に言及しない限り、報告した値はいずれも射出成形サンプルのZ方向(厚さ)におけるものである。
【0204】
曲げ試験片の動的機械分析(DMA)
【0205】
12.6×1.2cm射出成形曲げ試験片を用いて、TA Instruments DMA Q800でガラス転移点(T)及び貯蔵弾性率(G’)を測定した。ミツトヨ絶対式CD-6マイクロメータを用いて、サンプルの初期寸法を測定した。いずれのサンプルも、以下の方法で処理した。1:データ保存オフ、2:40.00℃で平衡化、3:等温で1.00分、4:データ保存オン、5:3.00℃/分で270.00℃まで勾配、6:方法を完了。
【0206】
データ及び分析
【0207】
図25は、Leistriz二軸押出機内での重縮合によりPEI/PFA反応性ポリマー相溶化剤ブレンドを調製可能な反応を表す。本実施形態において、重縮合は、押出機の熱によって進行し、せん断PFAによって生成したHFが、反応を進行させるルイス酸として作用する。図25に表すとおり、サンプル161A等の反応性ポリマー相溶化剤は、4,4-オキシジアニリン、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、及びPEI-アミンを用いたランダムブロックコポリマーとして調製してもよい。いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤は、PFAとPEI又はTPIとの表面張力を低減させるのに有効である。モノマーである4,4’-オキシジアニリン及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物は、より大きいポリマーであるせん断PFA及びPEI-アミンに対する有効な鎖伸長剤として作用する。図25に表すとおり、対応するブロックコポリマー、モノマー、及びオリゴマーを反応させてイミド及びアミド結合を形成し、新たなランダムブロックコポリマー反応性ポリマー相溶化剤としてもよい。
【0208】
表27は、サンプル891J、891L、及び162Fの組成を表す。上で検討したとおり、サンプル161A等の反応性ポリマー相溶化剤や他の相溶化剤を用いて、PEI又はTPIとPFAとの表面張力を低減させてもよい。ビス(オキサゾリン)化合物である1,4-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼンを用いて、PEI及びTPIをPFAに反応させた。更に、161A等の反応性ポリマー相溶化剤は、PFAにおけるPEI及びTPIの混和性を上昇させて相溶性を向上させるものであってもよい。ポリマー間の相溶性が向上したら、加工性が向上する。
【表28】
【0209】
サンプル891J、891L、及び162Fは、反応性ポリマー相溶化剤を含まないPEI/PFAブレンドであるTPHA 1000Bに対して加工特性が向上していた。反応性ポリマー相溶化剤161Aを添加すると、供給速度がTPHA1000Bでは1時間あたり2.0kgだったが、162Fでは1時間あたり6.0kgという高い値に上昇した。サンプル891J及び891Lは、いずれも1時間あたり4.5kgで加工された。891J、891L、及び162Fから製造したペレットは、TPHA 1000Bと比較してより均一であり、ダイスウェルが大きく低減していた。
【0210】
表28は、射出成形引張試験片を室温で用いた場合の162F、891J、891L、TPHA-1000B、及びPFAの引張データを表す。データから、最大引張強度はPFAの19から最高で891Jの31まで上昇することが分かる。これは38%を越える上昇率である。サンプルTPHA-1000Bと比較した場合も、38%を越える大きな上昇が見られる。PFAと比較した場合、他のすべてのサンプルでヤング率が向上していた。TPHA-1000Bと比較した場合、891J及び891Lではわずかな上昇しか見られなかった。TPHA-1000Bと比較した場合、162Fでは479.4MPaから348.4MPaへと大きな低下が見られた。他のサンプルで伸びの上昇が見られたのは予期しない結果であった。例えば、162Fは伸びが218.5%であり、伸びが230.9%であるPFAと非常に近い。サンプルTPHA-1000Bと比較した場合、他のサンプルは伸びが非常に大きく上昇している。
【表29】
【0211】
表29は、162F、891J、891L、TPHA-1000B、及びPFAのZ方向(厚さ)における熱膨張率(CTE)を温度の関数として表す。162Fは、TPHA-1000Bと比較して、全ての温度でCTEがかなり低い。サンプル891J及び891Lは、TPHA-1000Bに対して、120~180℃の温度でCTEが低い。いずれのサンプルも、PFAに対して、120℃、150℃、及び180℃でCTEが低い。162Fのみが、80℃及び100℃で一貫してCTE値が低い。
【表30】
【0212】
表30は、100℃及び150℃におけるPOLY-162F、POLY-0891J、POLY-0891L、TPHA-1000B、及びPFAの貯蔵弾性率を表す。表29中のサンプルはいずれも同じ条件下で射出成形したものである。サンプル162F、891J、及び891LはいずれもPFAより貯蔵弾性率が高かった。特に、サンプル891Lは100℃での貯蔵弾性率が321.7MPaであった。これは、100℃での値が107.2MPaであったコントロールPFAの貯蔵弾性率の約3倍である。サンプルTPHA-1000Bは貯蔵弾性率が最も低く、100℃で69.8MPa、150℃で41.6MPaであった。
【表31】
【0213】
貯蔵弾性率は、同位相における材料の弾性応答の尺度である。貯蔵弾性率が高いほど、材料が貯蔵できる歪みエネルギーが大きくなる。
【0214】
表32は、約16.9GHzにおけるPFA、891J、及び891Lの損失係数(D)及び誘電率(D)を表す。材料は、スプリット空洞共振器(split cavity resonator)を用いて、厚さ約2mmの板状で試験した。サンプルIDで示す通り、各サンプルを2回試験した。想定した通り、他の材料と比較してPFAのD及びDが最も低い。
【表32】
【0215】
表33は、室温における162F、891J、891L、TPHA-1000B、及びPFAから製造した繊維の物性を表す。反応性ポリマー相溶化剤161Aを含む891Lの最大引張強度が68.8MPaで最も大きかった。
【表33】
【0216】
