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特表2022-545256高粘度組成物を用いるマイクロ針の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(54)【発明の名称】高粘度組成物を用いるマイクロ針の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
A61M37/00 505
A61M37/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511197
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 GB2020052009
(87)【国際公開番号】W WO2021032993
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】1911910.6
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522064948
【氏名又は名称】イノチュア アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バムジー,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】カメリウ イチム,イオヌット
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA72
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB06
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB24
4C267BB31
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC01
4C267CC05
4C267GG02
4C267HH08
(57)【要約】
本発明は、粘性ポリマーの使用による微細構造、特に美容目的か医用目的のいずれかの経皮吸収型パッチなどの、医療機器上にみられる微細構造の新規な製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造の製造方法であって、前記方法は、貫通孔を備える有孔のテンプレートに微細構造組成物を適用するステップを含み、前記微細構造組成物は、貫通孔を通過し、基板上に付着し、それにより微細構造を形成し、前記微細構造組成物は、少なくとも10,000cpsの粘度を有することを特徴とする、微細構造の製造方法。
【請求項2】
前記基板上に付着した前記微細構造組成物を硬化剤に曝すステップをさらに含み、前記硬化剤は好ましくは紫外光である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記微細構造組成物の前記適用を繰り返すステップを含む1つ又は複数の追加のステップをさらに含み、前記有孔のテンプレートは任意選択的に、前記微細構造組成物の各適用の間に、前記貫通孔が前記微細構造と整列するように、前記基板から離され、位置を動かし、そして整列する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記テンプレートは、前記有孔のテンプレートの前記面上に組み込まれた位置に関するマークの整列システム、及び前記微細構造組成物が上部に付着する前記基板上に組み込まれた対応するしるしを用いて、位置を動かす、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記微細構造組成物は、10,000~250,000cpsの粘度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記微細構造組成物は、ポリマーを含み、前記ポリマーは好ましくは、UV-硬化性ポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記UV-硬化性ポリマーは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を含む、請求項6に記載の微細構造組成物。
【請求項8】
前記微細構造組成物は、自己付着性である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記微細構造は、実質的に、円形、正方形、長方形、六角形、三角形、又はインゲンマメの形状である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記微細構造は、微細構造の配列の1つである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記微細構造は、マイクロ針である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記基板は、PVC、金属、ポリ乳酸、ガラス、セラミック、ポリスチレン、セルロース系基板、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン、ポリエチレンテレフタラート、ポリウレタン、又はニトロセルロースである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記基板は、経皮吸収型パッチの少なくとも一部を形成する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記微細構造組成物は、活性成分、導電性材料、及び/又は生化学試薬をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、前記微細構造にコーティング組成物を適用する追加のステップを含み、前記コーティング組成物は、活性成分、導電性材料、及び/又は生化学試薬を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、前記貫通孔の断面幅が100μm未満の場合、前記微細構造組成物は少なくとも2100cpsの粘度を有し、前記貫通孔の断面幅が100μmより大きい場合、前記微細構造組成物は少なくとも10,000cpsの粘度を有することをさらに特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を用いて製造された微細構造を備える経皮吸収型パッチ。
【請求項18】
請求項17に記載の経皮吸収型パッチ及び前記経皮吸収型パッチの使用説明書を備えるキット。
【請求項19】
請求項17に記載の経皮吸収型パッチを患者の皮膚に適用することを含む、これを必要とする前記患者の状態を治療する治療方法又は美容方法。
【請求項20】
前記状態は、外眼角のしわ(目じりの小じわ)(lateral canthal rhytids(crow-feet))、口囲皮膚炎、目の下のくぼみ(tear trough deformity)、デコルタージュのしわ(胸のしわ)、老人性色素斑、伸展線、瘢痕、脱毛症、乾癬、湿疹及び/又はドライスキンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記状態は、疼痛及び/又は炎症である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の方法により得られる微細構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造、特に美容目的か医用目的のいずれかの経皮吸収型パッチなどの、医療機器上にみられる微細構造の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮的薬物送達は、一つには腸及び肝臓における広範囲に及ぶ処理又は胃の酸性条件に対する感受性のために経口投与に不適な薬剤の数が増加したことが原因で、長い間、活性な医薬品成分の重要な投与経路とみなされてきた。そのうえ、経皮的薬物送達は、より侵襲的な手法に代わる送達システムを提供し、非経口投与などの、このような治療を施すためには医療従事者が立ち会う必要がある方法と比較して患者の自由度が高い。例えばゲル又はコーティングしたパッチを皮膚に適用することにより、ある特定の薬剤を経皮的に投与することができる一方で、この皮膚の最外層、すなわち角質層と呼ばれる10~20μmの障壁は、微生物及び有害物質の望まない侵入を防ぐよう進化したが、たいていの医薬品化合物の侵入も防ぐ、又は少なくとも著しく低減させる。
【0003】
結果として、角質層を横切って医薬品化合物を送達するのを助ける多くの方法が考案されてきた。1つの方法は、微細構造、特にマイクロ針を備えるパッチの使用であり、これにより前述のことを実現することができる。マイクロ針はその大きさにより、表皮のみを穿通することができ、皮膚の深いところに位置する感覚ニューロンとは接触しないであろうという点で、従来の皮下針を超えるさらなる利点を有する。マイクロ針は、注射と関連することが多い痛み及び法令遵守の問題点を低減し、又は回避することができる。以前の経皮吸収型パッチは、種々の金属及び硬質プラスチックを用いて製造されてきたが、これらのパッチは身体の異なる領域に適応するために必要とされる可撓性を欠き、広い表面積にわたる非常に多数の微細構造の付加に耐えられない。
【0004】
発明者らは以前、ポリマーのすぐれたリソグラフィー付着方法をもたらすよう既存のポリマー及びマイクロプロセッサ技術を適合させた、微細構造、特にマイクロ針の改良された製造方法を記載した(特許文献1及び特許文献2に概説されている)。この方法では、テンプレート及びスキージブレードの使用を伴う「積層化技術」を使用し、この技術ではさまざまな微細構造設計を生成することができる。例えば、種々の大きさ及び形状の針を作製することができ、この針の最終製品は広い表面積を覆う各種可撓性基板に適している。経皮吸収型パッチを設計する際、可撓性は重要であり、なぜならこの経皮吸収型パッチはヒトの身体の輪郭に柔軟に適応できる必要があるからである。
【0005】
本発明は、新規で驚くほど利点のある微細構造の製造方法を提供することにより、微細構造を含むこれらの既知のパッチの使用を改良及び拡張するための手段を提供する。この新規な製造方法を用いると、微細構造の製造プロセスをより効率的で正確にすることが可能となる。本発明は、経皮吸収型パッチだけに限定されず、いかなる基板上に微細構造を製造するためにも有用である。
【0006】
以前の微細構造の製造方法では、硬化前の状態において2000センチポアズ(cps)又は2パスカル秒(Pa.s)の微細構造組成物を用いていた。これらの微細構造組成物の粘度は、本発明の発明者らが克服しようと努めてきた多くの問題をもたらすことが知られている。第1に、この粘度を有する微細構造組成物を用いると、用いられるテンプレートの貫通孔の大きさに柔軟性を持たせることができなくなり、例えば、微細構造の形状を変えるには(先のとがった針の形状)、様々な異なる大きさの貫通孔が必要となり、したがって、正確で再現性のある微細構造を作製するためには様々な粘度の微細構造組成物が必要となる。第2に、この粘度を有する微細構造組成物は、スキージブレードの回転機構により空気混入状態になりやすい。組成物にエアポケットが導入されると、微細構造が変形する。第3に、本発明の微細構造組成物は、スキージブレードをテンプレート及び基板の面から上方へ離す傾向がある。このことは貴重な材料の無駄につながる。最後に、以前用いられた微細構造組成物は、付着量が少ない傾向がある。このことから、有効な高さの微細構造を構築するためには複数のパスを要し、時間と資金がかかる。
【0007】
発明者らは、以前用いられた方法では実現できなかった、工業生産用の、運転速度が速く、正確性が高く、再現性が高く、微細化できる微細構造の新規な製造方法を究明した。
【0008】
本明細書中の見かけ上先に発行された文書の目録又は論考は、必ずしもその文書が最新技術の一部である又は普通の一般知識であるという承認とみなすべきではない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、少なくとも10,000cps又は少なくとも10Pa.sの粘度を有する微細構造組成物を用いて微細構造を製造すると、粘性値が当該技術分野で既知のものより低い微細構造組成物と比較してプロセスの時間効率が高く正確性も高くなるという、発明者らによる驚くべき発見に基づいている。
【0010】
したがって、本発明は、貫通孔を備える有孔のテンプレートに微細構造組成物を適用するステップを含み、この微細構造組成物は、貫通孔を通過し、基板上に付着し、それにより微細構造を形成し、この微細構造組成物は、少なくとも10,000cps又は少なくとも10Pa.sの粘度を有することを特徴とする、方法を提供する。
【0011】
この方法は、この基板上に付着したこの微細構造組成物を硬化剤に曝すステップを含んでよく、好ましくはこの硬化剤は紫外(UV)光であり、そしてこの微細構造組成物のこの適用を繰り返すステップを含む1つ又は複数の追加のステップをさらに含んでよく、この有孔のテンプレートは任意選択的に、この微細構造組成物の各適用の間に、この貫通孔がこの微細構造と整列するように、この基板から離され、位置を動かし、そして整列する。
【0012】
本発明はまた、本発明の方法を用いて製造された微細構造を備える経皮吸収型パッチを提供する。本発明はやはり、本発明による経皮吸収型パッチ及びこのパッチの使用説明書を備えるキットを提供する。
【0013】
本発明はさらに、本明細書中に記載される経皮吸収型パッチを対象の露出した面に適用することを含む、これを必要とする患者の状態を治療する治療方法又は美容方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、本明細書中に開示された方法により得られる微細構造を提供する。
【0015】
本発明を、以下の図面と実施例を参照してより詳細に説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第1,786,580号