本明細書中では、ポリマーアロイの各種ブレンドを開示している。いくつかの実施形態において、ポリマーアロイは、フルオロポリマー、相溶化剤、及び非フルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーは、完全に又は部分的にフッ素化していてもよい。非フルオロポリマーは、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ナイロン(複数種)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエステル、熱可塑性ウレタン(TPU)、環状ポリオレフィンコポリマー(COC)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリスルホン(PSU)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及び/又はポリフェニレンオキサイド(PPO)等の非フッ素化ポリマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、フルオロポリマーは、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)又はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)である。
【0217】
いくつかの実施形態において、相溶化剤は反応性ポリマー相溶化剤及び/又はビス(オキサゾリン)化合物であってもよい。いくつかの実施形態において、ポリマーアロイは、反応性ポリマー相溶化剤及びビス(オキサゾリン)化合物の両方を含む。
【0218】
いくつかの実施形態において、ポリマーアロイは、熱可塑性ポリイミド(TPI)等の溶融加工性ポリイミドを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ポリマーアロイはナノ粒子を含む。
【0219】
いくつかの実施形態において、ポリマーアロイは、少なくとも約50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%のPFAや他のフルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーアロイは、最大で約55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%のPFAや他のフルオロポリマーを含む。
【0220】
いくつかの実施形態において、ポリマーアロイは、約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%の反応性ポリマー相溶化剤を含む。
【0221】
いくつかの実施形態において、ポリマーアロイは、少なくとも約0.1%、0.5%、1%、3%、5%、10%、15%、又は20%のPEI又はPI等の非フッ素化ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーアロイは、最大で約1%、3%、5%、10%、15%、20%、又は25%のPEI又はPI等の非フッ素化ポリマーを含む。
【0222】
いくつかの実施形態において、ポリマーアロイは、少なくとも約0.1%、0.5%、1%、3%、5%、又は10%のビス(オキサゾリン)化合物を含む。いくつかの実施形態において、ポリマーアロイは、最大で約0.3%、0.5%、1%、3%、5%、10%、又は25%のビス(オキサゾリン)化合物を含む。
【0223】
いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤は、少なくとも約50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%のせん断PFAや他のせん断フルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤は、最大で約55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%のせん断PFAや他のせん断フルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態において、せん断PFAや他のせん断フルオロポリマーは、機械的にせん断される。
【0224】
いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤は、少なくとも約0.1%、0.3%、0.5%、1%、3%、又は5%の二無水物を含む。いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤は、最大で約0.3%、0.5%、1%、3%、5%、又は10%の二無水物を含む。
【0225】
いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤は、少なくとも約0.1%、0.3%、0.5%、1%、又は3%のジアミンを含む。いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤は、最大で約0.3%、0.5%、1%、3%、5%、又は10%のジアミンを含む。
【0226】
いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤は、少なくとも約1%、3%、5%、10%、15%、又は20%のPEI-アミン等のアミン末端ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、反応性ポリマー相溶化剤は、最大で約3%、5%、10%、15%、20%、又は25%のPEI-アミン等のアミン末端ポリマーを含む。
【0227】
結論
本発明に係る開示した実施形態における所定の要素は、単一の構造、単一の工程、又は単一の物質等において実施できることが理解できるであろう。同様に、開示した実施形態における所定の要素は、複数の構造、工程、又は物質等で実施できる。
【0228】