【特許文献2】米国特許第8,192,787号
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、断面幅が100μmの貫通孔を有するテンプレートを用いた粘性の低いポリマー(先端部)を、断面幅が200μmの貫通孔を有するテンプレートを用いた粘度の高いポリマー(基部)と組み合わせた使用を示す例の顕微鏡写真である。
図2図2は、90cps及び200cps(0.09Pa.s及び0.2Pa.s)の粘度を有するポリマーを平らで滑らかな基板上に付着し、次善の微細構造を生じたことを示す例の顕微鏡写真である。
図3図3は、90cps及び200cps(0.09Pa.s及び0.2Pa.s)の粘度を有するポリマーを平らで滑らかな基板上に付着し、次善の微細構造を生じたときの、積層の空気混入及び、生じた微細構造の精密でない構築を示す例の顕微鏡写真である。
図4図4は、90cps及び200cps(0.09Pa.s及び0.2Pa.s)の粘度を有するポリマーを粗面基板上に付着し、次善の微細構造を生じたことを示す例の顕微鏡写真である。
図5図5は、90cps及び200cps(0.09Pa.s及び0.2Pa.s)の粘度を有するポリマーを吸収性基板上に付着し、次善の微細構造を生じたことを示す例の顕微鏡写真である。
図6図6は、1000cps及び3000cps(1Pa.s及び3Pa.s)の粘度を有するポリマーを付着し、次善の微細構造を生じたことを示す例の顕微鏡写真である。
図7図7は、10,000cps(10Pa.s)の粘度を有するポリマーを付着したことを示す例の顕微鏡写真である。
図8図8は、10,000cps(10Pa.s)の粘度を有するポリマーを用いたときの結果を示す例の顕微鏡写真である。
図9図9は、少なくとも10,000cps(10Pa.s)の粘度を有するポリマーの付着物及び所望の特性を有する生じた微細構造を示す例の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
全ての当業者が本発明を行い、本発明を使用することを可能とするために以下の記述を示す。開示した実施形態に対する各種変更は、当業者にとって明白であろう。
【0019】
本発明は、少なくとも10,000cps又は10Pa.sの粘度を有する微細構造組成物の使用により、微細構造を正確にそして効率的に製造することができる新規方法を提供する。少なくとも前述の値の粘度を有する微細構造組成物は、10,000cps又は10Pa.s以下の粘性値を有する微細構造組成物と比較して多くの利点を有する。第1に、この値を超える微細構造組成物は、この値未満の微細構造組成物より効率的な方法で微細構造を作製するよう、有孔のテンプレートの貫通孔寸法に応じて変化することができる。第2に、この粘性値を超える微細構造組成物は、スキージブレードの回転機構(微細構造組成物に有孔のテンプレートの貫通孔を通過させ、基板上に向けるために使用される)により空気混入状態になる傾向を低減し、場合によっては全く空気混入状態にならない。第3に、印刷サイクルが開始すると、微細構造組成物がスキージブレードを基板から上方に離すことは珍しいことではない。これを克服するためには、過剰な微細構造組成物が必要となり、貴重な材料資源が無駄になる。少なくとも10,000cps又は10Pa.sの微細構造組成物を用いることにより、これが生じるのを防ぎ、プロセスがより効率的で費用対効果が高くなる。最後に、この粘性値を超える微細構造組成物を用いると付着量がより多くなり、この微細構造の高さを構築するのに要するパスが少なくなる。本発明は、本分野で既知の方法と関連する上の問題を解決する。
【0020】
本発明を適切な状況に置き、本出願中で用いられる用語に習熟してもらうために、特許文献1及び特許文献2にしたがって、以前に用いられた微細構造の製造方法の概要を説明した。本発明は、この方法と比較して著しい利点をもたらす。手短に言えば、所望の微細構造組成物が付着することになっている基板を多数の「孔」又は「貫通孔」を備える「有
孔のテンプレート」又は「ステンシル」と適切な技術を用いて整列する。微細構造組成物を「有孔のテンプレート」又は「ステンシル」に適用し、その後「貫通孔」又は「孔」に押し込み、所望量の微細構造組成物を受け入れ側の基板上に付着する。各パスで受け入れ側の基板上に付着する微細構造組成物の量は、「付着量」と呼ばれる。微細構造組成物を「有孔のテンプレート」又は「ステンシル」に押し込むためには、スキージブレード又は等価物を用いてテンプレートに圧力をかけることにより微細構造組成物を所望の位置に向ける。上の用語は、本発明の以下の記述全体を通して用いられる。2種類の印刷方法、1)テンプレートが基板と接触しない、非接触印刷、及び2)テンプレートが基板と接触する、接触印刷を採用してよい。
【0021】
したがって、第1の態様において、本発明は、貫通孔を備える有孔のテンプレートに微細構造組成物を適用するステップを含み、この微細構造組成物は、貫通孔を通過し、基板上に付着し、それにより微細構造を形成し、この微細構造組成物は、少なくとも10,000cps又は10Pa.sの粘度を有することを特徴とする、方法を提供する。
【0022】
用語「粘度」によって、流体の内部摩擦の大きさを表す量を意図する。本発明の微細構造組成物の粘度は、回転式粘度計を用いて測定することができる。当業者は、回転式粘度計が、カップ内でスピンドルを回転させ、スピンドルを回転させる垂直シャフトのトルクを測定することにより粘度を精密に測定することにより、試料の粘度を測定することが分かるだろう。この目的のために、2種類の異なる装置、バネ型装置又はサーボモーター装置を用いてもよい。あるいは、微細構造組成物の粘度を精密に測定するための任意の他の適した方法を採用してもよい。
【0023】
本発明による微細構造の製造方法は、この基板上に付着したこの微細構造組成物を硬化剤に曝すステップをさらに含んでよいと想定される。本発明の文脈において用語「硬化剤」とは、硬化した最終製品を製造するために、微細構造組成物の分子成分の結合を促進することができる薬品を指す。ある実施形態においては、硬化剤は、紫外(UV)光であってよいと想定される。
【0024】
そのうえさらに、本発明による微細構造の製造方法は、この微細構造組成物のこの適用を繰り返すステップを含む1つ又は複数の追加のステップをさらに含んでよく、この有孔のテンプレートは任意選択的に、この微細構造組成物の各適用の間に、この貫通孔がこの微細構造と整列するように、この基板から離され、位置を動かし、そして整列する。ある実施形態においては、このテンプレートは、この有孔のテンプレートのこの面上に組み込まれた位置に関するマークの整列システム、及びこの微細構造組成物が付着するこの基板上に組み込まれた対応するしるしを用いて、位置を動かしてよいと想定される。位置に関するマークの整列システムを用いることで、有孔のテンプレートを既に製造された微細構造の部分に対して正確な方法で確実に位置を動かすことができる。多くの整列システムがこの目的に適してよく、1つのこのようなシステムは、DEK Hawkeyeシステムである。
【0025】
用語「微細構造」は、高さが10μmと10mmの間のいずれの構造も含むことを意図する。例えば、高さが10μmと100μmの間、高さが10μmと500μmの間、高さが10μmと1000μmの間、高さが10μmと5000μmの間、高さが50μmと100μmの間、高さが50μmと500μmの間、高さが50μmと1000μmの間、高さが50μmと5000μmの間、高さが100μmと500μmの間、高さが100μmと1000μmの間、高さが100μmと5000μmの間、高さが500μmと1000μmの間、又は高さが500μmと5000μmの間である。本発明の文脈の範囲内で、用語「微細構造」とは主に、経皮吸収型パッチ上に位置する構造を指す。微細構造は、マイクロ針であってよく、及び/又は例えば拡張ワイヤ又はドーナツ形状などの種々の形状又は形をとってよい。
【0026】
「貫通孔」によって、物体の材料を完全に貫通して延び、物体の一方の側から他方の側まで切れ目のないチャンネルを生成する、開口を意図する。
【0027】
微細構造組成物は、10,000cps~250,000cpsの粘度を有することができると想定される。例えば、10,000cps~20,000cps、10,000cps~30,000cps、10,000cps~40,000cps、10,000cps~50,000cps、10,000cps~60,000cps、10,000cps~70,000cps、10,000cps~80,000cps、10,000cps~90,000cps、10,000cps~100,000cps、10,000cps~110,000cps、10,000cps~120,000cps、10,000cps~130,000cps、10,000cps~140,000cps、10,000cps~150,000cps、10,000cps~160,000cps、10,000cps~170,000cps、10,000cps~180,000cps、10,000cps~190,000cps、10,000cps~200,000cps、10,000cps~210,000cps、10,000cps~220,000cps、10,000cps~230,000cps、10,000cps~240,000cps
若しくは10,000cps~250,000cps、20,000cps~30,000cps、20,000cps~40,000cps、20,000cps~50,000cps、20,000cps~60,000cps、20,000cps~70,000cps、20,000cps~80,000cps、20,000cps~90,000cps、20,000cps~100,000cps、20,000cps~110,000cps、20,000cps~120,000cps、20,000cps~130,000cps、20,000cps~140,000cps、20,000cps~150,000cps、20,000cps~160,000cps、20,000cps~170,000cps、20,000cps~180,000cps、20,000cps~190,000cps、20,000cps~200,000cps、20,000cps~210,000cps、20,000cps~220,000cps、20,000cps~230,000cps、20,000cps~240,000cps
若しくは20,000cps~250,000cps、30,000cps~40,000cps、30,000cps~50,000cps、30,000cps~60,000cps、30,000cps~70,000cps、30,000cps~80,000cps、30,000cps~90,000cps、30,000cps~100,000cps、30,000cps~110,000cps、30,000cps~120,000cps、30,000cps~130,000cps、30,000cps~140,000cps、30,000cps~150,000cps、30,000cps~160,000cps、30,000cps~170,000cps、30,000cps~180,000cps、30,000cps~190,000cps、30,000cps~200,000cps、30,000cps~210,000cps、30,000cps~220,000cps、30,000cps~230,000cps、30,000cps~240,000cps
若しくは30,000cps~250,000cps、40,000cps~50,000cps、40,000cps~60,000cps、40,000cps~70,000cps、40,000cps~80,000cps、40,000cps~90,000cps、40,000cps~100,000cps、40,000cps~110,000cps、40,000cps~120,000cps、40,000cps~130,000cps、40,000cps~140,000cps、40,000cps~150,000cps、40,000cps~160,000cps、40,000cps~170,000cps、40,000cps~180,000cps、40,000cps~190,000cps、40,000cps~200,000cps、40,000cps~210,000cps、40,000cps~220,000cps、40,000cps~230,000cps、40,000cps~240,000cps
若しくは40,000cps~250,000cps、50,000cps~60,000cps、50,000cps~70,000cps、50,000cps~80,000cps、50,000cps~90,000cps、50,000cps~100,000cps、50,000cps~110,000cps、50,000cps~120,000cps、50,000cps~130,000cps、50,000cps~140,000cps、50,000cps~150,000cps、50,000cps~160,000cps、50,000cps~170,000cps、50,000cps~180,000cps、50,000cps~190,000cps、50,000cps~200,000cps、50,000cps~210,000cps、50,000cps~220,000cps、50,000cps~230,000cps、50,000cps~240,000cps
若しくは50,000cps~250,000cps、60,000cps~70,000cps、60,000cps~80,000cps、60,000cps~90,000cps、60,000cps~100,000cps、60,000cps~110,000cps、60,000cps~120,000cps、60,000cps~130,000cps、60,000cps~140,000cps、60,000cps~150,000cps、60,000cps~160,000cps、60,000cps~170,000cps、60,000cps~180,000cps、60,000cps~190,000cps、60,000cps~200,000cps、60,000cps~210,000cps、60,000cps~220,000cps、60,000cps~230,000cps、60,000cps~240,000cps