上述の説明は、本開示のプロセス、装置、製品、組成物、及びその他の教示を図示及び記載するものである。加えて、本開示では、開示したプロセス、装置、製造、組成物、及びその他の教示について一定の実施形態しか提示及び記載していない。しかしながら、上記の通り、本開示の教示は、他の様々な組み合わせ、変形形態、及び環境で使用でき、且つ当業者の技術及び/又は知識に対応して、本明細書に記載した教示の範囲内で変更及び変形させられることが理解できるであろう。更に、本明細書中で上記した実施形態は、本開示のプロセス、装置、製品、組成物、及びその他の教示を実施するためのものとして知られている一定の最良形態を説明すること、及び他の当業者が、そのような実施形態又は他の実施形態において本開示の教示を利用し、且つ具体的な用途に必要とされる各種変形と共に本開示の教示を利用できるようにすることを意図したものである。従って、本開示のプロセス、装置、製品、組成物、及びその他の教示は、本明細書中で開示した厳密な実施形態及び実施例に限定することを意図したものではない。本明細書中の表題は37C.F.R.§1.77の提案と対応させること、又は組織的な待ち行列(organizational queues)を提供することを意図したにすぎない。これらの表題は、本明細書中に記載した発明を限定及び特徴付けするものではない。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【手続補正書】
【提出日】2022-02-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フルオロポリマー、
(b)相溶化剤、及び
(c)ポリエーテルイミド(PEI)又はポリイミド(PI)
を含み、
前記フルオロポリマーは、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、並びに、エチレン、テトラフルオロエチレン、及び、ヘキサフルオロプロピレンのターポリマー(EFEP)からなる群より選択されるフルオロポリマーであるポリマーアロイ組成物。
【請求項2】
前記フルオロポリマーはPAである、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項3】
前記相溶化剤は反応性ポリマー相溶化剤である、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項4】
前記相溶化剤はビス(オキサゾリン)化合物である、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項5】
前記相溶化剤は、反応性ポリマー相溶化剤及びビス(オキサゾリン)化合物を含む、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項6】
前記相溶化剤は1,4-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼンである、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項7】
前記ポリイミドは溶融加工性熱可塑性ポリイミド(TPI)である、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項8】
ナノ粒子を更に含む、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項9】
約70~85%のPFA、約5~20%の反応性ポリマー相溶化剤、及び約5~20%のPEI又はPIを含む、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項10】
約70~80%のPFA、約10~20%の反応性ポリマー相溶化剤、約10~15%のPIを含み、約0.1~0.3%のビス(オキサゾリン)及び約0.1~0.4%のナノ粒子を更に含む、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項11】
前記反応性ポリマー相溶化剤は、せん断PFA、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-オキシジアニリン、及びPEI-アミンを含む、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項12】
前記反応性ポリマー相溶化剤は、約75~85%のせん断PFA、約2.5~3.5%の4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1.2~1.7%の4,4’-オキシジアニリン、及び10~15%のPEI-アミンを含む、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項13】
前記ポリマーアロイ組成物は、最大引張強度が約20~35MPaである、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項14】
前記ポリマーアロイ組成物は、約100℃におけるZ方向の熱膨張率が約115~145(μm/m-C)である、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項15】
前記ポリマーアロイ組成物は、約150℃におけるZ方向の熱膨張率が約150(μm/m-C)未満である、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項16】
前記ポリマーアロイ組成物は、約100℃における貯蔵弾性率が約200~350MPaである、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項17】
前記ポリマーアロイ組成物は、約150℃における貯蔵弾性率が約150~250MPaである、請求項1に記載のポリマーアロイ組成物。
【請求項18】
(a)フルオロポリマー、及び
(b)反応性ポリマー相溶化剤
を含むポリマーアロイ組成物であって、
前記反応性ポリマー相溶化剤は、約1~5%のジアミン、約10~15%のPEI-アミン、及び約1~10%の二無水物を含み、
前記フルオロポリマーは、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、並びに、エチレン、テトラフルオロエチレン、及び、ヘキサフルオロプロピレンのターポリマー(EFEP)からなる群より選択されるフルオロポリマーである
ポリマーアロイ組成物。
【請求項19】
官能基化フルオロポリマー、多官能アミン、及び多官能無水物をブレンドして、反応性ポリマー相溶化剤を形成する工程、及び
前記反応性ポリマー相溶化剤を、非官能基化フルオロポリマー、ポリマー、及びビス(オキサゾリン)化合物とブレンドして、熱可塑性アロイを形成する工程、
を有し、
前記非官能基化フルオロポリマーは、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、並びに、エチレン、テトラフルオロエチレン、及び、ヘキサフルオロプロピレンのターポリマー(EFEP)からなる群より選択されるフルオロポリマーである、熱可塑性アロイの形成方法。
【国際調査報告】