若しくは60,000cps~250,000cps、70,000cps~80,000cps、70,000cps~90,000cps、70,000cps~100,000cps、70,000cps~110,000cps、70,000cps~120,000cps、70,000cps~130,000cps、70,000cps~140,000cps、70,000cps~150,000cps、70,000cps~160,000cps、70,000cps~170,000cps、70,000cps~180,000cps、70,000cps~190,000cps、70,000cps~200,000cps、70,000cps~210,000cps、70,000cps~220,000cps、70,000cps~230,000cps、70,000cps~240,000cps
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若しくは100,000cps~250,000cps、110,000cps~120,000cps、110,000cps~130,000cps、110,000cps~140,000cps、110,000cps~150,000cps、110,000cps~160,000cps、101,000cps~170,000cps、110,000cps~180,000cps、110,000cps~190,000cps、110,000cps~200,000cps、110,000cps~210,000cps、110,000cps~220,000cps、110,000cps~230,000cps、110,000cps~240,000cps
若しくは110,000cps~250,000cps、120,000cps~130,000cps、120,000cps~140,000cps、120,000cps~150,000cps、120,000cps~160,000cps、120,000cps~170,000cps、120,000cps~180,000cps、120,000cps~190,000cps、120,000cps~200,000cps、120,000cps~210,000cps、120,000cps~220,000cps、120,000cps~230,000cps、120,000cps~240,000cps
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~190,000cps、160,000cps~200,000cps、160,000cps~210,000cps、160,000cps~220,000cps、160,000cps~230,000cps、160,000cps~240,000cps
若しくは160,000cps~250,000cps、170,000cps~180,000cps、170,000cps~190,000cps、170,000cps~200,000cps、170,000cps~210,000cps、170,000cps~220,000cps、170,000cps~230,000cps、170,000cps~240,000cps
若しくは170,000cps~250,000cps、180,000cps~190,000cps、180,000cps~200,000cps、180,000cps~210,000cps、180,000cps~220,000cps、180,000cps~230,000cps、180,000cps~240,000cps
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又は210,000cps~250,000cps、220,000cps~230,000cps、220,000cps~240,000cps若しくは220,000cps~250,000cps、230,000cps~240,000cps若しくは230,000cps~250,000cps、240,000cps~250,000cps、又は前の粘度を両端点として用いる間にあるいずれかの範囲である。
【0028】
Pa.sでの同等の粘性値、例えば10Pa.s~250Pa.sも、本明細書中に開示される本発明に含まれるとみなす。この範囲内で選択される粘度は、有孔のテンプレートの貫通孔の大きさに依存してよく、例えば、貫通孔が小さいほど粘性の低い組成物を要してよく、一方貫通孔が大きいほど粘性の高い組成物の恩恵を受けてよい又は粘性の高い組成物を要してよい。粘度の選択は、効率的なプロセスを可能にするよう有孔のテンプレートの貫通孔の大きさと印刷サイクルの回数のバランスであってよい。
【0029】
基板上に付着する微細構造組成物の量は、有孔のテンプレートの厚さ、有孔のテンプレートを作製する材料、貫通孔の寸法及び組成物の物理的特性といった、多くの要因に依存してよい。本発明によれば、粘性の高いポリマー(>10,000cps又は>10Pa.s)を用いると微細構造を作製するための本明細書中に開示された方法の繰り返し回数を低減することになり、エネルギー効率及び費用対効果がより高いプロセスをもたらす。
【0030】
微細構造組成物は、ポリマーを含んでよいと想定される。ある実施形態において、微細構造ポリマーは、UV光を使用してポリマーの架橋ネットワークを生成するような、UV-硬化性ポリマーであってよい。さらなる実施形態においては、UV-硬化性ポリマーは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸であってよい。しかしながら、当業者は、例えば、迅速に硬化することができる(例えば、1~5秒以内)ポリマーなどの、所望の特性を備えた任意のUV-硬化性ポリマーがこの目的に適切であると分かるだろう。
【0031】
微細構造組成物は、自己付着性であってよいと想定される。用語「自己付着性」は、微
細構造組成物が追加の成分を導入しなくても自身で接着できる能力を指すことを意図する。この特性があると、微細構造組成物の付着物を、いかなる追加成分も必要とせずに各々の後の付着物を前の付着物に付着させて、前の付着物に加えることが可能になる。この微細構造組成物の付着物は、後の又は前の付着物と同一又は異なってよく、例えば、付着性がある限り、粘度に関して前の付着物と異なってよい。したがって製造プロセスはより合理化され、時間及び費用対効果がより高いプロセスをもたらす。10,000cpsを超え、30,000cpsを超えるまで増加する粘度を有するポリマーは、高い付着量を示し、微細構造の所望の高さに達するための後の付着物の必要性をなくす。生じる微細構造の特性は、異なる粘度のポリマーをテンプレートの種々の物理パラメータと並行して用いることにより操作され、効率的な方法で特有の構造を生成することができる。そのうえ、後の付着物により微細構造を構築する際、異なるポリマー粘度の組み合わせを用いても、固有の構造特性を生じることができる。
【0032】
微細構造組成物は実質的に、円形、正方形、長方形、六角形、三角形、又はインゲンマメの形状であってよいと想定される。用いられる微細構造の形状は、治療される徴候と関連してもよい。例えば、いくつかの形状は、他のものと比較して覆われる表面積が広くなってよい。微細構造の形状又は微細構造の配列はまた、適用を意図する身体の部位に依存してよい。
【0033】
微細構造は、本明細書中に記載された本発明を用いて製造される微細構造の配列のうちの1つであってよい。「配列」によって、単一の固体基板上に存在し、互いに対して特有の配置を示す複数の微細構造を意図する。例えば、微細構造の配列は、複数の微細構造を備えた経皮吸収型パッチであってよく、支持用固体基板全体に均一に位置してよい。当業者は、治療すべき身体の部位に応じて所望の化合物の送達力を強化するために、異なるパターンの微細構造を使用できることが分かるだろう。
【0034】
本明細書中に開示される微細構造は、マイクロ針であってよいと想定される。「マイクロ針」によって、角質層を破壊する1mm以下の突出部を意図する。本発明で開示される方法はやはり、様々な異なる微細構造に適用可能であってよく、この微細構造は、正確度、精密度及び微細化を全て充分な時間枠で達成できる新規技術から恩恵を受けるだろう。この製造方法を適用することができる微細構造形状の例は、ドーナツ形状及び拡張ワイヤを含んでよい。本方法は、このような製品の構成要素が一般的には特に小規模である電気及び診断分野に応用することができると特に想定される。
【0035】
微細構造組成物が付着する基板は、平らで滑らかな基板、粗面基板又は吸収性基板であってよい。前述の基板の各々の例はそれぞれ、メリネックスプラスチック、ポリウレタンフォーム又は「melt weave型」であってよい。本発明の発明者は驚くべきことに、少なくとも10,000cps(10Pa.s)の粘度を有する微細構造組成物を用いると、用いられる全ての種類の基板全体に望ましい特性を有する微細構造をもたらすことを見出した。
【0036】
基板は、ポリ塩化ビニル(PVC)基板、金属基板、ポリ乳酸基板、ガラス基板、セラミック基板、ポリスチレン基板、セルロース系基板、ポリビニルアルコール基板、ポリカーボネート基板、ポリメタクリル酸メチル基板、シリコーン基板、ポリエチレンテレフタラート基板、ポリウレタン基板又はニトロセルロース基板であってよいと想定される。基板は、ヒト又は非ヒトの外面との接触に適し、そして例えば、可撓性及び耐久性などの所望の特性を呈するいかなる材料から形成されてもよい。このような外面の例としては、対象の皮膚、粘膜、口腔又は眼があげられる。ある実施形態において、基板は経皮吸収型パッチの少なくとも一部を形成してよい。
【0037】
微細構造組成物は、活性成分、導電性材料、及び/又は生化学試薬をさらに含んでよいと想定される。
【0038】
用語「活性成分」は、医薬品的性質及び非医薬品的性質の両方の活性成分を含むとみなされる。非医薬品的活性成分は、例えば美容業界で用いることができる。非医薬品的性質の活性成分の例としては、α-ヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸、ヒドロキノン、コウジ酸、レチノール、L-アスコルビン酸、ヒアルロン酸、銅ペプチド、α―リポ酸及びジメチルアミノエタノールがあげられる。導電性材料が存在すると、活性成分が角質層を横断して移動するのを促進することができる。この場合、生理的に許容される電流(0.1~1mA/cm)を送達するために外側に配置した電極が必要となるだろう。このような導電性材料の例は、導電性が知られている有機ポリマーである、導電性ポリマーを微細構造組成物に添加することであってよい。導電性ポリマーはいくつかを強調すると、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリインドール及びポリアニリンを含んでよい。ヒトの身体又は他の哺乳類の身体と接触するのに適切ないずれの導電性材料も、微細構造組成物中の含有に適切であってよい。用語「生化学試薬」によって、生物システムに見られる、又は生物的研究に用いることができるいずれの生物材料又は有機化合物を意図する。例えば、微細構造組成物は、治療用途又は美容用途を意図して、例えば、コラーゲン産生を強化することを意図して、ヌクレオチド及び/又はアミノ酸を含んでよい。生化学試薬を含有すると、診断プロセスにも役立つことができる。
【0039】
微細構造組成物内にこのような追加の材料を含有することは、例えば微細構造自身が基板から離れる(分離又は分解のいずれかにより)ことと特に関連してよいと想定される。
【0040】
そのうえ、微細構造の製造方法は、この微細構造にコーティング組成物を適用する追加のステップを含んでよく、このコーティング組成物は、活性成分、導電性材料、及び/又は生化学試薬を含むと想定される。この微細構造に対するコーティング組成物の適用はまた、微細構造を覆う構造的保護バリアとして使用してもよい。
【0041】
コーティング組成物は、溶解可能であってよく、所望の時点で活性成分を放出できる。活性成分をコーティング組成物から、コーティング自身の溶解又は拡散勾配のいずれかにより放出することができる。コーティングは、皮膚内の水と接触すること又は例えば融点などの、温度変化により活性成分を溶解し放出するよう巧みに設計することができる粘着性表面を提供するプライマーを用いることにより、溶解を引き起こしてよい。いくつかの例においては、プライマーを用いるステップは必要とされない。コーティング組成物内の活性成分を、皮膚の表面に送達してもずっと深い真皮中へ送達してもよい。送達の程度は、微細構造の長さ及び治療すべき徴候に依存するだろう。本発明の文脈の範囲内の活性成分とは、生物学的に活性で、したがって所望の治療効果を生むコーティング組成物の成分を指す。
【0042】
活性成分が活性な医薬品成分であるならば、この活性な医薬品成分は、生物学的に活性な皮膚再生化合物であってよく、この活性な皮膚再生化合物は好ましくはヒアルロン酸、ビタミンB、ビタミンC、コエンザイムQ10、マトリキシル、又はレスベラトロールである。これらの皮膚再生化合物は、本明細書中に記載された方法を用いてコーティングされた微細構造を備える美容製品を製造するのに使用することができる。このような製品を患者の美的問題を処理するために用いてよい。このような治療すべき状態は、外眼角のしわ(目じりの小じわ)(lateral canthal rhytids(crow-feet))、口囲皮膚炎、目の下のくぼみ(tear trough deformity)、デコルタージュのしわ(胸のしわ)、及び老人性色素斑を含んでよい。さらに、皮膚再生化合物は、瘢痕の外観を改善することを目標とする又は創傷治癒の速度を促進することを目指す化合物を含んでよい。当業者は、コーティング組成物に含むべき化合物は
、治療すべき状態に依存することが分かるだろう。例えばヒアルロン酸は、ビタミンB又はCよりも外眼角のしわ(lateral canthal rhytids)に対する使用に適した化合物であってよい。そのうえ、コーティング組成物は、単独の皮膚再生化合物だけを含んでも、又は2種類又はそれ以上の異なる化合物が同一のコーティング組成物内に存在する、複数の化合物の組み合わせを含んでよい。後者のものは、対処すべき状態が複数ある患者を治療する場合は特に有用であってよい。
【0043】
さらに、活性な医薬品成分は、鎮痛薬、抗炎症薬、及び/又は免疫抑制化合物であってよく、化合物は好ましくは、ジクロフェナク、イブプロフェン、リドカイン又はヒドロコルチゾンである。鎮痛薬は、一次作用が対象の痛みを緩和することである化合物とみなされる。抗炎症化合物は、特定の障害又は状態と関係する炎症を軽減することができる化合物であるとみなされる。免疫抑制化合物は、免疫系の活性を抑制する又は防ぐ化合物とみなされる。上の化合物は、全身疼痛緩和として使用されるか局所麻酔として使用されるかにかかわらず、疼痛管理法としての使用、又は乾癬若しくは湿疹などの皮膚科学的状態に適してよいと意図される。当業者は、上に挙げた化合物を上のグループのうち1個超に分類してよいと分かるだろう。例えば、イブプロフェンは、鎮痛薬と抗炎症薬の両方であると認識される。コーティング組成物に含むべき化合物は、治療すべき状態に依存すると理解される。例えば、ヒドロコルチゾンは、イブプロフェンより湿疹の治療に適している。そのうえ、コーティング組成物は、単独の鎮痛化合物、抗炎症化合物若しくは免疫抑制化合物だけを含んでも、又は2種類又はそれ以上の異なる化合物が同一のコーティング組成物内に存在する、複数の化合物の組み合わせを含んでよい。後者のものは、対処すべき状態が複数ある患者を治療する場合は特に有用であってよい。
【0044】
活性成分を、数秒から数時間の時間尺度にわたり放出してよい。コーティング組成物は、例えば治療すべき急性状態又は慢性状態のいずれかなどの、目的とする適用に応じて、種々の放出時間を有するよう目的に合わせることができる。
【0045】
問題の状態のための関連する活性成分に加えて、コーティング組成物はさらに、医薬品製剤の使用に適した化合物を含んでよい。このような化合物は、許容される医薬的担体を含んでよく、その例としてはカプセル封入賦形剤、ナノ粒子、ミセル、皮膚浸透エンハンサー及び他の賦形剤があげられる。
【0046】
そのうえ、コーティング組成物は、微細構造を覆う構造的保護バリアを形成してよい。これがあると、脆い微細構造が皮膚の最外層、角質層を通過するとき、破損から保護するのに役立つことができる。保護バリアは、微細構造の全体を覆っても、微細構造の一部だけ、例えば最も損傷を受けやすい部分である先端部を覆ってよい。構造的保護バリアのコーティングは、少なくとも一層のコーティングを要してよい。コーティング組成物により形成される構造的保護バリアは、コーティング組成物を気体又は液体、例えば、液相又は気相のアルコールなどの溶媒などに曝露することにより溶解を引き起こし、微細構造を露出してよい。
【0047】
本発明の方法は、この貫通孔の断面幅が100μm未満の場合、この微細構造組成物は少なくとも2100cpsの粘度を有し、この貫通孔の断面幅が100μmより大きい場合、この微細構造組成物は少なくとも10,000cpsの粘度を有することをさらに特徴としてよい。例えば、この貫通孔の断面幅が100μm未満の場合、この微細構造組成物は、2100cps~9999cps、2200cps~9999cps、2300cps~9999cps、2400cps~9999cps、2500cps~9999cps、2600cps~9999cps、2700cps~9999cps、2800cps~9999cps、2900cps~9999cps、3000cps~9999cps、3100cps~9999cps、3200cps~9999cps、3300c
ps~9999cps、3400cps~9999cps、3500cps~9999cps、3600cps~9999cps、3700cps~9999cps、3800cps~9999cps、3900cps~9999cps、4000cps~9999cps、4100cps~9999cps、4200cps~9999cps、4300cps~9999cps、4400cps~9999cps、4500cps~9999cps、4600cps~9999cps、4700cps~9999cps、4800cps~9999cps、4900cps~9999cps、5000cps~9999cps、5100cps~9999cps、5200cps~9999cps、5300cps~9999cps、5400cps~9999cps、5500cps~9999cps、5600cps~9999cps、5700cps~9999cps、5800cps~9999cps、5900cps~9999cps、6000cps~9999cps、6100cps~9999cps、6200cps~9999cps、6300cps~9999cps、6400cps~9999cps、6500cps~9999cps、6600cps~9999cps、6700cps~9999cps、6800cps~9999cps、6900cps~9999cps、7000cps~9999cps、7100cps~9999cps、7200cps~9999cps、7300cps~9999cps、7400cps~9999cps、7500cps~9999cps、7600cps~9999cps、7700cps~9999cps、7800cps~9999cps、7900cps~9999cps、8000cps~9999cps、8100cps~9999cps、8200cps~9999cps、8300cps~9999cps、8400cps~9999cps、8500cps~9999cps、8600cps~9999cps、8700cps~9999cps、8800cps~9999cps、8900cps~9999cps、9000cps~9999cps、9100cps~9999cps、9200cps~9999cps、9300cps~9999cps、9400cps~9999cps、9500cps~9999cps、9600cps~9999cps、9700cps~9999cps、9800cps~9999cps又は9900cps~9999cpsの粘度を有してよい。例えば、この貫通孔の断面幅が100μmより大きい場合、この微細構造組成物は、10,000cps~20,000cps、10,000cps~30,000cps、10,000cps~40,000cps、10,000cps~50,000cps、10,000cps~60,000cps、10,000cps~70,000cps、10,000cps~80,000cps、10,000cps~90,000cps、10,000cps~100,000cps、10,000cps~110,000cps、10,000cps~120,000cps、10,000cps~130,000cps、10,000cps~140,000cps、10,000cps~150,000cps、10,000cps~160,000cps、10,000cps~170,000cps、10,000cps~180,000cps、10,000cps~190,000cps、10,000cps~200,000cps、10,000cps~210,000cps、10,000cps~220,000cps、10,000cps~230,000cps、10,000cps~240,000cps又は10,000cps~250,000cpsの粘度を有してよい。このように貫通孔の幅(及び深さ)に関連して粘度を変化できると、形状が異なる微細構造を高い正確度と高い効率で生成することができる。例えば、貫通孔の断面幅は、微細構造の基部から微細構造の先端部まで不変であってよく、したがって「先が鈍い」微細構造を生成する。あるいは、貫通孔の断面幅は、微細構造の基部から微細構造の先端部まで変化してよく、例えば先端が鋭い微細構造を生成する。テンプレートの貫通孔の幅にしたがって微細構造組成物の粘度を変化させると、例えば貫通孔が小さいとき粘性の低いポリマーを用いると、テンプレートの貫通孔に付着して微細構造組成物が減ることによる資源の浪費を少なくすることもできる。
【0048】
したがって、第2の態様において、本発明は、本明細書中に定義した方法により製造さ
れた微細構造(複数含む)を備える経皮吸収型パッチを提供する。このパッチはもちろん、パッチの意図される適用のために適切に配置した複数の微細構造を備えることが予想される。1つ又は複数の微細構造を備える経皮吸収型パッチは、対象に活性物質を送達するのを援助することができ、又は例えば細菌感染若しくはウイルス感染などの状態を診断するのに使用することができると想定される。本明細書中に記載された経皮吸収型パッチは、例えば化学療法剤や抗生物質の成功率など、各種治療法の成功を監視するための装置として使用してもよいと想定される。
【0049】
本発明はまた、本明細書中に記載された経皮吸収型パッチ及びこの経皮吸収型パッチの使用説明書を備えるキットを提供してよい。使用説明書では、このパッチを適用すべき期間、及びこのパッチ又は複数のパッチを適切に再適用すべき事態及び/又は頻度を指示してよい。キットは、医師に指示されたとおりに適用できる種々の用量又は種々の活性な医薬品成分を有するパッチを収納することができる。
【0050】
本発明はまた、本明細書中に記載された経皮吸収型パッチをこの対象の皮膚に適用することを含む、これを必要とする患者の状態を治療する治療方法又は美容方法を提供してよい。
【0051】
本明細書中に提供される方法を用いて製造され、コーティングされたパッチ及び本明細書中に提供されるパッチは、外眼角のしわ(目じりの小じわ)(lateral canthal rhytids(crow-feet))、口囲皮膚炎、目の下のくぼみ(tear trough deformity)、デコルタージュのしわ(胸のしわ)、老人性色素斑、伸展線、瘢痕、脱毛症、乾癬、湿疹及び/又はドライスキンなどの治療する状態に有用であってよい。さらに、本明細書中に提供される方法を用いて治療すべき状態は、疼痛及び/又は炎症を含むことができる。
【0052】
微細構造の皮膚中への浸透の程度は、皮膚の状態に依存してよい。例えばきめの粗い皮膚には、皮膚を突破するための長い微細構造を要してよく、一方荒れた皮膚には、同一の効果を達成するために深さが浅い浸透を要してよい。
【0053】
本発明はやはり、獣医学的適用に応用可能であってよいと想定される。経皮吸収型パッチを有効にするためには、皮膚と直接接触できるよう動物の皮膚をそり落とす必要があってよいと予想される。用語「動物」には、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、雌ウシ、及びニワトリなどの全ての脊椎動物哺乳類が含まれる。
【0054】
本発明はまた、本明細書中に開示される方法のいずれかによって入手できる微細構造を提供してよい。
【0055】
本発明を、添付の図面を参照して以下の実施例において例示する。
【実施例
【0056】
本発明の発明者らは驚くべきことに、少なくとも10,000cps(少なくとも10Pa.s)の粘度を有する微細構造組成物により微細構造を製造し、そしてこの値を超える粘性値を変化させると、この粘性値以下の微細構造組成物よりもプロセスの時間効率が良くなり、正確になることを見出した。そのうえ、この粘度を超える微細構造組成物では、空気混入状態になる傾向が低減し、過剰な微細構造組成物を用いるべきであるという要求がなく、用いるべき印刷パスの回数が少なくなり、そしてこの粘性値以下の微細構造組成物よりも費用対効果が高い手法である。単一の微細構造を生成するために用いられる、微細構造組成物の粘度を変化させることができると(微細構造組成物の粘度は少なくとも10,000cpsである)、異なる形状の微細構造を生成することが可能となり(図1)、例えば経皮吸収型パッチ上での使用などの意図する目的に合う。
【0057】
本発明の開発より前に、発明者らは初めに、粘度の低い微細構造組成物を用いて微細構造を製造することを試みた。各種試験の結果を図に示す。多くの試験及び改良の後、発明者らはついに、粘度が重要であり、少なくとも10,000cps(10Pa.s)の粘度を有する微細構造組成物のみが上述した望ましい特性を有する微細構造を作製できるという驚くべき結論に達した。
【0058】
第1の例においては、90cps~200cps(0.09Pa.s~0.2Pa.s)の粘度を有する微細構造組成物を平らで滑らかな基板上に付着した。しかしながら、この程度の粘度では、組成物は形状を維持することができず、基板の面全体に制御できない方法で、流れた(図2)。そのうえ、微細構造を低い精密度で構築しただけでなく、積層に不必要な空気混入が観察された(図3)。初めに、発明者らは、上で述べた微細構造組成物を維持しながら、用いる基板の種類を変化させることにより結果を改善しようと努めた。粗面基板又は吸収性基板を用いても、やはり所望の微細構造を製造できなかった(図4及び図5)。
【0059】
発明者らはついで、1000cps~3000cps(1Pa.s~3Pa.s)の粘度が高い微細構造組成物を用いて試みた。しかしながら、この手法では、期待された構造を実現するためには過剰な層が必要となり(30以上)(図6)、時間と資源の両方に関して非効率であるという制限があった。
【0060】
微細構造組成物が10,000cps(10Pa.s)の高い粘性値を有するときのみ、放出時の形の改善及び基板上の流出量の低減に関して改善がみられた(図7及び8)。発明者らはその後、用いる粘度の高さにより、微細構造組成物が形状を保つ能力と、付着物当たりの収量の間に直接的な相関関係があり、必要とされる積層ステップの回数を低減できることを発見した。このことは、発明者らが少なくとも10,000cps(10Pa.s)の粘度を有する微細構造組成物を用いることに進んだときに特に明白であり、この場合付着層は、低粘度で必要とされる30層以上と著しく異なり、わずか16層まで減らすことができた。特許請求される粘度で付着量が改善しただけでなく、プロセスの制御性、微細構造の形及び構造の再現性が改善し、そして積層中の不必要な空気混入が欠乏した(図9)。したがって、10,000cps以下の粘度を有する微細構造組成物では、所望の構造又は商業的に実現可能なプロセスを可能にする層の数の低減を実現することができない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】